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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】イソシアネートを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 263/20 20060101AFI20221109BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C07C263/20
C07C265/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512446
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020075591
(87)【国際公開番号】W WO2021052894
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】19197784.2
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20155540.6
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20176532.8
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(71)【出願人】
【識別番号】520204744
【氏名又は名称】コベストロ・インテレクチュアル・プロパティ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・アンド・コー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツェヒリン ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ロッデンケンパー ティム
(72)【発明者】
【氏名】ブルドウスキー トーマス
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AD11
(57)【要約】
本発明は、イソシアネートを製造する方法であって、(A)アミンと化学量論的に過剰のホスゲンとを、(a)反応中の希釈剤として及び/又は(b)アミンとホスゲンとの反応によって形成された反応混合物を冷却する手段として(クエンチと称される)式C6-XCl(式中、X=1又は2)の芳香族溶媒を使用して反応させて、(任意に膨張後)イソシアネートと使用した芳香族溶媒とを含む液体生成物の混合物、及び更にはホスゲンと塩化水素とを含む気体生成物の混合物を得る工程とそれに続く(B)工程(A)で得られた液体生成物の混合物からイソシアネートを単離する工程であって、単離イソシアネートが生成物流として得られる精製蒸留の工程を含み、精製蒸留又は精製蒸留の上流の蒸留工程において、単離イソシアネートが、その総質量に対して0.0ppm~9.9ppm、好ましくは0.0ppm~5.0ppm、より好ましくは0.0ppm~3.0ppmの範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒を含むように、式C6-YCl(式中、Y=X+1)の芳香族溶媒を含む少なくとも1つの流れが(間隔を置いて又は連続的に)除去される工程を含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートを製造する方法であって、
(A)アミンと化学量論的に過剰なホスゲンとを、
(a)反応中の希釈剤として、及び/又は、
(b)前記アミンとホスゲンとの反応から形成された反応混合物を冷却するための手段として、
式C6-XCl(式中、X=1又は2)の芳香族溶媒を使用して反応させて、イソシアネートと使用した芳香族溶媒とを含む液体生成物の混合物、及びホスゲンと塩化水素とを含む気体生成物の混合物を得る工程と、
(B)工程(A)で得られた液体生成物の混合物からイソシアネートを単離する工程であって、単離イソシアネートが生成物流として得られる最終蒸留の工程を含み、前記単離イソシアネートが、その総質量に対して0.0ppm~9.9ppmの範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒を有するように、前記最終蒸留又は前記最終蒸留の上流の蒸留工程において、式C6-YCl(式中、Y=X+1)の芳香族溶媒を含む少なくとも1つの流れが排出される工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(A)で得られた前記液体生成物の混合物を、工程(B)において、最終蒸留の前に、式C6-XClの芳香族溶媒を分離するための溶媒蒸留に通す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(B)において、
分割型蒸留塔内で最終蒸留を行い、該分割型蒸留塔から抜き出した側流中でイソシアネートの生成物流を得て、該分割型蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得るか、又は、
2つの連続して配置された非分割型蒸留塔で最終蒸留を行い、第1の蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得て、第2の蒸留塔から留出物としてイソシアネートの生成物流を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(B)において、
分割型蒸留塔内で最終蒸留を行い、該分割型蒸留塔から抜き出した側流中でイソシアネートの生成物流を得て、該分割型蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得るか、又は、
2つの連続して配置された非分割型蒸留塔で最終蒸留を行い、第1の蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得て、第2の蒸留塔から留出物としてイソシアネートの生成物流を得る、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が工程(A)に再循環されずに排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分の一部が排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた前記混合物の一部が排出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が工程(A)に再循環されずに排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分の一部が排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた前記混合物の一部が排出される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られる式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られる、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物が排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から分離され、次いで工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の一部が排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分が工程(A)に再循環されずに排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から分離され、次いで工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分の一部が排出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(B)において、イソシアネートを分離するために、工程(A)で得られた気体生成物の混合物を式C6-XClの芳香族溶媒でスクラブする工程を含み、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分がスクラビング工程に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分がスクラビング工程に再循環されずに排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分がスクラビング工程に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から分離され、次いでスクラビング工程若しくは工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分の一部が排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から分離され、次いでスクラビング工程若しくは工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の一部が排出される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程(A)からの液体生成物の混合物を受け入れるためのタンク容器を、工程(B)を実施するための蒸留手段と接続するため、及び/又はこれらの蒸留手段を互いに接続するために使用される管路が、2.4610、1.4529又は1.4539のタイプのステンレス鋼から製造される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記最終蒸留に、その総質量に対して8%~49%の範囲の質量分率の式C6-XClの芳香族溶媒を含む生成物の混合物が供給される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式C6-YClの芳香族溶媒を含む排出流が、その総質量に対して1.0%~10%の範囲の質量分率の前記溶媒を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネートを製造する方法であって、(A)アミンと化学量論的に過剰なホスゲンとを、(a)反応中の希釈剤として及び/又は(b)アミンとホスゲンとの反応から形成された反応混合物を冷却する(いわゆるクエンチ)ための手段として、式C6-XCl(式中、X=1又は2)の芳香族溶媒を使用して反応させて、(任意に、減圧後)イソシアネートと使用した芳香族溶媒とを含む液体生成物の混合物、及びホスゲンと塩化水素とを含む気体生成物の混合物を得る工程と、それに続く(B)工程(A)で得られた液体生成物の混合物からイソシアネートを単離する工程であって、単離されたイソシアネートが生成物流として得られる最終蒸留の工程を含み、単離されたイソシアネートが、その総質量に対して、0.0ppm~9.9ppm、好ましくは0.0ppm~5.0ppm、特に好ましくは0.0ppm~3.0ppmの範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒を有するように、式C6-YCl(式中、Y=X+1)の芳香族溶媒を含む少なくとも1つの流れが最終蒸留又は最終蒸留の上流の蒸留工程で(間隔を置いて又は連続的に)排出される工程を含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは大量に製造され、主にポリウレタン製造の出発原料としての役割を果たす。イソシアネートは通常、化学量論的に過剰なホスゲンを使用して、対応するアミンとホスゲンとを反応させることによって製造される。アミンとホスゲンとの反応は、気相又は液相のいずれかで行うことができ、反応はバッチ式又は連続的に行うことができる。第一級アミン及びホスゲンから有機イソシアネートを製造する方法は、既に何度も説明されている。大規模な工業規模で興味深いのは、芳香族イソシアネート、例えば、ジフェニルメタン系列のジアミン(以下、MMDI-「モノメリックMDI」)、MMDIの混合物、及びジフェニルメタン系列のポリアミン(すなわち、MMDIのより高次の同族体であり、以下、PMDI、「ポリメリックMDI」;MMDIとPMDIとの混合物は以下、MDIと略記する)又はトリレンジイソシアネート(TDI)だけでなく、脂肪族又は脂環式イソシアネート、例えばペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)である。ベンジルイソシアネート基を有するイソシアネート(脂肪族イソシアネート)、特にキシリレンジイソシアネート(XDI)も重要である。
【0003】
最近の工業規模でのイソシアネートの製造は、半連続的に(幾つかの調製工程のバッチ単位での実施、例えば、バッチ式反応及び連続ワークアップ(workup:後処理))又は連続的に(全ての工程が連続的に)行われる。
