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特表2022-547550PD-1軸阻害剤及び抗ペリオスチン抗体の使用により癌を処置する方法。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】PD-1軸阻害剤及び抗ペリオスチン抗体の使用により癌を処置する方法。
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20221107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221107BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20221107BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20221107BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20221107BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221107BHJP
【FI】
A61K45/06 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C07K16/46
C07K16/28
C07K19/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515822
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 CA2020051164
(87)【国際公開番号】W WO2021046634
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,066
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521258005
【氏名又は名称】ベーリンガー・インゲルハイム・イオ・カナダ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOEHRINGER INGELHEIM IO CANADA INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジェサ,アリフ
(72)【発明者】
【氏名】フランソン,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】マクグレイ,エージェイ・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヒューム,ジョアン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085DD62
4C085EE03
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書中に記載するのは、個体に(a)PD-1軸阻害剤;及び(b)ペリオスチンの阻害剤を投与することを含む、癌を処置する方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に(a)PD-1軸阻害剤;及び(b)ペリオスチン阻害剤を投与することを含む、癌に罹患している個体を処置する方法。
【請求項2】
前記ペリオスチン阻害剤が、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペリオスチン阻害剤が、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、ペリオスチンに結合する前記抗体又は抗原結合フラグメントが以下を含む、請求項2に記載の方法:
a)配列番号1(GYTFTSYG)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)。
【請求項4】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントがキメラである又はヒト化されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントがIgG抗体である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントがFab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
ペリオスチンに結合する前記抗体又は抗原結合フラグメントが、免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、a)前記免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;ならびに
b)前記免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである
請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
個体に(a)PD-1軸阻害剤;及び(b)ペリオスチンの阻害剤を投与することを含む、癌に罹患している個体を処置する方法。
【請求項9】
ペリオスチンの前記阻害剤が、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ペリオスチン阻害剤が、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントが免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を含み、
a)前記免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;ならびに
b)前記免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントがキメラである又はヒト化されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントがIgG抗体である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項14】
ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて約50ナノモル未満のIC50を有する、請求項3~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記PD-1軸阻害剤がPD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤である、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記PD-1軸阻害剤が、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
PD-1に結合する前記抗体又はそのフラグメントが、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
PD-1に結合する前記抗体又はそのフラグメントが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、AMP-514(MEDI0680)、又はエザベンリマブ、あるいはそれらのPD-1結合フラグメントを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記PD-1軸阻害剤が、PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する抗体である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する前記抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS-936559(MDX-1105)、AMP-224、セミプリマブ(REGN2810)、トリパリマブ(JS001-PD-1)、カムレリズマブ(SHR-1210)、ドスタルリマブ(TSR-042)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、又はFAZ053、あるいはそれらのPDL-1又はPDL-2結合フラグメントを含む、請求項9の方法。
【請求項21】
PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の前記阻害剤が、PD-1、PDL-1、又はPDL-2に結合するFc-融合タンパク質を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記Fc-融合タンパク質がAMP-224又はそのPD-1結合フラグメントを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の前記阻害剤が、PD-1、PDL-1、又はPDL-2の小分子阻害剤を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
PD-1、PDL-1、又はPDL-2を介したシグナル伝達の前記小分子阻害剤が、以下の1つ又は複数を含む、請求項23に記載の方法:N-{2-[({2-メトキシ-6-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS 202);(2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)-5-メチルベンジル)-D-セリン塩酸塩;(2R,4R)-1-(5-クロロ-2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニルインドール;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニル-1h-インドール;L-α-グルタミン、N2,N6-ビス(L-セリル-L-アスパラギニル-L-スレオニル-L-セリル-L-α-グルタミル-L-セリル-L-フェニルアラニル)-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-アルギニル-L-バリル-L-スレオニル-L-グルタミニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-プロリル-L-リシル-L-アラニル-L-グルタミニル-L-イソロイシル-L-リシル;(2S)-1-[[2,6-ジメトキシ-4-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]フェニル]メチル]-2-ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N-(2-メルカプトアセチル)-L-フェニルアラニル-N-メチル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-ロイシル-N-メチルグリシル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-トリプトフィル-N-メチル-L-ノルロイシル-N-メチル-L-ノルロイシル-L-アルギニル-L-システイニル-、環状(1→14)-チオエーテル;又はその誘導体もしくは類似体。
【請求項25】
前記個体が、単剤療法としてのチェックポイント阻害剤を用いた処置後に進行性疾患を発生している、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記チェックポイント阻害剤がPD-1軸阻害剤を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記PD-1軸阻害剤及びペリオスチンの前記阻害剤が別々に投与される、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記PD-1軸阻害剤及びペリオスチンの前記阻害剤が同じ日に投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記PD-1軸阻害剤及びペリオスチンの前記阻害剤が異なる日に投与される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記癌が、膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頚部癌、卵巣癌、結腸癌、頚部癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
PD-1軸阻害剤によっても処置されている患者における使用のための、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項32】
ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントが以下を含む、請求項31に記載の使用:
a)配列番号1(GYTFTSYG)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);
b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);
c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);
d)配列番号10(SSDIGSNR)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);
e)配列番号11(SND)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び
f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)。
【請求項33】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントが、キメラである又はヒト化されている、請求項31に記載の使用。
【請求項34】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントがIgG抗体である、請求項31から33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項31~33のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントが、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み、a)前記免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;ならびに
b)前記免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである
請求項31~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
PD-1軸阻害剤によっても処置されている患者における使用のための、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントであって、ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み:
a)前記免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;ならびに
