IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヌヴァミド エスアーの特許一覧

特表2022-547937疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物
<>
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図1
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図2
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図3
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図4
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図5
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図6
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図7
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図8
  • 特表-疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】疼痛の予防および/または処置のためのNMNの使用および対応する組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20221109BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K31/706
A61P29/02
A61P25/04
A61K31/7084
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515517
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2020075085
(87)【国際公開番号】W WO2021048129
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】1909896
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】19218817.5
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522089066
【氏名又は名称】ヌヴァミド エスアー
【氏名又は名称原語表記】NUVAMID SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルモンド,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ギャルソン,ローラン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
(57)【要約】
本発明は、疼痛、特に侵害受容性疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩に関し、また本発明は、それらを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載のその使用のための、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩であって、
前記NMN誘導体が、アルファニコチンアミドモノヌクレオチド(α-NMN)、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN-Hと表記)、式(I):
【化1】


を有する化合物、またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくはその薬学的に許容される結晶(式中、
-Xは、O、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHの中から選択され;

-Rは、H、アジド、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C)チオアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、およびORの中から選択され;式中、Rは、Hおよび(C~C)アルキルから選択され;

-R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、(C~C12)アルキル、(C~C12)チオアルキル、(C~C12)ヘテロアルキル、(C~C12)ハロアルキルおよびORの中から選択され;式中、Rは、H、(C~C12)アルキル、C(O)(C~C12)アルキル、C(O)NH(C~C12)アルキル、C(O)O(C~C12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C~C12)アルキルアリール、C(O)NH(C~C12)アルキルアリール、C(O)O(C~C12)アルキルアリールおよびC(O)CHRAANHから選択され;式中、RAAは、タンパク質構成アミノ酸から選択される側鎖であり;

-Rは、H、アジド、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C)チオアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、およびORの中から選択され;式中、Rは、Hおよび(C~C)アルキルから選択され;

-Rは、H、P(O)R10、およびP(S)R10の中から選択され;式中、

-RおよびR10は互いに独立して、OH、OR11、NHR13、NR1314、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C12)アリール、(C~C)アルキルアリール、(C~C)アリールアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、(C~C)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、およびNHCHRA´C(O)R12の中から選択され;式中、
-R11は、(C~C10)アルキル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C18)アリール、(C~C10)アルキルアリール、置換(C~C12)アリール、(C~C10)ヘテロアルキル、(C~C10)ヘテロシクロアルキル、(C~C10)ハロアルキル、ヘテロアリール、-(CHC(O)(C~C15)アルキル、-(CHOC(O)(C~C15)アルキル、-(CHOC(O)O(C~C15)アルキル、-(CHSC(O)(C~C15)アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)アルキル、および-(CHC(O)O(C~C15)アルキルアリール(式中、nは、1~8から選択される整数である)、P(O)(OH)OP(O)(OH);ハロゲン、ニトロ、シアノ、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、-N(R11a、C~Cアシルアミノ、-COR11b、-OCOR11b;NHSO(C~Cアルキル)、-SON(R11aSO(式中、R11aの各々は、Hおよび(C~C)アルキルから独立して選択され、R11bは、OH、C~Cアルコキシ、NH、NH(C~Cアルキル)またはN(C~Cアルキル)から独立して選択される)の中から選択され;

-R12は、H、C~C10アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10ハロアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~Cアルキルアリール、およびC~C12ヘテロアリールの中から選択され;前記アリール基またはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノの中から選択される1つまたは2つの基で任意選択で置換されており;ならびに

-RおよびRA´は、独立して、H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C10)チオアルキル、(C~C10)ヒドロキシルアルキル、(C~C10)アルキルアリール、および(C~C12)アリール、(C~C10)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、-(CHNHC(=NH)NH、(1H-インドール-3-イル)メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)メチル、タンパク質構成アミノ酸もしくは非タンパク質構成アミノ酸の中から選択される側鎖の中から選択され;前記アリール基は、ヒドロキシル、(C~C10)アルキル、(C~C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロおよびシアノの中から選択される基で任意選択で置換されており;または

-RおよびR10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、-R-R10-が-CH-CH-CHR-を表す6員環を形成し;式中、Rは、H、(C~C)アリール基および(C~C)ヘテロアリール基の中から選択され、前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシおよびシアノで任意選択で置換されており;または
およびR10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、-R-R10-が-O-CH-CH-CHR-O-を表す6員環を形成し;式中、Rは、H、(C~C)アリール基および(C~C)ヘテロアリール基の中から選択され、前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシおよびシアノで場合により置換されており;

-Rは、H、OR、NHR13、NR1314、NH-NHR13、SH、CN、Nおよびハロゲンの中から選択され;式中、R13およびR14は、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルキルアリールおよび-CR-C(O)-ORの中から互いに独立して選択され、式中、RおよびRは、独立して、水素原子、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ベンジル、インドリル、もしくはイミダゾリルであり;前記(C~C)アルキルおよび前記(C~C)アルコキシは、ハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオールもしくはカルボキシル基のうちの1つ以上によって互いに独立して任意選択で置換されていてもよく、前記ベンジル基は、1つ以上のハロゲンもしくはヒドロキシル基によって任意選択で置換されており;または、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1つ以上のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオールおよびカルボキシルによって任意選択で置換されたC~Cシクロアルキル基を形成し;Rは、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニルまたは(C~C)シクロアルキルであり;

-Yは、CH、CH、C(CHおよびCCHの中から選択され;


【化2】


は、Yに沿った単結合または二重結合を表し;

【化3】


は、R1の位置に応じたアルファもしくはベータアノマー;
またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくは結晶を表す);

または
式(II):
【化4】


を有する化合物またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくは結晶(式中、
-X´およびX´は、O、CH、S、Se、CHF、CF、およびC=CHの中から独立して選択され;

-R´およびR´13は、H、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C1~C8チオアルキル、C1~C8ヘテロアルキルおよびORの中から独立して選択され、式中、Rは、HおよびC1~C8アルキルから選択され;

-R´、R´、R´、R´、R´、R´10、R´11、R´12は、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORの中から独立して選択され;式中、Rは、H、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)アルキル、C(O)NH(C~C12)アルキル、C(O)O(C~C12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C~C12)アリール、C(O)NH(C~C12)アルキルアリール、C(O)O(C~C12)アルキルアリールまたはC(O)CHRAANH2基の中から選択され得;式中、RAAは、タンパク質構成アミノ酸から選択される側鎖であり;

-R´およびR´は、H、アジド、シアノ、C~CアルキルおよびORの中から独立して選択され、式中、Rは、HおよびC~Cアルキルから選択され;

-R´およびR´14は、H、OR、NHR、NRR´、NH-NHR、SH、CN、Nおよびハロゲンの中から独立して選択され;式中、RおよびR´は、Hおよび(C~C)アルキルアリールから独立して選択され;

-Y´およびY´は、CH、CH、C(CHまたはCCHの中から独立して選択され;

-M´は、Hまたは適切な対イオンから選択され;


【化5】


は、Y´およびY´に応じて単結合または二重結合を表し;


【化6】


は、R´およびR´13の位置に応じてアルファまたはベータアノマーを表す);
およびそれらの組み合わせの中から選択され得る、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記前駆体が、ニコチンアミドリボシドまたはジヒドロニコチンアミドリボシドから選択される、請求項1に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記疼痛が、神経障害性疼痛ではない、請求項1から3のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記疼痛が、侵害受容性疼痛である、請求項1から4のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
異痛症を軽減するための、請求項1から5のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
痛覚過敏を軽減するための、請求項1から5のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記疼痛が、内臓痛である、請求項4から7のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記疼痛が、尿路感染によって引き起こされる疼痛である、請求項8に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
少なくとも1種の他の治療剤と組み合わせた、請求項1から9のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記少なくとも1種の追加の治療剤が、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、およびそれらの組み合わせの中から選択される、請求項10に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
前記少なくとも1種の治療剤が、鎮痛薬である、請求項10または11に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の追加の治療剤をさらに含む、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛、特に侵害受容性疼痛の処置および/または予防のためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。本発明はまた、疼痛、特に侵害受容性疼痛の処置および/または予防のためのNMN、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、症状および疾患の両方であり得る。疼痛は、国際疼痛学会(IASP)により「実際の組織損傷または潜在的な組織損傷に関連する、またはそれに類似する不快な感覚および感情的経験」と定義されている(2017年12月14日付け更新版による以下のリンクの定義を参照されたい:https://www.iasp-pain.org/Education/Content.aspx?ItemNumber=1698&navItemNumber=576#Pai)。疼痛は、神経系によって処理される情報である。
【0003】
ヒト等の哺乳動物の神経系は、以下の2つの主要部分を有する:
-中枢神経系は、脳(脳髄)、脳幹、小脳および脊髄で構成される。中枢神経系の役割は、末梢神経系から来る信号を受信し、レジスタし、解釈することである。
-末梢神経系は、中枢神経系に付属する脳神経および脊髄神経、ならびにそれらの対応する末端で構成される。末梢神経系の役割は、(i)末梢感受性および疼痛受容体によって受信された情報を中枢神経系に伝達し、(ii)中枢神経系によって送られた命令を特に筋肉に伝達することである。
【0004】
疼痛は複雑な現象であり、したがって様々な様式で分類することができる。疼痛には、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、および中枢性疼痛(中枢性感作としても知られる)の3つの主要なカテゴリーがある。
【0005】
侵害受容性疼痛または末梢性疼痛は、侵害受容器の活性化によって引き起こされる。侵害受容器は、神経線維の末端に位置する受容器である。侵害受容性疼痛の場合、神経系は影響を受けない。侵害受容性疼痛は、機械的刺激、熱刺激、化学的刺激、炎症性疾患または感染性疾患等の様々な異なる刺激によって誘発され得る。挙げることができる侵害受容性疼痛の例は、皮膚の灼熱感による疼痛である。
【0006】
神経障害性疼痛は、末梢神経系の神経への病変によって引き起こされる。挙げることができる例は、糖尿病性神経障害性疼痛である。
【0007】
中枢性疼痛は、中枢神経系による疼痛の処理の混乱に起因する。挙げることができる例は、線維筋痛症または幻肢痛症を含む。
【0008】
対照的に、片頭痛は、これらの前述の3つのカテゴリーとは異なる疼痛のカテゴリーであり、したがって、現在のところ、別個のカテゴリーを構成する。
【0009】
また、これらの疼痛のカテゴリーは相互に排他的ではなく、患者は様々な異なる種類の疼痛を同時に経験する可能性があることも明確にすべきである。実際、大きな損傷、癌または感染性疾患の場合、病変は、器官内に存在する組織および神経の両方に及ぶことがある。
【0010】
侵害受容性疼痛は、一般に、従来の鎮痛処置に容易に応答する。世界保健機関は、鎮痛薬をその効力に基づいて3つのカテゴリーに分類している。疼痛を軽減するのに役立つ物質が鎮痛薬として分類される。
【0011】
レベルIの鎮痛物質は、軽度から中程度の疼痛を処置することを意図しており、アスピリン、パラセタモール、ならびにイブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、アルミノプロフェン、アセクロフェナク、メフェナム酸、ニフルミン酸、チアプロフェン酸、セレコキシブ、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、メロキシカム、ナブメトン、ピロキシカム、スリンダクおよびテノキシカムなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を含む。NSAIDは、ストレス応答中に放出されるホルモンの1つであるコルチゾールに由来するステロイド性抗炎症薬またはコルチコステロイドと区別するために、そのように呼ばれる。コルチコステロイドの例として、ベタメタゾン、シプロフロキサシン、コルチバゾール、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンを挙げることができる。
【0012】
レベルIIの鎮痛物質は、中程度もしくは重度の疼痛、またはレベルIの鎮痛薬が提供する緩和が不十分である疼痛を処置することを意図しており、それらは、コデイン、ジヒドロコデイン、およびトラマドールを単独で、またはアスピリンもしくはパラセタモールと組み合わせて含む。
【0013】
レベルIIIの鎮痛物質は、他の鎮痛薬に耐性である重度の疼痛を処置することを意図しており、モルヒネならびにブプレノルフィン、フェンタニル、ヒドロモルホン、ナルブフィン、オキシコドンおよびペチジン等の他のアヘン誘導体を含む。
【0014】
しかしながら、これらの処置はいずれも有害な副作用がないものではない。例えば、NSAIDの使用は、出血、喘息、腎臓の問題、より頻繁には胃障害および潰瘍等の様々な有害作用を引き起こし得る。パラセタモールは肝毒性をもたらし得る。アスピリンは血液を薄くし、胃を攻撃する。コルチコステロイドは、体重増加、免疫防御の弱化、骨の弱化、およびその有効性の低下をもたらすコルチコステロイド依存性をもたらす。コデイン、ジヒドロコデインおよびトラマドールは様々な有害作用を誘発し、これらの中で最も一般的なものは悪心、嘔吐、便秘、眠気および薬物依存である。モルヒネおよびアヘン誘導体に関しては、それらは重大な有害作用、特に身体的および心理的依存の高いリスクを誘発する。さらに、モルヒネの過剰投与は呼吸筋を遮断し、致命的であると判明する可能性がある。
【0015】
最後に、ある特定の患者は、従来の鎮痛薬に対するアレルギーを発症することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、先行技術の鎮痛薬の欠点を軽減するのに役立つ、疼痛の処置および/または予防のための新しい組成物を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的は、疼痛の予防および/または処置における使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)およびそれを含む組成物のおかげで達成される。
【0018】
本発明は、疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0019】
有利には、NMNは、0.01mg/kg/日~1000mg/kg/日、好ましくは1mg/kg/日~100mg/kg/日、より好ましい様式では5mg/kg/日~50mg/kg/日、さらにより好ましい様式では10mg/kg/日~20mg/kg/日に含まれる量で使用される。
【0020】
一実施形態では、NMN誘導体は、アルファニコチンアミドモノヌクレオチド(α-NMN)、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN-Hと表記)、式(I):
【化1】


