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特表2022-548047C軸傾斜配向を有する圧電性バルク層及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】C軸傾斜配向を有する圧電性バルク層及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/17 20060101AFI20221109BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20221109BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20221109BHJP
   C30B 25/06 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 41/113 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20221109BHJP
   H01L 41/316 20130101ALI20221109BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H3/02 B
C30B29/38 C
C30B25/06
H01L41/113
H01L41/08 S
H01L41/316
H01L41/187
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516116
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 US2020050333
(87)【国際公開番号】W WO2021050828
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】16/569,939
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517090646
【氏名又は名称】コーボ ユーエス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】デリャ デニズ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ワシリク
(72)【発明者】
【氏名】ロバート クラフト
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ベルシック
【テーマコード(参考)】
4G077
5J108
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BE13
4G077DA11
4G077GA05
4G077HA11
4G077TA04
4G077TA07
4G077TJ04
5J108AA09
5J108BB07
5J108BB08
5J108DD01
5J108EE03
5J108KK01
5J108MM08
5J108MM11
(57)【要約】
構造体は、ウェハ又はウェハの一部分を含む基板と、基板へ堆積した第1部分及び第1部分へ堆積した第2部分を備える圧電性バルク材料層と、を含み、第2部分は4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を備える。圧電性バルク材料層を堆積させる方法は、所定のc軸傾斜を得るためにバルク層材料の第1部分を第1入射角で堆積させることと、バルク材料層の第2部分を第1入射角より小さい第2入射角で第1部分へ堆積させることと、を含む。第2部分は、第1c軸傾斜と実質的に合わせられた第2c軸傾斜を有する。
【選択図】 図2D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハ又は前記ウェハの一部分を備える基板と、
前記基板へ堆積した第1部分及び前記第1部分へ堆積した第2部分を含む圧電性バルク材料層であって、前記第2部分は4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を備える、圧電性バルク材料層と、
を備える構造体。
【請求項2】
前記外面は4nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
少なくとも部分的に前記バルク材料層に配置されるバンプをさらに備え、前記バンプは120g(1.18N)以上のせん断力に耐えることができる、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
少なくとも部分的に前記バルク材料層に配置されるバンプをさらに備え、前記バンプは125g(1.23N)以上のせん断力に耐えることができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項5】
前記第1部分は第1c軸傾斜を有し、前記第2部分は前記第1c軸傾斜と実質的に合わせられた第2c軸傾斜を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項6】
前記第1c軸傾斜は、約35度~約52度である、請求項5に記載の構造体。
【請求項7】
前記第1部分は第1バルク粒子配向を有し、前記第2部分は第2バルク粒子配向を有し、前記第2バルク粒子配向は、前記第1部分とは異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項8】
前記第2バルク粒子配向は実質的に垂直である、請求項7に記載の構造体。
【請求項9】
前記圧電性バルク材料層はAlNを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項10】
前記バルク材料層は、励振中に1.25以上のすべり結合対縦結合比を示す、請求項1~9のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項11】
前記バルク材料層は、約1,000オングストローム~約30,000オングストロームの厚さを持ち、前記厚さは、前記バルク材料層の面積全体にわたって2%未満で変動する、請求項1~10のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項12】
前記構造体は、
バルク材料層の第1c軸傾斜を有する第1部分を第1入射角で基板へ堆積させることと、
前記第1c軸傾斜と実質的に合わせられた第2c軸傾斜を有する前記バルク材料層の第2部分を前記第1入射角より小さい第2入射角で前記第1部分へ堆積させることと、
により作成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項13】
前記第1部分、前記第2部分、又はこれら両方を、5mTorr(0.67Pa)未満の圧力を含む堆積条件下で堆積する、請求項12に記載の構造体。
【請求項14】
前記圧力は、約1mTorr(0.13Pa)~約4mTorr(0.53Pa)である、請求項13に記載の構造体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の構造体を備えるバルク波共振子であって、第1電極と第2電極をさらに備え、前記圧電性バルク材料層の少なくとも一部分は前記第1電極と前記第2電極の間にある、バルク波共振子。
【請求項16】
単一のウェハから作成された複数の音響共振子構造体であって、前記ウェハは、表面と前記表面へ堆積された圧電性バルク材料層とを備え、前記圧電性バルク材料層は、第1入射角で堆積された前記バルク材料層の第1部分と、前記第1入射角より小さい第2入射角で前記第1部分へ堆積された前記バルク材料層の第2部分とを備え、
前記複数の音響共振子構造体は、共振周波数において公称周波数を最大100MHz上回る、又は下回る変動を示す、
複数の音響共振子構造体。
【請求項17】
前記複数の音響共振子構造体は、テスト条件の間に乾燥時利得で10%以下の変動を示す、請求項16に記載の複数の音響共振子構造体。
【請求項18】
前記第2部分は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を備える、請求項16又は17に記載の複数の音響共振子構造体。
【請求項19】
単一のウェハから作成された複数の音響共振子構造体であって、前記ウェハは、表面と前記表面へ堆積された圧電性バルク材料層とを備え、前記圧電性バルク材料層は、第1入射角で堆積された前記バルク材料層の第1部分と、前記第1入射角より小さい第2入射角で前記第1部分へ堆積された前記バルク材料層の第2部分とを備え、
前記複数の音響共振子構造体は、テスト条件の間に乾燥時利得で10%以下の変動を示す、
複数の音響共振子構造体。
【請求項20】
前記第2部分は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を備える、請求項19に記載の複数の音響共振子構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、c軸が傾斜した六方晶系結晶構造の材料を含む構造、並びにそのような材料を製造するシステム及び方法に関する。特に、本開示は、窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)などのc軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料を含む構造体に関する。c軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料は、例えば様々な共振子や、薄膜電気音響デバイス及び/又は薄膜センサデバイスで使用されることがあり、特に液状媒質/粘性媒質中で動作するセンサ(例えば化学センサや生化学センサ)及び同種のもので使用されることがある。
【背景技術】
【0002】
AlNやZnOなどの六方晶系結晶構造の圧電材料は、その圧電特性及び電気音響特性のために商業的に興味深い。電気音響技術は、主に電気通信分野で(例えば発振器、フィルタ、ディレイラインなどで)使用されてきた。さらに最近では、高感度、高分解能、及び高信頼性の可能性のために高周波センシング用途での電気音響デバイスの利用に対する関心が高まっている。しかし、電気音響技術を特定のセンサ用途、特に液状媒質又は粘性媒質中で動作するセンサ(例えば化学センサや生化学センサ)に適用するのは容易なことではなく、これは縦波及び表面波はそのような媒質へ音響的にかなりの漏出を示し、分解能の低下につながるからである。
【0003】
圧電性結晶共振子の場合、音波により圧電材料の内部(又は「バルク」)を通って伝搬するバルク波(BAW)、又は圧電材料の表面を伝搬する表面弾性波(SAW)のいずれかが具体化されうる。SAWデバイスは、圧電材料の表面に沿った櫛形電極(interdigital transducer)を利用して音波(一般的には2次元のレイリー波を含む)の変換に関与し、音波は約1波長の侵入深さに閉じ込められる。BAWデバイスは、典型的には圧電材料の対向する上面及び底面に配置された電極を用いて音波の変換に関与する。BAWデバイスでは、縦モード及び2つの異なった分極をしたすべりモードを含む、異なる振動モードがバルク材料中を伝搬することができて、縦モードとすべりバルクモードは異なる速度で伝搬する。縦モードは伝搬方向における圧縮及び伸長を特徴とするのに対し、すべりモードは局所的な体積変化のない、伝搬方向に対して垂直な動きから成る。これらのバルクモードの伝搬特性は、結晶軸方位に対する材料特性と伝搬方向のそれぞれにより決まる。せん断波は液体に対して非常に小さな侵入深さを示すので、(液体中で放射状に広がってかなり大きな伝搬損失を示しうる縦波とは対照的に)純粋なすべりモード又は支配的なすべりモードを有するデバイスは大きな放射損失なしに液体中で動作できる。言い換えると、すべりモードの振動は流体を用いた音波デバイスの動作で有益であり、これは、せん断波は大きなエネルギーを流体へ伝えないためである。
【0004】
特定の圧電薄膜は縦モード共振とすべりモード共振の両方を励振することができる。標準的なサンドイッチ方式の電極構成のデバイスを用いてすべりモードを含む波を励振するために、圧電薄膜の分極軸は、概して膜平面に対して非垂直である(例えば傾斜している)必要がある。(限定しないが)窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)などの六方晶系結晶構造の圧電材料は、その分極軸(すなわちc軸)を膜平面に対して垂直に成長させる傾向があり、これは(0001)平面は典型的には最も低い表面密度を有し、熱力学的に好ましいからである。特定の高温(例えば気相成長)プロセスはc軸が傾斜した薄膜を成長させるのに使用されることがあるが、金属電極や配線などのマイクロ電子構造と完全な互換性を提供するには低温堆積プロセス(例えば、典型的には約300℃未満)を必要とする。
