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特表2022-548088低遊離ポリウレタンプレポリマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】低遊離ポリウレタンプレポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20221109BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20221109BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20221109BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/72
C08G18/42
C08G18/42 069
C08G18/44
C08G18/48
C08G18/32 006
C08G18/32 015
C09J175/04
C09J5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516352
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 US2020050622
(87)【国際公開番号】W WO2021051039
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】62/899,476
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505006666
【氏名又は名称】ランクセス・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・エム・エマニュエル・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ポリーナ・ウェア
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド・キング
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD04
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
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4J034DG03
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4J034DG06
4J034DG08
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4J034HA02
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4J034HC12
4J034HC13
4J034HC17
4J034HC22
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4J034HC52
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4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034QA01
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4J034QA03
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4J034QB14
4J034QB15
4J034RA08
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF131
4J040EF281
4J040JB01
4J040JB04
4J040MA02
(57)【要約】
本発明は、0質量%超で1.0質量%未満の遊離ジイソシアネートモノマーを含むポリウレタンプレポリマー組成物であって、ここで、ポリウレタンプレポリマーは、80質量未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物(完全プレポリマー)を含む組成物、これらポリウレタンプレポリマー組成物を含む硬化性組成物、及びこれらポリウレタンプレポリマー組成物の接着剤としての使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンプレポリマー組成物であって、
(a)過剰のジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応の反応生成物であるポリウレタンプレポリマー、及び
(b)ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、0質量%超で1.0質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満の遊離ジイソシアネートモノマーを含み、
ここで、ポリウレタンプレポリマーのNCO含有量は、0.2~15質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは5~7質量%であり、ポリウレタンプレポリマーは、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1化学量論的付加物を、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて75質量%未満含む、ポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項2】
ジイソシアネートが、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、またはトルエンジイソシアネート(TDI)、好ましくは4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)である、請求項1に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項3】
少なくとも1つのポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、又はポリカプロラクトンポリオールである、請求項1又は2に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項4】