を有する化合物、またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくはその薬学的に許容される結晶(式中、
-Xは、O、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHの中から選択され;
-Rは、H、アジド、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C)チオアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、およびORの中から選択され;式中、Rは、Hおよび(C~C)アルキルから選択され;
-R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、(C~C12)アルキル、(C~C12)チオアルキル、(C~C12)ヘテロアルキル、(C~C12)ハロアルキルおよびORの中から選択され;式中、Rは、H、(C~C12)アルキル、C(O)(C~C12)アルキル、C(O)NH(C~C12)アルキル、C(O)O(C~C12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C~C12)アルキルアリール、C(O)NH(C~C12)アルキルアリール、C(O)O(C~C12)アルキルアリールおよびC(O)CHRAANHから選択され;式中、RAAは、タンパク質構成アミノ酸から選択される側鎖であり;
-Rは、H、アジド、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C)チオアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、およびORの中から選択され;式中、Rは、Hおよび(C~C)アルキルから選択され;
-Rは、H、P(O)R10、およびP(S)R10の中から選択され;式中、
-RおよびR10は互いに独立して、OH、OR11、NHR13、NR1314、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C12)アリール、(C~C)アルキルアリール、(C~C)アリールアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、(C~C)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、およびNHCHRA´C(O)R12の中から選択され;式中、
-R11は、(C~C10)アルキル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C18)アリール、(C~C10)アルキルアリール、置換(C~C12)アリール、(C~C10)ヘテロアルキル、(C~C10)ヘテロシクロアルキル、(C~C10)ハロアルキル、ヘテロアリール、-(CHC(O)(C~C15)アルキル、-(CHOC(O)(C~C15)アルキル、-(CHOC(O)O(C~C15)アルキル、-(CHSC(O)(C~C15)アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)アルキル、および-(CHC(O)O(C~C15)アルキルアリール(式中、nは、1~8から選択される整数である)、P(O)(OH)OP(O)(OH);ハロゲン、ニトロ、シアノ、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、-N(R11a、C~Cアシルアミノ、-COR11b、-OCOR11b;NHSO(C~Cアルキル)、-SON(R11aSO(式中、R11aの各々は、Hおよび(C~C)アルキルから独立して選択され、R11bは、OH、C~Cアルコキシ、NH、NH(C~Cアルキル)またはN(C~Cアルキル)から独立して選択される)の中から選択され;
-R12は、H、C~C10アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10ハロアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~Cアルキルアリール、およびC~C12ヘテロアリールの中から選択され;前記アリール基またはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノの中から選択される1つまたは2つの基で任意選択で置換されており;ならびに
-RおよびRA´は、独立して、H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C10)チオアルキル、(C~C10)ヒドロキシルアルキル、(C~C10)アルキルアリール、および(C~C12)アリール、(C~C10)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、-(CHNHC(=NH)NH、(1H-インドール-3-イル)メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)メチル、タンパク質構成アミノ酸もしくは非タンパク質構成アミノ酸の中から選択される側鎖の中から選択され;上記アリール基は、ヒドロキシル、(C~C10)アルキル、(C~C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロおよびシアノの中から選択される基で任意選択で置換されており;または
-RおよびR10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、-R-R10-が-CH-CH-CHR-を表す6員環を形成し;式中、Rは、H、(C~C)アリール基および(C~C)ヘテロアリール基の中から選択され、前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシおよびシアノで任意選択で置換されており;または
およびR10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、-R-R10-が-O-CH-CH-CHR-O-を表す6員環を形成し;式中、Rは、H、(C~C)アリール基および(C~C)ヘテロアリール基の中から選択され、前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシおよびシアノで場合により置換されており;
-Rは、H、OR、NHR13、NR1314、NH-NHR13、SH、CN、Nおよびハロゲンの中から選択され;式中、R13およびR14は、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルキルアリールおよび-CR-C(O)-ORの中から互いに独立して選択され、式中、RおよびRは、独立して、水素原子、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ベンジル、インドリル、もしくはイミダゾリルであり;前記(C~C)アルキルおよび前記(C~C)アルコキシは、ハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオールもしくはカルボキシル基のうちの1つ以上によって互いに独立して任意選択で置換されていてもよく、前記ベンジル基は、1つ以上のハロゲンもしくはヒドロキシル基によって任意選択で置換されており;または、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1つ以上のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオールおよびカルボキシルによって任意選択で置換されたC~Cシクロアルキル基を形成し;Rは、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニルまたは(C~C)シクロアルキルであり;
-Yは、CH、CH、C(CHおよびCCHの中から選択され;

【化2】


は、Yに沿った単結合または二重結合を表し;

【化3】


は、Rの位置に応じたアルファもしくはベータアノマー;
またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくは結晶を表す);
または
式(II):
【化4】


を有する化合物またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくは結晶(式中、
-X´およびX´は、O、CH、S、Se、CHF、CF、およびC=CHの中から独立して選択され;
-R´およびR´13は、H、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C1~C8チオアルキル、C1~C8ヘテロアルキルおよびORの中から独立して選択され、式中、Rは、HおよびC1~C8アルキルから選択され;
-R´、R´、R´、R´、R´、R´10、R´11、R´12は、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORの中から独立して選択され;式中、Rは、H、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)アルキル、C(O)NH(C~C12)アルキル、C(O)O(C~C12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C~C12)アリール、C(O)NH(C~C12)アルキルアリール、C(O)O(C~C12)アルキルアリールまたはC(O)CHRAANH2基の中から選択され得;式中、RAAは、タンパク質構成アミノ酸から選択される側鎖であり;
-R´およびR´は、H、アジド、シアノ、C~CアルキルおよびORの中から独立して選択され、式中、Rは、HおよびC~Cアルキルから選択され;
-R´およびR´14は、H、OR、NHR、NRR´、NH-NHR、SH、CN、Nおよびハロゲンの中から独立して選択され;式中、RおよびR´は、Hおよび(C~C)アルキルアリールから独立して選択され;
-Y´およびY´は、CH、CH、C(CHまたはCCHの中から独立して選択され;
-M´は、Hまたは適切な対イオンから選択され;

【化5】


は、Y´およびY´に応じて単結合または二重結合を表し;

【化6】


は、R´およびR´13の位置に応じてアルファまたはベータアノマーを表す);
およびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0021】
好ましい第1の実施形態において、薬学的に許容される誘導体は、式(I)を有する化合物である。
【0022】
第1の実施形態の一変形例において、Xは酸素を表す。
【0023】
第1の実施形態の一変形例において、RおよびRはそれぞれ互いに独立して水素を表す。
【0024】
第1の実施形態の一変形例において、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して水素またはOHを表す。
【0025】
第1の実施形態の一変形例において、YはCHを表す。
【0026】
第1の実施形態の一変形例において、YはCHを表す。
【0027】
第1の実施形態の一変形例において、Rは水素を表す。
【0028】
第1の実施形態の一変形例において、RはP(O)(OH)を表す。
【0029】
第1の実施形態の一変形例において、
Xは酸素を表し;および/または
およびRは、それぞれ独立して水素を表し;および/または
、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素を表すか、もしくはR、R、RおよびRは、独立してOHを表す;および/または
Yは、CHもしくはCHを表し;および/または
は、P(O)R10を表し、式中、RおよびR10は、OH、OR11、NHR13、NR1314、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10シクロアルキル、C~C12アリール、C~Cアリールアルキル、C~Cアルキルアリール、C~Cヘテロアルキル、C~Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、およびNHCRA´C(O)R12の中から独立して選択される。
【0030】
第1の実施形態の1つの特に好ましい変形例において、本発明の化合物は、式I-A~I-Hを有する化合物の中から選択される。
【0031】
【表1】

【0032】
好ましい第2の実施形態において、薬学的に許容される誘導体は、式(II)を有する化合物である。
【0033】
第2の実施形態の一変形例において、X´1およびX´2は、それぞれ独立して酸素を表す。
【0034】
第2の実施形態の一変形例において、R´7およびR´14は、それぞれ独立してNHを表す。
【0035】
第2の実施形態の一変形例において、R´1および/またはR´13は、それぞれ独立して水素を表す。
【0036】
第2の実施形態の一変形例において、R´6および/またはR´8は、それぞれ独立して水素を表す。
【0037】
第2の実施形態の一変形例において、R´2、R´3、R´4、R´5、R´9、R´10、R´11、およびR´12は、それぞれ独立して水素を表す。
【0038】
第2の実施形態の一変形例において、R´2、R´3、R´4、R´5、R´9、R´10、R´11は、それぞれ独立してOHを表す。
【0039】
第2の実施形態の一変形例において、Y´1およびY´2はそれぞれ独立してCHを表す。
【0040】
第2の実施形態の一変形例において、Y´1およびY´2はそれぞれ独立してCH2を表す。
【0041】
第2の実施形態の一変形例において、本発明による化合物は、式II-A~II-Fを有する化合物の中から選択される。
【0042】
【表2】

