(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】部分的に筋体積を計測するための方法、デバイス及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/053 20210101AFI20221109BHJP
【FI】
A61B5/053
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022514741
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020074799
(87)【国際公開番号】W WO2021044003
(87)【国際公開日】2021-03-11
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511244322
【氏名又は名称】アソシアシオン・アンスティテュ・ドゥ・ミオロジー
【氏名又は名称原語表記】ASSOCIATION INSTITUT DE MYOLOGIE
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ホグレル,ジャン-イヴ
(72)【発明者】
【氏名】バチャソン,ダミアン
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127GG11
4C127LL04
(57)【要約】
本発明は、身体部位の筋断面を測定するための方法に関する。筋断面(S)は、― 少なくとも2個の電極が前記身体部位に沿って位置付けられている状態で、身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極により計測された、少なくとも2つの電気抵抗値と、― 筋肉の導電率定数(σ)と、― 筋肉の誘電率定数(ε)と、の関数として測定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体部位の筋断面を測定するための方法であって、筋断面(S)が、
- 少なくとも2個の電極が前記身体部位に沿って位置付けられている状態で、身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極により計測された、少なくとも2つの電気抵抗値と、
- 筋肉の導電率定数(σ)と、
- 筋肉の誘電率定数(ε)と
の関数として測定される方法。
【請求項2】
筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の誘電率定数との積の関数として測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との間の比の関数として測定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との積を含んでいる導電率の項の関数として測定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
筋断面は補正項の関数として測定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
補正項は、計測周波数の二乗と筋肉の誘電率定数の二乗との積を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の誘電率定数の二乗との積を含んでいる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との比を含んでいる、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と計測周波数の二乗との積を含んでいる、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
筋断面は、
- 導電率の項と補正項との和、及び/又は
- 導電率の項と補正項との和の逆数
の関数として測定される、請求項4及び請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
筋断面は、
- 単一の計測周波数若しくは様々な計測周波数で計測されている少なくとも1対の電気抵抗値、及び/又は
- 数対の電気抵抗値であって、少なくとも1対の電気抵抗値は、別の対の電気抵抗値が計測される際の計測周波数とは異なる計測周波数で計測される、数対の電気抵抗値、及び/又は
- 数対の電気抵抗値であって、少なくとも1対の電気抵抗値は、他のそれぞれの対の電気抵抗値が計測される際の各々の計測周波数とは異なる計測周波数で測定される、数対の電気抵抗値;
から測定され、各対の電気抵抗値は、身体部位の第1の場所に位置付けられた第1の電極において計測された第1の電気抵抗値と、身体部位の第2の場所に位置付けられた第2の電極において計測された第2の電気抵抗値とを含んでいる、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
1対の電気抵抗値の第1及び第2の電気抵抗値がそれぞれ計測される身体部位の第1又は第2の場所は、別の対の電気抵抗値の第1及び第2の電気抵抗値がそれぞれ計測される身体部位の第1又は第2の場所と同一である、先行する請求項に記載の方法。
【請求項13】
筋断面(S)は、式1
の関数として測定され、上記式中、δR/δzは距離zをおいて隔てられた身体部位の2つの場所の間の電気抵抗勾配であり、かつωは少なくとも2つの電気抵抗値が計測される際のパルス付加であって、電気抵抗勾配δR/δzは前記少なくとも2つの電気抵抗値から測定される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
