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  • 特表-新ペプチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】新ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20221108BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20221108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20221108BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P29/00
A61P17/00
A61K8/64
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516192
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2020114828
(87)【国際公開番号】W WO2021047648
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/105830
(32)【優先日】2019-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519463558
【氏名又は名称】ジャンイン ユスン ファーマシューティカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンソン,ジャン‐クリステル
(72)【発明者】
【氏名】クー,ミン
(72)【発明者】
【氏名】サミュエルソン,ベンクト インゲマル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,マオチェン
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC582
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD262
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC06
4C083DD08
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE12
4C083FF01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA23
4C084CA59
4C084MA17
4C084MA23
4C084MA28
4C084MA43
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA341
4C084ZA342
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA671
4C084ZA672
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045EA28
4H045FA33
4H045FA58
4H045GA23
4H045GA25
(57)【要約】
以下のアミノ酸配列を含むペプチド化合物
G-W-Lys-X-Ser-U-X-Y-Z-Q
(式中、
Gが、任意選択のN末端の3,4-ジヒドロ桂皮酸基を表し、
Wが、AlaもしくはSerを表すか、または存在せず、
Uが、Tyr、DOPA、または単結合を表し、
およびXが、独立して、Pro、Hyp、またはジHypを表し、
Yが、単結合を表すか、または1~5のアミノ酸配列を表し、ここで、アミノ酸が、Pro、Hyp、ジHyp、Thr、DOPA、およびTyrの群のうちの1つ以上から選択され、
Zが、Pro、Hyp、ジHyp、Thr、DOPA、またはTyrを表し、
Qが、Lysを表すか、または存在しない)
ならびに該ペプチド化合物の位置異性体、立体異性体、および薬学的または美容的に許容される塩であって、
Gが存在せず、WがAlaを表すかまたは存在せず、QがLysを表す場合には、Zが、Pro、Hyp、ジHyp、またはThrを表すことを条件とする、化合物、が提供される。
これらの化合物は、粘膜の創傷、熱傷、および障害、例えば、肛門直腸疾患、炎症性腸疾患、婦人科疾患、および歯科疾患を含む、炎症を特徴とする病態の治療に特に有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列を含む化合物:
G-W-Lys-X-Ser-U-X-Y-Z-Q(配列番号3)
(式中、
Gが、任意選択のN末端の3,4-ジヒドロ桂皮酸基を表し、
Wが、AlaもしくはSerを表すか、または存在せず、
Uが、Tyr、DOPA、または単結合を表し、
およびXが、独立して、Pro、Hyp、またはジHypを表し、
Yが、単結合を表すか、または1~5のアミノ酸配列を表し、ここで、アミノ酸が、Pro、Hyp、ジHyp、Thr、DOPA、およびTyrの群のうちの1つ以上から選択され、
Zが、Pro、Hyp、ジHyp、Thr、DOPA、またはTyrを表し、
Qが、Lysを表すか、または存在しない)
ならびに前記ペプチド化合物の位置異性体、立体異性体、および薬学的または美容的に許容される塩であって、
Gが存在せず、WがAlaを表すかまたは存在せず、QがLysを表す場合には、Zが、Pro、Hyp、ジHyp、またはThrを表すことを条件とする、化合物。
【請求項2】
Gが存在しない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、HypまたはProを表す、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、Proを表す、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Uが、Tyrを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が、ProまたはHypを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、Hypを表す、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Yが、1~4のアミノ酸配列を表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Yが、単一のアミノ酸または3のアミノ酸配列を表す、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Yが、2のアミノ酸配列を表す、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
Wが、Serを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Wが存在しない、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Wが、Alaを表す、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Qが、Lysを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
Zが、Pro、Hyp、Thr、DOPA、またはTyrを表す、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
Zが、Hyp、Tyr、またはDOPAを表す、請求項16に記載の化合物。
【請求項17】
Zが、Hypを表す、請求項17に記載の化合物。
【請求項18】
Yが、1~5のアミノ酸配列を表し、前記アミノ酸が、Pro、Hyp、Thr、DOPA、およびTyrの群のうちの1つ以上から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
前記Yによって定義される配列中の前記アミノ酸が、DOPA、Hyp、Thr、およびTyrから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
前記アミノ酸が、ThrおよびTyrから選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
前記Yによって定義される配列中、Zに連結するアミノ酸が、DOPA、Thr、およびTyrから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
前記Zに連結したアミノ酸が、Tyrである、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
前記Yによって定義される配列中、Xに連結するアミノ酸が、Pro、Hyp、およびThrから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記Xに連結したアミノ酸が、HypまたはThrである、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
前記Xに連結したアミノ酸が、Thrである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記Yによって定義される配列が、-Hyp-Thr-Try、-Hyp-Thr-DOPA-、-Thr-Tyr-、-Thr-DOPA-、-Pro-Thr-、または-Hyp-Thr-である、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
前記化合物が、アミノ酸配列:
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号17)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号18)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号19)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA(配列番号20)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号21)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号22)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号23)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号24)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号25)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号26)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号27)、
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号28)、
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号29)、
Ala-Lys-Pro-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号30)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Pro-Thr-Tyr-Pro-Lys(配列番号31)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号32)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号33)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号34)、
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号35)、
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号36)、
Ala-Lys-Pro-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号37)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Pro-Thr-Tyr-Pro(配列番号38)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号39)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号40)、または
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号41)を含むか、またはそれからなる、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
前記化合物が、アミノ酸配列:
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)、
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号29)、または
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号34)を含むか、またはそれからなる、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
医薬品として使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
化粧品として使用するための、先行請求項のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的または美容的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と、を含む、製剤。
【請求項32】
局所投与に好適であり、適合され、かつ/または包装されて提示され、前記薬学的または美容的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体が、局所アジュバント、希釈剤、または担体である、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
ゲル、スプレー、クリーム、軟膏、または乾燥粉末の形態である、請求項31または32に記載の製剤。
【請求項34】
別の抗炎症剤をさらに含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項35】
パーツキットであって、以下の構成要素:
(A)請求項31~33のいずれか一項に記載の医薬製剤と、
(B)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と混合された、別の抗炎症剤を含む、医薬製剤と、を含み、
構成要素(A)および(B)が、各々、他方と組み合わせた投与に好適な形態で提供される、パーツキット。
【請求項36】
炎症、炎症性障害、および/または炎症を特徴とする障害の治療における使用のための、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物、請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤、または請求項35に記載のパーツキット。
【請求項37】
炎症、炎症性障害、および/または炎症を特徴とする障害の治療のための薬物を製造するための、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物、請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤、または請求項35に記載のパーツキットの使用。
【請求項38】
炎症、炎症性障害、および/または炎症を特徴とする障害の治療方法であって、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物、請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤、または請求項35に記載のパーツキットを、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記炎症性障害が、粘膜の障害、例えば、アレルギー性鼻炎、結膜炎、肛門直腸疾患、炎症性腸疾患、婦人科疾患、胃腸疾患、または歯科疾患から選択される、請求項36に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、請求項37に記載の使用、または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記肛門直腸疾患が、下痢、痔核、肛門膿瘍、瘻孔、裂肛、肛門のかゆみ、肛門洞炎、肛門疣贅、放射線直腸炎、および直腸脱から選択される、請求項39に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項41】
前記婦人科疾患が、子宮頸管炎、膣炎(vaginitis)、膣炎(colpitis)、または骨盤痛から選択される、請求項39に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項42】
前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎またはクローン病である、請求項39に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項43】
前記歯科疾患が、歯周炎である、請求項39に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項44】
前記胃腸疾患が、口内炎、胃食道逆流症、食道熱傷、胃潰瘍、または十二指腸潰瘍である、請求項39に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項45】
前記炎症を特徴とする障害が、創傷または熱傷であるか、またはそれをもたらす、請求項36に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、請求項37に記載の使用、または請求項38に記載の方法。