【0004】
これは、典型的には液相ホスゲン化と称される、液相でのプロセスレジームの特徴であり、反応条件は、少なくともアミン、粗イソシアネート及びホスゲン反応成分、ただし好ましくは全ての反応物、生成物及び反応中間体が、選択された条件下で適切な溶媒中で液体形態であるように選択される。変換が完了すると、塩化水素副生成物及び未変換のホスゲン(超化学量論量で使用されたため)を含む気相が分離される。これにより、溶媒と共に、主に液相に所望のイソシアネートが残る。したがって、粗イソシアネートは、純粋なイソシアネートを得るために(そして、溶媒、並びにホスゲン及び塩化水素の溶解画分を回収するために)ワークアップされる液体流としての溶媒との混合物中に得られる。
【0005】
これは、典型的には気相ホスゲン化と称される、気相でのプロセスレジームの特徴であり、反応条件は、少なくともアミン、イソシアネート及びホスゲン反応成分、ただし好ましくは全ての反応物、生成物及び反応中間体が、選択された条件下で気体であるように選択される。気相ホスゲン化の利点は、とりわけ、ホスゲンの「ホールドアップ」の低減、ホスゲン化が困難な中間体の回避、反応収率の向上、及び使用される溶媒が少ないことによる必要エネルギー量の低下である。気相ホスゲン化において最初に気体形態で得られる反応混合物は、所望のイソシアネートの大部分が液化され、塩化物及びリンを含有する気相が残るように、溶媒又はイソシアネート-溶媒混合物で構成されるクエンチ液と接触させることによって、いわゆるクエンチで冷却される。
【0006】
したがって、工業規模で関連する全てのイソシアネート製造方法は、液体の粗イソシアネート流を生成し、これをワークアップして、純粋な形態の所望のイソシアネートを得て、溶媒等の他の価値のある材料を回収しなければならない。このワークアップは、一般に、溶媒、溶解ホスゲン、及び溶解塩化水素の除去を含む。これに続いて、必要に応じて異性体分離を含み得るイソシアネートの最終精製が行われる。イソシアネートの種類によっては、最終精製の前に同族体の分離を行うことができる。ここでは、MMDI及びPMDIを含むイソシアネート混合物からMMDIを部分的に分離し、溶媒、ホスゲン、及び塩化水素を大幅に除去して、ごく微量のPMDI(粗MMDI)含むMMDI画分、及びPMDIとMMDIとの混合物を取得することに特に言及する必要がある。
【0007】
多くの異なる要件を同時に考慮に入れる必要があるため、工業規模での粗イソシアネート流のワークアップは容易ではない。最高純度の形態で目的の生成物を得るだけでなく、特にこれらを(任意に、例えば、塩化水素から塩素への更なる変換後に)プロセスに再循環させる目的で、ホスゲン、塩化水素、及び溶媒の損失を最小限に抑えた回収についてもここで言及する必要がある。これは全て、最大の経済的実行可能性の条件下で、すなわち最小のエネルギー消費で、(特に、最適化されていないワークアップの場合に望ましくない更なる反応を受ける可能性があるイソシアネートの)価値のある生成物の損失を最小限に抑えて行われなければならない。言うまでもなく、所望のイソシアネートは、副生成物、使用される芳香族溶媒、過剰のホスゲン等を可能な限り完全に除去しなければならない。塩素化芳香族炭化水素(特にモノクロロベンゼン又はジクロロベンゼン)はイソシアネート生成用の溶媒として有利であることが証明されているため、この状況では、純粋なイソシアネートの要件がかかる塩素化芳香族溶媒の残留物含有量に関してますます厳しくなっていることで蒸留技術への課題も増えていることに言及する必要がある。これらの要件の増加は、イソシアネートから製造されたポリウレタン製品が危険な排出物を生成してはならないという理由で導入されており、これは、シートクッション又はマットレス用の発泡体の場合に特に重要である。実際に使用される芳香族溶媒に加えて、従来技術は、それらの完全に塩素化された反応生成物(すなわち、モノクロロベンゼン又はジクロロベンゼンが溶媒として使用される場合、ヘキサクロロベンゼン)に焦点を合わせている。使用される芳香族溶媒よりも高い塩素含有量を有する溶媒は、ホスゲン化及び/又は粗イソシアネートのワークアップに使用される芳香族溶媒の塩素化によって形成される。追加の塩素置換基を1つだけ持つ芳香族溶媒の反応生成物の使用は、出願人の知る限り、これまで従来技術において特に注目されていなかった。
【0008】
粗イソシアネートのワークアップは、既に何度も記載されている。
【0009】
特許文献1は、ホスゲンと塩化水素との分離(「脱ホスゲン化」)による液相ホスゲン化とそれに続く溶媒の分離によって得られる液体溶媒を含有する粗イソシアネート流のワークアップを記載している。これに続いて、粗イソシアネート(ホスゲン、塩化水素、及び溶媒が既にほとんど除去されている)の蒸留による更なる精製が行われる。MDIの場合、この蒸留には同族体の分離も含まれ、MMDIが分離され、MMDIが枯渇したPMDI/MMDI混合物が残る(いわゆる「ポリマー分離」)。
【0010】
MDIからの同族体及び異性体の分離を含むワークアップの選択肢は、特許文献2に詳細に記載されている。粗TDIのワークアップの選択肢は、液相と気相との両方のホスゲン化について、特許文献3に記載されている。
【0011】
特許文献4は、気相での脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族のイソシアネートの製造及びワークアップと、それに続く芳香族溶媒を含むクエンチ液による得られた生成ガス混合物の急速な部分液化(「クエンチング」)を記載している。これにより、所望のイソシアネートを含む液体生成物流だけでなく、塩化水素とホスゲンとを含むガス流も得られる。イソシアネートは、複数の蒸留工程を通じて液体の生成物流から単離される。過剰なホスゲンはホスゲンガス流として回収され、反応に再循環される。この文献は、この回収されたホスゲンガス流中のベンゼン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼンの含有量を0.5重量%以下の値に制限することを教示している。これにより、製造されるイソシアネート中のヘキサクロロベンゼン含有量が減少する(本出願の実施例を参照されたい)。この文献は、反応ゾーンに導入されたガス流中の少量のベンゼン、クロロベンゼン、又はジクロロベンゼンが、ポリ塩素化芳香族化合物の形成、特に問題のあるヘキサクロロベンゼンの形成をもたらすという知見に基づいている。ポリ塩素化芳香族という用語は、主に反応ゾーンにおいて、ベンゼン、クロロベンゼン、及びジクロロベンゼンのポリ塩素化によって形成される反応生成物を意味すると理解される(3頁の最後の段落を参照されたい)。
【0012】
この文献の教示によれば、過剰のホスゲンの回収は、最初に、反応で生成された塩化水素とホスゲンとのガス混合物が、気体の塩化水素流と液体の塩化水素流とに分離されるように行われる。次いで、液体ホスゲン流を部分的に蒸発させる。これは好ましくは蒸留塔で行われる。この蒸留塔の頂部には、新たな液体ホスゲンを供給するポイントを設けることができる。蒸留塔から取り出される気体ホスゲン流中のベンゼン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンの含有量は、この気体ホスゲン流の出口温度を適切に選択することにより、また任意に、蒸留塔に追加で適用される新たなホスゲンの量を適切に選択することによって、本発明に従って指定される0.5重量%以下の値に低減することができる。この文献では、この値を達成するための更なる手段を何ら指定していない。特に、この参考文献は、イソシアネートの最終蒸留、又は反応で更にモノ塩素化された最終蒸留工程の上流の蒸留工程からの芳香族溶媒の流れがプロセス全体から排出されることを教示していない。特許文献4は、完全な塩素化反応以外の反応が発生することを示すものではなく、この文献は、(あらゆる種類の)塩素化反応がワークアップの状況で重要である可能性があることを示すものでもない(4頁の最初の段落を参照されたい)。
【0013】
特許文献5(段落[0015]を参照されたい)は、イソシアネートを精製する方法であって、
a)少なくとも1つの理論段数を含む蒸留において、イソシアネートと、高沸点及び低沸点成分と、非蒸発性残留物とを含む流れ1を、非蒸発性残留物とイソシアネートとを含む分割流2及びイソシアネートと低沸点物質とを含む蒸気流3に分離することと、
b)分割流2の非蒸発性残留物を蒸気流3及び/又は蒸気流3を少なくとも部分的に含む物質流から分離して維持することと、
c)分割流2から少なくとも1つの更なるイソシアネート含有蒸気流4及び実質的に非蒸発性残留物を含有する流れ8を分離することと、
d)イソシアネート含有蒸気流(複数の場合がある)4とa)からの蒸気流3とを異なる沸騰範囲を有する3つの個別の流れ5、6、7に蒸留により分離することと、
を含み、最低沸点流5は粗イソシアネート流1の低沸点物質の割合のかなりの部分を含み、最高沸点流7は粗イソシアネート流1の高沸点物質の割合のかなりの部分を含み、中沸点流6は実質的に所望の生成物を含む、方法を記載している。
【0014】
精製される粗イソシアネート流である流れ1は、好ましくは、ホスゲン化によってイソシアネートを製造する場合、そこから塩化水素、ホスゲン及び溶媒が実質的に分離されている流れである。結果として、流れ1中の塩化水素及びホスゲンの含有量は、いずれの場合も1000ppm未満であり、溶媒含有量は、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満である。粗イソシアネート流は、所望の生成物として得られるイソシアネートを含むだけでなく、典型的には、イソシアネートよりも沸点が低い成分(低沸点物質)を100ppm~5%含み、イソシアネートよりも沸点が高い成分(高沸点物質)(ただし、その沸点は、標準圧力でのイソシアネートの沸点から60℃を超えて高いものではない)を100ppm~5000ppm含み、また1重量%~8重量%の高分子性の非蒸発性残留物を含む(すなわち、生成物は標準圧力で蒸発する前に熱分解する)。したがって、イソシアネートと比較して沸点が低い溶媒は、粗イソシアネート流1にごく微量で存在し、この状況において、低沸点物質という用語は、他の成分を意味すると明らかに理解される。具体的には、とりわけ、イソシアネート(溶媒ではない)の更なる反応から生じる塩素含有副生成物(例えば、2つの塩素含有二次成分1-イソシアナト-6-クロロヘキサン又は1,6-ジイソシアナトヘキサンを製造する場合は1,6-ジクロロヘキサン)が言及されている。この文献では、溶媒の部分的又は完全な塩素化については言及されていない。芳香族イソシアネートの場合の典型的な低沸点物質は、メチルフェニルイソシアネート(TDIの製造)及びフェニルイソシアネート(MDIの製造)である。
【0015】
図2に示される記載されたプロセスの好ましい実施形態において、粗イソシアネート流1は、分割型蒸留塔に横方向に供給され、その中で3つの流れ5、6及び7に分離され、最低沸点流5は、塔の頂部において分割壁の上で取り出され、中沸点流6(すなわち所望の生成物の流れ)がフィードの上の分割壁の領域で取り出され、最高沸点流7が塔の底部で取り出される。この例では、TDIを製造する場合のこれらの流れの典型的な構成を示す。
【0016】
最低沸点流5は、(かなりの割合のイソシアネート、すなわち、99.4重量%のTDIに加えて)0.5重量%の低沸点物質を含み、残りの0.1重量%の構成は明示されていない(7頁上部の表を参照されたい)。中沸点流6は、99.9重量%のTDI、10ppmの低沸点物質、及び50ppmの高沸点成分を含む。中沸点流6の残りの0.094重量%(940ppm)の構成は明示されていない。最高沸点流7は、30重量%のTDI及び70重量%の高沸点成分からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2017/050776号
【特許文献2】国際公開第2019/134909号
【特許文献3】国際公開第2018/114846号
【特許文献4】国際公開第2019/145380号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1717223号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
下流のポリウレタン製品における危険な排出を回避するために、溶媒の残留率が可能な限り低いイソシアネートを得るという目的に関連して、現在、更なる要因が重要であることが分かっている。したがって、この分野では更なる改善が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、この必要性を考慮して、本発明は、イソシアネートを製造する方法であって、
(A)(芳香族、脂肪族、脂環式又は芳香脂肪族、好ましくは芳香族)アミンと化学量論的に過剰なホスゲンとを、
(a)反応中の希釈剤として、及び/又は、
(b)アミンとホスゲンとの反応から形成された反応混合物を冷却する(いわゆるクエンチ)ための手段として、
