(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】ジャッキアップ式プラットホームユニットにおけるクレーンまたはカンチレバーの動作エンベロープを決定する方法、ジャッキアップ式プラットホームユニット
(51)【国際特許分類】
B66C 23/52 20060101AFI20221109BHJP
【FI】
B66C23/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516296
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 NL2020050563
(87)【国際公開番号】W WO2021049937
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521121776
【氏名又は名称】グストエムエスシー ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】GustoMSC B.V.
【住所又は居所原語表記】Karel Doormanweg 35 3115 JD Schiedam The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カヨ・ファンデルヘッヘン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・ヴァンヘ
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA10
3F205AC01
3F205HA10
3F205HB10
(57)【要約】
予荷重付与の間の脚体荷重特性を監視することによって、実際の達成予荷重値を決定する方法が提供される。方法は、代わりに、実際の達成予荷重値を考慮に入れた実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定することをさらに含む。方法は、環境負荷またはクレーンもしくはカンチレバーの動きなどの他のデータを考慮に入れることをさらに含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキアップ式プラットホームユニット上に取り付けられたクレーンまたはカンチレバーのクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定する方法であって、
- 前記ジャッキアップ式プラットホームユニットの少なくとも1本の脚体に予荷重をかけるステップと、
- 所定時間間隔の間、脚体荷重値および/または脚体貫入値などの前記脚体の少なくとも1つの特性を監視するステップと、
- 前記時間間隔の間、前記脚体特性および/または前記脚体特性の勾配を監視するステップと、
- 前記時間間隔の間、前記脚体特性が安定しているかどうかを評価するステップと、
- 前記時間間隔の間、前記脚体特性が所定閾値内にとどまり前記脚体特性の前記勾配が所定限界内にとどまるところの前記脚体特性が安定するまで、上記のステップを繰り返すステップと
を含み、実際の達成予荷重の値が、こうして達成される安定した脚体特性に関連する脚体荷重値であり、方法はさらに、
- 脚体ごとに、前記実際の達成予荷重値に基づいて脚体荷重容量を計算することによって実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定し、算出された脚体荷重容量をクレーンまたはカンチレバー動作量に変換するステップを含む、方法。
【請求項2】
少なくともクレーンもしくはカンチレバーの動き、および/またはクレーンもしくはカンチレバー荷重付与、および/または環境負荷に応じて、前記クレーンまたはカンチレバー動作量をさらに決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脚体特性が安定しているかどうかを評価するステップが、所定閾値に対する脚体特性値の差を評価するステップ、および/または、所定限界に対する前記脚体特性の前記勾配を評価するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記脚体特性が安定しているかどうかを評価するステップが、前記脚体特性が脚体荷重値である場合、前記脚体における前記脚体荷重値の減少が所定閾値未満のままであるかどうか、および、前記脚体における前記脚体荷重値の前記勾配が所定限界よりも小さいかどうかを評価するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脚体特性が安定しているかどうかを評価するステップが、前記脚体特性が脚体貫入値である場合、脚体貫入値の増加が所定閾値未満のままであるかどうか、および、前記脚体の前記脚体貫入値の前記勾配が所定限界よりも小さいかどうかを評価するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脚体特性の差および/または前記脚体特性の勾配がそれぞれの所定閾値よりも大きいことから前記脚体の監視された脚体特性値が不安定であると評価された場合、警告信号をもたらすステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定するステップが、ホイスト荷重および/またはクレーン到達距離および/または旋回角度および/またはブーム角度、および/またはカンチレバー到達距離などの実際のクレーンまたはカンチレバーのパラメータを用いてリアルタイムで行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
- 所定時間間隔の間、前記脚体の前記脚体特性の前記監視された値を受信するように構成され、前記脚体特性が安定しているかどうかを前記時間間隔の間に監視するように構成された制御ユニットであり、好ましくは、前記脚体の前記脚体特性が不安定と評価されたときに警告信号をもたらすように構成され、好ましくは、前記達成予荷重値に基づいて脚体ごとの前記脚体荷重容量を計算することによって実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定するように構成された制御ユニットを用意するステップと、前記算出された脚体荷重容量を、ホイスト荷重および/またはクレーン到達距離および/または旋回角度および/またはブーム角度および/またはカンチレバー到達距離などのクレーンまたはカンチレバーのパラメータに応じてクレーンまたはカンチレバー動作量に変換するステップと