【請求項46】
創傷をもたらす前記障害が、痔核または潰瘍性大腸炎である、請求項45に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項47】
線維症、線維性障害、および/または線維症を特徴とする障害の治療における使用のための、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物、請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤、または請求項35に記載のパーツキット。
【請求項48】
線維症、線維性障害、および/または線維症を特徴とする障害の治療のための薬物を製造するための、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物、請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤、または請求項35に記載のパーツキットの使用。
【請求項49】
線維症、線維性障害、および/または線維症を特徴とする障害の治療方法であって、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物、請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤、または請求項35に記載のパーツキットを、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項50】
前記線維症が、膣または子宮頸部の線維症である、請求項47に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、請求項48に記載の使用、または請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物またはその塩が、局所製剤の形態で局所投与される、請求項30~50(必要に応じて)のいずれか一項に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項52】
関連する病態が、皮膚への直接局所投与によって治療される、請求項51に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項53】
前記関連する病態が、粘膜表面への直接局所投与によって治療される、請求項51に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項54】
前記化合物が、経口、静脈内、皮膚もしくは皮下、鼻、筋肉内、腹腔内、肺、または肛門直腸への送達によって投与される、請求項49~53(必要に応じて)のいずれか一項に記載の使用のための化合物、製剤、もしくはパーツキット、使用、または方法。
【請求項55】
請求項31~34のいずれか一項に記載の製剤の調製のためのプロセスであって、請求項1~28のいずれか一項に記載の化合物を、1つ以上の薬学的に許容されるまたは美容的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と関連付けることを含む、プロセス。
【請求項56】
請求項35に記載のパーツキットの調製のためのプロセスであって、前記パーツキットの構成要素(A)を、前記パーツキットの構成要素(B)と関連付けることを含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい短鎖オリゴペプチド、ヒト医学におけるそのようなペプチドの使用、およびそれらを含む医薬組成物に関する。具体的には、本発明は、例えば炎症の治療におけるこれらのペプチドおよび組成物の使用に関する。
【0002】
背景技術および先行技術
炎症は、典型的には、例えば、微生物、ある特定の抗原、損傷細胞、または物理的および/もしくは化学的因子の侵入に対する局所的な組織応答として特徴付けられる。炎症応答は通常、有害物質および傷害組織の両方を破壊するか、弱めるか、または隔離し、組織の治癒を開始する保護機構である。
【0003】
炎症は、物理的な外傷、感染、何らかの慢性疾患(例えば、乾癬およびリウマチ性関節炎などの自己免疫疾患)、ならびに/または外部刺激に対する化学的および/もしくは生理学的反応(例えば、アレルギー応答の一部)に起因する場合がある。炎症性メディエータが血流および局所血管の拡張を増加させ、発赤および熱、体液の滲出をもたらし、しばしば局所的な腫脹、炎症領域への白血球遊走、および疼痛をもたらす、一連の複雑な事象が関与する場合がある。
【0004】
多くの病態/障害は、異常な組織損傷炎症を特徴とし、かつ/またはそれによって引き起こされる。そのような病態は、典型的に、免疫防御機構の活性化を特徴とし、宿主にとって有益というよりもより有害である効果をもたらし、一般に異なる程度の組織の発赤もしくは充血、腫脹、高体温、疼痛、かゆみ、細胞死、組織破壊、細胞増殖、および/または機能喪失に関連している。例には、炎症性腸疾患、リウマチ性関節炎、多発性硬化症、乾癬、糸球体腎炎、および移植拒絶が含まれる。
【0005】
典型的には、一連の複雑な事象が、発赤および熱をもたらす局所血管の拡張による血流の増加、多くの場合に局所的な腫脹をもたらす白血球および血漿の血管外遊出、感覚神経の活性化(一部の組織で疼痛をもたらす)、ならびに機能喪失などの炎症性変化をもたらす。これらの炎症性変化は、好中球、単球、マクロファージ、およびリンパ球などの細胞に、血管作用性アミン、サイトカイン、補体因子、および活性酸素種などの炎症性メディエータと一緒に関与する、細胞および生化学的事象のカスケードによって引き起こされる。
【0006】
とりわけ、炎症は、創傷治癒プロセスにおいて重要な役割を果たす。したがって、創傷および熱傷は、炎症が関連する病態として分類することができる。当該技術分野における従来的な考え方は、創傷治癒の進行に有害であるため、開放創に抗炎症薬を直接適用すべきではないというものである。
【0007】
線維症は、線維性結合組織(コラーゲンおよびフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス(ECM)の構成要素)が、炎症を起こした組織または損傷した組織内およびその周辺に過剰に蓄積することによって定義される。コラーゲン沈着は、典型的には、創傷治癒の可逆的な部分であるが、組織の傷害が重篤な場合、または創傷治癒応答自体が無調節になる場合、次第に不可逆的となる線維応答に発展し得る場合が多い。さらに、線維形成は、多くの慢性炎症性疾患、ならびに末期肝疾患、腎疾患、特発性肺線維症(IPF)、および心不全の罹患および死亡の主な原因であることが知られている。これはまた、強皮症、リウマチ性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、骨髄線維症、および全身性エリテマトーデスなど、多くの慢性自己免疫疾患の病理学的特徴でもある。また、線維症は、多くの進行性ミオパチー、転移、および移植片拒絶の病因に影響を与え得る。
【0008】
Mytilus edulisの足のタンパク質(mefp)としても知られるイガイ接着タンパク質(MAP)は、Mytilus edulis、Mytilus coruscus、およびPerna viridisなどの海洋貝類によって分泌されるタンパク質である。11個の識別された個別の接着タンパク質サブタイプがイガイに由来し、これらには、コラーゲンpre-COL-P、pre-COL-D、およびpre-COL-NG;イガイ足マトリックスタンパク質PTMP(近位糸マトリックスタンパク質)およびDTMP(遠位糸マトリックスタンパク質);ならびにmfpタンパク質mfp-2(「mefp-2」と呼ばれることもあり、以下、互換的に使用される)、mfp-3/mefp-3、mfp-4/mefp-4、mfp-5/mefp-5、mfp-6/mefp-6、最も好ましくはmfp-1/mefp-1(例えば、Zhu et al,Advances in Marine Science,32,560(2014)and Gao et al,Journal of Anhui Agr.Sci.,39,19860(2011)を参照されたい)が含まれる。
【0009】
mefp-1の大部分は、デカペプチド:Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lysの70~90個のタンデム反復からなる(配列番号1、Waite,Int.J.Adhesion and Adhesives,7,9(1987)を参照されたい)。このデカペプチド配列は、天然に存在するMAPの低分子量誘導体として単離することができるか、または例えば、Yamamoto in J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,613(1987)に記載のように合成することができる。Dalsin et al,J.Am.Chem.Soc.,125,4253(2003)もまた参照されたい。
【0010】
デカペプチドの類似体、特にAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号2)も開示されている。例えば、US5,616,311およびWO96/39128を参照されたい。
【0011】
炎症および炎症を特徴とする病態の治療に使用され得る新薬および/または改良薬が明らかに必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、以下のアミノ酸配列の(単離された)ペプチド化合物:
G-W-Lys-X-Ser-U-X-Y-Z-Q(配列番号3)
(式中、
Gが、任意選択のN末端の3,4-ジヒドロ桂皮酸基を表し、
Wが、AlaもしくはSerを表すか、または存在せず(その場合、LysがN末端アミノ酸である)、
Uが、Tyr、DOPA、または単結合(すなわち、存在しない)を表し、
およびXが、独立して、Pro、Hyp、またはジHypを表し、
Yが、単結合(すなわち、存在しない)を表すか、または1~5のアミノ酸配列を表し、ここで、アミノ酸が、Pro、Hyp、ジHyp、Thr、DOPA、およびTyrの群のうちの1つ以上から選択され、
Zが、Pro、Hyp、ジHyp、Thr、DOPA、またはTyrを表し、
Qが、Lysを表すか、または存在しない(その場合、ZがC末端アミノ酸を表す))
ならびに該ペプチド化合物の位置異性体、立体異性体、および薬学的または美容的に許容される塩であって、
Gが存在せず、WがAlaを表すかまたは存在せず、QがLysを表す場合には、Zが、Pro、Hyp、ジHyp、またはThrを表す(すなわち、ZがDOPAまたはTyrを表さない)ことを条件とする、化合物、が提供され、
これらの化合物、位置異性体、立体異性体、および塩は、以下、まとめて「本発明の化合物」と称される。
【0013】
言及され得る本発明の化合物には、
Gが、存在せず、
が、Proを表し、
が、ProまたはHypを表し、
Yが、単結合(すなわち、存在しない)を表すか、または1~5のアミノ酸配列を表し、ここで、アミノ酸が、Pro、Hyp、Thr、DOPA、およびTyrの群のうちの1つ以上から選択され、かつ/あるいは
Zが、Pro、Hyp、Thr、DOPA、またはTyrを表す、化合物が含まれる。
【0014】
本発明の好ましい化合物には、
Uが、DOPA、またはより好ましくはTyrを表し、
が、Hyp、またはより好ましくはProを表し、
が、ジHyp、またはより好ましくはHypを表し、
Yが、1~4、例えば、3、1、または好ましくは2のアミノ酸配列を表し、ここで、アミノ酸配列が、Pro、Hyp、Thr、DOPA、およびTyrの群から選択される、化合物が含まれる。
【0015】
言及され得る本発明の化合物には、WがSerを表す化合物が含まれる。
【0016】
しかしながら、本発明のより好ましい化合物には、Wが存在しないか、またはより好ましくは、WがAlaを表す化合物が含まれる。
【0017】
本発明の好ましい化合物には、QがLysを表す化合物も含まれる。
【0018】
より好ましくは、本発明の化合物には、Zが、DOPAまたはTyr、より好ましくはPro、または特にHypを表す化合物が含まれる。
【0019】
本発明のより好ましい化合物には、QがLysを表す場合、Zが、DOPAまたはTyr、より好ましくはPro、または特にHypを表す化合物が含まれる。
【0020】
本発明のさらに好ましい化合物には、Yによって定義される配列中のアミノ酸が、Pro、好ましくはDOPA、より好ましくはHyp、Thr、およびTyrから選択される化合物が含まれる。
【0021】
本発明の特に好ましい化合物には、Yによって定義される配列中、
アミノ酸DOPA、好ましくはThr、またはより好ましくはTyrが、Zに連結し、
アミノ酸Pro、またはより好ましくはHypまたはThrがXに連結する、化合物が含まれる。
【0022】
Yの好ましい値には、これが3員のアミノ酸配列である場合には、-Hyp-Thr-Tyr、またはより好ましくは-Hyp-Thr-DOPA-、これが2員のアミノ酸配列である場合には、-Thr-Tyr-、またはより好ましくは-Thr-DOPA-、もしくは-Pro-Thr-、またはより好ましくは-Hyp-Thr-が含まれる。
【0023】
言及され得る本発明の化合物には、アミノ酸配列:
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、および
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)の化合物が含まれる。
【0024】
本発明の好ましい化合物には、アミノ酸配列:
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)の化合物が含まれる。
【0025】
本発明のより好ましい化合物には、アミノ酸配列:
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)の化合物、より好ましくは、アミノ酸配列:
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)によって定義される化合物、および
特に、アミノ酸配列:
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)によって定義される化合物、が含まれる。
【0026】
言及され得る本発明のさらなる化合物には、Qが存在しない化合物、例えば、アミノ酸配列:
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号17)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号18)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号19)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号21)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号22)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号23)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号24)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号25)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号26)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号27)、および
特に、アミノ酸配列:
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA(配列番号20)によって定義される化合物、が含まれる。
【0027】
GがN末端の3,4-ジヒドロ桂皮酸である本発明のさらなる化合物には、アミノ酸配列:
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列28)によって定義される化合物、およびより好ましくはアミノ酸配列:
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号29)によって定義される化合物が含まれる。
【0028】
言及される本発明のさらなる好ましい化合物には、WがAlaであり、QがLysである化合物、例えば、アミノ酸配列:
Ala-Lys-Pro-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号30)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Pro-Thr-Tyr-Pro-Lys(配列番号31)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号32)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号33)の化合物、および
特に、アミノ酸配列:
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号34)によって定義される化合物が含まれる。
【0029】
言及され得る本発明のさらなる化合物には、Qが存在しない化合物、例えば、アミノ酸配列:
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号35)、
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号36)、
Ala-Lys-Pro-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号37)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Pro-Thr-Tyr-Pro(配列番号38)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号39)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号40)、および
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号41)の化合物が含まれる。
【0030】
