(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】バイオ・オイルおよび/または水に基づく均質な繊維製品ならびにその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/262 20160101AFI20221109BHJP
D21H 11/16 20060101ALI20221109BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20221109BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221109BHJP
A23L 2/62 20060101ALI20221109BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20221109BHJP
A23G 1/40 20060101ALI20221109BHJP
A23C 9/137 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A23L29/262
D21H11/16
D21H15/02
A61K47/38
A23L2/00 L
A23L2/62
A23L27/60 A
A23L27/60 B
A23L27/60 Z
A23G1/40
A23C9/137
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516756
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-13
(86)【国際出願番号】 FI2020050588
(87)【国際公開番号】W WO2021053268
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510063878
【氏名又は名称】アールト・ユニバーシティ・ファウンデイション・エスアール
【氏名又は名称原語表記】Aalto University Foundation sr
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ダール,オッリ
(72)【発明者】
【氏名】ピエティライネン,アンッティ
(72)【発明者】
【氏名】ペッカリネン,ティモ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B041
4B047
4B117
4C076
4L055
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC15
4B001BC03
4B001EC53
4B001EC99
4B014GB01
4B014GG14
4B014GL11
4B014GP01
4B041LC05
4B041LC10
4B041LH11
4B041LK18
4B041LP04
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG10
4B047LG29
4B047LG37
4B047LG40
4B047LG49
4B047LP03
4B117LK10
4B117LK13
4B117LL05
4B117LP20
4C076AA71
4C076BB01
4C076EE31
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG43
4L055EA32
(57)【要約】
本発明は、典型的には、ゲル状のセルロース系の均質な繊維製品に関する。当該繊維製品は、ヘミセルロースを含まない。しかし、それにもかかわらず、リグニンは含んでいてよい。また、このような繊維製品の製造方法に本発明は関する。当該方法では、微結晶セルロース(MCC)を油または水に混合して繊維混合物を形成し、機械的な処理によって均質な形態まで分解する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微結晶セルロース(MCC)を油もしくは水またはそれらの混合物と混合して繊維混合物とし、2段階の機械的な処理によって均質な形態にまで分解することを特徴とする、微結晶セルロース(MCC)から油性または水性の均質な繊維製品を製造するための方法。
【請求項2】