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ジャッキアップ式プラットホームユニット上のクレーンの実際のクレーン動作エンベロープを決定するシステムであって、
- 前記ジャッキアップ式プラットホームユニットの船体に対して関連の脚体を動かし、前記脚体に荷重をかけるように配置された、ジャッキアップシステムと、
- 予荷重付与の間、前記脚体の監視された脚体特性値を受信するように構成された制御ユニットであって、所定時間間隔の間、前記脚体特性値が安定したままであるかどうかを監視するようにさらに構成された、制御ユニットと
を備える、システム。
【請求項10】
前記制御ユニットが、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法のステップのうちのいずれかを実行するようにさらに構成された、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記制御ユニットから実際のクレーン動作エンベロープデータを受信するように配置されたクレーンオペレータディスプレイ、および/または、前記制御ユニットから実際のカンチレバー動作エンベロープデータを受信するように配置されたカンチレバーオペレータディスプレイをさらに備える、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1から8の方法のいずれかを実行する、1つまたは複数の処理エンジン上で実行されるソフトウェアを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラム製品を記憶する、非一時的信号記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキに取り付けられたミッション機器を有するジャッキアップ船に関する。ミッション機器は、少なくとも1つのクレーンまたはカンチレバーであり得る。クレーンは、ジャッキアップ式プラットホームユニット上に取り付けることができ、デッキに対して可動であってよく、例えばクレーンブーム角および/または到達距離は動作中に変わる。クレーンは、例えばデッキ上、脚体周り、またはジャッキハウス(jack house)上などに取り付けることができる。カンチレバーは、デッキ上に可動的に取り付けることができ、例えば、カンチレバーがデッキの実質的に外側に延びる伸長位置と、カンチレバーが実質的にデッキ上にある後退位置との間で可動であってよい。
【背景技術】
【0002】
ジャッキアップ式プラットホームユニットまたはジャッキアップ船は、よく知られており、一般的に、浮揚性船体および複数の可動脚体を備える。脚体は、船体に対して動くことができ、船体を貫通して延長可能である。典型的には、ジャッキアップ式プラットホームユニットは、3、4または6本の脚体を有することができる。脚体は、脚体が船体の実質的に上に延びる航行位置の間で調整可能である。脚体の航行位置では、船体は、水面に浮かび、プラットホームユニットは、ある場所から他へと変位させることができる。脚体はさらに、脚体が船体の実質的に下に延び船体が水面(water level)上またはすぐ上にある、設置位置へと調整することができる。この位置では、脚体は、海底と接触し、海底上および/または海底中に置かれる。さらなる一位置である動作位置では、脚体は、船体の実質的に下に延び海底に固定される一方、船体は、水面と船体の底面との間の十分な間隙によって、特に、波がその下を通過できるようにするために、水面よりも上の動作高さへと上昇される。脚体は、ジャッキシステムによって船体に対して動かされる。
【0003】
そうしたジャッキアップ式プラットホームユニットは、自航または自走することができるが、やはりまた曳航されることもある。ジャッキアップ式プラットホームユニットはしばしば、例えば掘削作業(operation)、メンテナンス作業または風力タービン設置作業である、洋上作業で使用される。ジャッキアップ式プラットホームユニットはしばしば、例えばその脚体のうちの1つ周りに取り付けられた、巻き上げおよび/または設置作業のためのクレーンを備える。
【0004】
ジャッキアップ式プラットホームユニットの設置位置において、脚体を、海底まで下げ、ジャッキアップ式プラットホームが動作位置で安定し、安全な動作が可能になるようにしっかりと位置決めするように、海底にしっかりと設置する必要がある。脚体を海底にしっかりと下ろすため、例えば1本ずつまたは対でなど、各脚体に順に、例えば数千トンの比較的高い荷重をかけ、他の脚体はわずかな荷重付与のままにすることが一般的に行われており、この手順はしばしば「予荷重付与(preloading)」と称される。
【0005】
様々な予荷重付与手順が可能であり、用いられる最も一般的なものは能動的(active)な予荷重付与または受動的(passive)な予荷重付与であるが、能動的と受動的な予荷重付与の組合せも可能である。能動的な予荷重付与の場合、設定した力が所定時間間隔の間、脚体に連続的にかけられる。能動的な荷重の適用は、ジャッキオペレータが、その経験および専門知識から判断して、脚体が十分に沈下し基礎が安定したと判断されるまで繰り返される。受動的な予荷重付与の場合、力は、能動的な手順での連続的とは対照的に、脚体に不連続にかけられる。不連続な力は、ジャッキオペレータが、その経験および専門知識から判断して、基礎が十分に安定したと判断するまで繰り返しかけられる。基礎が安定しているかどうか、および予荷重の値の決定は、ジャッキオペレータの専門的な知識および人間の判断だけが頼りである。予荷重値の再現可能な決定はない。
【0006】
ジャッキオペレータは、予荷重付与操作、ならびに十分な予荷重が脚体にもたらされていることおよびプラットホームユニットの安定した基礎が得られていることの監視に責任を持つ。この予荷重付与ステップの後、船体を海面より上の所望の動作高さ、例えば海面の上おおよそ10m~15mの高さまでさらに上昇させることにより、船体に継続的に波が衝突することが実質的に回避される。船体をさらに上昇させる前または後に、脚体への荷重を実質的に均等または均一にすることができる。このようにして、海流および/または波作用とほぼ無関係に作業を行うことができる比較的安定したプラットホーム位置が確立されると考えられる。
【0007】
