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特表2022-547738滅菌機器と非滅菌機器の帯域外ペアリングのためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-15
(54)【発明の名称】滅菌機器と非滅菌機器の帯域外ペアリングのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/60 20180101AFI20221108BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G16H40/60
G06K7/10 244
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517732
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 US2020051250
(87)【国際公開番号】W WO2021055590
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/902,031
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/023,063
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ バレット
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
無菌性を損なわない帯域外ペアリングのためのシステム(100)は、滅菌機器(110)と、非滅菌機器(150)と、滅菌機器(110)を包囲する滅菌パッケージ(120)とを含む。一例の実施形態では、滅菌機器(110)は第1のNFCタグ(114)を有し、滅菌パッケージ(120)は第2のNFCタグ(414)を有する。当該2つのNFCタグ(114、414)は、滅菌機器(110)についての同一の識別情報を含む。滅菌パッケージ(120)の開封前は、無線ペアリングを開始するために、非滅菌機器(150)によってNFCタグ(114、414)のいずれかをスキャンすることができる。ペアリング前に滅菌パッケージ(120)が開けられた場合、パッケージ(120)に含まれるNFCタグ(414)を滅菌野の外に持ち出し、非滅菌機器(150)によってスキャンすることができ、滅菌機器(110)の無菌性を維持することができる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器の帯域外ペアリングを制御するためのシステムであって、前記システムは、
非滅菌機器と、
滅菌医療機器と、
前記滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージと、
ペアリング情報を記憶するように構成されるとともに、前記滅菌パッケージ及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合された電子回路と、
を備え、
前記非滅菌機器は、前記電子回路をスキャンして、短距離無線プロトコルを介して前記滅菌医療機器についてのペアリング情報を交換するように構成され、
前記滅菌医療機器は、前記電子回路から前記ペアリング情報を読み込み、無線接続の要求を前記非滅菌機器に伝送するように構成され、
前記無線接続の要求を受け取ることに応答して、滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器は、長距離無線プロトコルを介して、前記電子回路に格納された前記ペアリング情報を用いて、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器とセキュアな無線接続を確立する、
システム。
【請求項2】
前記非滅菌機器は、前記滅菌パッケージが開封される前であって前記滅菌医療機器が非アクティブ状態にある間に、前記ペアリング情報を交換し、
前記滅菌医療機器は、前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージから取り出されアクティブ状態になった後に、前記無線接続の要求を前記非滅菌機器に伝送する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記非滅菌機器は、前記短距離無線プロトコルを介して、前記ペアリング情報を前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグに伝送及び格納するように構成されたNFCトランシーバを含み、
前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線通信を確立するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記非滅菌機器はNFCトランシーバを含み、前記NFCトランシーバは、前記短距離無線プロトコルを介して前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つから前記ペアリング情報を読み込み、前記ペアリング情報を前記非滅菌機器のメモリに格納するように構成され、
前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線接続を確立するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ペアリング情報は、無線識別子と、暗号化キーと、互いのセキュアな通信のために前記滅菌医療機器を前記非滅菌機器と関連付けるように機能するパスワードとのうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記第1のNFCタグは、前記滅菌医療機器に結合されたパッシブRFIDタグを含み、前記第2のNFCタグは、前記滅菌パッケージに組み込まれたパッシブRFIDタグを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記非滅菌機器及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合されたプロセッサ及びメモリ、
を更に備え、
前記メモリは、前記プロセッサが、
前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を前記非滅菌野に置き、前記非滅菌機器を用いて前記電子回路をスキャンするように、ユーザに促す
ために実行可能な命令を格納する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記プロセッサは、
前記第1のNFCタグ又は前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つが前記非滅菌機器のNFCトランシーバによってスキャンされたかどうかを決定し、
前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を前記滅菌野内に配置し、前記滅菌パッケージから前記滅菌医療機器を取り出し、前記滅菌医療機器をオンにして前記セキュアな無線接続を確立するように、前記ユーザに促す
ように更に構成される、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記滅菌医療機器は、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記第1のNFCタグと前記第2のNFCタグは、それぞれ、アンテナと、集積回路と、パスワード保護された無線暗号化キーを格納するメモリとを含み、
前記非滅菌機器は、前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つに開錠パスワードを伝送するように構成されたNFCトランシーバを含み、
前記開錠パスワードを受け取ることに応答して、前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの前記少なくとも1つは、前記無線暗号化キーを前記非滅菌機器に伝送する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記滅菌パッケージが前記第2のNFCタグに結合された後であって、前記第1のNFCタグに結合された前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージによって包囲された後に、暗号化キーを用いて前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの1つ以上をプログラムするように構成されたプログラミングユニット、
を更に備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のNFCタグと前記第2のNFCタグの両方は、同一のペアリング情報によって構成され、
前記滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、前記第1のNFCタグ又は前記第2のNFCタグのいずれかが前記非滅菌機器のスキャナによってスキャンされ、
前記滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリングを開始するために、前記滅菌パッケージに組み込まれた前記第2のNFCタグのみが前記スキャナによってスキャンされる、
請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
滅菌機器及び非滅菌機器のシステムにおいて、その無菌性を損なうことなく帯域外ペアリングを制御するための方法であって、
前記システムは、非滅菌機器と、滅菌医療機器と、前記滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージと、ペアリング情報を格納するように構成されるとともに前記滅菌パッケージ及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合される電子回路と、を備え、
前記方法は、
前記非滅菌機器によって前記電子回路をスキャンして、短距離無線プロトコルを介して、前記滅菌医療機器についてのペアリング情報を交換するステップと、
前記滅菌医療機器によって前記電子回路から前記ペアリング情報を読み込み、前記滅菌医療機器により、前記非滅菌機器に無線接続の要求を伝送するステップと、
を含み、
前記無線接続の要求を受け取ることに応答して、滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器は、長距離無線プロトコルを介して、前記電子回路に格納された前記ペアリング情報を用いて、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器とセキュアな無線接続を確立する、
方法。
【請求項14】
滅菌機器及び非滅菌機器のシステムにおいて、その無菌性を損なうことなく帯域外ペアリングを制御するための方法であって、
前記システムは、非滅菌機器と、第1の近距離無線通信(NFC)タグに結合された滅菌医療機器と、第2のNFCタグに結合されるとともに前記滅菌医療機器を包囲するパッケージとを含み、
前記方法は、
短距離無線プロトコルを介して、前記非滅菌機器と前記第1のNFCタグ及び/又は前記第2のNFCタグとの間でペアリング情報を交換するステップと、
前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグに前記ペアリング情報を格納するステップと、
前記短距離無線プロトコルとは異なる長距離無線プロトコルを介して、滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で無線接続の要求を交換するステップと、
前記第2のNFCタグに格納された前記ペアリング情報を用いて、前記長距離無線プロトコルを介して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記コンピュータ機器との間でセキュアな無線通信を確立するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記非滅菌機器は、前記滅菌パッケージが開封される前であって前記滅菌医療機器が非アクティブ状態にある間に、前記ペアリング情報を交換し、
前記滅菌医療機器は、前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージから取り出されアクティブ状態になった後に、前記無線接続の要求を前記非滅菌機器に伝送する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ペアリング情報を交換するステップは、前記非滅菌機器が、前記短距離無線プロトコルを介して、前記ペアリング情報を前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグに伝送及び格納することを含み、
セキュアな無線接続を確立するとき、前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線通信を確立する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ペアリング情報を交換するステップは、前記非滅菌機器が、前記短距離無線プロトコルを介して、前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つから前記ペアリング情報を読み込み、前記ペアリング情報を前記非滅菌機器のメモリに格納することを含み、
セキュアな無線接続を確立するとき、前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線接続を確立する、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記非滅菌機器及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合されたプロセッサが、ユーザに、前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を前記非滅菌野内に配置し、前記非滅菌機器のNFCトランシーバを用いて前記第1のNFCタグ及び/又は前記第2のNFCタグをスキャンするように促すステップ、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記第1のNFCタグ又は前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つが前記非滅菌機器の前記NFCトランシーバによってスキャンされたかどうかを決定するステップと、
前記プロセッサが、前記ユーザに、前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を前記滅菌野内に配置し、前記滅菌パッケージから前記滅菌医療機器を取り出し、前記滅菌医療機器をオンにして前記セキュアな無線接続を確立するように促すステップと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記滅菌パッケージが前記第2のNFCタグに結合された後であって、前記第1のNFCタグに結合された前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージによって包囲された後に、暗号化キーを用いて前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの1つ以上をプログラムするステップ、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国仮出願第62/902031号(2019年9月18日出願)及び米国非仮出願第17/023063号(2020年9月16日出願)に対する優先権を主張し、それらの開示は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、医療機器に関する。より詳細には、本開示は、医療環境(例えば手術室等)における滅菌機器と非滅菌機器の帯域外ペアリングのためのシステム及び方法を例示する。
【背景技術】
【0003】
滅菌とは、表面、機器又は物品から生きている微生物を効果的に排除するプロセスを指す。無菌状態とその維持は、交差感染の予防とともに、患者ケアにおける重要な要素の最優先事項である。実際には、最終滅菌後の微生物の生存レベルの尺度として、無菌性保証レベル(SAL)が用いられる。医療機器等の物品は、その物品が滅菌後に汚染されたままである可能性が100万分の1以下である場合にのみ、「滅菌済み」に分類することができる。したがって、医療機器周りのパッケージは、当該機器の滅菌を可能にし、微生物バリアを提供し、使用時点まで効果的に無菌状態を維持するように、注意深く設計される。このタイプのパッケージは、滅菌バリアシステム(SBS)を形成し、滅菌医療機器の不可欠な部分である。
【0004】
医療機器業界では、使い捨ての滅菌医療機器が普及している。滅菌医療機器は、通常、最終滅菌されたパッケージで医療施設(病院等)に配送され、1人の患者に対して1回使用され、手技の後に廃棄される。不適切な洗浄、殺菌のリスクが減少し、感染や相互汚染の可能性が低くなるので、使い捨ての滅菌機器が再利用可能な機器よりも好まれることが多い。過去には、使い捨てにするために、滅菌医療機器は、典型的には低品質の射出成形プラスチックから作製され、ほとんどの使い捨て滅菌機器には電子部品が含まれていなかった。
【0005】
最近、モノのインターネット(IoT)業界は、無線接続機器の出現とともに、家電市場に革命をもたらした。IoT業界の急速な成長と電子部品の低コストにより、現在、いくつかの医療機器製造業者は、非使い捨て医療機器と相互作用する必要のある高度な電子部品を含む使い捨て医療機器を製造している。そのために、相互に無線接続できる医療機器の拡散を促進するために、ワイヤレスフィディリティ(WiFi)、Bluetooth、Z-Wave、ZigBee、近距離無線通信(NFC)、無線自動識別(RFID)、6LoWPAN(IPv6 over low-power wireless area networks)等の多くの無線通信プロトコルが開発されてきた。
【0006】
近距離無線通信(NFC)は、短距離無線周波通信技術の一種であり、約2MHzの帯域において約13.56MHzで動作し、NFC対応RF機器リーダとNFC対応機器の間の読込み専用通信と読み書き通信を可能とする。NFCの動作は、2つのループアンテナ間の誘導結合に基づき、これにより、近距離にあるNFC対応機器間で電力とデータを共有することができる。典型的には、適切な動作のために、NFC対応リーダとNFC対応機器の間の距離は、約10センチメートル(cm)未満、より好ましくは約5cm又は2インチ未満である必要がある。
【0007】
無線接続される医療機器では、セキュリティが最も重要であるので、無線暗号化は必須である。また、非滅菌コンポーネントと滅菌コンポーネントが互いにインタフェース接続されることを必要とする機器では、医療機器のパッケージは、無菌性を喪失する可能性を最小化するための重要な側面である。しかしながら、滅菌医療機器を非滅菌医療機器にペアリングするプロセスでは、滅菌コンポーネントが非滅菌ユーザ又は非滅菌コンポーネントと接触したときに、無菌性が偶発的に損なわれやすい。
【0008】
多くの機器製造業者は、セキュアに通信を暗号化するために、近距離無線通信(NFC)又は無線自動識別(RFID)の技術を使用して、機器間で機器識別情報(無線識別子や暗号化キー等)を帯域外で交換する。このプロセスは、帯域外(OOB)ペアリングと呼ばれる。OOBペアリングは、メインの通信チャネル又はプロトコルを用いずに無線識別子及び/又は暗号化キーを共有する、セキュアな方法である。Bluetooth対応機器の場合、例えば、OOBペアリングではBluetooth以外のプロトコルを用いることができる。例えば、ペアリングは、異なる2.4GHzプロトコルを使用することができ(ダイレクトWiFiやZigBee、6LoWPAN等)、或いは、異なる通信周波数を使用することができる(NFC等)。NFCを用いたBluetooth OOBペアリングがよく知られている。例えば、2014年にNFCフォーラムによって発行されたアプリケーションドキュメント“Bluetooth Secure Simple Pairing Using NFC”を参照されたい。以上のとおり、NFCとRFID技術を用いるOOBペアリングでは、機器が互いにすぐ近くにあるか、或いは互いに接触することすら必要となる。滅菌医療機器を非滅菌医療機器にペアリングするこのプロセスでは、滅菌コンポーネントが非滅菌ユーザ又は非滅菌コンポーネントと接触したときに、無菌性が偶発的に損なわれやすい。しかしながら、ペアリングプロセス中に適切な無菌性を維持するという問題は、家電業界によって解決されていない。
【0009】
例えば、米国特許第9800663号の“Associating Dialysis Accessories Using Near Field Communications”には、NFC技術を用いて透析機械を血圧カフ等の透析アクセサリとペアリングして、透析機械アクセサリデバイスに一意的である無線識別子を交換することが記載されている。次に、透析機械は、無線識別子を用いてアクセサリと無線通信を確立し、透析機械の機能を制御する許可を透析アクセサリに与える。同様に、米国特許出願公開第2014/0273824号の“Systems,Apparatus and Methods Facilitating Secure Pairing of an Implantable Device with a Remote Device Using Near Field Communication”には、NFCプロトコルを用いて埋込み型機器と情報を交換することが記載されている。この場合、埋込み型医療機器は、インプラントに外部から取り付けられるNFCコンポーネントを含む。NFCコンポーネントは、NFCプロトコルを用いて、埋込み型機器と関連付けられた識別情報をリーダに送るように構成される。この情報の交換により、NFC以外の2次的な通信プロトコル(Bluetooth等)を介したインプラントと外部遠隔機器のペアリングが可能となる。また、米国特許出願公開第2017/0091498号は、ホストシステムとのセキュアな承認ペアリングを容易にするために、医療機器のパッケージに組み込まれるか又は含まれるRFID機器を用いることを開示している。米国特許出願公開第2017/0091498号では、医療機器は、ウェアラブルセンサ、患者に取付け可能な検知パッチ、又は、患者への投薬と連携して使用される検知パッチである。したがって、RFIDによって医療機器のセキュアなペアリングが保証され得るが、医療機器が患者に適用されるときに、医療機器の無菌性は維持されない。
【0010】
米国特許第9800663号では、いずれの透析アクセサリも滅菌されないので、この特許は、無菌性を損なうことなく滅菌機器を非滅菌機器とペアリングする必要性に対処していない。同様に、米国公開第2014/0273824号は、埋込み型医療機器のみに限定され、インプラントが患者内に移植された後にのみNFCを介して情報を交換することを包含している。したがって、無菌性を損なうことなく滅菌医療機器を非滅菌医療機器とペアリングする必要性は残っている。
【0011】
実際、このような無線技術を滅菌医療機器に導入する際の主な障壁は、滅菌使い捨て機器の無菌性を損なうことなく、別の非滅菌の非使い捨て機器(コンピュータ等)と滅菌医療機器をセキュアに無線ペアリングするという課題である。滅菌医療機器と非滅菌医療機器の間の物理的相互作用により、滅菌機器は必然的に非滅菌状態になってしまう。この課題は、このような無線技術を医療機器に適用することに特有のものであり、よって、家庭用電化製品業界では対処されていない。
【発明の概要】
【0012】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、滅菌医療機器の無菌性を損なうことなく、滅菌医療機器と非滅菌計算機器を帯域外ペアリングするためのシステム及び方法が提供される。
【0013】
システムは、滅菌医療機器と、非滅菌計算機器と、少なくとも1つのNFC(近距離無線通信)タグと、滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージとを含む。一例では、滅菌された経皮的針誘導機器が、非滅菌コンピュータとペアリング及び通信する必要がある。滅菌誘導機器は、機器に埋め込まれた第1のNFCタグと、滅菌パッケージに埋め込まれた第2のNFCタグとを有する。当該2つのNFCタグは、互いの複製である。滅菌パッケージの開封前は、非滅菌機器によってNFCタグのいずれかをスキャンして、無線ペアリングを開始することができる。ペアリング前に滅菌パッケージが開けられた場合、パッケージに含まれる第2のNFCタグを滅菌野の外に持ち出し、非滅菌計算機器によってスキャンすることができるので、経皮的針誘導機器の無菌性を維持することができる。