式C6-XCl(式中、X=1又は2)の芳香族溶媒を使用して反応させて、(任意に、減圧後)イソシアネートと使用した芳香族溶媒とを含む液体生成物の混合物、及びホスゲンと塩化水素とを含む気体生成物の混合物を得る工程と、
(B)工程(A)で得られた液体生成物の混合物からイソシアネートを単離する工程であって、単離されたイソシアネートが生成物流として得られる最終蒸留の工程を含み、単離されたイソシアネートが、その総質量に対して0.0ppm~9.9ppm、好ましくは0.0ppm~5.0ppm、特に好ましくは0.0ppm~3.0ppmの範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒を有するように、式C6-YCl(式中、Y=X+1)の芳香族溶媒を含む少なくとも1つの流れが最終蒸留又は最終蒸留の上流の蒸留工程で(間隔を置いて又は連続的に)排出される(すなわち、イソシアネートを製造するプロセスから送り出される)工程と、
を含む、方法を提供する。
【0020】
実際、使用する芳香族溶媒(C6-XCl)だけでなく、追加の塩素置換基を1つだけ持つ反応生成物(更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YCl)も、イソシアネートの目的の生成物から十分に分離する必要があることがわかっている。技術水準のイソシアネート製造方法内の通常多数の溶媒再循環回路の結果として、これには、この更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClをプロセスから送り出す(すなわち、排出する)必要がある。これらの更に1つの塩素を含有する溶媒C6-YClは、実際、危険な排出物を伴わずにポリウレタン製品を提供できるようにする上で決定的に重要である。イソシアネートの製造に使用される芳香族溶媒(C6-XCl)の含有量を(当該技術分野で慣習的であるように)制限することに加えて、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒(C6-YCl)の含有量も制限する場合、すなわち、本発明で規定されているように9.9ppm以下にする場合、クロロ芳香族化合物(chloroaromatics)(すなわち、使用される溶媒及びその全ての塩素化生成物)の総含有量は十分に低いと想定することができる。
【0021】
総質量に対する単離されたイソシアネート中の式C6-YClの芳香族溶媒の質量分率は、原則的には、低分子量有機化合物の濃度を決定するための当業者に良く知られている任意の方法によって決定することができる。これらは一般に、本発明の目的に必要な精度に関連して一貫した結果を提供する。水素炎イオン化検出器(FID検出器)又は電子捕獲検出器(ECD検出器)を使用したガスクロマトグラフィーによる測定が優先される。疑わしい場合は、水素炎イオン化検出器を使用したガスクロマトグラフィーによって決定される値が決定的である。
【0022】
「排出する」という用語並びにそれから派生する動詞及び形容詞は、本発明の状況において、プロセス(すなわち、イソシアネートを製造するプロセス)で生成された流れをプロセスから(すなわち、イソシアネートを製造するプロセスから)送り出すことに関連し、すなわち、このように排出された流れは、プロセスに(反応部分にもワークアップ部分にも)再循環で戻されることはない。排出された流れは、処分のために送られ、特に焼却されることが好ましい。しかしながら、かかる排出された流れの物質の回収は、イソシアネートを製造するプロセスへのそれらの再循環を除いて、除外されない。排出された流れは、特に、それらの総質量に対して1.0%~10%の範囲、好ましくは1.5%~5.0%の範囲、特に好ましくは2.2%~3.0%の範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒を含む。
【0023】
以下、本発明の様々な可能な実施の形態の簡単な要約が続く。
【0024】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第1の実施の形態において、工程(A)で得られた液体生成物の混合物は、工程(B)において、最終蒸留の前に、溶解ホスゲンを分離するために脱ホスゲン化を経る。
【0025】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第2の実施の形態において、工程(A)で得られた気体生成物の混合物を、工程(B)において、イソシアネートを分離するために式C6-XClの芳香族溶媒によるスクラビングに供する。
【0026】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第3の実施の形態において、工程(A)で得られた液体生成物の混合物は、工程(B)において、最終蒸留の前に、式C6-XClの芳香族溶媒を分離するための溶媒蒸留に供する(溶媒蒸留は、式C6-XClの分離された芳香族溶媒を精製するための更なる蒸留を含み得る)。
【0027】
第3の実施の形態の特定の構成である本発明の第4の実施の形態において、溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒は、そこに存在するホスゲンを分離するための溶媒精製に送られる(溶媒脱ホスゲン化)。
【0028】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第5の実施の形態において、これらが最終蒸留における分割型蒸留塔の使用を排除しないことを条件として、工程(B)において、最終蒸留は、分割型蒸留塔から抜き出した側流(side stream takeoff)中でイソシアネートの生成物流を得て、分割型蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得るため、分割型蒸留塔において行われる(最終蒸留は、分割型蒸留塔の頂部で得られる式C6-XClの芳香族溶媒を精製するための更なる蒸留塔を含み得る)。
【0029】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第6の実施の形態において、これらが最終蒸留における分割型蒸留塔の使用を規定していないことを条件として、工程(B)において、最終蒸留は、2つの連続して配置された非分割型蒸留塔で行われ、第1の蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒が得られ、第2の蒸留塔からの留出物としてイソシアネートの生成物流が得られる(最終蒸留は、第1の蒸留塔の頂部で得られた式C6-XClの芳香族溶媒を精製するための更なる蒸留塔を含み得る)。
【0030】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第7の実施の形態において、これらが溶媒蒸留を含むことを条件として、溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒は、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物(すなわち、溶媒蒸留で得られた混合物)中に得られ、この混合物の第1の部分(任意に溶媒脱ホスゲン化後)は、工程(A)に再循環され、この混合物の第2の部分は、工程(A)に再循環されずに(間隔を置いて又は連続的に)排出される。
【0031】
第7の実施の形態及び下記の第9の実施の形態の代替であるが、そうでなければ、他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第8の実施の形態において、これらが溶媒蒸留を含むことを条件として、溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒は、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物(すなわち、溶媒蒸留で得られた混合物)中に得られ、この混合物の第1の部分(任意に、溶媒脱ホスゲン化後)は工程(A)に再循環され、この混合物の第2の部分は更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒は、この混合物の第2の部分から分離され、その後(少なくとも部分的に、特に完全に)工程(A)に再循環され、式C6-XClの芳香族溶媒をこの混合物の第2の部分から分離した後に残るこの混合物の第2の部分の一部(式C6-YClの芳香族溶媒に富む)は(間隔を置いて又は連続的に)排出される。
【0032】
第7の実施の形態及び第8実施の形態の代替であるが、そうでなければ、他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第9の実施の形態において、これらが溶媒蒸留を含むことを条件として、溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒は、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物(すなわち、溶媒蒸留で得られた混合物)中に得られ、この混合物は更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒は、この混合物から分離され、その後(少なくとも部分的に、特に完全に)工程(A)に再循環され、式C6-XClの芳香族溶媒をこの混合物から分離した後に残るこの混合物の一部(式C6-YClの芳香族溶媒に富む)は(間隔を置いて又は連続的に)排出される。
【0033】
第5の実施の形態/第6の実施の形態の特定の構成である本発明の第10の実施の形態において、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られる式C6-XClの芳香族溶媒は、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物(すなわち、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物)中に得られる。
【0034】
第10の実施の形態の第1の特定の構成である本発明の第11の実施の形態において、得られた混合物(すなわち、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物)が排出される。
【0035】
第10の実施の形態の第2の特定の構成である本発明の第12の実施の形態において、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分は工程(A)に再循環され、この混合物の第2の部分は工程(A)に再循環されずに(間隔を置いて又は連続的に)排出される。
【0036】
第10の実施の形態の第3の特定の構成である本発明の第13の実施の形態において、すなわち、工程(B)が、イソシアネートを分離するため、工程(A)で得られた気体生成物の混合物を式C6-XClの芳香族溶媒でスクラブする工程を含む場合(すなわち、上記の第2の実施の形態)、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分はスクラビング工程に再循環され、この混合物の第2の部分はスクラビング工程に再循環されずに(間隔を置いて又は継続的に)排出される。
【0037】
第10の実施の形態の第4の特定の構成である本発明の第14の実施の形態において、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分は、工程(A)に再循環され、この混合物の第2の部分は更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒がこの混合物の第2の部分から分離され、次いで(少なくとも部分的に、特に完全に)工程(A)に再循環され、混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残るこの混合物の第2の部分の一部(式C6-YClの芳香族溶媒に富む)が(間隔を置いて又は連続的に)排出される。
【0038】
第10の実施の形態の第5の特定の構成である本発明の第15の実施の形態において、すなわち、工程(B)が、イソシアネートを分離するために工程(A)で得られた気体生成物の混合物を式C6-XClの芳香族溶媒でスクラブする工程を含む場合(すなわち、上記の第2の実施の形態)、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分は、スクラビング工程に再循環され、この混合物の第2の部分は更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒がこの混合物の第2の部分から分離され、次いで(少なくとも部分的に、特に完全に)スクラビング工程又は工程(A)に再循環され、この混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残るこの混合物の第2の部分の一部(式C6-YClの芳香族溶媒に富む)は、(間隔を置いて又は継続的に)排出される。
【0039】
