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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】圧縮果実粉末及び飲料粉末
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20221109BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20221109BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L2/00 Q
A23L2/00 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513662
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020074328
(87)【国際公開番号】W WO2021043758
(87)【国際公開日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】19195275.3
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ブリュッシュ, リンダ
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンフランセスコ, アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ハルシェ, ヨゲシュ
(72)【発明者】
【氏名】カマーホーファー, ジャナ
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ, ヴィンセント, ダニエル, モーリス
(72)【発明者】
【氏名】プーゾット, マテュー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィネイ, クレア
【テーマコード(参考)】
4B016
4B117
【Fターム(参考)】
4B016LE02
4B016LG01
4B016LK11
4B016LK13
4B016LP01
4B016LP13
4B016LT08
4B117LE01
4B117LE06
4B117LG01
4B117LG06
4B117LG11
(57)【要約】
本発明は、ふるい分けにより測定したとき、2.0mm未満の直径である圧縮果実粉末の粒子を含む果実粉末に関し、果実粉末粒子の30重量%未満は、ふるい分けにより測定したとき、300μm未満の直径を有し、ここで、果実粉末は、550g/Lよりも高く800g/Lよりも低いバルク密度を有する。果実粉末は、改善された保存安定性及び再構成挙動を持つ。果実粉末は、飲料粉末製品を調製するために使用され得る。製造方法もまた開示される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮果実粉末の粒子を含む果実粉末であって、前記圧縮果実粉末の粒子は、ふるい分けにより測定したとき、2.0mm未満、好ましくは1.6mm未満の直径を有しており、前記果実粉末の粒子のうち30重量%未満は、ふるい分けにより測定したとき、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有しており、前記果実粉末は、550g/Lよりも高く800g/L未満であるバルク密度を有する、果実粉末。
【請求項2】
前記圧縮果実粉末の粒子の10重量%未満が、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有する、請求項1に記載の果実粉末。
【請求項3】
水分活性Awが、0.20未満である、請求項1又は2に記載の果実粉末。
【請求項4】
前記果実粉末のガラス転移温度が、12℃~30℃から構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項5】
前記果実粉末の糖含量が、30重量%~80重量%の乾燥重量から構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項6】
前記果実粉末の繊維含量が、5重量%~35重量%の乾燥重量から構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項7】
4kN/cm~12kN/cmの線圧縮力で果実粉末を圧縮し、かつふるい分けにより、300μm~2mm、好ましくは350μm~1.6mmの直径を有する前記圧縮果実粉末の粒子を確保することによって得ることができる、請求項1~6のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項8】
圧縮果実粉末の粒子のみからなり、前記圧縮果実粉末の粒子が、ふるい分けにより測定したとき、2.0mm未満、好ましくは1.6mm未満の直径を有し、30重量%未満の前記果実粉末の粒子が、ふるい分けにより測定したとき、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有し、前記果実粉末が、550g/Lよりも高く800g/L未満であるバルク密度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項9】
前記果実粉末が、少なくとも95重量%の果実成分、好ましくは少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%のように、果実成分を主成分として含み、好ましくは前記果実粉末が本質的に果実成分のみからなり、最も好ましくは前記果実粉末が果実成分のみからなり、任意選択的には、前記果実粉末が、種子成分及び/又は植物繊維を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項10】
添加されたスクロース、グルコースシロップ、マルトデキストリン、又は他の甘味料を含有せず、増量剤を含有せず、流動剤を含有しない、請求項1~9のいずれか一項に記載の果実粉末。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の果実粉末を10重量%~100重量%と、
任意選択で、ナッツ若しくは豆由来の粉乳類似物、飲料又は粥の調製に好適である穀類由来のフレーク若しくは粉末、及びそれらの混合物から選択される、最大90重量%までの植物由来成分と、を備える、飲料粉末組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の果実粉末を製造する方法であって、
(1)15~25kg/時の速度で粉末圧縮機に果実粉末を供給する工程と、
(2)粉末圧縮装置において前記果実粉末を圧縮して、圧縮果実粉末の塊を得る工程と、
(3)前記圧縮果実粉末の塊を2.0mm未満の粒径に粉砕して、圧縮果実粉末の粒子を得る工程と、
(4)前記圧縮果実粉末の粒子をふるい分けし、300μm~2mm、好ましくは350μm~1.6mmの直径を有する前記圧縮果実粉末の粒子を確保する工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
前記粉末圧縮装置が、ローラーコンパクターである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記果実粉末を圧縮するために4kN/cm~12kN/cmの線圧縮力が適用される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
300μmより小さい粒子、好ましくは350μmより小さい粒子、及び任意選択的には2mmより大きい粒子が、ふるい分け後に回収され、前記回収された粒子が、前記果実粉末と共に前記粉末圧縮装置に再供給される、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1つ又は複数の飲料を調製するためのキットであって、
乳由来の粉末、発酵乳由来の粉末、植物由来の乳類似物粉末、飲料又は粥を調製するのに好適である穀類由来のフレーク若しくは粉末から選択される第1の飲料成分の1つ又は複数の容器と、
第2の飲料成分の1つ又は複数の容器であって、前記第2の飲料成分が、
請求項1~10のいずれか一項に記載の果実粉末を含む、若しくは請求項1~10のいずれか一項に記載の果実粉末のみからなる、又は
請求項11に記載の飲料粉末組成物である、
第2の飲料成分の1つ又は複数の容器と、を含む、キット。
【請求項17】