【0014】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
図1図1は、短距離の近距離無線通信プロトコルを用いて滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のシステムの図である。
図2図2は、滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のプロセスのフローチャートであり、ペアリング中、非滅菌機器が識別情報を生成し、それを滅菌機器のNFCタグに書き込む。
図3図3は、滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のプロセスのフローチャートであり、製造中、滅菌機器のNFCタグに識別情報が書き込まれる。
図4図4は、短距離の近距離無線通信プロトコルを用いて滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のシステムの図である。
図5図5は、滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のプロセスのフローチャートであり、製造中、滅菌機器のNFCタグ及び滅菌パッケージのNFCタグに識別情報が書き込まれる。
図6図6は、製造中に、滅菌機器のNFCタグ及び滅菌パッケージのNFCタグに識別情報を事前プログラムするための例示のシステムの図である。
図7図7は、滅菌機器のNFCタグに事前プログラムされた識別情報を滅菌パッケージのNFCタグに複製するための例示のシステムの図である。
図8図8は、パッケージのNFCタグ及び滅菌機器のNFCタグを暗号化又はパスワード保護するための例示のシステム及び方法の図である。
図9図9は、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく、滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするための例示のシステムの図である。
図10A図10Aは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10B図10Bは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10C図10Cは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10D図10Dは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10E図10Eは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図11図11は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器を非滅菌機器に帯域外ペアリングするための更なるプロセス(方法)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態は、滅菌医療機器の無菌性を損なうことなく、滅菌医療機器と非滅菌計算機器を帯域外ペアリングするためのシステム及び方法を提供するという目的に基づく。
【0018】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。本明細書で用いられる場合、「滅菌」という用語は、その一般的な医学的定義を指し、完全に清潔であり、細菌その他の生きている微生物が実質的に存在しないことを意味する。同様に、未滅菌及び非滅菌という用語は、未滅菌の医用器具や、非滅菌環境で行われる医療手術のように、生物及び微生物がいないわけではないことを意味するように、同義で使用される。
【0019】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。使用される場合、「及び/又は」という語句は、「/」と省略される場合があり、それは、そのように提供される場合、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組合わせを含む。
【0020】
様々な図に示されるようなある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記述を簡易にするために、本明細書では、「下」、「真下」、「下方」、「低い」、「上方」、「上」、「近位」、「遠位」等の空間的な相対語が使用される場合がある。ただし、当然のことながら、空間的な相対語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中の機器の様々な向きを包含することが意図される。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」にあると記述されている要素は、図中の機器が裏返されると、当該他の要素又は特徴の「上方」に向けられることになる。よって、「下方」等の相対的な空間用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。機器は、他の方法で方向付けられてもよく(90度回転又は他の方向に)、本明細書で使用される空間的な相対的記述子は、それに応じて解釈されるべきである。同様に、相対的な空間用語「近位」と「遠位」も、該当する場合、交換可能である場合がある。
【0021】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。任意の数値範囲は、本明細書に記載される場合、そこに包含される全ての部分範囲を含むことが意図される。
【0022】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションは、本明細書の開示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションと呼ぶことができる。
【0023】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」という用語は、本明細書において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、留意すべきこととして、一部のクレームは、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0024】
「例示」との語句は、本明細書では、「例、事例又は図説として機能する」ことを意味するように用いられる。本明細書で「例示」と記載されている態様は、特段の記載がない限り、必ずしも他の態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0025】
「プロセッサ」という用語は、実質的に、任意の論理及び/又はソフトウェアベースの計算処理ユニット又は機器を指すことができる。「メモリ」という用語は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを指す場合もあれば、揮発性メモリと不揮発性メモリの両方を含む場合もある。実施形態のメモリ(例えばデータストレージ)は、プロセッサの動作及び機能に関連する適切なタイプの情報ストレージコンポーネントを含む。
【0026】
近距離無線通信(NFC)は、モバイル機器(スマートフォン、非接触型カード及び類似の機器等)を互いに接触させたり近付けたりする(通常、数センチメートル以下)ことによって、モバイル機器が互いに無線通信を確立するための、一連の規格である。NFC機器は磁場誘導を介して通信し、この場合、2つのループアンテナが互いの近接場内に配置され、効果的に空芯トランスを形成する。通信は、NFC機器と動力のないNFCチップとの間でも可能である。動力のないNFCチップは、「NFCタグ」、或いは単純に「タグ」と呼ばれる。NFCには、イニシエータとターゲットが関与する。NFC機器には、電池を必要としないタグ、ステッカ、キーフォブ又はカード等、非常に単純なフォームファクタが採用される。両方の機器に電力が供給されれば、NFCピアツーピア通信が可能である。名称が示すように、イニシエータは通信を開始する機器であり、また、データ交換を制御する。ターゲット機器は、イニシエータからの要求に応答し、イニシエータとの通信の発生を受諾するパッシブ機器である。イニシエータは、パッシブなターゲットに電力を供給できるRF場をアクティブに生成する。無線自動識別(RFID)は、基本的にNFCと同じ作業規格を使用する。ただし、NFCは、2つのアクティブ機器間の通信モードであるRFIDに優る重要な拡張機能を備えている。よって、本開示では、「NFCタグ」という用語は、「RFIDタグ」という用語、及び/又は、磁場誘導を介して通信する他の任意のパッシブタグも含む。NFCイニシエータは、例えばRFIDリーダやスマートフォンであってよい。NFCイニシエータは、別のNFC機器の近くで通信を開始し、次に、ターゲット(タグ)から情報を収集し、或いは収集した情報に従ってアクションを実行する。例えば、NFCタグの付いた商品の識別情報を取得することが、情報を収集することの基本的な例である。Bluetooth(登録商標)音楽プレーヤ(NFCイニシエータ)をアクティブBluetooth(登録商標)スピーカ(NFCターゲット)とペアリングすることは、NFCトランザクションの結果として生じるアクションの良い例である。
【0027】
「ペアリング」という用語は、コンピュータネットワーキングの分野で使用され、2つの計算機器間の初期リンク又は接続を確立して、当該機器間の通信を可能にするためのプロセスを指す。例えば、2つのBluetooth機器がリソースを共有するために互いに接続する場合は、常にBluetoothペアリングが必要である。一例は、Bluetooth通信プロトコルを用いて、ヘッドフォンのセットと携帯電話又はラップトップ等の2つの機器をペアリングすることである。Bluetoothペアリングプロセスは、典型的には、まだペアリングされていない機器から機器が接続要求を受信したときに初めて、自動的にトリガされる。Bluetoothペアリングが発生するには、2つの機器間で最小限のセキュリティ情報を交換する必要がある。このセキュリティ情報(「パスワード」や「パスキー」等)は、両方のBluetooth機器によって共有されるコードであり、パスキーは、両方の機器/ユーザが互いにペアリングすることに同意していることを確認するために使用される。帯域外(OOB)ペアリングは、ペアリング機器を検出するとともに、ペアリングプロセスで使用されるセキュリティ情報を交換又は転送するために帯域外通信技術が使用されるシナリオ用に設計されたペアリングプロセスである。
【0028】
現在、スマートフォンやタブレット等の一部のBluetooth対応機器では、機器間の‘タップ・トゥ・ペア(tap to pair)’にはNFCが用いられ、通常の通信には標準Bluetoothプロトコルが用いられる。NFCは非常に短い距離の通信(約2インチ以下)を行うので、NFC対応機器間の近接性は、2つの機器が実際にペアリングされることを保証するものとして機能する。したがって、NFCは、OOBペアリングに適した通信インタフェースである。一例として、ユーザがスマートフォンとBluetoothヘッドフォンを持っているとして、両方の機器にBluetooth機能とNFC機能が備わっている場合、ユーザが最初に2つの機器に一緒にタッチすると、ペアリングの選択肢が与えられる。これは、NFCプロトコル下で2つの機器間でセキュリティ情報が交換されるシングルタッチプロセスである。ペアリングの選択が確認された場合(“YES”が選択されている場合)、ペアリングは成功し、スマートフォンとBluetoothヘッドフォンの間の通信は、標準Bluetoothプロトコル下で行われる。
【0029】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント、機能又は部分を示すために用いられる。更に、これから具体的な図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【0030】
図1
図1は、滅菌医療機器110及び非滅菌計算機器150を含むシステム100の例示の図を示す。医用システム100は、非滅菌計算機器150がNFC信号125(短距離信号)を介して滅菌医療機器110とペアリングすることを示しており、また、滅菌医療機器110が無線接続135(長距離信号)を介して無線で非滅菌計算機器150に接続することを示している。その基本形では、滅菌医療機器110は、プロセッサ112と、メモリ116と、無線トランシーバ118と、組込み又は埋込みされた(近距離無線通信)NFCタグ114とを含む。図1に示されるように、滅菌医療機器110とNFCタグ114は、滅菌パッケージ120に包囲される。少なくとも一部の実装では、NFCタグ114は、滅菌医療機器110と滅菌パッケージ120の両方に接続されてよい(例えば一時的な接続114aによって)。或いは、以下に更に詳述するように、滅菌パッケージ120が自身のNFCタグを含むことが好ましい場合がある。
【0031】
プロセッサ112は、滅菌医療機器110の全ての動作を制御する。プロセッサ152は、非滅菌計算機器150の全ての動作を制御する。プロセッサ112/152は、中央処理装置(CPU)と呼ばれる場合もある。更に、プロセッサという用語は、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を指す場合もある。メモリ116(リードオンリーメモリ(ROM)とランダムアクセスメモリ(RAM)の両方を含んでよい)は、プロセッサ112に命令及びデータを提供する。メモリ116の一部は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)を含んでもよい。プロセッサ112は、典型的には、メモリ116内に格納されたプログラム命令に基づいて論理演算及び算術演算を実行する。したがって、メモリ116内の命令は、本明細書に記載されるシステム100の制御法及びプロセス法の少なくとも一部を実施するために実行可能であり得る。また、滅菌医療機器110は、信号の処理に用いられる図示されていないデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を含んでよい。滅菌医療機器110は図示されていないコンポーネントを含んでよく、例えば、電源(例えば電池)、電源スイッチ(オン/オフボタン)、該機器を取り扱い操作するための視覚的、触覚的及び聴覚的なコンポーネントとしての他のユーザインタフェースコンポーネントを含んでよい。
【0032】
NFCタグ114は、パッシブの、好ましくは読込み専用の機器である。NFCタグ114は、少なくとも、集積回路(IC)に通信可能に結合されたアンテナと、メモリとを含む。NFCタグ114は、NFC(登録商標)タグ、RFID(登録商標)タグ、ZigBee(登録商標)タグ、或いは、滅菌医療機器110に埋め込まれるとともに最終的な滅菌パッケージ120内に密封される他の類似技術のタグのうちのいずれかであってよい。医療機器のパッケージは、製品に対して保護を提供するだけでなく、製品が何であるかや、命令、警告、安全性情報、その他の関連情報(ロット番号、滅菌方法、使用期限等)を伝達しなければならない。このような情報を伝達するために、パッケージ上に直接印刷するか、或いはラベルを適用することにより、パッケージ上に十分なスペースが設けられる必要がある。多くの場合、2つ以上の言語の情報用にも十分なスペースが必要となる。上記の情報の少なくとも一部が、NFCタグ114のメモリ内に提供されてよい。滅菌パッケージ120は、例えば3Dプリントされたパッケージを含む。また、滅菌医療機器110についての識別情報をパッケージ120内に組み込むことには、例えば、RFIDタグ、NFCタグ、又は電子バーコード、電子回路にコード化されたホログラム又は透かし(スマートラベル)、及びそれらの組合わせを、滅菌医療機器110を包囲する3Dプリントパッケージに追加することが含まれる。
【0033】
パッケージ120は、当技術分野で従来から知られている任意の材料及び形状のものであってよい。従来のパウチ及びトレイ蓋の材料は、主にタイベック(登録商標)と、ホイルと、いくつかの透明ポリマーのバリエーションとから成る。従来のトレイの材料は、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)から成る。PETGは、特に積層造形(3Dプリンティング)で最も一般的に使用される材料である傾向がある。PETGは、透明であり、優れた機械的特性を備え、最も一般的なタイプの滅菌方法に対応する。他の材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を挙げることができる。医療機器の場合、材料及びパッケージの検証テストは、ISO規格11607に概説されている。規格要件に合わせると、パッケージ120は、1つ以上の異なるタイプのポリマー基板又は層から成る密閉容器であってよい。一部の実施形態では、前述したように、パッケージ120は、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリエチレンテレフタレート(PET)で作られる容器を3Dプリントすることによって形成されてよい。他の実施形態では、梱包材120は、ポリマーの層によって作製されてもよいし、或いは、紙や合成紙、医療グレードの織布又は不織布のシート、ポリマーのフィルム又はシート等の可撓性材料の層によって作製されてもよい。更なる実施形態では、パッケージ120は、押出成形されたポリマー材料から作製されてよい。
【0034】
非滅菌計算機器150は、例えば汎用コンピュータ又はモダリティのコンソール計算資源であり、とりわけ、プロセッサ152、ユーザインタフェース153、NFCトランシーバ154、メモリ156及び無線トランシーバ158を含む。プロセッサ152は、非滅菌計算機器150の全ての動作を制御する。プロセッサ152は、中央処理装置(CPU)と呼ばれる場合もあるマイクロプロセッサを含んでよく、或いは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路基板等の他のプロセッサを含んでよい。メモリ156(リードオンリーメモリ(ROM)とランダムアクセスメモリ(RAM)の両方を含んでよい)は、プロセッサ152に命令及びデータを提供する。メモリ156の一部は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)を含んでもよい。プロセッサ152は、典型的には、メモリ156内に格納されたプログラム命令に基づいて論理演算及び算術演算を実行する。メモリ156内の命令は、本明細書に記載の方法の少なくとも一部を実施するために実行可能であり得る。ユーザインタフェース153は、概してシステム100のユーザインタフェースを提供する。ユーザインタフェース153は、ユーザ(例えば医師、看護師、技師等)が医療機器110とやりとりするためのインタフェースを提供することができる。ユーザインタフェース153は、タブレットやスマートフォン、携帯電話、ラップトップ、或いは専用の電子ハードウェア等のネットワーク化機器を含んでよい。ユーザインタフェース153は、非滅菌計算機器150、保健施設のイントラネット(例えば病院のイントラネット)、又は滅菌医療機器110の一部であってもよいし、或いは、物理的ワイヤを介して直接的に、又は無線で、又はその両方で、それらに接続されてもよい。ユーザインタフェース153と非滅菌計算機器150又は滅菌医療機器110との間の接続は、室内ネットワークの一部であってよい。ユーザインタフェース153は、手技中に患者の処置を確認するようにユーザに促すことができ、ユーザは、確認後、滅菌医療機器のパッケージ120が開けられる前(又は後)に、医療機器110のNFCタグ114をスキャンすることができる。
【0035】
医療環境では、使用に先立ち、好ましくは滅菌パッケージ120上のシールが破られる前に、滅菌医療機器110が非滅菌計算機器150とペアリングされる必要がある。しかしながら、滅菌パッケージが開けられた後にペアリングプロセスが必要になる事象が存在し得る。本開示の残りの部分は、無菌性を損なうことなく帯域外ペアリングを実施するために、非滅菌計算機器150のプロセッサ152及び/又は滅菌医療機器110のプロセッサ112によって実施できるプロセス及びアルゴリズムの詳細な説明を提供する。
【0036】
図2
図2は、滅菌医療機器110の無菌性を損なうことなく滅菌医療機器110を非滅菌計算機器150(コンピュータ等)とペアリングするプロセス(方法)を示す例示のフロー図である。この実施形態では、包装された滅菌医療機器110が非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154の近接(近く)に持って来られると(ステップS202)、NFCトランシーバ154は、滅菌医療機器110のNFCタグ114に誘導無線周波信号(NFC信号125)を伝送する。より具体的には、非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154は、NFCタグ114の誘導コイルを励磁する。このエネルギーの移動により、NFCトランシーバ154は、以前にメモリ156に格納された識別情報(例えば暗号化キー及び/又はパスワード)を、NFC通信プロトコル(例えばISO/IEC 1800-3、ISO/IEC 18092/ECMA-340、ISO/IEC 21481/ECMA-352)を用いてNFCタグ114に転送する。すなわち、一実施形態によれば、非滅菌計算機器150は、識別情報を生成し、それを滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込む(ステップS204)。
【0037】
“識別情報”としては、無線識別子、パスワード/パスキー、及び/又は、滅菌医療機器110と非滅菌計算機器150の間で情報を交換するのに必要な暗号化キーが挙げられるが、これらに限定されない。無線識別子は、当業者には既知であるように、例えば、SSID(サービスセット識別子)、MAC(媒体アクセス制御)アドレス、IP(インターネットプロトコル)アドレス、UUID、BD_ADDR値、OUI(organization unique identifier)等を含んでよい。安全性を確保するために、識別情報を滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込む前は、NFCタグ114は空であることが好ましい。そのために、NFCタグ114は、NFCライタから新しい識別情報を受け入れて格納するように構成されてよい(例えばNFCタグは書換え可能であってよい)。
【0038】
より具体的には、ステップs202において、非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154によって、滅菌医療機器110のNFCタグ114がスキャンされる。ステップS204において、非滅菌計算機器150のプロセッサ152が、適切なソフトウェアアプリケーションを実行して、識別情報を(メモリ156から)読み込むか又は生成し、識別情報を滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込む。滅菌医療機器110が非滅菌計算機器150とペアリングされた(登録された)後、ユーザ(例えば医師)は滅菌エリア(例えば手術室)へ向かうことができ、ここで、滅菌医療機器110のパッケージ120を開け、使用に向けてアクティブ化する(電源をオンにする)ことができる。滅菌パッケージ120が開けられ、滅菌医療機器110がオンになると(ステップS206)、滅菌医療機器110は、NFCタグ114に含まれる識別情報125を読み込んで(用いて)(ステップS208)、ホスト機器を検索することができる。具体的には、滅菌医療機器110は、NFCタグ114から識別情報を読み込み、その識別情報(例えば非滅菌機器の識別情報)を用いて、非滅菌計算機器150との無線通信135をセキュアに確立する(ステップS209)。無線通信135は、BluetoothやダイレクトWiFi、無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)等の、NFCプロトコルとは異なる2次的な通信プロトコルを介して発生することが好ましい。
【0039】
言い換えれば、前述したように、滅菌医療機器110のNFCタグ114と非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154との間の帯域外ペアリングに、NFCプロトコルを使用することができる。一方、滅菌医療機器110と非滅菌計算機器150の間の無線通信135では、帯域幅が高く、かつ/又はNFCプロトコルの短距離(近距離)よりも長距離である通信プロトコルが用いられる。
【0040】
