(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-16
(54)【発明の名称】有機および無機構造指向剤と、フレーク状形態を有するチャバサイト型ゼオライトと、を含むチャバサイト合成法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20221109BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20221109BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221109BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20221109BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221109BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221109BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20221109BHJP
【FI】
C01B39/48 ZAB
B01J29/76 A
B01J29/76 Z
B01D53/94 222
F01N3/022 C
F01N3/08 A
F01N3/08 B
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533250
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(85)【翻訳文提出日】2022-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2020057297
(87)【国際公開番号】W WO2021024142
(87)【国際公開日】2021-02-11
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】522046645
【氏名又は名称】パデュー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】グンダー,ラジャマニ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ディ イオリオ,ジョン ロッコ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ケーシー ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ニムロス,クレア タウンセンド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッティパリ,ヴィヴェク
(72)【発明者】
【氏名】プラサッド,サブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】クンケス,エドゥアルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマド
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
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4G073
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本開示は、一般に、CHA結晶骨格を有するゼオライトと、それを調製する方法とを提供する。連晶、制御された骨格アルミニウム分布、またはその両方を含有するCHA型ゼオライトを、本明細書で提供する。さらに、CHA型ゼオライトであって、当該ゼオライト材料の結晶が、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって判定される主にフレーク状形態を有する、CHA型ゼオライトを提供する。さらに、金属で促進されたCHA型ゼオライトを含む触媒組成物、触媒物品、および触媒システムを提供する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHA結晶骨格を有するゼオライトを合成する方法であって、前記方法は、
水と、アルミニウム源と、シリカ源と、有機構造指向剤の供給源と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、前記無機構造指向剤が、カリウムカチオンの供給源である、形成することと、
前記合成ゲルを結晶化プロセスに供して、前記CHA結晶骨格を有する前記ゼオライトを結晶化させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記カリウムカチオンの前記供給源が、水酸化カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
調製することが、
前記有機構造指向剤の前記供給源と、前記無機構造指向剤の前記供給源と、アルミニウムの供給源とを、前記水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成し、
前記水溶液を第1の時間混合することを含む、第1の混合工程と、
ケイ素の供給源を前記アルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して、アルミノシリケート含有溶液を形成することを含む、第2の混合工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の時間が、各々独立して、約1秒~約24時間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の混合工程が、約20℃~約100℃の温度で実施される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記結晶化プロセスが、約140℃~約200℃の温度で、約24時間~約6日の時間、前記合成ゲルを混合することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
加熱工程中に形成された前記結晶を濾過することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有機構造指向剤の前記供給源が、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAda)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
TMAdaの量およびカリウムカチオン源の量が、カリウムカチオンのN,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムカチオンに対するモル比が約1~約20の範囲のモル比にあるような量である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミノシリケート、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、またはアルミニウムトリイソプロポキシドである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウムまたはアルミニウムトリイソプロポキシドである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウムである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ素の供給源が、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド化合物、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ素の供給源が、コロイダルシリカである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記合成ゲルのOH/Si比が、約0.1~約0.5である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
CHA型ゼオライトが、制御されたアルミニウム分布を有し、前記制御されたアルミニウム分布が、式(Al-O(-Si-O)
x-Al)に従うアニオン性骨格Al中心の配列を含み、式中、
x=1もしくは2であり、前記アニオン性骨格Al中心は、ペア配列にあるか、または
x≧3であり、前記アニオン性骨格Al中心は、分離した配列にある、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約2~約60のSARを有するCHA型ゼオライトを提供するように選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約6~約20のSARを有するCHA型ゼオライトを提供するように選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ケイ素源対前記アルミニウム源対TMAda対カリウムカチオン源対前記水の比が、式:
1 SiO
2/0.033 Al
2O
3/X TMAdaOH/0.5*(0.5-X)K
2O/44 H
2Oによって表され、
式中、Xの値は、0.01~0.25である、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記CHA結晶骨格を有する前記ゼオライトが、第1のCHA相および第2のCHA相を含む連晶ゼオライトであり、
前記第1のCHA相および前記第2のCHA相が、各々独立して、約2338Å
3~2489Å
3の単位格子容積を有し、
前記第1のCHA相の前記単位格子容積が、前記第2のCHA相の前記単位格子容積とは異なっている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のCHA相および前記第2のCHA相が、各々独立して、約4~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、
前記第1のCHA相のSARが、前記第2のCHA相の前記SARとは異なっている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のCHA相が、前記第2のCHA相より高いSARを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のCHA相の前記SARが約10~約40であり、前記第2のCHA相の前記SARが約6~約8である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のCHA相の前記SARが、約10~約20である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のCHA相の前記SARが、約10~約15である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のCHA相が、前記連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、
前記第1のCHA相が、0.5を超える、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有し、
前記第2のCHA相が、約0.5未満の、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有する、請求項20~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のCHA相、前記第2のCHA相、またはその両方が、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む、請求項20~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記SAPO組成物が、SAPO-34またはSAPO-44である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
連晶ゼオライト結晶サイズが、約0.1~約15μmである、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
CHA結晶骨格を有する連晶ゼオライトであって、
前記CHA結晶骨格が、第1のCHA相および第2のCHA相を含み、
前記第1のCHA相および前記第2のCHA相が、各々独立して、約2338Å
3~2489Å
3の単位格子容積を有し、
前記第1のCHA相の前記単位格子容積が、前記第2のCHA相の前記単位格子容積とは異なっている、連晶ゼオライト。
【請求項31】
前記第1のCHA相および前記第2のCHA相が、各々独立して、約4~約100の、シリカ対アルミナ比(SAR)を有し、
前記第1のCHA相の前記SARが、前記第2のCHA相の前記SARとは異なっている、請求項30に記載の連晶ゼオライト。
【請求項32】
前記第1のCHA相が、前記第2のCHA相よりも高いSARを含む、請求項31に記載の連晶ゼオライト。
【請求項33】
前記第1のCHA相の前記SARが約10~約40であり、前記第2のCHA相の前記SARが約6~約8である、請求項32に記載の連晶ゼオライト。
【請求項34】
前記第1のCHA相の前記SARが、約10~約20である、請求項32に記載の連晶ゼオライト。
【請求項35】
前記第1のCHA相の前記SARが、約10~約15である、請求項32に記載の連晶ゼオライト。
【請求項36】
前記第1のCHA相が、前記連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、
前記第1のCHA相が、0.5を超える、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有し、
前記第2のCHA相が、約0.5未満の、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有する、請求項30~35のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト。
【請求項37】
前記第1のCHA相、前記第2のCHA相、またはその両方が、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む、請求項30~36のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト。
【請求項38】
前記SAPO組成物が、SAPO-34またはSAPO-44である、請求項37に記載の連晶ゼオライト。
【請求項39】
連晶ゼオライト結晶サイズが、約0.1~約15μmである、請求項30~38のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト。
【請求項40】
分離構成における前記CHA結晶骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率が、約0.90~約1.00の範囲にある、請求項30~39のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト。
【請求項41】
分離構成における前記CHA結晶骨格の結晶格子骨格位置における前記アルミニウム原子の前記分率が、約0.95~約1.00のである、請求項40の連晶ゼオライト。
【請求項42】
排気ガス流における窒素酸化物(NO
x)の軽減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、前記SCR触媒が、促進剤金属で促進された、請求項30~41のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト材料を含む、選択的接触還元(SCR)触媒。
【請求項43】
前記促進剤金属が、前記SCR触媒の総重量に基づき、金属酸化物として計算されて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、請求項42に記載のSCR触媒。
【請求項44】
前記促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、請求項43に記載のSCR触媒。
【請求項45】
前記促進剤金属が、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項42~44のいずれかに一項に記載のSCR触媒。
【請求項46】
エンジン排気ガスから窒素酸化物(NOx)を軽減するのに有効なSCR触媒物品であって、前記SCR触媒物品が、基材の少なくとも一部の上に配置された請求項42~45のいずれか一項に記載の選択的接触還元(SCR)触媒を有する基材を含む、SCR触媒物品。
【請求項47】
前記基材が、ハニカム基材である、請求項46に記載のSCR触媒物品。
【請求項48】
前記ハニカム基材が、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである、請求項47に記載のSCR触媒物品。
【請求項49】
排気ガス処理システムであって、
排気ガス流を生成するエンジンと、
前記エンジンの下流に位置決めされ、かつ前記排気ガス流と流体連通している請求項46~48のいずれか一項に記載のSCR触媒物品と、を備える、排気ガス処理システム。
【請求項50】
排気ガス流における窒素酸化物(NO
x)の軽減に有効な低温NOx吸着(LT-NA)触媒であって、前記LT-NA触媒は、白金族金属で促進された、請求項30~41のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト材料を含む、低温NO
x吸着(LT-NA)触媒。
【請求項51】
オレフィン形成、炭化水素分解、オレフィンを形成するためのアルコールの除去、メタノールおよびアンモニアからのメチルアミンの形成、ならびにメタンのメタノールへの部分酸化から選択される1つ以上の変換に有効な触媒組成物であって、前記触媒組成物は、請求項30~41のいずれか一項に記載の連晶ゼオライト材料を含む、触媒組成物。
【請求項52】
CHA結晶骨格を有するゼオライト材料であって、前記ゼオライト材料の結晶は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって判定される主にフレーク状形態を有する、ゼオライト材料。
【請求項53】
前記結晶の少なくとも約40%が、走査型電子顕微鏡法/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)によって判定されるフレーク状形態を有する、請求項52に記載のゼオライト材料。
【請求項54】
前記結晶の少なくとも約70重量%が、フレーク状形態を有する、請求項52または53に記載のゼオライト材料。
【請求項55】
前記結晶の平均の長さおよび幅が約0.3~約1.5μmであり、平均の厚さが約0.050μm未満である、請求項52~54のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項56】
前記平均厚さが、約0.025μm未満である、請求項55に記載のゼオライト材料。
【請求項57】
前記結晶のアスペクト比が、約20より大きい、請求項55に記載のゼオライト材料。
【請求項58】
前記結晶のアスペクト比が、約20~約40である、請求項55に記載のゼオライト材料。
【請求項59】
前記ゼオライト材料のシリカのアルミナに対するモル比(SAR)が、約2~約60である、請求項52~58のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項60】
前記SARが、約10~約30である、請求項59に記載のゼオライト材料。
【請求項61】
前記ゼオライト材料のシリカのカリウムに対するモル比が、約20未満である、請求項52~60のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項62】
前記シリカのカリウムに対するモル比が、約12~約17である、請求項61に記載のゼオライト材料。
【請求項63】
CHA結晶骨格および主にフレーク状形態を有するゼオライト材料を合成する方法であって、前記方法が、
水と、アルミニウム源と、ケイ素源と、有機構造指向剤と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、前記無機構造指向剤が、カリウムカチオンを含む、形成することと、
前記合成ゲルを結晶化プロセスに供して、前記ゼオライト材料を結晶化させることと、を含む、方法。
【請求項64】
調製することが、
前記有機構造指向剤と、前記無機構造指向剤と、アルミニウムの供給源とを、前記水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成し、
前記水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程と、
ケイ素の供給源を前記アルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して、アルミノシリケート含有溶液を形成することを含む第2の混合工程と、を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第1および第2の時間が、各々独立して、約1秒~約24時間である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第1および第2の混合工程が、約20℃~約100℃の温度で実施される、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記結晶化プロセスが、約100℃~約200℃の温度で、約12時間~約6日の時間、前記合成ゲルを混合することを含む、請求項63~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記温度が、約160℃~約180℃である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
加熱工程中に形成された前記結晶を濾過することをさらに含む、請求項63~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記有機構造指向剤が、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、N,N-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、トリメチル-2-アンモニウムエキソ-ノルボルナン、およびN-メチル-3-キヌクリジノールからなる群から選択される、請求項63~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記有機構造指向剤が、TMAdaOHである、請求項63~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記無機構造指向剤が、水酸化カリウムである、請求項63~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記合成ゲル中に存在するTMAdaOHの量およびカリウムカチオンの量が、カリウムカチオンのTMAdaOHに対するモル比が約10以上であるような量である、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
カリウムカチオンのTMAdaOHに対する前記モル比が、約15~約50である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記合成ゲル中に存在するTMAdaOHの量およびケイ素源の量が、TMAdaOHのケイ素原子に対するモル比が約0.05未満であるような量である、請求項71~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
TMAdaOHのケイ素原子に対する前記モル比が、約0.05~約0.01である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記アルミニウムの供給源が、ゼオライト、アルミニウムイソプロポキシド、または水酸化アルミニウムである、請求項63~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウムである、請求項63~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記ケイ素の供給源が、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである、請求項63~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記ケイ素の供給源が、コロイダルシリカである、請求項63~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約2~約60のSARを有するゼオライトを提供するように選択される、請求項63~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約10~約30のSARを有するゼオライトを提供するように選択される、請求項63~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
請求項63~82のいずれか一項に記載の方法によって調製された、走査型電子顕微鏡法/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)によって判定される、CHA結晶骨格および主にフレーク状形態を有する、ゼオライト材料。
【請求項84】
排気ガス流における窒素酸化物(NO
x)の軽減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、前記SCR触媒が、促進剤金属で促進された、請求項52~62または請求項83のいずれか一項に記載のゼオライト材料を含む、選択的接触還元(SCR)触媒。
【請求項85】
前記促進剤金属が、前記SCR触媒の総重量に基づき、促進剤金属酸化物として計算されて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、請求項84に記載のSCR触媒。
【請求項86】
前記促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、請求項85に記載のSCR触媒。
【請求項87】
前記促進剤金属が、遷移金属である、請求項84~86のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【請求項88】
前記促進剤金属が、鉄、銅、マンガン、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項84~87のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【請求項89】
前記促進剤金属が、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項84~88のいずれか一項に記載のSCR触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CHA型ゼオライト、そのようなゼオライトを含む触媒組成物の調製のための方法と、そのような触媒組成物を使用する触媒物品および触媒系とに関する。
【背景技術】
【0002】
NOx含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されてきた。1つの処理タイプは、窒素酸化物の接触還元を伴う。2つのプロセスがある:(1)一酸化炭素、水素、または炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス。選択的還元プロセスでは、少量の還元剤を用いて高度な窒素酸化物の除去を達成でき、以下の式に従って主として窒素および蒸気が形成される:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0003】
