(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】美容用コンタクトレンズのためのインク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/10 20140101AFI20221109BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C09D11/10
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021569467
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2020057842
(87)【国際公開番号】W WO2021048664
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】パトン・ジャクンダ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】グズマン・アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マハルビ・グラーム
【テーマコード(参考)】
2H006
4J039
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB05
2H006BB07
2H006BB10
2H006BC05
2H006BC06
2H006BC07
4J039AB07
4J039AD06
4J039AD12
4J039AD21
4J039AE07
4J039AE08
4J039AE09
4J039AE11
4J039BA37
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC12
4J039BC31
4J039BC50
4J039BE02
4J039BE12
4J039EA33
4J039EA48
4J039FA07
4J039GA34
(57)【要約】
美容用コンタクトレンズを作製するためのインク組成物、並びに美容用コンタクトレンズ、並びにそれらを調製及び使用するための方法が提供される。インク組成物は、(a)着色剤、及び(b)非反応性親水性ポリマーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
美容用コンタクトレンズを作製するためのインク組成物であって、(a)着色剤、(b)非反応性親水性ポリマー、及び任意選択で(c)結合剤ポリマーを含む、インク組成物。
【請求項2】
前記非反応性親水性ポリマーが、ポリアミドを含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
前記非反応性親水性ポリマーが、デキストラン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オリゴエチレンオキシド)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリ(イミン)、ポリ(アクリル酸)、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の混合物を含む、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項4】
任意選択の前記結合剤ポリマーが、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む親水性モノマー、シリコーン含有マクロマー、並びに任意選択でシリコーン含有モノマーから形成されるコポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
(d)溶媒を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記溶媒が、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール(1E2P)、t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール、及び3,7-ジメチル-1,7-オクタンジオール(D3O)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPME)、イソプロピルラクテート(IPL)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(HEP)、グリセロール、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の混合物を含む、請求項5に記載のインク組成物。
【請求項7】
前記非反応性親水性ポリマーが、環状ポリアミドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記着色剤が、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、バットオレンジ#1、酸化鉄ブラック、酸化鉄ブラウン、酸化鉄イエロー、酸化鉄レッド、二酸化チタン、ジクロロトリアジン、ビニルスルホン系染料、及びこれらの2つ又は3つ以上の混合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項9】
各々前記インク組成物の総重量に基づいて、0.1~約25重量%の前記着色剤、約1~約50重量%の前記非反応性親水性ポリマー、約1~60重量%の前記結合剤ポリマー、及び約50~約95重量%の溶媒を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項10】
前記結合剤ポリマーが、約1.66×10
-23~約1.66×10
-22kg(約10~約100kDa)の範囲内の重量平均分子量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
前記非反応性親水性ポリマーが、ポリ(ビニルピロリドン)である、請求項1~10のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項12】
前記親水性モノマーが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、又はこれらの混合物を含む、請求項4に記載のインク組成物。
【請求項13】
前記親水性モノマーが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである、請求項12に記載のインク組成物。
【請求項14】
前記シリコーン含有マクロマーが、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチリル、ビニル、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルエーテル、O-ビニルカーボネート、及びO-ビニルカーボネートからなる群から選択される重合性官能基を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項15】
前記シリコーン含有マクロマーが、式Iに示される化学構造を含み、
【化1】
式中、Zが、O、N、S、又はNCH
2CH
2Oから選択され、Z=O又はSの場合、R
2は、不要であり、R
1が、水素原子又はメチルであり、nが、1~200の整数であり、R
3が、アルキレンセグメント(CH
2)
yであり、ここで、yが、1~6の整数であり、各メチレン基が、任意選択で、更にかつ独立して、エーテル、アミン、エステル、ケトン、カルボニル、カルボキシレート、及びカルバメートからなる群から選択される基で置換され得るか、又はyが2若しくは3以上である場合、非末端メチレン基が、任意選択で、カルバメート基で置き換えられ得るか、あるいはR
3が、オキシアルキレンセグメントO(CH
2)
zであり、ここで、zが、1~3の整数であるか、あるいはR
3が、アルキレンセグメント及びオキシアルキレンセグメントの混合物であり、y及びzの和が、1~9であり、R
2及びR
4が、独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖ポリエチレンオキシアルキル基、アルキル-シロキサニル-アルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換若しくは非置換アリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、1~6個の炭素原子を含有するモノ-、ジ、若しくはトリ-ヒドロキシアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、R
5が、1~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、又はアリール基であり、これらのいずれも、1つ又は2つ以上のフッ素原子又はトリメチルシロキシ基で更に置換され得る、請求項4~14のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項16】
前記シリコーン含有マクロマーが、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(ジアルキルシロキサン)、モノアルキル末端、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(ジアリールシロキサン)、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(アルキルアリールシロキサン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4~15のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項17】
前記シリコーン含有マクロマーが、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項16に記載のインク組成物。
【請求項18】
前記シリコーン含有マクロマーが、式VIIIに示される化学構造を含み、
【化2】
式中、Zが、O、N、S、又はNCH
2CH
2Oから選択され、R
1が、独立して、水素原子又はメチル基であり、R
2、R
3、及びR
4が、独立して、水素原子、又は1~8個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基であり、これらのいずれも、少なくとも1つのヒドロキシ基で更に置換され得、かつ任意選択で、アミド基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、及びこれらの組み合わせで置換され得、Z=O及びSの場合、R
2は、不要であり、nが、シロキサン繰り返し単位の数であり、かつ4~200であり、R
5が、直鎖又は分岐鎖C
1~C
8アルキル基から選択される、請求項4~17のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項19】
前記シリコーン含有マクロマーが、モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサンである、請求項4~18のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項20】
前記シリコーン含有マクロマーが、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4~19のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項21】
