(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】平形のワークピースを湿式処理するための装置、装置のセル用のデバイスおよび装置を操作する方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/10 20060101AFI20221109BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20221109BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20221109BHJP
C25D 5/08 20060101ALI20221109BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20221109BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20221109BHJP
B65G 49/02 20060101ALN20221109BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D17/00 G
C25D17/06 E
C25D5/08
C25D17/10 A
C25D17/08 G
B65G49/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516444
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020075459
(87)【国際公開番号】W WO2021048343
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテック ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フェアディナント ヴィーナー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ シェラー
【テーマコード(参考)】
4K024
【Fターム(参考)】
4K024BB09
4K024BB12
4K024CB01
4K024CB02
4K024CB14
4K024CB16
4K024CB18
(57)【要約】
平形のワークピースを湿式処理するための装置のセル用のデバイスは、第1の壁(13a)と第2の壁(13b)とを備えた構造体を備える。ワークピースは、第1の壁(13a)と第2の壁(13b)との間の空間(3)を通って中心平面(4)内で第1の方向(y)に移動可能である。第1の壁(13a)と第2の壁(13b)との間に加圧液体を導入するための開口(27)が、中心平面(4)の互いに反対の側で中心平面(4)に面して設けられている。開口(27)は、第1の方向(y)と、第1の方向(y)を横切る第2の方向(x)とに分配されている。液体が空間(3)から進出するための排出開口(28a,28b)が、第1の方向(y)における空間(3)の範囲に沿って、第2の方向(x)で見て、互いに反対の側に画定されている。第1の壁(13a)および第2の壁(13b)は、中心平面(4)に対して垂直な方向(z)での空間からの液体の流れに対する障壁を形成している。壁(13a,13b)を貫通して通路(23a,23b,24a,24b)が設けられており、各通路(23a,23b,24a,24b)は、開口(27)のそれぞれ1つに液体を導くように配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平形のワークピースを湿式処理するための装置のセル用のデバイスであって、
第1の壁(13a)と第2の壁(13b)とを備えた構造体を備え、
前記ワークピースは、前記第1の壁(13a)と前記第2の壁(13b)との間の空間(3)を通って中心平面(4)内で第1の方向(y)に移動可能であり、
前記第1の壁(13a)と前記第2の壁(13b)との間に加圧液体を導入するための開口(27)が、前記中心平面(4)の互いに反対の側で前記中心平面(4)に面して設けられており、
前記開口(27)は、前記第1の方向(y)と、前記第1の方向(y)を横切る第2の方向(x)とに分配されており、
前記液体が前記空間(3)から進出するための排出開口(28a,28b)が、前記第1の方向(y)における前記空間(3)の範囲に沿って、前記第2の方向(x)で見て、前記空間(3)の互いに反対の側に画定されており、
前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)は、前記中心平面(4)に対して垂直な方向(z)での前記空間からの液体の流れに対する障壁を形成している、
デバイスにおいて、
前記壁(13a,13b)を貫通して通路(23a,23b,24a,24b)が設けられており、各通路(23a,23b,24a,24b)は、前記開口(27)のそれぞれ1つに前記液体を導くように配置されていることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記開口(27)は、それぞれの前記通路(23a,23b,24a,24b)の端部で前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)の表面に画定されている、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
第1の液体分配デバイス(2a)と第2の液体分配デバイス(2b)とを備え、前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)は、前記第1の液体分配デバイス(2a)の壁(14a)および前記第2の液体分配デバイス(2b)の壁(14b)をそれぞれ備え、
前記第1の液体分配デバイス(2a)および前記第2の液体分配デバイス(2b)は、前記空間(3)が前記液体分配デバイス(2a,2b)同士の間に延在するように取り付けられている、
請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
前記通路(23a,23b,24a,24b)の入口を横切って前記第2の方向(x)に延在する少なくとも1つの液体分配空間(17a,17b)が、前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)のうちの少なくとも一方の、前記空間(3)と反対の側に画定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項5】
前記液体分配空間(17a,17b)は、前記液体分配空間(17a,17b)が前記壁(13a,13b)の縁部に向かって先細になるように前記壁(13a,13b)に対して傾斜した障壁(16a,16b)によって区画されている、請求項4記載のデバイス。
【請求項6】
少なくとも1つの拡がり液体導管(20a,20b)であって、液体供給導管(11a,11b)に接続可能である入口(10a,10b)を一方の側に有し、前記拡がり液体導管(20a,20b)の幅に沿った複数の箇所で前記液体分配空間(17a,17b)と液体連通している反対の側に向かって拡幅している、少なくとも1つの拡がり液体導管(20a,20b)を備える、請求項4または5記載のデバイス。
