(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】複合ZSM-5分子篩、その製造方法、触媒、及び使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/38 20060101AFI20221109BHJP
B01J 29/40 20060101ALI20221109BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20221109BHJP
C07C 2/86 20060101ALI20221109BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C01B39/38
B01J29/40 Z
C07C15/08
C07C2/86
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515897
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 CN2020084201
(87)【国際公開番号】W WO2021047171
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】201910859731.4
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520335934
【氏名又は名称】国家能源投資集団有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY INVESTMENT CORPORATION LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】520380978
【氏名又は名称】北京低▲タン▼清▲潔▼能源研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 豫▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲傳▼付
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BB42
4G073BB43
4G073BB48
4G073CZ13
4G073FB11
4G073FB26
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4G169ZB08
4G169ZC04
4H006AA02
4H006AC25
4H006BA71
4H006BA81
4H006BA85
4H006DA12
4H006DA25
4H006DA46
4H039CA11
4H039CL25
(57)【要約】
本発明はアルキル化触媒の分野に関し、複合ZSM-5分子篩、その製造方法、触媒、及び使用を開示する。該複合ZSM-5分子篩の1つの結晶は、主結晶と双晶とを含み、前記主結晶及び前記双晶はいずれもZSM-5結晶であり、主結晶の[010]結晶面は双晶の[100]結晶面で覆われており、複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が(0.7~10):1であり、表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y
1が(300~2000):1である。本発明の複合ZSM-5分子篩の1つの結晶は正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が大きく、表面にはアルミニウムが少なく、内部にはアルミニウムが豊富であり、トルエンのメタノールによるアルキル化反応に応用してp-キシレンを製造する際に、p-キシレンの選択性を大幅に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ZSM-5分子篩であって、
1つの結晶が主結晶と双晶とを含み、前記主結晶及び前記双晶はいずれもZSM-5結晶であり、前記主結晶の[010]結晶面は前記双晶の[100]結晶面で覆われており、前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が(0.7~10):1であり、前記複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y
1が(300~2000):1である、ことを特徴とする複合ZSM-5分子篩。
【請求項2】
前記ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が(0.9~3.2):1である、請求項1に記載の複合ZSM-5分子篩。
【請求項3】
前記複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y
1が(500~1200):1である、請求項1又は2に記載の複合ZSM-5分子篩。
【請求項4】
前記複合ZSM-5分子篩全体のSi元素とAl元素とのモル比Y
2が(20~600):1、好ましくは(50~300):1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合ZSM-5分子篩。
【請求項5】
1つの結晶の長さが10~50μm、高さが1~20μm、幅が1~20μmであり、1つの結晶の比表面積が200~600m
2/gである、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合ZSM-5分子篩。
【請求項6】
複合ZSM-5分子篩の製造方法であって、
(1)水、第1のテンプレート剤及び第2のテンプレート剤の存在下で、シリコン源とアルミニウム源を混合し、pHを11~13.5に調整した後、結晶化するステップと、
(2)結晶化後の生成物を固液分離し、得られた固相を焙焼して前記複合ZSM-5分子篩を得るステップとを含み、
