(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】熱光起電力セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20221109BHJP
H01L 31/054 20140101ALI20221109BHJP
H02S 40/42 20140101ALI20221109BHJP
H01L 31/072 20120101ALI20221109BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20221109BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 620
H02S40/42
H01L31/06 400
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022514601
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020074632
(87)【国際公開番号】W WO2021043918
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522082595
【氏名又は名称】シルバット、エナジー、ストレージ、ソリューションズ、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】SILBAT ENERGY STORAGE SOLUTIONS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、イグナシオ、ルケ、ロペス
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA01
5F151AA08
5F151DA07
5F151EA19
5F151FA06
5F151FA14
5F151FA15
5F151GA04
5F151HA01
5F151HA20
5F151JA09
5F151JA23
(57)【要約】
本発明は、光起電力セルの分野に属し、白熱光源から放射され、熱光起電力セルによって吸収される実質的な全放射パワーを電力に変換し、大量の非吸収放射をミラーによって白熱光源に戻すことができる熱光起電力セルに関する。本発明はまた、そのような熱光起電力セルを備えるモジュール、およびそのような熱光起電力セルの製造方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面(2.1)および裏面(2.2)を有する半導体プレート(2)であって、前記半導体プレート(2)が少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える、半導体プレート(2)と、
前記前面(2.1)に配置された複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)であって、前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)が導電性であり、前記半導体プレート(2)の前記前面(2.1)と電気的に接触する、複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)と、
前記前面(2.1)に配置された少なくとも1つの導電性前面バスバーベースストリップ(3)、および対応する前面バスバーベースストリップ(3)上に配置された、前記前面バスバーベースストリップ(3)と電気的に接触する少なくとも1本の導電性ワイヤ(5)であって、前記前面バスバーベースストリップ(3)と前記少なくとも1本の導電性ワイヤ(5)とが前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)と交差する、少なくとも1つの導電性前面バスバーベースストリップ(3)および少なくとも1本の導電性ワイヤ(5)と、
前記裏面(2.2)に配置された導電層(9、15)であって、前記導電層(9、15)と前記裏面(2.2)とが、直接または中間導電性材料を介して、局所的な導電性ストリップ(6、7)においてのみ電気的に接触する、導電層(9、15)と
を備える熱光起電力セル(1)。
【請求項2】
前記裏面(2.2)と前記導電層(15)との間に配置されたミラー(14)であって、
前記局所的な導電性ストリップ(6、7)が、
前記裏面(2.2)と前記ミラー(14)との間に配置された少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)、および
前記裏面(2.2)と前記ミラー(14)との間に配置された複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)であって、前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)が、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)と交差し、前記裏面バスバーベースストリップ(6)および前記半導体プレート(2)の前記裏面(2.2)と電気的に接触して配置されている、複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)
として具体化されており、
前記ミラー(14)が、前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)の上に配置された少なくとも1つのチャネル(13)を備え、前記少なくとも1つのチャネル(13)が、前記裏面バスバーベースストリップ(6)と前記導電層(15)との間の電気的接触に適合するように中間導電性材料で充填されている、ミラー(14)
をさらに備える、請求項1に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項3】
前記ミラー(14)が複数の誘電体層を備える、請求項2に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項4】
前記ミラー(14)が少なくとも1つのフォトニック結晶を備える、請求項2または3に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項5】
前記熱光起電力セル(1)が、好ましくは互いの間で平行な複数の裏面バスバーベースストリップ(6)を備え、前記ミラー(14)が、前記複数の裏面バスバーベースストリップ(6)上に配置された複数のチャネル(13)を備え、各チャネル(13)が、対応する裏面バスバーベースストリップ(6)と前記導電層(15)との間の電気的接触に適合するように前記中間導電性材料で充填されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項6】
前記裏面(2.2)と前記導電層(9)との間に配置された裏面反射促進層(17)であって、前記局所的な導電性ストリップ(7)が、前記裏面反射促進層(17)に配置され前記裏面(2.2)と前記導電層(9)との間の電気的接触を提供する複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)に適合するように前記導電層(9)の前記材料で充填された複数の窓(27)として具体化されている、裏面反射促進層(17)をさらに備える、請求項1に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの前面反射促進ストリップ(10)であって、前記前面反射促進ストリップ(10)が、少なくとも1つの誘電体層を備え、前記前面(2.1)と前面バスバーベースストリップ(3)との間に配置されている、少なくとも1つの前面反射促進ストリップ(10)、および/または、
少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ(8)であって、前記裏面反射促進ストリップ(8)が、少なくとも1つの誘電体層を備え、前記裏面(2.2)と裏面バスバーベースストリップ(6)との間に配置されている、少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ(8)
をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項8】
前記裏面反射促進ストリップ(8)および/または前記前面反射促進ストリップ(10)および/または前記裏面反射促進層(17)が、前記半導体プレート(2)と、前記裏面反射促進ストリップ(8)と前記裏面バスバーベースストリップ(6)および/または前記前面反射促進ストリップ(10)と前記前面バスバーベースストリップ(3)および/または前記裏面反射促進層(17)と前記導電層(9)のアセンブリとの間の反射率を最大化する厚さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項9】
前記前面(2.1)の至る所に、または前面バスバーベースストリップ(3)によって覆われる領域を除く前記前面(2.1)に配置された反射防止コーティング(11)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項10】
前記熱光起電力セル(1)が、好ましくは互いの間で平行な複数の前面バスバーベースストリップ(3)と、複数の導電性ワイヤ(5)とを備え、各導電性ワイヤ(5)は対応する前面バスバーベースストリップ(3)上に配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項11】
前記導電性ワイヤ(5)が三次元であり、好ましくは、前記導電性ワイヤ(5)が、前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)の断面積の少なくとも3000倍の断面積を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項12】
前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)が互いに実質的に平行であり、かつ/または
前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)が互いに実質的に平行である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項13】
前記半導体プレート(2)の前記前面(2.1)および/または前記裏面(2.2)が鏡面研磨されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)を備えるモジュール。
【請求項15】
前記モジュールが、複数の熱光起電力セル(1)と、第1の端部ホルダ(19)と、第2の端部ホルダ(19)と、少なくとも1つの中間ホルダ(19)とを備え、
前記第1の端部ホルダ、前記第2の端部ホルダ、および前記中間ホルダ(19)が導電性であり、
前記熱光起電力セル(1)が、前記第1の端部ホルダ(19)上および前記中間ホルダ(19)上に配置され且つ前記第1の端部ホルダ(19)および前記中間ホルダ(19)に取り付けられており、
前記中間ホルダ(19)および前記第2の端部ホルダ(19)が、一端に、前記熱光起電力セル(1)の前記前面バスバーベースストリップ(3)に位置合わせされた複数のノッチ(18)を備えるフランジ(25)を備え、
前記第1の端部ホルダ(19)が、第1の外部接続部(23)として構成された細長い部分を備え、
前記第2の端部ホルダ(19)が、第2の外部接続部(24)として機能することが意図されており、
前記導電性ワイヤ(5)が、1つのホルダ(19)上に配置された前記熱光起電力セル(1)の前記導電性ワイヤ(5)が隣接するホルダ(19)の前記フランジ(25)に接続されるように、前記ホルダ(19)の前記ノッチに沿って配置されている、
請求項14に記載のモジュール。
【請求項16】
前記ホルダ(19)に取り付けられた冷却手段、特に冷却要素、をさらに備える、請求項14から15のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの熱光起電力セル(1)と、内部に白熱材料(42)を収容するように構成された白熱キャビティ(41)とを備え、前記白熱キャビティ(41)が窓(43)を有する壁を備え、前記熱光起電力セル(1)が前記窓(43)に取り付けられている、エネルギー貯蔵システム(40)。
【請求項18】
a)半導体プレート(2)を設けるステップであって、前記半導体プレート(2)が、前面(2.1)および裏面(2.2)を有し、少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える、ステップと、
b)前記前面(2.1)を処理するステップであって、前記前面(2.1)の前記処理が、
前記前面(2.1)に少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ(3)を堆積させるステップであって、前記前面バスバーベースストリップ(3)が導電性である、ステップと、
前記前面(2.1)に、少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ(3)と交差し、前記前面バスバーベースストリップ(3)および前記半導体プレート(2)と電気的に接触する複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)を堆積させるステップであって、前記複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)が導電性材料で作られる、ステップと、
前記少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ(3)上に少なくとも1本の導電性ワイヤ(5)を配置するステップと
を含む、ステップと、
c)前記裏面(2.2)を処理するステップであって、前記裏面(2.2)の前記処理が、
前記裏面(2.2)に導電層(9、15)を堆積させるステップ
を含む、ステップと
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項19】
ステップc)が、
