(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】温度調節を有するアクティブ光学センサーシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20221108BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01C3/06 120Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513301
(86)(22)【出願日】2020-08-26
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020073795
(87)【国際公開番号】W WO2021037879
(87)【国際公開日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】102019122774.7
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】トーステン、ボイト
(72)【発明者】
【氏名】セルカン、カブーク
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲ、ケテルセン
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112CA12
2F112DA19
2F112DA25
2F112FA25
5J084AA05
5J084BA04
5J084BA36
5J084BB18
5J084CA31
5J084EA12
(57)【要約】
温度調節を有するアクティブ光学センサーシステム(1)は、物体(4)の方向に光(3)を放出するように構成される光源(2)と、物体(4)によって反射された光(3)の成分(6)を検出するように構成される少なくとも1つの光検出器(5)と、反射された成分(6)のための受けビーム路に配置される光学フィルター要素(7)と、を有する。センサーシステム(1)は、フィルター要素(7)のフィルター温度に応じて光源(2)のソース温度を調節するように構成される温度調節装置(8)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節を有するアクティブ光学センサーシステムであって、前記センサーシステム(1)は、
- 物体(4)の方向に光(3)を放出するように構成される光源(2)と、
- 前記物体(4)によって反射された前記光(3)の成分(6)を検出するように構成される少なくとも1つの光検出器(5)と、
- 前記光(3)の前記反射された成分(6)のための受けビーム路に配置される光学フィルター要素(7)と、を有し、
- 前記センサーシステム(1)は、前記フィルター要素(7)のフィルター温度に応じて前記光源(2)のソース温度を調節するように構成される温度調節装置(8)を有する、
ことを特徴とするアクティブ光学センサーシステム。
【請求項2】
前記温度調節装置(8)は、
- 前記フィルター温度に依存する第1センサー信号を生成するように構成され且つ配置される第1温度センサー(9)を含み、
- 前記ソース温度に依存する第2センサー信号を生成するように構成され且つ配置される第2温度センサー(10)を含み;及び
- 前記第1センサー信号及び前記第2センサー信号に応じて前記ソース温度を調節するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項3】
前記温度調節装置(8)は、
- 前記第1センサー信号に応じて前記ソース温度に関する設定値を決定するように;及び
- 前記第2センサー信号に応じて前記ソース温度を前記設定値に調節するように、
構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項4】
前記温度調節装置(8)は、
- 前記光源(2)の前記周囲エリアに配置される温度調節要素(11)を含み;及び
- 前記ソース温度を調節するために、前記フィルター温度に応じて前記温度調節要素(11)を制御するように構成されるコントロールユニット(12)を含む、
ことを特徴とする請求項1~3のうちの一項に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項5】
前記温度調節要素(11)はペルチェ素子として設計される、
ことを特徴とする請求項4に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項6】