前記第1のテンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、前記第2のテンプレート剤は、エチレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキサンジアミン、エチルアミン、エタノール、エタノールアミンから選ばれる少なくとも1種であり、前記第1のテンプレート剤と第2のテンプレート剤との使用量のモル比が1:(1~30)である、ことを特徴とする複合ZSM-5分子篩の製造方法。
【請求項7】
前記第1のテンプレート剤と第2のテンプレート剤との使用量のモル比が1:(3~20)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)において、pHを11.2~13に調整する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記シリコン源、前記アルミニウム源、前記第1のテンプレート剤、前記第2のテンプレート剤及び水の使用量のモル比が100:(0.08~2.5):(0.5~6):(0.5~60):(100~4000)であり、前記シリコン源は、SiO
2換算であり、前記アルミニウム源は、Al
2O
3換算であり、
好ましくは、前記シリコン源、前記アルミニウム源、前記第1のテンプレート剤、前記第2のテンプレート剤及び水の使用量のモル比が100:(0.4~2):(1~6):(3~30):(500~4000)である、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(1)において、前記結晶化の条件は、温度120~250℃、時間12~72h、好ましくは、温度150~180℃、時間24~60hを含み、
ステップ(2)において、前記焙焼の条件は、温度500~700℃、時間1~24h、好ましくは4~12hを含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記焙焼を行う前に、固液分離で得られた固相を乾燥し、好ましくは、前記乾燥の条件は、温度90~200℃、時間2~12hを含む、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された複合ZSM-5分子篩。
【請求項13】
請求項1~5及び12のいずれか1項に記載の複合ZSM-5分子篩を含む触媒。
【請求項14】
トルエンのメタノールによるアルキル化反応によるp-キシレンの製造における、請求項1~5及び12のいずれか1項に記載の複合ZSM-5分子篩又は請求項13に記載の触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル化触媒の分野に関し、具体的には、複合ZSM-5分子篩、その製造方法、触媒、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
p-キシレン(p-xylene、PX)は工業的によく使われる重要な化学原料であり、ほとんどのp-キシレンはテレフタル酸の製造に使用され、次にポリエステル繊維などの化学製品の製造用である。近年、p-キシレンの需要量はずっと急速に増加しており、2015年に中国国内のPXへの需要は2400万トンであるのに対し、全国の生産能力は1100万トン程度しかなく、近年の輸入量はすべて50%を超えている。ここ数年、全国や各区域で新たなPXプロジェクトが次々と開始されているが、年間の不足量はまだ500万トン以上である。
【0003】
トルエンのアルキル化反応は工業的応用の将来性が期待できる反応の一つであり、トルエンを応用価値の高いp-キシレンに転化することができ、またメタノールの合理的利用に有効な手段を提供する。トルエンのアルキル化反応には通常、ZSM-5分子篩が触媒として用いられる。ZSM-5分子篩は、互いに直交する正弦状細孔(sinusoidal pore channels)と直線状細孔(straight pore channels)を有し、細孔の断面はいずれも楕円形である。ZSM-5分子篩の外面の[100]結晶面に0.51nm*0.55nmのサイズの正弦状細孔が開口しており、ZSM-5分子篩の外面の[010]結晶面に0.53nm*0.56nmの直線状細孔が開口している。理論的には、ZSM-5分子篩の細孔サイズはキシレンの3つの異性体に対して篩分けの作用に優れており、すなわち、細孔のサイズはp-キシレンのみを通過させるが、o-キシレンとm-キシレンは通過しにくいため、キシレン生成物に関わる反応ではその生成物が熱力学的平衡の制限を突破し、p-キシレンのみを生成することを確保し、すなわち、ZSM-5分子篩の形状選択的触媒機能を利用して高濃度のp-キシレンを得ることができる。
【0004】
しかし、研究者は研究した結果、純粋なZSM-5分子篩ではキシレンに対する高い選択性が得られず、その具体的な原因は複数あるが、主としてZSM-5分子篩の外面の酸位によるp-キシレンの異性化、ZSM-5分子篩の細孔の形状選択性能の不足及びZSM-5分子篩の過度の酸強度の3つとして解釈していることを見出した。これらの原因に対して、大量の研究者はケイ素、リン、マグネシウム、ホウ素などの元素を用いた変性方法を用いて分子篩の外面の酸位を減少させることを研究したところ、分子篩の強酸含有量が大量に減少し、しかも変性剤も部分的又は完全に分子篩の細孔を閉塞していることを見出した。要するに、どちらの作用、あるいは三者の共同作用が選択性の上昇を引き起こしたのかは判断しにくい。
【0005】