滅菌医療機器110のNFCタグ114と非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154との間の帯域外ペアリングでは、Bluetooth short-range、RFID、ZigBee(IEEE 802.15.4、IEEE 802.15.4a)、ANT/ANT+、ボディエリアネットワーク(BAN)プロトコル、MICS(Medical Implant Communication Service)、6LoWPAN等、NFCプロトコル以外の様々な適切な短距離無線通信技術を用いることができる。滅菌医療機器110と非滅菌計算機器150の間の無線通信135では、Bluetooth Low Energy(BTLE)、IEEE802.11規格に従うWiFi、Bluetooth High Speed、ダイレクトWiFi、超広帯域無線(UWB)等、より長距離の通信技術を用いることができる。高いセキュリティを維持するために、滅菌医療機器110と非滅菌計算機器150の間の無線通信(信号135)は、2つの機器間で転送されるデータが大規模なネットワークやインターネットを経由する必要がないように、ポイントツーポイント接続であってよい。
【0041】
Bluetooth帯域外短距離キャリアの例は、例えばBluetooth仕様書第4版(2010年6月30日)に記載されている。無線自動識別(RFID)帯域外短距離キャリアの例は、例えばISO11785(エアインタフェースプロトコル)、ISO 14443(エアインタフェースプロトコル)及びISO 15693に記載されている。近距離無線通信(NFC)帯域外短距離キャリアの例は、例えばISO/IEC 14443及びISO/IEC 18092に記載されている。
【0042】
再び図1を参照すると、NFCタグ114は、薄い基板上に作製されたパッシブな読込み専用機器である(例えばステッカのような)。NFCタグ114は、少なくとも、集積回路(IC)に通信可能に結合されたアンテナと、NFCタグ114が取り付けられた滅菌医療機器110を識別するための識別情報(例えば番号、コード、キー、パスワード等)を少なくとも格納するように構成されたメモリとを含む。NFCタグ114は、そのメモリに一度だけ書き込まれるように構成されてもよいし、複数回書き込まれるように構成されてもよい。更に、NFCタグ114は、製造中、及び/又は、好ましくは滅菌医療機器110への組込み後(例えばタグが既に滅菌医療機器110に取り付けられたとき)に、プログラム(書込み)されてよい。NFCタグ114への書込み動作は、パスキーその他のセキュアな方法を用いて、パスキーが分からない限り更なる書込み動作が防止され得るエリアに対して、達成することができる。NFCタグ114は、電源を含まないことが望ましい。代わりに、NFCタグ114は、磁気誘導を用いてNFCタグ114に読込み及び/又は書込みを行うNFCトランシーバ154から、電力を引き出す。このように、NFCタグ114は、小さなフォームファクタでより小さなサイズに、最小のコストで製造することができる。
【0043】
NFCタグ114は、シリアルナンバーや滅菌医療機器110の識別タイプ/モデル/製造業者等の、NFCプロトコルを介して非滅菌計算機器150に転送できる追加の情報(例えば、ペアリングに必要な識別情報以外の情報)を格納することができる。NFCタグ114は、偽造の(場合によっては非滅菌)機器に対して本物の滅菌医療機器110を識別する一意的な情報を格納することができる。更に、NFCタグ114は、滅菌医療機器110が以前に使用されたかどうかを示す情報(例えば、無菌性が侵害されたかどうかを示す情報)を格納するように構成されてよい。例えば、NFCタグ114は、NFCタグ114がNFCリーダによってスキャンされたときにアクティブ化できる誘導性又は容量性のフラッグを用いてプログラムされてよい。このように、NFCタグ114は、医療機器の無菌性が損なわれたかどうかの表示を提供することができる。
【0044】
本開示では、NFCタグ114は、小さなフォームファクタでより小さなサイズに、最小のコストで製造できるパッシブなタグとして説明されたが、必要に応じてNFCタグ114をアクティブなタグとして提供することは、設計上の選択項であり得る。NFCパッシブタグと同様に、NFCアクティブタグは、IC、アンテナ及びメモリを有するが、オンボードの電源及びオンボードのリーダ/ライタ回路も有し、これにより、NFCタグは、信号をアクティブにブロードキャストし、データを転送することができる。NFCタグは、様々なフォームファクタと機能タイプに製造される。ほとんどのNFCタグは、13.56MHzのNFC伝送周波数でISO14443タイプA及びBの無線規格を用いて通信するが、各タイプのNFCタグは、異なる記憶容量と転送速度を提供する。タグタイプ1及び2は、48バイトから2キロバイトのデータ容量を備え、当該情報を106Kbps(キロビット/秒)で伝送することができる。タイプ3のNFCタグは、ソニー社のFelica規格を使用し、212Kbpsでデータを転送することができる。タイプ4のNFCタグは、最大32Kバイトの更に大きなメモリ容量を備え、通信速度は106Kbp~最大424Kbpsである。NFCタグのタイプ1及び2は、再書込みと再利用が可能であるが、タイプ3及び4は読込み専用であり、再書込みはできない。
【0045】
図3
図3を見てみると、別のペアリング方法が記載されている。図3によれば、滅菌医療機器110を非滅菌計算機器150とペアリングする方法は、製造中に滅菌機器識別情報を生成し、それをNFCタグ114に書き込むことを含む。
【0046】
具体的には、図3に図示されるプロセスでは、ステップS301において、滅菌医療機器110の製造中及び/又は組立て中、図示されていないNFCライタは、識別情報を生成し、それを滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込むように構成される。前述したように、NFCタグ114は、シリアルナンバー、滅菌医療機器110の識別タイプ/モデル/製造業者、及び/又は、ペアリングに必要な識別情報を用いて、プログラムされてよい。
【0047】
次に、ステップS302において、滅菌医療機器110が、非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154によってそのパッケージ120内でスキャンされる。ステップ304において、非滅菌計算機器150は、この情報を受け取り(読み込み)、それをそのメモリ156に格納することになる。医療手技中、滅菌医療機器110が開梱されてオンになると(ステップS306)、滅菌医療機器110は、製造時にそのNFCタグ114に格納された情報を読み込み(S308)、ホスト(非滅菌機器)を検索する。ホストが見つかると、滅菌医療機器110は、2次的な通信プロトコル(BluetoothやダイレクトWiFi等)を介して、以前にNFCタグ114に格納された情報を利用して、非滅菌計算機器150とのセキュアな無線通信を開始する(S309)。
【0048】
この場合、識別情報が製造時に滅菌医療機器110のNFCタグ114に格納されるとき、承認されたNFCリーダが滅菌医療機器110を改ざんする(読み込む)おそれがある。そのような可能性を阻止するために、本開示の実施形態は、更なるセキュリティレイヤを提供する。
【0049】
図4
図4は、滅菌医療機器の無菌性を損なうことなく滅菌医療機器110を非滅菌計算機器150とペアリングするためのシステムの実施形態を示す。前の実施形態では、ペアリング手順の前に滅菌パッケージ120が偶発的或いは意図的に開けられた場合、無菌性を損なわずに滅菌医療機器110を非滅菌計算機器150とペアリングすることができず、滅菌医療機器110を動作不能にしてしまうおそれがある。更に、承認されたNFCトランシーバによってNFCタグ114が読込み又は書込みされた場合、滅菌医療機器110は、非滅菌計算機器150とペアリングすることができない。図4の実施形態は、滅菌医療機器110のパッケージ120に2次的なNFCタグ414を埋め込むことによって、このような問題に対処する。
【0050】
より具体的には、図4に示される実施形態は、図1に示されるシステムに構造的に類似する。しかしながら、図4では、システム100は、滅菌パッケージ120に包囲された滅菌医療機器110を含み、滅菌医療機器110は、埋め込まれた第1のNFCタグ114(NFCタグ1)を含み、滅菌パッケージ120は第2のNFCタグ414(NFCタグ2)を含む。図4に示されるシステム100の他の全ての態様は、図1に示されるシステム100の態様と同じである。
【0051】
図4では、第1のNFCタグ114は、取り外せないように滅菌医療機器110に埋め込まれるか又は組み込まれる。一方、第2のNFCタグ414は、パッケージ120に(表面の内側又は外側に)取り付けられてもよいし、或いは、パッケージ120内で固定されていなくてもよいし、或いは、滅菌医療機器110に除去可能に取り付けられるとともにパッケージ120に固定的に取り付けられる取外し可能なステッカであってもよい。第2のNFCタグ414がパッケージ120に埋め込まれると同時に、滅菌医療機器110に接続されるか或いは除去可能に取り付けられる場合、滅菌医療機器110がパッケージ120から取り出されるときに、第2のNFCタグ414はパッケージ120に取り付けられたままである。
【0052】
これ以降、第2のNFCタグ414は、パッケージNFCタグと呼ばれる場合もある。この実施形態では、パッケージNFCタグは、非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154によって読み込まれる(スキャンされる)。承認されたNFCリーダが滅菌医療機器110を改ざんする可能性を回避するために、パッケージNFCタグ(第2のNFCタグ414)及び第1のNFCタグ114は、機器製造時にプログラムされてよく、また、滅菌医療機器110の同じ固有の識別情報を含む必要がある。機器ペアリング時、非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ158は、短距離NFCプロトコルを用いて、第2のNFCタグ414に格納された情報を読み込むことになる。これにより、非滅菌計算機器150は、Bluetoothや無線LAN(WLAN)、ダイレクトWiFi等の別の無線通信プロトコルを介してセキュアな接続を確立することができる。
【0053】
具体的には、非滅菌計算機器150は、NFCプロトコルを介した滅菌医療機器110とのペアリングを容易にするために、既知の承認/認証方法を採用することができる。例えば、製造時、NFCタグ114は、非滅菌計算機器150に対して滅菌医療機器110を一意的に識別する識別情報を用いてプログラムすることができる。ペアリングプロセス中、NFCトランシーバ154は、第2のNFCタグ414を読み込み(スキャンし)、読み込んだ情報をメモリ156に格納することができる。次に、非滅菌150は、NFCタグ414から読み込まれた識別情報を、NFCタグ114に格納された識別情報と比較することができる。NFCタグ114に格納された情報は、NFCタグ414から読み込まれた識別情報と一致することになるので、非滅菌機器150と滅菌医療機器110は、Bluetooth等の長距離かつ高速な通信プロトコルを介してセキュアな通信リンクを確立することができる。
【0054】
図5
図5は、滅菌医療機器110の無菌性を損なうことなく、図4に示されるような滅菌医療機器110を非滅菌計算機器150とペアリングする方法を示す。この実施形態では、ステップS501において、製造時及び/又は組立て時に、滅菌医療機器110に一意的な識別情報が生成され、滅菌医療機器110の第1のNFCタグ114と滅菌パッケージ120の第2のNFCタグ414の両方に書き込まれる。本開示の他の箇所で論じられるように、製造時/組立て時は第1のタグと第2のタグをブランクのままにしておいて、医療手術での初回使用の際に、非滅菌機器150から第1のNFCタグ114及び第2のNFCタグ414にペアリング情報を書き込むことも可能である。ステップS502において、ユーザが意図的又は偶発的に滅菌シールを破り、滅菌医療機器110をそのパッケージ120から分離した場合、非滅菌計算機器150とのペアリングにパッケージ120が使用される間、滅菌医療機器110はその無菌性を保つことができる。具体的には、ステップS503において、NFCトランシーバ154が、滅菌パッケージ120の第2のNFCタグ414をスキャンする。次に、ステップS504において、NFCトランシーバ154が、NFCタグ414から識別情報を読み込み、識別情報をメモリ116に格納する。
【0055】
ステップS504、S506、S508及びS509のプロセスは、前述した図2のステップS204、S206、S208及びS209と同様である。
【0056】
本実施形態において、第2のNFCタグ414がもたらす利点は、パッケージタグが滅菌状態を維持する必要はないので、滅菌機器のパッケージが開けられた(偶発的又は別の方法で)場合であっても、非滅菌環境で非滅菌計算機器150を用いてパッケージタグをスキャンできるということである。当然のことながら、滅菌パッケージを開く前に、滅菌医療機器110のNFCタグ114か又はパッケージ120の第2のNFCタグ414のいずれかをコンピュータを用いてスキャンして、無線ペアリングを開始することができる。ペアリング前にパッケージ120が開けられた場合、パッケージに含まれるNFCタグ414を滅菌野の外に持ち出し、非滅菌コンピュータによってスキャンすることができるので、滅菌医療機器110の無菌性を維持することができる。
【0057】
代替の実施形態として、滅菌医療機器110の第1のNFCタグ114を完全に排除し、パッケージ120のNFCタグ414に格納された識別情報の複製を、滅菌医療機器110のメモリ116にハードコード化することができる。しかしながら、2つのタグ(第1のNFCタグ114及び第2のNFCタグ414)を維持することには、機器製造プロセスにおいて大きな利点がある。なぜなら、これにより、機器がその対応する滅菌筐体と嵌合された後にパッケージNFCタグ(第2のNFCタグ414)をプログラムすることができるからである。
【0058】
図6
図6は、製造中、滅菌機器のNFCタグ及び滅菌パッケージのNFCタグに識別情報を事前プログラムするための例示のシステムの図である。図6では、システムは、滅菌医療機器110の第1のNFCタグ114及びパッケージ120の第2のNFCタグ414をプログラムするように構成された製造プログラミングデバイス610を含む。そのために、製造プログラミングデバイス610は、プロセッサ612と、メモリ616と、ユーザインタフェース613と、NFCライタ617とを含む。この場合、製造プログラミングユニット610は、NFCライタ617を用いて、同じ(複製の)識別情報IDX1を用いて滅菌機器NFCタグ114とパッケージNFCタグ414の両方をプログラムする(書き込む)。プロセッサ612、メモリ616、ユーザインタフェース613は、それぞれ非滅菌機器150のプロセッサ152、メモリ156、ユーザインタフェース153と同様である。
【0059】
図7
図7は、滅菌医療機器110のNFCタグ114に事前プログラムされた識別情報を滅菌パッケージ120のNFCタグ414に複製するための例示のシステムの図である。図7では、滅菌医療機器110がそのNFCタグ114に既にプログラムされた識別情報を事前に生成及び格納していると仮定される。これは、例えば、滅菌医療機器110の製造時に発生する場合もあるし、その機能テスト時に発生する場合もある。この場合、滅菌医療機器110とそのパッケージ120との組立て(嵌合)中に、製造プログラミングデバイス610は、滅菌医療機器110のNFCタグ114(NFCタグ1)を読み込んで、そこに既に格納されていた識別情報を抽出し、当該情報をパッケージNFCタグ414に複製する。より具体的には、図7に示されるように、製造プログラミングデバイス610のNFCリーダ718は、NFCタグ114から識別情報(IDXa)を読み込む。次に、NFCライタ617は、同じ識別情報(IDXa)をパッケージ120のNFCタグ414に書き込む。
【0060】
図6に示される方法と図7に示される方法の両方では、滅菌医療機器110がその対応するパッケージ120と嵌合される間又は後に、パッケージNFCタグ(NFCタグ114)をプログラムすることが可能である。NFCタグ114とNFCタグ414を同じ情報を用いてプログラミングする利点は、滅菌機器NFCタグとパッケージNFCタグの間の不一致のリスクが低減されることである。NFCタグ114、414は無線近距離技術の下で動作するので、パッケージが封止された後に、必要に応じて機器が滅菌された後であっても、タグをプログラムすることができる。
【0061】
機器製造中にNFCタグがプログラムされる場合、例えば医療施設への機器輸送中に、不正ユーザ(中間者)によって、NFCタグに含まれる情報が読み込まれ、かつ/又は改ざんされるおそれがある。不正ユーザは、NFCタグに含まれる情報を利用して、機器間の無線通信に中間者(MITM)攻撃を行うおそれがある。機器を使用する準備ができたときにのみ識別情報がNFCタグに書き込まれるので、図2のペアリングプロセスは更にセキュアである。実施形態3は、実施形態2を、MITM攻撃を防止するために追加のセキュリティ強化と組み合わせた方法である。
【0062】
図8
図8は、パッケージ120のNFCタグ414と滅菌機器110のNFCタグ114がパスワード保護され、かつ/又は事前暗号化されるシステム及び方法を示す。具体的には、図8に示されるように、医療手技中、パッケージ120は、最初に、意図的或いは別の方法で、滅菌医療機器110から分離される。パッケージ120のNFCタグ414(NFCタグ2)は、パスワード及び/又は暗号化キー(識別情報804)を用いて事前にプログラムされたメモリ802を含む。
【0063】
滅菌機器の使用を開始するために(医療手技中)、非滅菌計算機器150のNFCトランシーバ154は、NFC書込みコマンド825により、NFCタグ414に識別情報(パスワード/キー)を伝える。このようにして、NFCタグ識別情報804は、NFC読取りコマンド826を介して、非滅菌機器150によって開錠されて読み込まれる。このプロセスによって、滅菌機器110は更にセキュアになる。なぜなら、不正ユーザは、パッケージ120のNFCタグ414に含まれる情報を読み込むために、この事前プログラムされたパスワード/キーを知っている必要があるからである。よって、識別情報804を用いてNFCタグ414を事前プログラムすることによって、更なるセキュリティレイヤが提供される。
【0064】
或いは、本方法には、共通の(同じ)キーを用いて事前に暗号化されたNFCタグに格納された識別情報を追加することが含まれる(例えば図6に示されるように)。そのために、製造業者が独自の暗号化アルゴリズムを両方の機器に実装できるように、製造業者が滅菌機器110と非滅菌機器150の両方のプログラミングを制御できることが好ましい。NFCタグに格納された識別情報が非滅菌機器によって読み込まれるとき、予め格納されたキーを用いて識別情報を復号することができ、次に、復号された情報は、滅菌機器と非滅菌機器の間のセキュアな無線通信に用いられることになる。不正ユーザは、無線通信のMITM攻撃を行うには、滅菌機器又は非滅菌機器に含まれる暗号化アルゴリズムをリバースエンジニアリングする必要がある。しかしながら、本方法を実施するには、両方の機器がセキュアな通信をネゴシエートするための正しいキーを知ることができるように、同じプログラミング(好ましくは同じ製造業者による)を滅菌機器と非滅菌機器の両方に行う必要がある。
【0065】
最後に、滅菌医療機器を非滅菌計算機器にペアリングする更にセキュリティの高い方法では、パスワードを用いる方法と暗号化キーを用いる方法が組み合わされる。より高いセキュリティのための組合わせ方法は、事前暗号化されたキーを両方のNFCタグ(すなわち第1のNFCタグ114と第2のNFCタグ414)に格納することを含む。更に、組合わせ方法は、両方のNFCタグ(すなわち第1のNFCタグ114と第2のNFCタグ414)を開錠する共通のパスワード(同じパスワード)を提供することを含む。このように、NFCタグは、キーによって暗号化されるとともにパスワード保護される。この組合わせ方法では、非滅菌機器150がNFCタグ414にパスワードを伝送することで、その内容が開錠されて読み込まれる。次に、非滅菌機器150は、事前暗号化されたキーを滅菌機器110のNFCタグ114から読み込む。次に、事前暗号化されたキーが独自の復号化アルゴリズムにかけられて、無線通信の暗号化に用いられる実際のキーが見つかる。この方法はいくつかのセキュリティレイヤを提供するので、滅菌医療機器の無菌性を維持しながら実践するための最高セキュリティ方法と見なすことができる。
【0066】
本開示には、従来技術に優る以下のような利点がある。全ての実施形態では、滅菌機器の無菌性を伴わずに、滅菌機器と非滅菌機器のセキュアな帯域外ペアリングが可能となる。1つ以上の実施形態では、滅菌機器が製造中にそのパッケージと嵌合され滅菌された後に滅菌機器をプログラムする方式が提供され、パッケージと機器の不一致のリスクが低減される。1つ以上の実施形態では、無断使用、MITM攻撃、及び/又は滅菌医療機器の改ざんのリスクを低減するための、追加のセキュリティ手段が提供される。
【0067】
滅菌機器を非滅菌機器と帯域外ペアリングするための新規のシステム及び方法が開示される。一態様では、滅菌機器に埋込み型NFCタグが設けられ、NFCタグと滅菌機器は滅菌パッケージに包囲される。滅菌医療機器の滅菌パッケージには、2次的なNFCタグが設けられる。これにより、滅菌バリアパッケージが開けられた後でも、滅菌機器の無菌性を損なうことなく、滅菌機器を非滅菌機器とペアリングすることが可能となる。一態様によれば、方法は、滅菌機器がそのパッケージに嵌合及び封入され、滅菌された後に、パッケージNFCタグと滅菌機器NFCタグをプログラムすることを含む。これにより、製造業者以外の存在により、特注のプロセス又はアルゴリズムを用いてプログラミンを実行することが可能となる。
【0068】
少なくとも1つの実施形態は、更なるセキュリティのために、上記の特徴に加えて、パスワード保護されたNFCメモリを含む。少なくとも1つの実施形態は、更なるセキュリティのために、MITM攻撃の可能性を更に低減するために、上記の特徴に加えて、事前暗号化された無線機器情報及び暗号化キーを含む。少なくとも1つの実施形態は、上記の特徴に加えて、パスワード保護されたNFCメモリと、事前暗号化された無線機器情報及び暗号化キーとを含む。
【0069】
これまで、本開示は、無線通信のために滅菌機器を非滅菌機器とペアリングする様々な態様を説明してきた。本明細書には、様々な新規の態様を実施するためのいくつかの環境が含まれる。
【0070】
図9
図9は、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく、滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするための例示のシステムの図である。図9の例では、滅菌医療機器110は、非滅菌計算機器150とペアリングして通信する必要がある。滅菌医療機器110は、例えば滅菌誘導機器902及び滅菌通信ユニット(CU)910を含む。非滅菌計算機器150は、例えば無線通信トランシーバ158(例えばWiFiルータやアクセスポイント)と、近距離又はNFCのトランシーバ154と、表示デバイス153とを備えたコンピュータ又はシステムコンソールを含む。表示デバイス153は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)155上に画像及び医療手術を表示するタッチスクリーン式液晶ディスプレイ(LCD)であってよい。
【0071】
滅菌誘導機器902は滅菌針誘導器具であり、通信ユニット(CU)910を含むか又はこれに接続される。通信ユニット910及び/又は誘導機器902は、埋込み型のNFCタグ114(少なくとも1つの第1のNFCタグ)を有する。医療手技での使用前に、この誘導機器902と通信ユニット910は、滅菌パッケージ120に包装される。パッケージ120も、同様に、取り付けられたか又は埋め込まれたNFCタグ414(第2のNFCタグ)を含む。NFCタグ414は、滅菌医療機器110のNFCタグ114に含まれる識別情報の複製である識別情報を含む。滅菌パッケージ120の開封前に、第1又は第2のNFCタグ(114又は414)のいずれかを非滅菌コンピュータ機器150のNFCトランシーバ154を用いてスキャンして、NFC通信プロトコル下でNFC信号125を用いてOOBペアリングを開始することができる(図10Aを参照)。ペアリングの後、滅菌パッケージ120(まだ滅菌医療機器を包含している)が、滅菌野に移されて開封され(図10Bに示されるように)、誘導機器902及び通信ユニット910が使用に向けて準備される(図10C図10Dを参照)。ペアリングの前にパッケージ120が最初に滅菌野(例えば手術室)内で開封された場合、空になったパッケージ120に含まれるNFCタグ414を、滅菌野の外部に持って行き(図9の矢印913を参照)、非滅菌コンピュータ機器150のNFCトランシーバ154を用いてスキャンすることができるので、誘導機器902及び通信ユニット910の無菌性が保たれる。NFCトランシーバ154によってNFCタグ414が読み込まれると、非滅菌機器150は、識別情報をそのメモリ156に格納する。滅菌医療機器110の電源がオンになると、通信ユニット910は、NFCタグ114から情報を読み込み、ホスト機器(非滅菌機器150)を検索する。ホスト機器はNFCタグ114の識別情報を確認することができるので、通信ユニット910は、NFCプロトコル以外の通信プロトコル(例えばBluetoothやダイレクトWiFi、その他の類似の長距離通信プロトコル)下で、無線信号135を介して、非滅菌計算機器150の無線トランシーバ158とセキュアな接続を確立する。
