(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(54)【発明の名称】椎間板変性疾患の治療、及び繊維芽細胞ならし培地によるタンパク質グリカン合成の刺激、並びにその製剤
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20221107BHJP
C07K 14/485 20060101ALI20221107BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20221107BHJP
C07K 14/50 20060101ALI20221107BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20221107BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20221107BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20221107BHJP
A61P 19/04 20060101ALI20221107BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
C12N5/071
C07K14/485
C07K14/475
C07K14/50
A61K35/15 Z
A61K35/28
A61K38/18
A61P19/04
A61K39/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516641
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020051036
(87)【国際公開番号】W WO2021055448
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516071686
【氏名又は名称】フィジーン、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FIGENE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オヒーロン、ピート
(72)【発明者】
【氏名】イチム、トーマス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4C084ZA96
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4C087ZA96
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】
いくつかの態様において、開示されるのは、線維芽細胞からのならし培地からの1つ以上の成分を使用する、椎間板再生及び/又は修復のための方法及び組成物である。ある場合には、1つ又は複数のオピオイド受容体アンタゴニスト、及び、1つ又は複数のトール様受容体アゴニストで刺激された線維芽細胞から馴化培地を得る。線維芽細胞からの調整培地は、それを必要とする個体に有効量で提供され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のトール様受容体(TLR)アゴニストと共に培養された線維芽細胞に由来する1つ以上の成分を含む、組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の成分は、線維芽細胞の培養物由来の培地に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の成分は、1つ以上の成長因子を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記成長因子は、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)-1、FGF-2、FGF-5、FGF-15、インスリン様成長因子(IGF)、胎盤成長因子、肝細胞成長因子(HGF)、又はそれらの組み合わせである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記1つ以上の成分は、エキソソームを含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記エキソソームは、CD9を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記エキソソームは、樹状細胞及び/又は間葉幹細胞に結合することができる、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
オピオイド受容体拮抗薬は、ナルトレキソン、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐メチルナルトレキソン、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロリンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベノプラン、メチルサミドルファン、ナルデメジン、又はこれらの組合せである、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
TLRアゴニストは、Pam3CSK4、LPS、CpG DNA、ポリ(ic)、フラジェリン、MALP-2、イミキモド、レスミキモド、ザイモサン、又はそれらの組み合わせである、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記線維芽細胞は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストと共に増殖状態において培養された、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、Stella、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記線維芽細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、CD90、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記線維芽細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQ、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
個体における椎間板再生を促進する方法であって、前記方法は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のトール様受容体(TLR)アゴニストと共に培養された線維芽細胞に由来する1つ以上の成分の有効量を個体に提供することを含む、方法。
【請求項16】
前記1つ以上の成分は、線維芽細胞の培養由来の培地に由来する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の成分は、エキソソームを含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記エキソソームは、CD9を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エキソソームは、樹状細胞及び/又は間葉幹細胞に結合することができる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記オピオイド受容体拮抗薬は、ナルトレキソン、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐メチルナルトレキソン、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロリンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベノプラン、メチルサミドルファン、ナルデメジン、又はこれらの組合せである、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記TLRアゴニストは、Pam3CSK4、LPS、CpG DNA、ポリ(ic)、フラジェリン、MALP-2、イミキモド、レスミキモド、ザイモサン、又はそれらの組み合わせである、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記線維芽細胞は、前記1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び前記1つ以上のTLRアゴニストと共に増殖状態において培養された、請求項16~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、Stella、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項16~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記線維芽細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項16~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、CD90、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項16~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記線維芽細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQ、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項16~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上の成分は、個体に椎間板内投与される、請求項16~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記1つ以上の成分は、個体に全身的に投与される、請求項16~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
