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特表2022-548239水溶性昆虫タンパク質の加水分解物及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-17
(54)【発明の名称】水溶性昆虫タンパク質の加水分解物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/06 20060101AFI20221110BHJP
   A23J 3/04 20060101ALI20221110BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20221110BHJP
   A23L 27/21 20160101ALI20221110BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20221110BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20221110BHJP
   A23K 20/189 20160101ALI20221110BHJP
   A23K 20/163 20160101ALI20221110BHJP
   C07K 14/435 20060101ALN20221110BHJP
【FI】
C12P21/06
A23J3/04
A23L33/18
A23L27/21 B
A23L23/00
A23K10/20
A23K20/189
A23K20/163
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022516070
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 NL2020050572
(87)【国際公開番号】W WO2021054824
(87)【国際公開日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】2023838
(32)【優先日】2019-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2024481
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2025546
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2025547
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520220755
【氏名又は名称】プロティックス ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】PROTIX B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ポール, アマン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B036
4B047
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
2B150AA06
2B150AA07
2B150AA08
2B150AB03
2B150AB10
2B150AB20
2B150BA01
2B150BB03
2B150BB04
2B150BC03
2B150BD01
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2B150BE01
2B150BE02
2B150CD34
2B150CJ04
2B150CJ07
2B150DC13
2B150DC14
2B150DF10
4B018LB06
4B018LB09
4B018LB10
4B018MD22
4B018MD76
4B036LF01
4B036LF03
4B036LG04
4B036LH15
4B036LH42
4B047LB09
4B047LF04
4B047LF08
4B047LF10
4B047LG19
4B064AG01
4B064BA01
4B064BA02
4B064BA03
4B064BA04
4B064BA05
4B064BA06
4B064BA07
4B064BA08
4B064BA09
4B064BE01
4B064CA21
4B064CB01
4B064CE03
4B064CE16
4B064DA10
4B064DA11
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA51
4H045EA01
4H045EA07
4H045FA65
4H045GA15
(57)【要約】
本発明は、特にタンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫から、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法に関する。特にタンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫からの、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質及び酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関する。酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の使用又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の使用に関する。酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分に関し、また酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる人間用食品又は人間用食物成分に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法であって、
a)少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップであって、前記組成物のpHがpH4~pH8であり、前記水溶性タンパク質組成物中の前記少なくとも1種の水溶性タンパク質が可溶化されるステップ、及び少なくとも1種のペプチダーゼをさらに用意するステップと;
b)ステップa)の前記少なくとも1種のペプチダーゼを、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物と混合して、タンパク質/ペプチダーゼ混合物を用意するステップと;
c)前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の前記少なくとも1種の水溶性タンパク質が前記少なくとも1種のペプチダーゼにより酵素加水分解されるように、ステップb)の前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物を75℃未満の温度で加熱して、酵素加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を用意するステップと;
d)前記少なくとも1種のペプチダーゼが加熱により熱不活性化されるように、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を75℃~110℃の温度で加熱することにより、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解を停止して、前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を用意するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、2種以上の水溶性タンパク質、好ましくは2種より多い異なる水溶性タンパク質、より好ましくは3種より多い異なる水溶性タンパク質、最も好ましくは4種より多い異なる水溶性タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)において、前記加熱が35℃~60℃の温度で行われ、及び/又は前記加熱が2時間~12時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、前記加熱が35℃~60℃の温度で2時間~12時間の期間行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)において、前記加熱が40℃~55℃の温度で行われ、及び/又は前記加熱が4時間~9時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、前記加熱が40℃~55℃の温度で4時間~9時間の期間行われ、より好ましくは、ステップc)において、前記加熱が45℃~53℃の温度で5時間~7時間の期間行われ、最も好ましくは、前記加熱が50℃の温度で6時間の期間行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物のpHが5~7.7、好ましくは6~7.5である、より好ましくはpHが7.0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップa)で用意される前記少なくとも1種のペプチダーゼが、アミノペプチダーゼ、好ましくはエンドペプチダーゼ若しくはエクソペプチダーゼ、又はそれらの混合物であるか又はそれらを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)において、前記少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼ、パパイン、プロナーゼ、セリンプロテアーゼ、アルカラーゼ、サブチリシン、サブチリシンA、α-キモトリプシン、カテプシンIII、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、ペプシン、サーモリシン、トリプシンを含むか又はそれらから選択され、好ましくは、前記少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼであるか又はそれを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)において、前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の前記少なくとも1種のペプチダーゼの量が、前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.05重量%~7重量%、好ましくは前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.1重量%~6重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%、最も好ましくは0.5重量%~3重量%、例えば1.0重量%~2.0重量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップd)において、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の前記酵素加水分解が、前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を30秒~30分、好ましくは45秒~20分、より好ましくは1分~15分、最も好ましくは2分~10分の期間加熱することにより停止される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップd)において、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の前記酵素加水分解が、前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を80℃~105℃、好ましくは85℃~103℃、より好ましくは90℃~100℃の温度に加熱することにより停止される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップd)の後、任意選択のさらなるステップe)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、前記酵素加水分解されたタンパク質中に修飾アミノ基を提供するためにメイラード反応に供され、前記メイラード反応は、
e1)炭水化物を用意し、前記炭水化物をステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質と混合して、酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を用意するサブステップと;
e2)ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を加熱し、酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を用意するサブステップとを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップe1)において、添加された炭水化物の最終濃度が、前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.05重量%~6.0重量%、好ましくは前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.1重量%~5.0重量%、より好ましくは0.2重量%~3重量%、最も好ましくは0.3重量%~1.0重量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップe2)において、ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、100℃~170℃、好ましくは120℃~168℃、より好ましくは135℃~166℃、例えば140℃~165℃の温度で加熱される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ステップe2)において、ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、1分~120分、好ましくは2分~60分、より好ましくは3分~30分、最も好ましくは5分~20分、例えば10分~17分又は約15分の期間加熱される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップe1)において、用意される炭水化物が、スクロース若しくはグルコース、又はそれらの混合物、好ましくはスクロースである、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップd)の後、任意選択のさらなるステップf1)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ若しくは複数を適用することにより乾燥される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、又は、任意選択のステップe2)の後、任意選択のさらなるステップf2)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が乾燥され、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ若しくは複数を適用することにより乾燥される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップd)の後、任意選択のさらなるステップf3)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が濃縮される、好ましくは、濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の乾燥物質含量が、濃縮ステップf3)の後に前記濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%であるように濃縮される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、又は、任意選択のステップe2)の後、任意選択のさらなるステップf4)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が濃縮される、好ましくは、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、濃縮ステップ4)の後に酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも30重量%、例えば少なくとも50重量%であるように濃縮される、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
任意選択の濃縮ステップf3)の後に、前記濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の乾燥物質含量が、前記濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として30重量%~80重量%である、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは50重量%~70重量%である、又は、任意選択の濃縮ステップf4)の後に、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として30重量%~80重量%、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップb)の前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の水溶性昆虫タンパク質の量が、前記タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.2重量%~30重量%、好ましくは前記タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.5重量%~25重量%、より好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは3重量%~10重量%、例えば3.5重量%~7重量%、又は3重量%~5重量%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、甲虫の幼虫、イエバエ、アメリカミズアブ、イナゴ、バッタ、コオロギ、ゴキブリの幼虫、ヤシオオオサゾウムシの幼虫、カイコ、タガメ、セミ、タケムシ、アリ、キリギリス、チョウ、ヨコバイ、ウンカ及びハチの幼虫のうちのいずれか1つ又は複数に由来する水性水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、好ましくはアメリカミズアブに由来し、好ましくは、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来する水性水溶性タンパク質組成物である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、水等の水溶液中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物、好ましくはアメリカミズアブの幼虫に由来する水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)昆虫、好ましくはアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りにすることにより、ステップ(i)の前記昆虫のサイズを低減するステップと、
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する前記昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)の前記パルプを70~100℃の温度に加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより前記昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の前記昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液等の水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより、昆虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来し、水中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前の、アメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)の前記アメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の前記昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する前記昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)の前記パルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより前記昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の前記昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより、好ましくはそれらのステップにより前記アメリカミズアブの幼虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップd)で用意される前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、ステップd)で用意される前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、請求項1~10、16~22のいずれか一項に記載の方法、及び/又は、ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が、ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、請求項11~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~10若しくは16~23のいずれか一項に記載の方法により得られる、又は請求項1~10若しくは16~23のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、又は請求項1~10若しくは16~23のいずれか一項に記載の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質、或いは請求項11~23のいずれか一項に記載の方法により得られる、又は請求項11~23のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、又は請求項1~10若しくは16~23のいずれか一項に記載の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項25】
昆虫タンパク質源が、請求項20に記載のアメリカミズアブの幼虫である、及び/又は、昆虫タンパク質源が、請求項22のステップ(i)~(vi)に従って用意される、請求項24に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項24に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項26】
酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であって、前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは55重量%~100重量%、より好ましくは65重量%~100重量%、最も好ましくは75重量%~100重量%、例えば80重量%~95重量%又は85重量%~100重量%が1,000ダルトン未満の分子量を有する、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項27】
前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~55重量%、最も好ましくは30重量%~50重量%、例えば25重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%が遊離アミノ酸残基である、請求項26に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項28】
前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として、又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも2.5重量%が遊離アルギニンであり、及び/又は少なくとも2.5重量%が遊離グルタミン酸であり、及び/又は少なくとも1.25重量%が遊離ロイシンであり、及び/又は少なくとも2.2重量%が遊離リシンであり、好ましくは、少なくとも3.7重量%が遊離アルギニンであり、少なくとも3.0重量%が遊離グルタミン酸であり、少なくとも1.5重量%が遊離ロイシンであり、少なくとも2.6重量%が遊離リシンであり、好ましくは、4.7重量%未満が遊離アルギニンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離グルタミン酸であり、及び/又は3.0重量%未満が遊離ロイシンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離リシンであり、好ましくは、4.5重量%未満が遊離アルギニンであり、3.7重量%未満が遊離グルタミン酸であり、2.7重量%未満が遊離ロイシンであり、3.6重量%未満が遊離リシンである、請求項26又は27に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項29】
前記水溶性タンパク質が、大腸菌については50未満、例えば10若しくは10未満、及び/又はサルモネラ菌については1未満、例えば0、及び/又はセレウス菌については500未満、例えば150未満若しくは10未満、及び/又はウェルシュ菌については500未満、例えば50未満、好ましくは10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、好ましくは、cfu/gタンパク質での前記微生物数が、大腸菌については10未満、及び/又はサルモネラ菌については0.1未満、好ましくはサルモネラ菌は存在せず、及び/又はセレウス菌については10未満、及び/又はウェルシュ菌については10未満であり、より好ましくは、前記水溶性タンパク質が、大腸菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、25グラムの加水分解されたタンパク質が評価された場合サルモネラ菌は存在せず、セレウス菌については10未満、及びウェルシュ菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含む、請求項26~28のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項26~28のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項30】
前記水溶性タンパク質が、請求項1~10若しくは16~23のいずれか一項に記載の方法により得られるか若しくは提供される、請求項26~29のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質、又は、前記水溶性タンパク質が、請求項11~23のいずれか一項に記載の方法により得られるか若しくは提供される、請求項26~29のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項31】
前記昆虫タンパク質源が、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質である、請求項30の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項30の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項32】
食味増強剤及び保湿剤のうちのいずれか1つ又は複数、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項24~31のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項24~31のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項33】
前記食味増強剤が、ピロリン酸金属塩、2-メチルフラン、2-メチルピロール、ジメチルジスルフィドであり、並びに/又は前記保湿剤が、プロピレングリコール、グリセリン、コーンシロップ及び無機塩から選択される、請求項32に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項32に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項34】
ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品若しくは動物飼料成分の製造、又は人間用食品若しくは人間用食物成分の製造、好ましくはネコ用飼料、イヌ用飼料又はエビ用飼料、例えばバナメイエビ用飼料の製造における、請求項24~33のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、使用。
【請求項35】
前記ペットがイヌ若しくはネコ、好ましくはイヌである、又は前記動物がイヌ、ネコ若しくはエビ、好ましくはバナメイエビ(リトペニウス・バナメイ)である、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
製造されるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、例えばバナメイエビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物用、好ましくは、ネコ、イヌ、エビ、例えばバナメイエビ用の、食物若しくは食物成分又は飼料若しくは飼料成分、請求項20及び請求項20に従属する範囲での請求項21~35のいずれか一項に記載の昆虫種とは異なる昆虫種、例えば受粉媒介者等、例えばこれらに限定されないがハチ又は生物防除に使用される益虫、例えばこれらに限定されないがテントウムシ、並びに例えばマルハナバチ、カ、シロアリ及びミバエ用の飼料のいずれかであるか;又は飼料若しくは食物香味剤又は飼料若しくは食物香味増強剤であり、或いは、製造される人間用食品又は製造される人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤、食物香味増強剤、スープ、肉代用製品若しくは成分、又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、請求項34又は35に記載の使用。
