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特表2022-547751バッテリの充放電特性を用いてバッテリに電気エネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵システム(ESS)
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】バッテリの充放電特性を用いてバッテリに電気エネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵システム(ESS)
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20221109BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20221109BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20221109BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20221109BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20221109BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/3842
G01R31/367
H02J7/02 H
H02J15/00 D
H01M10/48 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020570536
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2020-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2020017778
(87)【国際公開番号】W WO2021256638
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0073422
(32)【優先日】2020-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520492477
【氏名又は名称】ナサン エレクトリック インダストリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NASAN ELECTRIC INDUSTRIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】42, Junam-ro 503beon-gil Daesan-myeon, Uichang-gu Changwon-si Gyeongsangnam-do 51124, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】ベ ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】ソン スヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソンヨン キム
(72)【発明者】
【氏名】ムン サンチュン
(72)【発明者】
【氏名】アン ハンヨル
(72)【発明者】
【氏名】ベ キョンジン
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA26
2G216BA27
2G216BA29
2G216BA34
2G216CB18
2G216CB52
2G216CC05
5G503AA01
5G503BA02
5G503BA04
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503EA05
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5G503HA00
5H030AA01
5H030AS20
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
バッテリの充放電特性を用いてバッテリに電気エネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵システム(ESS)が開示される。このようなシステムは、前記バッテリに電気エネルギーを充放電する電力変換部(power conversion system;PCS)と、前記バッテリ及び前記電力変換部の電圧、電流、温度、及び内部抵抗を含む状態情報をモニターリングし且つ制御する電力管理部(power management system;PMS)と、前記バッテリの状態情報から前記バッテリの充電状態(state of charge;SOC)及び健康状態(State of Health;SOH)を推定し、推定された充電状態と健康状態に基づいて前記バッテリを管理するバッテリ管理部(battery management system;BMS)と、を備え、前記バッテリ管理部は、構成するセルの充電量を等化させるセルバランシング部と、推定された充電状態と健康状態に基づいて前記バッテリの残余寿命を予測し、予測された残余寿命に従って前記バッテリの過充電及び過放電を防いで前記バッテリを保護するバッテリ保護部と、を備える。本発明により、温度と時間の成分を排除してバッテリの寿命を予測することができるのでエネルギーを安定的に蓄えることができる。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充放電特性を用いてバッテリに電気エネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵システムであって、
前記バッテリに電気エネルギーを充放電する電力変換部(power conversion system;PCS)と、
前記バッテリ及び前記電力変換部の電圧、電流、温度、及び内部抵抗を含む状態情報をモニターリングし且つ制御する電力管理部(power management system;PMS)と、