少なくとも1つのポリオールが、ポリエーテルポリオール、好ましくはプロピレンオキシドベースのポリエーテルポリオールである、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項5】
少なくとも1つのポリオールが、ポリプロピレングリコール(PPG)である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのポリオールが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が、50~16,000g/mol、好ましくは250~4,000g/mol、より好ましくは500~1,100g/molのものである、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項7】
少なくとも1つのポリオールが、分子量の異なる2つのポリプロピレングリコールを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのポリオールが、200~800g/mol、好ましくは200~600g/mol、より好ましくは400~600g/molの重量平均分子量Mwを有する第一ポリプロピレングリコールと、800~12,000g/mol、好ましくは800~4,000g/mol、より好ましくは800~2,000g/molの重量平均分子量を有する第二ポリプロピレングリコールを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項9】
プレポリマーが、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物を、30質量%超で75質量%未満含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項10】
ポリウレタンプレポリマーのNCO含有量が、0.2~15質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは5~7質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項11】
ジイソシアネートが、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)であり、ここで、少なくとも1つのポリオールが、200~800g/molの重量平均分子量有する第一ポリプロピレングリコールと、800~12,000g/molの重量平均分子量を有する第二ポリプロピレングリコールを含み、ここで、遊離ジイソシアネートモノマーが、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて0質量%超で0.1質量%未満で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリウレタンプレポリマー組成物と、硬化剤とを含む、硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項13】
硬化剤が、ジアミン、ポリオール、またはこれらのブレンド、好ましくは1,4-ブタンジオール(BDO)、またはヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)である、請求項12に記載の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物。
【請求項14】
2つの基材を接着接合または封止する方法であって、
(1)請求項12または13に記載の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物を、基材上に適用する工程、及び
(2)基材上に適用された硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物を、結合が形成されるように第2の基材に接触させる工程
を含む、方法。
【請求項15】
請求項12に記載の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物の、接着剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0質量%超で1.0質量%未満の遊離ジイソシアネートモノマーを含むポリウレタンプレポリマー組成物であって、ポリウレタンプレポリマーが、ジイソシアネートと少なくとも一つのポリオールとの2:1化学量論的付加物(完全プレポリマー)を75質量%未満含むポリウレタンプレポリマー組成物、これらのポリウレタンプレポリマー組成物を含む硬化性組成物、及びこれらのポリウレタンプレポリマー組成物の接着剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーは、エラストマー、フォーム、コーティング、接着剤、シーラント、及びバインダーのようなポリウレタン製品の製造に一般的に使用されている。しかしながら、ポリウレタンプレポリマーの製造プロセスでは、通常、プレポリマー合成に使用されたポリイソシアネートモノマーの残留濃度が高くなる。残留ポリイソシアネートは、健康及び安全上の問題をもたらす恐れがあり、また、最終用途製品の性能及び属性に悪影響を及ぼす可能性もある。例えば、残留ポリイソシアネートは、これらの分子が界面に移動することによって、オープンタイムの望ましからぬ損失、製品の不安定性、水分感受性の増大、及び接着性の低下をもたらす可能性がある。ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて1.0質量%未満、好ましくは0.1質量%未満の低レベルで残留ジイソシアネートを含むポリウレタンプレポリマーは、健康及び安全上のリスクを低減し、最終製品性能を向上させることができる。
【0003】
残留ポリイソシアネートは、製品性能の低下と並んで、重大な健康及び安全上のリスクをもたらす恐れがあることから、残留ポリイソシアネートレベルを低減した製品及びプロセスが多数導入されている。
JP08176252には、MDIと、Mw=250~4,000と2つの活性水素を持つ直鎖分子とを、2.5~10:1の当量比(NCO:OH)で反応させることが開示されている。遊離のMDIは真空蒸留で1質量%未満とする。例には、ポリテトラメチレングリコール(PTMEG)及びエチレングリコールアジペートが示される。
