IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャンハイテック ユニバーシティの特許一覧

特表2022-547781ASIC1チャネルアンタゴニスト抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ASIC1チャネルアンタゴニスト抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221109BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221109BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221109BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221109BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221109BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
A61K39/395 N
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P9/10
A61P25/20
A61P25/04
A61P27/02
A61P25/00
G01N33/53 D
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022504084
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 CN2019097246
(87)【国際公開番号】W WO2021012176
(87)【国際公開日】2021-01-28
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520025002
【氏名又は名称】シャンハイテック ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAITECH UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】ヤン グァン
(72)【発明者】
【氏名】キアン ミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB42
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045BA70
4H045BA71
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本技術は、概して、虚血性脳卒中を阻止するまたは治療する組成物および方法に関する。本技術は、抗ASIC1a抗体を有効量で投与して、虚血性脳卒中に罹患したまたはかかりやすい対象を治療することにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における虚血性脳卒中を治療するための方法であって、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含み、
前記VHが、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;
前記VLが、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記方法。
【請求項2】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抗体またはその抗原結合フラグメントがASIC1aタンパク質に結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、ASIC1aの細胞外ドメインに結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合フラグメントがプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
Hが、配列番号2、12、22、32、42、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
Lが、配列番号7、17、27、37、47、および57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、それぞれ、
配列番号2および配列番号7(ASC01);
配列番号12および配列番号17(ASC02);
配列番号22および配列番号27(ASC03);
配列番号32および配列番号37(ASC04);
配列番号42および配列番号47(ASC05);ならびに
配列番号52および配列番号57(ASC06)
からなる群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
抗体またはその抗原結合フラグメントがASC06である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
それを必要とする対象における虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状を緩和するための方法であって、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含み、
前記VHが、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;
前記VLが、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記方法。
【請求項14】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、それぞれ、
配列番号2および配列番号7(ASC01);
配列番号12および配列番号17(ASC02);
配列番号22および配列番号27(ASC03);
配列番号32および配列番号37(ASC04);
配列番号42および配列番号47(ASC05);ならびに
配列番号52および配列番号57(ASC06)
からなる群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む、請求項13~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
抗体またはその抗原結合フラグメントがASIC1aタンパク質に結合する、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、ASIC1aの細胞外ドメインに結合する、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
抗体またはその抗原結合フラグメントがプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する、請求項13~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状が、突発的脱力、顔面、腕、または脚の麻痺またはしびれ、顔面の片側の下垂、錯乱、発話困難、言語理解障害、一方または両方の目での視力障害、かすみ目、黒内障、複視、呼吸困難、めまい、歩行困難、平衡感覚の喪失、協調運動障害、原因不明の転倒、意識の喪失、突然の頭痛または激しい頭痛である、請求項13~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状が、突発性顔面脱力、顔面の片側の下垂、上肢の片側筋力低下、または異常発語である、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
それを必要とする対象における虚血性脳卒中を治療するための方法であって、
(a)配列番号7、17、27、37、47、もしくは57のうちのいずれか1つの軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列;および/または(b)配列番号2、12、22、32、42、もしくは52のうちのいずれか1つに存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列(VH
を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項25】
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記VHが、配列番号3、13、23、33、および43からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、および44からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、および45からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;
前記VLが、配列番号8、18、28、38、および48からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、および49からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、および50からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項26】
IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む、請求項25に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項27】
抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される、請求項25~26のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項28】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項25~27のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項29】
ASIC1aタンパク質に結合する、請求項25~28のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項30】
ASIC1aの細胞外ドメインに結合する、請求項25~29のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項31】
2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する、請求項25~30のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項32】
ASIC1a電流を阻害する、請求項25~31のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項33】
請求項25~32のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントをコードする、核酸配列。
【請求項34】
配列番号1、6、11、16、21、26、31、36、41、46、51、および56からなる群から選択される、核酸配列。
【請求項35】
請求項33または請求項34に記載の核酸を発現する、宿主細胞またはベクター。
【請求項36】
請求項25~32のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および使用のための指示書を含む、キット。
【請求項37】
抗体または抗原結合フラグメントは、放射性標識、蛍光標識、および発色標識からなる群から選択される少なくとも1種の検出可能な標識にカップリングされている、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
抗体または抗原結合フラグメントに特異的に結合する二次抗体をさらに含む、請求項36または37に記載のキット。
【請求項39】
生物学的サンプルにおけるASIC1aタンパク質を検出するための方法であって、生物学的サンプルと、検出可能な標識にコンジュゲートされた、請求項25~32のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させる工程;ならびに生物学的サンプルにおける検出可能な標識の存在およびレベルを検出する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、一般に、ASIC1a活性および/またはシグナル伝達と関連した疾患を阻止するまたは治療する組成物および方法に関する。より特に、本技術は、有効量の抗ASIC1a抗体を対象に投与して、ASIC1a活性および/またはシグナル伝達によって引き起こされるまたはそれに関連した虚血性脳卒中および関連病状に罹患したまたはかかりやすい対象を治療することを提供する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明は、読み手の理解を支援するために提供される。提供される情報または引用される参考文献のいずれも、先行技術であるとは認められない。
酸感受性イオンチャネル(ASIC)は、細胞外プロトンによってゲート制御(gate)される。ASICは、細胞外アシドーシスによって活性化されるカチオンチャネルである。6種のASICサブユニット:ASIC1a、ASIC1b、ASIC2a、ASIC2b、ASIC3、およびASIC4をコードする少なくとも4種の遺伝子が同定されており、その中の「a」および「b」という名称は、それぞれ、ASIC1およびASIC2遺伝子の選択的スプライシングされた変種であるACCN2およびACCN1を表す。アミロリドによる遮断に感受性がある機能的ASICチャネルは、ホモマーまたはヘテロマー形態のいずれかでアセンブリした3種のサブユニットから構成される。ASIC1aは脳において高発現し、他のASICアイソフォームとともに機能的ホモマーまたはヘテロマーチャネルを形成する。pH7.0付近の活性化閾値を有して、ASIC1aは、脳においてアシドーシスの一次センサーとして働き、正常ならびに病態に関わる。
【発明の概要】
【0003】
1つの態様において、本技術は、それを必要とする対象における虚血性脳卒中を治療するための方法であって、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含み、VHは、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;VLは、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記方法を提供する。
【0004】
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、VHは、配列番号2、12、22、32、42、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、VLは、配列番号7、17、27、37、47、および57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ、配列番号2および配列番号7(ASC01);配列番号12および配列番号17(ASC02);配列番号22および配列番号27(ASC03);配列番号32および配列番号37(ASC04);配列番号42および配列番号47(ASC05);ならびに配列番号52および配列番号57(ASC06)からなる群から選択されるVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASC06である。
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。
【0005】
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、それぞれ、配列番号2および配列番号7(ASC01);配列番号12および配列番号17(ASC02);配列番号22および配列番号27(ASC03);配列番号32および配列番号37(ASC04);配列番号42および配列番号47(ASC05);ならびに配列番号52および配列番号57(ASC06)からなる群から選択されるVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含む。
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1aタンパク質またはそのフラグメントを発現する細胞に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1aタンパク質の細胞外ドメインまたは完全長ASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する。
【0006】
1つの態様において、本技術は、それを必要とする対象における虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状を緩和する方法を提供することであって、前記方法は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含み、前記VHは、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;前記VLは、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ことを提供する。
【0007】
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1aタンパク質の細胞外ドメインまたは完全長ASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aを阻害する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1a電流を阻害する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する。
【0008】
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状は、突発的脱力、顔面、腕、または脚の麻痺またはしびれ、顔面の片側の下垂、錯乱、発話困難、言語理解障害、一方または両方の目での視力障害、かすみ目、黒内障、複視、呼吸困難、めまい、歩行困難、平衡感覚の喪失、協調運動障害、原因不明の転倒、意識の喪失、突然の頭痛または激しい頭痛である。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状は、突発性顔面脱力、顔面の片側の下垂、上肢の片側筋力低下、または異常発語である。
【0009】
1つの態様において、本技術は、それを必要とする対象における虚血性脳卒中を治療するための方法であって、(a)配列番号7、17、27、37、47、もしくは57のうちのいずれか1つの軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列(VL);および/または(b)配列番号2、12、22、32、42、もしくは52のうちのいずれか1つに存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列(VH)、を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0010】
1つの態様において、本技術は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントであって、VHは、配列番号3、13、23、33、および43からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、および44からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、および45からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;VLは、配列番号8、18、28、38、および48からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、および49からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、および50からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1aタンパク質の細胞外ドメインまたは完全長ASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1a電流を阻害する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する。
1つの態様において、本技術は、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体を含む組成物を提供する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、核酸配列は、配列番号1、6、11、16、21、26、31、36、41、46、51、および56からなる群から選択される。
【0011】
1つの態様において、本技術は、本明細書に開示される任意の核酸を発現する宿主細胞またはベクターを提供する。
1つの態様において、本技術は、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメント、および使用のための指示書を含むキットを提供する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメントは、放射性標識、蛍光標識、および発色標識からなる群から選択される少なくとも1種の検出可能な標識にカップリングされている。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、キットは、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合する二次抗体をさらに含む。
【0012】
1つの態様において、本技術は、生物学的サンプルにおけるASIC1aタンパク質を検出するための方法であって、生物学的サンプルと本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させる工程であって、抗体またはその抗原結合フラグメントは検出可能な標識にコンジュゲートされている、工程;ならびに生物学的サンプルにおける検出可能な標識の存在およびレベルを検出する工程を含む、前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ELISAによって測定される、短縮hASIC1a(アミノ酸13~464;以降「ΔhASIC1a」)を含有するナノディスクへの精製されたscFv抗体ASC01~ASC06の結合を示したグラフである。空ナノディスクを陰性対照として使用した。
図2】表面にhASIC1aを発現する細胞との6種のscFv抗体の相互作用を例示した共焦点顕微鏡法画像である。CHO-K1細胞に、hASIC1a-eYFP(緑色)をコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトし、ASC01~ASC06(赤色)で染色し、核をDAPI(青色)によって標識した、バー=10μm。
図3A】ASC06 scFvおよびASC06-IgG1抗体で染色されたCHO-K1/hASIC1a細胞を示した画像である。CHO-K1細胞に、hASIC1a-eYFP(緑色)をコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトし、ASC06 scFvおよびASC06-IgG1抗体(赤色)で染色し、核をDAPI(青色)によって標識した、バー=10μm。
図3B】シングルサイクルカイネティクス(SCK)モデルを用いた、Biacore SPR(表面プラズモン共鳴)システムを使用して判定される、ΔhASIC1aへのASC06-IgG1の結合親和性を示したグラフである。時間の関数として共鳴単位(RU、表面の分析物結合能の変化を反映する)を描写した線グラフ。ΔhASIC1aへのASC06-IgG1の結合親和性は7.9nMであると判定された。
図4A】ASC06-IgG1の種特異性を例示した共焦点顕微鏡画像である。CHO-K1細胞に、hASIC1a-eYFP、mASIC1a-eYFP、またはrASIC1a-eYFP(緑色)プラスミドを一過性にトランスフェクトし、ASC06-IgG1(赤色)で染色した。DAPI(青色)を使用して、細胞の核を染色した。バーは10μmスケールを表す。
図4B】FACS選別によって判定される、ASC06-IgG1の種特異性およびASIC1サブタイプ特異性を例示したグラフである。CHO-K1細胞に、hASIC1a-eYFP、mASIC1a-eYFP、rASIC1a-eYFP、hASIC1b-eYFP、hASIC2a-eYFP、hASIC2a/2b-eYFP、およびhASIC3a-eYFPプラスミドを一過性にトランスフェクトし、Alexa555コンジュゲートASC06-IgG1で染色した。10,000個の細胞を選別した。FACSプロファイルの右上クアドラントに呈示されるAlexa555およびeYFP二重陽性細胞は、所与のASIC1サブタイプまたはホモログへのASC06-IgG1の結合を指し示す。
図5A】種々の用量のASC06-IgG1(100nM、300nM)の非存在または存在下における、単一のhASIC1a安定CHO-K1細胞からの代表的な電流トレース図である。電流トレース図の上の灰色の線は、細胞外pH値がpH7.4からpH6.0に減少し、記録が行われた時間を示している。電流トレース図の上の黒色の線は、表示された作用物質での処理を表す。pH6で処理された細胞を陰性対照として使用し、毒ペプチドプサルモトキシン(Psalmotoxin-1)(PcTx1)を陽性対照として使用した。「洗浄」は、300nM ASC06-IgG1の処理、それに続く洗浄溶液の15分間の注入の後の、電流の回復を表す。
図5B】ASC06-IgG1による、酸誘導性hASIC1a電流の用量依存的阻害を示したグラフである。見掛けのIC50値は85±6nMであると測定される(N=3~5)。データは、5回の繰り返しについての平均±標準偏差として示されている。
図5C】ASC06-IgG1またはPcTx1を用いた処理後のウォッシュアウト時間中のhASIC1a電流を例示したウォッシュアウト実験を示したグラフである。折れ線グラフは、ウォッシュアウト時間(分)の関数としての相対電流を示している(N=4)。
図6A】ASC06-IgG1による、酸誘導性ASIC1a媒介性カルシウム流入の阻害を示したグラフである。様々な濃度のASC06-IgG1(1:3連続希釈での30~0.12nM)の存在下での、hASIC1a-mCherryを安定に過剰発現するCHO-K1細胞(4C12)における酸誘導性カルシウム流入の代表的な進行曲線が示されている。
図6B】酸誘導性カルシウム流入に対するASC06-IgG1の用量依存的阻害を示したグラフである(N=6)。
図7A】細胞質デヒドロゲナーゼ活性によって測定される、hASIC1a-eYFPの膜発現の有無でのCHO-K1細胞の生存率に対するpH(pH=5.5、6.0、および7.4)の効果を示したグラフである(N=5~6)。
図7B】hASIC1a-eYFPの膜発現の有無でのCHO-K1細胞に対するpH(pH=5.5、6.0、および7.4)の効果を示したグラフである。棒グラフは、放出されたLDH含有率を示している(N=5~6)。
図7C】増加する濃度のASC06-IgG1の存在下におけるhASIC1a-eYFP安定細胞の生存率によって測定される、ASC06-IgG1によるアシドーシス誘導性細胞死からの用量依存的保護を示したグラフである。データは、4回の繰り返しについての平均±標準偏差として示されている(N=3~5)。
図7D】増加する濃度のASC06-IgG1の存在下におけるhASIC1a-eYFP安定細胞によるLDH放出によって測定される、ASC06-IgG1によるアシドーシス誘導性細胞死からの用量依存的保護を示したグラフである。データは、3~5回の繰り返しについての平均±標準偏差として示されている(N=3~5)。
図8A】マウス中大脳動脈閉塞(MCAO)誘導性虚血性脳卒中モデルにおける、インビボ試験のための実験設計を表した概略図である。
図8B】(上のパネル)MCAO誘導性虚血性脳卒中モデルマウスにおける、PBS(偽対照、N=6)、アイソタイプ対照(N=6)、ASC06-IgG1(N=6)、およびPcTx1(N=6)を用いた処理後の生体染色色素(vital dye)2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム塩酸塩(TTC)での染色によって検出される、梗塞エリアを例示した脳の断面の画像である。(下のパネル)(上のパネル)におけるように処理されたマウス由来の脳における梗塞エリアの体積を例示した棒グラフである。*は、偽対照群と比較した、p値<0.05を示し、**はp値<0.01を示す。NS=有意でない。
