(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】皮内投与用混合ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20221109BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221109BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221109BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20221109BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20221109BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A61K39/12
A61P43/00 121
A61K9/107
A61K47/06
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/04
A61K39/00 J
A61P31/20
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515948
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2020075454
(87)【国際公開番号】W WO2021048338
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,テオドルス
(72)【発明者】
【氏名】スノ,メラニー
(72)【発明者】
【氏名】ウィトフリート,マールテン・ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ピエスト,マルティン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB11
4C076CC06
4C076DD09
4C076DD22
4C076DD29
4C076DD34
4C076DD59
4C076EE23
4C076FF68
4C076GG41
4C085AA04
4C085BA48
4C085BA51
4C085CC07
4C085CC08
4C085DD01
4C085DD23
4C085EE03
4C085EE05
4C085GG05
(57)【要約】
本発明は獣医ワクチン学の分野、すなわち、ブタ用の混合ワクチンに関する。特に、本発明は、ブタサーコウイルス2型(PCV2)およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mhyo)による病原性感染に対する防御のための、PCV2の非複製性免疫原およびMhyoの非複製性免疫原を含む混合ワクチンに関する。該ワクチンは、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンであることを特徴とする。もう1つの実施形態においては、本発明は、皮内投与による、PCV2およびMhyoによる病原性感染に対する防御のための混合ワクチンに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブタサーコウイルス2型の非複製性免疫原とマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非複製性免疫原とを含む混合ワクチンであって、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンであることを特徴とする混合ワクチン。
【請求項2】
1~15% w/vの量のスクアランを含む、請求項1記載の混合ワクチン。
【請求項3】
2~20% w/vの量のビタミンE-アセタートを含む、請求項1または2記載の混合ワクチン。
【請求項4】
8~20のHLB値を有する乳化剤を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項5】
乳化剤がポリソルベート80である、請求項4記載の混合ワクチン。
【請求項6】
乳化剤が0.5~10% w/vの量で存在する、請求項4または5記載の混合ワクチン。
【請求項7】
0.02~2% w/vの量のシリカを含む、請求項1~6のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項8】
ブタサーコウイルス2型の非複製性免疫原が、ブタサーコウイルス2型のORF2遺伝子によりコードされる組換え発現タンパク質である、請求項1~7のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項9】
マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)の非複製性免疫原が死滅全マイコプラズマ・ヒオニューモニエを含む、請求項1~8のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項10】
混合ワクチンが動物の真皮内に投与されることを特徴とする、ブタサーコウイルス2型による感染およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に対する動物の予防的治療における使用のための、請求項1~9のいずれか1項記載の混合ワクチン。
【請求項11】
動物の真皮内に投与される混合ワクチンの体積が0.1~0.5mlである、請求項10記載の使用のための混合ワクチン。
【請求項12】
ブタサーコウイルス2型による感染およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に対して動物を予防的に治療するための請求項1~9のいずれか1項記載の混合ワクチンの製造のための、ブタサーコウイルス2型の非複製性免疫原およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエの非複製性免疫原の使用であって、混合ワクチンが動物の真皮内に投与されることを特徴とする、前記使用。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項記載の混合ワクチンを動物の真皮内に投与することによる、ブタサーコウイルス2型による感染およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)による感染に対する動物の予防的治療方法。
【請求項14】
スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンであることを特徴とする、非生ワクチンを製剤化するためのアジュバント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の一般的分野
本発明は獣医ワクチン学の分野、すなわち、ブタ用の混合ワクチン(組合せワクチン)に関する。特に、本発明は、ブタサーコウイルス2型(PCV2)およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)(Mhyo)による病原性感染に対する防御のための、PCV2の非複製性免疫原およびMhyoの非複製性免疫原を含む混合ワクチンに関する。該ワクチンは、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンであることを特徴とする。もう1つの実施形態においては、本発明は、皮内投与による、PCV2およびMhyoによる病原性感染に対する防御のための混合ワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の集約的養豚は、動物の健康を維持するために、および経営を可能にするために、獣医用医薬品に大きく依存している。飼料と農場管理システムとの最適化に加えて、種々の治療、すなわち、ホルモンまたは抗生物質のような医薬、および細菌性またはウイルス性病原体に対するワクチン接種が定期的に用いられる。若齢以降からブタを冒す最も顕著な疾患の幾つかはマイコプラズマ・ヒオニューモニエのような細菌およびブタサーコウイルス2型のようなウイルスによって引き起こされる。
【0003】
マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mhyo)は、世界中で発生するブタにおける慢性呼吸器疾患である(ブタ)流行性肺炎を引き起こす主要因子である。特に若い子ブタはこの高伝染性疾患に罹り易い。該細菌は比較的小さく、細胞壁を欠き、モリクテス(Mollicutes)属に属する。これらの細菌は宿主細胞の表面上または内部で寄生的生活様式で生息する。Mhyoによる肺疾患は、硬化性(consolidated)肺炎を招く主に免疫媒介性病態である。該細菌は肺繊毛上皮にコロニー形成し、損傷を与えて、繊毛活性の喪失を招く。収容状態および環境ストレスに応じて、この疾患の最も問題となる影響は、それが他の細菌性病原体およびウイルス性病原体によるブタ呼吸器系の種々の二次感染の素因となることである。これは、重度の肺病変を示すいわゆるブタ呼吸器複合感染症(PRDC)を引き起こす。動物の不快感に加えて、流行性肺炎およびPRDCは、成長率および飼料要求率における成績の低下ゆえに、ならびに獣医学的ケアおよび抗生物質の使用のためのコストにより、養豚業に重大な経済的損失をもたらす。
【0004】
ブタサーコウイルス2型(PCV2)は、若いブタで観察される離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)に関連している。臨床的徴候および病理は1996年に公開され、進行性消耗、呼吸困難、頻呼吸、そして時には黄疸および黄化病を含む。新たな因子は、PK-15細胞の自然汚染体であった公知PCVとは異なるものとして、PCV2と命名された。PCV2はサーコウイルス属の非常に小さな非エンベロープウイルスである。それは、2つの主要遺伝子を有する環状一本鎖DNAゲノムを含有する。ORF2遺伝子は約233アミノ酸のウイルスカプシドタンパク質をコードしている。組換え発現されたPCV2 ORF2タンパク質は、サブユニットワクチンとして非常に有効なウイルス様粒子を形成する。
