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特表2022-547597ジルコニウム合金核燃料棒におけるセラミックコーティングの物理的気相成長
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ジルコニウム合金核燃料棒におけるセラミックコーティングの物理的気相成長
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/06 20060101AFI20221107BHJP
   G21C 3/07 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
G21C3/06 210
G21C3/07 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516180
(86)(22)【出願日】2020-09-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020050592
(87)【国際公開番号】W WO2021112938
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】62/899,977
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219442
【氏名又は名称】ウェスティングハウス エレクトリック カンパニー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】WESTINGHOUSE ELECTRIC COMPANY LLC
【住所又は居所原語表記】1000 Westinghouse Drive, Suite 141, Cranberry Township, Pennsylvania 16066 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マグナス ノーレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ライト
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ジェイ. ラホダ
(72)【発明者】
【氏名】マグナス リムバック
(72)【発明者】
【氏名】ジョリー ウォルターズ
(72)【発明者】
【氏名】ハビエル イー. ロメロ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン アール. マイヤー
(57)【要約】
核燃料被覆管が開示されており、核燃料被覆管は、CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される耐摩耗性及び耐酸化性外部コーティングを有するジルコニウム合金管を備える。核燃料被覆管は、管と外部コーティングとの間に形成されている中間層を備えてもよい。中間層は、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。核燃料被覆管及び中間層は、物理的気相成長によって成膜されてもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される耐摩耗性及び耐酸化性外部コーティングを有するジルコニウム合金管を備える、核燃料被覆管。
【請求項2】
前記外部コーティングの厚さは0.1~30μmである、請求項1に記載の核燃料被覆管。
【請求項3】
前記管と前記外部コーティングとの間に形成されており、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される中間層をさらに備える、請求項1に記載の核燃料被覆管。
【請求項4】
前記中間層の厚さは0.01~10μmである、請求項3に記載の核燃料被覆管。
【請求項5】
前記中間層は物理的気相成長により施されている、請求項3に記載の核燃料被覆管。
【請求項6】
前記外部コーティングは物理的気相成長により施されている、請求項1に記載の核燃料被覆管。
【請求項7】
核燃料被覆管の製造方法であって、
核分裂性物質を収容する内部と、外面と、を有するジルコニウム合金被覆管を提供する工程と、
CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される耐摩耗性及び耐酸化性セラミックコーティングを前記被覆管の前記外面上に蒸着する工程と、を備える、核燃料被覆管の製造方法。
【請求項8】
前記セラミックコーティングの厚さは0.1~30μmである、請求項7に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項9】
前記セラミックコーティングは物理的気相成長により蒸着される、請求項7に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項10】