【0005】
反応性無線周波数マグネトロンスパッタリングなどの低温堆積方法は、傾斜したAlN膜を作成するのに使用されてきた。しかし、これらのプロセスは、基板の面積全体にわたって位置と共に大きく変動する蒸着角をもたらす傾向があり、これにより、ターゲットからソースへの半径方向の位置と共に変動する、堆積された圧電材料のc軸方向が、もたらされる。
【0006】
基板にわたるAlN膜構造のc軸傾斜角度の均一性の欠如による影響の一つは、AlN膜で覆われた基板が個々のチップへとダイスカットされる場合に、個々のチップにおいてc軸傾斜角度のかなり大きな変動と、付随して音波伝搬特性の変動が示されることである。c軸傾斜角度のそのような変動は、一貫した繰り返し可能な性能を有する大量の共振子チップを効率的に製造することを難しくするであろう。
【0007】
主に蒸着角を制御することでバルク層のc軸傾斜を制御する、c軸傾斜を有するバルク膜を製造するための改善された方法及びシステムが説明されてきた。例えば、傾斜したc軸を有するシード層及びバルク層を堆積させるための装置及び方法は、「c軸が傾斜した圧電材料構造を成長させるための成膜装置(”Deposition System for Growth of Inclined C-Axis Piezoelectric Material Structures”)」と題された米国特許出願第15/293,063号明細書、「c軸が傾斜した圧電性バルク層及び結晶性シード層を有する音響構造を製造するための方法(”Methods for Fabricating Acoustic Structure with Inclined C-Axis Piezoelectric Bulk and Crystalline Seed Layers”)」と題された米国特許出願第15/293,071号明細書、「c軸が傾斜した圧電性バルク層及び結晶性シード層を有する音響共振子構造体(”Acoustic Resonator Structure with Inclined C-Axis Piezoelectric Bulk and Crystalline Seed Layers”)」と題された米国特許出願第15/293,082号明細書、「c軸が傾斜した圧電材料構造を成長させるための多段式成膜装置(”Multi-Stage Deposition System for Growth of Inclined C-Axis Piezoelectric Material Structures”)」と題された米国特許出願第15/293,091号明細書、「異なるC軸方位分布の圧電性バルク層及び結晶性シード層を製造するための方法(”Methods for Producing Piezoelectric Bulk and Crystalline Seed Layers of Different C-Axis Orientation Distributions”)」と題された米国特許出願第15/293,108号明細書に記載されている。また、これらの公開された特許出願明細書は、中でも、基板の表面全体にわたってより均一なc軸傾斜のバルク膜を提供するためのコリメータ及び制御機構の使用についても記載している。コリメータの使用は、基板ではなくコリメータへのかなりの量のバルク層の堆積をもたらすことがあり、これはプロセスにおける無駄及び非効率性をもたらしかねない。
【0008】
また、これらの公開された特許出願明細書は、最初にシード層を堆積させることなくバルク層を直接基板へ堆積させるための試みについても記載している(例えば、米国特許出願第15/293,071号明細書を参照)。しかし、そのようなバルク層は、所望のc軸傾斜角度分布を示さず、(所望の特性を示した)バルク層をシード層へ堆積させるのに用いられるのと同じ条件下で堆積したにも関わらず、1.25以上の所望の最小のすべりモード対縦結合比を示すことができなかった(これは、液状媒質/粘性媒質中でバルク音響センシング用共振子として使用するのに適切ではない構造をもたらすであろう)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
改善された特性を有するバルク層が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、中でもバルク波共振子構造体(バルク音響波共振子構造体)及びそのような共振子構造体を製造するための方法を提供する。バルク波共振子構造体は、c軸が傾斜した六方晶系結晶構造の材料(例えば圧電材料)を有するバルク層を含む。六方晶系結晶構造のバルク層は基板により支持される。バルク層は2ステップ(2つの工程)のプロセスで形成可能である。第1ステップでは、バルク層の一部分が非垂直な入射角で堆積し、所望のc軸傾斜が得られる。c軸傾斜が確定されたら、バルク層の残りの部分が垂直入射で堆積する。垂直入射で堆積するにも関わらず、残りのバルク層は既に堆積した結晶層のc軸傾斜を採用する傾向がある。そのようなプロセスは、(002)方向に沿った面内配向のない(103)テクスチャを促進する傾向がある従来のシード層を用いることなく行われてよく、あるいは、そのようなプロセスは従来のシード層を用いて行われてよい。
【0011】
一部の実施形態では、構造体は、ウェハ又はウェハの一部分を備える基板と、基板へ堆積した第1部分及び第1部分へ堆積した第2部分を有する圧電性バルク材料層と、を含み、第2部分は4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有する。圧電性バルク材料層は、約35度~約52度のc軸傾斜を有することができる。結晶性バルク層は、励振中に1.25以上のすべり結合対縦結合比を示しうる。
【0012】
構造体は、少なくとも部分的にバルク材料層に配置されたバンプを含みうる。一実施形態によれば、バンプ接点は80g(0.78N)以上、100g(0.98N)以上、110g(1.08N)以上、120g(1.18N)以上、130g(1.27N)以上、又は140g(1.37N)以上の力に耐えることができるせん断強度を示しうる。
【0013】
バルク材料層は、約1,000オングストローム~約30,000オングストロームの厚さを持ちうる。厚さは、バルク材料層の面積全体にわたって2%未満だけ変動しうる。
【0014】
一部の実施形態では、あらかじめ選択された角度のc軸を持つ結晶性バルク層は、第1成長ステップで5mTorr(0.67Pa)以下の圧力を含む堆積条件下での第1部分の堆積を含む方法により作成される。第1成長ステップは非垂直入射で行われる。好ましくは、堆積したバルク層は約35度以上のc軸傾斜を有する。例えば、バルク材料層は約35度~約85度の蒸着角で堆積させることができる。好ましくは、第1成長ステップにおける堆積は、堆積している材料の表面移動度を阻害する条件下にあり、それにより、バルク材料層の結晶が互いに対して略平行となり、実質的にあらかじめ選択された角度の方向を向くようになっている。方法は、第2成長ステップにおいてより小さな入射角、例えばほぼ垂直入射でバルク材料層を堆積させることを含む、第2部分の堆積をさらに含む。ほぼ垂直入射での堆積であるにも関わらず、第2成長ステップで堆積させるバルク材料層の第2部分は第1部分のc軸傾斜の方向、例えば、約35度以上を向く。バルク材料は、励振中に1.25以上のすべり結合対縦結合比を示しうる。バルク層(例えば第2部分)は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有しうる。
【0015】
一部の実施形態では、あらかじめ選択された角度のc軸傾斜を有する結晶性バルク層は、バルク材料層の第1c軸傾斜を有する第1部分を第1入射角で基板へ堆積させることと、第1c軸傾斜と実質的に合わせられた第2c軸傾斜を有するバルク材料層の第2部分を第1入射角より小さい第2入射角で第1部分へ堆積させることと、を含む方法により作成される。第1部分は、直接基板の表面へ堆積させることができる。バルク層(例えば第2部分)は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有しうる。
【0016】
一部の実施形態では、あらかじめ選択された角度のc軸傾斜を有する結晶性バルク層は、10mTorr(1.33Pa)以上の圧力を含む堆積条件下でシード層を基板へ堆積させることと、あらかじめ選択された角度のc軸傾斜を有する結晶性バルク層をシード層へ堆積させることと、を含む方法により作成される。バルク層を堆積させることには2ステップのプロセスが含まれる。第1部分は、非垂直の入射角である第1入射角で行われる第1成長ステップにおいて堆積する。好ましくは、堆積したバルク層の第1部分はあらかじめ選択された角度のc軸傾斜を有する。方法は、バルク材料層の第2部分を第1入射角より小さい第2入射角で堆積させることを含む第2成長ステップをさらに含む。ほぼ垂直入射での堆積であるにも関わらず、第2成長ステップで堆積させるバルク材料層の第2部分は第1部分のc軸傾斜の方向を向く。バルク材料は、励振中に1.25以上のすべり結合対縦結合比を示しうる。バルク層(例えば第2部分)は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有しうる。
【0017】
本明細書に記載される様々な実施形態において、バルク層は、バルク層内の結晶のc軸方位が0度~90度の範囲内、例えば約30度~約52度や約35度~約46度などで選択可能であるように作成される。c軸方位分布は、好ましくは大きな(例えば、約50mm以上、約100mm以上、又は約150mm以上の範囲の直径を有する)基板の面積全体にわたって実質的に均一であり、これにより同じ又は似た音波伝搬特性を有する多数のチップを単一基板から得ることが可能となる。
【0018】
本明細書に記載される様々な実施形態において、バルク材料層は、約1,000オングストローム~約30,000オングストロームの厚さを持つ。バルク材料層は約35度~約85度の蒸着角で堆積させることができる。バルク材料は、励振中に1.25以上のすべり結合対縦結合比を示しうる。
【0019】
本明細書に記載される様々な実施形態において、構造体は、ウェハを備える基板とウェハの表面へ堆積された圧電性バルク材料層とを含み、バルク材料層は、約32度以上のc軸傾斜を有する。構造体は、励振中に1.25以上のすべり結合対縦結合比を示しうる。バルク層(例えば第2部分)は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有しうる。
【0020】
本明細書に記載される様々な実施形態において、バルク波共振子(バルク音響波共振子)は、ウェハを備える基板とウェハの表面へ堆積する圧電性バルク材料層とを含む構造体を含み、バルク材料層は、約32度以上のc軸傾斜を有し、圧電性バルク材料層の少なくとも一部分は第1電極と第2電極の間にある。バルク層(例えば第2部分)は、4.5nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有しうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、AlNに関するc軸傾斜角度の関数としてのすべり結合係数(Ks)及び縦結合係数(Kl)のグラフである。
図2A図2Aは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層のない基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図2B図2Bは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層のない基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図2C図2Cは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層のない基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図2D図2Dは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層のない基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図3A図3Aは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層を有する基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図3B図3Bは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層を有する基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図3C図3Cは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層を有する基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図3D図3Dは、本明細書に記載される実施形態に従ってシード層を有する基板へバルク層を堆積させて、所望のc軸傾斜を得るプロセスを示す模式図である。