個体における椎間板再生を促進する方法であって、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のトール様受容体(TLR)アゴニストで予め培養された有効量の線維芽細胞を個体に提供することを含む方法。
【請求項30】
前記オピオイド受容体アンタゴニストは、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐methylnaltrexone、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベベノプラン、メチルサミドルファン、ナルデメジン、又はそれらの組合せである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記TLRアゴニストは、Pam3CSK4、LPS、CpG DNA、ポリ(ic)、フラジェリン、MALP-2、イミキモド、レスミキモド、チモサン、又はそれらの組み合わせである、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記線維芽細胞を、オピオイド受容体アンタゴニスト及びTLRアゴニストと共に増殖状態において培養した、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、Stella、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記線維芽細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項29~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、CD90、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項29~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記線維芽細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQ、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項29~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記線維芽細胞は、個体に椎間板内投与される、請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記線維芽細胞は、個体に全身的に投与される、請求項29~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
線維芽細胞から1つ以上の成分を生成する方法であって、線維芽細胞を1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のトール様受容体(TLR)アゴニストと共に培養することを含む方法。
【請求項40】
前記オピオイド受容体アンタゴニストは、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐メチルナルトレキソン、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベベノプラン、メチルサミドルファン、ナルデメジン、又はそれらの組合せである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記TLRアゴニストは、Pam3CSK4、LPS、CpG DNA、ポリ(ic)、フラジェリン、MALP-2、イミキモド、レスミキモド、チモサン、又はそれらの組み合わせである、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記線維芽細胞を増殖状態において培養した、請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、Stella、又はそれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項39~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記線維芽細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現する、請求項39~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、CD90、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項39~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記線維芽細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQ、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない、請求項39~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
培養の前に、個体からの生物学的サンプルから線維芽細胞を単離することをさらに含む、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
寛容原性療法の効力を改善するための方法であって、前記方法は以下を含む:
(a)個人に寛容性療法を提供すること、及び
(b)寛容誘発療法の有効性を増強するのに十分な1つ以上のオピオイド受容体拮抗薬の有効量を個人に提供すること。
【請求項49】
前記寛容原性治療は、自己抗原投与を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記自己抗原投与は、静脈内投与及び/又は経口投与を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記自己抗原投与は、個体に提供することを含む、請求項49又は50に記載の方法:
(a)自己抗原を含む未成熟抗原提示細胞、
(b)自己抗原を含む寛容原性抗原提示細胞、
(c)自己抗原を含む間葉幹細胞、
(d)自己抗原を含む造血幹細胞、
(e)同種間葉系幹細胞、又は
(f)これらの組み合わせ。
【請求項52】
寛容原性抗原提示細胞は、樹状細胞である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
オピオイド受容体拮抗薬は、ナルトレキソン、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐メチルナルトレキソン、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロリンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベノプラン、メチルサミドルファン、ナルデメジン、又はこれらの組合せである、請求項48~52のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、令和1年9月16日に出願された米国仮特許出願第62/901164号の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示の実施形態は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、及び医学の分野を含む。
【背景技術】
【0003】
椎間板は、コラーゲン、水、及びプロテオグリカンの高度に組織化されたマトリックスから作製される。椎間板におけるプロテオグリカン産生は、分化した軟骨細胞によって起こると考えられている。各椎間板は、弾性で高度に線維性の線維輪(輪)によって囲まれた中央の高度に水和したゼラチン状の髄核(核)を含む。軟骨終板は、椎間板の下及び上の椎骨への接続を提供する。椎間板内のこの緩衝された配置は、椎間板が脊椎内の運動及び可撓性を促進する一方で、脊椎を通る液圧を消散させることを可能にする。
