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特表2022-547803整形器具又は人工装具用の油圧アクチュエータ、及び人工補整装置
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  • 特表-整形器具又は人工装具用の油圧アクチュエータ、及び人工補整装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】整形器具又は人工装具用の油圧アクチュエータ、及び人工補整装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/68 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
A61F2/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510849
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074220
(87)【国際公開番号】W WO2021047934
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019124545.1
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506153712
【氏名又は名称】オットー・ボック・ヘルスケア・プロダクツ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】エデル・フロリアン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097BB03
4C097BB06
4C097BB08
4C097TA05
4C097TB01
(57)【要約】
本発明は、筐体(11)を有する調節要素(10)を備えた整形器具又は人工装具(1)用の油圧アクチュエータに関する。その筐体内にはシリンダ(12)が配置されており、ピストン(13)がそのシリンダ内に移動可能に据え置かれており、シリンダ(12)を屈曲室(15)と伸展室(14)とに分割する。屈曲室(15)と伸展室(14)との間には、流体的接続(20)されており、その接続回路内にそれぞれ伸張運動又は屈曲運動に影響を与えるための調節弁(24、25)が配置されている。流体的接続(20)内にはモータ駆動式のポンプ(30)が配置されている。油圧流体は、一方の小室(14;15)から吸引側の接続管(22;23)内の少なくとも1つの調節弁(24;25)を通じてポンプ(30)へ輸送され、逆止弁(44;45)が、ポンプ(30)から他方の小室(15;14)までの押圧側の接続管(34;35)内に配置されており、その逆止弁が、ポンプ(30)の搬送方向に反したこの小室(15;14)からポンプ(30)への送出済み媒体の逆流を遮断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(11)を有する調節要素(10)を備えた整形器具又は人工装具(1)用の油圧アクチュエータであって、前記筐体内にシリンダ(12)が配置されており、ピストン(13)が前記シリンダ内に移動可能に据え置かれており、前記シリンダ(12)を屈曲室(15)と伸展室(14)とに分割し、前記屈曲室(15)と前記伸展室(14)との間は流体的接続(20)されており、前記接続内にそれぞれ伸張運動又は屈曲運動に影響を与えるための調節弁(24、25)が配置されており、前記流体的接続(20)内にモータ駆動式のポンプ(30)が配置されている、油圧アクチュエータが、油圧流体が一方の小室(14;15)から吸引側の接続管(22;23)内の少なくとも1つの調節弁(24;25)を通じて前記ポンプ(30)へ輸送され、逆止弁(44;45)が、前記ポンプ(30)から他方の小室(15;14)までの押圧側の接続管(34;35)内に配置されており、前記逆止弁が、前記ポンプ(30)の搬送方向に反したこの小室(15;14)から前記ポンプ(30)への送出済み媒体の逆流を遮断することを特徴とする、油圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記ポンプ(30)と前記ポンプ(30)により加圧される前記小室との間に、1つの逆止弁(44;45)のみが配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記ポンプ(30)がそれを用いて前記流体的接続(20)と接続されている、前記押圧側の接続管(34、35)が、同方向に作用する直列配置の2つの逆止弁(44、44’;45、45’)の間に通じていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項4】