下文に記載されるように、例えばQがLysである化合物、および/あるいはWがSerであり、かつ/またはZがProもしくは特にHypである化合物を含む、本発明のある特定の化合物、ならびに特に、配列番号4~配列番号15、および配列番号28~配列番号34のアミノ酸配列を含む本発明の化合物が、代謝に対して耐性であることが理解される。
【0031】
とはいえ、当業者であれば、投与後に形成され得る本発明の化合物の代謝産物が本発明の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0032】
特に、配列番号16~配列番号27、および配列番号35~配列番号41のアミノ酸配列をそれぞれ有する化合物を含む、Qが存在しない本発明の化合物は、投与後に、配列番号4~配列番号15および配列番号28~配列番号34のアミノ酸配列を有する化合物を含む本発明の他の化合物から切断され得る、LysをC末端に含む本発明の対応する化合物の代謝産物として形成され得る。
【0033】
とはいえ、配列番号16~配列番号27および配列番号35~配列番号41のアミノ酸配列を有する本発明の化合物もまた、それ自体が本発明の化合物であり、本明細書に記載されている、および/または以下に例示されている本発明の他の化合物とまったく同じ方法で作製、製剤化、および患者に投与することができる。
【0034】
誤解を避けるために、本明細書で使用される場合、Proはプロリンを表し、Alaはアラニンを表し、Serはセリンを表し、Tyrはチロシンを表し、Hypはヒドロキシプロリン(3-ヒドロキシプロリン(3Hyp)および4-ヒドロキシプロリン(4Hyp)を含む)を表し、ジHypはジヒドロキシプロリン(3,4-ジヒドロキシプロリン(3,4ジHyp)、3,5-ジヒドロキシプロリン(3,5ジHyp)、および4,5-ジヒドロキシプロリン(4,5ジHyp)を含む)を表し、Thrはトレオニンを表し、Lysはリシンを表し、Alaはアラニンを表し、DOPAは3,4-ジヒドロキシフェニルアラニンを表す。N末端でWに結合し得る任意選択の3,4-ジヒドロ桂皮酸残基は、本質的にDOPA残基であるが、N末端で結合しているカルボン酸に対して2またはα炭素位置に-NH基(Ala、Ser、またはLysのいずれか)を有しない。
【0035】
本発明の化合物は、塩の形態であろうとなかろうと、ペプチドのアミノ酸内の位置異性体(例えば、ジHyp、Hyp、およびTyr部分)、ならびにそのような位置異性体の混合物を含む。例えば、Tyrの定義には、チロシン(4-ヒドロキシフェニルアラニン)だけでなく、2-および3-ヒドロキシフェニルアラニンも含まれる。Hypの定義には、4-ヒドロキシプロリン(4Hyp)、3-ヒドロキシプロリン(3Hyp)、および5-ヒドロキシプロリン(5Hyp)が含まれる。Hyp残基が4-ヒドロキシプロリンであることが、より好ましい。同様に、ジHypの定義には、3,4-ジヒドロキシプロリン(3,4ジHyp)、3,5-ジヒドロキシプロリン(3,5ジHyp)、および4,5-ジヒドロキシプロリン(4,5ジHyp)が含まれる。ジHyp残基が3,4-ジヒドロキシプロリン(3,4ジHyp)であることが、より好ましい。
【0036】
また、(排他的ではなく通常は、L配置である)本発明の化合物のアミノ酸の標準的な中心炭素原子に加えて、配列内のある特定のアミノ酸は、さらなるキラル炭素原子を含む。すべてのそのような立体異性体およびそれらの混合物(ラセミ混合物を含む)が、本発明の範囲内に含まれる。比較して、Hypの定義には、トランス-4-ヒドロキシ-L-プロリン、シス-4-ヒドロキシ-L-プロリン、トランス-3-ヒドロキシ-L-プロリン、シス-3-ヒドロキシ-L-プロリン、トランス-5-ヒドロキシ-L-プロリン、およびシス-5-ヒドロキシ-L-プロリンが含まれるが、本発明の化合物中に用いられるHypは、4-ヒドロキシ-L-プロリンであることが好ましい。同様に、対応する定義をジHypに適用してもよく、2つのヒドロキシ基は、相互に対してシスまたはトランスであることもできる。いずれにしても、本発明の化合物の一部を形成し得る式Iの化合物の個々のエナンチオマーが、本発明の範囲内に含まれる。
【0037】
本発明の化合物は、塩の形態であってもよい。言及され得る塩には、薬学的および/または美容的に許容される酸付加塩および塩基付加塩などの、薬学的に許容される塩および/または美容的に許容される塩が含まれる。このような塩は、慣用的手段により、例えば、本発明の化合物と、1当量以上の適切な酸または塩基とを、任意選択で溶媒中で、または塩が不溶である媒体中で反応させ、次いで、標準的技術を使用して(例えば、真空中、凍結乾燥または濾過によって)、当該溶媒または当該媒体を除去することにより、形成されてもよい。塩はまた、例えば、好適なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の有効成分の対イオンを別の対イオンと交換することによって、調製されてもよい。
【0038】
好ましい塩には、例えば、酢酸塩、塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、メシレート、トシレート、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、またはナトリウムおよびカリウム塩などのアルカリ金属塩が含まれる。最も好ましくは、本発明の化合物は、酢酸塩の形態にあり得る。
【0039】
本発明の化合物は、例えば下文に記載されるように、標準的なカップリング試薬および溶媒を使用して、従来の技術によって、例えば、標準的なアミノ酸カップリング技術によって、調製することができる。本発明の化合物は、適切な試薬および反応条件を使用して、利用可能な出発物質から合成することができる。この点に関して、当業者は、特に、「Comprehensive Organic Synthesis」by B.M.Trost and I.Fleming,Pergamon Press,1991を参照してもよい。用いられ得るさらなる参考文献には、「Heterocyclic Chemistry」by J.A.Joule,K.Mills and G.F.Smith,3rd edition, published by Chapman&Hall,「Comprehensive Heterocyclic Chemistry II」by A.R.Katritzky,C.W.Rees and E.F.V.Scriven,Pergamon Press,1996、および「Science of Synthesis」Volumes 9-17(Hetarenes and Related Ring Systems),Georg Thieme Verlag,2006が含まれる。
【0040】
本発明の化合物は、それらの反応混合物から単離され、必要な場合には当業者に既知のものなどの従来技術を使用して精製することができる。したがって、本明細書に記載の本発明の化合物の調製プロセスは、最終ステップとして、本発明の化合物の単離および任意選択で精製を含んでもよい。
【0041】
上記および下記に記載されているプロセスにおいて、中間体化合物の官能基を保護基によって保護する必要があり得ることは当業者によって理解されるであろう。官能基の保護および脱保護は、反応の前に行っても後に行ってもよい。
【0042】
保護基は、当業者に周知であって以下に記載されるような技術に従って適用および除去することができる。例えば、本明細書に記載の保護された化合物/中間体は、標準的な脱保護技術を使用して、保護されていない化合物に化学的に変換することができる。関与する化学の種類は、保護基の必要性および種類、ならびに合成を達成するための順序を決定付けるであろう。保護基の使用は、「Protective Groups in Organic Synthesis」,5th edition,T.W.Greene&P.G.M.Wutz,Wiley-Interscience(2014)に十分に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明の化合物が有用であるのは、それらが薬理学的活性を有するためである。したがって、本発明の化合物は、ヒトおよび動物の医薬として有用である。したがって、それらは、医薬品として(および/または獣医学で)示されるが、化粧品および/または医療デバイスの一部としても使用することができる。
【0044】
本発明の化合物は、それ自体で薬理学的活性を有し得るが、本発明の化合物のある特定の薬学的に許容される(例えば、「保護された」)誘導体が存在しても、調製されてもよく、それらは、そのような活性を有さなくてもよいが、経口投与され、その後に体内で代謝または化学的に変換されて、本発明の化合物を形成することができる。したがって、(いくらかの薬理学的活性を有し得るが、但し、そのような活性が、それらが代謝/変換される活性化合物の活性よりも認識できるほどに低いことを条件とする)そのような化合物は、本発明の化合物の「プロドラッグ」として記載され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、プロドラッグへの言及は、投与後の所定の時間内に、実験的に検出可能な量で本発明の化合物を形成する化合物を含むであろう。本発明の化合物のすべてのプロドラッグが、本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
本発明の化合物は、炎症の治療において特に有用である。
【0047】
「炎症の治療」には、原因にかかわらず、身体の任意の臓器(軟部組織、関節、神経、血管系、内臓、特に粘膜表面、および具体的には皮膚を含む)における炎症の治療が含まれ、すべてのそのような炎症性障害もしくは病態、および/または炎症を特徴とする(例えば、症状として)障害もしくは病態もまた含まれる。
【0048】
炎症障害および/または病態は、宿主にとって有益というよりも有害である効果をもたらす、免疫防御機構の活性化を特徴とする場合がある(かつ典型的には、それらを特徴とする)。そのような病態は一般に、異なる程度の、組織の発赤もしくは充血、腫脹、浮腫、高体温、疼痛(痛みを含む)、体液の滲出、かゆみ(掻痒症)、細胞死、および組織破壊、細胞増殖、ならびに/または機能喪失に関連している。
【0049】
言及され得る炎症病態には、動脈炎、糖尿病、メタボリックシンドローム、酒さ、喘息およびアレルギー、強直性脊椎炎、慢性閉塞性肺疾患、痛風性関節炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎など)、多発性硬化症、変形性関節症、膵炎、前立腺炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、腱炎、滑液包炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、じんましん、血管炎、肥満細胞症、糖尿病性血管合併症、片頭痛、アテローム性動脈硬化症、ならびに関連する心血管障害が含まれる。言及され得る炎症を特徴とする病状は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。言及され得る炎症を特徴とするさらなる病状は、クローン病、および特に潰瘍性大腸炎を含む、炎症性腸疾患である。言及され得る炎症を特徴とする他の病状は、子宮頸管炎、膣炎(vaginitis)、および膣炎(colpitis)などの婦人科疾患である。胃腸管に影響を与える疾患、例えば、胃潰瘍形成(例えば、胃炎、胃潰瘍、胃がん、および他の胃粘膜疾患)、ならびに胃食道逆流症(GERD)、便秘、および胃炎、がんおよび感染症(例えば、風邪またはインフルエンザなどのウイルス感染症)に関連する炎症。
【0050】
さらに特に言及され得る炎症病態には、感染(ウイルス感染および/もしくは細菌感染など)またはアレルギー/アトピー性病態(鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)、咽頭炎、歯周炎、歯肉炎、眼球乾燥症、結膜炎(例えば、アレルギー性結膜炎)、皮膚炎、じんましん(urticaria)(じんましん(hives))、および食物アレルギーなど)に起因する炎症などの、皮膚または粘膜(口腔、鼻、眼、膣、子宮頸部、および/もしくは肛門直腸の粘膜、より具体的には口腔または鼻の粘膜を含む)の炎症、ならびにヘルペス、薬疹、多形性光疹、日焼け、皮膚がんの初期症状(紅斑様皮膚病変)、病理学的脱毛(皮膚移植後を含む)、化学発疹、乾癬、多形性紅斑、毛包炎、湿疹、および外耳炎などの他の炎症病態が含まれる。言及され得る病状は、多形性光疹である。
【0051】
より具体的には、化合物は、炎症を特徴とする、かつ/または炎症が関連しているある特定の病態の治療に使用することができる。そのような病態には、創傷(擦過創(引っ掻き傷)、(手術切開を含む)切開、裂傷、穿刺、裂離、打撲傷、および瘢痕を含む)、熱傷(皮膚移植などの、熱傷後の手術に起因する炎症を含む)、ならびに痔核などの他の病態が含まれ得る。創傷は、急性または慢性であり得、かつ/または本明細書に定義されるような1つ以上の炎症性障害に起因し得る。
【0052】
皮膚または粘膜の創傷は、膜表面の内部もしくは外部の身体的傷害から生じ得るか、または根本的な生理学的障害によって引き起こされる(すなわち、その症状である)可能性がある。
【0053】
物理的(例えば、「開放」)創傷は、鋭利な物体(切り傷、切開、穿刺)または鈍い物体/機械的な力(裂傷、擦過創、裂離)、物理的打撃(打撲傷)、熱または化学物質(熱傷および水疱)、紫外線(日焼け)、寒さ(凍瘡または凍傷)によって引き起こされる可能性がある。創傷は表在性(表皮および/もしくは真皮のみの損傷)、または全層創傷(表皮および/または真皮の下の損傷)であり得る。深刻な場合には、筋肉、骨、関節、およびさらには内臓などの皮下および/または粘膜下組織が、損傷を受ける場合がある。
【0054】
本発明の化合物を使用して、炎症および/または創傷に関連する疼痛(痛みを含む)を緩和することができる。具体的には、本発明の化合物を使用して、処置痛および/または非処置痛を緩和することができる。当業者は、「処置痛」(すなわち、手術の疼痛)という用語が、医療の目的で行われる医学的調査および治療に関連する急性の疼痛を指すことを理解するであろう。「非処置的」という用語は、炎症および/または創傷に関連する一般的な疼痛(例えば、歯性潰瘍、熱傷、および/または瘢痕に関連する疼痛)を指し、特定の医学的介入の結果ではない。
【0055】
本発明の化合物を使用して、創傷自体および治癒プロセスに関連する炎症、疼痛(痛みを含む)、および/または掻痒症(かゆみ)を治療することができるだけでなく、それらを使用して、創傷からの体液の滲出、感染のリスクを予防し、ならびに瘢痕およびメラニン色素沈着などの炎症および/または創傷治癒プロセスに起因する生理学的反応も予防することができる。
【0056】
瘢痕は、炎症および/または創傷治癒の結果であり、そのような炎症/治癒の結果である線維性組織の形成の一般的な用語である。
【0057】
本発明の化合物はまた、炎症および/または創傷治癒に起因し得る、または起因しない可能性がある、メラニン色素沈着の産生の抑制に有用であり得る。本発明の化合物はまた、肝斑、そばかす、メラニン沈着、蝶形紅斑、および他の色素沈着などのメラニン色素沈着に関連する障害、黒色腫を伴う皮膚がん、ならびに日光への曝露またはにきびなどの皮膚疾患によって引き起こされる色素沈着の抑制に有用であり得る。
【0058】
創傷はまた、疾患または障害の結果(例えば、炎症)として生じる可能性もある。そのような創傷には、水疱、ならびに/または皮膚および粘膜の潰瘍が含まれ得る。これらは、しばしば長続きし、治療が困難である一般的な病態である。皮膚組織は、しばしば損傷、除去、液化、感染、および/または壊死することがあり得る。潰瘍は、特に感染した場合、健康に二次的な結果をもたらす可能性があり、治癒が困難であり、治療するのに費用がかかる。それらはまた、患者に対して著しい心理的ストレスおよび経済的損失も引き起こし、全般的な幸福および生活の質の両方に影響を与える可能性がある。
【0059】
あるいは、本発明の化合物が特定の有用性を見出す炎症性皮膚病態または疾患には、乾癬、にきび、湿疹および皮膚炎、特にアレルギー性/アトピー性皮膚炎、ならびに鼻炎、特にアレルギー性鼻炎、痔核、慢性閉塞性肺疾患、および潰瘍性大腸炎を特徴とする粘膜炎の治療が含まれる。
【0060】
乾癬は、慢性の炎症性皮膚疾患であり、再発する傾向がある(一部の患者は生涯治癒しない)。乾癬の臨床症状には、主に紅斑および鱗屑が含まれる。これは、全身に発生する可能性があるが、頭皮および手足でより一般的に観察される。
【0061】
にきびは、濾胞性(毛包脂腺単位)の慢性炎症性皮膚疾患であり、その発生は、皮脂過多、毛包脂腺管の閉塞(閉鎖面皰および開放面皰を含む)、細菌感染、ならびに炎症反応などの主な要因と密接に関連し、若年期に発生する傾向があり、顔面の多形性の皮膚病変を特徴とする。したがって、にきびという用語には、通常のにきびおよびにきび酒さ(すなわち、赤鼻)が含まれる。
【0062】
湿疹は、様々な内部および外部の要因によって引き起こされる強いかゆみを伴う皮膚の炎症反応である。それは、急性、亜急性、および慢性の3つの段階を有する。急性期には滲出液が産生される傾向があるが、慢性期には浸潤および肥大が含まれる。皮膚病変は、かゆみを伴い、容易に再発することが多い。
【0063】
皮膚炎は、粗さ、発赤、かゆみ、湿疹、および乾燥を特徴とする、一般的な皮膚疾患である。皮膚炎によって引き起こされる小さなしこり、難治性潰瘍、および色素斑は、すぐに治療しないと、基底細胞がん、扁平上皮がん、および悪性黒色腫に発展する場合がある。皮膚炎は、物質(接触性皮膚炎)またはアレルギー(アレルギー性/アトピー性皮膚炎)を含む、様々な内部および外部の感染性または非感染性の要因によって引き起こされる場合がある。脂漏性皮膚炎(脂漏性湿疹)およびすべての形態のステロイド依存性皮膚炎(光線過敏性脂漏、口囲皮膚炎、酒さ様皮膚炎、ステロイド酒さ、ステロイド誘発性酒さ、イアト酒さ(iatrosacea)、ステロイド皮膚炎様酒さ、局所コルチコステロイド誘発性酒さ様皮膚炎、およびより具体的には、局所コルチコステロイドによる長期治療(非制御使用、乱用、または誤用を含む)後の顔面野の紅潮、紅斑、毛細血管拡張、萎縮、丘疹、および/または膿疱を特徴とする、顔面コルチコステロイド嗜癖性皮膚炎(FCAD)または顔面コルチコステロイド依存性皮膚炎(FCDD)(例えば、Xiao et al,J.Dermatol.,42,697(2015)およびLu et al,Clin.Exp.Dermatol.,35,618(2009)を参照されたい)もまた含まれる。
【0064】