SCRプロセスで用いられる触媒は、理想的には、水熱条件下で、広い使用温度条件範囲、例えば、200℃~600℃以上で良好な触媒活性を維持できる必要がある。SCR触媒は、一般に、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である煤フィルタの再生中などに、水熱条件で用いられる。
【0004】
SCRプロセスで用いられている現在の触媒は、鉄または銅のような触媒金属とイオン交換された、ゼオライトのようなモレキュラーシーブを含む。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライトに含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~約10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。8員環の細孔開口部および二重の6環二次構造単位を有するゼオライト、特に、ケージ様構造を有するゼオライトは、SCR触媒としての使用に特に適する。とりわけ、鉄促進および銅促進ゼオライト触媒を含む金属促進ゼオライト触媒は、アンモニアによる窒素酸化物の選択的接触還元で知られている。
【0005】
金属交換(例えば、銅交換)されたときにNH3によるNOxの選択的接触還元のための有効な触媒であることが示されている1つの例示的なゼオライトは、チャバサイト(CHA)骨格を有するゼオライトである。CHA型ゼオライトは、三次元の多孔性を介してアクセス可能な8員環の細孔開口部(約3.8オングストローム)を有する小細孔ゼオライトである。ケージのような構造は、二重の6環の構造単位を4環によって接続することから生じる。CHA構造を有するゼオライトは、例えば、米国特許第4,544,538号および同第6,709,644号に開示されている方法に従って調製することができ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
ゼオライトの触媒特性は、それらの骨格の接続性によってだけでなく、触媒活性部位を発生させる骨格アルミニウム(Al)原子の微視的な原子配列によっても、定義される。単一のユニークな四面体部位(T部位)から構成された対称性の高い骨格であるCHA型ゼオライトの場合、骨格Al原子の別個の配列は、6員環(6-MR)における分離した(x≧3)またはペアとなった(x=1、2)立体配置として定義され、後者は、二価のCo2+およびCu2+カチオンの交換によって定量化されてきた。CHAにおけるこれらの異なる骨格Al集合は、ジメチルエーテルへのメタノール脱水反応に関する代謝回転率、メタノールからオレフィンへの触媒作用に関する稼働時間安定性(time-on-stream stability)、CO2吸着平衡定数、ならびにメタノールへの部分的メタン酸化(PMO)およびNH3によるNOxの選択的接触還元(SCR)を媒介する骨格外カチオン性CuおよびFe錯体の種分化の違いと関連付けられてきた。(Chen,H.-Y.,“Urea-SCR Technology for Denox after Treatment of Diesel Exhausts”;Nova,I.,Tronconi,E.,Eds.;Springer New York:New York,NY,2014,p123-147)。
【0007】
ゼオライト材料は、それらの明確に定義された結晶性骨格により、調整した材料設計作業に便利な骨格を提供し、触媒の構造および機能に関する実験的および理論的評価からのデータと洞察を結び付けることを容易にする。ゼオライト骨格において置換されたヘテロ原子の配置に意図的に影響を与える合成プロトコル、およびそのようなプロトコルの開発を支援できる構造指向剤(SDA)-骨格相互作用の理論モデルは、調整された触媒および吸着特性を有するゼオライトを調製する手段を提供することになる。カチオン性SDA分子は、ゼオライト結晶化中に、骨格SiO4/2四面体単位をアニオン性AlO4/2
-四面体単位で置換するのを容易にし、SDAの帯電部分およびアニオン性格子Al部位の近接性に基づいて、特定のT部位位置でのAlの場所に影響を与えることが示唆されている。有機分子(例えば、トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムイオン(TMAda+))、無機カチオン(例えば、Cu2+)またはプロトンのいずれかである単一タイプの骨格外カチオンを考慮すると、CHA骨格においてこれらのカチオンとAl部位との間の相互作用をモデル化するための第一原理密度汎関数理論(DFT)および分子動力学(MD)シミュレーションは、様々な骨格Al配列の安定性に対する静電相互作用の支配的な役割の証拠を提供した。しかしながら、骨格Al配列のエネルギー論に及ぼすカチオン性有機および無機SDAの混合物の効果は、あまりよく理解されていない。高シリカ(Si/Al>7)ゼオライトの結晶化は、静電相互作用によってアニオン性格子の電荷をバランスさせ、分散的相互作用によってゼオライト格子のケイ酸含有部分を安定化させるために、典型的には、有機SDA分子の存在に依存しており、それは、所望の結晶相へ結晶化を選択的に誘導するように調整することができる。ゼオライト結晶化中のアルカリカチオンの取り込みを使用して、MFIの結晶形態を制御し、FAUにおけるAlの取り込みを空間的に偏らせ、また、様々なサイズの空隙(直線チャネルおよび正弦波チャネルとそれらの交差点)の間、ならびに分離構成とペア構成との間のMFI型ゼオライトにおけるAl部位の配列に影響を及ぼす。
【0008】
既に、SDAが、主に分離Al部位を含有するため、おそらく、各CHAケージ(直径約0.7nm)の占有を、1つだけのTMAda+分子に限定するために立体的制約を課すアダマンチル基(直径約0.7nm)の結果として(Zones,S.I.,Journal of the Chemical Society,Faraday Transactions 1991,87,3709-3716)、CHA型ゼオライト(Si/Al=15)は、低電荷密度の有機TMAda+のみを含有している合成媒体から結晶する、ことが報告されている(Di Iorio,J.R.;Gounder,R.Chem.Mater.2016,28,2236-2247)。すべての他の合成変数を一定に保ちながら、CHA合成媒体においてTMAda+をNa+で部分的に置換すると(0<Na+/TMAda+<2)、CHAケージ1つ当たり1つのTMAda+分子を含有しているが、飽和Co2+イオン交換レベルによって測定したペアAl部位サイトの総数で補正されたNa+の様々な量を含有しているCHA型ゼオライト(Si/Al=15)が結晶化した(Di Iorio,J.R.;Gounder,R.Chem.Mater.2016,28,2236-2247;Di Iorio et al.,ACS Catal.2017,7,6663-6674)。Na+/TMAda+が2を超えると、MORへの相転移が生じ、合成媒体の電荷密度によって課せられる静電的制約を満たすために、より高密度の骨格を形成する優先度を反映している可能性がある(Di Iorio,J.R.;Gounder,R.Chem.Mater.2016,28,2236-2247;Blackwell et al.,Angewandte Chemie International Edition 2003,42,1737-1740;Lewis et al.,Studies in Surface Science and Catalysis 2004,154,364-372;Park et al.,Chemistry of Materials 2014,26,6684-6694)。Na+/TMAda+含有合成ゲルを使用するCHA型ゼオライトの調製は、米国特許出願公開第2017/0107114号にさらに開示されており、その開示は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0009】
ますます厳しくなる排出規制により、特に、リーンで、低いエンジン排気温度条件下で、十分な高温熱安定性を示しながら、NOx排出を管理する能力が向上したSCR触媒を開発するニーズが高まっている。調整された吸着および触媒機能を有するゼオライト材料と、効率的かつ低コストであるが、例えば、SCR触媒作用に好適な特性を有する材料も提供する、CHAなどの小細孔ゼオライトを作製するための方法と、に関するニーズが存在する。特に、当技術分野では、排気ガス流からのNOx排出を効率的かつ効果的に軽減するのに効果的なSCR触媒に対する継続的なニーズが存在する。ゼオライトにおけるAl分布は、炭化水素およびアルコールに関する酸触媒作用における構造安定性、失活、およびコーキングに関連しているため、この分布を操作することでこれらの技術に利益をもたらすことができる。ゼオライト中のアルミニウムの分布は、ゼオライト上で交換され得る骨格外の金属イオン(例えば、Cu2+、(CuOH)+)の数および構造にも関連しており、これらのイオンは、アンモニアによるNOxの選択的接触還元における触媒部位であるため、この分布を操作することで、これらの技術にメリットをもたらすことができる。したがって、使用される構造指向剤のタイプおよび量のみを操作することによって、固定されたSi/Al比でチャバサイト型ゼオライト中のAl分布を直接的かつ系統的に制御する合成手順のための当技術分野における重要な満たされていないニーズが存在する。
【0010】
CHA骨格を有するゼオライトの例であるチャバサイトは、典型的には、限られた範囲の形態、例えば、立方晶、角が切り取られた立方晶、球形/楕円形の結晶、およびワーム様結晶の形態で見出される。例えば、Kumar et al.,J.Am.Chem.Soc.137(2015),13007-13017;Bohstrom et al.,Microporous and Mesoporous Materials 195(2014)294-302、およびGuo et al.,Chemical Engineering Journal 358(2019),331-339を参照されたい、これらの各々は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。ある特定の形態は、例えば、基材コーティング中または触媒条件下で、異なる挙動を示す可能性があり、それらの各々は、触媒性能(例えば、SCR性能)の点で有利であることが証明され得る。したがって、ゼオライトの形態に意図的に影響を及ぼす合成プロトコルは、調整された触媒特性および改善された性能を有する触媒材料を調製するための手段を提供することができる。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、一般に、チャバサイト型ゼオライトを製造するための方法を提供する。
【0012】
いくつかの態様では、制御されたアルミニウム分布を有するチャバサイト型ゼオライトを製造するための方法を提供する。本開示の目的のために、制御されたアルミニウム分布を有するゼオライト構造は、その骨格中のアルミニウム原子の配置および配列(すなわち、分布)が、調製方法によって制御されるゼオライト構造である。本明細書に開示される実験的および理論的アプローチの組み合わせは、CHA型ゼオライトの結晶化に使用される有機および無機構造指向剤(SDA)の混合物間の異なる相互作用を明らかにし、調整された吸着および触媒機能を有するゼオライトを設計するための骨格を提供する。驚くべきことに、本開示によれば、ゼオライト結晶化の間にSDAとして電荷密度が異なる有機カチオンおよび無機カチオンの混合物を使用すると、アニオン性骨格Al中心(Al-O(-Si-O)x-Al)の配列が、分離(x≧3)配列とペア(x=1、2)配列との間で影響を受け得ることを見出した。具体的には、K+およびTMAda+の混合物から結晶化したCHA型ゼオライトは、K+カチオンがCHAケージからTMAda+を置換し、同じ組成範囲内で主に分離されたAl部位の形成につながることを示した。さらに、CHA型ゼオライトは、Na+(Na+/TMAda+<2)でよりもK+(K+/TMAda+<50)での方が1桁を超える高い無機対有機SDA比を含有する合成媒体から結晶化することができ、それはコストに有利な影響を及ぼす。最後に、本開示によれば、驚くべきことに、有機および無機カチオンが、CHA型ゼオライトの空隙内での占有について協力または競争し、結晶相の連晶(混合ドメイン)におけるいくつかの実施形態をもたらすことが見出された。
【0013】
したがって、一態様では、本開示は、CHA結晶骨格を有するゼオライトを合成する方法を提供し、当該方法は、水と、アルミニウム源と、シリカ源と、有機構造指向剤の供給源と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、当該無機構造指向剤は、カリウムカチオンの供給源である、形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供してチャバサイト型ゼオライトを結晶化させることと、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、カリウムカチオンの供給源は、水酸化カリウムである。
【0015】
いくつかの実施形態では、調製は、有機構造指向剤の供給源、無機構造指向剤の供給源、およびアルミニウムの供給源を水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成し、当該水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程と、ケイ素の供給源を当該アルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して、アルミノシリケート含有溶液を形成することを含む第2の混合工程と、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1および第2の時間は、各々独立して、約1秒~約24時間である。
【0017】
いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約100℃の温度で実施される。
【0018】
いくつかの実施形態では、結晶化プロセスは、約140℃~約200℃の温度で、約24時間~約6日の時間、合成ゲルを混合することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、当該方法は、加熱工程中に形成された結晶を濾過することをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、有機構造指向剤の供給源は、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAda)である。
【0021】
いくつかの実施形態では、TMAdaの量およびカリウムカチオン源の量は、カリウムカチオンのN,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムカチオンに対するモル比が約1~約20の範囲のモル比にあるような量である。
【0022】
いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源は、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミノシリケート、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、またはアルミニウムイソプロポキシドである。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源は、水酸化アルミニウムまたはアルミニウムイソプロポキシドである。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源は水酸化アルミニウムである。
【0023】
いくつかの実施形態では、ケイ素の供給源は、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド化合物、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである。いくつかの実施形態では、ケイ素の供給源はコロイダルシリカである。
【0024】
いくつかの実施形態では、合成ゲルのOH/Si比は、約0.1~約0.5である。
【0025】
いくつかの実施形態では、CHA型ゼオライトは、制御されたアルミニウム分布を有し、制御されたアルミニウム分布は、式(Al-O(-Si-O)x-Al)に従うアニオン性骨格Al中心の配列を含み、式中、x=1もしくは2であり、アニオン性骨格Al中心はペア配列にあり、またはx≧3であり、アニオン性骨格Al中心は分離配列にある。
【0026】
いくつかの実施形態では、合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)は、約2~約60のSARを有するCHA型ゼオライトを提供するように選択される。いくつかの実施形態では、合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)は、約6~約20のSARを有するCHA型ゼオライトを提供するように選択される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ケイ素源対アルミニウム源対TMAda対カリウムカチオン源対水の比は、1 SiO2/0.033 Al2O3/X TMAdaOH/0.5*(0.5-X)K2O/44 H2Oによって表され、式中、Xの値は0.01~0.25である。
【0028】
いくつかの実施形態では、開示した方法によるゼオライトCHA結晶骨格は、第1のCHA相および第2のCHA相を含む連晶ゼオライトである。
【0029】
いくつかの実施形態では、連晶ゼオライトは、約0.1μm~約15μmの結晶サイズを有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、連晶ゼオライトは、第1のCHA相および第2のCHA相を含み、第1のCHA相および第2のCHA相は、各々独立して、約2338Å3~2489Å3の単位格子容積を有し、第1のCHA相の単位格子容積は、第2のCHA相の単位格子容積とは異なる。いくつかの実施形態では、第1のCHA相および第2のCHA相の単位格子容積は、2353Å3~2411Å3の範囲である。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相および第2のCHA相は、各々独立して、約4~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、第1のCHA相のSARは、第2のCHA相のSARとは異なる。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、第2のCHA相よりも高いSARを含む。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは約10~約40であり、第2のCHA相のSARは約6~約8である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは、約10~約20である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは、約10~約15である。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、第1のCHA相は、0.5を超えるカリウムカチオン対アルミニウム比を有し、第2のCHA相は、約0.5未満のカリウムカチオン対アルミニウム比を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相、第2のCHA相、またはその両方は、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む。いくつかの実施形態では、SAPO組成物は、SAPO-34またはSAPO-44である。
【0035】
別の態様では、チャバサイト(CHA)結晶骨格を有する連晶ゼオライトが提供され、CHA結晶骨格は、第1のCHA相および第2のCHA相を含み、第1のCHA相および第2のCHA相は、各々独立して、約2338Å3~2489Å3の単位格子容積を有し、第1のCHA相の単位格子容積は、第2のCHA相の単位格子容積とは異なる。いくつかの実施形態では、第1のCHA相および第2のCHA相の単位格子容積は、2353Å3~2411Å3の範囲である。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相および第2のCHA相は、各々独立して、約4~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、第1のCHA相のSARは、第2のCHA相のSARとは異なる。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、第2のCHA相よりも高いSARを含む。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは約10~約40であり、第2のCHA相のSARは約6~約8である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは、約10~約20である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは、約10~約15である。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、第1のCHA相は、0.5を超えるカリウムカチオン対アルミニウム比を有し、第2のCHA相は、約0.5未満のカリウムカチオン対アルミニウム比を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相、第2のCHA相、またはその両方は、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む。いくつかの実施形態では、SAPO組成物は、SAPO-34またはSAPO-44である。
【0040】
いくつかの実施形態では、分離構成におけるCHA型ゼオライト骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率は、約0.90~約1.00の範囲である。いくつかの実施形態では、分離構成におけるCHA型ゼオライト骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率は、約0.95~約1.00である。
【0041】
別の態様では、排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒が提供され、当該SCR触媒は促進剤金属で促進される、本明細書で開示されるゼオライト材料を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、促進剤金属は、SCR触媒の総重量に基づき、金属酸化物として計算されて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、約4~約6重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0043】
別の態様では、エンジン排気ガスから窒素酸化物(NOx)を軽減するのに有効なSCR触媒物品が提供され、当該SCR触媒物品は、基材を含み、当該基材は、その少なくとも一部上に配置された、本明細書で開示される選択的接触還元(SCR)触媒を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、基材は、ハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである。
【0045】
別の態様では、排気ガス流を生成するエンジンを含む排気ガス処理システムが提供され、本明細書で開示されるSCR触媒物品は、エンジンの下流に配置され、排気ガス流と流体連通している。
【0046】
別の態様では、排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な低温NOx吸着(LT-NA)触媒が提供され、当該LT-NA触媒は、白金族金属で促進される、本明細書で開示される連晶ゼオライト材料を含む。
【0047】
別の態様では、オレフィン形成、炭化水素分解、オレフィンを形成するためのアルコールの除去、メタノールおよびアンモニアからのメチルアミンの形成、ならびにメタンのメタノールへの部分酸化から選択される1つ以上の変換に有効な触媒組成物が提供され、当該触媒組成物は、本明細書に開示される連晶ゼオライト材料を含む。
【0048】
いくつかの態様では、主にフレーク状形態を有するチャバサイト型ゼオライトを製造するための方法が提供される。驚くべきことに、本開示によれば、有機構造指向剤(OSDA)に対するカリウムイオンの比率が高い合成ゲル組成物を使用すると、主にフレーク状形態を有するCHA型ゼオライトの合成が可能になることが見出された。
【0049】
さらなる態様では、本開示は、CHA結晶骨格を有するゼオライト材料を提供し、当該ゼオライト材料の結晶は、走査型電子顕微鏡(SEM)エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)によって判定されるように、主にフレーク状形態を有する。いくつかの実施形態では、結晶の少なくとも約40%は、SEM/EDSによって判定されるように、フレーク状形態を有する。いくつかの実施形態では、結晶の少なくとも約70重量%はフレーク状形態を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、結晶の平均の長さおよび幅は約0.3~約1.5μmであり、平均の厚さは約0.050μm未満である。いくつかの実施形態では、平均厚さは約0.025μm未満である。
【0051】
いくつかの実施形態では、結晶のアスペクト比は約20より大きい。いくつかの実施形態では、結晶のアスペクト比は約20~約40である。
【0052】
いくつかの実施形態では、ゼオライト材料のシリカのアルミナに対するモル比(SAR)は約2~約60である。いくつかの実施形態では、SARは約10~約30である。
【0053】
いくつかの実施形態では、ゼオライト材料のシリカのカリウムに対するモル比は約20未満である。いくつかの実施形態では、シリカのカリウムに対するモル比は、約12~約17である。
【0054】
別の態様では、CHA結晶骨格を有し、かつ主にフレーク状形態を有するゼオライト材料を合成する方法が提供され、当該方法は、水と、アルミニウム源と、ケイ素源と、有機構造指向剤と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、当該無機構造指向剤は、カリウムカチオンを含む、形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供してゼオライト材料を結晶化させることと、を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、調製は、有機構造指向剤、無機構造指向剤、およびアルミニウムの供給源を水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成し、当該水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程と、ケイ素の供給源を当該アルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して、アルミノシリケート含有溶液を形成することを含む第2の混合工程と、を含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の時間は、各々独立して、約1秒~約24時間である。いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約100℃の温度で実施される。
【0056】
いくつかの実施形態では、結晶化プロセスは、約100℃~約200℃の温度で、約12時間~約6日の時間、合成ゲルを混合することを含む。いくつかの実施形態では、温度は約160℃~約180℃である。
【0057】