図4図4は、傾斜したc軸を有する六方晶系結晶構造の圧電材料を成長させる成膜装置の反応炉の上部外側斜視図であり、成膜装置は直線スパッタリング装置と、多数の基板を支持する移動可能な基板テーブルと、コリメータとを含む。
図5図5は、直線スパッタリング装置と、多数の基板を支持する移動可能な基板テーブルを平行移動させる移動用レールと、コリメータとを含む、図4の反応炉の要素の一部の上側斜視図である。
図6図6は、本明細書で開示される、c軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層を含むバルク波固体実装型共振デバイスの一部分の概略断面図であり、共振デバイスは、圧電材料の一部分が上側電極と底部側電極の重なり合う部分の間に配置された活性領域を含む。
図7図7は、本明細書で開示される、一実施形態に係る、結晶性シード層の上に配置されたc軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層を含む薄膜バルク波共振子(FBAR)デバイスの概略断面図であり、FBARデバイスは、支持層により覆われる空洞を規定する基板を含み、圧電材料の一部分が上側電極と底部側電極の重なり合う部分の間に配置され、空洞を用いて検知される活性領域を含む。
図8A図8Aは、一例における試料のc軸角度のグラフ表示である。
図8B図8Bは、一例における試料のc軸角度のグラフ表示である。
図9A図9Aは、一例における比較用試料のc軸角度のグラフ表示である。
図9B図9Bは、一例における比較用試料のc軸角度のグラフ表示である。
図10図10は、一例における試料と比較用試料の電気機械結合のグラフ表示である。
図11図11は、例1の試料と比較用試料のウェハ品質のグラフ表示である。
図12図12は、例2の試料と比較用試料のSEM画像を示す。
図13図13は、例2の試料と比較用試料のSTEM画像を示す。
図14図14は、例2の試料と比較用試料のウェハ品質のSTEM画像を示す。
図15図15は、例3で作成されたバンプの概略図面を示す。
図16図16は、図15のバンプのせん断破壊試験の画像を示す。
図17図17は、例3の結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、結晶性バルク層と、結晶性材料のc軸傾斜の選択を可能とする結晶性バルク層を堆積させる方法とに関する。本開示は、デバイスへと加工される場合に改善された特性、例えば、改善された機械的品質係数、低減された音響損失、低減された抵抗(電気的)損失、低減された表面粗さ、及び/又は、改善された機械的強度などを有する結晶性バルク層に関する。バルク層は2ステップのプロセスで形成可能である。第1ステップでは、バルク層の一部分が非垂直な入射角で堆積し、所望のc軸傾斜が得られる。c軸傾斜が確定されたら、バルク層の残りの部分が垂直入射で堆積する。垂直入射、又はほぼ垂直入射で堆積するにも関わらず、残りのバルク層は既に堆積した結晶層のc軸傾斜を採用する傾向がある。バルク層は直接基板上へ堆積可能である、あるいはシード層を有する基板上へ堆積可能である。
【0023】
本開示は、低い表面粗さを示し、厚さの変動が小さい結晶性バルク層に関する。結晶性バルク層は、高いせん断強度及び高いすべり結合対縦結合比を示し、共振周波数及び乾燥時利得の変動が小さい共振子を作成するのに使用することができる。
【0024】
結晶性バルク層に対する改善及び結晶性バルク層の作成方法は、例えば以下のうちの1つ又は複数を提供することが望ましい:バルク層内の結晶のc軸の角度に対する更なる制御、特性の改善(例えば、薄膜表面の粗さの減少や、機械的品質係数の改善、結合係数の改善、バルク層厚さの均一性の向上、すべり結合対縦結合比の上昇など)、バルク層製造効率の向上、及び、薄膜を用いたデバイスの性能の向上。
【0025】
ほぼ垂直入射での結晶性バルク層の堆積と所望のc軸傾斜の実現により、無駄と処理効率が低減される。例えば、垂直入射での堆積はコリメータなしに行うことが可能で、これによりコリメータ上への堆積に由来するバルク層材料の材料損失を削減することができる。その結果、より多くのバルク層材料を直接基板へ移動させることができる。さらに、コリメータ上に積もった堆積物を清掃する頻度、又はコリメータを交換する頻度を減少させることができる。加えて、垂直入射での堆積はより早くなりえて、標準的な設備とプロセス条件を用いて行うことができる。これらの利点及び他の利点は当業者には容易に理解されるであろう。
【0026】
本開示の方法は、c軸があらかじめ選択された角度で傾斜した結晶性バルク層を有する構造体の作成を提供する。望ましいc軸傾斜は、意図する目的、利用法、及びバルク層の影響により決まる。六方晶系結晶構造の圧電材料に対してc軸傾斜角度を変えることで、図1に示されるようにすべり結合係数及び縦結合係数が変動する。図1は、AlNに関するc軸傾斜角度の関数として、すべり結合係数(Ks)及び縦結合係数(Kl)それぞれのグラフを表す。AlNにおけるすべりモード共振の最大電気機械結合係数は約35度のc軸傾斜角度で得られること、(縦結合がゼロの)純粋せん断応答は約46度のc軸傾斜角度で得られること、そして、すべり結合係数は約19度~約63度の範囲のc軸傾斜角度の値に対して縦結合係数を上回ることがわかる。また、縦結合係数は90度のc軸傾斜角度でゼロであるが、非常に急なc軸傾斜角度でAlNを成長させるのは現実的ではない。同様の動作が他の圧電材料でも想定されるが、具体的な角度位置は変わりうる。液状媒質又は他の粘性媒質中での動作が意図される電気音響共振子では、特定の実施形態では縦結合係数がゼロへと近づくc軸傾斜角度で又はすべり結合が最大化される値近辺のc軸傾斜角度で、縦結合係数を上回るすべり結合係数を提供するのに充分なc軸傾斜角度を持つ圧電薄膜を提供するのが望ましい。したがって、AlN圧電層を含む電気音響共振子では、約19度~約63度の範囲のc軸傾斜角度を提供するのが望ましく、約35度~約46度のc軸傾斜角度を提供するのが特に望ましい。他のc軸傾斜角度は他の目的で、又はAlN以外の材料が堆積に使用される場合には望ましいことがある。
【0027】
AlNのバルク層を備えるバルク波共振子でのすべり結合係数は、約19度~約63度の範囲のc軸傾斜角度の値に対して縦結合係数を上回る。すべりモードと縦結合の間のより大きな差異は、だいたい30度~52度で得られ、(縦結合がゼロの)純粋すべりモード共振応答はおよそ46度のc軸傾斜角度で得ることができる。それゆえ、約30度~約52度、約32度~約50度、約35度~約50度、約35度~約48度、又は約46度のc軸傾斜角度を持つAlNバルク層を作成可能であることが望ましい。一部の実施形態では、すべりモード励振は、約30度~約52度、約32度~約50度、又は約35度~約48度のc軸傾斜を有するバルク層を堆積させることで増大させることができる。また、他の角度のc軸傾斜も他の実施形態では有用になりうる。例えば、約30度~約45度、約32度、又は約90度のc軸傾斜は、一部の実施形態では所望されうる。
【0028】
「c軸」という用語は、本明細書では六方晶系ウルツ鉱型構造を有する堆積した結晶の(002)方向を指すのに使用される。c軸は典型的には結晶の縦軸である。
【0029】
「c軸傾斜」、「c軸方位」、及び「c軸傾き」という用語は、本明細書では同じ意味で、堆積基板の表面平面の法線に対するc軸角度のことを指すのに使用される。
【0030】
c軸傾斜、又はc軸方位に言及する場合、単一の角度値が与えられたとしても、堆積した結晶層(例えばシード層又はバルク層)内の結晶は角度分布を示しうることを理解されたい。角度分布は、例えば釣鐘曲線に似た2次元グラフとして、又は極点図により図で実際に示すことが可能な正規(例えばガウス)分布に通常はほぼ従う。
【0031】
「入射角」という用語は、本明細書では、原子が基板へ堆積する角度を指すのに使用され、堆積の経路と基板表面の平面の法線の間の角度として測定される。
【0032】
「基板」という用語は、本明細書では、シード層又はバルク層が堆積されうる物質を指すのに使用される。基板は、例えばウェハとすることができ、あるいは、複合共振デバイスの一部又はウェハであってよく、これらは、基板の少なくとも一部分に配置される電極構造などの他の構成要素も含みうる。シード層は、本開示の実施形態では「基板」とはみなされない。
【0033】
「基板上の」結晶の堆積に言及する場合、基板と結晶の間には介在層(例えばシード層)が存在することがある。ただし、「直接基板上へ」、又は「基板表面に」という表現では、介在層を除外することが意図されている。
【0034】
「シード層」という用語は、本明細書では、(002)方向に沿った面内配向がほとんどない又はない(103)テクスチャにより占められている、バルク材料層が堆積しうる結晶層を指すのに使用される。
【0035】
「バルク層」という用語は、本明細書では、主に(002)テクスチャを示す結晶層を指すのに使用される。バルク層は1つ又は複数のステップで形成可能である。本開示におけるバルク層への言及はバルク層全体を指し、バルク層は1つのステップ、2つのステップ、又は3つ以上のステップで形成される。「第1部分」という用語は、本開示では主に(002)テクスチャを示すバルク層の第1堆積部(例えば層)を指すのに使用される。
【0036】
「実質的に」という用語は、本明細書では「ほぼ完全に」と同じ意味を持ち、後に続く用語を約90%以上、約95%以上、又は約98%以上で修飾すると理解することができる。
【0037】
結晶に関する「平行」及び「略平行」という用語は、結晶の方向性を指す。略平行である結晶は、同じ、又は似たc軸傾斜を有するだけでなく、同じ、又は似た方向を向いている。
【0038】
「約」という用語は、本明細書では数値と共に使用されて当業者が想定する測定値の正常な変動を含めるのに使用されて、「およそ)」と同じ意味を有すると理解され、記載されている値の±5%などの典型的な誤差の範囲を網羅する。
【0039】
本明細書で使用されるすべての科学用語及び専門用語は、特に指定のない限り、当該技術分野で一般に使用される意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に使用される特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。
【0040】
本明細書で使用される場合、内容から明らかにそうではないと示されていない限りは、単数形の「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を有する実施形態を包含する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「又は」という用語は、内容から明らかにそうではないと示されていない限りは、概して「及び/又は」を含む意味で使用される。「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくはすべて、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「有する/持つ」、「有すること/持つこと」、「含む」、「備える/含むこと」、又は同種のものは、それらのオープンエンドの意味で使用され、概して「含むが、これに限定されない」を意味する。「基本的に~から成る」、「~から成る」、及び同種のものは、「備える/含む」及び同種のものに包含される。本明細書で使用される場合、「基本的に~から成る」は、組成、生成物、方法、又は同種のものに関するため、組成、生成物、方法、又は同種のものの構成要素が列挙された構成要素と、組成、生成物、方法、又は同種のものの基本的特徴及び新規の特徴に対して物質的に影響を与えないその他の構成要素とに限定されることを意味する。
