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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】潤滑剤組成物の空気放出
(51)【国際特許分類】
   C10M 155/02 20060101AFI20221109BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20221109BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20221109BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20221109BHJP
   C10N 30/18 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C10M155/02 ZHV
C10N20:02
C10N40:04
C10N40:00 D
C10N30:18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515530
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 FR2020051572
(87)【国際公開番号】W WO2021048506
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】1910040
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505036674
【氏名又は名称】トータルエナジーズ マーケティング サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イーエル-バヒ,ハキム
(72)【発明者】
【氏名】ブービエ,グルヴァン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB41A
4H104CB14A
4H104CJ01C
4H104DA02A
4H104EA02C
4H104LA09
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA39
(57)【要約】
本発明は、電気車両またはハイブリッド車両の少なくとも1つの可動部品を潤滑する際に、少なくとも1つの基油を含む潤滑剤組成物から空気を放出するための少なくとも1つのポリオルガノシロキサンの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気車両またはハイブリッド車両の推進システムの少なくとも1つの可動部品を潤滑する際に、少なくとも1種の基油を含む潤滑剤組成物から空気を放出するための少なくとも1種のポリオルガノシロキサンの使用。
【請求項2】
前記潤滑剤組成物は、規格NF ISO 12152に従って測定して、6%未満、好ましくは5%未満の、前記潤滑剤組成物中の空気量の初期変動を示す、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンの中から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記潤滑剤組成物は、前記潤滑剤組成物の総重量に対して、0.0005~2重量%、好ましくは0.001~1.5重量%、より好ましくは0.05~1重量%のポリオルガノシロキサンを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記基油は、100℃で4~50mm/sの範囲の動粘度を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記潤滑剤組成物は、前記潤滑剤組成物の総重量に対して、少なくとも70重量%、好ましくは80~99重量%、より好ましくは85~95重量%の1種または複数の基油を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
車両の潤滑システムにおける泡立ち損失を低減するための、請求項1から6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記少なくとも1つの可動部品は、1000~15000rpmの範囲、好ましくは1300~12000rpmの範囲、より好ましくは5000~10000rpmの範囲の速度で回転する部品である、請求項1から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記潤滑システムは、電気車両またはハイブリッド車両の、電気モータのロータとステータとの間に配置されたベアリングならびに変速機のうちの少なくとも1つの要素を備える、請求項1から8のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に電気車両またはハイブリッド車両用の潤滑剤組成物の分野に関する。より具体的には、泡立ちによる損失を低減し、車両、特に電気車両またはハイブリッド車両の出力(効率)を高めるための潤滑剤組成物からの空気の放出に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤組成物は、接触面を保護および潤滑するために使用され、動力を伝達するために使用することもできる。
【0003】
一般に、車両では、車両推進システムの異なる部品間、特にエンジン内の可動金属部品間の摩擦力を低減することを主目的として、「潤滑剤」とも呼ばれる潤滑剤組成物を使用することが必要である。これらの潤滑剤組成物は、これらの部品、特にその表面の早期摩耗および損傷さえも防止するのにさらに効率的である。
