(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】忌避剤の組成及び使用
(51)【国際特許分類】
A01N 37/02 20060101AFI20221109BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20221109BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20221109BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20221109BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P17/00
A01N25/02
A01M29/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516305
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2020075386
(87)【国際公開番号】W WO2021048305
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510148500
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ブルゴーニュ
(71)【出願人】
【識別番号】505129079
【氏名又は名称】アンスティテュ・ナシオナル・ドゥ・ルシェルシュ・プール・ラグリキュルテュール,ラリマンタシオン・エ・ランヴィロンヌマン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE RECHERCHE POUR L’AGRICULTURE,L’ALIMENTATION ET L’ENVIRONNEMENT
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルテロ-グロージャン,マルタン
(72)【発明者】
【氏名】グロージャン,ヤエル
(72)【発明者】
【氏名】マニエール,ジェラール
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CC02
2B121CC21
4H011AC06
4H011BA01
4H011BB06
4H011BC01
4H011DA13
4H011DA21
(57)【要約】
本発明は、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される、有利には揮発性及び臭気性の少なくとも1つの脂肪酸の使用に、ならびに忌避活性成分として、及び/又は有利には嗅覚によりハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される、有利には揮発性及び臭気性、ならびに非殺虫性の少なくとも1つの脂肪酸を含む、特に植物衛生の組成物の使用に関する。本発明は、農業、獣医、及び植物衛生の分野において使用することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
忌避有効成分としての、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するための、プロピオン酸及び酪酸を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸の使用。
【請求項2】
前記ハエ亜目が、ヒツジバエ科、シラミバエ科、クモバエ科、ハナアブ科、ヤドリバエ科、ノミバエ科、サーミトキセナ(thermitoxena)科、ミバエ科の昆虫を含む群より選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ハエ亜目が、ショウジョウバエ属、ツェツェバエ属、クロバエ属、アウクメロミイア(auchmeromyia)属、キンバエ属、ニクバエ属、サシバエ属の昆虫を含む群より選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ハエ亜目が、オウトウショウジョウバエ、オリーブミバエ、好ましくはオウトウショウジョウバエを含む群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記プロピオン酸が0.1~30容積%(v/v)の濃度である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記酪酸が0.1~2容積%(v/v)の濃度である、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記プロピオン酸及び/又は前記酪酸が、許容可能な担体をさらに含む組成物中にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記の許容可能な担体がパラフィン油である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
請求項1~6において定義される前記脂肪酸又は請求項6もしくは7において定義される前記組成物が、散布器、スプレー、噴霧器、又は含浸担体を用いて適用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
請求項1~6において定義される前記脂肪酸又は請求項7もしくは8において定義される前記組成物がケース中に存在しており、前記ケースが使用説明書を含む担体をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
請求項1~6において定義される前記脂肪酸又は請求項7もしくは8において定義される前記組成物の、表面上への適用を含む、少なくとも1つの生物的及び/又は非生物的表面をハエ亜目から保護するための方法であって、前記非生物的表面が、野菜及び/又は植物の全部又は一部の表面である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸の使用に関する。
【0002】
本発明はまた、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸及び酪酸を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸、特に揮発性の脂肪酸の使用に関する。
【0003】
本発明はまた、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するための、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸を含む、特に植物衛生の組成物の使用に関する。
【0004】
本発明はまた、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するための、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される、少なくとも1つの脂肪酸、特に揮発性脂肪酸を含む、特に植物衛生の組成物の使用に関する。
【0005】
本発明は、特に農業、獣医、及び植物衛生の分野において使用することができる。
【背景技術】
【0006】
農業の分野において、多数の昆虫が害虫と考えられる。これらは特に、作物の損傷及び/又は腐敗を起こす、及び/又はその源となる昆虫である。
【0007】
全ての農作物、例えば穀物、果物、又は野菜作物などは、害虫により影響されうる。一般的な様式において、害虫は1つの種類の作物及び/又は植物に特有であり、作物及び/又は植物に異なって影響しうる。言い換えれば、害虫が1つの作物/植物に特有であり、作物/植物に対する影響が特有である場合がしばしばある。
【0008】
例えば、害虫は、例えば、それを食べることにより植物の果実に対する影響を有しうる、及び/又は病原体、例えばウイルス、真菌などを運ぶことにより植物の「健康」に影響しうる。それによって、植物/作物の成長及び/又は果実/花産生などが損なわれうる。
【0009】
植物/作物の全ての部分が、害虫により影響されうる。例えば、害虫は、それらの発生の全ての段階で、葉、茎、芽、樹皮、木、根、花、果実、種子を損ないうる。さらに、害虫はまた、収穫物から得られる産物/果物及び/又は任意の他の要素に影響しうる。
【0010】
従って、先行技術において、害虫による植物/作物の攻撃及び/又は腐敗を保護及び/又は防止する真の必要性がある。しかし、生態系及び生物多様性を危険にさらすことなく、害虫による収穫物の攻撃及び/又は腐敗を保護及び/又は防止する真の必要性もある。制御されない様式において昆虫種を破壊する殺虫剤への代替品を見出す緊急の必要性もある。
【0011】
害虫に対して植物/作物を保護するために、方法及び/又は産物が公知であり、使用されている。例えば、ある年から次の年への交代、及び/又は栽培植物の農業区画、及び/又は特定の植物の選択を、害虫の影響を低下させるために使用する。しかし、保護及び/又は影響は限定される。さらに、耐性植物を選択することによって、在来植物の遺伝的貧困化、及び/又は生物多様性における低下に導かれうる。
【0012】
機械的方法も使用される。化学的方法も使用され、特に忌避剤組成物などの合成的及び/又は化学的農薬ならびに殺虫剤の使用である。しかし、これらの方法は「非選択的な」影響を有し、全ての昆虫を無差別に標的化し、このように、補助的な及び/又は必須の昆虫、例えばミツバチ及び/又はマルハナバチなどに対する有害な影響を有しうる。さらに、化学的方法は現在議論の余地がある。特に、なぜなら、それらは、ヒト及び/又は動物の健康に影響し、ならびに/あるいは土壌汚染、水路汚染などの原因となりうるためである。さらに、使用される殺虫剤は植物により吸収されうる。このように、産生された植物及び/又は作物は、動物及び/又はヒトでの消費と不適合である、これらの組成物の濃度を有しうる。
【0013】
従って、先行技術のこれらの失敗、不利、及び障害を克服する新規の手段及び/又は新規の組成物、特に、生態系、生物多様性、ならびに/あるいはヒトの健康及び/又は動物の健康を保ちながら及び/又は保存しながら、害虫から植物及び/又は作物を保存することを可能にする方法及び/又は組成物を見出す真の必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】International Nomenclature of Cosmetic Ingredients(INCI)辞書,Personal Care Products Council(PCPC)
【非特許文献2】Remington Pharmaceutical Sciences,sixteenth edition,E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980
【非特許文献3】Grosjean,Y.,Grillet,M.,Augustin,H.,Ferveur,J.F.and Featherstone,D.E.A glial amino-acid transporter Controls synapse strength and courtship in Drosophila.Nature Neuroscience 2008.Volume 11,pages 54-61.DOI:10.1038/nn2019
【非特許文献4】Grosjean Y,Rytz R,Farine JP,Abuin L,Cortot J,Jefferis GS,Benton R.An olfactory receptor for food-derived odours promotes male courtship in Drosophila.Nature 2011.Volume 478(7368),pages 236-240.DOI:10.1038/nature10428.
【非特許文献5】Greenspan & Ferveur.Courtship in Drosophila.Annu.Rev.Genet.2000.Volume 34,pages 205-232.DOI:10.1146/annurev.genet.34.1.205
【非特許文献6】Revadi S,Lebreton S,Witzgall P,Anfora G,Dekker T and Becher PG.Sexual Behavior of Drosophila suzukii.Insects 2015.Volume 6(1),pages 183-196(2015).DOI:10.3390/insects6010183.
