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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】オマリズマブを使用した治療方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/42 20060101AFI20221109BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221109BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C07K16/42
A61K39/395 N
A61P3/10
A61P13/12
A61P37/08
A61P25/00
A61P37/02
A61P1/04
A61P21/04
A61P7/06
A61P25/16
A61P5/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P1/00
A61P11/06
A61P11/02
A61P17/04
A61K31/573
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515955
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(85)【翻訳文提出日】2022-03-10
(86)【国際出願番号】 IB2020058097
(87)【国際公開番号】W WO2021048678
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】19197285.0
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ヨウモン,ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】パロマレス,オスカル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA341
4C084ZA551
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZB071
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB131
4C084ZB261
4C084ZC411
4C084ZC752
4C085AA14
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA02
4C086ZA34
4C086ZA55
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、詳細にはアレルギー性疾患又は病態を有する患者における、Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害の経過を修正する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要としている対象のTreg細胞機能不全を伴う疾患又は障害の治療又は予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害を治療する方法であって、それを必要としている対象に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
前記それを必要としている対象が、コルチコステロイドによる治療に対するノンレスポンダー(not-responder)である、請求項1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記それを必要としている対象が、コルチコステロイドに対する反応が不十分な対象であるか、又はコルチコステロイド減量を必要としている対象であるか、又はコルチコステロイド治療が不適切な対象である、請求項1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記それを必要としている対象が、コルチコステロイドを含めた従来療法に対して不十分な反応を示したことがあるか、又はかかる療法を忍容できない、若しくはそれを医学的禁忌とする、請求項1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記それを必要としている対象が、コルチコステロイドによる治療を忍容できない、請求項1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記それを必要としている対象が、コルチコステロイドに対して不十分な反応を示す、請求項1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患又は障害が、1型糖尿病、糸球体腎炎、アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎、後天性再生不良性貧血、自己免疫性脳炎、パーキンソン病、Foxp3欠損、IPEX症候群、免疫調節不全、多腺性内分泌障害、腸症、抗腫瘍免疫、又は移植片拒絶反応から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記疾患又は障害が、1型糖尿病、糸球体腎炎、アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎、重症筋無力症、後天性再生不良性貧血、自己免疫性脳炎、パーキンソン病、Foxp3欠損、IPEX症候群、免疫調節不全、腸症、抗腫瘍免疫、又は移植片拒絶反応から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項10】
前記患者が、アレルギー、喘息、蕁麻疹及び鼻炎から選択される疾患又は病態、例えば、アレルギー性喘息、慢性特発性蕁麻疹及びアレルギー性鼻炎から選択される疾患又は病態を更に患っている、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項11】
前記患者が、アレルギー、喘息、蕁麻疹又は鼻炎を患っていない、例えば、アレルギー性喘息、慢性特発性蕁麻疹又はアレルギー性鼻炎を患っていない、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項12】
前記抗IgE抗体がオマリズマブ又はリゲリズマブである、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項13】
オマリズマブが、約75mg~約600mgの用量、例えば600mgの最大用量で投与される、請求項12に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項14】
オマリズマブが2~4週間毎に投与される、請求項12又は13に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項15】
オマリズマブが、最長16週間、例えば12~16週間にわたって投与される、請求項12~14のいずれか一項に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【請求項16】
