IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キアゲン ビバリー, エルエルシーの特許一覧

特表2022-548118改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素
<>
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図1
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図2
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図3
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図4
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図5
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図6
  • 特表-改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】改善された熱安定性ウイルス逆転写酵素
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20221109BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221109BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516609
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020051465
(87)【国際公開番号】W WO2021055729
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】62/902,183
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19201780.4
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】320009819
【氏名又は名称】キアゲン ビバリー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チュン, スーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュスター, デイビッド マーク
(72)【発明者】
【氏名】ショーンフェルド, トーマス ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD20
4B050FF09E
4B050FF11E
4B050LL03
4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA27
4B065CA46
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、熱安定性、プロセシビティ、cDNA収量、および二次酵素活性の除去において有益な改善をもたらす、新規に操作された逆転写酵素を提供する。本発明はまた、そのような逆転写酵素を使用して鋳型核酸を増幅するための方法を提供する。本発明は、RNAの検出および分析における逆転写酵素の現在の技術水準における欠陥に対処し、それには、特に、長さ、二次構造およびヌクレオチド含有量がさまざまである鋳型核酸を使用した場合の検出感度、特異性、副酵素活性、酵素安定性および合成能力の欠陥が含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのサブユニットを含む逆転写酵素(RT)であって、前記2つのサブユニットは、各々、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントにコードされており、
前記バリアントにコードされたアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも90%同一であり、
前記バリアントは、前記RTのサムドメインの副溝結合トラック(MGBT)において前記配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす変異を前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含み、
前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中の前記変異は、配列番号2の263、265、267、269、および271位に対応するすべてのアミノ酸位置の前記コードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、前記アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、およびS271Qである、逆転写酵素(RT)。
【請求項2】
前記バリアントが、前記RTの接続ドメイン(CD)内の配列番号2に対して1または複数のさらなるアミノ酸交換を引き起こす、1または複数のさらなる変異を前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含む、請求項1に記載のRT。
【請求項3】
前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中の前記1または複数のさらなる変異が、配列番号2の356、360、362、および363位に対応するアミノ酸位置の前記コードされたアミノ酸配列内で1または複数のさらなるアミノ酸交換を引き起こし、前記アミノ酸交換が、I356G/I356D/I356Nおよび/またはN360Aおよび/またはG362T/G362Nおよび/またはW363K/W363N/W363I、好ましくはI356Gおよび/またはN360Aおよび/またはG362Tおよび/またはW363K、より好ましくはI356G、N360A、G362TおよびW363Kである、請求項2に記載のRT。
【請求項4】
前記バリアントが、前記RTのRNアーゼHドメインの配列番号2に対して1または複数のさらなるアミノ酸交換を引き起こす、1または複数のさらなる変異を前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のRT。
【請求項5】
前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中の前記さらなる変異が、配列番号2の443および476位に対応するアミノ酸位置の前記コードされたアミノ酸配列内で1または複数のさらなるアミノ酸交換を引き起こし、前記アミノ酸交換が、D443Gおよび/またはE476Q、好ましくはD443Gである、請求項4に記載のRT。
【請求項6】
前記バリアントが、配列番号2に対してさらなるアミノ酸交換を引き起こす、さらなる変異を前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含み、前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中の前記さらなる変異が、配列番号2の491位に対応するアミノ酸位置の前記コードされたアミノ酸配列内でさらなるアミノ酸交換を引き起こし、前記アミノ酸交換がQ491Rである、先行する請求項のいずれか1項に記載のRT。
【請求項7】
前記バリアントが、配列番号2に対して1または複数のさらなるアミノ酸交換を引き起こす、1または複数のさらなる変異を前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含み、前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中の前記さらなる変異が、配列番号2の470、526および553位に対応するアミノ酸位置の前記コードされたアミノ酸配列内で1または複数のさらなるアミノ酸交換を引き起こし、前記アミノ酸交換が、V470Fおよび/またはR526Hおよび/またはK533R、好ましくはR526Hおよび/またはK553R、より好ましくはR526Hである、請求項6に記載のRT。
【請求項8】
前記配列番号1のポリヌクレオチド配列中の前記変異が、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置の前記コードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、前記アミノ酸交換が、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363KおよびD443Gである、先行する請求項のいずれか1項に記載のRT。
【請求項9】
前記2つのサブユニットのうちの第1のサブユニットが、前記バリアントによってコードされる完全なアミノ酸配列を含み、前記2つのサブユニットのうちの第2のサブユニットが、前記バリアントによってコードされる完全なアミノ酸配列のタンパク質分解断片を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のRT。
【請求項10】
鋳型核酸と、先行する請求項のいずれか1項に記載のRTとを接触させることを含む、前記鋳型核酸を増幅させるための方法であって、好ましくは、前記方法は逆転写(RT)PCRである、方法。
【請求項11】
a)請求項1から9のいずれか1項に記載のRT;および
b)緩衝液
を含むキット。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載のRTをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む、形質転換宿主細胞。
【請求項15】
請求項12に記載のポリヌクレオチドまたは請求項13に記載のベクターを宿主細胞、好ましくはE.coliで発現させることによって得られる、RT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、RNAの検出および分析を改善するための新規に操作された逆転写酵素を提供する。本発明はまた、そのような逆転写酵素を使用して鋳型核酸を増幅するための方法および前記酵素を産生する方法を提供する。本発明は、RNAの検出および分析における現在の技術水準の逆転写酵素の欠陥に対処し、それには、特に長さ、二次構造およびヌクレオチド含有量がさまざまである鋳型核酸を使用した場合の検出感度、特異性、副酵素活性、酵素安定性および合成能力の欠陥が含まれる。