前記導電層(15)を設ける前に、前記裏面(2.2)に少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)を堆積させるステップであって、前記裏面バスバーストリップ(6)が導電性である、ステップと、
前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)と交差し、前記裏面バスバーベースストリップ(6)および前記半導体プレート(2)と電気的に接触する複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)を堆積させるステップであって、前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)が導電性材料で作られる、ステップと、
複数の誘電体層を堆積させ、前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)および前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)を覆うことによってミラー(14)を設けるステップと、
前記ミラー(14)に、前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)上に配置された少なくとも1つのチャネル(13)を掘り込むステップと、
前記少なくとも1つのチャネル(13)を中間導電性材料で充填するステップと、
前記ミラー(14)を前記導電層(15)で覆うステップと
を含み、前記少なくとも1つの充填されたチャネル(13)内の前記中間導電性材料が、前記裏面バスバーベースストリップ(6)と前記導電層(15)との間の電気的接触に適合する、請求項18に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項20】
ステップc)が、
前記導電層(9)を設ける前に、前記裏面(2.2)全体を覆う裏面反射促進層(17)を堆積させるステップと、
前記裏面反射促進層(17)を穿孔して複数の窓(27)を形成するステップと、
前記反射促進層(17)の裏面に金属層を堆積させることによって前記導電層(9)を設けるステップであって、前記導電層(9)の材料が前記裏面(2.2)と前記導電層(9)との間の電気的接触に適合するように前記複数の窓(27)を通る、ステップと
を含む、請求項18に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項21】
前記方法が、前記前面(2.1)に、好ましくは前記前面バスバーストリップ(3)によって覆われていない領域上に、反射防止コーティング(11)を堆積させるステップであって、前記反射防止コーティング(11)が好ましくは少なくとも1つの誘電体材料の層によって形成されている、ステップをさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項22】
前記方法が、
前記少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ(3)を堆積させる前に、前記前面(2.1)に少なくとも1つの前面反射促進ストリップ(10)を堆積させるステップであって、前記前面反射促進ストリップ(10)が少なくとも1つの誘電体層を備え、前記少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ(3)が前記前面反射促進ストリップ(10)上に堆積される、ステップ、および/または、
前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)を堆積させる前に、前記裏面(2.2)に少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ(8)を堆積させるステップであって、前記裏面反射促進ストリップ(8)が少なくとも1つの誘電体層を備え、前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(3)が前記裏面反射促進ストリップ(8)上に堆積される、ステップ
をさらに含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光起電力セルの分野に属し、白熱チャンバ内に存在する白熱光源によって放射された放射パワーを電力に変換し、大量の未使用の放射を白熱光源に戻すことができる熱光起電力セルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は、特定の波長で電磁放射の透過閾値または吸収閾値を有し、それを超えると半導体は本質的に放射を透過させる。透過閾値未満では、放射は吸収され、通常光電流の発生を伴う。各半導体材料は、異なる透過閾値を有する。
【0003】
光起電力(PV)セルは、通常はプレートの表面に平行な少なくとも1つのpn接合が内部に形成されている半導体プレートに基づくものである。プレートは、いくつかの異なる半導体のスタックと、その中に形成されたいくつかの接合部とを含む場合もある。その場合、透過閾値は、透過閾値が最も高い半導体の透過閾値である。
【0004】
接合部を形成した後、発生した電流が抽出されなければならない。これを行うために、光起電力セルは、光起電力セルの両面に導電体を堆積させることによって後処理される。裏面では単純な金属シートであることが多いが、前面では光電流が特定の電圧で生成されるように光を半導体に通過させながら光電流の抽出を可能にする金属グリッドを堆積させる必要がある。すなわち、光起電力セルは放射パワーから電力を生成する。
【0005】
上述の後処理は、半導体プレートから電流を抽出するために格子形状の電極を堆積させることにある。これは太陽電池における一般的な方法であり、ジュール(または直列抵抗)損失が小さいが非常に遮光的な高密度金属グリッドと、非常に透明であるがより多くのジュール損失を有するライトグリッドとの間に特定のトレードオフが見られる。PVでは、ほぼすべての平面(平面に含まれる)の合理的な構造が非常に類似した結果をもたらす。
【0006】
通常の光起電力セルでは、グリッド遮光の最適化が通常行われる。これは、グリッド遮光と電流のジュール効果による損失との間のバランスに基づくものである。これらの損失は、I
2・R
sとして決定され、Iは電流であり、R
sは直列抵抗であり、その計算は、例えば、Luque,A.:Solar Cells and Optics for Photovoltaic Concentration,Adam Hilger,Bristol(1989),Chap.4.に説明されている。電流の分散される性質のために、正しく設計された光起電力セルでは、直列抵抗は約
【数1】
であり、R
gは幾何学的抵抗であり、R
g=ρ
Ω・L/Aであり、式中、ρ
Ωは抵抗率であり、Lは長さであり、Aは面積であるが、場合によっては、電流は、例えば、セルの前面から裏面に向かう電流のように分散されない。光起電力セルの設計では、いわゆる比直列抵抗(r
ss)がしばしば使用され、r
ss=R
s・A’であり、A’は電流がそこから集電されるセルの割合の面積である。
【0007】
要約すると、遮光/ジュール損失のトレードオフが、通常のPVセルの設計では通常求められる。
【0008】
熱光起電力(TPV)効果は、近くに位置する白熱放射光源から電力を抽出するための光起電力セルの使用に関連する。これは、光源を高温に保つ目的で、受け取られる放射光、主に透過閾値を超える放射光をできるだけ多く白熱光源に戻すことにある。光起電力セル(ηPV)の効率は、ηPV=Pe,max/Piとして定義され、Pe,maxは最大抽出可能電力であり、Piは入射放射パワーである。熱光起電力装置またはTPVデバイスでは、効率はηTPV=Pe,max/(Pi-Pr)として定義され、Pe,maxは最大抽出可能電力であり、Piは入射放射パワーであり、Prは放射光源に戻される放射パワーである。理論的には、ηTPVは、白熱体とセルの絶対温度との間のカルノー効率にさえ達する可能性がある。実際には、我々はこの効率達成からかけ離れている。
【0009】
上記の正確な定義にもかかわらず、たとえ放射光が光源に戻されなくても、またはそれがほんのわずかであっても、熱光起電力セルを該白熱光源のスペクトルによく適合した光起電力セルと呼ぶことはごく一般的である。実際には、熱光起電力(TPV)と呼ばれる場合でも、該光源によって放射された非吸収光を実質的に光源に戻す光起電力(PV)セルは存在しない。
【0010】
欧州特許第3120096号明細書は、通常の電力から、または他の供給源から得られたエネルギーをシリコンまたは他の材料に貯蔵し、それが白熱するように溶融し、このエネルギーを光起電力セルによって電力の形態で放射されたパワーから回収するためのシステムを開示している。欧州特許第3120096号明細書では、セルがどのようになっているかに関しては何も言及されていない。
【0011】
国際公開第2004019419号パンフレットは、PVデバイスの透過閾値を超える若干の放射光を光源に反射する目的で、PVデバイスと白熱光源との間にフィルタを配置することを開示している。しかしながら、国際公開第2004019419号パンフレットによって提案された解決策にはいくつかの欠点がある。第1に、フィルタの反射は、小さな波長スパンをカバーする。また、透過閾値未満の有害な反射係数を有する。
【0012】
米国特許第9461191号明細書は、裏面ミラーの使用を開示している。特に、ミラーは、金の反射率を損なう遷移金属の使用を回避するために有機結合剤を用いて特定の基板に貼り付けられた金の層で作られている。結合剤を除けば、これは従来技術と変わらない。しかしながら、金と半導体とのこの密な接触は、深刻な光子吸収を引き起こし、熱光起電力効率を低下させる。
【0013】
米国特許出願公開第2019/036473号明細書は、選択フィルタおよび裏面ミラーを用いて、放射再結合によって生成された照射を捕捉することを目的としたPVセルを開示している。放射再結合によって生成される弱い照射は、TPV効果で意図された照射管理とは非常に異なる。
【0014】
Datas et al.:Ultra high temperature latent heat energy storage and thermophotovoltaic energy conversion,Energy 107,542-549(2016)には、溶融シリコンの容器の内側に配置された管に導入された熱光起電力セルを有するシステムが開示されている。しかしながら、熱光起電力セルについての詳細は与えられていない。放射光再利用を達成するためのこの論文では、水冷の効果的な透明システムに適合する両面セル構造が開示されている。この構成では、提案された冷却が有効であり得るかは疑わしい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第3120096号明細書
【特許文献2】国際公開第2004019419号パンフレット
【特許文献3】米国特許第9461191号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/036473号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Luque, A.:Solar Cells and Optics for Photovoltaic Concentration, Adam Hilger, Bristol (1989), Chap.4
【非特許文献2】Datas et al.:Ultra high temperature latent heat energy storage and thermophotovoltaic energy conversion, Energy 107, 542-549 (2016)
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、白熱体によって放射される放射束のほぼ全体を収集し、電流を抽出するためのジュール損失を大幅に低減させ、非吸収性入射放射の大部分を白熱体に戻す構成を開示することである。
【0018】
本発明は、光源を高温に保つためにそのエネルギーが光電流を生成するのに十分ではない光子の大部分、ならびに高温の光源の近接によって引き起こされるジュール損失を低減するために必要な厚いグリッドによって反射された放射光を、近くに位置する白熱放射光源に戻すように適合されたより効率的な熱光起電力セルを開示する。以下で説明されるように、本発明の熱光起電力セルのTPV効率は高効率であるとみなされる。
【0019】
そのために、請求項1に記載の熱光起電力セル、請求項14に記載のモジュール、請求項17に記載のエネルギー貯蔵システム、および請求項18に記載の熱光起電力セルの製造方法が開示される。従属請求項では、本発明の好ましい実施形態が定義される。
【0020】
第1の発明的態様では、
前面および裏面を有する半導体プレートであって、少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える半導体プレートと、
前面に配置された複数の前面コンタクトフィンガストリップであって、導電性であり、半導体プレートの前面と電気的に接触する、複数の前面コンタクトフィンガストリップと、
前面に配置された少なくとも1つの導電性前面バスバーベースストリップ、および対応する前面バスバーベースストリップ上に配置された、前面バスバーベースストリップと電気的に接触する少なくとも1本の導電性ワイヤであって、前面バスバーベースストリップと少なくとも1本の導電性ワイヤとが前面コンタクトフィンガストリップと交差する、少なくとも1つの導電性前面バスバーベースストリップおよび少なくとも1本の導電性ワイヤと、
裏面に配置された導電層であって、導電層と裏面とが、直接または中間導電性材料を介して、局所的な導電性ストリップにおいてのみ電気的に接触する、導電層と
を備える熱光起電力セルが提供される。
【0021】
コンタクトフィンガストリップは、本明細書を通して、半導体プレートに接触することを意図された、通常は金属製の、狭い高伝導性ストリップとして理解されたい。
【0022】
前面バスバーベースストリップは導電性ワイヤと共に三次元前面バスバーを形成する。
【0023】
