(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】エキスパンドメタルシートで作られた、パン類、ヴィエノワズリー、パティスリーおよび類似の製品用の支持トレイ
(51)【国際特許分類】
A21B 3/15 20060101AFI20221109BHJP
A47J 37/01 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
A21B3/15
A47J37/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022517256
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2020075756
(87)【国際公開番号】W WO2021052954
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516006493
【氏名又は名称】メカサーム
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウドー ヨルダン
(72)【発明者】
【氏名】セルジャン オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA10
4B040AC03
4B040AD04
4B040AE04
4B040EB01
(57)【要約】
本発明は、パン類、パティスリー、ヴィエノワズリーまたは類似の製品を製造するために用いられる設備の少なくとも1つの加工ユニットを通って、それらの製品を運搬するための支持トレイ装置(1)に関し、装置(1)は少なくとも1つの金属材料のシート(5)が固定されたフレーム(2)を備える。金属のシート(5)は、金属格子を形成するマイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートから構成され、エキスパンドメタルシートは金属のシートを切断および伸長することにより得ることができ、マイクロメッシュは130から750μmの通過孔を有し、マイクロメッシュの結果として、エキスパンドメタルシートはシートの総表面積の17から60%に相当する空隙面積を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン類、パティスリー、ヴィエノワズリーまたは類似の製品を製造するための設備の少なくとも1つの加工ユニットを通って、前記の製品を運搬するための支持トレイ装置(1)であって、前記装置(1)は、少なくとも1つの金属材料のシート(5)が固定されたフレーム(2)を備え、金属の前記シートは金属格子を形成するマイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートから構成され、前記マイクロメッシュは130から750μmの通過孔を有し、前記エキスパンドメタルシートは、前記マイクロメッシュの結果として、前記シートの総表面積の17から60%に相当する空隙面積を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記マイクロメッシュは130から250μmの通過孔を有し、前記エキスパンドメタルシートは、前記マイクロメッシュにより、前記シートの総表面積の17から45%の空隙面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項3】
マイクロメッシュを備える前記エキスパンドメタルシートは、非付着性コーティングに覆われていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項4】
前記非付着性コーティングは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構成されることを特徴とする、請求項3に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項5】
前記非付着性コーティングは、ゾルゲルコーティングから構成されることを特徴とする、請求項3に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項6】
前記非付着性コーティングは、シリコーンポリマから構成されることを特徴とする、請求項3に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項7】
マイクロメッシュを備える前記エキスパンドメタルシートは、アルミニウムとステンレス鋼とから選択された金属材料で作られることを特徴とする、請求項1から請求項6のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項8】
