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特表2022-548022在宅医療及びパーソナルケア用の変性デンプン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】在宅医療及びパーソナルケア用の変性デンプン
(51)【国際特許分類】
   C08B 31/04 20060101AFI20221109BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20221109BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08B31/04
A61K8/73
A61Q5/02
A61Q5/12
A61Q5/00
A61Q19/10
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516033
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 US2020050110
(87)【国際公開番号】W WO2021050671
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,204
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ビルトレッセ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】エーフェラールト,エマヌエル ポール ヨス マリー
【テーマコード(参考)】
4C083
4C090
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC172
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD132
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD392
4C083CC23
4C083CC31
4C083CC33
4C083CC38
4C083CC41
4C083DD21
4C083EE01
4C083EE06
4C090AA02
4C090AA09
4C090BA15
4C090BB52
4C090BB94
4C090BD36
4C090BD37
4C090CA38
4C090DA22
4C090DA26
(57)【要約】
本出願は、新規な無水物置換デンプン並びにパーソナルケア製品及び在宅医療製品におけるそれらの使用を提供する。開示された天然系デンプンは、パーソナルケア製品及び在宅医療製品における化学界面活性剤の代替物として有用である。デンプンは、当該生成物中に所望の特性を付与し、維持する固有の機能を呈する。無水物置換デンプンは、特に、標準的な化学界面活性剤の発泡特性の再現に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)置換の程度が10%~80%であり、(ii)平均分子量が15,000~200,000g/モルである基材デンプンから調製される、無水物変性デンプン。
【請求項2】
nOSA変性デンプンである、請求項1に記載の無水物変性デンプン。
【請求項3】
置換の程度が20%~50%である、請求項2に記載の無水物変性デンプン。
【請求項4】
基材デンプンの平均分子量は、15,000~50,000g/モルである、請求項3に記載の無水物変性デンプン。
【請求項5】
無水物変性デンプンを含むパーソナルケア配合物又は在宅医療配合物であって、前記無水物変性デンプンは(i)置換の程度が10%~80%であり、(ii)平均分子量が15,000~200,000g/モルである基材デンプンから調製される、パーソナルケア配合物又は在宅医療配合物。
【請求項6】
シャンプー、硫酸塩非含有シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアマスク、ヘアリーブオン、ボディウォッシュ、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、固形石鹸、歯磨き剤、及び洗口剤からなる群から選択される、請求項5に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項7】
無水物変性デンプンは、nOSA変性デンプンである、請求項6に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項8】
置換の程度が20%~50%である、請求項7に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項9】
基材デンプンの平均分子量が15,000~50,000g/モルである、請求項8記載のパーソナルケア配合物。
【請求項10】
0.1質量%~50質量%、1質量%~25質量%、又は1質量%~15質量%の無水物変性デンプンを含む、請求項6に記載のパーソナルケア配合物。
【請求項11】
シャンプー、硫酸塩非含有シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアマスク、ヘアリーブオン、顔用洗浄剤又はボディウォッシュである、請求項8に記載のパーソナルケア配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、在宅医療及びパーソナルケアの用途に用いる無水物変性デンプンの製造に関する。特に、高無水物置換デンプンを用いることにより、発泡等の望ましい感覚特性を維持しつつ、他の界面活性剤がわずかしか含まれないか又は全く含まれない組成物を製造することができる。
【背景技術】
【0002】
