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特表2022-547754車両、特に自動車のコックピットのための導電性多層パネル
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  • 特表-車両、特に自動車のコックピットのための導電性多層パネル 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】車両、特に自動車のコックピットのための導電性多層パネル
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20221109BHJP
   B60K 37/04 20060101ALI20221109BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
B60K37/00 G
B60K37/00 A
B60K37/04
B60R16/02 620B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541664
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2020058458
(87)【国際公開番号】W WO2021048805
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019000016313
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519234327
【氏名又は名称】マルトゥール・イタリー・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100210398
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ユステュンベルク,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スカルトリト,ルチアーノ
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA03
3D344AA12
3D344AA17
3D344AB01
3D344AC04
3D344AC13
3D344AD13
(57)【要約】
本発明は、車両、特に自動車のコックピットのためであることを意図されて導電性を有するように作られる導電性多層パネルに関し、上記コックピットの内部に多数の電気デバイスおよび電子デバイスを装着するための現代の要求を満たす。本発明によるパネルが、互いに重ねられて堅固に結合される実質的に等しい形状およびサイズの複数の層から構成される多層構造を有し、上記多層構造の層のうちの1つの層がフレキシブル印刷回路基板(10)から構成される。上記フレキシブル印刷回路基板が、実質的に上記パネルの表面全体にわたって延在するかまたは少なくとも前記パネルの実質的な部分にわたって延在し、ダッシュボードに付随の電気デバイスおよび電子デバイスを後で装着することになるところの位置に配置される電気コネクタ(18)を装備する。有利には、本発明は、車両のコックピットのためのダッシュボードに付随の電気デバイスおよび電子デバイスのワイヤ式の接続部を完全に排除するのを可能にし、これには、これらの電気デバイスおよび電子デバイスに対しての電気接続部を作るとき、さらにはその後の保守管理作業および/または修理作業の場合に大幅に単純化されることを伴う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に自動車のコックピットのための導電性多層パネルであって、
前記パネルが、互いに重ねられて堅固に結合される実質的に等しい形状およびサイズの複数の層から構成される多層構造(10、20、30、40)を有し、
前記多層構造の前記層のうちの1つの層がフレキシブル印刷回路基板(10)から構成され、
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が、実質的に前記パネルの表面全体にわたって延在するかまたは少なくとも前記パネルの実質的な部分にわたって延在する、
ことを特徴とする、導電性多層パネル。
【請求項2】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が、前記コックピットから最も離れた前記多層構造の端の層を構成する、
請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が、前記パネルに付随の、電気デバイスおよび電子デバイスを受けることを意図されてそれぞれの電気コネクタを有する着座部分にある空洞(12)を有する、
