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▶ アバンテック バスキュラー コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】血管内コイルおよびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20221107BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516061
(86)(22)【出願日】2020-09-13
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020050599
(87)【国際公開番号】W WO2021051030
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/900,012
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515345089
【氏名又は名称】アバンテック バスキュラー コーポレイション
【住所又は居所原語表記】870 Hermosa Drive, Sunnyvale, CA 94085, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】トー, ジョン タオ
(72)【発明者】
【氏名】ホシノ, ライアン マサト
(72)【発明者】
【氏名】ルバルカバ, テレサ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD53
4C160DD63
(57)【要約】
捻れた8の字形状を有する血管内コイルの例示的実施形態が、開示される。血管内コイルは、第1のループと、第2のループと、第1のループの一部が第2のループの一部に遷移する変曲領域とを含む。第2のループは、第1のループの長軸と平行な軸について回転させられ、捻れた8の字形状を生成する。捻れは、より無作為性および変動性を血管内コイルの充填挙動に追加する。追加された無作為性および変動性は、捻れた8の字コイルが不規則的形状の動脈瘤の空隙を他の従来の塞栓コイルより良好に充填することを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内コイルであって、
第1のループと、
第2のループと、
前記第1のループの一部が前記第2のループの一部に遷移する変曲領域と
を備え、前記第2のループは、第1の軸について第1の回転度だけ回転させられ、前記第1の軸は、前記第1のループの主軸に実質的に平行である、血管内コイル。
【請求項2】
前記第1の回転度は、5~90度の範囲を備える、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項3】
前記第1の回転度は、45度を備える、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項4】
前記第2のループは、第2の軸について第2の回転度だけさらに回転させられ、前記第1および第2の軸は、相互に非平行であり、前記第1および第2の軸は、前記第1のループの一次平面上に位置する、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項5】
前記第2の回転度は、5~45度の範囲を備える、請求項4に記載の血管内コイル。
【請求項6】
前記第2のループは、前記第2のループの一次平面の上方および下方にうねる起伏トレースパターンを備える、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項7】
前記第1のループは、第1の断面を備え、前記第2のループは、第2の断面を備え、前記第1および第2の断面は、異なる、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項8】
前記変曲領域は、捻れ、重複する、請求項11に記載の血管内コイル。
【請求項9】
複数の第1および第2のループ対をさらに備え、各対は、前記変曲領域において連続的に接続され、別の第1および第2のループ対上に積層する、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項10】
前記血管内コイルの遠位端の近傍の1つまたは複数の第1および第2のループ対は、異なるワイヤ属性を有する、請求項9に記載の血管内コイル。
【請求項11】
前記異なるワイヤ属性は、ワイヤの剛性、断面形状、直径、または外部特徴のうちの1つを備える、請求項10に記載の血管内コイル。
【請求項12】
前記第1および第2のループのうちの1つは、1つまたは複数の応力点を備える、請求項1に記載の血管内コイル。
【請求項13】
前記応力点のうちの1つまたは複数は、前記第1または第2のループの半径の0.001~0.5の屈曲半径を備える、請求項12に記載の骨組コイル。
【請求項14】
前記第1および第2のループのうちの1つまたは複数は、複数のループを備える、請求項1に記載の骨組コイル。
【請求項15】
前記第1および第2のループは、8の字形状を形成する、請求項1に記載の骨組コイル。
【請求項16】
塞栓コイルであって、
第1の主軸を有する第1のループと、
前記第1のループに接続されている第2のループであって、第2の主軸を有する第2のループと
を備え、前記第1および第2の主軸は、相互に実質的に平行であり、前記第2のループは、前記第2の主軸について回転させられ、前記第1および第2のループは、8の字形状を形成する、塞栓コイル。
【請求項17】
前記第2のループは、5~175度の角度で回転させられる、請求項16に記載の塞栓コイル。
【請求項18】
前記第2のループは、45度の角度で回転させられる、請求項16に記載の塞栓コイル。
【請求項19】
前記第1の主軸および前記第2の主軸は、同一軸である、請求項18に記載の塞栓コイル。
【請求項20】
血管内コイルを製造する方法であって、
コイルワイヤの第1の端部をマンドレルの第1のロッドに固定することであって、前記マンドレルは、前記第1のロッドおよび第2のロッドを備える、ことと、
前記ワイヤを前記第1および第2のロッドの周囲に配索し、複数の8の字ワイヤパターンを前記第1および第2のロッド上に生成することと、
前記第1および第2のロッドのうちの1つを回転点について第1の回転度だけ回転させることであって、前記回転点は、前記複数の8の字ワイヤパターンのうちの1つの長軸上に実質的に位置する、ことと、