【0004】
老化、機械的ストレス、及び/又は他の環境及び/又は遺伝的変化の結果として、椎間板は変性し始めることがある。老化に伴い、板(disc)のマトリックスは、実質的な構造的、分子的、及び機械的変化を受けることが知られている。本開示は、椎間板変性の治療のための組成物及び方法の当技術分野において長い間感じられてきた必要性を満たす。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、個体における椎間板再生及び/又は修復を促進することに関連する方法及び組成物を対象とする。刺激された線維芽細胞由来の1つ以上の成分を使用して、個体における椎間板再生及び/又は修復を促進するための方法が、本明細書中に開示される。特定の実施形態では、本開示の組成物が1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のトール(toll)様受容体(TLR)アゴニストと共に培養された線維芽細胞由来の1つ以上の成分を含む。いくつかの実施形態は細胞集団からの線維芽細胞再生細胞の単離に関し、必要に応じて、治療目的のために培養された線維芽細胞が存在する培地中の成分を使用する。
【0006】
いくつかの実施形態では、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストと共に培養された線維芽細胞に由来する1つ以上の成分を含む組成物が本明細書に提供される。1つ以上の成分は、線維芽細胞の培養物由来の培地に由来し得る。1つ又は複数の成分は1つ又は複数の成長因子、例えば、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)-1、FGF-2、FGF-5、FGF-15、インスリン様成長因子(IGF)、胎盤成長因子、及び肝細胞成長因子(HGF)を含むことができ、特定の実施形態では、1つ又は複数の成長因子が特定の条件下で培養された線維芽細胞に由来する。いくつかの実施形態において、1つ以上の成分は、エキソソームを含む。エキソソームは1つ以上のマーカー(例えば、CD9)を含み得る。いくつかの実施形態では、エキソソームが樹状細胞及び/又は間葉幹細胞に結合することができる。さらなる態様において、1つ以上の成分は、細胞に対する増殖状態において、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストで培養された線維芽細胞に由来した。
【0007】
いくつかの実施形態では、オピオイド受容体拮抗薬は、ナルトレキソン、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐メチルナルトレキソン、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベベノプラン、メチルサミドルファン、ナルデメジン、又はそれらの組合せである。いくつかの実施形態において、TLRアゴニストは、Pam3CSK4、LPS、CpG DNA、Poly(ic)、フラジェリン、MALP-2、イミキモド、レスミキモド、チモサン、又はそれらの組み合わせである。いくつかの態様において、線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、Stella、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるマーカーを発現する。さらなる実施態様において、線維芽細胞は、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現する。ある場合には、線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、CD90、及びこれらの組合せからなる基由来のマーカーを発現しない。場合によっては、線維芽細胞がCD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、HLA-DQ、及びこれらの組合せからなる群より選択されるマーカーを発現しない。
【0008】
さらなる態様において、個体における椎間板再生を促進する方法が提供され、この方法は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のトール様受容体(TLR)アゴニストとともに培養された線維芽細胞由来の1つ以上の成分の有効量を個体に提供することを包含する。いくつかの場合において、椎間板再生を促進するための方法は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストとともに以前に培養された有効量の線維芽細胞(及び/又はそれに由来する成分)を個体に提供する工程を包含する。1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニスト、及び/又はそれらからの1つ以上の成分(例えば、1つ以上の再生因子)とともに培養された線維芽細胞は、少なくとも局所的(例えば、椎間板内)又は全身的を含む、任意の適切な送達経路で個体に提供され得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されるのは、寛容原性療法の効力を改善するための方法であり、この方法は、(a)個体に寛容原性療法を提供する工程、及び(b)個体に、寛容原性療法の効力を増強するのに十分な量の1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニストを提供する工程を包含する。寛容誘発療法は、静脈内及び/又は経口的に投与され得る自己抗原投与を含み得る。いくつかの実施形態において、自己抗原投与は、自己抗原を含む未成熟抗原提示細胞を提供すること、自己抗原を含む寛容原提示細胞を提供すること、自己抗原を含む間葉系幹細胞を提供すること、自己抗原を含む造血幹細胞を提供すること、及び/又は同種間葉系幹細胞を提供することを含む。寛容原性抗原提示細胞は、場合によっては樹状細胞であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、ナルトレキソン及び示されたトール様受容体(TLR)アゴニストで培養した新生児包皮細胞からの上皮成長因子(EGF)産生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.定義例
長年にわたる特許法条約に従い、本明細書において使用される場合の用語「a」及び「an」は、特許請求の範囲を含む単語と併せて、「1つ以上」を意味する。本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の言及を含む。例えば、用語「核酸」は、複数の核酸(それらの混合物を含む)を含む。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つ以上の要素、方法ステップ、及び/又は方法から構成されてもよく、又は本質的にそれらから構成されてもよい。本明細書に記載の任意の方法又は組成物は本明細書に記載の任意の他の方法又は組成物に関して実施することができ、異なる実施形態を組み合わせることができることが企図される。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「約」又は「およそ」は、参照量、レベル、数、頻度、パーセンテージ、寸法、量、重量、又は長さに対して30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%ほど変化する量、レベル、数、パーセンテージ、サイズ、パーセンテージ、寸法、量、重量又は長さを指す。特定の実施形態では、用語「約」又は「約」が数値に先行する場合、15%、10%、5%、又は1%の範囲をプラス又はマイナスする値を示す。生物学的系又はプロセスに関して、この用語は、値のオーダー内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特に明記しない限り、「約」という語は、特定の数値に対する許容誤差範囲内に手段する。
【0013】
用語「投与される」又は「投与する」は、本明細書中で使用される場合、組成物が患者に対して意図される効果を有するように、組成物を個体に提供する任意の方法をいう。例えば、投与の1つの方法はカテーテル、アプリケーターガン、シリンジなどの医療デバイスを使用する間接機構によるものであるが、これらに限定されない。第2の例示的な投与方法は直接機構、例えば、局所組織投与、経口摂取、経皮パッチ、局所、吸入、坐薬などによる。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「同種異系」は、同じ種の1つ以上の個体由来であるが、天然の設定において免疫学的に不適合であるか、又は免疫学的に不適合であり得る、別の身体由来の組織又は細胞又は他の物質をいう。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「同種移植」は、ドナーからレシピエントへの器官、組織、及び/又は細胞の移植をいい、ここで、ドナー及びレシピエントは異なる個体であるが、同じ種のものである。このような手順によって移植された組織は、同種移植片又は同種移植と呼ばれる。
