(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】多孔質物品、その調製方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 81/02 20060101AFI20221109BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221109BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20221109BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08L81/02
C08K7/02
C08K5/09
C08J9/26 102
C08J9/26 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515115
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2020075340
(87)【国際公開番号】W WO2021048286
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブランハム, ケリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コメル, ヴィダ
(72)【発明者】
【氏名】トロッター, ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA87
4F074AC34
4F074AD10
4F074AE04
4F074CB03
4F074CB16
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4F074DA02
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4F074DA47
4J002CN011
4J002DA017
4J002DL007
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4J002EG076
4J002FA047
4J002FD017
4J002GB00
4J002GD01
4J002GD05
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、多孔質物品、特に微多孔膜又は中空繊維を調製するためのポリマー組成物(C)に関する。さらに具体的には、本発明は、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーと、添加剤及び少なくとも1種の補強フィラーとから多孔質物品を調製し、それに続いて物品を賦形し、且つ物品を水と接触させて添加剤を溶かし、及び賦形品内に連通する細孔ネットワークを作り出す工程を行うプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物(C)であって、
- 少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)と、
- 前記ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも28重量%の、式(I):
R
a-Ar-X
b (I)
(式中、
- Arは、芳香族部分であり、且つ5~18個の炭素原子を有する置換又は非置換の芳香族単環式基又は多環式基からなる群から選択され、
- Rのそれぞれは、互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~C18脂肪族基、C1~C18脂環式基及びC1~C18芳香族からなる群から選択され、
- aは、ゼロ又は1~5の範囲の整数であり、
- Xは、(COO
-)
、(M
p+)
1/p(式中、M
p+は、p価の金属陽イオンである)であり、
- bは、1~4の範囲の整数である)
の少なくとも1種の添加剤と、
- 少なくとも1種の補強フィラーと
を含むポリマー組成物(C)。
【請求項2】
式(I)におけるArは、
【化1】
(式中、Zは、二価部分であり、且つ-SO
2-、-CO-及び1~6個の炭素原子のアルキレンからなる群から選択される)
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項3】
前記添加剤は、式(II):
【化2】
(式中、
- Rのそれぞれは、互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~C18脂肪族基、C1~C18脂環式5基及びC1~C18芳香族からなる群から選択され、
- aは、ゼロ又は1~5の範囲の整数であり、
- Xは、(COO
-)
、(M
p+)
1/p(式中、M
p+は、p価の金属陽イオンである)であり、及び
- bは、1又は2のいずれかのそれぞれである)
によるものである、請求項1又は2に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項4】
添加剤塩は、ベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、プロピルベンゾエート及びブチルベンゾエートからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項5】
30重量%~70重量%の前記添加剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項6】
前記補強フィラーは、繊維状フィラーであり、及び前記ポリマー組成物は、前記ポリマー組成物の総重量に基づいて5重量%~50重量%の範囲の量で前記繊維状フィラーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項7】
前記補強フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維及びバサルト繊維からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含むポリマー物品(A)。
【請求項9】
多孔質ポリマー膜(M)を形成する方法であって、
(i)請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を調製する工程、
(ii)前記ポリマー組成物(C)を膜に加工する工程、
(iii)前記膜を水中に浸漬させる工程
を含む方法。
【請求項10】
工程(i)は、少なくとも1種のポリマー(P)を、少なくとも28重量%の、式(I)の前記少なくとも1種の添加剤と溶融混合することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融混合は、前記半結晶性ポリマー(P)を、式(I)の前記添加剤とともに、前記ポリマーの溶融温度(Tm)を超える加工温度(Tp)に加熱して、溶融物を形成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加工温度(Tp)は、前記半結晶性ポリマー(P)の前記溶融温度(Tm)よりも少なくとも15℃高い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
約0.01ミクロン~約5.0ミクロンの平均細孔径を有する、請求項9~12のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることができる多孔質ポリマー膜(M)。