【0005】
Mhyoに対しては種々の市販ワクチンが存在し、これらは商業的養豚業の大部分において日常的に使用されている。一般に、これらのワクチンは、非複製性免疫原、例えばサブユニットタンパク質および/またはバクテリン(すなわち、無傷であるか否かを問わない死滅細菌)を含み、これらは、典型的には、非経口注射によって投与される。幾つかの例としては、RespiSure(登録商標)(Zoetis)、Ingelvac(登録商標)M.hyo(Boehringer Ingelheim)およびM+Pac(登録商標)(Merck Animal Health)が挙げられる。
【0006】
PCV2による感染に対して動物、特にブタを予防的に治療するための通常のワクチンは(非複製性)免疫原としての全不活化PCV2ウイルスに基づくものでありうる。また、当技術分野においては、ORF2にコードされるカプシドタンパク質(例えば、組換え発現された場合)は、適切なワクチンに使用されるPCV2のサブユニット免疫原として適していることが示されている。このように理解されうるのは、このサブユニットが体内でウイルス自体と同様に現れ(それはウイルス様粒子を形成する)、DNAおよび非構造タンパク質がカプシドの内部に存在しないという点でのみ本質的に異なるに過ぎないからである。当技術分野においては、PCV2に対する幾つかのワクチンが商業的に入手可能である。Porcilis(登録商標)PCV(MSD Animal Health,Boxmeer,The Netherlandsから入手可能)は、3週齢以上のブタにおいて使用される、ブタサーコウイルス2型に対してブタを防御するためのワクチンである。2回投与(2用量)ワクチンとして投与された場合、免疫持続時間(DOI)は22週間であり、ブタの肥育期間をほぼ完全にカバーする。Ingelvac CicroFlex(登録商標)(Boehringer Ingelheim,Ingelheimから入手可能)は、2週齢以上のブタにおいて使用される、ブタサーコウイルス2型に対してブタを防御するためのワクチンである。それは1回投与(1用量)ワクチンとしてのみ登録されている。Circovac(登録商標)(Merial,Lyon,Franceから入手可能)は、3週齢以上のブタにおいて使用される、ブタサーコウイルス2型に対してブタを防御するためのワクチンである。Suvaxyn(登録商標)PCV(Zoeitis,Capelle a/d IJssel,The Netherlandsから入手可能)は、3週齢以上のブタにおいて使用される、ブタサーコウイルス2型に対してブタを防御するためのワクチンである。他のPCV2ワクチンは、例えば、WO2007/028823、WO2007/094893およびWO2008/076915に記載されている。
【0007】
動物に対するストレスならびに飼育員の労力およびコストを低減するために、幾つかのブタワクチンが混合ワクチンとして製造されている。具体例としては、投与直前に混合されうるIngelvac CircoFLEXおよびIngelvac MycoFLEX(Boehringer)、PCV2とMhyoとの抗原を組合せたFostera(登録商標)PCV MH(Zoetis)およびPorcilis(登録商標)PCV MHyo(MSD Animal Health)が挙げられる。
【0008】
非複製性免疫原を含むワクチンの重要な成分はアジュバントである。これは、アジュバントの非存在下では免疫原性ではない非複製性免疫原に免疫刺激をもたらす。これは種々の免疫系経路を始動させるが、基本的なメカニズムは十分には理解されていない。獣医用ワクチンにおいては、例えば以下のような多種多様な化合物がアジュバントとして使用されうる:鉱油、例えばBayol(登録商標)またはMarkol(登録商標)、Montanide(登録商標)またはパラフィン油;非鉱油、例えばスクアレン、スクアランまたは植物油、例えばオレイン酸エチル;アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム;ペプチド、例えばジメチルグリシンまたはタフトシン;細菌細胞壁成分、例えばリピドAおよびムラミルジペプチド;(合成)ポリマー、例えばプルロニック、デキストラン、カルボメア、ピランまたはサポニン;サイトカイン;およびトール様受容体の刺激因子、例えば、非メチル化CpG基を含有する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド;など。
【0009】
アジュバント含有混合ワクチンを製造する際に克服すべき主な問題は、免疫応答またはワクチンの安全性もしくは安定性に悪影響を及ぼす、種々のワクチン成分間の相互作用を防ぐことである。そのような相互作用は、例えば、免疫原自体の間で生じうる。例えば、Mhyoのバクテリンのような幾つかのものは非常に粗製な製品であるからである。しかし、PCV2およびMhyoに関して、当技術分野は、種々のタイプのこれらの病原体の非複製性免疫原が、有効なワクチンにおいて組合せられうることを既に示している。しかし、アジュバントはワクチン免疫原を阻害し、または更には損傷しうる。これは、販売許可を付与する登録当局によっても認識されている。例えば、USDAは、生ウイルスを含む不活化ワクチンにおける殺ウイルス活性の検出に関する規則9CFR113.35を施行している。これに加えて、特定の投与経路はアジュバント組成物の安全性に重大な影響を及ぼしうる。アジュバントは、筋肉内投与された場合には安全かもしれないが、皮下投与された場合には許容し得ない安全性の問題を引き起こしうる。
【0010】
複雑な混合ワクチンの開発におけるこれらの潜在的な問題は一般に認識されている。例えば、EMEAからの刊行物“Note for guidance:requirements for combined veterinary products”(EMEA,2000,CVMP/IWP/52/97-FINAL)、および1997年4月からの米国保健福祉省食品医薬品局生物学的評価研究センター(U.S. Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration,Center for Biologies Evaluation and Research)からの出版物“Guidance for Industry,for the evaluation of combination vaccines for preventable diseases:Production,Testing and Clinical Studies”,Docket No. 97N-0029を参照されたい。これらの刊行物は共に、免疫原とアジュバントとを組合せた場合のワクチンの有効性および安全性に対する干渉の影響に関して警告している。
【0011】
したがって、複数の種の病原体に関連する免疫原の複雑な組合せに対して有効な免疫応答を誘導する混合ワクチンを開発することは困難である。更に、混合ワクチンは動物における使用に際して安全でなければならない。すなわち、発熱、局所的な腫れ、食欲不振などのような重大な副反応を引き起こさないものでなければならない。また、より実際的な特性が重要であり、混合ワクチンは、理想的には、経済的な製造が可能であること、製剤化(処方)および貯蔵中に十分に安定であること、ならびに他の免疫原の存在下で各免疫原に関する効力試験方法が可能であることが必要である。
【0012】
全体として、複数の病原体に対する混合ワクチン接種は簡単ではなく、特に混合ワクチン接種がアジュバント含有混合ワクチンによるものである場合には、安全性および有効性を決定するための実験を要することが一般に公知である。
【0013】
したがって、先行技術における1以上の欠点を克服し、PCV2およびMhyoによる感染に関連した疾患に対する有効かつ安全な混合ワクチンを提供することが必要とされている。
【0014】
多数の動物のワクチン接種においては、動物とそれらにワクチン接種する人々との両方のストレスを軽減することが重要である。更に、通常の筋肉内経路によるワクチン接種は、しばしば、動物における疼痛およびストレスを伴い、副反応および感染のリスクの増加を伴う。筋肉内投与に伴う問題を克服するための1つの可能性は真皮内への投与によるワクチン接種(皮内投与とも称される)である。皮内ワクチン接種は、動物において、より広い範囲の部位の投与を可能にして、使用者における自由度を高める。これは、ブタの大きな集団にワクチン接種する場合に特に有用である。なぜなら、それは迅速かつ非侵襲的な適用を可能にして、ブタおよび管理者の両方のストレスを軽減するからである。
【0015】
市販の不活化マイコプラズマ・ヒオニューモニエ全細胞ワクチン(Porcilis(登録商標)MHYO ID ONCE-MSD Animal Health)の皮下投与により誘導される全身免疫応答および呼吸器局所免疫応答が、筋肉内経路により投与された2つの市販ワクチンおよび陰性対照と比較して、P.Martelliら,Vet Microbiol.2014;168(2-4):357-64に記載されており、アジュバント含有Mhyoバクテリンの皮内投与が全身性および粘膜性の両方の免疫応答を誘導することが示されている。
【0016】
特に、皮内投与は、IDAL(登録商標)ワクチン接種装置(MSD Animal Health,Boxmeer,The Netherlandsから入手可能)のような無針ワクチン接種装置により実施可能であるという利点を有する。「皮内」投与自体は「無針」投与と同一視されるべきではない。無針装置が「皮内ワクチン接種用に設計されている」場合にのみ、ワクチンは実際に(少なくとも部分的に)真皮内に送達されうる。無針皮内投与は針注射よりも侵襲性が低く、動物における全身副作用が少なく、優れた免疫応答を誘導する。それはまた、ワクチン接種の実施中に針がブタの間で疾患を伝染させるリスクを低減する。
