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特表2022-547566グリッドスケールエネルギー貯蔵のためのシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】グリッドスケールエネルギー貯蔵のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/39 20060101AFI20221107BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20221107BHJP
   H01M 10/38 20060101ALI20221107BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20221107BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20221107BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20221107BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20221107BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20221107BHJP
【FI】
H01M10/39 D
H01M4/38 Z
H01M10/38
H01M4/02 A
H01M50/188
H01M50/198
H01M50/184 A
H01M50/176
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515947
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020050547
(87)【国際公開番号】W WO2021050987
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,400
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ANDROID
(71)【出願人】
【識別番号】515103582
【氏名又は名称】アンブリ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドウェル,デイビッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マックリアリー,デイビッド・エー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】バイ,アレックス・ティー
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,アレクサンダー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】クイ,ジャンイー
(72)【発明者】
【氏名】ティムソン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,エライザ
(72)【発明者】
【氏名】ラングハウザー,ウィリアム・ビー
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011FF03
5H011FF04
5H011GG01
5H011HH09
5H011KK00
5H011KK02
5H011KK04
5H029AJ03
5H029AK11
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM09
5H029AM10
5H029HJ00
5H029HJ14
5H029HJ17
5H029HJ19
5H050AA08
5H050BA19
5H050CA17
5H050CB11
5H050CB12
5H050HA00
5H050HA14
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
本開示は、負極と、負極と電気的に連通する溶融電解質と、溶融電解質と電気的に連通する正極とを備えるエネルギー貯蔵装置を提供する。負極、正極及び溶融電解質のうちの1又は複数が、エネルギー貯蔵装置の動作温度で少なくとも部分的に液体であってもよい。正極は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で少なくとも部分的に固体であってもよい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料を含む第1の電極と、
前記第1の材料とは異なる第2の材料を含む第2の電極であって、前記第2の材料がアンチモンと、鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む、第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質であって、前記電解質が前記第1の材料のイオンを伝導するように構成されている、電解質と
を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記第1の電極がカルシウムを含む、請求項1に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記第1の電極がカルシウムとリチウムとの合金を含む、請求項2に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記第2の電極が鉄-アンチモン合金を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記第2の電極が鋼-アンチモン合金を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記第2の電極がステンレス鋼-アンチモン合金を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
放電中、前記第2の電極が、(i)カルシウム、リチウム、及びアンチモンと、(ii)放電中に鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む粒子を形成する、請求項6に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記電解質が、塩化カルシウム、塩化リチウム、及び塩化カリウムからなる群より選択される1種又は複数種を含む、請求項7に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記電解質が溶融塩電解質である、請求項1~8のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記第1の電極が、前記エネルギー貯蔵装置の動作温度で少なくとも部分的に液体である、請求項1~9のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記動作温度が250℃以上である、請求項10に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記第2の電極が前記第2の材料の固体粒子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
第1の材料を含む第1の電極と、
エネルギー貯蔵装置の放電中に第2の材料の少なくとも80%が利用されるように構成された前記第2の材料を含む第2の電極であって、前記第2の材料が前記第1の材料と反応する、第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された溶融電解質であって、前記溶融電解質が前記第1の材料のイオンを伝導するように構成されている、溶融電解質と
を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記第1の材料が、前記エネルギー貯蔵装置の動作温度で液体状態である、請求項13に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記動作温度が約250℃以上である、請求項14に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記第1の材料又は前記第2の材料が1又は複数の金属を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記第1の材料がカルシウム又はカルシウム合金を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
前記第2の材料がアンチモンを含む、請求項13~17のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項19】
前記第2の電極が、前記溶融電解質に浸漬された前記第2の材料の粒子を含む、請求項13~18のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項20】
動作時、前記エネルギー貯蔵装置の容量損失が、少なくとも約500回の放電サイクルにわたって約0.5%以下である、請求項13~19のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項21】
前記エネルギー貯蔵装置が、C/4の充電率又は放電率で約75%以上の直流-直流(DC-DC)効率を有する、請求項13~20のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項22】
前記エネルギー貯蔵装置が、C/10の充電率又は放電率で約80%以上のDC-DC効率を有する、請求項13~21のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項23】
第1の材料を含む第1の電極であって、前記第1の材料がエネルギー貯蔵装置の動作温度で液体である、第1の電極と、
前記第1の材料と反応する第2の材料を含む第2の電極であって、前記第2の電極が約300ミリアンペア時/グラム(mAh/g)以上の充電状態比容量を有する、第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質であって、前記電解質が前記第1の材料のイオンを伝導するように構成されており、前記電解質が溶融塩である、電解質と
を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項24】
前記充電状態比容量が約500mAh/g以上である、請求項23に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項25】
前記第2の材料が、前記エネルギー貯蔵装置の動作温度で固体又は半固体である、請求項23又は24に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項26】
前記動作温度が約250℃以上である、請求項25に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項27】
前記第1の材料又は前記第2の材料が1又は複数の金属を含む、請求項23~26のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項28】
前記第1の材料がカルシウム又はカルシウム合金を含む、請求項23~27のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項29】
前記第2の材料がアンチモンを含む、請求項23~28のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項30】
前記第2の電極が前記第2の材料の粒子を含む、請求項23~29のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項31】
前記第2の電極が、約3,000ワット時/リットル(Wh/L)以上のエネルギー密度を有する、請求項23~30のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項32】
キャビティ及び蓋体を含む容器であって、前記蓋体が、前記キャビティを密閉し、シールに加えられる約1000ニュートン(N)以上の力に耐えるように構成された前記シールを備える、容器と、
前記キャビティ内に配置された電気化学セルであって、前記電気化学セルが、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された溶融電解質とを備える、電気化学セルと
を備える、エネルギー貯蔵装置。
【請求項33】
前記シールが、前記シールに加えられる約1400N以上の力に耐えるように構成されている、請求項32に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項34】
前記蓋体が導体開口部を備え、前記導体開口部を通して導体が配置されている、請求項32又は33に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項35】
前記シールが前記導体を前記蓋体に結合する、請求項34に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項36】
前記導体が、最大約200アンペア(A)の電流を流すように構成されている、請求項32~35のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項37】