米国特許第9461191号明細書に開示されているセルとは対照的に、本発明では、導電層と裏面とは、局所的な導電性ストリップにおいてのみ電気的に接触するため、裏面と導電層との間の拡張された接触が防止される。したがって、導電性ストリップがセルの裏面のごく一部を占めることから、効率の低下は回避される。したがって、本発明では、米国特許第9461191号明細書で発表されている効率よりも約50%高い効率に達し得る。
【0024】
好ましい一実施形態では、半導体プレートは矩形であり、好ましくは、サブミリメートルの厚さのものである。
【0025】
好ましい一実施形態では、矩形の半導体プレートの面積は、6×2cm2であることが好ましい。
【0026】
第1の発明的態様のTPVセルは、遮光/ジュール損失だけでなく、放射光戻りも考慮する。よって、トレードオフは、遮光/ジュール損失/放射光戻りである。
【0027】
よって、上述の構成によれば、前面コンタクトフィンガストリップによって収集された光電流は、それらの電気接続を介して前面バスバーベースストリップに送られ、小さいジュール損失で半導体プレートから抽出される。
【0028】
一実施形態では、熱光起電力セルは、
裏面と導電層との間に配置されたミラーであって、局所的な導電性ストリップが、
裏面とミラーとの間に配置された少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ、および
裏面とミラーとの間に配置された複数の裏面コンタクトフィンガストリップであって、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップと交差し、該裏面バスバーベースストリップおよび半導体プレートの裏面と電気的に接触して配置されている、複数の裏面コンタクトフィンガストリップ
として具体化されており、
ミラーが、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップの上に配置された少なくとも1つのチャネルを備え、少なくとも1つのチャネルが、裏面バスバーベースストリップと導電層との間の電気的接触に適合するように中間導電性材料で充填されている、ミラー
を備える。
【0029】
この実施形態では、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップは、裏面コンタクトグリッドを形成する。加えて、少なくとも1つの三次元前面バスバーおよび前面コンタクトフィンガストリップは、三次元前面コンタクトグリッドを形成する。
【0030】
本明細書を通して、グリッドとは、第1の方向に配置された離間ストリップと第2の方向に配置された離間ストリップとのネットワークとして理解されたく、第1の方向のストリップは第2の方向のストリップと交差し、交差は直交するかまたは直交しない。
【0031】
本発明は、異なる適切な厚さの複数のグリッドを使用する。これにより、有利には、遮光/ジュール損失のトレードオフのかなりの改善が得られる。
【0032】
上述のグリッドに使用される金属は、空気中で自然な高反射率を示すが、空気/金属反射率は、半導体が透過的である波長の範囲の高屈折率半導体上に堆積されると目立って低下する。
【0033】
よって、導電層は2つの異なる役割を有し、一方は、無視できるほどの導電による横方向ジュール損失を有する二次元裏面接続であり、他方は、白熱体を含むキャビティの方に達する光子の大部分の反射である。
【0034】
一実施形態では、ミラーは、複数の誘電体層を備え、近赤外光子および中赤外光子をカバーする放射光の半球状の入射のための広いスペクトル範囲において、通常0.999より高い、非常に高い反射率を提供するように構成される。複数の誘電体層は、異なる厚さを有していてもよく、異なる材料で作られていてもよい。この実施形態では、誘電体層セットの厚さは、約200μmであってもよい。
【0035】
一実施形態では、ミラーは、少なくとも1つのフォトニック結晶、好ましくは複数のフォトニック結晶を備える。好ましくは、複数のフォトニック結晶は、白熱光源からの等方性入射放射を反射するために、広範囲の波長の非常に高い反射および等方性反射を提供するように構成される。
【0036】
好ましい一実施形態では、セルは、好ましくは互いの間で平行な複数の裏面バスバーベースストリップを備え、ミラーは、複数の裏面バスバーベースストリップ上に配置された複数のチャネルを備え、各チャネルは、対応する裏面バスバーベースストリップと導電層との間の電気的接触に適合するように中間導電性材料で充填されている。好ましくは、裏面バスバーベースストリップは、均一に離隔されている。
【0037】
一実施形態では、熱光起電力セルは、裏面反射促進層を覆う裏面と導電層との間に配置された裏面反射促進層を備え、局所的な導電性ストリップは、好ましくはエッチングによって作製されており、約5μmの幅を有する複数の非交差窓として具体化されており、裏面反射促進層内に配置され裏面と導電層との間の電気的接触を提供する複数の裏面コンタクトフィンガストリップに適合するように導電層の材料で充填されている。本実施形態では、導電層は、裏面反射促進層と共にミラーを構成する。一実施形態では、導電層は、絶縁反射促進層によって半導体から分離された約0.98の反射率を有する高反射率金属層、好ましくは金または銀から形成され、よってミラーを構成する。ミラー(導電層および反射促進層を含む)の総厚さは、好ましくは約3.5μmである(好ましくは、導電層が約3μmの厚さを有し、反射促進層が約0.5μmの厚さを有する)。これらの寸法は、導電層が窓を介して半導体プレートに接触することを可能にする。反射促進層には、金属層が半導体裏面に電気的に接触し、複数のコンタクトフィンガを形成するように、複数のストリップ形状の窓が貫通している。この実施形態では、裏面バスバーは不要である。誘電体ミラーおよび反射促進層によって覆われた高反射率金属層を含む実施形態の比較を、詳細な説明に示す。
【0038】
よって、反射促進層は、有利には、堆積された金属ミラー、好ましくは銀または金のミラーを、未使用の光子を反射して高温キャビティに戻すための優れたミラーにし、前面バスバーの光吸収を大幅に低減し、電子的に有益な特徴を有する。
【0039】
一実施形態では、半導体プレートの前面および裏面が鏡面研磨されている。シリコンPVセルでは、いわゆる光閉じ込めを強化するために表面をテクスチャ加工することが一般的であり、よって、光の光子は、テクスチャ加工されたシリコンに入り、半導体プレートの壁に対して跳ね返り始め、シリコンの制限角度(arcsin(1/n);n:屈折率)内で表面に当たるまで離れることができず、これはシリコン内部の光子経路を増加させ、シリコンの電子バンドギャップに近いエネルギーで不完全に吸収された光子の吸収を助ける。しかし、これに対応するのが、光電流を生成することができない光子の輝度の膨大な(n2~16倍)増加(単位面積当たりおよびステレオラジアン当たりのワット数)をもたらすことである。対照的に、研磨面は、裏面の要素によって反射され、前後に何度も跳ね返って一定の輝度をもたらす前面に向かう第2の円錐を生成する半導体の内部の光子の円錐を形成する(Yablonovitch,E.,Cody,G.D.:Intensity enhancement in textured optical sheets for solar cells.Electron Devices,IEEE Transactions on 29(2),300-305(1982);Luque,A.:Coupling Light to Solar Cells.In:Prince,M.(ed.)Advances in Solar Energy.vol.8,pp.161-230.ASES,Boulder(CO)(1993))。
【0040】
一実施形態では、コンタクトフィンガストリップは非交差ストリップであり、好ましくは互いに平行に、好ましくはバスバーベースストリップに対して垂直に配置される。好ましくは、コンタクトフィンガストリップは、均一に離隔されている。特に、一実施形態では、前面コンタクトフィンガストリップは互いに実質的に平行であり、かつ/または裏面コンタクトフィンガストリップが互いに実質的に平行である。
【0041】
一実施形態では、バスバーベースストリップは、好ましくはコンタクトマスクを介して、半導体プレートの対応する面に形成される。しかしながら、任意の他の標準的なフォトリソグラフィ手順が使用されてもよい。
【0042】
一実施形態では、コンタクトフィンガストリップは、好ましくはリフトオフマイクロエレクトロニクス技術によって、半導体プレートの対応する面に堆積される。しかしながら、任意の他の標準的なフォトリソグラフィ手順が使用されてもよい。
【0043】
バスバーベースストリップは、好ましくは銀で作られている。バスバーベースストリップの幅は、製造可能性の制限によって決定され、場合によっては、50μmは両面とも妥当な値であり得る。バスバーベースストリップの厚さは、好ましくは、製造可能性によって許容される程度の厚さ、現在は約3μmである。バスバーベースストリップの間隔は、一実施形態では約6mmである。
【0044】
前面バスバーベースストリップ内で傾斜している導線の直径は、通常、ストリップの幅よりも大きい。一実施形態では、ワイヤは、銅で作られている。
【0045】
コンタクトフィンガストリップは、好ましくは銀で作られている。コンタクトフィンガストリップの厚さは、好ましくは、製造可能性によって許容される程度の厚さ、現在は約3μmである。コンタクトフィンガストリップの幅は、好ましくは、製造可能性によって許容される程度の狭さ、現在は約5μmである。コンタクトフィンガストリップの間隔は、一実施形態では約6mmである。
【0046】
一実施形態では、前面バスバーベースストリップは、前面コンタクトフィンガストリップよりも幅が広く、導電性ワイヤは、前面バスバーベースストリップよりも幅が広く、厚い。
【0047】
好ましい一実施形態では、バスバーベースストリップは、半導体プレートの全幅に沿って延びている。
【0048】
好ましい一実施形態では、前面コンタクトフィンガは、半導体プレートの全長に沿って延びている。
【0049】
一実施形態では、熱光起電力セルは、
少なくとも1つの前面反射促進ストリップであって、少なくとも1つの誘電体層を備え、前面と前面バスバーベースストリップとの間に配置されている、少なくとも1つの前面反射促進ストリップ、および/または、
少なくとも1つの裏面反射促進ストリップであって、少なくとも1つの誘電体層を備え、裏面と裏面バスバーベースストリップとの間に配置されている、少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ
を備える。
【0050】
導電性ストリップまたは層に隣接する、反射促進ストリップまたは層は、本明細書を通して、半導体内部の、該半導体の透過閾値を超える波長の放射光を可能な限り反射するようにその厚さが計算された、1つまたは複数の誘電体ストリップまたは層として理解されたい。
【0051】
一実施形態では、セルは、前面の至る所に、または前面バスバーベースストリップによって覆われる領域を除く前面に配置された反射防止コーティングを備える。
【0052】
特定の実施形態では、熱光起電力セルは、好ましくは互いの間で平行な複数の前面バスバーベースストリップと、複数の導電性ワイヤとを備え、各導電性ワイヤは対応する前面バスバーベースストリップ上に配置されている。好ましくは、前面バスバーベースストリップは、均一に離隔されている。
【0053】
特定の実施形態では、導電性ワイヤは三次元であり、好ましくは、導電性ワイヤは、前面コンタクトフィンガストリップの断面積の少なくとも3000倍の断面積を有し、これにより、有利には、セルのより高い効率が可能になる。
【0054】
一実施形態では、少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える半導体プレートはまた、多接合太陽電池を形成するための複数の接合部を備えていてもよい。
【0055】
一実施形態では、熱光起電力セルは、熱光起電力セルの裏面に取り付けられた冷却要素を備え、裏面は、熱光起電力セルの導電層が位置する側である。冷却要素は、冷却液に熱を伝達するように構成されている。
【0056】
第2の発明的態様では、第1の発明的態様の実施形態のいずれかによる少なくとも1つの熱光起電力セルを備えるモジュールが定義される。
【0057】
一実施形態では、モジュールは、生成された電気を使用するための快適な電流レベルおよび電圧レベルを得るために直列および/または並列に接続された複数の熱光起電力セルを含む。
【0058】
一実施形態では、モジュールは、熱光起電力セルが、それなしでは効率を失い、近くに位置する熱源によって損傷を受けることさえある、適度な温度で動作することができるように熱光起電力セルを冷却する手段を含む。
【0059】
一実施形態では、モジュールは、機械的損傷および/または温度損傷からの保護要素を含む。
【0060】
一実施形態では、モジュールは、複数の熱光起電力セルと、第1の端部ホルダと、第2の端部ホルダと、少なくとも1つの中間ホルダとを備え、
第1の端部ホルダ、第2の端部ホルダ、および中間ホルダは、導電性であり、
熱光起電力セルは、第1の端部ホルダ上および中間ホルダ上に配置され、第1の端部ホルダおよび中間ホルダに取り付けられており、
中間ホルダは、一端に、熱光起電力セルの前面バスバーベースストリップに位置合わせされた複数のノッチを備えるフランジを備え、
第1の端部ホルダは、第1の外部接続部として構成された細長い部分を備え、
第2の端部ホルダは、第2の外部接続部として機能することが意図されており、
導電性ワイヤは、1つのホルダ上に配置された熱光起電力セルの導電性ワイヤが隣接するホルダのフランジに接続されるように、ホルダのノッチに沿って配置されている。
【0061】
モジュールのこの実施形態では、同じホルダ上に配置された熱光起電力セルは電気的に並列に接続され、隣接するホルダの熱光起電力セルは電気的に直列に接続される。第1の端部ホルダおよび第2の端部ホルダは、モジュールの外部接続部を提供する。
【0062】
モジュールを実現するための第1の動作は、TPVデバイスホルダを設ける動作である。ホルダの長さは、好ましくは、TPVセルの1つまたはいくつかを保持するためにTPVセルの長さの倍数である。
【0063】
一実施形態では、TPVセルは、好ましくははんだ金属および/または導電性接着剤によってホルダに取り付けられており、よって、同じホルダのすべてのTPVセルの並列接続をもたらす。
【0064】
ホルダは、支持プレートとして具体化されてもよく、1つまたは複数の中間ホルダおよび第2の端部ホルダは、その側面の一方に、好ましくは光起電力セルセルを受け入れることを意図された部分に対して実質的に垂直なフランジを備える。
