(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】地下環境において有機化合物を製造する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C12P 1/04 20060101AFI20221109BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20221109BHJP
C12P 5/00 20060101ALI20221109BHJP
C12P 7/02 20060101ALI20221109BHJP
C12P 7/24 20060101ALI20221109BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20221109BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20221109BHJP
C09K 8/582 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12P1/04 Z
E21B43/00 Z
C12P5/00
C12P7/02
C12P7/24
C12N1/00 P
C12M1/00 H
C09K8/582
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510952
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 US2020047250
(87)【国際公開番号】W WO2021035076
(87)【国際公開日】2021-02-25
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522063424
【氏名又は名称】センビタ ファクトリー インク.
【氏名又は名称原語表記】CEMVITA FACTORY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】カリミ タヘレ
(72)【発明者】
【氏名】カリミ モジタバ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029BB02
4B029DA10
4B029DF10
4B064AB01
4B064AC01
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4B064CD02
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4B064CD23
4B064DA16
4B065AA01X
4B065AA23X
4B065BB14
4B065BB22
4B065CA55
(57)【要約】
本開示は、地下環境において有機化合物を製造する方法、及びそれを実施するためのシステムに関する。本明細書で開示される方法の利点としては、地下環境に貯蔵された二酸化炭素原料を高い費用効率で1又は2以上の有機化合物に転化することを挙げることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造する方法であって、
二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を用意するステップと;
前記二酸化炭素原料、前記微生物培養物、及び前記微生物増殖培地を前記地下環境へ加えることにより、前記二酸化炭素原料の一部分を前記少なくとも1つの有機化合物へ転化させるステップと
を含み、
前記二酸化炭素原料が前記二酸化炭素原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~100体積パーセントの二酸化炭素を含有する、前記方法。
【請求項2】
地下環境が、坑井、炭化水素を含有する井戸層、天然洞窟、地下層、地下貯蔵タンク、又はそれらの組合せを含む。請求項1に記載の方法。
【請求項3】
微生物培養物が、地下層に土着の少なくとも1つの細菌集団、少なくとも1つの外因的細菌集団、少なくとも1つの嫌気性細菌集団、少なくとも1つの遺伝子改変細菌集団、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
微生物培養物が、ジオバクター属細菌、クロストリジウム属細菌、桿菌、ゲオバチルス属細菌、ペトロバクター属細菌、デスルホトマキュラム属細菌、バクテロイデス属細菌、サーモアナエロバクター属細菌、サーモコッカス属細菌、テルモトガ目細菌、ペトロトガ細菌、テルモトガ属細菌、デスルホトマキュラム属細菌、カミニセラ細菌、ジオスポロバクター細菌、若しくはそれらの組合せを含む、又は前記微生物培養物が、メタン資化性細菌、メタン生成細菌、古細菌、屈化性細菌、鉄酸化細菌、硫黄酸化細菌、好極限性細菌、好熱性細菌、好塩性細菌、水素生成細菌、界面活性剤生成細菌、酢酸生成細菌、若しくはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
微生物増殖培地が、前記微生物増殖培地の総重量に対して約1重量パーセント~50重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含む水性液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの生物由来材料が、グルコース、フルクトース、グリセリン、スクロース、マルトデキストリン、塩化ナトリウム、酵母エキス、麦芽エキス、カゼインペプトン、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コーンスティープリカー、スイカの皮、コーンコブ、モラセス、乾燥生物由来材料、又はそれらの組合せを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの有機化合物が、C
1-C
12アルカン、C
1-C
4アルコール、C
1-C
3有機酸、C
1-C
120炭化水素、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの有機化合物が、アルカン、メタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、アルケン、アルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタンジオール、有機酸、酢酸、シュウ酸、オレフィン、エチレン、バイオサーファクタント、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
微生物培養物が二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な時間の後に、前記少なくとも1つの有機化合物を地下環境から採取するステップ、又は前記二酸化炭素原料の第2の部分を前記地下環境へ加えるステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の時点で第1の試料を地下環境から収集するステップと、
前記第1の試料を分析して第1の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと、
前記第1の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
地下環境の少なくとも1つの特性に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップをさらに含み、前記少なくとも1つの特性が、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の時点で第2の試料を地下環境から収集するステップと、
前記第2の試料を分析して、第2の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと、
前記第2の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて調整用量を選択するステップであって、前記調整用量が、第2の微生物培養物、第2の微生物増殖培地、又はそれらの組合せを含む、ステップと、
前記調整用量を前記地下環境へ注入するステップと
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1の微生物培養物及び第2の微生物培養物の少なくとも1つにより生成される少なくとも1つの有機化合物の量を測定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を、同時に若しくは任意の順番で地下環境へ加えるステップ、又は
前記二酸化炭素原料、前記微生物培養物、及び前記微生物増殖培地の少なくとも1つを、同時に若しくは任意の順番で前記地下環境へ注入若しくはポンプ送入するステップ
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
微生物培養物及び微生物増殖培地を共に混合することにより培養混合物を形成するステップと、