前記導体が、約50A以上の電流を流すように構成されている、請求項32~36のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項38】
前記導体が、前記キャビティ内で前記第1の電極を懸下するように構成された第1の集電体を備える、請求項32~37のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項39】
前記シールが、約15回以上の熱サイクル受けるように構成されている、請求項32~38のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項40】
前記シールが、窒化アルミニウム(AlN)セラミックと、1又は複数の薄い金属スリーブとを備える、請求項32~39のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項41】
前記AlNセラミックが、1又は複数のろう付け接合部を介して前記1又は複数の薄い金属スリーブに結合されており、前記薄い金属スリーブのうちの少なくとも1つが、ろう付け接合部又は溶接接合部を介して前記蓋体に接合されている、請求項40に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項42】
(a)(i)第1の材料を含む第1の電極と、(ii)第2の材料を含む第2の電極であって、前記第2の材料がアンチモンと、鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む、第2の電極と、(iii)前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質であって、前記電解質が前記第1の材料のイオンを伝導する、電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を設けることと、
(b)前記エネルギー貯蔵装置を充電又は放電させることと
を含む、エネルギーを貯蔵するための方法。
【請求項43】
(a)の前に、アンチモンを鉄、鋼、又はステンレス鋼と反応させて前記第2の電極を生成すること、をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
(a)の前に、アンチモンを(i)鉄、鋼、又はステンレス鋼及び(ii)カルシウムと反応させて前記第2の電極を生成すること、をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
(a)の前に、アンチモンを(i)鉄、鋼、又はステンレス鋼、(ii)電解質、及び(iii)カルシウムと反応させて前記第2の電極を生成すること、をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記電解質が、塩化カルシウム、塩化リチウム、及び塩化カリウムからなる群より選択される1種又は複数種を含む、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第2の材料が前記鉄-アンチモン合金を含む、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記第2の材料が前記鋼-アンチモン合金を含む、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第2の材料が前記ステンレス鋼-アンチモン合金を含む、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
(a)(i)第1の材料を含む第1の電極と、(ii)第2の材料を含む第2の電極であって、前記第2の材料が前記第1の材料と反応する、第2の電極と、(iii)前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された溶融電解質であって、前記溶融電解質が前記第1の材料のイオンを伝導するように構成されている、溶融電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を設けることと、
(b)前記第2の材料の少なくとも80%が利用されるように前記エネルギー貯蔵装置を放電させることと
を含む、エネルギーを貯蔵するための方法。
【請求項51】
前記エネルギー貯蔵装置の容量損失が、少なくとも約500回の放電サイクルにわたって約0.5%以下である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記エネルギー貯蔵装置が、C/4の充電率又は放電率で約65%以上の直流-直流(DC-DC)効率を有する、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記エネルギー貯蔵装置が、C/10の充電率又は放電率で約70%以上のDC-DC効率を有する、請求項50~52のいずれか一項に記載のエネルギー貯蔵装置。
【請求項54】
(a)(i)第1の材料を含む第1の電極であって、前記第1の電極がエネルギー貯蔵装置の動作温度で液体である、第1の電極と、(ii)第2の材料を含む第2の電極であって、前記第2の材料が前記第1の材料と反応する、第2の電極と、(iii)前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された電解質であって、前記電解質が前記第1の材料のイオンを伝導し、前記電解質が溶融塩であり、前記第2の材料が、約300ミリアンペア時/グラム(mAh/g)以上の充電状態比容量を有する、電解質と、を備える前記エネルギー貯蔵装置を設けることと、
(b)前記エネルギー装置を充電又は放電させることと
を含む、エネルギーを貯蔵するための方法。
【請求項55】
前記第2の電極が、約3,000ワット時/リットル(Wh/L)以上のエネルギー密度を有する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記充電状態比容量が約500mAh/g以上である、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
(a)(i)キャビティ及び蓋体を含む容器であって、前記蓋体が、前記キャビティを密閉し、シールに加えられる約1000ニュートン(N)以上の力に耐えるように構成された前記シールを備える、容器と、(ii)前記キャビティ内に配置された電気化学セルであって、前記電気化学セルが、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された溶融電解質とを備える、電気化学セルと、を備える、エネルギー装置を設けることと、
(b)前記エネルギー装置を充電又は放電させることと
を含む、エネルギー貯蔵のための方法。
【請求項58】
前記シールが、前記シールに加えられる約1400N以上の力に耐えるように構成されている、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記導体が、前記キャビティ内で前記第1の電極を懸下するように構成された第1の集電体を備える、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記シールが、約15回以上の熱サイクル受けるように構成されている、請求項57~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
(a)1又は複数のベイと、第1の材料を含む第1の電極、第2の材料を含む第2の電極、及び電解質とを備えるセルハウジングを設けることであって、前記第2の材料がアンチモンと、鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む、セルハウジングを設けることと、
(b)前記第1の材料及び前記第2の材料を前記セルハウジングの前記1又は複数のベイに装填することと、
(c)前記電解質を前記セルハウジングに装填することと
を含む、エネルギー貯蔵装置を形成するため方法。
【請求項62】
前記第1の材料及び前記第2の材料が顆粒を含み、各顆粒が単一成分を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
(b)の前に、前記第1の材料及び前記第2の材料で合金を形成すること、をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
(b)の前に、前記合金が粉末又は顆粒に粉砕され、前記粉末又は顆粒が前記1又は複数のベイに装填される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
(b)の前に、溶融スラリーを形成するために前記第1の材料又は前記第2の材料の顆粒が前記電解質と混合され、前記溶融スラリーが前記1又は複数のベイに装填される、請求項61~64のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2019年9月12日に出願された米国仮特許出願第62/899400号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することができる装置である。電池は、多くの家庭及び工業用途で使用されている。いくつかの例では、電池は、(例えば、力学的エネルギーなどの非電気的タイプのエネルギーから変換された)電気エネルギーが化学エネルギーとして、すなわち電池を充電することによって電池に貯蔵され得るように再充電可能である。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、グリッドスケール用途のためのエネルギー貯蔵装置及びエネルギー貯蔵システムを提供する。エネルギー貯蔵装置は、負極と、電解質と、正極とを備え、少なくとも一部は、エネルギー貯蔵装置の動作時に液体状態であり得る。状況によっては、エネルギー貯蔵装置の放電中に、正極又はその近傍に金属間化合物が形成される。
【0004】
一態様では、本開示は、第1の材料を含む第1の電極と、第2の材料を含む第2の電極であって、第2の材料がアンチモンと、鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群よりの1種又は複数種とを含む、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質であって、電解質が第1の材料のイオンを伝導するように構成されている、電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1の電極はカルシウムを含む。いくつかの実施形態では、第1の電極は、カルシウムとリチウムとの合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、ステンレス鋼-アンチモン合金を含み、放電中、第2の電極は、(i)カルシウム、リチウム、及びアンチモンと、(ii)鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む粒子を形成する。いくつかの実施形態では、電解質は、塩化カルシウム、塩化リチウム、及び塩化カリウムからなる群より選択される1種又は複数種を含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、鉄-アンチモン合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、鋼-アンチモン合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、ステンレス鋼-アンチモン合金を含む。いくつかの実施形態では、電解質は、溶融塩電解質である。いくつかの実施形態では、第1の電極は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で少なくとも部分的に液体である。いくつかの実施形態では、動作温度は250℃以上である。いくつかの実施形態では、第2の電極は、第2の材料の固体粒子を含む。
【0006】
別の態様では、本開示は、第1の材料を含む第1の電極と、エネルギー貯蔵装置の放電中に第2の材料の少なくとも80%が利用されるように構成された第2の材料を含む第2の電極であって、第2の材料が第1の材料と反応する、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された溶融電解質であって、溶融電解質が第1の材料のイオンを伝導するように構成された、溶融電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の材料は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で液体状態である。いくつかの実施形態では、動作温度は約250℃以上である。いくつかの実施形態では、第1の材料又は第2の材料は、1又は複数の金属を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、カルシウム又はカルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料はアンチモンを含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、溶融電解質に浸漬された第2の材料の粒子を含む。いくつかの実施形態では、動作時、エネルギー貯蔵装置の容量損失は、少なくとも約500回の放電サイクルにわたって約0.5%以下である。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、C/4の充電率又は放電率で約75%以上の直流-直流(DC-DC)効率を有する。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、C/10の充電率又は放電率で約80%以上のDC-DC効率を有する。
【0008】