前記セラミックコーティングを蒸着する前に、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される中間層を前記被覆管の前記外面上に蒸着する工程をさらに備える、請求項7に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項11】
前記中間層は物理的気相成長により蒸着される、請求項10に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【請求項12】
前記中間層の厚さは0.01~10μmである、請求項10に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願との相互参照)
本出願は、「ジルコニウム合金核燃料棒におけるセラミックコーティングの物理的気相成長」と題する2019年9月13日出願の特許出願第62/899,977号の利益を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、核燃料被覆管に関し、より詳細には、外部セラミックコーティングを施したジルコニウム合金管に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的な原子炉では、炉心に多数の燃料集合体が含まれる。各燃料集合体は複数の細長い燃料棒で構成される。各燃料棒は、通常、He等のガスに囲まれた核燃料ペレットの積層体の形態で核燃料の核分裂性物質を含む。燃料棒は、核分裂性物質を封じ込める役割を果たす被覆管を有する。
【0004】
軽水炉は、冷却方法、及び、中性子減速材として水を使用する。軽水炉には、加圧水型原子炉(PWR)と沸騰水型原子炉(BWR)との2種類がある。この種の原子炉では、被覆管は通常ジルコニウム合金で作製されている。ジルコニウム合金は、1100℃以上の水蒸気と急速に反応して、酸化ジルコニウム、及び、水素を生成する。原子炉の環境では、その反応によって発生した水素が原子炉を劇的に加圧し、最終的には格納容器や原子炉建屋に漏れ、爆発的な雰囲気と水素爆発の可能性につながり、これが格納容器外への核分裂生成物の飛散につながる可能性があった。核分裂生成物の境界を維持することが非常に重要である。
【0005】
デブリフレッティングによる燃料破損に対抗するために、燃料被覆材へのハードフェイシングコーティングが開発されている。ここで生じる問題の1つは、BWRの炉心内に広がる条件下でのこれらのコーティングの安定性である。
【0006】
参照により本明細書に関連部分が組み込まれる、米国特許第9,336,909号、及び、第8,971,476号に開示されているように、燃料棒被覆管を、外部腐食を防止する材料で被覆可能とすることが提案されている。被覆されたZr被覆管は、設計基準を超えた事故に関連する主要な問題の1つである、1200°Cを超える過度の酸化の問題を克服するものである。クロム(Cr)だけでコーティングすると、Zr合金の他の成分により、1333℃より低い温度でZrとCr間の低融点共晶が発生する。この問題を回避するために、初期にニオブ(Nb)でコーティングすることが提案されている。
【0007】
コールドスプレーを使用して、Crコーティング、及び、Nb/Crコーティングをジルコニウム合金ロッドに蒸着させ、通常の動作条件と非通常の動作条件の両方における耐食性を向上させる方法が説明されている。これらのコーティングの中間Nb層は、900℃超の温度でCrとZr間の共晶形成をなくすものである。Crコーティングは、高温の蒸気、及び、空気中で良好な事故耐性があるコーティングとして以前から認識されている。
【0008】
米国特許出願US2014/0254740号は、コールドスプレー技術などの溶射を用いて、クロムを含む金属酸化物、セラミック材料、又は、金属合金をジルコニウム合金被覆管に適用する取り組みを開示している。ここでは、粒子を塑性変形させて、扁平な連結材料としコーティングを形成するために、粉体化したコーティング材料を基板上にかなりの速度で蒸着させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、Crは沸騰水型原子炉(BWR)化学や低H2加圧水型原子炉(PWR)化学に適していない。
【0010】
セラミックス、特に純粋な窒化クロム又は改質された窒化クロムは、BWR化学への利用に適しているものとして認識されている。また、セラミックコーティングはより耐摩耗性がある。ただし、これらのCrを含む化合物は、事故条件下で生じる温度ではZr合金と反応する可能性もある。BWRは、冷却水中のデブリによる燃料破損という問題もある。
【0011】
以下の概要は、開示される実施形態に特有の革新的な機構の一部の理解を容易にするために提供されるのであって、完全な説明であることを意図したものではない。実施形態の様々な態様は、明細書全体、特許請求の範囲、要約書、及び、図面を全体的に理解することによって完全に理解され得る。
【0012】
本明細書では、CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される耐摩耗性及び耐酸化性外部セラミックコーティングを有するジルコニウム合金管を含む核燃料被覆管が記載される。様々な態様におけるセラミックコーティングは、物理的気相成長によって蒸着され、厚さを0.1~30μm(マイクロメートル)としてもよい。