パーソナルケア及び在宅医療市場では、現在用いられている化学界面活性剤の代替物である天然由来の溶液が欠如している。界面活性剤は、2つの液体の間、気体と液体の間、又は液体と固体の間の表面張力(又は界面張力)を低下させる化合物である。界面活性剤は、洗浄剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、及び分散剤として作用することができる。界面活性剤は通常、両親媒性の有機化合物であり、疎水性基(尾部)と親水性基(頭部)の両方を含むことを意味する。従って、界面活性剤は、水不溶性(又は油溶性)成分及び水溶性成分の両方が含まれている。界面活性剤は、界面活性剤は、水中で拡散し、空気と水の界面や、水と油が混ざった場合の油と水の界面に吸着する。水不溶性の疎水性基はバルク水相から空気中や油相に広がるが、水溶性のヘッド基は水相に留まる。界面活性剤の世界生産量は1,500万トン/年と推定されており、そのうちの約半分は石鹸である。その他、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、リグニンスルホネート、脂肪族アルコールエトキシレート、及びアルキルフェノールエトキシレートが特に大規模に生産されている。パーソナルケア製品及び在宅医療製品には界面活性剤が含まれ、湿潤及び/又は発泡が促進される場合がある。本開示は、パーソナルケア製品及び在宅医療製品における界面活性剤用の、極めて効果的な天然代替物の供給源を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,321,132号明細書
【特許文献2】欧州特許第0,761,691号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“Converted Starches”、O.B.Wurzburg,Ed.Modified Starches:Properties and Uses,CRC Press,Florida,1987;ISBN 0-8493-5964-3;136~137
【発明の概要】
【0005】
本開示は、(i)置換の程度が10%~80%であり、(ii)平均分子量が15,000~200,000g/モルである基材デンプンから調製される、無水物変性デンプンを提供する。
好ましくは、nOSA変性デンプンである、無水物変性デンプンである。
無水物変性デンプンの置換の程度は、好ましくは、0.2~0.5を含む。
【0006】
無水物変性デンプンは、好ましくは、平均分子量が、15,000~50,000g/モルである基材デンプンから調製される。
【0007】
本開示はまた、無水物変性デンプンを含むパーソナルケア配合物又は在宅医療配合物を提供し、前記無水物変性デンプンは(i)置換の程度が10%~80%であり、(ii)平均分子量が15,000~200,000g/モルである基材デンプンから調製された。
【0008】
パーソナルケア配合物は、好ましくは、シャンプー、硫酸塩非含有シャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアマスク、ヘアリーブオン、ボディウォッシュ、皮膚洗浄剤、毛髪洗浄剤、固形石鹸、歯磨き剤、及び洗口剤からなる群から選択される。
【0009】
パーソナルケア配合物は、好ましくは、nOSA変性デンプンである無水物変性デンプンを含む。
【0010】
パーソナルケア配合物は、好ましくは、置換の程度が0.2~0.5である無水物変性デンプンを含む。当該置換の程度は、一般的に、規制上限値が0.03又は3%である食品用のnOSAデンプンで許容されるものよりもはるかに高い。本開示のnOSAデンプンの置換の程度は、食用デンプンの置換の程度よりも10以上である。
【0011】
パーソナルケア配合物は、好ましくは、平均分子量が15,000~50,000g/モルである基材デンプンから調製される。
【0012】
パーソナルケア配合物は、好ましくは、0.1~50質量%、1~25質量%、又は1~15質量%の無水物変性デンプンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示において用いられる略語及び用語の説明は、本発明を理解し、実施の一助になるように提供される。
【0014】
配合物成分の比率はすべて、特に指定のない限り、質量パーセント(%)を表す。
【0015】
開示されているパラメータ範囲は全て、特に指定しない限り、終点及び中間の全ての値を含む。
【0016】
代表的特徴は、明細書の他の箇所及び/又は図面に開示されている1又は2以上の特徴と、単独で又はいかなる組み合わせで組み合わせることができる、以下の明細書に記載される。
【0017】
本明細書で用いられかつ特許請求の範囲にて特定される用語「含む」及び「含まれる」及びその変形は、特定の特徴、工程又は整数が含まれることを意味する。当該用語は、他の特徴、工程又は構成要素の存在を除外するものとして解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書で用いられかつ特許請求の範囲にて特定される用語「界面活性剤」は、分子量が1000g/モル未満の、両親媒性である有機化合物を意味し、疎水性基及び親水性基をともに含む。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性、かつ、それらの混合物であってよい。界面活性剤の例としては、ココグルコシド、コカミドプロピルベタイン、ココベタイン、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ココイルメチルイセチオン酸ナトリウム、ラウリルエーテルカルボン酸、ラウリルベタイン、ココアンホ酢酸ナトリウム、ラウリルアンホ酢酸ナトリウム、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリルタウレート、コシルタウレート、ココメチルタウレート、ココヒドロキシスルタイン、ラウリルアミノプロピルヒドロキシスルタイン、ココアミノプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(n)EO、(nは1~5)、(C12~13)パレート硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム(n)EO、(nは1~5)、及びそれらの混合物があげられるが、これらに限定されない。
【0019】
デンプン