前記シリコーン含有マクロマーが、8.30×10
-25キログラム(500ダルトン)を超える数平均分子量を有する、請求項4~20のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項22】
前記シリコーン含有マクロマーが、約8.30×10
-25キログラム~約3.32×10
-23キログラム(約500ダルトン~約20,000ダルトン)の数平均分子量を有する、請求項4~20のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項23】
前記シリコーン含有マクロマーの繰り返し単位が、前記結合剤ポリマーの総重量の約30~約80重量%の範囲内で存在する、請求項4~22のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項24】
前記シリコーン含有モノマーが、3-メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-メタクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル、N-(2,3-ジヒドロキシルプロピル)N-(3-テトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)プロピル)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4~23のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項25】
美容用コンタクトレンズを作製するための方法であって、(i)第1のレンズ形成型のレンズ形成面にクリアコートを適用することと、(ii)前記クリアコートに請求項1~24のいずれか一項に記載のインク組成物を適用することと、(iii)任意選択で、工程(i)、工程(ii)、又は工程(i)及び工程(ii)の両方を繰り返すことと、(iv)レンズ材料を前記第1のレンズ形成型に分注することと、(v)第2のレンズ形成型を適用することと、(vi)前記レンズ材料を硬化させて、前記美容用コンタクトレンズを形成することと、を含む、方法。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載のインク組成物が上に適用されたコンタクトレンズを含む、美容用コンタクトレンズ。
【請求項27】
美容用シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである、請求項26に記載の美容用コンタクトレンズ。
【請求項28】
内部湿潤剤を更に含む、請求項27に記載の美容用コンタクトレンズ。
【請求項29】
前記レンズが、複数層のインク組成物を含み、前記複数層のインク組成物が、同じであり得るか又は異なり得る、請求項26~28のいずれか一項に記載の美容用コンタクトレンズ。
【請求項30】
非反応性親水性ポリマーを含まないインク層を更に含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の美容用コンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許出願第16/987,673号(2020年8月7日出願)及び米国特許仮出願第62/899,311号(2019年9月12日出願)に対する優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、美容用コンタクトレンズに関するものであり、より具体的には、美容用シリコーンハイドロゲルレンズなどの美容用コンタクトレンズを作製するために使用することができるインク組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
美容目的のために、色の付いたハイドロゲルコンタクトレンズを使用して眼の自然な色を変更することが知られている。色の付いたハイドロゲルコンタクトレンズを製造するために用いられるインク組成物は、典型的には、結合ポリマー及び着色剤から構成される。美容用レンズ用の既知のインク組成物は、概ね、従来の(非シリコーン)レンズ用に設計されている。
【0004】
近年、シリコーンハイドロゲルから形成されたコンタクトレンズが普及してきている。これらのコンタクトレンズは、従来のハイドロゲルよりも高い酸素透過性を有する。改善された酸素透過性によって、それを着用しているコンタクトレンズユーザーにおける低酸素症の症状が低減した。残念ながら、従来のハイドロゲルレンズを製造するために使用されるプロセスは、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを一貫して製造するためには十分に機能しない。このようなプロセスの一例は、美容用シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの製造である。
【0005】
インクが著しくスメアすることも摩擦落ちすることもなしに、美容用シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズなどの美容用コンタクトレンズを提供し、かつベースレンズ材料と適合性のあるインク組成物は、当該技術分野における進歩である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、着色剤、非反応性親水性ポリマー、及び任意選択で結合剤ポリマーを含有する、インク組成物を提供する。インク組成物は、例えばシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズで使用されるとき、丸形である(歪んでいない)コンタクトレンズを提供し、このインクは、レンズに適用されると、スメアせず、容易に摩擦落ちすることもない。したがって、インク組成物は、美容用コンタクトレンズの製造によく適している。
【0007】
したがって、一態様では、本発明は、美容用コンタクトレンズを作製するためのインク組成物を提供する。インク組成物は、(a)着色剤、(b)非反応性親水性ポリマー、及び任意選択で(c)結合剤ポリマーを含む。結合剤ポリマーは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つのシリコーン含有マクロマー、並びに任意選択でシリコーン含有モノマーから形成される、ポリマーを含み得る。
【0008】
別の態様では、本発明は、美容用コンタクトレンズを提供する。美容用コンタクトレンズは、本明細書に記載のインク組成物が上に適用されたコンタクトレンズを含む。明らかなように、美容用コンタクトレンズは、任意選択で複数層のクリアコートを有する複数層のインク組成物(例えば、2、3、又は4層)を含み得、使用される顔料を含む複数層のインク組成物の組成は、同じであり得るか又は異なり得る。美容用コンタクトレンズは、顔料を含有するが非反応性親水性ポリマーを含まない層を含む、追加の層をその上に含み得る。
【0009】
更なる態様では、本発明は、美容用コンタクトレンズを作製する方法を提供する。当該方法は、(i)第1のレンズ形成型のレンズ形成面にクリアコートを適用することと、(ii)本明細書に記載のインク組成物を当該クリアコートに適用することと、(iii)任意選択で、工程(i)、工程(ii)、又は工程(i)及び工程(ii)の両方を繰り返すことと、(iv)レンズ材料を第1のレンズ形成型に分注することと、(v)第2のレンズ形成型を適用することと、(vi)レンズ材料を硬化させて、美容用コンタクトレンズを形成することと、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、以下の説明に記載されている構造又はプロセス工程の詳細に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、本明細書に記載の教示を用いた様々な方法によって実行又は実施することが可能である。
【0011】
上述のように、一態様では、本発明は、インク組成物を提供する。本発明者らは、本明細書に記載のインク組成物を使用して、好都合な特性を有する美容用シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズなどの美容用コンタクトレンズを製造できることを見出した。例えば、このようなレンズは、低いヘイズしか呈さないか又は全くヘイズを呈さず、このことは、インク組成物の材料とベースレンズの材料との間の良好な適合性を示す。加えて、インクは、インクのスメアも摩擦落ちもほとんど又は全く呈さない。更に、インク組成物は、レンズの形状に悪影響を及ぼさない。したがって、レンズは、概して、その丸形形状を保持する。
【0012】
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0013】
別段の定めがある場合を除き、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
本明細書で使用するとき、「(メタ)」という用語は、任意選択のメチル置換を意味する。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を意味する。
【0015】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量による。
【0016】
別途記載のない限り、例えば、「2~10」のような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0017】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用デバイスを指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の送達、診断的評価若しくはモニタリング、紫外線吸収、可視光若しくはグレアの低減、又はこれらの任意の組み合わせを含む、矯正的、美容的、又は治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0018】
本発明のレンズは、シリコーンハイドロゲル又は従来のハイドロゲルから構成されてよい。シリコーンハイドロゲルは、典型的には、硬化されたデバイス内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分を含有する。
【0019】
本発明によるインク組成物は、(a)着色剤、(b)非反応性親水性ポリマー、及び任意選択で(c)結合剤ポリマーを含む。
【0020】
本発明のインク組成物において使用するための着色剤は、コンタクトレンズにおいて使用するのに好適な任意の有機若しくは無機の顔料若しくは染料、又はこのような顔料及び/若しくは染料の組み合わせであってよい。不透明度は、組成物中の着色剤の濃度を変化させることによって制御することができ、量が多くなるにつれて不透明度が高くなる。例示的な着色剤としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、バットオレンジ#1、酸化鉄ブラック、酸化鉄ブラウン、酸化鉄イエロー、酸化鉄レッド、二酸化チタン、ジクロロトリアジン、ビニルスルホン系染料、及びこれらの2つ又は3つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な染料及び顔料は、市販されている。
【0021】
本発明のインク組成物は、少なくとも1つの非反応性親水性ポリマーを含む。「非反応性」とは、親水性ポリマーが製剤中で使用されるとき、本明細書に記載のフリーラジカル重合条件下で製剤中の他の構成成分と共重合することができるフリーラジカル重合性基を含有しないことを意味する。理論に束縛されるものではないが、非反応性親水性ポリマーは、インク組成物内の着色剤を安定化させるのに役立つと考えられる。