動作中、クレーンオペレータまたはカンチレバーオペレータなどのオペレータは、予め確立された手順、および、持ち上げ計画、カンチレバー計画またはデッキ荷重計画などの計画に頼り、動作中、予荷重値を超えないときはプラットホームユニットの安定性が脅かされることなく安全に作業を行うことができるものと確信する。
【0008】
特に、洋上風力タービン設置の場合、プラットホームが、設置された連続構造物(consecutive construction)において頻繁にジャッキアップおよびジャッキダウンされるとき、時間の制約があることがあり、オペレータは、適用された荷重が安定な値に落ち着いたか否を見極めるのに十分に長く待っていられないことがある。したがって、ジャッキアップ式プラットホームユニット上の洋上動作が依拠する安全性は、ジャッキオペレータの技術によって決まる。
【0009】
さらに、特に、風力タービン設置作業に使用されるジャッキアップ式プラットホームユニットにおいては、持ち上げおよび/または巻き上げ作業のためのクレーンは、ジャッキアップ式プラットホーム上、例えば脚体のうちの1本の周りに設けられる。最大クレーン能力は、クレーン特性によって規定され、クレーン操作マニュアルに定められている。クレーンオペレータは、必ずその規定範囲内でクレーンを操作する。したがって、クレーンオペレータは、ジャッキオペレータから与えられた予荷重値を利用する。ジャッキアップによっては、ジャッキシステムオペレータから受けた予荷重値を超えていなくても、オペレータがその操作によって脚体に過荷重をかけてしまうことがある。これは、プラットホームユニットの安全および安定性を脅かすおそれがある。それによって、例えば海底への脚体の制御不能な必要以上の沈下、または突き抜け、および/またはクレーンの倒壊、またはプラットホームユニットの損失にさえなるおそれがある。したがって、時々、クレーンオペレータがその操作において安全マージンを大きく残し過ぎ、他の操作における安全マージンが少なくなり過ぎることが起こり得る。これは、ジャッキアップ式プラットホームの動作中の安全上のリスクおよび/またはクレーン能力の未使用につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、洋上ジャッキアップ式プラットホームユニットにおけるより安全かつ信頼性の高い動作が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため、請求項1に記載の、ジャッキアップ式プラットホーム上に取り付けられたクレーンまたはカンチレバーのクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定する方法が提供される。
【0012】
方法は、ジャッキアップ式プラットホームユニットの少なくとも1本の脚体に予荷重をかけるステップと、所定時間間隔の間、脚体荷重値および/または脚体貫入値などの前記脚体の少なくとも1つの特性を監視するステップと、前記時間間隔の間、脚体特性および/または脚体特性の勾配を監視するステップと、前記時間間隔の間、脚体特性が安定しているかどうかを評価するステップと、前記時間間隔の間、脚体特性が所定閾値内にとどまり脚体特性の勾配が所定限界内にとどまるところの脚体特性が安定するまで、上記のステップを繰り返すステップとを含み、実際の達成予荷重の値が、こうして達成される安定した脚体特性に関連する脚体荷重値であり、方法はさらに、脚体ごとに、実際の達成予荷重値に基づいて脚体荷重容量(load capacity)を計算することによって実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定し、算出された脚体荷重容量をクレーンまたはカンチレバー動作量(operations capacity)に変換するステップを含む。
【0013】
有利には、クレーンまたはカンチレバー動作量を決定することは、例えばホイスト荷重付与(hoist loading)またはデッキ荷重付与、環境負荷、クレーンもしくはカンチレバーの到達距離などである、クレーンまたはカンチレバーの動き、クレーンまたはカンチレバー荷重付与に応じて行われる。すべてのこれらのパラメータは、算出された脚体荷重容量をクレーンまたはカンチレバー動作量に変換することによって、クレーンまたはカンチレバー動作量を決定するときに、一緒にまたは個別に考慮に入れられ得る。
【0014】
脚体荷重値は、脚体への荷重の値とみなすことができ、例えばジャッキシステムを介して監視され得る。当然、ジャッキシステムによって、油圧式、ラックアンドピニオン、または電気式のものは、直接的か間接的かのどちらかで、脚体荷重値を適用し監視する異なる手段を有する。脚体貫入は、脚体が海底に貫入された深さとみなすことができる。これは、脚体沈下または脚体変位とも称され得、例えば船体に対する脚体の変位を測定することによって、および船体と海底との間の距離を測定することなどによって、直接的または間接的に様々な方法で監視され得る。
【0015】
ジャッキアップユニット上に取り付けられたクレーン、またはデッキ上のカンチレバーは、典型的には、それらが船体の輪郭の外側に到達距離を有する動作状態を有し得る。特に、そのような動作状態は、不正確な予荷重データにより、実際の動作状態が理論的に決定された動作計画を超過しているとき、ジャッキアップユニットの安定性を脅かすことがある。したがって、動作エンベロープのより正確な決定は、クレーンまたはカンチレバー動作に関連し得る。
【0016】
好ましくはコンピュータプログラムによって実行可能なアルゴリズムを用いることによって、今度は、体系化された客観的な方法で脚体への実際の達成予荷重値を決定することによって、ジャッキオペレータの個人的な人の判断が、実際の達成予荷重値の決定に関係なくなされ得る。これは、より信頼性の高い予荷重値を与え、結果的にジャッキアップ式プラットホームユニットにおける動作がより安全になる。特に、実際のクレーン動作エンベロープの決定に実際の達成予荷重値を用いると、ジャッキアップ式プラットホームユニットにおいて正確で信頼性が高く安全なクレーン動作を行うことができる。したがって、ジャッキ動作は、クレーン動作に結び付けられて統合され得、その結果、今度は、クレーン動作についての実際のマージンが正確に決定され得るので、安全なクレーン動作になる。同様に、カンチレバー動作へのフィードバックも行われ得る。したがって、クレーンオペレータが実際の決定されたクレーン動作エンベロープ内でクレーンを操作する場合、脚体および/またはプラットホームの故障の危険を回避することができる。したがって、人間の判断に大きく依拠する開ループの従来の方法ではなく、本発明による理論的に決定された動作エンベロープでは、予荷重がより正確に決定されるだけでなく、さらにこの正確に規定された予荷重値が動作エンベロープに提供される。したがって、より正確な入力の閉ループ方法が得られ、その結果、動作エンベロープの信頼性がより高くなり、したがって動作がより安全になり、人間の判断が最小限になる。