前記抗IgE抗体がコルチコステロイド及び/又は免疫抑制薬(immunusuppressor)と共投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗IgE抗体、例えばオマリズマブを使用した、制御性T細胞の機能不全(dyfunctioning)を伴う疾患又は障害の予防又は治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞は、胸腺で発生するリンパ球であり、免疫応答において中心的な役割を果たす。この細胞は、その表面にT細胞受容体が存在することによって他のリンパ球と区別され得る。T細胞は骨髄に由来する前駆細胞として生じ、胸腺に遊走した後、幾つかの特徴的な種類のT細胞へと発達する。
【0003】
制御性T細胞(Treg細胞)は、サプレッサーT細胞とも称され、誘導されると、病的自己反応性を防いで自己抗原に対する寛容性を維持するように免疫系を調節する(これによって免疫系は、侵入してくる細胞を自己細胞と区別することができる)、ひいては自己免疫疾患の防止に関与するT細胞のサブ集団である。誘導されたTreg細胞は、免疫調節薬である:これは、エフェクターT細胞の誘導及び増殖を抑制する(又は下方制御する)ことによって不適切な免疫応答を能動的に抑制する。
【0004】
機能制御性T細胞は、樹状細胞(DC)によって誘導され得る。
【0005】
免疫グロブリンE(IgE)は、過敏反応及びアレルギー反応に関連する抗体である。IgEは、マスト細胞、好塩基球及び樹状細胞上の高親和性IgE受容体(FcεRI)に主に結合し、従って制御性T細胞の誘導を低下させる。これは、Treg細胞の誘導に依存する疾患が惹起される又は増悪する条件を作り出し得る。喘息、重症筋無力症、関節リウマチ(rhumatoid arthritis)、ループス、クローン病のような炎症性腸疾患、種々の炎症性内分泌病(inflamatory endocrinopathies)など、種々の疾患を挙げることができる。
【0006】
既存の薬物療法にも関わらず、これらの疾患は、未だ十分にはコントロールされておらず、その治療(全身性コルチコステロイド、免疫抑制薬(immumosuppressor))は、安全性プロファイルが低いことが公知である。これらの疾患に対する良好な治療を特定すること、又は少なくとも、低用量のコルチコステロイド又は免疫抑制薬(immumosuppressor)の投与が可能となり得る代替療法を見付け出すことが必要とされている。
【0007】
Xolair(登録商標)(オマリズマブ)は、組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体であり、遊離循環ヒト免疫グロブリンE(IgE)に選択的に結合するもので、ひいてはIgEがマスト細胞及び好塩基球の表面上のIgE受容体に結合するのを阻害する結果、アレルギー性メディエーターの放出が低下することになる。オマリズマブはまた、遊離循環IgEに結合することにより血清遊離IgEレベルも下げ、マスト細胞及び好塩基球の表面上にあるIgE受容体の数も下方制御する。オマリズマブは、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎及び慢性特発性蕁麻疹(CSU)の治療に広く使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで本発明者らは、オマリズマブが制御性T細胞の誘導を促進可能であることを発見した。オマリズマブのこの新規作用様式を特定したことは、制御性T細胞の機能不全(dyfunctioning)を伴う多くの疾患又は障害、詳細には自己免疫疾患又は障害及び癌に対する新規治療可能性の道を開くものである。
【0009】
従って、本明細書には、制御性T細胞の機能不全(dyfunctioning)を伴う疾患又は障害の予防又は治療方法であって、治療有効量の抗IgE抗体、例えば、遊離循環ヒトIgEに選択的に結合する抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)を、それを必要としている患者に投与することを含む方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1:ヒトPBMCからの精製pDCの特徴付け。200×10個のPBMCから0.2×10~10個のpDC(85~95%純度)を単離した。A)pDC単離前及び単離後の純度を示す代表的なドットプロット。精製pDCは、HLADR+CD303+CD304+CD123+であった。B)FcεR1結合IgEを有するpDC(%IgE+pDC)の頻度と血漿IgEとの間の非線形相関、「r」スピアマン相関係数(n=24)。C)IgE-pDC及びIgE+pDCドナー(n=24)に含まれる血漿IgEレベル。pDCについてFcεR1結合IgE陽性率が45%より高かったドナーをIgE+pDCドナーと見なした。値は平均値±SEMとして提供する。IgE-pDCとIgE+pDCドナーとを比較する対応のあるt検定で、**p<0.01。
図1B】(上記の通り。)
図1C】(上記の通り。)
図2】IgE媒介性FcεR1架橋により、IgE+pDCにおける遺伝子の発現、マーカー及びサイトカイン分泌が変化する。アトピードナーからpDCを精製し、10ng/mL IL-3、2μM TLR9-L及び10μg/mL IgE-FcεR1架橋剤(CL)又はアイソタイプ対照(IgG)を加えたRPMI培地で18時間培養した。A)左から右に、pDCにおいてゲーティングしたCD83(n=4)、CD86(n=4)、HLA-DR平均蛍光強度の頻度(MFI、n=4)、PD-L1(n=8)及びOX40L(n=8)の頻度。B)ICOSL、PD-L1及びIDO遺伝子の発現(n=8)。C)培養上清中で測定したIFN-α(n=5)及びTNF-α(n=6)。値は平均値±SEMとして提供する。複数の条件を比較する対応のあるt検定で、***p<0.001、**p<0.01、p<0.05。
図3】IgE-FcεR1架橋剤は、pDCがTreg細胞を誘導する能力を障害する。アトピードナーからpDCを精製し、10ng/mL IL-3及び2μM TLR9-Lを加えたRPMI培地で18時間培養した。その後、pDCを洗浄し、10ng/mL IL-3、10μg/mL IgE-FcεR1架橋剤(CL)又はアイソタイプ対照(IgG)を加えたRPMI培地でナイーブCD4+T細胞(1:5比)と5日間共培養した。A)共培養上清中のIFN-α、IL-5、IL-2及びIL-10サイトカイン(n=9)。B)CD4+細胞に関してゲーティングしたCD127低CD25+Foxp3+Treg細胞頻度のグラフ(n=9)。値は平均値±SEMである。複数の条件における対応のあるt検定で、***p<0.001、**p<0.01、p<0.05。
図4A-4B】オマリズマブ(Oma)は精製pDCから膜結合型IgEを除去する。アトピードナーからのpDCを精製し、IL-3及び5、10及び20mg/mLのOmaと24時間培養した。A)左:pDCにおいてゲーティングしたFcεR1α結合IgE+細胞の頻度。右:pDCにおいてゲーティングした、空いているFcεR1を有する細胞の頻度(n=4)。B)Omaと24時間インキュベートした後のpDCの生存率(n=2)。値は平均値±SEMとして提供する。複数の条件を比較する対応のあるt検定で、**p<0.01、p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書で使用されるとき、IgEは免疫グロブリンEを指す。
【0012】
用語「含む(comprising)」は、「含まれる(including)」並びに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなることもあり、又は何か追加的なもの、例えばX+Yが含まれることもある。
【0013】