【0072】
図10
図10A図10Eは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す。図10Aに示されるように、滅菌医療機器110の使用を必要とする医療手技を開始する前に、システムコンソール又は非滅菌コンピュータ機器150は、GUI155を介して、コンピュータ機器150に取り付けられたリーダ(例えばNFCトランシーバ154)を用いて滅菌医療機器110(この場合は針ガイド機器)をスキャンするように、ユーザに促すように構成されてよい。ここで、システムコンソール又はコンピュータ機器150は、滅菌医療機器がコンソールリーダによって有効にスキャンされるまで、包装された滅菌医療機器を特定の方法で(例えば特定の位置、距離又は向きに)移動又は配置するように、ユーザに促すようにプログラムされてよい。
【0073】
図10Bに示されるように、コンピュータ機器150は、機器パッケージを開け、滅菌野の安全な環境(例えば滅菌テーブル)に滅菌機器コンポーネントを配置するように、ユーザに促すように更にプログラムされてよい。図10Cに示されるように、コンピュータ機器150は、GUI155を介して、滅菌医療機器110をアクティブ化する(オンにする)方法をユーザに促し指示するように更に構成されてよい。先に説明したように、滅菌医療機器110がアクティブ化される(オンになる)と、通信ユニット910は、NFCタグ114から識別情報を読み込み、ホスト機器(非滅菌機器)の検索を開始する。ここでも、滅菌機器110がホスト機器を見つけられなかった場合、コンピュータ機器150は、GUI155を介して、滅菌医療機器110が非滅菌機器150と信頼できる無線通信を確立するまで、開梱された滅菌医療機器110を特定の方法で(例えば特定の位置、距離又は向きに)移動し、或いは配置し直すように、ユーザに促すようにプログラムされてよい。
【0074】
図10D及び図10Dは、開梱中及び滅菌医療機器と非滅菌医療機器のペアリング中にユーザに対して誘導プロンプトを提供することの有利な結果を示す。具体的には、図10Dに示されるように、GUI155は、ユーザに、非滅菌機器150と滅菌機器110の間の位置及び接続強度の図式的なガイドを提示する。最後に、図10Eは、滅菌機器110と非滅菌機器150の間の成功した位置決め、ペアリング及び接続の図解を示す。更に、改ざんや無菌性喪失の疑いがある場合、コンピュータ又はシステムコンソールは、滅菌医療機器110を廃棄し新品に交換すべきであることを、ユーザに(例えば警告を発することによって)促すようにプログラムされてよい。
【0075】
図11
図11は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器を非滅菌機器に帯域外ペアリングするための更なるプロセス(方法)を示す。図11のプロセスは、インタラクティブなペアリングプロセスであり、非滅菌計算機器150(図9に示される)のGUI155によって出力されるプロンプト及びイメージングよって、ユーザ(例えば医師や技師)を誘導することができる。図11のプロセスでは、非滅菌計算機器150が、非滅菌野(例えば制御室)に配置されたコンソール又はワークステーションである環境を想定している。滅菌機器110は、滅菌パッケージ120に包囲された針ガイド機器である。滅菌機器110は、無菌性を損なうことなく非滅菌機器150とペアリングされる必要がある。
【0076】
図11によれば、ステップS602において、GUI155が、図10Aに示されるような、滅菌機器をそのパッケージ及びNFCタグとともに非滅菌機器リーダに近接して配置するようにユーザに指示するプロンプトを伴う画像を出力する。ステップS602では、非滅菌機器150が、パッケージ又は滅菌機器に取り付けられたタグがリーダによって適切にスキャンされたかどうかを決定する。本開示の他の箇所で説明されるように、非滅菌機器150は、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのうちの少なくとも1つにペアリング情報を書き込むことができ、或いは、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのうちの少なくとも1つからペアリング情報を読み込むことができる。タグの少なくとも1つが適切にスキャンされなかった場合(S604でNO)、非滅菌機器150は、ステップS606において、ユーザに、NFCリーダの更に近くに滅菌機器を移動するように促すことができる。ここで思い出してほしいのは、NFCタグは短距離無線通信プロトコル(例えばNFCプロトコル)を用いて読み込まれるということである。S602、S604及びS606のプロセスは、タグの少なくとも1つがスキャンされるまで、数回繰り返されてよい。タグのスキャンが失敗した場合、非滅菌機器150のプロセッサは、タグの少なくとも1つが適切にスキャンされるまで、滅菌機器を交換する(すなわち異なる/新しい滅菌機器を使用する)ように、ユーザに促すようにプログラムされてよい。
【0077】
タグの少なくとも1つがスキャンされると(S604でYES)、プロセスはステップS608へ進む。タグの少なくとも1つのスキャンに成功することには、第2のNFCタグ414(又は第1のNFCタグ114)に格納された情報を読み込むことが含まれてよい。両方のタグが同じペアリング情報を用いてプログラムされることが好ましいので、タグのいずれかがスキャンされてよい。したがって、2つのタグを用いることにより、スキャンが容易になり、高速になる。ステップS608において、非滅菌機器150のプロセッサは、滅菌機器110をその滅菌パッケージ120及び対応するNFCタグとともに滅菌野(例えば手術室)内に運び、移動し、或いは配置するように、ユーザに促す。ステップS610において、GUI155は、パッケージ120を開け、滅菌機器110を取り出し、滅菌機器110の滅菌コンポーネントを滅菌表面上に置くように、ユーザに促すことができる(図10Bを参照)。このとき、ユーザは、図10Cに示されるように、滅菌機器110をアクティブ化する(オンにする)ように促される場合がある。ステップS612において、滅菌機器110は、そのNFCタグ(タグ1)からペアリング情報を読み込み、接続要求をブロードキャストすることによってホスト機器(非滅菌機器)を検索する。ここで、非滅菌機器150はステップS602~S604でスキャンされた情報を格納しているので、滅菌機器150のプロセッサは、滅菌機器110から受信した接続要求を許可/受諾することができる。
【0078】
ステップS614において、非滅菌機器150のプロセッサ(又は滅菌機器110の通信ユニット910)は、滅菌機器110と非滅菌機器150の間の接続が確立されたかどうかを決定することができる。滅菌機器110と非滅菌機器150の間の接続が確認された場合(S614でYES)、プロセスはステップS620に進む。ステップS620において、滅菌野に配置された滅菌機器と、滅菌野の外部に配置された非滅菌機器は、短距離無線プロトコル以外の長距離無線プロトコル(例えばBluetoothやWiFi)を用いてセキュアな無線接続を介して通信するように、完全に有効化される。したがって、ステップS620では、GUI155は、滅菌機器110と非滅菌機器150が互いに正常にペアリングされたことをユーザに通知することができる(図15Eを参照)。
【0079】
ステップS614において、非滅菌機器150のプロセッサは、滅菌機器110と非滅菌機器150の間の接続が確立されていない、或いは確立することができないと決定することができる(S614でNO)。NFCタグの少なくとも1つがスキャンされた後であっても、滅菌機器110と非滅菌機器150の間の接続の確立を妨げ得る様々な理由があり得る。例えば、医療手技の開始前に、非滅菌機器150又はそのトランシーバが偶発的に電力を失ったり切断されたりした場合、ステップS614で接続を確認することはできない。また、電源がオンになった後、滅菌機器110が自己診断プロシージャを受ける場合がある。自己診断プロシージャが失敗した場合、滅菌機器110を廃棄する前に、非滅菌機器150を用いてパッケージ120のNFCタグを再スキャンすることが役立つ場合がある。このようなシナリオのいずれでも、滅菌機器が滅菌野内に残っている場合があるので(S616)、ユーザに、滅菌野から滅菌機器を取り出すことなく、パッケージ120及び第2のNFCタグ414を用いてスキャンステップを繰り返すように促すことができる(ステップS618)。
【0080】
別の例では、非滅菌透析機を、血圧モニタ等の滅菌透析アクセサリとペアリングする必要がある。この例では、透析アクセサリは、機器に埋め込まれたRFIDタグ又はNFCタグを有し、透析アクセサリを包含する滅菌パッケージは、複製のNFCタグ又はRFIDタグを有する。滅菌バリアが壊される前は、非滅菌透析機によっていずれかのタグを読み込むことができる。パッケージが開封された後は、非滅菌透析機のパッケージタグのみをスキャンすることにより、透析アクセサリの無菌性を維持することができる。
【0081】
多くの医療機器は、滅菌野を汚染するリスクを伴わずに滅菌野内に拡張可能な滅菌コンポーネントを必要とする。滅菌野では、当該滅菌コンポーネントが、デバイスの操作に必要な非滅菌コンポーネントと相互作用する。この状況では、非滅菌コンポーネントが滅菌野に入るおそれがあり、滅菌野の無菌状態を無効にするおそれがある。無菌状態の喪失を防ぐための解決策は、滅菌野に入る非滅菌コンポーネント上に滅菌バリアを展開することであった。これは特に、生体内(in vivo)環境で使用される医療機器に当てはまり、当該環境では、インターベンション用ロボットシステム等の滅菌コンポーネントを、滅菌できない電子コンポーネントとインタフェース接続する必要がある。
【0082】
例えば、非滅菌コンピュータを、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとペアリングする必要がある。医師は、手術用ロボットを誘導するために滅菌グローブを用いてコントローラを使用するので、コントローラは無菌性を維持しなければならない。本開示によれば、コントローラは埋込み型のNFCタグ又はRFIDタグを含み、コントローラは滅菌ドレープ又はパッケージに包囲される。この場合でも、コントローラの滅菌ドレープ又はパッケージにも、複製のNFCタグ又はRFIDタグが含まれる。手技中、医師又は技師は、滅菌パッケージが開封される前は、タグ(コントローラタグ又はパッケージタグ)のいずれかをスキャンすることができる。しかしながら、ペアリング前にパッケージが開封された場合であっても、パッケージの複製タグにより、医師又は技術者は、コントローラの無菌性を壊すことなく、滅菌コントローラを非滅菌コンピュータとペアリングすることができる。
【0083】
これらは、本開示を実施できる多くの可能な用途のほんの数例である。当業者には当然のことながら、本開示を実施できる態様は他にも数多く存在する。
【0084】
第1の態様(態様1)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器を帯域外ペアリングするためのシステムとして実施することができる。当該システムは、以下を備える:滅菌医療機器;非滅菌機器;少なくとも滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージ;滅菌医療機器の識別情報を格納するように構成された少なくとも1つのNFCタグ;第1の無線プロトコルを介してNFCタグと通信するように構成されたNFCトランシーバ;及び、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリ。メモリは、プロセッサが、滅菌野の内部に配置された滅菌医療機器からペアリング要求信号を受け取り、滅菌野の外側に配置された非滅菌機器にペアリング要求信号を伝送するために実行可能な命令を格納する。ペアリング要求信号を受け取ることに応答して、プロセッサは、少なくとも1つのNFCタグに格納された識別情報を用いて、第1の無線プロトコルとは異なる第2の無線プロトコルを介して非滅菌機器と無線接続するように、滅菌医療機器を構成する。
【0085】
第2の態様(態様2)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。非滅菌機器はNFCトランシーバを含む。NFCトランシーバは、少なくとも1つのNFCタグに識別情報を書き込むように構成される。滅菌医療機器は、少なくとも1つのNFCタグから識別情報を読み込むように構成されたNFCリーダを含む。
【0086】
第3の態様(態様3)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは滅菌医療機器に組み込まれる。識別情報は、滅菌医療機器を非滅菌機器と関連付けるように機能する無線識別子及び/又は暗号化キーを含む。
【0087】
第4の態様(態様4)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは、滅菌医療機器に組み込まれたRFIDタグを含む。
【0088】
第5の態様(態様5)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは、滅菌医療機器に組み込まれた第1のNFCタグと、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグとを含む。
【0089】
第6の態様(態様6)によれば、本開示は、態様5のシステムとして実施することができる。非滅菌機器は、第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方に識別情報を書き込むように構成され、滅菌医療機器は、第1のNFCタグから識別情報を読み込むように構成される。非滅菌機器と滅菌医療機器は、ペアリング要求信号を受け取ることに応答して、第1のNFCタグから読み込まれた識別情報を用いて、互いに無線接続する。
【0090】
第7の態様(態様7)によれば、本開示は、態様6のシステムとして実施することができる。滅菌医療機器は、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの1つ以上を含む。
【0091】
第8の態様(態様8)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは、アンテナと、集積回路と、パスワード保護された無線暗号化キーを格納するメモリとを含む。非滅菌機器は、少なくとも1つのNFCタグに開錠パスワードを伝送するように構成されたNFCトランシーバを含む。開錠パスワードを受け取ることに応答して、少なくとも1つのNFCタグは、無線暗号化キーを非滅菌機器に伝送する。
【0092】
第9の態様(態様9)によれば、本開示は、態様5のシステムとして実施することができ、以下を更に備える:滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、暗号化キーを用いて第1のNFCタグ及び第2のNFCタグをプログラムすることにより、第1のNFCタグと第2のNFCタグの間のキー不一致のリスクを排除するように構成された製造業者プログラミングユニット。
【0093】
第9(b)の態様(態様9b)によれば、本開示は、態様3のシステムとして実施することができ、以下を更に備える:滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、滅菌医療機器に組み込まれた少なくとも1つのNFCタグを暗号化キーを用いてプログラムするように構成された製造業者プログラミングユニット。暗号化キーは、滅菌医療機器を非滅菌機器と関連付けるように機能し、それにより、滅菌医療機器と非滅菌機器の間のキー不一致のリスクを排除する。この態様(態様9b)によれば、滅菌プロセスに、滅菌機器の一部の繊細な部分を損傷又は破損するリスク、或いは滅菌に失敗するリスクが含まれる場合、滅菌プロセスの後に暗号化キーの定義プロセスを完了できれば有利である。これにより、不要な製造工程を実施するリスクが低減され、適切な滅菌とペアリングのセキュリティが保証される。
【0094】
第10の態様(態様10)によれば、本開示は、態様5のシステムとして実施することができる。第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方は、同一の識別情報によって構成される。滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのいずれかが非滅菌機器のスキャナによってスキャンされる。滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリングを開始するために、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグのみがスキャナによってスキャンされる。
【0095】
第11の態様(態様11)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器を帯域外ペアリングするための方法として実施することができる。方法は、以下を含む:第1の近距離無線通信(NFC)タグが組み込まれた滅菌医療機器と、非滅菌機器と、第2のNFCタグが組み込まれるとともに滅菌医療機器及び第1のNFCタグを包囲する滅菌パッケージとを備える通信システムを形成するステップ;第1のNFCタグ及び第2のNFCタグに同一の識別情報を格納するステップ;及び、滅菌パッケージのステータスに従って、非滅菌機器によって第1のNFCタグ又は第2のNFCタグをスキャンするステップ。滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのいずれかが非滅菌機器によってスキャンされる。滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリングを開始するために、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグのみが非滅菌機器によってスキャンされる。
【0096】
第12の態様(態様12)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができ、以下を更に含む:滅菌パッケージの開封前、第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方に同一の識別情報を書き込むステップ。
【0097】
第13の態様(態様13)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができ、以下を更に含む:滅菌パッケージの開封後、無線ペアリングを開始するために、第2のNFCタグから非滅菌機器に識別情報を伝送するステップ。
【0098】
第14の態様(態様14)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。識別情報は、無線識別子と、滅菌医療機器と非滅菌機器の間の無線通信を有効化するように機能する暗号化キーとを含む。
【0099】
第15の態様(態様15)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。非滅菌機器は、第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方に識別情報を書き込むように構成され、滅菌医療機器は、第1のNFCタグから識別情報を読み込むように構成される。非滅菌機器と滅菌医療機器は、受け取られたペアリング要求信号に応答して、第1のNFCタグから読み込まれた識別情報を用いて、互いに無線接続する。
【0100】
第16の態様(態様16)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。滅菌医療機器は、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの1つ以上を含む。ペアリングは、セキュアな無線通信のために、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの少なくとも1つを非滅菌医療機器とペアリングすることを含む。
【0101】
第17の態様(態様17)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。第1のNFCタグ及び第2のNFCタグは、パスワード保護された無線暗号化キーを用いて構成される。非滅菌機器は、第1のNFCタグ及び第2のNFCタグのうちの少なくとも1つに開錠パスワードを伝送するように構成されたNFCトランシーバを含む。開錠パスワードを受け取ることに応答して、第1のNFCタグ及び第2のNFCタグのうちの少なくとも1つは、暗号化キーを非滅菌機器に伝送する。
【0102】
第18の態様(態様18)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができ、以下を更に含む:滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、暗号化キーを用いて第1のNFCタグ及び第2のNFCタグをプログラムすることにより、第1のNFCタグと第2のNFCタグの間のキー不一致のリスクを排除するステップ。
【0103】
第19の態様(態様19)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方は、同一の識別情報によって構成される。滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのいずれかが非滅菌機器によってスキャンされる。滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリンを開始するために、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグのみが非滅菌機器によってスキャンされる。
【0104】
第20の態様(態様20)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器を帯域外ペアリングするための方法として実施することができる。本方法は、以下のステップを含む:(a)滅菌医療機器と、非滅菌機器と、少なくとも滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージと、滅菌医療機器に組み込まれるとともに滅菌医療機器についての識別情報を格納する少なくとも1つのNFCタグと、非滅菌機器に作動的に接続されるとともに、第1の無線プロトコルを介して少なくとも1つのNFCタグと通信するように構成されたNFCトランシーバとを備える通信システムを形成するステップ;(b)ペアリングプロセス中に、NFCトランシーバによって少なくともNFCタグをスキャンし、第1の無線プロトコルを介してペアリング情報を交換するステップ;及び、(c)医療手技中に、(c1)少なくとも1つのNFCタグをアクティブ化し、(c2)滅菌野の内部に配置された滅菌医療機器から、滅菌野の外側に配置された非滅菌機器に接続要求を伝送するステップ。滅菌医療機器は、ペアリング情報と、少なくとも1つのNFCタグに格納された識別情報とを用いて、第1の無線プロトコルとは異なる第2の無線プロトコルを介して非滅菌機器と無線接続する。
【0105】
第21の態様(態様21)によれば、本開示は、態様20の方法として実施することができる。ペアリングプロセス中、第1の無線プロトコルを介してペアリング情報を交換するステップは、滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、滅菌医療機器に組み込まれた少なくとも1つのNFCタグを暗号化キーを用いてプログラムすることを含む。暗号化キーは、滅菌医療機器を非滅菌機器と関連付けるように機能し、それにより、滅菌医療機器と非滅菌機器の間のキー不一致のリスクを排除する。
【0106】