別の態様では、本開示は、第1の材料を含む第1の電極であって、第1の電極がエネルギー貯蔵装置の動作温度で液体である、第1の電極と、第1の材料と反応する第2の材料を含む第2の電極であって、第2の電極が約300ミリアンペア時/グラム(mAh/g)以上の充電状態比容量を有する、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質であって、電解質が第1の材料のイオンを伝導するように構成されており、電解質が溶融塩である、電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、充電状態比容量は約500mAh/g以上である。いくつかの実施形態では、第2の材料は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で固体又は半固体である。いくつかの実施形態では、動作温度は約250℃以上である。いくつかの実施形態では、第1の材料又は第2の材料は、1又は複数の金属を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、カルシウム又はカルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料はアンチモンを含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、第2の材料の粒子を含む。いくつかの実施形態では、第2の電極は、約3,000ワット時/リットル(Wh/L)以上のエネルギー密度を有する。
【0010】
別の態様では、本開示は、キャビティ及び蓋体を含む容器であって、蓋体が、キャビティを密閉し、シールに加えられる約1000ニュートン(N)以上の力に耐えるように構成されたシールを備える、容器と、キャビティ内に配置された電気化学セルであって、電気化学セルが、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された溶融電解質とを備える、電気化学セルと、を備えるエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、シールは、シールに加えられる約1400N以上の力に耐えるように構成される。いくつかの実施形態では、蓋体は導体開口部を備え、導体開口部を通して導体が配置される。いくつかの実施形態では、シールは、導体を蓋体に結合する。いくつかの実施形態では、導体は、最大で約200アンペア(A)の電流を流すように構成される。いくつかの実施形態では、導体は、約50A以上の電流を流すように構成される。いくつかの実施形態では、導体は、キャビティ内で第1の電極を懸下するように構成された第1の集電体を備える。いくつかの実施形態では、シールは、約15回以上の熱サイクル受けるように構成される。いくつかの実施形態では、シールは、窒化アルミニウム(AlN)セラミックと、1又は複数の薄い金属スリーブとを備える。いくつかの実施形態では、AlNセラミックは、1又は複数のろう付け接合部を介して1又は複数の薄い金属スリーブに結合され、薄い金属スリーブのうちの少なくとも1つは、ろう付け接合部又は溶接接合部を介して蓋体に接合される。
【0012】
別の態様では、本開示は、(i)第1の材料を含む第1の電極と、(ii)第2の材料を含む第2の電極であって、第2の材料がアンチモンと、鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む、第2の電極と、(iii)第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質であって、電解質が第1の材料のイオンを伝導する、電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を設けることと、エネルギー貯蔵装置を充電又は放電させることと、を含む、エネルギーを貯蔵するための方法を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、この方法は、アンチモンを鉄、鋼、又はステンレス鋼と反応させて第2の電極を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、アンチモンを(i)鉄、鋼、又はステンレス鋼及び(ii)カルシウムと反応させて第2の電極を生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、電解質は、塩化カルシウム、塩化リチウム、及び塩化カリウムからなる群より選択される1種又は複数種を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料は、鉄-アンチモン合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料は、鋼-アンチモン合金を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料は、ステンレス鋼-アンチモン合金を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、(i)第1の材料を含む第1の電極と、(ii)第2の材料を含む第2の電極であって、第2の材料が第1の材料と反応する、第2の電極と、(iii)第1の電極と第2の電極との間に配置された溶融電解質であって、溶融電解質が第1の材料のイオンを伝導するように構成される、溶融電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を設けることと、第2の材料の少なくとも80%が利用されるようにエネルギー貯蔵装置を放電させることと、を含む、エネルギーを貯蔵するための方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の容量損失は、少なくとも約500回の放電サイクルにわたって約0.5%以下である。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、C/4の充電率又は放電率で約65%以上の直流-直流(DC-DC)効率を有する。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、C/10の充電率又は放電率で約70%以上のDC-DC効率を有する。
【0016】
別の態様では、本開示は、(i)第1の材料を含む第1の電極であって、第1の電極がエネルギー貯蔵装置の動作温度で液体である、第1の電極と、(ii)第2の材料を含む第2の電極であって、第2の材料が第1の材料と反応する、第2の電極と、(iii)第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質であって、電解質が第1の材料のイオンを伝導し、電解質が溶融塩であり、第2の材料が、約300ミリアンペア時/グラム(mAh/g)以上の充電状態比容量を有する、電解質と、を備えるエネルギー貯蔵装置を設けることと、エネルギー装置を充電又は放電させることと、を含む、エネルギー貯蔵のための方法を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の電極は、約3,000ワット時/リットル(Wh/L)以上のエネルギー密度を有する。いくつかの実施形態では、約500mAh/g以上の充電状態比容量。
【0018】
別の態様では、本開示は、(i)キャビティ及び蓋体を含む容器であって、蓋体が、キャビティを密閉し、シールに加えられる約1000ニュートン(N)以上の力に耐えるように構成されたシールを備える、容器と、(ii)キャビティ内に配置された電気化学セルであって、電気化学セルが、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された溶融電解質とを備える、電気化学セルと、を備えるエネルギー装置を設けることと、エネルギー装置を充電又は放電させることと、を含む、エネルギー貯蔵のための方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、シールは、シールに加えられる約1400N以上の力に耐えるように構成される。いくつかの実施形態では、導体は、キャビティ内で第1の電極を懸下するように構成された第1の集電体を備える。いくつかの実施形態では、シールは、約15回以上の熱サイクル受けるように構成される。
【0020】
別の態様では、本開示は、1又は複数のベイと、第1の材料を含む第1の電極、第2の材料を含む第2の電極、及び電解質とを備えるセルハウジングを設けることであって、第2の材料がアンチモンと、鉄、鋼、及びステンレス鋼からなる群より選択される1種又は複数種とを含む、セルハウジングを設けることと、第1の材料及び第2の材料をセルハウジングの1又は複数のベイに装填し、電解質をセルハウジングに装填することと、を含む、エネルギー貯蔵装置を形成するための方法を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1の材料及び第2の材料は顆粒を含み、各顆粒は単一成分を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、第1の材料及び第2の材料で合金を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、合金は、粉末又は顆粒に粉砕され、粉末又は顆粒は、1又は複数のベイに装填される。いくつかの実施形態では、溶融スラリーを形成するために第1の材料又は第2の材料の顆粒が電解質と混合され、溶融スラリーは、1又は複数のベイに装填される。いくつかの実施形態では、溶融スラリーを形成するために第1の材料及び第2の材料の顆粒が電解質と混合され、溶融スラリーは、放冷されて粉末又は顆粒に粉砕され、粉末又は顆粒は1又は複数のベイに装填される。
【0022】
本開示の追加の態様及び利点は、本開示の単なる例示である実施形態が図示及び説明されている、以下の詳細な説明を読めば当業者には容易に明らかになるであろう。理解されるように、本開示は、他の異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本開示から逸脱することなく、様々な自明な点において修正が可能である。したがって、図面及び説明は本質的に例示とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではない。
【0023】
参照による援用
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、又は特許出願が参照により具体的且つ個別に組み込まれると指示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた刊行物及び特許又は特許出願が本明細書に含まれる開示と矛盾する限りにおいて、本明細書は、任意のそのような矛盾する資料に取って代わり、且つ/又は優先することが意図されている。
【0024】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明、及び添付の図面(本明細書では「図」とも記載する)を参照すれば得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】例示的な電気化学セルの充電及び放電プロセスを示す図である。
図2】例示的な電気化学セルの充電中及び放電中の開回路電圧(OCV)測定値を示す図である。
図3】例示的な電気化学セルの充電電圧トレース及び放電電圧トレースを示す図である。
図4】電気化学セルの例示的な概略図である。
図5】鋼-アンチモン合金の形成の一例を示す図である。
図6】アンチモン系電極を有する電池の充電及び放電についての電圧シフト対容量の一例を示す図である。
図7】鋼-アンチモン合金の例示的な走査型電子顕微鏡画像を示す図である。
図8】ある期間にわたる例示的な電気化学セルの容量及び電圧挙動の一例を示す図である。
図9A】電気化学セルの例示的なハウジングを示す、例示的な電気化学セルを示す図である。
図9B】電気化学セルの例示的なシールを示す、例示的な電気化学セルを示す図である。
図10A】例示的な電気化学セルの水平構成を示す、例示的な電気化学セル構成を示す図である。
図10B】例示的な電気化学セルの垂直構成を示す、例示的な電気化学セル構成を示す図である。
図11】例示的な電気化学セルの放電容量を示す図である。
図12】例示的なエネルギー貯蔵システムを示す図である。
図13】本明細書で提供される方法を実装するようにプログラム又はそれ以外の方法で構成されるコンピュータシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書では本発明の様々な実施形態が図示及び説明されているが、そのような実施形態は例として提供されているにすぎないことが当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく当業者には多数の変形、変更、及び置換が想起されるであろう。本明細書に記載される発明の実施形態の様々な代替形態が用いられ得ることを理解されたい。
【0027】
本明細書で使用される「セル」又は「電気化学セル」という用語は、一般に、電気化学セルを指す。セルは、材料「A」の負極と材料「B」の正極とを含むことができ、A||Bとして表される。正極と負極とは、電解質によって分離することができる。セルはまた、ハウジング、1又は複数の集電体、及び高温電気絶縁シールを含むこともできる。
【0028】
「パック」又は「トレイ」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、異なる電気的接続を介して(例えば、垂直又は水平に、直列又は並列に)取り付けられたセルを指す。パック又はトレイは、任意の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、80、100、120、140、160、200、250、300、又はそれ以上)のセルを備えることができる。場合によっては、パック又はトレイは100個のセルを備える。場合によっては、パックは、少なくとも約100キロワット時のエネルギーを貯蔵すること、及び/又は少なくとも約25キロワットの電力を供給することができる。