【0016】
本明細書中で使用される、用語「同種刺激性」及び「同種反応物性」は、同種抗原、又は異種HLAハプロタイプを発現する「同種抗原」もしくは細胞に応答する免疫系の刺激及び反応物を意味する。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「自己」とは、同じ個体の身体に由来するか、又はそれから移入される組織又は細胞又は他の物質(すなわち、自己献血、自己骨髄移植)をいう。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「自己移植」は個体における身体のある部分から同じ個体における別の部分への器官、組織、及び/又は細胞の移植をいう(すなわち、ドナー及びレシピエントは、同じ個体である)。このような「自家」手技によって移植された組織は、自家移植片、又は自家移植と呼ばれる。
【0019】
用語「生物学的に活性である」は、構造的、調節的又は生化学的機能を有する任意の分子を指す。例えば、生物学的活性は、例えば、タンパク質活性を欠く細胞における野生型増殖の回復によって決定され得る。タンパク質活性を欠く細胞は、多くの方法(すなわち、例えば、点変異及びフレームシフト変異)によって産生され得る、相補性は、タンパク質活性を欠く細胞を、タンパク質、その誘導体、又はその一部を発現する発現ベクターでトランスフェクトすることによって達成される。他の場合において、遺伝子産物のフラグメント(例えば、タンパク質)は、それが全長遺伝子産物の活性を保持する場合、生物学的に活性であると考えられ得る(又は機能的に活性であると呼ばれ得る)がそれは全長遺伝子産物の活性の減少したが検出可能なレベルであり得る。
【0020】
「細胞培養物」は、静止、老化、又は(活発に)分裂しているかどうかにかかわらず、生存細胞を含有する人工インビトロ系である。細胞培養では、細胞が適当な温度、典型的には37℃の温度で、典型的には酸素及びCO2を含む大気中で増殖され、維持されるが、他の場合にはこれらは変更される。培養条件は、各細胞型について広範に変動し得るが、特定の細胞型についての条件の変動は、発現される異なる表現型を生じ得る。培養系において最も一般的に変化する因子は、増殖培地である。増殖培地は、栄養素、成長因子の濃度、及び他の成分の存在において変化し得る。培地を補充するために使用される成長因子は、しばしば、ウシ血清のような動物血液に由来する。
【0021】
本明細書全体を通して、文脈が別段の要求をしない限り、用語「備える」、「備える」、及び「備える」は記載されたステップ又は要素、又はステップ又は要素のグループの包含を意味するが、他のステップ又は要素、又はステップ又は要素のグループの排除を意味しないことが理解されるのであろう。「consisting of」とは「consisting of」という語句の後に続くものを含むことを意味し、これに限定されるものではない。したがって、「consisting of」という語句は列挙された要素が必須又は必須であること、及び他の要素が存在しないことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙される要素についての開示において特定される活性又は作用を妨害しないか、又はそれに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「から本質的になる」という語句は列挙された要素が必要又は必須であることを示すが、他の要素は任意ではなく、列挙された要素の活動又は作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在しても存在しなくてもよい。
【0022】
本明細書で使用される用語「薬物」、「薬剤」又は「化合物」は、所望の効果を達成する、投与することができる任意の薬理学的に活性な物質を指す。薬物又は化合物は、合成又は天然に存在する、非ペプチド、タンパク質又はペプチド、オリゴヌクレオチド、又はヌクレオチド(DNA及び/又はRNA)、多糖又は糖であり得る。
【0023】
本明細書で使用される「個体」という用語は、医療施設に収容されてもされなくてもよく、医療施設の外来患者として治療されてもよい、ヒト又は動物を指す。個体は、インターネットを介して1つ以上の医療組成物を受けていてもよい。個体は、ヒト又は非ヒト動物の任意の年齢を含み得、したがって、成人及び幼児(すなわち、子供)ならびに乳児の両方を含む。用語「個体」は、医学的治療の必要性を意味することは意図されておらず、従って、個人は、臨床的なものであろうと基礎科学の研究を支持するものであろうと、自発的に又は非自発的に実験の一部であろう。用語「対象」又は「個体」は、哺乳動物、例えば、ヒト、実験動物(例えば、霊長類、ラット、マウス、ウサギ)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、七面鳥、及びニワトリ)、家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコ、及びげっ歯類)、ウマ、並びにトランスジェニック非ヒト動物を含む、方法又は材料の対象である任意の生物又は動物対象を指す。
【0024】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、又は「さらなる実施形態」、又はそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の機能、構成、又は特徴が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを手段する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているわけではない。さらに、特別な特徴、構造又は特質は1以上の実施形態において任意の適当な方法で組み合わせられ得る。
【0025】
本明細書で使用されるように、用語「又は」及び「及び/又は」は、複数の構成要素を組み合わせて、又は互いに排他的に説明するために利用される。例えば、「x、y、及び/又はz」は「x」単独、「y」単独、「z」単独、「x、y、及びz」、「(x及びy)又はz」、「x又は(y及びz)」又は「x又はy又はz」を意味することができ、具体的にはx、y、又はzは実施形態から特に除外され得ることが企図される。
【0026】
本明細書中で使用される用語「薬学的に」又は「薬理学的に許容される」は、動物又はヒトに投与された場合に、有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物をいう。
【0027】
本明細書中で使用される用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、ならびに植物油、コーティング、等張性及び吸収遅延剤、リポソーム、商業的に入手可能な洗浄剤などを含むが、これらに限定されない、任意の及び全ての溶媒、又は分散媒体を含む。補助的な生物活性成分もまた、このようなキャリアに組み込まれ得る。
【0028】
治療された被験体と比較して、治療されていない被験体における任意の症状の発現を参照する場合、用語「減少」、「抑制」、「減少」、「減少」、「予防」及び文法的等価物(「より低い」、「より小さい」などを含む)は、治療された被験体における症状の量及び/又は大きさが、任意の医学的に訓練された職員によって臨床的に関連すると認識される任意の量によって、治療された被験体における症状の量及び/又は大きさよりも低いことを意味する。一実施形態では、治療対象における症状の量及び/又は大きさは未治療対象における症状の量及び/又は大きさよりも少なくとも10%低く、少なくとも25%低く、少なくとも50%低く、少なくとも75%低く、及び/又は少なくとも90%低い。
【0029】
血管新生及び/又は傷の治癒を調節する際に「治療効力」を有するのに手段な「治療剤」及び治療剤の量は、その量の治療剤の投与が血管新生の調節を必要とする対象(例えば、動物モデル又はヒト患者)に投与された場合に血管新生活性の有意な調節(すなわち、増大又は低下)を引き起こすのに充分である場合、「血管新生調節量」であると言われる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は「有効量」、「治療有効量」及び/又は「有効量」と同義であり、そしてそれを必要とする個体において開業医によって求められる生物学的、美容的又は臨床的応答を誘発する化合物の量をいう。一例として、有効量は、細胞群の免疫原性を低下させるのに十分な量である。非限定的な例として、有効量は、移植された組織を支持するのに十分な血液供給の形成を促進するのに十分な量である。別の非限定的な例として、有効量は、新しい血管及び関連する血管系(血管形成)の形成を促進するのに十分な量、及び/又は既存の血管及び関連する血管系の修復又はリモデリングを促進するのに十分な量である。開示される方法の特定の適用のために投与されるべき適切な有効量は、本明細書中に提供されるガイダンスを使用して、当業者によって決定され得る。例えば、有効量は、本明細書に記載されるように、インビトロ及びインビボアッセイから外挿され得る。当業者は、個体の状態が治療の過程を通してモニターされ得ること、及び投与される本明細書中に開示される化合物又は組成物の有効量がそれに従って調節され得ることを認識する。