【0004】
車両推進システムは、一般に、高い回転速度で動作する。したがって、使用される潤滑剤組成物は、高い回転速度にさらされた場合でも良好な性能および良好な特性を維持しなければならない。
【0005】
特に、車両での使用時に、特に高い回転速度にさらされる部品において、空気が潤滑剤組成物のコアに入ることがある。潤滑剤組成物への空気混入の現象と潤滑剤組成物の発泡とを特に区別しなければならない。
【0006】
特に、潤滑剤組成物の空気混入は、高速機械変速機の泡立ちによる損失の原因となり得る。泡立ちによるこれらの損失はまた、車両出力の損失の原因となり得る。これらの損失の根底にあるのは、潤滑流体の全体積への空気の進入として解釈される油への混入の現象である。逆に、発泡の現象は、表面上、すなわち潤滑流体/空気界面のみに空気を含むことを特徴とする。その結果、推進システムで観察される乱流相中、流体の全体積に組み込まれるこの空気は、車両の最適な出力を妨げる。
【0007】
特許文献1は、油脱泡および脱気剤としてのグラフト化ポリシロキサンの使用を開示している。
【0008】
特許文献2は、気泡を除去するための液体化合物中の有機ケイ素化合物の使用を開示している。
【0009】
特許文献3は、オクタメチルシクロテトラシロキサン型の消泡剤を調製する方法を開示している。
【0010】
特許文献4は、油中の気泡を減少させるためのジメチルシロキサンおよびアクリレートコポリマーの併用を開示している。
【0011】
特許文献5は、シリコーン油およびシリカ粒子を含む消泡剤の使用を開示している。
【0012】
非特許文献1は、泡立ちによる損失に影響を与えるパラメータについて考察している。
【0013】
これらの6つの文献のいずれも、電気車両またはハイブリッド車両の推進システムの少なくとも1つの可動部品を潤滑する際に、少なくとも1種の基油を含む潤滑剤組成物から空気を放出するためのポリオルガノシロキサンの使用を示唆していない。しかし、これらのタイプの車両は、高性能の空気放出添加剤を必要とする応力(特に高回転速度)に関して、特定の極端な条件さえも含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP1634940
【特許文献2】FR2170827
【特許文献3】CN1066662
【特許文献4】CN1064884
【特許文献5】WO2015187440
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】LEPRINCE ET AL 「Influence of aerated lubricants on gear churning losses-an engineering model」,Tribology Transactions,Vol 54,No.6,2011年11月1日,929-938ページ
【発明の概要】
【0016】
本発明は、例えば電気車両またはハイブリッド車両の変速機を潤滑するときに、特に乱流相において、すなわち、潤滑剤組成物が高回転速度にさらされる場合に、潤滑剤組成物からの空気放出を可能にする添加剤を提供することについて特に述べる。
【0017】
より具体的には、本発明は、電気車両またはハイブリッド車両の推進システムの少なくとも1つの可動部品を潤滑する際に、少なくとも1種の基油(ベースオイル)を含む潤滑剤組成物から空気を放出するための少なくとも1つのポリオルガノシロキサンの使用に関する。
【0018】
一実施形態では、潤滑剤組成物は、規格NF ISO 12152に従って測定して、6%未満、好ましくは5%未満の潤滑剤組成物中の空気量の初期変動を示す。
【0019】
一実施形態において、上記ポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンの中から選択される。
【0020】
一実施形態において、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して、0.0005~2重量%、好ましくは0.001~1.5重量%、より好ましくは0.05~1重量%のポリオルガノシロキサンを含む。
【0021】
一実施形態では、基油は、100℃で4~50mm/sの範囲の動粘度を有する。
【0022】
一実施形態では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して、少なくとも70重量%、好ましくは80~99重量%、より好ましくは85~95重量%の1種または複数の基油を含む。
【0023】
一実施形態では、潤滑剤組成物は、車両、好ましくは電気車両またはハイブリッド車両の潤滑システムにおける泡立ちによる損失を低減するために使用される。
【0024】
一実施形態では、潤滑剤組成物は、泡立ちによる損失を低減するために使用される。
【0025】
一実施形態では、上記少なくとも1つの可動部品は、1000~15000rpmの範囲、好ましくは1300~12000rpmの範囲、より好ましくは5000~10000rpmの範囲の速度で回転する部品である。
【0026】
一実施形態では、車両は電気車両またはハイブリッド車両であり、潤滑システムは、電気車両またはハイブリッド車両の、電気モータのロータとステータの間に配置されたベアリングならびに変速機のうちの少なくとも1つの要素を備える。
【0027】
本発明における「推進システム」とは、車両を推進するために必要な機械部品を備えるシステムを指すことを意味する。したがって、電気車両の場合、推進システムは、電気モータ、または(速度調整専用の)パワーエレクトロニクスのロータ-ステータアセンブリ、減速機とも呼ばれる変速機およびバッテリを特に含む。
【0028】
