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特表2022-547735乳房がんの分子特徴付けに基づく処置の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】乳房がんの分子特徴付けに基づく処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20221108BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/4535 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/085 20060101ALI20221108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/567 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/4355 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/5685 20060101ALI20221108BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20221108BHJP
   G16H 50/50 20180101ALI20221108BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALN20221108BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20221108BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/496
A61K31/4535
A61K31/55
A61K31/138
A61K31/085
A61P35/00
A61K31/567
A61K31/4196
A61K31/4355
A61K31/5685
A61K31/436
G16H50/50
C12Q1/6837 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517211
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 US2020051130
(87)【国際公開番号】W WO2021055517
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/901,175
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】カーティス, クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】セオアネ フェルナンデス, ホセ ア.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C086
4C206
5L099
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR55
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA20
4C084ZB26
4C084ZC20
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC31
4C086BC50
4C086BC60
4C086CB05
4C086CB22
4C086DA09
4C086GA04
4C086GA07
4C086GA12
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA27
4C206FA23
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA20
4C206ZB26
5L099AA04
(57)【要約】
乳房がんの分子プロファイルに基づく、リスクの層別化および処置の方法が提供される。種々のゲノム遺伝子座のコピー数逸脱および種々の遺伝子の発現レベルは、患者を分子的にサブタイピングするため、ならびに一部の例では、乳房がんの悪性度および再燃のリスクを決定するために、使用される。再燃の関連するリスクと共に特定の分子サブタイプを有する乳房がんは、層別化され得、治療的に標的化され得る。本発明は一般に、個体の乳房がんの分子特徴付けに基づく診断および処置の方法を対象にし、より具体的には、乳房がんの悪性度、再燃リスクまたは分子サブタイプを示す分子診断法に基づく処置を対象にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳房がんを有する個体を処置するための方法であって、
リスク層別化モデルを利用して、個体の乳房がんを、高リスクの再発のサブグループに層別化するまたは層別化しているステップであって、
前記リスク層別化モデルが、分子病理学によって記述される統合サブタイプクラスターに由来する特色を組み込む統計モデルである、ステップ;および
化学療法、内分泌療法、標的化療法または医療専門家の監視のうち少なくとも1つを含む長期にわたる処置レジメンを施すことによって前記個体を処置して、再発のリスクを低減させる、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記リスク層別化モデルが、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法またはニューラルネットワークのうち1つを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
統合されたサブタイプクラスター特色が、所与のクラスターへのメンバーシップまたは所与のクラスターへのメンバーシップの事後確率である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記統合サブタイプクラスターが、分子データを特色として組み込むIntClust分類モデルによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分子データが、マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanostring nCounter、コピー数推論のためのNanostring nCounter、タンパク質のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、in situにおけるタンパク質遺伝子発現のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイまたはATAC-seqのうち少なくとも1つによって得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分子データが、遺伝子パネルを利用して導出される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子パネルが、Foundation Medicine CDx、Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)またはUCSF500 Cancer Gene Panelのうち1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記リスク層別化モデルが、臨床データ、例えば、年齢、がんステージ、腫瘍陽性リンパ節の数、腫瘍のサイズ、腫瘍のグレード、実施された手術、実施された処置、または基本的分子正体のうち少なくとも1つを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記リスク層別化モデルが、CTS5アルゴリズムを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記リスク層別化モデルが、Oncotype DX、Prosigna PAM50、Prosigna ROR、MammaPrint、EndoPredictまたはBreast Cancer Index(BC)のうち1つを組み込む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記長期にわたる処置レジメンが、アジュバント化学療法を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記長期にわたる処置レジメンが、処置の標準的な過程を超えた処置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
乳房がんを有する個体を処置するための方法であって、
リスク層別化モデルを利用して、個体の乳房がんをより低いリスクの再発のサブグループに層別化するまたは層別化しているステップであって、
前記リスク層別化モデルが、分子病理学によって記述される統合サブタイプクラスターに由来する特色を組み込む統計モデルである、ステップ;および
手術または内分泌療法を含むが化学療法は含まない処置レジメンを施すことによって前記個体を処置して、化学療法の有害な影響を低減させるステップ
を含む、方法。
【請求項14】
前記リスク層別化モデルが、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法またはニューラルネットワークのうち1つを利用する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
統合されたサブタイプクラスター特色が、所与のクラスターへのメンバーシップまたは所与のクラスターへのメンバーシップの事後確率である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記統合サブタイプクラスターが、分子データを特色として組み込むIntClust分類モデルによって決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記分子データが、マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanostring nCounter、コピー数推論のためのNanostring nCounter、タンパク質のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、in situにおけるタンパク質遺伝子発現のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイまたはATAC-seqのうち少なくとも1つによって得られる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分子データが、遺伝子パネルを利用して導出される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子パネルが、Foundation Medicine CDx、Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)またはUCSF500 Cancer Gene Panelのうち1つである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記リスク層別化モデルが、臨床データ、例えば、年齢、がんステージ、腫瘍陽性リンパ節の数、腫瘍のサイズ、腫瘍のグレード、実施された手術、実施された処置、または基本的分子正体のうち少なくとも1つを利用する、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記リスク層別化モデルが、CTS5アルゴリズムを利用する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記リスク層別化モデルが、Oncotype DX、Prosigna PAM50、Prosigna ROR、MammaPrint、EndoPredictまたはBreast Cancer Index(BC)のうち1つを組み込む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記処置レジメンが、アジュバント内分泌療法を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
乳房がんを有する個体を処置するための方法であって、
個体の乳房がんを、統合されたクラスター(IntClust)サブグループに分類したアッセイの結果を、決定するまたは決定しているステップであって、前記結果が、前記乳房がんがIntClust1、IntClust2、IntClust6またはIntClust9のうち1つに分類されることを示す、ステップ、および
前記個体を、化学療法、内分泌療法、標的化療法および医療専門家の監視のうち少なくとも1つを含む長期にわたる処置レジメンで処置するステップ
を含む、方法。
【請求項25】
前記個体の乳房がんの前記分類が、分子クラス予測ツールを利用して実施される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記分子クラス予測ツールが、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記分子クラス予測ツールが、分子データを特色として組み込む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記分子データ特色が、前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色または占有率特色である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記分子データが、マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanostring nCounter、コピー数推論のためのNanostring nCounter、タンパク質のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、in situにおけるタンパク質遺伝子発現のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイまたはATAC-seqによって得られる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記分子データが、遺伝子パネルを利用して導出される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記遺伝子パネルが、Foundation Medicine CDx、Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)またはUCSF500 Cancer Gene Panelである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記個体の前記乳房がんに、アジュバント化学療法が施される、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記個体の前記乳房がんに、延長された内分泌療法が施される、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記内分泌療法が、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的エストロゲン受容体分解剤、アロマターゼ阻害剤またはPROTAC ARV-471を投与することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記選択的エストロゲン受容体モジュレーターが、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、オスペミフェンまたはバゼドキシフェンである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記選択的エストロゲン受容体分解剤が、フルベストラント、ブリラネストラント(GDC-0810)、エラセストラント、GDC-9545、SAR439859(SERD ’859)、RG6171またはAZD9833である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記アロマターゼ阻害剤が、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタンまたはファドロゾールである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記乳房がんが、IntClust1に分類され、前記個体に、mTOR経路アンタゴニスト、AKT1アンタゴニスト、AKT1/RPS6KB1アンタゴニスト、RPS6KB1アンタゴニスト、PI3Kアンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項39】
前記乳房がんが、IntClust2に分類され、前記個体に、CDK4/6アンタゴニスト、FGFR経路アンタゴニスト、PARPアンタゴニスト、相同組換え欠損(HRD)標的化療法、PAK1アンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記乳房がんが、IntClust6に分類され、前記個体に、FGFR経路アンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
前記乳房がんが、IntClust9に分類され、前記個体に、選択的エストロゲン受容体分解剤、SRC3アンタゴニスト、MYCアンタゴニスト、BETブロモドメインアンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、mTOR経路を示す、ステップ;
前記個体にmTORアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項43】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記mTORアンタゴニストが、エベロリムス、テムシロリムス、シロリムスまたはラパマイシンである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、AKT1を示す、ステップ;
前記個体にAKT1アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項46】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記AKT1アンタゴニストが、イパタセルチブまたはカピバセルチブ(AZD5363)である、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、AKT1/RPS6KB1を示す、ステップ;
前記個体にAKT1/RPS6KB1アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項49】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記AKT1/RPS6KB1アンタゴニストがM2698である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、RPS6KB1を示す、ステップ;
前記個体にRPS6KB1アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項52】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記RPS6KB1アンタゴニストがLY2584702である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、PI3Kを示す、ステップ;
前記個体にPI3Kアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項55】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記PI3Kアンタゴニストが、アルペリシブ、ブパリシブ(BKM120)またはピクチリシブ(GDC-0941)である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、CDK4/6を示す、ステップ;
前記個体にCDK4/6アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項58】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記CDK4/6アンタゴニストが、パルボシクリブ、リボシクリブまたはアベマシクリブである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、FGFR経路を示す、ステップ;
前記個体にFGFR経路アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項61】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記FGFR経路アンタゴニストが、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877またはポナチニブである、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、SRC3を示す、ステップ;
前記個体にSRC3アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項64】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記SRC3アンタゴニストがSI-2である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、MYCを示す、ステップ;
前記個体にMYCアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項67】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記MYCアンタゴニストがomomycである、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、BETブロモドメインを示す、ステップ;
前記個体にBETブロモドメインアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項70】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記BETブロモドメインアンタゴニストが、JQ1またはPROTAC ARV-771である、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、eIF4Aを示す、ステップ;
前記個体にeIF4Aアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項73】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記eIF4Aアンタゴニストがゾタチフィンである、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、eIF4Eを示す、ステップ;
前記個体にeIF4Eアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項76】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記eIF4Eアンタゴニストが、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリンまたはAZD8055である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、PARPを示す、ステップ;
前記個体にPARPアンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項79】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記PARPアンタゴニストが、ニラパリブまたはオラパリブである、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
乳房がんを有する個体を処置する方法であって、
個体のがんの発癌病理学を分類するまたは分類しているステップであって、前記発癌病理学が、PAK1を示す、ステップ;
前記個体にPAK1アンタゴニストを投与するステップ
を含む、方法。
【請求項82】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記PAK1アンタゴニストがIPA3である、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
乳房がん患者由来のオルガノイドを利用して薬物化合物を評価するための方法であって、
1人または複数の患者からがん細胞を抽出するステップ;
各患者のがんの発癌病理学を、分子病理学サブグループに分類するステップ;
前記抽出されたがん細胞を利用して、患者由来のオルガノイド系のパネルを発生させるステップであって、前記パネルの各患者由来のオルガノイド系が、同じ分子病理学サブグループ内にある、ステップ;および
複数の薬物化合物を患者由来のオルガノイド系の前記パネルに投与して、各薬物化合物の毒性を評価するステップ
を含む、方法。
【請求項85】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記患者の乳房がんまたは前記患者由来のオルガノイド系のDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記分子病理学サブグループが、統合されたクラスターサブグループである、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
化合物濃度が評価される、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
健康な細胞に対する化合物毒性が評価される、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
乳房がん患者由来のオルガノイドを利用して、個別化された処置のために薬物化合物を評価するための方法であって、
患者からがん細胞を抽出するステップ;
前記患者のがんの発癌病理学を、分子病理学サブグループに分類するステップ;
前記抽出されたがん細胞を使用して、1つまたは複数の患者由来のオルガノイド系を発生させるステップ;および
複数の薬物化合物を前記1つまたは複数の患者由来のオルガノイド系に投与して、各薬物化合物の毒性を評価するステップであって、投与される前記薬物化合物が、前記分子病理学サブグループに関連する候補化合物である、ステップ
を含む、方法。
【請求項90】
前記発癌病理学が、
縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワーク;および
前記患者の乳房がんまたは前記患者由来のオルガノイド系のDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色
を利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記分子病理学サブグループが、統合されたクラスターサブグループである、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