【請求項14】
自動車、5G電気通信、医療又は健康管理における、請求項13に記載の多孔質ポリマー膜(M)の使用。
【請求項15】
液体又は気体などの流体を濾過又は精製するための、請求項13に記載の多孔質ポリマー膜(M)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年9月10日出願の米国仮特許出願第62/898,245号及び2019年11月12日出願の欧州特許出願公開第19208586.8号の優先権を主張するものであり、これらの出願のそれぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、多孔質物品、特に微多孔膜又は成形部品を調製するためのポリマー組成物に関する。さらに具体的には、本発明は、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーと、添加剤及び少なくとも1種の補強フィラーとから多孔質物品を調製し、それに続いて物品を賦形し、且つ物品を水と接触させて添加剤を溶かし、及び賦形品内に連通する細孔ネットワークを作り出す工程を行うプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質ポリマー膜は、多様な用途に使用される。それらは、様々なプロセスを用いて調製することができる。
【0004】
転相法は、現在、最も一般的に使用されている方法である。転相は、ポリマー溶液が沈澱により半固体のゲル相に挿入される膜形成のプロセスを意味する。非溶媒誘起相分離(NIPS)法では、ポリマー、好適な溶媒及び/又は共溶媒を含有する均一なポリマー溶液(「ドープ溶液」とも称される)は、通常、キャスティングによってフィルムに加工された後、それを非溶媒媒体と接触させることによって沈澱される。熱誘起相分離(TIPS)法では、沈澱は、ポリマー溶液の温度を下げることにより得られる。これらの方法は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)又はジオクチルフタレート(DOP)などの溶媒を使用する。溶媒の使用により、重大な環境問題及び廃棄処分問題が生じる。溶媒の使用を、環境に優しい代替手段に代えようとする積極的な研究努力が多くなされてきた。
【0005】
テンプレート浸出技法として知られている別の方法は、一般的な有機溶媒に不溶なポリマーから多孔質膜を調製するために使用することができる。この技法では、均質フィルムは、膜マトリックス材料と浸出性成分との混合物から調製される。浸出性成分は、可溶性の低分子量の物質又はポリ(ビニルアルコール)(PVA)若しくはポリ(エチレングリコール)(PEG)などの巨大分子材料であり得る。フィルムが調製された後、浸出性成分は、好適な化学処理により取り除かれ、結果として多孔質構造が形成される。この方法の1つの欠点は、300℃を超える温度で劣化するPEG及びPVAの低い熱安定性である。
【0006】
米国特許第4,196,070号明細書は、微孔性フルオロカーボンポリマーシートを形成する方法を開示している。このプロセスは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水性分散体を金属有機塩と混合する工程と、湿潤シートを形成する工程と、濃縮工程と、乾燥焼結工程と、塩結晶を浸出する工程とを含む。
【0007】
米国特許出願公開第2007/0232502号明細書は、樹脂多孔質物品及び樹脂多孔質物品に含浸する潤滑油に関する。樹脂は、ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリアミドを含有する。潤滑油は、ペルフルオロポリエーテル油である。
【0008】
米国特許第3,956,020号明細書は、多孔質ポリマー物品を形成する方法を開示している。この方法は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンを加熱する工程と、塩を混合することによって複合体を形成する工程と、複合体を賦形する工程と、それを室温に冷却する工程と、固体複合体を形成する工程と、塩を溶解する工程と、ポリマーを多孔質物品として残す工程とを含む。
【0009】
英国特許920,229号明細書は、水溶性陰イオン界面活性剤を用いる微孔性オレフィンポリマー(主にポリエチレン及びポリプロピレンポリマー)の生成に関する。
【0010】
国際公開第2018/065526A1号パンフレットは、多孔質物品を調製するためのポリマー組成物に関する。少なくとも1つの半結晶性又は非晶性ポリマーと添加剤とのブレンドから多孔質物品を調製し、それに続いて物品を賦形し、水と接触させて添加剤を溶かし、且つ物品を作り出すプロセスである。
【0011】
欧州特許出願公開第1746125A1号明細書は、樹脂多孔質物品を製造する方法を開示している。このプロセスは、細孔形成物質を樹脂に添加する工程と、成形する工程と、細孔形成物質を溶解する溶剤で細孔形成物質を抽出する工程とを含む。この文献は、ポリマーと水溶性添加剤とをドライブレンドするか、又は代わりに水溶性添加剤を溶解する溶剤中の水溶性添加剤をブレンドし、それに続いて溶剤(水)を除去し、成形可能な組成物にすることを記載している。多孔質膜について得られた平均細孔径は、50~500ミクロンである。
【0012】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用する先行技術の基準のいくつかは、低い引張強さを有する。方法のさらなる問題は、得られたシートの均一な多孔度がないことである。いくつかの他の方法、例えば抽出可能な可塑剤の使用、溶剤の揮発、焼結又は接着剤による接合などがあるが、しかし、これらの方法は、本方法によって得ることができる非常に均一な超微細多孔質構造物及び制御の容易性を与えることができない。さらに、潤滑油を含有する従来の摺動材料が摺動部材に成形されるとき、潤滑油は、一般的に分解される。
【0013】
ポリマーから作製され、NMP又はDMFなどの溶媒を使用せず、いかなる放射線源も伴わない環境に優しいプロセスにより調製される多孔質物品を提供する必要性は、依然として存在する。本発明の別の目的は、このような多孔質物品を調製するための簡潔でコスト効果の高いプロセスを提供することである。本発明の別の目的は、5ミクロン(μm)未満、好ましくは1ミクロン未満の平均細孔径を有する多孔質膜を提供することである。
【0014】
本発明による多孔質物品を製造する方法は、先行技術のプロセスのあらゆる欠点を本質的に取り除く。このプロセスは、約60%までの多孔度を有する固体の強靭な超微細多孔質物品の製造を可能にし、細孔径は、約0.01ミクロン~約5.0ミクロンであり得る。多孔質物品は、例外的な機械的強度、高い耐熱性、優れた寸法安定性、固有の耐燃性、良好な耐薬品性、非常に高い弾性率及び耐クリープ性並びに電気的特性などの特性の優れたバランスを提供する、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーから製造される。さらに、本発明の多孔質物品は、引張特性を改良し、且つ細孔を強靭にする補強フィラーを含み得る。
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、多孔質ポリマー物品、例えば膜又は中空繊維を調製するのに好適なポリマー組成物(C)を提供することである。
【0016】
本発明によると、本発明のポリマー組成物(C)は、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーを含む。
【0017】
