(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】抗体アイソタイピングおよび定量化のためのLC-MS方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20221109BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20221109BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N33/48 Z
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516607
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 US2020051083
(87)【国際公開番号】W WO2021055486
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】シュ シャオビン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シャオシャオ
(72)【発明者】
【氏名】チュウ ハイボ
(72)【発明者】
【氏名】リ ニン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA10
2G041FA11
2G041FA12
2G041GA03
2G041GA09
2G045BB35
2G045DA37
2G045GC17
(57)【要約】
本発明は、免疫捕捉および/または液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)分析に基づく抗体のアイソタイピングおよび定量化のための方法およびシステムを提供する。これらの抗体は、医薬品の投与によって誘導される。免疫捕捉方法は、試料を固体支持体に接触させることを含み、医薬品は、固体支持体に直接架橋されている。MS分析は、ペプチドマッピングの実行、MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するための固有のペプチドおよび断片イオンの選択、衝突エネルギーの最適化、ならびにLLOQ(定量化の下限)の決定を含む。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法であって、以下を含む、前記方法:
前記試料を固体支持体に接触させることであって、少なくとも1つの医薬品が前記固体支持体に結合されている、前記接触させることと、
少なくとも1つの移動相溶液を使用して前記固体支持体を洗浄して、少なくとも1つの溶出液を提供することと、
前記溶出液から前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離することと、
単離された前記ペプチドまたはタンパク質を変性溶液および/または酵素消化反応で処理して、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を生成することと、
質量分析計を使用して、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分を同定すること。
【請求項2】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスが決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質が、質量分析計を使用して定量化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬品が、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、前記固体支持体に結合した前記医薬品に選択的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記ヒト抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記哺乳動物抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSK、GLPAPIEK、WYVDGVEVHNAK、GLPSSIEK、DASGVTFTWTPSSGK、DASGATFTWTPSSGK、VSVFVPPR、またはDFTPPTVKである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSR、GPSVFPLASCSR、GPSVFPLVSCSR、GPSVFPLASSSR、QIEVSWLR、またはDPSGATFTWTPSSGKである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、前記固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が酢酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、室温で約1時間、前記固体支持体とともにインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、塩および界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、約6~9のpH範囲を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固体支持体が、塩および界面活性剤を含む前記少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの移動相溶液が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記変性溶液が、約5~10Mの尿素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素消化反応の酵素がトリプシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬品が、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して前記固体支持体に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬品が、前記医薬品のリジン残基を使用して前記固体支持体に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記質量分析計が、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記質量分析計が、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記質量分析計が、三連四重極質量分析計である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分が、少なくとも約0.01ng、少なくとも約0.1ng、少なくとも約0.2ng、または少なくとも約0.3ngである、請求項3に記載の方法。
【請求項27】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うステップと、
MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択するステップと、
前記固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択するステップと、
前記固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化するステップと、
その後較正曲線を生成するステップと、
前記較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項28】
試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定または定量化するためのシステムであって、以下を備える、前記システム:
医薬品が結合されている固体支持体と、
前記固体支持体を洗浄するための少なくとも1つの移動相溶液であって、前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離するために、前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を含有する少なくとも1つの溶出液を提供することができる、前記少なくとも1つの移動相溶液と、
単離された前記ペプチドまたはタンパク質から成分を生成することができる変性溶液および/または酵素消化溶液と、
前記単離されたペプチドまたはタンパク質から前記成分を同定または定量化することができる質量分析計。
【請求項29】
前記質量分析計が、前記単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスを同定または定量化することができる、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記医薬品が、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品である、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、前記固体支持体に結合された前記医薬品に選択的に結合する抗体である、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記ヒト抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEである、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記哺乳動物抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAである、請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSK、GLPAPIEK、WYVDGVEVHNAK、GLPSSIEK、DASGVTFTWTPSSGK、DASGATFTWTPSSGK、VSVFVPPR、またはDFTPPTVKである、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSR、GPSVFPLASCSR、GPSVFPLVSCSR、GPSVFPLASSSR、QIEVSWLR、またはDPSGATFTWTPSSGKである、請求項28に記載のシステム。
【請求項36】
前記試料が、前記固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理される、請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
前記溶液が酢酸を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記試料が、室温で約1時間、前記固体支持体上でインキュベートされる、請求項28に記載のシステム。
【請求項39】
前記試料が、塩および界面活性剤をさらに含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項40】
前記試料が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項41】
前記試料が、約6~9のpH範囲を有する、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記固体支持体が、塩および界面活性剤を含む前記少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄される、請求項28に記載のシステム。
【請求項43】
前記少なくとも1つの移動相溶液が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記変性溶液が、約5~10Mの尿素を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項45】
前記酵素消化溶液の酵素が、トリプシンである、請求項28に記載のシステム。
【請求項46】
前記医薬品が、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して前記固体支持体に結合される、請求項28に記載のシステム。
【請求項47】
前記医薬品が、前記医薬品のリジン残基を使用して前記固体支持体に結合される、請求項28に記載のシステム。
【請求項48】
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である、請求項28に記載のシステム。
【請求項49】
前記質量分析計が、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている、請求項28に記載のシステム。
【請求項50】
前記質量分析計が、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる、請求項28に記載のシステム。
【請求項51】
前記質量分析計が、三連四重極質量分析計である、請求項28に記載のシステム。
【請求項52】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うこと、
MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択すること、
前記固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択すること、
前記固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化すること、
その後較正曲線を生成すること、ならびに
前記較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定すること
ができる、請求項28に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、概して、医薬品の投与によって誘導される抗体のアイソタイピングおよび定量化のための方法およびシステムに関する。これらの方法およびシステムは、免疫捕捉および/または液体クロマトグラフィー-質量分析に基づいている。
【背景技術】
【0002】
背景
抗薬物抗体(ADA)は、薬物有効性の低減、内因性タンパク質への交差反応、または治療用タンパク質の薬物動態の変化等のいくつかの臨床的結果の一因となる可能性があるため、医薬品の投与によって誘導される抗体の存在、例えばADAの誘導に起因する、薬物有効性および患者の安全性の懸念がある。FDAは、安全性および有効性に影響する治療用タンパク質製品と関連する有害な免疫学的関連応答に関する免疫応答を評価および軽減するためのリスクベースのアプローチを採用することを推奨している。(Guidance for Industry:Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products,August 2014,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration(非特許文献1))
【0003】
モノクローナル抗体、酵素製品、サイトカイン、成長因子および毒素を含む免疫原性データを評価および報告するために、121のFDA承認生物製剤の処方情報およびFDAの臨床薬理学的レビューが再検討された。最も報告頻度が高かったのは、免疫原性の発生率であった。ADAの臨床的重要性は不明であった。全体的に、製品の全身クリアランスの増加とADAに関連する有効性の低下との間に顕著な一致があった。(Wang et al.,Evaluating and Reporting the Immunogenicity Impacts for Biological Products-a Clinical Pharmacology Perspective.The AAPS Journal.2016;18(2):395-403(非特許文献2))
【0004】
免疫応答の生物学的複雑性は、ADAの薬物動態への影響を定量化するための課題を提示するが、これは、薬物動態曝露が、ADAの作用を評価するための有効性エンドポイントよりも影響を受けやすい可能性があるためである。
【0005】
ADAのアイソタイプを決定し、ADAの存在をさらに定量化する等、ADAを特徴付ける方法の必要性が存在することが理解される。これらの方法は、薬物投与、例えば生物製剤の投与のための薬物動態、有効性および安全性に関連する臨床薬理学における免疫原性影響に関する貴重な情報を提供することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Guidance for Industry:Immunogenicity Assessment for Therapeutic Protein Products,August 2014,U.S.Department of Health and Human Services,Food and Drug Administration
【非特許文献2】Wang et al.,Evaluating and Reporting the Immunogenicity Impacts for Biological Products-a Clinical Pharmacology Perspective.The AAPS Journal.2016;18(2):395-403
【発明の概要】
【0007】
概要
タンパク質医薬品の免疫原性発生は、タンパク質医薬品、例えば、抗薬物抗体(ADA)の投与によって誘導される抗体の存在を特徴付けることの需要の増加をもたらした。ADAの特徴付けデータは、薬物の安全性を向上させるためのタンパク質医薬品の免疫原性の理解を提供することができる。
【0008】
本明細書に開示される例示的実施形態は、医薬品の投与によって誘導される抗体を特徴付ける、同定する、および/または定量化するための方法およびシステムを提供することによって、前述の需要を満たす。本出願の方法およびシステムは、免疫捕捉および/または液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)法を使用するADAのアイソタイピングおよび定量化を提供する。
【0009】