【0031】
「治療」、「治療」、又は「治療」は、疾病又は状態の影響を低減する手法を手段する。治療とは、単なる症状ではなく、病気や状態そのものを軽減する方法を指すこともできる。治療は、治療前のレベルからの任意の減少であり得、疾患、状態、又は疾患もしくは状態の症状の完全なアブレーションに限定することはできない。したがって、開示された方法において、「治療」は、疾患の少なくとも1つの症状の重症度の減少を含む、確立された疾患又は疾患進行の重症度における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の減少を指すことができる。例えば、細胞の免疫原性を減少させるための開示された方法は、同じ被験体又は対照被験体における処置前レベルと比較した場合に、細胞の免疫原性の検出可能な減少が存在する場合の処置であると考えられる。したがって、減少は、天然又は対照レベルと比較して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100%、又はその間の任意の量の減少であり得る。「治療」は、必ずしも疾患又は状態の治癒を指すものではなく、疾患又は状態の見通しの改善を指すことが理解され、本明細書で企図される。特定の実施形態では、治療が少なくとも1つの症状の重症度又は程度の減少を指し、代替的に又は追加的に、少なくとも1つの症状の発症の遅延を指すことができる。
【0032】
II.実施形態
刺激線維芽細胞由来の培地とその成分
いくつかの実施形態では、本開示が線維芽細胞の培養から得られる成分に関する。このような成分は、線維芽細胞からの再生因子の産生を刺激する1つ以上の化合物で培養された線維芽細胞からの細胞培養培地であり得るか、又はそれから得られ得る。線維芽細胞培養から得られる成分は、例えば、椎間板再生又は修復の促進、椎間板変性疾患の治療、及びプロテオグリカン合成の刺激を含む、本明細書に開示される1つ以上の方法において有用であり得る。
【0033】
1つの実施形態において、本明細書中に開示されるのは、線維芽細胞の組織培養物から得られる培養培地又はその中に存在する成分の利用である。特定の実施形態において、開示される方法内での使用のために、培養物中の線維芽細胞は増殖状態にあり、前記増殖状態は、コンフルエントに達しない細胞として記載される。いくつかの実施形態では、前記線維芽細胞は、25%~75%コンフルエントな状態で増殖している。1つ以上の成分(例えば、再生因子)は、増殖状態で増殖する線維芽細胞から得られ得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、線維芽細胞活性の改変による調節細胞増殖の刺激による自己抗原に対する免疫応答のモジュレーターとしてのオピオイド受容体アンタゴニストの利用が開示される。再生因子の線維芽細胞産生の刺激は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニストによる線維芽細胞の処理を通して達成され得る。オピオイド受容体拮抗薬としては、ナルトレキソン、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐メチルナルトレキソン、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロリンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベノプラン、メチルサミドルファン、及び/又はナルデメジンが挙げられるが、例に限定されない。オピオイド受容体アンタゴニスト(例えば、ナルトレキソン)による線維芽細胞の処置は、EGFを含む種々の成長因子の産生を誘導することが本明細書中で実証される。さらに、再生因子産生のアップレギュレーションは、トール様受容体2アゴニストPam3CSK4、トール様受容体4アゴニストリポ多糖類(LPS)、及びトール様受容体9アゴニストCpGのようなトール様受容体(TLR)ファミリーのアゴニストと共にオピオイド受容体アンタゴニスト(例えばナルトレキソン)投与の組合せによってさらに開示される。いくつかの実施形態において、TLR-4アンタゴニストは、オピオイド受容体アンタゴニストの代わりに線維芽細胞を刺激するために使用される。線維芽細胞を刺激するために使用され得る例TLR-4アンタトニストには、Rhodobacter sphaeroides由来のLPS及びリピドA、Bartonella Quintana由来のLOS、Oscillatoria Planktothrix FP1由来のLPS、Curcuma longa由来のクルクミン、スルホラファン及びアブラナ科野菜由来のイベリン、ホップ及びビール由来のキサントフモール、ならびにTripterygium wilfordii由来のセラストロールが含まれる。
【0035】
TLRは、ストレス下又は組織損傷もしくは細胞アポトーシスによって産生される損傷関連分子パターン(DAMP)と結合することができる。TLRは、自然免疫と自己免疫の橋渡しをつくっていると考えられている。MyD88、TRIF、TIRAP/MAL、TRAM、及びSARMを含む、TLRに対する5つのアダプタがある。活性化されると、TLRは特異的アダプターを動員して、炎症性サイトカイン及びケモカインの産生につながる下流のシグナル伝達経路を開始させる。ある種の状況下では、TLRの連結が異常な活性化及び無制限な炎症反応を駆動し、それにより自己免疫疾患における炎症の持続に寄与する。過去にはTLR3、TLR7、TLR9などの細胞内TLRに焦点を当てた研究がほとんどであったが、最近の研究から、細胞表面TLR、特にTLR2とTLR4も自己免疫疾患の発症に必須の役割を果たし、複数の治療標的を与えることが明らかになっている[Clin Rev Allergy Immunol.47(2):136-47(2014)]。TLR4は、クッパー細胞、骨髄樹状細胞、星細胞、T細胞、NK細胞、類洞内皮細胞を含む肝細胞及び非実質細胞と関連している。近年、いくつかの証拠は、自己免疫性肝疾患(AILD)の病因及び進行におけるTLR‐4の役割を媒介する可能性を示唆している(Heら2006、Longhiら2009、Mencinら2009)。PBC患者由来の単球は、様々なリガンド、特にTLR4及びTLR5を介するシグナル伝達物質でチャレンジすると、IL-1β、IL-6などの炎症誘発性サイトカインのレベルが増加する(Maoら2005)。内因性DAMPは組織損傷に続いて放出される。熱ショックタンパク質、HMGB1、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、ヘパラン硫酸及びビグリカンなどのTLR-2及びTLR-4のリガンドは、無菌性炎症を媒介するために産生される(Morethら2014)。リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、シェーグレン症候群、乾癬、多発性硬化症、及び自己免疫性糖尿病を含む自己免疫疾患の病因におけるTLR2/4の生物学的特性、シグナル伝達機構、TLR2/4経路の負の調節因子、及びTLR2/4の重要な機能が、Liu Yら[Clin Rev Allergy Immunol.47(2):136-47(2014)]によって最近レビューされた。
【0036】
本開示の組成物は、外胚葉、中胚葉、又は内胚葉に増殖及び分化することができる単離された線維芽細胞又はその集団(その培養物からを含む)から得ることができる。いくつかの実施形態において、単離された線維芽細胞は、Oct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344又はStellaマーカーのうちの少なくとも1つを発現する。いくつかの実施形態において、単離された線維芽細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、又はCD90細胞表面タンパク質の少なくとも1つを発現しない。このような単離された線維芽細胞は、条件培地の供給源として使用され得る。細胞は単独で培養されてもよく、又は条件培地中の成長因子の産生をさらにアップレギュレートするために、他の細胞の存在下で培養されてもよい。
【0037】
線維芽細胞は、投与自体によって増殖及び利用され得るか、又はその後使用され得る条件培地を得るために増殖培地中で培養され得る(又はその成分が使用され得る)。成長培地という用語は、一般に、線維芽細胞の培養に十分な培地を指す。特に、本明細書の開示の細胞の培養のための1つの特定の培地は、ダルベッコの改変必須培地(DMEM)を含む。特定の実施形態では、それはDMEM-低グルコース(ここではDMEM-LGでもある)(Invitrogen(登録商標),Carlsbad,CA)である。DMEM-低グルコースは15%(v/v)ウシ胎仔血清(例えば、規定ウシ胎仔血清、Hyclone(登録商標)、ローガンユタ州)、抗生物質/抗真菌薬(例えば、ペニシリン(100単位/ミリリットル)、ストレプトマイシン(100ミリグラム/ミリリットル)、及びアンホテリシンB(0.25マイクログラム/ミリリットル)、(Invitrogen(登録商標)、カリフォルニア州カールスバッド)、及び0.001%(v/v)2-メルカプトエタノール(Sigma(登録商標)、セントルイス、Mo)を補充することができる。いくつかの場合において、異なる増殖培地が使用されるか、又は異なる補充が提供され、そしてこれらは、通常、増殖培地への補充として示される。また、標準増殖条件とは、37℃、5% CO2を含む標準大気中で細胞を培養することをいい、ここで、相対湿度は約100%に維持される。前述の条件は培養に有益であるが、このような条件は細胞を培養するために当業者が利用可能な選択肢、例えば、体温、CO2、相対湿度、酸素、増殖培地などを変化させることによって変化させることができることを理解されたい。