【0029】
本明細書で使用される「ラック」という用語は、一般に、直列又は並列に互いに電気的に接合されたパック又はトレイを指し、互いに重なり合って垂直に積み重ねられたパック又はトレイを含み得る。ラックは、任意の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、40、80、100、又はそれ以上)のパック又はトレイを備えることができる。場合によっては、ラックは5つのトレイを備える。場合によっては、ラックは、少なくとも約500キロワット時のエネルギーを貯蔵すること、及び/又は約125キロワットの電力を供給することができる。
【0030】
「コア」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、異なる電気的接続を介して(例えば、直列及び/又は並列に)取り付けられた複数のパック、トレイ、及び/又はラックを指す。コアは、任意の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又はそれ以上)のパック又はトレイ又はラックを備えることができる。場合によっては、コアはまた、コアが制御された方法で電気エネルギーを効率的に貯蔵及び回収することを可能にする機械的、電気的、及び熱的システムも備える。場合によっては、コアは、少なくとも約10個のパック又はトレイの少なくとも約2つのラックを備える。場合によっては、コアは、少なくとも約1000キロワット時のエネルギーを貯蔵すること、及び/又は少なくとも約250キロワットの電力を供給することができる。
【0031】
「システム」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、異なる電気的接続を介して(例えば、直列及び/又は並列に)取り付けられ得る1又は複数のコアを指す。場合によっては、システムはまた、追加の電気機器(例えば、DC-AC双方向インバータ)及び制御部(例えば、システムが外部信号に応答して動作モードを変更することを可能にする制御部)も備える。システムは、任意の数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上)のコアを備えることができる。場合によっては、システムは4つのコアを備える。場合によっては、システムは、約1メガワット時のエネルギーを貯蔵すること、及び/又は少なくとも約250キロワットの電力を供給することができる。
【0032】
「電池」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、直列及び/又は並列に接続された1又は複数の電気化学セルを指す。電池は、任意の数の電気化学セル、パック、トレイ、コア、又はシステムを備えることができる。
【0033】
「垂直」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、重力加速度ベクトル(g)に平行な方向を指す。
【0034】
「サイクル」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、充電/放電又は放電/充電サイクルを指す。サイクルという用語はまた、電気化学セルの熱サイクルも指し得る。電気化学セルの熱サイクルは、セルを動作温度から室温に冷却及び再加熱することを含み得る。セルは、システム維持及び/又はセルの輸送のために熱サイクルされ得る。
【0035】
「電圧」又は「セル電圧」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、(例えば、任意の充電の状態又は充電/放電条件における)セルの電圧を指す。場合によっては、電圧又はセル電圧は開回路電圧であってもよい。場合によっては、電圧又はセル電圧は、充電中又は放電中の電圧であり得る。
【0036】
「酸化状態」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、例えば溶融ハロゲン化物塩などのイオン溶液又は電解質に溶解されたときの種の可能な荷電イオン状態を指す(例えば、亜鉛2+(Zn2+)は2+の酸化状態を有する)。
【0037】
「直流-直流効率」又は「DC-DC効率」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、エネルギー貯蔵装置又は電池から放電されるワット時(Wh)単位のエネルギー量を、電池を充電するために使用されるWh単位のエネルギーで割ったものを指す。DC-DC効率は、充電及び放電電圧カットオフ限界を有する対称電流サイクルを使用して決定され得る。
【0038】
「充電率」又は「C/『N』」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、電池がその定格容量を「N」時間以内に完全に充電又は放電されるような、電池の充電率又は放電率を指す。例えば、C/4レートは、電池が4時間以内に充電又は放電されることを示し得る。C/10レートは、電池が10時間以内に充電又は放電されることを示し得る。
【0039】
「エネルギー密度」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、単位体積当たりの所与の系又は空間領域に貯蔵されたエネルギーの量を指す。
【0040】
「放電容量」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、充電容量の量(例えば、アンペア時又はAh単位)、又は電池が放電されるときに電池によって外部電気回路に提供されるエネルギー容量の量(例えば、ワット時又はWh単位)を指す。
【0041】
「放電深度」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、電池が放電されるときに外部電気回路に提供される電池の定格放電容量又は理論的放電容量の割合又はパーセンテージを指す。
【0042】
「電極利用率」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、電池に装填された電極材料の定格充電容量又は理論的充電容量に対する、放電プロセス中に一方又はどちらかの電極によって提供される電荷容量(例えば、Ah単位)の割合又はパーセンテージを指す。
【0043】
「少なくとも」、「より大きい」、又は「以上」という用語が2つ以上の一連の数値の最初の数値に先行するときはいつでも、「少なくとも」、「より大きい」、又は「以上」という用語は、その一連の数値の各数値に適用される。例えば、1、2、又は3以上は、1以上、2以上、又は3以上と等価である。
【0044】
「以下(no more than)」、「未満」、又は「以下(less than or equal to)」という用語が2つ以上の一連の数値の最初の数値に先行するときはいつでも、「以下」、「未満」、又は「以下」という用語は、その一連の数値の各数値に適用される。例えば、3、2、又は1以下は、3以下、2以下、又は1以下と等価である。
【0045】
本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置(例えば、電池)及び電気化学エネルギー貯蔵システムを提供する。エネルギー貯蔵装置は、ハウジング又は容器内にシールされた(例えば、密閉された)少なくとも1つの電気化学セルを含み得る。セルは、例えば、電子装置、別のエネルギー貯蔵装置、又は送電網などの負荷に電気エネルギー(例えば、電位下の電子)を供給するように構成され得る。
【0046】
一例では、エネルギー貯蔵装置は、送電網に電気エネルギーを供給又は送達し得る。エネルギー貯蔵装置は、エネルギープラントからや再生可能な電気エネルギー源(例えば、ソーラーファーム、風力発電所など)からなどの電気エネルギー源から電力を受け取り得る。エネルギー貯蔵装置は、送電網に供給するために、風力や太陽光などの間欠性再生可能エネルギー源からのエネルギーを貯蔵するシステムの一部であってもよい。
【0047】
エネルギー貯蔵装置及びエネルギーを貯蔵するための方法
一態様では、本開示は、エネルギー貯蔵装置及びエネルギー貯蔵装置にエネルギーを貯蔵するための方法を提供する。エネルギー貯蔵装置は、第1の材料を含む第1の電極と、第2の材料を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質とを備え得る。第2の材料は、アンチモン(Sb)と、鉄、鋼、ステンレス鋼、又はそれらの組み合わせとを含み得る。例えば、第2の材料は、鉄-アンチモン(Fe-Sb)合金、鋼-アンチモン合金、又はステンレス鋼-アンチモン(SS-Sb)合金であってもよい。電解質は、第1の材料のイオンを伝導するように構成され得るか、又は伝導し得る。エネルギーを貯蔵するための方法は、エネルギー貯蔵装置を充電及び放電することを含み得る。
【0048】
別の態様では、本開示は、エネルギー貯蔵装置及びエネルギー貯蔵装置にエネルギーを貯蔵するための方法を提供する。エネルギー貯蔵装置は、第1の電極と、第2の電極と、溶融電解質とを備え得る。第1の電極は第1の材料を含み、第2の電極は第2の材料を含み得る。第1の材料は、エネルギー貯蔵装置の放電中に第2の材料の少なくとも約80%が利用されるように、第2の材料と反応し得る。溶融電解質は、第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極と第2の電極とを分離し得る。溶融電解質は、第1の材料のイオンを伝導するように構成され得るか、又は第1の材料のイオンを伝導し得る。使用時、エネルギー貯蔵装置は、充電又は放電され得る。エネルギーを貯蔵するための方法は、放電中に第2の材料の少なくとも80%が利用されるようにエネルギー貯蔵装置を充電及び放電することを含み得る。
【0049】
別の態様では、本開示は、エネルギー貯蔵装置及びエネルギー貯蔵装置にエネルギーを貯蔵するための方法を提供する。エネルギー貯蔵装置は、第1の電極と、第2の電極と、電解質とを備え得る。第1の電極は第1の材料を含み、第2の電極は第2の材料を含み得る。第1の電極は、エネルギー貯蔵装置の動作温度で液体又は液体状態であり得る。第1の材料は、第2の材料と反応し得る。電解質は、第1の電極と第2の電極との間に配置され、第1の電極と第2の電極とを分離し得る。電解質は、第1の材料のイオンを伝導するように構成され得るか、又は第1の材料のイオンを伝導し得る。電極は溶融塩であってもよい。第2の電極は、約300ミリアンペア時/グラム(mAh/g)以上の充電状態比容量を有し得る。使用時、エネルギー貯蔵装置は、充電又は放電され得る。エネルギーを貯蔵するための方法は、エネルギー貯蔵装置を充電及び放電することを含み得る。
【0050】
別の態様では、本開示は、エネルギー貯蔵装置及びエネルギー貯蔵装置にエネルギーを貯蔵するための方法を提供する。エネルギー貯蔵装置は、キャビティ及び蓋体を有する容器と、キャビティ内に配置された電気化学セルとを含み得る。蓋体は、キャビティを密閉するように構成されたシールを含み得る。シールは、シールに加えられる約1000ニュートン(N)以上の力に耐えるように構成され得る。電気化学セルは、第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された溶融電解質とを含み得る。使用時、エネルギー貯蔵装置は、充電又は放電され得る。エネルギーを貯蔵するための方法は、エネルギー貯蔵装置を充電及び放電することを含み得る。
【0051】
第1の電極(例えば、負極)及び/又は第2の電極(例えば、正極)は、1又は複数の金属を含み得る。電極は、単一の金属又は複数の金属を含み得る。一例では、一方又は両方の電極が金属合金を含む。第1の電極は、負極(例えば、アノード)であってもよく、カルシウム(Ca)又はカルシウム合金(Ca合金)を含んでいてもよい。溶融電極は、溶融塩電極であってもよく、カルシウム系塩(例えば、塩化カルシウム)を含んでいてもよい。一例では、電解質は塩化カルシウム及び塩化リチウムを含む。別の例では、電解質は、塩化カルシウム、塩化リチウム、及び塩化カリウムを含む。別の例では、電解質は、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む。第2の電極は、正極(例えば、カソード)であってもよく、アンチモン(Sb)を含んでいてもよい。アンチモンは、アンチモンの固体粒子であってもよい。
【0052】
いくつかの例では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、液体金属負極と、固体金属正極と、液体金属負極と固体金属正極とを分離する液体又は溶融塩電解質とを含む。いくつかの例では、電気化学エネルギー貯蔵装置は、固体金属負極と、固体金属正極と、固体金属負極と固体金属正極とを分離する液体塩電解質とを含む。いくつかの例では、電気化学エネルギー貯蔵装置は、半固体金属負極と、固体金属正極と、半固体金属負極と固体金属正極とを分離する液体電解質とを含む。
【0053】
溶融電解質及び/又は電極の少なくとも1つを液体又は半固体状態に維持するために、電池セルは任意の適切な温度まで加熱され得る。いくつかの例では、電池セルは、約100℃、約150℃、約200℃、約250℃、約300℃、約350℃、約400℃、約450℃、約500℃、約550℃、約600℃、約650℃、又は約700℃以上の温度まで加熱され、且つ/又はその温度に維持される。状況によっては、電池セルは、約150℃から約600℃まで、約400℃から約500℃まで、又は約450℃から約575℃まで加熱される。一例では、電気化学セルは、約300℃~650℃の温度で動作する。別の例では、電気化学セルは、約485℃~525℃の温度で動作する。別の例では、電気化学セルは、約250℃以上の温度で動作する。
