(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】IL-17RA抗体を用いた非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221108BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221108BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221108BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221108BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221108BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221108BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P1/16
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/22
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515869
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020075477
(87)【国際公開番号】W WO2021048359
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519363845
【氏名又は名称】ボシュ ヘルス アイルランド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル,ロバート・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC16
4C076DD09F
4C076DD51
4C076DD60
4C076EE23F
4C085AA14
4C085BB18
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
(57)【要約】
本開示は、IL-17レセプターA(IL-17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体のようなIL-17アンタゴニストを用いて、非アルコール性脂肪性肝炎(NAFLD)、及びそれらのサブセット、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を治療する方法を指向する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を治療する方法であって、治療有効量の、インターロイキン17受容体A(IL-17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を前記対象に投与することを含み、それにより前記対象におけるNAFLDを治療する方法。
【請求項2】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を患っている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、肝線維症を伴う非硬変性非アルコール性脂肪性肝炎(NC-NASH+LF)を患っている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
肝臓の炎症の軽減を必要とする対象における肝臓の炎症を軽減させる方法であって、治療有効量の、インターロイキン17受容体A(IL-17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を対象に投与することを含み、それにより前記対象における肝臓の炎症が軽減される方法。
【請求項5】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を患っている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体が、
(a)配列番号1の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、並びに
(b)配列番号4の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号5のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号6のCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体が、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、乾癬を患っている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、約150mg~約250mgの前記モノクローナル抗体を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、約210mgの前記モノクローナル抗体を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、約10mMのL-グルタミン酸塩、約3%(w/v)のL-プロリン、及び約0.001%(w/v)のポリソルベート20とともに製剤化される約210mgのブロダルマブを含み、前記組成物のpHが約4.8である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物を治療期間中に週に少なくとも1回投与する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物を、15週間の治療期間中、3週間にわたり週1回投与し、続いて12週間にわたり2週間に1回投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記対象における肝酵素のレベルの減少及び/又はc-反応性タンパク質(CRP)のレベルの減少をもたらす、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記対象におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルの減少をもたらす、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
対象における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療に使用するための、インターロイキン17受容体A(IL-17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片が、薬学的に許容可能な担体を含む組成物中に含まれ、前記抗体又はその抗原結合断片が、治療有効量で前記対象に投与されることが好ましい、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を患っている、請求項16に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
前記対象が、肝線維症を伴う非肝硬変性非アルコール性脂肪性肝炎(NC-NASH+LF)を患っている、請求項17に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
対象における肝臓の炎症の軽減に使用するための、インターロイキン17受容体A(IL17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片が、薬学的に許容可能な担体を含む組成物に含まれ、前記抗体又はその抗原結合断片が、治療有効量で前記対象に投与されることが好ましい、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を患っている、請求項19に記載の使用のためのモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項21】
前記モノクローナル抗体が、
(a) 配列番号1の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、並びに
(b) 配列番号4の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号5のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号6のCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体が、配列番号7の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、請求項21に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
前記対象が、乾癬を患っている、請求項16~22のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
前記組成物が、約150mg~約250mgの前記モノクローナル抗体を含む、請求項16~23のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
前記組成物が、約210mgの前記モノクローナル抗体を含む、請求項24に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項26】
前記組成物が、約10mMのL-グルタミン酸、約3%(w/v)のL-プロリン、及び約0.001%(w/v)のポリソルベート20とともに製剤化される約210mgのブロダルマブを含み、前記組成物のpHが約4.8である、請求項16~25のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項27】
前記組成物を治療期間中に週に少なくとも1回投与する、請求項16~26のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項28】