前記温度調節装置(8)は、前記光源(2)の固有波長における温度依存性シフトを表す特定の第1パラメータに応じて、前記ソース温度を調節するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~5のうちの一項に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項7】
前記温度調節装置(8)は、前記フィルター要素(7)の少なくとも1つの固有波長における温度依存性シフトを表す特定の第2パラメータに応じて、前記ソース温度を調節するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~6のうちの一項に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項8】
前記温度調節装置(8)は、前記フィルター要素(7)の少なくとも1つの固有波長における温度依存性シフトが、前記光源(2)の固有波長における温度依存性シフトによって補償されるように、前記ソース温度を制御するように構成される、
ことを特徴とする請求項1~5のうちの一項に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項9】
前記フィルター要素(7)は、少なくとも1つの光検出器(5)のアクティブ面に配置される層を有する、
ことを特徴とする請求項1~8のうちの一項に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項10】
- 前記フィルター要素(7)はバンドパスフィルターとして設計され、
- 前記光源(2)の特定の基準温度における発光波長は、前記バンドパスフィルターの帯域内にある、
ことを特徴とする請求項1~9のうちの一項に記載のアクティブ光学センサーシステム。
【請求項11】
アクティブ光学センサーシステム(1)の温度を調節するための方法であって、前記センサーシステム(1)は、
- 物体(4)の方向に光(3)を放出する光源(2)と、
- 前記物体(4)によって反射された前記光(3)の成分(6)を検出する少なくとも1つの光検出器(5)と、
- 前記光(3)の前記反射された成分(6)のための受けビーム路に配置される光学フィルター要素(7)と、を有し、
前記光源(2)のソース温度は、温度調節装置(8)により、前記フィルター要素(7)のフィルター温度に応じて調節される、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
- 第1センサー信号が、前記フィルター温度に応じて生成され;
- 第2センサー信号が、前記ソース温度に応じて生成され;
- 前記ソース温度は、前記温度調節装置(8)により、前記第1センサー信号及び前記第2センサー信号に応じて調節される、
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度調節装置(8)によって、
- 前記ソース温度の設定値が、前記第1センサー信号に応じて決定され;及び
- 前記ソース温度は、前記第2センサー信号に応じて、前記設定値に調節される、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度調節装置(8)によって、前記ソース温度は、
- 前記光源(2)の固有波長における温度依存性シフトを表す特定の第1パラメータに応じて、調節され;及び/又は
- 前記フィルター要素(7)の少なくとも1つの固有波長における温度依存性のシフトを表す特定の第2パラメータに応じて、調節される、
ことを特徴とする請求項11~13のうちの一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フィルター要素(7)の少なくとも1つの固有波長における温度依存性シフトが、前記ソース温度を調節することで前記光源(2)の固有波長における対応のシフトを生成することによって、補償される、
ことを特徴とする請求項11~13のうちの一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節を有するアクティブ光学センサーシステムに関し、当該アクティブ光学センサーシステムは、対象物の方向に光を発するように構成される光源と、対象物で反射した光の成分を検出するように構成された光検出器と、光の反射成分のための受けビーム路に配置された光学フィルター要素と、を備える。発明は更に、アクティブ光学センサーシステムの温度を調節するための対応する方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
ライダーシステムなどのアクティブ光学センサーシステムは、電子車両誘導システムや運転者支援システムの様々な機能を実現するために、動力車両に搭載可能である。これらの機能は、距離計測、距離制御アルゴリズム、レーンキープアシスタント、物体追跡機能などを含む。
【0003】