しかし、有効であるにもかかわらず、これらの変性方法には大きな問題がある。第一に、分子篩の外面の酸位を不動態化するために、これらの変性剤の多くは酸性位を毒化する毒化剤である。この毒化剤は分子篩の外面の酸位を毒化するだけでなく、分子篩の細孔中の酸位も毒化し、その数量の減少をもたらす。一方、分子篩の細孔中の酸位は反応に有利な酸位であり、数量の減少は必然的に分子篩の活性の低下を招く。第二に、これらの変性剤は、細孔のサイズを減少させると同時に、必然的に細孔を閉塞し、分子篩の細孔容積を低下させ、反応物の分子篩への出入りを阻害し、分子篩の活性を低下させる。第三に、異物としての変性剤は分子篩の骨格内で不安定であり、反応時間が長くなるにつれて、これらの変性剤は徐々に失われ、分子篩の形状選択性が低下し、これらの変性剤は反応器の後ろの化学配管に沈着し、配管の閉塞を引き起こす。
【0006】
一方、ZSM-5分子篩の2組の細孔では、正弦状細孔が直線状細孔よりも小さく蛇行しているため、p-キシレンに対する形状選択効果がより優れていることが分かった。しかし、ZSM-5分子篩では正弦状細孔が単独で存在することは不可能である。
【0007】
そのため、トルエンのメタノールによるアルキル化反応におけるp-キシレン選択性を向上させることができる新規なZSM-5分子篩が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ZSM-5分子篩の変性により理想的な形状選択的触媒機能を得ることが困難であり、トルエンのメタノールによるアルキル化反応に用いた場合に、p-キシレン選択性が高くないという従来技術の問題点を解決するために、複合ZSM-5分子篩、その製造方法、触媒、及び使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、複合ZSM-5分子篩であって、1つの結晶が主結晶と双晶とを含み、前記主結晶及び前記双晶はいずれもZSM-5結晶であり、前記主結晶の[010]結晶面は前記双晶の[100]結晶面で覆われており、前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口(「之」字形細孔の開口)と直線状細孔の開口との数の比が(0.7~10):1であり、前記複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y1が(300~2000):1である複合ZSM-5分子篩を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、
(1)水、第1のテンプレート剤及び第2のテンプレート剤の存在下で、シリコン源とアルミニウム源を混合し、pHを11~13.5に調整した後、結晶化するステップと、
(2)結晶化後の生成物を固液分離し、得られた固相を焙焼して前記複合ZSM-5分子篩を得るステップとを含み、
前記第1のテンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、前記第2のテンプレート剤は、エチレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキサンジアミン、エチルアミン、エタノール、エタノールアミンから選ばれる少なくとも1種であり、前記第1のテンプレート剤と第2のテンプレート剤との使用量のモル比が1:(1~30)である複合ZSM-5分子篩の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、本発明の製造方法によって製造された複合ZSM-5分子篩を提供する。
【0012】
本発明の第4の態様は、本発明の複合ZSM-5分子篩を含む触媒を提供する。
【0013】
本発明の第5の態様は、トルエンのメタノールによるアルキル化反応によるp-キシレンの製造における、本発明の複合ZSM-5分子篩又は本発明による触媒の使用を提供する。
【0014】
上記の技術的解決手段により、本発明による複合ZSM-5分子篩では、1つの結晶は、正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が大きく、p-キシレンを製造する反応過程において、すべてのキシレン分子は正弦状細孔を経由して分子篩の外部に拡散しなければならず、このように、キシレン分子拡散の抵抗及び分子篩のp-キシレンに対する形状選択性能を大幅に向上させる。また、この複合ZSM-5分子篩の表面にはSi元素とAl元素とのモル比が高いため、変性剤を添加する必要がなく、このため、変性剤の流失によるp-キシレン選択性の低下はなく、分子篩の安定性も大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の模式図である。
【
図2】本発明に係る複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の3次元立体構造模式図である。
【
図3】本発明により得られた複合ZSM-5分子篩の1つの結晶のSEM図である。
【
図4】本発明により得られた複合ZSM-5分子篩の、異なるエッチング時間条件下でのXPS Al信号スペクトルである。
【
図5】本発明により得られた複合ZSM-5分子篩の、異なるエッチング条件下でのXPS Si/Al値である。
【
図6】比較例1で得られたZSM-5分子篩のSEM図である。
【
図7】比較例2で得られたZSM-5分子篩のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、この正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値に近い値を含むものと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個別の点値との間、及び個別の点値の間は、互いに結合されて1つ又は複数の新たな数値範囲を得ることができ、このような数値範囲は本明細書で具体的に開示されているものとみなされるべきである。
【0017】
本発明の第1の態様は複合ZSM-5分子篩を提供し、