前記組成物を、15週間の治療期間中、3週間にわたり週1回投与し、続いて12週間にわたり2週間に1回投与する、請求項27に記載の使用のためのモノクローナル抗体又は抗原結合断片。
【請求項29】
前記使用により、前記対象における肝酵素のレベルの減少及び/又はc-反応性タンパク質(CRP)のレベルの減少がもたらされる、請求項16~28のいずれか一項に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項30】
前記使用により、前記対象におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルの減少がもたらされる、請求項29に記載の使用のためのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、世界的に急速に増加する疾病であり、慢性肝疾患及び肝細胞癌(HCC)のますます重要な病因である(Younossiら、Hepatology、62:1723-1730(2015)、Younossiら、Hepatology、64(1):73-84(2016)、Wongら、Hepatology、59(6):2188-2195(2014)、Goldbergら、Gastroenterology、152(5):1090-1099(2017))。NAFLDには、比較的良性の単純性脂肪肝から、2020年までに肝移植の主な適応となると予測される非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)まで、一連の肝異常が含まれる(Charltonら、Clin Gastro & Hep.、2(12):1048-1058(2004))。NAFLDは米国で約9000万人が罹患している(Younossiら、Gastroenterology、150(8):1778-1785(2016))。
【0002】
遺伝的に罹りやすい個人におけるNAFLDの発症について、マルチヒット(multi-hit)仮説が提唱されている。食事因子及び環境因子は、肥満とともに、遊離脂肪酸及びコレステロールの血清レベルの上昇、インスリン抵抗性の発症、脂肪細胞増殖、及び腸内微生物叢の変化につながる代謝的摂動をもたらす。脂肪毒性をもたらす脂肪肝は、炎症カスケードの活性化の引き金となり、肝臓の炎症、線維症、肝硬変、及びHCCを引き起こす。
【0003】
インターロイキン(IL)-17A(リガンド)は、皮膚、粘膜組織、及び肝臓を含むいくつかの器官で産生される炎症性サイトカインのファミリーに属する。IL-17RA(IL-17A受容体)は、肝細胞、クッパー細胞、肝星細胞、胆管上皮細胞、類洞内皮細胞によって遍在的に発現される。IL-17によって引き起こされるIL-17RAの活性化によって、炎症誘発性サイトカイン及び好中球動員ケモカインが産生される。IL-17A産生の増加は、慢性B型及びC型肝炎、HCC、及びアルコール性肝障害を含む様々な慢性肝疾患で報告されてきた。IL-17発現の増加は、肥満したヒト及びマウスでも報告されており、肥満及びNAFLDの調節に関係している。
【0004】
動物モデルでは、IL-17AはNAFLDの発病を引き起こすIL-17の主なファミリーメンバーである(Harleyら、Hepatology、59(5):1830-1839(2014)、Xuら、Acta Biochem Biophys.、45(9):726-733(2013))。さらに、NASHのマウスモデルは、野生型マウスと比較してIL-17A発現の有意な増加、並びに肝臓の炎症及び肝細胞傷害と関連している炎症性表現型へのマクロファージの分化の増加を示す(Gilesら、PLOS One、11(2):e0149783(2016))。このように、IL-17経路は動物モデルにおけるNAFLDの発病に関与している。現時点では、NAFLDのためにFDA(米国食品医薬品局)が承認した医学的治療法はない。
【0005】
NAFLD及びそのサブセット、例えば、NASHを治療するための組成物及び方法の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Younossiら、Hepatology、62:1723-1730(2015)
【非特許文献2】Younossiら、Hepatology、64(1):73-84(2016)
【非特許文献3】Wongら、Hepatology、59(6):2188-2195(2014)
【非特許文献4】Goldbergら、Gastroenterology、152(5):1090-1099(2017)
【非特許文献5】Charltonら、Clin Gastro & Hep.、2(12):1048-1058(2004)
【非特許文献6】Younossiら、Gastroenterology、150(8):1778-1785(2016)
【非特許文献7】Harleyら、Hepatology、59(5):1830-1839(2014)
【非特許文献8】Xuら、Acta Biochem Biophys.、45(9):726-733(2013)
【非特許文献9】Gilesら、PLOS One、11(2):e0149783(2016)
【発明の概要】
【0007】
本開示は、治療有効量の、インターロイキン17受容体A(IL-17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体、又はその抗原結合断片のなどのIL-17アンタゴニスト、及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を対象に投与し、それによってNAFLDが対象において治療されることを含む、対象における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を治療する方法を提供する。
【0008】
本開示はまた、肝炎の炎症の軽減を必要とする対象における肝臓の炎症を軽減させる方法を提供し、治療有効量の、インターロイキン17受容体A(IL-17RA)に特異的に結合するモノクローナル抗体又はその抗原結合断片などのIL-17アンタゴニスト、及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物を対象に投与し、それによって対象における肝臓の炎症を軽減させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例2に記載した臨床プロトコールを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、少なくとも部分的には、肝臓の炎症、特に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に関連する肝臓の炎症が、IL-17受容体A(IL-17RA)の拮抗作用により治療され得るという発見に基づいている。
【0011】
<定義>
本技術の理解を容易にするために、以下に多くの用語及び語句を定義する。詳細な説明の全体にわたって、追加の定義を記載する。
【0012】
本明細書で使用される用語「免疫グロブリン」又は「抗体」は、細菌及びウイルスなどの異物を識別及び無力化するために免疫系によって使用される、脊椎動物の血液又は他の体液中に見出されるタンパク質を指す。典型的には、免疫グロブリン又は抗体は、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むタンパク質である。CDRは抗体の「超可変領域」を形成し、これが抗原結合を担っている(後述)。免疫グロブリン全体は、典型的には4種類のポリペプチドからなる。すなわち、重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピー及び軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピーである。重鎖のそれぞれは1つのN末端可変(VH)領域及び3つのC末端定常(CH1、CH2、及びCH3)領域を含み、各軽鎖は1つのN末端可変(VL)領域及び1つのC末端定常(CL)領域を含む。抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)又はラムダ(λ)の2つの異なるタイプのどちらかに割り当てることができる。典型的な抗体では、各軽鎖はジスルフィド結合によって重鎖と結合し、二つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合している。軽鎖可変領域は重鎖の可変領域と並び、軽鎖定常領域は重鎖の第一定常領域と並ぶ。重鎖の残りの定常領域は互いに並んでいる。
【0013】
軽鎖及び重鎖の各対の可変領域は抗体の抗原結合部位を形成する。VH領域及びVL領域は同じ一般構造をもち、各領域は4つのフレームワーク(FW又はFR)領域を含む。本明細書で使用される「フレームワーク領域」という用語は、CDRの間に位置する可変領域内の比較的保存されたアミノ酸配列を指す。各可変ドメインには4つのフレームワーク領域があり、それらはFR1、FR2、FR3、FR4と名づけられる。フレームワーク領域は、可変領域の構造的フレームワークを提供するβシートを形成する(例えば、C.A.Janewayら(編集)、Immunobiology、第5版、Garland Publishing、ニューヨーク、N.Y.(2001)参照)。
【0014】
フレームワーク領域は3つのCDRでつながっている。前述したように、CDR1、CDR2、CDR3として知られる3つのCDRは抗体の「超可変領域」を形成し、抗原結合を担っている。CDRは、フレームワーク領域によって形成されるベータシート構造とつながる(場合によってはその一部を含む)ループを形成する。軽鎖及び重鎖の定常領域は抗原への抗体の結合に直接は関与しないが、定常領域は可変領域の向きに影響を与えることができる。また、定常領域は、抗体依存性補体介在性溶解又はエフェクター分子及び細胞との相互作用による抗体依存性細胞毒性への関与など、様々なエフェクター機能を示す。
【0015】
