(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】脂肪分解活性の検出のための組成物、方法、およびキット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20221109BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221109BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20221109BHJP
G01N 33/92 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01N33/50 T
C12Q1/02
C12Q1/34
G01N33/92 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516037
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020049992
(87)【国際公開番号】W WO2021050585
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-クリスティアン・マーラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・フェドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヤーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ツェル
(72)【発明者】
【氏名】アタナス・コウロヴ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045CB30
2G045DA20
2G045DA60
2G045FB12
4B063QA01
4B063QA05
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ30
4B063QQ79
4B063QR41
4B063QX02
(57)【要約】
本開示は、脂肪分解活性を検出するための組成物、方法、およびキットを提供する。一部の実施形態では、組成物は、水性アッセイ試料と有機溶媒とを含み、有機溶媒が、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む。また、タンパク質調製物の安定性を決定するための方法も本明細書に提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a.タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料と、
b.有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、
を含み、
前記水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有し、
前記水性アッセイ試料が、前記組成物の約80%~約99.9%であり、前記有機溶媒が、前記組成物の約0.1%~約20%である、組成物。
【請求項2】
前記タンパク質調製物が、細胞培養上清である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質調製物が、部分的に精製されたタンパク質調製物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記タンパク質調製物が、精製されたタンパク質調製物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記タンパク質調製物が、治療用タンパク質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記タンパク質調製物が、界面活性剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤が、ポリソルベートである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記タンパク質調製物が、追加の宿主細胞タンパク質をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記水性アッセイ試料が、緩衝剤、塩、またはそれらの両方をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記塩が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記塩が、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記塩化ナトリウムが、前記水性アッセイ試料中で、約50mM~約400mMである、請求項11または12に記載の組成物。
【請求項14】
前記塩化ナトリウムが、前記水性アッセイ試料中で、約100mM~約200mMである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記塩化カルシウムが、前記水性アッセイ試料中で、約0.2mM~約10mMである、請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記塩化カルシウムが、前記水性アッセイ試料中で、約1.0mM~約2.0mMである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記緩衝剤が、約pH6.0で緩衝能を有する、請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記緩衝剤が、Trisである、請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記緩衝剤が、Bis-Trisである、請求項10~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記緩衝剤が、前記水性アッセイ試料中で、約2mM~約200mMである、請求項10~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記緩衝剤が、前記水性アッセイ試料中で、約10mM~約100mMである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記緩衝剤が、前記水性アッセイ試料中で、約40mM~約60mMである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記有機溶媒が、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせである、請求項1~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記有機溶媒が、アセトニトリルを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記有機溶媒が、アルコールを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記有機溶媒が、アセトニトリルおよびイソプロパノールの混合物を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
前記有機溶媒が、C
1-C
6アルコールである、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、リパーゼ阻害剤をさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記リパーゼ阻害剤が、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記リパーゼ阻害剤が、前記有機溶媒中にある、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
前記リパーゼ阻害剤が、前記組成物中で、約1μM~約50μMである、請求項30~32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
前記リパーゼ阻害剤が、前記組成物中で、約5μM~約25μMである、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
組成物であって、
a.水性アッセイ試料であって、
i.精製されたタンパク質調製物、
ii.緩衝剤、および
iii.塩、
を含む、水性アッセイ試料と、
b.有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、
を含み、
前記水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有し、
前記水性アッセイ試料が、前記組成物の約80%~約99.9%であり、前記有機溶媒が、前記組成物の約0.1%~約20%である、組成物。
【請求項36】
組成物であって、
a.約90%~約99.9%(体積/体積)の水性アッセイ試料であって、
i.タンパク質および脂質を含む精製されたタンパク質調製物、
ii.緩衝剤、
iii.約1.0mM~約2.0mMの塩化カルシウム、および
iv.約100mM~約200mMの塩化ナトリウム、
を含む、水性アッセイ試料と、
b.メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはそれらの組み合わせから選択される約10%~約0.1%(体積/体積)の有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、
を含み、
前記水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する、組成物。
【請求項37】
水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法であって、前記方法が、
a.タンパク質調製物を含む前記水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせることと、
b.蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、
を含む、方法。
【請求項38】
水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法であって、前記方法が、
a.タンパク質調製物を含む前記水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせて、アッセイ組成物を形成することと、
b.タンパク質調製物およびリパーゼ阻害剤を含む対照試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせて、対照組成物を形成することと、
c.蛍光によって、前記アッセイ組成物中および前記対照組成物中のオレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、
を含む、方法。
【請求項39】
タンパク質調製物の安定性を決定する方法であって、
a.前記タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせることと、
b.蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、
c.測定された前記蛍光に基づいて、前記タンパク質調製物の安定性を決定することと、
を含む、方法。
【請求項40】
前記水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記水性アッセイ試料および前記有機溶媒が、約80:20~約99.9:0.1の比率で組み合わされる、請求項37~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記水性アッセイ試料および前記有機溶媒が、約90:10~約98:2の比率で組み合わされる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記蛍光が、330nmでの蛍光励起および495nmでの蛍光発光によって測定される、請求項37~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記蛍光が、最大24時間測定される、請求項37~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記蛍光が、約24時間~約400時間測定される、請求項37~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記蛍光が、約100時間を超えて測定される、請求項37~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記タンパク質調製物が、細胞培養上清である、請求項37~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記タンパク質調製物が、部分的に精製されたタンパク質調製物である、請求項37~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記タンパク質調製物が、精製されたタンパク質調製物である、請求項37~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記タンパク質調製物が、治療用タンパク質を含む、請求項37~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記タンパク質調製物が、界面活性剤を含む、請求項37~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記界面活性剤が、ポリソルベートである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリソルベートが、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記タンパク質調製物が、追加の宿主細胞タンパク質をさらに含む、請求項37~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記水性アッセイ試料が、緩衝剤、塩、またはそれらの両方をさらに含む、請求項37~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記塩が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記塩が、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムである、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記塩化ナトリウムが、前記水性アッセイ試料中で、約50mM~約400mMである、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
前記塩化ナトリウムが、前記水性アッセイ試料中で、約100mM~約200mMである、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記塩化カルシウムが、前記水性アッセイ試料中で、約0.2mM~約10mMである、請求項56~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記塩化カルシウムが、前記水性アッセイ試料中で、約1.0mM~約2.0mMである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記緩衝剤が、約pH6.0で緩衝能を有する、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記緩衝剤が、Trisである、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記緩衝剤が、Bis-Trisである、請求項55~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記緩衝剤が、前記水性アッセイ試料中で、約2mM~約200mMである、請求項55~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記緩衝剤は、前記水性アッセイ試料中で、約10mM~約100mMである、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記緩衝剤が、前記水性アッセイ試料中で、約40mM~約60mMである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記有機溶媒が、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせである、請求項37~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記有機溶媒が、アセトニトリルを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記有機溶媒が、アルコールを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記有機溶媒が、アセトニトリルおよびイソプロパノールを含む、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記有機溶媒が、C
1-C
6アルコールである、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記水性アッセイ試料が、ステップ(a)の前に、リパーゼ阻害剤と、約10分間~約1時間インキュベートされる、請求項37または40~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記水性アッセイ試料が、ステップ(a)の前に、前記リパーゼ阻害剤と、約30分間インキュベートされる、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記リパーゼ阻害剤が、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である、請求項37、38、または40~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記リパーゼ阻害剤が、約1μM~約50μMで添加される、請求項38または40~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記リパーゼ阻害剤が、約5μM~約25μMで添加される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
キットであって、2つ以上の容器内に、
a.有機溶媒と、
b.4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)と、
c.リパーゼ阻害剤と、
を含む、キット。
【請求項81】
緩衝剤、塩、またはそれらの両方をさらに含む、請求項80に記載のキット。
【請求項82】
緩衝液交換カラムをさらに含む、請求項80または81に記載のキット。
【請求項83】
キットであって、
a.4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と、
b.タンパク質調製物の緩衝液を交換するのに好適なカラムと、
c.リパーゼ阻害剤と、
を含む、キット。
【請求項84】
前記有機溶媒が、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせである、請求項80~83のいずれか一項に記載のキット。
【請求項85】
前記有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項84に記載のキット。
【請求項86】
前記有機溶媒が、アセトニトリルを含む、請求項84に記載のキット。