前記バッテリの状態情報から前記バッテリの充電状態(state of charge;SOC)を測定し、前記充電状態に基づいて前記バッテリを管理するバッテリ管理部(battery management system;BMS)と、
を備え、
前記バッテリ管理部は、
構成するセルの充電量を等化させるセルバランシング部と、
前記充電状態に基づいて前記バッテリの残余寿命を予測し、予測された残余寿命に従って前記バッテリの過充電及び過放電を防いで前記バッテリを保護するバッテリ保護部と、
を備え、
前記バッテリ保護部は、
変動する充電電流及び放電電流で前記バッテリを充電及び放電しながら、前記バッテリの電圧、充電状態(state of charge;SOC)、及び放電深さ(depth of discharge;DOD)を測定するバッテリ状態測定部と、
エンタルピーとエントロピーの法則を用いて、前記電圧及び前記充電状態(SOC)から前記バッテリが充放電される過程において発生する非可逆的エネルギー量(Qir)を導出する非可逆的エネルギー量導出部と、
導出された非可逆的エネルギー量(Qir)から前記バッテリの残余寿命を予測する残余寿命予測部と、
を備え、
前記非可逆的エネルギー量導出部は、
前記非可逆的エネルギー量(Qir)を数式
【数1】
を用いて導出し、
ここで、Qは、バッテリの最大容量、αは、アレニウス定数(Arrhenius rate constant)であり、E及びEは、それぞれ充電時及び放電時のセル電圧であり、
前記残余寿命予測部は、
前記バッテリの残余寿命を数式
【数2】
を用いて予測し、
ここで、Qir_mは、非可逆的エネルギー量のサイクルごとの最大値、mは、最大のサイクル期間、N及びNは、それぞれ実際のサイクル回数と予測されたサイクル回数であり、Qir_kは、k番目のサイクル現在の非可逆的エネルギー量であることを特徴とする、バッテリの充放電特性を用いたエネルギー貯蔵システム(ESS)。
【請求項2】
前記残余寿命予測部は、
ir_m及びQir_kを、前記バッテリに対する電圧と充電状態(SOC)との関係を示すグラフにおいてサイクルごとの充放電曲線が占める面積から求めることを特徴とする、請求項1に記載のバッテリの充放電特性を用いたエネルギー貯蔵システム(ESS)。
【請求項3】
前記サイクルごとの充放電曲線の面積は、前記充放電曲線を少なくとも二つ以上のセクションに分割し、分割された各セクションの面積を合算して求められることを特徴とする、請求項2に記載のバッテリの充放電特性を用いたエネルギー貯蔵システム(ESS)。
【請求項4】
前記サイクルごとの充放電曲線を分割することは、
前記充放電曲線から、連続する二つのサイクルにおける充電開始点(PCS,P CS)、充電変曲点(PCK,P CK)、放電開始点(PDS,P DS)、及び放電変曲点(PDK,P DK)を抽出することと、
前記充放電曲線を:
CS、P CS、PCK、及びP CKにより形成される第1のセクションと、
CS、P CK、P DS、及びP DKにより形成される第2のセクションと、
DS、P DS、PDK、及びP DKにより形成される第3のセクションと、
に分割することと、
を含むことを特徴とする、請求項3に記載のバッテリの充放電特性を用いたエネルギー貯蔵システム(ESS)。
【請求項5】
前記充電開始点(PCS)及び放電開始点(PDS)は、電流の方向変動により抽出され、
前記充電変曲点(PCK)及び放電変曲点(PDK)は、充電状態(SOC)に対する電圧の変化量に基づいて抽出されることを特徴とする、請求項4に記載のバッテリの充放電特性を用いたエネルギー貯蔵システム(ESS)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ管理に関し、特にバッテリの充放電特性を用いて充放電可能なバッテリに電気エネルギーを蓄えるエネルギー貯蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリは、現在商用化されている二次電池の中で最も卓越した性能を有する。他の二次電池と比較して相対的に軽量であり、しかも、エネルギー密度が高いことから、携帯型製品から大型のエネルギー貯蔵システムに至るまで多岐に亘る分野において広く用いられている。特に、電気自動車の普及に伴い、走行距離の向上のためのバッテリの貯蔵容量の問題と致命的な欠点である安定性の問題を解決するために、リチウム-硫黄(Lithium-Sulfur)、リチウム-エア(Lithium-Air)、ナトリウム-マグネシウム(Sodium-Magnesium)及び全固体(Solid-State)バッテリなどの次世代電池の開発を進めている。しかしながら、これらの次世代電池は、商用化に至るまでは未だ解決すべき問題が多い。従って、当分の間はリチウムイオン電池市場が継続的に拡大していく見込みである。特に、携帯電話及びパーソナルモビリティ(電動キックボード、電動自転車など)市場の成長とあいまって、リチウムイオン電池の効率的なエネルギー使用と安定性の問題がなお一層注目されている。
【0003】
一般に、リチウムイオンバッテリは、初期にはしばらくの間は安定的である。しかしながら、使用頻度が増えるにつれて、寿命が次第に減り、電解質が酸化-還元反応により分解され、これがSEI(Solid Electrolyte Interface)層を形成して、内部抵抗が増加する効果を奏し、これに伴い、使用可能なバッテリ容量が減ってしまう。SEI層は、電解質が分解され続けないようにする保護膜の役割を果たすが、これに対し、エントロピー側面からみたとき、可逆容量の減少を招く直接的な原因となる。
【0004】
寿命が減った状態で充放電を繰り返し行うと、状況に応じて過充電、過放電、過電流などの問題が生じる虞がある。特に、パーソナルモビリティ市場の成長により、各家庭において電動キックボード及び電動自転車などを、寿命状態を考慮せずに充電してしまうことが原因となって、過熱及び発火による火災事故も頻繁に起こっている。
【0005】
リチウムイオンバッテリは、容量が初期の容量に比べて80%以下に落ちると、寿命が尽きたとみなしている。このようなバッテリの寿命を予測することは、エネルギー貯蔵装置の効率的な資源の活用と安定的な管理及び使用のために非常に重要である。
【0006】
寿命を予測するための取り組みが盛んに行われている。