前記培養混合物及び二酸化炭素原料を、同時に又は任意の順番で地下環境へ加えるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
二酸化炭素原料が第1の地下環境へ加えられ、微生物培養物及び微生物増殖培地が第2の地下環境へ加えられ、前記第1の地下環境が前記第2の地下環境へ接続されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な注入速度及び注入圧力で、微生物培養物及び微生物増殖培地を合わせた体積で地下環境へ注入するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
電気分解装置及び水素原料の少なくとも1つを地下環境へ導入するステップをさらに含み、前記水素原料が、ガス原料の総体積に対して約1体積パーセント~約80体積パーセントを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
地下環境で少なくとも1つの有機化合物を製造するシステムであって、
微生物注入口に接続された微生物培養容器、及び微生物増殖培地注入口に接続された微生物増殖培地容器、又は培養混合物口に接続された培養混合物容器と、
前記微生物注入口、前記微生物増殖培地注入口、前記培養混合物口の少なくとも1つ、及びポンプ場に接続された供給パイプラインと、
前記ポンプ場に接続された注入パイプラインであって、一部分が前記地下環境へ接続されている、注入パイプラインと
を含む、前記システム。
【請求項20】
抗井からの炭化水素の製造を増加させる方法であって、
ある時点で試料を抗井環境から収集するステップと、
前記試料を分析して、試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと、
前記試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップであって、前記試料のマイクロバイオームの情報が、前記抗井環境の少なくとも1つの特性に対する前記微生物培養物の適応性、前記抗井環境の少なくとも1つの特性に対する前記微生物培養物の耐性、前記抗井環境の少なくとも1つの特性、又はそれらの組合せを含み、
前記少なくとも1つの特性が、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む、ステップと、
バイオサーファクタント原料を用意するステップと、
前記バイオサーファクタント原料の一部分を少なくとも1つのバイオサーファクタントへ転化させ、前記バイオサーファクタント原料、前記微生物培養物、及び前記微生物増殖培地を前記抗井環境へ加えることにより、前記抗井環境中に存在する少なくとも1つの石油系炭化水素、少なくとも1つのパラフィン、又はそれらの組合せを分解するステップであって、
前記微生物培養物が、界面活性剤生成細菌、石油系炭化水素分解菌、パラフィン分解菌、ゴルディナ種、シュードモナス種、バチルス種、枯草菌、岩石分解細菌、ロドサーマス・マリナス、又はそれらの組合せを含む、ステップと、
前記抗井からの炭化水素の製造を増加させるステップと
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地下環境において有機化合物を製造する方法、及びそれを実施するためのシステムに関する。本明細書で開示される方法の利点としては、地下環境に貯蔵された二酸化炭素を使用して燃料として及び他の用途の原料として有用な1又は2以上の有機化合物を製造することを挙げることができる。本明細書で開示される方法及びシステムの別の利点としては、過剰な二酸化炭素を環境から削減することを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
世界の人口は77億人と見積もられ、急速に増加している。これらの人々はすべて、少なくとも1つのことが共通している。人々はすべて、酸素を吸い二酸化炭素を吐き出す。また、彼らは世界の電力への欲求及びエネルギー需要を高める傾向がある。この状況は、石油及びガスなどの化石燃料への強い需要、並びに多くの人々が地球温暖化危機と呼んでいる石油及びガスの燃焼による過剰な二酸化炭素を作り出してきた。
【0003】
化石燃料の側面において、石油及びガスの製造業者は、加水分解破砕、炭化水素の流動を改善するための化学物質の添加、及び微生物攻法などの処理を含む、炭化水素井戸の産出量を増加させるための方法を見出している。微生物攻法(MEOR,microbial enhanced oil recovery)は、微生物群の活性を操作して貯留槽の流動特性を改善する三次石油抽出技術であり、これは井戸産出を高める又は供給源を制御することができる。しかし、現在知られているあらゆる方法は、単に炭化水素を井戸から採取する石油及びガスの製造業者の能力を改善するだけである。それらの方法はいずれも井戸においてより多くの炭化水素を製造するのではなく、したがってそれらの方法はいずれも持続可能ではない。
【0004】
地球温暖化の側面において、産業界は二酸化炭素が大気中に入るのを防ごうと必死である。二酸化炭素回収・有効利用・貯蔵(CCUS,Carbon Capture, Utilization and Storage)は、二酸化炭素排出の削減を促進する、要求の厳しい分野である。炭素回収・有効利用・貯蔵は、排煙から又は大気から直接CO2を除去し、続いて通常は地下、例えば地層又は他の地下環境などである大気中に入らないような安全な場所で利用及び保存する、方法及び技術を含む。
【0005】
しかし、現在知られている方法は、二酸化炭素を地下へ貯蔵することにより又は表面利用用途によって単に大気から二酸化炭素を除去するだけであり、これは資本集約的なインフラを大規模に構築することを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エネルギー及び原料のための炭化水素を製造することが依然として必要とされている。過剰の二酸化炭素を大気から除去することが依然として必要とされている。経済的及び効率的な方法で二酸化炭素を酸素及び他の有用な原料へ転化させることが依然として必要とされている。二酸化炭素回収・有効利用・貯蔵のプロセスを統合することができる方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書における実施形態は、地下環境で有機化合物を製造する方法、及びそれを実施するための関連するシステムに向けられている。一実施形態において、地下環境で少なくとも1つの有機化合物を製造する方法が開示される。様々な実施形態において、この方法は二酸化炭素原料、微生物培養物、微生物増殖培地を用意するステップと;二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を地下環境へ加えることにより、二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるステップとを含む。ある特定の実施形態において、二酸化炭素原料は二酸化炭素原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~100体積パーセントの二酸化炭素を含有する。
【0008】
ある特定の実施形態において、地下環境は、坑井、炭化水素を含有する井戸層、天然洞窟、地下層、地下貯蔵タンク、又はそれらの組合せを含む。
【0009】
様々な実施形態において、微生物培養物は、地下層に土着する少なくとも1つの細菌集団、少なくとも1つの外因的細菌集団(exogenous bacterial population)、少なくとも1つの嫌気性細菌集団、少なくとも1つの遺伝子改変細菌集団、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態において、微生物培養物は、ジオバクター属(Geobacter)細菌、クロストリジウム属(Clostridium)細菌、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態において、微生物培養物は、桿菌、ゲオバチルス属(Geobacillus)細菌、ペトロバクター属(Petrobacter)細菌、デスルホトマキュラム属(Desulfotomaculum)細菌、バクテロイデス属(Bacteroides)細菌、サーモアナエロバクター属(Thermoanaerobacter)細菌、サーモコッカス属(Thermococcus)細菌、テルモトガ目(Thermotogales)細菌、ペトロトガ(Petrotoga)細菌、テルモトガ属(Thermotoga)細菌、デスルホトマキュラム属細菌、カミニセラ(Caminicella)細菌、ジオスポロバクター(Geosporobacter)細菌、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態において、微生物培養物は、メタン資化性細菌、メタン生成細菌、古細菌、屈化性細菌(chemotrophic bacterium)、鉄酸化細菌、硫黄酸化細菌、好極限性細菌、好熱性細菌、好塩性細菌、水素生成細菌、界面活性剤生成細菌、酢酸生成細菌、又はそれらの組合せを含む。
【0010】