逆止弁(44’、45’)が、前記押圧側の接続管(34;35)と吸引側の接続管(22;23)との間の結合器(50)を遮断することを特徴とする、請求項1~3のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記流体的接続(20)内に中央管(21)が形成されており、前記屈曲室(15)及び前記伸展室(14)からの前記吸引側の接続管(22、23)が前記中央管に通じており、供給管(231、232)から、前記ポンプ(30)への少なくとも1つの吸引側の流入口(31;32)へ続いていることを特徴とする、請求項1~4のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記吸引側の接続管(22、23)内にそれぞれ調節弁(24、25)が配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記ポンプ(30)が2つの圧力接続口を有し、前記圧力接続口が、それぞれ押圧側の接続管(34、35)を介して前記流体的接続(20)に接続されており、2つの押圧側の接続管(34、35)が、2つの同じ方向に作用する直列配置の逆止弁(44、44’;45、45’)の間に通じており、前記逆止弁が一組の逆止弁として形成されており、前記一組の逆止弁が、反対側に向いた通流方向を有することを特徴とする、請求項1~6のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項8】
前記中央管(21)が前記伸展室(14)及び前記屈曲室(15)への返送管(22’、23’)まで続いており、前記返送管(22’、23’)内に、前記中央管(21)への逆流を防止する少なくとも1つの逆止弁(44、44’;45、45’)が配置されていることを特徴とする、請求項5~7のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項9】
前記押圧側の接続管(34、35)が、前記伸展室(14)又は前記屈曲室(15)への返送管(22’、23’)まで続いていることを特徴とする、請求項1~8のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項10】
相殺容積(60)が前記流体的接続(20)に接続されていることを特徴とする、請求項1~9のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項11】
前記ピストン(13)がピストン棒(16)と結合されており、前記ピストン棒が前記筐体(11)から突き出ており、直線移動可能に据え置かれていることを特徴とする、請求項1~10のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項12】
前記ポンプ(30)が、前記伸展室(14)と前記屈曲室(15)の両方を充填するように動作可能に形成又は接続されていることを特徴とする、請求項1~11のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項13】
前記逆止弁(44、44’;45、45’)が受動的な弁として形成されていることを特徴とする、請求項1~12のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項14】
前記調節弁(24、25)が電子的に制御されていることを特徴とする、請求項1~13のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項15】
複数の調節要素(10)が前記ポンプ(30)と流体的に接続されていることを特徴とする、請求項1~14のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ。
【請求項16】
請求項1~15のうちの1項に記載の油圧アクチュエータ(100)を備えた人工補整装置(1)。
【請求項17】
前記油圧アクチュエータ(100)が、能動的なアクチュエータとして又は受動的なアクチュエータ(100)として動作可能に形成されていることを特徴とする、請求項16に記載の人工補整装置。
【請求項18】
前記調節要素(10)が、上部(2;3)を備えた関節装置(5、6)と前記関節装置に関節状に固着された下部(3;4)との間に配置されていることを特徴とする、請求項16又は請求項17に記載の人工補整装置。
【請求項19】
共通のポンプ(30)に接続された2つの調節要素(10)が、前記人工補整装置(1)の異なる関節装置(5、6)に配置されていることを特徴とする、請求項16~18のうちの1項に記載の人工補整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体を有する調節要素を備えた整形器具又は人工装具用の油圧アクチュエータに関する。その筐体内にはシリンダが配置されており、そのシリンダに、ピストンが移動可能に据え置かれており、そのシリンダを屈曲室と伸展室とに分割する。屈曲室と伸展室との間は流体的接続されており、その接続内にそれぞれ伸張運動又は屈曲運動に影響を与えるための調節弁が配置されている。流体的接続内にはモータ駆動式のポンプが配置されている。本発明は同様に、上記の油圧アクチュエータを備えた人工補整装置、特に整形器具又は人工装具に関する。
【背景技術】
【0002】