請求項1に記載のパネル。
【請求項4】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が、前記空洞(12)の周縁まで延在する導電性トラック(16)を装備する、
請求項3に記載のパネル。
【請求項5】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が、前記パネルに付随の前記電気デバイスおよび前記電子デバイスの前記電気コネクタに直接接続されるように適合される、前記空洞(12)の周縁に配置される電気コネクタ(18)を装備する、
請求項3または4に記載のパネル。
【請求項6】
前記電気コネクタ(18)が前記フレキシブル印刷回路基板(10)に一体化される剛体コネクタとして作られる、
請求項5に記載のパネル。
【請求項7】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が制御信号の伝達および電力供給源の電力供給の両方を保証する、
請求項1に記載のパネル。
【請求項8】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が導電性トラック(16)を装備し、
前記導電性トラック(16)が制御信号の伝達および電力供給源の電力供給の両方のために使用される、
請求項7に記載のパネル。
【請求項9】
前記多層構造が支持層(20)を備え、前
記支持層(20)が前記フレキシブル印刷回路基板に直接隣接し、前記フレキシブル印刷回路基板(10)のための機械的な支持体として機能する、
請求項1~8のいずれか一項に記載のパネル。
【請求項10】
前記多層構造が外側カバー層(30)をさらに備える、
請求項9に記載のパネル。
【請求項11】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)および前記外側カバー層(30)が前記多層構造の反対側の端の層であり、
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が前記コックピットから最も離れた前記多層構造の前記端の層を構成し、
前記外側カバー層(30)が前記コックピットの最も近くにある前記多層構造の前記端の層を構成する、
請求項8に記載のパネル。
【請求項12】
1つまたは複数の中間層(40)が前記支持層(20)と前記外側カバー層(30)との間に挟まれる、
請求項10に記載のパネル。
【請求項13】
前記支持層(20)および前記1つまたは複数の中間層(40)が、存在する場合、前記電気コネクタ(18)を通過させるための貫通孔(22)を装備する、
請求項9または12に記載のパネル。
【請求項14】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)が、ポリマー材料で作られる絶縁層(10a、10c、10e、10g、10i、10k)と交互になっている、金属材料で作られる複数の導電性層(10b、10d、10f、10h、10j)を備える多層構造を有する、 請求項1に記載のパネル。
【請求項15】
前記フレキシブル印刷回路基板の前記多層構造の前記端の層(10a、10k)が絶縁層である、
請求項14に記載のパネル。
【請求項16】
前記フレキシブル印刷回路基板の前記多層構造が、
電力供給を意図される、電気伝導性トラックを装備する1つまたは複数の導電性層(10d)と、
制御信号伝達を意図される、電気伝導性トラックを装備する1つまたは複数の導電性層(10h)と、
を備える、請求項14に記載のパネル。
【請求項17】
電力供給を意図される、電気伝導性トラックを装備する前記1つまたは複数の導電性層(10d)、および、制御信号伝達を意図される、電気伝導性トラックを装備する前記1つまたは複数の導電性層(10h)が、互いから分離され、別の金属層(10b、10f、10j)によって遮蔽される、
請求項16に記載のパネル。
【請求項18】
前記フレキシブル印刷回路基板(10)の前記多層構造が、前記車両の前記コックピットから最も離れた端部から、
構造的特徴をも有する第1の絶縁ポリマー層(10a)と、
遮蔽機能を有する第1の金属層(10b)と、
第2の絶縁ポリマー層(10c)と、
電力供給のための電気伝導性トラックを有する1つまたは複数の金属層(10d)と、
第3の絶縁ポリマー層(10e)と、
遮蔽機能を有する第2の金属層(10f)と、
第4の絶縁ポリマー層(10g)と、
制御信号伝達のための電気伝導性トラックを有する1つまたは複数の金属層(10h)と、
第5の絶縁ポリマー層(10i)と、
遮蔽機能を有する第3の金属層(10j)と、
第6の絶縁ポリマー層(10k)と
を備える、請求項14に記載のパネル。
【請求項19】