本明細書で使用されるように、抗体又は他の実体(例えば、抗原結合ドメイン)が抗原又はエピトープを「特異的に認識する」又は抗原又はエピトープに「特異的に結合する」場合、それは、タンパク質及び/又は巨大分子の複合混合物中の抗原を優先的に認識し、抗原又はエピトープを表示しない他の実体よりも実質的に高い親和性で抗原又はエピトープに結合する。この点に関して、「実質的により高い親和性」とは、所望のアッセイ又は測定装置を用いて実体から区別される抗原又はエピトープの検出を可能にするのに十分に高い親和性を意味する。典型的には、それは少なくとも107M-1の結合定数(Ka)を有する結合親和性を意味する(例えば、>107M-1、>108M-1、>109M-1、>1010M-1、>1011M-1、>1012M-1、>1013M-1など)。特定のこのような実施形態では、抗体は、異なる抗原がその特定のエピトープを含む限り、異なる抗原に結合することができる。例えば、ある場合には、異なる種由来の相同タンパク質が同一のエピトープを含むことがある。
【0016】
「抗体の断片」、「抗体断片」、及び抗体の「抗原結合断片」という用語は本明細書中で互換的に用いられ、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す(一般には、Holligerら、Nat.Biotech.、23(9):1126-1129(2005)参照)。本明細書に記載される抗体のあらゆる抗原結合断片は、本発明の範囲内である。抗体断片は、望ましくは、例えば、1つ以上のCDR、可変領域(又はその一部)、定常領域(又はその一部)、又はそれらの組合せを含む。抗体断片の例には、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片、(iii)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を穏やかな還元条件を用いて切断することにより生じる、Fab’断片、(v)ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、及び(vi)抗原に特異的に結合する抗体単一可変領域ドメイン(VH又はVL)ポリペプチドであるドメイン抗体(dAb)が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、及び「オリゴヌクレオチド」という用語は本明細書中で互換的に使用され、それぞれ、ピリミジン及び/又はプリン塩基、好ましくはシトシン、チミン、及びウラシル、並びにアデニン及びグアニンのポリマー又はオリゴマーを指す(793-800(Worth Pub.1982)のAlbert L. Lehninger、Principles of Biochemistryを参照)。これらの用語は、任意のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、又はペプチド核酸成分、及びそれらの任意の化学的変異体、例えばこれらの塩基のメチル化形態、ヒドロキシメチル化形態、又はグリコシル化形態を包含する。これらのポリマー又はオリゴマーは、組成が不均一又は均一であってもよく、天然源から単離されてもよく、又は人工的又は合成的に製造されてもよい。さらに、核酸は、DNA若しくはRNA、又はそれらの混合物であってよく、ホモ二本鎖、ヘテロ二本鎖、及びハイブリッド状態を含む一本鎖又は二本鎖形態で永久的に又は移行的に存在し得る。いくつかの実施形態において、核酸又は核酸配列は、例えば、DNA/RNAヘリックス、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ核酸(例えば、Braasch及びCorey、Biochemistry、41(14):4503-4510(2002)及び米国特許第5,034,506を参照)、ロックされた核酸(LNA;Wahlestedtら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97:5633-5638(2000)を参照)、シクロヘキセニル核酸(Wang,J.Am.Chem.Soc.,122:8595-8602(2000))及びリボザイムのような他の種類の核酸構造を含む。「核酸」及び「核酸配列」という用語はまた、天然のヌクレオチドと同じ機能を示すことができる非天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、及び/又は非ヌクレオチド基本単位(例えば、「ヌクレオチド類似体」)を含む鎖を包含することができる。
【0018】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は本明細書中で互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これはコード化及び非コード化アミノ酸、化学的又は生化学的修飾又は誘導化アミノ酸、及び修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる。
【0019】
「免疫原」及び「抗原」という用語は本明細書中で互換的に使用され、動物(例えば哺乳動物)において免疫応答を誘導する任意の分子、化合物、又は物質を指す。「免疫応答」は、例えば、抗体産生及び/又は免疫エフェクター細胞の活性化を伴い得る。開示の文脈における抗原は、哺乳動物において免疫応答を引き起こす任意のタンパク質性又は非タンパク質性(例えば、炭水化物又は脂質)分子の任意のサブユニット、断片、又はエピトープを含み得る。「エピトープ」とは、抗体又は抗原受容体によって認識される抗原の配列を意味する。エピトープはまた、「抗原決定基」として当技術分野で言及されている。特定の実施形態において、エピトープは、抗体によって特異的に結合される抗原の領域である。特定の実施形態において、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面グルーピングを含み得る。特定の実施形態において、エピトープは、特定の三次元構造特性(例えば、「立体配座」エピトープ)及び/又は特定の電荷特性を有していてもよい。抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、真菌、原生動物、プリオン、細胞、又は細胞外起源のタンパク質又はペプチドであってよく、哺乳動物において免疫応答を誘発し、好ましくは防御免疫を導く。
【0020】
<IL-17アンタゴニスト>
本明細書に記載される方法は、IL-17アンタゴニスト、例えば、IL-17結合分子(例えば、可溶性IL-17受容体又はIL-17結合抗体若しくはその抗原結合断片)、又はIL-17受容体結合分子(例えば、IL-17受容体結合抗体若しくはその抗原結合断片)を利用する。記載された方法で使用され得る17結合抗体の例としては、セクキヌマブ(COSENTYX(R))、イキセキズマブ(TALTZ(R))、及びCJM112(例えば、Riisら、Expert Opin.Investig.Drugs、27(1):43-53(2018)参照)が挙げられるが、これらに限定されない。IL-17アンタゴニストについては、例えば、Wasilewskaら、Postepy.Dermatol.、Alergol.、33(4):247-252(2016)、及びSilfvast-Kaiserら、Expert Opin.Biol.Ther.、19(1):45-54(2019)にさらに記載されている。いくつかの実施形態において、IL-17アンタゴニストは、IL-17受容体A(「IL-17RA」)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片である。「IL-17受容体A」、「IL-17RA」、「IL-17受容体」、及び「IL-17R」という用語は、本明細書中で、サイトカインIL-17Aに結合する細胞表面受容体及び受容体複合体(例えば、IL-17RA-IL-17RC複合体及びIL-17RA-IL-17RB)を指すために互換的に使用される。IL-17Aは、活性化されたT細胞によって選択的に発現される転写産物として最初に識別される炎症性サイトカインである。IL-17RAは遍在的に発現され、約0.5nMの親和性でIL-17Aと結合することが示されている(Yaoら、Immunity、3:811-821(1995))。5つの追加のIL-17様リガンド(すなわち、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17F)及び4つの追加のIL-17RA様受容体(すなわち、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、及びIL-17RE)が識別された(Kolls及びLinden、Immunity、21:467-476(2004))。異なるIL-17RA受容体複合体は、種々のIL-17リガンドの1つ又はそれ以上に結合し、それにより細胞内でシグナル伝達経路を開始することが知られている。IL-17RAのクローニング、特徴付け、及び調製は、例えば、米国特許第6,072,033号に記載されている。
【0021】
本明細書に記載された抗体又はその抗原結合断片は、全長の野生型IL-17RAに特異的に結合することができ、そのアミノ酸配列は配列番号9に示されている。あるいは、抗体又はその抗原結合断片は、IL-17RAの変異体、突然変異体、及び/又は断片に特異的に結合し得る。そのようなIL-17RAの変異体、突然変異体、及び/又は断片は、IL-17A及び/又はIL-17Fに結合する能力を望ましくは保持する。いくつかの実施形態において、例えば、抗体又はその抗原結合断片は、IL-17RAの細胞外ドメイン、又はシグナルペプチドを欠くIL-17RAの成熟形態に特異的に結合し得る。その抗体又はその抗原結合断片は、IL-17RA突然変異体又は変異体がIL-17A及び/又はIL-17F、又はIL-17A及び/又はIL-17Fの異種型を結合する能力を保持する限り、配列番号9と約70%~99%の間同一であり、かつ米国特許第6,072,033号に記載されているようなアミノ酸配列を有する、任意のIL-17RA突然変異体又は変異体に特異的に結合することができる。他の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、例えば、N-及びO-結合グリコシル化のような翻訳後修飾を含むIL-17RAタンパク質に特異的に結合することができる。
【0022】