【請求項7】
前記拡がり液体導管(20a,20b)および前記液体分配空間(17a,17b)は、前記第1の液体分配デバイス(2a)および前記第2の液体分配デバイス(2b)のうちの一方のハウジング内のチャンバ(12a,12b)内で、前記チャンバ(12a,12b)内に延在する障壁(16a,16b)によって画定されている、請求項3および6記載のデバイス。
【請求項8】
前記排出開口(28a,28b)のうちの少なくとも一方は、互いに対向する液体不透過性の部分同士の間、例えば前記第1の壁(13a)の縁部と前記第2の壁(13b)の縁部との間に前記空間(3)の前記第1の方向(y)の範囲に沿って延在する単一の間隙によって形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項9】
前記中心平面(4)と、前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)のうちの一方との間の平面内に延在する少なくとも1つの液体透過性の電極(5a,5b)、例えば平形の電極をさらに備える、請求項1から8までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項10】
前記中心平面(4)と、前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)のうちの一方との間の平面内に延在する少なくとも1つの液体透過性の遮蔽構造体(6a,6b)、例えば平形の遮蔽構造体をさらに備える、請求項1から9までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項11】
前記開口(27)に延在するノズル(25a~25d)が、前記第1の壁および前記第2の壁に設けられている、請求項1から10までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項12】
前記ノズル(25a~25d)のオリフィス(26,27a~27d)が、前記第2の方向(x)に前記第1の方向(y)よりも大きな寸法を有する細長い形状を有する、請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
前記開口(27)は、少なくともほぼ前記第2の方向(x)に延在する行として整列させられている、請求項1から12までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項14】
前記開口(27)は、各行内に均一に分配されている、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
各行の前記開口(27)は、少なくとも1つの別の行の開口に対して前記第2の方向にオフセットされている、請求項14記載のデバイス。
【請求項16】
前記開口(27)は、前記第1の方向(y)に対して鋭角(α)をなして延在する列として整列させられている、請求項15記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)は、(i)1m
2あたり少なくとも460個の開口(27)の面密度および(ii)前記第2の方向(x)において1mあたり少なくとも16個の開口(27)の線密度のうちの少なくとも一方における開口(27)を有する、請求項1から16までのいずれか1項記載のデバイス。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の少なくとも1つのデバイス(1)を備える、平形のワークピースを湿式処理するための装置。
【請求項19】
液体を前記開口(27)に圧送するための少なくとも1つのポンプをさらに備える、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記デバイス(1)は、請求項8記載のデバイス(1)であり、
前記装置は、搬送デバイス(7)であって、ワークピースの縁部で前記ワークピースに解離可能に係合して、前記間隙(28a,28b)の範囲に沿って前記第1の方向(y)に移動するように案内される少なくとも1つのクランプ(8)と、前記搬送デバイス(7)を移動させるための少なくとも1つの駆動装置(9)とを備えた搬送デバイス(7)をさらに備える、
請求項18または19記載の装置。
【請求項21】
請求項18から20までのいずれか1項記載の装置を操作する方法であって、
ワークピースを前記デバイスを通して前記中心平面(4)において移動させる間、前記開口(27)と前記排出開口(28a,28b)とを通して前記液体を圧送することを含む、方法。
【請求項22】
前記中心平面(4)から前記第1の壁(13a)および前記第2の壁(13b)のうちの一方に向かって移動する前記ワークピースの任意のセクションが、該セクションを前記中心平面(4)に向かって戻す傾向にある局所的な力を生じさせることを保証するのに十分な速度で前記液体を圧送する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
半導体デバイス、例えば光電子デバイスを製造するための、請求項1から17までのいずれか1項記載のデバイス(1)および請求項18から20までのいずれか1項記載の装置のうちの少なくとも1つの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平形のワークピースを湿式処理するための装置のセル用のデバイスであって、
第1の壁と第2の壁とを備えた構造体を備え、
ワークピースは、第1の壁と第2の壁との間の空間を通って中心平面内で第1の方向に移動可能であり、
第1の壁と第2の壁との間に加圧液体を導入するための開口が、中心平面の互いに反対の側で中心平面に面して設けられており、
開口は、第1の方向と、第1の方向を横切る第2の方向とに分配されており、
液体が空間から進出するための排出開口が、第1の方向における空間の範囲に沿って、第2の方向で見て、空間の互いに反対の側に画定されており、
第1の壁および第2の壁は、中心平面に対して垂直な方向での空間からの液体の流れに対する障壁を形成している、デバイスに関する。
【0002】
本発明はまた、平形のワークピースを湿式処理するための装置に関する。
【0003】
本発明はまた、このような装置を操作する方法に関する。
【0004】
本発明はまた、このようなデバイスおよびこのような装置のうちの少なくとも1つの使用に関する。
【0005】
背景技術