化合物濃度が評価される、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
健康な細胞に対する化合物毒性が評価される、請求項89に記載の方法。
【請求項94】
前記薬物化合物の少なくとも1つの組合せが評価される、請求項89に記載の方法。
【請求項95】
前記1つまたは複数の患者由来のオルガノイド系に対する前記薬物化合物の前記毒性に基づいて、前記複数の薬物化合物の中の薬物化合物を前記患者に投与するステップをさらに含む、請求項89に記載の方法。
【請求項96】
前記薬物化合物が、アジュバント療法として投与される、請求項95に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が本明細書により参照によって本明細書に組み込まれる、2019年9月16日出願のChristina Curtisらによる米国仮出願第62/901,175号、表題「Methods of Treatments Based Upon Molecular Characterization of Breast Cancer」に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は一般に、個体の乳房がんの分子特徴付けに基づく診断および処置の方法を対象にし、より具体的には、乳房がんの悪性度、再燃リスクまたは分子サブタイプを示す分子診断法に基づく処置を対象にする。
【背景技術】
【0003】
背景
乳房がんは、毎年140万の診断および500,000の死亡を伴う、世界中の女性における、最も高頻度のがん診断およびがんの死亡原因である。生存率は、新たな処置に起因して劇的に改善されているが、患者の相当数の少数派は、高悪性度形態のがんを患い、および/または治癒不能であり得る再燃を経験する。ほとんどのがんレジストリは、再発情報を記録しておらず、再燃の比率は不十分にしか特徴付けられていない。レトロスペクティブコホートの分析および臨床試験は、再発のパターンに関するいくらかの洞察を提供している。例えば、一部のエストロゲン受容体陽性(ER+)腫瘍は、より高い比率の骨転移を伴って、5年を経過して十分に再発し続けるが、エストロゲン受容体陰性(ER-)腫瘍は、より迅速に再発し、より高い比率の内臓転移を有する。しかし、再燃のリスクを確実に層別化するための方法は、その腫瘍分子プロファイルに基づく、高い再燃のリスクがある初期ステージ乳房がん患者またはすでに再発している初期ステージ乳房がん患者のための治療アプローチと同様、欠如している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
種々の実施形態は、その分子特徴付けに基づく、乳房がんのための処置の方法に関する。種々の実施形態では、乳房がんの分子サブタイプは、その遺伝学に基づいて決定される。種々の実施形態では、分子サブタイプは、乳房がんの悪性度および再燃のリスクを示す。種々の実施形態では、分子サブタイプは、乳房がんの分子病理学を示す。種々の実施形態では、乳房がんは、その分子サブタイプによって決定される、悪性度、再燃のリスクおよび分子ドライバーに基づいて処置される。
【0005】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体の乳房がんは、リスク層別化モデルを利用して、高リスクの再発のサブグループに層別化される。リスク層別化モデルは、分子病理学によって記述される統合サブタイプクラスターに由来する特色を組み込む統計モデルである。個体は、化学療法、内分泌療法、標的化療法または医療専門家の監視を含む長期にわたる処置レジメンを施すことによって処置されて、再発のリスクが低減される。
【0006】
別の実施形態では、リスク層別化モデルは、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法またはニューラルネットワークを利用する。
【0007】
なお別の実施形態では、統合されたサブタイプクラスター特色は、所与のクラスターへのメンバーシップまたは所与のクラスターへのメンバーシップの事後確率である。
【0008】
さらなる実施形態では、統合サブタイプクラスターは、分子データを特色として組み込むIntClust分類モデルによって決定される。
【0009】
なおさらなる実施形態では、分子データは、マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanostring nCounter、コピー数推論のためのNanostring nCounter、タンパク質のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、in situにおけるタンパク質遺伝子発現のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイまたはATAC-seqによって得られる。
【0010】
なおさらなる実施形態では、分子データは、遺伝子パネルを利用して導出される。
【0011】
なおもさらなる実施形態では、遺伝子パネルは、Foundation Medicine CDx、Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)またはUCSF500 Cancer Gene Panelのうち1つである。
【0012】
なおまたさらなる実施形態では、リスク層別化モデルは、臨床データ、例えば、年齢、がんステージ、腫瘍陽性リンパ節の数、腫瘍のサイズ、腫瘍のグレード、実施された手術、実施された処置、または基本的分子正体を利用する。
【0013】
なおまたさらなる実施形態では、リスク層別化モデルは、CTS5アルゴリズムを利用する。
【0014】
なおまたさらなる実施形態では、リスク層別化モデルは、Oncotype DX、Prosigna PAM50、Prosigna ROR、MammaPrint、EndoPredictまたはBreast Cancer Index(BC)を組み込む。
【0015】
なおまたさらなる実施形態では、長期にわたる処置レジメンは、アジュバント化学療法を含む。
【0016】
なおまたさらなる実施形態では、長期にわたる処置レジメンは、処置の標準的な過程を超えた処置を含む。
【0017】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体の乳房がんは、リスク層別化モデルを利用して、より低いリスクの再発のサブグループに層別化される。このリスク層別化モデルは、分子病理学によって記述される統合サブタイプクラスターに由来する特色を組み込む統計モデルである。個体は、手術または内分泌療法を含むが化学療法は含まない処置レジメンを施すことによって、化学療法の有害な影響を低減させるために処置される。
【0018】
別の実施形態では、リスク層別化モデルは、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法またはニューラルネットワークを利用する。
【0019】
なお別の実施形態では、統合されたサブタイプクラスター特色は、所与のクラスターへのメンバーシップまたは所与のクラスターへのメンバーシップの事後確率である。
【0020】
さらなる実施形態では、統合サブタイプクラスターは、分子データを特色として組み込むIntClust分類モデルによって決定される。
【0021】
なおまたさらなる別の実施形態では、分子データは、マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanostring nCounter、コピー数推論のためのNanostring nCounter、タンパク質のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、in situにおけるタンパク質遺伝子発現のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイまたはATAC-seqによって得られる。
【0022】
なおさらなる実施形態では、分子データは、遺伝子パネルを利用して導出される。
【0023】
なおもさらなる実施形態では、遺伝子パネルは、Foundation Medicine CDx、Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)またはUCSF500 Cancer Gene Panelのうち1つである。
【0024】
なおまたさらなる実施形態では、リスク層別化モデルは、臨床データ、例えば、年齢、がんステージ、腫瘍陽性リンパ節の数、腫瘍のサイズ、腫瘍のグレード、実施された手術、実施された処置、または基本的分子正体を利用する。
【0025】
なおまたさらなる実施形態では、リスク層別化モデルは、CTS5アルゴリズムを利用する。
【0026】
なおまたさらなる実施形態では、リスク層別化モデルは、Oncotype DX、Prosigna PAM50、Prosigna ROR、MammaPrint、EndoPredictまたはBreast Cancer Index(BC)を組み込む。
【0027】
なおまたさらなる実施形態では、処置レジメンは、アジュバント内分泌療法を含む。
【0028】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体の乳房がんを、統合されたクラスター(IntClust)サブグループに分類するアッセイの結果が決定される。これらの結果は、乳房がんがIntClust1、IntClust2、IntClust6またはIntClust9のうち1つに分類されることを示す。個体は、化学療法、内分泌療法、標的化療法および医療専門家の監視を含む長期にわたる処置レジメンで処置される。
【0029】
別の実施形態では、個体の乳房がんの分類は、分子クラス予測ツールを利用して実施される。
【0030】
さらに別の実施形態では、分子クラス予測ツールは、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する。
【0031】
さらなる実施形態では、分子クラス予測ツールは、分子データを特色として組み込む。
【0032】
なおさらに別の実施形態では、分子データ特色は、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色または占有率特色である。
【0033】
なおさらなる実施形態では、分子データは、マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanostring nCounter、コピー数推論のためのNanostring nCounter、タンパク質のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、in situにおけるタンパク質遺伝子発現のNanostringデジタル空間プロファイラー測定、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイまたはATAC-seqによって得られる。
【0034】
なおさらなる実施形態では、分子データは、遺伝子パネルを利用して導出される。
【0035】
なおもさらなる実施形態では、遺伝子パネルは、Foundation Medicine CDx、Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)またはUCSF500 Cancer Gene Panelである。
【0036】
なおまたさらなる実施形態では、個体の乳房がんに、アジュバント化学療法が施される。
【0037】
なおまたさらなる実施形態では、個体の乳房がんに、延長された内分泌療法が施される。
【0038】
なおまたさらなる実施形態では、内分泌療法は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的エストロゲン受容体分解剤、アロマターゼ阻害剤またはPROTAC ARV-471を投与することを含む。
【0039】
なおまたさらなる実施形態では、選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、オスペミフェンまたはバゼドキシフェンである。
【0040】
なおまたさらなる実施形態では、選択的エストロゲン受容体分解剤は、フルベストラント、ブリラネストラント(GDC-0810)、エラセストラント、GDC-9545、SAR439859(SERD ’859)、RG6171またはAZD9833である。
【0041】
なおまたさらなる実施形態では、アロマターゼ阻害剤は、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタンまたはファドロゾールである。
【0042】
なおまたさらなる実施形態では、乳房がんは、IntClust1に分類され、個体に、mTOR経路アンタゴニスト、AKT1アンタゴニスト、AKT1/RPS6KB1アンタゴニスト、RPS6KB1アンタゴニスト、PI3Kアンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される。
【0043】
なおまたさらなる実施形態では、乳房がんは、IntClust2に分類され、個体に、CDK4/6アンタゴニスト、FGFR経路アンタゴニスト、PARPアンタゴニスト、相同組換え欠損(HRD)標的化療法、PAK1アンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される。
【0044】
なおまたさらなる実施形態では、乳房がんは、IntClust6に分類され、個体に、FGFR経路アンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される。
【0045】
なおまたさらなる実施形態では、乳房がんは、IntClust9に分類され、個体に、選択的エストロゲン受容体分解剤、SRC3アンタゴニスト、MYCアンタゴニスト、BETブロモドメインアンタゴニスト、eIF4AアンタゴニストまたはeIF4Eアンタゴニストが投与される。
【0046】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、mTOR経路を示す。個体には、mTORアンタゴニストが投与される。
【0047】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0048】
なお別の実施形態では、mTORアンタゴニストは、エベロリムス、テムシロリムス、シロリムスまたはラパマイシンである。
【0049】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、AKT1を示す。個体には、AKT1アンタゴニストが投与される。
【0050】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0051】
なお別の実施形態では、AKT1アンタゴニストは、イパタセルチブまたはカピバセルチブ(AZD5363)である。
【0052】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、AKT1/RPS6KB1を示す。個体には、AKT1/RPS6KB1アンタゴニストが投与される。
【0053】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0054】
なお別の実施形態では、AKT1/RPS6KB1アンタゴニストはM2698である。
【0055】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、RPS6KB1を示す。個体には、RPS6KB1アンタゴニストが投与される。
【0056】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0057】
なお別の実施形態では、RPS6KB1アンタゴニストはLY2584702である。
【0058】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、PI3Kを示す。個体には、PI3Kアンタゴニストが投与される。
【0059】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0060】
なお別の実施形態では、PI3Kアンタゴニストは、アルペリシブ、ブパリシブ(BKM120)またはピクチリシブ(GDC-0941)である。
【0061】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、CDK4/6を示す。個体には、CDK4/6アンタゴニストが投与される。
【0062】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0063】
なお別の実施形態では、CDK4/6アンタゴニストは、パルボシクリブ、リボシクリブまたはアベマシクリブである。
【0064】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、FGFR経路を示す。個体には、FGFR経路アンタゴニストが投与される。
【0065】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0066】
なお別の実施形態では、FGFR経路アンタゴニストは、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877またはポナチニブである。
【0067】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、SRC3を示す。個体には、SRC3アンタゴニストが投与される。
【0068】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0069】
なお別の実施形態では、SRC3アンタゴニストはSI-2である。
【0070】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、MYCを示す。個体には、MYCアンタゴニストが投与される。
【0071】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0072】
なお別の実施形態では、MYCアンタゴニストはomomycである。
【0073】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、BETブロモドメインを示す。個体には、BETブロモドメインアンタゴニストが投与される。
【0074】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0075】
なお別の実施形態では、BETブロモドメインアンタゴニストは、JQ1またはPROTAC ARV-771である。
【0076】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、eIF4Aを示す。個体には、eIF4Aアンタゴニストが投与される。
【0077】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0078】
なお別の実施形態では、eIF4Aアンタゴニストはゾタチフィンである。
【0079】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、vを示す。個体には、eIF4Eアンタゴニストが投与される。
【0080】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0081】
なお別の実施形態では、eIF4Eアンタゴニストは、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリンまたはAZD8055である。
【0082】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、PARPを示す。個体には、PARPアンタゴニストが投与される。
【0083】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0084】
なお別の実施形態では、PARPアンタゴニストは、ニラパリブまたはオラパリブである。
【0085】
ある実施形態では、乳房がんを有する個体が処置される。個体のがんの発癌病理学が分類される。発癌病理学は、PAK1を示す。個体には、PAK1アンタゴニストが投与される。
【0086】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子予測ツールはまた、個体の乳房がんのDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0087】
なお別の実施形態では、PAK1アンタゴニストはIPA3である。
【0088】
ある実施形態では、薬物化合物は、乳房がん患者由来のオルガノイドを利用して評価される。がん細胞は、1人または複数の患者から抽出される。各患者のがんの発癌病理学は、分子病理学サブグループに分類される。患者由来のオルガノイド系のパネルは、抽出されたがん細胞を利用して発生させられる。このパネルの各患者由来のオルガノイド系は、同じ分子病理学サブグループ内にある。複数の薬物化合物が、各薬物化合物の毒性を評価するために、患者由来のオルガノイド系のパネルに投与される。
【0089】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子クラス予測ツールはまた、患者の乳房がんまたは患者由来のオルガノイド系のDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0090】
なお別の実施形態では、分子病理学サブグループは、統合されたクラスターサブグループである。
【0091】
さらなる実施形態では、化合物濃度が評価される。
【0092】
なおさらに別の実施形態では、健康な細胞に対する化合物毒性が評価される。
【0093】
ある実施形態では、薬物化合物は、乳房がん患者由来のオルガノイドを利用して、個別化された処置のために評価される。がん細胞は、患者から抽出される。患者のがんの発癌病理学は、分子病理学サブグループに分類される。1つまたは複数の患者由来のオルガノイド系は、抽出されたがん細胞を使用して発生させられる。複数の薬物化合物が、各薬物化合物の毒性を評価するために、1つまたは複数の患者由来のオルガノイド系に投与される。投与される薬物化合物は、分子病理学サブグループに関連する候補化合物である。
【0094】
別の実施形態では、発癌病理学は、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンまたはニューラルネットワークを利用する分子クラス予測ツールを利用して分類される。分子クラス予測ツールはまた、患者の乳房がんまたは患者由来のオルガノイド系のDNAまたはRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色またはヌクレオソーム占有率特色を利用する。
【0095】
なお別の実施形態では、分子病理学サブグループは、統合されたクラスターサブグループである。
【0096】
さらなる実施形態では、化合物濃度が評価される。
【0097】
なおさらに別の実施形態では、健康な細胞に対する化合物毒性が評価される。
【0098】
なおさらなる実施形態では、薬物化合物の少なくとも1つの組合せが評価される。
【0099】
なおもさらなる実施形態では、1つまたは複数の患者由来のオルガノイド系に対する薬物化合物の毒性に基づいて、複数の薬物化合物の中の薬物化合物が患者に投与される。
【0100】
なおまたさらなる実施形態では、薬物化合物は、アジュバント療法として投与される。
【0101】
記載および特許請求の範囲は、以下の図面およびデータグラフを参照してより完全に理解されるが、それらは、本発明の例示的な実施形態として示されているのであり、本発明の範囲の完全な列挙と解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1A図1A~1Fは、先行技術に従う乳房がん特徴付けのためのゲノムアッセイのリストを提供する。
図1B図1A~1Fは、先行技術に従う乳房がん特徴付けのためのゲノムアッセイのリストを提供する。
図1C図1A~1Fは、先行技術に従う乳房がん特徴付けのためのゲノムアッセイのリストを提供する。
図1D図1A~1Fは、先行技術に従う乳房がん特徴付けのためのゲノムアッセイのリストを提供する。
図1E図1A~1Fは、先行技術に従う乳房がん特徴付けのためのゲノムアッセイのリストを提供する。
図1F図1A~1Fは、先行技術に従う乳房がん特徴付けのためのゲノムアッセイのリストを提供する。
【0103】
図2A図2Aおよび2Bは、先行技術において生成され、参照として利用される、染色体コピー数逸脱および統合クラスターを横断するそれらの広まりのマップを提供する。
図2B図2Aおよび2Bは、先行技術において生成され、参照として利用される、染色体コピー数逸脱および統合クラスターを横断するそれらの広まりのマップを提供する。
【0104】
図3A図3Aおよび3Bは、先行技術において生成され、参照として利用される、列挙された遺伝子においてコピー数獲得または増幅を経験している、高リスク統合クラスター内の乳房がんのパーセントを示す棒グラフを提供する。
図3B図3Aおよび3Bは、先行技術において生成され、参照として利用される、列挙された遺伝子においてコピー数獲得または増幅を経験している、高リスク統合クラスター内の乳房がんのパーセントを示す棒グラフを提供する。
【0105】
図4図4は、先行技術において生成され、参照として利用される、統合クラスターシステムのサブグループについての再燃の確率を提供する。
【0106】
図5図5は、本発明の種々の実施形態に従って利用される、統合クラスターシステムのER+サブグループについての経時的な再燃の確率を提供する。
【0107】
図6図6は、本発明の種々の実施形態に従って利用される、特定の遺伝子のコピー数獲得を経験している、統合クラスターサブグループに分割された乳房がんのパーセントを示す棒グラフを提供する。
【0108】
図7図7は、本発明の種々の実施形態に従う、分子サブグループへの分類に基づいて乳房がんを処置するための方法のフローダイヤグラムを提供する。
【0109】
図8図8は、先行技術において生成され、参照として利用される、METABRICコホート臨床特徴およびインクルージョン分析のフローチャートを提供する。
【0110】
図9図9は、先行技術において生成され、参照として利用される、外部検証メタコホート臨床特徴およびインクルージョン分析のフローチャートを提供する。
【0111】
図10図10および11は、先行技術において生成され、参照として利用される、ER+およびER-患者についての死亡の累積発生率を示すデータグラフを提供する。
図11図10および11は、先行技術において生成され、参照として利用される、ER+およびER-患者についての死亡の累積発生率を示すデータグラフを提供する。
【0112】
図12図12は、先行技術において生成され、参照として利用される、ER+患者およびER-患者における乳房がんの開始時の平均年齢を詳述するデータチャートを提供する。
【0113】
図13図13は、先行技術において生成され、参照として利用される、乳房がん進行の多状態マルコフモデルのグラフ表示を提供する。
【0114】
図14図14は、先行技術において生成され、参照として利用される、異なる疾患状態における臨床的共変量の予後診断的価値を示すデータチャートを提供する。
【0115】
図15図15は、先行技術において生成され、参照として利用される、ブートストラップを使用した、全ての移行についてのモデルの包括的予測の内部検証を示すデータチャートを提供する。
【0116】
図16図16は、先行技術において生成され、参照として利用される、単純なモデルについての強い一致を実証する、10年の時点でのER状態に基づく2つの計算的モデルによって計算した疾患特異的死亡リスクの予測の散乱プロットを提供する。
【0117】
図17図17は、先行技術において生成され、参照として利用される、遠隔再燃(dr)、疾患特異的死亡(ds)、死亡(os)および再燃(r)のリスクの予測の一致c指数を提供する。
【0118】