いくつかの実施形態では、当該方法は、加熱工程中に形成された結晶を濾過することをさらに含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、有機構造指向剤は、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、N,N-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、トリメチル-2-アンモニウムエキソ-ノルボルナン、およびN-メチル-3-キヌクリジノールからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、有機構造指向剤はTMAdaOHである。
【0059】
いくつかの実施形態では、無機構造指向剤は水酸化カリウムである。いくつかの実施形態では、合成ゲル中に存在するTMAdaOHの量およびカリウムカチオンの量は、カリウムカチオンのTMAdaOHに対するモル比が約10以上であるような量である。いくつかの実施形態では、カリウムカチオンのTMAdaOHに対するモル比は、約15~約50である。いくつかの実施形態では、合成ゲル中に存在するTMAdaOHの量およびケイ素源の量は、TMAdaOHのケイ素原子に対するモル比が約0.05未満であるような量である。いくつかの実施形態では、TMAdaOHのケイ素原子に対するモル比は、約0.05~約0.01である。
【0060】
いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源は、ゼオライト、アルミニウムイソプロポキシド、または水酸化アルミニウムである。いくつかの実施形態では、アルミニウムの供給源は水酸化アルミニウムである。
【0061】
いくつかの実施形態では、ケイ素の供給源は、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである。いくつかの実施形態では、ケイ素の供給源はコロイダルシリカである。
【0062】
いくつかの実施形態では、合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)は、約2~約60のSARを有するゼオライト材料を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)は、約10~約30のSARを有するゼオライト材料を提供するように選択される。
【0063】
なおさらなる態様では、CHA結晶骨格と、本明細書で開示される方法によって調製された、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)によって判定される主にフレーク状形態と、を有するゼオライト材料が提供される。
【0064】
さらに別の態様では、排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒が提供され、当該SCR触媒は促進剤金属で促進される、本明細書で開示されるゼオライト材料を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、促進剤金属は、促進剤金属酸化物として計算され、SCR触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、約4~約6重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は遷移金属である。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、鉄、銅、マンガン、およびこれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0066】
本発明は、以下の実施形態を限定することなく含む。
【0067】
実施形態1:CHA結晶骨格を有するゼオライトを合成する方法であって、当該方法は、水と、アルミニウム源と、シリカ源と、有機構造指向剤の供給源と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、当該無機構造指向剤は、カリウムカチオンの供給源である、形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供して、当該CHA結晶骨格を有するゼオライトを結晶化させることと、を含む、方法。
【0068】
実施形態2:カリウムカチオンの供給源が、水酸化カリウムである、実施形態1に記載の方法。
【0069】
実施形態3:調製することが、有機構造指向剤の供給源、無機構造指向剤の供給源、およびアルミニウムの供給源を水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成し、当該水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程と、ケイ素の供給源をアルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して、アルミノシリケート含有溶液を形成することを含む第2の混合工程と、を含む、実施形態1または2に記載の方法。
【0070】
実施形態4:第1および第2の時間が、各々独立して、約1秒~約24時間である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態5:第1および第2の混合工程が、約20℃~約100℃の温度で実施される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態6:結晶化プロセスが、約140℃~約200℃の温度で、約24時間~約6日の時間、合成ゲルを混合することを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態7:加熱工程中に形成された結晶を濾過することをさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態8:有機構造指向剤の供給源が、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAda)である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態9:TMAdaの量およびカリウムカチオン源の量が、カリウムカチオンのN,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムカチオンに対するモル比が約1~約20の範囲のモル比にあるような量である、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態10:アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミノシリケート、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、またはアルミニウムトリイソプロポキシドである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態11:アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウムまたはアルミニウムトリイソプロポキシドである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態12:アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウムである、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態13:ケイ素の供給源が、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド化合物、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態14:ケイ素の供給源が、コロイダルシリカである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態15:合成ゲルのOH/Si比が、約0.1~約0.5である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態16:CHA型ゼオライトが、制御されたアルミニウム分布を有し、制御されたアルミニウム分布は、式(Al-O(-Si-O)x-Al)に従うアニオン性骨格Al中心の配列を含み、式中、x=1もしくは2であり、アニオン性骨格Al中心はペア配列にあり、またはx≧3であり、アニオン性骨格Al中心は分離配列にある、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態17:合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約2~約60のSARを有するCHA型ゼオライトを提供するように選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態18:合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約6~約20のSARを有するCHA型ゼオライトを提供するように選択される、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態19:ケイ素源対アルミニウム源対TMAda対カリウムカチオン源対水の比が、式:1 SiO2/0.033 Al2O3/X TMAdaOH/0.5*(0.5-X)K2O/44 H2Oによって表され、式中、Xの値は0.01~0.25である、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態20:CHA結晶骨格を有するゼオライトが、第1のCHA相および第2のCHA相を含む連晶ゼオライトであり、第1のCHA相と第2のCHA相は、各々独立して、約2338Å3~2489Å3の単位格子容積を有し、第1のCHA相の単位格子容積は、第2のCHA相の単位格子容積とは異なる、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態21:第1のCHA相および第2のCHA相が、各々独立して、約4~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、第1のCHA相のSARは、第2のCHA相のSARとは異なる、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態22:第1のCHA相が、第2のCHA相よりSARが高い、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態23:第1のCHA相のSARが約10~約40であり、第2のCHA相のSARが約6~約8である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態24:第1のCHA相のSARが、約10~約20である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態25:第1のCHA相のSARが、約10~約15である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態26:第1のCHA相が、連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、第1のCHA相が、0.5を超える、カリウムカチオン対アルミニウム比を有し、第2のCHA相が、約0.5未満の、カリウムカチオン対アルミニウム比を有する、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態27:第1のCHA相、第2のCHA相、またはその両方が、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態28:SAPO組成物が、SAPO-34またはSAPO-44である、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態29:連晶ゼオライト結晶サイズが、約0.1~約15μmである、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態30:CHA結晶骨格を有する連晶ゼオライトであって、CHA結晶骨格は、第1のCHA相および第2のCHA相を含み、第1のCHA相および第2のCHA相は、各々独立して、約2338Å3~2489Å3の単位格子容積を有し、第1のCHA相の単位格子容積は、第2のCHA相の単位格子容積とは異なる、連晶ゼオライト。
【0097】
実施形態31:第1のCHA相および第2のCHA相が、各々独立して、約4~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、第1のCHA相のSARは、第2のCHA相のSARとは異なる、実施形態30の連晶ゼオライト。
【0098】
実施形態32:第1のCHA相が、第2のCHA相よりSARが高い、実施形態30または31に記載の連晶ゼオライト。
【0099】
実施形態33:第1のCHA相のSARが約10~約40であり、第2のCHA相のSARが約6~約8である、実施形態30~32のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト。
【0100】
実施形態34:第1のCHA相のSARが、約10~約20である、実施形態30~33のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト。
【0101】
実施形態35:第1のCHA相のSARが、約10~約15である、実施形態30~34のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト。
【0102】
実施形態36:第1のCHA相が、連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、第1のCHA相が、0.5を超える、カリウムカチオン対アルミニウム比を有し、第2のCHA相が、約0.5未満の、カリウムカチオン対アルミニウム比を有する、実施形態30~35のいずれか一つに記載の連晶ゼオライト。
【0103】
実施形態37:第1のCHA相、第2のCHA相、またはその両方が、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む、実施形態30~36のいずれか一つに記載の連晶ゼオライト。
【0104】
実施形態38:SAPO組成物が、SAPO-34またはSAPO-44である、実施形態30~37のいずれか一つに記載の連晶ゼオライト。
【0105】
実施形態39:連晶ゼオライト結晶サイズが、約0.1~約15μmである、実施形態30~38のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト。
【0106】
実施形態40:分離構成におけるCHA結晶骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率が、約0.90~約1.00の範囲である、実施形態30~39のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト。
【0107】
実施形態41:分離構成におけるCHA結晶骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率が、約0.95~約1.00の範囲である、実施形態30~40のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト。
【0108】
実施形態42:排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、SCR触媒が、促進剤金属で促進された、実施形態30~41のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト材料を含む、選択的接触還元(SCR)触媒。
【0109】
実施形態43:促進剤金属が、SCR触媒の総重量に基づき、金属酸化物として計算されて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、実施形態42に記載のSCR触媒。
【0110】
実施形態44:促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、実施形態42または43のSCR触媒。
【0111】
実施形態45:促進剤金属が、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される、実施形態42~44のいずれか1つに記載のSCR触媒。
【0112】
実施形態46:エンジン排気ガスから窒素酸化物(NOx)を軽減するのに有効なSCR触媒物品であって、SCR触媒物品が、当該基材の少なくとも一部の上に配置された実施形態42~45のいずれか1つに記載の選択的接触還元(SCR)触媒を有する基材を含む、SCR触媒物品。
【0113】
実施形態47:基材が、ハニカム基材である、実施形態46に記載のSCR触媒物品。
【0114】
実施形態48:ハニカム基材が、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである、実施形態47に記載のSCR触媒物品。
【0115】
実施形態49:排気ガス流を生成するエンジンと、当該エンジンから下流に位置決めされ、かつ排気ガス流と流体連通している、実施形態46~48のいずれか1つに記載のSCR触媒物品と、を含む、排気ガス処理システム。
【0116】
実施形態50:排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な低温NOx吸着(LT-NA)触媒であって、LT-NA触媒は、白金族金属で促進された、実施形態30~41のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト材料を含む、低温NOx吸着(LT-NA)触媒。
【0117】
実施形態51:オレフィン形成、炭化水素分解、オレフィンを形成するためのアルコールの除去、メタノールおよびアンモニアからのメチルアミンの形成、ならびにメタンのメタノールへの部分酸化から選択される1つ以上の変換に有効な触媒組成物であって、触媒組成物は、実施形態30~41のいずれか1つに記載の連晶ゼオライト材料を含む、触媒組成物。
【0118】
実施形態52:CHA結晶骨格を有するゼオライト材料であって、ゼオライト材料の結晶は、走査型電子顕微鏡法(SEM)によって判定される主にフレーク状形態を有する、ゼオライト材料。
【0119】
実施形態53:結晶の少なくとも約40%が、走査型電子顕微鏡法/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)によって判定されるフレーク状形態を有する、実施形態52に記載のゼオライト材料。
【0120】
実施形態54:結晶の少なくとも約70重量%が、フレーク状形態を有する、実施形態52または53に記載のゼオライト材料。
【0121】
実施形態55:結晶の平均の長さおよび幅が約0.3~約1.5μmであり、平均の厚さが約0.050μm未満である、実施形態52~54のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0122】
実施形態56:平均厚さが、約0.025μm未満である、実施形態52~55のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0123】
実施形態57:結晶のアスペクト比が、約20より大きい、実施形態52~56のいずれか一つに記載のゼオライト材料。
【0124】
実施形態58:結晶のアスペクト比が、約20~約40である、実施形態52~57のいずれか一つに記載のゼオライト材料。
【0125】
実施形態59:ゼオライト材料のシリカのアルミナに対するモル比(SAR)が、約2~約60である、実施形態52~58のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0126】
実施形態60:SARが、約10~約30である、実施形態52~59のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0127】
実施形態61:ゼオライト材料のシリカのカリウムに対するモル比が、約20未満である、実施形態52~60のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0128】
実施形態62:シリカのカリウムに対するモル比が、約12~約17である、実施形態52~61のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
【0129】
実施形態63:CHA結晶骨格を有し、かつ主にフレーク状形態を有するゼオライト材料を合成する方法であって、当該方法は、水と、アルミニウム源と、ケイ素源と、有機構造指向剤と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、当該無機構造指向剤は、カリウムカチオンを含む、形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供してゼオライト材料を結晶化させることと、を含む、方法。
【0130】
実施形態64:調製することが、有機構造指向剤、無機構造指向剤、およびアルミニウムの供給源を水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成し、当該水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程と、ケイ素の供給源をアルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して、アルミノシリケート含有溶液を形成することを含む第2の混合工程と、を含む、実施形態63に記載の方法。
【0131】
実施形態65:第1および第2の時間が、各々独立して、約1秒~約24時間である、実施形態63または64の方法。
【0132】
実施形態66:第1および第2の混合工程が、約20℃~約100℃の温度で実施される、実施形態63~65のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
実施形態67:結晶化プロセスが、約100℃~約200℃の温度で、約12時間~約6日の時間、合成ゲルを混合することを含む、実施形態63~66のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
実施形態68:温度が、約160℃~約180℃である、実施形態63~67のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
実施形態69:加熱工程中に形成された結晶を濾過することをさらに含む、実施形態63~68のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
実施形態70:有機構造指向剤が、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)、トリメチルシクロヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、N,N-ジメチルピペリジニウムヒドロキシド、トリメチル-2-アンモニウムエキソ-ノルボルナン、およびN-メチル-3-キヌクリジノールからなる群から選択される、実施形態63~69のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
実施形態71:有機構造指向剤が、TMAdaOHである、実施形態63~70のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
実施形態72:無機構造指向剤が、水酸化カリウムである、実施形態63~71のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態73:合成ゲル中に存在するTMAdaOHの量およびカリウムカチオンの量が、カリウムカチオンのTMAdaOHに対するモル比が約10以上であるような量である、実施形態63~72のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態74:カリウムカチオンのTMAdaOHに対するモル比が、約15~約50である、実施形態63~73のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
実施形態75:合成ゲル中に存在するTMAdaOHの量およびケイ素源の量が、TMAdaOHのケイ素原子に対するモル比が約0.05未満であるような量である、実施形態63~74のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
実施形態76:TMAdaOHのケイ素原子に対するモル比が、約0.05~約0.01である、実施形態63~75のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
実施形態77:アルミニウムの供給源が、ゼオライト、アルミニウムイソプロポキシド、または水酸化アルミニウムである、実施形態63~76のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態78:アルミニウムの供給源が、水酸化アルミニウムである、実施形態63~77のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態79:ケイ素の供給源が、コロイダルシリカ、ケイ素アルコキシド、ヒュームドシリカ、アモルファスシリカ、またはアルミノシリケートである、実施形態63~78のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
実施形態80:ケイ素の供給源が、コロイダルシリカである、実施形態63~79のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
実施形態81:合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約2~約60のSARを有するゼオライト材料を提供するように選択される、実施形態63~80のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
実施形態82:合成ゲルのシリカ対アルミナ比(SAR)が、約10~約30のSARを有するゼオライト材料を提供するように選択される、実施形態63~81のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態83:実施形態63~84のいずれか一つに記載の方法によって調製された、走査型電子顕微鏡法/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDS)によって判定される、CHA結晶骨格および主にフレーク状形態を有するゼオライト材料。
【0150】
実施形態84:排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効な選択的接触還元(SCR)触媒であって、SCR触媒が、促進剤金属で促進された、実施形態52~62または実施形態83のいずれか1つに記載のゼオライト材料を含む、選択的接触還元(SCR)触媒。
【0151】
実施形態85:促進剤金属が、促進剤金属酸化物として計算され、SCR触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、実施形態84に記載のSCR触媒。
【0152】
実施形態86:促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、実施形態84または85のSCR触媒。
【0153】
実施形態87:促進剤金属が、遷移金属である、実施形態84~86のいずれか1つに記載のSCR触媒。
【0154】
実施形態88:促進剤金属が、鉄、銅、マンガン、およびこれらの組み合わせから選択される、実施形態84~87のいずれか1つに記載のSCR触媒。
【0155】
実施形態89:促進剤金属が、鉄、銅、およびこれらの組み合わせから選択される、実施形態84~88のいずれか1つに記載のSCR触媒。