【0017】
脚体は、海底に十分に沈下された場合、特に脚体特性が予荷重付与の間安定している場合、典型的には脚体特性の差および/または脚体特性の勾配がそれぞれの所定閾値よりも小さい場合、安定とみなされる。
【0018】
脚体特性は、脚体特性の差および/または脚体特性の勾配がそれぞれの所定閾値よりも大きい場合、不安定とみなされる。この場合、脚体は、海底にまだ安定的に沈下されていないとみなされる。
【0019】
方法によれば、少なくとも1本の脚体に予荷重が付与される。4本の脚付きジャッキアップ式プラットホームユニットの場合、典型的には、対角線上に対向する2本の脚体に予荷重が同時に付与され、他の2本の脚体は荷重をかけられていない。予荷重付与の間、好ましくは可能な限り大きな荷重が脚体にかけられる。例えば、20,000トンのジャッキアップ式プラットホームユニットの場合、2本の脚体に総重量がかかると、理論的には、10,000トンの予荷重になる。実際には、この理論的な最大値は、摩擦または他の損失、海底特性、環境負荷などにより決して達成されることがない。次いで、ジャッキオペレータは、可能な限り高い荷重を脚体にかけようと試みる。これは、ジャッキシステムがそうした高荷重を予荷重付与されるべき脚体にかける場合、能動的に行われ得る。または、これは、ジャッキシステムが予荷重されるべき脚体を保持する一方、他の脚体が解放され、プラットホームの重量が脚体にかかり、したがって予荷重付与に重力が使用される場合、受動的に行われ得る。どちらの方法を使用するかは、達成予荷重値に関係しない。脚体における実荷重は、ジャッキシステムを介して監視され得、ジャッキオペレータのオペレータインターフェース上でジャッキオペレータに提供され得るが、追加して、または代替として、制御ユニットに入力されてもよい。海底沈下、摩擦、水力学などにより、脚体における実荷重の経時的な減少が観察される。方法によれば、脚体における実荷重は、所定時間間隔の間、例えば30分間または40分間、監視される。所定時間間隔は、ジャッキアップ式プラットホームユニット設計者によって設定され得ることが好ましいが、プラットホームユニットオペレータによって設定されてもよい。この所定時間間隔の間、脚体における実荷重の値は、好ましくは制御ユニットによって監視される。前記脚体における荷重値が所定閾値を上回ったままであるかどうか、および、前記脚体における荷重値の勾配が所定限界よりも小さいかどうかが監視される。好ましくは、制御ユニットは、脚体における荷重値を自動的に監視するように構成される。最小閾値および最大勾配は、プラットホームユニット設計者による提供が有利であるが、ジャッキアップ式プラットホームユニットオペレータによって決定されてもよい。脚体荷重値の低下が所定閾値よりも大きいとき、または脚体荷重値の勾配が高過ぎるときは、予荷重付与を繰り返さなければならない。制御ユニットは、ジャッキオペレータに警告信号を与えることができ、それによってジャッキオペレータは、現時点の予荷重付与を止めることができ、同じ予荷重付与値または若干より高い予荷重付与値での少なくとも1本の脚体への予荷重付与をやり直さなければならない。警告信号、視覚、聴覚または触覚をもたらすことによって、オペレータは、予荷重ステップが失敗したこと、および予荷重ステップを同じ予荷重値またはより高い予荷重値のどちらかで繰り返す必要があることを知る。制御ユニットは、続く予荷重付与ステップの予荷重値の提案または指示を与えることができる。予荷重をかけるステップおよびその荷重値を監視するステップは、脚体が海底に安定して沈下されたと判断されるまで、すなわち、所定時間間隔の間の荷重値が監視される間、予荷重付与されている脚体の脚体荷重値の低下または減少が所定閾値よりも小さく、荷重値の勾配が最大所定勾配限界未満にとどまるときまで、行われるべきである。次いで、実際の達成予荷重値が、所定時間間隔の間の最小到達荷重値として決定される。制御ユニットがこの実際の達成予荷重値を決定することが好ましい。実際の達成予荷重値が決定されると、これが、ジャッキアップ式プラットホームユニット上の、例えば脚体のうちの1本の周りに取り付けられたクレーンのクレーン動作エンベロープの計算に使用され得る。クレーン設計者は、クレーン動作エンベロープが規定されるクレーン操作マニュアルも提供する。しかし、クレーン動作エンベロープは、クレーンを静止品として、すなわち静止的なクレーン動作エンベロープとして扱い、その基礎が比較的予測できない、または予測しがたい動的なプラットホームユニット上にクレーンが取り付けられることを全く考慮していない。今度は、実際の達成予荷重値をクレーン動作エンベロープに統合することによって、現場固有条件を考慮に入れた実際の正確かつ信頼性の高いクレーン動作エンベロープが得られる。例えば、予荷重付与後、脚体への荷重は均一化もしくは均等化される、または少なくともそれらは設置荷重値に対して確定され得る。実際の達成予荷重値と設置荷重値との差は、動作荷重マージンおよび安全マージンをもたらす。したがって、残りの動作荷重値は、理論的なクレーン動作エンベロープとの統合に使用され得る。ホイスト荷重、到達距離、旋回角度および/またはブーム角度次第で、特定クレーン動作が、理論的に決定されたクレーン動作エンベロープ内にあるが、ジャッキアップ式プラットホームユニットの動作荷重マージン外にあり、したがってその特定クレーン動作の実施は安全でないことがあり得る。したがって、実際のクレーン動作エンベロープは、実際の達成予荷重値ならびに実際のクレーン動作を考慮に入れて決定され得る。有利には、実際のクレーン動作エンベロープは、リアルタイムで決定され得、クレーンオペレータに、特定クレーン動作の実施が安全か否かのリアルタイムの実際の見通しが与えられる。好ましくは、この実際のクレーン動作エンベロープは、クレーンオペレータがその運転室で利用可能なクレーンオペレータディスプレイに出力される。次いで、クレーンオペレータは、そのクレーンの動作および動作限界をリアルタイムで追うことができる。これは、実際のカンチレバー動作エンベロープの決定についても同様に行われ、好ましくはカンチレバー動作エンベロープを、その運転室でカンチレバーオペレータが利用可能なカンチレバーオペレータディスプレイに出力することによって、実際のカンチレバー動作エンベロープをカンチレバーオペレータが利用できるようにする。したがって、実際のカンチレバー動作エンベロープは、実際の達成予荷重値が考慮に入っているという点で、理論的なカンチレバー動作エンベロープとは異なり得る。理論的なクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープは、典型的には、理論値および安全マージンを考慮に入れてクレーンまたはカンチレバーを設計するエンジニアによって提供される。