デンプンは、グリコシド結合により連結された多数のグルコース単位からなる高分子炭水化物である。この多糖類はほとんどの緑色植物によりエネルギー貯蔵として産生される。ヒトの食物のなかで最も一般的な炭水化物であり、主食に大量に含まれる。本開示において有用なデンプンとして、ジャガイモ、小麦、トウモロコシ(コーン)、米、タピオカ、キノア、キャッサバ等を含むが、これらに限定されないいかなる植物資源に由来しうる。純粋なデンプンは、冷水又はアルコールに不溶で、白色、無味、無臭の粉末である。直鎖状でらせん状のアミロースと分岐状のアミロペクチンの2種類の分子から構成されている。植物にもよるが、一般に、デンプンは1~25質量%のアミロースと75~99質量%のアミロペクチンを含む。植物資源から直接単離される場合はほとんど「天然デンプン」と呼ばれる。天然のデンプンを増粘又はゲル化するには加熱する必要がある。デンプンを予備加熱すると、冷水中で瞬間的にとろみをつけることができる。これを「前ゼラチン化デンプン」という。
【0020】
天然のデンプンは、温度、酸、様々な酵素、又はその3つの組み合わせによって、より単純な炭水化物に加水分解される。得られた断片はデキストリン又は加水分解デンプンとして知られる。変換の程度は、通常、デキストロース当量(DE)で定量され、これはデンプン中のグリコシド結合が切断されたおおよその比率を示す。例えば、マルトデキストリンは加水分解の程度が低いデンプン生成物(DE 4-20又は10-20)であり、淡泊な味の充填剤及び増粘剤として用いられる。各種グルコースシロップ(DE30-70)は、米国ではトウモロコシシロップとも呼ばれ、加水分解デンプンの一種であり、多くの種類の加工食品に甘味料や増粘剤として用いられる粘性溶液である。市販のブドウ糖であるデキストロース(DE100)は、デンプンを完全に加水分解することによって調製される。
【0021】
デンプンはまた、シクロデキストリンであってよい。シクロデキストリンは、グルコースサブユニットがα-1,4グリコシド結合で結合した大環状環からなる、環状オリゴ糖のよく知られたファミリーである。シクロデキストリンはデンプンから酵素変換によって製造される。これらは、食品、医薬品、ドラッグデリバリー、化学工業、農業や環境工学で用いられている。シクロデキストリンは、アミロース(デンプンの断片)のように、α-D-グルコピラノシド単位が5個以上1->4結合したものである。最大のシクロデキストリンは32個の1,4-アンヒドログルコピラノシド単位を含む一方で、十分に解明されていない混合物として、少なくとも150員の環状オリゴ糖も知られている。通常、シクロデキストリンは、環内に6~8単位のグルコース単量体を含み、1)α(アルファ)-シクロデキストリン:6個のグルコースサブユニット;2)β(ベータ)-シクロデキストリン:7個のグルコースサブユニット;及び3)γ(ガンマ)-シクロデキストリン:8個のグルコースサブユニットを含む円錐形を形成する。
【0022】
本開示のデンプンは、デンプン試料中のグルコース鎖の平均分子量によっても特徴付けることができる。平均分子量(以下「MW」という)は、当技術分野において公知の方法により、以下に記載するように決定することができ、g/モル又はダルトンで表すことができる。本発明の態様には、平均分子量が200,000g/モル未満、又は100~200,000g/モル、又は50,000~200,000g/モル、15,000~200,000g/モル、15,000~200,000g/モル、15,000~100,000g/モル、又は15,000~50,000g/モルの基材デンプンが含まれる。
【0023】
好ましくは、変性デンプンのの多分散指数(PDI)は、2~25、より好ましくは4~20である。PDIは、所与の試料中の分子量分布のよく知られ、理解されている尺度である。PDIはMwを平均分子量(Mn)で除して算出することができる。これは、試料のバッチ中における個々の分子量の分布を示す。PDIの値は常に1以上(すなわちMw≧Mn)であるが、試料が均一に近づくにつれてPDIは1に近づく(PDI→1)。
【0024】
変性されたデンプンの構造は、その天然の状態から変化しており、その結果、その化学的又は物理的特性の1つ以上又が変性する。デンプンは、例えば、酵素、酸化又は様々な化合物による置換によって変性されうる。例えば、デンプンは、とりわけ、熱、酸、又は凍結に対する安定性の向上、食感の改善、粘度の増加又は減少、膠化(ゼラチン化)時間の増加又は減少、及び/又は溶解度の増加又は減少のために改質され得る。変性されたデンプンは、部分的又は完全に、より短鎖又はグルコース分子に分解され得る。アミロペクチンは脱分枝されることがある。一例では、変性デンプンは、例えば、安定性を改善するために架橋される。置換によって変性されたデンプンの化学組成は異なる。
【0025】
本発明で用いられる変性デンプンを得るための基材として用いられる基材デンプンは、例えば、トウモロコシ、小麦、ジャガイモ、タピオカ、大麦、エンドウ、デントウモロコシ(デントコーン)、ワキシートウモロコシ(ワキシーマイズ)、サゴ、米、ソルガム及び高アミロースデンプン、すなわち、アミロース含有量が少なくとも15%、特に少なくとも02%であるデンプン、例えば、高アミローストウモロコシを含む、いかなるデンプン含有源(以下、基材材料)から得られ得る。デンプン粉を用いてもよい。
【0026】
基材デンプンは、化学的に変換されても、酵素的に変換されても、又は熱処理若しくは物理的処理によって変換されてもよい。用語「化学的に変換された」又は「化学的変換」としては、架橋、逆行性分解を阻害するブロッキング基による変性、親油性基の付加による変性、アセチル化デンプン、ヒドロキシエチル化及びヒドロキシプロピル化デンプン、無機エステル化デンプン、カチオン性、アニオン性及び酸化デンプン、双性イオン性デンプン及びそれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されない。本明細書における「酵素的に変換されたデンプン」とは、酵素によって変換されたデンプンであると理解される。熱処理には、例えば、前ゼラチン化が含まれる。基材デンプンは、好ましい顆粒状態又は非顆粒状態、すなわち、デンプンの顆粒状態が、物理的、熱的、化学的又は酵素的処理によって破壊されてよい。好ましい基材には、トウモロコシ、高アミローストウモロコシ、小麦、ジャガイモ、タピオカ、ワキシートウモロコシ(ワキシーマイズ)、サゴ、米に由来する変換された又は未変換のデンプンが含まれる。基材デンプンを製造するための好ましい基材材料は、コーンスターチ(トウモロコシデンプン)、小麦デンプン及びジャガイモデンプンからなる群から選択される。最も好ましい基材は、コーンスターチ及び小麦デンプンである。
【0027】