前記第1の回転度だけ前記マンドレル内で回転させられながら、前記複数の8の字ワイヤパターンを熱硬化させることと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記第1の回転度は、15~90度の範囲を備える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記コイルワイヤは、複数の区分を備え、各区分は、異なるワイヤ属性を備える、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記異なるワイヤ属性は、ワイヤの剛性、断面形状、直径、または外部特徴のうちの1つを備える、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
動脈瘤および他の類似の血管障害の治療は、多くの場合、動脈瘤または他の血管構造の空間内への血管内コイルの設置を伴う。動脈瘤では、この空間は、多くの場合、球状である。しかしながら、いくつかの事例では、それは、楕円形であり得るか、または2つもしくはそれより多くの小葉突出部(多くの場合、二葉性または多葉性動脈瘤と呼ばれる)を有し得る。従来のコイルシステムは、骨組コイル、充填コイル、および仕上げコイル等の多様な形状およびタイプのコイルを有する。
【0002】
骨組コイルは、典型的には、動脈瘤内に設置される最初のコイルであり、動脈瘤によって形成された空間内に適合するように設計された複雑なまたは3次元の形状を有する。骨組コイルは、以下の機能、すなわち、(1)動脈瘤の閉じ込め空間(confines)内に安定な骨組を提供する機能であって、その中に後続コイルが設置され得る、機能と、(2)動脈瘤の頸部にわたって適正なループ適用範囲を提供する機能と、(3)ループが動脈瘤の中心を横切る(追加のカテーテル操作を必要とし、手順を長引かせ、動脈瘤破裂のリスクを増加させる区画を動脈瘤内に生成し得る)ことを防止する機能とを実施するために使用され得る。
【0003】
加えて、いくつかの事例では、骨組コイルがマイクロカテーテル内で最小限にまたは容認可能に低い摩擦を伴って送達されることが望ましい。多くの骨組コイルが、球状動脈瘤を治療するときにこれらの機能を実施し得る球状形状を有する。しかしながら、それらは、多くの場合、動脈瘤が非球状(例えば、楕円形または二葉性)であるとき、不適正である。他の骨組コイルが非球状動脈瘤内に適合する複雑な形状を有する。しかしながら、そのようなコイルは、典型的には、独立軸を伴って整列させられたループから成り、動脈瘤自体によって束縛されるように設計されている。このタイプの形状は、顕著なポテンシャルエネルギーを伴う骨組コイルをもたらす。これは、その非抑制状態では骨組コイルが動脈瘤の寸法を優に越えて拡張し、したがって、空間内に束縛されると動脈瘤壁に力を直接伝達する傾向にあることを意味する。この力は、動脈瘤壁を傷付けるためには不十分であり得る一方、骨組コイルを後続コイルの設置時に移動しやすい状態にする。多くの場合、そのようなコイルは、偏移し、ループが親動脈の中に突出することを潜在的に引き起こし、それは、補助および/または緊急療法を必要とする。加えて、いくつかの骨組コイルの複雑な形状は、多くの場合、それらがマイクロカテーテルを通して送達されるときに生成される摩擦を増加させる。
【0004】
複雑な3D形状を伴う血管内コイルは、それらが骨組コイル、充填コイル、または仕上げコイルのいずれであったとしても、それらが非常に具体的な3D形状を形成するように設計および熱硬化されるため、種々の不規則的形状のおよび多葉性動脈瘤を良好に充填しない。したがって、従来の複雑な形状の血管内コイルは、動脈瘤の形状がコイルの複雑な形状と良好に合致しないとき、動脈瘤のあるエリアまたはボリュームを非充填のままにし得る。当然のことながら、無作為に選択された複雑な形状のコイルが不規則的形状の動脈瘤を妥当な容認可能な程度まで充填し得る可能性は存在する。しかしながら、正しく設計および工作された血管内コイルは、任意の不規則的形状の動脈瘤を予測可能かつ確実に充填し得、そのため、成功手順に関する可能性にあまり依拠しない。故に、予測可能で、確実で、かつ実質的に完全な方式において任意の不規則的形状のおよび多葉性動脈瘤を充填する血管内コイルが、必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(概要)
捻れた8の字形状を有する血管内コイルの例示的実施形態が、開示される。血管内コイルは、第1のループと、第2のループと、第1のループの一部が第2のループの一部に遷移する変曲領域とを含む。
【0006】
第2のループは、第1の軸について第1の回転度だけ回転させられる。第1の軸は、第1のループの主軸に実質的に平行である。第1の回転度は、5~90度の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、第1の回転度は、45度である。血管内コイルの第1および第2のループは、8の字パターンに配置され得る。
【0007】
第2のループは、第2の軸について第2の回転度だけさらに回転させられ得る。第1および第2の軸は、相互に非平行であるが、両方とも、第1のループが配置されている平面である第1のループの一次平面上に位置している。第2のループの第2の回転度は、5~45度の範囲を有し得る。これは、第2のループが8の字の長軸について捻れながら、同一参照軸からある角度でオフセットすることを引き起こす。
【0008】
いくつかの実施形態では、第2のループは、第2のループの一次平面の上方および下方にうねる起伏トレースパターンを有し得る。トレースパターンは、複数の場所で第2のループの一次平面を突き抜け、横切り得る。血管内コイルは、第1の断面を伴う第1のループと、第2の断面を伴う第2のループとを加えて有し得る。第1および第2の断面は、同一であることも、またはそれらが異なることもあり得る。断面は、円形、多角形、または楕円形の形状を有し得る。第2のループは、第1のループのワイヤより小さい直径を有するワイヤを用いて作製されることもあり得る。
【0009】
血管内コイルの変曲領域は、捻れ得、重複し得る。変曲領域では、第1のループの一部が、両方のループが閉ループとなるように重複し、第2のループの一部に接触し得る。代替として、第1のループの一部は、捻れており、重複するが、相互に接触しないことがあり得、すなわち、変曲領域を開放領域として残し得る。
【0010】