図9A】hASIC1aのエクトドメイン(hASIC1a-ECD)とASC06-Fab複合体との複合体についてのネガティブ染色電子顕微鏡法画像である。図9Aは、未加工画像の部分エリアを示している。スケールバー=50nm。
図9B】hASIC1aのエクトドメイン(hASIC1a-ECD)とASC06-Fab複合体との複合体についてのネガティブ染色電子顕微鏡法画像である。図9Bは、図9Aから選択された代表的な単一粒子を示している。スケールバー=10nm。
図9C】hASIC1aのエクトドメイン(hASIC1a-ECD)とASC06-Fab複合体との複合体についてのネガティブ染色電子顕微鏡法画像である。図9Cは、単一粒子に基づく相当する代表的なクラス平均を示している(N=5,064)。スケールバー=10nm。
図9D】分子動力学シミュレーションによって検出される、ASC06-IgG1の立体構造的エピトープを示した図である。第1のサブユニットは画像の左側に呈示され、第2のサブユニットは右側に示されている。画像の底部近くにベータシートを含む第1のサブユニットの一部は、第2のサブユニットの後方に位置する。ドット(第1のサブユニットにおける暗灰色のドット、第2のサブユニットにおける薄灰色のドット)を使用して示されているASC06-IgG1の結合部位は、2つのASIC1aサブユニットによって形成される。
図9E】hASIC1aタンパク質において、ASC06-IgG1への結合において役割を有するアミノ酸残基の同定を示した図である。表示されるアラニン置換変異体hASIC1a-eYFPタンパク質を一過性にトランスフェクトされたCHO-K1細胞を、FACSベースのアッセイを使用してASC06-IgG1への結合についてアッセイした。上のパネルは、第1の抗体なしであるが第2の抗体のみが含まれた陰性対照(NC)を示している。下のパネルは、ASC06-IgG1を細胞とともにインキュベートした実験を示している。細胞が野生型hASIC1aタンパク質を発現する陽性細胞が示されている。CHO-K1細胞がhASIC1aを発現しない別の陰性対照も左側に示されている。
図10A】hASIC1a-eYFP融合タンパク質を発現する安定株である6H7細胞株への、ASC06-IgG1の用量依存的結合を示したグラフである。データは、2.06±0.01nMの見掛けの結合親和性を示している(n=3)。
図10B】(上のパネル)hASIC1a-mCherry(赤色)をわずかにトランスフェクトされた、mASIC1a KOマウスの皮質由来のASC06-IgG1染色された初代ニューロン(緑色)の共焦点顕微鏡法画像である。微分干渉コントラスト(DIC)眺望は、ニューロンの蛍光眺望と統合された明視野画像を示している。(下のパネル)ASC06-IgG1結合がシナプス後樹状突起において生じることを示した神経突起の増幅視野を示した画像である。
図11A】hASIC1aの定常脱感作(SSD)プロファイルに対するASC06-IgG1の効果を示したグラフである(n=6~8)。
図11B】hASIC1aのプロトン活性化プロファイルに対するASC06-IgG1の効果を示したグラフである(n=5)。
図12A】ΔhASIC1a-ナノディスクの組成についてのSDS-PAGE解析を示した画像である。上端の青色、黄色、紫色の色付きのリボンが推定ΔhASIC1a三量体立体配置を表し、ディスクの側面の赤色のリボンがMSP1を表し、白色の球状クラスターが1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)を表す、計算モデリングを使用した、右側に図解されるΔhASIC1a-ナノディスク。空ナノディスクとは、ΔhASIC1aの代わりにアセチルコリンを使用したナノディスクアセンブリを指す。
図12B】ナノディスクアセンブリのサイズを例示した動的光散乱(DLS)測定の結果を示した図である。挿入された画像は、計算された直径でラベル付けされたモデル化粒子を示している。
図12C】「差示的富化」パニングにおける陽性ファージミドのアウトプットを示したグラフである。
図12D】精製された単鎖(ASC06)および完全長(ASC06-IgG1)抗体についてのSDS-PAGE解析を示した画像である。
図13A】商業的ヤギポリクローナル抗ASIC1a抗体またはASC06-IgG1を使用した、CHO-K1細胞(「-」)またはhASIC1a-eYFPを発現するCHO-K1安定細胞株(「+」)由来の細胞溶解物についてのウェスタンブロット解析を示した画像である。
図13B】ASC06-IgG1を用いて免疫沈降され、商業的抗eYFP抗体によって解析された、CHO-K1細胞(「-」)またはhASIC1a-eYFPを発現するCHO-K1安定細胞株(「+」)の細胞溶解物についてのウェスタンブロットを示した画像である。
図14】hASIC1a-ECDおよびASC06-Fabによって会合した複合体のゲル濾過プロファイルを示したグラフである。hASIC1a-ECD単独、ASC06-Fab単独、および複合体のゲル濾過プロファイルが示されている。Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーカラムを使用した(24mL体積)。
図15】PcTx1-FcのSPRセンサーグラムである。ΔhASIC1aへのPcTx1-Fcの結合親和性は、シングルサイクルカイネティクス法に基づいて1.0nMであると判定された。
図16A】ASC06-IgG1は、ASIC1aのSSDも活性化も妨害しないことを図解したグラフである。図16Aは、様々な調節pH値においてpH6.0刺激によって惹起されたASIC1a電流の代表的なトレース図を示している。上のパネルにおけるトレース図は、ASC06-IgG1の非存在下での電流を示し、下のパネルにおけるトレース図は、300nM ASC06-IgG1の存在下での電流を示している。
図16B】ASC06-IgG1は、ASIC1aのSSDも活性化も妨害しないことを図解したグラフである。図16Bは、調節pH7.4を用いた、6.8~6.0に及ぶpHによって引き出された代表的な電流トレース図を示している。上、ASC06-IgG1なし;下、ASC06-IgG1(300nM)あり。pH7.2およびpH7.0活性化のトレース図は、これらの条件で惹起される電流がなかったため示されていない。
図17A】CHO-K1細胞またはhASIC1a-mCherry過剰発現安定CHO-K1細胞(4C12)における酸誘導後の、細胞質におけるカルシウム流入の最大蛍光強度を示したグラフである。表示される場合、4C12細胞を、アミロリド、PcTx1、ASC06-IgG1、またはアイソタイプ対照抗体とともにプレインキュベートした。
図17B】アミロリド、PcTx1、ASC06-IgG1、またはアイソタイプ対照抗体の存在下での、4C12における酸誘導性カルシウム流入の代表的な進行曲線である。無関係の抗体をアイソタイプ対照として選んだ。
図18】ASC06-IgG1のサイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)解析を示したグラフである。ASC06-IgG1(0.5mg/mL)を、種々のpHの細胞外液とともに37℃で6時間インキュベートし、その後にSEC-HPLC解析が続いた。
図19A】ASC01のVHドメインのヌクレオチド配列(配列番号1)を示す表である。
図19B】ASC01のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号2)を示す表である。VH CDR1(配列番号3)、VH CDR2(配列番号4)、およびVH CDR3(配列番号5)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図20A】ASC01のVLドメインのヌクレオチド配列(配列番号6)を示す表である。
図20B】ASC01のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号7)を示す表である。VL CDR1(配列番号8)、VL CDR2(配列番号9)、およびVL CDR3(配列番号10)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図21A】ASC02のVHドメインのヌクレオチド配列(配列番号11)を示す表である。
図21B】ASC02のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号12)を示す表である。VH CDR1(配列番号13)、VH CDR2(配列番号14)、およびVH CDR3(配列番号15)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図22A】ASC02のVLドメインのヌクレオチド配列(配列番号16)を示す表である。
図22B】ASC02のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号17)を示す表である。VL CDR1(配列番号18)、VL CDR2(配列番号19)、およびVL CDR3(配列番号20)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図23A】ASC03のVHドメインのヌクレオチド配列(配列番号21)を示す表である。
図23B】ASC03のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号22)を示す表である。VH CDR1(配列番号23)、VH CDR2(配列番号24)、およびVH CDR3(配列番号25)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図24A】ASC03のVLドメインのヌクレオチド配列(配列番号26)を示す表である。
図24B】ASC03のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号27)を示す表である。VL CDR1(配列番号28)、VL CDR2(配列番号29)、およびVL CDR3(配列番号30)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図25A】ASC04のVHドメインのヌクレオチド配列(配列番号31)を示す表である。
図25B】ASC04のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号32)を示す表である。VH CDR1(配列番号33)、VH CDR2(配列番号34)、およびVH CDR3(配列番号35)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図26A】ASC04のVLドメインのヌクレオチド配列(配列番号36)を示す表である。
図26B】ASC04のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号37)を示す表である。VL CDR1(配列番号38)、VL CDR2(配列番号39)、およびVL CDR3(配列番号40)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図27A】ASC05のVHドメインのヌクレオチド配列(配列番号41)を示す表である。
図27B】ASC05のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号42)を示す表である。VH CDR1(配列番号43)、VH CDR2(配列番号44)、およびVH CDR3(配列番号45)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図28A】ASC05のVLドメインのヌクレオチド配列(配列番号46)を示す表である。
図28B】ASC05のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号47)を示す表である。VL CDR1(配列番号48)、VL CDR2(配列番号49)、およびVL CDR3(配列番号50)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図29A】ASC06のVHドメインのヌクレオチド配列(配列番号51)を示す表である。
図29B】ASC06のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号52)を示す表である。VH CDR1(配列番号53)、VH CDR2(配列番号54)、およびVH CDR3(配列番号55)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
図30A】ASC06のVLドメインのヌクレオチド配列(配列番号56)を示す表である。
図30B】ASC06のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号57)を示す表である。VL CDR1(配列番号58)、VL CDR2(配列番号59)、およびVL CDR3(配列番号60)は、下線付きの太字フォントによって示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本技術のある特定の態様、様態、実施形態、変形、および特質は、本技術についての実質的な理解を提供するために様々なレベルでの詳細を下に記載されることが解されるべきである。本技術は、虚血性脳卒中および/または関連障害を治療する方法を提供する。
本明細書に記載されるASIC1aタンパク質を標的にする例示される抗体は、scFvおよびIgG1抗体であるものの、本説明は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、および遺伝子改変されたIgG、およびそのフラグメント、ならびに本明細書に記載される抗原結合活性を保持する抗体相補性決定領域(CDR)ドメインを含むポリペプチド等、任意の免疫学的結合因子を広く内包することが意図される。
【0015】
定義
本明細書において使用されるある特定の用語の定義が下に提供される。別様に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、一般的に、本技術が属する技術分野における当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈上別様にはっきりと述べられない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」への言及は、2個以上の細胞の組み合わせ等を含む。一般的に、本明細書において使用される命名法、ならびに下に記載される細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学、および核酸化学とハイブリダイゼーションにおける実験室手順は、当技術分野において周知のかつよく採用されるものである。
【0016】
本明細書において使用するとき、数に関する「約」という用語は、別様に記述されないまたは別様に文脈から明白でない限り、概して、数のいずれかの方向に(それを上回るまたはそれ未満の)1%、5%、または10%の値域内に入る数を含むと受けとられる(そのような数が、考え得る値の0%未満または100%を超えるであろう場合を除く)。
本明細書において使用するとき、対象への作用物質、薬物、またはペプチドの「投与」は、その意図される機能を果たすための、対象に化合物を導入するまたは送達する任意の経路を含む。投与は、経口的、鼻腔内、非経口的(静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下)、または局所的を含めた、任意の適切な経路によって行われ得る。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、頭蓋内(脳室内)経路、髄腔内経路、または動脈内経路によって投与される。投与には、自己投与および別の者による投与が含まれる。
【0017】
本明細書において使用するとき、「アミノ酸」という用語は、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのカルボキシル基を含有する任意の有機分子を指すために使用される。典型的に、少なくとも1つのアミノ基は、カルボキシル基に対してα位にある。「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を含む。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるもの、ならびに後に改変されるそうしたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα-炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。そのような類似体は、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般の化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する構造を有する化学的化合物を指す。アミノ酸は、本明細書において、それらの一般に公知の3文字記号によって、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨される1文字記号によって言及され得る。
【0018】
本明細書において使用するとき、「抗体」という用語は、例としてかつ限定されることなく、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、その組み合わせ、ならびに、サメ免疫グロブリン等、任意の脊椎動物において、例えばヒト、ヤギ、ウサギ、およびマウス等の哺乳類、ならびに非哺乳類種において免疫応答の間に産生される同様の分子を含めた、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を集合的に指す。本明細書において使用するとき、「抗体」(無傷免疫グロブリンを含む)および「抗原結合フラグメント」は、他の分子への結合を実質的に除外して、目的の分子(または目的の極めて同様の分子の群)に特異的に結合する(例えば、生物学的サンプルにおける他の分子に対する結合親和性よりも少なくとも103-1大きい、少なくとも104-1大きい、または少なくとも105-1大きい、目的の分子に対する結合親和性を有する抗体および抗体フラグメント)。「抗体」という用語は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(二重特異性抗体等)等の遺伝子操作された形態も含む。Pierce Catalog and Handbook, 1994-1995 (Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.);Kuby, J., Immunology, 3rd Ed., W.H. Freeman & Co., New York, 1997も参照されたい。
【0019】
より具体的に、抗体とは、抗原のエピトープを特異的に認識しかつ結合する少なくとも軽鎖免疫グロブリン可変領域または重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを指す。抗体は、そのそれぞれが、可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域と称される可変領域を有する重鎖および軽鎖から構成される。一緒になって、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識される抗原に結合することに関与する。典型的に、免疫グロブリンはジスルフィド結合によって相互接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。ラムダ(λ)およびカッパ(κ)という2種のタイプの軽鎖がある。抗体分子の機能的活性を決定する5種の主な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEがある。各重鎖および軽鎖は、定常領域および可変領域を含有する(領域は「ドメイン」としても知られる)。組み合わせて、重鎖および軽鎖可変領域は抗原に特異的に結合する。軽鎖および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって分断された「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの範囲は規定されている(参照により本明細書によって組み入れられる、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, 1991を参照されたい)。Kabatデータベースは、現在オンラインで維持されている。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種の中で比較的保存されている。軽鎖および重鎖構成成分の組み合わせられたフレームワーク領域である、抗体のフレームワーク領域は大部分がβ-シート立体構造を取り、CDRは、β-シート構造に接続し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する。ゆえに、フレームワーク領域は、鎖間非共有結合性相互作用によって正しい配向にCDRを配置することを提供する足場を形成するように作用する。
【0020】
CDRは、抗原のエピトープへの結合に主として関与する。各鎖のCDRは、典型的に、N末端から逐次的に始まる番号付けされたCDR1、CDR2、およびCDR3と称され、また典型的に、特定のCDRが位置する鎖によって識別される。ゆえに、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方でVL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。ASIC1aタンパク質に結合する抗体は、特異的VH領域およびVL領域配列、ゆえに特異的CDR配列を有するであろう。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。それは、抗体から抗体へと変わるCDRであるものの、CDR内の限定された数のアミノ酸箇所のみが抗原結合に直接関わる。CDR内のこれらの箇所は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。本明細書において使用される「本技術の抗ASIC1a抗体」とは、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組み換え抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体等)ならびに抗体フラグメントを指す。抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に特異的に結合する。
【0021】
本明細書において使用するとき、「抗体関連ポリペプチド」という用語は、単独で、または以下のポリペプチド要素:抗体分子のヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインのうちのすべてもしくは一部との組み合わせで可変領域を含み得る、単鎖抗体を含めた抗原結合抗体フラグメントを意味する。可変領域、ならびにヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの任意の組み合わせも本技術に含まれる。例えばFab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、ならびにVLまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメントであるがそれらに限定されない抗体関連分子が本方法において有用である。例には、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)2;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., Nature 341: 544-546, 1989);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、が含まれる。そのため、「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」は、完全長抗体の一部分、一般的にはその抗原結合または可変領域を含み得る。抗体フラグメントまたは抗原結合フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;ダイアボディ;二重特異性抗体;直鎖抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0022】
本明細書において使用するとき、「コンジュゲートされた」という用語は、当業者に公知の任意の方法による2つの分子の会合を指す。適切なタイプの会合には、化学的結合および物理的結合が含まれる。化学的結合には、例えば共有結合および配位結合が含まれる。物理的結合には、例えば水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、静電相互作用、疎水性相互作用、および芳香族スタッキングが含まれる。
本明細書において使用するとき、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、フラグメントは、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を同じポリペプチド鎖に含む(VHL)。同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合せざるを得ず、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディは、例えば欧州特許第404,097号;国際公開第93/11161号;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)においてより十分に記載される。
【0023】
本明細書において使用するとき、「単鎖抗体」または「単鎖Fv(scFv)」という用語は、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHの抗体融合分子を指す。単鎖抗体分子は、いくつかの個々の分子を有するポリマー、例えば二量体、三量体、または他のポリマーを含み得る。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは、別個の遺伝子によってコードされるものの、それらは、VLおよびVH領域が対合して一価の分子を形成する単一タンパク質鎖としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、組み換え法を使用して接合され得る(単鎖Fv(scFv)として知られる)。Bird et al. (1988) Science 242:423-426およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad Sci. USA 85:5879-5883。そのような単鎖抗体は、組み換え技法または無傷抗体の酵素的もしくは化学的切断によって調製され得る。
本明細書において使用するとき、「抗原」とは、抗体(またはその抗原結合フラグメント)が選択的に結合し得る分子を指す。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然に存在するもしくは合成の化合物であり得る。一部の実施形態において、標的抗原はポリペプチド(例えば、ASIC1aポリペプチド)であり得る。抗原は、動物において免疫応答を生じさせるために動物に投与もされ得る。
【0024】
「抗原結合フラグメント」という用語は、抗原への結合に関与するポリペプチドの一部を所有する免疫グロブリン構造全体のフラグメントを指す。本技術において有用な抗原結合フラグメントの例には、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’、およびF(ab’)2が含まれるが、それに限定されるわけではない。
上述の抗体フラグメントのいずれかは、当業者に公知の従来的技法を使用して獲得され、フラグメントは、無傷抗体と同じ様式で、結合特異性および中和活性についてスクリーニングされる。
「結合親和性」によって、分子の単一結合部位(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原または抗原ペプチド)との間の非共有結合性相互作用全体の強度を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(KD)によって表され得る。親和性は、本明細書に記載されるものを含めた、当技術分野において公知の標準的方法によって測定され得る。低親和性複合体は、概して抗原から容易に解離する傾向がある抗体を含有し、一方で高親和性複合体は、一般的により長い継続期間の間抗原に結合したままである傾向がある抗体を含有する。