本発明によると、本発明のポリマー組成物(C)は、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも28重量%の添加剤を含む。
【0018】
一実施形態によると、本発明のポリマー組成物(C)は、少なくとも1種の補強フィラー(F)を含む。
【0019】
本発明の別の目的は、このような多孔質物品を調製するための簡潔でコスト効果の高いプロセスを提供することであり、そのプロセスは、NMP又はDMFなどの溶媒を使用せず、照射源も伴わない。
【0020】
本発明の一実施形態によると、このプロセスは、例えば、押出により、ポリマー組成物を物品に加工又は賦形することを含む工程と、本明細書で「添加剤」と称するポリマー組成物の成分の1つを溶解させるように物品を水と接触させ、それにより賦形品内に細孔ネットワークを作り出すことを含む工程とを含む。本発明者らは、驚くべきことに、水溶性である特定の添加剤が様々なポリマー組成物、特に半結晶性ポリマー組成物中で均質に配合され得、厳しい条件に耐える、即ち特に(例えば、配合で使用するもの)を高温で劣化させないことを見出した。組成物内の添加剤の調整量とともに、ポリマー組成物内での添加剤の均質な配分は、水に溶解させることを含む工程により、賦形品内に連通する細孔ネットワークを作り出す可能性を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態によると、多孔質ポリマー膜(M)は、自動車、5G電気通信及び医療/健康管理用途において使用される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ポリマー組成物(C)であって、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーと、ポリマー組成物の総重量に基づいて少なくとも28重量%の少なくとも1種の添加剤と、少なくとも1種の補強フィラーとを含むポリマー組成物(C)に関する。この組成物は、多孔質物品、例えば微多孔膜又は中空繊維を調製するために使用され、一般的な濾過(精密濾過及び限外濾過)、食品業及び乳業、廃水処理、血液透析、電池用セパレータ、逆浸透の前処理、自動車、5G電気通信並びに医療/健康管理にわたる広い用途範囲で使用される。より正確には、均質な物品(例えば、フィルム又は膜)は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマー、添加剤及び補強フィラーの混合物から作製される。賦形品(例えば、フィルム又は膜)を調製した後、本来水溶性である添加剤を水中に浸漬させることにより、賦形品から除去する。結果として、連通する細孔ネットワークを呈する多孔質構造が形成される(例えば、多孔質フィルム又は多孔質膜)。このプロセスにより、このような成分を用いて取得した多孔質賦形品は、多孔度が高いだけでなく、良好な機械的特性及び耐薬品性も示す。
【0023】
明確さのために、本出願を通して、
- 「溶融温度(Tm)」若しくは「Tm」又は「融点」は、実施例において詳述するように、ASTM D3418に従って20℃/分で示差走査熱量測定(DSC)により測定した溶融温度を意味し、
- 用語「ハロゲン」は、特に明記しない限り、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含み、
- 形容詞「芳香族の」は、4n+2(ここで、nは、1又は任意の正の整数である)に等しい数のπ電子を有する任意の単核又は多核環基(又は部分)を意味し、芳香族基(又は部分)は、アリール及びアリーレン基(又は部分)であり得る。
【0024】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマー
本発明によると、本発明のポリマー組成物(C)は、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーを含む。
【0025】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)は、半結晶性、高温エンジニアリングサーモプラスチックである。ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーは、例外的な機械的強度、高い耐熱性、優れた寸法安定性、固有の耐燃性、良好な耐薬品性、非常に高い弾性率及び耐クリープ性並びに電気的特性などの特性の優れたバランスを提供する。それは、補強されるときに高い弾性率をさらに提供する。それは、従来の材料に対してグリーンイニシアティブ(再利用性)に適う。
【0026】
本明細書で使用するポリ(パラ-フェニレンスルフィド)(PPS)は、少なくとも50モル%の、式(L)の繰り返し単位(R
PPS)を含む任意のポリマーを意味する。
【化1】
【0027】
好ましくは、少なくとも60モル%、70モル%、80モル%、90モル%、95モル%、99モル%、最も好ましくはPPS中の繰り返し単位のすべてが繰り返し単位(RPPS)である。
【0028】
その分子構造の高度に安定な化学結合は、熱崩壊及び化学反応性の両方に対して著しい分子安定度を与える。この分子構造は、非常に熱的に安定な結晶格子も容易に形成し、従って、PPSは、285oCの高い結晶融点を有する半結晶性ポリマーである。
【0029】
一般に、ポリマー組成物中のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーは、10,000g/モル~150,000g/モル、好ましくは20,000g/モル~100,000g/モル又は40,000g/モル~95,000g/モルの範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。重量平均分子量は、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィーによって求めることができる。
【0030】
PPSは、Solvay Specialty Polymers USA,LLCにより商標名Ryton(登録商標)PPSの下で製造販売されている。多孔質膜を調製するのに使用したポリマーがPPSであった場合、優れた結果が得られた。
【0031】
添加剤
本発明のポリマー組成物(C)は、式(I):
Ra-Ar-Xb (I)
(式中、
- Arは、芳香族部分であり、且つ5~18個の炭素原子を有する置換又は非置換の芳香族単環式基又は多環式基からなる群から選択され、
- Rのそれぞれは、互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~C18脂肪族基、C1~C18脂環式基及びC1~C18芳香族からなる群から選択され、
- aは、ゼロ又は1~5の範囲の整数であり、好ましくは、aは、ゼロ又は1であり、
- Xは、(COO-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属陽イオンである)であり、
- bは、1~4の範囲の整数であり、好ましくは、bは、1又は2である)
の添加剤も含む。
【0032】
本発明の本質的な特徴の1つは、カルボン酸の塩の形態における、より正確にはカルボキシレート-COO-の添加剤を使用することである。添加剤は、同一であるか又は異なる1~4個の基Xを含み得、ここで、Xは、(COO-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属陽イオンである)である。
【0033】
一実施形態によると、式(I)の添加剤は、それぞれのRが互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、ヒドロキシル及びC1~C3脂肪族基(即ちメチル、エチル又はプロピル)からなる群から選択される。