筋肉の導電率定数及び/又は筋肉の誘電率定数は、少なくとも2つの電気抵抗値が計測される際の計測周波数の関数であり、前記筋肉の導電率定数は、0.1~2S/m、好ましくは0.4~1.5S/m、より好ましくは0.6~1.2S/mに含まれ、前記筋肉の誘電率定数は、1・10
-8~1・10
-6F/m、より好ましくは5・10
-8~7・10
-7F/mに含まれる、請求項6~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
- 筋肉の導電率定数は、式2すなわち
に従って計測周波数fの関数として定義され、
- 誘電率定数は、式3すなわち
に従って計測周波数fの関数として定義される、請求項6~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
計測周波数は40~1000kHzに含まれる、請求項6~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
身体部位の筋体積を測定するための方法であって、身体部位の筋体積は身体部位の1以上の筋断面から測定され、身体部位の各筋断面は請求項1~16のいずれか1項に従って測定される方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の方法を実行するように配置構成及び/又は設定及び/又はプログラムされた技術的手段を具備している装置。
【請求項19】
コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって遂行される時に請求項1~17のいずれか1項に記載の方法をコンピュータに実行させる命令を含んでいる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物について部分的に筋体積を計測するための方法、デバイス及び装置に関する。本発明は医学、生物学及び生理学の分野に該当する。特に、本発明は医療診断に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格筋の消耗は、健康管理全般にわたる負の転帰、例えば身体機能の低下、合併症又は併発症の発生率上昇、生活の質の低下、及び生存期間の短縮に関係している。
【0003】
したがって、骨格筋の量/体積を評価するための非侵襲性かつ高度に正確な方法が強く必要とされている。骨格筋の量/体積の評価は、一般集団において、かつ一次性及び/又は二次性の筋肉の消耗及び変性を伴う身体状態において、極めて重要である。骨格筋の量/体積は、一次性及び/又は二次性の筋肉の消耗及び変性を示す指標となりうる。
【0004】
先行技術には、中性子放射化を用いた全身計数測定、二重エネルギーX線吸収測定法、コンピュータ断層撮影法、及び核磁気共鳴画像法のような、専門技術による骨格筋量の評価が知られている。これらの方法は、現在のところ骨格筋の量/体量を計測するための標準的な方法とされている。
【0005】
上記方法は費用が高額であり、多くの時間がかかり、高レベルの専門知識を必要とし、かつ特定の大型で厄介な施設を要してそこへ患者を連れて行かなければならない。
【0006】
文献Salinariら, Journal of Applied Physiology, (米), 2003, vol.94, p.1552-1556及びSalinariら, American Journal of Physiology Endocrinology and Metabolism, (米), 2002, Vol.282: E960-6に詳述されるような生体電気インピーダンス分析法(BIA)が知られている。しかしながら、現行のBIA法は大きな制約を有している。
【0007】
従来のBIA法による骨格筋量の評価は正確ではない。実際、評価に使用されるモデルは生理学的個体差を受け入れるために単純化され過ぎている。さらに、該モデルは極めて集団特異的であるためモデルの一般化は困難である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、
- 先行技術の方法の欠点のうち少なくとも1つを克服する方法を提供すること、及び/又は
- あらゆる種類の集団に適用できる非侵襲性の方法を提供すること、及び/又は
- 患者のベッドサイドで行うことが可能な方法を提供すること、及び/又は
- 正確かつ集団非特異的な方法を提供すること、である。
【0009】
この目的のために、本発明により、身体部位の筋断面を測定するための方法であって、筋断面(S)が、
- 少なくとも2個の電極が前記身体部位に沿って位置付けられている状態で、身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極により計測された、少なくとも2つの電気抵抗値と、
- 筋肉の導電率定数(σ)と、
- 筋肉の誘電率定数(ε)と
の関数として測定される方法が、提供される。
【0010】
身体部位に沿って位置付けられた少なくとも2個の電極は、身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極の中に含まれていることが好ましい。
【0011】
該方法は、身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極から少なくとも2つの電気抵抗値を計測及び/又は測定するステップを含むことができる。少なくとも2つの電気抵抗値を測定するステップは、演算処理装置によって行なわれてもよい。
【0012】