前記容器が、サシェ、パウチ、缶、又はカプセルから選択される、請求項16に記載のキット。
【請求項18】
前記容器が、1回分容器又は複数回分容器である、請求項16又は17に記載のキット。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[0001]本発明は、概して、果実粉末、及び果実粉末を製造する方法の分野に関する。例えば、本発明は、飲料粉末の調製に使用するための果実粉末に関する。特に、本発明は、良好な保存安定性及び良好な再構成特性を呈する果実粉末に関する。
【0002】
[背景技術]
[0002]飲料粉末とは、水性液体中に分散させて飲料を形成するのに好適な粉末組成物である。飲料粉末は、成分として果実粉末を含有してもよい。果実粉末には非常に吸湿性であるという問題点があり、すなわち、果実粉末は周囲雰囲気から湿気を取り込み塊を形成する傾向がある。この現象は固化として知られている。周囲雰囲気に曝露された場合、果実粉末は数時間以内に固化し、液体中へ分散することが殆ど不可能になる。
【0003】
[0003]果実粉末の固化を防止するためにはいくつかの選択肢が存在する。1つの選択肢は、担体、乾燥助剤、又は固化防止剤を、果実粉末と混合することである。例えば、マルトデキストリン又はグルコースシロップが担体又は乾燥助剤として使用されてもよい。シリカは一般的な固化防止剤である。結果として、得られる果実粉末は、もはや100%の果実粉末ではなくなる。また、マルトデキストリン又はグルコースシロップは、添加糖として見なされ得る。そもそも、特に糖の添加を回避することにより、食品製品の糖含量を低減することが、食品及び飲料産業における継続的な目標である。また、消費者の間では、天然又は「クリーンラベル」と見なされる製品を選択する傾向が高まっている。固化防止剤、担体、又は乾燥助剤を添加することは、この傾向に逆行する。
【0004】
[0004]別の選択肢は、飲料粉末を製造直後に耐湿容器へ詰めることである。このような容器は、通常、防湿バリアとしてプラスチック層又は金属層を備える。容器はまた、多層材料で作製され得るが、多層材料はリサイクルが困難である。この理由から、多層材料を省きたいという要望が存在する。数回分の飲料粉末を収容するバルク容器では、容器が密封された状態を維持している場合にのみバリアが有効であり得る。容器が開くとすぐに固化が始まる。この選択肢は、おそらく、1回分(single-serve)容器でより効果的である。しかしながら、1回分容器は通常、多層材料で作製されている。コート紙などの紙はリサイクル可能な包装材料である。しかしながら、果実粉末のような吸湿性材料を考慮する場合、コート紙などの紙のバリア特性は不充分であり得る。
【0005】
[0005]実際、完全に乾燥された果実粉末のガラス転移温度が低いことに起因して、かかる粉末の固化は、湿密容器では室温でさえ生じる。したがって、100%果実飲料粉末を製造直後に耐湿容器中に充填することでは、固化は防止されない。
【0006】
[0006]果実粉末の別の問題は、果実粉末の再構成特性に関連している。一般に、消費者がスプーンで撹拌する場合などの低~中剪断速度下において、100%果実粉末の再構成は、塊の形成を含む不完全な再構成につながることが多い。
【0007】
[0007]したがって、飲料粉末、特に果実粉末を含有する飲料粉末の特性を改善して、固化を防止し、再構成特性を改善する必要がある。
【0008】
[0008]NESTECS.A.の国際公開第2013/167452号は、食品又は飲料製品を調製するための組成物を開示している。組成物は、水性液体中に溶解した際にガスを放出する発泡成分を備える。組成物はまた、コーヒー抽出物マトリックス中に焙煎粉砕コーヒー粒子を含む。発泡成分によって発泡体が形成されるまで、コーヒーの溶解は遅延される。遅延溶解は、組成物のコーヒー成分を圧縮することによって達成され得る。したがって、その溶解を遅延又は妨害するために、コーヒー成分の圧縮が実施される。前記公報は、飲料粉末の調製に好適な果実粉末の製造については考察していない。
【0009】
[0009]INTERCONTINENTAL GREAT BRANDSの国際公開第2012/09668号は、3in1コーヒーミックス(コーヒー、甘味料、及びクリーマ)などの飲料を調製するのに好適な粉末化組成物を開示している。粉末化組成物は、分散が困難な少なくとも1つの粉末化成分(例えば、脱脂乳固形物、不溶性ココア固形物、不溶性コーヒー固形物)を、分散促進剤(例えば、脂質、乳脂肪、糖、塩)と一緒に共粉砕することによって得られる。前記公報は、飲料粉末の調製に好適な果実粉末の製造については考察していない。
【0010】
[0010]FONTERRAの国際公開第2012/38913号は、レシチンなどの界面活性剤で圧縮及びコーティングすることによって、粉乳を処理する方法を開示している。この処理の目的は、バルク密度、流動性、粉っぽさ(dustiness)、分散性、水和性、水和粘度(hydration viscosity)、水和速度、溶解速度、可溶性、沈降性、懸濁安定性、及び固化などの、粉末の少なくとも1つの特徴を変更することである。レシチンは、概して、脂肪を含有する粉末の湿潤特性を改善するために添加される。前記公報によれば、圧縮粉乳の可溶性を改善するために、レシチンを用いる必要があった。
【0011】
[0011]Barnekowらの米国特許出願公開第2009/246315A1号は、消費に好適であり、芳香放出が遅延した、加圧凝集体に関する。本文書に記載の組成物は、果実香(担体上の噴霧乾燥果実香)を備えたマルトデキストリン担体、又はマルトデキストリンと果実ピューレ若しくは果実濃縮物との噴霧乾燥混合物を含むマルトデキストリン担体を主に含有する。噴霧乾燥混合物により、担体上に噴霧乾燥された果実香の混合物が開示される。記載される組成物にマルトデキストリンを含まないものはない。
【0012】
[0012]Barnekowらに対する米国特許出願公開第2008/00801A1号は、消費に好適である加圧凝集体、特に食品製品の香りづけに関する。実施例は、マルトデキストリン、デキストロース、及びアラビアガムを含む担体上にラズベリー香を備える、噴霧乾燥製品を開示する。
【0013】
[0013]Husterらの米国特許第4,737,370号は、乾燥したピューレのデンプン質フレークに関する。乾燥したピューレのデンプン質フレークは、例として、ジャガイモピューレを再構成するために使用されてもよい。
【0014】
[0014]PERORA GMBHの米国特許出願公開第2019/0110514A1号は、満腹感を誘発する製剤を備えるキットに関する。
【0015】
[0015]Perez-Gandarillasらは、顆粒及び錠剤特性に対するロール圧縮及び粉砕条件の影響を研究した(Eur.J.Pharmaceutics and Biopharrmaceutics,2016年,第106巻,第38~49頁)。これらの顆粒及び錠剤は微結晶性セルロース及びマンニトールを含有していた。
【0016】
[0016]したがって、飲料粉末組成物での使用に適し、優れた工業的特性及び使用特性を有する果実粉末を提供することが、望ましい。工業的特性としては、果実粉末を成分として保管することと、工業的方法でそれを輸送、適用、及び混合することとに関連する、流動性及び固化が挙げられる。使用特性としては、最終製品の保存安定性に関連し、かつ飲料としての再構成に関連する、固化及び分散性が挙げられる。
【0017】
[0017]本明細書における先行技術文献へのいかなる参照も、かかる先行技術が周知であること、又は当技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものとみなされるべきではない。
【0018】
[発明の概要]
[0018]本発明は、現在の技術を改良することを目的とし、特に、従来技術の課題を克服し、上記ニーズに対処する果実粉末及び果実粉末の製造方法を提供すること、又は少なくとも有用な代替物を提供することを目的とする。
【0019】
[0019]特に、本発明は、保存安定期間中に固化せず、水で再構成する際に塊を形成しない飲料粉末(流動する、固化なし、保存安定性)の製造に工業的に使用され得る、100%の果実粉末を提供することを目的とする。
【0020】
[0020]本発明者らは、驚くべきことに、本発明の目的が、独立請求項の主題により達成され得ることを見出した。従属請求項は、本発明の着想を更に展開させるものである。
【0021】
