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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】射出成形ステッピングモーター
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
H02K1/18 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516274
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2021073271
(87)【国際公開番号】W WO2021208554
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】202010290862.8
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517010286
【氏名又は名称】上海鳴志電器股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Moons’Electric Co.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.168,Mingjia Road,Minhang District Shanghai 201107 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】彭 光明
(72)【発明者】
【氏名】伍 旺賢
(72)【発明者】
【氏名】甘 建軍
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601AA25
5H601CC01
5H601CC16
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD19
5H601EE12
5H601EE19
5H601FF03
5H601GA03
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GC03
5H601GC12
5H601HH01
5H601HH04
5H601JJ04
5H601JJ06
5H601KK08
5H601KK26
(57)【要約】
本発明に係る射出成形ステッピングモーターは、射出成形固定子アセンブリおよび回転子アセンブリを含み、射出成形固定子アセンブリは、固定子鉄心と、前部フレームと、後部フレームと、固定子巻線と、前部内張りリングと、後部内張りリングと、取り付けブラケットと、を有し、固定子巻線は、前部フレームおよび後部フレームの挿入された固定子鉄心の溝に巻きつけられ、前部内張りリングおよび後部内張りリングは固定子鉄心の両側に取り付けられ、固定子鉄心は取り付けブラケットに固定され、前部内張りリングおよび後部内張りリングはともに、内径の異なる薄板を打ち抜いてから積層した構造を有する。従来技術に比べ、本発明によれば、モーターの軸方向の磁気漏れを低減でき、モーターのモーメントを向上できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形固定子アセンブリ(1)および回転子アセンブリを含み、前記射出成形固定子アセンブリ(1)は、固定子鉄心(2)と、前部フレーム(3)と、後部フレーム(4)と、固定子巻線(5)と、前部内張りリング(6)と、後部内張りリング(7)と、取り付けブラケット(8)と、を有し、
前記固定子巻線(5)は、前記前部フレームおよび前記後部フレームの挿入された前記固定子鉄心の溝に巻きつけられ、前記前部内張りリング(6)および前記後部内張りリング(7)は前記固定子鉄心(2)の両側に取り付けられ、前記固定子鉄心(2)は前記取り付けブラケット(8)に固定され、前記前部内張りリング(6)および前記後部内張りリング(7)はともに、内径の異なる薄板を打ち抜いてから積層した構造を有する、射出成形ステッピングモーター。
【請求項2】
前記薄板は、内径が異なる第1薄板(12)と第2薄板(13)とを含み、前記第1薄板(12)および前記第2薄板(13)は積層されて、回転子の脱落を防止するためのスナップリング配置用溝(14)を形成している、ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項3】
前記第1薄板(12)および前記第2薄板(13)は、ともにステンレス鋼製の薄板である、ことを特徴とする請求項2に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項4】
前記薄板は、第3薄板(16)、第4薄板(17)および第5薄板(18)を含み、前記第3薄板(16)および前記第5薄板(18)は内径が同じであり、前記第4薄板(17)の内径は前記第3薄板(16)の内径より大きく、前記第5薄板(18)は前記固定子鉄心(2)に最も近い側に設けられ、前記第3薄板(16)と前記第5薄板(18)は互いに隣接し、前記第4薄板(17)は前記第3薄板(16)の間に埋め込まれている、ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項5】
前記第5薄板(18)は非磁性材料で作られた薄板であり、前記第3薄板および前記第4薄板は鉄板である、ことを特徴とする請求項4に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項6】
前記非磁性材料は、ステンレス鋼である、ことを特徴とする請求項5に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項7】