アクティブ光学センサーシステムは、光を放出する光源と、その光の反射成分を受光する光検出器とを備える。周囲温度が上昇すると、センサーシステムのこれらの部品が熱くなり、それは機械的な膨張及び/又は部品の内部物理パラメータの変化をもたらす可能性がある。これは、光源の発光波長のシフト及び/又は受けビーム路に配置されたフィルター要素の透過スペクトルのシフトをもたらしうる。しかし、原則として、そのシフトはフィルター要素及び光源に関して異なり、その結果、既知のアクティブ光学センサーシステムにおいて、温度変動が生じた場合でも光源の発光波長を有する光が十分に高い強度でフィルター要素によって伝えられることを保証するために、波長に応じて非常に広い透過範囲を持つフィルター要素が使用される。
【0004】
しかし、フィルター要素が高い透過率を持つ波長域が広くなるほど、例えば周囲光に起因するノイズの影響が大きくなる。これは、低下された信号対雑音比をもたらし、それに応じてアクティブ光学センサーシステムの測定結果の低下された精度及び信頼性をもたらす。
【0005】
この背景に対し、より低いノイズの影響又は増大された信号対雑音比をもたらすアクティブ光学センサーシステムに関する改良されたコンセプトを特定することが、本発明の1つの目的である。
【0006】
発明によれば、この目的は、独立請求項のそれぞれの主題によって達成される。有利な発展及び好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
改良されたコンセプトは、センサーシステムのフィルター要素のフィルター温度に応じて、センサーシステムの光源のソース温度(source temperature)を調節するアイデアに基づく。
【0008】
改良されたコンセプトの独立した側面によれば、温度調節を有するアクティブ光学センサーシステムが特定される。センサーシステムは光源を有し、当該光源は、物体の方向に、特にセンサーシステムの周囲エリアに位置する物体の方向に、光を放射するように構成される。そのセンサーシステムは、物体によって反射された光の成分を検出するように構成される少なくとも1つの光検出器と、光の反射成分のための受けビーム路に配置される光学フィルター要素とを有する。そのセンサーシステムは温度調節装置を有し、当該温度調節装置は、フィルター要素のフィルター温度に応じて光源のソース温度を調節するように構成される。
【0009】
光源は、特にレーザーとして、例えばレーザーダイオードとして、設けられることができる。
【0010】
センサーシステムは、特にライダーシステムとして設けられることができる。
【0011】
少なくとも1つのその検出器は、例えば、フォトダイオードとして、特にアバランシェフォトダイオードとして、設けられることができる。
【0012】
ここで及び以下において、「光」という用語は、可視域、赤外線域、及び/又は紫外線域における電磁波を含むと理解されることができる。したがって、「光学」という用語は、この意味での光に関係すると理解されることもできる。
【0013】
光源によって発せられる光は、好ましくは赤外光である。したがって発光波長、すなわち光源の発光スペクトルの最大値、は、赤外スペクトル域に存在し、例えば905nmや1200nmである。
【0014】
フィルター要素は、例えば、バンドパスフィルターとして設けられることができ、光源の発光波長は、バンドパスフィルターの透過帯域内にある。
【0015】
フィルター要素が受けビーム路に配置されていることは、特に、センサーシステムの外部から少なくとも1つの光検出器のアクティブ面に入射した光が、光学フィルター要素を通過したことを意味する。
【0016】
ソース温度は、光源の近くの周囲エリアの温度とすることができ、例えば光源のハウジングの温度、又はヒートシンクすなわち光源が配置されている冷却体或いは光源が冷却されるために接続されている冷却体の温度、とすることができる。またそれは、光源自体の温度、すなわち、例えば、レーザーダイオードのバリア層温度又は光源やレーザーダイオードが搭載される回路担体やプリント基板の温度であってもよい。
【0017】
フィルター要素は、センサーシステムによる測定中のノイズの影響を低減するため、特に、光源によって放射された光の反射成分を少なくとも1つの検出器によって選択的に受光するのに、及び例えば環境光などの他の光を可能な限り抑制するのに、役立つ。従って、フィルター要素の透過スペクトルは光源の発光波長と一致し、その結果、発光波長は、少なくとも特定の基準温度において、フィルター要素の透過帯域又は透過範囲内にある。
【0018】
フィルター温度は、フィルター要素の温度又はフィルター要素の近くの周囲エリアにおける温度とすることができる。
【0019】
特に、温度調節装置は、フィルター温度を特定するように、及び、特定されたフィルター温度に基づいてソース温度に関する設定値を、例えばルックアップテーブルによって、特定するように、構成される。そして、温度調節装置は、ソース温度を設定値に調節する。
