(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
B41M 5/26 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B41M5/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516029
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020075524
(87)【国際公開番号】W WO2021048390
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507055925
【氏名又は名称】データレース リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DATALASE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】トゥィーディ,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】クック,リチャード
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111HA07
2H111HA14
2H111HA21
2H111HA34
(57)【要約】
本発明は、塗布された透明または半透明な組成物を含む基材上に画像を形成する方法であって、透明または半透明な組成物は、非変性状態のタンパク質を含み、方法は、透明または半透明な組成物に放射を適用して、タンパク質を変性させて、それによって基材上に画像を形成することを含む、方法に関する。本発明は、その上に画像が形成され得る基材を調製する方法、および関連する基材、組成物およびその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布された透明または半透明な組成物を含む基材上に画像を形成する方法であって、前記透明または半透明な組成物は、非変性状態のタンパク質を含み、前記方法は、前記透明または半透明な組成物に放射を適用して、前記タンパク質を変性させて、それによって前記基材上に画像を形成することを含む、方法。
【請求項2】
その上に画像が形成され得る基材を調製する方法であって、非変性状態のタンパク質を含む透明または半透明な組成物を前記基材の少なくとも一部に塗布することを含み、前記タンパク質は、前記透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性されて、それによって前記基材上に画像を形成することができる、方法。
【請求項3】
前記タンパク質が、動物性、乳性または植物性タンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、植物性または動物性タンパク質、好ましくは植物性タンパク質である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が、プロラミンタンパク質、または加水分解ウシコラーゲンを含む加水分解もしくは非加水分解コラーゲン、好ましくは、グルテン、ゼイン、ダイズ、エンドウおよびアサから選択されるプロラミンタンパク質、または加水分解ウシコラーゲンを含む加水分解コラーゲン、より好ましくは、ゼイン、または加水分解ウシコラーゲンを含む加水分解コラーゲンである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質が、40℃以上の温度で変性される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質が、変性後に白色またはオフホワイト色を表示する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、NIR吸収剤をさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記NIR吸収剤が、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式M
xW
yO
z(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物、好ましくは、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式M
xW
yO
z(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、架橋剤と、任意選択の触媒とをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記架橋剤が、メラミン系架橋剤、好ましくはアルキル化メラミン系架橋剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、スルホン酸触媒、好ましくはジノニルナフタレンジスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、pH2~12.5である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、アルカリ性水性媒体をさらに含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、水および/または有機溶媒、好ましくは水および/またはアルコール、エステルもしくはケトン、より好ましくは水および/またはアルコールもしくはエステルから選択される溶媒をさらに含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、殺生物剤をさらに含む、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記放射が、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO
2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射、400~700nmの波長を有する可視放射、および100~400nmの波長を有する紫外線(UV)放射から選択される、好ましくは、前記放射が、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO
2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射、および100~400nmの波長を有する紫外線(UV)放射から選択され、より好ましくは、前記放射が、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO
2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、および700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射から選択され、最も好ましくは、前記放射が、10600nm(CO
2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、および700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射から選択される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
形成される前記画像が、40%以上、例えば、50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上などの不透明度を有する、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記基材上に形成される前記画像は、色が白またはオフホワイトである、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記透明または半透明な組成物が、20%以下、例えば、15%以下、好ましくは10%以下、またはさらに5%以下などの不透明度を有する、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
