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特表2022-547756香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液
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  • 特表-香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液 図1
  • 特表-香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液 図2
  • 特表-香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221109BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/85
A61Q13/00 102
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547763
(86)(22)【出願日】2020-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 KR2020014882
(87)【国際公開番号】W WO2022034970
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0100557
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520462034
【氏名又は名称】バイオジェニックス, インク.
【氏名又は名称原語表記】BIOGENICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】シン チャンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】オ ジェソク
(72)【発明者】
【氏名】リン ソルビン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ユジョン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD261
4C083AD262
4C083BB41
4C083CC01
4C083DD14
4C083EE07
4C083FF05
4C083KK03
(57)【要約】
本発明は、香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その製造方法により製造された香油を含有するマイクロカプセル、およびそれを含む分散液に関し、前記香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、大量製造時にも凝集が抑制され、独立した1次粒子の分布が増加し、均一な粒子形態、優れた表面特性を有し、高い降伏応力を有するため、外部圧両による変形回復能力に優れ、崩壊が抑制され、香油の安定した担持が可能な、香油含有マイクロカプセルを提供する。また、香油の長時間の優れた発香持続性および香油に対する放出制御特性を有する、香油含有マイクロカプセルおよびそれを含む分散液を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を製造するステップと、
前記溶液を分散安定剤を含む水溶液に投入して混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液を乳化して、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造するステップと、
前記乳化液を下記式1を満たす条件で撹拌して前記第1有機溶媒を除去するステップと、
を含む、香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
(前記式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。)
【請求項2】
前記香油の分配係数(partition coefficient、logP)は3超過である、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記第1有機溶媒の蒸発温度(T)は、常圧での第1有機溶媒の沸点(T)よりも低い値を有する、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記分散安定剤は、水溶性高分子である、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記溶液は第2有機溶媒をさらに含み、前記第2有機溶媒は第1有機溶媒よりも沸点が高い、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記第2有機溶媒は、第1有機溶媒の重量基準に20重量%以下で含まれる、請求項5に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記マイクロカプセル表面の生分解性高分子は、繰り返し単位中にエーテル基またはエステル基を含み、前記香油と水との界面張力が前記生分解性高分子と水との界面張力よりも大きい、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記分散相の体積分率は30~50%である、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記第1有機溶媒を除去するステップは、減圧下で除去される、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
マイクロカプセルであって、
前記マイクロカプセルは、香油を含むコア、および生分解性高分子を含有するシェルを含み、
前記マイクロカプセルは、乾燥状態でフリーフロー性(free flowing)を有し、
前記香油に対して放出制御特性を有することを特徴とする、香油含有マイクロカプセル。
【請求項11】
前記生分解性高分子は、アルキル置換セルロース系高分子または乳酸系高分子である、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項12】
前記アルキル置換セルロース系高分子はエチルセルロース(EC)であり、前記乳酸系高分子はポリ乳酸(PLA)である、請求項11に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項13】
前記マイクロカプセルの平均直径は3~30μmである、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項14】
前記マイクロカプセルは、10mNで30秒間加圧時、80%以上のマイクロカプセルが内部に香油を含有する、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項15】
前記マイクロカプセルの乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)は、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも小さい、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項16】
前記シェルは、低分子量の乳酸系高分子をさらに含む、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項17】
請求項10に記載のマイクロカプセルを含み、前記マイクロカプセルは、水分散液中で、マイクロカプセルの総重量に対して、1次粒子が80重量%以上で存在する、香油含有マイクロカプセル分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル(Microcapsule)は、色剤、触媒、接着剤、香料、燃料、農薬、生体材料、農薬、医薬品、食品、化粧品、生活用品、洗浄剤などの多様な方面に広く用いられている。
【0003】
中でも、特に生体材料や医薬品、食品、化粧品、洗浄剤など(例えば、ヘア・コンディショナー、ボディソープ、柔軟剤など)に用いられる香油含有マイクロカプセルは、人体に無害でなければならず、さらにはカプセルが生分解される環境に優しい製品であることが求められている。
【0004】
しかしながら、既存の大半の方法は、香油を、界面活性高分子やナノ粒子を用いてエマルション液滴を形成した後、メラミン-ホルムアルデヒド、尿素、ウレタンなどの樹脂をエマルション芳香液滴の表面において縮重合してカプセル化している。このように製造された芳香カプセルは、芳香に対する担持力、担持効率には優れるものの、使用後にカプセルが分解されないため、環境的に問題となっている。
【0005】
このような問題を解決するために、生分解性を有するバイオ高分子(例えば、アラビアゴム、デンプン、セルロース、ゼラチンアルギネート、アルブミンなど)および変性バイオ高分子(例えば、CMC、HPMC、HPMC-ASなど)を用いて、香油を担持したマイクロカプセルを製造しようとする試みがあった。
【0006】
しかし、前記バイオ高分子は、上述したメラミン-ホルムアルデヒドなどの高分子に比べて軟質特性を有し、水あるいは香油により膨潤し得るため、マイクロカプセルの大量生産時に1次粒子が凝集するか、または圧縮のような外部の刺激によりマイクロカプセルが容易に崩壊し、芳香に対する担持力および担持安定性が非常に低下するという問題がある。
したがって、従来に比べて生分解性のバイオ高分子を用いても、優れた凝集安定性および香油の担持安定性を実現可能な製造方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生分解性のバイオ高分子を用いても、香油を安定的に担持することができ、外部の圧力による崩壊が抑制されて担持安定性が向上した、香油を含むマイクロカプセルの製造方法を提供することにある。また、前記香油を担持したマイクロカプセルの形状が均一であり、凝集が抑制されて個別的な1次粒子の分布が増加した、香油を含むマイクロカプセルの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記香油を含むマイクロカプセルの製造方法により製造されたマイクロカプセル、およびそれを含む分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を製造するステップと、前記溶液を分散安定剤を含む水溶液に投入して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を乳化して、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造するステップと、前記乳化液を下記式1を満たす条件で撹拌して前記第1有機溶媒を除去するステップと、を含む、香油を含むマイクロカプセルの製造方法を特徴とする。
【0010】
【0011】
(前記式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。)
【0012】
本発明の一態様として、前記香油の分配係数(partition coefficient、logP)は3超過である、香油を含んでもよい。
