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特表2022-547614燃料電池スタック保護方法、デバイス、および燃料電池電源システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】燃料電池スタック保護方法、デバイス、および燃料電池電源システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20221107BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20221107BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221107BHJP
   B60L 3/04 20060101ALN20221107BHJP
   B60L 50/70 20190101ALN20221107BHJP
   B60L 58/30 20190101ALN20221107BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/04 Z
H01M8/043
H01M8/04664
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/04746
B60L3/04 E
B60L50/70
B60L58/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516394
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 IB2020058623
(87)【国際公開番号】W WO2021053543
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】201910869974.6
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508359550
【氏名又は名称】セレス インテレクチュアル プロパティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン レイ
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BB05
5H125BD12
5H125CD04
5H125EE33
5H125EE38
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127AC17
5H127BA02
5H127DB66
5H127DB89
5H127DB91
5H127DC02
5H127DC89
(57)【要約】
本発明は、燃料電池スタック保護方法、燃料電池スタック保護デバイス、および燃料電池電源システムを提供する。方法は、燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定することと、燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させることと、を含む。燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路がオンにされてDC-DC回路を放電させ、したがって、燃料電池内のDC-DC回路は、電流を出力し続けることができ、それで、負荷遮断障害のために燃料電池スタックの電圧が急激に上昇するのを防ぎ、負荷遮断障害によって惹起される燃料電池スタックのいかなる損傷も防ぐ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック保護方法であって、
燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定することと、
前記燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、前記燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御して前記DC-DC回路を放電させることと、を含む方法。
【請求項2】
前記燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されている前記ブリーダ回路を制御して前記DC-DC回路を放電させることは、
負荷遮断障害が発生する前に、ターゲット電力として表される、前記燃料電池の出力電力を取得することと、
前記燃料電池内の前記DC-DC回路の前記出力端に接続されている前記ブリーダ回路のターンオンを制御し、前記ブリーダ回路のブリーダ電力が前記ターゲット電力であるように、前記出力電力に従って前記DC-DC回路の前記出力電圧を調節することと、を含む、請求項1に記載の燃料電池スタック保護方法。
【請求項3】
前記燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されている前記ブリーダ回路を制御して前記DC-DC回路を放電させた後、前記方法は、
第1の事前設定勾配に従って前記燃料電池内に注入される燃料の量を減らすことと、
第2の事前設定勾配に従って前記燃料電池内の前記DC-DC回路の前記出力電圧を低下させることと、をさらに含む、請求項1または2に記載の燃料電池スタック保護方法。
