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2022-548198難燃剤組成物および難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】難燃剤組成物および難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/12 20060101AFI20221110BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20221110BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20221110BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20221110BHJP
【FI】
C09K21/12
C08L75/04
C08K5/5399
C08K5/3492
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022507734
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031769
(87)【国際公開番号】W WO2021028999
(87)【国際公開日】2021-02-18
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000149561
【氏名又は名称】大八化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515012136
【氏名又は名称】イタルマッチ ケミカルズ ソチエタ ペル アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】ITALMATCH CHEMICALS S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ズッケーリ, ウゴ
(72)【発明者】
【氏名】モローネ, ヴィンチェンツァ
(72)【発明者】
【氏名】辻 裕志
【テーマコード(参考)】
4H028
4J002
【Fターム(参考)】
4H028AA29
4H028AA38
4H028BA06
4J002CK021
4J002CK031
4J002CK041
4J002CK051
4J002DH059
4J002DJ049
4J002EJ028
4J002EJ038
4J002EU187
4J002EU189
4J002EW049
4J002EW068
4J002EW156
4J002FD019
4J002FD059
4J002FD078
4J002FD099
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD139
4J002FD149
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、難燃性に優れた難燃剤組成物および熱可塑性ポリウレタン組成物を提供する。特定の構造を有するホスホロアミデート化合物(成分(B))およびトリアジン系化合物(成分(C))を難燃剤組成物および難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物のための難燃剤として使用する。1つの実施形態において、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(成分(A))、ホスホロアミデート化合物(成分(B))およびトリアジン系化合物(成分(C))を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物を含む難燃剤組成物であって、
ここで、該ホスホロアミデート化合物は、一般式(I):
【化21】

によって表され、
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R11およびR12はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R13は炭素数1~6のアルキレン基であり、Bは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、Aは水素原子または一般式(II):
【化22】

で表される有機基であり、
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R14およびR15はそれぞれ独立して炭素数が1~3のアルキレン基であり、Bは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、そして
ここで、Aが水素原子であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとR13-Aとが結合して、一般式(I)中の窒素原子と一緒になって含窒素複素環を形成してもよく、そして
Aが一般式(II)で表される有機基であり、Bが炭素数1~6のアルキル基であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとBとが結合して、一般式(I)中の窒素原子、一般式(II)中の窒素原子およびR13と一緒になって含窒素複素環を形成してもよく、そして
ここで、該トリアジン系化合物が、1,3,5-トリアジン構造もしくは1,3,5-トリアジン縮合環構造を有する化合物またはその塩である、
組成物。
【請求項2】
前記トリアジン系化合物が、メラミン、メラミンの縮合体またはそれらの塩である、請求項1に記載の難燃剤組成物。
【請求項3】
前記トリアジン系化合物がメラミンの塩である、請求項1または2に記載の難燃剤組成物。
【請求項4】
前記トリアジン系化合物がメラミンのシアヌレート塩である、請求項1~3のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【請求項5】
前記一般式(I)において、RおよびRがメチル基であり、そしてR11およびR12がメチレン基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【請求項6】
前記一般式(I)において、Aが一般式(II)で表される有機基であり、RおよびRがメチル基であり、そしてR14およびR15がメチレン基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【請求項7】
前記一般式(I)において、R13が炭素数1~2のアルキレン基である、請求項6に記載の難燃剤組成物。
【請求項8】
前記一般式(I)において、BおよびBが水素原子である、請求項6または7に記載の難燃剤組成物。
【請求項9】
前記ホスホロアミデート化合物が、以下の式(4):
【化23】

