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特表2022-548026血液中のADMAを調節するデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】血液中のADMAを調節するデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/40 20060101AFI20221109BHJP
   C12N 11/02 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 9/78 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20221109BHJP
   C07K 17/02 20060101ALI20221109BHJP
   A61M 1/02 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12M1/40 Z
C12N11/02 ZNA
C12N9/78
C12N15/55
C07K17/02
A61M1/02 107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516043
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 US2020050158
(87)【国際公開番号】W WO2021050695
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,763
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジャイパル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
4B050
4C077
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029AA27
4B029BB16
4B029CC03
4B029GA08
4B029GB10
4B033NA26
4B033NB50
4B033NB62
4B033NC03
4B033ND04
4B033ND08
4B033ND12
4B050CC03
4B050DD11
4B050EE10
4B050GG10
4B050LL01
4B050LL05
4C077AA11
4C077CC03
4C077CC06
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH17
4C077HH20
4C077JJ03
4C077JJ18
4C077JJ22
4C077KK13
4C077KK30
4C077MM07
4C077MM09
4C077NN18
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA89
4H045EA24
4H045FA74
4H045GA45
(57)【要約】
ADMAを代謝的に分解するための組成物および方法が提供される。一実施形態において、患者の血液中のADMAレベルを減少させるためのデバイスであって、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含むデバイスが提供される。一実施形態において、患者の血液中のADMAレベルを減少させる方法は、患者の血液または血液フラクションを、固定された生物学的に活性なDDAHポリペプチドに接触させるステップであって、患者の血液と当該DDAHポリペプチドとの接触が、結果として、患者の血液中に存在するADMAの分解を生じさせるステップを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体支持体に共有結合または非共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含む、デバイス。
【請求項2】
固体支持体が合成ポリマーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
固体支持体が微粒子形態である、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
固体支持体が、モノリシックな細片、膜又はシートである、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項5】
固体支持体が多孔質であり、DDAHポリペプチドが固体支持体の外部及び内部空間全体にわたって固体支持体の表面上に固定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
DDAHが固体支持体に共有結合している、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
DDAHポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
DDAHポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号13のアミノ酸配列、あるいは配列番号1又は配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
DDAHポリペプチドが、配列番号1又は配列番号2又は配列番号13のアミノ酸配列を含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
動脈ラインと;
血液ポンプと;
血液処置ユニットと;
静脈ラインと
を含む血液処置デバイスであって、該動脈ライン及び該静脈ラインは、体外血液回路を形成するために患者の血管に接続することができ、
該血液処置デバイスが、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含み、体外血液回路が形成される場合、患者の血液は、血液処置デバイスを通って流され、患者に戻される前にDDAHポリペプチドに接触する、デバイス。
【請求項11】
血液処置デバイスが血漿交換システムに統合される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
固体支持体が微粒子形態である、請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項13】
固体支持体が、モノリシックな細片、膜又はシートである、請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項14】
固体支持体が多孔質であり、DDAHポリペプチドが固体支持体の外部及び内部空間全体にわたって固体支持体の表面上に固定される、請求項10~13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
DDAHポリペプチドが、配列番号1、配列番号2のアミノ酸配列、あるいは配列番号1又は配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項10~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
患者の血液中のADMAレベルを減少させる方法であって、
患者の血液又は血漿を、固定された生物学的に活性なDDAHポリペプチドに接触させるステップであり、患者の血液又は血漿とDDAHポリペプチドとの接触が、結果として、患者の血液又は血漿中に存在するADMAの分解を生じるステップ
を含む、方法。
【請求項17】
患者の血液又は血漿を、固定された生物学的に活性なDDAHポリペプチドに接触させるステップがエクスビボにおいて行われ、血液又は血漿がDDAHポリペプチドとの接触の後に患者に戻される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
患者の血液又は血漿が、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含むデバイスを通過させられ、患者に戻される前にDDAHポリペプチドに接触する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
固体支持体が多孔質であり、DDAHポリペプチドが固体支持体の外部及び内部空間全体にわたって固体支持体の表面上に固定されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
透析患者、ICU患者、及び疾患状態、例えば、腎臓病、急性腎傷害、心虚血、心不全、心筋障害、敗血症、肺外傷、子癇前症などの患者のADMAを減少させる方法であって、
患者の血液又は血漿を、固定された生物学的に活性なDDAHポリペプチドに接触させるステップであり、患者の血液又は血漿とDDAHポリペプチドとの接触が、結果として、患者の血液又は血漿中に存在するADMAの分解を生じるステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、以下:2019年9月13日に出願された米国特許仮出願第62/899,763号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該仮出願の開示は、明確に本明細書に組み入れられる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み入れ
本明細書と共に提出されたコンピュータ読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、参照によりその全体が組み入れられ、それは、以下のように識別される:2020年9月6日に作成された「320861SeqListing_ST25.txt」と命名された32キロバイトACII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0003】
L-アルギニンのアナログである非対称ジメチルアルギニン(ADMA)は、ヒトの循環器において見出される天然に存在する代謝産物である。ADMAの高い血中レベルは、高血圧、子癇前症、糖尿病、腎臓病、末期腎不全(ESRD)、あるいは慢性腎不全および心不全などの疾患状態において生じる。高いADMAレベルは、心臓バイパス手術、心臓弁置換術を受ける患者、敗血症およびICUの患者においても生じる。透析患者の心血管系死亡率の主な原因は、透析システムによって効率的に除去されない高いレベルの循環カルジオトキシンに関連している。特に、透析システムは、尿毒症の毒素に結合したタンパク質を除去しない。
【0004】
尿毒症の毒素ADMAは、心臓血管病および死亡率に強く関連している。ADMAは、透析を受けている慢性腎疾患(CKD)を患う患者の血液中において著しく蓄積する。血中のADMAはタンパク質に結合するため、結果として、透析の際、それらは実質的に減少しない。ADMAの血漿レベルは、透析および死亡への進行に関連している。研究では、ADMAの血漿濃度により、ESRDを患う患者の死亡率が予想されること、ならびに高い、中間、または低い世界的血管リスクでの、集団における心血管事象および死亡率が予想されることが示された。末期腎不全の患者において、高いADMAレベルは、アテローム性頚動脈硬化症および心血管系死亡率に関連する。
【0005】
ADMAの注入は、有効腎血漿流量を減少させた。その上、老齢対象の血漿ADMAは、有効腎血漿流量の減少および腎血管耐性の増加の独立予測因子であった。ADMAの蓄積も、慢性腎不全の患者における高血圧に関与し得る。
【0006】
子癇前症は、全受胎の5~10%に関与する母体および胎児の死亡率および疾病率の主な原因であり、全世界で年間50,000を超える妊娠関連の死亡の主な原因である。子癇前症患者においてNOバイオアベイラビリティが減少するめ、子癇前症の血管病因において一酸化窒素(NO)が重要な役割を果たすと広く認識されている。NOは、母体および胎児の血管の健康、胎盤血流、脈管形成、栄養膜細胞浸潤、および移植にとって重要な分子である。NOの機能障害は、血管収縮、血小板凝集、血管炎症、ならびに腎機能不全、タンパク尿症、および心血管疾患につながるミトコンドリア機能不全を生じる。
【0007】
異常に高いレベルのADMAが、子癇前症患者の血液中を循環する。1338人の妊婦による11の研究のメタ分析は、後に子癇前症を発症した女性では、そうでない女性と比べて、早くも懐胎の20週においてADMAの循環レベルが著しく高いことを示した。子癇前症の発症に先行するADMAの増加は、子癇前症の病因におけるその潜在的な役割を示唆している。631人の子癇前症の妊婦と498人の健康な妊婦による別の研究は、同様の結論に達した。
【0008】
加えて、身体のADMAレベルが上昇する場合、それは、一酸化窒素(NO)の発生を減少させ得、その結果、血管機能不全に貢献する。NO不足は、血管収縮、炎症促進、および心血管疾患を促進するプロトロンビン合成状態を引き起こす。より詳しくは、低下したNOバイオアベイラビリティは、糸球体の血流の減少、輸入細動脈および輸出細動脈の血管抵抗性の増加、限外ろ過、腎血流、および糸球体ろ過速度(GFR)の減少、身体のナトリウムおよび水のバランスに関与するホルモンであるレニンの分泌の減少、正常状態下でのナトリウムの排泄能力の低下、血圧増加、および腎機能の悪化に貢献する。ESRD患者における高いADMAレベルは、GFRに反比例し、ならびにESPDへの進行および心血管系の合併症による死亡率に対して正の相関を有する。さらに、NO経路の機能不全は、臓器障害に直接関与する酸素反応種の生成を生じさせる。
【0009】
様々な実験的および臨床的研究は、ADMAが一酸化窒素合成の阻害因子であることを確証した。高いレベルのADMAは、酸化窒素合成酵素(NOS)による一酸化窒素生成に対する競合的阻害因子として機能することによって病原性の役割を果たす。それは、カチオン性アミノ酸輸送体に結合することによって、アルギニン輸送を阻害する。NO産生不足は、高血圧、肺動脈高血圧、勃起機能不全、急性および慢性心不全、心房細動、鎌状赤血球症、および敗血症、創傷治癒などの様々な血管系疾患に関連する。さらに、ADMAは、冠状動脈病、高血圧、腎臓病、糖尿病、肥満を患う患者において観察されるような、アルギニン濃度が減少する病的状態においてNOS活性を減弱することにおいて、さらに重要な役割を有する場合がある。
【0010】
NOバイオアベイラビリティを減少させることにより、高いレベルのADMAは、血管機能不全、血管収縮、炎症促進、およびプロトロンビン合成状態を促進することができる。加えて、高いレベルのADMAは、NOSを切り離すことができ、それにより、酸素フリーラジカル形成および臓器障害を生じさせる。血管の恒常性は、正常な生理学および生存において基本的な役割を果たすため、脈管内皮の持続的機能不全は、様々な病状および死亡につながり得る。
【0011】
ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)は、全ての哺乳動物細胞において見出される酵素である。当該酵素は、メチルアルギニン、詳細には、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)およびNG-モノメチル-L-アルギニン(MMA)を分解する。DDAHの発現または活性が損なわれるような疾患状態において、ADMAクリアランスは減少し、それは、組織および血液でのその蓄積につながる。例えば、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、または炎症などの病的状態において、DDAH-1遺伝子発現は減少し、ADMAは増加する。虚血再潅流の後に観察されるように、酸化ストレス下において、活性部位システイン249の酸化は、DDAH活性を不活性化することが明らかとなっている。肺動脈高血圧(PAH)などの肺疾患において、DDAH mRNAおよびタンパク質の発現は減少し、ADMAレベルは増加する。したがって、身体における酵素レベルを増加させることができる方法は、ADMAを減少させ、疾患の予防または処置において治療効果を生じるであろう。
【0012】
DDAHの2種類のアイソフォームが、ヒトの第1染色体(DDAH-1)および第6染色体(DDAH-2)上に位置された別々の遺伝子によってコードされる。この2種類のタンパク質は、63%のアミノ酸相同性を共有するが、同様の触媒特性を示す。両方の酵素は、ADMAをシトルリンおよびジメチルアミンへと代謝する。DDAHは、NG-モノメチル-1-アルギニン(1-NMMA)およびADMAの両方を加水分解することができ、したがって、DDAHは、メチルアミンの抑制濃度を減少させ、より多くのNO生成を可能にする。
【0013】
本開示の一態様は、固定された酵素ジメチルアルギニンジアミノヒドロラーゼ(DDAH)あるいはDDAH酵素のアナログまたは生物学的に活性な断片の合成および使用に関し、この場合、当該DDAHアナログまたはその断片は、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)をシトルリンおよび/またはADMAの他の破壊生成物へと加水分解することができる。DDAHタンパク質をコードするcDNAは、作製されており、生物学的に活性なDDAHタンパク質を発現および産生させるために使用されており、固体支持体に共有結合されている。
【0014】
当該固定されたDDAHまたはその生物学的に活性な断片は、ADMAの血漿レベルを下げるために患者の血液または血漿または組織に接触させることによって、本開示に従って使用される。DDAHまたはそのアナログは、ADMAのレベルを下げるために患者の血液を体外処置するため、血液透析システム構成要素または血漿交換療法と併用して、またはその一部として、用いられる場合、ADMAを減少させるのに特に有効であり得る。
【発明の概要】
【0015】
本開示の一実施形態に従って、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)を分解するための組成物および方法が提供される。より詳しくは、本開示の一態様は、そのような処置を必要とする患者のADMAを減少させる方法を対象とする。一実施形態に従って、DDAHによるADMAの分解にとって好適な条件下において、ADMAを酵素ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)に接触させることによって、ADMAレベルが減少される。
【0016】
一実施形態に従って、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含むデバイスが提供される。一実施形態に従って、DDAHは、固体支持体上の官能基とDDAHのカルボン酸との間のアシル化反応によって固体支持体に共有結合される。一実施形態において、DDAHポリペプチドは、DDAHのC末端カルボキシ酸を介して固体支持体表面に共有結合することにより、アミド結合を形成する。一実施形態において、固体支持体の表面は、N-ヒドロキシスクシンアミド基によって官能化され、DDAHポリペプチドは、DDAHのアミノ基またはスペーサーを介して固体支持体にコンジュゲートされる。別の実施形態において、DDAHは、そのカルボキシ基によって固体支持体に結合され得る。
【0017】
一実施形態に従って、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含むデバイスであって、当該固体支持体が、合成ポリマーで構成される、デバイスが提供される。当該固体支持体は、任意の不溶性材料であり得、微粒子(例えば、複数のビーズ)として、または不溶性材料の細片またはシートとして形成することができる。一実施形態において、固体支持体は、多孔質であり、ならびにDDAHポリペプチドは、固体支持体の外部および内部空間全体にわたって当該固体支持体の表面上に固定される。一実施形態に従って、固体支持体は、不溶性材料のマトリックスを含み、この場合、DDHAポリペプチドが、当該マトリックス足場に共有結合する。
【0018】