図1に示すように、この複合ZSM-5分子篩の1つの結晶が主結晶と双晶とを含み、前記主結晶及び前記双晶はいずれもZSM-5結晶であり、前記双晶は前記主結晶と90°で重ねて成長し、その結果、前記主結晶の[010]結晶面は前記双晶の[100]結晶面で覆われている。本発明では、前記主結晶の[010]結晶面の両方が双晶の[100]結晶面で覆われている。前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が(0.7~10):1であり、前記複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比(以下、Y
1で表す)は(300~2000):1である。
【0018】
国際分子篩協会が公表しているパラメータによれば、ZSM-5分子篩の[010]結晶面では、20.090Å×13.142Åの面積あたりに1つの直線状細孔の開口があり、ZSM-5分子篩の[100]結晶面では、19.7380Å×13.1420Åの面積あたりに1つの正弦状細孔の開口がある。SEMパターンにより分子篩結晶1個あたりの各結晶面サイズを得た後、結晶面の面積を算出することにより、本発明に係る複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比を得る。好ましくは、前記ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が(0.9~3.2):1である。
【0019】
本発明によれば、好ましくは、前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の長さは10~50μm、高さは1~20μm、幅は1~20μmであり、前記1つの結晶の比表面積は200~600m
2/gである。
図2に示すように、本発明では、前記長さは複合ZSM-5分子篩の1つの結晶のc軸方向における両端の最大距離、前記高さは複合ZSM-5分子篩の1つの結晶のb軸方向における両端の最大距離、前記幅は複合ZSM-5分子篩の1つの結晶のa軸方向における両端の最大距離である。
【0020】
本発明では、XPS技術を用いて複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素の含有量を走査し、Y1を算出する。好ましくは、Y1は(300~1500):1であり、より好ましくは(500~1200):1である。本発明において、複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内とは、複合ZSM-5分子篩の表面からの厚さが10nm以内である部分をいう。
【0021】
本発明によれば、好ましくは、前記複合ZSM-5分子篩全体のSi元素とAl元素とのモル比(以下、Y2で表す)は(20~600):1であり、より好ましくは、(50~300):1である。複合ZSM-5分子篩粒子を粉砕して分子篩内部を露出させた後、XPS技術を用いて複合ZSM-5分子篩全体のSi元素とAl元素の含有量を得て、Y2を算出する。
【0022】
本発明による複合ZSM-5分子篩は、表面にはアルミニウムが少なく、内部にはアルミニウムが豊富であり、p-キシレンの製造に用いた場合、生成したp-キシレンは複合ZSM-5分子篩表面で異性化することがなく、p-キシレンの選択性を向上させることができる。
【0023】
本発明の第2の態様は、本発明に記載の複合ZSM-5分子篩の製造方法を提供し、この方法は、
(1)水、第1のテンプレート剤及び第2のテンプレート剤の存在下で、シリコン源とアルミニウム源を混合し、pHを11~13.5に調整した後、結晶化するステップと、
(2)結晶化後の生成物を固液分離し、得られた固相を焙焼して前記複合ZSM-5分子篩を得るステップとを含み、
前記第1のテンプレート剤は、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、前記第2のテンプレート剤は、エチレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキサンジアミン、エチルアミン、エタノール、エタノールアミンから選ばれる少なくとも1種であり、前記第1のテンプレート剤と第2のテンプレート剤との使用量のモル比が1:(1~30)である。
【0024】
本発明の発明者は、研究した結果、特定の2種類のテンプレート剤を選択するとともに、第1のテンプレート剤と第2のテンプレート剤との使用量の割合を一定の範囲内に制御することにより、主結晶と双晶とを含む複合ZSM-5分子篩結晶を得ることができ、そして、前記主結晶の[010]結晶面が前記双晶の[100]結晶面で覆われており、このように、前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数が多く、かつ、この複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモルが大きくなることを見出した。好ましい場合、前記第1のテンプレート剤と第2のテンプレート剤との使用量のモル比は、1:(3~20)であり、より好ましくは1:(5~15)である。
【0025】
好ましくは、ステップ(1)において、pHを11.2~13に調整する。本発明者らは研究したところ、pHを上記の範囲に制御することにより、得られた複合ZSM-5分子篩をp-キシレンの製造反応に用いた場合、p-キシレンの選択性をさらに向上できることを見出した。
【0026】
本発明において、pHの調整は、例えばアルカリ性物質、好ましくは水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを添加するなど、既存の技術的手段を用いて行うことができる。
【0027】
本発明において、前記シリコン源は、シリコーングリース、シリカゾル、及び固体シリカゲルから選択される少なくとも1種であってもよい。前記シリコーングリースは、オルトケイ酸エチル及び/又はオルトケイ酸メチルであることが好ましい。前記アルミニウム源は、メタアルミン酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム及びアルミニウムイソプロポキシドから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0028】