[0021]したがって、本発明の実施形態は、圧縮果実粉末の粒子を含む果実粉末であって、ふるい分けにより測定したとき、2.0mm未満、好ましくは1.6mm未満の直径を有しており、当該果実粉末粒子のうち30重量%未満は、ふるい分けにより測定したとき、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有しており、当該果実粉末は、550g/Lよりも高く800g/L未満であるバルク密度を有する、果実粉末を提案する。
【0022】
[0022]好ましくは、果実粉末は、以下の特徴のうちの1つ又はいくつかを有する
圧縮果実粉末の粒子の10重量%未満は、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有する、
果実粉末の水分活性Awは、0.20未満である、
果実粉末のガラス転移温度は、12℃~30℃から構成される、
果実粉末の糖含量は、30重量%~80重量%(乾燥重量)から構成される、
果実粉末の繊維含量は、5重量%~35重量%(乾燥重量)から構成される。
【0023】
[0023]一実施形態では、(圧縮果実)粉末は、4kN/cm~12kN/cmの線圧縮力(linear compaction force)で果実粉末を圧縮し、かつふるい分けにより、300μm~2mm、好ましくは350μm~1.6mmの直径を有する圧縮果実粉末の粒子を確保することによって得ることができる。
【0024】
[0024]本発明の別の実施形態は、上で定義したような果実粉末を10重量%~100重量%と、任意選択で、ナッツ若しくは豆由来の粉乳類似物、飲料又は粥の調製に好適である穀類由来のフレーク若しくは粉末、及びそれらの混合物から選択される、最大90重量%までの植物由来成分と、を含む、飲料粉末組成物を提案する。
【0025】
[0025]本発明の更なる実施形態は、上で定義したような果実粉末を製造するための方法を提案し、この方法は、
(1)15~25kg/時の速度で粉末圧縮機に果実粉末を供給する工程と、
(2)粉末圧縮装置において果実粉末を圧縮して、圧縮果実粉末塊を得る工程と、
(3)圧縮果実粉末塊を2.0mm未満の粒径に粉砕して、圧縮果実粉末の粒子を得る工程と、
(4)圧縮果実粉末の粒子をふるい分けし、300μm~2mm、好ましくは350μm~1.6mmの直径を有する圧縮果実粉末の粒子を確保する工程とを含む。
【0026】
[0026]好ましくは、粉末圧縮装置は、ローラーコンパクターである。一実施形態では、果実粉末を圧縮するために4kN/cm~12kN/cmの線圧縮力が適用される。
【0027】
[0027]一実施形態では、300μmより小さい粒子、好ましくは350μmより小さい粒子、及び任意選択で2mmより大きい粒子が、ふるい分け後に回収され、回収された粒子が、果実粉末と共に粉末圧縮装置に再供給される。
【0028】
[0028]更に別の実施形態では、本発明は、1つ又は複数の飲料を調製するためのキットを提案し、このキットは、
乳由来の粉末、発酵乳由来の粉末、植物由来の乳類似物粉末、飲料又は粥を調製するのに好適である穀類由来のフレーク若しくは粉末から選択される第1の飲料成分の1つ又は複数の容器と、
第2の飲料成分の1つ又は複数の容器であって、第2の飲料成分が、(i)上で定義されたような果実粉末を含む、若しくは上で定義されたような果実粉末のみからなる、又は(ii)上記で定義されたような飲料粉末組成物である、第2の飲料成分の1つ又は複数の容器と、を含む。
【0029】
[0029]一実施形態では、当該容器は、サシェ、パウチ、缶、又はカプセルから選択される。容器は、1回分(single-serve)容器又は複数回分(multi-serve)容器であってもよい。
【0030】
[0030]本発明のこれらの並びに他の態様、特徴及び利点は、当業者には、添付の図面と併せて本発明の実施形態についての詳細な説明から更に明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
[0031]
図1】T=22℃の温度及びRH=45%の相対湿度で1時間曝露された、イチゴ粉末の視覚的態様を示す。A:初期粉末(圧縮せず);B:圧縮粉末。
図2】50℃のオーブン内で1時間後の、密封されたガラス瓶中のイチゴ粉末の視覚的態様を示す。A:初期粉末(圧縮せず)、B:圧縮粉末。
図3】30℃及びRH70%でアルミニウムパック中において3ヶ月保管した後の、果実粉末混合物の視覚的外観を示す。A:初期粉末(圧縮せず);B:圧縮粉末。
図4】再構成した状態の果実粉末混合物を示す。A:初期粉末(圧縮せず);B:圧縮顆粒。
図5】非圧縮粉末(灰色の丸)又は圧縮粉末(黒い四角)について、飲料の秒単位での再構成時間を、撹拌速度に対して示す。
図6】湿潤後の粉末の視覚的態様を示す。A:非圧縮粉末;B:10重量%の微粉を有する圧縮粉末;C:30重量%の微粉を有する圧縮粉末。D:微粉を有しない圧縮粉末。
図7】非圧縮(白抜き記号)の3つの製品又は圧縮(黒色の記号)の3つの製品の水収着動態を、時間に対して示す。四角:製品1、10重量%スクロースを混合した全脂粉乳;丸:製品2、イチゴ粉末;三角:製品3、ブルーベリー粉末。
図8】非圧縮イチゴ粉末の表面微細構造を示す。スケールバー:300μm。
図9】圧縮イチゴ粉末の表面微細構造を示す。スケールバー:300μm。
図10】非圧縮イチゴ粉末の表面微細構造を示す。スケールバー:50μm。
図11】圧縮イチゴ粉末の表面微細構造を示す。スケールバー:50μm。
図12】非圧縮粉乳の表面微細構造を示す。スケールバー:1mm。
図13】10重量%のスクロースを有する圧縮粉乳の表面微細構造を示す。スケールバー:1mm。
図14】非圧縮粉乳の表面微細構造を示す。スケールバー:50μm。
図15】10重量%のスクロースを有する圧縮粉乳の表面微細構造を示す。スケールバー:50μm。
図16】圧縮(実線)粉末及び非圧縮(点線)粉末の両方について、果実粉末の溶液(赤色混合物)の粘度測定の結果を示す。詳細については実施例7を参照されたい。
図17】圧縮(実線)粉末及び非圧縮(点線)粉末の両方について、果実粉末の溶液(紫色混合物)の粘度測定の結果を示す。詳細については実施例7を参照されたい。
図18】圧縮(実線)粉末及び非圧縮(点線)粉末の両方について、果実粉末の溶液(黄色混合物)の粘度測定の結果を示す。詳細については実施例7を参照されたい。
図19】圧縮(実線)粉末及び非圧縮(点線)粉末の両方について、乳由来の粉末の粘度測定の結果を示す。詳細については実施例7を参照されたい。
【0032】
[発明を実施するための形態]
[0041]本明細書で用いられるとき、単語「含む(comprise)」及び「含んでいる(comprising)」などは、包含的な意味、すなわち、「~を含むが、~に限定されない」という意味で解釈されるべきであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を排除するものではない。本明細書で用いられるとき、単語「のみからなる(consist of)」及び「のみからなっている(consisting of)」などは、排他的又は網羅的な意味で解釈されるべきであり、これらは、任意の列挙されていない要素又は方法工程を除外する。本明細書で用いられるとき、単語「のみから本質的になる(consists essentially of)」及び「のみから本質的になっている(consisting essentially of)」などは、本発明の本質的な特徴に実質的に影響を及ぼさない限り、更なる要素又は方法工程が存在し得るという意味で解釈されるべきである。
【0033】
[0042]本明細書で用いられるとき、単数形の冠詞「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明示しない限り、複数の対象物も含む。
【0034】
[0043]別途記載のない限り、本明細書中のすべての百分率は、該当する場合、重量百分率を指す。重量パーセントは、重量%として記述されてもよい。
【0035】
[0044]別途定義がない限り、すべての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味のものであり、同じ意味を与える必要がある。
【0036】
[0045]本発明の一態様は、圧縮果実粉末の粒子を含む果実粉末である。圧縮果実粉末の粒子は、非圧縮果実粉末を所望の粒径及びバルク密度に圧縮することによって調製される。本明細書では、「圧縮果実粉末」及び「圧縮果実粉末の粒子」は、同じ意味を有する。
【0037】
[0046]本発明者らは、果実粉末の圧縮が、固化の発生を遅らせることを見出した。したがって、周囲温度(保存安定性試験、下記の段落1.3)において、パック中で6ヶ月を超えて固化を示さなかった、常温保存可能な果実粉末を製造することが可能であった。