好ましくは、基材デンプンは、マルトデキストリン;ピロデキストリン;デキストリン、例えば、酸及び/又は熱の加水分解作用により、又は酵素の作用により調製されるもの;分解デンプン、例えば、流動性デンプン又は薄煮沸デンプン、例えば、酵素変換、熱処理又は酸加水分解により調製されるもの;酸化剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化物及び過硫酸塩での処理により調製される酸化デンプン;及び誘導体化デンプン、例えば、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性及び架橋からなる群から選択される。これらの基材デンプンを製造するために、例えば、上記のいかなる基材材料を用いることができる。
【0028】
明確にするため、本明細書では、デキストリンにより、酸及び/又は熱の加水分解作用により、又は酵素の作用により調製される解重合デンプンを理解する。好ましくは、本発明により用いられるデキストリンは、乾燥又は半乾燥(10質量%未満の水分)熱処理でデンプンを解重合して調製される。当該処理の例は、欧州特許第11685162号明細書に開示されている。
【0029】
基材デンプンは、好ましくは、マルトデキストリン、デキストリン、薄煮沸デンプン及び酸化デンプンからなる群より選択され、前記基材デンプンは、未変換コーンスターチ、未変換小麦デンプン及び未変換ジャガイモデンプンからなる群より選択される基材材料から製造される。
【0030】
より好ましくは、基材デンプンは、マルトデキストリン、デキストリン、薄煮沸デンプン及び酸化デンプンからなる群より選択され、前記基材デンプンは、未変換コーンスターチ及び未変換小麦デンプンからなる群より選択される基材材料から製造される。
【0031】
本発明により用いられる変性デンプンは、基材デンプンを少なくともポリ酸の無水物と反応させて得られ、以下、単に「無水物」という。
【0032】
好ましくは、無水物は環状無水物である。より好ましくは、無水物は、マレイン酸及びコハク酸無水物からなる群から選択される。最も好ましいコハク酸無水物は、(アルキル-、アルケニル-、アラルキル-又はアラルケニル-)コハク酸無水物からなる群から選択される。さらにより好ましくは、無水物は、アルキル-コハク酸無水物及びアルケニル-コハク酸無水物からなる群から選択され、アルキル又はアルケニル基の炭素原子は、0~22個、最も好ましくは0~10個である。最も好ましくは、無水物は、n-オクテニルコハク酸無水物(nOSA)である。
【0033】
例えば、特許文献1及び2並びに非特許文献1を参照されたい。好ましくは、本発明により用いられる変性デンプンを調製する方法は、(i)変性される基材デンプンと酸性度の低いpHで混合するして混合物を予め分散又は密接に接触させて、混合物を提供する工程;及び(ii)混合物を反応条件にする工程;を含む。
【0034】
好ましくは、無水物変性デンプンは、基材デンプンを水性系中で無水物と反応させる方法に従って調製され、当該方法は以下の:
a)pHが最大9.0、より好ましくは1.0~9.0である水中で、基材デンプンの溶液、部分溶液、又はスラリーを調製する工程;
b)無水物を前記スラリーに添加し、前記スラリーのpHを5.0~9.0、より好ましくは7.0~9.0、最も好ましくは8.0~9.0に維持し、必要に応じて調整する工程であって、ここで、前記無水物は以下の式:
【化1】
(式中、R’はジメチレン又はトリメチレン基であり、R’は、炭素原子が0~20個、より好ましくは0~10個である炭化水素基である)
を有し;
c)場合によっては、基材デンプンと無水物を混合により密接に接触させて、好ましくは安定な分散液を形成し、ここで、安定な分散液により、分散液は、少なくとも前記分散液をさらに処理するまでの期間、分離の兆候を示さないことが本明細書で理解され;
ここで、工程b)では、アルカリ材料を、例えば激しく攪拌することによって、スラリーに添加することで、pHを所望の範囲内に維持し、かつ、前記アルカリ材料は無水物の添加中に添加される;
を含む。
【0035】
得られた変性デンプンは以下の式:
【化2】
(式中、Stは工程a)で用いられる基材デンプンであり、Rはジメチレン基又はトリメチレン基であり、R’は炭素原子が0~12個である炭化水素基であり、YはH、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウムである)
で表される。
【0036】
本発明の方法で用いられる無水物は、以下の構造式:
【化3】
(式中、Rはジメチレン又はトリメチレン基を表し、R’は炭素原子が0~20個、より好ましくは0~12個、最も好ましくは0~8個である置換基である)
を有する。
【0037】
炭化水素又は疎水性置換基R’は、アルキル、アルケニル、アラルキル又はアラルケニルであってよく、アルキル及びアルケニルが好ましい。R’は、炭素-炭素結合(アルケニルコハク酸無水物の場合のように)又は2つの炭素-炭素結合(無水マレイン酸のメチルペンタジエンとの付加物の場合のように、又はシクロ-パラフィン系シクロ-ジカルボン酸無水物、例えばシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸無水物の場合のように)を介して無水物部分Rに結合されてよく、又はエーテル結合又はエステル結合(オクチロキシコハク酸無水物の場合のように、又はカプリロキシコハク酸無水物の場合のように)を介して結合されてよい。
【0038】
上記の方法の工程a)におけるpHは、多くとも9.0でなければならず、好ましくは酸性である。前記pHは、好ましくは、1.0~9.0、より好ましくは3.0~8.0、最も好ましくは5.0~7.0である。本明細書では、スラリーによって、水中のデンプンの溶液又は分散物であると理解される。
【0039】
上記方法の工程b)におけるpHは、好ましくは7.5~9.0であり、最も好ましくは8.0~9.0である。本発明者らにより、これらの条件下では、方法の効率が高まり、かつ、変性デンプンの特性も最適化されることが観察された。
【0040】
好ましくは、本発明の組成物は無水物変性デンプンを含み、前記無水物変性デンプンはポリ酸の無水物で変性(変性)され、当該無水物は好ましくはマレイン酸及びコハク酸無水物からなる群、より好ましくは、(アルキル-、アルケニル-、アラルキル-又はアラルケニル-)コハク酸無水物からなる群より選択される。より好ましくは、無水コハク酸には、炭素の間の鎖長が3~22個、又は特に鎖長が8、10、12、14、16、18個、又はそれらの組み合わせがある。最も好ましくは、前記無水物はn-オクテニルコハク酸無水物である。