【請求項87】
前記有機溶媒が、アルコールを含む、請求項84に記載のキット。
【請求項88】
前記有機溶媒が、アセトニトリルおよびイソプロピルアルコールの混合物を含む、請求項84に記載のキット。
【請求項89】
前記有機溶媒が、C
1-C
6アルコールである、請求項84に記載のキット。
【請求項90】
前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである、請求項89に記載のキット。
【請求項91】
前記リパーゼ阻害剤が、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステルである、請求項80~90のいずれか一項に記載のキット。
【請求項92】
前記塩が、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはそれらの組み合わせである、請求項81に記載のキット。
【請求項93】
前記塩が、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムである、請求項81に記載のキット。
【請求項94】
前記緩衝剤が、Trisである、請求項81、92、または93のいずれか一項に記載のキット。
【請求項95】
前記緩衝剤が、Bis-Trisである、請求項81、92、または93のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脂肪分解活性を検出および/または定量化するための組成物、方法、およびキットを提供する。また、タンパク質調製物の安定性を決定するための方法も本明細書に提供される。一部の実施形態では、脂肪分解活性を検出するための組成物は、水性アッセイ試料と、有機溶媒と、を含み、有機溶媒は、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む。
【背景技術】
【0002】
細胞培養は、治療用タンパク質などの商業的に重要なタンパク質の生成に使用され得る。標的タンパク質の他に、細胞は、宿主細胞タンパク質(HCP)(例えば、リパーゼ)を産生し、これは、標的タンパク質(例えば、細胞培養上清または細胞溶解物)の産生プール中に見出すことができる。様々なクロマトグラフィーステップ(例えば、モノクローナル抗体の産生の場合、親和性クロマトグラフィー)を含み得る下流の精製プロセスは、一般に、HCPの大部分を枯渇させることができる。しかしながら、平衡に基づく分離方法および精製方法の自然原理により、HCPの100%の枯渇は不可能である場合がある。業界および保健当局によって許容されるHCP制限は、活性タンパク質の量に対して、約1~100ppmである。HCPは、典型的には、例えば、USP<1132>に概説されているように、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて総和パラメータ(sum parameter)として測定および報告される。したがって、これらは、典型的には、様々な濃度の異なる宿主由来タンパク質の範囲を含む。ELISAによって定量化されたのと同じ総HCP含有量の薬物は、異なるHCPプロファイルを有する可能性がある。これは、わずかなプロセスの変動が、低濃度の特異的HCP(例えば、リパーゼ)の増加を引き起こすという状況につながり得るが、全HCPアッセイの適用によって検出されない場合がある。したがって、わずかな割合のHCPは、最終タンパク質生成物中に存在し得、触媒活性を有し得る。残留触媒活性は、賦形剤(例えば、ポリソルベートなどの界面活性剤)の安定性、ならびに、最終的には、タンパク質生成物の安定性、品質、および安全性などの生成物の品質に対して悪影響を及ぼし得る。タンパク質が治療用タンパク質(特に、ヒトにおいて使用される治療用タンパク質)である場合、これらの悪影響を最小化するか、または排除することが最も重要であり得る。
【0003】
タンパク質の調製における残留リパーゼ活性(例えば、標的タンパク質の下流精製プロセス中の最適でない枯渇に起因する残留リパーゼ活性)は、一部の賦形剤(例えば、界面活性剤)の加水分解をもたらし得る。結果としては、例えば、界面活性剤からの非極性(したがって、不溶性)長鎖脂肪酸および他の分解物の遊離、ならびに界面活性剤によってもたらされる安定化の喪失に起因する、不可視粒子および可視粒子の形成が含まれ得る。界面活性剤の分解はまた、例えば、タンパク質の分解につながるペルオキシドの生成、またはラウリン酸に誘導されるタンパク質凝集の生成など、タンパク質品質に悪影響を及ぼし得る。界面活性剤の分解はまた、製剤中のそれらの濃度を低下させ、例えば、界面応力(例えば、振盪、凍結/解凍等)に対するタンパク質の不十分な保護を潜在的に引き起こし、また、例えば、分解された界面活性剤に起因する異なるインビボ傾向の生成物の安全性考慮事項の潜在的な差異をもたらす。したがって、残留リパーゼ活性は、賦形剤の加水分解による最終的なタンパク質調製物の品質を損なう可能性がある。例えば、ポリソルベートなどの賦形剤の分解生成物は、注射部位の反応など、患者における安全性の問題を引き起こす可能性もある(例えば、非特許文献1を参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Singh et al.,J Pharm Sci 107(11):2735-2741(2018)
【発明の概要】
【0005】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料と、(b)有機溶媒と、を含み、有機溶媒が、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有し、水性アッセイ試料が、組成物の約80%~約99.9%であり、有機溶媒が、組成物の約0.1%~約20%である。
【0006】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、細胞培養上清である。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、部分的に精製されたタンパク質調製物である。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、精製されたタンパク質調製物である。
【0007】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、治療用タンパク質を含む。
【0008】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートである。一部の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせである。
【0009】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、追加の宿主細胞タンパク質をさらに含む。
【0010】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、緩衝剤、塩、またはそれらの両方をさらに含む。
【0011】
一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムである。一部の実施形態では、塩化ナトリウムは、水性アッセイ試料中で、約50mM~約400mMである。一部の実施形態では、塩化ナトリウムは、水性アッセイ試料中で、約100mM~約200mMである。一部の実施形態では、塩化カルシウムは、水性アッセイ試料中で、約0.2mM~約10mMである。一部の実施形態では、塩化カルシウムは、水性アッセイ試料中で、約1.0mM~約2.0mMである。
【0012】
一部の実施形態では、緩衝剤は、約pH6.0で緩衝能を有する。一部の実施形態では、緩衝剤は、Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Bis-Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約2mM~約200mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約10mM~約100mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約40mM~約60mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約45mM~約55mMである。
【0013】
一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルを含む。
【0014】
一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコールを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルおよびイソプロパノールの混合物を含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、C1-C6アルコールである。一部の実施形態では、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである。
【0015】
一部の実施形態では、組成物は、リパーゼ阻害剤をさらに含む。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。
【0016】
一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、有機溶媒中にある。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約1μM~約50μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約5μM~約25μMである。
【0017】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)精製されたタンパク質調製物、(ii)緩衝剤、および(iii)塩を含む水性アッセイ試料と、(b)有機溶媒と、を含み、有機溶媒が、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有し、水性アッセイ試料が、組成物の約80%~約99.9%であり、有機溶媒が、組成物の約0.1%~約20%である。
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)タンパク質および脂質を含む精製されたタンパク質調製物、(ii)緩衝剤、(iii)約1.0mM~約2.0mMの塩化カルシウム、および(iv)約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む、約90%~約99.9%(体積/体積)の水性アッセイ試料と、(b)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはそれらの組み合わせから選択される約10%~約0.1%(体積/体積)の有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、を含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する。
【0019】
一部の実施形態では、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法を提供し、当該方法は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせることと、(b)蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、を含む。
【0020】
一部の実施形態では、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法を提供し、当該方法は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせて、アッセイ組成物を形成することと、(b)タンパク質調製物およびリパーゼ阻害剤を含む対照試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせて、対照組成物を形成することと、(c)アッセイ組成物および対照組成物中の蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本開示は、タンパク質調製物の安定性を決定する方法を提供し、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせることと、(b)蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、(c)測定された蛍光に基づいて、タンパク質調製物の安定性を決定することと、を含む。
【0022】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、5.0~7.0のpHを有する。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約80:20~約98:2の比率で組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約90:10~約99.9:0.1の比率で組み合わされる。
【0023】
一部の実施形態では、蛍光は、330nmでの蛍光励起および495nmでの蛍光発光によって測定される。一部の実施形態では、蛍光は、最大24時間測定される。一部の実施形態では、蛍光は、約24時間~約400時間測定される。一部の実施形態では、蛍光は、約100時間を超えて測定される。
【0024】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、ステップ(a)の前に、約10分~約1時間リパーゼ阻害剤とインキュベートされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、ステップ(a)の前に、リパーゼ阻害剤と約30分間インキュベートされる。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、約1μM~約50μMで添加される。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、約5μM~約25μMで添加される。
【0025】
一部の実施形態では、本開示は、キットを提供し、2つ以上の容器内に、(a)有機溶媒と、(b)4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)と、(c)リパーゼ阻害剤と、を含む。
【0026】
一部の実施形態では、キットは、緩衝剤、塩、またはそれらの両方をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、緩衝液交換カラムをさらに含む。
【0027】
一部の実施形態では、本開示は、キットを提供し、当該キットは、(a)4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と、(b)タンパク質調製物の緩衝液を交換するのに好適なカラムと、(c)リパーゼ阻害剤と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】実施例1Aに関する。
図1Aおよび1Bは、それぞれ、ブタ膵臓リパーゼ(PPL)活性および4-メチルウンベリフェロン(4Mu)蛍光クエンチに対する、TrisおよびBis-Tris緩衝液の緩衝液濃度およびpHの影響をそれぞれ示す。
【
図1B】実施例1Aに関する。
図1Aおよび1Bは、それぞれ、ブタ膵臓リパーゼ(PPL)活性および4-メチルウンベリフェロン(4Mu)蛍光クエンチに対する、TrisおよびBis-Tris緩衝液の緩衝液濃度およびpHの影響をそれぞれ示す。
【
図1C】実施例1Aに関する。
図1Cは、リパーゼ活性および4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)の自己加水分解に対する、緩衝液濃度およびpHの影響を示す。
【
図1D】実施例1Aに関する。
図1Dは、4Muの蛍光が測定されたpH範囲を示す。
図1Eは、様々なpHにおける4Muの異なる形態を示す。
【
図1E】実施例1Aに関する。
図1Eは、様々なpHにおける4Muの異なる形態を示す。
【
図2A】実施例2Aに関する。
図2Aおよび2Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対するCaCl
2濃度の影響を示す。
【
図2B】実施例2Aに関する。
図2Aおよび2Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対するCaCl
2濃度の影響を示す。
【
図2C】実施例2Aに関する。
図2Cは、4MuOのリパーゼ活性および自己加水分解に対するCaCl
2濃度の影響を示す。
【
図3A】実施例3Aに関する。
図3Aおよび3Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対するNaCl濃度の影響を示す。
【
図3B】実施例3Aに関する。
図3Aおよび3Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対するNaCl濃度の影響を示す。
【
図3C】実施例3Aに関する。
図3Cは、4MuOのリパーゼ活性および自己加水分解に対するNaCl濃度の影響を示す。
【
図4A】実施例4Aに関する。
図4Aおよび4Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対する有機溶媒の影響を示す。
【
図4B】実施例4Aに関する。
図4Aおよび4Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対する有機溶媒の影響を示す。
【
図4C】実施例4Aに関する。
図4Cは、4MuOのリパーゼ活性および自己加水分解に対する有機溶媒の影響を示す。
【
図5A】実施例5に関する。
図5Aおよび5Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対する界面活性剤の影響を示す。
【
図5B】実施例5に関する。
図5Aおよび5Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対する界面活性剤の影響を示す。
【
図5C】実施例5に関する。
図5Cは、4MuOのリパーゼ活性および自己加水分解に対する界面活性剤の影響を示す。
【
図6A】実施例6に関する。
図6Aおよび6Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対する3つの異なる濃度のリパーゼ阻害剤オルリスタットの影響を示す。
【
図6B】実施例6に関する。
図6Aおよび6Bは、それぞれ、リパーゼ活性および4Muの蛍光クエンチに対する3つの異なる濃度のリパーゼ阻害剤オルリスタットの影響を示す。
【
図7A】実施例7に関する。
図7Aおよび7Cは、4Muのリパーゼ活性および自己加水分解に対する理論的に完全に分解されたPS20の生成物阻害の影響を示す。
【
図7B】実施例7に関する。
図7Bおよび7Dは、4Muのリパーゼ活性および自己加水分解に対する理論的に完全に分解されたPS80の生成物阻害の影響を示す。
【
図7C】実施例7に関する。
図7Aおよび7Cは、4Muのリパーゼ活性および自己加水分解に対する理論的に完全に分解されたPS20の生成物阻害の影響を示す。
【
図7D】実施例7に関する。
図7Bおよび7Dは、4Muのリパーゼ活性および自己加水分解に対する理論的に完全に分解されたPS80の生成物阻害の影響を示す。
【
図8】実施例8に関する。
図8は、4Muの蛍光クエンチに対するPS80の影響を示す。
【
図9A】実施例9に関する。
図9Aおよび9Bは、様々な濃度の細胞培養回収液(CCHF)中のPS20(
図9A)およびPS80(
図9B)の分解を試験するためのHPLC-FMAアッセイの結果を示す。
【
図9B】実施例9に関する。
図9Aおよび9Bは、様々な濃度の細胞培養回収液(CCHF)中のPS20(