【0007】
特許文献1には、二次電池の作動電圧の範ちゅうにおいて1次充電するステップと、前記二次電池の特定の容量の充電時点においてカットオフ(cut-off)するステップと、前記カットオフ電圧に達したとき、特定の容量の電流まで2次充電するステップと、前記2次充電から前記電流に達するまでの時間を測定するステップと、前記測定時間と予め設定された基準時間とのデータマッピングによって電池の寿命を予測するステップと、前記予測された寿命を表示するステップと、を含む電池充電時の定電圧区間を用いた二次電池の寿命予測システム及びこれを予測できる装置が開示されている。このような従来の技術によれば、ユーザが二次電池の寿命を確かめることができて、予想しなかった時期に二次電池が放電されることにより、ユーザが携帯型電気機器を使えなくなるという不都合をなくすことができ、特に、二次電池の取り替えが必要であるにも拘わらず、充電器において充電する前にユーザがそれに気づけないため、余計な充電をしてしまうという問題を解決することができる。
【0008】
しかしながら、従来の技術のほとんどの装置は、時間関数を含むパラメータを用いることにより随時変わり得る使用環境に対応することができないという欠点を有している。また、温度(T)に基づくパラメータとモデル推定装置は、境界条件に伴う誤差及び温度測定誤差、並びに温度変化の遅い動き特性によりバッテリの状態解析の誤りを犯しかねない要素として働いてしまう。
【0009】
従って、このような不確実性が存在する要素を排除し、バッテリの残余寿命を正確に予測してバッテリにエネルギーを蓄えることのできる技術が切望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2010-0019660号公報(2010年2月19日)「二次電池の寿命予測方法及びこれを用いた寿命予測装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、時間的な要素ではなく、電圧と充電状態(SOC)との関係に基づいてバッテリ寿命をエントロピーの観点から予測し、予測された寿命に基づいてバッテリに電気エネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、バッテリの充放電特性を用いてバッテリに電気エネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵システムに関する。本発明によるエネルギー貯蔵システムは、前記バッテリに電気エネルギーを充放電する電力変換部(power conversion system;PCS)と、前記バッテリ及び前記電力変換部の電圧、電流、温度、及び内部抵抗を含む状態情報をモニターリングし且つ制御する電力管理部(power management system;PMS)と、前記バッテリの状態情報から前記バッテリの充電状態(state of charge;SOC)及び健康状態(State of Health;SOH)を推定し、推定された充電状態と健康状態に基づいて前記バッテリを管理するバッテリ管理部(battery management system;BMS)と、を備え、前記バッテリ管理部は、構成するセルの充電量を等化させるセルバランシング部と、推定された充電状態と健康状態に基づいて前記バッテリの残余寿命を予測し、予測された残余寿命に従って前記バッテリの過充電及び過放電を防いで前記バッテリを保護するバッテリ保護部と、を備え、前記バッテリ保護部は、変動する充電電流及び放電電流で前記バッテリを充電及び放電しながら、前記バッテリの電圧、充電状態(state of charge;SOC)、及び放電深さ(depth of discharge;DOD)を測定するバッテリ状態測定部と、エンタルピーとエントロピーの法則を用いて、前記電圧及び前記充電状態(SOC)から前記バッテリが充放電される過程において発生する非可逆的エネルギー量(Qir)を導出する非可逆的エネルギー量導出部と、導出された非可逆的エネルギー量(Qir)から前記バッテリの残余寿命を予測する残余寿命予測部と、を備えるように構成される。特に、前記非可逆的エネルギー量導出部は、前記非可逆的エネルギー量(Qir)を数式
【数1】
を用いて導出し、ここで、Qは、バッテリの最大容量、αは、アレニウス定数(Arrhenius rate constant)であり、E及びEは、それぞれ充電時及び放電時のセル電圧である。また、前記残余寿命予測部は、前記バッテリの残余寿命を数式
【数2】
を用いて予測し、ここで、Qir_mは、非可逆的エネルギー量のサイクルごとの最大値、mは、最大のサイクル期間、N及びNは、それぞれ実際のサイクル回数と予測されたサイクル回数であり、Qir_kは、k番目のサイクル現在の非可逆的エネルギー量である。特に、前記残余寿命予測部は、Qir_m及びQir_kを、前記バッテリに対する電圧と充電状態(SOC)との関係を示すグラフにおいてサイクルごとの充放電曲線が占める面積から求め、前記サイクルごとの充放電曲線の面積は、前記充放電曲線を少なくとも二つ以上のセクションに分割し、分割された各セクションの面積を合算して求める。さらに、前記サイクルごとの充放電曲線を分割することは、前記充放電曲線から、連続する二つのサイクルにおける充電開始点(PCS,P CS)、充電変曲点(PCK,P CK)、放電開始点(PDS,P DS)、及び放電変曲点(PDK,P DK)を抽出することと、前記充放電曲線を:PCS、P CS、PCK、及びP CKにより形成される第1のセクションと、P CS、P CK、P DS、及びP DKにより形成される第2のセクションと、PDS、P DS、PDK、及びP DKにより形成される第3のセクションと、に分割することと、を含む。また、前記充電開始点(PCS)及び放電開始点(PDS)は、電流の方向変動により抽出され、前記充電変曲点(PCK)及び放電変曲点(PDK)は、充電状態(SOC)に対する電圧の変化量に基づいて抽出される。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、時間的な要素を取り除くために電圧/SOCの関係をエントロピーの観点から糾明し、温度による影響をV/SOCの結果として示されることを整理することにより、温度と時間の成分を排除してバッテリの寿命を予測し、予測された寿命に基づいてバッテリに安定的にエネルギーを蓄えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】バッテリ管理システム(BMS)を概略的に示すブロック図である。