【0004】
US-B-4,786,703には、TDIプレポリマーを含む反応生成物を製造するプロセスが開示されており、こうしたプレポリマーの少なくとも約90%は、長鎖ジオール1モル当たり2モルのTDIのプレポリマーからなり、未反応のTDIのレベルは約0.15%未満である。この文献は、90質量%超の完全プレポリマーを多量に用いることの利点を教示している。
【0005】
US-A-4,888,442には、ポリイソシアネート付加物の遊離モノマー含有量を低減するプロセスであって、付加物を、攪拌薄層蒸発器中、2~30質量%の不活性溶媒で、ポリイソシアネート付加物混合物の遊離モノマー含有量を溶媒の非存在下で得られるレベルよりも低減するために十分な条件下で処理することによるプロセスが開示されている。ポリイソシアネート付加物の調製に適したジイソシアネートとしてのMDIの使用を示す実施例はない。
【0006】
US-A-4,892,920には、未反応のCHDIを含まず、かつ本質的にオリゴマー性CHDI副生成物を含まない、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)ベースのプレポリマーを製造する方法が開示されている。
【0007】
US-A-5,202,001には、低レベルの残留有機ジイソシアネートを有するポリウレタンプレポリマーの調製が開示されている。この例では、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、及びメチレン-ビス[(4-シクロヘキシル)-ジイソシアネート](CHDI)から作られるプレポリマーが示しされている。
【0008】
US-A-5,703,193には、ポリウレタンプレポリマー反応生成物中の残留有機ジイソシアネートモノマーの量を低減するプロセスであって、モノマーより沸点の高いものと低いものの不活性溶媒ブレンドの存在下で蒸留することによるプロセスが開示されている。比較例には、PTMEG 1000/MDIプレポリマー反応生成物からMDIモノマーを除去することが示されている。
【0009】
US-A-6,133,415には、ポリウレタンプレポリマーを製造するための向流抽出法が開示されている。この例には、低遊離MDIを得るように処理されたMDI/PTMEGが示される。
US-B-6,174,984には、少なくとも1つのジイソシアネートと、エチレンオキシドのホモポリマー、プロピレンオキシドのホモポリマー、及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマーからなる群より選択される少なくとも1つのポリエーテルポリオールのプレポリマーが開示されており、ここでは、遊離のジイソシアネートは、プレポリマーの1%未満のレベルにまで低減されている。
【0010】
EP-A-0827995には、少なくとも2の官能性を有するポリイソシアネートと少なくとも2の官能性を有するポリオールとを反応させることによって調製されるポリイソシアネートプレポリマーを含むホットメルト接着剤が開示されており、反応生成物は少なくとも90質量%の「完全」プレポリマー及び2質量%未満の未反応イソシアネートモノマーを含み、プレポリマーは0.2から8質量%の遊離のNCO官能性を有する。この文献は、90質量%超の多量で完全プレポリマーを使用する利点を教示している。
【0011】
US-B-6,866,743には、本質的に少なくとも80質量%の完全プレポリマーと2質量%未満の遊離MDIモノマーからなり、MDIまたはTDIに基づき、非構造用ポリウレタン接着剤組成物における使用に適した、プレポリマー組成物が開示されている。
【0012】
US-B-6,884,904には、本質的に少なくとも80質量%の完全プレポリマーと2質量%未満の遊離MDIモノマーからなり、ポリウレタン接着剤組成物における使用に適した、MDI/ポリプロピレンポリエーテルプレポリマー組成物が開示されている。75質量%未満の完全プレポリマーと1.0質量%未満の残留ジイソシアネートモノマーを含むポリウレタンプレポリマー組成物は、開示されていない。
【0013】
US-B-6,943,202には、純粋ABA構造について理論NCO含量の少なくとも70%、好ましくは純粋ABA構造について理論NCO含量の少なくとも80%のNCO含量を有するポリウレタンプレポリマーが開示されている。
【0014】
WO-A-01/040340には、低レベルのモノマー状ジイソシアネートを有するポリウレタン組成物が、2000未満の分子量を有するジオール成分と500未満の分子量を有するモノマー状ジイソシアネートとを第1段階で反応させる、2段階プロセスで調製できることが開示されている。MDI:ポリオールのモル比は5:1~10:1が好ましく、これは、純粋ABA構造についての理論NCO含有量の少なくとも約80%のNCO含有量を有する最終プレポリマー(溶剤及び遊離MDIモノマーの除去後)の形成に有利なためである。得られる低モノマー高分子ジイソシアネートを、第二段階でポリオールと反応させて、イソシアネート末端基を有する反応性プレポリマーを形成する。こうしたポリウレタン組成物は、この文献においては、溶剤を含んでもよい反応性の1または2成分接着剤/シーラント材料のバインダーとして有用であるとされており、また、ポリオールが適切に選択されていれば、反応性ホットメルトの調製に有用であるとされている。
【0015】
US-A-2004/259968には、ポリオールの、500以下の分子量及び1.75~2.5のNCO官能性を有する非対称ポリイソシアネートと高分子量ポリイソシアネートとの混合物の化学量論的過剰量との少なくとも1つの反応生成物を含む組成物が開示されている。当該発明によらない比較例には、5:1の比率の4,4’-MDIとPPG-750に基づくプレポリマーであって、モノマー状MDIの残留量が<0.1%であるものが開示されている。
【0016】
US-A-2005/154172には、IPDIとMw=4200g/molのポリプロピレングリコール(PPG)及びMw=6300g/molのPPGとの反応生成物であり、0.05質量%の残留IPDIを含み、44%のオリゴマー付加物量を有し、1.5質量%のNCO含有量を有するポリウタンプレポリマーが開示されている。この文献には、開示されたプレポリマーの接着特性についてのみならず、ジイソシアネートとしてのMDIの使用についても記載がない。
【0017】