好ましくは、前記シリコン源、前記アルミニウム源、前記第1のテンプレート剤、前記第2のテンプレート剤及び水の使用量のモル比が100:(0.08~2.5):(0.5~6):(0.5~60):(100~4000)であり、ここで、前記シリコン源は、SiO2換算であり、前記アルミニウム源は、Al2O3換算である。さらに好ましくは、前記シリコン源、前記アルミニウム源、前記第1のテンプレート剤、前記第2のテンプレート剤及び水の使用量のモル比が100:(0.4~2):(1~6):(3~30):(500~4000)である。本発明において、前記水の使用量とは系全体の水の量を指し、前記シリコン源、前記アルミニウム源、前記第1のテンプレート剤又は前記第2のテンプレート剤を水溶液の形態で添加した場合、前記水の使用量は水溶液中の溶媒水を含む。
【0029】
本発明において、ステップ(1)における前記結晶化を行う条件は特に限定されておらず、より良好な結晶化効果を達成するためには、好ましくは、前記結晶化を行う条件は、温度120~250℃、時間12~72hを含む。より好ましくは、温度は150~180℃であり、時間は24~60hである。
【0030】
本発明において、ステップ(2)における前記焙焼を行う条件は特に限定されておらず、より良い焙焼効果を達成するためには、好ましくは、前記焙焼を行う条件は、温度500~700℃、時間1~24hを含む。より好ましくは、時間は4~12hである。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記焙焼を行う前に、固液分離で得られた固相を乾燥する。
【0032】
好ましくは、前記乾燥の条件は、温度90~200℃、時間2~12hを含む。
【0033】
本発明の第3の態様は、本発明の製造方法によって製造された複合ZSM-5分子篩を提供する。
【0034】
ここで、前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶は主結晶と双晶とを含み、ここで、前記主結晶及び前記双晶はいずれもZSM-5結晶であり、前記主結晶の[010]結晶面は前記双晶の[100]結晶面で覆われており、前記複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が(0.7~10):1であり、前記複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y1は(300~2000):1である。
【0035】
好ましくは、前記ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比は(0.9~3.2):1である。
【0036】
好ましくは、前記複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y1は(500~1200):1である。
【0037】
好ましくは、前記複合ZSM-5分子篩全体のSi元素とAl元素とのモル比Y2は、(20~600):1、好ましくは(50~300):1である。
【0038】
本発明の第4の態様は、本発明の複合ZSM-5分子篩を含む触媒を提供する。本発明によれば、前記触媒は、前記複合ZSM-5分子篩を活性成分として含む。前記複合ZSM-5分子篩に加えて、該触媒は、変性剤、細孔拡張剤、結合剤などの一般的な触媒成分を含んでもよく、また、触媒が異なる反応器タイプに適合することを可能にするために、その分野の触媒の従来の構造形状を有することができる。前記複合ZSM-5分子篩の含有量は、前記触媒全量に対して40~90重量%であってもよい。
【0039】
本発明の第5の態様は、トルエンのメタノールによるアルキル化反応によるp-キシレンの製造における、本発明の複合ZSM-5分子篩又は本発明の触媒の使用を提供する。
【0040】
本発明によれば、該触媒及び該複合ZSM-5分子篩は、トルエンのメタノールによるアルキル化反応によるp-キシレンの製造の反応効果に対する触媒作用が同等同様である。
【0041】
本発明による複合ZSM-5分子篩は、変性により得られた従来のZSM-5分子篩と比較して、以下の利点を有する。
【0042】
(1)本発明の複合ZSM-5分子篩は、キシレン分子に対する拡散抵抗が大きい正弦状細孔を利用して分子篩の形状選択機能を達成し、形状選択効果の劣る直線状細孔が形状選択的触媒過程に関与することを回避し、分子篩のp-キシレンに対する選択性を大幅に向上させることができる。
【0043】
(2)本発明の複合ZSM-5分子篩は、変性により得られるZSM-5分子篩と比較して、ワンステップで直接合成したものであり、分子篩の変性工程が存在しないため、酸中心の数は変性工程による影響を受けず、分子篩本来の活性を100%保持することができる。また、反応過程で変性剤が失われて分子篩の形状選択性能が低下することもない。
【0044】
(3)本発明により得られた分子篩では、外面にはアルミニウムが少なく、触媒としてp-キシレンを製造するために使用した場合、生成するp-キシレンは複合ZSM-5分子篩表面で異性化することがなく、p-キシレンの選択性をさらに向上させることができる。
【0045】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、SEMパターンは、球面収差補正走査電子顕微鏡(Nova NanoSEM 450、FEIから購入)を用いて測定される。
【0046】
国際分子篩協会が公表しているパラメータによれば、ZSM-5分子篩の[010]結晶面では、20.090Å×13.142Åの面積あたりに1つの直線状細孔の開口があり、ZSM-5分子篩の[100]結晶面では、19.7380Å×13.1420Åの面積あたりに1つの正弦状細孔の開口がある。SEMパターンにより分子篩結晶1個あたりの各結晶面サイズを得た後、結晶面の面積を算出することにより、本発明に係る複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比を得る。