保護オーバーコート層が、前記基材上の前記組成物の上に塗布される、請求項1から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
プライマー層が、前記基材上の前記組成物の下に塗布される、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
透明または半透明な組成物であって、
a)非変性状態のタンパク質であり、前記透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)NIR吸収剤と
を含む、組成物。
【請求項24】
前記NIR吸収剤が、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式M
xW
yO
z(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物、好ましくは、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式M
xW
yO
z(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
架橋剤と、任意選択の触媒とをさらに含む、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
前記架橋剤が、メラミン系架橋剤、好ましくはアルキル化メラミン系架橋剤である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記触媒が、スルホン酸触媒、好ましくはジノニル(ナフタレンジスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
透明または半透明な組成物であって、
a)非変性状態のタンパク質であり、前記透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)架橋剤と
を含む、組成物。
【請求項29】
前記架橋剤が、メラミン系架橋剤、好ましくはアルキル化メラミン系架橋剤である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
触媒、好ましくはスルホン酸触媒、好ましくはジノニル(ナフタレンジスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸をさらに含む、請求項28または29に記載の組成物。
【請求項31】
NIR吸収剤をさらに含む、請求項28、29または30に記載の組成物。
【請求項32】
前記NIR吸収剤が、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式M
xW
yO
z(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物、好ましくは、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式M
xW
yO
z(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
塗布された請求項23から32のいずれかに記載の透明または半透明な組成物を含む基材。
【請求項34】
保護オーバーコート層が、基材上の前記組成物の上に塗布されている、請求項33に記載の基材。
【請求項35】
非変性状態のタンパク質を含む透明または半透明な組成物の使用であって、前記タンパク質は、前記透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性されて、基材上に画像を形成することができる、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に画像を形成するための組成物に関する。本発明はさらに、塗布された組成物を有する基材、ならびに基材を調製するための方法および基材上に画像を形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インラインデジタル印刷は、基材上の画像の形成で知られているプロセスである。レーザ源からの放射など、刺激の適用は、基材上に塗布された組成物中のレーザ反応性化合物が放射の適用時に色を表示するように、レーザ反応性化合物に影響する。典型的には、白画像の形成を達成するために、モリブデン酸ナトリウム二水和物または炭酸ナトリウムなどの化合物がレーザ反応性組成物中で利用される。放射の適用時、化合物は、オフガス発生を経て、典型的には二酸化炭素または水を放出し、これは、組成物のポリマー性キャリアビヒクル内にポケットまたはバブルを生成する。これは、結果として屈折率の変化につながり、白色形成の外観を与える。しかし、そのような水和物および炭酸塩化合物は、オフガス発生により生成されたポケットまたはバブルに浸透することができる水の影響を非常に受けやすく、結果として経時的に画像の損失または劣化につながる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様において、その上に画像が形成され得る基材を調製する方法であって、非変性状態のタンパク質を含む透明または半透明な組成物を基材の少なくとも一部に塗布することを含み、タンパク質は、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性されて、それによって基材上に画像を形成することができる、方法が提供される。
【0004】
本発明の第2の態様において、塗布された透明または半透明な組成物を含む基材上に画像を形成する方法であって、透明または半透明な組成物は、非変性状態のタンパク質を含み、方法は、透明または半透明な組成物に放射を適用して、タンパク質を変性させて、それによって基材上に画像を形成することを含む、方法が提供される。
【0005】
本発明の第3の態様において、透明または半透明な組成物であって、
a)非変性状態のタンパク質であり、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)NIR吸収剤と
を含む、組成物が提供される。
【0006】
本発明の第4の態様において、透明または半透明な組成物であって、
a)非変性状態のタンパク質であり、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)架橋剤と
を含む、組成物が提供される。
【0007】
本発明の第5の態様において、塗布された透明または半透明な組成物を含む基材であって、透明または半透明な組成物は、
a)非変性状態のタンパク質であり、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)NIR吸収剤と
を含む、基材が提供される。
【0008】
本発明の第6の態様において、塗布された透明または半透明な組成物を含む基材であって、透明または半透明な組成物は、
a)非変性状態のタンパク質であり、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)架橋剤と
を含む、基材が提供される。
【0009】
本発明の第7の態様において、非変性状態のタンパク質を含む透明または半透明な組成物の使用であって、タンパク質は、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性されて、基材上に画像を形成することができる、使用が提供される。
【0010】
本発明を添付図面により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基材上の組成物の選択領域への放射の適用後の、本発明の組成物6を使用した画像形成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
驚くべきことに、かつ有利なことに、ヒトおよび/または機械可読画像の効果的な形成を達成するために、組成物、特にレーザ反応性組成物中でタンパク質が利用され得ることが本発明者らにより認識された。特に、白またはオフホワイト画像が有利に形成され得る。本発明の組成物は、配合時および基材への塗布時に、透明または半透明である。基材上の組成物の選択領域への放射の適用時、白またはオフホワイト画像がこれらの選択領域において形成され得る一方、放射が適用されていない組成物の領域(バックグラウンド)は影響を受けない。