【0038】
[0047]更に、本発明者らは、果実粉末の圧縮は、低剪断速度でさえ塊を形成させず、飲料の最終的な再構成を向上させることを見出した。特に、飲料中への果実粉末粒子の湿潤及び沈殿を含む、飲料中の粉末の分散は、圧縮のおかげで改善される(粉末再構成の評価、下記のセクション2)。
【0039】
[0048]特に、本発明者らは、圧縮果実粉末が、他の圧縮飲料粉末、例として圧縮粉乳とは異なる挙動を有することを見出した。
【0040】
[0049]「果実」という用語は、この単語に関する食用の意味で使用される。すなわち、リンゴ、オレンジ、ブドウ、及びイチゴなどの、甘味があり、生食可能な、多肉質で種子を伴う植物構造体を示す。果実には、種なしブドウ又はバナナなどの無種子の果実を産する植物の栽培品種に由来する果実が含まれる。本明細書において、用語「果実」は、植物学的な意味で使用されるものではない。例えば、豆(beans)、ナッツ、豆類(pulses)、及び穀類は、本発明の文脈において果実とは見なされないのに対し、イチゴは、本発明の文脈において果実と見なされる。通常、果実は、生で又は調理されて、デザート及び甘味のある調製物に使用される。
【0041】
[0050]果実は、リンゴ、アンズ、バナナ、コケモモ、ブラックベリー、クロフサスグリ、ブルーベリー、ボイセンベリー、サクランボ、クラウドベリー、カカオパルプ、クランベリー、ダムソン、ナツメヤシ、ドラゴフルーツ、ドリアン、エルダーベリー、グースベリー、ブドウ、グレープフルーツ、グアバ、キウイフルーツ、キンカン、レモン、ライム、ライチ、マンダリン、マンゴー、マンゴスチン、メロン、クワ、ネクタリン、オレンジ、パパイヤ、モモ、セイヨウナシ、カキ、パイナップル、プラム、ザクロ、ブンタン、キイチゴ、アカフサスグリ、スターフルーツ、イチゴ、タンジェリン、タンジェロ、スイカ、ホワイトカラント、クコ、ユズ、及びこれらの混合物から選択され得るが、これらに限定されない。果実は、採れたての熟した状態で、4重量%を超える糖含量を有し得る。
【0042】
[0051]非圧縮果実粉末は、乾燥果実調製物又は乾燥果実を摩砕又は粉砕することによって、調製される。果実調製物とは、果実ピューレ、果汁、又は果実ピューレと果汁との混合物であり得る。いくつかの種類の果実を混合して、果実調製物を調製してもよい。果実調製物の乾燥は1つ又は複数の工程を含み得る。果実は、通常、新鮮な状態では大量の水分を含有するため、例として真空下において、果実調製物を加熱して水分の一部を除去し、濃縮果実調製物を得ることが、有用であり得る。
【0043】
[0052]場合によっては、例として香り又は風味を展開させるために、果実調製物を加熱することが望ましい場合がある。その後、凍結乾燥によって果実調製物を更に乾燥させてもよい。あるいは、果実調製物は、凍結乾燥によって直接乾燥されてもよい。加熱は果実の官能性に影響を与え得るとして、凍結乾燥は果実調製物の加熱を回避する。
【0044】
[0053]加熱が有用であるか否かは、加熱が果実調製物の風味プロファイルに及ぼす影響による。この趣旨で、標準的な凍結乾燥装置を使用してもよい。その後、凍結乾燥調製物を摩砕又は粉砕して、非圧縮果実粉末を得る。非圧縮果実粉末を得るために、果実調製物を噴霧乾燥することもまた可能である。
【0045】
[0054]乾燥果実はまた、個別急速凍結(individual quick freezing:IQF)によって調製されてもよい。IQFは、ベリーなどの小さな果実又は果実片に特によく適用される。凍結後、IQF果実を凍結乾燥して水を除去し、次いで粉末に粉砕して、非圧縮果実粉末を得る。
【0046】
[0055]非圧縮果実粉末は、1種類の果実で調製してもよい。いくつかの果実粉末を混合して果実粉末混合物を得ることによってもまた、調製することができる。果実粉末が1つ又は複数の種類の果実を含むかどうかにかかわらず、好ましくは、果実の全果肉(whole flesh)又は柔らかい果肉(pulp)を用いて調製される。実際、本発明者らは、果汁から作製された果実粉末が、全果実から作製された果実粉末よりも固化しやすいことを見出した。したがって、好ましい実施形態では、果実粉末は、果実の全果肉又は柔らかい果肉を用いて調製される。
【0047】
[0056]種子が充分に小さい、例としてキウイフルーツ又はイチゴなどの場合、種子は果実調製物中に残存していてもよい。種子の粒径が圧縮果実粉末の粒子の所望の粒径よりも小さい場合、種子は、「小さい」と見なされる。しかし、種子が大きすぎる、又は粉砕後に望ましくない風味を生成し得る場合、種子は、好ましくは、乾燥及び粉砕前に果実調製物から濾過又はふるい分けして取り除かれる。望ましくない風味は種子材料に固有であり得る。望ましくない風味はまた、粉砕した種子材料の酸化によっても生成され得る。マンゴー、アンズ、又は各モモの仁(kernel)などの仁は、通常、果実調製物が乾燥する前に除去される。いずれの場合も、望ましくない風味特質を付与し得る種子は、好ましくは、粉砕前に果実調製物又は乾燥果実から除去される。これらの条件下において、圧縮果実粉末とは、好ましくは、圧縮された全果実粉末である。
【0048】
[0057]一実施形態では、再構成された飲料に触感及び口当たりをもたらすために、小さな種子又は粉砕種子又は仁などの種子成分を組み込むこともまた考慮され得る。種子成分は、乾燥前に果実調製物に混合されてもよい。あるいは、種子成分は、圧縮前又は圧縮後に、果実粉末と混合される。小さな種子の例としては、クランベリー、ナツメヤシ、キウイフルーツ、ケシ、ゴマ、又はイチゴの種子が挙げられるが、これらに限定されない。上で説明したように、種子の粒径が圧縮果実粉末の粒子の所望の粒径よりも小さい場合、種子は、「小さい」と見なされる。粉砕種子又は仁の例としては、粉砕ココア豆、粉砕コーヒー豆、又は粉砕ナッツが挙げられるが、これらに限定されない。ナッツの例としては、ブラジルナッツ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピーナッツ、ピーカンナッツ、ピスタチオが挙げられるが、これらに限定されない。この実施形態では、果実粉末は、種子成分を含む。好ましくは、種子成分の粒径は、圧縮果実粉末の粒子の所望の粒径よりも小さい。
【0049】
[0058]以下で説明するように、本発明者らは、所望の粒径の圧縮果実粉末と組み合わせた繊維の存在が、果実粉末の再構成特性に役立ち得ることを見出した。これが、好ましい実施形態において、果実粉末が果汁ではなく果実ピューレなどの全果実から調製される更なる理由である。実際、果汁は、全果実よりも少ない繊維を含有する。果汁が果実調製物の一部である場合、圧縮果実粉末は、80重量%未満の糖を含むべきである。「糖」という用語は、本明細書では、果実に天然に存在する単糖類及び二糖類を指し、主にグルコース、フルクトース、及びスクロースを指す。好ましくは、圧縮前及び圧縮後の果実粉末は、30重量%~60重量%の糖含量を有する。好ましくは、圧縮果実粉末は、添加糖を含まない。
【0050】
[0059]したがって、一実施形態では、乾燥前に、最大20重量%までの植物繊維を、非圧縮果実粉末又は果実調製物と混合すると考えられ得る。好ましくは、植物繊維は、柑橘繊維又はリンゴ繊維などの果実繊維である。あるいは、植物繊維は、オート麦繊維若しくは小麦繊維などの穀類繊維、又は更にはニンジン繊維である。一実施形態では、果実粉末は、5~20重量%の添加された植物繊維、例えば8~15重量%の添加された植物繊維、好ましくは、柑橘類、リンゴ、又はニンジン繊維を含む。したがって、圧縮前及び圧縮後の果実粉末は、任意選択的に追加の植物繊維を含む、最大35重量%までの繊維を含む。
【0051】
[0060]したがって、果実粉末は、植物材料以外、すなわち、主原料又は唯一の原料としての全果実、任意選択で種子成分、及びまた任意選択で植物繊維、以外の成分を含有しない。果実粉末は、添加されたスクロース、グルコースシロップ、マルトデキストリン、又は他の甘味料若しくは増量剤を含有しない。同様に、果実粉末は、シリカなどの流動剤(flowing agent)を含有しない。言い換えれば、果実粉末は、100%植物由来であり、添加糖を含有しない。したがって、非圧縮果実粉末は、少なくとも95重量%の果実成分、好ましくは少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%などのように、果実成分を主成分として含む。非圧縮果実粉末は、本質的に果実成分のみからなる。最も好ましくは、非圧縮果実粉末は、果実成分のみからなる。結果として、圧縮果実粉末は、少なくとも95重量%の果実成分、好ましくは少なくとも96重量%、又は少なくとも97重量%、又は少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%のように、果実成分を主成分として含む。圧縮果実粉末は、本質的に果実成分のみからなる。最も好ましくは、圧縮果実粉末は、果実成分のみからなる。