本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1の相補性決定領域1(CDR)アミノ酸配列、配列番号2のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号3のCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号4のCDR1アミノ酸配列、配列番号5のCDR2アミノ酸配列、及び配列番号6のCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。他の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1、配列番号2、及び/又は配列番号3とそれぞれ少なくとも90%同一である重鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列、及び配列番号4、配列番号5、及び/又は配列番号6とそれぞれ少なくとも90%同一である軽鎖可変領域CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を含むことができる。
【0023】
一実施形態では、重鎖可変領域(VH)CDR1アミノ酸配列は、配列番号1を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、VHCDR2アミノ酸配列は、配列番号2を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなり、VHCDR3アミノ酸配列は、配列番号3を含むか、これから本質的になるか、又はこれからなる。開示された抗体のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3アミノ酸配列が、それぞれ本質的に配列番号1、配列番号2及び配列番号3から本質的になる場合、抗体又はその抗原結合断片(例えば、精製又は単離を容易にするビオチンなどのタンパク質部分)に実質的に影響を及ぼさないさらなる成分をCDRに含めることができる。開示された抗体のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3アミノ酸配列が、それぞれ配列番号1、配列番号2、及び配列番号3からなる場合、各CDRは、いかなる付加的成分(すなわち、CDRに対して内因性でない成分)も含まない。同様に、軽鎖可変領域(VL)CDR1アミノ酸配列は、配列番号4を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、VLCDR2アミノ酸配列は、配列番号5を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなり、VLCDR3アミノ酸配列は、配列番号6を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる。開示された抗体のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3アミノ酸配列が、それぞれ本質的に配列番号4、配列番号5、及び配列番号6から本質的になる場合、抗体又はその抗原結合断片(例えば、精製又は単離を容易にするビオチンなどのタンパク質部分)に実質的に影響を及ぼさないさらなる成分をCDRに含めることができる。開示された抗体のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3アミノ酸配列が、それぞれ配列番号4、配列番号5、及び配列番号6からなる場合、各CDRは、いかなる付加的な成分(すなわち、CDRに対して内因性でない成分)も含まない。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号7を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列、及び配列番号8を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含む。VHアミノ酸配列が配列番号7から本質的になり、かつVLアミノ酸配列が配列番号8から本質的になる場合、抗体又はその抗原結合断片に実質的に影響を及ぼさないさらなる成分(例えば、精製又は単離を容易にするビオチンなどのタンパク質部分)を重鎖又は軽鎖可変領域に含めることができる。VHアミノ酸配列が配列番号7からなり、かつVLアミノ酸配列が配列番号8からなる場合、重鎖及び軽鎖可変領域は、さらなる成分(すなわち、重鎖又は軽鎖可変領域に対し内因性でない成分)を含まない。
【0025】
配列番号7を含むVHアミノ酸配列及び配列番号8を含むVLアミノ酸配列を含むヒトモノクローナル抗体は、Ortho Dermatologics,Inc.によりSILIQ(商標)(ブロダルマブ)として米国で販売されており、LEO Pharma,Inc.によりKYNTHEUM(R)として欧州で販売されている。ブロダルマブは、中等症から重症の乾癬の治療薬としてFDAにより最近承認されたヒトモノクローナル抗体及びIL-17受容体アンタゴニストである。ブロダルマブは、乾癬及び慢性炎症性疾患に伴う炎症の抑制に関与している(Sherlockら、Nat.Med.、18(7):1069-1076(2012))。
【0026】
ブロダルマブは、第3相臨床試験(Stroberら、Journal of the American Academy of Dermatology、72(5):AB224(2015)、Lebwohlら、N.Eng.J.Med.、373(14):1318-1328(2015))に基づき、2017年に乾癬の治療のために承認された。ブロダルマブは忍容性が高く、安全性プロファイルも良好である。ブロダルマブを用いた第3相試験で観察された治験薬投薬下の有害事象(TEAE)のうち最も多かったのは、鼻咽頭炎、上気道感染、頭痛、関節痛であった。好中球減少症も観察されたが、重篤な感染症にはつながらなかった。さらに、好中球減少症は軽度で、一過性で可逆性であった。ブロダルマブ治療群では、プラセボと比較してカンジダ感染が多く観察された。自殺念慮は枠組み警告として含まれていたが、ブロダルマブプログラムの患者をさらに分析したところ、因果関係の証拠は示されなかった(Lebwohlら、Journal of the American Academy of Dermatology、78(1):81-89.e5(2018))。
【0027】
本開示はまた、配列番号7に対して少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一)である重鎖可変領域アミノ酸配列、及び配列番号8に対して少なくとも90%同一(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一)である軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む抗体又はその抗原結合断片を提供する。本明細書に記載されるような核酸又はアミノ酸配列の「同一性」は、目的の核酸又はアミノ酸配列を参照核酸又はアミノ酸配列と比較することによって決定することができる。同一性のパーセントは、目的の配列と参照配列との間で同じ(すなわち、同一である)ヌクレオチド又はアミノ酸残基の数を、最も長い配列の長さ(すなわち、目的の配列又は参照配列のいずれか長い方の長さ)で割ったものである。最適アラインメントを取得し、2つ以上の配列間の同一性を計算するための数学的アルゴリズムが数多く知られており、多くの利用可能なソフトウェアプログラムに組み込まれている。そのようなプログラムの例としては、CLUSTAL-W、T-Coffee、ALIGN(核酸及びアミノ酸配列のアラインメントのため)、BLASTプログラム(例えば、BLAST2.1、BL2SEQ、及びその後の版)及びFASTAプログラム(例えば、FASTA3x、FAS(商標)、及びSSEARCH)(配列アラインメント及び配列類似性検索のため)が挙げられる。配列アラインメントアルゴリズムは、例えば、Altschulら、J.Molecular Biol.、215(3):403-410(1990)、Beigertら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、106(10):3770-3775(2009)、Durbinら、編集、Biological Sequence Analysis: Probabilistic Models of Proteins and Nucleic Acids、Cambridge University Press、英国ケンブリッジ(2009)、及びSoding、Bioinformatis、21(7):951-960(2005)、Altschulら、Nucleic Acids Res.、25(17):3389-3402(1997)及びGusfield、Algorithms on Strings, Trees And Sequence、Cambridge University Press、英国ケンブリッジ(1997))にも開示されている。
【0028】
抗体又はその抗原結合断片がIL-17RAに特異的に結合する能力を保持する限り、前記抗体又はその抗原結合断片の1つ以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸で置き換え又は置換することができる。アミノ酸の「置き換え」又は「置換」とは、所定の位置又は残基における1つのアミノ酸を、ポリペプチド配列内の同じ位置又は残基の別のアミノ酸で置き換えすることを指す。
【0029】
アミノ酸は「芳香族」と「脂肪族」に大別され、芳香族アミノ酸は芳香環を含む。「芳香族」アミノ酸の例としては、ヒスチジン(H又はHis)、フェニルアラニン(F又はPhe)、チロシン(Y又はTyr)、及びトリプトファン(W又はTrp)が挙げられる。非芳香族アミノ酸は「脂肪族」アミノ酸として大別される。「脂肪族」アミノ酸の例には、グリジン(G又はGly)、アラニン(A又はAla)、バリン(V又はVal)、ロイシン(L又はLeu)、イソロイシン(I又はIle)、メチオニン(M又はMet)、セリン(S又はSer)、スレオニン(T又はThr)、システイン(C又はCys)、プロリン(P又はPro)、グルタミン酸(E又はGlu)、アスパラギン酸(A又はAsp)、アスパラギン(N又はAsn)、グルタミン(Q又はGln)、リジン(K又はLys)、アルギニン(R又はArg)が挙げられる。
【0030】