【0065】
一実施形態では、ホルダは、金属、好ましくは金属シート、特に銅、コバール、インバー、または半導体の熱膨張とよりよく一致するように熱膨張が小さい任意の他の合金で作られている。
【0066】
好ましくは、モジュールは、複数の中間ホルダを備える。
【0067】
好ましい一実施形態では、フランジエッジは、並列に接続されたTPVセルの各々について、好ましくは導電性ワイヤごとに1つずつ、1組の溝またはノッチを備える。
【0068】
好ましくは、溝またはノッチの厚さは、導電性ワイヤをこれらのノッチに通すことを可能にするために導電性ワイヤの直径の厚さである。
【0069】
したがって、導電性ワイヤは、バスバーベースと位置合わせされたすべてのノッチに通される。この動作では、導電性ワイヤは、バスバーベースと、グリッドを形成する溝とに接合され、すべてのTPVセルの並列接続を実現する。
【0070】
特定の実施形態では、ホルダの外側でフランジに隣接する位置で導電性ワイヤを切断することによって、該ホルダは直列に接続され、よって並列/直列TPVセルの集合を形成する。
【0071】
一実施形態では、モジュールは、ホルダに取り付けられた、すなわち第1の端部ホルダ、第2の端部ホルダおよび/または中間ホルダに取り付けられた、冷却手段、特に冷却要素をさらに備える。好ましくは、冷却要素は、モジュール内の複数のホルダに対応する面積を有するように寸法決めされている。好ましくは、冷却要素は、セルから水などの冷却液に熱を伝達するように構成されている。
【0072】
一実施形態では、冷却要素は、良好な熱導体である非導電性材料のシートで絶縁されている。
【0073】
特定の実施形態では、すべてのTPVセルがホルダと接続されると、該ホルダは冷却手段に接続され、電気的接触が防止される。このために、電気絶縁体のシートは、ホルダと冷却手段との間に配置され、ホルダと冷却手段とを電気的に絶縁する。電気絶縁シートはまた、良好な熱伝導性を示さなければならない。
【0074】
一実施形態では、冷却要素は、良好な熱伝導を有する接着剤でホルダに取り付けられており、好ましくは、隣接するホルダの直列絶縁を維持するために該ホルダ間に狭い隙間を残す。
【0075】
第3の発明的態様では、エネルギー貯蔵システムは、第1の発明的態様による少なくとも1つの熱光起電力セルと、内部に白熱材料を収容するように構成された白熱キャビティとを備え、白熱キャビティは、窓を有する壁を備え、熱光起電力セルは、窓に取り付けられている。
【0076】
本エネルギー貯蔵システムに関連して、5つの重要な電力束の概念が考慮されるべきである:
入力放射パワー束Pi(多くの場合シュテファン・ボルツマンの法則によって計算される単位面積当たりのワット数)、
抽出された電力束Pe、
冷却手段によってPVセルから除去された熱パワー束Ptの冷流水への熱の伝達、および
キャビティ内の熱漏れを含む望ましくない熱損失であるパワー束Pl。
【0077】
TPVセルでは、入射放射束Prの一部は、その窓を通って白熱キャビティに反射され、または戻される。以下の関係が成立するものとする:
Pi=Pe+Pt+Pr+Pl(1)
【0078】
Pl=0の場合、白熱キャビティは理想的であり、計算されたTPV効率はTPVセルの効率となる。
【0079】
以下の定義および関係も考慮される:
【数2】
式中、P
eは、0(短絡または開回路のPVセル)からその最大値まで変更することができる。
【0080】
加えて、
Pw=Pi-Pr(3)
が、電気を生成するときに熱溜りから浪費される熱パワーである。Pl=0、Pw=Pe+Ptを有するモジュールでは、PwはTPVセルから抽出された電力によって変化しないため、電力の抽出は項Ptを減少させ、PVセルの冷却にのみ影響を及ぼし、浪費される電力Pwには影響しない。
【0081】
第4の発明的態様では、第1の発明的態様のいずれかの実施形態による熱光起電力セルの製造方法が定義され、この方法は、
a)前面および裏面を有し、少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える半導体プレートを設けるステップと、
b)前面を処理するステップであって、前面の処理が、
前面に少なくとも1つの前面バスバーベースストリップを堆積させるステップであって、前面バスバーベースストリップが導電性である、ステップと、
前面に、少なくとも1つの前面バスバーベースストリップと交差し、該前面バスバーベースストリップおよび半導体プレートと電気的に接触する複数の前面コンタクトフィンガストリップを堆積させるステップであって、複数の前面コンタクトフィンガストリップが導電性材料で作られる、ステップと、
少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ上に少なくとも1本の導電性ワイヤを配置するステップと
を含む、ステップと、
c)裏面を処理するステップであって、裏面の処理が、
該裏面に導電層を堆積させるステップ
を含む、ステップと
を含む。
【0082】
少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ上に少なくとも1本の導電性ワイヤを配置するステップは、セルを製造するときに実行される。
【0083】
しかしながら、モジュールを実現するために製造が実行されるとき、少なくとも1つの前面バスバーベースストリップ上に少なくとも1本の導電性ワイヤを配置する該ステップは、該モジュールの製造の後続のステップで実行することができる。
【0084】
一実施形態では、この方法は、前面の、前面バスバーベースストリップによって覆われていない領域上に反射防止コーティングを堆積させるステップを含む。反射防止コーティングは、半導体によって吸収された光電流を生成する放射光、すなわち透過閾値未満の放射光の反射を低減させ、よって光電流を増加させる。
【0085】
好ましい一実施形態では、反射防止コーティングは、厚さも最適化された、異なる屈折率の誘電体材料の1つまたは2つの層を備える(例えば、Born,M.et al.:Principles of Optics,Pergamon Press,Oxford(1975)を参照)。これらの層が前面バスバーベースストリップ上に堆積するのを防止することが好都合である。このために、前面バスバーベースストリップを堆積させるために使用されるコンタクトマスクのほぼネガであるコンタクトマスクが使用されてもよく、このコンタクトマスクは、一連の薄い金属ストリップの形状を有し得る。このようにして、反射防止コーティングは、半導体プレートの前面の大部分を占め、前面バスバーベースストリップを別として、前面コンタクトフィンガストリップを覆う。他のマイクロエレクトロニクス手順、例えばフォトリソグラフィも使用され得る。前面に反射防止コーティングを施すこのステップは、前面バスバーワイヤを配置する前に行われてもよい。
【0086】
この方法の一実施形態では、ステップc)は、
導電層を設ける前に、裏面に少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップを堆積させるステップであって、裏面バスバーストリップが導電性である、ステップと、
少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップと交差し、裏面バスバーベースストリップおよび半導体プレートと電気的に接触する複数の裏面コンタクトフィンガストリップを堆積させるステップであって、裏面コンタクトフィンガストリップが導電性材料で作られる、ステップと、
複数の誘電体層を堆積させ、裏面コンタクトフィンガストリップおよび少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップを覆うことによってミラーを設けるステップと、
ミラーに、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ上に配置された少なくとも1つのチャネルを掘り込むステップと、
少なくとも1つのチャネルを中間導電性材料で充填するステップと、
ミラーを導電層で覆うステップと
を含み、少なくとも1つの充填されたチャネル内の中間導電性材料が、裏面バスバーベースストリップと導電層との間の電気的接触に適合する。
【0087】
この実施形態によれば、裏面にチャネルを開けた後、チャネルは、導電性材料、好ましくはインジウムなどの可鍛性金属、または同様の可鍛性を有する低融点導電結合ペーストで充填される。必要に応じて、プレートに熱を加えて、チャネルのより容易な充填を促進することができる。例えば、マイクロノズルを用いて導電性ペーストを注入することによって、チャネルに導電体を充填する任意の方法が使用されてもよい。
【0088】
この実施形態では、裏面バスバーベースストリップと少なくとも1つのチャネルを充填する導電材料とが合わさって、連続導電層、好ましくは金属と接触するように適合された裏面バスバーを形成して、熱光起電力セルの裏面電極を形成する。導電層は、好ましくは、高反射率の材料、例えば銀で作られるので、誘電体ミラーの反射率が改善される。
【0089】
チャネルは、ミニミリングやミニソーのウェハーダイシングマシンを使用することに加えて、レーザによって、イオン掘削によって、または任意の他の方法によって掘り込まれてもよい。
【0090】
この方法の別の実施形態では、ステップc)は、
導電層を設ける前に、裏面全体を覆う裏面反射促進層を堆積させるステップと、
裏面反射促進層を穿孔して複数の窓を形成するステップと、
反射促進層の裏面に金属層を堆積させることによって導電層を設けるステップであって、導電層の材料が裏面と導電層との間の電気的接触に適合するように複数の窓を通る、ステップと
を含む。
【0091】
この実施形態によれば、後で堆積されるべき層、好ましくは金属の反射率を高めることを意図して、裏面全体に反射促進層が堆積される。次いで、金属を堆積させる前に、裏面コンタクトフィンガを形成するために反射促進層上にストリップ形状の窓が形成される。これは、標準的なフォトリソグラフィ技術を使用して実行され得る。最後に、例えば銀の導電層がプレートの裏面全体に堆積され、その大部分にミラーを形成し、窓を通して裏面コンタクトフィンガも形成する。このように形成された裏面ミラーは、反射促進層によって反射率が高められている。有利には、この実施形態では、ミラーおよび裏面コンタクトフィンガを製造するために正確な位置合わせは必要とされない。
【0092】
好ましい一実施形態では、複数の前面バスバーベースストリップおよび裏面バスバーベースストリップが堆積される。
【0093】
一実施形態では、バスバーベースストリップは、好ましくはコンタクトマスクを介して、半導体プレートの対応する面に堆積される。しかしながら、任意の他の標準的な手順が使用されてもよい。
【0094】
一実施形態では、この方法は、
少なくとも1つの前面バスバーベースストリップを堆積させる前に、前面に少なくとも1つの前面反射促進ストリップを堆積させるステップであって、前面反射促進ストリップが少なくとも1つの誘電体層を備え、少なくとも1つの前面バスバーベースストリップが前面反射促進ストリップ上に堆積される、ステップ、および/または、
少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップを堆積させる前に、裏面に少なくとも1つの裏面反射促進ストリップを堆積させるステップであって、裏面反射促進ストリップが少なくとも1つの誘電体層を備え、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップが裏面反射促進ストリップ上に堆積される、ステップ
をさらに含む。
【0095】
好ましい一実施形態では、反射促進ストリップは、半導体と各面のバスバーベースストリップとの間に、おそらくは、反射促進ストリップとバスバーベースストリップとに同じコンタクトマスクを用いて堆積されるが、任意の他の標準的なフォトリソグラフィ手順が使用されてもよい。
【0096】
一実施形態では、コンタクトフィンガストリップは、好ましくはリフトオフマイクロエレクトロニクス技術によって、半導体プレートの両面に堆積される。しかしながら、任意の他の標準的なフォトリソグラフィ手順が使用されてもよい。
【0097】
バスバーベースストリップは、好ましくは銀で作られている。バスバーベースストリップの幅は、製造上の制限によって決定され、通常、両面とも50μmが妥当な値である。バスバーベースストリップの厚さは、好ましくは、製造可能性によって許容される程度の厚さ、現在は約3μmであり、バスバーベースストリップの間隔は、一実施形態では約6mmである。
【0098】
一実施形態では、前面バスバーベースストリップ内で傾斜している導線は、銅または錫メッキされた銅で作られる。
【0099】
コンタクトフィンガストリップは、好ましくは銀で作られている。コンタクトフィンガストリップの厚さは、好ましくは、製造可能性によって許容される程度の厚さ、現在は約3μmであり、コンタクトフィンガストリップ幅は、好ましくは、製造可能性によって許容される程度の狭さ、現在は約5μmである。
【0100】
本明細書(特許請求の範囲、明細書、および図面を含む)に記載されるすべての特徴および/または記載される方法のすべてのステップは、相互に排他的な特徴および/またはステップの組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0101】
本発明の上記他の特性および利点は、図面を参照して、単なる例として与えられ、それに限定されない、本発明の好ましい実施形態から明らかになる本発明の詳細な説明を考慮すれば明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】本発明の一実施形態による熱光起電力セルを示す上から見た三次元図である。
【
図2】本発明の一実施形態による熱光起電力セルを示す下から見た三次元分解図である。
【
図3】1本のワイヤに垂直な平面による熱光起電力セルの一実施形態を示す部分断面図である。
【
図4】1本のワイヤに垂直な、前面コンタクトフィンガストリップまたは裏面コンタクトフィンガストリップに沿った平面による熱光起電力セルの一実施形態を示す部分断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に対応する熱光起電力セルの裏面コンタクトフィンガストリップに垂直な平面による部分断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に対応する熱光起電力セルの裏面コンタクトフィンガストリップに垂直な平面による分解図としての部分断面図である。