EP-A-1746117には、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)と、Mw=4350g/molの三官能性ポリエーテルポリオール(PPO;Lupranol(登録商標)2095;グリセロールを開始剤分子として、ポリプロピレンオキシドとエチレンオキシドの付加反応により調製)との反応生成物であって、0.083質量%の未反応モノマー(残留MDI)を含み、最大80質量%の完全ABA構造の量を有し、且つ2質量%のNCO含有量を有するポリウレタンプレポリマーが開示されている。
【0018】
US-A-2007/060731は、イソシアネートとポリオールとの定義されたABA構造が構築される際には、こうした定義された構造は、例えば熱可塑性ポリウレタンまたは注入可能エラストマーなどのコンパクトエラストマーの特性プロファイルに良い影響を有することから、オリゴマーポリウレタンの形成が望ましくない旨を開示している。非対称ジイソシアネート、例えば2,4’-MDIは、PPG-450と反応して、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定してジウレタンが80面積%超のプレポリマーを提供する。こうした非対称ジイソシアネートは、反応性が低い。2,4’-MDIもまた、工業スケールで入手することは容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】JP08176252
【特許文献2】US-B-4,786,703
【特許文献3】US-A-4,888,442
【特許文献4】US-A-4,892,920
【特許文献5】US-A-5,202,001
【特許文献6】US-A-5,703,193
【特許文献7】US-A-6,133,415
【特許文献8】US-B-6,174,984
【特許文献9】EP-A-0827995
【特許文献10】US-B-6,866,743
【特許文献11】US-B-6,884,904
【特許文献12】US-B-6,943,202
【特許文献13】WO-A-01/040340
【特許文献14】US-A-2004/259968
【特許文献15】US-A-2005/154172
【特許文献16】EP-A-1746117
【特許文献17】US-A-2007/060731
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
先行技術に鑑みて、「完全」プレポリマーの量が多く、オリゴマーの量が少ないポリウレタンプレポリマーが好ましいことは明らかである。
【0021】
遊離ジイソシアネートモノマーの量が少なく、それにもかかわらず、高いNCO官能性を有するポリウレタンプレポリマーと同等またはより優れた物理特性、例えば引裂強度、または接着特性、例えば高い剪断強度を有する硬化ポリウレタンを提供することが、長きに亘る要望であった。
【0022】
ここで、驚くべきことに、先行技術における長年の教示とは対照的に、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて0質量%超で1.0質量%未満の少量の残留遊離ジイソシアネートモノマーと、75質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物(完全プレポリマー)とを含むポリウレタンプレポリマーは、少量の残留ジイソシアネートモノマーと、75質量%以上の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物とを含むポリウレタンプレポリマーに対して、望ましい性能有意性を示すことが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、過剰のジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応の反応生成物であるポリウレタンプレポリマーと、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、0質量%超で1.0質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満の遊離ジイソシアネートモノマーとを含む、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマー組成物に関し、ここで、ポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物を75質量%未満、好ましくはジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物を73質量%未満、より好ましくはジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物を70質量%未満含む。
【0024】
本発明は、過剰のジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応に基づき、残留ジイソシアネートモノマーが少なく、オリゴマー含有量が高い、ポリウレタンプレポリマー組成物に関する。
【0025】
ポリウレタンプレポリマー組成物は、「n」(少なくとも2)個のOH基を含む少なくとも1つのポリオールと過剰のジイソシアネートとの反応から得られる生成物である。ポリウレタンプレポリマー反応生成物は、オリゴマーと、いわゆる「完全」プレポリマーとを含む。このプレポリマー組成物に必要な、高いオリゴマー含有量は、プレポリマー組成物の全質量に基づいて20質量%超か、または相反して、75質量%未満であるはずの、ジイソシアネートとポリオールとの2:1化学量論的付加物の含有量で表してもよい。
【0026】
ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物(完全プレポリマー)並びにこれらの調製方法は広く知られており、当技術分野において、例えばEP-A-0288823、EP-A-0370408、EP-A-0370392、EP-A-0827995、EP-A-1237967、EP-A-1237971、EP-A-1249460、EP-A-1253159、EP-A-1499653、及びEP-A-1553118に記載されている。
【0027】
本発明のジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1化学量論的付加物は、1つのポリオール分子(B)の2つのジイソシアネート分子(A)との化学量論的末端封止生成物である。反応生成物中のジイソシアネートとポリオールとの化学量論的比率は、ジオール(二官能性ポリオール(B))の場合、2:1である。完全プレポリマーは、本質的に、各プレポリマー分子A:B:A(もしくはA2B)中にポリオール(B)の1分子のみを含む付加物である。