【非特許文献7】Benelli G.Male Wing Vibration in the Mating Behavior of the Olive Fruit Fly Bactrocera olea (Rossi)(Diptera: Tephritidae).J.Insect behav.2012 Volume 25,pages 590-603.DOI:10.1007/s10905-012-9325-9
【発明の概要】
【0015】
具体的には、本発明は、忌避活性成分としての使用のために、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸を提供することにより、これらの必要性を満たし、これらの欠点を克服することを目的とする。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、非殺虫性組成物、即ち、本発明に従った揮発性脂肪酸が、ハエ亜目に関して有利に忌避効果を有することを示した。
【0017】
実際に、本発明者らは、驚くべきことに、予想外に、本発明、特に本発明に従った揮発性脂肪酸の使用が、ハエ亜目に関して、有利には、嗅覚認識により、特に成体の嗅覚認識により忌避効果を有することを示した。
【0018】
本発明者らはまた、驚くべきことに、予想外に、本発明、特に本発明に従った揮発性脂肪酸の使用が、特にその繁殖に関連付けられるハエ亜目の行動に対して効果を有することを示した。
【0019】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、予想外に、本発明に従った使用、特に本発明に従った脂肪酸の使用が、特に前記分子の嗅覚認識により、害虫の行動に対して効果を有することを最初に実証した。
【0020】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、予想外に、本発明に従った使用、特に本発明に従った特に揮発性脂肪酸の使用が、害虫の致死率に影響することなく、特に前記分子の嗅覚認識により、害虫、好ましくは成虫害虫の行動に対して効果を有することを最初に実証した。言い換えれば、本発明者らは、本発明が害虫に対して殺虫効果を有さないことを示した。
【0021】
特に、本発明者らは、驚くべきことに、本発明に従った脂肪酸の使用が忌避効果を有し、昆虫の求愛を低下させる又はさらには排除することを可能にし、昆虫の麻酔をもたらしうることを示した。
【0022】
本発明者らは、本発明に従った使用、特に本発明に従った特に揮発性脂肪酸の使用が、ハエ亜目の可逆的な麻酔をもたらし、有利には、公知の殺虫剤とは対照的に、ハエ亜目に関して無毒であることを可能にしうることを有利に示した。言い換えれば、本発明者らは、本発明が、成体のハエ亜目において任意の毒性をもたらさない、一時的な麻酔に相当する可逆的な麻酔を有利にもたらしうることを示した。
【0023】
本発明者らはまた、驚くべきことに、本発明が、例えば、求愛を低下させることにより、害虫の増殖を低下させる及び/又は防止することを有利に可能にすることを示した。
【0024】
本発明者らはまた、本発明が、保護される作物の外側の生態系におけるその役割に影響することなく、害虫の伝播を低下させる及び/又は防止することを有利に可能にすることを示した。
【0025】
本発明者らはまた、驚くべきことに、本発明が、害虫の繁殖及び/又は交尾を低下させる及び/又は防止することを有利に可能にすることを示した。
【0026】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、本発明が嗅覚認識により害虫に対して効果を
有し、害虫による、魅力的な嗅覚シグナルの検出を低下させる及び/又は抑制することを有利に可能にすることを示したが、それは、例えば、昆虫の交配に先立つ求愛を起こし、及び/又は刺激することが可能である。言い換えれば、本発明者らは、驚くべきことに、本発明が、害虫による、例えば、雄と雌の間の魅力的な嗅覚シグナルの検出を変えることを有利に可能にすることを示した。
【0027】
特に、本発明者らは、驚くべきことに、本発明が、嗅覚認識により、害虫の求愛及び交尾、例えば、植物及び/又は作物(例えば、子孫がこれらの昆虫を殺すことなく食べて、このように、外部の生態系、特に保護されるべき植物及び/又は作物についてのそれらの重要性を保護する)の上に選択的に卵を産む前の行動を有利に低下させる及び/又は阻害することを可能にすることを示した。
【0028】
さらに、本発明は、環境について無毒であり、生態系に優しく、ヒト及び動物の健康について公知の有害な影響を伴わない化合物及び/又は分子である脂肪酸及び/又はその誘導体を使用する。
【0029】
本発明は、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸の使用に関する。
【0030】
本発明はまた、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸及び酪酸を含む群より選択される少なくとも1つの有利に揮発性の脂肪酸の使用に関する。
【0031】
本発明はまた、忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも2つの脂肪酸の使用に関する。
【0032】
本発明はまた、有利に揮発性の忌避活性成分として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するためのプロピオン酸及び酪酸の使用に関する。
【0033】
本文書において、用語「誘導体」は、1つ又は複数の化学反応により親化合物より産生される化合物又は分子を意味する。
【0034】
本発明において、用語「塩」は、毒性、刺激、アレルギー反応、又は医学的使用のために不適切である他の有害な影響を伴わない、ヒト又は獣医医薬的な使用のために適しており、利益及びリスクの合理的なバランスを有する塩を意味する。
【0035】
本発明において、用語「塩」はまた、毒性、刺激、アレルギー反応、又は、例えば、農業における使用について不適切である他の有害な影響を伴わない、植物衛生使用のために適している塩を意味する。
【0036】
本文書において、用語「忌避剤」は、植物及び/又は野菜及び/又は果実、ならびに/あるいは植物及び/又は野菜及び/又は哺乳動物の全部又は一部からハエ亜目を遠ざける及び/又は押しのけることを意味する。用語「忌避剤」はまた、植物及び/又は野菜及び/又は果実、ならびに/あるいは植物及び/又は野菜及び/又は哺乳動物の全部又は一部へのハエ亜目の誘引を阻害することを意味する。用語「忌避剤」はまた、1つ又は複数の揮発性臭気分子が存在する環境及び/又は空間についてのハエ亜目の関心の欠如を意味する。
【0037】
本文書において、用語「繁殖の制御」は、特に、求愛の阻害及び/又は求愛の低下、ならびに/あるいは群れにおける飛行の阻害及び/又は雄による雌への獲物の提供の阻害、ならびに/あるいは雄による繭の作製の阻害による、ハエ亜目の繁殖の阻害及び/又は安定化を意味する。言い換えれば、「繁殖の制御」は、ハエ亜目が卵を産む前での、好ましくは選択的に、特に、例えば、子孫、例えば、幼虫が好ましくは食べる植物及び/又は野菜の上に卵を産む前での、好ましくは成体の行動であるハエ亜目の求愛及び/又は交尾の低下及び/又は阻害を意味する。
【0038】
本文書において、ハエ亜目は、イエバエ科、ヒツジバエ科、シラミバエ科、クモバエ科、ハナアブ科、ヤドリバエ科、ノミバエ科、サーミトキセナ(thermitoxena)科に属する昆虫を意味する。好ましくは、ハエ亜目は、ヒツジバエ科、シラミバエ科、クモバエ科、ハナアブ科、ヤドリバエ科、ノミバエ科、サーミトキセナ(thermitoxena)科に属する昆虫を意味する。例えば、これらは、イエバエ属、ショウジョウバエ属、ツェツェバエ属、クロバエ属、アウクメロミイア(Auchmeromyia)属、キンバエ属、ニクバエ属、サシバエ属の昆虫を含む群より選択される昆虫でありうる;好ましくは、これらは、ショウジョウバエ属、ツェツェバエ属、クロバエ属、アウクメロミイア(Auchmeromyia)属、キンバエ属、ニクバエ属、サシバエ属の昆虫を含む群より選択される昆虫でありうる。これらは、例えば、オウトウショウジョウバエ、キイロショウジョウバエ、好ましくはオウトウショウジョウバエを含む群より選択されるショウジョウバエ属に属する昆虫でありうる。
【0039】
本文書において、昆虫がイエバエ属である場合、それらは、ムスカ・ドメスティカを除く、イエバエ属の任意の昆虫でありうる。
【0040】
本文書において、ハエ亜目はまた、ミバエとも呼ばれる、ミバエ科に属する昆虫を含む。これらは、例えば、ミバエ種属の昆虫を含む群より選択される昆虫でありうる。これらは、例えば、オリーブミバエを含む群より選択される昆虫でありうる。
【0041】
本文書において、ハエ亜目は、ヒツジバエ科、シラミバエ科、クモバエ科、ハナアブ科、ヤドリバエ科、ノミバエ科、サーミトキセナ(thermitoxena)科、及び/又はミバエ科に属する昆虫より選択することができる。
【0042】
本文書において、ハエ亜目は、オウトウショウジョウバエ及びオリーブミバエを含む群より選択することができる。
【0043】
本文書において、「プロピオン酸」は、プロパン酸とも呼ばれ、以下の通り、実験式C3H6O2及び/又は半構造式(I)の揮発性C3脂肪酸を意味する:
【0044】
【0045】
有利には、プロピオン酸は揮発性脂肪酸である。
【0046】
有利には、本発明に従って、プロピオン酸は臭気がある。
【0047】
本文書において、臭気化合物は、臭気を発する化合物を意味する。
【0048】
本文書において、プロピオン酸の誘導体は、当業者に公知の任意の誘導体及び/又は塩を意味する。これは、例えば、プロピオン酸エステル、プロピオン酸アミン、及び/又はそれらの混合物を含む群より選択される誘導体でありうる。
【0049】
本発明に従って、プロピオン酸エステルは、当業者に公知の任意のプロピオン酸エステルでありうる。これは、例えば、式CH3-CH2-COOR1(III)のエステルでありうるが、式中、R1は、C1からC6アルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、R11が陰イオンであり、R12が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを含むアルカリ金属の群より選択される陽イオンであるR11R12基でありうる。例えば、プロピオン酸エステルは、プロピオン酸エチル、プロパン酸プロピル、プロパン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、プロパン酸イソブチル、及び/又はプロパン酸イソプロピルを含む群より選択されうる。プロピオン酸エステルは、好ましくはプロピオン酸エチルである。
【0050】
本発明に従って、プロピオン酸アミンは、当業者に公知の任意のプロピオン酸アミンでありうる。例えば、プロピオン酸は、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミンを含む群より選択されうる。
【0051】
有利には、エステルがプロピオン酸の誘導体、好ましくはプロピオン酸エチル又は酪酸エチルである場合、それは、酸よりもヒトに心地良い香りを示す。
【0052】
本発明に従って、プロピオン酸及び/又はその誘導体は、0.1から30容積%(v/v)の間の濃度でありうる。本発明に従って、プロピオン酸及び/又はその誘導体の濃度は、ハエ亜目に依存して調整してもよい。例えば、プロピオン酸及び/又はその誘導体は、0.5容積%から1容積%、1容積%から2容積%、又は2容積%から30容積%(v/v)の間の濃度でありうる。本発明に従って、プロパン酸の濃度は、0.5容積%、1
容積%、2容積%、4容積%、5容積%(v/v)に等しくてもよい。本発明に従って、プロピオン酸誘導体の濃度は、2容積%から30容積%(v/v)の間でありうる。例えば、プロピオン酸エチルの濃度は10容積%(v/v)でありうる。
【0053】
本文書において、「酪酸」は、ブタン酸とも呼ばれ、以下の通り、実験式C4H8O2及び/又は半構造式(II)の揮発性C4脂肪酸を意味する:
【0054】
【0055】
有利には、酪酸は揮発性脂肪酸である。
【0056】
有利には、本発明に従って、酪酸は臭気がある。
【0057】
本文書において、酪酸の誘導体は、当業者に公知の任意の誘導体及び/又は塩を意味する。これは、例えば、酪酸エステル及び/又はその塩を含む群より選択される誘導体でありうる。
【0058】
本発明に従って、酪酸エステルは、当業者に公知の任意の酪酸エステルでありうる。これは、例えば、式CH3-(CH2)2-COOR2(III)のエステルでありうるが、式中、R2は、C1からC6アルキル、例えば、メチル、エチル、ブチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、R11が陰イオンであり、R12が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを含むアルカリ金属の群より選択される陽イオンであるR11R12基でありうる。例えば、酪酸エステルは、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸イソブチル、及び/又は酪酸イソプロピルを含む群より選択されうる。
【0059】
有利には、それが酪酸エステル、好ましくは酪酸エチルである場合、それは、ヒトに心地良い香り(パイナップル)を有する。
【0060】
本発明に従って、酪酸及び/又はその誘導体は、0.1から3容積%(v/v)の間の濃度でありうる。
【0061】
本発明に従って、酪酸及び/又はその誘導体の濃度は、ハエ亜目に依存して調整してもよい。例えば、酪酸及び/又はその誘導体は、0.5容積%から3容積%(v/v)の間の濃度でありうる。本発明に従って、酪酸の濃度は、0.5容積%、1容積%、2容積%(v/v)に等しくてもよい。本発明に従って、酪酸誘導体の濃度は、有利には2容積%(v/v)に等しくてもよい。本発明に従って、酪酸誘導体の濃度は、2容積%から3容
積%(v/v)の間でありうる。例えば、誘導体が酪酸エチルである場合、濃度は2容積%(v/v)より大きい又はそれと等しくてもよい。
【0062】
本発明に従って、プロピオン酸及び/又はその誘導体、ならびに酪酸及び/又はその誘導体が有効成分として使用される場合、プロピオン酸及び/又は誘導体の濃度は、0.1%容積から0.5%容積(v/v)の間でありうる、ならびに酪酸及び/又は誘導体の濃度は、0.1容積%から0.5容積%(v/v)の間でありうる。
【0063】
本発明はまた、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸、ならびに許容可能な担体を含む組成物に関する。
【0064】
本発明はまた、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの有利に揮発性の脂肪酸、ならびに許容可能な担体を含む組成物に関する。
【0065】
本発明はまた、プロピオン酸、酪酸を含む群より選択される少なくとも1つの有利に揮発性の脂肪酸、及び許容可能な担体を含む組成物に関する。
【0066】
本発明はまた、プロピオン酸及び酪酸ならびに許容可能な担体を含む組成物に関する。
【0067】
本発明はまた、プロピオン酸及び酪酸を含む組成物に関する。
【0068】
本発明はまた、忌避剤として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸、ならびに許容可能な担体を含む組成物の使用に関する。
【0069】
本発明はまた、忌避剤として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの有利に揮発性の脂肪酸、ならびに許容可能な担体を含む組成物の使用に関する。
【0070】
本発明はまた、忌避剤として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸、酪酸、及び許容可能な担体を含む組成物の使用に関する。
【0071】
本発明はまた、忌避剤として、及び/又はハエ亜目の繁殖を制御するために、プロピオン酸及び酪酸を含む組成物の使用に関する。
【0072】
本発明に従って、担体は、当業者に公知であり、組成物中の脂肪酸と混合される及び/又は関連付けられるのに適している任意の担体でありうる。これは、例えば、油、例えば、鉱油、植物油、及び/又はそれらの混合物でありうる。それは、例えば、当業者に公知であり、医薬品、化粧品、及び/又は植物衛生の分野における使用のために適している任意の鉱油でありうる。それは、例えば、パラフィン油又はワセリンを含む群より選択される鉱油でありうる。鉱油は、好ましくはパラフィン油である。有利には、パラフィン油は、ハエ亜目に関して有意な効果を有さない。さらに、パラフィン油は、それが混合される脂肪酸及び/又は誘導体の一定の放出を有利に可能にする。
【0073】
有利には、担体がパラフィン油である場合、それによって、組成物中の脂肪酸を非イオン性形態(COOH)に保つことが可能になる。
【0074】
本発明に従って、植物油は、当業者に公知であり、医薬品、化粧品、及び/又は植物衛生の分野における使用のために適している任意の植物油でありうる。
【0075】
本発明に従って、組成物は、化粧品組成物又は皮膚科学的組成物、医薬的組成物、及び/又は植物衛生組成物でありうる。
【0076】
本文書において、「化粧品組成物」は、当業者に公知である任意の形態の化粧品組成物を意味する。本発明に従った化粧品組成物は、当業者に公知である1つ又は複数のアジュバント及び/又は美容的に許容可能な担体を含みうる。アジュバント及び/又は美容的に許容可能な担体が、本発明に従った化合物と不適合であることが証明された、例えば、任意の種類の望ましくない生物学的効果を産生する、ならびに/あるいは本発明に従った化合物の臭気をマスクすることができうる臭気及び/又は効果を有した、あるいは実際に化粧品組成物の任意の他の成分と有害な様式において相互作用する場合を除いて、その使用は本発明の範囲下にあると考えられる。それは、例えば、エステル型の薬剤、水和剤、軟化剤、乳化剤、界面活性剤、ミネラル増粘剤、有機増粘剤、会合性又はその他の水溶性及び脂溶性有機ソーラーフィルター、ミネラルソーラーフィルター、シリコン化合物、芳香剤、保存剤、セラミド及び疑似セラミド、ビタミン及びプロビタミン、タンパク質、隔離剤、アルカリ化剤、酸性化剤、還元剤、酸化剤、ミネラル充填剤、着色剤、又は非特許文献1において引用されうる任意の他の適したアジュバントより選択される1つ又は複数のアジュバントでありうる。