図18図18および19は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループの経時的な再燃の確率を示すデータチャートを提供する。
図19図18および19は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループの経時的な再燃の確率を示すデータチャートを提供する。
【0119】
図20図20は、先行技術において生成され、参照として利用される、局所領域的再燃の10年後の遠隔再燃の確率と、いくつかの臨床-病理学的特色および分子特色との間の関連を示すデータチャートを提供する。
【0120】
図21図21~26は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループにおける手術後の経時的な再燃またはがん関連死の平均確率を示すデータチャートを提供する。
図22図21~26は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループにおける手術後の経時的な再燃またはがん関連死の平均確率を示すデータチャートを提供する。
図23図21~26は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループにおける手術後の経時的な再燃またはがん関連死の平均確率を示すデータチャートを提供する。
図24図21~26は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループにおける手術後の経時的な再燃またはがん関連死の平均確率を示すデータチャートを提供する。
図25図21~26は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループにおける手術後の経時的な再燃またはがん関連死の平均確率を示すデータチャートを提供する。
図26図21~26は、先行技術において生成され、参照として利用される、種々のサブグループにおける手術後の経時的な再燃またはがん関連死の平均確率を示すデータチャートを提供する。
【0121】
図27図27は、先行技術において生成され、参照として利用される、統合クラスターサブタイプを組み込むモデルと比較した、標準的な臨床モデルの予測的有用性の評価を示すデータグラフを提供する。
【0122】
図28図28は、先行技術において生成され、参照として利用される、診断の5年後の時点において無再燃であったER+/Her2-患者における遠隔再燃または乳房がん死亡の確率を示すデータグラフを提供する。
【0123】
図29図29は、先行技術において生成され、参照として利用される、診断の5年後に無再燃であった患者についての、IntClust3と比較した、4個の後期再燃性サブグループにおける個々の平均ER+/HER2-患者についての遠隔再燃または乳房特異的死亡の確率を示すデータグラフを提供する。
【0124】
図30図30は、本発明の種々の実施形態に従って利用される、全ゲノムコピー数データを利用する種々の計算的モデルの受信者動作特性および適合率再現率曲線を提供する。
【0125】
図31A図31Aおよび31Bは各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の配列決定パネルを利用して乳房がんのリスクを層別化した結果を提供する。
図31B図31Aおよび31Bは各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の配列決定パネルを利用して乳房がんのリスクを層別化した結果を提供する。
【0126】
図32A図32Aは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、Foundation Medicine標的化配列決定遺伝子パネルを使用して高リスクのIntClustサブグループを予測するための分類器の感度および特異度の結果を提供する。
【0127】
図32B図32Bは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、MSK-IMPACT標的化配列決定遺伝子パネルを使用して高リスクのIntClustサブグループを予測するための分類器の感度および特異度の結果を提供する。
【0128】
図32C図32Cは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、MSK-IMPACT標的化配列決定遺伝子パネルを使用して予測したIntClustサブグループの分布を提供する。
【0129】
図33図33は、本発明の種々の実施形態に従って利用される、乳房がんの再発を予測する際の種々の診断試験のC指数スコアを提供する。
【0130】
図34図34~37は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、乳房がんの再発を予測する際の種々の診断試験のハザード比スコアを提供する。
図35図34~37は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、乳房がんの再発を予測する際の種々の診断試験のハザード比スコアを提供する。
図36図34~37は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、乳房がんの再発を予測する際の種々の診断試験のハザード比スコアを提供する。
図37図34~37は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、乳房がんの再発を予測する際の種々の診断試験のハザード比スコアを提供する。
【0131】
図38図38は、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の診断試験による乳房がんの再発のリスクを層別化した結果を提供する。
【0132】
図39図39~43は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の診断試験と組み合わせてIntClust分類システムを利用して乳房がんの再発のリスクを層別化した結果を提供する。
図40図39~43は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の診断試験と組み合わせてIntClust分類システムを利用して乳房がんの再発のリスクを層別化した結果を提供する。
図41図39~43は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の診断試験と組み合わせてIntClust分類システムを利用して乳房がんの再発のリスクを層別化した結果を提供する。
図42図39~43は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の診断試験と組み合わせてIntClust分類システムを利用して乳房がんの再発のリスクを層別化した結果を提供する。
図43図39~43は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、種々の診断試験と組み合わせてIntClust分類システムを利用して乳房がんの再発のリスクを層別化した結果を提供する。
【0133】
図44図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図45図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図46図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図47図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図48図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図49図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図50図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
図51図44~51は各々、本発明の種々の実施形態に従って利用される、化学療法、標的化(分子)療法または内分泌療法を含む種々の形態の処置における、種々の高リスク発癌分子サブグループの無進行生存の確率を提供する。
【0134】
図52A図52Aおよび52Bは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、患者19006に由来する患者由来のオルガノイドの生存率曲線を提供する。
図52B図52Aおよび52Bは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、患者19006に由来する患者由来のオルガノイドの生存率曲線を提供する。
【0135】
図53A図53Aおよび53Bは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、患者19004に由来する患者由来のオルガノイドの生存率曲線を提供する。
図53B図53Aおよび53Bは、本発明の種々の実施形態に従って生成した、患者19004に由来する患者由来のオルガノイドの生存率曲線を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0136】
詳細な説明
ここで、図面およびデータに転じると、がんの分子病理学に基づいて、乳房がんの悪性度および再燃の可能性を決定する、ならびに乳房がんを処置する、システム、キットならびに方法が、提供される。多くの実施形態は、診断アッセイを利用して、乳房がんの悪性度および再燃の可能性を決定することに関する。多くの実施形態は、診断アッセイを利用して、乳房がんの分子病理学を決定することに関する。次いで、いくつかの実施形態では、乳房がんの悪性度および再燃の可能性ならびに/または分子病理学の決定が、処置選択肢を決定するため、およびその新生物をしかるべく処置するために使用される。種々の実施形態では、体細胞コピー数または転写物発現データは、乳房がん分子サブタイプの表示を提供し、したがって、適切な処置を決定する手段を提供する。一部の実施形態では、がん進行の分子ドライバーの遺伝子コピー数変化または異常な発現が、がんの病理学の基礎として決定される。複数の実施形態によれば、高い悪性性および再燃の高い可能性を示す特定の分子病理学を示す乳房がんは、適切な療法、例えば、アジュバント化学療法、標的化療法および/または長期にわたるホルモン/内分泌療法によって攻撃的に処置される。さらに、いくつかの実施形態では、再燃の高い可能性を有するがんを有する個体は、がんを検出不能なレベルまで低減させる処置を含む外科的および/または化学療法処置の後、延長された期間にわたって、入念に反復してモニタリングされる。種々の実施形態では、特定の分子病理学を有するがんは、遺伝子、遺伝子産物、および/またはその遺伝子が関与する分子経路を標的化することによる、分子病理学を分類する遺伝子に指向される療法で処置される。多くの実施形態によれば、低い悪性性および再発を示す分子病理学を示す乳房がんは、内分泌療法または攻撃性が低い化学療法のみであり得る療法によって適切に処置される。
【0137】
いくつかの実施形態は、個体の分子病理学を決定することに関する。多くの実施形態では、コピー数逸脱(CNA)は、個体のDNAおよび/またはRNAから評価され、これは、個体のがんを分類するために使用され得る。CNAは、がんのゲノム内のゲノム遺伝子座のセットの増幅(例えば、重複)および/または低減(例えば、欠失)と理解すべきである。一部の実施形態では、がんは、1つまたは複数の分子ドライバー(即ち、腫瘍形成において少なくとも部分的に病原性であると分類された遺伝子)のセットを含むコピー数逸脱によって分類される。種々の実施形態は、乳房がんの病理発生を記載する分子ドライバーのセットを決定するために、統合クラスター(IntClust)分類を利用する。IntClust分類システムについて詳しくは、それらの開示が各々、これにより参照により本明細書に組み込まれる、C. Curtis, et al., Nature 486, 346-52 (2012)およびH. R. Ali, et al., Genome Biol. 15, 431 (2014)を参照のこと。多くの実施形態では、再燃のリスクは、リスク分類器によって決定される。
【0138】
最近の発見に基づいて、処置および監視の過程を示す、分子病理学と、再発の可能性を含むがん進行との間の関連性がここで理解される。したがって、種々の実施形態は、特定の乳房がんのために調整される処置レジメンを決定するために、乳房がんをIntClustサブグループおよび/またはリスクサブグループに分類することに関する。さらに、乳房がんをIntClustおよび/またはリスクサブグループに分類するいくつかのツールおよびキットが記載されている。
【0139】
いくつかの診断試験が、乳房がんを有する患者をモニタリングおよび処置するためのアプローチについて臨床医をガイドするために、現在利用可能である(図1A~1F)。これらの試験のほとんどは、新生物内の遺伝的逸脱、および潜在的な関連するリスク、例えば再発についての洞察を獲得するために、分子技法およびゲノム技法を利用する。さらに、これらの試験は、個別化された処置選択肢、例えば、化学療法(ネオアジュバントまたはアジュバント化学療法を含む)を利用するという決定、化学療法薬の強さ、用量および持続時間、内分泌療法を利用するという決定、ならびに他の処置選択肢(例えば、標的化療法、免疫療法)を利用するという決定についての情報を与え得る。乳房がんについて利用可能な種々の診断試験についての詳細な議論については、その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるO.M Fayanju, K.U. Park, and A. Lucci Ann. Surg. Oncol. 25, 512-19 (2018)を参照のこと。
【0140】
診断試験は、Oncotype Dx(Genomic Health、Redwood City、CA)、Prosigna(NanoString Technologies、Seattle WA)、MammaPrint(Agendia、Irvine、CA)、EndoPredict(Myriad Genetics、Salt Lake City、UT)およびBreast Cancer Index(BCI)(Biotheranostics,Inc.、San Diego、CA)を含む(図1A~1Fを参照のこと)。
【0141】
Oncotype Dxは、米国において乳房がんのために使用されている、最も一般に使用される診断試験である。この試験は、21個の遺伝子の発現を試験し、これは、特に、初期ステージのER+、HER2-、リンパ節陰性(LN-)乳房がんを有する個体において、化学療法が示されるかどうかを決定するために使用される。Oncotype Dxは、10年以内の遠隔再発の見込みを定量化し、高い(≧31)、中間の(18~30)または低い(0~17)再発の見込みを示すスコアを提供する。中間の再発スコアを示す結果は、どの処置が実施されるかの指標に関して、臨床医に臨床的難問を提示することに留意されたい。
【0142】
PAM50分類器に基づくProsignaは、50個の遺伝子の発現を決定する診断試験である。Prosigna試験は、再発のリスクスコア(ROR)を生成し、以下の4個の固有のサブタイプのうち1つに腫瘍を割り当てる:Luminal A、Luminal B、HER2+およびBasal-like。RORスコアおよび他の臨床的因子(リンパ節状態を含む)に基づいて、リスク状態が決定される。
【0143】
MammaPrintは、ER+/HER2-患者において5年以内の遠隔転移を予測するための、マイクロアレイ上にプロファイリングされた70遺伝子発現アッセイである。MammaPrintは、陽性または陰性のリンパ節状態を有する患者について利用することができる。発現プロファイル結果に基づいて、低リスクまたは高リスクの分子予後プロファイルが決定される。
【0144】
EndoPredictは、陰性リンパ節状態または陽性リンパ節(1~3個)状態を有するER+/HER2-患者において、診断の10年後の遠隔再発のリスクを予測するための12遺伝子試験である。発現プロファイル結果に基づいて、低リスクまたは高リスクの分子予後プロファイルが決定される。
【0145】
Breast Cancer Index(BCI)は、陰性リンパ節状態または陽性リンパ節(1~3個)状態を有するER+患者において、診断の5~10年後の遠隔再発を予測するために、増殖およびエストロゲンシグナル伝達遺伝子発現シグネチャーを組み合わせる。BCIは、患者が延長された(>5年)アジュバント内分泌療法から利益を得ることができるかどうかを決定するために利用される意図である。
【0146】
一部の個体は、最大で20年後および20年後以降の、再発の持続性のリスクおよび乳房がん死亡もまた含み得る、高悪性度形態のがんを有する。しばしば、利用可能な現在の診断試験からは、再発、特に後期再発(例えば、>5年)のリスクがある者を見定めることが困難であり得る。例えば、初期ステージER+乳房がんを有する個体のサブセットは、診断の20年後まで、再発の持続性のリスクおよび死亡を有するが、現在の診断法は、このサブセットを同定するのが困難な状況である。実際、ほとんどの現在の診断アッセイは、5年以降を確実に予測することができず、時間経過と共に、臨床的共変量は、予測力を喪失し続ける。したがって、再発のリスクを含む、高リスクがんおよび低リスクがんを有する患者のサブセットを定義するために、現在の利用可能な試験および標準的な臨床的共変量(節の状態、腫瘍サイズおよびグレード)よりも、悪性度および再発のリスクに関してより予測的な腫瘍特徴を同定する重要な必要が存在する。リスクおよび再燃可能性をより良く理解していることは、どの個体が種々の療法、例えば、延長された内分泌療法またはより高い投薬量の化学療法的療法もしくは分子的に標的化された療法から利益を得るかを記述することを助け得る。
【0147】
ここで、いくつかの実施形態は、乳房がんを再発リスクサブグループ(例えば、高い、中間の、低い)および/または統合クラスター(IntClust)(上で引用したC. Curtis, et al., (2012)を参照のこと)に分類する分子試験に基づく。リスクサブグループへの分類は、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法およびニューラルネットワークを含む(がそれらに限定されない)、いくつかの統計的技法によって実施され得る。
【0148】
IntClustサブグループへのクラスタリングについて、合計11個のIntClustサブグループが現在記載されており、これらは、研究内の各乳房がんが保有する遺伝子発現およびコピー数プロファイルの教師なし共同(joint)潜在変数クラスタリングを利用して開発されたものである。合計約1000の初期ステージ乳房がんを使用してクラスターが開発され、これが、別の約1000の初期ステージ乳房がんにおいて検証された。結果は図2Aおよび2Bに示される。CNA増幅は赤で示されるが、CNA喪失は青で示される。計算的モデリングによって各々決定された10個のIntClustサブグループが示されているが、IntClust4は、ER+およびER-にさらに分割されて、11個のIntClustサブグループを得ることができることに留意されたい。
【0149】
IntClustサブグループは各々、がん内に保有され、がんの進行と関連する可能性が高い(即ち、乳房がんの分子ドライバー)コピー数逸脱(CNA)および相対的遺伝子発現レベルによって特徴付けられる。例えば、IntClustサブグループ1、2、6および9は、全てのER+腫瘍のおよそ25%を占めることが見出されており、各サブグループは、ゲノムの種々の領域における特徴的なコピー数増幅事象について富化される(図2Aおよび2Bを参照のこと)。IntClust1に関して、17q23の近傍の遺伝子(例えば、RPS6KB1)が増幅および過剰発現されることが現在公知である。同様に、IntClust2は、遺伝子CCND1、FGF3(11q13.3)および11q13.2アンプリコン遺伝子(例えば、EMSY、RSF1、PAK1)の増幅を有し、ゲノムのこれらの領域は、付随する遺伝子発現上方調節と共に高頻度で共増幅され、これは、これらの遺伝子座間での発癌協働を示唆している。注目すべきことに、染色体8p12および11q13の反復性の増幅は、これらの遺伝子座が、腫瘍の発生および進行を促進するように協働し得ることを示唆している。このように、これらは、一部の患者において共標的化される必要があり得る。IntClust6は、8p12の近傍の遺伝子(例えば、FGFR1、ZNF703、EIF4EBP1)の増幅を示す。さらに、IntClust9は、8q24の近傍の遺伝子(例えば、MYC)および20q13の近傍の遺伝子(例えば、SRC3、NCOA3)の近傍の遺伝子の増幅および過剰発現を有する。類似の分析において、Intclust5は、乳房がんの分子ドライバーであることが十分に理解されている発癌遺伝子であるHER2/ERBB2における増幅および過剰発現によって特徴付けられる。それが割り当てられたIntClustサブグループを定義する遺伝子のCNA獲得または増幅を有するコホートにおける腫瘍のパーセンテージが、図3Aおよび3Bに示される(留意:図3Aおよび3Bは、前臨床データに基づいてアスタリスクが付けられた、各統合されたクラスターについての発癌ドライバーを含む)。
【0150】
特定のIntClustサブグループが悪性度および再燃の可能性を与えることが現在公知である(図4)。言い換えると、乳房がんが特定のIntClustサブグループに分類される場合、がんが高悪性度である見込みおよびがんが再燃する見込みが決定され得る。この知識は、処置の過程および/または継続的なモニタリングの必要を決定するためにも使用され得る。例えば、IntClustサブグループへのサブタイピングは、高リスク集団において内分泌療法を延長させるかどうか、本質的に内分泌耐性である患者において内分泌療法を回避するかどうか、IntClustサブグループの分子ドライバーに基づいて標的化療法を適用すること、ならびに化学療法薬の適切な選択および処置レジメンについての情報を与え得る。
【0151】
これらの統合されたクラスターの使用は、標準的な臨床的共変量および現在の診断方法よりも良好に、後期遠隔再燃(特に、5年後の再燃)の予測を改善することが見出されており、これは、外部検証コホートにおいて補強される。三重陰性乳房がん患者のサブグループは、5年後の再発はまれであるが、他は、リスクがあるままであることも見出されている。遠隔再発の後、腫瘍サブタイプは、引き続く転移の比率を決定付け続け、したがって、腫瘍を分類することの重要性が強調される。これらの知見に基づいて、いくつかの実施形態は、診断方法によって決定される、高悪性度がんおよび再燃の特定のリスクを有する個体を同定することに関する。種々の実施形態は、がんの悪性度および再燃のリスクに基づいて、個体を処置および/またはモニタリングする。
【0152】
図4は、各分類内の乳房がんの悪性度および再燃を調査するための研究の結果を示す。ここでは、非一様(non-homogenous)(セミ)マルコフ連鎖モデルを利用して、IntClustサブグループを横断する乳房がん再燃の時空間動態を記述した(例示的実施形態を参照のこと)。このモデルからの結果は、種々のサブグループが、特に、5年以降、または10年もしくは15年の到達点でも、再燃のかなりより高い見込みを有することを示している。
【0153】
11個のIntClustサブグループの各々、ならびに3つの時点:手術時、手術後5年間の無病、ならびに手術後10年間の無病、からの再燃の確率が、図4に示される。これらの結果は、再燃のリスクによって順序付けられ、再燃の最も小さいリスクを有するサブグループは左側であり、再燃の最も大きいリスクを有するサブグループは右側である。これらの結果に基づいて、群は、高リスク群およびより低いリスクの群に分けられ得る。より低いリスクの群は、IntClust3、IntClust7、IntClust8、IntClust4ER+およびIntClust10を含む。高リスク群は、IntClust4ER-、IntClust1、IntClust6、IntClust9、IntClust2およびIntClust5を含む。
【0154】
臨床転帰データに基づいて、ER+/HER2-乳房がん患者における経時的な遠隔再燃のリスクを示す累積発生率プロット(即ち、1-カプラン・マイヤー推定)が、図5に提供される。図5の上パネルから理解できるように、IntClustサブグループ2、9、6および1は、遠隔再燃の増加した確率を有する。図5の下パネルは、より低いリスクのサブグループ(IntClustサブグループ3、4ER+、7および8)と比較して、高リスクサブグループ(IntClustサブグループ1、2、6および9)を比較する。これらの結果は、2つのサブグループ間でのリスクの明確な相違を示している。
【0155】
IntClust10およびIntClust4ER-は、それらがER-、HER2-かつPR-であることを意味する、三重陰性乳房がん(TNBC)である臨床的分類を有する。TNBCは、乳房がんの10%~20%において生じ、より若い人に影響を与える可能性がより高い。TNBCは、その悪性度および再発の可能性に起因して、処置するのが困難であり得る。しかし、IntClust研究の結果は、IntClust10の乳房がんが、5年間の無病後に、再発の非常に低い見込みを有することを示している。対照的に、IntClust4ER-は、無病である5年間の後でも、または無病である10年間の後でも、再発の比較的高い見込みを有する。したがって、いくつかの実施形態では、TNBCを有する個体は、そのがんが分類されるIntClustサブグループを決定するために評価され、そうして、結果に基づいて処置を実施する。
【0156】
IntClust3、IntClust7、IntClust8およびIntClust4ER+は、全てER+/HER2-であり、中程度の再発のリスクを有する。他方、IntClust1、IntClust6、IntClust9およびIntClust2は、ER+/HER2-であり、再発の高い持続性のリスクを有する。したがって、種々の実施形態では、がんが高リスクER+/HER2-として分類される場合、より攻撃的な処置レジメン(例えば、内分泌療法に加えたアジュバント化学療法)が有益であり得る。さらに、高リスクの再発群の発癌ゲノムドライバーは、特異的標的化処置によって直接的に標的化され得る。例えば、一部の実施形態では、IntClust1がんは、mTOR経路アンタゴニスト(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、シロリムス、ラパマイシン)、AKT1アンタゴニスト(例えば、イパタセルチブ、カピバセルチブ(AZD5363))、AKT1/RPS6KB1アンタゴニスト(例えば、M2698)、RPS6KB1アンタゴニスト(例えば、LY2584702)、PI3Kアンタゴニスト(例えば、アルペリシブ、ブパリシブ(BKM120)、ピクチリシブ(GDC-0941))、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン(zotatifin))、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。種々の実施形態では、IntClust2がんは、後成的に標的化される療法、CDK4/6アンタゴニスト(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ)、FGFR経路アンタゴニスト(例えば、ルシタニブ(lucitanib)、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877、ポナチニブ)、PARPアンタゴニスト(例えば、ニラパリブ、オラパリブ)、相同組換え欠損(HRD)標的化療法、PAK1アンタゴニスト(例えば、IPA3)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。一部の実施形態では、IntClust6がんは、FGFR経路アンタゴニスト(例えば、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877、ポナチニブ)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。そして、種々の実施形態では、IntClust9がんは、選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)(例えば、フルベストラント、GDC-9545、SAR439859(SERD ’859)、RG6171、AZD9833)、タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)ARV-471、SRC3アンタゴニスト(例えば、SI-2)、MYCアンタゴニスト(例えば、omomyc)、BETブロモドメインアンタゴニスト(例えば、JQ1、PROTAC ARV-771)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。