【0017】
しかし、皮内投与に適した安全かつ有効なワクチンの提供は困難である。なぜなら、ワクチンの体積が、典型的には約0.1~0.5mlの範囲のように非常に少量である必要があるからである。したがって、免疫原およびワクチンの他の成分(例えば、可能なアジュバント)は非常に濃縮される必要があり、これは種々のワクチン成分間の相互作用のリスクを増加させる。前記のとおり、PCV2およびMhyoからの免疫原を組合せたワクチンは商業的に入手可能である。しかし、これらの混合ワクチンは筋肉内投与用であり、皮内投与には適していない。
【発明の概要】
【0018】
発明の目的
皮内投与に適した、PCV2およびMhyoによる感染に関連する疾患に対する混合ワクチンを提供することが目的であった。特に、PCV2およびMhyoによる感染に対する動物の予防的治療に使用されうる安全かつ有効なワクチンを提供することが目的であった。
【0019】
発明の概括
驚くべきことに、ブタサーコウイルス2型(PCV2)の非複製性免疫原とマイコプラズマ・ヒオニューモニエ(Mhyo)の非複製性免疫原とを含む混合ワクチンを可能にする特定のアジュバントを案出することにより(ここで、該混合ワクチンは、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンである)、これらの目的が達成可能であり、その結果、先行技術の1以上の欠点が克服されうることが判明した。
【0020】
特に、驚くべきことに、PCV2の非複製性免疫原とMhyoの非複製性免疫原とを含む混合ワクチンであって、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョン(すなわち、そのエマルジョンの連続相は水性であり、その内部に、不連続相である疎水性液が分散しており、その後者の相自体の内部に第2の又は更なる相が分散していてもよい)である混合ワクチンが、PCV2による感染およびMyhoによる感染に対する動物の安全な予防的治療において、皮内投与により使用されうることが判明した。
【0021】
本発明はまた、アジュバント組成物自体、特に、非生ワクチンを製剤化するためのアジュバント組成物において具体化され、ここで、該組成物は、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンである。
【0022】
定義
「混合ワクチン」は、複数の微生物種からの免疫原を含むワクチンである。本発明による混合ワクチンは、少なくとも、ブタサーコウイルス2型およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエからの免疫原を含む。したがって、本発明による混合ワクチンは、口語的には、PCV2およびMhyoに「対する」ワクチンとも称されうる。
【0023】
「ワクチン」は、一般に、ブタのような対象動物に安全に投与される、そして病原性微生物に対してその動物において防御免疫を誘導しうる医薬組成物を意味する。ワクチンは、典型的には、免疫学的に活性な成分および薬学的に許容される担体を含む。「免疫学的に活性な成分」は、1以上の免疫原性分子、例えば、PCV2およびMhyoからの非複製性免疫原である。これらは、標的動物の免疫系により認識され、防御免疫応答を誘導する。
【0024】
ワクチンは、一般に、例えば病原体の数を減少させることにより、または宿主動物における病原体の複製の期間を短縮することにより、感染の重症度を低減するのに有効である。それに加えて、あるいはおそらくはその結果として、ワクチンは、一般に、そのような感染もしくは複製により、またはその感染もしくは複製に対する動物の応答により引き起こされうる疾患の(臨床)症状を軽減または改善するのに有効である。
【0025】
病原体の「非複製性免疫原」は、生きた複製性病原体全体(弱毒化形態の野生型におけるいずれかのもの)を除く、病原体に対応する任意の物質または化合物であり、その病原体に対して免疫応答が誘導され、この免疫応答の結果として、対応する毒性病原体またはその病原性因子の1以上が宿主の免疫系により認識され、最終的に少なくとも部分的に中和される。非複製性免疫原の典型例は、死滅全病原体(この用語は細胞溶解形態のこれらの病原体を含む)、ならびにこれらの病原体のサブユニット、例えばカプシドタンパク質、表面発現分子(例えば、組換え発現タンパク質またはリポ多糖)および分泌分子、例えば毒素である。
【0026】
病原体による感染に対する「予防的治療(予防的処置)」は、典型的には、その病原体による感染またはその感染から生じる障害、あるいは病原性病原体での処置後チャレンジから生じる感染または障害を予防、改善または治癒するのを助けて、特に、そのようなチャレンジの後の宿主におけるその負荷を低減し、そして所望により、該病原体による処置後感染から生じる1以上の臨床症状を予防または改善するのを助ける。
【0027】
発明の実施形態
第1の実施形態においては、本発明は、PCV2の非複製性免疫原とMhyoの非複製性免疫原とを含む混合ワクチンであって、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンであることを特徴とする混合ワクチンに関する。
【0028】
本発明による混合ワクチン中の「非複製性免疫原」のそれぞれは単一のタイプのものであることが可能であり、または例えばそれぞれの病原体の1以上の株に由来する複数のタイプのものであることが可能である。本発明の場合、PCV2の非複製性免疫原は、好ましくは、不活化全PCV2ウイルスである。より一層好ましいのはサブユニットとしてのORF2タンパク質の使用であり、これは、典型的には、組換え発現系から得られ、またはレプリコン粒子により運搬され発現される。PCV2 ORF2は昆虫細胞培養内の組換えバキュロウイルスにより発現され、回収される。レプリコン粒子は欠損ウイルス粒子、例えば、Alpha Vaxにより開発されたアルファウイルス粒子である。発現されるORF2配列の親PCV2はPCV2血清型a、b、cまたはdのいずれかであることが可能であり、あるいはこれらの血清型の1以上のキメラに由来しうる。
【0029】
マイコプラズマ・ヒオニューモニエの非複製性免疫原は、典型的には、死滅全マイコプラズマ・ヒオニューモニエ、すなわち、死滅Mhyoバクテリンを含む。Mhyoバクテリンは、好ましくは、11株またはJ株に由来する。
【0030】
「水中油型エマルジョン」は、水性の連続相を有するエマルジョンであり、該水性連続相の内部に、不連続相である疎水性液が分散しており、その後者の相自体の内部に第2の又は更なる相が分散していてもよい。乳化剤の適切な種類および濃度を選択することにより、そのようなエマルジョンが形成されうる。ワクチンとして使用される水中油型エマルジョンの製造のための方法および装置は当技術分野で周知であり、例えば、“Remington:the science and practice of pharmacy”(2000,Lippincot,USA,ISBN:683306472)および“Veterinary vaccinology”(P.Pastoretら編,1997,Elsevier,Amsterdam,ISBN 0444819681)のようなハンドブックに記載されている。
【0031】
本発明においては、外側の水相はPCV2およびMyhoからの非複製性免疫原ならびにシリカを含むことが可能であり、油相はスクアランおよびビタミンE-アセタートを含むことが可能である。
【0032】
本発明による混合ワクチンは、水中油型エマルジョンとして製造された場合、非常に有効であり、安全であり、安定であることが判明した。本発明による混合ワクチン用の水中油型エマルジョンの製造のための実施形態および好ましい形態は本明細書において後記に記載されている。
【0033】
「スクアラン」は非鉱油であり、硬化サメ肝油、ヘキサメチルテトラコサンまたはペルヒドロスクアレンとも称される。これはスクアレン(CAS番号111-02-4)と混同すべきではなく、スクアレンはポリ不飽和C30油であり、コレステロール経路の化合物として代謝可能である。しかし、スクアランはスクアレンの完全水素化形態であり、したがって酸化されにくい。したがって、スクアランは注射部位から移動可能であり(したがって、それは注射部位から「消失」する)、したがって、「代謝可能」であると示されることがあるが、実際には不活性で代謝不可能な油である(それは注射部位から物理的に移動するに過ぎず、代謝されない)。
【0034】
最初はスクアランの前駆体はサメの肝臓から得られたが、環境上の懸念から、これはオリーブオイルのような他の天然資源および化学合成に変わってきている。したがって、スクアランの定義には、天然、合成もしくは半合成形態またはそれらの混合物が含まれる。スクアランは種々の純度で商業的に入手可能であり、例えば、野菜、ウォーリー(Worlee)(スクアラン、野菜)またはクロダ(Croda)(Pripureスクアラン)から、あるいは合成物として例えばクラレ(Kuraray)(スクアラン-PE)から入手可能である。本発明の場合、高純度のスクアランが好ましく、好ましくは、75%を超える純度、より好ましくは、80、90または更には95%(後のものほど好ましい)を超える純度のものが好ましい。
【0035】
本発明による混合ワクチンにおけるスクアランは、典型的には、ワクチンの1~15% w/vの量で存在する。より好ましくは、スクアランはワクチンの3~12% w/vまたは更には5~9% w/v(後のものほど好ましい)、例えば、5%、6%、7%、8%または9% w/vの量で存在する。最も好ましくは、スクアランはワクチンの約6.8% w/vの量で存在する。
【0036】
したがって、本発明による混合ワクチンの1つの実施形態においては、ワクチンは1~15% w/vの量のスクアランを含む。
【0037】