【0077】
本発明に従って、化粧品組成物又は皮膚科学的組成物は、例えば、化粧品分野において使用することができる、当業者に公知の任意の形態でありうる。化粧品組成物又は皮膚科学的組成物の製剤が、本発明に従った化合物と不適合であった、例えば、任意の種類の望ましくない生物学的効果、ならびに/あるいは本発明に従った化合物の臭気をマスクすることができうる臭気及び/又は効果を産生する、あるいは化粧品組成物の任意の他の成分と有害な様式において相互作用する場合を除いて、その使用は本発明の範囲下にあると考えられる。当業者の一般的な知識から、当業者は、意図された適用に依存して製剤を適応させることができるであろう。
【0078】
本文書において、化粧品組成物は、化粧品組成物を調製するための、当業者に公知の任意の適切な方法により得てもよい。これは、水中の表面活性材料の混合物でありうる。
【0079】
本文書において、「医薬組成物」は、当業者に公知である任意の形態の適した医薬組成物を意味する。本文書において、医薬組成物は、例えば、局所溶液、ガレノス口腔分散形態、及び/又は空気分散溶液、例えば、液体溶液、又はスプレーでありうる。
【0080】
本発明に従って、医薬組成物は、例えば、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、パッチ、及びムースを含む群より選択される、局所投与又は経皮投与のための医薬組成物でありうる。医薬組成物の製剤が、本発明に従った化合物と不適合でありうる、例えば、任意の種類の望ましくない生物学的効果、ならびに/あるいは本発明に従った化合物の臭気をマスクすることができうる臭気及び/又は効果を産生する、あるいは医薬組成物の任意の他の成分と有害な様式において相互作用する場合を除いて、その使用は本発明の範囲下にあると考えられる。当業者の一般的な知識から、当業者は、意図された適用に依存して製剤を適応させることができるであろう。
【0081】
本文書において、組成物は、その投与に従って製剤化及び/又は適応させてもよい。本発明の組成物はまた、使用されるガレヌス製剤に従って、少なくとも1つの他の活性成分、特に、例えば同時もしくは別々の使用のための、又は経時的に広がる使用のための別の治療活性成分を含みうる。
【0082】
上に記載するように、本発明の医薬的に許容可能な組成物は、医薬的に許容可能な担体
、アジュバント、又は賦形剤をさらに含みうるが、それは、本文書において定義するように、所望の特定の投薬形態のために適している任意の溶媒、希釈剤又は他の液体賦形剤、分散剤又は懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む。非特許文献2には、医薬的に許容可能な組成物の製剤化において使用される異なる担体、及びその調製のための公知の技術が記載されている。従来の担体媒体が、本発明に従った化合物と不適合であることが証明された、例えば、任意の種類の望ましくない生物学的効果を産生する、ならびに/あるいは本発明に従った化合物の臭気をマスクすることができうる臭気を有した、あるいは実際に医薬的に許容可能な組成物の任意の他の成分と有害な様式において相互作用する場合を除いて、その使用は本発明の範囲下にあると考えられる。医薬的に許容可能な担体として役立ちうる材料の一部の例は、イオン交換体、緩衝物質、水、塩又はワックス電解質、糖;デンプン、賦形剤、油、グリコール、エステル、ならびに他の適合性のある非毒性潤滑剤を含むが、これらに限定されず、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、芳香剤、保存剤、及び抗酸化剤もまた、ガレノス形態の専門家の判断に従って、組成物中に存在しうる。
【0083】
本発明に従って、その使用の間に、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される脂肪酸、ならびに/あるいはプロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸を含む組成物を、当業者に公知の任意の適した手段により適用してもよい。例えば、それは、散布器、スプレー、噴霧器、含浸担体を用いた適用でありうる。
【0084】
本発明に従って、適用手段は、使用される組成物に依存して調整することができる。当業者の一般的な知識から、当業者は、適用手段を、使用される組成物の形態に調整することができるであろう。
【0085】
本発明はまた、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸の、あるいはプロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸を含む組成物の、前記表面上への適用を含む、少なくとも1つの生物的及び/又は非生物的表面をハエ亜目から保護するための方法に関する。
【0086】
本発明はまた、プロピオン酸、酪酸、あるいはプロピオン酸及び/又は酪酸を含む組成物を含む群より選択される少なくとも1つの脂肪酸の、前記表面への適用を含む、少なくとも1つの生物的及び/又は非生物的表面をハエ亜目から保護するためのエクスビボ方法に関する。
【0087】
本発明はまた、少なくとも1つの生物的及び/又は非生物的表面をハエ亜目から保護するための、プロピオン酸の及び酪酸の、ならびに/あるいはプロピオン酸及び酪酸を含む組成物のエクスビボ使用に関する。
【0088】
プロピオン酸及び/又はその誘導体は、上に定義する通りである。
【0089】
酪酸及び/又はその誘導体は、上に定義する通りである。
【0090】
組成物は、上に定義する通りである。
【0091】
表面の保護により、本文書は、特に、ハエ亜目が卵を産む前の行動であるハエ亜目の求愛及び/又は交尾の低下及び/又は阻害に起因する、表面上での産卵の非存在、ならびに/あるいは1つ又は複数の揮発性臭気分子が存在する環境及び/又は空間中に存在する、表面についてのハエ亜目の魅力及び/又は無関心の阻害を意味する。
【0092】
本文書において、表面は、当業者に公知の任意の表面を意味する。それは、例えば、生物又は非生物表面でありうる。
【0093】
本文書において、生物表面は、当業者に公知の任意の生物表面を意味する。それは、例えば、皮膚、粘膜、毛髪、皮膚付属器、目、羽毛を含む群より選択される生物表面でありうる。
【0094】
本文書において、生物表面は、健常な表面ならびに/あるいは少なくとも1つの病変及び/又は感染を示す表面でありうる。これは、例えば、創傷、感染した創傷、瘢痕化している創傷、縫合された創傷、瘢痕、火傷を含む生物表面でありうる。
【0095】
本文書において、生物表面は、野菜及び/又は植物の全部又は一部の表面でありうる。それは、例えば、葉、果実、花、花弁、雌しべ、茎、枝、幹の表面でありうる。好ましくは、それは果物の表面でありうる。
【0096】
本文書において、非生物表面は、当業者に公知の任意の非生物表面を意味する。それはまた、当業者に公知の任意のデバイス表面でありうる。それは、例えば、医療機器の表面、医療緊急治療室、医療治療室、手術室、手術ブロック、集中治療室(ITU)室、感染症ユニット室において存在する任意の表面でありうる。それはまた、実験室の、生物学的実験室の、生物学的分析実験室の、培養室の、及び別の密閉容積の任意の表面でありうる。それは、例えば、例えば、住宅、貯蔵、及び/又は農業の目的のための建物の表面でありうる。それは、例えば、屋根、壁、窓、側溝の表面でありうる。
【0097】
本文書において、非生物表面は、当業者に公知の任意の材料により形成されうる。それは、例えば、生体適合性材料でありうる。本文書において、非生物表面は、例えば、金属表面、合金により形成された表面、ポリマー表面でありうる。例えば、金属は、当業者に公知の任意の金属、例えば、チタン、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、タングステン、銀、金、パラジウム、バナジウム、モリブデンを含む群より選択される金属でありうる。例えば、合金は、当業者に公知の任意の合金、例えば、鋼、黄銅、銅-ニッケル、銅-パラジウム、銀-金、銀-パラジウム、モリブデン-バナジウム、モリブデン-タングステンを含む群より選択される合金でありうる。例えば、ポリマーは、表面を形成する及び/又は覆うことができる、当業者に公知の任意のポリマーでありうる。それは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリシロキサン、ポリウレタン、官能化ポリマーを含む群より選択されるポリマーでありうる。
【0098】
本発明に従って、本願は、当業者に公知の任意の手段により行ってもよい。例えば、適用は、散布器、噴霧器、加圧散布器を使用して行ってもよい。当業者の一般的な知識から、当業者は、表面に依存して適用手段を適応及び/又は選択することができるであろう。
【0099】
有利には、本発明に従った脂肪酸及び/又は本発明に従った組成物が非生物表面に適用される場合、それらによって、前記表面に近いハエ亜目の出現を防止することが可能になり、特にそれらによって、ハエ亜目が前記表面から押しのけられる及び/又は距離が置かれる。
【0100】