【0054】
一例では、エネルギー貯蔵装置は、エネルギー貯蔵装置の動作時に溶融電解質及び負極を液体状態に維持するために、例えば、約450℃~550℃の高温で動作し得る。エネルギー貯蔵装置の温度を維持することにより、正極が固体状態に維持され得る(例えば、純アンチモンは、約630℃の溶融温度を有することができる)。溶融電解質及び負極を液体状態に維持することにより、電極の電子移動速度が増加し得る。
【0055】
一例では、電気化学エネルギー貯蔵装置は、約0.9ボルト(V)~約1Vの開回路電圧(OCV)を有する。電気化学セルのOCVは、約0.1V、約0.2V、約0.3V、約0.4V、約0.5V、約0.6V、約0.7V、約0.8V、約0.9V、約1V、約1.1V、約1.2V、又はそれ以上であってもよい。電気化学セルのOCVは、約0.1V~0.2V、約0.1V~0.3V、約0.1V~0.4V、約0.1V~0.5V、約0.1V~0.6V、約0.1V~0.7V、約0.1V~0.8V、約0.1V~0.9V、約0.1V~1V、約0.1V~1.1V、約0.1V~1.2V、約0.2V~0.3V、約0.2V~0.4V、約0.2V~0.5V、約0.2V~0.6V、約0.2V~0.7V、約0.2V~0.8V、約0.2V~0.9V、約0.2V~1V、約0.2V~1.1V、約0.2V~1.2V、約0.3V~0.4V、約0.3V~0.5V、約0.3V~0.6V、約0.3V~0.7V、約0.3V~0.8V、約0.3V~0.9V、約0.3V~1V、約0.3V~1.1V、約0.3V~1.2V、約0.4V~0.5V、約0.4V~0.6V、約0.4V~0.7V、約0.4V~0.8V、約0.4V~0.9V、約0.4V~1V、約0.4V~1.1V、約0.4V~1.2V、約0.5V~0.6V、約0.5V~0.7V、約0.5V~0.8V、約0.5V~0.9V、約0.5V~1V、約0.5V~1.1V、約0.5V~1.2V、約0.6V~0.7V、約0.6V~0.8V、約0.6V~0.9V、約0.6V~1V、約0.6V~1.1V、約0.6V~1.2V、約0.7V~0.8V、約0.7V~0.9V、約0.7V~1V、約0.7V~1.1V、約0.7V~1.2V、約0.8V~0.9V、約0.8V~1V、約0.8V~1.1V、約0.8V~1.2V、約0.9V~1V、約0.9V~1.1V、約0.9V~1.2V、約1V~1.1V、約1V~1.2V、又は約1.1V~1.2Vからのものであってもよい。OCVは充電の状態に依存し得る。このOCVは、リチウムイオン型電池のOCVよりも小さくてもよい。この範囲内のOCVは、より高いOCVを有する電池と比較して、熱暴走のリスクを低減し、より大きなセルの製造を可能にし、電池管理システムの複雑さを低減し得る。より低い開回路電圧の効果は、セルの化学的性質によって少なくとも部分的に相殺される可能性があり、例えば、カルシウムとアンチモンの両方が多電子を交換し得る。
【0056】
図1に、充電中101、充電状態102、放電中103、及び放電状態104におけるエネルギー貯蔵装置の一例を示す。充電状態102では、アノードは液体カルシウム(Ca)合金であってもよく、電解質はカルシウムイオン(Ca2+)を含んでいてもよく、正極(例えば、カソード)は固体アンチモン(Sb)粒子を含んでいてもよい。電気化学セルの放電中103は、負極(例えば、アノード)を消費し得る。セルが放電中103であるとき、各電極で半反応が起こり得る。負極(例えば、アノード)において、Ca合金は電子を放出し、イオンとして塩に溶解し得る(例えば、xCa→xCa2++2xe)。電子は、電気的仕事を行う外部回路を通って移動し得る。正極(例えば、カソード)において、溶融塩からのイオンは、カソード中のSb金属及び外部回路から戻る電子と結合して金属間化合物を形成し得る(例えば、Sb+xCa2++2xe→CaSb(合金))。電子が(外部回路を介して)電極間を流れるための駆動力は、負極と正極との間のCaの相対活量であり得る。アノード中のCaの活量は1に近くてもよく、Sbカソード中のCaの活量は3×10-11~3×10-13であってもよい。2つのセル放電半反応は、結合して完全反応になり得る(例えば、xCa+Sb→CaSb(合金))。
【0057】
図2に、例示的な電気化学セルの充電中及び放電中の開回路電圧(OCV)測定値を示す。放電電圧測定値は複数のプラトーを示しており、これらは異なる金属間化合物(例えば、CaSb(合金))からのアンチモン原子としての異なる酸化還元反応を表し得る。放電中、各Ca原子は2つの電子を供与し得、各Sb原子は3つの電子を受け取り得る。アノードとカソードの両方が「多価」であってもよく、これにより電極容量密度が増加し得る。第2の電極の容量密度(その表面積を通るイオンの平均流量と直交するカソードの表面積に基づく)は、約0.1アンペア時/平方センチメートル(Ah/cm)、約0.2Ah/cm、約0.3Ah/cm、約0.4Ah/cm、約0.5Ah/cm、約0.6Ah/cm、約0.7Ah/cm、約0.8Ah/cm、又はそれ以上であってもよい。第2の電極の容量密度は、約0.1Ah/cm~0.2Ah/cm、約0.1Ah/cm~0.3Ah/cm、約0.1Ah/cm~0.4Ah/cm、約0.1Ah/cm~0.5Ah/cm、約0.1Ah/cm~0.6Ah/cm、約0.1Ah/cm~0.7Ah/cm、又は約0.1Ah/cm~0.8Ah/cmであってもよい。一例では、第2の電極の容量密度は、約0.16Ah/cm~0.78Ah/cmである。第2の電極の容量体積密度は、約0.1アンペア時/ミリリットル(Ah/mL)、約0.2Ah/mL、約0.3Ah/mL、約0.4Ah/mL、約0.5Ah/mL、約0.6Ah/mL、約0.7Ah/mL、約0.8Ah/mL、約0.9Ah/mL、約1Ah/mL、約1.25Ah/mL、又は約1.5Ah/mL、又はそれ以上であってもよい。
【0058】
図1に記載される充電及び放電プロセスは、ある程度のヒステリシスを示す場合がある。しかしながら、セルは、直流-直流(DC-DC)エネルギー効率の商業的に実用的な値を達成し得る。例えば、約20アンペア時(Ah)の容量を有するセルは、約99%のクーロン効率、並びにC/4、C/10、及びC/20の充電率に対してそれぞれ及び86%、91%、及び94%のDC-DC効率を示しており、約0.85Vの平均セル放電電圧を達成している。図3に、例示的な電気化学セルの充電電圧トレース及び放電電圧トレースを示す。Ca電極及びSb電極の利用率は、約90%以上であり得る。図3では、「100%の放電深度」値は、Sb原子あたり3つの電子を仮定したSbの90%の利用率に基づくものである。
【0059】
DC-DC効率値は、どちらも過電圧を変化させ、DC-DC効率に影響を与える可能性がある、(所与の充電率での)電流密度と内部抵抗とをそれぞれ変化させ得る電極厚さ/容量及び電極間間隔などのセル構成によって影響され得る。電気化学セルのDC-DC効率は、C/4の充電/放電率で約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又はそれ以上であり得る。一例では、DC-DC効率は、C/4の充電/放電率で約75%より大きい。一例では、DC-DC効率は、C/4の充電/放電率で約65%より大きい。電気化学セルのDC-DC効率は、C/10の充電/放電率で約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、又はそれ以上であり得る。一例では、DC-DC効率は、C/10の充電/放電率で約80%より大きい。一例では、DC-DC効率は、C/10の充電/放電率で約70%より大きい。
【0060】
電極利用率は、一方の電極のイオンの電解質への溶解、及び電解質からのイオンと他方の電極の材料との反応を含み得る。例えば、第2の電極又はカソードは、電気化学セルの放電中に利用され得る(例えば、第1の材料のイオンと反応する)。第2の電極の利用率は、放電中に約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又はそれ以上であり得る。一例では、第2の電極の利用率は、放電中に約70%以上であり得る。別の例では、第2の電極の利用率は、放電中に約80%以上であり得る。別の例では、第2の電極の利用率は、放電中に約90%以上であり得る。電極利用率は、様々な特徴、動作パラメータ、又はその両方によって変更又はそれ以外の方法で修正され得る。電極利用率を変更又は修正し得るパラメータには、多孔質金属セパレータの設計(例えば、厚さ、材料、孔径など)、負極集電体の設計(例えば、厚さ、材料、孔径など)、動作温度、充電率、電極厚さ、電極形状、正極粒径、電解質組成、電解質厚さ、負極と正極との間の距離、充電カットオフ電圧、又はそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、電極利用率は、電極の厚さ(例えば、負極の厚さ又は正極の粒径)を減少させる、電極間に配置された電解質の厚さを減少させる、一定の電流速度でC/4以下の充電率で動作させる、又はそれらの任意の組み合わせによって増加し得る。一例では、各々が約0.5センチメートル以下の厚さを有する複数の負極と、約10ミリメートル以下の電極間の電解質ギャップと、形状が平坦であり、互いに平行に配置され、C/4以下で動作する負極とを備える電気化学セルは、約80%以上の電極利用率を有し得る。
【0061】
図4に、例示的な電気化学セル構成の概略図を示す。この例では、Ca合金負極401は、多孔質金属集電体に保持されている。正極402は、正極集電体としても機能し得る透過性金属セパレータ403で定位置に保持された固体アンチモン粒子を含む。粒子は、溶融電解質404に浸漬され、又は囲まれていてもよい。負極401、正極402、及び溶融電解質404は、セルハウジング405内に収容されていてもよい。セルハウジング405は、透過性金属セパレータ403と電気的に連通し得、正極集電体として機能し得る。セルハウジングは、セルハウジング405内に貫通して延在する負電流リード406を有する開口部を有し得る。負極401は、負電流リード406と電気的に連通し得る。セルハウジングは、負電流リード406とセルハウジング405との間に配置されたシール407によって密閉され得る。正極402、負極401、及び電解質404は、セル構成要素の上方に空きヘッドスペース408が存在するように、セルハウジング405内に配置され得る。
【0062】
カルシウム-アンチモン(Ca||Sb)電池は、負極活物質として液体Ca金属合金を使用し得る。負極は、1又は複数の合金化添加剤をさらに含んでいてもよい。Ca金属がCa2+イオンに変化するとき、その反応は原子当たり2つの電子の交換を伴う。一例では、90%のアノード利用率を仮定すると、1.55 g/mLの密度を有する純Ca電極は、約1200ミリアンペア時/グラム(mAh/g)の比容量及び約1850ミリアンペア時/ミリリットル(mAh/mL)の容量密度を有し得る。0.85Vと仮定すると、これらのアンペア時ベースの値は、それぞれ、約1023ワット時/キログラム(Wh/kg)の比エネルギー及び約1659ワット時/リットル(Wh/L)のエネルギー密度に換算される。負極がセル動作温度で液体として存在するために、Caが他の材料と合金化されていてもよい。これにより、上記で報告されたエネルギー及び容量の値が変更され得る。
【0063】
第2の電極又はカソードは、約50ミリアンペア時/グラム(mAh/g)以上、約100mAh/g以上、約150mAh/g以上、約200mAh/g以上、約250mAh/g以上、約300mAh/g以上、約400mAh/g以上、約500mAh/g以上、約600mAh/g以上、約800mAh/g以上、約1000mAh/g以上、又はそれ以上の充電状態比容量を有し得る。一例では、カソードは、約200mAh/g以上の充電状態比容量を有する。一例では、カソードは、約300mAh/g以上の充電状態比容量を有する。一例では、カソードは、約500mAh/g以上の充電状態比容量を有する。カソードの充電状態比容量は、電気化学セルの特徴及び動作条件によって変更又は修正され得る。カソードの充電状態比容量を変更又は修正し得るパラメータには、正極の粒径、正極の厚さ、電解質、正極集電体との電子接続、充電率、又はそれらの任意の組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。一例では、カソードの充電状態比容量は、約300mAh/g以上であり得、正極は、溶融電解質によって囲まれた1ミリメートル以下の特性寸法を有する粒子(例えば、アンチモン粒子)を含み得る。別の例では、カソードの充電状態比容量は、約300mAh/g以上であり得、正極は、溶融電解質によって囲まれた100マイクロメートル以下の特性寸法を有する粒子(例えば、アンチモン粒子)を含み得る。別の例では、カソードの充電状態比容量は、約300mAh/g以上であり得、正極は、ネットワーク構造を介して集電体と電子的に連通し得る(例えば、粒子はネットワーク構造を形成し得る)。別の例では、カソードの充電状態比容量は、約300mAh/g以上であり得、正極は、約2.5センチメートル以下の厚さを有し得る。別の例では、カソードの充電状態比容量は、約300mAh/g以上であり得、電気化学セルは、C/4以下の(例えば、C/4より遅い)充電率で動作し得る。セルをC/4より高い(例えば、C/4より速い)レートで動作させると、動作時の充電状態比容量が減少する可能性がある。
【0064】
カソードは、約2000ワット時/リットル(Wh/L)以上、約2250Wh/L以上、2500Wh/L以上、約2750Wh/L以上、約3000Wh/L以上、約3250Wh/L以上、約3500Wh/L以上、約3750Wh/L以上、約4000Wh/L以上、又はそれ以上のエネルギー密度を有し得る。一例では、カソードは、約2750Wh/L以上のエネルギー密度を有する。別の例では、カソードは、約3000Wh/L以上のエネルギー密度を有する。
【0065】