前記MCCが、リグニンを含む漂白されていないMCCおよびセルロースを含む漂白されていないMCCのいずれかまたはセルロースを含む漂白されたMCCである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.5~20重量%の水、好ましくは1~10重量%の水を含む油性の繊維混合物を前記MCCから形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記MCCを混合することで油中に少なくとも1%の水および少なくとも1%の繊維を含む油性の繊維混合物にする、あるいは前記MCCを混合することで好ましくは油中に少なくとも2%の水を含む油性の繊維混合物にする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記油が、液体の油あるいは20℃を超える温度に温度を上昇させると液体になる油、好ましくは植物由来の油もしくは動物由来の油または化石燃料油、より好ましくはアマニ油、マスタード油、アーモンド油、大豆油、ヘンプ油、パーム油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ココナッツ油またはコーン油などの食用油から選ばれ、典型的には、ナタネ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、オリーブ油またはココアバターなどの植物油から選ばれる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記油性または水性の繊維混合物を機械的な処理に供給するとき、コンシステンシーが、前記繊維に対して、5~20重量%、好ましくは10~15重量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
機械的な処理に供給されているとき、前記MCCを混合することで、10%または最大で15%のフィード・コンシステンシーを有する水性の繊維混合物になる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
機械的な処理に供給されているとき、前記MCCを混合することで、前記繊維に対して、5~10%のフィード・コンシステンシーを有する油性の繊維混合物になる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記2段階の機械的な処理の第1ステップにおいて、前記繊維混合物の液体部分をキャビテーションさせ、それによって、前記繊維粒子の構造が弱くなり、典型的には軟化し、部分的に分離して繊維になる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記2段階の機械的な処理の第2ステップにおいて、前記混合物を圧力によって小さな間隙を通過させるとき、第1ステップで構造的に弱くなり部分的に分離して繊維になった前記繊維粒子の粒子を混合して、均質な繊維製品にする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記粒子が主としてマイクロサイズである繊維製品が製造される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法によって、微結晶セルロース(MCC)から製造されていることを特徴とする、油性または水性の均質な繊維製品。
【請求項13】
MCCに基づいて、なおかつ、リグニンを含む漂白されていないMCCおよびセルロースを含む漂白されてないMCCのいずれかあるいはセルロースを含む漂白されたMCCを含んで成る、請求項12に記載の油性または水性の均質な繊維製品。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で製造される油性の均質な繊維製品の脂系または油系の食品への使用。
【請求項15】
マヨネーズ、チョコレートまたはサラダドレッシングにおいて、あるいは親水性の繊維を添加するプラスチックにおける、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
マスタード、ケチャップ、ヨーグルト、ジュースおよびスポーツドリンクなどの食品における請求項1~11のいずれか1項に記載の方法で製造される水性の均質な繊維製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ゲル状の形態(又はゲルのような形態又はゲル・ライクの形態)の均質(又は均一)なセルロースの繊維製品に関する。この繊維製品は、ヘミセルロースをほとんど含まない(ただし、リグニンは含んでいてもよい)。
【0002】
将来的には、さまざまな用途(又は適用)において、バイオベースの原材料の使用が増加することが望まれている。それと同時に、再生不可能な原材料や化石燃料(fossil)の原材料を代替することが望まれている。そのような用途(又は適用)は、例えば、食品、天然物、医薬品、プラスチック、コーティングおよび多くの他の製品において存在する。
【0003】
セルロースは、世界で最も一般的なバイオベースの材料およびポリマーである。セルロースは、植物や樹木など、多くの供給源(又はソース)から得られる。最も持続可能な様式(又は方法又はマナー)では、セルロース繊維(または最も一般的にはパルプ)は、木材から化学的な方法で製造することができる。最も一般的な方法は、硫酸塩系または亜硫酸塩系の方法のいずれかである。また、溶剤系の方法も知られている。硫酸塩および亜硫酸塩のプロセス(又は方法)は、紙および溶解パルプの両方の製造に用いることができる。上記セルロースのグレードの差(又は違い)は、ヘミセルロースの含有量である。これは、溶解パルプでは最小になるように企画されており、紙パルプでは最大になるように企画されている。