【0157】
乳房がんを分類および層別化するための方法
いくつかの実施形態は、診断目的のために、乳房がんのリスクを分類および/または層別化することに関する。一部の実施形態では、乳房がんは、特定のIntClustサブグループに分類される。一部の実施形態では、乳房がんは、リスクの可能性(例えば、低い、中間のまたは高いリスク)によって層別化される。
【0158】
いくつかの実施形態では、乳房がんは、上で引用したC. Curtis, et al. (2012)に記載されるもののような、統合されたクラスター(IntClust)に分類される。11個のIntClustサブグループの各々は、クラスタリング分析によって決定される、CNAの比較的規定されたセットを有する(図2)。IntClust4が、11個のサブグループを完成させるために、ER+およびER-にさらに分割され得ることが留意される。IntClust分類を使用することによって、種々の実施形態では、乳房がんは、11個のサブグループのうち1つに分類される。IntClust分類が記載されているが、乳房がんの他のゲノムドライバー分類法が、一部の実施形態に従って使用され得る。
【0159】
サブグループ1、2、6および9を含む種々のIntClustサブグループ内に入るER+/HER2-乳房がんは、高い再燃のリスクを伴って、高度に悪性度が高いことが現在理解されている。同様に、IntClustサブグループ3、7、8および4ER+内に入るがんは、悪性度が低く、より低い再燃のリスクを有する。したがって、種々の実施形態は、がんの悪性度およびリスク再燃を決定するために、乳房がんをIntClustサブグループに分類する。類似の様式で、TNBCは、高リスクサブグループIntClust4ER-またはより低いリスクのサブグループIntClust10に分類され得る。
【0160】
個体をIntClustに分類するために、遺伝子発現および/またはCNAデータが、乳房がんから得られる。CNAは、いくつかの方法によって検出され得る。一部の実施形態では、がんのDNAは、CNAレベルを検出するために、個体から抽出され、処理される。種々の実施形態では、がんのRNAは、いくつかの遺伝子の発現レベルを検出するために、抽出および処理され、コピー数における逸脱を決定するために利用され得る。種々の実施形態が、分子サブタイプを決定するために、DNAおよびRNAの両方の抽出を利用することができることをさらに理解すべきである。さらに、DNAメチル化は、クロマチンアクセス可能性(または状態)と同様、遺伝子発現と高度に相関するので、DNAメチル化またはクロマチンアクセス可能性プロファイリング(ATAC-seq)は、いくつかの実施形態では、統合クラスターメンバーシップまたは統合サブタイプを決定するために使用される。
【0161】
いくつかの実施形態では、乳房がんの統合サブタイプを決定するために使用される特色は、CNAおよび/または発現データを含む。したがって、計算的分類器は、コピー数特色および/または遺伝子発現特色を利用することができるが、乳房がんのDNAメチル化またはクロマチン(DNA)アクセス可能性分析に由来するDNA(遺伝子/CpG)メチル化特色および/またはアクセス可能なDNAピークもまた使用し得る。一部の実施形態では、コピー数特色は、ゲノム位置または遺伝子名のいずれかによって整合される。種々の実施形態では、発現特色は、発現を検出するプローブに整合される。特色が整合された後、種々の実施形態は、各特色をz-スコアに変換し、他の標準化法を含み得る。多数の実施形態では、整合された特色は、乳房がんがその中に入るサブグループをその分類器が決定するように、計算的分類器に入力される。一部の実施形態では、上で引用した、先に記載した教師なし共同潜在変数クラスタリングアプローチ(C. Curtis, et al., (2012)の刊行物に記載される)、またはH. R. Ali, et al., (2014)の刊行物に記載される、CRAN RパッケージでiC10と標識されて見出され得る統合サブタイプ(iC10)分類器(https://cran.r-project.org/web/packages/iC10/index.html)が使用される。
【0162】
種々の実施形態では、分子クラス予測モデルは、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンおよびニューラルネットワークを含む(がそれらに限定されず)、これらは各々、乳房がんを11個の統合サブタイプに分類するために独立して使用され得る。クラス予測モデルは、コピー数特色および/または遺伝子発現特色、DNA(遺伝子/CpG)メチル化特色および/または乳房がんのクロマチンアクセス可能性分析に由来するアクセス可能なDNAピークを含む種々の分子特色に基づき得る。一部の実施形態では、トップスコアリングペア(TSP)分類アプローチ(またはそのバリエーション)が使用され、これは、その相対的順序付けが、試料のクラス標識を正確に予測するために使用され得る、変数の対である。このアプローチの例は、Rgtspパッケージ(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるV. Popovici, E. Budinska, and M. Delorenzi, Bioinformatics 27, 1729-30 (2011))に実装される。さらに、一部の実施形態では、分子クラス予測は、例えば、Paquet et al.(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるE. R. Paquet and M. T. Hallet, J. Natl. Cancer Inst. 107, 357 (2014))によって記載されるAIMSアルゴリズムを利用して、絶対的サブタイプ割り当てを実施するために拡張される。
【0163】
核酸またはタンパク質は、当業者によって理解されるいくつかの方法論によって、腫瘍の組織生検内で、および/または個体の体液(例えば、血液、血漿、尿)から、抽出または試験され得る。抽出されると、核酸は、検出のために処理および調製され得る。検出の方法は、ハイブリダイゼーション技法(例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)、核酸増殖技法および配列決定を含む(がそれらに限定されない)。マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)配列決定、遺伝子発現のためのNanoString nCounter、コピー数推論のためのNanoString nCounter、Nanostringデジタル空間プロファイリング(in situタンパク質発現/RNA発現のため)、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイおよびATAC-seq、ならびに免疫組織化学(IHC)を含む(がそれらに限定されない)種々の分子技法が使用され得る。
【0164】
いくつかの実施形態では、CNAおよび/または発現レベルは、既知の結果と比較して定義される。一部の例では、試験試料のCNAおよび/または発現レベルは、対照試料または分子シグネチャー(即ち、既知の分類を有する試料/シグネチャー)と比較して決定される。対照試料/シグネチャーは、健康な組織(即ち、ヌル対照)、既知の陽性対照、または所望される任意の他の対照のいずれかであり得る。したがって、試験試料のCNAおよび/または発現レベルが1つまたは複数の対照と比較される場合、相対的なCNAおよび/または発現レベルは、試験試料がその中に入るゲノムドライバーサブグループを決定することができる。一部の例では、遺伝子発現レベルは、安定に発現されたバイオマーカー(即ち、内因性対照)と比較して決定される。一部の例では、遺伝子発現レベルが、安定に発現されたバイオマーカーと比較してある特定の閾値を超える場合、発現のレベルは、特定のゲノムドライバーサブグループを示す。一部の例では、CNAおよび/または発現レベルは、絶対的に決定される。一部の例では、種々のCNAおよび/または発現レベルの閾値および範囲は、ゲノムドライバーサブグループを分類するように設定され得、したがって、試験試料がその中に入るサブグループを示すために使用され得る。CNAおよび/または発現レベルを定義する方法は、適用可能な評価のために必要に応じて組み合わされ得ることを理解すべきである。転写物発現レベル、CNAレベル、DNAメチル化レベル、クロマチン(DNA)アクセス可能性ピーク、またはそれらの任意の組合せを利用して、乳房がんが分類され得る。
【0165】
ゲノム遺伝子座および/または遺伝子は、種々の実施形態に従って検出される。一部の実施形態では、ゲノムCNAおよび/または転写物発現の特定のセットの検出が、乳房がんを特定のIntClustサブグループに分類する。戻って図3Aおよび3Bを参照して、種々の遺伝子座におけるCNAは、いくつかのIntClustサブグループを実証する。例えば、IntClustサブグループ1、2、6および9は、全てのER+腫瘍のおよそ25%を占めることが見出されており、各々は、ゲノムの種々のセクションの特徴的なコピー数増幅事象について富化される。IntClust1に関して、RPS6KB1、HASF5、PPM1E、PRR11、DHX40、TUBD1、CA4、C17orf64、BCAS3、TBX2、BRIP1およびTBC1D3P2を含む(がそれらに限定されない)17q23の近傍の遺伝子が増幅されることが現在公知である。同様に、IntClust2は、遺伝子CCND1、FGF3(11q13.3における)、ならびにEMSY、RSF1、PAK1、CTTN、CLPB、P2RY2、UCP2、CHRDL2、MAP6、OMPおよびARS2を含む(がそれらに限定されない)11q13.2アンプリコン遺伝子の増幅を有する。IntClust6は、FGFR1、ZNF703、EIF4EBP1、LETM2およびSTARを含む(がそれらに限定されない)8p12の近傍の遺伝子の増幅を示す。さらに、IntClust9は、MYC、FBXO32、LINC00861、PCAT1、LINC00977、MIR5192およびADCY8を含むがそれらに限定されない8q24の近傍の遺伝子、ならびにSRC3、NCOA3を含む(がそれらに限定されない)20q13の近傍の遺伝子の増幅を有する。したがって、遺伝子座もしくは遺伝子、または遺伝子座および/もしくは遺伝子の組合せの増幅(CNAもしくは発現)の検出が、特定のIntClust分類を示すために利用され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、乳房がんの分類は、マルチゲノムコピー数逸脱、マルチ遺伝子発現プロファイル、DNAメチル化レベル、クロマチン(DNA)アクセス可能性ピーク、またはそれらの任意の組合せに基づく計算的モデルを利用して実施され、単一の染色体遺伝子座におけるコピー数状態/遺伝子発現よりも正確な分類を提供し得る。例えば、遺伝子RPS6KB1、FGFR1およびFGF3の増幅は、低い悪性度および再燃のリスクを有するものを含む、種々の乳房がんIntClustサブグループ内で生じる。図6で理解できるように、RPS6KB1の獲得または増幅を有する乳房がんのおよそ50%は、IntClust1に分類されるが、RPS6KB1コピー数変更は、いくつかのより多くのIntClustサブグループ内でも検出され得る。同様に、FGFR1増幅を有する乳房がんのおよそ50%は、IntClust6に分類され、この増幅は、全ての他のサブグループ内で検出され得る。FGF3増幅は、IntClustサブグループ間にかなり均等に分配される。したがって、適切なサブタイプ(例えば、IntClust分類器)に乳房がんがより正確に分類され得るように、トレーニングされた計算的モデルを利用することが有益であり得る。
【0167】
いくつかの実施形態は、乳房がん再発リスク(例えば、高い、中間の、低い)を層別化するために、統計的計算を利用する。種々の実施形態では、統計的計算モデルは、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法およびニューラルネットワークを含む(がそれらに限定されない)。一部の実施形態では、閾値が、より高いリスクスコアをより低いリスクスコアから分離するために利用される。いくつかの実施形態では、統計モデルをトレーニングするためおよび/または乳房がんにおける再発のリスクを予測するために使用される特色は、臨床データ、年齢、がんステージ、腫瘍陽性リンパ節の数、腫瘍のサイズ、腫瘍のグレード、実施された手術、実施された処置、基本的分子正体および統合サブタイプ分類/メンバーシップを含む(がそれらに限定されない)。患者の年齢は、連続値としてコード化され得る(過度に高い値(例えば、80歳を超える年齢)を回避するために潜在的にトリミングされ得る)。臨床ステージ(1~4の範囲の値)は、連続値としてもしくは倍数として含まれ得るか、または高い(3~4) 対 低い(1~2)ステージとしてグループ分けされ得る。陽性リンパ節は、連続値として含まれ得る(過度に高い値を回避するために潜在的にトリミングされ得る)。陽性リンパ節の数、これもまた、リンパ節陰性 対 陽性として、または陽性の中でカテゴライズされ得、低い(1個の陽性節)、中間(2~3個の陽性節)、高い(4~9個の陽性節)、非常に高い(>=10個の陽性節)ならびにそれらのバリエーションとしてグレード分けされ得る。腫瘍のサイズは、過度の高い値を回避するためにトリミングされ得る連続値として使用され得る。腫瘍のサイズもまたカテゴライズされ得る(例えば、ステージ分けシステム:T1<20mm、T2(20~50)、T3(>50))。腫瘍のグレードは、連続値として、またはカテゴリー(1~3)もしくは高い(3) 対 低い(1、2)として、使用され得る。一部の実施形態では、分類器は、CTS5アルゴリズムを含み、これは、以下のように組み込まれ得るリンパ節、サイズ、グレードのコード化に基づく:
0.438×節+0.988×(0.093×サイズ-0.001×サイズ2+0.375×グレード+0.017×年齢)
(CTS5アルゴリズムについて詳しくは、その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるM. Dowsett, et al., J. Clin. Oncol. 36, 1941-48 (2018)を参照のこと)。基本的分子正体は、臨床病理学報告に基づく、および/または遺伝子発現データから推定された、エストロゲン受容体(ESR1)、プロゲステロン受容体(PGR)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2/ERBB2)およびMKI67の状態を含む。手術の型は、乳房温存術または乳房切除術を含み得る。処置の型は、薬剤がより広く特定またはグループ分けされ得る、ホルモン、化学療法、標的化療法を含み得、処置持続時間が含まれ得る。種々の実施形態は、生殖系列遺伝的変異体、民族性、総体的な健康データ、および/または処置レジメンもまた利用する。一部の実施形態では、Predict Tool(https://breast.predict.nhs.uk)またはそのコンポーネントが、このモデルにおいて利用され得る。
【0168】
一部の実施形態では、特色は、統合されたサブタイプクラスター(例えば、IntClust分類)に由来し得、モデル中に含まれ得る。これらの特色は、統合サブタイプメンバーシップまたは所与のクラスターへのメンバーシップの事後確率であり得る。統合サブタイプは、論理特色として個々にコード化される。各サブグループの重心までの距離が利用され得る。IC分類器に由来する任意のスコアもまた利用され得る。一部の実施形態では、特定の下位集団、例えば、ER+/HER2-患者または三重陰性乳房がん患者についての再燃のリスク予測が利用される。ER+/HER2-患者では、高リスク(IntClust1、IntClust2、Intclust6またはIntClust10) 対 より低いリスク(IntClust3、IntClust4、Intclust7またはIntClust8)のカテゴリーが考慮され得る。同様に、IntClust4ER-に分類されたTNBCは、高悪性度であり高リスクを有すると決定されるが、IntClust10に分類されたTNBCは、より低いリスクを有すると決定される。
【0169】
いくつかの実施形態では、多状態Coxリセットモデルが利用され、これは、異なる疾患状態(局所領域的再発および遠隔再発)、異なる時間尺度(診断からの時間および再燃からの時間)、競合する死亡原因(がん死亡または他の原因)、臨床的共変量または年齢効果、および異なる分子サブグループについての別個のベースラインハザードを説明する統計モデルである(それらの開示が各々、これにより参照により本明細書に組み込まれる、H. Putter, M. Fiocco, & R. B. Geskus, Stat. Med. 26, 2389-430 (2007);O. Aalen, O. Borgan, & H. Gjessing, Survival and Event History Analysis - A Process Point of View. (Springer-Verlag New York, 2008);およびT. M. Therneau & P. M. Grambsh, Modeling Survival Data: Extending the Cox Model. (Springer-Verlag New York, 2000)を参照のこと)。多くの実施形態では、原発性腫瘍の外科的切除で開始し、その後局所領域的および/または遠隔再発の発生が続く乳房がんの年代学が説明され、がんまたは他の原因に起因する競合する死亡リスクが説明されるように、多状態統計モデルがデータセットにフィッティングされる。一部の実施形態では、これらの状態の各々の発生のハザードは、2つの吸収状態(死亡/がんおよび死亡/その他)を有する非一様セミマルコフ連鎖を用いてモデリングされる。多状態Coxモデルについて詳しくは、例示的実施形態における記載を参照のこと。
【0170】
Cox比例ハザードモデルは、事象までにかかる時間および時間におけるその量に関連する共変量を関連付ける、統計的生存モデルである(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるD. R. Cox, J. R. Stat. Soc. B 34, 187-220 (1972)を参照のこと)。Cox比例ハザードモデルを利用するために、一部の実施形態では、臨床、分子および統合サブタイプ特色が含まれる。一部の実施形態では、特色は、一次および/または多項式変形され得、相互作用は、変数選択を含み得る。一部の実施形態では、このモデルをさらに単純化するために、段階的変数選択が、交差検証スキーム中に組み込まれ得る。(例えば)、RMSパッケージ(https://www.rdocumentation.org/packages/rms)などの任意の適切な計算的パッケージが、利用および/または適合され得る。
【0171】
縮小ベースの方法は、正則化ラッソ(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるR. Tibshirani Stat. Med. 16, 385-95 (1997))、ラッソ化(lassoed)主成分(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるD. M. Witten and R. Tibshirani Ann. Appl. Stat. 2, 986-1012 (2008))および縮小重心(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるR. Tibshirani, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 99, 6567-72 (2002))を含む(がそれらに限定されない)。(例えば)、縮小重心のためのPAMRパッケージ(https://www.rdocumentation.org/packages/pamr/versions/1.56.1)などの任意の適切な計算パッケージが、利用および/または適合され得る。
【0172】
ツリーベースのモデルは、生存ランダムフォレスト(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるH. Ishwaran, et al., Ann. Appl. Stat. 2, 841-60 (2008))およびランダムローテーション生存フォレスト(random rotation survival forest)(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるL. Zhou, H. Wang, and Q. Xu, Springerplus 5, 1425 (2016))を含む(がそれらに限定されない)。一部の実施形態では、ハイパーパラメーターは、各ツリーについて選択される特色の数に対応する。(例えば)1000個のツリーなど、ツリーの数について任意の適切な設定が利用され得る。(例えば)、ランダムローテーション生存フォレストのためのRRotSFパッケージ(https://github.com/whcsu/RRotSF)などの任意の適切な計算パッケージが、利用および/または適合され得る。
【0173】
ベイズ法は、ベイズ生存回帰(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるJ. G. Ibrahim, M. H. Chen, and D. Sinha, Bayesian Survival Analysis, Springer (2001))およびベイズ混合生存モデル(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるA. Kottas J. Stat. Pan. Inference 3, 578-96 (2006))を含む(がそれらに限定されない)。一部の実施形態では、サンプリングは、多変量正規分布、または単調スプラインの一次結合(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるB. Cai, X. Lin, and L. Wang, Comput. Stat. Data Anal. 55, 2644-51 (2011)を参照のこと)を用いて実施される。(例えば)、ICBayesパッケージ(https://www.rdocumentation.org/packages/ICBayes/versions/1.0/topics/ICBayes)などの任意の適切な計算パッケージが、利用および/または適合され得る。
【0174】
カーネルベースの方法は、生存サポートベクターマシン(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるL. Evers and C. M. Messow, Bioinformatics 24, 1632-38 (2008))、カーネルCox回帰(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるH. Li and Y. Luan, Pac. Symp. Biuocomp. 65-76 (2003))およびマルチカーネル学習(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるO. Dereli, C. Oguz, and M. Gonen Bioinformatics (2019))を含む(がそれらに限定されない)。カーネルベースの方法が、サポートベクターマシン(SVM)ならびに多項式カーネルおよびガウスカーネルを用いた生存サポートベクターマシンを含み得ることを理解すべきであり、このとき、ハイパーパラメーターCが正則化を特定する(上で引用したL. Evers and C. M. Messowを参照のこと)。一部の実施形態では、マルチカーネル学習(MKL)アプローチは、臨床情報、分子情報および統合サブタイプを埋め込むカーネルを含むカーネルにおいて、特色を組み合わせる。(例えば)、path2survパッケージ(https://github.com/mehmetgonen/path2surv)などの任意の適切な計算パッケージが、利用および/または適合され得る。
【0175】
ニューラルネットワーク法は、DeepSurv(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるJ. L. Katzman, et al., BMC Med. Res. Methodol. 18, 24 (2018))およびSuvivalNet(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるS. Yousefi, et al., Sci. Rep. 7, 11707 (2017))を含む(がそれらに限定されない)。(例えば)、Optunityパッケージ(pypi.org/project/Optunity/)などの任意の適切な計算パッケージが、利用および/または適合され得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、モデルがオーバーフィッティングされないことを確実にするために、モデルは、X重(X-times)スキームを使用してトレーニングされ、X分割(X-fold)スキームを使用して交差検証される(例えば、10分割トレーニング、10分割交差検証)。試料データは、サブセットに分けられ得、一部のデータは、モデルをトレーニングするために使用され、一部のデータは、モデルを評価するために使用される。この方法を使用することによって、全てのデータが少なくとも1回検証され、トレーニングおよび検証の両方のために同時に使用される試料は存在しないと仮定され得るが、X分割交差検証はサンプリングバイアスを最小化した。トレーニング/交差検証アプローチは、信頼区間を計算することによって予測の安定性の評価もまた可能にし、モデル比較を容易にする。さらに、内部交差検証スキームが、ハイパーパラメーターの特定のために使用され得る。
【0177】
乳房がんのリスクを分子的に分類および層別化するためのプロセスの具体的な例が上記されるが、当業者は、プロセスの種々のステップが、異なる順序で実施され得ること、およびある特定のステップが、一部の実施形態に従って必要に応じたものであり得ることを理解することができる。このように、プロセスの種々のステップが、具体的な適用の要件に必要に応じて使用され得ることが明らかなはずである。さらに、所与の適用の要件に適切な分子分類およびリスク層別化のための種々のプロセスのいずれもが、種々の実施形態に従って利用され得る。
【0178】