本開示は、少なくとも部分的に、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法であって、以下を含む方法を提供する:試料を固体支持体に接触させることであって、少なくとも1つの医薬品が固体支持体に結合されている、接触させることと、少なくとも1つの移動相溶液を使用して固体支持体を洗浄して、少なくとも1つの溶出液を提供することと、溶出液から少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離することと、単離されたペプチドまたはタンパク質を変性溶液および/または酵素消化反応で処理して、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を生成することと、質量分析計を使用して、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を同定すること。
【0010】
いくつかの例示的実施形態において、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法は、単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスを決定することができる。
【0011】
いくつかの例示的実施形態において、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法は、質量分析計を使用して、単離されたペプチドまたはタンパク質を定量化することができる。
【0012】
他の例示的実施形態において、本出願の方法における医薬品は、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品であり得る。
【0013】
いくつかの態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質は、固体支持体に結合した医薬品に選択的に結合する抗体であり得る。
【0014】
いくつかの態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり得る場合、ヒト抗体のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEであり得る。
【0015】
他の態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり得る場合、哺乳動物抗体のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAであり得る。
【0016】
さらに他の態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSK、GLPAPIEK、WYVDGVEVHNAK、GLPSSIEK、DASGVTFTWTPSSGK、DASGATFTWTPSSGK、VSVFVPPR、またはDFTPPTVKであり得る。
【0017】
他の態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSR、GPSVFPLASCSR、GPSVFPLVSCSR、GPSVFPLASSSR、QIEVSWLR、またはDPSGATFTWTPSSGKであり得る。
【0018】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における試料は、固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理され得、溶液は酢酸を含む。
【0019】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における試料は、室温で約1時間、固体支持体とともにインキュベートされ得る。
【0020】
いくつかの態様において、本出願の方法における試料は、塩および界面活性剤をさらに含む。
【0021】
他の態様において、本出願の方法における試料は、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含み、試料は、約6~9のpH範囲を有する。
【0022】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における固体支持体は、塩および界面活性剤を含む少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄され得る。
【0023】
いくつかの態様において、本出願の方法における少なくとも1つの移動相溶液は、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する。
【0024】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における変性溶液は、約5~10Mの尿素を含む。
【0025】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における酵素消化反応の酵素は、トリプシンであり得る。
【0026】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における医薬品は、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して固体支持体に結合され得、医薬品は、一級アミン-エポキシ反応のための医薬品のリジン残基を使用して架橋により固体支持体に結合され得る。
【0027】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化質量分析計、ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計、または三連四重極質量分析計であり得、質量分析計は液体クロマトグラフィーシステムに結合され得る。
【0028】
いくつかの態様において、本出願の方法における質量分析計は、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができ得る。
【0029】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法における単離されたペプチドまたはタンパク質の成分は、少なくとも約0.01ng、少なくとも約0.1ng、少なくとも約0.2ng、または少なくとも約0.3ngであり得る。
【0030】
いくつかの例示的実施形態において、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法は、質量分析計を使用して、単離されたペプチドまたはタンパク質を定量化することができ得、方法は、単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うステップと、MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択するステップと、固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択するステップと、固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化するステップと、その後較正曲線を生成するステップと、較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定するステップとをさらに含む。
【0031】
本開示は、少なくとも部分的に、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定または定量化するためのシステムであって、以下を備えるシステムを提供する:医薬品が結合されている固体支持体と、固体支持体を洗浄するための少なくとも1つの移動相溶液であって、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離するために、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を含有する少なくとも1つの溶出液を提供することができる、少なくとも1つの移動相溶液と、単離されたペプチドまたはタンパク質から成分を生成することができる変性溶液および/または酵素消化溶液と、単離されたペプチドまたはタンパク質から成分を同定または定量化することができる質量分析計。
【0032】
いくつかの態様において、本出願のシステムにおける質量分析計は、単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスを同定または定量化することができる。
【0033】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける医薬品は、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品であり得る。
【0034】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質は、固体支持体に結合される医薬品に選択的に結合する抗体であり得る。
【0035】
いくつかの態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり得る場合、ヒト抗体のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEであり得る。
【0036】
いくつかの態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり得る場合、哺乳動物抗体のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAであり得る。
【0037】
他の態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSK、GLPAPIEK、WYVDGVEVHNAK、GLPSSIEK、DASGVTFTWTPSSGK、DASGATFTWTPSSGK、VSVFVPPR、またはDFTPPTVKであり得る。
【0038】
さらに他の態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSR、GPSVFPLASCSR、GPSVFPLVSCSR、GPSVFPLASSSR、QIEVSWLR、またはDPSGATFTWTPSSGKであり得る。
【0039】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける試料は、固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理され得、溶液は酢酸を含む。
【0040】
いくつかの態様において、本出願のシステム内の試料は、室温で約1時間、固体支持体とともにインキュベートされ得る。
【0041】
いくつかの態様において、本出願のシステムにおける試料は、塩および界面活性剤をさらに含む。
【0042】
他の態様において、本出願のシステムにおける試料は、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含み、試料は、約6~9のpH範囲を有する。
【0043】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける固体支持体は、塩および界面活性剤を含む少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄され得る。
【0044】
いくつかの態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つの移動相溶液は、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する。
【0045】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける変性溶液は、約5~10Mの尿素を含む。
【0046】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける酵素消化反応の酵素は、トリプシンであり得る。
【0047】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける医薬品は、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して固体支持体に結合され得、医薬品は、一級エポキシ反応のための医薬品のリジン残基を使用して架橋により固体支持体に結合され得る。
【0048】
いくつかの例示的実施形態において、本出願のシステムにおける質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化質量分析計、ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計、または三連四重極質量分析計であり得、質量分析計は液体クロマトグラフィーシステムに結合され得る。
【0049】
いくつかの態様において、本出願のシステムにおける質量分析計は、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができ得る。
【0050】
いくつかの例示的実施形態において、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定または定量化するシステムは、単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うこと、MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択すること、固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択すること、固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化すること、その後較正曲線を生成すること、ならびに較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定することができ得る。
【0051】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識および理解されるであろう。以下の説明は、様々な実施形態およびその多数の具体的な詳細を示す一方で、限定ではなく例示として記載され得る。多くの置換、修正、追加、または再配置が、本発明の範囲内で行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、要求に応じて、必要な料金を支払うことにより特許庁によって提供される。
【0053】
【
図1】ある例示的実施形態による、サルIgG1サロゲートペプチドからの生成物イオンの選択を示す。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、ある例示的実施形態による、サルIgG1サロゲートペプチドからの上位2つのトランジションの選択、および衝突エネルギーの最適化を示す。
図2Aは、ある例示的実施形態による生成物イオンのピーク面積を示す。
図2Bは、ある例示的実施形態による選択された衝突エネルギーを示す。
【
図3】ある例示的実施形態による、三連四重極LC-MSを使用する機器検出限界の決定を示す。0.3ng、0.9ng、3ng、9ng、30ng、90ng、および300ngを含む異なる量の免疫グロブリンペプチドを試験した。ある例示的実施形態に従って、サルIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、およびIgAを試験した。
【
図4】ある例示的実施形態による、ビオチン化薬物ビーズまたは架橋薬物ビーズを使用してADAの回収率を示す。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、ある例示的実施形態による、酵素消化を受ける前に乾燥ADAを溶解させる変性溶液の存在下でADAを捕捉するための薬物Aまたは薬物Bの使用を示す。
図5Aは、乾燥ADAを溶解するための変性溶液を使用せずにADAを捕捉するための薬物Aの使用を示す。
図5Bは、乾燥ADAを溶解するための変性溶液の存在下でADAを捕捉するための薬物Aまたは薬物Bの使用を示す。
【
図6】ある例示的実施形態による、サル血清の存在下での非特異的相互作用を示す。
【
図7】ある例示的実施形態による、室温で1時間または4℃で一晩のインキュベーションを含むインキュベーション条件を含む、免疫捕捉のためのインキュベーション条件の最適化を示す。
【
図8】ある例示的実施形態による、ノイズインジケータとしてIgG2を使用する免疫捕捉のインキュベーション条件の最適化を示す。
【
図9-1】ある例示的実施形態による、酸性条件を使用して血清中の相互作用を中断することによる免疫捕捉の最適化を示す。条件1:49μLのサル血清に1μLの5M酢酸を添加し、1時間インキュベートする(最終酢酸濃度300mM)。条件2:50μLのサル血清に50μLの600mM酢酸を添加し、1時間インキュベートする(最終酢酸濃度300mM)。
【
図10】ある例示的実施形態による、アイソタイピングの最適化およびADA IgG4の定量化のためのADAを捕捉するためのIgG薬物のFab部分の使用を示す。Fabのみの薬物は、IgG4薬物のFc領域との血清IgG4相互作用を排除する。IgG1について、完全抗体およびFabの両方とも、低い非特異的結合のみを有する。
【
図11】ある例示的実施形態による、アイソタイピングおよびIgM ADAの同定のためのADAを捕捉するための、IgG薬物のFab部分の使用を示す。結果は、血清IgMと薬物Fab領域との間の相互作用が、高いIgM背景を引き起こすことを示す。
【
図12】ある例示的実施形態による、ADAのアイソタイピングおよび定量化のための好ましい免疫捕捉、酵素消化、およびLC-MC方法を示す。
【
図13】ある例示的実施形態による、免疫捕捉の方法の開発の前または後の、薬物AまたはBを使用して、較正曲線を生成しかつ検出限界または定量限界を決定するための、ADAの試験範囲を示す。
【
図14】ある例示的実施形態による、ADAの定量化および検出に対する薬物AまたはBの様々な濃度の効果を示す。
【
図15】ある例示的実施形態による、前臨床毒性試験における経時的なサルAまたはBの血清試料中の薬物Bの濃度を示す。
【
図16】ある例示的実施形態による、サルAおよびBにおけるADAの総量の測定を示す。ある例示的実施形態による、
図16Aに示すような本出願の免疫捕捉-LC/MS方法を使用して、サルAおよびBにおけるADAの総量を測定した。ある例示的実施形態による、
図16Bに示されるようなリガンド結合アッセイ(LBA)を使用して、サルAおよびBにおけるADAの総量を測定した。
【
図17】
図17Aおよび17Bは、ある例示的実施形態による、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびIgAの量を含むADAアイソタイプの相対的定量化を示す。
図17Aは、ある例示的実施形態によるサルAの定量化を示す。