身体部位に沿って位置付けられた少なくとも2個の電極は、既知の距離をおいて互いに隔てられた身体部位の異なる場所に位置付けられていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、少なくとも2つの電気リアクタンス値が、少なくとも2つの電気抵抗値と共に、又は該電気抵抗値の代わりとして、計測されてもよい。本発明による少なくとも2つの電気抵抗値は、少なくとも2つの電気リアクタンス値によって代用されてもよいし、該電気リアクタンス値と組み合わされてもよい。
【0014】
少なくとも2つの電気抵抗値は生体電気インピーダンス分析法によって計測されてもよい。
【0015】
本文書において、「電極」という用語が単独で使用される場合、該用語は電圧電極を指す。
【0016】
身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極は、少なくとも3個の電極を含むことが可能であって、少なくとも3個の電極のうち少なくとも1個の電極は、筋断面(S)が測定される身体部位であって少なくとも3個の電極のうちの2個がその部位に沿って位置付けられている身体部位とは別の、身体の部位に位置付けられている。
【0017】
該方法は、前記身体部位に沿って位置付けられている少なくとも2個の電極それぞれにおける電位の計測を含んでもよい。前記身体部位に沿って位置付けられている少なくとも2個の電極は、電位を計測するようになされた電極アレイの一部であってもよい。好ましくは、電位を計測するための電極アレイは身体部位に沿って配置される。電位を計測するための電極アレイの電極は、身体部位に沿った電位の変化であって、身体部位を通って流れる電流によって引き起こされている電位の変化を、計測するようになされてもよい。
【0018】
該方法は、1対の電流注入電極を形成している2個の電流注入電極の中の1つの電流注入電極からもう1つの電流注入電極へと身体部位を通って流れる電流を注入するステップを含むことができる。注入される電流は交流電流であってよい。交流電流は、単発のパルス付加で、又はいくつかの異なるパルス付加で連続的に、注入可能である。好ましくは、2個の電流電極の中の1つは身体部位の上に位置付けられ、かつ2個の電流電極の中の1つは、筋断面(S)が測定される身体部位とは異なる身体の部位に、位置付けられてよい。
【0019】
該方法は、身体部位に沿って位置付けられた少なくとも2個の電極の中の2個の電極の間の、かつ従って身体部位に沿った、電気抵抗の変化を測定するステップを含むことができる。
【0020】
筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の誘電率定数との積の関数として測定することが可能である。
【0021】
筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との間の比の関数として測定することが可能である。
【0022】
筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との積を含んでいる導電率の項の関数として測定することが可能である。
【0023】
筋断面は補正項の関数として測定することが可能である。
【0024】
補正項により、筋断面の測定のために現在使用されている標準の項の補正を可能にすることができる。
【0025】
筋断面の測定に現在使用されている標準の項は、電気抵抗値と筋肉の導電率定数との積であってよい。
【0026】
補正項は、計測周波数の二乗と筋肉の誘電率定数の二乗との積を含むことができる。計測周波数は、2個の電流注入電極の間に注入される交流電流のパルス付加に、直接関係している、及び/又は比例している、及び/又は等しいことが可能である。
【0027】
補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の誘電率定数の二乗との積を含むことができる。
【0028】
補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電定数との比を含むことができる。
【0029】
補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と計測周波数の二乗との積を含むことができる。
【0030】
筋断面は、
- 導電率の項と補正項との和、及び/又は
- 導電率の項と補正項との和の逆数
の関数として測定することができる。
【0031】
筋断面は、
- 単一の計測周波数若しくは様々な計測周波数で計測されている少なくとも1対の電気抵抗値、及び/又は
- 数対の電気抵抗値であって、少なくとも1対の電気抵抗値は、別の対の電気抵抗値が計測される際の計測周波数とは異なる計測周波数で計測される、数対の電気抵抗値、及び/又は
- 数対の電気抵抗値であって、少なくとも1対の電気抵抗値は、他のそれぞれの対の電気抵抗値が計測される際の各々の計測周波数とは異なる計測周波数で測定される、数対の電気抵抗値;
から測定することが可能であり、各対の電気抵抗値は、身体部位の第1の場所に位置付けられた第1の電極において計測された第1の電気抵抗値と、身体部位の第2の場所に位置付けられた第2の電極において計測された第2の電気抵抗値とを含んでいることが好ましい。
【0032】
1対の電気抵抗値は、身体の異なる場所に位置付けられた異なる電極によって計測された少なくとも2つの電気抵抗値の中に含まれることが好ましい。
【0033】
1対の電気抵抗値の各々の電気抵抗値は、計測された少なくとも2つの電気抵抗値の中に含まれることが好ましい。
【0034】
第1及び第2の電極は、身体部位に沿って位置付けられている少なくとも2個の電極の中に含まれることが好ましい。
【0035】