本発明における「電気車両」とは、燃焼機関と電気モータとを、組み合わせた推進手段として備えるハイブリッド車両とは対照的に、電気モータを唯一の推進手段として備える車両を指すことを意味する。
【0029】
本発明の実施の他の特徴、変形および利点は、本発明を説明するために与えられる以下の説明および非限定的な例を読むことによってより明らかになるであろう。
【0030】
本文の残りの部分において、「...~...の間」、「...~...の範囲」、および「...~...で変化する」という表現は同等であり、特に明記しない限り、限度値を含むことを意味する。
【0031】
特に指示がない限り、「を含む」という表現は、「少なくとも1つ(1種)を含む」と理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】潤滑剤組成物中の空気分散の変動(%で表す)を時間(分で表す)の関数として示す。
【0033】
図2】実施例2の泡立ちによる損失を調べるための試験装置を示す。
【0034】
図3】泡立ちによる損失(Wで表す)のモニタリングを温度(℃で表す)の関数として示す。
【0035】
図4】泡立ちによる損失(Wで表す)のモニタリングを温度(℃で表す)の関数として示す。
【0036】
図5】組成物の空気混入(%で表す)を温度(℃で表す)の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、車両の少なくとも1つの可動部品を潤滑する際に、少なくとも1種の基油を含む潤滑剤組成物から空気を放出するための少なくとも1種のポリオルガノシロキサンの使用に関する。
【0038】
ポリオルガノシロキサン
本発明の一実施形態において、ポリオルガノシロキサン(1種または複数種)は、アルキル基が典型的には1から24個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子、より好ましくは1から6個の炭素原子を有するポリアルキルシロキサンの中から選択される。
【0039】
本発明の一実施形態において、本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、ポリジメチルシロキサンの中から選択される。
【0040】
本発明の一実施形態では、本発明で使用されるポリオルガノシロキサン、好ましくはポリアルキルシロキサンは、得られた潤滑剤組成物が、規格NF ISO 12152(2012)に従って測定して、6%以下、好ましくは5%以下の空気量の初期変動を有するように、潤滑剤組成物に添加される。
【0041】
本発明の一実施形態において、本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、25℃で1000~100000mm/s、好ましくは5000~75000mm/s、より好ましくは10000~50000mm/sの範囲の動粘度を有する。
【0042】
一実施形態において、本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、直鎖状ポリオルガノシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、環状直鎖状ポリオルガノシロキサン、およびそれらの混合物の中から選択される。
【0043】
一実施形態において、ポリオルガノシロキサンは、本発明において、シリカとの混合物で、典型的にはシリカ含有量が、(ポリオルガノシロキサンおよびシリカの添加後に得られる)潤滑剤組成物の総重量に対して0.001~1.5重量%、好ましくは0.002~1重量%の範囲であるような含有量で使用される。
【0044】
本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、それらの消泡特性について最初に知られた化合物であり、市販されている。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリオルガノシロキサンは、潤滑剤組成物の総重量の0.0005~2重量%、好ましくは0.001~1.5重量%、より好ましくは0.002~1重量%を占める。
【0046】
基油
したがって、本発明で使用される潤滑剤組成物は、1つ以上の基油を含み得る。
【0047】
これらの基油は、鉱物油、合成油もしくは天然油、動物油もしくは植物油、またはそれらの混合物などの潤滑油の分野で従来使用されている基油の中から選択することができる。
【0048】
基油は、複数の基油の混合物、例えば2、3または4つの基油の混合物であり得る。
【0049】
本発明の検討下での潤滑剤組成物の基油は、特に、以下の表1に示すAPI分類(またはATIEL分類におけるその等価物)で定義されるクラスのグループIからVに属する鉱物または合成起源の油、またはそれらの混合物であり得る。
【0050】
【表1】
【0051】
鉱物基油には、原油の常圧および真空蒸留、その後の溶剤抽出、脱歴、溶剤脱蝋、水素化処理、水素化分解、水素化異性化および水素化仕上げなどの精製操作によって得られるあらゆる種類の基油が含まれる。
【0052】
場合によりバイオソース処理された合成油および鉱物油の混合物も使用することができる。
【0053】
一般に、本発明で使用される組成物を調製するための異なる基油の使用に関して、それらが電気車両またはハイブリッド車両の推進システムでの使用に適合する特性、特に粘度、粘度指数または酸化安定性に関する特性を有しなければならないこと以外に制限はない。
【0054】
本発明で使用される組成物の基油は、カルボン酸およびアルコールのいくつかのエステル、ポリアルファオレフィン(PAO)、および2から8個の炭素原子、特に2から4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの重合または共重合によって得られるポリアルキレングリコール(PAG)などの合成油の中から選択することもできる。