本発明の一態様として、前記第1有機溶媒の蒸発温度(T)は、常圧での第1有機溶媒の沸点(T)よりも低い値を有する、香油を含んでもよい。
【0013】
本発明の一態様として、前記分散安定剤は、水溶性高分子であってもよい。
本発明の一態様として、前記溶液は第2有機溶媒をさらに含み、前記第2有機溶媒は第1有機溶媒よりも沸点が高い、香油を含んでもよい。
本発明の一態様として、前記第2有機溶媒は、第1有機溶媒の重量基準に20重量%以下で含まれてもよい。
【0014】
本発明の一態様として、前記マイクロカプセル表面の生分解性高分子は、繰り返し単位中にエーテル基またはエステル基を含み、前記香油と水との界面張力が前記生分解性高分子と水との界面張力よりも大きくてもよい。
【0015】
本発明の一態様として、前記分散相の体積分率は30~50%である、香油を含んでもよい。
本発明の一態様として、前記第1有機溶媒を除去するステップは、減圧下で除去されてもよい。
【0016】
本発明の他の一態様は、マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルは、香油を含むコア、および生分解性高分子を含有するシェルを含み、前記マイクロカプセルは、乾燥状態でフリーフロー性(free flowing)を有し、前記香油に対して放出制御特性を有することを特徴とする、香油含有マイクロカプセルであることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様として、前記生分解性高分子は、アルキル置換セルロース系高分子または乳酸系高分子であってもよい。
本発明の一態様として、前記アルキル置換セルロース系高分子はエチルセルロース(EC)であり、前記乳酸系高分子はポリ乳酸(PLA)であってもよい。
【0018】
本発明の一態様として、前記マイクロカプセルの平均直径は3~30μmであってもよい。
本発明の一態様として、前記マイクロカプセルは、10mNで30秒間加圧時、80%以上のマイクロカプセルが内部に香油を含有してもよい。
【0019】
本発明の一態様として、前記マイクロカプセルの乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)は、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも小さくてもよい。
本発明の一態様として、前記シェルは、低分子量の乳酸系高分子をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明のまた他の一態様は、前記マイクロカプセルを含み、前記マイクロカプセルは、水分散液中で、マイクロカプセルの総重量に対して、1次粒子が80重量%以上で存在する、香油含有マイクロカプセル分散液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、大量製造時にも凝集が抑制され、独立した1次粒子の分布が増加した、香油含有マイクロカプセルを形成できるという長所がある。
【0022】
また、本発明に係る製造方法により製造された香油含有マイクロカプセルは、均一な形態、優れた表面特性を有し、高い降伏応力を有するため、外部圧力による形状の変形回復力に優れ、崩壊が抑制され、香油の担持安定性が向上するという長所を有する。
さらに優れた香油の担持安定性により、拡散による発香能力に優れるとともに、長時間の発香持続効果に優れるという長所を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の香油を含むマイクロカプセルの製造方法を示した模式図である。
図2】本発明の実施例1、2および比較例1、2で製造した香油含有マイクロカプセルの走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)写真をそれぞれ図2(a)~図2(d)に示したものである。
図3】本発明の実施例1で製造した香油含有マイクロカプセルの常温および加温実験後の走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)写真をそれぞれ図3(a)および図3(b)に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を含む具体例または実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、種々の形態で実現されてもよい。
【0025】
また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者中の1人により一般的に理解される意味と同一な意味を有する。本発明において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限することを意図しない。
また、明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0026】
また、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0027】
本発明で用いられる用語「粒子」は、「カプセル」、「マイクロカプセル」、「香油含有マイクロカプセル」、および「コア-シェル粒子」を含む意味として用いられたものである。
【0028】
本発明で用いられる用語「カプセル」、「マイクロカプセル」、「香油含有マイクロカプセル」、「コア-シェル粒子」は、同一な意味として用いられたものである。
【0029】
本発明で用いられる用語「乳化液」、「エマルション(emulsion)」は、同一な意味として用いられたものである。
本発明で用いられる用語「有機溶媒」とは、「第1有機溶媒」および「第2有機溶媒」を含む意味として用いられたものである。
【0030】
上記の目的を達成するために、本発明は、香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油含有マイクロカプセルを提供する。
【0031】
本発明者は、生分解性を有し、優れた香油の担持安定性、および大量生産にも凝集した2次粒子の形成が抑制された、香油含有マイクロカプセルに対する研究を深化した。そこで、生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を、分散安定剤を含む水溶液と混合して乳化し、下記式1を満たす条件で撹拌して第1有機溶媒を除去する製造方法を適用することで、上記のような効果を実現可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
以下、本発明に係る香油を含むマイクロカプセルの製造方法について詳細に説明する。
本発明に係る香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を製造するステップと、前記溶液を分散安定剤を含む水溶液に投入して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を乳化して、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造するステップと、前記乳化液を下記式1を満たす条件で撹拌して前記第1有機溶媒を除去するステップと、を含む。
【0033】
【0034】
(前記式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。)
【0035】
前記溶液を製造するステップは、前記生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を混合して製造してもよく、製造された溶液は、油相であってもよい。
前記生分解性高分子は、微生物、熱、湿気、または他の環境的要因の作用により分解される性質を有する高分子を意味し、制限されるものではないが、具体的には、アルキル置換セルロース系高分子または乳酸系高分子であってもよい。
【0036】
前記アルキル置換セルロース系高分子は、アルキル基で置換されたセルロース系誘導体単位を含む重合体を意味し、具体的には、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(ethyl cellulose、EC)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよく、好ましくは、エチルセルロース(EC)であってもよい。
【0037】
前記乳酸系高分子は、乳酸を構造単位に含む重合体を意味し、前記乳酸は、L-乳酸、D-乳酸、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記乳酸単位は、乳酸系高分子を構成する全ての単量体成分100mol%に対して50mol%以上で含んでもよく、具体的には60mol%以上で含んでもよく、より具体的には70mol%以上で含んでもよい。具体的な例を挙げると、ポリ乳酸(Poly(lactic acid)、PLA)またはポリ乳酸-グリコール酸共重合体(Poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)であってもよい。
【0038】
前記生分解性高分子の重量平均分子量は30,000~1,000,000g/molであってもよく、具体的には50,000~500,000g/molであってもよく、より具体的には100,000~300,000g/molであってもよい。
【0039】
前記香油は、公知の香料成分であれば制限されないが、具体的に、天然または合成芳香族物質から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0040】
前記天然芳香族物質は、具体的に、花(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ(neroli)、イランイラン(ylang-ylang))、茎および葉(ゼラニウム、パチョリ、プチグレン)、果実(アニス実、コリアンダー、キャラウェー(carraway)、ジュニパー)、果皮(ユズ(Citus Junos Peel Oil)、ベルガモット、レモン、オレンジ)、種子(ユズ(Citus Junos Seed Oil))、根(メース(mace)、アンゼリカ(angelica)、セロリ、カルダモン(cardamom)、コスツス(costus)、アイリス、カルムス(calmus))、木(松、ビャクダン(sandalwood)、ユソウボク(guaiacum wood)、シダーウッド(cedarwood)、ローズウッド(rosewood))、ハーブおよび草(タラゴン(tarragon)、レモングラス(lemongrass)、セージ(sage)、タイム)、針状葉および枝(トウヒ、松、ヨーロッパアカマツ、モンタナマツ)、樹脂およびバルサム(ガルバナム(galbanum)、エレミ(elemi)、ベンゾイン、ミルラ(myrrh)、オリバナム(olibanum)、オポポナックス(opoponax))抽出物などの植物系原料の抽出物を含んでもよい。また、動物原料の麝香および海狸香などを含んでもよい。
前記合成芳香族物質は、具体的に、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール、または炭化水素型の生成物などであってもよい。
【0041】
