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▶ フレッド ハッチンソン キャンサー センターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】WT-1に特異的なT細胞免疫療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221109BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221109BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221109BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20221109BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
C07K19/00
A61K48/00
A61K35/17 Z
A61K31/7088
A61P43/00 121
A61P35/02
A61P35/00
A61K38/19
A61K38/20
A61K45/00
A61K35/12
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022510984
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020047071
(87)【国際公開番号】W WO2021034976
(87)【国際公開日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】62/889,519
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522256406
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,トーマス・エム
(72)【発明者】
【氏名】シャピュイ,オード・ジー
(72)【発明者】
【氏名】グリーンバーグ,フィリップ・ディー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084DA01
4C084DA12
4C084DA14
4C084MA02
4C084MA55
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA55
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトウィルムス腫瘍タンパク質1(WT-1)エピトープに特異的な結合性タンパク質のほか、結合性タンパク質を発現する宿主細胞を提示する。また、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。多様ながんなど、WT-1の発現と関連する疾患又は障害を処置するための、本明細書において開示される組成物に関連する方法及び使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む改変免疫細胞であって、前記コードされる結合性タンパク質が、
(a)配列番号28、19、22若しくは25のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)を含むT細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン又はその変異体及びTCR β鎖可変(Vβ)ドメイン、或いは
(b)配列番号40、31、34若しくは37のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)を含むTCR Vβドメイン又はその変異体及びTCR Vαドメイン、或いは
(c)(a)のTCR Vαドメイン及び(b)のTCR Vβドメイン
を含み、
前記コードされる結合性タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能であり、任意に、前記HLAが、HLA-A0201を含む、
前記改変免疫細胞。
【請求項2】
前記コードされる結合性タンパク質が、4.0以上又は4.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、前記RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、請求項1に記載の改変免疫細胞。
【請求項3】
前記コードされる結合性タンパク質が、5.0以上のIFNγ産生pEC50を伴って、前記RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、請求項1又は2に記載の改変免疫細胞。
【請求項4】
前記コードされる結合性タンパク質が、5.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、前記RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、請求項1~3のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項5】
前記コードされる結合性タンパク質が、6.0以上のIFNγ産生pEC50を伴って、前記RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項6】
前記コードされる結合性タンパク質が、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、前記RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項7】
前記HLAが、HLA-A201を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項8】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-4μM、10-5μM又は10-6μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に、4時間にわたり共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの50%以上が、IFN-γを産生し、前記抗原提示細胞が、任意に、T2細胞を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項9】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの10%以上が、Nur77であり、前記抗原提示細胞が、任意に、T2細胞、Jurkat細胞又はこれらの両方を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項10】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの15%以上が、Nur77である、請求項9に記載の改変免疫細胞。
【請求項11】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの20%以上が、Nur77である、請求項9又は10に記載の改変免疫細胞。
【請求項12】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの40%以上が、Nur77である、請求項9~11のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項13】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの50%以上が、Nur77である、請求項9~12のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項14】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-3μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの10%以上が、Nur77である、請求項1~13のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項15】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-3μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの15%以上が、Nur77である、請求項14に記載の改変免疫細胞。
【請求項16】
前記改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を約10-3μMとして、前記アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される場合に、集団中の前記改変免疫細胞のうちの20%以上が、Nur77である、請求項14又は15に記載の改変免疫細胞。
【請求項17】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの11%以上を死滅させることが可能である、請求項1~16のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項18】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの12%以上を死滅させることが可能である、請求項17に記載の改変免疫細胞。
【請求項19】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの14%以上を死滅させることが可能である、請求項17又は18に記載の改変免疫細胞。
【請求項20】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの15%以上を死滅させることが可能である、請求項17~19のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項21】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの20%以上を死滅させることが可能である、請求項17~20のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項22】
前記改変免疫細胞と、HLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの25%以上を死滅させることが可能である、請求項17~21のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項23】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に10:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの10%以上を死滅させることが可能である、請求項1~22のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項24】
前記改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に1:1の比で存在する場合に、試料中の前記HLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの約5%以上を死滅させることが可能である、請求項1~23のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項25】
前記改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中のPanc1細胞のうちの21%以上を死滅させることが可能である、請求項1~24のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項26】
前記改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中の前記Panc1細胞のうちの22%以上を死滅させることが可能である、請求項25に記載の改変免疫細胞。
【請求項27】
前記改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中の前記Panc1細胞のうちの23%以上を死滅させることが可能である、請求項25又は26に記載の改変免疫細胞。
【請求項28】
前記改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中の前記Panc1細胞のうちの24%以上を死滅させることが可能である、請求項25~27のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項29】
前記改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中の前記Panc1細胞のうちの25%以上を死滅させることが可能である、請求項25~28のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項30】
配列番号82に示されるアミノ酸配列を有するTCRα鎖及び配列番号83に示されるアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含むT細胞受容体をコードするポリヌクレオチドを含む参照免疫細胞と比較して、4時間にわたる共培養において、HLA-A0201MDA-MB-468細胞及び/又はPanc1細胞に対する増大した死滅活性を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項31】
前記コードされる結合性タンパク質が、CD8に非依存的に、又はCD8の非存在下において、細胞表面におけるWT-1ペプチド:HLA複合体に結合することが可能である、請求項1~30のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項32】
(i)前記コードされるVβドメインが、配列番号16、5、6、7、8、13、14若しくは15のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、及び/又は
(ii)前記コードされるVαドメインが、配列番号12、1、2、3、4、9、10若しくは11のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
請求項1~31のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項33】
(i)前記CDRのうちの少なくとも3つ又は4つが、変異を有さず、
(ii)変異を有する前記CDRが、2つ以下のみのアミノ酸置換、5つ以下の連続アミノ酸の欠失又はこれらの組合せを有し、
(iii)前記コードされる結合性タンパク質が、任意に、4.0以上のインターフェロン-ガンマ(IFNγ)産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合する能力を保持する
ことを条件として、前記コードされるVβドメインが、配列番号16、5、6、7、8、13、14若しくは15のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、及び/又は前記コードされるVαドメインが、配列番号12、1、2、3、4、9、10若しくは11のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、請求項1~32のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項34】
(i)前記コードされるCDR3βが、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記コードされるCDR3αが、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(ii)前記コードされるCDR3βが、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記コードされるCDR3αが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(iii)前記コードされるCDR3βが、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記コードされるCDR3αが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は
(iv)前記コードされるCDR3βが、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、前記コードされるCDR3αが、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
請求項1~33のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項35】
(i)前記コードされるVβドメインが、配列番号38、29、32若しくは35のうちのいずれか1つのCDR1βアミノ酸配列及び/又は配列番号39、30、33若しくは36のうちのいずれか1つのCDR2βアミノ酸配列を含む、並びに/或いは
(ii)前記コードされるVαドメインが、配列番号26、17、20若しくは23のうちのいずれか1つのCDR1αアミノ酸配列及び/又は配列番号27、18、21若しくは24のうちのいずれか1つのCDR2αアミノ酸配列を含む、
請求項1~34のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項36】
前記コードされるTCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインが、
(i)それぞれ、配列番号26~28及び38~40、
(ii)それぞれ、配列番号23、27、28及び38~40、
(iii)それぞれ、配列番号17~19及び29~31、
(iv)それぞれ、配列番号20~22及び32~34、又は
(v)それぞれ、配列番号23~25及び35~37
のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項37】
前記コードされるTCR Vβドメインが、
(i)TRBJ02-03遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列、及び/又は
(ii)TRBV06-05遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列、TRBV07-09遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列若しくはTRBV20-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列
を含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項38】
前記コードされるTCR Vαドメインが、
(i)TRAJ43遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列、及び/又は
(ii)TRAV20-02遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列、TRAV38DV08遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列若しくはTRAV38-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列
を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項39】
(i)前記コードされるTCR Vβドメインが、TRBJ02-03遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、
(ii)前記コードされるTCR Vαドメインが、TRAJ43遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、
請求項38に記載の改変免疫細胞。
【請求項40】
(i)前記コードされるTCR Vβドメインが、TRBV06-05遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、
(ii)前記コードされるTCR Vαドメインが、TRAV20遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、
請求項38に記載の改変免疫細胞。
【請求項41】
(i)前記コードされるTCR Vβドメインが、TRBV07-09遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、
(ii)前記コードされるTCR Vαドメインが、TRAV38DV08遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、
請求項38に記載の改変免疫細胞。
【請求項42】
(i)前記コードされるTCR Vβドメインが、TRBV20-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、
(ii)前記コードされるTCR Vαドメインが、TRAV38-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、
請求項38に記載の改変免疫細胞。
【請求項43】
(i)前記コードされるVβドメインが、配列番号16若しくは8に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号12若しくは4に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(ii)前記コードされるVβドメインが、配列番号13若しくは5に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号9若しくは1に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(iii)前記コードされるVβドメインが、配列番号14若しくは6に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号10若しくは2に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は
(iv)前記コードされるVβドメインが、配列番号15若しくは7に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号11若しくは3に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる
請求項1~42のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項44】
前記コードされる結合性タンパク質が、
(i)TCRα鎖定常ドメイン(Cα)若しくはその断片、及び/又は
(ii)TCRβ鎖定常ドメイン(Cβ)若しくはその断片
をさらに含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項45】
前記コードされるCαが、配列番号41~44のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項44に記載の改変免疫細胞。
【請求項46】
前記コードされるCβが、配列番号45に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項44又は45に記載の改変免疫細胞。
【請求項47】
前記コードされる結合性タンパク質が、
(i)配列番号61若しくは57に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性をを有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号53若しくは49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、これらを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖、
(ii)配列番号58若しくは54に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号50若しくは46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖、
(iii)配列番号59若しくは55に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号51若しくは47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性をを有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖、又は
(iv)配列番号60若しくは56に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性をを有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号52若しくは48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖
を含む、請求項44~46のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項48】
前記コードされる結合性タンパク質が、TCR、キメラ抗原受容体(CAR)又は単鎖TCR(scTCR)である、請求項1~47のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項49】
ヒト免疫系細胞である、請求項1~48のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項50】
T細胞、任意に、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞若しくはγδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、NK-T細胞、樹状細胞又はこれらの任意の組合せである、請求項1~49のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項51】
前記T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞又はこれらの任意の組合せである、請求項50に記載の改変免疫細胞。
【請求項52】
前記結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、前記免疫細胞での発現についてコドン最適化されている、請求項1~51のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項53】
前記結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号62~77のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1~52のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項54】
前記結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、
(i)配列番号77に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号69に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド、
(ii)配列番号74に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号66に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド、
(iii)配列番号75に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号67に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド、又は
(iv)配列番号76に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号68に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド
を含む、請求項53に記載の改変免疫細胞。
【請求項55】
結合性タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、前記Vβコードポリヌクレオチドと前記Vαコードポリヌクレオチドとの間に配置された自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1~54のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項56】
前記コードされる自己切断型ペプチドが、配列番号84~88のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項55に記載の改変免疫細胞。
【請求項57】
自己切断型ペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号89~93のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、請求項55又は56に記載の改変免疫細胞。
【請求項58】
結合性タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、5’末端から3’末端への(TCRβ鎖コードポリヌクレオチド)-(自己切断型ペプチドコードポリヌクレオチド)-(TCRα鎖コードポリヌクレオチド)の構造を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項59】
結合性タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号81又は78~80のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項55~58のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項60】
結合性タンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号81又は78~80のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなるポリヌクレオチドを含む、請求項53に記載の改変免疫細胞。
【請求項61】
(i)CD8共受容体α鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、前記コードされるポリペプチドが、CD8共受容体α鎖であるか、若しくはそれを含む、前記異種ポリヌクレオチド、
(ii)CD8共受容体β鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、前記コードされるポリペプチドが、CD8共受容体β鎖であるか、若しくはそれを含む、前記異種ポリヌクレオチド、又は
(iii)(i)のポリヌクレオチド及び(ii)のポリヌクレオチド
をさらに含み、任意に、宿主細胞が、CD4+ T細胞を含む、請求項1~60のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項62】
(a)CD8共受容体α鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、前記コードされるポリペプチドが、CD8共受容体α鎖であるか、又はそれを含む、前記異種ポリヌクレオチド、
(b)CD8共受容体β鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、前記コードされるポリペプチドが、CD8共受容体β鎖であるか、又はそれを含む、前記異種ポリヌクレオチド、及び
(c)(a)のポリヌクレオチドと(b)のポリヌクレオチドとの間に配置された自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む、請求項61に記載の宿主細胞。
【請求項63】
PD-1遺伝子、LAG3遺伝子、TIM3遺伝子、CTLA4遺伝子、HLA構成要素遺伝子、TCR構成要素遺伝子又はこれらの任意の組合せの染色体遺伝子ノックアウトを含む、請求項1~62のいずれか一項に記載の改変免疫細胞。
【請求項64】
前記染色体遺伝子ノックアウトが、α1マクログロブリン遺伝子、α2マクログロブリン遺伝子、α3マクログロブリン遺伝子、β1ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン遺伝子又はこれらの任意の組合せから選択されるHLA構成要素遺伝子のノックアウトを含む、請求項63に記載の改変免疫細胞。
【請求項65】
前記染色体遺伝子ノックアウトが、TCRα可変領域遺伝子、TCRβ可変領域遺伝子、TCR定常領域遺伝子又はこれらの任意の組合せから選択されるTCR構成要素遺伝子のノックアウトを含む、請求項63又は64に記載の改変免疫細胞。
【請求項66】
結合性タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドであって、前記コードされる結合性タンパク質が、TCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインを含み、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能であり、任意に、前記HLAが、HLA-A0201を含み、
(i)前記コードされるVαドメインが、配列番号28、19、22若しくは25のうちのいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列を含む、
(ii)前記コードされるVβドメインが、配列番号40、31、34若しくは37のうちのいずれか1つに示されるCDR3アミノ酸配列を含む、
(iii)前記コードされるVαドメインが、配列番号26、17、20若しくは23のうちのいずれか1つに示されるCDR1アミノ酸配列を含む、
(iv)前記コードされるVβドメインが、配列番号38、32若しくは35のうちのいずれか1つに示されるCDR1アミノ酸配列を含む、
(v)前記コードされるVαドメインが、配列番号27、18、21若しくは24のうちのいずれか1つに示されるCDR2アミノ酸配列を含む、
(vi)前記コードされるVβドメインが、配列番号39、30、33若しくは36のうちのいずれか1つに示されるCDR2アミノ酸配列を含む、 (vii)前記コードされるVαドメインが、配列番号4、1~3、12若しくは9~11のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(viii)前記コードされるVβドメインが、配列番号8、5~7、16若しくは13~15のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(ix)前記コードされるTCR Vαが、TCRα鎖中に含まれ、前記TCRα鎖が、配列番号53及び46~52のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、
(x)前記コードされるTCR Vβが、TCRβ鎖中に含まれ、前記TCRβ鎖が、配列番号61及び54~60のうちいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は
(xi)(i)~(x)の任意の組合せである、
前記単離ポリヌクレオチド。
【請求項67】
前記ポリヌクレオチドが、宿主細胞での発現についてコドン最適化されており、任意に、前記宿主細胞が、ヒトT細胞、ヒトNK細胞又はヒトNK-T細胞である、請求項66に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項68】
配列番号62~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項66又は67に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項69】
請求項66~68のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項70】
レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである、請求項69に記載のベクター。
【請求項71】
請求項66~68のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含み、前記コードされる結合性タンパク質を発現することが可能な、宿主細胞。
【請求項72】
(i)請求項1~65のいずれか一項に記載の改変免疫細胞、
(ii)請求項66~68のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、
(iii)請求項69若しくは70に記載のベクター、及び/又は
(iv)請求項71に記載の宿主細胞、
並びに薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤
を含む、組成物。
【請求項73】
(i)請求項1~65のいずれか一項に記載の改変免疫細胞、並びに
(ii)TCR Vα及びTCR Vβを含み、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能である結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞であって、任意に、前記HLAが、HLA-A0201を含み、任意に、(i)の改変免疫細胞及び(ii)の免疫細胞が、各々独立に、T細胞、NK細胞及びNK-T細胞から選択される、前記免疫細胞
を含む、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
(ii)における前記免疫細胞の前記結合性タンパク質が、
(a)それぞれ、配列番号101~103及び105~107のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)前記Vαが、配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)前記Vβが、配列番号108に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、
(b)それぞれ、配列番号109~110及び113~115のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)前記Vαが、配列番号112に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)前記Vβが、配列番号116に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、或いは
(c)それぞれ、配列番号117~119及び121~123のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)前記Vαが、配列番号120に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)前記Vβが、配列番号124に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはこれからなる、
請求項73に記載の組成物。
【請求項75】
WT-1の発現と関連する疾患又は障害を有する対象を処置するための方法であって、有効量の、(i)請求項1~65のいずれか一項に記載の改変免疫細胞、(ii)請求項66~68のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、(iii)請求項69若しくは70に記載のベクター、(iv)請求項71に記載の宿主細胞、及び/又は(v)請求項72~74のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、前記方法。
【請求項76】
TCR Vα及びTCR Vβを含み、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能である結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞を受けたことがあるか、それを受けているか、又はそれを受ける対象に、請求項1~65のいずれか一項に記載の改変免疫細胞を投与するステップを含み、任意に、前記HLAが、HLA-A0201を含み、任意に、前記改変免疫細胞及び前記免疫細胞が、各々独立に、T細胞、NK細胞及びNK-T細胞から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能な前記結合性タンパク質が、
(a)それぞれ、配列番号101~103及び105~107のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)前記Vαが、配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)前記Vβが、配列番号108に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、
(b)それぞれ、配列番号109~110及び113~115のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)前記Vαが、配列番号112に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)前記Vβが、配列番号116に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、或いは
(c)それぞれ、配列番号117~119及び121~123のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)前記Vαが、配列番号120に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)前記Vβが、配列番号124に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、