脂肪族アミノ酸は4つのサブグループに細分される。「大きな脂肪族非極性サブグループ」はバリン、ロイシン、イソロイシンからなる。「脂肪族のわずかに極性のサブグループ」は、メチオニン、セリン、スレオニン、及びシステインからなる。「脂肪族極性/荷電サブグループ」は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、及びアルギニンからなる。「小さい残基サブグループ」はグリジン及びアラニンからなる。荷電/極性アミノ酸のグループは、3つのサブグループ、すなわち、リジン及びアルギニンからなる「正電荷のサブグループ」、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる「負電荷のサブグループ」、アスパラギン及びグルタミンからなる「極性のサブグループ」に細分され得る。
【0031】
芳香族アミノ酸は、2つのサブグループ、すなわち、ヒスチジン及びトリプトファンからなる「窒素環サブグループ」、及びフェニルアラニン及びチロシンからなる「フェニルサブグループ」に細分され得る。
【0032】
アミノ酸置き換え又は置換は、保存的、半保存的、又は非保存的であり得る。「保存的アミノ酸置換」又は「保存的突然変異」という用語は、共通の特性を有する別のアミノ酸による1つのアミノ酸の置き換えを意味する。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義する機能的な方法は、相同生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化された頻度を解析することである(Schulz及びSchirmer、Principles of Protein Structure、Springer-Verlag、ニューヨーク(1979))。このような分析によれば、アミノ酸のグループは、グループ内のアミノ酸が相互に優先的に交換し、したがって、全体的なタンパク質構造への影響において互いに最も似ている場合に定義されてもよい(Schulz及びSchirmer、前出)。
【0033】
保存的アミノ酸置換の例には、上記のサブグループ内のアミノ酸の置換、例えば、正電荷が維持され得るようにアルギニンの代わりのリジン、又はその逆、負電荷が維持され得るようにアスパラギン酸の代わりのグルタミン酸、又はその逆、遊離-OHが維持され得るようにスレオニンの代わりのセリン、及び遊離-NH2が維持され得るようにアスパラギンの代わりのグルタミンが挙げられる。
【0034】
「半保存的突然変異」は、上に挙げた同じグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換を含むが、同じサブグループ内のものは含まない。例えば、アスパラギン酸のアスパラギンへの置換、又はアスパラギンのリジンへの置換は、同一グループ内であるが異なるサブグループ内のアミノ酸に関与する。「非保存的突然変異」は、異なるグループ間のアミノ酸置換、例えば、トリプトファンの代わりのリジン、又はセリンの代わりのフェニルアラニンなどを含む。
【0035】
さらに、抗体又はその抗原結合断片がIL-17RAに特異的に結合する能力を保持する限り、抗体又はその抗原結合断片に1つ又は複数のアミノ酸を挿入することができる(例えば、重鎖及び/又は軽鎖可変領域アミノ酸配列への挿入)。任意の数の任意の適切なアミノ酸を抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列に挿入することができる。この点において、少なくとも1つのアミノ酸(例えば、2個以上、5個以上、又は10個以上のアミノ酸)であるが、20個以下のアミノ酸(例えば、18個以下、15個以下、又は12個以下のアミノ酸)を抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列に挿入することができる。例えば、1~10個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、又は10個のアミノ酸)を、抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列に挿入することができる。この点において、アミノ酸(複数可)は、任意の適切な位置で抗体又はその抗原結合断片に挿入することができる。好ましくは、アミノ酸(複数可)は、抗体又はその抗原結合断片のCDR(例えば、CDR1、CDR2、又はCDR3)に挿入される。
【0036】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載された特定のアミノ酸配列を含むポリペプチドに限定されない。実際、抗体又はその抗原結合断片は、IL-17RAへの結合に関して本発明の抗体又はその抗原結合断片と競合する任意の重鎖ポリペプチド又は軽鎖ポリペプチドを含み得る。抗体競合は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、又は免疫組織化学法のようなありふれたペプチド競合アッセイを用いてアッセイすることができる(例えば、米国特許第4,828,981号及び第8,568,992号、並びにBraitbardら、Proteome Sci.,4:12(2006)参照)。
【0037】
本明細書に記載された抗体又はその抗原結合断片は、望ましくはモノクローナル抗体である。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、抗原上の単一エピトープに対して指向されるBリンパ球の単一クローンによって産生される抗体を指す。モノクローナル抗体は典型的には、Koehler及びMilstein,Eur.J.Immunol.、5:511-519(1976)で最初に報告されたように、ハイブリドーマ技術を用いて産生される。モノクローナル抗体は、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567を参照)を用いて産生され、ファージディスプレイ抗体ライブラリー(例えば、Clacksonら、Nature、352:624-628(1991)及びMarksら、J.Mol.Biol.,222:581:597(1991)を参照)から単離されるか、又は完全ヒト免疫グロブリン系を担持するトランスジェニックマウスから産生され得る(例えば、Lonberg、Nat.Biotechnol.、23(9):1117-25(2005)、及びLonberg、Handb.Exp.Pharmacol.、181:69-97(2008)を参照)。対照的に、「ポリクローナル」抗体は、動物内の異なるB細胞系列によって分泌される抗体である。ポリクローナル抗体は、同一抗原上の複数のエピトープを認識する免疫グロブリン分子の集合体である。
【0038】
IL-17RA結合抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体であり得る。「キメラ」とは、ヒト領域及び非ヒト領域の両方を含む抗体又はその断片を意味する。「ヒト化」抗体は、ヒト抗体足場及び非ヒト抗体から得られるか又は誘導される少なくとも1つのCDRを含むモノクローナル抗体である。非ヒト抗体には、例えば、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)などの任意の非ヒト動物から単離された抗体が含まれる。ヒト化抗体は、非ヒト抗体から得られるか又は誘導される1つ、2つ、又は3つのCDRを含み得る。特定の実施形態では、IL-17RA結合抗体又はその抗原結合断片はヒトモノクローナル抗体である。
【0039】
ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体は、インビトロ源(例えば、ハイブリドーマ又は抗体を組み換えて産生する細胞株)及びインビボ源(例えば、げっ歯類)を含む任意の手段によって得ることができる。抗体を作製する方法は当該技術分野で知られており、例えば、Koehler及びMilstein,Eur.J.Immunol.、5:511-519(1976)、Harlow及びLane(編集)、Antibodies:A Laboratory Manual、CSH Press(1988);及びJanewayら(編集)、Immunobiology、第5版、Garland Publishing, ニューヨーク、N.Y.(2001))に記載されている。
【0040】
<組成物及び配合物>
本開示はまた、本明細書に記載されたIL-17RA結合モノクローナル抗体又はその抗原結合断片などのIL-17アンタゴニストを含む組成物を提供する。この組成物は、望ましくは、担体、好ましくは薬学的に許容可能な(例えば、生理学的に許容可能な)担体、及びそのモノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む、薬学的に許容可能な(例えば、生理学的に許容可能な)組成物である。任意の適切な担体を本開示の文脈内で使用することができ、そのような担体は当技術分野において周知である。例えば、組成物は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、及び塩化ベンザルコニウムなどの保存剤を含有していてもよい。任意に2種以上の保存剤の混合物を用いてもよい。さらに、緩衝剤を組成物に含めてもよい。適切な緩衝剤としては、例えば、グルタミン酸(グルタミン酸塩)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、及び種々の他の酸及び塩が挙げられる。任意に2種以上の緩衝剤の混合物を使用してもよい。医薬用組成物を調製するための方法は当業者に知られており、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、Lippincott Williams & Wilkins、第21版(2005年5月1日)に記載されている。
【0041】
本組成物は、「治療有効量」のIL-17RA結合モノクローナル抗体又はその抗原結合断片などのIL-17アンタゴニストを含むことが望ましい。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な、投与量及び期間において有効な量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び重量、並びに個体において所望の反応を誘発する抗体の能力などの因子に応じて変動し得る。例えば、本発明のIL-17RA結合モノクローナル抗体の治療有効量は、ヒトにおけるIL-17A及び/又はIL-17Fの生物活性を減少させる及び/又は肝臓の炎症を軽減させる量である。
【0042】
