(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】噴霧熱分解によるナノ構造混合リチウムジルコニウム酸化物の製造
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20221108BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20221108BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20221108BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221108BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C01G25/00
H01M10/0562
H01M10/0565
H01M10/052
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516038
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020075279
(87)【国際公開番号】W WO2021048251
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルドゥ シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】アーミン ヴィーガント
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト アルフ
(72)【発明者】
【氏名】高田 令
(72)【発明者】
【氏名】フランツ シュミット
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE08
5H029AJ03
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
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5H029CJ02
5H029CJ28
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5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H029HJ14
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA13
5H050GA02
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、火炎噴霧熱分解によってリチウムジルコニウム混合酸化物を製造する方法、この方法によって得ることができる混合酸化物、およびリチウムイオン電池へのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎噴霧熱分解および任意の更なる熱処理によってリチウムジルコニウム混合酸化物を製造する方法において、
- リチウムカルボキシレートおよび/またはジルコニウムカルボキシレートであって、これらのカルボン酸金属塩のそれぞれが5~20個の炭素原子を有する、リチウムカルボキシレートおよび/またはジルコニウムカルボキシレートと、
- 5重量%未満の水を含有する溶媒と
を含む少なくとも1つの金属前駆体の溶液を前記方法で使用することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記火炎噴霧熱分解が、
a)金属前駆体の少なくとも1つの溶液をアトマイザーガスによって霧化して、エアロゾルを得る工程と、
b)前記エアロゾルを、反応器の反応空間において、燃料ガスと酸素含有ガスとの混合物の着火によって得られる火炎と反応させて、反応流を得る工程と、
c)前記反応流を冷却する工程と、
d)続いて前記反応流から固体金属酸化物を取り出す工程と
を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記混合酸化物が、一般式Li
aZr
bO
0.5a+2bの化合物であり、ここで、
0.5≦a≦12、
1.0≦b≦4.0であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記混合酸化物が0.1~100m
2/gのBET表面積を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記リチウムおよびジルコニウムカルボキシレートが互いに独立して、リチウムおよび/またはジルコニウムの直鎖、分岐または環状の、ペンタノエート(C5)、ヘキサノエート(C6)、ヘプタノエート(C7)、オクタノエート(C8)、ノナノエート(C9)、デカノエート(C10)、ウンデカノエート(C11)、ドデカノエート(C12)、トリデカノエート(C13)、テトラデカノエート(C14)、ペンタデカノエート(C15)、ヘキサデカノエート(C16)、ヘプタデカノエート(C17)、オクタデカノエート(C18)、ノナデカノエート(C19)、イコサノエート(C20)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるカルボキシレートであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がアルコール、エーテル、エステル、カルボン酸、任意にハロゲン化炭化水素、およびそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記金属前駆体の溶液が、ジアミンおよび1,3-ジカルボニル化合物からなる群から選択されるキレート剤を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記混合酸化物が、静的光散乱(SLS)によって決定されるd