「ビタミンE-アセタート」はビタミンE(トコフェロール)の酢酸エステルであり、種子、堅果、果実または葉のような植物性材料または脂身に由来しうるが、合成的に製造することも可能である。幾つかの別名として、トコフェリルアセタート(トコフェロール酢酸エステル)またはアルファ-トコフェロール-アセタート(アルファトコフェロール酢酸エステル)が挙げられる。ビタミンE-アセタートの定義には、天然、合成もしくは半合成形態またはそれらの混合物が含まれる。ビタミンE-アセタートは種々の純度で商業的に入手可能である。本発明による混合ワクチンにおいて使用されるビタミンE-アセタートは、CAS番号7695-91-2を有する化学物質のラセミ体であるDL-アルファ-トコフェロール-アセタートでありうる。
【0038】
本発明による混合ワクチンにおけるビタミンE-アセタートは、典型的には、ワクチンの2~20% w/vの量で存在する。より好ましくは、ビタミンE-アセタートはワクチンの4~16% w/vまたは6~10% w/v(後のものほど好ましい)、例えば、6%、7%、8%、9%または10% w/vの量で存在する。最も好ましくは、ビタミンE-アセタートはワクチンの約8% w/vの量で存在する。
【0039】
したがって、本発明による混合ワクチンの1つの実施形態においては、ワクチンは2~20% w/vの量のビタミンE-アセタートを含む。
【0040】
「シリカ」は二酸化ケイ素である。シリカはアジュバント組成物における使用に関して広範に記載されており、一般に、医薬品等級のシリカとして示されている。全ての医薬品等級のシリカは、それらがコロイド状二酸化ケイ素であるという共通点を有し、製薬業界でほぼ50年間使用されている。このタイプのシリカにおいて、種々の表面積、親水性および疎水性(例えば、メチル化)、結晶性またはアモルファス(例えば、ヒュームドシリカ)ならびに種々の造粒比のものが入手可能であり、全てがアジュバント組成物において一般に使用される。アジュバント組成物において好ましく使用されるシリカのタイプの例としては、アモルファスシリカ(これは親水性または疎水性でありうるが、本発明で使用される場合、好ましくは親水性である)が挙げられる。一般的なタイプのアモルファスシリカはヒュームドシリカであり、これは、炎の中で生成されるため、焼成シリカとしても公知であり、アモルファスシリカの微小液滴からなり、これは分岐鎖状三次元二次粒子に融合し、ついでこれは三次粒子へと凝集する。
【0041】
本発明の混合ワクチンにおいて使用されるシリカは100~700m2/グラム、より好ましくは300~500m2/グラム、更により好ましくは350~410m2/グラム、最も好ましくは約395±25m2/グラムの粒径(粒子サイズ)を有しうる。表面積は、ブルナウアー(Brunauer)の窒素吸着法(Brunauer,S.ら,J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938))を用いる計算のような、当技術分野で公知の方法により決定されうる。
【0042】
そのような製品は、例えば、Aerosil(登録商標)またはAeroperl(登録商標)の商品名として商業的に入手可能である(これらの商品名においては、異なる表面積、疎水性および親水性、結晶性またはアモルファスのような多数の変異体が入手可能である)。一例としては、Evonik Resource Efficiency GmbH,GermanyによるAerosil(登録商標)380またはSigma-AldrichによるS5130(約0.007μmの粒径、3.7~4.5のpH(4%分散)および約50g/lのタップ密度を有する)が挙げられる。
【0043】
本発明による混合ワクチンにおけるシリカは、典型的には、ワクチンの0.02~2% w/vの量で存在する。より好ましくは、シリカはワクチンの0.05~1.0% w/vまたは更には0.1~0.4% w/v(後のものほど好ましい)、例えば、0.1%、0.2%、0.3%または0.4% w/vの量で存在する。最も好ましくは、シリカはワクチンの約0.2% w/vの量で存在する。
【0044】
したがって、本発明による混合ワクチンの実施形態においては、ワクチンは0.02~2% w/vの量のシリカを含む。
【0045】
本発明の混合ワクチンは、典型的には、薬学的に許容される担体、好ましくは水を含む。好ましくは、水は高純度の水、例えば再蒸留水、精密濾過水または逆浸透水である。より好ましくは、水は注射用水であり、無菌であり、発熱物質を実質的に含有しない。
【0046】
水中油型エマルジョンに基づくワクチンの有利な特徴は、免疫原が通常、水相中に存在することである。これは、ワクチン免疫原の品質または生存度の維持にそれ自体では適合しない方法および技術を用いて、例えば、高エネルギー乳化を高温で用いて、別々に油相が調製され、水中で乳化されうることを意味する。これは本発明のための油性エマルジョンを生成し、これは水中のスクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカの水中油型エマルジョンである。本発明による混合ワクチンを製造するために、免疫原およびシリカを含有する水相と、その他のアジュバントを含有する油性エマルジョンとを、室温で穏やかに混合することにより混合する。
【0047】
それらの2つの組成物の混合はそれらのそれぞれの希釈を引き起こす。したがって、それぞれは、適用される希釈度に等しい係数で、種々の成分の濃度が最終ワクチンにおけるものより高い中間組成物として調製される必要がある。典型的には、水相と油性エマルジョンとは10:90~90:10の間の任意の体積比で混合されうる。
【0048】
本発明による混合ワクチンは、好ましくは、共に記載されている水相および油性エマルジョンを20:80~80:20の体積比で含む。したがって、1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは20:80~80:20の体積比の水相と油性エマルジョンとの混合物から製造される。好ましくは、体積比は30:70~70:30、40:60~60:40;または更には約50:50(後のものほど好ましい)の体積比である。
【0049】
明らかに、水相と油性エマルジョンとの混合比が約50:50である場合、それらの2つの組成物のそれぞれは、2つの中間的組成物の混合により製造される最終的なワクチン製剤において望まれるものよりも2倍高い量または濃度でその種々の成分を含むべきである。
【0050】
好ましい実施形態においては、本発明のための油性エマルジョンは、8~20のHLB値(親水性-親油性バランス)を有する乳化剤を使用して製造される。好ましい乳化剤はポリソルベート80である。
【0051】
ポリソルベート80は、CAS番号9005-65-6を有する化学物質(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートとも称される)を意味する。それは約15のHLB値を有し、例えばTween80として、広く商業的に入手可能である。
【0052】
好ましくは、ポリソルベート80は、本発明による混合ワクチン中に、ワクチンの0.5~10% w/vの量で存在する。より好ましくは、ポリソルベート80はワクチンの0.7~7% w/v、1.0~5%または更には2~4% w/v(後のものほど好ましい)の量で存在する。最も好ましくは、ポリソルベート80はワクチンの約3.2% w/vの量で存在する。
【0053】
したがって、1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは0.5~10% w/vの量のポリソルベート80を含む。
【0054】
本発明のための油性エマルジョンは、Microfluidizer(商標)、Silverson(商標)、Ultra Turrax(商標)またはDispaxリアクター(IKA)のような任意の適切なホモジナイズ(均質化)装置を使用して、任意の規模で製造されうる。当業者は、分散相(この場合は油性アジュバント)の粒子のサイズを制御するために、そのような乳化プロセスを実施し、最適化することが可能である。乳化剤のタイプおよび濃度の選択と共に、これはエマルジョンの医薬特性、そしてまた、その安定性を制御する。乳化プロセス自体の主要パラメーターはエネルギー入力(電力およびrpm)、温度、持続時間および反復サイクル数である。乳化プロセスの実施形態の詳細は後記に示されている。
【0055】
分散相の粒子のサイズは、好ましくは、非常に小さい。分散相の粒子の直径が約1マイクロメートル未満の場合、そのようなエマルジョンは一般に「サブミクロンエマルジョン」と称される。本発明による混合ワクチンの水中油型エマルジョンの1つの実施形態においては、エマルジョンはサブミクロンエマルジョンである。
【0056】
1マイクロメートル以下の粒径を測定するための装置は、例えばレーザー回折測定により、一般に利用可能である。典型的には、粒径はナノメートル(nm)単位で表され、平均粒径(メジアン径としても公知である)は累積粒径分布のD50として表される。
【0057】
本発明において、粒径は、Mastersizer(登録商標)(Malvern Instruments)を使用して決定された場合のようにD50のnm単位で表される。粒径の測定は(濃縮)油性エマルジョンまたは混合ワクチンにおいて行われうる。本発明のための油相の粒子屈折率は1.48である。Malvern Mastersizerのサイズ分析報告はD50をD(0.50)として表している。したがって、本発明による混合ワクチンのサブミクロン水中油型エマルジョンの1つの実施形態においては、油滴は500nm以下のD50を有し、好ましくは、D50は250nm以下である。より好ましくは、D50は150nm以下である。
【0058】
このようなサブミクロンエマルジョンを製造するために利用可能な多数の方法が存在し、典型的には高エネルギー乳化プロセスが使用され、例えば高圧ホモジナイザー、ロータ・ステータ(動静翼)装置、混合機(ブレンダー)、超音波、微多孔膜またはマイクロチャネリング装置が使用される。
【0059】
本発明のための高エネルギー乳化のための好ましいプロセスは高圧ホモジナイザー、好ましくはMicrofluidizer(商標)(Microfluidics)の使用である。典型的には、500~1500バール(すなわち、7000~22000 psi)の圧力で3回の通過で十分である。このようにしって製造されたエマルジョンは、典型的には、500nm以下のD50を有する分散相粒子を有し、狭いサイズ分布を有する。本発明の場合、分散相は油性アジュバントの液滴である。