【請求項37】
請求項24~33のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分、好ましくは、ネコ用飼料製品若しくは成分、イヌ用飼料製品若しくは成分、又はエビ用飼料製品若しくは成分、例えばバナメイエビ用飼料製品若しくは成分、又は請求項24~33のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、人間用食品若しくは人間用食物成分。
【請求項38】
前記ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物、好ましくは、ネコ、イヌ又はエビ、例えばバナメイエビ用の食物若しくは飼料又は食物成分若しくは飼料成分のいずれかであるか、或いは、食物香味剤若しくは食物香味増強剤又は飼料香味剤若しくは飼料香味増強剤である、請求項37に記載のペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分、又は、請求項37に記載の人間用食品若しくは人間用食物成分であり、前記人間用食品又は人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤又は食物香味増強剤、スープ、麺、バーガー、肉代用製品若しくは成分又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、麺、牛肉ベースのスープ、牛肉ベースのバーガー、ハンバーガー、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、製品又は成分。
【請求項39】
請求項24~33のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、酸化防止剤としての使用。
【請求項40】
請求項37又は38に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、酸化防止剤としての使用。
【請求項41】
請求項37又は38に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、健康増進能を有する成分としての使用。
【請求項42】
酸化防止能を有する、請求項37又は38に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の使用。
【請求項43】
細胞の酸化的損傷の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項37又は38に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分。
【請求項44】
活性酸素種により誘発される炎症誘発性応答の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項37又は38に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法に関する。さらに、本発明は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質及び酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関する。さらに、本発明は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の使用又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の使用に関する。最後に、本発明は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分に関し、また酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる人間用食品又は人間用食物成分に関する。
【0002】
[背景技術]
香味剤は、動物による食物の受容において重要な役割を果たす(Clark、1998;Dongら、2016;Katoら、1989)。いくつかの特定された化合物のうち、遊離アミノ酸及びペプチドベース香味剤が食物の香味を増強するためによく使用される。遊離アミノ酸又は短鎖ペプチドの集合体の組み合わせは、特定の香味を生成する(Katoら、1989)。
【0003】
肉タンパク質加水分解物及び海洋タンパク質加水分解物は、ペットフード配合物及び水産養殖飼料配合物において香味を増強する目的で一般的に使用される。製造方法に応じて、そのようなタンパク質加水分解物は、「消化物」(酵素加水分解により得られる)又は「パラタント」(酵素加水分解に続く第2の香味生成ステップにより、例えば(加水分解された)タンパク質をメイラード反応に供することにより得られる)と呼ばれ得る(Anuarら、2017)。香味増強とは別に、タンパク質加水分解物は高い消化性(Everson、2008)を有し得、またいくつかの健康増進特性(Senevirathne及びKim、2012)を有し得る。タンパク質加水分解物は、未発達の消化管及び免疫系を有する若い動物を育てるのに特に有益である。遊離アミノ酸及び(短鎖)ペプチドは消化が容易であり、その体にすぐに吸収される(Houら、2017)。
【0004】
タンパク質加水分解は、魅力並びに一定の味、臭い、香味及び食味等の制御及び操作の側面を考慮した場合、比較的複雑なプロセスである。タンパク質を加水分解に供すると、異臭、機能性の低下、及び製品を商業的に実現不可能にする他の因子がもたらされ得る(Wisuthiphaetら、2016)。しかしながら、加水分解されたオキアミミール等の製品は、異臭の問題なしに水産養殖及びペットフードに使用される(Tantikitti、2014)。残念ながら、魚の乱獲により、ナンキョクオキアミの数が大幅に減少した(PEW Charitable Trusts、2014)。多くの場合、好適な代替製品の提供は、達成可能であるとしても煩わしい課題である。
【0005】
ほとんどの疎水性L-アミノ酸は苦味がある(Katoら、1989)。いくつかの場合において、タンパク質の酵素加水分解(特にエンドペプチダーゼを使用)は、加水分解後に得られる生成物の苦味に寄与する遊離アミノ酸又は小ペプチドをもたらし、これは大きな不利益を意味する。そのような生成物のために、食品加工業は、最終生成物のコスト及び複雑性に寄与するだけでなく最終生成物の香味プロファイルを改変する、さらなる苦味除去ステップ(例えば酵素苦味除去)を使用する必要がある(Tchorbanovら、2011)。
【0006】
昆虫は、世界中の多くの文化で食物として一般的に消費されている。欧州諸国では、昆虫タンパク質は、動物の食事における高価値のタンパク質成分として急速に受け入れられている。欧州連合は、ペットフード及び水産養殖飼料配合物における昆虫タンパク質の含有をすでに承認している。チキンミール及びフィッシュミールは、それぞれペットフード及び水産養殖飼料調製物において一般的な成分である。これらの市場では、昆虫タンパク質が次第にチキンミール及びフィッシュミールの代替品として考えられてきている。工業規模で生産されている全ての昆虫のうち、アメリカミズアブ(ヘルメチア・イルセンス(Hermetia illucens))の幼虫が、高範囲の有機残渣及び独特の栄養組成で成長する能力によって特に注目を集めている。水産養殖及びペットの餌におけるアメリカミズアブの幼虫(BSF)のタンパク質の栄養学的な好適性は、十分に実証されている。
【0007】
ペットは、年齢と共に広範な健康障害を生じる。老化は、ペットの体内でのフリーラジカルによる損傷を加速させ得、これは認知及び運動系機能不全をもたらし得る。同様に、免疫応答の結果としての魚における酸化ストレスは、健康障害をもたらし得る。好中球(白血球)は、体の一次防御メカニズムを担っている。信号を受け取ると、好中球は病原微生物の侵入部位に急行する。次いで好中球は、食作用及び活性酸素種(ROS)の放出により病原体を不活性化する。ROSの生成は、宿主の防御に極めて重要である。しかしながら、長期的には、好中球による過度のROS生成は動物細胞を損傷し得、細胞の老化、がん、免疫の低下等をもたらし得る。ROSを捕捉し得る食事介入は、動物の体内での酸化的損傷を低減し、健康状態を得ることを補助し得る。この分野は、そのような食事介入を必要としている。
【0008】
したがって、例えばオキアミベースタンパク質加水分解物、及び様々な(希少な)タンパク質源に由来する加水分解物を、例えば味、香味、臭い、食味を考慮した場合に少なくとも同様の品質特性を有するタンパク質加水分解物で置き換えることを可能にする解決策を見出すことが依然として必要である。本発明はまた、昆虫から得られる食物及び飼料成分の提供を目的とし、それらの成分は有益な健康特性を有する。
【0009】
[発明の概要]
本発明は、オキアミタンパク質ベース加水分解物、肉タンパク質由来加水分解物、魚タンパク質加水分解物等の現在一般的に適用されているタンパク質加水分解物を置き換えるのに好適な代替製品の増加する必要性に対する解決策を提供することを目的とする。さらに、本発明は、肉を含まない食事への用途、並びに例えば畜産及び水産養殖に由来する肉の生産及び消費の低減に関連する用途での、肉代用製品及び肉代替製品の増加する需要に対する解決策を提供することを目的とする。
【0010】
本発明によれば、上で定義されたタンパク質加水分解物が提供されるが、タンパク質の源は、タンパク質源としてのヘルメチア・イルセンス昆虫バイオマスから単離されたタンパク質、例えばアメリカミズアブに由来するタンパク質、特にアメリカミズアブの幼虫から得られるタンパク質等の昆虫タンパク質である。
【0011】
昆虫は現在、食物タンパク質及び飼料タンパク質の新規な源と考えられている(Smetanaら、2019)。アメリカミズアブの幼虫等の昆虫は、例えば農産業からの副生成物を餌とし、サーキュラーエコノミーにおいて重要な役割を果たすことになる。例えば、幼虫は、農産業副生成物をタンパク質及び脂質の有益な源に作り替えることができる。特に、アメリカミズアブの幼虫は、農産業副生成物をタンパク質及び脂質の有益な源に作り替えることができ、それらの農産業副生成物は、従来の家畜用の飼料源として好適ではない。一般に、そのような昆虫は比較的多量のタンパク質、及びそれに伴いアミノ酸(必須アミノ酸及び非必須アミノ酸の両方)を含む。したがって、本発明の態様によれば、そのような昆虫ベースタンパク質源は、特にアメリカミズアブの幼虫がタンパク質源として適用された場合、昆虫タンパク質加水分解物の製造のための原料として役立つ。例えば、アメリカミズアブの幼虫に由来するタンパク質は、例えば現在のペットフード用途のオキアミタンパク質ベース加水分解物等を置き換えるのに好適なタンパク質加水分解物の提供に好適である。例えば、アメリカミズアブを含むいくつかの昆虫は、乾燥物質基準で60%超のタンパク質を含み、これは、例えば大豆(40%)、牛肉(40%)及び鶏肉(55%)のタンパク質含量と比べると比較的高い(Paulら、2016)。ここで、列挙されたタンパク質含量のパーセンテージは、必須及び非必須アミノ酸の合計含量のパーセンテージに関連する。本発明者らは、タンパク質加水分解物を提供するための源として昆虫由来タンパク質を適用することが、今日の一般的な加水分解物に関する現在の問題(現在の実践におけるいくつかの欠点を挙げると、天然資源の減少;煩わしい製造及び安定した品質の生成物の制御)の多くに対応する有益な手法であることを見出した。したがって、本発明により、昆虫タンパク質ベース加水分解物の源としての昆虫の可能性が探求の機会へと変わる。
【0012】
したがって、本発明は、いくつかのさらなる態様のうち、昆虫タンパク質加水分解物の製造の方法であって、タンパク質がタンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫、ゴミムシダマシ、コオロギ及びイナゴ等の昆虫から得られる、特にアメリカミズアブの幼虫から得られる方法;本発明の方法により得られるか又は得ることができる加水分解生成物を含む飼料成分組成物及び食物成分組成物;並びに例えばペットフード、動物飼料、人間による消費用の食品の調製等におけるそのような組成物の適用に関する。
【0013】
本発明の第1の態様は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法に関し、方法は、
a)少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップであって、前記組成物のpHがpH4~pH8であり、前記水溶性タンパク質組成物中の少なくとも1種の水溶性タンパク質が可溶化されるステップ、及び少なくとも1種のペプチダーゼをさらに用意するステップと;
b)ステップa)の少なくとも1種のペプチダーゼを、ステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物と混合して、タンパク質/ペプチダーゼ混合物を用意するステップと;
c)タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の少なくとも1種の水溶性タンパク質が少なくとも1種のペプチダーゼにより酵素加水分解されるように、ステップb)のタンパク質/ペプチダーゼ混合物を75℃未満の温度で加熱して、酵素加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を用意するステップと;
d)少なくとも1種のペプチダーゼが加熱により熱不活性化されるように、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を75℃~110℃の温度で加熱することにより、ステップc)の加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解を停止して、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を用意するステップと
を含む。
【0014】
典型的には、水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫に由来する。本発明の方法のステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物の用意を可能にするために、アメリカミズアブの幼虫がタンパク質抽出手段及び方法に供される場合、アメリカミズアブの幼虫は、12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前であるのが好適である。
【0015】
本発明によれば、水溶液中に提供される水溶性昆虫タンパク質組成物の源として、例えばみじん切りされたアメリカミズアブの幼虫の肉が適用される。みじん切りされた昆虫の残骸の平均粒径が10~500ミクロンの範囲である場合、有益である。水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、例えば、欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載のアメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための方法を適用することによりアメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性昆虫タンパク質組成物である。いくつかの実施形態において、本発明の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質は、添加された炭水化物の存在下でタンパク質加水分解物を加熱することによりメイラード反応に供される。しかしながら、本発明の方法のステップa)において用意される水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための以下の幼虫処理方法ステップ(i)~(vi)を適用することによりアメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性昆虫タンパク質組成物である場合が好ましい:
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前のアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)のアメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)のパルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法のステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップ。
【0016】
本発明者らは、方法のステップa)において、本発明の方法の一部としてこの幼虫処理方法ステップを適用することにより、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫から得られるタンパク質パルプが得られることを実証したが、このパルプは、当技術分野において知られている代替的なアメリカミズアブの幼虫の処理方法、例えば欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に概説される方法を適用することによりそのような幼虫から得られるパルプと比較して、驚くほど改善された特徴及び構造特性を有する。特に、本発明の方法のステップ(iv)において、100秒未満の比較的短い加熱時間が、改善された幼虫パルプを得るために必須であると考えられる。本発明者らは、時間と温度の組合せを使用することによって、より少ない油がタンパク質画分内に取り込まれ、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫からタンパク質パルプを単離するための代替的な現在の手段及び方法を用いて提供されるタンパク質源と比較して、本発明の方法のステップa)においてより純粋なタンパク質源が提供されることを見出した。また、メイラード反応による(タンパク質の)パルプの変色が大幅に回避され、それにより得られる生成物の品質が改善されることを見出した。例えば、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫が90℃で80秒間、又は90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱された場合、脂肪含量が低減されたタンパク質が得られる。EP2953487では、加熱時間は少なくとも5分、さらには30分である。さらに、みじん切りされたアメリカミズアブのパルプの最大100秒、好ましくは約70~90秒の比較的短い加熱時間により、当技術分野において知られている現在の方法において適用されるより長い加熱時間と比較して、顆粒化がより少なく凝集性がより低い昆虫パルプが得られる。顆粒化がより少ない幼虫パルプは、パルプに含まれるタンパク質の酵素加水分解に有益である。粒子状物質は酵素分子によりアクセスしにくいため、顆粒化は酵素効率を低減する。本発明の方法の一部として幼虫処理方法ステップを適用することにより、アメリカミズアブの幼虫のパルプが100秒を超える、例えば5分~30分間の加熱に供された場合に得られるより大きいタンパク質凝集体及び粒子と比較して、短い加熱時間によってより小さいタンパク質クラスタ、凝集体、粒子、又はさらには(主に)タンパク質モノマー及び/若しくは小マルチマーからなるタンパク質組成物が得られる。
【0017】
本発明の第2の態様は、本発明の方法により得られる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質、又は本発明の方法により得ることができる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質に関し、又は本発明の方法により得られる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関し、又は本発明の方法により得ることができる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関する。
【0018】
本発明の第3の態様は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関し、前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも50%、好ましくは55%~100%、より好ましくは65%~100%、最も好ましくは75%~100%、例えば80%~95%、又は85%~100%、又は85%~90%が1,000ダルトン未満の分子量を有する。
【0019】
本発明の第4の態様は、ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品若しくは動物飼料成分の製造、又は人間用食品若しくは人間用食物成分の製造における、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の使用に関する。
【0020】
本発明の第5の態様は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分、或いは、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる人間用食品又は人間用食物成分に関する。
【0021】
本発明の第6の態様は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、酸化防止剤としての使用に関する。特に、酸化防止活性を有する食物又は飼料成分としての使用に関する。したがって、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質及び酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物は、酸化防止特性を有する。
【0022】
本発明の第7の態様は、本発明の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、酸化防止剤及び/又は健康増進能を有する成分としての使用に関する。
【0023】
本発明の一態様は、細胞の酸化的損傷の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、本発明の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分に関する。
【0024】
本発明のさらなる態様は、本発明による酸化防止活性を有する、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含む動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分に関する。酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含む動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の酸化防止活性は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の酸化防止特性によるものである。
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】アメリカミズアブの幼虫に由来する水性水溶性タンパク質組成物からタンパク質加水分解物を製造するための製造フローチャートを示す図である。
図2】人間による消費に好適な生成物中の微生物数の目標限界値及び臨界限界値を示す表である。
図3】30分のインキュベーション後のBSF水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のDPPHラジカル捕捉活性を示すグラフである(n=3)。
図4】60分のインキュベーション後のBSF水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のDPPHラジカル捕捉活性を示すグラフである(n=3)。
図5】30分のインキュベーション後のBSF水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のABTSカチオンラジカル捕捉活性を示すグラフである(n=3)。
図6】SIEFEDアッセイを使用したBSF水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のMPO応答調節活性を示すグラフである(n=3)。
図7】古典的測定を使用したBSF水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)のMPO応答調節活性を示すグラフである(n=3)。
図8】BSF水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)、チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)の好中球応答調節活性を示すグラフである(n=3)。
図9A】ドッグフード食味試験(0.5%HIE2)のグラフである。
図9B】ドッグフード食味試験(1.25%HIE2)のグラフである。
図9C】ドッグフード食味試験(2.50%HIE2)のグラフである。
図10A】経時的な各餌に対する予測性能フィッティング(矢印で示される)を伴う各時間間隔でのジッタ数観察を示すグラフである。
図10B】食餌開始時間を示すグラフである。1匹のエビが餌を食べ始める平均的な時間の長さであり、標準誤差が示されている。様々な上付き文字は、餌群間で統計的に有意な差(p<0.05)が記録された場合を示す。
【0027】
[実施形態の説明]
本発明の第1の目標は、タンパク質加水分解物を提供するための改善された方法を提供することである。本発明の第2の目標は、現在のタンパク質加水分解物の代用製品を提供することであり、代用製品は、現在のタンパク質加水分解物と比較してより持続可能である。
【0028】
本発明の目的は、タンパク質加水分解物を製造するためのより持続可能な方法を提供し、それよって、より持続可能なタンパク質加水分解物でありながら、現在のタンパク質加水分解物、例えばペットフード、人間用食物成分、家畜飼料又は農業飼料等の製造において現在適用されているタンパク質加水分解物の代替製品としてのタンパク質加水分解物の適用を可能にする品質基準及び特性に少なくとも適合するタンパク質加水分解物を提供することである。
【0029】
上記目的の少なくとも1つは、本発明の昆虫ベースタンパク質加水分解物を提供することにより達成される。
【0030】
具体的な実施形態に関して本発明を説明するが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0031】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3等の用語は、例えば同様の要素、組成物中の構成物質、又は別個の方法ステップを区別するために使用され、順番又は時系列を説明するために使用されているとは限らない。これらの用語は適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、別段に指定されない限り、本明細書において説明又は例示されたもの以外の順序で行われてもよい。
【0032】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、別段に指定さない限り、組み合わせて、及び連携して行われてもよい。
【0033】
さらに、「好ましい」又は「例えば(e.g.)」又は「例えば(for example)」又は「特に」と呼ばれているとしても、様々な実施形態は例示的な様式で解釈されるべきであり、本発明は、本発明の範囲を限定するものとしてではなく実践され得る。
【0034】
特許請求の範囲において使用される「含む」という用語は、例えばその後に列挙される要素又は方法ステップ又は組成物の構成物質に限定されるものとして解釈されるべきではなく、他の要素又は方法ステップ又はある特定の組成物中の構成物質を除外しない。これは、言及されるような述べられた特徴、整数、(方法)ステップ又は構成要素の存在を指定するものであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ若しくは構成要素、又はそれらの群の存在又は追加を除外しないものとして解釈される必要がある。したがって、「ステップA及びBを含む方法」という表現の範囲は、ステップA及びBのみからなる方法に限定されるべきではなく、むしろ、本発明に関連して、方法の列挙されているステップがA及びBであるに過ぎず、さらに特許請求の範囲はそれらの方法ステップの均等物を含むものとして解釈されるべきである。したがって、「構成要素A及びBを含む組成物」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる組成物に限定されるべきではなく、むしろ、本発明に関連して、組成物の列挙されている構成要素がA及びBであるに過ぎず、さらに特許請求の範囲はそれらの構成要素の均等物を含むものとして解釈されるべきである。
【0035】
さらに、不定冠詞「a」又は「an」による要素又は構成要素の言及は、文脈上明確にその要素又は構成要素が1つのみ存在すると解すべき場合を除いて、その要素又は構成要素の2つ以上が存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0036】
本発明の第1の態様は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法に関し、方法は、
a)少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップであって、前記組成物のpHがpH4~pH8であり、前記水溶性タンパク質組成物中の少なくとも1種の水溶性タンパク質が可溶化されるステップ、及び少なくとも1種のペプチダーゼをさらに用意するステップと;
b)ステップa)の少なくとも1種のペプチダーゼを、ステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物と混合して、タンパク質/ペプチダーゼ混合物を用意するステップと;
c)、タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の少なくとも1種の水溶性タンパク質が少なくとも1種のペプチダーゼにより酵素加水分解されるように、ステップb)のタンパク質/ペプチダーゼ混合物を75℃未満の温度で加熱して、酵素加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を用意するステップと;
d)少なくとも1種のペプチダーゼが加熱により熱不活性化されるように、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を75℃~110℃の温度で加熱することにより、ステップc)の加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解を停止して、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を用意するステップと