ある特定の実施形態において、微生物増殖培地は、微生物増殖培地の総重量に対して約1重量パーセント~50重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含む水性液体である。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの生物由来材料は、グルコース、フルクトース、グリセリン、スクロース、マルトデキストリン、塩化ナトリウム、酵母エキス、麦芽エキス、カゼインペプトン、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コーンスティープリカー、スイカの皮、コーンコブ、又はそれらの組合せを含む。
【0011】
様々な実施形態において、少なくとも1つの有機化合物は、C1-C12アルカン、C1-C4アルコール、C1-C3有機酸、C1-C120炭化水素、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの有機化合物は、アルカン、メタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、アルケン、アルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタンジオール、有機酸、酢酸、シュウ酸、オレフィン、エチレン、バイオサーファクタント、又はそれらの組合せを含む。
【0012】
ある特定の実施形態において、この方法は、微生物培養物が二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な時間の後に、少なくとも1つの有機化合物を地下環境から採取するステップを含む。ある特定の実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料の第2の部分を地下環境へ加えるステップを含む。
【0013】
ある特定の実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を、同時に又は任意の順番で地下環境へ加えるステップを含む。ある特定の実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地の少なくとも1つを、同時に又は任意の順番で地下環境へ注入又はポンプ送入するステップを含む。ある特定の実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な注入速度及び注入圧力の合併体積で、微生物培養物及び微生物増殖培地を一緒に地下環境へ注入するステップを含む。ある特定の実施形態において、この方法は、微生物培養物及び微生物増殖培地を共に混合することにより培養混合物を形成させるステップと;培養混合物及び二酸化炭素原料を、同時に又は任意の順番で地下環境へ加えるステップとを含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料を第1の地下環境へ加えるステップを含み、微生物培養物及び微生物増殖培地が第2の地下環境へ加えられ、第1の地下環境が第2の地下環境へ接続されている。
【0015】
本明細書におけるある特定の実施方法は、第1の時点で第1の試料を地下環境から収集するステップと;第1の試料を分析して第1の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;第1の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップとを含む。ある特定の実施形態は、地下環境の少なくとも1つの特性に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップを含み、少なくとも1つの特性は、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態は、第2の時点で第2の試料を地下環境から収集するステップと;第2の試料を分析して第2の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;第2の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて調整用量を選択するステップであって、調整用量が、第2の微生物培養物、第2の微生物増殖培地、又はそれらの組合せを含む、ステップと;調整用量を地下環境へ注入するステップとを含む。ある特定の実施形態において、この方法は、第1の微生物培養物及び第2の微生物培養物の少なくとも1つにより生成される少なくとも1つの有機化合物の量を測定するステップを含む。
【0016】
ある特定の実施形態において、この方法は、電気分解装置及び水素原料の少なくとも1つを地下環境へ導入するステップを含み、水素原料はガス原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~約80体積パーセントの水素を含有する。
【0017】
地下環境で少なくとも1つの有機化合物を製造するシステムが本明細書で開示される。システムのある特定の実施形態は、微生物注入口に接続された微生物培養容器、及び微生物増殖培地注入口に接続された微生物増殖培地容器を含む。システムのある特定の実施形態は、培養混合物口に接続された培養混合物容器を含む。システムの様々な実施形態は、微生物注入口、微生物増殖培地注入口、培養混合物口の少なくとも1つ、及びポンプ場に接続された供給パイプラインと;ポンプ場に接続された注入パイプラインであって、一部分が地下環境へ接続されている、注入パイプラインとを含む。
【0018】
抗井からの炭化水素の製造を増加させる方法が本明細書で開示される。そのような方法の実施形態は、ある時点で抗井環境から試料を収集するステップと;試料を分析して試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップであって、試料のマイクロバイオームの情報が、抗井環境の少なくとも1つの特性に対する微生物培養物の適応性、抗井環境の少なくとも1つの特性に対する微生物培養物の耐性、抗井環境の少なくとも1つの特性、又はそれらの組合せを含み;少なくとも1つの特性が、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む、ステップと;バイオサーファクタント原料を用意するステップと;バイオサーファクタント原料の一部分を少なくとも1つのバイオサーファクタントへ転化させ、バイオサーファクタント原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を抗井環境へ加えることにより抗井環境中に存在する少なくとも1つの石油系炭化水素、少なくとも1つのパラフィン、又はそれらの組合せを分解するステップであって;微生物培養物が、界面活性剤生成細菌、石油系炭化水素分解菌、パラフィン分解菌、ゴルディナ属菌種(Gordina sp.)、シュードモナス属菌種(Pseudomonas sp.)、バチルス属菌種(Bacillus sp.)、枯草菌、岩石分解細菌、ロドサーマス・マリナス(Rhodothermus marinus)、又はそれらの組合せを含む、ステップと;抗井からの炭化水素の生成を増加させるステップとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特に断りのない限り、すべての測定は標準的なメートル単位による。
【0020】
特に断りのない限り、「a」、「an」、又は「the」という語のすべての事例はそれらが修飾する語の1又は2以上を指す場合がある。
【0021】
特に断りのない限り、「少なくとも1つ」という成句は、対象物の1又は2以上を意味する。例えば、「第1の微生物培養物及び第2の微生物培養物の少なくとも1つ」は、第1の微生物培養物、若しくは2以上の第1の微生物培養物、又は第2の微生物培養物、若しくは2以上の第2の微生物培養物、又はそれらの任意の組合せを意味する。
【0022】
特に断りのない限り、「約」という用語は、四捨五入して整数にされた、記載される非パーセンテージ数の±10%を指す。例えば、約100mmは90~110mmを含むことになる。特に断りのない限り、「約」という用語は、パーセンテージ数の±5%を指す。例えば、約50重量パーセントは45重量パーセント~55重量パーセントを含むことになる。「約」という用語が範囲に関して論じられる場合、この用語は下限を下回り上限を上回る適切な量を指す。例えば、約50重量パーセント~100重量パーセントは、45重量パーセント~100重量パーセントを含むことになる。
【0023】
特に断りのない限り、本明細書に記載の特性(高さ、幅、長さ、比など)は平均の測定値と理解される。
【0024】
特に断りのない限り、「提供する」、「提供される」、又は「提供している」という用語は、本明細書における任意の実施形態の任意の方法又はシステムの、任意の要素、量、部材、薬剤、量、測定、又は分析の、供給、生成、購入、製造、組立、形成、選択、構成、転化、導入、添加、又は組込みを指す。
【0025】
特に断りのない限り、「二酸化炭素原料」という用語は、二酸化炭素の大気レベルを超える、高められたレベルの二酸化炭素を含有するガスを指す。