第10の実施の形態の第6の特定の構成である本発明の第16の実施の形態において、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物は更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒がこの混合物から分離され、次いで(少なくとも部分的に、特に完全に)工程(A)に再循環され、この混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残るこの混合物の一部(式C6-YClの芳香族溶媒に富む)が(間隔を置いて又は連続的に)排出される。
【0040】
第10の実施の形態の第7の特定の構成である本発明の第17の実施の形態において、すなわち、工程(B)が、イソシアネートを分離するために工程(A)で得られた気体生成物の混合物を式C6-XClの芳香族溶媒でスクラブする工程を含む場合(すなわち、上記の第2の実施の形態)、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物は更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒がこの混合物から分離され、(少なくとも部分的に、特に完全に)スクラビング工程又は工程(A)に再循環され、この混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残るこの混合物の一部(式C6-YClの芳香族溶媒に富む)は、(間隔を置いて又は継続的に)排出される。
【0041】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第18の実施の形態において、これらが、溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が式C6-YClの芳香族溶媒との混合物(すなわち、溶媒蒸留で得られた混合物)中に得られる、溶媒蒸留を含むことを条件として、この混合物が部分的又は完全に排出され、この混合物の排出された部分/排出された混合物は焼却される。
【0042】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第19の実施の形態において、工程(A)からの液体生成物の混合物を受け入れるためのタンク容器を、工程(B)を実施するための蒸留手段と接続するため、及び/又はこれらの蒸留手段を互いに接続するために使用される管路は、2.4610、1.4529又は1.4539のタイプのステンレス鋼から製造される。
【0043】
第19の実施の形態の特定の構成である本発明の第20の実施の形態において、単離されたイソシアネートの生成物流が得られる最終蒸留の工程は、2.4610、1.4529又は1.4539のタイプのステンレス鋼から製造された液体蒸留底部(liquid distillation bottoms)を受け入れるための容器を有する蒸留塔にて行われる。
【0044】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第21の実施の形態において、液相ホスゲン化に関係しないことを条件として、工程(A)においてアミンとホスゲンとの反応は気相で行われ、(b)が含まれる。
【0045】
第21の実施の形態の特定の構成である本発明の第22の実施の形態において、アミンは、ジフェニルメタン系列のジアミン(ジフェニルメタン系列のジイソシアネートを得るため)、トリレンジアミン(トリレンジイソシアネートを得るため)、キシリレンジアミン(キシリレンジイソシアネートを得るため)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを得るため)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンを得るため)、ヘキサヒドロトリレンジアミン(ヘキサヒドロトリレンジイソシアネートを得るため)、1,6-ヘキサメチレンジアミン(ヘキサメチレンジイソシアネートを得るため)、1,5-ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジイソシアネートを得るため)及びイソホロンジアミン(イソホロンジイソシアネートを得るため)からなる群より選択される。
【0046】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第23の実施の形態において、気相ホスゲン化に関係しないことを条件として、工程(A)においてアミンとホスゲンとの反応は液相で行われ、(a)が含まれる。
【0047】
第23の実施の形態の特定の構成である本発明の第24の実施の形態において、アミンは、ジフェニルメタン系列のジアミン及びポリアミン(ジフェニルメタン系列のジイソシアネート及びポリイソシアネートを得るため)、ナフタレンジアミン(ナフタレンジイソシアネートを得るため)、トリレンジアミン(トリレンジイソシアネートを得るため)、キシリレンジアミン(キシリレンジイソシアネートを得るため)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを得るため)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンを得るため)、ヘキサヒドロトリレンジアミン(ヘキサヒドロトリレンジイソシアネートを得るため)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを得るため)、1,6-ヘキサメチレンジアミン(ヘキサメチレンジイソシアネートを得るため)、1,5-ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジイソシアネートを得るため)及びイソホロンジアミン(イソホロンジイソシアネートを得るため)からなる群より選択される。
【0048】
液相又は気相ホスゲン化を含む、特に気相ホスゲン化を含む全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第25の実施の形態において、使用されるアミンは、トリレンジアミン(トリレンジイソシアネートを得るため)である。
【0049】
第25の実施の形態の特定の構成である本発明の第26の実施の形態において、X=2である。
【0050】
第23の実施の形態の特定の構成である本発明の第27の実施の形態において、使用されるアミンは、ジフェニルメタン系列のジアミン及びポリアミンの混合物(ジフェニルメタン系列のジイソシアネート及びポリイソシアネートを得るため)である。
【0051】
第27の実施の形態の特定の構成である本発明の第28の実施の形態において、X=1である。
【0052】
第21の実施の形態の更に特定の構成である本発明の第29の実施の形態において、アミンは、ヘキサメチレンジアミン(ヘキサメチレンジイソシアネートを得るため)、ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジイソシアネートを得るため)及びイソホロンジアミン(イソホロンジイソシアネートを得るため)からなる群より選択される。
【0053】
第29の実施の形態の特定の構成である本発明の第30の実施の形態において、X=1である。
【0054】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第31の実施の形態において、最終蒸留に、その総質量に対して8%~49%の範囲の質量分率の式C6-XClの芳香族溶媒を含む生成物の混合物が供給される。
【0055】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第32の実施の形態において、最終蒸留に、その総質量に対して10%~30%の範囲の質量分率の式C6-XClの芳香族溶媒を含む生成物の混合物が供給される。
【0056】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第33の実施の形態において、式C6-YClの芳香族溶媒を含む排出流は、その総質量(すなわち、排出流の総質量)に対して1.0%~10%の範囲の質量分率の上記溶媒(すなわち、式C6-YClの芳香族溶媒)を含む。
【0057】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第34の実施の形態において、式C6-YClの芳香族溶媒を含む排出流は、その総質量(すなわち、排出流の総質量)に対して1.5%~5.0%の範囲の質量分率の上記溶媒(すなわち、式C6-YClの芳香族溶媒)を含む。
【0058】
他の全ての実施の形態と組み合わせることができる本発明の第35の実施の形態において、式C6-YClの芳香族溶媒を含む排出流は、その総質量(すなわち、排出流の総質量)に対して2.2%~3.0%の範囲の質量分率の上記溶媒(すなわち、式C6-YClの芳香族溶媒)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0059】
上で簡単に概説された実施形態、及び本発明の更に可能な実施形態を、以下でより詳しく説明する。実施形態は、別段の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、必要に応じて互いに組み合わせることができる。
【0060】
本発明による方法の工程(A)、すなわち、アミンと化学量論的に過剰のホスゲンとを反応させて、イソシアネート及び使用した芳香族溶媒を含む液体生成物の混合物(ホスゲン及び塩化水素を含む気体生成物の混合物に加えて)を得ることは、本発明の状況において、原則的には従来技術から知られているように実施することができる。冒頭で説明したように、2つの基本的なプロセスの変形例、すなわち液相及び気相のホスゲン化がある。液相ホスゲン化は、常に希釈剤としての溶媒の存在下で実施される(変形例(a))。しかしながら、気相ホスゲン化においても、反応は、希釈剤としての溶媒の蒸気の存在下で実施され得る。反応混合物を急速に冷却するための溶媒(又は溶媒だけでなく、所望のイソシアネートの一部も含む混合物)の添加(変形例(b))が、気相反応レジームで使用されることが好ましい。
【0061】
工程(A)における第一級アミンとホスゲンとの反応は、好ましくは、プロセスレジームに関係なく連続的に実施される。
【0062】
液相ホスゲン化の例は、独国特許発明第3744001号、欧州特許出願公開第0314985号、欧州特許出願公開第1369412号、独国特許出願公開第10260027号、独国特許出願公開第10260093号、独国特許出願公開第10310888号、独国特許出願公開第102006022448号、米国特許出願公開第2007/0299279号及びこれらのそれぞれで引用されている文献に記載されている。液相ホスゲン化は、工程(A)の変形例(a)を含む。変形例(b)、いわゆるクエンチは一般に必要ない。
【0063】
本発明による方法は、好ましくは、ジフェニルメタン系列のジアミン及びポリアミン(ジフェニルメタン系列のジイソシアネート及びポリイソシアネートを得るため)、ナフタレンジアミン(ナフタレンジイソシアネートを得るため)、トリレンジアミン(トリレンジイソシアネートを得るため)、キシリレンジアミン(キシリレンジイソシアネートを得るため)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを得るため)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンを得るため)、ヘキサヒドロトリレンジアミン(ヘキサヒドロトリレンジイソシアネートを得るため)、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを得るため)、1,6-ヘキサメチレンジアミン(ヘキサメチレンジイソシアネートを得るため)、1,5-ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジイソシアネートを得るため)及びイソホロンジアミン(イソホロンジイソシアネートを得るため)から選択されるアミンのホスゲン化を可能にする。トルエンジアミン、並びにジフェニルメタン系列のジアミン及びポリアミンが特に好ましく、ジフェニルメタン系列のジアミン及びポリアミンが特に好ましい。この目的のため、ジフェニルメタン系列のジアミン及びポリアミンの混合物は、それ自体が知られている方法でホスゲン化されて、ジフェニルメタン系列のジイソシアネート及びポリイソシアネートの対応する混合物(すなわちMDI)を得て、好ましくはモノクロロベンゼン(X=1)が工程(A)で溶媒として使用される(ただし、原則的にはジクロロベンゼン(X=2)も使用可能である)。MDIの場合の工程(A)で得られた生成物の混合物のワークアップ(工程(B))は、好ましくは、ジフェニルメタン系列のジイソシアネートの画分(すなわちMMDI;「モノメリックMDI」)を分離して、ジフェニルメタン系列のジイソシアネートが枯渇したMDI混合物を得る工程も含み、これに続いて、分離されたモノメリックMDI画分の更なる最終蒸留が行われる(ジフェニルメタン系列のジイソシアネートが枯渇した残りのMDI混合物の場合、モノメリックMDIの分離は「最終蒸留」と見なされる)。生成物流中のこの溶媒の残留物含有量に関する本発明による要件は、モノメリックMDIが枯渇したMDI混合物及び単離されたMMDI自体に関連する。