【0020】
特に、ソース温度がフィルター温度に応じて調節されることは、ソース温度がフィルター温度に応じて設定値に調節されることを意味すると理解されることができる。
【0021】
フィルター温度を、特にフィルター要素についての特定の公称温度に関して、つまり光学フィルター要素の透過スペクトルが特定されている温度に関して、変えることによって、透過スペクトルがシフト及び/又は変更される。
【0022】
フィルター要素の透過スペクトル及び発光波長が互いに一致するので、光源の発光波長がフィルター要素の透過帯域又は透過範囲から外れることが又は少なくとも最大透過率の範囲から外れることが、改良されたコンセプトに基づいて温度調節なしで可能である。これは、発光波長に対応する波長を有する光の一部の抑制又は完全なる抑制をもたらすことになる。意味のある測定はもはや可能ではないであろう。改良されたコンセプトがなければ、フィルター要素の透過帯域が相応に広いように選択され、それによって、強い温度変動が発生しても発光波長が常にフィルター要素の透過帯域内にある点で、この問題に対処することができる。
【0023】
しかし、改良されたコンセプトによれば、ソース温度のフィルター温度-依存調節が、フィルター要素の透過スペクトルのシフトに制御された方法で発光波長が追跡されることができることを保証する。その結果、発光波長が常に透過スペクトルの所望の範囲に、すなわち特に透過帯域に、ひいてはフィルター要素の最大透過率範囲に、あるという結果を得ることが可能となる。
【0024】
これにより、フィルター要素の透過帯域又は透過範囲の幅を大幅に制限することが可能になり、これは、温度依存シフトは、改良されたコンセプトによる温度調節によって、すでに考慮されているからである。
【0025】
低透過幅又は低透過帯域を有するフィルター要素を選択することで、無関係な波長を有する光の対応のより大きな成分を遮断できるため、センサーシステムによる測定に関して信号対雑音比を向上させることができる。その結果、これは、より正確で信頼性の高い測定をもたらす。
【0026】
改良されたコンセプトによれば、特にソース温度はフィルター温度に応じて調節される。光源及びフィルター要素に典型的に使用される材料系において、発光波長における温度依存性シフトは、例えば、フィルター要素の透過スペクトルにおける温度依存性シフトよりも、著しく顕著である。したがって、ソース温度を調節することで、ソース温度の代わりに、フィルター温度をソース温度に応じて調節する場合よりも、温度調節装置によるより小さな温度調節のみが必要である。
【0027】
アクティブ光学センサーシステムの少なくとも1つの実施形態によれば、センサーシステムは処理ユニットを有し、当該処理ユニットは、検出器信号に応じて対象物の走査点を生成するように構成され、その少なくとも1つの検出器は、検出された光の反射成分に応じて検出器信号を生成するように構成される。
【0028】
走査点は、例えば、物体における対応のポイントの座標、特に3次元空間座標、及び、場合によっては、特にセンサーシステムがLIDARシステムとして具現化される場合には検出された反射光の強度、を含むことができる。強度に基づいて、発光波長がわかれば、その物体のスペクトル特性について、例えばその色について、結論を導き出すことができる。
【0029】
センサーシステムによる測定は、特に、説明した方法でその走査点又は複数の走査点を生成することを意味すると理解されることができる。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節装置は第1温度センサーを含み、当該第1温度センサーは、フィルター温度に依存する第1センサー信号を生成するように構成され及び配置される。温度調節装置は第2温度センサーを含み、当該第2温度センサーは、ソース温度に依存する第2センサー信号を生成するように構成され及び配置される。温度調節装置は、第1センサー信号及び前記第2センサー信号に応じてソース温度を調節するように構成される。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節装置は、特に温度調節装置のコントロールユニットは、第1センサー信号に応じたソース温度の設定値を特定するように、且つ、第2センサー信号に応じてソース温度を設定値に調節するように、構成される。
【0032】
したがって、第1センサー信号又は設定値は、特に調節のための基準変数として使用される一方で、第2センサー信号は、調節ループの調節変数を表す。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節装置は、光源の周囲エリアに配置された温度調節要素と、ソース温度を調節するためにフィルター温度に応じて温度調節要素を制御するように構成されたコントロールユニットと、を含む。