【0022】
非反応性親水性ポリマーは、ポリアミドであり得る。本明細書で使用するとき、「ポリアミド」という用語は、アミド基を含有する繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーを指す。ポリアミドは、環状アミド基、非環状アミド基、及びこれらの組み合わせを含み得る。非環式ポリアミドは、ペンダント非環式アミド基を含む。環状ポリアミドは、環状アミド基を含む。
【0023】
好適な非環状ポリアミドの例としては、式G1及びG2の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0024】
【化1】
式中、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR
44)-であり、ここで、R
44は、C
1~C
3アルキル基であり、R
40は、H、直鎖又は分岐鎖の置換又は非置換C
1~C
4アルキル基から選択され、R
41は、H、直鎖又は分岐鎖の置換又は非置換C
1~C
4アルキル基、最大2個の炭素原子を有するアミノ基、最大4個の炭素原子を有するアミド基、及び最大2個の炭素基を有するアルコキシ基から選択され、R
42は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C
1~C
4アルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R
43は、H、直鎖若しくは分岐鎖の置換若しくは非置換C
1~C
4アルキル基、又はメチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され、R
40及びR
41の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下であり、R
42及びR
43の炭素原子の数は合計で、7、6、5、4、3、又はそれ以下を含む、8以下である。R
40及びR
41の炭素原子の数は、合計で6以下又は4以下であってよい。R
42及びR
43の炭素原子の数は、合計で6以下であってよい。本明細書で使用するとき、置換アルキル基は、アミン基、アミド基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボニル基、若しくはカルボキシル基、又はこれらの組み合わせで置換されているアルキル基を含む。
【0025】
R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C1~C2アルキル基から選択され得る。Xは、直接結合であってもよく、R40及びR41は、独立して、H、置換又は非置換C1~C2アルキル基から選択され得る。R42及びR43は、独立して、H、置換又は非置換C1~C2アルキル基、メチル、エトキシ、ヒドロキシエチル、及びヒドロキシメチルから選択され得る。
【0026】
非環状ポリアミドは、式G1若しくは式G2の繰り返し単位の大部分を含み得るか、又は非環状ポリアミドは、少なくとも約70モル%、及び少なくとも80モル%を含む、式G1若しくは式G2の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含むことができる。式G1及び式G2の繰り返し単位の具体的な例としては、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-N-メチル-2-メチルプロピオンアミド、N-ビニル-2-メチル-プロピオンアミド、N-ビニル-N,N’-ジメチルウレア、N,N-ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、並びに式G3及びG4の非環状アミド由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0027】
【0028】
環状ポリアミドを形成するために使用され得る好適な環状アミドの例としては、α-ラクタム、β-ラクタム、γ-ラクタム、δ-ラクタム、及びε-ラクタムが挙げられる。好適な環状ポリアミドの例としては、式G5の繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーが挙げられ、
【0029】
【化3】
式中、R
45は、水素原子又はメチル基であり、fは、1~10の数であり、Xは、直接結合、-(CO)-、又は-(CONHR
46)-であり、ここで、R
46は、C
1~C
3アルキル基である。式G5中、fは、7、6、5、4、3、2、又は1を含む、8以下であり得る。式G5中、fは、5、4、3、2、又は1を含む、6以下であり得る。式G5中、fは、2、3、4、5、6、7、又は8を含む、2~8であり得る。式G5中、fは、2又は3であり得る。Xが直接結合のとき、fは、2であり得る。かかる事例において、環状ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone、PVP)であり得る。
【0030】
環状ポリアミドは、式G5の繰り返し単位の50モル%以上を含み得るか、又は環状ポリアミドは、少なくとも70モル%、及び少なくとも80モル%を含む、式G5の繰り返し単位の少なくとも50モル%を含むことができる。
【0031】
ポリアミドはまた、環状アミド及び非環状アミドの両方の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。ポリアミドは、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルアセトアミド(polyvinylmethyacetamide、PVMA)、ポリジメチルアクリルアミド(polydimethylacrylamide、PDMA)、ポリビニルアセトアミド(polyvinylacetamide、PNVA)、ポリ(ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド)、ポリアクリルアミド、並びにこれらのコポリマー及び混合物の群から選択され得る。ポリアミドは、PVP(例えば、PVP K90)とPVMA(例えば、約570KDaのMwを有する)の混合物であってよい。
【0032】
好ましい非反応性親水性ポリマーは、PVPである。本発明において使用するのに好適なPVPポリマーは、市販されているか、又は当業者が容易に調製することができる。好ましい市販のPVPは、約55,000ダルトンの重量平均分子量を有するPVP K30である。別の好ましい市販のPVPは、約400,000ダルトンの重量平均分子量を有するPVP K60である。更に好ましいのは、PVP K30及びPVP K60の混合物である。PVP K30及びPVP K90は、様々な重量比で、例えば、5:1~1:5、又は4:1~1:1、又は3:1~1:1、又は2:1~1:1の範囲のPVP K30:PVP K90重量比で使用され得る。例えば、PVP K30:PVP K90重量比は、3:1、又は2:1、又は1.7:1、又は1:1であり得る。
【0033】
本発明のインク組成物に使用され得る例示的な非反応性親水性ポリマーとしては、デキストラン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オリゴエチレンオキシド)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリ(イミン)、ポリ(アクリル酸)、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
好ましくは、非反応性親水性ポリマーは、約30,000~約500,000、又は約40,000~約80,000、又は約50,000~約60,000の重量平均分子量を有する。好適な分子量範囲には、例えば、40,000~500,000、又は40,000~80,000、又は200,000~500,000が含まれ得る。
【0035】
インク組成物は、インク組成物の総重量(溶媒を含む)に基づいて、少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%の全非反応性親水性ポリマーの総量を含有し得る。インク組成物は、インク組成物の総重量(溶媒を含む)に基づいて、50%以下、又は40%以下、又は35%以下、又は25%以下、又は20%以下、又は15%以下、又は10%以下の全非反応性親水性ポリマーの総量を含有し得る。例えば、全非反応性親水性ポリマーの総量は、1%~40%、又は3%~35%の範囲であり得る。
【0036】
本発明のインク組成物は、結合剤ポリマーを含有し得る。結合剤ポリマーは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む少なくとも1つの親水性モノマー、少なくとも1つのシリコーン含有マクロマー、並びに任意選択でシリコーン含有モノマーから形成される、コポリマーを含み得る。
【0037】
結合剤ポリマーは、C2~C8直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C2~C8直鎖若しくは分岐鎖ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C2~C8直鎖若しくは分岐鎖トリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N-C2~C6直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスC2~C6直鎖若しくは分岐鎖ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-C2~C8直鎖若しくは分岐鎖ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスC2~C8直鎖若しくは分岐鎖ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-C2~C8直鎖若しくは分岐鎖トリヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビスC2~C8直鎖若しくは分岐鎖トリヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、又はこれらの混合物を含む、少なくとも1つの親水性モノマーから形成され得る。
【0038】
結合剤ポリマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、又はこれらの混合物を含む、少なくとも1つの親水性モノマーから形成され得る。
【0039】
結合剤ポリマーは、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド(dimethylacrylamide、DMA)、N-ビニルピロリドン(N-vinylpyrrolidone、NVP)、N-ビニルアセトアミド(N-vinyl acetamide、NVA)、N-ビニルN-メチルアセトアミド(VMA)、N-イソプロピルアクリルアミド、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、アクリル酸(acrylic acid、AA)、メタクリル酸(methacrylic acid、MAA)、N-[(エテニルオキシ)カルボニル]-β-アラニン、3-アクリルアミドプロパン酸(ACA1)、5-アクリルアミドプロパン酸(ACA2)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロリド(METAC又はQ塩)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、1-プロパンアミニウム,N-(2-カルボキシエチル)-N,N-ジメチル-3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]-,分子内塩(CBT);1-プロパンアミニウム,N,N-ジメチル-N-[3-[(1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ]プロピル]-3-スルホ-,分子内塩(SBT);3,5-ジオキサ-8-アザ-4-ホスファウンデカ-10-エン-1-アミニウム,4-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-9-オキソ-,分子内塩,4-オキシド(9CI)(PBT)、及びこれらの混合物からなる群から独立して選択される少なくとも1つの親水性モノマーを含む、反応性モノマー混合物から形成され得る。