【0013】
さらに、タンパク質の使用は、水和物および炭酸塩化合物を利用する従来のレーザ反応性組成物と比較して有利である。そのような化合物は、水ベースの系にのみ可溶であり、これは、化合物が利用されるとき印刷速度が制限されることを意味する。対照的に、タンパク質は、アルカリ性水性溶液、またはアルコール、エステルおよびケトンなどの溶媒中で可溶化されてよく、溶媒ベースのグラビアおよびフレキソ印刷などの商業的印刷技術を使用する高速印刷を可能にする。
【0014】
さらに、本発明の組成物は、先行技術のものよりも改善された水および環境耐性を示す。オーバープリントワニスまたはラミネートなどの、その上に塗布されるまたはそれと共に利用される任意の保護オーバーコート層と併せた本発明の組成物の使用は、水および環境耐性をさらに改善するのにも役立つ。その上さらに、タンパク質は生分解性材料であるので、本発明の組成物は環境に優しい。
【0015】
驚くべきことに、かつ有利なことに、タンパク質が、画像形成を達成する成分および組成物のバインダーの両方として本発明の組成物中で利用され得ることがさらに見出された。したがって、組成物の製造は、従来の組成物のものと比較して大幅に簡略化される。
【0016】
本発明の組成物のタンパク質は、組成物の画像形成成分として作用することが理解される。有利なことに、これは、顔料または染料が色形成の目的のために組成物中に存在する必要がないことを意味する。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、その上に画像が形成され得る基材を調製する方法であって、非変性状態のタンパク質を含む透明または半透明な組成物を基材の少なくとも一部に塗布することを含み、タンパク質は、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性されて、それによって基材上に画像を形成することができる、方法が提供される。
【0018】
「非変性状態」とは、その好ましいコンフォメーション状態を呈しているタンパク質の状態を意味する。これは、タンパク質の最もエネルギー的に好都合な天然状態である。非変性状態は、典型的には折り畳まれた非常に特異的な三次元構造である。タンパク質は、その非変性状態において効力がありかつ機能的である。非変性状態において、タンパク質は、放射など、任意の刺激の適用を通じた変性に供されておらず、生物学的に活性であり得る。非変性状態において、タンパク質は、組成物中でヒトの目に見えず、非変性状態のタンパク質を含む組成物は、透明または半透明である。タンパク質は、周囲条件における非変性状態で安定である。したがって、タンパク質は、組成物、したがって、タンパク質自体への放射の特定の適用まで非変性状態のままである。「周囲条件」および本明細書において使用される同様の用語は、組成物、したがってタンパク質が曝露される周囲環境の条件の正常範囲、すなわち、組成物、したがってタンパク質が、使用中、貯蔵中およびその他の場合に曝露される温度、圧力および大気条件の範囲を指す。これは、X線、紫外線(UV)および赤外線(IR)放射の電磁放射を含む太陽放射を含む。典型的には、周囲条件は、10~35℃の温度、20~100kPaの圧力を含み、環境は、典型的には酸素含有雰囲気である。
【0019】
基材上の透明または半透明な組成物の選択領域への放射の適用時、画像は、放射に曝露される組成物の領域内のタンパク質の変性を通じて形成される。放射の適用時、タンパク質は、コンフォメーション変化を経る。タンパク質の「コンフォメーション変化」という用語は、その環境または他の要因の変化に呼応したタンパク質の形状の変化を指すことが当業者に周知であり、それぞれの可能な形状は、コンフォメーションと呼ばれる。コンフォメーション変化は、鎖間架橋(すなわち、水素結合、双極子-双極子相互作用)の改変、タンパク質アンフォールディングおよび沈殿により引き起こされ得る。そのような変化を誘発し得る要因には、温度、pH、電圧、発色団における光、イオン濃度またはリン酸化が含まれる。本発明の文脈において、コンフォメーション変化は、放射の適用により促進される。コンフォメーション変化は、放射に曝露されている組成物の領域内のタンパク質の非変性状態からタンパク質の変性状態への移行と考えることができる。この移行中、タンパク質は、組成物中でヒトの目に見えるようになる。変性状態において、タンパク質は、組成物中でヒトの目に見える。基材上に形成される画像は、色が白またはオフホワイトであるように、タンパク質の変性状態は、典型的には色が白またはオフホワイトである。放射が適用されていない組成物の領域内で、タンパク質は、非変性状態のままであり、これらの領域内の組成物は、透明または半透明であることが当業者によって理解される。タンパク質の変性およびコンフォメーション変化は不可逆過程であり、したがって、放射の適用後に一旦タンパク質が変性状態になると、タンパク質は、退色したり、非変性状態に戻ったりすることなく、この状態のままになる。タンパク質は、変性状態の組成物中でヒトの目に見え、画像の形成を促進する。理論によって制限されることなく、本発明の文脈において、放射の適用時、タンパク質が変性され、組成物中でヒトの目に見えるようになり、典型的には白またはオフホワイト色を表示するように、タンパク質のコンフォメーション変化および凝集およびポリペプチドサブユニットの架橋が起こると本発明者らは考える。
【0020】
上述のように、タンパク質は、周囲条件における非変性状態で安定であり、したがって、タンパク質は、基材上の組成物への放射の特定の適用前にコンフォメーション変化を経ず、変性されない。適切には、タンパク質は、40℃超、好ましくは45℃超、より好ましくは50℃超、より一層好ましくは55℃超、より一層好ましくは60℃超の温度で、非変性状態から変性状態に移行する、すなわち変性される。
【0021】
本発明の文脈において、タンパク質は、一旦変性された、すなわち変性状態の組成物中でヒトの目に見える。本発明の文脈において、変性タンパク質は典型的には、放射が適用された組成物の領域内で白色またはオフホワイト色を表示する。放射が適用されていない組成物の領域(バックグラウンド)は影響を受けないままになり、タンパク質は、これらの領域内で非変性状態のままになることが、当業者によって理解される。「白」、「白色」または「オフホワイト」という用語は、それらの任意のシェードまたはティントに加えて、純白または絶対白を包含する。
【0022】
本発明の文脈において、画像の効果的な形成は、不透明度値の測定により判断される。本発明の文脈において、不透明度は、光、この場合は可視光に対する、組成物の不透過性の尺度である。不透明度は、透明(0%)から不透明(100%)までの百分率で表される。百分率は、組成物を通過しない光の量の尺度であり、すなわち、不透明度0%で、0%の光が組成物を通過しないので、組成物は完全に透明であり、不透明度100%で、100%の光が組成物を通過しないので、組成物は完全に不透明である。本発明の文脈において、識別可能なヒトおよび/または機械可読画像の効果的な形成を示すために、放射が適用された組成物の領域(画像)および放射が適用されていない組成物の領域(バックグラウンド)の両方の不透明度値を測定することができる。本発明の文脈において、識別可能なヒトおよび/または機械可読画像が形成されるように、画像の不透明度は、バックグラウンドの不透明度よりも高いことが当業者によって理解される。画像とバックグラウンドの不透明度値の間の差が大きいほど、画像は、より明瞭かつ識別可能になる。放射が適用されていない組成物の領域の不透明度値は、放射の適用前の、基材に塗布される透明または半透明な組成物のものと同等であることが当業者によってさらに理解される。
【0023】
本発明について、透明または半透明な組成物および放射が適用されていない画像化組成物の領域は、20%以下、例えば、15%以下から、好ましくは10%以下、またはさらに5%以下などの不透明度を有してもよい。さらに、本発明の文脈において、放射が適用された画像化組成物の領域およびその上に形成された画像は、40%以上、例えば、45%以上、好ましくは50%以上、またはさらに60%以上、例えば70%以上の不透明度を有してもよい。画像の不透明度値が高いほど、形成される画像は、より明瞭かつ識別可能になることが理解される。したがって、高い不透明度値は、効果的な画像形成を意味する。