【0025】
本明細書において使用するとき、「生物学的サンプル」という用語は、生きた細胞に由来するサンプル材料を意味する。生物学的サンプルには、対象から単離された組織、細胞、細胞のタンパク質または膜抽出物、および生物学的流体(例えば、腹水または脳脊髄液(CSF))、ならびに対象の内に存在する組織、細胞、および流体が含まれ得る。本技術の生物学的サンプルには、乳房組織、腎組織、子宮頸部、子宮内膜、頭頸部、胆嚢、耳下腺組織、前立腺、脳、下垂体、腎臓組織、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺組織、心臓組織、肺組織、膀胱、脂肪組織、リンパ節組織、子宮、卵巣組織、副腎組織、精巣組織、扁桃腺、胸腺、血液、毛髪、頬、皮膚、血清、血漿、CSF、精液(semen)、前立腺液(prostate fluid)、精液(seminal fluid)、尿、糞便、汗、唾液、痰、粘液、骨髄、リンパ液、および涙液から採取されたサンプルが含まれるが、それらに限定されるわけではない。生物学的サンプルは、内臓の生検からまたはがんからも獲得され得る。生物学的サンプルは、診断もしくは研究のために対象から獲得され得る、または対照としてもしくは基礎研究のために非罹患個体から獲得され得る。サンプルは、例えば静脈穿刺および外科生検を含めた標準的方法によって獲得され得る。ある特定の実施形態において、生物学的サンプルは、皮膚組織、毛髪、爪、皮脂腺、または筋生検サンプルである。
【0026】
本明細書において使用するとき、「対照」とは、比較目的で実験において使用される代替的サンプルである。対照は、「陽性」または「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が、特定のタイプの疾患に対する治療のための治療剤の効力の相関を判定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を呈することが知られる化合物または組成物)および陰性対照(療法を受けないまたは偽薬を受ける対象またはサンプル)が典型的に採用される。
本明細書において使用するとき、「有効量」という用語は、所望の治療効果および/または予防効果を達成するのに十分な分量、例えば、本明細書に記載される疾患もしくは病状、または本明細書に記載される疾患もしくは病状と関連した1つもしくは複数の兆候もしくは症状の阻止または減少をもたらす量を指す。治療的または予防的適用の背景において、対象に投与される組成物の量は、組成物、疾患の程度、タイプ、および重症度、ならびに全般的健康状態、年齢、性別、体重、および薬物への耐性等の個体の特徴に応じて変わるであろう。当業者であれば、これらのおよび他の因子に応じて適当な投薬量を決定し得るであろう。組成物は、1種または複数の付加的な治療用化合物との組み合わせでも投与され得る。本明細書に記載される方法において、治療用組成物は、本明細書に記載される疾患または病状の1つまたは複数の兆候または症状を有する対象に投与され得る。本明細書において使用するとき、組成物の「治療有効量」とは、疾患または病状の生理学的影響が改善されるまたは排除される組成物レベルを指す。治療有効量は、1回または複数の投与で与えられ得る。
【0027】
「単離された」または「精製された」ポリペプチドまたはペプチドは、作用物質が由来する細胞もしくは組織供給源由来の細胞材料もしくは他の汚染ポリペプチドを実質的に含んでいない、または化学的に合成される場合には化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含んでいない。例えば、本技術の単離された抗ASIC1a抗体は、作用物質の診断的または治療的使用を妨害すると思われる材料を含んでいないであろう。そのような妨害材料には、酵素、ホルモン、ならびに他のタンパク質性および非タンパク質性溶質が含まれ得る。
【0028】
本明細書において使用するとき、「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合し得るタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特異的な3次元構造特徴ならびに特異的電荷特徴を有する。立体構造的および非立体構造的エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。一部の実施形態において、「エピトープ」は、ASIC1aの細胞外ドメインを含めた、本技術の抗ASIC1a抗体が特異的に結合するASIC1aタンパク質三量体の領域である。一部の実施形態において、エピトープは、2つのASIC1aサブユニットにまたがり得る。一部の実施形態において、エピトープは、立体構造的エピトープまたは非立体構造的エピトープである。エピトープに結合する抗ASIC1a抗体をスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane (1988)に記載されるもの等のルーチン的クロスブロッキングアッセイが実施され得る。このアッセイを使用して、抗ASIC1a抗体が、本技術の抗ASIC1a抗体と同じ部位またはエピトープに結合するかどうかを判定し得る。代替的にまたは付加的に、エピトープマッピングが、当技術分野において公知の方法によって実施され得る。例えば、図9Eに示されるように、抗体配列にアラニンスキャニング等によって変異導入して、接触残基を同定し得る。異なる方法において、ASIC1aタンパク質の種々の領域に相当するペプチドが、試験抗体を用いた、または試験抗体および特徴付けされたもしくは公知のエピトープを有する抗体を用いた競合アッセイにおいて使用され得る。
【0029】
本明細書において使用するとき、「発現」には、以下のもの:前駆体mRNAへの遺伝子の転写;成熟mRNAを産生するための前駆体mRNAのスプライシングおよび他のプロセシング;mRNA安定性;成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドン使用法およびtRNA利用可能性を含む);ならびに、適正な発現および機能に要される場合には、翻訳産物のグリコシル化および/または他の修飾、のうちの1つまたは複数が含まれる。
本明細書において使用するとき、「遺伝子」という用語は、発現を制御するプロモーター、エクソン、イントロン、および他の非翻訳領域を含めた、RNA産物の調節された生合成のためのすべての情報を含有する、DNAのセグメントを意味する。
【0030】
本明細書において使用するとき、「相同性」または「同一性」または「類似性」という用語は、2種のペプチド間または2種の核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的のためにアラインされ得る各配列における箇所を比較することによって判定され得る。比較された配列における箇所が、同じ塩基またはアミノ酸によって占有される場合には、分子はその箇所において相同である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有されるマッチしたまたは相同な箇所の数の関数である。ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、別の配列とある特定のパーセンテージ(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)の「配列同一性」を有し、アラインされた場合に、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が、2種の配列を比較した際に同じであることを意味する。このアライメントおよび相同性または配列同一性パーセントは、当技術分野において公知のソフトウェアプログラムを使用して判定され得る。一部の実施形態において、初期設定パラメーターがアライメントに使用される。1つのアライメントプログラムは、初期設定パラメーターを使用したBLASTである。特に、プログラムは、以下の初期設定パラメーター:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;予想=10;行列=BLOSUM62;記載=50配列;選別=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR、を使用したBLASTNおよびBLASTPである。これらのプログラムの詳細は、アメリカ国立生物工学情報センターにおいて見出され得る。生物学的に等価のポリヌクレオチドは、指定の相同性パーセントを有し、かつ同じまたは同様の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするものである。2種の配列は、それらが互いに40%未満の同一性、または25%未満の同一性を共有する場合、「非関連」または「非相同」と見なされる。
【0031】
本明細書において使用するとき、非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの部分に関して、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類等の非ヒト種(ドナー抗体)由来の超可変領域残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリンである。一部の実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、相当する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にまたはドナー抗体に見出されない残基を含み得る。これらの改変は、結合親和性等の抗体性能をさらに洗練させるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサスFR配列のものであるが、とはいえFR領域は、結合親和性を向上させる1つまたは複数のアミノ酸置換を含み得る、少なくとも1種、典型的には2種の可変ドメイン(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはFv)の実質的にすべてを含むであろう。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的に、H鎖において6個以下およびL鎖において3個以下である。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部分も含み得る。さらなる詳細に関しては、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332: 323-327 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。例えば、Ahmed & Cheung, FEBS Letters 588(2):288-297 (2014);Saxena & Wu, Frontiers in immunology 7: 580 (2016)を参照されたい。
【0032】
本明細書において使用するとき、「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において使用される場合、下で記載される初期設定パラメーターを用いたBLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用してまたは手動のアライメントおよび目視検査(例えば、NCBIウェブサイト)によって測定される、比較ウィンドウまたは指定の領域にわたる最大一致のために比較されかつアラインされた場合に、同じである、または同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの指定のパーセンテージ(すなわち、指定の領域(例えば、本明細書に記載される抗体をコードするヌクレオチド配列または本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列)にわたって約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも高い同一性)を有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。次いで、そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この用語は、試験配列の相補体も指すまたはそれにも適用され得る。該用語は、欠失および/または付加を有する配列、ならびに置換を有するものも含む。一部の実施形態において、同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸もしくはヌクレオチド、または長さが50~100個のアミノ酸もしくはヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0033】
本明細書において使用するとき、「無傷抗体」または「無傷免疫グロブリン」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2本の重(H)鎖ポリペプチドおよび2本の軽(L)鎖ポリペプチドを有する抗体を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存されている領域が間に散在した、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシル末端に並ぶ、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の構成要素(C1q)を含めた、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
本明細書において使用するとき、「個体」、「患者」、または「対象」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳類、またはヒトであり得る。一部の実施形態において、個体、患者、または対象はヒトである。
【0034】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から獲得された抗体を指し、すなわち該集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る考え得る天然に存在する変異を除いて同一である。例えば、モノクローナル抗体は、任意の真核性、原核性、またはファージクローンを含めた単一クローンに由来する抗体であり得、それが産生される方法のことではない。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を呈示する。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に向けられた、高度に特異的である。さらに、種々の決定基(エピトープ)に向けられた種々の抗体を典型的に含む従来的(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。「モノクローナル」という修飾語句は、抗体の実質的に均一の集団から獲得されるものとしての抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要するものとして捉えられるべきではない。モノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ、組み換え、およびファージディスプレイ技術を含むがそれらに限定されない、当技術分野において公知の多種多様な技法を使用して調製され得る。例えば、本方法に従って使用される対象となるモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature 256:495 (1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製され得る、または組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」は、また、例えばClackson et al., Nature 352:624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1991)に記載される技法を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0035】
本明細書において使用するとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌化合物、等張化合物および吸収遅延化合物等を含むことが意図される。薬学的に許容される担体およびそれらの製剤化は当業者に公知であり、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (20th edition, ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA.)に記載される。
本明細書において使用するとき、障害または病状の「阻止」または「阻止すること」とは、統計的サンプルにおいて、未処理対照サンプルと比べて処理サンプルにおいて障害もしくは病状の発生を低下させる、または未処理対照サンプルと比べて障害もしくは病状の1つもしくは複数の症状の発症を遅延させるもしくはその重症度を低下させる化合物を指す。
【0036】
本明細書において使用するとき、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、ペプチド結合または改変ペプチド結合によって互いに接合された2つ以上のアミノ酸、すなわちペプチドイソスター(isostere)を含むポリマーを意味するために、本明細書において互換的に使用される。ポリペプチドは、ペプチド、糖ペプチド、またはオリゴマーと一般に称される短い鎖、およびタンパク質と一般に称されるより長い鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20種の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含有し得る。ポリペプチドは、翻訳後プロセシング等の天然の過程によって、または当技術分野において周知である化学的改変技法によって改変されたアミノ酸配列を含む。
本明細書において使用するとき、「別個の」治療的使用という用語は、異なる経路による、同じ時点でのまたは実質的に同じ時点での少なくとも2種の活性成分の投与を指す。
本明細書において使用するとき、「逐次的な」治療的使用という用語は、投与経路が同一であるまたは異なる、異なる時点での少なくとも2種の活性成分の投与を指す。より特に、逐次的使用は、1種または複数の他方の投与が開始する前の、活性成分の一方の全投与を指す。ゆえに、他方の1種または複数の活性成分を投与する前に、活性成分の一方を数分間、数時間、または数日間にわたって投与することが可能である。この場合、同時治療はない。
【0037】
本明細書において使用するとき、「同時の」治療的使用という用語は、同じ経路によるかつ同じ時点でのまたは実質的に同じ時点での少なくとも2種の活性成分の投与を指す。
本明細書において使用するとき、「特異的に結合する」とは、別の分子(例えば、抗原)を認識しかつ結合するが、他の分子を実質的に認識せずかつ結合しない分子(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)を指す。本明細書において使用される、特定の分子(例えば、ポリペプチド、またはポリペプチド上のエピトープ)「への特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」という用語は、例えば、それが結合する分子に対する、約10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、または10-12MのKDを有する分子によって呈され得る。「特異的に結合する」という用語は、分子(例えば、抗体またはその抗原結合フラグメント)が、他のいかなるポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく、特定のポリペプチド(例えば、ASIC1aポリペプチド)または特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合も指し得る。
【0038】
本明細書において使用するとき、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳類、またはヒトであり得る。
本明細書において使用される「治療すること」、「治療する」、または「治療」とは、ヒト等の対象における本明細書に記載される疾患または障害の治療を網羅し、(i)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわちその進行を止めること;(ii)疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち障害の退縮を引き起こすこと;(iii)障害の進行を遅らせること;および/または(iv)疾患もしくは障害の1つもしくは複数の症状の進行を阻害すること、軽減すること、もしくは遅らせること、を含む。
本明細書に記載される障害の治療の様々な様態は、全体の治療を含むが全体に満たない治療も含み、一部の生物学的にまたは医学的に関連する結果が達成される、「実質的な」を意味することが意図されることも解されるべきである。治療は、慢性疾患に対する継続的な長期治療、または急性病状の治療のための単回もしくは数回の投与であり得る。
【0039】
本明細書に記載される抗ASIC1a抗体のアミノ酸配列改変が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を向上させることが望ましくあり得る。抗ASIC1a抗体のアミノ酸配列変種は、抗体核酸に適当なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。そのような改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/またはそれへの挿入、および/またはその置換が含まれる。獲得された抗体が所望の特性を所有する限りにおいて、目的の抗体を獲得するために、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせが行われる。改変には、タンパク質のグリコシル化のパターンの変化も含まれる。置換的変異導入のための最も大きな目的の部位は超可変領域を含むが、FR変更も企図される。「保存的置換」が下の表に示される。
【0040】
【0041】
置換的変種の1つのタイプは、親抗体の1つまたは複数の超可変領域残基を置換することを伴う。そのような置換的変種を作出するための好都合なやり方は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。具体的には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7個の部位)を変異させて、各部位ですべての考え得るアミノ酸置換を作出する。そのようにして作出された抗体変種は、各粒子内にパッケージされたM13の遺伝子III産物への融合体として、繊維状ファージ粒子から一価の形状で呈示される。次いで、ファージに呈示された変種を、本明細書に開示されるそれらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。改変のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング変異導入を実施して、抗原結合に大いに寄与する超可変領域残基を同定し得る。代替的にまたは付加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体と抗原との間の接触点を同定することが有益であり得る。そのような接触残基および近隣残基は、本明細書に詳述される技法による置換の候補である。いったんそのような変種が作出されると、変種のパネルを本明細書に記載されるスクリーニングに供し、1つまたは複数の関連アッセイにおいて同様のまたは優れた特性を有する抗体をさらなる開発に選択し得る。
【0042】
虚血性脳卒中の病原論
脳卒中は、脳の部分への酸素に富んだ血液の供給の途絶または低下によって引き起こされる。酸素がないと、脳細胞は数分以内に死に始める。脳卒中は、通常、突発的脱力;とりわけ身体の片側での顔面、腕、または脚の麻痺またはしびれ;顔面の片側の下垂;錯乱;不明瞭な単語等の発話困難または言語理解障害;かすみ目もしくは黒内障等、一方もしくは両方の目での見にくさ、または一方もしくは両方の目での複視;呼吸困難;めまい;歩行困難;例えば原因不明の転倒を引き起こす、平衡感覚喪失または協調運動障害;意識の喪失;および突然でかつ激しい頭痛等の症状を通じて提示される。最もよく見られる症状には、突発性顔面脱力(例えば、顔面の片側の下垂)、上肢の片側筋力低下、および異常発語が含まれる。これらの症状は、典型的には突然始まり、数秒間から数分間にわたり、ほとんどの場合にはさらに進行しない。脳および機能する能力への最小量の損傷を有して脳卒中を生き残るには、即時の緊急治療が重大である。
【0043】
すべての脳卒中の約87%を占める虚血性脳卒中は、血栓または他の粒子による血管の閉塞が理由で脳の部分への血液供給が絶たれた場合に生じる。プラークと呼ばれる脂肪沈着物も、血管において増大することによって遮断を引き起こし得る。虚血性脳卒中における遮断された血流は、経時的に動脈の狭窄を引き起こすアテローム性動脈硬化によって引き起こされ得る。虚血性脳卒中は、脳に栄養を与える動脈に沿った至るところでの遮断によって引き起こされ得る。
虚血性脳卒中は、血栓またはプラークフラグメントが体内のどこか他の場所(通常では心臓)で形成され、脳に移動する塞栓性脳卒中であり得る。いったん脳に入ると、血栓は、血栓が通過するのを遮断するのに十分に細い血管に移動する。血栓はそこにとどまり、血管を遮断し、脳卒中を引き起こす。塞栓性脳卒中の約15%は、心房細動(Afib)を有する人々において生じる。
【0044】
虚血性脳卒中は、脳に血液を供給する動脈の1本の内側で形成される血栓によって引き起こされる血栓性脳卒中であり得る。このタイプの脳卒中は、通常、高いコレステロールレベルおよびアテローム性動脈硬化を有する人々において見られる。血栓性脳卒中は、大血管血栓症または小血管疾患であり得る。大血管血栓症は、脳のより大きな動脈において生じる。ほとんどの場合、それは、急速な血栓形成との組み合わせでの長期アテローム性動脈硬化によって引き起こされる。高コレステロールは、このタイプの脳卒中の共通の危険因子である。小血管疾患またはラクナ梗塞は、高血圧と密接に関係している。
【0045】
本技術の抗ASIC1a抗体
本技術は、本技術の抗ASIC1a抗体(例えば、抗ASIC1a抗体またはその抗原結合フラグメント)の作出および使用のための方法および組成物を記載する。本技術の抗ASIC1a抗体は、虚血性脳卒中の診断または治療において有用であり得る。本技術の範囲内の本技術の抗ASIC1a抗体は、標的ポリペプチドに特異的に結合する、例えばモノクローナル、キメラ、ヒト化、二重特異性抗体、およびダイアボディ、そのホモログ、誘導体、またはフラグメントを含むが、それらに限定されるわけではない。
【0046】
下の表は、本技術の抗ASIC1a抗体の相補性決定領域(CDR)配列を提供する。
【0047】
したがって、抗体またはその抗原結合フラグメント(本技術の抗ASIC1a抗体)は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、前記VHは、本明細書に開示される相補性決定領域VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含み;前記VLは、本明細書に開示される相補性決定領域VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む、VHおよびVLを含み得る。
【0048】
1つの態様において、本技術は、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記VHは、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;前記VLは、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0049】