【0055】
基油として使用されるPAOは、例えば、4から32個の炭素原子を有するモノマー、例えばオクテンまたはデセンから得られる。PAOの重量平均分子量はかなり広く変動し得る。好ましくは、PAOの重量平均分子量は600Da未満である。PAOの重量平均分子量はまた、100~600Da、150~600Da、またはさらに200~600Daの範囲であり得る。
【0056】
有利には、本発明で使用される組成物の基油は、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)ならびにカルボン酸およびアルコールのエステルの中から選択される。
【0057】
1つの代替実施形態では、本発明で使用される組成物の基油は、グループIIまたはIIIの基油の中から選択することができる。
【0058】
本発明に適合する組成物に使用される基油の含有量を調整することは、当業者の範囲内である。
【0059】
検討下での本発明の潤滑剤組成物は、総重量に対して少なくとも70重量%の基油、好ましくは総重量に対して75~99重量%の基油、より好ましくは総重量に対して80~98重量%の基油、さらに好ましくは総重量に対して85~95重量%の基油を含み得る。
【0060】
添加剤
本発明に適した潤滑剤組成物はまた、車両、好ましくは電気車両またはハイブリッド車両の推進システム用の潤滑剤での使用に適合されたすべての種類の添加剤を含み得る。
【0061】
電気車両またはハイブリッド車両の推進システムの潤滑および/または冷却の分野の当業者に知られている上記添加剤は、摩擦調整剤、洗剤、耐摩耗添加剤、極圧添加剤、分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、およびそれらの混合物の中から選択することができる。
【0062】
有利には、本発明に適した組成物は、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、洗剤、極圧添加剤、分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤およびそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの追加の添加剤を含む。
【0063】
これらの添加剤は、単独で、および/または当業者に周知の欧州自動車工業会(ACEA)または米国石油協会(API)によって定義されるような性能レベルを有する車両エンジン用に既に市販されている市販の潤滑剤配合物と同様の混合物の形態で添加することができる。
【0064】
本発明に適した潤滑剤組成物は、少なくとも1種の摩擦調整添加剤を含んでもよい。摩擦調整剤は、金属元素を提供する化合物および無灰(アッシュフリー)化合物の中から選択することができる。金属元素を提供する化合物の中でも、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znなどの遷移金属の錯体を挙げることができ、その配位子は、酸素、窒素、硫黄またはリン原子を含む炭化水素化合物であり得る。無灰摩擦調整添加剤は、一般に有機起源であり、脂肪酸およびポリオールのモノエステル、アルコキシル化アミン、アルコキシル化脂肪族アミン、脂肪族エポキシド、脂肪族ホウ酸エポキシド、グリセロール脂肪酸エステルまたは脂肪族アミンの中から選択することができる。本発明において、脂肪族化合物は、10から24個の炭素原子を有する少なくとも1つの炭化水素基を含む。
【0065】
本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して0.01~2重量%または0.01~5重量%、好ましくは0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の摩擦調整添加剤を含むことができる。
【0066】
本発明で使用される潤滑剤組成物は、少なくとも1種の酸化防止添加剤を含んでもよい。
【0067】
酸化防止添加剤は、一般に、使用中の組成物の分解(変質)を遅らせることを可能にする。この分解は、堆積物の形成、スラッジの存在、または組成物の粘度の増加として特に解釈することができる。
【0068】
酸化防止添加剤は、特にラジカルスカベンジャー(捕捉剤)またはヒドロペルオキシド分解剤として作用する。一般的に使用される酸化防止添加剤の中でも、フェノール型の酸化防止添加剤、アミン型の酸化防止添加剤、硫黄-リン酸化防止添加剤を挙げることができる。これらの酸化防止添加剤のいくつか、例えば硫黄-リン酸化防止添加剤は灰を生成する可能性がある。フェノール系酸化防止添加剤は、無灰であってもよく、または中性もしくは塩基性金属塩の形態であってもよい。酸化防止添加剤は、特に、立体障害フェノール、立体障害フェノールエステル、およびチオエーテル架橋を含む立体障害フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも1つのC-C12アルキル基で置換されたジフェニルアミン、N,N´-ジアルキル-アリール-ジアミンおよびそれらの混合物の中から選択することができる。
【0069】
好ましくは、本発明において、立体障害フェノールは、アルコール官能基を有する炭素の少なくとも1つの隣接炭素が、少なくとも1つのC-C10アルキル基で置換された、好ましくはC-Cアルキル基で置換された、より好ましくはCアルキル基で置換された、さらに好ましくはtert-ブチル基で置換されたフェノール基を含む化合物の中から選択される。
【0070】