図9A)およびPS80(
図9B)の分解を試験するためのHPLC-FMAアッセイの結果を示す。
【
図9C】実施例9に関する。
図9Cは、4MuOリパーゼアッセイの理論的読み出し(readout)を示す。
【
図9D】実施例9に関する。
図9Dは、ポリソルベートの分解における様々な濃度のCCHFの4MuOリパーゼアッセイ試験の実際の読み出しを示す。
【
図10A】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10B】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10C】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10D】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10E】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10F】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10G】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図10H】実施例9に関する。
図10A~10Hは、異なるCCHF濃度のPS80による4MuOリパーゼアッセイの結果を示す。
【
図11】実施例1Bに関連する。
図11は、PPLおよびCCHFの脂肪分解活性、ならびに4Muの自己加水分解(AH)に対するTrisおよびBis-TrisのpHの影響を示す。
【
図12】実施例2Bに関連する。
図12は、PPLおよびCCHFの脂肪分解活性に対するCaCl
2濃度の影響を示す。
【
図13】実施例3Bに関連する。
図13は、PPLおよびCCHFの脂肪分解活性に対するNaCl濃度の影響を示す。
【
図14】実施例4Bに関連する。
図14は、PPLおよびCCHFの脂肪分解活性に対する有機溶媒の影響を示す。
【
図15A】実施例5Bに関する。
図15Aは、PPLおよびCCHFの脂肪分解活性に対する異なる界面活性剤の影響を示す。
【
図15B】実施例5Bに関する。
図15Bは、異なる界面活性剤による4Muの蛍光のクエンチを示す。
【
図16】実施例6Bに関連する。
図16は、3つの異なる濃度で、試料をリパーゼ阻害剤オルリスタットと事前にインキュベートすることまたは共にインキュベートすることの、PPL活性に対する影響を示す。
【
図17A】実施例10に関する。
図17Aは、様々な陽性対照および陰性対照(試料、アッセイ、製剤、および自己加水分解)を有するタンパク質含有製剤を用いて行われた、リパーゼアッセイの動態を示す。本明細書の表10に、試験した試料を要約する。
【
図18】実施例9に関する。
図18は、様々な濃度のCCHFを用いて行われた、リパーゼアッセイの要約を示す。
【
図19A】実施例1Bに関する。
図19Aおよび19Bは、それぞれ、0.01~5mMの濃度範囲における4Muの検量線および4Muの検量線の数値結果を示す。
【
図19B】実施例1Bに関する。
図19Aおよび19Bは、それぞれ、0.01~5mMの濃度範囲における4Muの検量線および4Muの検量線の数値結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、脂肪分解活性を検出するための組成物、方法、およびキットに関する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、単語「a」または「an」は、単語「含む」と併せて使用される場合、1つ以上を意味し得る。本明細書で使用される場合、「別の」または「さらに」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。
【0031】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、値を決定するために用いられる方法/デバイスの誤差の固有の変動、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、「約」という用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%以上、またはそれ未満の変動を包含することを意味する。一部の実施形態では、当業者は、「約」という用語によって示される可変性のレベルを、本明細書で使用される文脈から理解するであろう。「約」という用語の使用は、具体的に列挙される値も含むことも理解されるべきである。
【0032】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されない限り、「および/または」を意味するように使用されるか、または代替物は互いに排他的であるが、本開示は、代替物および「および/または」のみを指す定義を支持する。
【0033】
本明細書で使用する場合、「含む(comprising)」(ならびに「comprise」および「comprises」などの「comprising」の任意の変形もしくは形態)、「有する(having)」(ならびに「have」および「has」などの「having」の任意の変形もしくは形態)、「含む(including)」(ならびに「includes」および「include」などの「including」の任意の変形もしくは形態)、または用語「含む(containing)」(ならびに「contains」および「contain」などの「containing」の任意の変形もしくは形態)という用語は、包含的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。本明細書で論じられる任意の実施形態は、本開示の任意の方法、組成物、および/またはキットに関して実施され得ることが企図される。さらに、本開示の組成物は、本開示の方法およびキットを達成するために使用することができる。
【0034】
用語「例えば(for example)」およびその対応する略語「例えば(e.g.)」(斜体であるかどうかにかかわらず)の使用は、列挙された特定の用語が、本開示の代表的な実施例および実施形態であることを意味し、別途明示的に記載されない限り、参照または引用される特定の実施例に限定されることを意図しない。
【0035】
本明細書で使用される場合、「間(between)」は、範囲の末端を含む範囲である。例えば、xとyの間の数字には、xとyの数字、ならびにxとyの内にある任意の数字が明示的に含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」、「ペプチド」、または「ポリペプチド」は、アミノ酸のポリマー形態を指し、任意の長さであり得る。タンパク質には、例えば、抗体、構造タンパク質、酵素、膜タンパク質、膜関連タンパク質、および/または膜貫通タンパク質、トランスポーター、受容体、シグナル伝達タンパク質などが含まれ得る。また、本開示のタンパク質および/またはペプチドは、例えば、例えば、薬物、標的部分、タグ(例えば、可視化タグ)などの1つ以上の非ペプチド物質にコンジュゲートされた修飾タンパク質も包含する。本開示のタンパク質は、例えば、疾患もしくは障害の診断、治療、および/または予防に使用される治療用タンパク質であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のポリソルベートは、薬学的製剤中のタンパク質の安定性を改善することができる。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、抗体である。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、抗体-薬物コンジュゲートである。一部の実施形態では、本明細書に記載のタンパク質調製物は、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)を含む。
【0037】
タンパク質調製物の文脈で本明細書で使用される場合、「精製」は、1つ以上の物質(例えば、タンパク質)が複雑な混合物、典型的には、細胞、組織、または生物から単離されるプロセスを指す。「精製された」タンパク質試料またはタンパク質調製物は、細胞、組織、または生物の1つ以上の非水溶性成分(例えば、細胞膜、脂質、凝集タンパク質もしくは核酸、および他の疎水性物質など)が低減もしくは除去され、可溶性成分(例えば、可溶性タンパク質など)のみが残された試料を指し得る。本明細書で使用される場合、「可溶性」は、物質が、特定の溶媒(例えば、細胞培養培地、緩衝液、水、または有機溶媒)に溶解する能力を指し得る。タンパク質の文脈において、「可溶性」とは、特定の溶媒(例えば、細胞培養培地、緩衝液、水、または有機媒)中で、沈殿および/または凝集しないタンパク質も指し得る。
【0038】
例示的な精製プロセスは、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)を含む細胞培養物を増殖することと、細胞を培養培地から分離することと、細胞を溶解させ、溶解した細胞を分離して、可溶性成分を含む細胞培養上清および本明細書に記載の不溶性成分を含むペレットを生成することと、細胞培養上清を、緩衝液交換、pH調整、遠心分離、濾過(例えば、限外濾過および/もしくは透析濾過を含む)、クロマトグラフィー、またはそれらの任意の組み合わせに供して、精製したタンパク質調製物を生成することと、を含み得る。一部の実施形態では、本開示の精製されたタンパク質調製物は、本明細書に記載のプロセスによって精製される。一部の実施形態では、本開示の部分的に精製されたタンパク質調製物は、本明細書に記載の精製プロセスの一部に供されている。例えば、部分的に精製されたタンパク質調製物は、精製されたタンパク質調製物を生成するために使用される緩衝液交換、pH調整、遠心分離、濾過、および/またはクロマトグラフィーのステップの全てに供されていない場合がある。一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞培養上清は、本開示の治療用タンパク質を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の部分的に精製されたタンパク質調製物は、本開示の治療用タンパク質を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の精製されたタンパク質調製物は、本開示の治療用タンパク質を含む。
【0039】
一部の実施形態では、本開示は、脂肪分解活性の検出のための組成物および方法に関する。脂肪分解活性、すなわち、脂肪分解は、一般に、脂質の加水分解を指す。脂肪分解反応は、エステラーゼ酵素のサブクラスであるリパーゼ酵素によって触媒することができる。したがって、「リパーゼ」は、脂質(例えば、トリグリセリド、リン脂質、コレステリルエステルなど)のエステル結合を加水分解する酵素を指す。リパーゼとしては、例えば、トリグリセリドリパーゼ、リポタンパク質リパーゼ、膵臓リパーゼ、肝臓リパーゼ、胃リパーゼ、舌リパーゼ、内皮リパーゼ、およびホスファチジルセリンホスホリパーゼが挙げられる。リパーゼは、例えば、哺乳動物の膵臓、肝臓、舌腺、胃、甲状腺、および/もしくは粘膜によって天然に産生される、特定の細菌および真菌によって分泌される、かつ/またはリソソームに見出される。一部の実施形態では、リパーゼは、タンパク質精製におけるタンパク質が由来した細胞に対して内因性である。一部の実施形態では、リパーゼは、タンパク質調製物中の別の生物学的成分(例えば、タンパク質調製物に添加される安定化タンパク質を含む生物学的成分)に対して内因性である。
【0040】
一部の実施形態では、リパーゼは、細胞培養の細胞によって産生される。一部の実施形態では、リパーゼは、目的のタンパク質の産生のための細胞培養の細胞によって産生される。目的のタンパク質の産生に好適な細胞の非限定的な例としては、細菌、昆虫、酵母、哺乳動物、および/もしくはトランスジェニック細胞が挙げられる。細胞株の非限定的な例としては、CHO、HEK293、HT-1080、PER.C6、CAP、VERO、BHK、HeLa、CV1、Cos、MDCK、3T3、NS0、NS1、PC12、W138、Sp2/0、HKB-11、TM4、MMT060562、TR1、MRC5、FS4、骨髄腫細胞株、ハイブリドーマ細胞株、および肝癌細胞株が挙げられる。一部の実施形態では、目的のタンパク質を産生するための細胞株は、安定した細胞株であり、例えば、目的のタンパク質の遺伝子が、細胞のゲノムに安定して組み込まれている。一部の実施形態では、目的のタンパク質を産生するための細胞株は、一過性の細胞株であり、例えば、細胞が遺伝子を発現するが、遺伝子はゲノムに組み込まれない。
【0041】
一部の実施形態では、目的のタンパク質は、治療用タンパク質である。一部の実施形態では、目的のタンパク質は、細胞培養物から精製されて、精製されたタンパク質調製物を生成する。一部の実施形態では、細胞培養物中のリパーゼは、精製プロセス中にタンパク質調製物から完全に除去されない。したがって、一部の実施形態では、リパーゼは、精製されたタンパク質調製物中に存在する。
【0042】
本明細書で言及されるように、「活性」リパーゼは、脂肪分解を行うことができるリパーゼである(本明細書では「脂肪分解活性」を有するとも呼ばれる)。タンパク質調製物中に存在する活性リパーゼは、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)を伴う下流プロセスを妨げ得る。一部の実施形態では、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)、およびリパーゼを含むタンパク質調製物は、薬学的製剤に含まれる。一部の実施形態では、賦形剤は、タンパク質調製物に添加される。一部の実施形態では、賦形剤は、例えば、界面応力を最小化すること、タンパク質凝集を低減すること、および/またはタンパク質溶解性を改善することによって、タンパク質調製物を安定化する。一部の実施形態では、賦形剤は、界面活性剤である。一部の実施形態では、賦形剤は、脂肪酸、エステル、またはそれらの両方を含む。一部の実施形態では、賦形剤は、活性リパーゼによる加水分解を受けやすい。一部の実施形態では、目的のタンパク質および賦形剤を含むタンパク質調製物中の活性リパーゼの存在は、調製物の安定性を低下させる。したがって、賦形剤のリパーゼ加水分解によって引き起こされる、粒子の増加、安全性の懸念(例えば、注射部位の反応の増加に起因する)、および品質の低下などの負の影響を最小化するために、タンパク質調製物中の脂肪分解活性を確実に検出することが有利である。
【0043】
一部の実施形態では、本開示は、タンパク質調製物中の脂肪分解活性を検出することができる組成物を提供する。
【0044】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料と、(b)有機溶媒と、を含み、有機溶媒が、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有し、水性アッセイ試料が、組成物の約80%~約98%であり、有機溶媒が、組成物の約2%~約20%である。
【0045】
さらなる実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)精製されたタンパク質調製物、(ii)緩衝剤、および(iii)塩を含む水性アッセイ試料と、(b)有機溶媒と、を含み、有機溶媒が、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有し、水性アッセイ試料が、組成物の約80%~約98%(体積/体積)であり、有機溶媒が、組成物の約2%~約20%(体積/体積)である。
【0046】
なおさらなる実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)タンパク質および脂質を含む精製されたタンパク質調製物、(ii)緩衝剤、(iii)約1.0mM~約20mMの塩化カルシウム、および(iv)約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む、約90%~約98%(体積/体積)の水性アッセイ試料と、(b)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはそれらの組み合わせから選択される約2%~約10%(体積/体積)の有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、を含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「水性」(例えば、水性アッセイ試料)は、水が溶媒である溶液または試料を指す。したがって、本開示の水性アッセイ試料は、例えば、細胞培養培地、緩衝液、タンパク質試料などを含み得る。一部の実施形態では、本開示の水性アッセイ試料は、タンパク質調製物を含む。
【0048】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、細胞培養上清である。細胞培養上清は、本明細書に記載されており、例えば、目的のタンパク質を産生するための細胞培養から得ることができる。一部の実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質である。一部の実施形態では、細胞培養上清は、培養細胞を溶解し、可溶性および不溶性の成分を(例えば、遠心分離によって)分離した後に生成される。培養およびタンパク質産生に好適な細胞および細胞株の例が、本明細書に提供される。一部の実施形態では、細胞培養上清は、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)および追加の宿主細胞成分を含む。一部の実施形態では、追加の宿主細胞成分は、追加の宿主細胞タンパク質を含む。一部の実施形態では、追加の宿主細胞タンパク質は、リパーゼを含む。一部の実施形態では、リパーゼは、脂肪分解活性を有する。
【0049】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、部分的に精製されたタンパク質調製物である。部分的に精製されたタンパク質調製物は、本明細書に記載されており、例えば、細胞培養物からの目的のタンパク質の部分精製手順(例えば、本明細書に記載の精製プロセス)を行った後に得ることができる。一部の実施形態では、タンパク質は、治療用タンパク質である。一部の実施形態では、部分的に精製されたタンパク質調製物は、細胞培養上清と比較して、さらなる精製ステップを経た。一部の実施形態では、部分的に精製されたタンパク質調製物は、治療用タンパク質および宿主細胞の追加の成分を含む。一部の実施形態では、宿主細胞成分は、宿主細胞タンパク質を含む。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質は、リパーゼを含む。一部の実施形態では、リパーゼは、脂肪分解活性を有する。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、部分的に精製されたタンパク質調製物中の全てのタンパク質の20%~95%(w/w)、30%~90%(w/w)、または40%~80%(w/w)である。
【0050】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、精製されたタンパク質調製物である。精製されたタンパク質調製物は、本明細書に記載されており、例えば、細胞培養物からの目的のタンパク質の精製手順(例えば、本明細書に記載の精製プロセス)を行った後に得ることができる。一部の実施形態では、目的のタンパク質は、治療用タンパク質である。一部の実施形態では、精製されたタンパク質調製物は、治療用タンパク質および宿主細胞の追加の成分である。一部の実施形態では、宿主細胞成分は、宿主細胞タンパク質を含む。一部の実施形態では、宿主細胞タンパク質は、リパーゼを含む。一部の実施形態では、リパーゼは、脂肪分解活性を有する。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、精製されたタンパク質調製物中の全てのタンパク質の70%(w/w)超、80%(w/w)超、85%(w/w)超、90%(w/w)超、95%(w/w)超、または99%(w/w)超である。