【0043】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、特定の状況下で特定の利益を提供可能な本発明の実施形態を指す。ただし、他の実施形態も、同じ、又は他の状況下では好ましいことがある。さらに、1つ又は複数の好ましい実施形態の記述は他の実施形態が有用ではないことを意味せず、請求項を含む本開示の範囲から他の実施形態を除外することを意図していない。
【0044】
端点による数値範囲の記述は、その範囲に包含されるすべての数字を含む(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含み、10以下は10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などを含む)。ここで、値の範囲は特定の値「まで」であり、その値は範囲内に含まれる。
【0045】
本明細書で言及される任意の方向、例えば「上部」、「底部」、「左」、「右」、「上部の」、「下部の」、及び他の方向と方位は、本明細書では図に関連して明確にするために記載され、実際の装置若しくはシステム、又は装置若しくはシステムの使用を制限するものではない。本明細書に記載される装置又はシステムは、数多くの方向及び方位で使用可能である。
【0046】
本開示は、様々な面で結晶性バルク層、バルク波共振子構造体に関連し、またそのようなバルク層及び共振子構造体を製造する方法に関する。従来の共振子構造体、製造方法、及び成膜装置と比べて、本開示の様々な実施形態は、あらかじめ選択されたc軸傾斜角度を持ち、選択可能な角度範囲が増大したc軸傾斜圧電薄膜(c軸が傾斜した圧電薄膜)を含み、あるいは可能とする。また、c軸が傾斜した圧電薄膜は、デバイスへと加工される場合に、改善された機械的品質係数、低減された音響損失、低減された抵抗(電気的)損失、低減された表面粗さ、及び/又は、改善された機械的強度も示しうる。c軸が傾斜した圧電薄膜は、c軸傾斜角度の向上した均一性を伴って大面積(例えば大面積の基板)の上に作ることができる。c軸が傾斜した圧電薄膜を作成する方法は、c軸が傾斜した圧電薄膜を作成する先行技術の方法に対してより効率的でありえ、あるいは無駄を低減可能である。
【0047】
本明細書に記載される方法は、2つ以上のステップを有するバルク層堆積プロセスを含む。このプロセスは、基板上へシード層を堆積させることをさらに含むことができ、あるいはバルク層を(介在するシード層なしに)直接基板上へ堆積させることを含みうる。
【0048】
図2A図2D及び図3A図3Dを参照すると、2ステップのバルク層堆積プロセスの模式図が示されている。図2A図2Dは、バルク層40をシード層なしに直接基板4上へ堆積させるプロセスを示す。第1成長ステップ(図2Aに示される)は、直線スパッタリング装置のターゲット2から金属原子が放出されてガス種と反応し、堆積フラックス10を形成して、基板4により受け取られることを含む。成膜装置は、ターゲットと基板の間に配置される多開口式コリメータ17を含みうる。堆積フラックス10をコリメータ17の開口18を通るよう方向付けて、堆積中の入射角の制御を助けることができる。堆積フラックス10は第1入射角αで基板4に到達し、バルク層40の第1部分41(図2Bに示される)を形成する。バルク層40の第1部分41の結晶はc軸傾斜41γを有する。
【0049】
第2成長ステップ(図2Cに示される)において、金属原子はターゲット2から放出されてガス種と反応し、基板4上に既に堆積した第1部分41により受け取られる。第2成長ステップにおいて、第2入射角βが第1入射角αより小さくなる(例えば、法線と第1入射角αの間となる)ように、ターゲット2を配置することができる。例えば、第2入射角βは約0度(すなわち、基板4の表面に対して垂直)とすることができる。第2成長ステップにおいて堆積フラックス10はバルク層40の第2部分42(図2Dに示される)を形成する。バルク層40の第2部分42の結晶はc軸傾斜42γを有する。第2成長ステップはコリメータなしで行うことができる。
【0050】
一実施形態によれば、第2部分42のc軸傾斜42γは、バルク層40の第1部分41のc軸傾斜41γに従う、あるいは実質的に従う。一部の実施形態では、第1部分41及び第2部分42のc軸傾斜41γ、42γは、第1成長ステップの間に使用される第1入射角αと合わせられる、あるいは少なくとも実質的に合わせられる。結果として生じる第1部分41及び第2部分42のバルク層結晶は、互いに対して略平行となりえて、所望のc軸傾斜と少なくとも実質的に合わせることができる。また、結果として生じる第1部分41及び第2部分42のバルク層結晶は、それぞれの部分の中で略平行となりうる。例えば、第1部分41の結晶の少なくとも50%以上、75%以上、又は90%以上は、平均c軸傾斜から0度~10度以内であるc軸傾斜41γと、平均結晶方向から0度~45度以内、又は0度~20度以内である方向とを有することができる。同様に、第2部分42の結晶の50%以上、75%以上、又は90%以上は、平均c軸傾斜から0度~10度以内であるc軸傾斜42γと、平均結晶方向から0度~45度以内、又は0度~20度以内である方向とを有することができる。
【0051】
図3A図3Dは、基板4上に堆積したシード層31にバルク層50が堆積するプロセスを示す。結晶性バルク層50の第1部分51(図3B)は、図3Aに示される第1成長ステップにおいてシード層31へ堆積する。第1成長ステップにおいて、堆積フラックス10中の原子(ガスと反応した金属原子)が第1入射角αで堆積する。図3Cに示される第2成長ステップにおいて、堆積フラックス10中の原子は第2入射角βで堆積し、バルク層50の第2部分52がもたらされる。第2入射角βは第1入射角αより小さくすることができる。例えば、第2入射角βは約0度(すなわち、基板4の表面に対して垂直)とすることができる。バルク層50の第2部分52の結晶はc軸傾斜52γを有する。
【0052】
一実施形態によれば、第2部分52のc軸傾斜52γは、バルク層50の第1部分51のc軸傾斜51γに従う、あるいは実質的に従う。一部の実施形態では、第1部分51及び第2部分52のc軸傾斜51γ、52γは、第1成長ステップの間に使用される第1入射角αと合わせられる、あるいは少なくとも実質的に合わせられる。結果として生じる第1部分51及び第2部分52のバルク層結晶は、互いに対して略平行となりえて、所望のc軸傾斜と少なくとも実質的に合わせることができる。また、結果として生じる第1部分51及び第2部分52のバルク層結晶はそれぞれの部分の中で略平行となりうる。例えば、第1部分51の結晶の50%以上、75%以上、又は90%以上は、平均c軸傾斜から0度~10度以内であるc軸傾斜51γと、平均結晶方向から0度~45度以内、又は0度~20度以内である方向とを有することができる。同様に、第2部分52の結晶の50%以上、75%以上、又は90%以上は、平均c軸傾斜から0度~10度以内であるc軸傾斜52γと、平均結晶方向から0度~45度以内、又は0度~20度以内である方向とを有することができる。
【0053】
図2A図2D及び図3A図3Dに示される方法はいずれも第1成長ステップ(図2A及び図3Aを参照)においてコリメータ17を利用することができて、第1成長ステップには基板4に対してターゲット2を非垂直入射で位置決めすることが含まれる。バルク層40、50の第2部分42、52がほぼ垂直入射で堆積する第2ステップ(図2C及び図3Cを参照)は、好ましくはコリメータを利用しない。
【0054】
本開示の少なくとも一部の実施形態によれば、バルク層40、50はあらかじめ選択可能なc軸傾斜を有する。本開示の方法により、バルク層内の結晶があらかじめ選択されたc軸傾斜と合わせられた、あるいは実質的に合わせられたバルク層40、50がもたらされる。一部の実施形態では、バルク層内の結晶の75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上が、あらかじめ選択されたc軸傾斜からある範囲内のc軸傾斜、例えば、あらかじめ選択されたc軸傾斜から例えば1度~10度、1度~8度、1度~5度、又は1度~3度以内であるc軸傾斜を有するように、結晶のc軸傾斜が分布する。
【0055】
理論により制約されることは望まないが、少なくとも1つの成長ステップ中の堆積条件は、堆積条件は堆積する原子の表面移動度を阻害するように選択可能であると仮定される。表面移動度阻害効果を有しうる堆積条件には多くの変数が含まれる。これらの変数は、シード層及び/又はバルク層のc軸傾斜が制御可能である点まで表面移動度が低減されるように選択することができる。原子の表面移動度は変数全体の結果であり、必ずしもいずれかの単一の変数のみの結果ではない。従来の方法及びバルク層を堆積させる堆積条件と比較すると、変数のそれぞれは多少異なりうる、あるいは変数の一部のみが異なることがあって、その他は従来の方法におけるものと同じままでありうる。原子の表面移動度は直接決定することが難しいため、適切な条件の組み合わせは、結果として生じる結晶層のc軸傾斜を結晶学的制約のために堆積させる材料で通常利用可能な角度を超えて変化させる能力に基づいて決定されうる。例えば、AlNの場合は、32度以上に沿って整列された(約25度~約35度の範囲の角度分布を有する)c軸傾斜を有する結晶層を製造する能力は、熱力学よりも動力学で都合がよい、結晶が堆積環境の変化に反応して成長できるようにする堆積条件を示しうる。また、バルク層を20度、25度超、30度超、又は35度超で整列されたc軸傾斜角度で直接(シード層のない)基板へ堆積させる能力は、熱力学よりも動力学で都合がよい堆積条件を示しうる。バルク層内の結晶は、基板の面積全体にわたって(例えば、堆積範囲全体にわたって)整列されうる、あるいは実質的に整列されうる。
【0056】
一実施形態によれば、バルク層の最初の(例えば第1)部分は、結果として生じる最初のバルク層内の結晶が所望のc軸傾斜を有するように、初期堆積条件下で非垂直入射角で堆積させることができる。残りのバルク層(例えば第2、又はその後の部分)は、同一の初期堆積条件下で、又は異なる堆積条件下(例えば、バルク層の堆積に通常使用される条件)で堆積させることができる。
【0057】
一部の実施形態では、バルク波共振子構造体及びそのような共振子構造体を製造する方法は、バルク層を直接(シード層のない)基板に堆積させることを含む。シード層がバルク層と同じ材料で形成されるとしても、シード層を排除することによって、改善された結合効率及び機械的品質係数がもたらされうる。一部の実施形態では、共振子構造体はバルク層を直接基板上へ堆積させることで形成され、改善された機械的品質係数、低減された音響損失、低減された抵抗(電気的)損失、高いせん断強度、高いすべり結合対縦結合比、及び/又は、小さな共振周波数及び乾燥時利得の変動を示す。また、共振子構造体は、大面積にわたるc軸傾斜角度の向上した均一性も示す。
【0058】
本開示の少なくとも一部の実施形態によれば、バルク層のc軸傾斜は、初期堆積条件下でバルク層の第1部分を所望の角度で堆積させることで調整可能である。一部の実施形態によれば、初期堆積条件は、バルク層が堆積している間の原子の表面移動度を阻害するようになっている。少なくとも一部の実施形態では、あらかじめ選択されたc軸傾斜を有するバルク層は最初にシード層を堆積させることなく初期堆積条件下で堆積させることができる。
【0059】
一部の実施形態では、第1成長ステップの間の初期堆積条件には、入射角、圧力、温度、ターゲットから基板への距離、及びガス比のうちの1つ又は複数が含まれうる。入射角は非垂直入射とすることができる。例えば、入射角は、10度より大きく、27度より大きく、30度より大きく、32度より大きく、33度より大きく、34度より大きく、35度より大きく、36度より大きく、又は40度より大きくすることができる。入射角は、約85度以下、約75度以下、約65度以下、約56度以下、約52度以下、約50度以下、約49度以下、又は約48度以下とすることができる。例示の入射角には、35度、40度、43度、及び46度が含まれる。一部の実施形態では、入射角は32度より小さい、又は40度より大きい。
【0060】
第1成長ステップの間の圧力は、約0.5mTorr(0.07Pa)以上、約1mTorr(0.13Pa)以上、又は約1.5mTorr(0.20Pa)以上とすることができる。圧力は、約10mTorr(1.33Pa)以下、約8mTorr(1.07Pa)以下、約6mTorr(0.80Pa)以下、約5mTorr(0.67Pa)以下、又は約4mTorr(0.53Pa)以下とすることができる。一部の実施形態では、圧力は5mTorr(0.67Pa)未満である。例えば、圧力は約2mTorr(0.27Pa)、約2.5mTorr(0.33Pa)、約3mTorr(0.40Pa)、約3.5mTorr(0.47Pa)、又は約4mTorr(0.53Pa)とすることができる。温度は約20℃以上、約50℃以上、又は約100℃以上とすることができる。温度は約300℃以下、約250℃以下、又は約200℃以下とすることができる。一部の実施形態では、堆積プロセスは熱を生成しうるが、堆積が行われる堆積チャンバはヒーターにより加熱されない(つまり、意図的に加熱されない)。
