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特表2022-5479805G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム
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  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図1
  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図2A
  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図2B
  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図3
  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図4
  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図5A
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  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図6
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  • 特表-5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】5G用途で使用するためのポリマー組成物およびフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20221109BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 63/02 20060101ALI20221109BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221109BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L67/02
C08G63/02
H05K1/03 610H
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022515864
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(85)【翻訳文提出日】2022-05-02
(86)【国際出願番号】 US2020046906
(87)【国際公開番号】W WO2021050221
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/898,188
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/904,089
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/986,072
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/994,321
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/008,989
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/024,596
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
5J046
【Fターム(参考)】
4J002CF031
4J002CF181
4J002FA040
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD180
4J002FD200
4J002GQ00
4J029AA02
4J029AA05
4J029AB01
4J029AB07
4J029AC02
4J029AD06
4J029AD09
4J029AE01
4J029AE03
4J029AE18
4J029BB10A
4J029BB10B
4J029BF14A
4J029BF14B
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC06A
4J029EA01
4J029EB05A
4J029EC06A
4J029EC10
4J029HA01
4J029HB01
4J029KD02
4J029KE08
4J029KE12
5J046AB02
5J046AB03
5J046AB13
5J046PA07
(57)【要約】
ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸に由来する繰り返し単位を約50mol.%以上の量で含有する液晶ポリマーを含む、ポリマー組成物が提供される。ポリマー組成物は、10GHzの周波数で約4以下の比誘電率および約0.05以下の誘電正接を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸に由来する繰り返し単位を約50mol.%以上の量で含有する液晶ポリマーを含むポリマー組成物であって、当該ポリマー組成物が、10GHzの周波数で約4以下の比誘電率および約0.05以下の誘電正接を示し、さらに当該ポリマー組成物が、温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して約2%以上の引張伸びを示す、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して約4%~約15%の引張伸びを示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
10GHzの周波数で約3.6以下の比誘電率および約0.002以下の誘電正接を示す、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
約290℃~約350℃の溶融温度を有する、請求項1から3のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記液晶ポリマーが、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸に由来する繰り返し単位を約70mol.%以上の量で含有する、請求項1から4のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約50mol.%以上の量で含有する、請求項1から5のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸を約10mol.%~約40mol.%の量で含有する、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約70mol.%以上の量で含有する、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸を約20mol.%~約30mol.%の量で含有する、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸および4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を約0.1~約40のモル比で含有する、請求項1から9のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸および4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を約1~約5のモル比で含有する、請求項1から10のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記液晶ポリマーが前記組成物の100wt.%を構成する、請求項1から11のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項13】
添加剤が、前記ポリマー組成物の約1wt.%~約60wt.%を構成し、前記液晶ポリマーが、前記ポリマー組成物の約40wt.%~約99wt.%を構成する、請求項1から12のいずれかに記載のポリマー組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のポリマー組成物を含むフィルム。
【請求項15】
ポリマー組成物を含むフィルムであって、当該ポリマー組成物が、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約70mol.%以上の量で含有する液晶ポリマーを含み、当該ポリマー組成物が、10GHzの周波数で約4以下の比誘電率および約0.05以下の誘電正接を示す、前記フィルム。
【請求項16】
前記ポリマー組成物が、温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して約2%以上の引張伸びを示す、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記ポリマー組成物が、温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して約4%~約15%の引張伸びを示す、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記ポリマー組成物が、10GHzの周波数で約3.6以下の比誘電率および約0.002以下の誘電正接を示す、請求項15に記載のフィルム。
【請求項19】
前記ポリマー組成物が約290℃~約350℃の溶融温度を有する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項20】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸を約20mol.%~約30mol.%の量で含有する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項21】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸および4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を約0.1~約40のモル比で含有する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項22】
前記液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸および4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を約1~約5のモル比で含有する、請求項21に記載のフィルム。
【請求項23】
約3~約100マイクロメートルの厚さを有する、請求項15に記載のフィルム。
【請求項24】
導電層および請求項15に記載のフィルムを含む、回路板で使用するための積層体。
【請求項25】
前記フィルムが2つの導電層の間に位置する、請求項24に記載の積層体。
【請求項26】
前記導電層が銅またはその合金を含む、請求項24に記載の積層体。
【請求項27】
請求項24に記載の積層体を含む回路板。
【請求項28】
請求項27に記載の回路板、および5G無線周波数信号を送受信するように構成された少なくとも1つのアンテナ素子を含む5Gアンテナシステムであって、当該アンテナ素子が当該回路板に結合された、5Gアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出題の相互参照