【0026】
化石燃料の使用により生じる二酸化炭素排出は世界規模で上昇し続けている。大気二酸化炭素レベルの削減は、気候変動の軽減又は逆行の手がかりである。大気中の二酸化炭素を削減する1つの従来の方法は、石油増進回収(EOR,enhanced oil recovery)法によって二酸化炭素を地下に隔離することである。例えば、数百万トンの二酸化炭素を毎年石油及びガス貯留槽へ注入する。二酸化炭素の天然源が一般にEOR操作において使用されるが、工業発生源からの二酸化炭素も使用できる。二酸化炭素回収貯留(CCS,carbon capture and storage)は、工業由来の二酸化炭素を大気から除去するための優れた技術である。精製及び他の工業プロセスから捕捉される二酸化炭素は、地下環境、例えば従来の油田及びガス田など、地下層、採掘不可能な石炭層、天然洞窟、深部塩水貯留層、及び地下貯蔵タンクなどへ輸送し貯蔵することができる。20兆トンを超える二酸化炭素を地層に貯蔵できる可能性があると見積もられている。他の利用可能な方法と比較して、CCSは二酸化炭素排出を削減するための費用効率が高く手頃な方法である。しかし、二酸化炭素は単にそれが排出されるまで地下に貯蔵されているだけである。したがって、この方法は大気中の過剰な二酸化炭素に対する持続可能な解決法ではない。また、環境規制により強制されない限り又はビジネスモデルの一部分として報酬がない限り、産業界にとって二酸化炭素を地下環境へ送り込むことは財政的な動機がほとんどない。ほぼ間違いなく、地球温暖化は危機であるが、なぜなら二酸化炭素を処理するよりも二酸化炭素を生成する方が利益が大きいからである。
【0027】
環境及び工業にとって有益である用途及び製品において使用するための多量の工業由来の二酸化炭素を利用することができる方法が依然として必要とされている。
【0028】
従来の方法は、地下環境からの石油及びガスの製造を増進させる微生物の使用を発展させてきた。通常、この技術は例えば容易な回収のために重油の粘度を低下させることにより、地下環境からの石油及びガスの生成を高めるために、微生物の活性を利用する。しかし歴史的には、これらの方法は珍しいものであり、広く採用されてこなかった。
【0029】
微生物の活性を使用して石油及びガスの製造を増加させる方法は、いくつかの実用的な問題に対処しなければならない。貯留槽の特定の条件下で活性が高い適切な微生物の準備は、原油の組成及び特性を考慮に入れる必要がある。しかし現場の条件に適応できる微生物の大部分は、原油の組成及び特性に対してほとんど影響を与えないことがある。工業への応用は、高温及び塩分濃度に耐性があり、所望の界面活性剤、多糖、バイオ燃料、長鎖炭水化物、及び他の所望の化合物を合成することも可能である、新しい微生物の株を必要とする。別の課題は、特定の微生物の増殖及び活性に有利に働く適切な貯留槽条件を作り出すための技術を確立することである。これは窒素及びリン化合物を含むさらなる栄養分を導入する方法をさらに調査することを必要とする。別の課題は、硫酸塩を還元するための費用効率が高い方法の開発である。貯留槽条件は、硫酸還元菌の生態的ニッチである。多くの場合硫化水素の生成を制御することが必要であるが、なぜなら硫化水素は毒性の攻撃的な環境、浸食、原油中の高い硫黄含量、毒性生成物、及び他の望ましくない結果という問題を生じさせるからである。
【0030】
化石燃料の高まった需要に加え、これらの課題にも関わらず、環境への影響を最小化しながら、既存の資源からの生産量を最大化すること、及び燃料の持続可能な供給源を開発することがますます重要視されている。その上、費用効率が高いハイスループット遺伝子シーケンシング技術における最近の発展は、地下環境に土着する微生物群の理解の高まりにつながった。地下環境からの微生物群のデータの在庫は増加しており、これは地下環境からの炭化水素の採取における微生物のより広い使用につながる。しかし、既知の方法はいずれも二酸化炭素を酸素又は任意の有用な供給原料へ転化しない。代わりに、従来の方法は、完全にかつ高い費用効率で炭化水素を地下環境から採取するための微生物の使用に焦点を当てている。
【0031】
本開示の実施形態は、過剰な二酸化炭素を地下環境へ貯蔵し、微生物を使用して地下環境において二酸化炭素を酸素又は有用な原料へ転化して戻すことによって、過剰な二酸化炭素を大気から除去する方法を提供することができる。すなわち、本開示の実施形態は、従来の二酸化炭素固定化法の二酸化炭素除去の潜在能力と、二酸化炭素を酸素又は少なくとも1つの有機化合物へ転化させる微生物技術とを組み合わせることができる。例えば、そのような方法であれば、二酸化炭素を炭化水素などの有益な有機化合物へ転換させるように設計された微生物と共に、既存の二酸化炭素を地下環境へ送り込むことによって、再生可能な炭化水素井戸を作り出すことができる。
【0032】
本開示の実施形態の1つの利点は、この方法によって、石油又は天然ガス会社が二酸化炭素を環境から除去することを経済的に利益性の高いものとすることができることである。この方法の実施形態及びその経済的効率性は、実施例により説明することができる。石油会社は地下環境で石油を発見する。石油会社は地下環境を購入するために支払い、標準的な操作手順を使用して石油を地下環境から採取するために必要なインフラを提供するために支払う。石油会社が地下環境から可能な限り多くの石油を採取してしまったら、石油会社が別の場所に移転すると陥落孔及び環境流出を避けるために典型的には水などにより埋め戻すことになる、巨大な地下空間が残るだけである。一般に地下の土地は、価値がなく、売却が困難で、恐らくは環境債務と考えられている。
【0033】
しかし、本発明により開示される方法を使用した場合、石油会社、又はその請負業者は、二酸化炭素、微生物培養物、及び費用効率が高い微生物増殖培地、例えば捨てられたコーン外皮及びメロンの皮などで地下環境を満たすことができる。時間と共に、微生物は地下環境中の二酸化炭素を少なくとも1つの有機化合物、例えばエタノール又はオクタンなどへ転化することができる。すると石油会社は、その古いインフラの多くを再び使用して少なくとも1つの有機化合物を採取、精製、販売することができる。このプロセスは無限に繰り返されてもよく、地下環境にバイオリアクターとしての持続可能な価値を与える。本明細書で開示される方法は、二酸化炭素を環境から除去し、商業的に販売することが可能な有益な有機化合物を提供することができる。環境上の観点から、本明細書で開示される方法の実施形態は、過剰な二酸化炭素及び生物系廃棄物を消費する、補充可能な油井及びガス井を提供することができる。
【0034】
環境を保護するための最も効果的な方法は、人々が実際に使用する方法である。それらの方法がより利益性が高いほど、人々はそれらをより使用する傾向がある。本明細書で開示される方法の利点の1つは、パッシブバイオリアクターシステムを使用することの費用効率の高さである。上記の例において、石油会社は既に土地に対して支払い、材料を井戸へ送り込み井戸からくみ出すのに必要なインフラのすべてに対して支払い、石油の採取、精製、及び販売から利益を得ている。有益な炭化水素の製造を失うリスクをおかす可能性がある追加の工程はなかった。プロセスのこの時点までに新しいコストは負担されていない。最終工程又は最終に近い工程として二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地をわずかなコストで井戸へ送り込むことにより、油井又は地下環境に補充することができる。次いで、石油会社が次の掘削場所へ移転する間、微生物は二酸化炭素原料及び微生物増殖培地を少なくとも1つの有機化合物へ転化することができる。後日、石油会社、又はその請負業者は戻って、有機化合物を採取しそれらを営利目的で販売することができる。この例において、経費の大部分は販売のための石油の採取において生じた。井戸の補充は過剰の二酸化炭素、生物系廃棄物、及び時間を必要とするにすぎず、それらのすべては容易に入手可能である。本発明により開示される方法の実施形態は、以前には想像できない規模で、二酸化炭素を大気から除去し微生物が働く間に有益な有機化合物を受動的に生成させることを、利益性の高いものとすることができる。
【0035】
最初に二酸化炭素を生成することよりも、二酸化炭素を有益な有機化合物へ転化させることがより利益性の高い、又は全く同じように利益性が高いことになれば、地球温暖化危機はどうなるだろうか?本発明により開示される方法は、エネルギー生産者を地球温暖化企業から地球冷却企業へ転換させる可能性がある。
【0036】
本開示の実施形態は、二酸化炭素原料、微生物増殖培地、及び微生物培養物を地下環境に供給することにより、少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造する方法を提供することができ、微生物培養物は二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させる。本明細書における実施形態は、燃料として及び他の用途において有用な1又は2以上の有機化合物を製造するための豊富な資源として、貯蔵された二酸化炭素ガスを使用するという利点をもたらすことができる。
【0037】