【0034】
一実施形態によると、Mは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、銀、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銅、パラジウム、鉄及びセシウムからなる群から選択される。好ましくは、Mは、ナトリウム又はカリウムである。
【0035】
Mは、代わりに、アルカリ金属(周期表のIA)又はアルカリ土類金属(周期表のIIA)のなかから特に選択することができる。
【0036】
一実施形態によると、Xは、カルボン酸のナトリウム塩及び/又はカリウム塩である。
【0037】
本発明で使用する添加剤は、本来、水溶性であり得る。
【0038】
添加剤は、以下で定義するように抽出性であると言われ得る。
【0039】
本発明の一実施形態によると、式(I)の芳香族部分は、
【化2】
(式中、Zは、二価部分であり、且つ-SO
2-、-CO-及び1~6個の炭素原子のアルキレンからなる群から選択される)
からなる群から選択され得る。Zは、具体的には、nが1~6の整数である-C(CH
3)
2-又は-C
nH
2n-、例えば-CH
2-又は-CH
2-CH
2-であり得る。
【0040】
本発明の一実施形態によると、式(I)の添加剤は、式(I)のそれぞれの芳香族部分、例えば(Ar-A)~(Ar-D)が、同一であるか又は異なる1、2又は3個の基Xを含むようなものであり、ここで、Xは、(COO-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属陽イオンである)である。
【0041】
本発明の一実施形態によると、式(I)の添加剤は、式(I)のそれぞれの芳香族部分が、同一であるか又は異なる1又は2個の基Xを含むようなものであり、ここで、Xは、(COO-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属陽イオンである)である。
【0042】
一実施形態によると、添加剤は、式(II):
【化3】
(式中、
- Rのそれぞれは、互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~C18脂肪族基、C1~C18脂環式基及びC1~C18芳香族からなる群から選択され、
- aは、ゼロ又は1~5の範囲の整数であり、
- Xは、(COO
-)
、(M
p+)
1/p(式中、M
p+は、p価の金属陽イオンである)であり、
- bは、1又は2のいずれかのそれぞれである)
によるものである。
【0043】
本発明のさらなる一実施形態によると、式(I)又は(II)の添加剤は、aが0、1又は2である添加剤である。
【0044】
別の実施形態によると、aは、ゼロであるため、フェニレン部分は、スルホネート又はカルボキシレート官能基以外の置換基を全く伴わない。
【0045】
本発明の別の実施形態によると、添加剤塩は、アルキル又はアリールベンゾエート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、プロピルベンゾエート及びブチルベンゾエートである。
【0046】
本発明の別の実施形態によると、添加剤は、ナトリウム、又はカリウムアルキル、又はアリールベンゾエート、ナトリウム又はカリウムメチルベンゾエート、ナトリウム又はカリウムエチルベンゾエート、ナトリウム又はカリウムプロピルベンゾエート及びナトリウム又はカリウムブチルベンゾエートからなる群から選択される。
【0047】
添加剤は、組成物の総重量に基づいて少なくとも28重量%の量で本発明の組成物に存在する。
【0048】
本発明の別の実施形態によると、組成物は、約28~約80重量%、例えば約30~約75重量%又は約35~約70重量%の添加剤を含む。
【0049】
本発明の一実施形態によると、添加剤は、例えば、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)より測定して少なくとも150℃、例えば少なくとも170℃、少なくとも180℃、少なくとも190℃又は少なくとも200℃の溶融温度Tma(℃)を有する。
【0050】
本発明の実施形態によれば、ポリマー組成物(C)は、
- 少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーと、
- ポリマー組成物(C)の少なくとも28重量%の、例えばナトリウム又はカリウムベンゾエート、ナトリウム又はカリウムメチルベンゾエート、ナトリウム又はカリウムエチルベンゾエート、ナトリウム又はカリウムプロピルベンゾエート及びナトリウム又はカリウムブチルベンゾエート、好ましくはナトリウム又はカリウムベンゾエートからなる群から選択される上述の少なくとも1種の添加剤と、
- 少なくとも1種の補強フィラーと
を含む。
【0051】
補強フィラー
ポリマー組成物は、繊維状又は粒子状のフィラーなどの少なくとも1種の補強フィラーを任意選択的に含む。繊維状補強フィラーは、平均長さが幅及び厚さの両方よりもかなり大きい長さ、幅及び厚さを有する材料である。好ましくは、このような材料は、少なくとも5の、長さと、幅及び厚さの最少のものとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。好ましくは、補強繊維のアスペクト比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、さらにより好ましくは少なくとも50である。粒子状フィラーは、最大で5、好ましくは最大で2のアスペクト比を有する。
【0052】
好ましくは、補強フィラーは、鉱物フィラー、例えばタルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素;ガラス繊維、炭素繊維、炭化ホウ素繊維;ウォラストナイト;炭化ケイ素繊維、ホウ素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、バサルト繊維及び同様のものから選択される。最も好ましくは、補強フィラーは、ガラス繊維、好ましくはチョップドガラス繊維又は炭素繊維、好ましくはチョップド炭素繊維である。
【0053】
ガラス繊維は、異なるタイプのガラスをもたらように調整することができる数種の金属酸化物を含有するシリカ系ガラス化合物である。主な酸化物は、ケイ砂の形態のシリカであり、カルシウム、ナトリウム及びアルミニウムなどの他の酸化物は、溶融温度を低下させ、且つ結晶化を妨げるために組み込まれる。ガラス繊維は、円形横断面又は卵形、楕円形若しくは長方形を含めて、非円形横断面(いわゆる「扁平ガラス繊維」)を有する。ガラス繊維は、エンドレス繊維又はチョップドガラス繊維として添加され得る。ガラス繊維は、一般に、5~20、好ましくは5~15μm、より好ましくは5~10μmの相当直径を有する。A、C、D、E、M、S、R、Tガラス繊維(参照により本明細書に援用されるAdditives for Plastics Handbook,2nd ed,John Murphyの第5.2.3章、43~48ページに記載されているような)又は任意のそれらの混合物若しくはそれらの混合物など、すべてのガラス繊維タイプが使用され得る。例えば、R、S及びTガラス繊維は、典型的には、ASTM D2343に従って測定して少なくとも76、好ましくは少なくとも78、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも82GPaの弾性モジュラスを有する高モジュラスガラス繊維である。
【0054】