を含む。
【0037】
典型的には、水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫に由来する。本発明の方法のステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物の用意を可能にするために、アメリカミズアブの幼虫がタンパク質抽出手段及び方法に供される場合、アメリカミズアブの幼虫は、12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前であるのが好適である。
【0038】
本発明によれば、水溶液中に提供される水溶性昆虫タンパク質組成物の源として、例えばみじん切りされたアメリカミズアブの幼虫の肉が適用される。みじん切りされた昆虫の残骸の平均粒径が10~500ミクロンの範囲である場合、有益である。水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、例えば、欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載のアメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための方法を適用することによりアメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性昆虫タンパク質組成物である。いくつかの実施形態において、本発明の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質は、添加された炭水化物の存在下でタンパク質加水分解物を加熱することによりメイラード反応に供される。しかしながら、本発明の方法のステップa)において用意される水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための以下の幼虫処理方法ステップ(i)~(vi)を適用することによりアメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性昆虫タンパク質組成物である場合が好ましい:
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前のアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)のアメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)のパルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法のステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップ。
【0039】
本発明者らは、方法のステップa)において、本発明の方法の一部としてこの幼虫処理方法ステップを適用することにより、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫から得られるタンパク質パルプが得られることを実証したが、このパルプは、当技術分野において知られている代替的なアメリカミズアブの幼虫の処理方法、例えば欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に概説される方法を適用することによりそのような幼虫から得られるパルプと比較して、驚くほど改善された特徴及び構造特性を有する。特に、本発明の方法のステップ(iv)において、100秒未満の比較的短い加熱時間が、改善された幼虫パルプを得るために必須であると考えられる。本発明者らは、時間と温度の組合せを使用することによってより少ない油がタンパク質画分内に取り込まれ、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫からタンパク質パルプを単離するための代替的な現在の手段及び方法を用いて提供されるタンパク質源と比較して、本発明の方法のステップa)においてより純粋なタンパク質源が提供されることを見出した。また、メイラード反応による(タンパク質の)パルプの変色が大幅に回避され、それにより得られる生成物の品質が改善されることを見出した。例えば、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫が90℃で80秒間、又は90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱された場合、脂肪含量が低減されたタンパク質が得られる。EP2953487では、加熱時間は少なくとも5分、さらには30分である。さらに、みじん切りされたアメリカミズアブのパルプの最大100秒、好ましくは約70~90秒の比較的短い加熱時間により、当技術分野において知られている現在の方法において適用されるより長い加熱時間と比較して、顆粒化がより少なく凝集性がより低い昆虫パルプが得られる。顆粒化がより少ない幼虫パルプは、パルプに含まれるタンパク質の酵素加水分解に有益である。粒子状物質は酵素分子によりアクセスしにくいため、顆粒化は酵素効率を低減する。本発明の方法の一部として幼虫処理方法ステップを適用することにより、アメリカミズアブの幼虫のパルプが100秒を超える、例えば5分~30分間の加熱に供された場合に得られるより大きいタンパク質凝集体及び粒子と比較して、短い加熱時間によってより小さいタンパク質クラスタ、凝集体、粒子、又はさらには(主に)タンパク質モノマー及び/若しくは小マルチマーからなるタンパク質組成物が得られる。
【0040】
本発明による方法には、ステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、2種以上の水溶性タンパク質、好ましくは2種より多い異なる水溶性タンパク質、より好ましくは3種より多い異なる水溶性タンパク質、最も好ましくは5種以上の異なる水溶性タンパク質を含むことが好ましい。本発明によれば、昆虫に存在する任意の数の異なる水溶性タンパク質が、方法のステップa)において用意される水性水溶性昆虫タンパク質組成物に選択され得る。したがって、昆虫に存在する全ての水溶性タンパク質が、方法のステップa)において用意される水性水溶性昆虫タンパク質組成物の一部であることも、本発明の一部である。代替として、少なくとも1種の水溶性昆虫タンパク質を包含する選択された数のタンパク質及び/又は選択された組の特定のタンパク質が、本発明の方法a)において少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物として用意され得る。昆虫源に由来する全ての水溶性昆虫タンパク質を含む水溶性タンパク質組成物が好ましい。例えば、本発明の方法のステップa)において用意される少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、本発明によれば、みじん切りされた若しくは純粋な昆虫の肉、例えばアメリカミズアブの肉、又は好ましくはみじん切りされたアメリカミズアブの幼虫の肉に由来するタンパク質組成物である。本発明の方法のステップa)において用意される少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、アメリカミズアブの幼虫から得られるタンパク質組成物であることが好ましい。典型的には、これらの幼虫は、14~24日齢、例えば19~22日齢である。典型的には、そのようなアメリカミズアブの幼虫は、前記幼虫の総質量を基準として約35重量%~65重量%のタンパク質を含む。
【0041】
特に、本発明による方法では、テップc)において、加熱は35℃~60℃の温度で行われ、及び/又は加熱は2時間~12時間の期間行われ、本発明の方法では、好ましくは、ステップc)において、加熱は35℃~60℃の温度で2時間~12時間の期間行われる。例えば、本発明の方法が適用されるが、ステップc)における加熱は45℃又は55℃で行われ、本発明のステップc)中の加熱は4時間又は8時間行われた。典型的には、方法の加熱ステップc)中の温度は50℃であり、典型的には、加熱時間は6時間であった。本発明の方法の加熱ステップc)中のpHは、好ましくはpH6~8であり、典型的には、pHは6.5~7.5、好ましくは6.8~7.2、例えばpH7である。一実施形態は、ステップc)において加熱温度が50℃であり、ステップc)における加熱時間が6時間であり、pHが7である本発明の方法である。これらのプロセス条件が本発明による方法で適用された本発明の実施形態が、実施例の項でさらに例示される。当業者には、加熱時間、酵素加水分解ステップc)が行われる温度、及び水溶性タンパク質の水溶液のpHの組合せが、効率的なタンパク質加水分解のために選択及び最適化される3つのパラメータであることが理解される。すなわち、選択されたタンパク質加水分解酵素に対して、最適なpH条件、酵素活性の点で最適な温度、及びタンパク質の所望の程度の酵素加水分解を考慮した場合の好適な反応時間が、本発明の方法において選択される。特に、水性水溶性タンパク質組成物のpHが、本発明に従って酵素加水分解が反応時間内に効率的に進行するようなpHであることは、本発明の一部である。同様に、加熱温度は、タンパク質加水分解酵素が選択された反応時間内に効率的に加水分解するように選択される。さらに、酵素加水分解ステップに選択される時間は、選択された酵素、加水分解温度、酵素濃度、pH及び加水分解時間の組合せを考慮した場合、加水分解されたタンパク質の最大の達成可能な画分を本質的に提供するために好適である限り継続するように選択される。したがって、昆虫タンパク質の酵素加水分解を考慮した場合、pH、酵素濃度、加水分解の加熱温度、及び加水分解ステップの反応時間の好適な組合せを選択することは、本発明の一部である。本発明者らが驚いたことに、本発明の方法を適用することによって、水溶性昆虫タンパク質は、ほぼ中性のpH又は中性pHで、比較的短い時間内で比較的高い程度まで効率的に加水分解される。すなわち、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質等の水溶性昆虫タンパク質組成物を用意し、酵素加水分解のステップにおいて前記タンパク質組成物を約50℃で約6時間pH7で本発明の加水分解方法に供することにより、タンパク質の総重量を基準として85重量%超、例えば90重量%超、95重量%超、及び実施形態において最大100重量%の1000ダルトン未満の分子量を有するタンパク質を含む、100%のペプシン消化性の加水分解されたタンパク質が得られた。さらに、遊離アミノ酸残基の含量は、典型的には、タンパク質の総重量を基準として30重量%超、例えば40重量%超である。したがって、本発明者らが驚いたことに、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質等の昆虫タンパク質のペプシン消化性は極めて高く、すなわち100%であり、さらに、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質を考慮した場合、昆虫タンパク質を酵素消化する方法ステップの後の遊離アミノ酸残基の含量もまた比較的高く、タンパク質の総重量を基準として34重量%~50重量%又は40重量%~50重量%と高い。実施例の項もまた参照されたい。
【0042】
一実施形態は、方法のステップc)において、加熱が40℃~55℃の温度で行われ、及び/又は加熱が4時間~9時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、加熱が40℃~55℃の温度で4時間~9時間の期間行われ、より好ましくは、ステップc)において、加熱が45℃~53℃の温度で5時間~7時間の期間行われ、最も好ましくは、加熱が50℃の温度で6時間の期間行われる、本発明による方法である。
【0043】
実施形態において、本発明による方法はステップa)を含み、前記ステップa)において、水性水溶性昆虫タンパク質組成物のpHは5~7.7、好ましくは6~7.5である、より好ましくはpHは7.0である。水溶性昆虫タンパク質は、約7のpHの水溶液中で特に安定である。本発明者らは、タンパク質が本発明の方法に供される場合、約7のpHを有する水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、そのようなタンパク質の効率的及び有効な酵素加水分解に好適なタンパク質源であることを実証した。本発明の方法は、一定の加水分解度及びペプシン消化性を有する加水分解されたタンパク質を提供するための安定した手段を提供する。これにより、加水分解された昆虫タンパク質組成物の間のバッチ間変動が最小限となる。選択されたpH、温度、酵素用量、加水分解時間により、本発明の方法は、示されるように、昆虫タンパク質で達成可能なペプシン消化性の程度及び遊離アミノ酸残基の含量が高いだけに、すなわち(ほぼ)100%のペプシン消化性、及びタンパク質の総重量を基準として30重量%超、例えば40重量%超の遊離アミノ酸残基を有することから、一定組成の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を提供する。
【0044】
一実施形態は、方法のステップa)において用意された少なくとも1種のペプチダーゼがアミノペプチダーゼ、好ましくはエンドペプチダーゼ若しくはエクソペプチダーゼ、又はそれらの混合物である、或いは方法のステップa)において用意された少なくとも1種のペプチダーゼがアミノペプチダーゼ、好ましくはエンドペプチダーゼ若しくはエクソペプチダーゼ、又はそれらの混合物を含む、本発明による方法である。
【0045】
本発明による方法では、ステップa)において、少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼ、パパイン、プロナーゼ、セリンプロテアーゼ、アルカラーゼ、サブチリシン、サブチリシンA、α-キモトリプシン、カテプシンIII、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、ペプシン、サーモリシン、トリプシンを含むか又はそれらから選択され、本方法では、好ましくは、ステップa)において、少なくとも1種のペプチダーゼがロイシルアミノペプチダーゼであるか、又は本方法では、好ましくは、ステップa)において、少なくとも1種のペプチダーゼがロイシルアミノペプチダーゼを含むことが好ましい。本発明者らは、特に、本発明の方法における少なくともロイシルアミノペプチダーゼの適用は、加水分解された昆虫タンパク質組成物の提供に非常に好適であることを実証した。例えば、遊離アミノ酸残基の量は、ロイシルアミノペプチダーゼが適用される場合、本発明の方法の加水分解ステップに供されたタンパク質の総重量を基準として34重量%超である。驚くべきことに、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質、すなわち水溶性幼虫タンパク質を本発明の方法に供すると、1000ダルトン未満の質量を有するペプチドの量が、タンパク質の総重量を基準として85重量%超、例えば最大100重量%であり、さらに、加水分解されたタンパク質中の遊離アミノ酸残基の含量が、タンパク質の総重量を基準として33重量%超、例えば45重量%超である、加水分解されたタンパク質組成物が提供される。そのような高い加水分解度は、例えば、人間による消費用、例えばネコ又はイヌの給餌用の食物成分、ペットフード成分及び動物飼料成分としての用途、家畜飼育、畜産、水産養殖等における用途等に好適な加水分解されたタンパク質組成物を提供する。本発明の方法の安定性は、高い消化性並びに高含量の小ペプチド及び遊離アミノ酸残基と共に、食物及び飼料香味剤及びパラタントの好適な源を提供する。
【0046】
ある特定の実施形態は、ステップb)において、タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の少なくとも1種のペプチダーゼの量が、タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.05重量%~7重量%、好ましくはタンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.1重量%~6重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%、最も好ましくは0.5重量%~3重量%、例えば1.0重量%~2.0重量%である、本発明による方法である。典型的には、酵素、例えばロイシルアミノペプチダーゼのそのような選択される量は、アメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性タンパク質等の昆虫タンパク質の効率的な酵素加水分解に好適である。典型的には、ペプチダーゼは、本発明の方法において、迅速で効率的なタンパク質加水分解に好適な量で存在し、水溶性昆虫タンパク質は、タンパク質組成物の総重量を基準として2重量%~25重量%、好ましくは3.5重量%~20重量%、例えば約3.8%又は約19%の濃度で提供される。
【0047】
一実施形態は、ステップd)において、ステップc)の加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解が、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を30秒~30分、好ましくは45秒~20分、より好ましくは1分~15分、最も好ましくは2分~10分の期間加熱することにより停止される、本発明による方法である。
【0048】
一実施形態は、ステップd)において、ステップc)の加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解が、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を80℃~105℃、好ましくは85℃~103℃、より好ましくは90℃~100℃の温度に加熱することにより停止される、本発明による方法である。典型的には、本発明の方法の酵素不活性化ステップd)は、1.5分~8分、好ましくは2分を要する。典型的には、酵素不活性化ステップは、本発明の方法のステップd)において、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を100℃で例えば2分間加熱することによって行われる。
【0049】
一実施形態は、ステップd)の後、任意選択のさらなるステップe)において、ステップd)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、前記酵素加水分解されたタンパク質中に修飾アミノ基を提供するためにメイラード反応に供される、本発明の方法であり、メイラード反応は、
e1)炭水化物を用意し、炭水化物をステップd)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質と混合して、酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を用意するサブステップと;
e2)ステップe1)の酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を加熱し、酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を用意するサブステップと
を含む。
【0050】
一実施形態は、任意選択のステップe1)において、添加された炭水化物の最終濃度が、酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.05重量%~6.0重量%、好ましくは酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.1重量%~5.0重量%、より好ましくは0.2重量%~3重量%、最も好ましくは0.3重量%~1.0重量%である、本発明による方法である。
【0051】
好ましくは、本発明による方法の一部として、任意選択のステップe2)において、任意選択のステップe1)の酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、100℃~170℃、好ましくは120℃~168℃、より好ましくは135℃~166℃、例えば140℃~165℃の温度で加熱される。任意選択のステップe1)の酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を加熱するために適用される温度は、145℃~160℃、例えば150℃、155℃であることが好ましい。好ましい実施形態において、メイラード反応中の温度は150℃である。本発明者らは、メイラード反応生成物、すなわち酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物が、例えばキャットフード及びドッグフードにおけるペットフード成分として、又は例えば麺、スープ、ハンバーガー等の人間による使用のための食品における食物成分として適用される場合、145℃~155℃の加熱温度を好ましくは約10分~20分間、例えば150℃を20分間適用することにより、非常に魅力的でおいしい味及び/又は香味及び/又は食味を有するメイラード反応生成物が得られることを実証した。
【0052】
一実施形態は、任意選択の方法ステップe2)において、任意選択の方法ステップe1)の酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、1分~120分、好ましくは2分~60分、より好ましくは3分~30分、最も好ましくは5分~20分、例えば10分~17分又は約15分の期間加熱される、本発明による方法である。本発明者らは、本発明の方法により提供される酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫のタンパク質を、メイラード反応に供される酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.3重量%~1.0重量%の量の添加されたスクロース又はグルコース、好ましくはスクロース若しくはグルコース、又はそれらの混合物の存在下で約15分間加熱することにより、驚くほど強く魅力的な牛肉のような味又は豚肉のような味が得られることを実証した。目隠し試験において、本発明の方法により提供されたタンパク質加水分解物を含む、又は酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含む食料品の味、香味及び/又は食味が、昆虫タンパク質加水分解物又は酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物で強化されていない食料品の味、香味及び/又は食味より良好でそれを超えていることを、ヒト対象のパネルの全ての人が全員一致で示した。
【0053】
一実施形態は、任意選択の方法ステップe1)において、用意される炭水化物が、スクロース若しくはグルコース、又はそれらの混合物、好ましくはスクロースである、本発明による方法である。本発明者らは、アメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質が本発明の方法に供された場合、本発明の方法が、強い肉のような味及び食味を有するメイラード生成物を一貫して提供することを実証した。グルコース、スクロース又はそれらの混合物とは別に、さらなる炭水化物が、アミノ酸残基側鎖と結合及び反応するのに好適であることが知られていることが、当業者には理解される。一例は、グルコース-6-ホスフェートである。したがって、本発明の方法では、任意選択のステップe1)において、スクロース及び/又はグルコースを含むか又は含まない他の炭水化物又はその混合物、例えばグルコース-6-ホスフェートが、酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を提供するために適用されることも、本発明の一部である。スクロース及びグルコースとは異なる炭水化物を含めることにより、又はスクロース及び/若しくはグルコースを少なくとも1種の他の炭水化物と組み合わせることにより、本発明の方法は、スクロース又はグルコースが方法において適用された場合に得られる酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物又は糖化最終生成物とは異なる味及び/又は香味及び/又は食味を有する酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物又は糖化最終生成物を提供するのに好適である。したがって、本発明の方法は、選択される(1種又は複数種の)炭水化物の種類、本発明の方法の任意選択のステップe1)及びe2)中の(1種又は複数種の)炭水化物の濃度、並びにメイラード反応中の加熱時間及び加熱温度を制御することにより、方法に供された酵素加水分解された昆虫タンパク質の味及び/又は香味及び/又は食味を制御及び管理する機会を提供する。典型的には、Argアミノ酸残基が、メイラード反応生成物及び/又は糖化最終生成物を形成しやすい。
【0054】
一実施形態は、ステップd)の後、任意選択のさらなるステップf1)において、ステップd)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ又は複数を適用することにより乾燥される、本発明による方法である。さらなる実施形態は、任意選択の方法ステップe2)の後、任意選択のさらなるステップf2)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物が、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ又は複数を適用することにより乾燥される、本発明による方法である。上述のアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質組成物等の乾燥した水溶性昆虫タンパク質組成物を提供することの利益は、例えば、貯蔵される際の長い保存期間、及び、タンパク質濃度が制御可能であるように、水溶液中の選択された最終タンパク質濃度で水性水溶性昆虫タンパク質組成物を調製する機会に関連している。タンパク質を溶解するための水溶液の種類、及び所望のpHもまた選択され得る。本発明の目的において、以前に乾燥された本発明の方法のステップa)において用意される水溶性昆虫タンパク質組成物は、典型的には、本発明のステップa)における溶解したタンパク質の用意の前に水に溶解される。
【0055】
一実施形態は、ステップd)の後、任意選択のさらなるステップf3)において、ステップd)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が濃縮される、好ましくは、濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の乾燥物質含量が濃縮ステップf3)の後に濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%であるように濃縮される、本発明による方法である。一実施形態は、任意選択の方法ステップe2)の後、任意選択のさらなるステップf4)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物が濃縮される、好ましくは、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が濃縮ステップf4)の後に酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも30重量%、例えば少なくとも50重量%であるように濃縮される、本発明の方法である。
【0056】
一実施形態は、方法が任意選択の濃縮ステップf3)を含み、前記任意選択の濃縮ステップf3)の後に、濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の乾燥物質含量が、濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として30重量%~80重量%、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは50重量%~70重量%である、本発明の方法である。一実施形態は、方法が任意選択の濃縮ステップf4)を含み、前記任意選択の濃縮ステップf4)の後に、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として30重量%~80重量%、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%である、本発明の方法である。
【0057】
一実施形態は、ステップb)のタンパク質/ペプチダーゼ混合物中の水溶性昆虫タンパク質の量が、タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.2重量%~30重量%、好ましくはタンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.5重量%~25重量%、より好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは3重量%~10重量%、例えば3.5重量%~7重量%、又は3重量%~5重量%である、本発明による方法である。
【0058】
本発明の実施形態によれば、本発明の方法のステップa)において用意される水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、濃縮されたタンパク質組成物であるか、又は、本発明の方法により提供された加水分解されたタンパク質組成物は、加水分解されたタンパク質が例えばペットフード、人間用食料、家畜飼料等の調製において使用される前に任意選択で濃縮されるか、又はその両方である。本発明の方法のステップa)において濃縮された水性水溶性昆虫タンパク質を提供することの利益は、タンパク質加水分解の制御可能な速度及び程度に関連する。すなわち、より濃縮されたタンパク質組成物がタンパク質加水分解に供される場合、酵素加水分解はより短い時間枠内で生じ得る。さらに、より濃縮された加水分解されたタンパク質組成物の提供は、食物又は飼料成分としての加水分解物の適用を考慮した場合、より高い柔軟性を提供する。濃縮された加水分解されたタンパク質組成物が本発明の方法に供される場合、食品又は飼料製品の製造中に適用する必要がある加水分解された昆虫タンパク質組成物の量がより少ない。これは、水溶性昆虫タンパク質加水分解物の使用、及び酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の使用の機会及び用途を広げる。濃縮された水性水溶性昆虫タンパク質組成物を本発明の方法に適用することにより、本発明の方法により得られた生成物の添加による食物又は飼料成分の組成物の希釈が制限される。本発明の方法による濃縮された加水分解されたタンパク質の提供についても同じであり、例えば、加水分解されたタンパク質が食物成分、ペットフード成分、動物飼料成分、香味剤、パラタントとして人間による使用のための食料品の製造に適用される前に、加水分解されたタンパク質、又は加水分解されたタンパク質のメイラード反応生成物が濃縮ステップに供される。
【0059】