【0028】
本発明のオリゴマーは、二官能性ポリオール(B)(n=2)の場合、完全な2:1の分子比(A:B:A;ジウレタン)よりも大きい組成を有する任意の種、例えば3:2(A:B:A:B:A;トリウレタン)または4:3(A:B:A:B:A:B:A)である。
【0029】
本発明は、ポリウレタンプレポリマー組成物が、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、(1)75質量%未満、好ましくは73質量%未満、より好ましくは70質量%未満の、ジイソシアネートとポリオールとの2:1化学量論的付加物を含み、且つ(2)0質量%超で1.0質量%未満の、未反応、しかるに遊離の、ジイソシアネートモノマーを含むことを要する。好ましい実施態様では、本発明は、このジイソシアネートプレポリマー反応生成物が、(1)30質量%超の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物、及び75質量%未満、好ましくは73質量%未満、より好ましくは70質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物を含み、且つ(2)0質量%超で1.0質量%未満の、未反応のジイソシアネートモノマーを含むことを要する。
【0030】
ポリウレタンプレポリマー反応生成物は、0.2~15質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは5~7質量%の範囲の遊離プレポリマーNCO官能基を含有する。遊離NCO含有量は、典型的には、ASTM D1638-70に従って、質量%として決定される。
【0031】
一実施態様においては、本発明のポリウレタンプレポリマー組成物は、0.2~15質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは5~7質量%の範囲の遊離プレポリマーNCO官能基を含み、且つ、0質量%超でて1質量%未満の未反応ジイソシアネートモノマー、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満を含む。
【0032】
本発明の好ましい実施態様においては、ポリウレタンプレポリマーは、プレポリマーの全質量に基づいて、少なくとも30質量%の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物、及び、75質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物を含み、好ましくは、75質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物、より好ましくは、70質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物、さらに好ましくは65質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの2:1化学量論的付加物を含み、あるいは相反して、少なくとも20質量%のオリゴマー、好ましくは少なくとも25質量%のオリゴマー、より好ましくは少なくとも30質量%のオリゴマー、さらに好ましくは少なくとも35質量%のオリゴマーを含む。
【0033】
ジイソシアネート
本発明のジイソシアネートは、特に限定されない。本発明の好適なジイソシアネートには、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、多環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及び脂肪族-芳香族ジイソシアネートが含まれる。
【0034】
好ましい実施態様において、本発明のジイソシアネートは、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、又はトルイレンジイソシアネート(TDI)である。
【0035】
より好ましい実施態様では、ポリウレタンプレポリマーは、対称性ジイソシアネートを用いて調製される。
より好ましい実施態様では、ポリウレタンプレポリマーは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-メチレン-ビス-(フェニルイソシアネート);4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)を使用して調製される。
【0036】
ポリオール
本発明は、特定のポリオールの使用によって限定されず、1つより多くのポリオールを使用してもよい。本発明に好適なポリオールは、当該技術分野で既知の任意のポリオールから選択してよい。
ポリオールには、1つより多くのヒドロキシル基を有する化合物が含まれる。こうしたポリオールの形成は、当技術分野において周知である。
【0037】
多くの実施態様において、粘度の増大を避けるために、(ヒドロキシル官能性が2.0である)ジオールが、トリオールまたはより高いヒドロキシル官能性を有するポリオールよりも好まれる。
本発明のいくつかの実施態様では、ポリオールは、少なくとも1つのポリエステルポリオール、少なくとも1つのポリエーテルポリオール、少なくとも1つのポリカプロラクトンポリオール、少なくとも1つのポリカーボネートポリオール、またはこれらの組み合わせを含む。
【0038】
好ましいポリオールは、ポリプロピレングリコール(PPG)としても既知のポリプロピレンオキシドベースのポリエーテルポリオールであり、これは、以下に限定されるものではないが、2以上の官能性、100~8,000の平均当量を有するポリプロピレンポリエーテルポリオールを含む。また、エチレンオキシドでキャップされたPPG及び低モノオール含有PPGも含まれる。
【0039】
使用し得るさらなるポリオールには、アルキレンジオール、例えばジエチレングリコール(DEG)、別の二官能もしくは多官能アルキレンエーテルポリオール、例えばポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)及びポリエチレンオキシド、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン及び末端水酸基ポリブタジエン由来のポリエステルポリオールが含まれる。
【0040】