【0043】
好ましい第1の実施形態の一変形例において、薬学的に許容される誘導体は、下記式を有するアルファ-NMNである。
【0044】
【化7】

【0045】
好ましい第4の実施形態において、薬学的に許容される誘導体はNMN-Hである。
【0046】
【化8】

【0047】
有利には、薬学的に許容される前駆体は、ニコチンアミドリボシド(NRと表記):
【0048】
【化9】


または下記式を有するジヒドロニコチンアミドリボシド(-NR-Hと表記)である。
【化10】

【0049】
有利には、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、様々な経路:経口、眼、舌下、非経口、経皮、膣、硬膜外、膀胱内、直腸、または吸入を介して投与され得る。
【0050】
好ましくは、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩は、経口または非経口経路を介して投与される。
【0051】
有利には、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける疼痛の処置および/または予防に使用される。
【0052】
好ましい一実施形態において、疼痛は侵害受容性疼痛である。
【0053】
好ましい一実施形態において、疼痛は神経障害性疼痛ではない。
【0054】
有利には、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、異痛症を軽減するために使用される。
【0055】
有利には、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、痛覚過敏を軽減するために使用される。
【0056】
有利には、疼痛は内臓痛である。
【0057】
有利には、疼痛は、泌尿生殖器(または尿生殖器)系の疼痛である。
【0058】
有利には、疼痛は、尿路感染によって引き起こされる疼痛である。
【0059】
有利には、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、少なくとも1種の他の治療剤と組み合わせて使用される。
【0060】
有利には、少なくとも1種の追加の治療剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、およびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0061】
有利には、少なくとも1種の治療剤は鎮痛薬である。
【0062】
有利には、鎮痛薬は、パラセタモール、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬、コルチゾン誘導体、およびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0063】
有利には、非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、アルミノプロフェン、アセクロフェナク、メフェナム酸、ニフルミン酸、チアプロフェン酸、セレコキシブ、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、メロキシカム、ナブメトン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、およびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0064】
有利には、コルチゾン誘導体は、ベタメタゾン、シプロフロキサシン、コルチバゾール、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンならびにそれらの組み合わせの中から選択される。
【0065】
有利には、鎮痛薬は、コデイン、ジヒドロコデイン、トラマドール、およびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0066】
有利には、鎮痛薬は、モルヒネ、ブプレノルフィン、フェンタニル、ヒドロモルホン、ナルブフィン、オキシコドン、ペチジンおよびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0067】
本発明はまた、上述のような疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物に関する。
【0068】
有利には、本発明による組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、顆粒、軟カプセル、ロゼンジ、凍結乾燥物、懸濁液、ゲル、シロップ、溶液、水/油エマルジョン、油/水エマルジョン、油、クリーム、ミルク、スプレー、軟膏、アンプル、坐剤、点眼剤、膣坐剤、膣カプセル、吸入用液体、乾燥粉末吸入器、加圧定量吸入器の形態である。
【0069】
好ましくは、本発明による組成物は、胃耐性カプセルまたは舌下錠の形態である。
【0070】
有利には、本発明による組成物は医薬組成物である。
【0071】
有利には、本発明による組成物は栄養補助食品である。
【0072】
本発明はまた、上述のような疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤、および少なくとも1種の追加の治療剤を含む組成物に関する。
【0073】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0074】
特に明記されない限り、本発明において明示的に定義されていない置換基の命名法は、官能基の末端部分とそれに続く結合点に向かって隣接する官能基を命名することによって得られる。
【0075】
「アルキル」は、それ自体でまたは別の置換基の一部として、式CnH2n+1を有するヒドロカルビル基を指し、式中、nは、1以上の数である。一般に、本発明のアルキル基は、1~12個の炭素原子、好ましくは1~8個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、さらにより好ましくは1~2個の炭素原子を含む。アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、本発明において示されるように置換されていてもよい。本発明の実施の目的に適したアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチル;ペンチルおよびその異性体、例えばn-ペンチルおよびiso-ペンチル;ならびにヘキシルおよびその異性体、例えばn-ヘキシルおよびiso-ヘキシル;ヘプチルおよびその異性体(例えばn-ヘプチル、iso-ヘプチル);オクチルおよびその異性体(例えばn-オクチル、iso-オクチル);ノニルおよびその異性体(例えばn-ノニル、iso-ノニル);デシルおよびその異性体(例えばn-デシル、iso-デシル);ウンデシルおよびその異性体;ドデシルおよびその異性体の中から選択され得る。好ましくは、アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルおよびn-デシルの中から選択され得る。飽和および分岐アルキル基は、限定されないが、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、3,3-ジエチルヘキシルの中から選択され得る。好ましいアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチルおよびt-ブチルである。Cx-Cy-アルキルは、x~y個の炭素原子を含むアルキル基を指す。
【0076】
接尾辞「エン」(「アルキレン」)がアルキル基と併せて使用される場合、それは、本明細書中で定義されるようなアルキル基が他の基との結合点として2つの単結合を有することを示す。「アルキレン」という用語は、メチレン、エチレン、メチルメチレン、プロピレン、エチルエチレン、および1,2-ジメチルエチレンを含む。
【0077】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分岐鎖であってもよい不飽和ヒドロカルビル基を指す。適切なアルケニル基は、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、さらにより好ましくは2~6個の炭素原子を含む。アルケニル基の例は、エテニル、2-プロペニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-ペンテニルおよびその異性体、2-ヘキセニルおよびその異性体、2,4-ペンタジエニルならびに他の類似の基である。
【0078】
0067]「アルキニル」という用語は、本明細書で使用される場合、不飽和が1つ以上の炭素-炭素三重結合の存在に起因する一価不飽和ヒドロカルビル基のクラスを指す。アルキニル基は、一般に、および好ましくは、アルケニル基について本明細書で上述したのと同じ数の炭素原子を有する。限定されないが、アルキニル基のいくつかの例としては、エチニル、2-プロピニル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ペンチニルおよびその異性体、2-ヘキシニルおよびその異性体等が挙げられる。
【0079】
「アルコキシ」は、酸素原子によって別の部分に結合している、本明細書で上に定義されるアルキル基を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、イソプロポキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、1つ以上の置換基で任意選択で置換されていてもよい。本発明の化合物に含まれるアルコキシ基は、任意選択で可溶化基で置換されていてもよい。
【0080】
「アリール」は、本明細書で使用される場合、単環(例えばフェニル)、または一緒に縮合している(例えばナフチル)もしくは共有結合している複数の芳香環を有する多価不飽和芳香族ヒドロカルビル基を指し、一般に5~18個の原子、好ましくは5~12個の原子、より好ましい様式では6~10個の原子を含み、前記環の少なくとも1つは芳香族である。芳香環は、任意選択で、それに縮合した1つまたは2つの追加の環(シクロアルキル、ヘテロシクリル、またはヘテロアリール)を含んでもよい。アリールはまた、本明細書中に列挙される炭素環系の部分水素化誘導体を含むことが意図される。アリールの例としては、フェニル、ビフェニリル、ビフェニレニル、5-または6-テトラリニル、ナフタレン-1-または-2-イル;4-、5-、6または7-インデニル;1-、2-、3-、4-、または5-アセナフチレニル;3-、4-または5-アセナフテニル;1-または2-ペンタレニル;4-または5-インダニル;5-、6-、7-または8-テトラヒドロナフチル;1,2,3,4-テトラヒドロナフチル;1,4-ジヒドロナフチル;1-、2-、3-、4-または5-ピレニルが挙げられる。
【0081】
アリール基中の少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられる場合、得られた環は、本明細書では「ヘテロアリール」環と呼ばれる。
【0082】
「アルキルアリール」は、アルキル基で置換されたアリール基を指す。
【0083】
「アミノ酸」は、アルファ-アミノカルボン酸、すなわちカルボン酸基のアルファ位にカルボン酸官能基およびアミノ官能基を含む分子、例えばタンパク質構成酸または非タンパク質構成アミノ酸を指す。
【0084】
「タンパク質構成アミノ酸」は、生体内のリボソームによるメッセンジャーRNAの翻訳中にタンパク質に組み込まれるアミノ酸、すなわち、アラニン(ALA)、アルギニン(ARG)、アスパラギン(ASN)、アスパルテート(ASP)、システイン(CYS)、グルタメート(グルタミン酸)(GLU)、グルタミン(GLN)、グリシン(GLY)、ヒスチジン(HIS)、イソロイシン(ILE)、ロイシン(LEU)、リジン(LYS)、メチオニン(MET)、フェニルアラニン(PHE)、プロリン(PRO)、ピロリジン(PYL)、セレノシステイン(SEL)、セリン(SER)、スレオニン(THR)、トリプトファン(TRP)、チロシン(TYR)またはバリン(VAL)を指す。
【0085】
「非タンパク質構成アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、生物の遺伝コードに天然にコードされていない、または見られないアミノ酸を指す。限定されないが、非タンパク構成アミノ酸のいくつかの例は、オルニチン、シトルリン、アルギニノスクシネート、ホモセリン、ホモシステイン、システイン-スルフィン酸、2-アミノムコン酸、δ-アミノレブリン酸、β-アラニン、シスタチオニン、γ-アミノ酪酸、ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)、5-ヒドロキシトリプトファン、D-セリン、イボテン酸、α-アミノブチレート、2-アミノイソブチレート、D-ロイシン、D-バリン、D-アラニン、およびD-グルタメートである。
【0086】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、1個または2個の環構造を有する環状アルキル基、すなわち一価飽和または不飽和ヒドロカルビル基を指す。「シクロアルキル」という用語は、単環式または二環式ヒドロカルビル基を含む。シクロアルキル基は、環内に3個以上の炭素原子を含んでもよく、一般に、本発明によれば、3~10個、より好ましくは3~8個、さらにより好ましくは3~6個の炭素原子を含む。シクロアルキル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられ、シクロプロピルが特に好ましい。
【0087】
「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、活性成分が製剤化および/または投与され、動物、好ましくはヒトに投与された場合に有害なアレルギーまたは他の反応を引き起こさない溶媒または希釈剤として使用される不活性担体または支持物質を指す。これには、すべての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤、ならびに他の同様の成分が含まれる。ヒト投与の場合、製剤は、例えば米国の食品医薬品局(FDA)または欧州医薬品庁(EMA)等の規制当局によって要求されるように、無菌性、一般的な安全性および純度の特定の基準を満たさなければならない。本発明の意味の範囲内で、「薬学的に許容される賦形剤」は、全ての薬学的に許容される賦形剤ならびに全ての薬学的に許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントを含む。
【0088】
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを指す。好ましいハロ基は、フルオロおよびクロロである。
【0089】
「ハロアルキル」は、単独でまたは組み合わせて、1個以上の水素原子が本明細書で上に定義されるハロゲンによって置き換えられている、本明細書で上に定義される意味を有するアルキル基を指す。そのようなハロアルキル基の例として、以下を挙げることができる:クロロメチル、1-ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエチル、および同様の基。「Cx-Cy-ハロアルキル」および「Cx-Cy-アルキル」は、x~y個の炭素原子を含むアルキル基を指す。好ましいハロアルキル基は、ジフルオロメチルおよびトリフルオロメチルである。
【0090】
「ヘテロアルキル」は、1個以上の炭素原子が酸素、窒素および硫黄原子の中から選択されるヘテロ原子によって置き換えられている、本明細書で上に定義されるアルキル基を指す。ヘテロアルキル基において、ヘテロ原子は、アルキル鎖に沿って炭素原子のみに結合しており、すなわち、各ヘテロ原子は、少なくとも1個の炭素原子によって他のすべてのヘテロ原子から隔てられている。しかしながら、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意選択で四級化されていてもよい。ヘテロアルキルは、炭素原子によってのみ別の基または分子に結合し、すなわち、結合原子は、ヘテロアルキル基に含まれるヘテロ原子から選択されない。
【0091】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、単独で、または別の基の一部として、5~12個の炭素原子の芳香環、または融合もしくは共有結合した1個もしくは2個の環を含み、一般に5個もしくは6個の原子を含み、前記環の少なくとも1つが芳香族である環系を指すがこれらに限定されず、これらの環のうちの1つ以上における1つ以上の炭素原子が酸素、窒素および/または硫黄原子で置き換えられており、窒素および硫黄ヘテロ原子が任意選択で酸化され、窒素ヘテロ原子が任意選択で四級化されることが可能である。これらの環は、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロシクリル環に縮合していてもよい。限定されないが、そのようなヘテロアリールのいくつかの例としては、フラニル、チオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、1,3-ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンズイソオキサゾリル、2,1-ベンズイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[l,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニルが挙げられる。
【0092】
シクロアルキル基における少なくとも1個の炭素原子がヘテロ原子で置き換えられる場合、得られた環は、本明細書では「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクリル」と呼ばれる。
【0093】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクロアルキル」または「ヘテロシクロ」という用語は、それ自体で、または別の基の一部として本明細書で使用される場合、炭素原子を含む少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する完全飽和または部分不飽和(例えば、3~7員の単環式基、7~11員の二環式基、または合計3~10個の環原子を含む)の非芳香族環式基を指す。ヘテロ原子を含有する複素環基の各環は、窒素、酸素および/または硫黄原子の中から選択される1個、2個、3個または4個のヘテロ原子を有してもよく、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意選択で酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意選択で四級化されていてもよい。複素環基の炭素原子はいずれも、オキソ(例えば、ピペリドン、ピロリジノン)で置換されていてもよい。複素環基は、環または環系における任意のヘテロ原子または炭素原子に結合していてもよく、原子価はそのように許容される。多環複素環の環は、1つ以上のスピロ原子によって縮合され、架橋され、および/または結合/連結されてもよい。例示的な複素環基には、これらに限定されないが、以下の基が含まれる:オキセタニル、ピペリジニル、アゼチジニル、2-イミダゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ピペリジニル、3H-インドリル、インドリニル、イソインドリニル、2-オキソピペラジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、3-ジオキソラニル、1,4-ジオキサニル、2,5-ジオキシイミダゾリジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロロジニル、インドリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリン-1-イル、テトラヒドロイソキノリン-2-イル、テトラヒドロイソキノリン-3-イル、テトラヒドロイソキノリン-4-イル、チオモルホリン-4-イル、チオモルホリン-4-イルスルホキシド、チオモルホリン-4-イルスルホン、1,3-ジオキソラニル、1,4-オキサチアニル、1H-ピロリジニル、テトラヒドロ-1,1-ジオキソチオフェニル、N-ホルミルピペラジニル、およびモルホリン-4-イル。
【0094】
「前駆体」という用語はまた、本明細書で使用される場合、式(I)または(II)を有する化合物の薬理学的に許容される誘導体、例えばエステルを指し、そのインビボ生体内変換生成物は活性薬物である。前駆体は、バイオアベイラビリティの増加を特徴とし、インビボで活性化合物に容易に代謝される。本発明の目的に適した前駆体には、特にカルボン酸エステル、特にアルキルエステル、アリールエステル、アシルオキシアルキルエステル、およびジオキソレンのカルボン酸エステル;アスコルビン酸エステルが含まれる。
【0095】
「薬学的に許容される」とは、動物、より好ましくはヒトにおける使用について、規制機関によって承認されている状態、または潜在的に承認されている可能性がある状態、または認識された薬局方に記載されている状態を指す。それは、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない物質に関連し得、すなわち、該物質は、該物質が含有される組成物の成分の1つと有害な生物学的作用または有害な相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る。好ましくは、「薬学的に許容される」塩または賦形剤は、欧州薬局方(「Ph.Eur.」と表記)および米国薬局方(英語で「United States Pharmacopeia(USP)」と呼ばれる)によって認可されている任意の塩または任意の賦形剤を指す。
【0096】
「有効成分」という用語は、対象に投与された場合、疾患または状態の1つ以上の症状の進行、重症化または悪化を減速または停止させる;疾患または状態の症状を緩和する;疾患または状態を治癒させる分子または物質を指す。これらの実施形態の1つによれば、治療成分は、天然または合成の小分子である。別の実施形態によれば、治療成分は、例えば、オリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、microRNA(miRNA)、DNA断片、アプタマー、抗体等の生物学的分子である。「薬学的に許容され得る塩」は、これらの塩の酸付加塩および塩基付加塩を含む。適切な酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。引用され得る例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプチン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナフシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩、リン酸塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、およびキシナホ酸塩が挙げられる。適切な塩基性塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例として、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リジン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、モルホリン、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、および亜鉛の塩を挙げることができる。酸および塩基の半塩、例えば化学的カルシウムの半硫酸塩および塩もまた形成され得る。好ましい薬学的に許容される塩は、塩酸塩/塩化物、臭化物/臭化水素酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、硝酸塩、クエン酸塩および酢酸塩である。
【0097】
薬学的に許容される塩は、以下の方法の1つ以上によって調製され得る:
i.化合物を所望の酸と反応させることによる方法;
ii.化合物を所望の塩基と反応させることによる方法;
iii.所望の酸を使用して、化合物の適切な前駆体から塩基性もしくは酸性条件下で酸もしくは塩基不安定性保護基を除去することによる方法、または適切な環状前駆体、例えばラクトンもしくはラクタムを開環することによる方法;または
iv.前記初期塩を適切な酸と反応させることにより、または適切なイオン交換カラムを用いて、化合物の1つの塩を別の塩に変換することによる方法。
【0098】
これらの反応はすべて、一般に溶液中で行われる。塩は、溶液から沈殿させることができ、濾過によって回収することができ、または溶媒の蒸発によって回収することができる。塩のイオン化度は、完全にイオン化されたものからほとんどイオン化されていないものまで様々であり得る。
【0099】
「溶媒和物」は、本明細書において、本発明の化合物と1種以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えばエタノールとを含む分子複合体を説明するために使用される。
【0100】
「置換基」または「置換」という用語は、化合物または基上の水素基が、保護されていない形態で、または保護基によって保護されている場合に反応条件下で実質的に安定な任意の所望の基によって置き換えられることを示す。好ましい置換基の例としては、これらに限定されないが、ハロゲン(クロロ、ヨード、ブロモ、もしくはフルオロ);アルキル;アルケニル;上記のアルキニル;ヒドロキシ;アルコキシ;ニトロ;チオール;チオエーテル;イミン;シアノ;アミド;ホスホナト;ホスフィン;カルボキシル;チオカルボニル;スルホニル;スルホンアミド;ケトン;アルデヒド;エステル;酸素(-O);ハロアルキル(例えばトリフルオロメチル);縮合環もしくは非縮合環単環もしくは多環であり得るシクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルもしくはシクロヘキシル);または縮合環もしくは非縮合環単環式もしくは多環であってもよいヘテロシクロアルキル(例えば、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルまたはチアジニル);縮合もしくは非縮合単環もしくは多環アリールもしくはヘテロアリール(例えば、アリール、ヘテロアリール、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルもしくはチアジニル);縮合もしくは非縮合単環または多環(例えば、アリール、ヘテロアリール、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニルもしくはチアジニル)、フェニル、ナフチル、ピロリル、インドリル、フラニル、チオフェニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ピラジジニル、ピリダジミニル、ピリダジミニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチオフェニルまたはベンゾフラニル);アミノ(一級、二級または三級);COCH;CONH2;OCHCONH;NH2;SONH;OCHF;FC;OCFが挙げられ、さらに、これらの基は、縮合環架橋または構造、例えば-OCHO-によって任意選択で置換されていてもよい。これらの置換基は、これらの群の中から選択される置換基によって任意選択でさらに置換されていてもよい。ある特定の表現において、「置換基」という用語または「置換された」という形容詞は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ハロアルキル、-C(O)NR1112、-NR13C(O)R14、ハロ、-OR13、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、-C(O)R13、-NR1112、-SR13、-C(O)OR´13、-OC(O)R13、-NR13C(O)NR1112、-OC(O)NR1112、-NR13C(O)OR14、-S(O)rR13、-NR13S(O)rR14、-OS(O)rR14、S(O)rNR1112、-O、-S、および-NR13で構成される群から選択される置換基を指し、式中、rは1または2であり;R11およびR12は、各出現について、独立して、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたシクロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアリールアルキル、もしくは任意選択で置換されたヘテロアリールアルキルであり;または、R11およびR12は、それらが結合している窒素と一緒になって、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、もしくは任意選択で置換されたヘテロアリールであり;R13およびR14は、各出現について、独立して、H、任意選択で置換されたアルキル、任意選択で置換されたアルケニル、任意選択で置換されたアルキニル、任意選択で置換されたシクロアルキル、任意選択で置換されたシクロアルケニル、任意選択で置換されたヘテロシクロアルキル、任意選択で置換されたアリール、任意選択で置換されたヘテロアリール、任意選択で置換されたアリールアルキルまたは任意選択で置換されたヘテロアリールアルキルである。ある特定の変形例において、「置換基」という用語または「置換された」という形容詞は、可溶化基を指す。
【0101】
「投与」という用語、またはこの用語の変形(例えば「投与する」)は、有効成分を、単独で、または薬学的に許容される組成物の一部としてであるかどうかにかかわらず、状態、症状、または疾患の処置または予防に関連してそれを受ける患者に提供することを指す。
【0102】
「処置する」、「治癒する」、および「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、状態、または疾患および/もしくはそれに関連する症状の軽減、緩和、または消失を含むことが意図される。
【0103】
「予防する」、「妨害する」および「予防」という用語は、本発明で使用される場合、状態、または疾患および/もしくはそれに関連する症状の発症を遅延させる、または妨害する、または予防する;患者が状態または疾患に罹患するのを予防する;あるいは患者が所与の疾患または状態に罹患するリスクを低下させる目的に役立つ方法を指す。
【0104】
不斉炭素の結合は、本明細書において、実線の三角形
【化11】