米国特許出願公開第2015/0252488号明細書は、金属が処理される材料の表面に電気化学的に堆積される、湿式化学電気化学的処理のためのプレータを開示している。このデバイスは、処理される材料の搬送方向に対して平行に延在する、側面に配置された側壁と、処理チャンバを区画する底壁とを有している。さらに、処理チャンバは、処理される材料を運搬するためのスロットを有する更なる側壁によって、搬送方向に対して横切るように閉じられている。処理液の流出に対して液体処理チャンバを密閉するために、一対の圧搾ローラがこれらのスロットに配置され、処理される材料は、処理チャンバに対して搬入または搬出するときに圧搾ローラ同士の間を通って導かれる。処理される材料は、互いに一定の距離を置いて軸に取り付けられたホイールによって搬送され、軸は搬送方向に対して横切るように延在している。アノードは、処理される材料の上方および下方に配置される。搬送面は、処理チャンバ内で搬送方向に延在している。アノードを越えた搬送面から見ると、ノズルを有する供給デバイスは、処理される材料の上方および下方に位置している。供給デバイスは、頂部導水路と底部導水路とによって形成され、処理液を両側のノズルを介して処理される材料の表面に搬送する。ノズルおよび残りの構成要素は、処理チャンバの槽水位の下方に配置されている。使用中の処理される材料の上方に位置する供給デバイスの上方に壁は存在しない。アノードは、アノード間の空間から中心平面に対して垂直な方向への液体の流れに対する障壁を形成しない。処理される材料を搬送するホイールは、処理される材料の全幅に沿った位置で処理される材料に接触する。これは、処理される材料が比較的脆弱である場合、例えばフォトマスクで覆われている場合には望ましくない。ホイールが省略された場合、材料がアノードに接触するのを防止するために、アノードと処理される材料との間に比較的大きな距離を維持する必要がある。そうであっても、処理される材料の幅全体にわたる起伏により、アノードと材料との間の距離が変動するため、不均一な被覆の形成につながる恐れがある。
【0006】
西独国特許出願公開第4229403号明細書は、貫通孔を備えた肉薄のプラスチック箔の上面および下面ならびに貫通孔の側面にめっきを施すことができる装置を開示している。めっきチャンバにはハウジングが設けられており、その入口は一対の圧搾ローラによって形成され、出口は一対の圧搾ローラによって形成されている。上部アノードと下部アノードとは、プラスチック箔の上方および下方に、それと離隔して平行に延在している。電解質のそれぞれの分配空間は、アノードとめっきチャンバのハウジングとの間に設けられる。アノードには、プラスチック箔の移動方向に対して傾斜している複数の貫通孔が設けられ、その結果、それらは移動方向に収束する。導管を通して分配空間に供給される電解質が、プラスチック箔の移動方向に対して平行な移動成分を伴って、アノードとプラスチック箔との間の空間に入るような構成である。電解質は、ハウジングの側方の開口から流出し、そこから装置の液溜めに入る。側方の開口は、チャンバの長さに沿った一箇所にのみ設けられる。プラスチック箔は、装置の両端部のリールで巻き出されて、巻き取られ、一対の圧搾ローラによってしっかりと平坦に保持される。したがって、この構成はエンドレス箔の処理にのみ適しており、箔の幅にわたって圧搾ローラと箔とをしっかりと接触させる必要がある。
【0007】
国際公開第98/49374号は、直流またはパルス電流を使用して、水平連続装置で回路板および回路箔を電解的に処理するための装置を開示している。この装置は、対電極として機能する上部の不溶性アノードと下部の不溶性アノードとを備える。電解セルは、上部アノードと、回路板または回路箔と、それらの間の電解質空間とによって形成される。アノードは、基本的にワークピースの幅全体に延在している。回路板および回路箔は、上部アノードと下部アノードとの間の上部ガイド要素と下部ガイド要素とによって、好ましくは中央で伝導されており、電気的接点要素としても機能するクランプによって搬送される。ガイド要素は、一般的に、電気的に絶縁された狭いスピンドルであり、その上に非導電性プラスチックの穴あきディスクが取り付けられている。電解質噴霧デバイスは、搬送面と反対の側の対電極の側の電解質空間の外側に配置される。噴霧管には、ワークピースの表面に対して垂直または所定の角度をなして向けられた穴またはノズルが設けられる。アノードには穴が設けられており、噴霧管の穴またはノズルを出る処理液が実質的または完全に妨げられることなくアノードを通過することができるように位置決めされている。しかしながら、アノードは、搬送面から、搬送面に対して垂直な方向への液体の流れを妨げる障壁を形成しない。噴霧管は、デバイスの上壁および下壁に対して十分に離隔して位置決めされている。したがって、回路板または回路箔を搬送面に保持するには、穴あきディスクが必要である。
【0008】
国際公開第98/49374号に示されているものと同様の構成であるが、スピンドルに穴あきディスクがないものが、出願人から現在入手可能な水平連続めっき装置で使用されている。この装置では、ワークピースが搬送されるように配置された平面の互いに反対の側に設けられた噴霧バーが、その平面に向けられる。噴霧バーからワークピースの移動面までの距離は比較的小さい。したがって、肉薄のワークピースが起伏して、アノードと移動面との間に設けられた接触防護グリッドに接触するリスクが存在する。乾式薄膜電気めっきの場合、結果としてフォトマスクがワークピースから外れる恐れがある。接触を回避しても、ワークピースの1つ以上の表面に比較的剛性的な1つ以上の金属層が形成されるため、起伏が固定される恐れがある。
【0009】
発明の概要
本発明の目的は、上で冒頭の段落にて定義した形態のデバイス、装置および方法を改良して、比較的肉薄のワークピースの処理が、ワークピースを単一の平面内に比較的良好に保持しながら可能となるようにすることである。
【0010】
この目的は、第1の態様によれば、壁を貫通して通路が設けられており、各通路は、開口のそれぞれ1つに液体を導くように配置されていることを特徴とする本発明によるデバイスによって達成される。
【0011】
デバイスは、完全なセルを形成するためのものであってもよいし、セルを形成するために槽内に配置するように構成されていてもよい。後者の場合、第1の壁と第2の壁との互いに向かい合った表面同士の間に導入された液体へのアクセスを可能にする空間は、これらの互いに向かい合った表面同士の間の空間セクションよりも大きい。一実施形態では、複数のデバイスを単一の槽に設けて、セルを形成することができる。処理の種類は、特に湿式化学処理、例えば、化学的金属堆積または電解的金属堆積、化学的エッチングまたは電解的エッチングおよび化学的洗浄または電解的洗浄のうちの少なくとも1つを含むことができる。開口を通して導入された液体の少なくとも一部は反応物を含み、これにより、ワークピースの表面上の液体の流れが反応物の補充をもたらし、ひいては、より効率的な処理をもたらす。ワークピースの表面処理は、ワークピースの一方の表面のみまたは両方の表面で行うことができるが、液体の流れは両方の表面にわたって存在している。
【0012】
一実施形態では、デバイスは、ワークピースに電気めっき、例えばパルスめっきを施すように構成されたセルを形成するためのものである。
【0013】
ワークピースは、プレートまたは箔であってよい。ワークピースは、装置を介してリールからリールへ搬送される箔とは対照的に、特に別個のプレートまたは箔片であってよい。このデバイスは、例えば10~100μmのオーダーの厚さを有する、比較的肉薄で比較的可撓性の平形のワークピースを処理するための装置に特に適している。なぜならば、このようなワークピースはより湾曲しやすいからである。しかしながら、デバイスは、より肉厚のワークピースを処理するための装置にも使用することができる。
【0014】
ワークピースは、第1の壁と第2の壁との間の中心平面内で第1の方向に移動可能である。第1の方向は、本明細書では長手方向とも呼ばれるが、単に移動方向によって定義される。第1の方向は、デバイスまたは液体が導入される空間の最大寸法に対応する必要はない。