【0041】
無水物変性デンプンは、アルキル基の置換の程度によって特徴づけることができる。置換の程度の略は「DS」である。例えば、本開示の無水物変性デンプンのDSは、0.1~0.8又は10%~80%置換されているのが好ましい。本開示の他の態様により、DSの置換が0.2~0.7の間、又は20~70%の間である無水物変性デンプンが提供される。本開示の他の態様は、DSの置換が0.2~0.4の間、又は20~40%の間である無水物変性デンプンが提供される。
【0042】
nOSAデンプンは、n-オクテニルコハク酸無水物との反応によって部分的に置換された変性デンプンである。nOSAデンプンは、n-オクテニルコハク酸基の置換の程度によっても特徴付けることができる。置換の程度の略は「DS」である。それは、当業者によってよく理解され、用いられる命名法である。例えば、食品等級として承認されるnOSAデンプンのDSは、0.01~0.03であることが要求される。これは、可能性のある座の1%~3%がn-オクテニルコハク酸基で置換されることを意味する。したがって、食品用のnOSAデンプンの最大許容DSは0.03又は3%置換である。
【0043】
本開示の有効なnOSAデンプンのDSは、食品用途に許容されるものよりはるかに高く、本明細書に記載されるいかなる基材デンプンから調製することができる。
【0044】
ヒドロキシプロピル化デンプン(HPデンプン)は、ヒドロキシプロピル化によって官能化された変性デンプンの別の例である。当該ヒドロキシプロピル化デンプンは、当該技術分野で周知であり、食品添加物国際システム(INS)において名称1400として「E-コード」化されている。本発明の好ましいヒドロキシプロピル化デンプンとしては、Cargill Incorporatedから市販されているC*HiForm 12748があげられる。
【0045】
本開示の例は、在宅医療製品及びパーソナルケア製品において界面活性剤の代替となりうる。当該製品は、しばしば、所望の特性を達成するために複雑な界面活性剤系を用いる。当該配合物としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び/又は、両性界面活性剤があげられる。アニオン性界面活性剤は、親水性末端に負電荷がある。負電荷により、界面活性剤分子が汚れを持ち上げ、ミセル中で懸濁が促進される。アニオン性界面活性剤は広範囲の汚れを攻撃できるため、石鹸や洗剤に頻繁に用いられている。アニオン性界面活性剤は、混合すると多量の泡を発生させる。アニオン性界面活性剤は粒子状の汚れを浮き上がらせたり、懸濁させたりするのに優れるものの、油性の汚れを乳化させるには不向きである。アニオン性界面活性剤の例としては、硫酸塩、スルホン酸塩、グルコン酸塩があげられる。カチオン性界面活性剤はその親水性末端に正電荷がある。正電荷は、布の柔軟剤等の静電気防止製品に有用である。カチオン性界面活性剤も抗菌薬として作用することができるため、消毒剤として用いられる場合が多い。しかし、カチオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤は相溶性である。いくつかの一般的なカチオン性界面活性剤の例としては、塩化アルキルアンモニウムがあげられる。両性界面活性剤には、その親水性末端に正及び負の両方の二重電荷がある。二重電荷は互いに相殺し合い、正味の電荷がゼロになり、双性イオンとよばれる。両性界面活性剤がどのように反応するかにより、溶液のpHに依存する。酸性溶液中では、両性界面活性剤は正に荷電し、カチオン性界面活性剤と同様の挙動を示す。アルカリ性溶液中ではアニオン性界面活性剤と同様に負電荷を帯びる。両性界面活性剤は、シャンプーや化粧品等のパーソナルケア製品に用いられる場合が多い。両性界面活性剤の例の中で、ベタイン及びアミノオキシドは頻用される。
【0046】
以下の実施例に示されるように、本開示の無水物変性デンプンは、パーソナルケア製品中のカチオン性、アニオン性、又は両性界面活性剤の一部又は全部の置換に用いることができる。従って、これらの変性デンプンにより、パーソナルケア製品の配合に独特の柔軟性がもたらされる。界面活性剤を含まないパーソナルケア製品を製造してもよい。
【0047】
外用剤
本明細書で提供されるエマルジョンは、パーソナルケア製品又は化粧品等の局所配合物の製造に有用である。本発明者らは、以下にさらに説明するように、意外にも、特定のnOSAデンプンを含む配合物には多数の望ましい特性があることを見出した。
【0048】
一態様では、本発明は、本明細書中に記載される無水物変性デンプンを含む局所配合物である。本明細書で用いられる「局所配合物」とは、身体の一部に直接適用され得る配合物をいう。本明細書で用いられる用語「配合物」は、パーソナルケア配合物又は在宅医療で用いる、本開示による、様々な質量範囲の様々な成分の組成物を示すのに用いられる。
【0049】
「パーソナルケア」とは、化粧品、衛生用品、トイレタリーケア製品及び局所ケア製品を意味するものの、これらに限定されず、リーブオン製品(すなわち、適用後に角質基材上に残る製品);リンスオフ製品(すなわち、塗布中又は塗布後数分以内に角質基質から洗浄又はすすぎ落とされる製品);シャンプー;ヘアカール製品及びヘアストレート(毛髪矯正)製品;コーミングクリーム、デタングクリーム、ヘアスタイル維持製品及びヘアコンディショニング製品(濃縮マスク又はより標準的な配合物;リンスオフかリーブオンかにかかわらず);爪、手、足、顔、頭皮又は身体用のローション及びクリーム;毛髪染料、化粧品、ネイルケア製品、収斂剤、デオドラント、制汗剤、抗ニキビ剤、アンチエイジング、脱毛剤、皮膚用保護クリーム及びローション(日焼け止め等)、皮膚用洗剤、全身用コンディショナー、スキンコンディショナー;スキントナー;皮膚用ひきしめ組成物、皮膚用日焼け止め剤及び美白剤、液体石鹸、固形石鹸、浴用品;シェービング製品、口腔衛生用品(歯磨き粉、経口懸濁液、口腔ケア製品等)があげられる。
【0050】
本明細書に開示されている無水物変性デンプンは、シャンプー及びコンディショナー配合物に用いられる様々な界面活性剤を低減又は置換するのに特に有用である。それらは、当該配合物で通常用いられるアニオン性、中性又は両性界面活性剤を、個々に又は集合的に置換しうる。