図1B】エネルギー貯蔵システム(ESS)を概略的に示すブロック図である。
図1C】エントロピー-エンタルピーに基づくバッテリの寿命予測方法を概略的に示すフローチャートである。
図1D図1Cのバッテリの寿命予測方法を行うバッテリ寿命予測システムを概略的に示すブロック図である。
図2】バッテリテストシステムの単純化された構成を示す図である。
図3A】状態が異なるバッテリに対して1Cで放電したときの放電特性グラフである。
図3B】状態が異なるバッテリに対して0.5Cで充電したときの充電特性を示す図である。
図4A】充電電流が変わるSOCに対する電圧曲線(放電電流は、1Cに固定される)である。
図4B】放電電流が変わるSOCに対する電圧曲線(充電電流は、0.5Cに固定される)である。
図5A】充放電電流のみが異なる場合のQ値の変化を示す。
図5B】充放電電流及びDODが異なる場合のQ値の変化を示す。
図6】様々な状況における非可逆的エネルギーを示す。
図7A】より少ない電流に対する充放電動作を示す。
図7B】より少ない電流に対する充放電動作を示す。
図8】点検出装置(PDM)の概念説明図である。
図9】充放電状態に応じたPDMの四つの場合を示す。
図10】セクション分割装置を適用する概念説明図である。
図11】バッテリ寿命を予測するためのアルゴリズムの擬似コードを概略的に示す。
図12】放電電流がリアルタイムにて変わる場合、時間に伴う電圧の変化とSOCに応じた電圧の変化とを比較した図である。
図13】予測寿命と実際の寿命との比較曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明と本発明の動作上の利点及び本発明の実施により達成される目的を十分に理解するためには、本発明の好適な実施形態を例示する添付図面及び添付図面に記載されている内容を参照せねばならない。
【0016】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について説明することにより、本発明について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、図中の同じ参照符号は同じ部材であることを示す。
【0017】
図1Aは、バッテリ管理システム(BMS)を概略的に示すブロック図であり、図1Bは、エネルギー貯蔵システム(ESS)を概略的に示すブロック図である。
【0018】
図1Aに示すバッテリ管理システム(BMS)は、次のような機能を行ってバッテリを管理する。
【0019】
-バッテリ状態モニターリング機能:電圧、電流、温度、内部抵抗を測定し、バッテリの充電状態(state of charge;SOC)、バッテリの健康状態(state of health;SOH)、及びバッテリの残存寿命(state of life;SOL)をモニターリングする。
【0020】
-セルバランシング:直列に接続されたバッテリモジュールのセル間の電圧バランシングが行われるようにセル間の充放電の度合いが同じくなるように調整する機能を行う。
【0021】
-バッテリ保護:過電圧、過放電、過電流などを防ぐための保護機能を行い、バッテリ寿命に非常に重要な機能である。
【0022】
-その他の機能:バッテリの診断及びデータ状態の伝送などの機能を行う。すなわち、後述するPMS及びEMSと連動して実際のバッテリの状態を伝送し且つ管理する機能を行う。
【0023】
これらの動作を行うために、図1Aに示すバッテリ管理システムは、セルバランシング部とバッテリ保護部とを備えていてもよい。
【0024】
セルバランシング部は、バッテリの電圧、電流、温度、及び内部抵抗を測定するセンサから状態情報を受信し、受信された状態情報から前記バッテリの充電状態(state of charge;SOC)及び健康状態(State of Health;SOH)を推定する。また、セルバランシング部は、推定された充電状態と健康状態に基づいて、バッテリを構成するセルの充電量を等化させて過充電されたり過放電されたりするセルが生じないように防ぐ。
【0025】
また、バッテリ保護部は、推定された充電状態と健康状態に基づいてバッテリの残余寿命を予測し、予測された残余寿命に従ってバッテリの過充電及び過放電を防いでバッテリを保護する。
【0026】
このようなバッテリ管理システムは、バッテリの充放電特性を用いたバッテリ寿命予測機能と結合されてバッテリの残存寿命を正確に予測してバッテリを管理することが可能になる。バッテリの充放電特性を用いてバッテリの寿命を予測する技術については、この明細書の当該部分において詳しく後述する。
【0027】
図1Bは、図1Aのバッテリ管理システムを採択するエネルギー貯蔵システム(ESS)を概略的に示すブロック図である。エネルギー貯蔵システム(ESS)の各機能について簡略に紹介すると、次の通りである。
【0028】
-電力管理システム(Power Management System;PMS):バッテリ及び後述するPCSの状態をモニターリングし且つ制御する役割を果たす。なお、PMSは、エネルギー管理システム(EMS)と連動して電力を制御する機能を担う。
【0029】
-電力変換システム(Power Conversion System;PCS):バッテリに電気エネルギーを充電し、バッテリから電気エネルギーを放電する役割を果たす。
【0030】
-エネルギー管理システム(Energy Management System;EMS):ESSの全体のエネルギーを管理するシステムであり、PMSに対するコントロールタワーとしての役割を果たす。すなわち、EMSは、電源系統の需要と供給を管理し、エネルギーシステムを運用する。
【0031】
-バッテリ管理システム(Battery Management System;BMS):図1Aに示すようなBMSは、電圧、電流、温度、内部抵抗などのバッテリ状態情報を測定し、これらに基づいてSOC、SOHを推定し、バッテリを保護し、セルバランシングを行う役割を果たす。