【0051】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、治療用タンパク質を含む。治療用タンパク質の非限定的な例としては、抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体など)および抗体断片、タンパク質ベースのワクチン(例えば、B型肝炎表面抗原など)、血液因子(例えば、第VIII因子および第IX因子など)、血栓溶解剤(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)、ホルモン(例えば、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン、およびゴナドトロピンなど)、造血成長因子(例えば、エリスロポエチンおよびコロニー刺激因子など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、およびインターフェロンγなど)、インターロイキンベースのタンパク質(例えば、インターロイキン-12など)、ならびに腫瘍壊死因子および治療用酵素などの他のタンパク質が挙げられる。タンパク質ベースの治療薬のさらなる例としては、ベリムマブ、イピリムマブ、ベラタセプト、ブレンツキシマブベドチン、アフリベルセプト、erwinia chrysanthemiアスパラギナーゼ、グルカルピダーゼ、オビヌツズマブ、ペムブロリズマブ、ブリナツモマブ、ニボルマブ、イダルシズマブ、アソファターゼ-アルファ、ダラツムマブ、エロツズマブ、セベリパーゼアルファーゼ、アテゾリズマブ、タリグルセラーゼアルファ、ラキシバクマブ、エロスルファーゼアルファ、メトレレプチン、ラムシルマブ、シルツキシマブ、ペムブロリズマブ、ジヌツキシマブ、エボロクマブ、ネシツムマブ、オビルトキサキシマブ、アバタセプト、アダリムマブ、アレファセプト、エタネルセプト、インフリキシマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、デニロイキンジフチトクス、およびゴリムマブが挙げられる。タンパク質治療薬のさらなる例は、例えば、Dimitrov,Methods Mol Biol 899:1-26(2012),Lagasse et al.,F1000Res 6:113(2017)、およびProtein Therapeutics,Eds:Vaughan et al.,2017:Wiley-VCH Verlagに記載されている。治療用タンパク質としては、組換えタンパク質、修飾タンパク質、および融合タンパク質、例えば、抗体-薬物コンジュゲート、抗体-サイトカイン融合物、Fc融合物、二重特異性抗体、多重特異性抗体、アフィボディ融合物、グリコシル化タンパク質およびペプチド、ならびに操作された受容体アンタゴニストが挙げられ得る。一部の実施形態では、治療用タンパク質を含むタンパク質調製物は、薬学的製剤で使用される。
【0052】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、商業的に重要なタンパク質、例えば、工業用酵素を含む。商業的に重要なタンパク質は、医薬品、化学生産、バイオ燃料、食品および飲料、ならびに消費者製品などの様々な産業で使用され得る。例えば、一部の実施形態では、タンパク質調製物は、所望の生成物を生成するためにプロセス内で使用される酵素であるか、または目的の生成物であり得る。一部の実施形態では、商業的に重要なタンパク質は、食品、医薬品合成、バイオ燃料、化学、または製造の業界で使用されている。一部の実施形態では、工業用酵素には、パラターゼリポザイム、リポパン、キシロースイソメラーゼ、ブロメラインおよびノーパザイム(食品業界で使用)、セルラーゼおよびアミラーゼ(バイオ燃料業界で使用)、レジナーゼ(紙加工業界で使用)、アミダーゼ(化学業界で使用)、ノボザイム-435(ミリスチン酸イソプロピルの化粧品製造で使用)、またはスブチリシン(洗剤で使用)が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、薬学的賦形剤を含む。薬学的賦形剤は、例えば、製造前、製造中、もしくは製造後の薬物送達システムの処理を助けるために、安定性、生物学的利用能、もしくは患者の受容性を保護、支持、もしくは強化するために、製品の識別を補助し、全体的な安全性を高めるために、使用中の薬物の有効性および/もしくは送達を補助するために、ならびに/または保存中の医薬品の完全性の維持を補助するために、含まれる。薬学的賦形剤の非限定的な例としては、界面活性剤、充填剤、希釈剤、結合剤、懸濁剤、増粘剤、コーティング剤、香味剤、崩壊剤、着色剤、潤滑剤、流動促進剤、防腐剤、甘味料などが挙げられる。一部の実施形態では、薬学的賦形剤は、タンパク質調製物に添加される。一部の実施形態では、薬学的賦形剤は、精製前、精製後、または精製中にタンパク質調製物に添加される。
【0054】
一部の実施形態では、薬学的賦形剤は、界面活性剤である。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、2つの液体間の表面張力または界面張力を低下させる薬剤を指す。一部の実施形態では、界面活性剤は、組成物の1つ以上の成分の、凝集および/もしくは沈殿を最小化することによって、かつ/または溶解性を改善することによって(例えば、表面張力を低下させ、タンパク質の表面吸着を阻害することによって;例えば、Agarkhed et al.,AAPS PharmSciTech 14:1-9(2013)を参照されたい)、組成物(例えば、本明細書に記載のタンパク質調製物)を安定化することができる。また、薬学的組成物中の界面活性剤は、活性医薬成分(API)の生物学的利用能を調節し、APIを好ましい多形形態で維持するのを補助し、凝集もしくは解離を防止し、かつ/または活性成分の免疫原性応答を調節することもできる。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、および/または両性電解性界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤の非限定的な例としては、脂肪酸(例えば、ポリソルベート20中のラウリン酸およびポリソルベート80中のオレイン酸)でエステル化されたエトキシル化ソルビタンに由来するポリソルベート(例えば、TWEEN20およびTWEEN80などのTWEEN界面活性剤、それぞれポリソルベート20、ポリソルベート80としても知られている)、チロキサポール、ポロキサマー(例えば、PLURONIC F68LF、PLURONIC L-G2LF、PLURONIC L62D、LUTROL F68、およびKOLLIPHOR P188)、ポリオキシエチレンヒマシ油(例えば、KOLLIPHOR EL)およびその誘導体、ソルビタンエステル(Spanとしても知られている)、ステアリン酸ポリオキシル、レシチン、リン脂質、ポリオキシエチレン界面活性剤(TRITON(例えば、TRITON X-100)およびBRIJ(例えば、BRIJ 35)など)、ならびにポリエトキシル化脂肪酸(例えば、MYRJ S40、MYRJ S100、およびMYRJ 52)が挙げられる。
【0055】
一部の実施形態では、界面活性剤は、脂肪酸を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、エステルを含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートである。ポリソルベートは、脂肪酸でエステル化されたエトキシル化ソルビタンに由来する化合物のクラスであり、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリソルベート21、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート81、およびポリソルベート81が挙げられる。一部の実施形態では、本明細書に提供されるタンパク質調製物は、ポリソルベートを含む。一部の実施形態では、タンパク質調製物中のポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせである。
【0056】
一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.001%(w/v)~約2%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.005%(w/v)~約2%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.01%(w/v)~約2%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.02%~約1.5%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.03%~約1.0%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.04%~約0.8%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.05%~約0.6%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.06%~約0.4%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.07%~約0.2%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.08%~約0.15%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.09%~約0.10%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、水性アッセイ試料の約0.01%~約0.04%(w/v)である。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートである。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせである。
【0057】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、1つ以上の追加の宿主細胞タンパク質をさらに含む。本明細書に記載されるように、タンパク質調製物は、細胞培養物、すなわち、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)の宿主細胞を含む細胞培養物から調製される。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、1つ以上の追加の宿主細胞タンパク質を含む。一部の実施形態では、追加の宿主細胞タンパク質は、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)と実質的に同じ条件で可溶性である。一部の実施形態では、追加の宿主細胞タンパク質は、目的のタンパク質(例えば、治療用タンパク質)から容易に分離することができない。一部の実施形態では、追加の宿主細胞タンパク質は、リパーゼを含む。一部の実施形態では、追加の宿主細胞タンパク質のうちの1つ以上は、脂肪分解活性を有する。
【0058】
一部の実施形態では、タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料は、緩衝剤、塩、またはその両方をさらに含む。一般に、本開示の塩は、アニオンがOH-およびO2-でないイオン性化合物を指す。一部の実施形態では、塩は、組成物中の1つ以上の成分の分解を低減および/または防止する。水性アッセイ試料中に含まれ得る好適な塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などを含み、当業者によって選択することができる。一部の実施形態では、塩は、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化アンモニウム(NH4Cl)、酢酸アンモニウム(NH4CH3COO)、硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、塩は、NaCl、CaCl2、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、塩は、NaClおよびCaCl2の両方である。
【0059】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料中のNaClの濃度は、試料中の脂肪分解活性の正確かつ/または効率的な検出を促進する。一部の実施形態では、NaClは、水性アッセイ試料中で、約10mM~約500mMである。一部の実施形態では、NaClは、水性アッセイ試料中で、約25mM~約400mMである。一部の実施形態では、NaClは、水性アッセイ試料中で、約50mM~約300mMである。一部の実施形態では、NaClは、水性アッセイ試料中で、約75mM~約250mMである。一部の実施形態では、NaClは、水性アッセイ試料中で、約100mM~約200mMである。一部の実施形態では、NaClは、水性アッセイ緩衝液中で、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、または200mMである。
【0060】
一部の実施形態では、NaClは、最終組成物(水性アッセイ試料および有機溶媒)中で、約10mM~約500mMである。一部の実施形態では、NaClは、最終組成物中で、約25mM~約400mMである。一部の実施形態では、NaClは、最終組成物中で、約50mM~約300mMである。一部の実施形態では、NaClは、最終組成物中で、約75mM~約250mMである。一部の実施形態では、NaClは、最終組成物中で、約100mM~約200mMである。一部の実施形態では、NaClは、最終組成物中で、約100mM~約140mM例えば120mMである。一部の実施形態では、NaClは、最終組成物中、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約110mM、約120mM、約130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、または200mMである。
【0061】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料中のCaCl2の濃度は、試料中の脂肪分解活性の正確かつ/または効率的な検出を促進する。一部の実施形態では、CaCl2は、水性アッセイ試料中で、約0.1mM~約20mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、水性アッセイ試料中で、約0.2mM~約10mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、水性アッセイ試料中で、約0.5mM~約5.0mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、水性アッセイ試料中で、約0.7mM~約3.0mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、水性アッセイ試料中で、約1.0mM~約2.0mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、水性アッセイ試料中で、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0mM、約1.1mM、約1.2mM、約1.3mM、約1.5mM、約1.6mM、約1.7mM、約1.8mM、約1.9mM、約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、または約5.0mMである。
【0062】
一部の実施形態では、CaCl2は、最終組成物(水性アッセイ試料および有機溶媒)中で、約0.1mM~約20mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、最終組成物中で、約0.2mM~約10mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、最終組成物中で、約0.5mM~約5.0mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、最終組成物中で、約0.7mM~約3.0mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、最終組成物中で、約1.0mM~約2.0mMである。一部の実施形態では、CaCl2は、最終組成物中で、約0.5mM、約0.6mM、約0.7mM、約0.8mM、約0.9mM、約1.0mM、約1.1mM、約1.2mM、約1.3mM、約1.5mM、約1.6mM、約1.7mM、約1.8mM、約1.9mM、約2.0mM、約2.5mM、約3.0mM、約3.5mM、約4.0mM、約4.5mM、または約5.0mMである。
【0063】
一部の実施形態では、NaClおよびCaCl2は、水性アッセイ試料中の1つ以上の成分の分解を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、NaClおよびCaCl2は、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)の凝集および/または沈殿を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、NaClおよびCaCl2は、水性アッセイ試料中に存在しない組成物中(例えば、有機溶媒中)の1つ以上の成分の分解を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、NaClおよびCaCl2は、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)の自己加水分解を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約10mM~約500mMであり、CaCl2は、約0.1mM~約20mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約25mM~約400mMであり、CaCl2は、約0.2mM~約10mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約50mM~約300mMであり、CaCl2は、約0.5mM~約5.0mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約75mM~約250mMであり、CaCl2は、約0.7~約3.0mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約100mM~約200mMであり、CaCl2は、約1.0~約2.0mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約150mMであり、CaCl2は、約0.3mMである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「緩衝剤」は、溶液のpHを維持するために溶液中で使用される物質を指す。緩衝剤は、溶液を特定のpH範囲に維持し(すなわち、所与の範囲における緩衝能)、追加の成分が溶液に添加されたときのpHの急激な変化を防止することができる。一般に、緩衝剤は、弱酸または弱塩基であり得る。一部の実施形態では、緩衝剤は、約pH5.0、約pH5.5、約pH6.0、約pH6.5、または約pH7.0での緩衝能を有する。約pH5.0~約pH7.0の緩衝能を有する緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、MES、Bis-Tris、ADA、ACES、PIPES、MOPSO、Bis-Trisプロパン、BES、MOPS、TES、HEPES、DIPSO、MOBS、TAPSO、およびTrisが挙げられる。緩衝剤の緩衝能は、当業者によって決定され得る。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中の緩衝剤は、試料中の脂肪分解活性の正確かつ/または効率的な検出を促進する。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中の1つ以上の成分の分解を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、緩衝剤は、タンパク質(例えば、治療用タンパク質)の凝集を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中に存在しない組成物中(例えば、組成物の有機溶媒中)の1つ以上の成分の分解を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、緩衝剤は、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)の自己加水分解を、低減および/または防止する。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性緩衝液として水性アッセイ試料中に提供される。