【背景技術】
【0002】
技術的背景
RNAの検出および分析は、遺伝子発現、遺伝子サイレンシング、重要な病原体、特にRNAウイルスの存在または不在、およびその他の医学的に重要な状態などの重要な生物学的現象への洞察をもたらすことができる。メッセンジャーRNA、ノンコーディングRNAおよびウイルスRNAの存在もしくは不在または量の変化をモニターすることができれば、癌またはウイルス感染などの重要な病状の診断が可能になり、一般に生物学的プロセスの研究が容易になる。これらの理由から、これらの分析における技術水準の改善が強く求められている。
【0003】
RNA分析の最も一般的な方法は、いくつかの関連する分析および調製方法の重要な段階である、RNA鋳型を使用して相補的DNA(cDNA)の合成を触媒する逆転写酵素に依存している(Spiegelman 1971、Telesnitsky 1997)。例えば、逆転写PCR(RT-PCR)(Lee 1989)およびその変形である定量的RT-PCR(RT qPCR)、リアルタイム定量的RT-PCR(RT RT-PCR)(Owarzek 1992、Paria 1993、Gibson 1996)およびデジタルRT-PCR(RT dPCR)(Warren 2006、Sanders 2018)は、基本的に、cDNAが逆転写によって合成され、PCRによって増幅される2段階プロセスである。一般に、これら2つの機能は、逆転写酵素(RT)、多くの場合モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)RT誘導体と、熱安定性DNAポリメラーゼ(Pol)、通常はTaqPolという別個の酵素によって提供される。これらの方法の性能は両方の活性に依存するが、PCR段階は一般によく確立されて堅牢であるため、RT酵素に着目して改善点を求めることが最も一般的である。
【0004】
RT-PCRに加えて、転写物、ノンコーディングRNA、およびウイルスゲノミクスおよびメタゲノミクスに焦点を当てたRNA中心のゲノミクスの分野は、集合的にRNA-Seqと呼ばれる分析アプローチの変形に依存している(Hrdlickova 2017、Booneら、2018で概説されている)。さまざまなRNA-Seq戦略は、遺伝子発現および転写物の相対的存在量の変動、ウイルスゲノム配列とその進化の多様性、イントロンプロセシングとスプライシングなどの現象およびその他の関連する現象に関連するさまざまな生物学的問題に対処するために使用される。いずれの場合も、酵素成分は、配列解析に使用されるライブラリーの生成に重要であり、解析の全体的な品質と信頼性に大きな影響を及ぼす。RT-PCRおよびRNA-Seqに加えて、cDNA合成は、転写物と翻訳タンパク質に関するより集中的な解析のためのcDNAのクローニングに関連する調製方法として、伝統的に多く使用されている(Spiegelman 1971、Burrell 1996)。これらの解析の各々において最適な性能を発揮するために酵素に独特の要求が課され、RTの選択は方法の有効性および信頼性に大きな影響を与える(Okello 2010、Bustin 2015)。
【0005】
エンジニアリングは、特定の用途におけるRTの性能を向上させた。多くのRTは、RNA/DNAハイブリッドのRNA成分を消化する固有のRNアーゼH活性を有する(Gerard 1975)。これは特定の用途にとってプラスの特性であるが、他の一般的な使用を妨げる(Garces 1991)。RNアーゼH活性を無効にすることには二次的な効果がある。ヌクレアーゼとしての標準的な機能を除去するだけでなく、突然変異誘発によってRNアーゼH活性を除去することによって熱安定性も向上する。このことにより、高温での合成が可能になり、それにより高度に構造化されたRNA標的の分析が容易になる。MMLV RTに関するさらなる研究により、特定のドメイン、特に副溝結合トラック(MGBT)と接続ドメイン(CD)が、鋳型との相互作用に役割を果たすことが示されている(Beard1994)。RNアーゼH活性、MGBTまたはCDあるいはその組合せのいずれかを修飾することにより、鋳型スイッチング(Garces 1991、Svarovskaia 2000)、鋳型に対する親和性、さらに、伸長により、産物の長さを増加させることができる。これらの改善は、RT-PCR、RNA-Seqライブラリーの調製、cDNAクローニングにおいて、さまざまな程度で有益である。
【0006】
これらのさまざまな用途の特殊なニーズに対処するために、多数の天然および操作されたRTが検討されてきた。最も一般的なのは、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)RT(Gerard 1975)、またはあまり一般的ではないが、トリ骨髄芽球症(AMV)RT(Kacian 1971)の誘導体である。他のRT酵素は、代替レトロウイルス酵素(例えば、US7560117号)、ファージ(Moser 2012)および細菌(Grabco 1996)に由来しているが、いずれも長さ、二次構造およびヌクレオチド含有量がさまざまである標的の高感度で高度に特異的で堅牢なcDNAの合成のニーズに完全に対処していない。したがって、最先端技術におけるこれらの欠点は、継続的に改善される必要がある。
【0007】
参考文献
【化1-1】
【化1-2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7560117号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の要旨
本発明は、熱安定性、RNA鋳型を使用して合成されるcDNAの長さ、および二次酵素活性の除去において有益な改善をもたらす、新規に操作された逆転写酵素を提供する。これらの改善は、サム(thumb)ドメイン、接続ドメイン、およびRNアーゼHドメインに存在するアミノ酸残基の定方向突然変異誘発によって、親のウマ伝染性貧血ウイルス逆転写酵素(EIAV RT)分子に組み込まれた。これらの変異は、RNアーゼH活性を集合的に除去し、高温でRT活性を増加させるものであり、合理的設計とランダム変異誘発/スクリーニングの両方から特定された。これらの変異を組み合わせることにより、65℃までの温度で12kbを超える長さのcDNAを合成する能力などの成績を大幅に改善することが可能になる。
【0010】
第1の態様において、本発明は、2つのサブユニットを含む逆転写酵素(RT)に関し、ここで、2つのサブユニットは、各々、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントにコードされており、ここで、バリアントにコードされたアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも90%同一であり、ここで、バリアントは、RTのサムドメインおよび/またはRTの接続ドメイン(CD)の副溝結合トラック(MGBT)の配列番号2のアミノ酸配列に対して1または複数のアミノ酸交換を引き起こす、1または複数の変異を配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含む。
【0011】
本発明のこの態様による1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2の263、265、267、269、および271位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で引き起こされ得、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、およびS271Qである。
【0012】
さらにまたは代替的に、1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2の356、360、362、および363位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で引き起こされ得、ここで、アミノ酸交換は、I356GまたはI356DまたはI356N、N360A、G362TまたはG362N、およびW363KまたはW363NまたはW363I、好ましくはI356G、N360A、G362TおよびW363Kである。
【0013】
一実施形態によれば、配列番号1のバリアントは、RTのRNアーゼHドメインの配列番号2に対して1または複数のアミノ酸交換を引き起こす、1または複数の変異を配列番号1のポリヌクレオチド配列中にさらに含む。本発明のこの態様による1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2の443、470、476、491、526および553位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で引き起こされ得、ここで、アミノ酸交換は、D443G、V470F、E476Q、Q491R、R526HおよびK553Rである。好ましい実施形態では、アミノ酸交換は、D443Gおよび/またはE476Qである。非常に好ましい実施形態では、アミノ酸交換は、D443Gである。
【0014】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列中における1または複数の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271および443位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271QおよびD443Gである。好ましい実施形態では、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271QおよびD443Gである。
【0015】