、点線の三角形
【化12】


、またはジグザグ線
【化13】


を使用して表現され得る。
【発明を実施するための形態】
【0105】
発明の詳細な説明
本発明の主題は、疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩に関する。
【0106】
本発明の主題はまた、上述のような疼痛の予防および/または処置におけるその使用のためのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物に関する。
【0107】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、すべての生細胞に存在する補酵素である。NADは、酸化型NAD+または還元型NADHのいずれかで細胞内に存在する。NADの役割は、代謝の酸化還元反応に関与する電子伝達体の役割である。さらに、NADは、タンパク質の翻訳後修飾に関連してアデノシン二リン酸(ADP)リボシル化等のいくつかの細胞プロセスにも関与している。
【0108】
NADは、トリプトファンまたはアスパラギン酸塩等のアミノ酸から細胞によってデノボで合成され得る。しかしながら、そのような合成は、NAD合成の主な経路がサルベージ経路であり、それによって細胞および主に細胞核が前駆体からNADを再形成するために化合物を再循環させるため、限界がある。NADの前駆体には、ナイアシン、ニコチンアミドリボシド、ニコチンアミドモノヌクレオチドおよびニコチンアミドが含まれる。
【0109】
NMNは、サルベージ経路によるNADの合成を可能にする化合物の1つであり、下記式を有する。
【0110】
【化14】