数値xに関連して用語「約」は、例えば±10%を意味する。数値範囲又は列挙された数の前に用いられるとき、用語「約」は、その連続中の各々の数に適用され、例えば、語句「約1~5」は、「約1~約5」と解釈されるべきであり、又は、例えば、語句「約1、2、3、4」は、「約1、約2、約3、約4」と解釈されるべきである等である。
【0014】
単語「実質的に」は、「完全に」を除外せず、例えば、Yから「実質的に遊離している」組成物は、Yから完全に遊離していてもよい。必要に応じて、単語「実質的に」は、本開示の定義から省略されてもよい。
【0015】
用語「抗体」には、本明細書において参照されるとき、天然に存在する抗体及び全ての抗体が含まれる。天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVと省略する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される一層高度に保存された領域が散在した超可変領域又は相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細かく分けることができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含め、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0016】
抗体の「抗原結合断片」という用語は、本明細書で使用されるとき、IgEに特異的に結合する能力を保持している抗体の断片を指す。完全長抗体の断片によって抗体の抗原結合機能が果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に含まれる結合断片の例としては、V、V、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;V及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのV及びVドメインからなるFv断片;VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);及び単離CDRが挙げられる。更に、Fv断片の2つのドメイン、V及びVは別個の遺伝子によりコードされるが、組換え方法を用いて合成リンカーによってつなぎ合わせて、それらが単一のタンパク質鎖として作られることを可能にすることができ、ここではV及びV領域が対を成して一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;及びHuston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照のこと)。かかる一本鎖抗体もまた、用語「抗体」の範囲内に含まれることが意図される。一本鎖抗体及び抗原結合部分は当業者に公知の従来技術を用いて入手される。
【0017】
用語「K」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。用語「K」は、本明細書で使用されるとき、K対Kの比(即ちK/K)から求められる、且つモル濃度(M)として表される解離定数を指すことが意図される。抗体のK値は、当該技術分野で十分に確立されている方法を用いて決定することができる。抗体のKの好ましい決定方法は、表面プラズモン共鳴を用いるか、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによるものである。一部の実施形態において、本発明に係る抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブは、約0.02~7.7nM、例えば100~250pMのKでヒトIgEに結合する。
【0018】
用語「親和性」は、単一の抗原部位における抗体と抗原との間の相互作用強度を指す。各抗原部位の範囲内で、抗体「アーム」の可変領域は弱い非共有結合性の力によって多数の部位で抗原と相互作用する;相互作用が多いほど親和性が強くなる。様々な種のIgEに対する抗体の結合親和性を判定する標準アッセイは当該技術分野において公知であり、例えばELISA、ウエスタンブロット及びRIAが挙げられる。抗体の結合反応速度(例えば結合親和性)はまた、Biacore解析によるなど、当該技術分野において公知の標準アッセイによっても評価することができる。
【0019】
用語「誘導体」は、特に指示されない限り、例えば指定される配列(例えば可変ドメイン)の本開示に係る、例えばオマリズマブ等、IgE抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列変異体、及び共有結合修飾(例えばペグ化、脱アミド、ヒドロキシル化、リン酸化、メチル化等)を定義して使用される。「機能的誘導体」は、本開示の抗IgE抗体と共通する定性的生物学的活性を有する分子を含む。機能的誘導体には、本明細書に開示されるとおりの抗IgE抗体の断片及びペプチド類似体が含まれる。断片は、例えば指定される配列の本開示に係るポリペプチドの配列内にある領域を含む。
【0020】
語句「実質的に同一」は、関連性のあるアミノ酸又はヌクレオチド配列(例えばV又はVドメイン)が特定の参照配列と比較して同一である又は(例えば保存されたアミノ酸置換による)実質的でない差異しか有しないであろうことを意味する。実質的でない差異には、指定される領域(例えばV又はVドメイン)の5アミノ酸配列中1又は2個の置換など、軽微なアミノ酸変化が含まれる。抗体の場合、第2の抗体は同じ特異性を有し、且つその親和性の少なくとも50%を有する。本明細書に開示される配列と実質的に同一な(例えば少なくとも約85%の配列同一性の)配列もまた、本出願の一部である。一部の実施形態において、誘導体抗IgE抗体(例えばオマリズマブの誘導体、例えばオマリズマブバイオシミラー抗体)の配列同一性は、本開示の配列を基準として約90%以上、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上であってもよい。
【0021】
天然ポリペプチド及びその機能的誘導体に関して「同一性」とは、本明細書では、最大のパーセント同一性が達成されるように、且ついかなる保存的置換も配列同一性の一部としては考慮せずに配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入した後の、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。N末端又はC末端の伸長も挿入も、同一性を減じるとは解釈されないものとする。アラインメントの方法及びコンピュータプログラムは周知である。パーセント同一性は、標準的なアラインメントアルゴリズム、例えばAltshul et al.((1990)J.Mol.Biol.,215:403 410)によって記載されるベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(BLAST:Basic Local Alignment Search Tool);Needleman et al.((1970)J.Mol.Biol.,48:444 453)のアルゴリズム;又はMeyers et al.((1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11 17)のアルゴリズムによって決定することができる。パラメータ一式は、Blosum 62スコアリング行列で、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5であってもよい。2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間のパーセント同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller((1989)CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを用いて、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して決定することもできる。