【0052】
[0061]したがって、一実施形態では、果実粉末は、圧縮果実粉末の粒子からなり、圧縮果実粉末の粒子は、ふるい分けにより測定したとき、2.0mm未満、好ましくは1.6mm未満の直径を有しており、果実粉末粒子のうち30重量%未満は、ふるい分けにより測定したとき、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有しており、果実粉末は、550g/Lよりも高く800g/L未満であるバルク密度を有する。任意選択で、果実粉末は、上記のように、添加された植物繊維及び/又は添加された種子成分もまた含む。次いで、果実粉末は、添加された植物繊維及び/又は添加された種子成分を有する、圧縮果実粉末の粒子のみからなり得る。
【0053】
[0062]非圧縮果実粉末は、80~110μmのD10、200~300μmのD50、及び700~900μmのD90の範囲の粒径分布を有する。
【0054】
[0063]上記で説明したように、本発明者らは、果汁から作製された果実粉末が、全果実から作製された果実粉末よりも固化しやすいことを見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、全果実が果汁よりも多くの繊維を含有するという説明があり得た。これは、果実粉末のガラス転移温度(transition temperature:Tg)に影響を及ぼし得る。粉末中の繊維が多ければ多いほど、ガラス転移温度は高くなる。果実粉末のガラス転移温度が低い場合、例として周囲温度付近では、包装内でガラス転移が起こり得、これは水分が存在しない場合であっても固化を引き起こす。繊維を果実粉末に添加すると、系のガラス転移温度は周囲温度よりも上昇し得る。周囲温度は18℃~25℃の範囲内である。
【0055】
[0064]果実粉末のガラス転移温度は12℃~30℃から構成される。果実粉末のガラス転移温度は、以下の段落3.4にて説明されるように測定され得る。ガラス転移温度は、種子成分又は植物繊維を混合する前に、果実粉末で測定される。
【0056】
[0065]本発明者らは、圧縮果実粉末の粒子の好ましい粒径とは、圧縮果実粉末の粒子が2.0mm未満かつ300μm超の直径を有する場合であることを見出した。この範囲により、保存安定期間中又は工業的処理中の固化を回避することと、工業的処理中の取り扱いと、良好な飲料再構成挙動を確保することとの間に良好なバランスがもたらされる。「再構成」とは、飲料粉末組成物を、冷たい又は温かい水又は乳などの液体へと混合することによる、飲料の調製を指す。飲料粉末組成物の「再構成挙動」は、例として、液体中で塊を形成する粉末の湿潤特性及び沈降特性、又は撹拌前に液体の表面上に残る粉末の量により、特徴付けられ得る。
【0057】
[0066]圧縮粒子が300μmより小さい場合、圧縮粒子はより固化しやすい。圧縮粒子が約2.0mmより大きい場合、圧縮粒子の再構成挙動は不充分であり得る。すなわち、分散が不完全であり、沈降及び相分離(dephasing)につながり得る。更に、前記サイズ範囲により果実粉末の良好な流動性が得られ、輸送又は適用中などの工業的処理中の取り扱いがより容易になる。このサイズ範囲はまた、粉っぽさを低減する。粉っぽさは、既知の工業的危険(industrial hazard)である。粉っぽさは粉末中の微粉の量に関連する。
【0058】
[0067]一実施形態では、圧縮果実粉末の粒子は、ふるい分けにより測定したとき、2.0mm未満、好ましくは1.8mm未満、更により好ましくは1.6mm未満の直径を有する。圧縮果実粉末の粒径分布は、以下の段落3.1に説明されるように測定され得る。
【0059】
[0068]しかしながら、圧縮果実粉末の製造中にすべての微粉を排除することは非常に困難であり得る。加えて、圧縮果実粉末の取り扱い、輸送、又は包装は、圧縮果実粉末の脆性(fragility)に関連して微粉を生成し得る。圧縮果実粉末の脆性は、以下の段落3.2に説明されるように測定される。
【0060】
[0069]しかし、圧縮果実粉末は、大きすぎる微粉部分を含有するべきではなく、すなわち、粒子は300μm未満の直径、又は更には350μm未満の直径を有する。実際、本発明者らは、微粉の割合がより高くなると粉末粒子間の固着及び固化を引き起こすように思われることを観察した。したがって、本発明に係る果実粉末において、30重量%未満の果実粉末粒子は、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有する。好ましくは、20重量%未満、より好ましくは10重量%未満の果実粉末粒子は、300μm未満、好ましくは350μm未満の直径を有する。好ましくは、30重量%未満、より好ましくは20重量%未満、更により好ましくは10重量%未満の果実粉末粒子は、350μm未満の直径を有する。本明細書では、果実粉末の粒径は、ふるい分けによって決定される。
【0061】
[0070]本発明者らはまた、果実粉末のバルク密度もまた関連し得ることを見出した。果実粉末が再構成時に確実に沈降するためには最小密度が必要であるため、バルク密度が低すぎる場合、湿潤に悪影響を及ぼし得る。より高いバルク密度は工業的取り扱いにおける粉末の流動を改善するので興味深い。より高いバルク密度は、また所定の粉末質量に対してより少ない包装材料を用いることを可能にする。しかしながら、バルク密度が高すぎる場合、粉末の湿潤が遅れ得る。したがって、本発明者らは、圧縮果実粉末の最適なバルク密度を見出した。一実施形態では、圧縮果実粉末は、550g/Lよりも高く800g/L未満、好ましくは650~800g/Lのバルク密度を有する。圧縮果実粉末のバルク密度は、以下の段落3.3に説明されるように測定される。
【0062】
[0071]本発明の別の態様は、飲料粉末組成物である。果実粉末、特に上記の圧縮果実粉末は、かかる飲料粉末組成物を調製するための成分として使用してもよい。
【0063】
[0072]好ましくは、そのような飲料粉末組成物は、10重量%~100重量%(乾燥重量)の圧縮果実粉末を含む。飲料粉末組成物は、圧縮果実粉末、又はいくつかの種類の圧縮果実粉末を、別の植物由来成分と乾式混合することによって調製され得る。
【0064】
[0073]好ましくは、飲料粉末組成物の他の植物由来成分は、飲料粉末組成物の最大90重量%(乾燥重量)までとなる。例として、植物由来成分は、ナッツ由来の乳類似物粉末、豆由来の乳類似物粉末、穀類由来のフレーク又は粉末、及びそれらの混合物を含む。ナッツ由来の乳類似物粉末は、ココナッツ、クルミ、アーモンド、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、マカダミア、及びピーカンナッツなどで調製され得る。豆由来乳類似物粉末は、大豆、エンドウ豆、及びハウチワマメなどで調製され得る。穀類由来のフレーク又は粉末は、粥又は飲料を調製するのに好適である。これらは、小麦、トウモロコシ、オーツ麦、ライムギ、大麦、キビ、米などの真の穀類で、並びにまたソバ、キノア、及びアマランスなどの擬似穀類で調製され得る。好ましくは、飲料粉末組成物は、少なくとも20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%の圧縮果実粉末を備える。
【0065】
[0074]本発明の別の態様は、上記のような飲料粉末組成物を用いて1つ又は複数の飲料を調製するための、キットである。飲料は、第1の飲料成分と第2の飲料成分とを組み合わせることによって調製され得る。
【0066】
[0075]好ましくは、第1の飲料成分は、どちらかといえばクセのない飲料成分である「白色(white)」成分である。例として、第1の飲料成分は、乳由来の粉末、発酵乳由来の粉末、植物由来の乳類似物粉末、飲料又は粥を調製するのに好適である穀類由来のフレーク若しくは粉末から選択される。
【0067】
[0076]第2の飲料成分は、第1の飲料成分と混合される。第2の飲料成分は、風味又は着色成分である。第2の飲料成分は、上記のように果実粉末を含み得る、又は果実粉末のみからなり得る。第2の飲料成分はまた、上記のような飲料粉末組成物であってもよい。
【0068】
[0077]要するに、このキットでは、消費者は、様々な「白色」飲料成分の中から、及び様々な風味又は着色成分の中から選択することができる。第1及び第2の飲料成分のそれぞれは、複数の容器に含有される。容器は、例として、サシェ、パウチ、缶、又はカプセルであってもよい。容器は、1回分容器又は複数回分(multi-serve)容器であってもよい。好ましくは、容器は、コート紙などのリサイクル可能な材料で作製される。