相対電気抵抗値が、計測された少なくとも2つの電気抵抗値から測定されてもよい。
【0036】
相対電気抵抗値は1対の電気抵抗値から測定されてもよい。相対電気抵抗値は、第1の電極と第2の電極との間の身体部位の抵抗であってよい。
【0037】
1対の電気抵抗値の第1及び第2の電気抵抗値がそれぞれ計測される、身体部位の第1又は第2の場所は、別の対の電気抵抗値の第1及び第2の電気抵抗値がそれぞれ計測される身体部位の第1又は第2の場所と、同一であってもよい。
【0038】
筋断面(S)は、式1すなわち
の関数として測定可能であり、上記式中、δR/δzは距離zをおいて隔てられた身体部位の2つの場所の間の電気抵抗勾配であり、かつωは少なくとも2つの電気抵抗値が計測される際のパルス付加であって、電気抵抗勾配δR/δzは前記少なくとも2つの電気抵抗値から測定される。
【0039】
距離zをおいて隔てられた身体部位の2つの場所であって、その間の電気抵抗勾配が測定される2つの場所は、第1及び第2の電極がそれぞれ位置付けられている第1及び第2の場所であってよい。
【0040】
電気抵抗勾配δR/δzは、1対の電気抵抗値から測定することができる。
【0041】
筋肉の導電率定数及び/又は筋肉の誘電率定数は、少なくとも2つの電気抵抗値が計測される際の計測周波数の関数であってよく;前記筋肉の導電率定数は、0.1~2ジーメンス/メートル(S/m)、好ましくは0.4~1.5S/m、より好ましくは0.6~1.2S/mに含まれ;かつ前記筋肉の誘電率定数は、1・10-8~1・10-6ファラド/メートル(F/m)、より好ましくは5・10-8~7・10-7F/mに含まれている。
【0042】
より好ましくは:
- 筋肉の導電率定数は、40~60kHzに含まれる計測周波数の範囲においては0.6~1.1S/mに含まれ、及び/又は
- 筋肉の導電率定数は、220~260kHzに含まれる計測周波数の範囲においては上昇して0.7~1.2S/mに含まれるようになり、及び/又は
- 筋肉の導電率定数は、340~360kHzに含まれる計測周波数の範囲においては低下して0.65~1.15S/mに含まれるようになる。
【0043】
より好ましくは:
- 筋肉の誘電率定数は、40~60kHzに含まれる計測周波数の範囲においては7・10-7~3.7・10-7F/mに含まれ、及び/又は
- 筋肉の誘電率定数は、180~220kHzに含まれる計測周波数の範囲においては低下して3.5・10-7~1・10-7F/mに含まれるようになり、及び/又は
- 筋肉の誘電率定数は、340~360kHzに含まれる計測周波数の範囲においては低下して3・10-7~5・10-8F/mに含まれるようになる。
【0044】
筋肉の導電率定数σは、式2すなわち
に従って計測周波数fの関数として定義可能であり、及び/又は誘電率定数εは、式3すなわち
に従って計測周波数fの関数として定義可能であって、ここで式中の項a、b、c、d、g、h及びkは、周波数fの関数であってもよいし、定数であってもよい。
【0045】
計測周波数は40~1000kHzに含まれうる。
【0046】
好ましくは、計測周波数は50~500kHzに含まれうる。
【0047】
より好ましくは、計測周波数は100~300kHzに含まれうる。
【0048】
本発明によれば、身体部位の筋体積を測定するための方法であって、身体部位の筋体積を身体部位の1以上の筋断面から測定することが可能であり、身体部位の各々の筋断面は本発明に従って測定される方法が、さらに提供される。
【0049】
身体部位の筋体積は、前記身体部位に沿って位置付けられている少なくとも2個の電極の中のより遠くに離れている2個の電極を隔てている距離zについて筋断面を積分することにより計算することができる。
【0050】
身体部位の一部分の体積を測定することもできる。身体部位の一部分の体積は、前記身体部位に沿って位置付けられている少なくとも2個の電極であって該電極の間で筋断面が測定される電極を隔てる距離zについて、1以上の筋断面を積分することにより計算することができる。
【0051】
身体部位又は身体部位の一部分の筋体積(V)は、式4
【0052】
に従って測定可能であり、上記式中、nは、前記身体部位に沿って位置付けられている少なくとも2個の電極であって該電極の間で筋断面Sが測定される電極の間の距離zに沿って伸びている断面Snの数である。断面の数nは1以上の整数である。
【0053】
本発明によれば、本発明の方法を実行するように配置構成及び/又は設定及び/又はプログラムされた技術的手段を具備している装置がさらに提供される。
【0054】
本発明によれば、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって遂行される時に本発明の方法をコンピュータに実行させる命令を含んでいるコンピュータプログラム製品が、さらに提供される。
【0055】
さらなる目的、特徴及び利点は、図面に関連する本発明のいくつかの実施形態についての以降の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】ヒト参加者について電気抵抗値を計測するために使用される実験装置を示す概略図。
【
図2】ヒト被験者の大腿部に沿って位置付けられた電極アレイの各々の電圧電極において計測された電気抵抗値を計測周波数の関数として示しているグラフ。
【
図3】電気抵抗勾配を、ヒト被験者の大腿筋に沿って配置構成された電極アレイの電圧電極の間を隔てる距離の関数として示しているグラフ。
【
図4】本発明に従って測定された筋肉の導電率を計測周波数の関数として示しているグラフ。
【
図5】本発明に従って測定された筋肉の誘電率定数を計測周波数の関数として示しているグラフ。
【