E、R、S及びTガラス繊維は、当技術分野で周知である。それらは、とりわけ、参照により本明細書に援用されるFiberglass and Glass Technology,Wallenberger,Frederick T.;Bingham,Paul A.(Eds.),2010,XIVの第5章、197~225ページに記載されている。R、S及びTガラス繊維は、ケイ素、アルミニウム及びマグネシウムの酸化物から本質的になる。特に、それらのガラス繊維は、典型的には、62~75重量%のSiO2、16~28重量%のAl2O3及び5~14重量%のMgOを含む。ポリマー組成物中に広く使用される通常のE-ガラス繊維と異なり、R、S及びTガラス繊維は、10重量%未満のCaOを含む。
【0055】
繊維状フィラー、特にガラス繊維は、少なくとも15μm、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも22μm、さらにより好ましくは少なくとも25μmの断面最長直径を有し得る。それは、有利には、最大で40μm、好ましくは最大で35μm、より好ましくは最大で32μm、さらにより好ましくは最大で30μmのものである。優れた結果は、断面最長直径が15~35μm、好ましくは20~30μm、より好ましくは25~29μmの範囲である場合に得られた。
【0056】
繊維状フィラー、特にガラス繊維は、少なくとも4μm、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも6μm、さらにより好ましくは少なくとも7μmの断面最短直径を有し得る。それは、有利には、最大で25m、好ましくは最大で20μm、より好ましくは最大で17μm、さらにより好ましくは最大で15μmのものである。優れた結果は、断面最短直径が5~20μm、好ましくは5~15μm、より好ましくは7~11mの範囲である場合に得られた。
【0057】
繊維状フィラー、特にガラス繊維は、少なくとも2、好ましくは少なくとも2.2、より好ましくは少なくとも2.4、さらにより好ましくは少なくとも3のアスペクト比を有し得る。アスペクト比は、ガラス繊維の断面における最長直径と、その最短直径との比として定義される。また、ガラス繊維のアスペクト比は、最大で8、好ましくは最大で6、より好ましくは最大で4のものである。優れた結果は、前記比が約2~約6、好ましくは約2.2~約4のものである場合に得られた。
【0058】
ガラス繊維の断面の形状、その長さ、その断面直径及びそのアスペクト比は、光学顕微鏡法を使用して容易に決定することができる。
【0059】
補強フィラーの量は、ポリマー組成物の総重量に基づいて、粒子状フィラーの場合、1重量%~40重量%、好ましくは5重量%~35重量%、最も好ましくは10重量%~30重量%であり、繊維状フィラーの場合、1重量%~50重量%、好ましくは2重量%~30重量%、最も好ましくは3重量%~20重量%の範囲であり得る。好ましくは、ポリマー組成物は、約10重量%~約20重量%、最も好ましくは約15重量%のガラス繊維又は炭素繊維、最も好ましくはガラス繊維を含む。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満の繊維状フィラー、粒子状フィラー又は両方を含む。いくつかの態様では、ポリマー組成物は、繊維状フィラー、粒子状フィラー又はその両方を含まない。
【0060】
バサルト繊維は、鉱物の斜長石、輝石及びカンラン石から構成される、バサルトの極微細繊維から製造される材料である。それらは、ガラス繊維に類似しているが、ガラス繊維よりも良好な物理機械的特性を有し、炭素繊維よりもかなり安価である。
【0061】
任意の成分
一部の実施形態において、ポリマー組成物(C)は、二酸化チタン(TiO2)を含む。二酸化チタンの量は、好ましくは、0pph~約25pph、例えば約0.1pph~約25pph、例えば約5pph~約20pphの範囲である。二酸化チタン(TiO2)の量は、最大で約25pph、好ましくは最大で約20pph、好ましくは最大で約20pph、好ましくは最大で約15pphであり得る。
【0062】
ポリマー組成物(C)は、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、加工助剤、潤滑剤、難燃剤、可塑剤及び/又は導電性添加剤、例えばカーボンブラック及びカーボンナノフィブリルなどの追加の成分をさらに任意選択的に含み得る。
【0063】
ポリマー組成物(C)は、細孔の形態及び/又は多孔度を加工及び/又は最適化する利益のために、水溶性又は分散性ポリマー添加剤をさらに含み得る。そのようなポリマーの例としては、スルホ-ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、ポリエチレンイミン、ポリエチルオキサゾリン及びポリビニルピロリドンが挙げられる。このようなポリマー添加剤は、所望の処理温度で安定した状態を保ち、且つ最終品から水による抽出が実質的に可能である状態を保つように選択される。
【0064】
ポリマー組成物(C)は、難燃剤、例えばハロゲン及びハロゲン不含難燃剤をさらに含み得る。
【0065】
ポリマー組成物(C)を含む物品(A)及び用途
本明細書に記載するポリマー組成物(C)は、多様な成形物品を製造するために使用することができる。本発明に関連して、用語「物品」は、従って、広義に解されることとなる。その用語は、高分子材料から形成することができるいかなる種類の製品も指し、(a)中間品(又は中間賦形品)であって、無孔であり、例えば射出成形、押出成形又は3Dプリンティングにより、本発明のポリマー組成物を賦形品に賦形することを含む工程に直接起因する中間品と、(b)最終品(又は最終賦形品)であって、多孔質であり、例えば水中に浸漬させて添加剤を溶かし、且つ細孔を作り出す中間品から得られる最終品とを含む。これに関連して、添加剤は、水溶性及び/又は抽出性であると言われる。
【0066】
ポリマー組成物(C)は、可変形状及び可変サイズの断熱材又は防音材のために使用することができる。
【0067】
本発明のポリマー組成物(C)を含むポリマー物品(A)は、濾過材又は膜(例えば、精密濾過又は限外濾過)として使用することができる。
【0068】
物品は、好ましくは、膜である。本明細書に記載のポリマー組成物は、実際に、この種類の膜を生産するのに非常に好適である。「膜」という用語は、その通常の意味で本明細書では使用され、即ち、膜は、その膜と接触する化学種の浸透を緩和する個別の、通常、薄い界面を意味する。この界面は、分子的に均一であり得る(即ち構造が完全に均一(稠密な膜)であり得る)か、又は化学的若しくは物理的に不均一であり得、例えば有限寸法のボイド孔又は細孔を含み得る(多孔質膜)。膜は、平らなシートの形態又は管状の形態であり得る。管状の膜は、3mmよりも大きい直径を有する管状膜、0.5mm~3mmに含まれる直径を有するキャピラリー膜及び0.5mm未満の直径を有する中空微細繊維におけるそれらの寸法に基づいて分類される。高流束が必要な場合、平らなシート膜が一般的に好ましいが、表面積が大きいコンパクトなモジュールが必要である用途では、中空繊維が特に有利である。
【0069】
多孔質膜は、それらの細孔径によって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、多孔質ポリマー膜の平均細孔径は、約0.01ミクロン(μm)~約5.0ミクロン、好ましくは約0.02ミクロン~約2.0ミクロン、最も好ましくは約0.05ミクロン~約1.0ミクロン及びさらにより好ましくは約0.07ミクロン~約0.5ミクロンの範囲である。
【0070】