【0156】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡単に記載される添付の図面とともに以下の詳細な説明で明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の任意の組み合わせ、および本開示に記載されている任意の2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態の説明で明示的に組み合わされているか否かに関わらず含む。本開示は、開示される本発明の任意の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、組み合わせ可能であるように意図されていると見なされるべきであるように、全体として読み取られることが意図されている。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、これらは、必ずしも縮尺通りに描かれておらず、参照番号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を指す。図面は、単なる例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載される開示は、添付の図において、限定としてではなく、例示として示されている。図の簡潔化および明確化のために、図に示される特徴は、必ずしも縮尺に合わせて描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、分かりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、参照符号を複数の図の間で繰り返し用いて、対応するまたは類似の要素を示す。
【0158】
【
図1ab】CHA骨格およびAEI骨格それぞれの接続モードの描写である。
【
図2】本開示による触媒(例えば、選択的接触還元触媒)ウォッシュコート組成物を含み得るハニカム型基材の斜視図である。
【
図3a】
図2について拡大された断面の破断図であり、
図2のハニカム型基材は、ウォールフローフィルタ基材を表している。
【
図3b】本開示の層状触媒物品の一実施形態の断面図である。
【
図3c】本開示の区画化された触媒物品の一実施形態の断面図である。
【
図3d】本開示の層状の区画化された触媒物品の一実施形態の断面図である。
【
図4】本開示の触媒物品を利用する排出物処理システムの一実施形態の概略図である。
【
図5abcd】Al(O-i-Pr)3をSi/Al=15で使用し、またNa
+/TMAda
+の様々な比率を使用して合成されたCHA型ゼオライトのX線回折パターンである。
【
図6】Lowensteinの法則に従ってランダムなAl分布について予測されたペアAlの数の関数としての、Co
2+交換によって測定されたペアAlの分率のグラフである。
【
図8abcd】Al(O-i-Pr)3をSi/Al=15で使用し、かつK
+/TMAda
+の様々な比率を使用して合成されたゼオライトのX線回折パターンである。
【
図8e】43のSi/Alを有する市販のMFI型ゼオライトのX線回折パターンである。
【
図9abcdefgh】様々なK
+/TMAda
+比で合成されたCHAの1330倍の倍率での走査型電子顕微鏡写真である。
【
図10】K+/TMAda
+=20で合成された本開示の一実施形態について観察された2つの異なる高シリカ(1)相および低シリカ(2)相の元素分析を示しているエネルギー分散型X線分光写真である。
【
図11ab】(a)1300倍および(b)5000倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=1での本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図12ab】(a)1250倍および(b)4800倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=2での本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図13ab】(a)1250倍および(b)5000倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=3で合成された本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図14ab】(a)1250倍および(b)5000倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=4で合成された本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図15ab】(a)1250倍および(b)5000倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=5で合成された本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図16ab】(a)1400倍および(b)5900倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=10で合成された本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図17ab】(a)1300倍および(b)5100倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=15で合成された本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図18ab】(a)1700倍および(b)4900倍の倍率で撮影された、K+/TMAda
+=20で合成された本開示の一実施形態のSEM顕微鏡写真である。
【
図19】K+/TMAda
+=2で合成された本開示の一実施形態に関する、87KでのAr吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示すグラフである。
【
図20】K+/TMAda
+=15で合成された本開示の一実施形態に関する、87KでのAr吸着(黒丸)および脱着(白丸)等温線を示すグラフである。
【
図21a】合成媒体中のNa
+/TMAda
+比の関数としての、TGAによって測定されたCHAケージ1つ当たりのTMAda+の数と、AASによって測定されたCHAケージ1つ当たりに保持されたNa
+の量とのグラフである。
【
図21b】合成媒体中のK
+/TMAda
+比の関数としての、TGAによって測定されたCHAケージ1つ当たりのTMAda+の数と、AASによって測定されたCHAケージ1つ当たりに保持されたK
+の量とのグラフである。
【
図21c】結晶性CHA生成物に保持されたK
+またはNa
+の量の関数としての、CHAケージ1つ当たりのTMAda+の数のグラフである。
【
図22a】CHA骨格構造を有する比較例に関する走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図22b】CHA骨格構造を有する別の比較例に関する走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。
【
図22cd】本開示の実施形態に関する走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真である。
【
図23】本開示の一実施形態に関する透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【
図24】本開示の一実施形態に関するTEM単一領域回折パターン(SADP)である。
【
図25a】CHA骨格構造を有する比較例に関するX線回折パターンである。
【
図25b】CHA骨格構造を有する別の比較例に関するX線回折パターンである。
【
図25cd】本開示の実施形態に関するX線回折パターンである。
【
図26】本開示のSCR物品に関するNOx変換対温度の線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0159】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に対して様々な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであるだろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変更を含むことが意図される。
【0160】
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの語句が本明細書全体の様々な箇所に出現することが、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0161】
この開示で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0162】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。
【0163】
本明細書に引用されるいずれの範囲も包括的である。
【0164】
本明細全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」という用語は、±5%以下、例えば、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下などを指すことができる。すべての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。当然ながら、「約」という用語によって修飾された値には、特定の値が含まれる。例えば、「約5.0」には5.0を含める必要がある。
【0165】
「AMOx」とは、1つ以上の金属(典型的にはPtであるが、これに限定されることはない)と、アンモニアを窒素に変換するのに好適なSCR触媒と、を含有する触媒である、選択的アンモニア酸化触媒を指す。
【0166】
「触媒」または「触媒材料(catalyst material)」または「触媒組成物」または「触媒性材料(catalytic material)」という用語は、反応を促進する材料を指す。触媒物品を製造するために、本明細書で開示される基材は、触媒組成物でコーティングされる。コーティングは、「触媒コーティング組成物」または「触媒コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒コーティング組成物」という用語は、同義語である。
【0167】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化スートフィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置した入口チャネルと出口チャネルとからなり、入口チャネルは出口端部に差し込まれており、出口チャネルは入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、煤を運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁を通過させられる。煤の濾過および再生に加えて、CSFは、下流のSCR触媒を加速させるために、またはより低い温度における煤粒子の酸化を促進するために、COおよびHCをCO2およびH2Oに酸化させるための、またはNOをNO2に酸化させるための酸化触媒を運搬してもよい。CSFは、LNT触媒の後ろに位置する場合、H2S酸化機能を有し、LNT脱硫プロセスの間にH2S排出を抑制することができる。
【0168】
「DOC」とは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、パラジウムおよび/または白金のような1つ以上の白金族金属、アルミナのような担体材料、HC貯蔵のためのゼオライト、ならびに任意選択的に促進剤および/または安定剤を含む。
【0169】
「GDI」とは、リーンバーン条件下で動作するガソリン直噴ガソリンエンジンを指す。
【0170】
「LNT」とは、白金族金属、セリア、およびリーン条件中にNOxを吸着するのに好適なアルカリ土類金属トラップ材料(例えば、BaOまたはMgO)を含有する触媒である、リーンNOxトラップを指す。リッチ条件下では、NOxが、放出され、窒素に還元される。
【0171】
「モレキュラーシーブ」は、例えば、粒子形態で、1つ以上の促進金属と組み合わせて、触媒として使用することができる骨格材料である。モレキュラーシーブは、一般に四面体型の部位を含有し、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20オングストローム(Å)以下の、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。細孔径は環径により定義される。
【0172】
「NOx」という用語は、NOまたはNO2などの窒素酸化物化合物を指す。
【0173】
コーティング層に関連する「上」および「上方」という用語は、同義的に使用することができる。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示されている物品は、特定の実施形態では、第2のコーティング層の「上」に1つのコーティング層を含むと呼ばれるが、そのような言葉遣いは、コーティング層間の直接接触が必要とされない、介在層を有する実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0174】
本明細書で使用される場合、「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N2)に還元する触媒プロセスを指す。本明細書で使用される場合、「窒素酸化物」および「NOx」という用語は、窒素の酸化物を意味している。
【0175】
「SCRoF」とは、ウォールフローフィルタ上に直接コーティングされたSCR触媒組成物を指す。
【0176】
本明細書で使用される場合、「構造指向剤」という用語は、ゼオライトの結晶化中に存在し、所望の結晶構造(例えば、CHA)の形成を導くのに役立つ化合物である。
【0177】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリシック材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリスおよびモノリシックウォールフローフィルタである。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含量(例えば30重量%~90重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、次いでこれを基材上にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。
【0178】
「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的である単一構造を意味する。
【0179】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材または処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの当技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリシック基材または下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径または結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/または化学触媒機能が異なり得る。
【0180】
ゼオライトは、一種の「モレキュラーシーブ」であり、例えば、微粒子形態で、1つ以上の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用され得る骨格材料である。モレキュラーシーブとは、一般的に四面体型のサイトを含み、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20Å以下の、広範な三次元網目構造の酸素イオンに基づく材料である。細孔径は環径によって画定される。
【0181】
本明細書で使用されているように、「ゼオライト」という用語は、ケイ素およびアルミニウム原子を含むモレキュラーシーブの特定の例を指す。ゼオライトは、ゼオライトのタイプ、ならびにゼオライト格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10オングストロームの範囲の、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。
【0182】
ゼオライトは、コーナー共有TO4(式中、TはAlまたはSiである)四面体から構成された開放三次元骨格構造を有するアルミノシリケートであると理解される。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く会合しており、残りの細孔容積は水分子で満たされている。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。
【0183】
特定の実施形態では、「アルミノシリケートゼオライト」骨格型を参照することができ、これは、材料を、骨格において置換されたリンまたは他の金属を含まないゼオライトに限定し、一方、「ゼオライト」というより広い用語は、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含むことを意図している。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、アルミノシリケートゼオライトである。「アルミノホスフェート」という用語は、アルミニウム原子およびリン酸原子を含む、ゼオライトの別の特定の例を指す。アルミノホスフェートは、かなり均一な細孔径を有する結晶性材料である。いくつかの実施形態では、ゼオライトは、シリコアルミノホスフェートである。シリコアルミノホスフェートゼオライトは、SiO4/AlO4/PO4四面体を含み、「SAPO」と称される。SAPOの非限定的な例としては、SAPO-34およびSAPO-44が挙げられる。
【0184】
ゼオライトは一般に、2以上のシリカ対アルミナ(SAR)のモル比を含む。開示された触媒組成物で使用するためのゼオライトは、SAR値に関して特に限定されないが、ゼオライトに関連する特定のSAR値は、いくつかの実施形態では、(例えば、特にエージング後に)それが組み込まれる触媒組成物のSCR性能に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態では、ゼオライトのSAR値は、約5~約100の範囲、または約5~約50の範囲である。いくつかの実施形態では、SARは約5~約25であり、他の実施形態では、SARは約10~約15である。
【0185】
ゼオライトは、構造が特定される骨格トポロジーによって分類することができる。本明細書で既に参照したように、本開示は、具体的には、チャバサイト(CHA)骨格を有するゼオライトから調製された材料に関する。ゼオライトCHA骨格型モレキュラーシーブは、近似式:すなわち、(Ca,Na2,K2,Mg)Al2Si4O12・6H2O(例えば、水和ケイ酸アルミニウムカルシウム)を含む。ゼオライトCHA-骨格タイプのモレキュラーシーブの3つの合成形態は、参照によって組み込まれる、John Wiley&Sonsにより1973年に刊行された、D.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記載されている。Breckによって報告された3つの合成形態は、参照によって本明細書に組み込まれる、J.Chem.Soc.,p.2822(1956),Barrer et alに記載されているZeolite K-G、英国特許第868,846号(1961)に記載されているZeolite D、および米国特許第3,030,181号に記載されているZeolite Rである。ゼオライトCHA骨格タイプの別の合成形態であるSSZ-13の合成は、参照によって組み込まれる米国特許第4,544,538号に記載されている。特定の実施形態では、CHA骨格型ゼオライトは、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバサイト、ゼオライトK-G、リンデ D、リンデ R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、およびZYT-6からなる群から選択される。
【0186】
ゼオライトは、二次構造(secondary building)単位(SBU)および複合構造(composite building)単位(CBU)からなり、多くの異なる骨格構造(framework structure)で生じる。二次構造単位は、16個までの四面体原子を含有し、キラルではない。複合構造単位は、アキラルである必要はなく、骨格全体の構築に必ずしも使用可能であるわけではない。CHA骨格は、「二重6環」(d6r)二次構造単位を有する。d6r二次構造単位は、12個の四面体原子を有し、2つの「単一s6r単位」を結合することによって作り出され、「6」は、四面体のケイ素原子およびアルミニウム原子の位置を表し、酸素原子は四面体原子の間にある。
【0187】
チャバサイトを含むCHA骨格型ゼオライトは、「小細孔ゼオライト」と記載することもできる。小細孔ゼオライトは、最大8個の四面体原子によって画定されるチャネルを含有する。「8環」ゼオライトという語句は、8環細孔開口部と、二重6環(d6r)二次構造単位とを有し、かつ4つの環による二重6環構造単位の接続から生じるケージ様構造を有するゼオライトを指す。骨格構造型は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)で確認することができる。所与の型のゼオライトは、そのような構造単位の特定の配置を有する。例えば、通常のCHA骨格型ゼオライトの場合、周期的な構造単位は、上記で参照したように、二重6環(d6r)層である。本明細書で「A」および「B」と称されるこれらの層は、「B」が「A」の鏡像であることを除いて、トポロジー的に同一である。同じ型の層が互いの上にスタックするとき、例えば、AAAAAAスタックまたはBBBBBBスタックを形成するとき、CHA骨格を有するゼオライトが生じる。層「A」と「B」が交互になるとき、すなわち、ABABABABスタックを形成するとき、異なる骨格(AEI)を有するゼオライトが生じる。CHA骨格とAEI骨格との間のこの相違は、
図1aおよび1bを参照することによって理解することができる。
図1aは、CHA骨格におけるd6r単位の接続モードを示し、
図1bは、x軸に沿って見た、AEI骨格におけるd6r単位の接続モードを示している。参照により本明細書に組み込まれる、http://america.iza-structure.orgのゼオライト構造のデータベースを参照されたい。
【0188】
本開示のゼオライトは、連晶を含有し得る。ゼオライトの「連晶」は、少なくとも2つの異なるゼオライト骨格型または同じ骨格型の2つの異なるゼオライト組成物を含み得る。RaoおよびThomasによって提案された分類によると、ゼオライトに関連する2つの異なる型の連晶は、エピタキシャル連晶および多型連晶である。例えば、Rao,C.N.R.and Thomas,J.M.:“Intergrowth Structures:The Chemistry of Solid-Solid Interfaces”,Acc.Chem.Res.1985,13,113-119を参照されたい。エピタキシーは、組成的または構造的に異なるゼオライト相によるゼオライト結晶の配向過成長を伴うが、層状材料の個々のシートが異なる順序でスタックすると、ポリタイプが生じる。「過成長」ゼオライトでは、一方の骨格構造がもう一方の骨格構造の上に成長する。したがって、「過成長」は、「連晶」の一種を表し、「連晶」は属である。
【0189】
文献で報告されているエピタキシーの例は、ゼオライトA上でのゼオライトXの構造的過成長(de Vos Burchart,et al.,“Ordered overgrowth of zeolite X onto crystals of zeolite A”,Zeolites 1989,9,423-435)、ゼオライト上のゼオライトP(Breck,Zeolite Molecular Sieves:Structure,Chemistry and Use,John Wiley & Sons,New York,1974)、またはFAU/EMT過成長材料(Goossens et al.,“Synthesis and Characterization of Epitaxial FAU-on-EMT Zeolite Overgrowth Materials”,Eur.J.Inorg.Chem.2001,1167-1181)である。組成的過成長(compositional overgrowth)の例は、米国特許第4,148,713号に開示されているZSM-5またはZSM-11とシリカライト-1との組み合わせにおいて、および米国特許第4,394,362号に開示されている、中間細孔径結晶性シリケートを含む内側部分を有する結晶性シリケート粒子、例えば、実質的にアルミニウムを含まないZSM-5またはZSM-11において、およびアルミニウム含有同形構造外殻において、見出すことができる。
【0190】
ポリタイプは、ゼオライト結晶化におけるより一般的な連晶現象である。これは、結合の不一致がなく、各々個々の結晶内に異なる構造的に均一なドメインがスタックしているように描くことができる。2つまたはそれ以上の型のドメインは、例えば、異なる周期性を示すとき、構造的に関連し得る。これは、多くの場合、例えば、FAU/EMT(例えば、Anderson et al.,“Intergrowths of Cubic and Hexagonal Polytypes of Faujasitic Zeolites”,J.Chem.Soc.Chem.Commun.1991,1660-1664;およびTreacy et al.,“Intergrowth Segregation in FAU-EMT Zeolite Materials”,Proc.R.Soc.Lond.A-Math.Phys.Eng.Sci.1996,452,813-840において開示されている)またはMFI/MEL(例えば、Thomas et al.,“Direct,Real-space Determination of Intergrowths in ZSM-5/ZSM-11 Catalysts”,J.Chem.Soc.Chem.Commun.1982,1380-1383;およびMillward et al.,“Evidence for Semi-regularly Ordered Sequences of Mirror and Inversion Symmetry Planes in ZSM-5/ZSM11 Shape-selective Zeolitic Catalysts”,J.Chem.Soc.Faraday Trans.1983,79,1075-1082において開示されている)において、一般的なシートの交互スタッキングとして起こる。MAZ/MORにおけるように実質的に異なる構造を有する場合もある(例えば、Leonowicz et al.,“Proposed synthetic zeolite ECR-1 structure gives a new zeolite framework topology”,Nature 1987,329,819-821に開示されている)。スタッキングパターンは、厳密な変更から、まったく周期性のないドメイン配列まで変化することができる。
【0191】