【0034】
温度調節要素は、特に、冷却要素として、加熱要素として、又は冷却及び加熱要素として、例えばペルチェ素子として、設けられることができる。また、温度調節要素は、冷却要素及び加熱要素を含むことができる。
【0035】
温度調節要素は、例えば、能動的に冷却可能なヒートシンク又は能動的に冷却可能な冷却体を含むことができる。例えば、温度調節要素は、アクティブヒートシンクを形成するために、光源の受動的冷却体又は受動的ヒートシンクに取り付けられ又は接続されることができる。
【0036】
コントロールユニットは、特に、ソース温度を調節するために、第1センサー信号及び第2センサー信号に応じて温度調節要素を制御するように構成される。
【0037】
コントロールユニットによって生成される温度調節要素を作動させるための制御信号は、特に、調節の操られる変数とみなされことができる。
【0038】
特に、コントロールユニットは、第2センサー信号及び設定値に基づく差分信号を制御信号として決定するように、且つ、ソース温度を設定値に調節するために差分信号に応じて温度調節要素を制御するように、構成される。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節要素は、少なくとも1つのペルチェ素子を含む。
【0040】
これにより、エネルギー効率の良い冷却と、ソース温度の容易な調節とが可能になる。また、ペルチェ素子を動作させるための電流方向を逆にすることで、冷却から加熱への、或いはその逆への、簡単な変更が可能である。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節装置は、特にコントロールユニット及び温度調節要素は、特定の第1パラメータに応じてソース温度を調節するように構成され、当該特定の第1パラメータは、光源の固有波長における、特に発光波長における、温度依存性シフトを表す。
【0042】
第1パラメータは、特に、光源の材料パラメータ又は構造部品パラメータである。第1パラメータは、例えば、m/Kやnm/Kで特定されることができる。第1パラメータは、例えば、ソース温度に依存した発光波長のドリフトと、或いは、光源の波長シフトと、呼ぶことができる。
【0043】
光源としてレーザー又はレーザーダイオードを用いた場合のその温度に応じた光源の波長シフトは、例えば、レーザーダイオードが加熱されると活性物質のバンドギャップが小さくなり、その結果、対応するように放出される光子がより低いエネルギーを持ち、その結果より大きな波長を有することに起因している。
【0044】
例えば、発光波長における対応のシフトを光源に関する特定の公称温度からのソース温度の所与の偏差に割り当てる際に第1パラメータが考慮されるから、第1パラメータはルックアップテーブルにおいて考慮されることができる。
【0045】
代替的に又は追加的に、コントロールユニットは、第1パラメータ及び測定されたフィルター温度に応じて設定値を計算するように構成されることができる。例えば、コントロールユニットは、フィルター温度とフィルター要素に関する公称温度との差に基づいてフィルター要素の波長シフトを計算するように、且つ、フィルター要素の波長シフトの第1パラメータに対する比率に応じてソース温度に関する設定値を計算するように、構成されることができる。
【0046】
これにより、フィルター要素の透過スペクトルに対する光源の波長シフトの部分的な又は完全な補償が可能である。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節装置は、特にコントロールユニット及び温度調節要素は、特定の第2パラメータに応じてソース温度を調節するように構成され、当該特定の第2パラメータは、フィルター要素の少なくとも1つの固有波長の、特に透過スペクトルの、温度依存性シフトを表す。
【0048】
フィルター要素の少なくとも1つの特徴的波長は、説明したように、フィルター要素の透過スペクトル全体又は透過スペクトルの一部、又は透過スペクトルの、特にフィルター要素の透過帯域の、1つ又は複数のカットオフ波長、又はフィルター要素の透過スペクトルの1つ又は複数の他の特徴的な波長を、含むことが可能である。
【0049】
特に、ルックアップテーブルにおける上述の割り当てにおいて、第2パラメータを考慮することができる。
【0050】
代替的に又は追加的に、コントロールユニットは、第2パラメータ、第1パラメータ及び測定されたフィルター温度に応じて、ソース温度に関する設定値を計算するように構成されることができる。特に、フィルター要素の固有波長におけるシフトは、フィルター要素に関する公称温度からのフィルター温度の偏差と第2パラメータとの積によって、与えられることができる。