当該DDAHポリペプチドは、ADMAをシトルリンおよびジメチルアミンへと代謝することができる任意の公知のポリペプチドまたはその変異体であり得る。本開示に従って、例えば、ヒトDDAHポリペプチド、ウシDDAHポリペプチド、マウスDDAHポリペプチド、ラットDDAHポリペプチド、細菌性ポリペプチド、および非ヒト霊長類DDAHポリペプチドからなる群から選択されるDDAHポリペプチドなど、当業者に公知の任意のDDAHポリペプチドを使用することができる。一実施形態に従って、配列番号1、または配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、または配列番号14に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%の配列同一性を有する1つまたは複数の生物学的に活性なDDAHポリペプチドが、固体支持体に共有結合される。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、および配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号1、配列番号2のアミノ酸配列、あるいは配列番号1または配列番号2に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号13のアミノ酸配列を含む。
【0019】
一実施形態において、動脈ライン;血液ポンプ;血液処置ユニット;および静脈ラインを含む血液処置デバイスであって、当該動脈ラインおよび静脈ラインは、体外血液回路を形成するために患者の血管に接続することができ、当該血液処置ユニットは、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含む、血液処置デバイスが提供される。したがって、体外血液回路が当該デバイスを使用して形成される場合、患者の血液は、当該血液処置デバイスを通って流され、患者に戻される前に当該DDAHポリペプチドに接触する。
【0020】
本開示の固定されたDDAHコンストラクトは、血流を固体支持体上に固定されたDDAHに接触させるより大きな体外デバイスの構成要素として使用することができる。一実施形態において、ヒト患者から血液を回収するための手段;回収された血液をデバイスを通して輸送するための手段であって、当該デバイスが、生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドと、当該デバイスにおける基材であり、当該生物学的に活性なDDAHポリペプチドが当該基材上に固定され、当該生物学的に活性なDDAHポリペプチドが、血液中の非対称ジメチルアルギニン(ADMA)を分解する、基材とを含む、手段;ならびに、処置された血液をヒト患者に戻すための手段、を含む体外血液処置システムが提供される。一実施形態において、チャンバーを形成するハウジング、当該ハウジング内に位置された血液処置ユニット、動脈ラインおよび静脈ラインならびに血液ポンプを含む体外デバイスであって、当該動脈ラインおよび静脈ラインは、チャンバーおよび血液処置ユニットと液体連通され、当該血液処置ユニットは、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含み、当該血液ポンプは、当該血液処置ユニットを通して血液を移動させる、体外デバイスが提供される。一実施形態に従って、当該体外デバイスの動脈ラインは、患者の動脈血管と液体連通された状態にあり、当該体外デバイスの静脈ラインは、患者の静脈血管と液体連通された状態にあり、当該血液ポンプは、血液が患者から血液処置ユニットを通って動き当該静脈ラインを介して当該患者の血流へと戻るのを支援する。
【0021】
一実施形態において、本開示の体外デバイスの血液処置ユニットは、ビーズ、モノリシックな細片またはシートである固体支持体を含み、この場合、適宜、固体支持体は、多孔質であり、DDAHは、当該固体支持体の表面に共有結合される。
【0022】
一実施形態に従って、患者の血液中のADMAレベルを減少させる方法が提供される。一実施形態において、当該ADMAレベルは、DDAHがADMAをシトルリンおよびジメチルアミンへと代謝する条件下において、患者の血液または血液フラクション、例えば、血漿交換療法の後の透析物または血漿などをDDAHと接触させることによって、減少する。一実施形態において、当該DDAHは、固体支持体上に固定され、患者の血液または血液フラクションは、DDAHがADMAをシトルリンおよびジメチルアミンへと代謝する条件下において、当該固定されたDDAHと接触する。一実施形態において、患者の血液または血液フラクションを、固定された生物学的活性なDDAHポリペプチドに接触されるステップは、エクスビボにおいて行われ、当該血液および/または血液フラクションは、当該DDAHポリペプチドとの接触の後に患者に戻される。一実施形態において、患者の血液または血液フラクションは、固体支持体に共有結合させた生物学的に活性なジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチドを含むデバイスを通過させられ、この場合、当該血液または血液フラクションは、患者に戻される前に、生物学的に活性なDDAHポリペプチドと接触する。一実施形態において、固体支持体は、多孔質であり、DDAHポリペプチドは、固体支持体の外部および内部空間全体にわたって当該固体支持体の表面上に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】DDAHコンジュゲート化マトリックスの作製。マトリックスへのDDAHコンジュゲーションは、室温で1時間にわたる、1mg/mlのDDAHを用いたN-ヒドロキシスクシンアミド官能化ビーズのインキュベーションによって達成した。次いで、ビーズを生理食塩水または10mMのTris緩衝液で洗浄した。DDAHコンジュゲート化ビーズを4℃で貯蔵した。
図2】マトリックスコンジュゲート化DDAHの酵素活性の維持。酵素活性は、実施例1において説明した比色分析を使用して異なる濃度の非コンジュゲート化DDAHまたはマトリックスコンジュゲート化DDAHを使用することによって特定した。マトリックスコンジュゲート化DDAHは、90%を超える活性を維持した。
図3】マトリックスコンジュゲート化DDAHによる血漿中のADMAの減少。2μMのADMAを含むヒトまたはブタの血漿を、様々な期間において、DDAHコンジュゲート化ビーズと共にインキュベートした。マトリックスコンジュゲート化DDAHによるADMAの減少を、HPLCアッセイを使用して特定した。
図4】DDAHマトリックスカラムを使用することによるADMAの減少。マトリックスコンジュゲート化DDAHカラム(1ml体積)を、プロトタイプの治療用医療デバイスとして調製した。当該カラムを生理食塩水によって平衡化した。次いで、ADMA溶液または血漿を、1ml/分の流量において当該カラムを通過させた。次いで、開始溶液(カラム前)またはDDAHマトリックスカラムに供した後(カラム後)のADMAの濃度を、HPLC法を使用して特定した。HPLCピークの減少が、クロマトグラムに示される。
図5】血漿交換療法システムおよびプロトタイプのDDAHベースの治療用体外医療デバイス(Therapeutic Extracorporeal Medical Device)を使用した血液中のADMAの減少。臨床現場において患者に使用されるのと同様のBaxter Prismaflex治療用血漿交換システムを使用してブタ血液を血漿交換法に供した(図5A)。血漿に対して14%のフラクションを、10ml/分の流量において9mlのDDAH-マトリックスデバイス(治療用体外医療デバイス)を通して循環させた。次いで、血漿交換膜からの血液およびTEMDからの血漿を、混合して元の血液に戻した。次いで、経時における血液中のADMAの減少を、HPLCアッセイを使用して特定した(結果が図5Bに示される)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本開示の明細書および特許請求の範囲において、以下の専門用語は、下記において詳細に説明される定義に従って使用される。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」は、任意の標準的医薬担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、水、エマルション、例えば水中油型または油中水型エマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤を包含する。当該用語は、ヒトを含む動物における使用のための、米国連邦政府の監督官庁によって承認されるかまたは国薬局方にリストされる任意の薬剤も包含する。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、親化合物の生物活性を維持し、生物学的にまたはそれ以外の点で望ましくないものではない化合物の塩を意味する。本明細書において開示される化合物の多くは、アミノ基および/またはカルボキシル基あるいはそれに類似する基の存在によって酸および/または塩基の塩を形成することができる。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「処置する(treating)」は、特定の障害または状態の予防、または特定の障害または状態に関連する症状の緩和、ならびに/あるいは当該症状の予防または排除を包含する。
【0028】
本明細書において使用される場合、「有効」量または「治療有効量」は、所望の効果を提供するための、患者における化合物の濃度の変更を意味する。例えば、所望の効果の1つは、高レベルのADMAによって悪化する疾患状態に関連する症状を軽減させることである。この実施形態において、患者の血液または血漿は、治療有効量のDDAHと接触する。「有効」である量は、個体の年齢および全身状態、投与方式などに応じて、対象ごとに異なる。したがって、正確な「有効量」を指定することは、常に可能とは限らない。しかしながら、任意の個々の場合における適切な「有効」量は、常套的な実験を使用して当業者によって特定され得る。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「精製された」および同様の用語は、自然のまたは天然の環境において分子または化合物に通常は関連する不純物質を実質的に含まない形態における分子または化合物の単離に関する。本明細書において使用される場合、用語「精製された」は、完全な純度を必要とせず;むしろ、それは、相対的定義として意図される。用語「精製されたRNA」は、他の化合物、例えば、これらに限定されるわけではないが、ポリペプチド、脂質および炭水化物などから分離されているRNA配列を説明するために本明細書において使用される。
【0030】
用語「単離された」は、言及される材料がその元の環境(例えば、それらが天然に存在する場合、天然の環境)から除去されることを必要とする。例えば、生きている動物内に存在する天然に存在する核酸は、単離されていないが、その核酸が、天然系において共存する材料のいくつかまたは全てから分離される場合、それは、単離されている。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「患者」は、さらなる指定がない場合、任意の温血脊椎動物である飼い慣らされた動物(例えば、これらに限定されるわけではないが、家畜、ウマ、マウス、ネコ、イヌ、および他の愛玩動物を含む)およびヒトを包含することが意図される。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「固体支持体」は、可溶性分子と結合(好ましくは、共有結合)を形成することができる溶媒不溶性基材に関する。当該支持体は、本質的に生物学的なもの、例えば、これらに限定されるわけではないが、細胞またはバクテリオファージ粒子など、あるいは合成のもの、例えば、これらに限定されるわけではないが、アクリルアミド誘導体、ガラス、プラスチック、アガロース、セルロース、ナイロン、シリカ、または磁化された粒子などのどちらかであり得る。当該支持体は、微粒子形態あるいはモノリシックな細片またはシートであり得る。このような支持体の表面は充実性または多孔質であり得、また任意の有利な形状のものであり得る。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「血漿交換システム」は、血漿交換法を行うために必要とされる全ての必須の構成要素、例えば、患者の身体からの血液の取り出し、血液細胞からの血漿の分離、およびその後の身体への血漿および他の血液構成要素の返還などを定義する。
【0034】
語句「実質的に」は、「完全に」を排除するものではなく、例えば、Yを「実質的に含有しない」組成物は、Yを完全に含有しない場合もある。必要であれば、語句「実質的に」は、本開示の定義から除外され得る。
【0035】
特に明記されない限り、用語「を含むこと(comprising)」および「を含む(comprise)」ならびにその文法上の変形は、「オープンな」または「包括的な」言語を表すことが意図され、したがって、それらは、列挙された要素を含むが、列挙されていないさらなる要素を含むことも許容される。
【0036】
本明細書において使用される場合、「約(about)」なる用語は、製剤の構成要素の濃度に関連して、典型的には、言及された値の+/-5%、より典型的には、言及された値の+/-4%、より典型的には、言及された値の+/-3%、より典型的には、言及された値の+/-2%、さらにより典型的には、言及された値の-/-1%、さらにより典型的には、言及された値の+/-0.5%を意味する。
【0037】
用語「エポキシド」、「エポキシ基」、または「オキシラン」は、2つの炭素原子と1つの酸素原子との三員環配置からなる化学官能基を表す。三員環の当該2つの炭素原子は、独立して、置換されてもよい。用語「エポキシド」は、少なくとも1つのエポキシ基を含む分子または化合物も表し得る。
【0038】
用語「エポキシド含有化合物」は、エポキシドである任意の化合物またはエポキシド部分を含む化合物を意味する。例示的エポキシド含有化合物は、アルキレンオキシド、特に、低級アルキレンオキシド、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど、アルコールエポキシド、例えば、グリシドールなど、およびエピハロヒドリン、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、1,2-エポキシ-4-クロロブタン、1,2-エポキシ-4-ブロモブタン、1,2-エポキシ-4-ヨードブタン、2,3-エポキシ-4-クロロブタン、2,3-エポキシ-4-ブロモブタン、2,3-エポキシ-4-ヨードブタン、2,3-エポキシ-5-クロロペンタン、2,3-エポキシ-5-ブロモペンタン、1,2-エポキシ-5-クロロペンタンなど、エポキシ化合物、例えば、2,2-ビス(p-1,2-エポキシプロポキシフェニル)-プロパン-1,4-ビス(1,2-エポキシプロポキシ)ベンゼン-、N,N’-ビス(2,3-エポキシプロピル)ピペラジンなどである。
【0039】
用語「求電子基」、「求電子体」およびその類似用語は、本明細書に使用される場合、電子対を受け取って共有結合を形成することができる原子または原子団を意味する。本明細書において使用される「求電子基」としては、これらに限定されるわけではないが、ハロゲン化物、カルボニル、およびエポキシド含有化合物が挙げられる。一般的な求電子体は、ハロゲン化物、例えば、チオホスゲン、グリセリンジクロロヒドリン、塩化フタロイル、塩化スクシニル、塩化クロロアセチル、塩化クロロスクシニルなど;ケトン、例えば、クロロアセトン、ブロモアセトンなど;アルデヒド、例えば、グリオキサルなど;イソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネートなど、ならびにこれらの化合物の誘導体であり得る。
【0040】
用語「求核基」、「求核体」およびその類似用語は、本明細書に使用される場合、共有結合を形成することができる電子対を有する原子または原子団を意味する。このタイプの基は、アニオン基として反応するイオン性基であり得る。本明細書において使用される「求核基」としては、これらに限定されるわけではないが、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、およびチオールが挙げられる。
【0041】
補助として、以下の表は、所望の官能基を作り出すために組み合わせられ得る様々な出発求電子体および求核体を提供する。提供される情報は、例示であることが意図され、本明細書において説明される合成技術に対する限定を意図するものではない。
【0042】
【表1-1】
【0043】
【表1-2】
【0044】
概して、炭素求電子体は、炭素求核体などの相補的求核体による攻撃に影響を受けやすく、この場合、攻撃する求核体は、求核体と炭素求電子体との間に新たな結合を形成するために、電子対を炭素求電子体へと移す。
【0045】
炭素求核体の非限定的な例としては、これらに限定されるわけではないが、アルキル、アルケニル、アリール、およびアルキニルグリニヤール試薬、有機リチウム、有機亜鉛、アルキル-、アルケニル-、アリール-、およびアルキニル-スズ試薬(有機スタンナン)、アルキル-、アルケニル-、アリール-、およびアルキニル-ボラン試薬(有機ボランおよび有機ほう素化合物)が挙げられ;これらの炭素求核体は、水または極性有機溶媒中において動力学的に安定であるという利点を有する。炭素求核体の他の非限定的な例としては、ホスホラスイリド、エノールおよびエノラート試薬が挙げられ;これらの炭素求核体は、合成有機化学の分野の当業者に周知の前駆体から作製するのが比較的容易であるという利点を有する。炭素求核体は、炭素求電子体と併せて使用される場合、炭素求核体と炭素求電子体との間に新たな炭素-炭素結合を生じる。
【0046】
炭素求電子体へのカップリングに好適な非炭素求核体の非限定的な例としては、これらに限定されるわけではないが、第一級および第二級アミン、チオール、チオレート、およびチオエーテル、アルコール、アルコキシド、アジド、セミカルバジドなどが挙げられる。これらの非炭素求核体は、炭素求電子体と併せて使用される場合、典型的には、ヘテロ原子結合(C-X-C)を生成し、式中、Xは、ヘテロ原子、例えば、これらに限定されるわけではないが、酸素、硫黄、または窒素などである。
【0047】
用語「エーテル」または「エーテル含有」は、一般式R--O--Rの有機化合物のクラスを意味し、式中、Rは炭素である。用語「エーテル」または「エーテル含有」は、本明細書において使用される場合、Rが炭素ではない化合物、例えば、シアリ
ル基Si--O--Siなどを除外することが意図される。
【0048】
用語「ポリアミン」は、第一級アミノ基、第二級アミノ基および第三級アミノ基を含む群から選択される少なくとも2つの正のアミノ基を有する有機化合物を意味する。したがって、ポリアミンは、ジアミン、トリアミン、およびそれ以上のアミンを網羅する。
【0049】
用語「生分解性」または「生分解性ポリマー」は、本明細書において使用される場合、分解可能および/または堆肥化可能である材料を意味する。そのような材料は、様々な生きている生物によって、または光および/または酸素への曝露によって、分解可能であり得る。したがって、用語「生分解性」は、本明細書において使用される場合、オキソ生分解性、光生分解性、および微生物的生分解性である材料を包含すると理解される。
【0050】
用語「生体適合性」または「生体適合性ポリマー」は、生物体液、例えば、血漿または血液などに接触して使用される場合に、用いられた量において、非毒性、非移動性、化学的に不活性、および実質的に非免疫原性であるポリマーを意味する。好適な生体適合性ポリマーとしては、例えば、セルロースまたはキチンなどの多糖が挙げられる。
【0051】
用語「バイオポリマー」は、生きている生物によって産生されるかまたはそれらに由来するポリマーを意味する。例示的バイオポリマーとしては、ポリペプチド、核酸、ならびに、例えば、セルロースおよびキチンなどの多糖が挙げられる。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「水溶性ポリマー」は、水性溶媒に可溶性である任意のポリマーを意味する。そのような水溶性ポリマーとしては、これらに限定されるわけではないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC~C10アルコキシまたはそれらのアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号に記載される、なお、当該文献は、参照により本明細書に組み入れられる)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体、例えば、硫酸デキストランなど、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖、オリゴ糖、グリカン、セルロースおよびセルロース誘導体、例えば、これらに限定されるわけではないが、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなど、血清アルブミン、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体のコポリマー、ポリビニルエチルエーテル、およびα-β-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドなど、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