前記エステル型の芳香族物質化合物は、具体的に、ベンジルアセテート、フェノキシ-エチルイソブチレート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、リナリルアセテート、ジメチル-ベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルアセテート、リナリルベンゾエート、ベンジルホルメート、エチルメチルフェニルグリシネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、スチラリルプロピオネート、およびベンジルサリシレートなどを含んでもよい。
【0042】
前記エーテルは、具体的に、ベンジルエチルエーテルなどを含み;アルデヒドは、例えば、8~18個の炭化水素原子を有する直鎖状アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール、およびブルゲオナールなどを含み;ケトンは、例えば、イオノン、α-イソメチルイオノン、およびメチルセドリルケトンなどを含み;アルコールは、例えば、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、およびテルピノールなどを含み;炭化水素は、主にテルペンおよびバルサムを含んでもよい。
【0043】
前記香油は、比較的に低揮発性のエーテル性オイル、例えば、セージオイル、カモミールオイル、クローブオイル、メリッサオイル、シナモン葉オイル、ライム花オイル、ジュニパーベリーオイル、ベチバーオイル、オリバナムオイル、ガルバナムオイル、ラボラナムオイル、およびラバンジンオイルなどをさらに含んでもよい。
【0044】
前記香油は、疎水性(hydrophobicity)を有してもよく、分配係数(partition coefficient、logP)は、具体的には1超過であってもよく、より具体的には3超過であってもよい。前記範囲で、後述する乳化ステップにおいて、分散相の香油がコア(内部)に位置し、生分解性高分子がシェル(外郭)を形成する、コア-シェル形態のマイクロカプセルの形成が容易であるため好ましい。
【0045】
前記第1有機溶媒は、後述する水溶液との混合において分散相を形成し、前記生分解性高分子および香油を溶解可能なものであれば制限されないが、具体的に、常圧での蒸発温度(T)が沸点(T)よりも低い値を有してもよい。
【0046】
前記第1有機溶媒は、水に対して混和性を有しない有機溶媒の中から選択されてもよく、具体的に、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、エチルアセテート(ethyl acetate)、およびジクロロメタン(dichloromethane、DCM)などを単独でまたは混合して用いてもよく、好ましくは、ジクロロメタン(dichloromethane、DCM)を用いてもよい。
【0047】
前記油相溶液において、前記生分解性高分子および香油は1~30重量%で含まれてもよく、具体的には2~15重量%で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
前記生分解性高分子と香油は、重量比として1:1~4:1の重量比で含まれてもよく、具体的には1.3:1~2.5:1の重量比で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明の一態様によると、前記溶液は、前記第1有機溶媒と混和性を有する第2有機溶媒をさらに含んでもよく、前記第1有機溶媒および第2有機溶媒の混合有機溶媒は、後述する水溶液との混合において分散相を形成してもよい。前記第2有機溶媒は、水に対して混和性を有しない有機溶媒の中から選択されてもよく、第1有機溶媒よりも相対的に沸点がさらに高くてもよい。
【0050】
前記第2有機溶媒をさらに含む場合、第1有機溶媒は、全体混合有機溶媒に対して体積基準に50%以上で含んでもよく、前記第2有機溶媒は、第1有機溶媒の重量基準に20重量%以下、具体的には10重量%以下、より具体的には0.5~5重量%で含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0051】
上記のように、溶液が第2有機溶媒をさらに含む、2成分系の有機溶媒を用いる場合、後述する溶媒の除去ステップにおいて、蒸発温度に応じて2ステップの蒸発ステップを有してもよい。具体的に説明すると、相対的に第2有機溶媒よりも蒸発速度が速い第1有機溶媒により迅速な蒸発が可能であり、後続する第2有機溶媒の遅い蒸発により、製造されるマイクロカプセルの形態が均一で、且つ、滑らかな表面を有することができる。特に、互いに異なる沸点を有する2つの有機溶媒を用いることで、水と接する界面において、低い沸点を有する第1有機溶媒の蒸発により、生分解性高分子フィルムが先に密度化される。次いで、第2有機溶媒が徐々に蒸発しつつ、生分解性高分子と香油とが相分離され、マイクロカプセルのコアに安定的に香油が位置し、水と接する界面方向に生分解性高分子が相分離されて密度化されることができる。このような2ステップの蒸発工程は、1ステップの蒸発工程に比べて、マイクロカプセルが向上した降伏応力を有するようにするという点で有利である。
【0052】
本発明の一態様によると、前記溶液は、追加の低分子量の乳酸系高分子をさらに含んでもよい。低分子量の乳酸系高分子の重量平均分子量は、マイクロカプセルの主要成分である乳酸系高分子の重量平均分子量よりも低いことを意味し、乳酸系高分子を可塑化可能な程度の分子量であれば充分である。前記低分子量の乳酸系高分子の重量平均分子量は、具体的には1,000~30,000g/molであってもよく、より具体的には5,000~15,000g/molであってもよいが、これに制限されるものではない。前記低分子量の乳酸系高分子は、上述した乳酸系高分子の種類と化学的に同一なものを用いてもよく、前記範囲の分子量を有する低分子量の乳酸系高分子をさらに含むことで、製造されるマイクロカプセルのシェルが可塑化されて柔軟性を有し、降伏応力がさらに向上して加圧時にマイクロカプセルが破壊されず、内部に香油を安定的に含有することができるため好ましい。
【0053】
前記水溶液は、分散安定剤および水を含む水相の溶液を意味し、後述する溶液との混合において連続相を形成してもよい。前記分散安定剤は、マイクロカプセルの分散性の向上および安定したカプセルを製造するための疎水性と親水性を全て分散可能な両親媒性特性を有するものを意味し、前記分散安定剤は、水溶性高分子であってもよい。
【0054】
前記水溶性高分子は、具体的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテートの共重合体などから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよく、好ましくは、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を用いてもよい。
【0055】
前記水相の水溶液は、水溶液の総重量に対して前記水溶性高分子を0.1~10重量%で含んでもよく、具体的には1~5重量%で含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0056】
前記乳化するステップは、前記溶液を水溶液に投入して混合溶液を製造し、撹拌して乳化してもよい。前記乳化ステップは常温、常圧下で行われてもよく、前記撹拌は公知のホモミキサー、アジミキサー(Agi-mixer)、またはパドルミキサーなどを用いて行ってもよく、撹拌速度は制限されないが、具体的には1,000~10,000rpmの条件で行ってもよい。
【0057】
この際、図1に示されたように、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成し、O/W(Oil in Water)エマルション(emulsion)である乳化液を形成してもよい。前記溶液は、球状の粒子形態として独立して分散され、マイクロカプセルの形態に固形化する前の乳化液は、香油、生分解性高分子、および有機溶媒が互いに均質な溶液を形成する形態を有してもよい。
【0058】
前記乳化液において、分散相の体積分率は10~80%であってもよく、具体的には20~60%であってもよく、より具体的には30~50%であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
その後、前記マイクロカプセルの形態に固形化する前の均質な状態の乳化液から第1有機溶媒を除去し、マイクカプセルを固形化する第1有機溶媒除去ステップを含む。より具体的に、前記均質な状態の乳化液において、繰り返し単位中にエーテル基またはエステル基を含む生分解性高分子と水との界面張力よりも、香油と水との界面張力がさらに大きいため、香油が内部に位置し、外部に生分解性高分子が位置する粒子が形成され、第1有機溶媒を除去することで、前記粒子が固形化するにつれて、コアに香油が位置し、生分解性高分子がシェルを形成する、コア-シェル形態のマイクロカプセルが形成されてもよい。
【0060】
この際、前記第1有機溶媒を除去するステップは、下記式1の値が0.2以下を有してもよく、具体的には0.1以下、より具体的には0.08以下の値を有する条件で撹拌して行ってもよい。
【0061】
【0062】
(前記式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。
【0063】
前記式1の値を満たす範囲で第1有機溶媒を除去することで、製造される香油含有マイクロカプセルの凝集した2次粒子の割合が減少し、独立した1次粒子の割合が増加し得るし、また、外部衝撃などのような加圧により崩壊するマイクロカプセルの数が顕著に低減されるため好ましい。
【0064】
前記第1有機溶媒を除去する方法としては、制限されないが、具体的には、蒸発を用いてもよく、より具体的には、前記連続相を加熱することで、第1有機溶媒の蒸発を誘導してもよい。前記蒸発は30~50℃、具体的には35~45℃で6~20時間行われてもよい。これに制限されるものではないが、前記条件で、粒子の凝集および崩壊現象が抑制されるため好ましい。また、前記蒸発は、減圧下で行われてもよく、上述した蒸発条件で、短時間に第1有機溶媒を蒸発させることができ、製造される粒子の表面特性に優れ、粒子の凝集および崩壊が抑制されるため好ましい。
【0065】
以下、上述した香油を含むマイクロカプセルの製造方法により製造された本発明の香油含有マイクロカプセルについて詳細に説明する。
本発明に係る香油含有マイクロカプセルは、香油を含むコア、および生分解性高分子を含有するシェルを含み、前記マイクロカプセルは、乾燥状態でフリーフロー性(free flowing)および優れた降伏応力を有し、優れた香油の担持安定性により、長時間の発香持続能力に優れ、香油の放出が制御される特性を有してもよい。
【0066】
前記マイクロカプセルは、凝集せずに、独立して存在する1次粒子の含有量が増加し、上述した式1を満たす有機溶媒除去ステップにより、形態が均一であり、表面特性に優れ、乾燥状態でフリーフロー性を有してもよい。
前記マイクロカプセルは、平均直径が0.5~35μmであってもよく、具体的には3~30μmであってもよい。
【0067】
前記マイクロカプセルは、10mNで30秒間加圧時、80%以上のマイクロカプセルが内部に香油を含有してもよい。これは、外部衝撃によってもマイクロカプセルが崩壊せず、香油を含有する状態を維持することを意味し得る。
【0068】