【0013】
様々な態様において、被覆管は、管と外部セラミックコーティングの間に形成された中間層をさらに含んでもよい。中間層は、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。様々な態様における中間層は、物理的気相成長によって蒸着され、厚さを0.01~10μmとしてもよい。
【0014】
また、本明細書では、核燃料被覆管の製造方法について説明する。この方法は、一般に、核分裂性物質を収容するための内部及び外面を有するジルコニウム合金被覆管を提供するステップと、CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、これらの組み合わせからなる群より選択される耐摩耗性及び耐酸化性セラミックコーティングを被覆管の外面に蒸着させるステップと、を含む。
【0015】
本方法は、さらに、セラミックコーティングを蒸着する前に、被覆管の外面に中間層を蒸着するステップを含んでもよい。中間層は、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。様々な態様において、中間層は、物理的気相成長により、好ましくは、0.01~10μmの間の厚さで蒸着される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の特徴及び利点は、添付の図を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0017】
図1】被覆管試料の1回目の曝露時の試験用オートクレーブの入口、中間部及び出口の温度を示すグラフである。
【0018】
図2】1回目の曝露時の図1のグラフの温度を拡大して示すグラフである。
【0019】
図3】1回目の曝露時の試験用オートクレーブの中間部における導電率と温度を示すグラフである。
【0020】
図4】1回目の曝露時の試験用オートクレーブの中間部の圧力及び温度を示すグラフである。
【0021】
図5】1回目の曝露時の試験用オートクレーブの中間部の酸素レベル及び温度を示すグラフである。
【0022】
図6】2回目の曝露時の試験用オートクレーブの入口、中間部及び出口の温度を示すグラフである。
【0023】
図7】2回目の曝露時の図6のグラフの温度を拡大して示すグラフである。
【0024】
図8】2回目の曝露時の試験用オートクレーブの中間部における導電率及び温度を示すグラフである。
【0025】
図9】2回目の曝露時の試験用オートクレーブの中間部における圧力及び温度を示すグラフである。
【0026】
図10】2回目の曝露時の試験用オートクレーブの中間部の酸素レベル及び温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書で使用されるとき、「a」、「an」、及び、「the」の単一の形態は、文脈でそうでないことが明確に定められない限り、複数の参照を含む。
【0028】
例えば、限定的ではない、上、底、左、右、下方、上方、前、後、及び、その変形等の本明細書で使用される方向の語句は、添付の図面に示す要素の配向に関し、そうでないことが明記されていない限り、特許請求の範囲の限定ではない。
【0029】
請求項を含む本願においては、別段の指示がない限り、量、値又は特性を表わす全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修正されるものと理解されるべきであり、従って、「約」という用語がその数字で明示的に表されていなくても、数字は「約」という用語の前にあるかのように読み取ることができる。従って、反対に示されない限り、以下の説明に記載される任意の数値パラメータは、本開示による組成物及び方法において得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低限でも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定する試みとしてではなく、本明細書に記載される各数値パラメータは、少なくとも有効数字の数に照らして、かつ通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0030】
本明細書に列挙される任意の数値範囲は、その中に包含される全てのサブ範囲を含むことが意図される。例えば、「1~10」の範囲は、最小値1と最大値10との間の(及びそれを含む)、即ち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有する任意の全てのサブ範囲を含むことが意図される。
【0031】