あるいは、薬理学的及び/又は生理学的効果は、予防的であり得る、すなわち、効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防し得る。この点において、本発明の方法は、「予防的有効量」のIL-17アンタゴニスト(例えば、IL-17RA結合抗体)を投与することを含む。「予防的有効量」とは、所望の予防結果(例えば、炎症、乾癬、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防)を達成するのに必要な、投与量及び期間において有効な量を指す。
【0043】
抗体の典型的な用量は、例えば、動物又はヒトの体重の0.1μg/kg~30mg/kgの範囲内であり得る。しかし、この例示的な範囲を下回るか又は上回る用量は、本発明の範囲内である。例えば、1日の非経口投与量は、総体重の約0.2μg/kg~約25mg/kg(例えば、約0.5μg/kg、約1.5μg/kg、約5μg/kg、約10μg/kg、約100μg/kg、約500μg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、又は上記の値のいずれか2つによって定義される範囲)、好ましくは総体重の約0.1μg/kg~約10mg/kg(例えば、約0.5μg/kg、約1μg/kg、約50μg/kg、約150μg/kg、約300μg/kg、約750μg/kg、約1.5mg/kg、約5mg/kg、又は上記の値のいずれか2つによって定義される範囲)、より好ましくは総体重の約1μg/kg~約5mg/kg(例えば、約3μg/kg、約15μg/kg、約75μg/kg、約300μg/kg、約900μg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約4mg/kg、又は上記の値のいずれか2つによって定義される範囲)であり得る。具体的な実施形態では、用量は、0.1μg/kg~約30mg/kg、任意に1μg/kg~約30mg/kg又は10μg/kg~約5mg/kgの範囲であり得る。特定の実施形態において、本方法は、約150mg~約250mg(例えば、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、又は約240mg)のモノクローナル抗体の1日当たりの総量を投与することを含む。
【0044】
ブロダルマブのようなIL-17RA結合モノクローナル抗体を含有する剤形は、例えば、米国特許第10,072,085号に記載されており、このような剤形は本開示の範囲内である。一実施形態において、本開示は、約4.4~約5.2(例えば、約4.5、約4.6、約4.7、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0又は約5.1)のpHにおいて、約100~150mg/mLのIL-17RA結合モノクローナル抗体(例えば、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、又は約140mg/mLの抗体)、約5mM~約30mMのグルタミン酸塩(例えば、約10mM、約15mM、約20mM、又は約25mMのグルタミン酸塩)、2~4%プロリン(例えば、約2.5%、約3.0%、約3.5%のプロリン)及び0.001~0.2%(w/v)のポリソルベート20(例えば、約0.005%、約0.05%、又は約0.015%のプロリン)を含む剤形を提供する。例えば、この剤形は、pH4.8で、10mMのL-グルタミン酸塩、3%(w/v)のL-プロリン、及び0.001%(w/v)のポリソルベート20と共に製剤化される1.5mL(210mg)のブロダルマブを含み得る。
【0045】
治療効果又は予防効果は、治療を受けた患者の定期的な評価によってモニタリングできる。数日以上にわたる反復投与の場合、状態に応じて、所望の疾患症状の抑制が起こるまで治療を繰り返すことができる。しかし、他の投与計画が有用であり得、本発明の範囲内である。所望の用量は、組成物の単回ボーラス投与、組成物の多回ボーラス投与、又は組成物の持続注入投与により送達することができ、これは、以下でさらに議論する。
【0046】
本開示はさらに、前記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸配列を提供する。特定の実施形態において、核酸配列はベクターの形態である。ベクターは、例えば、プラスミド、エピソーム、コスミド、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルス又はアデノウイルス)、又はファージであり得る。適切なベクター及びベクター調製の方法は、当技術分野で周知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning、Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2012)、及びAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates及びJohn Wiley & Sons、ニューヨ-ク、N.Y.(1994))。
【0047】
ベクターは、抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸に加えて、望ましくは、宿主細胞における抗体コード核酸配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)などの発現制御配列を含む。例示的な発現制御配列は当該分野で知られており、例えば、Goeddel、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990)。
【0048】
モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、キット、すなわち、抗体を使用する方法(例えば、対象においてNAFLDを治療する方法)を実施するための使用説明書を伴う所定量の試薬のパッケージされた組合せで提供することができる。そのようなものとして、本開示は、本明細書に記載されたモノクローナル抗体又は抗原結合断片を含むキット、及びその使用(例えば、肝臓の炎症又はNAFLDを治療するための使用)のための使用説明書を提供する。使用説明書は、紙形式又はディスク、CD、DVDなどのコンピュータ可読形式とすることができる。その代わりに又はそれに加えて、キットはキャリブレーター又はコントロール、及び/又は少なくとも1つの容器、及び/又は緩衝剤を含むことができる。理想的には、キットは、方法を実施するために必要な全ての成分、すなわち試薬、標準、緩衝剤、希釈剤などを含む。他の添加剤、例えば、安定剤、緩衝剤(例えば、遮断緩衝剤又は溶解緩衝剤)などをキットに含めてもよい。種々の試薬の相対量は、本方法を実質的に最適化する試薬の溶液中の濃度を提供するように変化させることができる。試薬は、適切な濃度を有する試薬溶液を溶解時に提供する賦形剤を含む乾燥粉末(典型的には凍結乾燥された)として提供され得る。
【0049】
<治療方法>
本開示は、対象における非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、及び/又は肝臓の炎症を治療する方法を提供し、治療有効量のIL-17RA結合モノクローナル抗体などのIL-17アンタゴニスト、及び薬学的に許容可能な担体を含む、有効量の上記組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「治療」、「治療すること」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。好ましくは、前記効果は治療的である、すなわち、効果は疾患及び/又は疾患に起因する有害な症状を部分的又は完全に治癒する。上述したように、本明細書で使用される「非アルコール性脂肪性肝疾患」(NAFLD)という用語は、アルコール消費によって引き起こされるものではない肝細胞における過剰な脂肪の蓄積によって特徴付けられる一連の肝臓の状態を指す総称である。NAFLDは、特異的な肝障害を伴わない脂肪症(孤立性脂肪肝)から、瘢痕化、線維化、及び場合によっては肝硬変に至る炎症が認められる非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)まで、疾患スペクトラムを表す代謝障害である(Dowmanら、Ailment Pharmacol Ther.、33(5):525-540(2011))。危険因子には、男性、年齢、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドロームなどがある(Bellentaniら、Dig.Dis.、28:155-161(2010))。米国では、NAFLDは慢性肝疾患の最も一般的な病型であり、2020年までに世界中で肝移植の主原因となる可能性が高い(Mussoら、Ann.Med.、43:617-649(2011))。乾癬患者では、対照よりも非アルコール性脂肪性肝疾患の発生率が増加することが示されている(Van der Vootら、J Amer.Acad.Dermatol.、70:517-524(2014)、及びPrussickら、J.Clin.Aesthet.Dermatol.、8(3):43-45(2015))。非アルコール性脂肪性肝疾患及び乾癬患者では、非乾癬患者に比べて皮膚疾患が重症化し、重度の肝線維化のリスクが高い(Mieleら、J Hepatol.、51:778-786(2009))。
【0050】
上述したように、NAFLDに罹患した個人の中には、肝臓の炎症を特徴とし、肝硬変、肝細胞癌、又は肝不全に進行する可能性がある侵攻型の脂肪性肝疾患である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を発症する者もいる(Dowmanら、前出;及びPrussickら、前出)。この損傷は、大量の飲酒による損傷と似ている。NASHを発症するリスクは、肥満者では33%を超えるが、痩身者では5%未満である(Prussickら、前出)。患者が脂肪肝疾患であるか、より重度のNASHであるかを区別する唯一の方法は、肝生検によるものである。肝生検の候補となり得るNASHの高リスク患者は、メタボリックシンドローム、肥満(BMI>30)、糖尿病の患者である(Dowmanら、前出)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法は、乾癬にも罹患している患者に発生する肝線維症(NC-NASH+LF)を伴うNAFLD、NASH、又は非肝硬変のNASHを治療するために使用され得る。他の実施形態において、開示された方法を用いて、乾癬に罹患していない患者におけるNAFLD、NASH、又はNC-NASH+LFを治療することができる。さらに、開示された方法は、一般に、肝臓の炎症、特にNAFLD、NASH、又はNAFLDの他のサブセットに関連する肝臓の炎症を治療するために使用され得る。