【
図6】同じ半導体ウェハー上に製造された矩形の熱光起電力セルを示す図である。
【
図7】2つの隣接する支持プレート上に接着された2つの隣接する熱光起電力セルのアセンブリの詳細を示す図である(断面図)。
【
図8】ワイヤのうちの1本を備える、
図7に示されるアセンブリの断面図である。
【
図9】一点鎖線を通る法平面に沿って作成された
図8のアセンブリを示す断面図である。
【
図10】いくつかの隣接する熱光起電力セルのアセンブリを示す断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態による熱光起電力システムを示す図である。
【
図12】縦座標が(W/cm
2)/m単位で表され、横座標がm単位で表された、シリコン融点(1410℃または1683.15K)の温度における白熱黒体のパワースペクトル密度を真空中の波長の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本発明の実施形態による熱光起電力セル(1)が
図1から
図10に示されている。本発明による熱光起電力セル(1)は、半導体プレート(2)と、いくつかの前面バスバーベースストリップ(3)と、複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)と、三次元バスバーを形成する、前面バスバーベースストリップ(3)の上のいくつかの導電性ワイヤ(5)と、半導体プレート(2)の裏面(2.2)と電気的に接触する導電層(9、15)であって、該接触が高度に局所的な導電性ストリップ(7)に限定される導電層とを備える。
【0104】
図1に、本発明の実施形態の1つを示す。半導体プレート(2)は、前面(2.1)および裏面(2.2)を有し、少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備えるが、場合により、図示されていない異なる半導体層内のいくつかの接合部およびヘテロ接合を備える。一実施形態では、半導体プレート(2)はゲルマニウムで作られている。好ましくは幅約50μmの、いくつかの前面バスバーベースストリップ(3)が前面(2.1)に配置されている。この実施形態では、前面バスバーベースストリップ(3)は、前面バスバーベースストリップ(3)を半導体プレート(2)から電気的に絶縁する反射促進ストリップ(10)の上に配置されている。複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)は、好ましい実施形態では各々幅約5μmであり、導電性材料、例えば金属で作られており、前面バスバーベースストリップ(3)と交差し、電気的に接触して配置されている。また、複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)は、該前面バスバーベースストリップ(3)および半導体プレート(2)の前面(2.1)と電気的に接触して配置されている。好ましくは直径約3mmの導電性ワイヤ(5)は、導電性ワイヤと位置合わせされた対応する前面バスバーベースストリップ(3)上に配置されており、共に完全な三次元バスバーを形成している。
【0105】
熱光起電力セル(1)の裏面(2.2)は、
図2の分解図に示されている。特定の実施形態では、熱光起電力セル(1)の裏面(2.2)は、導電性ストリップの一実施形態として、半導体裏面(2.2)と電気的に接触し、好ましくは各々幅約50μmのいくつかの裏面バスバーベースストリップ(6)と交差し、電気的に接触する、好ましくは各々幅約5μmの裏面コンタクトフィンガストリップ(7)を含む。いくつかの好ましい実施形態では、裏面バスバーベースストリップ(6)は、誘電体反射促進ストリップ(8)によって半導体プレート(2)から電気的に絶縁される。
図2に見られるように、この実施形態では、半導体プレート(2)の裏面(2.2)上にミラー(14)が堆積されており、ミラー(14)と半導体プレート(2)との間に複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)を閉じ込めている。裏面コンタクトフィンガストリップ(7)は、複数の絶縁誘電体層で作られているため、ミラー(14)と電気的に接触しない。一実施形態では、ミラー(14)は厚さ約200μmである。ミラー(14)には、裏面バスバーベースストリップ(6)のところでミラー(14)をいくつかの部分(14)に分離するチャネル(13)が掘り込まれており、これは
図2においてより良く見える。これらのチャネル(13)は導電材料で充填されており、導電層(15)は、ミラー(14)および導体が充填されたチャネル(13)の部分が導電層(15)に接触するように配置されており、裏面電極として作用する好ましくは金属の該層(15)を、裏面バスバーベースストリップ(6)と半導体プレート(2)とに接続している。この接続は直接ではなく、裏面コンタクトフィンガストリップ(7)を介したものである。
【0106】
本発明による熱光起電力セル(1)は、白熱光源の放射光を受け取り、白熱光源に大量の未使用の放射光を戻すことができる。固有ではないが好ましい一実施形態では、白熱光源は融解シリコン(好ましくは固相および液相が融合している)であり得るが、多くの他の合金も非常に魅力的であり得る。シリコン金属(超精製されていない)は非常に安価であり、非常に高い融解潜熱(50.55kJ/mol、大部分の材料より約50%高い)を有し、ホウ素と混合された場合顕著に増加させることができる。Siの融点は1410℃であり、ホウ素の添加により低下する。これは、熱光起電力によるエネルギー貯蔵および回収にとって魅力的な材料である。しかしながら、溶融鉄(融解潜熱、13.8kJ/mol;融点1538℃;どちらも純鉄のデータ)およびその合金からの熱の電気への変換は、今日、経済的な利益になり得る。
【0107】
熱光起電力セル(1)の半導体プレート(2)は、Geまたは同様のバンドギャップを有するいくつかの他の材料で作られ得る。約0.7eVのバンドギャップを有する半導体の中で、Ge(0.67eV)、GaSb(0.726eV)もしくはInGaAs(可変バンドギャップ、In0.58Ga0.42Asで0.7eV)、または両方をこれらの半導体をその上にエピタキシャル成長させることができるGaSb結晶の格子定数に適合させた、異なる組成およびバンドギャップの2つのInGaAsSb半導体領域を有する二重接合デバイスさえも見出だせる可能性がある。しかし、非常に高品質の誘電体ミラーは、白熱材料のスペクトルにあまりよく適合していない材料の使用も可能にする。Siセルを使用することができ、非常に安価であるという利点がある。Ge半導体プレートは宇宙および集光型セルで使用される三接合太陽電池の構成要素であるため、Geも魅力的であり、そのため、いくつかの修正を加えれば、三接合太陽電池の製造業者からGe半導体プレートを得ることができる。
【0108】
説明したように、両方の半導体面(2.1、2.2)に配置された反射促進ストリップ(8、10)は、前面および裏面バスバーベースストリップ(3、6)と半導体プレート(2)との電気的接触を防止する。この接触は、熱光起電力セル(1)電圧の低下をもたらす半導体デバイスにおける電子-正孔再結合の一因である。しかし、加えて、反射促進ストリップ(8、10)は、バスバーベースストリップ(3、6)による放射光の反射を増強し、その吸収を減少させる役割も有する。明らかに、吸収された放射光を、放射光源に戻すことはできない。反射促進ストリップ(8、10)の厚さは、透過閾値を超える放射光を可能な限り反射するように計算され得る(Born,M.et al.:Principles of Optics.Pergamon Press,Oxford(1975))。一実施形態では、反射促進ストリップ(8、10)の厚さは、0.5μmの範囲内である。
【0109】
各反射促進ストリップ(10、8)に隣接して、1つの前面バスバーベースストリップまたは裏面バスバーベースストリップ(3、6)が配置されている。この実施形態では、前面バスバーベースストリップおよび裏面バスバーベースストリップ(3、6)は、金属、好ましくは銀で作られており、前面反射促進ストリップおよび裏面反射促進ストリップ(10、8)と同じ幅、および約3μmの厚さを有する。前面反射促進ストリップおよび裏面反射促進ストリップ(10、8)と前面バスバーストリップおよび裏面バスバーストリップ(3、6)とは、同じコンタクトマスクを使用して半導体プレート(2)上に堆積され得る。前面バスバーベースストリップ(3)の目的は、ワイヤ(5)のベースとして機能し、ワイヤ(5)および前面コンタクトフィンガストリップ(4)と電気的に接触することであり、一方、裏面バスバーベースストリップ(6)の目的は、裏面コンタクトフィンガストリップ(7)と、チャネル(13)を充填する中間導電性材料と、チャネルを介して金属で作られた導電層(15)と電気的に接触することである。好ましい一実施形態では、前面バスバーストリップおよび裏面バスバーストリップ(3、6)は、その全幅にわたって熱光起電力セル(1)に沿って延びている。
【0110】
図1および
図2の実施形態では、半導体プレート(2)の両面(2.1、2.2)に、好ましくはリフトオフマイクロエレクトロニクス技術によって堆積された複数の前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)が配置されている。前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)は、半導体プレート(2)上に直接堆積されており、対応する面(2.1、2.2)のバスバーベースストリップ(3、6)に電気的に接続されている。この実施形態では、前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)は、それぞれ、前面バスバーベースストリップおよび裏面バスバーベースストリップ(3、6)に対して垂直であり、熱光起電力セル(1)の全長に沿って延びているが、前面バスバーベースストリップおよび裏面バスバーベースストリップ(3、6)と前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)との間の他の交差角度も可能である。一実施形態では、前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)は、厚さ約3μmおよび幅約5μmである。好ましい一実施形態では、前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)は銀で作られている。
【0111】
図1には、セル幅(L)、ワイヤ直径(d)、およびバスバー周期(l)が示されている。
【0112】
図3および
図4に、熱光起電力セル(1)の一実施形態の1本のワイヤ(5)に垂直な平面による部分断面図を示す。
図3の図は、前(2.1)面および裏(2.2)面の前面バスバーベースストリップまたは裏面バスバーベースストリップ(3、6)の近傍における
図1の部分断面に対応していてもよく、断面平面は、前面コンタクトフィンガストリップまたは裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)に接触しない。
図4の図では、平面はまた、この図に位置合わせされて示されている前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)と交差している。しかしながら、前面コンタクトフィンガストリップおよび裏面コンタクトフィンガストリップ(4、7)は、異なる周期を有していてもよく、位置合わせされる必要はない。
【0113】
これらの断面のすべての要素は、次に説明されることを除いて、
図1および
図2に関連して既に説明されている。
図3および
図4には、通常は1つまたは複数の誘電体層で作られる、反射防止コーティング(11)がある。層の厚さ(例えば、Luque,A.:Solar Cells and Optics for Photovoltaic Concentration,Adam Hilger,Bristol(1989),Chap.14.参照)は、好ましくは適切に計算および最適化され、好ましくは厚さ0.1μmの範囲内であり、ワイヤ(5)が取り付けられる前に堆積される。ワイヤ(5)と前面バスバーベースストリップ(3)との間の電気的接触を容易にするために、反射防止コーティング(11)は、反射促進ストリップ(10、8)および前面バスバーベースストリップ(3)を堆積させるために使用されるもののネガであるコンタクトマスクを介して堆積されてもよく、または代替的に、フォトリソグラフィ手段を使用してコーティング(11)上に窓が形成されてもよい。参照番号12は、熱光起電力セル(1)の外側を指しており、空気のみとすることもでき、または例えばシリコーンで作られた透明な保護用の厚い層とすることもできる。参照番号16は、モジュールを形成するためにセル(1)を支持プレートに接着するための導電性ペーストを指す。
【0114】
図5Aに、本発明の別の実施形態に対応する熱光起電力セル(1)の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)に垂直な平面に対する部分断面を示す。具体的には、この図には、熱光起電力セル(1)の裏面(2.2)付近の3つの裏面コンタクトフィンガストリップ(7)の周りのセクタが示されている。この切断平面は、
図3および
図4の切断平面に対しても垂直である。この実施形態では、光起電力セル(1)の裏面(2.2)は、
図3および
図4の実施形態に関連して説明されたものとは異なる。この実施形態では、熱光起電力セル(1)は、半導体プレート(2)の裏面(2.2)に堆積された裏面反射促進層(17)を備え、複数の窓(27)が裏面反射促進層上にエッチングされている。裏面反射促進層(17)は、半導体プレート(2)の裏面(2.2)全体を覆って堆積される。窓(27)は、通常ストリップ形状であり、フォトリソグラフィによって裏面反射促進層(17)をその全厚でエッチング除去することによって作られる。ミラーは、導電層(9)、好ましくは金または銀層、および裏面反射促進層(17)によって具体化されており、裏面反射促進層(17)の窓(27)は、導電層(9)の材料で充填されており、半導体プレート(2)の裏面(2.2)と、熱光起電力セル(1)の裏面電極になる導電層(9)との間の電気的接触を提供する裏面コンタクトフィンガストリップ(7)に適合する。該導電層(9)および裏面反射促進層(17)によって形成されたミラーは、熱光起電力セル(1)を支持プレート(支持プレートは