本発明に係る香油含有マイクロカプセルは、乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)が、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも小さくてもよい。これは、前記香油含有マイクロカプセルは、式1の条件を満たすことにより、香油により、シェルが一部可塑化され、乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)が、香油を含有しない乳酸系マイクロ粒子の乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも相対的に小さい値を有してもよい。より具体的には、前記マイクロカプセルは、下記式2の値が1よりも小さくてもよく、さらに具体的には、0.7よりも小さくてもよい。
【0069】

【0070】
(前記式2中、ΔHmcは、マイクロカプセルに含まれる乳酸系高分子単位重量当たりの溶融エンタルピーを意味し、ΔHは、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピーを意味する。)
【0071】
具体的に、本発明のマイクロカプセルは、シェルの生分解性分子が高い結晶性を有する高分子であるにもかかわらず、コアの香油が可塑剤の役割をして、シェルが柔軟性を有するようになり、高い降伏応力を有するようになって、繰り返しの圧縮および回復にも耐えることができるため、外部応力を容易に吸収することができる。より具体的に、前記マイクロカプセルは、直径の30%まで圧縮されても回復することができるため、外部の衝撃などのような加圧条件で、破壊されるマイクロカプセルの数が少ないためさらに好ましい。
【0072】
本発明の香油含有マイクロカプセルは、多様な剤形への適用が可能であり、具体的に、粉末形態、液状形態などを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0073】
好ましい一態様として、前記香油含有マイクロカプセルは、分散液の形態で適用してもよい。前記分散液は水分散液であってもよく、前記水分散液中で、マイクロカプセルの総重量に対して、1次粒子が80重量%以上で存在してもよい。
【0074】
具体的に、本発明の香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、大量生産にも凝集していない1次粒子の生産量を増加させることができ、生分解性高分子を用いており、環境に優しく、残留マイクロプラスチックを発生させないため好ましい。
【0075】
また、製造されるマイクロカプセルは、表面特性に優れ、コアの香油によりシェルの生分解性高分子が一部可塑化され、柔軟な特性を有し、外部衝撃により崩壊し難い優れた降伏応力特性を有するものとして好ましい。
【0076】
さらに、前記特性により、マイクロカプセルは、フリーフロー性(free flowing)および香油に対する放出制御特性を有することができるため、香料、生体材料、農薬、医薬品、食品、化粧品、生活用品、洗浄剤などの多様な分野に適用可能であることを示唆する。
【0077】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0078】
[実験方法]
1.圧縮試験
マイクロカプセルに作用する圧縮荷重を測定するために、最大容量が50mNのカンチレバー形式のロードセル(LVS-5GA/共和電業社製)を適用し、微小変位制御が可能な、分解能が0.5μmのリニアステージ(PSV-X40D/Piezo-tech社製)を用いて、マイクロカプセルを圧縮した。圧縮後、電子顕微鏡を用いて、マイクロカプセルのそれぞれ異なる位置において5枚ずつ測定し、破壊されたマイクロカプセルの割合を計算した。
【0079】
[製造例]
a)ユズ果皮抽出液から天然ユズ香油原料を分離する第1ステップ
清潔に洗浄した天然ユズ10kgを、常温、常圧で、蒸留水を噴射可能な装置が取り付けられた表面が粗いプラスチック円筒からなる剥皮機に入れた後、剥皮機を回転させるとともに蒸留水を噴射してユズ表面を粗く処理する過程で剥皮されるにつれて、蒸留水に天然ユズ香油が含まれたユズ果皮抽出物5kgを得た。
【0080】
その後、前記ユズ果皮抽出物を分液漏斗に入れた後、NaClを前記得られたユズ果皮抽出物の重量に対して1%を添加して均一に混合した後、天然ユズ香油液と水溶液とが層分離されるまで静置させた後、分液漏斗からオイル層である上澄液部分を分離し、天然ユズ香油原料(crude)150gを得た。
【0081】
b)酸敗性物質を除去して純粋ユズエッセンシャルオイルを得る第2ステップ
上記で得た天然ユズ香油原料(crude)を20g採取し、試料にユズ香油原料の重量に対して、イオン性液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-Butyl-3-methylimidazorium bis(trifluoromethyl sulfonyl)imide)を5%添加した後、それぞれ真空回転濃縮器が取り付けられた蒸留機に入れ、真空圧力760Torrおよび温度50℃の条件で、試料の投入量の重さに対して90%に減少するまで真空回転濃縮し、前記ユズ香油原料(crude)に含まれた酸敗性物質が除去された純粋ユズエッセンシャルオイルを取った。
【0082】
[実施例1]
ポリ乳酸(分子量180,000g/mol)6gおよび前記製造例で製造したユズエセンショルオイル4gを、撹拌機を用いて、ジクロロメタン溶媒(T=39.7℃)80gに完全に溶解させ、粘度が63mPa・sの油相溶液を製造した。
【0083】
蒸留水100gにポリビニルアルコール(分子量80,000g/mol)2gを溶解させ、水溶液を製造した。
製造した溶液80mLおよび水溶液100mLを混合し、ホモミキサー(homomixer、直径0.25m)を用いて、2,000rpmの条件で5分間乳化させて、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造した。
【0084】
製造した乳化液を減圧下で300rpmの速度、40℃で12時間撹拌し、30℃で1時間さらに撹拌してジクロロメタン溶媒を完全に除去した。
その後、蒸留水で洗浄濾過し、真空乾燥オーブンで乾燥させ、コア-シェル(core-shell)形態の香油含有マイクロカプセルである白色のパウダーを得た。
【0085】
[実施例2]
前記実施例1において、乳化液を600rpmの速度で撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0086】
[実施例3]
前記実施例1において、ポリ乳酸8gを用いて、粘度が90mPa・sの油相溶液を製造して用いることを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0087】
[実施例4]
前記実施例1において、溶液40mLおよび水溶液100mLを混合して用いることを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0088】
[実施例5]
前記実施例1において、乳化液を900rpmの速度、36℃で撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0089】
[実施例6]
前記実施例1において、ジクロロメタン溶媒(T=39.7℃)75gおよびクロロホルム溶媒5gを混合した混合溶媒を用い、乳化液を40℃で24時間撹拌し、その後、30℃で1時間撹拌して混合溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0090】
[実施例7]
前記実施例1において、重量平均分子量180,000g/molのポリ乳酸4gおよび重量平均分子量12,000g/molのポリ乳酸0.2gを混合して、粘度45mPa・sの油相溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0091】
[実施例8]
前記実施例1において、ポリ乳酸の代わりにエチルセルロース(The Dow Chemical社製のETHOCELTM Standard 4)を用いて、粘度87mPa・sの油相溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0092】
[比較例1]
前記実施例1において、常温(25℃)で24時間撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0093】
[比較例2]
前記実施例1において、50℃で12時間撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0094】
[比較例3]
前記実施例1において、蒸留水100gにアルギン酸ナトリウム(sodium alginate、Sigma-Aldrich社製のW201502)0.4gを溶解させて水溶液を製造することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0095】
[比較例4]
前記実施例1において、ポリ乳酸2.2gを用いて、粘度が27mPa・sの油相溶液を製造し、乳化液を20℃で48時間撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0096】
[比較例5]
前記実施例1において、溶液20mLおよび水溶液100mLを混合して用い、乳化液を60rpmの速度、35℃で撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
前記実施例および比較例の式1の値および平均粒度を下記表1に示した。
【0097】
【表1】
【0098】
前記実施例および比較例に対して下記のように特性を評価した。
[実験例1]香油含有マイクロカプセルの表面特性および香油放出特性の評価
前記実施例1、2で製造した香油含有マイクロカプセルの常温でのSEMイメージをそれぞれ図2(a)および図2(b)に示し、比較例1、2で製造した香油含有マイクロカプセルの常温でのSEMイメージをそれぞれ図2(c)および図2(d)に示した。
【0099】
図2(a)および図2(b)のように、本発明の実施例1および実施例2に係る香油含有マイクロカプセルの場合、図2(b)および図2(c)の比較例1および比較例2に係る香油含有マイクロカプセルとは異なり、表面が潰れておらず、滑らかで均質な特性を確認することができた。
【0100】
[実験例2]香油含有マイクロカプセルの香油放出特性の評価
前記実施例1で製造した香油含有マイクロカプセルの常温でのSEMイメージを図3(a)に示し、50℃、24時間の条件で加温後のSEMイメージを図3(b)に示した。図3(b)のように、実施例1に係る香油含有マイクロカプセルの場合、℃ の条件で24時間の経過後にも、マイクロカプセルの形態が維持されることを確認することができた。これは、外部条件に応じた香油の急速な放出が抑制され、持続的に放出されることを示唆する。
【0101】
[実験例3]香油含有マイクロカプセルの凝集特性および圧縮特性の評価
前記実施例で製造したマイクロカプセルを電子顕微鏡でそれぞれ異なる領域を5枚撮影した後、各領域当たりに総100個のマイクロカプセルのうち凝集したマイクロカプセルの数を合算して平均したものを下記表2に示した。また、前記実施例で製造したマイクロカプセルを10mNで30秒間圧縮した後、電子顕微鏡でそれぞれ異なる領域を5枚撮影した後、各領域当たりに総100個のマイクロカプセルのうち破壊されたマイクロカプセルの数を合算して平均したものを下記表2に示した。