【0051】
有効量のIL-17RA結合モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下、又は坐剤投与を含む標準的な投与技術を用いて哺乳動物に投与することができる。組成物は、非経口投与に適していることが好ましい。本明細書で使用される「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、及び腹腔内投与を含む。理想的には、静脈内、腹腔内、又は皮下注射による末梢全身送達を用いて、前記組成物を哺乳動物に投与する。
【0052】
投与頻度は、使用される剤形中の特定のIL-17RA抗原結合タンパク質の薬物動態パラメータに依存する。典型的には、臨床医は、所望の効果を達成する用量に達するまで組成物を投与する。したがって、組成物は、単回投与として、又は2回以上の投与量(同量のモノクローナル抗体を含む場合も含まない場合もある)として、経時的に、又は埋め込み装置若しくはカテーテルを介した持続注入として投与することができる。本開示の方法は、特定の投与頻度に限定されない。いくつかの実施形態において、組成物は、1日1回投与され得るが、好ましくは、治療期間にわたり少なくとも週1回投与される。他の実施形態において、この方法は、最初に、組成物の週1回の投与、続いて2週間に1回の組成物の投与を含むことができる。例えば、組成物は、3週間にわたり週1回、その後12週間にわたり2週間毎の15週間の総治療期間投与してもよい。あるいは、投与開始日を隔週として、連続投与を行うこともできる。
【0053】
IL-17RA結合モノクローナル抗体を含む組成物の投与のための治療期間は特に制限されないが、治療期間は、望ましくは10週間以上、30週間以上、又は52週間(すなわち、1年)以上である。一実施形態において、治療期間は約10~20週間(例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19週間)である。さらに、治療期間には休止期間を含めてもよい。適切な用法及び治療期間のさらなる改良は、当業者によってなされ得る。例えば、本明細書に記載された組成物の用量は、時間「0」(すなわち、最初の投与)、時間「0」後1週間(すなわち、2回目の投与)、時間「0」後2週間(すなわち、3回目の投与)に皮下注射によって投与し、その後3回目の投与に続いて2週間毎に投与することができる。2週間毎の組成物の投与は、12週間、15週間の総治療期間実施してもよい。
【0054】
一旦哺乳動物(例えば、交差反応性ヒト)に投与されると、開示されたIL-17RA結合抗体又はその抗原結合断片のようなIL-17アンタゴニストの生物学的活性及び治療効果は、当該技術分野で知られた任意の適切な方法によって測定することができる。例えば、増大した肝酵素は典型的には肝臓の炎症及び線維症と関連しているので、生物学的活性は、対象中の1種以上の肝酵素のレベルを決定することによって評価することができる。したがって、本明細書に記載された方法は、望ましくは、肝酵素のレベルの減少をもたらす。肝酵素のレベルは、開示された方法の開始前になされた最初の測定(すなわち、ベースライン)と比較して、任意の適切な量だけ低下させることができる。例えば、1種以上の肝酵素のレベルは、ベースラインと比較して、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%低下させることができる。記載された方法の治療効果を評価するために、任意の適切な肝酵素、又は酵素の組合せを測定してもよい。この点について、標準肝パネルは、総ビリルビン、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、AST/ALT比、アルカリホスファターゼ(ALP)、ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、及びアルブミンの測定を含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された方法は、対象におけるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及び/又はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルの低下をもたらす。例えば、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、C-反応性タンパク質(CRP)、アポリポタンパク質、G2-マクログロブリン、ヒアルロン酸(HA)、ハプトグロビン、プロコラーゲンIII型アミノ末端プロペプチド(PIIINP)、メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害因子(TIMP-1)、α-2マクログロブリン(A2M)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、空腹時インスリン濃度、及び脂質を含む、炎症又は肝機能の他の生物学的マーカー(バイオマーカー)を測定して、治療効果を評価することができる。一実施形態において、本明細書に記載された方法は、対象におけるc-反応性タンパク質(CRP)のレベルの低下をもたらす。CRPのレベルは、開示された方法の開始前になされた最初の測定(すなわち、ベースライン)と比較して、任意の適切な量だけ低下させることができる。例えば、CRPのレベルは、ベースラインと比較して、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%低下させることができる。
【0055】
IL-17RA結合抗体又はその抗原結合断片のようなIL-17アンタゴニストは、単独で、又は他の薬物又は薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、IL-17アンタゴニストは、NAFLD又はNASHの治療又は予防のために、他の薬剤と組み合わせて投与することができる。この点において、IL-17アンタゴニストは、例えば、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン及びフルチカゾン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)(例えば、アスピリン、イブプロフェン、及びナプロキセン)、及び他の生物学的製剤(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、アレファセプト、ウステキヌマブ、イキセキズマブ、セクキヌマブ、及び/又はグセルクマブ)を含む少なくとも1種の他の抗炎症剤と組み合わせて使用することができる。IL-17アンタゴニストを含む組成物の投与の前、同時に、又はその後に、追加の薬剤又は薬物を投与することができる。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、いかなる方法によってもその範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0057】
[実施例1]
本実施例では、早期非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の潜在的指標を有する乾癬患者における炎症マーカーに関するブロダルマブの48週間のプール解析について記載する。
【0058】
本研究の目的は、ブロダルマブを投与された乾癬及び早期NAFLD指標患者における炎症マーカーC-反応性タンパク質(CRP)の変化を評価することであった。
【0059】
二つの同一に計画された無作為化二重盲検乾癬試験からデータをプールした。成人には、ブロダルマブ(210mgを2週間毎)又はウステキヌマブ(インターロイキン(IL)-12及びIL-2に結合する治療用ヒト免疫グロブリン(Ig)G1κmAb)45mg(体重100kg以下)又は90mg(100kg超)をベースライン、4週目、その後12週毎に最長48週間皮下投与した。16週目に、効果不十分なウステキヌマブ治療患者はブロダルマブ(210mgを2週間毎)に切り替えることができた。CRP変化は、ベースライン線維症指標(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)/アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)比≧1.4、AST>40U/L、線維症-4(FIB4)スコア>1.3)によりサブグループ化した患者で分析した。
【0060】
AST/ALT≧1.4サブグループでは、48週目に、ウステキヌマブ/ブロダルマブ治療群(16.2mg/L(n=6))対ウステキヌマブ単独治療群(2.8mg/L(n=56)、P=0.01)でCRPがベースラインから有意に低下した。さらに、AST>40(3.3(n=10)対0.1mg/L(n=41))及びFIB4スコア>1.3(2.3(n=18)対0.8mg/L(n=85))のサブグループでは、ウステキヌマブ/ブロダルマブの方がウステキヌマブよりもCRP低下が数値的に大きかった。
【0061】
このブロダルマブで治療した早期NAFLD集団におけるCRP値低下の長期事後観察は、ブロダルマブが肝臓の炎症を軽減する活性を有する可能性を示唆している。
【0062】
[実施例2]
この実施例では、肝硬変を伴う非肝硬変性非アルコール性脂肪性肝炎(NC-NASH+LF)の対象におけるブロダルマブの安全性及び有効性を評価する第2a相臨床試験について述べる。
【0063】
多施設無作為化二重盲検プラセボ対照24週間第2a相試験では、NC-NASH+LFの対象における、ブロダルマブの抗炎症効果及び抗線維化効果、並びに安全性及び忍容性をプラセボと比較評価する。NC-NASH+LFの対象は、米国肝臓学会議(AASLD)基準、VCTE推定F1-F3線維症(2.88-4.67kPa)、磁気共鳴画像法(MRI)-プロトン密度脂肪率測定(PDFF)推定肝脂肪>5%、ボディマス指数(BMI)>25kg/m2、肝酵素上昇(男女それぞれALT>30及び>19)に従って識別する。