【0040】
結合剤ポリマーは、好ましくは、上述の親水性モノマーのうちの1つ又は2つ以上などの親水性モノマーに加えて、シリコーン含有マクロマーから形成され得る。シリコーン含有マクロマーは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチリル、ビニル、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルエーテル、O-ビニルカーボネート、及びO-ビニルカルバメートからなる群から選択される1つの重合性官能基を含み得、かつ約1~約200個の二価二置換シロキサン繰り返し単位を有し得、C1~C8直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基で終端され得る。
【0041】
シリコーン含有マクロマーは、式Iに示される化学構造を含み得、
【0042】
【化4】
式中、Zが、O、N、S、又はNCH
2CH
2Oから選択され、Z=O又はSの場合、R
2は、不要であり、R
1が、水素原子又はメチルであり、nは、1~200、又は1~100、又は1~50、又は1~20の整数であり、R
3が、アルキレンセグメント(CH
2)
yであり、ここで、yは、1~6、1~4、又は2~4の整数であり、各メチレン基が、任意選択で、更にかつ独立して、エーテル、アミン、エステル、ケトン、カルボニル、カルボキシレート、及びカルバメートからなる群から選択される基で置換され得るか、又はyが2若しくは3以上である場合、非末端メチレン基が、任意選択で、カルバメート基で置換されるか、あるいはR
3が、オキシアルキレンセグメントO(CH
2)
zであり、ここで、zが、1~3の整数であるか、あるいはR
3が、アルキレンセグメント及びオキシアルキレンセグメントの混合物であり、y及びzの和が、1~9であり、R
2及びR
4が独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルコキシ基、直鎖又は分岐鎖ポリエチレンオキシアルキル基、アルキル-シロキサニル-アルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換若しくは非置換アリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、1~6個の炭素原子を含有するモノ-、ジ、若しくはトリ-ヒドロキシアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、R
5が、1~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、又はアリール基であり、これらのいずれも、1つ又は2つ以上のフッ素原子又はトリメチルシロキシ基で更に置換されたものであってもよい。
【0043】
これらのシリコーン含有マクロマーの非限定的な例としては、式IIに示されるモノ-n-アルキル末端モノ-メタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(式中、nは、3~50、3~25、及び3~15であり、R5は、1~8個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基である)、式IIIに示されるモノ-n-ブチル末端モノ-メタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)(式中、nは、3~50、3~25、又は3~15である)、及び式IV~XIに示される化学構造を有するマクロマー(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、各R2及びR4は独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖ポリエチレンオキシアルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換若しくは非置換アリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、又はこれらの組み合わせであり、R5は、1~8個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、又は環状アルキル基であり、nは、3~50、3~25、又は3~15である)が挙げられる。
【0044】
【0045】
【0046】
好適なモノ-アルキル末端モノ(メタ)アクリルオキシアルキル末端ポリジアルキルシロキサンの例としては、モノ-n-ブチル末端モノ(メタ)アクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、モノ-n-メチル末端モノ(メタ)アクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、モノ-n-ブチル末端モノ(メタ)アクリルオキシプロピル末端ポリジエチルシロキサン、モノ-n-メチル末端モノ(メタ)アクリルオキシプロピル末端ポリジエチルシロキサン、モノ-アルキル末端モノ(メタ)アクリルアミドアルキル末端ポリジアルキルシロキサン、モノ-アルキル末端モノ(メタ)アクリルオキシアルキル末端ポリジアリールシロキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
シリコーン含有マクロマーは、式XIIに示される化学構造を有する単官能性ヒドロキシル置換ポリ(ジアルキルシロキサン)を含み得、
【0048】
【化7】
式中、Zが、O、N、S、又はNCH
2CH
2Oから選択され、Z=O又はSのとき、R
2は、不要であり、R
1が、水素原子又はメチルであり、nは、1~200の整数であり、R
2及びR
4は独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルコキシ基、直鎖又は分岐鎖ポリエチレンオキシアルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換若しくは非置換アリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、又はこれらの組み合わせであり、R
5は、1~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、又はアリール基であり、これらのいずれも、1つ又は2つ以上のフッ素原子又はトリメチルシロキシ基で更に置換されたものであってもよい。
【0049】
ヒドロキシル含有マクロマーの例としては、式XIIIに示されるようなモノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)(式中、nは、4~30、4~8、又は10~20である)、並びに式XIV及びXVに示されるような化学構造を有するマクロマー(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、nは、4~30、4~8、又は10~20であり、R4は独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルコキシ基、直鎖又は分岐鎖ポリエチレンオキシアルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換若しくは非置換アリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、又はこれらの組み合わせであり、R5は、1~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、又はアリール基であり、これらのいずれも、1つ又は2つ以上のフッ素原子又はトリメチルシロキシ基で更に置換されたものであってもよい)が挙げられる。
【0050】
【0051】
シリコーン含有マクロマーは、式XVIに示される化学構造を含み得る。
【0052】
【化9】
R
1が、水素原子又はメチルであり、nは、1~200の整数であり、R
4は独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖のポリエチレンオキシアルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換又は非置換のアリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子又はこれらの組み合わせであり、R
5は、1~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、又はアリール基であり、これらのいずれも、1つ又は2つ以上のフッ素原子又はトリメチルシロキシ基で更に置換されてもよく、R
6は、アルキレンセグメント(CH
2)
yであり、ここで、yは、0~6、0~4、及び0~2の整数であり、各メチレン基は、任意選択で、更にかつ独立して、エーテル、アミン、アルコール、エステル、カルボニル、カルボキシレート、及びカルバメートからなる群から選択される基で置換されてもよい。
【0053】
シリコーン含有マクロマーは、式I~XVIに示される化学構造を有するマクロマーの混合物であってよい。
【0054】
好ましくは、シリコーン含有マクロマーは、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(ジアルキルシロキサン)、モノアルキル末端、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(ジアリールシロキサン)、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(アルキルアリールシロキサン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0055】
最も好ましくは、シリコーン含有マクロマーは、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(式III)、モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(式XIII)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0056】
シリコーン含有マクロマーは、約500ダルトン~約10,000ダルトン、又は約500ダルトン~約5,000ダルトン、又は約500ダルトン~約2,000ダルトンの数平均分子量を有し得る。
【0057】
好ましくは、結合剤ポリマーは、シリコーン含有マクロマーと親水性モノマーとのコポリマーであり、かつコポリマーの約30~約80重量%、又は約30~約70重量%、又は約40~約60重量%、又は約45~約55重量%、又は約50重量%のシリコーン含有マクロマーの繰り返し単位から構成される。
【0058】