多数の実施形態は、統合サブタイプ情報を組み込むリスク予測モデルを、Oncotype Dx(Genomic Health、Redwood City、CA)、Prosigna(NanoString Technologies、Seattle WA)、MammaPrint(Agendia、Irvine、CA)、EndoPredict(Myriad Genetics、Salt Lake City、UT)、Breast Cancer Index(BCI)(Biotheranostics,Inc.、SanDiego、CA)を含む(がそれらに限定されない)他のマルチ遺伝子シグネチャーと組み合わせることに関する。Oncotype DXと統合サブタイプ(IntClust)との組合せが、特に目的のものである。上述のように、Oncotype DXは、高い、中間のまたは低い再発の見込みのうち1つを示す結果を生じ、中間の見込みについての処置選択は、臨床医にとって難問であり得る。しかし、Oncotype DXが統合クラスタリング技法と組み合わされる場合、中間リスク群内に通常入る乳房がんは、より良好に層別化され得、高リスクおよびより低いリスクの明確な結果を生じる。Oncotype DXを統合クラスタリング技法と組み合わせることの詳細は、例示的実施形態のセクション内に記載されている。Prosigna、MammaPrint、BCIおよびEndoPredictとの組合せもまた、例示的実施形態に詳述されるように、診断的層別化における改善を示している。
【0179】
コピー数逸脱および遺伝子発現を検出する方法
コピー数における逸脱は、当業者によって理解されるように、種々の実施形態に従ういくつかの方法によって検出され得る。いくつかの実施形態では、CNAは、ゲノムDNAから直接的に検出され、および/またはRNA転写物発現から推定される。したがって、一部の実施形態では、CNA分析が、乳房がんを分類するために使用される。一部の実施形態では、RNA発現分析が、乳房がんを分類するために使用される。そして、一部の実施形態では、CNAおよびRNA発現の両方の分析が、乳房がんを分類するために使用される。
【0180】
発現を決定するための核酸(例えば、DNAおよびRNA)の供給源は、de novoで(即ち、生物学的供給源から)誘導され得る。生物学的供給源から核酸を抽出するためのいくつかの方法が周知である。一般に、核酸は、細胞または組織から抽出され、次いで、さらなる分析のために調製される。あるいは、DNAおよび/またはRNAは、細胞内で観察され得、これらの細胞は、典型的には、さらなる分析のために固定および調製される。直接的試験のために核酸を抽出するまたは(ホルマリン固定およびパラフィン包埋(FFPE)を介して)組織を固定するという決定は、当業者に理解されるように、実施されるアッセイに依存する。一部の実施形態では、DNAおよび/またはRNAは、固定された組織から抽出される。
【0181】
いくつかの実施形態では、核酸は、処置される細胞および組織の型において、抽出および/または試験される。多くの場合には、処置される細胞は、個体の乳房がんの新生物細胞であり、これは、生検において抽出され得る。一部の実施形態では、核酸は、分析のために、循環する腫瘍DNAを含み得る血液または血清から抽出される。核酸を抽出および/または試験するための正確な供給源は、実施されるアッセイ、生検の入手可能性、および実務者の選好に依存し得る。
【0182】
ゲノム遺伝子座コピー数および転写物発現を測定および定量化するためのいくつかのアッセイが公知である。CNAおよびRNA発現レベルは、ハイブリダイゼーション技法(例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH)、核酸増殖技法および配列決定を含む(がそれらに限定されない)いくつかの方法によって決定され得る。マイクロアレイベースの遺伝子発現、マイクロアレイ/SNPアレイベースのコピー数推論、RNA配列決定、標的化(捕捉)RNA配列決定、エキソーム配列決定、全ゲノム配列決定(WES/WGS)、標的化(パネル)DNA配列決定(Memorial Sloan Kettering Cancer Center Integrated Mutation Profiling of Actionable Cancer Targets(MSK-IMPACT)、Foundation Medicine CDx、Stanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)(moleculargenetics.stanford.edu/solid_tumors.htmを参照のこと)を含む)、遺伝子発現のためのnanoString nCounter、コピー数推論のためのnanoString nCounter、タンパク質およびRNA発現についてのnanoStringデジタル空間プロファイラー、DNA-ISH、RNA-ISH、RNAScope、DNAメチル化アッセイ、ならびにATAC-seqを含む(がそれらに限定されない)、種々の分子技法が使用され得る。
【0183】
いくつかの実施形態は、遺伝子パネル、例えば、学術センターによって構築されたもの(例えば、UCSF500 Cancer Gene Panel(San Francisco、CA))または他の使用を意図したコンパニオン診断アッセイ、例えば、Foundation One CDx(Foundation Medicine、Cambridge、MA)、およびMSK-IMPACT(Memorial Sloan Kettering Cancer Center、New York、NY)もしくはStanford Tumor Actionable Mutation Panel(STAMP)(Stanford、Stanford、CA)に由来する標的化配列決定データから、統合サブタイプ分類することに関する。十分な遺伝子カバー度がパネル内に含まれることを条件として、本明細書に記載されるアルゴリズムの種々の実施形態が利用され得る。一部の実施形態では、乳房がん評価のために設計された遺伝子パネルが利用される。一部の実施形態では、クロマチン調節遺伝子評価のために設計された遺伝子パネルが利用される。
【0184】
いくつかの実施形態は、CNAまたは遺伝子転写物の標的化検出に関する。したがって、多くの実施形態では、プローブおよび/またはプライマーは、直接的に、または本明細書に記載される計算的モデルを介してのいずれかで、IntClustサブグループを示す特定の遺伝子および/またはゲノム遺伝子座を検出するために使用される。
【0185】
当該分野で理解されるように、ゲノム遺伝子座または遺伝子の一部分のみが、陽性検出を有するために検出される必要があり得る。一部の例では、遺伝子は、僅か10ヌクレオチドの同定によって検出され得る。多くのハイブリダイゼーション技法では、検出プローブは、典型的には、10塩基と50塩基との間であるが、正確な長さは、アッセイ条件およびアッセイ開発者の選好に依存する。多くの増幅技法では、アンプリコンは、50塩基と1000塩基との間である場合が多く、これもまた、アッセイ条件およびアッセイ開発者の選好に依存する。多くの配列決定技法では、ゲノム遺伝子座および転写物は、10塩基と数百塩基との間の配列読み取りデータを用いて同定され、これもまた、アッセイ条件およびアッセイ開発者の選好に依存する。
【0186】
遺伝子配列および/またはアッセイツール(例えば、ハイブリダイゼーションプローブ、増幅プライマー)における少数のバリエーションが存在し得るが、検出アッセイにおいて類似の結果を提供すると予期されることを理解すべきである。これらの少数のバリエーションは、挿入、欠失、一塩基多型、およびアッセイ設計に起因する他のバリエーションを含む(がそれらに限定されない)。一部の実施形態では、検出アッセイは、完全な相同性ではないが高い相同性(例えば、70%、80%、90%または95%の相同性)を有するゲノム遺伝子座および転写物を検出することができる。当該分野で理解されるように、ハイブリダイゼーションに使用される核酸ポリマーが長くなるほど、ハイブリダイゼーションが生じるのに必要な相同性は低くなる。
【0187】
いくつかの遺伝子転写物は、発現されるいくつかのアイソフォームを有することもまた理解すべきである。当該分野で理解されるように、多くの代替的アイソフォームは、分子分類、したがって、がんの悪性度および再燃のリスクの類似の表示を与えることが理解される。したがって、遺伝子転写物の代替的アイソフォームもまた、一部の実施形態においてカバーされる。
【0188】
多くの実施形態では、アッセイは、CNAおよび転写物発現を測定および定量化するために使用される。アッセイの結果は、目的の組織の相対的なCNAおよび転写物発現を決定するために使用され得る。例えば、相補体核酸およびプローブのセットを利用して1つのマイクロチューブにおいて最大で数百個の核酸分子配列を定量化することができるnanoString nCounterは、ゲノム遺伝子座および/または遺伝子転写物のセットのCNAおよび転写物発現を決定するために使用され得る。得られたコピー数および発現は、直接的に、または本明細書に記載される計算的モデルを利用して、試料を分類するために使用され得、そうして、がんの悪性度および再燃のリスクを決定する。がんの悪性度および再燃のリスクに基づいて、がんは、しかるべく処置され得る。
【0189】
コピー数逸脱および遺伝子発現の検出のためのキット
いくつかの実施形態では、キットは、乳房がんリスクについて個体を評価するために利用され、ここで、このキットは、本明細書に記載されるように、バイオマーカーにおける遺伝的逸脱を検出するためおよび/または配列決定反応の準備をするために、使用され得る。例えば、キットは、悪性度および転移可能性を決定するために使用され得る、本明細書に記載される遺伝子バイオマーカーのうち任意の1つまたは複数を検出するために使用され得る。キットは、遺伝的逸脱を決定するためおよび/または配列決定の準備をするための1つまたは複数の薬剤、対象から得た生体試料(例えば、腫瘍または液体生検)を保持するための容器;ならびに試料に由来するバイオマーカー遺伝子内の1つまたは複数の遺伝的逸脱の存在または量を検出するために薬剤を生体試料と反応させるための印刷された使用説明書、を含み得る。これらの薬剤は、別々の容器中に包装され得る。キットは、生化学的アッセイ、酵素的アッセイ、イムノアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイまたは配列決定アッセイを実施するための1つまたは複数の対照参照試料および試薬をさらに含み得る。
【0190】
キットは、キット中に含まれる組成物のための1つまたは複数の容器を含み得る。組成物は、液体形態であり得るか、または凍結乾燥され得る。組成物のための適切な容器は、例えば、ビン、バイアル、シリンジおよび試験管を含む。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む種々の材料から形成され得る。キットは、腫瘍および/または液体生検から逸脱を検出する方法のための書面による使用説明書を含む添付文書もまた含み得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、キットは、CNAおよび転写物発現を測定および定量化するために使用される。種々の実施形態に従う核酸検出キットは、ゲノム遺伝子座および/または発現された転写物のセットに対して特異的な、ハイブリダイゼーション可能な相補体配列および/または増幅プライマーのセットを含む。一部の例では、キットは、ゲノム遺伝子座および/または発現された転写物のセットの検出および/または定量化を容易にするのに十分なさらなる試薬を含む。一部の例では、核酸検出キットは、少なくとも5、10、15、20、25、30、40または50個の遺伝子座および/または遺伝子について検出および/または定量化することができる。一部の例では、核酸検出キットは、少なくとも100、200、300、400、500または1000個の遺伝子座および/または遺伝子について検出および/または定量化するためのアレイを含む。一部の例では、キットは、アレイまたは配列決定技法を介して数千またはそれよりも多くの遺伝子を検出および/または定量化することができる。
【0192】
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーション可能な相補体配列のセットは、AffymetrixまたはIlluminaによって設計されたものなどのアレイ上に固定化される。多くの実施形態では、ハイブリダイゼーションを溶液中で実施できるように、nanoStringによって設計されたものなどの、ハイブリダイゼーション可能な相補体配列のセットが、ハイブリダイズした種の検出を促進するために「バーコード」に連結される。いくつかの実施形態では、PCRを溶液中で実施できるように、Applied Biosystems of ThermoScientific(Foster City、CA)によって設計されたものなどの、増幅および増幅された種の検出を促進するためのプライマー(および一部の場合には、プローブ)のセットが提供される。
【0193】
多くの実施形態は、コンパニオン診断法として利用されるキットに関する。したがって、種々の実施形態では、キットは、乳房がんを分類するために利用され、次いで、特定の処置を決定するために使用される。例えば、キットは、適切な処置を決定するために乳房がんの悪性度および再燃のリスクを決定するために利用され得る。一部の実施形態では、キットは、乳房がんが高リスクであるか、中間リスクであるか、低リスクであるかを決定し、次いで、それぞれ、より攻撃的なまたは攻撃性が低い処置を推定する。一部の実施形態では、キットは、乳房がんの分子病理学を決定し、次いで、1つまたは複数の発癌ドライバーを直接的に標的化する処置を使用するかどうかを推定する。
【0194】
分子特徴付けによって決定される乳房がんの処置
いくつかの実施形態は、乳房がんを分類および処置することに関する。いくつかの実施形態では、乳房がんは、そのDNAおよび/または転写物発現に基づいて、分子的に分類されるおよび/またはリスク層別化される。一部の実施形態では、乳房がんは、統計モデルを利用してリスクに基づいて層別化される。一部の実施形態に従う分子分類は、悪性度および再燃のリスクを示す。一部の実施形態では、統合クラスター(IntClust)サブタイプが、乳房がんを分子的に分類するために使用される。種々の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子のセットのコピー数および/または転写物発現分析が、乳房がんを分子病理学サブグループに分類するために使用される。分子病理学および/またはリスク層別化に基づいて、いくつかの実施形態は、乳房がんのための処置の過程を決定し、これは、がん再発を緩和するおよび/または腫瘍縮小を促進するための手段を含み得る。
【0195】
乳房がんを分子的に分類するおよび/またはリスク層別化するための方法のある実施形態が、図7に提供される。プロセス700は、乳房がん由来の核酸に対して、コピー数逸脱(CNA)、転写物発現および/または遺伝子メチル化分析を実施(701)することから開始する。いくつかの実施形態では、DNAおよび/またはRNA転写物は、分析のために、乳房がんを有する個体から抽出され、処理される。DNAは、種々のゲノム遺伝子座においてCNAおよび/またはメチル化分析を検出するために使用され得、RNAは、種々の遺伝子の発現レベルを決定するために使用され得る。
【0196】
CNAは、本明細書に記載されるいくつかの方法によって検出され得る。一部の実施形態では、がんのDNAは、CNAレベルを検出するために、個体から抽出され、処理される。種々の実施形態では、がんのRNAは、いくつかの遺伝子の発現レベルを検出するために、抽出および処理される。一部の例では、遺伝子発現は、さらなる分析のために直接的に使用される。一部の例では、遺伝子発現は、コピー数における逸脱が発現に影響するかどうかを決定するため、および/または所与の患者の腫瘍におけるドライバー遺伝子を記述するために利用される。一部の例では、CNAレベルは、RNA配列決定データから推定される。遺伝子のメチル化および/またはクロマチン利用可能性の決定が実施され得、これらは、さらなる分析のために使用され得る。
【0197】
循環する腫瘍DNA(ctDNA)を含む核酸は、当業者によって理解されるいくつかの方法論によって、がん生検からおよび/または個体の体液(例えば、血液、血漿)から抽出され得る。抽出されると、核酸は、本明細書に記載されるように、検出のために処理および調製され得る。検出の方法は、ハイブリダイゼーション技法(例えば、in situハイブリダイゼーション(ISH))、核酸増幅技法(例えば、PCR)および配列決定(例えば、エキソーム、ゲノム配列決定)を含む(がそれらに限定されない)。
【0198】
ゲノム遺伝子座および/または遺伝子は、本明細書に記載される種々の実施形態に従って検出される。一部の実施形態では、プローブおよび/またはプライマーのセットは、ゲノムCNAおよび/または発現された転写物の特定のセットを同定するために使用される。種々の実施形態では、全ゲノムもしくは部分的ゲノム、エキソーム、および/またはトランスクリプトームは、ゲノムCNAおよび/または発現された転写物の特定のセットを同定するために、配列決定および分析される。多くの実施形態では、ゲノムCNAおよび/または発現された転写物の特定のセットは、特定の分子分類を示す。一部の実施形態では、分子分類は、がんの悪性度および再燃のリスクを示す。一部の実施形態では、分子分類は、がんの分子病理学を示す。一部の実施形態では、ゲノムCNAおよび/または転写物の発現の特定のセットは、特定のIntClustサブグループを示す。一部の実施形態では、分子分類は、再発のリスクを層別化するためにさらに使用される。
【0199】
プロセス700は、遺伝分析(例えば、CNA、転写物発現、メチル化分析)に基づいて、乳房がんを分子的に分類および/またはリスク層別化(703)する。種々の実施形態では、分子クラス予測モデルは、縮小ベースの方法、ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンおよびニューラルネットワークを含む(がそれらに限定されない)。種々の実施形態では、統計的計算モデルは、多状態セミマルコフモデル、Cox比例ハザードモデル、縮小ベースの方法、ツリーベースの方法、ベイズ法、カーネルベースの方法およびニューラルネットワークを含む(がそれらに限定されない)。
【0200】
種々の実施形態に従う、種々のIntClustサブグループについて記載されたコピー数増幅は、本明細書に記載されるように、がんを特定のサブグループに分類するためのバイオマーカーとして使用される。いくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、乳房がんを特定の分子病理学サブグループ(例えば、IntClust)に割り当てるために、以前にトレーニングされた計算的分類器を利用する。種々の実施形態は、乳房がんの再発のリスクを決定するために、以前にトレーニングされたリスク層別化モデルを利用し得る。したがって、計算的分類器は、乳房がんを有する個体のDNAおよびRNA分析に由来するコピー数特色、遺伝子発現特色、ゲノムメチル化特色および/またはヌクレオソーム占有率特色を利用し得る。一部の実施形態では、コピー数特色は、ゲノム位置または遺伝子名のいずれかによって整合される。種々の実施形態では、発現特色は、発現および/または配列決定結果を検出するプローブに整合される。特色が整合された後、種々の実施形態は、各特色をz-スコアに変換し、他の標準化法を含み得る。多数の実施形態では、整合された特色は、分子分類および/または再発のリスクに基づいて個体を処置する方法を明らかにするために、分子分類器および/またはリスク層別化モデルに入力される。
【0201】
プロセス700はまた、がんの分子分類および/またはリスク層別化に基づいて、乳房がんを処置(705)する。一部の実施形態では、高悪性度および/または後期再燃性(例えば、IntClustサブグループ1、2、6および9)および/または高リスクサブグループに分類されたがんには、長期にわたるホルモン/内分泌療法(例えば、フルベストラント、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、タモキシフェン、GDC9545)が適用され得る。種々の実施形態では、高悪性度および/または後期再燃性および/または高リスクサブグループに分類されたがんは、化学療法で処置される。
【0202】
先に留意したように、種々のIntClustサブグループは、特定の分子逸脱およびゲノムドライバーによって特徴付けられ、これらの一部は、容易に治療的に標的化され得る。一部の実施形態では、IntClust1がんは、mTOR経路アンタゴニスト(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、シロリムス、ラパマイシン)、AKT1アンタゴニスト(例えば、イパタセルチブ、カピバセルチブ(AZD5363))、AKT1/RPS6KB1アンタゴニスト(例えば、M2698)、RPS6KB1アンタゴニスト(例えば、LY2584702)、PI3Kアンタゴニスト(例えば、アルペリシブ、ブパリシブ(BKM120)、ピクチリシブ(GDC-0941))、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。種々の実施形態では、IntClust2がんは、後成的に標的化される療法、CDK4/6アンタゴニスト(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ)、FGFR経路アンタゴニスト(例えば、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877、ポナチニブ)、PARP阻害剤(例えば、ニラパリブ、オラパリブ)、相同組換え欠損(HRD)標的化療法、PAK1阻害剤(例えば、IPA3)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。一部の実施形態では、IntClust6がんは、FGFR経路アンタゴニスト(例えば、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877、ポナチニブ)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。そして、種々の実施形態では、IntClust9がんは、選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)(例えば、フルベストラント、GDC-9545、SAR439859(SERD ’859)、RG6171、AZD9833)、タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)ARV-471、SRC3アンタゴニスト(例えば、SI-2)、MYCアンタゴニスト(例えば、omomyc)、BETブロモドメインアンタゴニスト(例えば、JQ1、PROTAC ARV-771)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。
【0203】
分子分類および/またはリスク層別化に基づいて乳房がんを処置するためのプロセスの具体的な例が上記されるが、当業者は、プロセスの種々のステップが、異なる順序で実施され得ること、およびある特定のステップが、本発明の一部の実施形態に従って必要に応じたものであり得ることを理解することができる。このように、プロセスの種々のステップが、具体的な適用の要件に必要に応じて使用され得ることが明らかなはずである。さらに、所与の適用の要件への、乳房がんを処置するための種々のプロセスのいずれもが、本発明の種々の実施形態に従って利用され得る。
【0204】
処置の方法
種々の実施形態は、がんの分子特徴付けおよび/またはリスク層別化に基づく、乳房がんの処置に関する。本明細書に記載されるように、がんの分子病理学ならびに/または悪性度および再燃のリスクによる乳房がんの分類。この分類に基づいて、乳房がん(または乳房がんを有する個体)は、しかるべく処置され得る。
【0205】
いくつかの実施形態は、がんの分子分類および/またはリスク層別化に基づく、乳房がんを処置するための薬物適用の使用に関する。一部の実施形態では、薬物適用は、処置の過程の一部として、治療有効量で投与される。この文脈で使用される場合、「処置する」とは、処置される障害の少なくとも1つの症状を寛解させること、または有益な生理学的効果を提供することを意味する。例えば、症状の1つのかかる寛解は、腫瘍サイズおよび/または再燃のリスクの低減であり得る。
【0206】
治療有効量は、乳房がんの症状を予防、低減、寛解または排除するのに十分な量であり得る。一部の実施形態では、治療有効量は、腫瘍サイズを測定することおよび増殖レベル(例えば、Ki67+発現)を測定することを含む(がそれらに限定されない)いくつかの方法によって決定され得る、乳房がん成長においてがん成長を低減させるのに十分な量である。
【0207】
放射線療法、化学療法、標的化(分子)療法、内分泌療法および免疫療法を含む(がそれらに限定されない)、いくつかの処置および薬物適用が、乳房がんを処置するために利用可能である。したがって、個体は、種々の実施形態によれば、本明細書に記載される単一の薬物適用または薬物適用の組合せによって、処置され得る。
【0208】
抗がん剤または化学療法剤のクラスは、アルキル化剤、白金剤、タキサン、ビンカ剤、抗エストロゲン薬物、アロマターゼ阻害剤、卵巣抑制剤、内分泌/ホルモン剤、ビスホスホネート療法剤および標的化された生物学的療法剤を含み得る。薬物適用は、シクロホスファミド、フルオロウラシル(または5-フルオロウラシル、即ち5-FU)、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチン、シスプラチン、タキサン、パクリタキセル、タンパク質結合型パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン、フルベストラント、ゲムシタビン、イリノテカン、イクサベピロン、テモゾロミド、トポテカン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、ムタマイシン(mutamycin)、カペシタビン、カペシタビン、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、リュープロリド、アバレリックス、ブセレリン、ゴセレリン、酢酸メゲストロール、リセドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、アレンドロネート、ゾレドロネートおよびタイケルブを含む(がそれらに限定されない)。アントラサイクリンは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシンおよびミトキサントロンを含む(がそれらに限定されない)。
【0209】
内分泌療法は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)、アロマターゼ阻害剤およびPROTAC ARV-471を含む(がそれらに限定されない)。SERMは、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、オスペミフェンおよびバゼドキシフェンを含む(がそれらに限定されない)。SERDは、フルベストラント、ブリラネストラント(brilanestrant)(GDC-0810)、エラセストラント、GDC-9545、SAR439859(SERD ’859)、RG6171およびAZD9833を含む(がそれらに限定されない)。アロマターゼ阻害剤は、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタンおよびファドロゾールを含む(がそれらに限定されない)。閉経前の女性のための内分泌療法は、タモキシフェン、SERDまたはアロマターゼ阻害剤の投与を含む(がそれらに限定されない)。卵巣アブレーションおよび/または卵巣抑制もまた実施され得る。閉経後の女性のための内分泌療法は、SERMまたはアロマターゼ阻害剤の投与を含む(がそれらに限定されない)。
【0210】
処置される乳房がんに適切な投薬および治療レジメンが、当業者に理解されるように投与され得る。例えば、アントラサイクリンは、1週間当たり10mg/m~300mg/mの投薬量で静脈内投与され得る。同様に、5-FUは、25mg/mと1000mg/mとの間の投薬量で静脈内投与され得る。メトトレキサートは、1mg/mと500mg/mとの間の投薬量で静脈内投与され得る。