【0038】
特定の実施形態において、ならし培地及び/又は再生因子を得るための開示された方法において使用される線維芽細胞は老化状態に達する前に、少なくとも25、30、35、又は40回の倍加を受け得る。1014以上の細胞に達するように倍加することができる細胞を誘導するための方法が提供される。特に、少なくとも約1014、1015、1016、又は1017以上のセルを、培養において約103から約106セル/cm2までシードしたときに生成するのに十分に倍にできるセルを導出する方法である。特定の場合において、これらの細胞数は、80、70、又は60日以内に産生される。一実施形態では、ならし培地の生成に使用される線維芽細胞を単離し、増殖させ、CD10、CD13、CD44、CD73、CD90、CD141、PDGFr-α、HLA-A、HLA-B、HLA-C、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上のマーカーを有する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は、CD31、CD34、CD45、CD117、CD141、HLA-DR、HLA-DP、又はHLA-DQの1つ又は複数を産生しない。
【0039】
場合によっては、生検から線維芽細胞を採取し、生検を提供するドナーが治療対象個体(自家)である場合と、治療対象個体(同種)と異なる場合がある。同種異系線維芽細胞が個体に利用される場合、線維芽細胞は、1人又は複数のドナーに由来し得る。
【0040】
線維芽細胞は、皮膚線維芽細胞、胎盤線維芽細胞、脂肪線維芽細胞、骨髄線維芽細胞、包皮線維芽細胞、臍帯線維芽細胞、毛包由来線維芽細胞、爪由来線維芽細胞、子宮内膜由来線維芽細胞、ケロイド由来線維芽細胞、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される供給源から得られ得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞の培養から得られる成分は、1つ以上の再生因子を含む。オピオイド受容体アンタゴニスト及びTLRアゴニストで培養された線維芽細胞から産生される再生因子には、例えば、上皮成長因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)-1、FGF-2、FGF-5、FGF-15、インスリン様成長因子(IGF)、胎盤成長因子、及び肝細胞成長因子(HGF)が含まれる。再生因子は開示される方法における使用(例えば、椎間板再生又は修復の刺激)の前に、細胞培養培地から単離され得る。あるいは、細胞培養培地が再生因子を単離することなく使用され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞の培養から得られる成分は、エキソソームを含む。線維芽細胞は、1つ以上の再生因子(例えば、成長因子)を含むエキソソームを産生し得、これは開示される方法(例えば、椎間板再生の促進)において使用され得る。エキソソームは、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストと共に培養された線維芽細胞から単離され得、それによって、1つ以上の再生因子を得る。エキソソームは、線維芽細胞培養培地から精製及び濃縮され得る。いくつかの実施形態では、線維芽細胞から得られるエキソソームは、60~200ナノメートルのサイズである。いくつかの実施形態において、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストで刺激された線維芽細胞から得られたエキソソームは樹状細胞から抗炎症メディエーター(例えば、IL-10、IL-20、TGF-βなど)の産生を誘導することができる。いくつかの実施形態において、オピオイド受容体アンタゴニスト及びTLRアゴニストで刺激された線維芽細胞から得られたエキソソームは、間葉系幹細胞に結合することができ、少なくともいくつかの場合には、間葉系幹細胞からのTGF-βの産生を誘導することができる。
【0043】
線維芽細胞から得られた培養条件培地は、濾過及び/又は脱塩手段によって濃縮され得る。一実施形態では、特異的な分子量カットオフを有するAmicon(登録商標)フィルター、又は実質的に同等の方法が利用される。前記カットオフは、1kDa~50kDaより高い分子量を選択することができる。
【0044】
代替手段として、C18カートリッジ(Mini-Spe-ed C18-14%,S.P.E.Limited,Concord ON)を使用する固相抽出などの当技術分野で公知の手段を使用して、細胞培養上清を濃縮してもよい。前記カートリッジは、メタノールで洗浄し、続いて脱イオン蒸留水で洗浄することによって調製される。最大100mlの幹細胞又は前駆細胞上清を、溶出前にこれらの特定のカートリッジの各々に通すことができるが、より大きなカートリッジを使用することができることは当業者には理解されている。カートリッジを洗浄した後、吸着した物質をメタノール3mlで溶出し、窒素気流下で蒸発させ、少量のメタノールに再溶解し、4℃で保存する。
【0045】
インビトロでの活性について溶出液を試験する前に、メタノールを窒素下で蒸発させ、培地で置き換える。C18カートリッジは、幹細胞培養上清又は前駆細胞培養上清から小疎水性分子を吸着するために使用され、塩及び他の極性汚染物質の除去を可能にする。しかしながら、前記線維芽細胞上清から特定の化合物を精製するために、他の吸着手段を使用することが望ましい場合がある。前記線維芽細胞濃縮上清は、本発明の実施に有用な生物学的活性について直接評価され得るか、又はさらに精製され得る。一実施形態において、線維芽細胞培養物の前記上清は、インビトロバイオアッセイを用いてプロテオグリカン合成を刺激する能力について評価される。インビトロバイオアッセイは、上清のどの分子量画分が生物学的活性を有するかの定量及び知識を可能にする。プロテオグリカン合成を刺激する能力を試験するためのバイオアッセイは、当該分野で公知である。種々のプロテオグリカンの産生は、質量分析、カラムクロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のような免疫ベースのアッセイ、免疫組織化学、及びフローサイトメトリーを含む技術を使用するタンパク質含量の分析によって評価され得る。
【0046】
さらに精製は例えば、公称排除限度1800DaのBio-Gel P-2カラム(Bio-Rad(登録商標),Richmond CA)を用いたゲルろ過を用いて行うことができ、該カラムを洗浄し、20mM Tris-HCl緩衝液、pH7.2(Sigma(登録商標))中で予備膨潤させ、減圧下で穏やかに旋回させて脱気することができる。Bio-Gel P-2材料を1.5×54cmガラスカラムに充填し、3カラム容量の同じ緩衝液で平衡化する。C18カートリッジによって抽出された羊水幹細胞上清濃縮物を、0.5mlの20mM Tris緩衝液(pH7.2)に溶解し、カラムに通すことができる。画分をカラムから収集し、生物学的活性について分析することができる。他の精製、分画、及び同定手段は当業者に公知であり、そしてアニオン交換クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴、及びマススペクトロメトリーを含む。
【0047】
III.使用方法の例
本発明の実施形態は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト(例えば、ナルトレキソン)単独及び/又は1つ以上のトール様受容体(TLR)アゴニストと一緒に刺激された線維芽細胞からの成分の導入を通して、1つ以上の変性プロセスを受けた板(disc)の再生を増強する手段を含む。線維芽細胞からの成分は、1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストを有する線維芽細胞の培養物からのならし培地を含み得る。調整培地は、再生因子の供給源として使用され得る。調整培地を濃縮することができる。線維芽細胞由来の成分は椎間板再生又は修復を必要とする個体(例えば、変性椎間板疾患を有する個体)に投与され得る。成分は、椎間板内又は全身に投与することができる。いくつかの実施形態において、刺激された線維芽細胞由来の微小胞及び/又はエキソソームは、再生因子の供給源として使用される。
【0048】