整形器具又は人工装具は多くの場合、少なくとも1つの旋回軸の周りで互いに対して旋回可能に据え置かれている上部と下部とを有する関節装置を有している。整形器具では、関節部は一般に生体関節の横に、例えば踝関節、膝関節及び/又は股関節の横に配置されている。同様に上肢の又は胴体における整形器具も、対応する関節装置を備えていてもよい。人工装具は存在しない又はもはや存在しない肢体の代わりをする。人工装具に使用される関節部は各々の生体関節の代わりをする。下部に対する上部の運動に影響を及ぼすことができるように、従来技術では純粋に受動的な抵抗装置及び/又は緩衝装置が設けられている。これらの装置の抵抗挙動を一定に調節することができる。代わりに、センサが人工装具又は整形器具に又は各々の肢体に配置されており、センサ値を取得し、それらのセンサ値に基づいて抵抗装置又は緩衝装置を操作する。油圧緩衝装置では、流動抵抗を変化させるために弁を開く若しくは閉ざす、又は流動断面を変化させる。他の抵抗装置では、磁気流動特性を変化させる、制動装置を始動させる、又はモータを発電機モードに切り替えることができる。抵抗の変化は伸展運動及び/又は屈曲運動のために行われ得る。それは、いわゆる電子機械的システムに関することである。
【0003】
緩衝装置又は抵抗装置による抵抗の変化を駆動機で補うことができるので、様々な抵抗又は緩衝特性を与えるとともに選択的に伸展及び/又は屈曲を生じさせる又は少なくとも補助するアクチュエータは、純粋に受動的な抵抗装置からなる。これに関しては、一般的に油圧システムが設けられている。なぜなら空圧システム内で使用される流体は圧縮され得るので、純粋に空圧式のシステムを必要な精度で動作させることができないからである。
【0004】
国際特許公報第2010/005473A1号から、人工装具又は整形器具の形の人工補整装置及びそれらを制御する方法が知られており、その際、モータ動作型のポンプが油圧流体を屈曲室に又は伸展室に送り出す。ポンプを、モータが駆動されない受動的な動作に切り替えることができ、そのため油圧ダンパが生じる。油圧抵抗は調節弁、逆止弁及び切替弁を介して調節される。能動弁を必要とし、ポンプが能動的な動作を開始又は補助し得る前に切替弁が開かれていなければならないことが、上記の形態の欠点である。さらには、ポンプ漏れを受け止め得る低圧領域が存在しないことが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許公報第2010/005473A1号
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、受動的な動作から能動的な動作への支障のない移行を最小の費用で可能にする油圧アクチュエータ及び人工補整装置を提供することである。
【0007】
この課題は、主要請求項の特徴を有する油圧アクチュエータ及び並列請求項の特徴を有する人工補整装置により解決される。本発明の有利な形態及び他の形態は、従属請求項、明細書及び図内に開示されている。
【0008】
筐体を有する調節要素を備えた整形器具又は人工装具用の油圧アクチュエータであって、その筐体内にシリンダが配置されており、ピストンがそのシリンダ内に移動可能に据え置かれており、そのシリンダを屈曲室と伸展室とに分割し、屈曲室と伸展室との間は流体接続されており、その接続内にそれぞれ伸張運動又は屈曲運動に影響を与えるための調節弁が配置されており、流体的接続内にモータ駆動式のポンプが配置されている、油圧アクチュエータは、吸引側で油圧流体が一方の小室から接続管内の少なくとも1つの調節弁を通じてポンプへ輸送され、押圧側で逆止弁が、ポンプから他方の小室までの接続管内に配置されており、その逆止弁が、ポンプの搬送方向に反したこの小室からポンプへの送出済み媒体の逆流を遮断することを設定している。上記の油圧アクチュエータを用いて、油圧流体が、対応する調節弁及び場合によっては逆止弁を通じて、接続管を通じて、伸展室から屈曲室に又は逆に屈曲室から伸展室に輸送されるという純粋に受動的な動作を、ポンプの始動により能動的な動作に容易に切り替えることができ、別の弁を能動的に接続する必要はない。アクチュエータは、ポンプを始動させ、対応する小室の方向に圧力をかけて油圧流体を供給することにより、能動アクチュエータになり、ポンプは逆止弁に対して圧力流体を搬送する。ポンプからの圧力がそれに逆らう圧力よりも大きい場合の対応する圧力差では、逆止弁が開かれ、ポンプが油圧システムに接続される。この接続は逆止弁を能動的に切り替えずに行われ、それによりポンプの始動と切替弁の開きとの同期が不要になる。これにより、ポンプがアクチュエータの油圧システムに緩慢に接続することになり、伸展緩和及び/又は屈曲緩和に影響を与えるために既存の油圧弁、例えば調節弁を追加的に設置する費用は必要としない。さらに、受動的な動作モードから能動的な動作モードへ移行する際にポンプが先んじて始動して、例えば既に開始された運動を緩和させ、この運動を止めることができる。つまりポンプが伸展方向に始動することにより、例えば調節弁の位置の変化による屈曲抵抗の変化とも組み合わせて、屈曲を阻止することができる。屈曲運動に影響を与える弁が閉じた状態にある場合、それだけでも伸展運動及び関節部での運動の反転を開始することができる。ポンプ圧力がシリンダ内のピストンの圧力を上回るとすぐに、関節部での運動の反転が自動的に起こる。
【0009】