多孔質膜は、透過度測定(所定の圧力条件下で膜を通して透過する水の体積)、多孔度(ボイドの体積と、膜が占める総体積との比)、細孔の特徴(平均の細孔直径、最小の細孔直径及び最大の細孔直径)により特徴付けられ得る。多孔質膜は、同様に、それらの機械的特性(特に引張特性)及び耐薬品性(浸漬後の様々な溶媒における所与の時間中)により特徴付けられ得る。
【0071】
物品は、単独で使用するか、又はバンドル配列及び形態、例えば濾過システムで使用することができる。物品は、例えば精密濾過膜、限外濾過膜又は逆浸透のための支持材であり得る。
【0072】
これらの物品は、様々な材料の分離に使用することができる。そのような膜物品の潜在的有用性は、膜材料、その構造(構造は、その調製方法により異なる)及び稼働するモードに応じて異なる。例えば、そのような物品は、気体、例えば酸素若しくは窒素を透過するか、懸濁物質の溶質を溶液から分離、例えば可溶性の廃棄物を血液から分離(血液透析)するか、又は例えばラテックス若しくはチーズの製造において、溶解した分子、コロイド及び懸濁固形物をより小さい分子から分離(限外濾過)するために使用され得る。
【0073】
本発明者らは、本発明の多孔質膜が、改善された多孔質構造を呈することを示している。
【0074】
従って、本発明は、濾過及び精製プロセス、例えば廃水の濾過、超純水の調製において且つ微生物の除去、透析及びタンパク質の濾過をはじめとする医療、薬剤又は食品用途において、最終賦形品、例えば多孔質膜を使用する方法にも関する。
【0075】
即ち、本発明は、廃水の濾過などの液体を濾過又は精製するための、超純水を調製するための且つ微生物の除去、透析及びタンパク質の濾過をはじめとする医療、薬剤又は食品用途における賦形品の使用に関する。
【0076】
膜の多孔度は、3~90%、好ましくは5~80%又は20~70%の範囲であり得る。例えば、膜は、約50%又は約60%の多孔度を有する。
【0077】
細孔は、少なくとも0.001μm、少なくとも0.005μm、少なくとも0.01μm、少なくとも0.1μm、少なくとも1μm、少なくとも10μm及び最大で50μmの平均直径を有し得る。
【0078】
一実施形態によると、多孔質ポリマー物品、例えば膜は、自動車において使用される。
【0079】
別の実施形態によると、多孔質ポリマー物品、例えば膜は、5G電気通信において使用される。
【0080】
別の実施形態によると、多孔質ポリマー物品、例えば膜は、医療/健康管理のためにおいて使用される。
【0081】
別の実施形態によると、多孔質ポリマー物品、例えば本発明による多孔質膜は、生物学的溶液(例えば、バイオバーデン、ウイルス、他の大きい分子)及び/又は緩衝液(例えば、DMSOのような少量の溶媒若しくは他の極性非プロトン性溶媒を含有し得る溶液)を濾過するために使用することができる。
【0082】
本発明の別の実施形態によると、ポリマー組成物(C)は、他に熱溶解積層法としても知られる、押出成形系の付加製造システムを用いて3次元物体を製造するプロセスで支持材料として使用される。これらの3D製造方法において支持材料として使用されるポリマー組成物(C)は、フィラメントの形態で提供される。フィラメントは、円筒形状若しくは実質的に円筒状の形状を有し得るか、又はリボンフィラメント形状などの非円筒形状を有し得、さらに、フィラメントは、中空形状を有し得るか、又はコア-シェル形状を有し得、本発明の支持材料は、コア又はシェルのいずれかを形成するために使用される。
【0083】
ポリマー組成物(C)、物品(A)及び多孔質物品を製造する方法
本発明は、上述のポリマー組成物(C)を製造する方法にも関し、その方法は、少なくともポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマー、添加剤及び補強フィラーを溶融混合する工程を含む。
【0084】
より正確には、ポリマー組成物(C)は、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマーを、ポリマー組成物(C)の総重量に基づいて少なくとも28重量%の、式(I):
Ra-Ar-Xb (I)
(式中、
- Arは、芳香族部分であり、且つ5~18個の炭素原子を有する置換又は非置換の芳香族単環式基又は多環式基からなる群から選択され、
- Rのそれぞれは、互いに同一であるか又は異なり、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~C18脂肪族基、C1~C18脂環式基及びC1~C18芳香族からなる群から選択され、
- aは、ゼロ又は1~5の範囲の整数であり、
- Xは、(COO-)、(Mp+)1/p(式中、Mp+は、p価の金属陽イオンである)であり、
- bは、1~4の範囲の整数である)
の少なくとも1種の添加剤及び任意選択的に少なくとも1種の補強フィラーと溶融混合して、溶融混合物をもたらすことによって製造され得る。
【0085】
本明細書に記載されるポリマー組成物(C)は、有利には、ペレットの形態で提供される。これらのペレットは、当技術分野で公知の射出成形又は押出法で使用され得る。
【0086】
ポリマー組成物(C)は、当業者に公知の方法により作製することができる。例えば、そのような方法としては、溶融混合プロセスが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態において、ポリマー組成物の調製工程は、少なくとも1種のポリマー(P)を少なくとも28重量%の式(I)の少なくとも1種の添加剤と溶融混合することを含む。溶融混合プロセスは、典型的には、熱可塑性ポリマーを、添加剤(I)とともに、熱可塑性ポリマー(P)の溶融温度(Tm)を超えて加熱し、それによりブレンドの溶融物を形成することによって実施される。ポリマー、添加剤及び任意選択的に補強フィラーとともにペレットをもたらす溶融配合が有利である。そのようなプロセスは、ポリマー/添加剤(I)のブレンドの溶融物を形成するために、半結晶性ポリマーの溶融温度(Tm)を超えて且つ/又は非晶性ポリマーのガラス転移温度(Tg)を超えてポリマー(P)を加熱することにより実施され得る。一部の実施形態では、その処理温度は、約180~450℃、好ましくは約220~440℃、約260~430℃又は約280~420℃の範囲である。処理温度は、半結晶性ポリマー(又は組成物が数種の半結晶性ポリマーを含む場合、ポリマー組成物中の最もTmが高いポリマー)の溶融温度(Tm)よりも少なくとも15℃、好ましくは少なくとも30℃、少なくとも50℃、少なくとも80℃又は少なくとも100℃高いことが好ましい。その処理温度は、非晶性ポリマー(又は組成物が数種の非晶性ポリマーを含む場合、ポリマー組成物中の最もTgが高いポリマー)のガラス転移温度(Tg)よりも少なくとも15℃、好ましくは少なくとも30℃又は少なくとも50℃高いことが好ましい。非晶性ポリマーと半結晶性ポリマーとのブレンドの場合、溶融混合プロセスは、Tm又はTgの最も高い温度で実施される。
【0087】
いくつかの好ましい実施形態において、溶融混合は、半結晶性ポリマー(P)を、添加剤(I)とともに、その溶融温度(Tm)を超えて加熱して、ポリマー/添加剤ブレンドの溶融物を形成することを含む。さらにより好ましくは、処理温度は、半結晶性ポリマーの溶融温度(Tm)よりも少なくとも15℃、好ましくは少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃又は少なくとも50℃高い。
【0088】
本発明に関連して使用する添加剤は、粉末状であることが好ましい。
【0089】
