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特表2022-548238昆虫を栄養物ストリームに変換するための方法及びそれから得られる生成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】昆虫を栄養物ストリームに変換するための方法及びそれから得られる生成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20221110BHJP
   A23J 1/00 20060101ALI20221110BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20221110BHJP
   A23K 50/42 20160101ALI20221110BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20221110BHJP
【FI】
A23L33/10
A23J1/00 Z
A23L35/00
A23K50/42
A23K10/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022516067
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 NL2020050571
(87)【国際公開番号】W WO2021054823
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】2023838
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2024481
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2025547
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2025546
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520220755
【氏名又は名称】プロティックス ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】PROTIX B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ポール, アマン
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B018
4B036
【Fターム(参考)】
2B005AA02
2B150AA06
2B150AB03
2B150DD57
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD14
4B018MD20
4B018MD22
4B018MD76
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF03
4B018MF04
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF12
4B036LE01
4B036LH42
4B036LH49
4B036LP01
4B036LP05
4B036LP07
4B036LP10
4B036LP18
(57)【要約】
本発明は、昆虫を栄養物ストリームに、例えばピューレ、酵素加水分解されたピューレ、脂肪画分及びタンパク質画分に変換するための方法に関する。本発明は、さらに、前記方法により得ることができる(加水分解された)ピューレ及び画分、並びに食品若しくは飼料製品又はその成分としてのその使用に関する。本発明はまた、昆虫の幼虫を酸化防止特性を有する組成物に変換するための方法に関する。したがって、本発明はまた、昆虫の幼虫を酸化防止組成物に変換するための方法に関する。さらに、本発明は、前記方法により得ることができる酸化防止特性を有する組成物、及び健康増進食物成分又は飼料成分としての組成物の使用に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)前記パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱するステップと;
c)加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記昆虫が昆虫の幼虫、好ましくはアメリカミズアブの幼虫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アメリカミズアブの幼虫が、12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パルプが、加熱前に酵素処理されない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb)の前に前記パルプを酵素により処理するステップa1)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パルプが、40℃~70℃、好ましくは45℃~65℃の温度、より好ましくは50℃±2℃の温度で0.5~3時間、好ましくは1~2時間酵素により処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素が、プロテアーゼ、例えばペプチダーゼ、好ましくは少なくとも1種のプロテアーゼ及び少なくとも1種のペプチダーゼの混合物、例えばフレーバーザイムである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)において、前記昆虫をみじん切りすることによりパルプが調製される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)の前記パルプ中の前記昆虫の残骸の平均粒径が、10~500ミクロンの範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)において、前記パルプが、60~95℃の温度で60~90秒間、特に90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)において、前記パルプが、75℃~95℃の温度、特に80℃~93℃、好ましくは85℃~90℃の温度である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)において、前記パルプが、60~95秒間、特に70~90秒間、好ましくは75~85秒間、例えば78~82秒間加熱される、請求項1~9又は11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物理的分離ステップが、デカンテーション及び/又は遠心分離を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水性タンパク質画分及び前記固体含有画分が、ステップ(c)の後に、好ましくは噴霧乾燥又は流動床乾燥により、最も好ましくは流動床乾燥により一緒に乾燥される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水性タンパク質画分及び前記固体含有画分が、ステップc)の後に別個に乾燥され、前記水性タンパク質画分は、好ましくは噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥若しくは屈折式乾燥、又はそれらの組合せにより乾燥される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法により得ることができる脂肪画分。
【請求項17】
請求項16に記載の脂肪画分を含む脂肪組成物。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法により得ることができる乾燥タンパク質画分。
【請求項19】
請求項16に記載の脂肪画分又は請求項17に記載の脂肪画分の組成物の、食品又は飼料製品としての使用。
【請求項20】
請求項15に記載の乾燥タンパク質画分の、食品又は飼料製品としての使用。
【請求項21】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法のステップa)及びb)により得ることができる昆虫パルプ。
【請求項22】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法のステップa)、a1)及びb)により得ることができる昆虫パルプ。
【請求項23】
飼料又は飼料成分、特にペットフートとしての使用のための、請求項21又は22に記載の昆虫パルプ。
【請求項24】
請求項21若しくは22に記載の昆虫パルプ又はその誘導体の、健康増進能を有する食物成分又は飼料成分としての使用。
【請求項25】
細胞の酸化的損傷の予防及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項21若しくは22に記載の昆虫パルプ又はその誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、昆虫を栄養物ストリーム(nutrient stream)に、例えばピューレ、酵素加水分解されたピューレ、脂肪画分及びタンパク質画分に変換するための方法に関する。本発明は、さらに、前記方法により得ることができる(加水分解された)ピューレ及び画分、並びに食品又は飼料製品としてのその使用に関する。本発明はまた、昆虫の幼虫を酸化防止特性を有する組成物に変換するための方法に関する。さらに、本発明は、前記方法により得ることができる酸化防止特性を有する組成物、及び健康増進食物成分又は飼料成分としての組成物の使用に関する。
【0002】
[発明の背景]
都市の固形廃棄物処理は、都市の自治体が直面している最も差し迫った重大な環境問題の1つと考えられる。急速な都市化及び都市人口増加の傾向を鑑みると、この課題の重大性は将来増大するであろう。現在、有機廃棄物質のリサイクルは依然としてかなり限られているが、これは発生する全ての都市廃棄物のうち群を抜いて最も高い割合を占める。
【0003】
生物学的廃棄物変換の極めて新規な手法は、昆虫の幼虫によるものであり、例えばアメリカミズアブ(ヘルメチア・イルセンス(Hermetia illucens))、イエバエ(ムスカ・ドメスティカ(Musca domestica))及びゴミムシダマシ(テネブリオ・モリトルL.(Tenebrio molitor L.)を使用する。その需要は、動物飼料製品又は食品用のタンパク質及び脂肪の源として採集された幼虫を使用し、したがってタンパク質及び脂肪の他の(動物)源の有益な代替物を提供する有望な機会に関連している。
【0004】
多くの人々は昆虫を丸ごと消費することを嫌うが、後に食物及び飼料の調製に使用される分離された脂肪及びタンパク質の源としての昆虫の使用は、比較的受け入れやすい。しかしながら、昆虫が商業的に実現可能な栄養源となるためには、その生産及び処理が大規模に行われるべきであり、得られる栄養物ストリームは望ましくない香味及び変色を有するべきではない。
【0005】
大規模な昆虫生産設備はすでに使用されているが、十分な品質の栄養物ストリームの経済的調製が依然として課題である。国際特許出願である国際公開第2014123420号では、昆虫又は芋虫から栄養物ストリームを得るための一般的方法が説明されている。そこに開示されている方法は十分な品質の栄養物ストリームを提供することができるものの、そのような方法の収率、及びそれにより得られる栄養物ストリームの品質をさらに増加させる必要性が残されている。
【0006】
昆虫は、世界中の多くの文化で食物として一般的に消費されている。欧州諸国では、昆虫タンパク質は、動物の食事における高価値のタンパク質成分として急速に受け入れられている。欧州連合は、ペットフード及び水産養殖飼料配合物における昆虫タンパク質の含有をすでに承認している。チキンミール及びフィッシュミールは、それぞれペットフード及び水産養殖飼料調製物において一般的な成分である。これらの市場では、昆虫タンパク質が次第にチキンミール及びフィッシュミールの代替品として考えられてきている。工業規模で生産されている全ての昆虫のうち、アメリカミズアブ(ヘルメチア・イルセンス(Hermetia illucens))の幼虫が、高範囲の有機残渣及び独特の栄養組成で成長する能力によって特に注目を集めている。水産養殖及びペットの餌におけるアメリカミズアブの幼虫(BSF)のタンパク質の栄養学的な好適性は、十分に実証されている。
【0007】
ペットは、年齢と共に広範な健康障害を生じる。老化は、ペットの体内でのフリーラジカルによる損傷を加速させ得、これは認知及び運動系機能不全をもたらし得る。同様に、免疫応答の結果としての魚における酸化ストレスは、健康障害をもたらし得る。好中球(白血球)は、体の一次防御メカニズムを担っている。信号を受け取ると、好中球は病原微生物の侵入部位に急行する。次いで好中球は、食作用及び活性酸素種(ROS)の放出により病原体を不活性化する。ROSの生成は、宿主の防御に極めて重要である。しかしながら、長期的には、好中球による過度のROS生成は動物細胞を損傷し得、細胞の老化、がん、免疫の低下等をもたらし得る。ROSを捕捉し得る食事介入は、動物の体内での酸化的損傷を低減し、健康状態を得ることを補助し得る。この分野は、そのような食事介入を必要としている。
【0008】
本発明は、先行技術において知られている方法よりも、昆虫から得られる栄養物ストリームの収率及び品質をさらに改善することを目的とする。さらに、本発明は、そのような方法により得られる栄養物ストリームを目的とする。
【0009】
[発明の概要]
本発明の第1の態様は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱するステップと;
c)加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るステップと
を含む方法に関する。
【0010】
本発明の一態様は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱し、それにより昆虫ピューレ(パルプ)を得るステップと