【0022】
「アミノ酸」は、あらゆる天然に存在するL-α-アミノ酸を例えば指し、及びD-アミノ酸を含む。語句「アミノ酸配列変異体」は、本開示に係る配列と比較したときそのアミノ酸配列に何らかの違いがある分子を指す。例えば指定される配列の本開示に係る抗体のアミノ酸配列変異体は、なおもIgEへの結合能力を有している。アミノ酸配列変異体には、置換変異体(本開示に係るポリペプチドにおいて少なくとも1つのアミノ酸残基が取り除かれ、それに代えて同じ位置に別のアミノ酸が挿入されているもの)、挿入変異体(本開示に係るポリペプチドにおける特定の位置にあるアミノ酸に直接隣接して1つ以上のアミノ酸が挿入されているもの)及び欠失変異体(本開示に係るポリペプチドにおいて1つ以上のアミノ酸が取り除かれているもの)が含まれる。
【0023】
用語「薬学的に許容可能」は、1つ又は複数の活性成分の生物学的活性の有効性に干渉しない非毒性物質を意味する。
【0024】
化合物、例えば抗IgE抗体に関して用語「投与する」は、当該化合物を任意の経路によって患者に送達することを指して使用される。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」は、患者(ヒトなど)への単回又は複数回用量投与時に、障害又は再発性障害を治療し、予防し、その発症を予防し、治癒し、(該当する場合)、遅延させ、その重症度を低減し、その少なくとも1つの症状を改善するのに有効な、又はかかる治療がない場合に予想される生存を超えて患者の生存を延長させるのに有効な抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ又はその抗原結合断片)の量を指す。単独で投与される個別の活性成分(例えば抗IgE抗体、例えばオマリズマブ)に適用される場合、この用語は当該成分単独を指す。併用に適用される場合、この用語は、併用投与か、逐次投与か、それとも同時投与かに関わらず、治療効果をもたらす活性成分の総量を指す。
【0026】
用語「治療」又は「治療する」は、本明細書では、対象への、又は対象から単離された組織若しくは細胞株への、本開示に係る抗IgE抗体、例えばオマリズマブ、又は前記抗IgE抗体を含む医薬組成物の適用又は投与として定義され、ここで対象は、特定の疾患、その疾患に関連する症状、又はその疾患を発症し易い素因を有し、その目的は、疾患を治癒すること(該当する場合)、その発症を遅らせること、その重症度を低減すること、それを緩和すること、その1つ以上の症状を改善すること、疾患を好転させること、疾患の任意の関連する症状又は疾患を発症し易い素因を低減し又は好転させることである。用語「治療」又は「治療する」には、疾患を有する疑いがある患者並びに病気である又は疾患若しくは医学的状態に罹患していると診断された患者を治療することが含まれ、及び臨床的再発の抑制が含まれる。
【0027】
本明細書で定義されるとき、用語「制御性T細胞の機能不全(dyfunctioning)を伴う疾患又は障害」とは、例えば、制御性T細胞免疫調節の障害を伴う疾患を指す。
【0028】
抗IgE抗体
開示される使用、方法、及びキットの一部の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片はモノクローナル抗体である。一部の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片はヒト又はヒト化抗体である。一部の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片はヒト化抗体である。一部の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片はIgGサブタイプのヒト抗体である。一部の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片はオマリズマブである。他の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片はリゲリズマブである。
【0029】
例示的抗IgE抗体としては、限定はされないが、オマリズマブ、キリズマブ、リゲリズマブ及びエトロリズマブが挙げられる。
【0030】
或いは、本開示の方法において使用される抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に示される参照抗IgE抗体のアミノ酸配列変異体であり得る。
【0031】
本開示はまた、オマリズマブのV又はVドメインのアミノ酸残基の1個以上、典型的にはほんの数個(例えば1~10個)が、例えば、対応するDNA配列の突然変異、例えば部位特異的突然変異誘発によって変化している抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、オマリズマブ)も含む。
【0032】
治療方法及び抗IgE抗体の使用
開示される抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片は、Treg細胞機能不全を伴う1つ以上の疾患又は障害を患っている患者(例えば、ヒト患者)を治療するために、インビトロ、エキソビボで使用されてもよく、又は医薬組成物中に組み込まれ、インビボで投与されてもよい。
【0033】
抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせたとき、医薬組成物として使用されてもよい。かかる組成物は、抗IgE抗体又はその抗原結合断片に加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤、及び当該技術分野において周知の他の材料を含有し得る。担体の特徴は、投与経路に依存することになる。
【0034】
本開示の方法に用いられる医薬組成物は従来方式で製造されてもよい。一実施形態において、医薬組成物は凍結乾燥形態で提供される。即時投与には、医薬組成物は好適な水性担体、例えば滅菌注射用水又は滅菌緩衝生理食塩水中に溶解される。他の製剤は、液体又は凍結乾燥製剤を含む。
【0035】
抗体、例えばIgE又はその抗原結合断片に対する抗体は、典型的には、即時非経口投与可能な水性形態で製剤化されるか、又は投与前に好適な希釈剤で再構成する凍結乾燥物として製剤化されるかのいずれかである。本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブは凍結乾燥物として製剤化される。好適な凍結乾燥製剤は、少量の液体容積(例えば2ml以下、例えば1ml)で再構成して皮下投与を可能にすることができ、且つ抗体凝集レベルが低い溶液を提供することができる。抗体を医薬品グレードに精製する技法は、当該技術分野において周知である。
【0036】
本明細書において、それを必要としている患者におけるTreg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害の予防、治療又はその経過の修正の開示される方法、及びそれにおける使用のための抗IgE抗体は、患者に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含んでいる。
【0037】