図6】本発明に従って測定され、かつ核磁気共鳴画像法によって測定された筋断面を、筋肉に沿った距離の関数として示しているグラフ。
【
図7】ヒト被験者群の各人の筋肉の中央部で本発明に従って測定された筋断面を、ヒト被験者群の各人の筋肉の中央部で核磁気共鳴画像法によって測定された筋断面と対比して示しているグラフ。
【
図8】ヒト被験者群について本発明に従って測定された筋体積を、前記ヒト被験者群について核磁気共鳴画像法によって測定された筋体積と対比して示しているグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本明細書中以下に記載される実施形態は限定的なものではなく、本明細書中以下に記載される特徴の中から選択された特徴を具備している他の実施形態について考えることが可能である。選択される特徴には、その選択された特徴が技術的な利点を付与するために又は本発明を先行技術とは区別するために十分である場合、一連の特徴群から切り離された特徴が(仮にこの選択された特徴がその他の特徴を含んでいる文の中で切り離されていても)含まれうる。この選択された特徴には少なくとも、好ましくはその技術的な機能によって説明されており構造上の特徴を伴わないか、又は構造細部の一部がそれだけで技術的な利点を付与するために若しくは本発明を先行技術とは区別するために十分である場合はその構造細部の一部を伴っている、特徴が含まれる。
【0058】
更に、本明細書中以下の実施形態は、上記本発明の概要の範囲内にある非限定的な実施形態である。よって、下記の実施形態の個別のいかなる特徴も、上記本発明の概要のより一般的又は機能的なステップ又は特徴と組み合わせて考慮される。
【0059】
≪参加者≫
20人のヒト被験者群には、8人の健康な参加者と11人の患者とが含まれている。11人の患者は、筋肉の消耗に関連する神経筋障害を有していた。参加者全員から書面のインフォームド・コンセントが得られた。
【0060】
本発明によれば、身体部位の筋断面は、
- 前記身体部位に沿って少なくとも2個の電極が位置付けられた状態で、身体上の異なる場所に位置付けられた異なる電極によって計測された少なくとも2つの電気抵抗値、及び
- 筋肉の導電率定数σ、及び
- 筋肉の誘電率定数ε
の関数として測定される。
【0061】
筋断面を測定するステップは、コンピュータの演算処理装置によって行なわれる。筋断面は、当業者には収縮性の横断面積(cCSA)としても知られている。
【0062】
図1は、計測を実施するためにヒト参加者について使用される実験装置の概略図を示す。この装置は、少なくとも2つの電気抵抗値を計測するために生体電気インピーダンスの計測を実行するように配置構成されている。
【0063】
この実験装置は、製造者であるBioparhomから商品名Zmetrixとして販売されている多周波生体電気インピーダンスアナライザ1を具備している。少なくとも2つの電気抵抗値を測定するステップは、該アナライザの演算処理装置によって行なわれる。この実験装置は、被験者の身体の異なる場所に位置付けられる12個の異なる電極2を具備している。これら12個の電極のうち、10個の電極は電位を計測するように配置構成された電圧電極21であり、2個の電極は被験者の身体を流れる50~100μAの交流電流を注入するように配置構成された電流電極22である。電極は、試験する部分の長軸に沿って被験者の皮膚上に置かれた皮膚電極である。注入電流は、必要に応じて単発のパルス付加で、又はいくつかの異なるパルス付加で注入される。計測周波数は、2個の電流注入電極の間に注入される交流電流のパルス付加と直接的に関係している。
【0064】
10個の電圧電極21のうち、9個の電極21は、本明細書中以下に説明されるように本発明に従って筋断面(S)が測定される大腿部に沿って配置構成された、電極アレイ211を形成する。電極アレイ211の9個の電極21にはE1~E9の番号が付けられて該電極はEmと記されるが、mは電極アレイ211の検討された電極21の番号である。電極アレイ211の電極E1,21は患者の大腿部の胸部側に位置付けられ、電極アレイ211の電極E9,21は患者の大腿部の腓腹側に位置付けられる。
【0065】
電極アレイ211の電圧電極21は互いに既知の距離をおいて隔てられている。最後の電圧電極E0,21は、大腿部とは異なる身体部位、実施形態によれば手に、配置構成される。電流電極のうちの一方222は被験者の足関節部に位置付けられ、他方221は被験者の手に位置付けられて、その結果電流が少なくとも被験者の大腿部を通って流れるようになっている。
【0066】
実施形態による電極アレイ211は9個の電極を具備しているが、電極アレイは必要に応じて様々な数の電極を具備することができる。例えば、電極アレイ211は、被験者の筋肉の異なる2箇所に位置付けられた僅か2個の電圧電極21で代用されてもよい。
【0067】
実際、筋断面は少なくとも1対の電気抵抗値から測定される。1対の電気抵抗値の各々の電気抵抗値は、計測される少なくとも2つの電気抵抗値の中に含まれる。電気抵抗値はそれぞれ1対の電圧電極21によって計測される。1対の電圧電極21は、その対の電圧電極21の2個の電極21の間の電気抵抗値を計測する。実施形態によれば、各対の電圧電極21は、患者の手の上に位置付けられた電圧電極E0,21と、電極アレイ211の1個の電圧電極Em,21とを含んでいる。
【0068】
患者の手の上に位置付けられた電圧電極E0,21は参照電極として使用されて、その結果各々の電気抵抗値が、手の上に位置付けられた電圧電極E0,21と電極アレイ211の1個の電圧電極Em,21とを含んでいる1対の電圧電極21から測定されうるようになっている。よって、計測される各々の電気抵抗値は、電極アレイ211の電圧電極Em,21が設けられた大腿部の場所において計測された電気抵抗値REm-E0と見なされる。