を含む方法に関する。栄養物ストリームは、新鮮な昆虫、例えばアメリカミズアブ(BSF、black soldier fly)の幼虫から調製されたパルプの加熱後に得られる昆虫ピューレである。任意選択で、方法は、ステップb)の後に、加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るさらなるステップc)を含む。タンパク質画分の乾燥によって、昆虫、例えばBSFの幼虫から得られたタンパク質ミールが現れる。
【0011】
本発明の一態様は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
a1)所定温度で所定期間パルプをペプチダーゼと接触させることにより、ステップa)のパルプを酵素加水分解に供するステップと;その後
b)ステップa1)の加水分解されたパルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱し、それにより加水分解された昆虫ピューレを得るステップと
を含む方法に関する。栄養物ストリームは、加水分解されたパルプの加熱後に得られる加水分解された昆虫ピューレであり、パルプは新鮮な昆虫、例えばBSFの幼虫から得られる。任意選択で、方法は、ステップb)の後に、加熱及び加水分解されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るさらなるステップc)を含む。タンパク質画分の乾燥によって、昆虫、例えばBSFの幼虫から得られた加水分解されたタンパク質ミールが現れる。
【0012】
本発明の方法により、処理された昆虫からの脂肪の収率を増加させることが可能であることが見出された。驚くべきことに、本発明の時間と温度の組合せを使用することによってより少ない油がタンパク質画分内に取り込まれることが見出された。(いかなる理論にも束縛されることを望まないが)本発明の方法は、100秒を超える、例えば少なくとも5分の加熱時間を適用する方法と比較して、本発明のステップb)及びステップc)においてより少ないタンパク質凝集及び顆粒形成をもたらすため、そのようなタンパク質凝集体で、及びその中により少ない油が取り込まれ得る。また、パルプ及び栄養物画分の変色が低減されることが見出された。本発明の方法はまた、先行技術においてこれまで示唆されていたようなパルプを加熱するのに必要な時間が大幅に短いため、エネルギーを節約する。さらに、本発明者らは、加熱された昆虫パルプ及び加熱された加水分解された昆虫パルプが酸化防止特性を有することを見出した。
【0013】
一実施形態において、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法は、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱するステップと;
c)加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るステップとを含み、またステップb)の前にパルプを酵素により処理するステップa1)(例えばパルプ中のタンパク質の酵素加水分解)をさらに含む。パルプは、40℃~70℃の温度、好ましくは45℃~65℃、より好ましくは50℃±2℃又は約50℃の温度で0.5~3時間、例えば1~2時間酵素により処理されてもよい。酵素は、プロテアーゼ、例えばペプチダーゼであってもよく、好ましくは酵素はフレーバーザイム(Flavourzyme)である。加熱ステップb)の前のこの酵素処理ステップa1)は、得られる昆虫(幼虫)ピューレの遊離アミノ酸含量及び消化性を増加させ、後続の分離ステップc)におけるパルプ及びタンパク質画分からの脂肪分離を改善する(より少ない脂肪/脂質を有するタンパク質が得られる)ことが見出された。さらに、方法のステップb)及びc)の後に得られた加熱されたパルプ、並びにステップa1)及びステップb)及びステップc)の後に得られた加熱された酵素加水分解されたパルプが、共に酸化防止特性を有することが実証された。
【0014】
本発明の第2の態様は、本発明による方法によって得ることができる脂肪画分に関する。昆虫の脂肪画分は大量の不飽和脂肪酸を含むため、加熱時間の短縮は得られる脂肪画分の品質に大きな影響を有し、すなわち、脂肪画分は先行技術においてすでに知られている方法により得られる画分より酸敗が少ない。
【0015】
本発明の一態様は、本発明の方法により得られた加熱された昆虫ピューレ、好ましくは加熱されたBSFの幼虫ピューレに関する。驚くべきことに、そのような加熱された昆虫ピューレは酸化防止特性を有し、酸化防止飼料若しくは食物又はその成分としての使用に好適である。
【0016】
本発明の一態様は、加水分解された昆虫ピューレ、好ましくは加水分解されたBSFの幼虫ピューレに関する。ペプチダーゼ等の影響下での加熱ステップ前の昆虫ピューレの加水分解は、改善された酸化防止活性を有するピューレをもたらす。さらに、そのような加水分解されたピューレから分離されたタンパク質は、本発明の方法に従って得られた加水分解されていないピューレと比較して、及び例えば30分の長い加熱ステップを適用することにより従来通り得られる加水分解されていないピューレと比較して、良好に少ない脂肪を含む。
【0017】
本発明の一態様は、本発明の方法により得られた加熱された昆虫ピューレ、好ましくは加熱されたBSFの幼虫ピューレに関する。驚くべきことに、そのような加熱された昆虫ピューレは酸化防止特性を有し、健康増進飼料若しくは食物又はその成分としての使用に好適である。
【0018】
本発明の一態様は、加水分解された昆虫ピューレ、好ましくは加水分解されたBSFの幼虫ピューレに関する。ペプチダーゼ等の影響下での加熱ステップ前の昆虫ピューレの加水分解は、改善された酸化防止特性を有するピューレをもたらす。さらに、そのような加水分解されたピューレから分離されたタンパク質は、本発明の方法に従って得られた加水分解されていないピューレと比較して、及び例えば30分の長い加熱ステップを適用することにより得られる従来の加水分解されていないピューレと比較して、良好に少ない脂肪を含む。
【0019】
本発明の第3の態様は、本発明による方法によって得られるタンパク質画分に関する。より低い/より短い温度/時間の組合せにより、タンパク質には、既知の昆虫タンパク質画分より少ない脂肪が取り込まれている。さらに、比較的穏やかな処理条件により、タンパク質の少なくとも一部はその機能性を保持する。さらに、比較的穏やかな処理条件は、例えばメイラード反応による変色を、より長い処理時間により、及び/又はより高い温度でより長期間の処理により誘発される変色と比較して低減する。これにより、前記タンパク質画分を様々な用途に使用することができる。
【0020】
本発明の一態様は、本発明による方法によって得られるタンパク質画分に関し、方法は、加水分解されたパルプがパルプを加熱するステップに供される前に昆虫パルプを酵素加水分解するステップを含んでいた。より低い/より短い温度/時間の組合せ及び加水分解ステップにより、タンパク質には、既知の昆虫タンパク質画分より少ない脂肪が取り込まれている。さらに、比較的穏やかな処理条件は、より長い処理時間により、及び/又はより高い温度でより長期間の処理により誘発される変色と比較して、例えばメイラード反応による変色を低減する。これにより、前記タンパク質画分を様々な用途に使用することができる。
【0021】
本発明の第4の態様は、前記脂肪画分及び/又はタンパク質画分及び/又は昆虫ピューレ及び/又は加水分解された昆虫ピューレの、食品若しくは飼料製品、又はその成分としての使用に関する。
【0022】
本発明の第5の態様は、本発明による方法のステップa)及びb)、又はステップa)、a1)及びb)により得ることができる昆虫パルプに関する。好ましくは、昆虫パルプは、アメリカミズアブの幼虫パルプである。
【0023】
本発明の第6の態様は、加水分解された昆虫パルプ及び/又は昆虫パルプ、例えば(加水分解された)アメリカミズアブの幼虫パルプの、酸化防止食物成分又は飼料成分としての使用に関し、(加水分解された)パルプは本発明の方法により得ることができ、方法は、方法のステップb)の前に酵素加水分解ステップa1)を含むか又は含まない。
【0024】
本発明の一態様は、加水分解された昆虫パルプ及び/又は昆虫パルプ、例えば(加水分解された)アメリカミズアブの幼虫パルプの、健康増進食物成分又は飼料成分としての使用に関し、(加水分解された)パルプは本発明の方法により得ることができ、方法は、方法のステップb)の前に酵素加水分解ステップa1)を含むか又は含まない。
【0025】
本発明の第7の態様は、加水分解された昆虫パルプ及び/又は昆虫パルプ、例えばアメリカミズアブの幼虫パルプの、食物成分又は飼料成分としての使用に関し、(加水分解された)パルプは本発明の方法により得ることができ、方法は、方法のステップb)の前に酵素加水分解ステップa1)を含むか又は含まない。
【0026】
本発明の一態様は、飼料又は飼料成分、特にペットフードとしての使用のための、本発明による昆虫パルプ又は加水分解された昆虫パルプ又はその誘導体に関する。
【0027】
本発明の一態様は、本発明による昆虫パルプ又は加水分解された昆虫パルプ又はその誘導体の、健康増進能を有する食物成分又は飼料成分としての使用に関する。
【0028】
本発明の一態様は、細胞の酸化的損傷の予防及び/又は抑制のための方法における使用のための、本発明による昆虫パルプ又は加水分解された昆虫パルプ又はその誘導体に関する。
【0029】
定義
「昆虫」という用語は、本明細書で使用される場合、任意の発育段階の昆虫、例えば昆虫の成虫、幼虫、前蛹及び蛹を指す。
【0030】
「孵化」という用語は、本明細書で使用される場合、その従来の意味を有し、若い幼虫が卵から孵るプロセスを指す。
【0031】
「幼虫」という用語は、本明細書で使用される場合、その従来の意味を有し、完全変態昆虫の若齢期、例えばアメリカミズアブの幼虫を指す。
【0032】
「幼生」又は「新生幼虫」という用語は、本明細書で使用される場合、その従来の意味を有し、卵から孵ったばかりの幼虫を指す。
【0033】
「前蛹」という用語は、本明細書で使用される場合、幼虫のキチン含量が著しく増加した最後の幼虫期を指す。
【0034】
「蛹」という用語は、本明細書で使用される場合、その従来の意味を有し、昆虫の一生のうち幼虫から成虫への、例えばアメリカミズアブへの変態が生じる段階を指す。
【0035】
「パルプ」又は「昆虫パルプ」又は「ピューレ」又は「幼虫ピューレ」という用語は、本明細書で使用される場合、全て同じ意味を有し、0.5mm未満のサイズまでの昆虫の機械的サイズ低減後に得られる生成物を指す。
【0036】
「栄養物ストリーム」という用語は、本明細書で使用される場合、その従来の意味を有し、栄養物、例えば脂肪、タンパク質及びタンパク質由来材料、炭水化物、ミネラル及び/又はキチンを含有するストリーム(streams)を指す。本発明に関連して、キチンもまた栄養物とみなされる。
【0037】
「酸化防止特性」という用語は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、抗炎症応答等の酸化防止活性を有する酸化防止剤からなるか又はそれを含む、本発明の、及び本発明の方法により得ることができるピューレ及び加水分解されたピューレ等の化合物又は組成物を指す。典型的には、そのような抗炎症応答は、例えばペット等の哺乳動物若しくは人間対象の細胞、又は魚の細胞における、例えば活性酸素種により誘発される炎症応答に対する応答である。例えば、「Antioxidants in Food: Practical Applications」(Jan Pokorny、Nedyalka Yanishlieva及びMichael Gordon(編集者)、2001、Cambridge: CRC Press、Woodhead Publishing Ltd. ISBN 1 85573 463 X、CRC Press、ISBN 0-8493-1221-1)の第1章、第5章及び第6章を参照されたい。酸化防止剤は、宿主免疫応答から生じる酸化的損傷に対する活性等の酸化防止活性を有する化合物、又は酸化防止活性を有する組成物、又は酸化防止活性を有する化合物を含む組成物である。酸化防止剤は、例えば酸化を阻害する。例えば、対象における酸化、例えば反応性酸素種は、細胞(酸化的)損傷を誘発する。
【0038】
「健康増進食物」、「健康増進活性」、「健康増進特性」、及び「健康増進能」等における「健康増進」という用語は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、動物、例えばペット動物等の哺乳動物又は人間対象の健康に対する、本発明の、又は本発明の方法により得ることができる加水分解されたピューレ又はピューレ等の化合物又は組成物の、そのような化合物又は組成物が動物により消費された際の効果を指す。健康増進能を有する化合物又は組成物の消費は、動物、例えばペット動物等の哺乳動物又は人間対象の健康状態に寄与するか、又はそれを補助するか、又はそれを増進するか、又はそれを増加させるか、又はそれを維持する。例えば、「Antioxidants in Food: Practical Applications」(Jan Pokorny、Nedyalka Yanishlieva及びMichael Gordon(編集者)、2001、Cambridge: CRC Press、Woodhead Publishing Ltd. ISBN 1 85573 463 X、CRC Press、ISBN 0-8493-1221-1)の第1章、第5章及び第6章を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】パルプの加熱時間の関数としてのBSFの幼虫パルプからの脂肪分離を示すグラフである。
図2】昆虫パルプの色に対するBSFの幼虫ピューレの加熱時間の影響を示す図である。
図3A】BSFの幼虫ピューレ、及びピューレの総重量を基準として0.1重量%又は0.5重量%のペプチダーゼに供されたBSFの幼虫ピューレにおける遊離アミノ酸含量を示すグラフである。
図3B】BSFの幼虫ピューレ、及びピューレの総重量を基準として0.1重量%又は0.5重量%のペプチダーゼに供されたBSFの幼虫ピューレのペプシン消化性を示すグラフである。
図3C】BSFの幼虫ピューレ、及びピューレの総重量を基準として0.1重量%又は0.5重量%のペプチダーゼに供されたBSFの幼虫ピューレから単離されたタンパク質ミールにおける脂質(脂肪)含量を示すグラフである。
図4】30分のインキュベーション後のBSF PureeX(商標)(BSF-P)、BSFの加水分解されたピューレ(BSF-HP)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のDPPHラジカル捕捉活性を示すグラフである(n=3)。