具体的には、ABC-6ゼオライトファミリーの材料では、連晶としてのポリタイプがよく知られている。ABC-6ファミリーに属する材料は、例えば、チャバサイト、オフレタイト、エリオナイト、グメリナイト、ソーダライトおよびレビナイトである。ABC-6ファミリーのゼオライト材料の構造は、上記したように、平面6環(6R)を含有する層のスタッキングとして表すことができる。1つの層中の6Rは、様々な仕方で6Rの次の層に接続され得る。層中の6Rの3つの異なる位置は、A、BまたはCと指定することができる。異なる層中の6Rは、互いに平行(位置A)に、またはシフト(位置BおよびC)によって、接続することができ、結果として、ABC-6ファミリーに属する様々な骨格が生じる。例えば、オフレタイトは、AABのスタッキングシーケンスを有する3つの接続層によって表すことができるが、エリオナイトは、AABAACのシーケンスを有する6つの固有の層を含有する。スタッキングシーケンスがいくつかの場所でわずかに変更されている、これらの層のうちの1つの間のスタッキング欠陥は、容易に起こり、異なる骨格型の連晶が生じる。OFFゼオライトのAABスタッキングシーケンスが、AABAACによってランダムに置き換えられるか、またはその逆の例である場合、ERI/OFF連晶と称され、ERIおよびOFF骨格型は連晶シリーズの末端メンバーである。ゼオライトTおよびZSM-34は最も一般的な例である。チャバサイトと連晶することができる材料の例は、GMEおよびAEI骨格型を有するゼオライトである。別の例は、例えば、米国特許出願公開第2012/0184429号に開示されているCHA/AEI連晶であり、当該米国特許出願公開は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の例は、例えば、欧州特許出願公開第3323785号に開示されているCHA/ERI連晶であり、当該欧州特許出願公開は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0192】
連晶の存在およびそれらの骨格の特性評価は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)によって確認することができる。典型的には、CHAベースの材料、一方、例えば。例えば、CHAベースの材料中の連晶材料(典型的には、立方体の晶癖を示す)に関するSEMでは、別の形状(例えば、AEIベースの材料に見られるような斜方晶系構造)の量が増えると、別の特性の存在(この例では、CHA/AEI連晶)を示すことができ、個々の骨格型の定量化は、SEMまたはTEM画像から得ることができる。
【0193】
別途示されない限り、すべての部およびパーセントは、重量に基づく。別途指示がない限り、「重量パーセント(重量%)」は、揮発性物質を含まない組成物全体、すなわち、乾燥固形物含有量に基づく。
【0194】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または特に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意および全ての例または例示的言語(例えば「のような」)の使用は、材料および方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、請求されていない要素を、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0195】
本明細書で参照される全ての米国特許出願、公開特許出願および特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0196】
チャバサイト合成法
非限定的な例の説明として、本明細書に開示されるゼオライト材料は、有機構造指向剤(SDA)の供給源、無機構造指向剤の供給源、ケイ素の供給源、アルミニウムの供給源、および水を含有する反応混合物から調製される。
【0197】
したがって、一態様では、CHA結晶骨格を有するゼオライトを合成する方法を提供し、当該方法は、水と、アルミニウム源と、シリカ源と、有機構造指向剤の供給源と、無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することであって、当該無機構造指向剤は、カリウムカチオンの供給源である、形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供してチャバサイト型ゼオライトを結晶化させることと、を含む。
【0198】
別の態様では、主にフレーク状形態を有するCHA型ゼオライトを合成する方法を提供し、当該方法は、水と、アルミニウム源と、ケイ素源と、OSDAと、カリウムカチオンを含む無機構造指向剤との混合物を調製して、合成ゲルを形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供して、主にフレーク状形態を有するCHA型ゼオライトを結晶化させることと、を含む。
【0199】
上記方法の各成分について、以下でさらに詳しく説明する。
【0200】
有機構造指向剤
開示の方法に従ってCHA型ゼオライトを含む材料を調製するために、「テンプレート」または「テンプレート剤」とも称される有機構造指向剤(OSDA)を使用する。OSDAは、ゼオライトの骨格の分子形状およびパターンを誘導または指向する有機分子であり、例えば、ゼオライト結晶がその周りに形成される足場として機能する。結晶の形成後、OSDAは、結晶の内部構造から除去され、分子的に多孔質のアルミノシリケートケージが残る。具体的には、本明細書で提供される方法は、一般に、CHA型骨格をもたらすと従来理解されている少なくとも1つのOSDAの使用を含む。使用されるOSDAの特定の型は変えることができる。いくつかの実施形態では、OSDAは、環状アミンおよび/またはアンモニウム化合物から選択される。例には、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する四級アンモニウムカチオンが含まれる。本明細書で使用される場合、「四級アンモニウムカチオン」という用語は、4つの置換基を有し、したがって正(カチオン)電荷を有する窒素原子を含有する有機分子を指す。四級アンモニウムカチオンは、アニオン、例えば、ハロゲン化物(例えば、Cl-、Br-、I-)、硫酸水素塩(HSO4
-)、または水酸化物(OH-)イオンと平衡しており、本明細書では、「四級アンモニウム塩」または「四級アンモニウム化合物」と称され、溶液中で、遊離の四級アンモニウムカチオンおよびそれぞれのアニオンに解離する。例えば、いくつかの実施形態では、CHA有機構造指向剤は、N,N,N-トリメチル-1-アダマントアンモニウム、N,N,N-トリメチル-2-アダマントアンモニウム、N,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、N,N-ジメチル-3,3-ジメチルピペリジニウム、N,N-メチルエチル-3,3-ジメチルピペリジニウム、N,N-ジメチル-2-メチルピペリジニウム、1,1,3,5-テトラメチルピペリジニウム、1,3,3,6,6-ペンタメチル-6-アゾニオ-ビシクロ(3.2.1)オクタン、またはトリメチル-2-アンモニウムエキソノルボルナン化合物、またはN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、水酸化コリン、N-メチル-3-キヌクリジノール、二環式または三環式窒素含有有機化合物、または前述のアミンもしくはアンモニウム化合物のいずれかの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、CHA構造指向剤は、N,N,N-トリメチル-1-アダマントアンモニウム化合物、N,N,N-トリメチル-2-アダマンタアンモニウム化合物、N,N,N-トリメチルシクロヘキシルアンモニウム化合物、N,N-ジメチル-3,3-ジメチルピペリジニウム化合物、N,N-メチルエチル-3,3-ジメチルピペリジニウム化合物、N,N-ジメチル-2-メチルピペリジニウム化合物、1,3,3,6,6-ペンタメチル-6-アゾニオ-ビシクロ(3.2.1)オクタン化合物、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、二環式および三環式窒素含有有機化合物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0201】
好適なSDAは、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、Zeolites and Related Microporous Materials:State of the Art 1994、Studies of Surface Science and Catalysis,Vol.84,p 29-36、Novel Materials in Heterogeneous Catalysis(Baker and Murrell編)Chapter 2,p14-24,May 1990、J.Am.Chem.Soc.,2000,122,p 263-273、および米国特許第4,544,538号および第6,709,644号において開示されている。いくつかの実施形態では、四級アンモニウムカチオンは、臭化物、ヨウ化物および水酸化物から選択されるアニオンと平衡している。ある特定の実施形態では、OSDAは、N,N,N-トリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)である。
【0202】
合成ゲルに存在するOSDAの量は変わり得る。いくつかの実施形態では、存在するOSDAの量は、ケイ素に対するモル比によって表し得る。いくつかの実施形態では、TMAdaOHのシリコンに対するモル比は、約0.01~約0.2であり、例えば、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、約0.09、または約0.1から、約0.11、約0.12、約0.13、約0.14、約0.15、約0.16、約0.17、約0.18、約0.19、または約0.2までである。
【0203】
無機構造指向剤
無機構造指向剤(SDA)の供給源は、変えることができ、いくつかの実施形態では、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属カチオンであり得る。
【0204】
ある特定の実施形態では、無機構造指向剤(SDA)は、カリウムカチオンを含む。ある特定の実施形態では、無機SDAは、カリウムカチオンである。
【0205】
特定の実施形態では、カリウムカチオン(K+)の供給源は、水酸化カリウム、例えば、酸化カリウム(K2O)の水溶液である。添加される無機構造指向剤(例えば、水酸化カリウム)の量は変えることができる。特に、水酸化物イオンは、反応混合物において必要とされる唯一の必要な鉱化剤であり、合成ゲルにおいて必要とされる水酸化物の量は、有機または無機構造指向剤から提供することができる。いくつかの実施形態では、水酸化カリウムは、無機SDAおよび水酸化物イオン源として機能し、合成ゲルが特定の範囲内のpHを有することを確実にするような量で提供される。例えば、いくつかの実施形態では、pHは、有利に塩基性であり、例えば、約12~約13である。所望ならば、水酸化物イオン含有量に対して、追加の水酸化物イオン源、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、四級水酸化アンモニウム、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、またはこれらの組み合わせを補充することができる。
【0206】
驚くべきことに、さらに、CHA型ゼオライトは、Na+(Na+/TMAda+<2)でよりもK+(K+/TMAda+<50)での方が1桁を超える高い無機対有機SDA比を含有する合成媒体から結晶化できることを発見した。いくつかの実施形態では、合成ゲルにおけるカリウムカチオンのTMAdaの比率は、約1、または約2から、約5、約10、約15、約20、または約50までである。いくつかの実施形態では、比率は約2~約10である。
【0207】
いくつかの実施形態では、合成ゲルにおけるカリウムのTMAdaOHに対してモル比は、約10~約50、例えば、約10、約15、約20、または約25から、約30、約25、約40、約45、または約50までである。
【0208】
特定の実施形態では、合成ゲルのOH/Siモル比は、約0.5であり、合成ゲルにおけるカリウムのTMAdaOHに対するモル比は、約10~約50である。
【0209】
いくつかの実施形態では、合成ゲルにおける水酸化物のシリカに対する(OH/Si)モル比は、約0.2~約0.5、例えば、約0.2または約0.3から、約0.4または約0.5までである。
【0210】
いくつかの実施形態では、合成ゲルにおけるカリウムのケイ素に対する(K/Si)モル比は、約0.2~約0.5、例えば、約0.2または約0.3から、約0.4または約0.5までである。
【0211】
本明細書で概説される方法は、有利には、ハロゲン化物含有化合物(例えば、フッ化物またはフッ素を含む化合物)を使用しない。フッ化水素酸(HF)は、AEI-CHA連晶を提供するための反応混合物に使用されている。本実施形態では、本開示の方法は、ハロゲンまたはハロゲン化物含有化合物を使用せず、例えば、フッ素またはフッ化物含有化合物を使用しない。
【0212】
アルミニウム源
アルミニウム源は変わり得る。いくつかの実施形態では、アルミニウム源は、ゼオライト系である。他の実施形態では、アルミニウム源は、非ゼオライト系である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、本開示の材料の製造にゼオライトを有利に使用しない(ただし、この方法は、それに限定されず、いくつかの実施形態では、ゼオライトをアルミナ源として使用することができる)。
【0213】
いくつかの実施形態では、アルミニウム源は、非結晶質である。例えば、ある特定の実施形態では、アルミニウム源は、アルミニウム塩(例えば、アルミニウムトリイソプロポキシドまたは他のアルコキシド、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム)、アルミニウム金属、非結晶性酸化アルミニウム、または非結晶性アルミノシリケートから選択される非結晶質源であり得る。他の実施形態では、アルミニウムの供給源は、結晶性アルミナまたはゼオライトなどの結晶質である。ある特定の実施形態では、アルミニウム源は、アルミニウムトリイソプロポキシドまたは他のアルコキシド、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミノシリケート、塩化アルミニウム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、またはアルミニウム金属から選択され得る。いくつかの実施形態では、アルミニウム源は、アルミニウムトリイソプロポキシドまたは水酸化アルミニウムである。いくつかの実施形態では、アルミニウム源は、水酸化アルミニウムである。
【0214】
ケイ素源
ケイ素源も変わり得る。様々な実施形態では、ケイ素は、沈降シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、水酸化ケイ素、ケイ素アルコキシド、アモルファスシリカ、アルミノシリケート、ヒュームドシリカ、またはシリケート、例えば、アルカリ金属シリケートのうちの1つ以上によって提供される。いくつかの実施形態では、ケイ素源は、コロイダルシリカである。
【0215】
いくつかの実施形態では、合成ゲル中に存在するケイ素およびアルミニウムの量は、出発組成物の計算されたSARが約1~約100、例えば、約2~60の範囲になるように選択されるいくつかの実施形態では、出発組成物のSARは、約10~約40の範囲である。いくつかの実施形態では、出発組成物のSARは、約20~約35の範囲である。当業者は、合成時のSARと最終ゼオライトにおけるSARが必ずしも同じであるとは限らないことを知っており、最終ゼオライトにおいて所望のSARを得るために合成時のSAR値を選択する方法も知っている。いくつかの実施形態では、CHA型ゼオライトの標的SARは、約2~約60、約10~約30、または約15~約25である。
【0216】
一実施形態では、合成ゲル中に存在するシリカおよびアルミナの量は、出発組成物の計算されたSARが、約10~約100の範囲、例えば、約50~約80の範囲になるように選択される。当業者は、合成時のSARと最終ゼオライトにおけるSARが必ずしも同じであるとは限らないことを知っており、最終ゼオライトにおいて所望のSARを得るために合成時のSAR値を選択する方法も知っている。いくつかの実施形態では、CHA型ゼオライトの目標比は、Si/Al=15である。
【0217】
いくつかの実施形態では、ケイ素源対アルミニウム源対TMAda対カリウムカチオン源対水の比は、1 SiO2/0.033 Al2O3/X TMAdaOH/0.5*(0.5-X)K2O/44 H2Oによって表すことができ、無機SDA(K+)の有機SDA(TMAda+)に対する比は、Xの値を約0.01~約0.25の間で変化させることによって制御することができる。例えば、Xは、約0.01、約0.02、約0.03、約0.04、約0.05、約0.06、約0.07、約0.08、または約0.09から、約0.1、約0.15、約0.2、または約0.25までであり得る。
【0218】
混合
上記のように、当該方法は、一般に、水と、アルミニウム源と、ケイ素源と、有機構造指向剤(OSDA)と、無機構造指向剤とを含む反応混合物を形成して、本明細書で「合成ゲル」または「ゲル」と称されるアルミノシリケート含有溶液を形成することと、当該合成ゲルを結晶化プロセスに供して、ゼオライトを結晶化させることと、を含む。一般に、当該合成ゲルは、高い固形分(例えば、約15%以上または約20%以上)を有する。
【0219】
いくつかの実施形態では、CHA結晶骨格を有するゼオライトを合成する当該方法は、有機構造指向剤の供給源と、無機構造指向剤の供給源と、アルミニウムの供給源とを水に添加して、アルミニウム含有水溶液を形成することと、当該水溶液を第1の時間混合することと、を含む第1の混合工程を含む。
【0220】
混合工程は、様々な時間で実行することができる。混合のための時間は、1秒~約24時間の範囲であることができる。例えば、時間は、約1秒~約1分、または約1分、約5分、約10分、もしくは約15分から、約30分、約45分、もしくは約1時間まで、または約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間から、もしくは約6時間から、約12時間、もしくは約24時間までであることができる。いくつかの実施形態では、時間は、約2時間である。
【0221】
いくつかの実施形態では、当該混合は、分離している別個の工程で実施することができる。したがって、いくつかの実施形態では、当該方法は、OSDA、SDA、およびアルミニウム源を水に添加してアルミニウム含有水溶液を形成し、当該水溶液を第1の時間混合することを含む第1の混合工程を含む。
【0222】
第1の時間は、1秒~約24時間の範囲であることができる。例えば、第1の時間は、約1秒~約1分の範囲であることができ、または約1分、約5分、約10分、もしくは約15分から、約30分、約45分、もしくは約1時間まで、または約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間から、もしくは約6時間から、約12時間、もしくは約24時間までの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、第1の時間は、約15分である。
【0223】
第1の混合工程は、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、混合は室温で行う。いくつかの実施形態では、混合は、高温(例えば、約25℃~約100℃などの室温より高い温度)で行う。
【0224】
いくつかの実施形態では、当該方法は、ケイ素の供給源を、アルミニウム含有水溶液に添加し、第2の時間混合して合成ゲルを形成することを含む第2の混合工程を含む。
【0225】
第2の時間は、1秒~約24時間の範囲であることができる。例えば、第2の時間は、約1秒~約1分、または約1分、約5分、約10分、もしくは約15分から、約30分、約45分、もしくは約1時間まで、または約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間から、もしくは約6時間から、約12時間、もしくは約24時間までであることができる。いくつかの実施形態では、第2の時間は、約2時間である。
【0226】
第2の混合工程は、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、混合は室温で行う。いくつかの実施形態では、混合は、高温(例えば、約25℃~約100℃などの室温より高い温度)で行う。
【0227】
いくつかの実施形態では、第1および第2の時間は、各々独立して、約1秒~約24時間である。いくつかの実施形態では、第1の時間は、約5分~約1時間である。いくつかの実施形態では、第2の時間は、約5分~約1時間である。
【0228】
いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約100℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約50℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、第1および第2の混合工程は、約20℃~約30℃の温度で実施される。
【0229】
結晶化
いくつかの実施形態では、次いで、合成ゲルを結晶化プロセスに供して、制御されたアルミニウム分布を有するチャバサイト型ゼオライトを結晶化する。結晶化条件は、一般に、ゼオライト結晶を含有する固体沈殿物の形成を促進するように選択される。典型的には、結晶化プロセスは、合成ゲルを高温で一定時間混合することを含む。一般に、本明細書で上記した反応混合物は、圧力容器内で撹拌しながら加熱すると、所望のCHA結晶性生成物を生成する。
【0230】
いくつかの実施形態では、その時間は、約24時間~約6日の範囲であることができる。例えば、時間は、約24時間、約30時間、または約36時間から、約2日、約3日、約4日、約5日、または約6日までの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、第3の時間は、約3日である。いくつかの実施形態では、時間は約6日である。結晶化プロセスは、対応する自生圧力において、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、結晶化プロセスは、約100℃~約200℃の範囲、例えば、約140℃~約200℃、または約140℃~約180℃の範囲である。いくつかの実施形態では、温度は、約140℃~約160℃である。
【0231】
合成ゲルを冷却した後、次いで、ゼオライト材料を含む沈殿物を濾別し、任意選択でさらなる処理に供する。任意選択的に、生成物は、遠心分離され得る。有機添加剤は、固形生成物の取り扱いおよび単離を助けるために使用され得る。沈殿物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Yangらによる米国特許出願公開第2015/118150号に開示されているように、濾別し、残りの母液を廃棄するか、またはリサイクルすることができる。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意選択的な工程である。
【0232】
他の実施形態では、合成ゲルを、次いで、結晶化プロセスに供して、主にフレーク状形態を有するCHA型ゼオライトを結晶化させる。結晶化条件は、一般に、CHA型ゼオライト結晶を含有する固体沈殿物の形成を促進するように選択される。典型的には、結晶化プロセスは、合成ゲルを高温で一定時間混合することを含む。一般に、本明細書で上記した反応混合物は、圧力容器内で撹拌しながら加熱すると、所望のCHA結晶性生成物を生成する。いくつかの実施形態では、結晶化は、任意選択で、ゼオライト種結晶を合成ゲルに添加することをさらに含み、所望の結晶構造の形成を促進する。いくつかの実施形態では、種結晶は、CHA骨格を有する。いくつかの実施形態では、種結晶は、焼成された、かつNa+形態であるCHA型ゼオライトである。
【0233】
いくつかの実施形態では、時間は、約12時間~約6日の範囲であることができる。例えば、時間は、約12時間、約18時間、約24時間、約30時間、または約36時間から、約2日、約3日、約4日、約5日、または約6日までの範囲であることができる。いくつかの実施形態では、第3の時間は、約3日である。いくつかの実施形態では、時間は約6日である。結晶化プロセスは、対応する自生圧力において、様々な温度で行うことができ、いくつかの実施形態では、結晶化プロセスは、約100℃~約200℃の範囲、例えば、約140℃~約200℃、または約140℃~約180℃の範囲である。いくつかの実施形態では、温度は、約140℃~約160℃である。
【0234】
合成ゲルを冷却した後、次いで、ゼオライト材料を含む沈殿物を濾別し、任意選択でさらなる処理に供する。任意選択的に、生成物は、遠心分離され得る。有機添加剤は、固形生成物の取り扱いおよび単離を助けるために使用され得る。沈殿物は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Yangらによる米国特許出願公開第2015/118150号に開示されているように、濾別し、残りの母液を廃棄するか、またはリサイクルすることができる。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意選択的な工程である。
【0235】
さらなる処理
固体CHA型ゼオライト生成物は、空気または窒素中で熱処理または焼成することができる。典型的な焼成温度は、1~10時間の間にわたって、約400℃~約850℃(例えば、約500℃~約700℃)である。最初の焼成に続いて、CHA型ゼオライト生成物は、主にアルカリ金属形態(例えば、K+形態)である。
【0236】
か焼後に得られたゼオライトは、アルカリの量を減らすために、または例えばアンモニウムイオンと交換するために、イオン交換され得る。いくつかの実施形態では、単一または複数のアンモニアイオン交換を使用して、ゼオライトのNH4
+形態を生成することができ、これは、任意選択でさらに焼成して、H+形態を形成し得る。イオン交換法は、当技術分野で周知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく適用することができる。イオン交換は、例えば、塩化アンモニウム水溶液で処理することによって達成することができる。
【0237】
CHA型ゼオライトの特性
いくつかの実施形態では、結晶化から生じるCHA型ゼオライト結晶は、約50~約100%の結晶質であり得る。いくつかの実施形態では、結晶化から生じるCHA型ゼオライト結晶は、約80%~約99%の結晶質または約90%~約97%の結晶質であり得る。開示の方法から得られるCHA型ゼオライト生成物は、典型的には、約0.1μm~最大約15μmの平均結晶サイズを有し、例えば、0.1μm~約2μm、または約2μm~5μm、または約4μm~約8μm、または約10μm~約15μmの平均結晶サイズを有する。平均結晶サイズは、例えば、顕微鏡法、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定され得る。
【0238】
開示の方法から得られるCHA型ゼオライト生成物は、一般に、文献で報告されているものと一致する単位格子容積を有する(例えば、シリカに富むCHAについて報告されている2338Å3(M.-J.Diaz-Cabanas et al.,Chemical Communications,1998,pp 1881-1882)から、アルミニウムに富むCHAについて報告されている2489Å3(O.V.Yakubovich et al.,Crystallography Reports,Vol.50,No.4,2005,pp.544-553)までの範囲)。
【0239】
CHA型ゼオライト生成物は、シリカ対アルミナのモル比(SAR)によって特性決定することもできる。一実施形態では、CHA型ゼオライトにおけるシリカのアルミナに対するモル比は、2~60の範囲である。ある特定の実施形態では、CHA型ゼオライト生成物は、約10~約30のSARを有する。ある特定の実施形態では、CHA型ゼオライト生成物は、約10~約15のSARを有する。
【0240】