で表される、請求項6~8のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【請求項10】
前記ホスホロアミデート化合物:前記トリアジン系化合物の質量比が1:9~9:1である、請求項1~9のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【請求項11】
熱可塑性ポリウレタン樹脂、および
請求項1~10のいずれか1項に記載の難燃剤組成物
を含む、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンまたはポリカーボネートポリウレタンを含む、請求項11に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項13】
前記難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の前記ホスホロアミデート化合物および前記トリアジン系化合物の合計量が7~50質量%である、請求項11または12に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項14】
酸化防止剤をさらに含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【請求項15】
他の添加剤をさらに含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた難燃性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物および熱可塑性ポリウレタン樹脂用の難燃剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートとポリオールとの反応に基づく材料であり、ポリオールおよびイソシアネートの化学構造および組み合わせの比率に応じて非常に異なる性能を有する。一般的な区別として、ポリウレタンは、形成方法に応じて、熱硬化性ポリウレタン(TSU)および熱可塑性ポリウレタン(TPU)に分けられる。TPUの大部分は重合によって製造されてペレット形状が得られ、これをさらに押出または射出することができる。ここで、TSUは、液体プレポリマーを成形機中に混合しそして特定の時間、硬化のために加熱することによって製造される。本発明は射出成形または押出成形に使用され得るTPU用の難燃性組成物に関する。TPUの性質は、使用されるポリオールによって影響され、それはポリエステル型、ポリエーテル型またはポリカーボネート型であり得る。ポリエステルTPUとポリエーテルTPUは、原料の革新と市場ニーズのために最も一般的である。ポリエーテルTPUをベースとする難燃剤は、それらの可撓性および加水分解安定性のために、ワイヤおよびケーブルの被覆および一次絶縁に使用されてきた。これらの製品では、厳しい燃焼要件を満たすために難燃剤を添加する必要がある。熱可塑性ポリウレタンは、炎または熱源にさらされると、低分子量の溶融物質に分解し、それは容易に発火しそして燃え上がる滴とともに滴下する。
【0003】
難燃剤の有効性を実証するために重要な特性は、UL-94試験「Flammability of plastic materials for parts in device and appliances(装置および器具の部品のためのプラスチック材料の燃焼性)」であり、これは、熱可塑性ポリウレタン組成物の消火能力および滴下挙動を評価する。可能な等級はV0、V1、およびV2である。最良の等級V0を達成するためには、サンプルは着火後最大10秒間燃焼し、そして試験片の下に置かれた綿を発火させることができる炎焼滴下物を滴下させない。V2等級では、炎焼滴下物は許容される。
【0004】
TPU化合物の難燃性を評価するための他のパラメータは、限界酸素指数(LOI)である。LOIは、ASTM D2863「Standard Test Method for Measuring the Minimum Oxygen Concentration to Support Candle-Like Combustion of Plastics(プラスチックのろうそくのような燃焼を維持するための最小酸素濃度を測定するための標準試験方法)」によれば、ろうそくのような形状において特定の条件下でサンプルが燃焼を持続することを可能にする酸素の最小百分率である。LOIの高い値は高いレベルの難燃性を意味する。純粋なTPU樹脂は21~23の範囲のLOI値を有する。難燃性(FR)TPUグレードは、24を超えるLOI値を示す。
【0005】
ワイヤおよびケーブル用途については、TPU組成物は78~98、好ましくは85~95のショアAデュロメーターを有するべきである。TPU組成物は軟質である。そのため、UL-94試験でV-0等級および高いLOIを軟質のTPUで達成することは、より困難である。
【0006】
24を超えるLOIおよびUL-94 V0等級を有する上記のFR TPUは、ほとんどの場合、たとえばIEC 60332-1「垂直炎試験」またはUL VW-1(UL 1581 セクション1080「垂直燃焼試験のための規格」など)またはCSA FT-1(CSA C22.2 No.0.3-92「電線およびケーブルの試験方法」)のようなケーブルの火炎試験に合格できる。
【0007】
ハロゲン化合物は、単独でまたは金属酸化物と組み合わせて、難燃性ポリウレタン熱可塑性ポリマーを製造するために一般的に使用されている。
【0008】
しかしながら、ハロゲンは、煙濃度と腐食の問題を与える。厳格な火炎試験に合格することができそして必要とされる十分な電気的および機械的性質を示すハロゲンフリー組成物を見出すためにいくつかの研究が行われた。
【0009】
窒素ベースの化合物またはリンベースの化合物、多価水酸基化合物、充填剤、特にタルクまたはそれらの混合物を用いて難燃化された多くのハロゲンフリーのTPU配合物が当該技術分野において知られている。
【0010】
窒素とリンの間に共有結合を含む化合物の新しいファミリー、ホスホンアミデートおよびホスホロアミデート化合物は選択肢である。
【0011】
ホスホンアミデート化合物の例は、アミノ置換DOPO(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-ホスファフェントレン-10-オキシド)誘導体である。国際公開第2013/020696号に報告されているように、それらは、様々な熱可塑性ポリマーに対して、そして特にポリウレタンフォームに対して良好な難燃特性を有する。
【0012】
エンジニアリング熱可塑性プラスチックにおけるホスホロアミデート化合物の多くの用途が当該技術分野において知られている。例えば、ポリエステルについて国際公開第2003/048247号、PC、PPE、ポリスチレンについて米国特許第5973041号および米国特許第6221939号、PC/ABSについて欧州特許出願公開第1067153号を参照のこと。
【0013】
国際公開第2009/153034号および欧州特許出願公開第2481744号によれば、アルキルまたはアリールホスホロアミデート化合物は、綿およびビスコース繊維およびフィルムを難燃化するために使用される。
【0014】
メラミンなどの他の難燃添加剤と組み合わせた環式ホスホロアミドエステル化合物で難燃化されたポリウレタン(PU)フォーム配合物の例は、米国特許出願公開第2010/0063169号に報告されている。PUフォームおよびPUエラストマーのための良好な難燃性を有する特定の構造を有するホスホロアミデート化合物は、米国特許第9988510号に開示されている。さらに、テキスタイルのコーティングまたは裏面コーティングのためのまたは合成皮革のポリウレタン樹脂組成物のための、特定の構造を有するホスホロアミデート化合物を有する難燃化された水性樹脂組成物の例は、米国特許第10000625号に開示されている。
【0015】
難燃剤としてメラミンシアヌレートのみを有するポリウレタン熱可塑性樹脂組成物は、国際公開第2003/066723号に開示されている。
【0016】
米国特許第5837760号は、有機ホスフェートまたはホスホネートの1種類以上をメラミン誘導体とともに混合された自己消火性難燃性TPUを特許請求の範囲に記載している。
【0017】
国際公開第2009/086035号によれば、TPUの難燃性はホスフィネート、ジペンタエリスリトール、メラミン誘導体およびタルクの混合物によって達成された。
【0018】
国際公開第2014/179092号において、無機ホスフィン酸アルミニウム、メラミン誘導体、多価アルコールおよびタルクを含む1種類以上の充填剤の混合物を用いたTPU配合物が開示されている。
【0019】
米国特許出願公開第2018/0273727号は、無機リン系難燃剤を含みそしてさらに膨張性グラファイト、メラミンまたは有機リン難燃剤の誘導体を含むTPU組成物を開示する。
【0020】
上記の特許は全て、最少で25質量%、または好ましくは最少で30質量%の合計難燃性添加剤含有量を特許請求の範囲に記載している。
【0021】
ハロゲンフリーTPUのための技術水準の解決法が満足な難燃性能を示すにもかかわらず、当該TPUの物理的および機械的性質および加工挙動は比較的高い添加剤含有量により悪影響を受けている。
したがって、必要とする添加レベルがより低い、新規でかつより効率的な難燃剤解決策の要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2013/020696号
【特許文献2】国際公開第2003/048247号
【特許文献3】米国特許第5973041号
【特許文献4】米国特許第6221939号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1067153号
【特許文献6】国際公開第2009/153034号
【特許文献7】欧州特許出願公開第2481744号
【特許文献8】米国特許第9988510号
【特許文献9】米国特許第10000625号
【特許文献10】国際公開第2003/066723号
【特許文献11】米国特許第5837760号
【特許文献12】国際公開第2009/086035号
【特許文献13】国際公開第2014/179092号
【特許文献14】米国特許出願公開第2018/0273727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の主な目的は、難燃性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物および熱可塑性ポリウレタン樹脂のための難燃剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意研究した結果、優れた難燃性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物および熱可塑性ポリウレタン樹脂のための難燃剤組成物を見出した。
【0025】
例えば、本発明は、下記の難燃性熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物等を提供する。
【0026】
(項1)
ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物を含む難燃剤組成物であって、
ここで、該ホスホロアミデート化合物は、一般式(I):
【化1】

によって表され、
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R11およびR12はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R13は炭素数1~6のアルキレン基であり、Bは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、Aは水素原子または一般式(II):
【化2】

で表される有機基であり、
ここで、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R14およびR15はそれぞれ独立して炭素数が1~3のアルキレン基であり、Bは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、そして
ここで、Aが水素原子であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとR13-Aとが結合して、一般式(I)中の窒素原子と一緒になって含窒素複素環を形成してもよく、そして
Aが一般式(II)で表される有機基であり、Bが炭素数1~6のアルキル基であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとBとが結合して、一般式(I)中の窒素原子、一般式(II)中の窒素原子およびR13と一緒になって含窒素複素環を形成してもよく、そして
ここで、該トリアジン系化合物が、1,3,5-トリアジン構造もしくは1,3,5-トリアジン縮合環構造を有する化合物またはその塩である、
組成物。
【0027】
(項2)
前記トリアジン系化合物が、メラミン、メラミンの縮合体またはそれらの塩である、上記項1に記載の難燃剤組成物。
【0028】
(項3)
前記トリアジン系化合物がメラミンの塩である、上記項1または2に記載の難燃剤組成物。
【0029】
(項4)
前記トリアジン系化合物がメラミンのシアヌレート塩である、上記項1~3のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0030】
(項5)
前記一般式(I)において、RおよびRがメチル基であり、そしてR11およびR12がメチレン基である、上記項1~4のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0031】
(項6)
前記一般式(I)において、Aが一般式(II)で表される有機基であり、RおよびRがメチル基であり、そしてR14およびR15がメチレン基である、上記項1~5のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0032】
(項7)
前記一般式(I)において、R13が炭素数1~2のアルキレン基である、上記項6に記載の難燃剤組成物。
【0033】
(項8)
前記一般式(I)において、BおよびBが水素原子である、上記項6または7に記載の難燃剤組成物。
【0034】
(項9)
前記ホスホロアミデート化合物が、以下の式(4):
【化3】