前記導電性多層パネルが、自動車のコックピットを覆うための、また好適には自動車のコックピットのダッシュボードを覆うためのパネルである、
請求項1~18のいずれか一項に記載のパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両コックピット、特に自動車コックピットのための導電性多層パネルに関する。
より詳細には、本発明は、車両コックピット、特に自動車コックピットのための導電性多層カバーパネルに関する。
【0002】
詳細には、本発明は、自動車のコックピットのための、多数の電気デバイスおよび電子デバイスを上記コックピットの内部に装着するための現代の要求を満たす導電性多層カバーパネルに関する。
【0003】
本発明は、限定しないが、車両、特に自動車のための導電性ダッシュボードの製造において特定の用途を見出す。
【背景技術】
【0004】
自動車のコックピットフロントパネルは、一般に、車両のフロントガラスの下に位置するブラインド(blind)の仕切りとして定義され、このブラインドの仕切りがボンネットおよびエンジン室に対してのコックピットの前方における境界を画定する。
【0005】
次に、航海由来の用語を使用すると、このようなフロントパネルの上側部分は「ダッシュボード」(イタリア語では「plancia」)と一般に称される。その理由は、その中に乗り物の計器制御パネルが存在するからである。
【0006】
近年では、実際には、自動車のダッシュボードに付随する電気デバイスおよび電子デバイスの数が増加しており、また、車両計器の制御パネル、車両の動作に関連する多くの他のデバイスに加えて、乗員の安全および快適さも加味されている。
【0007】
非包括的な例として、現在すべての車両がダッシュボードの上に配置される「娯楽情報番組」システムを装備していること、またはダッシュボードの上にやはり配置されるナビゲーションシステムを装備する車両が増えていることが分かるであろう。
【0008】
従来技術によると、車両コックピットのためのダッシュボードに付随する電気接続部または電子接続部(例えば、それぞれの電力供給源に対しての接続部、またはそれぞれの制御ユニットに対しての接続部)が、例えば円形断面を有する銅線を使用することによる、ワイヤ式の接続部によって作られる。
【0009】
ドアカバーパネルなどの、自動車のコックピット内の他のカバーパネルも、それらに付随する電気デバイスおよび電子デバイスを有する可能性がある。
このような事例でも、上記カバーパネルに付随する電気デバイスおよび電子デバイスの電気接続部が、例えば円形断面を有する銅線を使用することによる、ワイヤ式の接続部によって作られる。
【0010】
しかし、この解決策は顕著な欠点を有する。
実際には、ワイヤ式の接続部が存在するということは、自動車の製造の段階で、これらのワイヤ式の接続部の製造および組み立てにおいて熟練工を活用する必要があることを暗に意味する。
【0011】
見込まれる故障の修理および保守管理の仕事の場合においてもこのような熟練工に対しての需要は存在する。
また、ダッシュボードまたは他のカバーパネルに付随する電気デバイスおよび電子デバイスの数が増加すると、上で言及した電気接続部を実現するための介在物の複雑さも劇的に増す。
【0012】
結果として、非常に優れた熟練工を活用したとしても、製造時間が増大し、ヒューマンエラーのリスクも無視できなくなる。
加えて、車両コックピット内のダッシュボードまたは他のカバーパネルに付随する電気デバイスおよび電子デバイスの数が増加すると、ワイヤ式の接続部のために必要となる銅線の合計重量も大幅に増大する。
【0013】
このように重量が増大することは小さい不都合とはみなされない。その理由は、車両部品全体の合計重量を抑制することが絶えず行われ続ける取り組みだからである。
さらに、銅線の量が増大するとコストも大幅に増大することになり、銅線自体のコストおよび銅線を接続するのに必要となるアクセサリーのコストが増大することになる。
【0014】
電力供給のための電気接続部の場合、ワイヤ式の接続部を使用することに関連する別の重大な欠点としてワイヤの温度が上昇するリスクがあるということがあり、これに伴い、ワイヤを通過することができる電流の最大値が制限されることになる。過剰な電流がこれらのワイヤを通過すると、温度が上昇し、それに加えて、電気抵抗も増大し、さらに電気抵抗が増大することで消散するエネルギーが増大することも誘発され、結果として温度が上昇する。
【0015】
したがって、車両コックピット内で重大な故障が発生する可能性があるというリスクがあり、結果として事故が起こる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】GB2346352
【特許文献2】EP1956874
【特許文献3】米国特許第6669273号