例えば、Treg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害は、1型糖尿病、糸球体腎炎、アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎、後天性再生不良性貧血、自己免疫性脳炎、パーキンソン病、Foxp3欠損、IPEX症候群、免疫調節不全、多腺性内分泌障害、腸症、抗腫瘍免疫、及び移植片拒絶反応からなる群から選択される。
【0038】
別の例において、Treg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害は、リウマチ性関節炎を指す。
【0039】
更に別の例において、Treg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害は、1型糖尿病、糸球体腎炎、アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎、重症筋無力症、後天性再生不良性貧血、自己免疫性脳炎、パーキンソン病、Foxp3欠損、IPEX症候群、免疫調節不全、腸症、抗腫瘍免疫、及び移植片拒絶反応から選択される疾患又は障害を指す。
【0040】
更に別の例において、Treg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害は、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎又は多腺性内分泌障害を指す。
【0041】
本明細書には、患者に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、それを必要としている患者におけるTreg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害の予防、治療又はその経過の修正の方法、及びそれにおける使用のための抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)が開示される。
【0042】
それを必要としている患者は、インスリンアレルギーを有し得る。
【0043】
別の実施形態において、患者は、喘息、例えばアレルギー性喘息を患っている。
【0044】
別の例において、患者は、蕁麻疹、例えば慢性特発性蕁麻疹(CSU)を患っている。
【0045】
別の実施形態において、患者は、鼻炎、例えばアレルギー性鼻炎を患っている。
【0046】
更に別の実施形態において、患者は、アレルギー、喘息、蕁麻疹及び鼻炎から選択される疾患又は障害、例えば、アレルギー性喘息、CSU及びアレルギー性鼻炎から選択される疾患又は病態を患っている。
【0047】
更に、本明細書には、患者に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、それを必要としている患者におけるTreg細胞の機能不全を伴う疾患又は障害の予防、治療又はその経過の修正の方法、及びそれにおける使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブが開示され、ここで患者は、アレルギー、喘息、蕁麻疹又は鼻炎を患っていない。例えば、患者はアレルギーでなくてもよく、又はアレルギー性喘息、CSU、アレルギー性鼻炎から選択されるアレルギー病態を有しなくてもよい。
【0048】
一実施形態において、それを必要としている患者は、アレルギーを有しない。
【0049】
別の実施形態において、患者は、喘息、例えばアレルギー性喘息を患っていない。
【0050】
別の例において、患者は、蕁麻疹、例えば慢性特発性蕁麻疹(CSU)を患っていない。
【0051】
別の実施形態において、患者は、鼻炎、例えばアレルギー性鼻炎を患っていない。
【0052】
適切な投薬量は、例えば、利用されることになる詳細な抗IgE抗体、宿主、投与様式並びに治療下の病態の性質及び重症度に応じて、並びに患者が受けた前治療の性質に応じて変わることになる。投薬量はまた、抗IgE抗体による治療を開始する前の患者の血中IgEレベルにも依存し得る。
【0053】
最終的には、担当の医療提供者が、各個別の患者の治療に用いる抗IgE抗体の量を決めることになる。一部の実施形態において、担当の医療提供者は低用量の抗IgE抗体を投与して、患者の反応、詳細には(in particule)血中IgEレベルを観察し得る。
【0054】
喘息への適応には、オマリズマブの常用量範囲は、1~4回の皮下注射で75mg~600mgであり、最大推奨用量は600mgである。喘息の治療に対するオマリズマブの用量設定は、患者の体重及び患者の血清中総IgEレベルに基づき決定される(detrmined)。慢性蕁麻疹への適応に対するオマリズマブの投薬量は、1ヵ月に300mg scである。
【0055】
本開示の一実施形態において、オマリズマブは、約75mg~約600mgの用量、例えば約300mgの用量、例えば600mgの最大用量で皮下に投与される(adminstered)。
【0056】
一部の実施形態において、患者の血中IgEレベルは、抗IgE抗体、例えばオマリズマブの投与を開始する前に測定され、患者の体重及び/又はその血清中総IgEレベルに基づき抗体の用量が調整される。
【0057】
本開示の医薬組成物を使用した療法の継続期間は、治療しようとする疾患又は障害の重症度並びに各個別の患者の状態及び個人的反応に応じて変わることになる。一部の実施形態において、患者は、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)を長期間、例えば、少なくとも12週間にわたり、例えば最長16週間まで、例えば12~16週間まで投与される。
【0058】
一部の実施形態において、抗IgE拮抗薬(例えば、オマリズマブ)は、患者に2週間毎、例えば2又は4週間毎、例えば毎月投与される。
【0059】
本開示に係る抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブは、好都合には、非経口的に、例えば、静脈内に、筋肉内に、又は皮下に、例えば皮下に投与される。
【0060】
抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブは、例えば、約75mg~約600mg(例えば、約75mg、約600mg)、例えば約300mgで患者に皮下(SC)投与され得る。
【0061】
本開示の治療方法又は使用の一部の実施において、治療有効量の抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片は、患者、例えば哺乳類(例えばヒト)に投与される。本開示の方法は、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片を使用した、Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害の治療を提供することが理解されるが、これは、患者が最終的に抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片で治療されることになる場合には、療法が必然的に単剤療法となることを除外するものではない。
【0062】
実際には、ある患者が抗IgE抗体又はその抗原結合断片による治療に選択された場合、次には本開示の方法に従い抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片が、単独、又はTreg細胞機能不全を伴う疾患又は障害を患っている患者を治療するための他の薬剤及び療法との組み合わせ、例えば、少なくとも1つの追加の治療用薬剤、例えば、コルチコステロイド又は免疫抑制薬(immumosuppressor)、例えば全身性コルチコステロイド又は免疫抑制薬などとの組み合わせのいずれかで投与され得る。