本開示に記載のように、ゼオライトの結晶化中に添加された無機構造指向剤の量に応じて、非アルミニウム無機カチオンは、ゼオライトの骨格外の位置に存在することができる。本開示の目的のために、骨格外の位置は、結晶性ゼオライト格子中の4つの原子に共有結合されていない位置を意味すると理解されるべきである。ゼオライトの骨格外の位置にある原子、イオンおよび錯体は、典型的には、固体の細孔空間において見出されるものを指し、格子骨格自体に組み込まれているものではない。これらの非アルミニウム無機カチオンとしては、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、カリウムカチオン、マグネシウムカチオン、コバルトカチオン、銅カチオン、およびリチウムカチオン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなシナリオでは、ゼオライトの結晶格子骨格位置にあるアルミニウム原子の一部のみが分離構成にあり、この部分は、骨格外の位置にある二価のカチオンを交換することができない。
【0241】
したがって、本開示のさらに別の目的は、制御されたアルミニウム分布を有する異なるクラスのチャバサイト型ゼオライト構造を説明することであり、ゼオライトの骨格外の位置に存在する非アルミニウム無機カチオンに起因して、ゼオライト骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の一部のみが、分離構成にあり、この一部は、骨格外の位置にある二価カチオンと結合することはできない。驚くべきことに、本開示によれば、K+およびTMAda+の混合物から結晶化したCHA型ゼオライトは、K+カチオンがCHAケージからTMAda+を置換し、同じ組成範囲内で主に分離されたAl部位の形成につながることが見出された。
【0242】
いくつかの実施形態では、本開示のCHA型ゼオライトは、主に分離されたAl部位を有し、それは、式Al-O(-Si-O)x-Al(式中、x≧3である)によって定義され得る。いくつかの実施形態、すなわち本開示のCHA型ゼオライトでは、分離構成におけるCHA型ゼオライト骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率は、0.90~1.00の範囲である。いくつかの実施形態では、分離構成におけるCHA型ゼオライト骨格の結晶格子骨格位置におけるアルミニウム原子の分率は、約0.95~約1.00の範囲である。
【0243】
他の実施形態では、本開示のCHA型ゼオライトは、主にペアとなっているAl部位を有し、それは、式Al-O(-Si-O)x-Al(式中、x=1または2である)によって定義され得る。
【0244】
連晶
本開示によれば、驚くべきことに、有機および無機カチオンが、CHA型ゼオライトの空隙内での占有について協力または競争し、いくつかの実施形態では、結晶相の連晶(混合ドメイン)をもたらすことが見出された。したがって、いくつかの実施形態では、連晶を含むゼオライト材料が提供され、本明細書に開示される合成方法は、そのような連晶を含有するゼオライトを調製する方法として特徴付けられ得る。典型的には、本明細書に開示されるような連晶を含むゼオライト材料の特徴は、主に1つのタイプの骨格であると説明することができる。例えば、いくつかの実施形態では、連晶を含む開示のゼオライト材料は、CHA骨格の特徴を有し、また、各々がCHA骨格および異なるシリカ対アルミナ比を有する複数の連晶相を含む。
【0245】
連晶の存在は、例えば、粉末回折パターンによって判定することができる。具体的には、本明細書に開示される連晶に関する実験的粉末回折パターンは、例えば、ゼオライトの連晶相に関するXRD粉末パターンをシミュレートするために、国際ゼオライト学会によって選択され、当該学会から入手可能な、平面欠陥を含有する結晶由来の粉末回折パターンをシミュレートするための数学的モデルに基づくコンピュータプログラムであるDIFFaxを使用して、シミュレートされた粉末回折パターンに対して比較することができる。Treacy et al.,Proceedings of the Royal Chemical Society 1991,433:499-520およびTreacy and Higgins,Collection of Simulated XRD Powder Patterns for Zeolites,Fifth Edition Elsevier 2007を参照されたい。これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0246】
いくつかの実施形態では、2つの相の物理的混合物と比較して、ピークの広がりが、XRDパターンにおいて観察される。このようなピークの広がりは、2つの相の(混合ではなく)連晶の証拠として観察される場合がある。CHA骨格を有する連晶の存在は、いくつかの実施形態では、走査型電子顕微鏡法(SEM)または透過型電子顕微鏡法(TEM)によって、さらに確認することができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、開示の方法から生じるCHA型ゼオライト生成物は、サイズおよび組成が互いに異なる、2つの異なる結晶性CHA相の混合物を含む連晶ゼオライトである。
【0248】
いくつかの実施形態では、連晶ゼオライトは、第1および第2のCHA相を含み、第1のCHA相および第2のCHA相は、各々独立して、約2338Å3~2489Å3の単位格子容積を有し、第1のCHA相の単位格子容積は、第2のCHA相の単位格子容積とは異なる。いくつかの実施形態では、第1のCHA相および第2のCHA相の単位格子容積は、2353Å3~2411Å3の範囲である。
【0249】
これらの相の比は変わり得る。いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当する。一実施形態では、第1のCHA相は、連晶ゼオライトの約20~30%であり、第2のCHA相は、連晶ゼオライトの約70~80%である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、連晶ゼオライトの約5%~約95%に相当し、第1のCHA相は、0.5を超えるカリウムカチオン対アルミニウム比を有し、第2のCHA相は、約0.5未満のカリウムカチオン対アルミニウム比を有する。いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、約0.5~約1.6の、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有し、例えば、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、または約1.0から、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、または約1.5までの、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有する。いくつかの実施形態では、第2のCHA相は、約0.1~約0.5の、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有し、例えば、約0.1、約0.15、約0.2、約0.25、または約0.3から、約0.35、約0.4、約0.45、または約0.5、約0.5までの、カリウムカチオンのアルミニウムに対する比を有する。
【0250】
いくつかの実施形態では、連晶ゼオライトは、第1および第2のCHA相を含み、第1および第2のCHA相は、各々独立して、約4~約100のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、第1のCHA相のSARは、第2のCHA相のSARとは異なる。
【0251】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相は、第2のCHA相よりもSARが高い。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは約10~約40であり、第2のCHA相のSARは約6~約8である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは、約10~約20である。いくつかの実施形態では、第1のCHA相のSARは、約10~約15である。
【0252】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相は主としてカリウムイオンを含み、第2のCHA相は主として有機指向剤を含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相および第2のCHA相は、X線粉末回折パターンから測定されるように、異なる格子定数a0、c0、および単位格子容積を有する。
【0254】
いくつかの実施形態では、第1のCHA相、第2のCHA相、またはその両方は、シリコアルミノホスフェート(SAPO)組成物を含む。いくつかの実施形態では、SAPO組成物は、SAPO-34またはSAPO-44である。
【0255】
いくつかの実施形態では、連晶ゼオライト結晶サイズは、約0.1~約15μmである。
【0256】
フレーク状形態
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように調製されたCHA型ゼオライトは、主にフレーク状形態を有する。「フレーク状」とは、CHAゼオライト結晶が、厚さよりもはるかに長くかつ幅が広いことを意味する。この形態は、フレーク状結晶は、折り畳まれた構成が可能であり、しばしば折り畳まれた構成で観察される(プレート状形態の場合はそうではない)という点でプレート状形態と区別し得る。例えば、プレート状形態を有するCHA型ゼオライトの開示については、Choiらの米国特許第9,981,852号を参照されたい。当該特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される方法から生じるCHA型ゼオライト生成物は、典型的には、約0.3μm~最大約1.5μmの平均結晶長、例えば、約0.3~約1μm、または約0.3~約0.5μmの平均結晶長を有する。開示の方法から生じるCHA型ゼオライト生成物は、典型的には、約0.3μm~最大約1.5μmの平均結晶幅、例えば、約0.3~約1μm、または約0.3~約0.5μmの平均結晶幅を有する。例えば、フレーク状のCHA型ゼオライト結晶の厚さは、約0.05μm未満、例えば、約0.01~約0.03□□m、または約0.02~約0.025□mであり得る。平均結晶寸法は、例えば、顕微鏡法を使用して、例えば、走査型電子顕微鏡法(SEM)単独で、またはエネルギー分散型X線分光法(EDS)とともに使用して、測定することができる。いくつかの実施形態では、アスペクト比(最長寸法の厚さに対する比)は、約10より大きい、例えば、約20より大きい、または約30より大きい。いくつかの実施形態では、アスペクト比は、約20~約40である。いくつかの実施形態では、アスペクト比は、約10、約15、約20、約25、約30、約35、または約40である。
【0257】
「主にフレーク状」とは、本明細書に開示されるように調製された、CHA型ゼオライトのサンプル中に存在する結晶の約40%超が、例えば、SEM/EDSから得られた平均測定値に基づいて、フレーク状形態を有することを意味する。例えば、いくつかの実施形態では、結晶の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%が、フレーク状形態を有する。
【0258】
フレーク状形態を有するCHA型ゼオライト生成物は、シリカ対アルミナのモル比(SAR)によって特徴付けることもできる。一実施形態では、CHA型ゼオライトにおけるSARモル比は、2~60の範囲である。ある特定の実施形態では、CHA型ゼオライト生成物は、約10~約30のSARを有する。ある特定の実施形態では、CHA型ゼオライト生成物は、約15~約25のSARを有する。
【0259】
フレーク状形態を有するCHA型ゼオライト生成物はまた、シリカ対カリウム(Si/K)のモル比によって特徴付けることもできる。一実施形態では、CHA型ゼオライトのSi/Kモル比は、約20未満である。ある特定の実施形態では、CHA型ゼオライト生成物は、約20~約10のSi/Kモル比を有し、例えば、約20、約19、約18、約17、約16、または約15から、約14、約13、約12、約11、または約10までのSi/Kモル比を有する。ある特定の実施形態では、CHA型ゼオライト生成物は、約12~約17のSi/Kモル比を有する。
【0260】
促進されたCHA型ゼオライト
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCHA型ゼオライトは、促進剤金属でさらに処理されて、金属で促進された例えば、イオン交換された)ゼオライト触媒(を形成する。本明細書で使用される場合、「促進される」という用語は、モレキュラーシーブ中の固有の不純物とは対照的に、モレキュラーシーブ材料に意図的に添加される金属構成成分(「促進剤金属」)を指す。したがって、促進剤は、意図的に添加される促進剤を有しない触媒と比較して触媒の活性を向上させるために意図的に添加される。促進剤金属は、化学反応の促進に積極的に関与し、例えば、銅は、窒素酸化物の変換に関与し、したがって、多くの場合活性金属と称される。アンモニアの存在下での窒素酸化物の選択的接触還元を促進するために、1つ以上の実施形態では、好適な金属が、独立して、開示のCHA型ゼオライトに交換される。
【0261】
いくつかの実施形態では、開示されるゼオライトは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第IIIB族、第IVB族、第VB族、第VIB族、第VIIB族、第VIIIB族、第IB族、および第IIB族の遷移金属、第IIIA族の元素、第IVA族の元素、ランタニド、アクチニド、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される促進剤金属で促進される。いくつかの実施形態では、さらに、開示される触媒組成物の促進ゼオライトを調製するために使用され得る促進剤金属には、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、タングステン(W)、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、銅、マンガン、鉄、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、銅、鉄、またはこれらの組み合わせである。例えば、銅および/または鉄は、イオン交換されて、Cu-チャバサイト、Fe-チャバサイト、またはCu/Fe-チャバサイトを形成することができる。酢酸銅が使用される場合、銅イオン交換で使用される液体銅溶液の銅濃度は、特定の実施形態では、約0.01~約0.4モルの範囲、より具体的には約0.05~約0.3モルの範囲である。
【0262】
促進剤金属を、液相交換プロセスによってゼオライトに交換することができ、可溶性金属イオンは、ゼオライトの細孔内に位置するプロトンまたはアンモニウムまたはナトリウムイオンと交換する。交換はまた、固体状態プロセスによっても実行され得、ここで、促進剤金属酸化物または金属塩の固体粒子が、ゼオライト粉末と混合され、蒸気を含有しても、または含有しなくてもよいある特定の温度およびガス環境下で処理される。交換プロセスはまた、スラリー調製中にインサイツプロセスを介しても達成され得、ここで、微細な金属酸化物粒子が、固体液体相互作用に好適な条件下でゼオライトスラリー中に懸濁される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示のCHA型ゼオライトを促進剤金属で交換する前に、ゼオライトを、それぞれの材料のH+形態を得るために、当技術分野で知られているように、NH4
+で交換し、かつ焼成しなければならない。
【0263】
窒素酸化物のSCRをさらに促進するために、いくつかの実施形態では、ゼオライトは、2つ以上の金属(例えば、1つ以上の他の金属と組み合わせた銅)で促進することができる。2つ以上の金属が、促進ゼオライト系材料中に含まれる場合、複数の金属前駆体(例えば、銅および鉄前駆体)が、同時にまたは別個にイオン交換され得る。ある特定の実施形態では、第2の金属は、第1の金属で最初に促進されたゼオライト材料中に交換され得る(例えば、第2の金属は、銅で促進されたゼオライト材料中に交換され得る)。
【0264】
1つ以上の実施形態では、酸化物として計算される促進剤金属含有量は、独立して、(促進剤金属を含む)対応する焼成ゼオライトの総重量に基づき、揮発性物質を含まない基準で報告すると、約0.01重量%~約15重量%、約0.5重量%~約12重量%、または約1.0重量%~約10重量%の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、酸化物として計算される促進剤金属含有量は、(促進剤金属を含む)対応する焼成ゼオライトの総重量に基づき、揮発性物質を含まない基準で報告すると、少なくとも約0.1重量%である。特定の実施形態では、ゼオライトの促進剤金属は、Cuを含み、CuOとして計算されたCu含有量は、約0.1重量%~約20重量%の範囲であり、例えば、約0.5重量%~約17重量%、約2重量%~約15重量%、または約2重量%~約10重量%の範囲であり、いずれの場合も、揮発性物質を含まない基準で報告された焼成ゼオライトの総重量に基づいている。
【0265】
いくつかの実施形態では、ゼオライト(促進剤金属を含む)は、促進されたゼオライト内における促進剤金属のアルミニウムに対する比によって定義することができる。例えば、いくつかの実施形態では、促進剤金属のアルミニウムに対する重量比は、約0.002~約0.5の範囲である。特定の実施形態では、ゼオライトの促進金属は、Cuを含み、ゼオライトにける銅のアルミニウムに対する原子比は、約0.1~約0.5である(例えば、Cu/Al比は、約0.1~約0.5である)。
【0266】
SCR触媒組成物
本開示は、還元剤の存在下で、リーンバーンエンジンなどからのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに有効な選択的接触還元(SCR)触媒組成物を提供し、当該触媒組成物は、本明細書に開示されている促進されたCHA型ゼオライトを含む。
【0267】
理論に束縛されることを望まないが、主にフレーク状形態を有するCHA結晶は、コーティング中に異なる挙動を示す可能性があり、それは、SCR性能の観点から有利であることが証明され得る。異なるコーティングおよび充填挙動に加えて、フレーク状形態は、CHA結晶を横切る反応物および生成物のより効率的な物質移動を可能にし、したがって、コーティングされた触媒における質量輸送が制限される可能性を低減し得る。したがって、本開示は、還元剤の存在下で、リーンバーンエンジンなどからのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに有効な選択的接触還元(SCR)触媒組成物を提供し、当該触媒組成物は、本明細書に開示されている促進されたCHA型ゼオライトを含む。
【0268】
いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物は、結合剤、例えば、酢酸ジルコニルなどの好適な前駆体または硝酸ジルコニルなどの任意の他の好適なジルコニウム前駆体から誘導されるZrO2結合剤をさらに含み得る。酢酸ジルコニル結合剤は、例えば、触媒が少なくとも約600℃の高温、例えば、約800℃以上および約5%以上の高水蒸気環境に曝露されるとき、熱エージング後も均一で無傷のままのコーティングを提供する。他の潜在的に好適な結合剤としては、アルミナおよびシリカが挙げられるが、それらに限定されない。アルミナ結合剤としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、およびオキシ水酸化アルミニウムが挙げられる。アルミニウム塩、およびアルミナのコロイド形態が使用されてもよい。シリカ結合剤は、シリケートおよびコロイダルシリカを含む、SiO2の様々な形態を含む。結合剤組成物は、ジルコニア、アルミナ、およびシリカの任意の組み合わせを含み得る。他の例示的な結合剤は、ベーマイト、ガンマ-アルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルを含む。存在する場合、結合剤は、典型的には、約1~5重量%の量の総ウォッシュコート充填量で使用される。あるいは、結合剤は、ジルコニアベースまたはシリカベース、例えば、酢酸ジルコニウム、ジルコニアゾル、またはシリカゾルであり得る。存在する場合、アルミナ結合剤は、典型的には、約0.05g/in3~約1g/in3の量で使用される。
【0269】
NOx吸収体組成物
本開示のCHA型ゼオライトは、例えば、低温NOx吸収体(LT-NA)などのある特定のNOx吸収体組成物において有用性を有し得る。NOxの低温トラップに有用な比較的新しいLT-NAの1つは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0096922号に記載されているように、パラジウム交換ゼオライトを利用して、NO2への接触予備酸化(catalytic pre-oxidation)なしにNOをトラップする。したがって、別の態様では、排気ガス流における窒素酸化物(NOx)の軽減に有効なLT-NA触媒組成物を提供し、当該LT-NA触媒は、白金族金属で促進される、本明細書で開示のCHA型ゼオライト材料を含む。
【0270】
本明細書で使用されているように、「白金族金属成分」または「PGM成分」とは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、およびそれらの混合物を含む、白金族金属またはそれらの酸化物を指す。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PGM成分は、パラジウム、白金、またはそれらの混合物を含む。他の実施形態では、白金族金属成分は、2つの白金族金属を、例えば、約1:10~約10:1の重量比で含む。例えば、いくつかの実施形態では、白金族金属成分は、白金およびパラジウムを含む。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物は、白金を明確に除外する。
【0271】
白金族金属成分の濃度は、変えることができるが、典型的には、含浸されたゼオライトの総重量に対して、約0.01重量%~約10重量%であろう。いくつかの実施形態では、NOx吸収体組成物は、白金を実質的に含まない。本明細書で使用する場合、「実質的に白金を含まない」という用語は、NOx吸収体組成物に意図的に添加された追加の白金がないこと、およびNOx吸収体組成物中に存在する白金金属が約0.01重量%未満であることを意味する。
【0272】
他の触媒組成物および方法
本開示のゼオライトは、アルコールのオレフィンへの変換、炭化水素分解、メチルアミンの形成、およびメタンのメタノールへの部分酸化を含む、オレフィン形成などの多くの他の化学反応を触媒する際に有用性を有し得る。
【0273】
したがって、別の態様では、オレフィン形成、炭化水素分解、オレフィンを形成するためのアルコールの除去、メタノールおよびアンモニアからのメチルアミンの形成、ならびにメタンのメタノールへの部分酸化から選択される1つ以上の変換に有効な触媒組成物を提供し、当該触媒組成物は、本明細書に開示のCHA骨格構造を有する連晶ゼオライトを含む。
【0274】
CHA骨格を有するゼオライトは、メタノールのオレフィンへの触媒として報告されている(例えば、Deimund,et al.,ACS Catalysis 2016,6,542-550、Corma et al.,Chemistry-A European Journal 2018、およびNishitoba et al.,Industrial & Engineering Chemistry Research 2018,57,3914-3922を参照されたい。それらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。CHA骨格を有するゼオライトは、メタノールへの部分的メタン酸化(PMO)として報告されている(例えば、Snyder et al.,Chemical Reviews 2018,118,2718-2768、Li et al.,ACS Catalysis 2018,8,10119-10130、およびNewton et al.,Journal of the American Chemical Society 2018,140,10090-10093を参照されたい。それらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0275】
一実施形態では、連晶ゼオライトはH+形態である。他の実施形態では、連晶ゼオライトは、遷移金属などの1つ以上の金属で促進される。
【0276】
一実施形態では、メタンのメタノールへの部分酸化に有効な触媒組成物を提供し、当該触媒は、銅、鉄、またはこれらの組み合わせで促進される、本明細書に開示のCHA骨格構造を有する連晶ゼオライトを含む。
【0277】
別の態様では、アルコール、炭化水素、アンモニア、またはこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含むガス流を処理するための方法を提供し、当該方法は、ガス流を、酸化、還元、除去、および炭素-炭素結合破壊から選択される1つ以上の反応を触媒するのに有効な時間および温度で、本明細書に開示のCHA骨格構造を有する連晶ゼオライトと接触させることを含む。
【0278】
触媒物品
別の態様では、還元剤の存在下でリーンバーンエンジンなどからのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに効果的なSCR物品を提供し、当該SCR物品は、全長を画定する入口端および出口端を有する基材と、当該基材の少なくとも一部分上に配置される本明細書に開示のSCR触媒組成物と、を含む。
【0279】
基材
1つ以上の実施形態では、本触媒組成物(例えば、SCRまたはLT-NA組成物)を基材上に配置して、触媒物品を形成する。基材を含む触媒性物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(触媒物品としては、本明細書に開示されるSCRまたはLT-NA組成物を含む物品が挙げられるが、それらに限定されない)。有用な基材は、三次元であり、円柱に似た長さ、直径および体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端および出口端によって画定される軸方向長さである。
【0280】
1つ以上の実施形態によれば、開示される組成物のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるあらゆる材料から構成され得、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、ウォッシュコート組成物が塗布されかつ付着している複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0281】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0282】
基材はまた、金属であり得、1つ以上の金属または金属合金を含む。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、またはモノリス形態のような様々な形状で用いられ得る。金属基材の具体例としては、耐熱性の卑金属合金、特に、鉄が実質的なまたは主要な成分である合金が挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、各々の場合に、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、および0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、ならびにブレードおよびモノリス全体にわたる半径方向のガス搬送を可能にする、チャネル間のガス搬送を向上させるための穴も有するもの、が挙げられる。
【0283】