図17Bは、ある例示的実施形態によるサルBの定量化を示す。
【
図18】ある例示的実施形態による、薬物Aについての前臨床薬物動態試験において経時的にモニタリングされたサルA、B、およびCの血清試料中の薬物Aの濃度を示す。
【
図19】ある例示的実施形態による、薬物Aに関するサルでの前臨床薬物動態試験におけるADAのアイソタイピングおよび定量化のために本出願の免疫捕捉-LC/MS方法によって測定されたサルA、BおよびCにおけるADAの総量を示す。
【
図20】ある例示的実施形態による、薬物Aに関するサルでの前臨床薬物動態試験におけるIgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgAの量を含むADAアイソタイプの相対的定量化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
詳細な説明
タンパク質医薬品の免疫原性発現率に起因する薬物有効性および患者安全性の懸念の増加は、抗薬物抗体(ADA)を特徴付けることの需要の増加をもたらした。ADAを特徴付けることの需要は、例えば、薬物有効性の低減、内因性タンパク質への交差反応、または医薬品の薬物動態の改変に対するADAの影響を理解する必要性によって推進される。ADAの特徴付けデータは、医薬品の免疫原性に関する貴重な情報を提供することができ、したがって、薬物投与の安全性を高めることができる。
【0055】
本開示は、医薬品の投与によって誘導される抗体を特徴付ける、同定する、および/または定量化するための方法およびシステムを提供することによって前述の需要を満たす方法およびシステムを提供する。本出願の方法およびシステムは、免疫捕捉および/または液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)法を使用するADAのアイソタイピングおよび定量化を提供する。これらの方法およびシステムは、ADAのアイソタイピングおよび定量化によって、医薬品の投与後に経時的にADAをモニタリングするために、前臨床毒性学または薬物動態学試験に適用され得る。
【0056】
薬物動態、有効性、および安全性に関連する臨床薬理学における免疫原性影響等の、ADAの中和活性に関する発症が報告された。薬物処置中のADAの形成は、患者の体内の薬物濃度の低下を引き起こし得、これは有効性の低下に寄与し得る。薬物の異なる部位に結合することができる様々なADAは、中和または非中和ADA等、患者の体内に存在することができる。中和ADAは、薬物分子の活性部位、例えば薬物の標的への結合のための薬物分子内の結合部位、または抗体薬物の可変領域に結合することができる。中和ADAが薬物の活性部位に結合すると、薬物を不活性化する。非中和ADAは、抗体薬物分子の定常領域または骨格等の、薬物分子の非活性部位に結合することができ得る。薬物は、非中和ADAの結合に曝されても活性であり得るが、非中和ADAの存在は、臨床薬理学における特定の変化の一因になり得る。
【0057】
免疫原性は、免疫学的に関連する有害臨床事象を誘発する等の、それ自体および関連するタンパク質に対する免疫応答を生成する治療製品の性質を指す。関連する免疫原性情報には、結合抗体の誘導、中和抗体の誘導、薬物動態の改変、有効性の低下、および安全性の懸念が含まれる。しかしながら、ADAの臨床的重要性は不明であった。加えて、限られた利用可能データによって、ADAの作用の決定が妨げられ得る。ADAは、医薬品の全身クリアランスの増加と有効性の低下との間の一致性と関連付けられ得る。いくつかの薬物製品は、薬物を維持するADAを有し、これは、薬物のADA結合等のADA-薬物複合体の形成に起因し得るクリアランスの低下をもたらした。(Wang et al.,Evaluating and Reporting the Immunogenicity Impacts for Biological Products-a Clinical Pharmacology Perspective.The AAPS Journal.2016;18(2):395-403)
【0058】
免疫グロブリンは、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成されるヘテロ二量体タンパク質である。免疫グロブリンは、抗原に結合する可変ドメインおよびエフェクター機能を指定する定常ドメインを有する。重鎖定常ドメインには5つの主要なクラスがある。各クラスは、IgM、IgG、IgA、IgD、およびIgEのアイソタイプを定義する。IgGは、4つのサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に分類され得る。IgAは、IgA1およびIgA2に分類され得る。異なるADAアイソタイプは、異なる免疫応答を引き起こし得る。
【0059】
ADAのIgMアイソタイプは、血清中1.5mg/mLの濃度で7日間の第1の薬物曝露によって生成され得る。IgMの機能は、一次応答および固定相補体を含む。IgMのモノマーは、B細胞受容体として機能し得る。ADAのIgGアイソタイプは、血清中0.5~9mg/mlの濃度で25~35日目の第2の薬物曝露によって生成され得る。IgGの機能は、主な血液抗体、中和毒素、およびオプソニン化を提供することを含む。ADAのIgAアイソタイプは、血清中0.5~3mg/mlの濃度を有する。IgAは、粘液、涙、および唾液に分泌され得る。ADAのIgEアイソタイプは、血清中0.05mg/mlの濃度を有する。IgEは、アレルギーおよび抗寄生虫活性を提供する。IgDアイソタイプは、B細胞受容体を提供し得る。(Schroder WH,Cavacini L.Structure and Function of Immunoglobulins.J Allergy Clin Immunol.2010;125(202):S41-S52)
【0060】
FDAは、潜在的な患者免疫応答を理解するために、特にADA誘導の発生率、ならびに治療用タンパク質製品の安全性および有効性に対するADA応答の影響について、ADAアイソタイピングアッセイを開発することを推奨している。有用な特徴付けアッセイとしては、抗体アイソタイプ間を区別するための、アイソタイピング、エピトープマッピング、および交差反応性評価が挙げられる。(FDA Guidance for Industry:Assay Development and Validation for Immunogenicity Testing of Therapeutic Protein Products,draft,2016)
【0061】
いくつかの例示的実施形態において、免疫捕捉および液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)法を使用するADAのアイソタイピングおよび定量化のための方法およびシステムが提供される。これらは、前臨床または臨床毒性学および薬物動態学を研究するために使用することができる、薬物またはタンパク質医薬品の投与によって誘導される抗体を特徴付けるという長年の切実なニーズを満たす。
【0062】
いくつかの例示的実施形態において、免疫捕捉方法は、ADAをアイソタイプ化および定量化するためにLC-MSアッセイと結び付けられる。免疫捕捉方法は、ADAを含有する血清試料を処理するために酸解離を使用するステップを含み、内因性血清抗体、タンパク質医薬品、抗体薬物、既存の薬物またはADA等の血清試料中の成分間の凝集または結合を防止するために、酸性溶液が血清試料に添加される。血清試料の酸解離処理は、後のLC-MS分析のためにバックグラウンドノイズを低減する優れた利点を提供する。その後、血清試料中のADAは、固体支持体、例えば薬物コンジュゲートビーズまたは薬物ビーズにコンジュゲートさせることができる医薬品によって捕捉され、ADAは、医薬品に選択的に結合することができ、医薬品は、薬物の投与後にADAを誘導する薬物であり得る。
【0063】
いくつかの態様において、ADAは、薬物コンジュゲートビーズおよびADA含有血清試料のインキュベーションを通して、薬物コンジュゲートビーズによって捕捉される。後に、例えば薬物コンジュゲート磁気ビーズを単離するために磁石を使用して、ビーズが単離される。単離されたビーズは洗浄される。ADAを単離するために、溶出ステップが続く。単離されたADAは、トリプシン消化等の酵素消化を受ける。LC-MSまたはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)方法を使用して、各ADAアイソタイプ/サブクラスの固有のペプチドが同定および定量化される。
【0064】
いくつかの例示的実施形態において、サルまたはヒト血清試料からADAを単離するための免疫捕捉方法であって、免疫捕捉を最適化してADAの回収率を増加させることと、非特異的相互作用によって引き起こされるバックグラウンドノイズを最小限に抑えることと、定量化のための標準曲線を生成することと、定量化の下限(LLOQ)を決定することとを含む免疫捕捉方法が開発される。
【0065】
いくつかの例示的実施形態において、ADAアイソタイピングおよび定量化のためのLC-MRM-MS方法であって、サルまたはヒト抗体の各アイソタイプまたはサブクラスについて固有のサロゲートペプチドを選択することと、MRM(多重反応モニタリング)定量化のための定量化及び確認ペプチドを選択することと、三連四重極質量分析計上でMRM方法を開発することと、機器検出限界を決定することとを含む、LC-MRM-MS方法が開発され得る。
【0066】
いくつかの例示的実施形態において、単離されたADAは、酵素消化を受けて、ペプチドの組み合わせを得る。ペプチドの組み合わせは、ADAのアイソタイプを同定および定量化するための開発されたLC-MSまたはLC-MRM-MS方法によって分析される。いくつかの例示的実施形態において、開発されたLC-MSまたはLC-MRM-MS方法は、各アイソタイプについて固有のサロゲートペプチドを選択するステップと、ペプチドマッピングを行うステップと、ペプチドおよび断片イオンを選択してMRMトランジションを生成するステップと、固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択するステップと、固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化するステップと、その後較正曲線を生成するステップと、較正曲線に従って機器検出限界を決定するステップとをさらに含む。いくつかの態様において、ペプチドマッピングは、QE plus(Thermo Fisher ScientificからのQ Exactive(商標)Plus Orbitrap LC-MS/MS System)上で実行され、上位2つまたは上位3つのトランジションの選択は、三連四重極質量分析計上で実行される。
【0067】
LC-MSベースの方法は、本出願における抗体アイソタイプを同定および定量化するために使用することができ、アッセイ感度を考慮するためにペプチドレベルで実行され、酵素消化、および標的抗体に由来する選択されたシグネチャー固有のペプチドに基づく標的抗体の定量化のステップを含む。
【0068】
本出願の方法またはシステムは、複数の試料にわたってADAのアイソタイプの一貫した同定および正確な定量化を可能にするデータセットを生成する利点を提供する。いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法またはシステムは、複合体混合物中の低存在量におけるADAのアイソタイプを確実に定量化するためのMRMベースの方法を提供する。MRMアプローチでは、所定の前駆体イオンおよびその断片のうちの1つが、三連四重極機器の2つの質量フィルタによって選択される。一連の前駆体および断片イオン対、例えばトランジションが生成され、経時的にモニタリングされる。一連のトランジションが標的ペプチドの保持時間と組み合わされると、正確な定量化のための決定的アッセイを提供することができる。これによって、単一のLC-MS実験における多数のペプチドの定量化が可能となる。
【0069】
既存の方法の限界を考慮して、免疫捕捉およびLC-MSベースの方法を使用してADAの同定および定量化のための効果的かつ感受性の高い方法が開発されている。
【0070】
別段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を実践または試験に使用することができるが、特定の方法および材料がここに記載されている。言及されるすべての出版物は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
「a」という用語は、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきであり、「約」および「およそ」という用語は、当業者に理解されるように、標準的な変動を可能にすると理解されるべきであり、範囲が提供される場合、端点が含まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は、非限定的であることが意図され、それぞれ「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」を意味することが理解される。
【0073】
いくつかの例示的実施形態において、本開示は、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定および/または定量化する方法であって、以下を含む方法を提供する:試料を固体支持体に接触させることであって、少なくとも1つの医薬品が固体支持体に結合されている、接触させることと、少なくとも1つの移動相溶液を使用して固体支持体を洗浄して、少なくとも1つの溶出液を提供することと、溶出液から少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離することと、単離されたペプチドまたはタンパク質を変性溶液および/または酵素消化反応で処理して、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を生成することと、質量分析計を使用して、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を同定すること。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」または「タンパク質」は、共有結合的に連結したアミド結合を有する任意のアミノ酸ポリマーを含む。タンパク質は、一般に「ペプチド」または「ポリペプチド」として当該技術分野で知られている1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖を含む。タンパク質は、単一の機能的生体分子を形成するために、1つまたは複数のポリペプチドを含有してもよい。いくつかの例示的実施形態において、タンパク質は、抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、宿主細胞タンパク質、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、少なくとも1つの「医薬品」は、本質的に完全にもしくは部分的に生物学的であり得るか、または医薬活性を有する活性成分を含む。いくつかの例示的実施形態において、医薬品は、薬物、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、抗体のFc領域、酵素製品、サイトカイン、成長因子、タンパク質医薬品、毒素、核酸、DNA、RNA、化学化合物、細胞、組織、または対象において抗体を誘導することができ得る任意の医薬成分を含み得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「変性溶液」は、アルカリ性溶液、酸性溶液、または尿素、塩化グアニジニウム、酸化剤、還元剤もしくは有機溶媒を含有する溶液を含む。
【0077】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の医薬品は、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品であり得る。
【0078】
本明細書で使用される場合、「タンパク質医薬品」は、本質的に完全にまたは部分的に生物学的であり得る活性成分を含む。いくつかの例示的実施形態において、タンパク質医薬品は、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗原、ワクチン、ペプチド-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート、タンパク質-薬物コンジュゲート、細胞、組織、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの他の例示的実施形態において、タンパク質医薬品は、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗原、ワクチン、ペプチド-薬物コンジュゲート、抗体-薬物コンジュゲート、タンパク質-薬物コンジュゲート、細胞、組織、またはそれらの組み合わせの組換え、操作、修飾、変異、または切断バージョンを含み得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」は、例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域等の無傷抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fc断片、scFv断片、Fv断片、dsFvダイアボディ、dAb断片、Fd’断片、Fd断片、および単離された相補性決定領域(CDR)領域、ならびに抗体断片から形成されるトリアボディ、テトラボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、および多重特異性抗体が挙げられる。Fv断片は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域の組み合わせであり、ScFvタンパク質は、免疫グロブリン軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結された組換え単鎖ポリペプチド分子である。抗体断片は、様々な手段によって産生され得る。例えば、抗体断片は、無傷抗体の断片化によって酵素的または化学的に産生されてもよく、および/または部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換え的に産生されてもよい。代替的または追加的に、抗体断片は、完全にまたは部分的に合成的に産生され得る。抗体断片は、任意選択で一本鎖抗体断片を含んでもよい。代替的または追加的に、抗体断片は、例えば、ジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含んでもよい。抗体断片は、任意選択で多分子複合体を含んでもよい。