【請求項4】
第2の事前設定勾配に従って前記燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させる前に、前記方法は、
前記第1の事前設定勾配と前記第2の事前設定勾配との間のマッピングが記憶されている事前設定勾配マッピングリストに基づいて、前記第1の事前設定勾配に適合する第2の事前設定勾配を取得することをさらに含む、請求項3に記載の燃料電池スタック保護方法。
【請求項5】
前記燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されている前記ブリーダ回路を制御して前記DC-DC回路を放電させた後、前記方法は、
前記ブリーダ回路の前記ブリーダ電力をリアルタイムで監視し、前記ブリーダ回路の前記ブリーダ電力が事前設定安全閾値まで低下したことを検出したとき、前記ブリーダ回路をオフにして、前記燃料電池内のスタック事前充電ユニットをオフにすることをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の燃料電池スタック保護方法。
【請求項6】
燃料電池スタック保護デバイスであって、
燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定するように構成された障害検出ユニットと、
前記燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、前記燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御して前記DC-DC回路を放電させるように構成されたブリーダ制御ユニットと、を備えるデバイス。
【請求項7】
前記ブリーダ制御ユニットは、
負荷遮断障害が発生する前に、ターゲット電力として表される、前記燃料電池の出力電力を取得し、
前記燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されている前記ブリーダ回路のターンオンを制御し、前記ブリーダ回路の前記ブリーダ電力が前記ターゲット電力であるように、前記出力電力に従って前記DC-DC回路の前記出力電圧を調節するように構成されている、請求項6に記載の燃料電池スタック保護デバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、
第1の事前設定勾配に従って前記燃料電池内に注入される燃料の量を減らし、第2の事前設定勾配に従って前記燃料電池内の前記DC-DC回路の前記出力電圧を低下させるように構成された燃料調節ユニットをさらに備える、請求項6または7に記載の燃料電池スタック保護デバイス。
【請求項9】
前記ブリーダ制御ユニットは、
前記ブリーダ回路の前記ブリーダ電力をリアルタイムで監視し、前記ブリーダ回路の前記ブリーダ電力が事前設定安全閾値まで低下したことを検出したとき、前記ブリーダ回路をオフにして、前記燃料電池内のスタック事前充電ユニットをオフにするようにさらに構成されている、請求項6、7、または8に記載の燃料電池スタック保護デバイス。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか一項に記載の燃料電池スタック保護デバイスを備える燃料電池コントローラを備える、燃料電池電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新エネルギー車両の技術的分野に関し、特に、高電圧回路に負荷遮断障害が発生する燃料電池車両のための燃料電池スタック保護方法、デバイス、および燃料電池電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両(FCV)とは、車載燃料電池デバイスによって生成される電力を動力として使用する車両である。車載燃料電池デバイスに使用される燃料は、高純度の水素、または水素含有燃料由来の水素リッチ改質ガスである。FCVの電力は、車載燃料電池デバイスからのものであり、一般的なEVの電力は、送電網によって充電されるバッテリからのものである。したがって、FCVの鍵は、燃料電池であり、それは、FCVの性能に直接影響する。
【0003】
負荷遮断障害は、従来の電子回路にしばしば発生する障害の1つである。負荷遮断障害の種類は、回路の種類によって異なる。具体的な定義と説明については、自動車試験規格ISO7637を参照されたい。FCVの電力システムに予期せず高電圧停止が発生したとき、バッテリ管理システム(BMS)の配電ユニットおよびオールインワン制御ユニット内の継電器が開放され、燃料電池のスタックと車両のDCバスとの間の接続を切断し、スタックの負荷遮断障害が生じる結果となる。従来の技術的解決策では、燃料電池のスタックシステムに負荷遮断障害が発生した後、スタックに緊急シャットダウンが要求される。しかしながら、スタックの緊急シャットダウンは、スタックのパフォーマンス低下を生じる結果となり、したがって、スタックの寿命に影響を与える。
【発明の概要】
【0004】
これを鑑み、本発明の実施形態は、燃料電池の負荷遮断障害の場合に燃料電池のスタックを保護するように、燃料電池スタック保護方法、デバイス、および燃料電池電源システムを提供する。
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明の実施形態は、以下の技術的解決策を提供する。
【0006】
