(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】作業機械及び作業機械の操作方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
E04G21/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516090
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(85)【翻訳文提出日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2020073303
(87)【国際公開番号】W WO2021047872
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】102019214034.3
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519044656
【氏名又は名称】プツマイスター エンジニアリング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PUTZMEISTER ENGINEERING GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】カール ビーゼナック
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク コート
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘーフリング
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ クールマイ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フラッシュ
【テーマコード(参考)】
2E172
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA33
2E172CA44
(57)【要約】
粘着性物質を搬送する装置(1)を有する作業機械(100)を操作する方法であって、粘着性物質を搬送する装置(1)の動作に関する複数の目標値はユーザによって調整可能であり、この方法は装置(1)の複数の実測値を取得するステップと、取得された複数の実測値に基づいて複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値を計算するステップと、複数の調整可能な目標値のうちある調整された目標値が計算された最適目標値に対応していない場合にユーザに通知を出力するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性物質を搬送する装置(1)を有する作業機械(100)を操作する方法であって、
粘着性物質を搬送する前記装置(1)の動作に関する複数の目標値がユーザによって調整可能であり、
前記方法は、
前記装置(1)の複数の実測値を取得するステップと、
取得された前記複数の実測値に基づいて複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値を計算するステップと、
複数の調整可能な目標値のうち、ある調整された目標値が計算された最適目標値に対応していない場合にユーザに命令を出力するステップと、を有する方法。
【請求項2】
前記複数の調整可能な目標値は、
前記粘着性物質の目標吐出量(Q
soII)と、
粘着性物質を搬送する前記装置(1)を駆動する機関(2)の目標速度(n
Motor,soll)と、
前記作業機械(100)のマスト(3)の目標位置(Mast
soll)と、
から選択されている、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の実測値は、
前記作業機械(100)の油圧駆動装置(4)の実測油圧(p
HD,ist)と、
粘着性物質を搬送する前記装置(1)を駆動する機関(2)の実測速度(n
Motor,ist)と、
前記作業機械(100)のマスト(3)の実測位置(Mast
ist)と、
前記粘着性物質の状態(Beton
ist)と、
前記作業機械(100)の油圧駆動装置(4)の実測体積流量と、
前記作業機械(100)のマスト(3)の実測振動と、
前記作業機械(100)の下部構造(5)の実測振動と、
前記粘着性物質の実測吐出圧力と、
から選択されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値は、
粘着性物質を搬送する前記装置(1)を駆動する機関の燃料消費及び/又は効率、特に粘着性物質を搬送する前記装置(1)を駆動する内燃機関の燃料消費と、
マストの振動と、
構成要素の負荷と、
下部構造の振動と、
騒音排出と、
から選択された少なくとも1つの最適化基準に基づいて計算される、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
ユーザへの命令の出力は、
前記複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する前記最適目標値が表示されること、及び/又は
前記複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値を調整するための関連する調整装置が強調して示されること、及び/又は
前記複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値がどの程度、関連する最適値に対応しているかを示すスコア値(x)が表示されること、によって行われる、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
粘着性物質を搬送する装置(1)を有する作業機械(100)であって、
前記作業機械(100)が請求項1~5の何れか一項に記載の方法を実施するように構成されている、ことを特徴とする作業機械(100)。