上記のポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、ポリウレタンプレポリマーの製造に一般的に使用される。ポリオールは、プレポリマーの製造に使用される少なくとも1つのポリオール(単一のポリオールまたはブレンドのいずれか)は、約50~16,000g/mol、好ましくは250~4,000g/mol、好ましくは500~1,200g/molの範囲の重量平均分子量(Mw)を有するようにブレンドすることができる。別の好ましい実施態様では、少なくとも1つのポリオールは、異なる分子量を有する2つのポリプロピレングリコールを含む。平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて決定することができる。
【0041】
好ましい例では、本発明のポリウレタンプレポリマー組成物の少なくとも1つのポリオールが、200~800g/mol、好ましくは200~600g/mol、より好ましくは400~600g/molの重量平均分子量Mwを有する第一ポリプロピレングリコールと、800~12,000g/mol、好ましくは800~4,000g/mol、より好ましくは800~2,000g/molの重量平均分子量を有する第二ポリプロピレングリコールを含む。
【0042】
ポリウレタンプレポリマーの調製プロセス
本発明によるポリウレタンプレポリマーは、過剰のジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールとの反応によって調製される。
好ましい実施態様において、本発明のポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1つのポリオールと過剰のMDI、好ましくは4,4’-MDIとの反応によって調製される。
【0043】
いくつかの実施態様では、ポリウレタンプレポリマーは、過剰のジイソシアネート、好ましくはMDI、より好ましくは4,4’-MDIと少なくとも1つのポリプロピレングリコールとの反応によって調製される。
【0044】
本発明のポリウレタンプレポリマーは、ポリオールとジイソシアネートとの反応混合物を、50℃~150℃で10分間~24時間、好ましくは60℃~100℃で2時間~6時間加熱する条件下で調製することができる。
【0045】
ポリウレタンプレポリマーを合成する方法は、当技術分野で一般に知られている。一般的に、本発明のポリウレタンプレポリマーは、一般的にポリウレタンプレポリマーの製造について当該技術分野で既知の、標準的な工業的反応プロセス及び条件を用いて製造される。
【0046】
好ましい実施態様において、少なくとも1つのポリオールのジイソシアネートへの添加は、滴下式ではなく、バッチ式で行われる。
【0047】
本発明のポリウレタンプレポリマーは、典型的には過剰のジイソシアネートモノマーを用いて調製され、未反応モノマー、例えば、未反応または「遊離の」ジイソシアネートを含むポリウレタンプレポリマー組成物をもたらす。遊離ジイソシアネートモノマーのレベルは、ポリウレタンプレポリマー組成物に基づいて20質量%以上に達しうる。
【0048】
好ましい実施態様では、プレポリマー反応は触媒されない。触媒の使用によれば、ポリウレタンプレポリマー反応生成物中に触媒が微量に残留する可能性があり、これは硬化プロセスに影響しうる。
【0049】
本発明のポリウレタンプレポリマーは、「低遊離モノマー」ポリウレタンプレポリマー(「低遊離」または「LF」または「低イソシアネート」=「LNCO」としても既知)である。
【0050】
当業者には、従来のポリウレタンプレポリマーよりも少量の「遊離」モノマーイソシアネート基を有すると理解されており、すなわち、本発明のポリウレタンプレポリマー組成物は、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて1.0質量%未満の遊離ジイソシアネートモノマーを有する。
【0051】
プレポリマー反応生成物中の未反応ジイソシアネートモノマーは、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、0質量%超でて1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、最も好ましくは0.1質量%未満の濃度にまで除去される。遊離ジイソシアネートモノマーが残存していないポリウレタンプレポリマーは、好ましからぬ高粘度を有することになる。
【0052】
プレポリマー組成物中の遊離ジイソシアネートモノマーの量は、一般的な測定方法、例えばHPLC(高速液体クロマトグラフィー)測定に従って決定することができる。
また、付加物及びオリゴマーの量は、MALDI-MSによって決定することができる
【0053】
ポリウレタンプレポリマー組成物中の遊離ジイソシアネートモノマーの量を、本発明の低レベルにまで低減させるために適切な、任意のプロセスが採用できる。ポリイソシアネートモノマーの残留イソシアネート含有量を低減させて最小とするためには、様々な方法、例えば、WFE薄膜蒸発(wiped film evaporation)、溶剤補助蒸留/共蒸留、分子篩、及び溶媒抽出が知られている。減圧蒸留が好ましく、特に、真空下での薄膜蒸発または攪拌薄膜蒸発が好ましい。
【0054】
硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物
本発明は、さらに、本発明のポリウレタンプレポリマー組成物と少なくとも1つの硬化剤とを含む、硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物に関する。
【0055】
硬化剤
本発明の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物に好適な硬化剤には、ジアミン、ポリオール、またはこれらのブレンドが含まれる。
ジアミンの例には、芳香族及び脂肪族のジアミン、第1級及び第2級アミン末端ポリエーテルポリオール、ならびに二官能性、三官能性、及び高分子アミンが含まれる。
【0056】
ポリオールの例には、ポリエステルもしくはポリエーテルポリオールが含まれ、これらは、第1級、第2級及び/又は第3級アルコール基を有する、ジオール、トリオール、及びテトロールであってよい。好ましいポリオール硬化剤は、1,4-ブタンジオール(BDO)、またはヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)である。これらのポリオールは、ジアミンと混合してもよい。
【0057】
プレポリマーと硬化剤の比率は、典型的には、0.5:1~1.5:1、好ましくは0.7:1~1.2:1、より好ましくは1.1:1~0.90:1の範囲にある。