【0069】
図2を参照すると、ヒト患者の大腿部に沿って位置付けられた電極アレイ211の各々の電圧電極Em,21で計測された電気抵抗値R
Em-E0を計測周波数fの関数として例証するグラフが示されている。計測周波数fは、50~350kHzで10kHz間隔である。
【0070】
非線形回帰を行なうためにレーベンバーグ・マーカートアルゴリズムを使用して、本発明者らは、二重指数関数が、決定係数を0.997±0.018としてこの計測に良好にフィットすることを見出している。
【0071】
各対の電気抵抗値は、大腿部の第1の場所に位置付けられた電極アレイ211の第1の電圧電極Em1,21で計測された第1の電気抵抗値REm1-E0と、大腿部の第2の場所に位置付けられた電極アレイ211の第2の電圧電極Em2,21で計測された第2の電気抵抗値REm2-E0とを含んでいる。大腿部の第1及び第2の場所は距離zで隔てられており、その間の電気抵抗勾配δR/δzを測定することが可能である。実施形態によれば、大腿部の第2の場所で計測される第2の電気抵抗値RE9-E0は、電極アレイ211の電圧電極E9,21である。
【0072】
相対電気抵抗値Rmは、第1の電極Em,21及び第2の電極E9,21を含んでいる1対の電極21の間の、大腿部の電気抵抗として定義される。すなわち、相対電気抵抗値Rmは、対の電極21の第1の電極Em,21の場所と、対の電極21の第2の電極E9,21の場所との間の、大腿部の電気抵抗である。換言すれば、相対電気抵抗値Rmは、電極アレイ211の1対の電極21の電極21どうしを隔てている距離zに応じた、大腿部の一部分の電気抵抗である。
【0073】
【0074】
相対電気抵抗値Rmは、R1=RE1-E0-RE9-E0とR8=RE8-E0-RE9-E0との間に含まれる。その結果、距離zで隔てられた第1及び第2の場所の間の電気抵抗勾配δR/δzを、少なくとも2つの相対電気抵抗値Rmから決定することができる。電気抵抗勾配δR/δzは、大腿部に沿った電気抵抗の変化、及び電位の変化を示す。
【0075】
図3は、相対電気抵抗の勾配δR/δzを、大腿筋に沿って配置構成された電極アレイ211の2個の電圧電極Em,21を隔てる距離zの関数として示している。
【0076】
非線形回帰を行なうために適応できる非線形最小二乗アルゴリズムを使用して、本発明者らは、三次多項式関数が、決定係数を0.981±0.082としてこの計測に良好にフィットすることを見出している。
【0077】
注目に値するのは、Rm・ΔIinj=ΔVmであって、前記式中、ΔIinjは注入される電流であり、ΔVmは、大腿部の第1の場所に位置付けられた第1の電圧電極Em,21と大腿部の第2の場所に配置された第2の電圧電極E9、21との間で計測される電位の差であるということである。Rm=REm-E0-RE9-E0であることを考慮すれば、ΔVm=VEm-VE0-VE9+VE0である。よって、適正な較正を行えば、VE0は、大腿部に沿って配置構成された電極アレイ211の2個の電圧電極21の計測値のみから電気抵抗勾配δR/δzを直接計測することを可能にする所定の定数となりうる。
【0078】
図4を参照すると、筋肉の筋肉導電率定数σが本発明に従って計測周波数の関数として測定されている。本発明者らは、筋肉の導電率定数σを、被験者群のうち健康な参加者について核磁気共鳴画像法により測定された大腿部の筋断面S(右側のみ)、計測に使用した電極アレイ211の電圧電極Em,21の対の間でアナライザによって計測されたリアクタンス値X、電極アレイ211の電圧電極Em,21の対の間でアナライザによって計測された電気抵抗値R
Em-E0、及び、大腿筋に沿って配置構成された電極アレイ211の1対の電極21の2個の電圧電極Em,21を隔てる距離zから測定するために、式6
を使用する。
【0079】
本発明者らは、式2すなわち
による二次多項式関数が、決定係数を0.995として筋肉の導電率定数σに良好にフィットすることを見出しており、上記式中、a、b及びcは定数であって、aは-2.41・10
-12に相当し、bは1.15・10
-6に相当し、かつcは0.8に相当する。
【0080】
黒い線は計測周波数に応じた筋肉の導電率定数σの平均値を示し、領域3は信頼区間(CI)を示す。筋肉の導電率定数σの値の間の差は、計測周波数の影響及び生理学的個体差から生じる筋肉の導電率定数σの変動に起因する。
【0081】
導電率定数σは、領域3の0.6~1.2ジーメンス/メートル(S/m)に含まれる。計測が少人数のヒト被験者について行なわれたという事実を考えると、導電率定数σは絶対的には0.1~2S/mに含まれるとみなすことができる。筋肉の導電率定数σは、40~60kHzに含まれる計測周波数の範囲において0.6~1.1S/mに含まれている。筋肉の導電率定数σは次に、220~260kHzに含まれる計測周波数の範囲では増大して0.7~1.2S/mに含まれるようになる。筋肉の導電率定数は次に、340~360kHzに含まれる計測周波数の範囲では低下して0.65~1.15S/mに含まれるようになる。
【0082】
図5を参照すると、本発明者らは、本発明に従って筋肉の誘電率定数εを計測周波数の関数として測定した。本発明者らは、筋肉の誘電率定数εを、大腿筋に沿って配置構成された電極アレイ211の2個の電圧電極Em,21を隔てる距離zの関数としてのリアクタンス勾配δX/δz、上述のようにして測定された筋肉の導電率定数σ、計測のパルス付加ω、及び、大腿筋に沿って配置構成された電極アレイ211の2個の電圧電極Em,21を隔てる距離zの関数としての相対電気抵抗の勾配δR/δz、から測定するために、式7