アミン化合物は、場合によりフェノール系酸化防止添加剤と組み合わせて使用することができる別のクラスの酸化防止添加剤である。アミン化合物の例は、芳香族アミン、例えば式NRの芳香族アミンであり、式中、Rは任意選択で置換された脂肪族基または芳香族基であり、Rは任意選択で置換された芳香族基であり、Rは水素原子、アルキル基、アリール基または式RS(O)(式中、Rはアルキレン基またはアルケニレン基であり、Rはアルキル基、アルケニル基またはアリール基であり、zは0、1または2である)である。
【0071】
硫化アルキルフェノールまたはそのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩も、酸化防止添加剤として使用することができる。
【0072】
別のクラスの酸化防止添加剤は、銅含有化合物、例えば、銅チオ-またはジチオ-ホスフェート、銅およびカルボン酸の塩、ジチオカルバメート、スルホネート、フェネート、銅アセチルアセトネートの酸化防止添加剤である。銅IおよびII塩、コハク酸または無水物の塩も使用することができる。
【0073】
本発明で使用される潤滑剤組成物は、当業者に公知の任意の種類の酸化防止添加剤を含んでもよい。
【0074】
有利には、本発明で使用される潤滑剤組成物は、少なくとも1種の無灰酸化防止添加剤を含む。
【0075】
本発明で使用される潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して0.5~2重量%の少なくとも1種の酸化防止添加剤を含んでもよい。
【0076】
特定の一実施形態では、本発明で使用される潤滑剤組成物は、芳香族アミン型または立体障害フェノール型の酸化防止添加剤を含まない。
【0077】
本発明に適した潤滑剤組成物はまた、少なくとも1種の洗剤添加剤を含んでもよい。
【0078】
洗剤添加剤は、一般に、二次酸化生成物および燃焼生成物を溶解することによって、金属部品の表面上の堆積物の形成の減少を可能にする。
【0079】
本発明の潤滑剤組成物に使用することができる洗剤添加剤は、一般に当業者に公知である。洗剤添加剤は、長い親油性炭化水素鎖および親水性頭部を含むアニオン性化合物であり得る。関連するカチオンは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の金属カチオンであり得る。
【0080】
洗剤添加剤は、好ましくは、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、スルホン酸塩、サリチル酸塩、ナフテン酸塩およびフェネート塩の中から選択される。アルカリ金属およびアルカリ土類金属は、好ましくはカルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはバリウムである。
【0081】
これらの金属塩は、一般に、化学量論量または過剰量で、したがって化学量論量よりも多い量で金属を含む。それらは過塩基性洗剤添加剤であり、過塩基性を洗剤添加剤に与える過剰な金属は、一般に、油不溶性金属塩の形態、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、好ましくは炭酸塩の形態である。
【0082】
本発明に適した潤滑剤組成物は、例えば、組成物の総重量に対して2~4重量%の洗剤添加剤を含んでもよい。
【0083】
また、本発明で使用される潤滑剤組成物は、本発明で定義されるスクシンイミド型の化合物とは異なる少なくとも1種の分散剤を含んでもよい。
【0084】
分散剤は、マンニッヒ塩基、例えばポリイソブチレンスクシンイミド型のスクシンイミドの中から選択することができる。
【0085】
本発明で使用される潤滑剤組成物は、例えば、組成物の総重量に対して、本発明で定義されるスクシンイミド型の化合物とは異なる分散剤を0.2~10重量%含んでもよい。
【0086】
本発明に適した潤滑剤組成物はまた、少なくとも1種の耐摩耗および/または極圧添加剤を含んでもよい。
【0087】
多種多様な耐摩耗添加剤が存在する。好ましくは、本発明の潤滑剤組成物では、耐摩耗添加剤は、金属アルキルチオリン酸塩、特にアルキルチオリン酸亜鉛、より具体的にはジアルキルジチオリン酸亜鉛またはZnDTPなどの硫黄リン添加剤の中から選択される。好ましい化合物は、式Zn((SP(S)(OR)(OR))を有し、式中、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立してアルキル基、好ましくは1から18個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0088】
リン酸アミンも、本発明の組成物に使用することができる耐摩耗添加剤である。しかしながら、これらの添加剤は灰を生成するので、これらの添加剤が寄与するリンは車両触媒システムに対する有害なもの(活性抑制剤)として作用する可能性がある。これらの効果は、リンに寄与しない添加剤、例えばポリスルフィド、特に硫化オレフィンによってリン酸アミンを部分的に置換することによって最小限に抑えることができる。
【0089】
本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して、0.01~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは1~5重量%の耐摩耗剤を含むことができる。
【0090】
本発明に適した潤滑剤組成物は、本発明で定義されるポリオルガノシロキサン添加剤とは異なる少なくとも1種の消泡剤をさらに含んでもよい。
【0091】
消泡剤は、ポリアクリレートまたはワックスの中から選択することができる。
【0092】
本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して0.01~2重量%または0.01~5重量%、好ましくは0.1~1.5重量%または0.1~2重量%の消泡剤を含むことができる。
【0093】