用語「官能性」または「官能基」は、分子または物質を説明するために使用される場合、それらが結合している物質または分子の化学特性を決定するように配置された原子団を意味する。官能基の例としては、ハロゲン原子、アミド基、ヒドロキシル基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0054】
本明細書において使用される用語「機能性物質」およびその類似用語は、広くは、標的分子と反応することができるかまたはそれに結合することができるかまたはそれに対する親和性を有することができる部位を有する分子または活性物質を意味するために言及する。用語「機能性物質」およびその類似用語は、広くは、生物学的物質および生体分子を包含する。
【0055】
本明細書において使用される用語「生物学的物質」または「生体分子」およびその類似用語は、実質的に生物起源の任意の物質および化合物を意味する。したがって、当該用語は、少なくとも天然分子の特性が存在する限り、天然源から単離することができるものなど、元来の分子だけでなく、それらから得られる形態、断片、および誘導体、ならびに組換え形態および人工分子も包含する。したがって、当該用語は、生きている生物によって産生される有機分子、例えば、巨大ポリマー性分子、例えば、タンパク質、多糖、および核酸、ならびに小分子例えば、一次代謝産物、二次代謝産物、および天然産物を網羅する。
【0056】
本明細書において使用される用語「生物学的に活性な物質」、「生体活性物質」およびその類似用語は、広くは、標的分子と反応することができるかまたはそれに結合することができるかまたはそれに対する親和性を有することができる部位を有する生物学的分子または生理学的に活性な物質を意味するために言及する。このようなものとしては、これらに限定されるわけではないが、触媒活性な部位を有する物質、例えば、酵素など、特定の化合物または化合物の特定のクラスに結合することができる部位を有する物質、例えば、核酸オリゴヌクレオチド、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)など、あるいはレクチン、ビタミン、ぺプチド、タンパク質、ホルモン内分泌撹乱物質、糖、脂質などが挙げられる。
【0057】
用語「好適なマトリックス」は、上記において定義されるような未修飾の生物学的物質と化学的または生物学的にあまり反応しない材料で構成されるマトリックスを意味する。いくつかの実施形態において、当該生物学的物質は、生体分子を含み得、ならびに好適なマトリックスは、マトリックス材料が毒性ではなく、ヒトの身体に対していかなる有害な健康影響も引き起こさないような生体適合性である材料で構成される。生体適合性でもある好適なマトリックスは、典型的には、一般的に不溶性で、柔軟で、曲面を含む多くの異なる形状に適合することができる高分子材料である。用語「ポリマー」は、共有結合によって一緒に結合された多くの構造ユニットからなる高分子量の化学化合物を示すために使用される。好適で、上記において定義される生物学的物質に対して生体適合性である例示的高分子材料としては、これらに限定されるわけではないが、多糖、セルロース、アンバーライト、グルタルアルデヒド活性化キトサン、アルギン酸塩、PLGA-PEG、およびp(HEMA-EGDMA)が挙げられる。
【0058】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、その意味内において、1個から25個の炭素原子、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、または25個の炭素原子を有する一価(「アルキル」)および二価(「アルキレン」)の直鎖または分岐鎖または環状飽和脂肪族基を包含する。例えば、用語アルキルは、これらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、1-プロピル、イソプロピル、1-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどが挙げられる。低級アルキルは、1個から6個の炭素原子、好ましくは1個から4個の炭素原子を有する上記において定義されるアルキル基である。
【0059】
用語「アルケニル」は、本明細書に使用される場合、その意味内において、2個から25個の炭素原子、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、または25個の炭素原子を有し、アルキル鎖の適用可能な任意の場所にE、Z、シス、またはトランス立体化学のいずれかの少なくとも1つの二重結合を有する、一価(「アルケニル」)および二価(「アルケニレン」)の直鎖または分岐鎖または環状不飽和脂肪族炭化水素基を包含する。アルケニル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、ビニル、アリル、1-メチルビニル、1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、2-メチルペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、1-ノネニル、1-デセニルなどが挙げられる。低級アルケニルは、2個から6個の炭素原子、好ましくは2個から4個の炭素原子を有する上記において定義されるアルケニル基である。用語「アルキニル」は、本明細書において使用される場合、その意味内において、2個から10個の炭素原子を有し、炭素鎖の任意の場所に少なくとも1つの三重結合を有する一価(「アルキニル」)および二価(「アルキニレン」)の直鎖または分岐鎖または環状不飽和脂肪族炭化水素基を包含する。アルキニル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、エチニル、1-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-メチル-2-ブチニル、3-メチル-1-ブチニル、1-ペンチニル、1-ヘキシニル、メチルペンチニル、1-ヘプチニル、2-ヘプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、1-ノニル、1-デシニルなどが挙げられる。低級アルキニレンは、2個から6個の炭素原子、好ましくは2個から4個の炭素原子を有する上記において定義されるアルキニレン基である。
【0060】
用語「アリール」は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数の芳香環を有する単環式または多環式炭素環系を意味し、例えば、これらに限定されるわけではないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどが挙げられる。アリール基(二環式アリール基を含む)は、無置換であってもよく、あるいは、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、カルボキサルデヒド、カルボキシ、カルボキサミド、カルバミド、カルバメート、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィン、および保護されたヒドロキシからなる群から独立して選択される1個から5個の置換基またはそれ以上(典型的には、単環式アリールの場合は1個から5個の置換基、二環式/オリゴ環式アリールの場合は5個超の置換基)で置換することもできる。加えて、置換されたアリール基は、テトラフルオロフェニルおよびペンタフルオロフェニルを含む。
【0061】
用語「ヘテロアリール」は、単独において使用されるかまたは別の基の一部として使用されるかにかかわらず、置換または無置換の芳香族複素環系(単環式または二環式)を意味する。ヘテロアリール基は、例えば、約3個から約50個の炭素原子を有することができる。ヘテロアリール基は、典型的には、約4個から約14個の環原子を有し、炭素原子と、酸素、窒素、または硫黄から選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子とを有する、芳香族複素環系を含む。ヘテロアリール基の例としては、これらに限定されるわけではないが、フラン、チオフェン、インドール、アザインドール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、イミダゾール、N-メチルイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、N-メチルピロール、ピラゾール、N-メチルピラゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-メチル-1,2,4-トリアゾール、1H-テトラゾール、1-メチルテトラゾール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾイミダゾール、N-メチルベンゾイミダゾール、アザベンゾイミダゾール、インダゾール、キナゾリン、キノリン、およびイソキノリンが挙げられる。二環式芳香族ヘテロアリール基としては、(a)1つの窒素原子を有する6員環の芳香族(不飽和)複素環に融合している;(b)2つの窒素原子を有する5または6員環の芳香族(不飽和)複素環に融合している;(c)1つの酸素原子または1つの硫黄原子のどちらかと一緒に1つの窒素原子を有する5員環の芳香族(不飽和)複素環に融合している;または、(d)O、N、またはSから選択される1つのヘテロ原子を有する5員環の芳香族(不飽和)複素環系に融合している、フェニル、ピリジン、ピリミジン、またはピリジジン(pyridizine)環が挙げられる。用語「ヘテロアリール」は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アミノアシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アジド、シアノ、ハロ、ニトロ、カルボキサルデヒド、カルボキシ、カルボキサミド、カルバミド、カルバメート、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィン、および保護されたヒドロキシからなる群から独立して選択される1個から5個の置換基で置換された芳香族複素環も包含する。
【0062】
用語「適宜置換されてもよい」は、本明細書において使用される場合、この用語が意味する基が、無置換であってもよく、または、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ハロ、カルボキシル、カルボキシアルキル、ハロアルキル、ハロアルキニル、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルコキシ、メルカプト、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケノイル、アルキノイル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アミノアシル、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクロキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクロアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アジド、カルボキサルデヒド、カルボキシ、カルボキサミド、カルバミド、カルバメート、オキシム、ヒドロキシルアミン、サルフェート、スルホネート、スルフィネート、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、リン含有基、例えば、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、およびホスフィンなど、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、シアノ、シアネート、イソシアネート、C(O)NH(アルキル)、--C(O)N(アルキル)および--C(O)NR’R’’(式中、R’およびR”は、独立して、水素、アルキル、アリール、または本明細書において定義されるヘテロアリールである)から独立して選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよいことを意味する。
【0063】
用語「ハロゲン」またはその変形、例えば「ハロゲン化物」または「ハロ」などは、本明細書において使用される場合、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。
用語「アミノ」または「アミン」は、本明細書において使用される場合、式R-N-Rの基を意味し、式中、RおよびRは、水素、適宜置換されていてもよいアルキル、適宜置換されていてもよいアルケニル、適宜置換されていてもよいアルキニル、および適宜置換されていてもよいアリール基を含む群から独立して選択されるが、それらに限定されるわけではない。
【0064】
用語「化学的に結合した(chemically coupled)」および「化学的に結合する(chemically couple)」ならびにそれらの文法的変形は、分子の共有結合および非共有結合を意味し、詳細には、しかし排他的ではなく、共有結合、静電結合、水素結合、およびファンデルワールス結合を含む。当該用語は、分子の間接的および直接的結合の両方を包含する。したがって、第1の化合物が、第2の化合物に化学的に結合する場合、その接続は、直接的な化学結合によってであってもよく、あるいは他の化合物、リンカー、または結合を介した間接的な化学的結合によってであってもよい。
【0065】
用語「組換え宿主細胞」は、「宿主細胞」とも呼ばれ、外因性のポリヌクレオチドを含む細胞を意味し、この場合、当該外因性ポリヌクレオチドを細胞内に挿入するために使用される方法としては、これらに限定されるわけではないが、直接的取り込み、形質導入、f交配(f-mating)、または組換え宿主細胞を作り出すための当技術分野において公知の他の方法が挙げられる。単なる一例として、そのような外因性ポリヌクレオチドは、非統合ベクター、例えば、これらに限定されるわけではないが、プラスミドなどであってもよく、あるいは、宿主ゲノム内に統合してもよい。
【0066】
本明細書において使用される場合、「DDAH1」または「DDAH2」は、それらの生物活性にかかわらず、さらにその合成または製造の方法、例えば、これらに限定されるわけではないが、組換え方法(cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、または核酸の他の形態から作製されるか否かにかかわらず)、合成方法、遺伝子導入方法、および遺伝子活性化方法などにかかわらず、ヒトDDAH酵素の少なくとも1つの生物活性を有するヒトまたは非ヒト起源のこれらのポリペプチドおよびタンパク質、例えば、これらに限定されるわけではないが、それらのDDAHアナログ、DDAHアイソフォーム、DDAH模倣物、DDAH断片、ハイブリッドDDAHタンパク質、融合タンパク質オリゴマーおよびマルチマー、相同体、グリコシル化パターン変異体、および変異タンパク質を含む。本明細書において使用される場合、用語「DDAHユニット」、またはDDAH「酵素ユニット」、[U]は、Markus Knipp and Milan Vasak. Analytical Biochem. 286,257 (2000)において定義される条件下において、1分間で1mモルのシトルリンの生成を引き起こす酵素(DDAH)の量を意味する。様々な起源由来のDDAH1およびDDAH2に対するアミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列は、以下の通りである。
【0067】
【表2-1】
【0068】
【表2-2】
【0069】
【表2-3】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」、および「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)は、それらの従来の意味において使用され、それぞれ、分子の残りの部分に酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して結合したアルキル基を意味する。
【0076】
用語「アルキル」は、それ自体によってまたは別の置換基の一部として、特に明記しない限り、完全に飽和、単不飽和、または多価不飽和であり得る、直鎖または分岐鎖または環状炭化水素基、またはそれらの組合せを意味し、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C~C10は、1個から10個の炭素を意味する)、二価または多価基を含み得る。飽和炭化水素基の例としては、これらに限定されるわけではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルのホモログおよび異性体などの基が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つまたは複数の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、これらに限定されるわけではないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プロピニル、3-ブチニル、ならびにより高級のホモログおよび異性体が挙げられる。用語「アルキル」は、特に明記されない限り、下記においてより詳細に定義されるアルキルの誘導体、例えば、「ヘテロアルキル」などを含むことも意図される。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と呼ばれる。
【0077】
用語「アルキレン」は、それ自体によってまたは別の置換基の一部として、これに限定されるわけではないが構造-CHCH-および-CHCHCHCH-によって例示されるような、アルカンに由来する二価の基を意味し、さらに、「ヘテロアルキレン」として下記において説明される基を包含する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1個から24個の炭素原子を有し、この場合、10個以下の炭素原子を有するこれらの基は、本明細書において説明される方法および組成物の特定の実施形態である。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般的に8個以下の炭素原子を有する、より短い鎖のアルキルまたはアルキレン基である。
【0078】
用語「アミノ酸」は、天然に存在するアミノ酸および非天然アミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を意味する。天然においてコードされるアミノ酸は、20の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリン)ならびにピロリジンおよびセレノシステインである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどを意味する。そのようなアナログは、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を維持する。
【0079】
アミノ酸は、本明細書において、一般的に公知のそれらの3文字記号において、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨される1文字記号によって呼ばれ得る。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般的に受け入れられる一文字コードで呼ばれ得る。
【0080】