【0102】
【表2】
【0103】
前記表2のように、実施例1~7の場合は、圧縮前後のマイクロカプセルの個数の変化がほぼないことを確認することができるのに対し、比較例1~5の場合は、圧縮後、破壊されたマイクロカプセルが約35%以上であることを確認することができた。これは、本発明の製造方法に係る香油含有マイクロカプセルの降伏応力が高いため、外部衝撃による変形回復率が高く、破壊に対する抵抗力が向上したことを意味する。
【0104】
すなわち、図2図3および表2から確認できるように、前記表1に示した式1を満たす条件で製造された本発明の一態様に係る実施例1~8の場合、製造された香油含有マイクロカプセルの粒度が均一であり、形態の変形がない球状の粒子であって、表面が滑らかな優れた表面特性を有することを確認することができた。また、高温および外力などのような外部の苛酷条件においても、香油の担持安定性に優れるため、香油の急速な放出が抑制され、持続的に香油の放出が維持されることを確認することができた。さらに、マイクロカプセルのコア部分に位置する香油により、シェルである生分解性高分子が部分的に可塑化されることで、柔軟性および降伏応力が増加して、外部衝撃にも破壊され難いことが分かった。これは、香油をさらに安定的に担持することができ、持続的に香油を長期間放出することができるため、発香性能がさらに向上することを意味する。
【0105】
以上、特定の事項と限定された実施例および図面により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0106】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を製造するステップと、
前記溶液を分散安定剤を含む水溶液に投入して混合溶液を製造するステップと、
前記混合溶液を乳化して、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造するステップと、
前記乳化液を下記式1を満たす条件で撹拌して前記第1有機溶媒を除去するステップと、
を含む、香油を含むマイクロカプセルの製造方法。

(前記 式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。)
【請求項2】
前記香油の分配係数(partition coefficient、logP)は3超過である、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
前記第1有機溶媒の蒸発温度(T)は、常圧での前記第1有機溶媒の沸点(T)よりも低い値を有する、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記分散安定剤は、水溶性高分子である、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記溶液は第2有機溶媒をさらに含み、前記第2有機溶媒は第1有機溶媒よりも沸点が高い、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記第2有機溶媒は、第1有機溶媒の重量基準に20重量%以下で含まれる、請求項5に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記マイクロカプセル表面の生分解性高分子は、繰り返し単位中にエーテル基またはエステル基を含み、前記香油と水との界面張力が前記生分解性高分子と水との界面張力よりも大きい、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記分散相の体積分率は30~50%である、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記第1有機溶媒を除去するステップは、減圧下で除去される、請求項1に記載の香油を含むマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
マイクロカプセルであって、
前記マイクロカプセルは、香油を含むコア、および生分解性高分子を含有するシェルを含み、
前記マイクロカプセルは、乾燥状態でフリーフロー性(free flowing)を有し、
前記香油に対して放出制御特性を有することを特徴とする、香油含有マイクロカプセル。
【請求項11】
前記生分解性高分子は、アルキル置換セルロース系高分子または乳酸系高分子である、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項12】
前記アルキル置換セルロース系高分子はエチルセルロース(EC)であり、前記乳酸系高分子はポリ乳酸(PLA)である、請求項11に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項13】
前記マイクロカプセルの平均直径は3~30μmである、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項14】
前記マイクロカプセルは、10mNで30秒間加圧時、80%以上のマイクロカプセルが内部に香油を含有する、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項15】
前記マイクロカプセルの乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)は、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも小さい、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項16】
前記シェルは、低分子量の乳酸系高分子をさらに含む、請求項10に記載の香油含有マイクロカプセル。
【請求項17】
請求項10に記載のマイクロカプセルを含み、前記マイクロカプセルは、水分散液中で、マイクロカプセルの総重量に対して、1次粒子が80重量%以上で存在する、香油含有マイクロカプセル分散液。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油を含むマイクロカプセル、およびそれを含む分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセル(Microcapsule)は、色剤、触媒、接着剤、香料、燃料、生体材料、農薬、医薬品、食品、化粧品、生活用品、洗浄剤などの多様な方面に広く用いられている。
【0003】
中でも、特に生体材料や医薬品、食品、化粧品、洗浄剤など(例えば、ヘア・コンディショナー、ボディソープ、柔軟剤など)に用いられる香油含有マイクロカプセルは、人体に無害でなければならず、さらにはカプセルが生分解される環境に優しい製品であることが求められている。
【0004】
しかしながら、既存の大半の方法は、香油を、界面活性高分子やナノ粒子を用いてエマルション液滴を形成した後、メラミン-ホルムアルデヒド、尿素、ウレタンなどの樹脂をエマルション芳香液滴の表面において縮重合してカプセル化している。このように製造された芳香カプセルは、芳香に対する担持力、担持効率には優れるものの、使用後にカプセルが分解されないため、環境的に問題となっている。
【0005】
このような問題を解決するために、生分解性を有するバイオ高分子(例えば、アラビアゴム、デンプン、セルロース、ゼラチンアルギネート、アルブミンなど)および変性バイオ高分子(例えば、CMC、HPMC、HPMC-ASなど)を用いて、香油を担持したマイクロカプセルを製造しようとする試みがあった。
【0006】
しかし、前記バイオ高分子は、上述したメラミン-ホルムアルデヒドなどの高分子に比べて軟質特性を有し、水あるいは香油により膨潤し得るため、マイクロカプセルの大量生産時に1次粒子が凝集するか、または圧縮のような外部の刺激によりマイクロカプセルが容易に崩壊し、芳香に対する担持力および担持安定性が非常に低下するという問題がある。
したがって、従来に比べて生分解性のバイオ高分子を用いても、優れた凝集安定性および香油の担持安定性を実現可能な製造方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生分解性のバイオ高分子を用いても、香油を安定的に担持することができ、外部の圧力による崩壊が抑制されて担持安定性が向上した、香油を含むマイクロカプセルの製造方法を提供することにある。また、前記香油を担持したマイクロカプセルの形状が均一であり、凝集が抑制されて個別的な1次粒子の分布が増加した、香油を含むマイクロカプセルの製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、前記香油を含むマイクロカプセルの製造方法により製造されたマイクロカプセル、およびそれを含む分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を製造するステップと、前記溶液を分散安定剤を含む水溶液に投入して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を乳化して、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造するステップと、前記乳化液を下記式1を満たす条件で撹拌して前記第1有機溶媒を除去するステップと、を含む、香油を含むマイクロカプセルの製造方法を特徴とする。
【0010】

【0011】
(前記式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。)
【0012】
本発明の一態様として、前記香油の分配係数(partition coefficient、logP)は3超過である、香油を含んでもよい。
本発明の一態様として、前記第1有機溶媒の蒸発温度(T)は、常圧での前記第1有機溶媒の沸点(T)よりも低い値を有する、香油を含んでもよい。
【0013】
本発明の一態様として、前記分散安定剤は、水溶性高分子であってもよい。
本発明の一態様として、前記溶液は第2有機溶媒をさらに含み、前記第2有機溶媒は第1有機溶媒よりも沸点が高い、香油を含んでもよい。
本発明の一態様として、前記第2有機溶媒は、第1有機溶媒の重量基準に20重量%以下で含まれてもよい。
【0014】
本発明の一態様として、前記マイクロカプセル表面の生分解性高分子は、繰り返し単位中にエーテル基またはエステル基を含み、前記香油と水との界面張力が前記生分解性高分子と水との界面張力よりも大きくてもよい。
【0015】
本発明の一態様として、前記分散相の体積分率は30~50%である、香油を含んでもよい。
本発明の一態様として、前記第1有機溶媒を除去するステップは、減圧下で除去されてもよい。
【0016】
本発明の他の一態様は、マイクロカプセルであって、前記マイクロカプセルは、香油を含むコア、および生分解性高分子を含有するシェルを含み、前記マイクロカプセルは、乾燥状態でフリーフロー性(free flowing)を有し、前記香油に対して放出制御特性を有することを特徴とする、香油含有マイクロカプセルであることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様として、前記生分解性高分子は、アルキル置換セルロース系高分子または乳酸系高分子であってもよい。
本発明の一態様として、前記アルキル置換セルロース系高分子はエチルセルロース(EC)であり、前記乳酸系高分子はポリ乳酸(PLA)であってもよい。
【0018】