【0065】
一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約5mM~約200mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約10mM~約100mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約20mM~約80mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約30mM~約70mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約40mM~約60mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約10mM、約12mM、約15mM、約18mM、約20mM、約22mM、約25mM、約28mM、約30mM、約32mM、約35mM、約38mM、約40mM、約42mM、約45mM、約48mM、約50mM、約52mM、約55mM、約58mM、約60mM、約62mM、約65mM、約68mM、約70mM、約72mM、約75mM、約78mM、約80mM、約82mM、約85mM、約88mM、約90mM、約92mM、約95mM、約98mM、または約100mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Bis-Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Trisである。
【0066】
一部の実施形態では、緩衝剤は、最終組成物(水性アッセイ試料および有機溶媒)中で、約5mM~約200mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、最終組成物(水性アッセイ試料および有機溶媒)中で、約10mM~約100mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、最終組成物中で、約20mM~約80mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、最終組成物中で、約30mM~約70mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、最終組成物中で、約40mM~約60mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、最終組成物中で、約10mM、約12mM、約15mM、約18mM、約20mM、約22mM、約25mM、約28mM、約30mM、約32mM、約35mM、約38mM、約40mM、約42mM、約45mM、約48mM、約50mM、約52mM、約55mM、約58mM、約60mM、約62mM、約65mM、約68mM、約70mM、約72mM、約75mM、約78mM、約80mM、約82mM、約85mM、約88mM、約90mM、約92mM、約95mM、約98mM、または約100mMである。
【0067】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、NaCl、CaCl2、および緩衝剤を含む。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約10mM~約500mMであり、CaCl2は、約0.1mM~約20mMであり、緩衝剤は、約5mM~約200mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約25mM~約400mMであり、CaCl2は、約0.2mM~約10mMであり、緩衝剤は、約10mM~約100mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約50mM~約300mMであり、CaCl2は、約0.5mM~約5.0mMであり、緩衝剤は、約20mM~約8mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約75mM~約250mMであり、CaCl2は、約0.7~約3.0mMであり、緩衝剤は、約30mM~約70mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約100mM~約200mMであり、CaCl2は、約1.0~約2.0mMであり、緩衝剤は、約40mM~約60mMである。一部の実施形態では、水性アッセイ試料中で、NaClは、約150mMであり、CaCl2は、約0.3mMであり、緩衝剤は、約45mM~約55mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Bis-Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Trisである。当業者は、塩および緩衝液がタンパク質調製物に一般的に見出され、したがって、上記のパーセンテージは例のみによって提供されることを認識するであろう。
【0068】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料のpHは、4Muの蛍光強度を最大化するように調整される。一部の実施形態では、水性アッセイ試料のpHは、水性アッセイ試料および/または有機溶媒の1つ以上の成分を安定化するように調整される。一部の実施形態では、わずかに酸性~中性のpH(例えば、約5.0~約7.0)は、水性アッセイ試料中の成分の分解を最小化する。一部の実施形態では、わずかに酸性~中性のpH(例えば、約5.0~約7.0)は、治療用タンパク質の凝集を最小化する。一部の実施形態では、わずかに酸性~中性のpH(例えば、約5.0~約7.0)は、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)の自己加水分解を最小化する。
【0069】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、酸性pHを有する。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、5.0~7.0のpHを有する。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、または約7.0のpHを有する。
【0070】
一部の実施形態では、本開示の組成物は、本明細書に記載される水性アッセイ試料と、有機溶媒と、を含む。本明細書で使用される場合、「有機溶媒」とは、1つ以上の溶質を溶解するために使用することができる炭素系物質を指す。有機溶媒の例としては、例えば、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、およびハロゲン化炭化水素を含む炭化水素、ケトン、アミン、エステル、アルコール、アルデヒド、エーテル、ニトリル、スルホキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、有機溶媒は、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を可溶化することができる。
【0071】
一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリル(ACN)を含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコールを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、C1-C6アルコールである。一部の実施形態では、C1-C6アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、またはヘキサノールである。一部の実施形態では、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルおよびアルコールの混合物を含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルおよびイソプロパノールの混合物を含む。一部の実施形態では、アセトニトリルおよびイソプロパノールは、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、または約1:1の比率で混合される。
【0072】
一部の実施形態では、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)は、有機溶媒中に存在する。4MuOは、以下の構造を含む。
【化1】
【0073】
一部の実施形態では、4MuOは、加水分解して、オレイン酸および4-メチルウンベリフェロン(4Mu)を形成する(スキームI)。
【化2】
【0074】
一部の実施形態では、4MuOは、蛍光性ではない。一部の実施形態では、4Muは、蛍光性である。一部の実施形態では、4Muの蛍光は、リパーゼによる4MuOの加水分解を検出するために使用され、したがって、脂肪分解活性の指標である。当業者であれば、4MuOの加水分解(4Muの蛍光によって測定される)は、タンパク質調製物中で脂肪分解活性が生じた(すなわち、界面活性剤が加水分解された)ことを示し、おそらく、タンパク質調製物が不安定化されている可能性が高いことを理解するであろう。一部の実施形態では、4Muの蛍光は、約330nmの励起波長および約495nmの発光波長で測定され得る。一部の実施形態では、4Muの蛍光は、約327nmの励起波長および約449nmの発光波長で測定され得る。一部の実施形態では、4Muの蛍光は、約300nm~約350nmの励起波長および約420nm~約500nmの発光波長で測定され得る。一部の実施形態では、4Muの蛍光測定パラメータ(例えば、励起波長および発光波長)は、pHが変化するときに変化する。一部の実施形態では、4Muの蛍光測定パラメータは、塩および/または緩衝剤の濃度が変化するときに変化する。一部の実施形態では、4MuOは、リパーゼの基質である。一部の実施形態では、4MuOは、本明細書に記載のタンパク質調製物中のリパーゼによって加水分解される。一部の実施形態では、4Muの形成は、蛍光によって測定される。一部の実施形態では、本明細書に記載のタンパク質調製物を含むアッセイ試料の脂肪分解活性は、4Muの蛍光によって測定される。
【0075】
様々な濃度の4MuOを、本明細書に記載される組成物および方法に使用することができる。一般に、4MuOの量は、自己加水分解の影響を最小化するために,最小限に抑える必要がある。一部の実施形態では、有機溶媒中の4MuOは、約1μM~約1mM、または約10μM~約500μM、または約20μM~約200μM、または約50μM~約150μM、または約75μM~約125μM、または約100μMである。
【0076】
一部の実施形態では、組成物は、本明細書に記載されるタンパク質調製物を含む水性アッセイ試料と、本明細書に記載される4MuOを含む有機溶媒と、を含む。一部の実施形態では、組成物は、等量の水性アッセイ試料および有機溶媒を含まない。一部の実施形態では、組成物中の有機溶媒の量は、タンパク質調製物(特に、治療用タンパク質)に対する有機溶媒の潜在的な悪影響を最小化するために、組成物中の水性アッセイ緩衝液の量よりも少ない。例えば、有機溶媒の量が多すぎる場合、治療用タンパク質が凝集する可能性がある。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約70%~約99.9体積%であり、有機溶媒は、組成物の約0.1%~約30体積%である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約70%~約99.5体積%であり、有機溶媒は、組成物の約0.5%~約30体積%である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約70%~約99体積%であり、有機溶媒は、組成物の約1%~約30体積%である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約75%~約99体積%であり、有機溶媒は、組成物の約1%~約25体積%である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約80%~約98体積%であり、有機溶媒は、組成物の約2%~約20体積%である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約90%~約98体積%であり、有機溶媒は、組成物の約2%~約10体積%である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約95%~約98体積%であり、有機溶媒は、組成物の約2体積%~約5体積%である。
【0077】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、組成物の約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約99.1%、約99.2%、約99.3%、約99.4%、約99.5%、約99.6%、約99.7%、約99.8%、または約99.9体積%である。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、組成物の約70%~約85体積%、約75%~約85体積%、または約80%~約85体積%であり、水性アッセイ試料の非タンパク質調製物成分(例えば、緩衝剤および/または塩)は、組成物の約15%~約30%、約15%~約25%、約15%~約20体積%を含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、組成物の約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50体積%である。当業者は、塩および緩衝液がタンパク質調製物に一般的に見出され、したがって、上記のパーセンテージは例のみによって使用されることを認識するであろう。
【0078】
一部の実施形態では、組成物は、リパーゼ阻害剤をさらに含む。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、リパーゼを不活性化することによって、組成物中の脂肪分解活性を低減または消失する。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、脂肪分解活性の検出のための陰性対照を提供するために組成物に含まれ、すなわち、リパーゼ阻害剤を含む組成物は、脂肪分解活性を有することが予想されない。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、例えば、4Muの蛍光を測定することによって、脂肪分解活性が検出された後に、組成物に添加される。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、水性アッセイ試料中にある。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、水溶性である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、有機溶媒中にある。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、水溶性ではない。
【0079】
一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中の脂肪分解活性を低減または消失するのに十分な濃度である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中の脂肪分解活性を、組成物中で、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約99%、または約100%減少させるのに十分な濃度である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約1μM~約50μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約2μM~約40μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約3μM~約35μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約4μM~約30μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約5μM~約25μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約1μM、約2μM、約3μM、約4μM、約5μM、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、約10μM、約11μM、約12μM、約13μM、約14μM、約15μM、約16μM、約17μM、約17μM、約18μM、約19μM、約20μM、約21μM、約22μM、約23μM、約24μM、約25μM、約30μM、約35μM、約40μM、約45μM、または約50μMである。
【0080】
一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、アルカロイドであり、例えば、カフェイン、テオフィリン、およびテオブロミンである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、カロテノイドであり、例えば、フコキサンチンなどである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、グリコシドであり、例えば、アクテオシド、ケンフェロール-3-O-ルチノシド、ルチン、ケンフェロール、ケルセチン、およびルテオリンである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、ポリフェノールであり、例えば、ガランギン、ヘスペリジン、リコカルコンA、CT-II、7-フロロエコール、およびイソリキリチゲニンである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、サポニンであり、例えば、セシロシドおよびチイアノシドである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、テルペンであり、例えば、クロシンおよびクロセチンである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、細菌に由来し、例えば、リプスタチン、バリラクトン、ペルシキニン、パンクリシン、エベラクトン、ビブララクトン、およびエステラスチンである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、合成リパーゼ阻害剤、例えば、天然脂肪の合成類似体である。リパーゼ阻害剤は、Lunagariya yet al.,EXCLI J 13:897-921(2014)に概説されている。