【0015】
デバイスは、第1の壁と第2の壁とを備える構造を備えている。これらの第1の壁と第2の壁とは、結合したり、または単一のアセンブリの一部を形成したりする必要はない。しかしながら、第1の壁および第2の壁は、壁同士の間に導入される液体へのアクセスが可能となる空間の少なくとも一部を区画する互いに向かい合った表面同士を提示するように取り付けられている。液体透過性の構造を壁同士の間に挿入することができる。しかしながら、通路を除いて、壁は液体に対して不透過性であるため、壁は障壁を形成する。第1の壁および第2の壁は、壁同士の間の空間に液体を導入するための開口に対して逆流障壁として機能する。したがって、第1の壁および第2の壁は、壁同士の間に導入された液体へのアクセスが可能となる空間の境界の一部を形成する。そのような液体が、第1の壁および第2の壁の、中心平面に最も近い側から、第1の壁および第2の壁の互いに反対の背面側に直接的に流れることは防止されるが、液体は、少なくとも1つのポンプを備える再循環システムによって収集され、加圧液体として戻すことができる。
【0016】
第1の壁および第2の壁を貫通して通路が設けられており、各通路は、第1の壁と第2の壁との間の空間に液体を導入するための複数の開口のそれぞれ1つに液体を導くように配置されている。液体を導入するための開口は、中心平面の互いに反対の側で中心平面に面して設けられている。したがって、流れの方向は、主に排出開口に向かっており、そうでない場合、開口の近くでは中心平面に向かっている。そのような流れ場を確立するために、開口は、それぞれの通路の端部で表面に画定することができる。開口が、表面から突出しているノズルの遠位端部で画定されている場合、これらのノズルは、関係する壁が依然として逆流障壁として機能するように、表面から比較的短い距離だけ突出している。
【0017】
開口は、第1の方向と、第1の方向を横切る第2の方向、または横方向とに分配されているので、加圧液体は、壁の表面にわたって複数の箇所に導入される。これにより、液体の流れが排出開口に向かって反対の横方向に加速する。動作中、排出開口は、デバイスを通って移動するワークピースの側縁部に位置する。ワークピースが移動可能となる空間が、その空間の長手方向の端部で閉じられている範囲に応じて、第1の方向への流れは制限されるかまたは第1の方向への流れはまったく存在しない。
【0018】
中心平面から反対側の表面の1つに向かって逸脱する平形のワークピースのセクションは、その表面とワークピースとの間のすでに狭い間隙を局所的に狭める。その結果、流れが挟まれ、圧力が局所的に上昇する。圧力は、ワークピースの反対側で局所的に減少する。結果として生じる力は、ワークピースセクションを中心平面に向かって戻す傾向がある。ノズルオリフィスに近づくように移動するワークピースセクションは局所的な衝撃にさらされるが、このセクションを中心平面に戻す正味の力は受けないため、この復元効果は、拡がり噴流をワークピースの表面に向けるノズルでは実現することができない。これは、ノズルのすぐ後ろに逆流障壁が存在しないためである。
【0019】
対照的に、本デバイスでは、ワークピースは、いずれかの側での液体の流れによって実質的に中心平面に維持される。結果として、ワークピースが移動可能となる空間が、比較的低い高さを有することができる。したがって、循環させられる液体の量が比較的少なく、デバイスが比較的コンパクトになる。ワークピースの表面とデバイスとの間の意図しない接触が回避される。ワークピースの側縁部から離れるようにワークピースの表面に接触する中実のガイド要素は、少なくともデバイスの長手方向端部同士の間では省くことができる。ワークピースは、第2の横方向の張力下で保持される必要はない。
【0020】
液体の排出開口は、第2の方向で見て空間の互いに反対の側に画定されており、空間の第1の方向における範囲に沿って設けられているので、液体の流れは、中間から両側の横方向に外側に向けられる。流れがワークピースの一方の縁部から第2の方向の反対側の縁部にまでしかない場合、肉薄のワークピースは、特にワークピースがそれらの縁部の1つのみで支持されている場合、風を受けた旗のようにはためき始めてしまうはずである。
【0021】
前述のように、デバイスの一実施形態では、開口は、それぞれの通路の端部で第1の壁および第2の壁の表面に画定されている。
【0022】
つまり、通路は実質的に第1の壁と第2の壁との貫通孔である。開口の通路端部は、少なくとも壁の表面と同一平面を成している。これは、第一に、所望の流れ場を確立するのに役立つ。第二に、第1の壁と第2の壁とを互いに近づけて位置決めすることができる。
【0023】
一実施形態は、第1の液体分配デバイスと第2の液体分配デバイスとを備え、第1の壁および第2の壁は、第1の液体分配デバイスの壁および第2の液体分配デバイスの壁をそれぞれ備え、液体分配デバイスは、空間が液体分配デバイス同士の間に延在するように取り付けられている。
【0024】
この実施形態は、比較的少数の部品を有している。
【0025】
デバイスの一実施形態では、通路の入口を横切って第2の方向に延在する少なくとも1つの液体分配空間が、第1の壁および第2の壁のうちの少なくとも一方の、空間と反対の側に画定されている。
【0026】
特に、第1の壁の、中心平面の方向を向いた側と反対の側に、第1の液体分配空間が存在してよく、第2の壁の、中心平面の方向を向いた側と反対の側に、第2の液体分配空間が存在してよい。デバイスが第1の液体分配デバイスと第2の液体分配デバイスとを備える場合、液体分配空間は、液体分配デバイスのそれぞれのチャンバ内に画定することができる。液体分配空間は、第1の壁と第2の壁とを貫通する通路の上流側の液体圧力を均等にする。したがって、各液体分配空間は、一般的に、複数の通路の入口を横切って第1の方向および第2の方向に延在している。各液体分配空間は、例えば、その液体分配空間が画定されている側の壁の第1の方向および/または第2の方向に実質的に所定の範囲にわたって延在することができる。
【0027】
この実施形態の特定の例では、液体分配空間は、液体分配空間が壁の縁部に向かって先細になるように壁に対して傾斜した障壁によって区画されている。
【0028】
液体が液体分配空間の一方の側の液体分配空間に導入されるだけでよいという効果がある。液体は、液体分配空間の一方の縁部で、またはその近くで、かつ一般的にそれに対して平行に、第1の方向または第2の方向に延在する1つ以上の細長い開口を通して導入することができる。液体分配空間は、反対側の縁部に向かって(第1の壁または第2の壁に対して相対的に)高さが減少する。結果として、開口を横切る液体の比較的均一な出口速度が、液体分配空間の複数の縁部に沿って液体分配空間に液体を圧送するための液体入口を設けることなく実現される。
【0029】
空間に対して、第1の壁および第2の壁のうちの少なくとも一方の反対側に液体分配空間が画定されるデバイスの実施形態の一例は、少なくとも1つの拡がり液体導管であって、液体供給導管に接続可能である入口を一方の側に有し、拡がり液体導管の幅に沿った複数の箇所で液体分配空間と液体連通している反対の側に向かって拡幅している、少なくとも1つの拡がり液体導管を備える。
【0030】