[0001]本出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年9月10日の出願日を有する米国仮特許出願第62/898,188号;2019年9月23日の出願日を有する米国仮特許出願第62/904,089号;2020年3月6日の出願日を有する米国仮特許出願第62/986,072号;2020年3月25日の出願日を有する米国仮特許出願第62/994,321号;2020年4月13日の出願日を有する米国仮特許出願第63/008,989号;および2020年5月14日の出願日を有する米国仮特許出願第63/024,596号の出願利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]フレキシブルプリント回路板は、高密度の小さな電子構成部品で日常的に利用されている。そのような回路板は典型的に、絶縁ポリマーフィルム、および回路経路がそこからエッチングされる銅箔を含有する「銅張積層体」から生成される。しかし、残念なことに、従来のプリント回路板を5G用途で使用する試みには問題が生じている。より詳細には、5G用途で発生する高周波数での送受信は、一般に電力消費および発熱量を増加させる。その結果、従来のプリント回路板の絶縁フィルムを形成するために頻繁に使用される材料は、高周波数性能に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、5Gアンテナシステムで使用するためのフィルムに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸に由来する繰り返し単位を約50mol.%以上の量で含有する液晶ポリマーを含む、ポリマー組成物が開示される。ポリマー組成物は、10GHzの周波数で約4以下の比誘電率および約0.05以下の誘電正接(dissipation factor)を示す。さらに、ポリマー組成物は、温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して、約2%以上の引張伸びを示す。
【0004】
[0004]本発明の別の実施形態によると、ポリマー組成物を含むフィルムが開示される。当該ポリマー組成物は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約70mol.%以上の量で含有する液晶ポリマーを含む。ポリマー組成物は、10GHzの周波数で約4以下の比誘電率および約0.05以下の誘電正接を示す。
【0005】
[0005]本発明の他の特色および態様が、以下により詳細に記載される。
[0006]本発明の完全かつ実施可能な開示が、当業者に対するその最良の形態を含め、添付の図面への参照を含む本明細書の残り部分でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0007]本発明によって形成される回路板を利用できる5Gアンテナシステムの一実施形態の図である。
図2A】[0008]5Gアンテナを含む例示的なユーザコンピューティングデバイスを上から見た図である。
図2B】[0009]図2Aの例示的なユーザコンピューティングデバイスの側面図である。
図3】[0010]図2Aのユーザコンピューティングデバイスの一部の拡大図である。
図4】[0011]5Gアンテナシステムで利用できる同一平面導波管アンテナアレイ構成の側面図である。
図5A】[0012]5Gアンテナシステムの大規模多入力多出力構成のためのアンテナアレイの図である。
図5B】[0013]5Gアンテナシステムで利用できる、形成されたアンテナアレイの図である。
図5C】[0014]5Gアンテナシステムで利用できる例示的なアンテナ構成の図である。
図6】[0015]本発明によって形成可能な積層体の一実施形態の概略図である。
図7】[0016]本発明によって形成可能な積層体の別の実施形態の概略図である。
図8】[0017]本発明によって形成可能な積層体のさらに別の実施形態の概略図である。
図9】[0018]本発明の回路板を利用できる電子デバイスの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0019]本考察は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことが当業者によって理解される。
[0020]概して、本発明は、5G用途に良好に適合するフィルムに使用するためのポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、液晶ポリマーを含有する。本発明者らは、液晶ポリマーの特定の性質および組成物の他の態様を選択的に制御することにより、得られる組成物が広範な周波数にわたって低い比誘電率および誘電正接を示す場合があることを発見した。つまり、ポリマー組成物は、典型的な5G周波数(例えば、2または10GHz)で約4以下、一部の実施形態では約3.6以下、一部の実施形態では約0.1~約3.5、一部の実施形態では約1~約3.4の低い比誘電率を示してもよい。エネルギー損失率の測定値であるポリマー組成物の誘電正接は、同様に典型的な5G周波数(例えば、2または10GHz)で約0.05以下、一部の実施形態では約0.01以下、一部の実施形態では約0.0001~約0.008、一部の実施形態では約0.0002~約0.006であってもよい。実際に一部の場合では、誘電正接は非常に低くてもよく、例えば典型的な5G周波数(例えば、2または10GHz)で約0.003以下、一部の実施形態では約0.002以下、一部の実施形態では約0.001以下、一部の実施形態では約0.0009以下、一部の実施形態では約0.0008以下、一部の実施形態では約0.0001~約0.0007であってもよい。
【0008】
[0021]従来的に、低い誘電正接および比誘電率を示すポリマー組成物は、フィルムでのその使用を可能とするのに十分良好な機械的特性を同時に有さないと考えられていた。しかし従来の思想とは対照的に、ポリマー組成物は、両方の優れた特性を有することが見出された。特に、ポリマー組成物は、例えば温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して、約2%以上、一部の実施形態では約3%以上、一部の実施形態では約4%~約15%、一部の実施形態では約5%~約12%の引張伸びを示してもよい。そのような高い引張伸び特性は、得られるフィルムの良好な引張特性を達成するのに有用であることが見出された。当然ながら、ポリマー組成物は、他の良好な機械的特性も有することができる。例えば、ポリマー組成物は、例えば温度約23℃でISO試験No.527:2012に従って決定して、約10MPa以上、一部の実施形態では約50MPa以上、一部の実施形態では約100MPa~約300MPa、一部の実施形態では約120MPa~約200MPaの引張強度、および/または約20,000MPa以下、一部の実施形態では約15,000MPa以下、一部の実施形態では約3,500MPa~約10,000MPaの引張弾性率を示してもよい。さらに、ポリマー組成物は、約20MPa以上、一部の実施形態では約30MPa以上、一部の実施形態では約50MPa以上、一部の実施形態では約90MPa~約300MPa、一部の実施形態では約100MPa~約250MPaの曲げ強度;約0.5%以上、一部の実施形態では約1%~約15%、一部の実施形態では約2%~約12%の曲げ伸び;および/または約20,000MPa以下、一部の実施形態では約15,000MPa以下、一部の実施形態では約4,000MPa~約13,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、温度約23℃で178:2010に従って決定することができる。さらに、ポリマー組成物はまた、薄いフィルムを形成する際に有用でありうる高い衝撃強度を有してもよい。例えば、ポリマー組成物は、約1kJ/m以上、一部の実施形態では約5kJ/m以上、一部の実施形態では約15kJ/m以上、一部の実施形態では約20kJ/m~約150kJ/m、一部の実施形態では約40kJ/m~約120kJ/mのノッチ付きシャルピー衝撃強度を有してもよい。衝撃強度は、温度約23℃でISO試験No.ISO 179-1:2010に従って決定することができる。
【0009】
[0022]ポリマー組成物はまた、優れた熱的特性を示してもよい。例えば、ポリマー組成物の溶融温度は、例えば約200℃~約400℃、一部の実施形態では約250℃~約380℃、一部の実施形態では約280℃~約360℃、一部の実施形態では約290℃~約350℃、一部の実施形態では約300℃~約340℃であってもよい。そのような溶融温度であっても、短期的な耐熱性の測定値である荷重たわみ温度(「DTUL」)の溶融温度に対する比は、依然として比較的高いままであってもよい。例えば、比は約0.5~約1.00、一部の実施形態では約0.6~約0.95、一部の実施形態では約0.65~約0.85の範囲であってもよい。特定のDTUL値は、例えば約150℃以上、一部の実施形態では約160℃~約350℃、一部の実施形態では約170℃~約340℃、一部の実施形態では約180℃~約320℃であってもよい。そのような高いDTUL値は、とりわけ、構造体と電気構成部品の他の構成部品を嵌合するための高速かつ確実な表面実装プロセスを使用可能とすることができる。
【0010】
[0023]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリマー組成物
A.液晶ポリマー
[0024]液晶ポリマーは、一般的に棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限り、「サーモトロピック」と分類される。ポリマー組成物に利用される液晶ポリマーは、典型的に約200℃~約400℃、一部の実施形態では約250℃~約380℃、一部の実施形態では約280℃~約360℃、一部の実施形態では約290℃~約350℃、一部の実施形態では約300℃~約340℃の溶融温度を有する。溶融温度は、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用し当技術分野で周知のように決定されてもよく、例えばISO試験No.11357-3:2011によって決定されてもよい。そのようなポリマーは、当技術分野で公知のように1つまたは複数の種類の繰り返し単位から形成されてもよい。液晶ポリマーは、例えば、一般的に、以下の式(I):
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、
環Bは、置換または非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換または非置換の5または6員アリール基に縮合した置換または非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、あるいは置換または非置換の5または6員アリール基に連結した置換または非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
およびYは、独立してO、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)
によって表される1つまたは複数の芳香族エステル繰り返し単位を含有してもよい。
【0013】
[0025]典型的に、YおよびYの少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル繰り返し単位の例として、例えば芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式I中YおよびYはC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式I中YはOであり、YはC(O)である)、ならびにこれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0014】
[0026]例えば、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、およびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位は、それぞれ以下の式IIおよびIII:
【0015】
【化2】
【0016】
に示される4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)に由来するものである。
[0027]また、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリール、およびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジカルボン酸繰り返し単位として、それぞれ以下の式IV、VおよびVI:
【0017】
【化3】
【0018】
に示されるテレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)に由来するものが挙げられる。