血管内コイルは、複数の第1および第2のループ対を有し得る。各ループ対は、変曲領域において連続的に接続され、前および/または次のループ対にわたって積層する。血管内コイルは、多くのループ対(例えば、2~100)を有し得る。血管内コイルの遠位端によって形成された1つまたは複数のループ対は、異なるワイヤ属性を有し得る。例えば、血管内コイルは、40cmの全長を有し得、最後の5~10cmは、異なるワイヤ属性を有し得る。ワイヤ属性は、ワイヤの剛性、断面形状、直径、または繊維延在部/突出部等の他の外部特徴であり得る。ループ対は、第1および第2のループを備える。
【0011】
第1および第2のループのうちの1つは、ループの中に統合された1つまたは複数の応力点を有し得る。応力点のうちの1つまたは複数は、第1または第2のループの半径の0.001~0.5の屈曲半径を含み得る。
【0012】
第1の主軸を有する第1のループと、第1のループに接続されている第2のループであって、第2の主軸を有する第2のループとを含む塞栓コイルも、開示され、第1および第2の主軸は、相互に実質的に平行であり、第2のループは、第2の主軸について回転させられ、第1および第2のループは、捻れた8の字形状を形成する。
【0013】
血管内コイルを製造する方法も、開示される。方法は、コイルワイヤの第1の端部をマンドレルの第1のロッドに固定することであって、マンドレルは、第1のロッドおよび第2のロッドを備える、ことと、ワイヤを第1および第2のロッドの周囲に配索し、複数の8の字ワイヤパターンを第1および第2のロッド上に生成することと、第1および第2のロッドのうちの1つを回転点について第1の回転度だけ回転させることであって、回転点は、複数の8の字ワイヤパターンのうちの1つの長軸上に実質的に位置する、ことと、第1の回転度だけマンドレル内で回転させられながら、複数の8の字ワイヤパターンを熱硬化させることとを含む。
【0014】
本明細書に記載の特徴および利点は、全てを包含するわけではなく、特に、多くの追加の特徴および利点が、図面、明細書、および特許請求の範囲に照らして当業者に明白である。さらに、本明細書において使用される用語は主に可読性および教示目的のために選択されており、開示される主題を境界または限局するように選択されていない場合があることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
(図面の簡単な説明)
前述の概要および以下の詳細な説明は、付属の図面と併せて読まれると、より良好に理解される。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する付属の図面は、複数の実施形態を図示しており、記載とともに関連原理を説明し、関連技術(単数または複数)における当業者が開示される技術を作製および使用することを可能にする役割をさらに果たす。
【0016】
図1A図1Aおよび図1Bは、本開示のいくつかの実施形態による異なる平面に2つのループを有する血管内コイルを図示している。
図1B図1Aおよび図1Bは、本開示のいくつかの実施形態による異なる平面に2つのループを有する血管内コイルを図示している。
【0017】
図2A図2A図2B、および図2Cは、本開示のいくつかの実施形態による血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図2B図2A図2B、および図2Cは、本開示のいくつかの実施形態による血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図2C図2A図2B、および図2Cは、本開示のいくつかの実施形態による血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
【0018】
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態による起伏形状を伴う少なくとも1つのループを有する血管内コイルを図示している。
【0019】
図4図4は、本開示のいくつかの実施形態による1つまたは複数の応力点を伴う血管内コイルを図示している。
【0020】
図5図5は、本開示のいくつかの実施形態による重複(接触)遷移エリアを伴う血管内コイルを図示している。
【0021】
図6図6は、本開示のいくつかの実施形態による非重複遷移エリアを伴う血管内コイルを図示している。
【0022】
図7A図7Aおよび図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による異なるタイプの遷移エリアを伴うコイルを図示している。
図7B図7Aおよび図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による異なるタイプの遷移エリアを伴うコイルを図示している。
【0023】
図8図8は、本開示のいくつかの実施形態による複数の積層されたループを有する捻れた8の字形血管内コイルを図示している。
【0024】
図9図9は、本開示のいくつかの実施形態による複数の積層されたループを有する別の捻れた8の字形血管内コイルを図示している。
【0025】
図10A図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10B図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10C図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10D図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10E図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10F図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10G図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
図10H図10A~10Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルを製造するためのプロセスを図示している。
【0026】
図11A図11Aおよび図11Bは、2つの異なる従来のコイルの充塞挙動を図示している。
図11B図11Aおよび図11Bは、2つの異なる従来のコイルの充塞挙動を図示している。
【0027】