付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、VHは、配列番号3、13、23、33、および43からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、および44からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、および45からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;VLは、配列番号8、18、28、38、および48からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、および49からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、および50からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗原結合フラグメントは、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aタンパク質に結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1aの細胞外ドメインに結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aを阻害する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する。
【0050】
1つの態様において、本技術は、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体を含む組成物を提供する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、核酸配列は、配列番号1、6、11、16、21、26、31、36、41、46、51、および56からなる群から選択される。
1つの態様において、本技術は、本明細書に開示される任意の核酸を発現する宿主細胞またはベクターを提供する。
1つの態様において、本技術は、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメント、および使用のための指示書を含むキットを提供する。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメントは、放射性標識、蛍光標識、および発色標識からなる群から選択される少なくとも1種の検出可能な標識にカップリングされている。付加的にまたは代替的に、一部の実施形態において、キットは、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメントに特異的に結合する二次抗体をさらに含む。
【0051】
1つの態様において、本技術は、生物学的サンプルにおけるASIC1aタンパク質を検出するための方法であって、生物学的サンプルと、検出可能な標識にコンジュゲートされた、本明細書に開示される任意の実施形態の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させる工程;ならびに生物学的サンプルにおける検出可能な標識の存在およびレベルを検出する工程を含む方法を提供する。
一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む。
【0052】
一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号24に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号28に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号33に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号34に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号35に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号39に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む。
【0053】
一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号43に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号44に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号45に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号48に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号49に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む。
一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号53に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号55に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む。
【0054】
一部の実施形態において、VHは、配列番号2、12、22、32、42、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VLは、配列番号7、17、27、37、47、および57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
抗体またはその抗原結合フラグメント(本技術の抗ASIC1a抗体)は、ASIC1aタンパク質に特異的に結合し得る。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、ASIC1aの細胞外ドメインに結合し得る。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合し得る。
【0055】
一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、ASIC1a三量体の機能を阻害する。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、ASIC1a三量体を安定化する。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、ASIC1aと他のASIC1異性体とのヘテロオリゴマー化(例えば、ヘテロ三量体化)を阻害する。
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはscFv-Fc抗体である。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはscFv抗体である。一部の実施形態において、scFv抗体は、ASC01、ASC02、ASC03、ASC04、ASC05、またはASC06である。
【0056】
製剤化
例として、本技術の抗ASIC1a抗体は、単純な送達ビヒクル中に製剤化される。しかしながら、本技術の抗ASIC1a抗体は凍結乾燥され得る、またはゲル、クリーム、生体材料、持続放出送達ビヒクル中に組み入れられ得る。
本技術の抗ASIC1a抗体は、一般的に、薬学的に許容される担体と組み合わせられる。「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物を受けとる個体に対して有害な抗体の産生をそれ自体は誘導せず、過度の毒性なしで投与され得る、任意の薬学的担体を指す。適切な担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、およびアミノ酸共重合体等、大きく、ゆっくりと代謝される高分子であり得る。そのような担体は当業者に周知である。治療用組成物における薬学的に許容される担体には、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール等の液体が含まれ得る。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等の補助物質も、そのようなビヒクル中に存在し得る。薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩等の有機酸の塩も、医薬組成物に存在し得る。
【0057】
投与の態様および有効投薬量
細胞、臓器、または組織と本技術の免疫グロブリン関連組成物とを接触させるための、当業者に公知の任意の方法が採用され得る。適切な方法には、インビトロ、エクスビボ、またはインビボ方法が含まれる。インビボ方法は、典型的に、哺乳類、適切にはヒトへの、上で記載されるもの等の本技術の抗ASIC1a抗体の投与を含む。療法のためにインビボで使用される場合、本技術の抗ASIC1a抗体は、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。用量および投薬量レジメンは、対象における症状の程度、使用される本技術の特定の抗ASIC1a抗体の特徴、例えばその治療指数、対象、および対象の病歴に依存するであろう。
有効量は、内科医および臨床医によく知られる方法によって前臨床試験および臨床試験の間に判定され得る。方法において有用な本技術の抗ASIC1a抗体の有効量は、医薬組成物を投与するためのいくつかの周知の方法のいずれかによって、それを必要とする哺乳類に投与され得る。本技術の抗ASIC1a抗体は、全身的にまたは局部的に投与され得る。
【0058】
本明細書に記載される免疫グロブリン関連組成物は、本明細書に記載される疾患の治療または阻止のために、対象への単独でのまたは組み合わせでの投与のための医薬組成物に組み入れられ得る。そのような組成物は、典型的に、活性剤および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用するとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合する、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。補足的活性化合物も組成物に組み入れられ得る。
医薬組成物は、典型的に、投与のその意図される経路と適合するように製剤化される。投与の経路の例には、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、または皮下)、経口、吸入、経皮(局所的)、眼内、イオントフォレシスでの、および経粘膜的投与が含まれる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の構成要素:注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等、無菌の希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗細菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化物質;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;アセテート、シトレート、またはホスフェート等の緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロース等、張度の調整のための作用物質、を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等、酸または塩基を用いて調整され得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨て可能な注射器、またはガラスもしくはプラスチックで作られた複数回用量バイアルに封入され得る。患者または治療医の便宜上、投薬製剤は、治療コース(例えば、7日間の治療)のためのすべての必要な備品(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、注射器、および針)を含有するキットで提供され得る。
【0059】
一部の実施形態において、本明細書に記載される免疫グロブリン関連組成物は、非経口経路によって投与される。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、局所的経路によって投与される。
注射用の使用に適した医薬組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散体、および無菌の注射用の溶液または分散体の即時調製のための無菌の粉末が含まれ得る。静脈内投与に関して、適切な担体には、生理学的食塩水、静菌水(bacteriostatic water)、Cremophor EL(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、非経口投与のための組成物は無菌でなければならず、易注射器能(syringability)が存在する程度に流動性であるべきである。それは、製造および保管の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌等の微生物の汚染作用から守られなければならない。
本技術の抗ASIC1a抗体組成物は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る担体を含み得る。適正な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散体の場合には要される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の阻止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール(thiomerasol)等によって達成され得る。酸化を防止するために、グルタチオンおよび他の抗酸化物質が含まれ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、または塩化ナトリウムが組成物に含まれる。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物に含めることによってもたらされ得る。
【0060】
無菌の注射用溶液は、必要に応じて、上で列挙される成分の1つまたは組み合わせとともに、適当な溶媒に必要量の活性化合物を組み入れ、その後に濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散体は、基本的分散媒および上で列挙したものから必要な他の成分を含有する無菌のビヒクルに活性化合物を取り込むことによって調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌の粉末の場合、調製の典型的方法は、真空乾燥およびフリーズドライを含み、それは、活性成分と、それに加えて以前に滅菌濾過されたその溶液からの任意の付加的な所望の成分との粉末を産出し得る。
【0061】
経口組成物は、一般的に、不活性希釈剤または食用担体を含む。経口の治療的投与の目的上、活性化合物は、賦形剤とともに組み入れられ得、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態で使用され得る。経口組成物は、洗口液としての使用のために、流体担体を使用しても調製され得る。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は、以下の成分、または同様の性質の化合物:微結晶セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチン等のバインダー;デンプンもしくはラクトース等の賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはトウモロコシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(Sterote)等の潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素等の滑剤;スクロースもしくはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香味料等の香味剤、のうちのいずれかを含有し得る。
吸入による投与に関して、本技術の抗ASIC1a抗体は、適切な推進剤、例えば二酸化炭素等の気体を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、または噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達され得る。そのような方法には、米国特許第6,468,798号に記載されるものが含まれる。
【0062】
本明細書に記載される本技術の抗ASIC1a抗体の全身投与は、経粘膜的または経皮的手段によるものでもあり得る。経粘膜的または経皮的投与に関しては、透過されるべき障壁に適当な浸透剤が、製剤において使用される。そのような浸透剤は当技術分野において一般的に公知であり、例えば、経粘膜的投与に関しては洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜的投与は、経鼻スプレーの使用により遂行され得る。経皮的投与に関して、活性化合物は、当技術分野において一般的に公知のように、軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。1つの実施形態において、経皮的投与は、イオントフォレシスによって実施され得る。
本技術の抗ASIC1a抗体は、担体系の中に製剤化され得る。担体はコロイド系であり得る。コロイド系は、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであり得る。1つの実施形態において、本技術の治療用抗ASIC1a抗体は、本技術の抗ASIC1a抗体の完全性を維持しながら、リポソーム内に被包される。当業者であれば理解するであろうように、リポソームを調製する多様な方法がある。(Lichtenberg et al., Methods Biochem. Anal., 33:337-462 (1988);Anselem et al., Liposome Technology, CRC Press (1993)を参照されたい)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅延させ得、細胞取り込みを増加させ得る(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000)を参照されたい)。活性剤は、可溶性、不溶性、透過性、非透過性、生分解性、または胃保持性(gastroretentive)のポリマーまたはリポソームを含むがそれらに限定されない薬学的に許容される成分から調製された粒子内にも担持され得る。そのような粒子には、ナノ粒子、生分解性ナノ粒子、微粒子、生分解性微粒子、ナノスフェア、生分解性ナノスフェア、ミクロスフェア、生分解性ミクロスフェア、カプセル、エマルジョン、リポソーム、ミセル、およびウイルスベクターシステムが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0063】
担体は、ポリマー、例えば生分解性の生体適合性ポリマーマトリックスでもあり得る。1つの実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、タンパク質完全性を維持しながら、ポリマーマトリックス内に埋め込まれ得る。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質、もしくは多糖等の天然、またはポリα-ヒドロキシ酸等の合成であり得る。例には、例えばコラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖、フィブリン、ゼラチン、およびその組み合わせで作られた担体が含まれる。1つの実施形態において、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)またはコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマーマトリックスは、ミクロスフェアおよびナノスフェアを含めた多様な形態およびサイズで調製され得および単離され得る。ポリマー製剤は、治療効果の長期の継続期間につながり得る。(Reddy, Ann. Pharmacother., 34(7-8):915-923 (2000)を参照されたい)。ヒト成長ホルモン(hGH)に対するポリマー製剤が、臨床試験において使用されている。(Kozarich and Rich, Chemical Biology, 2:548-552 (1998)を参照されたい)。
【0064】
ポリマーミクロスフェア持続放出製剤の例は、PCT国際公開第99/15154号(Tracyら)、米国特許第5,674,534号および第5,716,644号(両方ともZaleらに対する)、PCT国際公開第96/40073号(Zaleら)、ならびにPCT国際公開第00/38651号(Shahら)に記載される。米国特許第5,674,534号および第5,716,644号、ならびにPCT国際公開第96/40073号は、塩との凝集に対して安定化されている、エリスロポエチンの粒子を含有するポリマーマトリックスを記載している。
一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、埋め込み物およびマイクロカプセル化送達システムを含めた制御放出製剤等、身体からの急速な排除から本技術の抗ASIC1a抗体を保護するであろう担体とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等、生分解性の生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤は、公知の技法を使用して調製され得る。材料は、商業的に、例えばAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.からも獲得され得る。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体を用いて特異的細胞に標的化されたリポソームを含む)も、薬学的に許容される担体として使用され得る。これらは、例えば米国特許第4,522,811号に記載される、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0065】
本技術の抗ASIC1a抗体は、細胞内送達を増強するようにも製剤化され得る。例えば、リポソーム送達システムは当技術分野において公知であり、例えばChonn and Cullis, “Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,” Current Opinion in Biotechnology 6:698-708 (1995);Weiner, “Liposomes for Protein Delivery: Selecting Manufacture and Development Processes,” Immunomethods, 4(3):201-9 (1994);およびGregoriadis, “Engineering Liposomes for Drug Delivery: Progress and Problems,” Trends Biotechnol., 13(12):527-37 (1995)を参照されたい。Mizguchi et al., Cancer Lett., 100:63-69 (1996)は、インビボおよびインビトロの両方において細胞にタンパク質を送達するための融合性リポソームの使用を記載している。
本技術の抗ASIC1a抗体の投薬量、毒性、および治療効力は、例えばLD50(集団の50%に対して致死の用量)およびED50(集団の50%において治療上有効な用量)を判定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって判定され得る。毒性効果と治療効果との間の用量比は治療指数であり、それはLD50/ED50比として表現され得る。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体は、高い治療指数を呈する。有毒な副作用を呈する本技術の抗ASIC1a抗体が使用され得るものの、罹患組織の部位にそのような化合物を標的化して、悲感染細胞への潜在的損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低減させる送達システムを設計するように注意するべきである。
【0066】
細胞培養アッセイおよび動物試験から獲得されたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の値域を策定する際に使用され得る。そのような化合物の投薬量は、ほとんどまたは全く毒性を有しない、ED50を含む循環濃度の値域内にある。投薬量は、採用される剤形および利用される投与の経路に応じて、この値域内で変わり得る。方法において使用される本技術の任意の抗ASIC1a抗体に関して、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養において判定されるIC50(すなわち、症状の最大半値(half-maximal)阻害を達成する、試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度域を達成するように、動物モデルにおいて策定され得る。そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に判定し得る。血漿におけるレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0067】
典型的に、治療効果または予防効果を達成するのに十分な、本技術の抗ASIC1a抗体の有効量は、約0.000001mg/キログラム体重/日~約10,000mg/キログラム体重/日に及ぶ。適切には、投薬量範囲は、約0.0001mg/キログラム体重/日~約100mg/キログラム体重/日である。例えば、投薬量は、毎日、2日ごとに、もしくは3日ごとに1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重であり得る、または毎週、2週間ごとに、もしくは3週間ごとに1~10mg/kgの範囲内にあり得る。1つの実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体の単回投薬量は、0.001~10,000マイクログラム/kg体重に及ぶ。1つの実施形態において、担体中の本技術の抗ASIC1a抗体濃度は、送達されるミリリットルあたり0.2~2000マイクログラムに及ぶ。例示的な治療レジームは、1日に1回または1週間に1回の投与を伴う。治療的適用において、疾患の進行が低下するまたは終結するまで、および対象が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が要されることもある。その後、患者は、予防的レジームを投与され得る。
【0068】
一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体の治療有効量は、10-12~10-6モル濃度、例えばおよそ10-7モル濃度の、標的組織における本技術の抗ASIC1a抗体の濃度として規定され得る。この濃度は、0.001~100mg/kgの全身用量、または体表面積による等価用量によって送達され得る。投薬のスケジュールは、標的組織において治療的濃度を維持するように最適化されるであろう。一部の実施形態において、投薬は、毎日または毎週1回の投与によって投与されるが、継続的投与(例えば、非経口注入または経皮的適用)も含み得る。一部の実施形態において、本技術の抗ASIC1a抗体の投薬量は、「低い」、「中間の」、または「高い」用量レベルで提供される。1つの実施形態において、低い用量は、約0.0001~約0.5mg/kg/時間、適切には約0.001~約0.1mg/kg/時間で提供される。1つの実施形態において、中間の用量は、約0.01~約1.0mg/kg/時間、適切には約0.01~約0.5mg/kg/時間で提供される。1つの実施形態において、高い用量は、約0.5~約10mg/kg/時間、適切には約0.5~約2mg/kg/時間で提供される。
【0069】
例えば、治療有効量は、突発的脱力;とりわけ身体の片側での顔面、腕、または脚の麻痺またはしびれ;顔面の片側の下垂;錯乱;不明瞭な単語等の発話困難または言語理解障害;かすみ目もしくは黒内障等、一方もしくは両方の目での見にくさ、または一方もしくは両方の目での複視;呼吸困難;めまい;歩行困難;例えば原因不明の転倒を引き起こす、平衡感覚喪失または協調運動障害;意識の喪失;および突然でかつ激しい頭痛を含めた、虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状を部分的にまたは完全に緩和し得る。治療有効量は、顔面の突発性顔面脱力(片側の垂れ下がり等)、上肢の片側筋力低下、および異常発語を含むがそれらに限定されない、虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状を部分的にまたは完全に緩和し得る。