請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記疾患又は障害が、血液悪性腫瘍又は固形がんである、請求項75~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(難治性AML及び再発性AMLを含み、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病(例えば、好酸球増多症を伴う、又はこれを伴わない)、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核芽球性白血病を含む、AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄球性白血病、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(難治性MM及び再発性MMを含むMM)から選択される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記固形がんが、胆管がん、膀胱がん、骨軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、乳癌腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、デスモイド腫瘍、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形性膠芽腫、膠芽腫、黒色腫、びまん性腹膜中皮腫、悪性胸膜中皮腫、神経膠腫、星状細胞腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝がん、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん(例えば、上皮卵巣がん、卵巣癌)、卵管がん、子宮内膜癌、膵がん、膵管腺癌、原発星状細胞腫瘍、原発甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞癌腫、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、精巣生殖細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、子宮癌肉腫又は子宮がんから選択される、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記改変免疫細胞が、前記異種ポリヌクレオチドを含むようにエクスビボで改変される、請求項75~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記改変免疫細胞が、前記対象に対して、同種、同系又は自家である、請求項75~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記改変免疫細胞が、造血前駆細胞又はヒト免疫系細胞である、請求項75~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記免疫系細胞が、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞又はこれらの任意の組合せである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はこれらの任意の組合せである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記改変免疫細胞の複数回用量を前記対象に投与するステップを含む、請求項75~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記複数回用量が、約2~約4週間の投与間隔で投与される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記改変免疫細胞が、約10個の細胞/kg~約1011個の細胞/kgの用量で前記対象に投与される、請求項75~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
サイトカインを前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項75~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記サイトカインが、IL-2、IL-15、IL-21又はこれらの任意の組合せである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記サイトカインが、IL-2であり、前記改変免疫細胞と共に同時に又は逐次的に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
、前記対象に、サイトカイン投与前に少なくとも3回又は4回、改変免疫細胞が投与されることを条件として、前記サイトカインが逐次的に投与される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記サイトカインが、IL-2であり、皮下投与される、請求項89~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記対象が、免疫抑制治療を受けている、請求項75~93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記免疫抑制治療が、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量のミコフェノール酸プロドラッグ又はこれらの任意の組合せから選択される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記対象が、非骨髄破壊的造血細胞移植又は骨髄破壊的造血細胞移植を受けたことがある、請求項75~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記対象に、前記非骨髄破壊的造血細胞移植の少なくとも3カ月後に前記改変免疫細胞が投与される、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記対象に、前記骨髄破壊的造血細胞移植の少なくとも2カ月後に前記改変免疫細胞が投与される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記対象が、AMLの治療を以前に受けたことがある、請求項75~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
WT-1の発現と関連する疾患又は障害の処置における使用のための、
(i)請求項1~65のいずれか一項に記載の改変免疫細胞、
(ii)請求項66~68のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、
(iii)請求項69若しくは70に記載のベクター、及び/又は
(iv)請求項71に記載の宿主細胞
を含む組成物。
【請求項101】
WT-1の発現と関連する疾患又は障害の処置のための医薬の製造における使用のための、
(i)請求項1~65のいずれか一項に記載の改変免疫細胞、
(ii)請求項66~68のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、
(iii)請求項69若しくは70に記載のベクター、及び/又は
(iv)請求項71に記載の宿主細胞
を含む組成物。
【請求項102】
前記疾患又は障害が、血液悪性腫瘍又は固形がんである、請求項100又は101に記載の使用のための組成物。
【請求項103】
前記血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(難治性AML及び再発性AMLを含み、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病(例えば、好酸球増多症を伴う、又はこれを伴わない)、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核芽球性白血病を含む、AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄球性白血病、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(難治性MM及び再発性MMを含むMM)から選択される、請求項102に記載の使用のための組成物。
【請求項104】
前記固形がんが、胆管がん、膀胱がん、骨軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、乳癌腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、デスモイド腫瘍、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形性膠芽腫、膠芽腫、黒色腫、びまん性腹膜中皮腫、悪性胸膜中皮腫、神経膠腫、星状細胞腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝がん、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん(例えば、上皮卵巣がん、卵巣癌)、卵管がん、子宮内膜癌、膵がん、膵管腺癌、原発星状細胞腫瘍、原発甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞癌腫、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、精巣生殖細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、子宮癌肉腫又は子宮がんから選択される、請求項102に記載の使用のための組成物。
【請求項105】
T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含む結合性タンパク質であって、
前記Vαドメインが、
(i)配列番号28、19、22又は25若しくは28のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)又はその変異体、
(ii)配列番号26、17、20若しくは23のうちのいずれか1つのCDR1アミノ酸配列(CDR1α)、
(iii)配列番号27、18、21若しくは24のうちのいずれか1つのCDR2アミノ酸配列(CDR2α)、
(iv)配列番号1~4又は9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又は
(v)(i)~(iv)の任意の組合せ
を含み、
前記Vβドメインが、
(vi)配列番号40、31、34若しくは37のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)又はその変異体、
(vii)配列番号38、29、32又は35のうちのいずれか1つのCDR1アミノ酸配列(CDR1β)、
(viii)配列番号39、30、33又は36のうちのいずれか1つのCDR2アミノ酸配列(CDR2β)、
(ix)配列番号5~8又は13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列、又は
(x)(vi)~(x)の任意の組合せ
を含み、
前記結合性タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能であり、任意に、前記HLAが、HLA-A0201を含む、
前記結合性タンパク質。
【請求項106】
(1)TCRα鎖定常ドメイン(Cα)若しくはその断片、及び/又は
(2)TCRβ鎖定常ドメイン(Cβ)若しくはその断片
をさらに含む、請求項105に記載の結合性タンパク質。
【請求項107】
前記Cαが、配列番号41~44のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項106に記載の結合性タンパク質。
【請求項108】
前記Cβが、配列番号45のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、請求項106又は107に記載の結合性タンパク質。
【請求項109】
請求項105~108のいずれか一項に記載の結合性タンパク質をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項110】
宿主細胞での発現についてコドン最適化されている、請求項109に記載のポリヌクレオチド。
【請求項111】
請求項109~110のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む改変免疫細胞であって、前記ポリヌクレオチドが、前記免疫細胞に対して異種である、前記改変免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願と関連する配列表は、印刷物の代わりに、テキストフォーマットで提供され、参照により本明細書へ組み込む。配列表を含有するテキストファイルの名称は、360056_473WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは、109KBであり、2020年8月17日に作成され、EFS-Webを介して、電子的に提出されている。
【背景技術】
【0002】
T細胞受容体(TCR)遺伝子治療は、腫瘍抗原特異的T細胞を単離し、特徴付け、拡大するのに要求される膨大な時間及び労力などの、従来のT細胞養子免疫療法と関連する障害を克服するためにデザインされた、新興の処置法である(Schmittら、Hum.Gene Ther.20:1240、2009)。別の難関は、T細胞免疫療法によりターゲティングされる、同定された腫瘍抗原の大半は、過剰発現された自己タンパク質であるので、これらの抗原に特異的な高アフィニティーT細胞は、一般に、胸腺選択時に消失させられ、末梢レパートリー内において希少であるか、又は存在しないことである。
【0003】
TCR遺伝子治療における使用が意図されるTCRのアフィニティーを増強するための戦略が考えられている(例えば、Udyavarら、J.Immunol.182:4439、2009;Zhaoら、J.Immunol.179:5845、2007;Richman及びKranz、Biomol.Eng.24:361、2007)。
【0004】
随伴する免疫毒性を最小限としながら、最大の臨床効果を達成する、ターゲティングされたT細胞療法のための前提条件は、例えば、悪性細胞コンパートメント内の高発現及びこれによる提示を伴うが、正常組織内の著明な発現を伴わない疾患関連抗原を同定することを伴う。例えば、いくつかの急性骨髄性白血病(AML)関連抗原について記載されており、ウィルムス腫瘍タンパク質1(WT-1)は、AML患者の大部分の白血病幹細胞(LSC)コンパートメント内において、生理学的造血幹細胞(HSC)内より著明に高度のレベルにおいて発現されることが示されている。WT-1は、養子T細胞移入及びペプチドワクチン接種のいずれを伴う臨床試験においてもターゲティングされている(例えば、米国特許第7,342,092号;同第7,608,685号;同第7,622,119号を参照)。加えて、形態的寛解下にあるAMLを伴う患者における転写物レベルの上昇が、明白な臨床的再発を予測したため、WT-1の発現は、微小残存疾患のマーカーであることが報告されている(Inoueら、Blood、84:3071、1994;Ogawaら、Blood、101:1698、2003)。
【0005】
WT-1は、細胞内(通例、核内)タンパク質であるので、WT-1をターゲティングする免疫療法は、MHCクラスI分子により、細胞表面において提示されたペプチドを認識するWT-1特異的CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)による応答の発生を目的とする細胞法を使用してきた。CTL応答を誘導するために、細胞内タンパク質が、通例、プロテアソーム又はエンドソーム/リソソームにより分解され、結果として得られるペプチド断片は、MHCクラスI又はクラスII分子に結合する。これらのペプチド-MHC複合体は、細胞表面上に提示され、ここで、ペプチド-MHC-TCR間相互作用を介して、T細胞の結合を受ける。WT-1タンパク質に由来するペプチドは、理論的に、腫瘍細胞を死滅させることが可能な、ヒト白血球抗原(HLA)拘束細胞傷害性CD8T細胞を誘導するように、ヒトにおけるワクチン中において使用されうる。しかし、WT-1は、自己タンパク質であるため、免疫化は、TCRのアフィニティーが小さいT細胞による応答を誘発するにとどまる可能性がある。加えて、WT-1に対する抗体は、造血悪性腫瘍及び充実性腫瘍を伴う患者において検出可能であり、これは、WT-1が、高度に免疫原性の抗原でありうることも示す(Gaigerら、Clin.Cancer Res.7(増刊3号):761、2001)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,342,092号明細書
【特許文献2】米国特許第7,608,685号明細書
【特許文献3】米国特許第7,622,119号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Schmittら、Hum.Gene Ther.20:1240、2009
【非特許文献2】Udyavarら、J.Immunol.182:4439、2009
【非特許文献3】Zhaoら、J.Immunol.179:5845、2007
【非特許文献4】Richman及びKranz、Biomol.Eng.24:361、2007
【非特許文献5】Inoueら、Blood、84:3071、1994
【非特許文献6】Ogawaら、Blood、101:1698、2003
【非特許文献7】Gaigerら、Clin.Cancer Res.7(増刊3号):761、2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
白血病及び腫瘍など、多様ながんに対して方向付けられた、高度に特異的なWT-1ターゲティングされた免疫療法としての使用のための代替的遺伝子療法が必要とされていることが明らかである。本明細書において開示される実施形態は、この必要に取り組み、他の関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
ある特定の実施形態に従い、本開示は、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能な結合性タンパク質であって、(a)配列番号19、22、25若しくは28のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)を含むT細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン又はその変異体及び、配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を任意に含むか若しくはそれからなる、TCRβ鎖可変(Vβ)ドメイン;(b)配列番号31、34、37若しくは40のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)を含むTCR Vβドメイン若しくはその変異体及び、配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を任意に含むか若しくはそれからなる、TCR Vαドメイン、又は(c)(a)のTCR Vαドメイン及び(b)のTCR Vβドメインを含む、結合性タンパク質を提示する。
【0010】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能である(例えば、結合性タンパク質を含む免疫細胞(例えば、T細胞、NK-T細胞又はNK細胞など)は、配列番号94:HLAに対する、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のIFNγ産生pEC50を有する。)。
【0011】
ある特定の実施形態において、HLAは、HLA-A0201を含む。
【0012】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、ヒト結合性タンパク質、ヒト化結合性タンパク質又はキメラ結合性タンパク質である。
【0013】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、結合性タンパク質は、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能であり、この場合、結合性タンパク質は、TCR Vβドメイン及びTCR Vαドメインを含み、(i)Vβドメインは、配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなる、及び/又は(ii)Vαドメインは、配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる。
【0014】
ある特定の実施形態において、コードされる結合性タンパク質は、TCR、CAR又はscTCRである。
【0015】
本明細書においてまた、本明細書において開示される結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む改変免疫細胞も提示される。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、T細胞、NK細胞、NK-T細胞又はこれらの任意の組合せを含む。ある特定の実施形態において、本明細書において開示される結合性タンパク質を発現する免疫細胞は、配列番号94に従うペプチド(例えば、ペプチド:HLA複合体内に含まれる)の存在下で活性化される。ある特定の実施形態において、本明細書において開示される結合性タンパク質を発現する免疫細胞は、配列番号94:HLA複合体を発現する標的細胞を死滅させることが可能である。
【0016】
また、本開示に従う結合性タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドも提供される。ある特定の実施形態において、コードされる結合性タンパク質は、(i)配列番号19、22、25、28、31、34、37若しくは40のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号17、20、23、26、29、32、35若しくは38のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号18、21、24、27、30、33、36若しくは39のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列;(v)配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;(vi)配列番号46~53のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;(vii)配列番号54~61のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列又は(viii)(i)~(vii)の任意の組合せを含む。
【0017】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号62~81のうちのいずれか1つに示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも75%(例えば、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するポリヌクレオチドを含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、免疫細胞(例えば、ヒトT細胞)などの宿主細胞内の発現についてコドン最適化されている。
【0018】
本明細書において記載されるポリヌクレオチドを含有するベクターのほか、本明細書において開示される改変細胞、結合性タンパク質、ポリヌクレオチド及び/又はベクターを含む組成物もまた提供される。
【0019】
また、WT-1の発現又は活性と関連する疾患又は障害を有する対象を処置するための方法であって、有効量の、本明細書において開示される改変免疫細胞、結合性タンパク質、ポリヌクレオチド又はベクターを、対象へと投与するステップを含む方法も提供される。
【0020】
ある特定の実施形態において、疾患又は障害は、血液悪性腫瘍又は固形がんである。例えば、処置される血液悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(難治性AML及び再発性AMLを含み、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病(例えば、好酸球増多症を伴う、又はこれを伴わない)、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核芽球性白血病を含むAML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄球性白血病、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(難治性MM及び再発性MMを含むMM)でありうる。処置される例示的固形がんは、胆管がん、膀胱がん、骨軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、乳癌腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、デスモイド腫瘍、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形性膠芽腫、膠芽腫、黒色腫、びまん性腹膜中皮腫、悪性胸膜中皮腫、神経膠腫、星状細胞腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝がん、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん(例えば、上皮卵巣がん、卵巣癌)、卵管がん、子宮内膜癌、膵がん、膵管腺癌、原発星状細胞腫瘍、原発甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞癌腫、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、精巣生殖細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、子宮癌肉腫又は子宮がんでありうる。
【0021】
以下の「発明を実施するための形態」及び添付の図面を参照すると、本開示の、これらの態様及び実施形態並びに他の態様及び実施形態がさらに理解される。本明細書において言及される、かつ/又は出願データシートにおいて列挙されている、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物の全ては、各々が、個別に組み込まれた場合と同様に、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込む。本開示の態様及び実施形態は、必要な場合、多様な特許、出願及び刊行物の概念を利用して、なおさらなる実施形態をもたらすように改変されうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】WT-1特異的T細胞系の同定を示す図である。略述すると、4例の健常ドナーから得られたWT-1特異的ポリクローナルT細胞系(CD8+)を、ペプチドをパルスされた自家樹状細胞と共に培養し、CD8非依存性(CD8i)WT-1ペプチド/HLA-A四量体で染色し、高四量体染色細胞について分取した。24のWT-1特異的クローン型を同定した。シーケンシングにより、TCRレパートリー解析を実施した。各クローン型の、非分取集団と対比したエンリッチメント倍数(y軸)及び各クローン型によるCD3の表面発現(x軸)を示す。
図2A】例示的なWT-1特異的結合性タンパク質の、形質導入された宿主細胞内の発現を示す図である。図1に示される24のクローン型に由来する、10のWT-1特異的TCRを使用して、TCRα/TCRβ欠損J76 Jurkat T細胞へと形質導入した。形質導入された細胞(明るいグレーで示される)による、WT-1:HLA-A四量体への結合及びCD3の発現を、Schmittら(Nat.Biotechnol.35:1188、2017)により記載されている、配列番号82に従うα鎖及び配列番号83に従うβ鎖を有するWT-1特異的参照TCR(暗いグレーで示される)により形質導入された細胞と比較した。
図2B】例示的なWT-1特異的結合性タンパク質の、形質導入された宿主細胞内の発現を示す図である。図1に示される24のクローン型に由来する、10のWT-1特異的TCRを使用して、TCRα/TCRβ欠損J76 Jurkat T細胞へと形質導入した。形質導入された細胞(明るいグレーで示される)による、WT-1:HLA-A四量体への結合及びCD3の発現を、Schmittら(Nat.Biotechnol.35:1188、2017)により記載されている、配列番号82に従うα鎖及び配列番号83に従うβ鎖を有するWT-1特異的参照TCR(暗いグレーで示される)により形質導入された細胞と比較した。
図2C】例示的なWT-1特異的結合性タンパク質の、形質導入された宿主細胞内の発現を示す図である。図1に示される24のクローン型に由来する、10のWT-1特異的TCRを使用して、TCRα/TCRβ欠損J76 Jurkat T細胞へと形質導入した。形質導入された細胞(明るいグレーで示される)による、WT-1:HLA-A四量体への結合及びCD3の発現を、Schmittら(Nat.Biotechnol.35:1188、2017)により記載されている、配列番号82に従うα鎖及び配列番号83に従うβ鎖を有するWT-1特異的参照TCR(暗いグレーで示される)により形質導入された細胞と比較した。
図3A】本開示の結合性タンパク質が、形質導入された宿主細胞内において機能的であることを示す図である。(A)Nur77-dtTomatoレポーター(ヒトT細胞内の抗原特異的シグナル伝達を報告する;Ahsouri及びWeiss、J Immunol 198(2):657~668 (2017)を参照)を発現するJurkat細胞へと、WT-1特異的TCRを形質導入し、WT-1ペプチドをロードされた、表示の濃度のAPCと共に、24時間にわたりインキュベートした。
図3B】本開示の結合性タンパク質が、形質導入された宿主細胞内において機能的であることを示す図である。(B)Nur77活性化ペプチドに対する、表示のTCRによるEC50値。
図4A】本開示の例示的な結合性タンパク質についての、さらなる機能的特徴付けを示す図である。(A)表示のWT-1特異的TCRを発現するように形質導入されたCD8+ T細胞による、ペプチド/MHC四量体への結合。
図4B】本開示の例示的な結合性タンパク質についての、さらなる機能的特徴付けを示す図である。(B)滴定濃度のペプチドをパルスされたT2標的細胞との、4時間にわたる共培養において拡大された抗原特異的CD8+ T細胞によるIFNγの産生(フローサイトメトリーにより決定される)である。IFN-γ+ T細胞の百分率が示される。
図4C】本開示の例示的な結合性タンパク質についての、さらなる機能的特徴付けを示す図である。(C)線形回帰により、IFNγ産生細胞の百分率を、用量反応曲線へと当てはめることにより各TCRについて、IFNγペプチドに対するEC50を決定した。
図5A】本開示の例示的な結合性タンパク質(TCR DL6又はDL10)を発現するT細胞による腫瘍細胞の、参照TCR(配列番号82に従うα鎖;配列番号83に従うβ鎖)を発現するT細胞による溶解と比較した溶解を示す図である。(A)HLA-A2形質導入腫瘍細胞系であるMDA-MB-468細胞の溶解。(A)及び(B)の両方は、標的細胞に、51Crをロードし、腫瘍細胞標的に対する漸減用量のエフェクターT細胞(E:T;x軸)に応答するCr放出を測定することにより、TCR形質導入T細胞媒介性殺滅を計算した、4時間アッセイからの結果を示す。
図5B】本開示の例示的な結合性タンパク質(TCR DL6又はDL10)を発現するT細胞による腫瘍細胞の、参照TCR(配列番号82に従うα鎖;配列番号83に従うβ鎖)を発現するT細胞による溶解と比較した溶解を示す図である。(B)年々のHLA-A2+腫瘍細胞系であるPanc-1細胞の溶解。(A)及び(B)の両方は、標的細胞に、51Crをロードし、腫瘍細胞標的に対する漸減用量のエフェクターT細胞(E:T;x軸)に応答するCr放出を測定することにより、TCR形質導入T細胞媒介性殺滅を計算した、4時間アッセイからの結果を示す。
図6】ペプチドをパルスされたT2標的細胞の存在下における参照TCR(配列番号82に従うα鎖;配列番号83に従うβ鎖)と比較した、本開示の例示的なTCR DL10によるIFN-γの産生を示す図である。
図7】本開示の例示的なTCR DL10を発現するT細胞の存在下における、Panc-1腫瘍細胞の増殖の、腫瘍細胞単独又は参照TCR(配列番号82に従うα鎖;配列番号83に従うβ鎖)を発現するT細胞の存在下と比較した低減を示す図である。細胞の増殖/生存を、IncuCyteアッセイにおいて、7日間にわたりモニタリングした。誤差バーは、平均値の標準誤差を指し示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ある特定の態様において、本開示は、主要組織適合性複合体(MHC)(例えば、ヒト白血球抗原(HLA))と会合したWT-1ペプチド抗原に対する特異性を有する結合性タンパク質(例えば、TCR、CAR、scTCR)、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド、結合性タンパク質をコードしかつ/又はこれらを発現させるベクター、改変免疫細胞並びに関連する組成物を提示する。本明細書において開示されるWT-1特異的組成物は、例えば、がんを処置する養子免疫療法において有用である。背景として述べると、T細胞ベースの免疫療法のための腫瘍標的の大半は、腫瘍が、かつて正常であった組織から生じるので、自己抗原である。例えば、このような腫瘍関連抗原(TAA)は、がん細胞内、高レベルにおいて発現されうるが、他の細胞内において発現されないか、又は発現が最小限でありうる。胸腺内におけるT細胞の発生時に、自己抗原への結合が弱いT細胞は、胸腺内において存続することが可能とされ、これにより、外来侵入物に対する特異性を増大させるように、さらなる発生を経る場合があるのに対し、自己抗原に強力に結合するT細胞は、所望されない自己免疫応答を惹起するので、免疫系により消失させられる。よって、T細胞は、抗原に結合して、同時に、自己免疫応答を防止しながら(すなわち、自己抗原の認識)、外来侵入物に対して応答する(すなわち、非自己抗原の認識)ように免疫系を準備するそれらの相対的能力により分取される。この寛容機構は、腫瘍(自己)抗原を、高アフィニティーにより認識しうる、天然に存在するT細胞を制限するので、腫瘍細胞を効果的に消失させるT細胞を消失させる。結果として、腫瘍抗原に特異的な高アフィニティーTCRを有するT細胞を単離することは、このような細胞が、免疫系により、本質的に消失させられるため、困難である。
【0024】
本開示の利点は、WT-1ペプチドに特異的な結合性タンパク質を提示することであり、この場合、結合性タンパク質は、WT-1(配列番号94):HLA(例えば、HLA-A0201)複合体に結合することが可能である。ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、CD8に非依存的なWT-1への結合又はCD8の非存在下におけるWT-1への結合が可能である内因性TCRと比較して、CD3タンパク質とより効率的に会合することが可能である結合性タンパク質を発現してサイトカインを産生するように、宿主細胞に対するシグナルを誘発することが可能であるか、又はこれらの任意の組合せである。ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能であり、そして/又は結合性タンパク質は、配列番号82のα鎖アミノ酸配列及び配列番号83のβ鎖アミノ酸配列を含むTCRと比較して、より高値のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である。
【0025】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載される組成物及び方法は、WT-1の発現(例えば、正常細胞内又は無病細胞内において検出可能なWT-1の発現レベルより高レベル、統計学的に有意な形において検出可能なWT-1の発現)と関連する疾患及び状態の処置のための治療的有用性を有する。このような疾患は、血液悪性腫瘍及び固形がんなど、多様な疾患及び障害を含む。本明細書において、これらの組成物及び方法並びに関連する使用についての非限定例が記載されており、WT-1ペプチド(例えば、RMFPNAPYL;配列番号94)に特異的な、異種結合性タンパク質をコードする及び/又は発現するT細胞など、組換え免疫細胞の使用などによる、WT-1抗原特異的T細胞応答の、インビトロにおける刺激、エクスビボにおける刺激及びインビボにおける刺激を含む。
【0026】
本開示をより詳細に明示する前に、本明細書において使用される、ある特定の用語の定義を提示することが、その理解の一助となりうる。さらなる定義は、本開示の全体を通して明示される。
【0027】
本記載において、そうでないことが指し示されない限りにおいて、任意の濃度範囲、百分率の範囲、比の範囲又は整数の範囲は、列挙された範囲内の任意の整数の値、適切な場合は、その分数(整数の10分の1及び100分の1など)を含むと理解されるものとする。また、そうでないことが指し示されない限りにおいて、ポリマーのサブユニット、サイズ又は厚さなど、任意の物理的特徴に関して、本明細書において列挙される任意の数の範囲も、列挙された範囲内の任意の整数を含むと理解されたい。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書において使用される「約」という用語は、表示の範囲、値若しくは構造に対する±20%を意味する。本明細書において使用される「ある(a)」及び「ある(an)」という用語は、列挙された構成要素のうちの「1つ以上」を指すことを理解されたい。選言詞(例えば、「又は」)の使用は、代替物のうちの一方、両方又はこれらの任意の組合せを意味するものと理解されたい。本明細書において使用される「含む(include)」、「有する」、及び「含む(comprise)」という用語は、同義に使用され、これらの用語及び変化形は、非限定的であるものとみなされることが意図される。
【0028】
加えて、本明細書において記載される構造及び置換基の多様な組合せに由来する、個々の化合物又は化合物の群は、各化合物又は化合物の群が、個別に示される場合と同じ程度に、本出願により開示されることを理解されたい。したがって、特定の構造又は特定の置換基の選択は、本開示の範囲内にある。
【0029】
「~から本質的になること」という用語は、「~を含むこと」と同義ではなく、指定された材料若しくはステップ又は特許請求される発明の基本特徴に、材料的に影響を及ぼさない、材料若しくはステップを指す。例えば、タンパク質ドメイン、領域又はモジュール(例えば、結合性ドメイン、ヒンジ領域、リンカーモジュール)又はタンパク質(1つ以上のドメイン、領域又はモジュールを有しうる)は、ドメイン、領域、モジュール又はタンパク質のアミノ酸配列が、組合せにおいて、ドメイン、領域、モジュール又はタンパク質の長さのうちの20%以下(例えば、15%以下、10%、8%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%)に寄与し、ドメイン(複数可)、領域(複数可)、モジュール(複数可)又はタンパク質の活性(例えば、結合性タンパク質の標的結合アフィニティー)に実質的に影響を及ぼさない(すなわち、活性の低減が40%以下、30%、25%、20%、15%、10%、5%又は1%であるなど、活性を、50%を超えて低減しない)、伸長、欠失、突然変異又はこれらの組合せ(例えば、アミノ末端又はカルボキシ末端又はドメイン間におけるアミノ酸)を含む場合に、特定のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0030】
本明細書において使用される「宿主」という用語は、目的のポリペプチド(例えば、アフィニティーが増強された抗WT-1 TCR)を産生するように、異種核酸分子又は外因性核酸分子による遺伝子改変のためにターゲティングされる細胞(例えば、T細胞)又は微生物を指す。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、任意に、異種タンパク質又は外因性タンパク質の生合成と関連するか又は関連しない、所望の特性(例えば、検出用マーカーの組入れ;内因性TCRの欠失、変更又は切断;共刺激性因子の発現の増大)を付与する、他の遺伝子改変を、既に保有する場合もあり、これらを含むように改変される場合もある。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、WT-1抗原ペプチドに特異的なTCRα鎖をコードする異種核酸分子又は外因性核酸分子により形質導入された、ヒト造血前駆細胞である。
【0031】
本明細書において使用される「免疫系細胞」とは、2つの主要な系統である、骨髄前駆細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、巨核球及び顆粒球などの骨髄性細胞を発生させる)及びリンパ系前駆細胞(T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ系細胞を発生させる)を発生させる、骨髄内の造血幹細胞に由来する、免疫系の任意の細胞を意味する。例示的な免疫系細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー細胞及び樹状細胞を含む。マクロファージ及び樹状細胞は、APCの表面上の主要組織適合性複合体(MHC)受容体が、T細胞の表面上のTCRと相互作用する場合に、T細胞を活性化させうる特化細胞である、「抗原提示細胞」又は「APC」と称されうる。ある特定の実施形態において、免疫系細胞は、ヒト免疫系細胞である。
【0032】
本明細書において使用される「造血前駆細胞」とは、造血幹細胞又は胚組織に由来しうる細胞であり、成熟細胞型(例えば、免疫系細胞)へのさらなる分化が可能である。例示的な造血前駆細胞は、CD24Lo LinCD117表現型を伴う細胞又は胸腺内に見出される細胞(胸腺前駆細胞と称される)を含む。
【0033】
「主要組織適合性複合体」(MHC)とは、ペプチド抗原を、細胞表面へと送達する糖タンパク質を指す。MHCクラスI分子は、膜貫通型α鎖を有する(3つのαドメインを伴う)ヘテロ二量体であり、β2ミクログロブリンと、非共有結合的に会合している。MHCクラスII分子は、それらの両方が膜を貫通する、2つの膜貫通糖タンパク質である、α及びβから構成される。各鎖は、2つのドメインを有する。MHCクラスI分子は、細胞質ゾルに由来するペプチドを、細胞表面へと送達し、この場合、ペプチド:MHC複合体は、CD8T細胞により認識される。MHCクラスII分子は、血管系に由来するペプチドを、細胞表面へと送達し、この場合、ペプチド:MHC複合体は、CD4T細胞により認識される。ヒトMHCは、ヒト白血球抗原(HLA)と称される。
【0034】
「T細胞」とは、胸腺内において成熟し、T細胞受容体(TCR)を産生する免疫系細胞である。T細胞は、ナイーブT細胞(抗原へと曝露されておらず;TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127及びCD45RAの発現が増大しており、CD45ROの発現が低下している)、メモリーT細胞(T)(抗原経験があり、長寿命である)及びエフェクター細胞(抗原経験があり、細胞傷害性である)でありうる。Tは、セントラルメモリーT細胞(TCM:ナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO及びCD95の発現が増大し、CD54RAの発現が低下している)、幹細胞様メモリーT細胞及びエフェクターメモリーT細胞(TEM:ナイーブT細胞又はTCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28、CD45RAの発現が低下し、CD127の発現が増大している)のサブセットへとさらに分けられうる。エフェクターT細胞(T)とは、TCMと比較して、CD62L、CCR7、CD28の発現が低下し、グランザイム及びパーフォリンについて陽性である、抗原経験があるCD8細胞傷害性Tリンパ球を指す。