図5】60分のインキュベーション後のBSF PureeX(商標)(BSF-P)、BSFの加水分解されたピューレ(BSF-HP)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のDPPHラジカル捕捉活性を示すグラフである(n=3)。
図6】30分のインキュベーション後のBSF PureeX(商標)(BSF-P)、BSFの加水分解されたピューレ(BSF-HP)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のABTSカチオンラジカル捕捉活性を示すグラフである(n=3)。
図7】SIEFEDアッセイを使用したBSF PureeX(商標)(BSF-P)、BSFの加水分解されたピューレ(BSF-HP)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のMPO応答調節活性を示すグラフである(n=3)。
図8】古典的測定を使用したBSF PureeX(商標)(BSF-P)、BSFの加水分解されたピューレ(BSF-HP)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のMPO応答調節活性を示すグラフである(n=3)。
図9】BSF PureeX(商標)(BSF-P)、BSFの加水分解されたピューレ(BSF-HP)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)の好中球応答調節活性を示すグラフである(n=3)。
図10】メタノール中で行われたWSEPのABTSラジカル捕捉活性を示すグラフである。結果は、3回の3つの独立したアッセイの平均±SDである。
【0040】
[発明の詳細な説明]
本発明の第1の態様は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱するステップと;
c)加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るステップと
を含む方法に関する。説明、実施例、実施形態、特許請求の範囲を通して、「ピューレ」及び「パルプ」という用語は同じ意味を有する。
【0041】
驚くべきことに、本発明の方法により、処理された昆虫からの脂肪の収率を増加させることが可能であることが見出された。さらに、本発明の時間と温度の組合せを使用することによってより少ない油がタンパク質画分内に取り込まれることが見出された。また、パルプ及び栄養物画分の変色が低減されることが見出された。本発明の方法はまた、先行技術においてこれまで示唆されていた方法に必要な時間とは対照的に、パルプを加熱するのに必要な時間が大幅に短いため、エネルギーを節約する。
【0042】
本発明の一態様は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱し、それにより昆虫ピューレ(パルプ)を得るステップと
を含む方法に関する。栄養物ストリームは、新鮮な昆虫、例えばアメリカミズアブ(BSF、black soldier fly)の幼虫から調製されたパルプの加熱後に得られる昆虫ピューレである。任意選択で、方法は、ステップb)の後に、加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るさらなるステップc)を含む。タンパク質画分の乾燥によって、昆虫、例えばBSFの幼虫から得られたタンパク質ミールが現れる。
【0043】
本発明の一態様は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
a1)所定温度で所定期間パルプをペプチダーゼと接触させることにより、ステップa)のパルプを酵素加水分解に供するステップと;その後
b)ステップa1)の加水分解されたパルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱し、それにより加水分解された昆虫ピューレを得るステップと
を含む方法に関する。栄養物ストリームは、加水分解されたパルプの加熱後に得られる加水分解された昆虫ピューレであり、パルプは新鮮な昆虫、例えばBSFの幼虫から得られる。任意選択で、方法は、ステップb)の後に、加熱及び加水分解されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るさらなるステップc)を含む。タンパク質画分の乾燥によって、昆虫、例えばBSFの幼虫から得られた加水分解されたタンパク質ミールが現れる。
【0044】
酵素処理された昆虫パルプ、例えばみじん切りされた幼虫、及び酵素処理なしの(対照)昆虫パルプ(例えば酵素加水分解されていないみじん切りされた幼虫)が例えば90℃に加熱され、パルプは例えばこの温度で80秒間維持される。得られた昆虫ピューレは、遊離アミノ酸含量及び消化性を測定するための試験に供され得る。タンパク質ミールは、加熱された昆虫パルプ、例えば加熱されたBSFの幼虫パルプから、及び加熱ステップ前の酵素処理後の加熱されたパルプから得ることができる。例えば、タンパク質ミールは、加熱されたBSFの幼虫パルプのバッチが90℃での加熱ステップ前に最初に0.1重量%又は0.5重量%のフレーバーザイムを使用したタンパク質の酵素加水分解に供された場合に、例えばパルプからのタンパク質分離、蒸発、乾燥及び粉砕のステップにより得られる。加熱前に昆虫ピューレ(BSFの幼虫ピューレ)が酵素的に処理される場合、加熱前に酵素処理されない昆虫ピューレと比較して、脂肪がタンパク質画分からより高い程度まで分離されることは、本発明の一部である。本発明によれば、適用される酵素の量を考慮した場合、用量依存的な程度のタンパク質からの脂肪分離が得られる。したがって、本発明によれば、加熱ステップ前のフレーバーザイムを使用したみじん切りされた幼虫、例えばみじん切りされたBSFの幼虫等の酵素処理は、遊離アミノ酸含量を増加させ、また得られる加水分解された幼虫ピューレのペプシン消化性を増加させ、その結果、本発明によれば、加水分解されたタンパク質を含む得られるピューレはより良好な味を有し(動物及び人間が遊離アミノ酸を含む生成物を消費した場合、遊離アミノ酸含量が魅力的で引き付けるような味に関連する)、極めて消化性が良く、酸化防止特性を有する(本明細書の以下の試験結果を参照されたい)。さらに、本発明によれば、BSFの幼虫パルプの酵素処理は、90℃での加熱の前に酵素加水分解ステップに供されなかった幼虫ピューレで得られたタンパク質画分からの脂肪分離と比較して、酵素加水分解及び酵素消化パルプの熱処理の後の次の分離ステップにおける脂肪分離を改善し、これによってタンパク質ミールからの脂肪抽出が増加する。
【0045】
先行技術では昆虫パルプから栄養物ストリームを分離するための方法が説明されているが、これまでのところ、比較的穏やかな処理、すなわち比較的低温/短時間での処理が脂肪の収率の増加をもたらし得ることは認識されていない。これに関して、国際公開第2014/123420号を参照すると、栄養物ストリームを分離するための方法が記載されているが、昆虫パルプから得られる脂肪の収率を増加させるためには、比較的高温/長時間の組合せが使用されるべきであるとみなされた。
【0046】
しかしながら、高温/長時間の組合せの使用は、栄養物ストリーム、特に得られる脂肪画分の品質に悪影響を及ぼす。例えば、昆虫パルプが比較的高温で比較的長時間加熱されると、パルプの変色が生じる。さらに、処理された昆虫の脂肪画分は比較的多量の不飽和脂肪酸を含有するため、脂肪は酸敗する。これは脂肪画分の異臭をもたらし、使用の範囲を限定する。
【0047】
本発明の方法により、これらの問題は大部分が克服される。第一に、本発明の方法により、昆虫パルプの変色が大幅に低減される。本発明の方法のさらに驚くべき利点は、昆虫パルプから得られた脂肪画分が、当技術分野において知られている方法で得られた脂肪画分より酸敗しにくいことである。さらに、処理された昆虫からの脂肪の収率もまた著しく高い。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、既知の方法を使用した場合、脂肪のかなりの部分が変性タンパク質中に取り込まれると想定される。より穏やかな処理条件を使用することにより、この脂肪の取込みは回避され得、昆虫パルプからの脂肪のより高い収率が得られる。さらに、穏やかな温度での短い加熱時間に起因して、タンパク質とのメイラード反応がより低い程度で生じる。
【0048】
一実施形態は、昆虫が昆虫の幼虫、好ましくはアメリカミズアブの幼虫である、本発明による方法である。
【0049】
一実施形態は、アメリカミズアブの幼虫が、12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前である、本発明による方法である。
【0050】
一実施形態は、加熱前にパルプが酵素処理されない、本発明による方法である。
【0051】
一実施形態は、ステップb)の前にパルプを酵素により処理するステップa1)をさらに含む、本発明による方法である。
【0052】
一実施形態は、方法が、ステップb)の前にパルプを酵素により処理するステップa1)をさらに含み、パルプが、40℃~70℃、好ましくは45℃~65℃の温度、より好ましくは50℃±2℃の温度で0.5~3時間、好ましくは1~2時間酵素により処理される、本発明による方法である。
【0053】
一実施形態は、方法が、ステップb)の前にパルプを酵素により処理するステップa1)をさらに含み、酵素が、プロテアーゼ、例えばペプチダーゼ、好ましくは少なくとも1種のプロテアーゼ及び少なくとも1種のペプチダーゼの混合物、例えばフレーバーザイムである、本発明による方法である。
【0054】
一実施形態は、ステップa)において、昆虫をみじん切りすることによりパルプが調製される、本発明による方法である。
【0055】
一実施形態は、ステップa)のパルプ中の昆虫の残骸の平均粒径が、10~500ミクロンの範囲である、本発明による方法である。
【0056】
一実施形態は、ステップb)において、パルプが、60~95℃の温度で60~90秒間、特に90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱される、本発明による方法である。
【0057】
一実施形態は、物理的分離ステップが、デカンテーション及び/又は遠心分離を含む、本発明による方法である。
【0058】
一実施形態は、水性タンパク質画分及び固体含有画分が、ステップ(c)の後に、好ましくは噴霧乾燥により、より好ましくは流動床乾燥により一緒に乾燥される、本発明による方法である。
【0059】
一実施形態は、水性タンパク質画分及び固体含有画分が、ステップc)の後に別個に乾燥され、水性タンパク質画分は、好ましくは噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥若しくは屈折式乾燥(refractive drying)、又はそれらの組合せにより乾燥される、本発明による方法である。
【0060】
分離ステップ、すなわちステップc)の結果、脂肪画分、水性タンパク質画分及び固体含有画分が得られる。このようにして、方法は、いくつかの栄養物ストリームを直接もたらす。通常、異なる画分の分離は本発明の最終目標であるが、ステップb)の後に得られた昆虫パルプを使用することが有利である用途もある。したがって、本発明はまた、上述の通りであるがステップa)及びb)のみを含む方法に関する。その後、パルプは、保存、包装及びおそらくはそのままで食物又は飼料成分として使用され得る。したがって、本発明はまた、前記方法のステップa)及びb)により得ることができる、又は得られる昆虫パルプに関する。
【0061】
昆虫パルプを調製するために使用される昆虫は、好ましくは昆虫の幼虫、好ましくは完全変態昆虫の幼虫である。幼虫は、好ましくは前蛹になる前に昆虫パルプに調製される。昆虫パルプの調製に前蛹を使用することも可能であるが、前蛹への変態前の「通常の」幼虫と比較してそのキチン含量が比較的高く、それにより人間又は動物による消費用の栄養源としての好適性はより低い。アメリカミズアブの幼虫を使用することが極めて好ましく、最も好ましくは、幼虫は養殖されているがまだ前蛹期に達していない。典型的には、幼虫は、通常の成長条件下で、孵化後10~30日間、好ましくは12~28日間、より好ましくは14~24日間、例えば14日間、16日間、18日間、20日間、22日間成長させられている。幼虫からの栄養物ストリームの最大収率を目的として、幼虫は、幼虫から前蛹段階への変態直前に本発明の方法に供されることが好ましい。
【0062】
したがって、幼虫が前蛹に変態し始める12時間~3日前、好ましくは前蛹への変態の1日~2日前に幼虫を本発明の方法に供することが有利である。アメリカミズアブの幼虫等の幼虫は、前蛹への変態期の直前はその最大サイズにあり、幼虫のライフサイクルのより早い段階及びより遅い段階と比較して、最大量のタンパク質及び脂肪を含む。さらに、アメリカミズアブの幼虫を考慮した場合、前蛹に変態し始める幼虫は、淡黄色から灰色/褐色に変色し、これは、若干色付いた白色/黄色のタンパク質が望ましい場合には望ましくない。本発明の方法において前蛹を適用したことに起因するより暗い褐色/灰色がかった色を有する昆虫パルプ及びそれから誘導されたタンパク質は、白色/黄色の外観を有する若干色付いた生成物と比較して品質がより低い生成物として認識される。これに関連して、以下で言及される選択肢及び優先性は、好ましくはそのようなアメリカミズアブの幼虫から誘導された昆虫パルプに関し実行されることに留意されたい。
【0063】
本発明の方法のステップa)において言及されるような昆虫からのパルプの調製は、様々な様式で行われ得る。1つの選択肢は、昆虫を押しつぶしてパルプを得ることである。好ましくは、パルプの調製にはみじん切り、切断又はミリングが使用される。これにより、粘性のある稠度の均質な出発材料が得られる。サイズの低減は、マイクロカッターミルで便利に行うことができるが、他の好適な技術もまた使用され得る。このステップの間、パルプ中に残留する昆虫、好ましくは幼虫の粒子サイズは、好ましくは500ミクロン未満、好ましくは10~500ミクロン(最大サイズは顕微鏡を使用して決定される)である。粒子サイズは、マイクロカッターミルの場合、ナイフ及びプレートの特定の組合せ並びに回転速度の選択により制御され得る。また、篩(例えばステンレススチール製)を使用し、昆虫をそれに押し通すことも可能である。原則的に、小さい残留粒子サイズはパルプからの脂肪抽出が容易になるため有利であるが、過度に小さい粒子サイズはエマルジョンを形成し、次のプロセスステップにおける脂肪及びタンパク質の分離をより困難にし得る。したがって、粒子サイズは、好ましくは10ミクロン超である。好ましくは、平均粒子サイズ(d32;体積/平均)は、10~500ミクロンの範囲である。