本発明の一態様として、前記マイクロカプセルの平均直径は3~30μmであってもよい。
本発明の一態様として、前記マイクロカプセルは、10mNで30秒間加圧時、80%以上のマイクロカプセルが内部に香油を含有してもよい。
【0019】
本発明の一態様として、前記マイクロカプセルの乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)は、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも小さくてもよい。
本発明の一態様として、前記シェルは、低分子量の乳酸系高分子をさらに含んでもよい。
【0020】
本発明のまた他の一態様は、前記マイクロカプセルを含み、前記マイクロカプセルは、水分散液中で、マイクロカプセルの総重量に対して、1次粒子が80重量%以上で存在する、香油含有マイクロカプセル分散液であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、大量製造時にも凝集が抑制され、独立した1次粒子の分布が増加した、香油含有マイクロカプセルを形成できるという効果がある。
【0022】
また、本発明に係る製造方法により製造された香油含有マイクロカプセルは、均一な形態、優れた表面特性を有し、高い降伏応力を有するため、外部圧力による形状の変形回復力に優れ、崩壊が抑制され、香油の担持安定性が向上するという効果を有する。
さらに優れた香油の担持安定性により、拡散による発香能力に優れるとともに、長時間の発香持続効果に優れるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の香油を含むマイクロカプセルの製造方法を示した模式図である。
図2】本発明の実施例1、2および比較例1、2で製造した香油含有マイクロカプセルの走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)写真をそれぞれ図2(a)~図2(d)に示したものである。
図3】本発明の実施例1で製造した香油含有マイクロカプセルの常温および加温実験後の走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)写真をそれぞれ図3(a)および図3(b)に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付された図面を含む具体例または実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の具体例または実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明がこれに限定されるものではなく、種々の形態で実現されてもよい。
【0025】
また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一な意味を有する。本発明において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限することを意図しない。
また、明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0026】
また、ある部分がある構成要素を「含む」とする際、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0027】
本発明で用いられる用語「粒子」は、「カプセル」、「マイクロカプセル」、「香油含有マイクロカプセル」、および「コア-シェル粒子」を含む意味として用いられたものである。
【0028】
本発明で用いられる用語「カプセル」、「マイクロカプセル」、「香油含有マイクロカプセル」、「コア-シェル粒子」は、同一な意味として用いられたものである。
【0029】
本発明で用いられる用語「乳化液」、「エマルション(emulsion)」は、同一な意味として用いられたものである。
本発明で用いられる用語「有機溶媒」とは、「第1有機溶媒」および「第2有機溶媒」を含む意味として用いられたものである。
【0030】
上記の目的を達成するために、本発明は、香油を含むマイクロカプセルの製造方法、その方法により製造された香油含有マイクロカプセルを提供する。
【0031】
本発明者は、生分解性を有し、優れた香油の担持安定性、および大量生産にも凝集した2次粒子の形成が抑制された、香油含有マイクロカプセルに対する研究を深化した。そこで、生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を、分散安定剤を含む水溶液と混合して乳化し、下記式1を満たす条件で撹拌して第1有機溶媒を除去する製造方法を適用することで、上記のような効果を実現可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
以下、本発明に係る香油を含むマイクロカプセルの製造方法について詳細に説明する。
本発明に係る香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を含む溶液を製造するステップと、前記溶液を分散安定剤を含む水溶液に投入して混合溶液を製造するステップと、前記混合溶液を乳化して、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造するステップと、前記乳化液を下記式1を満たす条件で撹拌して前記第1有機溶媒を除去するステップと、を含む。
【0033】
【0034】
(前記式1中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。)
【0035】
前記溶液を製造するステップは、前記生分解性高分子、香油、および第1有機溶媒を混合して製造してもよく、製造された溶液は、油相であってもよい。
前記生分解性高分子は、微生物、熱、湿気、または他の環境的要因の作用により分解される性質を有する高分子を意味し、制限されるものではないが、具体的には、アルキル置換セルロース系高分子または乳酸系高分子であってもよい。
【0036】
前記アルキル置換セルロース系高分子は、アルキル基で置換されたセルロース系誘導体単位を含む重合体を意味し、具体的には、メチルセルロース(methyl cellulose、MC)、エチルセルロース(ethyl cellulose、EC)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよく、好ましくは、エチルセルロース(EC)であってもよい。
【0037】
前記乳酸系高分子は、乳酸を構造単位に含む重合体を意味し、前記乳酸は、L-乳酸、D-乳酸、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記乳酸単位は、乳酸系高分子を構成する全ての単量体成分100mol%に対して50mol%以上で含んでもよく、具体的には60mol%以上で含んでもよく、より具体的には70mol%以上で含んでもよい。具体的な例を挙げると、ポリ乳酸(Poly(lactic acid)、PLA)またはポリ乳酸-グリコール酸共重合体(Poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)であってもよい。
【0038】
前記生分解性高分子の重量平均分子量は30,000~1,000,000g/molであってもよく、具体的には50,000~500,000g/molであってもよく、より具体的には100,000~300,000g/molであってもよい。
【0039】
前記香油は、公知の香料成分であれば制限されないが、具体的に、天然または合成芳香族物質から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0040】
前記天然芳香族物質は、具体的に、花(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ(neroli)、イランイラン(ylang-ylang))、茎および葉(ゼラニウム、パチョリ、プチグレン)、果実(アニス実、コリアンダー、キャラウェー(carraway)、ジュニパー)、果皮(ユズ(Citus Junos Peel Oil)、ベルガモット、レモン、オレンジ)、種子(ユズ(Citus Junos Seed Oil))、根(メース(mace)、アンゼリカ(angelica)、セロリ、カルダモン(cardamom)、コスツス(costus)、アイリス、カルムス(calmus))、木(松、ビャクダン(sandalwood)、ユソウボク(guaiacum wood)、シダーウッド(cedarwood)、ローズウッド(rosewood))、ハーブおよび草(タラゴン(tarragon)、レモングラス(lemongrass)、セージ(sage)、タイム)、針状葉および枝(トウヒ、松、ヨーロッパアカマツ、モンタナマツ)、樹脂およびバルサム(ガルバナム(galbanum)、エレミ(elemi)、ベンゾイン、ミルラ(myrrh)、オリバナム(olibanum)、オポポナックス(opoponax))抽出物などの植物系原料の抽出物を含んでもよい。また、動物原料の麝香および海狸香などを含んでもよい。
前記合成芳香族物質は、具体的に、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコール、または炭化水素型の生成物などであってもよい。
【0041】
前記エステル型の芳香族物質化合物は、具体的に、ベンジルアセテート、フェノキシ-エチルイソブチレート、p-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、リナリルアセテート、ジメチル-ベンジルカルビニルアセテート、フェニルエチルアセテート、リナリルベンゾエート、ベンジルホルメート、エチルメチルフェニルグリシネート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、スチラリルプロピオネート、およびベンジルサリシレートなどを含んでもよい。
【0042】
前記エーテルは、具体的に、ベンジルエチルエーテルなどを含み;アルデヒドは、例えば、8~18個の炭化水素原子を有する直鎖状アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアール、およびブルゲオナールなどを含み;ケトンは、例えば、イオノン、α-イソメチルイオノン、およびメチルセドリルケトンなどを含み;アルコールは、例えば、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、およびテルピノールなどを含み;炭化水素は、主にテルペンおよびバルサムを含んでもよい。
【0043】
前記香油は、比較的に低揮発性のエーテル性オイル、例えば、セージオイル、カモミールオイル、クローブオイル、メリッサオイル、シナモン葉オイル、ライム花オイル、ジュニパーベリーオイル、ベチバーオイル、オリバナムオイル、ガルバナムオイル、ラボラナムオイル、およびラバンジンオイルなどをさらに含んでもよい。
【0044】
前記香油は、疎水性(hydrophobicity)を有してもよく、分配係数(partition coefficient、logP)は、具体的には1超過であってもよく、より具体的には3超過であってもよい。前記範囲で、後述する乳化ステップにおいて、分散相の香油がコア(内部)に位置し、生分解性高分子がシェル(外郭)を形成する、コア-シェル形態のマイクロカプセルの形成が容易であるため好ましい。