【0081】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)タンパク質および脂質を含む精製されたタンパク質調製物、(ii)緩衝剤、(iii)約1.0mM~約2.0mMの塩化カルシウム、および(iv)約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む、約90%~約99.9%(体積/体積)の水性アッセイ試料と、(b)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはそれらの組み合わせから選択される約10%~約0.1%(体積/体積)の有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、を含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する。
【0082】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)タンパク質およびポリソルベート界面活性剤を含む精製されたタンパク質調製物、(ii)緩衝剤、(iii)約1.0mM~約2.0mMの塩化カルシウム、および(iv)約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む、約90%~約99.9%(体積/体積)の水性アッセイ試料と、(b)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはそれらの組み合わせから選択される約10%~約0.1%(体積/体積)の有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、を含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する。
【0083】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)タンパク質および脂質を含む部分的に精製されたタンパク質調製物と、(ii)緩衝剤と、(iii)約1.0mM~約2.0mMの塩化カルシウムと、(iv)約100mM~約200mMの塩化ナトリウムとを含む、約90%~約99.9%(体積/体積)の水性アッセイ試料と、(b)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはこれらの組み合わせから選択される約10%~約0.1%(体積/体積)の有機溶媒であって、さらに4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む、有機溶媒と、を含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する水性溶媒。
【0084】
一部の実施形態では、本開示は、組成物を提供し、(a)(i)タンパク質および脂質を含む細胞培養上清、(ii)緩衝剤、(iii)約1.0mM~約2.0mMの塩化カルシウム、および(iv)約100mM~約200mMの塩化ナトリウムを含む、約90%~約99.9%(体積/体積)の水性アッセイ試料と、(b)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、またはそれらの組み合わせから選択される約10%~約0.1%(体積/体積)の有機溶媒であって、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)をさらに含む、有機溶媒と、を含み、水性アッセイ試料が、5.0~7.0のpHを有する。
【0085】
さらなる実施形態では、本明細書に提供される組成物は、タンパク質調製物中の脂肪分解活性を検出するための方法で使用されるのに好適である。一部の実施形態では、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法をさらに提供する。
【0086】
一部の実施形態では、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法を提供し、当該方法は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせることと、(b)蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、を含む。
【0087】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、本明細書に記載の水性アッセイ試料である。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、5.0~7.0のpHを有する。
【0088】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、本明細書に記載の緩衝剤、塩、またはその両方をさらに含む。また、本方法に好適な緩衝剤および塩ならびにそれらの濃度の例も、本明細書に提供される。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム(CaCl2)、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムである。一部の実施形態では、塩化ナトリウムは、水性アッセイ試料中で、約50mM~約400mMである。一部の実施形態では、塩化ナトリウムは、水性アッセイ試料中で、約100mM~約200mMである。一部の実施形態では、塩化カルシウムは、水性アッセイ試料中で、約0.2mM~約10mMである。一部の実施形態では、塩化カルシウムは、水性アッセイ試料中で、約1.0mM~約2.0mMである。
【0089】
一部の実施形態では、緩衝剤は、約pH6.0で緩衝能を有する。一部の実施形態では、緩衝剤は、Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Bis-Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約2mM~約200mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約10mM~約100mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約40mM~約60mMである。一部の実施形態では、緩衝剤は、水性アッセイ試料中で、約45mM~約55mMである。
【0090】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、本明細書に記載のタンパク質調製物である。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、細胞培養上清である。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、部分的に精製されたタンパク質調製物である。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、精製されたタンパク質調製物である。様々な程度に精製されたタンパク質調製物、例えば、細胞培養上清、部分的に精製されたタンパク質調製物、および精製されたタンパク質調製物が本明細書に記載される。一部の実施形態では、タンパク質調製物は、治療用タンパク質(例えば、本明細書に記載の治療用タンパク質)を含む。本開示の方法は、タンパク質調製物の精製プロセス全体を通して、タンパク質調製物中の脂肪分解活性の単純かつ効率的な決定を有利に可能にする。例えば、細胞培養上清(またはその後の精製プロセスの生成物)の脂肪分解活性を、本方法を使用して測定して、その後の精製ステップの間にリパーゼを除去する必要があるかどうかを判定することができる。有利には、本方法は、タンパク質調製物中の脂肪分解活性が適切に消失しているかどうかを判定するために、精製プロセス全体を通して生成物に対して使用することができる。
【0091】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、追加の宿主細胞タンパク質を含む。一部の実施形態では、追加の宿主細胞タンパク質は、リパーゼを含む。リパーゼは、本明細書に記載される。
【0092】
一部の実施形態では、タンパク質調製物は、界面活性剤(例えば、本明細書に記載の界面活性剤)を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートである。一部の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはそれらの組み合わせである。
【0093】
一部の実施形態では、有機溶媒は、本明細書に記載の有機溶媒である。一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコールを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、C1-C6アルコールである。一部の実施形態では、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルおよびイソプロパノールの混合物を含む。一部の実施形態では、アセトニトリルおよびイソプロパノールは、約3:1の比率で混合される。
【0094】
一部の実施形態では、有機溶媒は、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む。4MuOの構造は、本明細書に提供される。一部の実施形態では、4MuOは、例えば、スキームIに記載されるように加水分解されて、オレイン酸および4-メチルウンベリフェロン(4Mu)を形成する。4Muの構造は、本明細書に提供される。一部の実施形態では、4Muは、蛍光性である。一部の実施形態では、4Muの蛍光は、約330nmの励起および495mmの発光で測定される。
【0095】
一部の実施形態では、本方法は、蛍光を、最大24時間測定することを含む。一部の実施形態では、蛍光は、約24時間~約400時間測定される。一部の実施形態では、蛍光は、約24時間を超えて測定される。一部の実施形態では、蛍光は、約100時間を超えて測定される。一部の実施形態では、蛍光は、約300時間を超えて測定される。蛍光測定は、必ずしも連続測定である必要はなく、所定の時点で蛍光が測定され得ることを理解されたい。一部の実施形態では、蛍光は、約12時間~約400時間の選択された時点で測定される。一部の実施形態では、蛍光は、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約120時間、約144時間、約168時間、約192時間、約216時間、約240時間、約264時間、約288時間、約312時間、約336時間、約360時間、約384時間、または約400時間の時点で測定される。蛍光が測定される期間は、タンパク質調製物中のリパーゼ活性のレベルに応じて選択され得る。例えば、低レベルの脂肪分解活性は、4MuOのより遅い加水分解に起因して、より長い検出期間を必要とし得る。
【0096】
一部の実施形態では、治療用タンパク質を含むタンパク質調製物は、精製され、次いで、一定期間(例えば、4時間未満、8時間未満、1日未満、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約1週間、1週間超、約2週間、2週間超、約3週間、3週間超、約1ヶ月間、1ヶ月間超、約2ヶ月間、2ヶ月間超、約3ヶ月間、または3ヶ月間超)保存される。次いで、タンパク質調製物を本方法に供して、脂肪分解活性を検出する。
【0097】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約70:30~約99:1の比率で組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約75:25~約99:1の比率で組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約80:20~約98:2の比率で組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約85:15~約98:2の比率で組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約90:10~約98:2の比率で組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および有機溶媒は、約95:5~約98:2の比率で組み合わされる。
【0098】
一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、ステップ(a)の前に、リパーゼ阻害剤と約10分間~約1時間インキュベートされ、タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料と有機溶媒が組み合わされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料は、ステップ(a)の前に、リパーゼ阻害剤と約15分間~約45分間、約20分間~約40分間、または約30分間インキュベートされる。一部の実施形態では、水性アッセイ試料をリパーゼ阻害剤とインキュベートすると、脂肪分解活性が低減または消失する。一部の実施形態では、水性アッセイ試料をリパーゼ阻害剤とインキュベートすることは、脂肪分解活性の検出のための陰性対照を提供する。実施形態では、水性アッセイ試料が、ステップ(a)の前に、リパーゼ阻害剤とインキュベートされ、測定された蛍光は、脂肪分解活性が低い(すなわち、低い脂肪分解活性または脂肪分解活性の欠如を示す)と予想される。リパーゼ阻害剤は、本明細書に記載される。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約1μM~約50μMである。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、組成物中で、約5μM~約25μMである。
【0099】
一部の実施形態では、対照試料は、脂肪分解活性のための水性アッセイ試料と並行して測定される。一部の実施形態では、本開示は、水性アッセイ試料中の脂肪分解活性を検出する方法を提供し、当該方法は、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせて、アッセイ組成物を形成することと、(b)タンパク質調製物およびリパーゼ阻害剤を含む対照試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせて、対照組成物を形成することと、(c)アッセイ組成物および対照組成物中の蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、を含む。一部の実施形態では、(a)のタンパク質調製物および(b)のタンパク質調製物は、同じタンパク質調製物から提供される。例えば、細胞培養物からタンパク質調製物を得て、それから2つのアリコートを取り出すことができる。一方のアリコートは、水性アッセイ試料のタンパク質調製物であり得、他方のアリコートは、対照試料のタンパク質調製物であり得る。一部の実施形態では、(a)のタンパク質調製物および(b)のタンパク質調製物は、実質的に同じ成分を含む。一部の実施形態では、(a)のタンパク質調製物および(b)のタンパク質調製物は、同じレベルの脂肪分解活性を有すると予想される。一部の実施形態では、水性アッセイ試料および対照試料は、対照試料中のリパーゼ阻害剤を除いて、実質的に同じ成分を有する。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤を含む対照試料は、陰性対照試料であり、すなわち、蛍光が検出されないと予想される。一部の実施形態では、本方法は、陽性対照試料(すなわち、蛍光が予想される試料)をさらに利用する。一部の実施形態では、陽性対照試料は、既知の量の4Muを含む。一部の実施形態では、陽性対照試料は、既知の量の4MuOおよび既知の量の活性リパーゼを含む。
【0100】
本明細書で考察されるように、脂肪分解活性を有するリパーゼは、タンパク質調製物の成分を妨害し得る。一部の実施形態では、脂肪分解活性を有するリパーゼは、タンパク質調製物中に存在する脂肪酸および/またはエステルを加水分解する。一部の実施形態では、脂肪分解活性を有するリパーゼは、タンパク質調製物中に存在する界面活性剤を加水分解する。一部の実施形態では、界面活性剤の加水分解は、タンパク質調製物の安定性を低下させる。本明細書で提供される方法を使用して脂肪分解活性の量を測定することによって、タンパク質調製物中で生じた加水分解のレベルは、その後、脂肪分解活性の測定量に基づいて決定され得、それによって、タンパク質調製物の安定性が決定される。一部の実施形態では、本開示は、タンパク質調製物の安定性を決定する方法を提供し、(a)タンパク質調製物を含む水性アッセイ試料を、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と組み合わせることと、(b)蛍光によって、オレエートおよび4-メチルウンベリフェロン(4Mu)の形成を測定することと、(c)測定された蛍光に基づいて、タンパク質調製物の安定性を決定することと、を含む。例えば、対照と比較して増加した蛍光は、リパーゼの存在を示し、賦形剤(例えば、ポリソルベートなどの界面活性剤)が加水分解され、それによって、非極性の、したがって不溶性の、長鎖脂肪酸を形成し、これが、タンパク質調製物中のタンパク質を不安定化させ得ることを示す。一部の実施形態では、本方法は、薬学的製剤のタンパク質調製物の安定性を決定するために使用される。
【0101】
一部の実施形態では、本開示は、本発明の組成物を提供するのに好適なキットを提供する。一部の実施形態では、本開示は、本発明の方法を達成するために使用され得るキットを提供する。例えば、一部の実施形態では、本開示は、キットをさらに提供し、2つ以上の容器内に、(a)有機溶媒と、(b)4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)と、(c)リパーゼ阻害剤と、を含む。
【0102】
任意の好適な容器は、本明細書に記載のキットに使用され得る。一部の実施形態では、容器は、バイアルである。一部の実施形態では、容器は、ボトルである。一部の実施形態では、各容器は、多区画(multi-compartment)容器の区画である。一部の実施形態では、有機溶媒および4MuOは、第1の容器内にあり、リパーゼ阻害剤は、第2の容器内にある。一部の実施形態では、有機溶媒およびリパーゼ阻害剤は、第1の容器内にあり、4MuOは、第2の容器内にある。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤および4MuOは、第1の容器内にあり、有機溶媒は、第2の容器内にある。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤および有機溶媒は、第1の容器内にあり、4MuOおよび有機溶媒は、第2の容器内にある。一部の実施形態では、4MuOは、固体(例えば、粉末)として提供される。一部の実施形態では、4MuOは、溶液(例えば、有機溶媒)中に提供される。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、固体(例えば、凍結乾燥粉末などの粉末)として提供される。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、溶液(例えば、有機溶媒)中に提供される。上記実施形態のいずれかにおいて、(a)有機溶媒、(b)4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)、および/または(c)リパーゼ阻害剤は、所定の特定の量のタンパク質調製物を受容するために、それぞれの容器に含まれ得、各成分の量は、本明細書に記載の脂肪分解活性を決定する方法を実施するのに十分である。一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のように、脂肪分解活性を決定するためにキットを利用するための説明書をさらに含む。