さらなる実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列中における1または複数の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363KおよびD443Gである。好ましい実施形態では、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363KおよびD443Gである。あるいは、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363NおよびD443Gである。さらにあるいは、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356D、N360A、G362T、W363KおよびD443Gである。さらにあるいは、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356N、N360A、G362N、W363IおよびD443Gである。
【0016】
さらなる実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列中における1または複数の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、491、526および443位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、Q491R、R526HおよびD443Gである。好ましい実施形態では、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、491、526および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、Q491R、R526HおよびD443Gである。あるいは、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、491、526および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、Q491R、K553RおよびD443Gである。さらにあるいは、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、491、526および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、Q491R、R526H、K553RおよびD443Gである。
【0017】
さらなる実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列中における1または複数の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363、491、526および443位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363K、Q491R、R526HおよびD443Gである。好ましい実施形態では、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363、491、526および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363K、Q491R、R526HおよびD443Gである。
【0018】
好ましい実施形態によれば、2つのサブユニットのうちの第1のサブユニットは、配列番号1のバリアントによってコードされる完全なアミノ酸配列を含み、2つのサブユニットのうちの第2のサブユニットは、配列番号1のバリアントによってコードされる完全なアミノ酸配列のタンパク質分解断片を含む。
【0019】
別の態様では、本発明は、鋳型核酸と本発明のRTを接触させることを含む鋳型核酸を増幅させるための方法を指す。一実施形態では、この方法は、逆転写(RT)PCRである。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、本発明のRTおよび緩衝液を含むキットを提供する。
【0021】
本発明の別の態様は、本発明のRTをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明のさらなる態様は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。別の態様では、本発明は、前記ベクターを含む形質転換宿主細胞に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドまたはベクターを宿主細胞において発現させることにより得られるRTを提供する。好ましい実施形態では、宿主細胞はE.coliである。
【0023】
さらに別の実施形態では、本発明は、形質転換宿主細胞からRTを単離することを含む、本発明のRTを生成する方法に関する。
【0024】
図面の簡単な説明
本開示は、以下の添付の図面に関連して検討される際に、以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、42℃でのRT反応の前に、示された温度でプレインキュベーションステップを行ったさまざまなRTを使用した熱安定性アッセイの結果を示す。
【0026】
図2図2は、さまざまなRTを使用して高温下でのcDNA合成を測定する熱安定性アッセイの結果を表す。パネル(a)は、50℃でのcDNA合成反応の結果を示す。パネル(b)は、cDNAを50℃(上のパネル)および60℃(下のパネル)で生成した2段階RT-PCR反応の結果を示す。
【0027】
図3図3は、RNアーゼH活性を低下させた最先端のMMLV RT(EnzScript)と、本発明によるRNアーゼHneg EIAV RTバリアントを用いる1段階RT-qPCRアッセイにおけるcDNA収率への温度の影響を示し、ここで、EIAV RT V3は、MGBT内に点変異をさらに含む。
【0028】
図4図4は、最先端のMMLV RT(SuperScript IV)および本発明によるEIAV RTバリアントを用いる2段階RT-qPCRアッセイにおけるさまざまな長さのcDNAの収率への温度の影響を示す。
【0029】
図5図5は、EIAV RT V3および最先端のMMLV RT SuperScript IVによる55℃で9kbのcDNA合成の時間経過を示す。
【0030】
図6図6は、本発明によるさまざまなEIAV RTバリアントを用いる2段階RT-qPCRアッセイにおけるcDNAの収率への温度の影響を示す。
【0031】
図7図7は、本発明によるさまざまなEIAV RTバリアントを用いる長期エンドポイントPCRアッセイにおけるcDNAの収率への温度の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
定義
別に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、当技術分野の(例えば細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術および生化学の)当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0033】
本発明を実践する際には、分子生物学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの従来技術が使用されてよい。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Volumes I,II,and III,1997(F.M.Ausubel ed.);Sambrookら、1989,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II,1985(D.N.Glover ed.);Oligonucleotide Synthesis,1984(M.L.Gait ed.);Nucleic Acid Hybridization,1985(Hames and Higgins);Transcription and Translation,1984(Hames and Higgins eds.);Animal Cell Culture,1986(R.I.Freshney ed.);Immobilized Cells and Enzymes,1986(IRL Press);Perbal,1984,A Practical Guide to Molecular Cloning;the series,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,1987(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology Vol.154 and Vol.155(それぞれ、Wu and Grossman,and Wu,eds.)に説明されている。
【0034】
本明細書において使用される、「含む」という用語は、「含んでいる」と「からなる」の両方を包含するものと解釈されるべきであり、両方の意味は特に意図され、そのため、本発明に従って個別に開示される実施形態を含む。
【0035】
本明細書において使用される「核酸配列、ヌクレオチド配列」または「ポリヌクレオチド配列」という用語は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドおよびその断片および部分、そしてゲノムまたは合成起源のDNAまたはRNAを指し、これは一本鎖または二本鎖であってよく、センス鎖またはアンチセンス鎖を表し得る。配列は、非コード配列、コード配列または両方の混合物であってよい。
【0036】
ポリヌクレオチド配列(例えば、RNAまたはDNA)の「バリアント」は、1または複数の核酸残基が核酸配列に挿入、削除および/または置換されている別のポリヌクレオチド配列に対して、ポリヌクレオチド配列内に1または複数の変異を含む。前記1または複数の変異は、別のアミノ酸配列と比較して、バリアントがコードするアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし得る(すなわち、「非サイレント変異」)。バリアントには、1または複数のコドンがアミノ酸交換を引き起こさないシノニム(synonyms)で置き換えられており、そのため「サイレント変異」と呼ばれる核酸配列も含まれる。
【0037】