【0051】
第2パラメータは、例えば、フィルター要素の、特にフィルター要素の透過スペクトルの、温度依存性の波長シフト又はバンドシフトと呼ぶことができる。第2パラメータも同様にm/K又はnm/Kの単位で特定されることができる。
【0052】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1パラメータは、第2パラメータよりも大きく、例えば第2パラメータの5倍以上である。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、温度調節装置、特にコントロールユニット及び温度調節要素は、フィルター要素の少なくとも1つの固有波長における温度依存性シフトが光源の固有波長における温度依存性シフトによって補償されるように、フィルター温度に応じてソース温度を調節するように構成される。
【0054】
特に、指定された波長シフトが補償されるということは、両方の波長シフトが同じ又はほぼ同じであることを意味すると理解されることができる。
【0055】
補償の結果、フィルター要素の帯域幅が狭くなるように選択されることができ、それは信号対雑音比を向上させる。
【0056】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィルター要素は、少なくとも1つの光検出器のアクティブ面に、特にアクティブ面上に直接的に、配置された層又はコーティングを有する。
【0057】
少なくとも1つの実施形態によれば、その層又はコーティングは、ポリマー材料又はガラスを含む。
【0058】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィルター要素は、バンドパスフィルターとして設計される。特定の基準温度において、光源の発光波長はバンドパスフィルターの透過帯域内にある。特に、ソース温度が光源に関する公称温度と同じであり且つフィルター温度がフィルター要素に関する公称温度と同じである場合、発光波長は透過帯域内に存在する。
【0059】
改良されたコンセプトによってソース温度を調節することは、特に、それらの公称温度から逸脱した温度においてさえ、特にセンサーシステムの異なる周囲温度においてさえ、発光波長が透過帯域内にあるということをもたらすことが可能である。
【0060】
改良されたコンセプトの更なる独立した側面によれば、改良されたコンセプトによるアクティブ光学センサーシステムを有する動力車両が特定される。
【0061】
改良されたコンセプトの更なる独立した側面によれば、アクティブ光学センサーシステムの温度を調節するための方法が特定される。そのセンサーシステムは、対象物の方向に光を放出する光源と、対象物で反射した光の成分を検出する少なくとも1つの光検出器と、光の反射成分のための受けビーム路に配置される光学フィルター要素と、を有する。温度調節のための方法によれば、光源のソース温度は、特にセンサーシステムの温度調節装置によって、フィルター要素のフィルター温度に応じて調節される。
【0062】
改良されたコンセプトによる方法の少なくとも1つの実施形態によれば、フィルター温度に依存する第1センサー信号が、特に第1温度センサーによって、生成される。ソース温度に依存する第2センサー信号が、特に第2温度センサーによって、生成される。ソース温度は、温度調節装置により、第1センサー信号及び第2センサー信号に応じて、調節される。
【0063】
少なくとも1つの実施形態によれば、ソース温度に関する設定値は、第1センサー信号に応じて温度調節装置によって決定され、ソース温度は、第2センサー信号に応じて設定値に調節される。
【0064】
少なくとも1つの実施形態によれば、ソース温度は、特定の第1パラメータに応じて、温度調節装置によって調節され、当該特定の第1パラメータは、光源の固有波長における温度依存性シフトを表す。
【0065】
少なくとも1つの実施形態によれば、ソース温度は、特定の第2パラメータに応じて、温度調節装置によって調節され、当該特定の第2パラメータは、フィルター要素の少なくとも1つの固有波長における温度依存性シフトを表す。
【0066】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィルター要素の少なくとも1つの固有波長における温度依存性シフトは、ソース温度を調節することによって光源の固有波長において対応するシフトを生成することによって補償される。
【0067】
改良されたコンセプトによる方法の更なる実施形態は、改良されたコンセプトによるアクティブ光学センサーシステムの様々な実施形態から直接的に生じ、その逆もまた同様である。特に、改良されたコンセプトによるセンサーシステムは、改良されたコンセプトによる方法を実行するように構成されることができ、又は、改良されたコンセプトによるセンサーシステムは、改良されたコンセプトによる方法を実行する。