有機化合物製造法の実施形態
本明細書で開示されるような実施方法は、地下環境で少なくとも1つの有機化合物を製造するステップを含んでいてもよい。本明細書における様々な実施形態において、この方法は二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を用意するステップと;二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるステップとを含む。一実施形態において、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地が地下環境へ加えられる。
【0038】
一実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を同時に地下環境へ加えるステップを含む。一実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を任意の順番で地下環境へ加えるステップを含む。一実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地の少なくとも1つを同時に地下環境へ注入又はポンプ送入するステップを含む。一実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地の少なくとも1つを任意の順番で地下環境へ注入又はポンプ送入するステップを含む。一実施形態において、この方法は、微生物培養物及び微生物増殖培地を共に混合することにより培養混合物を形成させるステップと;培養混合物及び二酸化炭素原料を同時に地下環境へ加えるステップとを含む。一実施形態において、この方法は、微生物培養物及び微生物増殖培地を共に混合することにより培養混合物を形成させるステップと;培養混合物及び二酸化炭素原料を任意の順番で地下環境へ加えるステップとを含む。一実施形態において、この方法は、二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な注入速度及び注入圧力の合併体積で、微生物培養物及び微生物増殖培地を一緒に地下環境へ注入するステップを含む。
【0039】
一実施形態において、二酸化炭素原料は第1の地下環境へ加えられ、微生物培養物及び微生物増殖培地は第2の地下環境へ加えられ、第1の地下環境が第2の地下環境へ接続されている。そのような実施形態の利点は、限定はされないが隣接した井戸を含む、ガス接続又は流体接続を有する地下環境の使用を提供することができる。
【0040】
一実施形態において、この方法は、微生物培養物が二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な時間の後に、少なくとも1つの有機化合物を地下環境から採取するステップを含む。一実施形態において、十分な時間としては、約5年~約15年を含め、約1年~約20年を挙げることができる。
【0041】
一実施形態において、この方法は、どの微生物及び/又は微生物増殖培地が地下環境に対して自然である又は最適であるかを決定することから恩恵を受けることができる。一実施形態において、この方法は、第1の時点で第1の試料を地下環境から収集するステップと;第1の試料を分析して第1の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;第1の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップとを含む。一実施形態において、この方法は、第2の時点で第2の試料を地下環境から収集するステップと、第2の試料を分析して第2の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと、第2の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて調整用量を選択するステップとを含む。いくつかの実施形態において、調整用量は、第2の微生物培養物、第2の微生物増殖培地、又はそれらの組合せを含む。一実施形態において、この方法は、調整用量を地下環境へ注入するステップを含む。
【0042】
様々な実施形態において、マイクロバイオームの情報としては、限定はされないが、微生物群の情報;現在存在する生存及び非生存の微生物の個体数調査;微生物の特性決定;遺伝物質及び生体物質の情報;遺伝物質から得られる又は解明される情報;DNA、RNA、タンパク質、又は炭水化物を含む、遺伝物質又は他の生体物質のフラグメント;並びに代謝産物のプロファイルを挙げることができる。そのような実施形態は、微生物培養物及び微生物増殖培地を選択して地下環境での微生物培養物の生存及び増殖、並びに1又は2以上の有機化合物の製造を促進するという利点を提供することができる。
【0043】
一実施形態において、この方法は、第1の微生物培養物及び第2の微生物培養物の少なくとも1つにより製造される少なくとも1つの有機化合物の量を測定するステップを含む。一実施形態において、この方法は、第1の微生物培養物及び第2の微生物培養物の少なくとも1つにより消費される地下環境中の二酸化炭素原料の量を測定するステップを含む。
【0044】
一実施形態において、二酸化炭素原料は、石油製造を増加させる目的で、二酸化炭素を地下層へ注入又はポンプ送入するのにも使用できる注入装置又はポンプ送入装置を使用して、地下層へ注入又はポンプ送入することができる。そのような実施形態の利点は、1又は2以上の有機化合物を地下環境で製造するため、及び石油製造を増加させる目的のための、注入装置又はポンプ送入装置の費用効率の高い使用である場合がある。そのような実施形態は、石油製造の目的のため、及び1又は2以上の有機化合物の製造のための、地下層の費用効率の高い使用という利点を提供することができる。
【0045】
様々な実施形態における二酸化炭素原料は、工業排出物由来の二酸化炭素ガス、天然源由来の二酸化炭素、大気から捕捉された二酸化炭素、地下環境に貯蔵若しくは注入された二酸化炭素ガス、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。そのような実施形態は、工業排出物由来の二酸化炭素を含む二酸化炭素原料を使用して1又は2以上の有用な有機化合物を製造するという利点を提供することができる。そのような実施形態は、製造される1又は2以上の有機化合物の販売からの収益を使用して工業的に生成される二酸化炭素を地下層へ捕捉及び輸送するコストを相殺することができるという点で、有機化合物の製造のために、工業発生源由来の二酸化炭素を高い費用効率で使用するという利点を提供することができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、二酸化炭素原料は二酸化炭素原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~100体積パーセントの二酸化炭素を含有する。一実施形態において、二酸化炭素原料は二酸化炭素原料の総体積に対して約2.0体積パーセント~約95体積パーセント又はそれを超える二酸化炭素を含有する。一実施形態において、二酸化炭素原料は二酸化炭素原料の総体積に対して約5.0体積パーセント~約90体積パーセント又はそれを超える二酸化炭素を含有する。一実施形態において、この方法は二酸化炭素原料の第2の部分を地下環境へ加えるステップを含む。
【0047】
少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造する方法の実施形態は、二酸化炭素原料から少なくとも1つの有機材料へ能動的に転化させる又は促進させるステップから利益を得る場合がある。一実施形態において、この方法は、電気分解装置及び/又は水素原料の少なくとも1つを地下環境へ導入するステップを含む。一実施形態において、水素原料は水素原料又はガス原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~約80体積パーセントの水素を含有する。一実施形態において、水素原料は水素原料の総体積に対して約2体積パーセント~約8体積パーセントの水素を含有する。一実施形態において、水素原料は水素原料の総体積に対して約4体積パーセント~約6体積パーセントの水素を含有する。そのような実施形態の利点としては、微生物培養物の増殖を促進すること、及び/又は地下層における二酸化炭素原料から少なくとも1つの有機化合物への転化率を高めることを挙げることができる。
【0048】
様々な実施形態における地下環境は、抗井、炭化水素を含有する井戸層、天然洞窟、地下層、地下貯蔵タンク、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。一実施形態において、この方法は、地下環境の少なくとも1つの特性に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップを含む。いくつかの実施形態において、地下環境の少なくとも1つの特性としては、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せが挙げられる。ある特定の実施形態において、この方法は、地下環境の少なくとも1つの特性への微生物培養物の適応に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップ、地下環境の特性の少なくとも1つに対する微生物培養物の耐性に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップ、又はそれらの組合せを含む。