【特許文献4】GB1175682
【特許文献5】米国特許出願第2009/058118号
【特許文献6】米国特許出願第2004/080459号
【特許文献7】特公2-128944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の主要な目的は、上述した従来技術の制限を解消するのを可能にする、自動車のコックピットのための導電性多層パネルを提供することである。
具体的には、本発明の目的は、付随の電気デバイスおよび電子デバイスの装着および接続を単純化するのを可能にする自動車のコックピットのための導電性多層パネルを提供することであり、ここではその結果として、これらの接続部のために必要となる材料の重量が低減され、これらの接続部のために必要となる材料のコストが低減され、製造時間が短縮される。
【0018】
また、本発明の目的は、同時にヒューマンエラーのリスクを排除しながら(または、少なくとも大幅に低減しながら)、このような電気デバイスおよび電子デバイスの電気接続部を製造、保守管理、および修理するための非常に優れた熟練工の必要性を回避することである。
【0019】
本発明の別の目的は、上記電気デバイスおよび電子デバイスのワイヤ式の接続部の過熱に関連する故障または事故のリスクを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらのおよび他の目的が、添付の特許請求の範囲で請求される導電性多層パネルを用いて達成される。
本発明によると、車両、特に自動車のコックピットのための導電性多層パネルが多層構造を有し、上記多層構造の層のうちの1つの層がフレキシブル印刷回路基板つまりFPCB(「Flexible Printed Circuit Board」)から構成される。
【0021】
本文脈では、「多層構造」が、例えば、機械的な結合、接着、または溶接により、互いに重ねられて堅固に結合される等しい形状およびサイズの複数の層によって作られる構造を意味する。
【0022】
この点に関して、現況技術では、具体的には自動車のコックピットのためのダッシュボードに組み合わされるような、車の分野のためのフレキシブル印刷回路基板の用途に関して複数の例が存在することに留意されたい。例えば、文献GB2346352およびEP1956874を参照されたい。
【0023】
文献米国特許第6669273号が、コックピットの実質的な部分にわたって延在するクロスカービームを有する車両のコックピットのためのダッシュボード組立体を説明している。上記クロスカービームが、電気デバイスおよび/または電子デバイスのための通常は平坦である複数の設置部位を画定し、さらに少なくとも1つの凹部を画定し、可能性としてフレキシブル印刷回路基板である印刷回路基板が上記凹部のところに設置され、取り外し可能なカバー要素が上記印刷回路基板の上に配置される。
【0024】
まず、米国特許第6669273号で説明されるダッシュボード組立体では、印刷回路基板がクロスカービームに付され、車両のコックピットのためのダッシュボードに付されない。次いで、この印刷回路基板が上記クロスカービームを基準として制限される延在範囲を有し、それにより、上記印刷回路基板と設置部位に配置される電気デバイスおよび電子デバイスとの間で平坦なワイヤ類(フラットワイヤバス)が必要となる。
【0025】
文献GB1175682が、多数の電気デバイスおよび電子デバイスを担持する可動のフロントパネルと、固定のリアパネルと、上記リアパネルと上記フロントパネルとの間に配置されるフレキシブル印刷回路基板とを備える車両ダッシュボード構造を説明している。このフレキシブル印刷回路基板が着座部分を有し、ここに、車両の電気ワイヤネットワークに対しての接続のための対応する接続部が挿入され得る。
【0026】
文献GB1175682が本文脈の意味での多層構造を一切説明してないことは明らかである。この事例ではまた、フレキシブル印刷回路基板が存在することで、ダッシュボードの電気デバイスおよび電子デバイスに対してのワイヤ式の接続部を排除することが可能になるというわけではない。
【0027】
文献米国特許出願第2009/058118号が、インターフェースを付すところである、車両のコックピットのためのパネルを説明している。このインターフェースが、照明手段を装備する印刷回路基板を使用して背面から照らされ得る。
【0028】
また、この事例では、印刷回路基板がパネルの実質的な部分にわたって延在しないが、印刷回路基板が、上記パネルの一部分に付されるサイズを限定される別個のインターフェースの一部分である。
【0029】