50=0.05~1μmの数平均粒径を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記混合酸化物が20~1000g/Lのタップ密度を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記更なる熱処理を500℃~1200℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
凝集一次粒子の形態であり、
15~50m
2/gのBET表面積を有し、
静的光散乱(SLS)によって決定されるd
50=0.05~1μmの数平均粒径を有し、
50~200g/Lのタップ密度を有することを特徴とする、リチウムジルコニウム混合酸化物。
【請求項12】
凝集一次粒子の形態であり、
20m
2/g未満のBET表面積を有し、
静的光散乱(SLS)によって決定されるd
50=1~50μmの数平均粒径を有し、
200~800g/Lのタップ密度を有することを特徴とする、リチウムジルコニウム混合酸化物。
【請求項13】
リチウム電池の電極用のコーティングもしくはドーピング材料、またはリチウムイオン電池の液体、ゲルもしくは固体電解質への添加剤としての請求項11または12記載の混合酸化物の使用。
【請求項14】
請求項11または12記載の混合酸化物を含むリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火炎噴霧熱分解によってリチウムジルコニウム混合酸化物を製造する方法、この方法によって得ることができる混合酸化物、およびリチウムイオン電池へのそれらの使用に関する。
【0002】
従来技術
二次リチウムイオン電池は、現在使用されている最も重要な電池の種類の1つである。二次リチウムイオン電池は通常、炭素材料またはリチウム金属合金からなるアノード、リチウム金属酸化物からなるカソード、リチウム塩を有機溶媒に溶解した液体電解質、ならびに充電および放電プロセス中に正極と負極との間でリチウムイオンを通過させるセパレータから構成される。
【0003】
近年、固有安全性およびエネルギー密度が改善された二次電池を開発する試みで、液体の電解質の代わりに固体の電解質を使用することが大幅に進められている。かかる全固体二次リチウムイオン電池は、所要の負荷特性を有するために、電極活物質と電解質との間の界面で良好なイオン伝導性を有する必要がある。この高いイオン伝導性は、特許第4982866号公報に記載されているように、LiTi2(PO4)3等の幾つかのリチウムを含む化合物で電極活物質の表面をコーティングすることによって達成することができる。
【0004】
リチウムを含む混合酸化物は、固体および液体の両方のリチウムイオン電池において様々な用途がある。
【0005】
リチウムイオン電池のカソード材料に関連する一般的な問題の1つは、サイクル中のそれらの急速な老朽化、ひいては性能の損失である。幾つかの金属酸化物での混合リチウム遷移金属酸化物粒子のコーティングまたはドーピングが、電解質と電極材料との望ましくない反応を阻害することで、リチウムイオン電池の長寿命安定性を改善し得ることが知られている。
【0006】
数ある金属酸化物の中でも、ジルコニウムを含む混合酸化物がこの目的で報告されている。
【0007】
米国特許出願公開第2017179544号明細書は、ジルコニウムベースの混合金属酸化物をドープしたリチウム正極材料の製造を開示している。このため、実施例1では、金属塩を混合し、混合物を1200℃で10時間焼結し、続いて混合リチウム遷移金属酸化物Li(Li10/75Ni18/75Co9/75Mn38/75)O2と乾式混合し、その後、900℃で20時間加熱してリチウム正極材料を形成することによって、Li7La3Zr2Al0.07O12.0105が製造された。この製造手順から、Li7La3Zr2Al0.07O12.0105の大型の焼結粒子のみがこの実施例に使用され得ることが明らかである。
【0008】
ジルコニウムを含有する、このように比較的大きな金属酸化物粒子の使用は多くの場合、コアカソード材料の表面上に不均一な分布および大きな集塊金属酸化物粒子をもたらし、結果として、ドープしていないまたはコーティングしていないカソード材料と比較してサイクル性能の改善は殆ど又は全く観察されない。
【0009】
Ceramic transactions (1997), 85, pp 55-66には、ジルコニウムおよびリチウムナイトレート前駆体の水溶液から開始する燃焼プロセスによる、20nm未満の一次粒子および10~14m2/gのBET表面積を有するLi2ZrO3粉末の製造が記載されている。尿素およびクエン酸を、かかる金属前駆体の水溶液に燃料として添加する。得られる混合物の加熱により水が完全に蒸発し、その後、金属前駆体および燃料が燃焼する。比較的小型の金属酸化物粒子が得られるにもかかわらず、この方法は、工業的に、特に対応するリチウム-ジルコニウム混合酸化物の大量の連続生産には殆ど適用可能ではない。