【0211】
ステージI、II、IIIおよびIVの乳房がんを含む、任意の適切な乳房がんが処置され得る。エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)およびヒト上皮増殖因子2(Her2)について陽性および/または陰性の状態を有する乳房がんもまた、本発明の種々の実施形態に従って処置され得る。
【0212】
発癌病理学に基づく標的化療法
いくつかの実施形態は、乳房がんを処置するための標的化(分子)療法に関する。これらの実施形態の多くでは、標的化療法は、分子分類(例えば、IntClustサブグループへの分類)に基づいて決定される、乳房がんの分子病理学または発癌ドライバーを特異的に標的化する療法である。したがって、標的化療法は、発癌ドライバーの機能を緩和する療法、(例えば)発癌ドライバーの活性を阻害するアンタゴニストなどである。一部の実施形態では、標的化療法は、発癌ドライバーの経路を標的化する。一部の実施形態では、コンパニオン診断法が、標的化療法を利用するかどうかを決定するために利用され、ここで、コンパニオン診断法は、乳房がんの発癌ドライバーを同定する。
【0213】
IntClustサブグループ1、2、6および9内に分類されるER+/HER2-乳房がんは、再燃する高い見込みを有する、より高悪性度のがんであることが現在理解されている。高リスクサブグループの発癌ドライバーは、この処置困難群への療法を改善するために標的化され得ることが、さらに理解される。図3Aおよび3Bに示されるように、IntClust1の一部の発癌ドライバーは、RPS6KB1、PRR11および/またはBCAS3であり、IntClust2の一部の発癌ドライバーは、FGF3/FGF4/FGF19、EMSY、PAK1および/またはRSF1と組み合わされることがあり得るCCND1であり、IntClust6の一部の発癌ドライバーは、FGFR1、EIF4EBP1および/またはZNF703であり、IntClust9の発癌ドライバーは、MYCおよび/またはNCOA3である。
【0214】
いくつかの実施形態では、発癌病理学は、直接的に標的化される。一部の実施形態では、IntClust1がんは、mTOR経路アンタゴニスト(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、シロリムス、ラパマイシン)、AKT1アンタゴニスト(例えば、イパタセルチブ、カピバセルチブ(AZD5363))、AKT1/RPS6KB1アンタゴニスト(例えば、M2698)、RPS6KB1アンタゴニスト(例えば、LY2584702)、PI3Kアンタゴニスト(例えば、アルペリシブ、ブパリシブ(BKM120)、ピクチリシブ(GDC-0941))、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。種々の実施形態では、IntClust2がんは、後成的に標的化される療法、CDK4/6アンタゴニスト(例えば、パルボシクリブ、リボシクリブ、アベマシクリブ)、FGFR経路アンタゴニスト(例えば、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877、ポナチニブ)、PARP阻害剤(例えば、ニラパリブ、オラパリブ)、相同組換え欠損(HRD)標的化療法、PAK1阻害剤(例えば、IPA3)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。一部の実施形態では、IntClust6がんは、FGFR経路アンタゴニスト(例えば、ルシタニブ、ドビチニブ、AZD4547、エルダフィチニブ、インフィグラチニブ(BGJ398)、BAY-1163877、ポナチニブ)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。そして、種々の実施形態では、IntClust9がんは、選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)(例えば、フルベストラント、GDC-9545、SAR439859(SERD ’859)、RG6171、AZD9833)、タンパク質分解標的化キメラ(PROTAC)ARV-471、SRC3アンタゴニスト(例えば、SI-2)、MYCアンタゴニスト(例えば、omomyc)、BETブロモドメインアンタゴニスト(例えば、JQ1、PROTAC ARV-771)、eIF4Aアンタゴニスト(例えば、ゾタチフィン)、eIF4Eアンタゴニスト(例えば、ラパマイシン、ラパマイシンアナログ、リバビリン、AZD8055)、またはそれらの組合せで処置される。
【0215】
初期ステージER+/HER2-乳房がんのための層別化および処置
いくつかの実施形態は、IntClust分類および/またはリスク層別化が、処置を層別化するために利用される、初期ステージ乳房がんの処置の方法に関する。現在のプロトコール標準では、乳房がんスクリーニングは、どのように進行するかについてのいくつかの予備的決定を提供する。典型的には、がんステージ(即ち、ステージI、II、IIIおよびIVの腫瘍型(即ち、管、小葉、混合型、化生性))、腫瘍サイズ、リンパ節内のがんの存在、および基本的遺伝分析(即ち、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)およびヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の状態)を決定することを含む、基本的な組織学および腫瘍評価、ならびにイメージングが実施される。これらの因子に基づいて、当該分野で現在実施されている特定の処置が実施される。
【0216】
ER+/HER2-乳房がんが、ステージI~IIIでありかつ節陰性である場合、これは、初期ステージ乳房がんとみなされる。現在の標準治療によれば、0.5cm未満の腫瘍を有する初期ステージER+/HER2-乳房がんは、手術およびアジュバント内分泌療法で処置される。初期ステージER+/HER2-乳房がんが、0.5cmよりも大きい腫瘍を有する場合、現在の標準治療によれば、再発のリスクを決定するために、分子試験、例えば、Oncotype DXが実施される場合が多い。再発のリスクが低い(例えば、Oncotypeスコア<18)場合、処置は、手術およびアジュバント内分泌療法を必然的に伴う。再発のリスクが高い(例えば、Oncotypeスコア≧31)場合、処置は、手術、アジュバント内分泌療法およびアジュバント化学療法を必然的に伴う。再発のリスクが中間(例えば、Oncotypeスコア18~30)である場合、処置は、アジュバント化学療法もまた実施する可能性を伴って、手術およびアジュバント内分泌療法を必然的に伴う。中間リスクにおけるアジュバント化学療法の利益は、この群内のリスクの層別化の欠如に起因して、明確ではない。
【0217】
いくつかの実施形態では、IntClust分類は、それが節陽性であるか節陰性であるかにかかわらず、初期ステージER+/HER2-乳房がんに対する分子試験として使用される。したがって、一部の実施形態では、初期ステージER+/HER2-乳房がんは、高リスクのIntClustサブグループ(即ち、IntClustサブグループ1、2、6または9)に分類され、手術、アジュバント内分泌療法およびアジュバント化学療法で処置される。一部の実施形態では、IntClust分類は、再発のリスクを決定するために、統計モデル内で特色として使用される。一部の実施形態では、高リスクとして層別化されたまたは高リスクのIntClustサブグループに分類されたがんは、IntClustサブグループの分子ドライバーに向けられた標的化療法を受ける。そして、一部の実施形態では、より低いリスクとして層別化されたまたはより低いリスクのIntClustサブグループ(即ち、IntClustサブグループ3、4ER+、7または8)に分類された、初期ステージER+/HER2-乳房がんは、手術およびアジュバント内分泌療法で処置されるが、化学療法に関連する有害な影響を低減させるために、化学療法では処置されない。
【0218】
いくつかの実施形態では、リスク層別化および/またはIntClust分類は、初期ステージER+/HER2-乳房がんに対する古典的な分子試験に加えて使用される。一部の実施形態では、リスク層別化および/またはIntClust分類は、これらの患者をさらに層別化するために、再発のリスクが別のモデルによって中間(例えば、Oncotypeスコア18~30)であると決定される場合に、使用される。したがって、一部の実施形態では、初期ステージER+/HER2-乳房がんが、古典的方法によって中間リスク群(例えば、Oncotypeスコア18~30)に分類され、本明細書に記載される方法によって高リスク群に分類される(例えば、高リスクのIntClustサブグループへの分子分類)場合、そのがんは、手術、アジュバント内分泌療法およびアジュバント化学療法で処置される。一部の実施形態では、高リスクとして層別化されたがんも、IntClustサブグループの分子ドライバーに向けられた標的化療法を受ける。そして、一部の実施形態では、初期ステージER+/HER2-乳房がんが、古典的方法によって中間リスク群(例えば、Oncotypeスコア18~30)に分類され、本明細書に記載される方法によってより低いリスク群に分類される(例えば、より低いリスクのIntClustサブグループへの分子分類)場合、それは、手術およびアジュバント内分泌療法で処置されるが、化学療法では処置されない。
【0219】
低い、中間のおよび高いへの、分子試験スコアの分類、例えば、Oncotypeは、変化し得ることに留意されたい(例えば、その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるJ. A. Sparano, et al., N. Engl. J. Med. 379, 111-121 (2018)を参照のこと)。起こり得る変化にもかかわらず、スコアをより良く理解するために分子ドライバー分類(例えば、IntClust分類)を使用するという判断が、なおも適用される。例示的実施形態に詳述されるように、Oncotypeと組み合わせた分子ドライバー分類の利用により、Oncotype単独よりも、再燃のリスクのより良い理解が得られる。
【0220】
Prosigna、MammaPrint、EndoPredict、BCIを含むいくつかの他の分子分類評価が、初期ステージ乳房がんに対して実施され得る。したがって、いくつかの種々の実施形態では、IntClust分類が、Prosigna、MammaPrint、EndoPredict、BCI、またはそれらの組合せに加えて使用される。多くの実施形態では、IntClust分類は、適切な処置戦略を決定するために、診断を確認するためおよび/または患者をより良好に層別化するために、別の分子分類と組み合わされ得る。
【0221】
エストロゲンの調節は重要であるので、女性の閉経状態もまた、適切な処置を決定する際に役立ち得る。ER+/HER2-乳房がんおよびより高い再発のリスク(若い年齢、高グレード腫瘍、リンパ節関与、または再発のリスクの分子予測子に基づいて)を有する閉経前の女性について、5年間にわたるタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤(プラス卵巣抑制またはアブレーション)が、一部の実施形態に従って投与される。アロマターゼ阻害剤は、アナストロゾール、エキセメスタンおよびレトロゾールを含む(がそれらに限定されない)。
【0222】
いくつかの実施形態では、閉経後の女性について、タモキシフェンが、4.5~6年間、および最大で10年間にわたって投与される。一部の実施形態では、アロマターゼ阻害剤は、閉経後の女性に投与される。彼女らの処置計画の一部として、一部の閉経後の女性は、アロマターゼ阻害剤単独を種々の実施形態に従って使用する。その他は、種々の実施形態に従って、1~5年間にわたってタモキシフェンを使用し、次いで、アロマターゼ阻害剤の使用を開始する。アロマターゼ阻害剤は、アナストロゾール、エキセメスタンおよびレトロゾールを含む(がそれらに限定されない)。
【0223】
いくつかの実施形態は、初期ステージ乳房がんのための標的化処置を利用する。例えば、一部の実施形態では、RPS6KB1発癌病理学を有する初期ステージ乳房がん(例えば、IntClust1)には、カピバセルチブ(AZD5363)またはM2698が投与され得る。1つの処置レジメンでは、カピバセルチブは、4日間の投薬および3日間の休薬の、間欠的な毎週の投薬スケジュールで与えられる、1日2回の400mg(2個の経口錠剤)で投与される(即ち、各々28日の処置サイクル内で、1、2および3週目の2日目~5日目に投薬し、その後、1週間の処置なしが続く)。これは、内分泌療法、例えば、フルベストラント(500mg)と、および潜在的にはタモキシフェンと組み合わせて、与えられ得る。M2698は、単独で240mgで毎日、またはタモキシフェンと組み合わせて160mgで毎日投与され得る。FGFR経路発癌病理学(例えば、FGFRおよびFGF発癌遺伝子)を有するがん(例えば、IntClust2、IntClust6)では、インフィグラチニブが、3週間の投薬、1週間の休薬で、75~125mgで毎日投与され得る。CDK4/6発癌病理学を有するがん(例えば、IntClust2、IntClust6)では、パルボシクリブは、3週間の投薬、1週間の休薬で、125mgで毎日投与され得る。
【0224】
具体的な処置レジメンが記載されているが、これらは、例示的な処置選択肢として提供されている。投薬量および/またはスケジュールの変更が、種々の実施形態内に含まれることを理解すべきである。当業者に理解されるように、種々の処置組合せが変更され得、他の処置組合せで置換され得、および/または他の処置組合せと組み合わされ得ることもまた理解すべきである。例えば、フルベストラントを含む種々の処置レジメンは、他のSERD、タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤を含むように変更され得る。フルベストラントは、低い経口アベイラビリティを有するので、一部の実施形態では、PROTAC ARV-471または経口的に利用可能なSERD、例えば、GDC-9545、SAR439859(SERD ’89)、RG6171もしくはAZD9833が利用され得る。
【0225】
転移性ER+/HER2-乳房がんのための処置
いくつかの実施形態は、IntClust分類が利用される、転移性乳房がんの処置の方法に関する。現在のプロトコール標準では、乳房がんスクリーニングは、どのように進行するかについてのいくつかの予備的決定を提供する。典型的には、がんステージ(即ち、ステージI、II、IIIおよびIVの腫瘍型(即ち、管、小葉、混合型、化生性))、腫瘍サイズ、リンパ節内のがんの存在、および基本的遺伝分析(即ち、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)およびヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の状態)を決定することを含む、基本的な組織学および腫瘍評価が実施される。これらの因子に基づいて、当該分野で現在実施されている特定の処置が実施される。
【0226】
ER+/HER2-乳房がんがステージIVおよび/または節陽性である場合、これは、転移性乳房がんとみなされる。処置決定は、女性が閉経前であるか閉経後であるかに依存する。閉経前の女性について、処置は、タモキシフェン、トレミフェンまたはフルベストラントの投与を含む(がそれらに限定されない)。卵巣アブレーションおよび/または卵巣抑制もまた実施され得る。閉経後の女性について、処置は、タモキシフェンおよび/またはアロマターゼ阻害剤の投与を含む(がそれらに限定されない)。これらの処置は、5年から10年まで実施され得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、転移性がんには、標的化処置が投与される。例えば、一部の実施形態では、RPS6KB1発癌病理学を有するがん(例えば、IntClust1)には、カピバセルチブ(AZD5363)またはイパタセルチブが投与され得、これらは、アロマターゼ阻害剤および/または他の内分泌療法と組み合わされ得る。いくつかの処置レジメンが企図される。1つのレジメンでは、処置は、カピバセルチブおよびアロマターゼ阻害剤を含み、カピバセルチブは、4日間の投薬および3日間の休薬で、400mg/日で投与されるが、アロマターゼ阻害剤は毎日投与される。1つのレジメンでは、処置は、カピバセルチブおよびフルベストラントを含み、カピバセルチブは、4日間の投薬および3日間の休薬で、400mg/日で投与されるが、500mgのフルベストラントが、28日サイクルの1日目および15日目に投与され、各引き続くサイクルの1日目に再度投与される。1つのレジメンでは、処置は、カピバセルチブおよびフルベストラントおよびパルボシクリブを含み、カピバセルチブは、4日間の投薬および3日間の休薬で、400mg/日で投与されるが、500mgのフルベストラントが、28日サイクルの1日目および15日目に投与され、各引き続くサイクルの1日目に再度投与され、パルボシクリブは、3週間の投薬および1週間の休薬のスケジュールで、経口投与される。1つのレジメンでは、処置は、イパタセルチブおよびアロマターゼ阻害剤を含み、イパタセルチブは、これもまた毎日投与されるアロマターゼ阻害剤と一緒に、400mg/日で毎日投与される。1つのレジメンでは、処置は、イパタセルチブおよびフルベストラントを含み、イパタセルチブは、400mg/日で毎日投与されるが、500mgのフルベストラントが、28日サイクルの1日目および15日目に投与され、各引き続くサイクルの1日目に再度投与される。1つのレジメンでは、処置は、イパタセルチブおよびフルベストラントおよびパルボシクリブを含み、イパタセルチブは、400mg/日で毎日投与されるが、500mgのフルベストラントが、28日サイクルの1日目および15日目に投与され、各引き続くサイクルの1日目に再度投与され、パルボシクリブは、3週間の投薬および1週間の休薬のスケジュールで、経口投与される。
【0228】
いくつかの実施形態では、転移性がんには、IntClust分類によって決定され得る標的化処置が投与される。例えば、一部の実施形態では、FGFR経路(例えば、FGFRおよび/またはFGF発癌遺伝子)発癌病理学を有するがん(例えば、IntClust2、IntClust6)には、インフィグラチニブ(BGJ398)が投与され得、これは、アロマターゼ阻害剤および/もしくは他の内分泌療法と、または潜在的には化学療法と組み合わされ得る。いくつかの処置レジメンが企図される。1つのレジメンでは、処置は、インフィグラチニブおよびアロマターゼ阻害剤を含み、インフィグラチニブは、3週間の投薬および1週間の休薬で125mg/日で毎日投与されるが、AIは毎日投与される。1つのレジメンでは、処置は、インフィグラチニブおよびフルベストラントを含み、インフィグラチニブは、3週間の投薬および1週間の休薬で125mg/日で毎日投与されるが、500mgのフルベストラントが、28日サイクルの1日目および15日目に投与され、各引き続くサイクルの1日目に再度投与される。1つのレジメンでは、処置は、インフィグラチニブおよびフルベストラントおよびパルボシクリブを含み、インフィグラチニブは、3週間の投薬および1週間の休薬で125mg/日で毎日投与されるが、500mgのフルベストラントが、28日サイクルの1日目および15日目に投与され、各引き続くサイクルの1日目に再度投与され、パルボシクリブは、3週間の投薬および1週間の休薬のスケジュールで、経口投与される。
【0229】
具体的な処置レジメンが記載されているが、これらは、例示的な処置選択肢として提供されている。投薬量および/またはスケジュールの変更が、種々の実施形態内に含まれることを理解すべきである。当業者に理解されるように、種々の処置組合せが変更され得、他の処置組合せで置換され得、および/または他の処置組合せと組み合わされ得ることもまた理解すべきである。例えば、パルボシクリブを含む処置レジメンは、リボシクリブおよび/またはアベマシクリブを含むように変更され得る。
【0230】
三重陰性乳房がんのための処置
いくつかの実施形態は、IntClust分類が利用される、三重陰性がんの処置の方法に関する。現在のプロトコール標準では、乳房がんスクリーニングは、どのように進行するかについてのいくつかの予備的決定を提供する。典型的には、がんステージ(即ち、ステージI、II、IIIおよびIVの腫瘍型(即ち、管、小葉、混合型、化生性))、腫瘍サイズ、リンパ節内のがんの存在、および基本的遺伝分析(即ち、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)およびヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)の状態)を決定することを含む、基本的な組織学および腫瘍評価が実施される。これらの因子に基づいて、当該分野で現在実施されている特定の処置が実施される。
【0231】
乳房がんがPR、ERまたはHER2の増幅を欠如する(即ち、PR-、ER-およびHER2-)場合、これは、三重陰性乳房がんとみなされる。三重陰性乳房がん(TNBC)について、ホルモンまたはHER2を標的化する療法は、機能しない。その代わり、現在の標準治療によれば、TNBCは、手術、放射線照射療法および/または化学療法の組合せで処置される。TNBCのための新興の選択肢は、チェックポイント阻害剤、例えば、ペムブロリズマブもしくはニボルマブおよび/またはタンパク質PD-L1もしくはPD1を標的化する免疫療法、例えば、アテゾリズマブ(Tecentriq)での処置である。一部の実施形態では、IntClust4ER-内に分類されるTNBCは、アテゾリズマブで処置されるが、それは、この分類内のがんが、高い程度の免疫浸潤および再発の持続性のリスクを有するからである。一部の実施形態では、IntClust10内に分類されるTNBCは、免疫系をより良好に刺激し、したがって、アテゾリズマブ処置に対してより感受性にするために、放射線照射もしくは化学療法の後に、または放射線照射もしくは化学療法と潜在的に組み合わせて、アテゾリズマブで処置される。
【0232】
患者由来のオルガノイドの発生および使用
いくつかの実施形態は、患者のがん組織に由来する、in vitroで培養したがん細胞の三次元組織である患者由来のオルガノイド(PDO)の発生および使用に関し、オルガノイドでは、三次元培養物における発癌シグナル伝達が、in vivo状況をより良好に模倣する。PDOは、in vivoで異種移植することもできる。PDOは、患者のがんの生物学的特色を反復し、したがって、がんを処置する薬物化合物の能力を調査するために十分適したモデルである。さらに、PDOは、既存のがん細胞系では十分に示されていない、高リスク乳房がんのために発生させることができる。
【0233】
種々の実施形態では、PDO系は、一般的および/またはパーソナル薬物化合物処置調査のために発生させられる。したがって、一部の実施形態では、PDO系は、分子サブグループ(例えば、IntClustサブグループ)に特徴付けられ、そのサブグループ内に入る患者を処置するための候補薬物化合物を推定するためのモデルとして利用される。一部の実施形態では、分子サブグループを有するPDO系のパネルが、そのサブグループ内に入る患者を処置するための候補薬物化合物を推定するために調査される。そして、個別化された評価のための一部の実施形態では、PDO系は、特定の患者に由来し、次いで、その患者を処置するための薬物化合物を推定するために評価される。
【0234】
一般的薬物化合物処置調査について、候補薬物化合物を推定するための方法の実施形態は、以下のように実施され得る:
・ 1人または複数の患者からがん細胞を抽出する
・ 組織の発癌病理学を、分子サブグループに分類する
・ 1人または複数の患者由来の1つまたは複数のPDO系のパネルを発生させる;パネル内の各PDO系は、類似の分子病理学を共有する(例えば、あるIntClustサブグループ内のPDO系のパネル)
・ 薬物化合物をパネルに投与して、類似の分子病理学を共有する患者の処置のための候補薬物化合物を同定する。
【0235】
一部の実施形態では、一般的薬物化合物処置調査の結果は、前臨床データとして、または患者についての臨床試験を開発するために、利用される。一部の実施形態では、化合物濃度(例えば、IC50)が評価される。一部の実施形態では、がん細胞に対する化合物毒性が評価される。一部の実施形態では、健康な細胞に対する化合物毒性が、潜在的なオフターゲット効果および/または副作用を決定するために評価される。
【0236】
パーソナル薬物化合物処置調査について、候補薬物化合物を推定するための方法の実施形態は、以下のように実施され得る:
・ 患者からがん細胞を抽出する
・ 必要に応じたもの:患者のがんまたは誘導されたPDOを、分子サブグループに特徴付ける
・ 患者由来の1つまたは複数のPDO系のパネルを発生させる
・ パネル中の薬物化合物を試験して、患者のための特定の処置レジメンのための薬物化合物を同定する
〇 必要に応じたもの:試験される薬物化合物は、特定の分子サブグループについての候補化合物である
〇 必要に応じたもの:薬物化合物の組合せを試験して、処置レジメンのための薬物のより最適な組合せを決定する。
【0237】
一部の実施形態では、パーソナル薬物化合物処置調査の結果は、患者にパーソナル処置を投与するために利用される。一部の実施形態では、化合物濃度が評価される。一部の実施形態では、患者のがん細胞に対する化合物毒性が評価される。一部の実施形態では、患者の健康な細胞に対する化合物毒性が、潜在的なオフターゲット効果および/または副作用を決定するために評価される。
【実施例
【0238】
例示的実施形態
本発明の実施形態は、その中に提供されるいくつかの実施例によってより良く理解される。乳房がん再燃の分子指標を同定するプロセスの多くの例示的な結果が提供される。検証結果もまた提供される。
【0239】
(実施例1)
乳房がん再燃の動態
乳房がんは、臨床的に関連する中間のエンドポイント、例えば、局所領域的または遠隔位置における再発を伴う、複数のステージの進行を有する(即ち、多状態疾患)。これらの再発事象は相関付けられ、1つのエンドポイントの個々の生存分析は、差次的予後に関連し得る再発のパターンを完全には捕捉できない。患者の予後は、再燃が起こる時間および場所、手術以降の時間、および局所領域的または遠隔再燃以降の時間に依存して、劇的に異なり得る。これらの別個の状態および時間尺度は、一般には説明されておらず、本明細書で提案された統一統計フレームワークの開発の動機付けを与える。
【0240】
これらの制限を克服するために、種々の実施形態は、異なる臨床的エンドポイントおよび時間尺度、ならびに死亡率の競合するリスクを説明し、再燃のリスクを含む個体のリスクの記載を可能にする計算的モデルを組み込む。これらの実施形態の一部では、非一様(セミ)マルコフ連鎖モデルが使用される。数年間の臨床的追跡を伴う、付随する分子データを有する多くの患者を含む乳房がん患者のコホートへのこれらのモデルの適用は、別個の分子サブグループを横断する乳房がん再燃の時空間動態を記述することができる。特に、臨床的サブグループ、PAM50サブグループ(それらの開示が各々、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、C. M. Perou, et al. Nature 406, 747-52 (2000)、J. S. Parker J. Clin. Oncol. 27, 1160-67 (2009))、ならびにゲノムコピー数変更および転写プロファイルの統合に基づいて定義された統合クラスター(IntClust)(上で引用したC. Curtis, et al., 2012)を横断する再燃のパターンを評価して、高悪性度がんおよび高リスクの再発を有する患者の分子サブグループを同定した。注目すべきことに、いくつかの実施形態では、特定のゲノムドライバーを保有する4個の統合サブグループは、初期診断の20年後まで、高リスクの再発を有する。これら4個のサブグループは、全てのER+腫瘍のおよそ25%を占めることが見出されている。さらに、これら4個のサブグループの各々は、統合クラスターのうち1つにマップされ、11q13(FGF3、CCND1、RSF1)、8p12(FGFR1、ZNF703)、17q23(RPS6KB1)および8q24(MYC)を含むゲノムの種々のセクションの特徴的なコピー数増幅事象について富化される。これらの統合されたクラスターの使用は、標準的な臨床的共変量を超えて後期遠隔再燃の予測を改善することが見出されており、これは、外部検証コホートにおいて補強される。三重陰性乳房がん患者のサブグループは、5年後の再発はまれであるが、他は、リスクがあるままであることも見出されている。遠隔再発の後、腫瘍サブタイプは、引き続く転移の比率を決定付け続け、したがって、腫瘍を分類することの重要性が強調される。これらの知見に基づいて、いくつかの実施形態は、診断方法によって決定される、高悪性度がんおよび再燃の特定のリスクを有する個体を同定することに関する。種々の実施形態は、がんの悪性度および再燃のリスクに基づいて、個体を処置および/またはモニタリングする。