【0103】
一部の実施形態では、キットは、緩衝剤、塩、またはそれらの両方をさらに含む。好適な緩衝剤および塩は、本明細書に記載される。一部の実施形態では、キットのユーザーは、キットと共に使用するためのタンパク質調製物を提供する。一部の実施形態では、ユーザーのタンパク質調製物は、キットとの使用に好適でない緩衝液(例えば、4MuOの自己加水分解および/またはリパーゼ阻害剤の分解を促進する緩衝液)中にある。一部の実施形態では、キットは、緩衝液交換カラムを提供する。一部の実施形態では、緩衝液交換カラムは、ユーザーのタンパク質調製物の緩衝液を、本明細書で提供されるキットとの使用に好適な緩衝液に交換する。緩衝液交換カラムの例としては、THERMO FISHERからのZEBAカラム、GE HEALTHCAREからのPD-10、SEPHADEX、HIPREP、およびHITRAPカラム、SARTORIUSからのVIVAFLOWおよびVIVASPIN濃縮器、BIO-RADからのBIO-SPINおよびECONOカラム、ならびにG-BIOSCIENCESからのSPINOUTカラムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本明細書に記載のキットのカラムは、緩衝系を交換するために使用され得る。この目的のために使用されるカラムは、当業者に既知である。例えば、カラムを使用して、タンパク質調製物中の緩衝液を、本明細書に記載される脂肪分解活性を決定する方法を実施するのにより好適な緩衝液に交換することができる。
【0105】
一部の実施形態では、本開示は、キットを提供し、当該キットは、(a)4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を含む有機溶媒と、(b)タンパク質調製物の緩衝液を交換するのに好適なカラムと、(c)リパーゼ阻害剤と、を含む。
【0106】
本開示のキットに好適な有機溶媒には、本明細書に記載の有機溶媒が含まれる。一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコール、スルホキシド、ニトリル、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、アルコールを含む。一部の実施形態では、有機溶媒は、C1-C6アルコールである。一部の実施形態では、有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、有機溶媒は、アセトニトリルおよびイソプロピルアルコールの混合物を含む。
【0107】
本開示のキットに好適なリパーゼ阻害剤には、本明細書に記載のリパーゼ阻害剤が含まれる。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、(S)-2-ホルミルアミノ-4-メチル-ペンタン酸(S)-1-[[(2S,3S)-3-ヘキシル-4-オキソ-2-オキセタニル]メチル]-ドデシルエステル(オルリスタット)である。一部の実施形態では、リパーゼ阻害剤は、本明細書に記載される脂肪分解活性を決定する方法を実施するときに、対照として使用される。
【0108】
本開示のキットに好適な塩には、本明細書に記載される塩が含まれる。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、またはそれらの組み合わせである。一部の実施形態では、塩は、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムである。
【0109】
本開示のキットに好適な緩衝剤には、本明細書に記載の緩衝剤が含まれる。一部の実施形態では、緩衝剤は、Trisである。一部の実施形態では、緩衝剤は、Bis-Trisである。
【0110】
一部の実施形態では、キットは、脂肪分解活性を決定するためのアッセイを実施するための説明書をさらに含む。一部の実施形態では、アッセイは、本明細書に記載の方法を含む。
【0111】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む本明細書に引用される全ての参考文献、およびそれらに引用される参考文献(それらがまだ引用されていない範囲まで)は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【実施例】
【0112】
本明細書に記載の実験のための化学物質および試薬は、以下の通りである。
【0113】
2-プロパノール(IPA、99.9%)、アセトニトリル(ACN、HPLC Plus、≧99.9%)、塩化カルシウム(≧97%)、Triton X-100(実験室グレード)、リン酸ナトリウム一塩基性一水和物(ACS試薬、≧95%)、ジメチルスルホキシド(DMSO、Reagent Plus、≧99.5%)は、Sigma-Aldrich(現Merck KGaA)から入手した。4-メチルウンベリフェロン(4Mu、≧98%)およびN-フェニル-1-ナフチルアミン(NPN、試薬グレード、98%)は、Aldrichから入手した。塩化ナトリウム(バイオ試薬、≧99%)、TRIZMA(登録商標)塩酸塩(試薬グレード、99.0%)、TRIZMA(登録商標)塩基(一次標準および緩衝液、≧99.9%)、ブタ膵臓由来リパーゼ(PPL、II型、100~500U/mg)、BIS-TRIS塩酸塩(≧99.0%(滴定))、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO、蛍光用に好適、≧95%(HPCE))およびKOLLIPHOR(登録商標)P188(細胞培養用に好適)は、Sigmaから入手した。アセトニトリル(LC-MSグレード)は、Thermo Fisherから入手した。エタノール(EtOH、液体クロマトグラフィーの勾配グレード)および塩酸25%(v/v)は、Merckから入手した。スクロース(USP/NF、EP、JP、高純度)は、Pfanstiehlから入手した。水酸化ナトリウムの1M溶液は、Honeywell FlukaTMから入手した。塩化ナトリウム(USP、マルチコンペンディアル)、L-ヒスチジン(USP、マルチコンペンディアル)、L-ヒスチジン一塩酸塩(FCC、マルチコンペンディアル)、PS20(NF)、およびPS80(NF)は、J.T.Baker.から入手した。高度に精製された水(以下、「水」と呼ばれる)は、水浄化システム(Barnstead(商標)GenPure(商標)Pro、Thermo Fisher)を使用することによって調製した。pHは、pHメーター(780 pHメーター、Metrohm)および白金pH電極(Unitrode Pt1000、Metrohm)を使用して測定した。非治療用モノクローナル抗体(mAb1)を発現する独自のCHO細胞株から産生されたHCPの一部としてリパーゼの混合物を含む細胞培養回収液(CCHF)、ならびにmAb1は、Lonza Biologics,Slough,UKから入手した。
【0114】
実施例1A.リパーゼアッセイの開発I:pH
Kurihara et al.,Biol Pharm Bull 26:383-385(2003)に記載されている方法に基づいて、リパーゼアッセイを開発した。これは、リパーゼ酵素の基質として、4-メチルウンベリフェリルオレエート(4MuO)を利用する。
【0115】
ブタ膵臓リパーゼ(PPL)を、アッセイの開発に使用した。この実験では、500nMのPPLおよび4MuOを、4つの異なる緩衝系のうちの1つで22時間インキュベートし、4MuOの蛍光クエンチおよび自己加水分解について試験した:(a)10.4mMのTris pH8.1、(b)10.4mMのBis-Tris pH6、(c)41.6mMのBis-Tris pH6、(d)104mMのBis-Tris pH6。
【0116】
図1A~1Bおよび表1の結果は、pH8と比較して、pH6で、4MuOの自己加水分解が減少したことを示す。
図1Cは、pH8における自己加水分解速度が、pH6における速度のほぼ2倍であったことを示す。リパーゼは、pH6と比較して、pH8で、わずかに活性が高かった(20%未満)。緩衝液の濃度は、自己加水分解およびリパーゼ活性に対して強い影響を有していないようであった。脂肪分解活性は、41.6mMのBis-Tris緩衝液において最も高いようであった。蛍光クエンチは、104mMのBis-Tris緩衝液中で観察された。
【表1】
【0117】
4MuOの自己加水分解をさらに検討した。4MuのpK
aは、約7.7である。
図1Dは、4Muを測定したpH範囲を示す(Zhi et al.,J Spectrosc 1(2013)doi:10.1155/2013/147128から転載されたグラフ)。
図1Eは、様々なpH範囲にわたる4Muの4つの形態を示す(Zhi et al.,2013から転載)。形態IIが優勢であり、320nmのλ
exおよび445nmのλ
emで、その励起および発光を示す。
【0118】
実施例1B.リパーゼアッセイの開発I:pH
リパーゼアッセイ緩衝液の様々な緩衝剤およびpHを評価するために、さらなる試験を行った。以下の体積比を適用した(全てv/v):試料(75%)、高濃度マトリックス緩衝液(HCMB)(20%)、有機溶媒(5%)。混合物を、約24時間~約300時間の時間枠でインキュベートした。アッセイの成分を、96ウェルプレートに移し、蛍光強度について分析した。4μMの検量線について、基準標準物質である4μMを、有機溶媒中で、0μM、0.2μM、1μM、2μM、5μM、10μM、20μM、50μM、および100μMの濃度で調製し、他のアッセイ成分に、0μM、0.1μM、0.05μM、0.1μM、0.25μM、0.5μM、1μM、2.5μM、および5μMの最終濃度まで、5%(v/v)でスパイク(spike)した。検量線の傾きは、低検量範囲(0.01~0.5μM)から最大5μMの高検量範囲まで、わずかにずれていることが分かった。したがって、4Muの定量結果は、最大0.5μMの濃度範囲で、0.01~0.5μMに限定された検量線を用いて計算された。
図19Aおよび19Bに、4Muの検量線が示されている。
【0119】
この試験では、「試料」は、プラセボ組成の緩衝液であり、20mMのL-ヒスチジン、pH6(pH調整は、25%(w/v)のHClもしくは1MのNaOHを添加することによって行った)、250mMのスクロース、0.5%の細胞培養回収液(CCHF)、または約0.0025mg/mLのブタ膵臓リパーゼ(PPL)を含んだ。HCMBは、pH7およびpH8のTRIS(208mM)、またはpH6のBIS-TRIS(208mM)(pH調整は、25%(w/v)のHClもしくは1MのNaOHを添加することによって行った)、NaCl(200mM、600mM、もしくは1800mM)、CaCl2(0.52mM、5.2mM、もしくは52mM)を含んだ。有機溶媒は、100μMの4MuOを含む、メタノール(MeOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはイソプロパノール(IPA)のいずれかであり、5%(v/v)の有機溶媒/基質が添加された。アッセイの成分を、96ウェルプレートに移し、蛍光強度について分析した。
【0120】
蛍光分析用に、試料を、96ウェルのマイクロプレート(Thermo Scientific(商標)Nunc(商標)F96マイクロウェル(商標)黒色ポリスチレンプレート)に移した。蛍光測定は、Molecular Devices SpectraMax iD3マイクロプレートリーダーおよびSMP7.1ソフトウェアで実施した。最大励起(λex)および発光波長(λem)は、それぞれ、330nmおよび495nmであり、最適化後、4Muの中間濃度について、SoftMax Pro7.1(SMP7.1)波長最適化モードを使用した。蛍光シグナルを約24時間~約300時間のインキュベーション時間で読み取り、各読み取りのために、200μLの液体(試料、HCMB、および有機溶媒を含む)を各ウェルに移すことによって、新しい96ウェルマイクロプレートを調製した。周囲温度で蛍光測定を実施した。
【0121】
図11に、pH6、pH7、またはpH8における2つの異なる緩衝液(TRISまたはBIS-TRIS)の評価の結果を示す。4MuOから4Muへの変換は、4Muの蛍光強度をモニタリングすることによって測定した。PPLまたはCCHFのいずれか、および4MuO自己加水分解を含む試料を評価した。pH変更の最も顕著な影響は、自己加水分解(AH)について観察され、pHを8から6に下げると、約5倍減少した。異なるpHの試料中の4Mu濃度を、同じpHでの参照試料中の4Muの検量線に対して測定した。すなわち、観察された傾向は、異なるpHにおける4Mu蛍光の異なる応答に起因するのではなく、異なる反応速度に起因する。PPL活性は、pHを8から6に下げると、ほぼ2倍増加したが、CCHF脂肪分解活性は影響を受けなかった。PPLのpH依存性は、以前に、Li et al.,“Adsorption and catalytic activity of Porcine pancreatic lipase on rod-like SBA-15 mesoporous material,”Colloids and Surfaces A:Physicochem Eng Aspects 2009;341:79-85に記載されている。しかしながら、このpH依存性は、DSプールに含まれるHCPに存在する可能性のある任意の他の種類のリパーゼに関して同一ではない場合がある。pH6は、ポリソルベートの分解が観察および報告された多くの治療用タンパク質製剤が、典型的には、わずかに酸性のpHで維持され、したがって、アッセイのpHを約6に適応させることは、リパーゼ媒介性の加水分解性ポリソルベートの分解を引き起こす原因となる元凶(例えば、リパーゼ)を包含するものと想定されるという観点からも、最も好適であると考えられた。したがって、200mMの濃度のBIS-TRISを選択して、HCMBに添加して、pH6での40mMの最終アッセイ濃度を得た。
【0122】
実施例2A.リパーゼアッセイの開発II:CaCl2
リパーゼアッセイ緩衝液中の塩化カルシウム濃度を調べた。500nMのPPLおよび4MuOを使用したリパーゼアッセイを、3つの異なるCaCl2濃度で実施し、4MuOの蛍光クエンチおよび自己加水分解を調べた:(a)0.104mMのCaCl2、(b)1.04mMのCaCl2、および(c)10.4mMのCaCl2。
【0123】
図2A~2Cおよび表2の結果は、4MuOの自己加水分解が起こらず、塩化物アニオンによる蛍光クエンチが観察されなかったことを示す。リパーゼ活性は、1.3mMのCaCl
2で最も高かった。
【表2】
【0124】
実施例2B.リパーゼアッセイの開発II:CaCl2
リパーゼアッセイ緩衝液中の塩化カルシウム濃度を、さらなる実験で調べた。試料、HCBM組成物、および実験手順は、実施例1Bに記載される通りであり、CaCl2は、実施例1Bに記載されるように、0.52mM、5.2mM、または52mMでHCMBに含まれた。
【0125】
PPLまたはCCHFのいずれかを含む試料を用いた、HCMB中の異なるCaCl
2濃度の評価の結果を、
図12に示す。最高濃度のCaCl
2では、PPL活性がわずかに減少することが観察された。様々な原薬/医薬品マトリックスについて同様のアッセイ条件を確立するためのHCMBの要件を考慮して、5mMのCaCl
2を選択し、HCMBに添加して、1mMのCaCl
2の最終アッセイ濃度を得た。
【0126】
実施例3A.リパーゼアッセイの開発III:NaCl
リパーゼアッセイ緩衝液中の塩化ナトリウム濃度を調べた。500nMのPPLおよび4MuOを使用したリパーゼアッセイを、3つの異なるNaCl濃度で実施し、4MuOの蛍光クエンチおよび自己加水分解を調べた:(a)40mMのNaCl、(b)120mMのNaCl、および(c)360mMのNaCl。
【0127】
図3A~3Cおよび表3の結果は、4MuOの自己加水分解が起こらず、塩化物アニオンによる蛍光クエンチが観察されなかったことを示す。リパーゼ活性は、120mMのNaClにおいて最も高かった。
【表3】
【0128】
実施例3B.リパーゼアッセイの開発III:NaCl
リパーゼアッセイ緩衝液中の塩化ナトリウム濃度を、さらなる実験で調べた。試料、HCBM組成物、および実験手順は、実施例1Bに記載される通りであった。実施例1Bに記載されるように、NaClは、200mM、600mM、または1800mMでHCMBに含まれた。
【0129】
PPLまたはCCHFのいずれかを含む試料を用いたHCMB中の異なるNaCl濃度の評価の結果を、
図13に示す。最高濃度のNaClでは、PPL活性がわずかに減少することが観察された。様々な原薬/医薬品マトリックスについて同様のアッセイ条件を確立するためのHCMBの要件を考慮して、600mMのNaClを選択し、HCMBに添加して、120mMのNaClの最終アッセイ濃度を得た。
【0130】
実施例4A.リパーゼアッセイの開発IV:有機溶媒
リパーゼアッセイ緩衝液中の有機溶媒を調べた。500nMのPPLおよび4MuOを使用したリパーゼアッセイを、3つの異なる有機溶媒を使用して実施し、4MuOの蛍光クエンチおよび自己加水分解を調べた:(a)DMSO、(b)イソプロパノール(IPA)、および(c)メタノール(MeOH)。
【0131】
図4A~4Cおよび表4の結果は、3つの溶媒のうち、イソプロパノールで、わずかな蛍光クエンチがあるものの、最低の自己加水分解が観察されたことを示す。しかしながら、メタノールも同等の結果をもたらした。さらに、Glogauer et al.,Microb Cell Fact 10:54(2011)は、メタノールが活性を向上させる能力を有し得ることを示す。
【表4】
【0132】
実施例4B.リパーゼアッセイの開発IV:有機溶媒
リパーゼアッセイ緩衝液中の有機溶媒を、さらなる実験で調べた。試料、HCBM組成物、および実験手順は、実施例1Bに記載される通りであった。実施例1Bに記載されるように、100μMの4MuOを含む有機溶媒のメタノール(MeOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはイソプロパノール(IPA)が、アッセイ反応に含まれた。
【0133】
図14に、PPLまたはCCHFのいずれかを含む試料を用いた異なる有機溶媒の評価結果を示す。Glogauer et al.,“Identification and characterization of a new true lipase isolated through metagenomic approach,”Microb Cell Fact 2011;10:54に報告されている(E.coliからメタゲノムアプローチによって単離されたLipC12リパーゼに対して、異なる溶媒による強い影響が報告されている)以前の結果とは異なる。Glogauerらによると、MeOH-および(より低い程度で)IPA-は、活性化効果を示し、LipC12リパーゼ活性を10倍超増加させた。しかしながら、研究した細菌酵素は、例えば、実施例1Bの結果と比較して、活性のための異なる最適pHによって証明されるように、非常に異なる特性を有している可能性が高い。
図14の結果に基づいて、HCMBに添加するために、MeOHを選択した。
【0134】
実施例5A.リパーゼアッセイの開発V:界面活性剤
界面活性剤の存在下で、リパーゼアッセイ緩衝液の性能を調べた。500nMのPPLおよび4MuOを使用したリパーゼアッセイを、2つの異なる濃度の2つの界面活性剤を使用して実施し、4MuOの蛍光クエンチおよび自己加水分解を調べた:(a)0.012%(w/v)のTRITON X-100、(b)0.06%(w/v)のTRITON X-100、(c)0.032%(w/v)のKOLLIPHOR P188、および(d)0.16%(w/v)のKOLLIPHOR P188。界面活性剤を含まない対照も試験した。
【0135】
図5A~5Cおよび表5の結果は、界面活性剤を含む試料が、蛍光クエンチが観察されたものの、最も低い自己加水分解を有したことを示す。また、脂肪分解活性は、界面活性剤と共に低下するように見えた。
【表5】
【0136】
実施例5B.リパーゼアッセイの開発V:界面活性剤