鼻炎は、鼻内部の粘膜の刺激および炎症である。鼻炎の一般的な症状には、鼻づまり、鼻水、くしゃみ、および後鼻漏が含まれる。最も一般的な種類の鼻炎は、花粉、粉塵、カビ、またはある特定の動物の皮膚の薄片などのアレルゲンによって引き起こされるアレルギー性鼻炎である。驚くべきことに、本発明の化合物で治療したアレルギー性鼻炎の患者は、本発明の化合物を経鼻的に(すなわち、鼻粘膜に)投与した場合でさえ、眼のかゆみの緩和を経験したことが見出された。
【0065】
痔核は、直腸および肛門の内部または周囲に見出される痔核血管の大きな炎症によって引き起こされる腫脹である。症状には、便通過後の出血(すなわち、創傷)、痔核脱出、粘液分泌およびかゆみ、ひりひり感、発赤、および肛門の領域の腫脹が含まれる。痔核は、例えば、便秘または下痢の結果としての腹部の圧力の増加の結果であると考えられている。
【0066】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺気腫(肺胞への損傷)および慢性気管支炎(長期の気道炎症)を含む、呼吸困難を引き起こす肺の病態の群の名称である。COPDは、肺が炎症化し、損傷し、狭くなると発生する。肺への損傷は通常、不可逆的であり、肺に出入りする空気の流れの障害をもたらす。COPDの症状には、息切れ、湿性咳、頻繁な胸部感染、および持続的な喘鳴が含まれる。この疾患の最も一般的な原因は、喫煙であるが、他のリスク因子には、高レベルの大気汚染、ならびに粉塵、化学物質、および煙への職業上の曝露が含まれる。
【0067】
本発明の化合物は、本明細書で一般的および具体的に言及したものを含む様々な病態によって引き起こされる紅斑、発赤および腫脹、浮腫、水疱、ならびに水疱性類天疱瘡の軽減に正の効果を有する可能性があり、皮下組織液の滲出を阻害し、かつそのような炎症病態によって引き起こされるかゆみおよび疼痛を抑制する可能性がある。
【0068】
言及され得る他の炎症病態には、以下が含まれる。
(a)口腔粘膜炎、アフタ性潰瘍、中耳炎、喉頭炎、気管炎、食道炎、胃炎、腸炎、および腸結腸炎(細菌性赤痢、慢性アメーバ性赤痢、住血吸虫症、非特異的潰瘍性大腸炎、および限局性(regional)腸炎を含む)、子宮頸管炎および子宮頸内膜炎、子宮内膜炎、吸入傷害などによって引き起こされる炎症、ならびにがんに関連する粘膜の炎症、および口腔、鼻咽頭、耳、喉、気管、胃腸管、子宮頸部などの粘膜表面に影響を及ぼす、感染(例えば、風邪もしくはインフルエンザなどのウイルス感染)などの粘膜炎症。
(b)例えば、骨折、骨および関節の化膿性感染、リウマチ性骨疾患による炎症、ならびに化膿性骨髄炎(急性、慢性、限局性(localized)、硬化性、外傷後)、化膿性関節炎、骨腫瘍(骨腫、類骨骨腫、軟骨腫)、骨嚢胞、破骨細胞腫、原発性骨肉腫(骨肉腫、軟骨肉腫、骨線維肉腫、ユーイング肉腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、脊索腫)、転移性骨腫瘍、骨の腫瘍様病変(骨嚢胞、動脈瘤骨嚢胞、好酸球性肉芽腫、線維性形成異常)、ならびにリウマチ性関節炎に関連する整形外科の炎症。
(c)末梢多発神経炎、顔面神経炎、末梢神経炎、皮下神経炎、尺骨神経炎、肋間神経炎などの神経炎症。
(d)筋炎、靭帯炎、腱炎、嚢胞炎、リンパ節炎、腺窩炎、扁桃炎、滑膜炎、筋膜炎などの、皮下および粘膜下の軟部組織の炎症、ならびに筋肉、靭帯、筋膜、腱、滑膜、脂肪、関節嚢、およびリンパ組織の傷害、挫傷、または裂傷によって引き起こされる軟部組織の炎症。
(e)アレルギー性白血球破砕性血管炎、アレルギー性皮膚血管炎、結節性多発動脈炎、血栓性血管炎、肉芽腫性血管炎、リンパ球性血管炎、血液組成の異常を伴う血管炎、およびリウマチ性血管炎などの血管炎症、ならびにアレルギー性白血球破砕性血管炎、結節性多発動脈炎、血栓性血管炎、肉芽腫性血管炎、リンパ球性血管炎、血液組成の異常を伴う血管炎、およびリウマチ性血管炎によって引き起こされる血管がんに関連する血管炎症。
(f)心膜炎、心筋炎、心内膜炎、肺炎、肝炎、脾炎、腎炎、膵炎、膀胱炎、卵巣炎、前立腺炎および胃潰瘍を含むが、これらに限定されない、心臓、胃、腸、肺、肝臓、脾臓、腎臓、膵臓、膀胱、卵巣、および前立腺などの内臓の炎症。
(g)結膜炎、角膜炎(例えば、急性表層角膜炎、貨幣状角膜炎、間質性角膜炎、円板状角膜炎、神経栄養性角膜炎、粘膜斑角膜炎、単純ヘルペス性角膜炎、帯状疱疹性角膜炎、細菌性角膜炎、真菌性角膜炎、アカントアメーバ角膜炎、回旋糸状虫角膜炎、点状表層角膜炎、潰瘍性角膜炎、兎眼性角膜炎、光線角膜炎、およびコンタクトレンズ装用中の急性充血)、視神経炎などの眼および周辺領域の炎症。
(h)歯周炎、歯肉炎、歯性潰瘍などの歯茎および口腔の炎症。
(i)リウマチ性血管炎、リウマチ性関節炎、リウマチ性骨疾患、強直性脊椎炎、滑液包炎、クローン病、痛風、感染性関節炎、若年性特発性関節炎、変形性関節症、骨粗鬆症、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、腱炎などのリウマチに関連する炎症。
【0069】
本発明の化合物はまた、口の酸味、逆流、胸焼け、嚥下痛および/または咽頭痛、唾液分泌の増加(胸焼け)、吐き気、胸痛、および咳を特徴とし得る、GERDなどの消化器系のある特定の具体的な疾患の治療に使用することができる。GERDは、逆流性食道炎(すなわち、胃と食道との接合部またはその周辺で潰瘍を引き起こし得る食道上皮の炎症)、食道狭窄(すなわち、逆流誘発性炎症によって引き起こされる食道の持続的な狭窄)、バレット食道(すなわち、腸上皮化生(すなわち、遠位食道の扁平上皮から腸円柱上皮への上皮細胞の変化)、および/または食道腺がん(がんの一形態)を含む、食道の傷害を引き起こし得る。
【0070】
本発明の化合物はまた、肺嚢胞性線維症、通常型間質性肺炎、アレルギー性肺炎、石綿肺、肺気腫、肺性心、肺塞栓症などの呼吸器系のある特定の特別な疾患の治療に使用することもできる。言及され得る特別な疾患容態は、特発性肺線維症(IPF)である。
【0071】
IPFは、肺胞上皮損傷、肺線維芽細胞の広範囲な増殖、細胞外マトリックスの過剰な沈着を含む病理学的特徴を伴う、びまん性かつ致命的な肺間質性疾患であり、最終的には不可逆的な肺組織損傷をもたらす。疾患の後期段階では、IPFを有する対象は、呼吸不全および死亡を経験する。本発明の化合物は、IPFの治療および/またはこの疾患に関連する症状の緩和において有用性を見出し得ることが見出されている。
【0072】
本発明の化合物は、以下の肺および/または線維性病態(本明細書に別段の記載があるかどうかにかかわらず):肺線維症、腎線維症、肝線維症、ケイ酸症、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管気管支炎、気管支喘息、重症喘息、気管支拡張症、風邪およびインフルエンザを含む上気道感染)、アレルギー性気道炎症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎、レケッチア(reckettsia)、放射性肺炎、肺炎球菌(ブドウ球菌、連鎖球菌、およびグラム陰性桿菌を含む)肺炎、肺カンジダ症(アスペルギルス症、ムコール症、ヒストプラズマ症、放線菌症、およびノカルジア症を含む)、肺真菌症、クリプトコッカス症、肺膿瘍、アナフィラキシー性肺炎(レオファー症候群(Leoffer’s syndrome))、外因性アレルギー性肺胞炎、肺好酸球増加症(好酸球増加症)、閉塞性肺気腫、肺水腫、肺結核、呼吸器アルカリ症(酸症)、急性肺傷害、間質性肺疾患、膿胸、肺線維腫、および肺性心の治療に特に有用である。
【0073】
本発明の化合物が有用であると認められる特定の粘膜障害および疾患には、下痢、痔核、膿瘍、瘻孔、裂肛、肛門のかゆみ、肛門洞炎(anal sinusitis)、疣贅および直腸脱などの肛門直腸疾患、クローン病、特に潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、子宮頸管炎、膣炎、骨盤痛および障害などの婦人科疾患、例えば、傍歯状炎などの歯科疾患が含まれる。
【0074】
本発明の化合物は、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)産生を増加させ、脂質酸化を低減することによって、抗酸化効果をさらに有し得る。したがって、本発明の化合物は、抗酸化特性を有するとみなすことができる。
【0075】
本発明の化合物はまた、例えば、対象の体温を低減する(これは、発熱の低減をもたらす)ことによって、発熱の治療を可能にし、かつ/またはその症状を緩和する解熱特性を有し得る。したがって、本発明の化合物およびそれらを含む製剤は、解熱剤であるとみなされ得る。
【0076】
本発明のさらなる態様によれば、炎症、炎症性障害、および/または(例えば、症状として)炎症を特徴とする障害/病態の治療方法であって、本発明の化合物またはその塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0077】
誤解を避けるために、本発明の文脈では、「治療」、「療法」、および「治療法」という用語は、治療を必要とする患者の療法的または緩和的治療、ならびに炎症および/または炎症性障害にかかりやすい患者の予防的治療および/または診断を含む。
【0078】
本発明の化合物は、痛みおよび/または炎症など、任意のウイルス感染またはウイルス感染の任意の症状の治療とは対照的に、ウイルス感染自体の治療、すなわち、宿主内でのウイルスの複製を妨害することによる、ウイルス感染またはウイルス疾患の治療を可能にし得る抗ウイルス特性をさらに有し得る。そのような抗ウイルス特性はまた、そのような感染もしくは疾患の発症の予防、(例えば、さらなる)ウイルス感染からの宿主内の細胞の保護、ウイルス感染もしくは疾患の拡大の予防もしくは阻止(単一の宿主内で、または1つの宿主から新しい宿主へ)、または宿主での待ち時間後のウイルスの再活性化の防止を可能にし得る。
【0079】
本発明のさらなる態様によれば、ウイルス感染の治療方法であって、本発明の化合物またはその塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0080】
言及され得るウイルス感染には、adenoviridae(例えば、アデノウイルス)、papillomaviridae(例えば、ヒトパピローマウイルス)、polyomaviridae(例えば、BKウイルス、JCウイルス)、herpesviridae(例えば、単純ヘルペス、タイプ1、単純ヘルペス、タイプ2、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、タイプ8)、poxviridae(例えば、天然痘)、hepadnaviridae(例えば、B型肝炎ウイルス)、parvoviridae(例えば、パルボウイルスB19)、astroviridae(例えば、ヒトアストロウイルス)、caliciviridae(例えば、ノロウイルス、ノーウォークウイルス)、picornaviridae(例えば、コクサッキーウイルス、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス)、coronoviridae(例えば、重症急性呼吸器症候群ウイルス)、flaviviridae(例えば、C型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス)、retroviridae(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、HIV)、togaviridae(例えば、風疹ウイルス)、arenaviridae(例えば、ラッサウイルス)、bunyaviridae(例えば、ハンタウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、ハンタンウイルス)、filoviridae(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス、Ravnウイルス)、orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザAウイルス(例えば、H1N1およびH3N2ウイルス)、インフルエンザBウイルス、またはインフルエンザCウイルスを含む、インフルエンザウイルス)、paramyxoviridae(例えば、はしかウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス)、rhabdoviridae(例えば、狂犬病ウイルス)、hepeviridae(例えば、E型肝炎ウイルス)、reoviridae(例えば、ロタウイルス、オルビウイルス、コルチウイルス、バンナウイルス)、およびD型肝炎ウイルスなどの科に割り当てられていないウイルスが含まれる。
【0081】
より具体的に言及され得るウイルスには、単純ヘルペス、タイプ1および単純ヘルペス、タイプ2、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ならびにパラインフルエンザウイルスが含まれる。
【0082】
本発明の化合物は、痛みおよび/または炎症など、任意の細菌感染または疾患の任意の症状の治療とは対照的に、細菌感染自体の治療、すなわち、宿主内での細菌の成長または増殖を妨害することによる、細菌感染または細菌疾患の治療を可能にし得る抗細菌および/または静菌特性をさらに有し得る。したがって、本発明の化合物は、殺菌剤および/または好ましくは静菌剤であるとみなすことができる。
【0083】
そのような抗菌特性はまた、そのような感染もしくは疾患の発症の予防、(例えば、さらなる)細菌感染からの宿主内の細胞の保護、細菌感染もしくは疾患の拡大の予防もしくは阻止(単一の宿主内で、または1つの宿主から新たな宿主へ)、または宿主での待ち時間後の細菌の再活性化の防止を可能にし得る。
【0084】
本発明のさらなる態様によれば、細菌感染の治療方法であって、本発明の化合物またはその塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0085】
本発明の化合物は、痛みおよび/または炎症など、がんの任意の症状の治療とは対照的に、がん自体の治療、すなわち、がんを妨害することによる、がんの治療を可能にし得る抗がん特性をさらに有し得る。そのような抗がん特性はまた、例えば炎症を治療し、それによってそのような発症を予防することによる、そのような疾患の発症の予防を含み得る。
【0086】
本発明の別の態様によれば、がんの治療方法であって、本発明の化合物またはその塩を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。
【0087】
言及され得る特定のがんには、口腔がん、鼻咽頭がん、中耳がん、結膜がん、喉がん、気管がん、食道がん、胃がん、腸がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、口腔粘膜炎、鼻炎、中耳炎、結膜炎、咽頭炎、喉頭炎、気管炎、食道炎、胃炎、腸結腸炎、子宮頸炎、子宮内膜炎、紅斑様皮膚病変などによって引き起こされる皮膚がんなどが含まれる。言及され得る特定の皮膚がんは、基底細胞がんである。
【0088】
「患者」には、爬虫類、鳥類、および好ましくは、哺乳動物(特にヒト)の患者が含まれる。
【0089】
本発明によれば、本発明の化合物は、薬学的に許容される剤形の化合物を含む医薬品の形態で、好ましくは局所的または全身的に、例えば、経口、静脈内、または動脈内(血管内および他の血管周囲デバイス/剤形(例えば、ステント)を含む)、筋肉内、皮膚、皮下、経粘膜(例えば、舌下もしくは頬側)、直腸、膣内、皮内、経皮、経鼻、肺(例えば、気管もしくは気管支)、好ましくは局所的に、または任意の他の非経口経路によって投与される。
【0090】
吸入(例えば、鼻腔内)による投与は、治療される病態が鼻炎または気道のウイルス感染(例えば、風邪およびインフルエンザなどの上気道感染)に起因する炎症である場合に特に有用である。
【0091】
肺投与は、治療される病態がCOPDまたはIPFである場合に特に有用である。局所投与形態は、例えば、粉末エアロゾルを使用することによって、またはネブライザーなどの適切な霧化技術もしくは装置を使用する水性ミストによって、有効成分を含むスプレーを作製することによって強化され得る。
【0092】
肛門直腸投与は、注射される泡の溶液または坐剤などの適切な送達手段を使用して、治療される病態が痔核または潰瘍性大腸炎である場合に特に有用である。
【0093】
下部消化管への投与はまた、当業者に知られている標準的な遅延放出または徐放コーティング技術による非経口、特に経口送達によって達成され得る。特に、上部または下部の腸の別個の部分が標的とされ得る。例えば、結腸投与はまた、最初に経口的または非経口的に投与される結腸標的化薬物送達手段によって達成することができる。
【0094】
本発明の化合物は、代替として、直接全身非経口投与によって投与されてもよい。そのような投与は、患者の1つ以上の臓器の炎症性および/または線維性障害または病態の治療方法において有用であり得る。
【0095】
言及され得る内臓には、胃、腸、膵臓、肝臓、脾臓、膀胱、血管系、卵巣、前立腺、好ましくは心臓および腎臓、より好ましくは肺が含まれる。
【0096】
言及され得る内臓の線維性病態には、炎症または損傷した組織内およびその周辺の線維性結合組織(上記のとおり)の過剰な蓄積を特徴とする急性および/または重度の内部線維性病態が含まれる。このため、本発明の製剤は、線維形成(上記のとおり)ならびにそれに関連し得る罹患および死亡の治療または予防に有用であってもよい。このため、本発明の製剤により治療することができる内臓の(例えば、急性および/または重度の)線維性病態には、肝臓、腎臓、肺、心臓および血管系を含む心臓血管系、膵臓、脾臓、中枢神経系(神経線維症)、骨髄線維症、眼、膣、子宮頸部などの線維症が含まれる。
【0097】
内臓の炎症病態には、いずれかの重度の病態(すなわち、集中的な医療処置を必要とする病態)であるか、またはそれに発展し得る病態、および検出可能な炎症を特徴とし得るようなある種の炎症要素が明らかである病態、さらに、罹患が明白である(または予想される)および/または生命を脅かすものである病態が含まれる。
【0098】
言及され得る炎症病態には、1つ以上の内臓(前述した臓器のうちのいずれかを含む)における、急性内臓傷害など、炎症を(例えば、症状として)特徴とする内臓の1つ以上の急性障害または病態(すなわち、即時の医学的介入を必要とする病態、またはそれを必要とする病態に発展し得る1つ以上の病態)が含まれる。そのような急性炎症性障害を治療することにより、本発明の製剤は、そのような病態に関連する症状(急性または慢性)の発症を予防または阻止してもよく、またそのような病態に関連する罹患および/または死亡の進行を阻止してもよい。