【0064】
次のステップであるステップ(b)において、パルプは60℃~95℃の温度に加熱される。加熱は、次の分離ステップに好適な混合物を調製するために、脂肪の大部分が液化されることを確実にする。好ましくは、加熱は、異なる相、例えば水相及び脂肪相の分離を促進するために混合条件下で達成される。脂肪の変色(例えばメイラード反応生成物の形成による)及び酸化を回避するために、並びに脂肪収率を改善するために、パルプは、前記温度で比較的短時間、すなわち50~100秒間だけ加熱される。好ましくは、パルプは、60~90秒間60℃~95℃に、特に90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱される。
【0065】
上述の温度までパルプを加熱した後、パルプは物理的分離ステップ、すなわち本発明の方法のステップ(c)に供される。このステップの間、様々な栄養物ストリーム(例えば脂肪及びタンパク質)は、少なくとも部分的に互いから分離される。しかしながら、上で説明されたように、脂肪の収率は、本発明の方法を用いると当技術分野において知られている方法よりも著しく高い。さらに、栄養物ストリームの品質もまた改善した。好ましくは、得られる栄養物ストリームは、脂肪含有画分、水性タンパク質含有画分及び固体含有画物である。物理的分離は、好ましくは、デカンテーション、遠心分離、又はこれらの方法の組合せを包含する。好ましくは、物理的分離は、標準(大気)圧で行われる。
【0066】
脂肪はデカンテーションを用いて分離されてもよく、残りの混合物は、デカンテーション又は遠心分離により水性タンパク質画分及び固体含有画分にさらに分離される。しかしながら、脂肪、タンパク質及び固体含有画分は異なる順序で、又は同時に、例えば3相デカンタを使用して得ることも可能である。そのような同時法の利点は、3つの栄養物ストリームが最小限のステップで、したがって生成物の最小限の損失で得られることである。分離ステップの数の低減は、連続プロセスで使用される場合も利点を有する。
【0067】
本発明の一実施形態において、脂肪画分が例えばデカンテーションにより最初に分離され、残りの混合物はそれ以上分離されないが、乾燥に供される。したがって、残りの混合物は、固体画分及び水性タンパク質画分の両方を合わせたものである。この実施形態において、非脂肪相は、好ましくはさらに乾燥されて乾燥材料を生成する。乾燥材料はタンパク質に富み、水性タンパク質画分及び固体含有画分からのタンパク質に富む材料の両方を含む。本発明の方法によって、より良好に脂肪をタンパク質から分離することが可能であるため、より高品質の生成物が得られる。さらに、本発明の方法によって、メイラード反応による(タンパク質の)変色が大幅に回避され、それにより得られる生成物の品質が改善される。乾燥は様々な方法により、例えば空気乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、ディスク乾燥、気流乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥、又は好ましくは噴霧乾燥により達成され得る。
【0068】
さらなる実施形態において、水性タンパク質画分及び固体含有画分は、ステップc)の後に別個に乾燥される。比較的穏やかな加熱条件により、水性タンパク質画分中に存在するタンパク質の少なくとも一部はその機能性を保持する。その後の乾燥中にそのような機能性を失わないことが有益である。したがって、そのような状況においては、流動床乾燥又は噴霧乾燥又はフリーズドライ又は屈折式乾燥が好ましい。
【0069】
本発明の第2の態様は、本発明による方法によって得ることができる脂肪画分に関する。昆虫の脂肪画分は多くの複数の不飽和脂肪酸を含むため、加熱時間の短縮は得られる脂肪画分の品質に大きな影響を有し、すなわち、脂肪画分は先行技術においてすでに知られている方法により得られる画分より酸敗が少ない。本発明による方法により得られた脂肪画分は、所望の特性を得るために、他の源から得られた脂肪画分と混合されてもよい。したがって、本発明はまた、本発明により得ることができる脂肪画分を含む脂肪組成物に関する。
【0070】
本発明の一態様は、本発明の方法により得られた加熱された昆虫ピューレ、好ましくは加熱されたBSFの幼虫ピューレに関する。驚くべきことに、そのような加熱された昆虫ピューレは酸化防止特性を有し、酸化防止飼料若しくは食物又はその成分としての使用に好適である。
【0071】
本発明の一態様は、加水分解された昆虫ピューレ、好ましくは加水分解されたBSFの幼虫ピューレに関する。ペプチダーゼ等の影響下での加熱ステップ前の昆虫ピューレの加水分解は、改善された酸化防止活性を有するピューレをもたらす。さらに、そのような加水分解されたピューレから分離されたタンパク質は、本発明の方法に従って得られた加水分解されていないピューレと比較して、及び例えば30分の長い加熱ステップを適用することにより従来通り得られる加水分解されていないピューレと比較して、良好に少ない脂肪を含む。
【0072】
本発明の一態様は、本発明の方法により得られた加熱された昆虫ピューレ、好ましくは加熱されたBSFの幼虫ピューレに関する。驚くべきことに、そのような加熱された昆虫ピューレは酸化防止特性を有し、健康増進飼料若しくは食物又はその成分としての使用に好適である。
【0073】
本発明の一態様は、加水分解された昆虫ピューレ、好ましくは加水分解されたBSFの幼虫ピューレに関する。ペプチダーゼ等の影響下での加熱ステップ前の昆虫ピューレの加水分解は、改善された酸化防止特性を有するピューレをもたらす。さらに、そのような加水分解されたピューレから分離されたタンパク質は、本発明の方法に従って得られた加水分解されていないピューレと比較して、及び例えば30分の長い加熱ステップを適用することにより従来通り得られる加水分解されていないピューレと比較して、良好に少ない脂肪を含む。
【0074】
本発明の第3の態様は、本発明による方法によって得られるタンパク質画分に関する。より低い温度-時間の組合せにより、タンパク質には、既知の昆虫タンパク質画分より少ない脂肪が取り込まれている。さらに、比較的穏やかな処理条件により、タンパク質の少なくとも一部はその機能性を保持する。これにより、前記タンパク質画分を様々な用途に使用することができ、これは以前は不可能であった。さらに、本発明の方法によって、メイラード反応による(タンパク質の)変色が大幅に回避され、それにより得られる生成物の品質が改善される。タンパク質画分は、ステップc)で得られる水性タンパク質画分の形態であってもよく、又はその乾燥形態、すなわち乾燥タンパク質画分の形態であってもよい。しかしながら、タンパク質の機能性を失いたくない場合には、噴霧乾燥又はフリーズドライ又は屈折式乾燥等の比較的穏やかな乾燥方法が使用されるべきである。
【0075】
固体含有画分は、50重量%以上の乾燥物質含量を有するパルプを含む。このパルプは水性タンパク質画分から容易に区別及び分離され得る。パルプは、キチン及びその誘導体等の固体を含有する。固体含有画分はまた、残留脂肪又はタンパク質を含み得るが、既知の方法よりも低い程度である。この固体含有画分はさらに乾燥され得、キチンもまたそこから単離され得る。得られたキチンは、食物又は飼料中の成分として使用され得る。
【0076】
本発明の一態様は、加水分解された昆虫パルプ及び/又は昆虫パルプ、例えば(加水分解された)アメリカミズアブの幼虫パルプの、健康増進食物成分又は飼料成分としての使用に関し、(加水分解された)パルプは本発明の方法により得ることができ、方法は、方法のステップb)の前に酵素加水分解ステップa1)を含むか又は含まない。
【0077】
本発明の第7の態様は、加水分解された昆虫パルプ及び/又は昆虫パルプ、例えばアメリカミズアブの幼虫パルプの、食物成分又は飼料成分としての使用に関し、(加水分解された)パルプは本発明の方法により得ることができ、方法は、方法のステップb)の前に酵素加水分解ステップa1)を含むか又は含まない。
【0078】
本発明の一態様は、飼料又は飼料成分、特にペットフードとしての使用のための、本発明による昆虫パルプ又は加水分解された昆虫パルプ又はその誘導体に関する。
【0079】
本発明の一態様は、本発明による昆虫パルプ又は加水分解された昆虫パルプ又はその誘導体の、健康増進能を有する食物成分又は飼料成分としての使用に関する。
【0080】
本発明の一態様は、細胞の酸化的損傷の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、本発明による昆虫パルプ又は加水分解された昆虫パルプ又はその誘導体に関する。
【0081】
本発明者らは、驚くべきことに、ラジカル捕捉モデル(DPPH及びABTSアッセイ)、ミエロペルオキシダーゼ応答が関与する酵素モデル(古典的及びSIEFEDアッセイ)、並びに好中球応答が関与する細胞モデルを使用して、アメリカミズアブのタンパク質及びタンパク質加水分解物のin vitro酸化防止活性を実証及び分析した。市販のフィッシュミール及びチキンミールが比較例において業界基準として使用された。本発明者らにより行われた試験及び比較の結果では、フィッシュミール及びチキンミールが、好中球及びミエロペルオキシダーゼ応答の結果として生じる酸化的損傷の抑制に関する利点をほとんど又は全く提供しないことが明らかである。さらに、フィッシュミール及びチキンミールはまた、使用された試験アッセイ及びモデルのいくつかにおいて酸化促進挙動を示す。結果は、アメリカミズアブのタンパク質((加水分解された)幼虫ピューレの一部として)が、宿主の好中球及びミエロペルオキシダーゼ応答から生じる細胞損傷に対する保護において効果的であることを示している。したがって、本発明者らにより試験されたアメリカミズアブ誘導体(ピューレ、加水分解されたピューレ)は、ペットフード/飼料及び水産養殖飼料配合物への含有に関して、例えば飼料成分としての使用に関して、チキンミール及びフィッシュミールを超える利点を示す。
【0082】
本発明者らは、BSFのタンパク質加水分解物が、1000Da未満のタンパク質の有意なシェアを有することを実証した。これは、短鎖ペプチド及び遊離アミノ酸の混合物を含む。いくつかの短鎖ペプチド及び遊離アミノ酸は、酸化防止活性を有することが知られている。これらの分子は、ROS及びフリーラジカルを活発に捕捉し得る。Firmansyah及びAbduh[3]は、BSFタンパク質加水分解物のDPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)捕捉活性を評価した。Zhuら[4]は、BSFタンパク質加水分解物のDPPH、ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、スーパーオキシド及びヒドロキシルラジカル捕捉活性を評価した。本発明者らの知る限り、BSFの幼虫ピューレ及び加水分解されたBSFの幼虫ピューレによる驚くほど高い酸化防止活性並びに酸化ストレス及び/又は損傷に対する驚くほど高い保護を示す、基礎的酵素及び細胞モデルを使用してBSFタンパク質加水分解物の酸化防止活性を実証した研究は、現在まで実現していない。したがって、このたび実証された発明の前には、BSFタンパク質加水分解物の酸化防止能は、基礎的レベルでよく理解されておらず、まだ開示されておらず、予想されておらず、期待されてもいなかった。本発明によれば、BSFタンパク質及びタンパク質加水分解物のin vitro酸化防止活性に関する詳細な調査により、これらのタンパク質誘導体の新たな用途が切り開かれ、動物の健康が改善される。
【0083】
本発明者らは、以下を使用して、BSFタンパク質及びタンパク質加水分解物の驚くほど高い酸化防止剤能を見出した:(1)DPPH及びABTSが関与するラジカル捕捉モデル;(2)ミエロペルオキシダーゼ応答が関与する酵素モデル;並びに(2)好中球応答が関与する細胞モデル。本発明による(加水分解された)BSFの幼虫ピューレの酸化防止活性との比較のために、チキンミール及びフィッシュミールが比較例において業界基準として使用された。
【0084】
本発明者らは、驚くべきことに、90℃で40秒間加熱された昆虫ピューレが、比較的多量の遊離脂肪酸(約70%)を有することを実証した。例えば、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫を本発明の方法に供することに関連する実施例4を参照されたい。ピューレを40秒間加熱するだけでは、リパーゼの不活性化には効果がない。一方、ピューレが80秒間加熱された場合、少量の遊離脂肪酸が観察され、これは90℃での酵素不活性化にはこの時間で十分であることを示している。80秒を超える、例えば300秒又は1800秒までの加熱時間では、アメリカミズアブの幼虫ピューレが80秒間加熱された場合に得られる低い脂肪酸含量と比較して、脂肪酸含量が増加する。したがって、本発明の方法により比較的低い遊離脂肪酸含量を含むタンパク質画分を得るためには、本発明の方法における加熱時間は、40秒超300秒未満、例えば50~100秒、又は60~90秒若しくは70~85秒から選択される加熱時間、例えば約80秒であるべきである。好ましい加熱時間は、約90℃又は90℃±2℃である。
【0085】
驚くべきことに、本発明者らは、アメリカミズアブの幼虫のみじん切りで得られたピューレ等のみじん切りされた昆虫パルプが本発明の方法ステップに供されるが50秒未満の加熱ステップ期間(本発明の方法から逸脱している)である場合、50秒未満、例えば約40秒の加熱期間でより高い過酸化物価が観察されることを実証した。ピューレ又はパルプが40秒間加熱された場合に得られる、ヒドロペルオキシドの生成をもたらす酵素酸化に関与し得る多量の遊離脂肪酸が、比較的多量の過酸化物の生成の根底にある。しかしながら、昆虫パルプ又はピューレ、例えばアメリカミズアブの幼虫から得られるピューレが、80秒の処理の加熱ステップで本発明の方法に供された場合、50秒未満の期間加熱された場合に得られる過酸化物価に比べて、比較的低い過酸化物価が得られる。本発明の方法に従い、生成物(例えば幼虫からのピューレ)を100秒超の期間以内、例えば300秒又は1800秒間加熱すると、例えばピューレ又はパルプが80秒の期間加熱された場合の過酸化物価と比較して、過酸化物価が増加するという点で脂肪酸化に影響がある。したがって、本発明の方法を使用して比較的低い過酸化物価を含むタンパク質画分を得るためには、本発明の方法における加熱時間は、40秒超300秒未満、例えば50~100秒、又は60~90秒若しくは70~85秒から選択される加熱時間、例えば約80秒であるべきである。好ましい加熱時間は、約90℃又は90℃±2℃である。