【0024】
本発明の文脈において、不透明度測定は、Techkon SpectroDens分光光度計の不透明度機能を使用して、ASTM規格ASTM D589-97にしたがって行われ、基材上の組成物の画像化(画像)領域および非画像化(バックグラウンド)領域が、黒および白標準に対してそれぞれ測定される。まず、Techkon SpectroDens分光計の不透明度機能が選択され、次いで、基材上の組成物の不透明度が、黒Lenetaチャートに対して測定され、次いで、基材上の組成物の不透明度が、最低50シートの白紙などの白バックグラウンドに対して測定され、得られた不透明度測定値が、Techkon SpectroDens分光計により表示される。
【0025】
本発明の文脈において、透明または半透明な組成物が基材に塗布されるとき、基材自体、およびその任意の色は、典型的には、その透明または半透明な性質に照らして組成物を通じて見えるようになることが理解される。画像の形成後、これは、典型的には、刺激が適用されていない組成物の領域についても同じままになる。
【0026】
本発明の文脈において、「透明な」および「半透明な」という用語は、刺激の適用前の組成物、または刺激が適用されていない画像化組成物の領域を指す。この透明または半透明な組成物は、実質的に無色、好ましくは無色であってもよい。
【0027】
タンパク質は、組成物の「画像形成性化合物」であることが当業者によって理解される。「画像形成性化合物」とは、基材への組成物の塗布後、放射への組成物、したがってタンパク質の曝露時にタンパク質が基材上に識別可能な画像を形成することになることを意味する。識別可能な画像は、ヒトおよび/または機械可読である。本発明の文脈において、タンパク質により形成される識別可能な画像は、典型的には色が白またはオフホワイトになる。識別可能な画像とは、画像が明瞭であり、かつ組成物のバックグラウンド、すなわち放射に曝露されていない組成物の領域から容易に識別可能であることを意味する。組成物の透明または半透明な性質に照らして、基材自体、およびその任意の色は、典型的には、画像が形成されていない組成物の領域を通じて見えるようになることが理解される。したがって、その上に透明または半透明な組成物が塗布される基材の色は、形成される画像が明瞭であり、かつそれから容易に区別可能であるように選択されることが好ましい。例えば、画像が、白色である場合、基材は、その任意のシェードもしくはティントまたは真珠光沢もしくは金属などの特殊効果を含む、赤、青、緑、橙、紫、茶および黒など、白とのコントラストがある可視スペクトル内の任意の色でよい。コントラストが大きいほど、画像は、より明瞭になる。ポリマー性フィルムなど、基材自体が透明または半透明である場合において、基材が接着される任意のさらなる基材は、上記の特性を示してもよいことがさらに理解される。
【0028】
タンパク質は、任意の適したタンパク質でよい。1種を超えるタンパク質が、組成物中に存在してもよい。タンパク質は、動物性、乳性および植物性タンパク質を含む様々な天然資源から得られてもよい。好ましくは、タンパク質は、動物性または植物性タンパク質から選択される。より好ましくは、植物性タンパク質は、その生分解性および環境に優しい性質のために選択される。動物性タンパク質の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:加水分解ウシコラーゲンなどのコラーゲン(加水分解または非加水分解);およびゼラチン。乳性タンパク質の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:卵白;ホエー;およびカゼイン。植物性タンパク質の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:グルテン、ゼイン、ダイズ、エンドウおよびアサなど、プロラミンタンパク質。
【0029】
好ましくは、タンパク質は、プロラミンタンパク質、および加水分解ウシコラーゲンなどの加水分解コラーゲンなどのコラーゲンから選択される。より好ましくは、タンパク質は、ゼイン、および加水分解ウシコラーゲンなどの加水分解コラーゲンなどのコラーゲンから選択される。
【0030】
本発明のタンパク質は、レーザ光を吸収することができることが理解される。
【0031】
本明細書における特定のタンパク質へのすべての言及は、タンパク質自体、さらに、適切な場合には、誘導体、例えばペプチドまたは官能化タンパク質を網羅すると解釈されるべきである。
【0032】
タンパク質は、任意の適した量で組成物中に存在してもよい。好ましくは、組成物は、0.1~50wt%、例えば、0.1~40wt%、またはさらに3~30wt%のタンパク質を含む。最も好ましくは、組成物は、5~25wt%のタンパク質を含む。
【0033】
組成物中のタンパク質の含有量が多いほど、形成される画像の不透明度値はより高くなり、すなわち形成される画像はより明瞭になることが、当業者によって理解される。しかし、組成物中のタンパク質の量と組成物の粘度との間のバランスが見出されなければならないことが当業者によって理解される。
【0034】
タンパク質は、組成物の配合時および基材への組成物の塗布前に組成物中で可溶化される。異なるタンパク質は、異なるpHにおいて可溶化することが理解される。したがって、組成物のpHは、異なるタンパク質の溶解度が変化するにつれて変化し得る。いくつかは、より高いまたはより低いpHにおいてより溶解しやすくなる。しかし、典型的には、pH1またはpH14など、極端なpH値は、しばしば、刺激の適用前にタンパク質がコンフォメーション変化を経る原因となり、これは望ましくない。したがって、適切には組成物は、pH2~12.5、好ましくはpH3~11.5である。組成物は、中性媒体を含んでもよく、すなわち組成物は、結果的にpH約7である。
【0035】
組成物は、組成物の配合時および基材への組成物の塗布前に、その中でタンパク質が可溶化される水性媒体を含んでもよい。組成物は、アンモニア、モノエタノールアミンまたは他のアミンベースの材料および炭酸塩を含む水など、アルカリ性水性媒体を含んでもよい。これは、水へのアンモニア、モノエタノールアミンまたは他のアミンベースの材料および炭酸塩を含む水性溶液の添加を通じて生成されてもよい。組成物は、酢酸、塩酸および他の酸ベースの化学薬品など、酸性水性媒体を含んでもよい。好ましくは、組成物は、アンモニア、モノエタノールアミン、または他のアミンベースの材料および炭酸塩、好ましくはモノエタノールアミンを含む水など、アルカリ性水性媒体を含む。
【0036】
あるいは、組成物は、組成物の配合時および基材への組成物の塗布前にその中でタンパク質が可溶化される溶媒を含んでもよい。組成物は、単一の溶媒または溶媒の混合物を含んでもよい。溶媒は、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物、または有機溶媒の混合物を含んでもよい。アンモニア、モノエタノールアミンまたは他のアミンベースの材料および炭酸塩などの塩基が、溶媒中に任意選択で存在してもよい。適した有機溶媒には、これらに限定されないが、以下が含まれる:エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、およびn-酢酸ヘキシルなどのエステル;ベンゼン、トルエン、キシレン、およびソルベントナフサ100、150、200などの芳香族炭化水素;アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、およびメチルエチルケトンなどのケトン;ブチルグリコールなどのグリコール;メトキシプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル;ならびにそれらの組合せ。好ましくは、組成物は、水および/または有機溶媒を含む。より好ましくは、組成物は、水および/またはアルコール、アセテートもしくはケトンを含む。より好ましくは、組成物は、水および/またはアルコールもしくはケトンを含む。より好ましくは、組成物は、水および/またはアルコールを含む。より好ましくは、組成物は、水および/またはエタノールを含む。