通流する流体流に対して通路が開放するように、基材の入口または出口面からそこを通って延在する微細で平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの、本明細書に開示される触媒物品のための任意の好適な基材が用いられ得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきに通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルーおよびウォールフロー基材は、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際出願第2016/070090号にも開示されている。
【0284】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタまたはフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材は、ウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材である。フロースルー基材およびウォールフローフィルタについては、本明細書で以下にさらに考察される。
【0285】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、通路が流体の流れに対して開放されているように、基材の入口端から出口端まで延在する微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上または壁の中において、触媒性コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状およびサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミックまたは金属であり得る。
【0286】
フロースルー基材は、例えば、約50in3~約1200in3の体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsiまたは最大900cpsi、例えば、約200~400cpsiのセル密度(入口開口)と、約50~約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚とを有し得る。
【0287】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリスウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、はるかに少ない数が用いられてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、上記のようにセラミックまたは金属性であってもよい。
【0288】
図2を参照すると、例示的なウォールフローフィルタ基材は、円筒形であり、直径Dおよび軸方向長さLを有する円筒形の外面を有する。モノリシックなウォールフローフィルタ基材の断面図が
図3aに示してあり、交互になっている閉塞通路および開放通路(セル)が示されている。遮断されたまたは閉塞された端部100と、開放された通路101とは交互に位置し、それぞれの反対側の端部が、それぞれ開放および遮断されている。フィルタは、入口端102および出口端103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、排気ガス流が、開放されたセル端部に入り、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放された出口セル端部を出ることを表す。閉塞された端部100は、ガス流を妨げ、セル壁を通した拡散を促進する。各セル壁は、入口側104aおよび出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0289】
ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm3、約100in3、約200in3、約300in3、約400in3、約500in3、約600in3、約700in3、約800in3、約900in3、または約1000in3から、約1500in3、約2000in3、約2500in3、約3000in3、約3500in3、約4000in3、約4500in3、または約5000in3までの体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、または約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0290】
ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約40%または少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約10ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有する。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒性コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%、または約70%から、約75%までの壁多孔度および約10ミクロンまたは約20ミクロンから、約30ミクロンまたは約40ミクロンまでの平均細孔径を有するであろう。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(または細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径および細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0291】
基材のコーティングプロセス
本開示の触媒物品を製造するために、本明細書に記載の基材は、本明細書で開示のように触媒組成物(例えば、SCRまたはLT-NA触媒組成物)でコーティングされる。コーティングは、「触媒性コーティング組成物」または「触媒性コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒性コーティング組成物」は、同義である。
【0292】
一般に、触媒組成物は、本明細書に記載されるように調製され、基材上にコーティングされる。この方法は、本明細書に一般に開示される触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)を溶媒(例えば、水)と混合して、触媒基材をコーティングするためのスラリーを形成することを含むことができる。触媒組成物に加えて、スラリーは、任意選択で、様々な追加の成分を含有し得る。典型的な追加の成分としては、本明細書で上記したような結合剤、例えば、スラリーのpHおよび粘度を制御するための添加剤が挙げられるが、それらに限定されない。追加の成分としては、炭化水素(HC)貯蔵成分(例えば、ゼオライト)、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性または両性界面活性剤を含む)を挙げることができる。スラリーの典型的なpH範囲は、約3~約6である。酸性または塩基性の種をスラリーに添加してpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、酢酸水溶液の添加によって調整される。
【0293】
スラリーを粉砕して、粒径を小さくし、粒子の混合および均質な材料の形成を向上させることができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固形物含有量は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約1~約40ミクロン、好ましくは2~約20ミクロン、より好ましくは約4~約15ミクロンのD90粒径によって特徴付けられる。
【0294】
本触媒組成物は、典型的には、本明細書に開示されるような触媒組成物を含有する1つ以上のウォッシュコートの形態で適用され得る。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の触媒組成物(または触媒組成物の1つ以上の成分)の特定の固形分(例えば、約10~約60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、次いで、それを、当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用して基材に適用し、乾燥および焼成してコーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後に、および/または所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後に、基材は、乾燥および/または焼成される。1つ以上の実施形態では、触媒性材料は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0295】
焼成の後に、上記のウォッシュコート技術により得られる触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差を計算することにより求めることが可能である。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することが可能である。さらに、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填水準または厚さに構築することができ、すなわち、1つより多くのウォッシュコートを適用することが可能である。
【0296】
コーティング構成
本触媒性コーティングは、1つ以上のコーティング層を含むことができ、その少なくとも1つの層は、本触媒組成物または触媒組成物の1つ以上の成分を含む。触媒コーティングは、基材の少なくとも一部の上に配設されかつこれに付着している1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。
【0297】
いくつかの実施形態では、本触媒物品は、1つ以上の触媒層の使用、および1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。触媒性材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体がすべてもしくは部分的に触媒性材料で構成され得る。触媒コーティングは、基材壁表面上および/または基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」および/または「上」にあってもよい。したがって、「基材上に配置されたウォッシュコート」という表現は、任意の表面上、例えば、壁表面上および/または細孔表面上を意味する。
【0298】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触するように適用することができる。あるいは、1つ以上の「アンダーコート」が存在していてもよく、それによって、触媒性コーティング層またはコーティング層の少なくとも一部は、基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)。コーティング層の少なくとも一部がガス流または雰囲気に直接曝されないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在してもよい。
【0299】
あるいは、本触媒組成物は、ボトムコーティング層の上を覆うトップコーティング層中に存在し得る。触媒組成物は、トップ層およびボトム層中に存在し得る。任意の1つの層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、例えば、ボトム層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、トップ層はまた、ボトム層の上方で基材の軸方向長さ全体に延在し得る。トップ層およびボトム層はそれぞれ、入口端部または出口端部のいずれかから延在し得る。
【0300】
例えば、ボトムコーティング層およびトップコーティング層はどちらも、同じ基材端部から延在し得、トップ層は、部分的または完全にボトム層をオーバーレイしており、ボトム層は、基材の部分長または全長に延在しており、トップ層は、基材の部分長または全長に延在している。あるいは、トップ層が、ボトム層の一部をオーバーレイしていてもよい。例えば、ボトム層は、基材の全長に延在し得、トップ層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%まで延在し得る。
【0301】
あるいは、ボトム層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在し得、トップ層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材長の約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在し得、トップ層の少なくとも一部は、ボトム層をオーバーレイしている。この「オーバーレイ」ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%から、約80%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60、または約70%まで延在し得る。
【0302】
触媒性コーティングは、有利には、「ゾーン化」させることができ、ゾーン化された触媒性層を含む、すなわち、触媒性コーティングは、基材の軸方向の長さにわたって様々な組成物を含有する。これは、「横方向にゾーン化された」と表現されてもよい。例えば、層は、入口端部から出口端部に向かって延在してもよく、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在してもよい。別の層は、出口端部から入口端部に向かって延在し、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在してもよい。異なるコーティング層は、互いに隣接し、かつ互いにオーバーレイしていない場合がある。あるいは、異なる層が、互いの一部に重なって、第3の「中間」ゾーンを提供してもよい。中間ゾーンは、例えば、基材長さの約5%~約80%、例えば、基材長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%または約70%にわたって延在してもよい。
【0303】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって画定される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーニング構成がある。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する場合、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンが存在する場合、4つの異なるゾーンが存在する場合などがある。2つの層が隣接していて重なり合っていない場合は、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する。2つの層がある程度重なり合っている場合は、上流、下流、および中間ゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長にわたって延在しており、異なるコーティング層が出口端部からある長さまで延在しかつ第1のコーティング層の一部にオーバーレイしている場合、上流および下流ゾーンが存在する。
【0304】
例えば、SCR触媒物品は、第1のウォッシュコート層を含む上流ゾーンと、異なる触媒材料または成分を含む第2のウォッシュコート層を含む下流ゾーンと、を含み得る。あるいは、上流ゾーンは第2のウォッシュコート層を含み得、下流ゾーンは第1のウォッシュコート層を含み得る。
【0305】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置されており、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。
【0306】
図3b、3c、および3dは、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す。コーティング層201(トップコート)および202(ボトムコート)が配置されている基材壁200が示されている。これは簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔および細孔壁に付着したコーティングは示されておらず、閉塞された端部は示されていない。
図3bでは、コーティング層201および202は、それぞれ、基材の全長に延在しており、トップ層201は、ボトム層202にオーバーレイしている。
図3bの基材は、ゾーン化されたコーティング構成を含まない。
図3cは、出口から基材長の約50%延在して下流ゾーン204を形成するコーティング層202と、入口から基材長の約50%延在して上流ゾーン203を提供するコーティング層201と、を有するゾーン化された構成を例示している。
図3dでは、ボトムコーティング層202は、出口から基材長の約50%延在しており、トップコーティング層201は、入口から基材長の50%を超えて延在しており、層202の一部をオーバーレイしており、上流ゾーン203、中間オーバーレイゾーン205、および下流ゾーン204を提供する。
図3b、3c、および3dは、ウォールスルー基材またはフロースルー基材上の触媒組成物コーティングを例示するのに有用であり得る。
【0307】
いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである。ある特定の実施形態では、本明細書に開示のSCR触媒組成物は、本明細書に開示のSCR触媒物品に組み込まれる場合、還元剤の存在下で、リーンバーンエンジンからの排気などのエンジン排気ガス由来のNOxの還元を触媒するのに有効である。現在の物品は、様々な温度にわたってNOxの還元を触媒するのに有効である。いくつかの実施形態において、NOxの効果的な還元は、約150℃より高く、かつ約700℃より低い温度のときである。いくつかの実施形態では、NOxの効果的な還元は、約200℃~約600℃の温度のときである。
【0308】
排気ガス処理システム
さらなる態様では、エンジンからの排気ガス流を処理するためのシステムを提供し、当該システムは、リーンバーンエンジンなどの排気ガス流を生成するエンジンの下流に位置し、かつ当該エンジンと流体連通している本明細書に開示のSCR物品を含む。エンジンは、例えば、化学量論的燃焼に必要とされる空気よりも多くの空気を伴う燃焼条件、すなわちリーン条件で作動する、ディーゼルエンジンであり得る。他の実施形態では、エンジンは、ガソリンエンジン(例えば、リーンバーンガソリンエンジン)、または固定電源(例えば、発電機またはポンプ場)と関連のあるエンジンであることができる。排気ガス処理システムは、一般に、排気ガス流と流体連通するようにエンジンの下流に配置された2つ以上の触媒性物品を含有する。システムは、例えば、本明細書に開示される選択的接触還元触媒(SCR)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、還元剤注入器、煤煙フィルタ、アンモニア酸化触媒(AMOx)、またはリーンNOxトラップ(LNT)を含有する1つ以上の物品と、を含有し得る。還元剤注入器を含む物品は還元物品である。還元システムは、還元剤注入器および/またはポンプおよび/またはリザーバなどを含む。本処理システムは、煤フィルタおよび/またはアンモニア酸化触媒をさらに含み得る。煤フィルタは、触媒化されていなくても、または触媒化(CSF)されていてもよい。例えば、本処理システムは、上流から下流まで、DOCを含有する物品、CSF、尿素インジェクター、SCR物品、およびAMOxを含有する物品を含み得る。リーンNOxトラップ(LNT)も含まれる場合がある。
【0309】
排出物処理システム内に存在する様々な触媒成分の相対的な配置は、変動し得る。本排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流は、上流端部に入って下流端部を出ることによって、物品または処理システムに受け取られる。基材または物品の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃機関の下流にあり、かつ内燃機関と流体連通している。
【0310】
1つの例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム20の概略図を図示する
図4に例示されている。示されるように、排出物処理システムは、リーンバーンガソリンエンジンなどのエンジン22の下流に直列に存在する複数の触媒構成要素を含み得る。触媒成分のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されているような本発明のSCR触媒であろう。本発明の触媒組成物は、多数の追加の触媒材料と組み合わせることができ、追加の触媒材料と比較して様々な位置に置くことができる。
図4は、直列の5つの触媒成分24、26、28、30、32を例示するが、触媒成分の総数は変動する可能性があり、5つの成分は単なる一例である。
【0311】
限定することなく、表1は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表中の成分A~Eに対する参照は、
図4の同じ記号で相互参照され得る。
【0312】
表1に記載されるLNT触媒は、NOxトラップとして従来から使用されている任意の触媒であり得、典型的には、卑金属酸化物(BaO、MgO、CeO2など)ならびに触媒によるNOの酸化および還元のための白金族金属(例えば、PtおよびRh)を含むNOx吸着剤組成物を含む。
【0313】
表1に記載されているLT-NA触媒は、低温(<250℃)でNOx(例えば、NOまたはNO2)を吸着し、高温(>250℃)でそれをガス流に放出することができる任意の触媒であり得る。放出されたNOxは、一般に、下流SCRまたはSCRoF触媒上でN2およびH2Oに変換される。典型的には、LT-NA触媒は、Pd促進ゼオライトまたはPd促進耐火金属酸化物を含む。いくつかの実施形態では、LT-NAは、本明細書に記載のフレーク状形態を有する促進されたCHA型ゼオライトを含む。
【0314】
表中のSCRへの言及は、本発明のSCR触媒組成物を含み得るSCR触媒を指す。SCRoF(すなわち、フィルタ上のSCR)への言及は、本発明のSCR触媒組成物を含み得る微粒子または煤フィルタ(例えば、ウォールフローフィルタ)を指す。SCRおよびSCRoFの両方が存在する場合、1つもしくは両方が本発明のSCR触媒を含むことができるか、または触媒の1つが従来のSCR触媒(例えば、従来の金属充填レベルのSCR触媒)を含むことができよう。
【0315】
表中のAMOxへの言及は、本発明の1つ以上の実施形態の触媒の下流に提供されて、漏れた一切のアンモニアを排気ガス処理システムから除去することができるアンモニア酸化触媒を指す。特定の実施形態では、AMOx触媒は、PGM成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを有するボトムコートと、SCR機能を有するトップコートとを含み得る。
【0316】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、成分A、B、C、D、またはEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルタなどの微粒子フィルタ上に、またはフロースルーハニカム基材上に配置され得る。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒組成物を含み、追加の触媒組成物は車体の下の位置(床下位置、UF)にある。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、尿素噴射構成要素をさらに含み得る。
【表1】
【0317】
エンジン排気の処理方法
本発明の別の態様は、リーンバーンエンジン、特に、リーンバーンガソリンエンジン、またはディーゼルエンジンなどのエンジンの排気ガス流を処理する方法に関する。本方法は、本開示の1つ以上の実施形態による触媒物品をエンジンの下流に置くこと、およびエンジン排気ガス流を触媒の上に流すことを含むことができる。1つ以上の実施形態では、本方法は、上記のように、エンジンの下流に追加の触媒成分を置くことをさらに含む。本触媒組成物、本物品、本システム、および本方法は、内燃機関、例えば、ガソリン、小型ディーゼルおよび大型ディーゼルエンジンの排気ガス流の処理に好適である。触媒組成物はまた、静止した工業プロセスからの排出の処理、室内空気からの有害もしくは有毒物質の除去、または化学反応プロセスにおける触媒作用にも好適である。
【0318】
本発明の物品、システム、および方法は、トラックや自動車などの移動排気源からの排気ガス流の処理に適している。本発明の物品、システムおよび方法は、発電所などの固定源からの排気流の処理にも適している。
【0319】
本明細書に記載されている組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は、例示的なものであり、請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示されている様々な実施形態、態様、および選択肢の全ては、全ての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載されている組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好のすべての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用された全ての特許および刊行物は、組み込まれた他の特定の記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる。
【0320】
本明細書の発明は、特定の実施形態を参照して記載されているが、これらの実施形態は、本発明の原理および用途の単なる例示であることを理解されたい。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示の方法および装置に対して様々な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであるだろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変更を含むことが意図される。
本明細書全体を通して「一実施形態」、「ある特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、「1つ以上の実施形態では」、「ある特定の実施形態では」、「一実施形態では」、または「実施形態では」などの語句が本明細書全体の様々な箇所に出現することが、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つ以上の実施形態では任意の好適な方法で組み合わせることができる。本明細書に引用される範囲は全て、包括的である。
【0321】
ここで、本発明を以下の実施例を参照して記載する。本発明のいくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0322】
実験
I.制御されたAl部位を有するCHA型ゼオライト
実施例1.Na+およびTMAda+を使用したCHAの調製(比較)
比較CHA型ゼオライトは、参照により完全に本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0107114号に開示された手順に従って、アルミニウムイソプロポキシド(Al(O-i-Pr)3)、コロイドダルシリカ(AS-40;40重量%のSiO2)、無機構造指向剤としてのNa+(NaOHとして)、および有機構造指向剤(OSDA)としてのトリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAda+)使用して、合成した。結晶化後、各材料を濾過し、脱イオン水で洗浄し、540℃で空気中で焼成した。
【0323】
図5a~5dは、Si/Al=15およびNa+/TMAda
+の比0または1を使用して合成されたCHA型ゼオライトのX線回折パターンを提供している。Na