文献米国特許出願第2004/080459号が、基板と、上記基板に付される電気回路/アンテナの層と、電解回路/アンテナの上記層を覆うカバー層と、を有する、車両のコックピットのためのパネルを説明している。回路/アンテナの上記層が、基板の中に設けられる対応する開口部の中に嵌め込まれるコネクタを装備する。電解回路/アンテナ層のためのフレキシブル印刷回路基板の使用がこの文献で言及されている。
【0030】
したがって、文献米国特許出願第2004/080459号は、本文脈の意味での多層構造を説明していない。この事例ではやはり、フレキシブル印刷回路基板が下方の基板を基準として制限される延在範囲を有する。
【0031】
特公2-128944が車両のパッセンジャーコンパートメントのための計器類ダッシュボードを説明しており、ここでは、フレキシブル印刷回路基板および2つの剛体のバッキングプレートが拡大マトリックスの中に埋設され、上記フレキシブル印刷回路基板が2つの剛体のバッキングプレートの間に挟まれる。したがって、文献特公2-128944は、本文脈の意味での多層構造を一切説明していない。
【0032】
上記から、概して、既知の用途が、小さいサイズを有するフレキシブル印刷回路基板の特徴的な用途(point application)にも関連していることは明らかであろう。
【0033】
しかし、層のうちの1つの層を、大きい面積を有するフレキシブル印刷回路基板から構成するような、自動車のコックピットのための、多層構造を有する導電性多層パネルを作ることは、現況技術によって説明されたり提案されたりしていない。
【0034】
代わりに、本発明によると、多層構造が互いに重ねられて堅固に結合される等しい形状およびサイズの複数の層によって作られ、結果として、上で言及した多層構造の層のうちの1つの層であるフレキシブル印刷回路基板が、実質的に導電性多層パネルの表面全体にわたって延在するかまたは少なくともその実質的な部分にわたって延在する。
【0035】
具体的には、フレキシブル印刷回路基板が、電気デバイスおよび電子デバイスへの制御信号伝達のためのおよび電力源供給のための導電性トラックを提供することが必要であるような領域を含むパネルの実質的な部分にわたって延在する。
【0036】
好適には、本発明によるパネルの多層構造が、フレキシブル印刷回路基板を支持するための少なくとも1つの支持層と、例えば導電性多層パネルに見た目の良い所望の外観を与えるように適合される可能性としての外側カバー層(特には、カバーパネルである場合)とをさらに備える。
【0037】
本発明の好適な実施形態によると、フレキシブル印刷回路基板が多層構造の裏側層を構成し、つまり外側カバー層の反対側にある上記多層構造の端の層を構成する。
この特定の実施形態は上述した既知の解決策とは大きく異なり、ここでは、印刷回路基板が支持構造とカバー要素との間に挟まれる。
【0038】
フレキシブル印刷回路基板が車両のコックピットの内部空間から最も離れた多層構造の端の層であることにより、事故の場合においてエアバッグの正確な動作に干渉するリスクを有さず、具体的には、エアバッグハウジングのドアを正確に開けることに干渉するリスクを有さない。
【0039】
さらに、フレキシブル印刷回路基板が多層構造の端の層であることにより、上記フレキシブル印刷回路基板の保守管理、修理、および交換のためのオペレーションが非常に容易になり、多層構造の残りの層に影響することがない。代わりに、フレキシブル印刷回路基板が多層構造の中間層である場合、この印刷回路基板に故障または異常が発生することがパネル全体を交換する必要があること意味することになる。
【0040】
本発明によると、上記フレキシブル印刷回路基板が、ダッシュボードに付随の電気デバイスおよび電子デバイスを後で装着することを必要とするような位置において電気コネクタを装備する。
【0041】
上記電気コネクタが、上記電気デバイスおよび電子デバイスのそれぞれのコネクタに直接結合されるのに適する。
本発明の好適な実施形態によると、上記電気コネクタが小さいサイズを有する剛体要素として作られる。
【0042】
本発明の上記好適な実施形態によると、上記フレキシブル印刷回路基板が、そのコネクタと共に、制御信号伝達および電力供給の両方のために使用される。
結果として、本発明は、ダッシュボードに付随の電気デバイスおよび電子デバイスのワイヤ式の接続部を完全に排除するのを可能にする。
【0043】
これには、これらの電気デバイスおよび電子デバイスに対しての電気接続部を作るとき、さらにはその後の保守管理作業および/または修理作業の場合に大幅に単純化されることが伴う。
【0044】
さらに、電気デバイスおよび電子デバイスの電気接続部のための構造の全体重量も大幅に低減され、実質的に、フレキシブル印刷回路基板の重量と等しくなる。
加えて、有利には、上記フレキシブル印刷回路基板の重量が、このフレキシブル印刷回路基板に接続される電気デバイスおよび電子デバイスの数と無関係であり、それにより、上記電気デバイスおよび電子デバイスの数の増加の場合でも実質的に変化しない。