「アミノ末端修飾基」は、ポリペプチドのアミノ末端に結合させることができる任意の分子を意味する。例えば、そのような末端アミン基は、ポリマー性分子の末端であり得、そのようなポリマー性分子としては、これらに限定されるわけではないが、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、および多糖が挙げられる。同様に、「カルボキシ末端修飾基」は、ポリペプチドのカルボキシ末端に結合させることができる任意の分子を意味する。末端修飾基としては、これらに限定されるわけではないが、様々な水溶性ポリマー、ペプチド、またはタンパク質、例えば血清アルブミンなど、あるいはペプチドの血清半減期を延ばす他の部分が挙げられる。末端修飾基としては、これらに限定されるわけではないが、様々な水溶性ポリマー、ペプチド、またはタンパク質が挙げられる。
【0081】
「二官能性ポリマー」は、「二官能性リンカー」とも呼ばれ、他の部分と特異的に反応して共有結合または非共有結合を形成することができる2つの官能基を含むポリマーを意味する。そのような部分は、これらに限定されるわけではないが、アミノ酸またはペプチド上の側鎖を含み得る。二官能性リンカーまたは二官能性ポリマーに結合され得る当該他の部分は、同じ部分であってもまたは異なる部分であってもよい。単なる一例として、二官能性リンカーは、第1のペプチド上の基と反応する官能基と、第2のペプチド上の基と反応する別の官能基とを有し得、それにより、第1のペプチド、二官能性リンカー、および第2のペプチドを含むコンジュゲートを形成し得る。
【0082】
「多官能性ポリマー」は、「多官能性リンカー」とも呼ばれ、他の部分と反応することができる2つ以上の官能基を含むポリマーを意味する。そのような部分は、共有結合または非共有結合を形成するために、これらに限定されるわけではないが、天然または非天然アミノ酸あるいはそのような天然または非天然アミノ酸を含むペプチド上の側鎖(例えば、これらに限定されるわけではないが、アミノ酸側鎖など)を含み得る。二官能性ポリマーまたは多官能性ポリマーは、任意の所望の長さまたは分子量であり得、ならびに、化合物に結合した1つまたは複数の分子と、当該化合物が結合する分子または当該化合物との間に特定の所望の間隔または立体構造を提供するように選択され得る。
【0083】
「生物活性を調節する」とは、化合物、ポリペプチドまたは酵素の反応性を増加または減少させること、当該化合物、ポリペプチドまたは酵素の選択性を変更すること、当該ポリペプチドまたは酵素のマトリックス選択性を増強または低下させることを意図する。修飾された生物活性の分析は、2つ以上の化合物、ポリペプチドまたは酵素の生物活性を比較することによって実施することができる。
【0084】
用語「生体材料」は、本明細書において使用される場合、生物学的に誘導された材料、例えば、これらに限定されるわけではないが、バイオリアクターから得られる材料ならびに/あるいは組換え方法または組み換え技術から得られる材料などを意味する。
【0085】
用語「生物物理学的プローブ」または「バイオセンサー」は、本明細書において使用される場合、濃度など、分子における変化を検出またはモニターすることができるセンサーまたはプローブを意味する。そのような分子としては、これらに限定されるわけではないが、ADMAおよびシトルリンなどの化合物、DDAHなどのタンパク質が挙げられ、ならびに、タンパク質と他の巨大分子との相互作用を検出またはモニターするために使用され得る。
【0086】
用語「ビオチンアナログ」は、「ビオチン模倣物」とも呼ばれ、本明細書において使用される場合、高い親和性によってアビジンおよび/またはストレプトアビジンに結合する、ビオチン以外の任意の分子である。
【0087】
用語「アリール」は、特に明記しない限り、一緒に縮合されているかまたは共有結合している単一の環または複数の環(例えば、これらに限定されるわけではないが、1個から3個の環)であり得る多価不飽和芳香族炭化水素置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択される1個から4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)を意味し、この場合、窒素原子および硫黄原子は、適宜酸化されてもよく、ならびに窒素原子は、適宜四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子によって分子の残りの部分に結合させることができる。アリール基およびヘテロアリール基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、および6-キノリルが挙げられる。上記において述べたアリールおよびヘテロアリール環系のそれぞれに対する置換基は、以下において説明される許容可能な置換基の群から選択される。
【0088】
簡潔のため、用語「アリール」は、他の用語と組み合わせて使用される場合(例えば、これらに限定されるわけではないが、アリールオキシ、アリールチオキシ、アラルキル)、上記において定義されるアリール環およびヘテロアリール環の両方を包含する。したがって、用語「アラルキル」または「アルカリル」は、その基のアリール基がアルキル基に結合している基(例えば、これらに限定されるわけではないが、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)、例えば、そのアルキル基の炭素原子(例えば、これらに限定されるわけではないが、メチレン基など)が、例えば酸素原子で置き換えられている基(例えば、これらに限定されるわけではないが、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなど)を包含することが意図される。
【0089】
「二官能性ポリマー」は、共有結合または非共有結合を形成するために、他の部分(例えば、これらに限定されるわけではないが、アミノ酸側鎖など)と特異的に反応することができる2つの別々の官能基を含むポリマーを意味する。特に生物学的に活性な構成要素上の基と反応する一官能基と、第2の生物学的構成要素上の基と反応する別の基とを有する二官能性リンカーは、第1の生物学的に活性な構成要素と、二官能性リンカーと、第2の生物学的に活性な構成要素とを含むコンジュゲートを形成するために使用され得る。様々な化合物をペプチドに結合させるための多くの手順およびリンカー分子が、当業者に公知である。「多官能性ポリマー」は、共有結合または非共有結合を形成するために、他の部分(例えば、これらに限定されるわけではないが、アミノ酸側鎖など)と特異的に反応することができる2つ以上の別々の官能基を含むポリマーを意味する。二官能性ポリマーまたは多官能性ポリマーは、任意の所望の長さまたは分子量であり得、ならびに、ポリペプチドに結合した1つまたは複数の分子と、その結合パートナーまたは当該ポリペプチドとの間に特定の所望の間隔または立体構造を提供するように選択され得る。
【0090】
用語「生物学的に活性な分子」、「生物学的に活性な部分」、または「生物学的に活性な薬剤」は、本明細書において使用される場合、有機体に関連する生物学的システム、経路、分子、または相互作用の任意の物理的または生化学的特性に影響を及ぼすことができる任意の物質を意味する。
【0091】
コフォールディング(cofolding)は、本明細書において使用される場合、お互いに相互作用する少なくとも2つのポリペプチドを用い、結果として、折り畳まれていないポリペプチドまたは不適切に折り畳まれたポリペプチドの、元来の適切に折り畳まれたポリペプチドへの形質転換を生じさせる、リフォールディングプロセス、反応、または方法を明確に意味する。
【0092】
「比較ウインドウ(comparison window)」は、本明細書において使用される場合、20から600、通常は約50から約200、より通常は約100から約150からなる群から選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含み、そこで、配列と参照配列とが最適に揃えられた後に当該配列が、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る。比較のために配列をアラインメントする方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、これらに限定されるわけではないが、Smith and Watermanの局所相同アルゴリズム(local homology algorithm)によって、Needleman and Wunschの相同アラインメントアルゴリズム(homology alignment algorithm)によって、Pearson and Lipmanの類似性検索法(search for similarity method)によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実装(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison、WI)によって、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって、実施することができる。
【0093】
パーセント配列同一性および配列類似性を特定するための好適なアルゴリズムの一例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムである。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、アメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)によって公的に利用可能である。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして、11のword length(W)、10のexpectation(E)、M=5、N=-4、およびcomparison of both strandsを使用する。アミノ酸配列に対して、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のword length、および10のexpectation(E)、ならびに50のBLOSUM62 scoring matrix alignments(B)、10のexpectation(E)、M=5、N=-4、およびcomparison of both strandsを使用する。BLASTアルゴリズムは、通常、「low complexity」フィルターをオフにして実施される。
【0094】
BLASTアルゴリズムは、2つの配列の間の類似性の統計的分析も実施する。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1つは、最も小さい合計確率(P(N))であり、それは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の一致が偶発する確率の指標を提供する。例えば、参照核酸に対する試験核酸の比較における最も小さい合計確率が、約0.2未満、約0.01未満、または約0.001未満である場合、核酸は、参照配列と同様であると見なされる。
【0095】
用語「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾された変異体」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、あるいは、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列を意味する。遺伝コードの縮重により、機能的に同一の多くの核酸が、任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定される全ての位置において、コードされるポリペプチドを変更することなく、当該コドンを、説明された任意の対応するコドンに変更することができる。そのような核酸の変化型は、保存的に修飾された変化型の一種である「サイレント変化型」である。本明細書において、ポリペプチドをコードする全ての核酸配列は、当該核酸の全ての可能性あるサイレント変化型も説明する。当業者は、核酸におけるそれぞれのコドン(通常はメチオニンのための唯一のコドンであるATG、および通常はトリプトファンのための唯一のコドンであるTGGは除外する)は、機能的に同一の分子を生じるように修飾することができることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変化型は、それぞれの説明された配列において暗に示される。
【0096】
アミノ酸配列のように、当業者は、コードされる配列の単一のアミノ酸またはわずかな割合のアミノ酸を変更、追加、または削除する、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失、または追加は、その変更によって結果として、アミノ酸が化学的に同様のアミノ酸に置き換えられる場合、「保存的に修飾された変異体」であるということを認識する。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換の表は、当業者に公知である。そのような保存的に修飾された変異体は、本明細書において説明される方法および組成物の多型変異体、種間相同体、およびアレルに追加されるものであり、それらを排除するものではない。
【0097】
以下の8つのグループはそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:
a.アラニン(A)、グリシン(G);
b.アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
c.アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
d.アルギニン(R)、リジン(K);
e.イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
f.フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
g.セリン(S)、トレオニン(T);および
h.システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton,Proteins: Structures and Molecular Properties (W H Freeman & Co.; 2nd edition (December 1993年12月)を参照されたい)。
【0098】
用語「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、特に明記しない限り、それ自体によってまたは他の用語との組合せにおいて、それぞれ、「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環状の変化型を表す。したがって、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、飽和、部分的不飽和、および完全不飽和の環状結合を包含する。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りの部分に結合される位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、これらに限定されるわけではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、これらに限定されるわけではないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられる。さらに、当該用語は、二環式および三環式の環状構造を包含する。同様に、用語「ヘテロシクロアルキレン」は、それ自体によってまたは別の置換基の一部として、ヘテロシクロアルキル由来の二価の基を意味し、ならびに、用語「シクロアルキレン」は、それ自体によってまたは別の置換基の一部として、シクロアルキルに由来する二価の基を意味する。
【0099】
「変性薬剤(Denaturing agent)」または「変性剤(denaturant)」は、本明細書において使用される場合、タンパク質の可逆的アンフォールディングを生じさせる任意の化合物または材料として定義される。変性薬剤または変性剤の強さは、特定の変性薬剤または変性剤の特性および濃度の両方によって決定される。好適な変性薬剤または変性剤は、カオトロープ、界面活性剤、有機水混和性溶媒、リン脂質、または2種類以上のそのような薬剤の組合せであり得る。好適なカオトロープとしては、これらに限定されるわけではないが、尿素、グアニジン、およびチオシアン酸ナトリウムが挙げられる。有用な界面活性剤としては、これらに限定されるわけではないが、強い界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、またはポリオキシエチレンエーテル(例えば、TweenまたはTriton界面活性剤)、サルコシルなど、穏やかな非イオン性界面活性剤(例えば、ジギトニン)、穏やかなカチオン性界面活性剤、例えば、N-2,3-(ジオールエトキシ)-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムなど、穏やかなイオン性界面活性剤(例えば、コール酸ナトリウムまたはデオキシコール酸ナトリウム)、あるいは双性イオン性界面活性剤、例えば、これらに限定されるわけではないが、スルホベタイン(Zwittergent)、3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ-1-プロパンサルフェート(CHAPS)、および3-(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSO)など、が挙げられ得る。有機水混和性溶媒、例えば、アセトニトリル、低級アルカノール(とりわけ、C~Cアルカノール、例えば、エタノールまたはイソプロパノールなど)、または低級アルカンジオール(とりわけ、C~Cアルカンジオール、例えば、エチレングリコールなど)は、変性剤として使用され得る。本明細書において説明される方法および組成物において有用なリン脂質は、天然に存在するリン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、およびホスファチジルイノシトールなど、または合成リン脂質誘導体または変異体、例えば、ジヘキサノイルホスファチジルコリンまたはジヘプタノイルホスファチジルコリンなどであり得る。
【0100】
用語「有効量」は、本明細書において使用される場合、処置される疾患、状態または障害の症状の1つまたは複数をある程度まで軽減する、患者の血液中のADMAの加水分解の量を意味する。
【0101】
用語「増強する(enhance)」または「増強すること(enhancing)」は、所望の効果の効力または持続時間のどちらかを増加するかまたは長引かせることを意味する。
【0102】
本明細書において使用される場合、用語「真核生物」は、系統学的ドメインEucaryaに属する有機体、例えば、動物(例えば、これらに限定されるわけではないが、哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥など)、繊毛虫、植物(例えば、これらに限定されるわけではないが、単子葉植物、双子葉植物、藻類など)、真菌、酵母、鞭毛虫、微胞子虫、原生生物などを意味する。
【0103】
用語「官能基」、「活性部分」、「活性化基」、「脱離基」、「反応部位」、「化学的反応性基」、および「化学的に反応性の部分」は、当技術分野および本明細書において、分子の異なる定義可能な一部分またはユニットについて言及するために使用される。当該用語は、化学分野において幾分か同義的であり、本明細書において、何らかの機能または活性を実施し、他の分子と反応するような、分子の一部分を示すために使用される。
【0104】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、ヨウ素、および臭素を包含する。