【0035】
「T細胞受容体」(TCR)とは、MHC受容体に結合した抗原ペプチドに特異的に結合することが可能な、免疫グロブリンスーパーファミリーメンバー(可変結合性ドメイン、定常ドメイン、膜貫通領域及び短い細胞質テールを有する;例えば、Janewayら、「Immunobiology:The Immune System in Health and Disease」、第3版、Current Biology Publications、4~33頁、1997を参照)を指す。TCRは、細胞の表面上に見出される場合もあり、可溶性形態において見出される場合もあり、一般に、α鎖及びβ鎖(それぞれ、TCRα及びTCRβとしてもまた公知である)又はγ鎖及びδ鎖(それぞれ、TCRγ及びTCRδとしてもまた公知である)を有するヘテロ二量体から構成される。他の免疫グロブリン(例えば、抗体)と同様に、TCR鎖の細胞外部分(例えば、α鎖、β鎖)は、N末端における、可変ドメイン(例えば、α鎖可変ドメイン又はVα、β鎖可変ドメイン又はVβ;典型的に、Kabatによる番号付けに基づく、アミノ酸1~116;Kabatら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、US Dept.Health and Human Services、Public Health Service National Institutes of Health、1991、第5版)及び細胞膜に隣接する、1つの定常ドメイン(例えば、α鎖定常ドメイン又はCα、典型的に、Kabatに基づく、アミノ酸117~259、β鎖定常ドメイン又はCβ、典型的に、Kabatに基づく、アミノ酸117~295)である、2つの免疫グロブリンドメインを含有する。これもまた、他の免疫グロブリンと同様に、可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)により隔てられた相補性決定領域(CDR)を含有する(例えば、Joresら、Proc.Nat’l Acad.Sci.U.S.A.87:9138、1990;Chothiaら、EMBO J.7:3745、1988;を参照。また、Lefrancら、Dev.Comp.Immunol.27:55、2003も参照)。ある特定の実施形態において、TCRは、T細胞(又はTリンパ球)の表面上に見出され、CD3複合体と会合する。本開示において使用されるTCRの供給源は、ヒト、マウス、ラット、ラビット又は他の哺乳動物など、多様な動物種に由来しうる。
【0036】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、免疫グロブリンスーパーファミリー結合性タンパク質(例えば、TCR)の、抗原への結合に関与する、免疫グロブリンスーパーファミリー結合性タンパク質のドメイン(例えば、TCRα鎖又はTCRβ鎖(又はγδTCRについてのγ鎖及びδ鎖))を指す。TCRの場合、α鎖及びβ鎖の可変ドメイン(それぞれ、Vα及びVβ)は、一般に、各ドメインが、4つの保存的フレームワーク領域(FR)及び3つのCDRを含む、同様の構造を有する。Vαドメインは、2つの個別のDNAセグメントである、V(variable)遺伝子セグメント及びJ(joining)遺伝子セグメント(V-J)によりコードされ、Vβドメインは、3つの個別のDNAセグメントである、V(variable)遺伝子セグメント、D(diversity)遺伝子セグメント及びJ(joining)遺伝子セグメント(V-D-J)によりコードされる。単一のVαドメイン若しくはVβドメイン又はこれらの機能的断片若しくは機能的部分が、抗原結合特異性を付与するのに十分な場合もある。さらに、抗原に結合するTCRに由来するVαドメイン又はVβドメインを使用して、相補性Vαドメイン又は相補性Vβドメインそれぞれのライブラリーをスクリーニングして、特定の抗原に結合するTCRを単離することもできる。
【0037】
「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、「超可変領域」又は「HVR」と同義であり、当技術分野において、免疫グロブリン(例えば、TCR)可変領域内において、抗原特異性及び/又は結合アフィニティーを付与し、フレームワーク領域により、互いから隔てられたアミノ酸の配列を指すことが公知である。一般に、各TCRα鎖可変領域内において、3つのCDR(αCDR1、αCDR2、αCDR3)が存在し、各TCRβ鎖可変領域内において、3つのCDR(βCDR1、βCDR2、βCDR3)が存在する。TCR内において、CDR3は、プロセシングされた抗原の認識の一因となる、主要なCDRであると考えられる。典型的に、CDR1及びCDR2は、主に、MHCと相互作用する。
【0038】
CDR1及びCDR2が、TCR可変領域コード配列のV(variable)遺伝子セグメント内においてコードされるのに対し、CDR3は、Vαについて、V(variable)セグメント及びJ(joinig)セグメントにわたる領域又はVβについて、V(variable)セグメント、D(diversity)セグメント及びJ(joinig)セグメントにわたる領域によりコードされる。したがって、Vα又はVβのV(variable)遺伝子セグメントの識別が既知である場合、それらの対応するCDR1及びCDR2の配列は推定されうる。CDR1及びCDR2と比較して、CDR3は、典型的に、組換え工程時における、ヌクレオチドの付加及び喪失のために、著明により多様である。
【0039】
番号付けスキーム(例えば、IMGT、Kabat、Chothia、増強型Chothia、Contact及びAho)に照らして、TCR可変ドメイン配列をアライメントし、例えば、ANARCIソフトウェアツール(2016、Bioinformatics 15:298~300)を使用して、同等な残基位置をアノテーションし、異なる分子を比較することを可能とすることができる。番号付けスキームは、TCR可変ドメイン内のフレームワーク領域及びCDRの標準化画定をもたらす。したがって、TCR Vα領域若しくはTCR Vβ領域又はTCR Vαドメイン若しくはTCR Vβドメインに由来するCDRは、特定の番号付けスキームに従う、特定の配列を有することが可能であり、異なる番号付けスキームに従う、わずかに短い配列、延長された配列又はシフトされた(例えば、部分的に重複する)配列を有しうることが理解される。本明細書において開示される、ある特定の実施形態において、CDRは、IMGT番号付けスキームを使用して、例えば、IMGT V-Quest(imgt.org/IMGTindex/V-QUEST.php)を使用して決定される。
【0040】
当技術分野において、「CD3」は、6つの鎖による多重タンパク質複合体として公知である(Abbas及びLichtman、2003;Janewayら、172及び178頁、1999を参照されたい)。哺乳動物において、複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖及びCD3ζ鎖のホモ二量体を含む。CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖は、単一の免疫グロブリンドメインを含有する、免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面タンパク質との類縁性が高い。CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖の膜貫通領域は、負に帯電しており、これは、これらの鎖が、正に帯電したT細胞受容体鎖の領域と会合することを可能とすると考えられる特徴である。CD3γ鎖、CD3δ鎖及びCD3ε鎖の細胞内テールの各々が、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ又はITAMとして公知の、単一の保存性モチーフを含有するのに対し、各CD3ζ鎖は、3つの保存性モチーフを含有する。理論に束縛されることを望まずに述べると、ITAMは、TCR複合体のシグナル伝達能のために重要であると考えられている。本開示において使用されるCD3は、ヒト、マウス、ラット又は他の哺乳動物を含む、多様な動物種に由来しうる。
【0041】
本明細書において使用される「TCR複合体」とは、CD3の、TCRとの会合により形成される複合体を指す。例えば、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモ二量体、TCRα鎖及びTCRβ鎖から構成されうる。代替的に、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、CD3ζ鎖のホモ二量体、TCRγ鎖及びTCRδ鎖から構成されうる。
【0042】
本明細書において使用される「TCR複合体の構成要素」とは、TCR鎖(すなわち、TCRα、TCRβ、TCRγ又はTCRδ)、CD3鎖(すなわち、CD3γ、CD3δ、CD3ε又はCD3ζ)又は2つ以上のTCR鎖又はCD3鎖により形成される複合体(例えば、TCRαとTCRβとの複合体、TCRγとTCRδとの複合体、CD3εとCD3δとの複合体、CD3γとCD3εとの複合体又はTCRα、TCRβ、CD3γ、CD3δと、2つのCD3ε鎖とのTCRサブ複合体)を指す。
【0043】
本明細書において使用される「CD8共受容体」又は「CD8」という用語は、2つのCD8α鎖を含むホモ二量体として、又はα鎖及びβ鎖を含むヘテロ二量体として、T細胞により発現されうる細胞表面糖タンパク質であるCD8を意味する。CD8共受容体は、細胞傷害性T細胞(CD8)の機能及びその細胞質チロシンリン酸化経路(Gao及びJakobsen、Immunol.Today 21:630~636、2000;Cole及びGao、Cell.Mol.Immunol.1:81~88、2004)を介するシグナル伝達による機能の一助となると考えられる。特に、理論に束縛されることを望まずに述べると、CD8共受容体は、抗原発現細胞の表面上において発現されたMHC-Iタンパク質複合体に結合し、TCR:抗原-MHC間結合の文脈におけるこの結合は、抗原発現細胞に対する免疫応答(例えば、サイトカインの転写及び発現、カルシウムの分泌、細胞溶解活性など)をもたらす、T細胞シグナル伝達経路を誘発するか、又はこの一助となることが考えられる。ヒトにおいて、8つの異なるCD8ベータ鎖アイソフォームが公知であり(「M1」~「M8」;UniProtKB識別番号:P10966-1、2、3、4、6、7、8及び9を参照);これらのうち、アイソフォーム1、2、4及び5が、天然において、細胞膜と会合すると考えられるのに対し、アイソフォーム3、6、7及び8は、細胞外領域と会合するか、又は分泌されると考えられる。ヒトにおいてまた、3つのCD8アルファ鎖アイソフォームも公知である(UniProtKB識別番号P01732-1、2及び3を参照)。
【0044】
「CD4」とは、TCRの、抗原提示細胞との相互作用の一助となる免疫グロブリン共受容体糖タンパク質(Campbell及びReece、Biology 909(Benjamin Cummings、第6版、2002);UniProtKB P01730を参照)を指す。CD4は、ヘルパーT細胞、単球、マクロファージ及び樹状細胞など、免疫細胞の表面において見出され、典型的に、細胞表面において発現される、4つの免疫グロブリンドメイン(D1(Ig様V型ドメインを含む)、D2、D3及びD4(それぞれ、Ig様C2型ドメイン1、2及び3を含む))を含む。抗原提示時に、CD4は、MHCII分子の異なる領域に結合するように、TCR複合体と共に動員される(CD4が、MHCII β2に結合するのに対し、TCR複合体は、MHCII α1/β1に結合する。)。理論に束縛されることを望まずに述べると、TCR複合体への近接は、CD4関連キナーゼ分子が、CD3の細胞質ドメイン上に存在する免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)をリン酸化することを可能とすると考えられる。この活性は、多様な種類のヘルパーT細胞をもたらすために、活性化TCRにより発生させられたシグナルを増幅すると考えられる。
【0045】
本明細書において使用される「結合性ドメイン」(「結合性領域」又は「結合性部分」とも称される)とは、標的(例えば、WT-1又はWT-1ペプチド:MHC複合体)と、特異的であるが、非共有結合的に会合する、一体化するか、又は複合する能力を保有するペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を指す。結合性ドメインは、生体分子、分子複合体(すなわち、2つ以上の生体分子を含む複合体)又は他の目的の標的に対する、任意の天然に存在する結合パートナー、合成の結合パートナー、半合成の結合パートナー又は組換えにより作製される結合パートナーを含む。例示的な結合性ドメインは、生体分子、分子複合体又は他の目的の標的に結合する特異的能力について選択された、単鎖免疫グロブリン可変領域(例えば、scTCR、scFv)、受容体細胞外ドメイン、リガンド(例えば、サイトカイン、ケモカイン)又は合成ポリペプチドを含む。
【0046】
本明細書において使用される「~に特異的に結合する」又は「~に特異的」とは、結合性タンパク質(例えば、TCR受容体)又は結合性ドメイン(又はこれらの融合タンパク質)の、試料中の他の任意の分子又は構成要素と、著明には会合又は一体化しないが、標的分子への、10-1(この会合反応についての、オン速度[kon]の、オフ速度[koff]に対する比が等しい)以上のアフィニティー又はK(すなわち、1/Mを単位とする、特定の結合相互作用の平衡会合定数)による会合又は一体化を指す。結合性タンパク質又は結合性ドメイン(又はこれらの融合タンパク質)は、「アフィニティーが大きい」結合性タンパク質若しくは結合性ドメイン(又はこれらの融合タンパク質)又は「アフィニティーが小さい」の結合性タンパク質若しくは結合性ドメイン(又はこれらの融合タンパク質)として分類されうる。「アフィニティーが大きい」結合性タンパク質又は結合性ドメインとは、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも1010-1、少なくとも1011-1、少なくとも1012-1又は少なくとも1013-1のKを有する結合性タンパク質又は結合性ドメインを指す。「アフィニティーが小さい」の結合性タンパク質又は結合性ドメインとは、10-1以下、10-1以下、10-1以下のKを有する結合性タンパク質又は結合性ドメインを指す。代替的に、アフィニティーは、特定の結合相互作用についての、Mを単位とする平衡解離定数(K)として規定されうる(例えば、10-5M~10-13M)。
【0047】
ある特定の実施形態において、受容体又は結合性ドメインは、「アフィニティーが増強されている」場合があり、これは、標的抗原への結合が、野生型(又は親)結合性ドメインより強力である、選択又は操作された受容体又は結合性ドメインを指す。例えば、アフィニティーの増強は、標的抗原に対する、野生型結合性ドメインより高値のK(平衡会合定数)による場合もあり、標的抗原に対する、野生型結合性ドメインのK未満のK(解離定数)による場合もあり、標的抗原に対する、野生型結合性ドメインのkoff未満のオフ速度(koff)による場合もあり、これらの組合せによる場合もある。ある特定の実施形態において、アフィニティー増強TCRは、T細胞など、特定の宿主細胞内の発現を増強するように、コドン最適化される場合がある(Scholtenら、Clin.Immunol.119:135、2006)。
【0048】
「機能的アビディティー」という用語は、インビトロにおける免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、NK-T細胞)の、所与の濃度のリガンドに対する応答についての生物学的尺度又は活性化閾値を指し、この場合、生物学的尺度は、サイトカインの産生(例えば、IFNγの産生、IL-2産生など)、細胞傷害活性、活性化及び増殖を含みうる。例えば、インビトロにおいて、サイトカインを産生する、細胞傷害性である、活性化マーカーを発現するか、又は増殖することにより、低抗原用量に対して生物学的に(免疫学的に)応答するT細胞が、機能的アビディティーが大きいと考えられるのに対し、機能的アビディティーがより小さなT細胞は、アビディティーの大きなT細胞と同様の免疫応答が誘発されるに至るには、より高量の抗原が必要とされる。機能的アビディティーは、アフィニティー及びアビディティーと異なることが理解される。アフィニティーとは、結合性タンパク質と、その抗原/リガンドとの間における、任意の所与の結合の強度を指す。一部の結合性タンパク質は、多価であり、複数の抗原に結合し、この場合、全体的な接合の強度は、アビディティーである。
【0049】
機能的アビディティーと免疫応答の有効性との間には、多数の相関が存在する。一部のエクスビボ研究は、顕著に異なるT細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生など)が、異なる閾値で誘発されうることを示している(例えば、Bettsら、J.Immunol.172:6407、2004;Langenkampら、Eur.J.Immunol.32:2046、2002を参照)。機能的アビディティーに影響を及ぼしうる因子は、(a)TCRの、pMHC複合体に対するアフィニティー、すなわち、TCRとpMHCとの間にある相互作用の強度(Cawthonら、J.Immunol.167:2577、2001)、(b)TCR及びCD4又はCD8共受容体の発現レベル並びに(c)シグナル伝達分子の分布及び組成(Viola及びLanzavecchia、Science、273:104、1996)のほか、T細胞機能及びTCRシグナル伝達を弱める分子の発現レベルを含む。
【0050】
指定された曝露時間の後、ベースライン値と最大値応答との間の半値応答を誘導するのに必要とされる抗原の濃度は、「50%有効濃度」又は「EC50」と称される。EC50値は、一般に、モル量(1リットル当たりのモル数)として提示されるが、以下:-log10(EC50)の通りに、対数値へと変換されることが多い(例えば、図4(C)を参照)。例えば、EC50が、1μM(10-6M)に等しい場合、log10(EC50)値は、-6である。使用される別の値は、EC50の負の対数(-log10(EC50))として規定される、pEC50である。上記の例において、1μMに等しいEC50は、pEC50値として6を有する。ある特定の実施形態において、本開示の結合性タンパク質の機能的アビディティーは、免疫細胞(例えば、T細胞、NK-T細胞、NK細胞)によるIFNγの産生を促進するその能力の尺度となり、これは、当技術分野で公知のアッセイ及び/又は本明細書において記載されるアッセイを使用して測定されうる。「機能的アビディティーが大きい」TCR又はその結合性ドメインとは、少なくとも10-4M、少なくとも約10-5M又は少なくとも約10-6MのEC50を有する、TCR又はその結合性ドメインを指す。
【0051】
一部の実施形態において、pEC50は、免疫細胞のうちの50%が、活性化マーカーであるNur77を発現するのに要求されるペプチド抗原の量について記載するのに使用される。
【0052】
ウェスタンブロット、ELISA、解析的超遠心分離、分光法及び表面プラズモン共鳴(Biacore(登録商標))解析(例えば、Scatchardら、Ann.N.Y.Acad.Sci.51:660、1949;Wilson、Science 295:2103、2002;Wolffら、Cancer Res.53:2560、1993;及び米国特許第5,283,173号、同5,468,614号又は同等の文献を参照)並びにペプチド:MHC四量体染色など、特定の標的に特異的に結合する、本開示の結合性ドメインを同定するほか、結合性ドメイン又は融合タンパク質のアフィニティーを決定するための、様々なアッセイが公知である。
【0053】
ある特定の実施形態において、「免疫グロブリンスーパーファミリーWT-1特異的結合性タンパク質」又は「WT-1特異的結合性タンパク質」という用語は、WT-1又は、任意に、HLA分子と複合体化したそのペプチドに特異的結合する、本開示のタンパク質又はポリペプチドを指す。「WT-1結合性ドメイン」又は「WT-1結合性断片」という用語は、WT-1特異的結合性タンパク質のうちの、WT-1への特異的結合の一因となるドメイン又は部分を指す。単独における(すなわち、WT-1特異的結合性タンパク質の他の任意の部分を伴わない)WT-1特異的結合性ドメインは、可溶性でありうる。例示的なWT-1特異的結合性ドメインは、TCR内又はscTCR(例えば、Vα-L-Vβ、Vβ-L-Vα、Vα-Cα-L-Vα又はVα-L-Vβ-Cβ[配列中、Vα及びVβは、それぞれ、TCRα及びTCRβの可変ドメインであり、Cα及びCβは、それぞれ、TCRα及びTCRβの定常ドメインであり、Lは、リンカーである]などの単鎖αβTCRタンパク質)内において見出されうるWT-1特異的TCR由来のWT-1特異的結合性ドメイン、及び抗WT-1 TCR又は抗WT-1抗体に由来しうる、本明細書において記載されるscFv断片に由来するWT-1特異的結合性ドメインを含む。
【0054】
「WT-1抗原」又は「WT-1ペプチド抗原」とは、MHC(例えば、HLA)分子と共に複合体を形成することが可能であり、このような複合体が、WT-1ペプチド:MHC(例えば、HLA)複合体に特異的なTCRに結合しうる、約7アミノ酸~約15アミノ酸の長さの範囲の、天然であるか、又は合成により作製された、WT-1タンパク質の部分を指す。抗原提示細胞(APC)(樹状細胞、マクロファージ、リンパ球又は他の細胞型など)による抗原プロセシング及びAPCによる、T細胞への抗原提示であって、免疫適合性である(例えば、抗原提示に関連するMHC遺伝子の、少なくとも1つの対立遺伝子形態を共有する)APCと、T細胞との間の主要組織適合性複合体(MHC)拘束提示を含む抗原提示の原理は、十分に確立されている(例えば、Murphy、Janeway’s Immunobiology(第8版)2011 Garland Science、NY、6、9及び16章を参照)。例えば、細胞質ゾルに由来する、プロセシングされた抗原ペプチド(例えば、腫瘍抗原、細胞内病原体)が、一般に、約7アミノ酸~約11アミノ酸の長さであり、クラスI MHC分子と会合するのに対し、血管系においてプロセシングされたペプチド(例えば、細菌性、ウイルス)は、約10アミノ酸~約25アミノ酸の長さにおいて変動し、クラスII MHC分子と会合する。WT-1は、内部宿主タンパク質であるので、WT-1抗原ペプチドは、クラスI MHCの文脈において提示される。特定の実施形態において、WT-1ペプチドは、ヒトクラスI HLA(及び、より具体的に述べると、対立遺伝子であるHLA-A201と会合する)と会合することが公知である、RMFPNAPYL(配列番号94)である。
【0055】
「リンカー」とは、2つのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ドメイン、領域又はモチーフを接続し、結果として得られるポリペプチドが、標的分子に対する特異的結合アフィニティー(例えば、scTCR)を保持するか、又はシグナル伝達活性(例えば、TCR複合体)を保持するように、2つの結合性サブドメインの相互作用と適合性のスペーサー機能をもたらしうるアミノ酸配列を指す。ある特定の実施形態において、リンカーは、約2~約35アミノ酸、例えば、又は約4~約20アミノ酸又は約8~約15アミノ酸又は約15~約25アミノ酸から構成される。
【0056】
本明細書において使用される「融合タンパク質」とは、単鎖内に、天然において、タンパク質中に一体では見出されない、少なくとも2つの顕著に異なるドメイン又はモチーフを有するタンパク質を指す。融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、PCRを使用して構築される場合もあり、組換えにより操作されるなどもあり、このような融合タンパク質が、合成される場合もある。融合タンパク質は、タグ、リンカー又は形質導入マーカーなど、他の構成要素をさらに含有しうる。ある特定の実施形態において、宿主細胞(例えば、T細胞など、例えば、免疫細胞)により発現される、又は産生される融合タンパク質は、細胞表面へと局在化し、ここで、融合タンパク質は、細胞膜(例えば、膜貫通構成要素又は膜貫通ドメインを介して)へとアンカリングされ、細胞外構成要素(例えば、MHC分子と会合することが可能である)及び細胞内構成要素(例えば、シグナル伝達ドメイン若しくはシグナル伝達部分、エフェクタードメイン若しくはエフェクター部分、共刺激ドメイン若しくは共刺激部分又はこれらの組合せを含有する)を含む。
【0057】
「接合部アミノ酸」又は「接合部アミノ酸残基」とは、例えば、結合性ドメインと隣接する定常ドメインとの間又はTCR鎖と隣接する自己切断型ペプチドとの間など、ポリペプチドの、2つの隣接するモチーフ、領域又はドメインの間における、1つ以上の(例えば、約2つ~10の)アミノ酸残基を指す。接合部アミノ酸は、融合タンパク質の構築デザインから生じうる(例えば、融合タンパク質をコードする核酸分子の構築時における制限酵素部位の使用から生じるアミノ酸残基)。
【0058】
「変更ドメイン」又は「変更タンパク質」とは、野生型のモチーフ、領域、ドメイン、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質(例えば、野生型のTCRα鎖、TCRβ鎖、TCRα定常ドメイン、TCRβ定常ドメイン)に対する、少なくとも85%(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%)の配列同一性を伴うモチーフ、領域、ドメイン、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を指す。
【0059】
本明細書において使用される「核酸」又は「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」とは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、オリゴヌクレオチド、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、又はインビトロにおける翻訳により作出される断片及びライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用又はエクソヌクレアーゼ作用のうちのいずれかにより作出される断片のうちのいずれかを指す。ある特定の実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、PCRにより作製される。ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドである単量体(デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドなど)からなる場合もあり、天然に存在するヌクレオチドのアナログ(例えば、天然に存在するヌクレオチドのα-光学異性形態)からなる場合もあり、これらの両方の組合せからなる場合もある。修飾ヌクレオチドは、糖部分又はピリミジン塩基部分若しくはプリン塩基部分の修飾又は置きかえを有しうる。核酸の単量体は、ホスホジエステル結合又はこのような連結の類似物により連結されうる。ホスホジエステル連結の類似物は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホルアミデートなどを含む。ポリヌクレオチドは、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある。
【0060】
「単離された」という用語とは、素材が、その元の環境(例えば、素材が天然に存在する場合は、天然の環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生存動物において存在する、天然に存在する核酸又はポリペプチドは、単離されていないが、天然の系内に共存する材料の一部又は全部から分離された、同じ核酸又はポリペプチドは、単離されている。このような核酸は、ベクターの一部でありうる、かつ/又はこのような核酸若しくはポリペプチドは、組成物(例えば、細胞溶解物)の一部でありうるが、このようなベクター又は組成物は、核酸又はポリペプチドに対して、天然環境の一部ではないという意味で、やはり単離されている場合がある。「遺伝子」という用語とは、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意味し、コード領域に先行する領域及びコード領域後続する領域である、「リーダー及びトレーラー」のほか、個々のコードセグメント(エクソン)の間に介在する配列(イントロン)を含む。
【0061】
本開示の任意の宿主細胞、結合性タンパク質、ポリヌクレオチド又はベクターは、「分離/単離」されうる。
【0062】
本明細書において使用される「組換え」、「操作」及び「改変」という用語は、外因性核酸分子の導入により改変された細胞、微生物、核酸分子若しくはベクターを指す、又は内因性核酸分子又は内因性遺伝子の発現が、制御される、脱調節される、又は構成的とされるように、変更された細胞又は微生物を指し、この場合、このような変更又は改変は、遺伝子操作により導入されうる。遺伝子変更は、例えば、1つ以上のタンパク質若しくは酵素をコードする核酸分子(プロモーターなどの発現制御エレメントを含みうる)又は他の核酸分子の付加、欠失、置換又は細胞の遺伝子素材に対する、他の機能的な破壊若しくは細胞の遺伝子素材への機能的な付加を導入する改変を含みうる。例示的な改変は、参照分子又は親分子に由来する異種ポリペプチド又は相同ポリペプチドのコード領域内又はその機能的断片内の改変を含む。
【0063】
本明細書において使用される「突然変異」とは、核酸分子又はポリペプチド分子の配列の、参照核酸分子若しくは野生型核酸分子又は参照ポリペプチド分子若しくは野生型ポリペプチド分子のそれぞれと比較した変化を指す。突然変異は、ヌクレオチド(複数可)又はアミノ酸(複数可)の置換、挿入又は欠失を含む、いくつかの異なる種類の配列の変化を結果としてもたらしうる。ある特定の実施形態において、突然変異は、1つ又は3つのコドン又はアミノ酸の置換、1つ~約5つのコドン又はアミノ酸の欠失又はこれらの組合せである。
【0064】
当技術分野において、「保存的置換」は、類似の特性を有する、1つのアミノ酸の、別のアミノ酸への置換として認識されている。当技術分野において、例示的な保存的置換が周知である(例えば、WO97/09433、10頁;Lehninger、「Biochemistry」、第2版、Worth Publishers, Inc.NY、NY、71~77頁、1975;Lewin、「Genes IV」、Oxford University Press、NY and Cell Press、Cambridge、MA、8頁、1990を参照)。当業者に公知の様々な基準は、ペプチド内又はポリペプチド内の特定の位置において置換されるアミノ酸が、保存的である(又は類似する)かどうかを指し示す。例えば、類似のアミノ酸置換又は保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置きかえられる置換である。類似のアミノ酸は、以下の類型:塩基性側鎖を伴うアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を伴うアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖を伴うアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、ヒスチジン)、非極性側鎖を伴うアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分枝状側鎖を伴うアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を伴うアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)に含まれうる。分類が難しいと考えられるプロリンは、脂肪族側鎖(例えば、ロイシン、バリン、イソロイシン及びアラニン)を有するアミノ酸と、特性を共有する。ある特定の状況下において、グルタミンによるグルタミン酸の置換又はアスパラギンによるアスパラギン酸の置換は、グルタミン及びアスパラギンが、それぞれ、グルタミン酸及びアスパラギン酸のアミド誘導体であるという点において、同様の置換であると考えられる。当技術分野において理解される通り、2つのポリペプチドの間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列及びこれに代替的な保存されているアミノ酸配列を、第2のポリペプチドの配列と比較することにより決定される(例えば、GENEWORKS、Align、BLASTアルゴリズム又は本明細書において記載され、当技術分野において実施されている、他のアルゴリズムを使用して)。
【0065】
ある特定の実施形態において、本開示に従うタンパク質(例えば、結合性タンパク質)は、参照配列と比較した変異体配列(例えば、本明細書において開示される参照TCR CDRと比較した、変異体TCR CDR)を含む。ある特定の実施形態において、本開示の変異体タンパク質、変異体ペプチド、変異体ポリペプチド及び変異体アミノ酸配列は、参照アミノ酸配列と比べた、1つ以上の保存的置換を含みうる。本開示のポリヌクレオチド及びポリペプチドの変異体もまた想定される。変異体の核酸分子又はポリペプチドは、本明細書において記載される規定ポリヌクレオチド若しくは規定ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチド若しくは参照ポリペプチドのそれぞれと、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%同一であり、好ましくは、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.9%同一であるか、又はポリヌクレオチドについて、約65~68℃における0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム若しくは約42℃における0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム及び50%のホルムアミドの厳密なハイブリダイゼーション条件下において、参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズする、変異体である。核酸分子の変異体は、標的分子への特異的な結合など、本明細書において記載される機能性を有する結合性タンパク質又はその結合性ドメインをコードする能力を保持する。ハイブリダイゼーション反応の厳密性についてのさらなる詳細及び説明について、Ausubel,F.M.(1995)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley & Sons,Incを参照されたい。さらに、当業者は、どのようにして、ハイブリダイゼーションにより、DNA配列を同定するのかについて、マニュアルである、Boehringer Mannheim GmbH(1993) 「The DIG System Users Guide for Filter Hybridization」、Boehringer Mannheim GmbH、Mannheim、Germany及びin Liebl,W.、Ehrmann,M.、Ludwig,W.及びSchleifer,K.H.(1991) International Journal of Systematic Bacteriology 41:255~260において与えられている指示に従うこともできる。
【0066】
変異体はまた、規定配列又は参照配列の断片(例えば、部分は、切断(truncation、cleavage)などから生じる。)も指す場合があり、断片は、規定配列又は参照配列の長さより短い任意の長さでありうる。本明細書において使用される「機能的部分」又は「機能的断片」とは、親化合物又は参照化合物のドメイン、部分又は断片のみを含むポリペプチド又はポリヌクレオチドを指し、ポリペプチド又はコードされるポリペプチドは、親化合物又は参照化合物のドメイン、部分又は断片と関連する、少なくとも50%の活性、好ましくは、親ポリペプチドの活性に対する、少なくとも55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%若しくは100%のレベルの活性を保持するか、又は生物学的利益(例えば、エフェクター機能)をもたらす。本開示のポリペプチド又はコードされるポリペプチドの「機能的部分」又は「機能的断片」は、機能的部分又は機能的断片が、結合アフィニティーを測定するか、又はエフェクター機能(例えば、サイトカインの放出)を測定するためのアッセイなどの選択されたアッセイにおける機能性の、親ポリペプチド又は参照ポリペプチドと比較した、50%以下の低減(アフィニティーに関して、親又は参照と比較して、好ましくは20%以下若しくは10%又は対数値以下の差違)を提示する場合に、「同様の結合」又は「同様の活性」を有する。ある特定の実施形態において、機能的部分とは、エフェクター分子、エフェクタードメイン、共刺激分子又は共刺激ドメインの「シグナル伝達部分」を指す。
【0067】
ある特定の実施形態において、変異体の結合性タンパク質又はその部分(例えば、結合性ドメイン)若しくは断片は、親結合性タンパク質若しくは親結合性ドメイン又は参照結合性タンパク質若しくは参照結合性ドメインと比べて、1つ以上のアミノ酸置換を含む場合があり、この場合、1つ以上のアミノ酸置換は、親結合性ドメイン内若しくは親結合性タンパク質内又は参照結合性ドメイン内若しくは参照結合性タンパク質内に存在する場合における、潜在的な所望されない特色又は特徴;例えば、潜在的に免疫原性であるアミノ酸配列又は所望されないグリコシル化部位、所望されない脱アミド化部位、所望されない酸化部位、所望されない異性体化部位若しくは熱力学的安定性の低減をもたらす場合もあり、結合性タンパク質内の誤対合又はミスフォールディングを結果としてもたらす場合(例えば、近接する不対システイン残基)もあるアミノ酸配列を除去する、変化させる、又は弱める。所望されない特色又は特徴をもたらしうる、アミノ酸の配列、パターン及びモチーフは公知である(例えば、Seeligerら、mAbs、7(3):505~515(2015)を参照)。
【0068】
ある特定の実施形態において、アミノ酸置換は、例えば、生殖細胞系列により発現されるアミノ酸への復帰など、体細胞突然変異を除去する置換を含む。例えば、ある特定の実施形態において、参照CDRアミノ酸配列又はTCR可変ドメイン配列若しくはTCR定常領域配列の変異体は、潜在的な所望されない特色又は特徴を除去するか、又は弱める置換を含む。このような変異体は、所望の機能(例えば、WT-1抗原:HLA複合体に対する結合特異性及び/又は結合アフィニティー)を損なう、又は実質的に損なわないように選択されることが理解される。
【0069】
「構築物」という用語は、組換え核酸を含有する、任意のポリヌクレオチドを指す。構築物は、ベクター内に存在する場合(例えば、細菌性ベクター、ウイルスベクター)もあり、ゲノムへと組み込む場合もある。「ベクター」とは、別の核酸を運ぶことが可能な核酸分子である。ベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、RNAベクター又は染色体核酸、非染色体核酸、半合成核酸若しくは合成核酸を含みうる、直鎖状若しくは環状のDNA分子若しくはRNA分子でありうる。例示的なベクターは、自己複製が可能なベクター(エピソームベクター)又はそれらが連結された核酸の発現が可能なベクター(発現ベクター)である。
【0070】
ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルス及びセンダイウイルス)などのマイナス鎖RNAウイルス、ピコルナウイルス及びアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、1型単純ヘルペスウイルス及び2型単純ヘルペスウイルス、エプスタインン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)を含む、二本鎖DNAウイルス並びにポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス及びカナリア痘ウイルス)を含む。他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫ウイルス、哺乳動物C型ウイルス、哺乳動物B型ウイルス、哺乳動物D型ウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin,J.M.、「Retroviridae:The viruses and their replication」、「In Fundamental Virology」、第3版、B.N.Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia、1996)。
【0071】
本明細書において使用される「レンチウイルスベクター」とは、組込型の場合もあり、非組込型の場合もあり、パッケージング容量が比較的大きな場合があり、ある範囲にわたる、異なる細胞型へと形質導入しうる、遺伝子送達のための、HIVベースのレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは通例、3つ以上のプラスミド(パッケージングプラスミド、エンベローププラスミド及び導入プラスミド)の、産生細胞への一過性のトランスフェクションの後に作出される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターも、ウイルス表面の糖タンパク質の、細胞表面上の受容体との相互作用を介して標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAは、逆転写を経るが、これは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される。逆転写の産物は、二本鎖直鎖状のウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNAへのウイルスの組込みのための基質である。
【0072】
「作動可能に連結された」という用語は、一方の核酸分子の機能が、他方の核酸分子の影響を受けるような、単一の核酸断片上における、2つ以上の核酸分子の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現に影響を及ぼすことが可能である(すなわち、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある)場合に、コード配列と作動可能に連結されている。「連結されていない」とは、関連の遺伝子エレメントが、互いと緊密に会合しておらず、一方の機能が、他方に影響を及ぼさないことを意味する。
【0073】
本明細書において使用される「発現ベクター」とは、適切な宿主内の核酸分子の発現をもたらすことが可能な、適切な制御配列へと作動可能に連結された核酸分子を含有する、DNA構築物を指す。このような制御配列は、転写をもたらすプロモーター、このような転写を制御する任意選択のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合性部位をコードする配列並びに転写及び翻訳の終結を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミドの場合もあり、ファージ粒子の場合もあり、ウイルスの場合もあり、単なる潜在的なゲノムインサートの場合もある。適切な宿主へと形質転換されると、ベクターは、複製され、宿主ゲノムと独立に機能する場合もあり、場合によって、ゲノム自体へと組み込まれる場合もある。本明細書においては、「プラスミド」、「発現プラスミド」、「ウイルス」及び「ベクター」は、互換的に使用されることが多い。
【0074】