[0028]他の繰り返し単位もポリマーに利用することができる。例えば、特定の実施形態では、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジオール繰り返し単位は、ヒドロキノン(「HQ」)または4,4’-ビフェノール(「BP」)に由来するものである。また、芳香族アミド(例えばアセトアミノフェン(「APAP」))、および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)に由来するものなどの繰り返し単位が利用されてもよい。また、ポリマーに種々の他のモノマー繰り返し単位が導入されてもよいことが理解されるべきである。例えば、特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーに由来する1つまたは複数の繰り返し単位を含有してもよい。当然ながら、他の実施形態では、ポリマーは非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族性」であってもよい。
【0019】
[0029]利用される特定の繰り返し単位にかかわらず、液晶ポリマーは、NDA、HNAまたはこれらの組合せなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を比較的高い含有量で含有する限り、一般的に「高ナフテン」ポリマーとみなされる。つまり、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNAまたはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの約50mol.%以上、一部の実施形態では約60mol.%以上、一部の実施形態では約62mol.%以上、一部の実施形態では約68mol.%以上、一部の実施形態では約70mol.%以上、一部の実施形態では約70mol.%~約80mol.%である。多くの従来的な「低ナフテン」ポリマーとは対照的に、得られる「高ナフテン」ポリマーは、良好な熱的および機械的特性を示すことができると考えられる。理論によって制限されるものではないが、そのような「高ナフテン」ポリマーは、ポリマー組成物の吸水傾向を低減させることができ、それにより高周波数範囲での比誘電率および誘電正接の安定化を促進することができると考えられる。すなわち、そのような高ナフテンポリマーは、ISO62-1:2008に従って水中に24時間浸漬された後、典型的に約0.015%以下、一部の実施形態では約0.01%以下、一部の実施形態では約0.0001%~約0.008%の吸水性を有する。高ナフテンポリマーはまた、ISO62-4:2008に従って23℃の温度で多湿雰囲気(相対湿度50%)に曝露された後、約0.01%以下、一部の実施形態では約0.008%以下、一部の実施形態では約0.0001%~約0.006%の吸湿性を有してもよい。
【0020】
[0030]一実施形態では、例えばHNAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの約50mol.%以上、一部の実施形態では約60mol.%以上、一部の実施形態では約62mol.%以上、一部の実施形態では約68mol.%以上、一部の実施形態では約70mol.%以上、一部の実施形態では約70mol.%~約80mol.%を構成してもよい。液晶ポリマーはまた、種々の他のモノマーを含有してもよい。例えば、ポリマーは、HBAに由来する繰り返し単位を約10mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約15mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約20mol.%~約30mol.%の量で含有してもよい。利用される場合、HNAのHBAに対するモル比は、所望の特性の達成を促すための特定の範囲内、例えば約0.1~約40、一部の実施形態では約0.5~約20、一部の実施形態では約0.8~約10、一部の実施形態では約1~約5で選択的に制御されてもよい。
【0021】
[0031]また他の繰り返し単位、例えば芳香族ジカルボン酸(TA、IAなど)、芳香族ジオール(例えば、BP、HQなど)も上述のように利用されてもよい。しかし、特定の実施形態では、所望の特性の達成を促すために、ポリマー中のそのようなモノマーの存在を最小限にすることが所望される場合がある。例えば、芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/またはTA)の合計量は、ポリマーの約20mol.%以下、一部の実施形態では約15mol.%以下、一部の実施形態では約10mol.%以下、一部の実施形態では0mol.%~約5mol.%、一部の実施形態では0mol.%~約2mol.%であってもよい。同様に、芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/またはTA)の合計量は、ポリマーの約20mol.%以下、一部の実施形態では約15mol.%以下、一部の実施形態では約10mol.%以下、一部の実施形態では0mol.%~約5mol.%、一部の実施形態では0mol.%~約2mol.%(例えば、0mol.%)であってもよい。
【0022】
[0032]ポリマーの特定の構成要素および性質とは無関係に、液晶ポリマーは、エステル繰り返し単位(例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸など)および/または他の繰り返し単位(例えば、芳香族ジオール)を形成するために使用される芳香族モノマーをまず反応容器に導入し、重縮合反応を開始することによって調製されてもよい。そのような反応に利用される特定の条件およびステップは周知であり、Calundannの米国特許第4,161,470号;Linstid,III,et al.の米国特許第5,616,680号;Linstid,III,et al.の米国特許第6,114,492号;Shepherd,et al.の米国特許第6,514,611号;およびWaggonerのWO2004/058851でより詳細に記載される場合がある。反応に利用される容器は特に限定されないが、典型的に高粘度流体の反応で一般的に使用されるものを利用するのが望ましい。そのような反応容器の例として、様々な形状の撹拌ブレード、例えばアンカー型、多段型、らせんリボン型、スクリューシャフト型など、またはそれらの修正形を備えたかき混ぜ機を有する撹拌タンク型装置が挙げられてもよい。そのような反応容器のさらなる例として、樹脂の混練で一般的に使用される混合装置、例えば混練機、ロールミル、バンバリーミキサーなどが挙げられてもよい。
【0023】
[0033]所望であれば、反応は、当技術分野で公知のモノマーのアセチル化によって進行してもよい。これは、アセチル化剤(例えば、無水酢酸)をモノマーに添加することによって達成することができる。アセチル化は、一般的に約90℃の温度で開始される。アセチル化の初期段階では、酢酸副生成物および無水物が蒸留し始める点未満に気相温度を維持するために、還流が利用されてもよい。アセチル化の間の温度は、典型的に90℃~150℃、一部の実施形態では約110℃~約150℃の範囲である。還流が使用される場合、気相温度は、典型的に酢酸の沸点を超えるが、残存する無水酢酸を保持するのに十分低いままである。例えば、無水酢酸は、約140℃の温度で蒸発する。したがって、約110℃~約130℃の温度で反応器に気相還流をもたらすことが特に望ましい。実質的に完全な反応を保証するために、過剰量の無水酢酸が利用されてもよい。過剰の無水物の量は、還流の有無を含む、利用される特定のアセチル化条件に応じて異なる。存在する反応物ヒドロキシル基の合計モルに対して約1~約10モルパーセントの無水酢酸の過剰量を使用するのは珍しいことではない。
【0024】
[0034]アセチル化は、別個の反応容器で行われてもよく、重合反応容器内でin situで行われてもよい。別個の反応容器が利用される場合、モノマーのうちの1種または複数がアセチル化反応器に導入され、その後重合反応器に移されてもよい。同様に、モノマーのうちの1種または複数が、前アセチル化を経ずに反応容器に直接導入されてもよい。
【0025】
[0035]モノマーおよび任意選択のアセチル化剤に加え、重合を促進し易くするための他の成分も反応混合物中に含まれてもよい。例えば、金属塩触媒(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸スズ(I)、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)および有機化合物触媒(例えば、N-メチルイミダゾール)などの触媒が任意選択で利用されてもよい。そのような触媒は、典型的に、繰り返し単位前駆体の全重量に対して約50~約500百万分率の量で使用される。別個の反応器を利用する場合、典型的に、重合反応器ではなくアセチル化反応器に触媒を適用することが望ましいが、これは決して必須ではない。
【0026】
[0036]反応混合物は、反応物の溶融重縮合を開始するために、一般的に重合反応容器内で高温に加熱される。重縮合は、例えば約200℃~約400℃、一部の実施形態では約250℃~約380℃、一部の実施形態では約280℃~約350℃、一部の実施形態では約300℃~約340℃の温度範囲内で行われてもよい。例えば、芳香族ポリエステルを形成するための1つの好適な技術は、前駆体モノマーおよび無水酢酸を反応器に投入し、混合物を約90℃~約150℃の温度に加熱し、モノマーのヒドロキシル基をアセチル化(例えば、アセトキシを形成)し、次いで温度を約280℃~約380℃に上昇させて溶融重縮合を実施することを含んでもよい。最終重合温度が近づくにつれ、所望の分子量が容易に達成可能になるように、反応の揮発性副生成物(例えば酢酸)を除去することもできる。反応混合物は一般に、良好な加熱および物質移動、ひいては良好な材料均質性を確保するために、重合の間にかき混ぜられる。かき混ぜ機の回転速度は、反応の間に変化してもよいが、典型的に1分あたり約10~約100回転(「rpm」)、一部の実施形態では約20~約80rpmの範囲である。溶融物中の分子量を増強するために、重合反応を真空下で実施することもでき、真空を適用することにより、重縮合の最終段階の間に形成された揮発物が除去し易くなる。真空は、例えば2.54平方cm(1平方インチ)あたり約2.27~約13.6kg(約5~約30ポンド)(「psi」)、一部の実施形態では約10~約20psiの範囲内で吸引圧力を適用することにより作り出すことができる。
【0027】
[0037]溶融重合後、溶融ポリマーは、典型的に所望の形状のダイを備えた押出しオリフィスを通して反応器から排出し、冷却し、収集することができる。一般的に、溶融物は穿孔ダイを通して排出されてストランドを形成し、これを水浴中に引き取り、ペレット化して乾燥する。一部の実施形態では、溶融重合されたポリマーを後続の固相重合法に供し、その分子量をさらに増加させてもよい。固相重合は、ガス(例えば、空気、不活性ガスなど)の存在下で実施することができる。好適な不活性ガスとして、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンなど、およびこれらの組合せを挙げることができる。固相重合反応容器は、ポリマーを所望の滞留時間にわたって所望の固相重合温度に維持することができる、実質的に任意の設計のものであってもよい。そのような容器の例は、固定床、静止床、移動床、流動床などを有するものであってもよい。固相重合が実施される温度は異なってもよいが、典型的に約200℃~約400℃、一部の実施形態では約250℃~約380℃、一部の実施形態では約280℃~約350℃、一部の実施形態では約300℃~約340℃の範囲内である。当然ながら、重合時間は、温度および標的分子量に基づいて変動する。しかし、ほとんどの場合、固相重合時間は約2~約12時間、一部の実施形態では約4~約10時間である。
【0028】
B.任意選択の添加剤
[0038]液晶ポリマーは、ニート形態でポリマー組成物中に利用されてもよく(すなわち、ポリマー組成物の100wt.%)、または多種多様な他の添加剤が任意選択で組成物中に含まれてもよい。利用される場合、そのような添加剤は典型的に、ポリマー組成物の約1wt.%~約60wt.%、一部の実施形態では約2wt.%~約50wt.%、一部の実施形態では約5wt.%~約40wt.%を構成する。そのような実施形態では、液晶ポリマーは同様に、ポリマー組成物の約40wt.%~約99wt.%、一部の実施形態では約50wt.%~約98wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約95wt.%を構成してもよい。
【0029】