第22の態様(態様22)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌医療機器と非滅菌医療機器を帯域外ペアリングするためのシステムとして実施することができる。本システムは、滅菌医療機器と、非滅菌機器と、滅菌医療機器についての情報を格納するように構成された少なくとも1つの近距離無線通信(NFC)タグと、メモリに結合されたプロセッサと、を備え、メモリは、プロセッサが、ユーザに、非滅菌機器の近くに少なくとも1つのNFCタグを配置するように促し、非滅菌医療機器と少なくとも1つのNFCタグの間で第1の無線接続を確立して、滅菌医療機器についての情報をNFCタグから非滅菌医療機器に伝送し、滅菌野の内部に配置された滅菌医療機器と滅菌野の外側に配置された非滅菌機器との間で第2の無線接続を確立して、滅菌医療機器と非滅菌機器の間で動作情報を交換するために実行可能な命令を格納する。プロセッサは、NFCタグから読み込まれた滅菌医療機器についての情報に基づいて、第2の無線接続を確立し、プロセッサは、NFCプロトコルを介して少なくともNFCタグと非滅菌医療機器の間でペアリング情報を伝送するために第1の無線接続を確立し、また、NFCプロトコルとは異なる短距離又は長距離の無線通信プロトコルを介して滅菌医療機器と非滅菌機器の間で動作情報を交換するために、第2の無線接続を確立する。
【0107】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0108】
したがって、本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い合理的な解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器の帯域外ペアリングを制御するためのシステムであって、前記システムは、
非滅菌機器と、
滅菌医療機器と、
前記滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージと、
ペアリング情報を記憶するように構成されるとともに、前記滅菌パッケージ及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合された電子回路と、
を備え、
前記非滅菌機器は、前記電子回路をスキャンして、短距離無線プロトコルを介して前記滅菌医療機器についてのペアリング情報を交換するように構成され、
前記滅菌医療機器は、前記電子回路から前記ペアリング情報を読み込み、無線接続の要求を前記非滅菌機器に伝送するように構成され、
前記無線接続の要求を受け取ることに応答して、滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器は、長距離無線プロトコルを介して、前記電子回路に格納された前記ペアリング情報を用いて、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器とセキュアな無線接続を確立する、
システム。
【請求項2】
前記非滅菌機器は、前記滅菌パッケージが開封される前であって前記滅菌医療機器が非アクティブ状態にある間に、前記ペアリング情報を交換し、
前記滅菌医療機器は、前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージから取り出されアクティブ状態になった後に、前記無線接続の要求を前記非滅菌機器に伝送する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記非滅菌機器は、前記短距離無線プロトコルを介して、前記ペアリング情報を前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグに伝送及び格納するように構成されたNFCトランシーバを含み、
前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線通信を確立するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記非滅菌機器はNFCトランシーバを含み、前記NFCトランシーバは、前記短距離無線プロトコルを介して前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つから前記ペアリング情報を読み込み、前記ペアリング情報を前記非滅菌機器のメモリに格納するように構成され、
前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線接続を確立するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ペアリング情報は、無線識別子と、暗号化キーと、互いのセキュアな通信のために前記滅菌医療機器を前記非滅菌機器と関連付けるように機能するパスワードとのうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記第1のNFCタグは、前記滅菌医療機器に結合されたパッシブRFIDタグを含み、前記第2のNFCタグは、前記滅菌パッケージに組み込まれたパッシブRFIDタグを含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記非滅菌機器及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合されたプロセッサ及びメモリ、
を更に備え、
前記メモリは、前記プロセッサが、
前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を非滅菌野に置き、前記非滅菌機器を用いて前記電子回路をスキャンするように、ユーザに促す
ために実行可能な命令を格納する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記プロセッサは、
前記第1のNFCタグ又は前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つが前記非滅菌機器のNFCトランシーバによってスキャンされたかどうかを決定し、
前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を前記滅菌野内に配置し、前記滅菌パッケージから前記滅菌医療機器を取り出し、前記滅菌医療機器をオンにして前記セキュアな無線接続を確立するように、前記ユーザに促す
ように更に構成される、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記滅菌医療機器は、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの1つ以上を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記電子回路は、前記滅菌医療機器に結合された第1の近距離無線通信(NFC)タグと、前記滅菌パッケージに結合された第2のNFCタグとを含み、
前記第1のNFCタグと前記第2のNFCタグは、それぞれ、アンテナと、集積回路と、パスワード保護された無線暗号化キーを格納するメモリとを含み、
前記非滅菌機器は、前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つに開錠パスワードを伝送するように構成されたNFCトランシーバを含み、
前記開錠パスワードを受け取ることに応答して、前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの前記少なくとも1つは、前記無線暗号化キーを前記非滅菌機器に伝送する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記滅菌パッケージが前記第2のNFCタグに結合された後であって、前記第1のNFCタグに結合された前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージによって包囲された後に、暗号化キーを用いて前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの1つ以上をプログラムするように構成されたプログラミングユニット、
を更に備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のNFCタグと前記第2のNFCタグの両方は、同一のペアリング情報によって構成され、
前記滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、前記第1のNFCタグ又は前記第2のNFCタグのいずれかが前記非滅菌機器のスキャナによってスキャンされ、
前記滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリングを開始するために、前記滅菌パッケージに組み込まれた前記第2のNFCタグのみが前記スキャナによってスキャンされる、
請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
滅菌機器及び非滅菌機器のシステムにおいて、その無菌性を損なうことなく帯域外ペアリングを制御するための方法であって、
前記システムは、非滅菌機器と、滅菌医療機器と、前記滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージと、ペアリング情報を格納するように構成されるとともに前記滅菌パッケージ及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合される電子回路と、を備え、
前記方法は、
前記非滅菌機器によって前記電子回路をスキャンして、短距離無線プロトコルを介して、前記滅菌医療機器についてのペアリング情報を交換するステップと、
前記滅菌医療機器によって前記電子回路から前記ペアリング情報を読み込み、前記滅菌医療機器により、前記非滅菌機器に無線接続の要求を伝送するステップと、
を含み、
前記無線接続の要求を受け取ることに応答して、滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器は、長距離無線プロトコルを介して、前記電子回路に格納された前記ペアリング情報を用いて、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器とセキュアな無線接続を確立する、
方法。
【請求項14】
滅菌機器及び非滅菌機器のシステムにおいて、その無菌性を損なうことなく帯域外ペアリングを制御するための方法であって、
前記システムは、非滅菌機器と、第1の近距離無線通信(NFC)タグに結合された滅菌医療機器と、第2のNFCタグに結合されるとともに前記滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージとを含み、
前記方法は、
短距離無線プロトコルを介して、前記非滅菌機器と前記第1のNFCタグ及び/又は前記第2のNFCタグとの間でペアリング情報を交換するステップと、
前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグに前記ペアリング情報を格納するステップと、
前記短距離無線プロトコルとは異なる長距離無線プロトコルを介して、滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で無線接続の要求を交換するステップと、
前記第2のNFCタグに格納された前記ペアリング情報を用いて、前記長距離無線プロトコルを介して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間でセキュアな無線通信を確立するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記非滅菌機器は、前記滅菌パッケージが開封される前であって前記滅菌医療機器が非アクティブ状態にある間に、前記ペアリング情報を交換し、
前記滅菌医療機器は、前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージから取り出されアクティブ状態になった後に、前記無線接続の要求を前記非滅菌機器に伝送する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ペアリング情報を交換するステップは、前記非滅菌機器が、前記短距離無線プロトコルを介して、前記ペアリング情報を前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグに伝送及び格納することを含み、
セキュアな無線接続を確立するとき、前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線通信を確立する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ペアリング情報を交換するステップは、前記非滅菌機器が、前記短距離無線プロトコルを介して、前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つから前記ペアリング情報を読み込み、前記ペアリング情報を前記非滅菌機器のメモリに格納することを含み、
セキュアな無線接続を確立するとき、前記滅菌医療機器は、当該滅菌医療機器に結合された前記第1のNFCタグから前記ペアリング情報を読み込み、前記第1のNFCタグから読み込まれた前記ペアリング情報を前記非滅菌機器に伝送して、前記滅菌野内に配置された前記滅菌医療機器と前記滅菌野の外部に配置された前記非滅菌機器との間で前記セキュアな無線接続を確立する、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記非滅菌機器及び前記滅菌医療機器のうちの1つ以上に結合されたプロセッサが、ユーザに、前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を非滅菌野内に配置し、前記非滅菌機器のNFCトランシーバを用いて前記第1のNFCタグ及び/又は前記第2のNFCタグをスキャンするように促すステップ、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記プロセッサが、前記第1のNFCタグ又は前記第2のNFCタグのうちの少なくとも1つが前記非滅菌機器の前記NFCトランシーバによってスキャンされたかどうかを決定するステップと、
前記プロセッサが、前記ユーザに、前記滅菌パッケージに包囲された前記滅菌医療機器を前記滅菌野内に配置し、前記滅菌パッケージから前記滅菌医療機器を取り出し、前記滅菌医療機器をオンにして前記セキュアな無線接続を確立するように促すステップと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記滅菌パッケージが前記第2のNFCタグに結合された後であって、前記第1のNFCタグに結合された前記滅菌医療機器が前記滅菌パッケージによって包囲された後に、暗号化キーを用いて前記第1のNFCタグ及び前記第2のNFCタグのうちの1つ以上をプログラムするステップ、
を更に含む、請求項15に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国仮出願第62/902031号(2019年9月18日出願)及び米国非仮出願第17/023063号(2020年9月16日出願)に対する優先権を主張し、それらの開示は、参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、医療機器に関する。より詳細には、本開示は、医療環境(例えば手術室等)における滅菌機器と非滅菌機器の帯域外ペアリングのためのシステム及び方法を例示する。
【背景技術】
【0003】
滅菌とは、表面、機器又は物品から生きている微生物を効果的に排除するプロセスを指す。無菌状態とその維持は、交差感染の予防とともに、患者ケアにおける重要な要素の最優先事項である。実際には、最終滅菌後の微生物の生存レベルの尺度として、無菌性保証レベル(SAL)が用いられる。医療機器等の物品は、その物品が滅菌後に汚染されたままである可能性が100万分の1以下である場合にのみ、「滅菌済み」に分類することができる。したがって、医療機器周りのパッケージは、当該機器の滅菌を可能にし、微生物バリアを提供し、使用時点まで効果的に無菌状態を維持するように、注意深く設計される。このタイプのパッケージは、滅菌バリアシステム(SBS)を形成し、滅菌医療機器の不可欠な部分である。
【0004】
医療機器業界では、使い捨ての滅菌医療機器が普及している。滅菌医療機器は、通常、最終滅菌されたパッケージで医療施設(病院等)に配送され、1人の患者に対して1回使用され、手技の後に廃棄される。不適切な洗浄、殺菌のリスクが減少し、感染や相互汚染の可能性が低くなるので、使い捨ての滅菌機器が再利用可能な機器よりも好まれることが多い。過去には、使い捨てにするために、滅菌医療機器は、典型的には低品質の射出成形プラスチックから作製され、ほとんどの使い捨て滅菌機器には電子部品が含まれていなかった。
【0005】
最近、モノのインターネット(IoT)業界は、無線接続機器の出現とともに、家電市場に革命をもたらした。IoT業界の急速な成長と電子部品の低コストにより、現在、いくつかの医療機器製造業者は、非使い捨て医療機器と相互作用する必要のある高度な電子部品を含む使い捨て医療機器を製造している。そのために、相互に無線接続できる医療機器の拡散を促進するために、ワイヤレスフィディリティ(WiFi)、Bluetooth、Z-Wave、ZigBee、近距離無線通信(NFC)、無線自動識別(RFID)、6LoWPAN(IPv6 over low-power wireless area networks)等の多くの無線通信プロトコルが開発されてきた。
【0006】
近距離無線通信(NFC)は、短距離無線周波通信技術の一種であり、約2MHzの帯域において約13.56MHzで動作し、NFC対応RF機器リーダとNFC対応機器の間の読込み専用通信と読み書き通信を可能とする。NFCの動作は、2つのループアンテナ間の誘導結合に基づき、これにより、近距離にあるNFC対応機器間で電力とデータを共有することができる。典型的には、適切な動作のために、NFC対応リーダとNFC対応機器の間の距離は、約10センチメートル(cm)未満、より好ましくは約5cm又は2インチ未満である必要がある。
【0007】
無線接続される医療機器では、セキュリティが最も重要であるので、無線暗号化は必須である。また、非滅菌コンポーネントと滅菌コンポーネントが互いにインタフェース接続されることを必要とする機器では、医療機器のパッケージは、無菌性を喪失する可能性を最小化するための重要な側面である。しかしながら、滅菌医療機器を非滅菌医療機器にペアリングするプロセスでは、滅菌コンポーネントが非滅菌ユーザ又は非滅菌コンポーネントと接触したときに、無菌性が偶発的に損なわれやすい。
【0008】
多くの機器製造業者は、セキュアに通信を暗号化するために、近距離無線通信(NFC)又は無線自動識別(RFID)の技術を使用して、機器間で機器識別情報(無線識別子や暗号化キー等)を帯域外で交換する。このプロセスは、帯域外(OOB)ペアリングと呼ばれる。OOBペアリングは、メインの通信チャネル又はプロトコルを用いずに無線識別子及び/又は暗号化キーを共有する、セキュアな方法である。Bluetooth対応機器の場合、例えば、OOBペアリングではBluetooth以外のプロトコルを用いることができる。例えば、ペアリングは、異なる2.4GHzプロトコルを使用することができ(ダイレクトWiFiやZigBee、6LoWPAN等)、或いは、異なる通信周波数を使用することができる(NFC等)。NFCを用いたBluetooth OOBペアリングがよく知られている。例えば、2014年にNFCフォーラムによって発行されたアプリケーションドキュメント“Bluetooth Secure Simple Pairing Using NFC”を参照されたい。以上のとおり、NFCとRFID技術を用いるOOBペアリングでは、機器が互いにすぐ近くにあるか、或いは互いに接触することすら必要となる。滅菌医療機器を非滅菌医療機器にペアリングするこのプロセスでは、滅菌コンポーネントが非滅菌ユーザ又は非滅菌コンポーネントと接触したときに、無菌性が偶発的に損なわれやすい。しかしながら、ペアリングプロセス中に適切な無菌性を維持するという問題は、家電業界によって解決されていない。
【0009】
例えば、米国特許第9800663号の“Associating Dialysis Accessories Using Near Field Communications”には、NFC技術を用いて透析機械を血圧カフ等の透析アクセサリとペアリングして、透析機械アクセサリデバイスに一意的である無線識別子を交換することが記載されている。次に、透析機械は、無線識別子を用いてアクセサリと無線通信を確立し、透析機械の機能を制御する許可を透析アクセサリに与える。同様に、米国特許出願公開第2014/0273824号の“Systems,Apparatus and Methods Facilitating Secure Pairing of an Implantable Device with a Remote Device Using Near Field Communication”には、NFCプロトコルを用いて埋込み型機器と情報を交換することが記載されている。この場合、埋込み型医療機器は、インプラントに外部から取り付けられるNFCコンポーネントを含む。NFCコンポーネントは、NFCプロトコルを用いて、埋込み型機器と関連付けられた識別情報をリーダに送るように構成される。この情報の交換により、NFC以外の2次的な通信プロトコル(Bluetooth等)を介したインプラントと外部遠隔機器のペアリングが可能となる。また、米国特許出願公開第2017/0091498号は、ホストシステムとのセキュアな承認ペアリングを容易にするために、医療機器のパッケージに組み込まれるか又は含まれるRFID機器を用いることを開示している。米国特許出願公開第2017/0091498号では、医療機器は、ウェアラブルセンサ、患者に取付け可能な検知パッチ、又は、患者への投薬と連携して使用される検知パッチである。したがって、RFIDによって医療機器のセキュアなペアリングが保証され得るが、医療機器が患者に適用されるときに、医療機器の無菌性は維持されない。
【0010】
米国特許第9800663号では、いずれの透析アクセサリも滅菌されないので、この特許は、無菌性を損なうことなく滅菌機器を非滅菌機器とペアリングする必要性に対処していない。同様に、米国公開第2014/0273824号は、埋込み型医療機器のみに限定され、インプラントが患者内に移植された後にのみNFCを介して情報を交換することを包含している。したがって、無菌性を損なうことなく滅菌医療機器を非滅菌医療機器とペアリングする必要性は残っている。
【0011】
実際、このような無線技術を滅菌医療機器に導入する際の主な障壁は、滅菌使い捨て機器の無菌性を損なうことなく、別の非滅菌の非使い捨て機器(コンピュータ等)と滅菌医療機器をセキュアに無線ペアリングするという課題である。滅菌医療機器と非滅菌医療機器の間の物理的相互作用により、滅菌機器は必然的に非滅菌状態になってしまう。この課題は、このような無線技術を医療機器に適用することに特有のものであり、よって、家庭用電化製品業界では対処されていない。
【発明の概要】
【0012】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、滅菌医療機器の無菌性を損なうことなく、滅菌医療機器と非滅菌計算機器を帯域外ペアリングするためのシステム及び方法が提供される。
【0013】
システムは、滅菌医療機器と、非滅菌計算機器と、少なくとも1つのNFC(近距離無線通信)タグと、滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージとを含む。一例では、滅菌された経皮的針誘導機器が、非滅菌コンピュータとペアリング及び通信する必要がある。滅菌誘導機器は、機器に埋め込まれた第1のNFCタグと、滅菌パッケージに埋め込まれた第2のNFCタグとを有する。当該2つのNFCタグは、互いの複製である。滅菌パッケージの開封前は、非滅菌機器によってNFCタグのいずれかをスキャンして、無線ペアリングを開始することができる。ペアリング前に滅菌パッケージが開けられた場合、パッケージに含まれる第2のNFCタグを滅菌野の外に持ち出し、非滅菌計算機器によってスキャンすることができるので、経皮的針誘導機器の無菌性を維持することができる。
【0014】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の更なる目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0016】
図1図1は、短距離の近距離無線通信プロトコルを用いて滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のシステムの図である。
図2図2は、滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のプロセスのフローチャートであり、ペアリング中、非滅菌機器が識別情報を生成し、それを滅菌機器のNFCタグに書き込む。