【0064】
液相ホスゲン化の好ましい実施形態において、手順は以下の通りである。
【0065】
第一級アミンとホスゲンとの反応物を別々に溶媒に溶解する。この目的に適した溶媒は、モノクロロベンゼン(X=1)及びジクロロベンゼン(X=2)であり、後者はオルト又はパラ異性体、好ましくはオルト異性体の形態である。第一級アミンは、溶液の総質量に対して10質量%~40質量%、好ましくは10質量%~20質量%の濃度で使用されることが好ましい。ホスゲンは、溶液の総質量に対して10質量%~40質量%、好ましくは25質量%~35質量%の濃度で使用されることが好ましい。
【0066】
第一級アミンとホスゲンとの効率的な混合は、液相プロセスにおいて非常に重要である。従来技術では、静的混合装置(好ましくはノズル)及び動的混合装置(機械的な可動部を含む)がこの目的のために使用されている。混合後、混合された反応物は反応ゾーンを通過して変換を完了する。混合装置及び反応ゾーンはまた、共通の反応器に配置され得る。ホスゲンは、アミンの第一級アミノ基よりも化学量論的に過剰に使用されており、特にホスゲン対第一級アミノ基のモル比は4.0:1~1.1:1の範囲、特に好ましくは3.0:1~1.1:1の範囲、更に好ましくは2.0:1~1.1:1の範囲である。
【0067】
液相ホスゲン化は、様々な温度及び圧力レベルで実施され得る。したがって、液相ホスゲン化は、例えば、0℃~250℃、好ましくは20℃~200℃の範囲の温度、及び1.0bar(絶対)~70bar(絶対)、好ましくは1.0bar(絶対)~50bar(絶対)の範囲の圧力で実施され得る。
【0068】
好ましい実施形態において、反応において副生成物として形成された塩化水素は、液相中に部分的に溶解した形態で存在し、部分的にガス放出(outgassed)される。気体の形態のものと比較した溶解塩化水素の割合は、選択される温度及び圧力レベルに依存する。
【0069】
別の実施形態において、温度及び圧力レベルは、塩化水素が最初に、実質的には完全に溶解又は液化された形態で存在し、意図的な減圧後(例えば、気液分離器において)にのみ気相が形成されるように選択される。本発明の用語では、そのような減圧は、工程(A)の不可欠な部分である。
【0070】
したがって、いずれの場合でも、工程(A)の終わりに、製造されるイソシアネートと溶媒とを含む液体流、及び塩化水素と任意に蒸発溶媒とを含むガス流が得られる。ホスゲンは超化学量論量で使用されるため、両方の流れはホスゲンを追加的に含有する。両方の流れを、反応ゾーンから直接取り出すことができる。プロセスの二相生成物(液相及び気相を含む)を反応ゾーンから取り出し、それを相分離のための装置に移すことも可能である。この相分離は、気相及び液相の分離に適した当業者に知られている全ての装置で実施することができる。例えば、静的分離の補助の有無にかかわらず、サイクロン分離器、偏向分離器、及び/又は重力分離器等の気液分離器を使用することが好ましい。同様に、塩化水素(及び任意の他の気体成分)のガス放出が促進されるため、反応ゾーンの圧力と比較して圧力を下げることにより、相分離を支援することが可能である。反応ゾーンから取り出された液体流、又は(存在する場合)反応ゾーンの下流に配置された相分離のための装置から取り出された液体流は、この実施形態において、工程(B)で実施されるワークアップの出発物質であり、すなわち、本発明の用語では、この液相は「イソシアネートと使用した芳香族溶媒とを含む液体生成物の混合物」である。
【0071】
第一級アミンの例であるTDAを使用して、液相ホスゲン化を以下に更に詳しく示す。
【0072】
液相プロセスでは、上記で定義した溶媒の1つに溶解したTDAが、-10℃~220℃、好ましくは0℃~200℃、特に好ましくは20℃~180℃の範囲の温度でホスゲンとの混合に供給される。ホスゲンは、同じく上記で定義された溶媒の1つにおいて、-40℃~200℃、好ましくは-30℃~170℃、特に好ましくは-20℃~150℃の範囲の温度で、TDAとの混合に供給される。TDA及びホスゲン溶液の混合は、液相プロセスにおいて、好ましくは静的ミキサー又は動的ミキサーを使用して実施される。適切な静的ミキサーの例としては、例えば、独国特許出願公開第1792660号、米国特許第4,289,732号又は米国特許第4,419,295号に記載されているようなノズル又はノズル配置が挙げられる。適切な動的ミキサーの例としては、ポンプ様アセンブリ、例えば遠心ポンプ(米国特許第3,713,833号を参照されたい)又は特定のミキサー反応器(欧州特許出願公開第0291819号、欧州特許出願公開第0291820号、欧州特許出願公開第0830894号を参照されたい)が挙げられる。
【0073】
下流の反応ゾーンでの反応は、液相法では、0℃~250℃、好ましくは20℃~200℃、特に好ましくは20℃~180℃の範囲の温度で、反応ゾーンでの反応混合物の平均滞留時間は10秒~5時間、好ましくは30秒~4時間、特に好ましくは60秒~3時間の範囲で、最大100bar(絶対)、好ましくは1.0bar(絶対)~70bar(絶対)、特に好ましくは1.0bar(絶対)~50bar(絶対)の範囲の圧力で行われる。反応ゾーンでの反応に関して、本発明に従って使用可能なプロセスレジームの例は、例えば、米国特許出願公開第2007/0299279号(特に、7頁、段落[0070]、[0071]、[0089])及び独国特許出願公開第10310888号(特に5頁、段落[0038]、[0039])、並びにこれらのそれぞれに引用されている文献に記載されている。
【0074】
気相ホスゲン化の例は、欧州特許出願公開第0570799号、欧州特許出願公開第1555258号、欧州特許出願公開第1526129号及び独国特許出願公開第10161384号に記載されており、特に脂肪族イソシアネートの場合は、欧州特許第0289840号、欧州特許第1754698号、欧州特許第1319655号及び欧州特許第1362847号に記載されている。その他の点で通例の液相ホスゲン化に対するこのプロセスの利点としては、高価で複雑な溶媒及びホスゲン回路を最小限に抑えることによってもたらされるエネルギー節約が挙げられる。気相ホスゲン化は、工程(A)の変形例(b)を含む。変形例(a)は、気相ホスゲン化の場合、工程(A)で使用される芳香族溶媒の蒸気を希釈剤として使用することも同様に可能であるが、必須ではない。
【0075】
本発明による方法は、好ましくはジフェニルメタン系列のジアミン(ジフェニルメタン系列のジイソシアネートを得るため)、トリレンジアミン(トリレンジイソシアネートを得るため)、キシリレンジアミン(キシリレンジイソシアネートを得るため)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを得るため)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンを得るため)、ヘキサヒドロトリレンジアミン(ヘキサヒドロトリレンジイソシアネートを得るため)、1,6-ヘキサメチレンジアミン(ヘキサメチレンジイソシアネートを得るため)、1,5-ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジイソシアネートを得るため)及びイソホロンジアミン(イソホロンジイソシアネートを得るため)から選択されるアミンのホスゲン化を可能にする。トリレンジアミンが特に優先され、好ましくはジクロロベンゼン(X=2)、特にオルト異性体が工程(A)の溶媒として使用される。この目的のため、様々な異性体、特に2,4-及び2,6-トリレンジアミン(メタ-トリレンジアミン)の混合物の形態であるトリレンジアミンは、それ自体が知られている方法でホスゲン化されて、トリレンジイソシアネート異性体(すなわちTDI)の対応する混合物を得て、ここでは、上記で言及されるように、好ましくはジクロロベンゼン(X=2)、特にオルト異性体が工程(A)の溶媒として使用される(ただし、原則的にはモノクロロベンゼン(X=1)も使用され得る)。
【0076】
気相ホスゲン化の好ましい実施形態において、手順は以下の通りである。
【0077】
最初に、第一級アミンのガス流が提供される。この目的に適した方法は、原則的には当業者に知られている。好ましい実施形態を以下に明示する。
【0078】
第一級アミンは、従来技術から知られている全ての蒸発装置、特に流下膜式蒸発器で気相に変換することができる。高い循環力を備えた流下膜式蒸発器よりも、少量の作業内容物が導かれる蒸発装置を使用することが優先される。
【0079】
アミンへの熱応力を最小限に抑えるには、蒸発装置の正確な構成とは関係なく、N、He、Ar(特にN)等の不活性ガス又は溶媒の蒸気を導入することで蒸発操作を支援することが好ましい。この目的に適した溶媒は、モノクロロベンゼン(X=1)及びジクロロベンゼン(X=2)であり、後者はオルト又はパラ異性体、好ましくはオルト異性体の形態である。
【0080】
出発アミンの蒸発(及び必要に応じて過熱)(特に200℃~430℃、好ましくは250℃~420℃、特に好ましくは250℃~400℃の範囲の温度まで)が好ましくは気体アミン流中の蒸発しない液滴を可能な限り最大限回避するために、単段又は多段、好ましくは多段の方法で実施される。特に好ましいのは、液滴分離器が蒸発システムと過熱システムの間(少なくとも1つのポイント、すなわち少なくとも1つの蒸発システムとその後の過熱システムとの間、又は各蒸発システムとその後の過熱システムとの間)に設置され、及び/又は蒸発装置は液滴分離器の機能も有している、多段階蒸発及び過熱の工程である。適切な液滴分離器は当業者に知られている。
【0081】
更なる工程では、気体ホスゲン流が提供される。ホスゲン対第一級アミン基のモル比を1.1:1~20:1、特に好ましくは1.2:1~5.0:1に確立することが好ましい。第一級アミンについて上に記載されるように、ホスゲンもまた、好ましくは、200℃~430℃、好ましくは250℃~420℃、特に好ましくは250℃~400℃の範囲の温度に加熱され、任意に、N、He、Ar(特にN)等の不活性ガス、又はアミンについて上記で定義した不活性溶媒の蒸気で希釈される。
【0082】
気体反応物である第一級アミンとホスゲンとは混合ゾーンで混合され、その下流に配置された反応ゾーンで反応する。別々に加熱されたアミンとホスゲンとの反応物は、好ましくは、ノズル配置を介して混合及び反応に供給される。アミン及びホスゲン反応物のガス流を導入するためのノズル配置は、当業者に知られている様々な方法で構成することができ、例えば、欧州特許第2199277号、段落[0017]~[0019]、欧州特許第1449826号、段落[0011]~[0012]、欧州特許第1362847号、段落[0011]~[0012]、欧州特許第1526129号、段落[0009]~[0011]及び欧州特許第1555258号、段落[0008]~[0011]に例が見られる。
【0083】
第一級アミンのガス流と気体ホスゲン流とを希釈する上記の選択肢に加えて、別々の希釈ガス流(N、He、Ar、特にN等の不活性ガス)、又はアミンについて上記で定義された不活性溶媒の蒸気を直接混合物に入れることも可能である。この場合、この希釈ガス流は、好ましくは100℃~500℃、好ましくは150℃~450℃、特に好ましくは150℃~400℃の範囲の温度に加熱される。
【0084】
混合ゾーンで混合された第一級アミンとホスゲンとの反応物の反応ゾーンでの更なる変換は、好ましくは断熱方式で行われる。断熱変換とは、生じた反応熱の熱伝達媒体による制御された除去が不要になることを意味する。したがって、反応エンタルピーは、(避けられない熱損失は別として)生成物ガス流と反応物ガス流との温度差に定量的に反映される。
【0085】
反応ゾーンでは、アミンとホスゲンとが、対応するイソシアネートに、好ましくは断熱的に急速に変換される。反応は、好ましくは、アミンが完全に変換されてから、本明細書で以下により詳しく記載されるクエンチに入るように行われる。
【0086】