b)前記免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項38】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントが、キメラである又はヒト化されている、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントがIgG抗体である、請求項37又は38に記載の使用。
【請求項40】
ペリオスチンに結合する前記組換え抗体又はその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は単鎖可変フラグメント(scFv)である、請求項37又は38に記載の使用。
【請求項41】
ペリオスチンに結合する前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて約50ナノモル未満のIC50を有する、請求項31~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記PD-1軸阻害剤が、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤である、請求項31~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
前記PD-1軸阻害剤が、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
PD-1に結合する前記抗体又はそのフラグメントが、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項45】
PD-1に結合する前記抗体又はそのフラグメントが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、AMP-514(MEDI0680)、又はエザベンリマブ、あるいはそれらのPD-1結合フラグメントを含む、請求項42に記載の使用。
【請求項46】
前記PD-1軸阻害剤が、PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する抗体である、請求項42に記載の使用。
【請求項47】
PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する前記抗体が、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、BMS-936559(MDX-1105)、AMP-224、セミプリマブ(REGN2810)、トリパリマブ(JS001-PD-1)、カムレリズマブ(SHR-1210)、ドスタルリマブ(TSR-042)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、あるいはそれらのPDL-1又はPDL-2結合フラグメントを含む、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の前記阻害剤が、PD-1、PDL-1、又はPDL-2に結合するFc-融合タンパク質を含む、請求項31~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項49】
前記Fc-融合タンパク質がAMP-224又はそのPD-1結合フラグメントを含む、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の前記阻害剤が、PD-1、PDL-1、又はPDL-2の小分子阻害剤を含む、請求項42に記載の使用。
【請求項51】
PD-1、PDL-1、又はPDL-2を介したシグナル伝達の前記小分子阻害剤が、以下の1つ又は複数を含む、請求項50に記載の使用:N-{2-[({2-メトキシ-6-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS 202);(2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)-5-メチルベンジル)-D-セリン塩酸塩;(2R,4R)-1-(5-クロロ-2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニルインドール;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニル-1h-インドール;L-α-グルタミン、N2,N6-ビス(L-セリル-L-アスパラギニル-L-スレオニル-L-セリル-L-α-グルタミル-L-セリル-L-フェニルアラニル)-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-アルギニル-L-バリル-L-スレオニル-L-グルタミニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-プロリル-L-リシル-L-アラニル-L-グルタミニル-L-イソロイシル-L-リシル;(2S)-1-[[2,6-ジメトキシ-4-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]フェニル]メチル]-2-ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N-(2-メルカプトアセチル)-L-フェニルアラニル-N-メチル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-ロイシル-N-メチルグリシル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-トリプトフィル-N-メチル-L-ノルロイシル-N-メチル-L-ノルロイシル-L-アルギニル-L-システイニル-、環状(1→14)-チオエーテル;又はその誘導体もしくは類似体。
【請求項52】
前記個体が癌に罹患している、請求項31~51のいずれか一項に記載の使用。
【請求項53】
前記癌が膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頚部癌、卵巣癌、結腸癌、頚部癌、前立腺癌、又は肺癌を含む、請求項52に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ASCIIフォーマットにおいて電子的に提出され、参照によりその全体において本明細書により組み入れられる配列リストを含む。前記ASCIIコピーは、2020年8月11日に作成され、01-3435-WO-1_SL.txtと名付けられており、サイズは19,155バイトである。
背景
【0002】
ペリオスチンは、多様な生理学的過程(上皮間葉転換、細胞-マトリクス相互作用、及び炎症を含む)を調節すると仮定されてきたマトリクス細胞タンパク質である。その発現は、いくつかの病理(癌及び線維症を含む)において調節不全となっていることが示されてきたが、そこでは、ペリオスチンの過剰発現が負の転帰と相関する。他のマトリクス細胞タンパク質、例えばフィブロネクチン及びコラーゲンなどに結合することにより細胞外リモデリングを調節することに加えて、ペリオスチン媒介性のインテグリンシグナル伝達は、腫瘍形成状況における癌細胞の遊走及び免疫細胞の動員の両方について重大な意味を持つことが示されてきた。
概要
【0003】
本明細書中に記載するのは、癌の処置のためのPD-1軸阻害剤及びペリオスチン阻害剤の方法、使用、及び併用である。本明細書中に記載する方法によって、腫瘍のコラーゲン含量が減少し、抑制性骨髄細胞集団、例えば顆粒球細胞及び腫瘍関連マクロファージなどの浸潤が低下する一方で、M1表現型へのマクロファージ極性化が増加し、腫瘍浸潤T細胞の抗腫瘍特性が増加する。
【0004】
本明細書中に記載する一態様では、癌に罹患している個体を処置する方法であって、この方法は、個体に(a)PD-1軸阻害剤;及び(b)ペリオスチンの阻害剤を投与することを含む。特定の実施形態では、ペリオスチンの阻害剤は、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、ペリオスチンの阻害剤は、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを含み、ペリオスチンに結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、以下を含む:(a)配列番号1(GYTFTSYG)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、キメラである又はヒト化されている。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG抗体である。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は単鎖可変フラグメント(scFv)である。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み:(a)免疫グロブリン重鎖は、配列番号13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;及び(b)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤であり、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである。
【0005】
本発明の及びその実施形態の全ての意味内でのPD-1経路阻害剤は、PD-1とその受容体との相互作用を阻害する化合物である。PD-1経路阻害剤は、PD-1経路のシグナル伝達を損なうことが可能であり、好ましくはPD-1受容体により媒介される。PD-1阻害剤は、PD-1経路のシグナル伝達に拮抗することが可能なPD-1経路の任意のメンバーに対して向けられた任意の阻害剤でありうる。この阻害剤は、PD-1経路の任意のメンバーを標的化する拮抗性抗体でありうるが、好ましくはPD-1受容体、PD-L1又はPD-L2に対して向けられる。また、PD-1経路阻害剤は、PD-1受容体又はPD-1リガンドの活性を遮断するPD-1受容体のフラグメントでありうる。
【0006】
PD-1拮抗薬は、当技術分野において周知であり、Li et al., Int. J. Mol. Sci. 2016, 17, 1151(参照により本明細書中に組み入れられる)により概説されている。任意のPD-1拮抗薬、特に抗体、例えばLi et al.により開示されている抗体など、ならびに、本明細書中で以下に開示するさらなる抗体を、本発明に従って使用することができる。好ましくは、本発明及び全てのその実施形態のPD-1拮抗薬は、以下の抗体からなる群より選択される:ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体);ニボルマブ(抗PD-1抗体);ピジリズマブ(抗PD-1抗体);チスレリズマブ(抗PD-1);スパルタリズマブ(PDR-001)(抗PD-1抗体);、好ましくはエザベンリマブ(抗PD-1抗体)。
【0007】
特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する抗体である。特定の非限定的な実施形態では、PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する抗体は、デュルバルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、AMP-224、MEDI0680(AMP-514)、BMS-936559(MDX-1105)、トリパリマブ(JS001-PD-1)、セミプリマブ(REGN2810)、カムレリズマブ(SHR-1210)、ドスタルリマブ(TSR-042)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、又はFAZ053、あるいはそれらのPDL-1又はPDL-2結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤は、PD-1、PDL-1、又はPDL-2に結合するFc-融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、Fc-融合タンパク質は、AMP-224又はそのPD-1結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤は、PD-1、PDL-1、又はPDL-2の小分子阻害剤を含む。特定の実施形態では、PD-1、PDL-1、又はPDL-2を介したシグナル伝達の小分子阻害剤は、以下の1つ又は複数を含む:N-{2-[({2-メトキシ-6-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS 202);(2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)-5-メチルベンジル)-D-セリン塩酸塩;(2R,4R)-1-(5-クロロ-2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニルインドール;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニル-1h-インドール;L-α-グルタミン、N2,N6-ビス(L-セリル-L-アスパラギニル-L-スレオニル-L-セリル-L-α-グルタミル-L-セリル-L-フェニルアラニル)-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-アルギニル-L-バリル-L-スレオニル-L-グルタミニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-プロリル-L-リシル-L-アラニル-L-グルタミニル-L-イソロイシル-L-リシル;(2S)-1-[[2,6-ジメトキシ-4-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]フェニル]メチル]-2-ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N-(2-メルカプトアセチル)-L-フェニルアラニル-N-メチル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-ロイシル-N-メチルグリシル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-トリプトフィル-N-メチル-L-ノルロイシル-N-メチル-L-ノルロイシル-L-アルギニル-L-システイニル-、環状(1→14)-チオエーテル;又はその誘導体もしくは類似体。
【0008】
特定の実施形態では、個体は、単剤療法としてのチェックポイント阻害剤を用いた処置後に進行性疾患を発生している。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1軸阻害剤を含む。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤及びペリオスチンの阻害剤は、別々に投与される。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤及びペリオスチンの阻害剤は、同じ日に投与される。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤及びペリオスチンの阻害剤は、異なる日に投与される。特定の実施形態では、癌は、膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頚部癌、卵巣癌、結腸癌、頚部癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。