で表される、上記項6~8のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0035】
(項10)
前記ホスホロアミデート化合物:前記トリアジン系化合物の質量比が1:9~9:1である、上記項1~9のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0036】
(項11)
熱可塑性ポリウレタン樹脂、および
上記項1~10のいずれか1項に記載の難燃剤組成物
を含む、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【0037】
(項12)
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンまたはポリカーボネートポリウレタンを含む、上記項11に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【0038】
(項13)
前記難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の前記ホスホロアミデート化合物および前記トリアジン系化合物の合計量が7~50質量%である、上記項11または12に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【0039】
(項14)
酸化防止剤をさらに含む、上記項11~13のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【0040】
(項15)
他の添加剤をさらに含む、上記項11~14のいずれか1項に記載の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物。
【0041】
1つの実施形態において、本発明は、以下に記載する難燃性熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物などを提供する。
【0042】
(項A1)
一般式(I):
【化4】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R11およびR12はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R13は炭素数1~6のアルキレン基であり、Bは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、Aは水素原子または一般式(II):
【化5】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または炭素数が1~3のアルキル基であり、R14およびR15はそれぞれ独立して炭素数が1~3のアルキレン基であり、Bは水素原子または炭素数1~6のアルキル基である)で表される有機基であり、そして
ここで、Aが水素原子であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとR13-Aとが結合して、一般式(I)中の窒素原子と一緒になって含窒素複素環を形成してもよく、
Aが一般式(II)で表される有機基であり、Bが炭素数1~6のアルキル基であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとBとが結合して、一般式(I)中の窒素原子、一般式(II)中の窒素原子およびR13と一緒になって含窒素複素環を形成してもよい。]
で表されるホスホロアミデート化合物を含む難燃剤組成物であって、
ここで、該組成物は、さらに、
熱可塑性ポリウレタン樹脂;または
トリアジン系化合物
を含み、そして
ここで、該トリアジン系化合物が、1,3,5-トリアジン構造もしくは1,3,5-トリアジン縮合環構造を有する化合物またはその塩である、
組成物。
【0043】
(項A2)
前記組成物が前記トリアジン系化合物を含む、項A1に記載の難燃剤組成物。
【0044】
(項A3)
前記トリアジン系化合物が、メラミンの塩またはメラミンの縮合体である、項A2に記載の難燃剤組成物。
【0045】
(項A4)
前記トリアジン系化合物がメラミンの塩である、項A2に記載の難燃剤組成物。
【0046】
(項A5)
前記トリアジン系化合物がメラミンのシアヌレート塩である、項A2に記載の難燃剤組成物。
【0047】
(項A6)
前記一般式(I)において、RおよびRがメチル基であり、R11およびR12がメチレン基である項A1~A5のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0048】
(項A7)
前記一般式(I)において、Aが一般式(II)で表される有機基であり、RおよびRがメチル基であり、R14およびR15がメチレン基である項A1~A6のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0049】
(項A8)
前記一般式(I)において、R13が炭素数1~2のアルキレン基である項A7に記載の難燃剤組成物。
【0050】
(項A9)
前記一般式(I)において、BおよびBが水素原子である項A7またはA8に記載の難燃剤組成物。
【0051】
(項A10)
前記ホスホロアミデート化合物が、以下の式(4):
【化6】

で表される、項A1~A9のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0052】
(項A11)
前記組成物が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、そして該熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンまたはポリカーボネートポリウレタンを含む、項A1~A10のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0053】
(項A12)
前記組成物中の前記ホスホロアミデート化合物の量が7~30質量%である、項A1~A11のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0054】
(項A13)
前記組成物中の前記ホスホロアミデート化合物の量が7~15質量%である、項A1~A12のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0055】
(項A14)
前記組成物が熱可塑性ポリウレタン樹脂を含み、そして該組成物中の該熱可塑性ポリウレタン樹脂の量が70~90質量%であり、そして該組成物中の前記ホスホロアミデート化合物の量が7~30質量%である、項A1~A12のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0056】
(項A15)
前記組成物が前記トリアジン系化合物を含み、該組成物中の前記ホスホロアミデート化合物の量が7~30質量%であり、そして該組成物中の該トリアジン系化合物の量が3~25質量%である、項A1~A14のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0057】
(項A16)
前記組成物が前記トリアジン系化合物を含み、該組成物中の前記ホスホロアミデート化合物の量が7~15質量%であり、そして該組成物中の該トリアジン系化合物の量が3~15質量%である、項A1~A15のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0058】
(項A17)
前記組成物が前記トリアジン系化合物を含み、そして前記ホスホロアミデート化合物:該トリアジン系化合物の質量比が9:1~1:9である、項A1~A16のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0059】
(項A18)
前記組成物が前記トリアジン系化合物を含み、そして前記ホスホロアミデート化合物:該トリアジン系化合物の質量比が3:1~1:3である、項A1~A17のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0060】
(項A19)
さらにタルクを含む、項A1~A18のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0061】
(項A20)
前記組成物が以下の性能:
a)V0のUL-94等級;または
b)24よりも高いLOI
を有する、項A1~A19のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0062】
(項A21)
前記組成物がマスターバッチである、項A1~A20のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0063】
(項A22)
前記組成物が成形された製品である、項A1~A20のいずれか1項に記載の難燃剤組成物。
【0064】
本発明の1つの実施形態においては、例えば、以下の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物等が提供される。
【0065】
(項B1)
以下を含む難燃性熱可塑性組成物。
a)熱可塑性ポリウレタン樹脂;
b)一般式(IV)または(V)で表される環状ホスホロアミデート化合物:
【化7】

【化8】

[ここで、
・R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1~3のアルキル基であり、
・R11、R12、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基であり、
・BおよびBは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、
・R13は、炭素数1~6のアルキレン基であり、そして
・R17は、炭素数2~12のアルキレン基である。];および
c)必要に応じてトリアジン系化合物。
【0066】
(項B2)
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂が、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンおよびポリカーボネートポリウレタンまたはそれらの混合物から選択されることを特徴とする、項B1に記載の組成物。
【0067】
(項B3)
前記環状ホスホロアミデート化合物が一般式(4)
【化9】