第1の態様は、燃料電池スタック保護方法であって、燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定することと、燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させることと、を含む方法を提供する。
【0007】
燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させることは、負荷遮断障害が発生する前に、ターゲット電力として表される、燃料電池の出力電力を取得することと、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路のターンオンを制御し、ブリーダ回路のブリーダ電力がターゲット電力であるように、出力電力に従ってDC-DC回路の出力電圧を調節することと、を含むことができる。
【0008】
燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させた後、燃料電池スタック保護方法は、第1の事前設定勾配に従って燃料電池内に注入される燃料の量を減らすことと、第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させることと、をさらに含むことができる。
【0009】
第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させる前に、方法は、第1の事前設定勾配と第2の事前設定勾配との間のマッピングが記憶されている事前設定勾配マッピングリストに基づいて、第1の事前設定勾配に適合する第2の事前設定勾配を取得することをさらに含むことができる。
【0010】
燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させた後、燃料電池スタック保護方法は、ブリーダ回路のブリーダ電力をリアルタイムで監視し、ブリーダ回路のブリーダ電力が事前設定安全閾値まで低下したことを検出したとき、ブリーダ回路をオフにして、燃料電池内のスタック事前充電ユニットをオフすることをさらに含むことができる。
【0011】
第2の態様は、燃料電池スタック保護デバイスであって、燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定するように構成された障害検出ユニットと、燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させるように構成されたブリーダ制御ユニットと、を備える燃料電池スタック保護デバイスを提供する。
【0012】
ブリーダ制御ユニットは、負荷遮断障害が発生する前に、ターゲット電力として表される、燃料電池の出力電力を取得し、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路のターンオンを制御し、ブリーダ回路のブリーダ電力がターゲット電力であるように、出力電力に従ってDC-DC回路の出力電圧を調節するように構成することができる。
【0013】
燃料電池スタック保護デバイスは、第1の事前設定勾配に従って燃料電池内に注入される燃料の量を減らし、第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させるように構成された燃料調節ユニットをさらに備えることができる。
【0014】
第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させる前に、燃料電池スタック保護デバイスの燃料調節ユニットは、第1の事前設定勾配と第2の事前設定勾配との間のマッピングが記憶されている事前設定勾配マッピングリストに基づいて、第1の事前設定勾配に適合する第2の事前設定勾配を取得するようにさらに構成することができる。
【0015】
燃料電池スタック保護デバイスのブリーダ制御ユニットは、ブリーダ回路のブリーダ電力をリアルタイムで監視し、ブリーダ回路のブリーダ電力が事前設定安全閾値まで低下したことを検出したとき、ブリーダ回路をオフにして、燃料電池内のスタック事前充電ユニットをオフにするようにさらに構成することができる。
【0016】
第3の態様は、燃料電池コントローラを備える燃料電池電源システムであって、燃料電池スタック保護デバイスが燃料電池コントローラに使用されている燃料電池電源システムを提供する。
【0017】
本発明の実施形態によって提供される上述の技術的解決策に基づき、燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路がオンにされてDC-DC回路を放電させ、したがって、燃料電池内のDC-DC回路は、電流を出力し続けることができ、それで、負荷遮断障害のために燃料電池スタックの電圧が急激に上昇するのを防ぎ、負荷遮断障害によって惹起される燃料電池スタックのいかなる損傷も防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態をより明確に説明するために、以下は、本発明の実施形態の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明の図面は、本発明のいくつかの実施形態にすぎない。
【0019】
図1】本願の一実施形態に開示される燃料電池スタック保護方法のフローチャートである。