【0032】
図1Bに示すエネルギー貯蔵システムにもバッテリの充放電特性を用いたバッテリ寿命予測機能が採用される。従って、図1Bに示すエネルギー貯蔵システムは、バッテリの残存寿命を正確に予測してバッテリを管理することができるようになるので、エネルギーを効率よく蓄えることができ、バッテリ寿命を均一に管理することができるので、破損されたセルに起因する火災など不意の事故を未然に防ぐことが可能になる。バッテリの充放電特性を用いてバッテリの寿命を予測する技術については、この明細書の当該部分において詳しく後述する。
【0033】
図1Cは、エントロピー-エンタルピーに基づくバッテリの寿命予測方法(S100)を概略的に示すフローチャートであり、図1Dは、図1Cのバッテリの寿命予測方法を行うバッテリ寿命予測システム100を概略的に示すブロック図である。
【0034】
バッテリ寿命及び安全のようなバッテリ性能のための最適な作動条件を設定するためには、充電/放電のCレートを基準として熱の発生及び温度の変化を定量化することが重要である。理解しやすさのために、時間パラメータが反映されたバッテリの寿命予測方法について簡略に説明する。
【0035】
バッテリの充放電電圧に関する特性方程式は、シェファード(Shepherd)モデルを根拠として、電流項目と温度(T)、並びにSOHに関連するパラメータで次のように表わすことができる。
【0036】

【数3】
【0037】

【数4】
【0038】
上式は、バッテリ解析のための電圧特性方程式であって、大勢の研究者が基本モデルとして提示したものである。しかしながら、ここでは、電流は、たとえ定電流(Constant Current;CC)モードにより動作する定電流であると解析をするとしても、
【数5】
は、温度とSOHに応じて次の数式のように表わし得る関数であるため、数式1と2のみでバッテリの特性を解析することには多少無理がある。
【0039】
【数6】
【0040】
【数7】
【0041】
【数8】
【0042】
【数9】
【0043】
また、上式は、時間に関する関数として計算されるため、バッテリの使用パターンや負荷環境などの変化に伴う多くの誤差をもたらす確率が高く、従って、非現実的な解析装置になる虞がある。また、多くの研究において解析している熱的な要素を反映した内部抵抗、分極抵抗、容量などを推定することは現実的に多くの誤り要素を含んでいるため、実際的な使用装置に限界がある。
【0044】
このような問題を予防するために、電流が「0」である状態、すなわち、OCVを測定して状態を解析する方法も提案されているが、OCVを測定するためには、安定化されるまで多少時間がかかるため、リアルタイム予測方法には適用し難い。
【0045】
まず、バッテリを充放電しながらバッテリの電圧、SOC、DODなどを測定する(S110)。このような動作は、バッテリ状態測定部110において行われ得る。
【0046】
現実的な使用環境を考慮するのであれば、実際に測定可能なパラメータは、電圧と電流、温度である。ここで、温度は重要なパラメータであることは間違いない。ESSなどのような大容量アプリケーションにおいては、バッテリの安定的な動作のために冷却設備を備え、温度に応じてバッテリ表面温度を制御するようにするシステムを運用する。しかしながら、ほとんどの小容量システムは、冷却設備を備えておらず、適切なIレートを保つようにし、温度は、リミットをかけて保護装置としてのみ用いる。
【0047】
温度の内部と外部における伝熱特性と温度センサの測定及び応答の遅い動き特性を考慮するのであれば、リアルタイムな計算に反映することは、バッテリの状態を解析する上で誤りを犯す確率が高い。
【0048】
-寿命を予測するための数学的なモデリング
従って、数式1~6のように、時間要素を排除し、エントロピーとエンタルピーの概念を用いてバッテリの残余寿命を予測することが有利である。
【0049】
【数10】
【0050】
数式7のように、ギブス(Gibb’s)自由エネルギー(ΔG)に関する式で、エンタルピー(ΔH)とエントロピー(ΔS)に対する概念について説明する。ここで、nは、反応に含まれる電子の数であり、リチウムイオンの場合、n=1であり、Fは、ファラデー定数である。ここで、xは、リチウムイオンの濃度を示し、この値は、SOCに比例するため、数式8のように表わすことができる。
【0051】
【数11】
【0052】
上式に基づいて、エントロピー法則を踏まえて、数式9のように非可逆的ジュール熱と可逆的ジュール熱、並びに端子抵抗による熱で定義することができる。
【0053】
【数12】
【0054】
ここで、非可逆的ジュール熱に注目しなければならない。というのは、温度に関連する関数や内部抵抗の場合、前述したように、測定または推定誤差、遅い動き特性により誤りが生じる確率が高いからである。従って、リアルタイムにて推定可能な電圧と電流の項となっている非可逆的エネルギー量を応用することが好ましい。
【0055】
【数13】
【0056】
ここで、Eは、充電時のセル電圧を示し、Eは、放電時のセル電圧を示す。非可逆的熱量の総量は、数式10を積分して次のように表わすことができる(S120)。
【0057】
【数14】
【0058】
【数15】
【0059】
【数16】
【0060】
数式13において、Vを両側に掛け、積分式で表わせば、数式14となる。
【0061】
【数17】
【0062】
ここで、VをαE-Eで定義し、式を整理すれば、数式15のように定義される。
【0063】
【数18】
【0064】
数式11から数式15を再び整理すると、数式16のようにSOCに対する電圧変化の総量が、つまり、非可逆エネルギーを求め得る式として導出されることが分かる。このような動作は、非可逆的エネルギー量導出部150において行われ得る。
【0065】
【数19】
【0066】
それぞれの充放電サイクルの間に、バッテリ寿命は、非可逆的エネルギーQir_kを追加し、これを一つのサイクルの間に生成できる非可逆的エネルギーの最大量Qir_mと最大のサイクル期間(maximum cycle period)との積と比較して計算され得る。
【0067】
数式17を用いると、バッテリの残余寿命状態(state of life;SOL)を推定することができる。従って、バッテリ寿命は、当該充放電に伴う非可逆的エネルギーを計算することにより決定され得る。