【0009】
本明細書中に記載する別の態様では、また、PD-1軸阻害剤を用いて処置されている患者における使用のための、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントである。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:(a)配列番号1(GYTFTSYG)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)。
【0010】
特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、キメラである又はヒト化されている。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、IgG抗体である。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab)、単一ドメイン抗体、又は単鎖可変フラグメント(scFv)である。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントは、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み:(a)免疫グロブリン重鎖は、13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;及び(b)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。特定の実施形態では、ペリオスチンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤であり、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントである。特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体又はそのフラグメントは、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、AMP-514、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、好ましくはエザベンリマブ、又はそれらのPD-1結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する抗体である。特定の実施形態では、PDL-1又はPDL-2に特異的に結合する抗体は、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、アベルマブ(MSB0010718C)、BMS-936559(MDX-1105)、AMP-224、MEDI0680(AMP-514)、セミプリマブ(REGN2810)、トリパリマブ(JS001-PD-1)、カムレリズマブ(SHR-1210)、ドスタルリマブ(TSR-042)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、又はFAZ053、あるいはそれらのPDL-1又はPDL-2結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤は、PD-1、PDL-1、又はPDL-2に結合するFc-融合タンパク質を含む。特定の実施形態では、Fc-融合タンパク質は、AMP-224又はそのPD-1結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1、PDL-1、又はPDL-2シグナル伝達の阻害剤は、PD-1、PDL-1、又はPDL-2の小分子阻害剤を含む。特定の実施形態では、PD-1、PDL-1、又はPDL-2を介したシグナル伝達の小分子阻害剤は、以下の1つ又は複数を含む:N-{2-[({2-メトキシ-6-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS 202);(2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)-5-メチルベンジル)-D-セリン塩酸塩;(2R,4R)-1-(5-クロロ-2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニルインドール;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニル-1h-インドール;L-α-グルタミン、N2,N6-ビス(L-セリル-L-アスパラギニル-L-スレオニル-L-セリル-L-α-グルタミル-L-セリル-L-フェニルアラニル)-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-アルギニル-L-バリル-L-スレオニル-L-グルタミニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-プロリル-L-リシル-L-アラニル-L-グルタミニル-L-イソロイシル-L-リシル;(2S)-1-[[2,6-ジメトキシ-4-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]フェニル]メチル]-2-ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N-(2-メルカプトアセチル)-L-フェニルアラニル-N-メチル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-ロイシル-N-メチルグリシル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-トリプトフィル-N-メチル-L-ノルロイシル-N-メチル-L-ノルロイシル-L-アルギニル-L-システイニル-、環状(1→14)-チオエーテル;又はその誘導体もしくは類似体。特定の実施形態では、個体は癌に罹患している。特定の実施形態では、癌は、膠芽腫、膵臓癌、乳癌、膀胱癌、腎臓癌、頭頚部癌、卵巣癌、結腸癌、頚部癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書中に記載する新規の特色を、特に添付の特許請求の範囲において示す。本明細書中に記載する特色及び特色の利点のより良好な理解が、例証的な実施例を示す以下の詳細な説明への参照により得られるであろうが、それにおいて、本明細書中に記載する特色の原理が利用されており、その添付の図面は以下である:
図1図1は、500nMの単一濃度でテストされた78の配列固有IgGによるペリオスチン媒介性細胞接着の阻害を例証する。
図2図2は、NB0828又は賦形剤コントロールを用いた処置後のマウスMB49膀胱癌モデルにおける腫瘍成長を例証する。
図3図3は、腫瘍内骨髄細胞の蓄積に対するNB0828処置の影響を例証する。MB49担癌マウスを、図2において記載するように、NB0828又は賦形剤を用いて処置した。データを、全CD45+免疫浸潤のパーセントとして提示する。
図4図4は、NB0828を用いた処置後の全腫瘍コラーゲン含量における変化を例証する。MB49担癌マウスを、図2において記載するように処置し、エンドポイントMB49腫瘍の全腫瘍コラーゲン含量を、方法において記載するように評価した。
図5図5は、NB0828又は賦形剤コントロールを用いた処置後のマウスCT26結腸癌モデルにおける腫瘍成長を例証する。
図6図6は、NB0828処置されたCT26担癌マウスにおける顆粒球細胞/TAM(腫瘍関連マクロファージ)の低下した腫瘍内蓄積及びM1表現型に向かって傾斜しているマクロファージを例証する。
図7図7は、NB0828処置されたCT26担癌マウスにおけるCD8+及びCD4+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増加した蓄積ならびに増強したCD8+ TIL機能を例証する。
図8図8は、NB0828又は賦形剤コントロールを用いた処置後のマウスMC38結腸癌モデルにおける腫瘍成長を例証する。
図9図9A~9Dは、MC38結腸癌モデルにおいて、NB0828が腫瘍関連マクロファージ(9A)の全体量を減少させる一方で、炎症誘発性I型マクロファージ(9B)、及びCD8+T細胞(9C)を増加させること、ならびに腫瘍有効性がC8+T細胞(9D)に依存的であることを例証する。
図10図10A~10Cは、PD-1及びNB0828の併用によって、腫瘍サイズ(10A)及び生存(10B)の両方に関した制御において、PD-1単独と比較し、MC38結腸癌モデルにおける応答が改善され;最初のチャレンジを生き延びた動物は、再チャレンジから保護される(10C)ことを例証する。
図11図11は、NB0828が、樹立されたMC38腫瘍における抗PD-1への耐性を克服することを例証する。
図12図12A~12Dは、PD-1耐性腫瘍において、NB0828がCD8+ TILの頻度(12A)及び機能(12B)を改善する一方で、全TAM(12C)を低下させ、免疫刺激性M1 TAM(12D)の蓄積を促進することを例証する。詳細な説明
【0012】
以下の説明では、特定の具体的な詳細を、種々の実施形態の徹底的な理解を提供するために示している。しかし、当業者は、提供する実施形態が、これらの詳細を伴わずに実行されうることを理解するであろう。文脈が別に要求しない限り、本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」及びその変形、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などは、オープンで包括的な意味において、すなわち、「含むが、しかし、限定しない」として解釈すべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに別に指示しない限り、複数の指示対象を含む。また、用語「又は」は、内容が明らかに別に指示しない限り、その意味(「及び/又は」を含む)において一般的に用いられることに注意すべきである。さらに、本明細書中で提供する見出しは、便宜だけのためであり、請求する実施形態の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0013】
本明細書中で使用するように、用語「約」は、10%又はそれ以下だけ、記述する量に近い。
【0014】
本明細書中で使用するように、用語「個体」、「患者」、又は「対象」は、記載する組成物及び方法が処置するために有用である少なくとも1つの疾患と診断された、それに罹患していることが疑われる、又はそれを発生するリスクがある個体を指す。特定の実施形態では、個体は哺乳動物である。特定の実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、又はヤクである。特定の実施形態では、個体はヒトである。
【0015】
本明細書中で使用するように、用語「併用」又は「併用処置」は、併用される物品の同時投与又は併用される物品の連続投与のいずれかを指すことができる。本明細書中に記載するように、併用が物品の連続投与を指す場合、物品は、任意の時間的順序において投与することができる。物品は、バイオアベイラビリティを最大化し、副作用を低下させ、治療の可能性を最大化する(又はそれらの任意の併用)スケジュールに従って、異なる日又は同じ日に別々に各々の物品を投与することができる。
【0016】
用語「癌」及び「腫瘍」は、調節解除された細胞成長により特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態に関連する。癌は、細胞の群が制御されない成長又は望まれない成長を呈する疾患のクラスである。癌細胞はまた、他の位置に伝播することができ、それによって転移の形成に導くことができる。身体における癌細胞の伝播は、例えば、リンパ液又は血液を介して生じることができる。制御されない成長、侵入、及び転移の形成はまた、癌の悪性特性と呼ばれる。これらの悪性特性によって、癌は良性腫瘍から区別され、それらは、典型的には、浸潤又は転移しない。
【0017】
本明細書中で使用するように、用語「有効量」は、哺乳動物に投与された場合に生物学的効果を起こす治療薬の量を指す。生物学的効果は、受容体リガンド相互作用の阻害又は遮断、標的の酵素活性における低下、低下した腫瘍成長、低下した腫瘍転移、腫瘍部位へのCD8+ T細胞の増加した浸潤、腫瘍部位における低下した全マクロファージ、M1マクロファージの増加した浸潤、M1/M2比率における増加、又は腫瘍を持つ動物の延長した生存を含むが、これらに限定しない。「治療量」は、治療効果を発揮するように算出された薬物の濃度である。治療量は、個体の集団における治療応答を誘導することが可能な投与量の範囲を包含する。哺乳動物はヒト個体でありうる。ヒト個体は、腫瘍に罹患している、又は罹患していることが疑われうる。
【0018】
提供する抗体の間には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体及び多反応性抗体)、及び抗体フラグメントがある。抗体は、抗体複合体及び分子(抗体、例えばキメラ分子などを含む)を含む。このように、抗体は、全長及び天然抗体、ならびにそれらの結合特異性を保持するそれらのフラグメント及び部分、例えば、それらの任意の特異的結合部分(任意の数の免疫グロブリンクラス及び/又はアイソタイプ(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、IgE、及びIgM)を有する特異的結合部分を含む);ならびに生物学的に関連する(抗原結合)フラグメント又はそれらの特異的結合部分(Fab、F(ab’)、Fv、及びscFv(単鎖又は関連実体)を含む)を含むが、それらに限定しない。モノクローナル抗体は、一般的に、実質的に均質な抗体の組成物内のモノクローナル抗体であり;このように、モノクローナル抗体組成物内に含まれる任意の個々の抗体は、微量で存在しうる可能な天然変異を除いて同一である。ポリクローナル抗体は、一般的に2つ又はそれ以上の異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる、変動する配列の異なる抗体を含む調製物である。モノクローナル抗体は、ヒトIgG1定常領域を含むことができる。モノクローナル抗体は、ヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0019】
本明細書中の用語「抗体」は、最も広い意味において使用され、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体(インタクトな抗体及びそれらの機能的(抗原結合)抗体フラグメント(フラグメント抗原結合(Fab)フラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab’フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rIgG)フラグメント、単鎖抗体フラグメント(単鎖可変フラグメント(sFv又はscFv)を含む)、及び単一ドメイン抗体(例、sdAb、sdFv、ナノボディ)フラグメントを含む))を含む。この用語は、遺伝子操作された及び/又は別の方法で改変された形態の免疫グロブリン、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロ複合体抗体など、多特異性、例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvなどを包含する。別に記述しない限り、用語「抗体」は、それらの機能的抗体フラグメントを包含すると理解すべきである。この用語はまた、インタクトな抗体又は全長抗体(任意のクラス又はサブクラス(IgGならびにそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、及びIgDを含む)の抗体を含む)を包含する。抗体はヒトIgG1定常領域を含むことができる。抗体はヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0020】