【0111】
本発明者らは、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および本発明による組成物の使用が、疼痛を処置するために一般的に使用される医薬品に匹敵する疼痛に対する効果を得ることを可能にすることを実際に実証した。より正確には、本発明によるNMNおよび本発明による組成物の使用は、疼痛刺激に応答して発生する疼痛の強度を軽減する手段を提供するため、疼痛を予防する能力を提供する。本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩、および組成物の使用は、既に存在する疼痛の処置にも有効である。
【0112】
さらに、体内に自然に存在する分子であるNMNの使用には多くの利点がある。特に、本発明によるNMNおよび組成物は、患者による十分な耐性を示す。本発明によるNMNおよび組成物の使用は、実際に患者にアレルギーを誘発しない。さらに、本発明によるNMNおよび組成物の使用は、従来の鎮痛薬で頻繁に遭遇する有害な副作用、例えば、潰瘍、肝毒性、抗凝血、眠気、悪心および嘔吐を誘発しない。
【0113】
さらに、NMNはまた、モルヒネまたはアヘン誘導体を含む鎮痛薬とは異なり、身体的または心理的依存の現象を誘発しない。したがって、疼痛を予防および/または処置するためのNMNおよび本発明による組成物の使用は、患者にとって安全である。
【0114】
したがって、本発明によるNMNおよび組成物は、小児および成人に使用され得る。NMNは実際に、小児による十分な耐性を示す。本発明に関連して、患者は、16歳未満である場合には小児であると見なされ、16歳以上では成人であると見なされる。
【0115】
好ましい一実施形態において、NMNは双性イオンの形態である。「双性イオン」という用語は、一般に分子の隣接していない原子上に位置する反対の符号の電荷をする分子化学種を指すと理解される。
【0116】
薬学的に許容される賦形剤は、増量剤、滑沢剤、香味剤、着色剤、乳化剤、圧縮剤、希釈剤、保存剤、ゲル化剤、可塑剤、界面活性剤、またはそれらの組み合わせの中から選択され得る。当業者は、彼らが選択したであろうガレヌス形態に基づいて、選択すべき賦形剤を決定することを知っているであろう。
【0117】
本発明に関連して、「賦形剤」は、組成物中にあり、治療効果を有さないNMN以外の任意の物質を指す。賦形剤は、NMNまたは任意の他の追加の治療剤と化学的に相互作用しない。
【0118】
本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、治療有効量で投与され得る。本発明に関連して、治療有効量は、組成物が、所望の治療効果、この場合は疼痛感覚の軽減を得るのに十分な適切な量で患者に投与されることを示す。
【0119】
一実施形態において、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩は、NMNは、0.01mg/kg/日~1000mg/kg/日、好ましくは1mg/kg/日~100mg/kg/日、より好ましい様式では5mg/kg/日~50mg/kg/日、さらにより好ましい様式では10mg/kg/日~20mg/kg/日に含まれる量で使用される。当業者は、患者の年齢および体重、ならびに処置される疼痛の強度に応じて、投与されるNMNの用量を適合させることができる。
【0120】
適切な投薬レベルは、約0.01~250mg/kg/日、約0.05~100mg/kg/日、または約0.1~50mg/kg/日であり得る。この範囲内で、用量は、1日当たり0.05~0.5、0.5~5、または5~50mg/kgであり得る。経口投与の場合、組成物は、好ましくは、処置される患者の症状に基づく用量調整のために、1.0ミリグラム~1000ミリグラムの活性成分、特に1.0ミリグラム、5.0ミリグラム、10.0ミリグラム、15.0ミリグラム、20.0ミリグラム、25.0ミリグラム、50.0ミリグラム、75.0ミリグラム、100.0ミリグラム、150.0ミリグラム、200.0ミリグラム、250.0ミリグラム、300.0ミリグラム、400.0ミリグラム、500.0ミリグラム、600.0ミリグラム、750.0ミリグラム、800.0ミリグラム、900.0ミリグラムおよび1000.0ミリグラムの活性成分を含有する錠剤の形態で提供される。例えば、投薬量は、100mg/日~5000mg/日、好ましくは500mg/日~1000mg/日に含まれ得る。化合物は、1日1~4回、好ましくは1日1回、2回または3回、好ましくは1日3回のスケジュールに基づいて投与され得る。処置期間は、医師次第であり、医師によって決定される。それは、1日~1年またはそれ以上、好ましくは1週間~3ヶ月、より好ましくは2週間~6週間の範囲であり得る。しかしながら、特定の用量レベルおよび投薬頻度、ならびに所与の患者に対する期間は様々であり得、様々な要因、特に使用される特定の化合物の作用の効力、この化合物の代謝安定性および作用期間、対象の年齢、体重、全般的健康状態、性別、食事、投与様式および投与時間、排泄速度、医薬の組み合わせ、ならびに処置に供されている宿主に依存することが理解されるべきである。
【0121】
NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩は、10mg/kgの1日用量で、最小50mg/日および最大1000mg/日で投与され得る。
【0122】
患者の年齢およびその認知状態に基づいて、疼痛を評価するための様々な疼痛尺度が存在し、それらは当業者に周知である。以下のスケールがある:
-疼痛の強度または特徴を伝えることができる成人または4~6歳(学齢期)の子供のいずれかの患者による自己評価(自己報告);
-他者評価、すなわち、介護者による、伝達不可能な成人(高齢者、集中治療を受けている患者、複数の障がい者等)または4歳未満の子供の痛みの評価。
【0123】
小児における自己報告疼痛のスケールには、特に、垂直視覚的類似度(VAS:vertical visual analogue)スケール、数値(NS)スケール、顔面疼痛スケール、ポーカーチップスケール(poker chips scale)、および小児が疼痛を位置付ける身体図が含まれる。
【0124】
小児の急性疼痛の他者評価スケールには、新生児顔面コーディングシステム(NFCS:Neonatal Facial Coding System)、新生児用の新生児疼痛スケール(NIPS:Neonatal Infant Pain Scale)、顔面表情、脚および腕の動き、叫ぶこと、およびコンソーラビリティ(consolability)の観察に基づくスケール(すなわち、「顔、脚、活動、叫び声、コンソーラビリティ(Face、Legs、Activity、Cry、Consolability)」またはFLACC)、快適スケール(または「快適行動」スケール)、未熟児疼痛プロファイル(またはPIPP:Premature Infant Pain Profile)、小児外来急性疼痛スケール(またはCHEOPS:Children´s Hospital of Eastern Ontario Pain Scale」)、フランス小児疼痛スケールENVENDOL(Evaluation Enfant Douleur)が含まれる。小児における慢性疼痛のための他者評価スケールには、フランス新生児疼痛および不快性スケールEDIN(Evaluation de Douleur et d´Inconfort du Nouveau-ne)、客観的疼痛スケール、逆スコアリングを伴うAmiel-Tisonシステム、Gustave-Roussy小児疼痛スケール(Douleur Enfant Gustave-Roussy-DEGR)、フランス小児疼痛他者評価スケールHEDEN(Hetero Evaluation de la Douleur de l´Enfant)、およびSaint-Antoine疼痛質問票(Questionnaire de la Douleur de Saint-Antoine-QDSA)が含まれる。
【0125】
成人の自己評価(自己報告)スケールには、垂直視覚的類似度(vertical visual analogue)スケール、数値評価スケール(NRS)、および単純言語評価スケール(VRS:verbal rating scale)が含まれる。成人における他者評価スケールには、Algoplus試験、Doloplus試験、および高齢者の行動疼痛評価スケール(Evaluation Comportementale Chez la Personne Agee-ECPA)が含まれる。最後に、神経障害性疼痛の評価のための特定の試験:DN4試験(Douleur Neuropathique 4 Questions)がある。
【0126】
本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、1日1回または1日複数回投与され得る。特に、本発明によるNMNおよび組成物は、1日1~12回、好ましくは1日3~10回、より好ましくは1日5~8回投与され得る。
【0127】
投与される用量および投与頻度は、特に患者が感じる疼痛の強度に依存する。
【0128】
使用
本発明によれば、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、疼痛を予防および/または処置するために使用される。一実施形態において、疼痛は神経障害性疼痛ではない。好ましくは、疼痛は侵害受容性疼痛である。
【0129】
本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、特に疼痛に対する感受性を軽減するために使用される。一実施形態において、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、およびそれを含む組成物は、異痛症を軽減するために使用される。本発明に関連して、異痛症は、通常は疼痛を引き起こさない刺激に応答して感じられる疼痛である。換言すれば、異痛症の状況では、患者の疼痛耐性閾値が低下する。したがって、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体またはその薬学的に許容される塩、およびそれを含む組成物の使用は、患者の疼痛耐性の正常な閾値を回復させ、異痛症の現象を排除するか、または少なくとも軽減することを可能にする。当業者に周知の様々な異なる技術が、ヒトにおける異痛症を評価するために使用される。ヒトにおける異痛症は、例えば、創傷(術後表面)上の、またはカプサイシンの皮内注射後の、または皮膚への熱の適用後の、異なるフィラメントによる刺激(フォン・フレイ試験の原理)によって測定することができる。異痛症はまた、例えば手を氷に浸した後、またはある領域に所与の温度で所与の時間熱を加えた後、または異なる部位(腕、膝、会陰部、肛門等)に規定の圧力を加えた後に、患者が疼痛のスコアを示す質問票を使用して測定され得る。評価の別の可能な手法は、非疼痛誘発性であることが知られている刺激で領域を刺激し、患者が感じる疼痛を質問票によって評価することである。
【0130】
一実施形態において、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、痛覚過敏を軽減するために使用される。本発明に関連して、痛覚過敏は、疼痛誘発刺激に応答して悪化する疼痛として定義される。
【0131】
一実施形態において、疼痛は内臓痛である。本発明に関連して、内臓痛は、胸部、腹部および骨盤の臓器の侵害受容器の活性化に起因する。そのような疼痛には、特に、膨張感、切り傷、火傷、およびそれらの組み合わせが含まれ得る。「膨張」とは、伸張、痙攣、引っ張り、圧迫または圧搾、およびねじれ等の任意の症状を指す。内臓痛は、特に、腸間膜上の突然の牽引、漿膜の伸張、二次的膨張を引き起こす内臓の圧縮、胃または腸等の中空器官の膨張によって引き起こされ得る。臨床的観点から、内臓痛は、炎症、感染、胃腸運動障害等の正常な機械的プロセスの途絶、腫瘍および虚血によって引き起こされ得る。
【0132】
一実施形態において、内臓痛は、女性または男性の泌尿生殖路内で感じる痛みである。泌尿生殖器(または尿生殖器)系には、腎臓、尿管、膀胱、尿道、女性生殖器系、男性生殖器系、卵巣、および精巣が含まれる。
【0133】
そのような疼痛は、特に間質性膀胱炎を示し得る。間質性膀胱炎または有痛性膀胱症候群は、異常な尿意切迫(緊急および/または頻繁な尿意)ならびに下腹部および膀胱における著しい疼痛を特徴とする膀胱の炎症性疾患であり、疼痛の特定の部位は、女性では尿道(膀胱から身体の外部に尿を運ぶ管)または膣であり、時に排尿困難を伴う。症状の重症度は人によって異なる。疼痛はまた、細菌、真菌またはウイルス源に起因しない泌尿生殖路の炎症に起因し得る。例えば、疼痛は、非微生物性膀胱炎によって引き起こされ得る。
【0134】
一実施形態において、内臓痛は、尿路感染によって引き起こされる疼痛である。尿路感染は、細菌、真菌、もしくはウイルス感染、またはそれらの組み合わせによって引き起こされ得る。尿路感染は、腎臓、尿管、膀胱、尿道、および前立腺等の泌尿生殖系の複数の器官に影響を及ぼし得る。これは、排尿時の灼熱感を伴う、または伴わない疼痛の形態で現れることが多い。尿路感染は、膀胱炎、尿道炎、腎盂腎炎、前立腺炎、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0135】
膀胱炎は、最も一般的な形態の尿路感染である。これは膀胱の炎症である。膀胱炎は、大腸菌(Escherichia coli)等の腸内細菌の増殖によって引き起こされることがあり、大腸菌の多くは肛門の周りに見られる。女性では、細菌は肛門領域から尿路を介して膀胱に移動し、それによって局所炎症を引き起こす。男性では、膀胱炎は、クラミジアまたは淋菌感染等の細菌感染によって引き起こされることが多い。膀胱炎は、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)等の真菌による真菌感染によって引き起こされることがある。
【0136】
尿道炎は、尿道、すなわち膀胱を尿路に接続する管の炎症を指す。男性では、前立腺が尿道の近くに位置することを考えると、炎症は前立腺にも影響を及ぼす可能性があり、その場合、状態は前立腺炎に対応する。
【0137】
腎盂腎炎は、腎盂、すなわち腎臓に尿を集める腔の炎症を指す。これは、細菌感染、特に処置が不十分な膀胱炎によって引き起こされることが多い。この場合、細菌は尿管に沿って上昇し、腎臓に感染する。
【0138】
1つの好ましい実施形態において、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、膀胱炎によって引き起こされる疼痛を処置または予防するために使用される。したがって、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、尿路感染によって引き起こされる疼痛を処置する手段を提供する。
【0139】
投与様式およびガレヌス形態
本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、様々な経路:経口、眼、吸入、舌下、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、経皮、膣、硬膜外、局所、膀胱内、または直腸を介して投与される。好ましくは、NMNおよび本発明による組成物は、経口経路を介して投与される。
【0140】
本発明による組成物は、錠剤、カプセル、サシェ、顆粒、軟カプセル、凍結乾燥物、ロゼンジ、懸濁液、ゲル、シロップ、溶液、水/油エマルジョン、油/水エマルジョン、油、クリーム、ミルク、スプレー、軟膏、アンプル、坐剤、点眼剤、膣坐剤、膣カプセル、吸入用液体、乾燥粉末吸入器、加圧定量吸入器の形態であり得る。好ましくは、本発明による組成物は、胃耐性カプセルまたは舌下錠の形態である。
【0141】
「胃耐性」という用語は、胃中で溶解しないガレヌス形態を指すと理解される。そのようなガレヌス形態は、遅延放出を有するように、すなわち、腸内で溶解することができるように、胃の酸性pH(pH<2)に耐性のあるコーティングまたはコーティング組成物を有するように設計される。胃耐性の性質は、欧州薬局方によって確立された試験に従って決定される。簡単に言えば、カプセルの胃耐性の性質は、崩壊装置内で、崩壊媒体としての37℃の0.1M塩酸中で測定される。この培地は、胃の物理化学的条件を模倣している。カプセルをこの培地中で1時間インキュベートする。カプセルは、その中の内容物の損失につながり得る崩壊または亀裂の兆候を示すべきではない。次いで、カプセルを、pH6.8を有するリン酸緩衝溶液中、37℃で1時間インキュベートするが、この溶液は、欧州薬局方の推奨に従う腸環境の条件を模倣している。カプセルは1時間未満で完全に崩壊しなければならない。
【0142】
「舌下錠剤」という用語は、活性成分が舌下粘膜、特に舌下静脈および動脈によって吸収されるために舌の下に配置されるガレヌス形態を意味すると理解される。
【0143】
本発明による組成物はまた、即時放出性を有するように設計されたガレヌス形態であってもよく、そのようなガレヌス形態は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)前駆体の迅速な吸収、したがって作用開始の減少を可能にするのに役立つ。即時放出型のガレヌス形態には、特に分散性錠剤、口腔分散性錠剤、発泡性錠剤および経口凍結乾燥物が含まれる。
【0144】
本発明による組成物はまた、遅い(減速された)放出を有するように設計されたガレヌス形態であってもよい。NAD前駆体の溶解および吸収は腸内で生じ、それによって胃の刺激または酸性pHで脆弱な活性成分の分解が制限される。これらは、主に胃耐性形態であり、すなわち、錠剤または顆粒は、酸性媒体に不溶性であるが、アルカリ性媒体または腸リパーゼによって分解される脂質媒体中の水に対して透過性であるポリマーフィルムでコーティングされている。
【0145】
本発明による組成物はまた、逐次および持続放出を有するように設計されたガレヌス形態であってもよい。有効血漿濃度が患者の体内でより長期間にわたって維持されることを確実にするために、逐次放出(正確な時間間隔での放出)および持続放出(枯渇するまでの活性成分の連続放出)を有するガレヌス形態は、経時的に広がる活性成分の放出を促進する。そのようなガレヌス形態は、より長期間にわたって患者の疼痛を和らげ、医薬の投薬量を分散させる手段を提供する。
【0146】
適切な投与様式およびガレヌス形態は、処置される疼痛の解剖学的位置および患者の関連情報に基づいて当業者によって決定される。これに関しては、Remington´s Pharmaceutical Sciencesの最新版を参照されたい。
【0147】
本発明による組成物は、これらの製剤にそれ自体適した支持物質または担体、賦形剤および希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカントガム、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロース、水(滅菌)、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、食用油、植物油および鉱油、またはそれらの適切な混合物を用いて製剤化され得る。製剤は、任意選択で、医薬製剤に一般的に使用される他の物質、例えば滑沢剤、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、分散剤、崩壊剤、増量剤、充填剤、保存剤、甘味剤、香味剤、流動調整剤、離型剤等を含有してもよい。組成物はまた、活性化合物またはその中に含有される化合物の迅速な、持続的なまたは遅い(減速された)放出を可能にするような様式で製剤化され得る。
【0148】
本発明による組成物は、好ましくは単位用量の形態であり、適切な様式で、例えば箱、ブリスターパック、バイアル、ボトル、サシェ、アンプルに、または単回用量もしくは複数回用量の包装(適切にラベル付けされていてもよい)に適した任意の他の適切な支持体もしくは容器に包装されてもよく、任意選択で、製品の関連情報および/または使用説明書を含む1つ以上の添付文書を含む。
【0149】
治療的組み合わせ
有利には、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、および組成物は、少なくとも1種の追加の治療剤と組み合わせて使用される。一実施形態において、本発明による組成物は、NMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体、またはその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される賦形剤、および少なくとも1種の追加の治療剤を含む。
【0150】
有利には、少なくとも1種の追加の治療剤は、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、およびそれらの組み合わせの中から選択される。したがって、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体もしくはその薬学的に許容される塩、または組成物の使用は、細菌感染、真菌感染もしくはウイルス感染、またはそれらの組み合わせに関連する侵害受容性疼痛を軽減することを可能にする。例えば、本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体もしくはその薬学的に許容される塩、または組成物は、抗生物質と組み合わせて使用され得る。そのような組み合わせは、局所適用、例えば、一方では細菌性狭心症の場合に微生物量を減少させ、局所炎症に関連する疼痛を和らげることを可能にする喉用ロゼンジに有用性を有することが証明され得る。本発明によるNMN、その薬学的に許容される前駆体、その薬学的に許容される誘導体もしくはその薬学的に許容される塩、または組成物はまた、抗真菌剤と組み合わせて使用され得る。そのような組み合わせは、例えば、尿路、膣、皮膚真菌症等の治療または予防に有用であることが判明し得る。
【0151】
一実施形態において、抗生物質は、ベータ-ラクタム、サイクリン、マクロライド、関連マクロライド、キノロン、フルオロキノロン、キノリン、アミノグリコシド、フシジン酸、リンコサミド、フェニコール、ポリミキシン、スルホンアミド(トリメトプリムに関連しているか否かにかかわらない)、アンチレパー(antilepers)、ホスホマイシン、ムピロシン、ニトロフラントイン、ニトロフラン、ニトロイミダゾール、オキサゾリジノン、糖ペプチド、リポペプチド、ポリミキシン、および抗結核薬の中から選択され得る。
【0152】
一実施形態において、抗真菌剤は、アムホテリシンB、フルシトシン、アゾール誘導体、テルビナフィン、硫化セレン、トリクロカルバン、ナイスタチン、グリセオフルビン、アモロルフィン、サリチル酸、シクロピロキソラミン、アモロルフィン、トルファネート、およびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0153】
抗真菌性アゾール誘導体は、特に、ビフォナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、フルコナゾール、イソコナゾール、イトロコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、ボリコナゾール、およびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0154】
抗ウイルス薬は、特に、CCR5受容体(C-Cケモカイン受容体5型)のアンタゴニスト、全身性抗ウイルス薬、リン酸誘導体、インテグラーゼ阻害剤、融合阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤を除くヌクレオシドおよびヌクレオチド、ならびにそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0155】
一実施形態において、本発明による組成物はまた、少なくとも1種の鎮痛薬を含む。鎮痛薬は、WHO分類によるレベルI、レベルII、レベルIII鎮痛薬、またはそれらの組み合わせに属し得る。
【0156】
一実施形態において、レベルI鎮痛薬は、パラセタモール、アスピリン、非ステロイド性抗炎症薬、コルチゾン誘導体、およびそれらの組み合わせの中から選択される。
【0157】
非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、アルミノプロフェン、アセクロフェナク、メフェナム酸、ニフルミン酸、チアプロフェン酸、セレコキシブ、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、エトドラク、エトリコキシブ、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、メロキシカム、ナブメトン、ピロキシカム、スリンダク、テノキシカム、およびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0158】
コルチゾン誘導体は、ベタメタゾン、シプロフロキサシン、コルチバゾール、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロンの中から選択され得る。
【0159】
レベルII鎮痛薬は、コデイン、ジヒドロコデイン、トラマドール、およびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0160】
レベルIII鎮痛薬は、モルヒネ、ブプレノルフィン、フェンタニル、ヒドロモルホン、ナルブフィン、オキシコドン、ペチジンおよびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0161】
本発明に関連して、「賦形剤」は、組成物中にあり、治療効果を有さないNMN以外の任意の物質を指す。賦形剤は、NMNまたは任意の他の追加の治療剤と化学的に相互作用しない。
【0162】
賦形剤は、増量剤、滑沢剤、香味剤、着色剤、乳化剤、圧縮剤、希釈剤、保存剤、ゲル化剤、可塑剤、界面活性剤、またはそれらの組み合わせの中から選択され得る。当業者は、彼らが選択したであろうガレヌス形態に基づいて、選択すべき賦形剤を決定することを知っているであろう。
【0163】
本発明による組成物は医薬組成物であってもよい。この場合、賦形剤は、本明細書で上に定義される薬学的に許容される賦形剤である。
【0164】
本発明による組成物は栄養補助食品であってもよい。
【0165】
NMNの誘導体および前駆体
本発明によれば、NMN誘導体は、アルファニコチンアミドモノヌクレオチド(α-NMN)、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN-Hと表記)、式(I):
【0166】
【化15】