【0068】
一般に、数式17を用いて、バッテリの寿命は、充放電に伴う非可逆的エネルギーの総合が初期のバッテリ容量の80%以下になると、寿命が尽きたと判断することができる。
【0069】
【数20】
【0070】
バッテリメーカーが提供する充放電サイクルは、DODが100%基準回数を意味するため、それから、次のように実際に使用可能な充放電サイクルを計算することができる。このような動作は、残余寿命予測部190において行われ得る。
【0071】
【数21】
【0072】
また、バッテリが充放電される過程において発生する非可逆的エネルギー量Qirが導出された後に、充放電曲線から、連続する二つのサイクルにおける充電開始点(PCS,P CS)、充電変曲点(PCK,P CK)、放電開始点(PDS,P DS)、及び放電変曲点(PDK,P DK)を抽出し(S130)、抽出された点を用いて充放電曲線を三つのセクションに分割する(S140)。
【0073】
そして、各セクションの面積を求めて合算することにより(S150)、Qir_m及びQir_kが計算される(S160)。そして、計算されたQir_m及びQir_kからバッテリの残余寿命が予測される(S170)。これらの過程は、明細書の当該部分において詳しく後述する。
【0074】
-テストシステムの構成
図2は、バッテリテストシステムの単純化された構成を示す図である。
【0075】
提案した方法を検証するために、バッテリ充放電実験システムを第1図のように構成した。定電流(CC)、定電圧(CV)の機能をもったバッテリ専用充電器を用いてメインコントローラにおいて充放電シーケンスに従ってオン/オフにする構成も可能であるが、スイッチの過度状態及び損失などを考慮してさらに簡素化された実験システムが構成される。CV動作は、電流リミット機能をもったパワーサプライを用いて実現され、スイッチを取り外し、シリアル通信を用いて充放電シーケンスを制御するように構成した。温度(T)は、異常状態に対する保護機能を行う役割のみを果たすのように構成した。
【0076】
表1は、テストに用いられたバッテリの仕様を並べる。表1の仕様は、単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではないことに留意されたい。
【0077】
【表1】
【0078】
バッテリの老化状態に対する特性を調べるために、新たなバッテリとDOD100、並びに定格充電電流0.5Cと放電電流1Cでそれぞれ100、200、300、400、500回充放電を行ったバッテリ5種に対して充放電特性実験を行った。
【0079】
図3Aは、状態が異なるバッテリに対して1Cで放電したときの放電特性グラフであり、図3Bは、0.5Cで充電したときの充電特性を示す図である。我々が予想しているように、充放電サイクルが多く進んだバッテリであるほど、充電と放電の速度が速やかに変わることが分かる。これは、バッテリ特性のために定格で充放電を正確に定められた規則通りに行ったため、それぞれの老化状態に応じた特性が非常に線形的な変化を示していることが分かる。
【0080】
図4Aは、充電電流が変わるSOCに対する電圧曲線(放電電流は、1Cに固定される)であり、図4Bは、放電電流が変わるSOCに対する電圧曲線(充電電流は、0.5Cに固定される)である。
【0081】
すなわち、図4Aは、放電電流は、定格電流である1Cに固定し、充電電流を0.1Cから1Cまで変化させながらDODを100%で充放電したときのSOCに対する電圧のグラフである。充放電をしながら現れる曲線が有する面積が電流の大きさに応じて変わることが分かる。電流の大きさが最も大きな1Cの場合、面積が広く、充電電流が小さくなればなるほど、面積が次第に狭くなることが分かる。図4Bは、充電電流を0.5Cに固定した状態において、DOD100%で、放電電流を変化させながらSOCに対する電圧のグラフを示すものである。放電電流が最も大きな1Cの場合、下端部が最も下側にグラフが描かれることが分かる。電流が小さくなればなるほど、グラフが囲む面積が狭まることが分かる。図4A及び図4Bから、前述された技術に対する根拠が明確になることを確認することができる。電流の大きさに応じてSOCに対する電圧の曲線が囲む面積が変化することを確認することができ、電流が大きくなるにつれて面積が広くなることが分かった。この量は、非可逆的エネルギーに換算可能であり、従って、非可逆的エネルギーの計算による寿命の推定が可能である。
【0082】
図5Aは、充放電電流のみが異なる場合のQ値の変化を、図5Bは、充放電電流及びDODが異なる場合のQ値の変化を示す。特に、図5Aは、0.5C充電(Charging)(0.5CC)、1C放電(Discharging)(1CD)と0.1C充電(0.1CC)、0.1C放電(0.1CD)に対するDOD100%であるときの充放電特性曲線を示す。図5Aの黒色の実線により囲まれた曲面の面積がQir_mであると定義され、1サイクルにおいて、定格充電電流、定格放電電流は、DOD100%で運転した場合、非可逆的熱容量の最大の大きさである。赤色の実線で示された面積は、0.1C充電(0.1CC)、0.1C放電(0.1CD)に対するDOD100%であるときの非可逆的熱容量の大きさであり、Qir_kであると定義され、特定の1サイクルにおいて減衰されたバッテリ容量を意味する。図5Bは、DODを70%で運転した場合、消耗された容量を示している。図5A及び図5Bにおいて、Qir_m-Qir_kは、使用可能な残余容量を意味する。それから、比例関係式を用いて我々は残っている容量と残余サイクルを計算することができる。
【0083】
図6は、様々な状況における非可逆的エネルギーを示す。
【0084】
図6は、充放電電流の大きさ及びDODを変更する結果のグラフであり、黒色の実線領域は、一つのサイクルの間の非可逆的エネルギーの最大値Qir_mである。図5は、様々に変わる非可逆的熱容量の模様を示す。電流の充電速度が定格範囲を超えると、非可逆的熱容量は、1サイクル基準値を超えてしまい、その結果、寿命が短縮される。
【0085】
図7A及び図7Bは、より少ない電流に対する充放電動作を示し、すなわち、基準対比の充放電電流の大きさとDODを変化させながら示した結果グラフである。この場合、非可逆的エネルギーが少なくなって残余寿命が延びる。