【0004】
繊維が漂白されていない場合、繊維は、セルロースに加えて、リグニンおよびヘミセルロースを含んで成る。パルプを漂白すると、リグニンが除去され、ヘミセルロースとセルロースとを含む繊維だけが残る。典型的には、パルプ繊維の長さは、0.5~4mmであり、直径は、その長さの約1/100である。さらに、繊維は、数マイクロメートル(μm)の厚さの繊維壁を有する。
【0005】
粒子状セルロースは、繊維状セルロースから製造することができる。それによって、その物理的な構造が破壊される。これは、化学的および機械的の両方で行うことができる。化学的な方法では、繊維構造を分解し、例えば、濃縮された鉱酸(又は濃鉱酸)を用いて分解し、それによって、同時に繊維からヘミセルロースを除去する。この場合、微結晶セルロース(又はミクロクリスタリンセルロース(microcrystalline cellulose))、すなわちMCCが得られる。
【0006】
上記の様式(又は方法又はマナー)で調製される繊維を機械的に処理すると、MFC、すなわちミクロフィブリル化されたセルロース(microfibrillated cellulose)が得られる。いずれの方法も、現在、当該技術分野で知られている。
【0007】
しかし、アールト大学(Aalto University)では、費用効果の高い新しい方法を開発してMCCを製造している。これは、AaltoCellTMとしても知られている。このブランドは、最終製品だけでなく、MCCを製造するプロセスも対象としている。さらに、AaltoCellTMに基づく微結晶セルロースは、純粋なセルロースであってもよく、あるいは繊維中にリグニンを含んでいてもよい(ただし、繊維を漂白してリグニンを除去していない場合である)。リグニンを含む微結晶セルロースは、これまで市場に出ていなかった全く新しい製品である。
【0008】
上記の技術は、化学的な方法による微結晶セルロース(すなわち、MCC)の製造に基づくものである。この場合、最終的なMCCは、ナノ粒子およびヘミセルロースを本質的には含まないものである。
【背景技術】
【0009】
(発明の背景)
水相中での機械的なグラインディング(又は粉砕)によって繊維状のパルプからゲルを形成できることが知られている。しかし、このような場合には、機械的に製造されたミクロフィブリル化されたセルロースが使用される。それによって、水性のMFC繊維混合物が得られる。これは、マイクロ粒子(又はマイクロパーティクル)に加えて、ナノサイズの粒子も含み、さらに、セルロースに加えて、ヘミセルロースも含むものである。
【0010】
さらに、このような繊維状のMFCパルプは、油/水の相(オイル/ウォーター・フェーズ)において機械的に処理することができ、油状のMFC繊維混合物(これは様々な量の水をも含むものでもある)が得られることが知られている。
【0011】
上記のプロセスに関する課題は、フィード・コンシステンシー(feed consistency)が、すべてのケースにおいて、繊維に対して、3%未満、典型的には1~2%であり、このことによって、プロセスのエネルギーコストが顕著に増加することである。
【0012】
さらに、上記のMFCに含まれるセルロース粒子の一部は、油相および水相の両方において、ほとんどがナノサイズであり、その健康への影響は、未だ不明である。このようにして製造される製品は、食品産業や医薬品産業の規格には合わないため、最終製品でのそれらの潜在的な使用のためには、長期的かつ高額な調査が必要である。
【0013】
以上のことから、新しい水性および油性の繊維製品であって、食品および薬物の許容可能なグレードを有し、均質(又は均一)であり、なおかつその中の粒子が、ナノサイズではなく、マイクロサイズであるものを開発する必要性が明らかになってきている。さらに、高いコンシステンシー(又は高濃度又はハイ・コンシステンシー(high consistencies))で操作する方法が有利になるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(本発明の要旨)
従って、本発明の目的は、化学的に製造される微結晶セルロース(MCC)(ヘミセルロースが実質的に除去されているもの)を原材料として用いることによって、油性または水性の均質(又は均一)な繊維製品を製造するための新しい方法を提供することにある。
【0015】
さらに、本発明の目的は、油性または水性の均質(又は均一)な繊維製品を製造するための方法を提供することにある。当該方法では、高いフィード・コンシステンシー(又は高い供給コンシステンシー又は高い供給濃度又はハイ・フィード・コンシステンシー(high feed consistencies))を使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
我々が開発した新しい方法では、乾燥したMCC、または、より好ましくは未乾燥のMCC(リグニンおよびセルロースのいずれかを含むか、あるいはセルロースのみを含むもの(注:未乾燥のMCCは、AaltoCell