本発明に適した潤滑剤組成物はまた、少なくとも1種の流動点降下剤(PPD)を含んでもよい。
【0094】
パラフィン結晶の形成を遅らせることにより、流動点降下剤は、一般に、組成物の低温特性を改善する。流動点降下添加剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキル化ポリスチレンを挙げることができる。
【0095】
上記潤滑剤組成物の配合に関して、上記空気放出添加剤は、基油または基油の混合物に添加することができ、その後、他の追加の添加剤を添加することができる。
【0096】
あるいは、上記空気放出添加剤は、特に1種以上の基油、1種以上の追加の添加剤を含む従来の既存の潤滑剤配合物に添加することができる。
【0097】
あるいは、本発明の上記空気放出添加剤は、1種以上の追加の添加剤と組み合わせることができ、このようにして形成された添加剤の「パッケージ」を基油または基油の混合物に添加することができる。
【0098】
本発明で使用される潤滑剤組成物
有利には、本発明で使用される潤滑剤組成物は、規格ASTM D445に従って100℃で測定して、4~50mm/sの範囲、特に5~40mm/sの範囲の動粘度を有する。
【0099】
有利には、本発明で使用される潤滑剤組成物は、規格ASTM D445に従って40℃で測定して、3~450mm/sの範囲、特に10~400mm/sの範囲、好ましくは15~70mm/sの範囲の動粘度を有する。
【0100】
本発明の有利な一実施形態では、本発明で使用される潤滑剤組成物の90℃で測定された電気抵抗率の値は、5~10000Mohm.mの間、好ましくは6~5000Mohm.mの間である。
【0101】
本発明の有利な一実施形態では、本発明で使用される潤滑剤組成物の90℃で測定された誘電損失の値は、0.01~30の間、好ましくは0.02~25の間、より好ましくは0.02~10の間である。
【0102】
有利には、SAEJ300分類による本発明で使用される潤滑剤組成物のグレードは、式(X)W(Y)によって定義することができ、式中、Xは0または5であり、Yは、4から20の範囲の整数、特に4から16または4から12の範囲の整数である。
【0103】
特定の一実施形態では、本発明で使用される潤滑剤組成物は、以下を含むか、以下によって構成される。
ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、カルボン酸とアルコールのエステル、グループIIの基油およびグループIIIの基油の中から好ましくは選択される基油または基油の混合物、好ましくはポリアルファオレフィン(PAO)およびグループIIIの基油の中から選択される基油および基油の混合物、
好ましくはポリジメチルシロキサンなどのポリアルキルシロキサンの中から選択される1種以上のポリオルガノシロキサン、
オプションで、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、洗剤、分散剤、耐摩耗および/または極圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤およびそれらの混合物の中から選択される1つ以上の追加の添加剤。
【0104】
特定の一実施形態では、本発明で使用される潤滑剤組成物は、以下を含むか、以下によって構成される。
0.0005%~2重量%、好ましくは0.001~1.5重量%、より好ましくは0.002~1重量%のポリオルガノシロキサン、好ましくはポリジメチルシロキサン、
ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリアルキレングリコール(PAG)、カルボン酸とアルコールのエステル、グループIIの基油およびグループIIIの基油の中から好ましくは選択される、ポリアルファオレフィン(PAO)、グループIIの基油およびグループIIIの基油の中からより好ましくは選択される、少なくとも70重量%、好ましくは80~99.95重量%の基油、
オプションで、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、洗剤、分散剤、耐摩耗および/または極圧添加剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤およびそれらの混合物の中から選択される、0.1~5重量%の1つ以上の添加剤。含有量は、上記潤滑剤組成物の総重量に対して表される。
【0105】
用途
本発明の主題は、車両の少なくとも1つの可動部品を潤滑する際に、少なくとも1種の基油を含む潤滑剤組成物から空気を放出するための少なくとも1種のポリオルガノシロキサンの使用である。
【0106】
本発明の意味において、「空気放出」は、潤滑剤組成物中に存在する空気の体積量を減少させることができる作用を示す。空気放出は、潤滑剤組成物の表面上の泡を標的とする脱泡とは区別されるべきである。
【0107】
本発明において、「可動部品」は、回転部品であり得る部品を意味する。
【0108】
本発明の一実施形態では、可動部品は、典型的には1000~15000rpmの範囲、好ましくは1300~12000rpmの範囲、より好ましくは5000~10000rpmの範囲の速度の回転部品である。
【0109】
本発明の一実施形態では、回転部品はギヤボックスのピニオンである。
【0110】
本発明者らは、上記潤滑剤組成物が運動しているとき、例えば、高い回転速度にさらされる可能性がある部品を潤滑するために使用されるとき、ポリオルガノシロキサンが、潤滑剤組成物のコア内の空気量の有意な減少を可能にすることを発見した。
【0111】
より具体的には、オルガノシロキサンは、潤滑剤組成物の空気放出プロセスの加速を可能にする。
【0112】