【0047】
X線光電子分光装置(ESCALAB 250Xi、Thermo-Fisherより購入)を用いて複合ZSM-5分子篩の元素分析を行う。
【0048】
1)XPS技術により、複合ZSM-5分子篩表面から10nm以内の元素とその含有量を走査してY1を得る。
【0049】
2)複合ZSM-5分子篩粒子を破砕して分子篩内部を露出させた後、XPS技術によりY2を得る。
【0050】
複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の長さ、高さ及び幅は球面収差補正走査電子顕微鏡によって得られ、比表面積の試験方法は、試験試料を350℃で前処理した後N2物理吸着を行い、BETモデルを用いて比表面の計算を行う。
【実施例】
【0051】
実施例1
(1)各材料の使用量がSiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:n-ブチルアミン:水=100:0.67:4.5:35.3:3333(モル比)を満たすように、シリカゾル溶液(30wt%)60gを、メタアルミン酸ナトリウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、n-ブチルアミン及び水と混合し、水酸化ナトリウムを加えてpHを12に調整した後、30分間均一に撹拌し、回転式自己圧力結晶化釜に入れて180℃で48h結晶化した。
【0052】
(2)ステップ(1)で結晶化した試料をろ過し、脱イオン水で中性まで洗浄した後、オーブンに入れて120℃で2h乾燥し、乾燥した固形物をマッフル炉に入れ、流動空気雰囲気下、室温(25℃)から550℃まで1℃/minの昇温速度で昇温した後、550℃で5h恒温焙焼し、室温まで自然冷却して、複合ZSM-5分子篩M1を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ50μm、高さ20μm、幅20μm、比表面積420m2/gであった。
【0053】
SEMパターン(
図3参照)により特徴付けられたところ、該複合ZSM-5分子篩M1の1つの結晶は、主結晶の[010]結晶面の約20%の面積が、本体に対して90°で成長した双晶で覆われていた。該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比を表1に示す。
【0054】
該複合ZSM-5分子篩の元素分析を行い、結果を
図4に示す。
図4から分かるように、イオンエッチング深さの増加に伴ってアルミニウム元素の信号値が増加している。
図5に示すように、異なるエッチング時間条件下でのSi/Alモル比を算出した。
図5から分かるように、該複合ZSM-5分子篩中のSi/Alモル比は分子篩表面から内部に向かって徐々に小さくなっており、複合ZSM-5分子篩では表面にはアルミニウムが少なく、内部にはアルミニウムが豊富であることが示された。該複合ZSM-5分子篩のY
1及びY
2の値を表1に示す。
【0055】
実施例2
(1)各材料の使用量がSiO2:Al2O3:水酸化テトラプロピルアンモニウム:ヘキサンジアミン:水=100:0.67:3:30:3000(モル比)を満たすように、固形シリカゲル粉末(シリカの含有量が99wt%を超える)18gを、硫酸アルミニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液(25wt%)、ヘキサンジアミン及び水と混合し、水酸化カリウムを加えてpHを12.5に調整した後、30分間均一に撹拌し、回転式自己圧力結晶化に入れて180℃で48h結晶化した。
【0056】
(2)ステップ(1)で結晶化した試料をろ過し、脱イオン水で中性まで洗浄した後、オーブンに入れて150℃で2h乾燥し、乾燥した固形物をマッフル炉に入れ、流動空気雰囲気下、室温(25℃)から550℃まで2℃/minの昇温速度で昇温した後、550℃で12h恒温焙焼し、室温まで自然冷却して、複合ZSM-5分子篩M2を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ40μm、高さ15μm、幅14μm、比表面積340m2/gであった。
【0057】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0058】
実施例3
(1)各材料の使用量がSiO2:Al2O3:水酸化テトラプロピルアンモニウム:エチレンジアミン:水=100:0.8:4:36:2000(モル比)を満たすように、オルトケイ酸エチル62.4gを、硫酸アルミニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液(25wt%)、エチレンジアミン及び水と混合し、水酸化カリウムを加えてpHを13に調整した後、30分間均一に撹拌し、回転式自己圧力結晶化釜に入れて150℃で60h結晶化した。
【0059】
(2)ステップ(1)で結晶化した試料をろ過し、脱イオン水で中性まで洗浄した後、オーブンに入れて150℃で2h乾燥し、乾燥した固形物をマッフル炉に入れ、流動空気雰囲気下、室温(25℃)から550℃まで5℃/minの昇温速度で昇温した後、550℃で12h恒温焙焼し、室温まで自然冷却して、複合ZSM-5分子篩M3を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ33μm、高さ12μm、幅15μm、比表面積300m2/gであった。
【0060】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0061】
実施例4