【0045】
同様に、電気デバイスおよび電子デバイスの電気接続部のための構造の全体のコストも大幅に低減され、実質的に、フレキシブル印刷回路基板のコストと等しくなる。
この事例でも、上記フレキシブル印刷回路基板のコストが、このフレキシブル印刷回路基板に接続される電気デバイスおよび電子デバイスの数と無関係であり、それにより、上記電気デバイスおよび電子デバイスの数の増加の場合でも実質的に変化しない。
【0046】
さらに、本発明による導電性多層パネルの中でフレキシブル印刷回路基板を使用することにより、フレキシブル印刷回路基板の導電性トラックのS/V比が高いことも理由として、熱交換を最適化して危険性のある温度上昇を回避することが可能となる。
【0047】
さらに、本発明の好適な実施形態では、フレキシブル印刷回路基板が、交互の金属層および絶縁ポリマー層から構成される多層構造を有する。
このフレキシブル印刷回路基板が制御信号伝達および電力供給の両方のために使用される場合、フレキシブル印刷回路基板が、好適には、制御信号伝達のための専用の1つまたは複数の層と、電力供給のための専用の1つまたは複数の層とを有する。
【0048】
本発明は、非常に優れた熟練工を活用しない場合でも、製造時間を大幅に短縮することおよび同様にヒューマンエラーを大幅に低減することを可能にする。
より概略的には、本発明は導電性多層パネルを得るためのプロセスの質を全体的に改善することにつながる。その理由は、自動化されるプロセスはヒューマンエラーが起こりにくく、より高速であり、生み出す廃棄物を少量にするのを可能にし、それにより、ワイヤ式の接続部を有する既知のパネルの製造プロセスと比較して、本発明による導電性多層パネルの製造プロセスをより安価にすることおよびより環境フレンドリーにすることの両方が達成される。
【0049】
加えて、本発明による導電性多層パネルを得るのに使用され得る自動化されるプロセスにより、より高品質の製品を得ることが可能となり、それにより、ワイヤを手動で組み付けるような既知の解決策と比較して、制御信号伝達および電力供給の信頼性が向上するのを見込むことが可能となる。
【0050】
本発明による導電性多層パネルを作るための方法が、本質的に、以下のステップを含むことができる:
- フレキシブル印刷回路基板自体が多層構造を有する場合、例えばレーザー溶接により、上記印刷回路基板の層を組み立てるステップ、
- 好適には車両のコックピットの内部空間から最も離れた上記多層構造の端の層として、上記フレキシブル印刷回路基板を多層構造の残りの層に結合するステップ。
【0051】
上記結合ステップが、フレキシブル印刷回路基板を形成する材料にダメージを与えないようにするために、低温で行われる。
本発明の限定的ではない好適な実施形態では、車両、特に自動車のコックピットのための導電性多層パネルが、自動車のコックピットのための、また好適には自動車のコックピットのためのダッシュボードのための、カバーパネルである。
【0052】
添付図を参照する、非限定の例として与えられる本発明の好適な実施形態の以下の説明から別の特徴および利点がより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1a】異なる反対側の視点から見る、本発明に従って作られる、自動車のコックピットのためのダッシュボードのフレキシブル印刷回路基板を示す図である。
図1b】異なる反対側の視点から見る、本発明に従って作られる、自動車のコックピットのためのダッシュボードのフレキシブル印刷回路基板を示す図である。
図1c図1aの細部を示す拡大図である。
図2】本発明に従って作られる、自動車のコックピットのためのダッシュボードの多層構造を示す概略図である。
図3】本発明に従って作られる、自動車のコックピットのためのダッシュボードの多層構造を示す概略図である。
図4】本発明の好適な実施形態によるフレキシブル印刷回路基板の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明の好適な実施形態の以下の説明では、特には、自動車のコックピットのための導電性ダッシュボードを作ることに対しての本発明の適用を参照する。
しかし、本出願は限定的な意味で理解されるべきではなく、本発明は、自動車のドアのためのカバーパネルなどの、車両、特に自動車のコックピットのための他のカバーパネルにも適用され得る。
【0055】
より概略的には、本発明が、制御信号および電力供給信号をそこに送信しなければならないところである電気デバイスおよび電子デバイスを上に装着される、車両、特に自動車のコックピットの中にある他のパネルにも適用され得る。
【0056】
本発明の教示に従って作られるコックピットダッシュボードが多層構造を有し、この多層構造内で、層のうちの1つの層がフレキシブル印刷回路基板から構成される。上記フレキシブル印刷回路基板10が図1aおよび1bに示される。