前記エキスパンドメタルシートは、少なくとも1つの生地片または少なくとも1つのローフ等を受容するための窪んだ収容部を構成する、少なくとも1つのほぼ半円状のセル(11)を形成するように、曲げ加工によって成形され、前記セル(11)は前記支持トレイ装置(1)の一端から他端まで縦方向に延在することを特徴とする、請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項9】
複数のエキスパンドメタルシートを備え、各シートは、少なくとも1つの生地片または少なくとも1つのローフ等を受容するための窪んだ収容部を構成するほぼ半円状のセル(11)を形成するように曲げ加工により成形され、前記セル(11)のそれぞれは、2つの縦方向のセル支持体の間において前記シートの一端から他端まで縦方向に延在することを特徴とする、請求項1から請求項8のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項10】
前記エキスパンドメタルシートの表面は平坦またはほぼ平坦であることを特徴とする、請求項1から請求項7のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項11】
前記エキスパンドメタルシートの前記マイクロメッシュは、通過孔が200μmであり、寸法が0.6mm(LD-長対角線)×0.4mm(SD-短対角線)×0.12mm(W-ストリップ幅)×0.10mm(Th-ストリップ厚さ)である菱形形状を有し、前記エキスパンドメタルシートは、前記シートの前記総表面積の28%に相当する空隙面積を有することを特徴とする、請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項12】
前記エキスパンドメタルシートの前記マイクロメッシュは、通過孔が200μmであり、寸法が0.75mm(LD)×0.5mm(SD)×0.20mm(W)×0.15mm(Th)である菱形形状を有し、前記エキスパンドメタルシートは、前記シートの前記総表面積の29%に相当する空隙面積を有することを特徴とする、請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【請求項13】
前記エキスパンドメタルシートの前記マイクロメッシュは、通過孔が250μmであり、寸法が0.85mm(LD)×0.7mm(SD)×0.20mm(W)×0.15mm(Th)である菱形形状を有し、前記エキスパンドメタルシートは、前記シートの前記総表面積の30%に相当する空隙面積を有することを特徴とする、請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の支持トレイ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特にパン類、ヴィエノワズリー(菓子パン)、パティスリー(菓子)または類似の製品の発酵、焼成、冷却、冷凍のための支持トレイ装置に関する。
【0002】
本発明は、主に調理器具および工業的製パン設備の分野における用途が見込まれる。
【0003】
この適用分野において、基本的には製品の主な系統が2つある。すなわち、
・支持トレイの上または型の中で焼成される製品と、
・オーブンの床面で直接焼成される製品である。
【0004】
従来、第1の種類の製品に関して、生地は、最初に複数の生地片に分けられる工程を経る。その後、その生地片を支持トレイの上または型の中に置く前に、生地片を成形する工程を実施してもよい。
【0005】
こうした支持トレイは、その後、工業的パン類製造設備において通常存在する、具体的には発酵ユニット、焼成ユニット、冷凍ユニットおよび冷却ユニットなどの様々なパン類製品加工ユニットを通って、生地片を運搬および供給するのに用いられる。
【0006】
パン類または類似の製品用の支持トレイには多くの種類があり、本説明の残りの部分において、これらの支持トレイは焼成トレイとも称される。
【0007】
そのため、具体的には、こうした支持トレイは、フレームに固定的に取り付けられた支持材を備えてもよい。そして、これによりトレイを取り扱うためのトレイ全体の剛性を確保する骨組みを構成する。
【0008】
1つの具体的な実施形態において、支持材は、具体的には生地片を受容するための収容部を形成するように曲げ加工により成形され得る中実シートで構成される。具体的な形状は、例えば、セルまたはトラフとも呼ばれる窪んだ収容部を形成するような支持材の凹凸で構成される。したがって、「ディンプル付きトレイ」と称され、こうしたトレイはパン類製品等を製造する方法において、それらの製品に丸みのある形状を与えるために用いられる。