【0060】
典型的には、分散相のそのような非常に微細なサイズの粒子を有するエマルジョンは幾つかの工程で製造される。このようにして、初期の比較的粗い油性エマルジョンを低エネルギー混合により製造し、ついで、粒径の更なる減少を達成するために、1以上の後続の高エネルギー処理に付す。次に、アジュバントおよび所望により乳化剤を水中に含む「顕微溶液化(microfluidised)」油性エマルジョンを、免疫原を含む水相と一緒にして、本発明による混合ワクチンを得る。
【0061】
製品の一貫性および品質上の理由により、メジアン粒径だけでなく粒径の広がり(サイズ分布としても公知である)も有利にモニターされ制御されうる。本発明による混合ワクチンのサブミクロン水中油型エマルジョン中の油滴のサイズ分布は、好ましくは、比較的狭い。粒径分布の指標は累積粒径分布のD90である。
【0062】
したがって、本発明による混合ワクチンのサブミクロン水中油型エマルジョンの1つの実施形態においては、油滴は900nm未満のD90を有し、より好ましいD90は、500nm未満、400nm未満または更には300nm未満(後のものほど好ましい)である。最も好ましくは、D90は約150~250nmである。
【0063】
そのような小さな粒径および分布を有するエマルジョンの利点の1つは、これが次いで、物質の有意な喪失を伴うことなく濾過により滅菌されうることである。なぜなら、典型的な滅菌フィルターは約0.2マイクロメートルの孔径を有するからである。このような濾過滅菌は、油性エマルジョンの成分の品質を損ないうる、加熱、化学薬品または照射のような他の滅菌方法の必要性を回避する。
【0064】
したがって、本発明による混合ワクチンは、典型的には、PCV2およびMhyoからの非複製性免疫原を、前記のとおりのそれらの関連疾患に対する防御免疫応答を動物標的において誘導しうる量で含む。
【0065】
本発明の分野の当業者は、例えば、ワクチン接種後またはチャレンジ感染後の免疫学的応答をモニターすることにより、例えば、標的の疾患徴候、臨床スコアをモニターすることにより、あるいは病原体を再分離し、これらの結果を、模擬ワクチン接種動物において見られるワクチン接種-チャレンジ応答と比較することにより、本発明による混合ワクチンの有効性を決定することが十分に可能である。
【0066】
1つの指標としては、本発明による混合ワクチンにおいて使用される免疫原の量は、これらの免疫原を含有するそれぞれの1価または混合ワクチンにおいて使用されるものに基づきうる。例えば、本発明による混合ワクチンは、1~150μgのPCV2のORF2、およびMhyoとしての不活化濃縮Mhyo培養物2~50% w/vを1ミリリットル当たりに含みうる。これらの免疫原を定量するための方法は当技術分野でよく知られており、特定の標準物に対するELISAに基づく定量に基づくことも可能である。
【0067】
本発明による混合ワクチンは、有利には、複製性または非複製性の、全体的な又は破壊された1以上の他の抗原または免疫原と組合されうる。したがって、1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは少なくとも1つの追加的な抗原または免疫原を含みうる。
【0068】
追加的な抗原または免疫原は、ブタに対して病原性である微生物の弱毒化形態であり、あるいはブタに対して病原性である微生物に由来する非複製性抗原または免疫原である。微生物は、ブタに対して病原性である任意のウイルス、細菌、寄生生物、真菌、リケッチア、原生動物および/または寄生虫でありうる。ブタに対して病原性のあるそのような微生物の例としては、偽狂犬病ウイルス、ブタパルボウイルス、ブタコレラウイルス、ブタインフルエンザウイルス、足口病ウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタ呼吸器コロナウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ブラキスピラ(Brachyspira)、大腸菌(E.coli)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、クロストリジウム(Clostridia),パスツレラ(Pasteurella)、エリシペロスリックス(Erysipelothrix)、レプトスピラ(Leptospira)、ボルデテラ(Bordetella)、トキソプラズマ(Toxoplasma)、イソスポラ(Isospora)およびトリキネラ(Trichinella)が挙げられる。好ましい追加的な抗原または免疫原としては、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、ブラキスピラ・ヒオジセンテリエ(Brachyspira hyodysenteriae)およびブタインフルエンザウイルスからの1以上が挙げられる。
【0069】
本発明による混合ワクチンの観察された効果は以下のとおりである。Mhyoに関しては、Mhyoにより引き起こされる肺病変、例えば硬化性(consolidated)肺炎および慢性呼吸器疾患の予防または軽減。Mhyoの場合、ワクチン効力の最も信頼しうる尺度はMhyoチャレンジ感染後の肺病変スコアの減少である。そのような病変は、典型的には、グッドウィン(Goodwin)スケールに基づく肺硬化の肉眼的評価により、剖検中にスコア化される(Goodwinら,1969,J.Hyg.Camb.,vol.67,p.465-476)。このスケールは、ゼロから、完全に冒された肺に関する最大55ポイント/動物まで推移する。
【0070】
PCV2に関しては、衰弱または病的節約(ill thrift)の臨床徴候、疾患に特徴的な肉眼的および顕微鏡的病変の存在、および顕微鏡的リンパ性病変におけるウイルス抗原またはDNAの存在の予防または軽減。PCV2の場合、ワクチン効力の最も信頼しうる尺度は、血清、糞便スワブ物質、鼻スワブ物質、鼠径リンパ節、腸間膜リンパ節、扁桃腺および肺におけるqPCRによるウイルス核酸の存在の試験である。ワクチン接種後のPCV2に対する抗体の誘導は防御と相関する。
【0071】
好ましい実施形態においては、混合ワクチンはブタ用である。「ブタ」なる語は、イノシシ科の動物を意味し、好ましくは、ブタとも称されるイノシシ属の動物を意味する。具体例としては、野生または家畜のブタ、雄ブタ、イノシシ、バビルサまたはイボイノシシが挙げられる。これは、例えば性別または年齢を表す任意の名称で示されるブタ、例えば、雌ブタ、クイーン、イノシシ、去勢ブタ(barrow)、ホッグ、若雌ブタ、離乳直後のブタ(weaner)または子ブタをも含む。更に、ブタなる語は、繁殖型または肥育型のような任意のタイプのブタ動物、およびこれらのタイプのいずれかの親系統を意味する。
【0072】
本発明による混合ワクチンは、本明細書に記載されているとおり、種々の方法で構成されうる。
【0073】
1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは使用準備済みの製剤として提供され、すなわち、更なる混合または再構成工程を必要とすることなく混合ワクチンがワクチン接種に直接使用されうるようにワクチンの全成分が予め混合されている製剤として提供される。
【0074】
もう1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは、少なくとも2つの容器を含むパーツキット(kit of parts)から製造可能であり、ここで、1つの容器は、Myho免疫原を除く本発明による混合ワクチンの全成分を含み、1つの容器はMyho免疫原を含む。PCVまたはMyho免疫原は、例えば、凍結乾燥形態、または無菌懸濁液、例えば水性懸濁液として提供されうる。凍結乾燥形態は、例えばボトルのような容器内の凍結乾燥ケーキでありうるが、Sphereon(商標)技術において適用されるリオスフィアであることも可能である。
【0075】
したがって、パーツキットの要素が一緒になったものは本発明による混合ワクチンの具体例の1つである。前記の少なくとも2つの容器の内容物は、使用直前、すなわちワクチン接種前に、インサイチュ(in situ)で再構成されうる。Mhyoからの非複製性免疫原の再構成に際して、本発明による完全な混合ワクチンが形成される。これはワクチンの「現場(オン・ザ・スポット)」混合または「フィールド・サイド(field-side)」混合とも称される。
【0076】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、少なくとも2つの容器を含むパーツキットに関するものであり、ここで、1つの容器は、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョン中にPCV2からの非複製性免疫原を含み、1つの容器はMhyoからの非複製性免疫原を含む。
【0077】
もう1つの実施形態においては、PCV2およびMhyoの両方の免疫原は1つの容器内で提供され、例えば、水性の溶液または分散液として、あるいは凍結乾燥形態で提供され、所望により、それはシリカを更に含み、o/wエマルジョンの形態の、(他の)アジュバントを含有する第2の容器の成分で、使用前に再構成される。
【0078】
本発明によるパーツキットおよびその要素は、本発明による混合ワクチンに関して本明細書に記載されている実施形態(好ましいもの又はそうでないもの)のいずれか、または本発明による混合ワクチンのそれらの実施形態のうちの2以上の任意の組合せを含みうる。
【0079】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、
・PCV2およびMhyoからの非複製性免疫原を含む水相を調製する工程、ならびに