【0241】
英国およびカナダの5つの腫瘍バンクに由来する3,240人の患者からのデータを、本明細書に記載される研究のために使用し、本明細書でフルデータセット[FD](9.75年の中央値追跡)と呼ぶ。[FD]は、臨床的および病理学的変数を含み、これを使用して、臨床的サブタイプ(ER+/HER2+、ER+/HER2-、ER-/HER2+、ER-/HER2-)を定義した。1,980人の患者のサブセットについて、遺伝子発現およびコピー数データに基づく統合されたゲノム分析は、以前に記載されており、本明細書で分子データセットまたはMETABRIC[MD]と呼ぶ。このコホートについて、腫瘍を、臨床的サブタイプ、固有サブタイプ(PAM50)(上で引用したC. M. Perou, et al., (2000)およびJ. S. Parker, et al., (2009))および統合クラスター(IntClust)メンバーシップ(上で引用したC. Curtis, et al., (2012)およびH. R. Ali, et al., (2014))に基づいて層別化する。最後に、遠隔転移を経験した患者のサブセット(再燃した1079人のうち618人)について、各再発(最初の再発だけではなく)の日付についての完全な情報が入手可能であり、時空間動態の分析を可能にする。このデータは、本明細書で再発性事象データセット[RD]と呼ぶ。これら3つのデータセットを、表2~4、図8に提供される臨床的な詳細と共に、表1に要約する。1380人の乳房がん患者から構成される独立したコホートを使用して、これらの知見を外部から検証した(図9)。
【0242】
[FD]から、乳房がんにおける2つの重要な中間エンドポイントを単純に記載するいくつかの基本的パラメーターを導出した:局所領域的再燃(LR)および遠隔再燃(DR)。この実施例について、局所領域的再燃は、同じ乳房、胸部の皮膚、腋窩、内胸、腋窩のまたは鎖骨上リンパ節中の病変を含め、局所的または領域的再発である。遠隔再燃は、遠隔転移として定義される。
【0243】
2297人のER+患者のうち、312人(14%)および718人(31%)の患者が、それぞれLRまたはDRを経験し、176人(8%)は、LRおよびDRの両方を有したが、850人のER-患者のうち、140人(16%)はLRを経験し、335人(39%)はDRを経験し、111人(13%)は両方を有した。再発した患者では、再燃までの平均時間は、ER+患者ではLRまで平均5.7年、DRまで平均5.4年であり、ER-患者ではLRまで平均2.8年、DRまで平均2.8年である点で異なった。最後に、LRを経験した患者のうち、ER+患者の56%およびER-患者の79%は、DRまたは乳房がん死亡を有するに至った。LR後のDRまたは乳房がん死亡までの平均時間は、ER+腫瘍を有する患者については2.1年、ER-疾患を有する患者については0.9年であった。
【0244】
基本的な品質制御を、データに対して実施した。ゼロと等しい再燃時間または最後の観察された時間と等しい再燃時間を有した観察は、0.1日シフトした。遠隔再燃後に発生した局所的再燃は除外した。ステージIVのがんを有する11の症例もまた、分析から除外した。良性および葉状腫瘍は分析から除去した。最後の追跡時間または死亡の時間が、全ての患者についての最終エンドポイントであった。データセットから第2の原発性腫瘍を除去するために、特別な症例を選んだ。各モデルにおいて使用した症例の総数は、臨床的変数、分子分類などにおける異なる欠測値に起因して異なり得る。
【0245】
乳房がん再発についての多状態モデル
LRおよびDRの中間の事象を組み込む生存の分析もまた試験した。ほとんどの研究は、無病生存または全生存期間を試験しているが、このアプローチには重大な制限がある。重要なことに、ER+患者は、ER-患者よりも、非悪性原因からのより高い死亡率を経験しているが、それは、彼女らが、診断の時点でより年齢が高い傾向があるからである。
【0246】
ほとんどの生存分析は、一次エンドポイントとしての疾患特異的死亡、および打ち切り自然死を使用しているが、この戦略は、いくつかの競合するリスクが存在し、バイアスのかかった生存のカプラン・マイヤー推定を生じる状況では、研究された変数と無関係ではない打ち切り機構を生成する。コホートにおけるバイアスの程度は、異なる死亡原因についての適切な累積発生率関数を用いた推定(図11)に対して、がん関連死のみを考慮に入れたER-患者およびER+患者についてのがん関連死についての単純な累積発生率(1-生存確率として計算される)(図10)を比較することによって明らかである。この実施例に記載されるように、がん関連死は、死亡証明書においてがん関連と標識された任意の死亡である。死亡原因が、別の理由、未知または不明と標識された場合、その死亡は、「他の」原因の死亡とみなした。これらの比較は、疾患特異的死亡の発生率がER+腫瘍について過大評価されていることを示している(20年の時点で0.46 対 0.37)。これは、診断時の年齢が、ER-腫瘍よりもER+腫瘍についてより高く(中央値63.9 対 53.0歳;p値<2.2e-16)、したがって、患者が、非悪性疾患関連死のより高いリスクを有するからである(図12)。エンドポイントとして全生存期間を使用することは、2つの異なる死亡原因を混合し、ER+患者におけるリスクを吊り上げるので、それはこの問題を解決しない。さらに、病理学的サブグループについてのベースライン生存関数は別個である(図13)ので、それらの差異は、Cox比例ハザードモデルにおいて単一のパラメーターで適切に要約することができない。
【0247】
これらの課題を克服するために、異なる疾患状態(LRおよびDR)、異なる時間尺度(診断からの時間および再燃からの時間)、競合する死亡原因(がん死亡または他の原因)、臨床的共変量または年齢効果、および異なる分子サブグループについての別個のベースラインハザードを説明する統計モデルを開発した(それらの開示が各々上で引用される、H. Putter, M. Fiocco, & R. B. Geskus, Stat. Med. 26, 2389-430 (2007);O. Aalen, O. Borgan, & H. Gjessing, Survival and Event History Analysis - A Process Point of View. (Springer-Verlag New York, 2008);およびT. M. Therneau & P. M. Grambsh, Modeling Survival Data: Extending the Cox Model. (Springer-Verlag New York, 2000)を参照のこと)。多状態統計モデル(図13)を[FD]にフィッティングさせ、それにより、原発性腫瘍の外科的切除で開始し、その後局所領域的および/または遠隔再発の発生が続く乳房がんの年代学を説明し、がんまたは他の原因に起因する競合する死亡リスクを説明する。これらの状態の各々の発生のハザードを、2つの吸収状態(死亡/がんおよび死亡/その他)を有する非一様セミマルコフ連鎖を用いてモデリングし、状態の各対間の移行の数を記録した(表5~7)。
【0248】
このモデルは、分子サブタイプによって層別化され、患者が新たな状態に入った場合にクロックが停止する、クロック-リセット時間尺度を使用した。遠隔再燃から局所的再燃への少数の移行(15人のER+症例および7人のER-症例)が存在したが、局所的再燃は、本発明者らのモデルでは、冗長とみなされ、局所的再燃から遠隔再燃への移行のみが可能であったので、局所的再燃はこれらの実施例では除外した。再発なしのがん死亡の可能性を、転移が検出されなかった症例を説明するために含めた。Rパッケージのmstateおよびsurvivalを使用して、データをフィッティングした。mstateおよびsurvivalについて詳しくは、その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるL. C. de Wreede, M. Fiocco, and H. Putter J. Stat Softw. 38, 1-30 (2011);および上で引用したT.M. Therneau and P.M Grambsch, 2000を参照のこと。
【0249】
いくつかの共変量をモデル中に含めた:診断時の年齢、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、および陽性リンパ節の数。リンパ節を、連続変数として入力したが、極端な例からの影響力のある観察を回避するために、10個のリンパ節に上限を定めた。診断からの時間も連続として含めた。
【0250】
このモデルは、それらの別個のプロファイルに従って、ER+疾患およびER-疾患について独立したベースラインハザードを使用する。データセット[FD]について、Coxモデルを、ER状態についてフィッティングし層別化した。年齢は、両方のER値について、死亡/その他の原因への全ての移行について、同じ係数を有した。グレード、サイズおよびリンパ節は、各ER状態について、出発状態から再発/死亡の状態まで、異なる係数を有した。診断以降の時間は、各ER状態について、再燃の出発状態から再発/死亡の状態まで、異なる係数を有し、局所領域的再燃以降の時間は、各ER状態について、遠隔再燃状態からがん関連死まで、異なる係数を有した。
【0251】
がん関連死の大多数(ER+腫瘍では83%、ER-腫瘍では87%)は、遠隔転移に引き続いて発生した(表5)。症例の残りは、未検出の再発、または患者が別の悪性疾患に屈服した状況のいずれかを反映している。
【0252】
年齢は、他の原因による死亡への移行に有意に関連した(p値<0.01)。全ての他の変数についての対数ハザード比および95%信頼区間の試験は、各変数の影響が疾患進行と共に減少したことを示している(図14)。これは、原発性腫瘍に関連する臨床的変数が、後期の移行(例えば、DRから死亡への)についてよりも、初期の移行(例えば、無病状態から再発への)について、より予後診断的であったことを暗示している。しかし、いくつかの腫瘍特徴は、LRからDRまでおよびDRから死亡までの進行のリスクについての情報を与えた。ER+がんでは、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、および陽性リンパ節の数は全て、「より悪い」状態への進行のリスクを増加させた。しかし、手術とLRとの間または手術とDRとの間のより長い時間は、「より悪い」状態への移行のリスクを減少させ、この減少したリスクは、ER-がんにおいてより広く見られた。LR後の時間の量は、DRの開始を予測しなかった。したがって、この変数は、分析の残りには含めなかった。
【0253】
詳細な検証は、これらのモデルが十分に較正されており、オーバーフィッティングの傾向がないことを示している(図15)。さらに、強い一致が、外部メタコホートにおける匹敵するモデル性能(図17)を伴って、確立されたツールPredictに対してER状態によって層別化された基本モデルについて示されている(図16)(Predictについて詳しくは、その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるG. C. Wishart, et al., Breast Cancer Res. 12, R1 (2010)を参照のこと)。
【0254】
乳房がん分子サブタイプを横断する再発の差次的パターン
適切なエンドポイントは、全ての患者における再燃の平均確率として計算される、LRまたはDRを経験する確率である。一般に、LRのリスクは、比較的小さいままであるが、IntClust群(図4)、ならびに臨床的(図18)およびPAM50(図19)サブグループにおいて明らかなように、DRのリスクは、疾患の過程を通じて変化する。これらの比較は、IntClust10患者と比較して、IntClust4ER-患者について、5年後のLRおよびDRの上昇したリスクをさらに示している。集合的に、これらのデータは、三重陰性患者のうち、IntClust10に属し、5年後に無再燃である患者が、無視できる再燃のリスクを有するが、PAM50 BasalサブタイプおよびER-/HER2-サブグループは識別力が低いことを示している。
【0255】
LRまたはDRの確率の比較は、より良好な予後サブグループに対応するIntClust3、IntClust7、IntClust8およびIntClust4ER+を有するER+患者において、再燃トラジェクトリーにおける劇的な差異もまた明らかにしているが、IntClust1、IntClust2、IntClust6およびIntClust9は、後期再発性の予後不良患者に対応する(図18および22)。これら4個のサブグループは、全てのER+症例の26%を占め、手術後の後期再燃の特に高いリスクがあり、DRの平均確率は、手術の20年後まで、0.42~0.55の範囲である。ER+/HER2-症例に限ると、傾向は類似である。したがって、これらの高リスクER+サブグループは、疾患の慢性の性質を考慮して、延長されたモニタリングおよび処置から利益を得うる女性の相当数の少数派を規定する。
【0256】
重要なことに、4個の高リスクの再発のサブグループの各々は、潜在的なバイオマーカーに対応する推定ドライバー遺伝子にまたがる特徴的なゲノムコピー数変更について各々富化される(図3Aおよび3B)。例えば、IntClust2腫瘍は、FGF3、CCND1、EMSY、PAK1およびRSF1を含む複数の推定発癌遺伝子にまたがる染色体11q13の増幅によって定義される。IntClust2は、他のサブグループの0~22%と比較して、ER+症例の4.5%、RSF1増幅を有する症例の96%を占める。IntClust6腫瘍は、FGFR1およびZNF703を中心とした8p12の限局的な増幅(IntClust6症例の100% 対 他の症例の2~21%)によって特徴付けられ、ER+腫瘍の5.5%を占める。IntClust1は、ER+腫瘍の8%を占め、症例のそれぞれ96%および70%において獲得または増幅されるmTORエフェクター、RPS6KB1(S6K1)にまたがる染色体17q23の増幅を示すが、増幅は、他の群の0~25%において生じる。IntClust9は、ER+症例の別の8%を占め、MYC発癌遺伝子にまたがる染色体8q24の増幅によって特徴付けられ、増幅は、IntClust9腫瘍の89%(他の群の3~42%)において生じる。集合的に、これらの知見は、患者を層別化し、適切な治療戦略を決定するために使用され得る、後期再発性ER+患者サブグループおよび付随するゲノムバイオマーカーを強調する。
【0257】
分子的に定義された後期再発性患者サブタイプの同定
患者転帰のトラジェクトリーを、LRを有した患者について、DRまたは死亡まで進行する平均確率を比較することによってさらに評価したが(図20)、これは、IntClustサブグループ(図21)、臨床的分類サブグループ(図22)およびPAM50サブグループ(図23)に層別化することによってさらに詳述される。診断時の原発性腫瘍の分子サブタイプおよび病理学的特色によれば、LR後のDRのリスクは、有意に変動した。例えば、IntClustサブグループを横断して、リスクにおける差異は、10年の時点で0.6を超え、この分離は、PAM50サブグループについてよりも極端であった。同様に、進行までの中央値時間は、IntClustサブグループおよびPAM50サブグループを横断して、5年よりも大きく変動した。
【0258】
DR後に死亡まで進行する平均確率もまた、IntClustサブグループ(図24)、臨床的分類サブグループ(図25)およびPAM50サブグループ(図26)に層別化することによって、評価および詳述した。予後は、全てのサブタイプについて不良であったが、死亡までの中央値時間には、注目すべき差異が存在した。これらのデータは、以下にさらに詳述されるように、病理学的サブタイプおよび分子サブタイプの両方が、遠隔再燃後になおも予後診断的であることを示唆している。
【0259】
統合サブタイピングの臨床予後診断的価値
次に、IntClustメンバーシップが、患者の上記後期遠隔再燃のリスクについての、標準的な臨床情報から最適に推定され得る限界を超えた情報を提供したかどうかを評価した。他のコホートで示されたように、診断時に定義される臨床的変数は、長い無病区間の後であっても、遠隔再燃転帰を決定付け続けた。IHCサブタイプと組み合わせた臨床的変数(年齢、腫瘍サイズ、グレード、陽性リンパ節の数、手術以降の時間)を含むIHCモデルは、5年の時点で無再燃であった患者における遠隔再燃の確率についてのかなりの情報を提供したことが見出された:10年の時点で0.63(CI 0.58~0.68)、15年の時点で0.62(CI 0.58~0.67)、および20年の時点で0.61(CI 0.57~0.66)のC指数。しかし、統合サブタイプを含めることは、その予測的価値を有意に改善した:10年の時点で0.70(CI 0.64~0.75;臨床モデルを超える改善 P=0.00011)、15年の時点で0.67(CI 0.63~0.72、P=0.0016)および20年の時点で0.66(CI 0.62~0.71、P=0.0017)のC指数。言い換えると、統合サブタイプによって提供される後期再燃の動態についての情報は、IHCサブタイプを含む標準的な臨床的変数からは推定できなかった。これらの傾向は、より短い追跡時間(20年の時点での分析を妨げる)およびより小さい試料サイズにもかかわらず、外部検証コホートにおいて反復された。さらに、類似のパターンが、その腫瘍がER陽性/HER2陰性であった患者のサブセットにおいて見られ(図27~29)、この群では、後期再燃およびこれを標的化する戦略、例えば、延長された内分泌療法。
【0260】
手術後のこれら4個のサブグループの各々におけるER+/Her2-患者に関連する相当の再燃のリスク(IntClust3と比較した)は、経時的に変動し、標準的な臨床モデルによっては捕捉されない(図28)。さらに、診断の5年後の時点において無再燃であった個々のER+/Her2-患者におけるDRまたは乳房がん死亡の確率は、4個の後期再燃性IntClustサブグループの各々においてかなり変動し(図29)、これは、個別化モニタリング戦略の重要性をさらに強調している。
【0261】
適合度検定
適合度検定を、全てのモデルについて実施した。比例ハザード仮定を、survival関数cox.zph()を使用するシェーンフィールド残差 対 時間を使用して試験した。転移の数および「他の転移」が有意であった転移の部位についてのモデル(ER+)、ならびにグレードおよび転移の数が有意であった転移の部位についてのモデル(ER-)を除き、この仮定に違反した共変量を示したモデルは存在しなかった。プロットの目視検査により、傾向はおおざっぱに平坦であり、したがって、違反が重大でなかったことが示された。ERを含むモデルでは、以前に示されたように、ERは、比例ハザード仮定に違反する。しかし、このモデルは、ERに従う他の共変量のハザード比における差異を試験するためにのみ使用した。
【0262】
ER+高リスク統合クラスターにおける再燃の確率の比較
統合クラスターに基づいてリスクを層別化するモデルを試験することは、ER+高リスク群における再燃の異なる確率を予測する。遠隔再燃を有する確率を、患者が手術後に無病である場合に計算し(たとえ次に何が起ころうと、遠隔再燃を有する確率として定義される)、局所領域的再燃後の遠隔再燃/がん死亡の確率を、IntClust1、2、6および9中のER+/HER2-患者について計算した。独立した変数としてIntClustメンバーシップを用いる線形モデルをフィッティングさせ、ペアワイズ比較のためにチューキー事後検定を実施した。
【0263】
(実施例2)
乳房がんのリスク層別化のためのモデル
いくつかの統計モデルが、乳房がんのリスクを層別化するために使用され得る。多くの実施形態では、リスク層別化は、分子分類および/または分子分類器(例えば、IntClust分類)に由来する予測子を特色として組み込む。分子特色は、遺伝子発現および/またはコピー数レベル、ならびに転写レベル/状態を反映するDNAメチル化またはクロマチンアクセス可能性に基づき得る。
【0264】
ゲノムワイドコピー数データからリスク層別化を決定することに関するモデル性能の評価において、以下の型のモデルを構築し、試験した:ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたSVM、ガウスカーネルを用いたSVMおよびニューラルネットワーク(図30)。
【0265】
分析を実施するために、ゲノム全体にまたがる1,191,855個のセグメントからなるSNP6アレイからのゲノムコピー数を利用した。各セグメントは、その領域における平均コピー数を示した。次元性を低減させかつ有用な特色を得るために、iClusterPlus RパッケージからのCNRegions関数を使用して、隣接する領域をマージさせ、各領域についての調整済み平均コピー数値と共に、(データセット中の1285人の患者の)各試料についての4794個の一貫したコピー数の領域の最終セットを得た。これらを、機械学習法において、臨床的共変量、例えば、診断時の年齢、腫瘍グレード、腫瘍サイズ、および腫瘍陽性リンパ節の数と一緒に特色として使用して、統合サブタイプまたは二成分の高い[IC 1、2、6、9] 対 低い[IC 3、4、7、8]リスクの再燃の標識を予測した。ロジスティック回帰、線形カーネルを用いたサポートベクターマシン、ガウスカーネルを用いたサポートベクターマシンおよびニューラルネットワークを含む種々のモデルの性能を評価して、ゲノムワイドコピー数データから統合サブタイプリスク標識を正確に予測するそれらの能力を決定した(図30)。複数のモデルが良好に機能したが、ニューラルネットワークが、最も高いAUROCおよび最も高いAUPRCの両方を有して、異なるモデル間で最も強い性能を有する。
【0266】
(実施例3)
標的化パネル配列決定から統合サブタイプおよびリスク標識を予測する
標的化パネル配列決定データ(例えば、MSK-Impact、Foundation MedicineまたはSTAMPからの)は、統合サブタイプを予測するために利用され得、かかる方法の性能は、ゲノムワイドコピー数(および発現データ)を有するコホートを使用して評価され得る。特に、METABRICおよびTCGAコホートは、IntClust分類器に基づく(遺伝子発現およびゲノムコピー数データの両方に基づく)統合サブタイプ割り当てのために以前から利用されてきた。目的のパネルと重複するIntClust分類器中の遺伝子を使用して、Genes x Samplesからなるマトリックスを創出したが、ここで、各腫瘍について、円形バイナリセグメンテーション(circular binary segmentation)(CBS)アルゴリズムに基づいてセグメンテーションされたコピー数値が使用される。あるいは、パネル上の全ての遺伝子が利用されて、各腫瘍について、Genes x Samplesからなるマトリックスをやはりまた生じ得、ここで、各腫瘍について、円形バイナリセグメンテーション(CBS)アルゴリズムに基づいてセグメンテーションされたコピー数値が使用される。pamRパッケージからのPAMアルゴリズムを使用して、適切な縮小パラメーターを選択する(即ち、F1を最適化する)ために交差検証を使用して、METABRIC(またはTCGAトレーニングセット)中の分類器をトレーニングした。乳房腫瘍を、トレーニングのために統合サブタイプおよびクラス標識に分類し、十分に検証されたIC10割り当て(ゲノムコピー数および遺伝子発現データに基づく)と比較して設定された試験は差し控えた。バランス正解率(balanced accuracy)を含む性能の尺度を、10個の群の各々への割り当てについて、およびER+/Her2-腫瘍における二元リスクカテゴリー、即ち、高リスク(IntClustサブグループ1、2、6、9) 対 より低いリスク(IntClustサブグループ3、4、7、8)または再燃について評価したところ(図31Aおよび31B)、いくつかのコンパニオン診断アッセイを介して入手可能な標的化(パネル)配列決定データからの統合サブタイプのロバストな分類が実証されている。
【0267】
パネル配列決定データから統合サブタイプを予測するための代替的アプローチには、段階的ビニングが関与する。このアプローチでは、ASCATを使用して生成されたMETABRICについてのコピー数推論を使用した(ASCATについて詳しくは、その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるP. Van Loo, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2010;107(39):16910-16915を参照のこと)。これらのコピー数コールを、FoundationOneパネル内の遺伝子にサブセット化した。変更されたゲノムの割合(Fraction of genome altered)(FGA)を、これらの遺伝子について計算し、METABRICデータを、FGA>0を有する試料を含むようにフィルタリングした。これは、分類器をトレーニングするための510個の試料を生じた。次いで、コピー数推論を、ビニングアプローチを使用して変形して、特定のコピー数プロファイルへのオーバーフィッティングを回避した。このために、以下のビン - 0~6、6~10、10~14、14~20、20~60および>60を使用した。さらに、高リスクサブグループに関連する染色体アーム(即ち、8p11、8q24、11q13および17q23)についてのアームレベルのコピー数推論を組み込んだ。
【0268】
IntClust1、IntClust2、IntClust4、IntClust6、IntClust8およびIntClust9をトレーニングに使用して、4個の高リスクカテゴリー、即ち、IntClust1、IntClust2、IntClust6およびIntClust9についての正解率を最大化した。このモデルは、弾性ネット回帰(elastic net regression)、ランダムフォレストおよび勾配ブーストツリーを組み込む投票ベースのアプローチを使用して、所与の試料についてIntClust型を推定する。全体的正解率は、全てのサブタイプを横断して69%であったが、高リスク群についての合理的に高い試験正解率が、以下に示されるように達成された。
【表1】
【0269】
全てのMETABRIC試料についての全体的トレーニング+試験正解率が、図32Aに示される。Foundation Medicineデータについて、Foundation Medicine Inc.によって提供された臨床報告からのコピー数推論を使用した。これらは、6コピーまたはそれよりも高い増幅を含む。報告されたCNコールで開始して、ビニングを上記のように実施し、目的の染色体アームについてのアームレベルのコピー数推論を計算した。次いで、これを、上記分類器へのインプットとして使用して、Foundation Medicineデータに対して予測を行った。
【0270】
MSKコホートは、1756人の患者由来の1918個の試料からなり、そのうち1345個のER陽性かつHER2陰性の試料を分析した。MSKデータから、統合されたサブタイプを同定するために、分類器ベースのアプローチを、MSK-IMPACTパネル中に存在する遺伝子を使用して開発した。このために、元のMETABRICコホートを使用して、10個の統合サブタイプを最初に同定した。METABRIC試料のうち、1363個は、ER陽性HER2陰性であり、これらは、IMPACT-IC分類器を開発するために使用した試料であった。