図12図12は、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形血管内コイルの充塞挙動を図示している。
【0028】
図および以下の説明は、例証のみによってある実施形態を説明している。当業者は、以下の説明から、本明細書に図示される構造および方法の代替実施形態が本明細書に説明される原理から逸脱することなく採用され得ることを容易に認識する。ここで、参照が、いくつかの実施形態に対して詳細になされ、その実施例が、付属の図に図示されている。実践可能である場合は常に、類似または同様の参照番号が図において使用され、類似または同様の機能性を示し得ることに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(詳細な説明)
(概説)
捻れた8の字形状を呈する血管内/塞栓コイルが、本明細書に開示される。8の字形状は、8の字形状の上側および下側部分を形成する2つの丸みを帯びた部分を有する。捻れた8の字コイルにおいて、丸みを帯びた部分のうちの一方は、他方の回転させられていない丸みを帯びた部分に対して捻れているか、または回転させられている。回転させられた丸みを帯びた部分は、限定ではないが、1~179度の範囲等の任意の回転度だけ回転させられ得る。いくつかの実施形態では、回転させられた丸みを帯びた部分は、45度だけ回転させられている。別の実施例では、回転させられた丸みを帯びた部分は、90度だけ回転させられている。8の字コイルの丸みを帯びた部分は、円形、多角形、または楕円形であり得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、回転させられた丸みを帯びた部分は、回転させられていない丸みを帯びた部分の半主軸に実質的に平行な軸について回転させられている。回転させられていない丸みを帯びた部分が円形である場合、半主軸は、直径である。この場合、回転させられた丸みを帯びた部分は、2つの丸みを帯びた部分の共通軸または長軸について回転させられている。換言すると、回転させられた丸みを帯びた部分は、両方の丸みを帯びた部分の共通主軸である真っ直ぐな8の字の長軸について回転させられている。8の字形状のコイルの丸みを帯びた部分の相対位置および回転に関するさらなる詳細が、下記に提供される。
【0031】
塞栓コイルは、その最小エネルギー状態または二次構成において捻れた8の字形状を有するように構成されている。コイルは、塞栓コイルがスリーブまたはカテーテルによって阻止されていないとき、最小エネルギー状態を取得するためにその二次構成に戻るように構成され、二次構成は、捻れた8の字の形状である。塞栓コイルが(体外で)平坦面上に出されたとき、コイルは、相互の上に積層する8の字の複数の層を形成する一方で概して平坦に見え、すなわち、回転させられても捻れてもいないように見える。これは、平坦面の拘束と、塞栓コイルの回転させられた丸みを帯びた部分を平坦面に向かって引き寄せる重力とに起因する。同塞栓コイルは、身体の内側(例えば、動脈瘤の内側)で展開されたとき、捻れた8の字形状を有する(例えば、図1を参照)。動脈瘤または動脈の内側の体液が、いくらかの浮力を提供し、それによって、塞栓コイルを浮かせ、塞栓コイルが、捻れた/回転させられた8の字形状であるその最小エネルギー状態および形状を形成することを可能にする。実験的データは、塞栓コイルが動脈瘤(例えば、不規則的形状(例えば、多葉性)の動脈瘤)を充填すると、捻れがコイルの充填挙動にさらなる無作為性および変動性を追加することを示す。充填挙動の追加された無作為性および変動性は、捻れた8の字塞栓コイルが、真っ直ぐな8の字形状のコイル等の他の従来の塞栓コイルより良好に不規則的形状の動脈瘤の空隙を充填することを可能にする。
【0032】
いくつかの実施形態では、捻れた8の字コイルは、限定ではないが、近位部分および遠位部分等の複数の部分を有し得る。遠位部分は、異なる材料を用いて、または同一材料であるが異なる属性を伴う材料を用いて作製され得、異なる属性は、限定ではないが、剛性(例えば、直径、厚み)、軟度、および他の外部特徴(例えば、繊維突出部)等である。いくつかの実施形態では、遠位部分は、近位部分より薄く、近位部分より柔軟であり得る。逆に、近位部分は、遠位部分より薄く、遠位部分より柔軟であり得る。
【0033】
(捻れた8の字)
図1は、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字形状を伴う血管内コイル100を図示している。血管内コイル100は、第1のループ105と、第2のループ110とを含む。第1のループ105は、第1の平面115上に配置されている。第2のループ110は、第1の平面115に対してあるオフセット角度にある第2の平面120上に配置されている。第1の平面115と第2の平面120との間のオフセット角度は、1~179度の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、オフセット角度は、概ね90度である。別の実施形態では、オフセット角度は、45度である。示されているように、オフセット角度は、第1および第2のループ105、110の両方の共通軸である長軸130について第2のループ110が回転させられている角度である。いくつかの実施形態では、オフセット角度は、第2のループ110の第2の軸についての回転角度であり得る。第2の軸(示されていない)は、軸130と同一であり得るか、または、それは、軸130に実質的に平行であり得る。ループ110が楕円形である場合、第2の軸は、ループ110の半主軸であり得る。第2の軸は、コイル全体の長軸であり得る。
【0034】
図1Bは、異なる参照環境において、捻れた8の字コイルのループの空間的関係を図示するために役立つように血管内コイル100を図示している。第1および第2のループ105、110間の空間的関係は、第1のループ105が配置されている平面115と、第2のループ110の回転軸150とによって画定され得る。回転軸150は、平面115上に配置され、第1のループ105の主軸および直径に実質的に平行であり得る。回転軸150は、第1のループ105に関する同一主軸でもあり得る。言い換えると、軸150は、コイル100の長軸130と同一であり得る。示されているように、第2のループ110は、回転軸150について90度だけ回転させられている。しかしながら、第2のループ110は、軸150について、限定ではないが、5、10、20、25、30、35、40、45、50、55、および60度等の任意の度だけ回転させられ得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、第2のループ110が軸150について回転させられた後、第2のループ110は、変曲領域135または集束点137について1~90度だけさらに枢動され得る。例えば、図1Bに示された位置における第2のループ110は、ループ本体が軸155または157と整列させられるように枢動させられ得る。例えば、第2のループ110は、第2のループ110の遠位点160Aが遠位点160Bと同一場所である軸155上の場所161に平行移動させられるように枢動させられ得る。同様に、第2のループ110は、第2のループ110の遠位点160Aが遠位点160Cと同一場所である軸157上の場所162に平行移動させられるように枢動させられ得る。