本明細書において使用される「発現」という用語は、ポリペプチドが、遺伝子の核酸配列に基づき産生される過程を指す。工程は、転写及び翻訳の両方を含む。
【0075】
核酸配列を、細胞へと挿入する文脈における、「導入された」という用語は、「トランスフェクション」又は「形質転換」又は「形質導入」を意味し、核酸配列の、真核細胞又は原核細胞への組込みに対する言及を含み、この場合、核酸分子は、細胞のゲノムへと組み込まれる場合(例えば、染色体、プラスミド、プラスチド、又はミトコンドリアDNA)もあり、自己複製レプリコンへと転換される、又は一過性に発現される場合(例えば、トランスフェクトmRNA)もある。
【0076】
本明細書において使用される「異種」核酸分子、「異種」構築物若しくは「異種」配列又は「外因性」核酸分子、「外因性」構築物若しくは「外因性」配列とは、宿主細胞に対して天然ではない核酸分子若しくは核酸分子の部分を指すが、宿主細胞に由来する核酸分子若しくは核酸分子の部分と相同でありうる。異種核酸分子、異種構築物若しくは異種配列又は外因性核酸分子、外因性構築物若しくは外因性配列の供給源は、異なる属又は種に由来しうる。ある特定の実施形態では、異種核酸分子又は外因性核酸分子は、例えば、コンジュゲーション、形質転換、トランスフェクション、電気穿孔などにより、宿主細胞又は宿主ゲノムへと付加される(すなわち、内因性又は天然ではない)が、この場合、付加された分子は、宿主ゲノムへと組み込まれる場合もあり、染色体外遺伝子素材(例えば、プラスミド又は他の形態の自己複製型ベクターとして)として存在する場合もあり、複数のコピーにおいて存在しうる。加えて、「異種」とは、宿主細胞が、相同なタンパク質又は活性をコードする場合であってもなお、宿主細胞へと導入された外因性核酸分子によりコードされる、非天然の酵素、タンパク質又は他の活性を指す。さらに、「修飾」ポリヌクレオチド若しくは「修飾」結合性タンパク質又は「異種」ポリヌクレオチド若しくは「異種」結合性タンパク質を含む細胞は、後代が、それら自体、形質導入されるのか、トランスフェクトされるのか、他の形で操作又は変化させられるのかに関わらず、この細胞の後代を含む。
【0077】
本明細書において記載される、1つを超える異種核酸分子又は外因性核酸分子は、宿主細胞へと、別個の核酸分子として導入される場合もあり、個別に制御される複数の遺伝子として導入される場合もあり、ポリシストロニックの核酸分子として導入される場合もあり、単一の融合タンパク質をコードする核酸分子として導入される場合もあり、これらの任意の組合せとして導入される場合もある。例えば、本明細書において開示される通り、宿主細胞は、WT-1抗原ペプチドに特異的な、所望のTCR(例えば、TCRα及びTCRβ)をコードする、2つ以上の異種核酸分子又は外因性核酸分子を発現するように改変されうる。2つ以上の外因性核酸分子が、宿主細胞へと導入される場合、2つ以上の外因性核酸分子は、単一の核酸分子(例えば、単一のベクター上の)として導入される場合もあり、別個のベクター上に導入される場合もあり、単一の部位又は複数の部位において、宿主染色体へと組み込まれる場合もある。言及される異種核酸分子又は異種タンパク質の活性の数とは、コード核酸分子の数又はタンパク質活性の数を指すものであり、宿主細胞へと導入される別個の核酸分子の数を指すものではない。外因性核酸分子(例えば、本開示の結合性タンパク質又はCD8共受容体をコードする)はまた、例えば、CRISPR-Cas系、メガヌクレアーゼなどを使用する遺伝子編集法によっても、宿主細胞のゲノムへと導入される場合がある。
【0078】
本明細書において使用される「内因性」又は「天然」という用語は、宿主細胞内に通常存在する、遺伝子、タンパク質又は活性を指す。さらに、親の遺伝子、タンパク質又は活性と比較して、突然変異した、過剰発現された、シャフリングされた、重複した、又は他の形で変更された遺伝子、タンパク質又は活性もやはり、この特定の宿主細胞に内因性又は天然であると考えられる。例えば、第1の遺伝子に由来する内因性制御配列(例えば、プロモーター、翻訳抑制配列)は、第2の天然の遺伝子又は核酸分子の発現を変更又は調節するのに使用される場合があり、この場合、第2の天然の遺伝子又は核酸分子の発現又は調節は、親細胞内の正常な発現又は調節と異なる。
【0079】
「相同」又は「ホモログ」という用語は、宿主細胞、宿主種又は宿主株において見出される、又はこれらに由来する分子又は活性を指す。例えば、異種核酸分子又は外因性核酸分子は、天然の宿主細胞遺伝子と相同な場合があり、任意に、発現レベルが変更されている場合もあり、配列が異なる場合もあり、活性が変更されている場合もあり、これらの任意の組合せである場合もある。
【0080】
本明細書において使用される「配列同一性」とは、最大の配列同一性パーセントを達成するように、配列をアライメントし、必要な場合、ギャップを導入し、保存的置換を配列同一性の一部と考えずにおいた後における、1つの配列内の、別の参照ポリペプチド配列内のアミノ酸残基と同一なアミノ酸残基の百分率を指す。配列同一性の百分率値は、Altschulら、(1997)「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」、Nucleic Acids Res.25:3389~3402により規定される通り、パラメータを、デフォルト値へと設定した、NCBI BLAST2.0ソフトウェアを使用して生成されうる。
【0081】
当技術分野において理解される通り、2つのポリペプチドの間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列及びこれに代替的な保存されているアミノ酸配列を、第2のポリペプチドの配列と比較すること(例えば、GENEWORKS(商標)、Align、Clustal(商標)、BLASTアルゴリズムなどを使用して)により決定される。
【0082】
本明細書において使用される「過剰増殖性障害」とは、正常細胞又は非罹患細胞と比較した、過剰な増殖(growth)又は増殖(proliferation)を指す。例示的な過剰増殖性障害は、腫瘍、がん、新生物性組織、癌腫、前悪性細胞のほか、非新生物性過剰増殖性障害又は非悪性過剰増殖性障害(例えば、腺腫、線維芽細胞種、脂肪腫、平滑筋腫、血管腫、再狭窄のほか、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患)を含む。過剰増殖性疾患の文脈における場合よりも緩徐に生じる、増殖の異常又は過剰を伴う、ある特定の疾患は、「増殖性疾患」と称される場合があり、ある特定の腫瘍、がん、新生物性組織、癌腫、肉腫、悪性細胞、前悪性細胞のほか、非新生物性障害又は非悪性障害を含む。
【0083】
WT-1抗原ペプチドに特異的な結合性タンパク質
ある特定の実施形態において、本開示は、(a)配列番号19、22、25若しくは28のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)を含むT細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン又はその変異体及びTCR Vβドメイン;(b)配列番号31、34、37若しくは40のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)を含むTCR Vβドメイン又はその変異体及びTCR Vαドメイン;又は(c)(a)のTCR Vαドメイン及び(b)のTCR Vβドメインを含み、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能であり、任意に、HLAが、HLA-A0201を含む結合性タンパク質を提示する。
【0084】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って結合することが可能である。
【0085】
ある特定の実施形態において、(a)、(b)又は(c)のVβドメインは、配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、かつ/又は(a)、(b)又は(c)のVαドメインは、配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する任意のアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる。
【0086】
ある特定の実施形態において、CDR3βは、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、CDR3αは、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、CDR3βは、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、CDR3αは、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、CDR3βは、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、CDR3αは、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、CDR3βは、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、CDR3αは、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0087】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、CDR1α、CDR2α及びCDR3αを含むVαドメイン並びにCDR1β、CDR2β及びCDR3βを含むVβドメインを含む。
【0088】
ある特定の実施形態において、Vβドメインは、配列番号29、32、35若しくは38のうちのいずれか1つによるCDR1βアミノ酸配列又はその変異体及び/又は配列番号30、33、36若しくは39のうちのいずれか1つによるCDR2βアミノ酸配列又はその変異体を含む。ある特定の実施形態において、Vαドメインは、配列番号17、20、23若しくは26のうちのいずれか1つによるCDR1αアミノ酸配列又はその変異体及び/又は配列番号18、21、24若しくは27のうちのいずれか1つによるCDR2αアミノ酸配列又はその変異体を含む。
【0089】
特定の実施形態において、TCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインは、それぞれ、CDR1α、CDR2α、CDR3α及びCDR1β、CDR2β、CDR3β並びに(i)それぞれ、配列番号26~28及び38~40;(ii)それぞれ、配列番号23、27、28及び38~40;(iii)それぞれ、配列番号17~19及び29~31;(iv)それぞれ、配列番号20~22及び32~34又は(v)それぞれ、配列番号23~25及び35~37のアミノ酸配列を含む。
【0090】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、結合性タンパク質は、WT-1ペプチド:HLA-A201複合体に結合する。本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、結合性タンパク質は、CD8に非依存的に、又はCD8の非存在下において、細胞表面におけるWT-1ペプチド:HLA複合体に結合することが可能である。
【0091】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載される結合性タンパク質は、本明細書において提示される配列番号1~61の配列と比べて、アミノ酸配列内に、1つ以上のアミノ酸置換、挿入又は欠失を有する、変異体ポリペプチド分子種を含む。ある特定の実施形態において、置換は、保存的置換であるか、又はこれを含む。アミノ酸の保存的置換は、周知であり、天然において生じる場合もあり、結合性タンパク質が、組換えにより作製される場合に導入される場合もある。当技術分野において公知の突然変異誘発法を使用して、アミノ酸置換、欠失及び付加は、タンパク質へと導入されうる(例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、2001を参照)。オリゴヌクレオチド指向部位特異的(又はセグメント特異的)突然変異誘発手順は、所望の置換、欠失又は挿入に従い変更された特定のコドンを有する、変更ポリヌクレオチドをもたらすように利用されうる。代替的に、アラニンスキャニング突然変異誘発、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応突然変異誘発及びオリゴヌクレオチド指向突然変異誘発などの、ランダム突然変異誘発法又は飽和突然変異誘発法も、免疫原ポリペプチド変異体を調製するのに使用されうる(例えば、Sambrookら、前出を参照)。
【0092】
ある特定の実施形態において、WT-1に特異的な、特定の結合性タンパク質の分子種(又は変異体)は、本明細書において開示される例示的なアミノ酸配列(例えば、配列番号1~61)のうちのいずれかに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を含みうる。
【0093】
ある特定の実施形態において、配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の配列同一性を有するVβドメイン及び/又は配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するVαドメインを含み、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、結合性タンパク質が提供される。さらなる実施形態において、本明細書において提示される、βCDRアミノ酸配列又はαCDRアミノ酸配列のうちのいずれか1つ以上は、それぞれ、Vβドメイン内及び/又はVαドメイン内に存在しうる。
【0094】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、(a)CDRのうちの少なくとも3つ又は4つが、突然変異を有さず、(b)突然変異を有するCDRが、2つ以下のみのアミノ酸置換、5つ以下の連続アミノ酸欠失又はこれらの組合せを有し、(c)結合性タンパク質が、任意に、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合するその能力を保持することを条件として、配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるVβドメイン及び/又は配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるVαドメインを含む。
【0095】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、ヒトTCR V対立遺伝子、ヒトTCR D対立遺伝子及び/又はヒトTCR J対立遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を含む、TCR可変ドメインを含む。背景として述べると、リンパ球発生時に、Vαエクソンは、異なるV(variable)遺伝子セグメント及びJ(joining)遺伝子セグメント(V-J)からアセンブルされ、Vβエクソンは、異なるV(variable)遺伝子セグメント、D(diversity)遺伝子セグメント及びJ(joining)遺伝子セグメント(V-D-J)からアセンブルされる。TCRα染色体遺伝子座は、70~80のV(variable)遺伝子セグメント及び61のJ(joining)遺伝子セグメントを有する。TCRβ染色体遺伝子座は、52のV(variable)遺伝子セグメント及び、各々が、単一のD(diversity)遺伝子セグメントを、6つ又は7つのJ(joining)遺伝子セグメントと共に含有する、2つの個別のクラスターを有する。機能的なVα遺伝子エクソン及びVβ遺伝子エクソンは、Vαについて、V(variable)遺伝子セグメントの、J(joining)遺伝子セグメントによる組換え並びにVβについて、V(variable)遺伝子セグメントの、D(diversity)遺伝子セグメント及びJ(joining)遺伝子セグメントによる組換えにより作出される。当技術分野において、多様な対立遺伝子のTCR遺伝子セグメントに従うヌクレオチド配列及びアミノ酸配列が公知であり、ImMunoGeneTicsウェブサイト上、例えば、imgt.org/IMGTrepertoire/LocusGenes/listIG_TR/TR/human/Hu_TRgroup.htmlにおいて見出されうる。
【0096】
結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、本明細書において開示されるTCR遺伝子セグメントに従う、同じヌクレオチド配列を含みうるが、本開示の文脈内においては、遺伝子セグメントのアミノ酸配列をコードする、任意のヌクレオチド配列が使用されうることが理解される。
【0097】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、(i)TRBJ02-03遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列及び/又は(ii)TRBV06-05遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列、TRBV07-09遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列若しくはTRBV20-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含むVβドメインを含む。ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、(i)TRAJ43遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列及び/又は(ii)TRAV20-02遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列;TRAV38DV08遺伝子セグメントによりコードされるアミノ酸配列若しくはTRAV38-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含むVαドメインを含む。関連する実施形態において、Vβドメインは、TRBJ02-03遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、TRAJ43遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;Vβドメインは、TRBV06-05遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、TRAV20-02遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;Vβドメインは、TRBV07-09遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、TRAV38DV08遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;又はVβドメインは、TRBV20-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含み、Vαドメインは、TRAV38-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む。
【0098】
上述の実施形態において、TRA遺伝子セグメント又はTRB遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列は、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150アミノ酸の長さであり、これらの例示的な長さ(例えば、11、12、13、14アミノ酸など)の間の任意の長さのアミノ酸を含む。
【0099】
ある特定の実施形態において、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能な結合性タンパク質であって、TCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインを含む結合性タンパク質が提供される。ある特定の実施形態において、Vαドメインは、配列番号1又は9に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、Vβドメインは、配列番号5又は13に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、Vαドメインは、配列番号2又は10に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、Vβドメインは、配列番号6又は14に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、Vαドメインは、配列番号3又は11に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、Vβドメインは、配列番号7又は15に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、Vαドメインは、配列番号4又は12に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、Vβドメインは、配列番号8又は16に示されるアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0100】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、結合性タンパク質は、α鎖定常ドメイン(Cα)若しくはその断片及び/又はβ鎖定常ドメイン(Cβ)又はその断片若しくは部分を含みうる。ある特定の実施形態において、Cαは、配列番号41~44のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、Cβは、配列番号45に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0101】
さらなる実施形態において、TCR Cβは、アミノ酸57位における天然のセリンの代わりに、システインアミノ酸(例えば、GV(S→C)TD)を含み、TCR Cαは、アミノ酸48位における天然のトレオニンの代わりに、システインアミノ酸(例えば、DK(T→C)VL;例えば、Cohenら、Cancer Res.67(8):3898~3903(2007)を参照)を含む。
【0102】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、それらのうちのいずれかが、キメラ結合性タンパク質の場合もあり、ヒト化結合性タンパク質の場合もあり、ヒト結合性タンパク質の場合もある、T細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体又はTCRの抗原結合性断片である。さらなる実施形態において、TCRの抗原結合性断片は、単鎖TCR(scTCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)を含む。
【0103】
「キメラ抗原受容体」(CAR)とは、天然で生じない、又は天然の宿主細胞内において生じない形において、一体に連結された、2つ以上の天然に存在するアミノ酸配列を含有するように操作された融合タンパク質であって、細胞の表面上に存在する場合に、受容体として機能しうる融合タンパク質を指す。CARは、膜貫通ドメイン及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン(任意に、共刺激性ドメイン(複数可)を含有する)へと連結された、抗原結合性ドメインを含む細胞外部分(例えば、がん抗原に特異的なTCRに由来する、若しくはこれらから得られるTCR結合性ドメイン、抗体に由来する、若しくはこれらから得られるscFv又はNK細胞に由来するキラー免疫受容体に由来する、若しくはこれらから得られる抗原結合性ドメインなど、免疫グロブリン若しくは免疫グロブリン様分子から得られる、若しくはこれらに由来する細胞外部分)(例えば、Sadelainら、Cancer Discov.、3(4):388(2013)を参照;また、それらのCAR構築物及びこれらの作製法が、参照により本明細書に組み込む、Harris及びKranz、Trends Pharmacol.Sci.、37(3):220(2016)、Stoneら、Cancer Immunol.Immunother.、63(11):1163(2014)並びにWalsengら、Scientific Reports 7:10713(2017)も参照)を含みうる。WT-1抗原(例えば、ペプチド:HLA複合体の文脈における)に特異的に結合する、本開示のCARは、TCR Vαドメイン及びTCR Vβドメイン又はこれらの機能的断片若しくは機能的部分を含む。
【0104】
ある特定の実施形態において、WT-1特異的結合性タンパク質は、TCRである。関連する実施形態において、結合性タンパク質は、(a)配列番号50若しくは46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖及び配列番号58若しくは54に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖を含む;(b)配列番号51若しくは47に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖及び配列番号59若しくは55に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖を含む;(c)配列番号52若しくは48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖及び配列番号60若しくは56に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖を含む;又は(d)配列番号53又は49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖及び配列番号61若しくは57に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖を含む。
【0105】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、(i)T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びT細胞受容体(TCR)β鎖可変(Vβ)ドメインを含み、Vαドメインが、配列番号19、22、25若しくは28のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)又はその変異体を含み、TCR Vβドメインが、配列番号31、34、37若しくは40のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)又はその変異体を含む結合性ドメインを含む細胞外構成要素;(ii)細胞内構成要素;及び(iii)細胞外構成要素と細胞内構成要素との間に配置された膜貫通構成要素を含む融合タンパク質を含む。ある特定の実施形態において、融合タンパク質は、CARである。
【0106】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、(i)RMFPNAPYL(配列番号94)ペプチド:HLA複合体に特異的に結合し、結合性ドメインが、T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びT細胞受容体(TCR)β鎖可変(Vβ)ドメインを含み、任意に、(a)CDRのうちの少なくとも3つ又は4つが、突然変異を有さず、(b)突然変異を有するCDRが、2つ以下のみのアミノ酸置換、5つ以下の連続アミノ酸欠失又はこれらの組合せを有し;(c)融合タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合するその能力を保持することを条件として、Vαドメインが、配列番号1、2、3、4、9、10、11若しくは12又はその変異体のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり、Vβドメインが、配列番号5、6、7、8、13、14、15若しくは16又はその変異体のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる結合性ドメインを含む細胞外構成要素;(ii)細胞内構成要素;及び(iii)細胞外構成要素と細胞内構成要素との間に配置された膜貫通構成要素を含む融合タンパク質を含む。
【0107】
例示的なCDR配列及び可変ドメイン配列並びにその変異体を含む、本明細書において開示される結合性ドメインのうちのいずれかは、本開示に従う融合タンパク質内に含まれうることが理解される。
【0108】
本明細書において記載される実施形態のうちのいずれかにおいて、本開示の、コードされるポリペプチドは、「シグナルペプチド」(また、リーダー配列、リーダーペプチド又はトランジットペプチドとしても公知である)を含みうる。シグナルペプチドは、新規に合成されたポリペプチドを、細胞内又は細胞外にそれらの適切な位置へとターゲティングする。シグナルペプチドを含む、例示的な本開示のタンパク質又はポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、配列番号1~8、46~49及び54~57において提示されている。シグナルペプチドは、局在化時若しくは分泌時に、又は局在化若しくは分泌が完了したら、ポリペプチドから除去されうる。本明細書において、シグナルペプチドを有するポリペプチドは、「プレタンパク質」と称され、本明細書において、それらのシグナルペプチドが除去されたポリペプチドは、「成熟」タンパク質又は「成熟」ポリペプチドと称される。本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、結合性タンパク質又は融合タンパク質は、成熟タンパク質を含むか、若しくは成熟タンパク質であるか、又はプレタンパク質であるか、若しくはプレタンパク質を含む。本開示の例示的な成熟タンパク質又は成熟ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号9~16、50~53及び58~61に提示されている。
【0109】
ある特定の実施形態において、本開示の結合性タンパク質は、1つ以上の接合部アミノ酸を含む。
【0110】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、リンカーを含む。ある特定の実施形態において、リンカーは、約2~約35アミノ酸、例えば、又は約4~約20アミノ酸又は約8~約15アミノ酸又は約15~約25アミノ酸から構成される。例示的なリンカーは、グリシン-セリンリンカー(例えば、配列番号95及び96)を含む。
【0111】
ある特定の実施形態において、上述の実施形態のうちのいずれか1つに従うWT特異的結合性タンパク質と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む組成物が提供される。
【0112】
ある特定の実施形態において、WT-1特異的結合性タンパク質は、可溶性形態(例えば、Walsengら、PLoS One doi:10.1371/journal.pone.0119559(2015)を参照)で用意され、任意に、細胞傷害剤及び/又は検出剤へとコンジュゲートされうる。例を挙げると、組換え作製された可溶性TCRを単離及び精製するために有用な方法は、組換え可溶性TCRを培養培地へと分泌する、適切な宿主細胞/ベクター系から上清を得、次いで、市販のフィルターを使用して培地を濃縮するステップを含みうる。濃縮の後、濃縮物を、単一の適切な精製マトリックス又はアフィニティーマトリックス若しくはイオン交換樹脂など、一連の適切なマトリックスへと適用することができる。1つ以上の逆相HPLCステップを利用して、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。これらの精製法はまた、免疫原を、その天然環境から単離する場合にも利用されうる。本明細書において記載される単離/組換え可溶性TCRのうちの1つ以上の、大スケールにおける作製のための方法は、適切な培養条件を維持するようにモニタリング及び制御されるバッチ式細胞培養法を含む。可溶性TCRの精製は、本明細書において記載され、当技術分野で公知であり、国内外の規制機関による法規及びガイドラインに準拠する方法に従い実施されうる。
【0113】
ある特定の実施形態において、WT-1に特異的な結合性タンパク質をコードする核酸分子は、養子移入療法における使用のために、宿主細胞(例えば、T細胞)にトランスフェクトする/宿主細胞(例えば、T細胞)へと形質導入するのに使用される。TCRシーケンシングにおける利点については、記載されており(例えば、Robinsら、2009、Blood、114:4099;Robinsら、2010、Sci.Translat.Med.2:47~64、PMID:20811043;Robinsら、2011年(9月10日)、J.Imm.Meth.Epub、出版先行版、PMID:21945395;Warrenら、2011、Genome Res.21:790)、本開示に従う実施形態を実施する過程において利用されうる。同様に、これらの方法の、本明細書において開示される実施形態への適合が、本明細書における教示に基づき想定されるように、所望の抗原特異性のT細胞を使用する養子移入手順(例えば、Schmittら、Hum.Gen.20:1240、2009;Dossettら、Mol.Ther.17:742、2009;Tillら、Blood、112:2261、2008;Wangら、Hum.Gene Ther.18:712、2007;Kuballら、Blood 109:2331、2007;US2011/0243972;US2011/0189141;Leenら、Ann.Rev.Immunol.25:243、2007)と同様に、T細胞に所望の核酸をトランスフェクトする/所望の核酸をT細胞へと形質導入するための方法であって、HLAと複合体化されたWT-1ペプチド抗原RMFPNAPYL(配列番号94)に特異的な、アフィニティー増強型TCRへと方向付けられた方法を含む方法についても記載されている(例えば、US2004/0087025)。
【0114】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載される、WT-1特異的結合性タンパク質又はWT-1特異的結合性ドメインは、宿主T細胞により発現される場合があり、T細胞の結合、活性化又は誘導の決定を含み、また、抗原特異的であるT細胞応答の決定も含む、T細胞活性についてアッセイするための、当技術分野で許容される多数の方法のうちのいずれかに従い、機能的に特徴づけられうる。ある特定の実施形態において、結合性タンパク質は、ヒトWT-1に対する抗原特異的T細胞応答を、クラスI HLA拘束的に促進することが可能である。さらなる実施形態において、クラスI HLA拘束応答は、輸送体関連抗原プロセシング(TAP)非依存性である。ある特定の実施形態において、抗原特異的T細胞応答は、CD4ヘルパーTリンパ球(Th)応答及びCD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答のうちの少なくとも1つを含む。関連する実施形態において、CTL応答は、WT-1過剰発現細胞に対して方向付けられる。T細胞活性についてアッセイするための方法のさらなる例は、T細胞の増殖、T細胞によるサイトカインの放出、抗原特異的T細胞の刺激、T細胞のMHC拘束的刺激、CTL活性(例えば、プレロードされた標的細胞からの51Crの放出を検出することによる)、T細胞表現型マーカー発現の変化及びT細胞機能についての他の尺度の決定を含む。これらのアッセイ及び同様アッセイを実施するための手順は、例えば、Lefkovits(「Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques」、1998)において見出されうる。また、「Current Protocols in Immunology」;Weir、「Handbook of Experimental Immunology」、Blackwell Scientific、Boston、MA(1986);Mishell及びShigii(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、Freeman Publishing、San Francisco、CA(1979);Green及びReed、Science、281:1309(1998)並びにこれらの中で引用されている参考文献も参照されたい。
【0115】
「MHCペプチド四量体染色」とは、各々が、少なくとも1つの抗原(例えば、WT-1)に対してコグネイトである(例えば、これと同一又は類縁である)アミノ酸配列を有する、同一なペプチドを含む、MHC分子の四量体を特徴とする抗原特異的T細胞を検出するのに使用されるアッセイを指し、この場合、複合体は、コグネイト抗原に特異的なT細胞受容体に結合することが可能である。MHC分子の各々は、ビオチン分子でタグ付けされる場合がある。ビオチン化MHC/ペプチドは、ストレプトアビジンの付加により四量体化され、これは、蛍光的に標識付けされうる。四量体は、蛍光標識を介するフローサイトメトリーにより検出されうる。ある特定の実施形態において、MHC-ペプチド四量体アッセイは、本開示のアフィニティー増強TCRを検出又は選択するのに使用される。
【0116】
サイトカインのレベルは、例えば、ELISA、ELISPOT、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリー並びにこれらの組合せ(例えば、細胞内サイトカイン染色及びフローサイトメトリー)を含む、本明細書において記載され、当技術分野で実施される方法に従い決定されうる。免疫応答の抗原特異的誘発又は抗原特異的刺激から生じる、免疫細胞の増殖及びクローン的拡大は、末梢血細胞又はリンパ節に由来する細胞の試料中の循環リンパ球などのリンパ球を単離すること、細胞を抗原で刺激すること及びトリチウム化チミジンの取込み又はMTTアッセイなどの非放射性アッセイなどにより、サイトカイン産生、細胞増殖及び/又は細胞生存率を測定することにより決定されうる。本明細書において記載される免疫原の、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の平衡に対する影響は、例えば、IFN-γ、IL-12、IL-2及びTNF-βなどのTh1サイトカイン並びにIL-4、IL-5、IL-9、IL-10及びIL-13などの2型サイトカインのレベルを決定することにより検討されうる。
【0117】
ポリヌクレオチド及びベクター
また、本開示に従う結合性タンパク質又はその断片若しくは部分をコードするポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)も提供される。本明細書において記載される、WT-1に特異的な結合性タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチド又は組換えポリヌクレオチドは、分子的生物学又はポリペプチド精製技術分野の多様な方法及び技法に従い作製及び調製されうる。
【0118】
ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、標的宿主細胞内の効率的発現のために、コドン最適化される。コドン最適化は、公知の技法及びツールを使用して、例えば、GenScript(登録商標)OptimumGene(商標)ツール;GeneArt(登録商標)GeneOptimizer(商標)(Sigma)などを使用して実施されうる。コドン最適化配列は、部分的にコドン最適化された(すなわち、少なくとも1つのコドンが、宿主細胞内の発現に最適化された)配列及び完全にコドン最適化された配列を含む。ある特定の宿主免疫細胞での発現のためのコドン最適化については、例えば、Scholtenら、Clin.Immunol.119:135、2006において開示されている。
【0119】
当業者が認識する通り、ポリヌクレオチドとは、任意の形態にある、一本鎖又は二本鎖のDNA、cDNA又はRNAを指す場合があり、アンチセンスのDNA、cDNA及びRNAを含む、互いに相補的な核酸のプラス鎖及びマイナス鎖を含みうる。また、siRNA、マイクロRNA、RNA-DNAハイブリッド体、リボザイム、及びDNA又はRNAの他の多様な天然に存在する形態又は合成形態も含まれる。
【0120】
一部の実施形態において、本開示の結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号62~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%(例えば、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するポリヌクレオチドを含む。
【0121】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、(i)配列番号74に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRβ鎖コードポリヌクレオチド及び配列番号66に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRα鎖コードポリヌクレオチド;(ii)配列番号75に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRβ鎖コードポリヌクレオチド及び配列番号67に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRα鎖コードポリヌクレオチド;(iii)配列番号76に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRβ鎖コードポリヌクレオチド及び配列番号68に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRα鎖コードポリヌクレオチド又は(iv)配列番号77に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRβ鎖コードポリヌクレオチド及び配列番号69に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有する、TCRα鎖コードポリヌクレオチドを含む。
【0122】
一部の実施形態において、単一のポリヌクレオチドが、本明細書において記載される結合性タンパク質をコードするか、又は、代替的に、結合性タンパク質が、1つを超えるポリヌクレオチドによりコードされる場合もある。言い換えれば、結合性タンパク質の構成要素又は部分は、単一の核酸分子上に含有される場合もあり、2つ以上の核酸分子上に含有される場合もある、2つ以上のポリヌクレオチドによりコードされうる。
【0123】