TMに基づく製品として、唯一、入手可能である))を油性または水性のいずれかの均質(又は均一)な繊維製品(部分的に疎水性または親水性であり、ゲル状の(又はゲルのような)セルロースの繊維製品)にすることができる。ここでは、2段階(又は2ステージ)の機械的な方法(
図1)によって、微結晶セルロースを分解して、ゲル状の形態(又はゲルのような形態)にすることができる。
【0017】
また、少量の水が、典型的には、油性の混合物中に存在する。しかし、典型的には、この水を別途に添加する必要はない。なぜなら、このような好ましい微結晶セルロースは、既に水を含んでいるからである。
【0018】
本発明によって多数の利点が達成される。とりわけ、繊維に関して、混合物が機械的な処理に供給されるとき、MCCから形成される水性または油性の混合物のコンシステンシーを高いレベルに保つことができる。それによって、プロセスのエネルギー消費が低く保たれる。
【0019】
MCCを使用することから、顕著な量のナノサイズ粒子が存在しない製品が得られる。それによって、健康的な効果が調査されている製品が得られる。それによって、本発明に従う繊維製品は、食品産業および医薬品産業の要件を満たす。
【0020】
本発明に従う2段階(又は2ステージ)の機械的な処理(又はメカニカル・トリートメント)を用いることによって、MCCを再構築し、なかでも特に、様々な等級の油(又はオイル)(例えば、植物油またはココアバターなど)あるいは水相に均一に分配(又は分布又は分散)させる。成功すると、当該方法において、少量の水を油性のゲル状の混合物が含むことが求められ、典型的には、少なくとも2%の水が必要とされ、その後、油性の繊維混合物を上記の機械的な装置(又はメカニカル・デバイス)に導入する。少量の水は、装置内にキャビテーション(又は空洞現象)をもたらす。それによって、繊維の状態が変化し、その最終的な形状を受け入れる。このことは、小さなノズルを通して、繊維混合物を最終的に通過させることに起因する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、2段階の装置(又は2ステージ・デバイス)の動作原理の一例である。それによって、水性および油性のゲルの両方を未乾燥のAaltoCel
TM繊維製品から得ることになる。
【
図2】
図2は、フィード・コンシステンシー(又はフィード濃度又は供給濃度)(または最終製品のコンシステンシー)が10%である水性のゲル状のセルロースの繊維混合物(左側)を示し、フィード・コンシステンシー(又はフィード濃度又は供給濃度)(または最終製品のコンシステンシー)が10%であるパルプ/リグニン系のゲル状の混合物(右側)を示す。
【
図3】
図3は、フィード・コンシステンシー(又はフィード濃度又は供給濃度)が8%の油性のゲル状のセルロースの繊維混合物を示す。
【
図4】
図4は、フィード・コンシステンシー(又はフィード濃度又は供給濃度)が10%で調製された水性のゲル状の混合物を水で希釈して1.5%のコンシステンシーにしたものを示す(図の中央)。機械的な処理を行わなかったMCC(図の左側)、15%のフィード・コンシステンシー(又はフィード濃度又は供給濃度)で機械的な処理を行ったMCC(図の右側)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(定義)
本願の文脈上、用語「均質(又は均一)(homogeneous)な繊維製品」は、部分的に疎水性または親水性のゲルの形態を有するハイドロコロイド(又はヒドロコロイド又は親水コロイド)または混合物を包含する。
【0023】
「MCC」、すなわち、微結晶セルロース(又はミクロクリスタリンセルロース)は、化学的な分解によって、繊維状のセルロースから製造される粒子状(微結晶)のセルロースを包含する(同時にヘミセルロースが除去されている)。漂白されていても、漂白されてなくてもよい。
【0024】
本願の文脈において、「機械的な処理(又は機械による処理又は機械処理又はメカニカル・トリートメント)」とは、すなわち、MCCを含む混合物(又はMCC含有混合物)の第1の加圧処理のステップ(又は工程又は段階)および第2の処理ステップ(又は工程又は段階)を指す。
第1の加圧処理のステップ(又は工程又は段階)によって、キャビテーション(又は空洞現象)が達成される。その結果、粒子構造の劣化、場合によっては、部分的な脱繊維化(又はデファイバリゼーション(defiberization))がもたらされる。
第2の処理ステップ(又は工程又は段階)では、圧力を適用(又は付与)することによって、処理装置の小さな間隙(又は隙間又はギャップ)に混合物を通過させて、それによって、弱められた混合物の一部をさらに処理することができ、そうすることで、混合物の粒子を混合して、均質(又は均一)な繊維状の製品にすることができる。
【0025】
次いで、「キャビテーション(又は空洞現象)」とは、混合物(およびそれによって生じる気泡(又はバブル))の流れ(又はフロー)によって、典型的には、繊維構造を弱めることによって、繊維が変化(又は変形又は修飾)することを指す。