【0036】
換言すると、捻れた8の字コイル100は、ループ105、110の両方が実質的に同一の平面にある状態から開始して形成され得る。例証目的のために、コイル100は、第1のループ105が上部にあり、第2のループ110が底部にある状態において鉛直に立っていると仮定する。捻れた8の字形状を形成するために第1のまたは上側ループ105が所定位置に保たれている一方、第2のまたは底部ループ110は、長軸130について捻れている。述べられたように、回転角度は、任意の度であり得る。示されているように、回転角度は、90度である。捻れた8の字コイル100の製造段階中、複数の8の字コイルが、特殊マンドレルを使用して同時に形成され、捻られ得る。捻れた8の字コイル100を製造するためのコイル巻着および熱硬化手順に関するさらなる記載が、下記に提供される(図10A~Hを参照)。
【0037】
図2A~Cは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字コイル250を製造するためのプロセス200を図示している。図2Aは、第1のループ205および第2のループ210が実質的に同一の平面215上にある真っ直ぐな8の字コイル202を図示している。プロセス200は、実質的に同一の平面215上に留まっている間、1~90度等の任意の量の度だけ長軸212に対して第2のループ210をオフセットさせることによって開始する。例えば、第2のループ210は、所望のオフセット角度(例えば、15、20、30、45)に到達するまで、集束点220について捻られ得る。その間ずっと、第2のループ210の一次平面は、平面215に実質的に平行である。図2Bに示されているように、角度225は、概ね28.4度であり、第2のループ210は、依然として平面215に実質的に平行である。この実施例では、軸204は、第2のループ210の主軸である。
【0038】
次に、ループ210が、その後、軸204について所望の回転度(例えば、2、10、45、90)だけ回転させられる。これは、第2のループ210が捻られ、オフセットされると、捻れた8の字コイル250を生成する。捻れた8の字コイル250は、最初に第2のループ210を軸212について(任意の回転度だけ)回転させ、その後、図2Bに示されているように、回転させられたコイルをオフセットさせることによっても形成され得ることに留意されたい。最終結果は、図2Cに示されているものと同一のコイル250である。
【0039】
第1のループ(例えば、105、205)は、第2のループ(例えば、110、210)と概ね同一の直径を有し得る。第1のループの直径(Dloop1)は、第2のループの直径(Dloop2)より小さくあり得る。いくつかの実施形態では、第1のループは、第2のループより大きい直径を有し得る(Dloop1>Dloop2)。第1および第2のループは、円形、多角形、または楕円形であり得る。いくつかの実施形態では、第1および第2のループは、楕円形または多角形(例えば、六角形および十角形)等の異なるループ形状を有し得る。例えば、第1のループ(例えば、105、205)は、円形であり得、第2のループ(例えば、110、210)は、多角形であり得る。別の事例では、第1のループ(例えば、105、205)は、楕円形形状を有し得、第2のループ(例えば、110、210)は、六角形形状を有し得る。
【0040】
第1のループ105および第2のループ110の断面形状は、同一であり得る。代替として、第1のループ105および第2のループ110の断面形状は、異なり得る。例えば、第1のループ105は、円形断面形状を有し得、第2のループ110は、六角形断面形状を有し得る。第1のループ105および第2のループ110のコイル厚み(断面の直径)は、同一であり得る。いくつかの実施形態では、第1のループ105および第2のループ110のコイル厚みは、異なり得る。例えば、第1のループは、第2のループより大きい外径を有し得る。例えば、第1のループは、0.00257”の外径を有し得、第2のループは、0.002”の外径を有し得る。
【0041】
加えて、捻れた8の字コイル100および250は、2つの異なる部分、すなわち、近位部分および遠位部分を有し得る。近位部分は、20~40cmの全長を有し得、遠位部分は、3~10cmの全長を有し得る。各部分は、複数の捻れた8の字コイルを有し得る。コイル100および250が(例証目的のために)個々に示されているが、コイル100および250は、図11に示されているように、相互に接続されている複数のコイルを有し得る。
【0042】
再び図1Aを参照すると、いくつかの実施形態では、血管内コイル100および/または250は、端間長140を有し得、端間長140は、軸130と同じ場所に生じ、第1のループ105と第2のループ110との直径の和(Dloop1+Dloop2)に実質的に等しい。コイル100の長さ140は、Dloop1+Dloop2より大きくあり得る。この実施形態では、遷移部分130は、ループ間のあるオフセット距離を有し得る。オフセットは、ループのうちの1つに対する接線方向であり得る。端間長140は、Dloop1+Dloop2未満であり得る。例えば、長さ140は、ループ105と110との直径の和の0.5倍(0.5×(Dloop1+Dloop2))であり得る。長さ140は、ループ105と110との直径の和の2倍(2×(Dloop1+Dloop2))より大きくあり得る。いくつかの実施形態では、長さ140は、0.6×(Dloop1+Dloop2)~1.4×(Dloop1+Dloop2)の範囲であり得る。一実施形態では、長さ140は、0.75×(Dloop1+Dloop2)~1.25×(Dloop1+Dloop2)の範囲であり得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、軸130は、湾曲または角度付けもされ得る。曲線は、コイル100の端から端まで漸次的であり得る。代替として、曲線は、遷移部分130から急になり得る。軸130は、ループ105およびループ110の接線が相互に平行または垂直であり得る(0~90度)ような曲線または角度であり得る。いくつかの実施形態では、ループ105およびループ110の接線は、相互に対して45度である。