一実施形態では、本発明で使用される潤滑剤組成物の空気量の初期変動は、規格NF ISO 12152(2012)に従って測定して、6%以下、好ましくは5%以下であり、および/または、本発明で使用される潤滑剤組成物の1分間静置後の空気の体積変動は、規格NF ISO 12152(2012)に従って測定して、4%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下である。
【0113】
本発明の一実施形態では、潤滑剤組成物は、ギヤボックス、変速機、モータ、減速機から選択される少なくとも1つの要素を潤滑するために適用される。
【0114】
したがって、本発明の1つの好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、電気車両またはハイブリッド車両の推進システム、特に減速機を潤滑するために使用される。
【0115】
有利には、潤滑剤組成物は、電気車両またはハイブリッド車両の推進システムの異なる部品を潤滑するために使用され、特に、電気車両またはハイブリッド車両の、電気モータのロータとステータとの間に配置されたベアリング、および/または変速機、特に減速機を潤滑するために使用される。
【0116】
一実施形態において、本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、車両、好ましくは電気車両またはハイブリッド車両の潤滑システムにおける泡立ちによる損失の低減を可能にする。典型的には、本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、泡立ちによる損失の少なくとも10%またはさらには少なくとも15%の低減を可能にする。
【0117】
泡立ちによる損失は、典型的には、潤滑剤組成物の浴中での運動中の部品、典型的には回転中の部品のドラッギング(引きずり)による出力損失に対応する。
【0118】
一実施形態において、本発明で使用されるポリオルガノシロキサンは、車両出力の増加を可能にする。
【0119】
したがって、別の態様では、本発明は、車両の可動部品の潤滑システムにおける、上記車両の出力を高めるための少なくとも1種の基油および少なくとも1種のポリオルガノシロキサンを含む潤滑剤組成物の使用に関する。
【0120】
ポリオルガノシロキサンおよびその使用を含む、本発明で使用される潤滑剤組成物について記載されるすべての特徴および選好は、出力を高めるためのこの使用にも適用される。
【0121】
別の態様では、本発明はさらに、車両の少なくとも1つの可動部品を潤滑するために使用される潤滑剤組成物から空気を放出する方法に関し、上記方法は、上記潤滑剤組成物における少なくとも1種のポリオルガノシロキサンの使用を含む。
【0122】
一実施形態では、空気放出方法は、典型的には、潤滑剤組成物が、上記車両内で動くように設定されることが意図された部品と接触するように配置されるステップを含む。
【0123】
したがって、本発明の特定の一実施形態では、空気放出方法は、電気車両またはハイブリッド車両の推進システム、特に電気モータのロータとステータとの間に配置されたベアリング、および/または変速機、特に減速機を潤滑することを目的とした潤滑剤組成物に適用される。
【0124】
ポリオルガノシロキサンおよびその使用を含む、本発明で使用される潤滑剤組成物について記載される全ての特徴および選好は、この空気放出方法にも適用される。
【0125】
一態様では、本発明はまた、車両推進システムの潤滑システム、好ましくは電気車両またはハイブリッド車両の潤滑システムにおける泡立ちによる損失を低減する方法に関し、上記方法は、少なくとも1種の基油および少なくとも1種のポリオルガノシロキサンを含む潤滑剤組成物を、上記車両の推進システムの少なくとも1つの部品と接触させるステップを含む。
【0126】
典型的には、泡立ちによる損失を低減する方法は、泡立ちによる損失が好ましくは少なくとも10%、有利には少なくとも15%低減されるステップを含む。
【0127】
ポリオルガノシロキサンおよびその使用を含む、本発明で使用される潤滑剤組成物について記載されるすべての特徴および選好は、泡立ちによる損失を低減するためのこの方法にも適用される。
【0128】
本発明において、本発明の組成物の特定の、有利な、または好ましい特徴は、同様に特定の、有利な、または好ましい本発明の使用の定義を可能にする。
【0129】
ここで、本発明を、本発明を限定しない例示として明らかに与えられる以下の実施例によって説明する。
【実施例
【0130】
実施例1
潤滑剤組成物を以下の成分を用いて調製した:
基油:100℃における動粘度が40mm/s、40℃における動粘度が400mm/sのポリアルファオレフィン;
ポリオルガノシロキサン:炭化水素溶剤ベース中、4重量%の活性材料のポリジメチルシロキサン;
変速機用途で使用され、特に耐摩耗および極圧添加剤、酸化防止剤、腐食防止剤、分散剤を含む添加剤パッケージ。
【0131】
この実施例では、この標準化試験で使用される比較的低い回転速度を考慮して、高粘度の基油を使用した。
【0132】
以下の表2は、試験した組成物をまとめたものであり、パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量%で表される。
【0133】
【表2】
【0134】
表2の組成物を、規格NF ISO 12152(2012)に従って使用して、組成物の空気放出を決定した。試験の原理は以下の通りである:一組のギヤが、規定の油温(この実施例では30℃)で、一定期間、一定速度(1400rpmの回転速度および4m/sの接線速度)で、試験潤滑剤中で回転するように設定される。エンジンのスイッチオフ後、試験潤滑剤の体積増加は、油空気分散と表面泡とを区別することによって決定される。
【0135】