一実施形態は、方法ステップa)において、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、イエバエ、アメリカミズアブ、イナゴ、バッタ及びコオロギに由来する水性水溶性昆虫タンパク質組成物のいずれか1つである、本発明の方法である。一実施形態は、ステップa)において、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、甲虫の幼虫、イエバエ、アメリカミズアブ、イナゴ、バッタ、コオロギ、ゴキブリの幼虫、ヤシオオオサゾウムシの幼虫、カイコ、タガメ、セミ、タケムシ、アリ、キリギリス、チョウ、ヨコバイ、ウンカ及びハチの幼虫のうちのいずれか1つ又は複数に由来する水性水溶性昆虫タンパク質組成物であり、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、好ましくはアメリカミズアブに由来し、好ましくは、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来する水性水溶性タンパク質組成物である、本発明の方法である。水性水溶性昆虫タンパク質組成物がアメリカミズアブに由来することが好ましく、より好ましくは、水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、アメリカミズアブの幼虫に由来する水性水溶性タンパク質組成物である。典型的には、そのようなアメリカミズアブの幼虫は、幼虫から前蛹期への移行直前の齢である。典型的には、アメリカミズアブの幼虫は、12日齢~25日齢、例えば16~22日齢である。そのような幼虫は、典型的には、一定の飼料供給条件下、すなわち不断給餌下で、及び29℃~32℃、例えば30.5℃~31℃の温度で養殖又は飼育される。アメリカミズアブの幼虫は、典型的には、幼虫の総重量を基準として(乾燥物質基準)35重量%超、例えば40重量%超、45重量%超、50重量%超、55重量%超、60重量%超、例えば35重量%~65重量%、又は63重量%未満のタンパク質含量を有する。そのような高タンパク質含量により、アメリカミズアブの幼虫は、水溶性昆虫タンパク質を回収するための源として特に好適であり、そのようなタンパク質を本発明の方法に供するのに好適である。驚くべきことに、アメリカミズアブの幼虫の水性水溶性タンパク質組成物を本発明の方法に適用した場合、タンパク質加水分解物及びタンパク質加水分解物のメイラード反応生成物が得られ、これは、例えば人間対象によりそれ自体が消費された場合、及び例えば麺及びベジタリアンバーガーの成分として組み込まれた際に人間によって消費された場合、及び例えばキャットフードと混合された場合、及びドッグフードと混合された場合に、強い牛肉のような味及び/又は香味及び/又は食味を有する。
【0060】
一実施形態は、方法ステップa)において、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、水等の水溶液中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物、好ましくはアメリカミズアブの幼虫に由来する水溶性昆虫タンパク質組成物であり、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)昆虫、好ましくはアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りにすることにより、ステップ(i)の昆虫のサイズを低減するステップと、
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)のパルプを70~100℃の温度に加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液等の水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより昆虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、本発明による方法である。
【0061】
一実施形態は、ステップa)において、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来する、水中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物であり、水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前のアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)のアメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)のパルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより、好ましくはそれらのステップによりアメリカミズアブの幼虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、本発明による方法である。
【0062】
典型的には、水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫に由来する。本発明の方法のステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物の用意を可能にするために、アメリカミズアブの幼虫がタンパク質抽出手段及び方法に供される場合、アメリカミズアブの幼虫は、12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前であるのが好適である。
【0063】
本発明によれば、水溶液中に提供される水溶性昆虫タンパク質組成物の源として、例えばみじん切りされたアメリカミズアブの幼虫の肉が適用される。みじん切りされた昆虫の残骸の平均粒径が10~500ミクロンの範囲である場合が有益である。水性水溶性昆虫タンパク質組成物は、例えば、欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載のアメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための方法を適用することによりアメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性昆虫タンパク質組成物である。いくつかの実施形態において、本発明の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質は、添加された炭水化物の存在下でタンパク質加水分解物を加熱することによりメイラード反応に供される。しかしながら、本発明の方法のステップa)において用意される水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離するための以下の幼虫処理方法ステップ(i)~(vi)を適用することによりアメリカミズアブの幼虫から得られる水溶性昆虫タンパク質組成物である場合が好ましい:
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前のアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)のアメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)のパルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法のステップa)の水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップ。
【0064】
本発明者らは、方法のステップa)において、本発明の方法の一部としてこの幼虫処理方法ステップを適用することにより、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫から得られるタンパク質パルプが得られることを実証したが、このパルプは、当技術分野において知られている代替的なアメリカミズアブの幼虫の処理方法、例えば欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に概説される方法を適用することによりそのような幼虫から得られるパルプと比較して、驚くほど改善された特徴及び構造特性を有する。特に、本発明の方法のステップ(iv)において、100秒未満の比較的短い加熱時間が、改善された幼虫パルプを得るために必須であると考えられる。本発明者らは、時間と温度の組合せを使用することによって、より少ない油がタンパク質画分内に取り込まれ、タンパク質源としてのアメリカミズアブの幼虫からタンパク質パルプを単離するための代替的な現在の手段及び方法を用いて提供されるタンパク質源と比較して、本発明の方法のステップa)においてより純粋なタンパク質源が提供されることを見出した。また、メイラード反応による(タンパク質の)パルプの変色が大幅に回避され、それにより得られる生成物の品質が改善されることを見出した。例えば、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫が90℃で80秒間、又は90℃±2℃の温度で75~85秒間加熱された場合、脂肪含量が低減されたタンパク質が得られる。EP2953487では、加熱時間は少なくとも5分、さらには30分である。さらに、みじん切りされたアメリカミズアブのパルプの最大100秒、好ましくは約70~90秒の比較的短い加熱時間により、当技術分野において知られている現在の方法において適用されるより長い加熱時間と比較して、顆粒化がより少なく凝集性がより低い昆虫パルプが得られる。顆粒化がより少ない幼虫パルプは、パルプに含まれるタンパク質の酵素加水分解に有益である。粒子状物質は酵素分子によりアクセスしにくいため、顆粒化は酵素効率を低減する。本発明の方法の一部として幼虫処理方法ステップを適用することにより、アメリカミズアブの幼虫のパルプが100秒を超える、例えば5分~30分間の加熱に供された場合に得られるより大きいタンパク質凝集体及び粒子と比較して、短い加熱時間によってより小さいタンパク質クラスタ、凝集体、粒子、又はさらには(主に)タンパク質モノマー及び/若しくは小マルチマーからなるタンパク質組成物が得られる。
【0065】
本発明の方法に供されるアメリカミズアブは、アメリカミズアブの幼虫であることが好ましい。アメリカミズアブの幼虫等の昆虫を、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための本発明の方法における適用に好適な水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換するための典型的な方法は、欧州特許出願EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載されている。加熱ステップ(iv)は、典型的には、50秒~120秒間、好ましくは80秒間継続し、典型的には、ステップ(iv)における加熱温度は、80℃~95℃、好ましくは約90℃である。本発明の方法によれば、ステップ(i)においてアメリカミズアブの幼虫が用意された場合、昆虫パルプがステップ(iv)において90℃で80秒間加熱されると、高いタンパク質収量が達成され得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質は、添加された炭水化物の存在下でタンパク質加水分解物を加熱することによりメイラード反応に供される。いくつかの実施形態において、水溶性昆虫タンパク質の源は、例えば、EP2953487の実施例の項、特に実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載の方法により提供される水性水溶性昆虫タンパク質組成物でもあり、これは、本発明の方法の方法ステップa)~d)に供されてから本発明による方法ステップe1)及びe2)にさらに供され、メイラード反応生成物及び/又は糖化最終生成物が提供される。本発明の方法による水性水溶性昆虫タンパク質組成物の提供、並びに加水分解されたタンパク質及び加水分解されたタンパク質のメイラード反応生成物の提供のためのステップの概要に関しては、図1も参照されたい。
【0066】
一実施形態は、方法ステップd)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、ステップd)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、本発明による方法である。一実施形態は、方法のステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物が、ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、本発明による方法である。アメリカミズアブの幼虫に由来するタンパク質を考慮した場合、pH7の水等の水溶液へのタンパク質溶解度は、本明細書において上記で概説されたステップ(i)~(v)に従ってアメリカミズアブの幼虫から得られたタンパク質中に存在するタンパク質の総重量を基準として少なくとも90重量%であり、本質的に100重量%である。
【0067】
本発明の一態様は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得られる、又は本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得ることができる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質に関する。本発明のさらなる態様は、メイラード反応生成物を用意するさらなるステップを含む本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得られる、又はメイラード反応生成物を用意するさらなるステップを含む本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得ることができる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関する。
【0068】
一実施形態は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得られる、若しくは本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得ることができる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質、又はメイラード反応生成物を用意するさらなるステップを含む本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得られる、若しくはメイラード反応生成物を用意するさらなるステップを含む本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法により得ることができる酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であり、昆虫タンパク質源は、本発明の実施形態によるアメリカミズアブの幼虫のタンパク質であり、及び/又は、昆虫タンパク質源は、本発明の幼虫処理方法のステップ(i)~(vi)に従って提供される。
【0069】
本発明の一態様は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質に関し、又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関し、前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは55重量%~100重量%、より好ましくは65重量%~100重量%、最も好ましくは75重量%~100重量%、例えば80重量%~95重量%、又は85重量%~90重量%、又は85重量%~100重量%が1,000ダルトン未満の分子量を有する。昆虫タンパク質は、好ましくはアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質、例えばアメリカミズアブの幼虫の水性水溶性タンパク質組成物である。アメリカミズアブの幼虫等の幼虫に由来するそのようなタンパク質組成物は、好ましくは、欧州特許出願EP2953487の実施例の項、実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載の方法を適用することにより得られる。
【0070】
一実施形態は、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質であり、前記タンパク質の総重量を基準としてタンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~55重量%、最も好ましくは35重量%~50重量%、例えば25重量%~40重量%、又は45重量%~55重量%が遊離アミノ酸残基である。一実施形態は、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であり、前記タンパク質の総重量を基準としてタンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~50重量%、最も好ましくは25重量%~35重量%、例えば25重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%が遊離アミノ酸残基である。典型的には、水溶性昆虫タンパク質組成物を本発明の方法に供することにより、タンパク質組成物中のタンパク質の総重量を基準として33重量%~48重量%の遊離アミノ酸残基を含む酵素加水分解された昆虫タンパク質組成物が得られる。酵素加水分解された昆虫タンパク質を本発明によるメイラード反応の任意選択の方法ステップe1)及びe2)に供することにより、タンパク質組成物中のタンパク質の総重量を基準として典型的には33重量%~48重量%の遊離アミノ酸残基が得られ、ここで、前記遊離アミノ酸残基の画分が、Arg残基等のメイラード反応生成物として提供される。一実施形態は、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であり、前記タンパク質の総重量を基準としてタンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~55重量%、最も好ましくは30重量%~50重量%、例えば25重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%が遊離アミノ酸残基である。
【0071】
一実施形態は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質であり、前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として少なくとも2.5重量%が遊離アルギニンであり、及び/又は少なくとも2.5重量%が遊離グルタミン酸であり、及び/又は少なくとも1.25重量%が遊離ロイシンであり、及び/又は少なくとも2.2重量%が遊離リシンである、好ましくは前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として少なくとも3.7重量%が遊離アルギニンであり、少なくとも3.0重量%が遊離グルタミン酸であり、少なくとも1.5重量%が遊離ロイシンであり、少なくとも2.6重量%が遊離リシンである、好ましくは前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として4.7重量%未満が遊離アルギニンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離グルタミン酸であり、及び/又は3.0重量%未満が遊離ロイシンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離リシンである、好ましくは前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として4.5重量%未満が遊離アルギニンであり、3.7重量%未満が遊離グルタミン酸であり、2.7重量%未満が遊離ロイシンであり、3.6重量%未満が遊離リシンである。
【0072】
一実施形態は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であり、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも2.5重量%が遊離アルギニンであり、及び/又は少なくとも2.5重量%が遊離グルタミン酸であり、及び/又は少なくとも1.25重量%が遊離ロイシンであり、及び/又は少なくとも2.2重量が遊離リシンである、好ましくは酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも3.7重量%が遊離アルギニンであり、少なくとも3.0重量%が遊離グルタミン酸であり、少なくとも1.5重量%が遊離ロイシンであり、少なくとも2.6重量%が遊離リシンである、好ましくは酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として4.7重量%未満が遊離アルギニンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離グルタミン酸であり、及び/又は3.0重量%未満が遊離ロイシンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離リシンである、好ましくは酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として4.5重量%未満が遊離アルギニンであり、3.7重量%未満が遊離グルタミン酸であり、2.7重量%未満が遊離ロイシンであり、3.6重量%未満が遊離リシンである。
【0073】
一実施形態は、前記水溶性タンパク質が、大腸菌(E.coli)については50未満、例えば10若しくは10未満、及び/又はサルモネラ菌(Salmonella)については1未満、例えば0、及び/又はセレウス菌(B.cereus)については500未満、例えば150未満若しくは10未満、及び/又はウェルシュ菌(C.perfringens)については500未満、例えば50未満、好ましくは10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、好ましくは、cfu/gタンパク質での微生物数が、大腸菌については10未満、及び/又はサルモネラ菌については0.1未満、好ましくはサルモネラ菌は存在せず、及び/又はセレウス菌については10未満、及び/又はウェルシュ菌については10未満であり、より好ましくは、前記水溶性タンパク質が、大腸菌については10未満、セレウス菌については10未満、及びウェルシュ菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、25グラムの酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質中でサルモネラ菌数が測定された場合サルモネラ菌については微生物数は0cfu/gタンパク質である(サルモネラ菌は25グラムの酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の試料中では検出不可能である)、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質である。
【0074】
一実施形態は、前記水溶性タンパク質が、大腸菌については50未満、例えば10若しくは10未満、及び/又はサルモネラ菌については1未満、例えば0、及び/又はセレウス菌については500未満、例えば150未満若しくは10未満、及び/又はウェルシュ菌については500未満、例えば50未満、好ましくは10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、好ましくは、cfu/gタンパク質での前記微生物数が、大腸菌については10未満、及び/又はサルモネラ菌については0.1未満、好ましくはサルモネラ菌は存在せず、及び/又はセレウス菌については10未満、及び/又はウェルシュ菌については10未満であり、より好ましくは、前記水溶性タンパク質が、大腸菌については10未満、セレウス菌については10未満、及びウェルシュ菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、25グラムの酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質中でサルモネラ菌数が測定された場合サルモネラ菌については微生物数は0cfu/gタンパク質である(サルモネラ菌は25グラムの酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の試料中では検出不可能である)、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物である。
【0075】
本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質及び本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物は両方とも、人間による使用のための食品又は食物成分としての加水分解されたタンパク質の用途を考慮した場合、欧州委員会により許可される指定の微生物の上限未満のcfu/gタンパク質で表現される微生物数を有する。図2もまた参照されたい。
【0076】
一実施形態は、水溶性タンパク質が本発明による方法によって提供される、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質である。一実施形態は、水溶性タンパク質が本発明による方法によって提供される、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物である。一実施形態は、昆虫タンパク質源が、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質である、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物である。特に、タンパク質源は、本発明の方法のステップa)において、本発明のアメリカミズアブの幼虫の処理方法のステップ(i)~(vi)を適用することにより提供される。
【0077】
一実施形態は、食味増強剤及び保湿剤のうちのいずれか1つ又は複数、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質である。一実施形態は、食味増強剤及び保湿剤のうちのいずれか1つ又は複数、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物である。
【0078】
一実施形態は、食味増強剤が、ピロリン酸金属塩、2-メチルフラン、2-メチルピロール、ジメチルジスルフィドであり、並びに/又は保湿剤が、プロピレングリコール、グリセリン、コーンシロップ及び無機塩から選択される、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質である。一実施形態は、食味増強剤が、ピロリン酸金属塩、2-メチルフラン、2-メチルピロール、ジメチルジスルフィドであり、並びに/又は保湿剤が、プロピレングリコール、グリセリン、コーンシロップ及び無機塩から選択される、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物である。
【0079】
本発明の一態様は、ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品若しくは動物飼料成分の製造、又は人間用食品若しくは人間用食物成分の製造、好ましくはネコ用飼料、イヌ用飼料又はエビ用飼料、例えばバナメイエビ用飼料の製造における、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の使用に関する。本発明のさらなる態様は、ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品若しくは動物飼料成分の製造、又は人間用食品若しくは人間用食物成分の製造、好ましくはネコ用飼料、イヌ用飼料又はエビ用飼料、例えばバナメイエビ用飼料の製造における、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物に関する。一実施形態は、ペットがイヌ若しくはネコ、好ましくはイヌである、又は動物がイヌ、ネコ若しくはエビ、好ましくはバナメイエビ(リトペニウス・バナメイ(Litopenaeus vannamei))である、上述の使用である。
【0080】
一実施形態は、製造されるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、例えばバナメイエビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物用、好ましくは、ネコ、イヌ、エビ、例えばバナメイエビ用の食物若しくは食物成分又は飼料若しくは飼料成分のいずれかであるか、又は飼料若しくは食物香味剤又は飼料若しくは食物香味増強剤であり、或いは、製造される人間用食品又は製造される人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤、食物香味増強剤、スープ、肉代用製品若しくは成分、又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、本発明による使用である。一実施形態は、製造されるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物用の食物若しくは食物成分又は飼料若しくは飼料成分、本発明の方法において適用される昆虫種とは異なり、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が得られた、及び由来した、また本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物が得られた、及び由来した昆虫種とは異なる昆虫種用の飼料、例えば受粉媒介者等、例えばこれらに限定されないがハチ又は生物防除に使用される益虫、例えばこれらに限定されないがテントウムシ、並びに例えばマルハナバチ、カ、シロアリ及びミバエ用の飼料のいずれかであるか;又は飼料若しくは食物香味剤又は飼料若しくは食物香味増強剤であり、或いは、製造される人間用食品又は製造される人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤、食物香味増強剤、スープ、肉代用製品若しくは成分、又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、本発明による使用である。典型的には、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物は、BSFの幼虫から得られる、及び由来する。本発明の方法において適用される昆虫種とは異なり、本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が得られた、及び由来した、又は本発明による酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物が得られた、及び由来した昆虫種とは異なる昆虫種用の飼料の場合、そのような昆虫種はこのように典型的には甲虫の幼虫、イエバエ、アメリカミズアブ、イナゴ、バッタ、コオロギ、ゴキブリの幼虫、ヤシオオオサゾウムシの幼虫、カイコ、タガメ、セミ、タケムシ、アリ、キリギリス、チョウ、ヨコバイ、ウンカ及びハチの幼虫とは異なり、好ましくは、イエバエ、アメリカミズアブ、イナゴ、バッタ、コオロギ、ゴキブリの幼虫、ヤシオオオサゾウムシの幼虫、カイコ、タガメ、セミ、タケムシ、アリ、キリギリス、チョウ、ヨコバイ、ウンカ及びハチの幼虫とは異なり、好ましくは、BSF、特にBSFの幼虫とは異なる。