【0063】
例えば、治療しようとする患者がアレルギーであるとき、又は患者が、喘息、蕁麻疹、及び鼻炎から選択される、例えば、アレルギー性喘息、CSU、及びアレルギー性鼻炎から選択される別の疾患又は障害も患っているときが、そのような場合であり得る。
【0064】
1つ以上の追加の乾癬用薬剤と共投与されるとき、抗IgE抗体又はその抗原結合断片は、当該の他の薬剤と同時投与されるか、又は逐次投与されるか、いずれであってもよい。逐次投与される場合、主治医が、抗IgE抗体又はその抗原結合断片を他の薬剤と組み合わせて投与する適切な順序及び共送達に適切な投薬量を決めることになる。
【0065】
本明細書に開示されるTreg細胞機能不全を伴う疾患又は障害の治療に際しては、有利には、オマリズマブなどの開示される抗IgE抗体と様々な療法を組み合わせ得る。かかる療法としては、例えば、コルチコステロイド(例えば、全身性コルチコステロイド)又は免疫抑制薬が挙げられる。
【0066】
本明細書には、患者に約75mg~約600mgの用量の抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片を皮下注射によって投与することを含む、それを必要としている患者のTreg細胞機能不全を伴う疾患又は障害の経過の修正の方法、及びそれにおける使用のための抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片が開示される。
【0067】
開示される使用、方法、及びキットの一部の実施形態において、患者はアレルギー、喘息及び/又は蕁麻疹を有し、例えば、喘息、アレルギー性喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹及びCSUから選択される疾患又は障害を有する。開示される使用、方法、及びキットの一部の実施形態において、患者は、アレルギー性喘息、アレルギー性蕁麻疹及び/又はCSUを有する。開示される使用、方法、及びキットの他の実施形態において、患者はアレルギー性喘息及びCSUを有する。
【0068】
開示される使用、方法、及びキットの一部の実施形態において、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片は第一選択治療として処方されてもよく、又は標準治療の薬物療法のいずれかに追加されてもよい。
【0069】
キット
本開示はまた、Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害を有する特定の患者の治療用キットも包含する。かかるキットは、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)若しくはその抗原結合断片(例えば、液体又は凍結乾燥形態)又は抗IgE抗体(前述)を含む医薬組成物を含む。加えて、かかるキットは、抗IgE抗体又はその抗原結合断片の投与手段(例えば、自己注射器、シリンジ及びバイアル、プレフィルドシリンジ、プレフィルドペン)及び使用説明書を含み得る。こうしたキットには、Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害を治療するための、例えば、同梱されている抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブと組み合わせて送達するための追加の治療用薬剤(前述)が入っていてもよい。かかるキットはまた、患者を治療するための抗IgE抗体又はその抗原結合断片(例えば、オマリズマブ)の投与に関する説明書も含み得る。かかる説明書は、同梱されている抗IgE抗体又はその抗原結合断片、例えばオマリズマブで用いるための用量(例えば、75mg、300mg)、投与経路(例えば、IV、SC)、及び投与レジメン(例えば、2又は4週間毎に、例えば12~16週間の間)を提供し得る。
【0070】
語句「投与手段」は、限定はされないが、プレフィルドシリンジ、バイアル及びシリンジ、ペン型注射器、自己注射器、点滴静注及びバッグ、ポンプ等を含め、薬物を患者に全身投与するための任意の利用可能な器具を指して使用される。かかるアイテムで、患者が薬物を自己投与してもよく(即ち、医師の手助けなしに薬物を投与してもよく)、又は医療従事者が薬物を投与してもよい。
【0071】
コルチコステロイドを用いた療法又は他の従来療法に対する「ノンレスポンダー」という用語は、そのベースラインの少なくとも50%、例えば50%~90%の改善を達成できなかった対象又はその症状の増悪を示した対象として定義される。コルチコステロイドを用いた療法又は他の従来療法に対するレスポンダーは、ベースラインの少なくとも(least)50%、例えば50%~90%、例えば90%の改善を達成した対象として定義される。
【0072】
本明細書には、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片を含む、Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害を有する患者の疾患経過の修正における使用のためのキットが開示される。一部の実施形態において、本キットは、患者への抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)又はその抗原結合断片の投与手段を更に含む。
【0073】
実施形態
1.それを必要としている対象のTreg細胞機能不全を伴う疾患又は障害の治療又は予防における使用のための抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0074】
2.Treg細胞機能不全を伴う疾患又は障害を治療する方法であって、それを必要としている対象に治療有効量の抗IgE抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む方法。
【0075】
3.それを必要としている対象が、コルチコステロイドによる治療に対するノンレスポンダー(not-responder)である、実施形態1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は実施形態2に記載の方法。
【0076】
4.それを必要としている対象が、コルチコステロイドに対する反応が不十分な対象であるか、又はコルチコステロイド減量を必要としている対象であるか、又はコルチコステロイド治療が不適切な対象である、実施形態1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は実施形態2に記載の方法。
【0077】
5.それを必要としている対象が、コルチコステロイドを含めた従来療法に対して不十分な反応を示したことがあるか、又はかかる療法を忍容できない、若しくはそれを医学的禁忌とする、実施形態1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は実施形態2に記載の方法。
【0078】
6.それを必要としている対象が、コルチコステロイドによる治療を忍容できない、実施形態1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は実施形態2に記載の方法。
【0079】
7.それを必要としている対象が、コルチコステロイドに対して不十分な反応を示す、実施形態1に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は実施形態2に記載の方法。
【0080】