【0010】
噴霧熱分解は、比較的小さな金属酸化物粒子を製造する既知の方法である。
【0011】
噴霧熱分解および火炎噴霧熱分解は、単純な金属酸化物だけでなく、複雑な混合金属酸化物を製造する確立された方法である。噴霧熱分解では、微細液滴の形態の金属化合物を高温域に導入し、そこで酸化および/または加水分解して金属酸化物を得る。この方法の特殊な形態が火炎噴霧熱分解であり、燃料ガスおよび酸素含有ガスの着火によって形成される火炎に液滴を供給する。
【0012】
インド特許出願公開第2010K000216号明細書には、水性前駆体溶液を用いたナノ構造リチウムジルコネート粉末の合成のための噴霧熱分解法が記載されている。このため、この特許出願の実施例には、ジルコニウムナイトレートまたはジルコニウムオキシナイトレート、リチウムナイトレート、および尿素またはグリシンの水溶液を使用して、6~10m2/gのBET表面積および最大1020g/Lのタップ密度を有するリチウムジルコネートを製造することが示されている。
【0013】
発明の概要
従来技術の引用文献は、噴霧熱分解による混合リチウムジルコニウム酸化物の製造を教示している。しかしながら、得られる生成物は、比較的大きなタップ密度および比較的低いBET表面積を有することが報告され、かかる粒子の比較的大きな凝集粒度が示唆される。
【0014】
本発明が取り組む課題は、リチウムイオン電池において、特にリチウムイオン電池の電極、特にカソードのコーティングまたはドーピング材料、およびリチウムイオン電池の電解質への添加剤として使用可能な混合リチウムジルコニウム酸化物の工業的製造のための改善された方法を提供することである。
【0015】
具体的には、この方法により、比較的小さな粒度、高いBET表面積および低いタップ密度を有する金属酸化物粒子を提供することが望ましい。
【0016】
徹底的な実験の過程で、驚くべきことに、金属前駆体および溶媒の特別な組合せを使用した場合に、所望の粒子特性を有するリチウムジルコニウム混合酸化物が火炎噴霧熱分解法によって製造され得ることが見出された。
【0017】
混合酸化物を製造する方法
本発明は、火炎噴霧熱分解および任意の更なる熱処理によってリチウムジルコニウム混合酸化物を製造する方法において、
- リチウムカルボキシレートおよび/またはジルコニウムカルボキシレートであって、これらのカルボン酸金属塩のそれぞれが5~20個の炭素原子を有する、リチウムカルボキシレートおよび/またはジルコニウムカルボキシレートと、
- 5重量%未満の水を含有する溶媒と
を含む少なくとも1つの金属前駆体の溶液を該方法で使用することを特徴とする、方法を提供する。
【0018】
「リチウムジルコニウム混合酸化物」という用語は、本発明との関連では、リチウム(Li)、ジルコニウム(Zr)および酸素(O)原子を含有する化学化合物または化学化合物の混合物を意味する。
【0019】
火炎噴霧熱分解プロセスにおいては、微細液滴の形態の金属化合物(金属前駆体)の溶液を、燃料ガスおよび酸素含有ガスの着火によって形成される火炎中に導入し、そこで使用される金属前駆体が酸化および/または加水分解されて、対応する金属酸化物が得られる。
【0020】
この反応により、高度に分散したほぼ球状の一次金属酸化物粒子が初めに形成され、これが反応の更なる過程で合体して凝集体を形成する。次いで、凝集体が集合体へと蓄積することがある。原則としてエネルギーの導入によって比較的容易に凝集体にまで分離することができる集合体とは対照的に、凝集体は、仮にあったとしても、エネルギーの集中的な導入によってのみさらに分解される。
【0021】
製造した金属酸化物は、「ヒュームド」または「熱分解により製造した(pyrogenically produced)」金属酸化物と称される。
【0022】
火炎噴霧熱分解プロセスは概して、国際公開第2015173114号等に記載されている。
【0023】
火炎噴霧熱分解は、好ましくは、
a)金属前駆体の少なくとも1つの溶液をアトマイザーガスによって霧化して、エアロゾルを得る工程と、
b)反応器の反応空間において、エアロゾルを、燃料ガスと酸素含有ガスとの混合物の着火によって得られる火炎と反応させて、反応流を得る工程と、
c)反応流を冷却する工程と、
d)続いて反応流から固体金属酸化物を取り出す工程と
を含む。
【0024】
好適な燃料ガスの例は、水素、メタン、エタン、天然ガスおよび/または一酸化炭素である。水素を用いることが特に好ましい。燃料ガスは特に、製造すべき金属酸化物の高い結晶化度が所望される実施形態に用いられる。
【0025】
酸素含有ガスは概して、空気または酸素富化空気である。酸素含有ガスは特に、例えば製造すべき金属酸化物の高いBET表面積が所望される実施形態に用いられる。酸素の総量は概して、少なくとも燃料ガスおよび金属前駆体の完全な変換に十分であるように選択される。
【0026】
エアロゾルを得るために、金属前駆体を含有する気化溶液を窒素、空気および/または他のガス等のアトマイザーガスと混合することができる。得られるエアロゾルの微細液滴は、好ましくは1~120μm、特に好ましくは30~100μmの平均液滴サイズを有する。液滴は通例、単材または多材ノズルを用いて生成する。金属前駆体の溶解性を高め、溶液の噴霧化に好適な粘度を達成するために、溶液を加熱してもよい。