図2】本願の一実施形態に開示される燃料電池スタック保護方法のフローチャートである。
図3】本願の一実施形態に開示される燃料電池スタック保護方法のフローチャートである。
図4】本願の一実施形態に開示される燃料電池スタック保護方法のフローチャートである。
図5】本願の一実施形態に開示される燃料電池スタック保護デバイスの構造の概略図である。
図6】本願の一実施形態に開示される燃料電池電源システムの構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は、図面と組み合わせて、本発明の実施形態における技術的解決策を明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施形態は、本願の実施形態の一部でしかなく、すべてではない。本発明の実施形態に基づいて、いかなる創造的な作業も伴わずに、当業者によって得られる他のすべての実施形態が、本発明の保護の範囲に含まれるべきである。
【0021】
負荷遮断障害の場合にスタックのいかなる損傷も防ぐために、本願は、燃料電池スタックを保護するための燃料電池スタック保護方法を開示する。ブリーダ回路が、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されており、ブリーダ回路の入力端はDC-DC回路の正の出力端に接続され、ブリーダ回路の出力端はDC-DC回路の負の出力端に接続されている。方法は、燃料電池の燃料電池コントローラに適用することができる。図1に示されたように、方法は、以下を含む。
【0022】
ステップS101:燃料電池の動作データを取得する。
【0023】
燃料電池の動作データは、燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを、例えば燃料電池内のDC-DC回路の出力端から出力された電流信号を検出するために使用される動作データである。DC-DC回路の出力端からの電流出力が急激に低下したとき、それは、燃料電池に負荷遮断障害が発生したことを示す。急激に低下することは、ある現時点におけるDC-DC回路の出力端からの電流出力と、ある前時点におけるDC-DC回路の出力端からの電流出力との差が、事前設定電流差よりも大きいことを意味し得る。
【0024】
ステップS102:動作データに基づいて燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定し、燃料電池に負荷遮断障害が発生した場合に、ステップS103を実行する。
【0025】
動作データがDC-DC回路の出力端からの電流出力であるとき、DC-DC回路の出力端からの電流出力が急激に低下したかどうかを判定する。電流が急激に低下した(燃料電池に負荷遮断障害が発生したことを示す)場合は、ステップS103を実行し、それ以外の場合は、DC-DC回路の出力端からの電流出力を監視し続ける。
【0026】
ステップS103:燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させる。
【0027】
本願の実施形態に開示される技術的解決策では、燃料電池の負荷遮断障害が監視されているとき、DC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路がオンにされ、ブリーダ回路はDC-DC回路を放電させて、DC-DC回路から出力される電気エネルギーを消費し、したがって、燃料電池スタックの急激な電圧上昇を防ぐ。
【0028】
上述の技術的解決策から、燃料電池の動作状態は、本願における燃料電池の動作データに従って分析されることが分かる。負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路がオンにされてDC-DC回路を放電させ、したがって、燃料電池内のDC-DC回路は電流を出力し続けることができ、それで、負荷遮断障害のために燃料電池スタックの電圧が急激に上昇するのを防ぎ、負荷遮断障害によって惹起される燃料電池スタックのいかなる損傷も防ぐ。
【0029】
ブリーダ回路のブリーダ電力は、DC-DC回路の出力電圧Uおよびブリーダ回路の等価抵抗Rに依存し、すなわち、ブリーダ回路のブリーダ電力は、U/Rである。したがって、DC-DC回路の出力電圧Uまたはブリーダ回路の等価抵抗Rを、ブリーダ電圧が負荷遮断障害の前の出力電圧と一致し、かつスタックの出力電圧の変化が最小であるように調節することによって、ブリーダ回路のブリーダ電圧を調節することができ、それで、負荷遮断障害によって惹起されるスタックの損傷を最大限に低減し、スタックを効果的に保護する。これを鑑み、本願の上述の実施形態に開示された技術的解決策では、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させることは、以下を含む。
【0030】
ステップS201:負荷遮断障害が発生する前に、ターゲット電力として表される、燃料電池の出力電力を取得する。
【0031】
このステップでは、負荷遮断障害の前の燃料電池の出力電力は、負荷遮断障害の前の燃料電池の動作データを計算することによって得られ、出力電力は、ブリーダ回路のターゲット電力として表される。
【0032】
ステップS202:燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路のターンオンを制御する。
【0033】