【0009】
このタイプの支持トレイにおいては、1つの同じ収容部内に複数の生地片を互いに間隔を空けて配置することが可能であり、1つのトラフに受容される生地片の数は、一方ではそのトラフの長さによって、そして他方では生地片の寸法によって決まる。
【0010】
WO2015/044588の番号で公開された国際特許出願から公知であるのは、生地片を受容するための複数の収容部を提供するように成形された中実の支持材が固定されたフレームを備える、パン類または類似の製品を焼成するための支持トレイ装置である。
【0011】
これらの収容部は、トレイの1つの端部から反対側の端部まで互いに平行に延在し、これらの収容部のそれぞれは、断面円弧状の中実シートにより構成される。さらに、2つの隣接する収容部の隣り合う縁部は、収容部を互いに独立させるために、収容部の間に連続スロットを提供するように離間している。
【0012】
このような装置は一定の利点を有し、具体的には、収容部が劣化した場合に、装置全体の交換を必要とせず、収容部のうちの1つを交換できるという利点である。
【0013】
独立した収容部を備えるこの支持トレイ装置の別の利点は、トレイに加わる機械的応力、具体的には材料の膨張に関連する変形が大幅に減少することにある。実際、各収容部の上部長手方向縁部が解放されているため、その縁部は制約なく膨張することができるからである。
【0014】
なお、トレイに含まれるセルまたは収容部の間の空間は、トレイの中央部に位置する生地片を含む、トレイ上に置かれた全ての生地片の最適な焼成を確実にするため、オーブンからの空気流が通過できるようにしている。
【0015】
さらに、生地片を焼成するために中実シートを使用することにより、最終製品の底部は、石の上で焼成した後に得られる製品の外観に匹敵する滑らかな外観を有することが可能になる。
【0016】
しかしながら、パン類製品を製造する方法において生地片の下面で必然的に放出される水分およびガスは、中実シートを通って排出することができない。より具体的には、製品がガスおよび水分を放出するのは、プルーフィング段階とも呼ばれる発酵段階の間である。さらに、冷却工程の間に、製品はやはり水分を放出する。製品の表皮がすでに形成された焼成後に製品が水分を放出するこの段階は、スウェッティングとも呼ばれる。
【0017】
発酵段階で用いられたものと同じトレイ上で焼成が行われる場合、発酵段階におけるこのようなガスや水分の放出によって製品の底部に割れ目が形成され、焼成段階後に割れ目が目立つようになり、最終的には最終製品の底部に見苦しい外観をもたらす。
【0018】
冷却段階における水分の放出により、今度は製品の底部に濡れとその後の軟化、言い換えれば、不満足な最終的質感や外観が生じる。
【0019】
製品の焼成段階において、第1焼成工程では水蒸気がオーブン内に注入され、その後、第2工程ではオーブン内の雰囲気は乾燥している。焼成中、製品も水分を放出する。しかし、オーブンの底部からの熱は、生地片が速やかに「固着」させられ、底部で放出された水分が割れ目を生じさせるのを防ぐのに十分迅速に表皮が形成されるようになっている。言い換えれば、プルーフィング段階(具体的には、すでに湿潤な雰囲気中に製品が比較的長時間留まる段階)とは反対に、第2焼成工程における高温で乾燥したオーブン内の雰囲気は、生地片により放出される水分の吸収に寄与する。
【0020】
割れ目の存在をなくす、または少なくとも制限するために、事前に打ち粉をしたトレイの上に製品が置かれてもよい。粉の目的は、製品の底部で形成された水分の蒸発を吸収することであり、その結果として、割れ目を形成させる可能性が高い、トレイと製品の接触面における水滴の出現を防ぐことである。
【0021】
しかしながら、打ち粉をする方法には欠点があり、まず生産ライン上に小麦粉が蓄積するリスクという欠点である。この蓄積は、生産ラインの汚染やオーブン内の小麦粉の堆積につながる可能性があり、発火を引き起こし得る。
【0022】
さらに、このような方法を実施することにより、底部に打ち粉のない製品を消費者に提供することができなくなる。
【0023】
別の可能性は、焼成用の中実シートメタル製支持トレイのトラフ内に生地片を移動させる前に、割れ目の出現を防止するために、事前にセモリナ粉で打ち粉をした、または覆ったプラスチック材料製のトレイの上で生地片の発酵段階を実施することである。
【0024】
しかし、そのような可能性を実行することは、生地片を発酵用の第1トレイから取り上げて焼成が行われる第2トレイに載置するための複雑な機械システムの存在と操作を前提とする。したがって、こうした取り上げ・載置操作は、特にトレイの種々のセットの管理および機械設備の維持に関して必然的に大幅な制約を伴う。
【0025】