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体によってまたは他の用語との組合せにおいて、特に明記しない限り、述べられた数の炭素原子と、O、N、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる、安定な直鎖または分岐鎖または環状炭化水素基、あるいはそれらの組合せを意味し、この場合、窒素原子および硫黄原子は、適宜酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は、適宜四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、およびS、ならびにSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に、またはアルキル基が分子の残りの部分に結合される位置に位置され得る。その例としては、これらに限定されるわけではないが、-CH-CH-O-CH、-CH-CH-NH-CH、-CH-CH-N(CH)-CH、-CH-S-CH-CH、-CH-CH、-S(O)-CH、-CH-CH-S(O)-CH、-CH=CH-O-CH、-Si(CH、-CH-CH=N-OCH、および-CH=CH-N(CH)-CHが挙げられる。例えば、-CH-NH-OCHおよび-CH-O-Si(CHなど、2つまでのヘテロ原子が連続している場合もある。同様に、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体によってまたは別の置換基の一部として、これらに限定されるわけではないが、-CH-CH-S-CH-CH-および-CH-S-CH-CH-NH-CH-によって例示されるような、ヘテロアルキルに由来する二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基の場合、同じまたは異なるヘテロ原子が、鎖末端のどちらかまたは両方も占めることができる(例えば、これらに限定されるわけではないが、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、アミノオキシアルキレンなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレンの連結基の場合、連結基の方向は、当該連結基の式が記述されている方向によって示されるものではない。例えば、式-C(O)R’-は、-C(O)R’-および-R’C(O)-の両方を表す。
【0105】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連における、用語「同一の」またはパーセント「同一性」は、同じである2つ以上の配列またはサブ配列を意味する。下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手作業によるアラインメントおよび目視検査によって測定した場合に、比較ウインドウまたは指定された領域にわたって最大の一致となるように比較および整列させたとき、配列が、アミノ酸残基またはヌクレオチドの同じパーセンテージを有する場合(すなわち、指定された領域にわたって約60%の同一性、適宜、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の同一性)、配列は「実質的に同一」である。この定義は、試験配列の補体も意味する。同一性は、少なくとも約50のアミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたって、または、75~100のアミノ酸長またはヌクレオチド長である領域にわたって、または、指定されない場合は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列全体にわたって、存在することができる。
【0106】
配列比較のため、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要であれば、サブ配列座標が指定され、ならびに配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメーターを使用することもできるし、または代替パラメーターを指定することもできる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較して、試験配列に対するパーセント配列同一性を計算する。
【0107】
用語「単離された」は、核酸またはタンパク質に適用される場合、当該核酸またはタンパク質が、天然状態においてそれらが関連付けられた細胞構成成分の少なくともいくらかを含有しないこと、または、当該核酸またはタンパク質が、インビボまたはインビトロにおいて産生される濃度よりもより高いレベルまで濃縮されていることを意味する。それは、均質状態であり得る。単離された物質は、乾燥状態または半乾燥状態のどちらかであり得、あるいは、溶液中、例えば、これらに限定されるわけではないが、水溶液中であり得る。それは、追加の薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含む医薬組成物の構成成分であり得る。純度および均質性は、通常、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーなどを使用して特定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質は、実質的に精製されている。特に、単離された遺伝子は、当該遺伝子に隣接し、目的の遺伝子以外のタンパク質をコードする、オープンリーディングフレームから分離される。用語「精製された」は、核酸またはタンパク質が、電気泳動ゲルにおいて、実質的に1つのバンドを生じることを意味する。特に、それは、その核酸またはタンパク質が、少なくとも85%の純度、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも99%またはそれ以上の純度であること意味し得る。
【0108】
用語「結合」または「リンカー」または「スペーサー」は、通常は化学反応の結果として形成されかつ典型的には共有結合である、基または結合を意味するために、本明細書において使用される。用語「リンカー」および「スペーサー」は、本明細書において使用される場合、化合物の2つの一部分を接続する有機部分を意味する。加水分解的に安定な結合は、当該結合が、水中において実質的に安定であり、有用なpH値において、例えば、これらに限定されるわけではないが、長期間、おそらく無期限に、生理的条件下において、水と反応しないことを意味する。加水分解的に不安定なまたは分解可能な結合は、当該結合が、水中または水溶液中、例えば、血液中などにおいて分解可能であることを意味する。酵素学的に不安定なまたは分解可能な結合は、当該結合が、1つまたは複数の酵素によって分解することができることを意味する。当技術分野において理解されるように、PEGおよび関連ポリマーは、ポリマー骨格中に、またはポリマー骨格と、ポリマー分子の末端官能基の1つまたは複数との間のリンカー基中に分解可能な結合を含み得る。例えば、PEGカルボン酸または活性化PEGカルボン酸と生理活性剤上のアルコール基との反応によって形成されるエステル結合は、一般的に、生理的条件下において加水分解して、薬剤を放出する。他の加水分解的に分解可能な結合としては、これらに限定されるわけではないが、カーボネート結合;アミンとアルデヒドの反応から生じるイミン結合;アルコールとリン酸基の反応によって形成されるリン酸エステル結合;ヒドラジドとアルデヒドの反応生成物であるヒドラジド結合;アルデヒドとアルコールの反応生成物であるアセタール結合;ホルマートとアルコールの反応生成物であるオルソエステル結合;アミン基、例えば、これらに限定されるわけではないが、PEGなどのポリマーの末端のアミン基などと、ペプチドのカルボキシル基とによって形成されるペプチド結合;ならびにホスホルアミダイト基、例えば、これらに限定されるわけではないが、ポリマーの末端のホスホルアミダイト基などと、オリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基とによって形成されるオリゴヌクレオチド結合が挙げられる。一実施形態において、当該リンカーは、非炭化水素、例えば、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アンモニア、水、または硫化水素などである。
【0109】
用語「結合」または「リンカー」または「スペーサー」は、本明細書において使用される場合、化合物の2つの一部分を接続する有機部分も意味する。一実施形態において、リンカーは、2個から18個の炭素原子、2個から16個の炭素原子、2個から14個の炭素原子、2個から12個の炭素原子、または2個から10個の炭素原子、2個から8個の炭素原子、2個から6個の炭素原子、および2個から4個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪族鎖である。一実施形態において、当該リンカーは、4個から8個の炭素原子、より好ましくは6個の炭素原子を有する飽和脂肪族鎖である。当該リンカーの求核基は、脂肪族鎖の末端の一方に、または脂肪族鎖の末端の間に位置され得る。一実施形態において、当該リンカーの求核基は、脂肪族鎖から延びる分岐鎖によって当該脂肪族鎖に化学的に結合され得る。一実施形態において、当該リンカー上に、好ましくは脂肪族鎖の末端に配置された2つの求核基が存在する。一実施形態において、少なくとも1つの求核基は、脂肪族鎖の末端に配置されており、ならびに第二級脂肪族リンカー鎖によってエーテルまたはエポキシド含有部分のどちらかに結合される。当該第二級脂肪族リンカー鎖は、1個から3個の炭素原子を有し得る。
【0110】
本明細書において使用される場合、用語「培地」は、任意の宿主細胞、例えば、細菌宿主細胞、酵母宿主細胞、昆虫宿主細胞、植物宿主細胞、真核生物宿主細胞、哺乳動物宿主細胞、CHO細胞、原核生物宿主細胞、大腸菌(E. coli)、またはシュードモナス属宿主細胞、および細胞内容物などを支持または収容し得る、任意の培養培地、溶液、固体、半固体、または剛体支持体を包含する。したがって、当該用語は、宿主細胞が増殖した培地、例えば、増殖ステップの前または後のどちらかの培地などの、ポリペプチドが分泌された培地を包含し得る。当該用語は、例えば、ポリペプチドが細胞内において産生され、宿主細胞が溶解または破壊されて当該ポリペプチドを放出するような場合における、宿主細胞溶解物を含む緩衝液または試薬も包含し得る。
【0111】
物質の「代謝物」は、当該物質が代謝されるときに形成される、その物質の誘導体である。用語「活性代謝物」は、物質が代謝されるときに形成される、その物質の生物学的に活性な誘導体を意味する。用語「代謝された」は、特定の物質が、例えば酵素によって、変えられるプロセス(例えば、これらに限定されるわけではないが、加水分解反応および酵素によって触媒される反応など)の合計を意味する。
【0112】
用語「修飾された」は、本明細書において使用される場合、ポリペプチドに対する翻訳後修飾の存在を意味する。
本明細書において使用される場合、用語「非真核生物」は、非真核有機体を意味する。例えば、非真核有機体は、真正細菌(例えば、これらに限定されるわけではないが、大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)など)系統学的ドメイン、あるいは、古細菌(例えば、これらに限定されるわけではないが、メタノコッカス・ヤンナスキイ(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモアートトロピカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロバクテリウム属、例えば、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム属種NRC-1、アーケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、パイロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、アエロピュルム・ペルニクス(Aeuropyrum pernix)など)系統学的ドメインに属することができる。
【0113】
「非天然アミノ酸」は、20の一般的なアミノ酸またはピロリシンまたはセレノシステインのうちの1つではないアミノ酸を意味し;用語「非天然アミノ酸」と同じ意味において使用され得る他の用語は、「非天然コード化アミノ酸」、「非天然アミノ酸」、「天然に存在しないアミノ酸」、およびそれらの様々にハイフンでつながれたまたはつながれていない変化型である。用語「非天然アミノ酸」は、これらに限定されるわけではないが、天然にコードされるアミノ酸(例えば、これらに限定されるわけではないが、20の一般的なアミノ酸またはピロリシンまたはセレノシステインなど)の修飾によって天然に生じるが、翻訳複合体によって、成長するポリペプチド鎖中に組み込まれないアミノ酸を包含する。天然にコードされない天然に生じるアミノ酸の例としては、これらに限定されるわけではないが、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-トレオニン、およびO-ホスホチロシンが挙げられる。
【0114】
用語「核酸」は、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、またはリボヌクレオチドならびに一本鎖形態または二本鎖形態のどちらかのそれらのポリマーを意味する。特に限定されない限り、当該用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の方式において代謝される、天然のヌクレオチドの公知のアナログを含む核酸を包含する。具体的に限定されない限り、当該用語は、PNA(ペプチド核酸)を含むオリゴヌクレオチドアナログ、アンチセンス技術において使用されるDNAのアナログ(ホスホロチオエート、ホスホロアミデートなど)も言及する。特に明記されない限り、特定の核酸配列は、保存的に修飾されたその変異体(例えば、これらに限定されるわけではないが、縮重コドン置換など)および相補配列ならびに明確に示された配列も暗黙において包含する。詳細には、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を生成することによって実現され得る。
【0115】
「酸化剤」は、タンパク質リフォールディングに関して本明細書において使用される場合、酸化される化合物から電子を除去することができる任意の化合物または材料として定義される。好適な酸化剤としては、これらに限定されるわけではないが、酸化されたグルタチオン、シスチン、シスタミン、酸化されたジチオスレイトール、酸化されたエリスリトール、および酸素が挙げられる。本明細書において説明される方法および組成物での使用に対して、様々な酸化剤が好適である。
【0116】
本明細書において使用される場合、用語「ポリアルキレングリコール」は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびそれらの誘導体を意味する。用語「ポリアルキレングリコール」は、1kDaから100kDaの間の平均分子量を有する直鎖状および分岐鎖状ポリマーの両方を包含する。他の例示的な実施形態は、例えば、商業的サプライヤーのカタログに一覧される。
【0117】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを意味するために、本明細書において互換的に使用される。すなわち、ポリペプチドを対象とする説明は、ペプチドの説明およびタンパク質の説明にも等しく当てはまり、その逆もまたしかりである。この用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、ならびに1つまたは複数のアミノ酸残基が非天然アミノ酸であるようなアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書において使用される場合、当該用語は、全長タンパク質またはその断片を含む、任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、この場合、アミノ酸残基は、共有結合性ペプチド結合によって結合される。
【0118】
用語「翻訳後修飾された」は、ポリペプチド鎖中に組み入れられた後に天然または非天然アミノ酸に生じる、そのようなアミノ酸の任意の修飾を意味する。当該用語は、単なる一例として、共翻訳インビボ修飾、共翻訳インビトロ修飾(例えば、無細胞翻訳システムにおいてなど)、翻訳後インビボ修飾、および翻訳後インビトロ修飾を包含する。
【0119】
用語「保護された」は、ある特定の反応条件下での化学反応性官能基の反応を防ぐ「保護基」または部分の存在を意味する。保護基は、保護される化学的反応性基のタイプに応じて変わる。例えば、当該化学的反応性基が、アミンまたはヒドラジドである場合、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)および9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)からなる群から選択することができる。化学的反応性基がチオールである場合、保護基は、オルトピリジルジスルフィドであり得る。化学的反応性基が、カルボン酸、例えば、ブタン酸またはプロピオン酸など、またはヒドロキシル基である場合、保護基は、ベンジル基、またはアルキル基、例えば、メチル、エチルもしくはtert-ブチルなどであり得る。光不安定性基、例えば、NvocおよびMeNvocなど、当技術分野において公知の他の保護基も、本明細書において説明される方法においておよび組成物と共に使用され得る。
【0120】
単なる一例として、ブロッキング基/保護基が、以下から選択され得る。
【0121】
【化1】
【0122】
他の保護基は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999に記載されており、なお、当該文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0123】
「組換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入のために使用される方法、例えば、直接的取り込み、形質導入、f交配(f-mating)、または組換え宿主細胞を作り出すための当技術分野において公知の他の方法にかかわらず、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞を意味する。当該外因性ポリヌクレオチドは、非統合ベクター、例えば、プラスミドなどとして維持され得るか、または二者択一的に、宿主ゲノム内に統合され得る。
【0124】
「還元剤」は、タンパク質リフォールディングに関して本明細書において使用される場合、スルフヒドリル基を還元状態に維持し、ならびに分子内または分子間ジスルフィド結合を還元する、任意の化合物または材料として定義される。好適な還元剤としては、これらに限定されるわけではないが、ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、ジチオエリトリトール、システイン、システアミン(2-アミノエタンチオール)、および還元されたグルタチオンが挙げられる。本明細書において説明される方法および組成物における使用に対して、様々な還元剤が好適である。
【0125】
「リフォールディング」は、本明細書において使用される場合、ジスルフィド結合含有ポリペプチドを、不適切に折り畳まれた状態または折り畳まれていない状態から、ジスルフィド結合に関して本来のまたは適切に折り畳まれたコンフォメーションへと形質転換する、任意のプロセス、反応、または方法を説明する。
【0126】
語句「に選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」は、配列が、複合体混合物(例えば、これらに限定されるわけではないが、全細胞内DNAもしくはRNAまたはライブラリーDNAもしくはRNAなど)に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において、分子のみを特定のヌクレオチド配列へ結合、二重化、またはハイブリダイズすることを意味する。
【0127】