(1)各材料の使用量がSiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:エタノールアミン:水=100:0.7:5:60:1000(モル比)を満たすように、固形シリカゲル粉末(シリカ含有量が99wt%を超える)18gを、メタアルミン酸ナトリウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、エタノールアミン及び水と混合し、水酸化ナトリウムを加えてpHを12.5に調整した後、30分間均一に撹拌し、回転式自己圧力結晶化釜に入れて170℃で24h結晶化した。
【0062】
(2)ステップ(1)で結晶化した試料をろ過し、脱イオン水で中性まで洗浄した後、オーブンに入れて120℃で2h乾燥し、乾燥した固形物をマッフル炉に入れ、流動空気雰囲気下、室温(25℃)から550℃まで5℃/minの昇温速度で昇温した後、550℃で5h恒温焙焼し、室温まで自然冷却して、複合ZSM-5分子篩M4を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ16μm、高さ5μm、幅8μm、比表面積314m2/gであった。
【0063】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0064】
実施例5
(1)各材料の使用量がSiO2:Al2O3:水酸化テトラエチルアンモニウム:エチルアミン:水=100:0.8:3:45:4000(モル比)を満たすように、シリカゾル溶液(30wt%)60gを、メタアルミン酸ナトリウム、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(25wt%)、エチルアミン及び水と混合し、水酸化ナトリウムを加えてpHを11.6に調整した後、30分間均一に撹拌し、回転式自己圧力結晶化釜に入れて170℃で24h結晶化した。
【0065】
(2)ステップ(1)で結晶化した試料をろ過し、脱イオン水で中性まで洗浄した後、オーブンに入れて120℃で2h乾燥し、乾燥した固形物をマッフル炉に入れ、流動空気雰囲気下、室温(25℃)から550℃まで5℃/minの昇温速度で昇温した後、550℃で5h恒温焙焼し、室温まで自然冷却して、複合ZSM-5分子篩M5を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ27μm、高さ14μm、幅10μm、比表面積354m2/gであった。
【0066】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0067】
実施例6
(1)各材料の使用量がSiO2:Al2O3:水酸化テトラブチルアンモニウム:エタノール:水=100:0.6:2:40:3000(モル比)を満たすように、固形シリカゲル粉末(シリカ含有量が99wt%を超える)18gを、メタアルミン酸ナトリウム、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液(25wt%)、エチルアミン及び水と混合し、水酸化ナトリウムを加えてpHを13に調整した後、30分間均一に撹拌し、回転式自己圧力結晶化釜に入れて170℃で24h結晶化した。
【0068】
(2)ステップ(1)で結晶化した試料をろ過し、脱イオン水で中性まで洗浄した後、オーブンに入れて120℃で2h乾燥し、乾燥した固形物をマッフル炉に入れ、流動空気雰囲気下、室温(25℃)から550℃まで5℃/minの昇温速度で昇温した後、550℃で5h恒温焙焼し、室温まで自然冷却して、複合ZSM-5分子篩M6を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ10μm、高さ4μm、幅4μm、比表面積370m2/gであった。
【0069】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0070】
実施例7
各材料の使用量がSiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:n-ブチルアミン:水=100:0.67:2:60:3333(モル比)を満たす以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、複合ZSM-5分子篩M7を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ30μm、高さ13μm、幅13μm、比表面積300m2/gであった。
【0071】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0072】
実施例8
各材料の使用量がSiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:n-ブチルアミン:水=100:0.67:2:6:3333(モル比)を満たす以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、複合ZSM-5分子篩M8を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ10μm、高さ2μm、幅3μm、比表面積410m2/gであった。
【0073】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0074】
実施例9
pHを11に調整する以外、実施例2の方法により分子篩を製造し、複合ZSM-5分子篩M9を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ40μm、高さ20μm、幅15μm、比表面積320m2/gであった。
【0075】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0076】
実施例10