いくつかの態様において、本開示は1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストで刺激された線維芽細胞から1つ以上の成分を送達する(例えば、分泌される、放出されるなど)ことによって、病的な椎間板障害を処置又は予防するための方法に関する。刺激された線維芽細胞は椎間板への投与に適し、椎間板再生を刺激することができる1つ又は複数の再生因子を生成することができる。いくつかの実施形態において、これらの再生因子のうちの1つ以上は、いくつかの場合において、媒体中で一緒になって、それを必要とする個体に提供される。あるいは又はさらに、再生因子を産生し得る刺激された線維芽細胞は個体に直接送達され得る。
【0049】
本開示の実施形態は、治療用途を含む、特定の調整培地を包含する。特定の実施形態では、調整培地が椎間板変性疾患に罹患している個体又は椎間板変性疾患の危険性がある個体(危険性がある個体が例えば、約40、45、50、55、60、65、70、75、80などの年齢を超える個体、運動選手であるか又は運動選手であった個体、身体活動を必要とする仕事をする個体、脊椎損傷を有する個体、又はそれらの組み合わせである)を含む、個体における椎間板再生又は修復の刺激に有用である。したがって、特定の実施形態では、本開示によって包含される方法を利用して、椎間板変性が予防されるか、又は椎間板変性が発症が遅延され、及び/又は重症度が低減されてもよい。
【0050】
調整培地は、任意の種類の線維芽細胞であり得る線維芽細胞の刺激によって生成され得る。このような刺激はいくつかの実施形態において、線維芽細胞による再生因子(例えば、1つ以上の成長因子)の産生を刺激するのに十分な有効量の1つ以上のオピオイド受容体アンタゴニスト及び1つ以上のTLRアゴニストによる処置を含む。線維芽細胞は、例えば、ナルトレキソン、6B-ナルトレキソール、ナルメフェン、ナロキソン、N‐methylnaltrexone、アルビモパン、ジプレノルフィン、ナロルフィン、ナロリンジニコチン酸塩、レバロルファン、サミドルファン、ナロデイン、ナロキセゴル、アクセロプラン、ベノプラン、メチルサミドルファン、又はナルデメジンを含む任意のオピオイド受容体拮抗薬で刺激され得る。いくつかの実施形態において、線維芽細胞はナルトレキソンで刺激される。線維芽細胞は例えば、Pam3CSK4、LPS、CpG DNA、Poly(ic)、フラジェリン、MALP-2、イミキモド、レスミキモド、ザイモサン、又はそれらの組み合わせを含む任意のTLRアゴニストで刺激され得る。線維芽細胞の刺激から生成された調整培地を、場合によっては濃縮して得て、それを必要とする個体に提供することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、線維芽細胞ならし培地が他の治療化合物との製剤の一部として利用され、ここで、製剤は、椎間板からのプロテオグリカン産生を誘導するために、個体に椎間板内又は全身に投与される。化合物は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、葉酸、コリン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB5、ビタミンB6、ビオチン、ニコチンアミド、ベータカロテン、補酵素Q、セレン、スーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンペルオキシド、ウリジン、クレアチンコハク酸、ピルビン酸、ジヒドロキシアセトン)、アセチル-L-カルニチン、α-リポ酸、カルジオリピン、ω脂肪酸、炭酸リチウム、クエン酸リチウム、カルシウム、又はそれらの任意の組合せであり得る。いくつかの態様では、化合物は抗炎症剤である。ある態様において、抗炎症剤は、アルクロフェナク、アルクロメタゾンジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、αアミラーゼ、αリポ酸、αトコフェロール、アムシナファル、アムシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース。アナキンラ、アニロラック、アニトラザフェン、アパゾン、アスコルビン酸、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、ベンジダミン塩酸塩、ブロメライン、ブロペラモール、ブデスソニド、カルプロフェン、ロロゲン酸、シクロプロフェン、シンタゾン、クリップロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラック、プロピオン酸クロチタゾン、コルメタゾンアセテート、コルトドックスン、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロラゾンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサール、ジフルプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エラグ酸、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカム・ナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナマート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラック、フェンドサル、フェンピパロン、フェンティアザック、フラザロン、フルアザコルト、フルフェナム酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシン・メグルミン、フルコルチン・ブチル、フルオロメソロンアセテート、フルカゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオン酸、フラプロフェン、フロブフェン、グルタチオン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、ヘスペリン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドプロフェン インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、ロフェミゾール塩酸塩、ロモキシカム、ロテプレドノールエタボネート、リコピン、メクロフェナマートナトリウム、メクロフェナム酸、メクリソ メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリソ、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロン スレプタン酸、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オレウロペイン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、パラ オレウロペイン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、パラニリン塩酸塩、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、ピクノジェノール、ポリフェノール、プレドナゼート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、ケルセチン、レスベラトロール、リメキソロン、ロマザリット、ロスマリン酸、ルチン、サルコレックス、サルナデシン、サルサレート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメイト、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトラヒドロクルクミン、トトリダミン、チオピナク、チクソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウムの1つ以上が含まれる。いくつかの態様では、化合物が成長因子、サイトカイン、抗体、抗体断片、及び/又は5000ダルトン未満の質量の有機分子を含むがこれらに限定されない生物活性化合物である。化合物は、本開示の組成物と同時に投与することができる。あるいは、化合物が組成物が対象に投与される前及び/又は後に投与されてもよい。
【0052】
IV.線維芽細胞再生細胞の入手
本開示の実施形態は、再生線維芽細胞を得るか又は単離するための方法を含む。再生線維芽細胞を得ることは、再生活性を有する組織からの再生線維芽細胞の集団を濃縮することを含み得る。いくつかの実施形態では、再生線維芽細胞がOct-4、Nanog、Sox-2、KLF4、c-Myc、Rex-1、GDF-3、LIF受容体、CD105、CD117、CD344、及びStellaのうちの少なくとも1つを発現し、MHCクラスI、MHCクラスII、CD45、CD13、CD49c、CD66b、CD73、CD105、又はCD90細胞表面タンパク質のうちの少なくとも1つを発現しない、約6~12μmのサイズの細胞を濃縮することによって再生活性を有する組織から得られる。いくつかの実施形態では顆粒球、T細胞、B細胞、NK細胞、赤血球、又はそれらの任意の組み合わせなどの細胞型は線維芽細胞再生細胞から分離される。いくつかの態様において、細胞型の分離は、細胞枯渇によって行われる。いくつかの実施形態において、線維芽細胞再生細胞は、フローサイトメトリーによって濃縮される。