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、当技術分野において公知の低イオン強度および高温の条件を意味する。典型的には、ストリンジェントな条件下において、プローブは、核酸の複合混合物中のその標的サブ配列、(例えば、これらに限定されるわけではないが、全細胞内DNAもしくはRNAまたはライブラリーDNAもしくはRNAなど)にハイブリダイズするが、当該複合混合物中の他の配列にはハイブリダイズしない。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる状況では異なる。より長い配列は、特により高い温度においてハイブリダイズする。概して、ストリンジェントな条件は、定義されたイオン強度pHにおいて特定の配列に対して熱融点(T)より約5~10℃低くなるように選択される。Tは、平衡状態において標的に対して相補的なプローブの50%が標的配列にハイブリダイズする(標的配列は過剰に存在し、Tでは、平衡においてプローブの50%が占められる)、(定義されたイオン強度、pH、および核濃度の下での)温度である。ストリンジェントな条件は、塩濃度が、pH7.0から8.3において、約1.0M未満のナトリウムイオン濃度、典型的には約0.01から1.0Mのナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、ならびに温度が、短いプローブの場合(例えば、これらに限定されるわけではないが、10~50のヌクレオチド)、少なくとも約30℃であり、ならびに長いプローブ(例えば、これらに限定されるわけではないが、50超のヌクレオチドなど)の場合、少なくとも約60℃であるような、条件であり得る。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても実現され得る。選択的ハイブリダイゼーションまたは特異的ハイブリダイゼーションの場合、正の信号は、少なくとも2回のバックグラウンドハイブリダイゼーションであり得、適宜、10回のバックグラウンドハイブリダイゼーションであってもよい。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、以下の通り:50%のホルムアミド、5倍のSSC、および1%のSDS、42℃でのインキュベーション、または、5倍のSSC、1%のSDS、65℃でのインキュベーションであり得、0.2倍のSSCで洗浄し、65℃において0.1%のSDSで洗浄される。そのような洗浄は、5分、15分、30分、60分、120分、または以上において、実施することができる。
【0128】
用語「対象」は、本明細書において使用される場合、処置、観察または実験の目的物である、動物、いくつかの実施形態では哺乳動物、他の実施形態ではヒトを意味する。
用語「実質的に精製された」は、通常はタンパク質に随伴するかまたはタンパク質と相互作用する構成成分を実質的にまたは本質的に含み得ないポリペプチドであって、その天然に存在する環境、すなわち、ネイティブ細胞、または、組換え的に産生されたポリペプチドの場合は、宿主細胞において見出されるようなポリペプチドを意味する。細胞材料を実質的に含み得ないポリペプチドは、夾雑タンパク質の約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約l%未満(乾燥重量の)を有するタンパク質の調製物を含む。当該ポリペプチドまたはその変異体が、宿主細胞によって組換え的に産生される場合、当該タンパク質は、当該細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%以下において存在し得る。当該ポリペプチドまたはその変異体が、宿主細胞によって組換え的に産生される場合、当該タンパク質は、当該細胞の乾燥重量の約5g/L、約4g/L、約3g/L、約2g/L、約1g/L、約750mg/L、約500mg/L、約250mg/L、約100mg/L、約50mg/L、約10mg/L、または約1mg/L以下において培養培地中に存在し得る。したがって、本明細書において説明される方法によって作製される「実質的に精製された」ポリペプチドは、適切な方法、例えば、SDS/PAGE分析、RP HPLC、SEC、および細管式電気泳動法によって特定された場合、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、詳細には、少なくとも約75%、80%、85%の純度レベル、より詳細には、少なくとも約90%の純度レベル、少なくとも約95%の純度レベル、少なくとも約99%以上の純度レベルを有し得る。
【0129】
用語「置換基」は、これらに限定されるわけではないが、「非妨害性置換基(non-interfering substituent)」を包含する。「非妨害性置換基」は、安定な化合物をもたらす基である。好適な非妨害性置換基は、これらに限定されるわけではないが、ハロ、C~C10アルキル、C~C10アルケニル、C~C10アルキニル、C~C10アルコキシ、C~C12アラルキル、C~C12シクロアルキル、C~C12シクロアルケニル、フェニル、置換フェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C~C12アルコキシアルキル、C~C12アルコキシアリール、C~C12アリールオキシアルキル、C~C12オキシアリール、C~Cアルキルスルフィニル、C~C10アルキルスルホニル、-(CH-O-(C~C10アルキル)[式中、mは、1から8である]アリール、置換アリール、置換アルコキシ、フルオロアルキル、複素環基、置換複素環基、ニトロアルキル、-NO、-CN、-NRC(O)-(C~C10アルキル)、-C(O)-(C~C10アルキル)、C~C10アルキルチオアルキル、-C(O)O-(C~C10アルキル)、-OH、-SO、=S、-COOH、-NR、カルボニル、-C(O)-(C~C10アルキル)-CF3、-C(O)-CF3、-C(O)NR2、-(C~C10アリール)-S-(C~C10アリール)、-C(O)-(C6~C10アリール)、-(CH-O-(CH-O-(C~C10アルキル)[式中、各mは、1から8である]、-C(O)NR、-C(S)NR、-SONR、-NRC(O)NR、-NRC(S)NR、それらの塩などが挙げられる。先行のリストの各R基は、H、アルキルもしくは置換アルキル、アリールもしくは置換アリール、またはアルカリルからなる群から独立して選択される。置換基が、左から右へと記述される従来の化学式によって指定されている場合、それは、構造を右から左へと記述することによって得られる化学的に同一な置換基を等しく包含し、例えば、-CHO-は、-OCH-と同等である。
【0130】
アルキル基およびヘテロアルキル基のための置換基(例えば、多くの場合、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニルといわれる基を含む)は、ゼロから(2m’+1)の範囲の数の(この場合、mは、そのような基の炭素原子の総数である)、OR、=O、=NR、=N-OR、-NR、-SR、-ハロゲン、-SiR、-OC(O)R、-C(O)R、-COR、-CONR、-OC(O)NR、-NRC(O)R、-NR-C(O)NR、-NR(O)R、-NR-C(NR)=NR、-S(O)R、-S(O)R、-S(O)NR、-NRSOR、-CNおよび-NOから選択される1つまたは複数の様々な基であり得るが、それらに限定されるわけではない。先行のリストの各R基は、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例えば、これらに限定されるわけではないが、1個から3個のハロゲンで置換されたアリールなど、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシ基もしくはチオアルコキシ基、またはアラルキルからなる群から独立して選択される。2つのR基が、同じ窒素原子に結合している場合、それらは、窒素原子と組み合わされて、5、6、または7員環を形成することができる。例えば、-NRは、これらに限定されるわけではないが、1-ピロリジニルおよび4-モルホリニルを包含することが意図される。置換基についての上記の説明から、当業者は、用語「アルキル」は、水素原子以外の基に結合した炭素原子を含む基、例えば、ハロアルキル(例えば、これらに限定されるわけではないが、CFおよび-CHCFなど)、およびアシル(例えば、これらに限定されるわけではないが、-C(O)CH、-C(O)CF、-C(O)CHOCHなど)などを包含することが意図される。
【0131】
アルキル基について説明した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基のための置換基は、様々であり、これらに限定されるわけではないが、ゼロから芳香族環系における開放原子価の総数までの範囲の数において、-OR、=O、=NR、=N-OR、-NR、-SR、-ハロゲン、-SiR、-OC(O)R、-C(O)R、-COR、-CONR、-OC(O)NR、-NRC(O)R、-NR-C(O)NR、-NR(O)R、-NR-C(NR)=NR、-S(O)R、-S(O)R、-S(O)NR、-NRSOR、-CN、-NO、-R、-N、-CH(Ph)、フルオロ(C~C)アルコキシ、およびフルオロ(C~C)アルキルから選択され;この場合、先行のリストの各R基は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリールから独立して選択される。
【0132】
用語「処置する」は、予防的処置および/または治療的処置のどちらかを意味するために使用される。
本明細書において使用される場合、用語「水溶性ポリマー」は、水性溶媒に可溶性である任意のポリマーを意味する。ポリペプチドへの水溶性ポリマーの結合は、変化、例えば、これらに限定されるわけではないが、血清半減期の増加もしくは調節、または未修飾形態との比較における治療半減期の増加もしくは調節、免疫原性の調節、物理的会合特性の調節、例えば、凝集および多量体形成など、受容体結合の変更、1つまたは複数の結合パートナーへの結合の変更、および受容体二量体化または多量体化の変更などをもたらし得る。当該水溶性ポリマーは、その自身の生物活性を有してもまたは有さなくてもよく、ならびにポリペプチドを他の物質、例えば、これらに限定されるわけではないが、1つまたは複数のポリペプチドまたは1つまたは複数の生物学的に活性な分子などに結合させるためのリンカーとして用いられ得る。好適なポリマーは、これらに限定されるわけではないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC1~C10アルコキシまたはそれらのアリールオキシ誘導体(米国特許第5,252,714号に記載される、なお、当該文献は、参照により本明細書に組み入れられる)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体、例えば、硫酸デキストランなど、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖、オリゴ糖、グリカン、セルロースおよびセルロース誘導体、例えば、これらに限定されるわけではないが、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなど、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体のコポリマー、ポリビニルエチルエーテル、およびα-β-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミドなど、あるいはそれらの混合物が挙げられる。そのような水溶性ポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、ポリエチレングリコールおよび血清アルブミンが挙げられる。
【0133】
実施形態
身体からADMAを排除するための主要経路は、DDAHの酵素作用による経路である。ADMAの高レベルは、様々な疾患および状態の患者、例えば、腎臓疾患、冠状動脈疾患、うっ血性心不全、高血圧、肺動脈高血圧、ならびに、特に、末期腎不全、手術患者、外傷患者、集中治療室の患者などにおいて見出されている。ADMAのレベルは、急性腎傷害および造影剤誘発性腎損傷を患う患者においても増加する。加えて、ADMAレベルの増加は、心臓血管関連の死亡のリスクの指標であることが報告されている。
【0134】
ADMAの高レベルおよびDDAHの減少は、高血圧、腎損傷、胎児の成長低下、および早産の原因となり得る子癇前症を患う患者において見出される。ADMAの高いレベルは、エリスロポイエチン耐性に関連する。
【0135】
したがって、患者、特に、子癇前症、急性心不全を患う患者、ICU患者、および腎臓関連疾患のための血液透析処置治療を受ける人の血液中のADMA濃度を減少させる手段を開発することは、急ぎ必要とされている。血液透析処置と併せて、DDAHまたは生物学的に活性なその断片に患者の血液を接触させることによって、末期腎疾患患者の血液からADMAを減少させる能力は、ADMA媒介性の病的状態を軽減し、寿命を延ばすことが予想される。
【0136】
本開示の特徴は、ADMAをシトルリンおよび他の反応生成物へと加水分解することができる固定されたDDAH酵素を提供することであり、それは、血液中のADMA濃度の増加に対する上記において言及した結果の1つまたは複数を軽減する。
【0137】
本開示のさらなる特徴は、共有結合された巨大分子の形成において、共有結合によって固定されたDDAH酵素を含む組成物を提供することである。
本開示の別の特徴は、乾燥し、貯蔵し、酵素活性を維持することができる、共有結合によって固定されたDDAH酵素を含む組成物を提供することである。
【0138】
本開示のさらなる特徴は、生物体液、例えば、これらに限定されるわけではないが、血液または血液フラクションなどからADMAを除去するためのシステムにおいて利用することができる固定されたDDAH酵素を提供することである。
【0139】
本開示の別の特徴は、透析のための吸着剤カートリッジを提供することであり、この場合、吸着剤カートリッジは、固体表面上に固定されたDDAH酵素を含み、適宜、DDAH酵素は、直接的またはスペーサーを介してのどちらかにおいて、固体支持体に共有結合していてもよい。
【0140】
本開示の別の特徴は、ADMA加水分解酵素活性を維持する、固定されたDDAH酵素を調製する方法を提供することであり、この場合、適宜、当該固定されたDDAH酵素は、固体支持体に共有結合されていてもよい。
【0141】
本開示の別の特徴は、天然源または組換え的に産生されたかにかかわらず、DDAH酵素の粗な(または未加工の)未精製形態を利用することができる、固定されたDDAH酵素を調製する方法を提供することである。
【0142】
上記において述べた特徴を実現するために、本明細書において具体化され広く説明される、本開示の目的に従って、本開示は、共有結合または非共有結合によって固定されたDDAH酵素または修飾DDAHを含む組成物であって、ADMAをシトルリンおよび他の代謝物質へと加水分解するDDAH酵素活性を有する組成物を提供する。当該組成物は、DDAH酵素、ポリマー、および架橋剤を含むことができる。当該組成物は、共有結合または非共有結合された巨大分子の形成を含むことができ、当該DDAH酵素は、架橋剤と、固体支持体を含むポリマーまたはガラスにも共有結合または非共有結合させることができる。当該組成物は、周囲温度および周囲圧力下において、乾燥させ、次いで貯蔵することができ、さらに、DDAH酵素活性を維持することができる。このタイプの固定化は、例えば生物体液などの液相へのDDAH酵素の溶解を防ぐことができる。このタイプの固定化は、他の化学物質または生化学物質によるその固定状態からのDDAH酵素の変位も防ぐことができ、ならびに/あるいは支持マトリックスからDDAH酵素が離れて移動することも防ぐことができる。
【0143】
本開示は、固定されたDDAH酵素を調製する方法も提供する。当該方法は、ポリマーおよびDDAH酵素の水性混合物を形成するステップと、架橋剤を当該水性混合物に加えて反応混合物を形成するステップと、共有結合または非共有結合された巨大分子の形成において当該反応混合物を架橋させるのに十分な時間において当該反応混合物を維持するステップとを含むことができる。一実施形態において、当該固体支持体は、DDAHポリペプチドと相互作用して共有結合を形成することができる官能基を含み、その結果、当該ポリペプチドを当該固体支持体に結合させる。
【0144】
本開示は、ADMAを含む生物体液、例えば、これらに限定されるわけではないが、血液または血液フラクションなどからADMAを除去する方法も提供する。当該方法は、DDAH酵素活性を有する、共有結合または非共有結合によって固定されたDDAH酵素を含む組成物によって生物体液を処置するステップと、減少したADMA濃度を有する当該生物体液を回収するステップとを含むことができる。当該回収された生物体液は、ADMAの加水分解により増加したシトルリン濃度も有し得る。増加したシトルリン濃度は、本開示の固定されたDDAHを含むマトリックスによってそのように処置された患者に追加の利点を提供し得る。当該DDAH酵素は、生物体液に溶解しないように、ならびに生物体液中へあまり放出されないようにまたは移動しないように、固定することができる。
【0145】
本開示は、吸着剤カートリッジ中に、DDAH酵素活性を有する、共有結合または非共有結合によって固定されたDDAH酵素を含む吸着剤カートリッジを提供する。
本開示は、ADMAを含む透析液を、固定されたDDAH酵素を含むマトリックスに曝露させるステップと、当該透析液を当該マトリックスから除去するステップとを含む透析または血漿交換法も提供する。
【0146】
本開示は、透析装置での使用のための透析器であって、固定されたDDAHを含む本明細書において説明されるようなマトリックスを含む透析器も提供する。そのため、DDAHは、透析膜、例えば、透析器内に含まれた酢酸セルロース膜フィルターなどの上に固定され得る。本明細書において詳細に説明されるように、DDAHが固定され得る多くの他のタイプのマトリックスが存在する。
【0147】
当該マトリックスはさらに、当該マトリックス上に配置されたコーティングであって、生物学的に活性なDDAH酵素および安定化添加剤を含むコーティングを含み得る。当該安定化添加剤としては、これらに限定されるわけではないが、グルコースなどの糖、エチレンジアミン四酢酸などの有機酸、システインなどアミノ酸、およびアスコルビン酸などの糖酸が挙げられ得る。
【0148】
別の実施形態において、透析装置での使用のための吸着剤カートリッジが提供され、当該吸着剤カートリッジは、固定されたDDAHを含む、上に配置された化合物を有するマトリックスを含み、各化合物は、DDAHに化学的に結合した第1の官能基含有部分と、DDAH酵素活性を実質的に損なうことなくDDAHを当該マトリックスに固定するために、リンカーによって当該マトリックスに結合させた第2の官能基含有部分とを含む。
【0149】
別の実施形態において、ADMAを含む透析物を、固定されたDDAHを含む、上に配置された化合物を有するマトリックスに曝露させるステップと、当該ADMAの少なくとも一部が加水分解された後に、当該DDAHを含むマトリックスから当該透析液を除去するステップとを含む透析または血漿交換法が提供される。加えて、潜在的に危険な物質の放出はほとんどなく、結果として、固定されたDDAHを含むマトリックスは、様々な医療用途、例えば、血液透析ならびに腹膜透析などにおける使用にとって好適である。
【0150】
DDAHが固定され得るマトリックスは、ビーズ、マクロサイズの粒子、ナノサイズの粒子、磁気ビーズ、膜、メッシュ、ガラス、足場、または、生体物質、例えば生物学的に活性なDDAHなどを含む官能性物質がその上に固定されるように調製することができる任意の固体支持体であり得る。一実施形態において、好適なマトリックスとしては、これらに限定されるわけではないが、ポリエステルマトリックス、ポリアミドマトリックス、エポキシ樹脂マトリックス、ポリアクリレートマトリックス、ヒドロキシル官能化マトリックスセファデックス、セファロース、アガロース、および多糖ベースのマトリックスが挙げられる。多糖ベースのマトリックスは、例えば、コットンリンター、コットンパルプ、綿織物、セルロース繊維、セルロースビーズ、セルロース粉末、微結晶性セルロース、セルロース膜、レーヨン、セロハン、酢酸セルロース、酢酸セルロース膜、キトサン、キチン、デキストラン誘導体、およびアガロース誘導体などであり得る。当該マトリックスは、当該マトリックスが、人体内に、または人体と併せて移植された場合に、例えば、透析において、引き起こされた有害健康効果がわずかであるかまたは全く引き起こされないような生体適合性でもあり得る。
【0151】
一実施形態において、当該固定されたDDAHは、血漿交換システム、例えば、中空糸膜または遠心分離血漿交換システムなどと組み合わせて使用される。
一実施形態において、当該固定されたDDAHおよび中空糸膜は、ウエラブルデバイスとして構築される。
【0152】
一実施形態において、当該ウエラブルデバイスは、デバイスを通して血液を循環させるためにミニポンプを使用し得る。
当該中空糸膜は、血漿タンパク質がフィルターに掛けられ、中空糸内に血液細胞を維持するような、孔径を有し得る。