当業者であれば、疾患もしくは障害の重症度、以前の治療、対象の全般的健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがそれらに限定されないある特定の因子が、対象を有効に治療するために要される投薬量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。さらに、本明細書に記載される治療用組成物の治療有効量を用いた対象の治療には、単一の治療または一連の治療が含まれ得る。
【0070】
本方法に従って治療される哺乳類は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、およびウマ等の家畜;イヌおよびネコ等のペット動物;ラット、マウス、およびウサギ等の実験室動物を含めた、任意の哺乳類であり得る。一部の実施形態において、哺乳類はヒトである。
本技術の抗ASIC1a抗体の使用
概略。本技術の抗ASIC1a抗体は、ASIC1aタンパク質またはその変異体の局在および/または定量に関する当技術分野において公知の方法(例えば、適当な生理学的サンプル中のASIC1aタンパク質のレベルを測定することにおける使用のための、診断法における使用のための、ポリペプチドを撮像することにおける使用のための、等)において有用である。本技術の抗ASIC1a抗体は、親和性クロマトグラフィーまたは免疫沈降等の標準的技法によってASIC1aタンパク質を単離するのに有用である。本技術の抗ASIC1a抗体は、生物学的サンプル、例えば哺乳類の血清または細胞からの天然の免疫反応性ASIC1aタンパク質、ならびに宿主システムにおいて発現される組み換えで産生された免疫反応性ASIC1aタンパク質の精製を容易にし得る。さらに、本技術の抗ASIC1a抗体を使用して、免疫反応性ASIC1aタンパク質またはそのフラグメントを検出して(例えば、血漿、細胞溶解物、または細胞上清における)、免疫反応性ポリペプチドの存在量および発現のパターンを評価し得る。本技術の抗ASIC1a抗体を診断的に使用して、臨床検査手順の一部として、組織における免疫反応性ASIC1aタンパク質レベルをモニターし得る、例えば所与の治療レジメンの効力を判定し得る。上述のように、検出は、本技術の抗ASIC1a抗体を検出可能な物質にカップリングさせる(すなわち、物理的に連結する)ことによって容易になり得る。
【0071】
ASIC1aタンパク質の検出。生物学的サンプルにおける免疫反応性ASIC1aタンパク質の存在または非存在を検出するための例示的な方法は、試験対象から生物学的サンプルを獲得する工程、および生物学的サンプルと、免疫反応性ASIC1aタンパク質を検出し得る本技術の抗ASIC1a抗体とを接触させ、それにより免疫反応性ASIC1aタンパク質の存在が生物学的サンプルにおいて検出される工程を伴う。検出は、抗体に付着した検出可能な標識によって遂行され得る。
本技術の抗ASIC1a抗体に関する「標識された」という用語は、検出可能な物質を抗体にカップリングさせる(すなわち、物理的に連結する)ことによる抗体の直接的標識化、ならびに二次抗体等の直接標識される別の化合物との反応性による抗体の間接的標識化を包含することが意図される。間接的標識化の例には、蛍光標識二次抗体を使用した一次抗体の検出、およびそれが蛍光標識ストレプトアビジンを用いて検出され得るような、ビオチンを用いたDNAプローブの末端標識化が含まれる。
一部の実施形態において、本明細書に開示される本技術の抗ASIC1a抗体は、1種または複数の検出可能な標識にコンジュゲートされる。そのような使用のために、本技術の抗ASIC1a抗体は、発色性、酵素的、放射性同位体による、同位体による、蛍光性、毒素による、化学発光性の標識、核磁気共鳴造影剤、または他の標識の共有結合性または非共有結合性付着によって検出可能に標識され得る。
【0072】
適切な発色標識の例には、ジアミノベンジジンおよび4-ヒドロキシアゾ-ベンゼン-2-カルボン酸が含まれる。適切な酵素標識の例には、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカス(staphylococcal)ヌクレアーゼ、Δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
適切な放射性同位体標識の例には、3H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd等が含まれる。111Inは、それが、125Iまたは131I標識されたASIC1aタンパク質結合抗体の肝臓による脱ハロゲン化の問題を回避することから、インビボ撮像が使用される例示的な同位体である。加えて、この同位体は、撮像のためのより好ましいガンマ放射エネルギーを有する(Perkins et al, Eur. J. Nucl. Med. 70:296-301 (1985);Carasquillo et al., J. Nucl. Med. 25:281-287 (1987))。例えば、1-(P-イソチオシアナトベンジル)-DPTAを有するモノクローナル抗体にカップリングした111Inは、非腫瘍性組織、特に肝臓における取り込みをほとんど呈さず、腫瘍局在の特異性を増強する(Esteban et al., J. Nucl. Med. 28:861-870 (1987))。適切な非放射性同位体標識の例には、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、および56Feが含まれる。
【0073】
適切な蛍光標識の例には、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o-フタルアルデヒド(phthaldehyde)標識、およびフルオレスカミン標識が含まれる。適切な毒素標識の例には、ジフテリア毒素、リシン、およびコレラ毒素が含まれる。
化学発光標識の例には、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびエクオリン標識が含まれる。核磁気共鳴造影剤の例には、Gd、Mn、および鉄等の重金属原子核が含まれる。
【0074】
本技術の検出法を使用して、インビトロならびにインビボにおいて、生物学的サンプルにおける免疫反応性ASIC1aタンパク質を検出し得る。免疫反応性ASIC1aタンパク質の検出のためのインビトロ技法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ、および免疫蛍光が含まれる。さらに、免疫反応性ASIC1aタンパク質の検出のためのインビボ技法には、本技術の標識された抗ASIC1a抗体を対象に導入することが含まれる。例えば、本技術の抗ASIC1a抗体は、対象における存在および位置が標準的撮像技法によって検出され得る放射性マーカーで標識され得る。1つの実施形態において、生物学的サンプルは、試験対象由来のASIC1aタンパク質分子を含有する。
免疫学的アッセイおよび画像化。抗体をベースにした技法を使用し、本技術の抗ASIC1a抗体を使用して、生物学的サンプル(例えば、ヒト血漿)における免疫反応性ASIC1aタンパク質レベルをアッセイし得る。例えば、組織におけるタンパク質発現は、古典的な免疫組織学的方法を用いて試験され得る。Jalkanen, M. et al., J. Cell. Biol. 101: 976-985, 1985;Jalkanen, M. et al., J. Cell. Biol. 105: 3087-3096, 1987。タンパク質遺伝子発現を検出するのに有用な他の抗体をベースにした方法には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA)等の免疫学的アッセイが含まれる。適切な抗体アッセイ標識は当技術分野において公知であり、グルコースオキシダーゼ等の酵素標識、ならびにヨウ素(125I、121I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)等の放射性同位体または他の放射性作用物質、ならびにフルオレセイン、ローダミン、および緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光標識、ならびにビオチンを含む。
【0075】
生物学的サンプルにおける免疫反応性ASIC1aタンパク質レベルをアッセイすることに加えて、本技術の抗ASIC1a抗体は、ASIC1aタンパク質をインビボ撮像するために使用され得る。この方法に有用な抗体には、X線ラジオグラフィー、NMR、またはESRによって検出可能なものが含まれる。X線ラジオグラフィーに関して、適切な標識には、検出可能な放射線を発するが対象にとってあからさまには有害でない、バリウムまたはセシウム等の放射性同位体が含まれる。NMRおよびESRに対する適切なマーカーには、関連するscFvクローンに対する栄養素の標識化によって本技術の抗ASIC1a抗体に組み入れることのできる、重水素等の検出可能な特徴的スピンを有するものが含まれる。
【0076】
放射性同位体(例えば、131I、112In、99mTc)、放射線不透過性物質、または核磁気共鳴によって検出可能な材料等の適当な検出可能な画像化部分で標識されている本技術の抗ASIC1a抗体が、対象に(例えば、非経口的に、皮下に、または腹腔内に)導入される。対象のサイズおよび使用される画像化システムが、診断用画像を作り出すために必要とされる撮像部分の分量を決定するであろうことは当技術分野において理解されるであろう。放射性同位体部分の場合、ヒト対象に関して、注射される放射能の量は、通常、約5~20ミリキュリーの範囲の99mTcであろう。本技術の標識された抗ASIC1a抗体は、次いで、特異的標識ポリペプチドを含有する細胞の位置に蓄積するであろう。例えば、本技術の標識された抗ASIC1a抗体は、ASIC1aタンパク質が局在している細胞および組織において対象内に蓄積するであろう。
ゆえに、本技術は、(a)個体の細胞または体液における本技術の抗ASIC1a抗体の結合を測定することによって、免疫反応性ASIC1aタンパク質の発現をアッセイする工程;(b)サンプルに存在する免疫反応性ASIC1aタンパク質の量と標準参照とを比較する工程であって、標準と比較した免疫反応性ASIC1aタンパク質レベルの増加または減少は医学的状態を指し示す工程、を伴う、医学的状態の診断法を提供する。
【0077】
親和性精製。本技術の抗ASIC1a抗体を使用して、サンプルから免疫反応性ASIC1aタンパク質を精製し得る。一部の実施形態において、抗体は固体支持体に固定される。そのような固体支持体の例には、ポリカーボネート等のプラスチック、アガロースおよびセファロース等の複合糖質、ポリアクリルアミドおよびラテックスビーズ等のアクリル樹脂が含まれる。そのような固体支持体に抗体をカップリングさせるための技法は、当技術分野において周知である(Weir et al., “Handbook of Experimental Immunology” 4th Ed., Blackwell Scientific Publications, Oxford, England, Chapter 10 (1986);Jacoby et al., Meth. Enzym. 34 Academic Press, N.Y. (1974))。
抗体-支持マトリックスに抗原を結合させる最も簡単な方法は、カラム内にビーズを収集し、抗原溶液をカラムに通すことである。この方法の効率は、固定された抗体と抗原との間の接触時間に依存し、それは低い流速を使用することによって拡張され得る。固定された抗体は、抗原が流れ過ぎるときに抗原を捕捉する。代替的に、抗原溶液と支持体(例えば、ビーズ)とを混合し、スラリーを回転させまたは振動させ、抗原と固定された抗体との間の最大接触を可能にすることによって、抗原を抗体-支持マトリックスと接触させ得る。結合反応が完了した後、ビーズの収集のためにスラリーをカラムに通す。適切な洗浄緩衝液を使用してビーズを洗浄し、次いで純粋なまたは実質的に純粋な抗原を溶出する。
【0078】
目的の抗体またはポリペプチドは、ビーズ等の固体支持体にコンジュゲートされ得る。加えて、ビーズ等の第1の固体支持体は、また所望の場合には、支持体へのポリペプチドのコンジュゲーションのための本明細書に開示されるものを含めた任意の適切な手段によって、第2のビーズまたは他の支持体であり得る第2の固体支持体にコンジュゲートされ得る。したがって、固体支持体へのポリペプチドのコンジュゲーションに関して本明細書に開示されるコンジュゲーション方法および手段のいずれかは、第1および第2の固体支持体が同じであり得るまたは異なり得る、第2の支持体への第1の支持体のコンジュゲーションにも適用され得る。
【0079】
固体支持体にポリペプチドをコンジュゲートするための使用のための、架橋剤であり得る適当なリンカーには、支持体の表面に存在する官能基ともしくはポリペプチドとまたはその両方と反応し得る多様な作用物質が含まれる。架橋剤として有用な試薬には、ホモ二官能性、および特にヘテロ二官能性の試薬が含まれる。有用な二官能性架橋剤には、N-SIAB、ジマレイミド、DTNB、N-SATA、N-SPDP、SMCC、および6-HYNICが含まれるが、それらに限定されるわけではない。架橋剤は、ポリペプチドと固体支持体との間の選択的に切断可能な結合を提供するように選択され得る。例えば、3-アミノ-(2-ニトロフェニル)プロピオン酸等の光解離性(photolabile)架橋剤は、固体支持体からポリペプチドを切断するための手段として採用され得る。(Brown et al., Mol. Divers, pp, 4-12 (1995);Rothschild et al., Nucl. Acids Res., 24:351-66 (1996);および米国特許第5,643,722号)。他の架橋試薬は当技術分野において周知である。(例えば、Wong (1991)、上記;およびHermanson (1996)、上記を参照されたい)。
【0080】
抗体またはポリペプチドは、カルボキシル基官能化ビーズとポリペプチドのアミノ末端との間で形成される共有結合性アミド結合を通じて、または逆に、アミノ基官能化ビーズとポリペプチドのカルボキシル末端との間で形成される共有結合性アミド結合を通じて、ビーズ等の固体支持体に固定され得る。加えて、二官能性トリチルリンカーは、アミノ樹脂による樹脂上のアミノ基またはカルボキシル基を通じて、支持体に、例えばワング樹脂等の樹脂上の4-ニトロフェニル活性エステルに付着され得る。二官能性トリチル手法を使用すると、固体支持体は、ポリペプチドが切断されかつ除去され得ることを確実にするために、ギ酸またはトリフルオロ酢酸等の揮発性酸を用いた処理を要し得る。そのような場合、ポリペプチドは、固体支持体のウェルの底にまたは固体支持体の平面に、ビーズレスの(beadless)斑点として堆積し得る。マトリックス溶液の添加後、ポリペプチドはMSに脱着され得る。
【0081】
ポリペプチドからアミノ連結トリチル基を切断するために揮発性酸または適当なマトリックス溶液、例えば3-HPAを含有するマトリックス溶液を使用することによって、疎水性トリチルリンカーも酸不安定性リンカーとして利用され得る。酸不安定性は変化もし得る。例えば、トリチル、モノメトキシトリチル、ジメトキシトリチル、またはトリメトキシトリチルは、ポリペプチドの適当なp-置換されたまたはより酸不安定性のトリチルアミン誘導体に変化し得る、すなわちトリチルエーテルおよびトリチルアミン結合がポリペプチドに作製され得る。したがって、ポリペプチドは、例えば疎水性引力を分断することによって、または所望の場合には、3-HPA等のマトリックスが酸として作用する典型的なMS条件下を含めた酸性条件下でトリチルエーテルもしくはトリチルアミン結合を切断することによって、疎水性リンカーから取り外され得る。
【0082】
第1の固体支持体、例えばビーズを、第2の固体支持体に結合させるために、または目的のポリペプチドを固体支持体に結合させるために、直交切断可能なリンカーも有用であり得る。そのようなリンカーを使用すると、支持体からポリペプチドを切断することなく、第1の固体支持体、例えばビーズは、第2の固体支持体から選択的に切断され得;次いで、ポリペプチドはその後にビーズから切断され得る。例えば、DTT等の還元剤を使用して切断され得るジスルフィドリンカーを採用して、ビーズを第2の固体支持体に結合させ得、酸切断可能な二官能性トリチル基を使用して、ポリペプチドを支持体に固定し得る。所望のとおり、固体支持体へのポリペプチドの連結がまず切断され得、例えば第1および第2の支持体間の連結は無傷のまま残る。トリチルリンカーは、共有結合性または疎水性コンジュゲーションを提供し得、コンジュゲーションの性質にかかわらず、トリチル基は、酸性条件において容易に切断される。
例えば、固体支持体へのビーズの高密度結合またはビーズへのポリペプチドの高密度結合が促進されるような長さおよび化学的性質を有するように選択され得る連結基を通じて、ビーズは第2の支持体に結合され得る。そのような連結基は、例えば「樹状」構造を有し得、それによって固体支持体上の付着部位あたり多数の官能基を提供する。そのような連結基の例には、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ペンタ-エリスリトール(erythrole)、およびトリス-ヒドロキシ-アミノメタンが含まれる。
【0083】
非共有結合性結合による会合。非共有結合性相互作用を通じて、抗体もしくはポリペプチドは固体支持体にコンジュゲートされ得る、または第1の固体支持体は、また、第2の固体支持体にコンジュゲートされ得る。例えば、磁化され得る強磁性材料で作られた磁気ビーズは、磁性固体支持体に引き付けることができ、磁場の除去によって支持体から解放され得る。代替的に、固体支持体は、イオン性または疎水性部分を有して提供され得、それは、それぞれイオン性または疎水性部分と、ポリペプチド、例えば付着されたトリチル基を含有するポリペプチドとの、または疎水性特徴を有する第2の固体支持体との相互作用を可能にし得る。
固体支持体は、特異的結合ペアのメンバーを有して提供することもでき、それゆえ、相補的結合部分を含有するポリペプチドまたは第2の固体支持体にコンジュゲートすることができる。例えば、アビジンでまたはストレプトアビジンでコートされたビーズは、そこに組み入れられたビオチン部分を有するポリペプチドに、またはビオチンもしくはイミノビオチン等のビオチンの誘導体でコートされた第2の固体支持体に結合され得る。
本明細書に開示されるまたは当技術分野において別様に公知の結合メンバーのいずれかは入れ替えられ得ることが認識されるべきである。ゆえに、ビオチンを、例えばポリペプチドまたは固体支持体のいずれかに組み入れることができ、逆に、アビジンまたは他のビオチン結合部分を、それぞれ支持体またはポリペプチドに組み入れることができるであろう。本明細書における使用のために企図される他の特異的結合ペアには、ホルモンおよびそれらの受容体、酵素およびそれらの基質、ヌクレオチド配列およびその相補的配列、抗体およびそれが特異的に相互作用する抗原、ならびに当業者に公知の他のそのようなペアが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0084】
A.本技術の抗ASIC1a抗体の診断的使用
概略。本技術の抗ASIC1a抗体は診断法において有用である。そのため、本技術は、対象におけるASIC1aタンパク質活性の診断において該抗体を使用した方法を提供する。本技術の抗ASIC1a抗体は、それらが、任意のレベルのエピトープ結合特異性およびASIC1aタンパク質に対する非常に高い結合親和性を有するように選択され得る。一般的に、抗体の結合親和性が高ければ高いほど、免疫学的アッセイにおいてよりストリンジェントな洗浄条件を実施して、標的ポリペプチドを除去することなく、非特異的に結合している材料を除去し得る。したがって、診断用アッセイにおいて有用な本技術の抗ASIC1a抗体は、通常、約108-1、109-1、1010-1、1011-1、または1012-1の結合親和性を有する。さらに、診断用試薬として使用される本技術の抗ASIC1a抗体は、少なくとも12時間、少なくとも5(5)時間、または少なくとも1(1)時間以内に標準的条件下で平衡に到達するのに十分な速度論的会合速度(on-rate)を有することが望ましい。
【0085】
本技術の抗ASIC1a抗体を使用して、多様な標準的アッセイ形式において免疫反応性ASIC1aタンパク質を検出し得る。そのような形式には、免疫沈降、ウェスタンブロッティング、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫学的計量(immunometric)アッセイが含まれる。Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Publications, New York, 1988);米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,879,262号;第4,034,074号、第3,791,932号;第3,817,837号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;および第4,098,876号を参照されたい。生物学的サンプルは、対象の任意の組織または体液から獲得され得る。ある特定の実施形態において、対象はがんの早期ステージにある。1つの実施形態において、がんの早期ステージは、対象から獲得されたサンプルにおけるASIC1aタンパク質のレベルまたは発現パターンによって判定される。ある特定の実施形態において、サンプルは、尿、血液、血清、血漿、唾液、羊水、脳脊髄液(CSF)、および生検された生体組織からなる群から選択される。
【0086】
免疫学的計量アッセイまたはサンドイッチアッセイは、本技術の診断法のための1つの形式である。米国特許第4,376,110号、第4,486,530号、第5,914,241号、および第5,965,375号を参照されたい。そのようなアッセイは、1種の抗体、例えば固相に固定された本技術の抗ASIC1a抗体または本技術の抗ASIC1a抗体の集団、および溶液中の別の本技術の抗ASIC1a抗体または本技術の抗ASIC1a抗体の集団を使用する。典型的に、溶液の本技術の抗ASIC1a抗体または本技術の抗ASIC1a抗体の集団は標識される。抗体集団が使用される場合、集団は、標的ポリペプチド内の異なるエピトープ特異性に結合する抗体を含有し得る。したがって、同じ集団が、固相および溶液抗体の両方に使用され得る。本技術の抗ASIC1a抗体が使用される場合、異なる結合特異性を有する第1および第2のASIC1aタンパク質モノクローナル抗体が、固相および液相に使用される。固相(「捕捉」とも称される)および溶液(「検出」とも称される)抗体は、いずれかの順序でまたは同時に標的抗原と接触し得る。固相抗体が最初に接触する場合、アッセイは、前方アッセイであると称される。逆に、溶液抗体が最初に接触する場合、アッセイは、後方アッセイであると称される。標的が両抗体と同時に接触する場合、アッセイは同時アッセイと称される。ASIC1aタンパク質と本技術の抗ASIC1a抗体とを接触させた後、サンプルを、通常では約10分間~約24時間で変動する期間(通常では約1時間)インキュベートする。次いで、洗浄工程を実施して、診断用試薬として使用されている本技術の抗ASIC1a抗体に特異的には結合していないサンプルの構成要素を除去する。固相および溶液抗体が別個の工程において結合される場合、いずれかのまたは両方の結合工程の後に洗浄が実施され得る。洗浄した後、結合は、典型的に、標識された溶液抗体の結合を通じて、固相に連結された標識を検出することによって定量化される。通常、抗体または抗体の集団の所与のペア、および所与の反応条件に対して、既知の濃度の標的抗原を含有するサンプルから検量線が作成される。試験されているサンプルにおける免疫反応性ASIC1aタンパク質の濃度を、次いで、検量線(すなわち、標準曲線)からの補間によって読み取る。分析物は、平衡状態で結合している標識された溶液抗体の量から、または平衡に到達する前の一連の時点における結合している標識された溶液抗体の速度論的測定によって測定され得る。そのような曲線の傾きは、サンプルにおけるASIC1aタンパク質の濃度の尺度である。
【0087】
上記の方法における使用のための適切な支持体には、例えばニトロセルロース膜、ナイロン膜および誘導体化ナイロン膜、ならびにまた粒子、例えばアガロース、デキストランベースのゲル、ディップスティック、粒子状物質、ミクロスフェア、磁気粒子、試験管、マイクロタイターウェル、SEPHADEX(商標)(Amersham Pharmacia Biotech、Piscataway N.J.)等が含まれる。固定は、吸収によるまたは共有結合性付着によるものであり得る。任意に、本技術の抗ASIC1a抗体は、アビジン等の表面結合リンカーへの付着のための、ビオチン等のリンカー分子に接合され得る。
一部の実施形態において、本開示は、診断剤にコンジュゲートした本技術の抗ASIC1a抗体を提供する。診断剤は、放射性または非放射性標識である造影剤(磁気共鳴撮像、コンピューター断層撮影、または超音波等のための)を含み得、放射性標識は、ガンマ、ベータ、アルファ、オージェ電子、または陽電子放出同位体であり得る。診断剤は、抗体部分、すなわち抗体または抗体フラグメントもしくはサブフラグメントにコンジュゲートされて投与され、抗原を含有する細胞の場所を特定することによって疾患を診断するまたは検出することにおいて有用である分子である。
【0088】
有用な診断剤には、放射性同位体、色素(ビオチン-ストレプトアビジン複合体を有するもの等)、造影剤、蛍光化合物または分子、および磁気共鳴撮像(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。米国特許第6,331,175号は、MRI技法、およびMRI増強剤にコンジュゲートした抗体の調製を記載しており、参照によりその全体として組み入れられる。一部の実施形態において、診断剤は、放射性同位体、磁気共鳴撮像における使用のための増強剤、および蛍光化合物からなる群から選択される。抗体構成要素に放射性金属または常磁性イオンを積むために、それと、イオンに結合するための多数のキレート基が付着されている長い尾部を有する試薬とを反応させることが必要であり得る。そのような尾部は、ポリリジン、多糖、または例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシム(polyoxime)、およびこの目的に有用であることが公知の同様の基等のキレート基が結合され得るペンダント基を有する他の誘導体化されたもしくは誘導体化可能な鎖等のポリマーであり得る。キレートは、標準的な化学的性質を使用して、本技術の抗体にカップリングされ得る。キレートは、通常、免疫反応性の最小限の喪失ならびに最小限の凝集および/または内部架橋をもって、分子への結合の形成を可能にする基によって抗体に連結される。キレートを抗体にコンジュゲートするための他の方法および試薬は、米国特許第4,824,659号に開示される。特に有用な金属-キレート組み合わせには、放射性撮像のための診断用同位体とともに使用される2-ベンジル-DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が含まれる。マンガン、鉄、およびガドリニウム等の非放射性金属と複合される場合の同じキレートは、本技術のASIC1aタンパク質抗体とともに使用される場合、MRIに有用である。
【0089】
B.本技術の抗ASIC1a抗体の治療的使用
概略。一部の態様において、本技術の抗ASIC1a抗体は、本明細書に開示される方法において有用であり、虚血性脳卒中および関連病状の阻止、改善、または治療のための療法を提供する。
1つの態様において、本技術は、それを必要とする対象における虚血性脳卒中を治療する方法であって、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含み、前記VHは、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;前記VLは、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記方法を提供する。
【0090】