【0069】
[0078]好ましくは、第1の飲料成分は、最小量のタンパク質、炭水化物、及び脂質などの栄養素の最小セットをもたらすように設計される一方で、第2の飲料成分は、主要な風味及び/又は色プロファイルをもたらすように設計される。ビタミン及び/又はミネラルが、第1の飲料成分又は第2の飲料成分に添加されてもよい。好ましくは、第1及び第2の飲料成分は、任意の第1の飲料成分を任意の第2の飲料成分と組み合わせて、再構成された飲料の最小栄養プロファイルを達成し得るように、製造される。
【0070】
[0079]したがって、本発明は、1つ又は複数の飲料を調製するためのキットに関し、このキットは、
乳由来の粉末、発酵乳由来の粉末、植物由来の乳類似物粉末、飲料又は粥を調製するのに好適である穀類由来のフレーク若しくは粉末から選択される第1の飲料成分の1つ又は複数の容器と、
第2の飲料成分の1つ又は複数の容器であって、ここで、第2の飲料成分が、上記のような果実粉末を含む若しくは上記のような果実粉末のみからなる、又は上記のような飲料粉末組成物である、第2の飲料成分の1つ又は複数の容器と、を含む。
【0071】
[0080]好ましくは、消費者にとって使用がより便利となるので、キットは1回分容器を含有する。消費者は、第1の「白色」飲料成分を収容する容器、及び第2の風味又は着色飲料成分を収容する容器を選択し、それらを任意の順序でグラス中の(例えば)水に入れて空にすることができる、又は後から水を加え、混合し、飲料成分の所望の組合せに対応する飲料を得ることができる。
【0072】
[0081]興味深いことに、本発明者らは、圧縮果実粉末の再構成時間は、圧縮のおかげで、圧縮果実粉末の水中での混合に適用される剪断速度とは独立していることを見出した(図5)。
【0073】
[0082]本発明の別の態様は、上記の果実粉末の製造方法である。本方法は、以下の工程:(1)15~25kg/hの速度で粉末圧縮機に果実粉末を供給する工程と、(2)粉末圧縮装置において果実粉末を圧縮して、圧縮果実粉末塊を得る工程と、(3)圧縮果実粉末塊を2.0mm未満の粒径に粉砕して、圧縮果実粉末の粒子を得る工程と、(4)圧縮果実粉末の粒子をふるい分けし、300μm~2mm、好ましくは350μm~1.6mmの直径を有する圧縮果実粉末の粒子を確保する工程と、を含む。
【0074】
[0083]好ましくは、粉末圧縮装置は、ローラーコンパクターである。例として、ALEXANDERWERK(Remsheid、ドイツ)製のローラーコンパクターWP 120又はWP 200が、この方法で使用されてもよい。このようなローラーコンパクターは、例として、米国特許出願公開第2018/0243748号に記載されている。本発明者らは、圧縮パラメータの中でも線圧縮力が最も重要であると思われることを見出した。したがって、好ましくは、果実粉末を圧縮するために4kN/cm~12kN/cmの線圧縮力が適用される。線圧縮力とは、ローラーコンパクターにおいて2つのロール間で加えられる、生成物1cm当たりの力である。
【0075】
[0084]他の関連パラメータには、ローラギャップ、及び供給速度又は供給率が含まれる。好ましくは、ローラギャップは、1.5~4mmである。
【0076】
[0085]一実施形態では、300μmより小さい粒子、好ましくは350μmより小さい粒子、及び任意選択で2mmより大きい粒子が、ふるい分け後に回収され、果実粉末と共に粉末圧縮装置に再供給される。これにより原材料の浪費が回避される。本発明者らは、原材料又は非圧縮果実粉末中に、圧縮又は予備圧縮された果実粉末を導入することは、得られる生成物の再構成挙動及び保存安定性に悪影響を及ぼさないことを見出した。
【0077】
[0086]本方法は、制御雰囲気下において、特に酸化感受性又は湿度感受性の材料の場合において実行され得る。特に、本方法は、低相対湿度下、又は窒素などの不活性ガスの存在下において実施され得る。
【0078】
[0087]当業者は、本明細書に開示される本発明の全ての特徴を自由に組み合わせることができることを理解するであろう。更に、本発明の異なる実施形態について記載された特徴を、適切な場合、一緒に組み合わせてもよい。周知の均等物が特定の特徴について存在する場合、このような均等物は、本明細書で具体的に言及されているかのように組み込まれる。本発明の更なる利点及び特徴は、図及び非限定的な実施例から明らかである。
【0079】
[実施例]
方法
1 粉末安定性の評価
[0088] 以下に記載される様々な方法に従って、圧縮顆粒の固化挙動を、同様の組成を有する非圧縮乾燥混合物の固化挙動と比較した。
【0080】
1.1 湿度試験
[0089]15gの果実粉末を、白色の紙シート上に手作業で広げ、大気条件に2時間曝露させたままにした(T=18~22℃、RH=40~50%)。1時間毎後に写真を撮影して固化を評価した。実験の最後に、粉末の流動挙動を評価するために、粉末を手で機械的に移動させた。
【0081】
1.2 オーブン試験(熱ショック)
[0090]10gの果実粉末をガラス瓶に入れた(d=0.02m、V=20mL)。瓶を密閉し、40℃及び50℃の実験室用オーブン中に1時間置いた。実験の最後に、固化の存在を目視で観察し、粉末の流動挙動を評価するために瓶を手で振盪した。次いで、瓶を逆さまにし、写真を撮影した。
【0082】
1.3 保存安定性試験
[0091]20gの果実粉末を、気密のアルミニウム袋に入れ、制御された大気温度及び相対湿度(RH20℃~50%及びRH30℃~70%)下の2つの人工気候室内に配置した。粉末固化を1ヶ月毎に視覚的に評価し、写真を撮影した。実験の総期間は6ヶ月であり、各測定は2回ずつ行った。
【0083】
2 粉末再構成の評価
[0092]以下に記載される方法に従って、圧縮果実粉末の再構成挙動を、同様の組成を有する非圧縮乾燥混合物の再構成挙動で圧縮した。
【0084】
2.1 再構成の視覚的評価
[0093]12.5gの果実粉末を、底部に磁気撹拌機を備えたビーカー(d=70mm;V=500mL)内の、100mLの常温の水(ambient water)又は熱湯(それぞれ、T=20℃及び55℃)に注いだ。液体を2分間撹拌し、続いて、ふるいに注いだ(メッシュサイズ=0.355mm)。再構成不良の粉末塊の存在を目視で観察し、写真をカメラで撮影した。
【0085】
2.2 再構成の導電率による評価
[0094]脱塩水は、周囲温度、すなわち20℃で使用される。145mLの水を溶解容器に注ぐ。導電率プローブMetrohm(導電率セルPt100)を、溶解容器の底部から15mmに水平に配置する。オーバーヘッド撹拌機を導電率プローブの直上に配置し、300~1000rpmの所望の撹拌速度に設定する。導電率プローブは、アッセイ中に導電率及び温度を記録するために、コンピュータインターフェースに接続されている。導電率及び温度の記録を開始する。10秒後:13gの果実粉末を、容器の上部(水から8cm)から溶解容器内へと手作業で注いだ。
【0086】
[0095]溶解時間の開始は、導電率シグナルの5%及び10%の点を通る直線と、初期導電率信号によって得られる線との交点によって検出される。溶解時間は、最大導電率シグナルの90%に達する時間として定義される。各粉末について3回繰り返した。
【0087】
2.3 湿潤の評価
[0096]脱塩水は、周囲温度、すなわち20℃で使用される。200mLの水をガラスビーカ(d=70mm;V=250mL)に注ぎ入れ、粉末ディスペンサの下に配置する。粉末ディスペンサは両端で開口するカラムを備える。底端部にはスライド式金属プレートが設けられている。10gの果実粉末を、金属プレート上の密閉式粉末ディスペンサ内に充填する。プレートをディスペンサの底部から迅速にスライドさせて、粉末を水の上部に落下させる。同時にストップウォッチを開始する。ストップウォッチは、すべての粉末が湿潤するが、ビーカーの底部には沈んでいない場合、停止される。
【0088】
[0097]湿潤時間は、粉末が沈む前に、すべての粉末を湿潤させるのに必要な時間として定義される。各粉末について3回繰り返した。
【0089】
3 果実粉末特性
3.1 粒径分布
[0098]粒径分布は、重力による粒子の分散のためのX-fallモジュールを備えた、粒子分析器Camsizer XTにより測定した(Retsch Technology GmbH、ドイツ)。測定中、粉末は、実験室条件に対して可能な限り少なく暴露され、いずれの場合も2分未満で曝露される。デジタル画像分析技術は、277枚/秒のフレームレートで、2台の異なるカメラで同時に撮影した多数の試料画像を、コンピュータ処理することによるものである。特性粒径D10、D50、及びD90を、それぞれ、10%、50%、及び90%の粒子の粒径に対応する正規化曲線から計算する。