組成物を調製するプロセスは、溶融混合装置で実施することができ、そのために、溶融混合によりポリマー組成物を調製する、当業者に知られた任意の溶融混合装置を使用することができる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、一軸押出機及び二軸押出機である。好ましくは、所望の成分のすべてを押出機へと押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投入するための手段を備えた押出機が使用される。ポリマー組成物の調製のためのプロセスでは、組成物を形成するための構成成分が溶融混合装置に供給され、その装置で溶融混合される。構成成分は、ドライブレンドとしても知られている粉末混合物若しくは顆粒ミキサーとして同時に供給するか又は個別に供給し得る。
【0090】
溶融混合中に成分を組み合わせる順序は、特に限定されない。一実施形態では、成分は、単一バッチで混合することができるため、成分のそれぞれの所望の量を一緒に添加し、続いて混合することができる。他の実施形態では、第1のサブセットの成分を最初に一緒に混合することができ、1つ以上の残りの成分をさらなる混合のために混合物に添加することができる。明確にするために、各成分の総所望量が単一量として混合される必要はない。例えば、成分の1つ以上において、一部の量を最初に添加し、混合し、続いて残りの一部又はすべてを添加して混合することができる。
【0091】
ポリマー組成物(C)を製造する方法は、必要に応じて、異なる条件下での溶融混合又は押出成形のいくつかの連続工程を含み得る。
【0092】
方法自体又は関連する場合、方法の各工程は、溶融混合物を冷却することを含む工程もさらに含み得る。
【0093】
中間の非多孔質物品(例えば、賦形した非多孔質膜又は賦形した多孔質フィルム)及び本発明による最終の多孔質物品(例えば、多孔質膜又は多孔質フィルム)は、任意の好適な溶解処理方法を用いてポリマー組成物(C)から作製される。具体的には、それらは、射出成形、押出成形又は3Dプリンティングにより作製される。
【0094】
この目的のために、任意の標準的な成形技術を用いることができ、溶融/軟化形態のポリマー組成物を賦形することを含む標準的な技術を有利に適用することができ、これには、とりわけ圧縮成形、押出成形、射出成形、トランスファー成形などが挙げられる。ダイを用いて物品を賦形し得、例えば物品が中空繊維膜である場合、ダイは、環状オリフィスを有する。
【0095】
本発明の一実施形態によると、ポリマー物品(中間の非多孔質のもの又は最終の多孔質のもの)を形成する方法は、提供されたポリマー組成物(C)からの3次元物体の層をプリントすることを含む工程を含む。本実施形態によると、ポリマー物品は、実際には、他に熱溶解積層法としても知られる、押出成形系の付加製造システムを用いて形成される。
【0096】
本発明の一実施形態によると、ポリマー物品(中間の非多孔質物品又は最終の多孔質物品)を形成する方法は、少なくとも、上述のポリマー組成物(C)を押出すことを含む工程を含む。
【0097】
本発明の一実施形態によると、多孔質ポリマー物品(例えば、多孔質膜又は多孔質中空繊維)を形成する方法は、中間の非多孔質物品を、例えば水中又は水を含有する溶液中に浸漬させて水と接触させることを含む工程を追加的に含む。水溶性添加剤を溶解させるために使用する水は、例えば、室温~95℃の様々な温度であり得る。ポリマーを溶解させるのに必要とされる時間は、様々である。例としては、時間は、1秒~2時間又は5秒~1時間で変わることができる。
【0098】
本実施形態によると、添加剤は、抽出性であると言われ得、即ち、水と接触させることにより、例えば水中に浸漬させることにより中間生成物から実質的に抽出することができ、水は、場合により2時間までの期間で95℃まで昇温する。これに関連して、「実質的に」は、最終の多孔質の賦形品を得るために、添加剤の少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%が中間生成物から抽出される。
【0099】
従って、本発明は、多孔質ポリマー膜M)を形成する方法にも関し、その方法は、
(i)上述のポリマー組成物(C)を調製する工程、
(ii)ポリマー組成物(C)を膜に加工する、例えばポリマー組成物(C)を平らな膜に押出成形する工程、
(iii)膜を水中に浸漬させる工程
を含む。
【0100】
多孔質ポリマー膜(M)を形成する方法は、1つ又はいくつかの任意の工程を含み得る。ひとつの任意の工程は、膜を延伸する工程を含む。この任意の工程は、特に工程(iii)中に行うことができる。別の任意の工程は、膜を例えばオーブン内で乾燥させることを含む。
【0101】
本発明は、この方法で得られる多孔質ポリマー物品(例えば、膜又は中空管)にも関する。
【0102】
多孔質ポリマー物品は、20重量%までの添加剤、例えば15重量%までの添加剤、10重量%までの添加剤、5重量%までの添加剤又は5重量%未満の添加剤を含有し得る。一実施形態によると、多孔質ポリマー物品は、1重量%未満の添加剤を含有する。
【0103】
繊維強化材を有する射出成形部品は、多孔質非補強相当物よりもかなり良好な機械的強度(引張強さ、比引張強さ)及び弾性率(比弾性率)を提供する。ガラス繊維を加えると、誘電率及び誘電損率などの他の内部特性を比例して増加させることができる。
【0104】
ポリマー組成物(C)は、一般的に、これが本発明の範囲から逸脱することなく、必要に応じて射出成形物品に射出成形することによって加工され、必要とされる最終形状を有する部品を得ることができる。
【0105】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマー組成物(C)を射出成形することによって製造される少なくとも1つの構造部品を含む、油/ガス回収産業において使用するために適した物品に関し、ここで、前記ポリフェニレンスルフィド(PPS)ポリマー組成物(C)の前記射出成形構造部品は、改良された機械的特性、特に高い剛性及び高い靭性、増加した耐電圧、寸法安定性及び良好な審美的特性を有することを特徴とする。
【0106】
本発明による物品は、コートされるか又はさらに処理され得る。
【0107】
そのため、上記で詳述されたような方法は、少なくとも1つの金属を前記部品の表面の少なくとも一部上にコートすることを含む、少なくとも1つの追加の工程をさらに含み得る。
【0108】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0109】
本発明は、以下において、非限定的な実施例によって以下のセクションでより詳細に例証される。
【実施例】
【0110】
4つの実施例及び2つの対応する比較例を提供する。
【0111】
原材料
1)PPSポリマー:Solvay Specialty Polymers USA,LLCからのRyton(登録商標)QC160N。
2)ナトリウムベンゾエート、Fluid Energy,Telford,PAの製品名:微粉化ナトリウムベンゾエート(NaBz)。
3)ガラス繊維、日本、大津の日本電気硝子からのT-779H。
【0112】
実施例1
成分をCoperion ZSK-26二軸押出機(Coperion GmbH,Stuttgart,Germany)内でブレンドすることにより、42.75重量パーセント(重量%)のRyton(登録商標)QC-160、55重量%のナトリウムベンゾエート及び2.25重量%のガラス繊維(T-779H、日本、大津の日本電気硝子)の混合物を製造した。この押出機は、12のバレル領域と、450oCまでで運転する加熱出口ダイとを有し、質量処理量>30kg/時間を可能にした。サイドフィーダーをCoperion ZSK-26上で使用してガラス繊維をバレル7に導入した。出口ダイでの実際の溶融温度をハンドヘルド機器で測定したところ、375oCであることが分かった。ISOバーを製造し、特性試験を実施した。これらの試験のデータを表1~4に示す。抽出後、この試料は、5重量%のガラス繊維含有量を有した。