【0099】
このため、言及され得る急性炎症病態には、腹膜炎、膵炎、大腸炎、直腸炎、胃炎、十二指腸炎、咽頭炎、GERD、歯周炎、および口内炎などの病態が含まれる。言及され得る特定の急性炎症病態には、急性肺傷害、気道傷害(熱傷など)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、ならびに多臓器の炎症、傷害、および/または不全など、1つ以上の内臓(前述したもののうちのいずれかを含む)への急性傷害が含まれる。
【0100】
そのような病態は、内部または外部の外傷(例えば、傷害または熱傷)、または例えば、ウイルス、細菌、もしくは真菌による感染によって引き起こされ得る。
【0101】
例えば、多臓器の炎症、傷害、および/または不全は、外傷性および/または広範囲の熱傷を含む、広範囲および/または外傷性の外部傷害に起因し得る。外傷性の外部熱傷は、第2度、より具体的には第3度熱傷および第4度熱傷を含むと理解される。広範囲の外部熱傷は、患者の体の面積の少なくとも約20%を含む、少なくとも約15%など、少なくとも約10%に影響を与える熱傷を含むと理解される。外部(および内部)の火傷は、熱、化学物質などへの露出に起因し得る。
【0102】
急性の炎症性および/または線維性の病態はまた、敗血症または敗血症性ショックに起因してもよく、これらは、ウイルス、細菌、または真菌感染によって引き起こされ得る。さらに、急性肺傷害、ARDS、および特にSARSは、新型SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)を含むコロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされ得る。
【0103】
このため、さらに、前述の(例えば、急性の)炎症性病態のうちの1つ以上は、何らかの形の内部組織損傷および/または関連する内部組織の機能不全をもたらし得る(実際に一部の場合にはその可能性が高い)。このため、関連する組織には、気道上皮などの(例えば、粘膜の)組織が含まれる。そのような組織損傷も、上文で述べた線維性病態のうちの1つ以上を生じさせ得る。例えば、新型コロナウイルスSARS-CoV-2(コロナウイルス疾患2019またはCOVID-19)に起因するSARS疾患は、多くの場合、炎症を含むある数の因子のうちの1つ以上から生じる線維症を引き起こすことが知られている。
【0104】
この点で、本発明の化合物およびその塩は、関連する炎症性および/または線維性の病態の治療において、そのような病態が多くの場合に1つ以上の併存疾患を特徴とするという前提で、特定の有用性を見出す。「併存疾患を特徴とする」病態は、問題の主な病態が、同時に、上文で述べたものを(実際に好ましくは)含むもう1つのさらなる医学的病態を引き起こす(またはそれから引き起こされる)ことを含み、これらの病態は、何らかの方法で互いに相互作用および/または重複し得る。
【0105】
このため、以下が提供される:
・患者の1つ以上の内臓の少なくとも1つの炎症性および/または線維性の障害または病態の治療方法であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の直接全身非経口投与を、そのような治療を必要とする患者に行うことを含む、方法、
・患者の1つ以上の内臓の2つ以上の炎症性および/または線維性の障害または病態の治療方法であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の直接全身非経口投与を、そのような治療を必要とする患者に行うことを含む、方法、
・患者の1つ以上の内臓の1つ以上の炎症性および/または線維性の障害または病態に関連するまたは関連し得る罹患および/または死亡の発生を低減する方法であって、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩の直接全身非経口投与を、そのような治療を必要とする患者に行うことを含む、方法。
【0106】
本発明の化合物/その塩が直接かつ非経口で投与される場合、それらは、静脈内、動脈内、血管内、血管周囲、筋肉内、皮膚、および/または皮下に、例えば直接注射によって、または任意の他の非経口経路によって、本発明の化合物またはその塩の形態で、薬学的に許容される剤形の形態で、投与されてもよい。
【0107】
このため、そのような投与に使用するための薬学的に許容される製剤は、本発明の化合物を、意図される直接非経口投与経路および標準的な薬務を十分に考慮して選択され得る薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と混合したものを含んでもよい。そのような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であってもよく、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さなくてもよい。そのような薬学的に許容される担体はまた、有効成分の即時放出または放出調節を付与し得る。
【0108】
このため、注射用の本発明の製剤は、懸濁液、および/もしくはより好ましくは溶液などの水性製剤(例えば、生理食塩水含有製剤(例えば、溶液)、リン酸含有製剤(例えば、溶液)、酢酸塩含有製剤(例えば、溶液)、もしくはホウ酸塩含有製剤(例えば、溶液)などの(任意選択の)緩衝された水性製剤(例えば、溶液)、または使用(例えば、注射)前に水性ビヒクルなどのビヒクルで再構成され得る凍結乾燥粉末の形態であってもよい。
【0109】
本発明の製剤には、溶媒(例えば、水)、共溶媒、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤、還元剤、抗菌防腐剤、増量剤、および/または保護剤などの当業者に既知の他の好適な賦形剤が含まれてもよい。
【0110】
本発明の製剤は、好ましくは、標準的な技術により、本明細書に記載されるように緩衝液および/またはpH調整剤を使用して、生理学的に許容されるpH値(例えば、約4.5~約9.5の間、例えば、約6~約9、例えば、約6.5~約8.5の間のpH)に緩衝され、かつ/あるいは張性修飾剤(塩化ナトリウムなど)をさらに含んでもよい。
【0111】
上記にもかかわらず、本発明の化合物の好ましい送達様式には、皮膚および/もしくは適切な粘膜表面への適用に好適である適切な(例えば、薬学的および局所的に許容される)ビヒクル、ならびに/または市販の製剤中の炎症部位(例えば、口腔および/もしくは鼻腔粘膜、肺、肛門直腸および/もしくは結腸を含む粘膜)、またはより好ましくは、皮膚)への局所送達が含まれるが、経口、静脈内、皮膚もしくは皮下、経鼻、筋肉内、腹腔内、または肺送達もまた含まれ得る。
【0112】
皮内注射による(例えば、皮内)投与は、溶液または懸濁液(例えば、皮膚充填剤)の形態で、有効成分を真皮に投与するために特に有用である。これは、上文に記載されるメラニン色素沈着療法の投与手段として特に有用である。
【0113】
本発明の化合物は一般に、意図される投与経路(例えば、関連する粘膜(肺を含む)もしくは好ましくは皮膚への局所投与)および標準的な医薬または他の(例えば、美容)慣行を十分に考慮して選択され得る(例えば、薬学的に許容される)アジュバント、希釈剤、または担体と混合された、1つ以上の、例えば、医薬製剤の形態で投与されるであろう。そのような薬学的に許容される担体は、活性化合物に対して化学的に不活性であってもよく、使用条件下で有害な副作用または毒性を有しないものであってもよい。そのような薬学的に許容される担体はまた、有効成分の即時放出または放出調節を付与し得る。
【0114】
好適な医薬製剤は、市販されているか、または文献、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy,22nd edition,Pharmaceutical Press(2012)、およびMartindale-The Complete Drug Reference,38th Edition,Pharmaceutical Press(2014)、ならびにそこで参照されている文書に記載の技術に従って調製することができ、これらすべての文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。そうでなければ、本発明の化合物を含む好適な製剤の調製は、慣習的な技術を使用して当業者によって本発明のものではない方法で達成することができる。
【0115】
本発明の化合物は、乳濁液、懸濁液、および/もしくは溶液などの水性製剤(例えば、生理食塩水含有製剤(例えば、溶液)、リン酸含有製剤(例えば、溶液)、酢酸塩含有製剤(例えば、溶液)、もしくはホウ酸塩含有製剤(例えば、溶液)などの(任意選択で)緩衝された水性製剤(例えば、溶液)、または凍結乾燥粉末の形態であり得る。
【0116】
有効成分は、さらにおよび/または代替として、適切な賦形剤と組み合わせて以下を調製することができる:
●ゲル製剤(これの好適なゲルマトリックス材料には、セルロース誘導体、カルボマーおよびアルギン酸塩、トラガントガム、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、ジェランガム、デンプン、キサンタンガム、カチオン性グアーガム、寒天、非セルロース多糖類、グルコースなどの糖類、グリセリン、プロパンジオール、ビニルポリマー、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、および特に、ヒアルロン酸が含まれる)、
●ローション(これの好適なマトリックス材料には、セルロース誘導体、グリセリン、非セルロース多糖類、異なる分子量のポリエチレングリコール、およびプロパンジオールが含まれる)、
●ペーストもしくは軟膏(これの好適なペーストマトリックス材料には、グリセリン、ワセリン、パラフィン、異なる分子量のポリエチレングリコールなどが含まれる)、
●クリームまたは発泡体(これの好適な賦形剤(例えば、発泡剤)には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、種々の分子量のポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、脂肪アルコールポリオキシエチレンエーテルスルホン酸ナトリウム、コーングルテン粉末、およびアクリルアミドが含まれる)、
●粉末エアロゾル(これの好適な賦形剤には、マンニトール、グリシン、デキストリン、デキストロース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、およびポリソルベート、例えば、乾燥粉末吸入剤が含まれる)、ならびに/または
●経口用または吸入用の液体、例えば、水(エアロゾル)スプレー(これの好適な賦形剤には、ヒアルロン酸などの粘度調節剤、グルコースおよびラクトースなどの糖、乳化剤、緩衝剤、アルコール、水、防腐剤、甘味料、香料などが含まれる)。
●注射液または懸濁液(水性またはその他であり得、これの好適な賦形剤には、溶媒および共溶媒、可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、増粘剤、キレート剤、抗酸化剤、還元剤、抗菌防腐剤、緩衝液および/またはpH調整剤、増量剤、保護剤、ならびに張性変更剤が含まれる)。言及され得る特定の注射可能な溶液または懸濁液には、皮膚充填剤(すなわち、注射可能な充填剤または軟組織充填剤)が含まれる。
【0117】
グリセロール、グリセリン、ポリエチレングリコール、トレハロース、グリセロール、ワセリン、パラフィン油、シリコーン油、ヒアルロン酸およびその塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、オクタン酸/カプリン酸トリグリセリドなどの保湿剤、ならびに/またはビタミンおよびグルタチオンなどの抗酸化剤、ならびに/または酸、塩基、およびpH緩衝液などのpH調節剤もまた、必要に応じてそのような製剤中に含まれてもよい。さらに、ヘキサデカノール(セチルアルコール)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ソルビタンエステル(例えば、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタンなど)、モノアシルグリセリド(モノステアリン酸グリセリルなど)、ポリエトキシ化アルコール、ポリビニルアルコール、ポリオールエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、エトキシ化脂肪酸エステル、ポリオキシルグリセリド、ラウリルジメチルアミンオキシド、胆汁酸塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム)、リン脂質、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、ヘキサデシルトリメチル-アンモニウムブロミド、ポロキサマー、レシチン、ステロール(例えば、コレステロール)、糖エステル、ポリソルベートなどの界面活性剤/乳化剤、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリンなどの防腐剤、ならびにアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマーなどの増粘剤が含まれてもよい。特に、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセリル、ヘキサデカノール、ステアリン酸ソルビタン、セチルアルコール、オクタン酸/カプリン酸グリセリドなどが、特にクリーム製剤に含まれてもよい。
【0118】
本発明の化合物およびそれらを含む(例えば、医薬)製剤(例えば、上記に記載されているような溶液、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、発泡体、ペースト、および/または乾燥粉末)を適切なマトリックス材料とさらに組み合わせて、皮膚または粘膜表面などの生物学的表面に適用するための包帯または治療パッチを調製することができる。したがって、そのような製剤を用いて、ガーゼ、不織布、または絹紙などのマトリックス材料に含浸してもよい。あるいは、治療パッチは、例えば、バンドエイド(登録商標)、顔面マスク、アイマスク、ハンドマスク、フットマスクなどであってもよい。
【0119】
そのような包帯を創傷に適用する際に使用するためにワセリンを用いてもよいが、我々はまた、PEG(例えば、PEG400)に基づく軟膏をマトリックス材料と組み合わせて、ワセリンを使用する必要なく、包帯を調製することができることも見出した。
【0120】
本発明の化合物は、懸濁液、乾燥粉末、または溶液によって吸入のために投与され得る。好適な吸入デバイスには、手動または呼気で作動し、標準のスペーサー装置の有無にかかわらず用いることができる加圧式定量吸入器(pMDI)、単回投与、複数回投与のパワーアシスト式であり得る乾燥粉末吸入器(DPI)、および微細なミスト中のエアロゾル薬が、例えばpMDIを使用して供給されるスプレーよりも遅い速度で送達されるソフトミスト吸入器(SMI)またはネブライザーが含まれる。
【0121】
pMDIでは、本発明の化合物は、各作動で約20~約100μLの1回以上の計量された用量を送達するために、推進剤(例えば、HFA、マンニトール、ラクトース、ソルビトールなどの賦形剤とともに)に分散された微粉化粒子の加圧懸濁液として、またはエタノール溶液として投与され得る。作動は、手で(例えば、押す)または吸入(呼吸作動)によって行うことができ、ばねによって駆動されるフロートリガーシステムを伴う。
【0122】
DPIにおいて、本発明の化合物は、デバイスに予め充填され得るか、または手動で充填され得るカプセル内で、単独で、またはより大きな粒子サイズの不活性賦形剤(例えば、マンニトール)と混成されて、微粉化された薬物粒子(約1~約5μmの間のサイズ)の形態で投与され得る。DPIからの吸入は、薬剤粒子を分解し、気道内に分散させる可能性がある。
【0123】
SMIにおいて、本発明の化合物は、デバイスに充填されるカートリッジ内に溶液として保管され得る。ばねは、ボタンが押されたときに用量が放出され、薬液のジェット流を放出するように、用量をマイクロポンプに放出することができる。
【0124】
様々なネブライザーを使用して、エアロゾル化溶液の微細なミストの形で本発明の化合物を投与することもできる。ネブライザーには、呼気増強ジェットネブライザー(コンプレッサーの助けを借りて、空気流がジェットを通って移動し、薬液をエアロゾル化させる)、呼気作動式ジェットネブライザー(患者が吸入した後、コンプレッサーの助けを借りて、空気流がチューブを通って移動し、薬液がエアロゾル化される)、超音波ネブライザー(圧電結晶が振動して加熱することによりエアロゾル化を引き起こし、噴霧化を引き起こす)、振動メッシュネブライザー(圧電結晶がメッシュプレートを振動させ、エアロゾル化を引き起こして、噴霧中に溶液の温度を大きく変化させることなく、非常に微細な液滴を生成する)が含まれる場合がある。
【0125】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に定義される医薬組成物/製剤の調製のためのプロセスであって、上文に定義される本発明の化合物を、上文に定義される1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と関連付けることを含む、プロセスが提供される。
【0126】
本発明の化合物はまた、血小板型成長因子(血小板由来成長因子、PDGFを含む)、骨肉腫由来成長因子(ODGF)、上皮成長因子(EGF)、形質転換成長因子(TGFαおよびTGFβ)、線維芽細胞成長因子(αFGF、βFGF)、インスリン様成長因子(IGF-I、IGF-II)、神経成長因子(NGF)、インターロイキン型成長因子(IL-1、IL-1、IL-3)、エリスロポエチン(EPO)、ならびにコロニー刺激因子(CSF)から選択される1つ以上の成長因子による治療において組み合わせることもできる。
【0127】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化合物と、アジュバント、希釈剤、または担体などの1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と、を含む、(例えば、医薬)組成物が提供される。好ましい製剤は、例えば、粘膜(口腔および/もしくは鼻腔粘膜、肺、肛門直腸および/もしくは結腸を含む)、またはより好ましくは皮膚に局所的に適用するのに好適であり、したがって局所的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体を含む。