【0057】
上記図から分かるように、本発明によると、多層構造という用語が、互いに重ねられて堅固に結合される等しい形状およびサイズの複数の層によって作られる構造を意味し、その結果、フレキシブル印刷回路基板10が、実質的にダッシュボードの表面全体にわたって延在するようにまたはその実質的な部分にわたって延在するように、およびダッシュボードの外形に従うように、サイズ決定および成形される。
【0058】
多層構造の層が、例えば、機械的な結合、接着、または溶接(特には、レーザー溶接)により、互いに結合され得る。
具体的には、上記フレキシブル印刷回路基板10が、ダッシュボードに付随の電気デバイスおよび電子デバイスに対応することを意図される電気デバイスおよび電子デバイスを受けることを意図される着座部分のところに空洞12を有する。
【0059】
概略的には、上記印刷回路基板10が非導電性材料で作られるベースボディ14を有することができ、ベースボディ14の上に導電性トラック16が刻まれる(図1cの拡大詳細図でより良好に見ることができる)。
【0060】
非導電性ベースボディ14が、例えば、ポリイミドまたはポリエステルなどの、材料で作られ得る。
導電性トラック16が例えば銅で作られ得る。
【0061】
フレキシブル印刷回路基板10が、フォトリソグラフィもしくはシルクスクリーン印刷または電気化学的な写真製版テクニック(electrochemical photoengraving technique)あるいは当業者に利用され得る任意のテクニックを利用することにより、作られ得る。
【0062】
例えば、フレキシブル印刷回路基板10がフォトリソグラフィテクニックによって作られ得る。フォトリソグラフィテクニックは、非導電性支持体(例えば、ポリマー材料で作られる)の上に導電性材料(例えば、銅などの金属材料)を蒸着して次いで「フォトレジスト」を蒸着することを伴う。導電性トラックのための所望のパターンを得るために、UVレーザーを用いる「直接描画」テクニック、UVランプを用いる「シャドウマスク」などを含めた、よく知られている多様なテクニックが使用され得る。フォトリソグラフィテクニックでは、フレキシブル印刷回路基板を作ることが、「フォトレジスト」を現像するステップ、現像したフォトレジストを「エッチング」するステップ、所望の結果を得るまで残留「フォトレジスト」を「ストリップ」するステップを含む。
【0063】
フレキシブル印刷回路基板10が、実質的にダッシュボードの表面全体にわたって延在することにより、導電性トラックが各々の空洞12の周縁まで延在することがき、上記空洞の周縁のところに、空洞の中に収容される電気デバイスまたは電子デバイスの電気接続部のためのコネクタ18が設けられ得る。
【0064】
具体的には、異なる空洞12のところに設けられるコネクタ18が剛体コネクタであってよい。上記剛体コネクタが、好適には、フレキシブル印刷回路基板10に一体化される。
【0065】
したがって、本発明が有利にはワイヤ式の接続部の必要性を排除することが当業者には明らかとなろう。
有利には、ダッシュボードの構成および付随の電気デバイスおよび電子デバイスの配置構成が設計ステップ中に決定されると、コネクタ18がフレキシブル印刷回路基板10の上の所望の位置のところに配置されることになる。
【0066】
これにより、その後の組み立てオペレーションを大幅に単純化することが可能となり、その結果として製造時間が短縮される。
フレキシブル印刷回路基板10の導電性トラック16が、好適には、制御信号伝達および電力供給源の電力供給の両方のために使用される。具体的には、フレキシブル印刷回路基板10を使用することにより大電流を通過させることが可能となり、それによりジュール効果による温度上昇が低減され、それにより最大電流の閾値に関しての従来技術の制限を排除する。
【0067】
次に図2および3を参照すると、本発明によるダッシュボードの多層構造が概略的に示されている。概略的には、上記多層構造が、少なくとも(フレキシブル印刷回路基板10から構成される層に加えて)、フレキシブル印刷回路基板10に直接隣接して上記フレキシブル印刷回路基板10のための機械的な支持体として機能する支持層20と、ダッシュボードに見た目の良い所望の外観を与えるという機能を基本的に有する外側層30と備える。
【0068】
図2および3で見ることができるように、フレキシブル印刷回路基板10が本発明によるダッシュボードの多層構造の層の中での、多層構造の端の層を形成し、具体的には、車両のコックピットから最も離れておりかつボンネットおよびエンジン室の最も近くにある層を形成する。
【0069】
言い換えると、フレキシブル印刷回路基板10および外側層30がダッシュボードの多層構造の反対側の端の層である。