「同一性」という用語は、配列を整列および比較することによって決定される、2またはそれを超えるポリペプチド分子または2またはそれを超える核酸分子の配列間の関係を指す。「同一性パーセント」とは、比較される分子中のアミノ酸またはヌクレオチド間の同一の残基のパーセントを意味し、比較される分子の最小のサイズに基づいて計算される。これらの計算では、アラインメントのギャップ(存在する場合)は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって対処されることが好ましい。整列した核酸またはポリペプチドの同一性を計算するために使用することができる方法としては、Computational Molecular Biology,(Lesk,A.M.,ed.),1988,New York:Oxford University Press;Biocomputing Informatics and Genome Projects,(Smith,D.W.,ed.),1993,New York:Academic Press;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.),1994,New Jersey:Humana Press;von Heinje,G.,1987,Sequence Analysis in Molecular Biology,New York:Academic Press;Sequence Analysis Primer,(Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.),1991,New York:M.Stockton Press;およびCarilloら、1988,SI AM J.Applied Math.48:1073に記載されるものが挙げられる。
【0038】
同一性パーセントを計算する際、比較される配列は通常、配列間で最大一致をもたらすような方法で整列される。同一性パーセントを決定するために使用することができるコンピュータプログラムは、例えば、Pearsonによって考察されている(Pearson、2013、Curr.Protoc.Bioinform.42:3.1.1-3.1.8)。このようなコンピュータアルゴリズムは、配列同一性パーセントを決定する2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドを整列させるために使用される。配列は、そのそれぞれのアミノ酸またはヌクレオチドの最適な一致(アルゴリズムによって決定される「一致したスパン」)を目指して整列される。
【0039】
2つの配列を整列させるための特定のアラインメントスキームは、2つの配列の短い領域のみの一致をもたらすことがあり、この小さな整列領域は、2つの全長配列間に有意な関係がないにもかかわらず、非常に高い配列同一性を示すことがある。したがって、選択したアラインメント方法を必要に応じて調整して、少なくとも50個または他の数の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸にまたがるアラインメントをもたらすことができる。
【0040】
本発明の核酸配列は、当業者に周知の標準的な技術を使用して作製することができる。「コード化」または「コーディング」という用語は、定義された配列のヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA、他のRNA分子)またはアミノ酸を有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマーおよび高分子の合成用の鋳型として機能する、染色体またはmRNA中の遺伝子などの核酸中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、およびそれらから生じる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子によって生成されたmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系においてタンパク質を生成する場合に、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列リストに記載されているコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方のコード鎖は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードしていると呼ぶことができる。タンパク質をコードする核酸には、さまざまなヌクレオチド配列を有するが、遺伝暗号の縮重のために同じタンパク質のアミノ酸配列をコードする核酸が含まれる。タンパク質をコードする核酸およびヌクレオチド配列には、イントロンが含まれることがある。
【0041】
「ポリペプチド」という用語は、「アミノ酸配列」または「タンパク質」と同義的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。これらの用語には、限定されるものではないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、またはタンパク質プロセシングを含む反応によって翻訳後修飾されるタンパク質も含まれる。修飾および変化、例えば他のタンパク質への融合、アミノ酸配列の置換、欠失または挿入は、分子がその生物学的機能活性を維持したまま、ポリペプチドの構造内で行うことができる。例えば、特定のアミノ酸配列置換を、ポリペプチドまたはその基礎となる核酸コード配列において行い、同様の特性をもつタンパク質を得ることができる。アミノ酸修飾は、例えば、部位特異的変異誘発またはポリメラーゼ連鎖反応を介した変異誘発をその基礎となる核酸配列に実施することによって作製することができる。
【0042】
本明細書で使用される「発現した」という用語は、宿主細胞内の異種核酸配列の転写および/または翻訳を指す。「産生」には、転写と翻訳の両方が含まれる。宿主細胞における発現量は、その細胞に存在する対応するmRNAの量のいずれかに基づいて決定されてよく、産生は所望のポリペプチドの量に基づくことになる。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNA保護、細胞のRNAへのインサイツハイブリダイゼーションまたはPCRによって定量することができる(Sambrookら(1989年)、前掲;Ausubelら(1994年更新)、前掲を参照)。選択された配列にコードされるタンパク質は、さまざまな方法、例えば、ELISA、ウエスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降、タンパク質生物活性のアッセイ、またはタンパク質の免疫染色とそれに続くFACS分析PCRによって定量することができる(Sambrookら(1989年)、前掲;Ausubelら(1994年更新)、前掲を参照)。
【0043】
「PCR」という用語は、DNA増幅のための分子生物学の標準的な方法であるポリメラーゼ連鎖反応を指す。
【0044】
「RT-PCR」は、RNAの検出および定量化に一般に使用されるPCRの変形である逆転写ポリメラーゼ連鎖反応に関する。RT-PCRは、RNAからの逆転写による相補的DNA(cDNA)の合成と、生成されたcDNAのPCRによる増幅の2つのステップを含む。RT-PCRの変形には、定量的RT-PCR(RT-qPCR)、リアルタイムRT-PCR、デジタルRT-PCR(dRT-PCR)またはデジタル液滴RT-PCR(ddRT-PCR)が含まれる。
【0045】
以下では、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。これらの実施形態および項目が複数の可能性の一例を示しているに過ぎないことは、当業者には明らかであろう。したがって、ここに示す実施形態は、これらの特徴および構成の限定をなすものと理解されるべきではない。記載された特徴の任意の可能な組合せおよび構成は、本発明の範囲に従って選択することができる。
【0046】
ポリメラーゼ/酵素
ウマ伝染性貧血ウイルス逆転写酵素(EIAV RT)は、単一のオープンリーディングフレームに由来する66kDaおよび51kDaのサブユニットを含むヘテロ二量体として生体内で活性である。小さい方の51kDaのサブユニットは、大きい方の66kDaのサブユニットのタンパク質分解断片である。E.coliにおける配列番号1のオープンリーディングフレームの発現は、ホモ二量体(すなわち、p66/p66およびp51/p51)とヘテロ二量体(すなわち、p66/p51)を形成することのできる66kDaと51kDaのサブユニットの両方を生じさせる。RTのいくつかの市販の調製物は、ホモ二量体とヘテロ二量体の混合物である。どちらの種類の二量体もDNA合成に活性を示すが、ヘテロ二量体はホモ二量体よりも高い安定性とプロセシビティ(processivity)を示す。
【0047】
したがって、本発明によるRTの好ましい実施形態は、ヘテロ二量体が濃縮されている酵素調製物である。濃縮は、当業者に公知の任意の方法、例えば、ヘパリンを含むクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、およびイオン交換などを用いて行うことができる。ヘテロ二量体の含有量が、酵素調製物中のヘテロ二量体の濃縮前の含有量と比較して少なくとも25%高い場合、酵素調製物はヘテロ二量体が濃縮されている。本発明のこの態様の一部の実施形態では、ヘテロ二量体の含有量は、酵素調製物中のヘテロ二量体の濃縮前の含有量と比較して少なくとも30%濃縮されている。もう一つの実施形態では、ヘテロ二量体の含有量は、酵素調製物中のヘテロ二量体の濃縮前の含有量と比較して少なくとも50%濃縮されている。本発明のこの態様の好ましい実施形態では、ヘテロ二量体の含有量は、酵素調製物中のヘテロ二量体の濃縮前の含有量と比較して少なくとも75%濃縮されている。本発明のこの態様のより好ましい実施形態では、ヘテロ二量体の含有量は、酵素調製物中のヘテロ二量体の濃縮前の含有量と比較して少なくとも100%濃縮されている。本発明のこの態様の特に好ましい実施形態では、ヘテロ二量体は、明らかに均質になるまで精製されている。
【0048】