本発明はまた、プロピオン酸及び/又はその誘導体、酪酸及び/又はその誘導体より選択される少なくとも1つの脂肪酸、ならびに/あるいはプロピオン酸及び/又はその誘導体、酪酸及び/又はその誘導体より選択される少なくとも1つの脂肪酸を含む組成物、ならびに使用説明書を含む担体を含むキット又はケースに関する。
【0101】
プロピオン酸及び/又はその誘導体は、上に定義する通りである。
【0102】
酪酸及び/又はその誘導体は、上に定義する通りである。
【0103】
組成物は、上に定義する通りである。
【0104】
本文書において及び以下の実施例において、プロピオン酸及び/又は酪酸及び/又はそれらの誘導体の濃度は、他に記述しない限り、組成物の総容量(v/v)に関するパーセンテージで、即ち、プロピオン酸及び/又は酪酸及び/又はそれらの誘導体の容積で表現する。
【0105】
当業者はまた、例により与えられた添付の図面により例証される、以下の実施例を読む際にさらなる利点を特定することができうる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】
図1は、0.1%、0.5%、及び1%プロピオン酸(X軸)を含む組成物の非存在における、又は存在における、雄のオウトウショウジョウバエの、雌に対する求愛の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(*)、(**)、(***)、及び(****)は、変動量のプロピオン酸を示し、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定を実施することにより算出された、異なる条件間の統計的差異を表示する。
【
図2】
図2は、0.1%、0.5%、及び1%酪酸(X軸)を含む組成物の非存在における、又は存在における、雄のオウトウショウジョウバエの、雌に対する求愛の測定値(パーセンテージ)(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(*)、(**)、(***)、及び(****)は、変動量の酪酸を示し、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定を実施することにより算出された、異なる条件間の統計的差異を表示する。
【
図3】
図3は、0.1%、0.5%、及び1%プロピオン酸又は0.1%、0.5%、及び1%酪酸あるいは0.1%、0.25%、又は0.5%プロピオン酸及び酪酸に相当する混合物(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における、又は存在における、雄のオウトウショウジョウバエの、雌に対する求愛の測定値(パーセンテージ)(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(*)は、変動量の脂肪酸を示す、異なる条件間の統計的差異を表示する。実施される統計的検定は、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定である。
【
図4】
図4は、0.1%、0.5%、及び1%プロピオン酸(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における、又は存在における、オウトウショウジョウバエの交尾の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(*)は、変動量のプロピオン酸を示す、異なる条件間の統計的差異を表示する。実施される統計的検定は、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定である。
【
図5】
図5は、0.1%、0.5%、及び1%酪酸(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における、又は存在における、オウトウショウジョウバエの交尾の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(*)は、変動量の酪酸を示す、異なる条件間の統計的差異を表示する。実施される統計的検定は、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定である。
【
図6】
図6は、2%プロピオン酸を含む組成物の存在における、雄又は雌のオウトウショウジョウバエ(X軸)の麻酔に導く経過時間(分及び秒)(Y軸)を示す棒チャートである。マンホイットニー(ノンパラメトリックt検定)によって、ハエの雌雄に依存した、ハエの麻酔に導く時間に関連付けられる差は明らかになっていない。
【
図7】
図7は、2%酪酸を含む組成物の存在における、雄又は雌のオウトウショウジョウバエ(X軸)の麻酔に導く経過時間(分及び秒)(Y軸)を示す棒チャートである。マンホイットニー(ノンパラメトリックt検定)によって、ハエの雌雄に依存した、ハエの麻酔に導く時間に関連付けられる差は明らかになっていない。
【
図8】
図8は、1250cm
3の透明なテストボックスの内側の一部を示す写真であって、それにおいて、2%プロピオン酸が、ガーゼにより覆われたペトリ皿中に沈着している(示している画像の範囲外)。図上の黒色点は、オウトウショウジョウバエに対応する。矢印は、オウトウショウジョウバエが、麻酔をかけた位置において仰向けに飛んでいることを示す。
【
図9】
図9は、1250cm
3の透明なテストボックスの内側の一部を示す写真であって、それにおいて、2%酪酸が、ガーゼにより覆われたペトリ皿中に沈着している(示している画像の範囲外)。図上の黒色点は、オウトウショウジョウバエに対応する。矢印は、オウトウショウジョウバエが、麻酔をかけた位置において仰向けに飛んでいることを示す。
【
図10】
図10は、0.5%及び1%プロピオン酸(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における、又は存在における、キイロショウジョウバエの求愛の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(*)は、変動量のプロピオン酸を示し、マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定)を実施することにより算出された、異なる条件間の統計的差異を表示する。
【
図11】
図11は、0.5%及び1%酪酸(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における、又は存在における、キイロショウジョウバエの求愛の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(***)は、変動量の酪酸を示し、マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定)を実施することにより算出された、異なる条件間の統計的差異を表示する。
【
図12】
図12は、2%プロピオン酸を含む組成物の存在における、雄又は雌のキイロショウジョウバエ(X軸)の麻酔に導く経過時間(分及び秒)(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(****)は、変動量のプロピオン酸を示し、マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定)を実施することにより算出された、異なる条件間の統計的差異を表示する。
【
図13】
図13は、2%酪酸を含む組成物の存在における、雄又は雌のキイロショウジョウバエ(X軸)の麻酔に導く経過時間(分及び秒)(Y軸)を示す棒チャートである。図において、(***)は、変動量のプロピオン酸を示し、マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定)を実施することにより算出された、異なる条件間の統計的差異を表示する。
【
図14A】
図14Aは、キイロショウジョウバエ及びオウトウショウジョウバエの忌避及び/又は遠隔麻酔行動を試験するために使用されたテストボックスの写真(
図14A中のその全体)に対応する。容積1250cm
3のこの透明な箱中に、2つのペトリ皿を配置する。1つは、2%、6%、又は20%プロピオン酸を含むガーゼ(テストボックスの全体を示す画像の右側に見える)で覆われており、他は合成食品を含む(画像の左側に見える)。図上の黒色点は、キイロショウジョウバエに対応する。
【
図14B】
図14Bは、キイロショウジョウバエ及びオウトウショウジョウバエの忌避及び/又は遠隔麻酔行動を試験するために使用されたテストボックスの写真(下からの部分図)に対応する。図上の黒色点は、キイロショウジョウバエに対応する。
【
図14C】
図14Cは、キイロショウジョウバエ及びオウトウショウジョウバエの忌避及び/又は遠隔麻酔行動を試験するために使用されたテストボックスの写真(下からの部分図)に対応する。図上の黒色点は、キイロショウジョウバエに対応する。
【
図15】
図15は、キイロショウジョウバエの求愛を試験するために使用された行動デバイスの6つの円筒形小孔の1つを示す図である。臭気を染み込ませたろ紙をシリンダーの底に配置し、その紙の中央部分には、テストされるハエが動く網が保持され、このシリンダーは最後に閉じられる。キイロショウジョウバエの求愛のテストのために、赤色ライトによってデバイスが照らされる。