フレキシブル印刷回路基板10が車両のコックピットから最も離れた層であることから、保守管理、修理、および交換が非常に容易になる。
【0070】
加えて、本発明による多層パネルが車両のコックピットのためのダッシュボードを作るのに使用される場合、上記フレキシブル印刷回路基板10が、事故においてエアバッグの正確な機能に干渉するリスクを有さない。
【0071】
特定の用途に応じて、このフレキシブル印刷回路基板10と外側コーティング層30との間に(つまり、より正確には、フレキシブル印刷回路基板10に隣接する支持層20と外側コーティング層30との間に)、追加の中間層が配置されてもよい。
【0072】
支持層20、さらには中間層(存在する場合)が、コネクタを通過させるための、フレキシブル印刷回路基板10のコネクタ18の位置に従う適切な孔22を装備する。
非限定の例として、図2および3の実施形態では、支持層20と外部カバー層30との間に、ダッシュボードに柔らかい手触りを与えるように適合される発泡材料(発泡体)40の層が存在する。
【0073】
中間層の数および性質が特定の要求に従ってその都度変化し得ることが当業者には明らかとなろう。
フレキシブル印刷回路基板10が、その上に導電性トラック16を刻まれている非導電性材料で作られるベースボディ14の形態として作られ得るが(上述したように、ならびに図1aおよび1bに示されるように)、本発明の好適な実施形態によると、フレキシブル印刷回路基板10が、交互の絶縁層および導電性層によって形成される多層構造を有する。
【0074】
フレキシブル印刷回路基板10のこの多層構造が図4に概略的に示される。
概略的には、上記フレキシブル印刷回路基板10が、ポリマー材料(例えば、ポリイミド)で作られる絶縁層10a、10c、10e、10g、10i、10kと交互になっている、金属材料(例えば、銅、アルミニウム)で作られる複数の導電性層10b、10d、10f、10h、10jを有する。
【0075】
上記多層構造の端の層10a、10kが好適には絶縁層である。
上記層10a~10kが別個に作られ得、その後で、例えば電子回路の完全な機能を保証することができるレーザー溶接プロセスにより、組み立てられ得、それにより単一のボディを形成することができる。
【0076】
具体的には、図4に示される実施形態で、フレキシブル印刷回路基板の多層構造が、電力供給の専用の、電気伝導性トラックを装備する1つまたは複数の導電性層10dと、制御信号伝達の専用の、電気伝導性トラックを装備する1つまたは複数の導電性層10hとを有する。
【0077】
これらの2つの層または層のグループが互いに分離され、電磁干渉の問題を回避するために追加の金属層10b、10f、10jによって遮蔽される。
概略的には、上記フレキシブル印刷回路基板10の多層構造が、車両のコックピットから最も離れた端部から、
- 構造的特徴をも有する第1の絶縁ポリマー層10aと、
- 遮蔽機能を有する第1の金属層10bと、
- 第2の絶縁ポリマー層10cと、
- 電力供給のための電気伝導性トラックを有する1つまたは複数の金属層10dと、
- 第3の絶縁ポリマー層10eと、
- 遮蔽機能を有する第2の金属層10fと、
- 第4の絶縁ポリマー層10gと、
- 制御信号伝達のための電気伝導性トラックを有する1つまたは複数の金属層10hと、
- 第5の絶縁ポリマー層10iと、
- 遮蔽機能を有する第3の金属層10jと、
- 第6の絶縁ポリマー層10kと
を備える。
【0078】
本発明が上述の実施形態のみに限定されないこと、ならびに添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内で多数の変更形態および修正形態が可能であることが当業者には明らかとなろう。
【0079】
具体的には、上述の実施形態では自動車のコックピットのためのダッシュボードを参照してきたが、本出願は限定的な意味で理解されるべきではなく、本発明は、車両のコックピットのための他のパネルにまで、また具体的には、電気デバイスおよび電子デバイスを付随させているかまたは付随させることができる車両のコックピットのためのあらゆるパネルにまで拡大適用され得る。
【符号の説明】
【0080】
10 多層構造、フレキシブル印刷回路基板
10a 絶縁層
10b 導電性層
10c 絶縁層
10d 導電性層
10e 絶縁層
10f 導電性層
10g 絶縁層
10h 導電性層
10i 絶縁層
10j 導電性層
10k 絶縁層
12 空洞
16 導電性トラック
18 電気コネクタ
20 多層構造、支持層
22 貫通孔
30 多層構造、外側カバー層
40 多層構造、中間層
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
【国際調査報告】