【0090】
3.2 脆性
[0099]脆性とは、粒子が機械的応力下において破壊される傾向を指す。脆性試験で生成された微粒子の質量パーセントとして、脆性を測定する。
【0091】
[0100]圧縮されふるい分けされた果実粉末(100g)を、0.2mmのメッシュサイズを有する振動ふるい(Retsch sieving tower)上に配置する。次いで、ふるいを1mmの振幅で1分間振動させる。微粉は回収容器内の振動ふるいの下に回収される。微粉の第1の画分(F1)を、0.2mmのふるい上の残留粉末(RP1)と同様に秤量する。次いで、回収容器を空にし、洗浄する。次いで、残留粉末を3mmの振幅で2分間振動させる。微粉の第2の画分(F2)を回収し、秤量する。第2の振動処理後に、残留粉末(RP2)もまた秤量する。脆性は、微粉F2の第2の画分の重量を、第1の残留粉末RP1の重量で割った比である。脆性は重量パーセント(重量%)で表される。
【0092】
脆性=RP1×100/F2
式中、RP1は残留粉末の重量であり、F2は微粉の第1の画分の重量である。
【0093】
3.3 バルク密度及びタップ密度
[0101]材料のバルク密度は、タップされていない修正(mod)粉末試料の体積(粒子間空隙体積を含む)に対する、質量の比である。バルク密度は、既知の体積の粉末をメスシリンダに入れ、この体積の質量を秤量することによって得られる。密度は質量/体積として計算される。
【0094】
[0102]タップ密度は、更なる体積変化が殆ど観察されなくなるまで、試料を含有するメスシリンダを機械的にタッピングすることによって得られる。タッピングは様々な方法を用いて実行することができる。タップ密度は質量を粉末の最終体積で割ったものとして計算される。タップ密度の決定のために、JEL振動密度計STAV 2003を使用し、300±2回の振動を適用する。粉末の増量特性に影響を及ぼす粒子間相互作用もまた、粉末流動を妨害する相互作用である。したがって、バルク密度とタップ密度とを比較することによって、所与の粉末におけるこれらの相互作用の相対的な重要性に関する情報を得ることが可能であり、そのような比較を使用して、粉末が流動する能力を指数化することができる。
【0095】
3.4 ガラス転移温度
[0103]ガラス転移温度Tgは、TA Instruments(Q2000 DSC、TA Instruments、New Castle、DE、アメリカ)製の示差走査熱量計を用いて測定した。スキャン速度は5℃/分とした。この系を次に20℃/分で冷却した。様々な化合物の様々なガラス転移温度を測定するために、単純なスキャン手順を-40℃~80℃で実施した。経験的に、測定の不確実性は、一般的に±3℃である。
【0096】
[0104]測定中の水の蒸発を回避するために、すべての実験は密閉パンで行った。Tgは第2の加熱ランプで観察された熱流における変化の開始から決定された。
【0097】
3.5 水分取込み-等温収着曲線の動態
[0105]SPSx法により、食品試料の水分取込み又は放出の連続的な記録が可能となる。ProUmid SPSxの自動化収着系を使用する。試料を制御温度(T)及び相対湿度(RH)条件下において維持する。SPSxは、広範囲のRH(10%~80%)にわたって23℃及び50℃で較正された、極めて正確なRHセンサ及びTセンサを備えている。SPSxは、一定温度で相対湿度工程を適用することによって、収着動態を記録するために使用される。次いで、生成物の水拡散係数を確立するために、データを拡散モデルに適合させる。Weibullモデルを使用した。
【0098】
[0106]このアッセイでは、温度の変動を回避するために、温度を25℃に設定し、閉鎖SPSで調節された。相対湿度もまた制御され、閉鎖SPSで調節された。15%でRH工程を課す前に確実に平衡状態になるように、試料を12時間にわたりRH10%で事前調整した。
【0099】
3.6 顕微鏡法
[0107]圧縮粉末及び非圧縮粉末の表面は、果実粉末構造に対する圧縮の効果、並びに圧縮果実粉末について観察された向上した再水和及び水分取込みを理解するため、顕微鏡法によって観察された。
【0100】
[0108]図8図15のSEM顕微鏡写真は、二次電子検出器を用いて、4kVの高電圧モードで動作するQuanta F200走査電子顕微鏡(FEI、ドイツ)によって取得された。観察前に、導電性両面テープを備えたアルミニウム片上に試料を堆積させ、過剰分をタッピングで除去し、それによって、粉末をその片上に良好に広げた。これらの表面及び内部構造を明らかにするために、かみそり刃を用いて試料を破砕し、次いでLeica SCD500イオンスパッタ装置を用いて10nmの金層でコーティングした。
【0101】
実施例1-イチゴ粉末
[0109]圧縮イチゴ粉末を、Paradise Fruit(ドイツ)から供給された非圧縮イチゴ粉末を用いてローラーコンパクターWP120(Alexanderwerk、Remscheid、DE)により調製した。非圧縮イチゴ粉末を、[kg/h]の速度で圧縮ローラ間に供給した。圧縮ローラギャップは3mmであり、圧縮ローラ速度は5rpmであった。5~12kN/cmの範囲の線圧縮力を圧縮ローラ間の果実粉末に適用して、圧縮果実粉末塊を得た。圧縮ローラの下流に、圧縮果実粉末塊が、0.8~3.15mmのメッシュサイズの内蔵破砕ふるい(internal grinding sieves)を通して押し出された。圧縮イチゴ粉末を、300μmのメッシュサイズを有するふるい上に回収して、微粉を除去した。
【0102】
[0110]別個の試験では、圧縮粉末特性への影響を確認するために、微粉を回収し、非圧縮イチゴ粉末に添加した。圧縮粉末の再構成又は他の特性に対する有意な影響は観察されなかった。
【0103】
[0111] 得られた顆粒を、粒径分布、脆性、バルク密度、及びタップ密度のような物理的特性について試験した。中剪断から低剪断下における、圧縮顆粒の水中での再構成も実施された。
【0104】
[0112]使用される果実粉末の種類、圧縮強度、及び粉砕ふるいのサイズに応じて、顆粒のサイズ分布は、90μm~450μmのD10、550μm~1300μmのD50、及び700μm~1850μmのD90の範囲であった。したがって、密度は、580g/L~730g/Lの自由流動バルク密度、及び610g/L~770g/Lのタップ密度の範囲であった。
【0105】
[0113]初期粉末、すなわち圧縮前粉末、及び圧縮粉末を、それぞれ、段落1.1及び段落1.2で上述した湿度試験及びオーブン試験に供した。結果を図1及び図2に示す。
【0106】
[0114]図1は、T=22℃の温度及びRH=45%の相対湿度で1時間曝露された、イチゴ粉末の視覚的態様を示す。A:初期粉末(圧縮せず);B:圧縮粉末。左側では固化した粉末の塊が見えるのに対し、圧縮された顆粒では固化が観察されない。
【0107】
[0115]図2は、50℃のオーブン内で1時間後の、密封されたガラス瓶内におけるイチゴ粉末の視覚的態様を示す。A:初期粉末(圧縮せず)、B:圧縮粉末。非圧縮粉末は固化され、瓶が回転するときに流動しないのに対し、圧縮された顆粒には依然として流動性があり、すべての粉末が、回転したときに瓶の底へ容易に流動した。
【0108】
[0116]同様の結果は、実施例2に記載の果実粉末混合物で、又はブルーベリー、セイヨウナシ、リンゴ、バナナ、ニンジン、若しくはマンゴー粉末などの他の果実粉末で作製された果実粉末で、又はリンゴフレークで、得ることができる。
【0109】
イチゴ粉末、ブルーベリー粉末(Paradise Fruit、ドイツ)
Pear 300、Apple 100、Banana 300、Carrot 100(Naturex、フランス)
マンゴー粉末、リンゴフレーク(Diana、フランス)
実施例2-果実粉末混合物
[0117]実施例1と同じ条件下において果実粉末混合物を調製した。果実混合物は、48重量%のリンゴ粉末(Apple 100、Naturex、フランス)、32重量%のセイヨウナシ粉末(Pear 300、Naturex、フランス)、及び20重量%のバナナ粉末(Banana 300、Naturex、フランス)を含み、300μm未満の微粉が再循環される。
【0110】
[0118]初期粉末、すなわち圧縮前粉末、及び圧縮粉末を、段落1.3で上述した保存安定性試験に供した。
【0111】