・水中油型エマルジョンを形成させるために、前記水相を、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む油性エマルジョンと混合する工程
を含む、本発明による混合ワクチンの製造方法に関する。
【0080】
もう1つの態様においては、本発明は、
・PCV2からの非複製性免疫原を含む水相を調製する工程、
・水中油型エマルジョンを形成させるために、前記水相を、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む油性エマルジョンと混合する工程、ならびに
・前記の水中油型エマルジョンをMhyoからの非複製性免疫原と混合する工程
を含む、本発明による混合ワクチンの製造方法に関する。
【0081】
もう1つの態様においては、本発明は、
・Mhyoからの非複製性免疫原を凍結乾燥形態で調製する工程、
・PCV2からの非複製性免疫原を含む水相を調製する工程、
・前記水相を、スクアレン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む油性エマルジョンと混合する工程、ならびに
・Mhyoからの前記凍結乾燥非複製性免疫原を、水相と油性エマルジョンとの前記混合物で再構成させる工程
を含む、本発明による混合ワクチンの製造方法に関する。
【0082】
更にもう1つの態様においては、本発明は、
・PCVからの非複製性免疫原を凍結乾燥形態で調製する工程、
・Mhyoからの非複製性免疫原とシリカとを含む水相を調製する工程、
・前記水相を、スクアランおよびビタミンE-アセタートを含む油性エマルジョンと混合する工程、ならびに
・PCVからの前記凍結乾燥非複製性免疫原を、水相と油性エマルジョンとの前記混合物で再構成させる工程
を含む、本発明による混合ワクチンの製造方法に関する。
【0083】
これらの方法における種々の時点で、例えば追加的な処理、例えば精製または貯蔵のために、追加的な工程が加えられうる。また、該製造方法は、追加的な抗原もしくは免疫原、または薬学的に許容される賦形剤、例えば安定剤または保存剤と混合することを含みうる。
【0084】
記載されているとおり、本発明による方法により製造されうる本発明による混合ワクチンは、PCV2およびMhyoによる感染ならびに/またはPCV2およびMhyoによる感染に関連した疾患から防御するために、ブタに対する皮内投与に有利に使用されうる。
【0085】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、PCV2およびMhyoに対する、ブタのような動物の真皮内へのワクチン接種における使用のための、スクアラン、ビタミンE-アセタート、シリカ、PCV2およびMhyoからの非複製性免疫原を含む水中油型エマルジョンに関する。
【0086】
もう1つの態様においては、本発明は、ワクチンが、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンであることを特徴とする、ブタのような動物用の混合ワクチンの製造のための、PCV2およびMhyoからの非複製性免疫原の使用に関する。
【0087】
本発明による混合ワクチンは、PCV2およびMhyoに対するブタのワクチン接種に適用されうる。
【0088】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、スクアラン、ビタミンE-アセタート、シリカならびにPCV2およびMhyoからの非複製性免疫原を含む水中油型エマルジョンを動物に皮内投与することによる、PCV2およびMhyoに対するブタのような動物のワクチン接種のための方法に関する。。
【0089】
あるいは、類似実施形態においては、本発明は、本発明による混合ワクチンを動物に皮内投与することによる、PCV2およびMhyoに対するブタのような動物のワクチン接種のための方法に関する。
【0090】
したがって、本発明による混合ワクチンは、典型的には、動物の皮膚内に投与され、すなわち、皮内投与により適用される。これは、種々の方法より、例えば、通常のシリンジおよび皮下注射針の使用により達成されうる。あるいは、非経口投与は、例えばMSD Animal HealthのIDAL(登録商標)アプリケーターのような皮内アプリケーターによりワクチンを送達する、無針注射の何らかの方法により行われうる。
【0091】
皮内投与に適したものとなるためには、本発明による混合ワクチンの動物用量の体積は、典型的には、動物当たり0.05~1.0ml、好ましくは、0.1~0.5ml、より好ましくは、約0.2、0.3または0.4ml、最も好ましくは、動物用量当たり約0.2ml(後のものほど好ましい)である。
【0092】
標的ブタへの本発明によるワクチン接種の方法のための投与レジメンは単一用量または複数用量におけるものであり、あるいは養豚の実際の態様に適合する方法よるものでありうる。
【0093】
必要に応じて、動物標的には、後年において、本発明による混合ワクチンの2回目の又は更なる投与、いわゆるブースター(追加)ワクチン接種が行われうる。しかし、本発明による混合ワクチンは、動物の一生の重要な期間、例えば、6月齢までのブタの肥育段階の期間に免疫防御を得るのに単一ワクチン接種用量で一般に十分となるように最適化される。したがって、好ましい実施形態においては、本発明による混合ワクチンは動物標的当たり1回だけ投与され、すなわち、それは単一用量(単回投与)ワクチンである。
【0094】
好ましくは、動物に対するストレスを更に低減し、人件費を削減するために、ワクチン接種方法のレジメンは、標的ブタが要しうる他のワクチンの既存のワクチン接種スケジュールに組み込まれる。これらの他のワクチンは、それらの登録された用途に適合する方法で、同時、併用または連続様態で投与されうる。したがって、本発明によるブタのワクチン接種方法の1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは別のブタワクチンと組合せて投与される。
【0095】
標的動物がブタである場合、本発明のワクチン接種の標的ブタは、それらがワクチン接種に対して感受性である任意の年齢、および/またはワクチンが防御する疾患もしくは感染に対して感受性である任意の年齢のものでありうる。したがって、本発明によるブタのワクチン接種の方法の1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンは、若いブタ、すなわち、約2月齢のブタに投与される。あるいは、本発明による混合ワクチンは、成体ブタ、すなわち、約6月齢のブタに投与される。
【0096】
MhyoおよびPCV2の保有率が高く、これらの病原体の1以上に対するワクチンが広範に使用されているため、多数の雌ブタはMhyoおよびPCV2の1以上に対する抗体に関して血清陽性であろう。その結果、そのような雌ブタから初乳を接種した若いブタはMDA+(母体由来抗体陽性)となりうる。これは本発明による混合ワクチンの有効性を全く損なわない。なぜなら、それはMDA+ ブタにおいても有効だからである。したがって、本発明によるワクチン接種の方法の1つの実施形態においては、本発明による混合ワクチンはMDA+ ブタに投与される。
【0097】
本発明による混合ワクチンの投与は予防的処置または治療的処置のいずれかとして、あるいはそれらの両方として適用されうる。なぜなら、それはMhyoおよびPCV2による感染の確立および進行の両方を妨げるからである。本発明による混合ワクチンの使用は、ブタの集団、農場または或る地理的地域におけるブタにおける、MhyoおよびPCV2の一方または両方による感染の低減を助けるであろう。したがって、もう1つの態様においては、本発明は、本発明による混合ワクチンをブタに皮内投与することを含むことを特徴とする、MhyoおよびPCV2による感染またはブタにおける関連疾患徴候を低減するための方法に関する。
【0098】
次に、以下の非限定的な実施例により、本発明を更に詳細に説明することとする。
【0099】
実施例
実施例1:混合ワクチンの製造
本発明による混合ワクチンを以下のとおりに製造した。
【0100】
2倍濃度のこの油性エマルジョンを以下の後続のプロセス工程に従い製造した。
【0101】
・必要量のビタミンE-アセタートおよびスクアランを量り取り、ビーカー内で一緒にした。
【0102】
・ビタミンE-アセタート/スクアラン混合物を室温で低エネルギー混合(マグネチックスターラー)により均質化(ホモジナイズ)した。
【0103】
・必要量のポリソルベート80を量り取り、均質化したビタミンE-アセタート/スクアラン混合物に加えた。
【0104】
・前記の一緒にした混合物を室温で低エネルギー混合により再び均質化した。
【0105】
・均質化混合物を0.2マイクロメートルのフィルター(Pall,Ultipor(商標)N66)で濾過滅菌した。
【0106】
・必要量の(熱滅菌された)シリカを量り取り、均質化混合物に加え、ついで、一緒にした混合物を室温で低エネルギー混合により再び均質化した。
【0107】
・混合物を65~75℃に加熱した。
【0108】
・注射用水(滅菌済み)を65~75℃に加熱した。
【0109】
・加熱した油相および水を、N18ロッドおよびUltra Turraxによる高エネルギー混合を用いて5~15分間、予備混合した。温度は65℃から55℃に減少した。
【0110】
・予備混合物を800バールでMicrofluidizer(商標)に3回通過させた。冷却スパイラルで温度を50℃以下に維持した。
【0111】
最終的な油性エマルジョンのうち、完全性および均質化レベルを光学顕微鏡で検査した。更に、pH(7.34)、浸透圧(221mOsm/kg)も検査した。粒径測定は以下を示した:D100=300nm;D99=250nm;D90=200nm;およびD50=130nm。
【0112】
以下の非複製性免疫原のそれぞれの必要量を取ることにより、水相(2倍濃度)を調製した:Mhyo:10倍濃縮不活化培養物6% v/vおよびPCV:50μg ORF2。
【0113】
次に、両方の濃縮組成物(アジュバントを含有する油性エマルジョン、および免疫原を含有する水相)を約50:50の体積比で室温で低エネルギー混合により混合した。