油圧アクチュエータの形態は、ポンプとそのポンプにより加圧される小室との間に1つの逆止弁のみが配置されており、ポンプから対応して方向付けられた逆止弁及び各々の接続管を通じて所望の小室へ油圧流体を輸送する場合に特に有利である。他の調節弁は、ポンプから各々の小室までの押圧側の接続管内にはもはや設けられておらず、それにより、油圧アクチュエータの構造が簡易化され、制御費用が減少する。
【0010】
各々の押圧側の接続管をもってポンプは流体的に接続されており、その押圧側の接続管は、同方向に作用する直列配置の2つの逆止弁の間に通じている。それにより、油圧アクチュエータの純粋に受動的な動作様式のほかに、少ない回路費用で、つまりポンプの始動により能動的な動作を容易に替えることができる。
【0011】
本発明の異なる形態は、逆止弁が、押圧側の接続管と吸引側の接続管との間の接続を遮ることを設定している。特に、一運動方向にのみポンプ動作で運動を補助することになるアクチュエータでは、上記の配置は場所を取らず、材料を節約するものである。従って、押圧側の接続管が2つの同方向の逆止弁の間に配置されている配管回路による場合の代わりに、伸展室と屈曲室との間の吸引側の接続管又は低圧側の接続管を、平行に接続された逆止弁により遮断することができる。2つの逆止弁は同方向に向けられているので、ポンプから流れる油圧流体は、ポンプ側の逆止弁を通り抜けるが、高圧側を低圧側から分離する逆止弁を開くことはできない。この回路配置により、さらにアクチュエータを受動的に双方向で動作させることができ、同時に一方向のみの能動的な動作様式を実現することができる。従って2つの動作方向で能動的及び受動的な動作様式と比較して、逆止弁を節約することができる。
【0012】
屈曲室と伸展室との間の流体的接続内には、屈曲室及び伸展室からの流出管がそれに通じている、中央管が形成されてもよい。中央管からは、ポンプの吸引側の複数の流入口又は少なくとも1つの吸引側の流入口への供給管が続いている。アクチュエータが双方向で能動的に形成されており、伸展運動も屈曲運動も能動的に補助し得る限り、複数の流入口が存在してもよい。代わりに、一方の搬送方向での流出口が、他方の搬送方向の流入口であり得る。油圧回路図は対称的に構成されている。それにより、ポンプモータの回転方向により搬送方向を切り替えることができ、従ってアクチュエータ又は関節部の運動方向も事前に定めることができる。これについての前提条件は、ポンプが双方向で搬送することができることであり、それは、例えば内歯車ポンプ、外歯車ポンプ又は環状歯車ポンプの場合に当てはまる。同様に、双方向で搬送することができるとともに搬送方向が回転方向により生じる他の全ての種類のポンプを使用することができる。流出管は好ましくは各々の調節弁を通じて中央管に続いている。流動方向に従って、流出管は同時に押圧側の接続管を形成し得る。
【0013】
本発明の別の形態は、ポンプが2つの圧力接続口を有し、それらの圧力接続口が、それぞれ接続管を介して流体的に接続されていることを設定している。2つの接続管は、2つの同じ方向に作用する直列配置の逆止弁の間に通じており、それらの逆止弁は一組の逆止弁として形成されており、それらの一組の逆止弁は、反対側に向いた通流方向を有する。これらの対称的な回路構成をもって、2つの調節弁及び4つの受動的な逆止弁のみを備えた油圧アクチュエータを提供することができ、その油圧アクチュエータは屈曲方向にも伸展方向にも受動的に及び能動的に動作することができる。ポンプが動作していない、つまりモータで駆動されていないとすぐに、各々の油圧抵抗に影響を与える油圧システムの受動的な接続が、2つの調節弁のみを介して自動的に行われる。ポンプ内の漏れ及び圧力損失は逆止弁の特殊な配置により排除され、それにより、ポンプに対する気密性の要求条件は緩やかである。油圧シリンダの気密性が逆止弁の特殊な回路により確保されるので、ポンプによる漏れのためにピストンが降下することはない。
【0014】
本発明の別の形態は、中央管が伸展室及び伸展室への返送管まで続いており、各々の返送管内に、中央管への逆流を防止する逆止弁が配置されていることを設定している。返送管は中央管から分岐しており、能動的な動作では一運動方向にのみ分岐路がポンプの吸引側の流入口まで続いている。2つの運動方向での能動的な動作のための形態ではそれぞれ、各々の吸引側の流入口への分岐路が設けられている。その際、2つの分岐路は、反対に向けられた2つの逆止弁を越えて配置されている。従って接続管は、伸展室又は屈曲室への返送管まで続いている。
【0015】
本発明の別の形態は、相殺容積が流体的接続に接続されている、特に2つの調節弁の間で流体回路に流体を供給可能な中央管に接続されていることを設定している。その相殺容積は、1つのピストン棒のみが油圧シリンダから突き出ており、そのため油圧アクチュエータが一般的にその一方の末端で筐体を介して、他方の末端でピストン棒を介して整形器具又は人工装具又は人工補整装置に固着される場合に特に有利である。相殺容積は、ピストン棒が入り込む又は抜け出すことによる伸展室と屈曲室との間の体積差を補償する。ピストンは好ましくはピストン棒と結合されており、そのピストン棒は再びシリンダの筐体から突き出て、直線状に移動する。
【0016】