図5Aには示されていない)に貼り付けるために、電気および熱伝導性接着剤(16)で覆われ得る。
【0115】
前述のものと同じ構成が、ただし、開示のすべての要素の認識を容易にするために分解図として
図5Bに示されている。
【0116】
本発明による複数の熱光起電力セル(1)が、固有の半導体ウェハー(30)上に製造され得る。好ましい一実施形態では、関連するpn接合、np接合またはヘテロ接合がいくつかの光起電力セル(1)を形成するように作製された前処理された半導体ウェハー(30)が使用される。
図6に、同じ半導体ウェハー(30)上に製造された矩形の熱光起電力セル(1)を示す。
【0117】
いくつかの熱光起電力セル(1)が同じ半導体ウェハー(30)上に製造される場合、本発明の方法の製造ステップが、好ましくはウェハー(30)に含まれる熱光起電力セル(1)に対して実行され、続いて、個々の熱光起電力セル(1)を分離するために必要な切断がウェハー(30)に対して行われる。
【0118】
図7~
図9に示されるように、熱光起電力セル(1)は、熱光起電力モジュールを形成するために、支持プレート(19)に1つずつまたは2つ以上の群で固定されてもよく、これらの熱光起電力セル(1)は、支持プレート(19)によって並列に接続されるようになる。好ましくは、熱光起電力セル(1)は、電気および熱伝導樹脂(16)を使用して支持プレート(19)に接着される。好ましくは、支持プレート(19)は、金属で作られており、並列接続された熱光起電力セル(1)の長さの合計と同様の長さを有する。一実施形態では、各々長さ6cmの2つのゲルマニウム熱光起電力セル(1)が、12cmの総プレート長さで並列に接続される。支持プレート(19)の幅は、好ましくは熱光起電力セル(1)の幅と同じであり、例えば2cmである。一実施形態では、支持プレート(19)の材料は、銅、または、コバールなどの熱膨張係数が低い任意の合金である。この支持プレート(19)の隣には、以下で説明されるように、第1の支持プレート(19)と直列に接続された対応する熱光起電力セル(1)を有する隣接する支持プレート(19)があり得る。
【0119】
図7に、2つの隣接する支持プレート(19)上に接着された2つの隣接する熱光起電力セル(1)のアセンブリの詳細を示す(断面図)。この図には、2つの支持プレート(19)が示されており、その上に、熱および電気伝導性ペースト(16)を使用して2つの熱光起電力セル(1)の導電層(15)が接着されている。熱および電気伝導性ペースト(16)は、支持プレート(19)を熱光起電力セル(1)に接着し接触させる。支持プレート(19)には、一端にフランジ(25)が設けられている。この説明は、
図1~
図4に開示されているもののような誘電体ミラーを有する熱光起電力セルの実施形態に言及している。しかしながら、同じ構成が、
図5A~
図5Bに関連して開示されているような、金属ミラーを有する実施形態に適用可能である。
【0120】
図8に、今度はワイヤ(5)のうちの1本を備える、
図7に示されるアセンブリの断面図を示す。ワイヤ(5)は、半導体プレート(2)上に堆積された前面バスバーベースストリップ(3)上に位置しており、前面バスバーベースストリップ(3)は、好ましくは、この図には示されていない前面反射促進ストリップによって電気的に分離されている。
【0121】
図9に、
図8の一点鎖線(22)を通る法平面を横切って作成された
図8のアセンブリの断面図を示す。
図7および
図8は、それぞれ一点鎖線(20)および(21)による
図9の切断図である(厳密に言えば、
図8は、フランジの上部が見えないはずなので、線21による切断ではない)。
図8では、ワイヤ(5)が切断されて(28)2つの熱光起電力セル(1)の直列接続を可能にする
図9には、支持プレート(19)のフランジ(25)、およびフランジ(25)の縁に形成されたノッチ(18)を見ることができる。これらのノッチ(18)を介してワイヤ(5)が導入され、接合される。ノッチ(18)の幅は、ワイヤ(5)の直径である。ノッチ(16)の深さは、前面バスバーベースストリップ(3)が前面コンタクトフィンガストリップ(4)と交差する(
図4参照)ときに前面コンタクトフィンガストリップ(4)によって厚くなるワイヤ(5)が前面バスバーベースストリップ(3)上に載置される(
図1~
図4参照)ことを可能にする。
【0122】
一実施形態では、ワイヤ(5)は、ノッチ(18)および前面バスバーストリップ(3)のいくつかの拡大された点でフランジ(25)に、または代替的に前面バスバーベースストリップ(3)全体にソフトボンディングされる。モジュール全体のボンディングプロセスが終了すると、ワイヤ(5)が熱光起電力セル(1)間で切断され(28)、よって、
図8の左側の熱光起電力セル(1)の半導体プレート(2)の前面(2.1)と右側の熱光起電力セル(1)の半導体プレート(2)の裏面(2.2)との接続が提供され、2つの支持プレート(19)上に含まれる熱光起電力セル(1)の直列接続が生じる。同じ支持プレート(19)上に位置する熱光起電力セル(1)に関して、それらは、裏面接続用の支持プレート(19)と、前面接続用の支持プレート(19)のフランジ(25)に接合されたワイヤ(5)とによって並列に接続される。
【0123】
図7~
図9には、簡単にするために、熱光起電力セル(1)のいくつかの要素のみが示されている。しかしながら、熱光起電力セル(1)は、本発明による追加の要素を含むことを理解されたい。また、
図1~
図4の実施形態による導電層(15)が図において特定されているが、熱光起電力セル(1)は、
図5の実施形態によるものであっても、本発明の任意の実施形態によるものであってもよい。
【0124】
図10に、モジュールがどのように形成され得るかをより詳細に提示するために、いくつかの隣接する熱光起電力セル(1)のアセンブリの断面図を示す。この図は、主に、直列の一連の熱光起電力セル(1)の端部を示している。熱光起電力セル(1)は、それらの支持プレート(19)に平行に配置され接続されている。ワイヤ(5)は、前面バスバーベースストリップ(3)と支持プレート(19)のフランジ(25)のノッチ(18)とに接合されて配置されており、ワイヤ(5)は、次の支持プレートフランジの右側で切断されている(28)。
【0125】
図の最も左の支持プレート(19)は、フランジを有さず、熱光起電力セル(1)の支持プレート(19)に加えて、所望の長さを有する任意の保護部から延在するモジュールの第1の電極(23)、例えば正極である。第1の電極(23)は、別のモジュール、AC/DCコンバータまたは実装されるべき用途の別の要素への外部接続を行うために使用される。モジュールの右側には、その上にフランジ(19)はあるが熱光起電力セルがない支持プレートが、熱光起電力セル(1)を含む最も右の支持プレート(19)のワイヤ(5)に接続され、接合されている。熱光起電力セル(1)がない支持プレートは、モジュールの第2の電極(24)、例えば負極であり、好都合である限り延長され得る。
【0126】
この概略的モジュールには、3つの熱光起電力セル(1)のみが示されている。一般に、実際のモジュールは、その電極間に好都合な電圧、例えば数十ボルト、またはそれ以上が達成されるまで、より多くの熱光起電力セル(1)を有する。一実施形態では、モジュールは、並列の2つの熱光起電力セル(1)と、直列の60個の支持プレートとを備え、よって6×2cm2の120個の熱光起電力セルが得られる。この実施形態における熱光起電力セルの総面積は、120×12=1440cm2になる。
【0127】
図11に、本発明の一実施形態による熱光起電力システム、特に、本発明による熱光起電力セル(1)と、白熱キャビティ(41)とを備えるエネルギー貯蔵システム(40)を示す。キャビティ(41)は、断熱壁(
図11に点線領域として示されている)によって閉じ込められてとどまる放射エネルギーを放射する白熱体または白熱材料(42)を含む。壁は、放射光がそこを通ってキャビティから出ることができる窓(43)を備える。熱光起電力セル(1)は、窓(43)に取り付けられており、放射された放射光を受け取る。使用時に、熱光起電力セル(1)は、キャビティ(41)の窓(43)を通って放射された等方性放射を電力に変換し、大量の未使用の放射をキャビティの窓(43)に戻す。熱光起電力セル(1)に取り付けられた冷却要素(44)が、温度を低く保つために必要な熱を冷却液(例えば、水)に伝達し、よって、熱光起電力セル(1)を周囲に近い温度に保ち、光起電力デバイスとしての半導体プレートの効果的な動作を容易にする。図中の矢印は、キャビティ(41)に熱を注入する任意の方法を示している。電線および水道管が、それぞれ、電力および熱パワーを抽出するために含まれている。図には1つの熱光起電力セルが概略的に示されているが、本発明による複数の熱光起電力セルおよび/または1つもしくは複数の熱光起電力モジュールが窓に取り付けられていてもよい。
【0128】
図12に、シリコン融点(1410℃または1683.15K)の温度における白熱黒体のパワースペクトル密度を真空中の波長の関数として示す。縦座標は(W/cm
2)/m単位で表されており、横座標はmで表されている。その積分が、放射された放射光の電力密度であり、45.51W/cm
2である。これを、0.1W/cm
2である、いわゆる標準太陽から受け取られる電力と比較すると好都合である。理解されるように、これははるかに大きいが、今日の多接合集光型セルによって受け取られる電力密度に匹敵する。通常1cm
2未満であるこれらセルでは、幅の広いバスバーが配置されている照射領域の外側に、エッジに電流を抽出するための高密度のコンタクトフィンガグリッドを配置する必要がある。放射エネルギーを浪費しないために、好ましくは白熱体の非常に近くに配置される本発明による熱光起電力セルでは、黒体から45.51W/cm
2程度の前述の電力密度を受け取り、幅の広いバスバーベースストリップに、またはセルを冷却するために利用可能な側面領域はない。
【0129】
しかしまた、融解シリコンの温度での黒体の照射下では、ゲルマニウムの吸収閾値(1.85μm)を超える波長で熱光起電力セルによって受け取られる放射パワーは31.91W/cm2であり、これは白熱光源に戻されなければならないものである。当然ながら、この放射光すべてを戻すことができるわけではない。熱光起電力効率を決定するための計算方法を以下で説明する。
【0130】
本発明の熱光起電力セル(1)の直列抵抗は、文献で教示されているように計算され得る(例えば、Luque,A.:Solar Cells and Optics for Photovoltaic Concentration,Adam Hilger,Bristol(1989),Chap 4)。通常の集光型セルの場合には、直列抵抗は、前から後に、主に、それらの発生点から前面コンタクトフィンガストリップ(4)まで電流の横方向経路の直列抵抗、前面コンタクトフィンガストリップ(4)に沿った(照射スポットの外側に位置する)バスバーまでの抵抗、およびプレート(2)の抵抗を含む。本発明の熱光起電力セル(1)では、一方では前面バスバーベースストリップ(3)およびワイヤ(5)の直列抵抗、他方ではそれらの発生点から裏面コンタクトフィンガストリップ(7)までの電流の横方向経路の直列抵抗が、通常のセル直列抵抗に加えられなければならない。これに加えて、誘電体ミラー(14)を有する実施形態では、裏面コンタクトフィンガストリップ(7)に沿った裏面バスバーベースストリップ(6)までの抵抗も加えられなければならない。金属ミラーを有する実施形態では、窓(27)を通して作られた裏面コンタクトフィンガ(7)に沿った直列抵抗は考慮されるべきではなく、その理由は、それらが裏面コンタクトを形成する裏面金属層に直接接続されており、その直列抵抗はゼロであるとみなされるからである。
【0131】
好ましい矩形セルの実施形態では、これらはすべて、セル幅Lと、ワイヤの等方性照射下の平均遮光(円筒のワイヤ直径である)dと、前面バスバーワイヤの周期(中心から中心までの距離)lと、裏面バスバーストリップの周期lbと、前面コンタクトフィンガストリップの透明度(ストリップの幅を周期で割ったものとして定義される)Fと、裏面コンタクトフィンガストリップの透明度Fbとの関数である。これらのパラメータはすべて、最大の熱光起電力効率のために最適化されるべきである。製造上の考慮事項(例えば、コンタクトフィンガストリップとバスバーベースストリップとの幅および厚さ)によって決定される他の寸法パラメータがある。他の非矩形の実施形態では、直列抵抗も計算および最適化することができる。裏面バスバーがない金属ミラーを有する実施形態では、lbは意味を持たず、lbを含む項は0である。
【0132】
熱光起電力効率の最適化を達成するためには、白熱光源に戻される放射パワーを考慮する必要がある。熱光起電力セルが白熱光源によって半球状に照射されると、放射パワーの一部が熱光起電力セルの前面の要素によって反射される(大部分は金属によるものであるが、わずかな部分が反射防止コーティングによっても反射される)。反射された放射パワーは、白熱光源に戻され、残りの放射光は半導体プレート(2)に入る。透過閾値未満の放射光は、半導体によって完全に吸収され、大部分が光電流を生成する。閾値を超える放射光は、その角度が空気と半導体との間の制限角度である円錐内に閉じ込められ(半導体プレートが両方の面を平坦に有する場合)、次いで、ミラーによって反射され、白熱光源に戻される別の放射光の円錐を形成する。高反射率ミラーでは、合理的な近似として、両方の円錐の輝度が同じB(W/(cm2×ステレオラジアン)単位)であると仮定され得る。前方放射光円錐は、この吸収を低減させる反射促進層(存在する場合)にもかかわらず、半導体バルクと、ミラーと、裏面コンタクトフィンガストリップ(7)と、裏面バスバーベースストリップ(6)とにおいてわずかに吸収される。他方、後方に反射された円錐は、半導体バルクと、前面バスバーベースストリップ(3)と、前面コンタクトフィンガストリップ(4)とにおいて同じ吸収を受けるが、その大部分は、前面コンタクトグリッドによって覆われていない空間によって熱光起電力セル(1)から出て、覆われていない表面ではわずかな反射があるが、存在する場合には反射防止コーティング(11)によって低減される。熱光起電力セル(1)を出る放射光は、白熱光源に戻される。