単一又は二重の事故耐性コーティングは、CrN、CrN、CrWN、CrZrN、又は、それらの混合物の耐食性外部コーティング層を含む。中間層は、外部コーティング層の蒸着前に施してもよい。様々な態様における中間層は、Ta、W、Mo、及び、Nbのうちの1つ又はその組み合わせであってよく、Cr/Zr共晶の形成を防止し、優れた高温性能を可能にするために含まれる。外部コーティングは、耐酸化性と耐摩耗性とを両立するように設計される。外部コーティング層と中間層とは、いずれも物理的気相成長(PVD)プロセスを用いて施してもよい。Ta、W、Mo、及び、Nbのうちの1つ又はその組み合わせの中間層を0.01~10μmの厚さにして、その後、再びPVDプロセスでCrN、CrN、CrWN、又は、CrZrN、若しくは、それらの混合物の耐摩耗性、及び、耐酸化性外部コーティング層を0.1~30μmの厚さに蒸着してもよい。金属元素であるCr、W、及び、Zrの比率は、これらのコーティング内で変化させることができる。
【0032】
PVDは、Ta、W、Mo、又は、Nbの非常に薄いコーティングを施すことができるため、二重コーティングの全体の厚さを最小限に抑えることができるので、中間層の蒸着に特に好ましい。
【0033】
本開示は、単層として、あるいは、Mo、Ta、W、及び、Nbのうちの1つ又は組み合わせの中間層とともに施すことができるLWR用途の耐摩耗性及び耐酸化性の両方を有するコーティングを特定している。
【0034】
粒子などの材料の薄層を基板に蒸着させるためのいくつかの物理的気相成長プロセスが当技術分野で知られており、外部コーティング層及び中間層の一方又は両方を施すために使用し得る。PVDは、以下の3つの基本的なステップからなる真空蒸着技術の集合体として特徴付けられてもよい。(1)高温真空、又は、ガスプラズマにより、固体ソースから材料を蒸発させる。(2)真空、又は、部分真空中において、蒸気を基板表面に輸送する。(3)基板上に凝縮させて薄膜を生成する。
【0035】
PVDコーティングの最も一般的なプロセスは、蒸発(通常、カソードアーク又は電子ビーム源を使用)、及び、スパッタリング(磁気強化源、又は、「マグネトロン」、円筒又は中空カソード源を使用)である。これらのプロセスは、全て真空中で作業圧力(通常1~0.01Pa(10-2~10-4mbar))で行われ、一般に高密度化を促進するためにコーティングプロセス中に高エネルギーの正電荷イオンでコーティングされる基板をボンバードすることを含む。さらに、金属蒸着中に反応性ガスを真空チャンバー内に導入し、様々な複合コーティング組成を作り出すことも可能である。その結果、コーティングと基板との間に非常に強い結合が生まれ、物理的特性が調整された蒸着層となる。
【0036】
セラミックの単層は、商業用原子力発電所の燃料破損の原因となるデブリフレッティングに対して耐摩耗性を提供する。また、それらは、水素のピックアップを低減して、これにより、柔軟性を高め、及び/又は、高燃焼度化を可能とするためにも有効である。
【0037】
外部コーティングの単層のみでも、ある程度の事故耐性は提供されるが、Zr合金被覆管と外部コーティングとの間に位置する中間層という形態で第2の層を追加することで、高温でのCr/Zr共晶が防止される。特定の窒化クロム系材料は、Cr金属及び窒素ガスに分解される傾向があるため、Mo、Ta、W、又は、Nbのボンド層を添加した状態でPVDにより二層構造を施すと、セラミックコーティングの事故耐性を向上させることができる。例えば、CrN、及び、CrNは、クロム金属及び窒素ガスに比較的低温で分解する。その後、Crの残渣は約1333℃でZrと共晶を形成する可能性がある。
【0038】
以下の「実験」で説明する広範なオートクレーブ試験の結果に基づき、セラミック化合物CrN、CrN、及び、CrWNは、BWR条件及び高酸素PWR運転条件の両方で非常に良好に動作するものと認識されている。CrZrNは、他の用途では良好な耐酸化性を有することが示されている。また、CrZrNは、BWR条件及び高酸素PWR運転条件の両方で非常に良好な挙動をも示すと考えられている。反応性電子ビームPVD法により被覆されたCrNコーティング単層の耐食性及び耐摩耗性の性能分析については、2017年6月20日投稿のK.Bouzid,N.E.Beliardouh,C.Noveau,“Wear and corrosion resistance of Cr-N based coatings deposited by RF magnetron sputtering”,HAL Id:hal-01202851 https://hal.archives-ouvertes.fr/hal-01202851を参照のこと。
【0039】
本方法は、外部コーティング層及び中間層のいずれか又は両方の蒸着に続いて、これらの層をアニールすることをさらに含んでもよい。アニールは、これらの層の機械的特性と微細構造を変更する。アニールは、200℃~800℃、好ましくは350℃~550℃の温度範囲でこれらの層を加熱することを含む。また、アニールは、層内の応力を緩和し、被覆管内の内圧を維持するのに必要な延性を付与する。被覆管が膨らむと、これらの層も膨らむことができるべきである。
【0040】
また、外部コーティング層及び中間層は、より滑らかな表面仕上げを実現するために、研削、バフ研磨、研磨、あるいは他の公知技術によって処理されてもよい。
【0041】
本明細書に記載される主題の様々な態様は、以下の実施例に示されている。
【0042】