ポンプは、伸展室と屈曲室の両方を充填するように動作可能に形成又は接続されている。ポンプが回転方向により切替可能ではない場合、切替弁が流体的接続内に配置されてもよいが、但しそれは制御費用をさらに高くすることになる。
【0017】
逆止弁は有利には受動的な弁、例えばばね負荷式のボール弁又はフラップ弁として形成されている。
【0018】
調節弁は有利には電子的に制御されている。そのためには、人工補整装置についての状態パラメータ又は各々の運動状態を検出して、データ処理装置、例えばプロセッサを備えている制御装置に伝達するセンサが、整形器具、人工装具のような人工補整装置に又は患者に配置されてもよい。センサの生データを評価するために、又はセンサ値に基づいてアクチュエータを操作して調節弁を開く又は閉ざすために、評価プログラムがプロセッサに保存されてもよい。調節弁は、伸展室と屈曲室との間の流体的接続を遮断するために、流動断面が低減又は増大され得る、場合により完全に閉ざされ得る。流動断面の低減により流動抵抗が増大し、顕著な運動が難しくなり、遮断の場合には運動が阻止される。2つの調節弁が完全に開かれている場合、アクチュエータは遮断されている。従ってアクチュエータを関節部に配置する際に、旋回軸周りの関節部の移動が遮られている。
【0019】
本発明の別の形態は、複数の調節要素がポンプと流体的に接続されていることを設定している。調節要素としてみなされるのは、特に、シリンダ、そのシリンダから突き出るピストン棒及び弁を備えた、場合により相殺容積を備えた機械的な構成部品である。調節要素は別個の筐体とともに形成されてもよく、その筐体は、ポンプの筐体と分離されており、油圧管を介してポンプと接続されている。それにより、モジュール式の構造を設定することができるとともに、単一のポンプを複数の調節要素と接続させることができる。つまり、単一のポンプを例えば2つの調節要素と油圧により接続させることができるので、各々の調節要素を別の関節部に割り当てることができる。第1の調節要素を、例えば整形器具膝関節又は人工装具膝関節用のアクチュエータ及び抵抗装置として使用することができ、他方では、同様にポンプと接続される第2の調節要素を、整形器具踝関節又は人工装具踝関節用のアクチュエータとして使用することができる。
【0020】
本発明は同様に、前に記載されたような油圧アクチュエータを備えた人工補整装置に関する。人工補整装置は、特に整形器具又は人工装具として形成されており、そのアクチュエータは、特に人工補整装置内に関節用の抵抗装置及び駆動機として形成され、適している。
【0021】
油圧アクチュエータは、能動的なアクチュエータとして又は受動的なアクチュエータとして動作可能に形成されており、押圧側で逆止弁を介して油圧式に連結しているために、受動的な動作様式と能動的な動作様式との間の切り替えのための機械的な制御を必要としない。
【0022】
調節要素は、上部を備えた関節装置とその関節装置に関節状に固着された下部との間に配置されてもよい。本発明の別の形態は、共通のポンプに接続された2つの調節要素が、人工補整装置の異なる関節装置に配置されていることを設定している。
【0023】
以下では、本発明の実施例を付属の図面に基づいてより詳しく説明する。図面は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】油圧アクチュエータを備えた人工装具の概略図である。
図2】2つの方向での能動的な動作モードに対する第1の油圧回路図である。
図3】一運動方向の能動的な動作モードに対する油圧回路図である。
図4図3の異なる形態である。
図5図2による回路の能動的及び受動的な動作モードに対する流動経路である。
図6図2による回路の能動的及び受動的な動作モードに対する流動経路である。
図7図2による回路の能動的及び受動的な動作モードに対する流動経路である。
図8図2による回路の能動的及び受動的な動作モードに対する流動経路である。
図9】2つの調節要素を備えた油圧アクチュエータの異なる形態である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1では、人工装具の形態の人工補整装置1が概略図で示されている。人工補整装置1は人工装具シャフトの形態の上部2を有し、その人工装具シャフトは、第1の関節装置5を介して下部3と旋回可能に結合されている。下部3の遠位端には、第2の関節装置6を介して義足4が旋回可能に据え置かれている。存在しない又はもはや存在しない下肢に代わる人工装具としての人工補整装置1の形態の代わりに、人工補整装置1は整形器具として形成されてもよい。人工装具を患者に配置するために大腿段端がその内部に収容される、大腿シャフト2の代わりに、上部2は、患者の大腿に装着される大腿副木又は大腿殻材として形成されてもよい。下部3は、例えば紐、ベルト又は面ファスナを介して患者の下腿に固定されている下腿副木又は下腿殻材として形成されている。下部3の遠位端には義足4の代わりに、足置きが第2の関節装置6を介して旋回可能に下部3に固着されてもよい。基本的に、2つの関節装置5、6の代わりに人工補整装置が1つの関節部のみに架橋し、例えば下腿断端を収容する下腿シャフトが下腿人工装具として形成されていることもあり得る。下腿シャフトに義足が関節状に固着されてもよい。代わりに整形器具が踝関節のみ又は膝関節のみに架橋してもよく、各々の関節装置は各々の生体関節の高さに配置されている。さらに人工補整装置は、例えば腕に装着される又は人工装具として腕若しくは腕の一部に代わる整形器具として、上肢に配置されてもよい。同様に、利用者の胴体に装着される人工補整装具が形成されてもよい。複数の関節装置5,6を備えた人工補整装置1の形態では、第1の関節装置5用の下部は、第2の関節装置6用の上部を成し得る。上部は、関節装置の近位に配置されているような構成部品であり、下部は、関節装置の遠位に配置されているような構成部品である。