【0081】
本発明の一態様は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分、好ましくは、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、ネコ用飼料製品若しくは成分、イヌ用飼料製品若しくは成分、又はエビ用飼料製品若しくは成分、例えばバナメイエビ用飼料製品若しくは成分、又は人間用食品若しくは人間用食物成分に関する。
【0082】
一実施形態は、ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物、好ましくは、ネコ、イヌ又はエビ、例えばバナメイエビ用の食物若しくは飼料又は食物成分若しくは飼料成分のいずれかであるか、或いは、食物香味剤若しくは食物香味増強剤又は飼料香味剤若しくは飼料香味増強剤、又は本発明による人間用食品若しくは人間用食物成分であり、人間用食品又は人間用食物成分が、ブロス、ソース、バーガー、ハンバーガー、麺、香味剤、食物香味剤又は食物香味増強剤、スープ、肉代用製品若しくは成分又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、豚ブロス、牛肉、調理肉、牛肉ベースのハンバーガー、牛肉ベースのバーガー、牛肉ベースのスープ、麺等のいずれかである、本発明によるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分である。
【0083】
本発明の第6の態様は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、酸化防止剤としての使用に関する。特に、酸化防止活性を有する食物又は飼料成分としての使用に関する。したがって、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質及び酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物は、酸化防止特性を有する。
【0084】
本発明の第7の態様は、本発明の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、酸化防止剤及び/又は健康増進能を有する成分としての使用に関する。
【0085】
本発明の態様は、細胞の酸化的損傷の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、本発明の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分に関する。
【0086】
本発明のさらなる態様は、本発明による酸化防止活性を有する、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含む動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分に関する。酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含む動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の酸化防止活性は、本発明の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の酸化防止特性によるものである。
【0087】
本発明者らは、驚くべきことに、BSFの幼虫から得られるアメリカミズアブの水性タンパク質加水分解物のin vitro酸化防止活性を実証及び分析したが、アメリカミズアブ-水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)の酸化防止活性は、ラジカル捕捉モデル(DPPH及びABTSアッセイ)、ミエロペルオキシダーゼ応答が関与する酵素モデル(古典的及びSIEFEDアッセイ)、並びに好中球応答が関与する細胞モデルを使用して分析された(以降の実施例の項を参照されたい)。市販のフィッシュミール及びチキンミールが比較例において業界基準として使用された。比較例では、試験結果において、フィッシュミール及びチキンミールが、好中球及びミエロペルオキシダーゼ応答の結果として生じる酸化的損傷の抑制に関する利点をほとんど又は全く提供しないことが明らかとなった。さらに、フィッシュミール及びチキンミールはまた、この研究で使用されたモデルのいくつかにおいて酸化促進挙動を示す。結果は、驚くべきことに、アメリカミズアブの水性タンパク質加水分解物が、宿主の好中球及びミエロペルオキシダーゼ応答から生じる細胞(酸化的)損傷に対する保護において効果的であることを示している。したがって、本発明のアメリカミズアブの水性タンパク質加水分解物(APH)は、ペットフード及び水産養殖飼料配合物における成分としての、例えば食物又は飼料成分としての含有に関して、チキンミール及びフィッシュミールを超える利点を示す。
【0088】
本発明者らは、BSFの水性タンパク質加水分解物が、1000Da未満のタンパク質の有意なシェアを有することを実証した。これは、短鎖ペプチド及び遊離アミノ酸の混合物を含む。いくつかの短鎖ペプチド及び遊離アミノ酸は、酸化防止活性を有することが知られている。これらの分子は、ROS及びフリーラジカルを活発に捕捉し得る。Firmansyah及びAbduh[3]は、BSFタンパク質加水分解物のDPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)捕捉活性を評価した。Zhuら[4]は、BSFタンパク質加水分解物のDPPH、ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、スーパーオキシド及びヒドロキシルラジカル捕捉活性を評価した。本発明者らの知る限り、加水分解されたBSFの幼虫のタンパク質(BSF-APH)による驚くほど高い酸化防止活性並びに酸化ストレス及び/又は損傷に対する驚くほど高い保護を示す、基礎的酵素及び細胞モデルを使用してBSFタンパク質加水分解物の酸化防止活性を実証した研究は、現在まで実現していない。したがって、このたび実証された発明の前には、BSFタンパク質加水分解物の酸化防止能は、基礎的レベルでよく理解されておらず、まだ開示されておらず、予想されておらず、期待されてもいなかった。本発明によれば、BSFタンパク質加水分解物のin vitro酸化防止活性に関する詳細な調査により、これらのタンパク質誘導体の新たな用途が切り開かれ、動物の健康が改善される。
【0089】
本発明者らは、(1)DPPH及びABTSが関与するラジカル捕捉モデル;(2)ミエロペルオキシダーゼ応答が関与する酵素モデル;並びに(2)好中球応答が関与する細胞モデルを使用して、BSFタンパク質加水分解物の驚くほど高い酸化防止能及び活性を見出した。本発明によるBSFタンパク質加水分解物の酸化防止活性との比較のために、チキンミール及びフィッシュミールが比較例において業界基準として使用された。
【0090】
本発明の一態様は、活性酸素種により誘発される炎症誘発性応答の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、本発明の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分に関する。
【0091】
本発明の一態様は、酸化防止能を有する本発明の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の使用に関する。
【0092】
「酸化防止特性」という用語は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、抗炎症応答等の酸化防止活性を有する酸化防止剤からなるか又はそれを含む、本発明の加水分解されたタンパク質等の化合物又は組成物を指す。典型的には、そのような抗炎症応答は、例えばペット等の哺乳動物若しくは人間対象の細胞、又は魚の細胞における、例えば活性酸素種により誘発される炎症応答に対する応答である。例えば、「Antioxidants in Food: Practical Applications」(Jan Pokorny、Nedyalka Yanishlieva及びMichael Gordon(編集者)、2001、Cambridge: CRC Press、Woodhead Publishing Ltd. ISBN 1 85573 463 X、CRC Press、ISBN 0-8493-1221-1)の第1章、第5章及び第6章を参照されたい。酸化防止剤は、宿主免疫応答から生じる酸化的損傷に対する活性等の酸化防止活性を有する化合物、又は酸化防止活性を有する組成物、又は酸化防止活性を有する化合物を含む組成物である。酸化防止剤は、例えば酸化を阻害する。例えば、対象における酸化、例えば活性酸素種は、細胞(酸化的)損傷を誘発する。
【0093】
「健康増進食物」、「健康増進活性」、「健康増進特性」、及び「健康増進能」等における「健康増進」という用語は、その通常の科学的意味を有し、本明細書では、動物、例えばペット動物等の哺乳動物又は人間対象の健康に対する、化合物又は組成物、例えば本発明の加水分解されたタンパク質の、そのような化合物又は組成物が動物により消費された際の効果を指す。健康増進能を有する化合物又は組成物の消費は、動物、例えばペット動物等の哺乳動物又は人間対象の健康状態に寄与するか、又はそれを補助するか、又はそれを増進するか、又はそれを増加させるか、又はそれを維持する。例えば、「Antioxidants in Food: Practical Applications」(Jan Pokorny、Nedyalka Yanishlieva及びMichael Gordon(編集者)、2001、Cambridge: CRC Press、Woodhead Publishing Ltd. ISBN 1 85573 463 X、CRC Press、ISBN 0-8493-1221-1)の第1章、第5章及び第6章を参照されたい。
【0094】
上記において、いくつかの例示的実施形態を参照しながら本発明を説明した。修正が可能であり、添付の特許請求の範囲において定義される保護の範囲に含まれる。本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、実施例は決して本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0095】
[実施例]
実施例1
欧州特許出願EP2953487の実施例の項、実施例1、12頁、8~13行目及び13頁、3~5行目に記載の方法に従ってアメリカミズアブの幼虫からタンパク質画分を単離することにより、水溶性タンパク質が実質的に完全に水等の水溶液に溶解している水性水溶性タンパク質組成物又は乾燥水溶性タンパク質組成物を得た。簡潔に説明すると、アメリカミズアブの幼虫を用意し、以降に実質的に概説される昆虫又は芋虫を栄養物ストリームに変換する方法に供した(図1もまた参照されたい):
昆虫又は芋虫を栄養物ストリームに変換する方法であって、
(a1)昆虫又は芋虫、ここではアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(a2)昆虫又は芋虫のサイズを低減するステップと、
(a3)昆虫又は芋虫からパルプを得るステップと、
次いで
(b)パルプを70~100℃の温度に加熱するステップと、次いで
(c)加熱されたパルプを物理的分離ステップに供して、それにより脂肪画分、水性タンパク質画分(「幼虫水」と呼ばれる)、及び固体含有画分を得るステップと
を含む方法。
【0096】
水性タンパク質画分は、昆虫を栄養物ストリームに変換する方法にアメリカミズアブの幼虫が供された場合の水性水溶性タンパク質画分である。水性水溶性タンパク質画分は、いくつかの実施形態において、噴霧乾燥を使用してステップ(c)の後に乾燥され、乾燥したアメリカミズアブの幼虫のタンパク質が得られる。方法は、方法のステップのいずれにおいても、パルプの酵素処理を含まない。任意選択で、方法は、幼虫パルプの酵素処理を含むが、本実施例では、アメリカミズアブの幼虫を栄養物ストリームに変換する方法において酵素消化ステップは適用されない。方法のステップ(b)において、みじん切りされたアメリカミズアブの幼虫は、パルプ(又は「ピューレ」)を90℃で80秒間加熱することにより低温殺菌され、幼虫の低温殺菌「肉」が得られる。低温殺菌肉は、その後ステップ(c)において機械的に分離されて、液体タンパク質画分(幼虫水)が得られる。水性タンパク質画分は、酵素加水分解された昆虫若しくは芋虫タンパク質の提供及び酵素加水分解された昆虫若しくは芋虫タンパク質のメイラード反応生成物の提供のための本発明の方法のステップ(a)において、少なくとも1種のタンパク質を含む水性昆虫若しくは芋虫タンパク質組成物として提供される前に、さらなる処理ステップ(例えば乾燥若しくは濃縮)なしで「そのまま」直接使用されるか、或いは、水性タンパク質画分(幼虫水)が最初に例えば3倍~12倍、例えば5~10倍濃縮されるか、又は例えば噴霧乾燥を使用して最初に乾燥されてから水等の水溶液への溶解に供され、次いで本発明の方法のステップ(a)において少なくとも1種のタンパク質を含む水性昆虫若しくは芋虫タンパク質組成物として提供される。
【0097】
上で概説された昆虫又は芋虫を栄養物ストリームに変換する方法のステップ(c)で得られた粗タンパク質含量は、幼虫水の総重量を基準として3.8重量%であった。粗脂肪含量は、幼虫水の総重量を基準として0.3重量%であった。得られた幼虫水に関して、30℃での好気性中温菌数(ISO4833)として評価される総プレート数は26000cfu/gであり、30℃でのセレウス菌数(ISO7932)は40cfu/g未満であり、37℃でのウェルシュ菌数(ISO7937)は10cfu/g未満であり、44℃での大腸菌数は10cfu/g未満であり、サルモネラ菌はPCR迅速方法(ISO6579)を使用して25gの生成物中で検出されなかった。したがって、幼虫水において、微生物数は、セレウス菌については40cfu/gタンパク質未満であり、ウェルシュ菌については10cfu/gタンパク質未満であり、大腸菌については10cfu/gタンパク質未満であり、サルモネラ菌数は25gの幼虫水を評価した場合0cfu/gタンパク質であった。これにより、微生物数は、食品又は食物成分における幼虫水の用途のために達成されるべき境界値内であった。
【0098】
水性水溶性タンパク質画分(幼虫水)は、濃縮されていてもいなくても、又は最初に乾燥され、次いで再び溶解されたものであっても、アメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質画分中の少なくとも1種のタンパク質の酵素加水分解のための基質として適用される。液体水性水溶性タンパク質画分は、水性タンパク質画分(幼虫水)の総重量を基準として約91重量%の水分含量、約4重量%のタンパク質を含有するが、液体水性タンパク質画分は低い脂肪含量(水性タンパク質画分の総重量を基準として1重量%未満、すなわち現在の調製においては0.3%)を有していた。幼虫水は、水溶性タンパク質の酵素加水分解の前にいかなる希釈ステップも必要としない溶解した水溶性タンパク質の原液である。水性水溶性タンパク質画分(幼虫水)は、非水溶性キチンを含まない。
【0099】
酵素加水分解
温度制御(30℃~100℃)、pH制御(pHは4~9である)、及び連続撹拌(最大1250rpm)を備えるバイオリアクタ内で、水性水溶性タンパク質画分(幼虫水)を酵素加水分解に供した。いくつかの例では単一のアミノペプチダーゼを使用して、またさらなる例ではエンドペプチダーゼ及びエクソペプチダーゼ活性を有するアミノペプチダーゼの組合せを使用して、タンパク質を酵素加水分解した。酵素濃度は、1種又は複数種のアミノペプチダーゼについて、(1種又は複数種の)酵素を含む水性水溶性タンパク質画分の総重量を基準として0.1重量%~2重量%であった。例えば、フレーバーザイム(Flavourzyme)(Novozymes、デンマーク)は、(1種又は複数種の)酵素を含む水性タンパク質画分の総重量を基準として1重量%で使用された。
【0100】
反応条件
酵素加水分解中、反応のpH(典型的には4~8)、反応温度(典型的には35℃~60℃)、及び酵素加水分解時間(典型的には2時間~12時間)は、選択された(1種又は複数種の)酵素の種類に依存した。フレーバーザイムでは、pH7(これはまた幼虫水のpHでもあった)、50℃の温度で6時間の間、水性水溶性タンパク質画分を加水分解した。
【0101】
酵素不活性化を誘発するための加熱
酵素加水分解反応は、75℃~110℃で1分~10分間の(1種又は複数種の)酵素の熱不活性化により停止した。一般に、酵素加水分解反応は、(1種又は複数種の)酵素を含む水性水溶性タンパク質画分の反応混合物を100℃で2分間加熱することにより停止し、酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質を得た。フレーバーザイム酵素を適用した場合、酵素加水分解されたタンパク質は、加水分解された昆虫の抽出物1(「HIE1」又は「HIE 1」)と呼ばれる。
【0102】
任意選択のステップ
メイラード反応を誘発するための酵素加水分解されたタンパク質の調理
炭水化物が添加混合された酵素加水分解されたタンパク質の総重量を基準として0.05重量%~1重量%のグルコース又はスクロースを添加した後、得られた酵素加水分解された昆虫タンパク質を100℃~170℃で5分~60分間慎重に加熱することにより、メイラード反応を行う。メイラード反応は、例えば、スクロースと混合されたHIE1の総重量を基準として1重量%のスクロースと混合されたHIE1を、150℃で15分間加熱することにより行った。このメイラード反応により、酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫のタンパク質のメイラード反応生成物が得られ、これは加水分解された昆虫の抽出物2(「HIE2」又は「HIE 2」)と呼ばれる。
【0103】
最終生成物
酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を提供するため、若しくは酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を提供するための本発明の方法によって提供された溶液を使用することにより、組成物HIE 1及びHIE 2をその後香味、食味等を試験する為の実験に供するか、又は、乾燥物質含量が濃縮されたHIE 1若しくはHIE 2の総重量の例えば少なくとも30重量%、例えば少なくとも50重量%等であるように水溶液を蒸発させることにより、HIE 1及び/若しくはHIE 2を最初に濃縮ステップに供する。代替として、乾燥HIE 1又は乾燥HIE 2の乾燥物質(DM)含量が、乾燥HIE 1の総重量を基準として、又は乾燥HIE 2の総重量を基準として少なくとも92重量%のDMであるように、HIE 1又はHIE 2を用いて実行される蒸発ステップ、並びに例えば流動床乾燥機を使用した、及び/又は噴霧乾燥機を使用した乾燥ステップによって、HIE 1又はHIE 2を乾燥加水分解タンパク質として、例えば粉末として適用する。
【0104】
組成物
酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質HIE 1及び酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質のメイラード反応生成物HIE 2の化学組成を、表1に概説する。さらに、アメリカミズアブの幼虫の水性水溶性タンパク質画分(幼虫水)の化学組成を表1に示す。アメリカミズアブの幼虫の水性水溶性タンパク質画分(幼虫水)の遊離アミノ酸組成を表2に概説する。表3では、一部の病原性微生物の数が言及されている。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
HIE 1及びHIE 2中に存在するタンパク質の総重量を基準として50重量パーセント超の加水分解されたタンパク質(すなわちそれぞれ100%及び87.5%)が、超短鎖ペプチドとして検出された。「超短鎖ペプチド」とは、本明細書において、約6アミノ酸残基~約20アミノ酸残基のアミノ酸残基鎖長を有するペプチドとして定義される。
【0108】
【表3】
【0109】
「好気性中温菌数30℃」(ISO4833と同等)とも呼ばれる総プレート数はNutrilab(Rijswijk、オランダ)により決定し;セレウス菌数は30℃で評価し(ISO7932と同等);ウェルシュ菌数は37℃で決定し(ISO7937と同等);大腸菌プレート数は44℃で評価し;サルモネラ菌数はPCR迅速方法を使用して評価した(ISO6579と同等)。したがって、2つの生成物HIE 1及びHIE 2において、微生物数は、セレウス菌については10cfu/gタンパク質未満であり、ウェルシュ菌については10cfu/gタンパク質未満であり、大腸菌については10cfu/gタンパク質未満であり、サルモネラ菌数は25gのHIE 1又はHIE 2を評価した場合0cfu/gタンパク質であった。これにより、HIE 1及びHIE 2の両方の微生物数は、食品又は食物成分における幼虫水の適用のために達成されるべき境界値内であった。すなわち、欧州委員会の「OECD issue paper on microbial contaminants limits for microbial pest control products」によれば、示された微生物に対して検出されたプレート数は、欧州委員会のガイドラインに従う許容限界内であった。図2もまた参照されたい。
【0110】
本発明の方法による上記プロセスから得られた生成物、すなわち酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質HIE 1及び酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質のメイラード反応生成物HIE 2を、官能パラメータ、すなわち香味プロファイル、香味スコア、芳香スコア及び苦味について調査し、アメリカミズアブの幼虫の水性水溶性タンパク質画分と比較した。香味プロファイルは説明的であり;人間の応答者(応答者1~3)に、形成された生成物に最も近い比較を示すように依頼した。他のパラメータについては、3人の人間の応答者により、生成物を1(非常に嫌い)~5(非常に好き)のスケールに基づいてスコア化した。結果を表4に示す。本発明者らが驚いたことに、HIE 1もHIE 2も苦い香味を有していた。さらに驚いたことに、アメリカミズアブの幼虫の水性水溶性タンパク質画分(幼虫水)の最初に存在していた昆虫のような風味は、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を提供するための方法に供した後に、肉のような風味(牛肉の香味及び味に類似)へと変化した。HIE 1をメイラード反応に供した結果として形成されたHIE 2は、HIE 1及び幼虫水と比較して、より顕著に調理された肉の香味を有していた。驚くべきことに、HIE 1及びHIE 2の肉のような味の強さは、牛肉自体の肉の味の強さよりも数倍高かった。HIE 1及びHIE 2のそのような肉のような香味は、明らかにHIE 1及びHIE 2の遊離アミノ酸組成に関連している。
【0111】
【表4】
【0112】
HIE 1及びHIE 2の官能プロファイルを考慮して、これらの酵素タンパク質分解されたアメリカミズアブの幼虫の水溶性タンパク質は、以下のような用途に好適である。
【0113】
1.食物の受容において味が中心的役割を担う、ネコ及びイヌの両方、より具体的にはネコのペットフード香味増強剤。HIE 1及びHIE 2の遊離アミノ酸レベル及び全組成の両方、さらには特定の強い肉のようなプロファイルは、飼料組成物の調製における加水分解物の高い好適性に寄与する。
【0114】
2.養殖海洋及び淡水生物等の水産養殖飼料パラタント。より具体的には、HIE 1及びHIE 2は、エビ用飼料の飼料添加剤として好適であり、飼料の受容性を増加させるために特定の遊離アミノ酸の組合せがすでにエビ用の餌に添加されている。
【0115】
3.人間用の食物調製物の構成物質。人間は、一方では肉を食べるのが好きであり、また一方では食事中の動物肉のレベルを低減するのに懸命となる。そのようなHIE 1又はHIE 2配合物は、肉のような香味を付与することにより、人間用食物の魅力を増強する。生成物中の微生物数(表3を参照されたい)もまた、生成物が人間による消費のための安全な微生物数以内であることを示している。
【0116】
4.飼育動物用の飼料の添加剤又は構成物質。離乳期及び離乳後の動物(特にペット及び離乳期の豚、孵化後の家禽及び魚)は、複雑な食物の消化における問題のために、胃の障害に悩まされる。HIE 1及びHIE 2は、1000Da未満の分子質量を有する多量のタンパク質を有する(表2を参照されたい)。これらのタンパク質は、容易に、及び極めて消化されやすい。これはまた、高いペプシン消化性により示される(表2を参照されたい)。そのような比較的高い消化性(100%)を有するそのような生成物は、若い動物用の栄養補助食品として有益に使用される。確かに、実用的なコーンよび大豆ミールベースの食事におけるある特定の量(例えば2~8%)の動物タンパク質加水分解物(例えば豚の腸、豚の粘膜、サケの内臓、若しくは家禽組織の加水分解物)又は大豆タンパク質加水分解物の含有は、離乳期の豚、若い子牛、孵化後の家禽、及び魚における望ましい成長能力の速度及び飼料効率を確実にし得る(Houら、2017)。これにより、そのような哺乳動物/魚/家禽ベースのタンパク質加水分解物は、家畜及びコンパニオンアニマルの栄養、並びにその健康(特に消化管の健康)及び福利の最適化に有望である。
【0117】
[実施例]
官能試験(目隠しされた人間の消費者)
実施例1.目隠しされた人間における試験(麺のレシピにおけるHIE 1の適用)
生成物HIE 1及びHIE 2(上記を参照されたい)の最初の味試験から、加水分解された昆虫の抽出物1及び加水分解された昆虫の抽出物2が両方とも牛肉のような香味を有することが明らかであった。したがって、実施例1の目的は、官能受容試験において牛肉麺の牛肉又は牛肉香味成分を加水分解された昆虫の抽出物1により置き換えることの効果を研究することであった。
【0118】
【表5】
【0119】
材料及び方法
allrecipes.comから4.5/5評価のレシピを選択した(Loop、n.d.)。原材料は全て地元のスーパーから調達した。原材料の詳細は、表Aで言及されている。試験レシピでは、ビーフシチュー用肉及び牛肉の顆粒を加水分解された昆虫の抽出物1、HIE 1で置き換えた。
【0120】
レシピは両方とも、大型のソースパンで製造した。対照レシピ肉の場合、タマネギ及びセロリを中火~強火で5分間(又は肉の全ての面が茶色になるまで)加熱した。他の原材料は、低温加熱でかき混ぜながら煮て、30分間煮込んだ。試験レシピに関しては、タマネギ及びセロリを、茶色になるまで同じ加熱レベルで5分間加熱した。その後、パセリ、コショウ、ニンジン、水、加水分解された昆虫の抽出物1及び卵麺を加えた。生成物を低温加熱で調理し、30分間煮込んだ。
【0121】
官能応答者のバイアス挙動を回避するために、対照レシピから牛肉キューブを取り除いた。官能パネルは6名からなっていた(全て25~40歳)。100g分量の各スープ麺を、各応答者に目隠しで与えた。2回の試食の間の味覚パレットを洗浄するために、各応答者にコップの水を与えた。9ポイントの快不快尺度(9-非常に好き、5-好きでも嫌いでもない、1-非常に嫌い)を使用して、受容試験を考慮した。
【0122】
結果及び考察
応答者の目隠し官能応答を表Bに示す。応答者には、対照レシピの一部及び試験レシピの一部を目隠し状態で与えた。応答者は、対照レシピを食べているのか、又は試験レシピを食べているのか、及びどの順番かを事前に知らされていなかった。
【0123】
【表6】
【0124】
全ての応答者は、試験レシピを好んだ。これはまた、平均スコアからも明らかであった。試験レシピは、対照レシピよりも有意に良好な味を有していた(t-試験、p<0.05)。ほとんどの応答者は、試験レシピが対照レシピと比較してより高い牛肉の香味を有していたことを目隠し状態で示した。
【0125】
結論
麺試験の結果は、加水分解された昆虫の抽出物1(HIE 1)が食物調製物の食物原材料として好適であること、及びHIE 1が試験した食品、例えば麺の牛肉のような香味を増強するか、又はさらにその香味を与えることを示している。
【0126】
実施例2-非肉調製物における加水分解された昆虫の抽出物2(HIE 2)の香味増強能
材料及び方法
allrecipes.comから4.5/5評価のキノア黒豆バーガーのレシピを選択した(DownHomeCitySisters、n.d.;2019年9月にアクセス)。原材料は全て地元のスーパーから購入した。表5で言及されている原材料を使用して、ベースレシピ組成物を作製した。キノアを水中で煮、次いで中火加熱で水の全てが吸収されキノアが軟らかくなるまで煮込んだ。黒豆を潰してペーストにした。この後に、全ての原材料をボウル内で混合した。混合物を2つの等しい部分に分割した。ベースレシピと呼ばれる組成物の対照部分を12.5gの水と混合し、一方ベースレシピ組成物の試験部分を12.5gの加水分解された昆虫の抽出物2(HIE 2)と混合したが、これは事前に5倍濃縮されていた(タンパク質含量は、HIE 2の総重量を基準として約20重量%であった)。両方の部分を4℃で1時間マリネードに漬けた。このステップの後、直径(約)2.5cmの小さいバーガーを、対照レシピ及び試験レシピの両方から作製した。これらのバーガーを、濃いキツネ色のクラストが得られるまでオリーブ油で炒めた(弱火を使用)。
【0127】
【表7】
【0128】
官能パネル(「応答者」)は、7名の人間からなっていた(全て25~45歳)。各応答者に、HIE 2を含む試験レシピ及び対照レシピからのバーガーを目隠しで与えた。したがって、応答者は、どのバーガーが対照レシピでどのバーガーが試験レシピかを知らなかった。2回の試食の間の味覚パレットを洗浄するために、各応答者にコップの水を与えた。5ポイントの快不快尺度(5-非常に好き、3-好きでも嫌いでもない、1-非常に嫌い)を使用して、受容試験を考慮した。
【0129】
結果及び考察
応答者の官能応答を表6に示す。
【0130】
【表8】
【0131】
表6のスコアカードから明らかなように、全ての応答者が対照レシピより試験レシピ(加水分解された昆虫の抽出物2を含む)を好んだ。試験レシピは、対照レシピよりも味が有意に良好であった(t-試験、p<0.05)。全ての応答者が、試験レシピが牛肉のような味を有することを示した。何人かの応答者はまた、試験レシピが強い肉の香味を有するだけでなく、スパイスの香味が対照レシピと比較して良好であることも示した。
【0132】
結論