先行技術においては、複数の穿孔または開口部が形成され、全面にわたって規則的に配置された金属のシートを備える支持トレイを使用することも公知である。
【0026】
従来、素材の除去、具体的には打ち抜きにより得られる穿孔されたシートを備える先行技術の支持トレイにおいて、穿孔はほぼ円形で、その直径は1.8から3mmである。トレイにおける空隙率または開口率は、40%程度である。この開口率は、発酵段階中に生地片の底部で発生し排出された水分を支持トレイが下から十分に放出することを可能にするために、必要と考えられる場合には、50%またはそれより高い空隙になることもあり得る。
【0027】
例えば、FR2756706の番号で公開されたフランス特許出願からは、ローフ受容ハウジングを構成する複数の縦溝を画定するように正弦波形状に成形された金属のシート、または穿孔された構造が載置された支持フレームを備える、焼成網用の装置が公知である。
【0028】
この装置の金属のシートは、焼成時に均等な熱分布と水分の排出を可能にするように、25%を超える高い空隙率を有する。さらに、シート上に噴霧された非付着性ポリマの薄い層によって覆われている。
【0029】
同じく穿孔を備えた、縦溝のうちの1つに圧入されるように成形された非付着性材料の取り外し可能な可撓部が、この金属のシート上に装着される。
【0030】
このようなトレイは、製造方法の一定の段階、具体的には発酵および冷却時に、空気および焼成熱の良好な伝達を確保しつつ、生地片から放出された水分およびガスの効果的かつ最適な排出を可能にするという利点を有する。
【0031】
同様に穿孔された非付着性の形状を組み込んでいるかどうかに関わらず、このような穿孔されたトレイ上で焼成された製品は、製品により放出された水分によって割れ目が出現することなく均一に焼成されるが、穿孔によって必然的に製品の底面に模様がつくことになる。
【0032】
そのような模様は、消費者の目から見て否定的な意味合いを有する工業的焼成の印象を製品に与えるため、消費者は無意識のうちに製品が低品質であると考えるのに対して、職人的製造を連想させる外観を有する製品が一般に求められる。
【0033】
先行技術において、ドイツ実用新案出願第9114841号およびフランス特許出願第1045958号および国際公開公報第01/65946号からは、圧延エキスパンドメタルで作られた焼成トレイまたは調理器具が公知である。国際公開公報第01/65946号において、用いられるエキスパンドメタルのメッシュは通常6mm×20mmの比較的大きな寸法の菱形状であり、前の段落で言及した発生する問題を解決することはできない。
【0034】
本発明は、複数の生地片を具体的にはパン類または類似製品の製造用設備の発酵ユニットおよび焼成ユニットを通って運搬するために、複数の生地片を受容することを目的とする支持トレイ装置を提案することにより、先行技術の様々な欠点を少なくとも部分的に解消する可能性を提供するものであり、この支持トレイ装置は、それと同時に、具体的には穿孔による跡から生じる製品の下面すなわち底面の見苦しい模様であって、消費者に製品を工業的製造によるものと見なさせる模様を回避しつつ、製品により放出される水分の最適な排出を可能にする。
【0035】
この目的のため、本発明は、パン類、パティスリー、ヴィエノワズリーまたは類似の製品を製造するための設備の少なくとも1つの加工ユニットを通って、それらの製品を運搬するための支持トレイ装置に関し、支持トレイ装置は、少なくとも1つの金属材料のシートが固定されたフレームを備え、支持トレイ装置は、金属のシートが金属格子を形成するマイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートから構成され、マイクロメッシュは130から750μmの通過孔を有し、その結果として、エキスパンドメタルシートはシートの総表面積の17から60%に相当する空隙面積を有することを特徴とする。
【0036】
更に製品の底部の模様を減少させることができる非常に優位な特徴によれば、装置は、金属のシートが金属格子を形成するマイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートから構成され、マイクロメッシュは130から250μmの通過孔を有し、その結果として、エキスパンドメタルシートはシートの総表面積の17から45%の空隙面積を有することを特徴とする。
【0037】
本発明の支持トレイ装置において用いられるエキスパンドメタルシートは、金属のシートの切断および伸長によって有利に得ることができる。
【0038】