PPLおよびCCHFの脂肪分解活性に対する界面活性剤の影響を評価するために、さらなる試験を行った。バイオ医薬品製剤に含まれる界面活性剤ポリソルベート20(PS20)およびポリソルベート80(PS80)を評価した。また、ポロキサマーも試験した。以前の研究では(Gupta et al.,“Simplified para-nitrophenyl palmitate assay for lipases and esterases,”Anal Biochem 2002;311:98-99)、界面活性剤が、p-ニトロフェニルパルミテートなどの難溶性基質を可溶化することが示唆された。
【0137】
試料は、pH6で20mMのL-ヒスチジン、250mMのスクロース、界面活性剤(0.02%もしくは0.06%(全てw/v)のポリソルベート20(PS20)、ポリソベート-80(PS80)、またはポロキサマーのいずれか、あるいは界面活性剤を含まない対照として)、0.5%のCCHFまたは0.0025mg/mLのPPLを含んだ。HCMBは、pH6で208mMのBIS-TRIS、600mMのNaCl、5.2mMのCaCl2を含んだ。100μMの4MeOを含む5%(v/v)の有機溶媒MeOHを、アッセイに添加した。アッセイ成分を、96ウェルプレートに移し、実施例1Bに関して上に記載のように、蛍光強度について分析した。
【0138】
図15に、脂肪分解活性に対する界面活性剤の影響の結果を示す。界面活性剤の存在は、脂肪分解活性に顕著な影響を及ぼした。ポリソルベートは、4Muの形成を、PPLでは>90%、CCHFでは約80%大幅に減少させた。PS80は、PS20と比較して、4Muの形成がやや顕著に減少させた。
【0139】
これらの観察に関して、いくつかの理由が考えられる:(1)脂肪酸エステルからなるポリソルベートは、リパーゼの競合基質/阻害剤である、かつ/または(2)非極性基質である4MuOがポリソルベートのミセル構造に組み込まれるため、水性媒体中の濃度が低下し、したがって、これが基質濃度と相関して、酵素速度定数に悪影響を及ぼす(例えば、ミカエリス・メンテン反応速度論の概念による)、かつ/または(3)リパーゼ酵素が構造的に影響を受けて、アンフォールディングをもたらす可能性があり、それによって、活性が低下する。
【0140】
興味深いことに、ポリソルベートの濃度は、CCHFの脂肪分解活性に影響を及ぼしたように見えた。PPLは、2つの異なる選択された濃度の両方のポリソルベートで、同様に活性であったが、ポリソルベートの濃度がより高いと、活性がより低くなった。一方、ポロキサマーは、非常に異なる方法で、PPLおよびCCHFの脂肪分解活性に影響を与えた。PPLの活性は、対照と比較して約50%に低下し、ポリソルベートで既に見られたように、選択された濃度の界面活性剤は、酵素活性に明らかな変動を示さなかった。CCHFの脂肪分解活性は、少なくとも0.02%の界面活性剤濃度でポロキサマーによって正の影響を受け、0.06%の濃度では明らかに影響を受けなかった。いずれの特定の理論に拘束されるものではないが、界面活性剤の存在下での酵素的挙動ならびに濃度依存性についての1つの理由は、2つ以上の原因の組み合わせであり得る。例えば、リパーゼの動態および機構的な調査は、酵素が、水に難溶性である基質(例えば、トリグリセリドおよび他の脂肪)に対して反応を触媒するという事実に起因して、困難である。水/脂肪界面では、酵素は、蓋ドメインの動きによって活性化され、閉じた形態では、活性部位が保護されており、一方、開いた形態では、基質が活性部位にアクセスできるようになる。例えば、Lowe,“The triglyceride lipases of the pancreas,”J Lipid Res 2002;43(12):2007-2016を参照されたい。
【0141】
特に、ポリソルベートは、モデルリパーゼであるPPLおよびCCHFの脂肪分解活性に悪影響を及ぼす。
図15Aに示されるように、4Mu加水分解生成物の蛍光強度も、界面活性剤の存在下(
図15Bを参照されたい)で影響を受ける(約20%の減少)。これは、4Mu生成物のシグナル強度の低下にも寄与する。
【0142】
実施例6A.リパーゼアッセイの開発VI:リパーゼ阻害剤
リパーゼ阻害剤であるオルリスタットを、リパーゼアッセイの対照実験に選択し、異なる濃度の阻害剤を用いてアッセイの性能を評価した。オルリスタットは、膵リパーゼの活性部位のセリンに共有結合することによって酵素を阻害するメカニズムに基づく阻害剤として開発された。この作用様式により、消化管の脂肪加水分解に基づく肥満および関連症状を治療するための経口投与薬となった。どのリパーゼのクラスがオルリスタットによって阻害され得るかを体系的に調査した研究は発表されていない。しかしながら、以前に、哺乳類のリパーゼとは別に、細菌のリパーゼ(例えば、Streptomyces rimosus由来のもの)は、ミリモル濃度のオリスタットで阻害され得、阻害が、活性部位のセリンの共有結合性修飾によって生じることが報告されていた。例えば、Hadvary et al.,“The lipase inhibitor tetrahydrolipstatin binds covalently to the putative active site serine of pancreatic lipase,”J Biol Chem 1991;266(4):2021-2027、Heck et al.,“Orlistat,a new lipase inhibitor for the management of obesity.Pharmacotherapy 2000;20(3):270-279、Asler et al.,“Mass spectrometric evidence of covalently-bound tetrahydrolipstatin at the catalytic serine of Streptomyces rimosus lipase,”Biochim Biophys Acta.2007;1770:163-170を参照されたい。このような以前の研究では、この高濃度で疎水性阻害剤を導入するために、最終アッセイで、50%(v/v)の有機溶媒の大きな体積比が必要であった。このような高い濃度の有機溶媒は、他のアッセイ成分との潜在的な障害のために(例えば、薬学的に活性なタンパク質の沈殿)、現在のリパーゼアッセイでは予測されなかったため、より低い溶媒濃度および阻害剤濃度も使用することを選択した。これは、哺乳類のリパーゼがはるかに低い濃度(すなわち、ナノモル濃度)のオルリスタットで阻害されることが見出されたため、必ずしもアッセイ読み出し(readout)に悪影響を及ぼすとは限らない。例えば、Lewis et al.,“Direct measurement of lipase inhibition by Orlistat using a dissolution linked in vitro assay,”Clin Pharmacol Biopharm 2012;1(3):1-3を参照されたい。
【0143】
500nMのPPLを含む試料を、3濃度のオルリスタット(リパーゼ阻害剤)で共処理および前処理した後、リパーゼ活性を試験して、4MuOの蛍光クエンチおよび自己加水分解を調べた:(a)25μMのオルリスタットで共処理、(b)15μMのオルリスタットで共処理、(c)5μMのオルリスタットで共処理、(d)25μMのオルリスタットで前処理、(e)15μMのオルリスタットで前処理、および(f)5μMのオルリスタットで前処理。オルリスタットを含まない対照試料も試験した。
【0144】
図6A~6Bおよび表6の結果は、25μMのオルリスタットによる前処理(30分)で、脂肪分解活性が完全に消失したことを示す。より低い濃度のオルリスタットで、残存活性が観察された。蛍光クエンチは観察されなかった。
【表6】
【0145】
実施例6B.リパーゼアッセイの開発VI:リパーゼ阻害剤
リパーゼ阻害剤オルリスタットの濃度を、さらなる実験で評価した。試料、HCMB組成物、および実験手順を、実施例1Bと同様に行った。阻害剤を、MeOH中で、200、600、および1000μMの濃度で調製した。プレインキュベーション実験のために、阻害剤溶液を2.5%(v/v)でアッセイに補充し、30分間プレインキュベーションを行った。次いで、200μMの4MuOを含むMeOHを、2.5%(v/v)でアッセイに添加した。共インキュベーション実験のために、100μMの4MuOおよびオルリスタット(100μM、300μM、および500μM)を含むMeOHを、5%(v/v)で添加した。0.0335mg/mLの高濃度PPLを使用した。
【0146】
3濃度のオルリスタット、すなわち、5μM、15μM、および25μM(最終アッセイ体積に対する)を、「最悪の場合」、すなわち、0.0335mg/mLのPPLの非常に高濃度のリパーゼを用いて試験した。これらの濃度では、最終アッセイ溶液は透明であり、潜在的に不溶性の阻害剤による濁りは示されなかった。さらに、オルリスタットを5%(v/v)のMeOH中の基質を含むアッセイに直接供した場合のリパーゼ活性への影響を、オルリスタットを2.5%(v/v)のMeOH中の酵素を含む試料に予め添加し、30分間インキュベーションした後、別の2.5%(v/v)体積分率のMeOH中の基質を添加した場合と比較して、試験した。
【0147】
図16に、リパーゼ阻害剤の評価の結果を示す。上に記載のような高濃度のPPLに起因して、オルリスタットの不在下では、4MuOが、24時間以内にほぼ完全に加水分解された。オルリスタットはPPLを阻害し、その阻害効果はオルリスタット濃度と相関し、すなわち、最も高い阻害効果が25μMのオルリスタットで観察されたことも分かる。阻害剤との酵素のプレインキュベーションは有益な効果を有した。すなわち、試験された25μMの最高オリスタット濃度では、酵素活性は、基質と阻害剤が同時に添加された試料と比較して、前処理された試料で約50%減少した。したがって、オルリスタットは、高濃度(すなわち25μM)で陰性対照に補充されるように選択され、陰性対照は、基質を添加する前に、阻害剤と約30分間プレインキュベートされる。
【0148】
実施例7.リパーゼアッセイの開発VII:脂肪酸生成物阻害
リパーゼアッセイで、2濃度の理論的に分解されたPS20およびPS80であるオレイン酸およびラウリン酸を使用して、脂肪酸生成物阻害を試験した:(a)0.1%および(b)0.001%。この実験では、PPLの濃度は800nMであった。
【0149】
図7A~7Dおよび表7の結果は、8.5μM超のラウリン酸がリパーゼ活性を阻害し、8.5μMと850μMの間に大差がないことを示す。オレイン酸の場合、780μMで有意な生成物阻害が観察された。
【表7】
【0150】
実施例8.リパーゼアッセイの開発VIII:クエンチ効果
ポリソルベート80のクエンチ効果を調べた。800nMのPPLおよび新鮮なPS80を含む試料を、800nMのPPLを含む対照およびPS80なしの対照に対して試験した。
図8の結果は、PS80により、各標準のRFU値が減少することを示し、軽度のクエンチ効果を示唆している。
【0151】
実施例9.リパーゼアッセイの評価:CCHF
原薬/医薬品における脂肪分解活性を試験するための実施例1~8で開発されたアッセイの適用可能性を評価するために、アッセイを、医薬品においてかかる分解が観察される時間枠内(例えば、1ヶ月以内)でポリソルベートの分解がもたらされ得るリパーゼの濃度で評価した。
【0152】
この試験用の試料は、pH6で20mMのL-ヒスチジン、250mMのスクロース、0.02%(w/v)の界面活性剤PS20またはPS80、および様々な濃度のCCHF(0%、0.001%、0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、全てv/v)を含んだ。試料を、室温および2~8℃で1ヶ月間保存した。試料を、以下に記載されるHPLC-FMAおよび本明細書におけるリパーゼアッセイにより分析した。アッセイの陽性対照については、試料に0.055mg/mLのPPLを補充した。HCMBは、pH6で208mMのBIS-TRIS、600mMのNaCl、5.2mMのCaCl2を含んだ。100μMの4MuOを含む5%(v/v)の有機溶媒MeOHを、アッセイに添加した。オルリスタットを含む陰性対照については、阻害剤を、MeOH中で1000μMに調製し、2.5%(v/v)をアッセイに補充し、30分間のプレインキュベーションを行った。次いで、200μMの4MuOを含むMeOHを、2.5%(v/v)でアッセイに添加した。アッセイ成分を96ウェルプレートに移し、実施例1Bに関して記載されるように、蛍光強度について分析した。
【0153】
インタクトのPS20およびPS80の定量分析は、アイソクラティックポンプ、オートサンプラー、編み込み式リアクターコイル(1mL;Supelco #57410-U)、および蛍光検出器(Waters2475FLR検出器)を備えた高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(Waters Alliance e2695)を使用して実施した。試料を、150mMのNaCl、50mMのTRIS、5%(v/v)のACNのpH8の溶液に溶解された5μMのN-フェニル-1-ナプチルアミン(NPN)、15ppm(w/v)のBrij(登録商標)35を含む移動相に注入した。蛍光を、λex=350nmおよびλem=420nmで測定した。Empower3クロマトグラフィーデータシステム(CDS)を、ピーク積分および分析に使用した。
【0154】
【0155】
図9Aおよび9Bに、HPLC-FMAからの結果を示し、0.10%以上のCCHF濃度でポリソルベートの分解が観察されたことを示す。PS20試料は、より分解されやすく、約0.10%のCCHFで見られる効果を有した。より高い濃度は、見かけのポリソルベート濃度の低下を示した。25℃では、2~8℃と比較して、その傾向がより顕著であった。PS20含有試料は、明らかにPS80含有試料よりも分解されやすく、シグナル強度の減少は、0.5%のCCHFでのみ検出することができた。前述の界面活性剤の評価に関する実験では、PS80は、PS20と比較して、CCHF含有試料中の脂肪分解活性に対してわずかに増強された負の影響があることが分かった。したがって、最悪の場合として、HPLC-FMAアッセイからのPS80含有試料を、リパーゼアッセイに供した。
【0156】
図9Cに、本明細書で開発されたリパーゼアッセイの理論的な読み出し(readout)を示し、
図9Dに、実際の結果を示す。実際の結果は、予想される読み出しと同等である。異なる濃度のCCHFを含む試料は、CCHF濃度と相関する4Muの形成を示した。この酵素活性は、3つの陰性対照(すなわち、自己加水分解試料およびオルリスタットでスパイクされた2つのCCHF試料)の酵素活性よりも高かった。アッセイは、HPLC-FMA法では、まだポリソルベートの分解が検出されていない濃度で(すなわち、0.1%未満のCCHF濃度で)、リパーゼ活性を検出するのに十分な感度があった。
【0157】
図10A~10Hに、0.001%~2%の範囲の異なる濃度のCCHF中にPS80を含む、追加のリパーゼアッセイ測定値を示す。示された濃度のCCHFおよびポリソルベートは、4MuOおよび緩衝液の添加前であった。
【0158】
図18に、リパーゼアッセイの結果を要約する。PPLでスパイクされた1%のCCHF試料(アッセイの陽性対照)は、PPLでスパイクされていない同じCCHF濃度の試料よりも、高い活性を示した。4Muの形成は、CCHFの濃度と相関し、この脂肪分解活性は、オルリスタットでスパイクされた自己加水分解および他の陰性対照の脂肪分解活性よりも高かった。最も顕著なことに、このアッセイは、リパーゼ活性を、自己加水分解および0.1%未満のCCHF濃度の陰性対照と区別するのに十分な感度があり、HPLC-FMA法では、まだポリソルベートの分解が検出されていない濃度で(すなわち、0.01%および0.05%のCCHF濃度で)、リパーゼアッセイにより脂肪分解活性を検出することができる。
【0159】
実施例10.リパーゼアッセイの評価:タンパク質含有製剤
脂肪分解活性によって悪影響を受ける可能性のあるバイオ医薬品製剤は、バイオ医薬用タンパク質を含む。実施例1~8で開発されたリパーゼアッセイを、タンパク質含有製剤で試験した。
【0160】
試料は、pH6で20mMのL-ヒスチジン、250mMのスクロース、0.02%のPS80、10mg/mLのmAb1(独自のIgG1)、0.5%のCCHFまたは0.025mg/mLのPPLを含んだ。HCMBは、pH6の208mMのBIS-TRIS、600mMのNaCl、5.2mMのCaCl
2から構成された。100μMの4MuOを含む5%(v/v)の有機溶媒MeOHを、アッセイに添加した。オルリスタットを含む陰性対照については、阻害剤を、MeOH中で1000μMに調製し、2.5%(v/v)をアッセイに補充し、30分間のプレインキュベーションを行った。次いで、200μMの4-MuOを含むMeOHを、2.5%(v/v)でアッセイに添加した。アッセイ成分を96ウェルプレートに移し、実施例1Bに関して記載されるように、蛍光強度について分析した。表10に、試験した試料を要約する。
【表9】
【0161】
図17Aに、異なる時点(1時間、24時間、72時間、168時間、および336時間)でのアッセイ結果を示す。予想通り、CCHFおよびPPLの両方を含むアッセイ陽性対照は、最も高い4Muの遊離を示した。アッセイ陰性対照は、強く低下した活性を示し、PPLおよびCCHFリパーゼの両方が、オルリスタットによって阻害されたことを示した。試料および製剤陽性対照(高活性)についても同様の傾向が見られるが、試料陰性対照および製剤陰性対照は、オルリスタット(低活性)によって阻害された。自己加水分解対照および製剤陰性対照は、全ての時点で、
図17Aでは区別できない類似の読み出しを示す。
図17Bは、陰性対照の拡大図を示し、両方の陰性対照における活性が類似していることを示している。
【0162】
自己加水分解対照/製剤陰性対照と比較して、アッセイ陰性対照/試料陰性対照の明らかな活性において、オフセットが観察され得る。同じオフセットが、基質を含まないブランク試料(データ未掲載)で観察され、これは、タンパク質含有試料が、既に4Muとは非依存性の蛍光応答を有することを示した。脂肪分解活性が試験された時間枠内(すなわち、336時間以内)で、オフセットが増加し、最初阻害されていたCCHFおよびPPLのリパーゼが、ゆっくりと再活性化され、しかし、製剤陰性には明らかに存在しないことが示された。
【0163】
Lookeneらは、オルリスタットが、メカニズムに基づく阻害剤であるだけでなく、リポタンパク質リパーゼの真の基質であり、速い阻害(すなわち、活性部位のセリンにおける共有結合性の酵素-オルリスタット複合体の形成)を有し、複合体の遅い加水分解を有することを報告した(例えば、Lookene et al.,“Interactions of lipoprotein lipase with the active-site inhibitor tetrahydrolipstatin (Orlistat)R,”Eur J Biochem.1994;222:395-403を参照されたい)。本アッセイおよび原薬/医薬品における脂肪分解活性の評価への適用に関して、これは関連性がある:原薬/医薬品中のHCPの残留画分の一部であり、ポリソルベートの分解を担う元凶(例えば、脂肪分解酵素)がオルリスタットによって阻害され得る場合、それらは再活性化され得る。試料と試料陰性対照との間の脂肪分解活性の区別が不可能な場合、これは、試料中の低い脂肪分解活性、またはオルリスタットによって阻害されない脂肪分解酵素の存在のいずれかを示している可能性がある。前者の場合、4Muの形成が自己加水分解対照と比較してあまり増加しない場合、これは、低い脂肪分解活性、および原薬/医薬品中のポリソルベートの分解のリスクが低いことを示す。自己加水分解と比較して、試料中で高い4Muの形成が見られる場合、これは、脂肪分解酵素が存在しているが、オルリスタットによって阻害され得ないことを示す。
【0164】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む本明細書に引用される全ての参考文献、およびそれらに引用される参考文献(それらがまだ引用されていない範囲まで)は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【国際調査報告】