ブリーダ回路がオンにされた後、DC-DC回路の出力電流はブリーダ回路に流入し、ブリーダ回路の抵抗器によって消費される。
【0034】
ステップS203:ブリーダ回路のブリーダ電力がターゲット電力であるように、出力電力に従ってDC-DC回路の出力電圧を調整する。
【0035】
このステップでは、燃料電池の出力電力を、負荷遮断障害の前の出力電力と一致させておくために、ブリーダ回路のブリーダ電力がターゲット電力であるように、DC-DC回路の出力電圧を調節することによって、ブリーダ回路のブリーダ電力を増加または減少させることができる。もちろん、ブリーダ回路のブリーダ電力は、ブリーダ回路の等価抵抗を調節することによって調節することもできる。
【0036】
本願の実施形態に開示される技術的解決策では、燃料電池の負荷遮断障害が検出された後、エネルギー浪費を低減する目的で、燃料電池に供給される燃料の量を、燃料電池が動作を停止するまで、徐々に減少させる必要がある。詳細については、図3を参照されたい。上述の技術的解決策では、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させた後、方法は、以下を含む。
【0037】
ステップS301:第1の事前設定勾配に従って燃料電池内に注入される燃料の量を減らす。
【0038】
ステップS302:第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させる。
【0039】
第1の事前設定勾配および第2の事前設定勾配は、設計要件に従って、ユーザが事前設定することができる。もちろん、燃料電池内に注入される燃料の量が異なる場合、燃料電池内のDC-DC回路の出力端から出力されることが可能な電圧もまた異なる。これを鑑み、第2の事前設定勾配は、第1の事前設定勾配に従って決定することができる。すなわち、第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させる前に、方法は、第1の事前設定勾配と第2の事前設定勾配との間のマッピングが記憶されている事前設定勾配マッピングリストに基づいて、第1の事前設定勾配に適合する第2の事前設定勾配を取得すること、をさらに含む。事前設定マッピングは、前もって作成される。第2の事前設定勾配は、既知の第1の事前設定勾配に基づいて事前設定勾配マッピングリストを検索することによって得ることができる。
【0040】
本願の上述の実施形態に開示された技術的解決策では、燃料電池の出力電力が安全閾値を下回ったとき、燃料電池をシャットダウンすることができる。この場合、燃料電池のシャットダウンは、燃料電池の寿命に影響しない。ブリーダ回路のブリーダ電力は、燃料電池の出力電力を表すことができるので、燃料電池をシャットダウンさせることができるかどうかは、ブリーダ電力を検出することによって決定することができる。詳細については、図4を参照されたい。燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させた後、方法は、以下をさらに含む。
【0041】
ステップS401:ブリーダ回路のブリーダ電力をリアルタイムで監視する。
【0042】
ブリーダ電力は、DC-DC回路の出力電圧とブリーダ回路の等価抵抗とに基づく計算によって得ることができる。
【0043】
ステップS402:ブリーダ電力が事前設定安全閾値よりも大きいかどうかを判定し、検出されたブリーダ回路のブリーダ電力が事前設定安全閾値まで低下した場合、ステップS403を実行する。
【0044】
ステップS403:ブリーダ回路をオフにして、燃料電池内のスタック事前充電ユニットをオフにする。
【0045】
上述の技術的解決策では、事前設定安全閾値は、ユーザの要求に従ってユーザが設定することができる。さらに、事前設定安全閾値は、燃料電池の老化度に従って調節することができる。これは、燃料電池がシャットダウンされたとき、燃料電池の老化度が高いほど、燃料電池への電流の影響が大きいためである。したがって、新品の燃料電池と一定期間使用された燃料電池とに同じ事前設定安全閾値が採用された場合、シャットダウンによって惹起される一定期間使用された燃料電池の損傷は、新品の燃料電池の損傷よりも重い。これを鑑み、本願の実施形態に開示される技術的解決策では、事前設定安全閾値は、燃料電池の老化度に従ってさらに事前設定することができ、燃料電池の老化度は、燃料電池の動作時間と、異なる動作時間にわたる燃料電池の対応する出力電力とに基づく計算によって得ることができ、老化度と事前設定安全閾値との間のマッピングは、表を検索することによって得ることができる。老化度が得られた後、表を検索することにより、老化度に対応する事前設定安全閾値を得ることができる。
【0046】
本願は、燃料電池スタック保護デバイスをさらに開示する。燃料電池スタック保護デバイスのユニットの特定の動作については、上述の方法の実施形態の内容を参照されたい。以下は、本発明の実施形態によって提供される燃料電池スタック保護デバイスを説明する。以下の燃料電池スタック保護デバイスの説明では、燃料電池スタック保護方法の説明を参照することができる。
【0047】
図5に示されたように、燃料電池スタック保護デバイスは、燃料電池に負荷遮断障害が発生したかどうかを判定するように構成された障害検出ユニット100と、燃料電池に負荷遮断障害が発生したとき、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路を制御してDC-DC回路を放電させるように構成されたブリーダ制御ユニット200とを備える。