【0086】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の方法により得られるか又は提供されるタンパク質画分がラジカル捕捉活性を有することを実証した。本発明の方法により得られた一連の用量のアメリカミズアブの幼虫のタンパク質を含む魚用飼料を給餌した後に魚肉の酸化状態を評価した場合(最低用量:魚に給餌される魚用飼料の総質量を基準として飼料中0%のBSFの幼虫タンパク質;最高用量:100%のBSFの幼虫タンパク質;25%及び50%もまた試験される)、ラジカル捕捉活性は、魚に給餌される従来の魚用飼料を用いて得ることができるラジカル捕捉活性より高い。本明細書の以下の実施例の項、実施例5もまた参照されたい。本発明の方法により得られたタンパク質を含むか又はそれからなる餌(水溶性抽出物粉末(WSEP)と呼ばれる)を事前に魚に給餌した後の魚肉のABTSラジカル捕捉活性を、本発明の方法により得られたアメリカミズアブの幼虫のタンパク質画分を含まない従来の飼料を事前に魚に給餌した後の魚肉のラジカル捕捉活性と比較した。全ての試料において、濃度の増加は、平均阻害値(魚肉におけるラジカル捕捉活性を評価した場合の給餌された飼料の酸化防止挙動を示す)の増加をもたらした。Emax(試験中に得られた最大阻害)はHI-25>HI-100>HI-50>HI-0の順であり(全て0.2mg/mlの最終濃度で得られた)、これらはそれぞれ、給餌された飼料の総質量を基準として25重量%、100重量%、50重量%及び0重量%の本発明の方法により得られたBSFの幼虫タンパク質を含む魚用飼料を指す。この結果は、HI-25試料の用量において最も高いABTSラジカル捕捉活性が得られることを示している。一方、HI-0試料は、最も低いABTSラジカル捕捉活性を示す。ABTSアッセイを使用して評価すると、アメリカミズアブの幼虫を用いて本発明の方法を適用することにより得られるタンパク質試料は全て、用量依存的に酸化防止活性を示す。HI-25試料は、最も高い酸化防止活性を示す。
【0087】
要約すると、本発明の方法により、昆虫から有益な栄養物ストリームを得ることが可能となった。これらのストリームは、外来化学物質により汚染されておらず、純粋に生物起源である。単離された栄養物ストリームは、食物、飼料又は医薬品の調製に使用され得る。さらに、意図される用途に応じて、得られた栄養物ストリームは、例えば、加水分解されたタンパク質、アミノ酸又は特定の脂肪酸等の特定の成分を単離するためにさらに処理されてもよい。
【0088】
一実施形態は、ステップb)において、パルプが75℃~95℃の温度、特に80℃~93℃、好ましくは85℃~90℃の温度である、本発明による昆虫を栄養物ストリームに変換する方法である。一実施形態は、ステップb)において、パルプが60~95秒間、特に70~90秒間、好ましくは75~85秒間、例えば78~82秒間加熱される、本発明による昆虫を栄養物ストリームに変換する方法である。前述のように、本発明者らは、方法のステップa)において、本発明の(アメリカミズアブの)幼虫処理方法を適用することにより、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫から得られる水性タンパク質画分のストリームを含む栄養物ストリームが得られることを実証したが、この水性タンパク質画分は、当技術分野において知られている代替的なアメリカミズアブの幼虫の処理方法、例えば欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に概説される方法を適用することによりそのような幼虫から得られるタンパク質と比較して、驚くほど改善された特徴及び構造特性を有する。特に、本発明の方法のステップb)における100秒又は100秒未満の比較的短い加熱時間は、ステップb)において改善された幼虫パルプを得るために、またその後方法のステップc)において改善された水性タンパク質画分を得るために必須であると考えられる。本発明者らは、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための代替的な現在の手段及び方法を用いて提供されるタンパク質源と比較して、時間と温度の組合せを使用することによってより少ない油が水性タンパク質画分内に取り込まれ、本発明の方法のステップc)においてより純粋なタンパク質源が提供されることを見出した。また、メイラード反応に起因する方法のステップb)における(タンパク質の)加熱されたパルプの変色が大幅に回避され、それにより得られる生成物、例えば本発明の方法のステップb)における加熱されたパルプ及びステップc)における水性タンパク質画分の品質が改善される。例えば、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫が90℃で80秒間、又は90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱された場合、脂肪含量が低減された水性タンパク質画分が得られる。EP2953487では、加熱時間は少なくとも5分、さらには30分である。さらに、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫パルプ(方法のステップa)において提供される)の最大100秒、好ましくは約70~90秒の比較的短い加熱時間により、当技術分野において知られている現在の方法において適用されるより長い加熱時間と比較して、方法のステップb)において顆粒化がより少なく凝集性がより低い加熱された昆虫パルプが得られる。方法のステップb)の後の顆粒化がより少ない幼虫パルプは、例えば、パルプに含まれるタンパク質の酵素加水分解に有益であり、一般に、顆粒化がより少なく凝集性がより低い昆虫パルプ及びその後のタンパク質画分は、改善された分離結果、並びにパルプ及びタンパク質の処理の改善された容易性に寄与する。例えば、粒子状物質は酵素分子によりアクセスしにくいため、顆粒化は酵素効率を低減する。本発明の方法の一部として幼虫処理方法ステップを適用することにより、アメリカミズアブの幼虫のパルプが100秒を超える、例えば5分~30分間の加熱に供された場合に得られるより大きいタンパク質凝集体及び粒子と比較して、短い加熱時間によってより小さいタンパク質クラスタ、凝集体、粒子、又はさらには(主に)タンパク質モノマー及び/若しくは小マルチマーからなるタンパク質組成物が得られる。さらに、脂肪は、比較的大きいタンパク質パルプクラスタ内に取り込まれ、タンパク質画分は、昆虫パルプを例えば90℃で100秒を超える期間加熱した後に凝集する。
【0089】
本発明を以下の限定されない実施例を用いてさらに例示する。
【0090】
[実施例及び実施形態]
実施例1
14日齢の洗浄した生きた幼虫(5kg)を収集した後、すぐに肉挽き機で処理し、使用するまで4℃で保存した。実験毎に100gの幼虫を新しくみじん切りにした。100gのみじん切りされた幼虫を90℃に加熱し(ホットプレートを使用して連続撹拌下)、生成物を0秒、40秒、80秒、120秒、300秒、600秒及び1800秒間この温度に維持した。約30gの加熱された幼虫を3つの遠心管に収集し、3200Gで5分間遠心分離した。遠心分離後に脂肪画分を抽出し、パスツールピペットを使用して収集し、秤量して、(湿潤ベースでの総ピューレ重量のうちの)%脂肪分離を計算した。
【0091】
時間の関数としての脂肪分離を、以下の表1及び図1に示す。これにより、加熱されていない昆虫パルプの遠心分離後では脂肪は得られなかったが、80秒の加熱時間までは着実に増加したことが明らかである。その後、600秒の加熱時間まで安定していたが、その後は脂肪分離が降下し始めた。この驚くべき結果は、当技術分野において推定されたこととは異なり、10分以下の比較的短い加熱時間が、加熱された昆虫パルプからの脂肪の最も効率的な除去に使用され得ることを示している。さらに、短縮された加熱時間に起因して、加熱された昆虫パルプの変色の発生がより少なく、これはより高品質の生成物(及び誘導される栄養物ストリーム)をもたらす。図2において、昆虫パルプの色に対する加熱時間の影響が示されている。さらに、短い加熱時間は、600秒を超えるより長い加熱時間と比較して、顆粒化がより少なく凝集性がより低い昆虫パルプをもたらす(例えば図2を参照されたい)。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例2
BSFの幼虫のピューレの酵素加水分解により得られるBSF PureeX(商標)(BSF-P)とも呼ばれるBSFの幼虫のピューレは、2019年10月にProtix B.V.(Dongen、オランダ)により調製された。ピューレ及び酵素消化ピューレは、以下の方法に従って得られた。14日齢の洗浄した生きたアメリカミズアブの幼虫を収集した後、すぐに肉挽き機に供して幼虫をみじん切りにし(幼虫パルプが得られる)、その後使用するまで4℃で保存した。幼虫は、実験毎に新しくみじん切りにした。みじん切りされた幼虫を、みじん切りされた幼虫の質量を基準として0.1%又は0.5%のフレーバーザイムで、連続撹拌下45℃~65℃(±2℃)で0.5~3時間、例えば1~2時間処理した。実施例2において適用された加水分解されたBSFの幼虫ピューレのバッチは、50℃(±2℃)で1時間の酵素加水分解により得られた。フレーバーザイム(Novozymes、デンマーク)は、エンドペプチダーゼ及びエクソペプチダーゼ活性を有するアミノペプチダーゼの組合せである。酵素処理されたみじん切りされた幼虫、及び酵素処理なしの対照幼虫を90℃に加熱し、生成物をこの温度で80秒間維持した。得られた昆虫ピューレを、遊離アミノ酸含量(図3A:遊離アミノ酸含量(n=1)-ピューレ中で試験)及びペプシン消化性(図3B:消化性(n=1)-ピューレ中で試験)を測定するために使用した。加熱されたBSFの幼虫パルプから、及び90℃での加熱ステップ前に最初に0.1重量%又は0.5重量%のフレーバーザイムを使用したタンパク質の酵素加水分解に供された加熱されたBSFの幼虫パルプのバッチから、例えばパルプからのタンパク質分離、蒸発、乾燥及び粉砕のステップによりタンパク質ミールを得た。脂肪分離のパーセンテージを、分離ステップ中に測定した(図3C:%脂肪分離(n=3)-タンパク質ミールを調製するための分離ステップ中に試験)。行われた全ての実験において、適用される酵素の量を考慮した場合、用量依存的な効果が観察された。したがって、加熱ステップ前のフレーバーザイムを使用したみじん切りされた幼虫の酵素処理は、遊離アミノ酸含量を増加させ、また得られる加水分解された幼虫ピューレのペプシン消化性を増加させ、その結果、加水分解されたタンパク質を含む得られるピューレはより良好な味を有し(動物及び人間が遊離アミノ酸を含む生成物を消費した場合、遊離アミノ酸含量が魅力的で引き付けるような味に関連する)、極めて消化性が良く、酸化防止特性を有する(本明細書の以下の試験結果を参照されたい)。さらに、BSFの幼虫パルプの酵素処理は、90℃での加熱の前に酵素加水分解ステップに供されなかった幼虫ピューレで得られたタンパク質画分からの脂肪分離と比較して、酵素加水分解及び酵素消化パルプの熱処理の後の次の分離ステップにおける脂肪分離を改善し、これによってタンパク質ミールからの脂肪抽出が増加する。
【0094】
実施例3
2.材料及び方法
2.1.試薬
試薬は全て分析グレードのものであった。ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、過酸化水素及びTween-20は、Merck(VWR、Leuven、ベルギー)から購入した。亜硝酸ナトリウム、ウシ血清アルブミン、ホルボール12-ミリステート13-アセテート及びパーコール(Percoll)(商標)は、Sigma(Bornem、ベルギー)から購入した。水性抽出物及び水溶液は、Milli-Q水システム(Millipore、Bedford、USA)を使用して得られたMilli-Q水中で作製した。ビシンコニン酸及び硫酸銅(II)溶液は、Sigma(Steinheim、ドイツ)から購入した。Whatman濾紙グレード4(270mm)は、Amersham(Buckinghamshire、UK)から購入した。Sterlip30ml使い捨て真空フィルタシステムは、Millipore(Bedford、USA)から購入した。2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル及び2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)は、Aldrich(Darmstadt、ドイツ)から購入した。8-アミノ-5-クロロ-7-フェニルピリド[3,4-d]ピリダジン-1,4(2H,3H)ジオン(L-012)は、Wako Chemicals(Neuss、ドイツ)から購入した。
【0095】
2.2.原料
チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)は、2019年9月にオンラインウェブショップから購入した。供給業者により公表されている両方の原材料の化学組成を、表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
BSF-P及び加水分解されたピューレBSF-HPは、2019年10月にProtix B.V.(Dongen、オランダ)により調製された。(1).BSF-Pは、-20℃で凍結状態で供給された低温殺菌BSFみじん切り「肉」(ピューレ、パルプ)であった。BSF-Pはまた、BSFタンパク質ミール(ProteinX(商標))を生成するための原料である。(2).BSF-HPは、同じく-20℃で凍結状態で供給された加水分解及び低温殺菌BSF肉(ピューレ)であった。(3).2つの原材料BSF-P及びBSF-HPの化学組成は、そのままの状態で表3に示されている。
【0098】
【表3】
【0099】