【0051】
当該パーソナルケア配合物のテクスチャは限定されず、液体、ゲル、スプレー、乳液(ローション及びクリーム等)、シャンプー、ポマード、フォーム、錠剤、スティック(リップケア製品等)、メーキャップ、坐剤であってよく、これらのいずれかを皮膚又は毛髪又はハール(hale)に塗布することができ、通常、水ですすぎ、又はシャンプー又は石鹸で洗浄することで除去されるまでそれらと接触するように設計される。他の形態は、軟らかい、硬い、又はスクイズ可能なゲルであってよい。スプレーは、手動でポンピングされた指作動スプレーから送出される非加圧エアロゾルであってよく、又は化学的又はガス状の噴射剤が用いられるムース、スプレー、又はフォーム形成配合物等の加圧エアロゾルであってよい。
【0052】
本明細書中に開示された無水物変性デンプンを用いて調製された配合物は、一般に審美的に魅力的であると考えられる白色又は淡白色である。場合によっては、本開示の配合物をさらに処理して、着色最終生成物を製造することができる。この場合、白色は、最終的な色に影響することなく、付加的な顔料を現すため、有益である。
【0053】
本開示の無水物変性デンプンを含有する配合物は、場合によっては、特定の用途の必要性に合わせて粘度を調整するために、追加の成分を含有してよい。当業者は、この目的に適合するために利用可能な添加剤の範囲を以下のように、容易に理解するであろう:スクレロチウムガム、キサンタンガム、カラギーナン、ゲランガム、天然デンプン、変性デンプン、デンプンコハク酸ナトリウム、アルミニウムデンプンコハク酸、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、ペクチン、クエン酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、アクリレートポリマー、アクリレート系コポリマー、カルボマー、セルロース、シトラス類繊維及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ソルビトール等のポリオール、及びそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。当該添加剤を用いて、配合物に質感、粘度、又は構造を付加することができる。熟練した当業者であれば、それらは特定の配合物の必要性に応じて様々な濃度で存在することができ、特定の配合物の主成分でさえであってよいことを理解するであろう。追加のテクスチャライザーは、本明細書に開示されている無水物変性デンプンを含む配合物中で用いても、用いなくてもよく、調製される製品の配合の必要性及び目的に依存する。本明細書に開示されている無水物変性デンプンがシャンプー又は毛髪コンディショニング配合物に用いられる場合、粘度を補助するためにさらなるテクスチャライザーを添加するのが望ましい。
【0054】
本開示の無水物変性デンプンを含有する配合物は、場合によっては、保存剤、塩、ビタミン、乳化剤、テクスチャライザー、栄養素、微量栄養素、糖、タンパク質、多糖類、ポリオール、グルコース、スクロース、グリセロール、ソルビトール、pH調整剤、皮膚乳化剤、色素、顔料、皮膚活性剤、ワックス又はシリコーンからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる成分を含有してよい。
【0055】
本開示の無水物変性デンプンを含有する配合物のpH値は、広範囲であってよい。本開示の態様では、pHが3~11、4~8、又は4~7の配合物が含まれる。
【0056】
本開示の配合物は、いかなる有用な量の本開示の無水物変性デンプンを含有することができる。配合物は、好ましくは、最終配合物中に1~50%、1~30%、2~20%又は3~15質量%の変性デンプンを含有するであろう。
【0057】
測定方法
変性デンプン試料のMw、Mnを以下のように測定した:試料をDMSO-水に約2質量%の乾燥物質で90~10v:vで溶解した。用いたGPCシステムは、Waters707パルスオートサンプラー付きWaters600コントローラーであった。検出器:水2414屈折率検出器。RI検出器システムを、既知の分子量のPullulansのセットで較正した。また、ピーク分子量20.106の参照デンプン(静的光散乱により測定)及び5単位のデキストロース線状ポリマー(DP 5)を注入した。各較正について、分子量の対数を保持時間に対してプロットする。処理が完了した後、データ処理システムはベースラインに適合させて、ベースラインとクロマトグラムとの間に含まれる領域を多数の小切片に切断した。各切片の面積を記録し、各切片に対応する分子量を検量線から導出した。これらのデータを用いて、データ処理システムで分子量を計算した。カラム:Shodex KS-806+ Shodex KS-804+ Shodex KS-802(全てナトリウム型)を75℃単位でシリーズ化溶離液:HPLC等級の水中で0.05 MのNaOHを用い、0.45μmフィルターで濾過し、脱気し、約70℃に維持する。流量:1.0ml/分注射液20μl。検出:示差屈折率。データ収集:ThermoからのAtlasデータ処理、キャリバー(ポリマーラボのGPCパッケージ)
【0058】
DE:以下の装置を用いて、周知のLane and Eynon法に従って測定した。滴定アセンブリ:リング支持体を、ガスバーナーの上方1~2インチ、および第1のリングの上方6~7インチのリングスタンドに取り付けた。下側のリングには、200mLの三角フラスコを支えるために6インチのオープンワイヤーガーゼを置き、上側のリングには熱をそらすために4インチの中心穴付き時計用ガラスを置いた。上リングに中心穴のある時計用ガラスは熱を偏らせるために用いる。25 mLビュレットをリングスタンドに取り付け、先端がフラスコ上部のウォッチグラスをちょうど通るようにした(斜めテフロン(登録商標)プラグ付きファンネルトップビュレット、KIMAX No.17055Fを推奨)。終点を観察するリング支持体を、ガスバーナーの上方1~2インチ、および第1のリングの上方6~7インチのリングスタンドに取り付けた。試薬は以下のものを用いた。:(i)フェーリング液:(A)試薬グレードの結晶性硫酸銅五水和物(CuSO・5HO)34.64gを精製水に溶解し、500mLに希釈した。