【0044】
各ループ105または110は、ともに積層された複数のループを有し得る(図10を参照)。積層内の各ループの形状は、実質的に同一であり得る。代替として、積層内の各ループの形状は、異なり得る。例えば、ループ105は、ともに積層された3つのループを有し得る。第1のループは、円形であり得、第2のループは、楕円形であり得、第3のループは、多角形であり得る。ループ150は、ともに積層された4つのループを有し得、1つまたは複数のループは、図1Aおよび図2Cに示されているように、主平面(例えば、平面115)からのあるオフセットにおいて位置し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、遷移または変曲部分130は、ループ部分145および147が相互に最も近いエリアであるくびれエリアを含む。くびれ間隙150は、ループ部分145と147との間の距離である。いくつかの実施形態では、間隙150のサイズは、0(接触または重複)~ループ105またはループ110の直径の半分の範囲であり得る。間隙150のサイズは、ループ105のワイヤコイルの直径と実質的に同一であり得る。いくつかの実施形態では、間隙150は、0.1×(Dloop1)~0.8×(Dloop1)の範囲をとり得る。例えば、間隙150は、Dloop1またはDloop2の0.3倍であり得る。間隙150は、0.1×(Dloop2)~0.8×(Dloop2)の範囲でもあり得る。記されているように、Dloop1は、Dloop2と異なり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、ループ105は、ループ105およびループ110が初めに平行である(同一平面上にある)状態において、マンドレル上に形成され得る。その後、マンドレルは、ループ105および110に対する角度を調節するために、熱成形に先立って回転させられ得る。マンドレルは、ループ105および110に対する角度が5~175度で調節され得るように、回転可能に構成されている。例えば、マンドレルは、熱成形に先立って30~90度だけ回転させられ得る。血管内コイル100は、ニチノール等の形状保持金属合金で作製され得る。他の好適な生体適合性金属および/または金属合金も、コイル100を製造するために使用され得る(例えば、ステンレス鋼、白金)。
【0047】
図3は、本開示のいくつかの実施形態によるコイル300の上面図である。コイル300は、図1A~1Bおよび2A~2Cに関して記載されているような、コイル100および250の1つまたは複数の特徴および属性を有し得る。コイル300は、底部ループ310が長軸330について概ね90度だけ回転させられた捻れた8の字コイルである。ループ310が90度だけ回転させられている場合が示されているが、15、20、25、35、40、および45度等の任意の所望の度だけ回転させられ得る。
【0048】
示されているように、コイル300は、上側ループ305と、底部ループ310とを含む。ループ305は、実質的に平面315上に配置され得、ループ310は、実質的に平面330上に配置され得る。ループ310は、平面330の上方および下方にうねる起伏トレースパターンを有し得る。例えば、任意の開始点からループ310の円周全体をトレースするとき、(ループ310の円周に追従するように)トレースされる経路は、ループ全体がトレースされるときにいくつかの場所で平面330を突き抜ける。いくつかの実施形態では、ループ310は、左で少なくとも2回、および右で少なくとも2回、平面235を突き抜ける。例えば、ループ310は、3つの異なる場所320、322、および324で平面235を突き抜け得る。いくつかの実施形態では、ループ305および/または210は、円形形状または六角形もしくは十角形等の多角形形状の全体を有し得る。図3からは明白でないが、ループ305は、示されているように円形形状から外にトレースすると平面315の上方および下方に起伏することもあり得る。代替として、ループ305は、実質的に平坦であり得る。
【0049】
図4は、本開示のいくつかの実施形態によるコイル100を図示している。コイル100は、ループのうちの1つまたは複数に1つまたは複数の応力点(角または急な遷移)を有し得る。例えば、ループ310は、コイルの中に誘発された応力点415、420、および425を有し得る。これは、熱成形プロセス中に比較的鋭い縁を伴うマンドレルを使用し、それに接するように応力点が巻着されることによってなされ得る。応力点の各々は、ループ305または310の半径の0.001~0.5である屈曲半径(r)を有し得る。例えば、応力点のうちの1つは、0.1×rまたは0.2×rの屈曲半径を有し得る。
【0050】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による閉ループアーキテクチャを伴うコイル100を図示している。コイル100は、ループ105の一部がループ110の一部に接触し、ループ105および110を閉鎖する遷移または変曲エリア130を含む。加えて、コイル100は、時計回り(CW)および反時計回り(CCW)経路を有し得る。例えば、ループ105は、CW経路を有し、ループ110は、CCW経路を有する。コイル100は、図1Aに示されているような、ループが相互に接触しない開ループ設計を有することもある。
【0051】
図6は、本開示のいくつかの実施形態によるコイル100を図示している。示されているように、コイル600は、ループ105および110が閉ループである閉ループアーキテクチャを有する。加えて、ループ105および110は、両方のループが時計回り経路を有するように遷移領域130において相互について回転させられている。
【0052】
図7Aおよび図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による遷移エリアにおいて異なる形状を伴う例示的コイル100を図示している。示されているように、遷移エリア715は、遷移エリア720より緊密であり、遷移エリア720より小さい。
【0053】