を使用し、上記式中、ω=2πfである。
【0083】
黒い線は、計測周波数に応じた筋肉の誘電率定数εの平均値を示し、領域3は信頼区間(CI)を示している。筋肉の誘電率定数εの値の間の差は、計測周波数の影響及び生理学的個体差から生じる筋肉の誘電率定数εの変動に起因する。
【0084】
本発明者らは、式3:
による二重指数関数が、決定係数を0.999として誘電率定数εに良好にフィットすることを見出しており、上記式中、d、g、h及びkは定数であって、dは1.012・10
-6に相当し、gは-10.54.に相当し、hは2.641・10
-7に相当し、kは-13.49に相当する。
【0085】
誘電率定数εは、領域4の中の5・10-8~7・10-7ファラド/メートル(F/m)に含まれる。計測が少人数のヒト被験者について行なわれたという事実を考えると、誘電率定数εは絶対的には1・10-8~1・10-6F/mに含まれるとみなすことができる。筋肉の誘電率定数εは、40~60kHzに含まれる計測周波数の範囲では7・10-7~3.7・10-7F/mに含まれる。筋肉の誘電率定数εは次に、180~220kHzに含まれる計測周波数の範囲では低下して3.5・10-7~1・10-7F/mに含まれるようになる。筋肉の誘電率定数εは、340~360kHzに含まれる計測周波数の範囲ではさらに低下して3・10-7~5・10-8F/mに含まれるようになる。
【0086】
計測周波数は50~350kHzの範囲に含まれる。本発明者らは、100kHzより低い計測周波数は細胞内腔に侵入するには不十分であって皮膚‐電極インピーダンスの大きな変化に関係する不整合性を生じるものと予想されるので、これらの周波数では信頼性の低い結果になりうることを見出している。反対に、350kHzを超える計測周波数、あるいは300kHzでさえ、接触面で生じる現象及びこの周波数から優勢となる拡散現象が際立ってしまうので、この周波数では信頼性の低い結果となりうる。
【0087】
筋断面は、導電率の項と補正項との和の逆数の関数として測定される。標準の項(standard term)は、筋断面の測定に現在使用されている項である。それは、電気抵抗値と筋肉の導電率定数との積である。補正項は、筋断面の測定に現在使用されている標準の項を補正することを目的としている。標準の項は{(δR/δz)・σ}と記すことができる。
【0088】
補正項の目的は、筋肉の導電率定数及び筋肉の誘電率定数に対して計測周波数の影響を重み付けすることである。補正項はさらに、生理学的個体差により引き起こされる電気抵抗値の変動を緩和することも狙いとする。補正項はさらに、生理学的個体差により引き起こされる電気抵抗値の変動に対して計測周波数の影響を重み付けする。
【0089】
筋断面(S)は、式1
の関数として測定され、上記式中、δR/δzは距離zをおいて隔てられた身体部位の2つの場所の間の電気抵抗勾配であり、かつωは少なくとも2つの電気抵抗値が計測される際のパルス付加であって、電気抵抗勾配δR/δzは前記少なくとも2つの電気抵抗値から決定される。
【0090】
図6についてはグラフが示されており、同グラフにおいて実線は、健康な被験者の大腿筋に沿って行なわれた生体インピーダンス計測から式6に従って測定された筋断面を例証している。さらに、健康な被験者の大腿筋に沿った核磁気共鳴画像法(NMRI)により測定された筋断面を例証する点線も示されている。NMRIは骨格筋量の計測のための標準的方法であると考えられる。生体電気インピーダンスの計測は150kHzで行われ、かつ測定に使用される筋肉の導電率定数σの値0.916S/m、及び誘電率定数εの値2.338e10
-7F/mは、それぞれ
図4及び5に由来する。
図6に例証されるように、本発明により測定された断面はNMRIにより測定された断面と一致しており、計測の標準誤差は約5.94%である。
【0091】
図7及び8を参照すると、点は、被験者群(健康な参加者及び患者)の中の各人についての筋断面、又は筋断面から計算された筋体積を例証しており、筋断面は群内の各人の大腿部の中央で実行された生体電気インピーダンス計測値から式1によって測定されており、核磁気共鳴画像法により群内の各人の大腿部の中央で測定された筋断面と対比されている。生体インピーダンスの計測は150kHzで行われ、かつ測定に使用される筋肉の導電率定数σの値0.916S/m、誘電率定数εの値2.338e10
-7F/mは、それぞれ
図4及び5に由来する。縦軸は本発明に従って測定された筋断面を示し、横軸は核磁気共鳴画像法によって測定された筋断面を示す。直線9及び10は、測定された筋断面の値の直線回帰によるフィッティングで得られたものである。領域5及び6は、筋断面の値の信頼区間(CI)を示す。
【0092】
表1及び2は、それぞれ
図7及び8に示された筋断面の値及び筋体積の値をそれぞれ直線回帰した統計パラメータに関する。
【0093】
表1及び2は、大腿部中央の筋断面(S)及び筋体積(V)であって本発明により測定されたもの(それぞれcCSABIA(cm2)及びVBIA(cm3))並びにNMRIにより測定されたもの(それぞれcCSANMRI(cm2)及びVNMRI(cm3))、スチューデントt検定(2つの母集団の平均値が等しいような帰無仮説についての2標本の位置の検定)のp値、95%の信頼区間における平均値の変化(CIM(cm2)[95%CI])、95%の信頼区間における変動係数として表された測定の標準誤差(SEM(%)[95%CI])、並びにcCSABIAとcCSANMRIとの間(表1)及びVBIAとVNMRIとの間(表2)の95%の信頼区間([95%CI])における級間相関係数、を示している。
【0094】
【0095】