この実施形態は、ポンプから液体を搬送する管状導管への限られた数の接続部のみを必要とする。それにもかかわらず、液体分配空間の縁部に沿った均一な流れが実現される。一実施形態では、拡がり導管には、その長さの少なくとも一部に沿って、例えば、拡がり導管のより広い端部に、流れガイドを設けることができる。これは、乱流を回避するのに役立つ。拡がり液体導管の幅に沿った複数の箇所での液体分配空間との液体連通は、拡がり液体導管の幅に沿って分配された複数の別個の開口を介することができる。代替的に、単一の開口が、拡がり液体導管の幅の大部分に沿って、例えば、拡がり液体導管の幅の少なくとも90%または少なくとも95%に対応する実質的に全幅に沿って延在することができる。
【0031】
第1の液体分配デバイスと第2の液体分配デバイスとを備え、第1の壁および第2の壁が、それぞれ第1の液体分配デバイスの壁および第2の液体分配デバイスの壁を備え、空間が液体分配デバイス同士の間に延在するように液体分配デバイスが取り付けられているデバイスのこの実施形態の例では、拡がり液体導管および液体分配空間は、第1の液体分配デバイスおよび第2の液体分配デバイスのうちの一方のハウジング内のチャンバ内で、チャンバ内に延在する障壁によって画定されている。
【0032】
これにより、異なる構成要素間のシール接続部が比較的少なく、ひいては漏れのリスクが比較的低い、小型の構造がもたらされる。
【0033】
デバイスの一実施形態では、排出開口のうちの少なくとも一方は、互いに対向する液体不透過性の部分同士の間、例えば第1の壁の縁部と第2の壁の縁部との間に空間の第1の方向の範囲に沿って延在する単一の間隙によって形成されている。
【0034】
ワークピースの縁部セクションを、排出開口を通って延在させ、第1の壁と第2の壁との間の空間の外側に保持することができるか、またはワークピースの縁部でワークピースを保持するための搬送デバイスの少なくとも一部が、排出開口を通って第1の壁と第2の壁との間の空間内に延在することができるという効果がある。後者の場合、ワークピースを保持する部分は、デバイス内でワークピースを長手方向に移動させるのに効果的であり得る。前者の場合、ワークピースを保持する部分は、ワークピースがデバイス内を移動するときに少なくともワークピースを支持することができるが、ワークピースを保持する部分は、ワークピースをデバイス内で移動させることもできる。
【0035】
一実施形態では、各排出開口は、最大で100mm、例えば、最大で50mmまたはさらには40mm未満の高さを有している。
【0036】
これに関連して、高さという用語は、中心平面を横切る寸法を指す。
【0037】
高さが比較的低いことにより、ワークピースのセクションが中心平面から移動したときに中心平面に戻す効果を、高々10m/s、例えば8m/s未満またはさらには5m/s未満の流速で実現することが可能になる。最小流速は、例えば、0.1m/sまたは0.5m/sにすることができる。
【0038】
一実施形態は、中心平面と、第1の壁および第2の壁のうちの一方との間の平面内に延在する少なくとも1つの液体透過性の電極、例えば平形の電極をさらに備える。
【0039】
この実施形態は、電気めっきセル用である。特に、中心平面と第1の壁との間の平面内に延在する第1の液体透過性の電極、例えば第1の平形の電極と、中心平面と第2の壁との間の平面内に延在する第2の液体透過性の電極、例えば平形の電極とが存在してよい。比較的肉薄のワークピースでさえ起伏によって1つ以上の電極に近づきすぎるリスクは、比較的低い。これにより、物理的な接触による損傷のリスクが低くなり、めっきの厚さが確実に均一になる。一実施形態では、電極はメッシュを備えることができる。各電極は、電極の平面に位置する相互に電気的に絶縁されたセグメントに細分化することができる。そのような構成の例およびその効果は、例えば、国際公開第2003/018878号に記載されている。
【0040】
一実施形態は、中心平面と、第1の壁および第2の壁のうちの一方との間の平面内に延在する少なくとも1つの液体透過性の遮蔽構造体、例えば平形の遮蔽構造体をさらに備える。
【0041】
一実施形態では、そのような遮蔽構造体は、中心平面の各側に設けられる。電極が平面のそれぞれの側に設けられる場合、遮蔽構造体は、中心平面とその電極との間に位置決めされる。したがって、ワークピースの表面と電極との間の接触は、すべての状況下で防止される。さもないと、ワークピースおよび電極のうちの一方が一般的にアノードを形成し、もう一方がカソードを形成するため、このような接触が短絡につながってしまう。各遮蔽構造体は、一般的に、その遮蔽構造体が設けられる中心平面の側で中心平面に最も近い中実構造になる。各遮蔽構造体は、電気絶縁材料、例えばポリマー材料から作製することができる。遮蔽構造体を実施する1つの方法は、電気絶縁材料のプレートに、比較的多数の比較的小さな直径の貫通通路を設けることである。このような通路の面密度は、第1の壁および第2の壁に関する開口の面密度よりも少なくとも1桁大きくなる。通路の直径はそれに応じて小さくなる。均一な電流密度を実現するために、特定の箇所にある2つ以上の隣接する通路は、そうでなければそれらを分離する材料を除去することによって、連結することができる。代替的または付加的に、1つ以上の通路は塞がれてもよい。一例では、1mm未満、例えば100μm未満またはさらには50μm未満の厚さを有するワークピースでの使用を目的としたデバイスでは、中心平面と遮蔽構造体との間の距離は、2mm~15mm、例えば10mm未満またはさらには8mm未満である。1つ以上の遮蔽構造体は、別個の平形のワークピース(つまり、連続ウェブではなくシート)を処理する場合に特に役立つが、それは、ワークピースが本質的に支持されていない自由縁部でセルに入るためである。その縁部でのワークピースのセクションは、移動方向に湾曲する場合がある。
【0042】
デバイスの一実施形態では、開口に延在するノズルが、第1の壁および第2の壁に設けられている。
【0043】
一般的に、それぞれのノズルは、各開口に設けられる。ノズルは、壁に形成されてよく、またはノズルは、壁の穴に挿入され、壁に対して所定の位置に固定された別個のデバイスであってもよい。一般的に、開口はノズルの出口オリフィスに対応する。しかしながら、一実施形態では、ノズルデバイスの出口オリフィスは、壁の表面に形成された開口に対していくらか後退させることができる。ノズルデバイスは、それらが配置されている穴からわずかに突出していてよい。しかしながら、別個のノズルデバイスは、それらが挿入される壁の穴を完全に満たす。したがって、別個のノズルデバイスが設けられる場合、液体は、第1の壁および第2の壁に挿通されたこれらのノズルデバイスを迂回することができない。ノズルによって、空間に進入する液体の流れを形付けることが可能となる。なぜならば、ノズルが円筒状の通路と異なっているからである。
【0044】
この実施形態の特定の例では、ノズルのオリフィスが、第2の方向に第1の方向よりも大きな寸法を有する細長い形状を有する。
【0045】