第1の態様において、本発明は、2つのサブユニットを含む逆転写酵素(RT)を提供し、ここで、2つのサブユニットは、各々、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントにコードされており、ここで、バリアントにコードされたアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも90%同一であり、ここで、バリアントは、RTのサムドメインおよび/またはRTの接続ドメイン(CD)の副溝結合トラック(MGBT)の配列番号2のアミノ酸配列に対して1または複数のアミノ酸交換を引き起こす、1または複数の変異を配列番号1のポリヌクレオチド配列中に含む。
【0049】
配列番号1のバリアントは、配列番号2に対してアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こさないそれらのシノニム(表1参照)によって置き換えられている任意の数のコドンを含むことができる。さらに、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも1つの変異を含む。一部の実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも2つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも3つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも4つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも5つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも6つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも8つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす少なくとも10の変異を含む。
表1:遺伝暗号
【表1-1】
【表1-2】
【0050】
本発明のこの態様による一部の実施形態では、配列番号1のバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす1つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす2つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす3つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす4つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす5つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす6つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす8つの変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす10の変異を含む。もう一つの実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対してアミノ酸交換を引き起こす12の変異を含む。
【0051】
配列番号2のアミノ酸配列に対する1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2のアミノ酸残基255~298に及ぶRTのサムドメインの副溝結合トラック(MGBT)、配列番号2のアミノ酸残基320~414に及ぶRTの接続ドメイン(CD)、および/または配列番号2のアミノ酸残基438~553に及ぶRTのRNアーゼHドメインに位置することができる。本発明のこの態様による一部の実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも1つのアミノ酸交換は、RTのサムドメインのMGBTに位置する。本発明のこの態様による他の実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも1つのアミノ酸交換は、RTのCDに位置する。本発明のこの態様によるさらなる実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも1つのアミノ酸交換は、RTのRNアーゼHドメインに位置する。好ましい実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも2つのアミノ酸交換は、RTのサムドメインおよびRTのCDのMGBTに位置する。もう一つの好ましい実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも2つのアミノ酸交換は、RTのサムドメインおよびRTのRNアーゼHドメインのMGBTに位置する。特に好ましい実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対する少なくとも3つのアミノ酸交換は、RTのサムドメイン、RTのRNアーゼHドメインおよびRTのCDのMGBTに位置する。
【0052】
本発明のこの態様による一部の実施形態では、配列番号1のバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対して1つのアミノ酸交換を引き起こす1または複数の変異を含む。この配列番号2のアミノ酸配列に対する1つのアミノ酸交換は、配列番号2のアミノ酸残基255~298に及ぶRTのサムドメインの副溝結合トラック(MGBT)、配列番号2のアミノ酸残基320~414に及ぶRTの接続ドメイン(CD)、および/または配列番号2のアミノ酸残基438~553に及ぶRTのRNアーゼHドメインに位置することができる。特定の実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対するこの1つのアミノ酸交換は、RTのサムドメインのMGBTに位置する。他の実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対するこの1つのアミノ酸交換は、RTのCDに位置する。さらなる実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対するこの1つのアミノ酸交換は、RTのRNアーゼHドメインに位置する。好ましい実施形態では、このバリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対して2つのアミノ酸交換を引き起こす変異を含む。配列番号2のアミノ酸配列に対するこれらの2つのアミノ酸交換は、RTのサムドメインおよびRTのCDのMGBTに位置する。もう一つの好ましい実施形態では、配列番号2のアミノ酸配列に対するこれらの2つのアミノ酸交換は、RTのサムドメインおよびRTのRNアーゼHドメインのMGBTに位置する。特に好ましい実施形態では、バリアントは、配列番号2のアミノ酸配列に対して3つのアミノ酸交換を引き起こす変異を含む。配列番号2のアミノ酸配列に対するこれらの3つのアミノ酸交換は、RTのサムドメイン、RTのRNアーゼHドメインおよびRTのCDのMGBTに位置する。
【0053】
本発明のこの態様による一部の実施形態では、配列番号1のバリアントにコードされたアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも90%同一である。他の実施形態では、バリアントにコードされたアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも95%同一である。本発明のこの態様による好ましい実施形態では、バリアントにコードされたアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも97%同一である。配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%同一であるアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片の生物学的機能を保持する。より具体的には、配列番号2のアミノ酸配列またはその断片と少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも97%同一であるアミノ酸配列は、EIAV-RTの逆転写酵素活性を保持する。
【0054】
一実施形態によれば、本発明のこの態様による1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2の263、265、267、269、および271位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で引き起こされ得、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、およびS271Qである。好ましくは、EIAV RTは、そのMGBT内の前記アミノ酸交換のうちの少なくとも2つを含む。より好ましくは、EIAV RTは、そのMGBT内の前記アミノ酸交換のうちの少なくとも3つを含む。一部のさらなる実施形態では、EIAV RTは、そのMGBT内の前記アミノ酸交換のうちの2つを含む。より好ましくは、EIAV RTは、そのMGBT内の前記アミノ酸交換のうちの3つを含む。特に好ましくは、EIAV RTは、そのMGBT内の前記アミノ酸交換のうちのすべてを含む。
【0055】
RTのMGBT内の少なくとも1つのアミノ酸交換に加えてまたはその代わりに、1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2の356、360、362、および363位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で引き起こされ得、ここで、アミノ酸交換は、I356GまたはI356DまたはI356N、N360A、G362TまたはG362N、およびW363KまたはW363NまたはW363I、好ましくはI356G、N360A、G362TおよびW363Kである。好ましくは、EIAV RTは、そのCD内の前記アミノ酸交換のうちの少なくとも2つを含む。より好ましくは、EIAV RTは、そのCD内の前記アミノ酸交換のうちの少なくとも3つを含む。一部のさらなる実施形態では、EIAV RTは、そのCD内の前記アミノ酸交換のうちの2つを含む。より好ましくは、EIAV RTは、そのCD内の前記アミノ酸交換のうちの3つを含む。特に好ましくは、EIAV RTは、そのCD内の前記アミノ酸交換のうちのすべてを含む。