【0133】
よって、放射光が半導体プレート(2)の2つの面(2.1、2.2)の間を移動する際に見出すすべての金属面および誘電体面において反射が生じる。これらの反射の大部分はミラー反射であり、したがって、それらは半導体内の2つの円錐に含められる。これらは輝度Bに寄与する。しかし、これらの反射の一部は、特に、金属および誘電体ストリップの縁部に形成された散乱において、円錐状に制限された放射光と同様の形で処理される半導体の内部で散乱される少量の明らかに等方性の放射光を生成し、等方性の輝度Bisoを高める。
【0134】
輝度Bの計算は、波長閾値を超える入射放射と、光源に戻された放射光と上記の吸収損失とのバランスをとることによって行われる(Luque,A.:The Confinement of Light in Solar-Cells,Solar Energy Materials 23(2-4),152-163(1991)or Luque,A.:Coupling Light to Solar Cells,In:Prince,M.(ed.)Advances in Solar Energy.vol.8,pp.161-230.ASES,Boulder(CO)(1993))。実際には、放射光のわずかな部分が等方性放射に変換され、等方性放射は、次に輝度Bisoの入力になり、等方性の逃げる放射光と損失とのバランスがとられる。逃げる放射光は空気-半導体制限角度円錐に制限され、残りは反射されて戻るため、Bisoが増加させることが考慮に入れられなければならない。
【0135】
このことにより、BおよびBisoを、したがって、熱光起電力セルに入らない放射光も加えられなければならない、白熱光源に戻される放射光を計算することが可能になる。したがって、抽出可能な電力を入射放射パワーで割った商から放射光源に戻された放射パワーを引いたものとして定義される、熱光起電力効率を計算することができる。次に、熱光起電力効率の最大値を得るために変数l、d、lb(存在する場合)、FおよびFbを選択することができる。
【0136】
このようにして、光起電力セルは、通常の光起電力効率よりもはるかに高い(以下で論じられるように、3倍超高い)、熱光起電力効率である効率で、溶融材料のリザーバに貯蔵されたエネルギーを需要に応じて電気に変換するディスパッチ可能な発電機として動作し得る。
【0137】
最適化に必要ないくつかのパラメータは、製造を容易にするために選択されると言われている。各熱光起電力セル(1)は、前面および裏面(2.1,2.2)に、いくつかのバスバーベースストリップ(6)および多数のコンタクトフィンガストリップ(4、7)を有する。一般に、これらのすべてのメタライゼーションストリップの幅については、狭いほど良好である。ストリップの厚さについては、厚いほど良いが、製造に適した技術によって強制される値がある。幅については、(長さが数cmである場合)約5μmを妥当とすることができ、厚さについては約3μmを妥当とすることができる。前面バスバーストリップの場合、それらは、おそらくは直径0.3mmのワイヤを前面に収容しなければならず、裏面のミラー内のチャネルは、ソーの厚さ、例えば50μmによって制限される。これらの考慮事項は、適用可能な場合、裏面にバスバーベースストリップが存在しない金属ミラーを有する実施形態にも当てはまる。
【0138】
熱光起電力セル(1)の幅Lは、その増加と共に増加する直列抵抗に大きく影響する。モジュールを製造するときに熱光起電力セル間のギャップを考慮することによってモジュールレベルで最適化が行われ得るが、この幅は実際的な理由で通常は固定されており、2cmが合理的な選択である。
【0139】
前述のように、グリッドは、半導体の内部に存在する吸収閾値を超える放射光の損失に重要な役割を果たす。ゆえに、熱光起電力効率は、前面のワイヤの直径d、それらの周期l、および裏面周期lb(裏面バスバーベースストリップが存在する場合)のいくつかの値についての影因子FおよびFbの関数として最適化される。
【実施例1】
【0140】
融解シリコン温度(1410C)での黒体の等方性照射下での13.53A/cm2のグリッドフリー短絡電流密度および0.629Vの開回路電圧で、ショックレーモデル(Shockley,W.:The Theory of p-n junctions in Semiconductors and p-n Junction Transistors,Bell Syst.Tech.J.28,435-489(1949))に従うと仮定された、(Geセルに近い)0.7eV半導体セルでは、最も高い熱光起電力効率は、誘電体ミラーを有する実施形態では、d=0.3mm、l=4mm、lb=1mm、F=0.038およびFb=0.029で生じる。幅5μmのコンタクトフィンガでは、それらの周期は前面および裏面でそれぞれ131μmおよび172μmである。性能データは、熱光起電力効率については31.8%、グリッド被覆短絡電流密度については11.02A/cm2、比直列抵抗(直列抵抗×セル面積)については0.0127Ω×cm2、熱光起電力セルによって受け取られた無駄な放射光の平均化された反射率については95.7%である。この実施例に対応するデータを表1の列Aに示す。前述の計算に使用された熱光起電力セルは、(理想的には)集電グリッドなしで、0.7eVセルの熱力学効率限界の70%を達成する熱光起電力セルである。この熱光起電力セルの光起電力効率は、光源に戻される放射光をカウントしなければ、9.44%である。熱光起電力効率は、光起電力効率よりも3.37倍大きい。
【0141】
しかしながら、1mmごとに裏面ミラーを掘り込むことは、ミラーにとって有害すぎると考えられる。よって、裏面ミラーのチャネルの周期は5mmが製造により適していると考えられている。lb=5mmでは、d=0.3mm、l=4mm、F=0.040およびFb=0.075で最も高い熱光起電力効率が生じる。幅5μmのコンタクトフィンガの周期は、それぞれ、前面で126μm、裏面で66.8μmである。性能データは、熱光起電力効率については29.4%、グリッド被覆短絡電流密度については11.00A/cm2、比直列抵抗については0.0138Ω×cm2、セルによって受け取られた無駄な放射光の平均化された反射率については94.7%である。この熱光起電力セルの光起電力効率は9.16%である。熱光起電力効率は、光起電力よりも3.18倍大きい。この実施例に対応するデータを表1の列Bに示す。
【0142】
同じ放射光源下の同じ0.7eV太陽電池について、銀ミラーを有する実施形態を使用した最適な熱光起電力効率は、d=0.3mm、l=4mm、F=0.039およびFb=0.028で生じる。幅5μmのコンタクトフィンガでは、それらの周期は前面および裏面でそれぞれ128μmおよび176μmである。性能データは、熱光起電力効率については30.4%、グリッド被覆短絡電流密度については11.01A/cm2、比直列抵抗(直列抵抗×セル面積)については0.0125Ω×cm2、セルによって受け取られた無駄な放射光の平均化された反射率については94.5%である。このセルの光起電力効率は9.56%である。熱光起電力効率は、光起電力よりも3.18倍大きい。熱光起電力効率30.4%は、誘電体ミラーを有する実施形態の最適値31.8%よりも低いが、誘電体ミラーに実用的とみなされる値29.4%よりも高いことに留意されたい。さらに、銀ミラーの実施形態はより簡単である。いずれにせよ、性能の変動はあらゆる場合においてかなり小さい。この実施例に対応するデータを表1の列Cに示す。
【0143】
Geセルを有するモジュールの好ましい実施形態は、既に簡単に提示されている。これは、任意の0.7eV半導体についてほぼ同じとすることができる。このモジュールは、支持プレート(19)に2つの並列のセルと、6×2cm2の120個のセルを備える直列の60個のプレートとを有する。総セル面積は、約120×12=1440cm2である。モジュール特性は、開回路電圧、37.7V;短絡電流、246A;長さ120cm、幅12cm、出力6.028kW(裏面ミラーの実際的な掘削を伴う)である。他の実施形態も可能であり、例えば、同じ電流と1/2、1/3および1/4の電圧および出力とでこのモジュール長の1/2、1/3および1/4を有するモジュールが可能である。同じセルを使用して可能な他の多くの組み合わせがあり、異なるセルサイズが使用されてもよい。これらの組み合わせはすべて、本開示の範囲に含まれる。
【0144】
モジュールの冷却に関して、6.028kWのモジュールは、無駄な放射光に加えて、電力出力に加えて、放散されなければならない10W/cm2の熱を受け取る。熱が毎分5リットルの速度で水で冷却される場合、熱のバランスは、出口における水温が入ってくる水温を40.27℃上回ることになる。セルはこの温度の約半分になる。すべてが非常に合理的であり、これらの要件を備えた水熱交換器を容易に見つけることができる。この結論は、他の出力電力を有するモジュールの大部分にも適用可能である。
【実施例2】
【0145】
シリコンセルの使用に対する商業的関心が既に指摘されている。概念的な観点からは違いはないが、結果は非常に異なる。最初に、無駄な放射光の波長閾値は、(Ge-0.7eV半導体のそれぞれ1.85μm-1.77μmの代わりに)1.0μmである。最初の結果は、融解Si黒体(1410℃)から受け取られる無駄な放射が、0.7eVセルの33.11W/cm2と比較して、44.13W/cm2であることである。したがって、光電流に有用なのは入射放射のごくわずかな部分、1.38W/cm2である。当然ながら、どちらの場合も、入力放射パワーは45.51W/cm2である。ここで使用したセルは、融解シリコン温度(1410℃)での黒体の等方性照射下での0.855A/cm2のグリッドフリー短絡電流密度および0.774Vの開回路電圧で、ショックレーモデル(Shockley,W.:The Theory of p-n junctions in Semiconductors and p-n Junction Transistors,Bell Syst.Tech.J.28,435-489(1949))に従うと仮定された、良好な市販のSiセルである。誘電体ミラーの実施形態を使用すると、最も高い熱光起電力効率は、マイクロエレクトロニクスにおけるワイヤボンディングに利用可能なd=70μm、l=5mm、lb=3mm、F=0.00548およびFb=0.00500で生じる。幅5μmのコンタクトフィンガ間の周期は、前面および裏面でそれぞれ0.92mmおよび1.00mmである。性能データは、熱光起電力効率については27.9%、グリッド被覆短絡電流密度については0.826A/cm2、比直列抵抗については0.0854Ω×cm2、セルによって受け取られた無駄な放射光の平均化された反射率については99.1%である。この実施例に対応するデータを表1の列Dに示す。
【0146】
しかしながら、上記のように、3mmごとに裏面ミラーを掘り込むことは、ミラーにとって有害すぎると考えられる。よって、裏面ミラーのチャネルの周期は5mmが製造により適していると考えられている。lb=5mmでの最も高い熱光起電力効率は、d=80μm、l=6mm、F=0.00598およびFb=0.00608で生じる。幅5μmのコンタクトフィンガの周期は、それぞれ、前面で0.86mm、裏面で0.82mmである。性能データは、熱光起電力効率については27.6%、グリッド被覆短絡電流密度については0.827A/cm2、比直列抵抗については0.0953Ω×cm2、セルによって受け取られた無駄な放射光の平均化された反射率については99.1%である。この実施例に対応するデータを表1の列Eに示す。
このセルの光起電力効率(戻り放射なし)は1.13%である。この場合、熱光起電力効率は、光起電力よりも24.4倍大きい。これは、シリコンセルが溶融シリコン放射に非常に不適合であるという事実を反映している。受け取られた放射光の大部分は無駄であり、戻さなければならず、これは高い反射率を説明するが、放射光を戻さなければ効率は非常に低い。いずれにせよ、非常に高性能のミラーの使用は、シリコンセル、および一般に、白熱光源にスペクトル的にあまり適合していない光起電力セルを熱光起電力セルとして使用することを可能にする。
【0147】
6×2cm2のセルでは、Siセルの好ましいモジュール実施形態は、同じプレートおよび直列の40個のプレート上に20個の並列のセルのアレイによって形成される。このモジュールのサイズは120×80=9600cm2であり、電気データは、開回路電圧、29.8V;短絡電流、198A;公称出力4.658kWである。
【0148】
このモジュールの冷却は、正確に計算されていないが、その特性から、放散する熱は0.7eV半導体セルのモジュールよりも約10倍少ないと推定することができる。これは、おそらくはモジュール後部にある自然対流冷却フィンセットが合理的な熱除去に十分であることを意味する。そうでなければ、フィン上の強制空気がその仕事を確実に行う。
【0149】
この実施例は、0.7eV半導体のセルを有する例とは非常に異なることが明らかである。第1の考慮事項は、同じ電力に対して、Siセルを用いる場合の、2桁以上大きいサイズである。しかし、冷却はより単純であり、熱光起電力効率はSiセルではわずかに低いだけである。よって、この選択肢は、接合対応のSiプレートの価格がGeプレートの価格よりもはるかに低い場合に好ましい可能性がある。
【0150】
いずれの場合でも、本発明による熱光起電力セルを用いて多種多様なモジュールが製造され得ることが強調されるべきである。
【0151】
【手続補正書】
【提出日】2021-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
白熱チャンバ内に存在する白熱光源によって放射された放射パワーを電力に変換し、大量の未使用の放射を白熱光源に戻すことができる熱光起電力セル(1)であって、
前面(2.1)および裏面(2.2)を有する半導体プレート(2)であって、前記半導体プレート(2)が少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える、半導体プレート(2)と、