【0128】
したがって、局所投与(例えば、口腔および/もしくは鼻粘膜、肺、肛門直腸領域および/もしくは結腸、または好ましくは皮膚への)に好適であり、適合され、かつ/または包装されて提示される本発明の化合物を含む医薬組成物、ならびにその製剤の直接局所投与(例えば、口腔および/もしくは鼻粘膜、肺、肛門直腸領域および/もしくは結腸を含む粘膜、または好ましくは皮膚への)による、炎症、炎症性障害、および/または炎症を特徴とする病態(例えば、症状として)を含む障害の治療におけるそのような製剤の使用がさらに提供される。
【0129】
本発明のこの態様に関して、誤解を避けるために、本発明の化合物を含む局所製剤は、炎症の治療を含む、本明細書に記載のいずれかおよびすべての病態において、ありとあらゆる炎症性障害の治療において、および/または本明細書の上文に言及、定義、もしくは記載される炎症を特徴とするいずれかおよびすべての病態の治療において使用することができる。同様に、言及され得る本発明の化合物を含む局所製剤には、上述で言及、定義、または記載されたもののいずれかおよびすべてが含まれる。本明細書の関連する開示のいずれかおよびすべては、本発明のこの態様と組み合わせて参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本発明の化合物を含む局所(例えば、液体または(例えば、水性)溶液に基づく)製剤は、創傷回復に特に有用である可能性があり、疼痛(痛みを含む)、ならびに特に創傷自体および創傷治癒プロセスに関連する掻痒症/かゆみを緩和する可能性がある。本発明の化合物を含むそのような局所製剤は、熱傷または創傷を受けた後の、特に急性炎症段階、例えば、最初の48時間に、創傷からの体液の滲出を予防および/または抑制するのに特に有用であり得る。これにより、感染のリスクおよび他の生理学的反応が予防される。本発明の化合物を含むそのような局所製剤はまた、創傷に関連するか否かにかかわらず、瘢痕およびメラニン色素沈着(上記参照)の予防および/または抑制において特に有用であり得る。
【0131】
有効成分の投与は、連続的または断続的であり得る。投与様式は、投与のタイミングおよび頻度によっても決定され得るが、炎症の療法的治療の場合、病態の重症度によっても決まる。
【0132】
治療される障害および患者、ならびに投与経路に応じて、本発明の化合物は、異なる治療有効用量で治療を必要とする患者に投与され得る。
【0133】
同様に、製剤中の有効成分の量は、治療される病態の重症度および患者によって決まるが、当業者によって決定されてもよい。
【0134】
いずれにせよ、開業医または他の当業者は、病態の重症度および投与経路に応じて、個々の患者に最も好適な実際の投与量を日常的に決定することができる。本明細書に言及される投与量は、平均の場合の例であり、当然のことながら、より高いまたはより低い投与量範囲が妥当である個々の事例が存在する可能性があり、それらも本発明の範囲内である。
【0135】
用量は、1日1回~4回(例えば、3回)投与することができる。
【0136】
水溶液生成物中の本発明の化合物の適切な濃度は、すべての場合で遊離(非塩)ペプチドとして計算して、約0.01(例えば、約0.1)~約15.0mg/mLであり得る。
【0137】
本発明の化合物の適切な局所用量は、すべての場合で遊離(非塩)化合物として計算して、約5μg/cmの治療領域などの約1~約10μg/cm)の治療領域を含む、約0.1(例えば、約0.5)~約20μg/cmの治療領域などの、約0.05~約50μg/cmの治療領域の範囲内である。
【0138】
経鼻投与(例えば、吸入による)のための本発明の化合物の適切な用量は、約0.01μg~約2000mgの範囲、例えば、約0.1μg~約500mgの間、または1μg~約100mgの間である。言及され得る経鼻投与のための特定の用量は、約10μg~約1mgの間、特に約0.1mg(すなわち、約100μg)の用量を含む。本発明の化合物の1日あたり約0.1mgの経鼻投与は、鼻炎(例えば、アレルギー性鼻炎)などの鼻腔および粘膜の炎症に関連する病態の治療において特に効果的であることが見出された。
【0139】
肺投与(例えば、吸入による)のための本発明の化合物の適切な用量は、約0.01μg~約2000mgの範囲、例えば、約0.1μg~約500mgの間、または1μg~約100mgの間である。言及され得る肺投与のための特定の用量は、約10μg~約10mgの間、特に約0.6mg(すなわち、60μg)~6mgの用量(例えば、COPDまたはIPFの治療に使用するため)を含む。
【0140】
本発明の化合物を含む製剤のpH値は、約1.0~約9.0の範囲内(例えば、約3.0~約8.0)であることが好ましい。
【0141】
いずれにせよ、哺乳動物、特にヒトに投与される用量は、本発明の文脈では、(上文に記載の)妥当な時間枠にわたって哺乳動物の治療応答をもたらすのに十分でなければならない。当業者は、正確な用量および組成ならびに最も適切な送達レジメンの選択が、とりわけ製剤の薬理学的特性、治療される病態の性質および重症度、レシピエントの体調および精神状態、ならびに治療される患者の年齢、状態、体重、性別および反応、疾患の病期/重症度、ならびに患者間の遺伝的差異によっても影響されることを認識している。
【0142】
本明細書に記載の使用および方法では、本発明の化合物は、炎症および/または炎症性障害の治療に有用な1つ以上の有効成分(他の抗炎症剤)と組み合わせてもよい。したがって、そのような患者はまた(および/またはすでに)、そのような他の有効成分のうちの1つ以上の投与に基づく療法を受けている場合もあり、それにより、本発明の化合物による治療の前、それに加えて、および/またはその後に、本明細書に言及される有効成分のうちの1つ以上の処方用量を受けていることを意味する。
【0143】
炎症の治療において本発明の化合物と組み合わせて使用され得るそのような抗炎症剤には、炎症および/またはその症状の1つとして炎症を特徴とする疾患の治療に有用な治療剤が含まれる。治療される病態に応じて、そのような抗炎症剤には、NSAID(例えば、アスピリン)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(例えば、モンテルカスト)、コルチコステロイド、鎮痛剤、および例えば、後述のトリプシンなどのある特定の酵素もまた含まれ得る。本発明の化合物はまた、ロイコトリエンB4(LTB4)と組み合わせることもできる。
【0144】
この文脈では、本発明の化合物はまた、炎症の治療に使用するために、1つ以上のイガイ接着タンパク質(MAP)と組み合わせることもでき、MAPには、コラーゲンpre-COL-P、pre-COL-D、およびpre-COL-NG、イガイの足のマトリックスタンパク質PTMPおよびDTMP、ならびにより好ましくはmfpまたはmefp(mefp-2、mefp-3、mefp-4、mefp-5、mefp-6、および特にmefp-1など)などの、イガイであるか、またはそれらに由来し得るすべてのサブタイプを含む全長タンパク質を含む、Mytilus edulis(ムラサキイガイ)などのイガイ種に由来し得る任意の接着タンパク質が含まれ、mefpなどのこれらのタンパク質のいずれかの混合物または組み合わせが含まれる。天然に存在するMAPは、例えば、混合吸着クロマトグラフィー(中国特許第2007/10179491.0号を参照されたい)によって、カルボキシメチルイオン交換クロマトグラフィー(中国特許第2007/10179492.5号を参照されたい)によって、ならびに/または塩析および透析(中国特許第2009/10087567.6号)によって調製することができる。MAPの商業的供給源には、USUN Bio Co.(China、MAP Medical Device(登録商標)として販売)、BD Biosciences(USA)、Kollodis(South Korea)、およびBiopolymer(Sweden)が含まれる。あるいは、MAPは、既知の組換えDNA法を使用して産生されてもよい。
【0145】
MAPの誘導体(例えば、薬学的に許容される誘導体)は、本発明の化合物と組み合わされてもよく、例えば、約500Da~約2,000Da(例えば、約800Daを含む、約1,200などの約1,500)の範囲の分子量を有する化合物を含む。そのような誘導体には、天然に存在するMAP中で同定された配列と同じであるか、またはそれらの(例えば、軽微な)変異体(上文に定義される)であるアミノ酸配列を含む他の化合物も含まれる可能性があり、これらは、化学的および/または生物学的プロセス(例えば、天然に存在するMAPの化学修飾、または直接合成)によって合成することができる。
【0146】
例えば、本明細書の上文で考察されるように、配列:
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(mefp-1デカペプチド、配列番号1)、および
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号2)
の単離されたデカペプチド化合物は、本発明の化合物と組み合わせることができるMAPの薬学的に許容される低分子量誘導体である。
【0147】
本発明の化合物と組み合わせることができる他の好ましい薬剤には、LTB4(創傷および熱傷を治療するため)、NSAID(例えば、アスピリン)、モンテルカスト(炎症を一般的に治療するため)、ならびにトリプシン(例えば、ウイルス感染に関連する粘膜の炎症を治療するため)が含まれる。
【0148】
本発明の化合物はまた、投与時に副作用として炎症を引き起こすことが知られている他の治療剤と組み合わせることもできる。
【0149】
本発明の化合物が、このように他の治療剤と「組み合わせることができる」場合、有効成分は、同じ製剤中で一緒に投与されても、異なる製剤で別個に(同時または順次)投与されてもよい。
【0150】
そのような組み合わせ生成物は、他の治療剤と組み合わせた本発明の化合物の投与を提供し、したがって別個の製剤(それらの製剤のうちの少なくとも1つが本発明の化合物を含み、少なくとも1つが他の治療剤を含む)として提示されても、組み合わせ調剤として提示(すなわち、製剤化)(すなわち、本発明の化合物および他の治療剤を含む単一製剤として提示)されてもよい。
【0151】
したがって、
(1)本発明の化合物と、別の抗炎症剤、または副作用として炎症を引き起こすことが知られている薬剤と、薬学的に許容される賦形剤(例えば、アジュバント、希釈剤、または担体)と、を含む、医薬製剤(この製剤は、以下「組み合わせ調製物」と称される)、および
(2)構成要素:
(A)本発明の化合物を、薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と混合して含む医薬製剤と、
(B)薬学的に許容されるアジュバント、希釈剤、または担体と混合された、別の抗炎症剤、または副作用として炎症を引き起こすことが知られている薬剤を含む医薬製剤と、を含む、パーツキットがさらに提供され、
構成要素(A)および(B)は、各々、他方と組み合わせた投与に好適な形態で提供される。
【0152】
本発明のさらなる態様では、上文に定義される組み合わせ調剤を調製するためのプロセスであって、本発明の化合物、他の抗炎症剤、または副作用として炎症を引き起こすことが知られている薬剤を、少なくとも1つの(例えば、薬学的に許容される)賦形剤と関連付けることを含む、プロセスが提供される。
【0153】
本発明のさらなる態様では、本明細書の上文に定義されるパーツキットを調製するためのプロセスであって、構成要素(A)および(B)を関連付けることを含む、プロセスが提供される。本明細書で使用する場合、関連付けることへの言及は、2つの成分を互いに組み合わせて投与するのに好適とすることを意味する。
【0154】
このため、上文で定義されるキットオブパーツの調製のためのプロセスに関して、2つの成分を互いに「関連付ける」ことによって、発明者らは、キットオブパーツの2つの成分が、
(i)別々の製剤として(すなわち、互いに独立して)提供され、その後、これらが併用治療において互いに合わせて使用されてもよいし、または
(ii)併用治療において互いに合わせて使用するための「組み合わせ包装」の別々の構成要素として一緒に包装され、提供されてもよいことが含まれる。
【0155】
したがって、
(I)本明細書に定義される構成要素(A)および(B)のうちの1つを、
(II)2つの構成要素のうちの他方と組み合わせてその構成要素を使用するための指示書と一緒に含む、パーツキットがさらに提供される。
【0156】
本明細書に記載のパーツキットは、反復投与を提供するために、適切な量/用量の本発明の化合物を含む2つ以上の製剤、および/または適切な量/用量の別の抗炎症剤を含む2つ以上の製剤を含み得る。2つ以上の製剤(活性化合物のいずれかを含む)が存在する場合、そのような製剤は、いずれかの化合物の投与量、化学的組成、および/または物理的形態に関して、同じであっても、異なっていてもよい。
【0157】
本明細書に記載のパーツキットに関して、「~と組み合わせた投与」によって、我々は、本発明の化合物および他の抗炎症剤を含むそれぞれの製剤が、関連する病態の治療過程にわたって、順次、別個、および/または同時に投与されることを含む。
【0158】
したがって、本発明による組み合わせ生成物に関して、「~と組み合わせた投与」という用語は、関連する病態の治療過程にわたって、組み合わせ生成物の2つの構成要素(本発明の化合物および他の抗炎症剤)が、同じ治療過程にわたって、本発明の化合物を含む製剤、または他の薬剤を含む製剤のいずれかが単独で他方の構成要素を含まずに(任意選択で反復)投与される場合よりも、患者に対するより大きな有益な効果を可能にするように、一緒に、または時間的に十分に近接して(任意選択で反復)のいずれかで投与されることを含む。組み合わせが、特定の病態の治療に関して、かつその治療過程にわたって、より大きな有益な効果を提供するかの決定は、治療または予防される病態によって決まることになるが、当業者によって慣習的に達成され得る。
【0159】
さらに、本発明によるパーツキットの文脈では、「~と組み合わせた」という用語は、2つの製剤のうちの一方または他方が、他方の構成要素の投与の前、その後、および/またはそれと同時に(任意選択で反復)投与され得ることを含む。この文脈で使用される場合、「同時投与される」および「~と同時に投与される」という用語は、関連する本発明の化合物および他の抗炎症剤の個々の用量が、互いの48時間(例えば、24時間)以内に投与されることを含む。
【0160】
本発明のさらなる態様では、上文に定義される組み合わせ調剤を調製するためのプロセスであって、上文に定義される本発明の化合物もしくはその塩、他の抗炎症剤、または副作用として炎症を引き起こすことが知られている薬剤を、少なくとも1つの(例えば、薬学的に許容される)賦形剤と関連付けることを含む、プロセスが提供される。
【0161】
本発明のある特定の化合物は、前述の生物学的活性を保有することに加えて、および/またはその代わりに、接着特性を保有し得る。
【0162】
本発明のそのような化合物は、無機基材、例えば、ガラス、金属など、および有機基材、例えば、生体組織を含む、ある数の基材に接着することができる。
【0163】
比較して、本発明のそのような化合物はまた、創傷表面修復製品、創傷表面保護製品、医療用生物学的接着剤製品、医療用コーティング製品、工業用コーティング製品(例えば、船舶、電子機器、パイプラインなどにおける腐食防止において)、生化学試薬、医療用製品、滅菌製品、細胞培養のための培養容器などとして使用されてもよい。
【0164】
本発明のそのような化合物は、回復を助けるために、熱傷、やけど、潰瘍、凍瘡、および褥瘡などの様々な皮膚および粘膜の創傷表面上にフィルムを形成し得る。本発明のそのような化合物はまた、外科手術、例えば、外科的切開の閉鎖、骨折した骨の接着、粘膜の接着、人工骨、軟骨ブラケット、骨膜、人工関節、歯科インプラント、閉塞ステント、脊椎固定装置、脊椎スペーサー、および臓器パッチなどの人体インプラントのコーティングに使用されてもよい。
【0165】
本発明のさらなる態様によれば、接着剤またはフィルム形成材料として、本発明の化合物またはその塩が提供される。
【0166】
「約」という用語が、本明細書で、有効成分の濃度および/もしくは用量、分子量、またはpHなどの量の文脈で用いられる場合はいつでも、そのような変数は、近似値であり、したがって本明細書で指定された数値から±10%、例えば、±5%、および好ましくは±2%(例えば、±1%)変動し得ることが理解されるであろう。この点において、「約10%」という用語は、例えば数値10について±10%、すなわち9%~11%を意味する。
【0167】
本発明の化合物は、その病態自体が、有機炎症性疾患であるか、または炎症に関連するか、もしくは炎症を特徴とするか(例えば、創傷、熱傷、もしくはウイルス感染)にかかわらず、炎症を特徴とする様々な病態に使用することができるという利点を有する。
【0168】
本発明の化合物はまた、配列番号1および/または配列番号2によって定義されるものを含めて、先行技術で説明されている化合物と比較して、インビボの代謝に対する改善された耐性を示すという利点を有し得る。本発明の化合物は、キモトリプシン(タンパク質を分解する消化酵素)および/またはエラスターゼ(コラーゲンとともに結合組織の機械的特性を決定するエラスチンを分解する酵素)による代謝に対する改善された耐性を示し得る。
【0169】
本明細書に記載の化合物、使用、および方法はまた、炎症、炎症性障害、もしくは症状として炎症を特徴とする障害(創傷を含む)、または他の方法に使用するためのものであるかにかかわらず、上文に言及される病態の治療において、先行技術で知られている類似の化合物または方法(治療)よりも、それらが医師および/もしくは患者にとって便利であり、効果的であり、毒性が低く、広範囲の活性を有し、強力であり、少ない副作用をもたらすか、またはそれ(ら)が類似の方法(治療)を上回る他の有用な薬理学的特性を有し得るという利点も有し得る。
【0170】
本発明を以下の実施例により説明する。ここで、図1は、試験化合物の血管透過性を示す、直腸および肛門組織中のエバンスブルー含量を示す。
【図面の簡単な説明】
【0171】
図1】試験化合物の血管透過性を示す、直腸および肛門組織中のエバンスブルー含量を示す。
【実施例
【0172】
実施例1
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)
Fmoc-Lys-Boc-Wang樹脂(9.15g、GLS180322-41301、GL Biochem、Shanghai,China)をガラス反応カラムに充填した。