いわゆるクエンチは、クエンチゾーンにおいて、急冷及び(気相に残っている微量を除いて)クエンチゾーン内のクエンチ液と接触することによって形成されたイソシアネートの液化(クエンチ)をもたらす。適切なクエンチ液には、上記の溶媒、及び製造されるイソシアネートと記載の溶媒との混合物が含まれる。接触は、好ましくは、クエンチ液を反応生成物の混合物のガス流に注入することによって行われる。クエンチゾーンの構築及び操作の選択肢は、原則的には従来技術から知られている。従来技術の装置及び方法は、本発明の状況においても使用され得る。クエンチゾーンの可能な構成は、例えば、欧州特許出願公開第1403248号及び欧州特許出願公開第1935875号に開示されている。クエンチに使用されるクエンチ液の温度は、一方では、イソシアネートに対応するカルバモイルクロリドをイソシアネート及び塩化水素に切断するのに十分に高いように選択されることが好ましい(液相ホスゲン化から知られているカルバモイルクロリド中間体が気相ホスゲン化でも形成されるかどうかは決して定かではない。しかしながら、液化イソシアネートがクエンチ中に存在する塩化水素ガスと部分的に反応してカルバモイルクロリドを生成することは独立して考えられるため、クエンチ液の温度はこの反応を抑制するのに十分高い必要がある)。他方、イソシアネート及び気体アミン流及び/又は気体ホスゲン流において希釈剤として追加的に使用される任意の溶媒は、可能な限り凝縮するか、又は可能な限り溶媒に溶解し、一方、過剰のホスゲン、塩化水素及び追加的に希釈剤として使用される任意の不活性ガスは、可能な限り非凝縮及び非溶解でクエンチゾーンを通過するため、選択されるクエンチ液の温度も高くなりすぎないようにする必要がある。気体反応混合物からイソシアネートを選択的に得るのに特に適したクエンチ液は、50℃~200℃、好ましくは80℃~180℃の温度に保たれたものである。クエンチゾーンで得られた混合物は、気体分と液体分とを含み、すなわち、二相性である。この二相混合物は、相分離のために収集ゾーンに送られる。液相及び気相は、好ましくは、収集ゾーンから連続的に取り出される。この実施形態において、このようにして得られた液相は、工程(B)で実施されるワークアップの出発物質であり、すなわち、この液相は、イソシアネート及び使用した芳香族溶媒を含む液体生成物の混合物である。
【0087】
好ましい実施形態において、混合ゾーン、反応ゾーン、クエンチゾーン、及び収集ゾーンは、直立した、特に円錐形又は円筒形又は円錐円筒形の反応器において、上から下に上記順序で配置される。この実施形態において、クエンチで生成された混合物は、重力によって収集ゾーンに流れ込む。収集ゾーンの別の配置では、状況によっては、反応生成物の混合物とクエンチ液との混合物を収集ゾーンにポンプで送る必要がある場合がある。
【0088】
工程(A)でのホスゲン化後、工程(B)は、(A)からの液体生成物の混合物のワークアップを含み、すなわち、工程(A)で得られた液体生成物の混合物からイソシアネートを単離して、その総質量に対して0.0ppm~9.9ppm、好ましくは0.0ppm~5.0ppm、特に好ましくは0.0ppm~3.0ppmの範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒と共にイソシアネートを得る。本発明によれば、工程(B)は、少なくとも最終蒸留工程、好ましくは最終蒸留の上流に配置された少なくとも1つの蒸留工程、特に式C6-XClの芳香族溶媒を分離するための溶媒蒸留を含む。或る特定の実施形態において、工程(B)は、工程(A)で得られた液体生成物の混合物から溶解ホスゲンを分離するための脱ホスゲン化も含み、脱ホスゲン化は必ずしも蒸留として構成される必要はない(以下を参照されたい)。或る特定の場合には、最終蒸留(残留物分離)の上流に、いわゆる残留物(ホスゲン化の非常に高沸点の副生成物)を分離するための専用の蒸留工程を配置する必要がある場合もある。ここで簡単に概説されている工程は、以下でより詳しく説明される。
【0089】
最終蒸留の工程、及び実施される場合、その上流に配置された蒸留工程は、単離イソシアネートの流れが連続的に得られるように、連続的に実施されることが好ましい。次いで、式C6-YClの芳香族溶媒の質量分率を、この連続的に得られた単離イソシアネート流で、特に1時間~16時間、好ましくは4時間~12時間の間隔で決定する。不連続構成の工程(B)の場合、単離イソシアネートは、不連続的に、すなわちバッチ毎に得られる。次いで、式C6-YClの芳香族溶媒の質量分率を各バッチで決定することが好ましい。工程(B)の操作条件が、式C6-YClの芳香族溶媒の質量分率が十分に低くなるように最適化されると、単離イソシアネートが連続的に得られるかバッチ毎に得られるかに関係なく、測定頻度も低下され得る。
【0090】
同様に、単離イソシアネートが連続的に得られるかバッチ毎に得られるかに関係なく、本発明に従って提供される式C6-YClの芳香族溶媒の質量分率から求められた任意の偏差は、式C6-YClの芳香族溶媒の排出の増加によって打ち消される。
【0091】
ホスゲン化生成物のワークアップの例は、欧州特許出願公開第1413571号(TDI)、米国特許出願公開第2003/0230476号(TDI)、及び欧州特許第0289840号(HDI、IDPI、及びH12-MDI)に記載されている。そこに記載されている基本的な手順は、原則として、本発明による方法でも採用され得る。これは、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClを含む少なくとも1つの流れの本発明に従って必要な排出をこれらの手順に組み込むことができる場合に当てはまり、その結果、C6-YClの濃度に関する純度要件が所望のイソシアネートにおいて満たされる。
【0092】
既に上で述べたように、任意に溶解ホスゲン(及び溶解塩化水素)は、最初に、別の工程において工程(A)で得られた液体生成物の混合物から分離される。液相ホスゲン化で得られる液体粗生成物は、気相ホスゲン化で得られるものよりも著しく高い割合の溶解ホスゲン及び溶解塩化水素を含む傾向があるため、このプロセスレジームは、特に工程A)においてホスゲン化が液相で行われる場合に好ましい。このいわゆる脱ホスゲン化工程は、原則的には、当業者に知られている任意の方法で、特に蒸留、吸収、又はこの2つの組み合わせによって実施され得る。
【0093】
脱ホスゲン化工程の後、又は特に気相で工程a)を実施する場合に工程(A)の直後に、既に上記で言及されているように、別々の工程において、使用される芳香族溶媒C6-XCl(より正確には、その大部分、すなわち、式C6-XClの芳香族溶媒が枯渇した液体生成物の混合物を得るのに十分であり、式C6-XClの芳香族溶媒の質量分率は、その総質量に対して8%~49%、好ましくは10%~30%の範囲である)の分離が続くことが好ましい。この溶媒分離は、蒸留(溶媒蒸留)によって行われる。このように分離された溶媒は、必要に応じて、その中に存在するホスゲンを分離するための溶媒精製(すなわち溶媒脱ホスゲン化)に供され得る。これは、好ましくは、溶媒脱ホスゲン化塔での蒸留によって行われ、底部生成物として多くても微量のホスゲン及びイソシアネートを含む精製された溶媒が得られる。しかしながら、脱ホスゲン化のために行われるかかる蒸留では、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒からの使用される溶媒の分離を達成することができず、これは、どちらも脱ホスゲン化塔の底部で一緒に得られるためである。経済的な理由から、回収された、任意に脱ホスゲン化された溶媒を工程(A)に再循環することが求められている。式C6-XClの回収された、任意に脱ホスゲン化された溶媒は、式C6-YClの高沸点溶媒の比率を含む場合もある(その他の比率は、溶媒蒸留の底部から式C6-XClの溶媒が枯渇した液体生成物の混合物に残る)。したがって、この場合、式C6-XClの溶媒は、式C6-YClの溶媒との混合物中での溶媒蒸留で得られることから、本発明の一実施形態において、この混合物全体を工程(A)に再循環させることができる。この場合、本発明に不可欠な式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れの排出は、イソシアネートの最終精製(すなわち最終蒸留)の下流工程に完全に移される。しかしながら、溶媒分離のこの工程において、本発明に不可欠であるこの排出を少なくとも部分的に予め実行することも可能である。そのための適切な実施形態を以下に説明する。
【0094】
したがって、本発明のかかる実施形態において、溶媒蒸留は、溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物において得られるように構成され、混合物の第1の部分(任意に、溶媒の脱ホスゲン化後、上記を参照されたい)は工程(A)に再循環され、混合物の第2の部分は工程(A)に再循環されずに(間隔を置いて又は断続的に)排出され、その後、焼却又はその他の方法で使用されるが、プロセスには再循環されない。焼却が好ましい。本発明のこの実施形態において、混合物の第2の部分の記載された分離(プロセスへのその再循環を意図的に回避すること)は、本発明又はその一部に必須である式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れの排出(他の排出ポイントがある場合)を構成する。
【0095】
溶媒蒸留の対応する構成は、この蒸留における温度、圧力、還流比、及び/又は理論段数の適切な条件を確立することによって達成される。言うまでもなく、選択される正確な条件は、工程(A)で使用される芳香族溶媒のタイプ、アミン、及び蒸留される出発混合物中のイソシアネートと更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒との両方の濃度に依存し、当業者は各用途について容易に決定することができる。場合によっては、最適な蒸留パラメータを特定するための簡単な予備実験が必要になることがある。
【0096】
溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分の排出の代わりに、混合物の第2の部分は、更なる蒸留(本発明の用語では、溶媒蒸留の不可欠な部分、したがって最終蒸留の上流に配置された蒸留工程)で精製することができ、式C6-XClの芳香族溶媒は、混合物の第2の部分から分離され、次いで(任意に、溶媒の脱ホスゲン化後に)少なくとも部分的に、特に完全に、工程(A)に再循環される。当然のことながら、溶媒蒸留で分離された全ての混合物を更なる蒸留で精製し、式C6-XClの芳香族溶媒を混合物から分離し、次いで(任意に溶媒脱ホスゲン化後に)少なくとも部分的に、特に完全に工程(A)に再循環させることも可能である。
【0097】
混合物の第2の部分のみ又はその全体が上記の更なる蒸留に送られるかどうかに関係なく、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClは、沸点が比較的高いため、この更なる蒸留の底部に蓄積するため、底流を介して上記蒸留から出る一方で、式C6-XClの芳香族溶媒の流れ(これは、多くても重要ではない比率の更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClを含む)は頂流として取得される。したがって、この更なる蒸留の底流は、排出され、焼却されるか、又は他の方法で使用されるが、プロセスには再循環されない。焼却が好ましい。本発明のこの実施形態において、更なる蒸留の底流の記載される分離(プロセスへのその再循環を故意に回避する)は、本発明に必須である式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れ又はその一部(他の排出ポイントがある場合)の排出を構成する。
【0098】
溶媒蒸留において得られた混合物の一部(第2の部分)の排出及び/又は更なる蒸留におけるこの混合物の一部/全混合物の精製に続いて、ここで、この更なる蒸留の底流の排出が行われ、その結果、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClがプロセスから十分な程度まで排出される。正確な条件(例えば、混合物の第1の部分対第2の部分のモル比、及び/又は更なる蒸留の正確な構成及び/又は間隔を置いて排出を行う場合の排出の頻度等)は、個々の場合の境界条件に依存し、任意に予備実験を実施することにより、当業者によって容易に決定され得る。関連するプロセス条件には、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClを排出する更なるポイントがプロセスにあるかどうかも含まれる。
【0099】
これは、本発明の目的のために溶媒蒸留のみにおいて十分な程度まで更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒を排出することは、原則的には可能であるが、費用がかかり、不便であるためである。したがって、以下に記載される最終精製工程において、主に又は完全に、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒の排出を行うことが好ましい。
【0100】
特に最終精製(すなわち最終蒸留)に供給される生成物の混合物は、最終精製の上流に溶媒分離が配置されているかどうかに関係なく、その総質量に対して8%~49%、好ましくは10%~30%の範囲の質量分率の式C6-XClの芳香族溶媒を含む(すなわち、記載された範囲の溶媒含有量は、溶媒分離の条件を選択することによって確立されるか、又は工程(A)の反応条件の結果として自動的に確立される)。製造されるイソシアネートのこの最終精製は、残っている低沸点及び高沸点有機二次成分(すなわち低沸点物質及び高沸点物質)及び任意の残留溶媒、並びに任意に塩化水素及びホスゲンのあらゆる残りの残留成分を分離するための蒸留によって実施される。任意の残留する溶媒、塩化水素、及びホスゲンも同様に、製造されるイソシアネートよりも低沸点であるため、主に又は、完全に低沸点の有機二次成分と共に分離される。次に、最終蒸留は、低沸点物質と高沸点物質との分離が2つの連続して配置された蒸留塔で行われるように、サブステップから構成され得る。しかしながら、同様に、分割型蒸留塔を使用して、これらの分離操作を1つの工程で(すなわち、単一の蒸留塔で)実施することも可能である。