【0037】
好ましくは、水性媒体または溶媒は、15~80wt%、例えば、15~70wt%、15~60wt%、またはさらに20~55wt%などの量で組成物中に存在する。
【0038】
タンパク質は、組成物の配合時および基材への組成物の塗布前に、組成物の水性媒体または溶媒中で可溶化されることが当業者によって理解される。水性媒体または溶媒、およびそれらの任意の成分は、タンパク質が、配合時および基材への組成物の塗布前に、溶媒または水性媒体中で可溶化されたままであるようなレベルで存在する。基材への塗布時、水性媒体または溶媒の大部分は、本明細書において詳述される塗布方法により失われることが理解される。
【0039】
組成物は、イソチアゾリノン、カチオン性四級塩、例えばアンモニウム/ホスホニウム、アミン、尿素、安息香酸/ソルビン酸塩など、殺生物剤をさらに含んでもよい。1種を超える殺生物剤が、組成物中に存在してもよい。殺生物剤は、安定性を高め、すなわちタンパク質の貯蔵寿命を延ばし、かつ殺生物性およびタンパク質安定化能を持つ界面活性剤を含む。例示的な界面活性剤としては、これらに限定されないが、アルキル硫酸塩、例えばジオクチルナトリウムスルホスクシネート(DSS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);カルボン酸塩、例えばステアリン酸ナトリウム;ソルビン酸塩、例えばソルビン酸ナトリウム(SS)、ポリソルベート、例えばポリソルベート20(Tween 20とも呼ぶ);アミンオキシド、例えばラウリルジメチルアミンオキシド;リン酸エステルが挙げられる。加えて、非従来の殺生物剤、すなわち、硝酸ナトリウム類/亜硝酸ナトリウム類、ラウリルジメチルアミンオキシド(LDAO)およびアスコルビン酸など、食料品に典型的に使用される保存料が使用され得る。組成物は、0.001~5wt%、例えば、0.1~5wt%、またはさらに0.1~1wt%、好ましくは0.1~0.5wt%などの殺生物剤を含んでもよい。
【0040】
典型的には、先行技術の組成物は、組成物を基材に効果的に結合するために、バインダーが組成物中に存在することを必要とする。しかし、追加のバインダーが本発明の組成物中に必要ではないこと、およびタンパク質がこの機能自体を果たすことが、本発明者らによって見出された。したがって、組成物は、典型的には、タンパク質に加えてバインダーを含有しない。
【0041】
あるいは、基材への組成物の結合の強度をさらに高めるために、組成物は、タンパク質に加えてバインダーを含んでもよい。適したバインダーは当業者に周知である。適したバインダーの例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:アクリルポリマー、スチレンアクリルポリマーおよびそれらの水素化生成物などのポリマー性バインダー;ビニルポリマー;ポリオレフィンおよびその水素化またはエポキシ化生成物;アルデヒド含有ポリマー;エポキシド含有ポリマー;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;スルホン含有ポリマー;天然物およびその誘導体;ならびにそれらの組合せ。バインダーは、任意の適した量で組成物中に存在してもよい。好ましくは、組成物は、1~40wt%、例えば、3~30wt%、最も好ましくは5~20wt%などのバインダーを含む。
【0042】
組成物は、近赤外線(NIR)吸収剤をさらに含んでもよい。NIR吸収剤は、近赤外線放射を吸収することができる任意の適した化合物であってよい。1種を超えるNIR吸収剤が、組成物中に存在してもよい。適したNIR吸収剤の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;N,N,N’,N’-テトラキス(4-ジブチルアミノフェニル)-p-ベンゾキノンビス(イミニウムヘキサフルオロ-アンチモネート)などの有機NIR染料および顔料;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式MxWyOz(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物;ポリポリスチレンスルホネート(poly polystyrene sulfonate)(PEDOT)などの導電性ポリマー;ならびにそれらの組合せ。
【0043】
好ましくは、NIR吸収剤は、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの無機銅塩;還元酸化インジウムスズ、還元酸化亜鉛、還元酸化タングステン(タングステンブロンズ)、式MxWyOz(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、BiおよびIからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1;および2.2≦z/y≦3.0を満たす)の無機化合物を含む還元ドープ酸化タングステン、還元酸化アンチモンスズ、またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)などのドープ金属酸化物などの、非化学量論的な還元またはドープ無機化合物から選択される。
【0044】
カーボンブラックなど、強い有色の(目に見えて濃い有色の)NIR吸収剤は、本発明の組成物に適切ではないことが当業者によって理解される。そのような強い有色のNIR吸収剤は、組成物の濃い有色のバックグラウンドを作り出す。対照的に、本発明の組成物は、基材への塗布時に透明または半透明である。したがって、可視性が低い色のNIR吸収剤が必要とされる。強い有色のNIR吸収剤は、本発明に有害である。この文脈における「可視性」は、ヒトの目に対する可視性を意味する。
【0045】
好ましくは、NIR吸収剤は、目に見えて濃い有色のNIR吸収剤ではない。好ましくは、NIR吸収剤は、目に見えて濃い有色の顔料または染料ではない。好ましくは、組成物は、カーボンブラックを含まない。
【0046】
画像を形成するために近赤外線放射が利用されるとき、NIR吸収剤は、好ましくは本発明の組成物中に存在することが当業者によって理解される。NIR吸収剤は、近赤外線放射を吸収し、このエネルギーを熱としてタンパク質に伝達して、タンパク質の変性を引き起こし、かつ非変性状態から変性状態への移行を促進して、それによって画像を形成する。
【0047】
組成物は、0.05~25wt%、例えば0.05~20wt%のNIR吸収剤を含んでもよい。
【0048】
NIR吸収剤は、任意の適したD50粒径分布値を有してもよい。好ましくは、NIR吸収剤のD50粒径分布値は、5μm以下である。より好ましくは、NIR吸収剤のD50粒径分布値は、0.5~3μm、最も好ましくは1~2μmである。
【0049】
D50粒径分布は、Malvern Mastersizerを使用して、ISO規格13320:2009にしたがって測定される。
【0050】
組成物は、架橋剤をさらに含んでもよい。架橋剤は、架橋性樹脂、ポリマーおよびモノマーを含む任意の適した熱硬化性または放射反応性架橋性材料でもよい。本発明の文脈において、「熱硬化性または放射反応性架橋性材料」とは、放射の適用時に組成物と架橋する材料を意味する。架橋剤の適した例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:Cymel XW3106、Cymel NF-3041およびCymel 303LFを含むCymelという商品名でAllnexから供給されるものなどのアルキル化メラミン系架橋剤を含むメラミン系架橋剤;ならびにUV硬化性モノマー、オリゴマーおよび光開始剤系またはエポキシもしくはイソシアネート材料などの他の反応性架橋性材料。
【0051】
好ましくは、架橋剤は、アルキル化メラミン架橋剤など、メラミン系架橋剤である。より好ましくは、架橋剤は、Cymel XW3106およびCymelNF-3041から選択されるメラミン系架橋剤である。より好ましくは、架橋剤は、メラミン系架橋剤Cymel XW3106である。
【0052】