【0173】
塩化メチレン(DCM、200mL;Shandong Jinling Chemical Industry Co Ltd、Shandong,China)をカラムに加え、樹脂を約30分間浸漬させた。次に、DCMを真空濾過により除去した。
【0174】
樹脂をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF、200mL;Shandong Shitaifeng Fertilizer Industry Co Ltd、Shandong,China)で3回洗浄した。
【0175】
DMF中の20%のピペリジン溶液(200mL)を脱保護溶液として加え、20分間反応させた。次に、溶液を真空濾過により除去し、カラムをDMFで6回洗浄した。Fmoc-4-Hyp(tBu)-OH(GLS 21303;GL Biochem、Shanghai,China)および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU、2.89g;GLS 170805-00705、GL Biochem、Shanghai,China)を樹脂に加えた。DMF(150mL)を反応カラムに加え、続いてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、2.33g;Suzhou Highfine Biotech Co.Ltd、Jiangsu,China)を加えた。30分後に樹脂に呈色反応が検出され、反応が完了したことを示した。溶媒を真空濾過により除去した。
【0176】
上記のカップリングステップを反復して、残りのアミノ酸を同じ量(モルにより)でカップリングした:Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-4-Hyp(tBu)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、およびFmoc-Ala-OH。
【0177】
95%のトリフルオロ酢酸(TFA)、2.5%の水、および2.5%のトリイソプロピルシラン(Tis)からなる91.5mL(すなわち、樹脂1グラムあたり10mL)の溶解物を加えて、樹脂に結合したペプチド化合物を浸漬した。側鎖も切断中に脱保護した。切断後、固体支持体を濾過により除去し、濾液を減圧下で濃縮した。切断したペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、凍結乾燥させて、粗表題化合物を得た。
【0178】
1mgの粗生成物を1mLのアセトニトリルおよび水の混合物(1:3)中に溶解させ、P3000A HPLCポンプおよびLC3000半調製機器(調製カラムモデル:GS-120-10-C18-AP 30mm;Beijing Chuangxintongheng Science&Technology Co.,Ltd.、Beijing,China)を使用して検出した。溶出に適した勾配を計算し、11.035分にLCMSで標的ピークを検出した(分析カラムモデル:GS-120-5-C18-BIO、4.6×250mm、検出:220nmのUV、溶媒A:MeCN中の0.1%のTFA、溶媒A:水中の0.1%のTFA、流量1.0mL/分、体積:10μL)。
【0179】
粗化合物を、陰イオン交換樹脂を使用して脱塩し、分析し、凍結乾燥させた。精製後、精製ペプチドを得た。
【0180】
Fmoc-Ala-OHを樹脂にカップリングした後、脱保護工程を実行してFmoc基を除去し、樹脂をDMF(200mL)で3回洗浄したことを除いて、上記の合成を繰り返した。
【0181】
DMF中の20%のピペリジン溶液(200mL)を脱保護溶液として加え、20分間反応させた。次に、樹脂を、各々次の溶媒、DMF(200mL)、DCM(200mL)、およびメタノール(200mL;Xilong Scientific Co.,Ltd.、Guangdong,China)で3回洗浄しました。樹脂を真空下で約2時間乾燥させた。
【0182】
85.0mL(すなわち、乾燥樹脂1グラムあたり10mL)の溶解物を加えて、樹脂に結合したペプチド含有化合物を浸漬した。約2時間の切断後、固体支持体を濾過により除去し、濾液を減圧下で収集した。濾液を850mL(すなわち、濾液1mlあたり10mL)のジエチルエーテル(Xilong Scientific Co.,Ltd.、Guangdong,China)で沈殿させ、沈殿物を濾過により収集した。沈殿物を約2時間真空乾燥させ、3.66gの粗表題化合物を得た。
【0183】
粗生成物を、まず、純水中の1mg/mLの試料として分析し、Shimadzu LCMS-8050システムを使用して検出した。分析カラムは、Angilent ZORBAX Eclipse SB-C18(4.6×250mm、5μmカラム、検出:220nmのUV、溶媒A:MeCN中の0.1%のTFA、溶媒B:水中の0.1%のTFA、50分で5%から90%の溶媒A濃度の線形勾配;流量1.0mL/分;試料体積:10μL)であった。
【0184】
標的ピークは、予想された分子量で、9.537分に溶出され、純度は77.256%であった。
【0185】
MS:m/z 1183.1
次に、3.6gの粗生成物を40mLの純水に溶解させ、LC3000半分取装置を使用して精製した。次に、3.6gの粗生成物を40mLの純水に溶解させ、LC3000半分取装置を使用して精製した。分取カラムモデルはDubhe-C18モデル(Hanbon Sci.&Tech.Co.,Ltd.、Jiangsu,China)(50×250mmカラム、検出:220nmのUV)であった。溶出に適したグラジエントを、LCMS検出ステップから計算した(溶媒A:MeCN中の0.1%のTFA、溶媒B:水中の0.1%のTFA、30分で5%から20%の溶媒A濃度の線形勾配;流量60.0mL/分)。画分を収集し、Shimadzu LC-20 HPLCシステムを使用して分析した(25分で5%から30%の溶媒A濃度の線形勾配を用いたことを除いた上記のカラム)。
【0186】
次に、陰イオン交換ステップのために、純度98%の画分を一緒に混合した。これは、LC3000半分取装置(分取カラムモデル:Dubhe-C18モデル(上記))を使用して達成した。画分を純水で1回希釈し、カラムに直接ロードした後、カラムを、純水中の0.37%の酢酸アンモニウムで約20分間、60mL/分の流量で洗浄し、続いて、次の勾配で溶出した(溶媒A:MeCN中の0.1%のHAc、溶媒B:水中の0.1%のHAc、30分で5%から20%の溶媒A濃度の線形勾配;流量60.0mL/分)。画分を収集し、Shimadzu LC-20 HPLCシステムを使用して分析した(カラムおよび条件は上記のとおり)。純度98%の画分を混合し、凍結乾燥させて、2.03gの精製された表題化合物を得た。
【0187】
実施例2
ラットにおけるクロトン油誘発性肛門腫脹モデル
0.5gのペプチドAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15;上記の実施例1を参照)を含むゲルを作製し、これは、次の成分:メチルセルロース(2.2g;Shandong Guangda Technology Development Co.,Ltd.、ShanDong,China)、グリセリン(11g)およびプロパンジオール11g(ともにSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd.)、ならびに純水(75.3g)からも構成された。
【0188】
メチルセルロースおよび水を一緒に混合し、均質なコロイド懸濁液が形成されるまで撹拌した。次に、ペプチド粉末、グリセリン、およびプロパンジオールを、メチルセルロース/水の混合物に加え、得られた混合物を5分間素早く撹拌して、最終生成物を得た。
【0189】
平均体重180~220gの6~8週齢のSDラットは、雌雄半半で、Changzhou Cvens Experimental Animal Co.Ltd(Changzhou,Jiangsu Province,China)から支給された。一切の実験を実施する前に、ラットを、約1週間、標準化された条件下(一定温度または22±2℃で、12時間の明暗を交互に繰り返す)で飼育し、水を含む標準的なマウス飼料を与えた。
【0190】
32匹のラットを無作為に4つの群に分け、各群8匹のラットとした。
【0191】
ラットをイソフルラン(China Pharmaceutical Group Chemical Reagents Co.,Ltd)吸入により麻酔した。75%アルコールのコットンボールを使用して、肛門周辺の皮膚を消毒した。0.16mLのクロトン油混合物(1部の蒸留水、4部のピリジン(Nanjing Chemical Reagent Co.,Ltd)、5部のエーテル(China Pharmaceutical Group Chemical Reagents Co.,Ltd)、および10部の6%クロトン油(Shanghai Yuanye Biotechnology Co.,Ltd)を綿棒にゆっくりと滴下させ、ラットの肛門に0.5cm挿入した。
【0192】
ラットを持ち上げて頭部を上向きに保ち(10秒間維持)、次に綿棒を引き抜き、クロトン油混合物を周囲の皮膚に均一に塗布した。ブランク対照群には、同体積のオリーブオイルを与えた。
【0193】
モデリングの1時間後、各群のラットを次のように処理した:
・対照群-通常の生理食塩水を付与(「対照」)
・モデル群-有効成分を含まないブランクゲルで処理(「モデル」)
・陽性対照-MaYinglong痔軟膏(MaYinglong Pharmaceutical Group Co.,Ltd.、「Mayinglong」)
・ペプチドゲル(上記のとおり、「ペプチド」)
【0194】
200μLの試験物質を1mLシリンジ(針を外した状態)で吸引した。シリンジを肛門管に挿入し、それぞれの試験物質約160mLを深さ約1.5cmまで押し込んだ。残りの薬を肛門付近の周囲の皮膚に塗布した。薬物が排出されないように、肛門周辺の皮膚を約1分間しっかりと押さえた。
【0195】
4日目の朝、薬物投与(200μL/100g)の30分後に1%エバンスブルー(EB)を尾静脈に注射した。さらに30分後、ラットを頸椎脱臼により屠殺した。
【0196】
ラットを仰臥位で解剖プレートに置き、開腹した。直腸肛門組織(長さ15mm)を単離して秤量し、組織に存在するEB色素を1mLのホルムアミドを使用して抽出した。
【0197】
すべての試料を55℃の水槽または加熱ブロックに移した。24時間のインキュベーションにより、EBを組織から抽出した。ホルムアミド/EB混合物を遠心分離して、残っている一切の組織断片をペレット化した。500μLのホルムアミドをブランクとして使用して、610nmで吸光度を測定した。
【0198】
直腸および肛門組織中のEBの含量を、組織1mgあたりの溢出したEBの量(ng単位)を使用して計算し、血管透過性を評価した。結果を図1に示し、これは、試験ペプチドがクロトン油の塗布によって引き起こされる炎症性腫脹を軽減し得ることを示す。
【0199】
実施例3
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)
関連アミノ酸カップリングステップにおいてFmoc-DOPA(アセトニド)-OHをFmoc-Tyr(tBu)-OHの代わりに使用したことを除き、上の実施例1に記載の後者と本質的に同じプロセスを使用して、表題化合物を調製し、3.73gの粗表題化合物を得た。
【0200】
分析により、標的ピークは、予想された分子量で9.297分に溶出されたことが示された(MS:m/z 1199.1)。純度は74.493%であった。
【0201】
次に、3.7gの粗生成物を上の実施例1に記載のように精製して、凍結乾燥後に2.01gの純表題化合物を得た。
【0202】
実施例4
3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号29)
3,4-ジヒドロキシヒドロ桂皮酸との最終カップリングを行ったことを除き、上の実施例1に記載の後者と本質的に同じプロセスを使用して、表題化合物を調製し、4.05gの粗表題化合物を得た。
【0203】
分析により、標的ピークは、予想された分子量で9.716分に溶出されたことが示された(MS:m/z 1347.1)。純度は79.183%であった。
【0204】
次に、4.0gの粗生成物を上の実施例1に記載のように精製して、凍結乾燥後に2.67gの純表題化合物を得た。
【0205】
実施例5
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号34)
関連アミノ酸カップリングステップにおいてFmoc-DOPA(アセトニド)-OHおよびFmoc-4-Hyp(tBu)-OHをそれぞれFmoc-Tyr(tBu)-OHおよびFmoc-Pro-OHの代わりに使用したことを除き、上の実施例1に記載の後者と本質的に同じプロセスを使用して、表題化合物を調製し、3.79gの粗表題化合物を得た。
【0206】
分析により、標的ピークは、予想された分子量で9.177分に溶出されたことが示された(MS:m/z 1215.7)。純度は75.365%であった。
【0207】
次に、3.7gの粗生成物を上の実施例1に記載のように精製して、凍結乾燥後に2.09gの純表題化合物を得た。
【0208】
実施例6
他のペプチドの合成
適切なアミノ酸を適切なペプチドカップリング配列で使用したことを除き、上の実施例1に記載のプロセスと本質的に同じプロセスに従って、次のペプチドを合成した:
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4、MS:m/z 1241.3)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5、MS:m/z 1225.3)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6、MS:m/z 1128.2)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7、MS:m/z 1112.2)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8、MS:m/z 1215.3)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9、MS:m/z 1199.3)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10、MS:m/z 1215.3)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11、MS:m/z 1199.3)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12、MS:m/z 1312.4)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13、MS:m/z 1296.4)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16、MS:m/z 1113.1)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号17、MS:m/z 1097.1)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号18、MS:m/z 1000)、
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号19、MS:m/z 984)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA(配列番号20、MS:m/z 1087.1)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号21、MS:m/z 1071.1)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号22、MS:m/z 1087.1)、
Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号23、MS:m/z 1071.1)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号24、MS:m/z 1184.2)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号25、MS:m/z 1168.2)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号26、MS:m/z 1071.1)、
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号27、MS:m/z 1055.1)、および
Ala-Lys-Pro-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号30、MS:m/z 1215.3)。
【0209】
適切なアミノ酸を適切なペプチドカップリング配列で使用したことを除き、上の実施例1に記載のプロセスと本質的に同じプロセスに従って、次のペプチドを合成する:
3,4-ジヒドロ桂皮酸-Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号28)、
Ala-Lys-Hyp-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号32)、および
Ala-Lys-Hyp-Ser-DOPA-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号33)。
【0210】
実施例7
クリーム製剤I
ペプチドLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)(上の実施例6を参照)の各々を含むクリーム系製剤を、すべてSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd、Shanghai,Chinaから支給された次の賦形剤を使用して、次のとおりに作製した。
【0211】
ステアリン酸ソルビタン(0.6g)、ポリソルベート-80(1g)、シリコーン油(0.5g)、ヘキサデカノール(2g)、オクタン酸/デカン酸グリセリド(5g)、液体パラフィン(2g)、モノステアリン酸グリセリド(2g)、およびワセリン(5g)を一緒に混合し、撹拌した。混合物が完全に溶解するまで、混合物を85℃に加熱した。