【0101】
工程(B)は、好ましくは(特に気相で工程(A)を実施する場合)、その中に存在する任意のイソシアネートを分離するための工程(A)で得られた気体生成物の混合物のワークアップも含む。これは、気体生成物の混合物を、使用される芳香族溶媒C6-XClでスクラブすることによって行うことが好ましい。この目的で使用される式C6-XClの溶媒は、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClに関して100%純粋である必要はない。スクラビングで得られたイソシアネート-溶媒混合物は、工程(A)からの液体生成物の混合物のワークアップに送ることができる。
【0102】
工程(B)の可能な実施形態は、特に好ましいイソシアネートであるTDIの例を使用して以下に詳細に記載され、最初に、好ましい蒸留シーケンスの基本的な設定のみを、様々な変形例(1~4)を参照して明らかにする。言うまでもなく、この基本的な設定はTDIのワークアップに限定されない。続いて、本発明によるプロセスが特定の蒸留シーケンスでどのように実施され得るかを説明する。
【0103】
変形例1
特に工程A)が液相で実施される場合に適した変形例1は、原則的に、Chem SystemのTDI/MDIに関するPERPレポート(Chem Systems, Process Evaluation Research Planning TDI/MDI 98/99 S8, Tarrytown, N.Y., USA: Chem Systems 1999、27頁~32頁)に記載されている。この変形例では、塩化水素とホスゲンとの蒸留分離が完了した後の液体反応混合物は、その総質量に対して50質量%超、好ましくは51質量%~85質量%、特に好ましくは55質量%~65質量%の溶媒含有量を依然として含む。この混合物は溶媒分離に送られ、最初にプレ蒸発装置(pre-evaporator)で溶媒-TDI混合物が溶媒蒸留塔に留去される。溶媒蒸留塔では、溶媒が留去され、プロセスのフロントエンドセクションに再循環される。この溶媒蒸留からの底流は、この底流の総質量に対して、TDIだけでなく、特に好ましくはこの底流の総質量に対して15質量%~25質量%の溶媒も含む。この流れは、いわゆる中間塔に移され、そこで更なる溶媒が留去され、溶媒が除去された底部生成物は、TDIの精製のために最後の蒸留塔に送られる。上記塔は陰圧で操作され、留出物流として販売可能な精製イソシアネートTDIを提供する。TDIの一部は、この最後の蒸留塔の蒸留底流に残る。また、特に欧州特許出願公開第1371635号に記載されているように、TDI精製用の中間塔と蒸留塔との機能を1つの分割型蒸留塔に組み合わせて、低沸点物質及び溶媒の頂流、分割壁の領域において純粋なTDI、並びに蒸留底流としてTDI及び高沸点成分(蒸留残留物)を含む生成物流を得ることができる。
【0104】
変形例2
この実施形態の変形例1とは対照的に、塩化水素及びホスゲンの完全な蒸留分離後の液体反応混合物は、その総質量に対して、わずか50.0質量%以下の溶媒含有量を保持する。この混合物はプレ蒸発装置に送られ、溶媒-TDI混合物がそこから留去されて蒸留塔に入る。この変形例では、TDIは既に後の蒸留塔で溶媒を除去されているため、この蒸留塔からの底流をTDI精製塔に移すことができ、その結果、この変形例は変形例1よりも1つ少ない塔を含む。TDI精製塔は陰圧で操作され、留出物流として販売可能な精製イソシアネートTDIを提供する。また、特に欧州特許出願公開第1413571号に記載されているように、TDI精製塔とその上流に配置された蒸留塔との機能を1つの分割型蒸留塔に組み合わせて、低沸点物質及び溶媒の頂流、分割壁の領域において純粋なTDI、並びに蒸留底流としてTDI及び高沸点成分(蒸留残留物)を含む生成物流を得ることができる。
【0105】
変形例3
変形例3は、変形例2及び変形例1に記載される蒸留シーケンスを含むが、それぞれの場合に言及されているプレ蒸発装置を含まない。この場合、記載された蒸留シーケンスにおける蒸留残留物の割合は、それぞれの最終的なTDI精製塔までの液体物質フローに含まれる。このプロセスは、同様に、原則として既知である(特許文献5)。
【0106】
変形例4
この変形例は、工程(A)が気相で実施される場合に特に採用される。気相ホスゲン化で得られる液体粗プロセス生成物は、溶解ホスゲン及び溶解塩化水素を比較的ごく少量しか含まないため(すなわち、液相ホスゲン化と比較して)、好ましくはホスゲン及び塩化水素の別々の除去が回避される。したがって、この実施形態において、液体生成物の混合物は、溶媒、並びに任意の溶解塩化水素及び任意の溶解ホスゲンが塔頂で蒸留により分離される溶媒分離に直接送られるか、又は溶媒含有量が十分に低い場合は、最終蒸留用のTDI精製塔に直接送られる。どちらの場合も、TDI精製塔は分割型蒸留塔として構成されることが好ましい。低沸点物質(すなわち、TDIよりも低沸点である副生成物、まだ存在する任意の塩化水素、まだ存在する任意のホスゲン及び溶媒、並びに不活性ガス)は、TDI精製塔の塔頂から取り出される。頂流は、更に少量の同伴TDIを含む場合がある。精製されたTDIは、分割壁の領域で留出物流として除去される。得られた蒸留底流は、いわゆる蒸留残留物及び一定量のTDIを含み、これは、蒸留底流を処理可能(流動性)に保つために、留去されず、おそらくは微量の溶媒である。言うまでもなく、分割型蒸留塔の代わりに、2つの連続して配置された非分割型蒸留塔を使用することも可能である。この後者の実施形態において、低沸点物質は第1の蒸留塔の頂部で取り出され、第1の蒸留塔からの底流が第2の蒸留塔への供給物を形成する。精製されたTDAは、留出物流として第2の蒸留塔から取り出され、一方、第2の蒸留塔からの底流は、TDIとの混合物中に蒸留残留物を含む。
【0107】
この変形例4では、溶媒分離は、実施される場合、好ましくは、160℃~200℃の範囲の温度及び160mbar~220mbarの範囲の圧力で実施され、いずれの範囲も、使用される蒸留塔の底部に関する。
【0108】
特に分割型蒸留塔で実施する場合、TDI最終蒸留は、好ましくは、160℃~200℃の範囲の温度及び50mbar~100mbarの範囲の圧力で実施され、いずれの範囲も、使用される蒸留塔の底部に関する。
【0109】
したがって、記載される全ての変形例において、TDIの最終蒸留は、低沸点物質の頂流、すなわち、分割型蒸留塔からの頂流、又は非分割型TDI精製塔の上流に配置された蒸留塔からの頂流を提供する。この低沸点物質の頂流の主成分は、使用される芳香族溶媒C6-XClである。この頂流で使用される芳香族溶媒(C6-XCl)と更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒(C6-YCl)との総質量分率は、その総質量に対して、特に51%~99%、特に好ましくは60%~99%である(残りは主に又は完全にTDIからなる)。言うまでもなく、これはTDIだけでなく、記載される方法での最終精製(2つの連続して配置された蒸留塔又は1つの分割型蒸留塔での低沸点物質と高沸点物質との分離)に適した全てのイソシアネートにも当てはまる。従来技術では、最終蒸留で(最初は気体で)得られたこの低沸点頂流を凝縮し、非凝縮性部分の分離後に得られた凝縮物を還流として最終蒸留に部分的に再循環させ、それを最終蒸留から部分的に排出させた後に、プロセスの別のポイントに再循環させるのが通例である。しかしながら、低沸点頂流にかなりの割合の更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClが含まれている場合、すなわち、この時点で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物で得られる場合、驚くべきことに、本発明に関連して見出されたように、この溶媒の再循環には課題がある。これは、この更に1つの塩素を含有する溶媒C6-YClは、その比較的高い沸点のために、低沸点頂流の凝縮物に徐々に蓄積するためであり(例えば、非凝縮性ガスと共に、気相としての感知できるほどの排出はない)、そのため溶媒再循環の結果として、プロセスにおいて、したがって最終的には、単離されるイソシアネートは汚染される。本発明に関連して、様々な方法でこれに対抗することができる。
【0110】
単離されたイソシアネートの純度に関する本発明による要件は、この場合に、プロセスの別のポイントへの低沸点頂流の再循環を提供する通例の従来技術とは対照的に、得られた混合物が(完全に)排出され、処分、特に焼却のために送られることで最も容易に達成される。しかしながら、所望の生成物は熱的にしか回収できず、物質的に回収できないため、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分のみをプロセス(すなわち、イソシアネートを製造するプロセス)の別のポイントに再循環させ、(間隔を置いて又は連続的に)排出し、次いで処分、特に焼却のため(実施例2も参照されたい)に第2の部分を送ることが好ましい。
【0111】
プロセスの別のポイントへの再循環は、工程(A)に対して、又はイソシアネートを除去するための式C6-XClの芳香族溶媒による工程(A)で得られた気体生成物の混合物の上記のスクラビングを含む実施形態において、好ましくはこのスクラビングに対して行われ得る。
【0112】
分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分を排出する代わりに、この第2の部分を、更なる蒸留でも精製することができ(本発明の用語の文脈では、最終蒸留の不可欠な部分)、式C6-XClの芳香族溶媒が混合物の第2の部分から分離され、その後、少なくとも部分的に、特に完全に、プロセスの別のポイントに再循環される。工程(A)及び任意に、工程(A)で得られた気体生成物の混合物のスクラビング(実施例4を参照されたい)は、上記のように、それに適している。更なる蒸留を考慮して、溶媒蒸留に関連して上記に述べられたことを参照する。そのため、上記に述べられていることは、ここでも当てはまる。特に、ここでも、更なる蒸留からの底流は排出され、焼却されるか、又は他の方法で使用されるが、プロセスに再循環されない。焼却が好ましい。
【0113】
当然のことながら、同様に、分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の全てを更に蒸留して精製し、式C6-XClの芳香族溶媒を混合物から分離し、次いで少なくとも部分的に、特に完全に、プロセスの別のポイントに再循環させることができる。ここでも、工程(A)及び任意に工程(A)で得られた気体生成物の混合物のスクラビングが同様に適切である。
【0114】
分割型蒸留塔の頂部又は第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の一部(第2の部分)の排出及び/又はこの混合物の一部/更なる蒸留における全混合物の精製に続いて、ここで、この更なる蒸留の底流の排出が行われ、その結果、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClがプロセスから十分な程度まで排出される。正確な条件(例えば、混合物の第1の部分対第2の部分のモル比、及び/又は更なる蒸留の正確な構成及び/又は間隔を置いて排出を行う場合の排出の頻度等)は、個々の場合の境界条件に依存し、任意に予備実験を実施することにより、当業者によって容易に決定され得る。当然のことながら、関連する境界条件には、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒C6-YClが他のポイント(溶媒精製等)で既に部分的に排出されているかどうかも含まれる。
【0115】
本発明による手順の結果として欠落している使用した芳香族溶媒C6-XClの割合(更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒の排出は常に使用された芳香族溶媒の割合の同時排出ももたらす)を新たに供給された溶媒C6-XClで置き換える。言うまでもなく、これは、更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒が排出される正確なポイントとは無関係である。
【0116】
特に塩化鉄(III)等の塩化鉄は、使用される芳香族溶媒の塩素化をもたらすため、腐食性物質の除去が行われることが知られているか又は懸念されており、またかなりの溶媒濃縮が依然として発生している全ての重要なポイントで特に耐食性のステンレス鋼を使用することによって、この望ましくない塩素化反応を低減する(したがって、単離されたイソシアネート中の更に1つの塩素を含有する芳香族溶媒の含有量を低減する)ことが可能である。以下のタイプは、この目的に特に適している。
1)総質量に対して以下の質量分率を有する低炭素オーステナイト系ニッケル-モリブデン-クロム合金:
炭素:0.01%~0.015%、
ケイ素:0%~0.08%、
マンガン:0%~1.00%、
リン:0%~0.025%、
硫黄:0%~0.015%、
クロム:14.0%~18.0%、
モリブデン:14.0%~17.0%、
チタン:0%~0.70%、
銅:0%~0.50%、
コバルト:0%~2.00%、
鉄:0%~3.00%、
ニッケル:100%までの残部
タイプ2.4610ステンレス鋼(「Hastelloy C4」としても知られる)
2)総質量に対して以下の質量分率を有するオーステナイト系特殊ステンレス鋼:
炭素:0%~0.02%、
硫黄:0%~0.010%、
窒素:0.15%~0.25%、
クロム:20.0%~21.0%、
ニッケル:24.0%~26.0%、
マンガン:0%~1.0%、
ケイ素:0%~0.5%、
モリブデン:6.0%~7.0%、
銅:0.5%~1.5%、
リン:0%~0.03%、
鉄:100%までの残部、
タイプ1.4529ステンレス鋼。
3)総質量に対して以下の質量分率を有する高合金、低炭素オーステナイト系ステンレス鋼:
炭素:0%~0.2%、
マンガン:2%、
ニッケル:23%~28%、
クロム:19%~23%、
硫黄:0%~0.3%、
モリブデン:4%~5%、
窒素:0%~0.1%、
銅:1%~2%、
リン:0%~0.03%、
ケイ素:0%~0.7%、
鉄:100%までの残部、
タイプ1.4539ステンレス鋼。
【0117】
いずれにせよ、実際の反応(すなわち反応器内)では、特に高品質のステンレス鋼が、既に使用されているため、ステンレス鋼は、反応の粗液生成物の混合物を受け入れるために、特に粗生成物容器(タンク容器)の下流のワークアップにおいて使用されなくてはならない。粗生成物容器を、使用される蒸留手段に接続するため、及び/又はこれらの蒸留手段を互いに接続し、最終蒸留塔の底部容器及びその底部配管に接続するために使用される管路にも特に注意を払う必要がある。
【0118】
これより、実施例を参照して本発明をより詳しく説明する。
【実施例
【0119】
パーセント及びppmで報告される量は、それぞれの物質流の総質量に対する質量分率である。
【0120】
実施例1~実施例4は、変形例4による気相反応(工程(A))で得られたTDI生成物の混合物のワークアップ(工程(B))を説明する(個別の脱ホスゲン化はないが、最終蒸留の上流の溶媒塔で溶媒の大部分を個別に分離する;分割型蒸留塔での最終蒸留)。反応混合物を冷却する手段として気相反応に使用された溶媒C6-XClは、オルト-ジクロロベンゼン(ODB)であった。分割型蒸留塔で塔頂から留去されたODB含有流を、凝縮後、部分的に還流として分割型蒸留塔に再循環させ、部分的にプロセスに(すなわち、クエンチ後の工程(A)に残っている気体反応生成物のスクラビングに)再循環させた。
【0121】
実施例1(比較、式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れを排出しない):
分割型蒸留塔から側流として取り出された精製TDIは、11ppmのトリクロロベンゼン(TCB)濃度を有した。塔頂から取り出された低沸点流は、8.6%TDI、88.6%ODB、及び2.2%TCBを含んだ。テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、及びヘキサクロロベンゼン等のより高度に塩素化されたクロロベンゼンは、使用したガスクロマトグラフィー分析法では検出できなかった。
【0122】
実施例2(本発明):
TCBの枯渇を達成するため、プロセスへの再循環が予定されている部分からの8.6%TDI、88.6%ODB、及び2.2%TCBを含有する1.9tの流れを排出し、1回限りの外部焼却に送った。これは、本発明の式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れの排出に相当する。溶媒再循環回路では、合計42kgのTCBが枯渇された。
【0123】
プロセス全体でのこの1回限りのTCBの枯渇により、分割型蒸留塔からのTDI側流中のTCB濃度が12時間かけて11ppmから6ppmに低下した。
【0124】
実施例3(比較、式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れを排出しない;プロセス模擬実験(VTPlan)):
TDI分割型蒸留塔の頂流の組成は次の通りである:
92.8%ODB、
5.1%TDI、
2.1%TCB。
【0125】
TDI分割型蒸留塔からの側流(TDI生成物)は、15ppmのTCBを含む。
【0126】
実施例4(本発明;実施例3と同様の模擬実験):
プロセスへの再循環が予定されている部分からの300kg/時間のTCBに富む頂流を迂回させて下流の蒸留塔に送る。これは、70mbarのヘッド圧力で動作する24の理論段数を備えた充填塔である。TCB含有量が1ppm未満のODBは、この下流の蒸留塔で頂部の生成物として分離される。次いで、このように精製されたODBは、同様にプロセスに再循環される。この下流の蒸留塔からの底部生成物として、3.0%TCB、96.9%TDI、及び0.1%ODBを含む14.5kg/時間のTCBに富む流れを取り出し、排出させ、外部廃棄物回収に送る。これは、本発明による式C6-YClの芳香族溶媒を含む流れの排出に相当する。
【0127】
精製溶媒ODBの連続排出、ワークアップ、及び再循環の結果として、分割型蒸留塔からの頂流の組成は次のように変化する:
95.3%ODB、
4.56%TDI、
0.14%TCB。
【0128】
プロセスからのトリクロロベンゼンのこの継続的な除去は、TDI生成物中のトリクロロベンゼンの汚染を先の15ppm(実施例3)から3ppm未満に減らす。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネートを製造する方法であって、
(A)アミンと化学量論的に過剰なホスゲンとを、
(a)反応中の希釈剤として、及び/又は、
(b)前記アミンとホスゲンとの反応から形成された反応混合物を冷却するための手段として、
式C6-XCl(式中、X=1又は2)の芳香族溶媒を使用して反応させて、イソシアネートと使用した芳香族溶媒とを含む液体生成物の混合物、及びホスゲンと塩化水素とを含む気体生成物の混合物を得る工程と、
(B)工程(A)で得られた液体生成物の混合物からイソシアネートを単離する工程であって、単離イソシアネートが生成物流として得られる最終蒸留の工程を含み、前記単離イソシアネートが、その総質量に対して0.0ppm~9.9ppmの範囲の質量分率の式C6-YClの芳香族溶媒を有するように、前記最終蒸留又は前記最終蒸留の上流の蒸留工程において、式C6-YCl(式中、Y=X+1)の芳香族溶媒を含む少なくとも1つの流れが排出される工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(A)で得られた前記液体生成物の混合物を、工程(B)において、最終蒸留の前に、式C6-XClの芳香族溶媒を分離するための溶媒蒸留に通す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(B)において、
分割型蒸留塔内で最終蒸留を行い、該分割型蒸留塔から抜き出した側流中でイソシアネートの生成物流を得て、該分割型蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得るか、又は、
2つの連続して配置された非分割型蒸留塔で最終蒸留を行い、第1の蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得て、第2の蒸留塔から留出物としてイソシアネートの生成物流を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(B)において、
分割型蒸留塔内で最終蒸留を行い、該分割型蒸留塔から抜き出した側流中でイソシアネートの生成物流を得て、該分割型蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得るか、又は、
2つの連続して配置された非分割型蒸留塔で最終蒸留を行い、第1の蒸留塔の頂部で式C6-XClの芳香族溶媒を得て、第2の蒸留塔から留出物としてイソシアネートの生成物流を得る、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が工程(A)に再循環されずに排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分の一部が排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた前記混合物の一部が排出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が工程(A)に再循環されずに排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた混合物の第2の部分の一部が排出されるか、又は、
前記溶媒蒸留で分離された式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られ、前記溶媒蒸留で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記溶媒蒸留で得られた混合物から分離され、その後工程(A)に再循環され、前記溶媒蒸留で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記溶媒蒸留で得られた前記混合物の一部が排出される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られる式C6-XClの芳香族溶媒が、式C6-YClの芳香族溶媒との混合物中に得られる、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物が排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から分離され、次いで工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の一部が排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分が工程(A)に再循環されずに排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分が工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から分離され、次いで工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分の一部が排出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(B)において、イソシアネートを分離するために、工程(A)で得られた気体生成物の混合物を式C6-XClの芳香族溶媒でスクラブする工程を含み、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分がスクラビング工程に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分がスクラビング工程に再循環されずに排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第1の部分がスクラビング工程に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から分離され、次いでスクラビング工程若しくは工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の第2の部分の一部が排出されるか、又は、
前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物が更なる蒸留で精製され、式C6-XClの芳香族溶媒が、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から分離され、次いでスクラビング工程若しくは工程(A)に再循環され、前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物から式C6-XClの芳香族溶媒を分離した後に残る前記分割型蒸留塔の頂部又は前記第1の蒸留塔の頂部で得られた混合物の一部が排出される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記最終蒸留に、その総質量に対して8%~49%の範囲の質量分率の式C6-XClの芳香族溶媒を含む生成物の混合物が供給される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式C6-YClの芳香族溶媒を含む排出流が、その総質量に対して1.0%~10%の範囲の質量分率の前記溶媒を含有する、請求項1~1のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】