の化合物またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくはその薬学的に許容される結晶(式中、
-Xは、O、CH、S、Se、CHF、CFおよびC=CHの中から選択され;
-Rは、H、アジド、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C)チオアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、およびORの中から選択され;式中、Rは、Hおよび(C~C)アルキルから選択され;
-R、R、RおよびRは、互いに独立して、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、(C~C12)アルキル、(C~C12)チオアルキル、(C~C12)ヘテロアルキル、(C~C12)ハロアルキルおよびORの中から選択され;式中、Rは、H、(C~C12)アルキル、C(O)(C~C12)アルキル、C(O)NH(C~C12)アルキル、C(O)O(C~C12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C~C12)アルキルアリール、C(O)NH(C~C12)アルキルアリール、C(O)O(C~C12)アルキルアリールおよびC(O)CHRAANHから選択され;式中、RAAは、タンパク質構成アミノ酸から選択される側鎖であり;
-Rは、H、アジド、シアノ、(C~C)アルキル、(C~C)チオアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、およびORの中から選択され;式中、Rは、Hおよび(C~C)アルキルから選択され;
-Rは、H、P(O)R10、およびP(S)R10の中から選択され;式中、
-RおよびR10は互いに独立して、OH、OR11、NHR13、NR1314、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C12)アリール、(C~C)アルキルアリール、(C~C)アリールアルキル、(C~C)ヘテロアルキル、(C~C)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、およびNHCHRA´C(O)R12の中から選択され;式中、
-R11は、(C~C10)アルキル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C18)アリール、(C~C10)アルキルアリール、置換(C~C12)アリール、(C~C10)ヘテロアルキル、(C~C10)ヘテロシクロアルキル、(C~C10)ハロアルキル、ヘテロアリール、-(CHC(O)(C~C15)アルキル、-(CHOC(O)(C~C15)アルキル、-(CHOC(O)O(C~C15)アルキル、-(CHSC(O)(C~C15)アルキル、-(CHC(O)O(C~C15)アルキル、および-(CHC(O)O(C~C15)アルキルアリール(式中、nは、1~8から選択される整数である)、P(O)(OH)OP(O)(OH);ハロゲン、ニトロ、シアノ、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、-N(R11a、C~Cアシルアミノ、-COR11b、-OCOR11b;NHSO(C~Cアルキル)、-SON(R11aSO(式中、R11aの各々は、Hおよび(C~C)アルキルから独立して選択され、R11bは、OH、C~Cアルコキシ、NH、NH(C~Cアルキル)またはN(C~Cアルキル)から独立して選択される)の中から選択され;
-R12は、H、C~C10アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~C10ハロアルキル、C~C10シクロアルキル、C~C10ヘテロシクロアルキル、C~C18アリール、C~Cアルキルアリール、およびC~C12ヘテロアリールの中から選択され;上記アリール基またはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、C~Cアルキル、C~Cアルコキシおよびシアノの中から選択される1つまたは2つの基で任意選択で置換されており;ならびに
-RおよびRA´は、独立して、H、(C~C10)アルキル、(C~C10)アルケニル、(C~C10)アルキニル、(C~C10)シクロアルキル、(C~C10)チオアルキル、(C~C10)ヒドロキシルアルキル、(C~C10)アルキルアリール、および(C~C12)アリール、(C~C10)ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、-(CHNHC(=NH)NH、(1H-インドール-3-イル)メチル、(1H-イミダゾール-4-イル)メチル、タンパク質構成アミノ酸もしくは非タンパク質構成アミノ酸の中から選択される側鎖の中から選択され;上記アリール基は、ヒドロキシル、(C~C10)アルキル、(C~C)アルコキシ、ハロゲン、ニトロおよびシアノの中から選択される基で任意選択で置換されており;または
-RおよびR10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、-R-R10-が-CH-CH-CHR-を表す6員環を形成し;式中、Rは、H、(C~C)アリール基および(C~C)ヘテロアリール基の中から選択され、前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシおよびシアノで任意選択で置換されており;または
およびR10は、それらが結合しているリン原子と一緒になって、-R-R10-が-O-CH-CH-CHR-O-を表す6員環を形成し;式中、Rは、H、(C~C)アリール基および(C~C)ヘテロアリール基の中から選択され、前記アリール基もしくはヘテロアリール基は、ハロゲン、トリフルオロメチル、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシおよびシアノで場合により置換されており;
-Rは、H、OR、NHR13、NR1314、NH-NHR13、SH、CN、Nおよびハロゲンの中から選択され;式中、R13およびR14は、H、(C~C)アルキル、(C~C)アルキルアリールおよび-CR-C(O)-ORの中から互いに独立して選択され、式中、RおよびRは、独立して、水素原子、(C~C)アルキル、(C~C)アルコキシ、ベンジル、インドリル、もしくはイミダゾリルであり;前記(C~C)アルキルおよび前記(C~C)アルコキシは、ハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオールもしくはカルボキシル基のうちの1つ以上によって互いに独立して任意選択で置換されていてもよく、前記ベンジル基は、1つ以上のハロゲンもしくはヒドロキシル基によって任意選択で置換されており;または、RおよびRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、1つ以上のハロゲン、アミノ、アミド、グアニジル、ヒドロキシル、チオールおよびカルボキシルによって任意選択で置換されたC~Cシクロアルキル基を形成し;Rは、水素、(C~C)アルキル、(C~C)アルケニル、(C~C)アルキニルまたは(C~C)シクロアルキルであり;
-Yは、CH、CH、C(CHおよびCCHの中から選択され;

【化16】


は、Yに沿った単結合または二重結合を表し;

【化17】


は、Rの位置に応じたアルファもしくはベータアノマー;
またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくは結晶を表す);
または
式(II):
【化18】


を有する化合物またはその立体異性体、その塩、その水和物、その溶媒和物もしくは結晶(式中、
-X´およびX´は、O、CH、S、Se、CHF、CF、およびC=CHの中から独立して選択され;
-R´およびR´13は、H、アジド、シアノ、C~Cアルキル、C1~C8チオアルキル、C1~C8ヘテロアルキルおよびORの中から独立して選択され、式中、Rは、HおよびC1~C8アルキルから選択され;
-R´、R´、R´、R´、R´、R´10、R´11、R´12は、H、ハロゲン、アジド、シアノ、ヒドロキシル、C~C12アルキル、C~C12チオアルキル、C~C12ヘテロアルキル、C~C12ハロアルキルおよびORの中から独立して選択され;式中、Rは、H、C~C12アルキル、C(O)(C~C12)アルキル、C(O)NH(C~C12)アルキル、C(O)O(C~C12)アルキル、C(O)アリール、C(O)(C~C12)アリール、C(O)NH(C~C12)アルキルアリール、C(O)O(C~C12)アルキルアリールまたはC(O)CHRAANH2基の中から選択され得;式中、RAAは、タンパク質構成アミノ酸から選択される側鎖であり;
-R´およびR´は、H、アジド、シアノ、C~CアルキルおよびORの中から独立して選択され、式中、Rは、HおよびC~Cアルキルから選択され;
-R´およびR´14は、H、OR、NHR、NRR´、NH-NHR、SH、CN、Nおよびハロゲンの中から独立して選択され;式中、RおよびR´は、Hおよび(C~C)アルキルアリールから独立して選択され;
-Y´およびY´は、CH、CH、C(CHまたはCCHの中から独立して選択され;
-M´は、Hまたは適切な対イオンから選択され;

【化19】


は、Y´およびY´に応じて単結合または二重結合を表し;

【化20】


は、R´およびR´13の位置に応じてアルファまたはベータアノマーを表す);
およびそれらの組み合わせの中から選択され得る。
【0167】
好ましい第1の実施形態において、薬学的に許容される誘導体は、式(I)を有する化合物である。
【0168】
第1の実施形態の一変形例において、Xは酸素を表す。
【0169】
第1の実施形態の一変形例において、RおよびRはそれぞれ互いに独立して水素を表す。
【0170】
第1の実施形態の一変形例において、R、R、RおよびRは、それぞれ互いに独立して水素またはOHを表す。
【0171】
第1の実施形態の一変形例において、YはCHを表す。
【0172】
第1の実施形態の一変形例において、YはCHを表す。
【0173】
第1の実施形態の一変形例において、Rは水素を表す。
【0174】
第1の実施形態の一変形例において、RはP(O)(OH)を表す。
【0175】
第1の実施形態の1つの変形例において、本発明の化合物は、式I-A~I-Hを有する化合物の中から選択される。
【0176】
【数1】

【0177】
好ましい第1の実施形態の1つの好ましい変形例において、薬学的に許容される誘導体は、下記式を有するアルファ-NMNである。
【0178】
【化21】

【0179】
好ましい第2の実施形態において、薬学的に許容される誘導体は、式(II)を有する化合物である。
【0180】
第2の実施形態の一変形例において、X´1およびX´2は、それぞれ独立して酸素を表す。
【0181】
第2の実施形態の一変形例において、R´7およびR´14は、それぞれ独立してNHを表す。
【0182】
第2の実施形態の一変形例において、R´1および/またはR´13は、それぞれ独立して水素を表す。
【0183】
第2の実施形態の一変形例において、R´6および/またはR´8は、それぞれ独立して水素を表す。
【0184】
第2の実施形態の一変形例において、R´2、R´3、R´4、R´5、R´9、R´10、R´11、およびR´12は、それぞれ独立して水素を表す。
【0185】
第2の実施形態の一変形例において、R´2、R´3、R´4、R´5、R´9、R´10、R´11およびR´12は、それぞれ独立してOHを表す。
【0186】
第2の実施形態の一変形例において、Y´1およびY´2はそれぞれ独立してCHを表す。
【0187】
第2の実施形態の一変形例において、Y´1およびY´2はそれぞれ独立してCH2を表す。
【0188】
第2の実施形態の一変形例において、本発明による化合物は、式II-A~II-Fを有する化合物の中から選択される。
【0189】
【数2】

【0190】
好ましい第4の実施形態において、薬学的に許容される誘導体はNMN-Hである。
【0191】
【化22】

【0192】
有利には、薬学的に許容される前駆体は、ニコチンアミドリボシド(NRと表記):
【0193】
【化23】


または式:
【化24】


を有するジヒドロニコチンアミドリボシド(-NR-Hと表記)またはそれらの組み合わせである。好ましくは、前駆体はニコチンアミドリボシド(NR)である。
【0194】
好ましくは、NMN誘導体は、ジヒドロニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN-H)および/またはアルファ-NMNである。
式(I)および(II)を有する化合物を調製するための化合物調製方法
【0195】
式(I)または式(II)を有する誘導体は、当業者に周知の任意の方法に従って調製され得る。
【0196】
式(I)を有する化合物を調製するための化合物調製方法
【0197】
式(I)を有する誘導体は、国際特許出願WO2017/024255A1に記載の方法に従って調製され得る。
【0198】
特に、式(I)を有する誘導体およびアルファ-NMNは、以下に記載される方法に従って調製され得る。
【0199】
特に、本明細書に開示される式(I)を有する化合物は、基質A~Eから以下に記載されるように調製され得る。これらの反応スキームは決して限定することを意図するものではなく、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくそれらの変更を行うことができることが、当業者によって理解されるべきである。
【0200】
一実施形態によれば、本発明は、上記の式(I)を有する化合物を調製するための化合物調製方法に関する。
【0201】
本方法は、第1のステップにおいて、塩化ホスホリルおよびリン酸トリアルキルの存在下で、式(A)を有する化合物をモノリン酸化し、それにより式(B)を有するホスホロジクロリデートを生成することを含み、
【0202】
【化25】


式中、X、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化26】


は、式(I)を有する化合物について本明細書で上に定義される通りである。
【0203】
第2のステップにおいて、式(B)を有するホスホロジクロリデートは加水分解され、それにより式(C)を有するホスフェートが生成され、
【0204】
【化27】


式中、X、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化28】


は、式(I)を有する化合物について本明細書で上に定義される通りである。
【0205】
一実施形態によれば、式(A)を有する化合物は、当業者に公知の様々な方法によって合成される。
【0206】
一実施形態によれば、式(A)を有する化合物は、式(D)を有するペントースと式(E)を有する窒素誘導体との反応によって合成され(式中、R、R、R、R、R、R、R、Yは、式Iを有する化合物について本明細書で上述した通りである)、それによって式(A-1)を有する化合物が生成され、次いでこれが選択的に脱保護されて式(A)を有する化合物が得られる。
【0207】
【化29】


式中、X、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化30】


は、式(I)を有する化合物について本明細書で上に定義される通りである。
【0208】
一実施形態によれば、Rは、当業者に公知の適切な保護基である。一実施形態において、保護基は、トリアリールメチルおよび/またはシリルの中から選択される。限定されないが、トリアリールメチルのいくつかの例としては、トリチル、モノメトキシトリチル、4,4´-ジメトキシトリチルおよび4,4´,4´´-トリメトキシトリチル基が挙げられる。限定されないが、シリル基のいくつかの例としては、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、トリ-iso-プロピルシリルオキシメチルおよび[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルが挙げられる。
【0209】
一実施形態によれば、ペントースに結合した任意のヒドロキシル基は、当業者に公知の適切な保護基によって保護される。
【0210】
保護基の選択および交換は、十分に当業者の知識および専門技術の範囲内である。保護基は、当業者に周知の方法、例えば、酸(例えば無機酸または有機酸)、塩基またはフッ化物源を用いて除去することもできる。
【0211】
1つの好ましい実施形態において、式(E)を有する窒素誘導体は、ルイス酸の存在下での反応によって式(D)を有するペントースにカップリングされ、それにより式(A-1)を有する化合物が生成される。限定されないが、ルイス酸のいくつかの例としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)、BF.OEt、TiClおよびFeClが挙げられる。
【0212】
一実施形態において、本発明の方法はまた、当業者に周知の様々な方法によって式(A)を有する化合物を還元し、それによって式(A´)を有する化合物を生成する還元ステップをさらに含み、式中、CH、R、R、R、R、R、R、R、Y、
【化31】