【0068】
発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面及び図面の説明から明らかである。上記の説明で引用される特徴及び特徴の組み合わせ、また、以下の図面の説明で引用される及び/又は図面にのみ示される特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ示された組み合わせにおいてだけでなく、発明の範囲から逸脱しない他の組み合わせにおいても使われることが可能である。したがって、図面に明示的には示されておらず説明されていないが、特徴の別々の組み合わせによって説明された実施形態から出現し製造可能である発明の実施形態も、包含され開示されるとみなされることが意図されている。したがって当初記載されている独立請求項の特徴をすべて備えていない実施形態及び特徴の組み合わせも、開示されたものとみなされることが意図されている。更に、特許請求の範囲の後方参照に記載される特徴の組み合わせを超える又は当該特徴の組み合わせとは異なる実施形態及び特徴の組み合わせは、特に上記に記載された実施形態によって、開示されているとみなされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図面において:
【
図1】
図1は、改良されたコンセプトによるアクティブ光学センサーシステムの例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図2は、発光波長の温度依存性シフトを示す。
【
図3】
図3は、透過スペクトルの温度依存性シフトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、改良されたコンセプトによるアクティブ光学センサーシステム1の例示的な実施形態の概略図を示す。
【0071】
センサーシステム1は光源2を有し、当該光源2は、特に赤外線レーザーダイオードとして設計可能である。光源2は、センサーシステム1の周囲エリア内に光3を発することができ、そこでそれは、反射光成分6がセンサーシステム1に入射するように、物体4によって少なくとも部分的に反射されることができる。
【0072】
センサーシステム1は更に1つ又は複数の光検出器5を有し、当該1つ又は複数の光検出器5は、例えば、互いに隣り合って配置されたアバランシェフォトダイオードとして構成可能である。
【0073】
光学フィルター要素7が検出器5のアクティブ光学面に配置され、当該光学フィルター要素7は例えばガラス含有層又はポリマー含有層として設計される。フィルター要素7は、特にバンドパスフィルターとして設計される。
【0074】
検出器5は、反射成分6を検出することができ、それに基づいて1つ又は複数の検出器信号を生成することができる。
【0075】
更に、センサーシステム1はコントロールユニット12を含み、当該コントロールユニット12は、検出器5によって生成された検出器信号を受信して処理するために、検出器5につながれる。
【0076】
またセンサーシステム1は温度調節装置8を有し、当該温度調節装置8は、コントロールユニット12を少なくとも部分的に含む。
【0077】
温度調節装置8は更に温度調節要素11を有し、当該温度調節要素11は、例えばペルチェ素子を含み、特に光源2の周囲エリアに配置され、それによって光源2のソース温度、特にレーザーダイオードのバリア層温度、が温度調節要素11によって調節されることが可能である。ペルチェ素子の動作電流の方向に応じて、温度調節要素11は、冷却要素として又は加熱要素として機能することができる。
【0078】
例えば、光源2は、光源2によって発生される熱を放散するためにヒートシンク又は冷却体14上に配置されることができる。
【0079】
例えば、温度調節要素11は冷却体14に接続されて後者を冷却することもでき、それによって光源2を冷却することができる。
【0080】
温度調節装置8は、更に、例えば、第1温度センサー9を有し、当該第1温度センサー9は、それがフィルター要素7の温度を検出できるように及び/又はフィルター温度に基づいて第1センサー信号を生成できるように、配置されている。第1温度センサー9は、第1センサー信号をコントロールユニット12に送信するために、コントロールユニット12につながれる。
【0081】
温度調節装置8は、更に、例えば、第2温度センサー10を有し、当該第2温度センサー10は、光源2のソース温度に応じて第2センサー信号を生成することができる。第2温度センサー10は、第2センサー信号をコントロールユニット12に送信するために、コントロールユニット12につながれる。
【0082】