これは、特に第1の方向において、開口同士の間の相互間隔を極端に減少させることを必要とせずに、(中心から外側に向かって、ワークピースの表面に沿った排出開口までの)必要な接線方向の流れ場を提供する効果を有する。液体によるワークピース表面の比較的均一な被覆が実現される。ノズルは、例えば、ファンノズルであってよく、すなわち、スリット形状のオリフィスを備えたノズルであってよい。この実施形態の特定の例では、デバイスはまた、中心平面と、第1の壁および第2の壁のうちの一方との間の平面内に延在する少なくとも1つの液体透過性の電極、例えば平形の電極を備え、電極は、それぞれのノズルオリフィスと整列する細長い液体透過性の窓、例えば開口を備えている。この実施形態では、電極内の液体透過性の窓は、比較的小さな面積を有することができる。電極は、窓が設けられている箇所では非導電性であるため、非導電性の窓を考慮するために必要な補償手段は少なくて済む。特に、電極と中心平面との間に遮蔽構造体も設けられている場合、ワークピースの領域にわたって均一な電流密度を実現するための遮蔽構造体の適応は、より少なくて済む。
【0046】
デバイスの一実施形態では、開口は、少なくともほぼ第2の方向に延在する行として整列させられている。
【0047】
これは、中心から排出開口への均一な流れを提供することに貢献する。一般的に、各行には少なくとも3個、例えば少なくとも5個または少なくとも10個の開口が存在する。開口が整列しているため、各行は直線状に延在している。開口は、基本的に第2の方向(通常の製造公差内)に延在する行として整列させられているため、行は互いに平行に延在している。
【0048】
開口が、少なくともほぼ第2の方向に延在する行として整列させられている実施形態の例では、開口は、各行内に均一に分配されている。
【0049】
つまり、開口同士の間の間隔は、行内のすべての開口で少なくともほぼ同一であり、各行には少なくとも3個の開口が存在する。一実施形態では、間隔は、複数の、例えば大部分の行について同一である。
【0050】
開口が、少なくともほぼ第2の方向に延在する行として整列させられていて、開口が各行内に均一に分配されている実施形態の特定の例では、各行の開口は、少なくとも1つの別の行の開口に対して第2の方向にオフセットされている。
【0051】
これは、ワークピースが電気化学的処理に供される第1の方向の縞を避けるのに役立つ。
【0052】
開口が、少なくともほぼ第2の方向に延在する行として整列させられていて、開口が、各行内に均一に分配されていて、各行の開口が、少なくとも1つの別の行の開口に対して第2の方向にオフセットされている実施形態の特定の例では、開口は、第1の方向に対して鋭角をなして延在する列として整列させられている。
【0053】
したがって、ほぼ均一な流れ場を確立することと、ワークピースの縞を防止することとの間の妥協が実現される。
【0054】
デバイスの一実施形態では、第1の壁および第2の壁は、(i)1m2あたり少なくとも460個の開口の面密度および(ii)第2の方向(x)において1mあたり少なくとも16個の開口の線密度のうちの少なくとも一方における開口を有する。
【0055】
一効果として、1~100μmのオーダー、例えば5~50μmのオーダーの厚さを有する比較的肉薄の別個のワークピース(すなわち、連続ウェブではなくシート)を中心平面に比較的良好に維持しながら処理することが可能となる。これは、中心平面(ここでは搬送平面である)が、実質的な水平な平面になるように構成されたデバイスに特に当てはまる。
【0056】
中心平面が実質的に垂直な平面である装置で使用するように構成されたデバイスの場合、第1の壁および第2の壁は、(i)1m2あたり少なくとも230個の開口の面密度および(ii)第2の方向(x)において1mあたり少なくとも8個の開口の線密度のうちの少なくとも一方における開口を有することができる。開口の数を削減すると、デバイスの製造コストが削減される。中心平面、すなわち搬送平面が実質的に垂直な平面である場合、重力は、平面から移動してしまったワークピースのセクションを平面内に戻すのに役立つ。したがって、所定の厚さのワークピースに必要な開口は少なくなる。
【0057】
別の態様によれば、本発明による平形のワークピースを湿式処理するための装置は、特許請求の範囲のいずれか1項記載の少なくとも1つのデバイスを備える。
【0058】
装置は、1つ以上のセルを備える。少なくとも1つのセルは、本発明による1つ以上のデバイスを備える。実施される処理の種類をセル間で異ならせることができる。
【0059】
装置は、液体を本発明によるデバイスの開口または各デバイスの開口に圧送するための少なくとも1つのポンプを含むことができる。したがって、ポンプは加圧液体の供給源として機能する。装置は、デバイスの排出開口または各デバイスの排出開口で特定の最小流速を実現するように、ポンプまたは各ポンプを駆動するように構成することができる。
【0060】
デバイスが、排出開口のうちの少なくとも1つが、表面同士の間の空間の第1の方向の範囲に沿って、対向する液体不透過性の部分同士の間、例えば第1の壁の縁部と第2の壁の縁部との間に延在する単一の間隙によって形成されているデバイスである装置の一実施形態において、装置は、搬送デバイスであって、ワークピースの縁部でワークピースに解離可能に係合して、間隙の長さに沿って移動するように案内される少なくとも1つのクランプと、搬送デバイスを移動させるための少なくとも1つの駆動装置とを備えた搬送デバイスをさらに備える。
【0061】
したがって、ワークピースをデバイス通して移動させるためには、ワークピースがその側縁部の一方または両方で接触させられさえすればよい。装置は、一実施形態では、前述の種類の一連の2つ以上のデバイスと、一連のデバイス全体内でワークピースを移動させるための単一の搬送デバイスとを含むことができる。搬送デバイスは、第1の方向に移動するように案内される。
【0062】
別の態様によれば、本発明による装置を操作する方法は、ワークピースをデバイスを通して中心平面において移動させる間、開口と排出開口とを通して液体を圧送することを含む。
【0063】
ワークピースがデバイスを通して移動する間、ワークピースは、ワークピースの表面に沿って流れる液体の作用によって、実質的に中心平面に保持される。特に、中心平面から第1の壁および第2の壁のうちの一方に向かって移動するワークピースの任意のセクションが、そのセクションを中心平面に向かって戻す傾向にある局所的な力を生じさせることを保証するのに十分な速度で液体が圧送される。ワークピースは別個のワークピースであり、つまり連続ウェブまたは準連続ウェブではなく、シートである。ワークピースは、一般的に、パネルまたは箔である。
【0064】
別の態様によれば、本発明は、半導体デバイス、例えば光電子デバイスを製造するための本発明によるデバイスおよび/または装置の使用を提供する。
【0065】
デバイスおよび/または装置は、特に、光電池デバイスを製造するために使用することができる。そのようなデバイスは、可撓性のあるデバイスであってよい。デバイスおよび/または装置は、例えば、ダマシン電気めっき処理において相互接続部を製造するために、かつ/または例えば、トレンチおよびビアのうちの少なくとも一方を充填するために使用することができる。
【0066】