結合剤ポリマーは、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの組み合わせ由来の繰り返し単位を含み得る。
【0059】
最も好ましくは、結合剤ポリマーは、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)由来の繰り返し単位を含む。好ましくは、mPDMSは、コポリマーの約30~約80重量%、又は約30~約70重量%、又は約40~約60重量%、又は約45~約55重量%、又は約50重量%を構成する。
【0060】
結合剤ポリマーは、約10~約100kDaの範囲内、又は約20~約80kDaの範囲内、又は約20~約60kDaの範囲内、又は約20~約50kDaの範囲内の重量平均分子量を有し得る。
【0061】
好ましくは、結合剤ポリマーは、ブロックコポリマー又はトリポリマーではない。好ましくは、結合剤ポリマーは、ランダムコポリマーなどのランダムポリマーである。
【0062】
本明細書に記載の結合剤ポリマーは、当業者に既知の方法によって作製され得る。例えば、結合剤ポリマーは、共重合の統計にかかわらず、少なくとも2つのモノマー又はマクロマーを伴う任意のフリーラジカル重合反応を介して形成され得、ランダム又は統計的又は統計的ランダム又はグラフトコポリマーを生成する。グラフトコポリマーは、マクロマーの側鎖の組成がコポリマーの骨格と異なる場合、マクロマーから形成される。コポリマーは、共重合の統計に基づいてブロック状であり得る。しかしながら、ジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーとして正当に分類され得るコポリマー(例えば、このようなジブロックコポリマー及びトリブロックコポリマーを作製する既知の方法に基づく)は、本出願に使用されるコポリマーの定義から除外される。
【0063】
インク組成物は、好ましくは、成分の混合及び美容用レンズの形成を促進するための溶媒を更に含む。好適な溶媒としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール(1E2P)、t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール、及び3,7-ジメチル-1,7-オクタンジオール(D3O)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPME)、イソプロピルラクテート(IPL)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(HEP)、グリセロール、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい溶媒は、1E2P、IPL、D3O、HEP、1-プロパノール、又はこれらの混合物である。
【0064】
本発明による好ましいインク組成物は、各々インク組成物の総重量に基づいて、0.1~約25重量%、好ましくは約5~約15重量%の着色剤、約1~約50重量%、好ましくは約10~約40重量%の親水性ポリマー、約1~60重量%、好ましくは約5~約40重量%のトリブロックコポリマー、約50~約95重量%、好ましくは約55~約80重量%の溶媒を含む。
【0065】
インク組成物は、レンズの1つ若しくは2つ以上の表面に適用若しくは印刷してもよく、又は成形型の1つ若しくは2つ以上の表面に印刷し、当該成形型にレンズ成形材料を堆積及び硬化させてもよい。本発明のインク組成物を組み込む美容用レンズを形成するための好ましい方法では、環状ポリオレフィン、及びポリプロピレン又はポリスチレン樹脂などのポリオレフィンを含むがこれら限定されない、任意の好適な材料で作製された熱可塑性の光学成形型が使用される。インク組成物は、成形型の成形面の所望の部分に堆積させる。「成形面」とは、レンズの表面を形成するために使用される成形型又は成形型の半分の表面を意味する。好ましくは、この堆積は、以下のようにパッド印刷によって行う。
【0066】
好ましくは鋼、より好ましくはステンレス鋼で作製された金属プレートが、硬化後に水不溶性となることが可能なフォトレジスト材料で覆われる。各要素が選択されるか又は設計され、次いで写真技術などの多くの技術のいずれかを用いて所望のサイズに縮小され、金属プレート上に置かれ、フォトレジスト材料が硬化される。この後、プレートは水溶液で洗浄され、得られた像は好適な深さ、例えば、約20マイクロメートルまでプレートにエッチングされる。次いで、インク組成物は要素上に堆積され、凹部が充填される。
【0067】
また、金属プレートは、好ましい像を有する領域内の金属を抽出するために適切なソフトウェアとレーザーを使用してレーザーエッチングされてもよく、これにより深さ15μm~30μmの像を複製するキャビティが作成される。更に、好ましいパターンのレーザーエッチングが、セラミックなどの他の基板上で行われてもよい。
【0068】
表面上への印刷において使用するのに好適な幾何学形状であり、様々な硬度を有するシリコンパッドを、プレート上の像に対して押圧して、インク組成物を除去する。パッドは次いで、光学成形型の成形面に対して押圧される。成形型は、最高で12時間にわたって脱気され、過剰な溶媒及び酸素が除去され、その後、成形型はレンズ材料で充填される。次に相補的な成形型半部を使用して成形型アセンブリを完成させ、この成形型アセンブリは、使用されるレンズ材料を硬化させるのに適した条件に曝される。そのような条件は当該技術分野において周知であり、また選択されたレンズ材料に依存する。硬化が完了し、レンズを成形型から外した後、レンズは緩衝生理食塩水中で平衡化される。
【0069】
好ましい実施形態では、まず、クリアコートを成形面に適用し、乾燥させた後、インク組成物を添加する。好ましくは、このようなクリアコートは、レンズの最外面全体を形成する。クリアコートは、例えば、着色剤を含まないことを除いて本明細書に記載のインク組成物と同じであってよい。しかしながら、クリアコートに他の材料を使用してもよい。加えて、所望の美容パターンを形成するために、レンズ材料を添加する前に、クリアコート及び/又はインク組成物の複数の層を成形型に適用してもよい。
【0070】
本発明のインク組成物を使用して、任意の既知のレンズ形成材料又は着色されたハード又はソフトコンタクトレンズを製造するのに好適な材料で作製された、このようなレンズを提供することができる。好ましくは、本発明のレンズはソフトコンタクトレンズであり、レンズを形成するために選択される材料は、ソフトコンタクトレンズの製造に適した任意の材料である。本発明の方法を用いてソフトコンタクトレンズを形成する上で適した好ましい材料としては、これらに限定されるものではないが、シリコーンエラストマー、これらの全容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,371,147号、同第5,314,960号、及び同第5,057,578号に開示されるものを含むが、これらに限定されないシリコーン含有マクロマー、ハイドロゲル、シリコーン含有ハイドロゲルなど、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、レンズは、シロキサン官能基を含有し、ポリジメチルシロキサンマクロマー、メタクリルオキシプロピルポリアルキルシロキサン、及びそれらの混合物、ヒドロキシ基、カルボキシル基又はそれらの両方、及び組み合わせを含有するモノマーから形成されたシリコーンハイドロゲル又はハイドロゲルを含むが、これらに限定されない。
【0071】
ソフトウェアコンタクトレンズを製造するための材料は周知のものであり、市販されている。例えば、シリコーンハイドロゲルは、少なくとも1つの親水性成分、及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製され得、重合された場合、レンズのベース材料を形成する。レンズが形成される反応性混合物中に存在し得る親水性成分の好適なファミリーの例としては、(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、N-ビニルイミド、N-ビニルウレア、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、他の親水性ビニル化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。シリコーン含有成分は周知であり、特許文献に広く記載されている。例えば、シリコーン含有成分は、少なくとも1つの重合性基(例えば、(メタ)アクリレート、スチリル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルカルバメート、O-ビニルカーボネート、ビニル基、又はこれらの混合物)と、少なくとも1つのシロキサン基と、重合性基とシロキサン基とを連結する1つ又は2つ以上の連結基と、を含んでいてもよい。シリコーン含有成分は、例えば、1~220個のシロキサン繰り返し単位を含有し得る。シリコーン含有成分はまた、少なくとも1つのフッ素原子も含有し得る。
【0072】
更なる例として、レンズ材料は、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(これらの変形のすべてを含む)のいずれか、並びに米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、米国特許出願公開第2010/0048847号、及び米国特許出願第15/691,829号で調製されているようなシリコーンハイドロゲルであり得る。別の実施形態では、レンズは、従来のハイドロゲル材料、例えば、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オクフィルコン(ocufilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(これらの変形のすべてを含む)から作製され得る。
【0073】
レンズ材料に好ましい組成物は、N,N-ジメチルアクリルアミド(「DMA」)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、及びこれらの混合物から選択される親水性成分と、2-ヒドロキシ-3-[3-メチル-3,3-ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロポキシ]-プロピルメタクリレート(SiMAA)、モノ-メタクリルオキシプロピル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(mPDMS)、モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端モノ-n-ブチル末端ポリジメチルシロキサン(OH-mPDMS)、及びこれらの混合物から選択されるシリコーン含有成分と、内部湿潤剤(好ましくはポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)(PDMA)、又はポリビニルメチルアセトアミド(PVMA)などのポリアミド)と、フリーラジカル開始剤と、を含む。親水性成分については、DMA及びHEMAの混合物が好ましい。シリコーン含有成分については、OH-mPDMS、又はSiMAA及びmPDMSの混合物が好ましい。組成物は、希釈剤、架橋剤、光吸収化合物(例えば、UV又は高エネルギー可視光遮断剤)などを含むがこれらに限定されない、ソフトコンタクトレンズを作製するための当該技術分野において既知の他の成分を含有していてよい。
【0074】
本発明を、以下の非限定的実施例によって更に説明する。
【実施例】
【0075】