液体金属アノード合金の使用により、他のセル化学物質に存在する亀裂形成や電気的切断などの特定の電極故障モードが回避され得る。さらに、固体金属負極(例えば、リチウム金属や亜鉛系の化学物質)を含む化学物質は、充電中に負金属がめっきされるとデンドライトを形成し、セルの短絡及び熱暴走の可能性をもたらし得る。対照的に、液体金属は、高い表面張力と迅速な輸送特性によりデンドライト形成を抑制する。液体アノードは、ステンレス鋼や他の鉄合金などの他の金属を濡らすアノードの能力を利用することによって定位置に保持され得る。負極集電体として多孔質金属構造を使用することにより、液体金属アノードは、水がスポンジに吸い取られるのと同様に、負極集電体に吸い取られ得る。
【0066】
電解質は、工業グレードのCaClその他の塩を含み得る。セルが高温で動作するとき、電解質は非水性(すなわち、水なし)の溶融塩混合物であり得るので、水性セル化学物質で経験されているような水素ガスの発生、放出、又は発火のリスクはない。過充電された場合、セル内で副反応が発生する可能性がある(例えば、Sb3+としての塩へのSbの溶解)。しかしながら、これらの副反応は、電解質の分解又はガス種の生成をもたらさない可能性がある。塩は不燃性であり得るので、発火又は着火のリスクがない可能性がある。溶融塩は非水性であるが、視覚的に水と同様に見える透明で低粘度の液体であり得る。
【0067】
正極は、溶融塩によって囲まれ、透過性金属セパレータによって定位置に保持された固体粒子(例えば、アンチモン粒子)を利用し得る。小さな(1cm未満)固体粒子の使用により、液体正極の層を使用する他のセル設計と比較して、より短い拡散経路長並びに正極材料の利率及び/又はアクセス可能性の対応する増加が提供され得る。例えば、650℃で動作するカルシウム-マグネシウム負極及び液体アンチモン正極セルを使用する電池(Ca-Mg||Sbliq)は、Sb中約23モルパーセント(mol%)のCaの理論容量を有し得、実験的にその理論容量の約90%を達成し得、よってSb原子当たり約0.54個の電子を表す。対照的に、Ca||Sbセル化学物質において小さな固体Sb粒子を使用することにより、各Sb粒子は3つの電子を受け取ることができ、Sbの約90%を超える利用率が実証されており、よって、液体Sb金属カソードを使用する場合と比較してSbカソード材料の容量が5倍増加する。
【0068】
カソード材料は、溶融電解質と結合又は混合され得る。カソード材料と塩の混合物は、バルク(電極間)塩領域とカソード室との間のイオン輸送を可能にし得、正極集電体としても機能し得る透過性金属セパレータを使用してカソード室内に保持され得る。固体粒子(例えば、アンチモン粒子)は、導電性であり得、充電反応及び放電反応に関与する能力を高め得る。混合物の導電性を高めるために添加剤を使用しなくても、セルは通常、各Sb原子が3つの電子を受け取ることに基づいて、装填されたSb容量の90%にアクセスし得る。
【0069】
アンチモンカソードは、高い体積エネルギー密度を有し得る。例えば、アンチモンは6.7グラム/ミリリットル(g/mL)の密度を有する。各Sb原子が3つの電子を受け取る場合、Sbの理論比容量は660mAh/gであり得、Sbの容量密度は4,400mAh/mLであり得る。電極材料の90%の利用率では、容量値は600mAh/g~4,000mAh/mLの範囲であり得る。0.85Vの公称放電電圧では、これらの値は、約505Wh/kgの比エネルギー及び約3,385Wh/Lのエネルギー密度に換算され得る。表1に、これらのカソード性能指標の例示的なリチウムイオン電池化学物質との比較を示す。
【0070】
【表1】
【0071】
よって、充電状態Sbカソードは、例示的なリチウムイオン電池カソードの充電状態に対して、比容量及び容量密度についてそれぞれ234%及び444%の利点を有し得る。カソードの高アンペア時(Ah)容量は、Ca||Sbなどの金属/半金属対の相対的に低いセル電圧によって部分的に相殺されて、例示的なリチウムイオン電池カソードの充電状態と比較して23%低い比エネルギー及び25%高いエネルギー密度をもたらし得る。Sbカソードは、(Li1-0.61Co1/3Ni1/3Mn1/3の1モル当たり1個未満の電子ではなく)Sb原子当たり3個の電子を受け取る能力に基づいて、小さい体積内で高いAh容量を貯蔵する能力を有し得る。
【0072】
正極は、セルハウジング(例えば、容器)と反応し得る。例えば、正極(例えば、第2の電極)はアンチモンを含んでいてもよく、アンチモンはセルハウジングの鉄、鋼、又はステンレス鋼と反応し得る。第2の電極の材料(例えば、アンチモン)とセルハウジングの成分との間の反応は、動作時に起こり得、鉄-アンチモン合金、鋼-アンチモン合金、又はステンレス鋼-アンチモン合金を形成し得る。反応は自然発生的であってもよく、又は複数の充電及び放電サイクルを行って、鉄-アンチモン合金、鋼-アンチモン合金、若しくはステンレス鋼-アンチモン合金を形成してもよい。
【0073】
一例では、電気化学エネルギー貯蔵装置は、アンチモンを含む正極を含み得る。正極は、電解質からのカチオン(例えば、カルシウムイオン又はリチウムイオン)と反応して、1又は複数の過渡的生成物(例えば、CaSb及び/又はLiCaSb)を形成し得る。追加的又は代替的に、正極は、セルハウジング(例えば、鋼成分やステンレス鋼成分)と反応して、アンチモンと鉄(Fe)、鋼又はステンレス鋼(SS)とを含む合金を生成してもよい。正極(例えば、アンチモン)とセルハウジングとの間の反応は、満充電状態でFe-Sb合金、鋼-Sb合金、又はステンレス鋼-Sb合金を形成し得る。放電状態では、正極がFe、鋼、又はステンレス鋼とLiCaSbとに相分離し得る。
【0074】
図5に、アンチモンとステンレス鋼容器との間の例示的な化学反応を示す。図5に示されるように、SS-Sb合金化粒子は、セルハウジングの表面、他のハウジング構成要素(例えば、多孔質金属セパレータ)、正極粒子、又はそれらの任意の組み合わせを形成し得る。アンチモン合金粒子は、表面に残存し得るか、又は砕けて表面から脱落し得る。セルハウジングからの鉄-合金、鋼-合金、又はステンレス鋼-合金の形成は、サイクル中の電気化学的電圧プロファイルのシフトと相関し得る。図6に示されるように、充電容量の関数としての電圧は、充電/放電サイクル数が増加するにつれて減少し得る。鋼と反応した正極粒子の一例が図7に示されており、約5000時間の動作後の正極種の例示的な走査型電子顕微鏡画像を示している。画像の白色部分は、塩電解質中に分散した鋼-アンチモン合金粒子に対応し得る。
【0075】
正(例えば、アンチモン)極とセルハウジング構成成分(例えば、鋼成分やステンレス鋼成分)との間の反応は、電気化学セルの電気化学的、構造的安定性を低下させる可能性がある。例えば、長期間の運転中に、鋼又はステンレス鋼とアンチモンとの合金化反応は、電気化学セルの構成成分から鋼又はステンレス鋼を消費し得る。正極を定位置に保持する多孔質金属セパレータを備えた電気化学セルでは、正極(例えば、アンチモン)は多孔質金属セパレータと反応し得る。鋼又はステンレス鋼アンチモン合金化反応は、多孔質金属セパレータなどのセルの構成要素を劣化させる可能性がある。多孔質金属セパレータの劣化は、正極の封じ込めの喪失につながる可能性があり、セル容量の見かけの喪失(例えば、図6を参照)及びセル内の内部短絡の形成をもたらす可能性がある。
【0076】
正(例えば、アンチモン)極とセルハウジング構成成分(例えば、鋼成分やステンレス鋼成分)との間の反応は、鉄(Fe)-アンチモン(Sb)合金、鋼-Sb合金、又はステンレス鋼(SS)-Sb合金などの予合金化された又は予混合された正極組成物を使用することによって防止又は少なくとも部分的に防止され得る。図8に示されるように、正極材料(例えば、アンチモン)を鉄、鋼、又はステンレス鋼と予合金化又は予混合することにより、正極材料を鉄、鋼、又はステンレス鋼と予合金化又は予混合しない電気化学セルと比較して、鋼成分又はステンレス鋼成分の劣化が遅くなるか又は防止され、電気化学セルの安定性を経時的に高められ得る。加えて、鋼又はステンレス鋼の添加で構築された電気化学セルは、経時的にセル電圧のシフトが少なくなる可能性があり、これにより、セルの健全状態及び充電の状態を予測するためのより単純な制御アルゴリズムが可能になり得る。
【0077】
エネルギー貯蔵装置は、蓋体を有する容器又はハウジングを含み得る。蓋体は、電気化学セルをハウジング内又は容器内に密閉するシールを含み得る。シールは、機械的にロバストであってもよく、化学的に安定な材料を含んでいてもよい。メカニカルシールは、何百回もの熱サイクルに耐え抜く(例えば、気密性を維持する)ように構成され得る。ハウジングにおいて、セルの負及び正の部分は、電極の短絡を回避するために(例えば、電解質によって)電気的に分離され得る。電気化学エネルギー貯蔵装置は、正に分極されたステンレス鋼ハウジング及び蓋体と、蓋体の穴を貫通する負に分極された金属電流リード(NCL)ロッド(例えば、導体)と、シール構成要素とを含み得る(例えば、図4)。シール構成要素は、NCLロッドをセル蓋に接合し得る。導体、すなわち負電流リードは、セルが充電又は放電しているとき、最大で約50アンペア(A)、約75A、約100A、約125A、約150A、約200A、約250A、約300A、約400A、約500A、又はそれ以上の電流を流し得る。一例では、導体は、セルが充電又は放電しているとき、最大で200アンペア(A)の電流を流し得る。導体、すなわち負電流リードは、セルが充電又は放電しているとき、約50アンペア(A)以上、約75A以上、約100A以上、約125A以上、約150A以上、約200A以上、約250A以上、約300A以上、約400A以上、約500A以上、又はそれ以上の電流得る。一例では、導体は、セルが充電又は放電しているとき、約100アンペア(A)以上の電流を流し得る。
【0078】
シールは、電気絶縁性であってもよく、又は少なくとも部分的に電気絶縁性であってもよい。シールは、気密であり、エネルギー貯蔵装置のハウジングを密閉し得る。シールは、空気がセルに入ること(これはセル性能の低下をもたらし得る)を防止し得る。セルの高い動作温度、(外側の)空気と(内側の)溶融塩及び反応性金属蒸気とへの暴露により、シール材料及び設計の選択肢の数が制限される場合がある。
【0079】
シール材料は、カルシウム金属及び溶融塩との反応性に対する原料の耐性に基づいて選択され得る。材料の選択は、熱力学的分析及び腐食試験によっても情報を得られ得る。一例では、シールは、窒化アルミニウム(AlN)セラミックを含むセラミックと金属とのろう付けアセンブリを備え得る。AlNセラミックは、セルの反応性材料(例えば、カルシウム金属や溶融電解質)との化学反応に耐えることができる。AlNセラミックは、セラミックと金属とのろう付けを介して薄い金属スリーブに結合され得る。薄い金属スリーブは、溶接部又はろう付け接合部を介して電気化学セルのハウジング又は導体に結合され得る。シールは、AlNセラミックと、ろう付けと、ステンレス鋼スリーブとの固有の組み合わせを含んでいてもよく、これらは各々著しく異なる熱膨張率を有する(すなわち、これらは加熱及び冷却されたときに異なる量膨張及び収縮する)。
【0080】
シールは、大量生産用に設計されてもよく、2つの薄い金属スリーブを挟む3つの平坦なセラミックワッシャを含んでいてもよい。一方の金属スリーブは負電流リードロッドに接続し、他方の金属スリーブはセル蓋に接続し得る。薄い金属スリーブは、その上面及び底面で2つのセラミックワッシャにろう付けされ得る。図9A及び図9Bに、例示的な電気化学セルを示す。図9Aは、電気化学セルの例示的なハウジングを示している。図9Bは、電気化学セル用の例示的なシールを示している。シールは、何百回もの急速な熱サイクル(例えば、室温からセル動作温度への加熱)に耐え抜く(例えば、ハウジングの気密シールを維持する)ように構成され得る。例えば、シールは、10回以上、15回以上、20回以上、25回以上、30回以上、40回以上、60回以上、80回以上、100回以上、150回以上、200回以上、300回以上、400回以上、600回以上、800回以上、1000回以上、又はそれ以上の熱サイクルに耐え抜くように構成され得るか、又は耐え抜き得る。一例では、シールは、15回を超える熱サイクルに耐え抜くように構成されて得るか、又は耐え抜き得る。
【0081】
シールは、機械的にロバストであるように構成され得るか、又は機械的にロバストであり得る。シールは、圧縮力(例えば、下向きの力)又は引張力に耐えるように構成され得る。シールは、約100ニュートン(N)以上、約200N以上、約300N以上、約400N以上、約500N以上、約600N以上、約800N以上、約1000N以上、約1200N以上、約1400N以上、約1600N以上、約1800N以上、約2000N以上、又はそれ以上の力に耐えるように構成され得る。一例では、シールは、約1000N以上の力(例えば、圧縮力や引張力)に耐えるように構成される。一例では、は、約1400N以上の力(例えば、圧縮力や引張力)に耐えるように構成される。
【0082】
セルは、水平構成又は垂直構成で構成又は配置され得る。図10Aに、水平構成で配置された電気化学セルの一例を示す。水平構成は、互いに重なりあって配置された3つの層(例えば、電解質1003によって分離された負極1001及び正極1002)を有し得る。3層設計の各層は、厚さ約1センチメートル(cm)であり得る。セルハウジング1004は、セルの高さよりも大きい幅及び深さを有し得る。セルハウジング1004は、電極及び電解質の上方に空きヘッドスペース1005を含み得る。セルハウジング1004は、シール1007によってハウジング1004にシールされた負電流リード1006を有する開口部を含み得る。一例では、2つの電極及び電解質は、セルの動作温度では液体であり、水平構成における密度差及び不混和性に基づいて互いに重なり合って浮遊する。水平構成は、例えば、約80%のDC-DC効率を有し得、約4時間(hr)~12時間以内に充電/放電し得る。水平構成を使用したセル容量は、セルの横方向寸法を増加させることによって増加し得る。横方向寸法の増加は、パッキング効率を低下させ、セル間相互接続のサイズ及び重量を増加させる可能性がある。