CM、FM、BSF-P及びBSF-HPに対して水溶性抽出物を調製した。各乾燥物質含量を基準としてこれらの生成物(各100g)を6倍体積のMilli-Q水で溶解し(例えば、BSF-Pは33.3%の乾燥物質含量を有し、200mlのMilli-Q水で希釈した)、磁気撹拌機で2時間撹拌した。遠心分離(4℃、1000×gで30分)後、上部の脂肪層を取り出し、Whatmanフィルタ(グレード4)を使用して上清を濾過した。遠心分離及び濾過ステップを再度繰り返して、全ての不溶性残渣を除去した。最後に、Sterlipフィルタ(50mL、0.22μm)を使用して上清を濾過し、2日間の期間にわたりフリーズドライして、それぞれの水溶性抽出物粉末を得た。4つ全ての水溶性抽出物を、さらなる使用までデシケータ内に保存した(18℃)。
【0100】
2.3.タンパク質定量
ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ[25]を使用して、4つの水溶性抽出物の総タンパク質含量を分析した。0、0.125、0.25、0.5及び1mg/mlの濃度のウシ血清アルブミン(BSA)を標準として使用して、較正曲線を得た。3mg/mlの水溶性抽出物の原液を分析に使用した。4900μlのBCA(49/50)及び100μlの硫酸銅(II)(1/50)を溶解することにより、試験溶液を作製した。試料原液(10μl)及び試験溶液(200μl)を96ウェルプレートのウェルに加えた。このプレートを37℃で30分間インキュベートし、マルチスキャンアセント(Multiscan Ascent)(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を使用して450nmで吸光度を測定した。
【0101】
2.4.DPPHアッセイ
Brand-Willamsら[6]のプロトコルに一部修正を加えて、DPPHラジカル捕捉活性を分析した。10.5mgのDPPHを40mlのエタノールに溶解することにより、DPPH試験溶液を作製した。試験溶液は新しく作製し、さらなる使用まで暗所で保存した。試験溶液を10倍のエタノールで希釈することにより、DPPH希釈標準溶液を作製した(517nmで0.6~0.8の吸光度が得られる)。DPPH希釈標準溶液(1920μl)を20μlの試料希釈液(Milli-Q水中の4つの水溶性抽出物)と混合して、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度を得た。暗所での30分及び60分のインキュベーション後の吸光度の減少が、HP 8453 UV-vis分光光度計(Agilent Technologies、Waldbronn、ドイツ)を使用して510nmで記録された。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0102】
2.5.ABTSアッセイ
Arnaoら[7]のプロトコルに一部修正を加えて、ABTSカチオンラジカル捕捉活性を分析した。Milli-Q水に7.0mmol/lのABTS及び2.45mmol/lの過硫酸カリウムを溶解することにより、ABTS試験溶液を作製した。試験溶液を室温で一晩暗所で保管した。メタノールで希釈することによりABTS希釈標準溶液を作製し、734nmで0.7~0.8の吸光度を得た。ABTS希釈標準溶液(1920μl)を20μlの試料希釈液(Milli-Q水中の4つの水溶性抽出物)と混合して、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度を得た。暗所での30分のインキュベーション後の吸光度の減少が、HP 8453 UV-vis分光光度計(Agilent Technologies、Waldbronn、ドイツ)を使用して734nmで記録された。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0103】
2.6.特異的免疫抽出に続く酵素検出(SIEFED)アッセイを使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
SIEFEDアッセイは、動物起源MPOの特異的検出のためのFranckら[8]により開発された実施許諾を得た方法である。ヒトMPOを20mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、5g/lのBSA及び0.1%のTween-20中に希釈することにより、MPO溶液を作製した。0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度の試料希釈液を、MPO溶液と共に25ng/mlの最終濃度で10分間(37℃)インキュベートした。インキュベーション後、ウマMPOに対するウサギポリクローナル抗体(3μl/ml)で被覆された96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに混合物を入れ、37℃で2時間暗所でインキュベートした。ウェルを洗浄した後、過酸化水素(10μM)、NO (10mM)及びアンプレックス(Amplex)(商標)レッド(40μM)を添加することによって、抗体により捕獲された酵素の活性を測定した。フルオロスキャンアセント(Fluorosckan Ascent)(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を用いて、アンプレックス(商標)レッドの蛍光性付加物レゾルフィンへの酸化を37℃で30分間監視した。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0104】
2.7.古典的測定を使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
2.6項で言及したようにMPO溶液を調製した。0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度の試料希釈液を、MPO溶液と共に25ng/mlの最終濃度で10分間(37℃)インキュベートした。インキュベーション後、混合物(100μl)を速やかに96ウェルマイクロタイタープレートに移した。これに続いて、10μlのNO (10mM)及び100μlのアンプレックス(商標)レッド及び過酸化水素混合物(2.6項で言及した濃度)を添加した。上記混合物の添加直後、フルオロスキャンアセント(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を用いて、アンプレックス(商標)レッドの蛍光性付加物レゾルフィンへの酸化を37℃で30分間監視した。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0105】
2.8.細胞酸化防止活性
Paulら[2]に従い、好中球及びホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)溶液の調製を行った。Tsumbuら[1]のプロトコルを使用して、試料の好中球応答調節活性を分析した。好中球懸濁液(100万細胞/143μl PBS)を、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに入れ、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度の試料のリン酸緩衝生理食塩水溶液と共に10分間(暗所で37℃)インキュベートした。インキュベーション後、25μlの塩化カルシウム(10μM)及び20μlのL-012(100μM)をウェルに加えた。好中球を10μl のPMA(16μM)で活性化した直後に、フルオロスキャンアセント(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を使用して、好中球の化学発光応答を37℃で30分間監視した。対照の場合、試料希釈液の代わりにリン酸緩衝生理食塩水のみを使用した。
【0106】
2.9.統計分析
分析は全て3回行った。タンパク質定量については、直線回帰を使用して、フィッティングされた線の方程式及びR二乗値を計算した。酸化防止アッセイについて得られた濃度と阻害との間の関係は、非単調な性質のものであった。これに対応するために、局所推定散布図平滑化(LOESS)回帰技術を使用して、関係をモデル化した[9]。モデルは、R統計ソフトウェアを使用してフィッティングした[10]。これらのモデルでは、局所回帰の平滑化感度を定義するスパンパラメータが必要である。目視検査により、0.4のスパンパラメータ値が、全ての濃度及び阻害関係曲線に好適であることが判明した。関心のある予測阻害パーセンテージを有する濃度、例えばIC50(50%阻害が達成される濃度)は、数値探索ルーチンと組み合わせてフィッティングされたモデルを使用して見出された。
【0107】
3.結果
3.1.タンパク質定量
BSAを使用して得られる較正曲線、線の方程式及びR二乗値が確立される。試料の光学密度及びタンパク質の相対濃度(線の方程式を使用して計算される)は、表3で言及されている。ビシンコニン酸アッセイを使用すると、試験された溶液のうちBSF-P抽出溶液(3mg/ml)が最も高いタンパク質濃度を示し、一方BSF-HP溶液が最も低いタンパク質濃度を示している。
【0108】
【表4】
【0109】
3.2.DPPHアッセイ
30分及び60分のインキュベーション後の5つ全ての試料のDPPHラジカル捕捉活性を、それぞれ図4及び図5に示す。プロットは、測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線を示す。CMは、30分及び60分のインキュベーション後、全ての試験濃度において酸化促進挙動を示した。一方、FMは、30分のインキュベーション後は5つの試験濃度のうち4つにおいて、また60分のインキュベーション後は全ての試験濃度において酸化促進挙動を示した。60分のインキュベーション後のBSF-HPのIC50を表5に示す。試料が酸化促進活性を示したか、又はアッセイ中に50%阻害が達成されなかったため、他の試料(30分又は60分のインキュベーション後)に対してIC50を計算することは不可能であった。30分及び60分のインキュベーション後のそれぞれ全ての試料のEmax(アッセイ中に達成される最大阻害)もまた表6に示されており、BSF-HP>BSF-P>FM及びBSF-HP>BSF-Pの順である。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
3.3.ABTSアッセイ
30分のインキュベーション後の試料のABTSカチオンラジカル捕捉活性を図6に示す(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)。全ての試料が同様の阻害パターンを示し、すなわち%阻害は増加する濃度の関数として増加した。試料のIC50は表5で言及されており、FM>CM>BSF-HP>BSF-Pの順である。IC50が低いほど、ABTSカチオンラジカル捕捉活性が高い。全ての試料のEmax(アッセイ中に達成される最大阻害)が表6に示されており、BSF-P>BSF-HP>FM>CMの順である。
【0113】
3.4.特異的免疫抽出に続く酵素検出(SIEFED)アッセイを使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
SIEFEDアッセイを使用して得られた試料のMPO応答調節活性を図7に示す(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)。BSF-HPは強い阻害挙動を示し、0.20mg/mlの濃度で75%超の阻害であった。試料のIC50は表5で言及されており、BSF-HPの順である。試料のEmaxは表6で示されており、BSF-HP>BSF-Pの順である。FM及びCMは、全ての試験濃度において酸化促進挙動を示す。一方、BSF-PのEmazは50%未満であった。
【0114】
3.5.古典的アッセイを使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
古典的アッセイを使用して得られた試料のMPO応答調節活性を図8に示す(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)。CM及びFMは、全ての試験濃度において酸化促進挙動を示した。試験した全ての試料のEmaxを表6に示す。BSF-P及びBSF-HPは75%超のEmaxを示した。試料のIC50は表5で言及されており、BSF-P>BSF-HPの順である。
【0115】
3.5.細胞酸化防止活性
試料の好中球応答調節活性(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)並びにEmaxを、それぞれ図9及び表6に示す。全ての試験試料が0%超のEmaxを示した。FM及びCMは、40%未満のEmaxを示した。CMは、5つの試験濃度のうち3つにおいて酸化促進挙動を示した。試料のIC50は表5で言及されている。BSF-P及びBSF-HPは、同じ数値のIC50値を有する。
【0116】
4.考察
4.1.タンパク質定量
ビシンコニン酸アッセイを使用して推定された4つの水溶性抽出物のタンパク質濃度を表4に示す。アメリカミズアブのタンパク質、FM及びCMの間のアミノ酸パターンの類似性を考慮すると、4つの水溶性抽出物のタンパク質含量は、BSF-P>CM>FM>45.5%>BSF-HPの順である。
【0117】
4.2.DPPHラジカル捕捉活性
DPPH及びABTSアッセイは、食品及び飼料製品の酸化防止能を分析するために一般的に使用される。DPPHラジカル捕捉活性は、フリーラジカルを安定化させるために試料が水素原子を供与する(水素原子移動と呼ばれる)か又は電子を供与する(単一電子移動と呼ばれる)能力を表す。全ての試験試料に対するDPPHアッセイIC50及びEmaxは、それぞれ表5及び表6で言及されている。30分のインキュベーション後では、全ての試験試料がEmax<50%示す(BSF-HPが最も高いEmaxを示す)。一方、60分のインキュベーション後では、BSF-HPのみがEmax>50%を示す。BSF-HPは、アメリカミズアブのタンパク質の制御された加水分解により製造され、少なくとも24%の1000Da未満のタンパク質を含有する(表3を参照されたい)。一方、BSF-Pは、少なくとも6%の1000Da未満のタンパク質を含有する。本発明者らは、FM及びCMの分子量分布に関するいかなる代表的文献も見つけることができなかった。しかしながら、文献によれば、FM及びCMは、それぞれ2.2%及び1.1%の遊離アミノ酸(全タンパク質のうち)を含有する[Li, P.、Wu, G. Composition of amino acids and related nitrogenous nutrients in feedstuffs for animal diets. Amino Acids 2020、1-20、doi:10.1007/s00726-020-02833-4]。これは、それぞれ少なくとも2.2%及び1.1%の1000Da未満のタンパク質を含有するFM及びCMに換算される。フリーラジカルを捕捉するタンパク質性材料の能力は、タンパク質分子量分布に依存する。低分子量ペプチドを有するタンパク質は、より効率的にフリーラジカルを捕捉することができる。タンパク質性分子のフリーラジカル捕捉活性はまた、以下によって影響される:(1)アミノ酸組成:疎水性アミノ酸(例えばTyr、Phe、Pro、Ala、His及びLeu)は親水性アミノ酸と比較して優れたラジカル捕捉活性を有する。(2)アミノ酸配列:両親媒性の性質を有するペプチドは、試料のラジカル捕捉活性を増強し得る。化学分析では、Tyrが水素原子移動メカニズムを介して酸化防止挙動を示すことが示されている。一方、Cys、Trp及びHis等のアミノ酸は、単一電子移動メカニズムを介して酸化防止挙動を示す。