【0056】
RTのMGBT内の少なくとも1つのアミノ酸交換に加えてまたはその代わりに、1または複数のアミノ酸交換は、配列番号2の443、470、476、491、526および553位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で引き起こされ得、ここで、アミノ酸交換は、D443G、V470F、E476Q、Q491R、R526HおよびK553Rである。一実施形態によれば、EIAV RTは、配列番号2のD443Gおよび/またはE476Qの位置に対応するアミノ酸交換を含む。一実施形態によれば、EIAV RTは、配列番号2のD443Gの位置に対応する1つのアミノ酸交換を含む。このEIAV RTは、配列番号3の核酸配列またはその同義バリアントにコードされる配列番号4のアミノ酸配列を有する。別の実施形態によれば、EIAV RTは、配列番号2のD443GおよびE476Qの位置に対応する2つのアミノ酸交換を含む。前記EIAV RTは、配列番号5の核酸配列またはその同義バリアントにコードされる配列番号6のアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、アミノ酸交換の1つは、D443Gである。他の実施形態では、EIAV RTは、少なくとも2つの前述のアミノ酸交換をそのRNアーゼHドメイン内に含む。さらなる実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも3つの前記アミノ酸交換をそのRNアーゼHドメイン内に含む。一部のさらなる実施形態では、EIAV RTは、2つの前述のアミノ酸交換をそのRNアーゼHドメイン内に含む。さらなる実施形態によれば、EIAV RTは、3つの前記アミノ酸交換をそのRNアーゼHドメイン内に含む。特に好ましくは、EIAV RTは、アミノ酸交換D443G、Q491R、およびR526Hを含む。
【0057】
本発明のこの態様による一部の実施形態では、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の1または複数の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271および443位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271QおよびD443Gである。好ましくは、EIAV RTは、少なくとも2つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置する。より好ましくは、EIAV RTは、少なくとも3つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも2つはMGBTに位置する。別の好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも4つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも3つはMGBTに位置する。さらに好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも5つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも4つはMGBTに位置する。一部のさらなる実施形態では、EIAV RTは、2つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の1つはMGBTに位置する。好ましくは、EIAV RTは、3つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の2つはMGBTに位置する。別の好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、4つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の3つはMGBTに位置する。さらに好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、5つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の4つはMGBTに位置する。特に好ましくは、EIAV RTは、前述のアミノ酸交換をすべて含む。後者のEIAV RTは、配列番号7の核酸配列またはその同義バリアントにコードされる配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0058】
本発明のこの態様によるさらなる実施形態では、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の1または複数の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内で1または複数のアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363KおよびD443Gである。好ましくは、EIAV RTは、少なくとも3つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はCDに位置する。別の好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも4つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はCDに位置する。さらに好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも5つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも2つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも2つはCDに位置する。他の好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも6つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも2つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも2つはCDに位置する。より好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも7つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも3つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも3つはCDに位置する。さらにより好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも8つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも3つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、少なくとも3つの前記アミノ酸交換はCDに位置する。他のより好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、少なくとも9つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、少なくとも1つの前記アミノ酸交換はRNアーゼHドメインに位置し、少なくとも4つの前記アミノ酸交換はMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の少なくとも4つはCDに位置する。一部のさらなる実施形態では、EIAV RTは、3つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の1つはMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の1つはCDに位置する。別の実施形態によれば、EIAV RTは、4つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の1つまたは2つはそれぞれMGBTとCDに位置する。さらなる実施形態によれば、EIAV RTは、5つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の2つはMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の2つはCDに位置する。他の実施形態によれば、EIAV RTは、6つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の2つまたは3つはそれぞれMGBTとCDに位置する。より好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、7つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の3つはMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の3つはCDに位置する。さらにより好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、8つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の3つまたは4つはそれぞれMGBTとCDに位置する。他のより好ましい実施形態によれば、EIAV RTは、9つの前述のアミノ酸交換を含み、ここで、前記アミノ酸交換の1つはRNアーゼHドメインに位置し、前記アミノ酸交換の4つはMGBTに位置し、前記アミノ酸交換の4つはCDに位置する。特に好ましくは、EIAV RTは、前述のアミノ酸交換をすべて含む。後者のEIAV RTは、配列番号9の核酸配列またはその同義バリアントにコードされる配列番号10のアミノ酸配列を有する。
【0059】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363NおよびD443Gである。