+およびTMAda
+の存在下での典型的な合成は、結晶化したゼオライトが、構造中に存在するペアアルミニウムのかなりの分率を有することを示した。これらのサンプルは、Al前駆体としてAl(O-i-Pr)
3を使用すると、ペア配列でAl原子のほぼ40%を含有するCHA型ゼオライトが得られ、そのペア配列は、この組成(Si/Al=15)のCHA型ゼオライトにおいて統計的にランダムなAl分布について予想されるであろう数のほぼ2倍である。SDAとしてTMAda
+のみを含有する合成媒体において、但しAl(O-i-Pr)
3の存在下で、結晶化されたCHA型ゼオライトは、TMAda
+およびAl源として水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)のみを使用して合成されたCHAに関する以前の観察と一致して、ペアAl部位を含有していなかった(
図6)(Di Iorio,J.R.;Gounder,R.Chem.Mater.2016,28,2236-2247)。Co
2+イオンを使用して、Al原子が、(6MR中に)ペアとして発生したのか、または分離されたイオンとして発生したのかを判定した(
図6)。
図6を参照すると、Co
2+交換によって測定されたペアAlの分率が、Lowenstein則に従ってランダムなAl分布に関して予測されたペアAlの数の関数として示してある(OH
-媒体中Al(OH)
3およびNa
+/TMAda
+=0~2(灰色の四角)、Al(O-i-Pr)
3およびNa
+/TMAda
+=1(黒の四角)、F
-媒体中Na
+/TMAda
+=0(灰色の円)、ならびにNa
+/TMAda
+=0(黒い円))。
【0324】
したがって、CHA合成媒体中にNa+が存在すると、Al前駆体(Al(OH)3またはAl(O-i-Pr)3に関してNa+/TMAda+=0のとき、Co/Al<0.01))または鉱化剤(例えば、OH-またはF-)に関係なく、ペアAl部位が形成され、それは、ゼオライトの結晶化を促進するために使用されるカチオンの構造が主にAl部位に影響を及ぼすことを示唆している。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、これらの結果を総合すると、有機TMAda+分子と無機アルカリカチオン(例えば、Na+)との間の協調的相互作用が、ペアAl部位を安定化し、CHA結晶化の間にペアAl部位の形成を導くことを示唆している。これは、CHAにおけるペアAl部位の数が、結晶化したCHA型ゼオライト生成物内において、TMAda+とのNa+の同時組み込み(co-incorporation)によって増加するという以前の実験的観察と一致している。
【0325】
実施例2.K+およびTMAda+(発明)を使用したCHA調製。
上記の仮説については、CHA合成中に、TMAda+と一緒に、アルカリSDAカチオンとしてNa+の代わりにK+を利用することによって、さらに精査した。K+は、特定の結晶相(例えば、BEA、MFIなど)の形成を抑制し、また、有機SDAの非存在下でFAU前駆体からの低シリカCHA(Si/Al<5)の結晶化を促進し、高濃度の種結晶(約10重量%のSiO2シード)を使用せずにNa+のみを使用してアクセスできない変換を促進することが知られている。これらの観察結果は、K+が、CHA骨格の方へと結晶化を導く可能性があることを示唆しているが、Al配列への影響における役割に関しては、おそらくNa+とは異なる結果をもたらす。TMAda+の存在下で結晶化した高シリカCHA(Si/Al=15)におけるAlの配列に関するK+の影響を、異なるNa+/TMAda+比を使用してCHAを合成するための以前に報告された手順(参照により完全に本明細書に組み込まれるDi Iorio,J.R.;Gounder,R.Chem.Mater.2016,28,2236-2247)を適応させことによって、但し、合成溶液中のNaOHをKOHに置換することによって、調査した。
【0326】
1 SiO2/0.033 Al2O3/X TMAdaOH/0.5*(0.5-X)K2O/44 H2Oの合成モル比を、15のCHA型ゼオライトSARについて使用した。K+のTMAda+に対する比を、Xの値を0~0.5の間で変化させることによって制御した。典型的な合成では、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)ジャーにおいて、TMAdaOH水溶液(25重量%、Sachem)の所望の量を、脱イオンH2O(18.2MΩ)に添加することと、その溶液を、蓋をして、周囲条件下で5分間、撹拌することと、を含んでいた。次いで、Al(OH)3(98重量%、SPI Pharma)および5M水酸化カリウム溶液(KOH:脱イオン水中21.9重量%のKOH、98重量%のKOHペレット、Alfa Aesar)を、TMAdaOH水溶液に添加し、当該混合物を、周囲条件下で蓋をして15分間撹拌し、内容物を均質化させた。最後に、その混合物に、コロイダルシリカ(Ludox HS40、40重量%、Sigma Aldrich)を添加し、蓋をして、周囲条件下で2時間撹拌した。すべての合成試薬は、さらに精製することなく使用した。次いで、その合成溶液を、45mlのテフロン(登録商標)で裏打ちされたステンレス鋼オートクレーブ(Parr Instruments)に移し、160℃の強制対流オーブン(Yamato DKN-402C)に入れ、約40RPMで6日間回転させました。
【0327】
K
+/TMAda
+≦20を含有する合成媒体は、X線回折(XRD)データに検出可能な相不純物が認められないCHA型ゼオライトをもたらすが(
図7a~h)、K
+/TMAda
+を20を超えて増やすと(K
+/TMAda
+を最大∞)、MFIが形成された。具体的には、
図7a~7hは
、K
+/TMAda
+の比が(a)1、(b)2、(c)3、(d)4、(e)5、(f)10、(g)15、および(h)20で合成されたCHA実施形態のX線回折パターンを提供している。
図8a~dは、Si/Al=15でAl(O-i-Pr)
3を使用して、かつK
+/TMAda
+の比が30、50、100、および無限大における、ゼオライトのXRDパターンを提供している。
図8eは、比較のためにMFI型ゼオライトのXRDを提供している。
【0328】
これは、CHA相への誘導を支援するTMAda+の役割を反映しており、K+だけでは本明細書に開示の合成条件下でCHAを結晶化することはできなかった。予期せぬことに、K+を使用すると、アルカリ源としてNa+を使用したときよりも1桁高いアルカリ/TMAda+比を含有する溶液からCHAを結晶化させることができた(MORはNa/TMAda>2で観察された)。これらの結果は、TMAda+と一緒にco-SDAとして機能する異なるアルカリカチオンの能力を強調しており(Lobo,R.F.;Zones,S.I.;Davis,M.E.Journal of Inclusion Phenomena and Molecular Recognition in Chemistry 1995,21,47-78)、K+およびベンジルモノ-およびジ-アザビシクロ錯体の混合物からのIFR型ゼオライトの合成について以前に示唆されたように(Muraoka et al.,Angewandte Chemie International Edition 2018,130,3804-3808)、他の望ましくない相の形成を抑制するK+の傾向を反映しているように思われる。
【0329】
K
+/TMAda
+<10で合成されたCHAゼオライトのSEM顕微鏡写真(
図9a~9h)は、サイズが4~8μmの範囲の立方晶でからなっており、同様の組成であったた(表2)。
図9a~9hを参照すると、(a)1、(b)2、(c)3、(d)4、(e)5、(f)10、(g)15、および(h)20のK
+/TMAda
+比で合成されたCHAを倍率1300倍で撮影したSEM顕微鏡写真が提供されている。しかしながら、K
+/TMAda
+>10で合成されたCHAは、サイズと組成が著しく区別される2つの異なる結晶性CHA相の混合物で構成されており(表2)、低シリカKリッチのCHA相(Si/Al<7、K
+/Al>1.5)が、K
+/TMAda
+<10(Si/Al>10、K
+/Al<0.70)を含有する合成溶液からの主要な結晶生成物である高シリカCHA相と並行して、形成し始めることを示している。
【表2】
【0330】
この観察結果は、K
+/TMAda
+<10で合成されたCHAは、ほとんど純相な高シリカCHAであったが、K
+/TMAda
+=20を含有する溶液から合成された材料の67%のみが高シリカCHA相で構成されていたことを示しているX線回折(XRD)データを精緻化したものと一致していた。表3は、粉末X線回折によって決定されたK
+/TMAda
+比が2、10、および20の実施形態について決定されたパラメーターを提供している。EDXによるこれら2つの異なるCHA相の元素分析は、高シリカCHA相がK
+/TMAda
+<10で合成された他のCHAサンプルと同様の元素組成を有していたことを示した(表2および
図10)。
【表3】
【0331】
K
+を使用して合成されたほとんどすべてのCHA型ゼオライトには、大きなメソ細孔の形成であると思われる目に見える欠陥が含有されており(
図11aおよび11b~18aおよび18b)、それは、アルカリなし(TMAda
+のみ)で、またはNa
+およびTMAda
+の混合物を使用して合成されたCHAでは観察されなかった。Arの吸脱着等温線(87°K)により、K
+/TMAda
+=2で合成されたCHAは、TMAda
+およびNa
+の異なる混合物(0.19cm
3g
-1)で合成されたCHAと同様のミクロ細孔容積を有し、脱着ヒステリシスがないことから明らかなように、メソ細孔を含有していなかった、ことが明らかになった(
図19)。
【0332】
K
+/TMAda
+=15で合成されたCHAは、CHAで予想されるよりも有意に低いArミクロ細孔容積(0.06cm
3g
-1)を有し、H4型の脱着ヒステリシス(約0.4のP/P
0でステップダウン、
図20)を示し、それは、過剰なカチオン電荷密度(K
+/Al>1、表3)から、または二次相内の吸着から導入された欠陥によっておそらく形成された無秩序なメソ細孔の存在を示した。この一連のデータは、CHA型ゼオライトの結晶化中のK
+の役割が、Na
+の役割とは異なり、結晶化中の吸蔵(occlusion)がTMAda
+を置き換えず(
図21a)、結晶性生成物のAl配列に反映された、ことを示唆している。
図21aは、合成媒体中のNa
+/TMAda
+比の関数として、熱重量分析(TGA)によって測定されたCHAケージ1つ当たりのTMAda
+の数(四角)およびAASによって測定されたCHAケージ1つ当たりに保持されたNa
+の量(円)がグラフで示されている。
【0333】
Na
+およびTMAda
+の混合物から結晶化した比較CHAゼオライトは、結晶性生成物内に保持された残留Na
+の量に関係なく、ケージ1つ当たり1つのTMAda
+(約20~22重量%の有機)を含有していた(
図21a)が、K
+およびTMAda
+の混合物から結晶化した本発明のゼオライトは、結晶性CHA生成物に保持されたK
+の量が増加するにつれて、CHAケージ1つ当たりのTMAda
+の占有率は、整然と減少する、ことを示した(
図21b、表2)。
図21bは、CHAケージ1つ当たりのTMAda
+数(正方形)およびCHAケージ1つ当たり保持されたK
+の量(円)を、合成培地のK
+/TMAda
+比の関数としてグラフで示してある。
【0334】
理論に束縛されることを望まないが、結晶性CHA生成物においてTMAda
+とK
+との間に観察された負の相関は、3つのK
+カチオンが、単一のTMAda
+をCHAケージから置き換えること、およびK+が、単位格子当たり約2つのTMAda
+の最大限度までCHA骨格の安定化を助けることを示唆している(
図21c)。
図21cは、結晶性CHA生成物に保持されたK
+(四角)またはNa
+(円形)の量の関数としての、CHAケージ1つ当たりのTMAda
+の数のグラフ図を提供している。破線(傾き約1/3)および点線(傾き約0)は、それぞれ、K
+(四角)およびNa
+(丸)のデータセットへの回帰である。
【0335】
総Al含有量はK
+含有量の増加とともに増加したが(表2)、骨格のアニオン電荷と比較して、過剰なカチオン電荷の存在(例えば、(K
++TMAda
+)/Al>1、表4)は、K
+カチオンを使用して合成されたCHAの過剰な骨格外電荷を補償するために、アニオン性格子欠陥の形成が必要であったことを示唆している(表4)。表4は、Al1個当たりの総K
+およびTMAda
+含有量、結晶性ゼオライト生成物の総カチオン電荷((K
++TMAda
+)/Al)、H
+/Al比、およびK
+/TMAda
+=1~20で合成されたCHAゼオライトの格子欠陥の推定数を提供している。水性NH
4
+イオン交換によるプロトンの滴定は、K
+/TMAda
+<10で合成されたCHA型ゼオライトが、骨格位置にほとんどすべてのAlを含有していることを示したが、K
+/TMAda
+比をさらに増やすと、水和したNH
4+カチオンにアクセスできないAlの割合が高くなった。それは、おそらく、K
+/TMAda
+>10で合成されたCHAにおける細孔閉塞、または骨格外Al部位の形成を反映している(表4)。
【表4】
【0336】
結晶性生成物に保持されたNa
+の総量が増加するにつれて、Na
+で合成されたCHA中のCo
2+滴定によって定量化されるペアAl部位の数(6-MR中の2個のAl)が増加することが以前に報告されている(Di Iorio,J.R.;Gounder,R.Chem.Mater.2016,28,2236-2247;et al.,ACS Catal.2017,7,6663-6674)。対照的に、結晶化後に保持されたK
+の総量は、Alペアの数と相関していなかった(表2)。合成媒体中のK
+/TMAda比が低い(K
+/TMAda<2)と、K
+の吸蔵により、少量のペアAl部位が形成されたが、Na
+およびTMAda
+(Co/Al=0.10)の混合物で合成されたCHAについて以前に報告された量よりも少ない量であった(Co/Al=0.05)。合成溶液中のK
+/TMAda
+比が増加すると、結晶生性成物中のK
+のTMAdaに対する比は、整然と増加した(
図21b)。これは、K
+が、CHAにおける同様の空隙についてTMAda
+と競合し、分離Al部位の形成に有利に働いたことを示唆している。この挙動は、Na
+の挙動とは著しく異なっており、それは、ペアAl構成中の2つのアニオン電荷を安定化させるように、TMAda
+によって占有されていない空隙空間内におけるNa
+の吸蔵を反映しているように思われる。これらの結果は、CHA結晶化の間に、異なるAl配列を安定化するための骨格外カチオン性SDAの優先度を反映しており、骨格外Cu
2+およびH
+カチオンがCHA内の異なるAl配列を優先的に安定化するという以前の発見と一致している。
【0337】
実施例3.Na
+およびTMAda
+を使用したCHAゼオライトの大規模調製(比較)。
大規模合成(反応器容量300ml)は、無機SDA(NaOHとして)としてNa
+および有機SDAとしてTMAda
+を使用して、行った。典型的な合成では、オートクレーブのPTFEライナーで計量された脱イオン水に対して所望の量の水酸化ナトリウムを添加することを含む。この溶液を5分間撹拌した。次に、所望の量の20重量%のTMAdaOH溶液(Sachem)を添加し、その混合物を5分間撹拌した。この混合物にアルミニウム源(水酸化アルミニウム)を添加し、30分間撹拌した。最後に、所望の量のコロイダルシリカ(Ludox AS-40)を、この混合物に添加し、60分間撹拌した。この混合物を有するPTFEライナーをオートクレーブに入れ、オートクレーブを密封し、250rpmで撹拌しながら160℃で72時間維持した。表5は、OH/Si比、無機/有機SDA比、合成ゲル中のSi/Al比、水/Si比、および各実験の生成物に関するXRDによって決定された相の結果を提供している。
【表5】
【0338】
実施例4.K
+およびTMAda
+を使用したCHA型ゼオライトの大規模調製(発明)
大規模合成(300mlまたは2Lの反応器)は、無機SDA(KOHとして)としてK
+および有機SDAとしてTMAda
+を使用して、行った。典型的な合成は、オートクレーブのPTFEライナーにおいて計量された脱イオン水に対して所望の量の45重量%の水酸化カリウムを添加することを含む。この溶液を5分間撹拌した。次に、所望の量の20重量%のTMAdaOH溶液(Sachem)を添加し、その混合物を5分間撹拌した。アルミニウム源(AH=水酸化アルミニウム、AIP=アルミニウムイソプロポキシド)を、この混合物に添加し、30分間撹拌した。最後に、所望の量のコロイダルシリカ(Ludox AS-40)を、この混合物に添加し、60分間撹拌した。この混合物を有するPTFEライナーをオートクレーブに入れ、オートクレーブを密封し、250rpmで撹拌しながら160℃で72時間維持した。表6は、OH/Si比、K/TMAda比、合成ゲル中のSi/Al比、水/Si比、および各実験の生成物に関するXRDによって決定された相の結果を提供している。
【表6】
【0339】
一般に、その結果は、有機および無機カチオンが、チャバサイト型ゼオライトの空隙空間内での占有のために共同または競争し、本質的に固定された組成のCHA型ゼオライトにおける骨格Al配列に影響を与え、いくつかの実施形態では、結晶相の連晶(混合ドメイン)をもたらすことを実証した。実験#3では、生成物における第1の相および第2の相の割合は、それぞれ約20~30%および70~80%であると判定された。これらの相の単位格子容積は、2353Å3~2411Å3の範囲であった。
【0340】
本明細書に開示の結果は、骨格Al原子の同様の顕微鏡的配列を有するCHA型ゼオライトが、Alの位置の選定に影響を与える支配的なSDA-骨格相互作用を変更する有機TMAda+とともに異なるアルカリカチオンを使用する合成プロトコルからどのように調製できるかを強調している。Na+は、CHAの6-MR空隙を優先的に占有し、TMAda+の存在下でペアAl部位を安定化し、それらは、より大きなCHAケージ内に吸蔵され、TMAda+のみで安定化され得るよりも局所的により高いアニオン電荷密度(すなわち、ペアAl)の領域を安定化する共同的相互作用を示唆している。
【0341】
K+カチオンは、CHAケージ内の占有についてTMAda+と競争し、最終的には高K+濃度(K+/TMAda+>2)でTMAda+の置換を生じさせ、それは、Na+(Na+/TMAda+>2で形成されたMORの場合)で可能な以上に、合成媒体(K+/TMAda+最大20)中のより高いアルカリ濃度においてCHA骨格を安定化するのを助けた。これらの観察結果は、カチオン性SDAが、高いアニオン電荷密度を含有するゼオライト骨格を安定化する際に果たす様々な役割を反映している可能性がある。K+カチオンは、TMAda+と競争しない、かつペアAl部位の形成を引き起こすNa+とは対照的に、大きなCHAケージ内での占有についてTMAda+との競争の結果として分離Al部位の形成を有利にする。これらの知見は、ゼオライトの結晶化中に有機SDAおよび無機SDAの混合物の共同的かつ競争的な相互作用を調査する方法論を提供し、また調整された吸着および触媒機能を有するゼオライト材料を設計する機会を提供する。
【0342】
実施例5.Cu交換されたCHA型ゼオライトおよびSCR活性
次いで、TMAda
+と、SDA助剤としてのNa
+またはK
+との混合物を使用して合成されたCHA型ゼオライトを、Cu交換し、NH
3によるNO
xの選択的接触還元(SCR)に関する触媒性能を評価するために使用した。表7には、アルカリなしで合成されたCu-CHA型ゼオライトまたはNa
+/TMAda
+=1(比較)、K
+/TMAda
+=2およびK
+/TMAda
+=15(発明)で合成されたCu-CHA型ゼオライトに関する、Cu交換前のH
+/Al、Cu交換後のCu/AlおよびH
+/Al、標準のNH
3-SCR評価(473°K、Cu当たり)、NO、O
2、およびNH
3の反応次数、および見掛けの活性化エネルギーが提供してある。
【表7】
【0343】
NOx SCRのターンオーバー率(Cu当たり、473°K)は、名目上部位分離されたCuカチオンの空間密度(1000Å3当たりのCu)に依存し、同様に、そのようなカチオン性Cu錯体を固定するアニオン性骨格Al原子の配列に依存した。これは、2つの[Cu(NH3)2]+錯体が関わるO2酸化工程を反映しており、それは、局所的な移動度を有するアニオン性骨格Al部位において静電的に拘束され、低温での律速プロセスになる。Cu-CHAゼオライトの安定性は、Cu2+および[CuOH]+錯体の分布にも依存し、それらは、硫黄中毒および熱水エージングによる失活に対する耐性に違いがあるため、ペアおよび分離Al部位でそれぞれ交換する。アルカリSDA助剤としてNa+またはK+のいずれかを用いてTMAda+を使用して合成されたCu交換CHA型ゼオライト(熱水エージング前)は、同様のNOx SCR評価(Cu当たり、473°K)、見掛けの反応物次数(reactant order)、および活性化エネルギーを示し、同様のCu密度を有するCu-CHAに関して以前に報告されたSCR評価(473°K、Cu当たり)と一致していた(Cu per 103Å3;Paolucci et al.,Science 2017,357,898-903)。
【0344】
Na+またはK+/TMAda+<10を使用して合成されたCu-CHAは、熱水エージング(10体積%H2O、1073°K、16時間、表7)後に同程度に失活し、それは、同様のAl配列および総Al取り込み(H+/Al>0.90)を有するCHA骨格の安定性は、合成手順によって影響を受けない、ことを示唆している。K+/TMAda+=15で合成されたCu-CHAは、熱水エージング後に、より激しい失活を示し、それは、おそらく、K+/TMAda+>10で調製されたCHA型ゼオライトの非常に欠陥のある性質を反映しており、それは、1よりも少ないH+/Alカウントと、低いアルカリ/TMAda+比で、またはアルカリを含んでいない結晶化媒体で調製されたCHAから有意に逸脱したミクロ細孔容積と、を含有していた。
【0345】
これらの結果は、有機TMAda+カチオンの存在下でAlの取り込みを導く際に、異なるアルカリが果たすと思われる多種多様な役割にもかかわらず、SCR性能に検出可能な変化を与えることなくCHA型ゼオライトを合成するために異なるアルカリカチオンが使用され得ることを示唆している。最終的に、理論に束縛されることを望まないが、この結果は、アルカリカチオンの主な役割が、骨格と、Alの位置の選定に影響を与える吸蔵された構造指向剤との間の相互作用を改変すること、にあることを示唆している。
【0346】
II.フレーク状CHA型ゼオライト
一般的なCHA型ゼオライト合成手順
いくつかの比較および発明のCHA型ゼオライト(以下の実施例6~9)は、アルミニウム源として水酸化アルミニウム(AH)またはアルミニウムイソプロポキシド(AP)のいずれか、ケイ素源としてコロイダルシリカ(AS-40、40重量%のSiO2)、無機構造指向剤(SDA)として水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、および有機構造指向剤(OSDA)としてトリメチル-1-アダマンチルアンモニウムヒドロキシド(TMAdaOH)を使用して、合成した。当該手順は、オートクレーブの内容物が結晶化の継続時間全体にわたって撹拌されたことを除いて、参照により完全に本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0107114号の開示に従って概して実施した。
【0347】
各合成ゲルの組成および結晶化条件を表8に提供する。結晶化後、合成ゲルを濾過し、ゼオライト生成物を脱イオン水で洗浄し、540℃で空気中で焼成した。
【表8】
【0348】
実施例6.角が切り取られた立方晶を有するCHA(比較)。
一般的な手順に従って、比較のCHA型ゼオライトを合成した。このCHA型ゼオライトのSEM画像は
図22aに提供してあり、これは、角が切り取られた立方晶の形態を示している。
【0349】
実施例7.立方晶の集合体を有するCHA(比較)。
一般的な手順に従って、比較のCHA型ゼオライトを合成した。このCHA型ゼオライトのSEM画像は
図22bに提供してあり、これは、球状の形態に集合した立方晶の形態を示している。
【0350】
実施例8.主にフレーク状形態を有するCHA(発明)。
一般的な手順に従って、発明のCHA型ゼオライトを合成した。このCHA型ゼオライトのSEM画像は
図22cに提供してあり、これは、いくつかの立方晶が存在するフレーク状形態を示している。
【0351】
実施例9.主にフレーク状形態を有するCHA(発明)。
一般的な手順に従って、発明のCHA型ゼオライトを合成した。このCHA型ゼオライトのSEM画像は
図22dに提供してあり、これは、いくつかの立方晶が存在するフレーク状形態を示している。単一のフレークに関するSEM画像(
図22d)およびTEM画像(
図23)の両方が、これらのフレークは、構造が硬質ではなく、曲がる/折り重なることができることを示した。
【0352】
図24は、フレーク状ゼオライトに関するTEM単一領域回折パターン(SADP)を提供しており、材料が結晶質であることを立証している。このパターンの環から誘導されたd-間隔は、
図24の挿入図にリストされており、これらは、この技術の実験誤差の範囲内で、CHA型ゼオライト構造の著しく回折するd-間隔と一致している。0.94nmのd-間隔に対応する環(CHA結晶構造の(100)面に対応)は、実験で使用されたビームストップからの散乱によってマスクされたように見える。
【0353】
実施例10.X線回折(XRD)パターン
実施例6~9に記載された材料に関するXRDパターンは、それぞれ
図25a~25dに提供してあり、各材料のCHA結晶構造を立証している。実施例8および9の発明の材料(それぞれ
図25cおよび25d)の場合、XRDは、特により高い角度(15~40°)で、ピーク異方性を示す。
【0354】
実施例11.形態の元素組成。
発明の実施例8および9のサンプルを、エネルギー分散型X線分光法(EDS)によって分析した。具体的には、各サンプルに存在する立方晶およびフレーク状結晶上の複数の点を分析して、Si、Al、Na、およびKの平均した多点相対濃度を提供した。これらのデータを表9に提供する。
【表9】
【0355】
実施例12.フレーク状結晶の寸法。
実施例8および9のサンプルのフレーク状結晶の平均寸法は、高倍率(20,000倍)でのSEM画像から得られた複数の測定値から判定した。フレークの寸法は高度に変動した。フレークの折り畳み、重なり、および裂けにより、測定値を正確に取得することは困難であった。各サンプルの平均寸法を表10に提供する。これらの値は推定されたものであり、限定と見なすべきではないが、データは、一般に、発明の材料が、長さおよび幅に対して非常に薄い縦断面を有し、フレーク状形態と一致することを示した。両方のサンプルにおいて、長い方の寸法で1.5μmを超えるフレークはほとんど観察されなかった。
【表10】
【0356】
平均フレーク厚(Z)測定値は、実施例8および9のサンプルについて、それぞれ0.021□mおよび0.025□mであった。フレークは、このデータが示唆するよりも薄い可能性があるが、方向、折り畳み、および画像解像度に起因して、厚さを十分に解像できないと考えられる。
【0357】
実施例13.立方晶対フレーク状形態の分布
実施例8および9のサンプル中のフレークのパーセンテージの推定は、個々の結晶(フレークおよび立方晶)に関するSEM-EDSからの組成情報を、全体的な組成測定と組み合わせることによって行った。これらのデータを表11に提供する。
【表11】
【0358】
実施例14.SCR性能
SCR物品は、実施例9の組成物を含有するウォッシュコートを使用して調製した。試験前に、触媒性材料を、10%H
2O/空気の存在下、800℃で16時間、エージングした。NO
x転換(
図26)を、200℃から600℃への0.5℃/分の温度勾配で、500ppmのNO、500ppmのNH
3、10%のO
2、5%のH
2O、残りはN
2のガス混合物中で、疑似定常状態条件下で80,000h
-1のガス1時間当たりの体積ベースの空間速度で実験室用反応器中で測定した。
図26のデータは、当該材料が、一定範囲の温度にわたって良好なNOx変換率を有していたことを示している。
【国際調査報告】