【0026】
図1の示される実施例では、下腿部として形成されている下部3内に油圧アクチュエータ100が配置されており、その油圧アクチュエータは、調節要素10をその調節要素に配置されるモータ駆動式のポンプ30とともに有する。油圧アクチュエータ100は、下部3に固定されている筐体11を有する。その固定は、使用の際の筐体11と下部3との間の相対運動を相殺するように旋回可能に行われ得る。調節要素10の筐体11からは、上部2に固着されているピストン軸16が突き出ている。後により詳しく説明されることになる油圧アクチュエータ100内には、シリンダが、その内部に移動可能に据え置かれた油圧ピストンとともに配置されており、その油圧ピストンはポンプ30を介して能動的に移動され得る。ピストンの移動によりピストン棒16が同様に移動し、それにより、関節装置5の旋回軸の周りで上部2が下部3に対して屈曲又は伸展することになる。ポンプ30は、油圧アクチュエータ100の筐体11内に組み込まれても、別個の筐体を備えていて配管を介して油圧アクチュエータ100と接続されてもよい。
【0027】
図1による実施例では、第2の油圧アクチュエータ100が踝関節の領域に配置され、その第2の油圧アクチュエータは調節要素10を伴って形成されており、油圧管7を介して、膝関節の領域内に配置された油圧アクチュエータ100のポンプ30と接続されている。ポンプ30が始動される場合、膝側の油圧アクチュエータ100又は踝側の油圧アクチュエータ100のどちらかに油圧流体を加えることができる。基本的に、両方の油圧アクチュエータ100に同時にポンプ30からの油圧流体を与えることもできる。
【0028】
2つの油圧アクチュエータ100を、ポンプ30が駆動されている能動モード又は受動モードで動作させることができる。受動モードでは、油圧アクチュエータ100が抵抗装置として特に油圧ダンパとして働く。人工補整装置1には、有線で又は無線で制御装置8と接続されているセンサ9、例えば力センサ、トルクセンサ、角度センサ、位置センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ及び/又は慣性計測ユニット(IMU)が配置されてもよい。制御装置8内にはプロセッサ又は他のデータ処理装置が収納されてもよく、バッテリ又は蓄電池を介してエネルギー供給が確保される。制御装置8は伸展方向及び/又は屈曲方向の流動抵抗を各々の負荷及び/又は作動状況に合わせるために、センサ値を処理し、油圧アクチュエータ100内の調節弁を制御する。基本的に、各々の調節弁を一度調節して、各々の利用者に合わることもできる。
【0029】
図2では、油圧アクチュエータ100の油圧回路図が示されている。調節要素10は、筐体11をその筐体内に形成されるシリンダ12とともに有する。シリンダ12内には油圧ピストン13が長手方向に移動可能に配置されており、シリンダ12を屈曲室15と伸展室14とに分割する。ピストン13にはピストン棒16が配置されており、そのピストン棒は、筐体11から突き出ており、人工補整装置1の構成部品、例えば上部2と結合されている。人工補整装置1の別の構成部品は筐体11と結合している。屈曲運動では、ピストン棒16は筐体11に入り込むように移動し、屈曲室15の体積が減少する。同時に伸展室14の体積が増加し、ピストン棒16の体積のために、移動時に2つの小室14、15間に体積差が生じる。2つの小室14、15が流体的接続20を介して互いに対して接続されているので、油圧流体は屈曲室15から伸展室14に及びその逆に流れ得る。ピストン棒16により生じる体積変化の差を相殺するために、相殺容積60が流体的接続20内に配置されている。その相殺容積に及びその相殺容積から、油圧流体が各々の小室14、15に輸送され得る。
【0030】
図2による配置では、流体的接続20が、各々の小室14、15から分岐する又は通じている接続管22、23を有する。さらに流体的接続20内には2つの調節弁24、25が配置されており、それらの調節弁には油圧流体が通される。調節弁24、25は接続管を介して中央管21へ続いており、相殺容積60からの配管がその中央管に通じている。図2の示された実施形態では、調節弁24は屈曲調節弁であり、調節弁25は伸展調節弁である。接続管に対して平行に、平行な供給管231、232が配置されており、それらの供給管内には逆止弁44、44’、45、45’が配置されている。各々の供給管231、232内にはそれぞれ一組の逆止弁44、44’及び45、45’として逆止弁が配置されている。