【0027】
本発明の方法に用いられる金属前駆体は、それぞれが5~20個の炭素原子を有する少なくとも1つのリチウムカルボキシレートおよび少なくとも1つのジルコニウムカルボキシレートを含む。
【0028】
本発明による方法で使用されるリチウムおよびジルコニウムカルボキシレートは、互いに独立して、リチウムおよび/またはジルコニウムの直鎖、分岐または環状の、ペンタノエート(C5)、ヘキサノエート(C6)、ヘプタノエート(C7)、オクタノエート(C8)、ノナノエート(C9)、デカノエート(C10)、ウンデカノエート(C11)、ドデカノエート(C12)、トリデカノエート(C13)、テトラデカノエート(C14)、ペンタデカノエート(C15)、ヘキサデカノエート(C16)、ヘプタデカノエート(C17)、オクタデカノエート(C18)、ノナデカノエート(C19)、イコサノエート(C20)、およびそれらの混合物であり得る。
【0029】
最も好ましくは、ジルコニウム2-エチルヘキサノエート(C8)およびリチウムネオデカノエート(C10)を使用する。
【0030】
本発明の方法で使用される溶媒は、好ましくはアルコール、エーテル、エステル、カルボン酸、任意にハロゲン化炭化水素、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】
アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、n-デカノール、ネオデカノール、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0032】
エステルは、酢酸エチル等のカルボン酸のアルキルエステルであり得る。
【0033】
カルボン酸は、好ましくは1~20個の炭素原子を有し、好ましくは酢酸、直鎖、分岐または環状の、プロピオン酸(C3)、酪酸(C4)、ペンタン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ドデカン酸(C12)、トリデカン酸(C13)、テトラデカン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、イコサン酸(C20)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
炭化水素は直鎖、分岐、環状の、脂肪族、芳香族または混合脂肪族/芳香族であり得る。その好適な例としては、ベンゼン、トルエン、ナフサおよびホワイトスピリットが挙げられる。
【0035】
ハロゲン化炭化水素の例としては、クロロホルム(CHCl3)、ジクロロメタン(CH2Cl2)、四塩化炭素(CCl4)が挙げられる。
【0036】
最も好ましくは、炭化水素とカルボン酸との混合物、例えばナフサと2-エチルヘキサン酸との混合物を溶媒として使用する。
【0037】
本発明で使用される溶媒は、5重量%未満の水、好ましくは3重量%未満の水、より好ましくは2重量%未満の水、さらに好ましくは1重量%未満の水、さらにより好ましくは0.5重量%未満の水を含有する。
【0038】
最も好ましくは、溶媒は本質的に水を含有せず、すなわち、溶媒中の含水量は0.1重量%未満、より好ましくは500ppm未満、さらに好ましくは200ppm未満である。
【0039】
金属前駆体の溶液中の総金属含有量は、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは2重量%~20重量%、さらに好ましくは3重量%~15重量%である。「総金属含有量」とは、使用される金属前駆体の溶液中の金属前駆体に含まれる全金属の総重量割合と理解される。
【0040】
本発明の方法で使用される溶媒混合物は、キレート剤、すなわち金属イオンと2つ以上の配位結合を形成することが可能な化合物を付加的に含んでいてもよい。かかるキレート剤の例は、例えばエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のようなジアミン、アセチルアセトンおよびアルキルアセチルアセテート等の1,3-ジカルボニル化合物である。最も好ましくは、アセチルアセトンをかかるキレート剤として使用する。
【0041】
かかるキレート剤の存在下で、ジルコニウム前駆体がより良好な溶解性を示し、比較的長い貯蔵時間後に沈殿を示さない可能性があることが観察された。
【0042】
本発明による金属カルボキシレートと含水量が低下した溶媒との特別な組合せの使用は、金属前駆体の良好な溶解性を確保し、小さな粒度、高いBET表面積および低いタップ密度等の所望の金属酸化物の粒子特性を達成することを可能にする。
【0043】
本発明の方法は、火炎噴霧熱分解プロセスによって製造された混合酸化物の任意の更なる熱処理を含む。
【0044】
この更なる熱処理は、好ましくは500℃~1200℃、より好ましくは550℃~1150℃、さらに好ましくは600℃~1100℃、さらにより好ましくは650℃~1050℃の温度で行われる。
【0045】