[0039]また、疎水性材料、滑剤、繊維状充填剤、粒子状物質充填剤、中空充填剤、レーザー活性化可能添加剤、熱伝導性充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、流動改質剤、カップリング剤、抗菌剤、顔料または他の着色剤、衝撃改質剤、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの、多種多様なさらなる添加剤がポリマー組成物に含まれてもよい。
【0030】
[0040]一実施形態では、例えば、ポリマーマトリックス全体に分布される疎水性材料が利用されてもよい。理論によって制限されるものではないが、疎水性材料は、ポリマー組成物の吸水傾向を低減させるのに役立つ場合があり、それにより高周波数範囲での比誘電率および誘電正接の安定化を支援しうると考えられる。特に好適な疎水性材料は、フルオロポリマー、シリコーンポリマーなどの低表面エネルギーエラストマーである。フルオロポリマーは、例えば水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換される炭化水素骨格ポリマーを含有してもよい。骨格ポリマーは、ポリオレフィン系であってもよく、かつフッ素で置換された不飽和オレフィンモノマーから形成されてもよい。フルオロポリマーは、そのようなフッ素置換モノマーのホモポリマーまたはフッ素置換モノマーのコポリマー、またはフッ素置換モノマーと非フッ素置換モノマーの混合物であってもよい。フッ素原子とともに、フルオロポリマーは塩素および臭素原子などの他のハロゲン原子で置換されてもよい。本発明で使用されるフルオロポリマーを形成するために好適な代表的なモノマーは、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、フッ化ビニリデン(「VF2」)、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)、クロロトリフルオロエチレン(「CTFE」)、ペルフルオロエチルビニルエーテル(「PEVE」)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(「PMVE」)、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(「PPVE」)など、およびこれらの混合物である。好適なフルオロポリマーの特定の例は、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(「PVE」)、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキルビニルエーテル)(「PFA」)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(「FEP」)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(「ETFE」)、フッ化ポリビニリデン(「PVDF」)、ポリクロロトリフルオロエチレン(「PCTFE」)、ならびにVF2および/またはHFPを有するTFEコポリマー、ならびにこれらの混合物を含む。
【0031】
[0041]特定の実施形態では、疎水性材料(例えば、フルオロポリマー)は、比較的低い厚さの膜の形成を促すように選択的に制御された粒径を有してもよい。例えば、疎水性材料は、例えばISO-13320:2009に従ってレーザー回折技術を使用して(例えば、Horiba LA-960粒径分布分析器を用いて)決定して、約1~約60マイクロメートル、一部の実施形態では約2~約55マイクロメートル、一部の実施形態では約3~約50マイクロメートル、一部の実施形態では約25~約50マイクロメートルのメジアン粒径(例えば、直径)を有してもよい。疎水性材料はまた、狭いサイズ分布を有してもよい。つまり、粒子の少なくとも約70体積%、一部の実施形態では粒子の少なくとも約80体積%、一部の実施形態では粒子の少なくとも約90体積%が、上述の範囲内のサイズを有してもよい。
【0032】
[0042]繊維状充填剤もポリマー組成物に利用することができる。繊維状充填剤は、典型的に、それらの質量に対して高度な引張強度を有する充填剤を含む。例えば、繊維の最大引張強度(ASTM D2101に従って決定される)は、典型的に約1,000~約15,000メガパスカル(「MPa」)、一部の実施形態では約2,000MPa~約10,000MPa、一部の実施形態では約3,000MPa~約6,000MPaである。所望の誘電特性の維持を促すために、そのような高強度繊維は、一般的に絶縁性の性質の材料、例えばガラス、セラミックまたは鉱物(例えば、アルミナまたはシリカ)、アラミド(例えば、E.I.duPont de Nemours、Wilmington、デラウェア州によって販売されるKevlar(登録商標))、鉱物、ポリオレフィン、ポリエステルなどから形成されてもよい。繊維状充填剤は、ガラス繊維、鉱物繊維またはこれらの混合物を含んでもよい。例えば、一実施形態では、繊維状充填剤はガラス繊維を含んでもよい。特に好適なガラス繊維は、E-ガラス、A-ガラス、C-ガラス、D-ガラス、AR-ガラス、R-ガラス、S1-ガラス、S2-ガラスなどを含んでもよい。別の実施形態では、繊維状充填剤は鉱物繊維を含んでもよい。鉱物繊維として、シリケート、例えばネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケート(例えば、珪灰石などのカルシウムイノシリケート;トレモライトなどのカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトなどのカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトなどのマグネシウム鉄イノシリケートなど)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトなどのアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなど;硫酸カルシウムなどの硫酸塩(例えば、脱水または無水石膏);ミネラルウール(例えば、ロックまたはスラグウール)などに由来するものが挙げられてもよい。商品名NYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4WまたはNYGLOS(登録商標)8)でNyco Mineralsから入手可能な珪灰石繊維などのイノシリケートが特に好適である。
【0033】
[0043]さらに、繊維状充填剤は様々な異なるサイズを有してもよいが、特定のアスペクト比を有する繊維がポリマー組成物の機械的特性の改善を促す場合がある。すなわち、約2以上、一部の実施形態では約4以上、一部の実施形態では約5~約50、一部の実施形態では約8~約40のアスペクト比(平均長を公称直径で除したもの)を有する繊維状充填剤が特に有益でありうる。そのような繊維状充填剤は、例えば約10マイクロメートル以上、一部の実施形態では約25マイクロメートル以上、一部の実施形態では約50マイクロメートル以上~約800マイクロメートル以下、一部の実施形態では約60マイクロメートル~約500マイクロメートルの重量平均長を有してもよい。また、そのような繊維状充填剤は、例えば約10マイクロメートル以上、一部の実施形態では約25マイクロメートル以上、一部の実施形態では約50マイクロメートル以上~約800マイクロメートル以下、一部の実施形態では約60マイクロメートル~約500マイクロメートルの体積平均長を有してもよい。繊維状充填剤は、同様に約5マイクロメートル以上、一部の実施形態では約6マイクロメートル以上、一部の実施形態では約8マイクロメートル~約40マイクロメートル、一部の実施形態では約9マイクロメートル~約20マイクロメートルの公称直径を有してもよい。繊維状充填剤の相対量もまた、ポリマー組成物の他の特性、例えばその流動性および誘電特性などに悪影響を及ぼさずに所望の機械的および熱的特性を達成することを促すために、選択的に制御されてもよい。この点について、繊維状充填剤は、1GHzの周波数で約6以下、一部の実施形態では約5.5以下、一部の実施形態では約1.1~約5、一部の実施形態では約2~約4.8の比誘電率を有してもよい。
【0034】
[0044]繊維状充填剤は、改質または非改質形態であってもよく、例えばプラスチックへの接着を改善するためにサイジングまたは化学的処理が施されてもよい。一部の例では、ガラス繊維を保護するためのサイジングをガラス繊維に施し、繊維を平滑にするだけでなく、繊維とマトリックス材料との間の接着を改善してもよい。存在する場合、サイジングは、シラン、膜形成剤、滑剤、湿潤剤、接着剤、任意選択で帯電防止剤および可塑剤、乳化剤、ならびに任意選択でさらなる添加剤を含んでもよい。1つの特定の実施形態では、サイジングはシランを含んでもよい。シランの特定の例は、アミノシラン、例えば3-トリメトキシシリルプロピルアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(3-トリメトキシシシラニルプロピル)エタン-1,2-ジアミン、3-(2-アミノエチル-アミノ)プロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,2-エタン-ジアミンである。
【0035】
[0045]特定の他の実施形態では、ポリマー組成物は、レーザー直接構造化(「LDS」)プロセスによって活性化できる添加剤を含有するという意味で「レーザー活性化可能」であってもよい。そのようなプロセスでは、添加剤は金属の遊離を引き起こすレーザーに曝露される。それにより、レーザーはその部分に導電素子のパターンを描き、埋め込まれた金属粒子を含有する粗面化表面を残留させる。これらの粒子は、後後のメッキプロセス(例えば、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ、銀メッキ、亜鉛メッキ、スズメッキなど)の間に、結晶成長のための核として作用する。レーザー活性化可能添加剤は、一般的にスピネル結晶を含み、これは画定可能な結晶形成内に2つ以上の金属酸化物クラスター構成を含んでもよい。例えば、全結晶形成は、以下の一般式:
AB
(式中、
Aは2の価数を有する金属カチオン、例えばカドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタンなど、およびこれらの組合せであり;
Bは3の価数を有する金属カチオン、例えばクロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズなど、およびこれらの組合せである)
を有してもよい。
【0036】
[0046]典型的に、上記式中のAは第1の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与え、Bは第2の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与える。これらの酸化物クラスターは、同じまたは異なる構造を有してもよい。例えば、一実施形態では、第1の金属酸化物クラスターは四面体構造を有し、第2の金属酸化物クラスターは八面体クラスターを有する。それにもかかわらず、クラスターは一緒になり、電磁放射線に対して増大した感度を有する単一の特定可能な結晶型構造を与えることができる。好適なスピネル結晶の例として、例えばMgAl、ZnAl、FeAl、CuFe、CuCr、MnFe、NiFe、TiFe、FeCr、MgCrなどが挙げられる。銅酸化クロム(CuCr)が本発明で使用するのに特に好適であり、Shepherd Color Co.から「Shepherd Black 1GM」の名称で入手可能である。
【0037】