上記の目隠し試験から、加水分解された昆虫の抽出物2が、ベジタリアン調製物において肉の香味を、すなわち牛肉の香味を効率的及び十分に付与すると結論付けられる。HIE 2を含む組成物において、HIE 2の存在はまた、試験レシピにおける他の原材料の香味も増強する。これにより、非肉食品における香味剤及び/又は香味増強食物成分としてのHIE 2タンパク質加水分解物の適用は、肉の消費(牛肉、豚肉及び家禽肉)を低減する可能性を有し、この肉の消費の低減は、持続可能な畜産及び食物生産、並びに食物消費に寄与するであろう。ここで、本発明により、現在限定されている持続可能なタンパク質源(例えば植物タンパク質)の備蓄に幼虫タンパク質加水分解物が加えられるが、これは例えばHIE 1及びHIE 2加水分解物の食品成分としての適用が、そのような食物調製物における動物肉の香味を、人間による大量生産及び大量消費に好適な有益な程度まで増強するためである。
【0133】
実施例3
2.材料及び方法
2.1.試薬
試薬は全て分析グレードのものであった。ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、過酸化水素及びTween-20は、Merck(VWR、Leuven、ベルギー)から購入した。亜硝酸ナトリウム、ウシ血清アルブミン、ホルボール12-ミリステート13-アセテート及びパーコール(Percoll)(商標)は、Sigma(Bornem、ベルギー)から購入した。水性抽出物及び水溶液は、Milli-Q水システム(Millipore、Bedford、USA)を使用して得られたMilli-Q水中で作製した。ビシンコニン酸及び硫酸銅(II)溶液は、Sigma(Steinheim、ドイツ)から購入した。Whatman濾紙グレード4(270mm)は、Amersham(Buckinghamshire、UK)から購入した。Sterlip30ml使い捨て真空フィルタシステムは、Millipore(Bedford、USA)から購入した。2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル及び2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)は、Aldrich(Darmstadt、ドイツ)から購入した。8-アミノ-5-クロロ-7-フェニルピリド[3,4-d]ピリダジン-1,4(2H,3H)ジオン(L-012)は、Wako Chemicals(Neuss、ドイツ)から購入した。
【0134】
2.2.原料
チキンミール(CM)及びフィッシュミール(FM)は、2019年9月にオンラインウェブショップから購入した。供給業者により公表されている両方の原材料の化学組成を、表7に示す。
【0135】
【表9】
【0136】
BSF PureeX(商標)(BSF-P)とも呼ばれるBSFの幼虫のピューレは、2019年10月にProtix B.V.(Dongen、オランダ)により調製された。ピューレは、以下の方法に従って得られた。14日齢の洗浄した生きたアメリカミズアブの幼虫を収集した後、すぐに肉挽き機に供して幼虫をみじん切りにし(幼虫パルプが得られる)、その後使用するまで4℃で保存した。幼虫は、実験毎に新しくみじん切りにした。みじん切りにされた幼虫を分離ステップに供し、本発明によるBSFの幼虫の水溶性タンパク質を得た。本発明の方法に従い、BSFの幼虫の水溶性タンパク質を、タンパク質の質量を基準として1wt%のフレーバーザイムで、連続撹拌下50℃(±2℃)で6時間処理した。フレーバーザイム(Novozymes、デンマーク)は、エンドペプチダーゼ及びエクソペプチダーゼ活性を有するアミノペプチダーゼの組合せである。その後、本発明の方法に従い、酵素処理されたBSFの幼虫の水溶性タンパク質を加熱して酵素を不活性化した。
【0137】
上述のようにして得られた水性タンパク質加水分解物(BSF-APH)は、2019年10月にProtix B.V.(Dongen、オランダ)により提供された。Protixによれば、BSF-APHは、本発明の方法に従い調製された水溶性BSFタンパク質の加水分解物である。BSF-APHは水に対する高い溶解度(>95%)を有することが実証されている。供給業者又はProtix(本発明者ら)により公表されている3つ全ての原材料の化学組成を、表8に示す。
【0138】
【表10】
【0139】
CM及びFMに対して水溶性抽出物を調製した。各乾燥物質含量を基準としてこれらの生成物(各100g)を6倍体積のMilli-Q水で溶解し、磁気撹拌機で2時間撹拌した。遠心分離(4℃、1000×gで30分)後、上部の脂肪層を取り出し、Whatmanフィルタ(グレード4)を使用して上清を濾過した。遠心分離及び濾過ステップを再度繰り返して、全ての不溶性残渣を除去した。最後に、Sterlipフィルタ(50mL、0.22μm)を使用して上清を濾過し、2日間の期間にわたりフリーズドライして、それぞれの水溶性抽出物粉末を得た。BSF-APHは95%超の水溶解度を有するため、直接使用した。4つ全ての水溶性抽出物及びBSF-APH粉末を、さらなる使用までデシケータ内に保存した(18℃)。
【0140】
2.3.タンパク質定量
ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ[24]を使用して、4つの水溶性抽出物及びBSF-APH粉末の総タンパク質含量を分析した。0、0.125、0.25、0.5及び1mg/mlの濃度のウシ血清アルブミン(BSA)を標準として使用して、較正曲線を得た。3mg/mlの水溶性抽出物及びBSF-APHの原液を分析に使用した。4900μlのBCA(49/50)及び100μlの硫酸銅(II)(1/50)を溶解することにより、試験溶液を作製した。試料原液(10μl)及び試験溶液(200μl)を96ウェルプレートのウェルに加えた。このプレートを37℃で30分間インキュベートし、マルチスキャンアセント(Multiscan Ascent)(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を使用して450nmで吸光度を測定した。
【0141】
2.4.DPPHアッセイ
Brand-Willamsら[25]のプロトコルに一部修正を加えて、DPPHラジカル捕捉活性を分析した。10.5mgのDPPHを40mlのエタノールに溶解することにより、DPPH試験溶液を作製した。試験溶液は新しく作製し、さらなる使用まで暗所で保存した。試験溶液を10倍のエタノールで希釈することにより、DPPH希釈標準溶液を作製した(517nmで0.6~0.8の吸光度が得られる)。DPPH希釈標準溶液(1920μl)を20μlの試料希釈液(Milli-Q水中の4つの水溶性抽出物及びBSF-APH)と混合して、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度を得た。暗所での30分及び60分のインキュベーション後の吸光度の減少が、HP 8453 UV-vis分光光度計(Agilent Technologies、Waldbronn、ドイツ)を使用して510nmで記録された。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0142】
2.5.ABTSアッセイ
Arnaoら[26]のプロトコルに一部修正を加えて、ABTSカチオンラジカル捕捉活性を分析した。Milli-Q水に7.0mmol/lのABTS及び2.45mmol/lの過硫酸カリウムを溶解することにより、ABTS試験溶液を作製した。試験溶液を室温で一晩暗所で保管した。メタノールで希釈することによりABTS希釈標準溶液を作製し、734nmで0.7~0.8の吸光度を得た。ABTS希釈標準溶液(1920μl)を20μlの試料希釈液(Milli-Q水中の4つの水溶性抽出物及びBSF-APH)と混合して、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度を得た。暗所での30分のインキュベーション後の吸光度の減少が、HP 8453 UV-vis分光光度計(Agilent Technologies、Waldbronn、ドイツ)を使用して734nmで記録された。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0143】
2.6.特異的免疫抽出に続く酵素検出(SIEFED)アッセイを使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
SIEFEDアッセイは、動物起源MPOの特異的検出のためのFranckら[27]により開発された実施許諾を得た方法である。ヒトMPOを20mMのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、5g/lのBSA及び0.1%のTween-20中に希釈することにより、MPO溶液を作製した。0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度の試料希釈液を、MPO溶液と共に25ng/mlの最終濃度で10分間(37℃)インキュベートした。インキュベーション後、ウマMPOに対するウサギポリクローナル抗体(3μl/ml)で被覆された96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに混合物を入れ、37℃で2時間暗所でインキュベートした。ウェルを洗浄した後、過酸化水素(10μM)、NO (10mM)及びアンプレックス(Amplex)(商標)レッド(40μM)を添加することによって、抗体により捕獲された酵素の活性を測定した。フルオロスキャンアセント(Fluorosckan Ascent)(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を用いて、アンプレックス(商標)レッドの蛍光性付加物レゾルフィンへの酸化を37℃で30分間監視した。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0144】
2.7.古典的測定を使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
2.6項で言及したようにMPO溶液を調製した。0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度の試料希釈液を、MPO溶液と共に25ng/mlの最終濃度で10分間(37℃)インキュベートした。インキュベーション後、混合物(100μl)を速やかに96ウェルマイクロタイタープレートに移した。これに続いて、10μlのNO (10mM)及び100μlのアンプレックス(商標)レッド及び過酸化水素混合物(2.6項で言及した濃度)を添加した。上記混合物の添加直後、フルオロスキャンアセント(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を用いて、アンプレックス(商標)レッドの蛍光性付加物レゾルフィンへの酸化を37℃で30分間監視した。対照の場合、試料希釈液の代わりにMilli-Q水のみを使用した。
【0145】
2.8.細胞酸化防止活性
Paulら[17]に従い、好中球及びホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)溶液の調製を行った。Tsumbuら[16]のプロトコルを使用して、試料の好中球応答調節活性を分析した。好中球懸濁液(100万細胞/143μl PBS)を、96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに入れ、0.0125、0.025、0.05、0.1及び0.2mg/mlの最終濃度の試料のリン酸緩衝生理食塩水溶液と共に10分間(暗所で37℃)インキュベートした。インキュベーション後、25μlの塩化カルシウム(10μM)及び20μlのL-012(100μM)をウェルに加えた。好中球を10μl のPMA(16μM)で活性化した直後に、フルオロスキャンアセント(Fisher Scientific、Asse、ベルギー)を使用して、好中球の化学発光応答を37℃で30分間監視した。対照の場合、試料希釈液の代わりにリン酸緩衝生理食塩水のみを使用した。
【0146】
2.9.統計分析
分析は全て3回行った。タンパク質定量については、直線回帰を使用して、フィッティングされた線の方程式及びR二乗値を計算した。酸化防止アッセイについて得られた濃度と阻害との間の関係は、非単調な性質のものであった。これに対応するために、局所推定散布図平滑化(LOESS)回帰技術を使用して、関係をモデル化した[28]。モデルは、R統計ソフトウェアを使用してフィッティングした[29]。これらのモデルでは、局所回帰の平滑化感度を定義するスパンパラメータが必要である。目視検査により、0.4のスパンパラメータ値が、全ての濃度及び阻害関係曲線に好適であることが判明した。関心のある予測阻害パーセンテージを有する濃度、例えばIC50(50%阻害が達成される濃度)は、数値探索ルーチンと組み合わせてフィッティングされたモデルを使用して見出された。
【0147】
3.結果
3.1.タンパク質定量
BSAを使用して得られる較正曲線、線の方程式及びR二乗値が確立される。試料の光学密度及びタンパク質の相対濃度(線の方程式を使用して計算される)は、表9で言及されている。ビシンコニン酸アッセイを使用すると、試験された溶液のうちCM抽出溶液(3mg/ml)が最も高いタンパク質濃度を示し、一方BSF-APH溶液が最も低いタンパク質濃度を示している。
【0148】
【表11】
【0149】
3.2.DPPHアッセイ
30分及び60分のインキュベーション後の5つ全ての試料のDPPHラジカル捕捉活性を、それぞれ図3及び図4に示す。プロットは、測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線を示す。CMは、30分及び60分のインキュベーション後、全ての試験濃度において酸化促進挙動を示した。一方、FMは、30分のインキュベーション後は5つの試験濃度のうち4つにおいて、また60分のインキュベーション後は全ての試験濃度において酸化促進挙動を示した。試料が酸化促進活性を示したか、又はアッセイ中に50%阻害が達成されなかったため、全ての試料(30分又は60分のインキュベーション後)に対してIC50を計算することは不可能であった。30分のインキュベーション後の全ての試料のEmax(アッセイ中に達成される最大阻害)もまた表11に示されており、BSF-APH>FMの順である。
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
【0152】
3.3.ABTSアッセイ
30分のインキュベーション後の試料のABTSカチオンラジカル捕捉活性を図5に示す(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)。全ての試料が同様の阻害パターンを示し、すなわち%阻害は増加する濃度の関数として増加した。試料のIC50は表10で言及されており、FM>CM>BSF-APHの順である。IC50が低いほど、ABTSカチオンラジカル捕捉活性が高い。全ての試料のEmax(アッセイ中に達成される最大阻害)が表11に示されており、BSF-APH>FM>CMの順である。
【0153】
3.4.特異的免疫抽出に続く酵素検出(SIEFED)アッセイを使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
SIEFEDアッセイを使用して得られた試料のMPO応答調節活性を図6に示す(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)。試料のIC50は表10で言及されている。試料のEmaxを表11に示す。FM及びCMは、全ての試験濃度において酸化促進挙動を示す。
【0154】
3.5.古典的アッセイを使用したミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性
古典的アッセイを使用して得られた試料のMPO応答調節活性を図7に示す(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)。CM及びFMは、全ての試験濃度において酸化促進挙動を示した。試験した全ての試料のEmaxを表11に示す。BSF-APHは75%超のEmaxを示した。試料のIC50は表10で言及されている。
【0155】
3.5.細胞酸化防止活性
試料の好中球応答調節活性(測定値及びLOESSから得られたフィッティング曲線)並びにEmaxを、それぞれ図8及び表11に示す。全ての試験試料が0%超のEmaxを示した。BSF-APH、FM及びCMは、40%未満のEmaxを示した。CMは、5つの試験濃度のうち3つにおいて酸化促進挙動を示した。試料のIC50は表10で言及されている。
【0156】
4.考察
4.1.タンパク質定量
ビシンコニン酸アッセイを使用して推定されたBSF-APH及び2つの水溶性抽出物のタンパク質濃度を表9に示す。BSF-APHでは、3mg/mlの溶液が0.702mg/mlのタンパク質濃度をもたらしたが、これはBSF-APHのグラム当たり0.235mgのタンパク質(又は23.5%のタンパク質)に換算される。本発明者ら(Protix)によれば、BSF-APHの平均タンパク質含量は45.5%である(表8を参照されたい、Dumas法を使用して分析)。分析方法に起因してタンパク質含量の差が生じる。ビシンコニン酸アッセイは、Cys、Trp及びTyrに特異的な結合の検出に基づく。一方、Dumasアッセイは、全有機窒素の推定に基づく。したがって、Dumas法を用いて推定されたタンパク質含量は、ビシンコニン酸アッセイを使用して推定されたものより常に高い。しかしながら、2つのタンパク質推定法の比較は、本発明の態様ではない。FMとCMとの間のアミノ酸パターンの類似性を考慮すると、2つの水溶性抽出物のタンパク質含量は、CM>FM>45.5%の順であると結論付けられる。
【0157】
4.2.DPPHラジカル捕捉活性
DPPH及びABTSアッセイは、食品及び飼料製品の酸化防止能を分析するために一般的に使用される。DPPHラジカル捕捉活性は、フリーラジカルを安定化させるために試料が水素原子を供与する(水素原子移動と呼ばれる)か又は電子を供与する(単一電子移動と呼ばれる)能力を表す。全ての試験試料に対するDPPHアッセイIC50及びEmaxは、それぞれ表10及び表11で言及されている。30分のインキュベーション後、全ての試験試料が50%未満のEmaxを示し、BSF-APHは少なくとも98%の1000Da未満のタンパク質を含む。本発明者らは、FM及びCMの分子量分布に関するいかなる代表的文献も見つけることができなかった。しかしながら、文献によれば、FM及びCMは、それぞれ2.2%及び1.1%の遊離アミノ酸(全タンパク質のうち)を含有する[Li, P.、Wu, G. Composition of amino acids and related nitrogenous nutrients in feedstuffs for animal diets. Amino Acids 2020、1-20、doi:10.1007/s00726-020-02833-4]。これは、それぞれ少なくとも2.2%及び1.1%の1000Da未満のタンパク質を含有するFM及びCMに換算される。フリーラジカルを捕捉するタンパク質性材料の能力は、タンパク質分子量分布に依存する。低分子量ペプチドを有するタンパク質は、より効率的にフリーラジカルを捕捉することができる。しかしながら、これは、BSF-APHがより多量の1000Da未満のタンパク質を含有するものの、示されるDPPHフリーラジカルの阻害がより低いことを説明していない。タンパク質性分子のフリーラジカル捕捉活性はまた、以下によって影響される:(1)アミノ酸組成:疎水性アミノ酸(例えばTyr、Phe、Pro、Ala、His及びLeu)は親水性アミノ酸と比較して優れたラジカル捕捉活性を有する。(2)アミノ酸配列:両親媒性の性質を有するペプチドは、試料のラジカル捕捉活性を増強し得る。化学分析では、Tyrが水素原子移動メカニズムを介して酸化防止挙動を示すことが示されている。一方、Cys、Trp及びHis等のアミノ酸は、単一電子移動メカニズムを介して酸化防止挙動を示す。
【0158】
FM及びCMは、30分及び60分のインキュベーション後、試験したほとんどの濃度で酸化促進挙動を示す(図3及び4を参照されたい)。この挙動は、主に熱処理により生じる。FM及びCMの両方において、熱処理は、一般に原料を高温で15~20分間加熱することを含む。ノルウェーでは、フィッシュミール製造中、腸内細菌(Enterobacteriaceae)数及びサルモネラ菌数の100 log10の低減を達成するために、天然魚が70℃以上の温度で20分以上加熱に供される。そのような厳密な熱処理条件は、脂肪及びタンパク質の酸化をもたらし得る。フィッシュミールは、より熱的酸化を受けやすい多価不飽和脂肪酸に富む脂質を含有する。多価不飽和脂肪酸の酸化を防止するために、フィッシュミールには酸化防止剤が一般的に添加される(表7でも見られる)。アミノ酸の熱誘発酸化は、広範な酸化生成物の発生をもたらす。生成物によるアミノ酸酸化の酸化促進挙動はすでに知られている。それらは動物の体に広範な健康状態をもたらし得る。供給業者によれば、本研究において使用されたアメリカミズアブのタンパク質誘導体は全て、100℃未満の温度で1.5分未満熱処理された。供給業者はまた、これらの熱処理時間-温度の組合せが、栄養物(タンパク質及び脂肪)に対する最小限の損傷及び病原性微生物の適正な不活性化を確実にするように採用されたことを示した。これは、FM及びCMの酸化促進挙動が、厳しい生成方法に主に起因して生じることを暗に意味している。
【0159】
4.3.ABTSカチオンラジカル捕捉活性
ABTSカチオンラジカル捕捉は、電子を供与してフリーラジカルを安定化する試料の能力を指す。全ての試料のABTSアッセイIC50を表10に示す。それらはFM>CM>BSF-APHの順である。IC50が高いほど、酸化防止活性が低い。このアッセイでは、FM及びCMでも酸化防止活性を示す。(1つ又は複数の)フリーラジカルが単一電子移動メカニズムを用いて安定化され得る場合、FM及びCM抽出物は効率的であり得ると思われる。しかしながら、それらはまだBSF-APHと比較するとより低い捕捉活性を示す。
【0160】
BSF-APHは、少なくとも98%の1000Da(全ての試験試料のうち最も低いタンパク質分子量)未満のタンパク質を有し、また最も低いABTS IC50を示した。ラジカル捕捉活性のタンパク質分子量に対する依存性は、すでに4.2項で説明されている。
【0161】
Zhuら[23]は、広範な市販の酵素を使用してBSFタンパク質加水分解物を開発した。加水分解物は、限外濾過を使用して群1(<3000Da)、群2(3000~10,000Da)及び群3(>10,000Da)の群にさらに分画された。これらの加水分解された画分の活性もまた、ABTSカチオンラジカル捕捉活性について調査された。この研究において、アスコルビン酸が参照分子として使用された。興味深いことに、最も良好な画分及びアスコルビン酸は、0.05mg/mlの濃度でABTSカチオンラジカルのそれぞれ85.67%及び92.11%を阻害することができた。ここで、本発明者らは、BSF-APHが(0.2mg/mlで)91%のABTSカチオンラジカル捕捉Emaxを示すことを実証した。これは、BSF-APHの分画が非常に強い酸化防止能を有する画分をもたらすことを示す。
【0162】
4.4.好中球応答調節活性
BSF誘導体の強いフリーラジカル捕捉活性は、4.2項及び4.3項から明らかである。さらに、全ての試料を好中球応答調節活性についても試験した。好中球は、動物(人間、ペット、魚、家禽及びブタを含む)の体内に存在する白血球である。それらは、病原体に対する一次防御に関与する。病原性微生物が動物の体内に入ると、好中球は侵入部位に急行して防御を開始する。肉芽形成の間、好中球は、スーパーオキシドアニオン及び副生成物(例えば過酸化水素)の生成を担うNADPHオキシダーゼを含む広範な酸化酵素を放出する。スーパーオキシドアニオンは、酸化窒素ラジカルとさらに反応して過酸化亜硝酸を生成し得る。このプロセスはまた、(過酸化水素と金属イオンとの反応により)ヒドロキシルラジカルを生成する。この一連の酸化反応は、宿主動物の防御に極めて重要である。しかしながら、宿主防御の間に生成されたこれらのROSは、体細胞の酵素、タンパク質、脂質等と反応し、様々な健康状態(例えば細胞の老化、がん等)の発生をもたらし得る。この研究において行われた好中球アッセイは、好中球活性の結果生成されたROSを捕捉するタンパク質性分子の能力を決定する。PMAは、ROS生成の触媒を担うNADPHオキシダーゼの生成をもたらす、好中球内に存在するタンパク質キナーゼCを活性化するために使用された。系におけるROS生成は、ルシゲニン増幅化学発光を伴う。ROS(特にスーパーオキシドアニオン)を捕捉するタンパク質性試料の能力は、化学発光の低下を特徴とする。本発明者らの知る限り、これは、BSF誘導体のin vitro好中球応答調節活性の初の分析及び決定である。CMは、5つの試験濃度のうち3つにおいて酸化促進挙動を示し、Emaxは0.2mg/mlでわずか5%であった(図8及び表11を参照されたい)。CMは、ペットフード調製物において一般的に使用される。しかしながら、ここで本発明者らは、CMの含有が、本発明の加水分解物の捕捉活性とは対照的に、好中球により生成されたROSの捕捉に関連する利益をほとんど又は全く提供しないことを実証した。さらに、CMの含有は、本発明のBSFの幼虫タンパク質加水分解物とは対照的に、宿主細胞に対する炎症性損傷をもたらすことすらある。イヌ又はネコ細胞の反復的な炎症性損傷は、老化の促進、遅い認知機能等の状態となり得る。
【0163】
一方、FMは、このアッセイにおいて穏やかな酸化防止挙動を示し、Emaxは22%である(表11を参照されたい)。0.2mg/mlでは、FMは5%の阻害を示す。水産養殖用飼育培地(すなわち水)は、病原性細菌の連続緩衝液を提供する。したがって、水産養殖生物は、病原性細菌の侵入の一定のリスク下にある。これは、免疫の低下、老化等の広範な健康状態をもたらす。本発明者らは、反復的好中球活性による炎症性損傷を抑制するFMの不適切性を強調する、FMを用いた比較試験を実行した。これはしばしば、抗生物質及び栄養補助食品の使用の結果として生じるコストの増加をもたらす。驚くべきことに、BSF-APHは、36.62%のEmaxを示す(表11を参照されたい)。したがって、いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らによれば、本発明のBSF-APHは、病原菌侵入から生じる酸化的損傷を抑制するための自然で持続可能な解決策を提供する。
【0164】
4.5.MPO応答調節活性(SIEFED及び古典的アッセイ)
好中球応答の一般的メカニズムは既知である。好中球細胞外トラップは、病原性微生物を不活性化するために必要ないくつかの分子を含有する。好中球細胞外トラップに存在するMPO酵素は、過酸化水素及び塩化物イオンから次亜塩素酸を生成し得る。さらに、MPOは、チロシンをチロシルフリーラジカルに酸化し得る。MPO酸化の生成物(次亜塩素酸及びチロシルフリーラジカル)は両方とも、病原体の不活性化に極めて重要である。ここでも、これらの分子の動物細胞との反復的な相互作用は、炎症性損傷をもたらす。動物の体内において、MPO-Fe(III)(活性形態)は過酸化水素と反応して、オキソフェリルπカチオンラジカル(CpI形態)を形成する。CpI形態は再びMPO-Fe(III)に変換され、塩化物イオンが結合して次亜塩素酸に転換する。しかしながら、この実験においては、CpI形態からMPO-Fe(III)への還元は、2段階で達成された。第1の還元は、亜硝酸イオンによる電子移動を介したCpIからMPO-Fe(IV)=Oへの還元である。次いで、MPO-Fe(IV)=OをMPO-Fe(III)形態に変換する電子供与が行われた(アンプレックス(商標)レッドからレゾルフィンへの酸化反応による)。タンパク質性分子は、CpI形態と直接反応させてハロゲン化を停止することにより、又はMPO活性の結果として生成されたROSに水素を供与(水素原子移動)することにより、MPOから生じる酸化的損傷を防止することができた。古典的アッセイ及びSIEFEDアッセイを用いて、MPO応答調節活性を分析した。古典的アッセイは、CpI形態と複合してROSを安定化する試料の能力を測定する。一方、SIEFEDアッセイではMPOはウサギポリクローナル抗体に結合するため(化合物の残りは洗い流される)、このアッセイは試料がCpI形態に複合する能力を純粋に測定する。
【0165】
好中球応答調節活性と同様に、BSF誘導体である加水分解されたBSFの幼虫タンパク質のMPO応答調節活性もまた、本発明者らによって初めて見出されるものである。FM及びCMは、両方のアッセイで酸化促進挙動を示す(図6及び7を参照されたい)。酸化促進応答を開始し得るFM及びCMにおける酸化反応生成物の存在(生成プロセスの結果として)は、4.2項においてすでに考察されている。本発明者らにより実現される比較例における詳細なin vitro調査は、動物の餌におけるFM及びCMの含有が、BSF-APHで見られる効果とは対照的に炎症性損傷をもたらし得ることを示している。
【0166】
古典的アッセイでは、BSF-APHは、驚くほど強い酸化防止能を示す。BSF-APHは、古典的アッセイでは強い酸化防止能を示す(表10を参照されたい)。これらの観察は、BSF-APHがMPO活性から生じる炎症性損傷を効果的に抑制するためのペットフード及び水産養殖配合物における使用に、例えば食物又は飼料成分としての使用に非常に好適であることを示している。
【0167】
本発明者らは、驚くべきことに、BSFタンパク質誘導体がFM及びCMに勝る酸化防止上の利点を提供することを見出した。
【0168】
実施例4
タンパク質加水分解物-ネコ食味試験
緒論
本発明のタンパク質加水分解物、すなわち酵素加水分解されたアメリカミズアブの幼虫のタンパク質HIE 1(HIE 1の調製に関する詳細は、例えば上記実施例1に概説されている)を提供する本発明の方法に従って、タンパク質加水分解物を調製した。実施例4において適用されたタンパク質加水分解物は、1000Da未満の分子量を有するタンパク質(短鎖ペプチド)を100%含有していた。さらに、タンパク質加水分解物中のタンパク質の最大45%は、遊離アミノ酸の形態で存在する。
【0169】
短鎖ペプチド及び遊離アミノ酸残基(アミノ酸組成及び配置に依存する)は両方とも、ペットフード調製物に香味を与えることができる。実施例4は、キャットフード調製物におけるタンパク質加水分解物HIE 1の香味増強能の評価を示す。
【0170】
材料
キャットフード食味試験は、De Morgenstond社(Dussen、オランダ)で行った。タンパク質加水分解物HIE 1は、本発明者らによって調製及び提供された。2つの市販のキャットフード食味増強剤(「香味剤A」及び「香味剤B」と呼ばれる)は、最大手の香味剤企業により提供された。これらのキャットフード食味増強剤は、加水分解されたタンパク質(Givaudan、オランダ)の溶液からなる。非常に低濃度の食味増強剤を含むPurina Felix(ウェットキャットフード)は地元で調達した。
【0171】
方法
タンパク質加水分解物HIE 1の粉末を水に溶解して、乾燥物質を基準として25%の最終溶液を作製した(これを試験に使用した)。香味剤A及びBはすでに液体として供給されていた。この実施例4の研究に使用した食味増強剤の用量は、表12で言及されている。
【0172】
【表14】
【0173】
1%濃度の香味剤A及び香味剤Bは、1.25%のタンパク質加水分解物HIE 1と比較して、最終レシピの乾燥物質含量を釣り合わせるように使用された。両方の試験設定において、20匹の適格なネコにレシピ1(1.1又は2.1)及びレシピ2(1.2又は2.2)を合計4日間給餌した。食味増強を、消費された餌のパーセンテージ及び第1選択のパーセンテージの関数として測定した。
【0174】
結果
この試験の結果は、表13で言及されている。
【0175】