[0119]図3は、30℃及びRH70%で制御雰囲気下に置かれた密閉アルミニウムサシェ中で3ヶ月保管した後の、果実粉末混合物の視覚的外観を示す。A:初期粉末(圧縮せず);B:圧縮粉末。圧縮された顆粒が依然として自由に流動するのに対し、圧縮されていない粉末では硬く固化した塊が観察され得る。
【0112】
実施例3-圧縮果実粉末の再構成
[0120]実施例2の果実粉末を、段落2.1に上述した再構成を視覚的評価するための試験で使用した。
【0113】
[0121]図4は、果実粉末混合物を再構成した状態を示す。A:初期粉末(圧縮せず);B:圧縮顆粒。粉末をT=20℃で水中に再構成し、2分間撹拌した。非圧縮粉末は、水中に分散した場合、大きな塊を生成することが観察された。これらの塊は、おそらく水が粘性外側層に浸透することができないので内部が乾燥しており、より長い撹拌時間をもってさえも消失しないであろう。対照的に、圧縮顆粒はより遅く分散するため、その結果、粘性層の出現が遅くなり、粉末は周囲温度で低~中剪断速度下において2分間で完全に再構成され得る。
【0114】
[0122]様々な撹拌速度での飲料再構成における圧縮の影響を、段落2.2に上記した導電率アッセイを用いて分析した。
【0115】
[0123]図5は、非圧縮粉末(灰色の丸)又は圧縮粉末(黒い四角)の、撹拌速度を秒単位での飲料の再構成時間に対して示す。驚くべきことに、再構成時間は、圧縮粉末の撹拌速度と無関係であると思われる。反対に、再構成時間は、非圧縮粉末の撹拌速度に大きく依存する。
【0116】
[0124]この観察は、圧縮果実粉末が、様々な条件下、例えば手動泡立て器又は電動泡立て装置による条件下で飲料を再構成するために使用され得ること、及び再構成に必要な時間に撹拌速度が影響を及ぼさないことを示すため、興味深い。
【0117】
実施例4-果実粉末の湿潤挙動
[0125]果実粉末の湿潤挙動を、段落2.3に上記した湿潤試験で分析した。3種の果実粉末、すなわち実施例2の圧縮果実粉末、実施例2の組成と同じ組成を有するが300μm未満の微粉を10%又は30%有する圧縮果実粉末、及び実施例2の圧縮果実粉末を生成するために出発材料として使用された非圧縮果実粉末、を評価した。
【0118】
[0126]図6は、湿潤後の粉末の視覚的態様を示す。A:非圧縮粉末;B:10重量%の微粉を有する圧縮粉末;C:30重量%の微粉を有する圧縮粉末。D:微粉を有しない圧縮粉末。
【0119】
[0127]アッセイは以下のことを示す。15分後、非圧縮果実粉末は完全には湿潤せず、沈殿することなく水の表面上に残った。浮遊生成物は図6Aの円内に示されている。微粉を有しない圧縮果実粉末(図6D)は、いかなる塊もなく、約20秒以内にビーカーの底に沈んだ。これは、すべての粉末が湿潤したことを意味する。微粉を有する圧縮果実粉末もまた約20秒以内に湿潤したが、塊がビーカーの底に、又は水の表面の下に浮遊して、残っていた。塊は図6B及び図6Cに円で示す。これは、塊内の果実粉末の一部が完全には湿潤しなかったことを意味する。
【0120】
実施例5-水分取込み
[0128]段落3.5に上述したように、等温収着曲線アッセイの動態を伴う、圧縮(黒塗り記号)又は非圧縮(白抜き記号)のいずれかの2つの異なる果実混合物粉末(丸及び三角の記号)及び完全に非晶質の乳由来粉末(四角の記号)の水分取込み。乳由来粉末は、10重量%の結晶性スクロースと乾式混合された噴霧乾燥全脂粉乳である。
【0121】
[0129]本発明者らは、相対湿度RH15%及び温度25℃の雰囲気下において、圧縮粉末が、非圧縮粉末よりもはるかに急速に水分を取り込むことを観察した。果実粉末の場合、圧縮粉末と非圧縮粉末との間の水分取込みの動態の差は、非晶質の乳由来粉末の場合よりもはるかに顕著である。非晶質の乳由来粉末では、水分取込みの差は非常に小さい。
【0122】
[0130]理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、この結果はおそらく、図9図11を比較する場合に見ることができるように、果実粉末の圧縮が、特に果実粉末変異形について、非常に粗い表面を作り出すという事実に関連していると考えている。
【0123】
[0131]図9図11は、実施例1の圧縮(図9及び図11)イチゴ粉末並びに非圧縮(図8及び図10)イチゴ粉末の表面微細構造を示す。これらは、圧縮(図13及び図15)加糖粉乳並びに非圧縮(図12及び図14)加糖粉乳の表面微細構造を示す図12~15と比較することができる。写真は段落3.6に上記したように撮影した。
【0124】
[0132]果実粉末の圧縮は、おそらく果実材料の繊維含量が高いことに起因して、圧縮強度及び熱下におけるそれらの微小領域(micro-domains)の部分的な半融のみを伴う非常に小さな粒子状微小領域における、果実粉末材料の破損を引き起こし得る。これは、図8図11に見ることができる。粉乳の場合、半融の程度はより高くはるかに顕著であり、圧縮果実粉末よりも滑らかな表面をもたらす(図12図15)。これは、単一ブロックの可塑化と見なすことができた。このことは、粉乳で観察された圧縮変異形(variants)と非圧縮変異形との間の水分取込みの差がはるかに小さいことを説明し得る。
【0125】
実施例6-パウチ
[0133]図3は、30℃及びRH70%の制御雰囲気下に置かれた密封されたアルミニウムパウチ中で3ヶ月保管した後の、果実粉末混合物の視覚的外観を示す。アルミニウムパウチが耐湿性(proof)であるという事実にもかかわらず、実施例2の初期果実粉末の場合には、重大な固化が起こった。このことは、固化がパウチ内の温度によって推進されることを示す。これらの固化した小片は、パウチを空にすること、及び水中で飲料を再構成することに対する、直接的な障害である。
【0126】
[0134]圧縮果実粉末の場合、固化は観察されなかった。圧縮果実粉末は、非圧縮粉末と同じ条件(30℃、RH70%)に配置されたアルミニウムパウチ中で、3ヶ月後でさえも完全に流動性が良いままである。これにより、パウチを適切に空にし、飲料の再構成を容易にすることが確実となる。加えて、上記のように、圧縮粉末はより良好な湿潤挙動を有し、これにより、飲料の再構成もまた改善される。
【0127】
実施例7-圧縮粉末及び非圧縮粉末から調製された調製物の粘度
果実粉末
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
試料調製及び分析
圧縮粉末及び非圧縮粉末を、磁気撹拌機を備えたビーカー内で25℃にて300rpmで5分間、再構成した。12.5gの果実粉末を、100mLの水に使用し、及び9gの粉乳を95mLの水に使用した。再構成された溶液の導電率シグナルを測定し、目視観察を行うことによって、粉末の完全な再構成を確実にした。次いで、これらの懸濁液を使用してレオロジー測定を行った。
【0132】
完全に再構成された果実粉末の粘度を、回転レオメータMCR502(Anton Paar)を用いて測定した。流動曲線は、25℃で再構成した直後に、ベーンジオメトリー(vane geometry)(ST22、シリアル番号32311)を用いて測定した。圧縮粉末及び非圧縮粉末を有する溶液間で流動曲線の比較を行った。各測定を3回繰り返して、結果の再現性を確認した。
【0133】
結果
様々な果実粉末について、圧縮粉末又は非圧縮粉末のいずれかで調製されたレシピの粘度を、図16(赤色混合物)、図17(紫色混合物)、及び図18(黄色混合物)で比較する。圧縮粉末を用いた結果を図中に実線で示し、非圧縮粉末の結果は点線で示す。図16図17、及び図18から、果実粉末に関係なく、圧縮果実粉末から生成されたスムージーの粘度は、非圧縮粉末から生成されるものと比較して、有意に低いことが分かり得る。溶液粘度に有意な変化がある。これはまた、同様のTS圧縮粉末では、非圧縮粉末と比較して、再構成には少ない労力又はエネルギー入力しか必要としないことを示す。この挙動を、乳由来粉末(糖38%、乳脂肪11.5%、脱脂粉乳33.5%、ココア粉末16.3%、レシチン0.7%、及び風味剤0.1%、すべて重量パーセント)と比較した。圧縮ココアミルク粉末及び非圧縮ココアミルク粉末を、果実粉末と同じ方法で再構成し、流動曲線を得るためにレオロジー測定を行った。結果を図19に示す。図から、この乳由来粉末の粘度に圧縮の影響がないことが分かり得る。
【0134】
[0135]本発明を実施例によって説明してきたが、特許請求の範囲で定義された本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び改変を加えることができることを理解されるべきである。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】