【0058】
添加剤
本発明の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物は、任意に、さらなる添加剤、例えば触媒;増粘剤;粘着付与樹脂、例えばアビエチン酸、アビエチンエステル、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、または炭化水素樹脂;フィラー、例えばケイ酸塩、タルカン、炭酸カルシウム、粘土、またはカーボンブラック;可塑剤、例えばフタレート;チキソトロピー性付与剤、例えばベントン、焼成シリカ、尿素誘導体、フィブリル化またはパルプ化短繊維;着色剤、例えばカラーペースト、及び顔料、または乾燥剤を含む。
【0059】
任意の触媒には、第三級アミン触媒及び適切な有機金属触媒、例えばスズ、ジルコニウム、及びビスマスから誘導される触媒が含まれる。
【0060】
接着剤
本発明はまた、2つの基材を接着接合または封止する方法であって、
(1)本発明の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物を、基材上に適用する工程、及び
(2)基材上に適用された硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物を、結合が形成されるように第2の基材に接触させる工程
を含む方法にも関する。
【0061】
一実施態様においては、本発明の方法で使用されるポリウレタン接着剤組成物は、ジイソシアネート、好ましくは4,4’-MDIを、平均分子量が500~1,100g/molのポリプロピレンポリエーテルポリオールと反応させることによって調製可能な、上記ポリウレタンプレポリマー反応生成物を含む。
【0062】
接着剤で接着され得る基材には、冷間圧延鋼、アルミニウム、ガラス繊維強化ポリエステル(FRP)、シート成形コンパウンド(SMC)、プラスチック、木材、及びガラスが含まれる。
【0063】
したがって、本発明は、また、本発明の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物の接着剤としての使用にも関する。好ましい実施態様では、ポリウレタンプレポリマー組成物は、過剰の4,4’-MDIと少なくとも1つのポリプロピレングリコールとの反応によって得られるポリウレタンプレポリマーを含み、且つ、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、0質量%超で1.0質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満の遊離4,4’-MDIモノマーを含み、ここで、前記ポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて、75質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物、好ましくは73質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物、より好ましくは70質量%未満の、ジイソシアネートと少なくとも1つのポリオールの2:1の化学量論的付加物を含む。
【0064】
好ましい実施態様において、ABABAオリゴマーの量は、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて25質量%以上である。
本発明は、硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物を調製するための、本発明のポリウレタンプレポリマー組成物の使用をも包含する。
【0065】
本発明は、本発明のポリウレタンプレポリマー組成物の、一液型フォーム(OFC)としての使用をも包含する。
本発明は、本発明の硬化性ポリウレタンプレポリマー組成物の、室温での接着剤として、またはホルトメルト接着剤としての使用をも包含する。
【0066】
接着剤組成物中に本発明のポリウレタンプレポリマー組成物を使用することにより、室温で1もしくは7日間硬化させた後に、少量のオリゴマーを有する、本発明のものでないポリウレタンプレポリマー、または多量の残留ジイソシアネートモノマーを有する、本発明のものでない従来のポリウレタンプレポリマーに基づく接着剤組成物と比較して、より優れた剪断強度を示し、また、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて1.0質量%未満の、揮発性ジイソシアネートモノマーがより低レベルであることに関する健康及び安全上の利点を示す、接着剤が提供される。
【実施例
【0067】
実施例では、以下の材料を使用した。
【表1】
【0068】
接着実験
【表2】
【0069】
方法:
遊離NCO含有量(%NCO)
遊離NCO含有量は、ASTM D1638-70に従って測定した。
【0070】
残留モノマー含有量
ポリウレタンプレポリマー反応生成物中の遊離4,4’-MDIモノマーの量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって測定される。
【0071】
オリゴマー含有量
ポリウレタンプレポリマー組成物のオリゴマー含有量は、MALDI-MSを用いて測定される。各タイプの構造の強度をまとめ、相対的な量を表2aに示す。試料は、THF中20mg/mLのDCTB(トランス-2-[3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-2-プロペニリデン]マロノニトリル)、THF中10mg/mLの試料、及びTHF中20mg/mLのNaTFAの、10:10:1の比率の混合物により調製される。データ収集は、リニアモード(正イオン、質量範囲300~30000)で行われる。データ解析は、ベースライン減算(smooth SG7points, Centroid 0.3 width S/N 1)で行われる。
【0072】
実施例1(本発明)
6046gの4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)を反応器に加え、50℃に加熱した。その後、2896gのPPG-500及び1646gのPPG-1100を加えた。反応温度を、80℃に4時間保持した。過剰の残留4,4’-MDIモノマーを、減圧下での薄膜蒸留によって反応生成物から除去し、残留4,4’-MDIのレベルを0.1質量%未満、NCO含有量の合計%を6.05質量%とした。
【0073】