[0047]ポリマー組成物は、所望の比誘電率の達成を促すための1種または複数の中空無機充填剤も含んでもよい。例えば、そのような充填剤は、100MHzで約3.0以下、一部の実施形態では約2.5以下、一部の実施形態では約1.1~約2.3、一部の実施形態では約1.2~約2.0の比誘電率を有してもよい。中空無機充填剤は、典型的に内部の中空空間または空洞を有し、当技術分野で公知の技術を使用して合成されてもよい。中空無機充填剤は、従来の材料から作製されてもよい。例えば、中空無機充填剤として、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、ガラス、フライアッシュ、ホウ酸塩,リン酸塩、セラミックなどが挙げられてもよい。一実施形態では、中空無機充填剤として、中空ガラス充填剤、中空セラミック充填剤およびこれらの混合物が挙げられてもよい。一実施形態では、中空無機充填剤は中空ガラス充填剤を含む。中空ガラス充填剤は、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス、ケイ酸ナトリウムガラスまたはアルミノケイ酸ガラスから作製されてもよい。この点に関して、一実施形態では、ガラスの組成は、限定されないが少なくとも約65重量%のSiO、3~15重量%のNaO、8~15重量%のCaO、0.1~5重量%のMgO、0.01~3重量%のAl、0.01~1重量%のKO、および任意選択で他の酸化物(例えば、LiO、Fe、TiO、B)であってもよい。別の実施形態では、組成は、約50~58重量%のSiO、25~30重量%のAl、6~10重量%のCaO、1~4重量%のNaO/KO、および1~5重量%の他の酸化物であってもよい。さらに、一実施形態では、中空ガラス充填剤は、アルカリ金属酸化物より多くのアルカリ土類金属酸化物を含んでもよい。例えば、アルカリ土類金属酸化物のアルカリ金属酸化物に対する重量比は、1より大きい、一部の実施形態では約1.1以上、一部の実施形態では約1.2~約4、一部の実施形態では約1.5~約3であってもよい。上記にかかわらず、ガラスの組成は利用されるガラスの種類に応じて異なってもよく、かつ本発明によって所望される利益を依然としてもたらすことが理解されるべきである。
【0038】
[0048]中空無機充填剤は、約1マイクロメートル以上、一部の実施形態では約5マイクロメートル以上、一部の実施形態では約8マイクロメートル以上、一部の実施形態では約1マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約10マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約12マイクロメートル~約50マイクロメートルの平均値を有する少なくとも1つの寸法を有してもよい。一実施形態では、そのような平均値は、d50値と称する場合がある。さらに、中空無機充填剤は、約3マイクロメートル以上、一部の実施形態では約4マイクロメートル以上、一部の実施形態では約5マイクロメートル~約20マイクロメートル、一部の実施形態では約6マイクロメートル~約15マイクロメートルのD10を有してもよい。中空無機充填剤は、約10マイクロメートル以上、一部の実施形態では約15マイクロメートル以上、一部の実施形態では約20マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約22マイクロメートル~約50マイクロメートルのD90を有してもよい。この点に関して、中空無機充填剤は、ガウスサイズ分布、正規サイズ分布または非正規サイズ分布でありうるサイズ分布で存在してもよい。一実施形態では、中空無機充填剤は、ガウスサイズ分布を有してもよい。別の実施形態では、中空無機充填剤は、正規サイズ分布を有してもよい。さらなる実施形態では、中空無機充填剤は、非正規サイズ分布を有してもよい。非正規サイズ分布の例として、単峰性および多峰性(例えば、二峰性)サイズ分布を挙げることができる。上記の寸法に言及する場合、そのような寸法は任意の寸法であってもよい。しかし、一実施形態では、そのような寸法は直径を指す。例えば、寸法に対するそのような値は、球体の平均直径を指す。平均直径などの寸法は、3M QCM 193.0に従って決定されてもよい。この点に関して、一実施形態では、中空無機充填剤は、中空ガラス球体などの中空球体を指す場合がある。例えば、中空無機充填剤は、およそ1の平均アスペクト比を有してもよい。概して、平均アスペクト比は約0.8以上、一部の実施形態では約0.85以上、一部の実施形態では約0.9~約1.3、一部の実施形態では約0.95~約1.05であってもよい。
【0039】
[0049]さらに、中空無機充填剤は、ポリマー組成物の誘電特性および重量の低減を支援するために比較的薄い壁を有してもよい。壁の厚さは、中空無機充填剤の平均寸法、例えば平均直径の約50%以下、一部の実施形態では約40%以下、一部の実施形態では約1%~約30%、一部の実施形態では約2%~約25%であってもよい。さらに、中空無機充填剤は、容易な取扱いを可能にし、重量が低減したポリマー組成物を提供することができる特定の真密度を有してもよい。概して、真密度は、中空充填剤試料の質量を中空充填剤の質量の真体積で除すことによって得られる商を指し、真体積は中空充填剤の総体積と称される。この点に関して、中空無機充填剤の真密度は、約0.1g/cm以上、一部の実施形態では約0.2g/cm以上、一部の実施形態では約0.3g/cm以上~約1.2g/cm、一部の実施形態では約0.4g/cm以上~約0.9g/cmであってもよい。真密度は、3M QCM 14.24.1に従って決定されてもよい。
【0040】
[0050]充填剤が中空である場合でも、充填剤は、それらの構造の一体性の維持を可能にし、充填剤が加工および/または使用中に破損する可能性を低減させる機械的強度を有してもよい。この点に関して、中空無機充填剤のアイソタクチック耐圧壊性(すなわち、中空充填剤の少なくとも80vol.%、例えば少なくとも90vol.%が生存する)は、約20MPa以上、一部の実施形態では約100MPa以上、一部の実施形態では約150MPa~約500MPa、一部の実施形態では約200MPa~約350MPaであってもよい。アイソタクチック耐圧壊性は、3M QCM 14.1.8に従って決定されてもよい。
【0041】
[0051]中空無機充填剤のアルカリ度は、約1.0meq/g以下、一部の実施形態では約0.9meq/g以下、一部の実施形態では約0.1meq/g~約0.8meq/g、一部の実施形態では約0.2meq/g~約0.7meq/gであってもよい。アルカリ度は、3M QCM 55.19に従って決定されてもよい。比較的低いアルカリ度をもたらすために、中空無機充填剤は、リン酸などの好適な酸で処理されてもよい。さらに、中空無機充填剤はまた、ポリマーおよび/またはポリマー組成物中の他の成分とのより良好な適合性をもたらすのを支援するための表面処理を含んでもよい。例として、表面処理はシラン化であってもよい。特に、表面処理剤として、これらに限定されないがアミノシラン、エポキシシランなどを挙げることができる。
【0042】
[0052]所望される場合、ポリマー組成物の特定の特性を改善するために、粒子状物質充填剤が利用されてもよい。特定の実施形態では、組成物の表面特性の改善を促すために、特定の硬度値を有する粒子が利用されてもよい。例えば、硬度値は、モース硬度スケールに基づいて約2以上、一部の実施形態では約2.5以上、一部の実施形態では約3~約11、一部の実施形態では約3.5~約11、一部の実施形態では約4.5~約6.5であってもよい。そのような粒子の例として、例えばシリカ(モース硬度7)、マイカ(モース硬度約3);炭酸カルシウム(CaCO、モース硬度3.0)、または炭酸水酸化銅(CuCO(OH)、モース硬度4.0)などの炭酸塩;フッ化カルシウム(CaFl;モース硬度4.0)などのフッ化物;ピロリン酸カルシウム(Ca、モース硬度5.0)、無水リン酸二カルシウム(CaHPO;モース硬度3.5)、または水和リン酸アルミニウム(AlPO・2HO;モース硬度4.5)などのリン酸塩;ホウケイ酸水酸化カルシウム(CaSiO(OH)、モース硬度3.5)などのホウ酸塩;アルミナ(AlO、モース硬度10.0);硫酸カルシウム(CaSO、モース硬度3.5)、または硫酸バリウム(BaSO、モース硬度3~3.5)などの硫酸塩など、およびこれらの組合せを挙げることができる。
【0043】
[0053]粒子の形状は、所望される通り異なってもよい。例えば、特定の実施形態では、約10:1以上、一部の実施形態では約20:1以上、一部の実施形態では約40:1~約200:1などの比較的高いアスペクト比(例えば、平均直径を平均厚さで除したもの)を有するフレーク形状の粒子が利用されてもよい。粒子の平均直径は、例えばISO13320:2009に従ってレーザー回折技術を使用して(例えば、Horiba LA-960粒径分布分析器を用いて)決定して、約5マイクロメートル~約200マイクロメートル、一部の実施形態では約30マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約50マイクロメートル~約120マイクロメートルの範囲であってもよい。好適なフレーク形状粒子は、天然および/または合成ケイ酸塩鉱物、例えばマイカ、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪灰石などから形成されてもよい。例えば、マイカが特に好適である。例えば、白雲母(KAl(AlSi)O10(OH))、黒雲母(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、金雲母(KMg(AlSi)O10(OH))、紅雲母(K(Li,Al)2-3(AlSi)O10(OH))、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))などを含む任意の形態のマイカが一般的に利用されてもよい。顆粒状粒子も利用することができる。典型的に、そのような粒子は、例えばISO13320:2009に従ってレーザー回折技術を使用して(例えば、Horiba LA-960粒径分布分析器を用いて)決定して、約0.1~約10マイクロメートル、一部の実施形態では約0.2~約4マイクロメートル、一部の実施形態では約0.5~約2マイクロメートルの平均直径を有する。特に好適な顆粒状充填剤として、例えばタルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられてもよい。
【0044】
[0054]粒子状物質充填剤は、主にまたは全体的に1種類の粒子、例えばフレーク形状粒子(例えば、マイカ)または顆粒状粒子(例えば、硫酸バリウム)から形成されてもよい。つまり、そのようなフレーク形状または顆粒状粒子は、粒子状物質充填剤の約50wt.%以上、一部の実施形態では約75wt.%以上(例えば、100wt.%)を構成してもよい。当然ながら、他の実施形態では、フレーク形状および顆粒状粒子は組合せで利用されてもよい。そのような実施形態では、例えばフレーク形状の粒子は、粒子状物質充填剤の約0.5wt.%~約20wt.%、一部の実施形態では約1wt.%~約10wt.%、を構成してもよく、一方で顆粒状粒子は、粒子状物質充填剤の約80wt.%~約99.5wt.%、一部の実施形態では約90wt.%~約99wt.%を構成してもよい。
【0045】
[0055]所望される場合、粒子はまた、より良好な金型充填、内部潤滑、離型などをもたらすことなどによって組成物の加工の改善を促すために、フッ素化添加剤でコーティングされてもよい。フッ素化添加剤として、水素原子の一部またはすべてがフッ素原子で置換される炭化水素骨格ポリマーを含有するフルオロポリマーが挙げられてもよい。骨格ポリマーは、ポリオレフィン系であってもよく、かつフッ素で置換された不飽和オレフィンモノマーから形成されてもよい。フルオロポリマーは、そのようなフッ素置換モノマーのホモポリマーまたはフッ素置換モノマーのコポリマー、またはフッ素置換モノマーと非フッ素置換モノマーの混合物であってもよい。フッ素原子とともに、フルオロポリマーはまた、塩素および臭素原子などの他のハロゲン原子で置換されてもよい。本発明で使用されるフルオロポリマーを形成するのに好適な代表的なモノマーは、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテルなど、およびこれらの混合物である。好適なフルオロポリマーの特定の例は、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ポリ(テトラフルオロエチレン-co-ペルフルオロアルキルビニルエーテル)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、フッ化ポリビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなど、およびこれらの混合物を含む。
【0046】
II.形成