本発明の方法による熱処理は、望ましい特性、特に所望の化学相、結晶構造等を有する熱処理された混合酸化物を得ることを可能にする。このため、火炎噴霧熱分解によって直接製造された熱処理されていないリチウムジルコニウム混合酸化物は、ZrO2、Li2O、Li2ZrO3および他の化学化合物の混合物を含有し得る。この混合物を約600℃~800℃の温度で熱処理することで、Li2ZrO3およびLi4Zr3O8相の付加的な形成が可能となり、この後者の化合物が熱処理された混合酸化物中に存在する支配的な化学相となる。
【0046】
混合酸化物
本発明による方法によって製造された混合酸化物は、好ましくは0.1m2/g~100m2/gのBET表面積を有する。
【0047】
熱処理されていない混合酸化物、すなわち更なる熱処理が用いられていない本発明の方法の生成物は、好ましくは5m2/g~100m2/g、より好ましくは7m2/g~70m2/g、最も好ましくは15~50m2/gのBET表面積を有する。
【0048】
熱処理された混合酸化物、すなわち更なる熱処理が用いられた本発明の方法の生成物は、好ましくは20m2/g未満、より好ましくは0.1m2/g~10m2/g、より好ましくは0.2m2/g~5m2/g、最も好ましくは0.3~3m2/gのBET表面積を有する。
【0049】
BET表面積は、DIN 9277:2014に準拠し、ブルナウアー-エメット-テラー法による窒素吸着によって決定することができる。
【0050】
本発明による方法によって製造された混合酸化物は通常、遷移電子顕微鏡法(TEM)によって決定される一次粒子の数平均径が5~100nm、好ましくは7~70nm、より好ましくは10~50nmの凝集一次粒子の形態である。この数平均径は、TEMによって分析された少なくとも500個の粒子の平均サイズを算出することによって決定することができる。
【0051】
(凝集および集塊した)混合酸化物の数平均粒径d50は、通常は約0.05μm~2μm、より好ましくは0.05μm~1μm、さらに好ましくは0.05μm~0.5μmである。この数平均径は、好適な分散液、例えば水分散液中で、静的光散乱(SLS)法によって決定することができる。
【0052】
集合体および一部の凝集体を、例えば粒子の粉砕または超音波処理によって破壊し、より小さな粒度およびより狭い粒径分布を有する粒子を得ることができる。
【0053】
好ましくは、粒子5重量%とピロリン酸ナトリウムの0.5g/L水溶液95重量%とからなる混合物の25℃で300秒の超音波処理後に静的光散乱(SLS)によって決定される混合酸化物の平均粒径d50は、10~150nm、より好ましくは20~130nm、さらに好ましくは30~120nmである。
【0054】
粒子5重量%とピロリン酸ナトリウムの0.5g/L水溶液95重量%とからなる混合物の25℃で300秒の超音波処理後に静的光散乱(SLS)によって決定される二酸化ジルコニウムおよび/またはジルコニウムを含む混合酸化物の粒子のスパン(d90-d10)/d50は、好ましくは0.4~1.2、より好ましくは0.5~1.1、さらに好ましくは0.6~1.0である。
【0055】
このため、本発明の方法によって製造される混合酸化物は、好ましくは比較的小さな粒度および狭い粒径分布を特徴とする。これは、リチウムイオン電池用の電極活物質の高品質な金属酸化物ドーピングおよび/またはコーティングを達成するのに役立つ。
【0056】
d値d10、d50およびd90は、一般に所与のサンプルの累積粒径分布を特徴付けるために用いられる。例えば、d10径は、サンプルの体積の10%がd10よりも小さい粒子から構成される直径であり、d50は、サンプルの体積の50%がd50よりも小さい粒子から構成される直径である。d50は、サンプルを体積で等分することから「体積中位径」としても知られ、d90は、サンプルの体積の90%がd90よりも小さい粒子から構成される直径である。
【0057】
本発明による方法によって製造された混合酸化物は、好ましくは20g/L~1000g/Lのタップ密度を有する。
【0058】
本発明による方法によって製造された熱処理されていない混合酸化物は、好ましくは20g/L~300g/L、より好ましくは30g/L~270g/L、さらに好ましくは40g/L~250g/L、さらにより好ましくは50g/L~200g/Lのタップ密度を有する。
【0059】
本発明による方法によって製造された熱処理された混合酸化物は、好ましくは200g/L~800g/L、より好ましくは250g/L~750g/L、さらに好ましくは300g/L~700g/Lのタップ密度を有する。
【0060】
粉末または粗粒の粒状材料のタップ密度は、DIN ISO 787-11:1995「顔料および体質顔料の一般試験方法-第11部:タップ容積およびタップ後の見掛け密度の測定(General methods of test for pigments and extenders -- Part 11: Determination of tamped volume and apparent density after tamping)」に準拠して決定することができる。これは、撹拌およびタップ後のベッドの見掛け密度を測定することを含む。
【0061】