撮像を使用して、印刷されたパターンの全体的な品質を、所望のデザインと比較して定性的に評価した(表中の「スミア」)。スミアのレベルを、重大度に基づいて分類した(表中の「軽度、中度、重度、又はなし」)。また、撮像を使用して、レンズの真円度及び歪みレベルを評価した(表中の「丸形」又は「直径差(out of round、OOR)」)。許容できないレベルのヘイズ又は半透明性も、撮像によって記述される(ヘイズ又はなし)。シリコーンハイドロゲル印刷されたコンタクトレンズの画像を、P2-DBF Fiber diascopic照明ベース(倍率0.75~1倍の1倍対物レンズ)を備えるNikon SMZ18実体顕微鏡を使用してキャプチャした。印刷されたシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを、ホウ酸緩衝充填溶液で完全に満たした結晶セル内に、凹側を上にして配置した。サンプルを視野窓内に配置し、顕微鏡を調整して、画像の焦点を合わせた。
【0076】
印刷されたパターンの耐久性を、印刷された表面を綿棒で擦ることにより評価した。試験は、レンズを50回ぬぐうことからなる。各々、印刷された表面上のレンズの中心からぬぐい始め、次いで、一方向に進めた。各レンズを、4つの直交方向にぬぐって、体系的に評価した。パターンが、50回このようにぬぐっても無傷のままである場合、パターンは恒久的であるとみなす(表中の「擦り落ちなし」)。あるいは、印刷されたパターンの任意の部分が、50回ぬぐう間に取り除かれるか、乱されるか、又は除去される場合、パターンは擦り落とされるとみなした(表中の「擦り落ち」)。
【0077】
レンズの湿潤性を、室温でKRUSS DSA-100(商標)機器を使用する液滴技術を使用して、かつ脱イオン水をプローブ溶液として使用して測定した(表中の「液滴」)。試験すべきレンズを脱イオン水中ですすぎ、充填溶液を取り除いた。それぞれの試験レンズを充填溶液で湿らせたリントフリーの吸い取り紙上に置いた。レンズの両面をこの吸い取り紙と接触させて、レンズを乾燥させることなく、表面の水を除去した。適切な平坦化を確保するために、レンズは、コンタクトレンズのプラスチック成形型の凸面上に「皿部を下にして」置いた。プラスチック成形型及びレンズは、適切な中央シリンジアライメントを確実にするために、液滴器具ホルダ内に配置されている。3~4マイクロリットルの脱イオン水の液滴は、その液滴が確実にレンズから離れて垂れるように、DSA 100-Drop Shape Analysisソフトウェアを使用して注射器の先端上に形成された。その液滴は、針を下に移動することによって、レンズの表面上に円滑に放出された。その針は、液滴を分注した後、直ちに回収された。その液滴は、5~10秒間レンズ上に平衡を保たれ、接触角は、液滴画像とレンズ表面との間で測定された。典型的に、3~5個のレンズを評価し、平均接触角を報告した。標準偏差を決定し、表中に括弧()で報告した。
【0078】
以下の略語は、実施例をとおして使用され、以下の意味を有する。
L:リットル
mL:ミリリットル
equiv.又はeq.:当量
kg:キログラム
g:グラム
mg:ミリグラム
mol:モル
mmol:ミリモル
min:分
cm:センチメートル
nm:ナノメートル
rpm:毎分回転数
Da:ダルトン又はグラム/モル
kDa:キロダルトン、又は1,000ダルトンに等しい原子質量単位
wt%:重量%
TL03光:Phillips TLK 40W/03電球
BC:ベースカーブプラスチック成形型
FC:フロントカーブプラスチック成形型
PP:プロピレンのホモポリマーであり、プラスチック成形型樹脂又は成分として使用されるポリプロピレン
TT:水素化スチレンブタジエンブロックコポリマーであり、プラスチック成形型樹脂又は成分として使用されるTuftec(Asahi Kasei Chemicals)
Z:ポリシクロオレフィン熱可塑性ポリマーであり、プラスチック成形型樹脂又は成分として使用されるZeonor(Nippon Zeon Co Ltd)
RMM:反応性モノマー混合物
DMA:N,N-ジメチルアクリルアミド(Jarchem)
NVP:N-ビニルピロリドン
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(Bimax)
PVP、PVP K30、PVP K60、PVP K90:ポリ(N-ビニルピロリドン)(ISP Ashland)
TEGDMA:テトラエチレングリコールジメタクリレート(Esstech)
Omnirad 1870:ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシドのブレンド、及び
mPDMS:モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン(Mn=800~1500ダルトン)(Gelest)
SiMAA:2-プロペン酸、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル(Toray)、又は3-(3-(1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン-3-イル)プロポキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート
Norbloc:2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリリルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(Janssen)
Blue HEMA:1-アミノ-4-[3-(4-(2-メタクリロイルオキシ-エトキシ)-6-クロロトリアジン-2-イルアミノ)-4-スルホフェニルアミノ]アントラキノン-2-スルホン酸(米国特許第5,944,853号に記載)
ホウ酸塩緩衝パッキング溶液:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、十分な脱イオン水に溶解させて、2リットルのメスフラスコを満たした。
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
FTIR:フーリエ変換赤外分光法
DCA:動的接触角湿潤性
DIW:脱イオン水
IPA:イソプロピルアルコール
THF:テトラヒドロフラン
D3O:3,7-ジメチル-3-オクタノール(Vigon)
1E2P:1-エトキシ-2-プロパノール
3E3P:3-エチル3-ペンタノール
HEP:1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン
IPL:イソプロピルラクテート
【0079】
ホウ酸塩緩衝パッキング溶液:18.52グラム(300mmol)のホウ酸、3.7グラム(9.7mmol)のホウ酸ナトリウム十水和物、及び28グラム(197mmol)の硫酸ナトリウムを、十分な脱イオン水に溶解させて、2リットルのメスフラスコを満たした。
【0080】
調製1
4グラムのAIBNを300グラムの1-プロパノールに溶解させることにより、AIBN溶液を調製した。AIBN溶液は、窒素ガスで15~20分間脱気してから使用した。98グラムのHEMA及び98グラムのmPDMSを91グラムの1-プロパノールに溶解することにより、モノマー溶液を調製した。モノマー溶液は、窒素ガスで15~20分間脱気してから使用した。
【0081】
279グラムの1-プロパノールを含有する2リットルジャケット付き反応器を、水浴を使用して窒素ガス雰囲気下で70℃に加熱した。Watson-Marlowポンプを使用して、AIBN及びモノマー溶液を4時間にわたって反応器に添加した。反応混合物を一晩撹拌した後、温度を50℃に下げ、炭素-炭素二重結合バンドが消失するまで、モノマー変換をFTIRによりモニタリングした。完全な変換には約24時間を要した。
【0082】
反応混合物を透明なガラスジャーに移した。コポリマーを、水への沈殿、吸引濾過、及び真空乾燥により単離して、約182グラムの生成物(コポリマー#1)を得た。
【0083】
(実施例1)
9重量%の黒色酸化鉄顔料(Sicovit(登録商標)ブラック85 E 172、Rockwood Italia SpA-Divisione Silo)を、表1に列挙したクリアコート溶液に添加することにより、インク組成物1A~1Dを調製した。インクを、ベンチスケールボールミル(Ultra-Turrax(登録商標)チューブドライブ(Ultra-Turrax Tube Drive、UTTD)システム、IKA)を使用して混合した。加えて、インクを、ジャーローラーを使用して更に手動で混合し得るか、又はオーバーヘッドミキサーを700~1800rpmで30分間使用し得る。
【0084】
【0085】
(実施例2)
実験室スケールのパッドプリンタを使用して、フロントカーブ成形型に、まず透明なコーティング(クリアコート1A~1D)を、次いでインク1A~1Dを使用してVivid(登録商標)クリシェパターンを印刷した。これらの印刷されたフロントカーブ成形型を、窒素下で少なくとも12時間脱気した。酸素ガス濃度を0.5~5%に維持したグローブボックス内で、印刷されたコンタクトレンズを製作した。約100マイクロリットルの表2に列挙したRMM#1を、印刷されたフロントカーブ成形型に周囲温度で投入した。RMM#1の投入とBCの配置との間の時間を、「ドウェル1」と称する。公称ドウェル1の時間は、別途記載のない限り、5秒以下であった。次いで、ベースカーブ成形型を、RMM#1の上に配置した。次に、透明石英プレートを、成形型アセンブリ上に配置した。次いで、成形型アセンブリを含有するパレットを、60~70℃の硬化チャンバ内に移動させた。重りの配置と硬化開始との間の時間を、「ドウェル2」と称する。公称ドウェル2は、別途記載のない限り、5秒以下であった。成形型アセンブリを含有するパレットをTL 20W/03 T蛍光灯(Philips)で照射することによって硬化を開始し、8分間4.0mW/cm2の強度を達成するように位置決めした。
【0086】
【0087】
ほとんどのレンズがFCに付着した状態で、印刷されたレンズを手動で脱型し、レンズを70%のIPA中に約1時間又は2時間沈めることによって離型し、続いて70%のIPAで2回、任意選択で25%のIPAで2回、DIで2回、最後にホウ酸緩衝充填溶液で2回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型プロセスの目的は、すべてのレンズを欠陥なく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから充填溶液で膨潤したハイドロゲルに移行させることである。レンズをバイアル内に移した後、122℃で30分間加圧処理することにより殺菌した。無菌の印刷されたレンズ(2A~2D、インク組成物1A~1Dからそれぞれ作製)を、ヘイズ、スメア、耐久性、及び形状について評価し、結果を表3に列挙した[ドウェル1=5秒、ドウェル2=300秒]。
【0088】
【0089】
表3に示すように、印刷されたレンズ2B及び2Dは透明であり、丸形であり、印刷擦り落ちを呈さず、軽度のスメアのみを呈するか、又はスメアを呈さなかった。印刷されたレンズ2Dも湿潤性であった。
【0090】
(実施例3)
9重量%の黒色酸化鉄顔料(Sicovit(登録商標)ブラック85 E 172、Rockwood Italia SpA-Divisione Silo)を、表4に列挙したクリアコート溶液に添加することにより、インク組成物3A~3Cを調製した。インクを、ベンチスケールボールミル(Ultra-Turrax(登録商標)チューブドライブ(UTTD)システム、IKA)を使用して混合した。加えて、インクを、ジャーローラーを使用して更に手動で混合し得るか、又はオーバーヘッドミキサーを700~1800rpmで30分間使用し得る。
【0091】
【0092】
(実施例4)