【請求項7】
前記作業機械(100)は粘着性物質を搬送する前記装置(1)を駆動する機関(2)を有する、ことを特徴とする請求項6に記載の作業機械(100)。
【請求項8】
前記作業機械(100)はマスト(3)を有する、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の作業機械(100)。
【請求項9】
前記作業機械(100)は油圧駆動装置(4)を有する、ことを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載の作業機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械の操作方法及び作業機械に関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の課題は、作業機械を可能な限り最適に操作できるようにする作業機械の操作方法及び作業機械を提供することである。
【0003】
この方法は、作業機械を操作するために使用される。作業機械は、例えば液状コンクリートの形態の粘着性物質(Dickstoff)を搬送する装置を有する。作業機械は、例えばトラック搭載型コンクリートポンプであってよい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
作業機械の動作中に、ユーザが、粘着性物質搬送装置の動作を制御することができる複数の目標値を設定することができる。
【0005】
この方法は以下のステップを有する。
【0006】
装置の複数の実測値を取得し、取得された実測値に基づいて複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値を計算し、複数の調整可能な目標値のうちある調整された目標値が計算された最適目標値に対応していない場合にユーザに命令を出力する。
【0007】
一実施形態によれば、複数の調整可能な目標値は、粘着性物質の目標吐出量若しくは目標体積流量、粘着性物質搬送装置を駆動する、特に電気発動機又は内燃機関の形態の機関の目標速度、及び作業機械のマストの目標位置のセットから選択されている。マストの目標位置は、例えばマストの所望の角度位置を指定し、及び/又はマストのマストセグメント間の所望の角度位置を指定することができる。
【0008】
一実施形態によれば、複数の実測値は、作業機械の油圧駆動装置の実測油圧、粘着性物質搬送装置を駆動する、特に電気発動機又は内燃機関の形態の機関の実測速度、作業機械のマストの実測位置、粘着性物質の状態、作業機械の油駆動装置の実測体積流量、作業機械のマストの実測振動、作業機械の下部構造の実測振動、及び粘着性物質の実測吐出圧力のセットから選択されている。
【0009】
一実施形態によると、調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値は、エネルギー消費、特に燃料消費、効率、マストの振動、コンポーネントの負荷、下部構造の振動、騒音排出のセットから選択された少なくとも1つの最適化基準に基づいて計算される。
【0010】
一実施形態によれば、ユーザへの命令の出力は、複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値が表示されること、及び/又は複数の目標値のそれぞれの目標値を調整するための関連する調整装置が強調して示されること、及び/又は複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値がどの程度、関連する最適値に対応しているかを示すスコア値が表示されることによって行われる。
【0011】
作業機械は、粘着性物質を搬送するための装置を有し、上述の方法を実施するように構成されている。
【0012】
一実施形態によると、作業機械はマスト、特にジョイントを介して互いに接続された複数のマストセグメントを備えたマストを有しており、マストセグメント間の角度位置は油圧シリンダによって調整可能である。
【0013】
一実施形態によると、作業機械は、特にマストセグメントを駆動するために割り当てられた油圧シリンダを有する。
【0014】
以下に図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は粘着性物質搬送装置を構成する作業機械の模式図である。
【
図2】
図2は目標値最適化の計算と
図1に示した駆動装置のユーザへの関連する命令の出力に関するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、液状コンクリートの形態の粘着性物質を搬送する装置1、内燃機関2、複数のマストセグメント3aからなるマスト3、内燃機関2によって駆動される油圧駆動装置4、及び下部構造5を備えたトラック搭載型コンクリートポンプの形態の作業機械100を模式的に示す。マストのマストセグメント3aはジョイントによって互いに接続されており、マストセグメント3a間の角度位置は油圧シリンダ3bによって調整することができる。作業機械100が、作業機械100の動作には必要であるが本発明の説明には必須ではないその他の慣用的な構成要素を有することは言うまでもない。それゆえこの点については、関連する技術文献、特にトラック搭載型コンクリートポンプに関する文献を参照されたい。
【0017】
内燃機関2を電気発動機に置き換えてもよいことは言うまでもない。
【0018】
以下に、作業機械100の動作について
図2を参照しながら説明する。
【0019】
装置1の複数の実測値が取得され、入力パラメータとして最適計算機6に提供される。実測値として、油圧駆動装置4の実測油圧pHD,ist、内燃機関2の実測速度nMotor,ist、マスト3の実測位置Mastist、粘着性物質の状態Betonistが例示されている。マスト位置は、例えばマスト3の回転角度位置を表し、及び/又は、マストセグメント3a間の角度位置を表すことができる。粘着性物質の状態Betonistは、例えば粘着性物質の粘度、含水率、密度などを表すことができる。
【0020】