【0060】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363NおよびD443Gである。
【0061】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356D、N360A、G362T、W363KおよびD443Gである。
【0062】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363および443位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356N、N360A、G362N、W363IおよびD443Gである。
【0063】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、443、491および526位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、D443G、Q491RおよびR526Hである。前記EIAV RTは、配列番号11の核酸配列またはその同義バリアントにコードされる配列番号12のアミノ酸配列を有する。
【0064】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、443、491および526位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、D443G、Q491RおよびK553Rである。
【0065】
別の実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、443、470、491、526および553位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、D443G、V470F、Q491R、R526HおよびK553Rである。
【0066】
さらなる実施形態によれば、配列番号1のポリヌクレオチド配列内の変異は、配列番号2の263、265、267、269、271、356、360、362、363、443、491および526位に対応するすべてのアミノ酸位置のコードされたアミノ酸配列内でアミノ酸交換を引き起こし、ここで、アミノ酸交換は、M263V、N265K、T267N、M269A、S271Q、I356G、N360A、G362T、W363K、D443G、Q491RおよびR526Hである。前記EIAV RTは、配列番号13の核酸配列またはその同義バリアントにコードされる配列番号14のアミノ酸配列を有する。
【0067】
以下の表2は、本発明による好ましい実施形態のアミノ酸配列を要約し、それをコードする1つの核酸配列を示している。当業者は、列挙されたアミノ酸配列が、表2に示されたものと同義の核酸配列によってもコードされ得ることを知っている。本発明はまた、前記同義の核酸配列のいずれかを包含する。
表2:好ましい実施形態とそれらの核酸/アミノ酸配列
【表2】
【0068】
本発明によるEIAV RTは、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントによってともにコードされる2つのサブユニットを含む。本発明によるバリアントは、本明細書の上文でより詳細に記載されている。好ましくは、RTはヘテロ二量体である。一部の実施形態によれば、2つのサブユニットのうちの第1のサブユニットは、バリアントによってコードされる完全なアミノ酸配列を含み、2つのサブユニットのうちの第2のサブユニットは、バリアントによってコードされる完全なアミノ酸配列のタンパク質分解断片、すなわち、第1のサブユニットのタンパク質分解断片を含む。第1のサブユニットの分子量は66kDaであり、第2のサブユニットの分子量は51kDaである。E.coliなどの宿主細胞における配列番号1のオープンリーディングフレームの発現は、ホモ二量体(すなわち、p66/p66およびp51/p51)とヘテロ二量体(すなわち、p66/p51)を形成することのできる66kDと51kDのサブユニットの両方を生じさせる。RTのいくつかの市販の調製物は、ホモ二量体とヘテロ二量体の混合物である。どちらの種類の二量体もDNA合成に活性を示すが、ヘテロ二量体はホモ二量体よりも高い安定性とプロセシビティ(processivity)を示す。したがって、好ましい実施形態では、EIAV RTのヘテロ二量体形態は、均質になるまで精製される。
【0069】
別の態様では、本発明は、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントまたは前記バリアントを含むベクターを宿主細胞で発現させることによって得られるRTを提供する。本発明によるEIAV RTの生成に使用することができる宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞または細菌細胞である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、HEK293またはCHO細胞などの哺乳動物細胞、またはE.coliなどの細菌細胞である。好ましい宿主細胞はE.coliである。
【0070】
本発明の別の態様は、本発明のRTをコードするポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドは、本明細書の上文でより詳細に記載されるように、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントである。本発明のさらなる態様は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。前記ポリヌクレオチドは、本明細書の上文でより詳細に記載されるように、配列番号1のポリヌクレオチド配列のバリアントである。別の態様では、本発明は、前記ベクターを含む形質転換宿主細胞に関する。
【0071】
さらに別の実施形態では、本発明は、形質転換宿主細胞からRTを単離することを含む、本発明のRTを生成する方法に関する。
【0072】
したがって、本発明は、熱安定性、プロセシビティ、したがってRNA鋳型を使用して合成されるcDNAの長さ、cDNA収量、および二次酵素活性、すなわち、RNアーゼH活性の除去において有益な改善をもたらす、新規に操作された逆転写酵素を提供する。これらの改善は、サムドメイン、接続ドメイン、および/またはRNアーゼHドメインに存在するアミノ酸残基の定方向突然変異誘発によって、親(EIAV RT)分子に組み込まれた。これらの変異は、RNアーゼH活性を集合的に除去し、高温でRT活性を増加させるものであり、合理的設計とランダム変異誘発とそれに続くスクリーニングの両方から特定された。これらの変異を組み合わせることにより、65℃までの温度で12kbを超える長さのcDNAを合成する能力をはじめとする性能を大幅に改善することが可能になり、最も困難なRNAサンプルでも優れた成績を得ることができる。
【0073】
方法
別の態様では、本発明は、鋳型核酸と本発明によるRTを接触させることを含む鋳型核酸を増幅させるための方法を指す。
【0074】
本発明による鋳型核酸は、RNA、DNA、またはRNA:DNAハイブリッドなどの任意の種類の核酸であってよい。鋳型核酸は、人工的に生成されたもの(例えば分子もしくは酵素の操作によるか、または合成によるもの)であってもよいし、天然に存在するDNAまたはRNAであってもよい。一部の好ましい実施形態では、鋳型核酸は、転写生成物、RNAウイルス、またはrRNAなどのRNA配列である。
【0075】
一部の実施形態では、本明細書で言及される方法は、RT-PCRである。RT-PCRは、定量的RT-PCR(RT-qPCR)、リアルタイムRT-PCR、デジタルRT-PCR(dRT-PCR)またはデジタル液滴RT-PCR(ddRT-PCR)であってよい。
【0076】
一部の好ましい実施形態では、本発明の方法は、以下の
a)本発明のRTを使用してcDNAを生成するステップ;および
b)Taq DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼを使用してcDNAを増幅するステップ
を含む。
【0077】
一部の実施形態では、血清アルブミンが増幅中に添加され、好ましくは組換えヒト型が1mg/mlの濃度で添加される。
【0078】
一部の実施形態では、本発明の方法は、増幅した核酸を検出および/または定量化することをさらに含む。増幅した核酸の定量化/検出は、例えば、配列非特異的な方法で二本鎖DNA分子にインターカレートされる非配列特異的蛍光色素(例えば、SYBR(登録商標)Green、EvaGreen(登録商標))、あるいはDNA標的とのハイブリダイゼーションの後、合成に依存する加水分解の後、またはPCR産物への組み込みの後にのみ検出が可能である配列特異的DNAプローブ(例えば、蛍光レポーターで標識したオリゴヌクレオチド)を使用して実施されてよい。
【0079】
キット
本発明の方法を実施するために必要な試薬は、キットに含めることができる。
【0080】
一部の実施形態では、本発明は、鋳型核酸を増幅するためのキットに関し、ここで、キットは、本発明のRTと緩衝液を含む。必要に応じて、キットは、Taq DNAポリメラーゼおよび/または血清アルブミンをさらに含む。キットに含められる緩衝液は、マグネシウムを含有する従来の緩衝液であってよい。
【実施例
【0081】
本発明を以下の実施例で説明する。
【0082】
実施例1:EIAV RTの発現および精製
配列番号1のオープンリーディングフレームまたはそのバリアントをE.coliで発現させ、66kDaのポリペプチドおよびそのタンパク質分解処理断片、すなわち、51kDaのポリペプチドが生じた。66kDaのポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する。66kDaおよび51kDaのポリペプチドは、ホモ二量体(すなわち、p66/p66およびp51/p51)およびヘテロ二量体(すなわち、p66/p51)を形成する。「均質な」調製物と呼ばれる1つの調製物では、ヘテロ二量体形態(p66/p51)は、ヘパリン、疎水性相互作用、およびイオン交換クロマトグラフィーをはじめとする複数回のクロマトグラフィーステップによってホモ二量体形態(p66/p66およびp51/p51)のいずれかから分離された;「不均質な」調製物と呼ばれる第2の調製物では、ホモ二量体とヘテロ二量体はほぼ等しい量で存在していた。ホモ二量体もヘテロ二量体もDNA合成において活性であったが、ヘテロ二量体の均質な調製物は、ホモ二量体とヘテロ二量体の不均質混合物よりも高い安定性およびプロセシビティと、性能の向上をもたらす(図1および2)。特に明記されていない限り、以下の実施例のすべてのRTバリアントを、ヘテロ二量体の均質な調製物として試験した。