【0020】
本発明はさらに、ジャッキアップ式プラットホームユニット上のクレーンの実際のクレーン動作エンベロープを決定するためのシステムに関する。
【0021】
本発明の他の態様は、コンピュータプログラム製品、および/または、コンピュータプログラム製品を記憶する非一時的信号記憶媒体に関する。
【0022】
さらなる有利な実施形態は、従属請求項に示される。
【0023】
本発明は、例示的な実施形態の図を含む図面を参照してさらに説明される。対応する要素は、対応する参照符号で示される。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】受動的な予荷重付与を用いる、本発明の一態様による方法の流れ図である。
【
図3】能動的な予荷重付与を用いる、本発明の一態様による方法の流れ図である。
【
図4】本発明の一態様によるシステムの概略図である。
【
図5】クレーンがジャッキアップ式プラットホームユニットの脚体のうちの1つの周りに取り付けられている、ジャッキアップ式プラットホームユニットの概略図である。
【
図8a】動的なクレーン動作エンベロープの概略図である。
【
図8b】動的なクレーン動作エンベロープの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面は、例示的な実施形態として示され、限定と解釈されるべきではなく、また一定の縮尺ではないことに留意されたい。
【0026】
図1は、本発明による方法の一実施形態の流れ図である。方法100は、脚体における実際の達成予荷重値のより正確な決定をもたらすだけでなく、実際の、さらに時にはリアルタイムの、動的なクレーン動作エンベロープを決定するために、ジャッキシステムデータをクレーンシステムデータと統合する。方法100は、ステップ101で、脚体に予荷重をかけることによって、予荷重付与手順を開始する。いくつかのジャッキアップ式プラットホームユニットの場合、予荷重付与は、対角線上に対向する2本の脚体に同時に行われる。予荷重は、比較的高い荷重であり、いくつかの状態では、海底に脚体を沈下させるのに適用される、実際に可能な限りの高い荷重である。予荷重付与は、能動的、受動的、または能動的/受動的手順の組合せで行うことができる。ステップ102で、脚体特性値が、所定時間間隔tの間、監視される。脚体特性は、例えば脚体荷重または脚体貫入とすることができる。次いでステップ103で、時間間隔tの間、脚体の安定性、最終的には基礎の安定性を示す、脚体特性が安定したままか否かが監視される。脚体特性が安定と判定されたら、ステップ105で、予荷重値が確立され得る。予荷重値は、安定と判定された脚体特性値と関連する。各脚体について、これらのステップ101、102、103、105が、各脚体について、脚体特性値が安定と判定され関連の予荷重値が確立され得るまで繰り返される(ステップ106)。すべての脚体について、実際の達成予荷重値が決定されたら、ステップ107で、各脚体における実荷重が決定され得る。実荷重は、設置荷重とも称され、プラットホームがその動作高さまでジャッキアップされるときにだけ確立され得る。その動作高さまで船体を動かした後、次いで、一部のジャッキオペレータがプラットホーム荷重を脚体に概ね等しく分配するように試み、他のジャッキオペレータは荷重を現状のままにすることができる。どちらの方法が使用されるとしても、船体を動作高さまで動かした後、各脚体についての設置荷重値がステップ107で決定され得る。これは、各脚体における実際の設置の荷重である。したがって、この実際の設置荷重は、脚体ごとに異なり得る。流れ図には、ステップ106とステップ107との間の船体をその動作状態へと動かすステップが示されていない。
【0027】
この設置荷重値は、達成予荷重値よりも小さく、簡潔に言うと、脚体における達成予荷重値と設置荷重との差は、ステップ108で決定される、脚体の動作マージンを規定する。次いで、ステップ109で、脚体ごとの動作マージンがクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープの動作マージンにインプットされ得る。次いで、ステップ110で、実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープが、実際の達成予荷重値および実際の設置荷重値を用いて決定され、こうして正確かつ信頼性の高いクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを得ることができる。
【0028】
図2および
図3は、
図2では受動的な予荷重付与、
図3では能動的な予荷重付与を用いた場合の、
図1の方法を示す。能動的な予荷重付与と受動的な予荷重付与との間の任意の組合せも可能である。受動的な予荷重付与の
図2では、監視される脚体特性は脚体荷重値である。
図3では、監視される脚体特性は脚体貫入値である。方法はほぼ同様であるため、
図2および
図3を一緒に説明することにする。
【0029】
ステップ101で、どちらか一方では、予荷重は、力が不連続にかけられるという点で受動的にかけられ、その後、荷重値が所定時間間隔tの間、監視される(
図2のステップ102)。またはどちらか一方では、予荷重は、力が連続的にかけられてから一定値に保持されるという点で能動的にかけられる。次いで、ステップ102で、脚体貫入値が所定時間間隔tの間、監視される(
図3のステップ102)。
【0030】
図2のステップ102で、予荷重付与されている脚体の荷重値が、所定時間間隔の間、すなわち時間tの間、監視される。時間tは、20分、30分、場合により50分とすることができ、ジャッキシステムオペレータおよび/またはジャッキアップ式プラットホームユニット設計者によって設定され得る。時間tの間、脚体荷重値の低下(Δ脚体荷重値)が所定閾値よりも大きいかどうか(質問103)が監視され、減少する荷重値の勾配(Δ脚体荷重値/Δt)が所定勾配限界よりも高いかどうか(質問104)が監視される。脚体荷重値の低下は、時間tでの脚体荷重値と監視時間間隔の開始時の0での脚体荷重値との差である。同様に、