ある特定の実施形態において、本開示の結合性タンパク質の、2つ以上の構成要素又は部分をコードするポリヌクレオチドは、単一のオープンリーディングフレーム内において作動可能に会合する、2つ以上のコード配列を含む。このような配置は、例えば、TCRのアルファ鎖及びベータ鎖が約1:1の比で産生されるようなそれらの共時的発現など、所望の遺伝子産物の協調的発現を可能としうるので有利である。ある特定の実施形態において、TCR(例えば、アルファ鎖及びベータ鎖)又はCARなど、本開示の結合性タンパク質の、2つ以上の代替的遺伝子産物は、別個の分子として発現され、翻訳後に会合する。さらなる実施形態において、本開示の結合性タンパク質の、2つ以上の代替的遺伝子産物は、部分が、切断可能セグメント又は除去可能セグメントにより隔てられた、単一のポリペプチドとして発現される。例えば、当技術分野において、単一のポリヌクレオチド又はベクターによりコードされる、分離型ポリペプチドの発現に有用な、自己切断型ペプチドが公知であり、例えば、1型ブタテッショウウイルス2A(P2A-1)ペプチド、2型ブタテッショウウイルス2A(P2A-2)ペプチド、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス2A(T2A)ペプチド、A型ウマ鼻炎ウイルス(ERAV)2A(E2A)ペプチド及び2A型口蹄疫ウイルス(F2A)ペプチドを含む。自己切断型ペプチドの、例示的なヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、配列番号84~93に提示されている。ある特定の実施形態において、自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号89~93のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、コードされる自己切断型ペプチドは、配列番号84~88のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。
【0124】
自己切断型ペプチドにより隔てられた、2つの目的のポリペプチド(例えば、β鎖コードポリヌクレオチド-自己切断型ペプチド-α鎖コードポリヌクレオチド;α鎖コードポリヌクレオチド-自己切断型ペプチド-β鎖コードポリヌクレオチド)をコードするポリヌクレオチドの多様な配置が想定されることが理解される。
【0125】
したがって、一部の実施形態において、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、5’末端から3’末端の、(TCRβドメイン(例えば、鎖)コードポリヌクレオチド)-(自己切断型ペプチドコードポリヌクレオチド)-(TCRαドメイン(例えば、鎖)コードポリヌクレオチド)を含むか又は有する構造を有する。
【0126】
ある特定の実施形態において、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号78~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%(例えば、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上)の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、配列番号78~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか又はそれからなるポリヌクレオチド配列を含む。
【0127】
さらなる態様において、コードされる結合性タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能であり、(i)配列番号19、22、25、28、31、34、37若しくは40のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列;(ii)配列番号17、20、23、26、29、32、35若しくは38のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列;(iii)配列番号18、21、24、27、30、33、36若しくは39のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列;(iv)配列番号1~4若しくは9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列;(v)配列番号5~8若しくは13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;(vi)配列番号46~53のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列;(vii)配列番号54~61のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列又は(viii)(i)~(vii)の任意の組合せを含むTCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインを含む、結合性タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドが提供される。
【0128】
さらなる実施形態において、コードされる結合性タンパク質は、安全性スイッチタンパク質;タグ、選択マーカー、CD8共受容体β鎖;CD8共受容体α鎖若しくはこれらの両方又はこれらの任意の組合せなど、1つ以上のさらなるアクセサリータンパク質をコードする、トランス遺伝子構築物の一部としても発現される場合もあり、改変免疫細胞がこれらを発現する場合もある。結合性タンパク質及びアクセサリー構成要素(例えば、安全性スイッチタンパク質、選択マーカー、CD8共受容体β鎖又はCD8共受容体α鎖のうちの1つ以上)をコードし、発現させるために有用なポリヌクレオチド及びトランス遺伝子構築物については、そのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を含むポリヌクレオチド、トランス遺伝子構築物及びアクセサリー構成要素が、参照により組み込む、PCT公開第WO2018/058002において記載されている。本開示の結合性タンパク質、安全性スイッチタンパク質、タグ、選択マーカー、CD8共受容体β鎖又はCD8共受容体α鎖のうちのいずれか又は全ては、単一の核酸分子によりコードされる場合もあり、別個の核酸分子であるか、又はこの上に存在するポリヌクレオチド配列によりコードされる場合もあることが理解される。
【0129】
例示的な安全性スイッチタンパク質は、例えば、細胞外N末端リガンド結合性ドメイン及び細胞内受容体チロシンキナーゼ活性を欠くが、その天然のアミノ酸配列を保持し、I型膜貫通タンパク質の細胞表面局在を示し、医薬グレードの抗EGFRモノクローナル抗体であるセツキシマブ(Erbitux)によるtEGF受容体(tEGFr;Wangら、Blood 118:1255~1263、2011);カスパーゼポリペプチド(例えば、iCasp9;Straathofら、Blood 105:4247~4254、2005;Di Stasiら、N.Engl.J.Med.365:1673~1683、2011;Zhou及びBrenner、Exp.Hematol.pii:S0301-472X(16)30513-6.doi:10.1016/j.exphem.2016.07.011)、RQR8(Philipら、Blood 124:1277~1287、2014);ヒトc-mycタンパク質(Myc)に由来する、10アミノ酸のタグ(Kiebackら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、105:623~628、2008);及びRQRなどのマーカー/安全性スイッチポリペプチド(CD20+CD34;Philipら、2014)について、コンフォメーション的に無傷の結合性エピトープを有する、切断型EGF受容体ポリペプチド(huEGFRt)を含む。
【0130】
本開示の改変免疫細胞に有用な、他のアクセサリー構成要素は、細胞が、同定、分取、単離、エンリッチ又は追跡されることを可能とする、タグ又は選択マーカーを含む。例えば、所望の特徴(例えば、抗原特異的TCR及び安全性スイッチタンパク質)を有する、マーキングされた免疫細胞は、試料中のマーキングされていない細胞からの分取が可能であり、所望の純度を有する生成物への組入れのために、より効率的な活性化及び拡大が可能である。
【0131】
本明細書において使用される、「選択マーカー」という用語は、選択マーカーを含むポリヌクレオチドにより形質導入された免疫細胞の検出及び陽性選択を可能とする同定可能な変化を、細胞へと付与する核酸構築物(及びコードされる遺伝子産物)を含む。RQRとは、主要なCD20の細胞外ループ及び2つの最小限のCD34結合性部位を含む選択マーカーである。一部の実施形態において、RQRコードポリヌクレオチドは、16アミノ酸の最小限のCD34のエピトープをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、最小限のCD34のエピトープは、CD8共受容体ストークドメイン(Q8)のアミノ末端位置に組み込まれる。さらなる実施形態において、最小限のCD34結合性部位配列は、T細胞に対するコンパクトマーカー/自殺遺伝子(RQR8)(参照により本明細書に組み込む、Philipら、2014)を形成するように、CD20に対する標的エピトープと組み合わされうる。この構築物は、例えば、磁気ビーズ(Miltenyi)に結合させたCD34特異的抗体により、構築物を発現する免疫細胞の選択を可能とし、トランス遺伝子を発現する操作T細胞の選択的除去を可能とする(Philipら、2014)、臨床的に許容された医薬抗体であるリツキシマブを用いる。
【0132】
さらなる例示的な選択マーカーはまた、通常、T細胞上では発現されない、いくつかの切断型のI型膜貫通タンパク質:切断型低アフィニティー神経増殖因子、切断型CD19及び切断型CD34(例えば、各々が、その全体において本明細書に組み込む、Di Stasiら、N.Engl.J.Med.365:1673~1683、2011;Mavilioら、Blood 83:1988~1997、1994;Fehseら、Mol.Ther.1:448~456、2000を参照)も含む。CD19及びCD34の有用な特色は、臨床グレードの分取のために、これらのマーカーをターゲティングしうる市販品である、Miltenyi製のCliniMACs(商標)選択系が入手可能であることである。しかし、CD19及びCD34は、ベクターにパッケージング容量及びベクター組込み転写効率の負荷をかける、比較的大型の表面タンパク質である。細胞外の非シグナル伝達ドメイン又は多様なタンパク質(例えば、CD19、CD34、LNGFR)を含有する表面マーカーもまた、利用されうる。任意の選択マーカーが利用されうるが、医薬品適正製造基準に許容可能であるものとする。ある特定の実施形態において、選択マーカーは、目的の遺伝子産物(例えば、TCR又はCARなど、本開示の結合性タンパク質)をコードするポリヌクレオチドと共に発現される。選択マーカーのさらなる例は、例えば、GFP、EGFP、β-gal又はクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などのレポーターを含む。ある特定の実施形態において、例えば、CD34などの選択マーカーは、細胞により発現され、CD34は、本明細書において記載される方法における使用のために、目的の形質導入細胞を、選択的にエンリッチ又は単離する(例えば、免疫磁気選択により)のに使用されうる。本明細書において使用されるCD34マーカーは、抗CD34抗体、又は、例えば、CD34に結合するscFv、TCR若しくは他の抗原認識部分と区別される。
【0133】
ある特定の実施形態において、選択マーカーは、RQRポリペプチド、切断型低アフィニティー神経増殖因子(tNGFR)、切断型CD19(tCD19)、切断型CD34(tCD34)又はこれらの任意の組合せを含む。
【0134】
背景として述べると、CD4T細胞の、免疫療法細胞生成物への組入れは、抗原誘導性IL-2分泌をもたらし、移入される細胞傷害性CD8T細胞の存続及び機能を強化しうる(例えば、Kennedyら、Immunol.Rev.222:129(2008);Nakanishiら、Nature 462(7272):510(2009)を参照)。ある特定の状況下において、CD4T細胞内のクラスI拘束TCRは、TCRの、クラスI HLAペプチド複合体に対する感受性を増強するのに、CD8共受容体の導入を要求する場合がある。CD4共受容体は、CD8共受容体と構造が異なり、CD8共受容体に対する、有効な代替物であることが示されている(例えば、Stone及びKranz、Front.Immunol.、4:244(2013)を参照;また、Coleら、Immunology137(2):139(2012)も参照)。したがって、本開示の組成物及び方法における使用のための、別のアクセサリータンパク質は、CD8共受容体又はその構成要素を含む。
【0135】
ある特定の実施形態において、本開示の結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む操作免疫細胞は、CD8共受容体タンパク質又はそのベータ鎖構成要素若しくはアルファ鎖構成要素をコードする異種ポリヌクレオチドをさらに含みうる。
【0136】
一部の実施形態において、コードされるCD8共受容体は、α鎖又はその断片又は変異体を含む。ヒトCD8共受容体α鎖前駆体のアミノ酸配列は、公知であり、例えば、UniProtKB-P30433(また、UniProtKB-P31783;-P10732;及び-P10731も参照)において提供されている。
【0137】
一部の実施形態において、コードされるCD8共受容体は、β鎖又はその断片又は変異体を含む。ヒトCD8共受容体β鎖前駆体のアミノ酸配列は、公知であり、例えば、UniProtKB-P10966(また、UniProtKB-Q9UQ56;-E9PD41;Q8TD28;及び-P30434;及び-P05541も参照)において提供されている。
【0138】
理論に束縛されることを望まずに述べると、宿主細胞表面からの距離は、RQRポリペプチドが、選択マーカー/安全性スイッチ(Philipら、2010(前出))として機能するために重要であることが考えられる。一部の実施形態において、コードされるRQRポリペプチドは、コードされるCD8共受容体の一方又は両方の、β鎖、α鎖又はこれらの両方若しくは断片若しくは変異体の中に含有される。具体的な実施形態において、改変免疫細胞は、iCasp9をコードする異種ポリヌクレオチド及びRQRポリペプチドを含有するβ鎖を含む組換えCD8共受容体タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含み、CD8 α鎖をさらに含む。
【0139】
本開示の単離ポリヌクレオチドは、本明細書において開示される安全性スイッチタンパク質、選択マーカー、CD8共受容体ベータ鎖又はCD8共受容体アルファ鎖をコードするポリヌクレオチドをさらに含む場合もあり、これらの任意の組合せをコードするポリヌクレオチドを含む場合もある。
【0140】
ある特定の実施形態において、本開示の改変免疫細胞は、(i)CD8共受容体α鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体α鎖であるか、又はこれを含む;(ii)CD8共受容体β鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体β鎖であるか、若しくはこれを含む;又は(iii)(i)のポリヌクレオチド及び(ii)のポリヌクレオチドであって、任意に、宿主細胞が、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞若しくはこれらの両方を含む、(i)のポリヌクレオチド及び(ii)のポリヌクレオチドをさらに含む。
【0141】
さらなる実施形態において、改変免疫細胞は、(a)CD8共受容体α鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体α鎖であるか、又はこれを含む異種ポリヌクレオチド;(b)CD8共受容体β鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体β鎖であるか、又はこれを含む異種ポリヌクレオチド及び(c)(a)のポリヌクレオチドと(b)のポリヌクレオチドとの間に配置された自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0142】
一部の実施形態において、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、選択マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0143】
組換えDNA、ペプチド合成及びオリゴヌクレオチド合成、イムノアッセイ並びに組織培養並びに形質転換(例えば、電気穿孔、リポフェクション)のための標準的な技法が使用されうる。酵素反応及び精製法は、製造元の仕様書に従い実施される場合もあり、当技術分野で一般に達成される、又は本明細書において記載される通りに実施される場合もある。これらの技法及び手順並びに関連する技法及び手順は、一般に、当技術分野において周知であり、微生物学、分子生物学、生化学、分子遺伝学、細胞生物学、ウイルス学及び免疫学による技法における、多様な一般的参考文献及びより特殊な参考文献であって、本明細書を通じて引用され、論じられる参考文献において記載されている、従来の方法に従い実施されうる。例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.;「Current Protocols in Molecular Biology」(John Wiley and Sons、2008年7月改定);「Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience;Glover、「DNA Cloning:A Practical Approach」、I及びII巻(IRL Press、Oxford Univ.Press USA、1985);「Current Protocols in Immunology」(John E.Coligan、Ada M.Kruisbeek、David H.Margulies、Ethan M.Shevach編、Warren Strober 2001 John Wiley & Sons、NY、NY);「Real-Time PCR:Current Technology and Applications」、Julie Logan、Kirstin Edwards and Nick Saunders編、2009、Caister Academic Press、Norfolk、UK;Anand、「Techniques for the Analysis of Complex Genomes」、(Academic Press、New York、1992);Guthrie及びFink、「Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology」(Academic Press、New York、1991);「Oligonucleotide Synthesis」(N.Gait編、1984);「Nucleic Acid Hybridization」(B.Hames及びS.Higgins編、1985);「Transcription and Translation」(B.Hames及びS.Higgins編、1984);「Animal Cell Culture」(R.Freshney編、1986);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」(1984);「Next-Generation Genome Sequencing」(Janitz、2008 Wiley-VCH);「PCR Protocols」(「Methods in Molecular Biology」)(Park編、第3版、2010 Humana Press);「Immobilized Cells And Enzymes」(IRL Press、1986);「Methods In Enzymology」(Academic Press、 Inc.、N.Y.)に所収の論考;「Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells」(J.H.Miller及びM.P.Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Harlow及びLane、「Antibodies」、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1998);「Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology」(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987);「Handbook Of Experimental Immunology」、I~IV巻(D.M.Weir及びCC Blackwell編、1986);Roitt、「Essential Immunology」、第6版(Blackwell Scientific Publications、Oxford、1988);「Embryonic Stem Cells:Methods and Protocols」(Methods in Molecular Biology)(Kurstad Turksen編、2002);「Embryonic Stem Cell Protocols:Volume I:Isolation and Characterization」(Methods in Molecular Biology)(Kurstad Turksen編、2006);「Embryonic Stem Cell Protocols:Volume II:Differentiation Models」(Methods in Molecular Biology)(Kurstad Turksen編、2006);「Human Embryonic Stem Cell Protocols」(Methods in Molecular Biology)(Kursad Turksen編、2006);「Mesenchymal Stem Cells:Methods and Protocols」(Methods in Molecular Biology)(Darwin J.Prockop、Donald G.Phinney及びBruce A.Bunnell編、2008);「Hematopoietic Stem Cell Protocols」(Methods in Molecular Medicine)(Christopher A.Klug及びCraig T.Jordan編、2001);「Hematopoietic Stem Cell Protocols」(Methods in Molecular Biology)(Kevin D.Bunting編、2008);「Neural Stem Cells:Methods and Protocols」(Methods in Molecular Biology)(Leslie P.Weiner編、2008)を参照。
【0144】
ある特定の実施形態は、ベクター内に含有されるポリヌクレオチドを含む。当業者は、本明細書において開示される、ある特定の実施形態による使用に適するベクターをたやすく確認しうる。典型的なベクターは、それが連結された別の核酸を輸送することが可能であるか、又は宿主生物における複製が可能なポリヌクレオチドを含みうる。ベクターの一部の例は、プラスミド、ウイルスベクター、コスミドなどを含む。一部のベクターが、それらが導入される宿主細胞における自律的な複製が可能であるのに対し(例えば、細菌性の複製起点を有する細菌性ベクター及び哺乳動物エピソームベクター)、他のベクターは、宿主細胞へと導入されると、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される可能性がある。加えて、一部のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を方向付けることが可能である。関連する実施形態に従い、1つ以上の薬剤(例えば、本明細書において記載される、WT-1に特異的な結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチド又はその変異体)が、対象へと共投与される場合、この各薬剤は、別個のベクター内に存在する場合もあり、同じベクター内に存在する場合もあり、複数のベクター(各々が異なる薬剤又は同じ薬剤を含有する。)が、細胞又は細胞集団へと導入される場合もあり、対象へと投与される場合もあることがさらに理解される。
【0145】
特定の実施形態において、本開示のポリヌクレオチドは、ベクターの、ある特定のエレメントへと、作動可能に連結されうる。例えば、それらがライゲーションされたコード配列の発現及びプロセシングがなされるために必要とされるポリヌクレオチド配列が、作動可能に連結されうる。発現制御配列は、適切な転写開始配列、転写終結配列、プロモーター配列及びエンハンサー配列;スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナルなど、有効なRNAプロセシングシグナル;細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳の効率を増強する配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増強する配列を含む可能性があり、おそらくは、タンパク質の分泌を増強する配列を含みうる。発現制御配列は、それらが、目的の遺伝子及び目的の遺伝子を制御するように、トランスにおいて、又はある距離において作用する発現制御配列と隣接する場合に、作動可能に連結されうる。
【0146】
ある特定の実施形態において、ベクターは、プラスミドベクター又はウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター又はγ-レトロウイルスベクターから選択されるベクター)を含む。ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹ウイルス及びセンダイウイルス)などのマイナス鎖RNAウイルス、ピコルナウイルス及びアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス並びにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、1型単純ヘルペスウイルス及び2型単純ヘルペスウイルス、エプスタインン-バーウイルス、サイトメガロウイルス)を含む、二本鎖DNAウイルス並びにポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、鶏痘ウイルス及びカナリア痘ウイルス)を含む。他のウイルスは、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス及び肝炎ウイルスを含む。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫ウイルス、哺乳動物C型レトロウイルス、哺乳動物B型レトロウイルス、哺乳動物D型レトロウイルス、HTLV-BLV群レトロウイルス、レンチウイルス、スプマウイルスを含む(Coffin,J.M.、「Retroviridae:The viruses and their replication」、「In Fundamental Virology」、第3版、B.N.Fieldsら編、Lippincott-Raven Publishers、Philadelphia、1996)。
【0147】
「レトロウイルス」とは、RNAゲノムを有するウイルスであり、これは、逆転写酵素を使用して、DNAへと逆転写され、次いで、逆転写されたDNAは、宿主細胞ゲノムへと組み込まれる。「ガンマレトロウイルス」とは、レトロウイルス科(retroviridae)の属を指す。ガンマレトロウイルスの例は、マウス幹細胞ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス及びトリ網状赤血球増加症ウイルスを含む。本明細書において使用される「レンチウイルスベクター」とは、組込型の場合もあり、非組込型の場合もあり、パッケージング容量が比較的大きな場合があり、ある範囲にわたる、異なる細胞型へと形質導入しうる、遺伝子送達のための、HIVベースのレンチウイルスベクターを意味する。レンチウイルスベクターは通例、3つ以上のプラスミド(パッケージングプラスミド、エンベローププラスミド及び導入プラスミド)の、産生細胞への一過性のトランスフェクションの後に作出される。HIVと同様に、レンチウイルスベクターも、ウイルス表面の糖タンパク質の、細胞表面上の受容体との相互作用を介して標的細胞に侵入する。侵入すると、ウイルスRNAは、逆転写を経るが、これは、ウイルス逆転写酵素複合体により媒介される。逆転写の産物は、二本鎖直鎖状のウイルスDNAであり、これは、感染細胞のDNAへのウイルスの組込みのための基質である。
【0148】
ある特定の実施形態において、ウイルスベクターは、ガンマレトロウイルス、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクターでありうる。他の実施形態において、ウイルスベクターは、より複雑なレトロウイルス由来ベクター、例えば、レンチウイルス由来ベクターでありうる。HIV-1由来ベクターは、この類型に属する。他の例は、HIV-2、FIV、ウマ感染性貧血症ウイルス、SIV及びマエディ-ビスナウイルス(ヒツジレンチウイルス)に由来するレンチウイルスベクターを含む。当技術分野において、TCRトランス遺伝子又はCARトランス遺伝子を含有するウイルス粒子を、哺乳動物宿主細胞へと形質導入するために、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスウイルスベクター並びにパッケージング細胞を使用する方法が公知であり、例えば、米国特許第8,119,772号;Walchliら、PLoS One 6:327930、2011;Zhaoら、J.Immunol.174:4415、2005;Engelsら、Hum.Gene Ther.14:1155、2003;Frechaら、Mol.Ther.18:1748、2010及びVerhoeyenら、Methods Mol.Biol.506:97、2009において既に記載されている。レトロウイルスベクター構築物及びレンチウイルスベクター構築物及び発現系はまた、市販もされている。ポリヌクレオチド送達のために、例えば、アデノウイルスベースのベクター及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクターを含むDNAウイルスベクター;単位複製配列ベクター、複製欠損HSV及び弱毒化HSVを含む、単純ヘルペスウイルス(HSV)由来ベクターを含む、他のウイルスベクターもまた、使用されうる(Kriskyら、Gene Ther.5:1517、1998)。
【0149】
遺伝子治療における使用のために開発された他のベクターもまた、本開示の組成物及び方法と共に使用されうる。このようなベクターは、バキュロウイルス及びα-ウイルスに由来するベクター(Jolly,D J.1999、「Emerging Viral Vector」、209~40頁、Friedmann T.編、「The Development of Human Gene Therapy」、New York:Cold Spring Harbor Lab)又はプラスミドベクター(Sleeping Beauty又は他のトランスポゾンベクターなど)を含む。
【0150】
ウイルスベクターゲノムが、宿主細胞内において、別個の転写物として発現される、複数のポリヌクレオチドを含む場合、ウイルスベクターはまた、2つ(以上)の転写物の間に、バイシストロニックの発現又はマルチシストロニックの発現を可能とする、さらなる配列も含みうる。ウイルスベクター内において使用されるこのような配列の例は、内部リボソーム侵入部位(IRES)、フーリン切断部位、ウイルス2Aペプチド又はこれらの任意の組合せを含む。
【0151】
ある特定の実施形態において、ベクターは、ポリヌクレオチド構築物又はトランス遺伝子構築物を、宿主細胞(例えば、造血前駆細胞又はヒト免疫系細胞)へと送達することが可能である。具体的な実施形態において、ベクターは、ポリヌクレオチド構築物又はトランス遺伝子構築物を、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、CD4-CD8-ダブルネガティブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞又はこれらの任意の組合せなどのヒト免疫系細胞へと送達することが可能である。さらなる実施形態において、ベクターは、トランス遺伝子構築物を、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はこれらの任意の組合せへと送達することが可能である。一部の実施形態において、本開示のポリヌクレオチド構築物又はトランス遺伝子構築物をコードするベクターは、宿主細胞内において染色体のノックアウトを実施するのに使用される場合もあり、遺伝子置換療法又は遺伝子修復療法において、治療用ポリヌクレオチド若しくはトランス遺伝子又はこれらの部分を、宿主細胞へと送達するのに使用される場合もあるヌクレアーゼ(例えば、本明細書において開示されるCRISPR-Casエンドヌクレアーゼ又は別のエンドヌクレアーゼ)をコードするポリヌクレオチドをさらに含みうる。代替的に、染色体のノックアウト又は遺伝子置換療法若しくは遺伝子修復療法のために使用されるヌクレアーゼは、本開示のポリヌクレオチド構築物又はトランス遺伝子構築物をコードするベクターから独立に、宿主細胞へと送達されうる。
【0152】
宿主細胞
本明細書においてまた、本開示の異種ポリヌクレオチド(例えば、本明細書において開示される任意の結合性タンパク又は融合タンパク質をコードし、任意に、選択マーカー自己切断型ペプチド、CD8共受容体ポリペプチド又はこれらの任意の組合せなど、1つ以上のさらなるタンパク質をコードする。)を含む宿主細胞及び/又は本明細書において開示される任意の結合性タンパク質を発現する宿主細胞も提示される。このような宿主細胞は、例えば、本開示のベクターのトランスフェクション若しくは本開示のベクターによる形質導入及び/又は遺伝子編集により作出されうる。
【0153】
一部の実施形態において、宿主細胞は、本明細書において記載される例示的な免疫系細胞など、任意のヒト免疫系細胞でありうる免疫系細胞を含む。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、T細胞、NK細胞、NK-T細胞又はこれらの任意の組合せを含む。さらなる実施形態において、T細胞は、CD8T細胞、CD4T細胞又はこれらの両方を含む。
【0154】
したがって、特定の実施形態において、改変免疫細胞は、コードされる結合性タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能である本開示に従う結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む。
【0155】
ある特定の実施形態において、コードされる結合性タンパク質は、配列番号94:HLA複合体に、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って結合することが可能である。
【0156】
ある特定の実施形態において、ペプチド:HLA複合体は、ペプチド:HLA-A201複合体を含む。
【0157】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、改変免疫細胞の集団は、共培養物中のペプチド濃度を10-4μM又は10-5μM又は10-6μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞(例えば、HLA-A0201などのHLAを発現するT2細胞、Jurkat細胞、樹状細胞)と共に、4時間にわたり共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの50%以上が、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)を産生する。ある特定に実施形態において、改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を約10-2μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞(一部の文脈ではまた、「標的細胞」とも呼ばれる)と共に共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%以上が、Nur77(すなわち、Nur77を発現する。)であり、この場合、抗原提示細胞は、任意に、T2細胞、Jurkat細胞又はこれらの両方を含み、任意に、HLA-A0201+である。
【0158】
一部の実施形態において、改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-3μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養する場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの10%、15%、20%以上は、Nur77である。
【0159】
一部の実施形態において、結合性タンパク質は、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6以上のNur77発現pEC50(配列番号94:HLA(HLA-A0201など))複合体を有する。
【0160】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、改変免疫細胞は、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、20%、25%以上を死滅させることが可能である。ある特定の実施形態において、改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に10:1の比で存在する場合に、改変免疫細胞は、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの10%以上を死滅させることが可能である。ある特定の実施形態において、改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に1:1の比で存在する場合に、改変免疫細胞は、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの約5%以上を死滅させることが可能である。
【0161】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、殺滅は、任意に、本明細書において記載される通り、標識化クロム(例えば、51Cr)を使用する、4時間共培養物アッセイを使用して測定されうる。
【0162】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、改変免疫細胞は、試料中のPanc1細胞のうちの21%、22%、23%、24%、25%以上を死滅させることが可能である。さらなる実施形態において、改変免疫細胞と、Panc1細胞とが、10:1の比で存在する場合に、改変免疫細胞は、試料中のPanc1細胞のうちの10%、15%以上を死滅させることが可能である。さらなる実施形態において、改変免疫細胞と、Panc1細胞とが、9:1、8:1、7:1、6:1又は5:1の比で存在する場合に、改変免疫細胞は、試料中のPanc1細胞のうちの10%、15%以上を死滅させることが可能である。
【0163】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、配列番号82に示されるアミノ酸配列を有するTCRα鎖及び配列番号83に示されるアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含むT細胞受容体をコードするポリヌクレオチドを含む参照免疫細胞と比較して、4時間にわたる共培養において、HLA-A0201MDA-MB-468細胞に対する及び/又はPanc1細胞に対する殺滅活性を増大させた、及び/又はペプチドをパルスされた標的細胞との4時間にわたる共培養において、IFN-γの産生を改善した、及び/又はPanc-1がん細胞の増殖を、さらに低減した(例えば、エフェクター:標的細胞比を8:1とするIncuCyteアッセイを使用して測定される通り、60、75、100、125、150時間以上にわたり)。
【0164】
一部の実施形態において、本開示の改変免疫細胞は、Panc-1がん細胞の増殖(growth)及び/又は増殖(proliferation)を、50、100、150時間以上にわたり防止するか、又はこれを実質的に防止し、この場合、任意に、改変免疫細胞と、Panc-1がん細胞とは、8:1のエフェクター:標的細胞比で存在する。
【0165】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、殺滅は、任意に、本明細書において記載される通り、標識化クロム(例えば、51Cr)を使用する、4時間共培養物アッセイを使用して測定されうる。
【0166】
「参照」免疫細胞は、コードされる結合性タンパク質を除き、同じ免疫細胞型であり、対象の改変免疫細胞と、表現型的に同一であるか、又は実質的に同一であることが理解される。例えば、改変CD8+ヒトT細胞において、参照免疫細胞は、CD8+ヒトT細胞であり、例えば、改変免疫細胞と同じ供給源又はドナーに由来しうる。
【0167】
上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、コードされる結合性タンパク質は、TCR、CAR又はscTCRでありうる。上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、コードされる結合性タンパク質は、CD8に非依存的に、又はCD8の非存在下において、細胞表面におけるWT-1ペプチド(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である。
【0168】
本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、改変免疫細胞により発現される結合性タンパク質は、TCR、単鎖TCR(scTCR)、キメラ抗原受容体(CAR)又はこれらの任意の組合せを含みうる。
【0169】
例えば、T細胞、NK細胞、NK-T細胞、マクロファージ、単球又は樹状細胞を含む、任意の適切な免疫細胞は、本開示の異種結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むように改変されうる。一部の実施形態において、改変免疫細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞又はこれらの両方を含む。一部の実施形態において、改変免疫細胞は、CD4CD8ダブルネガティブT細胞又はγδ T細胞を含む。一部の実施形態において、T細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はこれらの任意の組合せである。これらの方法の、本明細書において開示される実施形態への適合が、本明細書における教示に基づき想定されるように、所望の標的特異性のT細胞を使用する養子移入手順(例えば、Schmittら、Hum.Gen.20:1240、2009;Dossettら、Mol.Ther.17:742、2009;Tillら、Blood、112:2261、2008;Wangら、Hum.Gene Ther.18:712、2007;Kuballら、Blood、109:2331、2007;US2011/0243972;US2011/0189141;Leenら、Ann.Rev.Immunol.25:243、2007)と同様に、T細胞に所望の核酸をトランスフェクトする/所望の核酸をT細胞へと形質導入するための方法について記載されている(例えば、米国特許出願公開第2004/0087025号)。
【0170】