例1:核燃料被覆管は、CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される耐摩耗性及び耐酸化性外部コーティングを有するジルコニウム合金管を備える。
【0043】
例2:前記外部コーティングの厚さは0.1~30μmである、例1に記載の核燃料被覆管。
【0044】
例3:前記管と前記外部コーティングとの間に形成されており、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される中間層をさらに備える、例1又は2に記載の核燃料被覆管。
【0045】
例4:前記中間層の厚さは0.01~10μmである、例3に記載の核燃料被覆管。
【0046】
例5:前記中間層は、物理的気相成長により施されている、例3又は4に記載の核燃料被覆管。
【0047】
例6: 前記外部コーティングは物理的気相成長により施されている、例1から5のいずれに記載の核燃料被覆管。
【0048】
例7:核燃料被覆管の製造方法であって、
核分裂性物質を収容する内部と、外面と、を有するジルコニウム合金被覆管を提供する工程と、
CrN、CrN、CrWN、CrZrN、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される耐摩耗性及び耐酸化性セラミックコーティングを前記被覆管の前記外面上に蒸着する工程と、を備える、核燃料被覆管の製造方法。
【0049】
例8:前記セラミックコーティングの厚さは0.1~30μmである、例7に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【0050】
例9:前記セラミックコーティングは物理的気相成長により蒸着される、例7又は8に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【0051】
例10:前記セラミックコーティングを蒸着する前に、Ta、W、Mo、Nb、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される中間層を前記被覆管の前記外面上に蒸着する工程をさらに備える、例7に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【0052】
例11:前記中間層は物理的気相成長により蒸着される、例10に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【0053】
例12:前記中間層の厚さは0.01~10μmである、例10又は11に記載の核燃料被覆管の製造方法。
【0054】
(実験)
BWRの条件をシミュレートし、どのコーティングが腐食や酸化をしないかを判定した。ハードフェイシングコーティングの安定性は、オートクレーブでの曝露前後で破壊試験を行うことにより評価した。360℃の酸化性BWR環境をシミュレートするため、酸化剤として酸素水を選択した。
【0055】
オートクレーブ条件は、どの材料が商業用プラントで良好に動作するかについての優れたスクリーニングテストとして、「貧弱な」コーティングの腐食を促進する可能性のある酸素レベルとした商業用BWRを表すように選択した。試料の曝露に使用したオートクレーブは、長さが約2m、内径が約10cmの横長の本体管からなり、内容積は概略7リットルであった。オートクレーブには、連続的に曝露化学物質をリフレッシュするワンススルー回路が接続され、曝露をモニターするための基本的な機器、すなわち導電率計及び熱電対を装備させた。表1にオートクレーブ暴露中に測定されたパラメータと目標パラメータとを特定する。
【0056】
【表1】
【0057】
*導電率は変化し、一般に高かった。混合容器の後にあるオートクレーブの入口の導電率は顕著に高かった。超高純度脱気水のみを使用した混合容器をバイパスすると、導電率がおおよそ0.06μS/cmまで低下を示したが、技術的な空気飽和水に戻すと、空気タンクを交換しても導電率が再び上昇した。図3及び図8を参照のこと。
【0058】
テストを開始する前に、オートクレーブを340℃で8ppmの酸素(圧縮空気)を使っておおよそ6週間、予備酸化した。ジルコニウム合金にハードフェイシングコーティングを被覆したチューブ状及びプレート状のサンプルを二重サンプルとして供給し、これらをオートクレーブ内で互いに離して配置して、上流のサンプルからの腐食の影響を検査あるいは除外した。これらのサンプルは、オートクレーブと一緒にあらかじめ酸化処理されたステンレス製のカセットに装着した。サンプルをジルコニウム合金製のワイヤーに吊り下げて、このワイヤーを順次ステンレス製ワイヤーでカセットに吊り下げた。これら3つのカセットをオートクレーブの中央付近に配置し、温度を安定させて維持した。1回目と2回目の曝露間に中断をはさみ、それぞれ30日間、2回の曝露を行った。この中断の間に、いくつかのサンプルを取り除き、新しいサンプルを追加した。
【0059】