架橋剤は、好ましくは、組成物中に触媒を伴う。触媒の適した例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:Cycat 500(ジノニルナフタレンジスルホン酸)およびCycat 600(ドデシルベンゼンスルホン酸)を含むCycatという商品名でAllnexから供給されるものなどのスルホン酸触媒。
【0053】
好ましくは、触媒は、ドデシルベンゼンスルホン酸(Cycat 600)である。
【0054】
驚くべきことに、かつ有利なことに、本発明の組成物への架橋剤、および典型的には付随する触媒の組込みは、組成物の耐水性、したがって環境耐性を増加させることが見出された。これは、特に、タンパク質に植物性タンパク質、特にゼインなどのプロラミンタンパク質が選択されるときに当てはまる。水および環境耐性の増加は、水への曝露または浸漬後の組成物の画像化領域の不透明度値の維持により示される。
【0055】
さらに驚くべきことに、かつ有利なことに、タンパク質に植物性タンパク質、特にゼインなどのプロラミンタンパク質が選択され、かつ架橋剤が、Cymel XW3106などのアルキル化メラミン系架橋剤など、メラミン系架橋剤であるとき、本発明の組成物への架橋剤、および典型的には付随する触媒の組込みは、水および環境耐性を増加させ、かつ形成される画像をさらに改善する(より高い不透明度値)ことが確認された。
【0056】
本発明の組成物中の架橋剤、特に上記で論じた高機能架橋剤の使用は、放射の適用時にタンパク質の架橋密度を向上させる。この架橋密度の増加は、変性状態のタンパク質の非反応性も放射の適用後に高められること、すなわちタンパク質の変性の不可逆性がさらに支持されることを意味することが当業者によって理解される。
【0057】
組成物は、不透明度向上剤をさらに含んでもよい。「不透明度向上剤」とは、放射が適用された組成物の画像化領域の不透明度の程度を高める化合物を意味する。不透明度向上剤の適した例としては、これらに限定されないが、水酸化アルミニウム水和物およびシュウ酸カルシウム水和物などの金属水和物が挙げられる。好ましくは、組成物は、0.1~20wt%、例えば、0.1~15wt%、またはさらに0.1~10wt%などの不透明度向上剤を含む。
【0058】
組成物は、添加剤または添加剤の組合せをさらに含んでもよい。適した添加剤は当業者に周知。適した添加剤の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ポリマー;光またはエネルギー吸収剤;UV吸収剤;界面活性剤;湿潤剤;乾燥促進剤;顔料などの着色料;ティンティング(tinting)剤;蛍光剤;可塑剤;蛍光増白剤;酸化剤または還元剤;安定剤;ヒンダードアミンなどの光安定化剤;増粘剤または希釈剤などのレオロジー調整剤;保湿剤;接着促進剤;酸または塩基捕捉剤;遅延剤;消泡剤;発泡防止剤;およびそれらの組合せ。好ましくは、組成物は、0.1~25wt%、例えば0.1~20wt%、例えば0.1~15wt%、例えば0.1~12wt%、またはさらに0.1~10wt%などの添加剤または添加剤の組合せを含む。
【0059】
好ましくは、組成物は、顔料または染料を含まない。
【0060】
組成物は、適切にはザーンカップ#2粘度測定装置を使用して16~30℃の温度で測定された、14~120ザーン秒(流出時間)の粘度を有してもよい。特定の組成物の所望の粘度を配合者が制御できることに加えて、組成物の粘度は、組成物中に存在するタンパク質のタイプ、量および溶解度を含むいくつかの要因に依存することが理解される。
【0061】
組成物は、脱水形態、例えば凍結乾燥または噴霧乾燥形態など、乾燥粉末形態のタンパク質で配合されてもよい。
【0062】
組成物は、任意の適した方法により生成されてもよく、これは当業者に周知である。好ましくは、NIR吸収剤は、組成物の他の成分への添加前に、Eiger Torrance M50メカニカルビーズミルなど、メカニカルビーズミルを使用してミル粉砕される。
【0063】
組成物が塗布されたり組み組み込まれたりしてもよい適した基材の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、配向ポリプロピレン(OPP)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ナイロンなどのポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、もしくはそれらの組合せなどのポリマーおよびリサイクルポリマー材料;セルロース;ガラス;プラスチック;金属および金属箔;テキスタイル;紙;波形板紙、厚紙、および同等のリサイクル類似物、もしくはそれらの組合せ;セラミック;食料品および医薬品;またはそれらの組合せ。ポリマーおよびリサイクルポリマー材料は、ポリマーフィルム基材の形態でもよい。好ましくは、基材は、ポリマー性フィルム、金属、紙、厚紙、プラスチックまたはカートンボードである。より好ましくは、ポリマー性フィルム。
【0064】
基材は、清澄でもよい。基材は、透明、半透明または不透明、好ましくは透明または半透明でもよい。
【0065】
組成物、または組成物が塗布されたもしくは内部に組み込まれた基材は、ラベル(粘着もしくはラップアラウンド)、および/または動きの速い消費財;食品および高温もしくは低温の飲料の容器またはラベルまたは折畳みカートンを含む使い捨て包装などの包装;折畳みカートン;コート紙;缶端部;装飾金属製品;ブリスターパック包装;シャンプーボトルなどの衛生およびパーソナルケア製品包装;化粧品包装;ならびに医療および診断デバイスならびに関連包装における最終使用に適し得る。組成物、または組成物が塗布された、または内部に組み込まれた基材は、コーディングおよびマーキング、タギング、トラッキングおよびトレーシングならびに後期のカスタマイゼーションまたはパーソナライゼーションの目的のために使用されてもよい。
【0066】
組成物が塗布されたまたは内部に組み込まれた基材は、それ自体がさらなる基材に適用されてよいことが当業者によって理解される。さらなる基材の例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、配向ポリプロピレン(OPP)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、キャストポリプロピレン(CPP)、ナイロンなどのポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、もしくはそれらの組合せなどのポリマーおよびリサイクルポリマー材料;セルロース;ガラス;プラスチック;金属および金属箔;テキスタイル;紙;波形板紙、厚紙、および同等のリサイクル類似物、もしくはそれらの組合せ;セラミック;食料品および医薬品;またはそれらの組合せ。ポリマーおよびリサイクルポリマー材料は、ポリマーフィルム基材の形態でもよい。
【0067】
好ましくは、基材は、追加の接着剤層を含む。この追加の接着剤層は、基材をさらなる基材または任意の他の材料に適用するように操作可能であり、したがって基材の外面上にあることが理解される。接着剤層は、基材の外面の表面領域のすべて、実質的にすべて、または一部を覆ってもよい。
【0068】
組成物は、任意の適した方法により基材に塗布されてよい。組成物を基材に塗布する方法は当業者に周知である。適した塗布方法としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷およびマイヤーバーコーティング。組成物は、基材の外面の表面領域のすべて、実質的にすべてまたは一部に塗布されてもよい。
【0069】
組成物は、任意の適したコート重量まで基材上に塗布されてもよい。基材上の組成物のコート重量は、形成される画像の光学密度に影響することが理解される。
【0070】
組成物は、0.1~15gsm(グラム/平方メートル)、例えば、0.1~12gsm、またはさらに0.1~10gsmなどのコート重量まで基材に塗布されてもよい。好ましくは、組成物は、0.1~8gsmのコート重量まで基材に塗布される。このコート重量は、基材に塗布されてもよい組成物の個々の層あたりである。
【0071】
コート重量は、任意の適した方法により測定されてもよい。適した測定方法は当業者に公知である。好ましくは、コート重量は、塗布された組成物ありとなしの基材の同じ領域を秤量し、2つの重量を比較することにより測定される。典型的には、これは、いくつかのデータセットの平均である。