図3のステップ103で、脚体貫入値の増加(Δ脚体貫入値)が所定閾値よりも大きいかどうか、および、脚体貫入値の勾配(Δ脚体貫入値/Δt)が所定限界よりも大きいかどうかがチェックされる。脚体荷重値の低下が大き過ぎる、または脚体貫入値の増加が大き過ぎる場合、これは不安定状態を示す。または、脚体荷重値の勾配もしくは脚体貫入値の勾配が高過ぎる場合、これも不安定状態を示す。したがって、どちらの状態も、安定状態にまだ達しておらず、安定状態に達するまで予荷重付与ステップを繰り返さなければならない。質問103、質問104のどちらか一方に対する返答が「はい」の場合、予荷重付与は取り止めることができ、ステップ101から再度開始する必要がある。
【0031】
脚体特性が安定になるかどうかを監視することによって、脚体の予荷重値が特定の値に落ち着くときを検出することができる。特に、荷重値の減少または貫入値の増加である脚体特性値は、脚体沈下を示す。荷重値の減少または脚体貫入値の増加の勾配または傾きは、脚体沈下の速度を示す。脚体における荷重値が過度に急速に減少する、または脚体貫入値が過度に急速に増加する場合、これは、脚体が海底にまだ安定的に沈下されていないことを示す。予荷重がかけられるときの脚体における荷重値の減少または脚体貫入の増加は、例えば、泥が砂または岩とは異なる、摩擦、環境負荷など、海底特性によるものであることがある。質問103の質問104の両方に対する返答が「いいえ」の場合、脚体が海底に安定して沈下されており、実際の達成予荷重値がステップ105で決定され得る。前記脚体における実際の達成予荷重値は、時間tの間の最小達成荷重値であると考えられる。実際の達成脚体貫入値は、実際の達成予荷重に関連し、したがって実際の達成予荷重を間接的に示す。かけられる予荷重が予荷重値としてしばしば扱われる従来の予荷重付与とは対照的に、今度は、この方法を用いることによって実際の達成予荷重値が脚体ごとに確立され得る。予荷重付与および実際の達成予荷重値の決定は、実際の達成予荷重値がジャッキアップ式プラットホームユニットの各脚体について確立されるまで、各脚体または脚体の各対について行われるべきである。これはステップ106に示される。予荷重付与の終了後、次に、一部のクレーンオペレータは、脚体への荷重の均等化としても知られる、プラットホームユニットの脚体へのプラットホーム荷重の均一化を行うことができる。この方法の場合、これはもはや厳密には必要ではない。ある脚体に他の脚体よりも重い荷重が付与されたままになることも起こり得る。予荷重を付与し船体を海面より上のその動作高さまで動かした後、クレーンオペレータは、追加の荷重付与を対角線上に対向する2本の脚体に与えることによって、船体に追加のトルクをもたらすことができる。こうして、予荷重を付与しさらに船体をその動作高さまで動かした後、ステップ107で脚体の各々における実荷重が決定され得る。この実荷重は、いわゆる設置荷重値と称される。ここでも、ステップ106とステップ107との間における、船体をその動作高さまで動かすステップは図示されない。この設置荷重値は、達成予荷重値よりも小さく、簡潔に言うと、達成予荷重値と例えば設置脚体荷重値との差は、
図7に関連して説明するように、前記脚体の動作荷重マージンであり、ステップ108で決定される。この動作荷重マージンは、有利には安全率も考慮に入れて、予荷重付与後、船体を動作位置までジャッキで上げた後の設置脚体荷重値に基づいて決定され得る。この場合、動作荷重マージンは、静的な値である。代替として、動作荷重マージンは、ジャッキシステムまたは脚体にある任意の他の測定ユニットによって測定されるような、実際の測定脚体荷重値に基づいて決定されてもよい。この場合、動作荷重マージンは、プラットホームユニットにおける動作の間に変化する動的な値である。次いで、この動作荷重マージンはクレーン動作エンベロープまたはカンチレバー動作エンベロープに統合され得、それによって単一脚体が追加的に受けることができる荷重を考慮に入れた、統合されたクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープになる。これは、ステップ109で行われる。特定のホイスト荷重、到達距離、旋回角度および/またはブーム角度を伴った特定のクレーン動作が単一の脚体にそうした高い荷重を課すことがあり、脚体荷重が実際の達成予荷重値よりも高くなることがあり、したがって動作荷重マージンすべてが、そのクレーン動作に使用されることがあり得る。この場合、そうしたクレーンは、たとえ特定のクレーン動作自体が静的なクレーン動作エンベロープ内にあっても、もはや安全に動作できない。静的なクレーン動作エンベロープは、クレーン設計者によって与えられる動作状態または動作範囲であり、通常、クレーンが動的な基礎、すなわちジャッキアップ式プラットホームユニットに取り付けられることは考慮されていない。同様の状態は、カンチレバー延長部が大きい、および/またはカンチレバーに重い荷重が付与されるカンチレバー動作でもあり得る。ジャッキアップ式プラットホームユニットは、たとえ海底に安定的に沈下されてもやはり、プラットホームユニット上で行われる動作、または風および/もしくは波浪荷重、または海底特性などから、陸上の静止的な基礎とは対照的に、動的な基礎と考えるべきである。したがって、ステップ110で、ホイスト荷重、到達距離、旋回角度および/またはブーム角度を用いて、特定のクレーン動作についての実際のクレーン動作エンベロープが決定され得る。これは、クレーンオペレータがそのクレーンを用いて行うことができることについて、クレーンオペレータにさらにより信頼性の高いビューを与える。さらに、好ましくは実際のクレーン動作エンベロープはリアルタイムに適合され、したがってクレーンが旋回すると、例えばエンベロープが順応しそれがクレーンオペレータに与えられ、それによってクレーンオペレータはクレーンオペレータの操作が依然として安全であるかどうかを瞬時に評価することができる。これは、クレーンオペレータにとって、操作中に動作の安全性を監視し評価することができるので、大きな利点である。従来技術の動作では、クレーンオペレータは、実際の達成予荷重値が統合された統合クレーン動作エンベロープを持たない。従来の動作では、クレーンオペレータは、実際の達成予荷重値ではなく多くの場合かけられた予荷重値である、予荷重値を有することができたが、実際の脚体荷重の情報は全く持たない。同様に、ステップ110で、実際のプラットホーム状態、環境状態、カンチレバー到達距離および/またはカンチレバー荷重付与を考慮した、できる限りリアルタイムの、実際のカンチレバー動作エンベロープが決定され得る。これは、カンチレバーオペレータにも利点をもたらす。