一部の実施形態において、VHは、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含み、VLは、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号24に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号28に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号33に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号34に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号35に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号39に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号43に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号44に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号45に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号48に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号49に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号53に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号55に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む。
【0091】
一部の実施形態において、VHは、配列番号2、12、22、32、42、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VLは、配列番号7、17、27、37、47、および57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0092】
1つの態様において、本技術は、それを必要とする対象における虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状を緩和することであって、方法が、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程であって、VHは、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;VLは、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、ことを提供する。
【0093】
一部の実施形態において、VHは、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含み、VLは、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号4に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号5に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号8に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号9に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号13に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号14に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号18に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号19に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号20に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号23に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号24に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号25に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号28に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号33に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号34に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号35に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号38に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号39に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号40に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号43に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号44に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号45に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号48に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号49に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号50に記載のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、VH CDR1は配列番号53に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号54に記載のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号55に記載のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号58に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号59に記載のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号60に記載のアミノ酸配列を含む。
【0094】
1つの態様において、本技術は、それを必要とする対象における虚血性脳卒中を治療するための方法であって、(a)配列番号7、17、27、37、47、もしくは57のうちのいずれか1つの軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列;および/または(b)配列番号2、12、22、32、42、もしくは52のうちのいずれか1つに存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列(VH)、を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0095】
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはASIC1aタンパク質に結合する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1aの細胞外ドメインに結合する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、ASIC1a三量体の機能を阻害する。
【0096】
一部の実施形態において、虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状は、突発的脱力;とりわけ身体の片側での顔面、腕、または脚の麻痺またはしびれ;顔面の片側の下垂;錯乱;不明瞭な単語等の発話困難または言語理解障害;かすみ目もしくは黒内障等、一方もしくは両方の目での見にくさ、または一方もしくは両方の目での複視;呼吸困難;めまい;歩行困難;例えば原因不明の転倒を引き起こす、平衡感覚喪失または協調運動障害;意識の喪失;および突然のまたは激しい頭痛である。一部の実施形態において、虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状は、突発性顔面脱力(顔面の片側の下垂等)、上肢の片側筋力低下、および異常発語からなる群から選択される。
一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’、F(ab’)2、またはscFv-Fc抗体である。一部の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントはscFv抗体である。一部の実施形態において、scFv抗体は、ASC01、ASC02、ASC03、ASC04、ASC05、またはASC06である。
【0097】
ゆえに、例えば、本技術の抗ASIC1a抗体の1種または複数は、(1)単独で、または他の活性剤もしくは本技術の抗ASIC1a抗体との組み合わせ製剤で同時に、共製剤化され得かつ投与され得るまたは送達され得る;(2)別個の製剤として交互にまたは並行して送達され得る;あるいは(3)当技術分野において公知の他の任意の併用療法レジメンによるものであり得る。交互療法において送達される場合、本明細書に記載される方法は、例えば別個の溶液、エマルジョン、懸濁液、錠剤、丸薬、もしくはカプセルで、または別個の注射器での異なる注射によって、活性成分を逐次的に投与する工程または送達する工程を含み得る。一般的に、交互療法の間、各活性成分の有効投薬量が逐次的に、すなわち連続的に投与され、一方で同時療法において、2種以上の活性成分の有効投薬量が一緒に投与される。様々な配列の間欠的併用療法も使用され得る。本技術の抗ASIC1a抗体と他の活性剤とのそのような組み合わせを投与することは、医学的疾患または病状に罹患しかつ治療を必要とする対象に治療有効量で投与された場合、相乗的な生物学的効果をもたらし得る。そのような手法の利点は、対象における虚血性脳卒中に罹患したまたはかかりやすい対象を阻止する、改善する、または治療するために、より低い用量の本技術の抗ASIC1a抗体および/または他の活性剤が必要とされ得ることである。さらに、より低い投薬量の本技術の抗ASIC1a抗体および/または他の活性剤の使用によって、治療の潜在的副作用が回避され得る。
【0098】
ASC01、ASC02、ASC03、ASC04、ASC05、ASC06等の本明細書に記載される本技術の抗ASIC1a抗体は、疾患を防止するまたは治療するのに有用である。具体的には、本開示は、虚血性脳卒中に罹患したまたはかかりやすい対象を治療する予防的および治療的方法の両方を提供する。したがって、本方法は、それを必要とする対象に本技術の抗ASIC1a抗体の有効量を対象に投与して、イオンチャネルタンパク質三量体変異体の機能を回復させることによって、対象における虚血性脳卒中に罹患したまたはかかりやすい対象に阻止および/または治療を提供する。本技術は、それを必要とする対象に、ASC01、ASC02、ASC03、ASC04、ASC05、ASC06等の本明細書に開示される本技術の抗ASIC1a抗体の治療有効量の投与を通じて、哺乳類における虚血性脳卒中に罹患したまたはかかりやすい対象の治療を提供する。
【0099】
本技術の抗ASIC1a抗体の生物学的効果の判定
様々な実施形態において、適切なインビトロまたはインビボアッセイを実施して、本技術の抗ASIC1a抗体に基づく特異的療法の効果、およびその投与が治療に適応されるかどうかを判定する。様々な実施形態において、インビトロアッセイは、代表的な細胞株である、本明細書に開示されるCHO-K1/hASIC1a(完全長hASIC1aを発現する安定細胞株)等のCHO-K1細胞を用いて実施され得る。これらの実験を使用して、本技術の所与の抗ASIC1a抗体が、ASIC1aタンパク質三量体の活性を阻害することにおいて所望の効果を発揮するかどうかを判定し得る。療法における使用のための化合物は、ヒト対象において試験する前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギ等を含むがそれらに限定されない、適切な動物モデルシステムにおいて試験され得る。同様に、インビボ試験に関して、ヒト対象への投与の前に、当技術分野において公知の動物モデルシステムのいずれかが使用され得る。
一部の実施形態において、ASIC1a活性は、本明細書に開示されるパッチクランプ等の電気生理学的アッセイを含むがそれに限定されない、当技術分野において周知のアッセイによって判定される。一部の実施形態において、ASIC1a活性は、動物モデルにおける生物学的活性を測定するアッセイによって判定される。一部の実施形態において、ASIC1a活性は、本明細書に開示されるマウス中大脳動脈閉塞(MCAO)誘導性虚血性脳卒中モデルを含むがそれに限定されない、動物モデルの疾患表現型のレスキューを測定するアッセイによって判定される。
【0100】
投与の様態および有効投薬量
細胞、臓器、または組織と本技術の免疫グロブリン関連組成物とを接触させるための、当業者に公知の任意の方法が採用され得る。適切な方法には、インビトロ、エクスビボ、またはインビボ方法が含まれる。インビボ方法は、典型的に、哺乳類、適切にはヒトへの、上で記載されるもの等の免疫グロブリン関連組成物の投与を含む。療法のためにインビボで使用される場合、本技術の抗ASIC1a抗体は、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。用量および投薬量レジメンは、対象における症状の程度、使用される特定の免疫グロブリンの特徴、例えばその治療指数、対象、および対象の病歴に依存するであろう。
有効量は、内科医および臨床医によく知られる方法によって前臨床試験および臨床試験の間に判定され得る。方法において有用な免疫グロブリンの有効量は、薬学的化合物を投与するためのいくつかの周知の方法のいずれかによって、それを必要とする哺乳類に投与され得る。免疫グロブリンは、全身的にまたは局部的に投与され得る。
【0101】
C.キット
本技術は、本技術の少なくとも1種の免疫グロブリン関連組成物(例えば、本明細書に記載される任意の抗体または抗原結合フラグメント)またはその機能的変種(例えば、置換的変種)を含む、虚血性脳卒中の検出および/または治療のためのキットを提供する。任意に、本技術のキットの上記構成要素は、適切な容器に詰められ、虚血性脳卒中の診断および/または治療に関してラベルを付される。上述の構成要素は、単位または複数回用量容器、例えば密封アンプル、バイアル、ボトル、注射器、および試験管内に、水性の、好ましくは無菌の溶液として、または再構成のための凍結乾燥された、好ましくは無菌の製剤として保管され得る。キットは、医薬組成物をより高容量に希釈するのに適した希釈剤を保持する第2の容器をさらに含み得る。適切な希釈剤には、医薬組成物の薬学的に許容される賦形剤および生理食塩溶液が含まれるが、それらに限定されるわけではない。さらに、キットは、医薬組成物を希釈するための指示書、および/または希釈されるか否かにかかわらず、医薬組成物を投与するための指示書を含み得る。容器は、ガラスまたはプラスチック等の多様な材料から形成され得、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通され得る栓を有する静注用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。キットは、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液等、薬学的に許容される緩衝液を含むより多くの容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器、適切な宿主の1種または複数に対する培養培地を含めた、商業的なおよびユーザーの立場から望ましい他の材料をさらに含み得る。キットは、治療用または診断用製品の商業的パッケージに通例含まれる指示書を任意に含み得、それは、例えばそのような治療用または診断用製品の使用に関する適応症、使用法、投薬量、製造、投与、禁忌、および/または警告についての情報を含有する。
【0102】
キットは、生物学的サンプル、例えば血清、血漿、リンパ液、嚢胞液、尿、排泄物、脳脊髄液、腹水、または血液を含むがそれらに限定されない、および生体組織の生検サンプルを含めた、例えば任意の体液における、免疫反応性ASIC1aタンパク質の存在を検出するのに有用である。例えば、キットは、生物学的サンプルにおけるASIC1aタンパク質に結合し得る、本技術の1種または複数のヒト化、キメラ、または二重特異性抗ASIC1a抗体(またはその抗原結合フラグメント);サンプルにおけるASIC1aタンパク質の量を判定するための手段;およびサンプルにおける免疫反応性ASIC1aタンパク質の量と標準とを比較するための手段、を含み得る。抗ASIC1a抗体の1種または複数は標識され得る。キット構成要素(例えば、試薬)は、適切な容器にパッケージされ得る。キットは、免疫反応性ASIC1aタンパク質を検出するためにキットを使用するための指示書をさらに含み得る。
抗体ベースのキットに関して、キットは、例えば、1)ASIC1aタンパク質に結合する、固体支持体に付着した第1の抗体、例えば本技術のヒト化またはキメラ抗ASIC1a抗体(またはその抗原結合フラグメント);および任意に、2)ASIC1aタンパク質または第1の抗体のいずれかに結合しかつ検出可能な標識にコンジュゲートされている、第2の異なる抗体、を含み得る。
【0103】
キットは、例えば緩衝剤、防腐剤、またはタンパク質安定剤も含み得る。キットは、検出可能な標識、例えば酵素または基質を検出するために必要な構成要素をさらに含み得る。キットは、アッセイされ得かつ試験サンプルと比較され得る対照サンプルまたは一連の対照サンプルも含有し得る。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入され得、様々な容器のすべては、キットを使用して実施されるアッセイの結果を解釈するための指示書とともに、単一パッケージ内にあり得る。本技術のキットは、キット容器の上または中に書面の製品を含有し得る。書面の製品は、例えばインビトロもしくはインビボにおけるASIC1aタンパク質の検出のための、またはそれを必要とする対象における虚血性脳卒中の治療のための、キットに含有される試薬を使用する方法を記載している。ある特定の実施形態において、試薬の使用は、本技術の方法に従ったものであり得る。
【実施例
【0104】
本技術は、決して限定的なものとして捉えられるべきではない以下の実施例によってさらに解説される。下の実施例のそれぞれに関して、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、および遺伝子改変されたIgG等、本明細書に記載される任意の免疫学的結合因子およびそのフラグメントが使用され得る。例として、しかし限定によってではなく、下の実施例において使用されるscFvまたはIgG1抗体は、ASC01、ASC02、ASC03、ASC04、ASC05、またはASC06等であり得る。
(実施例1)
材料および方法
試薬および略語。試薬のすべてを、最高分析グレードで、Sigmaからまたはそうでなければ記述されるように購入した。組み換えタンパク質記号は、種(例えば、ヒト、マウス、ラット等)の頭文字のイタリック体の小文字が記号における最初の文字として使用され、その後に遺伝子名が続く形式で使用される(例えば、hASIC1aはhASIC1aタンパク質を表す)。抗体を、パニング結果に従って、ASC00のように任意に番号付けした。「-IgG1」記号を有するまたは有しない任意の数字は、それぞれ、Fcまたは完全長IgG1(IgG1)と融合したscFvの形式の抗体を表す。
【0105】
細胞培養。CHO-K1細胞株(#CRL-9618;ATCC)を、10%(体積/体積)FBS(#1600074;Gibco)を含有するF-12k培地(#21127022;Gibco)中で維持し、一方でFreeStyle 293F(#R79007;ThermoFisher Scientific)細胞株を、Freestyle 293発現培地(#12338026;Thermo-Fisher Scientific)中で培養した。スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)9(Sf9)細胞(#12659017;Thermo-Fisher Scientific)を、ESF921培地(#96-001-01;Expression Systems)中にて27℃で培養した。E18-d齢のC57 BL/6マウスまたはASIC1a-/-マウスから切開された初代皮質ニューロンを、B27(#17504044;Gibco)およびGlutamx I(#35050061;Gibco)を補足したNeurobasal培地(#21103049;Gibco)中で維持した。完全長hASIC1a(1~528アミノ酸)チャネルを過剰発現するCHO-K1/hASIC1a安定細胞株を以下のように作出した:C末端eYFP融合またはC末端mCherry融合を有する完全長hASIC1aのcDNAを構築し、pCDNA3.1-Neo発現ベクターにクローニングし、Lipofectin 2000を使用してCHO-K1細胞にトランスフェクトした。CHO-K1/hASIC1a安定細胞株を抗生物質ジェネティシン(最高1mg/mL)によって選択し、融合した蛍光タンパク質eYFP(λex=488nm;λem=528nm)またはmCherry蛍光(λex=587nm;λem=610nm)によってフローサイトメトリーを使用して検証した。200μg/mLジェネティシンの存在下で30日間培養した場合、80%を上回る陽性細胞が生き延びた。クローンの安定株を、eYFP(6H7細胞株)およびmCherry(4C12細胞株)の発現に基づいてフローサイトメトリー機器(BD FACSAria III)を使用して選別し、10%(体積/体積)FBSおよび200μg/mLジェネティシンを補足したF-12K培地を使用して増殖させた。hASIC1a特異的モノクローナル抗体ASC06を使用して、hASIC1aの過剰発現をさらに確認した。
【0106】
組み換え短縮hASIC1aの精製。N末端Flagタグに融合した短縮hASIC1a(ΔhASIC1a)をコードするcDNAを、pEG BacMam発現ベクター(Eric Gouaux、Howard Hughes Medical Institute、Oregon Health and Science University、Portland、ORのご厚意)にクローニングした。次いで、ΔhASIC1aタンパク質を、BacMamシステムを使用してHEK293F細胞において異種発現させた。Goehring, et al., Nat Protoc 9:2574-2585 (2014)。簡潔には、pEG BacMam-ΔhASIC1a構築物を、DH10Bac大腸菌(Escherichia coli)細胞に形質転換した(ΔhASIC1aバクミド)。次いで、結果として生じたバクミドを、FuGENEトランスフェクション試薬(Promega)を使用してSf9細胞にトランスフェクトして、P3バキュロウイルス(2回増幅された)を獲得した。HEK293F細胞(mLあたり2×106個細胞)に、1:25(ウイルス:細胞)の感染多重度(MOI)でバキュロウイルスによって37℃で24時間感染させた。感染細胞を、2mM酪酸ナトリウムの存在下にて37℃で48時間インキュベートして、標的タンパク質の発現をブーストした。細胞を、1分間あたり2,000×gの遠心分離によって採集した。
【0107】
以下の工程を、特に指定されない限り、氷上で行った。2L培養物からの細胞ペレットを、まず、プロテアーゼ阻害剤混合物(50mLあたり1錠;Roche)を補足した100mLの低張緩衝液(10mM Tris、pH7.5、10mM MgCl2、20mM KCl)中に再懸濁した。細胞をダウンスホモジナイザーを使用してすりつぶし、80,000×gで40分間遠心分離した。過程を1回繰り返した後、結果として生じたペレットを、100mLの高張緩衝液(10mM Tris、pH7.5、10mM MgCl2、20mM KCl、1M NaCl)中に再懸濁し、ホモジナイズし、遠心分離した。この手順ももう1回繰り返した。次いで、結果として生じたペレットを混合し、プロテアーゼ阻害剤を含有する50mL低張緩衝液中2mg/mLヨードアセトアミドで30分間処理した。組み換えΔhASIC1aタンパク質を、4℃で3時間の穏やかな撹拌下で、細胞溶解緩衝液(100mM Tris、pH7.5、1.6M NaCl、1% n-ドデシルb-D-マルトピラノシド(DDM)、0.2%ヘミコハク酸コレステリル(CHS))中に抽出した。15,000×gでの30分間の遠心分離の後、上清を、穏やかな撹拌下で抗FLAG M2磁気ビーズ(#M8823;Sigma)とともに一晩インキュベートした。磁気ビーズを、緩衝液A(50mM Tris、pH7.5、800mM NaCl、10%グリセロール、0.1% DDM、0.02% CHS、10mM MgCl2)および緩衝液B(25mM Tris、pH7.5、800mM NaCl、10%グリセロール、0.05% DDM、0.01% CHS)でそれぞれ1回洗浄した。ΔhASIC1aタンパク質を、0.1mg/mL Flagペプチドを補足した緩衝液Bを使用して溶出し、濃縮し、Superdex 200カラム(GE Heathcare)でのSECを使用してさらに精製し、濃縮して60μLの15mg/mLストック溶液を産出した。図12Aに示されるように、結果として生じた均質なΔhASIC1aは、SDS-PAGE解析によって判断される>90%純粋であった。
【0108】
hASIC1aチャネルのナノディスクアセンブリ。細胞膜の脂質二重層環境を模倣するために、ΔhASIC1aタンパク質と、膜足場タンパク質(MSP)および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)とを3:2:65のモル比で混合することによって、精製されたΔhASIC1aタンパク質を脂質ナノディスクに組み入れた。会合した界面活性剤を、Bio-Beads SM2[Bio-Beads:DDM=10:1(質量/質量);Bio-Rad]との穏やかな撹拌によって一晩かけて除去した。ΔhASIC1aが埋め込まれたナノディスクを、Flagペプチド特異的磁気ビーズを使用して、アセンブリしていないナノディスクから分離した。D'Antona et al., Biochemistry 53:127-134 (2014)。所望のΔhASIC1aナノディスクアセンブリ体を、20mM Tris、pH7.5、および150mM NaClを含有する緩衝液中でSuperose 6カラム(GE Heathcare)を使用してさらに精製しかつ収集した。空ナノディスクを、ΔhASIC1aの添加なしでパッケージした。アセンブリしたΔhASIC1aナノディスクの組成を、SDS-PAGE、EM、および動的光散乱によって解析した(図9A~C、12A、12B)。
【0109】
コンビナトリアル抗体ライブラリーの差示的富化ベースのスクリーニング。ストレプトアビジンコート磁気ビーズ(#21925;Pierce)に固定されたビオチン化ΔhASIC1aナノディスクに対する3ラウンドの親和性富化の後、hASIC1a特異的scFV抗体を、コンビナトリアルヒトモノクローナルscFv抗体ファージライブラリー(1011種の多様性)から選択した。ファージ抗体ライブラリーパニングを、改変された手順を使用して実施した。Xu, et al. Front Mol Neurosci 10: 298 (2017)。簡潔には、抗原(ΔhASIC1aナノディスク)に結合するファージミド(抗体ライブラリーを呈示する)を各サイクルで富化し、グリシン-HCl(pH2.2)を用いて溶出した。XL1-Blue細胞を使用して、次のラウンドのパニングのために、アウトプットファージミドを発現させかつ増幅した。非特異的富化を最小限に抑えるために、差示的富化ファージディスプレイ選択を使用し、第2および第3のサイクルにおけるΔhASIC1aナノディスクに対するパニングの前に、過剰量の空ナノディスク(ΔhASIC1aナノディスクの量を2倍上回る)を使用して非特異的ファージミドをプルダウンした。3回の反復の後、96個の陽性コロニーを選択し、ファージELISAによって解析した。Xu, et al. Front Mol Neurosci 10: 298 (2017)。陽性クローンのすべてをシーケンシングした。CDR3ドメインのDNAおよびタンパク質配列の両方を、国際的ImMunoGeneTics情報プラットフォームを使用して解析した。CDR3配列をアラインした後、系統樹を構築した。6種の特有のscFv配列が高度に富化された。
【0110】