で特定されることを特徴とする、項B1に記載の組成物。
【0068】
(項B4)
前記トリアジン系化合物が、メラミンシアヌレート、メラミン、メラミン縮合体またはそれらの混合物であることを特徴とする、項B1に記載の組成物。
【0069】
(項B5)
前記トリアジン系化合物がメラミンシアヌレートであることを特徴とする項B1に記載の組成物。
【0070】
(項B6)
以下を含む難燃性熱可塑性組成物:
a)ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンおよびポリカーボネートポリウレタン、またはそれらの混合物から選択される熱可塑性ポリウレタン、70~90質量%;
b)上記一般式(4)の化合物、5質量%~30質量%;
c)メラミンシアヌレートまたはメラミンまたはメラミン縮合体またはそれらの混合物、0質量%~25質量%;および
d)必要に応じて0質量%~10質量%の他の添加剤。
【0071】
(項B7)
以下:
a)10~90質量%の濃度の上記一般式(4)の化合物;および
b)10~90質量%の濃度の、メラミンシアヌレートまたはメラミンまたはメラミン縮合体またはそれらの混合物
を含む、押出成形材料、射出成形または押出製品のためのポリウレタン樹脂を難燃化するのに有用な難燃剤粉末混合物であって、
ここで、2つの成分a)とb)の比は9:1から1:9であり、そしてより好ましくは3:1から1:3である、
難燃剤粉末混合物。
【0072】
(項B8)
難燃性熱可塑性組成物であって、該組成物の総質量に対して以下:
a)ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンおよびポリカーボネートポリウレタン、またはそれらの混合物の中から選択される熱可塑性ポリウレタン、70~95質量%、またはより好ましくは75~90質量%;
b)項B7に記載の難燃剤混合物、5~30質量%、またはより好ましくは10~25質量%;および
c)必要に応じて0%~10質量%の他の添加剤
を含む、組成物。
【0073】
(項B9)
組成物の総質量に対して以下:
a)ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタンおよびポリカーボネートポリウレタンまたはそれらの混合物の中から選択される熱可塑性ポリウレタン、30~70質量%;
b)70~30質量%の項B7に記載の難燃剤粉末混合物;および
c)必要に応じて他の添加剤、例えば、タルクなどの充填剤、0~20質量%
を含む、押出成形材料、射出成形または押出製品用のポリウレタン樹脂を難燃化するのに有用なペレット形状の熱可塑性プラスチック濃縮物またはマスターバッチ。
【0074】
(項B10)
前記難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物が以下の性能を有する、項B8に記載の組成物。
a)V0のUL-94等級;および
b)24よりも高いLOI値。
【発明の効果】
【0075】
本発明は、優れた難燃性を有する熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【0076】
本発明の1つの実施形態において、本発明の目的は、ホスホロアミデート化合物とトリアジン系化合物(例えば、メラミンシアヌレートまたはメラミンまたはメラミンの縮合体など)との混合物に基づく、低濃度で有効な難燃性添加剤を提供することである。
【0077】
本発明の1つの実施形態において、TPU用の効率的な難燃剤系は、以下の性能を有する難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物を達成し得る。
a)UL-94で1.6mmの厚さでのV0等級、および
b)24よりも高いLOI値。
【0078】
本発明の1つの実施形態によれば、低濃度の難燃添加剤は、全組成物に対して25質量%未満、またはより好ましくは15質量%未満を意味する。
【0079】
本発明の1つの実施形態において、適切なTPUは、ポリエーテルTPU、ポリエステルTPU、ポリカーボネートTPUまたはそれらの組み合わせを含み得る。ポリエーテルTPUが特に好ましい。これらのTPUは重合工程で形成されてそして押出機に添加されてもよく、あるいは加熱した押出機に反応剤が実質的に同時に一緒に添加されてもよい。収率を改善するためにまたは反応の温度および時間を低減するためにウレタン触媒が添加され得る。本発明による難燃剤の量は、TPUの硬度および種類に応じて変動し得ることに留意することが重要である。
【0080】
好ましいホスホロアミデート化合物は二環式ホスホロアミドである。1つの実施形態において、粒径分布は、ケーブル押出成形材料に適しており、0.5μm~60μm、より好ましくは1μm~40μmの平均粒径を有する。粒度分布曲線は、単峰性、二峰性または多峰性であり得る。
【0081】
本発明の他の目的は、ホスホロアミデート化合物と、トリアジン系化合物(例えば、メラミンシアヌレート、メラミン、メラミン縮合体またはそれらの混合物など)とのドライブレンドから構成される難燃剤混合物である。
【0082】
好ましいトリアジン系化合物は、メラミンフリー含有量(<0.1%メラミン)およびシアヌル酸フリー含有量(<0.15%シアヌル酸)を有するメラミンシアヌレートである。1つの実施形態において、粒径分布は、ケーブル押出成形材料に適しており、0.5μm~60μm、より好ましくは5μm~40μmの平均粒径を有する。粒度分布曲線は、単峰性、二峰性または多峰性であり得る。
【0083】
本発明の1つの目的は、難燃性押出成形材料、射出成形製品または押出製品用のペレット形状の濃縮物またはマスターバッチでもある。1つの実施形態において、マスターバッチは、TPUポリマー、ならびに、ホスホロアミデート化合物、メラミン誘導体化合物、および他の添加剤(例えば、顔料、安定剤および充填剤)の混合物から構成される。1つの実施形態において、添加剤の総濃度の範囲は30質量%~70質量%である。
【0084】
本発明のさらに別の目的は、難燃性射出成形製品または押出製品用のペレット形状の成形材料である。成形材料は、TPUポリマー、ならびにホスホロアミデート化合物、トリアジン系化合物および他の添加剤(例えば、顔料、安定剤および充填剤)の混合物から構成され得る。1つの実施形態において、添加剤の総濃度の範囲は7質量%~50質量%である。
【0085】
本発明のさらなる目的は、一次絶縁または被覆ワイヤおよびケーブルに使用されるペレット形状の難燃性ポリマー組成物またはマスターバッチである。
【発明を実施するための形態】
【0086】
1つの実施形態において、本発明は、以下を含む難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物を提供する。
A)熱可塑性ポリウレタン樹脂;
B)ホスホロアミデート化合物;
C)トリアジン系化合物;
D)必要に応じて、酸化防止剤;および
E)必要に応じて、他の添加剤、例えば加工助剤、顔料、1つ以上のフィラー、例えば、タルク。
1つの実施形態において、成分A)~E)の合計百分率は100質量%である。
【0087】
難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の熱可塑性ポリウレタン樹脂(成分(A))の量は、特に限定されない。例えば、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の熱可塑性ポリウレタン樹脂(成分(A))の量は、好ましくは、40質量%以上であってもよく、より好ましくは、50質量%以上であってもよく、さらに好ましくは、60質量%以上であってもよく、そして特に好ましくは、70質量%以上であってもよい。難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の成分(A)の量は、好ましくは、98質量%以下であってもよく、より好ましくは、95質量%以下であってもよく、そしてさらに好ましくは、90質量%以下であってもよい。必要であれば、この量は、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下または50質量%以下とすることもできる。
【0088】
難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中のホスホロアミデート化合物(成分(B))およびトリアジン系化合物(成分(C))から構成される難燃剤混合物の量は、特に限定されない。1つの実施形態において、難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の成分(B)の量と成分(C)の量の合計は、好ましくは、5質量%以上であり、より好ましくは、7質量%以上であり、そしてさらに好ましくは、10質量%以上である。難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物中の成分(B)の量と成分(C)の量の合計は、好ましくは、50質量%以下であり、より好ましくは、40質量%以下であり、さらに好ましくは、35質量%以下であり、そして特に好ましくは、30質量%以下である。必要であれば、この量は、25質量%以下、20質量%以下、または15質量%以下とすることもできる。
【0089】
1つの実施形態において、成分(B)の量と成分(C)の量との質量比(成分(B):成分(C))は、好ましくは、9:1~1:9であり、より好ましくは、6:1~1:6であり、さらに好ましくは、4:1~1:4であり、そして特に好ましくは、3:1~1:3である。
【0090】
(熱可塑性ポリウレタン樹脂)
以下、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物に用いられる熱可塑性ポリウレタン樹脂について詳細に説明する。
【0091】
本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物においては、公知の任意の熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂を使用することができる。
【0092】
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、従来公知の、ポリオールとイソシアネートの間の重合反応を行うことにより、製造され得る。熱可塑性ポリウレタン樹脂は、市販されている製品もまた利用可能である。
【0093】
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリエーテルポリウレタンであってもよく、ポリエステルポリウレタンであってよく、そしてポリカーボネートポリウレタンであってもよい。
【0094】
(ポリオール)
熱可塑性ポリウレタン樹脂に用いられるポリオールとしては、ポリウレタン樹脂用のポリオールとして公知の各種のポリオールが使用可能である。
【0095】
具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオールなどを用いることができる。ポリウレタン形成の原料として通常使用されるポリオールであれば、ポリオールは特に限定されない。
【0096】
上記ポリオールの内で、ポリエーテルポリオールの好ましい例としては、例えば、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)を骨格分子に付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。付加の方法は、骨格分子に対してランダム共重合のようにアルキレンオキサイドを付加させてもよく、そして骨格分子に対してブロック共重合のようにアルキレンオキサイドを付加させてもよい。
【0097】
ポリエステルポリオールは、多官能カルボン酸と多官能ヒドロキシ化合物との重縮合によって得られる末端に水酸基を有する化合物である。好ましくは、約500~10000の数平均分子量、より好ましくは約1000~5000の数平均分子量を有するポリエステルポリオールを用いることができる。
【0098】
ポリカーボネートポリウレタンを製造するためのポリオールとしては、ポリカーボネートジオールなどが使用され得る。
【0099】
上記したポリオール成分は、ポリウレタン製品に対して要求される特性に応じて、一種類を単独で用いてもよく、または二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
(ポリイソシアネート)
前記ポリオールと反応させるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する化合物である。本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物において、ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン樹脂に使用されている従来公知の任意のポリイソシアネートを使用することができる。この様なポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等を用いることができ、更に、これらのポリイソシアネートを変性して得られる変性ポリイソシアネート等を用いることができる。また、必要に応じて、2種類以上のポリイソシアネートの混合物を用いてもよい。
【0101】
(ホスホロアミデート化合物)
本発明に使用されるホスホロアミデート化合物(成分(B))は、一般式(I):
【化10】