図3図3は、滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のプロセスのフローチャートであり、製造中、滅菌機器のNFCタグに識別情報が書き込まれる。
図4図4は、短距離の近距離無線通信プロトコルを用いて滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のシステムの図である。
図5図5は、滅菌医療機器を非滅菌計算機器とペアリングするための例示のプロセスのフローチャートであり、製造中、滅菌機器のNFCタグ及び滅菌パッケージのNFCタグに識別情報が書き込まれる。
図6図6は、製造中に、滅菌機器のNFCタグ及び滅菌パッケージのNFCタグに識別情報を事前プログラムするための例示のシステムの図である。
図7図7は、滅菌機器のNFCタグに事前プログラムされた識別情報を滅菌パッケージのNFCタグに複製するための例示のシステムの図である。
図8図8は、パッケージのNFCタグ及び滅菌機器のNFCタグを暗号化又はパスワード保護するための例示のシステム及び方法の図である。
図9図9は、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく、滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするための例示のシステムの図である。
図10A図10Aは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10B図10Bは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10C図10Cは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10D図10Dは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図10E図10Eは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す図である。
図11図11は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器を非滅菌機器に帯域外ペアリングするための更なるプロセス(方法)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施形態は、滅菌医療機器の無菌性を損なうことなく、滅菌医療機器と非滅菌計算機器を帯域外ペアリングするためのシステム及び方法を提供するという目的に基づく。
【0018】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。本明細書で用いられる場合、「滅菌」という用語は、その一般的な医学的定義を指し、完全に清潔であり、細菌その他の生きている微生物が実質的に存在しないことを意味する。同様に、未滅菌及び非滅菌という用語は、未滅菌の医用器具や、非滅菌環境で行われる医療手術のように、生物及び微生物がいないわけではないことを意味するように、同義で使用される。
【0019】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。使用される場合、「及び/又は」という語句は、「/」と省略される場合があり、それは、そのように提供される場合、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組合わせを含む。
【0020】
様々な図に示されるようなある要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明するための記述を簡易にするために、本明細書では、「下」、「真下」、「下方」、「低い」、「上方」、「上」、「近位」、「遠位」等の空間的な相対語が使用される場合がある。ただし、当然のことながら、空間的な相対語は、図に示されている向きに加えて、使用中又は動作中の機器の様々な向きを包含することが意図される。例えば、他の要素又は特徴の「下方」又は「真下」にあると記述されている要素は、図中の機器が裏返されると、当該他の要素又は特徴の「上方」に向けられることになる。よって、「下方」等の相対的な空間用語は、上と下の両方の向きを包含することができる。機器は、他の方法で方向付けられてもよく(90度回転又は他の方向に)、本明細書で使用される空間的な相対的記述子は、それに応じて解釈されるべきである。同様に、相対的な空間用語「近位」と「遠位」も、該当する場合、交換可能である場合がある。
【0021】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。任意の数値範囲は、本明細書に記載される場合、そこに包含される全ての部分範囲を含むことが意図される。
【0022】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションは、本明細書の開示から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又はセクションと呼ぶことができる。
【0023】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」という用語は、本明細書において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、留意すべきこととして、一部のクレームは、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0024】
「例示」との語句は、本明細書では、「例、事例又は図説として機能する」ことを意味するように用いられる。本明細書で「例示」と記載されている態様は、特段の記載がない限り、必ずしも他の態様よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0025】
「プロセッサ」という用語は、実質的に、任意の論理及び/又はソフトウェアベースの計算処理ユニット又は機器を指すことができる。「メモリ」という用語は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを指す場合もあれば、揮発性メモリと不揮発性メモリの両方を含む場合もある。実施形態のメモリ(例えばデータストレージ)は、プロセッサの動作及び機能に関連する適切なタイプの情報ストレージコンポーネントを含む。
【0026】
近距離無線通信(NFC)は、モバイル機器(スマートフォン、非接触型カード及び類似の機器等)を互いに接触させたり近付けたりする(通常、数センチメートル以下)ことによって、モバイル機器が互いに無線通信を確立するための、一連の規格である。NFC機器は磁場誘導を介して通信し、この場合、2つのループアンテナが互いの近接場内に配置され、効果的に空芯トランスを形成する。通信は、NFC機器と動力のないNFCチップとの間でも可能である。動力のないNFCチップは、「NFCタグ」、或いは単純に「タグ」と呼ばれる。NFCには、イニシエータとターゲットが関与する。NFC機器には、電池を必要としないタグ、ステッカ、キーフォブ又はカード等、非常に単純なフォームファクタが採用される。両方の機器に電力が供給されれば、NFCピアツーピア通信が可能である。名称が示すように、イニシエータは通信を開始する機器であり、また、データ交換を制御する。ターゲット機器は、イニシエータからの要求に応答し、イニシエータとの通信の発生を受諾するパッシブ機器である。イニシエータは、パッシブなターゲットに電力を供給できるRF場をアクティブに生成する。無線自動識別(RFID)は、基本的にNFCと同じ作業規格を使用する。ただし、NFCは、2つのアクティブ機器間の通信モードであるRFIDに優る重要な拡張機能を備えている。よって、本開示では、「NFCタグ」という用語は、「RFIDタグ」という用語、及び/又は、磁場誘導を介して通信する他の任意のパッシブタグも含む。NFCイニシエータは、例えばRFIDリーダやスマートフォンであってよい。NFCイニシエータは、別のNFC機器の近くで通信を開始し、次に、ターゲット(タグ)から情報を収集し、或いは収集した情報に従ってアクションを実行する。例えば、NFCタグの付いた商品の識別情報を取得することが、情報を収集することの基本的な例である。Bluetooth(登録商標)音楽プレーヤ(NFCイニシエータ)をアクティブBluetooth(登録商標)スピーカ(NFCターゲット)とペアリングすることは、NFCトランザクションの結果として生じるアクションの良い例である。
【0027】
「ペアリング」という用語は、コンピュータネットワーキングの分野で使用され、2つの計算機器間の初期リンク又は接続を確立して、当該機器間の通信を可能にするためのプロセスを指す。例えば、2つのBluetooth機器がリソースを共有するために互いに接続する場合は、常にBluetoothペアリングが必要である。一例は、Bluetooth通信プロトコルを用いて、ヘッドフォンのセットと携帯電話又はラップトップ等の2つの機器をペアリングすることである。Bluetoothペアリングプロセスは、典型的には、まだペアリングされていない機器から機器が接続要求を受信したときに初めて、自動的にトリガされる。Bluetoothペアリングが発生するには、2つの機器間で最小限のセキュリティ情報を交換する必要がある。このセキュリティ情報(「パスワード」や「パスキー」等)は、両方のBluetooth機器によって共有されるコードであり、パスキーは、両方の機器/ユーザが互いにペアリングすることに同意していることを確認するために使用される。帯域外(OOB)ペアリングは、ペアリング機器を検出するとともに、ペアリングプロセスで使用されるセキュリティ情報を交換又は転送するために帯域外通信技術が使用されるシナリオ用に設計されたペアリングプロセスである。
【0028】
現在、スマートフォンやタブレット等の一部のBluetooth対応機器では、機器間の'タップ・トゥ・ペア(tap to pair)'にはNFCが用いられ、通常の通信には標準Bluetoothプロトコルが用いられる。NFCは非常に短い距離の通信(約2インチ以下)を行うので、NFC対応機器間の近接性は、2つの機器が実際にペアリングされることを保証するものとして機能する。したがって、NFCは、OOBペアリングに適した通信インタフェースである。一例として、ユーザがスマートフォンとBluetoothヘッドフォンを持っているとして、両方の機器にBluetooth機能とNFC機能が備わっている場合、ユーザが最初に2つの機器に一緒にタッチすると、ペアリングの選択肢が与えられる。これは、NFCプロトコル下で2つの機器間でセキュリティ情報が交換されるシングルタッチプロセスである。ペアリングの選択が確認された場合(“YES”が選択されている場合)、ペアリングは成功し、スマートフォンとBluetoothヘッドフォンの間の通信は、標準Bluetoothプロトコル下で行われる。
【0029】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント、機能又は部分を示すために用いられる。更に、これから具体的な図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。
【0030】
図1
図1は、滅菌医療機器110及び非滅菌機器150を含むシステム100の例示の図を示す。医用システム100は、非滅菌機器150がNFC信号125(短距離信号)を介して滅菌医療機器110とペアリングすることを示しており、また、滅菌医療機器110が無線接続135(長距離信号)を介して無線で非滅菌機器150に接続することを示している。その基本形では、滅菌医療機器110は、プロセッサ112と、メモリ116と、無線トランシーバ118と、組込み又は埋込みされた(近距離無線通信)NFCタグ114とを含む。図1に示されるように、滅菌医療機器110とNFCタグ114は、滅菌パッケージ120に包囲される。少なくとも一部の実装では、NFCタグ114は、滅菌医療機器110と滅菌パッケージ120の両方に接続されてよい(例えば一時的な接続114aによって)。或いは、以下に更に詳述するように、滅菌パッケージ120が自身のNFCタグを含むことが好ましい場合がある。
【0031】
プロセッサ112は、滅菌医療機器110の全ての動作を制御する。プロセッサ152は、非滅菌機器150の全ての動作を制御する。プロセッサ112/152は、中央処理装置(CPU)と呼ばれる場合もある。更に、プロセッサという用語は、集積回路(IC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を指す場合もある。メモリ116(リードオンリーメモリ(ROM)とランダムアクセスメモリ(RAM)の両方を含んでよい)は、プロセッサ112に命令及びデータを提供する。メモリ116の一部は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)を含んでもよい。プロセッサ112は、典型的には、メモリ116内に格納されたプログラム命令に基づいて論理演算及び算術演算を実行する。したがって、メモリ116内の命令は、本明細書に記載されるシステム100の制御法及びプロセス法の少なくとも一部を実施するために実行可能であり得る。また、滅菌医療機器110は、信号の処理に用いられる図示されていないデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を含んでよい。滅菌医療機器110は図示されていないコンポーネントを含んでよく、例えば、電源(例えば電池)、電源スイッチ(オン/オフボタン)、該機器を取り扱い操作するための視覚的、触覚的及び聴覚的なコンポーネントとしての他のユーザインタフェースコンポーネントを含んでよい。
【0032】
NFCタグ114は、パッシブの、好ましくは読込み専用の機器である。NFCタグ114は、少なくとも、集積回路(IC)に通信可能に結合されたアンテナと、メモリとを含む。NFCタグ114は、NFC(登録商標)タグ、RFID(登録商標)タグ、ZigBee(登録商標)タグ、或いは、滅菌医療機器110に埋め込まれるとともに最終的な滅菌パッケージ120内に密封される他の類似技術のタグのうちのいずれかであってよい。医療機器のパッケージは、製品に対して保護を提供するだけでなく、製品が何であるかや、命令、警告、安全性情報、その他の関連情報(ロット番号、滅菌方法、使用期限等)を伝達しなければならない。このような情報を伝達するために、パッケージ上に直接印刷するか、或いはラベルを適用することにより、パッケージ上に十分なスペースが設けられる必要がある。多くの場合、2つ以上の言語の情報用にも十分なスペースが必要となる。上記の情報の少なくとも一部が、NFCタグ114のメモリ内に提供されてよい。滅菌パッケージ120は、例えば3Dプリントされたパッケージを含む。また、滅菌医療機器110についての識別情報を滅菌パッケージ120内に組み込むことには、例えば、RFIDタグ、NFCタグ、又は電子バーコード、電子回路にコード化されたホログラム又は透かし(スマートラベル)、及びそれらの組合わせを、滅菌医療機器110を包囲する3Dプリントパッケージに追加することが含まれる。
【0033】
滅菌パッケージ120は、当技術分野で従来から知られている任意の材料及び形状のものであってよい。従来のパウチ及びトレイ蓋の材料は、主にタイベック(登録商標)と、ホイルと、いくつかの透明ポリマーのバリエーションとから成る。従来のトレイの材料は、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)から成る。PETGは、特に積層造形(3Dプリンティング)で最も一般的に使用される材料である傾向がある。PETGは、透明であり、優れた機械的特性を備え、最も一般的なタイプの滅菌方法に対応する。他の材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)を挙げることができる。医療機器の場合、材料及びパッケージの検証テストは、ISO規格11607に概説されている。規格要件に合わせると、滅菌パッケージ120は、1つ以上の異なるタイプのポリマー基板又は層から成る密閉容器であってよい。一部の実施形態では、前述したように、滅菌パッケージ120は、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリエチレンテレフタレート(PET)で作られる容器を3Dプリントすることによって形成されてよい。他の実施形態では、滅菌パッケージ120は、ポリマーの層によって作製されてもよいし、或いは、紙や合成紙、医療グレードの織布又は不織布のシート、ポリマーのフィルム又はシート等の可撓性材料の層によって作製されてもよい。更なる実施形態では、滅菌パッケージ120は、押出成形されたポリマー材料から作製されてよい。
【0034】
非滅菌機器150は、例えば汎用コンピュータ又はモダリティのコンソール計算資源であり、とりわけ、プロセッサ152、ユーザインタフェース153、NFCトランシーバ154、メモリ156及び無線トランシーバ158を含む。プロセッサ152は、非滅菌機器150の全ての動作を制御する。プロセッサ152は、中央処理装置(CPU)と呼ばれる場合もあるマイクロプロセッサを含んでよく、或いは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路基板等の他のプロセッサを含んでよい。メモリ156(リードオンリーメモリ(ROM)とランダムアクセスメモリ(RAM)の両方を含んでよい)は、プロセッサ152に命令及びデータを提供する。メモリ156の一部は、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)を含んでもよい。プロセッサ152は、典型的には、メモリ156内に格納されたプログラム命令に基づいて論理演算及び算術演算を実行する。メモリ156内の命令は、本明細書に記載の方法の少なくとも一部を実施するために実行可能であり得る。ユーザインタフェース153は、概してシステム100のユーザインタフェースを提供する。ユーザインタフェース153は、ユーザ(例えば医師、看護師、技師等)が滅菌医療機器110とやりとりするためのインタフェースを提供することができる。ユーザインタフェース153は、タブレットやスマートフォン、携帯電話、ラップトップ、或いは専用の電子ハードウェア等のネットワーク化機器を含んでよい。ユーザインタフェース153は、非滅菌機器150、保健施設のイントラネット(例えば病院のイントラネット)、又は滅菌医療機器110の一部であってもよいし、或いは、物理的ワイヤを介して直接的に、又は無線で、又はその両方で、それらに接続されてもよい。ユーザインタフェース153と非滅菌機器150又は滅菌医療機器110との間の接続は、室内ネットワークの一部であってよい。ユーザインタフェース153は、手技中に患者の処置を確認するようにユーザに促すことができ、ユーザは、確認後、滅菌医療機器の滅菌パッケージ120が開けられる前(又は後)に、滅菌医療機器110のNFCタグ114をスキャンすることができる。
【0035】
医療環境では、使用に先立ち、好ましくは滅菌パッケージ120上のシールが破られる前に、滅菌医療機器110が非滅菌機器150とペアリングされる必要がある。しかしながら、滅菌パッケージが開けられた後にペアリングプロセスが必要になる事象が存在し得る。本開示の残りの部分は、無菌性を損なうことなく帯域外ペアリングを実施するために、非滅菌機器150のプロセッサ152及び/又は滅菌医療機器110のプロセッサ112によって実施できるプロセス及びアルゴリズムの詳細な説明を提供する。
【0036】
図2
図2は、滅菌医療機器110の無菌性を損なうことなく滅菌医療機器110を非滅菌機器150(コンピュータ等)とペアリングするプロセス(方法)を示す例示のフロー図である。この実施形態では、包装された滅菌医療機器110が非滅菌機器150のNFCトランシーバ154の近接(近く)に持って来られると(ステップS202)、NFCトランシーバ154は、滅菌医療機器110のNFCタグ114に誘導無線周波信号(NFC信号125)を伝送する。より具体的には、非滅菌機器150のNFCトランシーバ154は、NFCタグ114の誘導コイルを励磁する。このエネルギーの移動により、NFCトランシーバ154は、以前にメモリ156に格納された識別情報(例えば暗号化キー及び/又はパスワード)を、NFC通信プロトコル(例えばISO/IEC 1800-3、ISO/IEC 18092/ECMA-340、ISO/IEC 21481/ECMA-352)を用いてNFCタグ114に転送する。すなわち、一実施形態によれば、非滅菌機器150は、識別情報を生成し、それを滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込む(ステップS204)。
【0037】
“識別情報”としては、無線識別子、パスワード/パスキー、及び/又は、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間で情報を交換するのに必要な暗号化キーが挙げられるが、これらに限定されない。無線識別子は、当業者には既知であるように、例えば、SSID(サービスセット識別子)、MAC(媒体アクセス制御)アドレス、IP(インターネットプロトコル)アドレス、UUID、BD_ADDR値、OUI(organization unique identifier)等を含んでよい。安全性を確保するために、識別情報を滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込む前は、NFCタグ114は空であることが好ましい。そのために、NFCタグ114は、NFCライタから新しい識別情報を受け入れて格納するように構成されてよい(例えばNFCタグは書換え可能であってよい)。
【0038】
より具体的には、ステップs202において、非滅菌機器150のNFCトランシーバ154によって、滅菌医療機器110のNFCタグ114がスキャンされる。ステップS204において、非滅菌機器150のプロセッサ152が、適切なソフトウェアアプリケーションを実行して、識別情報を(メモリ156から)読み込むか又は生成し、識別情報を滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込む。滅菌医療機器110が非滅菌機器150とペアリングされた(登録された)後、ユーザ(例えば医師)は滅菌エリア(例えば手術室)へ向かうことができ、ここで、滅菌医療機器110の滅菌パッケージ120を開け、使用に向けてアクティブ化する(電源をオンにする)ことができる。滅菌パッケージ120が開けられ、滅菌医療機器110がオンになると(ステップS206)、滅菌医療機器110は、NFCタグ114に含まれる識別情報125を読み込んで(用いて)(ステップS208)、ホスト機器を検索することができる。具体的には、滅菌医療機器110は、NFCタグ114から識別情報を読み込み、その識別情報(例えば非滅菌機器の識別情報)を用いて、非滅菌機器150との無線通信135をセキュアに確立する(ステップS209)。無線通信135は、BluetoothやダイレクトWiFi、無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)等の、NFCプロトコルとは異なる2次的な通信プロトコルを介して発生することが好ましい。
【0039】
言い換えれば、前述したように、滅菌医療機器110のNFCタグ114と非滅菌機器150のNFCトランシーバ154との間の帯域外ペアリングに、NFCプロトコルを使用することができる。一方、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の無線通信135では、帯域幅が高く、かつ/又はNFCプロトコルの短距離(近距離)よりも長距離である通信プロトコルが用いられる。
【0040】
滅菌医療機器110のNFCタグ114と非滅菌機器150のNFCトランシーバ154との間の帯域外ペアリングでは、Bluetooth short-range、RFID、ZigBee(IEEE 802.15.4、IEEE 802.15.4a)、ANT/ANT+、ボディエリアネットワーク(BAN)プロトコル、MICS(Medical Implant Communication Service)、6LoWPAN等、NFCプロトコル以外の様々な適切な短距離無線通信技術を用いることができる。滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の無線通信135では、Bluetooth Low Energy(BTLE)、IEEE802.11規格に従うWiFi、Bluetooth High Speed、ダイレクトWiFi、超広帯域無線(UWB)等、より長距離の通信技術を用いることができる。高いセキュリティを維持するために、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の無線通信(信号135)は、2つの機器間で転送されるデータが大規模なネットワークやインターネットを経由する必要がないように、ポイントツーポイント接続であってよい。