【0061】
第1成長ステップの間のターゲットから基板への距離は、約50mm以上、約75mm以上、約80mm以上、又は約90mm以上とすることができる。距離は約200mm以下、約150mm以下、約130mm以下、又は約120mm以下とすることができる。一部の実施形態では、堆積中のターゲットから基板への距離は約108mm~約115mmとすることができる。
【0062】
成膜装置の蒸気空間内のガスは、堆積させる層の意図する組成に基づいて選択することができて、アルゴン、及び、堆積する原子と反応するガス、例えば窒素や酸素など、を含みうる。蒸気空間内のアルゴンと反応ガス(例えば窒素)とのガス比は、約1:10~約10:10、約2:10~約8:10、又は約4:10とすることができる。
【0063】
一部の実施形態では、バルク波共振子構造体及びそのような共振子構造体を製造する方法は、バルク層をシード層へ堆積させることを含む。シード層を用いて、バルク層を堆積させるテクスチャ化された表面を提供することができる。シード層は様々なテクスチャを示すことがあり、最も注目すべきは(103)と(002)である。方向性のある堆積フラックスと優位性のある柱状成長により、堆積フラックスに沿った方向を実質的に向いたc軸を有するバルク層をもたらすことができる。
【0064】
特定の実施形態では、結晶性シード層は、組成的に、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層と一致する。一部の実施形態では、結晶性シード層の厚さは、バルク層とシード層の合計の厚さの約20%以下、約15%以下、又は約10%以下である。特定の実施形態では、シード層は約500オングストローム~約2,000オングストロームの範囲の厚さを含み、(AlNなどの六方晶系結晶構造のシード材料では)支配的な(103)テクスチャを含みうる。
【0065】
シード層は、「c軸が傾斜した圧電性バルク層及び結晶性シード層を有する音響構造を製造するための方法」と題された米国特許出願第15/293,071号明細書に記載されたものなどの既知の方法及び条件に従って作成する(例えば、基板へ堆積させる)ことができる。一部の実施形態では、シード層は8mTorr(1.07Pa)以上、10mTorr(1.33Pa)以上、若しくは12mTorr(1.60Pa)以上、又は25mTorr(3.33Pa)以下、20mTorr(2.67Pa)以下、若しくは18mTorr(2.40Pa)以下の圧力で堆積する。
【0066】
一部の実施形態によれば、第1成長ステップにおいて、バルク層は、入射角、圧力、温度、ターゲットから基板への距離、及びガス比の1つ又は複数を含みうる初期堆積条件の間に、シード層へ堆積される。
【0067】
第1成長ステップの入射角は非垂直入射とすることができる。例えば、入射角は、10度より大きく、27度より大きく、30度より大きく、32度より大きく、33度より大きく、34度より大きく、35度より大きく、36度より大きく、又は40度より大きくすることができる。入射角は、約85度以下、約75度以下、約65度以下、約56度以下、約52度以下、約50度以下、約49度以下、又は約48度以下とすることができる。例示の入射角には、35度、40度、43度、及び46度が含まれる。一部の実施形態では、入射角は32度より小さい、又は40度より大きい。
【0068】
第1成長ステップの間の圧力は、約0.5mTorr(0.07Pa)以上、約1mTorr(0.13Pa)以上、又は約1.5mTorr(0.20Pa)以上とすることができる。圧力は、約10mTorr(1.33Pa)以下、約8mTorr(1.07Pa)以下、又は約6mTorr(0.80Pa)以下とすることができる。一部の実施形態では、圧力は5mTorr(0.67Pa)未満である。例えば、圧力は約2mTorr(0.27Pa)、約2.5mTorr(0.33Pa)、約3mTorr(0.40Pa)、約3.5mTorr(0.47Pa)、又は約4mTorr(0.53Pa)とすることができる。温度は約20℃以上、約50℃以上、又は約100℃以上とすることができる。温度は約300℃以下、約250℃以下、又は約200℃以下とすることができる。一部の実施形態では、堆積プロセスは熱を生成しうるが、堆積が行われる堆積チャンバはヒーターにより加熱されない(つまり、意図的に加熱されない)。
【0069】
堆積中のターゲットから基板への距離は、約50mm以上、約75mm以上、約80mm以上、又は約90mm以上とすることができる。距離は約200mm以下、約150mm以下、約130mm以下、又は約120mm以下とすることができる。一部の実施形態では、堆積中のターゲットから基板への距離は約108mm~約115mmとすることができる。
【0070】
成膜装置の蒸気空間内のガスは、堆積させる層の意図する組成に基づいて選択することができて、アルゴン、及び、堆積する原子と反応するガス、例えば窒素や酸素などを、含みうる。蒸気空間内のアルゴンと反応ガス(例えば窒素)とのガス比は、約1:10~約10:10、約2:10~約8:10、又は約4:10とすることができる。
【0071】
シード層、バルク層、又はバルク層の一部分が堆積する表面は、任意選択で堆積の前に粗面化することができる。例えば、基板の表面、シード層の表面、又はバルク層の第1部分の表面を粗面化することができる。表面は、例えば原子衝撃によって粗面化することができる。表面の粗面化により、その後に成長するバルク層の結晶を堆積中に配向する能力が向上しうる。理論により制約されることは望まないが、表面の粗面化により陰影効果が生じて、結晶の方位を蒸着角へ向けるのに都合よくするのを助けうると考えられる。基板の表面は、例えば原子衝撃によって粗面化することができて、表面の「山」と「谷」を作り出すことができる。
【0072】
特定の実施形態によれば、バルク層の第2部分は垂直入射で堆積する、あるいは第1入射と基板平面に対する法線の間の入射角で堆積する。バルク層の一部分、又は大半(例えばバルク層の第2部分)を垂直入射で堆積させる能力により、製造をより早く、より効率的にすることができる。加えて、垂直入射で堆積させることで、コリメータ上に堆積する材料をより少なくすることができる。
【0073】
第2成長ステップの間の堆積条件には、入射角と、圧力、温度、ターゲットから基板への距離、ガス比のうちの1つ又は複数が含まれうる。第2入射角は、約0度、約5度以下、約10度以下、約15度以下、約20度以下、約25度以下、約30度以下、約35度以下、又は約40度以下とすることができる。
【0074】
第2成長ステップの間の堆積条件は、初期堆積条件と同じとすることができる、あるいは異なるものとすることができる。第2成長ステップの間の堆積条件には、例えば0.5mTorr(0.07Pa)~約15mTorr(2.00Pa)、約0.8mTorr(0.11Pa)~約10mTorr(1.33Pa)、又は約1mTorr(0.13Pa)~約5mTorr(0.67Pa)の圧力が含まれうる。一部の実施形態では、圧力は5mTorr(0.67Pa)未満である。例えば、圧力は約2mTorr(0.27Pa)、約2.5mTorr(0.33Pa)、約3mTorr(0.40Pa)、約3.5mTorr(0.47Pa)、又は約4mTorr(0.53Pa)とすることができる。第2成長ステップの間の温度は、約20℃~約300℃、約50℃~約250℃、又は約100℃~約200℃の幅がありうる。蒸気空間内のアルゴンと反応ガス(例えば窒素)とのガス比は、約1:10~約10:10、約2:10~約8:10、又は約4:10とすることができる。
【0075】
第1成長ステップ及び第2成長ステップで使用される材料は同じとすることができる、あるいは異なるものとすることができる。バルク層に適切な材料には、圧電材料や高融点の他の金属材料が含まれる。一部の実施形態では、材料には、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化ニオブなどの金属窒化物が含まれる。一部の実施形態では、材料には、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化モリブデンなどの金属酸化物が含まれる。一部の実施形態では、材料には、ハフニウム酸窒化物、チタン酸窒化物、タンタル酸窒化物などの金属酸窒化物が含まれる。一部の実施形態では、材料には、炭化チタン、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化タンタルなどの金属炭化物が含まれる。一部の実施形態では、材料はジルコニウム、ハフニウム、タングステン、モリブデンなどの高融点金属である。バルク層は、上記の材料のうちの2つ以上の組み合わせを含みうる。
【0076】
特定の実施形態では、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層を支持する基板又はウェハの表面の法線に対して、主に12度~52度の範囲、27度~37度の範囲、又は75度~90度の範囲の方位分布を持つc軸を含む。
【0077】
六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層のc軸方位の分布は正規分布又は二峰性でありうる。好ましい実施形態では、分布は正規分布である。特定の実施形態では、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層のc軸方位分布の約30%未満、約25%未満、又は約20%未満が基板の表面の法線に対して0度~25度の範囲内にある。特定の実施形態では、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層のc軸方位分布の約30%未満、約25%未満、又は約20%未満が基板の表面の法線に対して45度~90度の範囲内にある。六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層のc軸方位分布の60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上は25度~45度の範囲内にありうる。一部の実施形態では、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層のc軸方位分布の60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上は30度~40度の範囲内にある。
【0078】
また、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は、c軸傾斜とは異なるバルク粒子配向を有する。バルク層の第1部分のバルク粒子配向は、バルク層の第2部分とは異なりうる。一部の実施形態では、第2部分のバルク粒子配向は垂直、又は実質的に垂直でありうる。例えば、第2部分のバルク粒子配向は、基板の表面の法線から15°以下、10°以下、又は5°以下でありうる。
【0079】
特定の実施形態では、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層(第1部分と第2部分を結合したもの)は、約1,000Å(オングストローム)以上、約2,000Å以上、約3,000Å以上、約4,000Å以上、約6,000Å以上、又は約10,000Å以上の厚さを持ちうる。六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の厚さは、約30,000Å以下、約26,000Å以下、又は約20,000Å以下でありうる。そのような六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は好ましくは実質的に均一な厚さ、ナノ構造、及び結晶特性を含み、制御された応力及び密に充填された柱状粒子又は再結晶粒状構造を有する。特定の実施形態では、結晶性シード層は500Å~2,000Åの範囲の厚さを含み、(AlNなどの六方晶系結晶構造の圧電材料では)支配的な(103)テクスチャを含みうる。他の実施形態では、構造体はシード層を含まない。
【0080】
バルク層の厚さの変動は、先行技術の方法と比べて低減することができる。一部の実施形態によれば、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は、膜厚で2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、又は1.7%以下の変動を示す。