上記に記載の骨組コイルの各々は、繰り返しループを1つまたは複数の平面(例えば、平面115または平面120)上に有し得る。いくつかの実施形態では、異なる平面対(例えば、平面2/平面3、平面3/平面4)を使用して、開示される関係を後続ループ対上に適用することによって意図されるコイルの長さを生成し、意図されるコイルの長さは、1cm~80cmであり得る。コイル形状は、コイルの全長を通して閉鎖/開放、交差/非交差、およびCW/CCW方略の組み合わせを活用し得る。コイル250および300は、図1A図1B図4図5図6図7、および図8に記載されているような、コイル100の1つまたは複数の特徴および属性でもあり得ることに留意されたい。
【0054】
図8は、上記に記載されたようなコイル100、250、および300の1つまたは複数の特徴および属性を伴う例示的全長血管内コイル800を図示している。コイル800は、上側部分805に4つのループを含み、下側部分810に3つのループを含む。しかしながら、コイル800は、上側および下側部分805、810の各々に任意の数のループを有するように製造され得る。示されているように、下側部分810におけるループは、所望の回転度において長軸815について回転させられ、所望の回転度は、45度であり得る。
【0055】
図9は、コイル100、250、および300の1つまたは複数の特徴および属性を伴う例示的全長血管内コイル900を図示している。コイル900は、第1の部分905と、第2の部分910とを含む。第1の部分905は、2つまたはそれより多くのループ915、920を含む。2つまたはそれより多くのループ915、920は、同一のループ直径を有し得る。いくつかの実施形態では、2つまたはそれより多くのループ915、920のうちの1つは、第1の部分905の他のループより小さい直径を有する。同様に、第2の部分910は、2つまたはそれより多くのループ925、930を含む。2つまたはそれより多くのループ925、930は、同一のまたは異なるループ直径を有し得る。加えて、第2の部分910は、第1の部分905のコイルワイヤと異なる属性(例えば、外径、剛性、断面形状、線維毛)を伴うコイルワイヤから成り得る。いくつかの実施形態では、第2の部分910の2つまたはそれより多くの最終ループは、限定ではないが、より小さい直径、異なる断面形状、および異なる材料等の異なる属性を伴うコイルワイヤを用いて作製され得る。
【0056】
図10A~Hは、本開示のいくつかの実施形態による捻れた8の字コイル(例えば、100、250、300、800、900)を巻回するためのプロセス1000を図示している。図10Aに示されているように、マンドレル1005は、第1のロッド1010と、第2のロッド1015と、マンドレル基部1020とを含む。コイル製造プロセス中、ロッド1010、1015の両方は、マンドレル基部1020に固定され得る。ワイヤ巻着プロセスが完了されると、マンドレル基部1020は、除去され得、ロッド1005、1010がコイル巻着の中心点について相互に対して回転することを可能にし得る(このプロセスは、下記にさらに記載される)。
【0057】
プロセス1000は、図10Aから開始し、図10Aでは、コイルワイヤ1030のワイヤ1025の端部部分が、柱部1035の周囲に固定されている。端部部分1005が柱部1035に固定されると、コイルワイヤ1030は、後続ループより小さいループ直径を伴う第1のループを生成する溝1040(随意)の中に押し込まれる。溝1040は、溝の底部がロッド1010の外面と同一レベルまでゆっくりと上昇する遷移エリア(示されていない)を含み得る。コイルワイヤ1030の遠位端(示されていない)は、架張機構または重りに固定されている。これは、張力を保ち、ロッド1010または1015の周囲で緊密巻着を生成するために役立つ。
【0058】
図10Bでは、マンドレル1005は、(親指が左を指した状態における右手の法則によって定義されるように、)ページの中に入るように180度だけ回転させられる。この行為は、示されているようにコイル130を引き上げ、コイルワイヤ130を吊架したままにする。図10Cでは、コイルワイヤ1030は、ロッド1010と1015との間に設置されている。次に、図10Dでは、マンドレル105は、360度だけページの中に回転させられ、コイルワイヤ1030は、ロッド1010と1015との間に再び設置される。次に、図10Eでは、マンドレル1005は、ページの外に出るように回転させられ(右親指は右を指している)、コイルワイヤ1030は、ロッド1010と1015との間に設置される。図10Fにおいて次の巻着を生成するために、マンドレル1005は、(ページの中への)対向方向に回転させられ、再び、コイルワイヤ1030は、マンドレル1005の次の回転の前にロッド1010と1015との間に設置される。図10Eおよび10Fに示されている手順は、所望の数のループが生成されるまで繰り返される(例えば、マンドレルは、1回おきに対向方向に回転させられ、コイルワイヤは、各回転後、ロッド1010と1015との間に通される)。コイル巻着が緩く離間されている場合が示されているが、実践例では、コイル巻着は、緊密に巻着され、各コイル巻着間に殆どまたは全く余地がない状態において相互に隣接している。
【0059】
図10Gは、多数の所望のループがロッド1010および1015の周囲に巻着されているコイルを図示している。所望の数のループが生成されると、マンドレル基部1020は、除去され得、ロッド1010および1015の周囲に巻着される全てのループの概ね中心である中心点1050について、ロッド1010および1015が相互に対して回転することを可能にし得る。図10Hは、中心点1050について回転させられたロッド1010および1015を示している。回転角度は、設計仕様に応じて変動し得る。しかしながら、回転角度は、1~179度の任意の角度であり得る。いくつかの実施形態では、回転角度は、45度である。回転設定および係止機構(示されていない)が、回転角度を設定するために使用され得、ロッド1010および1015を所望の回転角度に固定するためにも使用され得る。マンドレル全体ならびに回転設定および係止機構アセンブリは、その後、熱硬化手順のために炉の中に設置される。熱硬化プロセスは、コイル100の二次構成(例えば、最小エネルギー状態)の形状をロッドを伴わない図10Hに示されているものと同一の形状に硬化させる。
【0060】