【0049】
本明細書における微生物培養物の実施形態は、地下層に土着する少なくとも1つの細菌集団を含んでいてもよい。そのような実施形態の利点は、地下層で増殖するように自然に適合している少なくとも1つの細菌集団を選択することを含んでいてもよい。他の実施形態において、微生物培養物は、少なくとも1つの外因性細菌集団、又は少なくとも1つの土着細菌集団及び少なくとも1つの外因性細菌集団の組合せを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、微生物培養物は、少なくとも1つの嫌気性細菌集団、少なくとも1つの遺伝子改変細菌集団、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。一実施形態において、少なくとも1つの嫌気性細菌集団は、ジオバクター属細菌、クロストリジウム属細菌、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、微生物培養物は、バチルス属細菌、ゲオバチルス属細菌、ペトロバクター属細菌、デスルホトマキュラム属細菌、バクテロイデス属細菌、サーモアナエロバクター属細菌、サーモコッカス属細菌、テルモトガ目細菌、ペトロトガ細菌、テルモトガ属細菌、デスルホトマキュラム属細菌、カミニセラ細菌、ジオスポロバクター細菌、又はそれらの組合せを含む。ある特定の実施形態において、微生物培養物は、メタン資化性細菌、メタン生成細菌、古細菌、屈化性細菌、鉄酸化細菌、硫黄酸化細菌、好極限性細菌、好熱性細菌、好塩性細菌、水素生成細菌、界面活性剤生成細菌、酢酸生成細菌、又はそれらの組合せを含む。
【0050】
様々な実施形態において、少なくとも1つの微生物培養物は、地下環境の1又は2以上の特性に基づいて選択することができる。そのような実施形態において、地下環境の1又は2以上の特性としては、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを挙げることができる。そのような実施形態は、地下環境で増殖し二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるように適合している少なくとも1つの細菌集団を選択することの利点を提供することができる。
【0051】
本明細書における微生物増殖培地の実施形態は、水性液体を含んでいてもよい。様々な実施形態において、そのような水性液体に含まれていてもよい材料とは、所望の微生物の増殖を支援するように選択することができる。そのような水性液体としては、限定はされないが酵母エキスなどの材料を含む有機材料、動物由来のエキス、例えば牛肉エキス及びトリプトンなど、寒天、並びにビタミンを含むことができる。そのような水性液体としてはまた、限定はされないがアンモニウム塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化ナトリウム、及びミネラルを含む無機材料も含むことができる。有機及び無機材料を含有する微生物増殖培地の例としては、限定はされないが栄養寒天及びLB(Lysogeny Bertani)培地が挙げられる。
【0052】
水性液体を含む微生物増殖培地の実施形態は、微生物増殖培地の総重量に対して約1重量パーセント~50重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含んでいてもよい。一実施形態において、水性液体は、約10重量パーセント~約40重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含む。一実施形態において、水性液体は、約20重量パーセント~約30重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含む。一実施形態において、水性液体は、約1重量パーセント~約5重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含む。そのような水性液体の実施形態は、少なくとも1つの生物由来材料を含有する水溶液又はスラリーを含んでいてもよい。一実施形態において、少なくとも1つの生物由来材料としては、グルコース、フルクトース、グリセリン、スクロース、マルトデキストリン、塩化ナトリウム、酵母エキス、麦芽エキス、カゼインペプトン、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コーンスティープリカー、スイカの皮、コーンコブ、モラセス、乾燥生物由来材料、又はそれらの組合せが挙げられる。そのような実施形態の利点としては、豊富で費用効率が高い生物由来材料を微生物増殖培地において使用することを挙げることができる。本明細書における水性液体を含む微生物増殖培地の実施形態は、地下環境において微生物培養物の増殖を促進するという利点を提供することができる。そのような実施形態の別の利点は、微生物増殖培地を地下層へ注入又はポンプ送入するのに有利な微生物増殖培地であり得る。
【0053】
様々な実施形態における少なくとも1つの有機化合物としては、C1-C12アルカン、C1-C4アルコール、C1-C3有機酸、C1-C120炭化水素、又はそれらの組合せを挙げることができる。適切な炭化水素の例としては、アルカン、メタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、及びそれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの有機化合物としては、アルケン、アルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタンジオール、有機酸、酢酸、シュウ酸、オレフィン、エチレン、バイオサーファクタント、又はそれらの組合せを挙げることができる。
【0054】
様々な実施形態における少なくとも1つの有機化合物の利点は、燃料として有用な、又は他の有用な用途のための少なくとも1つの有機化合物の提供を挙げることができる。
【0055】
本明細書で開示される実施法は、抗井からの炭化水素の製造を増加させる方法を含んでいてもよい。そのような実施形態において、この方法は、ある時点で抗井環境から試料を収集するステップと;試料を分析して試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップであって、試料のマイクロバイオームの情報が抗井環境の少なくとも1つの特性に対する微生物培養物の適応性、抗井環境の少なくとも1つの特性に対する微生物培養物の耐性、抗井環境の少なくとも1つの特性、又はそれらの組合せを含み;少なくとも1つの特性が、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む、ステップと;バイオサーファクタント原料を用意するステップと;バイオサーファクタント原料の一部分を少なくとも1つのバイオサーファクタントへ転化させ、バイオサーファクタント原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を抗井環境へ加えることにより抗井環境中に存在する少なくとも1つの石油系炭化水素、少なくとも1つのパラフィン、又はそれらの組合せを分解するステップであって;微生物培養物が、界面活性剤生成細菌、石油系炭化水素分解菌、パラフィン分解菌、ゴルディナ種、シュードモナス種、バチルス種、枯草菌、岩石分解細菌、ロドサーマス・マリナス、又はそれらの組合せを含む、ステップと;抗井からの炭化水素の製造を増加させるステップとを含んでいてもよい。
【0056】
少なくとも1つのバイオサーファクタントを抗井環境中で製造する実施形態を含む、本明細書で開示されるような抗井からの炭化水素の製造を増加させる実施法は、微生物攻法(MEOR)を強化するという利点を提供することができる。石油系炭化水素分解菌、パラフィン分解菌、又はそれらの組合せを提供する実施形態は、ワックス状炭化水素を含む長鎖炭化水素を分解するという利点を提供することができ、これは粘度の低下及び抗井環境中に存在する石油の流動性の増加につながることがあり、そのため抗井からの炭化水素の製造の増加を支援することにつながることがある。岩石分解菌を提供する実施形態は、抗井環境中に存在するケイ素系岩石を分解し、そのため岩石の多孔性を高め炭化水素回収の増加を補助するという利点を提供することができる。
【0057】
様々な実施形態のシステム