(B)試薬グレードの酒石酸カリウムナトリウム四水和物(KNaC・4HO)173g及び試薬グレードの水酸化ナトリウム(NaOH)50gを精製水に溶解し、500mLに希釈した。同量の(A)と同量の(B)を混合した。(C)ある量のNational Institute of Standards and Technology (NIST)デキストロースを、70℃の真空オーブン中で4時間乾燥させた。その3.000gを精製水に溶解し、500mLに希釈し、完全に混合した。混合フェーリング液25.0mLを、少数のガラスビーズを含む200mLの三角フラスコにピペットで注入し、手順に従って標準デキストロース液で滴定した。フェーリング液Aの濃度は、滴定に0.6%デキストロース標準液20.0mLを必要とするように、硫酸銅の希釈又は添加によって調整した。(ii)メチレンブルー指示薬:1%水溶液。方法:希釈後、溶液が約0.6%の還元糖を含むように試料の量を精密に量った。試料を、熱水の助けを借りて500mLのメスフラスコに定量的に移し、室温に冷却し、容量に希釈し、そして完全に混合した。標準化混合フェーリング液25.0mLを200mL三角フラスコにピペットで注入し、数個のガラスビーズを添加した。ビュレットを用いて、予想されるエンドポイントの0.5mL以内に試料溶液を加えた(予備滴定により測定)。直ちに、フラスコを滴定アセンブリのワイヤーガーゼに置き、沸点に約2分で到達するようにバーナーを調整した。溶液を沸騰させ、2分間穏やかに沸騰させた。沸騰が続けば、メチレンブルー指示薬2滴を加え、1分以内に滴定を終了し、青色が消えるまで試料溶液を滴加又は少量ずつ滴定を行った。試料の乾燥物質濃度を測定した。
計算:
% 還元糖(そのままブドウ糖として計算)=[(500mL)(0.1200)(100)]/[試料滴定量、mL](試料Wt、g)。
DE=[(% 還元糖)(100)]/(% 乾燥物質含有率)
http://corn.org/wp-content/uploads/2009/12/DEXTR.02.pdf およびその注釈を参照。
【0059】
DS:反応中の試薬及び腐食性(モル単位)の消費から計算した:DS =2[M無水物]-[M NaOH]/[Mデンプン又はデキストリン](ここで、M[デンプン又はデキストリン]=用いた質量デンプン(g)/162g(= Mwアンドログルコース単位)。
【0060】
変性デンプンのpHを以下のように測定した:pH指示薬及び100質量%までのミリポア水からなる溶液の小滴を、変性デンプンからなる試料(通常はコーティング)の表面上に置いた。用いられるpHインジケータ及びそれらの各量は、当技術分野において周知である。例えば、ブロモクレゾールグリーン溶液(0.04%)を用いて、コーティングが中性からアルカリ性の条件下である場合、青色を示した。酸性処理後、青色は消え、原紙の色によってはわずかに黄色になることがある。表によれば、局所表面pHはせいぜい2.5~3と測定された。
【0061】
変性デンプンのmg/mLでの溶解度は、Rupendra Mukerjeaら、Carbohydrate Res.342(2007)103-110の実験の項に記載の方法論に従って決定することができる。
【0062】
変性デンプンの質量%における溶解度:欧州特許第1,964,969号明細書に示されているように測定した-その中の「方法」の節を参照されたい。
【0063】
乾燥物質含有量(DSC)は、式:DSC(%)=100%-MC(%)により測定する。
【0064】
粘度: Brookfield (RV, 100rpm, 25℃、粘度に適応したスピンドル)。
【実施例
【0065】
実施例1-nOSAによるマルトデキストリン変性(DS 0.1、0.3、0.5、0.7)
(b)マルトデキストリン(C*Dry MD 01915、Cargill、乾燥ベースで500g、Mw約20,000ダルトン、PDI10~20、DE約18)を懸濁し、室温で水に溶解してスラリーを形成した。スラリーを、オーバーヘッド撹拌機を用いて反応全体にわたって撹拌した。まず、8% w/wのNaOH溶液を用いてpHを8.5にした。nOSA試薬(229.05g)を、pHを8~8.5(pH制御ポンプ)に維持しながら、ポンプでゆっくり(30分)添加した。nOSA添加反応を室温でpH制御下で90分間続けた後、NaOH添加を停止した。合計594gのNaOH溶液が反応中に消費され、DSは0.32(反応効率90.9%)となった。
【0066】
(c)マルトデキストリン(C*Dry MD 01915,Cargill,500g乾燥系)を懸濁し、室温の水に溶解してスラリーを形成した。スラリーを、オーバーヘッド撹拌機を用いて反応全体にわたって撹拌した。まず、8% w/wのNaOH溶液を用いてpHを8.5にした。nOSA試薬(534.45g)を、pHを8~8.5(pH制御ポンプ)の間に維持しながら、ポンプでゆっくり(120分)添加した。nOSA添加反応を室温でpH制御下で30分間続けた後、NaOH添加を停止した。合計1477.7gのNaOH溶液が反応中に消費され、DSは0.69(反応効率83.7%)であった。
【0067】
(a)この手順を繰り返したが、nOSA試薬の量を0.1のDSを有する変性デキストリンとなるように調整した点が異なる。
【0068】
(d)この手順を繰り返したが、nOSA試薬の量を0.5のDSを有する変性デキストリンになるように調整した点が異なる。
【0069】
実施例2-nOSAによるデンプン変性(DS 0.1、0.3、0.5、0.7)
実施例1の操作を、出発物質としてC*iCoat 07520(約75 kDaltonsのMw、4~6の間のDE)及び適当な量のnOSA試薬を用いて繰り返し、実施例2(a DS 0.1;2(b)DS 0.3;2(c)DS 0.5;及び2(d)DS 0.7を作製した。
【0070】
実施例3-nOSAによるデキストリン変性(DS 0.1、0.3、0.5、0.7)