細胞、例えば、T細胞にトランスフェクトする、若しくはこれへと形質導入するか、又は本方法のポリヌクレオチド又は組成物を投与するのに、任意の適切な方法が使用されうる。ポリヌクレオチドを、宿主細胞へと送達するための公知の方法は、例えば、カチオン性ポリマー、脂質様分子及び例えば、IN-VIVO-JET PEIなど、ある特定の市販品の使用を含む。他の方法は、エクスビボにおける形質導入、注射、電気穿孔、DEAE-デキストラン、超音波処理ローディング、リポソーム媒介性トランスフェクション、受容体媒介性形質導入、微粒子銃、トランスポゾン媒介性移入などを含む。宿主細胞にトランスフェクトするか、又は宿主細胞へと形質導入する、なおさらなる方法は、本明細書においてさらに詳細に記載されるベクターを利用する。ある特定の実施形態において、宿主細胞は、そのゲノム内に、本明細書において提示される結合性タンパク質(又は他のタンパク質又はポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含むように遺伝子編集される。
【0171】
前出の実施形態のうちのいずれかにおいて、改変免疫細胞は免疫シグナル伝達若しくは他の関連する活性に関与するポリペプチドをコードする、1つ以上の内因性遺伝子の発現を低減するか、又は消失させる(例えば、本明細書において記載される染色体遺伝子ノックアウトにより)ように改変される場合もあり、かつ/又は本明細書において提示される異種ポリヌクレオチドを含むように改変される場合もある。例示的な遺伝子ノックアウトは、PD-1、LAG-3、CTLA4、TIM3、HLA分子、TCR分子などをコードする遺伝子ノックアウトを含む。理論に束縛されることを望まずに述べると、免疫細胞のある特定の内因性発現タンパク質は、改変免疫細胞を施される同種宿主により、外来タンパク質と認識される場合があり、これは、改変免疫細胞の消失を結果としてもたらす場合(例えば、HLA対立遺伝子)もあり、改変免疫細胞の免疫活性を下方調節する場合(例えば、PD-1、LAG-3、CTLA4)もあり、異種発現された本開示の結合性タンパク質の結合活性に干渉する場合(例えば、非WT-1抗原に結合し、WT-1抗原を発現する細胞への改変免疫細胞の結合に干渉しうる改変T細胞の内因性TCR)もあり、発現について、異種結合性タンパク質と競合する場合もある。
【0172】
したがって、このような内因性遺伝子又はタンパク質の発現又は活性の低下又は消失は、自家宿主状況下又は同種宿主状況下における、結合性タンパク質の活性、忍容性、発現又は改変免疫細胞の存続を改善することが可能であり、細胞のユニバーサルな投与(例えば、HLA型に関わらない、任意のレシピエントへの)を可能としうる。ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、ドナー細胞(例えば、同種細胞)又は自家細胞である。ある特定の実施形態において、本開示の改変免疫細胞は、PD-1、LAG-3、CTLA4、TIM3、TIGIT、HLA構成要素(例えば、α1マクログロブリン、α2マクログロブリン、α3マクログロブリン、β1ミクログロブリン又はβ2ミクログロブリンをコードする遺伝子)又はTCRの構成要素(例えば、TCR可変領域又はTCR定常領域をコードする遺伝子)(例えば、それらの遺伝子編集法、組成物及び養子細胞療法が、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込む、Torikaiら、Nature Sci.Rep.6:21757(2016);Torikaiら、Blood 119(24):5697(2012)及びTorikaiら、Blood、122(8):1341(2013)を参照)をコードする遺伝子のうちの1つ以上に対する染色体遺伝子ノックアウトを含む。
【0173】
本明細書において使用される「染色体遺伝子ノックアウト」という用語は、宿主細胞による、機能的に活性の内因性ポリペプチド産物の産生を防止する(例えば、低減するか、遅延させるか、抑制するか、又は妨げる)、宿主細胞内の遺伝子変更又は阻害性薬剤の導入を指す。染色体遺伝子ノックアウトを結果としてもたらす変更は、例えば、ナンセンス突然変異(未成熟終止コドンの形成を含む)、ミスセンス突然変異、遺伝子欠失及び鎖切断のほか、宿主細胞内の内因性遺伝子の発現を阻害する阻害性核酸分子の異種発現の導入を含みうる。
【0174】
ある特定の実施形態において、染色体遺伝子ノックアウト又は染色体遺伝子ノックインは、宿主細胞の染色体編集によりなされる。染色体編集は、例えば、エンドヌクレアーゼを使用して実施されうる。本明細書において使用される「エンドヌクレアーゼ」とは、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合の切断を触媒することが可能な酵素を指す。ある特定の実施形態において、エンドヌクレアーゼは、ターゲティングされた遺伝子を切断し、これにより、ターゲティングされた遺伝子を不活化させるか又は「ノックアウトすること」が可能である。エンドヌクレアーゼは、天然に存在するエンドヌクレアーゼの場合もあり、組換えエンドヌクレアーゼの場合もあり、遺伝子改変エンドヌクレアーゼ又は遺伝子融合エンドヌクレアーゼの場合もある。エンドヌクレアーゼにより引き起こされる核酸鎖の切断は、一般に、相同組換え又は非相同末端接合(NHEJ)という、顕著に異なる機構を介して修復される。相同組換え時に、ドナー遺伝子の「ノックイン」、標的遺伝子の「ノックアウト」のために、任意に、ドナー遺伝子ノックインイベント又は標的遺伝子ノックアウトイベントを介して、標的遺伝子を不活化させるように、ドナー核酸分子が使用されうる。NHEJは、切断の部位において、DNA配列に対する変化、例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの置換、欠失又は付加を結果としてもたらすことが多い、エラープローン修復過程である。NHEJは、標的遺伝子「をノックアウトする」のに使用されうる。エンドヌクレアーゼの例は、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ、TALE-ヌクレアーゼ、CRISPR-Casヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ及びmegaTALを含む。
【0175】
本明細書において使用される「亜鉛フィンガーヌクレアーゼ」(ZFN)とは、FokIエンドヌクレアーゼなど、非特異的DNA切断ドメインへと融合させた、亜鉛フィンガーDNA結合性ドメインを含む融合タンパク質を指す。約30アミノ酸の各亜鉛フィンガーモチーフが、約3塩基対のDNAに結合し、ある特定の残基におけるアミノ酸が、トリップレットの配列特異性を変更するように変化させられうる(例えば、Desjarlaisら、Proc.Natl.Acad.Sci.90:2256~2260、1993;Wolfeら、J.Mol.Biol.285:1917~1934、1999を参照)。約9~約18塩基対の範囲の長さを有する領域など、所望のDNA配列への結合特異性を創出するように、複数の亜鉛フィンガーモチーフが、タンデムに連結される場合がある。背景として述べると、ZFNは、部位特異的DNA二重鎖切断(DSB)ゲノムの形成を触媒することにより、ゲノム編集を媒介し、相同性指向修復により、DSBの部位におけるゲノムに相同なフランキング配列を含む、トランス遺伝子のターゲティングされた組込みが容易とされる。代替的に、ZFNにより作出されるDSBは、切断部位におけるヌクレオチドの挿入又は欠失を結果としてもたらす、細胞内エラープローン修復経路である、非相同末端接合(NHEJ)による修復を介する、標的遺伝子のノックアウトを結果としてもたらしうる。ある特定の実施形態において、遺伝子ノックアウトは、ZFN分子を使用してなされる、挿入、欠失、突然変異又はこれらの組合せを含む。
【0176】
本明細書において使用される「転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ」(TALEN)とは、TALE DNA結合性ドメイン及びFokIエンドヌクレアーゼなどのDNA切断ドメインを含む融合タンパク質を指す。「TALE DNA結合性ドメイン」又は「TALE」は、一般に、各々が、12及び13番目のアミノ酸が異なる、高度に保存された33~35アミノ酸の配列を有する、1つ以上のTALEリピートドメイン/単位から構成される。TALEリピートドメインは、標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。反復可変二残基(RVD)と称される、異なるアミノ酸残基は、特異的ヌクレオチド認識と相関する。これらのTALEによるDNA認識のための、天然の(カノニカルの)コードは、TALEの12及び13位におけるHD(ヒスチジン-アスパラギン酸)配列が、シトシン(C)に結合するTALEをもたらし、NG(アスパラギン-グリシン)が、Tヌクレオチドに結合し、NI(アスパラギン-イソロイシン)が、Aに結合し、NN(アスパラギン-アスパラギン)が、Gヌクレオチド又はAヌクレオチドに結合し、NG(アスパラギン-グリシン)が、Tヌクレオチドに結合するように、決定されている。非標準型(非定型)のRVDもまた、公知である(例えば、その非定型RVDが、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込む、米国特許出願公開第2011/0301073号を参照)。TALENは、T細胞のゲノム内の部位特異的二本鎖切断(DSB)を方向付けるのに使用されうる。非相同末端接合(NHEJ)は、アニーリングのための配列の重複がほとんど又は全く存在しない、二本鎖切断の両側に由来するDNAをライゲーションし、これにより、遺伝子発現をノックアウトするエラーを導入する。代替的に、相同性指向修復は、トランス遺伝子内に相同なフランキング配列が存在することを条件として、DSBの部位にトランス遺伝子を導入することが可能である。ある特定の実施形態において、遺伝子ノックアウトは、挿入、欠失、突然変異又はこれらの組合せを含み、TALEN分子を使用してなされる。
【0177】
本明細書において使用されるCRISPR/Cas(「clustered regularly interspaced short palindromic repeats/Cas」)ヌクレアーゼ系とは、塩基対合相補性を介して、ゲノム内の標的部位(プロトスペーサーとして公知である。)を認識するように、CRISPR RNA(crRNA)誘導型Casヌクレアーゼを利用し、次いで、短い、保存されたプロトスペーサー関連モチーフ(PAM)が、相補性標的配列の3’側の直後に後続する場合、DNAを切断する系を指す。CRISPR/Cas系は、Casヌクレアーゼの配列及び構造に基づき、3つの型(すなわち、I型、II型及びIII型)へと分類される。I型及びIII型におけるcrRNA誘導-監視複合体は、複数のCasサブユニットを必要とする。最もよく研究されているII型系は、少なくとも3つの構成要素:RNA誘導型Cas9ヌクレアーゼ、crRNA及びトランス活性化crRNA(tracrRNA)を含む。tracrRNAは、二重鎖形成領域を含む。crRNAと、tracrRNAとは、Cas9ヌクレアーゼと相互作用し、crRNA上のスペーサーと、標的DNA上の、PAMから上流におけるプロトスペーサーとの間のワトソン-クリック型塩基対合を介して、Cas9/crRNA:tracrRNA複合体を、標的DNA上の特異的部位へと誘導することが可能な二重鎖を形成する。Cas9ヌクレアーゼは、crRNAスペーサーにより規定される領域内において、二本鎖切断を施す。NHEJによる修復は、ターゲティングされた遺伝子座の発現を破壊する挿入及び/又は欠失を結果としてもたらす。代替的に、相同性指向修復を介して、DSBの部位に、相同なフランキング配列を伴うトランス遺伝子が導入される場合もある。crRNA及びtracrRNAは、単鎖ガイドRNAへと操作されうる(sgRNA又はgRNA)(例えば、Jinekら、Science 337:816~21、2012を参照)。さらに、ガイドRNAの、標的部位と相補性の領域は、所望の配列をターゲティングするように変更又はプログラムされうる(それらの各々が、参照により組み込む、Xieら、PLOS One 9:e100448、2014;米国特許出願公開第2014/0068797号、米国特許出願公開第2014/0186843号;米国特許第8,697,359号及びPCT公開WO2015/071474)。ある特定の実施形態において、遺伝子ノックアウトは、挿入、欠失、突然変異又はこれらの組合せを含み、CRISPR/Casヌクレアーゼ系を使用してなされる。
【0178】
例示的なgRNA配列及びこれを使用して、免疫細胞のタンパク質をコードする内因性遺伝子をノックアウトする方法は、それらのgRNA、Cas9 DNA、ベクター及び遺伝子ノックアウト法が、参照によりその全体において本明細書に組み込む、Renら、Clin.Cancer Res.23(9):2255~2266(2017)に記載されている、gRNA配列及びノックアウト法を含む。
【0179】
Cas12、Cas13及びCas14ヌクレアーゼ並びにその変異体を含むがこれらに限定されない、代替的なCasヌクレアーゼを使用されうる。例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込む、WO2019/178427において開示されるCasヌクレアーゼ(この中で開示される、Casヌクレアーゼ、CRISPR-Cas系及び関連する方法を含む)が用いられうる。
【0180】
「ホーミングエンドヌクレアーゼ」ともまた称される、本明細書において使用される「メガヌクレアーゼ」とは、大型の認識部位(約12~約40塩基対の二本鎖DNA配列)により特徴づけられるエンドデオキシリボヌクレアーゼを指す。メガヌクレアーゼは、配列及び構造モチーフ:LAGLIDADG(配列番号97)、GIY-YIG(配列番号98)、HNH、His-Cysボックス及びPD-(D/E)XK(配列番号99)に基づき、5つのファミリーへと分けられうる。例示的なメガヌクレアーゼは、それらの認識配列が公知である(例えば、米国特許第5,420,032号及び同第6,833,252号;Belfortら、Nucleic Acids Res.25:3379~3388、1997;Dujonら、Gene 82:115~118、1989;Perlerら、Nucleic Acids Res. 22:1125~1127、1994;Jasin、Trends Genet.12:224~228、1996;Gimbleら、J.Mol.Biol.263:163~180、1996;Argastら、J.Mol.Biol.280:345~353、1998を参照)、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII及びI-TevIIIを含む。
【0181】
ある特定の実施形態において、天然に存在するメガヌクレアーゼは、PD-1、LAG3、TIM3、CTLA4、TIGIT、HLAのコード遺伝子又はTCR構成要素のコード遺伝子から選択される標的の部位特異的ゲノム改変を促進するのに使用されうる。他の実施形態において、標的遺伝子に対する、新規の結合特異性を有する、操作メガヌクレアーゼは、部位特異的ゲノム改変(例えば、Porteusら、Nat.Biotechnol.23:967~73、2005;Sussmanら、J.Mol.Biol.342:31~41、2004;Epinatら、Nucleic Acids Res.31:2952~62、2003;Chevalierら、Molec.Cell 10:895~905、2002;Ashworthら、Nature 441:656~659、2006;Paquesら、Curr.Gene Ther.7:49~66、2007;米国特許出願公開第2007/0117128号;同第2006/0206949号;同第2006/0153826号;同第2006/0078552号及び同第2004/0002092号を参照)のために使用される。さらなる実施形態において、megaTALとして公知の融合タンパク質を作製するように、TALENのモジュラーDNA結合性ドメインにより改変されたホーミングエンドヌクレアーゼを使用して、染色体遺伝子のノックアウトがもたらされる。megaTALは、目的のポリペプチドをコードする外因性ドナー鋳型と組み合わせて使用される場合に、1つ以上の標的遺伝子をノックアウトするだけではなく、目的のポリペプチドをコードする外因性ドナー鋳型と組み合わせて使用される場合、異種又は外因性ポリヌクレオチドを導入する(ノックインする)のにも用いられうる。
【0182】
ある特定の実施形態において、染色体遺伝子ノックアウトは、腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗原特異的受容体をコードする異種ポリヌクレオチドを含む宿主細胞(例えば、免疫細胞)へと導入される阻害性核酸分子を含み、この場合、阻害性核酸分子は、標的特異的阻害剤をコードし、コードされた標的特異的阻害剤は、宿主免疫細胞内の、内因性遺伝子(すなわち、PD-1、TIM3、LAG3、CTLA4、TIGIT、HLAの構成要素若しくはTCRの構成要素又はこれらの任意の組合せ)の発現を阻害する。
【0183】
染色体遺伝子ノックアウトは、ノックアウト手順又は薬剤を使用した後における、宿主免疫細胞のDNAシーケンシングにより、直接確認されうる。染色体遺伝子ノックアウトは、ノックアウト後における、遺伝子発現の非存在(例えば、遺伝子によりコードされるmRNA産物又はポリペプチド産物の非存在)からもまた推測されうる。
【0184】
前出の遺伝子編集法のうちのいずれかは、本開示のポリヌクレオチド(例えば、結合性タンパク質及び/又はCD8共受容体ポリペプチドをコードする)を、宿主細胞ゲノムへと導入するのに使用されうる。一部の実施形態において、異種ポリヌクレオチドは、内因性TCR構成要素、HLA構成要素をコードする遺伝子座、PD-1遺伝子座、LAG-3遺伝子座、CTLA4遺伝子座、TIM3遺伝子座若しくはTIGIT遺伝子座又はRosa26、AAVS1、CCR5などのセーフハーバー遺伝子座へと導入される。ある特定の実施形態において、結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド及び/又はCD8共受容体ポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドは、宿主細胞TRAC遺伝子座へと導入される。さらなる実施形態において、宿主細胞のTRBC遺伝子座の染色体ノックアウトが導入される。
【0185】
したがって、ある特定の実施形態において、内因性TRAC遺伝子座内に、本開示の結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド、本開示のCD8共受容体又はこれらの両方を含む宿主細胞(例えば、改変免疫細胞)が提供される。さらなる実施形態において、宿主細胞は、内因性TRBC遺伝子座の染色体ノックアウトを含む。
【0186】
別の態様において、本開示の改変免疫細胞(及び/又はポリヌクレオチド、ベクター又は結合性タンパク質)と、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤とを含む組成物が本明細書において提示される。
【0187】
本明細書においてまた、有効量の改変免疫細胞又は改変免疫細胞を含む組成物を含む単位用量も提示される。ある特定の実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない(すなわち、単位用量中に存在するナイーブT細胞の集団が、同等数のPBMCを有する患者試料と比較して、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満又は約1%未満である。)。
【0188】
一部の実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約50%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約50%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない。さらなる実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約60%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約60%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない。なおさらなる実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約70%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約70%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約80%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約80%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約85%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約85%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない。一部の実施形態において、単位用量は、(i)少なくとも約90%の改変CD4+ T細胞を含む組成物を、(ii)少なくとも約90%の改変CD8+ T細胞を含む組成物と組み合わせて、約1:1の比で含み、この場合、単位用量は、低減量のナイーブT細胞を含有するか、又はナイーブT細胞を実質的に含有しない。
【0189】
本開示の単位用量は、本明細書において記載される改変免疫細胞(すなわち、配列番号94に従う、WT-1抗原に特異的な結合性タンパク質を発現する)及び異なる抗原(例えば、異なるWT-1抗原(例えば、配列番号100を含む)又は例えば、BCMA、CD3、CEACAM6、c-Met、EGFR、EGFRvIII、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EphA2、IGF1R、GD2、O-アセチルGD2、O-アセチルGD3、GHRHR、GHR、FLT1、KDR、FLT4、CD44v6、CD151、CA125、CEA、CTLA-4、GITR、BTLA、TGFBR2、TGFBR1、IL6R、gp130、Lewis A、Lewis Y、TNFR1、TNFR2、PD1、PD-L1、PD-L2、HVEM、MAGE-A(例えば、MAGE-A1、MAGE-A3及びMAGE-A4を含む)、メソテリン、NY-ESO-1、PSMA、RANK、ROR1、TNFRSF4、CD40、CD137、TWEAK-R、HLA、HLAに結合した腫瘍関連ペプチド若しくは病原体関連ペプチド、HLAに結合したhTERTペプチド、HLAに結合したチロシナーゼペプチド、HLAに結合したKRASペプチド、LTβR、LIFRβ、LRP5、MUC1、OSMRβ、TCRα、TCRβ、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD52、CD56、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD86、CD123、CD171、CD276、B7H4、TLR7、TLR9、PTCH1、HA1-H、Robo1、α-フェトプロテイン(AFP)、Frizzled、OX40、PRAME、BRAF、コア結合因子、MR-1(Crowtherら、Nature Immunol.21:175~185(2020))及びSSX-2など、異なるタンパク質又は標的に由来する抗原)に特異的な結合性タンパク質を発現する改変免疫細胞を含みうることが理解される。例えば、単位用量は、WT-1:HLA複合体に特異的に結合する結合性タンパク質を発現する改変CD8T細胞及びCD19抗原に特異的に結合する結合性タンパク質(例えば、CAR)を発現する改変CD4T細胞(及び/又は改変CD8+ T細胞)を含みうる。
【0190】
本明細書において記載される実施形態のうちのいずれかにおいて、単位用量は、同等数又はほぼ同等数の、操作CD45RACD3CD8TM細胞及び改変CD45RACD3CD4TM細胞を含む。
【0191】
一部の実施形態において、(i)本明細書において開示される改変免疫細胞を含み、(ii)TCR Vα及びTCR Vβを含み、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能であり、任意に、HLAが、HLA-A0201を含み、任意に、(i)の改変免疫細胞と、(ii)の免疫細胞とが、各々独立に、T細胞、NK細胞及びNK-T細胞から選択される、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞をさらに含む組成物が提供される。
【0192】
ある特定のさらなる実施形態において、(ii)における免疫細胞の結合性タンパク質は、(a)配列番号101~103及び105~107のそれぞれの、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号108に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる;(b)配列番号109~110及び113~115のそれぞれの、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαは、配列番号112に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%)の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号116に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる又は(c)配列番号117~119及び121~123のそれぞれの、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号120に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号124に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる。
【0193】
使用
ある特定の態様において、本開示は、それを必要とするヒト対象へと、有効量の、本明細書において開示される任意の実施形態に従う結合性タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞又は組成物を投与することにより、WT-1の発現と関連する疾患又は障害を処置するための方法を対象とする。
【0194】
「~を処置する」又は「処置」又は「~を改善する」とは、対象(例えば、ヒト又は霊長動物、ウマ、ネコ、イヌ、ヤギ、マウス若しくはラットなどの非ヒト哺乳動物)の疾患、障害又は状態の医学的管理を指す。治療的利益又は予防的/防止的利益は、臨床転帰の改善;疾患と関連する症状の軽減若しくは緩和;症状の発生の低下;生活の質の改善;無疾患状態の延長;疾患の程度の減弱、疾患状態の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存;生存の延長又はこれらの任意の組合せを含む。
【0195】
本明細書において使用される「治療有効量」又は「有効量」とは、統計学的に有意な形において、臨床転帰の改善;疾患と関連する症状の軽減若しくは緩和;症状の発生の低下;生活の質の改善;無疾患状態の延長;疾患の程度の減弱、疾患状態の安定化;疾患進行の遅延;寛解;生存又は生存の延長を含む治療効果を結果としてもたらすのに十分な改変免疫細胞の量を指す。
【0196】
本明細書において使用される「統計学的に有意な」とは、スチューデントのt検定を使用して計算される場合の、0.050以下のp値を指し、測定される特定のイベント又は結果が、偶然生じた可能性が小さいことを指し示す。
【0197】
本開示の方法に従い処置されうる対象は、一般に、ヒト並びに獣医学及び/又は研究目的のためのサル及び類人猿など、他の霊長動物対象である。マウス又はラットもまた、研究目的で使用されうる。上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、対象は、ヒト対象でありうる。対象は、男性の場合もあり、女性の場合もあり、乳児対象、小児対象、若齢対象、成年及び高齢対象を含む、任意の適切な年齢でありうる。本開示に従う細胞は、医療技術分野における当業者により決定される通り、処置される疾患、状態又は障害に適切な形で投与されうる。上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、本明細書において記載される改変免疫細胞又は単位用量は、標的細胞(例えば、白血病細胞)に遭遇するように、静脈内投与される、腹腔内投与される、腫瘍内投与される、骨髄へと投与される、リンパ節へと投与される、又は脳脊髄液へと投与される。組成物の投与の適切な用量、投与の適切な持続期間及び投与頻度は、患者の状態;疾患、状態又は障害のサイズ、種類及び重症度;特定の形態の有効成分;及び投与の方法などの因子により決定される。
【0198】
単独で投与される、個々の有効成分又は単一の有効成分を発現する細胞に言及する場合に、治療有効量とは、単独における、この成分又はこの成分を発現する細胞の効果を指す。組合せに言及する場合に、治療有効量とは、逐次的に投与されるのであれ、同時に投与されるのであれ、有効成分又は治療効果を結果としてもたらす、有効成分を発現する細胞と組み合わされた補助的有効成分の組合せ量を指す。組合せはまた、1つを超える有効成分を発現する細胞でもありうる。
【0199】
本明細書において使用される「養子免疫療法(adoptive immune therapy)」又は「養子免疫療法(adoptive immunotherapy)」という用語は、天然に存在するか、又は遺伝子操作された疾患特異的免疫細胞又は抗原特異的免疫細胞(例えば、T細胞)の投与を指す。養子細胞免疫療法は、自家細胞免疫療法(免疫細胞は、レシピエントに由来する。)の場合もあり、同種細胞免疫療法(免疫細胞は、同じ種のドナーに由来する。)の場合もあり、同系細胞免疫療法(免疫細胞は、レシピエントと遺伝子的に同一なドナーに由来する。)の場合もある。
【0200】
WT-1の発現と関連する状態は、過小活性、過剰活性又は不適正活性のWT-1の細胞イベント又は分子イベントが存在し、典型的に、罹患細胞(例えば、白血病性細胞)内の、正常細胞内と比べて、通例、高レベル(統計学的有意性を伴う)のWT-1の発現から生じる、任意の障害又は状態を含む。このような障害又は状態を有する対象は、本明細書において記載される実施形態の組成物又は方法による処置から利益を得る。したがって、WT-1の過剰発現と関連する、一部の状態は、対象に、特定の障害に対する素因を与える病理学的状態など、急性障害及び急性疾患のほか、慢性障害及び慢性疾患を含みうる。
【0201】
WT-1の発現と関連する疾患及び障害は、当技術分野において公知であり、診断及び分類のための基準が確立されている、対象における、例えば、新生物性細胞、腫瘍細胞、非接触阻害細胞又は腫瘍原性形質転換細胞などを含む、異形成性細胞、がん性細胞及び/又は形質転換細胞(例えば、固形がん;リンパ腫及び急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病などの白血病を含む血液がん)の存在(例えば、Hanahan及びWeinberg、2011 Cell 144:646;Hanahan及びWeinberg 2000 Cell 100:57;Cavalloら、2011 Canc.Immunol.Immunother.60:319;Kyrigideisら、2010 J.Carcinog.9:3)を含む。ある特定の実施形態において、このようながん細胞は、これらの種類のがんのうちのいずれかを誘発し、逐次的に移植することが可能ながん幹細胞(例えば、Parkら、2009 Molec.Therap. 17:219を参照)を含む、急性骨髄性白血病、B細胞リンパ芽球性白血病、T細胞リンパ芽球性白血病又は骨髄腫の細胞でありうる。ある特定の実施形態に従い、WT-1の過剰発現により特徴づけられる、事実上、任意の種類のがんは、血液がん(例えば、急性骨髄性白血病(AML)を含む白血病、T細胞性リンパ腫又はB細胞性リンパ腫、骨髄腫など)を含む、本明細書において開示される組成物及び方法の使用を介して処置されうる。さらに、「がん」とは、充実性腫瘍、腹水腫瘍、血液又はリンパ性悪性腫瘍若しくは他の悪性腫瘍;結合組織悪性腫瘍;転移性疾患;臓器又は幹細胞の移植後における微小残存疾患;多剤耐性がん、原発悪性腫瘍若しくは続発悪性腫瘍、悪性腫瘍と関連する血管新生又は他の形態のがんを含む、細胞増殖の任意の加速化を指す場合がある。本明細書において開示される実施形態内においてまた、WT-1の過剰発現により特徴づけられるのか否かに関わらず、上記の種類の疾患のうちの1つだけが含まれるか、又は具体的状態が除外されうる、具体的実施形態も想定される。
【0202】
WT-1の過剰発現と関連する状態についての一部の例は、腫瘍、新生物、がん、悪性腫瘍などを含む、対象における過剰増殖性障害及び増殖性障害を含む。活性化細胞又は増殖細胞に加えて、過剰増殖性障害又は増殖性障害はまた、壊死によるのであれ、アポトーシスによるのであれ、細胞死過程の異常又は調節異常も含みうる。細胞死過程のこのような異常は、がん(原発悪性腫瘍、続発悪性腫瘍のほか、転移性悪性腫瘍を含む)又は他の状態を含む、様々な状態と関連しうる。
【0203】
ある特定の実施形態において、本発明における方法は、血液悪性腫瘍又は固形がんを処置するために有用である。例示的な血液悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(難治性AML及び再発性AMLを含み、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病(例えば、好酸球増多症を伴う、又はこれを伴わない)、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核芽球性白血病を含むAML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄球性白血病、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(難治性MM及び再発性MMを含むMM)を含む。
【0204】
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される方法は、胆管がん、膀胱がん、骨軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、乳癌腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、デスモイド腫瘍、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形性膠芽腫、膠芽腫、黒色腫、びまん性腹膜中皮腫、悪性胸膜中皮腫、神経膠腫、星状細胞腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝がん、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん(例えば、上皮卵巣がん、卵巣癌)、卵管がん、子宮内膜癌、膵がん、膵管腺癌、原発星状細胞腫瘍、原発甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞癌腫、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、精巣生殖細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、子宮癌肉腫又は子宮がんなどの固形がんを処置するために有用である。
【0205】
また、本明細書において記載される方法のうちのいずれかに従う使用のための結合性タンパク質、ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞及び/又は改変免疫細胞を含む医薬組成物(任意に、配列番号100:HLA複合体に結合することが可能な結合性タンパク質を発現する免疫細胞と組み合わせて)も提供される。医薬組成物は、医療技術分野における当業者により決定される通り、処置される(又は防止される)疾患又は状態に適切な形で投与されうる。組成物の投与の適切な用量及び投与の適切な持続期間及び投与頻度は、患者の健康状態、患者のサイズ(すなわち、体重、体格又は体表面積)、患者の状態の種類及び重症度、特定の形態の有効成分及び投与法などの因子により決定される。一般に、適切な用量及び処置レジメンは、組成物(複数可)を、治療利益及び/又は予防利益(完全寛解若しくは部分寛解の頻度の増大又は無病生存及び/若しくは全生存の延長又は症状の重症度の軽減など、臨床転帰の改善を含む、本明細書において記載される治療利益及び/又は予防利益など)をもたらすのに十分な量において施す。
【0206】
医薬組成物の有効量とは、本明細書において記載される、所望の臨床結果又は有益な処置のを達成するのに必要な投与量において、これに必要な期間にわたり十分な量を指す。有効量は、1回以上の投与において送達される場合もある。投与が、疾患又は疾患状態を有することが既知であるか、又はこれが確認されている対象へとなされる場合、処置に言及して、「治療量」という用語が使用されうるのに対し、「予防有効量」は、疾患又は疾患状態(例えば、これらの再発)に対して感受性であるか、又はこれらを発症する危険性がある対象への、防止コースとしての有効量の投与について記載するのに使用されうる。
【0207】
ある特定の実施形態において、方法は、TCR Vα及びTCR Vβを含み、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能であり、任意に、HLAが、HLA-A0201を含み、任意に、改変免疫細胞と、免疫細胞とが、各々独立に、T細胞、NK細胞及びNK-T細胞から選択される、結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞を施されたことがある、これらを施されている、又はこれらを施される対象へと、本明細書において提示される改変免疫細胞を投与するステップを含む。ある特定の実施形態において、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能な結合性タンパク質は、(a)配列番号101~103及び105~107のそれぞれの、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号108に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる;
(b)配列番号109~110及び113~115のそれぞれの、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号112に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号116に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる又は(c)配列番号117~119及び121~123のそれぞれの、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号120に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号124に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる。
【0208】
一般に、適切な投与量及び処置レジメンは、活性の分子又は細胞を、利益をもたらすのに十分な量において施す。このような応答は、処置対象における臨床転帰の、非処置対象と比較した改善(完全寛解若しくは部分寛解の頻度の増大又は無病生存の延長)を確立することによりモニタリングされうる。腫瘍タンパク質に対する、既存の免疫応答の増大は、一般に、臨床転帰の改善と相関する。このような免疫応答は一般に、当技術分野において、常套的であり、処置の前及び後において対象から得られる試料を使用して実施されうる、標準的な増殖アッセイ、細胞傷害アッセイ又はサイトカインアッセイを使用して査定されうる。
【0209】
予防的使用のために、用量は、疾患又は障害の発症を防止する、遅延させる、又はこれらと関連する疾患の重症度を軽減するのに十分な用量であるものとする。本明細書において記載される方法に従い投与される組成物の予防的利益は、前臨床研究(インビトロ及びインビボにおける動物研究を含めた)及び臨床研究を実施し、それらの全てが当業者によりたやすく実施されうる、適切な統計学的方法及び技法、生物学的方法及び技法並びに臨床的方法及び技法を介してこれらから得られるデータを解析することにより決定されうる。
【0210】
本明細書において想定されるある特定の処置法又は防止法は、細胞の染色体へと安定的に組み込まれる、又は染色体外核酸分子として存在する、本明細書において記載される所望の核酸分子を含む宿主細胞(自家の場合もあり、同種の場合もあり、同系の場合もある)を投与するステップを含む。例えば、このような細胞性組成物は、所望の、WT-1へとターゲティングされたT細胞組成物を、対象へと、養子免疫療法として投与するために、自家免疫系細胞、同種免疫系細胞又は同系免疫系細胞(例えば、T細胞、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞)を使用して、エクスビボで作出されうる。ある特定の実施形態において、免疫細胞は、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞又はこれらの任意の組合せである。さらなる実施形態において、免疫細胞は、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はこれらの任意の組合せである。
【0211】
組成物中又は単位用量中の細胞の量は、少なくとも1つの細胞(例えば、1つの改変CD8T細胞亜集団(例えば、任意に、メモリーCD8T細胞及び/又はナイーブCD8T細胞を含む);1つの改変CD4T細胞亜集団(例えば、任意に、メモリーCD4T細胞及び/又はナイーブCD4T細胞を含む))であるか、又は、細胞10個、例えば、細胞10個以下、10個以下、10個以下、10個以下、10個以下、10個以下、1010個以下又は1011個以下である、より典型的に、これらの個数を超える。ある特定の実施形態において、細胞は、約10~約1011個の細胞/1mの範囲で、好ましくは約10~約10個の細胞/1mの範囲で投与される。一部の実施形態において、投与される用量は、約3.3×10個以下の細胞/kgを含む。一部の実施形態において、投与される用量は、約1×10個以下の細胞/kgを含む。一部の実施形態において、投与される用量は、約3.3×10個以下の細胞/kgを含む。一部の実施形態において、投与される用量は、約1×10個以下の細胞/kgを含む。ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、約5×10個以下の細胞/kg、5×10個の細胞/kg、5×10個の細胞/kg又は約5×10個以下の細胞/kgを含む用量で、対象へと投与される。ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、少なくとも約5×10個の細胞/kg、5×10個の細胞/kg、5×10個の細胞/kg又は約5×10個以下の細胞/kgを含む用量で、対象へと投与される。細胞の数は、組成物が意図される最終的使用並びにその中に含まれる細胞の種類に依存する。例えば、結合性タンパク質を含有するように改変された細胞は、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上の、このような細胞を含有する細胞集団を含む。本明細書において提示される使用のために、細胞は、一般に、1リットル以下、500ml以下、250ml以下又は100ml以下の容量である。複数の実施形態において、所望の細胞の密度は、典型的に、1ml当たりの細胞10個を超え、一般に、1ml当たりの細胞10個を超え、一般に、1ml当たりの細胞10個以上である。細胞は、単回注入として投与される場合もあり、ある範囲の時間にわたる複数回注入として投与される場合もある。臨床的に関連する数の免疫細胞は、累積的に、細胞10、10、10、10、1010又は1011個と同等であるか、又はこれを超える複数回の注入へと分配されうる。ある特定の実施形態において、単位用量の改変免疫細胞は、同種ドナーに由来する造血幹細胞と共に(例えば、これらと同時に又は共時的に)共投与されうる。一部の実施形態において、単位用量中に含まれる改変免疫細胞のうちの1つ以上は、対象に対して自家である。