【0045】
前記第1有機溶媒は、後述する水溶液との混合において分散相を形成し、前記生分解性高分子および香油を溶解可能なものであれば制限されないが、具体的に、常圧での蒸発温度(T)が沸点(T)よりも低い値を有してもよい。
【0046】
前記第1有機溶媒は、水に対して混和性を有しない有機溶媒の中から選択されてもよく、具体的に、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、エチルアセテート(ethyl acetate)、およびジクロロメタン(dichloromethane、DCM)などを単独でまたは混合して用いてもよく、好ましくは、ジクロロメタン(dichloromethane、DCM)を用いてもよい。
【0047】
前記油相溶液において、前記生分解性高分子および香油は1~30重量%で含まれてもよく、具体的には2~15重量%で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
前記生分解性高分子と香油は、重量比として1:1~4:1の重量比で含まれてもよく、具体的には1.3:1~2.5:1の重量比で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0049】
本発明の一態様によると、前記溶液は、前記第1有機溶媒と混和性を有する第2有機溶媒をさらに含んでもよく、前記第1有機溶媒および第2有機溶媒の混合有機溶媒は、後述する水溶液との混合において分散相を形成してもよい。前記第2有機溶媒は、水に対して混和性を有しない有機溶媒の中から選択されてもよく、第1有機溶媒よりも相対的に沸点がさらに高くてもよい。
【0050】
前記第2有機溶媒をさらに含む場合、第1有機溶媒は、全体混合有機溶媒に対して体積基準に50%以上で含んでもよく、前記第2有機溶媒は、第1有機溶媒の重量基準に20重量%以下、具体的には10重量%以下、より具体的には0.5~5重量%で含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0051】
上記のように、溶液が第2有機溶媒をさらに含む、2成分系の有機溶媒を用いる場合、後述する溶媒の除去ステップにおいて、蒸発温度に応じて2ステップの蒸発ステップを有してもよい。具体的に説明すると、相対的に第2有機溶媒よりも蒸発速度が速い第1有機溶媒により迅速な蒸発が可能であり、後続する第2有機溶媒の遅い蒸発により、製造されるマイクロカプセルの形態が均一で、且つ、滑らかな表面を有することができる。特に、互いに異なる沸点を有する2つの有機溶媒を用いることで、水と接する界面において、低い沸点を有する第1有機溶媒の蒸発により、生分解性高分子フィルムが先に密度化される。次いで、第2有機溶媒が徐々に蒸発しつつ、生分解性高分子と香油とが相分離され、マイクロカプセルのコアに安定的に香油が位置し、水と接する界面方向に生分解性高分子が相分離されて密度化されることができる。このような2ステップの蒸発工程は、1ステップの蒸発工程に比べて、マイクロカプセルが向上した降伏応力を有するようにするという点で有利である。
【0052】
本発明の一態様によると、前記溶液は、追加の低分子量の乳酸系高分子をさらに含んでもよい。低分子量の乳酸系高分子の重量平均分子量は、マイクロカプセルの主要成分である乳酸系高分子の重量平均分子量よりも低いことを意味し、乳酸系高分子を可塑化可能な程度の分子量であれば充分である。前記低分子量の乳酸系高分子の重量平均分子量は、具体的には1,000~30,000g/molであってもよく、より具体的には5,000~15,000g/molであってもよいが、これに制限されるものではない。前記低分子量の乳酸系高分子は、上述した乳酸系高分子の種類と化学的に同一なものを用いてもよく、前記範囲の分子量を有する低分子量の乳酸系高分子をさらに含むことで、製造されるマイクロカプセルのシェルが可塑化されて柔軟性を有し、降伏応力がさらに向上して加圧時にマイクロカプセルが破壊されず、内部に香油を安定的に含有することができるため好ましい。
【0053】
前記水溶液は、分散安定剤および水を含む水相の溶液を意味し、後述する溶液との混合において連続相を形成してもよい。前記分散安定剤は、マイクロカプセルの分散性の向上および安定したカプセルを製造するための疎水性と親水性を全て分散可能な両親媒性特性を有するものを意味し、前記分散安定剤は、水溶性高分子であってもよい。
【0054】
前記水溶性高分子は、具体的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテートの共重合体などから選択される何れか1つまたは2つ以上であってもよく、好ましくは、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を用いてもよい。
【0055】
前記水相の水溶液は、水溶液の総重量に対して前記水溶性高分子を0.1~10重量%で含んでもよく、具体的には1~5重量%で含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0056】
前記乳化するステップは、前記溶液を水溶液に投入して混合溶液を製造し、撹拌して乳化してもよい。前記乳化ステップは常温、常圧下で行われてもよく、前記撹拌は公知のホモミキサー、アジミキサー(Agi-mixer)、またはパドルミキサーなどを用いて行ってもよく、撹拌速度は制限されないが、具体的には1,000~10,000rpmの条件で行ってもよい。
【0057】
この際、図1に示されたように、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成し、O/W(Oil in Water)エマルション(emulsion)である乳化液を形成してもよい。前記溶液は、球状の粒子形態として独立して分散され、マイクロカプセルの形態に固形化する前の乳化液は、香油、生分解性高分子、および有機溶媒が互いに均質な溶液を形成する形態を有してもよい。
【0058】
前記乳化液において、分散相の体積分率は10~80%であってもよく、具体的には20~60%であってもよく、より具体的には30~50%であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
その後、前記マイクロカプセルの形態に固形化する前の均質な状態の乳化液から第1有機溶媒を除去し、マイクカプセルを固形化する第1有機溶媒除去ステップを含む。より具体的に、前記均質な状態の乳化液において、繰り返し単位中にエーテル基またはエステル基を含む生分解性高分子と水との界面張力よりも、香油と水との界面張力がさらに大きいため、香油が内部に位置し、外部に生分解性高分子が位置する粒子が形成され、第1有機溶媒を除去することで、前記粒子が固形化するにつれて、コアに香油が位置し、生分解性高分子がシェルを形成する、コア-シェル形態のマイクロカプセルが形成されてもよい。
【0060】
この際、前記第1有機溶媒を除去するステップは、下記計算式の値が0.2以下を有してもよく、具体的には0.1以下、より具体的には0.08以下の値を有する条件で撹拌して行ってもよい。
【0061】
【0062】
(前記計算式中、Dは撹拌手段の直径(m)、rは撹拌速度(turns/sec)、γは分散相と連続相との間の界面張力(N/m)、μは分散相の粘度(mPa・s)、μは連続相の粘度(mPa・s)、ρは連続相の密度(kg/m)、φは分散相の体積分率、Tは連続相の温度(K)、Tは常圧での第1有機溶媒の沸点(K)を示す。
【0063】
前記計算式の値を満たす範囲で第1有機溶媒を除去することで、製造される香油含有マイクロカプセルの凝集した2次粒子の割合が減少し、独立した1次粒子の割合が増加し得るし、また、外部衝撃などのような加圧により崩壊するマイクロカプセルの数が顕著に低減されるため好ましい。
【0064】
前記第1有機溶媒を除去する方法としては、制限されないが、具体的には、蒸発を用いてもよく、より具体的には、前記連続相を加熱することで、第1有機溶媒の蒸発を誘導してもよい。前記蒸発は30~50℃、具体的には35~45℃で6~20時間行われてもよい。これに制限されるものではないが、前記条件で、粒子の凝集および崩壊現象が抑制されるため好ましい。また、前記蒸発は、減圧下で行われてもよく、上述した蒸発条件で、短時間に第1有機溶媒を蒸発させることができ、製造される粒子の表面特性に優れ、粒子の凝集および崩壊が抑制されるため好ましい。
【0065】
以下、上述した香油を含むマイクロカプセルの製造方法により製造された本発明の香油含有マイクロカプセルについて詳細に説明する。
本発明に係る香油含有マイクロカプセルは、香油を含むコア、および生分解性高分子を含有するシェルを含み、前記マイクロカプセルは、乾燥状態でフリーフロー性(free flowing)および優れた降伏応力を有し、優れた香油の担持安定性により、長時間の発香持続能力に優れ、香油の放出が制御される特性を有してもよい。
【0066】
前記マイクロカプセルは、凝集せずに、独立して存在する1次粒子の含有量が増加し、上述した 式1を満たす有機溶媒除去ステップにより、形態が均一であり、表面特性に優れ、乾燥状態でフリーフロー性を有してもよい。
前記マイクロカプセルは、平均直径が0.5~35μmであってもよく、具体的には3~30μmであってもよい。
【0067】
前記マイクロカプセルは、10mNで30秒間加圧時、80%以上のマイクロカプセルが内部に香油を含有してもよい。これは、外部衝撃によってもマイクロカプセルが崩壊せず、香油を含有する状態を維持することを意味し得る。
【0068】
本発明に係る香油含有マイクロカプセルは、乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)が、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも小さくてもよい。これは、前記香油含有マイクロカプセルは、 式1の条件を満たすことにより、香油により、シェルが一部可塑化され、乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔHmc)が、香油を含有しない乳酸系マイクロ粒子の乳酸系高分子の単位重量当たりの溶融エンタルピー(ΔH)よりも相対的に小さい値を有してもよい。より具体的には、前記マイクロカプセルは、下記式2の値が1よりも小さくてもよく、さらに具体的には、0.7よりも小さくてもよい。
【0069】
【0070】
(前記式2中、ΔHmcは、マイクロカプセルに含まれる乳酸系高分子単位重量当たりの溶融エンタルピーを意味し、ΔHは、乳酸系マイクロ粒子の単位重量当たりの溶融エンタルピーを意味する。)
【0071】
具体的に、本発明のマイクロカプセルは、シェルの生分解性分子が高い結晶性を有する高分子であるにもかかわらず、コアの香油が可塑剤の役割をして、シェルが柔軟性を有するようになり、高い降伏応力を有するようになって、繰り返しの圧縮および回復にも耐えることができるため、外部応力を容易に吸収することができる。より具体的に、前記マイクロカプセルは、直径の30%まで圧縮されても回復することができるため、外部の衝撃などのような加圧条件で、破壊されるマイクロカプセルの数が少ないためさらに好ましい。
【0072】
本発明の香油含有マイクロカプセルは、多様な剤形への適用が可能であり、具体的に、粉末形態、液状形態などを含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0073】