特定の実施形態では、デバイスおよび/または装置は、基板上、例えばシリコン基板上、酸化スズ(例えば、フッ素ドープ酸化スズFTO、インジウム酸化スズITO)などの透明導電性酸化物TCOで被覆されたガラス基板上、またはモリブデン被覆されたステンレス鋼基板上に、1つ以上のデバイス層または前駆体層を堆積させるために使用される。デバイスおよび/または装置が、デバイス層または前駆体層を堆積させるために使用される場合、ワークピースは、その後、制御された雰囲気中での更なる処理ステップ、例えば、アニーリング、レーザースクライビング、フォトレジストパターニングなどに供することができる。この点で、ワークピースは比較的薄くすることができるが、別個のワークピースにすることができることが有用である。デバイス層、またはデバイス層を形成するための前駆体層を堆積させるためのロールツーロール処理は必要ない。
【0067】
吸収体層(またはそれらの前駆体)と支持層との両方を堆積させることができる。
【0068】
この方法で製造することができる光電池デバイスは、CdS/CdTeをベースにした太陽電池デバイスと、ZnTe、ZnSe、ZnS、ZnOとして太陽電池基板を組み込んだ太陽電池デバイスと、CuInSe2、Cu2ZnSnS4、あるいはCuInGaSe2、またはインジウムドープ酸化スズとしてめっきベースを有するドープシリコン表面を、ベースにした太陽電池デバイスとを含む。これらの例および更なる例は、例えば、欧州特許第2709160号明細書に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明は、添付の図面を参照してさらに詳細に説明される。
【
図1】平形のワークピースを電気めっきするためのセルの一部の断面図である。
【
図2】セルの一部と、セル内を循環する電解質の流れ方向を示す詳細な概略断面図である。
【
図3】ワークピースがセルを通って移動可能である2つの壁のうちの一方の平面図である。
【
図4】セルの一部を形成する2つの液体分配デバイスのうちの一方の平面断面図である。
【0070】
実施形態の説明
平形のワークピースを湿式処理するための装置のセルの一部を形成するためのデバイス1は、第1の液体分配デバイス2aと、第2の液体分配デバイス2bとを含む。
【0071】
本明細書では長手方向とも呼ばれる第1の方向yと、本明細書では横方向(
図4)とも呼ばれる、長手方向yを横切る第2の方向xとを定義することが都合がよい。使用中、平形のワークピースは、液体分配デバイス2a,2bの間の空間3(
図1)を通って第1の方向y(
図4)に導かれる。ワークピースは、実質的に、第1の液体分配デバイス2aと第2の液体分配デバイス2bとの中間の中心平面4(
図2)に延在している。この例では、中心平面4は一般的に水平な平面である。
【0072】
図示の例では、デバイス1は、電気めっきセルの一部を形成するためのものである。したがって、デバイス1は、第1のアノード5aおよび第2のアノード5bと、第1の遮蔽構造体6aおよび第2の遮蔽構造体6bとをさらに備える。
【0073】
遮蔽構造体6a,6bは、例えば、ポリマー材料などの電気絶縁材料から作製された格子を備えることができる。遮蔽構造体6a,6bは液体透過性である。アノード5a,5bは、例えば、金属、メッシュ、または他の導電性の格子構造体から作製することができる。したがって、アノード5a,5bもまた、液体に対して透過性である。
【0074】
2つのアノード5a,5bが図面に示されているが、これらのアノード5a,5bは、第1の方向yの空間3の範囲を越えて延在する必要はない。代わりに、単一の平面に一連のアノードが、第1の方向yに次々に存在してよい。さらに、各アノード5a,5bは、第2の方向xで相互に電気的に絶縁されたセグメントに細分化することができる。
【0075】
搬送デバイス7(
図1)は極めて概略的に示されているにすぎない。搬送デバイス7は、ワークピースを、搬送デバイス7の一方の側縁部に保持するためのクランプ8を備える。ワークピースを保持するために、複数のこのような搬送デバイス7を設けることができる。駆動装置9は、搬送デバイス7を第1の方向に動かすように配置されている。駆動装置9は、例えば、エンドレスベルトまたはエンドレスチェーンであってよい。電気めっき処理では、ワークピースはカソードとして機能する。クランプ8または各クランプ8は、ワークピースと電気的に接触して、ワークピースとアノード5a,5bとの間に電圧差を確立するように配置されている。
【0076】
図示の実施形態では、ワークピースは一方の縁部のみに保持されている。他の実施形態では、ワークピースは、第2の方向xで見て、対向する縁部の両方で保持することができる。特に、ワークピースは、空間3を越えて第2の方向xに延在し、ワークピースの縁部でワークピースに接触するホイールまたはベルトによって駆動することができる。
【0077】
液体分配デバイス2a,2bのそれぞれは、それぞれの液体供給導管11a,11bに接続するための液体入口10a,10bを備えるハウジングを備える。液体供給導管11a,11bを通して液体を圧送するために、1つ以上のポンプ(図示せず)が設けられる。
【0078】
チャンバ12a,12bは、ハウジングによって画定される。それぞれの複合壁13a,13bは、各ハウジングのそれぞれのハウジング壁14a,14bと、ハウジング壁14a,14bに配置された更なる壁15a,15bとを備える。アノード5a,5bおよび遮蔽構造体6a,6bがそうであるように、壁13a,13bの少なくとも向かい合う表面は、中心平面4に対して実質的に平行である。各複合壁13a,13bの構成要素壁14,15は、互いに異なる材料から作製することができる。例えば、更なる壁15a,15bは、電気絶縁材料から作製することができる。ハウジング壁14a,14bは、機械的に強固な材料から作製することができる。代替的な実施形態では、更なる壁15a,15bは省略される。複合壁13a,13bが、中心平面4から液体分配デバイス2a,2bに向かう液体の流れに対する障壁を形成する限り、各複合壁13a,13bの構成要素壁14,15のうちの一方のみが液体に対して不透過性である必要がある。
【0079】
各チャンバ12a,12bは、内壁16a,16b(
図1)によって、第1の方向yおよび第2の方向xを横切る第3の方向z(
図1および
図2)で細分化されている。各内壁16a,16bは、相互間に空間3が画定されている壁13a,13bに対して傾斜している。液体分配空間17a,17bは、内壁16a,16bと、空間3に最も近い壁13a,13bとの間に画定される。一実施形態では、液体分配空間17a,17bは、第1の方向yにおける壁13a,13bの実質的に全範囲にわたって、第1の方向yに延在している。別の実施形態では、複数の隣接する液体分配空間17a,17bが、第1の方向yに並んで設けられ、各液体分配空間17a,17bは、壁13a,13bの一方の側縁部から反対側の側縁部まで第2の方向xに延在することができる。
【0080】
液体分配空間17は、一方の側端部で閉じられ、反対側の側端部に入口を有している。液体分配空間17は、液体分配空間17の高さが、閉じられた端部に向かって減少するように先細になっている。
【0081】
内壁16a,16bの自由端部とチャンバ側壁19a,19bとの間に少なくとも1つの間隙18a~18f(
図1および
図4)が存在する。少なくとも1つの間隙18a~18fは共に、第1の方向yにチャンバ12a,12bの範囲に沿って延在している。各間隙18a~18fは、チャンバ12a,12bに画定された、液体分配空間17と拡がり液体導管20a,20bとの間の液体連通を提供する。拡がり液体導管20a,20bの入口側は、液体入口10a,10bに接続されている。出口側は間隙18a~18fに位置している。図示の実施形態では、流れガイド21a~21c(