【0064】
インフォームド・コンセント取得後、対象が治験への組み入れ基準を満たしているか否かを判断するために採血を行う。本試験中の検査は全て絶食状態で採血し、試験指定の中央検査室に送付して処理する。妊娠の可能性のある女性は、血清又は尿による妊娠検査を受ける。
【0065】
測定中の結果の1つに肝酵素の改善があるとして、肝酵素の上昇が認められた対象を募集する。肝臓の炎症及び肝臓の合成機能のエビデンスについては、検査で以下の項目、すなわち、鑑別を伴う全血算(CBC)、塩基性代謝プロファイル(BMP)、プロトロンビン時間(PT)/INR、肝パネル、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、C-反応性タンパク質(CRP)、アポリポタンパク質、G2-マクログロブリン、ヒアルロン酸(HA)、ハプトグロビン、プロコラーゲンIII型アミノ末端プロペプチド(PIIINP)、メタロプロテイナーゼ-1の組織阻害因子(TIMP-1)、α2マクログロブリン(A2M)を実施する。ヘモグロビンA1c(HbA1c)、空腹時インスリン濃度、脂質プロファイルを含む代謝精密検査も行う。インスリン抵抗性は、Homeostatic Model Assessment of Insulin Resistance(HOMA-IR)を用いて算出する。肝疾患の他の原因(例えば、臨床的に適切な場合、ウイルス性肝炎、遺伝性ヘモクロマトーシス、自己免疫性肝疾患、α-1-アンチトリプシン欠損症、及びウィルソン病など)を除外するためにも血液を採取する。対象がインフォームド・コンセントの提供前6ヵ月以内に肝スキャンを受けていない場合は、HCCを除外するためにα-フェトプロテイン(AFP)検査用の採血を行う。
【0066】
AST/ALT比、AST/血小板比指数(APRI)スコア、BAATスコア、BARDスコア、増強肝線維症(ELF)検査、線維計、線維症-4(FIB-4)スコア、Hepascore、及び非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)線維症スコア(NFS)のベースラインの線維症の程度を確立するために、以下の複合スコアを利用可能な血液検査から算出する。
【0067】
探索的評価項目(Pro-C3(線維症マーカーであるN末端III型コラーゲンプロペプチド)、並びにCCR2及びCCR5(炎症誘発性及び線維化促進性マーカー))について採血する。
【0068】
肝硬度及び脂肪肝の程度を評価するために、各対象は制御された減衰パラメータ(CAP)、MRI PDFF、及びMultiscan(利用可能な場合)によるVCTEを受ける。
【0069】
全ての患者に、完全な身体診察、構造化面接(アルコール消費、処方薬及び市販薬、ハーブサプリメントに関するデータを収集する)、及び肝臓の画像診断及び医療記録の再検討を行う。
【0070】
本治験には、NAFLDと診断され、選択基準を全て満たし、除外基準のいずれにも該当しない計60人の対象を米国内の約10の臨床施設において組み入れる。最終被験者の組入れ開始からEOS評価終了までの治験期間の推定期間は52週間とする。各被験者について、ベースラインからEOT来院までの治験薬投与期間の推定期間は15週間である。適格基準を満たし、文書によるインフォームド・コンセントが得られた被験者を、2つの治療群のいずれかに1:1の割合で無作為に割り当てる。一方の群にはブロダルマブを投与し、もう一方の群にはプラセボを投与する。各来院時に、有害事象(AE)及び重篤な有害事象(SAE)を記録し、診療録及び併用薬を検討する。
【0071】
ブロダルマブを、各々pH4.8でL-グルタミン酸10mM、L-プロリン3%(w/v)、ポリソルベート20 0.001%(w/v)を配合したブロダルマブ1.5mL(210mg)を含有する単回使用の薬剤充填済注射器で提供する。注射器には添付の27G 1/2インチ針が付いており、治験特有の情報を過大表示する。この第2相試験の実薬群の提案された用法・用量は、210mgのブロダルマブを3週間にわたり週1回投与し、その後12週間にわたり2週間に1回投与することである。提案された治療の総期間は15週間である。ブロダルマブを、注射用滅菌生理食塩水からなるプラセボと比較する。プラセボは、ブロダルマブの投与法に合わせた投与法で投与する。滅菌生理食塩水を10mLの単回投与バイアルで供給し、提供された27G 1/2インチ針を用いて、1.5mLを、滅菌技術を用いて3mL注射器に引き込む。
【0072】
治療期間を通じて4週間毎に検査を繰り返す。治療終了1週間後(EOT(16週間))、被験者は空腹時血液検査(鑑別を伴うCBC、BMP、PT/INR、血清又は尿による妊娠検査(妊娠の可能性のある女性について)、GGT、LDH、CRP、アポリポタンパク質、G2-マクログロブリン、HA、ハプトグロビン、PIIINP、TIMP-1、A2M、HbA1c、空腹時インスリン濃度、脂質プロファイル)を受ける。インスリン抵抗性はHOMA-IRを用いて再度算出する。探索的結果のための血液検査も実施する。臨床試験の概略を
図1に示す。
【0073】
有効性の主要評価項目は、ベースラインと比較したEOT(16週間)時の肝酵素(AST及びALT)の改善である。探索的評価項目には以下が含まれる。すなわち、(a)ブロダルマブによる治療後16週目の肝脂肪のベースラインと比較した改善。肝脂肪は、肝脂肪の非侵襲的マーカーであるMRI-PDFF、及びCAPを伴うVCTEにより測定する。(b)ブロダルマブによる治療後16週目の肝線維化のベースラインと比較した改善。これを、Multiscan(利用可能な場合)、VCTE、及びAST/ALT比、APRIスコア、BAATスコア、BARDスコア、ELF検査、FIB-4スコア、フィブロメーター、Hepascore及びNFSを含む複数の非侵襲的ツールによって測定する。(c)ブロダルマブによる治療後16週目の、ベースラインと比較したPro-C3(線維症マーカーであるN末端III型コラーゲンプロペプチド)の変化、(d)ブロダルマブによる治療後16週目のCCR2及びCCR5(炎症誘発性及び線維化促進性マーカー)の変化。全ての探索的評価項目について、ベースラインからEOT(16週間)までの平均変化を治療群毎に要約する。ベースラインからの平均変化の治療差の検定には、治療及び治験施設に対する効果並びにベースライン値を共変量としたANCOVAモデルを用いる。
【0074】
安全性評価項目には、(a)治験薬投薬下の有害事象(TEAE)及び重篤な有害事象(SAE)の発現率、(b)ベースラインからの臨床結果の変化、(c)ベースラインからのバイタルサインの変化が含まれる。安全性の評価は、有害事象(AE)の発生率、強度及び種類、並びにバイタルサイン及び臨床検査結果の変化に基づいて行う。
【0075】
一般に、統計学的試験はp=0.05有意水準で両側試験である。全ての連続変数について、記述統計(N:平均値、標準偏差、中央値、最大値、最小値)を用いて要約する。全てのカテゴリー変数を、頻度数及び割合を用いて要約する。ベースライン値を、治験薬の初回投与前に利用可能な最後の値と定義する。治療終了値(EOT(16週)値)を、治療期間後、16週目に実施した検査及び評価と定義する。
【0076】
【0077】
本明細書で引用する刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献を、各文献が参照により援用されるとして個々に具体的に示され、その内容の全てが本明細書に記載されているかのようなのと同じ程度に、参照により本明細書に援用する。
【0078】
発明を記述する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)における用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」及び「少なくとも1つ」及び類似の指示対象の使用は、本明細書で特に指示する場合又は文脈によって明らかに矛盾する場合を除き、単独及び複数を包含するものと解釈されるべきである。後に1つ以上の項目のリスト(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)が続く用語「少なくとも1つ」の使用は、本明細書に特に指示がないか、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、列挙された項目(A又はB)から選択された1つの項目、又は列挙された項目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」及び「包含する(containing)」は、特に断りのない限り、非限定的用語(すなわち「~を含むが限定しない」という意味)として解釈されるべきである。本明細書中の数値範囲の記載は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書で個々に列挙されるかのように、明細書に組み込まれる。本明細書に記載された全ての方法は、本明細書に特に指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。本明細書中の言い回しは、主張されていないいかなる要素も本発明の実施に不可欠であることを示していると解釈されてはならない。
【0079】
本発明の好ましい実施形態を、発明者らに知られた本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書で記載している。これらの好ましい実施形態の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。本発明者は、当業者が適宜このような変形を適切なものとして適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で発明が実施されることを予定している。したがって、本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載の主題の修正及び均等物を全て含む。また、あらゆる可能な変形例における上記の要素のあらゆる組み合わせが、本明細書に特に指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【配列表】
【国際調査報告】