【0212】
メチルセルロース(0.5g)、グリセリン(4g)、トレハロース(0.5g)、および64.97gの精製水を一緒に混合し、撹拌し、85℃に加熱して、均質なコロイド懸濁液を形成した。
【0213】
4つのペプチドの各々を30mgで1gの精製水に溶解させた。
【0214】
コポリマー/水の混合物をステアリン酸ソルビタン含有混合物に加え、続いてこれを、乳化装置を使用して5分間素早く撹拌した。得られたエマルションを55℃に冷却した後、ポリエチレングリコール200(4g)、フェノキシアルコール(0.3g)、およびエチルヘキシルグリセリン(0.1g)を、均一な懸濁液が得られるまで常に撹拌しながら、混合物に加えた。続いて、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)を含有する溶液を混ぜ入れた。
【0215】
得られた混合物を室温に冷却させて、最終生成物を得た。
【0216】
この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。さらに、上記の手順と本質的に同じ手順を用いて、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)(上の実施例6を参照)の各々を100mg含有するクリーム系製剤を作製した。
【0217】
実施例8
クリーム製剤II
ペプチドAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)(上の実施例6を参照)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)(上の実施例3を参照)、およびAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)(上の実施例1を参照)の各々を含むクリーム系製剤を、別途指定のない限り、すべてSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd、Shanghai,Chinaから支給された次の賦形剤を使用して、次のとおりに作製した。
【0218】
ステアリン酸(2g)、モノステアリン酸グリセリル(2g)、およびヘキサデカノール(2g)を一緒に混合し、撹拌した。混合物が完全に溶解するまで、混合物を85℃に加熱した。
【0219】
アクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム/VPコポリマー(0.13g;Clariant Chemical Co.,Ltd.、Guangzhou,China)、精製水(87.02g)、および水酸化ナトリウム(0.25g)を85℃で一緒に混合し、撹拌して、均質なコロイド懸濁液を形成させた。次に、グリセリン(5g)、フェノキシエタノール(0.3g)、およびエチルヘキシルグリセリン0.1g(後の2つの試薬はともにShanghai Rayson Chemicals Co.,Ltd.、Shanghai,China)を、常に撹拌しながら混合物に加えた。
【0220】
4つのペプチドの各々を200mgで1gの精製水に溶解させた。
【0221】
コポリマー/水の混合物およびステアリン酸ソルビタン含有混合物を、上の実施例7に記載のように組み合わせた。得られたエマルションを55℃に冷却した後、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)を含有する溶液を混ぜ入れた。室温に冷却すると、最終生成物が得られた。
【0222】
この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。
【0223】
実施例9
ローション製剤
ペプチドLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)(上の実施例6を参照)の各々を100mg含むボディローションを、すべてSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd、Shanghai,Chinaから支給された次の賦形剤を使用して、次のとおりに作製した。
【0224】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC;化粧品グレード、0.1g)ヒドロキシエチルセルロース(化粧品グレード、0.1g)、グルコース、フェノキシアルコール(0.5g)、および精製水(93.2g)を一緒に混合し、均質なコロイド懸濁液が得られるまで、常に撹拌しながら85℃に加熱した。混合物を室温に冷却した。
【0225】
8つのペプチドの各々を100mgで1gの精製水に溶解させた。Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)を含有する溶液をコロイド懸濁液に加え、結果物が最終生成物として均一に混合されるまで、一緒に混合した。
【0226】
この手順を他の7つのペプチドに対して繰り返した。さらに、上記の手順と本質的に同じ手順を用いて、ペプチドAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)(上の実施例6を参照)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)(上の実施例3を参照)、およびAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)(上の実施例1を参照)の各々を10mg含むクリーム系製剤を作製した。
【0227】
実施例10
ゲル製剤I
ペプチドLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)(上の実施例6を参照)の各々を含むゲル系製剤を、HPMC(1g)、ヒドロキシエチルセルロース(1g)、グルコース(5g)、フェノキシアルコール(0.5g)、および精製水(91.45g)を一緒に混合し、常に撹拌しながら85℃に加熱した後、1gの精製水中50mgのLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)の溶液を加えたことを除き、実施例9に記載の方法と本質的に同じ方法で調製した。
【0228】
完全に混合すると最終生成物が得られ、この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。
【0229】
実施例11
ゲル製剤II
ペプチドSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)(上の実施例6を参照)の各々を含むゲル系製剤を、上の実施例10に記載のプロセスと類似のプロセスを使用したが、すべてSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd,Shanghai,Chinaから支給された次の賦形剤を使用して調製した。
【0230】
メチルセルロース(化粧品グレード、2.2g)、グリセロール(11g)、プロパンジオール(11g)、および精製水(74.75g)を一緒に混合し、10時間撹拌して、均質なコロイド懸濁液を得た。
【0231】
1gの精製水に予め溶解させた50mgのSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)を混合しながら加えて、均一な最終生成物を得た。
【0232】
この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。
【0233】
1gのカルボマー(Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd)をメチルセルロースの代わりに使用し、5gのグリセロールを82.85gの精製水とともに使用したことを除き、本質的に同じ手順を用いて、ペプチドAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)(上の実施例6を参照)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)(上の実施例3を参照)、およびAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)(上の実施例1を参照)の各々を150mg含むゲル製剤を作製した。
【0234】
実施例11
ゲル製剤III
ペプチドLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)(上の実施例6を参照)に基づくスキンケア用ゲル系組成物を作製した。
【0235】
まず、ヒアルロン酸ナトリウム(0.2g;Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd)を精製水(98.75g)中で24時間膨潤させた。
【0236】
1gの精製水に予め溶解させた50mgのLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)をヒアルロン酸ナトリウムゲルに加え、十分に混合して、最終生成物を得た。この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。
【0237】
今回は0.1gのヒアルロン酸ナトリウムを94.88gの精製水に加えた後、各場合において、各々1gの精製水中の各ペプチドを20mg含む個々に事前調製した溶液を、ブタンジオール(2g)およびペンタンジオール(2g)(ともにSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd)とともに混合しながら加えて、最終生成物を得たことを除き、本質的に同じ手順を用いて、ペプチドSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)(上の実施例6を参照)の各々を20mg含むゲル製剤を作製した。
【0238】
同様に、ゲル製剤を、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)(上の実施例6を参照)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)(上の実施例3を参照)、およびAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)(上の実施例1を参照)、ならびにLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号17)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号18)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号19)(上の実施例6を参照)から作製し、各場合において、96.4g(最初の4つのペプチド)または96.5g(最後の4つのペプチド)の精製水中の0.4gのヒアルロン酸ナトリウムを使用し、2gのブタンジオール(単体)を、各々1gの精製水に溶解させた最初の4つのペプチドの各々200mg、最後の4つの各ペプチド100mgを含む個々に事前調製した溶液とともに加えて、8つの別個のゲル生成物を作製した。
【0239】
実施例12
スキントニック
次の量の次のペプチドの各々を指定量の精製水に溶解させることにより、スキントニックを作製した。
(a)Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号4)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号5)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号6)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号7)(上の実施例6を参照)、99.98g中各ペプチド20mg
(b)Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Lys(配列番号8)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Lys(配列番号9)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号10)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号11)(上の実施例6を参照)、99.9g中各ペプチド100mg
(c)Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号12)およびAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号13)(上の実施例6を参照)、99.99g中各ペプチド10mg
(d)Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)(上の実施例3を参照)、99.99g中10mg
(e)Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp-Lys(配列番号15)(上の実施例1を参照)、99.99g中10mg
(f)Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号17)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号18)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号19)(上の実施例6を参照)、99.9g中各ペプチド100mg
(g)Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA(配列番号20)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号21)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号22)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号23)(上の実施例6を参照)、99.96g中各ペプチド40mg
(h)Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号24)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号25)、Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号26)、およびAla-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号27)(上の実施例6を参照)、99.94g中各ペプチド60mg
【0240】
各場合において、適切な防腐剤および/または保湿剤をスキントニックに加えて、皮膚の感触をより良好にしてもよい。
【0241】
実施例13
保湿スプレー
ペプチドLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号17)、Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号18)、およびLys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号19)(上の実施例6を参照)に基づく保湿スプレーを、すべてSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd、Shanghai,Chinaから支給された次の賦形剤を使用して、次の方法で作製した。
【0242】
最初の10mgの各ペプチドを1gの精製水に溶解させて、4つのペプチドスキントニックを得た。次に、EDTA二ナトリウム(0.02g)、ブタンジオール(1.5g)、アルギニン(0.02g)、ヘキサンジオール(0.5g)、および精製水(96.95g)を一緒に混合した。
【0243】
Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号16)を含むペプチド溶液を得られた溶液に加えて、最終生成物を得た。この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。
【0244】
実施例14
エッセンス
ペプチドSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA(配列番号20)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-Tyr(配列番号21)、Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp(配列番号22)、およびSer-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-Tyr-Hyp(配列番号23)(上の実施例6を参照)に基づくエッセンスを、すべてSinopharm Chemical Reagent Co.Ltd、Shanghai,Chinaから支給された次の賦形剤を使用して、次の方法で作製した。
【0245】
ヒアルロン酸ナトリウム(0.5g)およびカルボマー(0.04g)を98.36gの精製水に加えた。24時間後、膨潤したゲルが得られた。
【0246】
4つのペプチドの各々(100mg)を1gの精製水に溶解させた。Ser-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Hyp-Thr-DOPA(配列番号20)を含む得られた溶液を、ヒアルロン酸ナトリウム/カルボマー混合物に加えた。完全に混合することで、最終生成物を得た。
【0247】
この手順を他の3つのペプチドに対して繰り返した。
【0248】
実施例15
ペプチド糊としての合成ペプチド
Ala-Lys-Pro-Ser-Tyr-Hyp-Thr-DOPA-Hyp-Lys(配列番号14)(上記の実施例3を参照)を、まず、pH2~8で純水(ならびに酢酸緩衝液を含む水溶液およびリン酸緩衝液)に溶解させた。
【0249】
様々なペプチド混合物を、100~800mg/gの濃度で調製した。ペプチドが完全に溶解した後、透明な溶液を接着剤として使用した。
図1
【配列表】
2022547700000001.app
【国際調査報告】