【0271】
ASCATを使用して生成されたMETABRICについてのコピー数推論を使用した(上で引用したP. Van Loo et al.)。これらのコピー数コールを、MSK-IMPACTパネルの遺伝子にサブセット化した。変更されたゲノムの割合(FGA)を、これらの遺伝子について計算し、METABRICデータを、FGA>0を有する試料を含むようにフィルタリングした。これは、分類器をトレーニングするための611個の試料を生じた。次いで、コピー数推論を、ビニングアプローチを使用して変形して、特定のコピー数プロファイルへのオーバーフィッティングを回避した。このために、以下のビン - 0~6、6~9、9~12、12~15、15~20、20~60および>60を使用した。IntClust1予測のために最も重要な遺伝子について(弾性ネット回帰からの特色重要性値から決定されるように)、最初の2つのビンを、0~4、4~9まで低下させた。さらに、アームレベルのコピー数推論を、高リスクサブグループに関連する染色体アーム(即ち、8p11、8q24、11q13および17q23)について組み込んだ。
【0272】
10種全てのIntClustサブタイプをトレーニングに使用したが、4個の高リスクカテゴリー、即ち、IntClust1、IntClust2、IntClust6およびIntClust9についての正解率を最大化した。このモデルは、弾性ネット回帰、ランダムフォレストおよび勾配ブーストツリーを組み込む投票ベースのアプローチを使用して、所与の試料についてIntClust型を推定する。全体的正解率は、全てのサブタイプを横断して68%であったが、合理的に高い試験正解率が、以下に示されるように高リスク群について達成された。
【表2】
【0273】
全てのMETABRIC試料についての全体的トレーニング+試験正解率が、図32Bに示される。IntClust1についての適合率は、高レベルの増幅とは反対に17q23アームの低レベルの獲得によって特徴付けられるこの群に起因して、比較的低い。
【0274】
MSKデータセットについて、対立遺伝子特異的コピー数推論を、FACETSを利用して生成した(その開示がこれにより参照により本明細書に組み込まれるR. Shen and V. E. Seshan, Nucleic Acids Res. 2016;44(16):e131を参照のこと)。FACETS結果は、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerによって提供された。コピー数プロファイルの初期品質制御を実施したが、複数の可能なフィッティングが存在した場合、最良のフィッティングは、ホモ接合性欠失の比率、ヘテロ接合性の喪失の比率およびバランスのとれた染色体セグメント(balanced chromosomal segment)を含むいくつかの測定基準に基づいて選択された。コピー数コーリングのために使用される2つの方法は異なっていたが、これらは共に、性質が対立遺伝子特異的であり、コピー数推論における腫瘍純度を補正する。FACETコールで開始して、ビニングを上記のように実施し、目的の染色体アームについてのアームレベルのコピー数推論を計算した。次いで、これを、上記分類器へのインプットとして使用して、MSK-IMPACTデータに対して予測を行った。
【0275】
これらの患者において使用される3つのバージョンのパネル、341個の遺伝子を有するIM3、410個の遺伝子を有するIM5および468個の遺伝子を有するIM6が存在する。これらのパネルの内容における差異を説明するために、一部のパラメーターを僅かに改変して、より少ない遺伝子を有するパネルのバージョンにおける性能を最適化した。
【0276】
サブタイプであった1345個の試料のうち、385個が高リスクカテゴリーに入った。これは、METABRIC内の高リスクサブタイプの割合と有意には異ならなかった(フィッシャーの正確確率 p値=0.26)。統合クラスターの全体的分布が、図32Cに示される。この結果は、分類器が重要なグループ分けを捕捉することを示唆している。
【0277】
MSK-コホートからの1344個の試料のうち、728個の試料は原発性腫瘍由来であり、残りの616個は転移性病変由来であった。原発性腫瘍および転移性腫瘍の分布を比較すると、転移性試料における高リスク統合クラスターの割合は、原発性腫瘍由来の試料において見られるものよりも有意に高いことが理解でき(オッズ比1.76、フィッシャーの正確確率 p値=3.98e-06)、これは、高リスクのIntClust群が増加した再燃のリスクを実際に与えるという事実を反映している。
【0278】
(実施例4)
ER+/HER-乳房がんについての統合サブタイピングの性能および臨床的有用性を評価する
IntClust分類システムの利用は、特に、ER+/HER2-乳房がんにおいて、現在市販されている診断試験よりも、遠隔再燃の予測においてより良好な性能を生じる。この実施例では、統合サブタイピングを、Oncotype Dx(Genomic Health、Redwood City、CA)、Prosigna(NanoString Technologies、Seattle WA)、MammaPrint(Agendia、Irvine、CA)およびBreast Cancer Index(BCI)(Biotheranostics,Inc.、San Diego、CA)と比較する。
【0279】
スコアおよびリスクを、それらのプロトコールに従い、genefu Gene Expression Based Signatures in Breast Cancer(D.M. Gendoo, et al., http://www.pmgenomics.ca/bhklab/software/genefu)を使用して、各試験について生成した。IntClust分類に関して、高リスクは、IntClustサブグループ1、2、6または9への分類であり、より低いリスクは、IntClustサブグループ3、4、7または8への分類である。IntClustスコアを、最も近い高リスク重心までの距離として計算した。ProsignaのPAM50を使用して、RoRスコアを計算し、リスクおよびスコアをカテゴライズするためにこれらのサブグループをさらに使用した:高リスクはLumBへの分類であり、より低いリスクはLumAへの分類であり、スコアを、LumBの確率によって決定した。BCIについて、スコアを、[0.44(第1PC prolif)+0.4972(hoxb12/IL17RB比)-0.09(hoxb12/IL17RB比)^3]2+5によって計算した;スコアが6.4よりも大きかった場合、リスクは高く、スコアが5よりも小さかった場合、リスクは低い。
【0280】
METABRICデータセットを使用して、上で引用したCurtis, et al., (2012)に詳述されるように、遺伝子発現データからシグネチャーを生成した。METABRICコホートの、後期再燃を含む転帰関連性もまた、実施例1に詳述したように計算した。この実施例では、データは、ER+/HER2-試料(n=1398)に限定した。後期再燃は、手術後の再燃の、以前のいずれの事例もない、5年間(即ち、5年の時点で無再燃)の後に発生する再燃として定義される。2つの転帰、無遠隔再燃生存期間および無再燃生存期間を検討した。無遠隔再燃生存期間は、遠隔再燃までの時間として定義される。無再燃生存期間は、遠隔再燃または疾患特異的死亡までの時間として定義される。
【0281】
転帰分析を実施するために、カプラン・マイヤープロットを、survivalパッケージ(survfit関数を使用するモデル)およびsurvminer(ggsurvplot関数を使用するplt)を使用して生成した。p値を、ログランク検定を使用して生成した。ハザード比を、survcompパッケージからのhazard.ratio関数を用いて計算し、これを使用して、シグネチャーのエフェクトサイズを測定した。一致指数(C指数)を、survcompパッケージからのconcordance.indexを使用して計算した。曲線下面積を使用して、異なる時点におけるシグネチャーの予測性能を評価した。survAUCパッケージのAUC.uno関数からのUnoのAUROCを使用して、AUROCを計算した。臨床的共変量に関しての予測における改善をより良好に比較するために、各時点について、AUCを、調整済み臨床的共変量と共にリスクまたはスコアを使用して、Cox比例ハザードモデルを使用して計算した。20×10分割の交差検証を実施して、AUCの過大評価におけるオーバーフィッティングを回避した。
【0282】
BCI、ProsignaのROR、Oncotype DX、ProsignaのPAM50およびIntClust分類(IC10)についてのC指数スコアが、図33に提供される。C指数スコアを、10年、15年および20年の時点での後期再燃を予測する能力について計算した。理解できるように、IntClust分類は、各時点において他の診断試験を上回る。
【0283】
後期遠隔再燃のハザード比(HR)プロットが、図34~37に提供される。図34は、異なるマルチ遺伝子シグネチャーおよび対応するリスクカテゴリーについて、5年の時点で無再燃であったER+/HER2-患者(一部の例では、リンパ節状態によって層別化した)における後期遠隔再燃のHRを提供する。ほとんどのシグネチャーについての信頼区間が均等線(1)と重複し、これは、それらが後期遠隔再燃の差次的リスクに有意には関連しないことを示しているが、高リスク 対 より低いリスクのIntClust層別化(IC10)は、有意に上昇したHRを示す。さらに、Oncotype Dxについてのエラーバーは、特に広い。これは、Oncotype Dxが生じさせる低リスク群が、極度に低リスクであり、患者をほとんど含まないという事実に起因する。はるかに多くの患者が、中間リスク群(これのための処置の問題はあまり明らかでない)に層別化される。実際、異なるマルチ遺伝子シグネチャーについてハザード比を比較する場合に個体をリスクカテゴリーにビニングするための任意の閾値の使用は、アーチファクトを生じ得、結果の解釈を複雑にする(図34~36)。この理由のために、図37に示されるように、各シグネチャーについてスコアを比較することが好ましい。この影響は、C指数を比較する場合にも緩和される(図33)。
【0284】
図35は、異なるマルチ遺伝子シグネチャーおよび対応するリスクカテゴリーについて、5年の時点で無再燃であったER+/HER2-、リンパ節陰性患者における後期遠隔再燃のHRを提供する。高リスク 対 より低いリスクのIntClust層別化(IC10)は、全てのシグネチャー間で最も高いHRを示す。
【0285】
図36は、異なるマルチ遺伝子シグネチャーおよび対応するリスクカテゴリーについて、5年の時点で無再燃であったER+/HER2-、リンパ節陽性患者における後期遠隔再燃のHRを提供する。ほとんどのシグネチャーについての信頼区間が均等線(1)と重複し、これは、それらが後期遠隔再燃の差次的リスクに有意には関連しないことを示しているが、高リスク 対 より低いリスクのIntClust層別化(IC10)は、有意に上昇したHRを示す。Oncotype Dxは、低リスク群における低い数の事象に起因して示されていないことに留意されたい。
【0286】
図37は、異なるマルチ遺伝子シグネチャーについて、5年の時点で無再燃であったER+/HER2-患者における後期遠隔再燃のHRを提供する。ここで、スコアを計算して、各マルチ遺伝子シグネチャーについての高リスクカテゴリー 対 より低いリスクのカテゴリーの間での比較を容易にした。ほとんどのシグネチャーについての信頼区間が均等線(1)と重複し、これは、それらが後期遠隔再燃の差次的リスクに有意には関連しないことを示しているが、高リスク 対 より低いリスクのIntClust層別化(IC10)は、全ての症例およびリンパ節陽性症例において特に明らかなように、有意に上昇したHRを示す(右のパネル)。
【0287】
(実施例5)
統合サブタイピングを他の診断試験と組み合わせる
IntClust層別化(IC10)、OncotypeDX、PAM50、ROR、BCI、EndoPredictおよびMammaPrintを含むいくつかの診断試験の後期遠隔再燃についての生存確率曲線が、図38に提供される。これらの曲線を得るために、ER+/HER2-患者のコホートの後期再燃データを含むMETABRICデータセットを利用して、各診断試験によってリスクを予測した。METABRICコホート内の患者を、それらの方法に従って、各診断試験によって決定されるリスク群に割り当てた。各リスク群の後期遠隔再燃生存確率(即ち、診断から5年以降の再燃)をプロットした。
【0288】
各診断試験についてのシグネチャーを、以下のように計算した:
・ IC10:Curtis et al. 2012;Rueda et al. 2019(上で引用した)からのIC10割り当てを使用した。IntClustサブグループ1、2、6および9に割り当てられた試料は、高リスクとみなされたが、IntClustサブグループ3、4、7および8に割り当てられた試料は、より低いリスクとみなされた。IntClustサブグループ10および5に割り当てられた試料は、ER+/HER2-疾患における再燃のリスクを予測する場合には、破棄した。IC10スコアは、高リスク群に属する最大事後確率を測定することによって計算され、ここで、事後確率は、pamRパッケージのpredict関数から計算される。
・ PAM50:genefuパッケージmolecular.subtyping関数を使用して、METABRICデータセットについてのPAM50割り当てを計算した。Luminal B/LumBを、高リスク群に割り当て、Luminal A/LumAおよびNormal likeなどを、より低いリスクの群に割り当てた。pam50スコアは、LumB割り当ての事後確率として定義される。
・ OncotypeDX:genefuパッケージ中のoncotypedx関数の改変バージョンを使用して、OncotypeDXスコアおよびリスクをコールし、このモデルを再較正するために利用可能な実際のoncotypeDX値および発現データを有する外部コホートを活用した。31よりも高い値は高リスクとみなし、18よりも低い値は低リスクとみなし、それらの間の値は中間リスクとみなした。
・ Prosigna ROR(ROR):genefuパッケージrorS関数を使用して、1:100から変換されるProsigna(PAM50)再燃のリスク(ROR)スコアを計算した。29よりも低い値は低リスクとみなし、52よりも高い値は高リスクとみなし、残りは中間リスクとみなした。
・ BCI:BCIスコアを、BCI=0.4431prolif+0.4972hiratio-0.09hiratio^3)になるように、増殖シグネチャーを、HOXB13とIL17RBとの間の比率(hiratio)と組み合わせることによって計算した。増殖シグネチャーは、以下の遺伝子の発現の第1主成分である:BUB1B、CENPA、NEK2、RACGAP1およびRRM2。BCIは、2を乗じ、5を加算することによって変換した。6.4よりも高い値は高リスクとみなし、5よりも低い値は低リスクとみなし、残りは中間リスクとみなした。
・ EndoPredict:genefuパッケージ中のendopredict関数を使用して、Endopredictスコアおよびリスクを計算した。5よりも高い値は高リスクとみなし、残りは低リスクとみなした。
・ Mammaprint:genefuパッケージ中のmammaprint関数を使用して、Mammaprintスコアおよびリスクを計算し、ここで、0.3よりも高い値は高リスクとみなし、残りは低リスクとみなした。
比較を標準化するために、全てのスコアを平均0、標準偏差1に変換した。
【0289】
図38で理解できるように、統合サブタイプ(IC10)は、後期遠隔再燃からの生存に関して、高リスク群とより低いリスクの群との間でのはるかに良好な層別化を提供する。実際、IC10は、後期遠隔再燃の高リスク 対 より低いリスクをロバストに層別化する唯一のシグネチャーである。言い換えると、IC10診断法の利用は、ER+/HER2-患者が5年以降の再燃を経験するリスクの、より良好な指標を提供する。MammaPrintは、2番目に良好な層別化を提供し、その後にOncotypeDXおよびRORが続いたが、これらは、IC10によって達成されるものよりもはるかに控えめであった。
【0290】
OncotypeDX、PAM50、ROR、BCIおよびMammaPrint、ならびにそれらとIC10との組み合わせを含むいくつかの診断試験の、後期遠隔再燃についての生存確率曲線が、図39~43に提供される。これらの曲線を得るために、ER+/HER2-患者のコホートの後期再燃データを含むMETABRICデータセットを利用して、各診断試験によってリスクを予測した。METABRICコホート内の患者を、それらの方法に従って、各診断試験、および統合サブタイプIC10との組合せによって決定されるように、リスク群に割り当てた。各リスク群の10年以内の遠隔再燃および後期遠隔再燃生存確率(即ち、5年以降の再燃)をプロットした。
【0291】
図39~43で理解できるように、IC10を各診断試験と組み合わせることは、後期遠隔再燃のリスクの予測のための患者の層別化を改善した。これらの結果は、統合されたクラスターシステムとこれらの遺伝子検査との組合せが、特に、後期遠隔再燃について、それらの診断能力を改善することを提供している。
【0292】
統合クラスター試験と、ER+/HER-乳房がんのための処置を決定するための一般的な診断試験であるOncotype DXとの組合せが、特に目的とされる。この試験は、21個の遺伝子の発現を試験し、これは、特に、初期ステージのER+、HER2-乳房がんを有する個体において処置を調整するために使用される。Oncotype Dxは、10年以内の遠隔再発の見込みを定量化し、高い、中間のまたは低い再発の見込みを示すスコアを提供する。中間の再発の見込みを示す結果は、臨床医に臨床的難問をしばしば提示し得、したがって、どの処置を実施するかの良好な指標を提供しないことに留意されたい。
【0293】
IC10分類システムおよびOncotype DXを組み合わせることは、Oncotype DX単独よりも良好な層別化を生じ、10年以内の遠隔再燃および後期遠隔再燃の両方において、Oncotype DX中間リスク群をはるかに明確に層別化した(図39)。組み合わされたOncotype DX中間リスクおよびIntClust高リスク群は、明らかに、組み合わされたOncotype DX中間リスクおよびIntClustのより低いリスクの群と比較して、再燃を有する可能性がはるかに高い。この結果は、Oncotype DXをIntClust分類と組み合わせることが、特に、中間群のリスク群について、Oncotype DX単独よりも良好な再燃リスクの予測を提供することができることを示している。
【0294】
IC10分類をPAM50と組み合わせることもまた、10年以内の遠隔再燃および後期遠隔再燃の両方において、LumA群およびLumB群の層別化を改善した(図40)。IC10分類をRORと組み合わせることもまた、10年以内の遠隔再燃および後期遠隔再燃の両方において、中間リスク群の層別化を改善した(図41)。IC10分類をBCIと組み合わせることもまた、10年以内の遠隔再燃および後期遠隔再燃の両方において、中間リスク群の層別化を改善した(図42)。IC10分類をMammaPrintと組み合わせることもまた、特に、後期遠隔再燃について、5年以降のより低いリスクの群の層別化を改善した(図43)。
【0295】
(実施例6)
特定の分子サブグループに対する処置の結果
特定の分子サブグループ内の患者に対する化学療法、標的化療法および内分泌療法の能力を、転移性ER陽性乳房がんを有する812人の患者のプロスペクティブコホートにおいて試験した。高リスク統合クラスター群(IntClust1、IntClust2、IntClust6およびIntClust9)およびより低いリスクの群(一緒に平均した)に化学療法を投与した後の無進行生存の比較が、図44に提供される。このデータは、それらの無進行生存確率が、より低いリスクの群および他の高リスク群と比較して高い(調整済みP=0.045)ので、IntClust2分子サブグループが、化学療法から大きく利益を得ることを示唆している。
【0296】
図45は、mTORアンタゴニスト処置ありおよびなしの分子サブグループIntClust1における無進行生存の比較を提供する。具体的には、mTOR阻害剤エベロリムスを受けている患者は、mTORアンタゴニストを受けなかった患者よりも大いに高い生存確率を有した(調整済みP値=0.023)。この結果は、このサブグループの発癌ドライバーRPS6KB1を特異的に標的化するためにmTORアンタゴニストを利用することで、無進行生存確率を増加させることができることを示唆している。
【0297】
図46は、CDK4/6アンタゴニスト処置ありおよびなしの分子サブグループIntClust2における無進行生存の比較を提供する。具体的には、CDK4/6阻害剤(パルボシクリブ、リボシクリブまたはアベマシクリブ)を受けている患者は、CDK4/6アンタゴニストを受けなかった患者よりも大いに高い生存確率を有した(調整済みP値=0.016)。この結果は、このサブグループの発癌ドライバーCDK4/6を特異的に標的化するためにCDK4/6アンタゴニストを利用することで、無進行生存確率を増加させることができることを示唆している。
【0298】
図47は、内分泌療法(フルベストラントまたはタモキシフェン)を高リスク統合クラスター群(一緒に平均した)およびより低いリスクの群(一緒に平均した)に投与した後の無進行生存の比較を提供する。このデータは、より低いリスクの群が、高リスク群よりも高い無進行生存確率を有することを示唆している(調整済みP=0.0075)。
【0299】
図48は、アロマターゼ阻害剤処置および選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)フルベストラント処置による分子サブグループIntClust1、InClust2およびIntClust6(一緒に平均した)における無進行生存の比較を提供する。アロマターゼ阻害剤を受けているIntClust1、InClust2およびIntClust6患者は、フルベストラントを受けている患者よりも高い生存確率を有した(調整済みP値=0.004)。この結果は、アロマターゼ阻害剤を利用する内分泌療法が、IntClust1、InClust2およびIntClust6内の患者において無進行生存確率を増加させることができることを示唆している。
【0300】
図49は、アロマターゼ阻害剤処置および選択的エストロゲン受容体分解剤(SERD)フルベストラント処置による分子サブグループIntClust9における無進行生存の比較を提供する。フルベストラントを受けているIntClust9患者は、アロマターゼ阻害剤を受けている患者よりも、僅かではあるが有意でなく高い生存確率を有した(調整済みP値=0.361)。この結果は、アロマターゼ阻害剤を利用する内分泌療法が、IntClust1、InClust2およびIntClust6とは異なり、IntClust9において無進行生存を増加させないことを示唆している。したがって、種々の高リスク分子サブグループへの内分泌処置は、しかるべく調整するべきである。
【0301】
図50は、高リスク分子群IntClust9の患者およびより低いリスクの群(一緒に平均した)に投与されたアロマターゼ阻害剤を利用する内分泌療法後の無進行生存の比較を提供する。アロマターゼ阻害剤を受けているIntClust9患者は、アロマターゼ阻害剤を受けている、より低いリスクの患者よりも、有意に低い生存確率を有した(調整済みP値=0.0019)。この結果は、アロマターゼ阻害剤を利用する内分泌療法が、IntClust9分子群においては生存確率を増加させないが、おそらく、その代わりにSERDまたはPROTAC ARV-471は、エストロゲン受容体シグナル伝達クロストークを緩和するので、これらの化合物がより良好な結果を提供し得ることを示唆している。
【0302】
図51は、高リスク分子群IntClust9の患者およびより低いリスクの群(一緒に平均した)に投与されたSERDフルベストラントを利用する内分泌療法後の無進行生存の比較を提供する。フルベストラントを受けているIntClust9患者は、フルベストラントを受けている、より低いリスクの患者と、類似の生存確率を有した(調整済みP値=0.784)。アロマターゼ阻害剤の結果と組み合わせたこの結果は、SERDを利用する内分泌療法が、アロマターゼ阻害剤を利用する内分泌療法よりも、IntClust9分子群においてより良好な生存確率を提供することを示唆している。
【0303】
(実施例7)
患者由来のオルガノイド
がん患者由来のオルガノイド(PDO)は、前臨床設定においてがん細胞に対して種々の薬物を試験する能力を提供する。この実施例では、乳房がんPDOを発生させ、各患者PDOは、統合されたクラスター分子サブグループ内に入る分子病理学を有した。種々の発生させたPDOに、種々の薬物化合物を投与して、それらの応答性を決定した。結果は、特定の分子サブグループ内に入る患者について臨床試験で評価される種々の候補化合物を同定する。またはあるいは、PDOは、患者のための特定の薬物を同定するための臨床設定であり得る。このシナリオでは、がん細胞を患者から抽出して、種々の薬物化合物で処置されるPDOを得る。最良の結果を有する化合物が、患者のための個別化された療法において利用され得る。
【0304】
乳房がんPDOを評価するために、オルガノイドを、TrypLE(Gibco)で単一細胞へと消化した。細胞を、100μmフィルターで裏ごしし、次いで、黒色透明底96ウェルプレート中に10μlのベータ-メルカプトエタノール(BME)(Cultrex)と共に1ウェル当たり10,000細胞で播種し、100μlの乳房オルガノイド培地で覆う。細胞を4日間成長させて、小さいスフェロイドを形成させる。細胞を、6つの濃度の異なる標的化療法(カピバセルチブ、イパタセルチブ、PF4706871、M2698、アルペリシブを含むがこれらに限定されない)、ならびに陰性対照(DMSO)および陽性対照(Triton(登録商標) X-100)で8日間にわたって二連で処置し、5日目に薬物培地を交換した。8日目に、プレートを顕微鏡下で手動でチェックして、陽性対照薬物(複数可)がオルガノイドを効果的に死滅させたこと、および陰性対照ウェル中に存在するオルガノイドが健康であったことを確実にする。細胞生存率を、1:10の最終濃度で色素を培地に添加し、その後37℃で4時間インキュベートし、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して発光を測定することによって、AlamarBlue(Thermofisher)を使用して評価する。IC50値を、Rパッケージdrcを使用して計算する。2~3つの独立した実験からのIC50の平均を、Rを使用して計算および可視化した。
【0305】
IntClust4にカテゴライズされたER陽性PDOの例示的な結果が、図52A~53Bに提供される。理解できるように、カピバセルチブ、イパタセルチブ、M22698およびアルペリシブは各々、19006患者に由来するPDOについて、100nMから10μMまでのオーダーのIC50を提供したが、PF4706871は提供しなかった(図52Aおよび52B)。同様に、カピバセルチブ、イパタセルチブおよびM22698は各々、19006患者に由来するPDOについて、100nMから10μMまでのオーダーのIC50を提供したが、アルペリシブおよびPF4706871は提供しなかった(図53Aおよび53B)。
【0306】
均等論
上記説明は、本発明の多くの具体的な実施形態を含んでいるが、これらは、本発明の範囲に対する限定ではなく、その一実施形態の一例と解釈すべきである。したがって、本発明の範囲は、示された実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決定されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31A
図31B
図32A
図32B
図32C
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52A
図52B
図53A
図53B
【国際調査報告】