前記第5薄板(18)の積層された厚さは1~2mmである、ことを特徴とする請求項4に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項8】
前記固定子鉄心(2)の一側には耐熱のプラスチックまたは絶縁紙(19)がさらに設けられている、ことを特徴とする請求項2または4に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項9】
前記プラスチックまたは絶縁紙(19)の厚さは0.5~2mmである、ことを特徴とする請求項8に記載の射出成形ステッピングモーター。
【請求項10】
前記前部フレーム(3)または前記後部フレーム(4)は、径方向において前記固定子鉄心(2)の歯部を覆う延伸部(21)を有するフレーム(20)である、ことを特徴とする請求項2または4に記載の射出成形ステッピングモーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモーターに関し、特に射出成形ステッピングモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来の射出成形ステッピングモーターは、射出成形固定子アセンブリ1を含む。図2に示すように、該射出成形固定子アセンブリ1は、固定子鉄心2、前部フレーム3、後部フレーム4、固定子巻線5、前部内張りリング6、後部内張りリング7および取り付けブラケット8を備え、金型射出により射出成形される。
【0003】
モーターは、モーター固定子アセンブリおよび回転子アセンブリから組み立てられ、射出成形された固定子アセンブリ1は、軸力の存在によって回転子がモーターからの脱落を防ぐために、前部および後部の内張りリングにおいて溝を加工し、溝にスナップリングを配置する。
【0004】
図3に示すように、加工後の固定子アセンブリ10には、加工された固定子の溝9が設けられている。
【0005】
従来の設計方法においては、射出成形後にスナップリングを配置するための溝を加工するため、加工の難しさおよび煩雑な工程といった問題がある。また、従来の方法であれば、射出成形する際、前部および後部の内張りリングと固定子鉄心とが直接接触しているため、前部および後部の内張りリングが透磁性材料で作られた場合、モーターにはソケットの接続の存在による磁気漏れを招き、モーターのモーメントが低下されてしまう。なお、非磁性材料により前部および後部の内張りリングを作る場合、内張りリングのコストはモーターのコスト高につながってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に存在する問題点に鑑みてなされたものであり、射出成形ステッピングモーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る射出成形ステッピングモーターは、射出成形固定子アセンブリおよび回転子アセンブリを含み、前記射出成形固定子アセンブリは、固定子鉄心と、前部フレームと、後部フレームと、固定子巻線と、前部内張りリングと、後部内張りリングと、取り付けブラケットと、を有し、
前記固定子巻線は、前記前部フレームおよび前記後部フレームの挿入された前記固定子鉄心の溝に巻きつけられ、前記前部内張りリングおよび前記後部内張りリングは前記固定子鉄心の両側に取り付けられ、前記固定子鉄心は前記取り付けブラケットに固定され、前記前部内張りリングおよび前記後部内張りリングはともに、内径の異なる薄板を打ち抜いてから積層した構造を有する。
【0008】
好ましくは、前記薄板は、内径が異なる第1薄板と第2薄板とを含み、前記第1薄板および前記第2薄板は積層されて、回転子の脱落を防止するためのスナップリング配置用溝を形成している。
【0009】
好ましくは、前記第1薄板および前記第2薄板は、ともにステンレス鋼製の薄板である。
【0010】
好ましくは、前記薄板は、第3薄板、第4薄板および第5薄板を含み、前記第3薄板および前記第5薄板は内径が同じであり、前記第4薄板の内径は前記第3薄板の内径より大きく、前記第5薄板は前記固定子鉄心に最も近い側に設けられ、前記第3薄板と前記第5薄板は互いに隣接し、前記第4薄板は前記第3薄板の間に埋め込まれている。
【0011】
好ましくは、前記第5薄板は非磁性材料で作られた薄板であり、前記第3薄板および前記第4薄板は鉄板である。
【0012】
好ましくは、前記非磁性材料は、ステンレス鋼である。
【0013】
好ましくは、前記第5薄板の積層された厚さは1~2mmである。
【0014】
好ましくは、前記固定子鉄心の一側には耐熱のプラスチックまたは絶縁紙がさらに設けられている。
【0015】
好ましくは、前記プラスチックまたは絶縁紙の厚さは0.5~2mmである。
【0016】
好ましくは、前記前部フレームまたは前記後部フレームは、径方向において前記固定子鉄心の歯部を覆う延伸部を有するフレームである。
【発明の効果】
【0017】
従来技術に比べ、本発明は以下の利点を有する。
(1)異なる内径の薄板を積層することにより、射出成形後に溝を加工することが避けられ、これによってモーターの軸方向の磁気漏れを低減でき、モーターのモーメントを向上できる。
(2)モーターの内張りリングにおいて非磁性材料を使用することを減らすため、モーターのコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】従来の射出成形ステッピングモーターの射出成形固定子アセンブリの構造を示す図である。
図2】従来の射出成形ステッピングモーターの射出成形固定子アセンブリの構造の分解図である。
図3】従来の射出成形ステッピングモーターにおける加工後の射出成形固定子アセンブリの構造を示す図である。
図4a】実施例1に係る内張りリングの立体構造を示す図である。