【
図16】
図16は、オウトウショウジョウバエの求愛を試験するために使用される行動デバイスを示す図である。それは、キイロショウジョウバエについて使用されているものと似ているが、しかし、白色光により照らされる。
【
図17】
図17は、2%酪酸、2%プロピオン酸、5%プロピオン酸エチル、10%プロピオン酸エチル、又は30%プロピオン酸エチル(X軸)を含む組成物の存在における、雄又は雌のオウトウショウジョウバエの麻酔に導く経過時間(分及び秒)(Y軸)を示す棒チャートである。
【
図18】
図18は、2%、4%、及び5%プロパン酸(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における(臭気又は溶媒を伴わない)、又は存在における、3~6日齢のオリーブミバエの、雌に対する雄の求愛の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、数字は、観察されたペアの数を表す。
【
図19】
図19は、2%及び5%プロパン酸(X軸)をそれぞれ含む組成物の非存在における(臭気又は溶媒を伴わない)、又は存在における、13~19日齢のオリーブミバエの、雌に対する雄の求愛の割合(パーセンテージ)の測定値(Y軸)を示す棒チャートである。図において、数字は、観察されたペアの数を表す。
【
図20】
図20は、キイロショウジョウバエの雄及び雌(X軸)が、2%プロパン酸(X軸上の左側)、又は2%酪酸(Y軸上の右側)をそれぞれ含む組成物への曝露により起こされる麻酔から覚醒するのに要求される時間(分又は秒)(Y軸)を示す棒チャートである。図において、数字はそれぞれテストされた個体の数を表す(以前に2%プロパン酸に曝露された20匹の雄及び30匹の雌、ならびに以前に2%酪酸に曝露された6匹の雄及び7匹の雌)。
【実施例】
【0107】
実施例1:ハエ亜目の繁殖に対するプロピオン酸及び/又は酪酸の効果
この実施例において、使用されたハエ亜目は、ハエ(イエバエ)、キイロショウジョウバエ及びオウトウショウジョウバエであった。この実施例において、求愛及び交尾の試験が行われた。
【0108】
A)材料及び方法
1.求愛の評価
1.1.キイロショウジョウバエ
3~9日齢のショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ)が、非特許文献3及び非特許文献4において記載されているように求愛テストのために使用される。
【0109】
未処置の雄を、それらの蛹から出た際に、個別にチューブ中に隔離した。雌を、未交尾であるように選択し、10の個体のチューブ中に保存した。これらのチューブを、25℃の温度が一定に保たれたインキュベーター中に入れた。12時間/12時間の昼/夜サイクルを適用した。求愛を、日周期の開始後1~3時間の間に午前中に行った。
【0110】
これらのテストを、1.52又はcm
3の容積の6つの円筒形の透明な密封小胞(
図15を参照のこと)で構成されたデバイスにおいて行った。直径6mmのろ紙(Whatman、ろ紙42)のディスクをその基部に配置する。前記紙を、パラフィン油(溶媒)中で希釈したプロピオン酸及び/又は酪酸を含む10μlの組成物中に浸す。使用された異なる組成物は、それぞれ、0.5%又は1%プロピオン酸、0.5%又は1%酪酸を含んだ。各々の濃度について、テストされたハエのペアの数は、それぞれ23、23、19、及び19であった。
【0111】
テストの時点で、1小胞当たり1ペアを行動デバイス中に導入した(即ち、6ペア)。前記ペアは、1匹の雄及び1匹の雌で構成され、各々が上に言及するチューブから由来する。ショウジョウバエを、任意の直接接触を防止する網により臭気源(前記紙)から物理的に隔離し、雌を断頭したが、しかし、生存したままであった。また、デバイスを赤色光
(625~630nmの間の波長から遠く離れた赤色)で照らし、視覚認識に関連付けられる任意の行動を排除した(キイロショウジョウバエでは300~550nmの間である)。このように、観察された行動は、デバイスの組み立て時にデバイス中に導入された化合物の、雄による嗅覚認識にだけ依存する。
【0112】
行動を、HDR-XR550カメラ(Sony社)を使用して10分間にわたり撮影した。各々のフィルムを記録し、その後の分析のために保管した。
【0113】
求愛の割合(パーセンテージとして表す)を次に算出し、雄が、テストを記録する10分間に雌に求愛する時間を表す。キイロショウジョウバエの求愛は、認識可能なステレオタイプの事象中に分解され、科学文献において正確に記載されている(非特許文献5)。統計的検定(マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定、GraphPad、Prism8))を、紙を浸した組成物の行動に対する影響を評価するために行った;これは、揮発性化合物の放出及びショウジョウバエにより認識される臭気を含む。
【0114】
ネガティブコントロールを、ハエに対する任意の影響の非存在を検証するために行い、ろ紙をパラフィン油単独の溶液(溶媒)中に浸すことに対応させた。
【0115】
1.2.オウトウショウジョウバエ
3~9日齢のショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ)を、上に記載する方法に従って求愛テストのために使用する。
【0116】
未処置の雄を、それらの蛹から出た際に、個別にチューブ中に隔離した。雌を、未交尾であるように選択し、10の個体のチューブ中に保存した。これらのチューブを、25℃の温度が一定に保たれたインキュベーター中に傾斜させて置いた。12時間/12時間の昼/夜サイクルを適用した。求愛を、日周期の開始後1~3時間の間に午前中に行った。
【0117】
テストの時点で、6mmのろ紙(Whatman、ろ紙42)のディスクを、求愛行動を試験するために、デバイスの小胞ごとに配置した。各々の小胞は、1.52又は0.9cm
3の円筒形で透明な密封容積であった。
図16は、使用したデバイスの小胞の略図である。
【0118】
紙を次に、0.1%、0.5%、もしくは1%プロピオン酸、又は0.1%、0.5%、もしくは1%酪酸の10μlの組成物、あるいは0.1%プロピオン酸及び0.1%酪酸、0.25%プロピオン酸及び0.25%酪酸、又は0.5%プロピオン酸及び0.5%酪酸を含む混合物中に浸した。ガーゼ(網)によって、ショウジョウバエを臭気から物理的に隔離することが可能になる。6ペア(小胞ごとに1ペア)を独立して観察した。各々のペアは、1匹の雄及び1匹の雌で構成され、各々が上に言及するチューブから由来する。
【0119】
行動を、HDR-XR550カメラ(Sony社)を使用して、白色光の下で10分間にわたり撮影した。各々のフィルムを記録し、次に分析した。使用した組成物の各々の濃度について、ハエのペアの数は、それぞれ、33、39、27、38、33、27、12、6、及び12であった。
【0120】
溶媒、即ち、パラフィン油だけを含むネガティブコントロールを、ハエに対する溶媒の影響の非存在を検証するために行った。
【0121】
求愛のパーセンテージを算出し、雄が、10分間の観察(記録)中に雌に求愛する時間を表す。オウトウショウジョウバエの求愛は、認識可能なステレオタイプの事象中に分解
され、科学文献において正確に記載されている(非特許文献6)。統計的検定、即ち、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定(GraphPad、Prism6)を、行動に対する、紙が浸されている組成の影響を評価するために行った;これは、揮発性化合物の放出及びショウジョウバエにより認識される臭気を含む。
【0122】
2.交尾の評価
オウトウショウジョウバエの求愛行動を試験するために記録されたフィルムから、10分間の観察中に交尾するペアの数のパーセンテージを、ろ紙を浸した組成物に基づいて算出した。統計的評価を行い、異なるテストを実施した。特に、クラスカル・ウォリス検定、それに続くダンの事後多重比較検定(GraphPad、Prism6)を、交尾する個体の数に対する、紙が浸されている、揮発性化合物及び認識される臭気の放出を含む組成物の影響を定量化するために行った。
【0123】
B)結果
1.求愛の評価
図1~3は、オウトウショウジョウバエを使用して得られた結果を示し、特にプロピオン酸、酪酸、又はプロピオン酸及び酪酸の混合物の存在又は非存在にそれぞれ依存している。
【0124】
図1において示すように、溶媒中での0.5%プロピオン酸の存在において、求愛が、溶媒単独と比較し、有意に低下した(**)。溶媒中での1%プロピオン酸の存在において、求愛が、溶媒単独(****)と比較して;同様に、1%(****)対0.1%、又は1%対0.5%プロピオン酸(*)を含む組成物と比較して有意に低下した。
【0125】
図2において示すように、溶媒中に0.5%酪酸の存在において、求愛が、溶媒単独(**)と比較して;同様に、溶媒中の0.1%酪酸(**)と比較して有意に低下する。
【0126】
溶媒中での1%酪酸の存在において、求愛が、溶媒単独(****)と比較して;同様に、0.1%(****)及び0.5%(*)と比較して有意に低下する。
【0127】