で表される。
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R11およびR12はそれぞれ独立して炭素数1~3のアルキレン基であり、R13は炭素数1~6のアルキレン基であり、Bは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、Aは水素原子又は一般式(II):
【化11】

で表される有機基である。
式中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数が1~3のアルキル基であり、R14およびR15はそれぞれ独立して炭素数が1~3のアルキレン基であり、Bは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基である。
ここで、Aが水素原子である場合には、Bが炭素数1~6のアルキル基であって、そしてBとR13-Aとが結合して、一般式(I)中の窒素原子と一緒になって含窒素複素環を形成してもよい。
Aが一般式(II)で表される有機基であり、Bが炭素数1~6のアルキル基であり、かつBが炭素数1~6のアルキル基である場合には、BとBとが結合して、一般式(I)中の窒素原子、一般式(II)中の窒素原子およびR13と一緒になって含窒素複素環を形成してもよい。
【0102】
なお、本明細書において「アルキル基」とは、鎖状または環状の脂肪族炭化水素(アルカン)から水素原子が一つ失われて生ずる1価の基をいう。鎖状アルキルの場合は、アルキル基は一般にC2k+1-で表される(ここで、kは正の整数である)。鎖状のアルキル基は、直鎖であってもよく、または分枝鎖であってもよい。環状のアルキル基は、環状構造のみから構成されてもよく、または環状構造にさらに鎖状アルキル基が結合した構造を有してもよい。本明細書において「アルキレン基」とは、アルキル基から水素原子がさらに一つ失われて生ずる2価の基をいう。例えば、「エチレン基」とは、エチル基から水素原子がさらに一つ失われて生ずる2価の基をいう。
【0103】
一般式(I)および(II)における炭素数1~3のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基およびイソプロピル基が挙げられる。これらの中で、メチル基およびエチル基が好ましく、難燃性の点からメチル基が特に好ましい。炭素数1~3のアルキレン基の例として、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基およびイソプロピレン基が挙げられる。これらの中で、メチレン基およびエチレン基が好ましく、難燃性の点からメチレン基が特に好ましい。
【0104】
炭素数1~6のアルキル基の例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらの中で、メチル基およびエチル基が好ましく、難燃性の点からメチル基が特に好ましい。炭素数1~6のアルキレン基の例として、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基およびイソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基等が挙げられる。これらの中で、炭素数4以下のアルキレン基が好ましく、難燃性の点からメチレン基およびエチレン基が特に好ましい。
【0105】
Aが水素原子である場合にBとR13とが結合して形成される脂肪族含窒素複素環は、3~13員、好ましくは4~8員の、より好ましくは6員の、窒素を1つ含有する複素環である。
【0106】
Aが一般式(II)で表される有機基である場合に形成され得る含窒素複素環は、5~20員、好ましくは5~8員、より好ましくは6員または7員、さらに好ましくは6員の、窒素を2つ含有する複素環である。
【0107】
一般式(I)で表されるホスホロアミデート化合物の例としては、
が炭素数1~6のアルキル基であり、且つAが水素原子であって、BとR13-Aとが結合して、一般式(I)中の窒素原子と一緒になって含窒素複素環を形成している、一般式(III):
【化12】

[式中、R、R、R11、およびR12は一般式(I)の定義と同じであり、R16は炭素数2~12のアルキレン基である]で表される化合物、
Aが一般式(II)で表される有機基であり、BおよびBがそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~6のアルキル基である、一般式(IV):
【化13】

[式中、R、R、R11、R12、およびR13は一般式(I)の定義と同じであり、R、R、R14、およびR15は一般式(II)の定義と同じであり、BおよびBはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~6のアルキル基である]で表される化合物、ならびに
が炭素数1~6のアルキル基であり、且つAが一般式(II)で表される有機基であって、Bが炭素数1~6のアルキル基であり、BとBとが結合して、一般式(I)中の窒素原子、一般式(II)中の窒素原子およびR13と一緒になって含窒素複素環を形成している、一般式(V):
【化14】