【0072】
組成物は、単層として、または多層で、すなわち1回または複数回、基材に塗布されてもよい。
【0073】
組成物は、プライマーの上にアンダーコートまたはオーバーコートとして、またはプライマー層として、基材に塗布されてもよい。組成物はまた、ベース層の上かつ/または保護オーバーコートもしくはワニス層の下に塗布されてもよい。組成物は、多層系の一部として基材に塗布されてもよい。オーバープリントワニス、フィルムまたはラミネートなど、保護オーバーコート層が、基材上の組成物の上に塗布されてもよい。
【0074】
オーバープリントワニスなど、適した保護オーバーコート層は、商業的に入手可能なコールドシールリリースラッカー(cold seal release lacquer)を含む。そのようなコールドシールリリースラッカーは典型的には、主成分としてニトロセルロースおよび/またはポリアミド樹脂を含む。したがって、コールドシールリリースラッカーは、ニトロセルロースおよび/またはポリアミド樹脂ならびに溶媒を含んでもよい。良好な滑り特性および耐ブロッキング特性を有するオーバープリントワニスを提供するために、ワックス、脂肪酸アミドワックス、パラフィンまたはシリコーンベースの添加剤も、ラッカーが調製される組成物に典型的に含まれる。適したコールドシールリリースラッカーは、InkTechから商業的に入手可能である。
【0075】
オーバープリントワニスなどの保護オーバーコート層が、基材上の本発明の組成物の上に塗布されるとき、組成物の耐水性、したがって環境耐性のさらなる改善が観察される。これは、水への曝露または浸漬時の、放射が適用された組成物の画像化領域の不透明度値の維持による。さらに、ヘイズが低くなるように保護オーバーコート層に性質上光沢があるとき、本発明の組成物と併せた、オーバープリントワニスなどの保護オーバーコート層の使用も、結果として改善された画像形成(より高い不透明度値)につながり得る。
【0076】
基材への組成物の塗布は、画像が基材上に形成されるのを可能にする。
【0077】
したがって、本発明の第2の態様によれば、塗布された透明または半透明な組成物を含む基材上に画像を形成する方法であって、透明または半透明な組成物は、非変性状態のタンパク質を含み、方法は、透明または半透明な組成物に放射を適用して、タンパク質を変性させて、それによって基材上に画像を形成することを含む、方法が提供される。
【0078】
本発明の第2の態様について、透明もしくは半透明な組成物または基材は、本発明の他の態様のいずれかに関して好ましいまたは任意選択などと本明細書に記載された特徴のいずれかを有してもよい。
【0079】
「画像」という用語には、これらに限定されないが、以下が包含される:文字、ロゴ、マーク、グラフィックス、図、写真およびシンボル。本発明の文脈において、それは、画像の形成を促進する画像形成性化合物としての組成物のタンパク質の操作であることが理解される。形成される画像は、ヒトおよび/または機械可読になり、かつコーディングおよびマーキング、タギング、トラッキングおよびトレーシングならびに後期のカスタマイゼーションまたはパーソナライゼーションの目的のために使用され得る。
【0080】
「印刷」、「インラインデジタル印刷」または「レーザ印刷」および本明細書において使用される同様の用語は、基材上の画像形成を達成するために放射を使用するプロセスを指す。「放射」および本明細書において使用される同様の用語は、波または粒子の形態のエネルギーを指し、特に、紫外線(UV)、可視、近赤外線(NIR)、および赤外線(IR)粒子放射などの電磁放射、例えばアルファ(α)放射、ベータ(β)放射、中性子放射およびプラズマを指す。
【0081】
「レーザ源」という用語および本明細書において使用される同様の用語は、CO2レーザなど、任意の適した商業的な非接触レーザ源を含む。
【0082】
放射は、画像の形成を促進するために基材上の組成物に適用されてもよい。放射は、「画像形成性化合物」、すなわちタンパク質を変性させ、識別可能な画像を形成するように選択されることが当業者によって理解される。
【0083】
放射は、0.01nm未満の波長を有するガンマ放射、0.01~10nmの波長を有するX線放射、10~400nmの波長を有する紫外線(UV)放射、400~700nmの波長を有する可視放射、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射、および1mm~1mの波長を有するマイクロ波放射から選択される放射を構成してもよい。好ましくは、放射は、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射、400~700nmの波長を有する可視放射、および100~400nmの波長を有する紫外線(UV)放射から選択される。より好ましくは、放射は、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射、および100~400nmの波長を有する紫外線(UV)放射から選択される。より好ましくは、放射は、700nm~1mmの波長を有する赤外線放射、10600nm(CO2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、および700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射から選択される。最も好ましくは、放射は、10600nm(CO2レーザを使用して適用される)を含む9000nm~11000nmの波長を有する赤外線放射、および700nm~1600nmの波長を有する近赤外線放射から選択される。
【0084】
本明細書において詳述される放射および波長範囲から、当業者は、上記で論じたようにタンパク質の変性を達成し、非変性状態から変性状態にタンパク質を移行させるのに必要とされるような特定の波長の放射を選択し得ることが理解される。具体的に選択される適用される放射は、組成物中に存在するタンパク質に応じて異なり得ることが理解される。
【0085】
放射は、任意の適した手段により組成物のタンパク質に適用されてよい。適した手段は、レーザ源による組成物、したがってタンパク質への放射の適用を通じたレーザ励起を含む。組成物が基材上に塗布されるとき、組成物中の局在位置にあるタンパク質の変性状態を選択的に発生させるために、これらの局在位置にある基材上の組成物に放射が適用されてもよいことが当業者によって理解される。これらの局在位置は、互いに重なっていてもよい。タンパク質のコンフォメーション変化(変性)および非変性状態から変性状態への移行を促進するのに必要とされる適切な時間、放射が組成物に適用されることも当業者によって理解される。典型的には、十分な放射を照射するのに必要とされる時間は、放射を適用するために使用される手段の仕事率に依存することになる。
【0086】
レーザ源を使用して適用されるとき、組成物に適用される放射線量は、放射が適用される時間の変更、放射を適用するために使用される手段の仕事率(ワット数)、したがって、レーザ源により送られるフルエンス(単位面積あたりに送られるエネルギーの量)、例えばJ/cm2により制御され得ることが理解される。これは、形成される画像の不透明度値に影響し得ることが当業者によって理解される。例えば、放射を適用するためにレーザ源が使用される場合、フルエンス(単位面積あたりに送られるエネルギーの量)は、形成される画像の不透明度値に影響し得る。
【0087】
本発明の文脈において、フルエンスは、放射を適用するために使用される手段の仕事率(ワット数)、および基材上の組成物の特定の局在位置に放射が適用される時間に依存し、これらは、レーザの走査速度または移動ステージの速度により制御されてもよい。フルエンスを変化させるために、これら2つの変数が変更され得る。フルエンスが低い(例えば、より低い仕事率および/またはより短い照射時間)場合、形成される画像は、より低い不透明度値を有することになり、フルエンスが高い(例えば、より高い仕事率および/またはより長い照射時間)場合、形成される画像は、より高い不透明度値を有することになる。本発明の文脈において、フルエンス値は、0.01~20J/cm2、例えば、0.1~10J/cm2、さらに0.5~5J/cm2または1~5J/cm2などの範囲でもよい。
【0088】