好適な実施形態において、マイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートは非付着性コーティングに覆われ、非付着性コーティングはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはゾルゲルコーティング、またはシリコーンポリマからも構成される。
【0039】
好ましくは、マイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートは、アルミニウムとステンレス鋼とから選択された金属材料で作られる。
【0040】
エキスパンドメタルシートは、少なくとも1つの生地片または少なくとも1つのローフ等を受容するための窪んだ収容部を構成する少なくとも1つのほぼ半円状のセルを形成するように、曲げ加工によって有利に成形されてもよく、セルは支持トレイの一端から他端まで縦方向に延在する。
【0041】
有利な実施形態において、本発明の支持トレイ装置は、少なくとも1つの生地片または少なくとも1つのローフ等を受容するための窪んだ収容部を構成するほぼ半円状のセルを形成するように、それぞれが曲げ加工によって成形された複数のエキスパンドメタルシートを備え、各セルは、2つの縦方向のセル支持体の間においてシートの一端から他端まで縦方向に延在する。
【0042】
別の実施形態では、本発明の支持トレイ装置において、エキスパンドメタルシートの表面は平坦またはほぼ平坦である。
【0043】
本発明の支持トレイ装置を提供するエキスパンドメタルシートのマイクロメッシュは、通過孔が200μmであり、寸法が0.6mm(LD-長対角線)×0.4mm(SD-短対角線)×0.12mm(W-ストリップ幅)×0.10mm(Th-ストリップ厚さ)である菱形形状を有し、エキスパンドメタルシートはシートの総表面積の28%に相当する空隙面積を有してもよい。
【0044】
本発明の支持トレイ装置を提供するエキスパンドメタルシートのマイクロメッシュは、また、通過孔が200μmであり、寸法が0.75mm(LD)×0.5mm(SD)×0.20mm(W)×0.15mm(Th)である菱形形状を有し、エキスパンドメタルシートはシートの総表面積の29%に相当する空隙面積を有してもよい。
【0045】
本発明の支持トレイ装置を提供するエキスパンドメタルシートのマイクロメッシュは、さらに、通過孔が250μmであり、寸法が0.85mm(LD)×0.7mm(SD)×0.20mm(W)×0.15mm(Th)である菱形形状を有し、エキスパンドメタルシートはシートの総表面積の30%に相当する空隙面積を有してもよい。
【0046】
本発明は、多くの利点を有し、特に、パン製品等のための支持トレイ装置においてエキスパンドメタルシートを用いることにより、現在使用されている穿孔されたトレイにより生じる模様と比較して、焼成時における製品の底面の模様を大幅に減少させる、または完全にあるいはほぼ完全になくすことができる。
【0047】
さらに、先行技術のシートと比べると開口率が少なからず低下しているにもかかわらず、パン製品の製造の一定の段階、特に発酵段階および冷却段階において、マイクロメッシュにより効果的な水分排出が依然として確保される。
【0048】
本発明の支持トレイ装置はまた、経済的に製造され、長期間持続する特に有利な機械的強度を有する。
【0049】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図を参照する以下の本発明の非限定的な実施形態の詳細な説明から浮かび上がるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】パン類製品等のための支持トレイ装置であって、数個のセルが固定されたフレームを備え、各セルはマイクロメッシュを備えるエキスパンドメタルシートから構成され、少なくとも1つの生地片等のための収容部を構成するように成形され、セルは支持トレイ装置の一端から他端まで縦方向に延在する支持トレイ装置の、具体的な実施形態の斜視図を概略的に示す。
【
図2A】
図1の支持トレイ装置のフレームであって、複数の縦方向のセル支持体を備えるフレームの、具体的な実施形態の斜視図における概略図である。
【
図2B】
図1の支持トレイ装置に含まれるセルの、具体的な実施形態の斜視図における概略図である。
【
図3A】
図1に示されている支持トレイ装置の細部の、側面図における概略図である。
【
図3B】
図3Aの拡大された細部の、側面図における概略図である。
【
図4A】左側のマイクロメッシュを備えたエキスパンドメタルシートを備える本発明による支持トレイ装置と、右側の穿孔された金属のシートを備える支持トレイ装置との比較を可能にする写真である。
【
図4B】
図4Aの左側に示すような本発明による支持トレイ装置上で製品を焼成した後に得られたパン類製品、この場合はバゲット、の底部の写真である。
【
図4C】