【0153】
一実施形態において、当該DDAHを含むマトリックスは、他の生物学的に活性な物質、例えば、ウレアーゼなどの酵素なども含み得る。有利なことに、DDAHとウレアーゼなどの他の酵素が、マトリックス上に固定される場合、当該固定された酵素を含む当該マトリックスも、腹膜透析または血液透析などの透析用途のために使用することができる。DDAH以外の酵素は、例えば、これらに限定されるわけではないが、ウリカーゼ、クレアチニナーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、アシラーゼ、ペニシリンアミダーゼ、およびプロテイナーゼKなどのうちの少なくとも1つでもあり得る。
【0154】
別の実施形態において、本開示は、センサーおよびバイオセンサーにおける当該DDAHを含むマトリックスの使用を提供する。そのようなセンサーおよびバイオセンサーは、生物体液、例えば、血液または血液フラクションなどにおけるADMA濃度を検出、モニター、および/または調節するために利用することができる。
【0155】
本開示におけるある実施形態は、配列番号1(DDAH-1)または配列番号2(DDAH-2)において説明されるアミノ酸配列を有するジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(DDAH)ポリペプチド、およびそれの生物学的に活性な断片であり、この場合、当該DDAHポリペプチドは、マトリックス上に固定される。当該DDAHポリペプチドは、非対称ジメチルアルギニン(ADMA)を加水分解することができる。当該DDAHポリペプチドは、全長DDAH-1またはDDAH-2ポリペプチドであり得る。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、全長DDAH-1またはDDAH-2ポリペプチドの生物学的に活性な断片または一部である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、ADMAを加水分解してシトルリンを形成する。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、溶液中においてADMAを加水分解してシトルリンを形成する。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、溶液中においてADMAを加水分解してシトルリンを形成し、この場合、当該溶液は、体液である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、溶液中においてADMAを加水分解してシトルリンを形成し、この場合、当該溶液は、体液であり、当該体液は、血液、血液フラクション、または血液由来の流体である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生される。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生され、この場合、当該組換え宿主細胞は、原核細胞である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生され、この場合、当該組換え宿主細胞は、細菌である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生され、この場合、当該組換え宿主細胞は、真核細胞である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生され、この場合、当該組換え宿主細胞は、哺乳動物細胞である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生され、この場合、当該組換え宿主細胞は、酵母細胞である。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、組換え哺乳動物DDAHポリペプチドであり、適宜、組換えヒトDDAHポリペプチドであってもよい。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、非ヒト源から単離される。当該DDAHポリペプチドは、細菌性DDAHアミノ酸配列緑膿菌から単離され得る。当該DDAHポリペプチドは、ヒト組織源またはヒト体液源から単離され得る。
【0156】
当該DDAHポリペプチドは、DDAHポリペプチドと当該マトリックスとの間の共有結合によって当該マトリックスに関連付けられ得る。当該DDAHポリペプチドは、DDAHポリペプチドとマトリックスとの間の非共有結合によって当該マトリックスに固定され得る。一実施形態において、DDAHポリペプチドは、式I:DDAH-B1-L-B2-M[式I]の構造を有し;式中、DDAHはDDAHポリペプチドの全長または生物学的に活性な断片であり;B1は、共有結合または非共有結合であり;Lは、リンカーであるか、または不在であり;B2は、共有結合または非共有結合であるか、あるいは不在であり;Mはマトリックスである。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、マトリックス内の物理的エントラップメントによってマトリックスに関連付けられる。一実施形態において、当該DDAHポリペプチドは、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列またはその生物学的に活性な断片を含み、この場合、当該DDAHポリペプチドは、固体支持体に関連付けられる。当該固体支持体は、プレート、ビーズ、繊維、または膜であり得る。一実施形態において、当該固体支持体は、樹脂、ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、コポリマーおよびそのグラフト、アンバーライト、ガラス、シリカ、シリコン、コントロールドポアグラス(Controlled Pore Glass:CPG)、逆相シリカ、金属、粒子、ビーズ、グルタルアルデヒド架橋キトサン-クレービーズ、キトサンビーズ、アルギン酸ビーズ、ポリ(HEMA-EGDMA)ビーズ、ストランド、沈着物、ゲル、ゾル-ゲル、シート、管材、球、コンテナ、キャピラリー、パッド、薄片、フィルム、プレート、ディップスティック、スライド、磁気ビーズまたは粒子、磁気ラテックスビーズ、酸化鉄粒子、ガラス、セラミック、プラスチック、ポリマー、金属、メタロイド、合金、複合材料、有機質、セルロース、石英、炭素、アルミナ、チタニア、酸化タンタル、ゲルマニウム、窒化ケイ素、ゼオライト、ガリウムひ素、金、白金、アルミニウム、銅、チタニウム、金属合金、ポリ(テトラ)フルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルエチレン、ポリエチレンミン、ポリ(エーテルエーテル)ケトン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルフェノール、ポリラクチド、ポリメタクリルイミド(PMI)、ポリアトケンスルホン(PAS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリルアミド、ポリイミド、およびブロックコポリマーで構成されたマトリックスである。当該マトリックスは、ヒドロゲル、PLLA、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリスルホン(PS)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、三酢酸セルロース、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、アルギン酸、ポリ乳酸(PLA)、およびPLGAからなる群から選択され得る。当該マトリックスの表面は、プラズマエッチングによって修飾され得る。
【0157】
本開示の別の実施形態は、DDAHポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸の第1の反応性基を、マトリックスに結合させた第2の反応性基と反応させ、それにより、結合を形成させて、当該マトリックスにDDAHポリペプチドを結合させることによって、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つのDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を当該マトリックスに結合させる方法を対象とする。第1の反応性基は、アミノ基、カルボキシ基、またはDDAHポリペプチドの任意のアミノ酸側鎖官能基であり得る。DDAHポリペプチドとマトリックスとの間の結合は、共有結合または非共有結合であり得る。
【0158】
本開示のさらなる実施形態は、1つまたは複数の結合性部分または反応性部分を含むマトリックスを提供するステップと、1つまたは複数の結合性部分または反応性部分を含むDDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片を提供するステップと、当該DDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片をマトリックスに接触させ、それにより、当該マトリックスの結合性部分または反応性部分を、当該DDAHポリペプチドまたはその断片の結合性部分または反応性部分に結合させるか、またはそれらと反応させて、当該DDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片に関連付けられたマトリックスを提供するステップとによって、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有するDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスを作製する方法である。DDAHポリペプチドのアミノ酸は、マトリックスの結合性部分または反応性部分と反応して、当該DDAHポリペプチドを当該マトリックスに結合させ得る。DDAHポリペプチドのアミノ酸は、当該DDAHポリペプチドを当該マトリックスに結合させるために、当該マトリックスの結合性部分または反応性部分に結合するリンカーに結合され得るか、または当該リンカーを含む。DDAHポリペプチドのアミノ酸は、DDAHポリペプチドに結合するかまたはそれと反応し、さらに当該マトリックスに結合するかまたはそれと反応することにより、当該DDAHポリペプチドを当該マトリックスに会合させるリンカーによって、当該マトリックスの結合性部分または反応性部分に結合され得る。
【0159】
本開示のさらなる別の実施形態は、第1の化学部分を含む少なくとも1つのアミノ酸を有するDDAHポリペプチドを提供するステップと;第2の化学部分を含む支持体マトリックスを提供するステップと、第3および第4化学部分を含むリンカーを提供するステップと、当該DDAHポリペプチド、当該リンカー、および当該支持体マトリックスをある条件下において組み合わせ、それにより、当該DDAHポリペプチド上の第1の化学部分が、当該リンカーの第3の化学部分に結合し、当該支持体マトリックス上の第2の化学部分が、当該リンカーの第4の化学部分に結合し、それにより、当該DDAHポリペプチドと当該支持体マトリックスとの間にブリッジを形成して、当該DDAHポリペプチドを当該支持体マトリックスに結合させるステップと、によって、DDAHポリペプチドを支持体マトリックスに結合させる方法である。リンカーは、支持体マトリックスとの反応の前に、DDAHポリペプチドと反応し得る。リンカーは、DDAHポリペプチドとの反応の前に、支持体マトリックスと反応し得る。DDAHポリペプチド上の第1の化学部分と、リンカー上の第3の化学部分との間の連結は、共有結合または非共有結合による連結であり得る。支持体マトリックス上の第2の化学部分と、リンカー上の第4の化学部分との間の連結は、共有結合または非共有結合による連結であり得る。第1の化学部分と第3の化学部分との間の連結は、非共有結合であり得、ならびに、ビオチンカップリングに対する、アビジン、ストレプトアビジン、またはニュートラアビジンを含む。当該リンカーは、ポリマーであり得る。当該リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC1~C10アルコキシまたはそれらのアリールオキシ誘導体、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体、例えば、硫酸デキストランなど、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖、オリゴ糖、グリカン、セルロースおよびセルロース誘導体、例えば、これらに限定されるわけではないが、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなど、デンプンおよびデンプン誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体、ポリアルキレングリコールおよびそれらの誘導体のコポリマー、ポリビニルエチルエーテル、およびα-β-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルトアミド、血清アルブミンならびにそれらの混合物からなる群から選択され得る。ポリマー表面は、プラズマエッチングによって修飾してもよく、DDAH架橋のために官能化してもよい。
【0160】
本開示の別の実施形態は、ADMAを含む体液と、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有する固定されたDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスとを、適切な条件下において、DDAHがADMAマトリックスからシトルリンを酵素的に産生するのに十分な時間にわたって接触させることによって、体液中のADMA濃度を下げ、それにより、当該体液および組織中のADMA濃度を下げる方法である。当該体液は、生物体液であり得る。当該生物体液は、血液であり得る。当該生物体液は、血液フラクション、または血液由来の体液であり得る。当該方法はさらに、当該体液にLアルギニンおよび/またはシトルリンを加えるステップを含み得る。
【0161】
本開示のもう一つの実施形態は、ADMAを含む体液と、固定されたDDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスとを、適切な条件下において、DDAHがADMAマトリックスからシトルリンを酵素的に産生するのに十分な時間にわたって接触させることによって、体液中のADMA濃度を減少させ、シトルリン濃度を増加させ、それにより、当該体液中のADMA濃度を減少させ、シトルリン濃度を増加させる方法である。当該体液は、生物体液であり得る。当該生物体液は、血液であり得る。当該生物体液は、血液フラクション、または血液由来の体液、または血液由来の体液であり得る。当該方法はさらに、当該体液にLアルギニンまたはシトルリンを加えるステップを含み得る。本開示の別の実施形態は、ADMAを含む血液または血液フラクションと、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有する固定されたDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスとを、適切な条件下において、DDAHが当該ADMAを加水分解するのに十分な時間にわたって接触させることによって、血液または血液フラクション、あるいは血液由来の体液中のADMA濃度を減少させ、それにより、当該血液または血液フラクション中のADMAの濃度を減少させる方法である。
【0162】
本開示のさらなる実施形態は、ADMAを含む血液または血液フラクションと、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有する固定されたDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスとを、適切な条件下において、DDAHがADMAマトリックスからシトルリンを酵素的に産生するのに十分な時間にわたって接触させることによって、血液または血液フラクション、あるいは血液由来の体液中のADMA濃度を減少させ、それにより、当該体液中のADMA濃度を下げる方法である。本開示のさらなる別の実施形態は、ADMAを含む血液または血液フラクションと、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有する固定されたDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスとを、適切な条件下において、DDAHがADMAからシトルリンを酵素的に産生するのに十分な時間にわたって接触させることによって、血液または血液フラクション、あるいは血液由来の体液中のADMA濃度を減少させ、シトルリン濃度を増加させ、それにより、当該体液中のADMA濃度を減少させ、シトルリン濃度を増加させる方法である。
【0163】
本開示における追加の実施形態は、ADMAを含む血液または血液フラクションと、配列番号1または配列番号2において説明されるアミノ酸配列を有する固定されたDDAHポリペプチド、またはその生物学的に活性な断片を含むマトリックスとを、適切な条件下において、DDAHがADMAマトリックスからシトルリンを酵素的に産生するのに十分な時間にわたって接触させることによって、血液または血液フラクション、あるいは血液由来の体液中のADMA濃度を減少させ、シトルリン濃度を増加させ、ならびにL-アルギニン濃度を増加させ、それにより、当該体液中のADMA濃度を減少させ、シトルリン濃度を増加させる方法であって、さらに、当該血液または血液フラクションにL-アルギニンを加えるステップを含む方法である。当該方法は、高いADMA濃度に関連する疾患または状態を患う患者からの血液または血液フラクション、あるいは血液由来の体液を使用して、体外において実施され得る。当該血液または血液フラクションは、当該患者に戻され得る。当該血液または血液フラクションは、血液透析患者に由来し得る。当該血液または血液フラクションは、腎臓病患者、心臓病患者、非代償性心不全患者、利尿剤抵抗性心不全患者、手術の際に造影剤を使用した患者、敗血症患者、肝不全患者、マラリア患者、鎌状赤血球患者、精神的外傷患者、および地中海熱患者、子癇前症患者、エリスロポイエチン抵抗性患者、心臓または非心臓手術の患者、輸血患者に由来し得る。当該血液または血液フラクションは、心疾患患者に由来し得る。
【0164】
本開示におけるある実施形態は、マトリックスに関連付けられたDDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片を含む反応容器であり、この場合、当該マトリックスは、当該容器の内側にあり、当該容器は、体液を加えるためおよび/または除去するための少なくとも1つの開口部またはポートを備え、それによって、当該体液を、マトリックスに関連付けられたDDAHポリペプチドに接触させることができる。当該マトリックスは、固体支持体であり得る。当該固体支持体は、プレート、ビーズ、磁気ビーズ、膜、または繊維であり得る。当該固体支持体は、袋状に形成された柔軟なシートであり得る。当該固体支持体は、樹脂、ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、およびポリアクリルアミド、コポリマーおよびそのグラフト、ガラス、シリカ、シリコン、コントロールドポアグラス(CPG)、逆相シリカ、金属、粒子、ビーズ、ストランド、沈着物、ゲル、ゾル-ゲル、シート、管材、球、コンテナ、キャピラリー、パッド、薄片、フィルム、プレート、ディップスティック、スライド、磁気ビーズまたは粒子、磁気ラテックスビーズ、酸化鉄粒子、ガラス、セラミック、プラスチック、ポリマー、金属、メタロイド、合金、複合材料、有機質、石英、炭素、アルミナ、チタニア、酸化タンタル、ゲルマニウム、窒化ケイ素、ゼオライト、ガリウムひ素、金、白金、アルミニウム、銅、チタニウム、金属合金、ポリ(テトラ)フルオロエチレン(PTFE)、フッ化ポリビニリデン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルエチレン、ポリエチレンイミン、ポリ(エーテルエーテル)ケトン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルフェノール、ポリラクチド、ポリメタクリルイミド(PMI)、ポリアトケンスルホン(PAS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリルアミド、ポリイミド、およびブロックコポリマー、PLLA、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリスルホン(PS)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、三酢酸セルロース、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン、アルギン酸、ポリ乳酸(PLA)、PLGAからなる群から選択される1つまたは複数の材料を含み得る。DDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片は、マトリックスに関連付けられ得、この場合、DDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片は、ADMAを含む体液と混合される。当該体液は、生物体液であり得る。当該生物体液は、血液であり得、当該生物体液は、血液フラクション、または血液由来の体液であり得る。DDAHポリペプチドまたはその生物学的に活性な断片は、ADMAを含む体液と混合され得、この場合、当該反応混合物は、反応容器内にある。