【0041】
Bluetooth帯域外短距離キャリアの例は、例えばBluetooth仕様書第4版(2010年6月30日)に記載されている。無線自動識別(RFID)帯域外短距離キャリアの例は、例えばISO11785(エアインタフェースプロトコル)、ISO 14443(エアインタフェースプロトコル)及びISO 15693に記載されている。近距離無線通信(NFC)帯域外短距離キャリアの例は、例えばISO/IEC 14443及びISO/IEC 18092に記載されている。
【0042】
再び図1を参照すると、NFCタグ114は、薄い基板上に作製されたパッシブな読込み専用機器である(例えばステッカのような)。NFCタグ114は、少なくとも、集積回路(IC)に通信可能に結合されたアンテナと、NFCタグ114が取り付けられた滅菌医療機器110を識別するための識別情報(例えば番号、コード、キー、パスワード等)を少なくとも格納するように構成されたメモリとを含む。NFCタグ114は、そのメモリに一度だけ書き込まれるように構成されてもよいし、複数回書き込まれるように構成されてもよい。更に、NFCタグ114は、製造中、及び/又は、好ましくは滅菌医療機器110への組込み後(例えばタグが既に滅菌医療機器110に取り付けられたとき)に、プログラム(書込み)されてよい。NFCタグ114への書込み動作は、パスキーその他のセキュアな方法を用いて、パスキーが分からない限り更なる書込み動作が防止され得るエリアに対して、達成することができる。NFCタグ114は、電源を含まないことが望ましい。代わりに、NFCタグ114は、磁気誘導を用いてNFCタグ114に読込み及び/又は書込みを行うNFCトランシーバ154から、電力を引き出す。このように、NFCタグ114は、小さなフォームファクタでより小さなサイズに、最小のコストで製造することができる。
【0043】
NFCタグ114は、シリアルナンバーや滅菌医療機器110の識別タイプ/モデル/製造業者等の、NFCプロトコルを介して非滅菌機器150に転送できる追加の情報(例えば、ペアリングに必要な識別情報以外の情報)を格納することができる。NFCタグ114は、偽造の(場合によっては非滅菌)機器に対して本物の滅菌医療機器110を識別する一意的な情報を格納することができる。更に、NFCタグ114は、滅菌医療機器110が以前に使用されたかどうかを示す情報(例えば、無菌性が侵害されたかどうかを示す情報)を格納するように構成されてよい。例えば、NFCタグ114は、NFCタグ114がNFCリーダによってスキャンされたときにアクティブ化できる誘導性又は容量性のフラッグを用いてプログラムされてよい。このように、NFCタグ114は、医療機器の無菌性が損なわれたかどうかの表示を提供することができる。
【0044】
本開示では、NFCタグ114は、小さなフォームファクタでより小さなサイズに、最小のコストで製造できるパッシブなタグとして説明されたが、必要に応じてNFCタグ114をアクティブなタグとして提供することは、設計上の選択項であり得る。NFCパッシブタグと同様に、NFCアクティブタグは、IC、アンテナ及びメモリを有するが、オンボードの電源及びオンボードのリーダ/ライタ回路も有し、これにより、NFCタグは、信号をアクティブにブロードキャストし、データを転送することができる。NFCタグは、様々なフォームファクタと機能タイプに製造される。ほとんどのNFCタグは、13.56MHzのNFC伝送周波数でISO14443タイプA及びBの無線規格を用いて通信するが、各タイプのNFCタグは、異なる記憶容量と転送速度を提供する。タグタイプ1及び2は、48バイトから2キロバイトのデータ容量を備え、当該情報を106Kbps(キロビット/秒)で伝送することができる。タイプ3のNFCタグは、ソニー社のFelica規格を使用し、212Kbpsでデータを転送することができる。タイプ4のNFCタグは、最大32Kバイトの更に大きなメモリ容量を備え、通信速度は106Kbp~最大424Kbpsである。NFCタグのタイプ1及び2は、再書込みと再利用が可能であるが、タイプ3及び4は読込み専用であり、再書込みはできない。
【0045】
図3
図3を見てみると、別のペアリング方法が記載されている。図3によれば、滅菌医療機器110を非滅菌機器150とペアリングする方法は、製造中に滅菌機器識別情報を生成し、それをNFCタグ114に書き込むことを含む。
【0046】
具体的には、図3に図示されるプロセスでは、ステップS301において、滅菌医療機器110の製造中及び/又は組立て中、図示されていないNFCライタは、識別情報を生成し、それを滅菌医療機器110のNFCタグ114に書き込むように構成される。前述したように、NFCタグ114は、シリアルナンバー、滅菌医療機器110の識別タイプ/モデル/製造業者、及び/又は、ペアリングに必要な識別情報を用いて、プログラムされてよい。
【0047】
次に、ステップS302において、滅菌医療機器110が、非滅菌機器150のNFCトランシーバ154によってその滅菌パッケージ120内でスキャンされる。ステップ304において、非滅菌機器150は、この情報を受け取り(読み込み)、それをそのメモリ156に格納することになる。医療手技中、滅菌医療機器110が開梱されてオンになると(ステップS306)、滅菌医療機器110は、製造時にそのNFCタグ114に格納された情報を読み込み(S308)、ホスト(非滅菌機器)を検索する。ホストが見つかると、滅菌医療機器110は、2次的な通信プロトコル(BluetoothやダイレクトWiFi等)を介して、以前にNFCタグ114に格納された情報を利用して、非滅菌機器150とのセキュアな無線通信を開始する(S309)。
【0048】
この場合、識別情報が製造時に滅菌医療機器110のNFCタグ114に格納されるとき、承認されたNFCリーダが滅菌医療機器110を改ざんする(読み込む)おそれがある。そのような可能性を阻止するために、本開示の実施形態は、更なるセキュリティレイヤを提供する。
【0049】
図4
図4は、滅菌医療機器の無菌性を損なうことなく滅菌医療機器110を非滅菌機器150とペアリングするためのシステムの実施形態を示す。前の実施形態では、ペアリング手順の前に滅菌パッケージ120が偶発的或いは意図的に開けられた場合、無菌性を損なわずに滅菌医療機器110を非滅菌機器150とペアリングすることができず、滅菌医療機器110を動作不能にしてしまうおそれがある。更に、承認されたNFCトランシーバによってNFCタグ114が読込み又は書込みされた場合、滅菌医療機器110は、非滅菌機器150とペアリングすることができない。図4の実施形態は、滅菌医療機器110の滅菌パッケージ120に2次的なNFCタグ414を埋め込むことによって、このような問題に対処する。
【0050】
より具体的には、図4に示される実施形態は、図1に示されるシステムに構造的に類似する。しかしながら、図4では、システム100は、滅菌パッケージ120に包囲された滅菌医療機器110を含み、滅菌医療機器110は、埋め込まれた第1のNFCタグ114(NFCタグ1)を含み、滅菌パッケージ120は第2のNFCタグ414(NFCタグ2)を含む。図4に示されるシステム100の他の全ての態様は、図1に示されるシステム100の態様と同じである。
【0051】
図4では、第1のNFCタグ114は、取り外せないように滅菌医療機器110に埋め込まれるか又は組み込まれる。一方、第2のNFCタグ414は、滅菌パッケージ120に(表面の内側又は外側に)取り付けられてもよいし、或いは、滅菌パッケージ120内で固定されていなくてもよいし、或いは、滅菌医療機器110に除去可能に取り付けられるとともに滅菌パッケージ120に固定的に取り付けられる取外し可能なステッカであってもよい。第2のNFCタグ414が滅菌パッケージ120に埋め込まれると同時に、滅菌医療機器110に接続されるか或いは除去可能に取り付けられる場合、滅菌医療機器110が滅菌パッケージ120から取り出されるときに、第2のNFCタグ414は滅菌パッケージ120に取り付けられたままである。
【0052】
これ以降、第2のNFCタグ414は、パッケージNFCタグと呼ばれる場合もある。この実施形態では、パッケージNFCタグは、非滅菌機器150のNFCトランシーバ154によって読み込まれる(スキャンされる)。承認されたNFCリーダが滅菌医療機器110を改ざんする可能性を回避するために、パッケージNFCタグ(第2のNFCタグ414)及び第1のNFCタグ114は、機器製造時にプログラムされてよく、また、滅菌医療機器110の同じ固有の識別情報を含む必要がある。機器ペアリング時、非滅菌機器150のNFCトランシーバ158は、短距離NFCプロトコルを用いて、第2のNFCタグ414に格納された情報を読み込むことになる。これにより、非滅菌機器150は、Bluetoothや無線LAN(WLAN)、ダイレクトWiFi等の別の無線通信プロトコルを介してセキュアな接続を確立することができる。
【0053】
具体的には、非滅菌機器150は、NFCプロトコルを介した滅菌医療機器110とのペアリングを容易にするために、既知の承認/認証方法を採用することができる。例えば、製造時、NFCタグ114は、非滅菌機器150に対して滅菌医療機器110を一意的に識別する識別情報を用いてプログラムすることができる。ペアリングプロセス中、NFCトランシーバ154は、第2のNFCタグ414を読み込み(スキャンし)、読み込んだ情報をメモリ156に格納することができる。次に、非滅菌機器150は、NFCタグ414から読み込まれた識別情報を、NFCタグ114に格納された識別情報と比較することができる。NFCタグ114に格納された情報は、NFCタグ414から読み込まれた識別情報と一致することになるので、非滅菌機器150と滅菌医療機器110は、Bluetooth等の長距離かつ高速な通信プロトコルを介してセキュアな通信リンクを確立することができる。
【0054】
図5
図5は、滅菌医療機器110の無菌性を損なうことなく、図4に示されるような滅菌医療機器110を非滅菌機器150とペアリングする方法を示す。この実施形態では、ステップS501において、製造時及び/又は組立て時に、滅菌医療機器110に一意的な識別情報が生成され、滅菌医療機器110の第1のNFCタグ114と滅菌パッケージ120の第2のNFCタグ414の両方に書き込まれる。本開示の他の箇所で論じられるように、製造時/組立て時は第1のタグと第2のタグをブランクのままにしておいて、医療手術での初回使用の際に、非滅菌機器150から第1のNFCタグ114及び第2のNFCタグ414にペアリング情報を書き込むことも可能である。ステップS502において、ユーザが意図的又は偶発的に滅菌シールを破り、滅菌医療機器110をその滅菌パッケージ120から分離した場合、非滅菌機器150とのペアリングに滅菌パッケージ120が使用される間、滅菌医療機器110はその無菌性を保つことができる。具体的には、ステップS503において、NFCトランシーバ154が、滅菌パッケージ120の第2のNFCタグ414をスキャンする。次に、ステップS504において、NFCトランシーバ154が、NFCタグ414から識別情報を読み込み、識別情報をメモリ116に格納する。
【0055】
ステップS504、S506、S508及びS509のプロセスは、前述した図2のステップS204、S206、S208及びS209と同様である。
【0056】
本実施形態において、第2のNFCタグ414がもたらす利点は、パッケージタグが滅菌状態を維持する必要はないので、滅菌機器のパッケージが開けられた(偶発的又は別の方法で)場合であっても、非滅菌環境で非滅菌機器150を用いてパッケージタグをスキャンできるということである。当然のことながら、滅菌パッケージを開く前に、滅菌医療機器110のNFCタグ114か又は滅菌パッケージ120の第2のNFCタグ414のいずれかをコンピュータを用いてスキャンして、無線ペアリングを開始することができる。ペアリング前に滅菌パッケージ120が開けられた場合、パッケージに含まれるNFCタグ414を滅菌野の外に持ち出し、非滅菌コンピュータによってスキャンすることができるので、滅菌医療機器110の無菌性を維持することができる。
【0057】
代替の実施形態として、滅菌医療機器110の第1のNFCタグ114を完全に排除し、滅菌パッケージ120のNFCタグ414に格納された識別情報の複製を、滅菌医療機器110のメモリ116にハードコード化することができる。しかしながら、2つのタグ(第1のNFCタグ114及び第2のNFCタグ414)を維持することには、機器製造プロセスにおいて大きな利点がある。なぜなら、これにより、機器がその対応する滅菌筐体と嵌合された後にパッケージNFCタグ(第2のNFCタグ414)をプログラムすることができるからである。
【0058】
図6
図6は、製造中、滅菌機器のNFCタグ及び滅菌パッケージのNFCタグに識別情報を事前プログラムするための例示のシステムの図である。図6では、システムは、滅菌医療機器110の第1のNFCタグ114及び滅菌パッケージ120の第2のNFCタグ414をプログラムするように構成された製造プログラミングデバイス610を含む。そのために、製造プログラミングデバイス610は、プロセッサ612と、メモリ616と、ユーザインタフェース613と、NFCライタ617とを含む。この場合、製造プログラミングユニット610は、NFCライタ617を用いて、同じ(複製の)識別情報IDX1を用いて滅菌機器NFCタグ114とパッケージNFCタグ414の両方をプログラムする(書き込む)。プロセッサ612、メモリ616、ユーザインタフェース613は、それぞれ非滅菌機器150のプロセッサ152、メモリ156、ユーザインタフェース153と同様である。
【0059】
図7
図7は、滅菌医療機器110のNFCタグ114に事前プログラムされた識別情報を滅菌パッケージ120のNFCタグ414に複製するための例示のシステムの図である。図7では、滅菌医療機器110がそのNFCタグ114に既にプログラムされた識別情報を事前に生成及び格納していると仮定される。これは、例えば、滅菌医療機器110の製造時に発生する場合もあるし、その機能テスト時に発生する場合もある。この場合、滅菌医療機器110とその滅菌パッケージ120との組立て(嵌合)中に、製造プログラミングデバイス610は、滅菌医療機器110のNFCタグ114(NFCタグ1)を読み込んで、そこに既に格納されていた識別情報を抽出し、当該情報をパッケージNFCタグ414に複製する。より具体的には、図7に示されるように、製造プログラミングデバイス610のNFCリーダ718は、NFCタグ114から識別情報(IDXa)を読み込む。次に、NFCライタ617は、同じ識別情報(IDXa)を滅菌パッケージ120のNFCタグ414に書き込む。
【0060】
図6に示される方法と図7に示される方法の両方では、滅菌医療機器110がその対応する滅菌パッケージ120と嵌合される間又は後に、パッケージNFCタグ(NFCタグ114)をプログラムすることが可能である。NFCタグ114とNFCタグ414を同じ情報を用いてプログラミングする利点は、滅菌機器NFCタグとパッケージNFCタグの間の不一致のリスクが低減されることである。NFCタグ114、414は無線近距離技術の下で動作するので、パッケージが封止された後に、必要に応じて機器が滅菌された後であっても、タグをプログラムすることができる。
【0061】
機器製造中にNFCタグがプログラムされる場合、例えば医療施設への機器輸送中に、不正ユーザ(中間者)によって、NFCタグに含まれる情報が読み込まれ、かつ/又は改ざんされるおそれがある。不正ユーザは、NFCタグに含まれる情報を利用して、機器間の無線通信に中間者(MITM)攻撃を行うおそれがある。機器を使用する準備ができたときにのみ識別情報がNFCタグに書き込まれるので、図2のペアリングプロセスは更にセキュアである。実施形態3は、実施形態2を、MITM攻撃を防止するために追加のセキュリティ強化と組み合わせた方法である。
【0062】
図8
図8は、滅菌パッケージ120のNFCタグ414と滅菌医療機器110のNFCタグ114がパスワード保護され、かつ/又は事前暗号化されるシステム及び方法を示す。具体的には、図8に示されるように、医療手技中、滅菌パッケージ120は、最初に、意図的或いは別の方法で、滅菌医療機器110から分離される。滅菌パッケージ120のNFCタグ414(NFCタグ2)は、パスワード及び/又は暗号化キー(識別情報804)を用いて事前にプログラムされたメモリ802を含む。
【0063】
滅菌機器の使用を開始するために(医療手技中)、非滅菌機器150のNFCトランシーバ154は、NFC書込みコマンド825により、NFCタグ414に識別情報(パスワード/キー)を伝える。このようにして、NFCタグ識別情報804は、NFC読取りコマンド826を介して、非滅菌機器150によって開錠されて読み込まれる。このプロセスによって、滅菌医療機器110は更にセキュアになる。なぜなら、不正ユーザは、滅菌パッケージ120のNFCタグ414に含まれる情報を読み込むために、この事前プログラムされたパスワード/キーを知っている必要があるからである。よって、識別情報804を用いてNFCタグ414を事前プログラムすることによって、更なるセキュリティレイヤが提供される。
【0064】
或いは、本方法には、共通の(同じ)キーを用いて事前に暗号化されたNFCタグに格納された識別情報を追加することが含まれる(例えば図6に示されるように)。そのために、製造業者が独自の暗号化アルゴリズムを両方の機器に実装できるように、製造業者が滅菌医療機器110と非滅菌機器150の両方のプログラミングを制御できることが好ましい。NFCタグに格納された識別情報が非滅菌機器によって読み込まれるとき、予め格納されたキーを用いて識別情報を復号することができ、次に、復号された情報は、滅菌機器と非滅菌機器の間のセキュアな無線通信に用いられることになる。不正ユーザは、無線通信のMITM攻撃を行うには、滅菌機器又は非滅菌機器に含まれる暗号化アルゴリズムをリバースエンジニアリングする必要がある。しかしながら、本方法を実施するには、両方の機器がセキュアな通信をネゴシエートするための正しいキーを知ることができるように、同じプログラミング(好ましくは同じ製造業者による)を滅菌機器と非滅菌機器の両方に行う必要がある。
【0065】
最後に、滅菌医療機器を非滅菌計算機器にペアリングする更にセキュリティの高い方法では、パスワードを用いる方法と暗号化キーを用いる方法が組み合わされる。より高いセキュリティのための組合わせ方法は、事前暗号化されたキーを両方のNFCタグ(すなわち第1のNFCタグ114と第2のNFCタグ414)に格納することを含む。更に、組合わせ方法は、両方のNFCタグ(すなわち第1のNFCタグ114と第2のNFCタグ414)を開錠する共通のパスワード(同じパスワード)を提供することを含む。このように、NFCタグは、キーによって暗号化されるとともにパスワード保護される。この組合わせ方法では、非滅菌機器150がNFCタグ414にパスワードを伝送することで、その内容が開錠されて読み込まれる。次に、非滅菌機器150は、事前暗号化されたキーを滅菌医療機器110のNFCタグ114から読み込む。次に、事前暗号化されたキーが独自の復号化アルゴリズムにかけられて、無線通信の暗号化に用いられる実際のキーが見つかる。この方法はいくつかのセキュリティレイヤを提供するので、滅菌医療機器の無菌性を維持しながら実践するための最高セキュリティ方法と見なすことができる。
【0066】
本開示には、従来技術に優る以下のような利点がある。全ての実施形態では、滅菌機器の無菌性を損なうことなく、滅菌機器と非滅菌機器のセキュアな帯域外ペアリングが可能となる。1つ以上の実施形態では、滅菌機器が製造中にそのパッケージと嵌合され滅菌された後に滅菌機器をプログラムする方式が提供され、パッケージと機器の不一致のリスクが低減される。1つ以上の実施形態では、無断使用、MITM攻撃、及び/又は滅菌医療機器の改ざんのリスクを低減するための、追加のセキュリティ手段が提供される。
【0067】
滅菌機器を非滅菌機器と帯域外ペアリングするための新規のシステム及び方法が開示される。一態様では、滅菌機器に埋込み型NFCタグが設けられ、NFCタグと滅菌機器は滅菌パッケージに包囲される。滅菌医療機器の滅菌パッケージには、2次的なNFCタグが設けられる。これにより、滅菌バリアパッケージが開けられた後でも、滅菌機器の無菌性を損なうことなく、滅菌機器を非滅菌機器とペアリングすることが可能となる。一態様によれば、方法は、滅菌機器がそのパッケージに嵌合及び封入され、滅菌された後に、パッケージNFCタグと滅菌機器NFCタグをプログラムすることを含む。これにより、製造業者以外の存在により、特注のプロセス又はアルゴリズムを用いてプログラミンを実行することが可能となる。
【0068】
少なくとも1つの実施形態は、更なるセキュリティのために、上記の特徴に加えて、パスワード保護されたNFCメモリを含む。少なくとも1つの実施形態は、更なるセキュリティのために、MITM攻撃の可能性を更に低減するために、上記の特徴に加えて、事前暗号化された無線機器情報及び暗号化キーを含む。少なくとも1つの実施形態は、上記の特徴に加えて、パスワード保護されたNFCメモリと、事前暗号化された無線機器情報及び暗号化キーとを含む。
【0069】
これまで、本開示は、無線通信のために滅菌機器を非滅菌機器とペアリングする様々な態様を説明してきた。本明細書には、様々な新規の態様を実施するためのいくつかの環境が含まれる。
【0070】
図9
図9は、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく、滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするための例示のシステムの図である。図9の例では、滅菌医療機器110は、非滅菌機器150とペアリングして通信する必要がある。滅菌医療機器110は、例えば滅菌誘導機器902及び滅菌通信ユニット(CU)910を含む。非滅菌機器150は、例えば無線通信トランシーバ158(例えばWiFiルータやアクセスポイント)と、近距離又はNFCのトランシーバ154と、表示デバイス153とを備えたコンピュータ又はシステムコンソールを含む。表示デバイス153は、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)155上に画像及び医療手術を表示するタッチスクリーン式液晶ディスプレイ(LCD)であってよい。
【0071】
滅菌誘導機器902は滅菌針誘導器具であり、通信ユニット(CU)910を含むか又はこれに接続される。通信ユニット910及び/又は誘導機器902は、埋込み型のNFCタグ114(少なくとも1つの第1のNFCタグ)を有する。医療手技での使用前に、この誘導機器902と通信ユニット910は、滅菌パッケージ120に包装される。滅菌パッケージ120も、同様に、取り付けられたか又は埋め込まれたNFCタグ414(第2のNFCタグ)を含む。NFCタグ414は、滅菌医療機器110のNFCタグ114に含まれる識別情報の複製である識別情報を含む。滅菌パッケージ120の開封前に、第1又は第2のNFCタグ(114又は414)のいずれかを非滅菌機器150のNFCトランシーバ154を用いてスキャンして、NFC通信プロトコル下でNFC信号125を用いてOOBペアリングを開始することができる(図10Aを参照)。ペアリングの後、滅菌パッケージ120(まだ滅菌医療機器を包含している)が、滅菌野に移されて開封され(図10Bに示されるように)、誘導機器902及び通信ユニット910が使用に向けて準備される(図10C図10Dを参照)。ペアリングの前に滅菌パッケージ120が最初に滅菌野(例えば手術室)内で開封された場合、空になった滅菌パッケージ120に含まれるNFCタグ414を、滅菌野の外部に持って行き(図9の矢印913を参照)、非滅菌機器150のNFCトランシーバ154を用いてスキャンすることができるので、誘導機器902及び通信ユニット910の無菌性が保たれる。NFCトランシーバ154によってNFCタグ414が読み込まれると、非滅菌機器150は、識別情報をそのメモリ156に格納する。滅菌医療機器110の電源がオンになると、通信ユニット910は、NFCタグ114から情報を読み込み、ホスト機器(非滅菌機器150)を検索する。ホスト機器はNFCタグ114の識別情報を確認することができるので、通信ユニット910は、NFCプロトコル以外の通信プロトコル(例えばBluetoothやダイレクトWiFi、その他の類似の長距離通信プロトコル)下で、無線信号135を介して、非滅菌機器150の無線トランシーバ158とセキュアな接続を確立する。
【0072】
図10
図10A図10Eは、滅菌経皮的針誘導機器の無菌性を壊すことなく滅菌経皮的針誘導機器を非滅菌コンピュータとペアリングするプロセスを実行するようにユーザを誘導するための例示のGUIプロンプトを示す。図10Aに示されるように、滅菌医療機器110の使用を必要とする医療手技を開始する前に、システムコンソール又は非滅菌機器150は、GUI155を介して、非滅菌機器150に取り付けられたリーダ(例えばNFCトランシーバ154)を用いて滅菌医療機器110(この場合は針ガイド機器)をスキャンするように、ユーザに促すように構成されてよい。ここで、システムコンソール又は非滅菌機器150は、滅菌医療機器がコンソールリーダによって有効にスキャンされるまで、包装された滅菌医療機器を特定の方法で(例えば特定の位置、距離又は向きに)移動又は配置するように、ユーザに促すようにプログラムされてよい。