【0080】
本明細書で使用される場合、「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」という用語は、不安定な結合を有するリンカーによって生物活性薬物に結合された抗体を指すことができる。ADCは、抗体のアミノ酸残基の側鎖に共有結合することができる生物学的に活性な薬物(またはペイロード)のいくつかの分子を含むことができる(Siler Panowski et al.,Site-specific antibody drug conjugates for cancer therapy,6 mAbs 34-45(2013))。ADCに使用される抗体は、標的部位における選択的蓄積および持続的保持に十分な親和性で結合することができ得る。ほとんどのADCは、ナノモル範囲のKd値を有することができる。ペイロードは、ナノモル/ピコモル範囲内の効力を有することができ、標的組織へのADCの分布に続いて達成可能な細胞内濃度に到達することができ得る。最後に、ペイロードと抗体との間の接続を形成するリンカーは、抗体部分の薬物動態特性(例えば長い半減期)を利用し、ペイロードが組織内に分布するにつれて抗体に結合したままであることを可能にするが、ADCが標的細胞内に取り込まれると生物学的活性薬物の効率的な放出を可能にするように、循環において十分に安定することができ得る。リンカーは、細胞プロセシング中に切断不可能であるもの、およびADCが標的部位に到達すると切断可能であるものであり得る。切断不可能なリンカーでは、呼び出し内に放出される生物学的活性薬物は、ペイロードと、リソソーム内のADCの完全なタンパク質分解後に、抗体のアミノ酸残基、典型的にはリジンまたはシステイン残基に依然として結合しているリンカーのすべての要素とを含む。切断可能なリンカーは、その構造がペイロードと抗体上のアミノ酸結合部位との間の切断部位を含むものである。切断機構は、酸性細胞内区画中の酸不安定結合の加水分解、細胞内プロテアーゼまたはエステラーゼによるアミドまたはエステル結合の酵素切断、および細胞内の還元環境によるジスルフィド結合の還元的切断を含み得る。
【0081】
いくつかの態様において、本出願の試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質は、固体支持体に結合した医薬品に選択的に結合する抗体であり得る。
【0082】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖である、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子を指すことが意図される。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVH)および重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化され得、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域とともに散在する。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配列された3つのCDRおよび4つのFRで構成され得る:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプまたはサブクラスのグリコシル化および非グリコシル化免疫グロブリンの両方への言及を含む。「抗体」という用語は、抗体を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体等の組換え手段によって調製、発現、作製、または単離されたものを含むが、これらに限定されない。IgGは、抗体のサブセットを含む。
【0083】
いくつかの態様において、本出願の方法またはシステムを使用して、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定および定量化することができ、本方法は、単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うステップと、MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択するステップと、固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択するステップと、固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化するステップと、その後較正曲線を生成するステップと、較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定するステップとをさらに含む。
【0084】
本明細書で使用される場合、「ペプチドマッピング」は、タンパク質の一次構造、例えばアミノ酸配列を確認するための技術を指す。ペプチドマッピングは、同定、一次構造の特徴付け、および品質保証/品質管理(QA/QC)に使用することができる。目的の未知のタンパク質は、まず、より小さいペプチドに切断することができ、その絶対質量は、例えばタンパク質一次構造の確認のためにタンデム質量分析(LC-MS/MS)ベースのペプチドマッピングプラットフォームと液体クロマトグラフィーを結び付けた質量分析計で正確に測定することができる。
【0085】
いくつかの態様において、本出願の方法またはシステムにおける質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化質量分析計、ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計、または三連四重極質量分析計であってもよく、質量分析計は、液体クロマトグラフィーシステムに結合することができ、質量分析計は、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を実行することができる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「質量分析計」は、特定の分子種を同定し、それらの正確な質量を測定することができるデバイスを含む。この用語は、検出および/または特徴付けのためにポリペプチドまたはペプチドが溶出され得る任意の分子検出器を含むことを意図する。質量分析計は、イオン源、質量分析器、および検出器の3つの主要な部分を含むことができる。イオン源の役割は、気相イオンを形成することである。分析物の原子、分子、またはクラスタは気相に移され、同時にイオン化され得る(エレクトロスプレーイオン化の場合等)。イオン源の選択は、用途に大きく依存する。
【0087】
本明細書で使用される場合、液体「クロマトグラフィー」という用語は、液体または気体によって運ばれる化学混合物が、静止した液体または固相の周囲または上を流れる際に化学物質の差分的分布の結果として成分に分離され得るプロセスを指す。クロマトグラフィーの非限定的な例としては、従来の逆相(RP)、イオン交換(IEX)、混合モードクロマトグラフィーおよび順相クロマトグラフィー(NP)が挙げられる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」という用語は、溶液中のカチオンまたはアニオンのいずれかが、溶液を含有するエレクトロスプレーニードルの先端と対電極との間の電位差を印加することから生じる高荷電液滴の流れの形成および大気圧での脱溶媒和を介して気相に移される、スプレーイオン化のプロセスを指す。一般に、溶液中の電解質イオンからの気相イオンの産生には、3つの主要なステップがある。これらは、(a)ES注入先端における荷電液滴の産生、(b)気相イオンを産生することができる小さい高荷電液滴をもたらす、溶媒蒸発および繰り返しの液滴崩壊による荷電液滴の収縮、ならびに(c)非常に小さい高荷電液滴から気相イオンを産生する機構である。段階(a)~(c)は、一般に装置の大気圧領域で発生する。いくつかの例示的実施形態において、エレクトロスプレーイオン化質量分析計は、ナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計であってもよい。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「三連四重極質量分析計」は、(質量分解しない)高周波(RF)を有する2つの直列四重極質量分析器からなるタンデム質量分析計を指し、その間の四重極のみが衝突誘発性解離のためのセルとして機能する。三連四重極質量分析計において、ペプチド試料は、MS機器と結合したLC上に注入される。第1の四重極は、標的m/zを有するペプチドを単離するための質量フィルタとして使用され得る。第2の四重極は、ペプチドを断片に分解するための衝突セルとしての役割を果たす。第3の四重極は、初期親ペプチドからの特定のm/z断片の第2の質量フィルタとして機能する。本明細書で使用される場合、「タンデム質量分析」という用語は、質量選択および質量分離の複数の段階を使用することによって、試料分子に関する構造情報を得ることができる技術を含む。前提条件は、試料分子を気相に移し、そのままイオン化することができ、第1の質量選択ステップの後、何らかの予測可能および制御可能な様式でバラバラになるように誘導することができることである。多段階MS/MS、またはMSnは、意味のある情報を得ることができるか、または断片イオンシグナルが検出可能であり得る限り、まず前駆体イオン(MS2)を選択および単離し、断片化し、一次断片イオン(MS3)を単離し、断片化し、二次断片(MS4)を単離すること等により行われ得る。タンデムMSは、様々な分析器の組み合わせで成功裏に行われている。ある特定の用途のために組み合わせる分析器は、感度、選択性、および速度だけでなく、サイズ、コスト、および利用可能性等の、多くの異なる要因によって決定することができる。タンデムMS方法の2つの主要なカテゴリは、タンデムインスペースとタンデムインタイムであるが、タンデムインタイム分析器が空間内でまたはタンデムインスペース分析器と結合されるハイブリッドも存在する。タンデムインスペース質量分析計は、イオン源、前駆体イオン活性化デバイス、および少なくとも2つの非捕捉質量分析器を備える。特定のm/z分離機能は、機器のあるセクションにおいてイオンが選択され、中間領域において解離され、次いで生成物イオンがm/z分離およびデータ収集のために別の分析器に伝達されるように設計され得る。タンデムインタイム質量分析計では、イオン源で産生されたイオンは、同じ物理デバイス内で捕捉、分離、断片化、およびm/z分離され得る。
【0090】
質量分析計によって同定されたペプチドは、無傷タンパク質およびそれらの翻訳後修飾のサロゲートとして使用することができる。これらは、実験的および理論的MS/MSデータを相関させることによって、タンパク質の特徴付けに使用することができ、後者は、タンパク質配列データベース内の可能なペプチドから生成される。特徴付けには、限定されないが、タンパク質断片のアミノ酸の配列決定、タンパク質配列決定、タンパク質デノボ配列決定、翻訳後修飾の位置特定もしくは翻訳後修飾の同定、もしくは比較可能性分析、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0091】
いくつかの例示的実施形態において、単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスが決定される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、免疫グロブリンの異なるアイソタイプを指す。免疫グロブリンは、2つの重鎖および2つの軽鎖で構成されるヘテロ二量体タンパク質である。免疫グロブリンは、抗原に結合する可変ドメインおよびエフェクター機能を指定する定常ドメインを有する。重鎖のFc部分は抗体のクラスを定義し、そのうち哺乳類には以下の5つが存在する:IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgE。これらのクラスは、別名エフェクター機能として知られるそれらの生物学的特性、および所与の抗原に対する適切な免疫応答を確実にするためのそれらの機能的局在が異なる。重鎖定常ドメインには5つの主要なクラスがある。各クラスは、IgM、IgG、IgA、IgD、およびIgEのアイソタイプを定義する。IgGは、4つのサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に分類され得る。IgAは、IgA1およびIgA2に分類され得る。抗体がヒト抗体であり得る場合、ヒト抗体のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEであり得る。抗体がサル抗体である場合、サル抗体のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAであり得る。
【0093】
例示的実施形態
本明細書に開示される実施形態は、免疫捕捉および質量分析に基づく方法を使用して、抗体のアイソタイプまたはサブクラスの同定および定量化のための組成物、方法、およびシステムを提供する。
【0094】
いくつかの例示的実施形態において、本開示は、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定および/または定量化する方法であって、以下を含む方法を提供する:試料を固体支持体に接触させることであって、少なくとも1つの医薬品が固体支持体に結合されている、接触させることと、少なくとも1つの移動相溶液を使用して固体支持体を洗浄して、少なくとも1つの溶出液を提供することと、溶出液から少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離することと、単離されたペプチドまたはタンパク質を変性溶液および/または酵素消化反応で処理して、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を生成することと、質量分析計を使用して、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を同定すること。
【0095】
いくつかの態様において、本出願の方法またはシステムにおける試料を酸性溶液で処理して、固体支持体に接触する前に約0.1~4.5のpH範囲に到達させることができる。いくつかの例示的実施形態において、酸性溶液は、約3.6、約0.1~3.6、約1.0~4.0、約2.0~4.0、約3.0~4.0、約1.5~4、約2.5~4、または約3.5~4のpH範囲を有する。いくつかの態様において、酸性溶液は、酢酸、リン酸、ホウ酸、クエン酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素酸、またはシュウ酸を含む。
【0096】
他の態様において、本出願の方法またはシステムにおける試料は、固体支持体とともに、室温(周囲温度)で約1時間、約5~60分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約0.5~6時間、約0.5~1.5時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約6時間、約12時間、または一晩インキュベートされ得る。いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法またはシステムにおける試料は、固体支持体とともに、約4~30℃で約1時間、約5~60分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約0.5~6時間、約0.5~1.5時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約6時間、約12時間、または一晩インキュベートされ得る。いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法またはシステムにおける試料は、固体支持体とともに、約4℃で約1時間、約5~60分、約5分、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約0.5~6時間、約0.5~1.5時間、約1.5時間、約2時間、約3時間、約6時間、約12時間、または一晩インキュベートされ得る。
【0097】
いくつかの態様において、本出願の方法またはシステムにおける固体支持体は、ビーズ、磁気ビーズ、クロマトグラフィー樹脂、ポリマー、またはクロマトグラフィーマトリックスであり得る。
【0098】
他の態様において、本出願の方法またはシステムにおける試料は、塩および界面活性剤をさらに含む。さらに他の態様において、本出願の方法またはシステムにおける試料は、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含み、試料は、約6~9のpH範囲を有する。
【0099】
いくつかの態様において、本出願の方法またはシステムにおける固体支持体は、塩および界面活性剤を含む少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄され得る。他の態様において、本出願の方法またはシステムにおける少なくとも1つの移動相溶液は、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する。
【0100】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法またはシステムにおける変性溶液は、約8M、約5~10M、約7~9M、約6~9M、または約3~10M尿素を含む。いくつかの態様において、変性溶液は、アルカリ性溶液または酸性溶液であり得る。他の態様において、変性溶液は、尿素、塩化グアニジニウム、酸化剤、還元剤、または有機溶媒を含む。
【0101】
いくつかの例示的実施形態において、本出願の方法またはシステムにおける単離されたペプチドまたはタンパク質の成分は、少なくとも約0.01ng、少なくとも約0.1ng、少なくとも約0.2ng、または少なくとも約0.3ng、約0.01~1.0ng、約0.2~0.4ng、約0.2~0.5ng、または約0.2~0.6ngであり得る。
【0102】