【表15】
【0176】
両方の場合において、タンパク質加水分解物HIE 1を含有する餌は、同等量(乾燥物質基準)の市販の香味剤A及び香味剤Bで強化されたキャットフードよりも多く消費された。さらに、本発明のタンパク質加水分解物HIE 1を含有する餌はまた、試験ネコの第1選択であった。
【0177】
結論
タンパク質加水分解物HIE 1は、キャットフード中に同じ用量で適用された場合、現在入手可能なキャットフード食味増強剤と比較して改善されたキャットフード食味増強剤である。
【0178】
実施例5
タンパク質加水分解物-イヌ食味試験
【0179】
実施例5の目的
ドッグフード食味増強剤としてのHIE 2の可能性を示すこと
【0180】
材料及び方法
飼料製造の詳細は、以下で言及される。
乾燥飼料(キブル)をイヌ食味試験に使用した。
キブル(比較的低濃度のパラタントを含む)を地元のスーパー(オランダ)から購入した。これらのキブルを対照として使用した。
希釈HIE 2溶液(HIE 2は水に希釈されている)の総体積を基準として0.5%、1.25%及び2.5%の濃縮HIE 2(エバポレータを使用して5倍濃縮)をキブルにコーティングすることにより、試験用イヌ飼料調製物を製造した。コーティング後1週間、試験調製物を室温で乾燥及びテンパリングした。
【0181】
食味増強試験の詳細は以下の通りである:
対照調製物及び試験調製物を、食味試験のためにイヌに提供した。
デザイン:
イヌの数:20
試験期間:4日
分量:それぞれ100g/イヌ/日の試験調製物及び対照調製物
朝に2回分の分量(1回分の試験調製物及び1回分の対照調製物)をイヌに提供した。翌日の朝(厳密に24時間後)に残された飼料の重量を測定及び記録した。残された量がより少なかった分量を、よりおいしいと判断した。
【0182】
結果及び考察
0.5%、1.25%及び2.5%の濃縮HIE 2を含む餌、すなわち試験調製物に関連する飼料消費の%の結果及びイヌの第1選択の%の結果を、それぞれ図9A図9B及び図9Cに示す。
【0183】
試験調製物を含む3つ全ての試験において、試験調製物であるHIE 2を含有する餌の%消費は、対照餌の消費より高かった。同様に、3つ全ての試験ケースにおいて、HIE 2を含有する餌の第1選択の%もまた、対照餌の第1選択の%より高かった。これらの結果は、従来のイヌ用飼料と比較した場合、イヌ用の餌におけるHIE 2の比較的強い食味増強能を実証している。食味効果は、例えば、及びとりわけ、HIE 2中の高レベルの遊離アミノ酸及び短鎖ペプチドの存在に起因する。
【0184】
結論
HIE 2は、イヌ用の餌における食味増強能を有し、例えば、現在使用されている従来のイヌ用飼料と比較した場合、イヌ用の餌における比較的強い食味増強能を有する。
【0185】
実施例6
バナメイエビ(L.バナメイ)用の飼料における食味増強剤としてのHIE 1の評価
緒論
この例において、Pontus Research(英国)は、本発明の加水分解されたタンパク質HIE 1(実施例6では「HSW」とも呼ばれる)の、バナメイエビ(L.バナメイ)用の飼料における食味増強剤としての強度及び有効性及び好適性を実証した。
【0186】
試験デザイン及び方法
加水分解されたタンパク質HIE 1のバナメイエビ(L.バナメイ)用の飼料における食味増強剤としての強度及び有効性及び好適性の実証は、以下の表A~Gに概説される試験詳細に従って行われた。
【0187】
【表16】
【0188】
【表17】
【0189】
【表18】
【0190】
【表19】
【0191】
【表20】
【0192】
【表21】
【0193】
【表22】
【0194】
データ計算及び統計処理
以下のプロトコルを用い、Rバージョン4.0.2を使用して全てのデータを統計的に分析して、平均値間の差の有意性を決定した:
食味データは、分散パラメータを追加したポアソン回帰モデルを使用して分析した。オキアミ油を含む処理をダミー変数として含め、HSWを含む処理を連続変数として処理した。
食餌開始時間のデータは、分散分析コマンドを使用して分析し、正規性についてはShapiro-Wilk検定を、また等分散性についてはLevene検定を用いた。
正規性及び等分散性が確認された場合、ANOVAの結果を認めた。
統計的に有意なANOVAの結果が決定された場合(p<0.05)、Tukeysの対のある事後分析を行って、どの処理が他のどの処理とp<0.05で異なるかを決定した。
正規性及び等分散性が確認されなかった場合、Kruskall-Wallaceノンパラメトリック検定をデータに対して行い、Conover-Imanの対のある事後分析を行って、どの処理が他のどの処理と異なるかを決定した。
【0195】
この情報は、以下の記号の1つとして示される:
ND-統計的差異なし、ANOVA又はKruskall-Wallace p>0.05
p<0.05-対のある事後分析は、p<0.05の信頼度で有意な統計的差異を示す
外れ値と判断されるデータはいずれもデータから除外した。
【0196】
結果
食味
表14に、食味の結果を要約する。
【0197】
【表23】
【0198】
図10Aは、各時間間隔でのジッタ数観察に基づく、経時的な各餌に対する予測性能フィッティング(矢印で示される)を示す。
【0199】
食餌開始時間
表15は、エビの食餌開始時間を要約している。
【0200】
【表24】
【0201】
図10Bに、食餌開始時間が示されている。1匹のエビが餌を食べ始める平均的な時間の長さであり、標準誤差が示されている。様々な上付き文字は、餌群間で統計的に有意な差(p<0.05)が記録された場合を示す。
【0202】
0%HSW+イカミール+オキアミ油と0%HSW-イカミール-オキアミ油との間にはエビ数に有意差は観察されなかった(p>0.05)。
1%HSW-イカミール-オキアミ油は、0%HSW-イカミール-オキアミ油と比較して有意に多いエビ数を有していた(p<0.05)。
2%HSW-イカミール-オキアミ油は、0%HSW-イカミール-オキアミ油と比較して有意に多いエビ数を有していた(p<0.05)。
0%HSW+イカミール+オキアミ油及び0%HSW-イカミール-オキアミ油(p>0.05)(p>0.05)の餌の両方と比較して、1%HSW-イカミール-オキアミ油の群及び2%HSW-イカミール-オキアミ油の群においてより速い食餌開始時間が観察された。
【0203】
考察及び結論
HIE 1(本明細書においてHSWと呼ばれる)の1%及び2%の含有は、両方の対照餌と比較してエビ数を有意に増加させたが、オキアミ油の含有はエビ数に対する有意な効果を有さなかった。HIE 1及びオキアミ油を含有する処理では食餌開始時間が減少し、2%HSW(=HIE 1)を含む試験飼料は、陰性対照と比較して食餌開始時間を42.6%減少させることにより、最大の効果を有していた。
【0204】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を製造するための方法であって、
a)少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップであって、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物がアメリカミズアブに由来し、前記組成物のpHがpH4~pH8であり、前記水溶性タンパク質組成物中の前記少なくとも1種の水溶性タンパク質が可溶化されるステップ、及び少なくとも1種のペプチダーゼをさらに用意するステップと;
b)ステップa)の前記少なくとも1種のペプチダーゼを、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物と混合して、タンパク質/ペプチダーゼ混合物を用意するステップと;
c)前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の前記少なくとも1種の水溶性タンパク質が前記少なくとも1種のペプチダーゼにより酵素加水分解されるように、ステップb)の前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物を75℃未満の温度で加熱して、酵素加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を用意するステップであって、前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として、前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の少なくとも50重量%が1,000ダルトン未満の分子量を有する、ステップと、
d)前記少なくとも1種のペプチダーゼが加熱により熱不活性化されるように、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を75℃~110℃の温度で加熱することにより、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解を停止して、前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を用意するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来する水性水溶性タンパク質組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、水等の水溶液中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物、好ましくはアメリカミズアブの幼虫に由来する水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)昆虫、好ましくはアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りにすることにより、ステップ(i)の前記昆虫のサイズを低減するステップと、
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する前記昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)の前記パルプを70~100℃の温度に加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより前記昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の前記昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液等の水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより昆虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来し、水中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前のアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)の前記アメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の前記昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する前記昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)の前記パルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより前記昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の前記昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより、好ましくはそれらのステップにより前記アメリカミズアブの幼虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、2種以上の水溶性タンパク質、好ましくは2種より多い異なる水溶性タンパク質、より好ましくは3種より多い異なる水溶性タンパク質、最も好ましくは4種より多い異なる水溶性タンパク質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップc)において、前記加熱が35℃~60℃の温度で行われ、及び/又は前記加熱が2時間~12時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、前記加熱が35℃~60℃の温度で2時間~12時間の期間行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップc)において、前記加熱が40℃~55℃の温度で行われ、及び/又は前記加熱が4時間~9時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、前記加熱が40℃~55℃の温度で4時間~9時間の期間行われ、より好ましくは、ステップc)において、前記加熱が45℃~53℃の温度で5時間~7時間の期間行われ、最も好ましくは、前記加熱が50℃の温度で6時間の期間行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物のpHが5~7.7、好ましくは6~7.5である、より好ましくはpHが7.0である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)で用意される前記少なくとも1種のペプチダーゼが、アミノペプチダーゼ、好ましくはエンドペプチダーゼ若しくはエクソペプチダーゼ、又はそれらの混合物であるか又はそれらを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップa)において、前記少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼ、パパイン、プロナーゼ、セリンプロテアーゼ、アルカラーゼ、サブチリシン、サブチリシンA、α-キモトリプシン、カテプシンIII、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、ペプシン、サーモリシン、トリプシンを含むか又はそれらから選択され、好ましくは、前記少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼであるか又はそれを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)において、前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の前記少なくとも1種のペプチダーゼの量が、前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.05重量%~7重量%、好ましくは前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.1重量%~6重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%、最も好ましくは0.5重量%~3重量%、例えば1.0重量%~2.0重量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップd)において、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の前記酵素加水分解が、前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を30秒~30分、好ましくは45秒~20分、より好ましくは1分~15分、最も好ましくは2分~10分の期間加熱することにより停止される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップd)において、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の前記酵素加水分解が、前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を80℃~105℃、好ましくは85℃~103℃、より好ましくは90℃~100℃の温度に加熱することにより停止される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)の後、さらなるステップe)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、前記酵素加水分解されたタンパク質中に修飾アミノ基を提供するためにメイラード反応に供され、前記メイラード反応は、
e1)炭水化物を用意し、前記炭水化物をステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質と混合して、酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を用意するサブステップと;
e2)ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を加熱し、酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を用意するサブステップとを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップe1)において、添加された炭水化物の最終濃度が、前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.05重量%~6.0重量%、好ましくは前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.1重量%~5.0重量%、より好ましくは0.2重量%~3重量%、最も好ましくは0.3重量%~1.0重量%である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップe2)において、ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、100℃~170℃、好ましくは120℃~168℃、より好ましくは135℃~166℃、例えば140℃~165℃の温度で加熱される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
ステップe2)において、ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、1分~120分、好ましくは2分~60分、より好ましくは3分~30分、最も好ましくは5分~20分、例えば10分~17分又は約15分の期間加熱される、請求項1416のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップe1)において、用意される炭水化物が、スクロース若しくはグルコース、又はそれらの混合物、好ましくはスクロースである、請求項1417のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップd)の後、さらなるステップf1)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ若しくは複数を適用することにより乾燥される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法、又は、ステップe2)の後、さらなるステップf2)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が乾燥され、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ若しくは複数を適用することにより乾燥される、請求項1418のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ステップd)の後、さらなるステップf3)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が濃縮される、好ましくは、濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の乾燥物質含量が、濃縮ステップf3)の後に前記濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%であるように濃縮される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法、又は、ステップe2)の後、さらなるステップf4)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が濃縮される、好ましくは、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、濃縮ステップ4)の後に酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも30重量%、例えば少なくとも50重量%であるように濃縮される、請求項1418のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
縮ステップf3)の後に、前記濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の乾燥物質含量が、前記濃縮された酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として30重量%~80重量%である、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは50重量%~70重量%である、又は、濃縮ステップf4)の後に、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として30重量%~80重量%、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップb)の前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の水溶性昆虫タンパク質の量が、前記タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.2重量%~30重量%、好ましくは前記タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.5重量%~25重量%、より好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは3重量%~10重量%、例えば3.5重量%~7重量%、又は3重量%~5重量%である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ステップd)で用意される前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、ステップd)で用意される前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、請求項1~1319~22のいずれか一項に記載の方法、及び/又は、ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が、ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、請求項1418のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~13若しくは19~23のいずれか一項に記載の方法により得られる、又は請求項1~13若しくは19~23のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、又は請求項1~13若しくは19~23のいずれか一項に記載の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質であって、前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは55重量%~100重量%、より好ましくは65重量%~100重量%、最も好ましくは75重量%~100重量%、例えば80重量%~95重量%又は85重量%~100重量%が1,000ダルトン未満の分子量を有し、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物がアメリカミズアブに由来する、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質、或いは、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法により得られる、又は請求項14~23のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、又は請求項1~13若しくは19~23のいずれか一項の方法により提供される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であって、前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは55重量%~100重量%、より好ましくは65重量%~100重量%、最も好ましくは75重量%~100重量%、例えば80重量%~95重量%又は85重量%~100重量%が1,000ダルトン未満の分子量を有し、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物がアメリカミズアブに由来する、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物
【請求項25】
昆虫タンパク質源が、請求項に記載のアメリカミズアブの幼虫である、及び/又は、昆虫タンパク質源が、請求項のステップ(i)~(vi)に従って用意される、請求項24に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項24に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項26】
前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~55重量%、最も好ましくは30重量%~50重量%、例えば25重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%が遊離アミノ酸残基である、請求項24に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項27】
前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として、又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも2.5重量%が遊離アルギニンであり、及び/又は少なくとも2.5重量%が遊離グルタミン酸であり、及び/又は少なくとも1.25重量%が遊離ロイシンであり、及び/又は少なくとも2.2重量%が遊離リシンであり、好ましくは、少なくとも3.7重量%が遊離アルギニンであり、少なくとも3.0重量%が遊離グルタミン酸であり、少なくとも1.5重量%が遊離ロイシンであり、少なくとも2.6重量%が遊離リシンであり、好ましくは、4.7重量%未満が遊離アルギニンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離グルタミン酸であり、及び/又は3.0重量%未満が遊離ロイシンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離リシンであり、好ましくは、4.5重量%未満が遊離アルギニンであり、3.7重量%未満が遊離グルタミン酸であり、2.7重量%未満が遊離ロイシンであり、3.6重量%未満が遊離リシンである、請求項24又は26に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項28】
前記水溶性タンパク質が、大腸菌については50未満、例えば10若しくは10未満、及び/又はサルモネラ菌については1未満、例えば0、及び/又はセレウス菌については500未満、例えば150未満若しくは10未満、及び/又はウェルシュ菌については500未満、例えば50未満、好ましくは10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、好ましくは、cfu/gタンパク質での前記微生物数が、大腸菌については10未満、及び/又はサルモネラ菌については0.1未満、好ましくはサルモネラ菌は存在せず、及び/又はセレウス菌については10未満、及び/又はウェルシュ菌については10未満であり、より好ましくは、前記水溶性タンパク質が、大腸菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、25グラムの加水分解されたタンパク質が評価された場合サルモネラ菌は存在せず、セレウス菌については10未満、及びウェルシュ菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含む、請求項2427のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項2427のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項29】
前記水溶性タンパク質が、請求項1~13若しくは19~23のいずれか一項に記載の方法により得られるか若しくは提供される、請求項2428のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質、又は、前記水溶性タンパク質が、請求項1423のいずれか一項に記載の方法により得られるか若しくは提供される、請求項2428のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項30】
前記昆虫タンパク質源が、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質である、請求項29の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項29の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項31】
食味増強剤であって、ピロリン酸金属塩、2-メチルフラン、2-メチルピロール、ジメチルジスルフィドである食味増強剤、及び保湿剤のうちのいずれか1つ又は複数、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項24~30のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項24~30のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項32】
前記保湿剤が、プロピレングリコール、グリセリン、コーンシロップ及び無機塩から選択される、請求項31に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は請求項31に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項33】
ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品若しくは動物飼料成分の製造、又は人間用食品若しくは人間用食物成分の製造、好ましくはネコ用飼料、イヌ用飼料又はエビ用飼料、例えばバナメイエビ用飼料の製造における、請求項24~32のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、使用。
【請求項34】
前記ペットがイヌ若しくはネコ、好ましくはイヌである、又は前記動物がイヌ、ネコ若しくはエビ、好ましくはバナメイエビ(リトペニウス・バナメイ)である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
製造されるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、例えばバナメイエビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物用、好ましくは、ネコ、イヌ、エビ、例えばバナメイエビ用の、食物若しくは食物成分又は飼料若しくは飼料成分、請求項2及び請求項2に従属する範囲での請求項3~35のいずれか一項に記載の昆虫種とは異なる昆虫種、例えば受粉媒介者等、例えばこれらに限定されないがハチ又は生物防除に使用される益虫、例えばこれらに限定されないがテントウムシ、並びに例えばマルハナバチ、カ、シロアリ及びミバエ用の飼料のいずれかであるか;又は飼料若しくは食物香味剤又は飼料若しくは食物香味増強剤であり、或いは、製造される人間用食品又は製造される人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤、食物香味増強剤、スープ、肉代用製品若しくは成分、又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、請求項33又は34に記載の使用。
【請求項36】
請求項24~32のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分、好ましくは、請求項24~32のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、ネコ用飼料製品若しくは成分、イヌ用飼料製品若しくは成分、又はエビ用飼料製品若しくは成分、例えばバナメイエビ用飼料製品若しくは成分、又は人間用食品若しくは人間用食物成分。
【請求項37】
前記ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物、好ましくは、ネコ、イヌ又はエビ、例えばバナメイエビ用の食物若しくは飼料又は食物成分若しくは飼料成分のいずれかであるか、或いは、食物香味剤若しくは食物香味増強剤又は飼料香味剤若しくは飼料香味増強剤である、請求項36に記載のペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分、又は、請求項36に記載の人間用食品若しくは人間用食物成分であり、前記人間用食品又は人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤又は食物香味増強剤、スープ、麺、バーガー、肉代用製品若しくは成分又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、麺、牛肉ベースのスープ、牛肉ベースのバーガー、ハンバーガー、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、製品又は成分。
【請求項38】
請求項24~32のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、酸化防止剤としての使用。
【請求項39】
請求項36又は37に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、酸化防止剤としての使用。
【請求項40】
請求項36又は37に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、健康増進能を有する成分としての使用。
【請求項41】
酸化防止能を有する、請求項36又は37に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の使用。
【請求項42】
細胞の酸化的損傷の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項36又は37に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分。
【請求項43】
活性酸素種により誘発される炎症誘発性応答の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項36又は37に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分。
【請求項44】
酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を製造するための方法であって、
a)少なくとも1種の水溶性タンパク質を含む水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップであって、前記組成物のpHがpH4~pH8であり、前記水溶性タンパク質組成物中の前記少なくとも1種の水溶性タンパク質が可溶化されるステップ、及び少なくとも1種のペプチダーゼをさらに用意するステップと;
b)ステップa)の前記少なくとも1種のペプチダーゼを、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物と混合して、タンパク質/ペプチダーゼ混合物を用意するステップと;
c)前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の前記少なくとも1種の水溶性タンパク質が前記少なくとも1種のペプチダーゼにより酵素加水分解されるように、ステップb)の前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物を75℃未満の温度で加熱して、酵素加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を用意するステップと;
d)前記少なくとも1種のペプチダーゼが加熱により熱不活性化されるように、加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を75℃~110℃の温度で加熱することにより、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の酵素加水分解を停止して、前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質を用意するステップと
を含み、ステップd)の後、さらなるステップe)において、ステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質が、前記酵素加水分解されたタンパク質中に修飾アミノ基を提供するためにメイラード反応に供され、前記メイラード反応は、
e1)炭水化物を用意し、前記炭水化物をステップd)の前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質と混合して、酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を用意するサブステップと;
e2)ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物を加熱し、酵素加水分解された昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を用意するサブステップとを含む、方法。
【請求項45】
ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、2種以上の水溶性タンパク質、好ましくは2種より多い異なる水溶性タンパク質、より好ましくは3種より多い異なる水溶性タンパク質、最も好ましくは4種より多い異なる水溶性タンパク質を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ステップc)において、前記加熱が35℃~60℃の温度で行われ、及び/又は前記加熱が2時間~12時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、前記加熱が35℃~60℃の温度で2時間~12時間の期間行われる、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
ステップc)において、前記加熱が40℃~55℃の温度で行われ、及び/又は前記加熱が4時間~9時間の期間行われ、好ましくは、ステップc)において、前記加熱が40℃~55℃の温度で4時間~9時間の期間行われ、より好ましくは、ステップc)において、前記加熱が45℃~53℃の温度で5時間~7時間の期間行われ、最も好ましくは、前記加熱が50℃の温度で6時間の期間行われる、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物のpHが5~7.7、好ましくは6~7.5である、より好ましくはpHが7.0である、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
ステップa)で用意される前記少なくとも1種のペプチダーゼが、アミノペプチダーゼ、好ましくはエンドペプチダーゼ若しくはエクソペプチダーゼ、又はそれらの混合物であるか又はそれらを含む、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
ステップa)において、前記少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼ、パパイン、プロナーゼ、セリンプロテアーゼ、アルカラーゼ、サブチリシン、サブチリシンA、α-キモトリプシン、カテプシンIII、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、ペプシン、サーモリシン、トリプシンを含むか又はそれらから選択され、好ましくは、前記少なくとも1種のペプチダーゼが、ロイシルアミノペプチダーゼであるか又はそれを含む、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
ステップb)において、前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の前記少なくとも1種のペプチダーゼの量が、前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.05重量%~7重量%、好ましくは前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物の総重量の0.1重量%~6重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%、最も好ましくは0.5重量%~3重量%、例えば1.0重量%~2.0重量%である、請求項44~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
ステップd)において、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の前記酵素加水分解が、前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を30秒~30分、好ましくは45秒~20分、より好ましくは1分~15分、最も好ましくは2分~10分の期間加熱することにより停止される、請求項44~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
ステップd)において、ステップc)の前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液中の前記酵素加水分解が、前記加水分解されたタンパク質/ペプチダーゼ溶液を80℃~105℃、好ましくは85℃~103℃、より好ましくは90℃~100℃の温度に加熱することにより停止される、請求項44~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
ステップe1)において、添加された炭水化物の最終濃度が、前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.05重量%~6.0重量%、好ましくは前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物の総重量の0.1重量%~5.0重量%、より好ましくは0.2重量%~3重量%、最も好ましくは0.3重量%~1.0重量%である、請求項44~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
ステップe2)において、ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、100℃~170℃、好ましくは120℃~168℃、より好ましくは135℃~166℃、例えば140℃~165℃の温度で加熱される、請求項44~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
ステップe2)において、ステップe1)の前記酵素加水分解された昆虫タンパク質/添加された炭水化物混合物が、1分~120分、好ましくは2分~60分、より好ましくは3分~30分、最も好ましくは5分~20分、例えば10分~17分又は約15分の期間加熱される、請求項44~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
ステップe1)において、用意される炭水化物が、スクロース若しくはグルコース、又はそれらの混合物、好ましくはスクロースである、請求項44~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
ステップe2)の後、さらなるステップf2)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が乾燥され、好ましくは、噴霧乾燥、流動床乾燥による乾燥、凍結乾燥、屈折式乾燥のうちのいずれか1つ若しくは複数を適用することにより乾燥される、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
ステップe2)の後、さらなるステップf4)において、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が濃縮される、好ましくは、ステップe2)の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、濃縮ステップ4)の後に酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも30重量%、例えば少なくとも50重量%であるように濃縮される、請求項44~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
濃縮ステップf4)の後に、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の濃縮されたメイラード反応生成物の乾燥物質含量が、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記濃縮されたメイラード反応生成物の総重量を基準として30重量%~80重量%、好ましくは45重量%~75重量%、より好ましくは60重量%~70重量%である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ステップb)の前記タンパク質/ペプチダーゼ混合物中の水溶性昆虫タンパク質の量が、前記タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.2重量%~30重量%、好ましくは前記タンパク質/酵素混合物の総重量を基準として0.5重量%~25重量%、より好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは2重量%~15重量%、最も好ましくは3重量%~10重量%、例えば3.5重量%~7重量%、又は3重量%~5重量%である、請求項44~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、甲虫の幼虫、イエバエ、アメリカミズアブ、イナゴ、バッタ、コオロギ、ゴキブリの幼虫、ヤシオオオサゾウムシの幼虫、カイコ、タガメ、セミ、タケムシ、アリ、キリギリス、チョウ、ヨコバイ、ウンカ及びハチの幼虫のうちのいずれか1つ又は複数に由来する水性水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、好ましくはアメリカミズアブに由来し、好ましくは、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来する水性水溶性タンパク質組成物である、請求項44~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、水等の水溶液中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物、好ましくはアメリカミズアブの幼虫に由来する水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)昆虫、好ましくはアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りにすることにより、ステップ(i)の前記昆虫のサイズを低減するステップと、
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する前記昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)の前記パルプを70~100℃の温度に加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより前記昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の前記昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液等の水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより、昆虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、請求項44~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
ステップa)において、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、アメリカミズアブの幼虫に由来し、水中に溶解した水溶性昆虫タンパク質組成物であり、前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物が、
(i)アメリカミズアブの幼虫、好ましくは12~30日齢、好ましくは14~28日齢、より好ましくは14~26日齢、最も好ましくは幼虫が前蛹に変態する12時間~3日前、例えば変態の1~2日前のアメリカミズアブの幼虫を用意するステップと、
(ii)好ましくはみじん切りすることにより、ステップ(i)の前記アメリカミズアブの幼虫のサイズを低減するステップであって、ステップa)のパルプ中の前記昆虫の残骸の平均粒径が10ミクロン~500ミクロンの範囲である、ステップと、次いで
(iii)ステップ(ii)の低減されたサイズを有する前記昆虫からパルプを得るステップと、
次いで
(iv)ステップ(iii)の前記パルプを80~95℃の温度、好ましくは85~92℃の温度に加熱する、好ましくは70秒~100秒、より好ましくは75秒~90秒の期間加熱するステップと、次いで
(v)ステップ(iv)の加熱されたパルプを、好ましくはデカンテーション及び/又は遠心分離を包含する物理的分離ステップに供して、それにより前記昆虫タンパク質組成物を用意するステップと、次いで
(vi)ステップ(v)の前記昆虫タンパク質組成物を、水又は緩衝水溶液中、好ましくは水中で混合して、ステップa)の前記水性水溶性昆虫タンパク質組成物を用意するステップと
により、又は少なくともそれらのステップにより、好ましくはそれらのステップにより前記アメリカミズアブの幼虫を少なくとも1種の水性水溶性昆虫タンパク質組成物に変換することによって用意される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物が、ステップe2)で用意される酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総量の重量を基準として少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、例えば70重量%~100重量%の程度まで水若しくは緩衝水溶液等の水溶液中に可溶である、請求項44~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
請求項44~65のいずれか一項に記載の方法により得られる、又は請求項44~65のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項67】
昆虫タンパク質源が、請求項62に記載のアメリカミズアブの幼虫である、及び/又は、昆虫タンパク質源が、請求項64のステップ(i)~(vi)に従って用意される、請求項66に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項68】
酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物であって、前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも50重量%、好ましくは55重量%~100重量%、より好ましくは65重量%~100重量%、最も好ましくは75重量%~100重量%、例えば80重量%~95重量%又は85重量%~100重量%が1,000ダルトン未満の分子量を有する、酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項69】
前記タンパク質の総重量を基準として前記タンパク質の少なくとも10重量%、好ましくは15重量%~60重量%、より好ましくは20重量%~55重量%、最も好ましくは30重量%~50重量%、例えば25重量%~40重量%、又は35重量%~50重量%が遊離アミノ酸残基である、請求項68に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項70】
前記酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の総重量を基準として、又は酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質の前記メイラード反応生成物の総重量を基準として少なくとも2.5重量%が遊離アルギニンであり、及び/又は少なくとも2.5重量%が遊離グルタミン酸であり、及び/又は少なくとも1.25重量%が遊離ロイシンであり、及び/又は少なくとも2.2重量%が遊離リシンであり、好ましくは、少なくとも3.7重量%が遊離アルギニンであり、少なくとも3.0重量%が遊離グルタミン酸であり、少なくとも1.5重量%が遊離ロイシンであり、少なくとも2.6重量%が遊離リシンであり、好ましくは、4.7重量%未満が遊離アルギニンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離グルタミン酸であり、及び/又は3.0重量%未満が遊離ロイシンであり、及び/又は4.0重量%未満が遊離リシンであり、好ましくは4.5重量%未満が遊離アルギニンであり、3.7重量%未満が遊離グルタミン酸であり、2.7重量%未満が遊離ロイシンであり、3.6重量%未満が遊離リシンである、請求項68又は69に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項71】
前記水溶性タンパク質が、大腸菌については50未満、例えば10若しくは10未満、及び/又はサルモネラ菌については1未満、例えば0、及び/又はセレウス菌については500未満、例えば150未満若しくは10未満、及び/又はウェルシュ菌については500未満、例えば50未満、好ましくは10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、好ましくは、cfu/gタンパク質での前記微生物数が、大腸菌については10未満、及び/又はサルモネラ菌については0.1未満、好ましくはサルモネラ菌は存在せず、及び/又はセレウス菌については10未満、及び/又はウェルシュ菌については10未満であり、より好ましくは、前記水溶性タンパク質が、大腸菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含み、25グラムの加水分解されたタンパク質が評価された場合サルモネラ菌は存在せず、セレウス菌については10未満、及びウェルシュ菌については10未満のcfu/gタンパク質での微生物数を含む、請求項68~70のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項72】
請求項44~65のいずれか一項に記載の方法により得られるか又は提供される、請求項68~71のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項73】
前記昆虫タンパク質源が、アメリカミズアブの幼虫のタンパク質である、請求項72に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項74】
食味増強剤であって、ピロリン酸金属塩、2-メチルフラン、2-メチルピロール、ジメチルジスルフィドである食味増強剤、及び保湿剤のうちのいずれか1つ又は複数、又はそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項66~73のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項75】
前記保湿剤が、プロピレングリコール、グリセリン、コーンシロップ及び無機塩から選択される、請求項74に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物。
【請求項76】
ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品若しくは動物飼料成分の製造、又は人間用食品若しくは人間用食物成分の製造、好ましくはネコ用飼料、イヌ用飼料又はエビ用飼料、例えばバナメイエビ用飼料の製造における、請求項66~75のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、使用。
【請求項77】
前記ペットがイヌ若しくはネコ、好ましくはイヌである、又は前記動物がイヌ、ネコ若しくはエビ、好ましくはバナメイエビ(リトペニウス・バナメイ)である、請求項76に記載の使用。
【請求項78】
製造されるペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、例えばバナメイエビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物用、好ましくは、ネコ、イヌ、エビ、例えばバナメイエビ用の、食物若しくは食物成分又は飼料若しくは飼料成分、請求項62及び請求項62に従属する範囲での請求項63~77のいずれか一項に記載の昆虫種とは異なる昆虫種、例えば受粉媒介者等、例えばこれらに限定されないがハチ又は生物防除に使用される益虫、例えばこれらに限定されないがテントウムシ、並びに例えばマルハナバチ、カ、シロアリ及びミバエ用の飼料のいずれかであるか;又は飼料若しくは食物香味剤又は飼料若しくは食物香味増強剤であり、或いは、製造される人間用食品又は製造される人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤、食物香味増強剤、スープ、肉代用製品若しくは成分、又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、請求項76又は77に記載の使用。
【請求項79】
請求項66~75のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分、好ましくは、ネコ用飼料製品若しくは成分、イヌ用飼料若しくは成分、又はエビ用飼料製品若しくは成分、例えばバナメイエビ用飼料製品若しくは成分、又は請求項66~75のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物を含むか又はそれらからなる、人間用食品若しくは人間用食物成分。
【請求項80】
前記ペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分が、ペット、ネコ、イヌ、魚、エビ、マグロ、タラ、養殖海洋生物、養殖淡水生物、ターボット、サケ、コイ、離乳期の動物、離乳後の動物、好ましくは、ネコ、イヌ又はエビ、例えばバナメイエビ用の食物若しくは飼料又は食物成分若しくは飼料成分のいずれかであるか、或いは、食物香味剤若しくは食物香味増強剤又は飼料香味剤若しくは飼料香味増強剤である、請求項79に記載のペットフード製品、ペットフード成分、動物飼料製品又は動物飼料成分、又は請求項79に記載の人間用食品若しくは人間用食物成分であり、前記人間用食品又は人間用食物成分が、ブロス、ソース、香味剤、食物香味剤又は食物香味増強剤、スープ、麺、バーガー、肉代用製品若しくは成分又は肉代替製品若しくは成分、例えば煮た牛肉、牛ブロス、麺、牛肉ベースのスープ、牛肉ベースのバーガー、ハンバーガー、豚ブロス、牛肉、調理肉の代用品のいずれかである、製品又は成分。
【請求項81】
請求項66~75のいずれか一項に記載の酵素加水分解された水溶性昆虫タンパク質のメイラード反応生成物の、酸化防止剤としての使用。
【請求項82】
請求項79又は80に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、酸化防止剤としての使用。
【請求項83】
請求項79又は80に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の、健康増進能を有する成分としての使用。
【請求項84】
酸化防止能を有する、請求項79又は80に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分の使用。
【請求項85】
細胞の酸化的損傷の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項79又は80に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分。
【請求項86】
活性酸素種により誘発される炎症誘発性応答の防止及び/又は抑制のための方法における使用のための、請求項79又は80に記載の動物飼料製品若しくは動物飼料成分又はペットフード製品若しくはペットフード成分。
【国際調査報告】