8.疾患又は障害が、1型糖尿病、糸球体腎炎、アレルギー性脳脊髄炎、多発性硬化症、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎、重症筋無力症、自己免疫性甲状腺炎、後天性再生不良性貧血、自己免疫性脳炎、パーキンソン病、Foxp3欠損、IPEX症候群、免疫調節不全、多腺性内分泌障害、腸症、抗腫瘍免疫、又は移植片拒絶反応から選択される、前出の実施形態のいずれか1つに記載の抗IgE抗体又はその抗原結合断片。
【0081】
9.疾患又は障害が、1型糖尿病、糸球体腎炎、アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、自己免疫性胃炎、重症筋無力症、後天性再生不良性貧血、自己免疫性脳炎、パーキンソン病、Foxp3欠損、IPEX症候群、免疫調節不全、腸症、抗腫瘍免疫、又は移植片拒絶反応から選択される、前出の実施形態のいずれか1つに記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0082】
10.患者が、アレルギー、喘息、蕁麻疹及び鼻炎から選択される疾患又は病態、例えば、アレルギー性喘息、慢性特発性蕁麻疹及びアレルギー性鼻炎から選択される疾患又は病態を更に患っている、上記の実施形態のいずれかに記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0083】
11.患者が、アレルギー、喘息、蕁麻疹又は鼻炎を患っていない、例えば、アレルギー性喘息、慢性特発性蕁麻疹又はアレルギー性鼻炎を患っていない、前出の実施形態のいずれか1つに記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0084】
12.抗IgE抗体がオマリズマブ又はリゲリズマブである、前出の実施形態のいずれか1つに記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0085】
13.オマリズマブが、約75mg~約600mgの用量、例えば600mgの最大用量で投与される、実施形態12に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0086】
14.オマリズマブが2~4週間毎に投与される、実施形態12又は実施形態13に記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0087】
15.オマリズマブが、最長16週間、例えば12~16週間にわたって投与される、実施形態12~14のいずれか1つに記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0088】
16.抗IgE抗体がコルチコステロイド及び/又は免疫抑制薬(immunusuppressor)と共投与される、上記の実施形態のいずれかに記載の抗IgE抗体若しくはその抗原結合断片又は方法。
【0089】
概要
上記の添付の説明に、本開示の1つ以上の実施形態の詳細を示している。本開示の実施又は試験においては本明細書に記載されるものと同様の又は等価な任意の方法及び材料を使用し得るが、ここでは好ましい方法及び材料を記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、この説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲においては、単数形は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に引用される全ての特許及び刊行物は参照によって援用される。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を更に詳しく例示するために提供される。これらの例は、決して添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本開示の特許(patient)事項の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例1】
【0090】
好適なインビトロモデルとしての形質細胞様樹状細胞
1.1.形質細胞様樹状細胞の精製及び特徴付け
形質細胞様樹状細胞(pDC)は、細菌感染後に遭遇する一般的な刺激物であるTLR9リガンド(TLR9-L)の刺激を受けると機能制御性T細胞(Treg)を誘導する能力を有する。
【0091】
形質細胞様樹状細胞単離キットII(Miltenyi Biotec)を使用することにより、バフィーコート由来の末梢血単核球(PBMC)からヒトpDCを均一(homogeneicity)に精製した。
【0092】
単離したpDCの純度は85~95%の範囲であった。図1Aに示すとおり、精製ヒトpDCは高親和性IgE受容体(FcεR1)を高度に発現し、低親和性IgE受容体(CD23)の発現は最小限であった。
【0093】
種々のドナーからの血漿IgEレベルをELISAによって定量化した。血漿IgEレベルと、FcεR1に結合したIgEを示すpDCの頻度との間には、正の相関があった(図1B)。
【0094】
アッセイした全ドナーを考慮したときの、FcεR1に結合したIgEを示すpDCのパーセンテージの平均値は、45.71±6.23(平均値±SEM)であった。この値が非アトピードナーとアトピードナーを区別するカットオフであるものと考えて、pDCが示すFcεR1結合IgE頻度が45%より高かったドナー(IgE+pDC又はアトピードナー)を以降の実験に選択した。
【0095】
この試験における更なる詳細な分析のため本試験に含めたアトピードナー(45%より高いIgE+pDC頻度)の血漿IgEレベルは、非アトピードナー(IgE-pDC)と比べて有意に高かった(p=0.002、図1C)。
【実施例2】
【0096】
IgE媒介性FcεR1架橋により、Treg細胞誘導に必須の機能マーカー及びサイトカインの転写/発現が低下する
IgE媒介性FcεR1架橋は、機能的に意味のある樹状細胞(DC)において下流シグナル伝達を惹起する。IgE-FcεR1複合体の活性化を誘導するため、ウサギ抗ヒトIgE(IgE-FcεR1架橋剤、CL)を使用した。精製pDCを10μg/mLのIgE-FcεR1架橋剤(CL)又は対応するアイソタイプ対照(IgG)で1時間刺激し、続いて2μMのCpG B型、ODN2006(TLR9-L)を加えた。18時間の刺激後、pDC遺伝子発現、活性化/機能マーカー発現及び上清サイトカインを分析した(図2)。IgE媒介性FcεR1架橋により、アイソタイプ対照と比較して、TLR9-L活性化pDCにおけるCD83(p=0.033)、CD86(p=0.046)、PD-L1(p=0.05)の頻度及びHLA-DRの発現(p=0.006)が有意に低下した(図2A)。加えて、IgE媒介性FcεR1架橋によりまた、ICOSL(p=0.003)、PD-L1(p=0.048)、IDO遺伝子(p=0.05)の発現(図2B)及びIFN-αの分泌(p=0.022)も減少した(図2C)。これらの分子は全て、Treg細胞の生成において決定的な役割を果たすことが公知である。同様に、IgE媒介性FcεR1架橋によりまた、SOCS1及びIKβαの発現も有意に減少した(データは示さず)。対照的に、IgE媒介性FcεR1架橋シグナル伝達により、非刺激条件と比較してTLR9-L活性化pDCにおけるOX40L細胞頻度(p=0.025)は増加し(図2A)、非刺激条件(p=0.017)及び刺激条件(p=0.041)のいずれと比較してもTNF-α分泌は増加した(図2C)。
【実施例3】
【0097】
ヒトTLR9-L活性化pDCがIgE媒介性FcεR1架橋後にTreg細胞を生成する能力