【0083】
セルは、垂直構成で構成又は配置されてもよい。図10Bに、垂直構成で配置された例示的な電気化学セルを示す。垂直構成は、各セル内に配置され、電解質1003によって分離された負極1001及び正極1002の複数の層を備えることができ、それによって高い矩形又は柱状のセル設計が可能になる。セルハウジング1004は、セルハウジング1004内のシール1007を貫通して延在する導体(例えば、負電流リード)1006を含み得る。導体1006は、負端子として機能し得、負極集電体と接触し得る。導体1006は、負極集電体を備え得る。導体は、容器のキャビティ内で第1の電極(例えば、負極)1001を懸下するように構成され得るか、又は懸架し得る。高い矩形又は柱状のセル設計は、水平セル設計と比較して、より短くより軽いセル間相互接続並びにトレイ及びラック内のより高いパッキング効率を可能にし得る。垂直構成は、水平構成に比較して、傾斜及び振動の影響を受けにくい場合がある。各セルは、約100アンペア時(Ah)以上、約200Ah以上、約300Ah以上、約400Ah以上、約600Ah以上、約800Ah以上、約1000Ah以上、約1200Ah以上、約1400Ah以上、約1600Ah以上、約1800Ah以上、約2000Ah以上、又はそれ以上の容量を有し得る。複数の電気化学セルが、ラックシステムに挿入され得るトレイに詰め込まれ得る。セルに熱暴走が発生しない可能性があるので、システムレベルのエネルギー密度を増加させるために複数のセルがシステム内で互いに密に詰め込まれ得る。垂直構成はまた、システムのバランスワイヤー接続及び/又は感知ワイヤー接続の数を減らし、全体的な回路を縮小し得る、水平構成よりも大きなセルを可能にすることができ、これによりシステムの複雑さが低減され得る。
【0084】
Ca||Sbセル化学物質は、数十年の動作に対して突出する、完全な放電深度サイクル下での低容量低下を含むロバストなサイクル性能を示している。例示的なセルのサイクル性能の一例が図11に示されている。例示的なセルは、C/3のサイクル速度及び90%のカソード利用率で、500回の放電深度サイクルにわたって0.5%未満の容量損失を示している。電気化学エネルギー貯蔵装置は、20年間の毎日のサイクルにわたって、約10%以下、約7.5%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%、又はそれ以下の容量低下(例えば、容量の減少)で構成され得る。電気化学セルは、セル容量の減少なしで熱サイクルを受けるように構成され得る。例えば、電気化学セルは、セルサイクル性能に影響を与えることなく(例えば、0.5%未満の容量低下)、少なくとも5回、10回、20回、30回、40回、50回、60回、80回、100回、120回、150回、200回、又はそれ以上で熱サイクルされてもよい。サイクル性能を修正又は変更し得るパラメータには、気密シール、多孔質金属セパレータ(例えば、セパレータがセルの寿命にわたって無傷のままである)、又はそれらの組み合わせのロバスト性及び寿命が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0085】
エネルギー貯蔵装置を製造するための方法
別の態様では、本開示は、エネルギー貯蔵装置を形成するための方法を提供する。エネルギー貯蔵装置の形成方法は、1又は複数のベイと、第1の材料を含む第1の電極と、第2の材料を含む第2の電極と、電解質とを備えるセルハウジングを設けることと、第1の材料及び第2の材料をセルハウジングの1又は複数のベイに装填することと、電解質をセルハウジング内に装填することと、を含み得る。第2の材料は、アンチモン(Sb)と、鉄(Fe)、鋼、ステンレス鋼(SS)、又はそれらの組み合わせとを含み得る。電解質は、溶融塩であってもよい。
【0086】
1又は複数のベイは、セルハウジング内に配置された1又は複数の多孔質セパレータによって形成され得る。1又は複数の多孔質セパレータは、鋼又はステンレス鋼を含んでいてもよく、セルハウジングの内面に溶接、ろう付け、又は他の方法で接合され得る。セル組立ては、第1の電極、第2の電極、及び電解質を形成する材料などの前駆体材料を設けることを含み得る。前駆体材料は、主として単一成分(例えば、カルシウム、アンチモン、鉄、鋼、ステンレス鋼など)から構成される材料であり得る。代替的に、又はこれに加えて、前駆体材料は、複数の成分の合金(例えば、鉄-アンチモン合金やカルシウム-アンチモン合金)であってもよい。
【0087】
第1の材料及び第2の材料は、別個の顆粒(例えば、Ca顆粒及びSb顆粒)としてセル内に装填されてもよく、セルは、顆粒が電解質内で浸漬されるように電解質で満たされ得る。一例では、鉄、鋼、又はステンレス鋼の顆粒はまた、第1の材料及び第2の材料の顆粒と共に添加され得る。代替的に、又はこれに加えて、放電状態の正極(例えば、カソード)を形成するために第1の材料及び第2の材料を一緒に予備反応させてもよい。一例では、放電状態の正極(例えば、カソード)を形成するために、第1の材料及び第2の材料を鉄、鋼、又はステンレス鋼と予備反応させ得る。
【0088】
一例では、電気化学セルは、セルの1又は複数のベイに、第1の材料(例えば、カルシウム(Ca))及び第2の材料(例えば、SbとFe、鋼、又はSS)の別個の顆粒又は粒子を装填することによって形成される。第2の材料は、アンチモンと鉄、鋼、又はステンレス鋼の別個の顆粒を含み得る。代替的に、又はこれに加えて、第2の材料は、アンチモンと鉄、鋼、又はステンレス鋼との予合金化顆粒を含んでいてもよい。セルは、顆粒又は粒子が溶融塩電解質内で浸漬されるように、溶融塩電解質で満たされ得る。
【0089】
別の例では、合金を形成するために第1の材料(例えば、Ca)及び第2の材料(例えば、SbとFe、鋼、又はSS)を予備反応させ得る。合金は、合金の粉末又は顆粒を生成するために粉砕され得る。粉末又は顆粒は、1又は複数のベイに装填され得る。セルは、顆粒又は粒子が溶融塩電解質内で浸漬されるように、溶融塩電解質で満たされ得る。
【0090】
別の例では、第1の材料、第2の材料、及び塩の混合物(例えば、Ca-Sb-Li)並びに第1の材料、第2の材料、塩、及び塩と混合された鉄、鋼、又はステンレス鋼(例えば、Ca-Sb-Li-Fe/SS)合金の混合物を形成するために、第1の材料(例えば、Ca)、第2の材料(例えば、SbとFe、鋼、又はSS)、及び電解質(例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化リチウムなどを含む溶融塩)を予備反応させ得る。混合物は粉末又は顆粒を生成するために処理され得、粉末又は顆粒をセルハウジングの1又は複数のベイに添加され得る。代替的に、又はこれに加えて、予備反応混合物は、溶融塩を有するスラリーを生成してもよく、スラリーは1又は複数のベイに添加され得る。セルは、顆粒又は粒子が溶融塩電解質内で浸漬されるように、溶融塩電解質で満たされ得る。
【0091】
溶融塩電解質は、正圧流を介して、又は中空管を介して溶融塩浴に接続されたセル上に真空を引くことによってセルに送達され得る。電気化学セルの反応性材料の上方の空きヘッドスペースが約2.5センチメートル(cm)以下になるように、ある体積の溶融電解質がセルハウジングに添加され得る。空きヘッドスペースは、約2.5cm以下、約2cm以下、約1.5cm以下、約1cm以下、約0.5cm以下、約0.1cm以下、又はそれ以下であってもよい。一例では、空きヘッドスペースは約1cm以下である。別の例では、空きヘッドスペースは約0.5cm以下である。別の例では、ヘッドスペースは、約0.1cm~1cmであり得る。
【0092】
セルハウジングは開口部を含んでいてもよく、導体が開口部を通してセルハウジング内の電解質に挿入され得る。セルハウジングは、導体の周りでシールされ得る。セルハウジング及び導体は、2013年10月15日に出願された国際出願PCT/US2013/065086号、2014年10月16日に出願されたPCT出願番号PCT/US2014/060979号、2016年3月4日に出願された国際出願PCT/US2016/021048号、及び2017年9月7日に出願された国際出願PCT/US2017/050544号に記載されているシールのいずれかによってシールされてもよく、これらの各々は参照により本明細書に全体として組み込まれる。
【0093】
エネルギー貯蔵システム
エネルギー貯蔵システムは、直列構成、並列構成、又は直列構成と並列構成の組み合わせで接続された数十個から数百個のセルを含むように設計され得る。図12に、断熱容器内に複数のセルを備える例示的なシステムを示す。複数のセル1201はトレイ1202上に組み立てられ、配置され得る。トレイは、1個以上、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、20個以上、40個以上、60個以上、80個以上、100個以上、又はそれ以上のセルを有していてもよい。トレイは、セルのタワー1203を形成するためにラックの内側に積み重ねられてもよい。タワーは、1個以上、2個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、20個以上、40個以上、又はそれ以上のトレイを有していてもよい。セルのタワー1203は、断熱容器1204内に配置され得る。システムのエネルギー密度は、構成要素(例えば、セル壁、金属セパレータなど)の厚さを減少させること、電極間間隔を減少させること、及び/又はセル内の空きヘッドスペースの高さを最小にすることによって増加し得る。
【0094】
エネルギー貯蔵システムは、10フィートの輸送容器内に約10キロワット時(kWh)以上、約20kWh以上、約30kWh以上、約40kWh以上、約50kWh以上、約75kWh以上、約100kWh以上、約150kWh以上、約200kWh以上、約300kWh以上、約400kWh以上、約500kWh以上、約600kWh以上、約800kWh以上、約1000kWh以上、約1200kWh以上、約1400kWh以上、約1600kWh以上、約1800kWh以上、約2000kWh以上、又はそれ以上の電力を貯蔵し得る。一例では、エネルギー貯蔵システムは、10フィートの輸送容器内に約400kWh以上の電力を貯蔵し得る。別の例では、エネルギー貯蔵システムは、10フィートの輸送容器内に約1000kWh以上の電力を貯蔵し得る。
【0095】
システムは低温(例えば、周囲温度で)で出荷されてもよく、設置されると、セルをその動作温度まで最初に加熱するためのエネルギーが供給され得る。周囲温度から動作温度までセルを加熱するには、セルによって貯蔵されるエネルギー量の3~4倍を使用し得る。システムが加熱されて動作すると、充電及び放電プロセスが熱を発生させ得、システムの温度を維持する。例えば、80%のDC-DC効率をもたらすレートで動作するセルの場合、セルのエネルギー容量の約20%が、各充電/放電サイクル中に熱的に密閉された室内で熱として放出され得る。一例では、80%のDC-DC効率で動作する1メガワット時(MWh)の容器は、サイクル中に200kWhのヘッドを生成し得る。
【0096】
複数のセルを収容する容器は断熱され得る。断熱材は、1~2日に1回サイクルされるとシステムが自己加熱される充電/放電サイクルから十分な熱が保持されるように構成され得る。システムは、システムが4時間毎、8時間毎、12時間毎、16時間毎、20時間毎、1日毎、1.5日間毎、2日間毎、3日間毎、4日間毎、又はそれ以上毎に少なくとも1回サイクルされるときに自己加熱されるように構成され得る。システムはまた、システム内の空気を導いて過剰な熱を除去するように構成された1又は複数の内部流路を含んでいてもよい。空気は、(例えば、自然対流を介して)受動的に流路を通って流れてもよく、又は能動的に流路を通って流れてもよい(例えば、空気は、ポンプ又は他の流れ生成装置によって導かれてもよい)。
【0097】
記載の電気化学セル及びシステムは、貯蔵されたエネルギーを受け入れたり戻したりするためにポンプ又は機械システムを使用しなくてもよいので、システムは充電と放電を即座に又はほぼ即座に代替し、それによって送電網事業者及び/又は産業顧客からの要求に迅速に応答し得る。システムの応答時間は、パワーエレクトロニクス及び制御システムの品質によって制限される場合もあり、電気化学セルによって制限されない場合もある。例えば、電気化学セルは、100ミリ秒(ms)以下、80ms以下、60ms以下、40ms以下、30ms以下、20ms以下、10ms以下、8ms以下、6ms以下、4ms以下、3ms以下、2ms以下、1ms以下、又はそれ以下で満充電から満放電に切り替えることができる。一例では、電気化学セルは、8ms以下で満充電から満放電に切り替えることができる。
【0098】
エネルギー貯蔵システムの高い動作温度にもかかわらず、Ca||Sbセル化学物質は、他のセル化学物質と比較して安全上の利点を有し得る。例えば、リチウムイオン電池の過充電は壊滅的であり、電解質の分解及びガス放出、圧力上昇、熱暴走事象、並びに/又は火災をもたらす可能性がある。よって、リチウムイオン電池は、そのような事例の発生を防止するために高感度制御システムを使用し得る。これに対して、Ca||Sbセルを200%以上過充電しても安全上のリスクをもたらさない可能性がある。例えば、熱及び空気にさらされると発火する可能性がある有機電解質を使用する他の電池とは異なり、Ca||Sb中の電解質は不燃性であり得る。加えて、Ca||Sb中の電解質は、過充電が電解質分解又はガス形成をもたらさないように広い電位窓を有することができ、それによって過充電によるセルの過圧が回避される。さらに、セルの過充電及び/又は内部短絡は、熱暴走を引き起こさない可能性がある。
【0099】