上記で論じたように、タンパク質は適切には、40℃超、好ましくは45℃超、より好ましくは50℃超、より一層好ましくは55℃超、より一層好ましくは60℃超の温度でコンフォメーション変化を経て、すなわち変性され、非変性状態から変性状態に移行する。したがって、タンパク質が、40℃超、好ましくは45℃超、より好ましくは50℃超、より一層好ましくは55℃超、より一層好ましくは60℃超の温度まで加熱されるように、放射は、熱エネルギーをタンパク質に供給することが理解される。適切には、タンパク質は、150℃未満、好ましくは140℃未満、より好ましくは130℃未満、より一層好ましくは120℃未満の温度まで加熱される。適切には、タンパク質は、40~150℃、例えば、45~140℃、またはさらに50~130℃、または55~120℃、または60~120℃などの温度まで加熱される。
【0089】
好ましくは、所望の画像を形成するために、組成物の局在位置にある組成物に放射は適用される。基本的には、放射の適用時、放射が適用された基材上の組成物の領域においてタンパク質は変性される。したがって、ヒトおよび/または機械可読画像が生成される。それは、画像が形成されるのを可能にする組成物の「画像形成性化合物」として機能するタンパク質である。好ましくは、本発明について、形成される画像は、色が白である。好ましくは、白画像が形成されるように、タンパク質の変性状態は、色が白である。放射が適用されていない組成物のバックグラウンドは影響を受けない。
【0090】
本発明の第3の態様において、透明または半透明な組成物であって、
a)非変性状態のタンパク質であり、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)NIR吸収剤と
を含む、組成物が提供される。
【0091】
本発明の第3の態様について、透明または半透明な組成物は、本発明の他の態様のいずれかに関して好ましいまたは任意選択などと本明細書に記載された特徴のいずれかを有してもよい。
【0092】
本発明の第4の態様において、透明または半透明な組成物であって、
a)非変性状態のタンパク質であり、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性され得るタンパク質と、
b)水性媒体または溶媒と、
c)架橋剤と
を含む、組成物が提供される。
【0093】
本発明の第4の態様について、透明または半透明な組成物は、本発明の他の態様のいずれかに関して好ましいまたは任意選択などと本明細書に記載された特徴のいずれかを有してもよい。
【0094】
本発明の第5の態様において、塗布された本発明の第3の態様による透明または半透明な組成物を含む基材が提供される。
【0095】
本発明の第5の態様について、透明もしくは半透明な組成物または基材は、本発明の他の態様のいずれかに関して好ましいまたは任意選択などと本明細書に記載された特徴のいずれかを有してもよい。
【0096】
本発明の第6の態様において、塗布された本発明の第4の態様による透明または半透明な組成物を含む基材が提供される。
【0097】
本発明の第6の態様について、透明もしくは半透明な組成物または基材は、本発明の他の態様のいずれかに関して好ましいまたは任意選択などと本明細書に記載された特徴のいずれかを有してもよい。
【0098】
本発明の第7の態様において、非変性状態のタンパク質を含む透明または半透明な組成物の使用であって、タンパク質は、透明または半透明な組成物への放射の適用時に変性されて、基材上に画像を形成することができる、使用が提供される。
【0099】
本発明の第7の態様について、透明または半透明な組成物は、本発明の他の態様のいずれかに関して好ましいまたは任意選択などと本明細書に記載された特徴のいずれかを有してもよい。特に、透明または半透明な組成物は、本発明の第3または第4の態様のいずれかの透明または半透明な組成物でもよい。
【0100】
ここで、本発明を以下の非限定的な例によりさらに説明する。
【実施例】
【0101】
例のそれぞれについて、1070nmの波長を有するファイバNIRレーザを使用してNIR放射を適用した。例のそれぞれについて、適用されたファイバNIRレーザにより送られたフルエンスは、1~4J/cm2の範囲内であった。
【0102】
例のそれぞれについて、形成された画像は、色が白またはオフホワイトであった。
【0103】
例のそれぞれについて、配合された組成物は、基材への塗布時に透明または半透明であった。
【0104】
非変性状態のタンパク質を含む以下の組成物1~7を、後述のように配合した。すべての量は重量百分率(wt%)で記載されている。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
組成物1~7を、5gsmのコート重量で配向ポリプロピレン(OPP)ポリマー性フィルム基材にそれぞれ塗布した。組成物1~7は、タンパク質に加えてバインダーが存在しないにも関わらず、いかなる変位の徴候もなく基材上に残った。これは、タンパク質が、組成物のバインダーおよび画像形成成分の両方として機能していることを示す。
【0113】
組成物6を、5gsmのコート重量でさらなる配向ポリプロピレン(OPP)ポリマー性フィルム基材にも塗布した。次いで、保護オーバーコート層(InkTechから商業的に入手可能なコールドシールリリースラッカー)を、1gsmのコート重量で基材上の組成物の上に塗布した。
【0114】
NIRレーザを使用して、基材上の組成物1~7の選択領域、したがって基材上のタンパク質に近赤外線放射を適用した。放射が適用された組成物1~7の領域内でタンパク質を変性させ、それによって画像を形成した。
【0115】
各組成物について、Techkon SpectroDens分光光度計を使用して、ASTM規格ASTM D589-97にしたがって、組成物の画像化領域および非画像化(バックグラウンド)領域の両方について不透明度値を測定した。結果を以下のTable1に示す。
【0116】
【0117】
図1は、組成物の選択領域への放射の適用後の、組成物6を含む配向ポリプロピレン(OPP)基材上の画像形成を示す。
図1において、配向ポリプロピレン(OPP)基材は、黒Lenataチャートに対して保持されている。異なるレベルの不透明度を有する、
図1に示された四角(放射が適用された組成物の選択領域)は、1~4J/cm
2の間のNIRレーザのフルエンスの変更により得た。組成物6について上記のTable1に挙げた「画像不透明度」値は、最も高い不透明度の四角(下段、右端)のものである。
【0118】
組成物6および組成物8(本発明によらない)の水および環境耐性を測定した。組成物8を以下のように配合した。すべての量が重量百分率(wt%)である。
【0119】
【0120】
組成物6および8を、5gsmのコート重量で配向ポリプロピレン(OPP)ポリマー性フィルム基材にそれぞれ塗布した。
【0121】
組成物6を、5gsmのコート重量でさらなる配向ポリプロピレン(OPP)ポリマー性フィルム基材にも塗布し、次いで、保護オーバーコート層(InkTechから商業的に入手可能なコールドシールリリースラッカー)を、1gsmのコート重量で基材上の組成物の上に塗布した。
【0122】
NIRレーザを使用して、基材上の組成物6および8の選択領域に近赤外線放射を適用した。放射が適用された組成物の領域内で組成物6のタンパク質を変性させ、それによって画像を形成した。組成物8については、放射が適用された組成物の選択領域において、モリブデン酸ナトリウム水和物がオフガス発生を経て、結果として屈折率の変化につながり、画像形成の外観を与えた。
【0123】
各組成物について、水への基材の24時間の完全浸漬の前後両方で、Techkon SpectroDens分光光度計を使用して、ASTM規格ASTM D589-97にしたがって、組成物の画像化領域および非画像化(バックグラウンド)領域の両方について不透明度値を測定した。結果を以下のTable2に示す。
【0124】
【0125】
したがって、タンパク質を含む本発明の組成物は、基材上の識別可能なヒトおよび/または機械可読画像の効果的な形成を促進することが明らかに示されている。さらに、本発明の組成物は、モリブデン酸ナトリウム水和物を含む先行技術の組成物(組成物8)と比較して、水および環境耐性の増加も示す。
【国際調査報告】