【0053】
本開示のさらなる実施形態は、線維芽細胞再生細胞を同定する方法に関する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの選択マーカー遺伝子に結合した線維芽細胞特異的プロモーターを含むベクターが細胞に導入される。選択マーカー遺伝子を細胞内の細胞特異的プロモーターから発現させ、検出し、それにより線維芽細胞再生細胞を同定することができる。いくつかの実施形態において、線維芽細胞再生細胞は、MHCクラスI、MHCクラスII、CD44、CD45、CD13、CD34、CD49c、CD66b、CD73、CD105、及びCD90細胞表面タンパク質の少なくとも1つを発現しない。いくつかの実施形態では、線維芽細胞再生細胞がOct-4、Nanog、Sox-2、Rex-1、GDF-3、Stella、FoxD3、又はPolycomb胚転写因子のうちの少なくとも1つを発現する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞再生細胞は、CD13、CD44、CD90、又はそれらの組み合わせを発現しない。
【0054】
いくつかの実施形態では、ベクターはレトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、選択マーカー遺伝子は蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))をコードする。いくつかの実施形態において、ベクターは2つの選択マーカー遺伝子を含み、ここで、2つの選択マーカー遺伝子は、蛍光タンパク質、薬物選択に感受性のタンパク質、細胞表面タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞特異的プロモーターは、Oct-4プロモーター、Nanogプロモーター、Sox-2プロモーター、Rex-1プロモーター、GDF-3プロモーター、aStellaプロモーター、FoxD3プロモーター、Polycombリプレッサー複合体2プロモーター、又はaCTCFプロモーターである。いくつかの実施形態において、線維芽細胞特異的プロモーターは、loxP部位に隣接する。
【0055】
いくつかの実施形態では、線維芽細胞再生細胞は、中胚葉、外胚葉、及び/又は内胚葉に分化することができる。いくつかの態様において、線維芽細胞再生細胞は、ローダミン123流出活性をさらに含む。さらなる態様において、線維芽細胞再生細胞は、対照と比較して、GDF-11の発現を増強した。いくつかの実施形態において、開示される方法は、線維芽細胞再生細胞の再生活性を増強し得る転写因子で線維芽細胞再生細胞をトランスフェクトする工程を包含する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞再生細胞は、OCT-4転写因子でトランスフェクトされる。いくつかの実施形態において、再生線維芽細胞は、多能性能力を有する細胞と融合され、それによって、増強された再生活性を有する線維芽細胞を生成する。
【0056】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、哺乳動物から線維芽細胞再生細胞を単離することを含む。いくつかの実施形態において、線維芽細胞再生細胞は、哺乳動物の体液に由来する。いくつかの実施形態において、線維芽細胞再生細胞は、哺乳動物の組織に由来する。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、線維芽細胞は細胞に入る検出可能な化合物と細胞を接触させることによって富化され、この化合物は増殖細胞及び非増殖細胞において選択的に検出可能であり、そして増殖細胞はこの化合物の検出に基づいて富化される。いくつかの実施形態では、検出可能な化合物がカルボキシフルオレセインジアセテート、スクシンイミジルエステル、又はAldefluor(登録商標)である。いくつかの場合において、1つ以上のマーカーを発現する線維芽細胞が選択され得る。いくつかの実施形態では、CD105及び/又はCD117を発現する線維芽細胞が選択される。CD105及び/又はCD117を発現する線維芽細胞をNANOG遺伝子でトランスフェクトしてもよい。
【0057】
細胞表面マーカー又はMHCタンパク質を発現する細胞は、線維芽細胞の集団から分離又は枯渇され得、それによって幹細胞の集団を単離する。いくつかの実施形態において、枯渇されるべき細胞は、MHCクラスI、CD66b、グリコホリンa、又はグリコホリンbを発現する。細胞は、レポーター又は選択遺伝子に機能的に連結された幹細胞特異的プロモーターでトランスフェクトされ得る。幹細胞特異的プロモーターは例えば、Oct-4、Nanog、Sox-9、GDF3、Rex-1、又はSox-2プロモーターであり得る。
【0058】
V.開示のキット
本明細書中に記載されるか、又はそれに類似する任意の細胞性及び/又は非細胞性組成物は、キット中に含まれ得る。非限定的な例において、線維芽細胞を調製するための方法において使用するための1つ以上の試薬は、キットに含まれ得る。このような試薬は、細胞、ベクター、1つ以上の成長因子、1つ以上の共刺激因子、培地、酵素、緩衝液、ヌクレオチド、塩、プライマー、化合物などを含み得る。キット構成要素は、適切な容器手段で提供される。
【0059】
キットのいくつかの成分は、水性媒体又は凍結乾燥形態のいずれかで包装され得る。キットの容器手段は、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ又は他の容器を含み、その中に、構成要素が配置され得、そして好ましくは、適切に等分される。キット中に2つ以上の成分が存在する場合、キットはまた、一般に、第2、第3、又は他の追加の容器を含み、その中に追加の成分が別々に配置され得る。しかし、成分のさまざまな組み合わせを1つのバイアル中に含めてもよい。また、本発明のキットは、典型的には商業的に販売するために、構成要素を閉じ込めた状態で収容するための手段を含む。このような容器は、所望のバイアルが保持される射出成形又はブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【0060】
キットの成分が1つ以上の液体溶液で提供される場合、液体溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に有用である。場合によっては、容器手段がそれ自身、注射器、ピペット、及び/又は他のそのような器具であってもよく、又は所望の反応のための多数の区画を有する基材であってもよい。
【0061】
キットのいくつかの成分は、乾燥粉末として提供されてもよい。試薬及び/又は成分が乾燥粉末として提供される場合には、粉末を適した溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒が別の容器手段の中に同じく提供されることが想定されている。キットはまた、滅菌された許容可能な緩衝液及び/又は他の希釈剤を収容するための第2の容器手段を含み得る。
【0062】
特定の実施形態において、試薬及び材料は、所望の配列を増幅するためのプライマー、ヌクレオチド、適切な緩衝液又は緩衝試薬、塩などを含み、いくつかの場合において、試薬は、特定の所望の細胞の単離のための装置又は試薬を含む。
【0063】
特定の実施形態では、個体から1つ以上の試料を抽出するのに適した1つ以上の装置がキット中に存在する。装置は、シリンジ、細い針、メスなどであってもよい。
【実施例】
【0064】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術は、本開示の方法の実施において十分に機能することが発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施のための好ましい形態を構成すると考えることができることを、当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでも、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、同様の又は類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0065】
実施例1
トール様受容体アゴニストと併用したナルトレキソンによる線維芽細胞における再生成長因子産生の刺激
本実施例は、線維芽細胞の型の例として、包皮線維芽細胞におけるEGF産生を刺激するためのナルトレキソン及びTLRアゴニストの使用を特徴付ける。
【0066】
新生児包皮線維芽細胞をATCCから入手し、10%ウシ胎仔血清及び抗生物質を含有する典型的なDMEM培養培地中で培養した。培養3日後、線維芽細胞を12ウェルプレートにプレートし、50%コンフルエント条件で培養した。ナルトレキソン(シグマAldrich(登録商標))及び示されたTLRアゴニストの付加を、培養の12時間実施した。Pam3CSK4を総濃度1ug/mlで添加した。LPSを0.5ug/mlで添加した。CpGを0.2ug/mlで添加した。EGFの濃度は、ELISA(R&D Systems)を用いて評価した。結果を
図1に示す。
【国際調査報告】