[0056]ポリマー組成物を形成するために使用される成分は、当技術分野で公知の種々の異なる技術のいずれかを使用して一緒に組み合わされてもよい。例えば、1つの特定の実施形態では、液晶ポリマーおよび他の任意選択の添加剤を押出機内で混合物として溶融加工し、ポリマー組成物を形成する。成分は、単軸または多軸押出機で約200℃~約450℃の温度で溶融混錬されてもよい。一実施形態では、混合物は、複数の温度ゾーンを含む押出機で溶融加工することができる。個々のゾーンの温度は、典型的にポリマーの溶融温度に対して約-60℃~約25℃内に設定される。例として、混合物は、Leistritz 18mm共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融加工することができる。混合物を溶融加工するために、汎用スクリュー設計を使用することができる。一実施形態では、成分をすべて含む混合物を、定量フィード機によって第一のバレルのフィード口にフィードすることができる。別の実施形態では、公知のように、押出機の別の添加点で異なる成分を添加することができる。例えば、ポリマーをフィード口に適用してもよく、それより下流に位置する同じまたは異なる温度ゾーンで、任意選択の添加剤を供給してもよい。いずれにせよ、得られた組成物を溶融および混合し、次いでダイを通して押し出すことができる。次に、押し出されたポリマー組成物を水浴中でクエンチして固化し、ペレタイザーで造粒し、その後乾燥してもよい。
【0047】
[0057]組成物が形成される方法にかかわらず、結果として生じる溶融粘度は、溶融押出基板を容易に形成できるように全体的に十分に低い。例えば、1つの特定の実施形態では、ポリマー組成物は、1,000秒-1のせん断速度で決定される、約500Pa・s以下、一部の実施形態では約250Pa・s以下、一部の実施形態では約5Pa・s~約150Pa・s、一部の実施形態では約5Pa・s~約100Pa・s、一部の実施形態では約10Pa・s~約100Pa・s、一部の実施形態では約15~約90Pa・sの溶融粘度を有してもよい。
【0048】
II.フィルム
[0058]上述のように、本発明の液晶ポリマー組成物は、フィルムでの使用に特に良好に適する。様々な異なる技術のいずれかを一般的に使用し、ポリマー組成物をフィルムへと形成することができる。好適なフィルム形成技術として、例えばフラットシートダイ押出、インフレーションフィルム押出、管状トラップバブルフィルムプロセスなどが挙げられてもよい。特定の一実施形態では、T型ダイを利用するフラットシートダイ押出プロセスが用いられる。ダイは、典型的に、最初の押出流路から直角に延伸するアームを含有する。アームは、ポリマー溶融物がそこを通って流動することを可能にするために、それらの長さに沿ってスリットを有してもよい。そのようなフィルム押出プロセスの例は、例えば、Kasamatsuの米国特許第4,708,629号に記載される。別の実施形態では、組成物が押出機にフィードされ、溶融加工された後でインフレーションフィルムダイを通して供給され、溶融バブルを形成するインフレーションフィルムプロセスが利用されてもよい。典型的に、ダイは、外側ダイ本体の内部に位置するマンドレルを含有しており、したがってそれらの間に空間が画定される。この空間を通してポリマー組成物をブローし、バブルを形成し、次にこれを引き出して空気で膨張させ、ポリマー組成物が急速に固化するように急速に冷却させてもよい。所望であれば、その後バブルをローラー間で破壊し、任意選択でリールに巻き付けてもよい。
【0049】
[0059]特定の一実施形態では、約0.5~約500マイクロメートル、一部の実施形態では約1~約250マイクロメートル、一部の実施形態では約2~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約3~約100マイクロメートル、一部の実施形態では約5~約60マイクロメートルの厚さを有するフィルムがポリマー組成物から形成されてもよい。同様に、厚いフィルム(またはシート)は、約500マイクロメートル~約25ミリメートル、一部の実施形態では約600マイクロメートル~約20ミリメートル、一部の実施形態では約1ミリメートル~約10ミリメートルの厚さを有してもよい。
【0050】
[0060]液晶ポリマー組成物の独特な特性のために、良好な機械的特性を示すフィルムを組成物から形成することができる。フィルムの相対強度を示す1つのパラメータは、応力-歪み曲線で得られるピーク応力に等しい引張強度である。望ましくは、フィルムは、約100~約800メガパスカル(MPa)、一部の実施形態では約150~約600MPa、一部の実施形態では約200~約400MPaの縦方向(「MD」)の引張強度、および約1~約50メガパスカル(MPa)、一部の実施形態では約5~約40MPa、一部の実施形態では約10~約30MPaの横方向(「TD」)の引張強度を示す。また、フィルムは延性であり、したがって約2%以上、一部の実施形態では約5%以上、一部の実施形態では約15%~約50%、一部の実施形態では約15%~約40%などの、MDおよび/またはTDの高い破断時伸びを示す。フィルムは、良好な強度および延性を有するが、あまり剛性ではない。フィルムの相対剛性を示す1つのパラメータは、ヤング率である。例えば、フィルムは、典型的に約10,000~約80,000MPa、一部の実施形態では約12,000~約50,000MPa、一部の実施形態では約15,000~約30,000MPaのMDのヤング率、および約300~約10,000MPa、一部の実施形態では約500~約5,000MPa、一部の実施形態では約800~約3,000MPaのTDのヤング率を示す。上述の引張特性は、例えばASTM ISO 527-3:2018に従って決定されてもよい。
【0051】
[0061]得られるフィルムは、独立型製品として使用されてもよく、他の種類の製品に組み込まれてもよい。例えば、フィルムは、シュリンクフィルム、クリングフィルム、ストレッチフィルム、封止フィルムなどとして独立形態で使用されてもよく、食品用パッケージ(例えば、スナック用包装、重袋、買い物袋、焼成および冷凍食品用包装など)、医療製品用包装、生物学的材料用包装、電子デバイス用包装、熱成形品などを形成するために使用されてもよい。
【0052】
[0062]フィルムはまた、外装、半導体パッケージ用多層プリント配線板およびマザーボード、フレキシブルプリント回路板、テープ自動ボンディング、タグテープ、電磁波用プローブケーブル、通信機器回路などの様々な異なる用途を有する積層材料へと形成されてもよい。特定の一実施形態では、積層体は、少なくとも1つの導電層および本明細書に記載の通り形成されるフィルムを含有するフレキシブルプリント回路板で利用される。フィルムは、少なくとも導電層に隣接して位置し、積層体を形成してもよい。導電層は、メンブレン、フィルム、モールド、ウェハ、チューブなどの様々な異なる形態で提供されてもよい。例えば、層は、比較的薄い、例えば約500マイクロメートル以下、一部の実施形態では約200マイクロメートル以下、一部の実施形態では約1~約100マイクロメートルの厚さを有するという点で箔状の構造を有してもよい。当然ながら、より大きな厚さも利用可能である。導電層はまた、金属、例えば金、銀、ニッケル、アルミニウム、銅およびこれらの混合物または合金などの様々な導電性材料を含有してもよい。例えば、一実施形態では、導電層は銅(例えば、純銅および銅合金)を含んでもよい。
【0053】
[0063]フィルムは、上述のものなどの技術(例えば、キャスティング)を使用して導電層に適用されてもよく、または導電層は代替的に、イオンビームスパッタリング、高周波スパッタリング、直流マグネトロンスパッタリング、グロー放電などの技術を使用してフィルムに適用されてもよい。所望であれば、フィルムは、フィルムと導電層の間の接着が改善するように、導電層に面する側に表面処理を施されてもよい。そのような表面処理の例として、例えばコロナ放電処理、UV照射処理、プラズマ処理などが挙げられる。導電層に適用される場合、フィルムは、その特性を改善するために任意選択でアニーリングされてもよい。例えば、アニーリングは、約250℃~約400℃、一部の実施形態では約260℃~約350℃、一部の実施形態では約280℃~約330℃の温度で、約15分~約300分、一部の実施形態では約20分~約200分、一部の実施形態では約30分~約120分の範囲の期間にわたって行われてもよい。アニーリングの際、フィルムが全体的に物理的に動くことができないように、フィルムを1つまたは複数の箇所(例えば、縁)で拘束することが望ましい場合がある。これは様々な方法で、例えばクランピング、テーピング、またはフィルムを導電層に別様に接着させることによって達成することができる。また、当技術分野で公知のように、フィルムと導電層の間に接着剤が用いられてもよい。好適な接着剤として、エポキシ、フェノール、ポリエステル、ニトリル、アクリル、ポリイミド、ポリウレタン樹脂などを挙げることができる。
【0054】
[0064]積層体は、フィルムと導電層のみを含有する2層構造を有してもよい。例えば図6を参照すると、導電層12(例えば、銅箔)に隣接して位置するフィルム11を含有するような2層構造10の一実施形態が示される。代替的に、2つ以上の導電層および/または2つ以上のフィルムを含有する多層積層体が形成されてもよい。例えば図7を参照すると、2つの導電層112の間に位置するフィルム110を含有する3層積層構造100の一実施形態が示される。さらに別の実施形態が図8に示される。この実施形態では、2つの導電層212の間に位置するフィルム210から形成されるコア201を含有する7層積層構造200が示される。フィルム220は同様に、それぞれ導電層212の各々を覆い、外部導電層222によってフィルム220が覆われる。上述の実施形態では、本発明のフィルムは、フィルム層のいずれかまたはさらにはすべてを形成するために使用されてもよい。十分な強度を有する積層体を提供するために、種々の従来の加工ステップが利用されてもよい。例えば、積層体は、当技術分野で公知のように押圧および/または熱処理に供されてもよい。
【0055】
IV.用途
[0065]本発明の積層体は、多種多様な異なる用途で利用することができる。例えば、上述のように、積層体は、アンテナ素子が設けられた電子デバイスの回路板(例えば、プリント回路板)に利用されてもよい。アンテナ素子は、回路板に直接適用(例えば、プリント)されてもよく、代替的に回路板によって支持され、それに接続されるアンテナモジュールに設けられてもよい。例えば図9を参照すると、電子デバイス140の一実施形態が示され、これは集積回路(例えば、トランシーバ回路網、制御回路網など)、個々の構成部品(例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗)、スイッチなどの種々の電気構成部品142を支持する基板154を含有する。構成部品142、ならびに本明細書に記載されるものなどの、電気信号経路を形成するための導電トレース152およびコンタクトパッド150を含有するプリント回路板154には、封止材料156が適用されてもよい。半導体ダイ144も利用されてもよく、これはプリント回路板に結合および包装体に包埋され、各個々の構成部品142を形成する。より詳細には、構成部品142は、接点146(例えば、はんだパッド)を有してもよく、さらに接点146と接点150の間に結合される導電性材料148(例えば、はんだ)を使用してプリント回路板154上の接点150に取り付けられてもよい。例示される実施形態では、アンテナ素子160は、封止材料156の露出表面に形成される。アンテナ素子156は、送信ライン158(例えば、金属ポスト)を介してプリント回路板154に電気的に接続されてもよい。
【0056】
[0066]特定の実施形態では、プリント回路板は、特に5Gアンテナシステムで使用するために構成される。本明細書で使用される場合、「5G」は、概して無線周波数信号による高速データ通信を指す。5Gネットワークおよびシステムは、前世代のデータ通信規格(例えば、「4G」、「LTE」)よりはるかに高速でデータを通信することができる。5G通信の要件を定量化する種々の規格および仕様が公開されている。一例として、International Telecommunications Union(ITU)は、International Mobile Telecommunications-2020(「IMT-2020」)規格を2015年に公開している。IMT-2020規格は、5Gのための種々のデータ送信基準(例えば、ダウンリンクおよびアップリンクデータレート、待ち時間など)を定めている。IMT-2020規格は、アップリンクおよびダウンリンクピークデータレートを、5Gシステムがサポートしなければならないデータをアップロードおよびダウンロードするための最小データレートと規定している。IMT-2020規格は、ダウンリンクピークデータレート要件を20Gbit/秒、アップリンクピークデータレートを10Gbit/秒と設定している。別の例として、3rd Generation Partnership Project(3GPP(登録商標))は、「5G NR」と称する5G用の新規規格を近年公開した。3GPP(登録商標)は、「Phase1」を5G NRの標準化と規定する「Release 15」を2018年に発行した。3GPP(登録商標)は、5G周波数帯を、概して6GHz未満の周波数を含む「Frequency Range 1」(FR1)として、かつ「Frequency Range 2」(FR2)を20~60GHzの範囲の周波数帯として規定している。しかし、本明細書で使用される「5G周波数」は、60GHzより大きい、例えば最大80GHz、最大150GHz、および最大300GHzの範囲の周波数を利用するシステムを指す場合がある。本明細書で使用される「5G周波数」は、約2.5GHz以上、一部の実施形態では約3.0GHz以上、一部の実施形態では約3GHz~約300GHz以上、一部の実施形態では約4GHz~約80GHz、一部の実施形態では約5GHz~約80GHz、一部の実施形態では約20GHz~約80GHz、一部の実施形態では約28GHz~約60GHzの周波数を指す場合がある。