この試験を通して、歯の幅の中央まで浸漬された一組のギヤは、回転する際に空気を潤滑剤組成物に混入する。この気泡の形態の混入空気は、アルキメデスの原理により自発的に外部に到達する。したがって、回転中、空気混入/空気放出平衡が継続的に存在する。
【0136】
したがって、初期空気の減少の観察は、空気放出プロセスの加速を意味する。
【0137】
図1は、最初の0分から5分までの、経時的な油空気分散の変化を示す。
【0138】
図1の結果によって示されるように、ポリオルガノシロキサンの使用は、潤滑剤組成物からの空気の放出を可能にし、特に、ポリオルガノシロキサンは、潤滑剤組成物の空気放出プロセスの加速を可能にする。特に、潤滑剤組成物Inv1、Inv2およびInv3は4%の初期空気変動を示し、ポリオルガノシロキサンを含有しない潤滑剤組成物CC1およびCC2は8%の初期空気変動を示す。ポリオルガノシロキサン添加剤による空気放出は、変速機用途の潤滑剤組成物に従来使用されている添加剤パッケージ(組成物Inv3)の存在によって乱されないことに留意されたい。
【0139】
実施例2:
潤滑剤組成物を以下の成分を用いて調製した:
基油:100℃における動粘度が8mm/s、40℃における動粘度が44mm/sのグループIIIの基油;
ポリオルガノシロキサン:炭化水素溶剤ベース中、4重量%の活性材料のポリジメチルシロキサン。
【0140】
この実施例では、この試験で使用される高い回転速度を考慮して、低い粘度の基油を使用した。
【0141】
以下の表3は、試験した組成物をまとめたものであり、パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量%で表される。
【0142】
【表3】
【0143】
泡立ちによる損失を、図2に示す試験装置でこれらの組成物CC3およびInv4について決定した。装置は、歯付きベルト駆動装置(最高速度7150rpm)を介して駆動シャフトを回転駆動する電気モータから構成された。この駆動シャフトの端部に、油浴内で回転するピニオンを配置して、泡立ちの現象を得た。異なる速度および油浴への浸漬で、複数のタイプのギヤ装置を試験することが可能である。油溜めの下に配置されたヒートストリップは、最大150℃までの温度上昇で試験を行うことを可能にする。流体の温度は、浴に浸漬された熱電対によって得られた。
【0144】
駆動シャフト上に配置されたトルク計(±0.002N.mの精度)は、引きずりトルクの測定を可能にし、回転速度によって、泡立ちによって散逸される出力(動力)を決定することが可能であった。ベアリングの摩擦トルクが、センサによって測定されたトルクから差し引かれ、泡立ちによって散逸された出力のみを得た。
【0145】
シャフト回転速度は6000rpmであり、選択されたピニオンは79.5mmのピッチ半径を有し、これにより50m/sの接線速度が得られた。選択されたピニオンは3mmモジュールを有し、試験は0.5の相対浸漬で行われ、相対浸漬はピニオンの中間高さ/中間幅での浸漬に対応する。
【0146】
図3は、両方の試験した組成物について、温度(℃)の関数として泡立ちによる損失をワットで示す。
【0147】
図3の結果によって示されるように、ポリオルガノシロキサンの使用は、泡立ちによる損失の減少を可能にし、特に、ポリオルガノシロキサンは、40℃~70℃で約20%、さらには80℃より高い温度でのさらに高い割合の泡立ちによる損失の減少を可能にする。
【0148】
これらの2つの実施例から結論付けると、ポリオルガノシロキサン添加剤の添加によって可能になる空気放出の加速は2つのプラスの効果を有することが指摘されるべきである。まず、実施例1に示すように、この添加剤による潤滑剤組成物中の空気分散物の体積の減少が観察され、これは流体力学的抗力の減少を意味し、したがって40~70℃の間で確認された20%の泡立ちによる損失の減少を意味する。次に、この空気量の減少はまた、80℃での泡立ちによる損失の重大な急激な上昇の防止を可能にし、したがって、添加剤を含有する配合物(Inv4)の泡立ちによる損失が温度とともに一定の勾配を示すという事実を可能にする。
【0149】
実施例3:
潤滑剤組成物を以下の成分を用いて調製した:
基油:100℃における動粘度が4mm/sのグループIIIの基油;
ポリオルガノシロキサンA:炭化水素溶剤ベース中、4重量%の活性材料であり、固体シリカも5重量%含有するポリジメチルシロキサン;
ポリオルガノシロキサンB:炭化水素溶剤ベース中、4重量%の活性材料のポリジメチルシロキサン。
【0150】
以下の表4は、試験した組成物をまとめたものであり、パーセンテージは、組成物の総重量に対する重量%で表される。
【0151】
【表4】
【0152】
これらの組成物の泡立ちによる損失を、より広い温度範囲(20~100℃)にわたって、実施例2と同じ方法で決定した。
【0153】
図4は、試験した組成物について、温度(℃)の関数として泡立ちによる損失をワットで示す。
【0154】
図4の結果によって示されるように、油中のポリオルガノシロキサンの使用は、ポリオルガノシロキサンを含まないこの同じ油と比較して、泡立ちによる損失の減少を可能にし、この減少は、60℃以降の高温でさらに顕著であり、80℃以降ではさらに顕著である。
【0155】
実施例1に記載の方法に従って、異なる温度で空気量を決定した。この実施例では、「初期」空気変動のみが決定された。
【0156】
図5は、試験した組成物の空気放出を温度の関数として示す。
【0157】
図5の結果によって示されるように、油へのポリオルガノシロキサンの添加は、ポリオルガノシロキサンを含まないこの同じ油と比較して、得られる潤滑剤組成物中の空気量の非常に有意な減少を可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】