本発明の方法によって製造された混合酸化物は、好ましくは、本質的に親水性であり、火炎噴霧熱分解プロセスによるその合成後に、シラン等の任意の疎水性試薬によってさらに処理されない。このようにして製造した粒子は通常、少なくとも96重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%の純度を有し、ここで、100%の純度は、混合酸化物が指定の金属および酸素のみを含有することを意味する。混合酸化物は、二酸化ハフニウムの形態でハフニウム化合物を含んでいてもよい。二酸化ハフニウムの割合は、ZrO2をベースとして1~4重量%とすることができる。塩化物の含有量は、混合酸化物粉末の質量をベースとして好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。炭素の割合は、混合酸化物粉末の質量をベースとして好ましくは2重量%未満、より好ましくは0.005重量%~1重量%、さらに好ましくは0.01重量%~0.5重量%である。
【0062】
混合酸化物は、好ましくは一般式LiaZrbO0.5a+2bの化合物であり、ここで、
0.5≦a≦12、好ましくは2.0≦a≦8、
1.0≦b≦4.0、好ましくは1.0≦b≦2.0である。
【0063】
好ましくは、本発明の混合酸化物の組成は、式:Li2ZrO3、Li4Zr2O6、Li4ZrO4、Li4Zr3O8、Li6Zr3O9、Li8ZrO6の1つに相当し、最も好ましくはLi2ZrO3である。
【0064】
本発明は、
- 凝集一次粒子の形態であり、
- 15~50m2/gのBET表面積を有し、
- 静的光散乱(SLS)によって決定されるd50=0.05~1μmの数平均粒径を有し、
- 50~200g/Lのタップ密度を有する、リチウムジルコニウム混合酸化物をさらに提供する。
【0065】
かかる混合酸化物は、更なる熱処理を適用しない、本発明の方法によって製造することができる。
【0066】
本発明は、
- 凝集一次粒子の形態であり、
- 20m2/g未満、好ましくは0.1~20m2/gのBET表面積を有し、
- 静的光散乱(SLS)によって決定されるd50=1~50μmの数平均粒径を有し、
- 200~800g/Lのタップ密度を有する、リチウムジルコニウム混合酸化物をさらに提供する。
【0067】
かかる混合酸化物は、更なる熱処理を適用する本発明の方法によって製造することができる。
【0068】
本発明は、本発明による方法によって得ることができる混合酸化物をさらに提供する。
【0069】
リチウムイオン電池への混合酸化物の使用
本発明は、リチウムイオン電池における、特にリチウムイオン電池の電極、特にカソードのコーティングもしくはドーピング材料としての、またはリチウムイオン電池の液体、ゲルもしくは固体電解質への添加剤としての本発明による混合酸化物または本発明の方法によって得ることができる混合酸化物の使用をさらに提供する。
【0070】
本発明は、本発明による混合酸化物または本発明の方法によって得ることができる混合酸化物を含むリチウムイオン電池をさらに提供する。
【0071】
本発明のリチウムイオン電池は、活性正極(カソード)とは別に、アノード、セパレータ、およびリチウムを含む化合物を含む電解質を含み得る。
【0072】
リチウムイオン電池の正極(カソード)は通常、集電体と集電体上に形成されたカソード活物質層とを含む。
【0073】
集電体は、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、導電性金属でコーティングされたポリマー基材、またはそれらの組合せであり得る。
【0074】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレート/デインターカレートすることが可能な物質を含むことができ、当該技術分野で既知である。かかる正極活物質は、Ni、Co、Mn、Vまたは他の遷移金属、および任意にリチウムを含む混合酸化物等の遷移金属酸化物を含み得る。正極活物質として使用されるのが好ましい混合リチウム遷移金属酸化物は、リチウム-コバルト酸化物、リチウム-マンガン酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物、またはそれらの混合物からなる群から選択される。混合リチウム遷移金属酸化物は、好ましくは一般式LiMO2を有し、ここで、Mはニッケル、コバルト、マンガンから選択される少なくとも1つの遷移金属であり、より好ましくはM=CoまたはNixMnyCozであり、ここで、0.3≦x≦0.9、0≦y≦0.45、0≦z≦0.4である。
【0075】
リチウムイオン電池のアノードは、リチウムイオンを可逆的にインターカレート/デインターカレートすることが可能な、二次リチウムイオン電池に一般に使用される任意の好適な物質を含み得る。その典型例は、板状、フレーク、球状もしくは繊維状の黒鉛の形態の天然もしくは人造黒鉛等の結晶性炭素;軟質炭素、硬質炭素、中間相ピッチカーバイド、焼成コークス等のような非晶質炭素、またはそれらの混合物を含む炭素質物質である。加えて、リチウム金属または変換材料(例えば、SiまたはSn)をアノード活物質として使用することができる。
【0076】
リチウムイオン電池の電解質は、液体、ゲルまたは固体の形態であり得る。
【0077】
リチウムイオン電池の液体電解質は、無水エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γブチロラクトン、ジメトキシエタン、フルオロエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、またはそれらの混合物等の、リチウムイオン電池に一般に使用される任意の好適な有機溶媒を含むことができる。