【0073】
図10Bに示されるように、非滅菌機器150は、機器パッケージを開け、滅菌野の安全な環境(例えば滅菌テーブル)に滅菌機器コンポーネントを配置するように、ユーザに促すように更にプログラムされてよい。図10Cに示されるように、非滅菌機器150は、GUI155を介して、滅菌医療機器110をアクティブ化する(オンにする)方法をユーザに促し指示するように更に構成されてよい。先に説明したように、滅菌医療機器110がアクティブ化される(オンになる)と、通信ユニット910は、NFCタグ114から識別情報を読み込み、ホスト機器(非滅菌機器)の検索を開始する。ここでも、滅菌医療機器110がホスト機器を見つけられなかった場合、非滅菌機器150は、GUI155を介して、滅菌医療機器110が非滅菌機器150と信頼できる無線通信を確立するまで、開梱された滅菌医療機器110を特定の方法で(例えば特定の位置、距離又は向きに)移動し、或いは配置し直すように、ユーザに促すようにプログラムされてよい。
【0074】
図10D及び図10Dは、開梱中及び滅菌医療機器と非滅菌医療機器のペアリング中にユーザに対して誘導プロンプトを提供することの有利な結果を示す。具体的には、図10Dに示されるように、GUI155は、ユーザに、非滅菌機器150と滅菌医療機器110の間の位置及び接続強度の図式的なガイドを提示する。最後に、図10Eは、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の成功した位置決め、ペアリング及び接続の図解を示す。更に、改ざんや無菌性喪失の疑いがある場合、コンピュータ又はシステムコンソールは、滅菌医療機器110を廃棄し新品に交換すべきであることを、ユーザに(例えば警告を発することによって)促すようにプログラムされてよい。
【0075】
図11
図11は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器を非滅菌機器に帯域外ペアリングするための更なるプロセス(方法)を示す。図11のプロセスは、インタラクティブなペアリングプロセスであり、非滅菌機器150(図9に示される)のGUI155によって出力されるプロンプト及びイメージングよって、ユーザ(例えば医師や技師)を誘導することができる。図11のプロセスでは、非滅菌機器150が、非滅菌野(例えば制御室)に配置されたコンソール又はワークステーションである環境を想定している。滅菌医療機器110は、滅菌パッケージ120に包囲された針ガイド機器である。滅菌医療機器110は、無菌性を損なうことなく非滅菌機器150とペアリングされる必要がある。
【0076】
図11によれば、ステップS602において、GUI155が、図10Aに示されるような、滅菌機器をそのパッケージ及びNFCタグとともに非滅菌機器リーダに近接して配置するようにユーザに指示するプロンプトを伴う画像を出力する。ステップS602では、非滅菌機器150が、パッケージ又は滅菌機器に取り付けられたタグがリーダによって適切にスキャンされたかどうかを決定する。本開示の他の箇所で説明されるように、非滅菌機器150は、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのうちの少なくとも1つにペアリング情報を書き込むことができ、或いは、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのうちの少なくとも1つからペアリング情報を読み込むことができる。タグの少なくとも1つが適切にスキャンされなかった場合(S604でNO)、非滅菌機器150は、ステップS606において、ユーザに、NFCリーダの更に近くに滅菌機器を移動するように促すことができる。ここで思い出してほしいのは、NFCタグは短距離無線通信プロトコル(例えばNFCプロトコル)を用いて読み込まれるということである。S602、S604及びS606のプロセスは、タグの少なくとも1つがスキャンされるまで、数回繰り返されてよい。タグのスキャンが失敗した場合、非滅菌機器150のプロセッサは、タグの少なくとも1つが適切にスキャンされるまで、滅菌機器を交換する(すなわち異なる/新しい滅菌機器を使用する)ように、ユーザに促すようにプログラムされてよい。
【0077】
タグの少なくとも1つがスキャンされると(S604でYES)、プロセスはステップS608へ進む。タグの少なくとも1つのスキャンに成功することには、第2のNFCタグ414(又は第1のNFCタグ114)に格納された情報を読み込むことが含まれてよい。両方のタグが同じペアリング情報を用いてプログラムされることが好ましいので、タグのいずれかがスキャンされてよい。したがって、2つのタグを用いることにより、スキャンが容易になり、高速になる。ステップS608において、非滅菌機器150のプロセッサは、滅菌医療機器110をその滅菌パッケージ120及び対応するNFCタグとともに滅菌野(例えば手術室)内に運び、移動し、或いは配置するように、ユーザに促す。ステップS610において、GUI155は、滅菌パッケージ120を開け、滅菌医療機器110を取り出し、滅菌医療機器110の滅菌コンポーネントを滅菌表面上に置くように、ユーザに促すことができる(図10Bを参照)。このとき、ユーザは、図10Cに示されるように、滅菌医療機器110をアクティブ化する(オンにする)ように促される場合がある。ステップS612において、滅菌医療機器110は、そのNFCタグ(タグ1)からペアリング情報を読み込み、接続要求をブロードキャストすることによってホスト機器(非滅菌機器)を検索する。ここで、非滅菌機器150はステップS602~S604でスキャンされた情報を格納しているので、滅菌機器150のプロセッサは、滅菌医療機器110から受信した接続要求を許可/受諾することができる。
【0078】
ステップS614において、非滅菌機器150のプロセッサ(又は滅菌医療機器110の通信ユニット910)は、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の接続が確立されたかどうかを決定することができる。滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の接続が確認された場合(S614でYES)、プロセスはステップS620に進む。ステップS620において、滅菌野に配置された滅菌機器と、滅菌野の外部に配置された非滅菌機器は、短距離無線プロトコル以外の長距離無線プロトコル(例えばBluetoothやWiFi)を用いてセキュアな無線接続を介して通信するように、完全に有効化される。したがって、ステップS620では、GUI155は、滅菌医療機器110と非滅菌機器150が互いに正常にペアリングされたことをユーザに通知することができる(図10Eを参照)。
【0079】
ステップS614において、非滅菌機器150のプロセッサは、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の接続が確立されていない、或いは確立することができないと決定することができる(S614でNO)。NFCタグの少なくとも1つがスキャンされた後であっても、滅菌医療機器110と非滅菌機器150の間の接続の確立を妨げ得る様々な理由があり得る。例えば、医療手技の開始前に、非滅菌機器150又はそのトランシーバが偶発的に電力を失ったり切断されたりした場合、ステップS614で接続を確認することはできない。また、電源がオンになった後、滅菌医療機器110が自己診断プロシージャを受ける場合がある。自己診断プロシージャが失敗した場合、滅菌医療機器110を廃棄する前に、非滅菌機器150を用いて滅菌パッケージ120のNFCタグを再スキャンすることが役立つ場合がある。このようなシナリオのいずれでも、滅菌機器が滅菌野内に残っている場合があるので(S616)、ユーザに、滅菌野から滅菌機器を取り出すことなく、滅菌パッケージ120及び第2のNFCタグ414を用いてスキャンステップを繰り返すように促すことができる(ステップS618)。
【0080】
別の例では、非滅菌透析機を、血圧モニタ等の滅菌透析アクセサリとペアリングする必要がある。この例では、透析アクセサリは、機器に埋め込まれたRFIDタグ又はNFCタグを有し、透析アクセサリを包含する滅菌パッケージは、複製のNFCタグ又はRFIDタグを有する。滅菌バリアが壊される前は、非滅菌透析機によっていずれかのタグを読み込むことができる。パッケージが開封された後は、非滅菌透析機のパッケージタグのみをスキャンすることにより、透析アクセサリの無菌性を維持することができる。
【0081】
多くの医療機器は、滅菌野を汚染するリスクを伴わずに滅菌野内に拡張可能な滅菌コンポーネントを必要とする。滅菌野では、当該滅菌コンポーネントが、デバイスの操作に必要な非滅菌コンポーネントと相互作用する。この状況では、非滅菌コンポーネントが滅菌野に入るおそれがあり、滅菌野の無菌状態を無効にするおそれがある。無菌状態の喪失を防ぐための解決策は、滅菌野に入る非滅菌コンポーネント上に滅菌バリアを展開することであった。これは特に、生体内(in vivo)環境で使用される医療機器に当てはまり、当該環境では、インターベンション用ロボットシステム等の滅菌コンポーネントを、滅菌できない電子コンポーネントとインタフェース接続する必要がある。
【0082】
例えば、非滅菌コンピュータを、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとペアリングする必要がある。医師は、手術用ロボットを誘導するために滅菌グローブを用いてコントローラを使用するので、コントローラは無菌性を維持しなければならない。本開示によれば、コントローラは埋込み型のNFCタグ又はRFIDタグを含み、コントローラは滅菌ドレープ又はパッケージに包囲される。この場合でも、コントローラの滅菌ドレープ又はパッケージにも、複製のNFCタグ又はRFIDタグが含まれる。手技中、医師又は技師は、滅菌パッケージが開封される前は、タグ(コントローラタグ又はパッケージタグ)のいずれかをスキャンすることができる。しかしながら、ペアリング前にパッケージが開封された場合であっても、パッケージの複製タグにより、医師又は技術者は、コントローラの無菌性を壊すことなく、滅菌コントローラを非滅菌コンピュータとペアリングすることができる。
【0083】
これらは、本開示を実施できる多くの可能な用途のほんの数例である。当業者には当然のことながら、本開示を実施できる態様は他にも数多く存在する。
【0084】
第1の態様(態様1)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器を帯域外ペアリングするためのシステムとして実施することができる。当該システムは、以下を備える:滅菌医療機器;非滅菌機器;少なくとも滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージ;滅菌医療機器の識別情報を格納するように構成された少なくとも1つのNFCタグ;第1の無線プロトコルを介してNFCタグと通信するように構成されたNFCトランシーバ;及び、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリ。メモリは、プロセッサが、滅菌野の内部に配置された滅菌医療機器からペアリング要求信号を受け取り、滅菌野の外側に配置された非滅菌機器にペアリング要求信号を伝送するために実行可能な命令を格納する。ペアリング要求信号を受け取ることに応答して、プロセッサは、少なくとも1つのNFCタグに格納された識別情報を用いて、第1の無線プロトコルとは異なる第2の無線プロトコルを介して非滅菌機器と無線接続するように、滅菌医療機器を構成する。
【0085】
第2の態様(態様2)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。非滅菌機器はNFCトランシーバを含む。NFCトランシーバは、少なくとも1つのNFCタグに識別情報を書き込むように構成される。滅菌医療機器は、少なくとも1つのNFCタグから識別情報を読み込むように構成されたNFCリーダを含む。
【0086】
第3の態様(態様3)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは滅菌医療機器に組み込まれる。識別情報は、滅菌医療機器を非滅菌機器と関連付けるように機能する無線識別子及び/又は暗号化キーを含む。
【0087】
第4の態様(態様4)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは、滅菌医療機器に組み込まれたRFIDタグを含む。
【0088】
第5の態様(態様5)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは、滅菌医療機器に組み込まれた第1のNFCタグと、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグとを含む。
【0089】
第6の態様(態様6)によれば、本開示は、態様5のシステムとして実施することができる。非滅菌機器は、第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方に識別情報を書き込むように構成され、滅菌医療機器は、第1のNFCタグから識別情報を読み込むように構成される。非滅菌機器と滅菌医療機器は、ペアリング要求信号を受け取ることに応答して、第1のNFCタグから読み込まれた識別情報を用いて、互いに無線接続する。
【0090】
第7の態様(態様7)によれば、本開示は、態様6のシステムとして実施することができる。滅菌医療機器は、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの1つ以上を含む。
【0091】
第8の態様(態様8)によれば、本開示は、態様1のシステムとして実施することができる。少なくとも1つのNFCタグは、アンテナと、集積回路と、パスワード保護された無線暗号化キーを格納するメモリとを含む。非滅菌機器は、少なくとも1つのNFCタグに開錠パスワードを伝送するように構成されたNFCトランシーバを含む。開錠パスワードを受け取ることに応答して、少なくとも1つのNFCタグは、無線暗号化キーを非滅菌機器に伝送する。
【0092】
第9の態様(態様9)によれば、本開示は、態様5のシステムとして実施することができ、以下を更に備える:滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、暗号化キーを用いて第1のNFCタグ及び第2のNFCタグをプログラムすることにより、第1のNFCタグと第2のNFCタグの間のキー不一致のリスクを排除するように構成された製造業者プログラミングユニット。
【0093】
第9(b)の態様(態様9b)によれば、本開示は、態様3のシステムとして実施することができ、以下を更に備える:滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、滅菌医療機器に組み込まれた少なくとも1つのNFCタグを暗号化キーを用いてプログラムするように構成された製造業者プログラミングユニット。暗号化キーは、滅菌医療機器を非滅菌機器と関連付けるように機能し、それにより、滅菌医療機器と非滅菌機器の間のキー不一致のリスクを排除する。この態様(態様9b)によれば、滅菌プロセスに、滅菌機器の一部の繊細な部分を損傷又は破損するリスク、或いは滅菌に失敗するリスクが含まれる場合、滅菌プロセスの後に暗号化キーの定義プロセスを完了できれば有利である。これにより、不要な製造工程を実施するリスクが低減され、適切な滅菌とペアリングのセキュリティが保証される。
【0094】
第10の態様(態様10)によれば、本開示は、態様5のシステムとして実施することができる。第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方は、同一の識別情報によって構成される。滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのいずれかが非滅菌機器のスキャナによってスキャンされる。滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリングを開始するために、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグのみがスキャナによってスキャンされる。
【0095】
第11の態様(態様11)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器を帯域外ペアリングするための方法として実施することができる。方法は、以下を含む:第1の近距離無線通信(NFC)タグが組み込まれた滅菌医療機器と、非滅菌機器と、第2のNFCタグが組み込まれるとともに滅菌医療機器及び第1のNFCタグを包囲する滅菌パッケージとを備える通信システムを形成するステップ;第1のNFCタグ及び第2のNFCタグに同一の識別情報を格納するステップ;及び、滅菌パッケージのステータスに従って、非滅菌機器によって第1のNFCタグ又は第2のNFCタグをスキャンするステップ。滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのいずれかが非滅菌機器によってスキャンされる。滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリングを開始するために、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグのみが非滅菌機器によってスキャンされる。
【0096】
第12の態様(態様12)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができ、以下を更に含む:滅菌パッケージの開封前、第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方に同一の識別情報を書き込むステップ。
【0097】
第13の態様(態様13)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができ、以下を更に含む:滅菌パッケージの開封後、無線ペアリングを開始するために、第2のNFCタグから非滅菌機器に識別情報を伝送するステップ。
【0098】
第14の態様(態様14)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。識別情報は、無線識別子と、滅菌医療機器と非滅菌機器の間の無線通信を有効化するように機能する暗号化キーとを含む。
【0099】
第15の態様(態様15)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。非滅菌機器は、第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方に識別情報を書き込むように構成され、滅菌医療機器は、第1のNFCタグから識別情報を読み込むように構成される。非滅菌機器と滅菌医療機器は、受け取られたペアリング要求信号に応答して、第1のNFCタグから読み込まれた識別情報を用いて、互いに無線接続する。
【0100】
第16の態様(態様16)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。滅菌医療機器は、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの1つ以上を含む。ペアリングは、セキュアな無線通信のために、針誘導機器と、滅菌透析機と、手術用ロボットを誘導するための滅菌コントローラとのうちの少なくとも1つを非滅菌医療機器とペアリングすることを含む。
【0101】
第17の態様(態様17)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。第1のNFCタグ及び第2のNFCタグは、パスワード保護された無線暗号化キーを用いて構成される。非滅菌機器は、第1のNFCタグ及び第2のNFCタグのうちの少なくとも1つに開錠パスワードを伝送するように構成されたNFCトランシーバを含む。開錠パスワードを受け取ることに応答して、第1のNFCタグ及び第2のNFCタグのうちの少なくとも1つは、暗号化キーを非滅菌機器に伝送する。
【0102】
第18の態様(態様18)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができ、以下を更に含む:滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、暗号化キーを用いて第1のNFCタグ及び第2のNFCタグをプログラムすることにより、第1のNFCタグと第2のNFCタグの間のキー不一致のリスクを排除するステップ。
【0103】
第19の態様(態様19)によれば、本開示は、態様11の方法として実施することができる。第1のNFCタグと第2のNFCタグの両方は、同一の識別情報によって構成される。滅菌パッケージの開封前は、無線ペアリングを開始するために、第1のNFCタグ又は第2のNFCタグのいずれかが非滅菌機器によってスキャンされる。滅菌パッケージの開封後は、無線ペアリンを開始するために、滅菌パッケージに組み込まれた第2のNFCタグのみが非滅菌機器によってスキャンされる。
【0104】
第20の態様(態様20)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌機器と非滅菌機器を帯域外ペアリングするための方法として実施することができる。本方法は、以下のステップを含む:(a)滅菌医療機器と、非滅菌機器と、少なくとも滅菌医療機器を包囲する滅菌パッケージと、滅菌医療機器に組み込まれるとともに滅菌医療機器についての識別情報を格納する少なくとも1つのNFCタグと、非滅菌機器に作動的に接続されるとともに、第1の無線プロトコルを介して少なくとも1つのNFCタグと通信するように構成されたNFCトランシーバとを備える通信システムを形成するステップ;(b)ペアリングプロセス中に、NFCトランシーバによって少なくともNFCタグをスキャンし、第1の無線プロトコルを介してペアリング情報を交換するステップ;及び、(c)医療手技中に、(c1)少なくとも1つのNFCタグをアクティブ化し、(c2)滅菌野の内部に配置された滅菌医療機器から、滅菌野の外側に配置された非滅菌機器に接続要求を伝送するステップ。滅菌医療機器は、ペアリング情報と、少なくとも1つのNFCタグに格納された識別情報とを用いて、第1の無線プロトコルとは異なる第2の無線プロトコルを介して非滅菌機器と無線接続する。
【0105】
第21の態様(態様21)によれば、本開示は、態様20の方法として実施することができる。ペアリングプロセス中、第1の無線プロトコルを介してペアリング情報を交換するステップは、滅菌医療機器が滅菌パッケージに包囲された後に、滅菌医療機器に組み込まれた少なくとも1つのNFCタグを暗号化キーを用いてプログラムすることを含む。暗号化キーは、滅菌医療機器を非滅菌機器と関連付けるように機能し、それにより、滅菌医療機器と非滅菌機器の間のキー不一致のリスクを排除する。
【0106】
第22の態様(態様22)によれば、本開示は、その無菌性を損なうことなく滅菌医療機器と非滅菌医療機器を帯域外ペアリングするためのシステムとして実施することができる。本システムは、滅菌医療機器と、非滅菌機器と、滅菌医療機器についての情報を格納するように構成された少なくとも1つの近距離無線通信(NFC)タグと、メモリに結合されたプロセッサと、を備え、メモリは、プロセッサが、ユーザに、非滅菌機器の近くに少なくとも1つのNFCタグを配置するように促し、非滅菌医療機器と少なくとも1つのNFCタグの間で第1の無線接続を確立して、滅菌医療機器についての情報をNFCタグから非滅菌医療機器に伝送し、滅菌野の内部に配置された滅菌医療機器と滅菌野の外側に配置された非滅菌機器との間で第2の無線接続を確立して、滅菌医療機器と非滅菌機器の間で動作情報を交換するために実行可能な命令を格納する。プロセッサは、NFCタグから読み込まれた滅菌医療機器についての情報に基づいて、第2の無線接続を確立し、プロセッサは、NFCプロトコルを介して少なくともNFCタグと非滅菌医療機器の間でペアリング情報を伝送するために第1の無線接続を確立し、また、NFCプロトコルとは異なる短距離又は長距離の無線通信プロトコルを介して滅菌医療機器と非滅菌機器の間で動作情報を交換するために、第2の無線接続を確立する。
【0107】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に機能する技術的な均等物を全て含む。
【0108】
したがって、本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い合理的な解釈が与えられるべきである。
【国際調査報告】