【0081】
また、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は低減された表面粗さも示しうる。一部の実施形態によれば、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は、4.5nm以下、4.2nm以下、4.0nm以下、3.8nm以下、又は3.8nm以下の表面粗さ(Ra)を持つ外面を有する。
【0082】
一部の実施形態によれば、音響共振子構造体は、基板を備える少なくとも1つのウェハが支持面により受け止められる成膜装置内で作成される。音響反射器構造体は基板の上に配置することができて、電極構造が音響反射器構造体の少なくとも一部分の上に配置され、そのような構造は少なくとも1つの固体実装型バルク波共振デバイスを製造するのに有用でありうる。特定の実施形態では、少なくとも1つのウェハは窪みを規定する基板を含み、支持層が窪みの上に配置され、電極構造が支持層の上に配置されて、そのような構造は少なくとも1つの薄膜バルク波共振デバイスを製造するのに有用でありうる。本明細書で方法を記載する際は、単純に「基板」への堆積が記載されることがある。しかし、基板は複合共振デバイス又はウェハの一部であってもよく、複合共振デバイス又はウェハは基板の少なくとも一部分に配置される電極構造などの他の構成要素も含みうるということを理解されたい。
【0083】
多数の音響共振子構造体又はデバイス(例えば、デバイスの一群)は、本開示の方法に従って作成された単一のウェハから作成することができる。デバイスの一群(デバイスのバッチ)は、特定の仕様及び品質パラメータに沿って作ることができる。そのような仕様や品質パラメータには、中でも、動作時共振周波数、群全体での共振周波数の変動、群全体での乾燥時利得(質量感度)の変動が含まれうる。共振周波数の変動は、群の中で公称周波数又は目標周波数と比べた場合の実際の周波数の差分と理解することができる。乾燥時利得の変動は、所与のテスト条件下での群全体での乾燥時利得の差分と理解することができる。音響共振子構造体の乾燥時利得はデバイスの共振周波数と正の相関があることがわかっている。それゆえ、所与のウェハから作成された音響共振子構造体の一群における乾燥時利得の変動も、群全体での共振周波数の変動と正の相関がある。一実施形態によれば、乾燥時利得の変動は、より均一なバルク層を堆積させることで低減することができる。したがって、本開示に従って作成された音響共振子構造体は、先行技術の構造体と比べて直列共振周波数(fs)におけるより小さな変動と乾燥時利得におけるより小さな変動を示しうる。
【0084】
一部の実施形態によれば、単一のウェハから作成された複数の音響共振子構造体(例えば、BAWデバイス)は、公称周波数と比べて、±100MHz以下、±90MHz以下、又は±80MHz以下の共振周波数の変動を示す。複数の音響共振子構造体の乾燥時利得の変動は、テスト条件下で10%以下、8%以下、6%以下、4%以下、2%以下、1.9%以下、又は1.8%以下でありうる。一群の構造体に対するテスト条件は群全体で同じであると仮定することができる。一部の実施形態では、任意の数の音響共振子構造体を単一のウェハから作成可能である。例えば、ウェハは100個以上、1,000個以上、又は10,000個以上の音響共振子構造体、そして最大で100,000個の音響共振子構造体にすることができる。任意の2つ以上の構造体が検査されることがあり、規定された共振周波数の変動と乾燥時利得の変動を示しうる。音響共振子構造体は、2GHz以上、2.5GHz以上、2.75GHz以上、3GHz以上などの任意の適切な動作周波数を持つことができる。一部の実施形態では、複数の音響共振子構造体は2GHz~3GHzの範囲の動作周波数を持つBAWデバイスである。
【0085】
好ましい一実施形態では、ウェハは本開示の方法に従ってバルク材料層を堆積させることで作成される。一群のBAW共振子がウェハから製造される。BAW共振子は約2.7GHzの公称共振周波数を持つ。群から任意の2つ以上のBAW共振子が検査されることがあり、±100MHz以下の共振周波数の変動を示しうる。つまり、検査されるBAW共振子は、2.6GHz~2.8GHzの共振周波数を示しうる。群から任意の2つ以上のBAW共振子がテスト条件下で検査されることがあり、10%以下の乾燥時利得の変動を示しうる。つまり、検査されるデバイスの乾燥時利得は、互いから±10%以内である。
【0086】
本開示の音響共振子構造体から作成された、BAW共振子などの様々なデバイスは先行技術のデバイスと比べて、より大きな機械的強度を示しうる。デバイス構造体は、少なくとも部分的にバルク材料層に配置されるバンプを含みうる。バンプ構造は圧電物質の表面へ電気的に接触するために作られる柱状の物である。デバイスの使用中にバンプはせん断力の影響を受けることがある。それゆえ、より大きなせん断強度と、より大きなせん断力に耐える能力は有益である。バンプのせん断強度は、バンプの直径、高さ、基礎の積層構成などの様々な要因により決まる。本開示の方法を用いて作成される積層上に作られるバンプは、先行技術の方法を用いて作成される積層上に作られる同様のバンプと比べてより大きなせん断強度を示しうる。一実施形態によれば、音響共振子構造体上に作成されたバンプ構造は、80g(0.78N)以上、100g(0.98N)以上、110g(1.08N)以上、120g(1.18N)以上、125g(1.22N)以上、130g(1.27N)以上、135g(1.32N)以上、又は140g(1.37N)以上の力に耐えることができるせん断強度(せん断接着測定ツールを用いて測定される)を示しうる。せん断力に耐える能力に望まれる上限はないが、実際にはバンプ構造は500g(4.90N)以下、400g(3.92N)以下、300g(2.94N)以下、250g(2.45N)以下、又は200g(1.96N)以下のせん断力に耐えることができうる。改善された機械的強度により、デバイスを使用中の性能の向上がもたらされうるが、製造中のプロセスのスループットの向上及びより小さな加工費ももたらされうる。
【0087】
一態様では、本開示は少なくとも1つの音響共振子構造体を製造する方法に関し、成長ステップ(例えば、第1成長ステップや第2成長ステップ)には基板上へ六方晶系結晶構造のバルク層の堆積が含まれる。堆積させる材料は圧電材料とすることができる。成長ステップは、直線スパッタリング装置のターゲット表面から金属原子が放出されてガス種と反応し、基板により受け取られることを含む。
【0088】
本開示の方法に従って作成された音響共振子構造体とそのような音響共振子構造体を用いて作成されたデバイスは、既知の方法を用いて作成された構造体と比べて、よりロバストでありえて、また改善された機械的安定性を示しうる。
【0089】
本開示のシード層及びバルク層は任意の適切な成膜装置で作成することができる。適切な成膜装置の一例は、「c軸が傾斜した圧電材料構造を成長させるための成膜装置」と題された米国特許出願第15/293,063号明細書に記載されている。成膜装置の主な側面を以下に要約する。ただし、本開示の方法は、使用されている成膜装置により特に限定されることはなく、他の適切な成膜装置もまた使用することができる。
【0090】
本開示の結晶層は、直線スパッタリング装置のターゲット表面と、スパッタリングで堆積する材料を受け取る1つ又は複数のウェハ若しくは基板を支持する基板テーブルとの間に配置される多開口式コリメータを組み込んだ成膜装置で作成することができる。一部の実施形態では、ウェハ又は基板は、垂直入射(0度)での堆積用の固定された台座(pedestal)上に設置されることがある。
【0091】
好ましい成膜装置が六方晶系結晶構造の圧電材料を成長させるための成膜装置の反応炉100の上部外側斜視図である図4に示されている。反応炉100は、基板へ堆積させる材料に使用される様々な元素を保管する第1、第2、及び第3の管状部102、120、108を含む。図5は、直線スパッタリング装置154と、多数の基板を支持する移動可能な基板テーブルを平行移動させる移動用レール115と、コリメータアセンブリ170とを含む、反応炉100の要素の一部の上側斜視図を示す。
【0092】
ターゲット表面は基板テーブルに対して平行ではないことがあり、中間に配置されるコリメータはターゲット表面及び基板テーブルの両方に対して平行ではないことがある。コリメータ及び基板テーブルは、好ましくはいずれもスパッタリング中に移動(例えば平行移動)することができて、基板テーブルとコリメータの少なくとも1つは、好ましくはグラウンド以外の電位へバイアスをかけられる。成膜装置は、結晶性シード層を成長させて(例えば堆積させる)、続いてシード層の堆積とは異なる条件下で結晶性シード層の上へ六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層を成長させるのに使用することができる。あるいは、本開示の方法によれば、最初にシード層を堆積させることなくバルク層を直接基板へ堆積させることができる。
【0093】
一実施形態によれば、バルク層は単一のスパッタリング装置を用いて成長する(例えば、堆積する)。成長ステップ(例えば、第1成長ステップ及び/又は第2成長ステップ)は、直線スパッタリング装置と、直線スパッタリング装置の範囲内の異なる位置の間で移動可能な基板テーブルと、基板テーブルと直線スパッタリング装置の間に配置されるコリメータとを利用する成膜装置を用いて行うことができる。六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は、大気中の値より低い条件を少なくとも1つの真空ポンプ要素を用いて生成させることができる筐体の中で成長させることができて、バルク層を支持するウェハ又は基板はこの筐体内で平行移動させることができる。
【0094】
一部の実施形態では、バルク層は、多数の直線スパッタリング装置と、異なる直線スパッタリング装置に最も近い異なる位置の間で移動可能な基板テーブルとを利用する成膜装置を用いて行うことができる2つ以上のステップで成長する(例えば、堆積する)。コリメータは、基板テーブルと各直線スパッタリング装置の間に配置することができる。例えば、結晶性シード層及び/又は六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第1部分は第1成長ステップに従って第1コリメータを用いて第1位置で反応性スパッタリングにより成長することができて、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層(又はバルク層の第2部分)は第2成長ステップでコリメータなしに第2位置で反応性スパッタリングにより成長することができる。これらの位置はいずれも、大気中の値より低い条件を少なくとも1つの真空ポンプ要素を用いて生成させることができる単一の筐体の中に配置することができて、各層を支持するウェハ又は基板は、大気中の値より低い条件から取り出す必要なく、これらの位置の間で移動させることができる。一部の実施形態では、異なるプロセス条件、及び/又は、ターゲット表面とコリメータとウェハ又は支持面の間の異なる角度位置が第1成長ステップ及び第2成長ステップで使用されることがある。
【0095】
c軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料を成長させるのに適切な成膜装置は、直線スパッタリング装置と、多開口式コリメータと、スパッタリング装置のターゲット表面に対して非平行に配置される支持面を有する移動可能な基板テーブルを含みえて、基板テーブル及び/又はコリメータはグラウンド以外の電位へ電気的にバイアスをかけられている。直線マグネトロン、又は直線イオンビームスパッタリング装置を含みうる直線スパッタリング装置は、金属(例えば、アルミニウムや亜鉛)原子を排出するよう構成されているターゲット表面を含み、ターゲット表面は支持面に対して非平行である(支持面から例えば、0°~90度未満に向けられている)。また、コリメータも支持面に対して非平行に配置することができる。特定の実施形態では、例えば第1成長ステップの間は、ターゲット表面は支持面に対して第1非ゼロ角度に配置され、コリメータは支持面に対して第2非ゼロ角度に配置され、第1非ゼロ角度は第2非ゼロ角度より大きい。ターゲット表面から放出された金属原子はガスを含む環境内に含まれるガス種と反応して、堆積する材料(例えば圧電材料)を形成する。例えば、アルミニウム又はアルミニウムを含むターゲット表面から放出されたアルミニウム原子は窒素ガス種と反応して窒化アルミニウムを形成することができて、亜鉛又は亜鉛を含むターゲット表面から放出された亜鉛原子は酸素ガス種と反応して酸化亜鉛を形成することができる。