【0086】
具体的に、図7Aは、0.5Cの充電電流、1Cの放電電流(0~500回のサイクル)である場合を、図7Bは、0.5Cの放電電流、1Cの充電電流(新たなバッテリ、500回目のバッテリ)である場合を示す。すなわち、図7は、6つの異なる寿命をもったバッテリを0.5CC、1CD、DOD=100%で充放電した場合の特性曲線を比較して示しており、面積別に区別すると、新たなバッテリの曲面の面積が最も小さく、寿命の消尽が近くなるにつれて、曲線の面積が広くなることを確認することができる。図7Bは、新たなバッテリと寿命が尽きたバッテリの特性曲線を示す。寿命が尽きたバッテリの場合、放電の際にSOCが0%になるまで放電を行ってしまうと、電圧降下の現象が生じることを確認した。このとき、瞬間的な過度現象によりバッテリ問題が発生する可能性が高いことが予想される。
【0087】
-点検出方法(point detection method;PDM)
通常の場合、曲線の面積を求めるために積分器を用いる方法を利用する。しかしながら、積分器は、累積誤差の除去のための方法を適用して処理しなければならないという欠点を有している。従って、本発明においては、積分器を用いずに、四つの変曲点を検出して四角形の面積を求める方法を適用した。この方法の場合、積分器を用いる場合の欠点を除去することができ、より簡便に、且つ効果的な方法で非可逆的熱容量を求めることができる。
【0088】
図8は、点検出装置(PDM)の概念説明図である。
【0089】
ポイントの変化は、結論的に、放電されたエネルギーが充電されたエネルギーよりも少ない場合(図8の第1図)、及び放電されたエネルギーが充電されたエネルギーよりも大きな場合(図8の第2図)に分けられる。ここで、PCSは、充電開始点(charging start point)、PCKは、充電変曲点(charging knee point)、PDSは、放電開始点(discharging start point)、PDKは、放電変曲点(knee point)であると定義される。このようなポイントの変化は、合計で4種類の場合の数を有し、それを図式的に表わすと、図9の通りである。
【0090】
図9は、充放電状態に応じたPDMの四つの場合を示す。具体的に、(a)は、DODが広くなる場合、(b)は、DODが狭くなる場合、(c)は、DODの範囲が低くなる場合、かつ、(d)は、DODの範囲が高くなる場合を示す。
【0091】
図9は、DODとして表わされ得る。(a)の場合、DODの範囲が以前よりも広く、(b)の場合、DODの範囲が狭くなる。(c)の場合には、DODの範囲が移動するが、すなわち、放電深さが深くなり、充電深さが浅くなる。ここで、充電深さ(depth of charge)もまた深ければ、これは、(a)の場合となる。すなわち、(d)とは反対に、放電深さは浅くなり、充電深さが増加する。同様に、充電深さもまた浅くなれば、これは、(b)の場合となる。一般に、バッテリのほぼ全ての充放電状態は、前記の四つの場合に含まれる。図9において、青色にて示されたP(PCS,PCK,PDS,PDK)は、現在の位置を示し、離散信号処理成分のP(n-1)と同じである。上付き字(*)により示される緑色の点P(P CS,P CK,P DS,P DK)は、新たに更新された点であり、これは、離散信号処理成分のP(n)である。
【0092】
-セクション分離方法(Section Separation Method;SSM)
図10は、セクション分割方法を適用する概念説明図である。具体的には、第1図は、SSMが適用されない場合のPDMによるQ値を示し、第2図は、SSMが適用される場合のPDMによるQ値を示す。
【0093】
前記のPDMを用いて面積を求めることができるが、曲線の形状を見ると、DODが大きい場合、図10の第1図のように面積の計算誤差が大きくなる。いうまでもなく、実際にバッテリの使用区間がほとんどの場合に20~80%であることに鑑みると、曲線のほぼ一定の区域であるため大きな誤差は発生しないが、SOCの全体の区域(0~100%)を考慮するのであれば、この方法は、非実用的な方法になる虞がある。従って、図10の第2図のように三つの区域に分割する方法(SSM)を提案する。表2は、実際の曲線の面積とPDMにより計算された面積の誤差率を示すものである。SSMを適用しなかった場合、DODが大きな区間においては、誤差率が格段に増加することを確認することができる。
【0094】
【表2】
【0095】
-アルゴリズム
図11は、バッテリ寿命を予測するためのアルゴリズムの擬似コードを概略的に示す。
【0096】
まず、Qir_mを決定するために、メーカーが提供した情報を用いるか、あるいはサンプル充放電サイクルを行ってQir_m情報を保存する。その後、電圧、電流、及び温度の情報がリアルタイムにて取得され、この情報が寿命を予測するために用いられる。温度情報は、異常な状況に対する緊急中止トリガーとして用いられる。
【0097】
このような情報を用いて、まず、充電状態であるか、あるいは、放電状態であるかを検査する。電流情報を調べてみるとき、電流の方向が変更されれば、これが充電または放電開始点の情報であり、よって、これをPCS及びPDSとして保存する。そして、充電及び放電のそれぞれが行われる間にSOC情報が検査される。充電または放電の開始時のSOCが1%以上変わると、当該個所が変曲点として決定され、変曲点における電圧情報がPCKまたはPDKに保存される。このような変化量は、単なる例示に過ぎず、本発明を限定するものではないことに留意されたい。
【0098】
このような方式により四つの個所が見出され、三つのセクションにおいて同じ動作が行われ、これが一つのサイクルの非可逆的エネルギーに対応する値を計算するために用いられ、寿命が推定される。
【0099】
-寿命サイクルの予測結果
図12は、放電電流がリアルタイムにて変わる場合、時間に伴う電圧の変化とSOCに応じた電圧の変化とを比較した図である。図12の(a)は、放電電流の大きさが時間間隔の間に0.5C、0.25C、及び1Cに変わるときに電圧状態が変わることを示す。しかしながら、図12の(b)において、時間間隔ごとに放電電流が変わるとはいえ、SOCに対する電圧変化グラフは、時間の変化とは無関係に一定のサイクル曲線を示す。これから、ユーザの充放電パターンが変更されることとは無関係に、電圧/SOC曲線を用いて寿命を予測すれば、非常に効率的であることが分かる。