(b)まず、トウモロコシデキストリンのペースト(C*Film 07325、Cargill、Mw約35.800ダルトン、PDI約5.5、DE0~2)を用いて、水中の前記デキストリンの10質量%スラリーを作製した。スラリーは、開始温度50℃、最高温度90℃(20分間保持)、終了温度50℃の温度プログラムを有するブラベンダーで調理した。加熱・冷却時間は1.5℃/分、回転数は75/分であった。ペーストの乾燥固形分を測定し、室温で水を添加し、オーバーヘッド撹拌機でホモジナイズするために撹拌することにより、必要な乾燥固形分(30質量%)に適合させた。調整したペーストを乾燥ベースで600g取った。ペーストを、オーバーヘッド撹拌機を用いて反応全体にわたって撹拌した。まず、8% w/wのNaOH溶液を用いてpHを8.5にした。nOSA試薬(274.86g)を、8% w/wのNaOH溶液でpHを8~8.5に維持しながら(pH制御ポンプを用いて)ポンプでゆっくりと(80分間)添加した。その後、nOSA添加反応は、室温でpH制御下で次の40分間続き、その後、NaOH添加は停止した。合計724gのNaOH溶液が反応中に消費され、DSが0.31(反応効率89.23%)となった。
【0071】
(c)この手順を繰り返したが、nOSA試薬の量を調整し、DSが0.7の変性デキストリンを得た点が異なる。
【0072】
(a)この手順を繰り返したが、nOSA試薬の量を0.1のDSを有する変性デキストリンとなるように調整した点が異なる。
【0073】
(d)この手順を繰り返したが、nOSA試薬の量を調整し、DSが0.5の変性デキストリンを得た点が異なる。
【0074】
実施例4-nOSAによるデンプン変性(DS 0.1、0.3、0.5、0.7)
実施例1の操作を、出発物質としてC*07302(約400 kDaltonsのMw、2~4の間のDE)を用いて繰り返し、実施例2(a)DS 0.1;2(b)DS 0.3;2(c)DS 0.5;及び2(d)DS 0.7を作製した。
【表1】
【0075】
安定性
本開示の無水物変性デンプンを含有する製品中の泡の安定性を試験するために、モデルシャンプー系を用いた。安定性は、経時的なフォームの安定性を観察することで視覚的に評価される。試験用無水物変性デンプンの1質量%溶液をデミ水中で調製した。30mLの試験溶液を100mLのメスシリンダーに加えた。シリンダーを10回振とうし、直ちに泡の量を記録し、振とう終了から1、2、3、及び4分後に記録した。泡が沈降または崩壊し始めると不合格となる。用途によっては、フォームが長期間にわたって安定であることが非常に望ましい。ほとんどの実施例で、4分後の観察で、フォームは最初の高さの80%以上を維持していた。
【表2】
【0076】
実施例6~16は、以下のように調製した:ビーカー(800g)でA相を調製し、A1を加えた後、A2を加える。600 RPMを均一になるまでIka船用プロペラと混合する。ウルトラThurax 25を用いて、A3を10000 RPMでA相に振り混ぜ、10分間混合する。B相の成分をA相にゆっくりと加え、Ikaプロペラブレードで300-400 RPMで1回ずつ加える。均一になるまで各添加の間に5~10分間待つ。小型ビーカーにIkaからのデフロクレウスを用いてC相を調製し、粉末をよく分散させる(600~800RPM、又は15分間ボルテックス)。相は均一になるはずである。クエン酸でpH5付近に調整する。AB(800~1000RPM)に相Cを均一になるまでゆっくりと10分間加える。
【0077】
界面活性剤相は、表Aに例示されているように、毎回完全な配合物を用いて、本発明により部分的又は完全に置換される。
【0078】
実施例:完全な配合物の界面活性剤のみを表Aに示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0079】
実施例6~12は全て、安定なシャンプー配合物である(45℃で4週間)。実施例6~10及び12はすべて、完全に透明な配合物であり、1%活性希釈シリンダー法を用いるか、又はリアルヘアスイッチで洗浄から、フォームを形成することによって表される発泡特性は良好である。良好な発泡特性とは、泡量(泡の量)と泡の質(泡の経時安定性、泡の小ささ)の両方を意味する。実施例3の変性デンプンで作製した試料11は透明ではない。
【表10】
【0080】
界面活性剤の相は、表Bに示すように、毎回完全な配合物を用いて、本発明により部分的又は完全に置換される。
【0081】
完全な配合物のうち、硫酸塩非含有界面活性剤のみを示す実施例を(表B)に示す。
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0082】
実施例6~17は全て、安定したシャンプー配合物(45℃で4週間)である。実施例6~10及び12~17はすべて完全に透明な配合物である。
【0083】
実施例14~17の式は、1%活性希釈シリンダー法を用いるか、又はリアルヘアスイッチで洗浄から、フォームを形成することによって表される発泡特性は良好である。良好な発泡特性とは、泡量(泡の量)と泡の質(泡の経時安定性、泡の小ささ)の両方を意味する。
【0084】
シャンプー配合物はすべて、シャワー又はバスボディクレンザー又はボディウォッシュに用いられるような通常のスキンケア用ボディウォッシュ成分をそのまま用いるか、又は調整して用いることができる。
【0085】
発泡現像
プロフュージョンテストを用いて、無水物変性デンプンを含有する配合物の発泡能を試験した。長首ビーカーに、1% dsの被験物質を含む溶液100gを、乱流を避けるように注意深く注ぐ。静止後、ベンチミキサーTurbotest(登録商標)のパドルを浸漬して、ローターを回転させて、渦を形成する。ロータ起動後から上面が平坦になり渦が見えなくなるまでの時間を記録する。これを、プロフュージョン時間とする。実施例6~10及び13~17をプロフュージョンテストで評価したが、驚くべきことに、本発明の無水物変性デンプンによる硫酸塩含有及び硫酸塩非含有の標準的なシャンプー配合物の単一の界面活性剤又は全ての界面活性剤の半分を置換したものは、プロフュージョン時間に有意な影響を与えることはなかった。従って、本明細書中に開示された無水物変性デンプンを含有するシャンプー配合物には、標準製品と同等の発泡能がある。
【0086】
本発明のさらなるパーソナルケア用途は、実施例18に例示されているように、固形石鹸の形態であってよい。
【表16】
【0087】
実施例18では、石鹸は、まず、全ての油A1及びA2を約70℃に加熱し、IKA実験室反応器を用いて十分に混合して製造した。NaOH B1及び水B2をゆっくりと添加してA1+A2を混合し、混合を30分間維持する。温度は80~85℃を超えないように制御した。続いて、界面活性剤C1及びデンプンC2、C3を主混合物に添加した後、本発明C4を添加した。5000rpmで10分間均質化し、次いで、最終混合物を個々の型に入れて、冷却した。
【国際調査報告】