第2温度センサー10は、例えば、同様に、冷却体14に取り付けられることができる。光源2のバリア層温度に関する結論は、例えば、光源2の熱抵抗と、場合によっては冷却体14と光源2との間のその変遷とに基づいて、冷却体14の温度から導き出されることができる。
【0083】
任意で、センサーシステム1は偏向装置13を含むことができ、当該偏向装置13は、光3の反射成分6を検出器5のアクティブ面に誘導することができる。この目的のために、偏向装置13は、例えば、ミラー、特に移動可能に取り付けられた又は回転可能に配置されたミラー、を含むことができる。
【0084】
以下、具体的な数値を用いた非限定的な例に基づいて、センサーシステム1の動作の態様をより詳細に説明する。これらの説明から、さらなる実施形態が直接的に得られる。
【0085】
例示的な実施形態において、例えば、第1の周囲温度は10℃とすることができる。センサーシステム1の動作中、これは、例えば、45℃のフィルター要素7の第1フィルター温度tF1をもたらすことができる。光源2は通常、その動作の結果としてフィルター要素7よりも熱くなるので、そこには第1フィルター温度tF1よりも高い第1ソース温度tL1が存在し、当該第1ソース温度tL1は例えば60℃でありうる。
【0086】
フィルター要素7は、例えば、例えば
図2及び
図3に示すように、第1ソース温度t
L1及び第1フィルター要素t
F1における光源2の発光波長がフィルター要素7の第1フィルター帯域B1内に存在するように、選択される。
【0087】
図2は、光源2の出射光3の放射パワーPを波長λの関数として模式的に示す。レーザーの場合、対応する波長分布は、光源2の第1発光スペクトルE1において示されるように、発光波長において鋭いピークを有する。
図2において、分布の幅が不釣り合いに大きく示される。
【0088】
図3は、フィルター要素7の透過率を波長λの関数として示す。特に、第1透過帯域B1は、矩形帯域として概略的に示されているが、実際の状況においては、矩形形状からの多かれ少なかれ偏差が存在しうる。
【0089】
例示的な実施形態において、例えば、周囲温度が10℃から-40℃に低下することが想定される。この場合、フィルター温度は、例えば、tF2=-5℃の第2フィルター温度まで低下しうる。
【0090】
光源2のソース温度が調整されていない場合、例えば10℃のソース温度が存在することになる。
【0091】
フィルター温度の50Kの低下は、
図3に模式的に示すように、第1透過帯域B1の値Δλのシフトをもたらして結果として第2透過帯域B2となる。
【0092】
フィルター要素7の透過帯域の温度依存性シフトは、例えば、0.05nm/Kの大きさのオーダーとすることができ、それはΔλ≒-2.5nmをもたらすことになる。
【0093】
光源2としてレーザーを用いた場合、温度に依存した発光波長におけるシフトが当初は予想されるが、それはそこでΔλよりも大幅に大きい。例えば、光源2の温度依存性の波長シフトは、0.5nm/Kの大きさのオーダーでありうる。ソース温度の調節がないと、これは、発光波長がフィルター要素7の透過帯域から外れてしまうことをもたらしうる。
【0094】
コントロールユニット12は、温度センサー9、10のセンサー信号に応じて制御信号を生成するように且つそれを温度調節要素11に伝えるように構成されており、その結果、調節ループが形成され、それによってコントロールユニット12がフィルター温度に応じて光源2のソース温度を調節する。
【0095】
透過スペクトル又は発光スペクトルにおける異なるシフトを完全に又は部分的に補うために、例えばソース温度を調節することができ、それは周囲温度の変化によって引き起こされるソース温度の変化と反対に作用する。
【0096】
具体的な例示的実施形態において、ソース温度は、例えば、第2ソース温度t
L2=45℃に調節されうる。上記で示した数値を用いれば容易に確認できるように、この場合の結果は、
図2に示すように、光源2の発光スペクトルが、同様にΔλ≒-2.5nmだけシフトし、第2発光スペクトルE2となる。
【0097】
その結果、第2発光スペクトルE2は、-40℃の周囲温度においても、フィルター要素7の透過帯域B2内に完全に存在する。
【0098】
他の実施形態において、波長のシフトを少なくとも部分的に補償するために、ソース温度を10℃~45℃の値に調節することができる。
【0099】
したがって、フィルター要素7の透過帯域の幅は、改良されたコンセプトによれば、温度調節を行わない場合よりも大幅に小さくなるように選択されることができる。
【0100】
説明したように、センサーシステムによる測定に関して信号対雑音比がそれによって増大させられることができ、それはセンサーシステムの精度及び信頼性を向上させる。
【0101】
光源のより大きな冷却の更なる追加の有益な副次的効果は、例えば、結果としてもたらされる光源の延ばされた寿命でありうる。
【国際調査報告】