【0026】
(実施形態の詳細な説明)
本発明は、微結晶セルロース(MCC)から油性(又は油系)または水性(又は水系)の均質(又は均一)な繊維製品を製造(又は調製)するための方法に関する。この方法では、油(又はオイル)もしくは水(又はウォーター)またはそれらの混合物とMCCを混合して、繊維混合物とし、2段階の機械的な処理(又は2ステージ・メカニカル・トリートメント)によって、均質(又は均一)な形態にまで分解することができる。
【0027】
繊維混合物における典型的な液体は、水(又はウォーター)または油(又はオイル)である。ここで、後者(又は油)の場合には、繊維中に水がいくらか含まれていてもよい。
【0028】
MCCは、典型的には、漂白されていない(又は未漂白)(この場合、MCCは、リグニンおよびセルロースの両方を含んで成る)あるいは漂白されている(MCCは、セルロースのみである)のいずれかである。好ましくは、MCCは、漂白されていない(又は未漂白である)。この場合、MCCは、リグニンを含む微結晶セルロース(又はリグニン含有微結晶セルロース)である。
【0029】
また、MCCは、乾燥していても、あるいは乾燥していなくてもよい(未乾燥であってもよい)。しかし、好ましくは、MCCは、乾燥していない(又は未乾燥である)。それによって、均質(又は均一)でゲル状の混合物の入手が促進される。
【0030】
機械的な処理(又はメカニカル・トリートメント)の前に、MCCを油または水と混合することによって、MMCが繊維混合物に変換される。
【0031】
しかし、油性の混合物を使用する場合、混合物は、典型的には、0.5~20重量%、好ましくは1~10重量%の水を含む。好ましくは、油性の混合物は、少なくとも1%の水と、1%の繊維とを含む。典型的には、すべての濃度は、重量パーセント(又は重量%)として示されている。
【0032】
油(又はオイル)は、液体の油(又はリキッドオイル)あるいは20℃を超える温度に温度を上昇させると液体になる油(又はオイル)から選択される。好ましくは、植物由来の油もしくは動物由来の油または化石燃料油(fossil oil)が選択される。しかし、最も適切には、アマニ油、マスタード油、アーモンド油、大豆油、ヘンプ油、パーム油、ピーナッツ油、ヒマシ油、ココナッツ油またはコーン油などの食用油から油が選択される。典型的には、ナタネ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、オリーブ油またはココアバターなどの植物油から油が選択される。
【0033】
本発明の方法の特別な特徴として、油性または水性の繊維混合物を機械的な処理に供給するとき、従前よりも高いコンシステンシー(consistencies)(又は濃度)が使用できることが挙げられる。好ましくは、このフィード・コンシステンシー(又は供給コンシステンシー又は供給濃度(feed consistency)は、繊維を基準にして、5~20重量%、より好ましくは10~15重量%である。
【0034】
機械的な処理をできるだけ効率的に行うために、2段階の機械的な処理(又は2ステージ・メカニカル・トリートメント)を使用する。
【0035】
本発明の実施形態によると、2段階の機械的な処理の第1ステップ(又は第1工程または第1段階)において、繊維混合物の液体の部分(又は一部)をキャビテーションさせる処理を行う。それによって、繊維粒子の構造を変化させる。典型的には、軟化させる。
【0036】
本発明の第2の実施形態によると、2段階の機械的な処理の第2ステップ(又は第2工程又は第2段階)では、第1ステップで構造的に変化した繊維粒子の部分(又は一部)を分離させて繊維にする。このとき、圧力によって、混合物を小さな間隙(又は隙間又はギャップ)を通過させる。
【0037】
1つの例示的な実施形態において、油性のゲル状のセルロースの繊維混合物を以下のように試験用に調製した:未乾燥のAaltoCell
TM繊維ブレンドであって、ここでは、水分含有量が50%のAaltoCellパルプをナタネ油と混合したものであり、そうすることで、この混合物は、繊維および水の両方を2、4、6および8%で含んでいた。このような混合物を
図1の装置に通過させると、この繊維製品が、おそらく水相中で分解されることがわかった。また、このような繊維製品は、油とともに均質(又は均一)な混合物になることがわかった。このような現象は、これまでに観察されたことはなく、公にも報告されていない。
【0038】
図1に示すように、このような装置(又はデバイス)は、典型的には、フィルター・モジュール、ノズル・モジュール、タービュランス・モジュールおよびバルブ・モジュールを有してよい。
【0039】
水性のゲル状のセルロースの繊維混合物を同様の方法で調製した。しかし、油(又はオイル)は含まれず、15%(ただし、最も好ましくは10%)の最大のフィード・コンシステンシー(又は供給コンシステンシー又は供給濃度(feed consistency))を達成するものであった。