図3において示すように、溶媒中での0.25%プロピオン酸及び0.25%酪酸の存在において、求愛が、溶媒単独と比較して低下した。溶媒中での0.5%プロピオン酸及び0.5%酪酸の存在において、求愛が、溶媒中での0.1%プロピオン酸及び0.1%酪酸(*)、ならびに0.5%プロピオン酸及び0.5%酪酸と比較して有意に低下した。
【0128】
図10及び11は、キイロショウジョウバエを使用して得られた結果を示し、特にプロピオン酸又は酪酸の存在又は非存在にそれぞれ依存している。
【0129】
図10において示すように、雌に対する雄の求愛の割合が、1%プロピオン酸を含む組成物の存在において、溶媒単独と比較して有意に変化した(*)。求愛がまた、溶媒中での1%プロピオン酸の存在において、溶媒中での0.5%プロピオン酸と比較して有意に低下した(*)。
【0130】
図11において示すように、雌に対する雄の求愛の割合が、0.5%酪酸を含む組成物の存在において、溶媒単独での求愛と比較して有意に低下した(*)。求愛がまた、1%酪酸を含む組成物の存在において、溶媒単独での求愛と比較して有意に低下した(***)。
【0131】
2.交尾の評価
図4及び
図5は、オウトウショウジョウバエを使用して得られた結果を示し、特にプロピオン酸、酪酸、又はプロピオン酸及び酪酸の混合物の存在又は非存在にそれぞれ依存している。
【0132】
図4において示すように、交尾の割合が、溶媒中で希釈された0.1%プロピオン酸を含む組成物の存在において58%だけ低下した。0.5%プロピオン酸((*)対溶媒単独)又は1%プロピオン酸((*)対溶媒単独)を含む組成物の存在において、交尾の割合はゼロである;交尾は観察されなかった。
【0133】
図5において示すように、交尾の割合は、0.1%酪酸を含む組成物の存在において70.55%だけ低下した。0.5%酪酸を含む組成物の存在において、交尾の割合は83.03%だけ低下し(17.86%から3.03%になる)、1%酪酸((*)対溶媒単独)を含む組成物の存在において、交尾の割合はゼロである;交尾は観察されなかった。
【0134】
上に示すように、酪酸及び/又はプロピオン酸の存在によって、ハエ亜目の繁殖を制御することが可能になる。特に、上に示すように、本発明に従った組成物の実施例によって、雌に対する雄の求愛を低下させること、また、ハエ亜目の交尾を低下させる、又はさらには抑制させることの両方が可能になる。
【0135】
この実施例はまた、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体が、ハエ亜目の繁殖を制御するための有効成分として有用であることを示す。
【0136】
この実施例は、さらに、プロピオン酸、酪酸、及び/又はそれらの誘導体が、低濃度でハエ亜目の繁殖を制御するための有効成分として有用であり、例えば、高濃度に関連付けられる任意の可能性な副作用を低下させながら及び/又は回避しながら、迅速な効果を得ることを有利に可能にすることを示す。
【0137】
実施例2:ハエ亜目の繁殖に対する、及び/又は忌避活性成分としての、プロピオン酸及び/又は酪酸及び/又はプロピオン酸の誘導体の効果
この実施例において、使用されたハエ亜目は、ハエ、キイロショウジョウバエ及びオウトウショウジョウバエであった。ショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ及びオウトウショウジョウバエ)は、実施例1において記載されているとおりであったが、キイロショウジョウバエの雌は断頭されていなかった。
【0138】
この実施例において、プロピオン酸及び/又は酪酸の麻酔効果及び忌避効果の試験を行った。
【0139】
A)材料及び方法
1.麻酔テスト
使用されたデバイスは、ファイルが導入されたスペースの容積(45.24又は22.62cm3であった)ことを除いて、求愛を試験するためのデバイス(上の実施例1)と同様であった。ろ紙(Whatman、ろ紙42)の9枚のディスクの各々を、パラフィン油中で希釈された酪酸及び/又はプロピオン酸及び/又はプロピオン酸の誘導体を含む10μlの組成物中に浸して、デバイス中に配置した。使用された異なる組成物は、それぞれ、2%プロピオン酸又は2%酪酸又は5%プロピオン酸エチル又は10%プロピオン酸エチル又は30%プロピオン酸エチルを含んだ。各々の組成物について、ハエの数は、それぞれ、キイロショウジョウバエについては雄30匹及び24匹、雌30匹及び11匹、ならびにオウトウショウジョウバエについては雄24、16、及び4匹、雌28、26、6、5、及び4匹であった。浸した紙のディスクとハエの任意の接触を避けるために、ガーゼ(網)を前記紙の上に並べた。ショウジョウバエはガーゼの上を自由に動くことができた。行動チャンバー中で揮発した化合物、酪酸、もしくはプロピオン酸の、又はプロピオン酸エチル(臭気)の量は、求愛のために使用されたデバイスでの量と同等であった。同様に、ハエは、組成物と直接接触することは決してなく(味覚認識なし)、揮発性粒子とだけ接触した(嗅覚認識)。テストされたハエは、群ごとに、囲い中に同時に導入された。それらの行動を10分間にわたりファイルし、麻酔に導くために要求される時間を、使用された酪酸又はプロピオン酸又はプロピオン酸エチルの濃度に依存して、この期間にわたり算出した。ハエは、それらが動くのを止めて横に倒れた場合、麻酔されたと考えた。マン・ホイットニー検定(ノンパラメトリック検定、GraphPad、Prism 6又はPrism 8)によって、テストされた雄又は雌についての麻酔前に経過した時間における任意の差は明らかにならなかった。
【0140】
2.「ボックス中」でのテスト(忌避効果)
ショウジョウバエの感受性を、1250cm3の密閉された透明なボックス中での条件(結果を参照のこと)に従って、0分から24時間の期間にわたり評価した。
【0141】
臭気源、即ち、パラフィン油中に酪酸又はプロピオン酸を含む組成物を、50mmペトリ皿の底でろ紙上に沈着させた。ハエが油性の臭気化合物に付着するのを防止するために、ペトリ皿をテストボックス中に導入し、ガーゼ(Securimed M8202滅菌ガーゼパッド)で覆う。
【0142】
使用した濃度は、2%、6%、又は20%プロピオン酸であった。
【0143】
実験室中でショウジョウバエを繁殖させるために使用される5~6グラムの合成食品を含む第2のペトリ皿を、テストボックス中に置いた(即ち、6.5%トウモロコシ粉、6.5%(v/v)酵母エキス、1%(v/v)寒天-寒天、及び95%のエタノール中の0.1%(v/v)抗真菌溶液(Tegosept(Apex))の3%(v/v))。この後者によって、ハエがテスト中に必要とする水及び/又は食物が提供され、テストされた個体の脱水に起因する事象の可能性が排除された。
【0144】
キイロショウジョウバエ又はオウトウショウジョウバエを次に、群ごとにテストボックス中に導入し、そこで自由に経時的に運動させた。上で言及する組成物の存在におけるそれらの行動を観察し、撮影した(iPhone(登録商標) 6S(Apple社))。
【0145】
B)結果
1.麻酔テスト
図6~9及び
図17は、オウトウショウジョウバエを使用して得られた結果を示し、プロピオン酸又は酪酸又はプロピオン酸エチルの存在又は非存在にそれぞれ依存している。
【0146】
図6において示すように、2%プロピオン酸の存在において、雄のハエ及び雌のハエを約4分で麻酔した。統計的評価(マンホイットニー検定、p=0.7056)によって、雄又は雌を麻酔するために要求される時間において有意差は示されなかった。
【0147】
図7において示すように、2%酪酸の存在において、雄のハエ及び雌のハエを約5分で麻酔した。統計的評価(マンホイットニー検定、p=0.43)によって、雄又は雌を麻酔するために要求される時間において有意差は示されなかった。
【0148】
図8は、1250cm
3の透明なテストボックス中への導入後のオウトウショウジョウバエの麻酔を示す写真であって、それにおいて、溶媒中で2%に希釈されたプロピオン酸が、任意の直接接触を避けるために、ガーゼにより覆われたペトリ皿中に沈着されている。個体は最初に、好ましくは前記臭気から離れたままであり、次に、雄及び雌を、続く時間に麻酔した。写真は、ボックス中への導入後の時間における、麻酔位置でのハエ及び仰向けの1個体の位置を示す。
【0149】
図9は、1250cm
3の透明なテストボックス中への導入後のオウトウショウジョウバエの麻酔を示す写真であって、それにおいて、溶媒中で2%に希釈された酪酸が、任意の直接接触を避けるために、ガーゼにより覆われたペトリ皿中に沈着されている。透明なテストボックス中に存在するハエは、酪酸中に浸したフィルターから離れたままで、雄及び雌が麻酔されて、この環境中で20時間後に死亡した。写真は、ボックス中への導入後の時間における、麻酔位置でのハエ及び仰向けの1個体の位置を示す。
【0150】
図12及び13は、A1において記載するデバイス中で得られ、キイロショウジョウバエを使用して得られた結果を示し、特にプロピオン酸又は酪酸の存在又は非存在にそれぞれ依存している。
【0151】
図12において示すように、2%プロピオン酸の存在において、雄のハエを約3分で麻酔し、雌のハエを約5分で麻酔した。雄又は雌のハエが麻酔されるのに要求される時間の間の統計的評価(ノンパラメトリックマン・ホイットニー検定)は、雄のより大きな感受性を実証した(****)。