は、式(I)を有する化合物について本明細書で上に定義される通りである。
【0213】
1つの特定の実施形態において、本発明は、式I-A、I-C、I-E、I-Gを有する化合物を調製するための化合物調製方法に関する。
【0214】
第1のステップにおいて、式Eを有するニコチンアミドは、ルイス酸の存在下でカップリング反応によって式Dを有するリボース四酢酸にカップリングされ、それにより式A-1を有する化合物が生成される。
【0215】
【化32】

【0216】
第2のステップにおいて、式A-1を有する化合物のアンモニア処理が行われ、それによって式I-Aを有する化合物が生成される。
【0217】
【化33】

【0218】
第3のステップにおいて、塩化ホスホリルおよびリン酸トリアルキルの存在下での式I-Aを有する化合物のモノリン酸化により、式I-A´を有するホスホロジクロリデートが生成される。
【0219】
【化34】

【0220】
第4のステップにおいて、式Bを有するホスホロジクロリデートは加水分解され、それにより式I-Cを有する化合物が生成される。
【0221】
【化35】

【0222】
一実施形態において、式I-Aを有する化合物を還元する還元ステップが行われ、それによって式I-Eを有する化合物が生成される。
【0223】
次いで、式I-Eを有する化合物は、第4のステップに記載のようにモノリン酸化され、加水分解されて、式I-Gを有する化合物が生成される。
【0224】
一実施形態によれば、式(I)を有する化合物は、以下の表中の化合物I-A~I-Hから選択される。
【0225】
【数3】

【0226】
1つの好ましい実施形態において、本発明の化合物は、上記の表の式I-A、I-C、I-E、およびI-Gを有する化合物、またはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物である。さらにより好ましい実施形態において、化合物は、式I-CまたはI-Dを有する化合物、その薬学的に許容される塩および/または溶媒和物である。
【0227】
式(II)を有する誘導体を調製するための誘導体調製方法
【0228】
特に、本明細書に提示される式IIを有する化合物は、基質X~XIIIから以下に記載されるように調製され得る。これらの図は決して限定することを意図するものではなく、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく詳細に関してそれらの変更を行うことができることが、当業者によって理解されるべきである。
【0229】
一実施形態によれば、本発明は、上記の式Iを有する化合物を調製するための化合物調製方法に関する。
【0230】
本方法は、まず、化合物ホスホロジクロリデートXIを得るために、リン酸トリアルキル中の塩化ホスホリルの存在下で、式Xを有する化合物を一リン酸化することからなり、
【0231】
【化36】


式中、X´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、Y´
【化37】


は上に定義される通りである。
【0232】
第2のステップにおいて、第1のステップで得られたホスホロジクロリデートXIの加水分解により、式XIIを有するホスフェート化合物が得られる。
【0233】
【化38】


式中、X´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、Y´、M´、
【化39】


は上に定義される通りである。
【0234】
次いで、本明細書に記載の式IIを有する化合物を得るために、第2のステップで得られた式XIIを有するホスフェート化合物は、第1のステップに記載のように得られた式XIIIを有するホスホロジクロリデート化合物と反応され、
【0235】
【化40】


式中、X´、R´、R´、R´10、R´11、R´12、R´13、R´14、Y´
【化41】


は、式IIについて本明細書に記載の通りである。
【0236】
一実施形態によれば、本方法は、Y´およびY´が同一であり、それぞれCHを表し、X´、X´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、R´、R´10、R´11、R´12、R´13、R´14、Y´、Y´、および
【化42】


が式IIについて本明細書に記載の通りである式IIを有する化合物を得るために、専門家に公知の様々な方法を使用して式IIを有する化合物を還元する還元ステップをさらに含む。
【0237】
一変形例によれば、Rは、当業者に公知の適切な保護基である。トリアリールメチルおよび/またはシリル基は、適切な保護基の例である。限定されないが、トリアリールメチルのいくつかの例としては、トリチル、モノメトキシトリチル、4,4´-ジメトキシトリチルおよび4,4´,4´´-トリメトキシトリチルが挙げられる。限定されないが、シリル基のいくつかの例としては、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、トリ-iso-プロピルシリルオキシメチルおよび[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチルが挙げられる。
【0238】
一代表例によれば、ペントース環に結合した任意のヒドロキシル基は、当業者に公知の適切な保護基によって保護される。
【0239】
保護基の選択および交換は、十分に当業者の知識および専門技術の範囲内である。いかなる保護基も、当技術分野において公知の方法、例えば、酸(例えば無機酸または有機酸)、塩基またはフッ化物源を用いて除去することもできる。
【0240】
1つの好ましい実施形態によれば、式XVを有する窒素化合物は、式X-1を有する化合物を得るために、ルイス酸の存在下でカップリング反応によってペントースXIVに付加される。限定されないが、適切なルイス酸のいくつかの例としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)、BF.OEt、TiClおよびFeClが挙げられる。
【0241】
1つの特定の実施形態によれば、本発明は、式VIIIを有する化合物
【0242】
【化43】


またはその薬学的に許容され得る塩および/もしくは溶媒和物を調製するための化合物調製方法に関する。
【0243】
第1のステップにおいて、式XVを有するニコチンアミドは、ルイス酸の存在下でカップリング反応によってリボース四酢酸XIVに付加され、式X-1を有する化合物が得られる。
【0244】
【化44】

【0245】
第2のステップにおいて、式X-1を有する化合物のアンモニア処理により、式Xを有する化合物が得られる。
【0246】
【化45】

【0247】
第3のステップにおいて、リン酸トリアルキル中の塩化ホスホリルの存在下での式Xを有する化合物のモノリン酸化により、化合物ホスホロジクロリデートXIが得られる。
【0248】
【化46】

【0249】
第4のステップにおいて、式XIIを有するホスフェート化合物を得るために、第3のステップで得られたホスホロジクロリデート化合物XIが部分的に加水分解される。
【0250】
【化47】

【0251】
第5のステップにおいて、式VIIIを有する化合物を得るために、第4のステップで得られた式XIIを有するホスフェート化合物が、次いで第3のステップで説明されたように得られた式XIを有するホスホロジクロリデート化合物と反応される。
【0252】
別の特定の実施形態によれば、本発明は、式IXを有する化合物
【0253】
【化48】


またはその薬学的に許容され得る塩および/もしくは溶媒和物を調製するための化合物調製方法に関する。
【0254】
一変形例によれば、式IXを有する化合物は、上記のように事前に合成された式VIIIを有する化合物から得られる。
【0255】
この実施形態において、式IXを有する化合物を得るために、当業者に公知の適切な還元剤を使用して式VIIIを有する化合物を還元することによって、式IXを有する化合物が得られる。
【0256】
一実施形態によれば、本発明の好ましい化合物は、表2に列挙される化合物II-A~II-Fである。
【0257】
【数4】