【0212】
本明細書において記載される医薬組成物は、密封されたアンプル又はバイアルなど、単位用量用の容器又は複数回投与用の容器により提示されうる。このような容器は、使用まで、製剤の安定性を保存するように凍結させられうる。ある特定の実施形態において、単位用量は、本明細書において記載される組換え宿主細胞を、約10個の細胞/1m~約1011個の細胞/1mの用量で含む。本明細書において記載される特定の組成物を、例えば、非経口投与若しくは静脈内投与又は非経口投与用若しくは静脈内投与用の製剤を含む、様々な処置レジメンにおいて使用するために適する投与レジメン及び処置レジメンの開発が提供される。
【0213】
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される改変免疫細胞を含む医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤をさらに含む。「薬学的に許容される賦形剤又は担体」又は「生理学的に許容される賦形剤又は担体」という用語は、本明細書においてより詳細に記載され、ヒト又は他の非ヒト哺乳動物対象への投与に適し、一般に、安全であるか、又は重篤な有害事象を引き起こさないと認識されている、生物学的に適合性の媒体、例えば、生理食塩液を指す。
【0214】
適切な賦形剤は、水、生理食塩液、デキストロース、グリセロールなど及びこれらの組合せを含む。複数の実施形態において、本明細書において開示される融合タンパク質又は宿主細胞を含む組成物は、適切な注入用媒質をさらに含む。適切な注入用媒質は、任意の等張性媒質製剤であることが可能であり、典型的に、通常の生理食塩液、Normosol R(Abbott)又はPlasma-Lyte A(Baxter)、水中に5%のデキストロース、リンゲル乳酸加液が用いられうる。注入用媒質は、ヒト血清アルブミン又は他のヒト血清成分を補充される場合がある。
【0215】
対象の組成物が、非経口投与される場合、組成物はまた、滅菌であり、水性又は油性である、溶液又は懸濁液も含みうる。適切な、非毒性の、非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒は、水、リンゲル液、等張性塩溶液、水との混合物中の、1,3-ブタンジオール、エタノール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールを含む。水性の溶液又は懸濁液は、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ砂又は酒石酸ナトリウムなど、1つ以上の緩衝剤をさらに含みうる。当然ながら、任意の投与量単位製剤の調製において使用される任意の素材は、薬学的に純粋であり、利用される量において、実質的に非毒性であるものとする。加えて、活性化合物は、持続放出調製物及び持続放出製剤へと組み込まれる場合もある。本明細書において使用される単位剤形とは、処置される対象のための単位投与量として適する、物理的に個別の単位を指し、各単位は、適切な医薬担体と会合して、所望の治療効果をもたらすように計算された所定数量の組換え細胞又は活性化合物を含有しうる。
【0216】
本明細書において使用される、組成物又は治療の投与とは、送達経路又は送達方式に関わりなく、組成物又は治療を、対象へと送達することを指す。投与は、持続的になされる場合もあり、間欠的になされる場合もあり、非経口的になされうる。投与は、認識された状態、疾患若しくは疾患状態を有するものとして、既に確認された対象を処置するか、又はこのような状態、疾患若しくは疾患状態に対して感受性であるか、若しくはこれらを発症する危険性がある対象を処置するための投与でありうる。補助治療との共投与は、任意の順序及び任意の投与スケジュール(例えば、1つ以上のサイトカインを伴う改変免疫細胞;カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量ミコフェノール酸プロドラッグ又はこれらの任意の組合せなど免疫抑制治療)における、複数の薬剤の同時的送達及び/又は逐次的送達を含みうる。
【0217】
ある特定の実施形態において、本明細書において記載される改変免疫細胞又は結合性タンパク質の、対象への複数回投与が行われるが、複数回投与は、約2~約4週間の投与間隔で行われる。さらなる実施形態において、サイトカインは、対象が、サイトカイン投与の前に、少なくとも3回又は4回にわたり改変免疫細胞を投与されることを条件として、逐次的に投与される。ある特定の実施形態において、サイトカインは、皮下投与される(例えば、IL-2、IL-15、IL-21)。なおさらなる実施形態において、処置される対象は、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量ミコフェノール酸プロドラッグ又はこれらの任意の組合せなどの免疫抑制治療を受けている。
【0218】
本開示の処置法又は防止法は、本明細書において開示される単位用量、細胞又は組成物の投与の前又は後において、さらなる処置を含みうる、処置コース又は処置レジメンの一部として、対象へと投与されうる。例えば、ある特定の実施形態において、単位用量の改変免疫細胞を施される対象は、造血細胞移植(HCT;骨髄破壊的HCT及び非骨髄破壊的HCTを含む。)を受けている、又はこれをかつて受けたことがある。一部の実施形態において、改変免疫細胞は、非骨髄破壊的造血細胞移植の、少なくとも2カ月後~少なくとも3カ月後に投与されうる。当技術分野において、HCTを実施するための技法及びレジメンが公知であり、臍帯血に由来する細胞、骨髄又は末梢血、造血幹細胞、動員幹細胞又は羊水に由来する細胞など、任意の適切なドナー細胞の移植を含みうる。したがって、ある特定の実施形態において、本開示の改変免疫細胞は、改変HCT療法において、造血幹細胞と共に投与される場合もあり、この直後に投与される場合もある。一部の実施形態において、HCTは、HLA構成要素をコードする遺伝子の染色体ノックアウト、TCRの構成要素又はこれらの両方をコードする遺伝子の染色体ノックアウトを含むドナー造血細胞を含む。
【0219】
一部の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質を施される対象は、かつて、リンパ球枯渇化学療法を受けたことがある。さらなる実施形態において、リンパ球枯渇化学療法は、シクロホスファミド、フルダラビン、抗胸腺細胞グロブリン又はこれらの組合せを含む。
【0220】
ある特定の実施形態において、対象は、かつて、AMLのための治療を受けたことがある、又はAMLを発症する若しくはAMLを進行させる危険性がある。
【0221】
本開示に従う方法は、1つ以上のさらなる薬剤を投与して、組合せ療法により、疾患又は障害を処置するステップをさらに含みうる。一部の実施形態において、方法は、改変免疫細胞又は結合性タンパク質を、免疫チェックポイント阻害剤と共に(共時的に、同時に、又は逐次的に)投与するステップをさらに含む。一部の実施形態において、方法は、改変免疫細胞を、刺激性免疫チェックポイント剤のアゴニストと共に投与するステップを含む。さらなる実施形態において、組合せ療法は、改変免疫細胞を、化学療法剤、放射線療法、手術、抗体又はこれらの任意の組合せなどの二次療法と共に投与するステップを含む。
【0222】
本明細書において使用される「免疫抑制剤(immune suppression agent)」又は「免疫抑制剤(immunosuppression agent)」という用語は、免疫応答を制御又は抑制する一助となる阻害性シグナルをもたらす、1つ以上の細胞、タンパク質、分子、化合物又は複合体を指す。例えば、免疫抑制剤は、免疫刺激を、部分的に、若しくは全面的に遮断する;免疫活性化を低下させる、これを防止する、若しくはこれを遅延させる;又は免疫抑制を増大させる、これを活性化させる、若しくはこれを上方調節する分子を含む。ターゲティングする(例えば、免疫チェックポイント阻害剤により)例示的な免疫抑制剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、CTLA4、B7-H3、B7-H4、CD244/2B4、HVEM、BTLA、CD160、TIM3、GAL9、KIR、PVR1G(CD112R)、PVRL2、アデノシン、A2aR、免疫抑制サイトカイン(例えば、IL-10、IL-4、IL-1RA、IL-35)、IDO、アルギナーゼ、VISTA、TIGIT、LAIR1、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5、Treg細胞又はこれらの任意の組合せを含む。
【0223】
免疫抑制剤の阻害剤(また、免疫チェックポイント阻害剤とも称される)は、化合物、抗体、抗体断片若しくは融合ポリペプチド(例えば、CTLA4-Fc又はLAG3-FcなどのFc融合)、アンチセンス分子、リボザイム若しくはRNAi分子又は低分子量有機分子でありうる。本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、方法は、改変免疫細胞又は結合性タンパク質を、単独における、又は任意の組合せにおける以下の免疫抑制性構成要素のうちのいずれか1つに対する、1つ以上の阻害剤と共に含みうる。
【0224】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、PD-1阻害剤、例えば、ピジリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、MEDI0680(旧称:AMP-514)、AMP-224、BMS-936558又はこれらの任意の組合せなど、PD-1特異的抗体又はその結合性断片と組み合わせて使用される。さらなる実施形態において、本開示の改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、BMS-936559、デュルバルマブ(MEDI4736)、アテゾリズマブ(RG7446)、アベルマブ(MSB0010718C)、MPDL3280A又はこれらの任意の組合せなど、PD-L1特異的抗体又はその結合性断片と組み合わせて使用される。
【0225】
ある特定の実施形態において、本開示の改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、LAG525、IMP321、IMP701、9H12、BMS-986016又はこれらの任意の組合せなどのLAG3阻害剤と組み合わせて使用される。
【0226】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、CTLA4の阻害剤と組み合わせて使用される。特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、イピリムマブ、トレメリムマブ、CTLA4-Ig融合タンパク質(例えば、アバタセプト、ベラタセプト)又はこれらの任意の組合せなど、CTLA4特異的抗体又はその結合性断片と組み合わせて使用される。
【0227】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、エノブリツズマブ(MGA271)、376.96又はこれらの両方など、B7-H3特異的抗体又はその結合性断片と組み合わせて使用される。B7-H4抗体の結合性断片は、例えば、Dangajら、Cancer Res.73:4820、2013において記載されている、scFv又はその融合タンパク質のほか、米国特許第9,574,000号並びにPCT公開WO2016/40724A1及び同WO2013/025779A1において記載されている結合性断片でありうる。
【0228】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、CD244の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0229】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、BLTA、HVEM、CD160又はこれらの任意の組合せの阻害剤と組み合わせて使用される。抗CD-160抗体については、例えば、PCT公開WO2010/084158において記載されている。
【0230】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、TIM3の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0231】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、Gal9の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0232】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、デコイアデノシン受容体など、アデノシンシグナル伝達の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0233】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、A2aRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0234】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、イリルマブ(BMS-986015)など、KIRの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0235】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、阻害性サイトカイン(典型的に、TGFβ以外のサイトカイン)又はTregの発生若しくは活性の阻害剤と組み合わせて使用される。
【0236】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、レボ-1-メチルトリプトファン、エパカドスタット(INCB024360;Liuら、Blood 115:3520~30、2010)、エブセレン(Terentisら、Biochem.49:591~600、2010)、インドキシモド、NLG919(Mautinoら、American Association for Cancer Research 2013年第104回年次大会、2013年4月6~10日)、1-メチル-トリプトファン(1-MT)-チラ-パザミン又はこれらの任意の組合せなど、IDO阻害剤と組み合わせて使用される。
【0237】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、N(オメガ)-ニトロ-L-アルギニンメチルエステル(L-NAME)、N-オメガ-ヒドロキシ-ノル-l-アルギニン(ノル-NOHA)、L-NOHA、2(S)-アミノ-6-ボロノヘキサン酸(ABH)、S-(2-ボロノエチル)-L-システイン(BEC)又はこれらの任意の組合せなど、アルギナーゼ阻害剤と組み合わせて使用される。
【0238】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、CA-170(Curis、Lexington、Mass.)など、VISTAの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0239】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞は、例えば、COM902(Compugen、Toronto、Ontario Canada)など、TIGITの阻害剤、例えば、COM701(Compugen)など、CD155の阻害剤又はこれらの両方と組み合わせて使用される。
【0240】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、PVRIG、PVRL2又はこれらの両方の阻害剤と組み合わせて使用される。抗PVRIG抗体については、例えば、PCT公開WO2016/134333において記載されている。抗PVRL2抗体については、例えば、PCT公開WO2017/021526において記載されている。
【0241】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、LAIR1阻害剤と組み合わせて使用される。
【0242】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5又はこれらの任意の組合せの阻害剤と組み合わせて使用される。
【0243】
ある特定の実施形態において、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、刺激性免疫チェックポイント分子の活性を増大させる(すなわち、アゴニストである)薬剤と組み合わせて使用される。例えば、改変免疫細胞又は結合性タンパク質は、CD137(4-1BB)アゴニスト(例えば、ウレルマブなど)、CD134(OX-40)アゴニスト(例えば、MEDI6469、MEDI6383又はMEDI0562など)、レナリドミド、ポマリドミド、CD27アゴニスト(例えば、CDX-1127など)、CD28アゴニスト(例えば、TGN1412、CD80又はCD86など)、CD40アゴニスト(例えば、CP-870,893、rhuCD40L又はSGN-40など)、CD122アゴニスト(例えば、IL-2など)、GITRのアゴニスト(例えば、PCT公開WO2016/054638において記載されているヒト化モノクローナル抗体など)、ICOS(CD278)のアゴニスト(例えば、GSK3359609、mAb 88.2、JTX-2011、Icos 145-1、Icos 314-8又はこれらの任意の組合せなど)と組み合わせて使用されうる。本明細書において開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、方法は、改変免疫細胞又は結合性タンパク質を、前出のうちのいずれかを、単独において、又は任意の組合せにおいて含む、刺激性免疫チェックポイント分子の1つ以上のアゴニストと共に投与するステップを含みうる。
【0244】
ある特定の実施形態において、組合せ療法は、改変免疫細胞又は結合性タンパク質及び非炎症性充実性腫瘍により発現されるがん抗原に特異的な抗体又はその抗原結合性断片、放射線処置、手術、化学療法剤、サイトカイン、RNAi又はこれらの任意の組合せのうちの1つ以上を含む二次療法を含む。
【0245】
ある特定の実施形態において、組合せ療法は、改変免疫細胞又は結合性タンパク質を投与するステップ及び放射線処置又は手術をさらに行うステップを含む。放射線療法は、当技術分野で周知であり、ガンマ照射などのX線療法及び放射線医薬療法を含む。対象における所与のがんの処置に適切な手術及び手技は、当業者に周知である。
【0246】
ある特定の実施形態において、組合せ療法は、改変免疫細胞又は結合性タンパク質を投与するステップ及び化学療法剤をさらに投与するステップを含む。化学療法剤は、クロマチン機能阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害薬、DNA損傷剤、代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ及び糖修飾アナログなど)DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(挿入剤など)及びDNA修復阻害剤を含むがこれらに限定されない。例示的な化学療法剤は、限定せずに述べると、以下の群:ピリミジンアナログ(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン及びシタラビン)及びプリンアナログ、葉酸アンタゴニスト及び類縁の阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの代謝拮抗剤/抗がん剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン及びビノレルビン)などの天然生成物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビンなどの微小管撹乱剤、エピジポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミン、オキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テモゾロミド、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド及びエトポシド(VP 16))を含む抗増殖剤/抗有糸分裂剤;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)及びマイトマイシンなどの抗生剤;酵素(L-アスパラギンを、全身的に代謝し、それら自身のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を欠乏させる、L-アスパラギナーゼ);抗血小板剤;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミド及びアナログ、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミン及びメチルメラミン(ヘキサメチルメラミン及びチオテパ)、スルホン酸アルキル(ブスルファン)、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU)及びアナログ、ストレプトゾシン)、トリアゼン(ダカルバジン(DTIC))などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸アナログ(メトトレキセート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモンアナログ(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)及びアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩及び他のトロンビン阻害剤);線溶剤(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ及びウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレフェルディン);免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス(FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP470、ゲニステイン)及び増殖因子阻害剤(血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤;線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断剤;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);キメラ抗原受容体;細胞周期阻害剤及び分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT-11)及びミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン及びプレドニゾロン);増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤、コレラ毒素などの毒素、リシン、シュードモナス属(Pseudomonas)外毒素、ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella pertussis)アデニル酸シクラーゼ毒素又はジフテリア毒素及びカスパーゼ活性化因子;並びにクロマチン撹乱剤を含む。
【0247】
サイトカインは、宿主免疫応答を、抗がん活性へと向かうように操作するのに使用されうる。例えば、Floros及びTarhini、Semin.Oncol.42(4):539~548、2015を参照。免疫による抗がん応答又は抗腫瘍応答を促進するために有用なサイトカインは、例えば、IFN-α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-24及びGM-CSFを、単独において、又は本開示の改変免疫細胞若しくは結合性タンパク質との任意の組合せにおいて含む。
【0248】
なおさらなる態様において、本開示の組成物を製造するための方法が提供される。ある特定の実施形態において、方法は、(i)本開示のベクターにより形質導入された宿主細胞のアリコートを、(ii)薬学的に許容される担体と組み合わせるステップを含む。ある特定の実施形態において、本開示のベクターは、養子移入療法(例えば、がん抗原をターゲティングする)における使用のために、宿主細胞(例えば、T細胞)にトランスフェクトする/宿主細胞(例えば、T細胞)へと形質導入するのに使用される。
【0249】
一部の実施形態において、方法は、アリコート分割する前に、形質導入された宿主細胞を培養するステップ及び形質導入された細胞を、ベクターを組み込んだ(すなわち、ベクターを発現する)細胞として選択するステップをさらに含む。さらなる実施形態において、方法は、培養及び選択の後において、アリコート分割する前に、形質導入された宿主細胞を拡大するステップを含む。本方法についての実施形態のうちのいずれかにおいて、製造された組成物又は単位用量は、後の使用のために凍結させられうる。例えば、造血幹細胞、T細胞、初代T細胞、T細胞系、NK細胞又はNK-T細胞を含む、任意の適切な宿主細胞が、本方法に従う組成物又は単位用量を製造するために使用されうる。具体的な実施形態において、方法は、CD8+ T細胞、CD4+ T細胞又はこれらの両方である宿主細胞を含む。
【0250】
本開示はまた、以下の例示的な実施形態も含む。
【0251】
実施形態1.結合性タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドを含む改変免疫細胞であって、コードされる結合性タンパク質が、(a)配列番号28、19、22若しくは25のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)を含むT細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン又はその変異体及びTCR β鎖可変(Vβ)ドメイン、又は(b)配列番号40、31、34若しくは37のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)を含むTCR Vβドメイン又はその変異体及びTCR Vαドメイン、又は(c)(a)のTCR Vαドメイン及び(b)のTCR Vβドメインを含み、コードされる結合性タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):ヒト白血球抗原(HLA)複合体に結合することが可能であり、任意に、HLAが、HLA-A0201を含む、改変免疫細胞。
【0252】
実施形態2.コードされる結合性タンパク質が、4.0以上又は4.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、実施形態1に記載の改変免疫細胞。
【0253】
実施形態3.コードされる結合性タンパク質が、5.0以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、実施形態1又は2に記載の改変免疫細胞。
【0254】
実施形態4.コードされる結合性タンパク質が、5.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0255】
実施形態5.コードされる結合性タンパク質が、6.0以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0256】
実施形態6.コードされる結合性タンパク質が、6.5以上のIFNγ産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0257】
実施形態7.HLAが、HLA-A201を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0258】
実施形態8.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-4μM、10-5μM又は10-6μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞(例えば、HLA-A0201+)と共に、4時間にわたり共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの50%以上が、IFN-γを産生し、抗原提示細胞が、任意に、T2細胞を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0259】
実施形態9.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に共培養される(例えば、約24時間にわたり)場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの10%以上が、Nur77であり、抗原提示細胞が、任意に、T2細胞、Jurkat細胞又はこれらの両方を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0260】
実施形態10.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの15%以上が、Nur77である、実施形態9に記載の改変免疫細胞。
【0261】
実施形態11.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの20%以上が、Nur77である、実施形態9又は10に記載の改変免疫細胞。
【0262】
実施形態12.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの40%以上が、Nur77である、実施形態9~11のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0263】
実施形態13.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-2μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの50%以上が、Nur77である、実施形態9~12のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0264】
実施形態14.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-3μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの10%以上が、Nur77である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0265】
実施形態15.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を10-3μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの15%以上が、Nur77である、実施形態14に記載の改変免疫細胞。
【0266】
実施形態16.改変免疫細胞の集団が、共培養物中のペプチド濃度を約10-3μMとして、アミノ酸配列RMFPNAPYL(配列番号94)を含むか又はそれからなるペプチドをパルスされた抗原提示細胞と共に(例えば、約24時間にわたり)共培養される場合に、集団中の改変免疫細胞のうちの20%以上が、Nur77である、実施形態14又は15に記載の改変免疫細胞。
【0267】
実施形態17.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの11%以上を死滅させることが可能である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0268】
実施形態18.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの12%以上を死滅させることが可能である、実施形態17に記載の改変免疫細胞。
【0269】
実施形態19.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの14%以上を死滅させることが可能である、実施形態17又は18に記載の改変免疫細胞。
【0270】
実施形態20.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの15%以上を死滅させることが可能である、実施形態17~19のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0271】
実施形態21.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの20%以上を死滅させることが可能である、実施形態17~20のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0272】
実施形態22.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に30:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの25%以上を死滅させることが可能である、実施形態17~21のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0273】
実施形態23.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に10:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの10%以上を死滅させることが可能である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0274】
実施形態24.改変免疫細胞とHLA-A0201MDA-MB-468細胞とが試料中に1:1の比で存在する場合に、試料中のHLA-A0201MDA-MB-468細胞のうちの約5%以上を死滅させることが可能である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0275】
実施形態25.改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中のPanc1細胞のうちの21%以上を死滅させることが可能である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0276】
実施形態26.改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中のPanc1細胞のうちの22%以上を死滅させることが可能である、実施形態25に記載の改変免疫細胞。
【0277】
実施形態27.改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中のPanc1細胞のうちの23%以上を死滅させることが可能である、実施形態25又は26に記載の改変免疫細胞。
【0278】
実施形態28.改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中のPanc1細胞のうちの24%以上を死滅させることが可能である、実施形態25~27のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0279】
実施形態29.改変免疫細胞とPanc1細胞とが30:1の比で存在する場合に、試料中のPanc1細胞のうちの25%以上を死滅させることが可能である、実施形態25~28のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0280】
実施形態30.配列番号82に示されるアミノ酸配列を有するTCRα鎖及び配列番号83に示されるアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含むT細胞受容体をコードするポリヌクレオチドを含む参照免疫細胞と比較して、4時間にわたる共培養において、HLA-A0201MDA-MB-468細胞及び/又はPanc1細胞に対する増大した殺滅活性を有する、実施形態1~29のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0281】
実施形態31.コードされる結合性タンパク質が、CD8に非依存的に、又はCD8の非存在下において、細胞表面におけるWT-1ペプチド:HLA複合体に結合することが可能である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0282】
実施形態32.(i)コードされるVβドメインが、配列番号16、5、6、7、8、13、14若しくは15のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(ii)コードされるVαドメインが、配列番号12、1、2、3、4、9、10若しくは11のうちのいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、実施形態1~31のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0283】
実施形態33.(i)CDRのうちの少なくとも3つ又は4つが、突然変異を有さず;(ii)突然変異を有するCDRが、2つ以下のみのアミノ酸置換、5つ以下の連続アミノ酸欠失又はこれらの組合せを有し;(iii)コードされる結合性タンパク質が、任意に、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2.、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5以上のインターフェロン-ガンマ(IFNγ)産生pEC50を伴って、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合する能力を保持することを条件として、コードされるVβドメインが、配列番号16、5、6、7、8、13、14若しくは15のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、及び/又はコードされるVαドメインが、配列番号12、1、2、3、4、9、10若しくは11のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、実施形態1~32のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0284】
実施形態34.(i)コードされるCDR3βが、配列番号40に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるCDR3αが、配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(ii)コードされるCDR3βが、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるCDR3αが、配列番号19に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(iii)コードされるCDR3βが、配列番号34に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるCDR3αが、配列番号22に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は(iv)コードされるCDR3βが、配列番号37に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるCDR3αが、配列番号25に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、実施形態1~33のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0285】
実施形態35.(i)コードされるVβドメインが、配列番号38、29、32若しくは35のうちのいずれか1つのCDR1βアミノ酸配列及び/又は配列番号39、30、33若しくは36のうちのいずれか1つのCDR2βアミノ酸配列を含む;並びに/又は(ii)コードされるVαドメインが、配列番号26、17、20若しくは23のうちのいずれか1つのCDR1αアミノ酸配列及び/又は配列番号27、18、21若しくは24のうちのいずれか1つのCDR2αアミノ酸配列を含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0286】
実施形態36.コードされるTCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインが、(i)それぞれ、配列番号26~28及び38~40;(ii)それぞれ、配列番号23、27、28及び38~40;(iii)それぞれ、配列番号17~19及び29~31;(iv)それぞれ、配列番号20~22及び32~34又は(v)それぞれ、配列番号23~25及び35~37のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0287】
実施形態37.コードされるTCR Vβドメインが、(i)TRBJ02-03遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列及び/又は(ii)TRBV06-05遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列、TRBV07-09遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列若しくはTRBV20-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0288】
実施形態38.コードされるTCR Vαドメインが、(i)TRAJ43遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列及び/又は(ii)TRAV20-02遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列;TRAV38DV08遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列若しくはTRAV38-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、実施形態1~37のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0289】
実施形態39.