用語「相補性決定領域」、及び「CDR」は、「超可変領域」又は「HVR」と同義であり、抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことが当技術分野において公知であり、それによって、抗原特異性及び/又は結合親和性が付与される。一般的に、各々の重鎖可変領域中の3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)及び各々の軽鎖可変領域中の3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」及び「FR」は、重鎖及び軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことが当技術分野において公知である。一般的に、各々の全長重鎖可変領域中の4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)及び各々の全長軽鎖可変領域中の4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)がある。所与のCDR又はFRの正確なアミノ酸配列境界は、多数の周知のスキーム(Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(“Kabat”ナンバリングスキーム)、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948(“Chothia” ナンバリングスキーム);MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745 (1996), “Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography,” J. Mol. Biol. 262, 732-745.”(“Contact”ナンバリングスキーム);Lefranc MP et al.,“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,” Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55-77(“IMGT”ナンバリングスキーム);Honegger A and Pluckthun A, “Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool,” J Mol Biol, 2001 Jun 8;309(3):657-70,(“Aho”ナンバリングスキーム);及びWhitelegg NR and Rees AR, “WAM: an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB,” Protein Eng. 2000 Dec;13(12):819-24(“AbM”ナンバリングスキーム)により記載されるスキームを含む)のいずれかを使用して容易に決定することができる。
【0021】
所与のCDR又はFRの境界は、同定のために使用されるスキームに依存して変動しうる。例えば、Kabatスキームは構造アラインメントに基づいている一方で、Chothiaスキームは構造情報に基づいている。Kabatスキーム及びChothiaスキームの両方についてのナンバリングは、最も一般的な抗体領域配列の長さに基づき、挿入文字、例えば、「30a」により順応される挿入、及び一部の抗体において出現する欠失を伴う。2つのスキームによって、特定の挿入及び欠失(「indel」)が異なる位置に配置され、異なるナンバリングがもたらされる。Contactスキームは、複雑な結晶構造の分析に基づいており、多くの点においてChothiaナンバリングスキームと類似している。
【0022】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体を抗原に結合させる際に含まれる抗体重又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖(それぞれVH及びVL)の可変ドメインは、一般的に、類似の構造を有し、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含む各々のドメインを伴う(例、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91(2007)を参照のこと)。単一のVHドメイン又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分でありうる。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、抗原に結合する抗体からのVHドメイン又はVLドメインを使用し、相補的なVLドメイン又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングして単離してもよい(例、Portolano et al., J. Immunol. 150:880-887 (1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628 (1991)を参照のこと)。
【0023】
提供する抗体の間には、抗体フラグメントがある。「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体フラグメントの例は、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子(例、scFv又はsFv);及び抗体フラグメントから形成される多特異性抗体を含むが、それらに限定しない。特定の実施形態では、抗体は、可変重鎖領域及び/又は可変軽鎖領域、例えばscFvなどを含む単鎖抗体フラグメントである。
【0024】
抗体フラグメントは、種々の技術(インタクトな抗体のタンパク質分解消化ならびに組換え宿主細胞による産生を含むが、それらに限定しない)により作製することができる。一部の実施形態では、抗体は、組換え産生されたフラグメント、例えば自然に生じない配置を含むフラグメントなど、例えば合成リンカー(例、ポリペプチドリンカー)により連結された2つ又はそれ以上の抗体領域又は鎖を伴うフラグメントなど、ならびに/あるいは天然のインタクトな抗体の酵素消化により産生されないフラグメントである。一部の態様では、抗体フラグメントはscFvである。
【0025】
「ヒト化」抗体は、全ての又は実質的に全てのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRから由来し、及び全ての又は実質的に全てのFRアミノ酸残基がヒトFRから由来する抗体である。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体から由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含みうる。非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、典型的には、ヒトへの免疫原性を低下させるためにヒト化を受けている一方で、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する非ヒト抗体のバリアントを指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基を用いて置換される。
【0026】
提供する抗体の間には、ヒト抗体がある。「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞、あるいはヒト抗体レパートリー又は他のヒト抗体コード配列(ヒト抗体ライブラリーを含む)を利用する非ヒト供給源により産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を伴う抗体である。この用語は、非ヒト抗原結合領域、例えば全ての又は実質的に全てのCDRが非ヒトである非ヒト抗原結合領域などを含むヒト化形態の非ヒト抗体を除外する。
【0027】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を伴うインタクトな抗体を産生するように改変されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製してもよい。そのような動物は典型的には、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含み、それは、内因性免疫グロブリン遺伝子座を交換する、あるいは、それは、染色体外に存在する、又は動物の染色体中にランダムに組み込まれる。そのようなトランスジェニック動物において、内因性免疫グロブリン遺伝子座は一般的に不活性化されている。ヒト抗体はまた、ヒトレパートリーから由来する抗体コード配列を含む、ヒト抗体ライブラリー(ファージディスプレイ及び無細胞ライブラリーを含む)から由来しうる。
【0028】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。ポリペプチド(提供する抗体及び抗体鎖及び他のペプチド、例、リンカー及び結合ペプチドを含む)は、アミノ酸残基(天然及び/又は非天然アミノ酸残基を含む)を含みうる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアル化、アセチル化、リン酸化などを含む。一部の態様では、ポリペプチドは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、未変性配列又は天然配列に関して修飾を含みうる。これらの修飾は、計画的(部位特異的変異誘発を通じてなど)でありうる、又は偶発的(例えばタンパク質を産生する宿主の変異又はPCR増幅に起因するエラーを通じてなど)でありうる。
【0029】
参照ポリペプチド配列に関するパーセント(%)配列同一性は、配列を整列させ、必要な場合、ギャップを導入して最大パーセント配列同一性を達成し、配列同一性の部分として任意の保存的置換を考慮しない後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、公的に利用可能なコンピューターソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用し、公知である種々の方法において達成することができる。配列を整列させるための適したパラメーターを決定することができる(比較されている配列の全長にわたり最大のアラインメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含む)。本明細書中の目的のために、しかし、%アミノ酸配列同一性値を、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成する。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech, Inc.により作成されたが、ソースコードは米国著作権局(ワシントンD.C.、20559)においてユーザー文書と提出されており、ここで、それは米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech, Inc.(カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)から公的に利用可能である、又はソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、UNIXオペレーティングシステム(デジタルUNIXV4.0Dを含む)での使用のためにコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメーターがALIGN-2プログラムにより設定されて、変動しない。
【0030】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それと、又はそれに対する所与のアミノ酸配列Aの%アミノ酸配列同一性(それは、あるいは、所与のアミノ酸配列Bへの、それと、又はそれに対して特定の%アミノ酸配列同一性を有する、又はそれを含む所与のアミノ酸配列Aとして言い表すことができる)を以下のように算出する:分数X/Yの100倍、式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2により、A及びBのそのプログラムのアラインメントにおける同一マッチとしてスコア化されるアミノ酸残基の数であり、及び、式中、YはBにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、BへのAの%アミノ酸配列同一性が、AへのBの%アミノ酸配列同一性と等しくならないことが理解されるであろう。別に具体的に記述しない限り、本明細書中で使用する全ての%アミノ酸配列同一性値を、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落において記載するように得る。
【0031】
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体のアミノ酸配列バリアントを熟慮する。バリアントは、典型的には、1つ又は複数の置換、欠失、付加、及び/又は挿入において本明細書中で具体的に開示するポリペプチドとは異なる。そのようなバリアントは、天然に生じることができる、あるいは、例えば、本発明の上のポリペプチド配列の1つ又は複数を改変し、本明細書中に記載するポリペプチドの1つ又は複数の生物学的活性を評価すること、ならびに/あるいは多数の公知の技術のいずれかを使用することにより合成的に生成することができる。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましいであろう。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列中に適した改変を導入することにより、又はペプチド合成により調製されうる。そのような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列からの欠失、及び/又はその中への挿入、及び/又はその内の残基の置換を含む。欠失、挿入、及び置換の任意の併用を、最終構築物が所望の特徴(例、抗原結合)を持つという条件で作製し、最終構築物に到達することができる。
【0032】
一部の実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントを提供する。置換による変異誘発のための目的の部位は、CDR及びFRを含む。アミノ酸置換を目的の抗体中に導入し、産物を所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングしうる。
【0033】