いくつかの例示的実施形態において、本開示は、試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定または定量化するためのシステムであって、以下を備えるシステムを提供する:医薬品が結合されている固体支持体と、固体支持体を洗浄するための少なくとも1つの移動相溶液であって、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離するために、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を含有する少なくとも1つの溶出液を提供することができる、少なくとも1つの移動相溶液と、単離されたペプチドまたはタンパク質から成分を生成することができる変性溶液および/または酵素消化溶液と、単離されたペプチドまたはタンパク質から成分を同定または定量化することができる質量分析計。いくつかの例示的実施形態において、本システムの質量分析計は、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる。いくつかの例示的実施形態において、システムは、ペプチドマッピングを行うこと、MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために固有のペプチドおよび断片イオンを選択すること、上位2つまたは上位3つのトランジションを選択すること、衝突エネルギーを最適化すること、その後較正曲線を生成すること、ならびに較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定することができる。
【0103】
いくつかの態様において、LLOQは、検出限界(LOD)または定量限界(LOQ)を含む。他の態様において、試料中のペプチドまたはタンパク質の同定または定量化のためのLODは、約40ng/mL、約10~80ng/mL、約20~50ng/mL、約30~60ng/mL、または約35~45ng/mLであり得る。他の態様において、試料中のペプチドまたはタンパク質の同定または定量化のためのLOQは、約120ng/mL、約80~160ng/mL、約100~140ng/mL、または約110~130ng/mLであり得る。
【0104】
本システムは、前述の医薬品、ペプチド、タンパク質、抗体、抗薬物抗体、抗原-抗体複合体、タンパク質医薬品、クロマトグラフィーカラム、または質量分析計のいずれかに限定されないことを理解されたい。
【0105】
本明細書で提供される方法ステップの数字および/または文字による連続した標識は、方法またはその任意の実施形態を特定の指示された順序に限定することを意図しない。
【0106】
特許、特許出願、特許出願公開、受託番号、技術記事、および学術記事を含む様々な刊行物が、本明細書を通して引用される。これらの引用文献の各々は、参照により、その全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0107】
本開示は、本開示をより詳細に説明するために提供される以下の実施例を参照することによって、より十分に理解される。これらは例示を意図し、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0108】
材料および試薬の調製
1.1 ADAを捕捉するための抗体薬物
いくつかの抗体薬物を使用して、表1に列挙したようにヒトまたはサルの血清試料からADAを捕捉した。
【0109】
【0110】
2.1.抗体薬物を磁気ビーズに結合させる
抗体薬物を磁気ビーズ等の固体支持体に組み込むために、2種類のコンジュゲーション方法を使用した。第1の方法では、EZ-Link SulfoN-HS-LCビオチン化キット等のビオチン化キットを使用して抗体薬物をビオチン化した。(Chen et al.,Development of Immunocapture-LC/MS Assay for Simultaneous ADA Isotyping and Semiquantitation,Journal of Immunology Research,Volume 2016,Article ID 7682472,14 pages;Roos et al.,Detection of cynomolgus monkey anti-protein XYZ anti-body using immunocapture-LC/MS,Journal of Applied Bioanalysis,October 2016,Vol 2,No.4,page 117-128)その後、ビオチン化された薬物をストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに結合させた。第2の方法では、抗体薬物を、薬物のリジン残基を介して一級アミン-エポキシ反応を使用して磁気ビーズに直接架橋した。ビオチン化薬物または架橋薬物を使用して、ヒトまたはサル血清試料中のADAを捕捉および単離した。磁石を使用して、血清試料から磁気ビーズを除去した。
【0111】
3.1 ADA陽性対照
サルIgG1モノクローナル抗ヒトカッパ軽鎖抗体を、ADAアイソタイピングおよび定量化のための免疫捕捉およびLC-MSアッセイを開発するためのADA陽性対照、例えば、ADA-Stdとして使用した。ADA-StdはヒトIgGに結合することができる。
【0112】
ペプチド同定および定量化のための機器
ペプチドの同定または定量化のための質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である。質量分析計は、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている。質量分析計は、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる。いくつかの例示的実施形態において、質量分析計は、三連四重極質量分析計である。
【0113】
実施例1.固有のサロゲートペプチドを選択して、ADAアイソタイプを同定および定量化する
LC-MSによるADAのアイソタイプの同定および定量化は、検出の感度を考慮して、ADAの全分子ではなく、ADAの固有のサロゲートペプチドに基づいていた。各ADAは、トリプシン消化時にペプチドの組み合わせを生じる。ADAの存在を推測し、アイソタイプの定量化を決定するために、ADAあたり数個の代表的ペプチドのみが標的とされる。(V.Lange,P.Picotti,B.Domon,and R.Aebersold,Selected reaction monitoring for quantitative proteomics:a tutorial,Molecular Systems Biology,vol.4,article 222,2008)。
【0114】
定量的測定は、各抗体アイソタイプに特有の適切なペプチドを同定することによって、ADAとそのサロゲートペプチドとの間の定量的関係の存在に依存する。各抗体アイソタイプに適切なサロゲートペプチドを選択するために、各アイソタイプのサロゲートペプチドは、抗体の定常領域から得られるべきである。同じアイソタイプのADAは、可変領域におけるアミノ酸配列に関して異なる形態を有するが、それらは同じ定常領域を有する。加えて、選択されたサロゲートペプチドは、各ADAアイソタイプに固有であり、任意の他のアイソタイプにおいて形成されるべきではない。(Chen et al.,Development of Immunocapture-LC/MS Assay for Simultaneous ADA Isotyping and Semiquantitation,Journal of Immunology Research,Volume 2016,Article ID 7682472,14 pages)さらに、サロゲートペプチドは、ADAアロタイプ多型残基のアミノ酸を含有すべきではない(M.-P.Lefranc and G.Lefranc,Human Gm,Km,and Am allotypes and their molecular characterization:a remarkable demonstration of polymorphism,Methods in Molecular Biol-ogy,vol.882,pp.635-680,2012)。多くのアイソタイプが同じ軽鎖(κおよびλ)を共有しているため、軽鎖はサロゲートペプチド選択から除外された。
【0115】
サロゲートペプチドの選択に関しては、いくつかの考慮事項がある。酸化の傾向があるメチオニンを含むペプチドは避ける。一貫性のないトリプシン消化をもたらす可能性があるアルギニン-アルギニン(RR)およびリジン-リジン(KK)を含むペプチド配列は避ける。アルギニン-プロリン(RP)およびリジン-プロリン(KP)を含有するペプチド配列は、消化によって分解することが困難であるため、好ましくない。好ましいペプチド長は、イオン化電荷状態の数を最小限に抑え、効率的なMS/MS断片化および高感度を達成し、所望のクロマトグラフィー保持を得るために、6~20アミノ酸である。グリコシル化部位を含有するペプチド配列を避けることも好ましい。(S.T.Wu,Z.Ouyang,T.V.Olah,and M.Jemal,A strategy for liquid chromatography/tandem mass spectrometry based quantitation of pegylated protein drugs in plasma using plasma protein precipitation with water-miscible organic solvents and subsequent trypsin digestion to generate surrogate peptides for detection,Rapid Communications in Mass Spectrometry,vol.25,no.2,pp.281-290,2011)
【0116】
各抗体アイソタイプに対する固有のサロゲートペプチドの同定のために、IgGサブクラスのアミノ酸配列アラインメントを行った。固有のペプチドを同定するために、これらの配列をインシリコトリプシン消化に基づく予測に供した。
【0117】
免疫グロブリン溶液を酵素的に消化し、得られたトリプシンペプチドをアッセイし、情報依存的取得(IDA)法を使用してLC-MSによってスクリーニングした。IDAの設定は、コンピュータ予測に基づくトリプシンペプチドの形成のためのMRM調査スキャン、続いてペプチド同一性を確認するための増強された生成物イオンスキャンから構成された。ペプチド分離をクロマトグラフィー法で達成した。良好なLC-MS感度を有するトリプチックペプチドをさらに評価した。特異的ペプチドは、各抗体アイソタイプからコンピュータでトリプシンペプチドを解釈することによって特定した。各ADAアイソタイプについて上位1~3の最も高感度のペプチドを、固有のペプチド候補として選択し、さらなる方法開発のために続けた。MS/MSでの衝突活性化時に、単一の荷電bイオンおよびyイオンに断片化された複数の荷電親イオン、ならびに最も高感度のyイオンを選択した。
【0118】
特定の生成物イオンをサロゲートペプチドに選択した。
図1は、サルIgG1サロゲートペプチドからの生成物イオンの選択を示す。
図2および表2は、サルIgG1サロゲートペプチドからの上位2つのトランジションの選択および衝突エネルギーの最適化を示す。
図2Aは、生成物イオンのピーク面積を示す。
図2Bは、選択された衝突エネルギーを示す。
【0119】
(表2)生成物イオンおよび衝突エネルギーを有するサルIgG1サロゲートペプチドの上位2つのトランジション
【0120】
ヒト抗体では、抗体アイソタイプを同定するための固有のサロゲートペプチドのアミノ酸配列は、IgG1についてはGPSVFPLAPSSK、IgG2についてはGLPAPIEK、IgG3についてはWYVDGVEVHNAK、IgG4についてはGLPSSIEK、IgA1についてはDASGVTFTWTPSSGK、IgA2についてはDASGATFTWTPSSGK、IgMについてはVSVFVPPR、またはIgEについてはDFTPPTVKである。サル抗体では、抗体アイソタイプを同定するための固有のサロゲートペプチドのアミノ酸配列は、IgG1についてはGPSVFPLAPSSR、IgG2についてはGPSVFPLASCSR、IgG3についてはGPSVFPLVSCSR、IgG4についてはGPSVFPLASSSR、IgMについてはQIEVSWLR、またはIgAについてはDPSGATFTWTPSSGKである。
【0121】
実施例2.ADAアイソタイプを同定および定量化するためのLC-MRM-MS方法を開発する
サルまたはヒト抗体のアイソタイプまたはサブクラスごとに固有のサロゲートペプチドを選択すること、三連四重極質量分析計上でMRM法を開発すること、および機器検出限界を決定することを含む、ADAのアイソタイピングおよび定量化のためのLC-MSに基づくMRM(多重反応モニタリング)方法、例えばLC-MRM-MS方法が開発される。
【0122】
ヒトまたはサルのADAのアイソタイプを同定および定量化するためのLC-MRM-MS方法の開発に成功した。LC-MSによるペプチドスクリーニング後、定量化および確認ペプチドをMRM定量化のために選択した。各無傷ADAの定量化のために、定量化ペプチドを選択した。同じADAの異なる位置からの別のペプチド、例えば確認ペプチドを選択して、定量化ペプチドのデータ精度および試料中のタンパク質一次構造の完全性を確認した。定量化ペプチドに基づく導出データは、ADAアイソタイプの定量化のために報告された。確認ペプチドに基づく導出データを使用して、定量化および確認ペプチドの間のデータの一致を評価した。各ペプチドのMRMイオントランジションを、最も顕著な生成物イオンが選択された生成物イオンスペクトルに基づいて決定した。MSパラメータ(ガス流量、温度、エレクトロスプレー電圧、脱クラスタ化電位、衝突エネルギー、および衝突セル退出電位)を、各MSパラメータについて様々な値を有するトリプシンペプチドを分析することによって最適化した。(Jiang et al.,Innovative Use of LC-MS/MS for Simultaneous Quantitation of Neutralizing Antibody,Residual Drug,and Human Immunoglobulin G in Immunogenicity Assay Development,Analytic Chemistry,2014,86,page 2673-2680)
【0123】
各抗体アイソタイプ/サブクラスについて1つの定量化ペプチドおよび1~2つの確認ペプチドを特定した。ヒトADAについては40のトランジション、サルADAについては30のトランジションを選択した。表3、4および5は、各抗体アイソタイプ、前駆体イオン、生成物イオン、衝突エネルギー、および経時的なモニタリングについての固有のサロゲートペプチド及び確認ペプチドのアミノ酸配列を含む、サルADAアイソタイピングのためのLC-MRM-MS方法の最適化を示す。
【0124】
(表3)LC-MRM-MS方法を最適化するためのサルADAアイソタイピングのための固有のペプチドの一覧
【0125】
(表4)LC-MRM-MS方法を最適化するためのサルADAアイソタイピングのための確認ペプチドの一覧
【0126】
(表5)サルADAアイソタイピングのための異なる時点での多重反応モニタリング
【0127】
表6および7は、各抗体アイソタイプ、前駆体イオン、生成物イオン、衝突エネルギー、および経時的なモニタリングのための固有サロゲートペプチドのアミノ酸配列を含む、ヒトADAアイソタイピングのためのLC-MRM-MS方法の最適化を示す。
【0128】
(表6)LC-MRM-MS方法を最適化するためのヒトADAアイソタイピングのための固有ペプチドの一覧
【0129】
(表7)ヒトADAアイソタイピングのための異なる時点での複数の反応モニタリング
【0130】
実施例3.機器の検出限界を決定する
Agilent Technologiesの6495 C Triple Quadrupole LC/MS等の三連四重極LC-MSを使用して、機器の検出限界を決定した。サルIgG、IgM、またはIgAを、BSA(ウシ血清アルブミン)マトリックス中で希釈した。0.3ng、0.9ng、3ng、9ng、30ng、90ng、および300ngを含む異なる量の免疫グロブリンペプチドを試験した。
図3は、サルIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、およびIgAの線形性および機器検出限界に関する試験結果を示す。LC法は15分以内に最適化することができる。確認ペプチドの結果は、それらの対応するサロゲートペプチドと良好な一致を有し、LC-MRM-MS方法を用いた正確な定量、ならびに試料の保存および処理中のタンパク質一次構造の良好な完全性を示唆していた。開発されたLC-MRM-MS方法は、Agilent Technologiesの6495C Triple Quadrupole LC/MS等の三連四重極LC-MS上で、各ADAアイソタイプ由来の定量化ペプチドを0.3ngまで検出することができる。
【0131】
実施例4.抗体薬物を使用するADAの免疫捕捉
抗体薬物を使用して、血清試料からADAを単離するための2種類の免疫捕捉方法を開発した。これらの方法において、ADAは抗体薬物に特異的に結合することができる。第1の方法では、抗体薬物をビオチン化した。ストレプトアビジンコーティング磁気ビーズに結合したビオチン化抗体薬物を使用して、ヒトまたはサル血清試料中のADAを捕捉した。第2の方法では、抗体薬物を、薬物のリジン残基を介して一級アミン-エポキシ反応を使用して磁気ビーズに直接架橋した。
【0132】
薬物ビーズ、例えば、ビオチン化薬物ビーズまたは架橋薬物ビーズを使用して、インキュベーションステップを実行することでヒトまたはサルの血清試料からADAが捕捉され、ここで、薬物ビーズは、インキュベーション緩衝液中でADAを含有する血清試料とともにインキュベーションされて、ADAを捕捉した。その後、磁石を使用して磁気ビーズを単離した。その後、単離したビーズを洗浄液で洗浄した。その後、単離されたビーズを溶出溶液に供し、薬物ビーズからADAを単離した。
【0133】
サルIgG1モノクローナル抗ヒトカッパ軽鎖抗体であるADA-Stdを、ADAの免疫捕捉を最適化するためのADA陽性対照として使用した。ADA-Stdをサル血清中で希釈して、ADAを含有する血清試料を模倣した。しかしながら、サル血清試料から捕捉されたADAを標的とするMS方法を開発するために、マウス血清を使用して、ADA-Stdを希釈して非特異的相互作用を低減した。
【0134】
ビオチン化薬物ビーズおよび架橋薬物ビーズを使用してADAの回収率を比較した。血清試料からADAを捕捉するための架橋薬物ビーズの使用が、約83~98%の高い回収率を有することは予想外である。反対に、血清試料からADAを捕捉するためのビオチン化薬物ビーズの使用は、約52~54%の回収率しか達成することができない。これらの実験では、
図4に投入として示されるADA-Stdを比較のための陽性対照として使用した。
図4に示すように、架橋薬物Aビーズを使用した場合、ADAの回収率は98%であった。架橋薬物Bビーズを使用した場合、ADAの回収率は83%であった。しかしながら、ビオチン化薬物Aビーズを使用した場合、ADAの回収率は52%であった。ビオチン化薬物Bビーズを使用した場合、ADAの回収率は54%であった。したがって、血清試料からADAを捕捉するための架橋薬物ビーズの使用が、ADAの高い回収率を達成することができることは、予想外の利点である。