【0078】
ゲル電解質は、ゲル化ポリマーを含む。
【0079】
リチウムイオン電池の固体電解質は、酸化物、例えばリチウム金属酸化物、硫化物、リン酸塩、または固体ポリマーを含むことができる。
【0080】
リチウムイオン電池の液体またはゲル電解質は、通常はリチウム塩を含有する。かかるリチウム塩の例としては、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)、リチウムビス2-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムペルクロレート(LiClO4)、リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4)、Li2SiF6、リチウムトリフレート、LiN(SO2CF2CF3)2、リチウムナイトレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、リチウム-シクロ-ジフルオロメタン-1,1-ビス(スルホニル)イミド、リチウム-シクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,1-ビス(スルホニル)イミドおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0081】
リチウムイオン電池、特に液体またはゲル電解質を含むリチウムイオン電池は、内部短絡につながる2つの電極間の直接接触を防ぐセパレータを備えていてもよい。
【0082】
セパレータの材料は、ポリオレフィン樹脂、フッ素化ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、不織布またはそれらの混合物を含み得る。好ましくは、この材料は、ポリエチレンまたはポリプロピレン系ポリマー等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニリデンポリマーまたはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化樹脂、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、不織布またはそれらの混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1A】実施例1に記載のように製造したLi-Zr混合酸化物粒子のTEM像である。
【
図1B】実施例1に記載のように製造したLi-Zr混合酸化物粒子のTEM像である。
【
図2】実施例1に記載のように製造したLZOを用いて製造したLZOコーティングNMC上のZr(白色)のSEM-EDXマッピング像である。
【
図3】比較例1に記載のように製造したLZOを用いて製造したLZOコーティングNMC上のZr(白色)のSEM-EDXマッピング像である。
【
図4】比較例1および実施例1に記載のように製造したLZOを用いて製造したLZOコーティングNMCのSEM-EDXマッピング像におけるZrの面積分布の統計分析を示す図である。
【
図5】実施例1~3に記載のように製造した本発明のLi-Zr混合酸化物(LZO)のXRDパターンを示す図である。
【0084】
実施例
BET表面積0.30~0.60m2/g、中位粒径d50=10.6±2μm(静的レーザー散乱法によって決定される)の市販の混合リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物粉末NMC(7-1.5-1.5)(タイプPLB-H7)が、Linyi Gelon LIB Co.によって提供された。
【0085】
BET表面積1m2/g未満、中位粒径d50=19.3±2μm(静的レーザー散乱法によって決定される)の市販のリチウムジルコニウム酸化物粉末LZO(タイプ2004PR)が、Sigma Aldrichによって提供された。
【0086】
比較例1
(水性ナイトレート前駆体からのLi-Zr混合酸化物)
630gのLiNO3および1733gのZr(NO3)4を含有する8.54kgの水溶液(金属含有量:24wt%)を、全ての固形分が溶解するまで激しい撹拌下で調製した。この溶液は、Li2ZrO3の理論的組成を表す。
【0087】
2.5kg/h流のこの溶液および15Nm3/h流の空気から二成分ノズルを介してエアロゾルを形成し、燃焼火炎により管形反応器内に噴霧した。火炎の燃焼ガスは、13Nm3/hの水素および75Nm3/hの空気からなる。さらに、25Nm3/hの二次空気を使用した。反応器の後に反応ガスを冷却し、濾過した。
【0088】
粒子特性を表1に示す。
【0089】
比較例1のLi-Zr混合酸化物でコーティングされたNMC粉末の製造:
高強度実験室用ミキサー(0.5L混合ユニットを備えるSomakonのMP-GLミキサー)において、NMC粉末(99g)を1.0g(1wt%)の比較例1のヒュームド粉末と初めに500rpm(比電気出力:350W/kg NMC)で1分間混合し、2つの粉末を均一に混合した。その後、混合強度を2000rpm(比電気出力:800W/kg NMC、混合ユニット内の混合器具の先端速度:10m/s)まで増大させ、混合を5分間継続して、比較例1のヒュームド粉末によるNMC粒子のドライコーティングを達成した。