図4Aの右側に示すような支持トレイ装置の標準的な穿孔されたトレイ上で製品を焼成した後に得られたパン類製品、この場合はパンのローフ、の底部の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は工業的製パンの分野、より具体的にはパン類、パティスリー、ヴィエノワズリーまたは類似の製品を、それらの製品用の少なくとも1つ、好ましくは複数の加工ユニットを備える適切な製造設備を用いて製造する分野に関する。
【0052】
したがって、そのような製品を製造するための設備は、具体的には、少なくとも1つのプルーフィングオーブンおよび/または焼成オーブンおよび/または冷却器および/またはフリーザを備えてもよい。
【0053】
さらに具体的には、添付の
図1に示すように、本発明は、パン類、パティスリー、ヴィエノワズリーまたは類似の製品を、そのような製品用の製造設備を構成するこれらの種々の加工ユニットを通って運搬するための支持トレイ装置1に関する。
【0054】
実際には、一般的に、生地を分ける工程および場合により次の成形する工程の結果生じる生地片は、前述の処理ユニットによってその生地片を取り扱いやすくするために、そのような支持トレイ装置1上に配置される。
【0055】
より具体的には、本発明に従い、
図1、2A、2Bおよび3を参照すると、支持トレイ装置1は、具体的には
図2Aにおいて詳細かつ全体的に見えるフレーム2を備え、フレーム2は、限定的ではない例として、例えば長方形の、具体的には装置1全体の剛性を確実にする骨組み3を形成する数個の金属製筒状部21、22、23、24の組立体から構成されてもよい。
【0056】
少なくとも2つ、好ましくは複数の並置された横支持体4がこの骨組み3に取り付けられ、各横支持体4は骨組み3上において、平行な2つの筒状部22、24を連結していることが好ましい。
【0057】
2つの並置された横支持体4の間に、金属材料製の支持シート5が固定されてもよく、支持シートは有利には、具体的には
図2Bに詳細に示すように、ほぼ半円形状のセル11またはトラフを形成するように、例えば曲げ加工により成形することができる。好ましくは、2つの長手方向縁部111、112は半円の各端部において半円を延長し、セル11の全長にわたって延在する。
【0058】
したがって、セル状に成形されたこの金属のシート5は、少なくとも1つの生地片6を受容することを目的とする窪んだ収容部を構成することができ、例えば、収容部はシート5の2つの端部の間において縦方向に延在する。
【0059】
金属材料製のシート5の長さおよび生地片6の大きさに応じて、単一の同一収容部内に数個の生地片6を受容してもよい。
【0060】
有利には、この金属材料製の支持シート5は、セル11の長手方向縁部111、112において、それぞれねじ7および/またはリベット8を用いたねじ止めおよび/またはリベット打ちにより骨組み3の横支持体4に固定されている。
【0061】
図1に具体的に示すように、本発明の支持トレイ装置1は複数の金属のシート5を備え、各金属のシート5は、1つ以上の生地片6を受容するための半円状のセル11を形成するように、曲げ加工によってそれぞれ成形される。
【0062】
この実施形態において、
図3Aおよび3Bを参照すると、各セル11は2つの並置されたセル支持体4に固定され、2つの隣接するセル11、11’は、それぞれの長手方向縁部111、111’を重ね合わせることにより共通のセル支持体4に固定されている。
【0063】
さらに、有利には、具体的にはリベット打ちおよび/またはねじ止めによるセルの固定を確実にするために、
図3Bで示すように、具体的にはシートメタル部の形を取る被覆手段9が、重ね合わされた長手方向縁部111、111′の上に取り付けられてもよい。
【0064】
本発明の支持トレイ装置1の、同様に興味深いが図示されてはいない他の実施形態において、曲げ加工によって単一の金属製支持シート5に波形が設けられ、それにより生地片6を受容する複数の窪んだ収容部を形成し、2つの隣接する収容部が波形の頂点によって分けられ、その頂点には、収容部の間において空気流の通過をより良くするために、場合により1つ以上の溝が形成されてもよい。
【0065】
図示されていない実施形態において、金属のシートまたはシート金属片5は、平坦またはほぼ平坦であって、本発明の支持トレイ装置1のフレーム2に固定され、少なくとも部分的に、フレーム2を形成する筒状部に重なることも考え得る。
【0066】
本発明のパン類製品支持トレイ装置1の本質的な特徴によれば、生地片6を支持することを目的とする金属のシート5は、具体的には比較的小さいマイクロメッシュを有するエキスパンドメタルシートである。
【0067】