電気化学セル構成要素は、高い熱質量を有し得る。高い熱質量が1ボルト程度のセル電圧と組み合わされると、他のセル化学物質に比較して、セルの単位質量当たりより少ないエネルギーが貯蔵されることが可能になり得る。そのため、セル内に貯蔵されたエネルギーは、セル温度をハウジング(例えば、ステンレス鋼容器)の融点を超えるまで上昇させるか又はセル内の成分を沸騰させるには不十分である可能性があり、よって電気化学セルの安全性が高まる。加えて、Ca||Sbセルは、セル化学物質の低毒性に基づいて、無害の廃棄物として処理及び処分され得る。Ca||Sbの安全特性は、システム設計要素を単純化し得る。熱暴走を回避することにより、エネルギー貯蔵システムは、パックが互いに近接して配置された大容量セルを使用して構築され、動作し得る。システムはまた、冷暖房空調システム(HVAC)及び消火システムの使用も回避し得る。また、セル容量の増加により、電池管理システムは、低容量のセルを有するシステムよりも、監視及びバランスをとるべきセルが少なくなり得る。
【0100】
コンピュータシステム
本開示は、1又は複数の電気化学エネルギー貯蔵セルを有するエネルギー貯蔵装置の動作を制御するなど、本開示の方法を実装するようにプログラムされたコンピュータシステム(例えば、制御システム)を提供する。エネルギー貯蔵装置は、装置の充電及び/又は放電を調節するコンピュータシステムに結合され得る。コンピュータシステムは、1又は複数のコンピュータプロセッサと、コンピュータプロセッサに結合された記憶場所とを含み得る。記憶場所は、コンピュータプロセッサによって実行されると、本明細書の他の箇所に記載されている方法のいずれかを実施する機械実行可能コードを備え得る。
【0101】
図13に、本開示のエネルギー貯蔵システムの1又は複数のプロセスパラメータを制御又は調節するようにプログラム又は構成されたシステム1301を示す。システム1301は、例えば、エネルギー貯蔵装置、及び/又は他の電池管理システムの温度、充電及び/又は放電を調節することなど、本開示の様々な方法の様々な態様を調節することができる。コンピュータシステム1301は、ユーザの電子装置、又は電子装置に対して遠隔に位置するコンピュータシステムとすることができる。電子装置は、モバイル電子装置とすることができる。
【0102】
コンピュータシステム1301は、シングルコア若しくはマルチコアプロセッサ、又は並列処理のための複数のプロセッサとすることができる中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータプロセッサ」ともいう)1305を含む。コンピュータシステム1301はまた、メモリ又は記憶場所1310(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ)と、電子記憶装置1315(例えば、ハードディスク)と、1又は複数の他のシステムと通信するための通信インターフェース1320(例えば、ネットワークアダプタ)と、キャッシュ、他のメモリ、データストレージ、及び/又は電子ディスプレイアダプタなどの周辺装置1325とを含む。メモリ1310、記憶装置1315、インターフェース1320及び周辺装置1325は、マザーボードなどの通信バス(実線)を介してCPU1305と通信する。記憶装置1315は、データを格納するためのデータ記憶装置(又はデータリポジトリ)とすることができる。コンピュータシステム1301は、通信インターフェース1320の助けを借りてコンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1330に動作可能に結合することができる。ネットワーク1330は、インターネット、イントラネット及び/若しくはエクストラネット、又はインターネットと通信するイントラネット及び/若しくはエクストラネットとすることができる。ネットワーク1330は、場合によっては、電気通信及び/又はデータネットワークである。ネットワーク1330は、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる1又は複数のコンピュータサーバを含むことができる。ネットワーク1330は、場合によってはコンピュータシステム1301の助けを借りて、コンピュータシステム1301に結合された装置がクライアント又はサーバとして動作することを可能にし得るピアツーピアネットワークを実装することができる。
【0103】
CPU1305は、プログラム又はソフトウェアで具現化することができる一連の機械可読命令を実行することができる。命令は、メモリ1310などの記憶場所に格納され得る。命令はCPU1305に向けることができ、命令は続いて、本開示の方法を実施するようにCPU1305をプログラム又は構成することができる。CPU1305によって実行される動作の例には、フェッチ、デコード、実行、及び書き込みが含まれ得る。
【0104】
CPU1305は、集積回路などの回路の一部とすることができる。システム1301の1又は複数の他の構成要素を回路に含めることができる。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0105】
記憶装置1315は、ドライバ、ライブラリ及び保存されたプログラムなどのファイルを格納することができる。記憶装置1315は、ユーザデータ、例えば、ユーザ設定やユーザプログラムを格納することができる。コンピュータシステム1301は、場合によっては、イントラネット又はインターネットを介してコンピュータシステム1301と通信するリモートサーバ上に位置するなど、コンピュータシステム1301の外部にある1又は複数の追加のデータ記憶装置を含むこともできる。
【0106】
コンピュータシステム1301は、ネットワーク1330を介して1又は複数のリモートコンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム1301は、ユーザのリモートコンピュータシステムと通信することができる。リモートコンピュータシステムの例には、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレート若しくはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話機、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android対応装置、Blackberry(登録商標))、又は携帯情報端末が含まれる。ユーザは、ネットワーク1330を介してコンピュータシステム1301にアクセスすることができる。
【0107】
本明細書に記載される方法は、例えば、メモリ1310上や電子記憶装置1315上などのコンピュータシステム1301の電子記憶場所に格納された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードによって実装することができる。機械実行可能コード又は機械可読コードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用時には、コードをプロセッサ1305によって実行することができる。場合によっては、コードを記憶装置1315から取り出し、プロセッサ1305がすぐにアクセスできるようにメモリ1310に格納することもできる。状況によっては、電子記憶装置1315を除外することもでき、機械実行可能命令はメモリ1310に格納される。
【0108】
コードは、コードを実行するように適合されたプロセッサを有する機械で使用するために事前コンパイル及び構成することができ、又は実行中にコンパイルすることができる。コードは、コードが事前コンパイルされて又はコンパイルされたままで実行することを可能にするように選択できるプログラミング言語で供給することができる。
【0109】
コンピュータシステム1301など、本明細書で提供されるシステム及び方法の態様は、プログラミングにおいて具現化することができる。本技術の様々な態様は、典型的には機械(又はプロセッサ)実行可能コード及び/又はある種の機械可読媒体上で搬送されるか又は具体化される関連データの形態の「製品」又は「製造品」と考えられてもよい。機械実行可能コードは、メモリ(例えば、読み出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)やハードディスクなどの電子記憶装置に格納することができる。「記憶」タイプの媒体には、ソフトウェアプログラミングのためにいつでも非一時的記憶を提供し得る、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどといった、コンピュータ、プロセッサなどの有形のメモリ、又はそれらの関連モジュールのいずれか又はすべてを含めることができる。ソフトウェアの全部又は一部は、インターネット又は様々な他の電気通信ネットワークを介して通信されることもある。そのような通信は、例えば、あるコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータ又はプロセッサへの、例えば管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのロードを可能にし得る。よって、ソフトウェア要素を運ぶことができる別のタイプの媒体は、ローカルデバイス間の物理インターフェースを横断して、有線及び光の地上通信線ネットワークを介して、及び様々なエアリンクを介して使用されるような、光波、電波、及び電磁波を含む。有線リンク又は無線リンク、光リンクなどの、そのような波を搬送する物理的要素もまた、ソフトウェアを運ぶ媒体とみなされ得る。本明細書で使用される場合、非一時的で有形の「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータ又は機械の「可読媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0110】
したがって、コンピュータ実行可能コードなどの機械可読媒体は、有形の記憶媒体、搬送波媒体、又は物理伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態をとり得る。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示されるデータベースなどを実装するために使用され得るような、任意の(1又は複数の)コンピュータなどにおける記憶装置のいずれかなどの光学ディスク又は磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリなどのダイナミックメモリを含む。有形の伝送媒体は、同軸ケーブル、すなわち、コンピュータシステム内のバスを構成するワイヤーを含む、銅ワイヤー及び光ファイバを含む。搬送波伝送媒体は、電気信号若しくは電磁信号、又は無線周波数(RF)及び赤外線(IR)データ通信時に生成されるような音波若しくは光波の形態をとり得る。したがって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態には、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD若しくはDVD-ROM、任意の他の光学媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、任意の他のメモリチップ若しくはカートリッジ、データ若しくは命令を搬送する搬送波、そのような搬送波を搬送するケーブル若しくはリンク、又はコンピュータがプログラミングコード及び/若しくはデータを読み出し得る任意の他の媒体が含まれる。これらの形態のコンピュータ可読媒体の多くは、実行のために1又は複数の命令の1又は複数のシーケンスをプロセッサに搬送することに関与し得る。
【0111】
コンピュータシステム1301は、例えば、エネルギー貯蔵装置の状況又はエネルギー貯蔵装置の制御を提供するためのユーザインターフェース(UI)1340を備える電子ディスプレイ1335を含むか、又は電子ディスプレイ1335と通信することができる。UIの例には、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)及びウェブベースのユーザインターフェースが含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
本開示の方法及びシステムは、1又は複数のアルゴリズムによって実装することができる。アルゴリズムは、中央処理装置905による実行時にソフトウェアによって実施することができる。アルゴリズムは、例えば、電池管理システムを制御し、且つ/又はエネルギー貯蔵装置の温度、充電、及び/若しくは放電を維持若しくは制御することができる。
【0113】
本明細書には本開示の好ましい実施形態が図示及び説明されているが、そのような実施形態は例として提供されているにすぎないことが当業者には明らかであろう。本発明が本明細書内で提供されている特定の例に限定されることは意図されていない。本発明は前述の明細書を参照して説明されているが、本明細書の実施形態の説明及び例示は、限定的な意味で解釈されることを意図されるものではない。本開示から逸脱することなく当業者には多数の変形形態、変更形態、及び置換形態が想起されるであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件及び変数に依存する、本明細書に記載される特定の説明、構成又は相対的な比率に限定されないことを理解されたい。本発明の実施に際して本明細書に記載される発明の実施形態の様々な代替形態が用いられ得ることを理解されたい。したがって、本発明は、任意のそのような代替形態、改変形態、変形形態又は均等物もカバーするものであることが企図されている。添付の特許請求の範囲は本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物が特許請求の範囲によってカバーされることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
【国際調査報告】