[式中、R、R、R11、R12、およびR13は一般式(I)の定義と同じであり、R、R、R14、およびR15は一般式(II)の定義と同じであり、R17は炭素数2~12のアルキレン基である]
で表される化合物等が挙げられる。
【0108】
一般式(III)で表される化合物の例としては、以下の式(1)~(3)等の化合物が挙げられる。
【化15A】
【0109】
一般式(IV)で表される化合物の例としては、以下の式(4)~(9)等の化合物が挙げられる。
【化15B】
【0110】
一般式(V)で表される化合物の例としては、以下の式(10)~(14)等の化合物が挙げられる。
【化15C】
【0111】
一般式(I)で表されるホスホロアミデート化合物の中でも、難燃性の観点から、RおよびRはメチル基であり、R11およびR12はメチレン基である化合物が好ましい。
【0112】
一般式(I)のAは、一般式(II)で表される有機基であることが好ましく、難燃性の観点から、RおよびRはメチル基であり、R14およびR15はメチレン基であることが好ましい。
【0113】
一般式(I)のR13は、炭素数1~6であり、難燃性の観点から、炭素数1~5であることが好ましく、炭素数1~4がより好ましく、炭素数1~2であることがさらに好ましい。
【0114】
一般式(I)のAが一般式(II)で表される有機基である場合、一般式(I)のBと一般式(II)のBが結合しない場合には、難燃性の観点から、BおよびBがともに水素原子であることが好ましい。BとBが結合する場合にはBとBが一緒になってエチレン基またはプロピレン基を形成することが好ましい。BとBが一緒になってエチレン基を形成することがより好ましい。そして、一般式(I)中の窒素原子、一般式(II)中の窒素原子およびR13と一緒になって5~8員の含窒素複素環を形成することが好ましく、6~7員の含窒素複素環を形成することがより好ましく、6員の含窒素複素環を形成することがさらに好ましい。
【0115】
一般式(I)のAが一般式(II)で表される有機基である場合、一般式(I)のRおよびRならびにR11およびR12がそれぞれ一般式(II)のRおよびRならびにR14およびR15と同じであることが好ましい。すなわち、2つの含リン環構造が同一であることが好ましい。2つの含リン環構造が同一であれば、その化合物の合成が容易であるという利点がある。
【0116】
前記式(1)~(14)の化合物の中では、好ましい化合物の例としては、式(4)~(7)の化合物が挙げられる。式(4)および(5)の化合物がより好ましく、式(4)の化合物がさらに好ましい。
【0117】
(トリアジン系化合物)
本発明に使用されるトリアジン系化合物(成分(C))は、1,3,5-トリアジン構造または1,3,5-トリアジン縮合環構造を有する含窒素化合物である。
【0118】
1,3,5-トリアジン構造は、3個の炭素原子と3個の窒素原子で構成される6員環構造である。
【0119】
本明細書中において、1,3,5-トリアジン縮合環とは、複数の1,3,5-トリアジン環が縮合して形成される縮合環を意味する。本明細書中において、1,3,5-トリアジン縮合環構造とは、複数の1,3,5-トリアジン環が縮合して形成される縮合環の構造を意味する。
【0120】
成分(C)の化合物は、1つの1,3,5-トリアジン構造を有する化合物であってもよく、複数の1,3,5-トリアジン構造を有する化合物であってもよい。1つの1,3,5-トリアジン構造を有する化合物は、具体的には、以下の一般式(C1)で表される化合物である。
【化16-1】
【0121】
上記一般式(C1)において、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素原子であるか、または任意の一価の置換基である。好ましくは、R21、R22およびR23のうちの少なくとも1つが水素原子以外である。より好ましくは、R21、R22およびR23のうちの少なくとも1つがアミノ基または置換アミノ基である。さらに好ましくは、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、アミノ基または置換アミノ基である。特に好ましくは、R21、R22およびR23がいずれもアミノ基である。メラミンは好ましい選択肢である。
【0122】
さらに、上記アミノ基および置換アミノ基以外の任意の一価の置換基は、例えば、水酸基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基またはtert-ブチル基であり得る。
【0123】
上記一般式(C1)の構造を有する化合物は、塩であってもよい。例えば、メラミンおよびシアヌル酸の塩が使用可能である。塩の種類としては、例えば、化合物中の塩基性窒素に酸性化合物が付加した酸付加塩など(例えば、リン酸メラミンまたはピロリン酸メラミン(例えば、ピロリン酸:メラミンのモル比が1:1の塩)またはシアヌル酸メラミン)が挙げられる。該酸付加塩としては、リン酸塩、ピロリン酸塩(例えば、ピロリン酸:塩基性窒素を有する化合物のモル比が1:1の塩)、またはシアヌル酸が好ましい。より好ましくは、酸塩は、シアヌル酸塩である。
【0124】
本明細書において、シアヌル酸塩とは、シアヌル酸と成分(C)の窒素含有化合物との塩を意味する。シアヌル酸:窒素含有化合物のモル比は特に限定されない。すなわち、窒素含有化合物の1分子のみが1つのシアヌル酸分子に結合している塩であってもよく、また、複数の窒素含有化合物分子が1つのシアヌル酸分子に結合している塩であってもよい。好ましくは、シアヌル酸:窒素含有化合物のモル比は1:1である。
【0125】
本明細書において、シアヌル酸メラミンとは、シアヌル酸とメラミンの塩を意味する。シアヌル酸:メラミンのモル比は特に限定されない。すなわち、メラミンの1分子のみがシアヌル酸の1分子に結合している塩であってもよく、また、複数のメラミン分子が1分子のシアヌル酸に結合している塩であってもよい。好ましくは、シアヌル酸:メラミンのモル比は1:1である。
【0126】
複数の1,3,5-トリアジン構造を有する化合物は、上記一般式(C1)において、R21~R23のうちの少なくとも1つが1,3,5-トリアジン構造を有する化合物であってもよい。すなわち、複数の1,3,5-トリアジン構造がつながった構造を有する化合物(例えば、メラム)とすることができる。
【0127】
1,3,5-トリアジン縮合環は、例えば、メラミンの脱アンモニア縮合により形成される。1,3,5-トリアジン縮合環構造を有する化合物の例としては、例えば、以下の一般式(C2)で表される化合物が挙げられる。
【化16-2】
【0128】
上記一般式(C2)において、R24、R25およびR26は、独立して、水素原子であるか、または任意の一価の置換基であり得る。好ましくは、R24、R25およびR26のうちの少なくとも1つが水素原子以外である。より好ましくは、R24、R25およびR26のうちの少なくとも1つがアミノ基または置換アミノ基である。さらに好ましくは、R24、R25およびR26は、それぞれ独立して、アミノ基または置換アミノ基である。特に好ましくは、R24、R25およびR26がいずれもアミノ基である(例えば、メレム)。
【0129】
さらに、アミノ基および置換アミノ基以外の上記任意の一価の置換基は、例えば、水酸基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基またはtert-ブチル基であり得る。
【0130】
上記一般式(C2)の構造を有する化合物は、塩であってもよい。例えば、複数のメラミン分子が縮合した構造を有する化合物の塩が使用可能である。塩の種類としては、例えば、化合物中の塩基性窒素に酸性化合物が付加した酸付加塩など(例えば、リン酸メレム、ピロリン酸メレムまたはシアヌル酸メレム)が挙げられる。該酸付加塩としては、リン酸塩、ピロリン酸塩またはシアヌル酸塩が好ましく、シアヌル酸塩がより好ましい。
【0131】
1,3,5-トリアジン縮合環構造を有する含窒素化合物の具体例としては、例えば、現在市販されているもの、例えば、メラム(CAS 3576-88-3)、メレム(CAS 1502-47-2)、メロン(CAS 32518-77-7)など、純粋なものまたはその混合物およびそれらの塩が挙げられる。
【0132】
成分(C)の含窒素化合物の好ましい具体例としては、メラミン、メラム、メレム、メロン、リン酸メラミン、リン酸メラム、リン酸メレム、リン酸メロン、メタリン酸メラミン、メタリン酸メラム、メタリン酸メレム、メタリン酸メロン、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸メラム、ピロリン酸メレム、ピロリン酸メロン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムおよびポリリン酸メロン、シアヌル酸メラミン、シアヌル酸メラム、シアヌル酸メレム、およびシアヌル酸メロンが挙げられる。リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、シアヌル酸メラミン、メラム、メレム、メロンが、成分(C)の含窒素化合物の例としてより好ましい。リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、およびシアヌル酸メラミンがさらに好ましく、そしてシアヌル酸メラミンが特に好ましい。