好ましい一態様として、前記香油含有マイクロカプセルは、分散液の形態で適用してもよい。前記分散液は水分散液であってもよく、前記水分散液中で、マイクロカプセルの総重量に対して、1次粒子が80重量%以上で存在してもよい。
【0074】
具体的に、本発明の香油を含むマイクロカプセルの製造方法は、大量生産にも凝集していない1次粒子の生産量を増加させることができ、生分解性高分子を用いており、環境に優しく、残留マイクロプラスチックを発生させないため好ましい。
【0075】
また、製造されるマイクロカプセルは、表面特性に優れ、コアの香油によりシェルの生分解性高分子が一部可塑化され、柔軟な特性を有し、外部衝撃により崩壊し難い優れた降伏応力特性を有するものとして好ましい。
【0076】
さらに、前記特性により、マイクロカプセルは、フリーフロー性(free flowing)および香油に対する放出制御特性を有することができるため、香料、生体材料、農薬、医薬品、食品、化粧品、生活用品、洗浄剤などの多様な分野に適用可能であることを示唆する。
【0077】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は、本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
【0078】
[実験方法]
1.圧縮試験
マイクロカプセルに作用する圧縮荷重を測定するために、最大容量が50mNのカンチレバー形式のロードセル(LVS-5GA/共和電業社製)を適用し、微小変位制御が可能な、分解能が0.5μmのリニアステージ(PSV-X40D/Piezo-tech社製)を用いて、マイクロカプセルを圧縮した。圧縮後、電子顕微鏡を用いて、マイクロカプセルのそれぞれ異なる位置において5枚ずつ測定し、破壊されたマイクロカプセルの割合を計算した。
【0079】
[製造例]
a)ユズ果皮抽出液から天然ユズ香油原料を分離する第1ステップ
清潔に洗浄した天然ユズ10kgを、常温、常圧で、蒸留水を噴射可能な装置が取り付けられた表面が粗いプラスチック円筒からなる剥皮機に入れた後、剥皮機を回転させるとともに蒸留水を噴射してユズ表面を粗く処理する過程で剥皮されるにつれて、蒸留水に天然ユズ香油が含まれたユズ果皮抽出物5kgを得た。
【0080】
その後、前記ユズ果皮抽出物を分液漏斗に入れた後、NaClを前記得られたユズ果皮抽出物の重量に対して1%を添加して均一に混合した後、天然ユズ香油液と水溶液とが層分離されるまで静置させた後、分液漏斗からオイル層である上澄液部分を分離し、天然ユズ香油原料(crude)150gを得た。
【0081】
b)酸敗性物質を除去して純粋ユズエッセンシャルオイルを得る第2ステップ
上記で得た天然ユズ香油原料(crude)を20g採取し、試料にユズ香油原料の重量に対して、イオン性液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(1-Butyl-3-methylimidazorium bis(trifluoromethyl sulfonyl)imide)を5%添加した後、それぞれ真空回転濃縮器が取り付けられた蒸留機に入れ、真空圧力760Torrおよび温度50℃の条件で、試料の投入量の重さに対して90%に減少するまで真空回転濃縮し、前記ユズ香油原料(crude)に含まれた酸敗性物質が除去された純粋ユズエッセンシャルオイルを取った。
【0082】
[実施例1]
ポリ乳酸(分子量180,000g/mol)6gおよび前記製造例で製造したユズエセンショルオイル4gを、撹拌機を用いて、ジクロロメタン溶媒(T=39.7℃)80gに完全に溶解させ、粘度が63mPa・sの油相溶液を製造した。
【0083】
蒸留水100gにポリビニルアルコール(分子量80,000g/mol)2gを溶解させ、水溶液を製造した。
製造した溶液80mLおよび水溶液100mLを混合し、ホモミキサー(homomixer、直径0.25m)を用いて、2,000rpmの条件で5分間乳化させて、前記溶液が分散相を形成し、前記水溶液が連続相を形成する乳化液を製造した。
【0084】
製造した乳化液を減圧下で300rpmの速度、40℃で12時間撹拌し、30℃で1時間さらに撹拌してジクロロメタン溶媒を完全に除去した。
その後、蒸留水で洗浄濾過し、真空乾燥オーブンで乾燥させ、コア-シェル(core-shell)形態の香油含有マイクロカプセルである白色のパウダーを得た。
【0085】
[実施例2]
前記実施例1において、乳化液を600rpmの速度で撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0086】
[実施例3]
前記実施例1において、ポリ乳酸8gを用いて、粘度が90mPa・sの油相溶液を製造して用いることを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0087】
[実施例4]
前記実施例1において、溶液40mLおよび水溶液100mLを混合して用いることを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0088】
[実施例5]
前記実施例1において、乳化液を900rpmの速度、36℃で撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0089】
[実施例6]
前記実施例1において、ジクロロメタン溶媒(T=39.7℃)75gおよびクロロホルム溶媒5gを混合した混合溶媒を用い、乳化液を40℃で24時間撹拌し、その後、30℃で1時間撹拌して混合溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0090】
[実施例7]
前記実施例1において、重量平均分子量180,000g/molのポリ乳酸4gおよび重量平均分子量12,000g/molのポリ乳酸0.2gを混合して、粘度45mPa・sの油相溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0091】
[実施例8]
前記実施例1において、ポリ乳酸の代わりにエチルセルロース(The Dow Chemical社製のETHOCELTM Standard 4)を用いて、粘度87mPa・sの油相溶液を用いたことを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0092】
[比較例1]
前記実施例1において、常温(25℃)で24時間撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0093】
[比較例2]
前記実施例1において、50℃で12時間撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0094】
[比較例3]
前記実施例1において、蒸留水100gにアルギン酸ナトリウム(sodium alginate、Sigma-Aldrich社製のW201502)0.4gを溶解させて水溶液を製造することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0095】
[比較例4]
前記実施例1において、ポリ乳酸2.2gを用いて、粘度が27mPa・sの油相溶液を製造し、乳化液を20℃で48時間撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
【0096】
[比較例5]
前記実施例1において、溶液20mLおよび水溶液100mLを混合して用い、乳化液を60rpmの速度、35℃で撹拌してジクロロメタン溶媒を除去することを除いては、実施例1と同様に行い、香油含有マイクロカプセルを製造した。
前記実施例および比較例の計算式の値および平均粒度を下記表1に示した。
【0097】
【表1】
【0098】
前記実施例および比較例に対して下記のように特性を評価した。
[実験例1]香油含有マイクロカプセルの表面特性および香油放出特性の評価
前記実施例1、2で製造した香油含有マイクロカプセルの常温でのSEMイメージをそれぞれ図2(a)および図2(b)に示し、比較例1、2で製造した香油含有マイクロカプセルの常温でのSEMイメージをそれぞれ図2(c)および図2(d)に示した。
【0099】
図2(a)および図2(b)のように、本発明の実施例1および実施例2に係る香油含有マイクロカプセルの場合、図2(b)および図2(c)の比較例1および比較例2に係る香油含有マイクロカプセルとは異なり、表面が潰れておらず、滑らかで均質な特性を確認することができた。
【0100】
[実験例2]香油含有マイクロカプセルの香油放出特性の評価
前記実施例1で製造した香油含有マイクロカプセルの常温でのSEMイメージを図3(a)に示し、50℃、24時間の条件で加温後のSEMイメージを図3(b)に示した。図3(b)のように、実施例1に係る香油含有マイクロカプセルの場合、℃ の条件で24時間の経過後にも、マイクロカプセルの形態が維持されることを確認することができた。これは、外部条件に応じた香油の急速な放出が抑制され、持続的に放出されることを示唆する。
【0101】
[実験例3]香油含有マイクロカプセルの凝集特性および圧縮特性の評価
前記実施例で製造したマイクロカプセルを電子顕微鏡でそれぞれ異なる領域を5枚撮影した後、各領域当たりに総100個のマイクロカプセルのうち凝集したマイクロカプセルの数を合算して平均したものを下記表2に示した。また、前記実施例で製造したマイクロカプセルを10mNで30秒間圧縮した後、電子顕微鏡でそれぞれ異なる領域を5枚撮影した後、各領域当たりに総100個のマイクロカプセルのうち破壊されたマイクロカプセルの数を合算して平均したものを下記表2に示した。
【0102】
【表2】
【0103】
前記表2のように、実施例1~7の場合は、圧縮前後のマイクロカプセルの個数の変化がほぼないことを確認することができるのに対し、比較例1~5の場合は、圧縮後、破壊されたマイクロカプセルが約35%以上であることを確認することができた。これは、本発明の製造方法に係る香油含有マイクロカプセルの降伏応力が高いため、外部衝撃による変形回復率が高く、破壊に対する抵抗力が向上したことを意味する。
【0104】
すなわち、図2図3および表2から確認できるように、前記表1に示した計算式を満たす条件で製造された本発明の一態様に係る実施例1~8の場合、製造された香油含有マイクロカプセルの粒度が均一であり、形態の変形がない球状の粒子であって、表面が滑らかな優れた表面特性を有することを確認することができた。また、高温および外力などのような外部の苛酷条件においても、香油の担持安定性に優れるため、香油の急速な放出が抑制され、持続的に香油の放出が維持されることを確認することができた。さらに、マイクロカプセルのコア部分に位置する香油により、シェルである生分解性高分子が部分的に可塑化されることで、柔軟性および降伏応力が増加して、外部衝撃にも破壊され難いことが分かった。これは、香油をさらに安定的に担持することができ、持続的に香油を長期間放出することができるため、発香性能がさらに向上することを意味する。
【0105】
以上、特定の事項と限定された実施例および図面により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0106】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まるものではなく、特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
【国際調査報告】