図3)が出口側に設けられている。流れガイド21a~21cは、拡がり液体導管20a,20bを平行な通路に、この例では4つの通路に細分化する。拡がり液体導管20の側壁22a,22bは、図示の例では直線状であるが、代替的に湾曲させることができる。
【0082】
液体分配デバイス2a,2bの間の空間3が配置されている壁13a,13bのそれぞれには、空間3に液体を導入するための開口で終端する複数の通路23a,23b,24a,24b(
図2)が設けられている。
【0083】
図示の実施形態では、通路23a,23b,24a,24bは、それらの長手方向軸線が中心平面4に対して実質的に垂直になるように配向されている。
【0084】
図示の実施形態では、更なる壁15a,15bは、例えばプラスチック製の支持壁である。ノズルデバイス25a~25d(
図2)が挿入される更なる壁15a,15bには、ねじ山付き貫通孔が設けられている。代替的に、ノズルデバイス25a~25dを貫通孔に圧入することができる。ノズルデバイス25a~25dは、液体がノズルデバイス25a~25dを通してのみ更なる壁15a,15bを通過することができるように、貫通孔を完全に塞いでいる。したがって、通路23a,23b,24a,24bのそれぞれのセクションは、ノズルデバイス25a~25dのうちの1つによって画定される。
【0085】
ノズルデバイス25a~25dは、各ノズルデバイス25a~25dから出現する液体の流れを形付けるファンノズルデバイス25a~25dである。この目的のために、狭窄部が、第1の方向yよりも第2の方向xにより大きな寸法を有する細長い形状を有するオリフィス26(
図3)を形成する。同じことが、液体が空間3に進入する出口開口27の場合にも当てはまる。この出口開口27は、図示の実施形態ではスリット形状である。
【0086】
間隙28a,28bは、壁13a,13bの側縁部で壁13a,13bの間に画定される。これらの間隙28a,28bはそれぞれ、実質的に壁13a,13bの範囲に沿って第1の方向yに延在している。
【0087】
したがって、液体は、使用中、中間から第2の方向xに外向きに流れる。液体分配空間17および拡がり液体導管20は、液体が比較的均一な速度で空間3に導入されることを保証し、その結果、流れは、ワークピースの側縁部に向かって加速する。結果として、セルフセンタリング効果が実現され、ワークピースに接触する支持部を必要とせずに、ワークピースが中心平面に維持される。それにもかかわらず、遮蔽構造体6a,6bは、あらゆる状況下でアノード5a,5bとの接触が防止されることを保証する。
【0088】
デバイス1の一例は、最大100μm、例えば、最大60μm、最大50μm、またはさらには最大10μmの厚さを有するワークピース用に構成されている。間隙28a,28bの高さの典型的な寸法は2~50mmの範囲である。液体は、間隙28a,28bでの速度が少なくとも0.1m/s、例えば少なくとも0.5m/sであるような速度で圧送される。速度は一般的に10m/s未満であり、5m/s未満であってもよい。
【0089】
遮蔽構造体6a,6bは、(中心平面4に対して垂直な方向に)少なくとも5mm、最大で25mm、例えば、最大で20mm、またはさらには15mm未満で離隔している。各アノード5a,5bから中心平面4までの距離は、少なくとも8mm、例えば、少なくとも10mmであり、一般的に、最大で15mm、例えば、最大で12mmである。
【0090】
図示の実施形態では、ノズルデバイス25a~25dは、第2の方向xに対して実質的に平行に延在する行として配置されている。開口の間、ひいてはノズルデバイス25a~25dの間の相互間隔は、各行内で等しい。図示の実施形態では、この間隔もすべての行で同一である。しかしながら、第1の方向yにおけるそれぞれの次の行のノズルデバイス25a~25dは、前の行のノズルデバイス25a~25dに対して第2の方向xにオフセットされている。オフセットは行の各ペアで同一であり、第1の方向yの行同士の間の間隔も均一である。結果として、ノズルデバイス25a~25dは、第1の方向y(
図3)に対してわずかな角度αをなして列状に配置されていると言うことができる。更なる結果は、ノズルデバイス25a~25dの数が、10個または11個になる可能性があるということである。間隔は、第2の方向xにおいて1mあたり少なくとも16個の開口27の線密度を実現するようなものである。図示の実施形態では、面密度は、1m
2あたり少なくとも460個、例えば、1m
2あたり少なくとも600個である。したがって、第1の方向yの壁13a,13bの寸法は、最大で500mm、例えば、400~450mmである。第2の方向xの寸法は、最大で700mm、例えば600~650mmである。これらの寸法では、壁13a,13bごとに少なくとも120個の開口27が存在する。
【0091】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内で変更することができる。例えば、本例の装置は、水平搬送平面(本明細書では中心平面4と称する)を有する装置であるが、垂直搬送平面を有する装置でも同様の効果を実現することができる。そのようなデバイスにおいて、本明細書に記載の流れ場は、間隙28a,28bのうちの1つの上部から出現する液体が自由空間に噴出しないように、デバイス1を槽に比較的深く沈めることによって実現可能である。垂直搬送平面を有する実施形態では、第1の方向xの寸法は、より大きく、例えば、最大で1300mmであってよい。単位面積あたりのノズルデバイス25a~25dの最小個数、および第2の方向xの最小線密度は、ワークピースを中心平面内に比較的良好に保持する効果を放棄することなく、水平搬送平面を有する実施形態について上記で付与された値の約半分とすることができる。
【0092】
連続して配置された複数のデバイス1を備える装置では、遮蔽構造体6a,6bの間の間隔は、第1の方向yにおいて減少してよい。
【0093】
液体が貫流できる限り、液体がアクセスできる空間は完全に空である必要はない。したがって、その空間のセクションは、多孔質構造体、例えば発泡体で充填することができる。これは、例えば、壁13a,13bとアノード5a,5bとの間、かつ/またはアノード5a,5bと遮蔽構造体6a,6bとの間のスペーサとして機能することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 デバイス
2a,2b 液体分配デバイス
3 空間
4 中心平面
5a,5b アノード
6a,6b 遮蔽構造体
7 搬送デバイス
8 クランプ
9 駆動装置
10a,10b 液体入口
11a,11b 液体供給導管
12a,12b チャンバ
13a,13b 第1の複合壁および第2の複合壁
14a,14b ハウジング壁
15a,15b 更なる壁
16a,16b 内壁
17a,17b 液体分配空間
18a~18f チャンバ内の間隙
19a,19b チャンバ側壁
20a,20b 拡がり液体導管
21a~21c 流れガイド
22a,22b 拡がり導管側壁
23a,23b 第1の通路
24a,24b 第2の通路
25a~25b ノズルデバイス
26 オリフィス
27 出口開口
28a,28b 間隙
【国際調査報告】