【0032】
図4は、本発明によるシステム200を概略的に示し、システム200は、制御ユニット203と通信するジャッキシステム201およびクレーンシステム202を備える。ジャッキシステム201は、関連の脚体をジャッキアップ式プラットホームユニットの船体に対してジャッキアップおよびジャッキダウンするように配置され、その脚体をある位置で保持するように配置される。ジャッキシステム201は、ジャッキオペレータユーザインターフェース204を介してジャッキシステム201に入力を与えるジャッキオペレータによって操作される。ジャッキシステム201は、ジャッキオペレータユーザインターフェース204から入力データを受信するが、例えば測定荷重データであるデータをジャッキオペレータユーザインターフェース204に提供することもできる。ジャッキオペレータユーザインターフェース204は、オペレータがそれを通して、例えば設定されるべき荷重である入力をジャッキシステムに与えるディスプレイおよび/または操作盤とすることができる。ジャッキシステム201からの、例えば測定荷重、脚体の位置などのデータは、ジャッキオペレータユーザインターフェース204のディスプレイ上でジャッキオペレータに示され得る。ジャッキシステム201は、脚体における荷重を測定するように配置され得る。代替として、脚体における実荷重を決定するために脚体に別個の荷重測定ユニットを設けてもよい。
【0033】
クレーンシステム202は、制御ユニット203と通信し、クレーン運転室からクレーンオペレータによって操作される。クレーンオペレータは、自由に使えるクレーンオペレータユーザインターフェース205を有し、それを通してクレーン動作を操縦することができる。クレーンシステム202は、クレーンオペレータユーザインターフェース205から入力データを受信するが、クレーンデータをクレーンオペレータユーザインターフェース205に提供することもできる。クレーンオペレータインターフェース205は、例えばホイスト荷重、到達距離、旋回角度またはブーム角度であるクレーン動作データが表示される1つまたは複数のディスプレイを備えることができる。クレーンオペレータインターフェース205は、命令をクレーンシステム202にもたらすための、例えば1つまたは複数のジョイスティックを備えるオペレータパネルをさらに備えることができる。
【0034】
本発明によれば、制御ユニット203は、ジャッキシステム201、ジャッキオペレータユーザインターフェース204、クレーンシステム202およびクレーンオペレータユーザインターフェース205と通信する。制御ユニット203は、ジャッキシステム201から、特に、測定脚体荷重データであるデータを受信する。測定脚体荷重データは、制御ユニット203、特に、脚体における実際の達成予荷重値を決定するように構成された第1の副制御ユニット206に入力される。実際の達成予荷重値は、決定後にジャッキオペレータユーザインターフェース204にフィードバックされ得る。さらに、本発明によれば、実際の達成予荷重値は、第2の副制御ユニット207に入力される。第2の副制御ユニット207は、実際の、すなわち動的なクレーン動作エンベロープを決定するように構成される。実際のクレーン動作エンベロープは、クレーン動作エンベロープを決定するために実際の達成予荷重値を考慮に入れる。実際のホイスト荷重および/または到達距離および/または旋回角度および/またはブーム角度を用いる、および実際のクレーンデータを用いることによって、実際のクレーン動作エンベロープを得ることができる。有利には、クレーン動作エンベロープは、リアルタイムで計算され得、クレーンオペレータに、クレーンオペレータのクレーン操作に基づき得るリアルタイムのエンベロープが与えられる。より有利には、実際のクレーン動作エンベロープは、実際の測定脚体荷重を用いて計算され、したがって、第2の副制御ユニット207も、実際の測定脚体荷重を受信するためにジャッキシステム201と通信することができる。こうして決定されたクレーン動作エンベロープは、クレーンオペレータ、特に、クレーンオペレータユーザインターフェース205にフィードバックされ得、それによって実際のクレーン動作エンベロープがクレーンオペレータに対して表示され得る。
【0035】
図5は、船体301および4本の脚体302を有するジャッキアップ式プラットホームユニット300を概略的に示す。脚体302は、船体301に対して調整可能である。この図面には動作状態のジャッキアップ式プラットホーム300が示されており、船体301は、海面よりも上の動作高さにある。4本の脚体302は、海底に沈下されている。各脚体302は、脚体を上下に動かすジャッキシステム201を備える。ジャッキシステム201は、ジャッキオペレータによって、ジャッキオペレータインターフェースを有するジャッキ運転室から操作される。脚体のうちの1つの周りには、例えば風力タービン設置作業である、洋上での重量物持ち上げ作業のために配置されるクレーン303が配置される。クレーン303は、クレーンオペレータユーザインターフェースを有するクレーン運転室にいるクレーンオペレータによって操作される。上記で説明したように、ジャッキシステム201およびクレーンシステム202は、実際の達成予荷重値を用いて実際のクレーン動作エンベロープを決定するために制御ユニット203と通信する。
【0036】
図6は、予荷重付与ステップの間の測定脚体荷重データを概略的に示す。ここでは、4本の脚付きプラットホームユニットの予荷重付与ステップが示される。4本の脚体が地上にある状態(位置401)から、対角線上に対向する2本の脚体に高荷重(適用予荷重値410)が与えられ、(線402および403)、脚体の他の対はほぼ荷重をかけられていない。例えば30分の所定時間間隔の間、線402、403によって示される脚体の測定荷重値の減少が監視される。測定荷重値の減少が所定荷重閾値Ltを上回ったままかどうかが監視される。さらに、脚体荷重値線402、403の傾きまたは勾配gが、予め設定された限界glよりも小さいかどうかが監視される。ここで、この実施形態では、線402、403で示される脚体の脚体荷重値が両方の要件を満たし、2本の脚体が海底に対して安定的に沈下されたといえる。次いで、実際の達成予荷重値が、それぞれ荷重値412、413である線402、403の最小値として決定される。次いで、次の予荷重付与ステップで、他の2本の脚体について、それらの脚体に対して予荷重値420をかけることによって予荷重付与が繰り返される。測定予荷重は、線404、405によって示されるようにゆっくりと減少する。ただし、脚体荷重値の低下が所定閾値よりも小さく、勾配が勾配限界よりも小さいとき、最小達成値が実際の達成予荷重値414、415として決定される。