【0114】
前記の方法を用いて、以下のワクチンアジュバント組成物を水中油型(o/w)エマルジョン(全ての百分率は% w/vである)として調製した。油性エマルジョンを調製する際に、幾つかの組成物に、ポリソルベート80およびスクアランと共に、示された量(2倍濃縮物として)の水酸化アルミニウムを加えた。
【表1】
【0115】
実施例2:Mhyoチャレンジ感染に対するブタにおけるPCV2/Mhyo ID製剤の有効性
Mhyoチャレンジに対するMhyo皮内(ID)製剤(0.2ml、頸部の右側にIDAL(登録商標)ワクチンを接種)によるワクチン接種の有効性を特定病原体除去(SPF)子ブタ(ToJaPigs)において試験する。該製剤はMhyo免疫原の種々の処理により製造されており、5 PCVU/ml(不活化Mhyo培養物約25% w/v)で製剤化されている。以下のスキームに従い、3週齢の動物にワクチン接種した(表2)。ワクチン接種の4週間後、全ての動物をMhyoで感染させた。全ての動物を7週齢(すなわち、ワクチン接種の4週間後)で2日間連続して、それぞれ10
9および10
9 CCU/mlの10mlの気管内Mhyo株98でチャレンジした。チャレンジの3週間後、動物を犠死させ、Mhyo誘発性硬化性肺炎の程度をグッドウィン(Goodwin)に従いスコア化した(最大スコア:55)。
【表2】
【0116】
結果:
ワクチン接種の有効性を肺病変スコア(LLS、平均)により決定する。これを各ブタに関して記録し、ワクチン未接種対照群と比較した。
【表3】
【0117】
群1および2において試験され対照群と比較されたワクチンのいずれにおいても、肺病変スコアにおける有意な減少は得られなかった。それどころか、肺病変コアはワクチン未接種対照群に類似していた。
【0118】
したがって、PCV2およびMhyoの免疫原と組合されたアジュバントアロヒドロゲル、スクアラン、ビタミンEアセタートおよびシリカの組合せも、商業的に入手可能なPCVワクチンPorcilis(登録商標)PCV IDとアジュバントとしてのシリカとの組合せも、安全かつ有効な皮内投与に適していなかった。
【0119】
実施例3:PCV2/Mhyo ID製剤において再構成されたPRRSワクチンのブタにおける有効性
この研究の目的は、5週齢の子ブタの頸部に皮内(ID)投与した場合の、Porcilis(登録商標)PRRSで再構成されたエーロシル(Aerosil)200またはエーロシル380を含有する種々のPCV2および/またはMhyoワクチンの安全性および血清学的有効性を比較することであった。以下に示す処置群に子ブタを割り当てた(表4)。子ブタを約5週齢で皮内ワクチン接種した。以下に記載されているとおり、種々のPCV2-Mhyoワクチン製剤で再構成された10
4.5 TCID
50 ウイルスを含むPorcillis PRRSで群4および5の子ブタをワクチン接種した。
【表4】
【0120】
・PCV2(10000AU/ml;約80μg/ml)+M.Hyo(10 PCVU/ml)およびアジュバントエーロシル200で製剤化されたワクチン の単一用量(0.2ml)で群4の子ブタを皮内ワクチン接種した。
【0121】
・PCV2(10000AU/ml)+M.Hyo(10 PCVU/ml)およびアジュバントエーロシル380で製剤化されたワクチンの単一用量(0.2ml)で群5の子ブタを皮内ワクチン接種した。
【0122】
・ワクチンPorcilis(登録商標)PCV ID+Porcilis(登録商標)PRRS(未混合)の単一用量(各0.2ml)で群6の子ブタを皮内ワクチン接種した。
【0123】
・群7の子ブタにはワクチン接種しなかった(陰性対照群)。全ての動物を注射部位反応に関して検査した。
【0124】
全ての子ブタを臨床的徴候に関してワクチン接種後に毎日観察した。体温を測定し、全ての動物から血清サンプルを収集した。PCV2、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(M.Hyopneumoniae)およびPRRSVに対する抗体に関してサンプルを試験した。
【0125】
結果:
ワクチン接種後、全ての群の体温は同等であった。ワクチン接種の日に、全ての動物は同等のPCV2抗体力価を有していた。PCV2抗体価は研究終了時まで全群で一定レベルのままであった。対照群7の抗体価は経時的に減少した。ワクチン接種の日に、全ての動物はPRRS抗体に関して陰性であった。全ての群が0~20%のPRRS応答体を示した。対照群7は陰性のままであった。研究開始時に、全ての動物はマイコプラズマ・ヒオニューモニエに関して血清学的に陰性であった。全ての群はSD21において0~20%の応答体を示した。SD28においては、ほとんどの群が陽性動物を示した。対照群7はマイコプラズマ・ヒオニューモニエ陽性応答を示さなかった。PCV2およびMhyoに対するIgM抗体応答(ワクチン接種を予測する)の結果を表5および6に示す。
【表5】
【表6】
【0126】
この研究から、いずれのワクチン接種群もPCV2またはMhyoに対する許容しうる抗体応答を示さなかったと結論付けられうる。したがって、Porcilis(登録商標)PRRSおよびPCV2ならびにMhyo免疫原で再構成された場合のアジュバントエーロシルA380もエーロシルA200もブタにおける安全かつ有効な皮内投与には適していなかった。
【0127】
実施例4:Mhyoチャレンジ感染に対するMhyo ID製剤において再構成されたPRRSワクチンのブタにおける有効性
Mhyoチャレンジ感染に対するPRRS(A212D、10
5.1 TCID50/用量)と混合されたMhyo皮内(ID)製剤でのワクチン接種の有効性をSPF子ブタにおいて試験する。該製剤は、種々のアジュバントを使用して製造された。以下のスキームに従い(表7)、動物に3週齢で頸部の右側にIDワクチン接種(0.2ml)した。ワクチン接種の3週間後、全ての動物をMhyoに感染させた。
【表7】
【0128】
全ての動物を、6週齢で2日間連続して、それぞれ9および8 CCUの10mlの気管内Mhyo株98に感染させた。
【0129】
結果:
ワクチン接種の有効性を肺病変スコア(LLS、平均)により決定する。これを各ブタに関して記録し、ワクチン未接種対照群と比較した。
【表8】
【0130】
参照組成物3におけるようにアジュバント組成物としてのアルヒドロゲル、スクアランおよびビタミンE-アセタートとMhyoおよびPRRS免疫原との組合せの皮内投与は、22%という非常に低い、したがって許容できない肺病変スコア減少率をもたらし、これに対して、市販Mhyoワクチンを使用した陽性対照群においては74%を与えることを示すことができた。したがって、アジュバントであるアルヒドロゲル、スクアランおよびビタミンE-アセタートと免疫原との組合せは、安全かつ有効な皮内投与には適していなかった。
【0131】
実施例5:Mhyoチャレンジ感染に対するSPFブタにおけるPCV2-Mhyo ID製剤の有効性
以下のスキーム(表9)に従い、12頭のブタの群に3週齢(+/- 3日)で皮内ワクチン接種した。群17はワクチン接種を受けず、Mhyoチャレンジ対照として用いた。ワクチン接種の4週間後、全ての動物を毒性Mhyo株に感染させた。チャレンジの3週間後、全ての動物を肺病変に関して死後検査した。ワクチン接種前、チャレンジ前および死後の血液サンプルを採取した。
【表9】
【0132】
実験手順
血清学
ワクチン接種の直前(T=0、3週齢)、チャレンジの直前(T=4、7週齢)および死後(T=7、10週齢)に血液サンプル(頸静脈)を採取した。サンプルは周囲温度で輸送した。血液サンプルから、血清を重複して得た。全ての血清サンプルにおける関連抗体の存在を、標準的な方法により、M.hyoおよびPCVに関するElisa試験で決定した。
【0133】
臨床観察および直腸温度
臨床観察を行い、ワクチン接種の直前、ワクチン接種の4時間後ならびに1日後および2日後に直腸温度を測定した。観察および温度を記録した。
【0134】
死後検査
この実験の終了時に、チャレンジの4週間後、ブタを電気的衝撃により鎮静させ、ついで出血死により安楽死させた。肺病変をグッドウィンに従いスコア化した。
【0135】
結果:
許容できない注射部位反応は観察されなかった。許容できない温度は観察されなかった。
【0136】
ワクチン接種の有効性を肺病変スコア(LLS、平均)により決定する。これを各ブタに関して記録し、ワクチン未接種対照群と比較した。結果を表10に示す。
【表10】
【0137】
肺病変スコアの前記データは、群11、12(本発明組成物)および13(参照組成物2)が、許容可能なスコアを示したことを示している。なぜなら、ワクチン未接種対照群(群17)と比較した減少率が45%(これを実質的な有効性に関するカットオフ値として用いた)を超えていたからである。一方、群14および15は、許容できないスコアを示した。なぜなら、群15におけるLLSはワクチン未接種照群のものより遥かに高く、群14におけるLLSは陰性対照群と比較して僅か20%減少したに過ぎなかったからである。
【0138】
したがって、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカのアジュバントの組合せを含む本発明ワクチン組成物は、有効なワクチン接種を示す許容可能な肺病変スコアを与えることを示すことができた。
【0139】
実施例6:PCVチャレンジ感染に対するSPFブタにおけるPCV2-Mhyo ID製剤の有効性
子ブタを各10頭の子ブタの5つの処置群に割り当て、それらが約3週齢になった際に皮内ワクチン接種を行った。群1~3の子ブタは、以下に記載されているワクチンでワクチン接種した。群4は、陽性対照群として、Porcilis(登録商標)PCV IDおよびPorcilis(登録商標)M Hyo ID ONCEでワクチン接種した。群5はワクチン接種を受けなかった(陰性対照)。ワクチン接種の3週間後(6週齢)、野生型PCV2bチャレンジウイルス株I12/11の5.0 log10 TCID50/mLを鼻腔内適用(鼻孔当たり3ml)で使用して、全ての動物をチャレンジした。治療計画を以下の表11に示す。チャレンジの3週間後、全ての動物を剖検し、PCV2の検出のために鼠径リンパ節、腸間膜リンパ節、扁桃腺および肺をサンプル採取した。