抗体の発現および精製。候補scFv配列をコードする遺伝子を、改変pFUSE発現ベクター(#pfuse-hg1fc2;Invivogen)にクローニングして、ヒトIgG1のFcドメイン全体を構成するscFv-Fc融合タンパク質を獲得した。完全長IgG1抗体に関しては、scFvベクターからの重鎖(VHドメイン)および軽鎖(VLドメイン)の可変領域を、それぞれ、無傷の定常重鎖ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)および無傷の定常軽鎖ドメイン(CL)を有するプラスミドにクローニングした。scFv-Fcベクターをトランスフェクトされたまたは等モルの重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターを共トランスフェクトされたHEK293F細胞を、4日間培養した。遠心分離の後、培地中に分泌されたscFv-Fcまたは完全長IgG1抗体を、AKTA purifier 100(GE Healthcare)にてシトレート溶出緩衝液pH3.4を用いたHiTrap Protein A HPカラム(#17-0403-03;GE Healthcare)を使用して精製した。次いで、精製された抗体を濃縮し(15mg/mL)、PBS緩衝液pH7.4中にて-80℃で保管した。例えば図12Dに示されるように、SDS-PAGE解析は、精製された単鎖および完全長抗体が少なくとも90%純粋であることを示した。
【0111】
ネガティブ染色電子顕微鏡法(EM):(1)サンプル調製およびデータ収集。ASC06-IgG1をパパインで消化し、その後にプロテインA親和性精製およびゲル濾過が続くことによって、ASC06-IgG1の抗原結合フラグメント(ASC06-Fab)を調製した。N末端に融合したIL-2タグおよびFlagタグを有するhASIC1aのエクトドメイン(hASIC1a-ECD)をHEK293F細胞において発現させ、抗Flag M2磁気ビーズ、およびPBS緩衝液pH7.4を使用したゲル濾過によって精製した。ASC06-FabおよびhASIC1a-ECDを、PBS緩衝液pH7.4中にて3:1のモル比で4℃にて一晩インキュベートして三次複合体を形成した。この複合体をゲル濾過によってさらに単離した。図14に示されるように、複合体は、ASC06-Fab単独およびhASIC1a-ECD単独の両方とも区別できる独特のピークを形成した。この複合体を含有するピーク画分を収集し、ネガティブ染色EMに供した。
hASIC1a-ECDおよびASC06-Fabの精製された複合体を0.01mg/mLに希釈することによって、EMサンプルを調製した。次いで、薄くかつ連続的なカーボンフィルム(#BZ31024a;Beijing Zhongjingkeyi Technology)によって被覆された新たにグロー放電された銅グリッドに、4-μLサンプル液滴を1分間吸収させた。グリッドを2滴の脱イオン水で洗浄し、続いて2滴の0.75%(質量/体積)ギ酸ウラニル(#22450;Electron Microscopy Sciences)で1分間ネガティブ染色し、その後濾紙で吸い取り、次いで空気乾燥させた。
【0112】
120kVで作動されるLaB6陰極、および67,000倍の較正倍率の4,000×4,000 Eagle CCDカメラを備えたTecnai G2 Spirit透過型電子顕微鏡(FEI)を用いてすべての顕微鏡写真を記録し、1.74Åのピクセルサイズをもたらした。
EM画像処理および3D再構成。すべての画像処理工程にScipionソフトウェア一式を使用した。de la Rosa-Trevin et al., J Struct Biol 157:38-46 (2016)。記録された顕微鏡写真のすべてを、まず2倍にデシメートした(3.48Åのピクセルサイズをもたらす)。次いで、96×96ピクセルのボックスサイズを使用したEMAN2 Boxer機能を用いて、100枚の顕微鏡写真から合計5,064個の粒子を手動で選択した。Tang et al., J Struct Biol. 157(1):38-46 (2007)。Xmipp CL2D機能を使用して、参照なしの2Dクラス平均解析をもたらした。de la Rosa-Trevin et al., J Struct Biol 184:321-328. (2013)。
【0113】
分子動力学シミュレーション。hASIC1aに対するおよびFab形式のASC06に対するモデルを、Swiss Modelウェブサイトを使用することによって相同性により導き出した。Biasini et al. Nucleic Acids Res 42:W252-W258 (2014)。ASIC1aタンパク質に対する鋳型を、短縮ニワトリタンパク質の構造[蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank)(PDB)IDコード4FZ0]から獲得した。ネガティブ染色結果と考え得る原子論的モデルとを比較するために、ClusPro 2.0サーバーおよび抗体ドッキングモードを使用して、hASIC1aのECDへのFabの一連の種々の考え得るドッキング(残基73~425のみが保たれた)をまず生み出した。Comeau et al., Bioinformatics 28:2608-2614SR (2004);およびBrenke et al., Bioinformatics 28(20):2608-14 (2012)。次いで、ネガティブ染色によって記載されるものとより適合する幾何形状を有する、hASIC1aのECDへのFabのドッキングのうちの8種を副選択し、エネルギー最小化を実施し、その後に、相互作用を緩めかつ複合体の構造を安定化する20-ns分子動力学シミュレーションが続いた。この手順の後、1種のモデルのみが、ネガティブ染色実験において実験的に観察される全体的幾何形状を満たすように見えた。Gromacs 4.6.7パッケージおよびAmber14ffSB力場を使用してシミュレーションを実施した。Pronk et al., Bioinformatics 29: 845-854 (2013);およびLindorff-Larsen et al., Proteins 78: 1950-1958 (2010)。システムのすべてを、約0.15Mの濃度でCl-およびK+イオンを含有する全原子TIP3P水で溶媒和させて、生理学的イオン強度を模倣した。
【0114】
ベレンゼン・サーモスタットおよびバロスタットを使用して、温度Tおよび圧力Pをそれぞれ300Kおよび1atmで一定に保った。Berendsen et al., J Chem Phys 81:3684-3690 (1984)。高速Particle Mesh Ewald和法を、直接相互作用に対して1.0nmのカットオフを有して、長距離静電相互作用に使用した。Darden et al., J Chem Phys 98:10089-10093 (1993)。
図12Aに示されるように、ASIC1a三量体と複合したMSP1タンパク質の結晶構造(PDB IDコード2MSC)から始まりかつ91個のDMPC分子で充填された、ナノディスクに挿入されたASIC1aのモデルを獲得した。
【0115】
ELISAアッセイ。アビジン(#21121;Pierce)を、炭酸-重炭酸緩衝液(#C3041;Sigma)中で2ng/μLの最終濃度に希釈した。結果として生じたアビジン溶液を使用して、96ウェルプレートを4℃で一晩コートした(ウェルあたり25μL)。コートされたプレートを、0.05% Tween-20を含有するリン酸緩衝溶液(PBST)(ウェルあたり150μL)で1回洗浄し、その後に、各ウェルにおける25μLのビオチン化ΔhASIC1aナノディスク溶液(2ng/μL)の添加および37℃で1時間のインキュベーションが続いた。PBST緩衝液単独および空ナノディスク溶液(2ng/μL)を、それぞれバックグラウンドおよび陰性対照として使用した。インキュベーション溶液の除去後、PBST緩衝液を使用して得られたプレートを1回リンスし、PBST中5%(体積/体積)ミルクを含有するブロッキング溶液(ウェルあたり150μL)とともに37℃で1時間インキュベートした。ブロッキングおよびPBST洗浄(1回)の後、25μLのscFv-Fc抗体溶液(1%(体積/体積)ミルクを含有するPBST中10μg/mL)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。PBSTを使用して得られたプレートを8回リンスし、その後にHRP検出に供した。ヤギ抗ヒトFc HRPコンジュゲート二次抗体(希釈倍率1:5,000;#A0170;Sigma)および抗M13 HRPコンジュゲート二次抗体(希釈倍率1:5,000;#27-9421-01;GE/Amersham/Whatman)を含有する溶液を上記プレートに添加し(ウェルあたり50μL)、37℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートをPBSTで8回洗浄し、その後に、各ウェルへの50μLの2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-二アンモニウム塩溶液(#11684302001;Roche)の添加が続いた。室温で20分間のインキュベーション後、各ウェルにおける405nmでの吸収変化をマイクロプレートリーダー(Enspire;PerkinElmer)で測定した。
【0116】
親和性判定。表面プラズモン共鳴(SPR)およびフローサイトメトリーを使用して、モノクローナル抗体とhASIC1aとの間の相互作用を調べた。SPR結合試験をBiacore T200(GE Healthcare)で実施した。抗Flag抗体を、バイオセンサーチップCM5 series S(GE Healthcare)の表面にアミンカップリングした。次いで、Flagタグ付けされた組み換えΔhASIC1aをチップ表面に固定した。連続希釈した抗体ASC06-IgG1(1、5、10、50、100nM)を、25mM HEPES、500mM NaCl、0.05% EDTA、および0.05% DDMを含有するランニング緩衝液(pH7.4)中で適用した。結合/解離の反応速度を、SPRシグナル共鳴単位の変化として測定した。見掛けの結合親和性を、シングルサイクルカイネティクスモデルを用いたBiacore T200 evaluationソフトウェアを使用して計算した。
【0117】
フローサイトメトリー結合実験では、ASIC1a-eYFP発現安定細胞(6H7)を収集し、氷冷FACS緩衝液(PBS、0.05% BSA、2mM EDTA)中に再懸濁した。次いで、同数の6H7細胞(チューブあたり50,000個細胞)を、種々の濃度のASC06-IgG1とともに4℃で20分間インキュベートし、1mLの氷冷FACS緩衝液で洗浄し、遠心分離し、ペレットを、ヒトFcを認識するAlexa555コンジュゲート二次抗体(1:800(体積/体積)希釈;Life Technology)を含有する100μLの氷冷FACS緩衝液中に再懸濁した。4℃で15分間インキュベートした後、細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、再懸濁した。細胞をフローサイトメーター(CytoFLEX S;Beckman Culter)で選別しかつ解析して、hASIC1aを過剰発現する安定細胞株への抗体による相対的結合レベルを判定した。eYFP陽性細胞におけるAlexa555の平均蛍光強度を記録しかつ解析して、抗体の見掛けの結合親和性を計算した。
【0118】
免疫細胞化学(ICC)を使用した細胞膜共局在研究。細胞(CHO-K1)を、ポリ-D-リジンコートされたガラス底24ウェルプレートにmLあたり2×105個細胞の濃度で播種した。12時間の培養後、CHO-K1細胞に、Lipofectin 3000試薬によってASICプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、ブロッキング溶液(PBS中5%ヤギ血清)中で30分間インキュベートした。結果として生じた細胞を、2μg/mL ASC06-IgG1とともに4℃で一晩インキュベートし、その後に3回のそれぞれ5分間のPBS洗浄およびAlexa555コンジュゲートヤギ抗ヒト二次抗体(Life Technology)とのインキュベーションが続いた。付加的な3回のそれぞれ5分間のPBS洗浄の後、細胞の核をDAPI(#10236276001;Roche)で染色した。ICC解析を、63×N.A.1.4対物レンズを有するレーザー走査共焦点顕微鏡法(ZEISS LSM710)にて25℃で実施した。画像を1,024×1,024ピクセルEM-CCDカメラで収集した。データ取得および解析を、ZEN 2012プロフェッショナルソフトウェアを用いて実施した。
【0119】
電気生理学的実験。細胞のASIC1a内向き電流を、パッチクランプ増幅器(Axon 200B;Axon Instruments)によって、標準的全細胞記録技法を使用して単一細胞から記録した。膜電流をサンプリングし、Digidata 1320AインターフェースならびにClampexおよびClampfitソフトウェア(バージョン9.0.1;Axon Instruments)を有するパーソナルコンピューターを使用して解析した。典型的な実験に関しては、使用された細胞外液(ECF)は、320~335mOsmの値域内の浸透圧および5M NaOHで調整されたpH7.4を有して、150mM NaCl、5mM KCl、10mM HEPES、10mM D-グルコース、2mM CaCl2、および1.0mM MgCl2を含有した。パッチ電極(4~6MΩ)は、300mOsmで、30mM NaCl、120mM KCl、0.5mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM HEPES、2mM MgATP、および5mM EGTA(5M KOHで調整されたpH7.2)を含有した。ASIC1a活性化ECFは、ECFをpH6.0に維持するためにMESを使用してHEPESを置き換えたという点を除いて、通常のECFと同一である。表面に離散的に分布した個々のCHO-ASIC1a安定細胞(6H7)を有するカバースリップを、倒立顕微鏡に取り付けられたALA 8チャネル灌流システム(ALA Scientific Instruments Inc.)によって生み出される一定の灌流(約2~3mL/分)の下で記録チャンバー内に置いた。ブレークイン(全細胞)配置を達成した後、細胞を-70mVの保持電位で電圧クランプした。まず、通常のECF(pH7.4)を、パッチされた細胞に灌流し、次いで、pH6.0の活性化ECFを迅速に適用して、対照電流としての最大内向きASIC1a電流を引き出した。抗体の阻害効果を試験する場合、種々の濃度のASC06-IgG1を含有するpH7.4のECFを、記録チャンバー内に低濃度から高濃度に10~15分間灌流した。電流の阻害を測定するために、相当する濃度の試験抗体を含有するpH6.0の活性化ECFを、同じパッチされた6H7細胞に適用して、同じ細胞の対照電流に対して正規化され得る内向き電流を生み出した。それぞれ30μMおよび100nMの濃度の小分子阻害剤アミロリド(#S1811;Selleck)および毒ペプチドPcTx1(#4435s;Peptide Institute)を、ASIC1a電流の阻害に対する陽性対照として使用した。4~5個の細胞から取得されたデータを、阻害効果の統計的計算に使用した。
【0120】
定常脱感作(SSD)の測定に関しては、調整ECFのpHを7.6、7.4、7.2、7.0、および6.8に調整し(HEPES緩衝液中)、一方で活性化ECFをpH6.0に維持した(MES緩衝液中)。6H7安定細胞におけるhASIC1aのpH活性化の測定に関しては、調整ECFをpH7.6に固定し(HEPES緩衝液中)、活性化ECFのpHを7.4、7.2、7.0、6.8、6.5、6.3、および6.0に調整した。安定細胞株6H7を300nM ASC06-IgG1の存在および非存在下でパッチした場合にhASIC1aを記録した。センサーグラム上に最大振幅(I/Imax)の画分として表現される相対電流を計算しかつプロットして、SSDおよびpH活性化プロファイルを構成した。各データ点は、少なくとも5個のパッチされた細胞の平均を表す。
【0121】
カルシウム流入。FLIPR Calcium 5アッセイキットを使用して、hASIC1a-mCherryを発現する安定CHO-K1細胞(4C12)における酸誘導性カルシウム流入を判定した。アッセイの24時間前に、細胞を透明底96ウェルプレートにウェルあたり10,000個の密度で播種した。アッセイ緩衝液および色素ローディング緩衝液(1.26mM CaCl2、0.5mM MgCl2、0.4mM MgSO4、5.33mM KCl、0.44mM KH2PO4、4.17mM NaHCO3、138mM NaCl、0.338mM Na2HPO4、20mM HEPES、pH7.4)を、メーカーの指示書に従って調製した。使用直前に、プロベネシドを色素ローディング緩衝液に2.5mMの最終濃度まで添加した。ASC06-IgG1を含有する50ミリリットルのアッセイ緩衝液を4C12細胞とともに37℃で30分間インキュベートし、等体積の色素ローディング緩衝液を添加した。アミロリドならびにPcTx1およびアイソタイプ抗体を、それぞれ陽性および陰性対照として使用した。FDSS/μCELLプレートリーダー(Hamamatsu)で読み取る前に、細胞を色素ローディング緩衝液とともに1時間インキュベートした。100μLのpH6.0活性化緩衝液(アッセイ緩衝液と同じ組成;pHを6.0に調整した)を50μL/sの速さで細胞に添加した。活性化緩衝液の添加前に10秒間(先行読み取り)およびFDSS/μCELL(励起波長:480nm;放射波長:540nm)FLIPRリーダーへの添加後に170秒間、各ウェルにおいて産生されたカルシウムシグナルの進行曲線を継続的に記録した。ASIC1a媒介性電流の阻害におけるASC06-IgG1のIC50値を判定するために、各濃度に関して6回の繰り返しを有して、1:3連続希釈のASC06-IgG1を4C12細胞に適用した。
【0122】
アシドーシス誘導性細胞死。hASIC1a-eYFP安定細胞(6H7)およびCHO-K1細胞を、処理の1日前にウェルあたり10,000個細胞の密度で96ウェルプレートに播種した。pH5.5、6.0、および7.4のECF溶液を使用して、37℃で6時間細胞を処理した。ASC06-IgG1のレスキュー効果を試験するために、抗体を酸性ECF(pH5.5)中に溶解して、0、50、100、300、500、および1,000nMの最終抗体濃度を作製した。6H7細胞を、まず、相当する濃度の抗体とともに細胞培地中にて37℃で30分間プレインキュベートした。細胞培地を相当する酸性ECFで置き換えた後、細胞を37℃で6時間インキュベートし、PBS緩衝液(pH7.4)で洗浄し、次いで1%FBS DMEM/F-12K培地中で一晩培養した。一晩の培養物の上清を、LDHアッセイキット(#88953;Thermo Fisher Scientific)を使用したLDH放出測定のために収集した。細胞生存率を、CCK-8アッセイキット(#CK04;Dojindo)を使用して判定した。
【0123】
中大脳動脈閉塞(MCAO)モデル。動物のケアおよび実験プロトコールは、中国、上海、上海交通大学医学部(Shanghai Jiao Tong University School of Medicine)の動物倫理委員会によって承認された。左脳半球における一過性の虚血性脳卒中を、再灌流前の1時間の中大脳動脈閉塞(MCAO)を使用して雄のマウス(C57 BL/6、20~25g)において確立した。虚血の3時間後、神経保護剤(100nM PcTx1または3.0μg/μL内毒素不含ASC06-IgG1(20μM))の非存在または存在下における合計4μLのビヒクル溶液(PBS)を、脳半球の対側に脳室内(i.c.v.)注射によって投与した。無関係の内毒素不含抗体(3.0μg/μL、20μM)をアイソタイプ対照として使用した。脳血流を経頭蓋(transcranical)レーザードップラーによってモニターして、虚血が上手く誘導されたことを確実にした。i.c.v.注射の24時間後にマウスを屠殺した。マウス脳を迅速に切開し、連続間隔スライスに横方向に切片化し、その後に2%生体染色色素2,3,5-トリフェニルテトラゾリウム塩酸塩(TTC)での染色が続いた。虚血性半球におけるTTCで染色された正常エリアを非虚血性半球のものから差し引くことによって、梗塞エリアを計算した。全切片の梗塞エリアを合計し、スライス厚を掛けることによって、梗塞体積を計算した。
データ解析。別様に示されない限り、結果を平均±SDとして表現した。データ解析を、OriginPro 2017統計ソフトウェアを使用して一元配置ANOVAによって実施した。有意性をP値<0.05で推測した。
【0124】
(実施例2)
ナノディスクを使用したhASIC1aに対する機能的抗体の選択
短縮ASIC1a(アミノ酸13~464;ΔhASIC1a)を過剰発現させかつ精製して、可溶性hASIC1aを呈示するシステムをアセンブリさせた。天然様膜環境を模倣しかつhASIC1aの天然の細胞外立体構造を保つために、本明細書に記載されるように、短縮ヒトASIC1aタンパク質をナノディスクにアセンブリさせた。ΔhASIC1aの添加を除いて、空ナノディスクを同一の手順を使用して調製した。ΔhASIC1aを積んだナノディスク(ΔhASIC1aナノディスク)を、Superose 6サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して精製した。ΔhASIC1aナノディスクの組成を、SDS-PAGEを使用して解析した。図12Aに示されるように、ΔhASIC1aタンパク質およびMSP1タンパク質はナノディスクに存在した。ナノディスクにおけるΔhASIC1aタンパク質は、SDS-PAGE解析によって判断される90%超の純粋であった。膜足場タンパク質1(MSP1)および単量体ΔhASIC1aに相当するSDS/PAGEバンドについての密度測定解析により、MSP1およびΔhASIC1aのモル比は約2:3であることが明らかになった。ΔhASIC1aナノディスクおよび空ナノディスクを動的光散乱によって解析した。図12Bに示されるように、ナノディスク(nanodsc)のそれぞれは1つのみのピークを呈し、ナノディスクが均質であることを示した。アセンブリしたΔhASIC1aナノディスクの見掛けの直径は約15.5nmであり、一方で空ナノディスクは約9.9nmの見掛けのサイズを有し(図12B)、ΔhASIC1aナノディスクにおけるΔhASIC1aタンパク質の組み入れと合致した(図12B)。図12Bに示されるように、ΔhASIC1aナノディスクの計算モデルにより、細胞外ドメイン(ECD)からナノディスクの下端までの距離は約14.8nmであることが計算され、それは最大距離であることが計算された。
【0125】
1011種のメンバーを含有するファージにおけるヒトscFvコンビナトリアル抗体ライブラリーのパニングのために、ビオチン化ナノディスクをストレプトアビジンコート磁気ビーズとの組み合わせで使用した。ファージミドとナノディスク構造との非特異的相互作用を最小限に抑えるために、空ナノディスクを使用した差示的富化ストラテジーを本明細書に記載されるように使用した。3ラウンドのパニングの後、富化された配列の6種を取得し、6種の抗体をscFv形式で精製し、ASC01~ASC06と名付けた。
【0126】
図19Aおよび19Bは、それぞれASC01の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。図20Aおよび20Bは、それぞれASC01の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示している。ASC02の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図21Aおよび21Bに示されている。ASC02の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図22Aおよび22Bに示されている。ASC03の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図23Aおよび23Bに示されている。ASC03の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図24Aおよび24Bに示されている。ASC04の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図25Aおよび25Bに示されている。ASC04の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図26Aおよび26Bに示されている。ASC05の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図27Aおよび27Bに示されている。ASC05の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図28Aおよび28Bに示されている。ASC06の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図29Aおよび29Bに示されている。ASC06の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ図30Aおよび30Bに示されている。
【0127】
(実施例3)
ΔhASIC1a-ナノディスクへの結合能
空ナノディスクと比較した、ΔhASIC1a-ナノディスクへのscFv形式のASC01~ASC06の結合能をELISAを使用して評価した。図1に示されるように、ΔhASIC1aナノディスクに関して観察されたELISAシグナルは、空ナノディスクに関して観察されたシグナルよりも大きく、ナノディスクのΔhASIC1a構成要素に特異的なscFv抗体の富化を示した。次いで、抗体の親和性を測定した。下の表は、Octetシステムを使用して測定される、ΔhASIC1a-ナノディスクへのASC01~ASC06(scFv形式)の結合親和性を示している。ASC04およびASC06は、ΔhASIC1aナノディスクに対する最も強い親和性を示した。
【0128】
【0129】
(実施例4)
細胞表面に発現したASIC1aタンパク質へのASC01~ASC06の結合
ASC01~ASC06が、細胞表面に発現したASIC1aタンパク質に特異的に結合するかどうかを理解するために、CHO-K1/hASIC1a細胞への抗体の結合を免疫細胞化学を使用して評価した。CHO-K1/hASIC1a細胞は、eYFPと融合した完全長hASIC1a(1~528アミノ酸)を過剰発現する。免疫細胞化学(ICC)研究は、細胞表面に発現したeYFP(緑色)を示した。図2に示されるように、ASC02、ASC03、ASC04、およびASC06(赤色)は、ASC01およびASC05と比較して、hASIC1a-eYFPを発現する細胞の原形質膜により多く局在した。ASC06は、他の抗体と比較して、染色された膜上でhASIC1a-eYFPとのより多くの共局在を示した。ASC01~ASC05は、特異的なASIC1a立体構造(confirmation)または亜集団を認識する可能性がある。
【0130】
ASC06抗体を、さらなる研究のために完全長IgG1形態(ASC06-IgG1)に変換した。ASC06-IgG1およびASC06の精製後の産出量は、約78mg/Lで同程度であった。図12Dに示されるように、SDS-PAGE解析により、単鎖(ASC06)および完全長(ASC06-IgG1)抗体は90%超の純粋であり、予想される位置にタンパク質バンドを示すことが示唆された。CHO-K1/hASIC1a細胞へのASC06-IgG1の結合を、ASC06(scFv形式)と比較して免疫細胞化学を使用して評価した。図3Aに示されるように、ASC06-IgG1は、ASC06のように、細胞表面でhASIC1aとの膜共局在を示した。
ASC06-IgG1の結合特異性は、ASIC1a KOマウス(ASIC1a-/-)由来の初代皮質ニューロンを使用しても示された。予想どおり、KOマウス由来の初代ニューロンは、統合した微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡眺望においてASC06-IgG1への明らかな結合を示さなかった。図10Bに示されるように、ニューロンにhASIC1a-mCherryを一過性にトランスフェクトした場合、ニューロンの膜上でのhASIC1aの発現は、ASC06-IgG1によって検証され、可視化された。さらに、神経突起におけるASC06-IgG1シグナルの増幅眺望は、一過性に発現されかつASC06-IgG1標識されたhASIC1aが、ニューロンのシナプス後樹状突起に主に位置することを示した(図10B)。
【0131】
(実施例5)
精製されたΔhASIC1aタンパク質へのASC06-IgG1の結合親和性
精製されたΔhASIC1aタンパク質へのASC06-IgG1の結合親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して測定した。Fcと融合した毒ペプチドPcTx1(PcTx1-Fc)を、ΔhASIC1aタンパク質への結合に対する陽性対照として使用した。図15に示されるように、PcTx1-Fcは、ΔhASIC1aタンパク質への結合に関して1.0nMの見掛けのKdを示し、文献における報告と合致した。Hoagland et al., J Biol Chem 285:41852-41862 (2010)。図3Bに示されるように、ASC06-IgG1は、Biacore T200機器を使用したSPRによって測定される、精製されたΔhASIC1aタンパク質への結合に関して7.9nMの見掛けのKD値を呈した。陽性対照として、Fcと融合した毒ペプチドPcTx1(PcTx1-Fc)を使用した。