一部の実施形態では、置換、挿入、又は欠失は、1つ又は複数のCDR内で生じうるが、置換、挿入、又は欠失は、抗原への抗体結合を実質的に低下させない。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的置換をCDR中に作製してもよい。そのような変化は、CDR「ホットスポット」の外部でありうる。一部の実施形態では、バリアントのVH配列及びVL配列、各々のCDRは不変である。
【0034】
変化(例、置換)をCDR中に作製し、例えば、抗体親和性を改善しうる。そのような変化は、体細胞成熟の間に高い変異率を伴うCDRコードコドン中に作製してもよく(例、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196 (2008)を参照のこと)、結果として得られたバリアントを結合親和性についてテストすることができる。親和性成熟(例、エラープローンPCR、チェーンシャッフリング、CDRのランダム化、又はオリゴヌクレオチド指定変異誘発を使用する)を使用し、抗体親和性を改善することができる(例、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (2001)を参照のこと)。抗原結合において含まれるCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリング(例、Cunningham and Wells Science, 244:1081-1085 (1989)を参照のこと)を使用して特異的に同定されうる。CDR-H3及びCDR-L3が特にしばしば標的化される。あるいは、又は加えて、抗体と抗原の間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換のための候補として標的化されうる又は排除されうる。バリアントをスクリーニングし、バリアントが所望の特性を含むか否かを決定してもよい。
【0035】
アミノ酸配列の挿入及び欠失は、長さにおいて1つの残基から100又はそれ以上の残基を含むポリペプチドまでの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、ならびに単一の又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入及び欠失を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を伴う抗体を含む。抗体分子の他の挿入バリアントは、酵素(例、ADEPTについて)又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN末端又はC末端への融合物を含む。抗体分子の配列内挿入バリアントの例は、軽鎖における3つのアミノ酸の挿入物を含む。末端欠失の例は、軽鎖の末端での7つ又はそれ以下のアミノ酸の欠失を伴う抗体を含む。
【0036】
一部の実施形態では、抗体を、それらのグリコシル化を増加又は減少させるように変化させる(例、1つ又は複数のグリコシル化部位が作製又は除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによる)。抗体のFc領域に付着されている糖を変化させてもよい。哺乳動物細胞からの天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN連結により付着された分岐した二分岐オリゴ糖を含む(例、Wright et al. TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照のこと)。オリゴ糖は、種々の糖、例えば、マンノース、Nアセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、二分岐オリゴ糖構造のステムにおいてGlcNAcに付着されたフコースでありうる。抗体中のオリゴ糖の修飾を、例えば、特定の改善された特性を伴う抗体バリアントを作製するために作ることができる。抗体グリコシル化バリアントは、改善されたADCC及び/又はCDC機能を有することができる。一部の実施形態では、抗体バリアントが提供され、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着されたフコースを欠く糖構造を有する。例えば、そのような抗体中でのフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%でありうる。フコースの量は、Asn297に付着された全ての糖構造の合計と比べて、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定する(例、WO08/077546を参照のこと)。Asn297は、Fc領域中のおよその位置297に位置付けられるアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEUナンバリング;例、Edelman et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May; 63(1):78-85を参照のこと)。しかし、Asn297はまた、抗体中での小さな配列変動に起因して、位置297の上流又は下流、即ち、位置294と300の間の約±3アミノ酸に位置付けられうる。そのようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有することができる(例、Okazaki et al. J. Mol. Biol. 336:1239-1249 (2004);及びYamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004)を参照のこと)。細胞株(例、ノックアウト細胞株)及びそれらの使用の方法を使用し、脱フコシル化抗体を産生することができる(例、タンパク質フコシル化において欠損したLec13 CHO細胞及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞)(例、Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545 (1986);Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87: 614 (2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688 (2006)を参照のこと)。他の抗体グリコシル化バリアントも含まれる(例、米国特許第6,602,684号を参照のこと)。
【0037】
一部の実施形態では、1つ又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書中で提供する抗体のFc領域中に導入してもよく、それにより、Fc領域バリアントを生成する。本明細書中のFc領域は、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域である。Fc領域は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例、置換)を含むヒトFc領域配列(例、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含みうる。
【0038】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、一部の(しかし、全てではない)のエフェクター機能を持つバリアントであり、それによって、適用のための望ましい候補になり、それにおいて、インビボでの抗体の半減期が重要であるが、しかし、特定のエフェクター機能(例えば補体及びADCCなど)は不要又は有害である。インビトロ及び/又はインビボ細胞毒性アッセイを行い、CDC及び/又はADCC活性の低下/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行い、抗体がFcγR結合を欠く(それ故に、ADCC活性を欠く可能性が高い)が、しかし、FcRn結合能力を保持していることを確実にすることができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例が、米国特許第5,500,362号及び第5,821,337号において記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法(例、ACTI(商標)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ)を用いてもよい。そのようなアッセイのために有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、マクロファージ、及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。
【0039】
抗体は、増加した半減期及び新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合を有しうる(例、US 2005/0014934を参照のこと)。そのような抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つ又は複数の置換をその中に伴うFc領域を含むことができ、EUナンバリングシステム(例、米国特許第7,371,826号を参照のこと)に従ったFc領域残基:238、256、265、272、286、303、305 、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434の1つ又は複数に置換を伴う抗体を含む。Fc領域バリアントの他の例も熟慮されている(例、Duncan & Winter, Nature 322:738-40 (1988);米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号;ならびにWO94/29351を参照のこと)。
【0040】
一部の実施形態では、システイン操作抗体、例えば、「チオMAb」を作製することが望ましいであろうが、それにおいて、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されている。一部の実施形態では、置換された残基は、抗体の接近可能部位で生じる。反応性チオール基を、他の部分、例えば薬物部分又はリンカー薬物部分などへの複合体化のための部位に配置し、免疫複合体を作製することができる。一部の実施形態では、以下の残基の任意の1つ又は複数をシステインで置換してもよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。
【0041】
一部の実施形態では、本明細書中で提供する抗体をさらに修飾し、公知であり利用可能な追加の非タンパク質性部分を含んでもよい。抗体の誘導体化のために適切な部分は、水溶性ポリマーを含むが、それに限定しない。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(nビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレン(polyprolylen)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物を含むが、それらに限定しない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性に起因して、製造において利点を有しうる。ポリマーは任意の分子量でありうる、及び分岐又は非分岐でありうる。抗体に付着されているポリマーの数は変動しうるが、2つ又はそれ以上のポリマーが付着している場合、それらは同じ又は異なる分子でありうる。
【0042】
本明細書中に記載する抗体は、核酸によりコードされうる。核酸は、2つ又はそれ以上のヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドの型である。特定の実施形態では、核酸は、ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドを細胞中に移すために使用することができるベクターの成分である。本明細書中で使用するように、用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターの1つの型は、ゲノム組込みベクター、又は「組込みベクター」であり、それは、宿主細胞の染色体DNA中に組み込むことができる。ベクターの別の型は、「エピソーム」ベクター、例えば、染色体外複製が可能な核酸である。作動可能に連結されている遺伝子の発現を方向づけることが可能なベクターを、本明細書中で「発現ベクター」として言及する。適切なベクターは、プラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、ウイルスベクターなどを含む。発現ベクターにおいて、転写を制御する際での使用のための調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどは、哺乳動物、微生物、ウイルス、又は昆虫の遺伝子から由来しうる。宿主において複製する能力(通常は複製起点により付与される)、及び形質転換体の認識を促進するための選択遺伝子をさらに組み入れてもよい。ウイルス、例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどから由来するベクターを用いてもよい。プラスミドベクターは、染色体位置中への組込みのために線形化することができる。ベクターは、ゲノム中の定義された位置又は制限された一組の部位中への部位特異的組込みを方向づける配列を含むことができる(例、AttP-AttB組換え)。加えて、ベクターは、転移性エレメントから由来する配列を含むことができる。
【0043】
本明細書中で使用するように、用語「相同」、「相同性」、又は「パーセント相同性」は、参照配列と比べて、アミノ酸配列又は核酸配列を記載するために本明細書で使用される場合、Karlin及びAltschul(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993におけるように改変)により記載される式を使用して決定することができる。そのような式は、Altschulらの基本的なローカルアラインメント検索ツール(BLAST)プログラム中に組み入れられている(J. Mol. Biol. 215: 403-410, 1990)。配列のパーセント相同性は、本願の出願日の時点で、BLASTの最新バージョンを使用して決定することができる。
【0044】
本明細書中に記載する抗体をコードする核酸を使用し、適切な細胞を核酸について感染させる、トランスフェクトする、形質転換する、又は別の方法でトランスジェニックにすることができ、このように、商業的又は治療的使用のための抗体の産生を可能にする。大規模な細胞培養物からの抗体の産生のための標準的な細胞株及び方法は、当技術分野において公知である。例えば、Li et al., “Cell culture processes for monoclonal antibody production.” Mabs. 2010 Sep-Oct; 2(5): 466-477を参照のこと。特定の実施形態では、細胞は真核細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、又はPER.C6(登録商標)細胞である。特定の実施形態では、抗体をコードする核酸を、抗体を産生するために有用な細胞のゲノム遺伝子座中に組み込む。特定の実施形態では、本明細書中に記載するのは、抗体をコードする核酸を含む細胞を、前記抗体の産生及び分泌を可能にするのに十分なインビトロの条件下で培養することを含む、抗体を作製する方法である。