その際、一組の逆止弁は同じ方向に向けられているので、中央管21からの流体は逆止弁44、44’、45、45’を通じてのみ流出するが、逆流することはできない。一組の逆止弁44、44’又は45、45’の間にはそれぞれ、ポンプ30の流入口又は流出口31、32まで続いている接続管34、35が配置されている。ポンプ30の駆動方向又は搬送方向に応じて、接続管22、23、34、35は、吸引側の又は押圧側の接続管になり、同様に流入口は流出口になり、その逆もあり得る。返送管22’、23’は、一組の逆止弁44、44’又は45、45’から各々の小室14、15まで続いており、その際、返送管22’、23’は接続管23、22に通じ得る。逆止弁44、45から各々の小室14、15まで続くこれらの配管内には、好ましくは、別の流体的に影響を与える物、特に弁又はノズルは設けられていない。調節要素10はポンプ30を組み込みこんで収容することができる。同様に、油圧アクチュエータ100の構造を可能な限り小型にするために、弁を筐体11内に又は筐体11に配置してもよい。
【0031】
供給管231、232を流体的に反対向きに遮断することにより、逆止弁44’、45’からポンプ30まで続いているそれぞれ押圧側の接続管34、35の間の結合器50は、低圧領域からの油圧流体がそれを通じてポンプ30まで搬送される、吸引側の接続管22、23に対して遮断される。図2による回路配置により、油圧アクチュエータ100を、その構造が2つの動作方向において対称的であるために、屈曲に関しても伸展に関しても動作させることができる。同様にポンプ30を停止させ、油圧アクチュエータ100の受動的な動作の際に加圧された油圧流体がポンプ流入口に隣接していない限り、そのポンプを流体回路から分離することができる。それにより、調節弁を遮断する際に、気密性の問題又はポンプ30の構造に起因する漏れのためにピストン13が沈み込むことが回避される。単にポンプ30の回転方向を反転させることにより、例えばポンプ30に接続されたモータ70の回転方向を変えることにより、能動的な伸展運動から能動的な屈曲運動へ切り替えることができる。
【0032】
ポンプ接続管34、35を逆止弁のカスケード接続内に配置することにより、能動的な動作モードでは調節弁の位置を変えることなく、ポンプ30をシステムに導入することができる。加圧された油圧流体は、ポンプ30の流出口から受動的な逆止弁を通じて油圧シリンダ12の各々の小室まで誘導される。圧力流体を導入するための追加の弁操作はもはや必要ではなく、それにより制御費用が減少し、組立空間が節減される。対応する逆止弁44、45は、ポンプ30からの圧力が逆止弁44、45の閉じ圧力よりも大きい場合にはじめて開く。弁操作の省略によりさらに、調節弁において弁を開くために2つの弁側面上で同じ圧力の時点が正確に得られない場合に発生する不規則なシステム応答が回避される。さらに、受動的な動作モードから能動的な動作モードへ移行する際にポンプ30を先んじて始動し得ることにより、調節要素10の正反対の運動を抑制することが可能である。有利には、能動的な伸展のために屈曲調節弁24を閉ざし、伸展調節弁25を開き、能動的な屈曲では伸展調節弁25を閉ざし、屈曲調節弁24を開く。
【0033】
実施形態において伸展方向の補助のみが望まれる場合、つまり能動的な動作モードにおいてポンプ30が一方向のみに動作する場合、この場合に対して可能な油圧回路図が図3に示されている。ポンプ30は伸展室14から、吸引側の接続管23からの油圧流体を伸展調節弁25を通じて吸引し、有利には屈曲調節弁24は閉ざされている。中央管21を通じて、油圧流体は結合器50から供給管231を通じて吸引側の接続管34、ポンプ31の流入口31まで輸送される。ポンプ圧力が、屈曲室15からの油圧流体により逆止弁45に対して加えられる圧力に到達し、それを上回る場合、受動的な逆止弁45が開き、油圧流体が押圧側の接続管35を通じて屈曲室15に搬送される。中央管21への逆流は、ポンプ30からの押圧側の接続管35内の逆止弁45に対して平行に配置されている逆止弁45’により妨げられ24、同様に油圧流体は低圧側に若しくは中央管21に又は相殺容器60に達し得ないので、対応する圧力上昇でピストン13が上向きに、ピストン棒16が筐体11から出て伸展運動を起こす又は補助する。伸展室14からの油圧流体に加えて、ピストン棒16による体積差を相殺するために、相殺容積60から油圧流体が吸引され、搬送される。油圧アクチュエータ100が受動的に動作する場合、ポンプ30は駆動されず、調節可能な調節弁24、25により変化する流動断面積により、伸展運動又は屈曲運動に影響が与えられる。伸展では、流体はもはやポンプ30を通じて流れず、平行に接続された逆止弁45’及び中央管21からの供給管232を通じて流れる。反対に屈曲では、伸展室14からの油圧流体は、屈曲調節弁24及び逆止弁44を通じて屈曲室15に流れ、それに平行して相殺容積60に流れる。
【0034】