本明細書で開示されるシステムの実施形態は、少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造するシステムを含んでいてもよい。一実施形態において、システムは、微生物注入口に接続された微生物培養容器、及び微生物増殖培地注入口に接続された微生物増殖培地容器を含む。一実施形態において、システムは、培養混合物口に接続された微生物培養混合物容器を含む。一実施形態において、システムは、微生物注入口、微生物増殖培地注入口、及び培養混合物口の少なくとも1つに接続された供給パイプラインを含む。様々な実施形態において、供給パイプライン及び注入パイプラインはポンプ場に接続されており、注入パイプラインの一部分は地下環境へ接続されている。一実施形態において、供給パイプライン、注入パイプライン、ポンプ場、又はそれらの組合せを使用して二酸化炭素原料を地下層へ注入又はポンプ送入することができ、EOR法において石油製造を増加させる目的のために、供給パイプライン、注入パイプライン、ポンプ場、又はそれらの組合せを使用して二酸化炭素を地下層へ注入又はポンプ送入することもできる。そのような実施形態は、1又は2以上の有機化合物を地下環境で製造するため、並びに石油製造を増加させるために、装置を高い費用効率で使用するという利益性を提供することができる。そのような実施形態は、石油製造の目的のため、及び1又は2以上の有機化合物を製造するために、地下層を高い費用効率で使用するという利益性を提供することができる。
[実施例]
【実施例1】
【0058】
少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造する方法において、第1の時点で第1の試料を地下環境から収集する。第1の試料を分析して第1の試料のマイクロバイオームの情報を得る。第1の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて、ジオバクター属培養物を含む、地下環境に土着する微生物培養物、及び適切な微生物増殖培地を選択する。地下環境(温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せ)の少なくとも1つの特性にさらに基づいて、微生物培養物及び微生物増殖培地を選択する。80体積パーセントの二酸化炭素を含有する二酸化炭素原料を地下環境に供給する。選択された微生物培養物を微生物培養容器に供給し、選択された微生物増殖培地を微生物増殖培地容器に供給する。微生物培養物及び微生物増殖培地は、それぞれ微生物注入口及び微生物増殖培地注入口を介して、供給パイプラインへ同時に注入される。供給パイプライン及び注入パイプラインはポンプ場へ接続され;注入パイプラインは地下環境へ接続されている。微生物培養物及び微生物増殖培地は、供給パイプライン及び注入パイプラインを介して地下環境へポンプ送入される。第2の時点で、第2の試料を地下環境から収集し分析して第2の試料マイクロバイオームの情報を得る。第2の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて、第2の微生物培養物及び第2の微生物増殖培地を含む、調整用量を選択する。調整用量を地下環境へ注入する。微生物培養物により生成される少なくとも1つの有機化合物の量を定期的に測定する。微生物培養物が二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な時間の後、少なくとも1つの有機化合物を地下環境から採取する。
【実施例2】
【0059】
少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造する方法において、MEOR法を使用する前に、原油の物理化学的特性、貯留槽の製造実績、及び温度を含む貯留槽の特性を考慮に入れて、プロジェクトを評価して原油及び貯留槽の特性とMEORとの適合性を決定する。予備段階において、貯留槽の流体試料を収集し、MEORシステムとの適合性を試験する。第1の段階は、in situの貯留槽条件に既に適合している土着の炭化水素消費細菌の特定であり;その後各プロジェクトの最良の行動戦略を設計し展開させる。地下層からの石油回収を高めるためのMEOR法は、Yarbrough HF、Coty VE. Microbially enhanced oil recovery from the Upper Cretaceous Nacatoch formation, Union County Arkansas. Proceedings of International Conference on Microbial Enhancement of Oil Recovery, USA; 1983, p. 149-153;及びPortwood JT (Company Alpha Environmental Midcontinent, Inc.). A commercial microbial enhanced oil recovery technology: Evaluation of 322 projects. Proceedings of the SPE Production Operations Symposium; 2-4 April, Oklahoma City, Oklahoma: SPE; 2007, p. 693-709に開示され、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
MEOR技術は以下のように:(1)処理しようとする井戸から、又は(2)同じ貯留槽の目的の井戸及び隣接した井戸から、個々の井戸で使用される。水を貯留槽に注入するのと同じ方法で、MEOR溶液を隣接した井戸へ注入する。目的の貯留槽の細孔体積に基づいて、注入しようとするMEOR生体材料の体積を計算する。溶液を混合し注入井戸を介してポンプ送入し、続いて水を注入して生体溶液を石油飽和ゾーンへ送り込む。次いで、処理済みの井戸を必要な期間(通常は24時間~7日)閉鎖し、その後石油製造を再開する。この手順を3~6か月ごとに繰り返して微生物を鉱床のより深部へ石油飽和ゾーンまで移動させる。
【0061】
例示的な実施形態
実施形態1. 少なくとも1つの有機化合物を地下環境で製造する方法であって、
二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を用意するステップと;
二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を地下環境へ加えることにより、二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるステップと
を含み、
二酸化炭素原料が二酸化炭素原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~100体積パーセントの二酸化炭素を含有する、方法。
【0062】
実施形態2. 地下環境が、坑井、炭化水素を含有する井戸層、天然洞窟、地下層、地下貯蔵タンク、又はそれらの組合せを含む、実施形態1の方法。
【0063】
実施形態3. 微生物培養物が、地下層に土着する少なくとも1つの細菌集団、少なくとも1つの外因的細菌集団、少なくとも1つの嫌気性細菌集団、少なくとも1つの遺伝子改変細菌集団、又はそれらの組合せを含む、上記の実施形態1~2のいずれかの方法。
【0064】
実施形態4. 微生物培養物が、ジオバクター属細菌、クロストリジウム属細菌、桿菌、ゲオバチルス属細菌、ペトロバクター属細菌、デスルホトマキュラム属細菌、バクテロイデス属細菌、サーモアナエロバクター属細菌、サーモコッカス属細菌、テルモトガ目細菌、ペトロトガ細菌、テルモトガ属細菌、デスルホトマキュラム属細菌、カミニセラ細菌、ジオスポロバクター細菌、若しくはそれらの組合せを含む;又は微生物培養物が、メタン資化性細菌、メタン生成細菌、古細菌、屈化性細菌、鉄酸化細菌、硫黄酸化細菌、好極限性細菌、好熱性細菌、好塩性細菌、水素生成細菌、界面活性剤生成細菌、酢酸生成細菌、若しくはそれらの組合せを含む、上記の実施形態1~3のいずれかの方法。
【0065】
実施形態5. 微生物増殖培地が、微生物増殖培地の総重量に対して約1重量パーセント~50重量パーセントの少なくとも1つの生物由来材料を含む水性液体である、上記の実施形態1~4のいずれかの方法。
【0066】
実施形態6. 少なくとも1つの生物由来材料が、グルコース、フルクトース、グリセリン、スクロース、マルトデキストリン、塩化ナトリウム、酵母エキス、麦芽エキス、カゼインペプトン、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コーンスティープリカー、スイカの皮、コーンコブ、モラセス、乾燥生物由来材料、又はそれらの組合せを含む、上記の実施形態5の方法。
【0067】
実施形態7. 少なくとも1つの有機化合物が、C1-C12アルカン、C1-C4アルコール、C1-C3有機酸、C1-C120炭化水素、又はそれらの組合せを含む、上記の実施形態1~6のいずれかの方法。
【0068】
実施形態8. 少なくとも1つの有機化合物が、アルカン、メタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、アルケン、アルコール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタンジオール、有機酸、酢酸、シュウ酸、オレフィン、エチレン、バイオサーファクタント、又はそれらの組合せを含む、上記の実施形態1~7のいずれかの方法。
【0069】
実施形態9.