【0057】
[0067]5Gアンテナシステムは、一般に、基地局、リピーター(例えば、「フェムトセル」)、中継局、端子、ユーザデバイスおよび/または5Gシステムの他の好適な構成部品に使用される高周波数アンテナおよびアンテナアレイを利用する。アンテナ素子/アレイおよびシステムは、Release 15(2018)などの3GPP(登録商標)によって公開された規格および/もしくはIMT-2020規格に基づく「5G」を満たすか、または「5G」とみなされてもよい。そのような高速データ通信を高周波数で達成するために、アンテナ素子およびアレイは、一般的に小さい特徴サイズ/間隔(例えば、ファインピッチ技術)および/またはアンテナ性能を改善することができる先進材料を利用する。例えば、特徴サイズ(アンテナ素子間の間隔、アンテナ素子の幅)などは、その上にアンテナ素子が形成される回路板を通って伝搬する、所望の送信および/または受信無線周波数の波長(「λ」)に一般的に依存する(例えば、nλ/4であり、ここでnは整数である)。さらに、ビーム形成および/またはビームステアリングを利用し、複数の周波数範囲またはチャネルにわたって送受信を促進することができる(例えば、多入力多出力(MIMO)、大規模MIMO)。高周波数5Gアンテナ素子は、種々の構成を有してもよい。例えば、5Gアンテナ素子は、同一平面導波管素子、パッチアレイ(例えば、メッシュグリッドパッチアレイ)、他の好適な5Gアンテナ構成であってもよいか、またはこれらを含んでもよい。アンテナ素子は、MIMO、大規模MIMO機能、ビームステアリングなどをもたらすように構成されてもよい。本明細書で使用される「大規模」MIMO機能は、一般的に、アンテナアレイによって多数の送受信チャネル、例えば8つの送信(Tx)チャネルおよび8つの受信(Rx)チャネル(8×8と略記される)を提供することを指す。大規模MIMO機能は、8×8、12×12、16×16、32×32、64×64以上を備えてもよい。
【0058】
[0068]アンテナ素子は、種々の製造技術を使用して製作されてもよい。一例として、アンテナ素子および/または関連素子(例えば、グランド素子、フィードラインなど)は、ファインピッチ技術を利用してもよい。ファインピッチ技術は、一般的に、それらの構成部品またはリード間の小さなまたは微細な間隔を指す。例えば、アンテナ素子間(またはアンテナ素子とグランドプレーンとの間)の特徴寸法および/または間隔は、約1,500マイクロメートル以下、一部の実施形態では1,250マイクロメートル以下、一部の実施形態では750マイクロメートル以下(例えば、1.5mm以下の中心間間隔)、650マイクロメートル以下、一部の実施形態では550マイクロメートル以下、一部の実施形態では450マイクロメートル以下、一部の実施形態では350マイクロメートル以下、一部の実施形態では250マイクロメートル以下、一部の実施形態では150マイクロメートル以下、一部の実施形態では100マイクロメートル以下、一部の実施形態では50マイクロメートル以下であってもよい。しかし、より小さいおよび/またはより大きい特徴サイズおよび/または間隔が利用されてもよいことが理解されるべきである。そのような小さい特徴寸法の結果として、小さな設置面積内に多数のアンテナ素子を有するアンテナ構成および/またはアレイを達成することができる。例えば、アンテナアレイは、平方センチメートルあたり1,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では平方センチメートルあたり2,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では平方センチメートルあたり3,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では平方センチメートルあたり4,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では平方センチメートルあたり6,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では平方センチメートルあたり約8,000個より多いアンテナ素子の平均アンテナ素子密度を有してもよい。アンテナ素子のそのような緻密な配置により、アンテナ領域の単位面積あたりより多数のMIMO機能用チャネルを提供することができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応してもよい(例えば、それと同等であってもよく、または比例してもよい)。
【0059】
[0069]例えば図1を参照すると、5Gアンテナシステム100は、基地局102、1つもしくは複数の中継局104、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス106、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター108(例えば、「フェムトセル」)および/または5Gアンテナシステム100の他の好適なアンテナ構成部品を含んでもよい。中継局104は、基地局102とユーザコンピューティングデバイス106および/または中継局104との間の信号を中継するまたは「反復する」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス106および/または他の中継局104による基地局102との通信を促進するように構成されてもよい。基地局102は、中継局104、Wi-Fiリピーター108と、および/または直接的にユーザコンピューティングデバイス106と無線周波数信号112を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ110を含んでもよい。ユーザコンピューティングデバイス306は、必ずしも本発明によって制限されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。
【0060】
[0070]MIMOアンテナアレイ110は、ビームステアリングを利用して無線周波数信号112を中継局104に対して集中させるまたは方向付けてもよい。例えば、MIMOアンテナアレイ110は、仰角114を、X-Y面および/またはZ-Y面に画定されるヘディング角116に対して、ならびにZ方向に対して調整するように構成されてもよい。同様に、中継局104、ユーザコンピューティングデバイス106、Wi-Fiリピーター108のうちの1つまたは複数は、ビームステアリングを利用し、基地局102のMIMOアンテナアレイ110に対するデバイス104、106、108の感度および/または送電を方向的に同調させることにより(例えば、それぞれのデバイスの相対仰角および/または相対方位角のうちの1つまたは両方を調整することにより)、MIMOアンテナアレイ110に対する受信および/または送信能力を改善することができる。
【0061】
[0071]同様に、図2A~2Bは、それぞれ例示的なユーザコンピューティングデバイス106を上から見た図および側面図である。ユーザコンピューティングデバイス106は、1つまたは複数のアンテナ素子200、202(例えば、各アンテナアレイとして配置される)を含んでもよい。図2Aを参照すると、アンテナ素子200、202は、X-Y面でビームステアリング(矢印204、206によって示され、相対方位角に対応する)を行うように構成されてもよい。図2Bを参照すると、アンテナ素子200、202は、Z-Y面でビームステアリング(矢印204、206によって示される)を行うように構成されてもよい。
【0062】
[0072]図3は、各フィードライン304を使用して(例えば、フロントエンドモジュールと)接続される複数のアンテナアレイ302の簡潔な概略図である。アンテナアレイ302は、例えば図4A~4Cに関して記載および図示されるように、基板308の側面306に取り付けることができる。基板308は、本明細書に記載されるものなどの回路板であってもよい。アンテナアレイ302は、複数の垂直接続された素子(例えば、メッシュグリッドアレイ)を含んでもよい。したがって、アンテナアレイ302は、一般的に基板308の側面306と平行に延伸してもよい。アンテナアレイ302が基板308に対してシールドの外側に位置するように、基板308の側面306にシールドが任意選択で設けられてもよい。アンテナアレイ302の垂直接続された素子間の垂直間隔距離は、アンテナアレイ320の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、これらの間隔距離は、アンテナアレイ302が「ファインピッチ」アンテナアレイ302であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【0063】
[0073]図4は、同一平面導波管アンテナ400の構成の側面図である。1つまたは複数の同一平面グランド層402は、アンテナ素子404(例えば、パッチアンテナ素子)と平行に配置されてもよい。別のグランド層406は、本明細書に記載されるような回路板でありうる基板408によってアンテナ素子から離間されてもよい。1つまたは複数のさらなるアンテナ素子410は、本明細書に記載されるような回路板でありうる第2の層または基板412によってアンテナ素子404から離間されてもよい。寸法「G」および「W」は、アンテナ400の「特徴サイズ」に対応してもよい。「G」寸法は、アンテナ素子404と同一平面グランド層406との間の距離に対応してもよい。「W」寸法は、アンテナ素子404の幅(例えば、線幅)に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、寸法「G」および「W」は、アンテナ400が「ファインピッチ」アンテナ400であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【0064】
[0074]図5Aは、アンテナアレイ500の一実施形態の図である。アンテナアレイ500は、基板510およびその上に形成された複数のアンテナ素子520を含んでもよい。基板510は、本明細書に記載されるような回路板であってもよい。複数のアンテナ素子520は、Xおよび/またはY方向でほぼ均等なサイズであってもよい(例えば、正方形または長方形)。複数のアンテナ素子520は、XおよびY方向でほぼ均等に離間されてもよい。アンテナ素子520の寸法および/またはその間の間隔は、アンテナアレイ500の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、寸法および/または間隔は、アンテナアレイ500が「ファインピッチ」アンテナアレイ500であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。省略記号522によって図示されるように、図5に図示されるアンテナ素子520の列数は、単なる例として示される。同様に、アンテナ素子520の行数は、単なる例として示される。
【0065】
[0075]同調されたアンテナアレイ500を使用し、例えば基地局に大規模MIMO機能を設けることができる(例えば、図1に関して上述された通り)。より詳細には、種々の素子間の無線周波数の相互作用が制御または同調され、複数の送信および/もしくは受信チャネルが提供されてもよい。送信電力および/または受信感度は、例えば図1の無線周波数信号112に関して記載されたように、無線周波数信号を集中させるまたは方向付けるように方向的に制御されてもよい。同調されたアンテナアレイ500は、小さい設置面積内に多数のアンテナ素子522を設けることができる。例えば、同調されたアンテナ500は、平方cmあたり1,000個以上のアンテナ素子の平均アンテナ素子密度を有してもよい。アンテナ素子のそのような緻密な配置により、単位面積あたりより多数のMIMO機能用チャネルを提供することができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応してもよい(例えば、それと同等であってもよく、または比例してもよい)。