【0048】
上述の方法に対応して、燃料電池スタック保護デバイスでは、ブリーダ制御ユニットは、負荷遮断障害が発生する前に、ターゲット電力として表される、燃料電池の出力電力を取得し、燃料電池内のDC-DC回路の出力端に接続されているブリーダ回路のターンオンを制御して、ブリーダ回路のブリーダ電力がターゲット電力であるように、出力電力に従ってDC-DC回路の出力電圧を調節するように特に構成されている。
【0049】
上述の方法に対応して、燃料電池スタック保護デバイスは、第1の事前設定勾配に従って燃料電池内に注入される燃料の量を減少させ、第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させるように構成された燃料調節ユニットをさらに備える。
【0050】
上述の方法に対応して、第2の事前設定勾配に従って燃料電池内のDC-DC回路の出力電圧を低下させる前に、燃料電池スタック保護デバイスの燃料調節ユニットは、第1の事前設定勾配と第2の事前設定勾配との間のマッピングが記憶されている事前設定勾配マッピングリストに基づいて、第1の事前設定勾配に適合する第2の事前設定勾配を取得するようにさらに構成されている。
【0051】
上述の方法に対応して、燃料電池スタック保護デバイスのブリーダ制御ユニットは、ブリーダ回路のブリーダ電力をリアルタイムで監視し、ブリーダ回路のブリーダ電力が事前設定安全閾値まで低下したことを検出したとき、ブリーダ回路をオフにして、燃料電池内のスタック事前充電ユニットをオフにするようにさらに構成されている。
【0052】
上述の方法に対応して、燃料電池スタック保護デバイスは、燃料電池の老化度に従って事前設定安全閾値を自動的に調節するように構成された安全閾値調節ユニットをさらに備え得、燃料電池の老化度は、燃料電池の動作時間と、異なる動作時間にわたる燃料電池の対応する出力電力とに基づく計算によって得ることができ、老化度と事前設定安全閾値との間のマッピングは、表を検索することによって得ることができる。老化度が得られた後、表を検索することにより、老化度に対応する事前設定安全閾値を得ることができる。
【0053】
燃料電池スタック保護デバイスに対応して、本願は、燃料電池電源システムをさらに開示し、燃料電池電源システムは、燃料電池コントローラを伴って構成され、本願のいずれかの実施形態に説明されている燃料電池スタック保護デバイスが、燃料電池コントローラに使用される。
【0054】
詳細については、図6を参照されたい。燃料電池電源システムは、ガス制御ユニット1、空気制御ユニット2、水制御ユニット3、スタックモジュール4(上述のスタック)、スタック事前充電ユニット5、燃料電池制御ユニット(FCU)6、DC-DC回路7、ブリーダ回路8、電源バッテリ9(BMSを含む)、オールインワンコントローラ10、高電圧部品11、および車両制御ユニット(VCU)12を備え得る。
【0055】
特に、ガス制御ユニット1、空気制御ユニット2、および水制御ユニット3の出力端は、スタックモジュール4の入力端に接続されており、ガス制御ユニット1は、スタックモジュール4内に注入されるガスの量を制御するように構成され、ガス制御ユニット2は、スタックモジュール4内に注入される空気の量を制御するように構成され、水制御ユニット3は、スタックモジュール4内に注入される水の量を制御するように構成されている。
【0056】
[0040]スタック事前充電ユニット5は、スタックモジュール4の出力端とDC-DC回路7の入力端との間に配置されており、ブリーダ回路8は、DC-DC回路7の2つの出力端に並列に接続されており、燃料電池制御ユニット(FCU)6は、DC-DC回路および電源バッテリ9に接続され、DC-DC回路7および電源バッテリ9の動作データを取得し、そしてDC-DC回路7および電源バッテリ9に制御コマンドを送信するように構成されている。
【0057】
オールインワンコントローラ10は、電源バッテリ9の出力端と高電圧部品11の入力端との間に配置されており、車両制御ユニット(VCU)12は、電源バッテリ9、オールインワンコントローラ10、および高電圧部品11に接続され、電源バッテリ9、オールインワンコントローラ10、および高電圧部品11の動作データを取得し、そして制御コマンドを電源バッテリ9、オールインワンコントローラ10、および高電圧部品11に送信するように構成されている。
【0058】
ブリーダ回路8の構造は、ユーザ要件に従って設定され得る。例えば、図4に示されたように、本願の実施形態に開示される技術的解決策におけるブリーダ回路8は、電源電子スイッチKと、直列に接続された電源抵抗器Rとからなる。電源電子スイッチKおよび電源抵抗器Rからなる直列支線の一方の端部は、DC-DC回路の正の出力端に接続され、他方の端部は負の出力端に接続されている。したがって、ブリーダ回路は、電源バッテリのDCバスに接続されていることが分かる。ブリーダ回路の電源電子スイッチは、ソリッドステートリレー、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、およびSiCチューブなどの非接触電源デバイスであり得、電源抵抗器Rは、調整可能な電源抵抗器であり得る。
【0059】