各材料の使用量がSiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:n-ブチルアミン:水=100:0.67:4.5:35.3:300(モル比)を満たす以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、複合ZSM-5分子篩M11を得た。該複合ZSM-5分子篩は、長さ15μm、高さ4μm、幅4μm、比表面積440m2/gであった。
【0077】
該複合ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0078】
比較例1
SiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:n-ブチルアミン:水=100:0.67:1.5:60:3333(モル比)である以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D1を得た。
【0079】
そのSEMパターンを
図6に示す。該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y
1及びY
2の値を表1に示す。
【0080】
比較例2
SiO2:Al2O3:臭化テトラプロピルアンモニウム:n-ブチルアミン:水=100:0.67:6:2:3333(モル比)である以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D2を得た。
【0081】
そのSEMパターンを
図7に示す。該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y
1及びY
2の値を表1に示す。
【0082】
比較例3
n-ブチルアミンを等モル量の水酸化テトラブチルアンモニウムに変更する以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D3を得た。
【0083】
該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0084】
比較例4
臭化テトラプロピルアンモニウムを等モル量のエタノールアミンに変更する以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D4を得た。
【0085】
該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0086】
比較例5
n-ブチルアミンを等モル量のトリエチルアミンに変更する以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D5を得た。
【0087】
該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0088】
比較例6
n-ブチルアミンを等モル量のトリエタノールアミンに変更する以外、実施例1の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D6を得た。
【0089】
該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0090】
比較例7
pHを13.8に調整する以外、実施例2の方法により分子篩を製造し、ZSM-5分子篩D7を得た。
【0091】
該ZSM-5分子篩の外面における正弦状細孔と直線状細孔との開口数の比、Y1及びY2の値を表1に示す。
【0092】
実施例11
上記実施例及び比較例で製造した複合ZSM-5分子篩M1~M10及びZSM-5分子篩D1~D7を、トルエンのメタノールによるアルキル化反応に用い、反応条件は、反応温度が470℃であり、反応圧力が常圧であり、反応が水素雰囲気で行い、液体原料中のトルエンとメタノールのモル比が6:1であり、原料が蠕動ポンプで0.03mL/minの供給速度で供給され、分子篩触媒の使用量が0.2gであった。
【0093】
反応終了後、トルエン転化率とp-キシレン選択性を算出し、結果を表1に示す。
【0094】
トルエン転化率=(トルエン供給モル量-トルエン排出モル量)/トルエン供給モル量×100%。
p-キシレン選択性=p-キシレン排出モル量/(p-キシレン排出モル量+m-キシレン排出モル量+o-キシレン排出モル量)×100%。
【0095】
【0096】
上述した実施例、比較例及び表1の結果から分かるように、本発明による複合ZSM-5分子篩の1つの結晶は、主結晶と双結晶とを含み、前記主結晶の[010]結晶面は前記双結晶の[100]結晶面で覆われており、このようにして、複合ZSM-5分子篩の1つの結晶の外面における正弦状細孔の開口と直線状細孔の開口との数の比が0.8よりも高くなる。複合ZSM-5分子篩の表面から10nm以内のSi元素とAl元素とのモル比Y1、複合ZSM-5分子篩全体のSi元素とAl元素とのモル比Y2のデータから、本発明の複合ZSM-5分子篩では、表面にはアルミニウムが少なく、内部にはアルミニウムが豊富であることが示されている。比較例1~7の結果データと比較すると、本発明の複合ZSM-5分子篩をメタノールによるトルエンのアルキル化反応によるp-キシレンの製造に用いると、メタノールによるトルエンのアルキル化反応によるp-キシレンの製造におけるp-キシレンの選択性を効果的に向上させることができる。
【0097】
以上、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的概念の範囲内では、個々の技術的特徴を他の任意の適切な方法で組み合わせることを含め、本発明の技術的解決手段に対して複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせは、同様に本発明に開示されたものとみなされるべきであり、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【国際調査報告】