【0135】
実施例5.酵素消化法の最適化
ADAの同定および定量化の線形性および一貫性を改善するために、酵素消化法を最適化した。免疫捕捉方法によって血清試料から単離したADAを、SpeedVac乾燥等の乾燥に供した。乾燥したADAを懸濁液中に溶解し、その後、LC-MSを使用して定量化するために、トリプシン消化等の酵素消化に供した。8M尿素溶液等の変性溶液の使用を含めて、様々な懸濁液を使用して酵素消化法を最適化した。
【0136】
酵素消化のために単離されたADAを懸濁させるための変性溶液の使用が、
図5に示すように、ADAの同定および定量化の一貫性および線形性を著しく向上させ得ることは、予想外の利点である。精製したADA-Stdをこれらの実験の陽性対照として使用した。乾燥したADA-Stdを、免疫捕捉のステップを経ることなく、酵素消化に供する前に直接懸濁液中に溶解した。ADA-Stdは、
図5において投入として示された。
図5Aは、乾燥ADAを溶解するための変性溶液を使用せずにADAを捕捉するための薬物Aの使用を示す。
図5Bは、乾燥ADAを溶解するための変性溶液の存在下でADAを捕捉するための薬物Aまたは薬物Bの使用を示す。
図5Bに示すように、薬物Aまたは薬物Bを使用してADAを捕捉した場合、ADA捕捉の定量化は、酵素消化に供する前に乾燥ADAを溶解するための変性溶液の存在下で、有意に改善された一貫性および線形性を示した。
図5Aに示すように、変性溶液を使用しなかった場合、一貫性および線形性は観察されなかった。
【0137】
実施例6.非特異的相互作用の観察
アイソタイピングおよびLC-MSを使用して定量化のためのADAの免疫捕捉の感度および線形性を改善するために、血清中の非特異的相互作用を観察するように実験を設計した。例えば、サルIgG1モノクローナル抗ヒトカッパ軽鎖抗体であるADA-StdをADA陽性対照として使用して、ADAアイソタイピングおよび定量化のための免疫捕捉およびLC-MSアッセイを開発および最適化した。ADA-Stdをマウスまたはサル血清中で希釈し、3倍希釈により1.5ng/ml~10μg/mlの範囲の試験を行った。ADA-Stdをサル血清中で希釈して、ADAを含有する血清試料を模倣した。免疫捕捉のステップを経ることなく、ADA-Stdを酵素消化およびLC-MSアッセイに供した。
【0138】
薬物Aまたは薬物Bを免疫捕捉方法で使用して、サル血清試料からADAを単離した。単離されたADAをマウスまたはサル血清中で希釈し、その後酵素消化およびLC-MSアッセイに供した。
図6に示すように、サル血清の添加は、非特異的相互作用および高いバックグラウンドノイズを引き起こす可能性があり、定量化の一貫性および線形性の低減につながる可能性がある。試験結果は、マウス血清において良好な線形性を示す。
【0139】
ADA-Stdをサル血清中で希釈して、ADAを含有する血清試料を模倣した。IgG1シグナルの検出は、ADA-Stdシグナルとサル血清由来の内因性IgG1との組み合わせとなり得る。対照的に、検出される任意の他の抗体アイソタイプは、サル血清からの非特異的結合から生じる内因性抗体であり得る。
【0140】
実施例7.免疫捕捉のためのインキュベーション条件の最適化
サル血清中のある特定の成分は、高いバックグラウンドノイズをもたらす非特異的相互作用を引き起こす可能性があるため、LC-MSアッセイを使用するADAのアイソタイピングおよび定量化のための感度および一貫性を増加させるために、免疫捕捉方法をさらに最適化した。ADAを捕捉するために使用した薬物を、室温で1時間または4℃で一晩のインキュベーションを含む様々なインキュベーション条件下で、ADAを含有するサル血清試料とともにインキュベートした。室温で1時間のインキュベーション条件が、バックグラウンドノイズの有意な低減をもたらすことを発見したことは驚くべきことであった。インキュベーションを室温で1時間行った場合に一貫性および線形性の向上とともにバックグラウンドノイズが低かったため、LC-MSアッセイにおけるADAのシグナルを増強した。
【0141】
図7Aに示すように、薬物Bまたは薬物Cをサル血清試料とともに4℃で一晩インキュベートした場合、ADA-IgG1の定量は線形性および一貫性を欠いていた。
図7Bに示すように、薬物Bまたは薬物Cをサル血清試料とともに室温で1時間インキュベートした場合、ADA-IgG1の定量は優れた線形性および一貫性を示した。これらの実験において、ADA-Stdが陽性対照として使用され、
図7にADA投入として示された。
図8は、IgG2をノイズインジケータとして使用する、免疫捕捉のインキュベーション条件の最適化を示す。
図8に示すように、薬物Bまたは薬物Cを使用してサル血清試料からADAが捕捉され、室温で1時間のインキュベーション条件は、4℃で一晩のインキュベーション条件と比較して、アイソタイピングおよびIgG2の定量化においてより少ないノイズを提供した。
【0142】
実施例8.血清中の相互作用を中断することによる免疫捕捉の最適化
血清中の成分間には、抗原と抗体との結合またはタンパク質間の凝集等の、様々な特異的または非特異的相互作用が存在する。高いバックグラウンドノイズを低減するために、免疫捕捉方法をさらに最適化して、血清中の非特異的または特異的相互作用を低減した。免疫捕捉を行う前に血清試料に酸性溶液を添加することが、LC-MCアッセイを使用する単離されたADAの同定およびアイソタイピングのバックグラウンドノイズを著しく低減することができることを発見したのは予想外であった。
【0143】
一般に、血清試料のpH範囲は、約pH8.0である。血清試料に、300mM酢酸等の酸性溶液を加え、血清中の成分間の酸解離を行うための酸性pH範囲、例えば約pH3.6に到達させた。その後、酸性血清試料のpHを、薬物ビーズを使用して免疫捕捉を行うために、HBST緩衝液、例えば、pH7.4における10mMのHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、150mMの塩化ナトリウム、3mMのEDTA(エチレンジアミン四酢酸)および0.2%のTween-20(ポリソルベート20)を添加するpH調整等、約pH4.5に調整した。
【0144】
血清試料の酸解離処理は、バックグラウンドノイズの有意な低減という予想外の利点をもたらした。酸解離のさらなる最適化を、2つの酸性条件1および2を使用して行った。酸性条件1の方法は、49μLのサル血清試料に1μlの5M酢酸を添加して、300mMの酢酸の最終濃度に到達させ、1時間インキュベートすることを含む。酸性条件2の方法は、50μLのサル血清試料に50μlの600mM酢酸を添加して、300mMの酢酸の最終濃度に到達させ、1時間インキュベートすることを含む。
【0145】
図9に示すように、ADAを捕捉するために、薬物Aまたは薬物Bを使用した。酸性条件2は、酸性条件1と比較して、IgG2、IgG3、およびIgAに関するADAのアイソタイピングおよび定量化のためのバックグラウンドノイズの有意な低減を提供した。酸性条件2は、薬物AまたはBを使用するADAのIgG2、IgG3、およびIgAアイソタイプの免疫捕捉のための酸解離を行うための好ましい条件であるが、酸性条件1および2は両方とも、IgG4のアイソタイピングおよび定量化のためのバックグラウンドノイズの有意な低減を提供しなかった。これは、IgG4のアイソタイピングおよび同定のための高いバックグラウンドノイズを低減するためには、さらなる最適化が必要であることを示した。これはまた、血清中の非特異的相互作用が、IgG4のアイソタイピングおよび定量化のための高いバックグラウンドノイズに有意に寄与していないことを示す。
【0146】
実施例9.IgG薬物のFabを使用する免疫捕捉
9.1.ADAのIgG4アイソタイプのアイソタイピングおよび定量化
IgGのFab部分のみを含む抗体薬物を使用してADAを捕捉し、免疫捕捉方法を最適化するために血清中の非特異的相互作用を調査した。表1に列挙されるように、薬物A~Eは、IgG分子全体を含み、薬物F~Jは、IgG分子のFab部分のみを含む。
図10に示すように、Fabのみの薬物は、IgG4薬物のFc領域に対する血清IgG4相互作用を排除する。IgG1では、完全抗体およびFabの両方とも、低い非特異的結合のみを有する。ADAを捕捉するためのIgG薬物のFab部分の使用は、IgG4 ADAのアイソタイピングおよび同定のためのバックグラウンドノイズを有意に低減した。特に、薬物F、薬物Gおよび薬物Hを、IgG4 ADAのアイソタイピングおよび定量化のためにADAの免疫捕捉に使用した場合、薬物A、薬物B、および薬物Cの使用と比較して、バックグラウンドノイズが有意に低減された。
【0147】
薬物A、薬物B、および薬物Cは、IgG4の分子全体を含む。薬物F、薬物G、および薬物Hは、IgG4のFab部分のみを含む。試験結果は、サル血清試料中の内因性IgG4抗体が、高いバックグラウンドノイズに寄与するために重要な役割を果たし得ることを示している。薬物A、薬物Bおよび薬物CはIgG4の全分子を含むため、サル血清試料中の内因性IgG4抗体は、これらの薬物のFc領域と相互作用し得る可能性が高い。サル血清試料中の内因性IgG4抗体は、IgG4中のL445残基等のIgG4薬物のFc領域と相互作用し得る可能性が高い。したがって、薬物F、薬物Gおよび薬物Hを使用した場合、これらの薬物はIgG4のFab領域のみを含み、Fc領域を含んでいないため、バックグラウンドノイズが低減または排除された。サル血清試料中の内因性IgG4抗体は、薬物Dおよび薬物Eに基づく試験結果によれば、IgG1薬物のFc領域と相互作用しない可能性が高い。
【0148】
9.2.ADAのIgMアイソタイプのアイソタイピングおよび定量化
ADAを捕捉するためにIgG分子のFab部分のみを含む抗体薬物を使用し、血清中の非特異的相互作用を調査して、免疫捕捉方法を最適化した。表1に列挙されるように、薬物A~Eは、IgG分子全体を含み、薬物F~Jは、IgG分子のFab部分のみを含む。
図11に示すように、ADAを捕捉するためのIgG薬物のFab部分の使用は、IgM ADAのアイソタイピングおよび同定のためのバックグラウンドノイズを有意に低減しなかった。結果は、血清IgMと薬物Fab領域との間の相互作用が、高いIgMバックグラウンドを引き起こすことを示している。特に、薬物F、薬物G、薬物H、薬物Iおよび薬物Jを、IgMのアイソタイピングおよび定量化のためのADAの免疫捕捉に使用した場合、薬物A、薬物B、薬物C、薬物Dおよび薬物Eの使用と比較して、バックグラウンドノイズが高かった。
【0149】
薬物A、薬物B、薬物C、薬物Dおよび薬物Eは、IgG、例えば、IgG1またはIgG4の分子全体を含む。薬物F、薬物G、薬物H、薬物Iおよび薬物Jは、IgG分子のFab部分のみを含む。試験結果は、サル血清試料中の内因性IgM抗体が、IgG1薬物およびIgG4薬物の両方のFab部分に結合することによって、高いバックグラウンドノイズに寄与するために重要な役割を果たし得ることを示している。これは、IgMのアイソタイピングおよび同定のための高いバックグラウンドノイズを低減するために、さらなる最適化が必要であることを示していた。
【0150】
実施例10.定量化の下限(LLOQ)の決定
10.1.好ましい免疫捕捉および酵素消化法
好ましい免疫捕捉および酵素法を用いて、ADAの濃度によるペプチド定量化の定量化の下限(LLOQ)を測定した。LLOQの決定のための較正曲線を生成するために使用された好ましい免疫捕捉および酵素消化法は、ADAを含有する血清試料を、血清中の成分の酸解離のための酸性溶液で処理することと、その後血清試料を、ADAの免疫捕捉のためにビーズに直接架橋された薬物とともにインキュベートすることと、ビーズを単離することと、単離されたビーズを洗浄液で洗浄することと、その後溶出溶液でビーズからADAを単離することと、単離されたADAを酵素消化に供してペプチドの組み合わせを生成することとを含む。ペプチドの組み合わせを、ADAのアイソタイピングおよび定量化のためにLC-MS分析に供した。好ましい免疫捕捉および酵素法は、例として
図12に概説されている。
【0151】
例として、血清試料50μLに600mMの酢酸50μLを添加し、室温で1時間インキュベートすることによって、酸解離を行った。その後、薬物ビーズを室温で1時間、血清試料とともにインキュベートした。例として、50μg/mLの架橋薬物40μLを、HBST緩衝液中の3%BSA(ウシ血清アルブミン)400μL中で希釈した血清試料に添加した。その後、ビーズを単離した。単離されたビーズを、HBST緩衝液等の少なくとも1つの洗浄液を0.5mLで、および/またはHBST緩衝液中の3%BSAで洗浄した。その後、ADAを溶出溶液でビーズから単離した。例として、溶出溶液、例えば0.1%ギ酸/50%アセトニトリル200μLを使用して、ADAをビーズから逃がした。単離されたADAを、例えばSpeedVacを使用して乾燥させた。乾燥したADAを、8M尿素等の変性溶液中に懸濁した。続いて、単離されたADAを、トリプシン消化等の酵素消化、およびADAのアイソタイピングおよび定量化のためのLC-MS分析に供した。
【0152】
10.2.較正曲線の生成
ADAアイソタイプの検出および定量化のための較正曲線を、上記のような好ましい免疫捕捉および酵素消化法を使用して得られたADAペプチドを使用して生成した。ADA-Stdを、検出および定量化のためにサル血清中で希釈した陽性対照として使用した。
図13に示すように、試験範囲は、1.5ng/mL~10μg/mLの3倍希釈したADAであった。薬物Aまたは薬物Bを、ADAの免疫捕捉に使用した。LLOQ試料中で十分なクロマトグラフィー応答(シグナル対ノイズ比)が観察され、対応する保持時間で干渉ピークは示されなかった。検出限界(LOD)は、
図13に示すように、ADAの免疫捕捉に薬物Aまたは薬物Bを使用した場合、40ng/mlのADAであることが決定された。
図13に示すように、ADAの免疫捕捉に薬物Aまたは薬物Bを使用した場合、定量限界(LOQ)は120ng/mlのADAであることが決定された。本出願の免疫捕捉およびLC-MS方法を使用するADAのアイソタイピングおよび定量化について、120ng/mLのADAのLLOQを確立した。
【0153】
実施例11.薬物耐性限界の決定
非臨床サル血清試料中の治療薬の存在は、薬物干渉としても知られるADAへの結合に関して免疫捕捉試薬と競合し得る。血清試料中に存在する薬物Aおよび薬物Bに対するアッセイ耐性を評価するために、500ng/mLのADA-PCを含有するプールされたサル血清試料を、異なる濃度の薬物Aまたは薬物B(0.38ng/mL~10μg/mLの範囲)の存在下で試験し、どの濃度の薬物がADA定量化およびADA検出の両方に影響を与えるかを決定した。
【0154】
図14に示すように、ADA-PCの定量化は、薬物濃度が195ng/mLに達するまで、薬物Aまたは薬物Bの影響を受けなかった。薬物濃度が195ng/mLより高かった場合、アッセイにおいて検出されたADA-PCの濃度が減少し始め、ADA結合について血清中の薬物の競合効果を示す。
【0155】
リガンド結合ADAアッセイは非定量的であり、非臨床試験におけるADA濃度は、抗体応答の相対的定量化を提供する力価(希釈)値とともに陰性または陽性のいずれかとして報告される。薬物耐性実験では、ADA-PCは、この薬物濃度でのアッセイバックグラウンドよりも3倍大きいADA-PCシグナルとともに、3.1μg/mLの薬物Aまたは薬物B濃度でも依然として検出することができる。
【0156】
実施例12.サルでの前臨床毒性試験におけるADAのアイソタイピングおよび定量化
本出願の免疫捕捉およびLC-MS方法を、薬物Bについてのサルでの前臨床毒性試験におけるADAのアイソタイピングおよび定量化に使用した。サルを、週1回投薬で1mg/kgの薬物Bで処置した。
図15に示すように、サルの血清試料中の薬物Bの濃度を経時的にモニタリングして、サルA、BおよびCの毒物動態にアクセスした。サルAおよびサルBの薬物レベル、すべてのADAアイソタイプの質量分析ピーク面積、変換されたADA濃度、およびシグナル対ノイズ比の概要を表8に示す。シグナル対ノイズ比は、投薬前陰性サル血清試料に対する所与の試料のピーク面積の比を表す。サルAは、60日以内に薬物B濃度の速やかな減衰を有した。サルB血清試料中の薬物B濃度は170日以内に徐々に減衰した。サルC血清試料中の薬物Bの濃度は、経時的に著しく低下することなく安定していた。
【0157】
(表8)薬物Bレベル、すべてのADAアイソタイプの質量分析ピーク面積、変換されたADA濃度、およびシグナル対ノイズ比の概要
【0158】
サルA、BおよびCの血清試料を、本出願の免疫捕捉およびLC-MS方法を使用する薬物BのADAのアイソタイピングおよび定量化に供した。サルCにおけるADAの試験結果は陰性であったが、これはサルCにおけるADAの不在を示唆していた。
図16Aに示されるように、サルAおよびBにおけるADAの総量を本出願の免疫捕捉-LC/MS方法を使用して測定した。
図16Bに示すように、サルAおよびBにおけるADAの総量を、リガンド結合アッセイ(LBA)を使用して測定した。
【0159】
免疫捕捉-LC/MS方法およびLBAの両方の試験結果は同等であり、経時的なADA量の同様の傾向を示していた。サルAについての免疫捕捉-LC/MS方法およびLBAの両方の試験結果は同等であり、
図16Aおよび16Bに示されるように、経時的にADAの量が増加する同様の傾向を示していた。これらの試験結果は、
図15のサルAの毒物動態試験に示されるように、サルAについての薬物B濃度の60日以内の速やかな減衰と一致した。LBAを使用するサルBにおける全ADAの測定は、
図16Bに示すように経時的にADAの量を検出することができなかった。しかしながら、免疫捕捉-LC/MS方法を使用するサルBにおける全ADAの測定は、
図16Aに示すように170日以内のADA濃度の漸増を定量化することができ、これは
図15に示すサルBの毒物動態試験と一致した。
【0160】
サルAおよびBの血清試料を、本出願の免疫捕捉-LC/MS方法を使用するADAのアイソタイピングおよび定量化に供した。これらの方法は、サルAについて
図17Aに示されるように、およびサルBについて
図17Bに示されるように、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgAの量を含むADAアイソタイプの相対的定量化を決定することができた。
【0161】
実施例13.サルでの前臨床薬物動態試験におけるADAのアイソタイピングおよび定量化。
本出願の免疫捕捉およびLC-MS方法を使用して、薬物Aについてのサルでの前臨床薬物動態試験におけるADAのアイソタイピングおよび定量化を行った。サルを、薬物動態試験のために単回用量の薬物Aで処置した。サルAは、15mg/kgの薬物Aで処置した。サルBは、5mg/kgの薬物Aで処置した。サルCは、1mg/kgの薬物Aで処置した。