【0100】
表3は、バッテリ充放電電流の大きさとDODを変更しながら本発明により提案された方法を適用して予測した寿命と、実際の残余容量とを比較・分析した結果を示す。
【0101】
【表3】
【0102】
結果的に、DODに応じて推定の正確度にやや違いがあるということが分かる。正確度は、0~100%の範囲においてはやや低く、DODが小さくなればなるほど、推定誤差も小さく、かつ、正確度が高かった。100%DODセクションと50%DODセクションにおける推定された正確度の偏差は、最大で2.7%に見合う分だけ異なるが、充放電電流の大きさに応じて約1%の偏差が生じることが分かる。
【0103】
-まとめ
図13は、予測寿命と実際の寿命との比較曲線である。
【0104】
図13は、表3のデータをグラフで表わしたものである。残余寿命が充放電CレートとDODに大きく依存するということが分かる。予測された寿命の結果が実際の残余容量に基づいて比較され、予測された寿命を分析して平均93%以上の正確度を得た。高いDODセクションにおいては、正確度がやや低下し、実際の使用セクションとして期待される20~80%セクション及び30~80%セクションにおいては、正確度が94%であった。
【0105】
このような結果に照らしてみたとき、何よりもDODとCレートが寿命において重要であるということが分かる。この明細書において、非可逆的熱容量を計算するための曲線に対する分析結果から明らかなように、Q値の面積がDODとCレートに応じて明らかに異なってくるということが分かる。
【0106】
結果的に、DODが大きくなればなるほど、Cレートが大きくなり、Q値もまた大きくなるが、これは、寿命が短くなるということを意味する。むしろ、同じ条件下において(同じDOD及びCレート)、非可逆的熱容量は、バッテリの老化状態に応じてやや増えるが、老化速度は、DODまたはCレートの効果よりは相対的に遅い。
【0107】
実験の結果、温度は、あまり結果に影響を及ぼさないということが分かる。温度が好適な動作範囲から外れると、計算された非可逆的エネルギーが増加し、これは、寿命が短くなるということを意味する。これと同様に、バッテリの老化が進むにつれて、計算される非可逆的エネルギーは増加する。本発明においては、平均期待寿命が90%以上の正確度で提供されるが、その正確度を増加させるためには、Qir_m値が温度と老化状態を反映せねばならない。
【0108】
本発明により、広く用いられるリチウムイオンバッテリの寿命を予測する装置がエントロピー法則に従い提案され、その結果が検証された。このような装置は、物理的であるとはいえ、直観的であり、相対的に容易に実現することができるというメリットを有する。前述したように、温度と時間の関数を伴う寿命の推定と解析方法には誤りが多い。事実のところ、バッテリ状態をリアルタイムにて取得し且つ処理する過程において、温度よりも反応性が高い電圧と電流の情報から寿命を推定することがさらに効果的である。電圧は、内部状態、温度、バッテリの環境因子を反映して、分析が容易になる。
【0109】
また、時間に伴って変わる成分を用いることなく、SOC情報のために電圧を用いることにより、使用パターンに応じて変わる時間成分への影響が取り除かれる。そして、本発明に係る実験の結果、92%よりも高い正確度を有するので、本発明が有効であり、しかも、正確であるということが証明された。
【0110】
本発明は、図示の実施形態を参考として説明されたが、これは単なる例示的なものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから様々な変形が行え、かつ、均等な他の実施形態が採用可能であるという点が理解できる筈である。
【0111】
また、本発明に係る装置は、コンピューターにて読み取り可能な記録媒体にコンピューターにて読み取り可能なコードとして実現することが可能である。コンピューターにて読み取り可能な記録媒体は、コンピューターシステムにより読み込まれ得るデータが格納されるあらゆる種類の記録装置を網羅する。コンピューターにて読み取り可能な記録媒体の例としては、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ格納装置などが挙げられ、また、キャリアウェーブ(例えば、インターネットを介した伝送)の形態で実現されるものも含む。なお、コンピューターにて読み取り可能な記録媒体は、ネットワークで結ばれた分散コンピューターシステムにより分散方式により起動され得るコンピューターにて読み取り可能なコードを格納することができる。
【0112】
この明細書において用いられる用語において、単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含むものと理解されなければならず、「備える」または「含む」などの用語は、説示された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものに過ぎず、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解すべきである。そして、明細書に記載されている「…部」、「…器」、「モジュール」、「ブロック」などの用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアやソフトウェアまたはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにより実現可能である。
【0113】
よって、この実施形態及びこの明細書に添付されている図面は、本発明に含まれる技術的思想の一部を明確に表わしているものにすぎず、本発明の明細書及び図面に含まれている技術的な思想の範囲内において当業者が容易に類推可能な変形例と具体的な実施形態は、いずれも本発明の権利範囲に含まれるものであることが自明であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、バッテリ管理技術に適用可能である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】