図4には回路の異なる形態が示されており、同様に伸展運動の能動的な補助のみが設けられている。ポンプ30の流出口32から屈曲室15まで続く押圧側の接続管35は、同方向に向けられた2つの逆止弁45、45’の間に通じている。一方の逆止弁45’は、押圧側の接続管35から中央管21へ戻る流れ込みを遮断し、第2の逆止弁45は、押圧側の接続管35と伸展室14への返送管との間の圧力差が十分に大きい場合にはじめて開く。ここでも有利には、能動的な動作には、屈曲調節弁24が閉ざされており、伸展調節弁25が開かれているので、圧力流は、屈曲室15及び相殺容積60から中央管21を通じて流入口31まで流れ得る。受動的な伸展移動では、油圧流体は流入口31を通じてではなく、2つの逆止弁45、45’を通じて流れる。それらの逆止弁は、受動的な動作では低圧側に配置されており、伸展室14への逆流を可能にする。場合によっては屈曲調節弁24が通流を可能にし得る。
【0035】
図3及び図4の油圧回路図は、伸展運動を能動的に補助するように設計されている。単独の屈伸補助では、ポンプ30が接続管34、35と接続され、逆止弁が鏡面対称的に中央管21の他方の側に配置され得る。
【0036】
図5図8では、異なる動作モードでの切替状態及び流動経路が示されている。図5では受動的な屈曲に対する切替状態、図6ではポンプ30が駆動された能動的な屈曲に対する切替状態、図7では能動的な伸展に対する切替状態、図8では受動的な伸展に対する切替状態が示されている。その回路は図2の回路に対応している。見通しをよくするために全ての参照番号は描き込まれていない。図5に示されているような純粋に受動的な屈曲では、ピストン棒16を備えたピストン13は、矢印により示されているように下方に移動する。それにより屈曲室15内の油圧流体は圧力下に置かれ、接続管22から屈曲調節弁24を通じて流れる。ポンプ30への流体的接続は逆止弁45により遮られる。伸展調節弁25は全体的に開かれても、部分的に開かれてもよい。油圧流体は伸展室から、部分的に相殺容積60に流れ、中央管21及び上部の一組の逆止弁44、44’を通じて伸展室14に流れる。屈曲室15からの加圧された流体は、ポンプ30の流入口へ輸送されない。
【0037】
反対に能動的な補助が望まれる場合、好ましくは伸展調節弁25は閉ざされ、屈曲調節弁24は開かれる。油圧流体は屈曲室15から吸引され、従って低圧領域にある。中央管21及び逆止弁45’を通じて、流体は吸引側の接続管35を通じて吸引される。ポンプ30では昇圧が行われる。圧力下におかれた流体は、押圧側の接続管34とポンプ30への逆流を遮る逆止弁44とを通じて、伸展室14への返送管22‘を通じて送り出される。ピストン13は下方に押されてピストン棒16が引っ込み、屈曲を能動的に起こす又は補助する。部分的な体積流が伸展室14から相殺容積60に流れる。
【0038】
図7に示されているような能動的な伸展では、伸展室14からの流体は、吸引側の接続管23を通じて、開かれた伸展調節弁25を通じて流れる。追加的に必要とされる油圧流体は相殺容積60から中央管21に流れ、その中央管から逆止弁44’を通じてポンプ30の流入口31へ流れる。第2の同方向の逆止弁44は、伸展室14からのポンプ流入口31への直接的な流れ込みを遮断する。駆動されたポンプ30から、油圧流体は押圧側の接続管35を通じて、逆止弁45を通じて、返送管23’及び反転運動の際に接続管22として機能する配管を通じて屈曲室15に流れ、従ってピストン棒16の突出により伸展運動が起こる。
【0039】
図8による受動的な回路ではポンプ30は停止したままである。油圧流体は伸展室14、伸展調節弁25、相殺容積60から、一組の逆止弁45、45’を通じて、場合によっては開かれた又は部分的に開かれた屈曲調節弁24を通じて屈曲室15に流れる。
【0040】
図9では、油圧アクチュエータ100の別の異なる形態が示されており、2つの調節要素10が互いに対して接続されている。回路の基本的な構造は、ほぼ図2に示されている回路に対応する。従って図9には全ての参照番号は描き込まれていない。図2とは異なり、2つの調節要素10が少なくとも1つの作業方向又は運動方向に駆動され得るように、モード駆動式のポンプ30に配管が配設される。1つの調節要素10が例えば人工の膝関節に配置され、他方の調節要素10が人工の踝関節に配置されている場合、例えば足裏の屈曲及び膝の伸展がポンプ30により同時に起こされ得る。その代わりに、膝の屈曲及び背面の屈曲、又は各々の屈曲運動若しくは伸展運動の別の組合せが行われるように、回路が形成されてもよい。また図9による形態でも、ポンプ30の流入口又は流出口への接続管は、2つの同方向の逆止弁44’45の間に通じている。そこから、送出済みの油圧流体は、返送管又は接続管を介して調節要素10の各々の小室へ輸送される。1つの共通の相殺容積60のみが存在し、その相殺容積は中央管に接続されている。2つの調節要素10は屈曲調節弁24と伸展調節弁25とを有しており、受動的な動作の際にそれらの調節弁を介して各々の調節要素10の異なる抵抗を調節することができる、又は流動抵抗の変化により各々の調節要素10で異なる調節経路を得ることができる。また2つの調節要素10を用いても、能動的な動作又は受動的な動作の際に高圧側からポンプ30を解結し、低圧領域からの油圧流体のみをポンプ30に供給することができる。これは、逆止弁44、44’、45に図示した配管を配設して逆止弁を配置するとともに、逆止弁に対して平行に調節弁24、25を配置することにより得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】