実施例2(本発明)
2880gの4,4’-MDIを反応器に加え、50℃に加熱した。次いで、603gのPPG-500及び1017gのPPG-1100を加えた。反応温度を80℃に4時間保持した。過剰の残留4,4’-MDIモノマーを、減圧下での薄膜蒸留によって反応生成物から除去し、残留4,4’-MDIのレベルを0.1質量%未満、NCO含有量の合計%を6.10質量%とした。
【0074】
実施例3(比較例)
4,4’-MDIを4182g反応器に加え、50℃に加熱した。次いで、443gのPPG-500及び1500gのPPG-1100を加えた。反応温度を80℃に4時間保持した。過剰の残留4,4’-MDIモノマーを、減圧下での薄膜蒸留によって反応生成物から除去し、残留4,4’-MDIのレベルを0.1質量%未満、NCO含有量の合計%を5.87質量%とした。
【0075】
実施例4(比較例)
4,4’-MDIを1584g反応器に加え、50℃に加熱した。次いで、900gのPPG-500及び1516gのPPG-1100を加えた。反応温度を80℃に4時間保持した。反応生成物の%NCO含量は5.90質量%であった。
残留4,4’-MDIモノマーは5質量%超である。
表1は、実施例1~4のMDI/PPGポリマーの%NCO、残留遊離4,4’-MDI、及びオリゴマー含有量を示す。
【0076】
【表3】
【0077】
遊離NCO基の実測質量%、及び使用したMDIモノマーとポリオールの分子量に基づいて、オリゴマー含有量の算出を実施し、その結果を表1aに示した。オリゴマー含有量の算出は、より高い分子量のオリゴマーは主にABABAであり、さらに高分子量であるオリゴマー、例えばABABABAの量は無視されるとの仮定に基づく。
【0078】
しかしながら、プレポリマー組成物は、MALDI MSを用いてさらに分析され、ABA付加物、並びにABABA、及びABABABAオリゴマーの正確な量が決定された(ここで、Aは4,4’-MDIを表し、BはPPGを表す)。
【0079】
【表4】
【0080】
表2aは、MALDIマススペクトルで測定した実施例1~4のABA付加物及びオリゴマーの量を示す。
本発明の実施例1及び2は、ポリウレタンプレポリマーの全質量に基づいて0.1質量%未満の残留4,4’-MDI含有量と、25質量%超のオリゴマー含有量を示す。従って、4,4’-MDIとPPGとの2:1化学量論的付加物の量は、本発明の実施例1及び2におけるプレポリマー組成物の全質量に基づいて75質量%未満である。
【0081】
実施例5
実施例1~4のプレポリマー組成物を、以下の構造用接着剤組成物において、アルミニウムクーポン上で室温硬化させることによって評価した。
【0082】
【表5】
【0083】
接着剤組成物を、1質量%のマイクロビーズを添加しながら、A部とB部とを1:0.9のNCO:OH比で混合することによって調製した。基材は、以下の基材調製プロセスの工程に従って準備した。
【0084】
(1) 研磨
アルミニウムクーポンを、20/40破砕ガラスで、80psiのノズルで6インチの距離をとって部分的に研磨した。アルミニウムクーポン上に予期されるプロフィールは、2~3mmであった。
【0085】
(2) 溶剤洗浄
表面をアセトンで洗浄し、次いで風乾させた。
その後、接着剤組成物を2.54×12.7cmのアルミニウムクーポンの片面に塗布して、少なくとも3.23cm2の面積を覆い、その後、第2の基材クーポンと接合して、合計3.23cm2のラップ剪断(重ね剪断)を得た。試料は、室温及び50%の湿度で硬化させた。試料を準備し、ASTM D10002-10 (引張荷重(金属間)による単純重ね合わせ接着接合された金属試験片の見掛けの剪断強度を測定する標準試験方法)に従って、1日後及び7日後に試験した。すべての試験は室温で行った。
【0086】
【表6】
【0087】
表3の結果は、本発明のポリウレタンプレポリマー実施例1及び2に基づく接着剤組成物が、オリゴマーの量が少ない、本発明のものでないプレポリマー(実施例3)又は遊離ジイソシアネートモノマーの量が多い、本発明のものでない従来品(実施例4)に基づく接着剤組成物と比較して、1日間及び7日間の硬化後により高い剪断強度を有することを示す。
【0088】
実施例6
実施例5に記載の接着剤試験手順を繰り返したが、但し、基材準備プロセスにおける第3工程として、接着剤組成物を塗布する前に、以下のように、アルミニウムクーポンの研磨され洗浄された表面上に結合剤を塗布した。
【0089】
(3)結合剤
メチルエチルケトン(MEK)とChemlok(登録商標)218接着剤との50:50ブレンドからなる結合剤を調製した。この結合剤にアルミニウムクーポンを浸漬し、垂直に吊るして乾燥させた。
剪断強度試験の結果を表4に示す。
【0090】
【表7】
【0091】
表4のデータは、本発明のプレポリマー組成物と本発明のものでないプレポリマー組成物に基づく接着剤組成物の間には、追加の、望ましからぬ、結合剤を適用するプロセス工程を採用することによってのみ、同等の剪断強度が達成され得ることを示す。
【0092】
実施例7
注型エラストマーを、実施例1~4のプレポリマーを使用し、従来技術によって調製した。ポリウレタンプレポリマー組成物を、化学量論的に98%の1,4-ブタンジオール(BDO)またはヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)で硬化させ、その後115℃で16時間に亘ってポスト硬化させた。以下のASTM試験方法:硬度(ASTM D2240)、スプリット引裂き(Split Tear)(ASTM D-470)、トラウザー引裂き(Trouser Tear)(ASTM D-1938)、ダイC引裂き(Die-C Tear)(ASTM D-624)、モジュラス、破断強度、伸度(ASTM D638)を用いて物理特性を求めた。表5及び表6にそのデータを示す。
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
低モノマーで高オリゴマープレポリマーである本発明の実施例1及び2は、本発明のものでない実施例3及び4と比べて、優れたスプリット引裂き、トラウザー引裂き、及びダイC引裂き強度を示す。
【0096】
【表10】
【0097】
低モノマーで高オリゴマープレポリマーである本発明の実施例1及び2は、本発明のものでない実施例3及び4と比べて、高いモジュラスを示す。
【0098】
【表11】
【0099】
低モノマーで高オリゴマープレポリマーである本発明の実施例1は、本発明のものでない実施例3及び4と比べて、高いモジュラスを示す。
【国際調査報告】