図18に示すように、サルA、BおよびCの血清試料中の薬物Aの濃度を経時的にモニタリングした。
図19に示すように、サルA、BおよびCにおけるADAの総量を、本出願の免疫捕捉-LC/MS方法によって測定した。試験結果は、総ADAのレベルがより対象に依存的であることを示していた。
【0162】
サルA、BおよびCの血清試料を、本出願の免疫捕捉-LC/MS方法を使用するADAのアイソタイピングおよび定量化に供した。これらの方法は、
図20に示されるように、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgAの量を含むADAアイソタイプの相対的定量化を決定することができた。試験結果は、ADAのIgG1サブタイプが、30日後のサルBにおける総ADAのレベルの上昇をもたらすことを示していた。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法であって、以下を含む、前記方法:
前記試料を固体支持体に接触させることであって、少なくとも1つの医薬品が前記固体支持体に結合されている、前記接触させることと、
少なくとも1つの移動相溶液を使用して前記固体支持体を洗浄して、少なくとも1つの溶出液を提供することと、
前記溶出液から前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離することと、
単離された前記ペプチドまたはタンパク質を変性溶液および/または酵素消化反応で処理して、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を生成することと、
質量分析計を使用して、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分を同定すること。
【請求項2】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスが決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質が、質量分析計を使用して定量化される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記医薬品が、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、前記固体支持体に結合した前記医薬品に選択的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記ヒト抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記哺乳動物抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSK
(配列番号1)、GLPAPIEK
(配列番号2)、WYVDGVEVHNAK
(配列番号3)、GLPSSIEK
(配列番号4)、DASGVTFTWTPSSGK
(配列番号5)、DASGATFTWTPSSGK
(配列番号6)、VSVFVPPR
(配列番号7)、またはDFTPPTVK
(配列番号8)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSR
(配列番号9)、GPSVFPLASCSR
(配列番号10)、GPSVFPLVSCSR
(配列番号11)、GPSVFPLASSSR
(配列番号12)、QIEVSWLR
(配列番号13)、またはDPSGATFTWTPSSGK
(配列番号14)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、前記固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が酢酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記試料が、室温で約1時間、前記固体支持体とともにインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、塩および界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記試料が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が、約6~9のpH範囲を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固体支持体が、塩および界面活性剤を含む前記少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの移動相溶液が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記変性溶液が、約5~10Mの尿素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素消化反応の酵素がトリプシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬品が、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して前記固体支持体に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬品が、前記医薬品のリジン残基を使用して前記固体支持体に結合される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記質量分析計が、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記質量分析計が、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記質量分析計が、三連四重極質量分析計である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分が、少なくとも約0.01ng、少なくとも約0.1ng、少なくとも約0.2ng、または少なくとも約0.3ngである、請求項3に記載の方法。
【請求項27】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うステップと、
MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択するステップと、
前記固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択するステップと、
前記固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化するステップと、
その後較正曲線を生成するステップと、
前記較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定するステップと
をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項28】
試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定または定量化するためのシステムであって、以下を備える、前記システム:
医薬品が結合されている固体支持体と、
前記固体支持体を洗浄するための少なくとも1つの移動相溶液であって、前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離するために、前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を含有する少なくとも1つの溶出液を提供することができる、前記少なくとも1つの移動相溶液と、
単離された前記ペプチドまたはタンパク質から成分を生成することができる変性溶液および/または酵素消化溶液と、
前記単離されたペプチドまたはタンパク質から前記成分を同定または定量化することができる質量分析計。
【請求項29】
前記質量分析計が、前記単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスを同定または定量化することができる、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記医薬品が、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品である、請求項28に記載のシステム。
【請求項31】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、前記固体支持体に結合された前記医薬品に選択的に結合する抗体である、請求項28に記載のシステム。
【請求項32】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記ヒト抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEである、請求項28に記載のシステム。
【請求項33】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記哺乳動物抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAである、請求項28に記載のシステム。
【請求項34】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSK
(配列番号1)、GLPAPIEK
(配列番号2)、WYVDGVEVHNAK
(配列番号3)、GLPSSIEK
(配列番号4)、DASGVTFTWTPSSGK
(配列番号5)、DASGATFTWTPSSGK
(配列番号6)、VSVFVPPR
(配列番号7)、またはDFTPPTVK
(配列番号8)である、請求項28に記載のシステム。
【請求項35】
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSR
(配列番号9)、GPSVFPLASCSR
(配列番号10)、GPSVFPLVSCSR
(配列番号11)、GPSVFPLASSSR
(配列番号12)、QIEVSWLR
(配列番号13)、またはDPSGATFTWTPSSGK
(配列番号14)である、請求項28に記載のシステム。
【請求項36】
前記試料が、前記固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理される、請求項28に記載のシステム。
【請求項37】
前記溶液が酢酸を含む、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記試料が、室温で約1時間、前記固体支持体上でインキュベートされる、請求項28に記載のシステム。
【請求項39】
前記試料が、塩および界面活性剤をさらに含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項40】
前記試料が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項41】
前記試料が、約6~9のpH範囲を有する、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記固体支持体が、塩および界面活性剤を含む前記少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄される、請求項28に記載のシステム。
【請求項43】
前記少なくとも1つの移動相溶液が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記変性溶液が、約5~10Mの尿素を含む、請求項28に記載のシステム。
【請求項45】
前記酵素消化溶液の酵素が、トリプシンである、請求項28に記載のシステム。
【請求項46】
前記医薬品が、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して前記固体支持体に結合される、請求項28に記載のシステム。
【請求項47】
前記医薬品が、前記医薬品のリジン残基を使用して前記固体支持体に結合される、請求項28に記載のシステム。
【請求項48】
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である、請求項28に記載のシステム。
【請求項49】
前記質量分析計が、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている、請求項28に記載のシステム。
【請求項50】
前記質量分析計が、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる、請求項28に記載のシステム。
【請求項51】
前記質量分析計が、三連四重極質量分析計である、請求項28に記載のシステム。
【請求項52】
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うこと、
MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択すること、
前記固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択すること、
前記固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化すること、
その後較正曲線を生成すること、ならびに
前記較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定すること
ができる、請求項28に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
[本発明1001]
試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定する方法であって、以下を含む、前記方法:
前記試料を固体支持体に接触させることであって、少なくとも1つの医薬品が前記固体支持体に結合されている、前記接触させることと、
少なくとも1つの移動相溶液を使用して前記固体支持体を洗浄して、少なくとも1つの溶出液を提供することと、
前記溶出液から前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離することと、
単離された前記ペプチドまたはタンパク質を変性溶液および/または酵素消化反応で処理して、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の成分を生成することと、
質量分析計を使用して、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分を同定すること。
[本発明1002]
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスが決定される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記単離されたペプチドまたはタンパク質が、質量分析計を使用して定量化される、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記医薬品が、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品である、本発明1001の方法。
[本発明1005]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、前記固体支持体に結合した前記医薬品に選択的に結合する抗体である、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記ヒト抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEである、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記哺乳動物抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAである、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSK、GLPAPIEK、WYVDGVEVHNAK、GLPSSIEK、DASGVTFTWTPSSGK、DASGATFTWTPSSGK、VSVFVPPR、またはDFTPPTVKである、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSR、GPSVFPLASCSR、GPSVFPLVSCSR、GPSVFPLASSSR、QIEVSWLR、またはDPSGATFTWTPSSGKである、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記試料が、前記固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理される、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記溶液が酢酸を含む、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記試料が、室温で約1時間、前記固体支持体とともにインキュベートされる、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記試料が、塩および界面活性剤をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
前記試料が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記試料が、約6~9のpH範囲を有する、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記固体支持体が、塩および界面活性剤を含む前記少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄される、本発明1001の方法。
[本発明1017]
前記少なくとも1つの移動相溶液が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記変性溶液が、約5~10Mの尿素を含む、本発明1001の方法。
[本発明1019]
前記酵素消化反応の酵素がトリプシンである、本発明1001の方法。
[本発明1020]
前記医薬品が、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して前記固体支持体に結合される、本発明1001の方法。
[本発明1021]
前記医薬品が、前記医薬品のリジン残基を使用して前記固体支持体に結合される、本発明1001の方法。
[本発明1022]