【0165】
本明細書において説明される方法および組成物ならびに参照により本明細書に組み入れられる方法および組成物は、本明細書において説明される特定の方法論、プロトコル、デバイス、手順、細胞株、構築物および試薬に限定されるものではなく、そのため、変わり得ることを理解されたい。本明細書において使用された用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本明細書において説明されるデバイス、マトリックス、リンカー、化学、生産、精製、コンジュゲーション、方法および組成物の範囲を限定することを意図するものではなく、それらは、添付の特許請求の範囲によってのみ、限定される。
【実施例
【0166】
実施例1
ヒトDDAHの組換え発現および精製
DDAHをクローニングする方法は、DDAHのためのポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列ならびに宿主細胞へのDDAHのクローニングと同じように、当技術分野において公知である。ヒトDDAH1およびDDAH2をコードするcDNAは、配列番号3および配列番号4として示され、ヒトDDAH1およびDDAH2ポリペプチドアミノ酸配列は、配列番号1および配列番号2として示される。DDAHポリペプチドのための非ヒトアミノ酸配列は、配列番号6;7;9;10;11;12;13;および14において示される。DDAHまたは修飾されたDDAHまたはDDAHアナログヌクレオチド配列を含有するプラスミドによる大腸菌(E.coli)の形質転換は、DDAHポリペプチドの生合成を可能にする。
【0167】
野生型成熟DDAHを、標準プロトコルを使用してcDNA合成反応からPCRによって増幅し、pET30(NcoI-BamHI)へとクローンする。以下の配列確認の前に、またはその代わりに、核酸配列をコードするDDAHは、大腸菌または他の好適な供給源から得られる合成プロモーターの構成的制御または誘導性制御下において発現ベクターへとサブクローンされる。DDAHの発現は、T7プロモーターの制御下にある。任意の所望の変異を、標準的クイックチェンジ変異プロトコル(quick change mutation protocol)(Stratagene;ラ・ホーヤ、カリフォルニア)を使用して導入する。構築物を配列検証する。
【0168】
T7ポリメラーゼの発現がアラビノース誘導プロモーターの制御下にある大腸菌の株を作製するために、発現プラスミド(例えば、pETおよびpBAD)を使用して、大腸菌株W3110B57へと形質転換させる。一晩かけた細菌培養物を、2倍のYT培養培地を収容する振盪フラスコ内へ1:100に希釈し、約0.8のOD600まで37℃において増殖させる。タンパク質発現を、アラビノース(0.2%最終)の添加によって誘導する。培養物を、37℃において5時間または一晩インキュベートする。細胞をペレット化し、B-PER溶解バッファー(Pierce)100ul/OD/ml+10ug/mlのDNaseに再懸濁させ、37℃で30分間インキュベートする。細胞材料を遠心分離によって除去し、上清を取り除く。当該ペレットを、等量のSDS-PAGEタンパク質ローディングバッファーに再懸濁させる。全ての試料を、MESおよびDTTを伴う4~12%PAGEゲル上にロードする。DDAHの精製方法は、当業者に公知であり、SDS-PAGE、ウエスタンブロット分析、またはエレクトロスプレーイオン化イオントラップ質量分析法などによって確認される。
【0169】
Hisタグ付けされた変異DDAHタンパク質は、当業者に公知の方法を使用して精製することができる。製造元から提供される標準的Hisタグ付けタンパク質精製手順によって、ProBond Nickel-Chelating Resin(Life Technologies、カールスバッド、CA)を使用してもよい。当技術分野において公知の方法、本願および組み込まれた参考文献内において提供される方法によってタンパク質の機能的測定を行ってもよく、あるいは、本開示のDDAHポリペプチドを評価するために、生細胞でのELISAを開発することもできる。
【0170】
実施例2
大腸菌によるDDAHポリペプチドの発現
大腸菌株W3110を使用して、野生型DDAHまたは修飾DDAHを作製する。単一のリサーチセルバンク(RCB)バイアル瓶を-80℃から取り出し、室温で解凍させ、次いで、50μLを使用して、250 mLのバッフル・エルレンマイヤー・フラスコ(baffled Erlenmeyer flask)において50μg/mLの硫酸カナマイシンを伴う50mLの種培地(既知組成培地)に播種する。初代種培養を、37℃および250rpmにおいておよそ18時間増殖させる(2.54cm(1インチ)投入)。当該初代種培養を、50μg/mLの硫酸カナマイシンを補った100mLの種培地を収容する500mLのバッフル・エルレンマイヤー・フラスコにおいて、0.05の600nm波長において測定した光学濃度(OD600)まで、二次種培養へ継代培養する。当該二次種培養を、約8時間、またはOD600が2から4の間に達するまで、37℃および250rpmにおいて増殖させる(2.54cm(1インチ)投入)。
【0171】
ザルトリウスバイオスタットB5-Lベッセルを、50μg/Lの硫酸カナマイシンを補った2.1Lの産生培地(既知組成培地)で満たす。二次種培養物を使用して、発酵槽において0.035の初期OD600まで播種する。当該培養物を37℃で増殖させ、一次撹拌(480~1200rpm)カスケードおよび二次O2カスケードを用いて、溶存酸素を30%(空気飽和)に維持するように設定する。6psiの背圧において5LPMの空気流量を、発酵の間、維持する。培養物のpHを、15%の水酸化アンモニウムの添加によって7.2±0.05に設定し、泡制御の必要に応じて、Dow Chemical P2000消泡剤を加える。培養が、35±5のOD600に達したとき(バッチ培地における初期グリセロールがほぼ枯渇したとき)、200mLのボーラス供給を与えて開始し、同時に、pH目標値を7.2から6.6に調節する。初期ボーラス供給の後、0.25mL/L/分の速度において連続供給を開始し、収穫まで継続する。2g/L(最終培養量)の濃度までL-アラビノースを加えることによって、DDAHタンパク質の発現を誘導する。アラビノース添加の後、培養物を6時間以上培養し、収穫する。
【0172】
実施例3
当技術分野において公開されている方法の修正型によってDDAH活性を特定する(Markus Knipp and Milan Vasak Analytical Biochemistry 286,257-264 (2000))。pH6.2の0.1 Mのリン酸ナトリウム緩衝液および精製した調製物のホモジナイズによって作製した細胞抽出物の酵素活性は、ADMAからのL-シトルリン生成によって特定される。100μlの試料を管に移し、リン酸ナトリウム緩衝液中における1mMのADMAの400μlを加え、37℃で45分間インキュベートする。500μlの4%スルホサリチル酸の添加によって、反応を停止させる。当該混合物を3000gで10分間遠心分離処理する。60μlの上清を、トリプリケートにおいてNUNC 96ウェルプレートに移す。200μlのCOLDER(発色現像試薬)を加える。COLDERは、1量の溶液A[80mMのDAMO(ジアセチルモノキシム)および2.0mMのTSC(チオセミカルバジド)]と、3量の溶液B[3MのH3PO4、6MのH2SO4、および2mMのNH4Fe(SO4)2]を混合することによって調製する。当該プレートを封止し、95℃で20分間加熱する。冷却後、それらを530nMにおいて読み取る。DDAH活性は、37℃での1分間あたりのタンパク質1グラムあたりの産生されたシトルリンのμMとして表される。
【0173】
上記のアッセイを使用することにより、DDAH酵素活性および修飾されたDDAH酵素活性を、濃度応答、基質濃度応答、経時変化およびKmによって特徴付ける。様々な温度および貯蔵条件下において酵素安定性を特定する。当該DDAHポリペプチドは、当該酵素の1つまたは複数の生物学的特性、例えば、これらに限定されるわけではないが、高いまたは低い酵素活性、マトリックスへの結合の前または後の当該ポリペプチドの安定性の増加または減少、および当該酵素の変更された時間-動作特性などに影響を及ぼすか、またはそれを調節するアミノ酸修飾を含み得る。本開示のマトリックスに結合させたDDAHポリペプチドまたは修飾DDAHポリペプチドを有する当該マトリックスは、例えば、減少した酵素活性を示し得るが、未修飾DDAHポリペプチドまたは遊離した結合されていないDDAHポリペプチドと比べて、より優れた安定性または時間-動作特性を示し得る。マトリックスにDDAHポリペプチドを結合させた後の酵素活性の所望のレベルは特定され得、ならびに、例えば、DDAHをマトリックスに取り付けるための異なった手段を利用することによって、または所望の活性および/または安定性特性を有する修飾されたDDAHポリペプチドを使用することによって、調節され得る。多くの場合、マトリックスへの化学結合の後に、DDAH酵素活性は減少することが予想され得る。活性の喪失は、例えば、特定の化学結合プロセスのために設計された修飾されたDDAHポリペプチドなどの使用によって緩和され得る。
【0174】
血清中のDDAH濃度、動物血清中の組換えヒトDDAH、PEG化組換えヒトDDAH、またはアシル化組換えヒトDDAHの濃度を測定するELISAアッセイは、Meso Scale Discovery(MSD)プラットフォームでの電気化学発光(ECL)法によって測定される。当該アッセイは、5つのインキュベーションステップ:(1)一晩かけての捕捉抗体によるコーティング、(2)2時間のブロッキング、(3)一晩かけての試料のインキュベーション、(4)1時間のビチオン化検出抗体のインキュベーション、および(5)1時間のSulfo-TAG標識ストレプトアビジンのインキュベーション、によって構成される。各インキュベーションステップの間に、0.05%のTween20を含むPBSを使用した洗浄ステップを実施する。初日に、MSD high-bind plate(MSD、ゲイザースバーグ、MD)を、4℃において一晩かけて、ラット抗ヒトDDAH mAbによってコーティングする。二日目に、捕捉抗体でコーティングされたプレートを、22℃において2時間かけて、I-Block緩衝液(0.2%のI-Block/PBS/0.1%のTween-20)によってブロックする。試験試料を室温で解凍し、十分に混合し、必要であればニート血清(neat serum)においてさらなる希釈を行って、0.2%のI-Block/PBS/0.1%のTween-20/5%の正常なCD-1マウス血清緩衝液中における5%最小必要希釈において分析する。研究において使用されるものと同じロットのWT DDAHを使用して、品質管理(QC)およびキャリブレーターを調製する。調製した試料、QC、およびキャリブレーターを、4℃で一晩かけてインキュベートすることにより、被分析物を当該プレートに結合させる。三日目に、捕捉されたWT DDAHを、ビチオン化ウサギ抗ヒトDDAHポリクローナルAbを使用し、続いて、Sulfo-TAG標識ストレプトアビジン(カタログ番号# R32AD-1、ロット# W0013923S、MSD、ゲイザースバーグ、MD)を使用して検出する。MSDリードバッファー(MSD、ゲイザースバーグ、MD)の添加の後、MSD Sector Imager 2400(MSD、ゲイザースバーグ、MD)によって発光強度を測定する。標準曲線およびQCを、≦20%の正確さおよび精度に対する受け入れ基準を使用して評価する。
【0175】
試験試料を、Softmax Pro 5.4.1ソフトウェア(Molecular Devices、サニーベル、CA)を使用してキャリブレーターから得られる4パラメーターロジスティック(4-PL)適合回帰モデルを使用して、定量化する。例示的標準曲線は、ニート動物血清において3.15から112ng/mLまで及んだ。
【0176】
実施例4
現在、子癇前症を予防または処置するために利用可能な薬理的療法はない。療法の開発は、母親および胎児の死亡率および疾病率に強い影響を及ぼす。子癇前症の一般的な基礎病理は、血管機能障害、異常な血管リモデリング、胎盤潅流欠陥、および虚血を含む(8~10)。一酸化窒素(NO)は、子癇前症の血管性病因において重要な役割を果たす(11~14)ことを広く認識されたい。NOは、母親および胎児の血管健康、胎盤血流量、脈管形成、栄養芽層侵入、および移植にとって重要な分子である。NOの減失は、血管狭窄、血小板凝集、血管炎症、ならびに、腎機能障害、タンパク尿症、および心血管疾患につながるミトコンドリア機能障害を生じる。NOバイオアベイラビリティは、子癇前症患者において減少する。患者における観察と一致して、動物モデルにおけるNO合成の阻害は、母親の血圧の増加、タンパク尿症、および腎臓機能低下を伴う子癇前症表現型につながる。より重要なことに、いくつかの前臨床試験は、NOシグナル伝達を増加させるための、PDE5阻害剤であるシルデナフィルまたはタダラフィルによる処置が、子癇前症における胎児の成長および母親の血圧および腎機能を改善することを示している。
【0177】
シルデナフィルおよびタダラフィルによる初期臨床研究は、有望な結果を生じた。残念ながら、シルデナフィルによるさらなる研究は、重要な安全に対する懸念を生じた。最新のトライアルでは、著しく高い幼児死亡率が存在し、妊娠におけるシルデナフィルによる調査は終了した。したがって、臨床前研究および臨床研究は、NOバイオアベイラビリティを改善することによる療法の証明を生じたが、薬理学的療法の安全性リスクは、基本的障害であった。したがって、子癇前症患者においてNOバイオアベイラビリティを安全に改善するための革新的アプローチの開発が、非常に求められている。
【0178】
一実施形態により、治療的アプローチが提供され、この場合、NO合成の内因性阻害剤である非対称ジメチルアルギニン(ADMA)の濃度が減少する。ADMAは、公知の心臓毒性である。異常に高いレベルのADMAが、子癇前症患者の血液中を循環する。1338人の妊娠女性による11の研究のメタ分析は、子癇前症を発症しなかった女性と比較して、後に子癇前症を発症した女性は、早くも妊娠の20週において、ADMAの循環レベルは著しく高かった(20)。ADMAの内皮機能障害およびADMAの上昇は、子癇前症の早期の病態生理学的特徴である。子癇前症の発症に先行するADMAの増加は、子癇前症の病原性におけるその潜在的役割を示唆する(21)。これらのデータは、子癇前症のリスクを有する妊娠女性の早期識別のためのマーカーであり得ることも示唆している。子癇前症の発症に先行する内皮機能障害およびADMAの上昇は、子癇前症の複雑さに貢献する潜在的病理学的機構であると見なされる。
【0179】
一実施形態により、ADMAは、体外デバイスを使用することによって下げられる。ADMAは、DDAHまたは誘導体を含むビーズ新規マトリックスによって除去される。DDAHを含む当該ビーズのカートリッジは、デバイスとして作製される。血液または血漿を、当該カートリッジを通して流すことにより、患者を薬物物質に晒すことなく、ADMAの選択的除去をもたらし、それにより、非常に安全な療法を提供する。
【0180】
発明者らは、治療用体外医療デバイスに指定される、DDAHを含む独自的マトリックスを開発した。固定されたDDAHを使用するプロトタイプの体外カートリッジが作製され、ADMAを下げるための実現可能性の研究は完了した。さらに、発明者らは、概念研究の証明を行い、動物モデルにおけるADMAの引き下げは、高血圧のラットの血圧を減少させ、急性腎臓傷害モデルの腎臓機能を改善したことを実証した。
【0181】
腎機能障害は、子癇前症の別の重要な臨床症状である。したがって、発明者らは、急性腎臓傷害のラットモデルにおいて、ADMA引き下げの効果を試験した。ラットにおける腎臓傷害は、双方の腎動脈結紮による40分の虚血とその後の再潅流によって生じさせた。これらの研究は、ADMAの引き下げは、結果として腎臓機能の改善を生じることを示した。
【0182】
ADMA除去マトリックスを含むプロトタイプの治療用体外医療デバイス(TEMD)デバイスを作製した。インビトロにおけるヒト、ブタおよびラットの血漿からのADMAの除去を、様々なデバイスサイズおよび流量を使用して研究した。研究から得られた実験データの例を、表8に示す。ADMAを含む溶液または血漿を、TEMDデバイスに適用した。出発材料およびカートリッジからの溶離液において、ADMAのレベルを特定した。データは、TEMDデバイスにより、ADMAが、血漿の循環において効果的に除去されたことを示している。予想されたように、ADMAの除去は、ADMAとTEMDとの間の相互作用の持続時間に依存した。したがって、血漿中に存在する20μg(100%)のADMAを、1mlのTEMDを含むデバイスを使用して0.16ml/分の流量において除去した。流量を0.5ml/分まで増加させることにより、結果として、10μgのADMA、すなわちカートリッジに適用されたADMAの50%の除去を生じた。したがって、ADMAの引き下げは、カートリッジのサイズおよび流量によって制御することができる。
【0183】
【表8】
【0184】
発明者らは、小さいプロトタイプからのデータを使用して、ブタまたはヒトに対して必要なスケールアップを評価した。例えば、発明者らは、ヒトにおける3000mlの平均総血漿量および2μM(404μg/l)のADMAに基づいて、50%の減少を達成するために、606μgのADMAの総目標引き下げを予想する。上記の流量を仮定すると、予想される60倍のスケールアップが必要である。これらの近似は、血漿交換システムの流量要件に基づいて最適化される。ブタの研究のための最適なデバイスサイズを達成するために、デバイスサイズおよび流量の反復が使用される。実現性研究のこれらの証明は、スケールアップのための基礎であり、ADMAの目標引き下げを達成するために、デバイスパラメーターは洗練される。1mlのデバイスを使用したADMA引き下げの減少に基づいて、40~60倍のスケールアップが、ブタ研究に反映される。
【0185】
TEMDデバイスの洗練および最適化のために、メタボリック症候群のOssabawブタモデルが使用される。このモデルは、高脂肪食に供された場合の、メタボリック症候群、糖尿病、高血圧、および心血管疾患の発症に対して十分に特徴が明らかにされている。発明者らは、このブタモデルにおけるADMA代謝活性が著しく減少されることを示した。
実施例5
ADMAの減少は、NOバイオアベイラビリティを改善し、子癇前症の複雑さを軽減する。概念証明およびプロトタイプの医療用デバイスを開発するために、発明者らは、大腸菌においてADMA代謝酵素であるジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ(rDDAH)をクローンし発現させた。rDDAHは、血液中のADMAを減少させ、高血圧ラットの血圧を下げた。rDDAHをビーズマトリックス上に固定し、カートリッジに組み入れた。当該固定化されたDDAHは、血漿からのADMAの減少において完全に効果的であった。血液から血漿を分離するための中空糸膜およびDDAHカートリッジからなるプロトタイプの体外デバイスを構築した。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2022548026000001.app
【国際調査報告】