(i)コードされるTCR Vβドメインが、TRBJ02-03遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;及び(ii)コードされるTCR Vαドメインが、TRAJ43遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、実施形態38に記載の改変免疫細胞。
【0290】
実施形態40.
(i)コードされるTCR Vβドメインが、TRBV06-05遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;及び(ii)コードされるTCR Vαドメインが、TRAV20遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、実施形態38に記載の改変免疫細胞。
【0291】
実施形態41.
(i)コードされるTCR Vβドメインが、TRBV07-09遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;及び(ii)コードされるTCR Vαドメインが、TRAV38DV08遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、実施形態38に記載の改変免疫細胞。
【0292】
実施形態42.
(i)コードされるTCR Vβドメインが、TRBV20-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む;及び(ii)コードされるTCR Vαドメインが、TRAV38-01遺伝子セグメントに従うアミノ酸配列を含む、実施形態38に記載の改変免疫細胞。
【0293】
実施形態43.(i)コードされるVβドメインが、配列番号16若しくは8に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号12若しくは4に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(ii)コードされるVβドメインが、配列番号13若しくは5に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号9若しくは1に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(iii)コードされるVβドメインが、配列番号14若しくは6に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号10若しくは2に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は(iv)コードされるVβドメインが、配列番号15若しくは7に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなり、コードされるVαドメインが、配列番号11若しくは3に示されるアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、実施形態1~42のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0294】
実施形態44.コードされる結合性タンパク質が、(i)TCRα鎖定常ドメイン(Cα)若しくはその断片及び/又は(ii)TCRβ鎖定常ドメイン(Cβ)若しくはその断片をさらに含む、実施形態1~43のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0295】
実施形態45.コードされるCαが、配列番号41~44のうちのいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態44に記載の改変免疫細胞。
【0296】
実施形態46.コードされるCβが、配列番号45に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態44又は45に記載の改変免疫細胞。
【0297】
実施形態47.コードされる結合性タンパク質が、(i)配列番号61若しくは57に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号53若しくは49に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖;(ii)配列番号58若しくは54に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号50若しくは46に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖;(iii)配列番号59若しくは55に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号51若しくは52に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖又は(iv)配列番号60若しくは56に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRβ鎖、及び配列番号52若しくは48に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなるTCRα鎖を含む、実施形態44~46のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0298】
実施形態48.コードされる結合性タンパク質が、TCR、キメラ抗原受容体(CAR)又は単鎖TCR(scTCR)である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0299】
実施形態49.免疫細胞が、ヒト免疫系細胞である、実施形態1~48のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0300】
実施形態50.免疫細胞が、T細胞、任意に、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞若しくはγδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、NK-T細胞、樹状細胞又はこれらの任意の組合せである、実施形態1~49のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0301】
実施形態51.T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、幹細胞メモリーT細胞又はこれらの任意の組合せである、実施形態50に記載の改変免疫細胞。
【0302】
実施形態52.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、免疫細胞での発現についてコドン最適化されている、実施形態1~51のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0303】
実施形態53.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号62~77のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、実施形態1~52のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0304】
実施形態54.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、(i)配列番号77に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号69に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド;(ii)配列番号74に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号66に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド;(iii)配列番号75に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号67に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド又は(iv)配列番号76に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド及び配列番号68に示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、実施形態53に記載の改変免疫細胞。
【0305】
実施形態55.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、Vβコードポリヌクレオチドと、Vαコードポリヌクレオチドとの間に配置された自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態1~54のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0306】
実施形態56.コードされる自己切断型ペプチドが、配列番号84~88のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態55に記載の改変免疫細胞。
【0307】
実施形態57.自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチドが、配列番号89~93のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含むか、又はそれからなる、実施形態55又は56に記載の改変免疫細胞。
【0308】
実施形態58.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、5’末端から3’末端への(TCRβ鎖コードポリヌクレオチド)-(自己切断型ペプチドコードポリヌクレオチド)-(TCRα鎖コードポリヌクレオチド)の構造を有する、実施形態55~57のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0309】
実施形態59.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号78~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、実施形態55~58のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0310】
実施形態60.結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号78~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列を含むか又はそれからなるポリヌクレオチドを含む、実施形態53に記載の改変免疫細胞。
【0311】
実施形態61.(i)CD8共受容体α鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体α鎖であるか、若しくはそれを含む異種ポリヌクレオチド;(ii)CD8共受容体β鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体β鎖であるか、若しくはそれを含む異種ポリヌクレオチド又は(iii)(i)のポリヌクレオチド及び(ii)のポリヌクレオチドをさらに含み、任意に、宿主細胞が、CD4+ T細胞を含む、実施形態1~60のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0312】
実施形態62.
(a)CD8共受容体α鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体α鎖であるか、又はそれを含む異種ポリヌクレオチド;(b)CD8共受容体β鎖の細胞外部分を含むポリペプチドをコードする異種ポリヌクレオチドであって、任意に、コードされるポリペプチドが、CD8共受容体β鎖であるか、又はそれを含む異種ポリヌクレオチド及び(c)(a)のポリヌクレオチドと(b)のポリヌクレオチドとの間に配置された自己切断型ペプチドをコードするポリヌクレオチド
を含む、実施形態61に記載の宿主細胞。
【0313】
実施形態63.免疫細胞が、PD-1遺伝子、LAG3遺伝子、TIM3遺伝子、CTLA4遺伝子、HLA構成要素遺伝子、TCR構成要素遺伝子又はこれらの任意の組合せの染色体遺伝子ノックアウトを含む、実施形態1~62のいずれか1つに記載の改変免疫細胞。
【0314】
実施形態64.染色体遺伝子ノックアウトが、α1マクログロブリン遺伝子、α2マクログロブリン遺伝子、α3マクログロブリン遺伝子、β1ミクログロブリン遺伝子又はβ2ミクログロブリン遺伝子又はこれらの任意の組合せから選択されるHLA構成要素遺伝子のノックアウトを含む、実施形態63に記載の改変免疫細胞。
【0315】
実施形態65.染色体遺伝子ノックアウトが、TCRα可変領域遺伝子、TCRβ可変領域遺伝子、TCR定常領域遺伝子又はこれらの任意の組合せから選択されるTCR構成要素遺伝子のノックアウトを含む、実施形態63又は64に記載の改変免疫細胞。
【0316】
実施形態66.結合性タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチドであって、コードされる結合性タンパク質が、TCR Vαドメイン及びTCR Vβドメインを含み、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能であり、(i)コードされるVαドメインが、配列番号28、19、22又は25のうちのいずれか1つに示される、CDR3アミノ酸配列を含む;(ii)コードされるVβドメインが、配列番号40、31、34又は37のうちのいずれか1つに示される、CDR3アミノ酸配列を含む;(iii)コードされるVαドメインが、配列番号26、17、20又は23のうちのいずれか1つに示される、CDR1アミノ酸配列を含む;(iv)コードされるVβドメインが、配列番号38、32又は35のうちのいずれか1つに示される、CDR1アミノ酸配列を含む;(v)コードされるVαドメインが、配列番号27、18、21又は24のうちのいずれか1つに示される、CDR2アミノ酸配列を含む;(vi)コードされるVβドメインが、配列番号39、30、33又は36のうちのいずれか1つに示される、CDR2アミノ酸配列を含む;(vii)コードされるVαドメインが、配列番号4、1~3、12又は9~11のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(viii)コードされるVβドメインが、配列番号8、5~7、16又は13~15のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(ix)コードされるTCR Vαが、TCRα鎖内に含まれ、TCRα鎖が、配列番号53及び46~52のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる;(x)コードされるTCR Vβが、TCRβ鎖内に含まれ、TCRβ鎖が、配列番号61及び54~60のうちいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、若しくはそれからなる、又は(xi)(i)~(x)の任意の組合せである、単離ポリヌクレオチド。
【0317】
実施形態67.ポリヌクレオチドが、宿主細胞での発現についてコドン最適化されており、任意に、宿主細胞が、ヒトT細胞、ヒトNK細胞又はヒトNK-T細胞である、実施形態66に記載の単離ポリヌクレオチド。
【0318】
実施形態68.ポリヌクレオチドが、配列番号62~81のうちのいずれか1つに示されるポリヌクレオチド配列に対して少なくとも75%の同一性を有するポリヌクレオチドを含む、実施形態66又は67に記載の単離ポリヌクレオチド。
【0319】
実施形態69.実施形態66~68のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【0320】
実施形態70.レンチウイルスベクター又はレトロウイルスベクターである、実施形態69に記載のベクター。
【0321】
実施形態71.実施形態66~68のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含み、コードされる結合性タンパク質を発現することが可能な宿主細胞。
【0322】
実施形態72.(i)実施形態1~65のいずれか1つに記載の改変免疫細胞;(ii)実施形態66~68のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド;(iii)実施形態69若しくは70に記載のベクター及び/又は(iv)実施形態71に記載の宿主細胞;並びに薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む組成物。
【0323】
実施形態73.
(i)実施形態1~65のいずれか1つに記載の改変免疫細胞;並びに(ii)TCR Vα及びTCR Vβを含み、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能である結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞であって、任意に、HLAが、HLA-A0201を含み、任意に、(i)の改変免疫細胞と、(ii)の免疫細胞とが、各々独立に、T細胞、NK細胞及びNK-T細胞から選択される、免疫細胞を含む、実施形態72に記載の組成物。
【0324】
実施形態74.(ii)における免疫細胞の結合性タンパク質が、(a)それぞれ、配列番号101~103及び105~107のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号108に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる;(b)それぞれ、配列番号109~110及び113~115のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号112に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号116に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる又は(c)それぞれ、配列番号117~119及び121~123のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号120に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号124に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる実施形態73に記載の組成物。
【0325】
実施形態75.WT-1の発現と関連する疾患又は障害を有する対象を処置するための方法であって、有効量の、(i)実施形態1~65のいずれか1つに記載の改変免疫細胞;(ii)実施形態66~68のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド;(iii)実施形態69若しくは70に記載のベクター;(iv)実施形態71に記載の宿主細胞及び/又は(v)実施形態72~74のいずれか1つに記載の組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
【0326】
実施形態76.TCR Vα及びTCR Vβを含み、VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能である結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞を施されたことがある、これらを施されている、又はこれらを施される対象へと、実施形態1~65のいずれか1つに記載の改変免疫細胞を投与するステップを含み、任意に、HLAが、HLA-A0201を含み、任意に、改変免疫細胞及び免疫細胞が、各々独立に、T細胞、NK細胞及びNK-T細胞から選択される、実施形態75に記載の方法。
【0327】
実施形態77.VLDFAPPGA(配列番号100):HLA複合体に特異的に結合することが可能な結合性タンパク質が、(a)それぞれ、配列番号101~103及び105~107のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号104に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号108に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる;(b)それぞれ、配列番号109~110及び113~115のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号112に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号116に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる又は(c)それぞれ、配列番号117~119及び121~123のCDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β及びCDR3βのアミノ酸配列を含み、任意に、(1)Vαが、配列番号120に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、及び/又は(2)Vβが、配列番号124に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するか、それを含むか、若しくはそれからなる、実施形態76に記載の方法。
【0328】
実施形態78.疾患又は障害が、血液悪性腫瘍又は固形がんである、実施形態75~77のいずれか1つに記載の方法。
【0329】
実施形態79.血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(難治性AML及び再発性AMLを含み、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病(例えば、好酸球増多症を伴う、又はこれを伴わない)、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核芽球性白血病を含むAML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄球性白血病、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(難治性MM及び再発性MMを含むMM)から選択される、実施形態78に記載の方法。
【0330】
実施形態80.固形がんが、胆管がん、膀胱がん、骨軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、乳癌腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、デスモイド腫瘍、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形性膠芽腫、膠芽腫、黒色腫、びまん性腹膜中皮腫、悪性胸膜中皮腫、神経膠腫、星状細胞腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝がん、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん(例えば、上皮卵巣がん、卵巣癌)、卵管がん、子宮内膜癌、膵がん、膵管腺癌、原発星状細胞腫瘍、原発甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞癌腫、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、精巣生殖細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、子宮癌肉腫又は子宮がんから選択される、実施形態78に記載の方法。
【0331】
実施形態81.改変免疫細胞が、異種ポリヌクレオチドを含むようにエクスビボで改変される、実施形態75~80のいずれか1つに記載の方法。
【0332】
実施形態82.改変免疫細胞が、対象に対して、同種、同系又は自家である、実施形態75~81のいずれか1つに記載の方法。
【0333】
実施形態83.改変免疫細胞が、造血前駆細胞又はヒト免疫系細胞である、実施形態75~82のいずれか1つに記載の方法。
【0334】
実施形態84.免疫系細胞が、CD4T細胞、CD8T細胞、CD4CD8ダブルネガティブT細胞、γδ T細胞、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞又はこれらの任意の組合せである、実施形態83に記載の方法。
【0335】
実施形態85.T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞又はこれらの任意の組合せである、実施形態84に記載の方法。
【0336】
実施形態86.改変免疫細胞の複数回用量を対象に投与するステップを含む、実施形態75~85のいずれか1つに記載の方法。
【0337】
実施形態87.複数回用量が、約2~約4週間の投与間隔で投与される、実施形態86に記載の方法。
【0338】
実施形態88.改変免疫細胞が、約10個の細胞/kg~約1011個の細胞/kgの用量で対象に投与される、実施形態75~87のいずれか1つに記載の方法。
【0339】
実施形態89.サイトカインを対象に投与するステップをさらに含む、実施形態75~88のいずれか1つに記載の方法。
【0340】
実施形態90.サイトカインが、IL-2、IL-15、IL-21又はこれらの任意の組合せである、実施形態89に記載の方法。
【0341】
実施形態91.サイトカインが、IL-2であり、改変免疫細胞と共に同時に又は逐次的に投与される、実施形態90に記載の方法。
【0342】
実施形態92.対象に、サイトカイン投与前に少なくとも3回又は4回、改変免疫細胞が投与されることを条件として、サイトカインが逐次的に投与される、実施形態91に記載の方法。
【0343】
実施形態93.サイトカインが、IL-2であり、皮下投与される、実施形態89~92のいずれか1つに記載の方法。
【0344】
実施形態94.対象が、免疫抑制治療を受けている、実施形態75~93のいずれか1つに記載の方法。
【0345】
実施形態95.免疫抑制治療が、カルシニューリン阻害剤、コルチコステロイド、微小管阻害剤、低用量ミコフェノール酸プロドラッグ又はこれらの任意の組合せから選択される、実施形態94に記載の方法。
【0346】
実施形態96.対象が、非骨髄破壊的造血細胞移植又は骨髄破壊的造血細胞移植を受けたことがある、実施形態75~95のいずれか1つに記載の方法。
【0347】
実施形態97.対象に、非骨髄破壊的造血細胞移植の少なくとも3カ月後に改変免疫細胞が投与される、実施形態96に記載の方法。
【0348】
実施形態98.対象に、骨髄破壊的造血細胞移植の少なくとも2カ月後に改変免疫細胞が投与される、実施形態97に記載の方法。
【0349】
実施形態99.対象が、AMLの治療を以前に受けたことがある、実施形態75~98のいずれか1つに記載の方法。
【0350】
実施形態100.WT-1の発現と関連する疾患又は障害の処置における使用のための、(i)実施形態1~65のいずれか1つに記載の改変免疫細胞;(ii)実施形態66~68のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド;(iii)実施形態69若しくは70に記載のベクター及び/又は(iv)実施形態71に記載の宿主細胞を含む組成物。
【0351】
実施形態101.WT-1の発現と関連する疾患又は障害の処置のための医薬の製造における使用のための、(i)実施形態1~65のいずれか1つに記載の改変免疫細胞;(ii)実施形態66~68のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド;(iii)実施形態69若しくは70に記載のベクター及び/又は(iv)実施形態71に記載の宿主細胞を含む組成物。
【0352】
実施形態102.疾患又は障害が、血液悪性腫瘍又は固形がんである、実施形態100又は101に記載の使用のための組成物。
【0353】
実施形態103.血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(難治性AML及び再発性AMLを含み、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病(例えば、好酸球増多症を伴う、又はこれを伴わない)、急性単球性白血病、急性赤白血病、及び急性巨核芽球性白血病を含むAML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄球性白血病、慢性好酸球性白血病(CEL)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)又は多発性骨髄腫(難治性MM及び再発性MMを含むMM)から選択される、実施形態102に記載の使用のための組成物。
【0354】
実施形態104.固形がんが、胆管がん、膀胱がん、骨軟部組織癌、脳腫瘍、乳がん、乳癌腫、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん、デスモイド腫瘍、胚性がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、胃腺癌、多形性膠芽腫、膠芽腫、黒色腫、びまん性腹膜中皮腫、悪性胸膜中皮腫、神経膠腫、星状細胞腫、婦人科腫瘍、頭頸部扁平上皮癌、肝がん、肝細胞癌、肺がん、非小細胞肺がん、悪性黒色腫、骨肉腫、卵巣がん(例えば、上皮卵巣がん、卵巣癌)、卵管がん、子宮内膜癌、膵がん、膵管腺癌、原発星状細胞腫瘍、原発甲状腺がん、前立腺がん、腎がん、腎細胞癌腫、横紋筋肉腫、皮膚がん、軟部組織肉腫、骨原性肉腫、精巣生殖細胞腫瘍、尿路上皮がん、子宮肉腫、子宮癌肉腫又は子宮がんから選択される、実施形態102に記載の使用のための組成物。
【0355】
実施形態105.T細胞受容体(TCR)α鎖可変(Vα)ドメイン及びTCRβ鎖可変(Vβ)ドメインを含む結合性タンパク質であって、Vαドメインが、(i)配列番号28、19、22又は25若しくは28のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3α)又はその変異体;(ii)配列番号26、17、20若しくは23のうちのいずれか1つのCDR1アミノ酸配列(CDR1α);(iii)配列番号27、18、21若しくは24のうちのいずれか1つのCDR2アミノ酸配列(CDR2α);(iv)配列番号1~4又は9~12のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列又は(v)(i)~(iv)の任意の組合せを含む;Vβドメインが、(vi)配列番号40、31、34若しくは37のうちのいずれか1つに従うCDR3アミノ酸配列(CDR3β)又はその変異体;(vii)配列番号38、29、32又は35のうちのいずれか1つのCDR1アミノ酸配列(CDR1β);(viii)配列番号39、30、33又は36のうちのいずれか1つのCDR2アミノ酸配列(CDR2β);(ix)配列番号5~8又は13~16のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列又は(x)(vi)~(x)の任意の組合せを含み、実施形態105に記載の結合性タンパク質が、RMFPNAPYL(配列番号94):HLA複合体に結合することが可能であり、任意に、HLAが、HLA-A0201を含む、結合性タンパク質。
【0356】
実施形態106.(1)TCRα鎖定常ドメイン(Cα)若しくはその断片及び/又は(2)TCRβ鎖定常ドメイン(Cβ)若しくはその断片をさらに含む、実施形態105に記載の結合性タンパク質。
【0357】
実施形態107.Cαが、配列番号41~44のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態106に記載の結合性タンパク質。
【0358】
実施形態108.Cβが、配列番号45のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態106又は107に記載の結合性タンパク質。
【0359】
実施形態109.実施形態105~108のいずれか1つに記載の結合性タンパク質をコードする単離ポリヌクレオチド。
【0360】
実施形態110.宿主細胞での発現についてコドン最適化されている、実施形態109に記載のポリヌクレオチド。
【0361】
実施形態111.実施形態109~110のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む改変免疫細胞であって、ポリヌクレオチドが、免疫細胞に対して異種である、改変免疫細胞。
【0362】
配列
【0363】
【化1】
【実施例
【0364】
[実施例1]
WT-1ペプチドに特異的なTCRの同定及び特徴付け
4例のドナーに由来するCD8T細胞を、WT-1ペプチドであるRMFPNAPYL(配列番号94)(Ho、Greenbergら、2006)によりパルスされた自家樹状細胞(DC)と共に培養した。T細胞系を、CD8非依存性(CD8i)WT-1ペプチド:HLA四量体と組み合わせ、染色し、高四量体染色細胞について分取した。四量体染色が高度な、合計40のポリクローナルT細胞系を同定した。各TCRクローン型を定量するために、分取されたT細胞試料及び全非分取試料の画分の両方を、TCRレパートリー解析(Adaptive Biotechnologies)により解析した。高四量体染色細胞の画分はまた、単一細胞RNAシーケンシング及びTCR対合(10X genomics)によっても解析した。分取集団内における各クローン型のエンリッチメント倍数の、非分取集団と対比した比較及び各クローン型によるCD3表面発現により、24のTCRクローン型を、WT-1特異的クローン型として同定した(図1)。これらのうち、10のTCRクローン型を、合成のために選択した。候補TCRを発現するように、TCRα/TCRβ欠損J76 Jurkat T細胞への形質導入を行った。相対WT-1ペプチド:HLA四量体染色を、トランスジェニックTCRの全表面発現についてのマーカーであるCD3発現と比較して測定することにより、各候補TCRの、WT-1に対するアフィニティーを評価した。結果を、配列番号82に従うα鎖及び配列番号83に従うβ鎖を有する、WT-1ペプチド:HLA特異的TCRを発現する細胞による結果と比較した。データを、図2A~2Cに示す。
【0365】
Nur77-tomato活性化マーカーを発現するTCR形質導入Jurkat細胞を、ペプチドの存在下における活性化について評価した。データを、図3Aに示す。
【0366】
さらなる研究のために選択された、8つのTCRのうちの1つを発現するように、ドナーPMBCから単離されたCD8+ T細胞への形質導入を行った。1週間後、形質導入された細胞を、WT-1ペプチド:HLA四量体染色及びCD8発現について分取した(図4A)。四量体CD8T細胞を拡大し、IFNγの産生についてアッセイした。拡大された抗原特異的細胞を、滴定濃度のWT-1ペプチドをパルスされたT2標的細胞と共に、4時間にわたり培養し、フローサイトメトリーにより、IFNγの産生を決定した(図4B)。各TCRについて、ペプチドに対するEC50を計算するために、IFNγ産生細胞の百分率を、非線形回帰による用量反応曲線へと当てはめた(図4C)。
【0367】
EC50値が最も小さい2つのTCRを発現するT細胞を、腫瘍細胞溶解を誘導する能力について、WT-1特異的参照TCRを発現するT細胞と比較した。HLA-A2を発現するように形質導入された腫瘍細胞系であるMDA-MB-468及び天然のHLA_A2腫瘍細胞系であるPanc-1に、51Crをロードした。腫瘍細胞標的に対する漸減用量のエフェクターT細胞に応答するCrの放出を測定することにより、TCR形質導入T細胞媒介性殺滅を計算した(図5A及び5B)。
【0368】
例示的なTCR DL10を発現するT細胞を、IFN-γの産生(図6)及び腫瘍細胞系細胞の増殖を低減する能力(図7)についてさらに探索した。IFN-γの産生のために、初代CD8+ T細胞へと、参照TCR又はTCRDL10を形質導入し、図6に表示のペプチドをパルスされたT2標的細胞と共に培養した。4時間後、細胞内フローサイトメトリーにより、IFNγの産生について評価し、Graphpad Prismにおける非線形回帰により、IFNγ陽性パーセントを、用量反応曲線へと当てはめた。腫瘍の増殖をコントロールする能力について評価するために、参照TCR(配列番号82に示されるアミノ酸配列を有するTCRα鎖及び配列番号83に示されるアミノ酸配列を有するTCRβ鎖を含む)又はTCRDL10を、初代CD8+ T細胞へと形質導入し、IncuCyteアッセイにおいて、HLA-A2+ WT1+膵臓腫瘍細胞系であるPanc-1(赤色蛍光タンパク質を発現するように形質導入された)と共に、8:1の比、三連で培養し、細胞の増殖/生存を、7日間にわたりモニタリングした。誤差バーは、平均値の標準誤差を指し示す。
【0369】
上記において記載された多様な実施形態は、さらなる実施形態をもたらすように組み合わされうる。2019年8月20日に出願された、米国特許仮出願第62/889,519号を含む、本明細書において言及される、かつ/又は出願データシートにおいて列挙されている、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物の全ては、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込む。実施形態の態様は、必要な場合、多様な特許、出願及び刊行物の概念を利用して、なおさらなる実施形態をもたらすように改変されうる。
【0370】
上記の「発明を実施するための形態」に照らして、実施形態に対して、これらの変化及び他の変化がなされうる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲において開示される、具体的実施形態へと限定するように理解されるべきではなく、このような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に、全ての可能な実施形態を含むように理解されるべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示により限定されない。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
【配列表】
2022547809000001.app
【国際調査報告】