図7及び表1を参照すると、本発明により測定された筋断面と、NMRIにより測定された筋断面との良好な一致を認めることができる。この結果は、本発明を使用した除脂肪筋断面の計測と標準的な核磁気共鳴画像法との極めて良好な一致を示している。
【0096】
本発明によれば、身体部位の1以上の筋断面から該身体部位の筋体積を測定するための方法であって、身体部位の各々の筋断面が本発明に従って測定される方法が、さらに提供される。実施形態によれば、大腿部の一部分の筋体積(V)は、式4
に従って測定され、上記式中、nは、大腿部に沿った電極アレイ211のうち2個の電圧電極Em,21であってそれらの間で筋断面Sが測定される電極の間の距離zに沿って伸びている断面S
nの数である。断面の数nは1以上の整数である。
【0097】
大腿部全体の筋体積は、電極アレイ211の電圧電極Em,21の中で更に離れている2個の電極、すなわちE1及びE9を隔てている距離zについて筋断面を積分することにより計算される。
【0098】
図8を参照すると、本発明に従って測定された筋断面から測定された大腿部の筋体積が、核磁気共鳴画像法によって測定された筋断面から測定された筋体積と対比して例証されている。点は、健康な参加者及び患者において測定された大腿部の筋体積を示している。筋体積は、筋断面から式4によって決定されている。直線10は、群の中の健康な被験者及び群の中の患者において測定された大腿部の筋断面の値の直線回帰によるフィッティングで得られたものである。領域6は、群の患者の中の健康な被験者において測定された大腿部の筋断面の値の値についてのCIを示す。
【0099】
図8及び表2を参照すると、本発明により測定された筋体積と、NMRIにより測定された筋断面との良好な一致を認めることができる。この結果は、本発明を使用した除脂肪筋断面の計測と標準的な核磁気共鳴画像法との良好な一致を示している。
【0100】
本発明は上述された実施形態に限定されるものではなく、数多くの調整を本発明の範囲内で行うことができる。
【0101】
さらに、本発明の特徴、代替形態及び実施形態は、相互に排除し合わないのであれば組み合わせることができる。
【0102】
よって、既述の実施形態の組み合わせ可能な代替形態において、
- 本発明の方法によって筋断面(S)が測定される身体部位は、腓腹部若しくは前腕部若しくは上腕部である、並びに/又は
- 少なくとも2つの電気リアクタンス値が、少なくとも2つの電気抵抗値と一緒に、若しくは該電気抵抗値の代用として、アナライザによって計測される、並びに/又は
- 本発明による少なくとも2つの電気抵抗値は、式8
を使用して、少なくとも2つの電気リアクタンス値で代用されるか、若しくは該電気リアクタンス値と組み合わされてもよく、上記式中、Z
impはインピーダンスであり、Rは抵抗であり、かつXはリアクタンスである、並びに/又は
- 筋断面(S)は、いくつかの異なる計測周波数で計測された電気抵抗値の対から測定され、少なくとも1対の電気抵抗値は、別の対の電気抵抗値が計測されるときの計測周波数とは異なる計測周波数で計測される、並びに/又は
- 筋断面(S)は、いくつかの異なる計測周波数で計測された電気抵抗値の対から測定され、少なくとも1対の電気抵抗値は、他のそれぞれの対の電気抵抗値が各々計測されるときの各々の計測周波数とは異なる計測周波数で計測される、並びに/又は
- 筋断面は、必要に応じて1対の電気抵抗値若しくは数対の電気抵抗値のいずれかから測定される、並びに/又は
- 筋断面は、必要に応じて単一の計測周波数で計測された電気抵抗値若しくはいくつかの異なる計測周波数で計測された電気抵抗値のいずれかから測定される、並びに/又は
- 1対の電気抵抗値のうち第1及び第2の電気抵抗値がそれぞれ計測される、大腿部の第1若しくは第2の場所は、別の対の電気抵抗値の第1及び第2の電気抵抗値がそれぞれ計測される、大腿部の第1若しくは第2の場所と、同一である、並びに/又は
- 筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の誘電率定数との積だけから、若しくはその積の関数として、測定される、並びに/又は
- 筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との比だけから、若しくはその比の関数として、測定される、並びに/又は
- 筋断面は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との積を含んでいる導電率の項だけから、若しくはその項の関数として、測定される、並びに/又は
- 補正項は、計測周波数の二乗と筋肉の誘電率定数の二乗との積である、並びに/又は
- 補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の誘電率定数の二乗との積である、並びに/又は
- 補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と筋肉の導電率定数との比である、並びに/又は
- 補正項は、検討された電気抵抗値各々について、その検討された電気抵抗値と計測周波数の二乗との積である、並びに/又は
- 筋断面は、導電率の項と補正項との和の関数として測定される、並びに/又は
- 本発明は、本発明による方法を実行するように配置構成及び/若しくは設定及び/若しくはプログラムされた技術的手段を具備している装置に関する、並びに/又は
- 本発明は、コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって遂行される時に本発明による方法をコンピュータに実行させる命令を含んでいるコンピュータプログラム製品に関する。
【国際調査報告】