【0133】
(酸化防止剤)
本発明の組成物には、必要に応じて、酸化防止剤が、酸化を防止するのに有効な量で含まれ得る。酸化防止剤は、押出の際の熱安定剤および加工安定剤としても使用され得る。この点に関して、酸化防止剤の例には、ヒンダードフェノール化合物、硫黄化合物、ホスファイト化合物、アミン-ケトン化合物およびアミン化合物が含まれる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール化合物とホスファイト化合物が好ましい。
【0134】
酸化防止剤としてのヒンダードフェノール化合物には、モノフェノール化合物、ビスフェノール化合物、およびポリフェノール化合物が含まれる。酸化防止剤の例は以下のものである:
モノフェノール化合物、例えば、
2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、
p-ベンゾキノン、
メチルヒドロキノン、
メチル-p-ベンゾキノン;
ビスフェノール化合物、例えば、
2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、
4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
2,2’-ジヒドロキシ-3,3’-ジ(α-メチルシクロヘキシル)-5,5’-ジメチルジフェニルメタン;
ポリフェノール化合物、例えば、
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、
1,3,5-トリス(3’、5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン;
ホスファイト化合物、例えば、
トリフェニルホスファイト、
ジフェニルイソデシルホスファイト、
フェニルジイソデシルホスファイト、
4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、
環状ネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、
環状ネオペンタンテトライルビス-(2,6-ジ-ter-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、
2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト。
【0135】
酸化防止剤は、市販の製品を利用可能であり得る。酸化防止剤の例は以下のとおりである。ヒンダードフェノール化合物、例えば、Irganox L 1010、L 1076、L 109、L 115、L 135(BASF製)、Adekastab AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-80、AO-330(Adeka製)など;ホスファイト化合物、例えば、Irgaphos 168(BASF製)、Adekastab 135A、260、1178、2112、HP-10、PEP-8、PEP-36、TPP(Adeka製)など。
【0136】
酸化防止剤を用いる場合、酸化防止剤の使用量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対し0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、5質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。
【0137】
上記した酸化防止剤は、ポリウレタン製品に対して要求される特性に応じて、1種類を単独で用いてもよく、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
(その他の添加剤)
他の添加剤は、加工助剤、顔料、1種類以上の充填材(例えば、タルク)が挙げられる。さらに、必要に応じて、上記各種添加剤以外の添加剤を使用することができる。そのような添加剤としては、例えば、架橋剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤などを使用することができる。これらの添加剤の種類および添加量については特に限定はなく、通常用いられている添加剤を、通常の使用量の範囲において使用できる。具体的には、例えば、これらの添加剤のそれぞれについて、樹脂100質量部に対して0.01質量部以上とすることが可能であり、0.1質量部以上または1質量部以上とすることも可能であり、そして樹脂100質量部に対して20質量部以下とすることが可能であり、10質量部以下または5質量部以下とすることが可能である。
【0139】
(その他の難燃剤)
本発明の組成物には、必要に応じて、上記ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤(以下、「他の難燃剤」という)をさらに添加することもできる。
【0140】
そのような他の難燃剤は、有機系難燃剤であってもよく、無機系難燃剤であってもよい。有機系難燃剤の例としては、ハロゲン系難燃剤およびリン酸エステル系難燃剤などが挙げられる。無機難燃剤の例としては、アンチモン化合物、金属水酸化物などが挙げられる。金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム(アルミナ水和物)、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0141】
しかしながら、本発明の難燃剤の利点を生かすためには、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤の使用量は少なくすることが好ましい。例えば、樹脂100質量部に対して、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤の使用量は20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましく、1質量部以下がいっそう好ましい。また、例えば、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物の合計100質量部に対して、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤の使用量は100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がいっそう好ましい。
【0142】
そして1つの好ましい実施形態においては、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤の使用量は、樹脂100質量部に対して5質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下、0.05質量部以下、0.01質量部以下、0.009質量部以下、0.008質量部以下、0.005質量部以下、0.001質量部以下、0.0005質量部以下、または0.0001質量部以下の量とすることが好ましい。
【0143】
特に好ましい実施形態においては、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤を混合せずに、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物からなる難燃剤組成物のみを使用する。
【0144】
本発明の難燃剤は、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤と混合しなくても、高い難燃性および通常のウレタン樹脂製品に求められる様々な性能を達成することが可能である。そのため、目的とするウレタン樹脂製品が特殊な用途のための製品でなければ、本発明の難燃剤に、ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物以外の難燃剤を混合する必要はない。
【0145】
(好ましい実施形態)
1つの好ましい実施形態において、本発明は、以下を含む難燃性TPU組成物を提供する。
A)熱可塑性ポリウレタン樹脂;
B)一般式(IV)または(V)で表されるホスホロアミデート化合物。
【化17】