さらに、最適計算機6には、ユーザが調整できる複数の目標値がその他の入力パラメータとして提供される。ユーザが調整できる目標値は、粘着性物質の目標吐出量又は目標体積流量Qsoll、内燃機関2の目標速度nMotor,soll、及びマスト3の目標位置Mastsollのセットから選択されている。
【0021】
最適計算機6は、上述の入力パラメータから1つ以上の最適化基準に基づいて、関連する最適目標値若しくは最適値として、粘着性物質の目標吐出量若しくは体積流量Qopt、内燃機関2の目標速度nMotor,opt、及びマスト3の目標位置Mastoptを計算する。
【0022】
粘着性物質の目標吐出量若しくは体積流量に対する最適値Qopt、内燃機関2の目標速度に対する最適値nMotor,opt、及びマスト3の目標位置に対する最適値Mastoptが、目標吐出量若しくは目標体積流量に対するユーザが調整できる目標値Qsoll、目標速度nMotor,soll、及び目標位置Mastsollに加えて命令計算機7に入力されると、粘着性物質の目標吐出量若しくは目標体積流量に対する関連命令QHinweis、内燃機関2の目標速度に対する関連命令nHinweis、及びマスト3の目標位置に対する関連命令MastHinweisが計算されてユーザに出力され、ユーザはこれらの命令に基づいて目標値の最適な調整を行うことができる。
【0023】
ユーザへの命令の出力は、例えば複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値に対する最適目標値が表示され、及び/又は複数の目標値のそれぞれの目標値を調整するための関連する調整装置が強調して示され、及び/又は複数の調整可能な目標値のそれぞれの目標値がどの程度、関連する最適値に対応しているかを示すスコア値が表示されること、によって行うことができる。
【0024】
スコア値xは、例えばディスプレイ8に画像表示することができる。以下に、スコア値xの例示的な計算方法を説明する。
【0025】
少なくとも1つの最適化基準は、エネルギー消費若しくは燃料消費、効率、マストの振動、コンポーネントの負荷、下部構造の振動、騒音排出のセットから選択できる。
【0026】
スコア値xの計算に用いるモードMは、例えば以下のように定義することができる。
アクティブモードの定義:nMotor,ist<=nMotor,opt 及び油圧ポンプオン
非アクティブモードの定義:nMotor,ist>nMotor,opt 及び油圧ポンプオン
停止モードの定義: 油圧ポンプオフ
【0027】
次に、スコア値x、関連する表示色、及び関連する記号は、例えば以下のように計算/決定することができる。この場合、例として定数a=50%(基準:最大吐出量)及び定数b=90%(基準:最大吐出量)が選択されている。
【0028】
ケース1
アクティブモード、実測吐出量Qist<a、x=100、表示色:ポジティブ、表示記号:ECOアクティブ、
【0029】
【0030】
ケース2
アクティブモード、a<Qist<b、50<x<100、表示色:ポジティブ、表示記号:吐出量を減らせ、
【0031】
【0032】
ケース3
アクティブモード、Qist>b、x=50、表示色:ポジティブ、表示記号:吐出量を減らせ、
【0033】
【0034】
ケース4
非アクティブモード、0<x=75、表示色:ネガティブ、表示記号:エコモードを起動せよ、ここで、nMotor,maxは機関の最大速度を表す。
【0035】
【0036】
ケース5
オフモード、x=0、表示色:ニュートラル、表示記号:なし、
【0037】
【0038】
オペレータがリセット可能な長期スコア値Sは、例えば以下のように計算できる。
【0039】
ケース1
オフモード、計算なし、最後値を表示
【0040】
ケース2
アクティブ/非アクティブモード、移動平均値、
【0041】
【0042】
ケース3
リセットモード、移動平均値、S(0)=50;tBezug=tPump,Total
ここで、tPump,Totalは進行中のポンプ動作時間を表す。長期スコア値Sの基準時間tBezugは、tBezug=tPump,Total-tPump,Resetから求める。
【0043】
作業機械100のユーザは、従来通り特定数の調整すべき目標値(自由パラメータ/目標値)を自分で調整しなければならない。なぜなら作業機械100は、これらの目標値が実際に作業に必要かどうかを自分で判断することができないからである。他方でユーザには、これらの目標値を調整することで機械の機能が向上するかどうかの知識や情報はない。ここで、本発明はユーザが目標値のより良い調整を見つけることを支援する。
【0044】
本発明によれば、特定の最適化基準を満たすために、現在の実測値と目標値に基づいて、ユーザが自由に調整できる目標値をどのように調整すべきかの命令がユーザに与えられる。実測値は、例えば油圧pHD,ist、機関速度nMotor、マスト位置、コンクリートの状態などであってよい。自由に調整できる目標値は吐出量Qsoll、機関速度、マスト位置などであってよい。最適化基準は、燃料消費、マストの振動、コンポーネントの負荷(例えばポンプ衝撃による)などであってよい。
【0045】
命令は、例えばオンライン計算、オフライン計算による特性図/表、経験による特性図/表、限界値/しきい値、ファジィ論理などに基づいて決定することができる。
【0046】
決定は、離散的又は連続的に、リアルタイムデータ又はデータ履歴に基づいて行うことができる。命令の決定に計算された最適値を援用することができる。
【0047】
命令は例えば最適目標値の直接表示、最適に調整されていない目標値(例えば目標値のない速度減少)の操作方向の表示、現在の状況の表示(例えば最適状態の有無、計算されたスコア値)、長期スコア値(古いデータの援用)などによって与えることができる。
【0048】
現在の油圧と現在の機関速度、及び目標吐出量と目標機関速度(手動調整)を分析することで、例えば、燃料消費の観点から油圧ポンプの最適な制御や最適な機関速度を決定することができる。例えばユーザが大きな吐出量や最適から外れた機関速度を調整した場合に、最適な(又は単により良い)目標値を設定するようにオペレータに命令を与えることができる。
【国際調査報告】