【図面の簡単な説明】
【0258】
図1】担体で処置した動物に対するラットにおけるシクロホスファミドの投与によって誘導された侵害受容性スコアおよび侵害受容性閾値を示すグラフである。
図2】ラットにおけるシクロホスファミド投与から2時間後および4時間後の侵害受容性スコアおよび侵害受容性閾値の推移を担体と比較して示すグラフである。
図3】シクロホスファミド投与からT0、T=2時間またはT=4時間後に担体、NMNまたはイブプロフェンが投与された、シクロホスファミドで処置した動物における侵害受容性閾値を示す図である。
図4】シクロホスファミド投与からT0、T=2時間またはT=4時間後に担体、NMNまたはイブプロフェンが投与された、シクロホスファミドで処置した動物における侵害受容性スコアを示す図である。
図5A】各実験群に対するベースライン侵害受容性閾値を示すグラフである。
図5B】実験群の全てに対するベースライン侵害受容性スコアを示すグラフである。
図6A】2時間でCYPによって誘導された異痛症に対するNMN、化合物Aおよび化合物Bの効果についての侵害受容閾値を示すグラフである。
図6B】4時間でCYPによって誘導された異痛症に対するNMN、化合物Aおよび化合物Bの効果についての侵害受容性閾値を示すグラフである。
図7A】2時間でCYPによって誘導された内臓痛に対するNMNの効果を示すグラフである(侵害受容性スコア)。
図7B】4時間でCYPによって誘導された内臓痛に対するNMNの効果を示すグラフである(侵害受容性スコア)。
図8A】2時間でCYPによって誘導された内臓痛に対する化合物Aの効果を示すグラフである(侵害受容性スコア)。
図8B】4時間でCYPによって誘導された内臓痛に対する化合物Aの効果を示すグラフである(侵害受容性スコア)。
図9A】2時間でCYPによって誘導された内臓痛に対する化合物Bの効果を示すグラフである(侵害受容性スコア)。
図9B】2時間でCYPによって誘導された内臓痛に対する化合物Bの効果を示すグラフである(侵害受容性スコア)。
【実施例
【0259】
本明細書の残りの部分において、記載される実施例は、本発明の例示として意図されており、決してその範囲を限定することを意図していない。
【0260】
実施例1
【0261】
本発明によるNMNの使用の有効性を、侵害受容性疼痛のモデルにおいてラットで評価した。より正確には、使用されるモデルは内臓痛モデルである。シクロホスファミド(CYP)の投与は、ラットにおいて膀胱炎を模擬するための手段として役立つ。
【0262】
陽性対照は、侵害受容性疼痛を軽減するために頻繁に処方される非ステロイド性抗炎症薬であるイブプロフェンである。陰性対照は、NMNおよびイブプロフェンの担体、すなわち蒸留水である。
【0263】
この研究のために、7週齢の雌Sprague-Dawleyラットを以下の3つの群に分け、各群は6匹のラットから構成された:
-5mlの蒸留水(担体)を与えた対照群;
-500mg/kgのNMNで処置した群;および
-300mg/kgのイブプロフェンで処置した群。
【0264】
NMNは双性イオンの形態である。
【0265】
24時間の適応後、各動物の疼痛耐性の閾値を測定する試験を、研究の開始前にフォン・フレイフィラメントを用いて行った。疼痛刺激への任意の曝露前のこの測定は、動物におけるベースライン疼痛耐性閾値レベルを得ることを可能にし、陰性対照として役立つ。
【0266】
フォン・フレイフィラメントは、皮膚の接触感度を測定するためのデバイスとして使用される。フォン・フレイフィラメントの使用は、齧歯類における異痛症および痛覚過敏を試験することを可能にする。簡単に言えば、各フィラメントは所与の力に対応する。フィラメントは、動物の皮膚に対する増加する力の順に適用される。齧歯類は、実際には、予期せぬ接触が生じると引っ込む反射を有する。齧歯類に及ぼされる力に応じた引っ込みは、疼痛に対する動物の耐性の閾値を示す。フォン・フレイフィラメントの使用は、齧歯類における疼痛の測定のために一般的に実践されている(Deuis JR,Dvorakova LS and Vetter I(2017)Methods Used to Evaluate Pain Behaviors in Rodents.Front.Mol.Neurosci.10:284)。
【0267】
本研究では、1g、2g、4g、6g、8g、10g、15g、および26gの増加する力の順に8本のフィラメントを使用し、膀胱付近の動物の腹部にそれぞれ3回適用した。動物の応答を以下のように評価した:
-スコア0:応答なし
-スコア1:腹部の収縮
-スコア2:動物のスタンピングまたは位置の変化
-スコア3:単収縮、または腹部の湾曲もしくは丸み、またはフォン・フレイフィラメントによって刺激された領域のリッキング。
【0268】
各ラットについて、結果は以下のように表される:
-侵害受容性閾値:動物からの応答が観察される第1の力レベル(応答スコア1以上)。これは、異痛症を測定するための疼痛に対する耐性の最低閾値を示す。
-侵害受容性スコア:各フィラメントの最大応答のパーセンテージ。これは、全体的な疼痛応答を示す。
【0269】
各群の動物に、経口経路を介して投与される担体、または500mg/kgのNMN、または300mg/kgのイブプロフェンのいずれかを与える。試験する化合物(担体、NMN、またはイブプロフェン)の投与後、シクロホスファミドを腹腔内経路を介して各ラットに注射する。シクロホスファミドは、膀胱において強い炎症を誘発し、膀胱炎等の尿路感染によって誘発される疼痛を模擬する。
【0270】
動物の疼痛応答を測定するために、シクロホスファミドの注射の2時間後、次いで4時間後にフォン・フレイフィラメントによる試験を繰り返す。
【0271】
結果を、Dunnett検定によって補足された一元配置分散分析(すなわち、一元配置ANOVA)試験または二元配置ANOVA分析によって分析した。統計学的有意性に関して、担体で処置した群と比較して、*はp<0.05を意味し、**はp<0.01を意味し、***はp<0.001を意味する。
【0272】
図1Aに見ることができるように、シクロホスファミドの投与は、1gの力の第1のフィラメントの適用直後にラットからの応答を惹起するが、曝露前の動物からの応答は、動物がシクロホスファミドの投与前に10gまで疼痛に対する応答を示さないことを示し、したがって、シクロホスファミドの注射は異痛症閾値を低下させる。この結果は、シクロホスファミドの投与が疼痛耐性閾値を10gから3gに低下させることを示す図1Bによって裏付けられる。換言すれば、異痛閾値は、ラットへのシクロホスファミドの注射によって有意に低下する。したがって、シクロホスファミドで処置される動物は、疼痛に対してより感受性である。
【0273】
図2Aおよび図2Bは、異痛閾値の低下が継続していることを示し、動物は、注射の2時間後と比較してシクロホスファミドの注射の4時間後にさらに低い疼痛耐性を示す。
【0274】
図1Aはまた、等しい力で動物がより大きな疼痛を感じることを示し、したがって、シクロホスファミドの注射は痛覚過敏を誘起する。図2Bは、この効果が経時的に持続することを示し、4時間後に処置ラットにおいて測定された疼痛スコアは、注射の2時間後に行われた測定からの疼痛スコアよりも高い。
【0275】
したがって、シクロホスファミドの注射は、一方では、処置された動物における異痛症の減少および痛覚過敏の増加を誘発し、その効果は時間とともにより強調される。
【0276】
図3および図4は、シクロホスファミドで処置したラットにおける疼痛閾値およびスコアに対するNMNおよびイブプロフェンの投与の効果を示す。
【0277】
図3A図3B、および図3Cに示されるように、NMNの投与は、注射からT0、T=2時間、およびT=4時間後に、侵害受容性疼痛に対する応答閾値を有意に増加させる能力を提供する。予想される様式では、イブプロフェンはまた、T0、注射からT=2時間後および注射からT=4時間後にシクロホスファミドで処置したラットにおいて疼痛耐性の閾値を有意に増加させる能力を提供する。これらの結果は、NMNの投与が異痛症を軽減する能力を提供することを示す。
【0278】
図4Aに示されるように、NMN、イブプロフェンおよび担体は、シクロホスファミドの注射の時点であるT0で侵害受容性スコアの同様の曲線を示す。これは、動物がNMNまたはイブプロフェンの投与に応答して疼痛を発症しないことを実証している。一方、図4Bおよび図4Cは、NMNの投与が、イブプロフェンと同様に、シクロホスファミドの投与から2時間後および4時間後に侵害受容性スコアを低下させるための手段として役立つことを示す。
【0279】
したがって、NMNおよびそれを含む組成物の投与は、イブプロフェンと同様の様式で、異痛症および痛覚過敏を有意な程度まで減少させることを可能にする。
【0280】
実施例2
【0281】
本発明の化合物の合成
【0282】
材料および方法
【0283】
全ての試薬は、商業的供給業者から入手し、さらなる精製を行わずに使用した。薄層クロマトグラフィーは、Merck製のTLCシリカゲル60 F254プラスチックシート(層厚0.2mm)で行った。カラムクロマトグラフィーによる精製は、シリカゲル60(70~230メッシュASTM、Merck)で行った。融点は、デジタルデバイス(Electrothermal IA 8103)で補正せずに、またはWME型のKofler加熱ベンチ(Wagner&Munz)で決定した。H、19Fおよび13C核磁気共鳴(NMR)ならびに赤外(IR)スペクトルにより、全ての化合物の構造を確認した。IRスペクトルは、Perkin Elmer Spectrum 100 FT-IR分光計で記録した。NMRスペクトルは、溶媒としてCDCl、CDCN、DOまたはDMSO-dを使用して、BRUKER AC300または400分光計で、Hスペクトルについては300または400MHz、13Cスペクトルについては75または100MHz、19Fスペクトルについては282または377MHzで記録した。化学シフト(δ)は、(i)HについてはCHCl(δ7.27)を、(ii)13CについてはCDCl(δ77.2)を用いて間接的に、(iii)19FについてはCFCl(内部標準)(δ0)を用いて直接的に、シグナルに対する百万分率で表された。化学シフトはppmで与えられ、ピーク多重度は以下のように表される:s、一重項。;br s、ブロードな一重項;d、二重項;dd、二重項の二重項;t、三重項;q、四重項;quint、五重項;m、多重項。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、「Service central d´analyse de Solaize」(フランス国立科学研究センター(Solaize))から得られ、エレクトロスプレーイオン化飛行時間型(ESI-TOF)質量分析を使用してWaters分光計で記録された。
【0284】
プロトコル
【0285】
ステップ1:式X-1を有する化合物の合成
【0286】
式XIVを有する化合物(1.0当量)を、ジクロロメタンに溶解する。式XVを有するニコチンアミド(1.50当量)およびTMSOTf(1.55当量)を、周囲温度で添加する。反応混合物を還流下で加熱し、反応が完了するまで撹拌する。混合物を周囲温度に冷却し、濾過する。濾液を濃縮乾固して、式X-1を有する粗ニコチンアミドリボシド四酢酸を得る。
【0287】
ステップ2:式Xを有する化合物の合成
【0288】
式X-1を有する粗NRテトラアセテートをメタノールに溶解し、-10℃に冷却する。これに続いて、-10℃でメタノール中4.6Mアンモニア(3.0当量)を添加し、混合物を反応の完了までこの温度で撹拌する。Dowex HCR(H)を6~7のpHに達するまで添加する。反応混合物を0℃に加熱し、濾過する。樹脂をメタノールおよびアセトニトリルの混合物で洗浄する。濾液を乾燥するまで濃縮する。残渣をアセトニトリルに溶解し、濃縮して固形分を乾燥させる。残渣をアセトニトリルに溶解して、式Xを有する粗ニコチンアミドリボシドトリフレートの溶液を得る。
【0289】
ステップ3:式XIを有する化合物の合成
【0290】
アセトニトリル中の粗ニコチンアミドリボシドトリフレートの溶液を、リン酸トリメチル(10.0当量)で希釈する。アセトニトリルを真空下で蒸留し、混合物を-10℃に冷却する。オキシ塩化リン(4.0当量)を-10℃で添加し、反応が完了するまで混合物を-10℃で撹拌する。
【0291】
ステップ4およびステップ5:式I-Aを有する化合物の合成
【0292】
アセトニトリルおよび水の50/50混合物を添加し、続いてメチルtert-ブチルエーテル(またはtert-ブチルメチルエーテル)を添加することによって、混合物を加水分解する。混合物を濾過し、固体を水に溶解する。重炭酸ナトリウムを添加することによって水溶液を中和し、ジクロロメタンで抽出する。水層を濃縮乾固して、式I-Aを有するNMNおよびジ-NMNの粗混合物を得る。
【0293】
式I-Aを有するジ-NMNの単離:
【0294】
式I-Aを有するNMNおよびジ-NMNを、水の溶出によるDowex 50wx8での精製によって分離する。ジ-NMNを含有する画分を濃縮して、固形分を乾燥させる。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(イソプロパノール/水勾配)によって精製する。純粋な画分を合わせ、濃縮する。残渣を凍結乾燥して、ジ-NMNをベージュ色固体として得る。
【0295】
生物学的データ
【0296】
本研究の目的は、雌のSprague-Dawleyラットにおいてシクロホスファミド(CYP)によって誘発された急性膀胱炎のモデルにおける内臓痛応答に対する、500mg/kgのニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、アルファ-NMN(化合物A)および化合物I-A(化合物B)の経口投与の効果を評価することである。
【0297】
材料および方法
【0298】
動物:出生時から7週齢のSprague-Dawley雌ラット
【0299】
薬理学的処置:
-NMN:500mg/kg
-アルファ-NMN:500mg/kg
-化合物I-A:500mg/kg
-担体:蒸留水
-投与経路:per os[p.o.](経口投与による)、5ml/kg
-投与頻度:D0、CYPの腹腔内注射(i.p.)の15分前に1回。
【0300】
CYPによって誘発される急性膀胱炎:CYPを、最終容量5ml/kgの生理食塩水中で150mg/kgの腹腔内注射によって注射した。
【0301】
フォン・フレイフィラメントを使用した機械的刺激
【0302】
ラットを金属金網床を備えた個々のプレキシグラスボックスに入れ、任意の試験の開始前に少なくとも30分間チャンバに適応させた。増加する力のレベル、すなわち1、2、4、6、8、10、15、および26gの8つのフォン・フレイフィラメントを使用した。それぞれの較正されたフィラメントを膀胱付近の下腹部に3回適用した。
【0303】
各適用の侵害受容行動の評価
-スコア0=応答なし
-スコア1=腹部の収縮
-スコア2=スタンピングまたは位置の変化
-スコア3=喘鳴もしくは鳴き声、または腹部湾曲、またはフォン・フレイフィラメントで刺激された部位のリッキング
【0304】
各ラットについて、結果は以下のように表された:
-侵害受容性閾値:刺激が有痛性であると知覚される第1のフォン・フレイ力レベル(スコア≧1が得られる)⇒閾値の低下=異痛症
-侵害受容性スコア:各フィラメントに対する最大応答の%(3つの組み合わせた適用について合計=9)⇒疼痛に対する全応答
【0305】
実験群(1群あたり6匹のラット):
-群1:担体(5ml/kg)+CYP
-群2:NMN(500mg/kg)+CYP
-群3:化合物A(500mg/kg)+CYP
-群4:化合物B(500mg/kg)+CYP
【0306】
結果
【0307】
全ての実験群に対するベースライン侵害受容性パラメータ(CYP注射前):結果は、(CYPの注射前の)実験群の全ての間でベースライン侵害受容性応答が類似していたことを示している(図5Aおよび5B)。
【0308】
注射から2時間後および4時間後のCYPによって誘発される内臓痛(担体処置群におけるベースライン値と比較):結果は、ベースライン応答と比較して、CYP(150mg/kg、i.p.)が、2つの時点で侵害受容性閾値の有意な減少(図2A)および侵害受容性スコアの有意な増加(図2B)を誘発したことを示している。
【0309】
CYP誘発異痛症(侵害受容性閾値)に対するNMN、化合物Aおよび化合物Bの効果:結果は、担体と比較して以下を示している:
-NMN(500mg/kg、p.o.)は、+2時間(図6A)および+4時間(図6B)で侵害受容性閾値のわずかな増加をもたらし、+4時間で統計学的有意性の範囲をわずかに上回る効果を有していた(p=0.063)。
-化合物A(500mg/kg、p.o.)は、+2時間(図6A)および+4時間(+4時間で有意)(図6B)で侵害受容性閾値を増加させた。
-化合物B(500mg/kg、p.o.)は、+4時間でのみ侵害受容性閾値の有意な増加をもたらし(図6B)、+2時間では効果を誘発しなかった(図6A)。
【0310】
CYP誘発内臓痛(侵害受容性スコア)に対するNMN、化合物Aおよび化合物Bの効果:結果は、担体と比較して以下を示している(図7図8および図9):
-NMN(500mg/kg、p.o.)は、+2時間(図7A)および+4時間(図7B)で侵害受容性スコアの有意な減少をもたらした。
-化合物A(500mg/kg、p.o.)は、+2時間(図8A)および+4時間(図8B)で侵害受容性スコアの減少をもたらし、これは+4hで統計学的有意性のレベルを達成しただけであった。
-化合物B(500mg/kg、p.o.)は、+4時間で侵害受容性スコアの有意な減少をもたらした(図9B)(+2時間では効果は観察されなかった(図9A))。
【0311】
結果のまとめ
【0312】
(CYPの注射前の)実験群の全てにおいて、ベースライン侵害受容性応答が類似していた。
【0313】
ベースライン応答と比較して、2時間および4時間でのCYP(150mg/kg、i.p.)の効果は、以下を特徴としていた:
-+2時間および+4時間での侵害受容性閾値の有意な減少;
-+2時間および+4時間での侵害受容性スコアの有意な増加。
【0314】
担体と比較して、CYPを注射したラットでは、NMN(500mg/kg、p.o.)の効果は以下をもたらした:
-+2時間および+4時間での侵害受容性閾値のわずかな増加、ならびに+4時間での統計学的有意性の範囲をわずかに上回る効果(p=0.063)
-+2時間および+4時間での侵害受容性スコアの有意な減少。
【0315】
担体と比較して、CYPの注射を受けたラットにおいて、化合物A(500mg/kg、p.o.)の効果は以下を特徴としていた:
-+2時間および+4時間での侵害受容性閾値の増加、ならびに+4時間でのみ有意水準を達成した効果;
-+2時間および+4時間での侵害受容性スコアの減少、これは+4時間でのみ統計学的有意性のレベルを達成した。
【0316】
担体と比較して、CYPを注射したラットでは、化合物B(500mg/kg、p.o.)の効果は以下をもたらした:
-+4時間での侵害受容性閾値の有意な増加(+2時間では効果は観察されなかった);
-+4時間での侵害受容性スコアの有意な減少(+2時間では効果は観察されなかった)。
【0317】
結論
【0318】
CYP(150mg/kg)の単回腹腔内注射は、注射から2時間後および4時間後に内臓痛を誘発し、+4時間でより顕著な効果があった。
【0319】
NMN(500mg/kg)の単回経口処置は、2つの時点でCYPによって誘発された内臓痛を和らげ、+4時間でより高いレベルの有意性があった。
【0320】
アルファ-NMN(化合物A)の投与は、+2時間および+4時間でCYPによって誘発された内臓痛を減少させたが、その効果は+4時間でのみ有意水準を達成した。
【0321】
CYPを注射したラットでは、化合物I-A(化合物B)による経口処置は+2時間で有益な効果を及ぼさなかったが、その後の時点(すなわち+4時間)で有意な抗侵害受容性活性を示した。
【0322】
したがって、本発明者らは、本発明によるNMNおよびその薬学的に許容され得る誘導体、例えばアルファNMNおよび化合物I-A、ならびにそれらを含む組成物の使用が、侵害受容性疼痛、より具体的には膀胱炎によって誘発される内臓痛を軽減する能力を提供することを実証した。
【0323】
したがって、本発明によるNMNおよびその薬学的に許容される誘導体、例えばアルファNMNおよび化合物I-A、ならびにそれらを含む組成物の使用は、疼痛、特に侵害受容性疼痛を処置および予防する能力を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】