【化18】

(式中、
・R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1~3のアルキル基である。
・R11、R12、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキレン基である。
・RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。
・R13は、炭素数1~6のアルキレン基である。
・R17は、炭素数2~12のアルキレン基である。)
C)トリアジン系化合物(メラミンシアヌレートが好ましい選択肢である。メラミン、または、メラミンの縮合体(例えば、メラム(CAS 3576-88-3)、メレム(CAS 1502-47-2)、メロン(CAS 32518-77-7)などの現在市販されているものなど)若しくはそれらの塩、純粋なものまたは混合物もまた選択肢である。)
D)必要に応じて、1種類以上の酸化防止剤、例えば、フェノール系酸化防止剤およびホスファイト酸化防止剤;および
E)必要に応じて、他の添加剤、例えば、顔料、フィラー、例えば、タルク。
【0146】
1つの実施形態において、成分A)~E)の合計百分率は100質量%である。
【0147】
1つの実施形態において、ホスホロアミデート化合物とトリアジン系化合物との間の比は、9:1から1:9が好ましく、より好ましくは6:1から1:6であり、さらに好ましくは4:1から1:4であり、特に好ましくは3:1から1:3である。
【0148】
1つの実施形態において、ホスホロアミデート化合物は、好ましくは下記式(4)の脂肪族二環式ホスホロアミドである。
【化19】
【0149】
1つの実施形態において、好ましいトリアジン系化合物は、メラミンシアヌレートまたはメラミン、またはメラミンの縮合体(例えば、メラム、メレム、メロン)またはそれらの混合物である。
【0150】
ホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物の組み合わせは、驚くべきことに、濃度が全組成物に対して25質量%未満、15質量%未満または10質量%未満であってもポリエーテル系TPUの難燃特性を改善する。難燃性を達成するために必要なホスホロアミデート化合物およびトリアジン系化合物の組み合わせの量は、先行技術において報告されている難燃性熱可塑性組成物における難燃剤の量と比較して非常に低いので、TPUを用いて成形する加工条件を制御することは非常に容易であり、そして成形された物品の物理的および機械的性質の劣化は顕著に低い。
【0151】
1つの実施形態において、本発明のTPU組成物は以下の難燃性能を達成し得る。
a)UL-94試験で1.6mmの厚さにおいてV0の等級、および
b)24よりも高いLOI値。
【0152】
驚くべきことに、発明者らは、特定の二環式ホスホロアミデート化合物とトリアジン系化合物(例えば、メラミンシアヌレート、メラミンまたはメラミンの縮合体)との組み合わせが、TPU中で非常に有効な難燃剤成分であることを見出した。
【0153】
本発明によれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂用難燃剤として総合的に極めて優れた難燃剤が提供される。
【実施例
【0154】
以下、実施例および比較例を示して本発明を更に詳細に説明する。
【0155】
(配合手順)
実施例および比較例の配合物における全ての成分は、180℃~190℃の範囲の温度プロファイルで、24mm二軸押出機で押し出ししてペレットを製造した。そのポリマーペレットをメインホッパーに導入し、そして添加剤のドライブレンドを第1サイドフィーダーに導入した。押し出しされたポリマーペレットを90℃のオーブン中で乾燥し、そしてその後、圧縮成形によって異なる厚さのシートを得た。厚さ1.6mmのシートを切断してUL-94試験用の試験片を得て、そして厚さ3mmのシートを切断してLOI試験手順に適した試験片を得た。
【0156】
(UL-94試験)
燃焼性試験を、UL-94垂直試験手順に従って行い、そして報告した。5つの試験片の2つのセットを23℃および50%湿度で24時間状態調節した。試験結果がV0、V1、およびV2を満たさない場合、NC等級が与えられた。
【0157】
(LOI試験)
LOI試験を、ASTM D2863の手順に従って行った。LOIは、試料が特定の条件下でろうそく状の形状で燃焼を持続することを可能にする酸素と窒素の混合物中の酸素の最小百分率である。
【0158】
(成分)
芳香族ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂、硬度85A(Estane 58311 NAT 028)、(以下、「TPU1」と記載する。)
環状ホスホロアミデート、上記式(4)の脂肪族2環式ホスホロアミデート化合物(以下、「ABCP」という)。ABCPは、米国特許出願公開公報第2016/0244582号、0173段落に記載された手順に従って製造された。
N,N 2-ビス(6-オキシド-6H-ジベンズ[c,e][1,2]オキサホスホリン-6-イル)-1,2-エタンジアミン(EDAB-DOPO、Metadynea製)、リン窒素含有化合物(以下、「EDAB-DOPO」と記載する。)
メラミンシアヌレート(Melagard MC25、イタルマッチケミカルズ製)、窒素含有化合物(以下、「MC」と記載する。)。
メラミン(メラミン、シグマアルドリッチ社製)、窒素含有化合物(以下、「MEL」という)。
メレム(Delacal 420、Delamin製)、窒素含有化合物(以下、「DEL」と記載する。)。
ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩(Exolit OP1240、Clariant製)リン含有化合物(以下、「OP1240」と記載する)。
次亜リン酸アルミニウム(Phoslite B85AX、イタルマッチケミカルズ製)リン含有化合物(以下、「B85AX」と記載する。)。
3,9-ジメチル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン3,9-ジオキシド(AFLAMMIT PCO900、THOR製)リン含有化合物(以下、「PCO900」と記載する。)。
リン酸メラミン(Melagard MP、イタルマッチケミカルズ製)、リン窒素含有化合物(以下、「MP」と記載する。)
ポリリン酸アンモニウム(Exolit AP 422)、リン含有化合物(以下、「APP」と記載する。)
タルク(STEAMIC T1 CA、Imerys製)、(以下、「TALC」と記載する。)
レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(Fyrolflex RDP、ICL Industries製)、リン含有化合物(以下、「RDP」と記載する。)。
20質量%のIrganox 1010、ヒンダードフェノール系熱安定剤と80質量%のIrgaphos 168、ホスファイト加工安定剤とのブレンド(Irganox B 561、BASF社製)(以下「B 561」と記載する。)。
【0159】
【表1A】
【0160】
【表1B】
【0161】
【表1C】
【0162】
【表2A】
【0163】
【表2B】
【0164】
(実施例および比較例についての考察)
表1Aの比較例C.1の結果から、難燃剤を含まないTPUがUL-94試験においてV2の性能を有することが理解される。
【0165】
比較例C.2および比較例C.3の結果から、メラミンシアヌレートを単独で使用した場合、30質量%から50質量%の範囲で24よりも高いLOI値が達成されることが理解される。しかし、50質量%の濃度でさえも、UL-94試験でV0等級は達成されない。
【0166】
比較例C.8、C.10、C.12、C.14、C.16、C.18およびC.20の結果から、20質量%の量のホスホロアミデート化合物と異なるリン含有化合物がUL-94試験でV0等級を達成するのに十分ではないことが理解される。
【0167】
実施例E.4の結果から、環状ホスホロアミデート化合物およびメラミンシアヌレートの組み合わせを8質量%で添加することが、UL-94試験でV0等級を達成することができることが理解される。実施例E.5、E.6、E.21は、環状ホスホロアミデート化合物とメラミンシアヌレートの混合物10質量%を添加することで、異なる比率であってもUL-94試験におけるV0等級および24よりも高いLOIを達成できることを示している。他の難燃剤または他の難燃剤の組み合わせを用いる場合は、このような少量ではUL-94試験でV0等級を達成することができない。すなわち、環状ホスホロアミデート化合物とメラミンシアヌレートとの組み合わせは、少量で高い難燃効果を達成できる。
【0168】
比較例C.7、C.9、C.11、C.13、C.15、C.17およびC.19の結果から、ホスホロアミデート化合物と異なるリン含有化合物とメラミンシアヌレートとの組み合わせ20質量%ではUL-94試験においてV0等級を達成するのに十分ではないことが理解される。
【0169】
表2Aおよび表2Bに示される結果から、本発明の環状ホスホロアミデートとトリアジン系化合物との混合物が、4:1~1:4の間の比率で全組成物に対して8質量%~40質量%の濃度でTPUのための難燃剤として非常に効率的であることが理解される。
【0170】
表2Bの結果は、ホスホロアミデート化合物とトリアジン系化合物としてのメラミンまたはメラミンの縮合体との混合物が、本発明の難燃性熱可塑性ポリウレタン組成物のLOIをさらに増加させるのに有用であることを示した。
【0171】
さらに、実施例E.30は、タルクのようなフィラーを使用した場合にも、難燃性能がUL-94試験でのV0等級および24よりも高いLOIを達成できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明によれば、優れた難燃性が熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に付与される。
【0173】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【国際調査報告】