図4b】実施例1に係る内張りリングの正面構造を示す図である。
図4c図4bに示されるA-A方向の断面図である。
図5図4cの部分拡大図である。
図6】実施例1に係る組み立て後の射出成形固定子アセンブリの構造を示す図である。
図7a】実施例2に係る内張りリングの立体構造を示す図である。
図7b】実施例2に係る内張りリングの正面構造を示す図である。
図7c図7bに示されるA-A方向の断面図である。
図8図7cの部分拡大図である。
図9】実施例2に係る組み立て後の射出成形固定子アセンブリの構造を示す図である。
図10】実施例3に係る射出成形固定子アセンブリの構造を示す図である。
図11】実施例4に係るフレームの構造を示す図である。
図12a】実施例4に係るフレームの正面構造を示す図である。
図12b】実施例4に係るフレームの立体構造を示す図である。
図13】実施例4に係る固定子鉄心、フレームおよび鋼製スリーブの組立図である。
図14】実施例4に係る組み立て後の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例における図面に合わせ、本発明の実施例における技術的解決手段を明瞭且つ完全に説明する。当然ながら、説明される実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労働を付していない前提で取得した全てのその他の実施例は、何れも本発明の保護範囲に属する。
【0020】
<実施例1>
図4~6に示すように、本発明に係る射出成形ステッピングモーターは、射出成形固定子アセンブリ1および回転子アセンブリを含み、射出成形固定子アセンブリ1は、固定子鉄心2と、前部フレーム3と、後部フレーム4と、固定子巻線5と、前部内張りリング6と、後部内張りリング7と、取り付けブラケット8と、を有し、固定子巻線5は、前部フレームおよび後部フレームの挿入された固定子鉄心の溝に巻きつけられ、前部内張りリング6および後部内張りリング7は固定子鉄心2の両側に取り付けられ、固定子鉄心2は取り付けブラケット8に固定され、前部内張りリング6および後部内張りリング7はともに、内径の異なる薄板を打ち抜いてから積層した構造を有する。
【0021】
上記薄板は、内径が異なる第1薄板12と第2薄板13とを含み、第1薄板12および第2薄板13は積層されて、回転子の脱落を防止するためのスナップリングを配置するためのスナップリング配置用溝14を形成している。モーターの磁気漏れを防止し、モーターの強度を向上させるため、打ち抜きに用いられるモーターの前部内張りリングおよび後部内張りリングの材料は、ステンレス鋼を選択する。
【0022】
<実施例2>
図7~8に示すように、設計される前部内張りリングおよび後部内張りリングは、同様に薄板を打ち抜いてから積層して構成される。薄板は、第3薄板16、第4薄板17および第5薄板18を含み、第3薄板16および第5薄板18は内径が同じであり、第4薄板17の内径は第3薄板16の内径より大きく、第5薄板18は固定子鉄心2に最も近い側に設けられ、第3薄板16と第5薄板18は互いに隣接し、第4薄板17は第3薄板16の間に埋め込まれている。
【0023】
好ましくは、第5薄板18は、非磁性材料で製作され、第3薄板16および第4薄板17は、鉄板である。第5薄板18の積層された厚さは、1~2mmであり、第2鋼製スリーブを取り付ける際、非磁性材料18側は固定子の内側に取り付けられ、モーターの固定子鉄心と接触する。
内張りリングの取り付け位置は、図9に示されるとおりである。
【0024】
<実施例3>
図10に示すように、前部内張りリングおよび後部内張りリングは、実施例1または実施例2に係る内張りリングを採用するが、射出成形固定子アセンブリにおける固定子鉄心の一側に耐熱のプラスチックまたは絶縁紙19をさらに設ける。プラスチックまたは絶縁紙19の厚さは、0.5~2mmである。
【0025】
図11には、新規フレーム20が示され、該フレームは、径方向において固定子鉄心の歯を覆う延伸部21を有する。
【0026】
固定子鉄心(巻線は図示せず)およびフレームの組立図は、図12に示され、フレームの径方向の延伸部はモーターの固定子鉄心の歯部22を覆っている。
【0027】
固定子鉄心(巻線は図示せず)、フレームおよび鋼製スリーブの組立図は、図13に示され、実施例1または実施例2に係る内張りリング24を採用している。図13に示されるように、内部溝23を有し、射出成形固定子アセンブリ25は図14に示されるとおりである。
【0028】
上記は本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、如何なる当該技術分野に詳しい技術者であれば、本発明に開示された技術範囲内で、様々な等価の補正または置換を容易に想到でき、これらの補正または置換は何れも本発明の保護範囲に属すべきである。そのため、本発明の保護範囲は請求項の保護範囲に準ずるべきである。
【符号の説明】
【0029】
1 射出成形固定子アセンブリ、
2 固定子鉄心、
3 前部フレーム、
4 後部フレーム、
5 固定子巻線、
6 前部内張りリング、
7 後部内張りリング、
8 取り付けブラケット、
9 加工された固定子の溝、
10 加工された固定子アセンブリ、
11 第1鋼製スリーブ、
12 第1薄板、
13 第2薄板、
14 スナップリング配置用溝、
15 第2鋼製スリーブ、
16 第3薄板、
17 第4薄板、
18 第5薄板、
19 プラスチックまたは絶縁紙、
20 新規フレーム、
21 延伸部、
22 固定子鉄心の歯部、
23 内部溝、
24 実施例4に係る内張りリング、
25 実施例4に係る射出成形固定子アセンブリ。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12a
図12b
図13
図14
【国際調査報告】