精製pDCをTLR9-Lで刺激し、IgE-FcεR1架橋剤の非存在下又は存在下において同種異系ナイーブCD4+T細胞と1:5比(pDC:ナイーブT細胞(T-cel))で共培養した。IL-10分泌の増加から同定されるとおり(p=0.041)(図3A)、また、CD4+CD127低CD25+Foxp3+Treg細胞の頻度の増加からも同定されるとおり(p=0.018)(図3B)、TLR9-L活性化pDCはTreg細胞の極性化を誘導した。IgE媒介性FcεR1架橋は、TLR9-L活性化pDCがTreg細胞の極性化を誘導する能力を障害し(p=0.009、図3B)、これには共培養上清中のIL-10の有意な減少が伴った(p=0.002、図3A)。IgE媒介性FcεR1架橋はまた、IFN-α(p=0.029)及びIL-2(p>0.001)の減少も誘導した(図3A)。
【実施例4】
【0098】
オマリズマブはアトピードナーからの精製pDC上の膜結合型IgEを除去する
精製pDC上のIgE平均蛍光強度(MFI)の用量依存的な低下によって示されるとおり、オマリズマブにより、pDC上のFcεR1に結合したIgEが減少した。
【0099】
結果的に、FcεR1結合IgEを有するpDC(FcεR1+IgE+pDC)の頻度の有意な減少と同時に、空いているFcεR1を有するpDC(FcεR1+IgE-pDC)のレベルの増加があった(図4A)。オマリズマブはpDC生存率に影響を及ぼさなかった(図4B)。要約すると、オマリズマブはインビトロでpDCのFcεR1からIgEを除去する。
【実施例5】
【0100】
オマリズマブはIgE媒介性FcεR1架橋の存在下でTLR9-L活性化pDCのサイトカインシグネチャを回復させる。pDCを5及び10mg/mLのオマリズマブで24時間処理した後、IgE-FcεR1架橋剤及びTLR9-L刺激を行った。次に、活性化の24時間後にサイトカインプロファイルをELISAによって分析した。10mg/mLのオマリズマブでは、IgE-FcεR1架橋剤条件と比較して、pDCがIFN-αを産生する能力が回復した(p=0.05)(図5A)。かかる結果と一致して、10mg/mLで処理したpDCは、IgE-FcεR1架橋剤条件と比較して低いTNF-αレベルを保った(p=0.04)(図5B)。要約すると、以前pDCをオマリズマブで処理したときには正常レベルに回復しているIFN-αをIgE-FcεR1架橋剤は阻害し、TLR9-L活性化pDCにおけるTNF-α産生を誘導した。
【実施例6】
【0101】
コルチコステロイドと比較してオマリズマブがTreg細胞の生成を促進する能力
コルチコステロイドが及ぼす効果との比較において、オマリズマブがpDCによるTreg細胞の生成能力を回復させることができるか確かめるため、pDCを5又は10mg/mLのオマリズマブで24時間処理した。次にpDCを1μMデキサメタゾン、IgE-FcεR1架橋剤及びTLR9-L刺激で処理した。24時間後、pDCを洗浄し、ナイーブCD4+T細胞と5日間共培養した。TLR9-L刺激に関連付けられるTreg細胞の有意な増加があり(p=0.004)(図6)、これはデキサメタゾン処理によって消失した。IgE-FcεR1架橋剤により、誘導されたTreg細胞の頻度が低下し(p=0.049)、これはオマリズマブによって用量依存的に戻った。要約すると、オマリズマブは、IgE-FcεR1架橋剤刺激下で、pDCがTreg細胞を生成する能力を回復させる能力を有する一方、デキサメタゾンはpDC機能を抑制する。
【実施例7】
【0102】
IgE媒介性FcεR1架橋は、pDCがTreg細胞を生成する能力に寄与するIDO、PD-L1及びIFN-αを障害する
IgE媒介性FcεR1架橋は、TLR9-L活性化pDCによるPD-L1、IDOの発現及びIFN-αの分泌を減少させる。IgE-FcεR1架橋剤条件下では、TLR9-L活性化pDCによるTreg細胞の誘導能力が障害されたため、遮断実験を実施して、IDO、PD-L1及びIFN-αの下方制御がpDCのTreg細胞誘導障害に関連した可能性があるかどうかを解明した。インドールアミン-2,3ジオキシゲナーゼ(IDO)はトリプトファンからキヌレニン(kyn)を生成し、kynは、Treg細胞の生成に関与するものである。pDCがIgE-FcεR1架橋剤条件下でTreg細胞を誘導する能力は、共培養物にkynを加えると増加したが(p=0.07)(図7)、これは、kynがIDOの下方制御を回避したことを実証するものであり、pDCにおけるIDO発現の関連性及びTreg細胞生成におけるその役割が強調される。Treg生成におけるIDOの役割を更に実証するため、共培養物に、IDO酵素活性に阻害効果を及ぼす1-メチル-D-トリプトファン(1-MT)を加えた。1-MTはTLR9-L活性化pDCがTreg細胞を生成する能力を障害したが(p=0.015)、これは、IgE媒介性FcεR1架橋に関連付けられるIDOの下方制御が、一部にはIgE-FcεR1架橋剤条件下におけるTreg細胞生成の減少の原因であることを裏付けている。
【0103】
pDCに発現するプログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)は、PD-1/PD-L1軸相互作用を通じたTreg細胞の生成において決定的な役割を果たす。抗ヒトPD-L1でPD-L1を遮断すると、TLR9-L活性化pDCがTreg細胞を誘導する能力が部分的に阻害された。
【0104】
従って、IgE媒介性FcεR1架橋に関連付けられるPD-L1下方制御もまた、Treg細胞生成の低下の原因である。1-MTと抗PD-L1との組み合わせは相加効果を有し、Treg細胞生成をFcεR1架橋条件レベルにまで消失させた。
【0105】
一部の著者らは、pDCにおけるIDOの上方制御が、TLR9-L活性化を受けたIFN-α分泌のオートクリン効果に部分的に依存することを示唆している。加えて、IFN-αそれ自体がTreg細胞の生成を誘導すると言われている。IgE媒介性FcεR1架橋を受けてTLR9-L活性化pDCによるIFN-αの分泌が障害されたため、抗IFNARを使用した遮断実験を実施して、IgE媒介性FcεR1架橋後に観察されたTreg細胞生成の低下の原因がpDC IFN-α分泌であり得るかどうかを確かめた。IFN-α受容体が遮断されたとき、Treg細胞生成の低下があった(図7)。従って、TLR9-L活性化pDCにおけるIgE媒介性FcεR1架橋に関連付けられるIFN-α分泌の減少もまた、pDCによるTreg細胞誘導が障害される一因である可能性がある。
【0106】
樹状細胞(DC)は制御性T細胞(Treg)を誘導し、Tregは、誘導時、アレルゲンに対する健常な免疫応答及び気道リモデリングの防止に必須である。IgEはDC上のFcER1を遮断し、ひいてはこのTReg誘導を減少させる。
【0107】
オマリズマブは、IgEとFcER1との間の相互作用によって引き起こされる樹状細胞(dendrtic cell)が制御性T細胞を誘導する能力を回復させ得る。
【0108】
このことはインビトロで証明されており、ここでは樹状細胞が精製されてオマリズマブとインキュベートされ、次にIgE-FcER1架橋剤の存在下でCpG ODN(TLR9-L)によって活性化され、次にTReg細胞に及ぼす効果がELISA、PCR及び培養物によって評価された。
【0109】
コルチコステロイドは、DCがTRegを誘導する能力を消失させる一方、オマリズマブはそれを誘導できたことから、今一度、安全性プロファイルが低いことが公知のコルチコステロイドによる免疫抑制(immunosuprression)と比較して、オマリズマブが良好に忍容される免疫調節効果を有し得ることが証明される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A-4B】
【国際調査報告】