本発明の装置1を提供することを目的とするこのようなエキスパンドメタルシートは、材料を除去することなく3次元金属格子の形を取るオープンメッシュを得るために、中実の金属のシートを例えば刃物を用いてせん断または切断し、ほぼ同時に伸長することにより得てもよい。伸長前または伸長後に、圧延による平坦化工程を任意に行ってもよい。
【0068】
一般に、格子のマイクロメッシュは菱形状であって、形成された各菱形に対して、通過孔の寸法を画定する互いに連結された金属バーによって囲まれた空隙を残し、この通過孔より大きい寸法を有する粒子はメッシュを通り抜けることができない。より具体的には、粒子の最小の寸法(長さ、幅、対角線、直径等)がこの通過孔より大きければ、その粒子はマイクロメッシュを通過することができない。
【0069】
本発明によれば、エキスパンドメタルシート5は130から750μmの通過孔を有するマイクロメッシュを備え、エキスパンドメタルシートは、そのマイクロメッシュにより、シートの総表面積の17から60%の空隙面積を有する。
【0070】
マイクロメッシュ4の通過孔およびシート5の空隙面積に関してこのような特徴を有するエキスパンドメタルシート5を備えた支持トレイ装置1は、特に製品の底部における最適な品質の最終製品の製造を可能にする。
【0071】
本発明の装置1の更に有利な実施形態において、装置が備えるエキスパンドメタルシート5は通過孔が130から250μmのマイクロメッシュを有し、マイクロメッシュにより形成される空隙または開口面積のエキスパンドメタルシート5の総表面積に対する割合は、17から45%に達する。
【0072】
このような装置1によって、最終的に得られる製品の底部の品質は更に向上し、底部の模様はほとんどなくなる。
【0073】
具体的には、製品の下面、言い換えれば製品の底部に肉眼では気付きにくい模様があるのみで、割れ目はなく、マイクロメッシュはその構造の跡を製品にほとんど残さないが、水分はメッシュが備える空隙を通って正しく排出されている。
【0074】
図4Aから4Cを参照し、製品(この場合、バゲット)の焼成テストが行われ、一方では1.8mm相当の直径および40%相当の空隙率の穿孔を有する穿孔された金属のシートで作られたセルを備える支持トレイ10を用い、他方ではエキスパンドメタルシートで作られたセルを備える支持トレイ装置1を用い、テストされた2つのトレイのそれぞれはシリコーン非付着性コーティングの層を備えていた。
【0075】
得られた結果は、エキスパンドメタルで作られた支持トレイ装置1上に置かれて製品が焼成された場合の製品の底部61すなわち製品の底面の外観(
図4B)は、穿孔された金属トレイ10上での焼成後に得られた製品の底部610(
図4C)と比べて、視覚的に、はるかに高品質であることを明らかに示している。
【0076】
換言すれば、エキスパンドメタルで作られた支持トレイ装置1を使用すると、焼成中においても焼成前においても製品の底部にほとんど模様が残らず、そのため最終製品は職人的製造を連想させる外観を有する。このような外観は
図4Bの写真で明らかである。
【0077】
なお、本発明の支持トレイ装置1を形成するエキスパンドメタルシート5の菱形形状のマイクロメッシュは、少なくとも4つの寸法、すなわち菱形の長対角線(LD)、菱形の短対角線(SD)、菱形のストリップの幅(W)、および菱形のストリップの厚さ(Th)により規定される。そのため、従来、菱形のマイクロメッシュの寸法は以下のように特定される:LD×SD×W×Th。
【0078】
焼成後に得られ、
図4Cの写真により示されている結果は、菱形形状のマイクロメッシュが0.85×0.7-0.20×0.15mmの寸法を有し、30%相当の空隙面積を有し、マイクロメッシュが250μm相当の通過孔を有するエキスパンドメタルシート5を備える支持トレイ装置1を用いて得られた。
【0079】
ただし、マイクロメッシュの他の寸法、つまり限定的ではない以下の寸法の例によれば、水分の十分な排出を維持しながら、底部に模様がないという点において最適な結果を得ることを可能にする。
【0080】
・0.6×0.4×0.12×0.10mm、28%の空隙面積、通過孔200μm
・0.75×0.5×0.20×0.15mm、29%の空隙面積、通過孔200μm
・0.85×0.7×0.15×0.15mm、45%の空隙面積、通過孔250μm
・1.25×1×0.2×0.2mm、45%の空隙面積、通過孔550μm
・1.5×1×0.15×0.15mm、56%の空隙面積、通過孔750μm
・1.25×1×0.15×0.15mm、60%の空隙面積、通過孔600μm
なお、本発明の支持トレイ装置1が備えるエキスパンドメタルシート5のマイクロメッシュは、また、菱形とは異なる形状、具体的には正方形、長方形、六角形や、更には円形であってもよい。
【0081】