【0118】
FM及びCMは、30分及び60分のインキュベーション後、試験したほとんどの濃度で酸化促進挙動を示す(図4及び図5を参照されたい)。この挙動は、主に熱処理により生じる。FM及びCMの両方において、熱処理は、一般に原料を高温で15~20分間加熱することを含む。ノルウェーでは、フィッシュミール製造中、腸内細菌(Enterobacteriaceae)数及びサルモネラ菌数の100 log10の低減を達成するために、天然魚が70℃以上の温度で20分以上加熱に供される。そのような厳密な熱処理条件は、脂肪及びタンパク質の酸化をもたらし得る。フィッシュミールは、より熱的酸化を受けやすい多価不飽和脂肪酸に富む脂質を含有する。多価不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、フィッシュミールには酸化防止剤が一般的に添加される(表1でも見られる)。アミノ酸の熱誘発酸化は、広範な酸化生成物の発生をもたらす。生成物によるアミノ酸酸化の酸化促進挙動はすでに知られている。それらは動物の体に広範な健康状態をもたらし得る。本発明者らにより使用及び分析された全てのアメリカミズアブのタンパク質誘導体(ピューレ、加水分解されたピューレ)を、100℃未満の温度で1.5分未満の期間(例えば90℃で80秒間)熱処理した。本発明のこれらの熱処理時間-温度の組合せは、栄養物(タンパク質及び脂肪)に対する最小限の損傷及び病原性微生物の適正な不活性化を確実にするように採用された。これは、FM及びCMの酸化促進挙動が、厳しい生成方法に主に起因して生じることを暗に意味している。
【0119】
最近の研究の1つにおいて[3]、研究者は、ブロメライン酵素を使用してBSFタンパク質加水分解物を作製した。ブロメライン誘導タンパク質加水分解物はまた、DPPHラジカル捕捉活性に関して試験され、8.4mg/mlのIC50が得られた。このブロメライン誘導タンパク質加水分解物のDPPHラジカル捕捉活性は、BSF-HP(60分のインキュベーション後にIC50 0.18mg/ml)等の生成物の活性と比較して、はるかに低かった。本発明者らにより見出されたBSF-HPのより高い活性は、組成属性(本項において上述された通り)及び原料自体の品質に起因し得る。Protixは、GMP+及びSecureFeed認定設備におけるHACCP条件下での昆虫タンパク質の生成を報告している。
【0120】
4.3.ABTSカチオンラジカル捕捉活性
ABTSカチオンラジカル捕捉は、電子を供与してフリーラジカルを安定化する試料の能力を指す。全ての試料のABTSアッセイIC50を表5に示す。それらはFM>CM>BSF-HP>BSF-Pの順である。IC50が高いほど、酸化防止活性が低い。このアッセイでは、FM及びCMでも酸化防止活性を示す。(1つ又は複数の)フリーラジカルが単一電子移動メカニズムを用いて安定化され得る場合、FM及びCM抽出物は効率的であり得ると思われる。しかしながら、それらは、BSF誘導体であるBSFの幼虫ピューレ及び加水分解されたBSFの幼虫ピューレの驚くほど高い捕捉活性と比較して、依然としてより低い捕捉活性を示す。
【0121】
ラジカル捕捉活性のタンパク質分子量に対する依存性は、すでに4.2項で説明されている。Protixにおいて、本発明者らは、BSF-P及びBSF-HPが全く同じアミノ酸組成を有することを実証した。しかしながら、タンパク質加水分解に起因して、1000Da未満のタンパク質の量は、BSF-HPにおいてBSF-Pよりも高い。したがって、BSF-P IC50値がBSF-HPと比較して若干より低いことは幾分驚くべきことである。これは、加水分解のメカニズムにより説明され得る。酵素加水分解は、エクソ及びエンドペプチダーゼを介して達成される。エクソペプチダーゼは末端ペプチド結合を切断し、一方エンドペプチダーゼは非末端ペプチド結合を切断する。両方の場合において、アミノ酸の配列が変更される。単一電子移動を介した得られるペプチドのラジカル捕捉能力はまた、タンパク質性分子の両親媒性の性質に依存する。BSF-HP中のペプチドは両親媒性の性質がより低く、これによりBSF-Pと比較してBSF-HPのより低いABTSカチオンラジカル捕捉活性が生じる。
【0122】
Zhuら[4]は、広範な市販の酵素を使用してBSFタンパク質加水分解物を開発した。加水分解物は、限外濾過を使用して群1(<3000Da)、群2(3000~10,000Da)及び群3(>10,000Da)の群にさらに分画された。これらの加水分解された画分の活性もまた、ABTSカチオンラジカル捕捉活性について調査された。実施例において、アスコルビン酸が参照分子として使用された。興味深いことに、最も良好な画分及びアスコルビン酸は、0.05mg/mlの濃度でABTSカチオンラジカルのそれぞれ85.67%及び92.11%を阻害することができた。ここで、驚くべきことに、本発明者らは、BSF-Pがすでに(0.2mg/mlで)89%という高いABTSカチオンラジカル捕捉Emaxを示すことを実証した。これは、BSF-Pの分画により非常に強い酸化防止能を有する画分が現れることを示す。
【0123】
4.4.好中球応答調節活性
BSF誘導体の強いフリーラジカル捕捉活性は、4.2項及び4.3項から明らかである。さらに、全ての試料を好中球応答調節活性についても試験した。好中球は、動物(人間、ペット、魚、家禽及びブタを含む)の体内に存在する白血球である。それらは、病原体に対する一次防御に関与する。病原性微生物が動物の体内に入ると、好中球は侵入部位に急行して防御を開始する。肉芽形成の間、好中球は、スーパーオキシドアニオン及び副生成物(例えば過酸化水素)の生成を担うNADPHオキシダーゼを含む広範な酸化酵素を放出する。スーパーオキシドアニオンは、酸化窒素ラジカルとさらに反応して過酸化亜硝酸を生成し得る。このプロセスはまた、(過酸化水素と金属イオンとの反応により)ヒドロキシルラジカルを生成する。この一連の酸化反応は、宿主動物の防御に極めて重要である。しかしながら、宿主防御の間に生成されたこれらのROSは、体細胞の酵素、タンパク質、脂質等と反応し、様々な健康状態(例えば細胞の老化、がん等)の発生をもたらし得る。この研究において行われた好中球アッセイは、好中球活性の結果生成されたROSを捕捉するタンパク質性分子の能力を決定する。PMAは、ROS生成の触媒を担うNADPHオキシダーゼの生成をもたらす、好中球内に存在するタンパク質キナーゼCを活性化するために使用された。系におけるROS生成は、ルシゲニン増幅化学発光を伴う。ROS(特にスーパーオキシドアニオン)を捕捉するタンパク質性試料の能力は、化学発光の低下を特徴とする。
【0124】
本発明者らの知る限り、これは、BSF誘導体であるBSFの幼虫ピューレ及び加水分解されたBSFの幼虫ピューレのin vitro好中球応答調節活性の初の分析である。CMは、5つの試験濃度のうち3つにおいて酸化促進挙動を示し、Emaxは0.2mg/mlでわずか5%であった(図9及び表6を参照されたい)。CMは、ペットフード調製物において一般的に使用される。しかしながら、本発明の実施例及び実施形態における比較試験結果は、CMの含有が、好中球により生成されたROSの捕捉に関連する利益をほとんど又は全く提供しないことを示している。さらに、CMの含有は、宿主細胞に対する炎症性損傷をもたらすことすらある。イヌ又はネコ細胞の反復的な炎症性損傷は、老化の促進、遅い認知機能等の状態となり得る。
【0125】
一方、FMは、このアッセイにおいて穏やかな酸化防止挙動を示し、Emaxは22%である(表6を参照されたい)。0.2mg/mlでは、FMは5%の阻害を示す。水産養殖用飼育培地(すなわち水)は、病原性細菌の連続緩衝液を提供する。したがって、水産養殖生物は、病原性細菌の侵入の一定のリスク下にある。これは、免疫の低下、老化等の広範な健康状態をもたらす。本発明者らの比較例は、反復的好中球活性による炎症性損傷を抑制するFMの不適切性を強調している。これはしばしば、抗生物質及び栄養補助食品の使用の結果として生じるコストの増加をもたらす。BSF-Pは、それぞれ59.57%及び0.15mg/mlのEmax及びIC50を示す(表6を参照されたい)。さらに、BSF-HPはまた、BSF-Pと比較して好中球応答調節活性を示す(表5を参照されたい)。
【0126】
4.5.MPO応答調節活性(SIEFED及び古典的アッセイ)
好中球応答の一般的メカニズムは既知である。好中球細胞外トラップは、病原性微生物を不活性化するために必要ないくつかの分子を含有する。好中球細胞外トラップに存在するMPO酵素は、過酸化水素及び塩化物イオンから次亜塩素酸を生成し得る。さらに、MPOは、チロシンをチロシルフリーラジカルに酸化し得る。MPO酸化の生成物(次亜塩素酸及びチロシルフリーラジカル)は両方とも、病原体の不活性化に極めて重要である。ここでも、これらの分子の動物細胞との反復的な相互作用は、炎症性損傷をもたらす。動物の体内において、MPO-Fe(III)(活性形態)は過酸化水素と反応して、オキソフェリルπカチオンラジカル(CpI形態)を形成する。CpI形態は再びMPO-Fe(III)に変換され、塩化物イオンが結合して次亜塩素酸に転換する。しかしながら、この実験においては、CpI形態からMPO-Fe(III)への還元は、2段階で達成された。第1の還元は、亜硝酸イオンによる電子移動を介したCpIからMPO-Fe(IV)=Oへの還元である。次いで、MPO-Fe(IV)=OをMPO-Fe(III)形態に変換する電子供与が行われた(アンプレックス(商標)レッドからレゾルフィンへの酸化反応による)。タンパク質性分子は、CpI形態と直接反応させてハロゲン化を停止することにより、又はMPO活性の結果として生成されたROSに水素を供与(水素原子移動)することにより、MPOから生じる酸化的損傷を防止することができた。古典的アッセイ及びSIEFEDアッセイを用いて、MPO応答調節活性を分析した。古典的アッセイは、CpI形態と複合してROSを安定化する試料の能力を測定する。一方、SIEFEDアッセイではMPOはウサギポリクローナル抗体に結合するため(化合物の残りは洗い流される)、このアッセイは試料がCpI形態に複合する能力を純粋に測定する。
【0127】
好中球応答調節活性と同様に、BSF誘導体であるBSFの幼虫ピューレ及び加水分解されたBSFの幼虫ピューレのMPO応答調節活性もまた、本発明の方法によるピューレの提供後に、本発明者らによって初めて実証されている。FM及びCMは、両方のアッセイで酸化促進挙動を示す(図7及び8を参照されたい)。酸化促進応答を開始し得るFM及びCMにおける酸化反応生成物の存在(生成プロセスの結果として)は、4.2項においてすでに考察されている。本発明者らにより実現される詳細なin vitro調査は、動物の餌におけるFM及びCMの含有が、炎症性損傷をもたらし得ることを示している。
【0128】
古典的アッセイでは、BSF誘導体は驚くほど強い酸化防止能を示し、IC50はBSF-P>BSF-HPの順である。SIEFEDアッセイでは、BSF-Pは(試験した最も高い濃度であっても)50%阻害に到達しなかった。したがって、BSF-PはROSの安定化により効果的であるが、BSF-HPはMPOのCpl形態との複合においてより高い有効性を有する。これらの観察は、2つのBSF誘導体が、MPO活性から生じる炎症性損傷を効果的に抑制するためのペットフード及び水産養殖飼料配合物における成分としての使用に好適であることを示している。
【0129】
BSFタンパク質誘導体がFM及びCMに勝る酸化防止上の利点を提供する。
【0130】
実施例4
ピューレ加熱時間の結果としての脂肪酸化
【0131】
緒論
処理された昆虫タンパク質の製造には、低温殺菌が極めて重要である。最適な加熱時間及び最適な加熱温度の組合せは、以下のために重要である:
(1)病原体の不活性化、及び
(2)食物の栄養品質の保存。
(昆虫タンパク質の)脂肪品質に関して、低温殺菌時間×温度の組合せは、以下のために重要な意味を有する:
(1)腸SN-1,3-リパーゼの不活性化:不活性化されないと、この酵素はトリグリセリドを遊離脂肪酸(トリグリセリドのSN-1,3位に存在する)及び2-モノグリセリドに加水分解し得る。
(2)脂質酸化:加熱は多価不飽和脂肪酸の(非酵素的)酸化をもたらし得る。リパーゼ活性により形成された遊離脂肪酸はまた、リポキシゲナーゼを介した(酵素的)酸化を生じ得る。これらの2つの酸化プロセスは、一次(例えばヒドロペルオキシド)並びに二次酸化生成物(例えばアルデヒド及びケトン)の形成をもたらす。これらの反応は、食物の感覚的品質、及び消費する動物の健康に対して悪影響を有する。
【0132】
本実施例4において、(リパーゼ不活性化を分析するための)低温殺菌されたピューレにおけるFFA形成の程度、及び加熱時間の結果としてのヒドロペルオキシドの発生が実証される。
【0133】
材料及び方法
約5kgの生きたアメリカミズアブの幼虫を飼育ユニットから採集した(Protix、オランダ)。これらの幼虫を十分に洗浄して、全ての目に見える不純物を除去した。処理毎に300gの洗浄された幼虫を使用した。幼虫をみじん切りして滑らかなスラリー(ピューレ)を得、表7に示される処理に従って低温殺菌した。低温殺菌された幼虫ピューレを、すぐに凍結した(-20℃まで)。これらの凍結された試料を後に解凍し、遊離脂肪酸含量及び過酸化物価について分析した。全ての実験は2回ずつ行った。
【0134】
【表7】
【0135】
結果
各処理において得られた遊離脂肪酸含量及び過酸化物価は、表8で言及されている。