EVの電源システムに予期せず高電圧停止が発生したとき、バッテリ管理システム(BMS)の配電ユニットおよびオールインワン制御ユニット内の継電器が開放され、車両のスタックとDCバスとの間の接続を切断し、スタックの負荷遮断障害が生じる結果となる。この場合、FCU6内の燃料電池スタック保護デバイスが、DC-DC回路7の出力電流の急激な低下を検出し、燃料電池に負荷遮断障害が発生したと判定し、次いでフォローアップ動作を実行する。
【0060】
一言で言えば、本願の実施形態で開示される技術的解決策では、燃料電池の高電圧回路に負荷遮断障害が発生した後、ブリーダ回路は、DC-DC回路の出力端に直ちに切り替わって、スタックの負荷遮断障害を防ぐ。さらに、スタック内に注入されるガス、空気、および水の物理的パラメータが制御される。したがって、スタックは、効果的に保護され、システムの安全性が改善される。
【0061】
FCUにブリーダ回路を制御させることによって、ブリーダ抵抗器は、スタック負荷に素早く切り替わって、スタック電圧の劇的な変化を防ぐことができる。さらに、スタックは、制御下で、電力削減モードおよび安全シャットダウンモードに入り、効果的に、スタックの性能低下を防ぎ、スタックの寿命を延ばす。
【0062】
説明の便宜性のために、システムが説明されるとき、システムは、異なるモジュールに機能的に分割され、これらのモジュールがそれぞれ説明されている。もちろん、異なるモジュールの機能は、本発明が実装されたとき、1つ以上のソフトウェアおよび/またはハードウェアで実現することができる。
【0063】
説明の実施形態は、漸次的に説明されている。実施形態間の同じまたは類似の部分については、これらの実施形態を参照されたい。各実施形態は、他の実施形態との違いに焦点を当てている。特に、システムまたはシステムの実施形態の説明は、それらが方法の実施形態に類似しているので、簡略的である。関連する部分については、方法の実施形態の説明を参照されたい。上述のシステムおよびシステムの実施形態は、例示的な目的でのみ与えられている。別個の部分として説明されたユニットまたはモジュールは、物理的に分離されていても、いなくてもよく、ユニットとして示された部分は、物理的なユニットであっても、なくてもよく、すなわち、それは、1つの場所に位置してもよいし、または複数のネットワークユニットに分散されていてもよい。モジュールの一部またはすべてが、実際の要件に従って実施形態における解決策を実現するように選択され得る。当業者は、いかなる創造的な作業も伴わずに、解決策を理解し、実装することができる。
【0064】
当業者は、本文書に開示された実施形態に示された例示的なユニットおよびアルゴリズムステップが、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、または両方の組み合わせを使用することによって実現され得ることをさらに認識し得る。ハードウェアおよびソフトウェアの互換性を明確に説明するために、実施例における構成およびステップは、概して、機能によって示されてきた。これらの機能がハードウェアまたはソフトウェアによって実装されるかどうかは、技術的解決策の特定の適用および設計の制約事項に依存する。当業者は、各特定の用途に対して異なる方法を使用して、示された機能を実装し得るが、そのような実装は、本発明の範囲を超えると考えられるべきではない。
【0065】
本文書に開示された実施形態に示された方法またはアルゴリズムステップは、ハードウェア、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュール、または両方の組み合わせを直接使用することによって実装することができる。ソフトウェアモジュールは、RAM、メモリ、ROM、電気的にプログラム可能なROM、電気的に消去可能・プログラム可能なROM、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、DC-ROM、または記憶媒体に、当該技術分野における任意の他の周知の形態で配備され得る。
【0066】
本願における第1のおよび第2のなど用語は、1つのエンティティまたは動作を別のエンティティまたは動作と区別するためにのみ使用され、但し、エンティティまたは動作間の任意の実際の関係または順番を要求したり、または暗示することはないことに留意されたい。加えて、用語「備える(comprise)」および「含む(include)」ならびにそれらの変形は、非排他的包含を含めることが意図されており、したがって、一連の要素を備えるプロセス、方法、物品、もしくはデバイスは、これらの要素を備えるだけでなく、明確に列挙されていない他の要素を備えたり、またはプロセス、方法、物品、もしくはデバイスに固有の要素を備える。これ以上の制限なしに、「1つの...を備える」によって定義される要素は、その要素を備えるプロセス、方法、物品、またはデバイスに、他の同一の要素が存在する場合を除外しない。
【0067】
開示された実施形態の説明は、当業者が本発明を実現または使用することを可能にする。これらの実施形態に対する様々な改変が、当業者には明らかである。本文書で定義された一般的な原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態で実装することができる。したがって、本発明は、本文書の実施形態に限定されないが、本文書に開示された原理および新規性の特徴と一致する最も広い範囲に準拠する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】