【0040】
従来において、様々な方法で乾燥させたMCCまたはMFCは、単に油と混合していただけであり、均質(又は均一)でない混合物(又は不均質な混合物)となる問題があった。ここで、繊維は、油中において、塊(又はダマ)を形成していた。上記の方法で得られる混合物は均質(又は均一)であり、繊維とともに、オイル混合物(又は油混合物又はオイル・ミクスチャ)を形成し、その中で、油は繊維から分離していない。それ故、新しい様式(又は方法又はマナー)で製造された油性のゲル状のセルロースの繊維混合物と言うことができる。
【0041】
水性のセルロースのゲルも従来から調製されている。しかし、フィード・デンシティ(又は供給密度)が低く、なおかつ上記の様式(又は方法又はマナー)で得られるMFCゲルは、ナノサイズの粒子を含んでいる。かかる粒子は我々の方法では製造されないものである。その代わり、我々の方法では、すべての粒子が少なくとも実質的にマイクロサイズである。
【0042】
水性のゲル状の混合物(先に述べた機械的な方法によって10%のフィード・コンシステンシーで調製し、1.5%のコンシステンシー(又は濃度)に希釈したもの)を
図4に示す。これにより、ハイドロコロイド(又はヒドロコロイド又は親水コロイド)が得られた。このハイドロコロイドは、水溶液中に均一に分配(又は分布または分散)し、66時間かけても沈降しないものであった。
【0043】
また、本発明は、上記の方法によって調製される製品に関するものである。なぜなら、本発明の方法において、MCCをセルロースの供給源(又はソース)として使用するからである。顕著な量のナノサイズ粒子が存在しない製品を製造することができる。この種の製品の健康への影響が調査された。それによって、本発明による繊維製品は、食品産業および医薬品産業の要求を満たすものである。
【0044】
したがって、本発明に従う製品は、食料品に使用することができる。従って、医薬品の添加物にも使用することができる。
【0045】
好ましくは、上記の方法で調製される油性のAaltoCellTMに基づくゲル状の混合物は、脂系および油系の食品に使用することができ、例えば、マヨネーズ、チョコレートおよびサラダドレッシングにおいて、例えば、食感(又はマウスフィール(mouthfeel))を改善することができる。さらに、この混合物は、親水性の繊維を添加するプラスチック類に使用することができる。この場合、プラスチック製品における親水性の繊維の接着(又は付着(adhesion))を改善することができる。それによって、複合体(又はコンポジット)の強度の特性が著しく改善される。例えば、押出機タイプのミキサーにおいて、油(又はオイル)が摩擦を低減する場合、その製造が促進される。
【0046】
次いで、上記の方法で調製される水性のAaltoCellTMに基づくゲル状の混合物は、食品において、有利に使用することができ、最終製品の食感を改善することができる(例えば、マスタード、ケチャップ、ヨーグルト、ジュースおよびスポーツドリンクにおいて)。
【0047】
(実施形態)
実施形態1
高いコンシステンシーの水性および油性のゲル状のセルロースの繊維混合物を製造するための機械的(又はメカニカル)な方法であって、当該方法において、粒子径(又は粒径又は粒子サイズ)は、主として、マイクロサイズであり、この繊維混合物は、ナノサイズの粒子をほとんど含まない。
【0048】
実施形態2
高いコンシステンシーの水性および油性のゲル状のセルロースの繊維混合物を製造するための機械的(又はメカニカル)な方法であって、当該方法において、粒子径(又は粒径又は粒子サイズ)がマイクロサイズであり、この繊維混合物がナノサイズの粒子を含まない。
【0049】
実施形態3
上記の機械的(又はメカニカル)な方法は、典型的には、2段階(又は2ステージ)を必要とし、当該方法において、第1ステップ(又は第1工程又は第1段階)では、繊維混合物(水性である繊維混合物)の液体の部分(又は一部)をキャビテーションさせ、それによって、繊維粒子を軟化させて、部分的に分離させて繊維にすることができる。第2ステップ(又は第2工程又は第2段階)では、繊維粒子の軟化した部分の脱繊維化(又はデファイバリゼーション(defiberization))を完了させることができる。
【0050】
実施形態4
また、油性のゲル状の混合物が水(又はウォーター)を含む場合、この油性のゲル状の混合物を得る機械的(又はメカニカル)な方法であって、そのキャビテーションステップ(又はキャビテーション工程)を可能にし、さらに、そのゲル状の混合物に油(又はオイル)を均一に分配(又は分布又は分散)させることができる方法。好ましくは、この油性の混合物において、少なくとも2%の水、より好ましくは8%の水が存在する。
【0051】
実施形態5
機械的(又はメカニカル)な処理の前に繊維混合物を形成する機械的(又はメカニカル)な方法であって、当該方法において、繊維を基準にして、5~20重量%のコンシステンシー(又は濃度)になるように、MCCを水性または油性の液体に添加する。
【国際調査報告】