実験室スケールのパッドプリンタを使用して、フロントカーブ成形型に、まず透明なコーティング(クリアコート3A~3C)を、次いでインク3A~3Cを使用してVivid(登録商標)クリシェパターンを印刷した。これらの印刷されたフロントカーブ成形型を、窒素下で少なくとも12時間脱気した。酸素ガス濃度を0.5~5%に維持したグローブボックス内で、印刷されたコンタクトレンズを製作した。約100マイクロリットルの表2に列挙したRMM#1を、印刷されたフロントカーブ成形型に周囲温度で投入した。RMM#1の投入とBCの配置との間の時間を、「ドウェル1」と称する。公称ドウェル1の時間は、別途記載のない限り、5秒以下であった。次いで、ベースカーブ成形型を、RMM#1の上に配置した。次に、透明石英プレートを、成形型アセンブリ上に配置した。次いで、成形型アセンブリを含有するパレットを、60~70℃の硬化チャンバ内に移動させた。重りの配置と硬化開始との間の時間を、「ドウェル2」と称する。公称ドウェル2は、別途記載のない限り、5秒以下であった。成形型アセンブリを含有するパレットをTL 20W/03 T蛍光灯(Philips)で照射することによって硬化を開始し、8分間4.0mW/cm2の強度を達成するように位置決めした。
【0093】
ほとんどのレンズがFCに付着した状態で、印刷されたレンズを手動で脱型し、レンズを70%のIPA中に約1時間又は2時間沈めることによって離型し、続いて70%のIPAで2回、任意選択で25%のIPAで2回、DIで2回、最後にホウ酸緩衝充填溶液で2回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型プロセスの目的は、すべてのレンズを欠陥なく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから充填溶液で膨潤したハイドロゲルに移行させることである。レンズをバイアル内に移した後、122℃で30分間加圧処理することにより殺菌した。無菌の印刷されたレンズ(4A~4C、インク組成物3A~3Cからそれぞれ作製)を、ヘイズ、スメア、耐久性、及び形状について評価し、結果を表5に列挙した[ドウェル1=5秒、ドウェル2=300秒]。
【0094】
【0095】
表5に示すように、印刷されたレンズ4B及び4Cは透明であり、丸形であり、印刷擦り落ちを呈さず、軽度のスメアのみを呈するか、又はスメアを呈さなかった。印刷されたレンズ4Bも湿潤性であった。
【0096】
(実施例5)
9重量%の黒色酸化鉄顔料(Sicovit(登録商標)ブラック85 E 172、Rockwood Italia SpA-Divisione Silo)を、表6に列挙したクリアコート溶液に添加することにより、インク組成物5A~5Dを調製した。インクを、ベンチスケールボールミル(Ultra-Turrax(登録商標)チューブドライブ(UTTD)システム、IKA)を使用して混合した。加えて、インクを、ジャーローラーを使用して更に手動で混合し得るか、又はオーバーヘッドミキサーを700~1800rpmで30分間使用し得る。
【0097】
【0098】
(実施例6)
実験室スケールのパッドプリンタを使用して、フロントカーブ成形型に、まず透明なコーティング(クリアコート5A~5D)を、次いでインク5A~5Dを使用してVivid(登録商標)クリシェパターンを印刷した。これらの印刷されたフロントカーブ成形型を、窒素下で少なくとも12時間脱気した。酸素ガス濃度を0.5~5%に維持したグローブボックス内で、印刷されたコンタクトレンズを製作した。約100マイクロリットルの表2に列挙したRMM#1を、印刷されたフロントカーブ成形型に周囲温度で投入した。RMM#1の投入とBCの配置との間の時間を、「ドウェル1」と称する。公称ドウェル1の時間は、別途記載のない限り、5秒以下であった。次いで、ベースカーブ成形型を、RMM#1の上に配置した。次に、透明石英プレートを、成形型アセンブリ上に配置した。次いで、成形型アセンブリを含有するパレットを、60~70℃の硬化チャンバ内に移動させた。重りの配置と硬化開始との間の時間を、「ドウェル2」と称する。公称ドウェル2は、別途記載のない限り、5秒以下であった。成形型アセンブリを含有するパレットをTL 20W/03 T蛍光灯(Philips)で照射することによって硬化を開始し、8分間4.0mW/cm2の強度を達成するように位置決めした。
【0099】
ほとんどのレンズがFCに付着した状態で、印刷されたレンズを手動で脱型し、レンズを70%のIPA中に約1時間又は2時間沈めることによって離型し、続いて70%のIPAで2回、任意選択で25%のIPAで2回、DIで2回、最後にホウ酸緩衝充填溶液で2回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型プロセスの目的は、すべてのレンズを欠陥なく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから充填溶液で膨潤したハイドロゲルに移行させることである。レンズをバイアル内に移した後、122℃で30分間加圧処理することにより殺菌した。無菌の印刷されたレンズ(6A~6D、インク組成物5A~5Dからそれぞれ作製)を、ヘイズ、スメア、耐久性、及び形状について評価し、結果を表7に列挙した[ドウェル1=5秒、ドウェル2=300秒]。
【0100】
【0101】
表7に示すように、印刷されたレンズ6C及び6Dは透明であり、丸形であり、印刷擦り落ちを呈さず、軽度のスメアのみを呈した。印刷されたレンズ6C及び6Dも湿潤性であった。
【0102】
(実施例7)
9重量%の黒色酸化鉄顔料(Sicovit(登録商標)ブラック85 E 172、Rockwood Italia SpA-Divisione Silo)を、表8に列挙したクリアコート溶液に添加することにより、インク組成物7Aを調製した。3.8~9.0重量%の様々な濃度の黒色、青色、及び白色顔料の組み合わせを、表8に列挙したクリアコート溶液に添加して、3色のインクのセットを作成することにより、インクセット組成物7Bを調製した。3つのインクのセットを使用して、印刷されたレンズ7Bのための1つの美容用インクデザインを作成した。インクを、ベンチスケールボールミル(Ultra-Turrax(登録商標)チューブドライブ(UTTD)システム、IKA)を使用して混合した。加えて、インクを、ジャーローラーを使用して更に手動で混合し得るか、又はオーバーヘッドミキサーを700~1800rpmで30分間使用し得る。
【0103】
【0104】
パッドプリンタを使用して、フロントカーブ成形型に、まず透明なコーティング(クリアコート7A及び7B)を、次いでインク7A又は7Bを使用してクリシェパターンを印刷した。酸素ガスレベルを0.5~5%に維持した試験的な設備製造ライン内で、印刷されたコンタクトレンズを製作した。約100マイクロリットルの表9に列挙したRMM#2を、印刷されたフロントカーブ成形型に周囲温度で投入した。RMM#2の投入とBCの配置との間の時間を、「ドウェル1」と称する。公称ドウェル1の時間は、別途記載のない限り、5秒以下であった。次いで、ベースカーブ成形型を、RMM#2の上に配置した。次に、早期硬化重りを、成形型アセンブリ上に配置した。次いで、成形型アセンブリを含有するパレットを、約30℃の加熱された早期硬化トンネル内に移動させた。重りの配置と硬化開始との間の時間を、「ドウェル2」と称する。公称ドウェル2は、別途記載のない限り、5秒以下であった。成形型アセンブリを含有するパレットをTL 20W/03 T蛍光灯(Philips)で照射することによって硬化を開始し、8分間4.0mW/cm2の強度を達成するように位置決めした。
【0105】
【0106】
ほとんどのレンズがFCに付着した状態で、印刷されたレンズを脱型し、レンズを70%のIPA中に約1時間又は2時間沈めることにより離型し、続いて70%のIPAで2回、任意選択で25%のIPAで2回、DIで2回、最後にホウ酸緩衝充填溶液で1回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型プロセスの目的は、すべてのレンズを欠陥なく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから充填溶液で膨潤したハイドロゲルに移行させることである。レンズを検査し、ヒートシールされたブリスタにパッケージングした後、121℃で18分間加圧処理することにより殺菌した。無菌の印刷されたレンズ(7A~7B、インク組成物7A~7Bからそれぞれ作製)を、ヘイズ、スミア、耐久性、形状、及び湿潤性について評価し、結果を表3に列挙した(ドウェル1=5秒、ドウェル2=300秒)。
【0107】
【0108】
表10に示すように、印刷されたレンズ7A及び7Bは透明であり、丸形であり、印刷擦り落ち又はスメアを呈さず、湿潤性であった。
【0109】
(実施例8)
3.8~9.0重量%の様々な濃度の黒色、青色、及び白色顔料の組み合わせを、表8に列挙したインクベース溶液に添加して、3色のインクのセットを作成することにより、インクセット組成物8Aを調製した。3つのインクのセットを使用して、印刷されたレンズ8Aのための1つの美容用インクデザインを作成した。インクを、ベンチスケールボールミル(Ultra-Turrax(登録商標)チューブドライブ(UTTD)システム、IKA)を使用して混合した。加えて、インクを、ジャーローラーを使用して更に手動で混合し得るか、又はオーバーヘッドミキサーを700~1800rpmで30分間使用し得る。
【0110】
【0111】
パッドプリンタを使用して、フロントカーブ成形型に、まず透明なコーティング(実施例7からのクリアコート7B)を、次いでインクセット8Aを使用してクリシェパターンを印刷した。酸素ガスレベルを0.5~5%に維持した試験的な設備製造ライン上で、印刷されたコンタクトレンズを製作した。約100マイクロリットルの表9に列挙したRMM#2を、印刷されたフロントカーブ成形型に周囲温度で投入した。RMM#2の投入とBCの配置との間の時間を、「ドウェル1」と称する。公称ドウェル1の時間は、別途記載のない限り、5秒以下であった。次いで、ベースカーブ成形型を、RMM#2の上に配置した。次に、早期硬化重りを、成形型アセンブリ上に配置した。次いで、成形型アセンブリを含有するパレットを、約30℃の加熱された早期硬化トンネル内に移動させた。重りの配置と硬化開始との間の時間を、「ドウェル2」と称する。公称ドウェル2は、別途記載のない限り、5秒以下であった。成形型アセンブリを含有するパレットをTL 20W/03 T蛍光灯(Philips)で照射することによって硬化を開始し、8分間4.0mW/cm2の強度を達成するように位置決めした。
【0112】
ほとんどのレンズがFCに付着した状態で、印刷されたレンズを脱型し、レンズを70%のIPA中に約1時間又は2時間沈めることにより離型し、続いて70%のIPAで2回、任意選択で25%のIPAで2回、DIで2回、最後にホウ酸緩衝充填溶液で1回洗浄した。各洗浄工程を約30分続けた。当業者は、正確なレンズ離型工程が、イソプロパノール水溶液の濃度、各溶媒での洗浄の回数及び各工程の継続時間に関して、レンズ配合及び成形型材料に応じて変化させることができることを理解している。レンズ離型プロセスの目的は、すべてのレンズを欠陥なく離型すること、及び希釈剤で膨潤したネットワークから充填溶液で膨潤したハイドロゲルに移行させることである。レンズを検査し、ヒートシールされたブリスタにパッケージングした後、121℃で18分間加圧処理することにより殺菌した。無菌の印刷されたレンズ(78A、クリアコート7B及びインク組成物セット8Aからそれぞれ作製)を、ヘイズ、スメア、耐久性、形状、及び湿潤性について評価し、結果を表3に列挙した(ドウェル1=5秒、ドウェル2=300秒)。
【0113】
【0114】
表12に示すように、異種インク層組成物を使用した印刷されたレンズ8Aは透明であり、丸形であり、印刷擦り落ち又はスメアを呈さず、湿潤性であった。
【0115】