【0152】
図13において示すように、2%酪酸の存在において、雄のハエを約5分で麻酔し、雌のハエを約17分で麻酔した。雄又は雌のハエが麻酔されるのに要求される時間の間の統計的評価(ノンパラメトリックマン・ホイットニー)は、雄のより大きな感受性を実証した(****)。
【0153】
図17は、A1において記載するデバイス中で得られ、2%酪酸又は2%プロピオン酸又は5%プロピオン酸エチル又は10%プロピオン酸エチル又は30%プロピオン酸エチルの存在において雌のオウトウショウジョウバエを使用して得られた結果を示す。
【0154】
図17において示すように、2%酪酸の存在において、雌のハエを約5分で麻酔し、2%プロピオン酸の存在において、雌のハエを約4分で麻酔した。雌を麻酔するのに要求される時間の統計的評価(ノンパラメトリックマン・ホイットニー)は、溶媒中の2%酪酸の存在において、溶媒中の2%プロピオン酸と比較して、増加した感受性(**)を示す。5%プロピオン酸エチルの存在において、雌のハエを約6分で麻酔し、10%プロピオン酸エチルの存在において、雌のハエを約4分で麻酔し、それによって、2%プロピオン酸及び2%酪酸に関して統計的差異は実証されていない。さらに、30%プロピオン酸エチルの存在において、雌のハエを約2~3分で麻酔し、それは、2%酪酸(****)に関して、及び2%プロピオン酸(***)に関して有意な統計的差異に相当する。
【0155】
2.忌避効果のテスト(「ボックス中」でのテスト)
図14A、
図14B及び
図14Cは、キイロショウジョウバエを使用して得られた結果を示す。溶媒(パラフィン油)中で2%又は6%に希釈されたプロピオン酸を含むボックス中で、ハエは24時間後に依然として生存している。この期間中、雄と雌は求愛し、交尾する;ボックスから取り出されると、それらは生存可能な子孫を有する。
【0156】
溶媒中で希釈された20%プロピオン酸では、個体を、臭気のある組成物に浸されたろ紙から遠ざけて、次にテスト時間に麻酔する。
【0157】
実施例3:ハエ亜目の繁殖に対する、及び/又は忌避活性成分としての、プロピオン酸及び/又は酪酸及び/又はプロピオン酸の誘導体の効果
この実施例において、使用されたハエ亜目は、それぞれ3~6日齢又は13~19日齢
のオリーブミバエであった。
【0158】
A)材料及び方法
1.求愛の評価
3~6日齢又は性的に成熟した(9~13日)オリーブバエ(オリーブミバエ)を、雌に対する雄の求愛のテストのために使用した(非特許文献7及びMenage Cindy、私信)。未処置の雄を、それらの蛹から出た際に、個別にチューブ中に隔離した。雌を、未交尾であるように選択し、一緒にチューブ中に保存した。これらのチューブを、25℃の温度が一定に保たれたインキュベーター中に傾斜させて置いた。12時間/12時間の昼/夜サイクルを適用した。求愛テストを、雄が最も活動的である1日サイクルの終わりの1時間前の午前中に行った(非特許文献7)。
【0159】
テストの時点で、サイズが6mmのろ紙(Whatman、ろ紙42)の3枚のディスクを、求愛行動を試験するために、デバイスの小胞ごとに配置した。各々の小胞は、円筒形で透明で密封されており、5.9cm
3の容積であった。
図16は、使用したデバイスの小胞の略図である。
【0160】
紙を次に、各々、2%、4%、又は5%プロピオン酸の10mlの組成物中に浸した。ガーゼ(網)によって、オリーブミバエを、プロピオン酸に相当する臭気から物理的に隔離することが可能になった。2ペア(小胞ごとに1ペア)を独立して観察した。各々のペアは、1匹の雄及び1匹の雌で構成され、各々が上に言及するチューブから由来する。
【0161】
行動を、Basler acA1920-155um USB 3.0カメラを使用して、白色光の下で10分間にわたり撮影した。各々のフィルムを記録し(Basler Video Recording Software V1.3)、次に分析した。使用された組成物の各々の濃度について、ハエのペアの数は、それぞれ、2、5、2、2、2及び6、6、4、4であった。
【0162】
溶媒、即ち、パラフィン油だけを含むネガティブコントロールを、ハエに対する溶媒の影響の非存在を検証するために行った。
【0163】
求愛のパーセンテージを算出し、雄が、10分間の観察(記録)中に雌に求愛する時間を表す。異なる工程が、翼の動き(迅速な「ブンブン」及び/又は垂直の振動)、顔の動き、横方向の動き、迅速な円の中での及び雌の方向での「ダンス」からなる(非特許文献7及びMenage Cindy、私信)。
【0164】
B)結果
図18及び19は、オリーブミバエを使用して得られた結果を示し、プロピオン酸の存在又は非存在に依存しており、それらの年齢に従っている。
【0165】
図18において示すように、溶媒中での2%プロピオン酸の存在において、雌に対する雄の求愛が、溶媒単独と比較し、有意に低下した。溶媒中での4%及び5%のプロピオン酸の存在において、求愛は実質的に存在しなかった。
【0166】
図19において示すように、2%又は5%プロピオン酸を含む組成物の存在において、言い換えると、溶媒中での2%及び5%プロピオン酸の存在において、雌に対する雄の求愛が、溶剤単独と比較して低下した。
【0167】
上に示すように、プロピオン酸の存在によって、ハエ亜目の繁殖を制御することが可能になる。特に、上に示すように、本発明に従った組成物の実施例によって、雌に対する雄
の求愛を両方低下させることが可能になる。
【0168】
この実施例はまた、プロピオン酸が、殺虫効果なしにハエ亜目の繁殖を制御するための有効成分として有用であることを示す。
【0169】
さらに、この実施例は、プロピオン酸の存在によって、ハエ亜目の求愛及び/又は交尾の低下及び/又は阻害を有利に可能にすることを明確に示す。この実施例はまた、プロピオン酸の存在によって、産卵前の繁殖が制御されることを明確に示す。
【0170】
この実施例は、さらに、プロピオン酸が、低濃度でハエ亜目の繁殖を制御するための有効成分として有用であり、例えば、高濃度に関連付けられる任意の可能性な副作用を低下させながら及び/又は回避しながら、迅速な効果を得ることを有利に可能にすることを示す。
【0171】
実施例4:ハエ亜目の麻酔に対するプロピオン酸及び/又は酪酸及び/又はプロピオン酸の誘導体の抑制/可逆効果の効果
この実施例において、使用されたハエ亜目は、キイロショウジョウバエであった。前記ショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ)は、実施例2において記載されるショウジョウバエであった。
【0172】
この実施例において、プロパン酸及び/又は酪酸の可逆的な非毒性効果の試験を行った。
【0173】
A)材料及び方法
可逆効果のテスト
使用されたデバイスは、上の実施例2において記載されているような麻酔の試験のために記載されたデバイスであった。プロパン酸又は酪酸についての適用条件は、上の実施例2において記載されている麻酔テストの適用条件と同様であった。ハエを、2%プロパン酸又は2%酪酸の存在において10分間にわたり入れた。麻酔の10分間の観察の終わりに(上記の実施例2)、ハエをデバイスから取り出し、同一であるが、しかし「空」である、即ち、溶媒又は臭気(臭気=それぞれ溶媒中の2%プロパン酸又は溶媒中の2%酪酸)を伴わない別のデバイス中に置いた。各々の空のデバイスについて、導入及び観察されたハエの総数は、以前に2%プロパン酸に曝露されて、この麻酔環境から除去された雄20匹及び雌30匹、ならびに以前に2%酪酸に曝露されて、この麻酔環境から除去された雄6匹及び雌7匹であった。
【0174】
空のデバイス中でのハエの行動を25分間にわたり観察し、撮影した。
【0175】
ハエは、それらが再び立ち上がり、デバイス中で動いた場合、麻酔から覚醒したと考えた。
【0176】
麻酔後にハエを覚醒させるために要求される時間を次に測定した。
【0177】
B)結果
図20は、キイロショウジョウバエの雄及び雌をそれぞれ使用し、それぞれ2%プロパン酸及び/又は2%酪酸への曝露後に得られた結果を示す。
【0178】
図20(X軸の左側)において示すように、雄は、それらが以前に2%プロパン酸の存在において10分間過ごし、次に、それらを空のデバイス中に置くために、この臭気デバイスから取り除かれた際、23分後に麻酔から完全に覚醒した。雌は、それらが以前に2
%プロパン酸の存在において10分間過ごし、次に、それらを空のデバイス中に置くために、この臭気デバイスから取り除かれた際、9分後に麻酔から完全に覚醒した。
【0179】
図20(X軸の右側)において示すように、雄は、それらが以前に2%酪酸の存在において10分間過ごし、次に、それらを空のデバイス中に置くために、この臭気デバイスから取り除かれた際、6分後に麻酔から完全に覚醒した。雌は、それらが以前に2%酪酸の存在において10分間過ごし、次に、それらを空のデバイス中に置くために、この臭気デバイスから取り除かれた際、4.5分後に麻酔から完全に覚醒した。
【0180】
この実施例において示されるように、本発明に従った組成物の例によって、ハエ亜目での可逆的な麻酔が有利に可能になる。さらに、この実施例によって、本発明に従った組成物の例の使用が、特にその可逆的効果の理由で、ハエ亜目に関して無毒性であることが明らかに実証される。
【国際調査報告】