【0113】
実施例2
40.5重量パーセント(重量%)のRyton(登録商標)QC-160N、55重量%のナトリウムベンゾエート及び4.5重量%のガラス繊維(ECS03T-T779、日本、大津の日本電気硝子)の混合物を実施例1で説明したように製造した。出口ダイでの実際の溶融温度をハンドヘルド機器で測定したところ、375oCであることが分かった。実施例1で説明したようにISOバーを製造し、特性試験を実施した。これらの試験のデータを表1~4に示す。抽出後、この試料は、10重量%のガラス繊維含有量を有した。
【0114】
実施例3
38.25重量パーセント(重量%)のRyton(登録商標)QC-160N、55重量%のナトリウムベンゾエート及び6.75重量%のガラス繊維(ECS03T-T779、日本、大津の日本電気硝子)の混合物を実施例1で説明したように製造した。出口ダイでの実際の溶融温度をハンドヘルド機器で測定したところ、410oCであることが分かった。実施例1で説明したようにISOバーを製造し、特性試験を実施した。これらの試験のデータを表1~4に示す。抽出後、この試料は、15重量%のガラス繊維含有量を有した。
【0115】
実施例4
36重量パーセント(重量%)のRyton(登録商標)QC-160N、55重量%のナトリウムベンゾエート及び9重量%のガラス繊維(ECS03T-T779、日本、大津の日本電気硝子)の混合物を実施例1で説明したように製造した。出口ダイでの実際の溶融温度をハンドヘルド機器で測定したところ、400oCであることが分かった。実施例1で説明したようにISOバーを製造し、特性試験を実施した。これらの試験のデータを表1~4に示す。抽出後、この試料は、20重量%のガラス繊維含有量を有した。
【0116】
成分の適切な質量比を得るために、K-TronT-35重量測定フィーダ(Coperion GmbH,Stuttgart,Germanyより)を使用してそれぞれの材料を押出機の供給セクションに供給した。成分を溶融し、均一な溶融組成物が得られるように設計されたスクリューで混合した。出口ダイでの実際の溶融温度をハンドヘルド機器で測定したところ、385oCであることが分かった。
【0117】
溶融流を空冷し、Maag Primo 60Eペレタイザー(Maag Automatik GmbH,Stuttgart,Germanyより)に供給した。典型的な量産速度は、1時間あたり10~20kgであった。ペレットを回収し、射出成形に使用するまで密封されたプラスチックバケツ内に保管した。ISOバーを射出成形によって製造し、ISO527-2に従って試験した。試験前に24時間熱水(80~95oC)を使用して可溶性成分を抽出し、100oC及び<20インチHgの真空オーブンで乾燥させた。寸法損失は、ISOバーのネック幅及び厚さで測定され、それぞれ1.0%及び2.5%であることが分かった。これらの試料について、多孔度のパーセント(%)を重量測定法で計算した。結果を表1に示す。
【0118】
水銀圧入試験は、粒子試験機関(Particle Testing Authority)(Norcross,GA)によって実施された。多孔度、嵩密度及び細孔径、Dp(最大増分水銀圧入量での細孔径)のデータを表1に示す。
【0119】
【0120】
引張試験を上記のように実施し、引張強さ及び弾性率を表2に示す。嵩密度を使用して比引張強さ及び弾性率を計算し、表2に示す。
【0121】
【0122】
誘電率及び誘電正接は、Electronics Consulting Laboratories(Red Lion,PA)によるASTM D2520、方法B - 空洞共振摂動法(Resonant Cavity Perturbation Technique)のガイドラインを用いて2.4GHzで測定された。誘電率及び誘電正接は、多孔質膜上で測定され、これらの多孔質膜は、5G用途のために使用される。より低い誘電率及び誘電損率を有する空気を含有するボイドの存在は、2つの電極間の絶縁間隙の空気及びプラスチックの複合物である誘電特性の組織的な値をもたらす。従って、固体材料に対して多孔質材料のより低い誘電特性(Dk、Df)が得られる。誘電特性を表3に示す。
【0123】
【0124】
熱伝導率(K)の測定は、Kaptonセンサーを使用して23oCのホットディスク(登録商標)(Gothenburg,SE)上で行われた。これらの試料の熱伝導率、Kのデータを表4に示す。
【0125】
【0126】
比較例1
40重量パーセント(重量%)のRyton(登録商標)PPS、QC-160Nと60重量%のナトリウムベンゾエート(Fluid Energy,Telford,PAにより、製品名:微粉化ナトリウムベンゾエート(Micronized Sodium Benzoate))との混合物を製造するため、成分をCoperion ZSK-26二軸押出機(Coperion GmbH,Stuttgart,Germany)内でブレンドした。この押出機は、12のバレル領域と、450oCまでで運転する加熱出口ダイとを有し、質量処理量>30kg/時間を可能にした。以下に示されるバレルプロファイルを使用した。
【0127】
【0128】
比較例1は、ガラス繊維を使用しない。重量測定による多孔度、多孔度(Hg圧入)、嵩密度及び細孔直径を表C1に示す。ガラス繊維が使用されなかったとき、比較例1において、嵩密度は、より低くなり、且つ細孔直径は、より大きくなり、ガラス繊維を使用するとき、微細細孔構造物が達成されたことを示す。
【0129】
【0130】
弾性率、比弾性率、引張強さ及び比引張強さを表C2に示す。ガラス繊維が使用されなかったとき、比較例1において、弾性率、比弾性率、引張強さ及び比引張強さは、より低い。
【0131】
【0132】
誘電率、誘電損率及び熱伝導率を表C3に示す。ガラス繊維が使用されなかったとき、比較例1において、誘電率、誘電損率及び熱伝導率はより低い。
【0133】
【0134】
比較例2
45重量%のRadilon(登録商標)S24Eポリアミド6と55重量%のナトリウムベンゾエートとの混合物を比較例1で説明したように製造した。以下に示されるバレルプロファイルを使用した。
【0135】
【0136】
出口ダイでの実際の溶融温度をハンドヘルド機器で測定したところ、250oCであることが分かった。ISOバーを製造し、実施例1で説明したように熱水中での抽出を行った。抽出中、試料は、かなり収縮した。寸法損失は、ISOバーのネック幅及び厚さで測定され、それぞれ19%及び29%であることが分かった。実施例1で説明したように水銀を実施し、これらの試験のデータを表C4に示す。寸法損失は、多孔度の重量測定による推定値が高くても、試料が収縮によって多孔度を失ったことを示す。これは、この作業の他の実施例に対して低い多孔度及び高い密度、同様に細孔径Dpの、サイズの二峰性分布へのシフトを示す水銀圧入データによって裏付けられる。より低い値は、おそらく崩壊細孔を示す。より大きい値は、バー表面のスキン層の、試料の嵩からの離層など、収縮による欠陥の原因に起因し得る。
【0137】
【0138】
さらに、上記の物品の製造方法は、任意のタイプのサイズ及び形状を有する部品内の射出成形された標準的な賦形構造部品の機械加工を包含する。前記標準的な賦形構造部品の非限定的な例としては、特にプレート、ロッド、スラブ、シート、フィルムなどが挙げられる。前記標準的な賦形構造部品は、ポリマー組成物(C)の射出成形によって得られる。
【国際調査報告】