有利には、エキスパンドメタルシート5はアルミニウム製、鋼製、またはステンレス鋼製のシートから構成され、そのシートは、通常0.3mm未満の非常に薄い厚さを有することが好ましい。
【0082】
具体的にはマイクロメッシュの寸法および金属材料の特性に関してどの実施形態が選択されたとしても、エキスパンドメタルシート5は、焼成後に生地片6を取り除きやすくするために、非付着性コーティングにより覆われることが有利になり得る。
【0083】
第1実施形態において、非付着性処理はポリテトラフルオロエチレン(すなわちPTFE)を用いて行われるが、この化合物は登録商標「Teflon」としても知られている。
【0084】
第2実施形態において、非付着性コーティングはゾルゲルコーティングから構成され、ゾルゲルコーティングは、当業者に公知の任意の適切な手段、具体的には噴霧により塗布されてもよい。
【0085】
最後に、更に別の実施形態において、非付着性コーティングはシリコーンポリマから構成され、シリコーンポリマもまた噴霧により塗布されてもよい。
【0086】
本発明による支持トレイ装置1は、パン製品の製造用設備の様々な発酵ユニット、焼成ユニットおよび冷却ユニット内、およびこれらの様々なユニットの間におけるパン製品の運搬および経路変更にとって、特に興味深く有利である。
【0087】
実際、製品の底面、言い換えれば支持トレイ1に直接接触している製品の下面において、その表面に割れ目が生じるのを避けるために、生じた水分の最適な排出を確実にする必要があるのは、パン類および類似の製品を製造するための方法において実施されるこれらの工程においてである。
【0088】
出願人は、本発明の支持トレイ1の特徴により、支持体として従来用いられている穿孔されたトレイにはできないが、トレイ1と接触する生地片6の下面において目に見える突起の形成が回避できることを明らかにした。本支持トレイ装置1を実施することにより、最終製品を否定的に暗示するであろう模様の形成ができる限り回避される。
【0089】
この顕著な改良点に加え、本発明の支持トレイ1により得られる製品の底部の模様は、石窯の上で直接焼成した製品の模様と類似している。したがって、トレイ式の支持体上で焼かれた製品と窯の上で直接焼かれた製品との、品質における視覚的な差はなくなる。
【0090】
本発明はまた、前述の支持トレイ装置1、具体的には、エキスパンドメタルシートで構成される少なくとも1つの金属材料のシート5が固定されたフレーム2を備える支持トレイ装置1、を製造する方法に関する。
【0091】
製造方法は、少なくとも以下の工程を含む。
【0092】
・金属材料、有利にはステンレス鋼のシートに、好ましくは、ほぼ同時に切断および伸長を行うことにより開口部が形成され、シートは好ましくは0.3mm未満の厚さを有する。
【0093】
・任意に、金属材料のシート5が、具体的には曲げ加工によって少なくとも1つのセル11または複数のセルを形成するように成形され、その結果形成されたセルまたは複数のセルのそれぞれは、ほぼ半円形の形状で、少なくとも1つの生地片または少なくとも1つのローフ等を受容するための窪んだ収容部を構成し、セル11は支持トレイ1の一端から他端へ縦方向に延在する。
【0094】
・金属材料のシート5がフレーム2に組付けられる。
【0095】
本発明の方法の有利な実施形態において、金属材料のシート5をフレーム2に組み付ける工程の前、またはこの工程の後に、このシートの表面上にポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、またはゾルゲルコーティングから選択された非付着性コーティングの層が設けられる。
【0096】
好ましくは、エキスパンドメタルシートのマイクロメッシュの目詰まりを回避するために、500μm以下の厚さを有する非付着性コーティングの層が設けられる。
【0097】
非付着性コーティングを設けるこの工程は、当業者に公知の任意の手段、具体的には噴霧により行ってもよい。
【0098】
任意に、金属材料のシート5の表面に非付着性コーティングの層が設けられる工程に先立って、シートの少なくとも1つの表面処理が行われる。
【0099】
この表面処理は、具体的には、その後で金属材料のシートの表面に設けられる非付着性コーティングを接着しやすくするために、ブラッシングによる処理またはプラズマ処理から構成されてもよい。
【0100】
具体的には、プラズマ処理を行うことにより、金属材料のシートを変形させることなく金属材料のシートに十分な粗さを与えることができる。
【0101】
言うまでもなく、本発明は、図示および前述した例に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、変形や変更を含み得る。
【国際調査報告】