【0045】
特定の実施形態では、本明細書中に記載するのは、以下を含むマスターセルバンクである:(a)ゲノム位置に組み込まれた、本明細書中に記載する抗体をコードする1つ又は複数の核酸を含む哺乳動物細胞株;及び(b)抗凍結剤。特定の実施形態では、抗凍結剤はグリセロールを含む。特定の実施形態では、マスターセルバンクは以下を含む:(a)(i)配列番号13により示すものと少なくとも90%同一である重鎖アミノ酸配列;及び(ii)ゲノム位置に組み込まれた配列番号14により示すものと少なくとも90%同一である軽鎖アミノ酸配列を伴う抗体をコードする核酸を含むCHO細胞株;ならびに(b)抗凍結剤。特定の実施形態では、抗凍結剤はグリセロールを含む。特定の実施形態では、マスターセルバンクは、液体窒素による凍結に耐えることができる適切なバイアル又は容器中に含まれる。
【0046】
また、本明細書中に記載するのは、本明細書中に記載する抗体を作製する方法である。そのような方法は、抗体の発現及び分泌を可能にするのに十分な条件下で、細胞培養培地中で、抗体をコードする核酸を含む細胞又は細胞株をインキュベートし、さらに細胞培養培地から抗体を収集することを含む。収集は、生細胞、細胞デブリ、非抗体タンパク質又はポリペプチド、望ましくない塩、緩衝剤、及び培地成分を除去するための1つ又は複数の精製工程をさらに含むことができる。特定の実施形態では、追加の精製工程は、遠心分離、超遠心分離、透析、脱塩、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、もしくはプロテインL精製、及び/又はイオン交換クロマトグラフィーを含む。
抗ペリオスチン抗体
【0047】
本明細書中に記載するのは、ペリオスチン機能を遮断する抗体である。そのような抗体は、癌の処置のために有用である。本明細書中に記載する抗体によって、腫瘍のコラーゲン含量が減少し、顆粒球及び腫瘍関連マクロファージの浸潤が低下する一方で、マクロファージの極性化がM1表現型に増加し、腫瘍浸潤T細胞の蓄積及び抗腫瘍特性が増加する。特定の実施形態では、抗ペリオスチン抗体によって、未処置の又はコントロール処置の個体と比較し、腫瘍コラーゲン含量が少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、又は40%だけ減少する。特定の実施形態では、抗ペリオスチン抗体によって、未処置の又はコントロール処置の個体と比較し、顆粒球及び腫瘍関連マクロファージの浸潤が少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%だけ減少する。特定の実施形態では、抗ペリオスチン抗体によって、未処置の又はコントロール処置の個体と比較し、CD11b+細胞の浸潤が少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%だけ減少する。特定の実施形態では、抗ペリオスチン抗体によって、未処置の又はコントロール処置の個体と比較し、M1型(CD11b+、MHCクラスII+、CD206-)への腫瘍関連マクロファージの分極化が少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%だけ増加する。特定の実施形態では、抗ペリオスチン抗体によって、未処置の又はコントロール処置の個体と比較し、腫瘍中でのCD4+及び/又はCD8+ T細胞の蓄積が少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%だけ増加する。特定の実施形態では、抗ペリオスチン抗体によって、未処置の又はコントロール処置の個体と比較し、腫瘍浸潤性CD8+ T細胞のインターフェロンガンマの産生が少なくとも約20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%だけ増加する。
【0048】
本明細書中に記載するのは、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントであって、抗体又はその抗原結合フラグメントは、以下を含む:(a)配列番号1(GYTFTSYG)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR1(CDR-H1);(b)配列番号2(ISAYNGNT)、3(ISAYSGNT)、4(ISAYQGNT)、5(ISAYTGNT)、又は6(ISAYDGNT)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR2(CDR-H2);(c)配列番号7(DILVVPFDY)、8(DVLVVPFDY)、又は9(DMLVVPFDY)のいずれか1つにおいて示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖CDR3(CDR-H3);(d)配列番号10(SSDIGSNR)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR1(CDR-L1);(e)配列番号11(SND)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR2(CDR-L2);及び(f)配列番号12(AAWDDSLSTYV)において示すアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖CDR3(CDR-L3)。特定の実施形態では、抗体はヒト化又はキメラ抗体である。特定の実施形態では、抗体はIgG抗体である。特定の実施形態では、本明細書中に記載する抗体は、エフェクター機能の欠如を伴うFc部分を含むことができる。特定の実施形態では、抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施形態では、抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約40ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施形態では、抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約30ナノモル未満のIC50を有する。
【0049】
また、本明細書中に記載するのは、免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含む、ペリオスチンに結合する組換え抗体又はその抗原結合フラグメントであって:(a)免疫グロブリン重鎖は、配列番号13において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み;及び(b)免疫グロブリン軽鎖は、配列番号14において示すアミノ酸配列と少なくとも約90%、95%、97%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み、配列番号13の55番目のアスパラギンは、アスパラギン、セリン、グルタミン、スレオニン、又はアスパラギン酸であり、及び、配列番号13の100番目のメチオニンは、メチオニン、イソロイシン、又はバリンである。特定の実施形態では、抗体はIgG抗体である。特定の実施形態では、本明細書中に記載する抗体は、エフェクター機能の欠如を伴うFc部分を含むことができる。特定の実施形態では、抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約50ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施形態では、抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約40ナノモル未満のIC50を有する。特定の実施形態では、抗体は、ヒト肺線維芽細胞及び/又はマウス線維芽細胞を用いて実施される細胞接着アッセイにおいて、約30ナノモル未満のIC50を有する。
PD-1軸阻害剤
【0050】
PD-1軸は、PD-1がT細胞応答に対して阻害効果を発揮するシグナル伝達経路であって、PDL-1又はPDL-2とのPD-1相互作用を含む。本明細書中に記載するペリオスチン結合ポリペプチド及び抗体を、PD-1軸阻害剤と併用し、腫瘍、癌、又は他の新生物を処置するための方法において配置することができる。特定の実施形態では、本明細書中に記載するペリオスチン結合ポリペプチド及び抗体を、癌、腫瘍、又は他の新生物を処置するために有用な医薬組成物中でPD-1軸阻害剤と併用することができる。本明細書中に記載するNB0828抗体をPD-1軸阻害剤と併用し、腫瘍、癌、又は他の新生物を処置するための方法において配置することができる。特定の実施形態では、本明細書中に記載するNB0828抗体を、癌、腫瘍、又は他の新生物を処置するために有用な医薬組成物中でPD-1軸阻害剤と併用することができる。
【0051】
本明細書中の組成物及び方法において利用されるPD-1軸阻害剤は、PD-1(CD279)、PDL-1(CD274)、又はPDL-2(CD273)を介したシグナル伝達を阻害することができる。この阻害剤は、抗体又は抗体フラグメント、可溶性リガンド-Fc融合構築物、又は小分子阻害剤でありうる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、抗体又はそのPD-1結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1(CD279)に特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、AMP-514(MEDI0680)、スパルタリズマブ、チスレリズマブ(BGB-A317)、ピジリズマブ、好ましくはエザベンリマブ(CAS#2249882-54-8)(抗PD-1抗体)、又はそのPD-1(CD279)結合フラグメントを含む。
【0052】
具体的には、本明細書中に記載する抗PD-1抗体分子は、配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むエザベンリマブである。
【0053】
特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤はPD-L2 Fc融合タンパク質(例、AMP-224)である。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PDL-1(CD274)に特異的に結合する抗体又はPDL-1結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PDL-1(CD274)に特異的に結合する抗体又は抗原結合フラグメントは、デュルバルマブ(MEDI 4376)、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、アベルマブ(MSB0010718C)、BMS-936559(MDX-1105)、MEDI0680(AMP-514)、セミプリマブ(REGN2810)、トリパリマブ(JS001-PD-1)、カムレリズマブ(SHR-1210)、ドスタルリマブ(TSR-042)、セトレリマブ(JNJ-63723283)、もしくはFAZ053、又はそのPDL-1(CD274)結合フラグメントを含む。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、PDL-2(CD273)に特異的に結合する抗体又はそのPDL-2結合フラグメントを含む。
【0054】
特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、1つ又は複数の小分子阻害剤、例えばN- {2-[({2-メトキシ-6-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]ピリジン-3-イル}メチル)アミノ]エチル}アセトアミド(BMS 202);(2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)-5-メチルベンジル)-D-セリン塩酸塩;(2R,4R)-1-(5-クロロ-2-((3-シアノベンジル)オキシ)-4-((3-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)-2-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボン酸;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニルインドール;3-(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-1-フェニル-1h-インドール;L-α-グルタミン、N2,N6-ビス(L-セリル-L-アスパラギニル-L-スレオニル-L-セリル-L-α-グルタミル-L-セリル-L-フェニルアラニル)-L-リシル-L-フェニルアラニル-L-アルギニル-L-バリル-L-スレオニル-L-グルタミニル-L-ロイシル-L-アラニル-L-プロリル-L-リシル-L-アラニル-L-グルタミニル-L-イソロイシル-L-リシル;(2S)-1-[[2,6-ジメトキシ-4-[(2-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メトキシ]フェニル]メチル]-2-ピペリジンカルボン酸;グリシンアミド、N-(2-メルカプトアセチル)-L-フェニルアラニル-N-メチル-L-アラニル-L-アスパラギニル-L-プロリル-L-ヒスチジル-L-ロイシル-N-メチルグリシル-L-トリプトフィル-L-セリル-L-トリプトフィル-N-メチル-L-ノルロイシル-N-メチル-L-ノルロイシル-L-アルギニル-L-システイニル-、環状(1→14)-チオエーテル;又はその誘導体もしくは類似体などを含む。
【0055】
特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、小分子ポリペプチド又は抗体含有医薬組成物の投与のために適切な任意の経路、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、脳内、又は経口などにより投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害抗体は静脈内投与される。特定の実施形態では、PD-1軸阻害抗体は、適切な投薬スケジュール、例えば、毎週、毎週2回、毎月、毎月2回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は4週間毎に1回投与される。抗体は、任意の治療的に有効な量で投与することができる。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約1mg/kg~約40mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約5mg/kg~約30mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約5mg/kg~約20mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約5mg/kg~約15mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、又は20mg/kgである。一例では、デュルバルマブは、2週間毎に1回、約10mg/kgの投与量で投与することができる。
【0056】