【0083】
実施例2:EIAV RT変異体の生成
RNアーゼHneg変異
一般的に研究されているRTのRNアーゼH活性を除去した相同変異、すなわち、MMLVおよびHIV-1RT(Mizuno 2010、Gerard 2002)に基づいて、EIAV RT RNアーゼHドメインの変異は熱安定性を高めると予想された。したがって、EIAV RTのRNアーゼHnegバリアント(EIAV RT V1およびV2;下の表3参照)は、部位特異的変異誘発によって生成された。250ngまでのサンプルを試験したところ、EIAV RT V1も EIAV RT V2も検出可能なRNアーゼH活性を示さなかった(データは示していない)。
【0084】
サムドメイン変異
サムドメインの副溝結合トラック(MGBT)は、レトロウイルスRTの中で高度に保存された構造要素である(Beard 1998、Bebenek 1997)。HIV-1RTの生化学的および分子モデリング研究により、この要素は、鋳型-プライマー結合親和性を高めることによってリーディングフレーム、忠実度およびプロセシビティを維持するために重要であることが明らかになった(Beard 1994、Bebenek 1995)。他のレンチウイルスRTのサムドメインの配列アラインメントに基づいて、MGBT(EIAV RT V3)内の5つの点変異(M263V/N265K/T267N/M269A/S271Q)を部位特異的変異誘発によってEIAV RT V1に導入した。
【0085】
接続およびRNアーゼHドメインでのランダム変異およびスクリーニング。
【0086】
RTの熱安定性を改善する重要な変異は、接続ドメインとRNアーゼHドメインにおいて特定されている(Matamoros 2013)。熱安定性とプロセシビティをさらに改善するために、接続ドメインとRNアーゼHドメインのランダム変異ライブラリーを構築してスクリーニングした。鋳型/プライマーと複合体を形成したHIV-1RTの結晶構造とモデリング研究(Huang 1998)に基づいて、接続ドメイン(CD)内の10アミノ酸(355~364)を含有する領域をランダム化のために選択した。CDライブラリーは、各位置に1つのランダムなアミノ酸を含む10個のssDNAオリゴの混合物でdsDNAを架橋することによって生成された。RNアーゼHドメインバリアントのランダムライブラリーは、エラープローンPCRによって生成された。ライブラリーのスクリーニングアッセイは、熱処理(50℃で10分間)した60℃の粗細胞溶解物のRT活性を測定することによって実施された。これらの結果により、CDライブラリーから4つのバリアント、RNアーゼHドメインライブラリーから3つのバリアントが、親EIAV RT V3よりも高いRT活性を示すことが特定された(データは示していない)。最も成績の良いCDバリアントはEIAV RT V4であり、最も成績の良いRNアーゼHドメインバリアントはEIAV RT V5であった。EIAV RT V4とEIAV RT V5の変異を組み合わせて、バリアントEIAV RT V6を生成した。
表3:EIAVの最適な形態の構築物
【表3-1】
【表3-2】
【0087】
実施例3:RNアーゼHnegバリアントの熱安定性および熱活性の評価
RNアーゼHバリアントEIAV RT V1およびV2の熱安定性および熱活性は、熱不活性化アッセイ(図1)および第1鎖cDNA合成(図2)によって評価した。熱不活性化アッセイでは、RTを基質(オリゴ(dT)20でプライムしたポリ(A)鋳型)とともに42~60℃で10分間プレインキュベートした。プレインキュベーションに続いて、MgClを添加することによりRT反応を開始させ、42℃でのdT取り込みの相対速度をモニターすることにより活性を測定した。すべてのRNアーゼHnegバリアント(EIAV RT V1およびV2)は、50℃でのプレインキュベーション後も完全に活性を維持したが、不均質なEIAV RT WTおよび均質なEIAV RT WTは、それぞれ50%および30%の活性低下を示した(図1)。特に、二重のHneg変異体であるEIAV RT V2は、55℃のプレインキュベーションでもその活性の80%を保持していた。
【0088】
これらのバリアントの熱安定性は、高温下でcDNA合成を測定することによって、より厳密に評価された。第1鎖cDNA合成反応は、0.5~9kbの長さのRNAの混合物を鋳型(ポリ(A)テールRNAラダー)として使用して50℃で実施された。一本鎖cDNAをアルカリ電気泳動で分離し、SYBRゴールドで染色して可視化した。図2(a)に示されるように、すべてのRNアーゼHnegバリアントは、9kbまでの全長cDNAを効率的に合成したが、EIAV RT WTは、RNアーゼHnegバリアントよりも低いcDNA収量を示した(レーン1:不均質なEIAV RT、レーン2:均質なEIAV RT WT、レーン3:EIAV RT V1、レーン4:EIAV RT V2)。対照的に、不均質なEIAV RT WTからの全長生成物はどのサイズも視覚的検出の限界に近い。一方、均質なEIAV RT WTの収量は、RNアーゼHnegバリアントよりもわずかに低かった。
【0089】
2段階RT-PCRアッセイでは、最初のcDNA合成反応は、10ngのヒト全RNAを鋳型として使用して、50℃(図2(b)、上のパネル)または60℃(図2(b)、下のパネル)で30分間行った。次に、APC遺伝子の2kbの断片を増幅した。すべてのRNアーゼHnegバリアントは、50℃と60℃の両方で増幅可能なcDNAを生成したが、均質および不均質なEIAV RTは、両方とも50℃または60℃のいずれかでcDNAを生成できなかった(図2(b))。
【0090】
総合すると、これらの結果は、RTのRNアーゼH活性を消失させるとその熱安定性が高まるという解釈をトータルで裏付ける。
【0091】
実施例4:サムドメインのMGBT内に追加の変異を有するRNアーゼHneg EIAV RTバリアント(EIAV RT V3)の熱安定性および熱活性の評価
追加の変異が熱安定性および熱活性に及ぼす影響を、FAMプローブに基づく1段階RT-qPCRを使用して評価したまず、ACTB遺伝子の1領域を、示されるようにEIAV RT V1、EIAV RT V3またはEnzScript RTを使用してヒト全RNA(2pg)から逆転写し、次に増幅および定量した。結果は、EIAV RT V1とEIAV RT V3が、ともに70℃付近でその活性の大部分を保持し、55℃前後の温度で最適な活性を示すことを示す。しかし、EIAV RT V1の活性の低下は65℃よりも高い温度で顕著になる。対照的に、温度が上昇するにつれて、cDNA収量の低下を示すCt値の大幅な増加が、広く使用されている典型的なコンパレータである、EnzScript(RNアーゼH活性が低下したモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)RT)で観察された(図3)。
【0092】
さらに、EIAV RT V1、EIAV RT V3およびSuperScript IVを使用して2段階RT-qPCRアッセイを実施した。ヒト全RNA(50ng)および遺伝子特異的プライマー(MAP4)を使用して、cDNAを示された温度で逆転写し、MAP4遺伝子を標的とするqPCRによって、さまざまな長さのcDNAを定量した。結果は、EIAV RT V1よりも低いCt値で示されるように、EIAV RT V3が、より高いcDNA収量を生成することを示している。これらの酵素間の収量の差は、高温またはより長いcDNA合成で劇的に増加し、EIAV RT V1と比較してEIAV RT V3の熱安定性およびプロセシビティの改善が示される(図4)。
【0093】
EIAV RT V3により生成されたcDNAの合成速度および生成物の長さを、最先端とみなされている、広く使用されている市販のRTであるSuperScript IVと比較した。この反応は、55℃で50ngのヒト全RNAを入力として、オリゴ(dT)20をプライマーとして使用して実施した。RTを示された時に85℃で5分間熱失活させた後、9kb APC遺伝子を増幅することによって反応をクエンチした。両方の酵素は、増幅可能な9kbの生成物を10分以内に生成した。しかし、収量はEIAV RT V3で大幅に増加した(図5)。
【0094】
実施例5:接続ドメインおよび/またはRNアーゼHドメイン内に追加の変異を有するRNアーゼHneg/MGBTmut EIAV RTバリアントの熱安定性および熱活性の評価
CDおよび/またはRNアーゼHドメイン内の追加の変異が熱安定性および熱活性に及ぼす影響を、2段階RT-qPCR(図6)および長期エンドポイントPCR(図7)で試験した。
【0095】
2段階RT-qPCRでは、ヒト全RNA(50ng)および遺伝子特異的プライマー(MAP4)を使用するcDNA合成が示された温度で実施された。次に、遺伝子の特定の領域のために設計されたプライマーセットを使用してMAP4遺伝子を増幅することにより、さまざまな長さのcDNAを定量した。長距離2段階RT-PCR(12.3kb)では、ラット脳全RNA(50ng)およびラットダイニンのための遺伝子特異的プライマーを、さまざまな温度でのcDNA合成使用した(図7;レーン1:EIAV RT V3、レーン2:EIAV RT V4、レーン3:EIAV RT V5、レーン4:EIAV RT V6)。
【0096】
さまざまな温度での2段階RT-qPCR(図6)および長期エンドポイントPCR(図7)の両アッセイにより、これらのバリアント(EIAV RT V4、EIAV RT V5およびEIAV RT V6)のすべてが、元のEIAV RT V3と比較して熱安定性およびプロセシビティの向上を示したことが確認された。構築物の1つであるEIAV RT V4は、65℃の高温で12.3kbのcDNAを合成することができ(図7)、このバリアントがほとんどの用途で最適な形態と考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022548118000001.app
【国際調査報告】