熱硬化手順に関して、炉は、摂氏650~750度に設定され得、焼成時間は、20~40分であり得る。いくつかの実施形態では、焼成時間は、30分であり、炉の温度は、摂氏700度に設定される。代替として、コイル100は、摂氏735度で熱処理され得る。図10A~10Hはマンドレル1005のロッド1010および1015の周囲に8の字パターンを生成するために使用される具体的な配索パターンを記載しているが、複数の8の字パターンがロッド1010および1015の周囲に生成される限り、他の配索パターンも、可能であり、検討される。例えば、コイルワイヤ1030が複数の8の字パターンを生成するためにロッド1010および1015の周囲で操作されている間、マンドレル1005は、静止し得る。これが行われると、ロッドのうちの一方は、8の字パターンのうちの1つの長軸に実質的に沿ってあり得る回転点について、他方のロッドに対して回転させられ得る。
【0061】
図11A~Bは、従来のコイルが不規則的形状の動脈瘤を充填する方法を図示している。図11Aでは、従来のコイルは、多くの開放空間1105を残す。同様に、図11Bでは、別の従来のコイルは、さらに多くの、かつより大きい開放空間を動脈瘤内に残す。ここで、図11Aおよび図11Bにおけるコイルの両方は、本質的に同一の長さである。図12は、上記に記載されたような捻れた8の字コイル(例えば、100、250、300)が動脈瘤を充填する方法を示している。図11Aおよび図11Bと対照的に、捻れた8の字コイルは、開放空間を動脈瘤内に殆ど残さない。空間1205の数は、図11Aおよび図11Bにおける空間1105および1110の数よりそれぞれはるかに少ない。図12における捻れた8の字コイルのコイル長さは、図11Aおよび図11Bにおけるコイルの長さと同一である。
【0062】
いくつかの実施形態では、上記に開示された捻れた8の字コイル(例えば、100、250、300、800、900)は、異なるコイルワイヤ材料を用いて作製された遠位部分を有し得る。遠位部分は、近位部分の端部上に溶接され得、近位部分は、遠位部分の長さより長くあり得る。遠位部分は、近位部分より5~7分の1倍短い長さを有し得る。遠位部分の長さは、長さが2つまたはそれより多くのループを生成するために十分であるように適切に選択され得る。
【0063】
遠位部分のワイヤは、近位部分のワイヤより小さい外径を有し得る。いくつかの実施形態では、遠位部分のワイヤの外径は、0.002”インチである。熱硬化手順に関して、捻れた8の字コイルの近位部分は、遠位部分上での溶接に先立って熱処理(硬化)され得る。遠位部分が溶接されると、コイルアセンブリ全体(近位部分および遠位部分)は、4~6分間、摂氏70~90度の範囲の温度において再び熱処理され得る。いくつかの実施形態では、コイルアセンブリ全体は、概ね5分間、摂氏80度の温度において再び熱処理され得る。これは、(遠位部分上で溶接されたことによって形成された)遠位ループの直径を20%収縮させることに役立つ。言い換えると、遠位ループの直径は、主ループの80%である。
【0064】
コイル900は、2つの3D空間にわたって50/50分布を有するように構成され得る。このように、二葉性動脈瘤は、骨組コイル800によって効果的に充填され得る。
【0065】
本発明に開示される複雑な形状は、患者動脈の中へのループ突出のリスクを最小限にしながら球状および/または非球状(例えば、楕円形、多葉性)動脈瘤を効果的に治療する能力を提供することを意図されている。識別された固有の属性、パラメータ、および関係は、達成可能充塞密度、送達摩擦、コイル分布均一性、頸部被覆、区画化を最小限にする能力、および長期安定性等のエリアにおいて、既存のコイル設計と比較して改善された性能を実現させる固有の可能性を提示する。下記の表1は、実験データから導き出された重要因子(例えば、属性、パラメータ、および/または関係)を利用することの性能利点を列挙している。
【表1】
【0066】
本明細書における「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書内の種々の場所での語句「一実施形態では」の表出は、必ずしも全て同一の実施形態を指しているわけではない。
【0067】
以下の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する動作のアルゴリズムおよび象徴的表現の観点から提示される。これらのアルゴリズム的説明および表現は、データ処理分野の当業者がその研究内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用される方法である。ここで、アルゴリズムは、一般に、所望の結果につながるステップの自己整合シーケンスであると見なされる。ステップは、物理量の物理的操作を必要とするものである。必ずしもではないが、通常、これらの数量は、貯蔵されること、伝達されること、組み合わせられること、比較されること、または別様に操作されることが可能な電気もしくは磁気信号の形態をとる。主に一般的な使用の理由により、ビット、値、要素、シンボル、文字、項、数字、または同等物としてこれらの信号を参照することが時として便宜的であることが、明らかになっている。
【0068】
図および以下の説明は、例証のみによってある実施形態を説明している。当業者は、以下の説明から、本明細書に図示される構造および方法の代替実施形態が本明細書に説明される原理から逸脱することなく採用され得ることを容易に認識する。ここで、参照が、いくつかの実施形態に対して詳細になされ、その実施例が、付属の図に図示されている。実践可能である場合は常に、類似または同様の参照番号が図において使用され、類似または同様の機能性を示し得ることに留意されたい。
【0069】
本発明の実施形態の前述の説明は、例証および説明目的のために提示されている。包括的であること、または本発明を開示される精密な形態に限定することは、意図されていない。多くの修正および変形例が、上記の教示に照らして可能である。本発明の範囲はこの詳細な説明によってではなく、むしろ、本出願の特許請求の範囲によって限定されることが、意図されている。当業者に理解されるように、本発明は、その精神または本質的な特性から逸脱することなく他の具体的な形態で具現化され得る。同様に、モジュール、ルーチン、特徴、属性、方法論、および他の側面の特定の命名および分割は、必須でも顕著でもなく、本発明またはその特徴を実装した機構は、異なる名称、分割、および/または形式を有し得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A-10C】
図10D-10F】
図10G
図10H
図11A-12】
【国際調査報告】