【0037】
決定された実際の達成予荷重値を用いて、脚体ごとの動作マージンが決定され得る。これは、
図7に4本の脚付きプラットホームユニットの4本の脚体302-1、302-2、302-3、302-4について示されている。実際の達成予荷重値412、414、413、415は、脚体当たりの最上線である。実際の達成予荷重値には安全率が適用され、それを計算に入れた予荷重値412f、413f、414f、415fになる。予荷重付与後、船体をその動作高さまで上げると、プラットホームの総重量は4本の脚体に分配され、脚体ごとの設置荷重値512、513、514、515になる。安全率が計算に入れられた予荷重値と設置脚体荷重との差、すなわちこの図での間隙は、プラットホームユニット上でのクレーン動作などの動作に使用することができる動作マージンである。このような線図は、制御ユニットによって計算され得、ジャッキオペレータ、特に、そのジャッキオペレータユーザインターフェースにフィードバックされ得るので、ジャッキオペレータは脚体動作マージンについての信頼できる情報を有する。
【0038】
図8は、
図8aにおいて、水平軸に到達距離がプロットされ、垂直軸に主ホイスト荷重がプロットされた、クレーン動作エンベロープを示す。この線図では、最大クレーン定格荷重は、線601でプロットされている。これは、クレーンが静的な基礎上にあるかのようであり、したがってプラットホームユニット上のクレーンの動的な基礎を考慮に入れていないクレーンの最大定格荷重を与える。さらに線図には、基礎定格荷重が線602としてプロットされている。これは実際、実際の達成予荷重値を用いて識別される動作マージンである。この例では、基礎定格線602の一部は、クレーン定格線601を下回り、したがって実際の安全なクレーン動作エンベロープは減少することが分かる。したがって、クレーンの最大定格荷重は、基礎定格荷重の部分602aおよびクレーン定格荷重の部分601aによって決定される。クレーンの実際の使用荷重は、点603によって表される。動作中、実際のクレーン使用荷重の点603は線図内を動く。有利には、線602は、実際のクレーンデータならびに実際の測定脚体荷重を用いてリアルタイムに算出される。したがって、点603が動くと、線602もシフトすることができる。
図8bは、脚体302および1本の脚体の周りのクレーン303を含むジャッキアップ式プラットホームユニット300の輪郭を含む、クレーン動作エンベロープの一代替表示である。クレーン動作エンベロープは、ここでは、ホイスト荷重の最小到達距離を示す内側境界線605、および外側境界線606によって示される。外側境界線606は、実際の達成予荷重値および動作脚体荷重マージンを考慮に入れた、ホイスト荷重の最大到達距離を与える。この例では、外側境界線606の一部(部分606a)が切り取られていることが分かる。これは、最大クレーン定格荷重を制限する、
図8aの部分602aに相当する。クレーンオペレータは、外側境界線を越えたホイスト荷重の動きが、基礎にとって、およびプラットホームユニットにとって、安全ではないことをこうして知る。さらに、これらの境界は、リアルタイムに算出され、クレーンオペレータに対してクレーンオペレータインターフェースにリアルタイムに提供される。こうして、実際の達成予荷重値、実際の測定脚体荷重およびクレーン動作エンベロープを組み合わせ、統合することによって、動的かつ好ましくはリアルタイムのクレーン動作エンベロープが得られ、それによってより安全でより安定したクレーン動作が可能になる。
【0039】
図4~
図8では、クレーンの例が示されるが、すべてがカンチレバーおよびカンチレバー動作に等しく適用可能であり、クレーンと記載のある場所をカンチレバーと読めばよい。さらに
図4~
図8では、方法は、受動的な予荷重付与を用いて説明されるが、
図3に関して説明したように、方法は能動的な予荷重付与またはそれらのあらゆる組合せにも等しく適用可能である。方法は、予荷重付与の間に脚体荷重特性を監視することによって、実際の達成予荷重値を決定するために提供される。方法は、代わりに実際の達成予荷重値を考慮に入れて、実際のクレーンまたはカンチレバー動作エンベロープを決定することをさらに含む。方法は、環境負荷またはクレーンもしくはカンチレバーの動きなどの他のデータを考慮に入れることをさらに含む。
【0040】
明瞭化および簡潔な説明のために、特徴は、同じまたは別個の実施形態の一部として本明細書に記載されるが、本発明の範囲は、記載された特徴のすべてまたはそのうちの一部の組合せを有する実施形態を含み得ることが理解されるであろう。この一節を鑑みて、当業者には、出願の請求項の変形は、出願の本願に記載の他の特徴、特に従属請求項に記載の特徴と組み合わせることができることが明らかである。示されている実施形態は、それらが異なるものとして説明されている場合を除いて、同一または同様の構成要素を有することが理解され得る。
【0041】
特許請求の範囲において、括弧内のいかなる参照符号も、請求項を限定するものとは解釈されないものとする。「備える」という言葉は、請求項に列挙されたもの以外の機能またはステップの存在を排除するものではない。さらに、単語「a」および「an」は、「1つだけ」に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ「少なくとも1つ」を意味するために用いられ、複数を排除しない。特定の手段が相互に異なる請求項で引用されているとしても、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを意味するものではない。多くの変形が、当業者にとって明らかであろう。すべての変形が、以下の特許請求の範囲において定義されている本発明の範囲内に含まれると理解される。
【符号の説明】
【0042】
100 方法
200 システム
201 ジャッキシステム
202 クレーンシステム
203 制御ユニット
204 ジャッキオペレータユーザインターフェース
205 クレーンオペレータユーザインターフェース
206 第1の副制御ユニット
207 第2の副制御ユニット
300 ジャッキアップ式プラットホームユニット
301 船体
302、302-1、302-2、302-3、302-4 脚体
303 クレーン
【国際調査報告】