【0140】
全ての子ブタを臨床徴候に関してワクチン接種後に毎日観察した。ワクチン接種の日ならびにSD14、SD20、SD35およびSD42(剖検中)に、血清サンプルを収集した。PCV2ウイルス核酸に対する抗体に関してサンプルをqPCRにより試験した。糞便スワブを全ての動物からSD20、35およびSD41で収集し、qPCRによりPCV2ウイルス核酸に関して検査した。
【表11】
【0141】
処置
投与量および投与
ワクチン接種は、頸部の右側の皮内経路(0.2ml)により行った。群21には右側に2回ワクチン接種した。チャレンジは、MADアプリケーターを使用して、鼻孔当たり6ml、3mlで、鼻腔内経路で行った。
【0142】
試験系
健常動物のみを使用した。非健常動物を除外するために、ワクチン接種前にそれらを検査した(全身外観および臨床的異常または疾患の非存在)。ワクチン接種の直前に、全ての動物に個別に耳標を付ける。全てのブタを疾患の臨床的徴候に関して毎日観察した。観察は、全身反応、例えば食欲不振、運動嫌悪、横臥傾向、倦怠感または眠気、振戦、剛毛、浮腫(特に眼周囲)、嘔吐および下痢および呼吸困難からなる。
【0143】
実験手法
血液のサンプル採取
ワクチン接種日、チャレンジの1日前、2週間後および剖検日に、全ての動物から血液サンプルを収集した。動物当たり最小4mlおよび最大8mlの血液を採取した。これは、標準的な手順に従い、全てのブタから個別に行った。血液サンプルは、抗凝固剤を添加せずに収集した。
【0144】
糞便スワブ
チャレンジ感染の1日前、2wpcおよび剖検の1日前に糞便スワブを採取した。抗生物質を含有する培地内にスワブ綿棒を入れた。
【0145】
死後検査
チャレンジ後の3週間後、動物を剖検室に移送した。それらを、感電死装置を使用して麻酔し、標準的な手順に従い放血させた。動物の死体を、標準的な手順に従い処分した。剖検中に、動物の体を開き、以下の器官に特に注意を払いながら内臓をインサイチュで検査する:肺、鼠径リンパ節および腸間膜リンパ節、扁桃腺、胸腺、脾臓、肝臓および腎臓。ついで扁桃腺、肺、腸間膜リンパ節および鼠径リンパ節からのサンプルを取り出し、2つの部分に分けた。1つは凍結およびPCV2 qPCRによる分析用であり、もう1つは固定およびそれに続く(免疫)組織化学的分析用である。
【0146】
サンプルの処理
凝固血液サンプルから血清を調製し、アリコート(例えば、2×0.8ml)を充填した。サンプルは熱不活化しなかった。糞便サンプルをスワブから調製し、アリコート(例えば、2×0.8ml)を充填した。使用するまで、サンプルを-15℃以下で貯蔵した。サンプル採取から貯蔵までの時間は36時間(血清)または48時間(スワブ)を超えなかった。
【0147】
PCV2抗体ELISA
標準的な手順に従い、PCV2に対する抗体に関して血清を試験した。簡潔に説明すると、系列希釈した血清サンプルを、バキュロウイルス発現PCV2 ORF2抗原でコーティングされたマイクロタイタープレート上でインキュベートした。血清を除去した後、全てのウェルを一定量のビオチン標識PCV2特異的モノクローナル抗体(MoAb)と共にインキュベートした。ついで結合MoAbをペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンと共にインキュベートし、ついで発色団検出を行った。力価は、試験の50%最大吸光度に等しい吸光度値を有する内挿血清希釈度の逆数として定義された。結果をlog2力価として表した。2.0 log2未満の力価を陰性とみなした。陰性サンプルに関しては、1.0 log2の値を計算目的で用いた。
【0148】
定量的PCR
PCV2核酸に関する定量的PCR(qPCR)を、標準的な手順に従い、全ての血清、糞便スワブに関して、および扁桃腺、肺、腸間膜リンパ節、鼠径リンパ節の10%組織ホモジネートに関して行った。簡潔に説明すると、市販のキットを使用してサンプルからDNAを抽出した。各サンプルにおけるPCV2ゲノムDNAを、PCV2-ORF2に特異的なプローブおよびプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により定量した。特異的蛍光が閾値を超えるサイクル数は、既知量のPCV2-ORF2含有プラスミドを含むサンプルセットに関するサイクル数と相関する。結果を抽出DNAのlog10コピー/μl(log10 c/μl)として表した。1.00 log10 c/μl未満の値を陰性とみなし、計算目的では0.00 log10 c/μlとした。
【0149】
免疫組織学(IHC)
扁桃腺およびリンパ節のサンプルを組織学的検査のために調製した。サンプルを10%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、スライド上のPCV2抗原の検出のために免疫組織化学的検査を行った。抗PCV2ウサギ血清を一次抗体として使用し、Envision+(DAKO,Denmark)を、製造業者の指示に従い、検出系として使用した。スライドをヘマトキシリンで対比染色した。顕微鏡検査を行った。扁桃腺およびリンパ節に関して、特徴的な褐色染色を以下の順序尺度でスコア化した。
【0150】
0:特定の陽性染色細胞は観察されない。
【0151】
1:散在(単一)陽性染色細胞が濾胞の10%(未満)に存在する。
【0152】
2:陽性染色(単一)細胞が濾胞の10~50%において観察され、または15個を超える陽性染色細胞の限局性集合が濾胞の10%未満で観察される。
【0153】
3:濾胞の50%以上に特異的染色。
【0154】
結果を、個々の組織のスコアの合計である合計スコアとして記録した。
【0155】
結果:
PCV2血清学:
SD1における測定開始時に、全ての群のlog2力価は4~5であった。陽性対照(群21)はSD34とSD41との間で10のlog2力価を示した。同じ週に、群18、19および20におけるlog2力価は8~10であった。ワクチン未接種陰性対照群22は4未満のlog2力価を示した。
【0156】
血清中のPCV2ウイルス量(qPCR血清)
SD0(測定開始)とSD19の間では、全ての群において、ウイルス量は検出できなかった(log10 c/μl=0)。
【0157】
SD34において、陽性対照(群21)におけるウイルス量は約1.0 log10 c/μlに増加し、SD41において約1.6に更に増加した。
【0158】
SD34において、ワクチン未接種陰性対照(群22)におけるウイルス量は約4.1 log10 c/μlに増加し、SD41において約3.6にわずかに減少した。
【0159】
群18、19および20におけるウイルス量は、SD 34においては1.3~1.8 log10 c/μl、そしてSD41においては1.6~2.1であった。
【0160】
糞便スワブにおけるPCV2ウイルス量(qPCR糞便スワブ)
SD19(測定開始)においては、全ての群でウイルス量は検出できなかった(log10 c/μl=0)。SD 34において、陽性対照(群21)におけるウイルス量は約1.5 log10 c/μlに増加し、SD41において約2.2に更に増加した。
【0161】
ワクチン未接種陰性対照(群22)におけるウイルス量はSD34で約3.6 log10 c/μlに増加し、SD41まで基本的に一定のままであった。
【0162】
群18、19および20におけるウイルス量は陽性対照群の範囲内(SD34において約1.5~1.8、SD41においては約1.8~2.2)であった。
【0163】
安全性
許容し得ない注射部位反応は観察されなかった。最大平均温度上昇は、T=0+4時間で0.4℃であった。したがって、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカのアジュバントの組合せを含む本発明ワクチン組成物は、許容し得ない部位反応を引き起こすことなく、ワクチン有効性に関して許容しうる結果をもたらすことを示すことができた。
【0164】
実施例7:混合ワクチンを構成する異なる医薬品等級シリカの使用
本実施例においては、種々の異なるタイプのシリカ[全ては医薬品等級(コロイド状)アモルファスシリカ]が、本発明による混合ワクチンを製造するのに有用であることが示されている。ワクチンの製造方法は実施例1とほぼ一致していた。ただし、幾つかのワクチンにおいてはMicrofluidizer(商標)通過後にのみシリカを添加した。これは最終組成物に実質的な影響を与えなかった。約120nmの平均粒径を有する最終組成物において全てのシリカが概ね分布していた。しかし、Microfluidizer(商標)通過後にシリカを添加した場合、シリカの総量のごくわずかな割合が、10μmを超える(最大200μm)大きな凝集体(固体粒子)として存在していた。しかし、これはワクチンの特性に悪影響を及ぼさない。種々の組成物に関するデータを表12に示す。
【表12】
【0165】
本発明での使用に適した他のシリカとしては、Aerosil(エーロシル)(登録商標)90、Aerosil(登録商標)130、Aerosil(登録商標)150、Aerosil(登録商標)200F、Aerosil(登録商標)255、Aerosil(登録商標)OX 50、Aerosil(登録商標)TT600およびAeroperl(登録商標)300/30が挙げられる。
【0166】
結論
実施例1~7は、試験された組成物のうち、スクアラン、ビタミンE-アセタートおよびシリカの新規アジュバント組合せのみが、許容し得ない部位反応を引き起こすことなく、PCV2およびMhyo感染に対するワクチン有効性に関する許容しうる結果をもたらしたことを示している。したがって、このアジュバント組成物を使用して、安全かつ有効な皮内投与のための、ブタサーコウイルス2型およびマイコプラズマ・ヒオニューモニエの非複製性免疫原を使用するPCV2およびMhyoに対する混合ワクチンが提供されうる。
【国際調査報告】