【0136】
【表8】
【0137】
表8から分かるように、90℃で40秒間加熱された昆虫ピューレが、比較的多量の遊離脂肪酸(約70%)を有する。ピューレを40秒間加熱するだけでは、リパーゼの不活性化には効果がない。一方、ピューレが80秒間加熱された場合、少量の遊離脂肪酸が観察され、これは90℃での酵素不活性化にはこの時間で十分であることを示している。80秒を超える加熱時間(表7及び表8中の処理4及び5)では、アメリカミズアブの幼虫ピューレが80秒間加熱された場合に得られる低い脂肪酸含量と比較して、脂肪酸含量が増加する。したがって、比較的低い遊離脂肪酸含量を含むタンパク質画分を得るためには、本発明の方法における加熱時間は、40秒超300秒未満、例えば50~100秒、又は60~90秒若しくは70~85秒から選択される加熱時間、例えば約80秒であるべきである。好ましい加熱時間は、約90℃又は90℃±2℃である。
【0138】
また、40秒の加熱期間でより高い過酸化物価が観察される。これは、ヒドロペルオキシドの生成をもたらす酵素酸化に関与し得る多量の遊離脂肪酸により説明され得る。しかしながら、80秒の処理の場合、より低い過酸化物価が得られる。生成物のさらなる加熱は、処理4及び処理5の過酸化物価が、処理3、すなわち80秒の加熱時間の過酸化物価と比較して増加するという点で、脂肪酸化に影響がある。したがって、比較的低い過酸化物価を含むタンパク質画分を得るためには、本発明の方法における加熱時間は、40秒超300秒未満、例えば50~100秒、又は60~90秒若しくは70~85秒から選択される加熱時間、例えば約80秒であるべきである。好ましい加熱時間は、約90℃又は90℃±2℃である。
【0139】
結論
みじん切りされた昆虫の幼虫を90℃で80秒間加熱することが酵素不活性化に十分であり、遊離脂肪酸形成を防止し、過酸化物形成を防止する。
【0140】
実施例5
魚に飼料補助食品を給餌した後の魚試料の酸化防止活性
抗ラジカル(ABTS)技術を使用して魚の切り身試料の酸化防止活性を調査した。HI-0、HI-25、HI-50及びHI-100と呼ばれるアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質抽出物を、蒸留水中で調製し、異なる濃度で使用した。ABTSアッセイでは、最大試験濃度におけるパーセント阻害は、HI-25>HI-100>HI-50>HI-0の順であった。ABTSアッセイでは、HI-25切り身試料は、IC50≧50%を達成した。結論として、試験した一連の濃度内では、全ての試験された魚の切り身試料のうち、HI-25試料が最大のABTSラジカル捕捉活性を有していた。
【0141】
ABTSアッセイを使用して、本発明の方法により得られたアメリカミズアブのタンパク質のラジカル低減活性に関して、魚肉試料の活性を評価した。
【0142】
材料及び方法

この試験で使用されたProteinX(ヘルメチア・イルセンスの高タンパク質ミール)は、本発明の方法に従って製造され、Protix(オランダ)により提供された。2つの等窒素、等脂質及び等エネルギーの餌を、フィッシュミール(20.6%)又はProteinX(32%)を主要なタンパク質源として用いて配合した。餌は両方とも、Research Diet Services(オランダ)により製造された。消化性測定のための不活性マーカーとして、ジアモール(Diamol)を両方の餌に添加した。両方の餌のうちのいずれか1つを給餌することにより、又は両方の餌を規定の比率まで混合することにより、4つの処理を形成した。
【0143】
餌の処理は、以下のように称される:
HI0(100%フィッシュミールベース飼料);
HI25(25%ProteinXベース飼料と混合された75%フィッシュミールベース飼料);
HI50(両方の飼料が等しい比率で混合されたもの;50%ProteinXベース飼料と混合された50%フィッシュミールベース飼料);
HI100(100%ProteinXベース飼料)。
【0144】
4つ全ての餌の処理の近似的組成を、表9に示す。
ProteinX及び4つの実験的な餌の処理の近似的組成は、DISAFA研究室により決定され、表9に示される。カッティングミル(MLI 204;Buhler AG、Uzwil、スイス)を使用して飼料の試料をすりつぶし、乾燥物質含量(AOAC #934.01)、粗タンパク質含量(AOAC #984.13)、灰分含量(AOAC #942.05)、及びエーテル抽出物(AOAC #2003.05)について分析したが、これらはAOAC Internationalに従って分析した。粗タンパク質含量は以下のように計算された:窒素6.25
【0145】
魚及び飼育条件
動物給餌試験は、トリノ大学(イタリア)の農林食品学部(Department of Agricultural, Forest, and Food Sciences)の実験設備にて行った。実験プロトコルは、実験動物の管理及び使用に関する欧州及びイタリアの現行法のガイドライン(欧州指令86 609/EEC、D.L. 116/92としてイタリアの法律に導入)に従って設計された。実験プロトコルは、トリノ大学の倫理委員会によって承認された(プロトコル番号143811)。ニジマスの稚魚を民間の孵化場(Troticoltura Bassignana、Cuneo、イタリア)から入手し、12個のグラスファイバー槽に無作為に分配した(n=3)(槽当たり50匹の魚)。流水システムで8L/分の流速で槽に堀抜井戸水(13±1℃)を供給した。溶存酸素を2週間毎に測定したところ、7.6~8.7mg/Lの範囲であった。魚を実験構成に4週間順化させ、その間、市販の餌を槽当たり全体重の1.6%で給餌した。順化後、魚に餌の処理を133日間限定的に給餌し、そのうち113日間は1.4%の固定比率、続いて20日間は1.1%の固定比率とした。飼料の摂取を、各投与で監視した。飼料は、1日2回、週6日手で分配した。14日毎に各槽のバイオマスをバルクで秤量し、1日の給餌率を補正した。死亡率を毎日確認した。
【0146】
【表9】
【0147】
試料採取
試験の最後に魚を1日断食させ、9匹の魚/処理(3匹の魚/槽)の処理当たりの魚を、麻酔薬(MS-222 - PHARMAQ Ltd、UK;500mg/L)の過剰投与により致死させ、個別に秤量した。各魚の右側の切り身を収集して真空密封し、凍結させ(-20℃)、その後フリーズドライした。
【0148】
試料調製:
魚の試料(粉末形態)を受領した。試料をさらなる処理まで冷凍庫(-20℃)内で保管した。各試料の水溶性抽出物粉末(WSEP)を、Mouithys-Mickaladら(2020)のプロトコルに従って作製した。WSEPをさらなる実験までデシケータ内で(18℃で)保存した。20mg/mLの最終濃度までMilli-Q水に溶解することによりWSEPの原液を作製したが、次いでこの原液を連続的に2分の1に希釈して10、5、2.5及び1.25mg/mLを得る。
【0149】
ABTSラジカル捕捉活性:
ABTSラジカルカチオンに対するWSEP試料のラジカル捕捉活性を、Arnaoら(2001)の方法に従って分析した。Milli-Q水に7.0mmol/LのABTS及び1.35mmol/Lの過硫酸カリウムを完全に溶解することにより、ABTS原液を作製した。反応を完了させるために、試験溶液を(18℃で)一晩暗所で保管した。原液をメチルアルコールで希釈することにより、ABTS希釈標準溶液を作製し、734nmで0.7~0.8mmの吸光度を得た。ABTS希釈標準溶液(1920μl)を20μlのWSEP溶液(Milli-Q水にWSEPを溶解することにより得られる)と混合して、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度を得た。暗所での30分のインキュベーション後の吸光度の減少が、HP 8453 UV-vis分光光度計を使用して734nmで測定された。対照の場合、WSEP希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。増加濃度の異なる試料を用いた反復を、Paul(2007)により説明された通りに行い、マルチウェルデバイス(96ウェルプレート)内に移し、200μL(198μLの溶媒及び2μLのWSEP)の最終体積とした。同様に、30分のインキュベーション期間後、マルチスキャンアセント(Multiskan Ascent)リーダー(Thermo Fisher Scientific)を使用して740nmで吸光度を読み出した。
【0150】
結果
WSEP試料のABTSラジカル捕捉活性を図10に示す。メタノール中で行われたWSEPのABTSラジカル捕捉活性が示されている。結果は、3回の3つの独立したアッセイの平均±SDである。全ての試料において、濃度の増加は、平均阻害値の増加をもたらした(酸化防止挙動を示す)。Emax(試験中に得られた最大阻害)は、HI-25>HI-100>HI-50>HI-0の順であった(全て0.2mg/mlの最終濃度で得られた)。この結果は、HI-25試料が最も高いABTSラジカル捕捉活性を示すことを示している。一方、HI-0試料は、最も低いABTSラジカル捕捉活性を示す。最終的に、HI-25試料は、50%以上の平均阻害値を示した(IC50が達成された)。
【0151】
結言
ABTSアッセイを使用して評価すると、アメリカミズアブの幼虫を用いて本発明の方法を適用することにより得られるタンパク質試料は全て、用量依存的に酸化防止活性を示す。HI-25試料は、最も高い酸化防止活性を示す。
【0152】
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11. Mouithys-Mickalad, A.、Schmitt, E.、Dalim, M.、Franck, T.、Tome, N.M.、van Spankeren, M.、Serteyn, D.、Paul, A.、2020. Black Soldier Fly (Hermetia illucens) Larvae Protein Derivatives: Potential to Promote Animal Health. Animals 10、941. https://doi.org/10.3390/ani10060941
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
a)新鮮な昆虫の幼虫を用意し、そのパルプを調製するステップと;
b)前記パルプを60℃~95℃の温度で50~100秒間加熱するステップと;並びに、任意に、
c)加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分、及び固体含有画分を得るステップと
を含む方法。
【請求項2】
記昆虫の幼虫が、アメリカミズアブの幼虫である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アメリカミズアブの幼虫が、12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パルプが、加熱前に酵素処理されない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップb)の前に前記パルプを酵素により処理するステップa1)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パルプが、40℃~70℃、好ましくは45℃~65℃の温度、より好ましくは50℃±2℃の温度で0.5~3時間、好ましくは1~2時間酵素により処理される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酵素が、プロテアーゼ、例えばペプチダーゼ、好ましくは少なくとも1種のプロテアーゼ及び少なくとも1種のペプチダーゼの混合物、例えばフレーバーザイムである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)において、前記昆虫をみじん切りすることによりパルプが調製される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)の前記パルプ中の前記昆虫の残骸の平均粒径が、10~500ミクロンの範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)において、前記パルプが、60~95℃の温度で60~90秒間、特に90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)において、前記パルプが、75℃~95℃の温度、特に80℃~93℃、好ましくは85℃~90℃の温度である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)において、前記パルプが、60~95秒間、特に70~90秒間、好ましくは75~85秒間、例えば78~82秒間加熱される、請求項1~9又は11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記物理的分離ステップが、デカンテーション及び/又は遠心分離を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記水性タンパク質画分及び前記固体含有画分が、ステップ(c)の後に、好ましくは噴霧乾燥又は流動床乾燥により、最も好ましくは流動床乾燥により一緒に乾燥される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記水性タンパク質画分及び前記固体含有画分が、ステップc)の後に別個に乾燥され、前記水性タンパク質画分は、好ましくは噴霧乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥若しくは屈折式乾燥、又はそれらの組合せにより乾燥される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法のステップb)により得ることができる昆虫パルプ。
【請求項17】
飼料又は飼料成分、特にペットフートとしての使用のための、請求項16に記載の昆虫パルプ。
【請求項18】
請求項16若しくは17に記載の昆虫パルプの、健康増進能を有する食物成分又は飼料成分としての使用。
【請求項19】
細胞の酸化的損傷の予防及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項16若しくは17に記載の昆虫パルプ。
【国際調査報告】