【0066】
[0076]図5Bは、アンテナアレイ540の実施形態の図である。アンテナアレイ540は、複数のアンテナ素子542、およびアンテナ素子542を(例えば、他のアンテナ素子542、フロントエンドモジュールまたは他の好適な構成部品と)接続する複数のフィードライン544を含んでもよい。アンテナ素子542は、各幅「w」ならびにその間の間隔距離「S」および「S」(例えば、それぞれX方向およびY方向に)を有してもよい。これらの寸法は、所望の5G周波数で5G周波数通信を達成するように選択されてもよい。より詳細には、寸法は、アンテナアレイ540を、5G周波数スペクトル(例えば、2.5GHzより大きいおよび/または3GHzより大きいおよび/または28GHzより大きい)内の無線周波数信号を使用してデータを送信および/または受信するように同調するために選択されてもよい。寸法は、本発明の回路板でありうる基板の材料特性に基づいて選択されてもよい。例えば、「w」、「S」または「S」のうちの1つまたは複数は、基板材料を通る所望の周波数の複数の伝搬波長(「λ」)に対応してもよい(例えば、nλ/4であり、ここでnは整数である)。
【0067】
[0077]一例として、λは、以下:
【0068】
【数1】
【0069】
(式中、cは真空中の光の速度であり、εは基板(または周囲材料)の比誘電率であり、fは所望の周波数である)
のように計算されてもよい。
【0070】
[0078]図5Cは、本発明の態様による例示的なアンテナ構成560の図である。アンテナ構成560は、基板564の平行な長辺に配置される複数のアンテナ素子562を含んでもよい。種々のアンテナ素子562は、アンテナ構成560を、所望の周波数および/または周波数範囲で受信および/または送信するように同調する各長さ「L」(およびその間の間隔距離)を有してもよい。より詳細には、そのような寸法は、例えば図5Bを参照して上述されたように、基板材料のための所望の周波数で伝搬波長λに基づいて選択されてもよい。
【0071】
[0079]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
試験方法
[0080]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して、せん断速度1,000s-1および溶融温度を15℃超える温度(例えば、約350℃)でISO試験No.11443:2005に従って決定されてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mm、ロッド長さは233.4mmであった。
【0072】
[0081]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で公知のように示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定されてもよい。溶融温度は、ISO試験No.11357-2:2013によって決定される示差走査熱量測定(DSC)のピーク溶融温度である。DSC手順に基づき、TA Q2000装置上で行うDSC測定を使用し、ISO標準10350に記述されるように、試料を1分あたり20℃で加熱および冷却した。
【0073】
[0082]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重たわみ温度は、ISO試験No.75-2:2013(技術的にASTM D648-07と同等である)に従って決定されてもよい。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片試料を、指定の荷重(最大外部繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点屈曲試験に供してもよい。検体をシリコーン油浴中に下げ、検体が0.25mm(ISO試験No.75-2:2013では0.32mm)たわむまで温度を1分あたり2℃で上昇させる。
【0074】
[0083]引張弾性率、引張応力および引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2012(技術的にASTM D638-14と同等である)に従って試験されてもよい。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同じ試験片試料で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0075】
[0084]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2010(技術的にASTM D790-10と同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、64mmの支持スパン上で実施されてもよい。試験は、切断されていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0076】
[0085]ノッチ付きシャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1:2010(技術的にASTM D256-10、方法Bと同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1検体サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmベース半径)であってもよい。検体は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出してもよい。試験温度は23℃であってもよい。
【0077】
[0086]比誘電率(「Dk」)および誘電正接(「Df」):比誘電率(または相対静的誘電率)および誘電正接は、IEC 60250:1969に従って決定される。そのような技術はまた、Baker-Jarvis,et al.、IEEE Trans. on Dielectric and Electrical Insulation、5(4)、571頁(1998年)およびKrupka,et al、Proc. 7th International Conference on Dielectric Materials:Measurements and Applications、IEEE Conference Publication No.430(1996年9月)に記載される。より詳細には、サイズ80mm×80mm×1mmの板状試料を2つの固定された誘電共振器の間に挿入した。共振器により、検体の面における誘電率成分を測定する。5つの試料を試験してもよく、平均値が記録される。
【実施例
【0078】
実施例1
[0087]試料1は、62%HNA、2%HBA、18%TAおよび18%BPから形成される、溶融押出基板に使用されるLCP1を100wt.%含有する。試料を射出成型して板(60mm×60mm)にし、熱的および機械的特性について試験する。結果を以下に記載する。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例2
[0088]試料2は、73%HNAおよび27%HBAから形成される、溶融押出基板に使用されるLCP2を100wt.%含有する。試料を射出成型して板(60mm×60mm)にし、熱的および機械的特性について試験する。結果を以下に記載する。
【0081】
【表2】
【0082】
実施例3
[0089]試料3は、78%HNA、2%HBA、10%TAおよび10%BPから形成される、溶融押出基板に使用されるLCP3を100wt.%含有する。試料を射出成型して板(60mm×60mm)にし、熱的および機械的特性について試験する。結果を以下に記載する。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例4
[0090]試料4は、48%HNA、2%HBA、25%NDAおよび25%BPから形成される、溶融押出基板に使用されるLCP4を100wt.%含有する。試料を射出成型して板(60mm×60mm)にし、熱的および機械的特性について試験する。結果を以下に記載する。
【0085】
【表4】
【0086】
実施例5
[0091]試料5は、76%HNAおよび24%HBAから形成される、5Gシステムに使用されるLCP5を100wt.%含有する。試料を射出成型して板(60mm×60mm)にし、熱的および機械的特性について試験する。結果を以下に記載する。
【0087】
【表5】
【0088】
実施例6
[0092]試料6~7を、液晶ポリマー(LCP5およびLCP1)ならびにPTFE1の種々の組合せから形成する。PTFE1は、4μmのD50粒径および15μmのD90粒径を有する。配合は、18mmの単軸押出機を使用して実施した。部品を射出成型し、試料を板(60mm×60mm)にする。
【0089】
【表6】
【0090】
[0093]試料6~7を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表で以下に記載する。
【0091】
【表7】
【0092】
[0094]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって実施可能である。さらに、種々の実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で相互交換可能であることが理解されるべきである。さらに、当業者は、上述の記載が単なる例示であり、したがって添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を制限するものではないことを理解する。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
[0069]例えば図1を参照すると、5Gアンテナシステム100は、基地局102、1つもしくは複数の中継局104、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス106、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター108(例えば、「フェムトセル」)および/または5Gアンテナシステム100の他の好適なアンテナ構成部品を含んでもよい。中継局104は、基地局102とユーザコンピューティングデバイス106および/または中継局104との間の信号を中継するまたは「反復する」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス106および/または他の中継局104による基地局102との通信を促進するように構成されてもよい。基地局102は、中継局104、Wi-Fiリピーター108と、および/または直接的にユーザコンピューティングデバイス106と無線周波数信号112を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ110を含んでもよい。ユーザコンピューティングデバイス106は、必ずしも本発明によって制限されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
[0072]図3は、各フィードライン304を使用して(例えば、フロントエンドモジュールと)接続される複数のアンテナアレイ302の簡潔な概略図である。アンテナアレイ302は、例えば図4A~4Cに関して記載および図示されるように、基板308の側面306に取り付けることができる。基板308は、本明細書に記載されるものなどの回路板であってもよい。アンテナアレイ302は、複数の垂直接続された素子(例えば、メッシュグリッドアレイ)を含んでもよい。したがって、アンテナアレイ302は、一般的に基板308の側面306と平行に延伸してもよい。アンテナアレイ302が基板308に対してシールドの外側に位置するように、基板308の側面306にシールドが任意選択で設けられてもよい。アンテナアレイ302の垂直接続された素子間の垂直間隔距離は、アンテナアレイ302の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、これらの間隔距離は、アンテナアレイ302が「ファインピッチ」アンテナアレイ302であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【国際調査報告】