前記前面(2.1)に配置された複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)であって、前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)が導電性であり、前記半導体プレート(2)の前記前面(2.1)と電気的に接触する、複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)と、
前記前面(2.1)に配置された複数の導電性前面バスバーベースストリップ(3)、および対応する前面バスバーベースストリップ(3)上にそれぞれ配置された、前記前面バスバーベースストリップ(3)と電気的に接触する複数の導電性ワイヤ(5)であって、前記前面バスバーベースストリップ(3)と前記導電性ワイヤ(5)とが前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)と交差する、少なくとも1つの導電性前面バスバーベースストリップ(3)および少なくとも1本の導電性ワイヤ(5)と、
複数の前面反射促進ストリップ(10)であって、各前面反射促進ストリップ(10)が、少なくとも1つの誘電体層を備え、前記前面(2.1)と前面バスバーベースストリップ(3)との間に配置され、前記前面バスバーベースストリップ(3)と前記半導体プレート(2)の前記前面(2.1)とを電気的に絶縁する、少なくとも1つの前面反射促進ストリップ(10)と、
前記裏面(2.2)に配置された導電層(9、15)であって、前記導電層(9、15)と前記裏面(2.2)とが、直接または中間導電性材料を介して、局所的な導電性ストリップ(6、7)においてのみ電気的に接触する、導電層(9、15)と
を備える熱光起電力セル(1)。
【請求項2】
前記裏面(2.2)と前記導電層(15)との間に配置されたミラー(14)であって、
前記局所的な導電性ストリップ(6、7)が、
前記裏面(2.2)と前記ミラー(14)との間に配置された少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)、および
前記裏面(2.2)と前記ミラー(14)との間に配置された複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)であって、前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)が、少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)と交差し、前記裏面バスバーベースストリップ(6)および前記半導体プレート(2)の前記裏面(2.2)と電気的に接触して配置されている、複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)
として具体化されており、
前記ミラー(14)が、前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)の上に配置された少なくとも1つのチャネル(13)を備え、前記少なくとも1つのチャネル(13)が、前記裏面バスバーベースストリップ(6)と前記導電層(15)との間の電気的接触に適合するように中間導電性材料で充填されている、ミラー(14)
をさらに備える、請求項1に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項3】
前記ミラー(14)が複数の誘電体層を備える、請求項2に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項4】
前記ミラー(14)が少なくとも1つのフォトニック結晶を備える、請求項2または3に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項5】
前記熱光起電力セル(1)が、好ましくは互いの間で平行な複数の裏面バスバーベースストリップ(6)を備え、前記ミラー(14)が、前記複数の裏面バスバーベースストリップ(6)上に配置された複数のチャネル(13)を備え、各チャネル(13)が、対応する裏面バスバーベースストリップ(6)と前記導電層(15)との間の電気的接触に適合するように前記中間導電性材料で充填されている、請求項2から4のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項6】
前記裏面(2.2)と前記導電層(9)との間に配置された裏面反射促進層(17)であって、前記局所的な導電性ストリップ(7)が、前記裏面反射促進層(17)に配置され前記裏面(2.2)と前記導電層(9)との間の電気的接触を提供する複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)に適合するように前記導電層(9)の前記材料で充填された複数の窓(27)として具体化されている、裏面反射促進層(17)をさらに備える、請求項1に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ(8)であって、前記裏面反射促進ストリップ(8)が、少なくとも1つの誘電体層を備え、前記裏面(2.2)と裏面バスバーベースストリップ(6)との間に配置されている、少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ(8)
をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項8】
前記裏面反射促進ストリップ(8)および/または前記前面反射促進ストリップ(10)および/または前記裏面反射促進層(17)が、前記半導体プレート(2)と、前記裏面反射促進ストリップ(8)と前記裏面バスバーベースストリップ(6)および/または前記前面反射促進ストリップ(10)と前記前面バスバーベースストリップ(3)および/または前記裏面反射促進層(17)と前記導電層(9)のアセンブリとの間の反射率を最大化する厚さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項9】
前記前面(2.1)の至る所に、または前面バスバーベースストリップ(3)によって覆われる領域を除く前記前面(2.1)に配置された反射防止コーティング(11)をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項10】
前記複数の前面バスバーベースストリップ(3)は互いの間で平行である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項11】
前記導電性ワイヤ(5)が三次元であり、好ましくは、前記導電性ワイヤ(5)が、前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)の断面積の少なくとも3000倍の断面積を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項12】
前記前面コンタクトフィンガストリップ(4)が互いに実質的に平行であり、かつ/または
前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)が互いに実質的に平行である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項13】
前記半導体プレート(2)の前記前面(2.1)および/または前記裏面(2.2)が鏡面研磨されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)を備えるモジュール。
【請求項15】
前記モジュールが、複数の熱光起電力セル(1)と、第1の端部ホルダ(19)と、第2の端部ホルダ(19)と、少なくとも1つの中間ホルダ(19)とを備え、
前記第1の端部ホルダ、前記第2の端部ホルダ、および前記中間ホルダ(19)が導電性であり、
前記熱光起電力セル(1)が、前記第1の端部ホルダ(19)上および前記中間ホルダ(19)上に配置され且つ前記第1の端部ホルダ(19)および前記中間ホルダ(19)に取り付けられており、
前記中間ホルダ(19)および前記第2の端部ホルダ(19)が、一端に、前記熱光起電力セル(1)の前記前面バスバーベースストリップ(3)に位置合わせされた複数のノッチ(18)を備えるフランジ(25)を備え、
前記第1の端部ホルダ(19)が、第1の外部接続部(23)として構成された細長い部分を備え、
前記第2の端部ホルダ(19)が、第2の外部接続部(24)として機能することが意図されており、
前記導電性ワイヤ(5)が、1つのホルダ(19)上に配置された前記熱光起電力セル(1)の前記導電性ワイヤ(5)が隣接するホルダ(19)の前記フランジ(25)に接続されるように、前記ホルダ(19)の前記ノッチに沿って配置されている、
請求項14に記載のモジュール。
【請求項16】
前記ホルダ(19)に取り付けられた冷却手段、特に冷却要素、をさらに備える、請求項14から15のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つの熱光起電力セル(1)と、内部に白熱材料(42)を収容するように構成された白熱キャビティ(41)とを備え、前記白熱キャビティ(41)が窓(43)を有する壁を備え、前記熱光起電力セル(1)が前記窓(43)に取り付けられている、エネルギー貯蔵システム(40)。
【請求項18】
a)半導体プレート(2)を設けるステップであって、前記半導体プレート(2)が、前面(2.1)および裏面(2.2)を有し、少なくとも1つのpn接合または1つのnp接合または1つのヘテロ接合を備える、ステップと、
b)前記前面(2.1)を処理するステップであって、前記前面(2.1)の前記処理が、
前記前面(2.1)に複数の前面反射促進ストリップ(10)を堆積させるステップであって、各前面反射促進ストリップ(10)が少なくとも1つの誘電体層を備える、ステップと、
前記前面(2.1)に複数の前面バスバーベースストリップ(3)を堆積させるステップであって、各前面バスバーベースストリップ(3)が導電性であり、各前面バスバーベースストリップ(3)は、対応する前面反射促進ストリップ(10)上に堆積される、ステップと、
前記前面(2.1)に、複数の前面バスバーベースストリップ(3)と交差し、前記前面バスバーベースストリップ(3)および前記半導体プレート(2)と電気的に接触する複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)を堆積させるステップであって、前記複数の前面コンタクトフィンガストリップ(4)が導電性材料で作られる、ステップと、
各前面バスバーベースストリップ(3)上に複数の導電性ワイヤ(5)を配置するステップと
を含む、ステップと、
c)前記裏面(2.2)を処理するステップであって、前記裏面(2.2)の前記処理が、
前記裏面(2.2)に導電層(9、15)を堆積させるステップ
を含む、ステップと
を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項19】
ステップc)が、
前記導電層(15)を設ける前に、前記裏面(2.2)に少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)を堆積させるステップであって、前記裏面バスバーベースストリップ(6)が導電性である、ステップと、
前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)と交差し、前記裏面バスバーベースストリップ(6)および前記半導体プレート(2)と電気的に接触する複数の裏面コンタクトフィンガストリップ(7)を堆積させるステップであって、前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)が導電性材料で作られる、ステップと、
複数の誘電体層を堆積させ、前記裏面コンタクトフィンガストリップ(7)および前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)を覆うことによってミラー(14)を設けるステップと、
前記ミラー(14)に、前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)上に配置された少なくとも1つのチャネル(13)を掘り込むステップと、
前記少なくとも1つのチャネル(13)を中間導電性材料で充填するステップと、
前記ミラー(14)を前記導電層(15)で覆うステップと
を含み、前記少なくとも1つの充填されたチャネル(13)内の前記中間導電性材料が、前記裏面バスバーベースストリップ(6)と前記導電層(15)との間の電気的接触に適合する、請求項18に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項20】
ステップc)が、
前記導電層(9)を設ける前に、前記裏面(2.2)全体を覆う裏面反射促進層(17)を堆積させるステップと、
前記裏面反射促進層(17)を穿孔して複数の窓(27)を形成するステップと、
前記反射促進層(17)の裏面に金属層を堆積させることによって前記導電層(9)を設けるステップであって、前記導電層(9)の材料が前記裏面(2.2)と前記導電層(9)との間の電気的接触に適合するように前記複数の窓(27)を通る、ステップと
を含む、請求項18に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項21】
前記方法が、前記前面(2.1)に、好ましくは前記前面バスバーストリップ(3)によって覆われていない領域上に、反射防止コーティング(11)を堆積させるステップであって、前記反射防止コーティング(11)が好ましくは少なくとも1つの誘電体材料の層によって形成されている、ステップをさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【請求項22】
前記方法が、
前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(6)を堆積させる前に、前記裏面(2.2)に少なくとも1つの裏面反射促進ストリップ(8)を堆積させるステップであって、前記裏面反射促進ストリップ(8)が少なくとも1つの誘電体層を備え、前記少なくとも1つの裏面バスバーベースストリップ(3)が前記裏面反射促進ストリップ(8)上に堆積される、ステップ
をさらに含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の熱光起電力セル(1)の製造方法。
【国際調査報告】