【0132】
(実施例6)
細胞表面に発現したASIC1aタンパク質へのASC06-IgG1の結合親和性
細胞表面に発現した完全長hASIC1aタンパク質へのASC06-IgG1の結合親和性を、定量的蛍光活性化細胞選別(FACS)を使用して判定した。図10Aに示されるように、見掛けのEC50値(最大結合の50%を提供する濃度)は、2.06±0.01nMであると判定され、それは、精製されたΔhASIC1aに対する測定されたKD値(7.9nM)と合致し、短縮hASIC1aおよび細胞表面に発現した完全長hASIC1aが、同様の細胞外立体構造を共有することを示した。
【0133】
(実施例7)
ASC06-IgG1の結合選択性
ASC06-IgG1の種およびサブタイプ選択性を試験するために、ヒトASIC1b-eYFP融合体、ラットASIC1a-eYFP融合体、マウスASIC1a-eYFP融合体、hASIC2a-eYFP融合体、hASIC2b-eYFP融合体、およびhASIC3a-eYFP融合体をコードするベクターを構築した。CHO-K1細胞にこれらのプラスミドを一過性にトランスフェクトした。FACS結合アッセイおよび免疫細胞化学(ICC)を行って、ASC06-IgG1が、細胞表面に発現したASICホモログおよびアイソタイプに結合し得るかどうかを判定した。図4Aに示されるように、ICC染色は、ヒトおよび齧歯類ASIC1aの間の高い配列相同性と合致した、ASC06-IgG1とhASIC1a-eYFP、rASIC1a-eYFP、およびmASIC1a-eYFPとの膜共局在を示した。図4Bに示されるように、FACS結果により、ASC06-IgG1はASIC1aのヒト/マウス/ラットホモログのみを認識するが、他のASIC1サブタイプであるhASIC1b、hASIC2a、hASIC2a/2b、またはhASIC3aを認識しないことが明らかになり、ASC06-IgG1抗体のサブタイプ選択性が示された。
【0134】
(実施例8)
細胞培養物におけるASC06-IgG1の効能:パッチクランプ実験
ASC06-IgG1の機能を、電気生理学的手法を使用して特徴付けした。細胞における酸誘導性のhASIC1a媒介性電流に対するASC06-IgG1抗体の効果を解析した。PcTx1を陽性対照として使用した。図5Aに示されるように、全細胞記録様態は、細胞外pH値を減少させること(pH7.4からpH6.0へ)が、hASIC1a過剰発現安定細胞株において電流の形成をもたらすことを示した。安定細胞のhASIC1a媒介性内向き電流の大きさを、陽性対照として使用された毒ペプチドPcTx1(100nM)とともに、ASC06-IgG1の非存在および存在下で記録しかつ定量した。図5B~5Cに示されるように、ASC06-IgG1は、85±6nMの見掛けのIC50値を有して、酸(pH6.0)誘導性電流の最高80%の持続的で(30分間)かつ用量依存的な阻害を呈示した。対照的に、図5A&5Cに示されるように、陽性対照PcTx1は、電流のほぼ完全な阻害を示した。洗浄後の、抗体を用いた持続的な阻害とは異なり、PcTx1を用いた阻害は5分以内にすぐにウォッシュアウトすることができた(図5C)。
【0135】
ASC06-IgG1がhASIC1a電流を遮断するメカニズムを理解するために、ASC06-IgG1の非存在および存在下におけるhASIC1aのSSDおよびpH活性化を検討した。hASIC1aに対するSSD曲線およびpH活性化曲線のpH50(ASIC1aチャネルの50%を開き得る、細胞外pHの下降)値を、300nM ASC06-IgG1の有無で測定しかつ比較した。図11A~11Bに示されるように、種々のpH値にて調節細胞外液(ECF)およびpH6.0の活性化ECFを適用した場合にSSDが誘導され、一方で様々なpH値にて活性化ECFおよびpH7.6の調整ECFを適用した場合にpH活性化曲線が構築された。SSDおよびpH活性化のpH50値の有意な差は、300nM ASC06-IgG1に関して観察されなかった。加えて、図16A~16Bに示されるように、ASC06-IgG1の有/無で処理されたASIC1a電流のSSDおよび活性化の両方の代表的トレース図によって示されるように、ASC06-IgG1はASIC1aのSSDも活性化も妨害しなかった。それゆえ、ASC06-IgG1は、プロトン濃度と非競合的であるメカニズムを使用してhASIC1aの活性化を遮断するように見えた。
【0136】
(実施例9)
細胞培養におけるASC06-IgG1の効能:ASC06-IgG1によるASIC1a媒介性カルシウム流入の阻害に対するFLIPRベースのアッセイ
ASIC1aのカルシウム流入を、hASIC1a-mCherry融合体を発現する安定細胞株4C12を使用してFLIPR機器で測定した。細胞における酸誘導性のhASIC1a媒介性カルシウム流入に対するASC06-IgG1抗体の効果を、hASIC1a-mCherry融合体を発現する安定細胞株を使用して、カルシウム感受性色素(Calcium 5、Molecular Devices)の細胞内蛍光シグナルを測定することによって、FLIPR機器を使用して解析した。4C12細胞において、記録の10分の1秒におけるpH6.0でのホモマーhASIC1aの活性化は、強いカルシウム流入を誘導するように見え、一方で酸誘導性カルシウム流入は、hASIC1a発現のないCHO-K1細胞に対して観察されなかった(図17A)。図6Aおよび6Bに示されるように、記録の10分の1秒における安定細胞におけるpH6.0でのホモマーhASIC1aチャネルの活性化は、強いカルシウム流入を誘導するようであった。hASIC1a特異的抗体のASC06-IgG1は、2.9±0.2nMのIC50を有して、カルシウム流入の用量依存的阻害を呈示した。対照的に、図17Bに示されるように、非選択的な小分子ASIC遮断薬のアミロリドは、30μMでほんの21%の阻害を示した。
【0137】
(実施例10)
ASC06-IgG1のpH安定性
酸性条件に対するASC06-IgG1の耐性を試験した。濃縮されたASC06-IgG1溶液(3.3μM)を種々のpH値(7.4~5.0)で37℃にて6時間インキュベートし、SEC-HPLC解析に供した。図18に示されるように、ASC06-IgG1の有意な分解または凝集は観察されなかった。
(実施例11)
ASC06-IgG1は、インビトロでアシドーシス誘導性細胞死を阻止する
脳卒中または虚血-再灌流傷害における細胞外アシドーシスは、ASIC1aチャネルの活性化を誘導することが知られ、それは、ASIC1aによって媒介される細胞内カルシウムおよび関連する細胞シグナル伝達の一過性の増加をおそらく通じて、中枢神経系における神経細胞死につながる。それぞれ細胞生存率および細胞毒性を反映する、細胞質デヒドロゲナーゼの酵素活性(CCK8アッセイ)および細胞培地に分泌される乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の濃度を測定することによって、hASIC1a過剰発現安定細胞の生存を評価した。図7Aおよび7Bに示されるように、ASIC1a安定細胞株(右のパネル)は、とりわけpH5.5で、対照CHO-K1細胞よりも高い程度のpH感受性を示し、酸への観察された応答の増強が膜上のhASIC1aチャネルを通じて媒介されることを示唆した。同じ実験条件下でかつpH5.5で、ASC06-IgG1は、有意な用量依存的保護効果を示した(図7Cおよび7D)。抗体の非存在下における約5%の生存割合と比較して、1μM ASC06-IgG1の存在下では、ASIC1a発現安定細胞のおよそ45%がpH5.5で生存した。CCK8結果と合致して、ASC06-IgG1の添加後に減少した、細胞培地に放出されたLDHの濃度も用量依存的様式である(図7D)。
これらの結果は、本技術の抗ASIC1a抗体が、アシドーシス誘導性細胞死を阻止するための方法において有用であることを実証している。
【0138】
(実施例12)
ASC06-IgG1は、インビボでアシドーシス誘導性細胞死を阻止する
インビトロにおける抗体ASC06-IgG1の保護効果がインビボにおける病状に拡張され得るかどうかを判定するために、中大脳動脈閉塞(MCAO)モデルを使用して、抗体の神経保護効果を調べた。再灌流の前に、マウスの左脳半球に対するMCAOによって虚血を60分間誘導した。図8Aに示されるように、虚血の誘導の3時間後、100nM PcTx1または3.0μg/L ASC06-IgG1を含有する合計4μLのビヒクル溶液(PBS)を、マウスの対側半球に脳室内(i.c.v.)注射した。ASC06-IgG1と同じ濃度を有する無関係の抗体(アイソタイプ)を陰性対照として投与した。注射の24時間後に、皮質および線条体の梗塞体積を計算した。図8Bに示されるように、虚血は、PBS群において脳における顕著な梗塞を誘導した(対側脳領域と比較した場合、およそ42%の体積)。PcTx1は、梗塞体積を約17%に減少させた(図8B)。アイソタイプ抗体は、いかなる保護効果も示さなかった。他方では、PcTx1と同様に、ASC06-IgG1で処理された群は、有意に低下した梗塞体積(約23%への減少)を示し、脳卒中に対する抗体の強力な神経保護効果を示した(図8B)。
これらの結果は、本技術の抗ASIC1a抗体が、アシドーシス誘導性細胞死を阻止するためのおよび虚血性脳卒中を治療するための方法において有用であることを実証している。
【0139】
(実施例13)
ASC06-IgG1はASIC1aの立体構造的エピトープに結合した
本明細書において実証されるように、抗体ASC06-IgG1は、精製されたASIC1aタンパク質および細胞表面に発現したASIC1aタンパク質を認識しかつ結合し得ることが示された。ASC06-IgG1とhASIC1aとの間の相互作用を特徴付けするために、hASIC1a-eYFP融合タンパク質を発現する6H7安定株をウェスタンブロット解析において使用した。図13Aに示されるように、ASC06-IgG1は、ウェスタンブロットアッセイにおいて、ASIC1aを過剰発現する細胞の細胞溶解物中のhASIC1aを認識し得なかった。対照的に、商業的ヤギポリクローナル抗ASIC1抗体および抗eYFP抗体は、100kDa辺りの分子量に6H7溶解物中のhASIC1a-eYFPタンパク質を検出し得た(図13Aおよびデータ示されず)。この観察結果は、抗体が立体構造依存的様式でASIC1aを認識することを示した。
【0140】
ASC06-IgG1を使用して、細胞溶解物中の天然hASIC1a-YFPをプルダウンし、その後にhASIC1a-YFP検出のための抗eYFPウェスタンブロットが続いた。図13Bに示されるように、hASIC1a-eYFPを表す約100kDaのはっきりとしたバンドが観察され、ASC06-IgG1が立体構造依存的様式でhASIC1aを認識することを示した。
hASIC1aへのASC06の結合の性質を理解するために、hASIC1a-ECDとASC06-Fabとを混合することによって複合体を形成した。hASIC1a-ECDおよびASC06-Fab複合体は、ゲル濾過を使用して分解された。図14に示されるように、hASIC1a-ECDは溶液中でホモ三量体として存在し、3つのASC06-Fabとの安定な複合体を形成した。
【0141】
抗体結合の性質をさらに理解するために、hASIC1aのエクトドメイン(hASIC1a-ECD)とFab形式のASC06(ASC06-Fab)との複合体を用いて、ネガティブ染色EM研究を行った。図9Aに示されるように、未処理のネガティブ染色EM画像により、粒子のほとんどが、形成された複合体に対して三角の配置を示し;その一方で、ブーメラン型および他の型の粒子も観察され、それはおそらく、1つまたは2つのASC06-Fab消失を有する複合体を表す。図9Aに示されるように、EM結果は、各ASC06-FabがhASIC1a-ECD-ASC06-Fab複合体に結合することを示した。図9Dに示されるように、ASIC1aのいくつかのアミノ酸は、分子動力学シミュレーションモデルに基づき、hASIC1aへのASC06-IgG1の結合に重要であると予測された。図9Cに示されるように、2D平均解析結果である、はっきりとしたドメイン分割を有する三角形の複合体が示され、hASIC1a-ECDの三量体立体配置へのASC06-Fabの相互作用を示した。分子ドッキングと分子動力学シミュレーションとを組み合わせて、見掛けの実験幾何形状を粗く再現するモデルを獲得した(図9D)。図9A~9Cに示されるように、エピトープは、2つのhASIC1a-ECDサブユニットによって形成される表面に位置した。
【0142】
これらのアミノ酸の役割を確認するために、アラニン変異導入を実施し、抗体結合に非常に重要である4つのアミノ酸を同定した。hASIC1a-eYFPの単一アミノ酸変異をコードするプラスミドを構築し、CHO-K1細胞に一過性にトランスフェクトした。次いで、FACS結合アッセイを実施して、ASC06-IgG1が、変異したhASIC1aを発現する細胞表面に依然として結合するかどうかを試験した。図9Eに示されるように、ASC06-IgG1に結合し得るWT hASIC1aとは異なり、hASIC1a Y360A変異またはhASIC1a N322A変異のいずれかは、ASC06-IgG1の結合能を減少させ;hASIC1a Y318A変異は、ASC06-IgG1の結合を無効にし、hASIC1a F252A変異もそうである。
【0143】
均等物
本技術は、本技術の個々の態様についての単一の例示として意図される、本出願に記載される特定の実施形態の点において限定されるべきではない。当業者に明らかであったように、本技術の多くの改変および変形は、その精神および範囲から逸脱することなく行われ得る。本明細書に列挙されるものに加えて、本技術の範囲内にある機能的に均等な方法および装置は、前述の説明から当業者に明らかであった。そのような改変および変形は、添付の特許請求の範囲の内に入ることが意図される。本技術は、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。本技術は、当然のことながら変わり得る特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物学的システムに限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される術語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであり、限定的であることが意図されるわけではないことも理解されるべきである。
【0144】
加えて、本開示の特質または態様がマーカッシュ群の観点から記載される場合、当業者であれば、本開示は、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群の観点からも記載されることを認識するであろう。
当業者によって理解されたように、ありとあらゆる目的上、特に書面での説明を提供する観点から、本明細書に開示されるすべての値域は、ありとあらゆる考え得るその部分域および部分域の組み合わせも包含する。任意の挙げられる値域は、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分等に分けられている同じ値域を十分に記載しかつ可能にするとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書において論じられる各値域は、下部3分の1、中部3分の1、および上部3分の1等に容易に分けられ得る。また当業者によって理解されるであろうように、「最高で」、「少なくとも」、「上回る」、「未満」等のすべての言葉は、挙げられた数を含み、上で論じられるようにその後部分域に分けられ得る値域を指す。最後に、当業者によって理解されたように、値域は、それぞれ個々のメンバーを含む。ゆえに、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、または3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、または5個の細胞を有する群を指す、等。
【0145】
本明細書において言及されるまたは引用されるすべての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない程度に、すべての図および表を含めて、それらの全体として参照により組み入れられる。
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内で示される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
【配列表】
2022547781000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における虚血性脳卒中を治療するための、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物であって前記抗体またはその抗原結合フラグメントが重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VLを含み
前記VHが、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;かつ、
前記VLが、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記医薬組成物
【請求項2】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項4】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項5】
抗体またはその抗原結合フラグメントがASIC1aタンパク質またはASIC1aの細胞外ドメインに結合する、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項6】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項7】
抗体またはその抗原結合フラグメントがプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項8】
Hが、配列番号2、12、22、32、42、および52からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、および/または、V L が、配列番号7、17、27、37、47、および57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項9】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、それぞれ、
配列番号2および配列番号7(ASC01);
配列番号12および配列番号17(ASC02);
配列番号22および配列番号27(ASC03);
配列番号32および配列番号37(ASC04);
配列番号42および配列番号47(ASC05);ならびに
配列番号52および配列番号57(ASC06)
からなる群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項10】
抗体またはその抗原結合フラグメントがASC06である、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項11】
対象における虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状を緩和するための、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物であって、前記抗体またはその抗原結合フラグメントが重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含み、
前記VHが、配列番号3、13、23、33、43、および53からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、44、および54からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、45、および55からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;かつ、
前記VLが、配列番号8、18、28、38、48、および58からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、49、および59からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、50、および60からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記医薬組成物
【請求項12】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、それぞれ、
配列番号2および配列番号7(ASC01);
配列番号12および配列番号17(ASC02);
配列番号22および配列番号27(ASC03);
配列番号32および配列番号37(ASC04);
配列番号42および配列番号47(ASC05);ならびに
配列番号52および配列番号57(ASC06)
からなる群から選択されるHCアミノ酸配列およびLCアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の医薬組成物
【請求項13】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む、請求項1112のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項14】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される、請求項1113のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項15】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項1114のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項16】
抗体またはその抗原結合フラグメントがASIC1aタンパク質またはASIC1aの細胞外ドメインに結合する、請求項1115のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項17】
抗体またはその抗原結合フラグメントが、2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する、請求項1116のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項18】
抗体またはその抗原結合フラグメントがプロトン誘導性ASIC1a電流を阻害する、請求項1117のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項19】
虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状が、突発的脱力、顔面、腕、または脚の麻痺またはしびれ、顔面の片側の下垂、錯乱、発話困難、言語理解障害、一方または両方の目での視力障害、かすみ目、黒内障、複視、呼吸困難、めまい、歩行困難、平衡感覚の喪失、協調運動障害、原因不明の転倒、意識の喪失、突然の頭痛または激しい頭痛である、請求項1118のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項20】
虚血性脳卒中の1つまたは複数の症状が、突発性顔面脱力、顔面の片側の下垂、上肢の片側筋力低下、または異常発語である、請求項1119のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項21】
対象における虚血性脳卒中を治療するための、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物であって、
(a)配列番号7、17、27、37、47、もしくは57のうちのいずれか1つの軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列;および(b)配列番号2、12、22、32、42、もしくは52のうちのいずれか1つに存在する重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一である重鎖免疫グロブリン可変ドメイン配列(VH
を含む抗体またはその抗原結合フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を含む、前記医薬組成物
【請求項22】
重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)および軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記VHが、配列番号3、13、23、33、および43からなる群から選択されるVH-CDR1配列;配列番号4、14、24、34、および44からなる群から選択されるVH-CDR2配列;ならびに配列番号5、15、25、35、および45からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み;かつ、
前記VLが、配列番号8、18、28、38、および48からなる群から選択されるVL-CDR1配列;配列番号9、19、29、39、および49からなる群から選択されるVL-CDR2配列;ならびに配列番号10、20、30、40、および50からなる群から選択されるVL-CDR3配列、からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項23】
IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、およびIgEからなる群から選択されるアイソタイプのFcドメインをさらに含む、請求項22に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項24】
抗原結合フラグメントが、Fab、F(ab’)2、Fab’、scFV、およびFVからなる群から選択される、請求項2223のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項25】
モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または二重特異性抗体である、請求項2224のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項26】
ASIC1aタンパク質またはASIC1aの細胞外ドメインに結合する、請求項2225のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項27】
2つのASIC1aサブユニットにまたがるエピトープに結合する、請求項2226のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項28】
ASIC1a電流を阻害する、請求項2227のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項29】
請求項2228のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメントをコードする、核酸
【請求項30】
配列番号1、6、11、16、21、26、31、36、41、46、51、および56からなる群から選択される核酸配列を有する核酸
【請求項31】
請求項29または請求項30に記載の核酸を発現する、宿主細胞またはベクター。
【請求項32】
請求項2228のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および使用のための指示書を含む、キット。
【請求項33】
抗体または抗原結合フラグメントは、放射性標識、蛍光標識、および発色標識からなる群から選択される少なくとも1種の検出可能な標識にカップリングされている、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
抗体または抗原結合フラグメントに特異的に結合する二次抗体をさらに含む、請求項32または33に記載のキット。
【請求項35】
in vitroで生物学的サンプルにおけるASIC1aタンパク質を検出するための方法であって、生物学的サンプルと、検出可能な標識にコンジュゲートされた、請求項2228のいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントとを接触させる工程;ならびに生物学的サンプルにおける検出可能な標識の存在およびレベルを検出する工程を含む、前記方法。
【国際調査報告】