特定の実施形態では、個体へのPD-1軸阻害剤の投与は、約100ミリグラム~約1000ミリグラムの間の一律の投与量レベルでありうる。特定の実施形態では、個体へのPD-1軸阻害剤の投与は、約200ミリグラム~約800ミリグラムの間、約200ミリグラム~約600ミリグラムの間、約200ミリグラム~約500ミリグラムの間、約300ミリグラム~約500ミリグラムの間の一律の投薬レベルでありうる。特定の実施形態では、個体へのPD-1軸阻害剤の投与は、約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1000ミリグラムの一律の投与量レベルでありうる。特定の実施形態では、個体へのPD-1軸阻害剤の投与は、単剤療法のために適切なレベルでありうる。例えば、ニボルマブを、2週間毎に約240ミリグラム又は4週間毎に約480ミリグラムの投与量で投与することができる。別の例では、ペムブロリズマブを、3週間毎に1回、約200ミリグラムで投与することができる。
治療方法
【0057】
本明細書中に開示する抗体は、癌又は腫瘍の処置のために有用な抗体である。処置は、処置されている状態を改善又は寛解させようとする方法を指す。癌処置に関しては、腫瘍容積の低下、腫瘍容積の成長における低下、無増悪生存期間における増加、又は全体的な平均余命を含むが、それらに限定しない。特定の実施形態では、処置は、処置されている癌の緩解に影響するであろう。特定の実施形態では、処置は、以前に処置される癌又は腫瘍の再発又は進行を防止することが意図される予防的又は維持用量としての使用を包含する。抗体は安全で有効でありうる一方で、全ての個体が施された処置に等しく応答するわけではないであろうが、それにもかかわらず、これらの個体は処置されたと考えられることが当業者により理解される。
【0058】
本明細書中に記載する方法はまた、PD-1軸阻害剤及びペリオスチン結合抗体の併用を投与することにより、癌(caner)を伴う個体を処置する方法を包含する。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤及びペリオスチン結合抗体は、別々に投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤及びペリオスチン結合抗体は、処置の同じ日に別々に投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤及びペリオスチン結合抗体は、それ自体の投与スケジュールに従って、各々、別々に投与することができる。特定の実施形態では、別々の投与スケジュールは、各々の阻害剤のPK/PD特徴を最大化するように設計される。特定の実施形態では、ペリオスチン結合抗体は、NB0828又はNB0828のCDRを伴う抗体を含む。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤は、エザベンリマブ(CAS#2249882-54-8)又は本明細書中に開示するエザベンリマブ(ezabenlimabas)のCDRを伴う抗体を含む。
【0059】
特定の実施形態では、癌又は腫瘍は、固形癌又は腫瘍である。特定の実施形態では、癌又は腫瘍は、血液癌又は腫瘍である。特定の実施形態では、癌又は腫瘍は、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頚部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、又は肝臓の腫瘍を含む。特定の実施形態では、本発明の抗体を用いて処置することができる腫瘍又は癌は、腺腫、腺癌、血管肉腫、星状細胞腫、上皮癌、胚細胞腫、膠芽腫、膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、黒色腫、神経芽腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、及び/又は奇形腫を含む。特定の実施形態において、腫瘍/癌は、末端黒子型黒色腫、日光角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管カルチノイド、癌腫、癌肉腫、胆管癌、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣肉腫、スウィング肉腫、限局性結節性過形成、ガストリノーマ(gastronoma)、生殖細胞腫瘍、膠芽腫、グルカゴノーマ、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝細胞癌、インスリナイト(insulinite)、上皮内新生物、上皮内扁平上皮新生物、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、脂肪肉腫、肺癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘腫瘍、髄芽腫、髄上皮腫、中皮腫、粘液性類表皮癌、骨髄性白血病、神経芽腫、神経上皮腺癌、結節型黒色腫、骨肉腫、卵巣癌、漿液性乳頭状腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、前立腺癌、肺芽腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、有棘細胞癌、小細胞癌、軟組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平上皮癌、有棘細胞癌、未分化癌、ブドウ膜黒色腫、疣状癌、膣/外陰癌、VIP産生腫瘍(VIPpoma)、及びウィルムス腫瘍の群より選択される。特定の実施形態では、本発明の1つ又は複数の抗体を用いて処置される腫瘍/癌は、脳癌、頭頚部癌、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、膀胱癌、星状細胞腫、好ましくは グレードII、III、又はIVの星状細胞腫、膠芽腫、多形性膠芽腫、小細胞癌、及び非小細胞癌、好ましくは非小細胞肺癌、肺腺癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性前立腺癌、アンドロゲン依存性転移性前立腺 癌、前立腺癌、及び乳癌、好ましくは乳管癌、及び/又は乳癌を含む。特定の実施形態では、本開示の抗体を用いて処置される癌は、膠芽腫を含む。特定の実施形態では、本開示の1つ又は複数の抗体を用いて処置される癌は、膵臓癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つ又は複数の抗体を用いて処置される癌は、卵巣癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つ又は複数の抗体を用いて処置される癌は、肺癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つ又は複数の抗体を用いて処置される癌は、前立腺癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つ又は複数の抗体を用いて処置される癌は、結腸癌を含む。特定の実施形態では、処置される癌は、膠芽腫、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、又は肺癌を含む。特定の実施形態では、癌は他の処置に抵抗性である。特定の実施形態では、処置される癌は再発する。特定の実施形態では、癌は、再発性/難治性膠芽腫、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、又は肺癌である。
【0060】
特定の実施形態では、抗体は、抗体含有医薬組成物の投与のために適切な任意の経路、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、又は脳内などにより、それを必要とする対象に投与することができる。特定の実施形態では、抗体を静脈内投与する。特定の実施形態では、抗体を皮下投与する。特定の実施形態では、抗体を腫瘍内投与する。特定の実施形態では、抗体を、適切な投与スケジュールで、例えば、毎週、毎週2回、毎月、毎月2回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は1ヶ月に1回などで投与する。特定の実施形態では、抗体を3週間毎に1回投与する。抗体は、任意の治療的に有効な量で投与することができる。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約1mg/kg~約40mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療的に許容可能な量は、約5mg/kg~約30mg/kgの間である。治療的に有効な量は、処置される疾患又は苦痛に関連付けられる1つ又は複数の症状を寛解させるのに十分な量を含む。
併用治療の投薬スケジュール
【0061】
ペリオスチン結合抗体又はポリペプチド及びPD-1軸阻害剤を含む併用処置は、多様な方法で施すことができる。ペリオスチン結合抗体又はポリペプチド及びPD-1軸阻害剤は、同じスケジュールで同時に、又は異なる時間に及び異なるスケジュールで投与することができる。同時に投与される場合、投与は、別々の製剤、又はペリオスチン結合ポリペプチド及びPD-1軸阻害剤の両方を含む単一製剤によることができる。投与の様式は混合することができ、例えば、ペリオスチン結合ポリペプチドを静脈内投与することができる一方で、PD-1軸阻害剤を経口で又は非経口注射により投与することができる。特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチドを、静脈内、非経口、皮下、腫瘍内、又は経口で投与する。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤を、静脈内、非経口、皮下、腫瘍内、又は経口で投与する。
【0062】
併用処置を同じスケジュールで個体に施す場合、ペリオスチン結合ポリペプチド及びPD-1軸阻害剤を、1週毎に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、又は4週間毎に1回投与することができる。ペリオスチン結合ポリペプチド及びPD-1軸阻害剤を、別々に又は単一の製剤として投与することができる。NB0828及びPD-1軸阻害剤を、別々に又は単一の製剤として投与することができる。
【0063】
併用処置を異なるスケジュールで個体に施す場合、ペリオスチン結合ポリペプチド及びPD-1軸阻害剤を交互にすることができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤を、ペリオスチン結合ポリペプチドの投与前に、1回又は複数回個体に投与することができる。ペリオスチン結合ポリペプチドを、PD-1軸阻害剤の投与の1日、2日、3日、4日、5日、又は6日以内に投与することができる。ペリオスチン結合ポリペプチドを、PD-1軸阻害剤の投与の1週間、2週間、3週間、又は4週間以内に投与することができる。NB0828抗体を、PD-1軸阻害剤の投与の1日、2日、3日、4日、5日、又は6日以内に投与することができる。NB0828抗体を、PD-1軸阻害剤の投与の1週間、2週間、3週間、又は4週間以内に投与することができる。
【0064】
ペリオスチン結合ポリペプチドを、PD-1軸阻害剤の投与前に1回又は複数回個体に投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤を、ペリオスチン結合ポリペプチドの投与の1日、2日、3日、3日、4日、5日、又は6日以内に投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤を、ペリオスチン結合ポリペプチドの投与の1週間、2週間、3週間、又は4週間以内に投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤を、NB0828抗体の投与の1日、2日、3日、3日、4日、5日、又は6日以内に投与することができる。特定の実施形態では、PD-1軸阻害剤を、NB0828抗体の投与の1週間、2週間、3週間、又は4週間以内に投与することができる。
【0065】
特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチドを、1週毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチドを、2週間毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチドを、3週間毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチドを、4週間毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、PD1軸阻害剤を、1週間毎に1回個体に投与することができ、ペリオスチン結合ポリペプチドを、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、PD1軸阻害剤を、2週間毎に1回個体に投与することができ、ペリオスチン結合ポリペプチドを、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、PD1軸阻害剤を、3週間毎に1回個体に投与することができ、ペリオスチン結合ポリペプチドを、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、PD1軸阻害剤を、4週間毎に個体に投与することができ、ペリオスチン結合ポリペプチドを、1週毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、NB0828を、PD-1軸阻害剤の投与前に1回又は複数回個体に投与することができる。特定の実施形態では、NB0828を、1週毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週間毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、NB0828を、2週間毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週間毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、NB0828を、3週間毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週間毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。特定の実施形態では、NB0828を、4週間毎に1回個体に投与することができ、PD1軸阻害剤を、1週間毎、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に個体に投与することができる。
【0066】
本開示に従った併用治療は、活性化成分(例、ペリオスチン結合ポリペプチド及びPD-1の阻害剤)の1つ又は両方がそれ自体により有効ではないが、しかし、併用療法の一部として投与された場合に有効である併用を含みうる。特定の実施形態では、PD-1の阻害剤を、単剤療法については有効ではないが、しかし、ペリオスチン結合ポリペプチドとの併用において有効であるレベルで投与する。特定の実施形態では、PD-1の阻害剤を、単剤療法については有効ではないが、しかし、NB0828抗体との併用において有効であるレベルで投与する。特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチドを、単剤療法については有効ではないが、しかし、PD-1の阻害剤との併用において有効であるレベルで投与する。特定の実施形態では、NB0828を、単剤療法については有効ではないが、しかし、PD-1の阻害剤との併用において有効であるレベルで投与する。特定の実施形態では、ペリオスチン結合ポリペプチド、及びPD-1の阻害剤の両方を、単剤療法については有効ではないが、しかし、併用において有効であるレベルで投与する。特定の実施形態では、NB0828及びPD-1の阻害剤の両方を、単剤療法については有効ではないが、しかし、併用において有効であるレベルで投与する。