〔実施の態様〕
(1) 美容用コンタクトレンズを作製するためのインク組成物であって、(a)着色剤、(b)非反応性親水性ポリマー、及び任意選択で(c)結合剤ポリマーを含む、インク組成物。
(2) 前記非反応性親水性ポリマーが、ポリアミドを含む、実施態様1に記載のインク組成物。
(3) 前記非反応性親水性ポリマーが、デキストラン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オリゴエチレンオキシド)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、ポリ(イミン)、ポリ(アクリル酸)、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の混合物を含む、実施態様1に記載のインク組成物。
(4) 任意選択の前記結合剤ポリマーが、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、及びこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む親水性モノマー、シリコーン含有マクロマー、並びに任意選択でシリコーン含有モノマーから形成されるコポリマーを含む、実施態様1~3のいずれかに記載のインク組成物。
(5) (d)溶媒を更に含む、実施態様1~4のいずれかに記載のインク組成物。
【0116】
(6) 前記溶媒が、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール(1E2P)、t-ブチルアルコール、t-アミルアルコール、及び3,7-ジメチル-1,7-オクタンジオール(D3O)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPME)、イソプロピルラクテート(IPL)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(HEP)、グリセロール、又はこれらの2つ若しくは3つ以上の混合物を含む、実施態様5に記載のインク組成物。
(7) 前記非反応性親水性ポリマーが、環状ポリアミドを含む、実施態様1~6のいずれかに記載のインク組成物。
(8) 前記着色剤が、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カルバゾールバイオレット、バットオレンジ#1、酸化鉄ブラック、酸化鉄ブラウン、酸化鉄イエロー、酸化鉄レッド、二酸化チタン、ジクロロトリアジン、ビニルスルホン系染料、及びこれらの2つ又は3つ以上の混合物を含む、実施態様1~7のいずれかに記載のインク組成物。
(9) 各々前記インク組成物の総重量に基づいて、0.1~約25重量%の前記着色剤、約1~約50重量%の前記非反応性親水性ポリマー、約1~60重量%の前記結合剤ポリマー、及び約50~約95重量%の溶媒を含む、実施態様1~8のいずれかに記載のインク組成物。
(10) 前記結合剤ポリマーが、約1.66×10-23~約1.66×10-22kg(約10~約100kDa)の範囲内の重量平均分子量を有する、実施態様1~9のいずれかに記載のインク組成物。
【0117】
(11) 前記非反応性親水性ポリマーが、ポリ(ビニルピロリドン)である、実施態様1~10のいずれかに記載のインク組成物。
(12) 前記親水性モノマーが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、又はこれらの混合物を含む、実施態様4に記載のインク組成物。
(13) 前記親水性モノマーが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである、実施態様12に記載のインク組成物。
(14) 前記シリコーン含有マクロマーが、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチリル、ビニル、N-ビニルラクタム、N-ビニルアミド、O-ビニルエーテル、O-ビニルカーボネート、及びO-ビニルカーボネートからなる群から選択される重合性官能基を含む、実施態様4~13のいずれかに記載のインク組成物。
(15) 前記シリコーン含有マクロマーが、式Iに示される化学構造を含み、
【化10】
式中、Zが、O、N、S、又はNCH
2CH
2Oから選択され、Z=O又はSの場合、R
2は、不要であり、R
1が、水素原子又はメチルであり、nが、1~200の整数であり、R
3が、アルキレンセグメント(CH
2)
yであり、ここで、yが、1~6の整数であり、各メチレン基が、任意選択で、更にかつ独立して、エーテル、アミン、エステル、ケトン、カルボニル、カルボキシレート、及びカルバメートからなる群から選択される基で置換され得るか、又はyが2若しくは3以上である場合、非末端メチレン基が、任意選択で、カルバメート基で置き換えられ得るか、あるいはR
3が、オキシアルキレンセグメントO(CH
2)
zであり、ここで、zが、1~3の整数であるか、あるいはR
3が、アルキレンセグメント及びオキシアルキレンセグメントの混合物であり、y及びzの和が、1~9であり、R
2及びR
4が、独立して、水素原子、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、1~6個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルコキシ基、直鎖若しくは分岐鎖ポリエチレンオキシアルキル基、アルキル-シロキサニル-アルキル基、フェニル基、ベンジル基、置換若しくは非置換アリール基、フルオロアルキル基、部分フッ素化アルキル基、ペルフルオロアルキル基、フッ素原子、1~6個の炭素原子を含有するモノ-、ジ、若しくはトリ-ヒドロキシアルキル基、又はこれらの組み合わせであり、R
5が、1~8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基、又はアリール基であり、これらのいずれも、1つ又は2つ以上のフッ素原子又はトリメチルシロキシ基で更に置換され得る、実施態様4~14のいずれかに記載のインク組成物。
【0118】
(16) 前記シリコーン含有マクロマーが、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(ジアルキルシロキサン)、モノアルキル末端、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(ジアリールシロキサン)、モノアルキル末端、モノ(メタ)アクリレート末端ポリ(アルキルアリールシロキサン)、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様4~15のいずれかに記載のインク組成物。
(17) 前記シリコーン含有マクロマーが、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサンである、実施態様16に記載のインク組成物。
(18) 前記シリコーン含有マクロマーが、式VIIIに示される化学構造を含み、
【化11】
式中、Zが、O、N、S、又はNCH
2CH
2Oから選択され、R
1が、独立して、水素原子又はメチル基であり、R
2、R
3、及びR
4が、独立して、水素原子、又は1~8個の炭素原子を含有する直鎖、分岐鎖、若しくは環状アルキル基であり、これらのいずれも、少なくとも1つのヒドロキシ基で更に置換され得、かつ任意選択で、アミド基、エーテル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、及びこれらの組み合わせで置換され得、Z=O及びSの場合、R
2は、不要であり、nが、シロキサン繰り返し単位の数であり、かつ4~200であり、R
5が、直鎖又は分岐鎖C
1~C
8アルキル基から選択される、実施態様4~17のいずれかに記載のインク組成物。
(19) 前記シリコーン含有マクロマーが、モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサンである、実施態様4~18のいずれかに記載のインク組成物。
(20) 前記シリコーン含有マクロマーが、モノ-n-ブチル末端モノメタクリルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、モノ-n-ブチル末端モノ-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロピル)-プロピルエーテル末端ポリジメチルシロキサン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様4~19のいずれかに記載のインク組成物。
【0119】
(21) 前記シリコーン含有マクロマーが、8.30×10-25キログラム(500ダルトン)を超える数平均分子量を有する、実施態様4~20のいずれかに記載のインク組成物。
(22) 前記シリコーン含有マクロマーが、約8.30×10-25キログラム~約3.32×10-23キログラム(約500ダルトン~約20,000ダルトン)の数平均分子量を有する、実施態様4~20のいずれかに記載のインク組成物。
(23) 前記シリコーン含有マクロマーの繰り返し単位が、前記結合剤ポリマーの総重量の約30~約80重量%の範囲内で存在する、実施態様4~22のいずれかに記載のインク組成物。
(24) 前記シリコーン含有モノマーが、3-メタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-アクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-メタクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3-アクリルアミドプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、トリス(トリメチルシロキシ)シリルスチレン、2-メチル-2-ヒドロキシ-3-[3-[1,3,3,3-テトラメチル-1-[(トリメチルシリル)オキシ]ジシロキサニル]プロポキシ]プロピルエステル、N-(2,3-ジヒドロキシルプロピル)N-(3-テトラ(ジメチルシロキシ)ジメチルブチルシラン)プロピル)アクリルアミド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、実施態様4~23のいずれかに記載のインク組成物。
(25) 美容用コンタクトレンズを作製するための方法であって、(i)第1のレンズ形成型のレンズ形成面にクリアコートを適用することと、(ii)前記クリアコートに実施態様1~24のいずれかに記載のインク組成物を適用することと、(iii)任意選択で、工程(i)、工程(ii)、又は工程(i)及び工程(ii)の両方を繰り返すことと、(iv)レンズ材料を前記第1のレンズ形成型に分注することと、(v)第2のレンズ形成型を適用することと、(vi)前記レンズ材料を硬化させて、前記美容用コンタクトレンズを形成することと、を含む、方法。
【0120】
(26) 実施態様1~24のいずれかに記載のインク組成物が上に適用されたコンタクトレンズを含む、美容用コンタクトレンズ。
(27) 美容用シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである、実施態様26に記載の美容用コンタクトレンズ。
(28) 内部湿潤剤を更に含む、実施態様27に記載の美容用コンタクトレンズ。
(29) 前記レンズが、複数層のインク組成物を含み、前記複数層のインク組成物が、同じであり得るか又は異なり得る、実施態様26~28のいずれかに記載の美容用コンタクトレンズ。
(30) 非反応性親水性ポリマーを含まないインク層を更に含む、実施態様26~29のいずれかに記載の美容用コンタクトレンズ。
【国際調査報告】