燃料被覆材上のハードフェイシングコーティングの安定性を検査するため、昇温した温度で合計50個のサンプルを、シミュレーションしたBWRの通常水化学条件に曝露させた。サンプルを、30日あるいは60(30+30)日間、曝露させた。この曝露前、中断後、おおよそ60日間の全曝露後にサンプルを撮影した。Wild-Heerbrugg/M7Aステレオ光学顕微鏡を用いてステレオ光学顕微鏡(SOM)解析を行うことにより、全ての試料の高倍率な光学画像(図示省略)を取得した。曝露は、結果の品質に影響を与えると思われる事象を発生させることなく行った。シミュレーションした条件下において、腐食又はさもなければ不安定な挙動の兆候は、変色、局所的な不均一性、コーティングの剥離、表面粗さの変化のいずれか、又は、複数によって示される。また、曝露の前後のサンプルを目視でも検査し、さらに直接検査を行う。CrN、CrN、CrWN、又は、CrZrNのコーティングを施したサンプルは、目視検査の観点においてベストに施されたコーティング、即ち、にじみや変色領域のない均一で滑らかなコーティングであると判断された。これらは、シミュレーションしたBWRの条件下で最も耐性を有し、最も変化しないものである。従って、Zr合金被覆管用のコーティングとしての使用に最も有望視されるものである。
【0060】
pHは、Thermo Scientific社のOrion Dual Star pHメーターとMetrohm社の複合pHガラス電極を使用して測定した。測定前に、MERCK社のpH4.01、7.00、及び10.00のpH緩衝液で、3点校正を行った。サンプルのpH測定を行う前にpH7.00の緩衝液を測定して、校正の確認を行った。
【0061】
1回目の曝露のオートクレーブ温度(入口、中間部、及び出口)、圧力、導電率(入口及び出口でも増加)、ならびに、酸素を図1図5に示し、2回目の曝露についても同じものを図6図10に示す。1回目の曝露は、イベントもなく行われたが、2回目の曝露は以下のように2つの小さなインシデントがあった。
1.加温シーケンス中(図10の開始前-20時間から-2時間まで)は、酸素レベルを測定しなかった。これは、水が分析機器の代わりに、排水に導かれていたためである。酸素飽和容器は、この間通常通り稼動していたため、水中の酸素レベルはこの間十分であったと考えられる。
2.おおよそ300時間後、飽和容器のバルブの不具合により、酸素レベルが一時的に低下し、目標値の約半分になった(図10及び図8を参照のこと)。この減少が電気化学的な電位に及ぼす影響はわずかである。
上記の2つのインシデントは、いずれも結果や結果の質に影響を与えるものではなく、2回目の曝露も1回目の曝露と同様に正常に完了したと結論づけられた。
【0062】
セラミック化合物CrN、CrN、及び、CrWNは、前述のオートクレーブ試験に基づいて認識され、BWR条件及び高酸素PWR運転条件の両方で非常に良い挙動を示すと判定された。他の用途で良好な耐酸化性を有するものとして示されるCrZrNもまた、BWR条件と高酸素PWR運転条件の両方で非常に良い挙動を示すと考えられている。
【0063】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、刊行物、又は他の開示材料は、それぞれの個々の参考文献がそれぞれ参照により明確に組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。参照によって本明細書に組み込まれると言われる全ての参照、及び任意の材料、又はその一部は、組み込まれる材料が、本開示で説明される既存の定義、ステートメント、又は他の開示材料と矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれる。したがって、必要な範囲で、本明細書に記載される開示は、参照により本明細書に組み込まれる任意の矛盾する材料、及び本出願の制御に明示的に記載される開示に取って代わる。
【0064】
本発明は、様々な例示的かつ例示的な実施形態を参照して説明されてきた。本明細書に記載された実施形態は、開示された発明の様々な実施形態の様々な詳細の例示的な特徴を提供するものとして理解され、したがって、特に指定されない限り、可能な範囲で、開示された実施形態の1つ又は複数の特徴、要素、構成要素、構成要素、成分、構造、モジュール、及び/又は態様は、開示された発明の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態の1つ又は複数の他の特徴、要素、構成要素、構成要素、成分、構造、モジュール、及び/又は態様と組み合わされ、分離され、交換され、及び/又は再配置され得ることを理解されたい。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態のいずれかの様々な置換、修正、又は組み合わせを行うことができることが、当業者には理解されよう。さらに、当業者は、本明細書を検討する際に、本明細書に記載される本発明の様々な実施形態と同等の多くを認識するか、又は日常的な実験のみを使用して確かめることができるであろう。したがって、本発明は、様々な実施形態の説明によって限定されず、むしろ特許請求の範囲によって限定される。
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【国際調査報告】