【0096】
基板テーブルの支持面は、堆積基板として使用される1つ又は複数のウェハを受け止めるように構成することができて、好ましくは約50mm以上、約100mm以上、又は約150mm以上の範囲の直径を有する。基板テーブルは、直線スパッタリング装置の動作中に基板テーブルを移動させるよう構成されている移動可能要素(例えば平行移動要素)と結合されうる。基板テーブルの移動により、材料が異なる厚さで局所的に堆積するのを防ぐことで、大面積での均一な材料堆積を促進することができる。好ましいコリメータは、多数のコリメータ開口を規定するグリッド(格子)を形成する、複数の縦方向部材や複数の横方向部材などの、支持面に対して非平行に配置された多数の案内部材を含む。基板テーブル及び/又はコリメータをグラウンド以外の電位へ電気的にバイアスをかけることで、スパッタリング装置の動作中の材料堆積の制御が強化される。また、コリメータにバイアスをかけることは、バルク波共振デバイス内のc軸が傾斜した圧電性バルク材料の微細構造の成長にも影響を与えうる。基板テーブル及びコリメータは、個々にグラウンド以外の電位へ電気的にバイアスをかけることができる。また、コリメータの別の案内部材にも互いとは異なるように電気的にバイアスをかけることができる。コリメータは直線スパッタリング装置の動作中に移動して、そうでなければ堆積する圧電材料を受け取る表面に形成されうる「陰影」模様が形成されるのを防ぐよう構成することができる。堆積用開口はコリメータと基板テーブルの間に配置することができる。
【0097】
少なくとも一部の実施形態によれば、結果として生じるバルク層のc軸傾斜は、あらかじめ選択された角度と同じである、あるいは入射角及び/又はあらかじめ選択された角度からある範囲内にある。例えば、結果として生じるバルク層のc軸傾斜は、入射角及び/又はあらかじめ選択されたc軸傾斜から1度以内、2度以内、3度以内、5度以内、10度以内、又は15度以内とすることができる。バルク層結晶のc軸傾斜の分布は、バルク層の結晶の75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上が入射角及び/又はあらかじめ選択されたc軸傾斜から例えば1度以内、2度以内、3度以内、5度以内、10度以内、又は15度以内などのある範囲内であるようにすることができる。
【0098】
特定の実施形態では、基板テーブル及び/又はコリメータは第1成長ステップ及び/又は第2成長ステップの間に移動して、均一な材料堆積を促進するよう構成される。電極構造は、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の少なくとも一部分の上に形成されて、少なくとも1つのバルク波共振デバイスを形成することができる。バルク波共振デバイスの活性領域が、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層が第1電極構造と第2電極構造の間に配置される範囲内に提供される。そのような成長ステップは、単一のスパッタリング装置を用いて、又は、多数の直線スパッタリング装置と、異なる直線スパッタリング装置に最も近い異なる位置の間で移動可能な基板テーブルと、任意選択で基板テーブルと各直線スパッタリング装置の間に配置されるコリメータとを利用する成膜装置を用いて行うことができる。特定の実施形態では、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層がその上に堆積する、少なくとも1つの複合共振デバイスが、固体実装型バルク波共振子チップや薄膜バルク波共振子チップなどの複数のチップへとダイスカットされる。
【0099】
本開示の別の態様では、少なくとも1つの共振子構造体を製造する方法は、第1ターゲット表面を含む第1直線スパッタリング装置を含む第1位置を使用することと、第2ターゲット表面を含む第2直線スパッタリング装置を含む第2位置を使用することと、を含む。基板テーブルにより支持される少なくとも1つのウェハ構造体は、第1の大気圧より低い圧力条件が生成される第1位置へ移動されて、第1成長ステップが少なくとも1つのウェハ構造体の上に六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第1部分を堆積させるために行われ、基板テーブルにより支持される少なくとも1つのウェハ構造体は第2の大気圧より低い圧力が生成される第2位置へ移動されて、第2成長ステップがバルク層の第1部分の上に六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第2部分を堆積させるために行われ、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第2部分は六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第1部分のc軸方位分布と実質的に類似したc軸方位分布を有する。第1成長ステップは、第1ターゲット表面から金属原子が放出されて、(i)(任意選択で多数の第1コリメータ開口を含む第1コリメータを通過した後に)第1堆積用開口を通過して、(ii)ガス種と反応して少なくとも1つのウェハ構造体により受け取られて、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第1部分を堆積させることを含む。第2成長ステップは、第2ターゲット表面から金属原子が放出されて、(i)第2堆積用開口を通過して、(ii)ガス種と反応して第1部分により受け取られて、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第2部分を堆積させることを含む。第2成長ステップは、コリメータを用いることを含んでも含まなくてもよい。特定の実施形態では、第1成長ステップは、主にあらかじめ選択された角度からある範囲内(例えば、±5度以内や±10度以内)の方位分布を有する六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第1部分を生じさせるよう構成され、第2成長ステップは、主に同一のあらかじめ選択された角度からある範囲内(例えば、±5度以内や±10度以内)の方位分布を有するc軸を含む六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の第2部分を生じさせるよう構成される。主に、は、層内の結晶の50%以上、約75%以上、約90%以上、又は約95%以上を意味することを意図している。
【0100】
特定の実施形態では、少なくとも1つのウェハ構造体を支持する基板テーブルは、基板テーブルにより支持される少なくとも1つのウェハ構造体を第1位置へ移動させる前にロードロック室に投入されて、最初の大気中の値より低い条件がロードロック室内で生成される。特定の実施形態では、第1位置及び第2位置は、第1の大気圧より低い圧力条件及び第2の大気圧より低い圧力条件が生成される単一の筐体内に配置される。他の実施形態では、第1位置は関連する第1真空ポンプ要素を有する第1チャンバ内に配置され、第2位置は関連する第2真空ポンプ要素を有する第2チャンバ内に配置される。
【0101】
特定の実施形態では、基板は約50mm以上(又は、約100mm以上、若しくは約150mm以上)の直径を有し、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層は基板の表面の約50%以上(又は75%以上、90%以上、若しくは95%以上)を覆う。特定の実施形態では、それぞれ第1電極構造と第2電極構造の間の活性領域を含む多数のバルク波共振デバイスは、単一基板上に提供される。多数のバルク音響共振子チップはそのような基板から(例えばダイスカットすることで)得ることができて、1つ又は複数のセンサ及び/若しくは流体素子に組み込むことができる。
【0102】
一実施形態では、成膜装置は、(最初にシード層を堆積させることなく)六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層を直接基板上で成長させるよう構成される。別の実施形態では、成膜装置は、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層を基板上に配置されたシード層上で成長させるよう構成される。基板は支持面により受け止められているウェハであってもよく、六方晶系結晶構造の圧電材料のバルク層の少なくとも50%(又は75%以上、90%以上、若しくは95%以上)が、支持面により受け止められている基板又はウェハの表面の法線に対して、主に25度~50度の範囲(若しくは、約35度にピークがある30度~40度の部分的範囲内)、又は、10度より大きい、27度より大きい、30度より大きい、32度より大きい、33度より大きい、34度より大きい、35度より大きい、36度より大きい、若しくは40度より大きい範囲にある方位分布を有するc軸を含む。方位分布は、約85度以下、約80度以下、約75度以下、約65度以下、約56度以下、約52度以下、約50度以下、約49度以下、又は約48度以下とすることができる。そのようなc軸方位分布は、好ましくは大面積の(例えば、約50mm以上、約100mm以上、又は約150mm以上の範囲の直径を有する)基板の面積全体にわたって実質的に均一であり、これにより同じ又は似た音波伝搬特性を有する多数のチップを単一基板から得ることが可能となる。
【0103】
本開示の方法に従って成長したバルク層は、あらかじめ選択されたc軸傾斜角度を持つ。あらかじめ選択されたc軸傾斜角度の選択は、結果として生じる結晶性バルク層構造体(例えば、音響共振子構造体)の望ましい、又は意図される利用法により決まる。例えば、あらかじめ選択された角度は、0度より大きく、90度より小さい任意の角度とすることができる。すべりモード共振に都合がよい角度を選択するのが望ましいことがある。例えば、あらかじめ選択された角度は、10度より大きく、27度より大きく、30度より大きく、32度より大きく、33度より大きく、34度より大きく、35度より大きく、36度より大きく、又は40度より大きくすることができる。あらかじめ選択された角度は、約85度以下、約75度以下、約65度以下、約56度以下、約52度以下、約50度以下、約49度以下、又は約48度以下とすることができる。好ましいあらかじめ選択された角度は、35度及び46度を含む。一部の実施形態では、あらかじめ選択された角度は32度より小さい、又は46度より大きい。
【0104】
本開示の実施形態に係るバルク層を有する圧電材料薄膜は、様々なバルク波(「BAW」)デバイス、例えばBAW共振子などで使用することができる。本開示の圧電材料薄膜を利用した好ましいBAW共振子は、図6図7に示されている。
【0105】
図6は、本明細書で開示されるc軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料(例えば、AlNやZnO)を具体化した圧電材料バルク層64を含む、バルク波固体実装型共振デバイス50の一部分の概略断面図である。圧電材料バルク層64のc軸(すなわち(002)方向)は、圧電材料バルク層64の上に重ね合わせられた2つの矢印で示されるように、基板52に対して垂直な方向から離れるように傾斜している。共振デバイス50は、基板52(例えば、典型的にはシリコン又は別の半導体材料)と、基板52の上に配置される音響反射器54と、圧電材料バルク層64と、底部側及び上側の電極60、68とを含む。底部側電極60は音響反射器54と圧電材料バルク層64の間に配置され、上側電極68は圧電材料バルク層64の上面66の一部分に沿って配置される。圧電材料バルク層64の、上側電極68と底部側電極60とが重なり合う部分の間に配置される領域は、共振デバイス50の活性領域70とみなされる。音響反射器54は音波を反射する働きをし、それゆえ基板52内での音波の散逸を低減する、又は防ぐ。特定の実施形態では、音響反射器54は、基板52の上に堆積した、任意選択でブラッグ反射鏡内で具体化された、異なる音響インピーダンスの材料(例えば、SiOC、Si、SiO、AlN、Mo)の薄い層56、58が交互に重なった層を含む。特定の実施形態では、他の種類の音響反射器が使用されることがある。共振デバイス50を形成するステップには、音響反射器54を基板52の上に堆積させて、続いて底部側電極60を堆積させて、その後に圧電材料バルク層64を(例えば、スパッタリング又は他の適切な方法で)成長させて、さらにこの後に上側電極68を堆積させることを含みうる。
【0106】