【0090】
比較例2
(エタノール性ナイトレート前駆体からのLi-Zr混合酸化物)
450gのLiNO3および1238gのZr(NO3)4を含有する8.32kgのエタノール溶液(金属含有量:24wt%)を、全ての固形分が溶解するまで激しい撹拌下で調製した。この溶液は、Li2ZrO3の理論的組成を表す。
【0091】
2.5kg/h流のこの溶液および15Nm3/h流の空気から二成分ノズルを介してエアロゾルを形成し、燃焼火炎により管形反応器内に噴霧した。火炎の燃焼ガスは、6.8Nm3/hの水素および75Nm3/hの空気からなる。さらに、25Nm3/hの二次空気を使用した。反応器の後に反応ガスを冷却し、濾過した。
【0092】
粒子特性を表1に示す。
【0093】
実施例1
リチウムネオデカノエートの形態で2wt%リチウムを含有する2725gの市販の溶液(Borchers(登録商標) Deca Lithium2)と、ジルコニウムエチルヘキサノエートの形態で12wt%Zrを含有する2984gの市販の溶液(Octa Solingen(登録商標) Zirconium 12)と、2231gの2-エチルヘキサン酸とを含有する7.94kgの溶液を混合し、透明な溶液を得た。この溶液は、Li2ZrO3の理論的組成を表す。
【0094】
2.5kg/h流のこの溶液および15Nm3/h流の空気から二成分ノズルを介してエアロゾルを形成し、燃焼火炎により管形反応器内に噴霧した。火炎の燃焼ガスは、4Nm3/hの水素および75Nm3/hの空気からなる。さらに、25Nm3/hの二次空気を使用した。反応器の後に反応ガスを冷却し、濾過した。
【0095】
粒子特性を表1に示す。粒子のTEM像を
図1Aおよび
図1Bに示す。
【0096】
XRD分析(
図5)から、生成物の主相が依然としてZrO
2構造であることが示された。
【0097】
実施例2
(焼成Li-Zr混合酸化物)
実施例1で得られた混合酸化物を回転炉にて700℃で6時間焼成した。XRD分析(
図5)から、生成物の主相が正方晶リチウムジルコニウム酸化物(Li
4Zr
3O
8)構造であることが示された。
【0098】
実施例3
(焼成Li-Zr混合酸化物)
実施例1で得られた混合酸化物を回転炉にて750℃で6時間焼成した。XRD分析(
図5)から、生成物の主相が単斜晶リチウムジルコニウム酸化物(Li
2ZrO
3)および正方晶リチウムジルコニウム酸化物(Li
4Zr
3O
8)構造であることが示された。
【0099】
実施例1のLi-Zr混合酸化物でコーティングされたNMC粉末の製造:
高強度実験室用ミキサー(0.5L混合ユニットを備えるSomakonのMP-GLミキサー)において、NMC粉末(99g)を1.0g(1wt%)の実施例1のヒュームド粉末と初めに500rpm(比電気出力:350W/kg NMC)で1分間混合し、2つの粉末を均一に混合した。その後、混合強度を2000rpm(比電気出力:800W/kg NMC、混合ユニット内の混合器具の先端速度:10m/s)まで増大させ、混合を5分間継続して、実施例1のヒュームド粉末によるNMC粒子のドライコーティングを達成した。
【0100】
SEM-EDXによるLi
2ZrO
3ドライコーティング混合リチウム遷移金属酸化物の分析
図2に、ヒュームドナノLZO(実施例1)を用いて製造したLi
2ZrO
3(LZO)コーティングNMC上のZr(白色)のSEM-EDXマッピングを示し、
図3に、ヒュームド粗LZO(比較例1)でコーティングされたNMCの分析の結果を示す。
図2および
図3の軸は、以下を示す:x軸=粒子の直径;左y軸=体積の%、右y軸=累積体積の%。ヒュームドナノLZO(実施例1)でドライコーティングされたNMC混合酸化物は、LZOによる全てのNMC粒子の完全かつ均一な被覆を示す(
図2)。より大きなLZO集合体は検出されず、ナノ構造ヒュームドナノLZOの良好な分散性が示された。さらに、NMC粒子に隣接して付着していない遊離のLZO粒子は見られず、コーティングと基材(NMC)との間の強い接着が示された。対照的に、
図3では、ヒュームド粗LZOの微細なLZO粒子のみがNMC粒子の表面に付着していることが示される。より大きなLZO粒子は分散しないため、付着せず、NMC粒子に隣接して位置する。結果として、NMC粒子は、酸化ジルコニウムで完全には覆われない。
【0101】
図4に
図2および
図3の統計分析を示す。SEM-EDXマッピングにおけるZr(白色)のμm
2の面積分布をボックス正規プロットによってさらに分析し、
図2の実施例1と
図3の比較例1との間でZr(白色)の分散性の明確な差異が示される。
【0102】
全固体リチウム金属電池の組立ておよび特性評価
3セットの全固体NMC_Li6SP5Cl_Li金属電池を、ヒュームドナノLZO(実施例1)およびSigma Aldrichからの市販のLZOを用いて組み立てた。カソードとして、LZOコーティングNMCを用いた複合カソードをNMC:Li6SP5Cl:炭素=60:35:5の重量比で製造した。Li-In合金をアノードとして使用した。
【0103】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)によって初期インピーダンスを分析し、結果を表2に示す。全固体電池の初期クーロン効率も表2に示す。
【0104】
【0105】
【国際調査報告】