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である、本発明1001の方法。
[本発明1023]
前記質量分析計が、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている、本発明1001の方法。
[本発明1024]
前記質量分析計が、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる、本発明1001の方法。
[本発明1025]
前記質量分析計が、三連四重極質量分析計である、本発明1001の方法。
[本発明1026]
前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分が、少なくとも約0.01ng、少なくとも約0.1ng、少なくとも約0.2ng、または少なくとも約0.3ngである、本発明1003の方法。
[本発明1027]
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うステップと、
MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択するステップと、
前記固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択するステップと、
前記固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化するステップと、
その後較正曲線を生成するステップと、
前記較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定するステップと
をさらに含む、本発明1003の方法。
[本発明1028]
試料中の少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を同定または定量化するためのシステムであって、以下を備える、前記システム:
医薬品が結合されている固体支持体と、
前記固体支持体を洗浄するための少なくとも1つの移動相溶液であって、前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を単離するために、前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質を含有する少なくとも1つの溶出液を提供することができる、前記少なくとも1つの移動相溶液と、
単離された前記ペプチドまたはタンパク質から成分を生成することができる変性溶液および/または酵素消化溶液と、
前記単離されたペプチドまたはタンパク質から前記成分を同定または定量化することができる質量分析計。
[本発明1029]
前記質量分析計が、前記単離されたペプチドまたはタンパク質のアイソタイプまたはサブクラスを同定または定量化することができる、本発明1028のシステム。
[本発明1030]
前記医薬品が、薬物、化学化合物、核酸、毒素、ペプチド、タンパク質、融合タンパク質、抗体、抗体断片、抗体のFab領域、抗体-薬物コンジュゲート、またはタンパク質医薬品である、本発明1028のシステム。
[本発明1031]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が、前記固体支持体に結合された前記医薬品に選択的に結合する抗体である、本発明1028のシステム。
[本発明1032]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記ヒト抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、またはIgEである、本発明1028のシステム。
[本発明1033]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記哺乳動物抗体のアイソタイプが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、またはIgAである、本発明1028のシステム。
[本発明1034]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSK、GLPAPIEK、WYVDGVEVHNAK、GLPSSIEK、DASGVTFTWTPSSGK、DASGATFTWTPSSGK、VSVFVPPR、またはDFTPPTVKである、本発明1028のシステム。
[本発明1035]
前記試料中の前記少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の前記成分のアミノ酸配列が、GPSVFPLAPSSR、GPSVFPLASCSR、GPSVFPLVSCSR、GPSVFPLASSSR、QIEVSWLR、またはDPSGATFTWTPSSGKである、本発明1028のシステム。
[本発明1036]
前記試料が、前記固体支持体に接触する前に、約0.1~4.5のpH範囲に達するように溶液で処理される、本発明1028のシステム。
[本発明1037]
前記溶液が酢酸を含む、本発明1036のシステム。
[本発明1038]
前記試料が、室温で約1時間、前記固体支持体上でインキュベートされる、本発明1028のシステム。
[本発明1039]
前記試料が、塩および界面活性剤をさらに含む、本発明1028のシステム。
[本発明1040]
前記試料が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)をさらに含む、本発明1028のシステム。
[本発明1041]
前記試料が、約6~9のpH範囲を有する、本発明1040のシステム。
[本発明1042]
前記固体支持体が、塩および界面活性剤を含む前記少なくとも1つの移動相溶液、ならびに約0.1~4.5のpH範囲を有する少なくとももう1つの後続の移動相溶液を使用して洗浄される、本発明1028のシステム。
[本発明1043]
前記少なくとも1つの移動相溶液が、BSA(ウシ血清アルブミン)、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、塩化ナトリウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびTween-20(ポリソルベート20)を含み、かつ約6~9のpH範囲を有する、本発明1042のシステム。
[本発明1044]
前記変性溶液が、約5~10Mの尿素を含む、本発明1028のシステム。
[本発明1045]
前記酵素消化溶液の酵素が、トリプシンである、本発明1028のシステム。
[本発明1046]
前記医薬品が、一級アミン-エポキシ反応を使用して、またはビオチン-ストレプトアビジン相互作用を使用して前記固体支持体に結合される、本発明1028のシステム。
[本発明1047]
前記医薬品が、前記医薬品のリジン残基を使用して前記固体支持体に結合される、本発明1028のシステム。
[本発明1048]
前記質量分析計が、エレクトロスプレーイオン化質量分析計またはナノエレクトロスプレーイオン化質量分析計である、本発明1028のシステム。
[本発明1049]
前記質量分析計が、液体クロマトグラフィーシステムに結合されている、本発明1028のシステム。
[本発明1050]
前記質量分析計が、LC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)またはLC-MRM-MS(液体クロマトグラフィー-多重反応モニタリング-質量分析)分析を行うことができる、本発明1028のシステム。
[本発明1051]
前記質量分析計が、三連四重極質量分析計である、本発明1028のシステム。
[本発明1052]
前記単離されたペプチドまたはタンパク質のペプチドマッピングを行うこと、
MRM(多重反応モニタリング)トランジションを生成するために、前記単離されたペプチドまたはタンパク質の固有のペプチドおよび断片イオンを選択すること、
前記固有のペプチドの上位2つまたは上位3つのトランジションを選択すること、
前記固有のペプチドの衝突エネルギーを最適化すること、
その後較正曲線を生成すること、ならびに
前記較正曲線に従ってLLOQ(定量化の下限)を決定すること
ができる、本発明1028のシステム。
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面と併せて考慮すると、よりよく認識および理解されるであろう。以下の説明は、様々な実施形態およびその多数の具体的な詳細を示す一方で、限定ではなく例示として記載され得る。多くの置換、修正、追加、または再配置が、本発明の範囲内で行われ得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
さらに他の態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSK(配列番号1)、GLPAPIEK(配列番号2)、WYVDGVEVHNAK(配列番号3)、GLPSSIEK(配列番号4)、DASGVTFTWTPSSGK(配列番号5)、DASGATFTWTPSSGK(配列番号6)、VSVFVPPR(配列番号7)、またはDFTPPTVK(配列番号8)であり得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
他の態様において、本出願の方法における少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSR(配列番号9)、GPSVFPLASCSR(配列番号10)、GPSVFPLVSCSR(配列番号11)、GPSVFPLASSSR(配列番号12)、QIEVSWLR(配列番号13)、またはDPSGATFTWTPSSGK(配列番号14)であり得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
他の態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質がヒト抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSK(配列番号1)、GLPAPIEK(配列番号2)、WYVDGVEVHNAK(配列番号3)、GLPSSIEK(配列番号4)、DASGVTFTWTPSSGK(配列番号5)、DASGATFTWTPSSGK(配列番号6)、VSVFVPPR(配列番号7)、またはDFTPPTVK(配列番号8)であり得る。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
さらに他の態様において、本出願のシステムにおける少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質が哺乳動物抗体であり得る場合、単離されたペプチドまたはタンパク質の成分のアミノ酸配列は、GPSVFPLAPSSR(配列番号9)、GPSVFPLASCSR(配列番号10)、GPSVFPLVSCSR(配列番号11)、GPSVFPLASSSR(配列番号12)、QIEVSWLR(配列番号13)、またはDPSGATFTWTPSSGK(配列番号14)であり得る。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
【
図1】ある例示的実施形態による、サルIgG1サロゲートペプチドからの生成物イオンの選択を示す。
図1は、配列番号9を開示する。
【
図2】
図2Aおよび2Bは、ある例示的実施形態による、サルIgG1サロゲートペプチドからの上位2つのトランジションの選択、および衝突エネルギーの最適化を示す。
図2Aは、ある例示的実施形態による生成物イオンのピーク面積を示す。
図2Bは、ある例示的実施形態による選択された衝突エネルギーを示す。
【
図3】ある例示的実施形態による、三連四重極LC-MSを使用する機器検出限界の決定を示す。0.3ng、0.9ng、3ng、9ng、30ng、90ng、および300ngを含む異なる量の免疫グロブリンペプチドを試験した。ある例示的実施形態に従って、サルIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、およびIgAを試験した。
【
図4】ある例示的実施形態による、ビオチン化薬物ビーズまたは架橋薬物ビーズを使用してADAの回収率を示す。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、ある例示的実施形態による、酵素消化を受ける前に乾燥ADAを溶解させる変性溶液の存在下でADAを捕捉するための薬物Aまたは薬物Bの使用を示す。
図5Aは、乾燥ADAを溶解するための変性溶液を使用せずにADAを捕捉するための薬物Aの使用を示す。
図5Bは、乾燥ADAを溶解するための変性溶液の存在下でADAを捕捉するための薬物Aまたは薬物Bの使用を示す。
【
図6】ある例示的実施形態による、サル血清の存在下での非特異的相互作用を示す。
【
図7】ある例示的実施形態による、室温で1時間または4℃で一晩のインキュベーションを含むインキュベーション条件を含む、免疫捕捉のためのインキュベーション条件の最適化を示す。
【
図8】ある例示的実施形態による、ノイズインジケータとしてIgG2を使用する免疫捕捉のインキュベーション条件の最適化を示す。
【
図9-1】ある例示的実施形態による、酸性条件を使用して血清中の相互作用を中断することによる免疫捕捉の最適化を示す。条件1:49μLのサル血清に1μLの5M酢酸を添加し、1時間インキュベートする(最終酢酸濃度300mM)。条件2:50μLのサル血清に50μLの600mM酢酸を添加し、1時間インキュベートする(最終酢酸濃度300mM)。
【
図10】ある例示的実施形態による、アイソタイピングの最適化およびADA IgG4の定量化のためのADAを捕捉するためのIgG薬物のFab部分の使用を示す。Fabのみの薬物は、IgG4薬物のFc領域との血清IgG4相互作用を排除する。IgG1について、完全抗体およびFabの両方とも、低い非特異的結合のみを有する。
【
図11】ある例示的実施形態による、アイソタイピングおよびIgM ADAの同定のためのADAを捕捉するための、IgG薬物のFab部分の使用を示す。結果は、血清IgMと薬物Fab領域との間の相互作用が、高いIgM背景を引き起こすことを示す。
【
図12】ある例示的実施形態による、ADAのアイソタイピングおよび定量化のための好ましい免疫捕捉、酵素消化、およびLC-MC方法を示す。
【
図13】ある例示的実施形態による、免疫捕捉の方法の開発の前または後の、薬物AまたはBを使用して、較正曲線を生成しかつ検出限界または定量限界を決定するための、ADAの試験範囲を示す。
【
図14】ある例示的実施形態による、ADAの定量化および検出に対する薬物AまたはBの様々な濃度の効果を示す。
【
図15】ある例示的実施形態による、前臨床毒性試験における経時的なサルAまたはBの血清試料中の薬物Bの濃度を示す。
【
図16】ある例示的実施形態による、サルAおよびBにおけるADAの総量の測定を示す。ある例示的実施形態による、
図16Aに示すような本出願の免疫捕捉-LC/MS方法を使用して、サルAおよびBにおけるADAの総量を測定した。ある例示的実施形態による、
図16Bに示されるようなリガンド結合アッセイ(LBA)を使用して、サルAおよびBにおけるADAの総量を測定した。
【
図17】
図17Aおよび17Bは、ある例示的実施形態による、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、およびIgAの量を含むADAアイソタイプの相対的定量化を示す。
図17Aは、ある例示的実施形態によるサルAの定量化を示す。
図17Bは、ある例示的実施形態によるサルBの定量化を示す。
【
図18】ある例示的実施形態による、薬物Aについての前臨床薬物動態試験において経時的にモニタリングされたサルA、B、およびCの血清試料中の薬物Aの濃度を示す。
【
図19】ある例示的実施形態による、薬物Aに関するサルでの前臨床薬物動態試験におけるADAのアイソタイピングおよび定量化のために本出願の免疫捕捉-LC/MS方法によって測定されたサルA、BおよびCにおけるADAの総量を示す。
【
図20】ある例示的実施形態による、薬物Aに関するサルでの前臨床薬物動態試験におけるIgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgAの量を含むADAアイソタイプの相対的定量化を示す。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
(表2)生成物イオンおよび衝突エネルギーを有するサルIgG1サロゲートペプチドの上位2つのトランジション
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0120
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0120】
ヒト抗体では、抗体アイソタイプを同定するための固有のサロゲートペプチドのアミノ酸配列は、IgG1についてはGPSVFPLAPSSK(配列番号1)、IgG2についてはGLPAPIEK(配列番号2)、IgG3についてはWYVDGVEVHNAK(配列番号3)、IgG4についてはGLPSSIEK(配列番号4)、IgA1についてはDASGVTFTWTPSSGK(配列番号5)、IgA2についてはDASGATFTWTPSSGK(配列番号6)、IgMについてはVSVFVPPR(配列番号7)、またはIgEについてはDFTPPTVK(配列番号8)である。サル抗体では、抗体アイソタイプを同定するための固有のサロゲートペプチドのアミノ酸配列は、IgG1についてはGPSVFPLAPSSR(配列番号9)、IgG2についてはGPSVFPLASCSR(配列番号10)、IgG3についてはGPSVFPLVSCSR(配列番号11)、IgG4についてはGPSVFPLASSSR(配列番号12)、IgMについてはQIEVSWLR(配列番号13)、またはIgAについてはDPSGATFTWTPSSGK(配列番号14)である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
(表3)LC-MRM-MS方法を最適化するためのサルADAアイソタイピングのための固有のペプチドの一覧
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0125
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0125】
(表4)LC-MRM-MS方法を最適化するためのサルADAアイソタイピングのための確認ペプチドの一覧
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
(表6)LC-MRM-MS方法を最適化するためのヒトADAアイソタイピングのための固有ペプチドの一覧
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】