図7は、一実施形態に係る薄膜バルク波共振子(FBAR)デバイス72の概略断面図である。FBARデバイス72は、支持層78(例えばシリコン酸化物)により覆われた空洞76を規定する基板74(例えば、シリコン又は別の半導体材料)を含む。底部側電極80は支持層78の一部分の上に配置され、底部側電極80及び支持層78を有する。c軸が傾斜した六方晶系結晶構造の圧電材料(例えば、AlNやZnO)を具体化した圧電材料バルク層84は底部側電極80の上に配置され、上側電極88が圧電材料バルク層84の上面86の少なくとも一部分の上に配置される。上側電極88と底部側電極80の間に配置される圧電材料バルク層84の一部分は、FBARデバイス72の活性領域90を具体化する。活性領域90は、支持層78の下に配置される空洞76の上に配置されて、空洞76を用いて検知される。空洞76は音響エネルギーが基板74へ散逸するのを防ぐことで活性領域90内で誘導される音波を閉じ込める働きをするが、これは、音波は効率的に空洞76を横断して伝搬しないためである。この点で、空洞76は、図6及び図7に示される音響反射器54に代わるものを提供する。図7に示される空洞76は、基板74の薄い部分により下方から境界されているが、別の実施形態では、空洞76の少なくとも一部分は基板74の厚さ全体にわたって広がっている。FBARデバイス72を形成するステップは、基板74内に空洞76を規定することと、犠牲材料(図示せず)で空洞76を満たした後に任意選択で犠牲材料を平坦化することと、支持層78を基板74及び犠牲材料の上に堆積させることと、(例えば、基板74若しくは支持層78内に規定される垂直な開口、又は基板74の外側縁を通してエッチング液を流すことで)犠牲材料を除去することと、支持層78の上に底部側電極80を堆積させることと、(例えば、スパッタリング又は他の適切な方法で)圧電材料バルク層84を成長させることと、上側電極88を堆積させることと、を含みうる。
【0107】
特定の実施形態では、音響反射器構造体は基板と少なくとも1つの第1電極構造の間に配置されて、固体実装型バルク音響共振デバイスが提供される。任意選択で、基板の裏面は裏面の音響反射を低減する、又は除去するよう構成されている粗面化された表面を含みうる。他の実施形態では、基板は窪みを規定し、支持層は窪みの上に配置され、支持層は基板と少なくとも1つの第1電極構造の少なくとも一部分との間に配置されて、薄膜バルク波共振子構造体が提供される。
【0108】
上での本発明の一般原理及び前述の詳細な説明の開示から、当業者は容易に様々な変更、再配置、及び本発明が受け入れ可能な置換、並びに本発明が提供可能な様々な利点及び利益を理解するであろう。それゆえ、本発明の範囲は、以下の請求項及びその均等物のみにより制限されるべきである。加えて、開示され、特許請求されている品物及び方法は外科的処置以外の用途で有用となりうることは本発明の範囲内であることが理解される。それゆえ、本発明の範囲は、そのような用途で特許請求され開示されている方法の使用を含むように広げることができる。
【実施例
【0109】
例1
BAWウェハ(試料)及びブランケット膜が本開示の方法に従って作成され、先行技術の方法に従って作成された基準BAWウェハ(比較用試料)及びブランケット膜と比較された。
【0110】
比較用試料を含むすべての試料は、「c軸が傾斜した圧電材料構造を成長させるための成膜装置」と題された米国特許出願第15/293,063号明細書に記載されている成膜装置を用いて作成された。
【0111】
3つのウェハ試料(直径150mm)及びブランケット膜が、2つのステップでAlN結晶性バルク層を直接基板へ堆積させることで作成された。ウェハ試料は、第1ステップでAlN結晶性バルク層の第1部分を43度の蒸着角で堆積させて、第2ステップで第2部分を0度の蒸着角(垂直入射)で堆積させることで作成された。
【0112】
(43度での)第1ステップの間、堆積圧力は6:15のアルゴン窒素混合比で2.5mTorr(0.33Pa)が選択された。出力は3kWで、直流電流は250kHzでパルス状にされ、目標電圧は250Vで目標電流は12Aであった。ターゲットから基板への距離は100mmであった。堆積速度は40Å/minであった。空間は加熱されなかったが、プラズマを使用するために、温度は約100℃であると推定された。
【0113】
(垂直入射での)第2ステップの間、ウェハ基板は固定された台座上に置かれた。堆積圧力は1:5のアルゴン窒素混合比で3.0mTorr(0.40Pa)が選択された。出力は6kWで、直流電流は100kHzでパルス状にされ、目標電圧は250Vで目標電流は12Aであった。空間は300℃まで加熱された。100Wのバイアスが台座へ印加された。コリメータは使用されなかった。ターゲットから基板への距離は50mmであった。堆積速度は900Å/minであった。
【0114】
比較用(基準)試料(直径150mm)は1つのステップでAlN層を堆積させることで作成された。AlN層は43度の蒸着角で堆積した。堆積圧力は6:15のアルゴン窒素混合比で2.5mTorr(0.33Pa)が選択された。出力は3kWで、直流電流は250kHzでパルス状にされ、目標電圧は250Vで目標電流は12Aであった。堆積速度は40Å/minであった。空間は加熱されなかったが、プラズマを使用するために、温度は約100℃であると推定された。
【0115】
AlNバルク層結晶のc軸角度をX線回折法で測定できるようにするためにブランケット膜が作成された。ブランケット膜上に堆積したAlNバルク層結晶は、同一の条件下でウェハ上に堆積したAlNバルク層結晶に相当する。
【0116】
試料のブランケット膜上、及び比較用ブランケット膜上のAlNバルク層結晶のc軸角度が極点図測定用の測角器を備えた標準的なX線回折計により測定された。この例で与えられた蒸着角は成膜装置の公称設定値であり、堆積フラックスが基板に接触する実際の角度範囲にはいくらかの変動がありうることに留意されたい。しかし、角度の相対的な振幅はそれでも比較可能である。
【0117】
試料のブランケット膜に対する結果は図8A及び図8Bに図で示されており、比較用(基準)ブランケット膜に対する結果は図9A及び図9Bに図で示されている。
【0118】
バルク層の大部分に垂直入射を適用すると、通常よりずっと大きなスループットを実現可能であることが観測された。垂直入射での堆積は、900Å/minでコリメータなしで行うことができた。堆積速度は、スループット及び効率の点でかなりの向上がもたらされた。
【0119】
垂直入射の第2ステップを有する2ステップの方法により作成された試料は、比較用試料と同様に、それぞれ極点図8A及び図9Aでわかるようにおよそ35度のc軸傾斜角度を持っていた。垂直入射で堆積したバルク層微結晶は、第1ステップで塗布された微結晶と揃っていることが観測された。第1ステップの微結晶はその後のバルク層のテンプレートとして機能すると考えられる。
【0120】
各ウェハの実効電気機械結合係数及び実効機械的品質係数が、ベクトルネットワークアナライザを用いて試料の散乱(S)パラメータ行列を調査することで評価されて、共振子性能特性が抽出された。電気的調査が各ウェハ上の100個の場所で行われ、その結果が正規化された平均値として算出された。
【0121】
品質係数(Q値)及び実効結合係数(k eff)を計算する方法は、K.M.Lakinにより発表された、”“Modeling of Thin Film Resonators and Filters”(「薄膜共振子及びフィルタのモデル化」) IEEE MTT-S Microwave Symposium Digest, 1992 pp. 149 - 152”を基にした。品質係数は、以下の式を利用して決定される。
【0122】
【数1】
【0123】
実効結合係数は、直列(f)共振周波数及び並列(f)共振周波数を測定して、以下の式を利用することで決定される。
【0124】
【数2】
【0125】
結果は、比較用(基準)試料に対して正規化された電気機械結合係数(kを示す図10と、比較用(基準)試料に対して正規化された機械的品質係数(Q値)を示す図11に図で示されている。
【0126】
堆積条件下で成長した本開示に係る試料薄膜の電気的性能が比較用(基準)試料に匹敵することが観測された。ウェハ試料上で測定された機械的品質係数(Q値)は比較用(基準)試料に匹敵する、又は少し大きい(およそ1.1倍)ものであった。
【0127】
例2
試料薄膜及び比較用薄膜は例1と同様に作成された。薄膜の表面粗さは、マサチューセッツ州ビレリカのブルカーコーポレーション(Bruker Corp.)のDimension 5000計測器(以前はDigital Instruments社から入手可能だった)を使って原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて検査された。
【0128】
薄膜は、断面の顕微鏡画像を撮影するために集束イオンビーム(FIB)を用いて切断された。FIBを備えたFEI社製Nova Nanolab 600I SEM(走査型電子顕微鏡)が切断及びSEM画像のために使用された。高分解能の走査型トンネル電子顕微鏡(STEM)画像が日立製2300A STEMを使って得られた。試料薄膜及び比較用薄膜の表面のSEM画像が図12に示されている(倍率100,000倍)。断面のSTEM画像が図13に示されている(倍率100,000倍)。画像に見られる主要な粒状構造は、c軸傾斜とは対照的に、バルク粒状構造であることに留意されたい。堆積した層の継ぎ目(試料薄膜)又は隙間(比較用薄膜)を示している断面のSTEM画像が図14に示されている。結果が以下の表1に示されている。
【表1】
【0129】
試料薄膜は比較用薄膜よりも小さい表面粗さを持つことが観測された。さらに、試料薄膜は比較用薄膜よりも均一な膜厚を有し、比較用薄膜での2%超とは対照的に、2%未満の膜厚の変動を有することが観測された。
【0130】
先行技術の方法は堆積している間の陰影効果のためにバルク膜の端部に隙間を形成してしまうと仮定される。試料薄膜は隙間を示さず、比較用薄膜が隙間を示す場所で継ぎ目が見えるのみであることが観測された。
【0131】
例3
ブランケット膜を用いて作成されたバイオセンサのバンプのせん断強度を試験するため、バンプ試料が図15の模式図に従って作成された。バンプ試料は、例1に従って作成された試料薄膜及び比較用薄膜の上に作成された。
【0132】
バンプ試料は、製造中に製品のせん断力への耐性を試験するために使用されることがあるせん断接着測定ツールを用いてせん断試験を受けた。せん断試験はウェハのレベルで行われ、1つのウェハで20回測定を行った。比較用薄膜のバンプは、基板が裂けたり亀裂のためにいくつかの信頼性問題を示した。試料薄膜上のバンプ及び比較用薄膜上のバンプの典型的な故障モードは、図16の画像で見ることができる。比較用薄膜のバンプは、試料薄膜のバンプとは異なり、基板が裂けて壊れた。また、試料薄膜上のバンプは、破損後でもなお一部の銅が残っているが、比較用薄膜では残っていないこともわかる。また、試料薄膜では、図17のグラフ表示でわかるように、せん断応力に対してより大きな耐性を有するバンプが作られた。試料薄膜のバンプは、125g(1.22N)~160g(1.57N)の範囲のせん断力を受けた場合に壊れた。比較用薄膜のバンプは、50g(0.49N)~150g(1.47N)の範囲のせん断力を受けた場合に壊れた。また、比較用薄膜のバンプは、せん断強度でより大きな変動を示すことも観測された。
【0133】
さらに、試料薄膜を用いて作成された共振子は、fs(直列共振周波数)及び乾燥時利得の変動が、比較用薄膜から作成された共振子よりも小さいことが観測された。共振子の電気的性能は、薄膜へ電気的に接触することで測定された。試料薄膜から作成された共振子のfsの変動は±100MHz未満であったが、比較用薄膜から作成された共振子のfsの変動は±100MHzを超えていた。試料薄膜から作成された共振子の乾燥時利得の変動は2%未満であったが、比較用薄膜から作成された共振子の乾燥時利得の変動は2%を超えていた。
【0134】
例1~3の結果は、第2ステップにおいて堆積を垂直入射角で行う本開示の方法を用いて2ステップでバルク層を堆積させることができ、先行技術の方法を用いて堆積したバルク層に少なくとも匹敵する、又はより優れたバルク層をもたらすことができることを実証した。このバルク層は、より小さな表面粗さとより大きな厚さ均一性を示す。このバルク層を用いて製造された構造体は、より大きなせん断強度を示す。バルク層の改善された品質により、より大きなプロセススループットとより小さな加工費などのプロセス改善がもたらされる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】