微生物培養物が二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な時間の後に、少なくとも1つの有機化合物を地下環境から採取するステップ;又は
二酸化炭素原料の第2の部分を地下環境へ加えるステップ
をさらに含む、上記の実施形態1~8のいずれかの方法。
【0070】
実施形態10.
第1の時点で第1の試料を地下環境から収集するステップと;
第1の試料を分析して第1の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;
第1の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップと
をさらに含む、上記の実施形態1~9のいずれかの方法。
【0071】
実施形態11. 地下環境の少なくとも1つの特性に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップをさらに含む、上記の実施形態1~10のいずれかの方法であって、少なくとも1つの特性が、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む、方法。
【0072】
実施形態12.
第2の時点で第2の試料を地下環境から収集するステップと;
第2の試料を分析して第2の試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;
第2の試料のマイクロバイオームの情報に基づいて調整用量を選択するステップであって、調整用量が、第2の微生物培養物、第2の微生物増殖培地、又はそれらの組合せを含む、ステップと;
調整用量を地下環境へ注入するステップと
をさらに含む、実施形態11の方法。
【0073】
実施形態13. 第1の微生物培養物及び第2の微生物培養物の少なくとも1つにより生成される少なくとも1つの有機化合物の量を測定するステップをさらに含む、実施形態12の方法。
【0074】
実施形態14.
二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を、同時に若しくは任意の順番で地下環境へ加えるステップ;又は
二酸化炭素原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地の少なくとも1つを、同時に若しくは任意の順番で地下環境へ注入若しくはポンプ送入するステップ
をさらに含む、上記の実施形態1~13のいずれかの方法。
【0075】
実施形態15.
微生物培養物及び微生物増殖培地を共に混合することにより培養混合物を形成させるステップと;
培養混合物及び二酸化炭素原料を、同時に又は任意の順番で地下環境へ加えるステップと
をさらに含む、上記の実施形態1~14のいずれかの方法。
【0076】
実施形態16. 二酸化炭素原料が第1の地下環境へ加えられ、微生物培養物及び微生物増殖培地が第2の地下環境へ加えられ、第1の地下環境が第2の地下環境へ接続されている、上記の実施形態1~15のいずれかの方法。
【0077】
実施形態17. 二酸化炭素原料の一部分を少なくとも1つの有機化合物へ転化させるのに十分な注入速度及び注入圧力の合併体積で、微生物培養物及び微生物増殖培地を一緒に地下環境へ注入するステップをさらに含む、上記の実施形態1~16のいずれかの方法。
【0078】
実施形態18. 電気分解装置及び水素原料の少なくとも1つを地下環境へ導入するステップをさらに含む、上記の実施形態1~17のいずれかの方法であって、水素原料がガス原料の総体積に対して約1.0体積パーセント~約80体積パーセントを含有する、方法。
【0079】
実施形態18A.
a. 電気分解装置及び水素原料の少なくとも1つを地下環境へ導入するステップであって、水素原料が水素原料の総体積に対して約1体積パーセント~約80体積パーセントの水素を含有する、ステップ
をさらに含む、上記の実施形態1~17のいずれかの方法。
【0080】
実施形態18B.
電気分解装置及びガス原料の少なくとも1つを地下環境へ導入するステップであって、ガス原料がガス原料の総体積に対して約1体積パーセント~約80体積パーセントの水素を含有する、ステップ
をさらに含む、上記の実施形態1~17のいずれかの方法。
【0081】
実施形態19. 地下環境で少なくとも1つの有機化合物を製造するシステムであって、
微生物注入口に接続された微生物培養容器、及び微生物増殖培地注入口に接続された微生物増殖培地容器、又は培養混合物口に接続された培養混合物容器と;
微生物注入口、微生物増殖培地注入口、培養混合物口の少なくとも1つ、及びポンプ場に接続された供給パイプラインと;
ポンプ場に接続された注入パイプラインであって、一部分が地下環境へ接続されている、注入パイプラインと
を含む、システム。
【0082】
実施形態20. 抗井からの炭化水素の製造を増加させる方法であって、
ある時点で試料を抗井環境から収集するステップと;
試料を分析して試料のマイクロバイオームの情報を得るステップと;
試料のマイクロバイオームの情報に基づいて微生物培養物及び微生物増殖培地を選択するステップであって、試料のマイクロバイオームの情報が抗井環境の少なくとも1つの特性に対する微生物培養物の適応性、抗井環境の少なくとも1つの特性に対する微生物培養物の耐性、抗井環境の少なくとも1つの特性、又はそれらの組合せを含み;
少なくとも1つの特性が、温度、圧力、浸透性、多孔性、塩分、酸性度、又はそれらの組合せを含む、ステップと;
バイオサーファクタント原料を用意するステップと;
バイオサーファクタント原料の一部分を少なくとも1つのバイオサーファクタントへ転化させ、バイオサーファクタント原料、微生物培養物、及び微生物増殖培地を抗井環境へ加えることにより抗井環境中に存在する少なくとも1つの石油系炭化水素、少なくとも1つのパラフィン、又はそれらの組合せを分解するステップであって;
微生物培養物が、界面活性剤生成細菌、石油系炭化水素分解菌、パラフィン分解菌、ゴルディナ種、シュードモナス種、バチルス種、枯草菌、岩石分解細菌、ロドサーマス・マリナス、又はそれらの組合せを含む、ステップと;
抗井からの炭化水素の製造を増加させるステップと
を含む、方法。
【国際調査報告】