医薬的に許容可能な賦形剤、担体、及び希釈剤
【0067】
特定の実施形態では、本開示の抗ペリオスチン抗体は、1つ又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤、担体、及び希釈剤を含む医薬組成物中に含まれる。特定の実施形態では、本開示の抗体を、滅菌溶液中に懸濁して投与する。特定の実施形態では、この溶液は0.9%NaClを含む。特定の実施形態では、この溶液は、以下の1つ又は複数をさらに含む:緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、及びヒドロキシメチルアミノメタン(Tris);界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween 80)、ポリソルベート20(Tween 20)、及びポロキサマー188;ポリオール/二糖/多糖、例えば、グルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びデキストラン40;アミノ酸、例えば、グリシン又はアルギニン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン;あるいはキレート剤、例えば、EDTA又はEGTA。
【0068】
特定の実施形態では、本開示の抗体を、凍結乾燥して輸送/保存し、投与前に戻す。特定の実施形態では、凍結乾燥抗体製剤は、増量剤、例えばマンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、デキストラン40、又はそれらの併用などを含む。この凍結乾燥製剤は、ガラス又は他の適切な非反応性材料で構成されるバイアル中に含めることができる。抗体は、製剤化された場合、戻されているか否かにかかわらず、特定のpH、一般的には7.0未満で緩衝化することができる。特定の実施形態では、このpHは、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、又は5.0~6.0の間でありうる。
【0069】
また、本明細書中に記載するのは、適切な容器中の本明細書中に記載する抗体の1つ又は複数及び以下より選択される1つ又は複数の追加成分を含むキットである:希釈剤、賦形剤、担体、及び投与用の装置。
【0070】
特定の実施形態では、本明細書中に記載するのは、1つ又は複数の医薬的に許容可能な賦形剤、担体、又は希釈剤及び本開示の抗体を混合することを含む、癌処置を調製する方法である。特定の実施形態では、本明細書中に記載するのは、本開示の1つ又は複数の抗体を凍結乾燥することを含む、保存又は輸送のために癌処置を調製する方法である。
実施例
【0071】
以下の例証的な実施例は、本明細書中に記載する組成物及び方法の実施形態を代表しており、任意の方法で限定することを意味しない。
実施例1-抗体生成及びスクリーニング
【0072】
ファージディスプレイ抗体発見キャンペーンを実施し、完全ヒトファージライブラリーを使用してペリオスチンに対する結合剤を単離した。簡単には、3ラウンドのパンニングを、組換えヒトペリオスチン、組換えマウスペリオスチン、又はそれらの併用のいずれかを使用して行い、マウス交差反応性結合剤を同定することに重点を置いた。このパニング戦略から、マウスペリオスチンと交差反応する78の配列固有ScFvを同定し、細胞接着アッセイにおける機能的スクリーニングのためにヒトIgG1フォーマット中で産生させた。図1を参照のこと。
【0073】
組換えヒト又はマウスペリオスチンを、96ウェルプレート上に4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを、PBSを用いて洗浄し、2%BSAを用いて37℃で1時間にわたりブロッキングした。ブロッキング後、抗体をプレートに加え、37℃で30分間にわたりインキュベートした。インキュベーション後、50,000のIMR90ヒト肺線維芽細胞又は50,000のMLGマウス線維芽細胞を次にウェルに加え、37℃で2時間にわたりインキュベートした。プレートを次に、PBSを用いて2回洗浄し、ウェルのコンフルエンシーを、IncuCyteプラットフォームを使用して測定した。500nMでの高濃度単一用量スクリーニングから、21のIgGを、図1中に示すように>50%阻害を有するとして同定し、結合スクリーンに進め、ヒト及びマウスのペリオスチンへの相対的な親和性を決定した(以下の表1中に示す通り)。
【0074】
組換えヒト又はマウスペリオスチンについての相対的親和性を決定するために、これらのタンパク質をmaxisorpプレート上に4℃で一晩コーティングした。翌日、プレートを、カゼインブロッキング緩衝液を用いて37℃で1時間にわたりブロッキングした。各々の抗体の滴定をプレートに加え、RTで1時間にわたり結合することを可能にした。プレートを、PBSTを用いて4回洗浄し、HRP結合抗ヒトFc二次培養物を用いたRTで30分間にわたるインキュベーションが続いた。プレートを次に、4×PBSTを用いて再び洗浄し、次にTMB基質及び1M HClを用いて展開した。このスクリーンから、4つのクローンが選択し(太字及び斜体によりマークされた表1)、それらはヒト及びマウスの両方のペリオスチンに<1nMの結合EC50値を有する。
【表1】

実施例2‐NB0828及び配列バリアントの生成。
【0075】
4つの候補を、細胞接着アッセイにおける用量反応において再テストし、IC50値を決定した。このスクリーンから、NB0627を特に適切なIgGとして同定した(表2)。
【表2】
【0076】
NB0627を次に、エフェクターサイレントIgG4PAAアイソタイプに変換し、リード候補NB0828を生成した。NB0828の配列分析によって、VH領域中で2つの翻訳後修飾傾向が同定された。第1の脱アミド化部位はCDR-H2中に位置付けられ、第2の酸化部位はCDR-H3中に位置付けられる。従って、これらの傾向を除去する試みにおいて、いくつかの単一及び二重変異体を生成し、それらの結合及び活性を測定した。NB0828及びそのバリアントについてのIC50値及びEC50値についての結果の要約を表3中に列挙する。
【表3】

実施例3-マウス膀胱MB49モデル及び結腸CT26腫瘍モデルにおけるNB0828のインビボ有効性。
【0077】
NB0828の有効性を、2つの別々の腫瘍モデル、膀胱MB49モデル及び結腸CT26腫瘍モデルにおいてテストした。簡単には、250,000のMB49細胞を雌C57BL/6マウスの側腹部中に皮内注射した、又は50,000のCT26細胞を雌Balb/cマウスの側腹部中に皮内注射した。腫瘍移植後の3日、マウスをNB0828(50mg/kg、3QW)又は賦形剤コントロール(PBS)のいずれかを用いて腹腔内処置した。腫瘍容積をキャリパー測定後に週2回評価し、(長さ×幅)/2として算出した。マウスを、腫瘍サイズが任意の単一の方向において15mmを超える場合、又は人道的なエンドポイントとしての腫瘍潰瘍に起因して、安楽死させた。
【0078】
図2及び図5中に示すように、NB0828は、両方のモデルにおいて腫瘍成長を低下させる際に効果を有した。MB49モデルでは、腫瘍成長におけるこの低下は、腫瘍内顆粒球骨髄細胞のより低い%(図3中に示す通り)、及びより低いコラーゲン含量(図4中に示す通り)に関連付けられた。MB49モデルと同様に、CT26モデルは顆粒球骨髄細胞における低下を示した。また、NB0828によって、腫瘍浸潤マクロファージの頻度が低下し、及び存在するマクロファージは、NB0828処置の結果としてM1表現型に向かって傾斜されられた(図1中に示す通り)。CT26マウスモデルでは、NB0828処置はまた、より高い量の腫瘍浸潤CD8+及びCD4+ T細胞、ならびに腫瘍浸潤T細胞におけるインターフェロンガンマの有意により高い分泌に関連付けられた(図7中に示す通り)。
免疫表現型決定
【0079】
MB49又はCT26担癌マウスを、記載するように、3日目に開始し、NB0828又は賦形剤コントロールを用いて処置した。示すデータについて、免疫表現型決定を、腫瘍移植後20日目及び18日目に、それぞれMB49及びCT26について行った。腫瘍を切除し、皮膚を除去し、Miltenyiマウス腫瘍解離酵素ミックス(Miltenyi Biotec、CAT#130-110-187)を使用して酵素消化させる前に、メスの刃を使用して機械的に破壊した。消化したサンプルを40μmストレーナーに通し、RPMI中で洗浄し、RPMI+10%FBS中での2回目の洗浄が続いた。細胞を次に、カウントのために再懸濁し、サンプル当たり最大2×10個の白血球を蒔き、フローサイトメトリーによる分析のために染色した。CT26モデルにおけるCD8+腫瘍浸潤リンパ球機能の評価のために、腫瘍からの消化された単一細胞懸濁液を、AH1ペプチド[H2-Ld制限gp70(423-431)MuLVエピトープ、CT26細胞により発現される免疫優勢CD8+ T細胞エピトープ]を用いて、抗CD28及びブレフェルジンAの存在において37℃で5時間にわたり刺激した。刺激後、細胞を染色し、標準的な表面/細胞内染色方法によるフローサイトメトリーを使用し、CD8+ T細胞によるIFN-γの産生を検出した。示している細胞集団を評価するために使用されるフロー染色パネルを、表4において以下に含める。生死判別染色(Thermo Fisher、Live/Dead Fixable Violet Stain)を使用し、生細胞事象だけの調査を可能にし、汎白血球マーカーCD45を含めて、免疫コンパートメント内での集団の標準化を可能にする。目的の免疫集団を、表現型的/機能的に以下のように定義した:全骨髄細胞(CD45+ CD11b+)、顆粒球(CD45+ CD11b+ Gr-1 hi又はCD45+ CD11b+ Ly6G+ Ly6C lo)、マクロファージ(CD45+ CD11b+ Ly6G- Ly6C lo/neg F4/80+)、M1マクロファージ(MHC II+ CD206-)、M2マクロファージ(MHC II- CD206+)、CD8+ TIL(CD45+ CD11b- CD3+ CD90.2+ CD8+)、CD4+ TIL(CD45+ CD11b- CD3+ CD90.2+ CD4+)、IFN-γ+ CD8+ TIL(CD45+ CD11b- CD3+ CD8+IFN-γ+)。蛍光強度の中央値(MFI)を、IFN-γ+ CD8+ TILからのIFN-γ染色強度の決定のために使用した。
【表4】

コラーゲン含量
【0080】
腫瘍の総コラーゲン含量を、QuickZyme(登録商標)総コラーゲンアッセイ(QuickZyme Biosciences、オランダ、ライデン、カタログ番号:QZBtotcol1)を使用したヒドロキシプロリンの定量化により評価した。。サンプル調製のために、MB49腫瘍を、腫瘍がエンドポイントに達した際に担癌マウスから切除し、液体窒素中で急速凍結し、分析前に-80℃で保存した。腫瘍材料を秤量し、6M HCl中に200mg腫瘍/ml HClで再懸濁し、ボルテックスし、95℃で20時間にわたりインキュベートした。チューブを冷却し、13,000RPMで10分間にわたり遠心分離し、上清を回収した。上清をMilliQ水、それに続く4M HCl中で製造業者の推奨プロトコールに従って希釈し、供給された緩衝剤及び検出試薬を使用したヒドロキシプロリンの検出のために技術的な複製物中に蒔いた。OD570nM値を測定し、供給されたコラーゲンを使用して作成された標準曲線と比較し、各々のサンプル中のコラーゲンの量を算出した。各々のサンプルについての算出された総コラーゲン(μg)を、腫瘍入力の総質量(mg)により割り、腫瘍サンプルにわたりデータを標準化した。
実施例4-マウス結腸MC38腫瘍モデルにおけるNB0828のインビボ有効性
【0081】
NB0828を、マウス結腸MC38腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を低下させる際でのその有効性についてテストし、図8中に示す結果を伴う。NB0828はまた、腫瘍微小環境を変化させ、CD8+ T細胞を増加させ、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の頻度を減少させ、炎症誘発性1型マクロファージの比率を増加させる際に有効であった(図9A及び9C中に示す通り)。これらの変化がこのモデルにおけるNB0828の有効性について関与していた。なぜなら、NB0828処置の間でのCD8+ T細胞の枯渇によって、NB0828の有益な効果が逆転されたためである(図9D中に示す通り)。全体として、このデータは、NB0828によって、腫瘍部位へのCD8+ T細胞の増加が可能になり、TAMが減少し、浸潤性腫瘍において炎症誘発性M1マクロファージ表現型が増加することを示す。
実施例5-マウス結腸MC38腫瘍モデルにおけるNB0828及び抗PD-1抗体のインビボ有効性。
【0082】
NB0828を、PD-1機能遮断抗体との併用において投与された場合にマウス結腸MC38腫瘍モデルにおいて腫瘍成長を低下させる際でのその有効性についてテストした。図10A~Cは、抗PD-1単独と比較し、抗PD-1及びNB0828の併用によって、腫瘍成長がさらに低下し(10A)、全生存が増加したことを示す(8/42と比較し、16/43の10B完全奏効(CR))。NB0828及び抗PD-1の併用処置への完全奏功を示した生存マウスは、10×のMC38腫瘍細胞を用いた再チャレンジから保護され、生存マウスが腫瘍への免疫学的記憶を獲得していたことを示す。
【0083】
抗PD-1処置単独に耐性である、確立されたMC38腫瘍を伴うマウスを、抗PD-1及びNB0828の併用で処置した場合、耐性が逆転した(図11中に示す通り)。図12中に示すように、NB0828及び抗PD-1の併用によって、CD8+ T細胞の浸潤及び機能が増加し(図12A及び12B)、TAM蓄積が低下し(図12C)、腫瘍内の残りのマクロファージの炎症誘発性表現型の比率が増加した(図12D)。腫瘍微小環境におけるこれらの改変は、CD8 T細胞応答を改善し、免疫抑制マクロファージを低下させることにより、抗PD-1耐性を克服するNB0828と一致している。
【0084】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中に示し、記載している一方で、そのような実施形態が例によってだけ提供されることは当業者には明らかであろう。多数のバリエーション、変化、及び置換を、本発明から逸脱することを伴わず、当業者がすぐに思いつくであろう。本明細書中に記載する、本発明の実施形態への種々の代替物が、本発明を実行する際に用いられることを理解すべきである。
【0085】
本明細書中で言及する全ての刊行物、特許出願、発行された特許、及び他の文書は、各々の個々の刊行物、特許出願、発行された特許、又は他の文書が、参照によりその全体において組み入れられることが具体的に、及び個別に示されているかのように、参照により本明細書中に組み込まれる。参照により組み入れられた本文中に含まれる定義は、それらが本開示中の定義と矛盾する範囲までは除外される。
本明細書中に提供する配列リスト
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
【配列表】
2022547550000001.app
【国際調査報告】